TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼
【SS】 コメディ  【ラブコメ】 【パロディ】
【安価】わしを育てるスレ 25回育てた【AA】
【リレー小説】サイコパスと化した殺人鬼スネ夫 PART94
ロスト・スペラー 14
【TRPG】下天の勇者達【クロスオーバー】
SS・小説創作の初心者のためのスレ 4筆目
【お絵描き落書き】色鉛筆を擬人化して萌えるスレ3
百合・レズ創作総合スレ
【マラカナンで】キャプテン森崎46【釈迦寝ポーズ】
【燃えて】キャプテン森崎47【ヒーロー】

ロスト・スペラー 18


1 :2018/02/08 〜 最終レス :2018/06/28
夢も希望もないファンタジー

過去スレ

https://mao.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1505903970/
http://mao.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1493114981/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1480151547/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1466594246/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1455282046/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1442487250/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1430563030/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1418203508/
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1404902987/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1392030633/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1377336123/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1361442140/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1347875540/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1334387344/
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1318585674/
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1303809625/
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1290782611/

2 :
今から500年前まで、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。
魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
グランド・マージは一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えるという膨大な作業を成し遂げた。
その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が、共通魔法を世界中に広め、現在の魔法文明社会がある。

『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、過去の『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』以降、封印された。
大戦の跡地には、禁呪クラスの『失われた呪文』が、数多の魔法使いと共に眠っている。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は『禁断の地』と名付けた。


ロスト・スペラー(lost speller):@失われた呪文を知る者。A失われた呪文の研究者。
B(俗)現在では使われなくなった呪文を愛用する、懐古趣味の者。偏屈者。

3 :
魔法大戦とは新たな魔法秩序を巡って勃発した、旧暦の魔法使い達による大戦争である。
3年に亘る魔法大戦で、1つの小さな島を残して、全ての大陸が海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
唯一残った小さな島の東岸に、沈んだ大陸に代わる、1つの大陸を浮上させた。
それが現在の『唯一大陸』――『私達の世界<ファイセアルス>』。
共通魔法使い達は、8人の高弟を中心に魔導師会を結成し、100年を掛けて、
唯一大陸に6つの『魔法都市<ゴイテオポリス>』を建設して世界を復興させた。
そして、共通魔法以外の魔法を『外道魔法<トート・マジック>』と呼称して抑制した。

今も唯一大陸には、6つの魔法都市と、それを中心とした6つの地方がある。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、砂漠のグラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、豊饒のブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、極寒のエグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、商都のティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、山岳のボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、常夏のカターナ地方。
共通魔法と魔導師会を中心とした、新たな魔法秩序の下で、人々は長らく平穏に暮らしている。
しかし、今――

4 :
……と、こんな感じで容量一杯まで、設定を作りながら話を作ったりする、設定スレの延長。
時には無かった事にしたい設定も出て来ますが、少しずつ矛盾を無くして行きたいと思います。

5 :
待ってました!

6 :
コバルトゥスの冒険


第五魔法都市ボルガにて


精霊魔法使いの冒険者コバルトゥス・ギーダフィは、旧い魔法使いが遺したと言われる、
財宝の在り処を示した秘密の地図を、怪しい浮浪者から受け取った。
この浮浪者は、ある魔法使いから地図を託されたのだが、自分で財宝を探し当てたくとも、
その力が無かった。
そこで「話に乗ってくれそうな腕利きの人物」を探していたと言う。
煽て上げられて好い気になったコバルトゥスは、何事も行動に移さなければ始まらないと、
地図に記された財宝の在り処へと向かう事にした。
財宝の在り処の周辺図と思しき物が描き記された地図の端には、以下の一文が添えられている。

「マンリガタリから西に、山を越え、川を越え、谷を越え、森を越え、断崖の洞穴に入る」

マンリガタリとはボルガ地方の西部にあるマンリガタリ町の事だ。
その西には確かに山があるが、山の向こうに何があると言う話は聞かない。
最新の町の周辺図を見ても、そこは山林しか描かれていない。
それでもコバルトゥスは浮浪者が持っていた地図を信じた。
伸るか反るか、危険を恐れないのが冒険者。
冒険心を失って何もしない者には、その資格は無いのだ。

7 :
ボルガ地方西部、山林に囲まれた秘境の洞窟にて


コバルトゥスは精霊の導きを頼りに道無き道を進み、山を越え、川を越え、谷を越え、森を越え、
遂に小さな洞窟を発見した。
とても徒歩では到達出来ない断崖の高い位置に、大人が入れる程の洞穴が口を開けている。
コバルトゥスは風の魔法で跳躍し、洞穴の前にある3平方身の広い足場に上がった。
そこでは意外な人物が、彼を待ち構えていた。

 「おっ、コバギじゃないか!
  こんな所に何の用なんだ?」

それは旅商の男ラビゾー。
中肉中背の中年男性で、コバルトゥスとは長い付き合いだ。
コバルトゥスは吃驚して尋ね返す。

 「先輩こそ!」

 「僕は人の付き添いで」

2人が話していると、洞穴から新たに1人が姿を現した。

 「どうしたんですか、ラビゾーさん?
  こんな所に誰か……」

それを見て、コバルトゥスは二度吃驚。

 「君は、カシエ!?」

 「バル!!」

第三の人物はカシエ・フラシャルデン。
一時コバルトゥスと旅をした事がある女性だ。
「バル」とは「コバルトゥス」の愛称の一つ。
約2年振りの偶然の再会に、カシエの方も驚いていた。

8 :
 「どうして、こんな所に!?
  いや、それよりも……、えぇい、何から聞けば良いのか!」

コバルトゥスの記憶では、カシエ・フラシャルデンは世間知らずで内気な女性だった。
一緒に旅をしたと言うのも、コバルトゥスが強引に彼女を口説いて連れ回した。
それが、「こんな場所」で何をしているのか?
混乱する彼に、カシエは笑顔で答える。

 「私、冒険者になったの」

 「何だってぇっ!?
  何で又!?」

コバルトゥスは仰天し、目を剥いて大きな声を上げた。
カシエは冒険者らしい砂色の「狩猟家」の服装に反して、凡そ「冒険者」とは言い難い生白い肌に、
鮮やかな朱色の長い髪を纏め上げている。
このアンバランスさが、如何にも駆け出しと言う風。

 「貴方と冒険して分かったの。
  私の人生に足りなかった物が何なのか!」

 「それが『冒険』だって言うのか?」

 「ええ、その通り!!
  今、私は生きている!」

気弱だった女の子が、数年で逞しくなった物だと、コバルトゥスは感心した。
彼は改めてラビゾーに向き直る。

 「それで、先輩は?
  何で、こんな所に?」

 「言ったじゃないか、付き添いだって」

 「そうじゃなくて、この洞窟が何なのか知ってるんスか?」

 「いや、知らない。
  財宝の洞窟らしいが、僕は雇われたんでなぁ」

 「――ってェ事は、カシエ!
  君が先輩を、ここに連れて来たのか!」

コバルトゥスがカシエを顧みると、彼女は素直に平然と頷いた。

 「そうよ」

以前の彼女からは想像出来ない行動力に、コバルトゥスは舌を巻く。

9 :
カシエは一々驚くコバルトゥスに、事情を話した。

 「ボルガ市で変な小父さんに地図を買わないかって言われてね」

コバルトゥスはラビゾーを一顧する。
ラビゾーは不快感を顔に表して言った。

 「僕じゃないぞ」

そんな2人の遣り取りを見たカシエは、苦笑して続ける。

 「財宝の隠し場所が記されてるって言うから、安かったし買っちゃった」

 「俺と同じって訳か」

コバルトゥスの発言を聞いて、カシエは尋ねた。

 「貴方も財宝を探しに来たの?」

 「ああ。
  それで、どうする?」

 「どうするって?」

彼の唐突な問いに、カシエは理解が追い付かず、尋ね返した。
コバルトゥスは小さく笑う。

 「同じ目的を前にして、冒険者が2人」

彼はラビゾーに目を遣る。
ラビゾーは眉を顰めて一言。

 「僕は違うぞ」

コバルトゥスは真顔でカシエに向き直った。

10 :
冒険者同士は仲間であり、商売敵でもある。
同じ目的を前にすれば、協力するか、敵対するか選ばなくてはならない。
しかし、カシエが理解していない様子だったので、コバルトゥスは先輩振って教授した。

 「冒険者同士は仲間、そうでなけりゃ敵だ。
  俺と君は同じ財宝を狙ってるんだぜ?」

 「じゃあ、競争する?」

カシエが然して驚きもせず、普通に尋ねて来たので、コバルトゥスは逆に驚かされる。

 「競争……。
  いや、競争しても良いけどさ、君は冒険者と言っても駆け出しだろう?
  俺と競争して勝つ自信あるの?」

彼にも先輩冒険者としての矜持がある。
駆け出しの雛(ひよ)っ子に負ける気は更々無かった。

 「それは分からないけど」

 「そうだろう?」

勝負は止めておけと、コバルトゥスは暗に忠告する。

11 :
だが、カシエは聞かなかった。

 「でも、分け前が減るのは嫌かな」

 「それは嫌だろうけどさぁ……」

意外に強欲なんだなと、コバルトゥスは呆れる。
素人が欲張ると碌な事にならないのだ。
カシエは思案する素振りを見せた後、こう提案した。

 「7:3で、どう?」

 「……あのさ、念の為に聞くけど」

 「私が7」

 「正気か?」

幾ら何でも欲の皮が張り過ぎている、身の程知らずだと、コバルトゥスは憮然として溜め息を吐く。
それにも拘らず、カシエは真顔で強気に反論する。

 「先に探索を始めたのは私。
  バルは後発の分、私より不利な筈」

コバルトゥスと別れてからの約2年、彼女に何があったのか?
世間の荒波に揉まれて強くなったのか、今の態度が本性なのか……。
そこまで言われては、コバルトゥスも大人しく従えない。

