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ロスト・スペラー 18
- 1 :2018/02/08 〜 最終レス :2018/06/28
- 夢も希望もないファンタジー
過去スレ
https://mao.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1505903970/
http://mao.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1493114981/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1480151547/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1466594246/
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http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1442487250/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1430563030/
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http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1404902987/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1392030633/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1377336123/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1361442140/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1347875540/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1334387344/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1318585674/
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1303809625/
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1290782611/
- 2 :
- 今から500年前まで、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。
魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
グランド・マージは一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えるという膨大な作業を成し遂げた。
その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が、共通魔法を世界中に広め、現在の魔法文明社会がある。
『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、過去の『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』以降、封印された。
大戦の跡地には、禁呪クラスの『失われた呪文』が、数多の魔法使いと共に眠っている。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は『禁断の地』と名付けた。
ロスト・スペラー(lost speller):@失われた呪文を知る者。A失われた呪文の研究者。
B(俗)現在では使われなくなった呪文を愛用する、懐古趣味の者。偏屈者。
- 3 :
- 魔法大戦とは新たな魔法秩序を巡って勃発した、旧暦の魔法使い達による大戦争である。
3年に亘る魔法大戦で、1つの小さな島を残して、全ての大陸が海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
唯一残った小さな島の東岸に、沈んだ大陸に代わる、1つの大陸を浮上させた。
それが現在の『唯一大陸』――『私達の世界<ファイセアルス>』。
共通魔法使い達は、8人の高弟を中心に魔導師会を結成し、100年を掛けて、
唯一大陸に6つの『魔法都市<ゴイテオポリス>』を建設して世界を復興させた。
そして、共通魔法以外の魔法を『外道魔法<トート・マジック>』と呼称して抑制した。
今も唯一大陸には、6つの魔法都市と、それを中心とした6つの地方がある。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、砂漠のグラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、豊饒のブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、極寒のエグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、商都のティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、山岳のボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、常夏のカターナ地方。
共通魔法と魔導師会を中心とした、新たな魔法秩序の下で、人々は長らく平穏に暮らしている。
しかし、今――
- 4 :
- ……と、こんな感じで容量一杯まで、設定を作りながら話を作ったりする、設定スレの延長。
時には無かった事にしたい設定も出て来ますが、少しずつ矛盾を無くして行きたいと思います。
- 5 :
- 待ってました!
- 6 :
- コバルトゥスの冒険
第五魔法都市ボルガにて
精霊魔法使いの冒険者コバルトゥス・ギーダフィは、旧い魔法使いが遺したと言われる、
財宝の在り処を示した秘密の地図を、怪しい浮浪者から受け取った。
この浮浪者は、ある魔法使いから地図を託されたのだが、自分で財宝を探し当てたくとも、
その力が無かった。
そこで「話に乗ってくれそうな腕利きの人物」を探していたと言う。
煽て上げられて好い気になったコバルトゥスは、何事も行動に移さなければ始まらないと、
地図に記された財宝の在り処へと向かう事にした。
財宝の在り処の周辺図と思しき物が描き記された地図の端には、以下の一文が添えられている。
「マンリガタリから西に、山を越え、川を越え、谷を越え、森を越え、断崖の洞穴に入る」
マンリガタリとはボルガ地方の西部にあるマンリガタリ町の事だ。
その西には確かに山があるが、山の向こうに何があると言う話は聞かない。
最新の町の周辺図を見ても、そこは山林しか描かれていない。
それでもコバルトゥスは浮浪者が持っていた地図を信じた。
伸るか反るか、危険を恐れないのが冒険者。
冒険心を失って何もしない者には、その資格は無いのだ。
- 7 :
- ボルガ地方西部、山林に囲まれた秘境の洞窟にて
コバルトゥスは精霊の導きを頼りに道無き道を進み、山を越え、川を越え、谷を越え、森を越え、
遂に小さな洞窟を発見した。
とても徒歩では到達出来ない断崖の高い位置に、大人が入れる程の洞穴が口を開けている。
コバルトゥスは風の魔法で跳躍し、洞穴の前にある3平方身の広い足場に上がった。
そこでは意外な人物が、彼を待ち構えていた。
「おっ、コバギじゃないか!
こんな所に何の用なんだ?」
それは旅商の男ラビゾー。
中肉中背の中年男性で、コバルトゥスとは長い付き合いだ。
コバルトゥスは吃驚して尋ね返す。
「先輩こそ!」
「僕は人の付き添いで」
2人が話していると、洞穴から新たに1人が姿を現した。
「どうしたんですか、ラビゾーさん?
こんな所に誰か……」
それを見て、コバルトゥスは二度吃驚。
「君は、カシエ!?」
「バル!!」
第三の人物はカシエ・フラシャルデン。
一時コバルトゥスと旅をした事がある女性だ。
「バル」とは「コバルトゥス」の愛称の一つ。
約2年振りの偶然の再会に、カシエの方も驚いていた。
- 8 :
- 「どうして、こんな所に!?
いや、それよりも……、えぇい、何から聞けば良いのか!」
コバルトゥスの記憶では、カシエ・フラシャルデンは世間知らずで内気な女性だった。
一緒に旅をしたと言うのも、コバルトゥスが強引に彼女を口説いて連れ回した。
それが、「こんな場所」で何をしているのか?
混乱する彼に、カシエは笑顔で答える。
「私、冒険者になったの」
「何だってぇっ!?
何で又!?」
コバルトゥスは仰天し、目を剥いて大きな声を上げた。
カシエは冒険者らしい砂色の「狩猟家」の服装に反して、凡そ「冒険者」とは言い難い生白い肌に、
鮮やかな朱色の長い髪を纏め上げている。
このアンバランスさが、如何にも駆け出しと言う風。
「貴方と冒険して分かったの。
私の人生に足りなかった物が何なのか!」
「それが『冒険』だって言うのか?」
「ええ、その通り!!
今、私は生きている!」
気弱だった女の子が、数年で逞しくなった物だと、コバルトゥスは感心した。
彼は改めてラビゾーに向き直る。
「それで、先輩は?
何で、こんな所に?」
「言ったじゃないか、付き添いだって」
「そうじゃなくて、この洞窟が何なのか知ってるんスか?」
「いや、知らない。
財宝の洞窟らしいが、僕は雇われたんでなぁ」
「――ってェ事は、カシエ!
君が先輩を、ここに連れて来たのか!」
コバルトゥスがカシエを顧みると、彼女は素直に平然と頷いた。
「そうよ」
以前の彼女からは想像出来ない行動力に、コバルトゥスは舌を巻く。
- 9 :
- カシエは一々驚くコバルトゥスに、事情を話した。
「ボルガ市で変な小父さんに地図を買わないかって言われてね」
コバルトゥスはラビゾーを一顧する。
ラビゾーは不快感を顔に表して言った。
「僕じゃないぞ」
そんな2人の遣り取りを見たカシエは、苦笑して続ける。
「財宝の隠し場所が記されてるって言うから、安かったし買っちゃった」
「俺と同じって訳か」
コバルトゥスの発言を聞いて、カシエは尋ねた。
「貴方も財宝を探しに来たの?」
「ああ。
それで、どうする?」
「どうするって?」
彼の唐突な問いに、カシエは理解が追い付かず、尋ね返した。
コバルトゥスは小さく笑う。
「同じ目的を前にして、冒険者が2人」
彼はラビゾーに目を遣る。
ラビゾーは眉を顰めて一言。
「僕は違うぞ」
コバルトゥスは真顔でカシエに向き直った。
- 10 :
- 冒険者同士は仲間であり、商売敵でもある。
同じ目的を前にすれば、協力するか、敵対するか選ばなくてはならない。
しかし、カシエが理解していない様子だったので、コバルトゥスは先輩振って教授した。
「冒険者同士は仲間、そうでなけりゃ敵だ。
俺と君は同じ財宝を狙ってるんだぜ?」
「じゃあ、競争する?」
カシエが然して驚きもせず、普通に尋ねて来たので、コバルトゥスは逆に驚かされる。
「競争……。
いや、競争しても良いけどさ、君は冒険者と言っても駆け出しだろう?
俺と競争して勝つ自信あるの?」
彼にも先輩冒険者としての矜持がある。
駆け出しの雛(ひよ)っ子に負ける気は更々無かった。
「それは分からないけど」
「そうだろう?」
勝負は止めておけと、コバルトゥスは暗に忠告する。
- 11 :
- だが、カシエは聞かなかった。
「でも、分け前が減るのは嫌かな」
「それは嫌だろうけどさぁ……」
意外に強欲なんだなと、コバルトゥスは呆れる。
素人が欲張ると碌な事にならないのだ。
カシエは思案する素振りを見せた後、こう提案した。
「7:3で、どう?」
「……あのさ、念の為に聞くけど」
「私が7」
「正気か?」
幾ら何でも欲の皮が張り過ぎている、身の程知らずだと、コバルトゥスは憮然として溜め息を吐く。
それにも拘らず、カシエは真顔で強気に反論する。
「先に探索を始めたのは私。
バルは後発の分、私より不利な筈」
コバルトゥスと別れてからの約2年、彼女に何があったのか?