 「君の考えは、よぉく解った。
  良いだろう!
  どちらが先に財宝を見付けるか、勝負だ!」

こうしてコバルトゥスはカシエと勝負する事になった。

12 :
コバルトゥスを導いて洞窟内を探索し、カシエより先に財宝を見付けましょう。

コバルトゥス
探索1回目
調子:普通
耐久力:11
魔力:16

13 :
コバルトゥスは勇んで洞窟に踏み込んだ。

 「行ってらっしゃーい」

先に洞窟から出たばかりのカシエは、呑気に手を振って彼を見送る。
それが「余裕」に感じられてならず、コバルトゥスは敢えて無視して歩を進めた。
洞窟の壁面が平らな所を見ると、内部には明らかに人の手が入っている。
それに幅も高さも共に1身半程度で、広さには余裕がある。
少なくとも、「天然の洞窟その儘」では無い。
洞窟に入って数身歩いた所で、下へ続く階段が見える。
階下は真っ暗で、外の明かりも入って来ない様だ。
コバルトゥスは魔法の灯火で周囲を照らし、階段を下りた。
暗闇が余り好きでは無い彼は、恐る恐る洞窟を行く。
湿った土と苔の臭いが漂う。
先ず、彼は魔法を使って、洞窟の全容を知ろうとした。

 (……精霊が感じられない。
  淀んでいる。
  嫌な空気だ)

しかし、精霊の気配がしなかった。
どうやら魔法的な仕掛けが、洞窟全体に施されている様だ。
カシエの余裕は、これが原因かも知れないと、コバルトゥスは考える。
ここでは彼の自慢の精霊魔法も、ある程度は制限される。


耐久力:10
魔力:16

【行動表判定】

14 :
【通常】

流石に財宝を隠した洞窟だけあって、一筋縄では行かない厄介な場所だと認めたコバルトゥスは、
慎重に洞窟を進む。
階段を下りると真っ直ぐの通路が続いていた。
それなりに長いらしく、明かりが突き当たりまで届かない。

【洞察力判定】

15 :
【失敗】

コバルトゥスは先の見えない洞窟の暗がりにばかり気を取られ、足元の警戒が疎かになっていた。
踏み込んだ足の下にある筈の、地面の感覚が無い。
これは落とし穴系の罠だ。
凡そ彼らしくない見落としである。
魔法が思う様に扱えないと言う心配から、感覚が鈍ったのか?

【機敏さ判定】

16 :
【失敗】

洞窟に入ってから、どうも調子が狂っている。
何とか罠を避けたかったが、反応が遅れてしまった。
一瞬の遅れが命取りに繋がるのだ。
コバルトゥスは危機を脱しようと、懸命に足掻いた。

【魔力を消費して再判定】

17 :
【成功】

コバルトゥスは隠し持っていた精霊石の力を引き出した。
突風が吹き、落とし穴に倒れ掛かる彼の体を押し返す。

 「あ、危ねぇ!」

踏み出した足を引き戻すと同時に、思わず独り言が漏れる。
落とし穴の中を確認すると、深さこそ半身以下で浅かった物の、底には短くも鋭い棘が幾本も、
上に向けて設置されている……。
中に落ちていれば、致命傷とまでは言わずとも、負傷は避けられなかったであろう。
コバルトゥスは冷や汗を拭いつつ、安堵の息を吐いた。
彼は気を強く持ち、落とし穴を避けて壁際を歩きながら、通路の先に進む。


耐久力:9
魔力:15

18 :
数身進むと、通路の突き当たりが見えて来た。
更に進むと、右側に通路が続いている事が判る。
右折している様だ。
後ろを振り返ると、幽かに階段が見えるも、地上から離れたと感じる。
コバルトゥスは軽く首を横に振って、悪い想像を振り払った。
通路の突き当たりに、特に仕掛けは無い。
素直に右折するより他に無さそうだ。


耐久力:8
魔力:15

19 :
洞窟内は静まり返っている。
魔法の灯りを頼りにしている所為で、暗闇に目が慣れる事も無い。
聞こえるのは、自分の足音と呼吸音、そして服が擦れる音のみ。
それに不気味な程、何の気配もしない。
少し歩いた所で、コバルトゥスは又も突き当たりに出会(でくわ)した。
先程と同様に、右側に通路が続いている。
ここにも仕掛けらしい物は何も無い。
右折するより他に無さそうだ。


耐久力:7
魔力:15

【行動表参照】

20 :
【不利判定】

角を曲がって暫く歩いたコバルトゥスは、分岐路に差し掛かった。
彼の目の前には真っ直ぐ続く道と、左に折れる道がある。

【洞察力判定】

21 :
【成功】

どちらの道を進もうか、コバルトゥスは迷って足を止めた。

 (さて、どうするかな……)

そこで何気無く辺りの床や天井、壁を見ていると、右側の壁に不自然な穴が開いているのを発見。

 (これは……?)

コバルトゥスは穴の正面に立たない様に気を付けて、穴に近付く。
直径は1節程度。
試しに、短剣を穴の前に翳してみた。
直後、短剣に何かが当たり、その衝撃で短剣が手から離れ、転がってしまう。
カッと硬い音がして、何かが対面の壁に当たった。
灯りを向けると、小さな冷たい金属の輝きが反射する。
金属の針が壁に刺さっているのだ。

 (矢か!)

大きさからして、仮に罠に気付かず刺さっていた所で、致命傷にはならないだろうが、
毒が塗ってある可能性もある。

 (益々油断ならない所だな)

落とし穴に嵌まり掛けて、慎重になっていなければ、これに引っ掛かっていたかも知れないと、
コバルトゥスは警戒心を強めた。

22 :
同時に彼はカシエの心配をする。
この罠は何かが前が横切ると、即座に発射される仕組みになっている。
暗闇の中で、彼女は小さな射出口を発見する事が出来たのだろうか?
カシエは先に探索していたので、恐らく罠の事は知っているとは思うのだが……。

 (先には、もっと危険な罠が仕掛けてあるかも知れない。
  何としても彼女より先に行かないと)

コバルトゥスはカシエに対する競争意識より、先輩冒険者として彼女を守るべきだと言う思いが、
強くなっていた。


耐久力:6
魔力:15

23 :
通路を真っ直ぐ進むか、左に進むか選択して下さい。

24 :
真っ直ぐ進む

25 :
矢の罠を避けつつ、短剣を回収したコバルトゥスは、改めて2つの道を見比べる。
そして、余り時間を掛けずに真っ直ぐ進む道を選択した。
どちらの道が正しいのか判らないのだから、迷う事は無い。
そう割り切ったのだ。
少し進むと、又突き当たり。
今度は左側に通路が続いている。
右側は扁平な岩の壁で、特に見るべき物は無い。
コバルトゥスは左折して進んだ。


耐久力:5
魔力:15

26 :
そこから真っ直ぐ行くと、更に下へと続く階段がある。
先の分岐路で左折した場合、何があったのかとコバルトゥスは気になった。
しかし、今から戻るのも面倒だと思い、取り敢えず階段を下りて、進めるだけ進もうと決める。
相変わらず、ここは生き物の気配がしない。
魔法的な仕掛けの所為で感覚が鈍っているのか、それとも本当に何も居ないのか……。
判るのは、陰気な土と苔の匂いのみ。


耐久力:4
魔力:15

27 :
階段を下りた先には、2叉に分かれた道がある。
一応、ここが地下2階と言う事になるだろうか?
雰囲気は上の階と、そう変わらない。
行き成り罠があると言う事も無い。
分岐路は右と左。
左の道からは、微かに風が感じられる。
コバルトゥスの鋭敏な感覚を以ってしても、本当に風が吹いているのか、気の所為なのか疑う位、
微弱にではあるが……。
右の道からは、特に何も感じられない。
どちらも魔法の灯りが弱まる自身の周囲数身より先は暗闇で、何があるか見通せない。


耐久力:3
魔力:15

28 :
右の道を進むか、左の道を進むか、選んで下さい。

29 :
右の道

30 :
コバルトゥスは右の道を進む事にした。
少し歩くと、ここでも突き当たりに出会す。
道は左側に続いている。
これまで彼は何度も曲がり道を見て来た。
暗い洞窟内では、正しい方角も判らない。
普通の冒険者なら色々と道具を揃えるのだが、コバルトゥスは余計な物を持ち歩かない。
魔法で大抵の事は何とかなるので、重荷を背負うのは馬鹿らしいと考えているのだ。
この洞窟では、その魔法が余り利かないので、少し心配ではある。
道順さえ憶えていれば、地上に帰れる筈なので、心配は要らないと思うのだが……。

 (何があるか判らないからな……)

コバルトゥスは小さく息を吐き、心を強く持って左折した通路を行く。


耐久力:2
魔力:15

31 :
曲がり角の先は真っ直ぐな通路だった。
少しの間、罠を見ていないので、コバルトゥスは余計な事を考える。

 (どうせ、この先に罠があるんだろう……。
  楽観しては行けない。
  しかし、お宝にも巡り会えていないな。
  どうした事か……)

今までの分かれ道の先に、お宝があったかも知れないと考えると、コバルトゥスは気も漫ろだった。
だが、必ず財宝があったとは限らない。
単なる外れの道だった可能性もある。
寧ろ、そちらの可能性の方が高い。
カシエが先に探索しているのだから。
真に価値のある財宝は、幾度の困難を潜り抜けた向こう、洞窟の最深部に眠っている物なのだと、
コバルトゥスは自分に言い聞かす。


耐久力:1
魔力:15

【行動表参照】

32 :
【失敗】

暫く真っ直ぐな道を歩いていると、又々突き当たり。
今度は右側に道が続いている。
そろそろ罠があるだろうと、コバルトゥスは壁や床に不自然な所が無いか、熟(じっく)り観察した。
一見した所、罠らしき物は見当たらない。
奇妙な穴が開いていたり、或いは不自然な凸凹があったり、色の異なる場所があったり、
そう言う事は全く無い。

 (罠は無いのか?)

この洞窟では魔法資質が十全に働かないが、異様な魔力が感じられると言う事も無いし、
必ず罠があると決まっている訳でも無いのだから、通っても大丈夫だとコバルトゥスは判断した。
それが誤りだった。

33 :
角を曲がろうとした所で、コバルトゥスは魔力の流れを感じる。
その源は彼の持っている精霊石だ。
精霊石から魔力が漏出している。

 「何だ、こりゃぁ!?」

コバルトゥスは思わず声を上げた。
精霊石の魔力が床に吸い込まれる様に失われて行く。
彼は直ぐに魔力を吸う床から離れたが、遅きに失した。
それは丸で、水を注いだグラスを倒してしまったかの如く。
精霊石の魔力は、あっと言う間に空になってしまった。

 「はぁ……」

コバルトゥスは深い溜め息を吐いて、茫然とした。
そろそろ罠があると警戒していたのに、間抜けにも引っ掛かってしまった自分の愚かさが恨めしい。
どうすれば罠が見破れたのかと、後悔する。
目に見えて怪しい所は無かった。

 (――精霊か!)

コバルトゥスは閃く。
そう言えば、この場には精霊以前に魔力が全く感じられないと。
それが違和感の正体。
だからこそ、無意識に「何かある」と警戒していたのだ。
「魔力の流れが無い事」を、彼は「危険が無い事」と捉えた。
しかし、それは魔力が淀んでいた為では無く、魔力が全く無い為だった。
今少し彼が注意深ければ、判った事。

34 :
しかし、幾ら後悔しても遅い。
それにコバルトゥスは疲労を感じ始めていた。

 (頃合かな)

引き揚げるには良いタイミングだと、彼は前向きに考えた。
元々疲れて来たら帰ろうと思っていたのだ。
危険な罠がある以上、無理して進まない方が良い。
洞窟が一体どれだけ深いのかも判っていないし、こんな所で命を落としては詰まらない。
少し落胆しながらも、コバルトゥスは来た道を引き返す。


耐久力:0
魔力:0

【耐久力と魔力が尽きたので帰還】

35 :
幸い、帰り道で迷う事は無かった。
コバルトゥスは記憶力には自信がある。
罠の位置が変わったり、新しい罠が追加されていたりもしない。
コバルトゥスが洞窟から出ると、カシエが迎えた。

 「お帰りなさい、バル。
  どうだった?」

彼女の問いに、コバルトゥスは肩を竦めて見せる。
何も宝を手に入れられなかったと言う意味では、収穫無しである。
カシエは余裕の笑みを浮かべて、コバルトゥスと擦れ違い、洞窟に入って行く。

 「フフッ、私が勝っちゃうかもね?」

コバルトゥスは眉を顰めて振り返り、彼女を呼び止めた。

 「カシエ!」

 「何?」

 「……気を付けて」

足を止めて振り返ったカシエに、コバルトゥスは注意する様にと忠告する。
カシエは小さく笑って頷いた。
 「分かった」

罠のある危険な洞窟から、果たしてカシエは戻って来れるのか……。
今のコバルトゥスには、無事を祈る事しか出来ない。

36 :
コバルトゥスは洞窟の入り口から少し離れた所に居るラビゾーの傍に座って体力の回復を待った。
序でに、精霊石を取り出して、精霊力も回復させておく。
今回は珍しく、ラビゾーが自分からコバルトゥスに話し掛けた。

 「意外と早かったな」

そんなに直ぐに洞窟から出た覚えが無いコバルトゥスは、怪訝な顔をして尋ねる。

 「否々(いやいや)、結構長く潜ってた積もりなんスけどねェ……。
  どん位、時間経ってるんスか?」

ラビゾーは懐から時計を取り出して確認した。

 「んー、1角は経ってないだろうな。
  半角……も経ってないな、2針と少しか」

 「えぇっ、2針!?
  唯(たった)そんだけ!?」

驚くコバルトゥスをラビゾーは笑う。

 「どんだけ長く潜ってた積もりなんだよ」

彼の時計が正しい証拠に、太陽の傾きも余り変わっていない。

 (時空が歪んでる……?
  馬鹿らしい。
  そこまで大掛かりな物だったら、もっと精霊が騒いでる。
  俺の感覚が狂ってただけだろう)

コバルトゥスは事実を受け止め、強引に自分を納得させた。

37 :
コバルトゥスは暇潰しに、ラビゾーと話を続ける。

 「先輩、カシエと会ったのは、どこで?」

 「ボルガ市だよ。
  僕が旅商だと知って、付いて来て欲しいって」

ラビゾーの答にコバルトゥスは呆れ顔で言う。

 「そんで付いてったんスか?」

 「急ぐ用事があった訳でも無いし、報酬は貰えるし、悪い話じゃ無かったんでな」

 「で、何してんスか?」

 「何って、商売だよ。
  冒険に必要そうな物を用意して、売ってるんだ」

 「例えば?」

コバルトゥスはラビゾーの商売人らしい所を、見た事が無い。
仮にも自分より年上の男性に対して、本当に商売が出来るのかと疑っている。
ラビゾーは面倒そうな顔をして、大きなバックパックを開き、中の物を取り出して見せた。

 「携行食、飲み水、薬草、傷薬、方位磁針、紙、縄、提燈(ランタン)と油、『燐寸<トーチ・スティック>』、
  布、ロッド、他にもあるが、こんな感じの物だな」

商人を捕まえて道具を用意させる等、丸で昔の本格的な冒険者の様。
カシエは道楽では無く、本気で冒険者になったのだと、コバルトゥスは感心した。

38 :
 「へー、中々本格的ッスねぇ……。
  先輩、俺にも呉れませんか?」

感心序でに、コバルトゥスはラビゾーに頼んでみる。
ラビゾーは快く頷いた。

 「良いよ。
  何が欲しい?」

 「んじゃ、先ず食い物を」

腹が減っては戦は出来ぬと、コバルトゥスは携行食を要求する。

 「1つ300MGだ」

携行食は手の平に乗る程度の箱に入った、棒状の『乾餅<ビスケット>』に似た『軽食<スナク>』。
1箱6本入りで、1食2本の1日分である。

 「えっ、金取るんスか?」

予想外だと言う顔をする彼に、ラビゾーは呆れ果てた。

 「当たり前だ。
  何で只で呉れてやらなきゃ行けない?」

 「えー……、でも、何時もは只で食い物分けてくれるじゃないッスか……」

 「これは『商品』だ。
  僕の私物じゃない」

 「吝々(けちけち)しなくても良いじゃないッスか」

 「吝嗇(けち)以前に、お前、今はカシエさんと勝負してる最中だろう?
  彼女は丁(ちゃん)と代金を払っているぞ。
  扱いは『公平<フェア>』じゃないとな」

ラビゾーに正論を言われて、コバルトゥスは反論出来ず、不満気に口を閉ざした。

39 :
コバルトゥスは少しの間、黙っていたが、やがて思い付いて言った。

 「あっ!
  じゃあ、先輩、付けって事で」

 「誰が信用するか!
  お前、今まで一度も僕が貸した金を返した事が無いだろう!」

良い考えだと思っていたのに、即ラビゾーに否定されて、コバルトゥスは面食らう。

 「えっ、借金なんかしましたっけ?」

 「何度もしているぞ。
  小額だから直ぐに返すと言いながらな!」

自分に都合の悪い事は直ぐ忘れられる、実に都合の好い記憶力を持っているコバルトゥスは、
借金の事を悉(すっか)り忘れていた。
悄気るコバルトゥスを慰める様に、ラビゾーは言う。