世間の荒波に揉まれて強くなったのか、今の態度が本性なのか……。
そこまで言われては、コバルトゥスも大人しく従えない。
「君の考えは、よぉく解った。
良いだろう!
どちらが先に財宝を見付けるか、勝負だ!」
こうしてコバルトゥスはカシエと勝負する事になった。
- 12 :
- コバルトゥスを導いて洞窟内を探索し、カシエより先に財宝を見付けましょう。
コバルトゥス
探索1回目
調子:普通
耐久力:11
魔力:16
- 13 :
- コバルトゥスは勇んで洞窟に踏み込んだ。
「行ってらっしゃーい」
先に洞窟から出たばかりのカシエは、呑気に手を振って彼を見送る。
それが「余裕」に感じられてならず、コバルトゥスは敢えて無視して歩を進めた。
洞窟の壁面が平らな所を見ると、内部には明らかに人の手が入っている。
それに幅も高さも共に1身半程度で、広さには余裕がある。
少なくとも、「天然の洞窟その儘」では無い。
洞窟に入って数身歩いた所で、下へ続く階段が見える。
階下は真っ暗で、外の明かりも入って来ない様だ。
コバルトゥスは魔法の灯火で周囲を照らし、階段を下りた。
暗闇が余り好きでは無い彼は、恐る恐る洞窟を行く。
湿った土と苔の臭いが漂う。
先ず、彼は魔法を使って、洞窟の全容を知ろうとした。
(……精霊が感じられない。
淀んでいる。
嫌な空気だ)
しかし、精霊の気配がしなかった。
どうやら魔法的な仕掛けが、洞窟全体に施されている様だ。
カシエの余裕は、これが原因かも知れないと、コバルトゥスは考える。
ここでは彼の自慢の精霊魔法も、ある程度は制限される。
耐久力:10
魔力:16
【行動表判定】
- 14 :
- 【通常】
流石に財宝を隠した洞窟だけあって、一筋縄では行かない厄介な場所だと認めたコバルトゥスは、
慎重に洞窟を進む。
階段を下りると真っ直ぐの通路が続いていた。
それなりに長いらしく、明かりが突き当たりまで届かない。
【洞察力判定】
- 15 :
- 【失敗】
コバルトゥスは先の見えない洞窟の暗がりにばかり気を取られ、足元の警戒が疎かになっていた。
踏み込んだ足の下にある筈の、地面の感覚が無い。
これは落とし穴系の罠だ。
凡そ彼らしくない見落としである。
魔法が思う様に扱えないと言う心配から、感覚が鈍ったのか?
【機敏さ判定】
- 16 :
- 【失敗】
洞窟に入ってから、どうも調子が狂っている。
何とか罠を避けたかったが、反応が遅れてしまった。
一瞬の遅れが命取りに繋がるのだ。
コバルトゥスは危機を脱しようと、懸命に足掻いた。
【魔力を消費して再判定】
- 17 :
- 【成功】
コバルトゥスは隠し持っていた精霊石の力を引き出した。
突風が吹き、落とし穴に倒れ掛かる彼の体を押し返す。
「あ、危ねぇ!」
踏み出した足を引き戻すと同時に、思わず独り言が漏れる。
落とし穴の中を確認すると、深さこそ半身以下で浅かった物の、底には短くも鋭い棘が幾本も、
上に向けて設置されている……。
中に落ちていれば、致命傷とまでは言わずとも、負傷は避けられなかったであろう。
コバルトゥスは冷や汗を拭いつつ、安堵の息を吐いた。
彼は気を強く持ち、落とし穴を避けて壁際を歩きながら、通路の先に進む。
耐久力:9
魔力:15
- 18 :
- 数身進むと、通路の突き当たりが見えて来た。
更に進むと、右側に通路が続いている事が判る。
右折している様だ。
後ろを振り返ると、幽かに階段が見えるも、地上から離れたと感じる。
コバルトゥスは軽く首を横に振って、悪い想像を振り払った。
通路の突き当たりに、特に仕掛けは無い。
素直に右折するより他に無さそうだ。
耐久力:8
魔力:15
- 19 :
- 洞窟内は静まり返っている。
魔法の灯りを頼りにしている所為で、暗闇に目が慣れる事も無い。
聞こえるのは、自分の足音と呼吸音、そして服が擦れる音のみ。
それに不気味な程、何の気配もしない。
少し歩いた所で、コバルトゥスは又も突き当たりに出会(でくわ)した。
先程と同様に、右側に通路が続いている。
ここにも仕掛けらしい物は何も無い。
右折するより他に無さそうだ。
耐久力:7
魔力:15
【行動表参照】
- 20 :
- 【不利判定】
角を曲がって暫く歩いたコバルトゥスは、分岐路に差し掛かった。
彼の目の前には真っ直ぐ続く道と、左に折れる道がある。
【洞察力判定】
- 21 :
- 【成功】
どちらの道を進もうか、コバルトゥスは迷って足を止めた。
(さて、どうするかな……)
そこで何気無く辺りの床や天井、壁を見ていると、右側の壁に不自然な穴が開いているのを発見。
(これは……?)
コバルトゥスは穴の正面に立たない様に気を付けて、穴に近付く。
直径は1節程度。
試しに、短剣を穴の前に翳してみた。
直後、短剣に何かが当たり、その衝撃で短剣が手から離れ、転がってしまう。
カッと硬い音がして、何かが対面の壁に当たった。
灯りを向けると、小さな冷たい金属の輝きが反射する。
金属の針が壁に刺さっているのだ。
(矢か!)
大きさからして、仮に罠に気付かず刺さっていた所で、致命傷にはならないだろうが、
毒が塗ってある可能性もある。
(益々油断ならない所だな)
落とし穴に嵌まり掛けて、慎重になっていなければ、これに引っ掛かっていたかも知れないと、
コバルトゥスは警戒心を強めた。
- 22 :
- 同時に彼はカシエの心配をする。
この罠は何かが前が横切ると、即座に発射される仕組みになっている。
暗闇の中で、彼女は小さな射出口を発見する事が出来たのだろうか?
カシエは先に探索していたので、恐らく罠の事は知っているとは思うのだが……。
(先には、もっと危険な罠が仕掛けてあるかも知れない。
何としても彼女より先に行かないと)
コバルトゥスはカシエに対する競争意識より、先輩冒険者として彼女を守るべきだと言う思いが、
強くなっていた。
耐久力:6
魔力:15
- 23 :
- 通路を真っ直ぐ進むか、左に進むか選択して下さい。
- 24 :
- 真っ直ぐ進む
- 25 :
- 矢の罠を避けつつ、短剣を回収したコバルトゥスは、改めて2つの道を見比べる。
そして、余り時間を掛けずに真っ直ぐ進む道を選択した。
どちらの道が正しいのか判らないのだから、迷う事は無い。
そう割り切ったのだ。
少し進むと、又突き当たり。
今度は左側に通路が続いている。
右側は扁平な岩の壁で、特に見るべき物は無い。
コバルトゥスは左折して進んだ。
耐久力:5
魔力:15
- 26 :
- そこから真っ直ぐ行くと、更に下へと続く階段がある。
先の分岐路で左折した場合、何があったのかとコバルトゥスは気になった。
しかし、今から戻るのも面倒だと思い、取り敢えず階段を下りて、進めるだけ進もうと決める。
相変わらず、ここは生き物の気配がしない。
魔法的な仕掛けの所為で感覚が鈍っているのか、それとも本当に何も居ないのか……。
判るのは、陰気な土と苔の匂いのみ。
耐久力:4
魔力:15
- 27 :
- 階段を下りた先には、2叉に分かれた道がある。
一応、ここが地下2階と言う事になるだろうか?
雰囲気は上の階と、そう変わらない。
行き成り罠があると言う事も無い。
分岐路は右と左。
左の道からは、微かに風が感じられる。
コバルトゥスの鋭敏な感覚を以ってしても、本当に風が吹いているのか、気の所為なのか疑う位、
微弱にではあるが……。
右の道からは、特に何も感じられない。
どちらも魔法の灯りが弱まる自身の周囲数身より先は暗闇で、何があるか見通せない。
耐久力:3
魔力:15
- 28 :
- 右の道を進むか、左の道を進むか、選んで下さい。
- 29 :
- 右の道
- 30 :
- コバルトゥスは右の道を進む事にした。
少し歩くと、ここでも突き当たりに出会す。
道は左側に続いている。
これまで彼は何度も曲がり道を見て来た。
暗い洞窟内では、正しい方角も判らない。
普通の冒険者なら色々と道具を揃えるのだが、コバルトゥスは余計な物を持ち歩かない。
魔法で大抵の事は何とかなるので、重荷を背負うのは馬鹿らしいと考えているのだ。
この洞窟では、その魔法が余り利かないので、少し心配ではある。
道順さえ憶えていれば、地上に帰れる筈なので、心配は要らないと思うのだが……。
(何があるか判らないからな……)
コバルトゥスは小さく息を吐き、心を強く持って左折した通路を行く。
耐久力:2
魔力:15
- 31 :
- 曲がり角の先は真っ直ぐな通路だった。
少しの間、罠を見ていないので、コバルトゥスは余計な事を考える。
(どうせ、この先に罠があるんだろう……。
楽観しては行けない。
しかし、お宝にも巡り会えていないな。
どうした事か……)
今までの分かれ道の先に、お宝があったかも知れないと考えると、コバルトゥスは気も漫ろだった。
だが、必ず財宝があったとは限らない。
単なる外れの道だった可能性もある。
寧ろ、そちらの可能性の方が高い。
カシエが先に探索しているのだから。
真に価値のある財宝は、幾度の困難を潜り抜けた向こう、洞窟の最深部に眠っている物なのだと、
コバルトゥスは自分に言い聞かす。
耐久力:1
魔力:15
【行動表参照】
- 32 :
- 【失敗】
暫く真っ直ぐな道を歩いていると、又々突き当たり。
今度は右側に道が続いている。
そろそろ罠があるだろうと、コバルトゥスは壁や床に不自然な所が無いか、熟(じっく)り観察した。
一見した所、罠らしき物は見当たらない。
奇妙な穴が開いていたり、或いは不自然な凸凹があったり、色の異なる場所があったり、
そう言う事は全く無い。
(罠は無いのか?)