 「紙と筆なら貸せるぞ」

 「えっ、要らないッスよ」

 「洞窟を探索するなら、地形とか記憶する必要があるだろう?」

 「俺、記憶力は良い方なんで」

 「じゃあ、借金の事も憶えてるよな?」

 「いや、それは全然……」

「こいつ何なんだ」とラビゾーは憤然とした表情で口を閉ざした。

40 :
コバルトゥスは切り替えて、違う話を始めた。

 「話は変わりますけど、先輩、カシエの探索って、どの辺まで進んでます?」

ラビゾーは素直に答える。

 「幾らか財宝らしい物を回収していた。
  未だ洞窟全体を探索し尽くした訳じゃないみたいだけど」

 「地下何階まで行ってるんスか?」

 「確か、3階まで進んだと言ってたかな。
  僕は洞窟に入ってないから、どんな所かは分からんのだが」

そんなに差は開いていないと、コバルトゥスは安堵した。
探索が順調に進めば、追い付けるだろう。

 「あの洞窟、結構危険な罠があるんスけど、カシエは大丈夫なんスかね?」

 「罠があるとは言っていたけど、そんなに危険なのか?」

ラビゾーの表情が少し曇る。
彼もカシエが危ない目に遭う事を、好ましく思っていない。

 「即死はしなくても、重傷を負う位はあり得ますよ」

 「……コバギ、お前は大丈夫だったのか?」

唐突に自分の心配をされ、コバルトゥスは慌てる。

 「あ、あぁ、その……俺は平気ッスよ!
  これでも熟練の冒険者なんスから!」

落とし穴を見落としたり、魔力を失ったりと、危ない場面があった事は、見栄の為に言わなかった。

41 :
間違えました。
>>39>>40の間には、以下の文章が入ります


沈黙が気不味くなって、コバルトゥスは自分から口を利く。

 「そう言や、先輩。
  あの『女の子<ロリータ>』は?」

彼は以前会った時にラビゾーが連れていた、女の子に就いて尋ねた。

 「今は家で留守番だ」

 「本気で拾った子を育てるんスか?」

 「ああ」

 「独りで?」

 「家族が居る」

 「やっぱり、『あれ』ッスか?」

 「何だよ、『あれ』って?」

 「理想の女に育てて、大きくなったら嫁にするって言う」

コバルトゥスはラビゾーが結婚している事を知らなかった。
独身男性が幼い女の子を育てる事を、下心抜きには考えられない。

 「哀れな奴だな」

ラビゾーに哀れまれ、コバルトゥスは動揺する。

 「えっ、何で」

 「お前は女が絡むと、それ抜きでは考えられないのか?
  相手は幼い子供なのに」

 「悪い事だとは思わないッスよ?
  別に先輩を非難したい訳じゃないッス。
  実際、悪くないっしょ?」

ラビゾーは静かに首を横に振って、口を閉ざした。
この話題は良くなかった様だ。

42 :
読む順番は>>39>>41>>40となって、その続きです。


ラビゾーは真剣に考え込む。

 「罠と言っても、彼女、そんな深刻な風じゃなかったんだが……。
  怪我をしても軽い物で……」

コバルトゥスが大袈裟なのか、カシエが楽観的過ぎるのか分からないのだ。
嘘では無いと、コバルトゥスは強弁する。

 「駆け出しの手には余ると思いますよ。
  今までは運良く行ってたかも知れませんけど、大事になってからじゃ遅いッス」

ラビゾーはコバルトゥスを見詰めて言った。

 「……詰まり、これ以上の探索は諦めろと?」

 「そこまでは言いませんけど。
  俺と一緒なら安全かと」

 「カシエさんが何と言うかだな」

問題は、それだ。
幾ら危険を訴えても、カシエが聞き入れるかは分からない。
コバルトゥスはラビゾーに依願する。

 「先輩からも、何とか言って下さいよ」

 「競争の件は、どうするんだ?」

 「ンな事、言ってる場合じゃないっしょ!」

 「あ、あぁ」

コバルトゥスが強い口調で押し切ると、ラビゾーは消極的に頷いた。
2対1ならカシエも聞き入れざるを得まいと、コバルトゥスは説得に自信を持つ。

43 :
それから数点経ったが、カシエは未だ帰らない。
コバルトゥスはラビゾーに言う。

 「カシエ、帰り遅いッスね……」

ラビゾーは時計を確認した。

 「いや、未だ2針も経ってないが?」

 「洞窟の中では、時間の進みが早く感じるんスよ。
  カシエにとっては、もう2角は経ってる気分だと思います」

心配性なコバルトゥスに、ラビゾーは客観的な情報を示す。

 「カシエさんは、そんな風には言ってなかったけどな……。
  それに今まで彼女は3針前後で戻って来た。
  4針が近付いても戻らなかったら、考えよう」

コバルトゥスは自分でも心配し過ぎなのか、正しい予感なのか判らなくなって来る。
ラビゾーの言い分は随分と悠長に聞こえるが、焦りから強引に突入して二次遭難する事も避けたい。
否、二次なら未だしも、自分だけ遭難する可能性もある。

 「心配な気持ちは分かるけど、今は待とう」

コバルトゥスの内心の焦りを見透かした様に、ラビゾーは落ち着いた声で言う。

 「茶でも飲まないか?」

そう言って、彼は大型の魔法瓶から紙コップに熱い麦茶を注ぎ、コバルトゥスに差し出した。
コバルトゥスは疑いの眼差しを向けて、受け取りを躊躇う。

 「金を取るんじゃ……?」

44 :
ラビゾーは憮然として告げた。

 「取る訳無いだろうが!
  要らないなら良いぞ」

 「あぁっ、頂ます、下さい、貰います!」

コバルトゥスは現金な態度で、茶の入った紙コップを受け取る。
熱い茶を一気に飲み干した彼は、大きな息を吐き、再び難しい顔をする。
ラビゾーは慰めを言う。

 「地下深く進むに連れて、地上に戻るのも時間が掛かる」

 「解ってます、その位」

コバルトゥスは迷いから心の制御が難しくなっていた。
どうしても、口調が苛立った物になってしまう。

 「……どうしても心配なら、今から行くか?」

ラビゾーの問い掛けに、コバルトゥスは沈黙して長考を始めた。
話は至って単純だ。
カシエを助けに行くか、行かないか、この2択しか無い。
ここで愚図愚図言っている位なら、早く助けに行った方が良いと言う事も理解している。
問題は、ここが普通の洞窟では無い所だ。
天然の洞窟であれば、どんなに深く、複雑な構造をしていようとも、攻略に苦労しない。
しかし、この洞窟は魔法的な仕掛けが全体に施してある。
鋭敏なコバルトゥスの魔法資質を以ってしても、その全容は疎か、1階層の構造も把握出来ない位。

45 :
カシエを助けに行くか、行かないか選択して下さい。
言い方を変えれば、お節介を焼きに行くか、カシエの実力を信用するかです。

46 :
難しいな…!
悩んだけど『行かない』で

47 :
助けに行くか、行かざるべきか……。
コバルトゥスは葛藤の末に、時間を区切る事にした。

 (先輩の言う通り、3針までは待とう。
  カシエも冒険者なんだ。
  そう下手はしない……と思う。
  だが、3針を過ぎても戻らなかったら。
  その時は、迷わず助けに行く)

そう決心するも、心は相変わらず落ち着かない。
彼はラビゾーに時間を訊ねる。

 「先輩、カシエが入ってから何針経ちました?」

 「今、聞いたばかりじゃないか……。
  2針を少し過ぎた位だな」

ラビゾーは呆れ気味に答える。
コバルトゥスは決意表明した。

 「3針過ぎたら、教えて下さい。
  俺はカシエを助けに行きます」

 「少し早いと思うがなぁ……。
  手遅れになるよりは増しだけど……」

暈(ぼ)やきながら頷くラビゾー。
重苦しい雰囲気の中、2人は無言で時が過ぎるのを待った。

48 :
3針が経つ前に、コバルトゥスは出来るだけ体力の回復を試みる。
精霊の気配を全身で感じ、その力が体の隅々まで行き渡るイメージを繰り返し思い浮かべる。

 (火よ、水よ、風よ、土よ、空よ、太陽よ……)

息を吸う度に、冷たい空気が肺から全身に回る。
心臓が脈打つ度に、熱い血が体中を巡る。
両足は植物の様に、大地から精気を吸い上げる。
陽光の温かさを、肌で受け止める。
そのイメージを保ちながら、コバルトゥスは精霊石を手にした。
そして手中の精霊石を体の一部の様に感じ、脈動を伝える。
回復に努めるコバルトゥスの横で、ラビゾーはバックパックを整理を始める。

 「コバギ、カシエさんの救助に僕も付いて行った方が良いだろうか?
  それとも素人は足手纏いになるかな?」

急な問い掛けに、コバルトゥスは思案した。

 「ムム、どうッスかねェ……。
  先輩は無理しない方が良いんじゃないッスか」

 「……解った、大人しく待つよ」

ラビゾーは残念そうに言って、バッグを漁る手を止める。

49 :
数極後に、ラビゾーは再びコバルトゥスに話し掛けて来た。

 「もし、お前も戻って来なかったら?」

その可能性も無い訳では無い。
コバルトゥスは答に迷う。

 「その時は……。
  先輩に助けて貰うしか無いッスかね……」

 「2人の手に負えない状況を、僕が何とかしなくちゃ行けなくなる訳だが……。
  町に戻って救助を呼ぼうか?
  最悪、魔導師会を頼る事になると思うが」

 「命には代えられないっしょ」

コバルトゥスの冷静な正論に、ラビゾーは頷いた。

 「そうだな。
  コバギ、お前がカシエさんを助けに行って、1角経っても戻らなかったら、その時は」

 「はい、お願いします」

口では頼んだ物の、そうならない様にしなければとコバルトゥスは用心した。
精霊魔法使いである彼は、魔導師会絡みの面倒は避けたい。
しかし、自分だけなら未だしも、カシエの命が懸かっているので、嫌々言ってる場合では無い。

50 :
待機中(カシエの判定)

51 :
待機中(カシエの判定)

52 :
待機中(カシエの判定)