この洞窟では魔法資質が十全に働かないが、異様な魔力が感じられると言う事も無いし、
必ず罠があると決まっている訳でも無いのだから、通っても大丈夫だとコバルトゥスは判断した。
それが誤りだった。
- 33 :
- 角を曲がろうとした所で、コバルトゥスは魔力の流れを感じる。
その源は彼の持っている精霊石だ。
精霊石から魔力が漏出している。
「何だ、こりゃぁ!?」
コバルトゥスは思わず声を上げた。
精霊石の魔力が床に吸い込まれる様に失われて行く。
彼は直ぐに魔力を吸う床から離れたが、遅きに失した。
それは丸で、水を注いだグラスを倒してしまったかの如く。
精霊石の魔力は、あっと言う間に空になってしまった。
「はぁ……」
コバルトゥスは深い溜め息を吐いて、茫然とした。
そろそろ罠があると警戒していたのに、間抜けにも引っ掛かってしまった自分の愚かさが恨めしい。
どうすれば罠が見破れたのかと、後悔する。
目に見えて怪しい所は無かった。
(――精霊か!)
コバルトゥスは閃く。
そう言えば、この場には精霊以前に魔力が全く感じられないと。
それが違和感の正体。
だからこそ、無意識に「何かある」と警戒していたのだ。
「魔力の流れが無い事」を、彼は「危険が無い事」と捉えた。
しかし、それは魔力が淀んでいた為では無く、魔力が全く無い為だった。
今少し彼が注意深ければ、判った事。
- 34 :
- しかし、幾ら後悔しても遅い。
それにコバルトゥスは疲労を感じ始めていた。
(頃合かな)
引き揚げるには良いタイミングだと、彼は前向きに考えた。
元々疲れて来たら帰ろうと思っていたのだ。
危険な罠がある以上、無理して進まない方が良い。
洞窟が一体どれだけ深いのかも判っていないし、こんな所で命を落としては詰まらない。
少し落胆しながらも、コバルトゥスは来た道を引き返す。
耐久力:0
魔力:0
【耐久力と魔力が尽きたので帰還】
- 35 :
- 幸い、帰り道で迷う事は無かった。
コバルトゥスは記憶力には自信がある。
罠の位置が変わったり、新しい罠が追加されていたりもしない。
コバルトゥスが洞窟から出ると、カシエが迎えた。
「お帰りなさい、バル。
どうだった?」
彼女の問いに、コバルトゥスは肩を竦めて見せる。
何も宝を手に入れられなかったと言う意味では、収穫無しである。
カシエは余裕の笑みを浮かべて、コバルトゥスと擦れ違い、洞窟に入って行く。
「フフッ、私が勝っちゃうかもね?」
コバルトゥスは眉を顰めて振り返り、彼女を呼び止めた。
「カシエ!」
「何?」
「……気を付けて」
足を止めて振り返ったカシエに、コバルトゥスは注意する様にと忠告する。
カシエは小さく笑って頷いた。
「分かった」
罠のある危険な洞窟から、果たしてカシエは戻って来れるのか……。
今のコバルトゥスには、無事を祈る事しか出来ない。
- 36 :
- コバルトゥスは洞窟の入り口から少し離れた所に居るラビゾーの傍に座って体力の回復を待った。
序でに、精霊石を取り出して、精霊力も回復させておく。
今回は珍しく、ラビゾーが自分からコバルトゥスに話し掛けた。
「意外と早かったな」
そんなに直ぐに洞窟から出た覚えが無いコバルトゥスは、怪訝な顔をして尋ねる。
「否々(いやいや)、結構長く潜ってた積もりなんスけどねェ……。
どん位、時間経ってるんスか?」
ラビゾーは懐から時計を取り出して確認した。
「んー、1角は経ってないだろうな。
半角……も経ってないな、2針と少しか」
「えぇっ、2針!?
唯(たった)そんだけ!?」
驚くコバルトゥスをラビゾーは笑う。
「どんだけ長く潜ってた積もりなんだよ」
彼の時計が正しい証拠に、太陽の傾きも余り変わっていない。
(時空が歪んでる……?
馬鹿らしい。
そこまで大掛かりな物だったら、もっと精霊が騒いでる。
俺の感覚が狂ってただけだろう)
コバルトゥスは事実を受け止め、強引に自分を納得させた。
- 37 :
- コバルトゥスは暇潰しに、ラビゾーと話を続ける。
「先輩、カシエと会ったのは、どこで?」
「ボルガ市だよ。
僕が旅商だと知って、付いて来て欲しいって」
ラビゾーの答にコバルトゥスは呆れ顔で言う。
「そんで付いてったんスか?」
「急ぐ用事があった訳でも無いし、報酬は貰えるし、悪い話じゃ無かったんでな」
「で、何してんスか?」
「何って、商売だよ。
冒険に必要そうな物を用意して、売ってるんだ」
「例えば?」
コバルトゥスはラビゾーの商売人らしい所を、見た事が無い。
仮にも自分より年上の男性に対して、本当に商売が出来るのかと疑っている。
ラビゾーは面倒そうな顔をして、大きなバックパックを開き、中の物を取り出して見せた。
「携行食、飲み水、薬草、傷薬、方位磁針、紙、縄、提燈(ランタン)と油、『燐寸<トーチ・スティック>』、
布、ロッド、他にもあるが、こんな感じの物だな」
商人を捕まえて道具を用意させる等、丸で昔の本格的な冒険者の様。
カシエは道楽では無く、本気で冒険者になったのだと、コバルトゥスは感心した。
- 38 :
- 「へー、中々本格的ッスねぇ……。
先輩、俺にも呉れませんか?」
感心序でに、コバルトゥスはラビゾーに頼んでみる。
ラビゾーは快く頷いた。
「良いよ。
何が欲しい?」
「んじゃ、先ず食い物を」
腹が減っては戦は出来ぬと、コバルトゥスは携行食を要求する。
「1つ300MGだ」
携行食は手の平に乗る程度の箱に入った、棒状の『乾餅<ビスケット>』に似た『軽食<スナク>』。
1箱6本入りで、1食2本の1日分である。
「えっ、金取るんスか?」
予想外だと言う顔をする彼に、ラビゾーは呆れ果てた。
「当たり前だ。
何で只で呉れてやらなきゃ行けない?」
「えー……、でも、何時もは只で食い物分けてくれるじゃないッスか……」
「これは『商品』だ。
僕の私物じゃない」
「吝々(けちけち)しなくても良いじゃないッスか」
「吝嗇(けち)以前に、お前、今はカシエさんと勝負してる最中だろう?
彼女は丁(ちゃん)と代金を払っているぞ。
扱いは『公平<フェア>』じゃないとな」
ラビゾーに正論を言われて、コバルトゥスは反論出来ず、不満気に口を閉ざした。
- 39 :
- コバルトゥスは少しの間、黙っていたが、やがて思い付いて言った。
「あっ!
じゃあ、先輩、付けって事で」
「誰が信用するか!
お前、今まで一度も僕が貸した金を返した事が無いだろう!」
良い考えだと思っていたのに、即ラビゾーに否定されて、コバルトゥスは面食らう。
「えっ、借金なんかしましたっけ?」
「何度もしているぞ。
小額だから直ぐに返すと言いながらな!」
自分に都合の悪い事は直ぐ忘れられる、実に都合の好い記憶力を持っているコバルトゥスは、
借金の事を悉(すっか)り忘れていた。
悄気るコバルトゥスを慰める様に、ラビゾーは言う。
「紙と筆なら貸せるぞ」
「えっ、要らないッスよ」
「洞窟を探索するなら、地形とか記憶する必要があるだろう?」
「俺、記憶力は良い方なんで」
「じゃあ、借金の事も憶えてるよな?」
「いや、それは全然……」
「こいつ何なんだ」とラビゾーは憤然とした表情で口を閉ざした。
- 40 :
- コバルトゥスは切り替えて、違う話を始めた。
「話は変わりますけど、先輩、カシエの探索って、どの辺まで進んでます?」
ラビゾーは素直に答える。
「幾らか財宝らしい物を回収していた。
未だ洞窟全体を探索し尽くした訳じゃないみたいだけど」
「地下何階まで行ってるんスか?」
「確か、3階まで進んだと言ってたかな。
僕は洞窟に入ってないから、どんな所かは分からんのだが」
そんなに差は開いていないと、コバルトゥスは安堵した。
探索が順調に進めば、追い付けるだろう。
「あの洞窟、結構危険な罠があるんスけど、カシエは大丈夫なんスかね?」
「罠があるとは言っていたけど、そんなに危険なのか?」
ラビゾーの表情が少し曇る。
彼もカシエが危ない目に遭う事を、好ましく思っていない。
「即死はしなくても、重傷を負う位はあり得ますよ」
「……コバギ、お前は大丈夫だったのか?」
唐突に自分の心配をされ、コバルトゥスは慌てる。
「あ、あぁ、その……俺は平気ッスよ!
これでも熟練の冒険者なんスから!」
落とし穴を見落としたり、魔力を失ったりと、危ない場面があった事は、見栄の為に言わなかった。
- 41 :
- 間違えました。
>>39と>>40の間には、以下の文章が入ります
沈黙が気不味くなって、コバルトゥスは自分から口を利く。
「そう言や、先輩。
あの『女の子<ロリータ>』は?」
彼は以前会った時にラビゾーが連れていた、女の子に就いて尋ねた。
「今は家で留守番だ」
「本気で拾った子を育てるんスか?」
「ああ」
「独りで?」
「家族が居る」
「やっぱり、『あれ』ッスか?」
「何だよ、『あれ』って?」
「理想の女に育てて、大きくなったら嫁にするって言う」
コバルトゥスはラビゾーが結婚している事を知らなかった。
独身男性が幼い女の子を育てる事を、下心抜きには考えられない。
「哀れな奴だな」
ラビゾーに哀れまれ、コバルトゥスは動揺する。
「えっ、何で」
「お前は女が絡むと、それ抜きでは考えられないのか?
相手は幼い子供なのに」
「悪い事だとは思わないッスよ?
別に先輩を非難したい訳じゃないッス。
実際、悪くないっしょ?」
ラビゾーは静かに首を横に振って、口を閉ざした。
この話題は良くなかった様だ。
- 42 :
- 読む順番は>>39、>>41、>>40となって、その続きです。
ラビゾーは真剣に考え込む。
「罠と言っても、彼女、そんな深刻な風じゃなかったんだが……。
怪我をしても軽い物で……」
コバルトゥスが大袈裟なのか、カシエが楽観的過ぎるのか分からないのだ。
嘘では無いと、コバルトゥスは強弁する。
「駆け出しの手には余ると思いますよ。
今までは運良く行ってたかも知れませんけど、大事になってからじゃ遅いッス」
ラビゾーはコバルトゥスを見詰めて言った。
「……詰まり、これ以上の探索は諦めろと?」
「そこまでは言いませんけど。
俺と一緒なら安全かと」
「カシエさんが何と言うかだな」
問題は、それだ。
幾ら危険を訴えても、カシエが聞き入れるかは分からない。
コバルトゥスはラビゾーに依願する。
「先輩からも、何とか言って下さいよ」
「競争の件は、どうするんだ?」
「ンな事、言ってる場合じゃないっしょ!」
「あ、あぁ」
コバルトゥスが強い口調で押し切ると、ラビゾーは消極的に頷いた。
2対1ならカシエも聞き入れざるを得まいと、コバルトゥスは説得に自信を持つ。
- 43 :
- それから数点経ったが、カシエは未だ帰らない。
コバルトゥスはラビゾーに言う。
「カシエ、帰り遅いッスね……」
ラビゾーは時計を確認した。
「いや、未だ2針も経ってないが?」
「洞窟の中では、時間の進みが早く感じるんスよ。
カシエにとっては、もう2角は経ってる気分だと思います」
心配性なコバルトゥスに、ラビゾーは客観的な情報を示す。
「カシエさんは、そんな風には言ってなかったけどな……。
それに今まで彼女は3針前後で戻って来た。
4針が近付いても戻らなかったら、考えよう」
コバルトゥスは自分でも心配し過ぎなのか、正しい予感なのか判らなくなって来る。
ラビゾーの言い分は随分と悠長に聞こえるが、焦りから強引に突入して二次遭難する事も避けたい。
否、二次なら未だしも、自分だけ遭難する可能性もある。
「心配な気持ちは分かるけど、今は待とう」
コバルトゥスの内心の焦りを見透かした様に、ラビゾーは落ち着いた声で言う。
「茶でも飲まないか?」
そう言って、彼は大型の魔法瓶から紙コップに熱い麦茶を注ぎ、コバルトゥスに差し出した。
コバルトゥスは疑いの眼差しを向けて、受け取りを躊躇う。
「金を取るんじゃ……?」
- 44 :
- ラビゾーは憮然として告げた。
「取る訳無いだろうが!
要らないなら良いぞ」
「あぁっ、頂ます、下さい、貰います!」
コバルトゥスは現金な態度で、茶の入った紙コップを受け取る。
熱い茶を一気に飲み干した彼は、大きな息を吐き、再び難しい顔をする。
ラビゾーは慰めを言う。
「地下深く進むに連れて、地上に戻るのも時間が掛かる」
「解ってます、その位」
コバルトゥスは迷いから心の制御が難しくなっていた。
どうしても、口調が苛立った物になってしまう。
「……どうしても心配なら、今から行くか?」
ラビゾーの問い掛けに、コバルトゥスは沈黙して長考を始めた。
話は至って単純だ。
カシエを助けに行くか、行かないか、この2択しか無い。
ここで愚図愚図言っている位なら、早く助けに行った方が良いと言う事も理解している。
問題は、ここが普通の洞窟では無い所だ。
天然の洞窟であれば、どんなに深く、複雑な構造をしていようとも、攻略に苦労しない。
しかし、この洞窟は魔法的な仕掛けが全体に施してある。
鋭敏なコバルトゥスの魔法資質を以ってしても、その全容は疎か、1階層の構造も把握出来ない位。
- 45 :
- カシエを助けに行くか、行かないか選択して下さい。
言い方を変えれば、お節介を焼きに行くか、カシエの実力を信用するかです。
- 46 :
- 難しいな…!
悩んだけど『行かない』で
- 47 :
- 助けに行くか、行かざるべきか……。
コバルトゥスは葛藤の末に、時間を区切る事にした。
(先輩の言う通り、3針までは待とう。
カシエも冒険者なんだ。
そう下手はしない……と思う。
だが、3針を過ぎても戻らなかったら。
その時は、迷わず助けに行く)
そう決心するも、心は相変わらず落ち着かない。
彼はラビゾーに時間を訊ねる。
「先輩、カシエが入ってから何針経ちました?」
「今、聞いたばかりじゃないか……。
2針を少し過ぎた位だな」
ラビゾーは呆れ気味に答える。
コバルトゥスは決意表明した。
「3針過ぎたら、教えて下さい。
俺はカシエを助けに行きます」
「少し早いと思うがなぁ……。
手遅れになるよりは増しだけど……」
暈(ぼ)やきながら頷くラビゾー。
重苦しい雰囲気の中、2人は無言で時が過ぎるのを待った。
- 48 :
- 3針が経つ前に、コバルトゥスは出来るだけ体力の回復を試みる。
精霊の気配を全身で感じ、その力が体の隅々まで行き渡るイメージを繰り返し思い浮かべる。
(火よ、水よ、風よ、土よ、空よ、太陽よ……)
息を吸う度に、冷たい空気が肺から全身に回る。
心臓が脈打つ度に、熱い血が体中を巡る。
両足は植物の様に、大地から精気を吸い上げる。
陽光の温かさを、肌で受け止める。
そのイメージを保ちながら、コバルトゥスは精霊石を手にした。
そして手中の精霊石を体の一部の様に感じ、脈動を伝える。
回復に努めるコバルトゥスの横で、ラビゾーはバックパックを整理を始める。
「コバギ、カシエさんの救助に僕も付いて行った方が良いだろうか?
それとも素人は足手纏いになるかな?」
急な問い掛けに、コバルトゥスは思案した。
「ムム、どうッスかねェ……。
先輩は無理しない方が良いんじゃないッスか」
「……解った、大人しく待つよ」
ラビゾーは残念そうに言って、バッグを漁る手を止める。
- 49 :
- 数極後に、ラビゾーは再びコバルトゥスに話し掛けて来た。
「もし、お前も戻って来なかったら?」
その可能性も無い訳では無い。
コバルトゥスは答に迷う。
「その時は……。
先輩に助けて貰うしか無いッスかね……」
「2人の手に負えない状況を、僕が何とかしなくちゃ行けなくなる訳だが……。
町に戻って救助を呼ぼうか?