53 :
そうこう言っている間に、カシエが洞窟から出て来た。
先に彼女に気付いたコバルトゥスは、安堵して呼び掛ける。

 「カシエ、無事だったか!」

カシエは疲れた笑みを浮かべて言った。

 「無事は無事だけど」

曖昧な答を返す彼女を見て、コバルトゥスは俄かに怪訝な顔になる。

 「危ない目に遭わなかった?」

見た所、カシエは傷一つ負っていないが、それだけで危険が無かったと判断する事は出来ない。
嫌に心配して来るコバルトゥスに、カシエは苦笑した。

 「全然。
  それより仕掛けに梃子摺って」

 「仕掛け?」

 「簡単には先に進めない様にしてあって、面倒臭かった。
  それに『化け物<モンスター>』も居たし」

カシエの情報に、コバルトゥスは目を剥いて驚く。

 「モ、モンスター!?」

 「化け物って言って良いかは分からないけど。
  弱かったし。
  それより、ワーロックさん!」

詳細を尋ねようとするコバルトゥスを余所に、カシエは話を打ち切って、ラビゾーの元へ駆け寄った。

54 :
カシエは嬉しそうに自分のバックパックから、先の探索で発見した物を取り出し、ラビゾーに見せた。

 「鑑定、お願いします」

石の器が1つと、金属塊が2つ。
ラビゾーは先ず、石の器を見る。
少し深い皿の様な形で、取っ手は付いていない。
手作りなのか、外側は凸凹の多い稚拙な造りで、粗々(ざらざら)している。
対して内側は磨いてあり滑らかだ。
重さは石製品相応。

 「これは……分からないな。
  ボルガ地方の有名な古陶磁とは違う。
  古い時代の物だろうけれど、一般的な食器だと思う。
  もしかしたら、物凄い値打ち物かも知れないが、僕には判らない。
  買い取るとしても、300MGって所だなぁ……」

ラビゾーは次の鑑定に移る。
対象は銀色の球形の金属。
彼は魔法も使って、正確に調べる。

 「この金属は……銀にしては軽いし、綺麗過ぎるな。
  霊銀の合金?
  磁性無し。
  何かの部品って訳でも無いし、飾りかな?
  中身は確り詰まってると。
  用途が解らない。
  ……500MGで」

最後の鑑定品は、先の物より小さな銀色の金属。

 「あぁ、これは銀合金だな。
  これも宝飾品だろうか……?
  純銀じゃないし、天然の銀でもないけど、これなら結構高値で売れると思う。
  8000MG位かな」

ラビゾーに財宝を鑑定して貰ったカシエは、満足気に頷いた。

 「全部で8800MGですね」

55 :
ラビゾーと楽しそうに話すカシエの姿が、コバルトゥスの心に暗い感情を鬱積させて行く。
手振らで戻ったコバルトゥスと違い、カシエは確り財宝を発見していた。
それに彼が感じていた危険も、どこ吹く風と言った様子。
調子の良い駆け出しに嫉妬するのは、狭量に過ぎると判っている彼だが……。
恨めし気に見詰めるコバルトゥスの視線に気付いたラビゾーは、カシエに小声で言った。

 「コバギの奴、大分心配してたんだ。
  カシエさんは大丈夫かって。
  僕は未だ早いって言うのに、助けに行こう、助けに行こうって」

カシエは振り返り、嫌らしい笑みを浮かべる。

 「へぇー、そうなんですかぁ」

コバルトゥスは羞恥で顔中が熱くなるのを感じた。

 「……『女性には優しく』が、俺のモットーだからな」

狼狽を悟られまいと、彼は焦りを隠して堂々と振舞う。
カシエ自身は何とも思っていないのに、他人が針小棒大に騒ぎ立てるのは、見っ度も無い。
コバルトゥスは居た堪れなくなり、洞窟に入った。

56 :
探索を再開する場所を決めて下さい。
地下1階の選択していない分岐路の先か、地下2階の選択していない分岐路の先か、
地下2階の進み掛けの道の先か、3つです。

57 :
進みかけの道

58 :
コバルトゥス
探索2回目
調子:不調
耐久力:11
魔力:16

59 :
洞窟に入ったコバルトゥスは、胸に靄を抱えていた。

 (先輩は何で、俺が心配してたってカシエに言ったんだろう……。
  あんな口の軽い人だとは思わなかった)

ラビゾーに悪気は無かったのだろうと解っていても、カシエの優越の笑みを思い浮かべると、
コバルトゥスは苛々して来る。

 (はぁ、余計な事を考えるんじゃない。
  今は探索に集中しないと……)

頭の中では冷静にならなければと思う彼だが、気が急いて集中し切れないのが現実だ。

 (道形に進んで、最初の分かれ道を真っ直ぐ、次の分かれ道を右に。
  罠の位置も憶えてる。
  大丈夫、大丈夫)

コバルトゥスは記憶通りに罠を回避して、何事も無く地下2階へと進む。

 (とにかくカシエより先に行かないと。
  女に優しい事と、甘い事は違う。
  宝を先取りされる訳には行かない。
  俺は冒険者だ)

だが、客観的に評価して、彼の精神状態は余り良くない。
雑念を振り払い切れていない。
それが魔法の明かりにも表れている。
コバルトゥスの行く先を照らす灯火は、不安定に強まったり弱まったり。
地下2階の罠があった場所まで来たコバルトゥスは、一旦足を止めた。

 (この曲がり角の床に罠がある事は判ってる。
  同じ罠に引っ掛かる様な馬鹿じゃない)

彼は前に罠が作動した時、その位置を確り記憶していた。
難無く罠を避けて、未だ見ぬ道を進む。

【行動表参照】

60 :
【失敗】

罠があった曲がり角を通り過ぎると、再び同じ様な曲がり角に出会す。
道は右側に続いている。
これまでに通って来た道は全て、壁も床も天井も殆ど同じ扁平な土と岩で出来ている。
特に目印となる様な物も無い。
こんな陰気な景色が延々と続くと思うと、気が滅入って来る。

 「はぁ……」

思わず、溜め息を吐いたコバルトゥスは、足元に小さな穴が開いてる事に気付いた。
先の魔力を奪う罠を抜けて、彼は少し気を抜いてしまっていた。
又しても罠を見落としていたのだ。
コバルトゥスは身の危険を感じ、精霊石を手にした。

【機敏さ判定】

61 :
【成功】

床の穴からは多数の槍が一斉に飛び出す。
コバルトゥスは精霊の力を借りて、高く跳躍した。
そんなに天井が高くないので、頭を打ちそうになり、慌てて首を引っ込め、両腕で衝撃を和らげる。
幸い、槍の長さは然程では無く、穴から1歩程で止まる。
コバルトゥスは槍が飛び出す罠から、少し離れた場所に着地して、安堵の息を吐いた。

 「あっ、危ねぇ……。
  『串刺し<シュタッヘル>』になる所だった……」

今まで「勘」を頼りに冒険して来たコバルトゥスは、未経験の危機を味わっている。
魔法に頼り過ぎて来た、「付け」なのだろうか?
本当に、こんな所をカシエは無事に通り抜けたのか……。
彼女の余裕振りを考えると、同じ道を通ったとは思えなかった。
振り返れば、槍は既に引っ込んでおり、何事も無かったかの様。
コバルトゥスは恐怖心に身震いするが、幾ら何でも引き返すには早過ぎる。
先に進もうとコバルトゥスは決心した。


耐久力:10
魔力:15

62 :
『槍<スパイク>』の罠を抜けると、真っ直ぐの道が続く。
1回目の探索に続き、罠の歓迎を受けたコバルトゥスの足取りは、重くなっていた。

 (遅弛してたら、カシエを追い越せない。
  それは解ってるんだが……)

慎重になり過ぎるのは良くないが、焦って又罠に掛かるのも良くない。
何より、思う様に進めない事で、苛々している事が良くない。
今のコバルトゥスには天の巡りまでも含めて、全てが自分の敵に回っている心持ちだった。
カシエは当然の事ながら、精霊を妨げる洞窟も、吝嗇なラビゾーも。
焦燥と苛立ちばかりが募って行く。

 (これは良くない。
  良くないぜ……)

悪い予感はしているのだが、今は前に進む事しか出来ない。


耐久力:9
魔力:15

63 :
通路を真っ直ぐ進んだ先には、更に地下へと続く階段があった。
これが「真の財宝」に辿り着く「正しい道」なのかは判らない。
しかし、この階層を抜ける事で、彼は気持ちを切り替えられそうだった。
コバルトゥスは実際に歩いた距離よりも長く、地下2階に滞在していた気分だった。
一度大きく深呼吸をしたコバルトゥスは、慎重に階段を下りる。


耐久力:8
魔力:15

64 :
コバルトゥスは地下3階に出た。
ここも今までと雰囲気は殆ど変わらない。
扁平な土と岩の壁面に、湿った土と苔の匂い。
通路は目の前に真っ直ぐ続いている。
罠の類は無さそうだ。


耐久力:7
魔力:15

65 :
少し進むと、分岐に差し掛かる。
片方は真っ直ぐ。
もう片方は右に曲がる。
どちらの道を進むべきか、コバルトゥスは一旦足を止めた。
他に道は無いし、罠らしい物も見当たらない。
真っ直ぐ進む道からは、何の気配も読み取れないが、右の方には何か「居る」。
明確な強い気配では無いが、確かに存在を感じるのだ。


耐久力:6
魔力:15

66 :
真っ直ぐ進むか、右折するか選択して下さい。

67 :
書き込みが無かったので、ランダム判定します。
時間の小数点以下が奇数なら直進、偶数なら右折。

68 :
コバルトゥスは右の道の先にある物を、確かめようと決めた。
恐怖を感じない訳では無いが、然して勇気を要する事でも無い。
これは冒険、危険を避けては進めない。
仮に凶悪な獣が棲み付いていたとしても、彼には必殺の魔法剣がある。
しかし、油断は禁物。
コバルトゥスは気配を殺して、静かに「何物か」に接近する。
先ずは正体を明らかにしなければ、対応も何も無い。

【行動表参照】

69 :
【通常判定】

コバルトゥスは風の精霊を頼り、何物かの大凡の姿形だけでも判らないか、試してみた。

 (……体温が無い?
  大きな塊?
  動物の形とは思えない。
  それに息遣いも無い。
  これは……蹲って眠ってる蛙か蛇か?)