最悪、魔導師会を頼る事になると思うが」
「命には代えられないっしょ」
コバルトゥスの冷静な正論に、ラビゾーは頷いた。
「そうだな。
コバギ、お前がカシエさんを助けに行って、1角経っても戻らなかったら、その時は」
「はい、お願いします」
口では頼んだ物の、そうならない様にしなければとコバルトゥスは用心した。
精霊魔法使いである彼は、魔導師会絡みの面倒は避けたい。
しかし、自分だけなら未だしも、カシエの命が懸かっているので、嫌々言ってる場合では無い。
- 50 :
- 待機中(カシエの判定)
- 51 :
- 待機中(カシエの判定)
- 52 :
- 待機中(カシエの判定)
- 53 :
- そうこう言っている間に、カシエが洞窟から出て来た。
先に彼女に気付いたコバルトゥスは、安堵して呼び掛ける。
「カシエ、無事だったか!」
カシエは疲れた笑みを浮かべて言った。
「無事は無事だけど」
曖昧な答を返す彼女を見て、コバルトゥスは俄かに怪訝な顔になる。
「危ない目に遭わなかった?」
見た所、カシエは傷一つ負っていないが、それだけで危険が無かったと判断する事は出来ない。
嫌に心配して来るコバルトゥスに、カシエは苦笑した。
「全然。
それより仕掛けに梃子摺って」
「仕掛け?」
「簡単には先に進めない様にしてあって、面倒臭かった。
それに『化け物<モンスター>』も居たし」
カシエの情報に、コバルトゥスは目を剥いて驚く。
「モ、モンスター!?」
「化け物って言って良いかは分からないけど。
弱かったし。
それより、ワーロックさん!」
詳細を尋ねようとするコバルトゥスを余所に、カシエは話を打ち切って、ラビゾーの元へ駆け寄った。
- 54 :
- カシエは嬉しそうに自分のバックパックから、先の探索で発見した物を取り出し、ラビゾーに見せた。
「鑑定、お願いします」
石の器が1つと、金属塊が2つ。
ラビゾーは先ず、石の器を見る。
少し深い皿の様な形で、取っ手は付いていない。
手作りなのか、外側は凸凹の多い稚拙な造りで、粗々(ざらざら)している。
対して内側は磨いてあり滑らかだ。
重さは石製品相応。
「これは……分からないな。
ボルガ地方の有名な古陶磁とは違う。
古い時代の物だろうけれど、一般的な食器だと思う。
もしかしたら、物凄い値打ち物かも知れないが、僕には判らない。
買い取るとしても、300MGって所だなぁ……」
ラビゾーは次の鑑定に移る。
対象は銀色の球形の金属。
彼は魔法も使って、正確に調べる。
「この金属は……銀にしては軽いし、綺麗過ぎるな。
霊銀の合金?
磁性無し。
何かの部品って訳でも無いし、飾りかな?
中身は確り詰まってると。
用途が解らない。
……500MGで」
最後の鑑定品は、先の物より小さな銀色の金属。
「あぁ、これは銀合金だな。
これも宝飾品だろうか……?
純銀じゃないし、天然の銀でもないけど、これなら結構高値で売れると思う。
8000MG位かな」
ラビゾーに財宝を鑑定して貰ったカシエは、満足気に頷いた。
「全部で8800MGですね」
- 55 :
- ラビゾーと楽しそうに話すカシエの姿が、コバルトゥスの心に暗い感情を鬱積させて行く。
手振らで戻ったコバルトゥスと違い、カシエは確り財宝を発見していた。
それに彼が感じていた危険も、どこ吹く風と言った様子。
調子の良い駆け出しに嫉妬するのは、狭量に過ぎると判っている彼だが……。
恨めし気に見詰めるコバルトゥスの視線に気付いたラビゾーは、カシエに小声で言った。
「コバギの奴、大分心配してたんだ。
カシエさんは大丈夫かって。
僕は未だ早いって言うのに、助けに行こう、助けに行こうって」
カシエは振り返り、嫌らしい笑みを浮かべる。
「へぇー、そうなんですかぁ」
コバルトゥスは羞恥で顔中が熱くなるのを感じた。
「……『女性には優しく』が、俺のモットーだからな」
狼狽を悟られまいと、彼は焦りを隠して堂々と振舞う。
カシエ自身は何とも思っていないのに、他人が針小棒大に騒ぎ立てるのは、見っ度も無い。
コバルトゥスは居た堪れなくなり、洞窟に入った。
- 56 :
- 探索を再開する場所を決めて下さい。
地下1階の選択していない分岐路の先か、地下2階の選択していない分岐路の先か、
地下2階の進み掛けの道の先か、3つです。
- 57 :
- 進みかけの道
- 58 :
- コバルトゥス
探索2回目
調子:不調
耐久力:11
魔力:16
- 59 :
- 洞窟に入ったコバルトゥスは、胸に靄を抱えていた。
(先輩は何で、俺が心配してたってカシエに言ったんだろう……。
あんな口の軽い人だとは思わなかった)
ラビゾーに悪気は無かったのだろうと解っていても、カシエの優越の笑みを思い浮かべると、
コバルトゥスは苛々して来る。
(はぁ、余計な事を考えるんじゃない。
今は探索に集中しないと……)
頭の中では冷静にならなければと思う彼だが、気が急いて集中し切れないのが現実だ。
(道形に進んで、最初の分かれ道を真っ直ぐ、次の分かれ道を右に。
罠の位置も憶えてる。
大丈夫、大丈夫)
コバルトゥスは記憶通りに罠を回避して、何事も無く地下2階へと進む。
(とにかくカシエより先に行かないと。
女に優しい事と、甘い事は違う。
宝を先取りされる訳には行かない。
俺は冒険者だ)
だが、客観的に評価して、彼の精神状態は余り良くない。
雑念を振り払い切れていない。
それが魔法の明かりにも表れている。
コバルトゥスの行く先を照らす灯火は、不安定に強まったり弱まったり。
地下2階の罠があった場所まで来たコバルトゥスは、一旦足を止めた。
(この曲がり角の床に罠がある事は判ってる。
同じ罠に引っ掛かる様な馬鹿じゃない)
彼は前に罠が作動した時、その位置を確り記憶していた。
難無く罠を避けて、未だ見ぬ道を進む。
【行動表参照】
- 60 :
- 【失敗】
罠があった曲がり角を通り過ぎると、再び同じ様な曲がり角に出会す。
道は右側に続いている。
これまでに通って来た道は全て、壁も床も天井も殆ど同じ扁平な土と岩で出来ている。
特に目印となる様な物も無い。
こんな陰気な景色が延々と続くと思うと、気が滅入って来る。
「はぁ……」
思わず、溜め息を吐いたコバルトゥスは、足元に小さな穴が開いてる事に気付いた。
先の魔力を奪う罠を抜けて、彼は少し気を抜いてしまっていた。
又しても罠を見落としていたのだ。
コバルトゥスは身の危険を感じ、精霊石を手にした。
【機敏さ判定】
- 61 :
- 【成功】
床の穴からは多数の槍が一斉に飛び出す。
コバルトゥスは精霊の力を借りて、高く跳躍した。
そんなに天井が高くないので、頭を打ちそうになり、慌てて首を引っ込め、両腕で衝撃を和らげる。
幸い、槍の長さは然程では無く、穴から1歩程で止まる。
コバルトゥスは槍が飛び出す罠から、少し離れた場所に着地して、安堵の息を吐いた。
「あっ、危ねぇ……。
『串刺し<シュタッヘル>』になる所だった……」
今まで「勘」を頼りに冒険して来たコバルトゥスは、未経験の危機を味わっている。
魔法に頼り過ぎて来た、「付け」なのだろうか?
本当に、こんな所をカシエは無事に通り抜けたのか……。
彼女の余裕振りを考えると、同じ道を通ったとは思えなかった。
振り返れば、槍は既に引っ込んでおり、何事も無かったかの様。
コバルトゥスは恐怖心に身震いするが、幾ら何でも引き返すには早過ぎる。
先に進もうとコバルトゥスは決心した。
耐久力:10
魔力:15
- 62 :
- 『槍<スパイク>』の罠を抜けると、真っ直ぐの道が続く。
1回目の探索に続き、罠の歓迎を受けたコバルトゥスの足取りは、重くなっていた。
(遅弛してたら、カシエを追い越せない。
それは解ってるんだが……)
慎重になり過ぎるのは良くないが、焦って又罠に掛かるのも良くない。
何より、思う様に進めない事で、苛々している事が良くない。
今のコバルトゥスには天の巡りまでも含めて、全てが自分の敵に回っている心持ちだった。
カシエは当然の事ながら、精霊を妨げる洞窟も、吝嗇なラビゾーも。
焦燥と苛立ちばかりが募って行く。
(これは良くない。
良くないぜ……)
悪い予感はしているのだが、今は前に進む事しか出来ない。
耐久力:9
魔力:15
- 63 :
- 通路を真っ直ぐ進んだ先には、更に地下へと続く階段があった。
これが「真の財宝」に辿り着く「正しい道」なのかは判らない。
しかし、この階層を抜ける事で、彼は気持ちを切り替えられそうだった。
コバルトゥスは実際に歩いた距離よりも長く、地下2階に滞在していた気分だった。
一度大きく深呼吸をしたコバルトゥスは、慎重に階段を下りる。
耐久力:8
魔力:15
- 64 :
- コバルトゥスは地下3階に出た。
ここも今までと雰囲気は殆ど変わらない。
扁平な土と岩の壁面に、湿った土と苔の匂い。
通路は目の前に真っ直ぐ続いている。
罠の類は無さそうだ。
耐久力:7
魔力:15
- 65 :
- 少し進むと、分岐に差し掛かる。
片方は真っ直ぐ。
もう片方は右に曲がる。
どちらの道を進むべきか、コバルトゥスは一旦足を止めた。
他に道は無いし、罠らしい物も見当たらない。
真っ直ぐ進む道からは、何の気配も読み取れないが、右の方には何か「居る」。
明確な強い気配では無いが、確かに存在を感じるのだ。
耐久力:6
魔力:15
- 66 :
- 真っ直ぐ進むか、右折するか選択して下さい。
- 67 :
- 書き込みが無かったので、ランダム判定します。
時間の小数点以下が奇数なら直進、偶数なら右折。
- 68 :
- コバルトゥスは右の道の先にある物を、確かめようと決めた。
恐怖を感じない訳では無いが、然して勇気を要する事でも無い。
これは冒険、危険を避けては進めない。
仮に凶悪な獣が棲み付いていたとしても、彼には必殺の魔法剣がある。
しかし、油断は禁物。
コバルトゥスは気配を殺して、静かに「何物か」に接近する。
先ずは正体を明らかにしなければ、対応も何も無い。
【行動表参照】
- 69 :
- 【通常判定】
コバルトゥスは風の精霊を頼り、何物かの大凡の姿形だけでも判らないか、試してみた。
(……体温が無い?