だが、正体は判然としない。
少なくとも恒温動物で無い事は明確だ。
コバルトゥスは魔法の明かりを前方に向け、今度は目視で正体を探ろうとする。
高さ1歩前後、幅1身弱の蠢く塊がある。
体表は明かりを反射して、照ら照らと輝く。

 (何だ?
  蛙でも蛇でも無い?)

謎の蠢く塊は明かりで照らされても、コバルトゥスに気付く様子が無い。
コバルトゥスは焦(じ)り焦(じ)りと、蠢く塊に近寄った。

 (……判らん。
  何だ、こりゃ?
  蛞蝓か?)

対象まで約2身に近付いても、正体が「判らない」。
半透明で輝く体を持つ、これは巨大なアメーバ状の生物。

【機敏さ判定】

70 :
【敵の先攻】

コバルトゥスは今まで、この様な生き物を見た事が無かった。
猛獣や妖獣の類とは、明らかに違う。
敵と認識して良いのかも判らない。
反応が無いので、コバルトゥスが更に接近すると、アメーバ状の生物は行き成り体を変形させ、
液体を飛ばして来た。

 「わ、糞(ば)っちい!」

慌ててコバルトゥスは後退る。

【戦闘能力判定】

71 :
【回避成功】

水の様な液体はコバルトゥスの体には届かず、土と岩の床を濡らした。
何だか分からないが、これを敵対的行動と受け取ったコバルトゥスは、反撃を試みる。
彼は短剣を持っているが、真面に斬り付けて効果があるかは怪しい。
滑々(ぬめぬめ)した体に触れるのも嫌なので、魔法剣で一刀両断する事にした。

【戦闘能力判定】

72 :
【失敗】

魔法剣はアメーバ状の生物の体を真っ二つにする。
しかし、活動が止まる様子は無い。
体が2つに分かれても、直ぐに再生する。
アメーバ状の生物は、再び液体をコバルトゥスに向かって吐き出した。

【戦闘能力判定】

73 :
【回避失敗】

より狙いが正確になった一撃を、コバルトゥスは受けてしまう。
彼は水鉄砲の様な攻撃を腕で防ぐ。

 「くっ……」

液体は袖を浸透して、肌を濡らす。
最初は何とも無かったのだが、徐々に腕が辣(ひり)付き始める。

 (動物の体を溶かす液体か!?)

これ以上やられる訳には行かないと、コバルトゥスは即座に反撃する。

【戦闘能力判定】

74 :
【成功】

闇雲に攻撃しても効果が無い事を理解していた彼は、弱点を狙う事にした。
半透明の体の中で1つだけ揺れ動く宝石の様な物が、心臓部では無いかと予想する。

 (これで止まれっ!)

短剣を振り抜くと、核の一部が欠けた。
それと同時に、アメーバ状の生物は動きを止める。
半透明の体は粘性を失い、水の様に溶けて流れる。
「異物」の気配は完全に消滅した。

 「勝った……」

コバルトゥスは小さく息を吐くと、腕の治療を始めた。
長袖を捲ると、皮膚は赤く爛れており、空気に触れて酷く痛む。
彼は精霊石を持って、呪文を唱える。

 「我が身を成す物、あるべき姿を取り戻せ」

見る見る皮膚が再生し、何事も無かったかの様に元に戻った。

【戦利品判定】

75 :
負傷を治したコバルトゥスは、床一面に広がる液体を真面真面(まじまじ)と見詰める。
カシエが言っていた化け物とは、これの事だろうかと彼は思った。

 (でも、カシエは『弱かった』って言ってたよなぁ……)

もしかしたら、カシエはコバルトゥスの想像以上に、腕の立つ冒険者になったのかも知れない。
思い返しても、彼女が傷を負った様子は無かった。

 (カシエが凄いのか?
  それとも俺が……、俺が大した事無いんだろうか?)

現在、冒険者を名乗る者は殆ど居ない。
これまで同業者と鉢合わせた事は、数える程も無い。
謙虚にならなければ行けないのかと、コバルトゥスは自信を失い掛けていた。
重苦しい気持ちで足を進めようとした所、視界に輝く物が映る。

 (あの変な生き物の核だな……)

拾い上げて見ると、薄緑掛かった半透明の小さな石塊(いしくれ)だった。
大きさは指の先程度。

 (水晶の原石か?)

美しいと言えば美しいが、如何程の価値があるかは判らない。
後でラビゾーに鑑定して貰おうと、コバルトゥスは石塊をコートの内に収めた。


耐久力:2.5
魔力:14

76 :
如何程の価値があるかは不明だが、一応お宝らしい物を入手出来たコバルトゥスは、少し安心した。
カシエの事もあり、2回連続で手振らで戻るのは辛過ぎる。
アメーバ状の生物が居た先に進むと突き当たりが見え、更に近付くと、その左右に道があると判る。
そして、突き当たりの壁面には、明らかに不自然な、扉型の凹みがある。
だが、押しても叩いても反応は無い。
精霊の気配を探ると、扉の向こうには地下へ続く空間がある。
壊して進もうとコバルトゥスは考えるが、扉は分厚い。
下手をすると、地下への空間が埋まってしまいそうだ。
ここでは彼の精霊魔法は、緻密な働きが出来ない為に、そうなる可能性は決して低くない。

 (どこかに、これを動かす『機巧<カラクリ>』があるのか?
  ……カシエは仕掛けに苦労した様な事を言ってたな)

恐らくは、この階層に扉を開ける仕掛けがある。
それは右の道か、左の道か、それとも前に通らなかった道の先か?


耐久力:1.5
魔力:14

77 :
右に進むか、左に進むか、1つ前の分岐に引き返してみるか、3択です。

78 :
一つ前の分岐点まで引き返そう

79 :
コバルトゥスは一つ前の分岐に戻って、通らなかった方の道を進んでみる事にした。
アメーバ状の生物を倒して水浸しになった場所を通過して、左右に道が分かれる丁字路に出る。

 (俺は左側の道から、右折して来た。
  こっちには上に続く階段があるだけだから、進むのは右……)

この先に何が待ち受けているのか?
罠だけでなく、「敵」の存在にも気を付けなければならない。
今の所は、何の気配もしないが……。

【行動表参照】

80 :
【通常判定】

丁字路を右折した先は、行き止まりだった。
右にも左にも道は続いていない。

 (外れか?
  いや、何かある……)

よく観察すると、右側の壁に1手四方の四角い石板が取り付けられている。
高さはコバルトゥスの腰の辺り。

 (これが扉を開く仕掛け?
  それとも罠?)

触って良い物かと、コバルトゥスは悩んだ。
取り敢えず、周囲を調べてみるが、罠らしい物は無い。
触った所で、罠が発動する可能性は低いが……。

【洞察力判定】

81 :
【成功】

コバルトゥスは思い切って、石板を押してみた。
しかし、何も反応は無い。

 (これだと思うんだが……)

二度、三度と押してみても、少しも反応は無かった。

 (何だ、これ?
  釦と見せ掛けた飾りか?
  そんな訳は……)

手の平で押すだけでは弱いのかと、拳で力任せに叩いてみても、やはり反応は無い。

 (押しても駄目なら――)

もしかして押し釦では無いのかと、コバルトゥスは気付いた。
石板は壁から少し出っ張っている。
隙間に指の先を掛ければ、引き出せそうだ。

【力判定】

82 :
【成功】

コバルトゥスは両脚に力を入れて踏ん張り、石板を引いてみた。

 「フンッ!!」

少しずつだが、石板は手前に引き出される。

 「グオォォ……!」

数節動いた所で、石板は何かに引っ掛かった様に動かなくなった。
それと同時に、遠方で地響きの様な音がする。
コバルトゥスは力を抜いて、大きく息を吐いた。

 (これで扉が開いた筈。
  女の腕力じゃ、これを動かすのは難しかったんだろうなぁ)

カシエが仕掛けに苦労した理由を、彼は察した。
ここには他に見るべき物は無さそうだ。
本当に扉が開いたのか、コバルトゥスは確認しに向かう。


耐久力;0.5
魔力;14

83 :
先の分岐路に戻り、左折して真っ直ぐの通路を抜けると、突き当たりに穴が開いている。
穴の中には、更に地下に続く階段が見える。

 (一応、下の様子を見てから、外に戻ろう)

コバルトゥスは階段を下り、地下4階に進んだ。
階段を一段下りる毎に、僅かではあるが、圧迫される感覚がある。
今の所は直接的な影響は無いが、気になる現象だとコバルトゥスは思った。
階段が終わると、その先には3つに分かれた道がある。
右と左と正面。

 (この先は気になるが、今回は切り上げるとしよう)

疲労を感じたコバルトゥスは、ここで探索を止めて戻る事にした。

 (今の所、余計な寄り道はしていない……と思う。
  そう遠くない内に、カシエに追い付けるんじゃないか?)