大きな塊?
動物の形とは思えない。
それに息遣いも無い。
これは……蹲って眠ってる蛙か蛇か?)
だが、正体は判然としない。
少なくとも恒温動物で無い事は明確だ。
コバルトゥスは魔法の明かりを前方に向け、今度は目視で正体を探ろうとする。
高さ1歩前後、幅1身弱の蠢く塊がある。
体表は明かりを反射して、照ら照らと輝く。
(何だ?
蛙でも蛇でも無い?)
謎の蠢く塊は明かりで照らされても、コバルトゥスに気付く様子が無い。
コバルトゥスは焦(じ)り焦(じ)りと、蠢く塊に近寄った。
(……判らん。
何だ、こりゃ?
蛞蝓か?)
対象まで約2身に近付いても、正体が「判らない」。
半透明で輝く体を持つ、これは巨大なアメーバ状の生物。
【機敏さ判定】
- 70 :
- 【敵の先攻】
コバルトゥスは今まで、この様な生き物を見た事が無かった。
猛獣や妖獣の類とは、明らかに違う。
敵と認識して良いのかも判らない。
反応が無いので、コバルトゥスが更に接近すると、アメーバ状の生物は行き成り体を変形させ、
液体を飛ばして来た。
「わ、糞(ば)っちい!」
慌ててコバルトゥスは後退る。
【戦闘能力判定】
- 71 :
- 【回避成功】
水の様な液体はコバルトゥスの体には届かず、土と岩の床を濡らした。
何だか分からないが、これを敵対的行動と受け取ったコバルトゥスは、反撃を試みる。
彼は短剣を持っているが、真面に斬り付けて効果があるかは怪しい。
滑々(ぬめぬめ)した体に触れるのも嫌なので、魔法剣で一刀両断する事にした。
【戦闘能力判定】
- 72 :
- 【失敗】
魔法剣はアメーバ状の生物の体を真っ二つにする。
しかし、活動が止まる様子は無い。
体が2つに分かれても、直ぐに再生する。
アメーバ状の生物は、再び液体をコバルトゥスに向かって吐き出した。
【戦闘能力判定】
- 73 :
- 【回避失敗】
より狙いが正確になった一撃を、コバルトゥスは受けてしまう。
彼は水鉄砲の様な攻撃を腕で防ぐ。
「くっ……」
液体は袖を浸透して、肌を濡らす。
最初は何とも無かったのだが、徐々に腕が辣(ひり)付き始める。
(動物の体を溶かす液体か!?)
これ以上やられる訳には行かないと、コバルトゥスは即座に反撃する。
【戦闘能力判定】
- 74 :
- 【成功】
闇雲に攻撃しても効果が無い事を理解していた彼は、弱点を狙う事にした。
半透明の体の中で1つだけ揺れ動く宝石の様な物が、心臓部では無いかと予想する。
(これで止まれっ!)
短剣を振り抜くと、核の一部が欠けた。
それと同時に、アメーバ状の生物は動きを止める。
半透明の体は粘性を失い、水の様に溶けて流れる。
「異物」の気配は完全に消滅した。
「勝った……」
コバルトゥスは小さく息を吐くと、腕の治療を始めた。
長袖を捲ると、皮膚は赤く爛れており、空気に触れて酷く痛む。
彼は精霊石を持って、呪文を唱える。
「我が身を成す物、あるべき姿を取り戻せ」
見る見る皮膚が再生し、何事も無かったかの様に元に戻った。
【戦利品判定】
- 75 :
- 負傷を治したコバルトゥスは、床一面に広がる液体を真面真面(まじまじ)と見詰める。
カシエが言っていた化け物とは、これの事だろうかと彼は思った。
(でも、カシエは『弱かった』って言ってたよなぁ……)
もしかしたら、カシエはコバルトゥスの想像以上に、腕の立つ冒険者になったのかも知れない。
思い返しても、彼女が傷を負った様子は無かった。
(カシエが凄いのか?
それとも俺が……、俺が大した事無いんだろうか?)
現在、冒険者を名乗る者は殆ど居ない。
これまで同業者と鉢合わせた事は、数える程も無い。
謙虚にならなければ行けないのかと、コバルトゥスは自信を失い掛けていた。
重苦しい気持ちで足を進めようとした所、視界に輝く物が映る。
(あの変な生き物の核だな……)
拾い上げて見ると、薄緑掛かった半透明の小さな石塊(いしくれ)だった。
大きさは指の先程度。
(水晶の原石か?)
美しいと言えば美しいが、如何程の価値があるかは判らない。
後でラビゾーに鑑定して貰おうと、コバルトゥスは石塊をコートの内に収めた。
耐久力:2.5
魔力:14
- 76 :
- 如何程の価値があるかは不明だが、一応お宝らしい物を入手出来たコバルトゥスは、少し安心した。
カシエの事もあり、2回連続で手振らで戻るのは辛過ぎる。
アメーバ状の生物が居た先に進むと突き当たりが見え、更に近付くと、その左右に道があると判る。
そして、突き当たりの壁面には、明らかに不自然な、扉型の凹みがある。
だが、押しても叩いても反応は無い。
精霊の気配を探ると、扉の向こうには地下へ続く空間がある。
壊して進もうとコバルトゥスは考えるが、扉は分厚い。
下手をすると、地下への空間が埋まってしまいそうだ。
ここでは彼の精霊魔法は、緻密な働きが出来ない為に、そうなる可能性は決して低くない。
(どこかに、これを動かす『機巧<カラクリ>』があるのか?
……カシエは仕掛けに苦労した様な事を言ってたな)
恐らくは、この階層に扉を開ける仕掛けがある。
それは右の道か、左の道か、それとも前に通らなかった道の先か?
耐久力:1.5
魔力:14
- 77 :
- 右に進むか、左に進むか、1つ前の分岐に引き返してみるか、3択です。
- 78 :
- 一つ前の分岐点まで引き返そう
- 79 :
- コバルトゥスは一つ前の分岐に戻って、通らなかった方の道を進んでみる事にした。
アメーバ状の生物を倒して水浸しになった場所を通過して、左右に道が分かれる丁字路に出る。
(俺は左側の道から、右折して来た。
こっちには上に続く階段があるだけだから、進むのは右……)
この先に何が待ち受けているのか?
罠だけでなく、「敵」の存在にも気を付けなければならない。
今の所は、何の気配もしないが……。
【行動表参照】
- 80 :
- 【通常判定】
丁字路を右折した先は、行き止まりだった。
右にも左にも道は続いていない。
(外れか?
いや、何かある……)
よく観察すると、右側の壁に1手四方の四角い石板が取り付けられている。
高さはコバルトゥスの腰の辺り。
(これが扉を開く仕掛け?
それとも罠?)
触って良い物かと、コバルトゥスは悩んだ。
取り敢えず、周囲を調べてみるが、罠らしい物は無い。
触った所で、罠が発動する可能性は低いが……。
【洞察力判定】
- 81 :
- 【成功】
コバルトゥスは思い切って、石板を押してみた。
しかし、何も反応は無い。
(これだと思うんだが……)
二度、三度と押してみても、少しも反応は無かった。
(何だ、これ?
釦と見せ掛けた飾りか?
そんな訳は……)
手の平で押すだけでは弱いのかと、拳で力任せに叩いてみても、やはり反応は無い。
(押しても駄目なら――)
もしかして押し釦では無いのかと、コバルトゥスは気付いた。
石板は壁から少し出っ張っている。
隙間に指の先を掛ければ、引き出せそうだ。
【力判定】
- 82 :
- 【成功】
コバルトゥスは両脚に力を入れて踏ん張り、石板を引いてみた。
「フンッ!!」
少しずつだが、石板は手前に引き出される。
「グオォォ……!」
数節動いた所で、石板は何かに引っ掛かった様に動かなくなった。
それと同時に、遠方で地響きの様な音がする。
コバルトゥスは力を抜いて、大きく息を吐いた。
(これで扉が開いた筈。
女の腕力じゃ、これを動かすのは難しかったんだろうなぁ)
カシエが仕掛けに苦労した理由を、彼は察した。
ここには他に見るべき物は無さそうだ。
本当に扉が開いたのか、コバルトゥスは確認しに向かう。
耐久力;0.5
魔力;14
- 83 :
- 先の分岐路に戻り、左折して真っ直ぐの通路を抜けると、突き当たりに穴が開いている。
穴の中には、更に地下に続く階段が見える。
(一応、下の様子を見てから、外に戻ろう)
コバルトゥスは階段を下り、地下4階に進んだ。
階段を一段下りる毎に、僅かではあるが、圧迫される感覚がある。
今の所は直接的な影響は無いが、気になる現象だとコバルトゥスは思った。
階段が終わると、その先には3つに分かれた道がある。
右と左と正面。
(この先は気になるが、今回は切り上げるとしよう)
疲労を感じたコバルトゥスは、ここで探索を止めて戻る事にした。
(今の所、余計な寄り道はしていない……と思う。
そう遠くない内に、カシエに追い付けるんじゃないか?)
勝手な想像ではあるが、何と無く、そんな気がした。
耐久力:0
魔力:14
【耐久力が尽きたので帰還】
- 84 :
- コバルトゥスが洞窟から出ると、携行食を咥えたカシエが出迎える。
「バル、大丈夫?
疲れた顔してるけど」
心配して来る彼女に、コバルトゥスは心外だと平静に振る舞う。
「そうかな?
そんな疲れてないんだが」
アメーバ状の生物に少し苦戦した事を頭の中から消し去って、彼は強がった。
「余り無理しない様にね」
怪訝な顔で、そう告げたカシエは、コバルトゥスと擦れ違い、真っ直ぐ洞窟に向かう。。
どうしてカシエに心配されるのかと、コバルトゥスは納得が行かない気持ちだった。
逆に、洞窟に向かう彼女に忠告しようと思ったが――、
「君こそ――」
「何?」
「い、いや、何でも無い……」
思うだけで止(とど)まる。
自分の為体を顧みれば、先輩振って助言する事は躊躇われたのだ。
先輩と言うからには、何かしら先んじた部分が無くてはならないと、コバルトゥスは考えていた。
尊敬出来る部分が無い者に、敬意を払う事は出来ない。
それがコバルトゥスの思想。
今の自分はカシエに偉そうな事を言える立場では無く、故に先輩風を吹かせても嫌われるだけと、
理解しているのだ。
- 85 :
- 洞窟に入るカシエの背を見送ったコバルトゥスは、ラビゾーに近付いた。
ラビゾーは彼に声を掛ける。
「早かったな、コバギ。
今度は1針と少しだ。
梃子摺っているのか?」
「そんなに早かったんスか?
やっぱり、この洞窟は普通じゃないッスよ」
コバルトゥスは少なくとも1角は探索していた積もりだった。
ラビゾーは彼の言葉を否定しない。
「こんな所に財宝の洞窟があるってのも、よく考えてみれば変だよな?
態々地図を人に渡す『案内人』が居るのも」
「……罠なんスかね?」
コバルトゥスが真剣な表情で尋ねると、ラビゾーは両腕を組んで低く唸る。
「人を陥れる罠……の可能性もあるけど、そうじゃない可能性もあると思う」
「そうじゃない可能性って何スか?」
曖昧な物言いを怪しんだコバルトゥスが問うと、ラビゾーは困った顔で言う。
「魔法使いには変わり者が多いからな……。
この洞窟は先ず間違い無く、魔法使いが作った物だろう。
こんな僻地に人を呼んで何が目的なのかと言うと――」
「罠じゃないんスか?」
「他人を暇潰しに付き合わせる事を罠と言うなら、罠なんだろうな」
ラビゾーが何を言いたいのか分からず、コバルトゥスは困惑した。
「えっ、罠なんスか?
罠じゃないんスか?」
「『謎々<リドル>』は解いて貰う為にある。
クイズでもパズルでも同じ。
挑む者が無ければ、詰まらない。
そう言う事だ」
利いた風な事を言うラビゾーに対して、何が言いたいのやらとコバルトゥスは呆れた眼差しを向ける。
- 86 :
- 「そんな事より!」
その内に、詰まらない話よりも重要な事を思い出して、コバルトゥスは高い声を上げた。
「先輩、鑑定して貰いたい物があるんスけど!」
彼は浮き浮きしながら、洞窟内で拾った宝石らしい物をラビゾーに見せた。
「これ、幾ら位になりますかねぇ?」
「手に取って見ても良いか?」
ラビゾーが訊ねると、コバルトゥスは難色を示す。
「取っちゃったりしませんよね?」
「んな事する訳無いだろう」
基本的に、コバルトゥスは他人を信用しない。
ラビゾーとは長い付き合いで、その為人を知っているので、冗談半分ではあるのだが、
極自然に疑いの言葉が口を衝いて出て来る。
当人は、それを悪癖とは思っていないので、改善する見込みは無い。
コバルトゥスは小さな水晶の原石と思しき物を、ラビゾーに渡す。
「はい、よく見て下さい」
ラビゾーは携帯用の小型顕微鏡で、水晶を観察した。
「……これは水晶だな。
でも、天然の物じゃないみたいだ。
人工の水晶だと思う」
「人工の!」
共通魔法には分子の構成を変化させる物がある。
魔法で作られた人工の水晶には、特徴的な魔法陣の文様が結晶構造に残るのだ。
- 87 :
- コバルトゥスの精霊魔法でも水晶を作り出せるが、それは土中からガラス質の物を選り集めて、
透明度を下げる不純物を取り除きながら、再結晶化させる物である。
この方法では不純物を完全には取り除けないので、色味に土地の特徴が残る。
分子一つ一つの配列を調整する様な精密な物では無いが、これは天然の物に酷似する。
そもそも彼は水晶を人工と天然で区別する感覚が無いので、見分けるも何も無いのだが……。
ラビゾーは顕微鏡での観察を続けながら言う。
「共通魔法で作られた物じゃないぞ……。
外道魔法絡みと思われて、売ろうとしても、買い手は付かないかもな。
水晶には違い無いけど、人工物は安く買い叩かれるのが普通だ。
大きさも小さくて、透明度も高くないし、一部欠けてるし、お世辞にも出来が良いとは言えない」
コバルトゥスは不安になって問う。
「……それで、幾ら位になりそうなんスか?」
「そうだなぁ、200って所か……」
それは余りにも安いと、コバルトゥスは憤慨した。
「そんな!
苦労して手に入れたんスよ!」
「労力をその儘価値に変換する事は出来ない。
成功に繋がらない努力は無意味だって、お前何時も言ってたじゃないか」
冷淡な反応のラビゾーに対して、何とか付加価値を高められないかと、コバルトゥスは知恵を絞る。
「実は、これ……『化け物<モンスター>』を倒して手に入れたんス。
半透明の粘着いた水……洟水とか卵白の塊みたいな奴で。
そいつの核だったんスよ」
- 88 :
- それを聞いたラビゾーは顔を顰めた。
「嫌な譬え方をするなよ……。
ゼリー状とかアメーバ状とか、他に言い様があろうに」
「ええと、詰まり俺が言いたいのは……何か『貴重<レア>』な物じゃないかって」
「幾ら貴重でも『洟水の塊』て……」
「いや、そこは重要じゃないんスよ。
洟水ってのは飽くまで譬えで。
それに卵白とも言ったのに、何で洟水ばっかり取り上げるんスか?
俺が伝えたかったのは、この核が化け物を動かしてたって事実です」
必死に訴えるコバルトゥスだが、ラビゾーは疑う。
「本当に事実なのか?」
「多分……。
『これ』を攻撃したら、化け物の体が溶けて水みたいになって、これだけが残ったんで」
ラビゾーは顕微鏡を覗きながら唸った。
「フーム、フム、フム……。
魔法生物の『核<コア>』なのかな?