勝手な想像ではあるが、何と無く、そんな気がした。


耐久力:0
魔力:14

【耐久力が尽きたので帰還】

84 :
コバルトゥスが洞窟から出ると、携行食を咥えたカシエが出迎える。

 「バル、大丈夫?
  疲れた顔してるけど」

心配して来る彼女に、コバルトゥスは心外だと平静に振る舞う。

 「そうかな?
  そんな疲れてないんだが」

アメーバ状の生物に少し苦戦した事を頭の中から消し去って、彼は強がった。

 「余り無理しない様にね」

怪訝な顔で、そう告げたカシエは、コバルトゥスと擦れ違い、真っ直ぐ洞窟に向かう。。
どうしてカシエに心配されるのかと、コバルトゥスは納得が行かない気持ちだった。
逆に、洞窟に向かう彼女に忠告しようと思ったが――、

 「君こそ――」

 「何?」

 「い、いや、何でも無い……」

思うだけで止(とど)まる。
自分の為体を顧みれば、先輩振って助言する事は躊躇われたのだ。
先輩と言うからには、何かしら先んじた部分が無くてはならないと、コバルトゥスは考えていた。
尊敬出来る部分が無い者に、敬意を払う事は出来ない。
それがコバルトゥスの思想。
今の自分はカシエに偉そうな事を言える立場では無く、故に先輩風を吹かせても嫌われるだけと、
理解しているのだ。

85 :
洞窟に入るカシエの背を見送ったコバルトゥスは、ラビゾーに近付いた。
ラビゾーは彼に声を掛ける。

 「早かったな、コバギ。
  今度は1針と少しだ。
  梃子摺っているのか?」

 「そんなに早かったんスか?
  やっぱり、この洞窟は普通じゃないッスよ」

コバルトゥスは少なくとも1角は探索していた積もりだった。
ラビゾーは彼の言葉を否定しない。

 「こんな所に財宝の洞窟があるってのも、よく考えてみれば変だよな?
  態々地図を人に渡す『案内人』が居るのも」

 「……罠なんスかね?」

コバルトゥスが真剣な表情で尋ねると、ラビゾーは両腕を組んで低く唸る。

 「人を陥れる罠……の可能性もあるけど、そうじゃない可能性もあると思う」

 「そうじゃない可能性って何スか?」

曖昧な物言いを怪しんだコバルトゥスが問うと、ラビゾーは困った顔で言う。

 「魔法使いには変わり者が多いからな……。
  この洞窟は先ず間違い無く、魔法使いが作った物だろう。
  こんな僻地に人を呼んで何が目的なのかと言うと――」

 「罠じゃないんスか?」

 「他人を暇潰しに付き合わせる事を罠と言うなら、罠なんだろうな」

ラビゾーが何を言いたいのか分からず、コバルトゥスは困惑した。

 「えっ、罠なんスか?
  罠じゃないんスか?」

 「『謎々<リドル>』は解いて貰う為にある。
  クイズでもパズルでも同じ。
  挑む者が無ければ、詰まらない。
  そう言う事だ」

利いた風な事を言うラビゾーに対して、何が言いたいのやらとコバルトゥスは呆れた眼差しを向ける。

86 :
 「そんな事より!」

その内に、詰まらない話よりも重要な事を思い出して、コバルトゥスは高い声を上げた。

 「先輩、鑑定して貰いたい物があるんスけど!」

彼は浮き浮きしながら、洞窟内で拾った宝石らしい物をラビゾーに見せた。

 「これ、幾ら位になりますかねぇ?」

 「手に取って見ても良いか?」

ラビゾーが訊ねると、コバルトゥスは難色を示す。

 「取っちゃったりしませんよね?」

 「んな事する訳無いだろう」

基本的に、コバルトゥスは他人を信用しない。
ラビゾーとは長い付き合いで、その為人を知っているので、冗談半分ではあるのだが、
極自然に疑いの言葉が口を衝いて出て来る。
当人は、それを悪癖とは思っていないので、改善する見込みは無い。
コバルトゥスは小さな水晶の原石と思しき物を、ラビゾーに渡す。

 「はい、よく見て下さい」

ラビゾーは携帯用の小型顕微鏡で、水晶を観察した。

 「……これは水晶だな。
  でも、天然の物じゃないみたいだ。
  人工の水晶だと思う」

 「人工の!」

共通魔法には分子の構成を変化させる物がある。
魔法で作られた人工の水晶には、特徴的な魔法陣の文様が結晶構造に残るのだ。

87 :
コバルトゥスの精霊魔法でも水晶を作り出せるが、それは土中からガラス質の物を選り集めて、
透明度を下げる不純物を取り除きながら、再結晶化させる物である。
この方法では不純物を完全には取り除けないので、色味に土地の特徴が残る。
分子一つ一つの配列を調整する様な精密な物では無いが、これは天然の物に酷似する。
そもそも彼は水晶を人工と天然で区別する感覚が無いので、見分けるも何も無いのだが……。
ラビゾーは顕微鏡での観察を続けながら言う。

 「共通魔法で作られた物じゃないぞ……。
  外道魔法絡みと思われて、売ろうとしても、買い手は付かないかもな。
  水晶には違い無いけど、人工物は安く買い叩かれるのが普通だ。
  大きさも小さくて、透明度も高くないし、一部欠けてるし、お世辞にも出来が良いとは言えない」

コバルトゥスは不安になって問う。

 「……それで、幾ら位になりそうなんスか?」

 「そうだなぁ、200って所か……」

それは余りにも安いと、コバルトゥスは憤慨した。

 「そんな!
  苦労して手に入れたんスよ!」

 「労力をその儘価値に変換する事は出来ない。
  成功に繋がらない努力は無意味だって、お前何時も言ってたじゃないか」

冷淡な反応のラビゾーに対して、何とか付加価値を高められないかと、コバルトゥスは知恵を絞る。

 「実は、これ……『化け物<モンスター>』を倒して手に入れたんス。
  半透明の粘着いた水……洟水とか卵白の塊みたいな奴で。
  そいつの核だったんスよ」

88 :
それを聞いたラビゾーは顔を顰めた。

 「嫌な譬え方をするなよ……。
  ゼリー状とかアメーバ状とか、他に言い様があろうに」

 「ええと、詰まり俺が言いたいのは……何か『貴重<レア>』な物じゃないかって」

 「幾ら貴重でも『洟水の塊』て……」

 「いや、そこは重要じゃないんスよ。
  洟水ってのは飽くまで譬えで。
  それに卵白とも言ったのに、何で洟水ばっかり取り上げるんスか?
  俺が伝えたかったのは、この核が化け物を動かしてたって事実です」

必死に訴えるコバルトゥスだが、ラビゾーは疑う。

 「本当に事実なのか?」

 「多分……。
  『これ』を攻撃したら、化け物の体が溶けて水みたいになって、これだけが残ったんで」

ラビゾーは顕微鏡を覗きながら唸った。

 「フーム、フム、フム……。
  魔法生物の『核<コア>』なのかな?
  魔法的な機構が仕込まれているなら、好事家に高く売れ……ないな。
  魔導師会に没収されるのが落ちだ。
  他に魔法を研究している機関は無いし」

宝石としての価値は低く、魔法道具としても一般人には扱えないとなると、愈々売り場が無い。
コバルトゥスは数極思案して、こう提案する。

 「魔導師会に売り付けるのは、どうッスか?」

89 :
だが、これにもラビゾーは良い反応を見せなかった。

 「ある程度の値段で買い取ってくれるかも知れないが、入手元に関して聞かれるぞ。
  どうせ、そんなに高くは売れまい。
  高々数万MGと引き換えに、魔導師会に目を付けられちゃ、割に合わない。
  普通の水晶として売るしかないが、そうすると価値が無い」

 「だ、駄目ッスか?」

 「あぁ、駄目だな。
  どこに持って行っても、200MGが精々と言うか、下手をすると値が付かないかも。
  水晶の主成分の『石素<クストン>』と『気素<スピラゲン>』は、有り触れた物だしな。
  そこら辺の素人を騙して売るとか、自分で加工して綺麗に磨くとかしないと。
  ……それにしても、化け物の核だって言うから怖い。
  何かの拍子に活動を再開しないとも限らない訳だろう?」

ラビゾーの言う通り、未知の魔法が仕込まれているなら、化け物が復活する可能性もある。
その懸念を払拭する為には、再構成する他に無いのだが、そうすると益々価値が無い。
暗い顔で俯いて黙り込み、本気で落胆するコバルトゥスに、ラビゾーは同情的な声を掛ける。

 「200MGと言うのは、市場価格の話だ。
  普通に店で売ろうとすれば、その程度の価格にしかならない。
  但し、僕が個人的に買い取るなら話は別だ」

コバルトゥスは希望を持って目を輝かせる。

 「そうだなぁ……。
  500MGで買い取ろう」

そして、ラビゾーの一言で再び落胆する。

 「吝嗇(ケチ)ぃッスよ」

 「2.5倍だぞ。
  500MGあれば、僕の手元にある品の幾つかを買う事が出来る」

90 :
filler

91 :
コバルトゥスは深い溜め息を吐いて、ラビゾーに尋ねた。

 「何が買えるんスか?」

 「携行食が300MG、傷を治す軟膏が400、後は方位磁針が300、燐寸が1箱100、
  魔力式の懐中電灯が200、短剣が400、魔力探査機が300、伸縮式ロッドが500、
  安い革の『篭手<アーム・ガード>』が片方400、作業用防護手袋が1組400……。
  買える物は、こんな所だな。
  あ、安物の時計もあるぞ。
  300MGだ」

どれを買おうか、コバルトゥスは悩んだ。
彼は先ず不要そうな物から選別する。

 「短剣は要らないッス。
  篭手や手袋も安っぽくて、何か好かないッスねぇ。
  懐中電灯も結局魔法を使うんなら、自前の魔法で事足りますし。
  これ、所謂『魔力石<エナジー・ストーン>』は付いてないんスよね?」