魔法的な機構が仕込まれているなら、好事家に高く売れ……ないな。
魔導師会に没収されるのが落ちだ。
他に魔法を研究している機関は無いし」
宝石としての価値は低く、魔法道具としても一般人には扱えないとなると、愈々売り場が無い。
コバルトゥスは数極思案して、こう提案する。
「魔導師会に売り付けるのは、どうッスか?」
- 89 :
- だが、これにもラビゾーは良い反応を見せなかった。
「ある程度の値段で買い取ってくれるかも知れないが、入手元に関して聞かれるぞ。
どうせ、そんなに高くは売れまい。
高々数万MGと引き換えに、魔導師会に目を付けられちゃ、割に合わない。
普通の水晶として売るしかないが、そうすると価値が無い」
「だ、駄目ッスか?」
「あぁ、駄目だな。
どこに持って行っても、200MGが精々と言うか、下手をすると値が付かないかも。
水晶の主成分の『石素<クストン>』と『気素<スピラゲン>』は、有り触れた物だしな。
そこら辺の素人を騙して売るとか、自分で加工して綺麗に磨くとかしないと。
……それにしても、化け物の核だって言うから怖い。
何かの拍子に活動を再開しないとも限らない訳だろう?」
ラビゾーの言う通り、未知の魔法が仕込まれているなら、化け物が復活する可能性もある。
その懸念を払拭する為には、再構成する他に無いのだが、そうすると益々価値が無い。
暗い顔で俯いて黙り込み、本気で落胆するコバルトゥスに、ラビゾーは同情的な声を掛ける。
「200MGと言うのは、市場価格の話だ。
普通に店で売ろうとすれば、その程度の価格にしかならない。
但し、僕が個人的に買い取るなら話は別だ」
コバルトゥスは希望を持って目を輝かせる。
「そうだなぁ……。
500MGで買い取ろう」
そして、ラビゾーの一言で再び落胆する。
「吝嗇(ケチ)ぃッスよ」
「2.5倍だぞ。
500MGあれば、僕の手元にある品の幾つかを買う事が出来る」
- 90 :
- filler
- 91 :
- コバルトゥスは深い溜め息を吐いて、ラビゾーに尋ねた。
「何が買えるんスか?」
「携行食が300MG、傷を治す軟膏が400、後は方位磁針が300、燐寸が1箱100、
魔力式の懐中電灯が200、短剣が400、魔力探査機が300、伸縮式ロッドが500、
安い革の『篭手<アーム・ガード>』が片方400、作業用防護手袋が1組400……。
買える物は、こんな所だな。
あ、安物の時計もあるぞ。
300MGだ」
どれを買おうか、コバルトゥスは悩んだ。
彼は先ず不要そうな物から選別する。
「短剣は要らないッス。
篭手や手袋も安っぽくて、何か好かないッスねぇ。
懐中電灯も結局魔法を使うんなら、自前の魔法で事足りますし。
これ、所謂『魔力石<エナジー・ストーン>』は付いてないんスよね?」
「ああ、魔力石が付いてたら、もっと値段が高い。
飽くまで共通魔法の発動を補助する物だ」
精霊魔法使いであるコバルトゥスは、余り共通魔法を好ましい物と思っていない。
共通魔法使いは精霊をRと理解している。
「この魔力探査機ってのは?
只の棒切れってか、針金に見えるんスけど」
「名前の通りだ。
比較的安価で魔力を通し易い銅合金で出来ている。
これを手に持っていると、魔力に反応して動くと言われている。
どうも使う人の魔法資質が高くないと効果が無いらしく、魔法資質の高い人は魔法を使って、
自力で探知するから不要なんだが、一応補助器具の役割は果たすとか……。
僕は使わないから判らないが」
さて、何を買おうか、売るだけで買わずに取っておくのか、それとも水晶を売らずに持っておくか、
コバルトゥスは考える。
- 92 :
- コバルトゥスが買う物を決めて下さい。
中には無意味な物もあります。
何も買わなくても良いです。
- 93 :
- 時計とマッチ
- 94 :
- 「……時計と燐寸を下さい」
コバルトゥスは暫し迷ったが、その2つを購入する事にした。
時計があれば、洞窟の中でも時間の経過が明確に判る。
狂わされているのが、自分の感覚なのか、それとも時空その物なのかも……。
知った所で何になる訳でも無いかも知れないが、少なくとも1つの謎は解ける。
「分かった」
ラビゾーは時計と燐寸の箱をコバルトゥスに渡した後、耐火布で作られた巾着型の小銭入れから、
100MG硬貨を差し出した。
「どうも」
コバルトゥスは小さく頷き、時計と燐寸をコートのポケットへ、硬貨は懐の革の財布に収める。
一泊置いて、彼はラビゾーが水晶をどうするのか気になって尋ねた。
「所で先輩、その水晶どうするんスか?」
「知り合いの魔法使いに見て貰おうと思う。
何か使い道があるかも知れない」
そう言ったラビゾーは、水晶を小銭入れとは別の革の小袋に入れた。
小袋の表面には蔓草に似た奇怪な文様があり、魔力を封じる呪文の文様ではないかと、
コバルトゥスは推察する。
恐らくは、効果が不明な未知の、乃至、幾らか危険性のある魔法道具を保管する為の物。
- 95 :
- それからコバルトゥスは両目を閉じて、呼吸を静め、体力の回復に努める。
一口に回復魔法と言っても、体力の回復と、負傷の回復は別物だ。
普段は疲れない様に、体力を回復させながら行動するのだが、洞窟の中では精霊を捉え難い。
だから、こうして洞窟の外――精霊の存在を十分に感じられる場所で、休息する必要がある。
瞑想するコバルトゥスに、ラビゾーは話し掛ける。
「コバギ、喉が渇いたり、腹が減ったりしないか?」
コバルトゥスは目を瞑った儘で答える。
「喉の渇きは平気ッス。
俺、水筒持ってますし、水の精霊に呼び掛ければ、何時でも補充出来ます」
「じゃあ、心配無いな」
「いや、腹は減るんスけどね」
如何に魔法でも空腹だけは凌ぎ難いと、彼は白状した。
それは暗に食い物を寄越せと要求しているのだが、ラビゾーは冷たい。
「携行食は沢山あるから、幾らでも買って良いぞ」
「……やっぱり買わなきゃ行けないんスか?」
「当たり前だろう」
他愛も無い会話で時が過ぎる。
- 96 :
- ラビゾーは時計を確認した。
「そろそろ、カシエさんが入ってから1針だ」
未だ瞑想を続けていたコバルトゥスは、少し反応が遅れる。
「ん、カシエが?
あぁ、そうッスね」
彼は余りカシエを心配しなくなっていた。
一体どうした事かとラビゾーは怪しむ。
「心配じゃないのか?」
「いや、全然心配じゃないかって言うと、そうでも無いんスけど……。
俺が一々気を揉んでも仕様が無いんじゃないかって。
今は他人の事より、自分の事ッスよ。
未だ、お宝も手に入れてないんスから」
コバルトゥスの言い分を聞いて、ラビゾーは頷いた。
「そうだな。
勝負の事もあるしな」
今の彼には他人の事を考えている余裕は無い。
だが、自分の事で頭が一杯と言う訳でも無い。
正しく「カシエを信頼している」のだ。
彼女を駆け出しと侮って無用な気を回す事を、コバルトゥスは止めたのである。
- 97 :
- 待機中【カシエの判定】
- 98 :
- 1針半が経過して、カシエは地上に戻って来た。
その表情が、どこか悩まし気だったので、コバルトゥスは気になって声を掛ける。
「お帰り、カシエ。
どうしたんだい?
顔色が優れないけど」
彼女は真顔でコバルトゥスに忠告する。
「気を付けて、バル。
5階層目からは重い空気が場を支配してる。
特に、貴方の魔法資質だと……」
これでは丸でカシエが「先輩」だと、コバルトゥスは苦笑いした。
「あぁ、有り難う。
気を付けるよ」
カシエはコバルトゥスの応答に小さく頷いたのみで、彼の前を通り過ぎてラビゾーの横に移動し、
崩れ落ちる様に腰を下ろした。
そして、大きな溜め息を吐く。
探索で余程疲れたのだろうと窺える。
- 99 :
- カシエは気怠そうにベルト・ポーチから小さな宝石を取り出して、ラビゾーに見せる。
「鑑定、お願いします」
「ああ」
それを受け取ったラビゾーは、顕微鏡で宝石を観察した。
「これは綺麗な紅水晶だ。
フムフム、結晶の中にコバギが持って帰った水晶と似た文様が、透けて見える……。
もしかして、これは化け物を倒して手に入れた物?」
彼の問いに、カシエは項垂れる様に頷く。
「蝙蝠みたいなのが、落として」
「宝石を核にして、色んな魔法生命体を造り出しているのか」
詰まる所、洞窟内の生物は魔法使いが生み出した「宝の番人」と言う訳だ。
コバルトゥスは2人の会話に興味を持って割り込む。
「先輩、それ見せて貰えませんか?」
ラビゾーは僅かに躊躇いを見せ、余り気乗りしない様子で宝石を渡した。
コバルトゥスは眉を顰めて言う。
「そんな心配しなくても、取ったりしませんよ」
「どうかだなぁ……」
「意地悪言わないで下さい。
前の事は謝りますから」
互いに冗談めかして笑い合う彼等の姿を、カシエは羨まし気に見ていた。
- 100 :
- コバルトゥスは紅水晶を天に翳し、透かして見る。
「……何が呪文なのか皆式判らないッスねぇ」
「知識が無いと判別は難しいからな」
暫しコバルトゥスは紅水晶を観察していたが、やがて飽きてラビゾーに返す。
ラビゾーはカシエの方を向いて、彼女に言った。
「大体3000MGって所かな。
どうします、カシエさん?」
「ええ、売ります。
その分で補充をお願いします」
「分かりました」
自分の水晶は買い叩いたのに、カシエの水晶は高く買うのかと、コバルトゥスは不満を持った。
水晶の質が違うのは事実なので、それを口に出したりはしないが……。
(先輩を驚かせる程の物を見付けてやる。
それが『冒険者』としての実力の証明にもなる)
独り心内で決意して、コバルトゥスは洞窟に向かった。
その背に向かって、ラビゾーが声を掛ける。
「コバギ、もう大丈夫なのか?」
「ええ、余り消耗しなかったんで。
今度は、もっと良い物を持って帰りますよ」
そう宣言して、コバルトゥスは洞窟に入った。
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