 「ああ、魔力石が付いてたら、もっと値段が高い。
  飽くまで共通魔法の発動を補助する物だ」

精霊魔法使いであるコバルトゥスは、余り共通魔法を好ましい物と思っていない。
共通魔法使いは精霊をRと理解している。

 「この魔力探査機ってのは?
  只の棒切れってか、針金に見えるんスけど」

 「名前の通りだ。
  比較的安価で魔力を通し易い銅合金で出来ている。
  これを手に持っていると、魔力に反応して動くと言われている。
  どうも使う人の魔法資質が高くないと効果が無いらしく、魔法資質の高い人は魔法を使って、
  自力で探知するから不要なんだが、一応補助器具の役割は果たすとか……。
  僕は使わないから判らないが」

さて、何を買おうか、売るだけで買わずに取っておくのか、それとも水晶を売らずに持っておくか、
コバルトゥスは考える。

92 :
コバルトゥスが買う物を決めて下さい。
中には無意味な物もあります。
何も買わなくても良いです。

93 :
時計とマッチ

94 :
 「……時計と燐寸を下さい」

コバルトゥスは暫し迷ったが、その2つを購入する事にした。
時計があれば、洞窟の中でも時間の経過が明確に判る。
狂わされているのが、自分の感覚なのか、それとも時空その物なのかも……。
知った所で何になる訳でも無いかも知れないが、少なくとも1つの謎は解ける。

 「分かった」

ラビゾーは時計と燐寸の箱をコバルトゥスに渡した後、耐火布で作られた巾着型の小銭入れから、
100MG硬貨を差し出した。

 「どうも」

コバルトゥスは小さく頷き、時計と燐寸をコートのポケットへ、硬貨は懐の革の財布に収める。
一泊置いて、彼はラビゾーが水晶をどうするのか気になって尋ねた。

 「所で先輩、その水晶どうするんスか?」

 「知り合いの魔法使いに見て貰おうと思う。
  何か使い道があるかも知れない」

そう言ったラビゾーは、水晶を小銭入れとは別の革の小袋に入れた。
小袋の表面には蔓草に似た奇怪な文様があり、魔力を封じる呪文の文様ではないかと、
コバルトゥスは推察する。
恐らくは、効果が不明な未知の、乃至、幾らか危険性のある魔法道具を保管する為の物。

95 :
それからコバルトゥスは両目を閉じて、呼吸を静め、体力の回復に努める。
一口に回復魔法と言っても、体力の回復と、負傷の回復は別物だ。
普段は疲れない様に、体力を回復させながら行動するのだが、洞窟の中では精霊を捉え難い。
だから、こうして洞窟の外――精霊の存在を十分に感じられる場所で、休息する必要がある。
瞑想するコバルトゥスに、ラビゾーは話し掛ける。

 「コバギ、喉が渇いたり、腹が減ったりしないか?」

コバルトゥスは目を瞑った儘で答える。

 「喉の渇きは平気ッス。
  俺、水筒持ってますし、水の精霊に呼び掛ければ、何時でも補充出来ます」

 「じゃあ、心配無いな」

 「いや、腹は減るんスけどね」

如何に魔法でも空腹だけは凌ぎ難いと、彼は白状した。
それは暗に食い物を寄越せと要求しているのだが、ラビゾーは冷たい。

 「携行食は沢山あるから、幾らでも買って良いぞ」

 「……やっぱり買わなきゃ行けないんスか?」

 「当たり前だろう」

他愛も無い会話で時が過ぎる。

96 :
ラビゾーは時計を確認した。

 「そろそろ、カシエさんが入ってから1針だ」

未だ瞑想を続けていたコバルトゥスは、少し反応が遅れる。

 「ん、カシエが?
  あぁ、そうッスね」

彼は余りカシエを心配しなくなっていた。
一体どうした事かとラビゾーは怪しむ。

 「心配じゃないのか?」

 「いや、全然心配じゃないかって言うと、そうでも無いんスけど……。
  俺が一々気を揉んでも仕様が無いんじゃないかって。
  今は他人の事より、自分の事ッスよ。
  未だ、お宝も手に入れてないんスから」

コバルトゥスの言い分を聞いて、ラビゾーは頷いた。

 「そうだな。
  勝負の事もあるしな」

今の彼には他人の事を考えている余裕は無い。
だが、自分の事で頭が一杯と言う訳でも無い。
正しく「カシエを信頼している」のだ。
彼女を駆け出しと侮って無用な気を回す事を、コバルトゥスは止めたのである。

97 :
待機中【カシエの判定】

98 :
1針半が経過して、カシエは地上に戻って来た。
その表情が、どこか悩まし気だったので、コバルトゥスは気になって声を掛ける。

 「お帰り、カシエ。
  どうしたんだい?
  顔色が優れないけど」

彼女は真顔でコバルトゥスに忠告する。

 「気を付けて、バル。
  5階層目からは重い空気が場を支配してる。
  特に、貴方の魔法資質だと……」

これでは丸でカシエが「先輩」だと、コバルトゥスは苦笑いした。

 「あぁ、有り難う。
  気を付けるよ」

カシエはコバルトゥスの応答に小さく頷いたのみで、彼の前を通り過ぎてラビゾーの横に移動し、
崩れ落ちる様に腰を下ろした。
そして、大きな溜め息を吐く。
探索で余程疲れたのだろうと窺える。

99 :
カシエは気怠そうにベルト・ポーチから小さな宝石を取り出して、ラビゾーに見せる。

 「鑑定、お願いします」

 「ああ」

それを受け取ったラビゾーは、顕微鏡で宝石を観察した。

 「これは綺麗な紅水晶だ。
  フムフム、結晶の中にコバギが持って帰った水晶と似た文様が、透けて見える……。
  もしかして、これは化け物を倒して手に入れた物?」

彼の問いに、カシエは項垂れる様に頷く。

 「蝙蝠みたいなのが、落として」

 「宝石を核にして、色んな魔法生命体を造り出しているのか」

詰まる所、洞窟内の生物は魔法使いが生み出した「宝の番人」と言う訳だ。
コバルトゥスは2人の会話に興味を持って割り込む。

 「先輩、それ見せて貰えませんか?」

ラビゾーは僅かに躊躇いを見せ、余り気乗りしない様子で宝石を渡した。
コバルトゥスは眉を顰めて言う。

 「そんな心配しなくても、取ったりしませんよ」

 「どうかだなぁ……」

 「意地悪言わないで下さい。
  前の事は謝りますから」

互いに冗談めかして笑い合う彼等の姿を、カシエは羨まし気に見ていた。

100 :
コバルトゥスは紅水晶を天に翳し、透かして見る。

 「……何が呪文なのか皆式判らないッスねぇ」

 「知識が無いと判別は難しいからな」

暫しコバルトゥスは紅水晶を観察していたが、やがて飽きてラビゾーに返す。
ラビゾーはカシエの方を向いて、彼女に言った。

 「大体3000MGって所かな。
  どうします、カシエさん?」

 「ええ、売ります。
  その分で補充をお願いします」

 「分かりました」

自分の水晶は買い叩いたのに、カシエの水晶は高く買うのかと、コバルトゥスは不満を持った。
水晶の質が違うのは事実なので、それを口に出したりはしないが……。

 (先輩を驚かせる程の物を見付けてやる。
  それが『冒険者』としての実力の証明にもなる)

独り心内で決意して、コバルトゥスは洞窟に向かった。
その背に向かって、ラビゾーが声を掛ける。

 「コバギ、もう大丈夫なのか?」

 「ええ、余り消耗しなかったんで。
  今度は、もっと良い物を持って帰りますよ」

そう宣言して、コバルトゥスは洞窟に入った。


100〜のスレッドの続きを読む
避難所2
【SSも絵も】ロリババァ創作スレ4【雑談も】
【MGS】メタルギアシリーズの続編案を考えるスレ
【気軽に】お題創作総合スレ【気楽に】
「小説家になろう」で企画競作するスレPart4
茨木敬くんの日常
【UTAU】神楽坂みら その2【製作】
創作発表板TRPGをベテランに教えてもらうスレ【教官】
SS・小説創作の初心者のためのスレ 4筆目
ドラえもんのび太の大日本帝国
--------------------
【ハンゲ】神の俺だけどなんか質問ある?【大富豪】
【アッキード/森友】籠池泰典&諄子夫婦が虎視眈々と狙う「安部夫婦への逆襲」◆2★1758
プルシェンコ五輪代表内定の経緯が凄すぎる件
テンリュウ ユーザースレ2
Victoria/ヴィクトリア太陽の沈まない帝国 75世
米農家総合スレ68
男の陰部 レーザー脱毛Part5
【北海道】 経済戦略議論 3 【札幌市】
MX・tvk・テレ玉・チバ・群馬・とちぎ実況 ★ 58529
【計測】LabVIEW相談室【制御】
●敦賀・小松・高岡● 【市街地&郊外】part2
【PS4/XB1】SEKIRO:SHADOWS DIE TWICE part285【隻狼】
なんJお絵描き部★55
結局サガスカが神ゲーだった件について
▼2019年のJ1降格チーム予想!part37▼
【最速】サイクロン【暴風】
南アルプスの山小屋で南アルプスの天然水買ったら600円取られた。なんか納得いかない。
【池袋店舗型リフレ】キャンクロ常設スレ45 【他店の荒らし禁止】
【総合】【DQ11】ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて Part410
クレジットの序列 part46
TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