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ロスト・スペラー 8


1 :2014/02/10 〜 最終レス :2014/06/25
人目は気にしても、人気を気にする必要は無いし、色々試してみようかなと考える。
でも、好き勝手に書いた結果、時間が過去へ未来へ、視点が様々な人へ飛んで、
読み手には繋がりが解り難くなっている事に就いては、申し訳無いの一言。
過去スレ
ロスト・スペラー 7
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1377336123/
ロスト・スペラー 6
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1361442140/
ロスト・スペラー 5
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1347875540/
ロスト・スペラー 4
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1334387344/
ロスト・スペラー 3
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1318585674/
ロスト・スペラー 2
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1303809625/
ロスト・スペラー
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1290782611/

2 :
今から500年前まで、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
グランド・マージは一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えるという膨大な作業を成し遂げた。
その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が、共通魔法を世界中に広め、現在の魔法文明社会がある。
『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、過去の『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』以降、封印された。
大戦の跡地には、禁呪クラスの『失われた呪文』が、数多の魔法使いと共に眠っている。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は『禁断の地』と名付けた。

ロスト・スペラー(lost speller):@失われた呪文を知る者。A失われた呪文の研究者。
B(俗)現在では使われなくなった呪文を愛用する、懐古趣味の者。偏屈者。

3 :
500年前、魔法暦が始まる前の大戦――魔法大戦で、地上の全ては海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
沈んだ大陸に代わり、1つの大陸を浮上させた。
共通魔法使い達は、100年を掛けて唯一の大陸に6つの魔法都市を建設し、世界を復興させ、
魔導師会を結成して、共通魔法以外の魔法を、外道魔法と呼称して抑制。
以来400年間、魔法秩序は保たれ、人の間で大きな争いは無く、平穏な日が続いている。

唯一の大陸に、6つの魔法都市と、6つの地方。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、グラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、ブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、エグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、ティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、ボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、カターナ地方。
そこに暮らす人々と、共通魔法と、旧い魔法使い、その未来と過去の話。

4 :
……と、こんな感じで容量一杯まで、話を作ったり作らなかったりする、設定スレの延長。
規制に巻き込まれた時は、裏2ちゃんねるの創作発表板で遊んでいるかも知れません。

5 :
乙です
待ってました!

6 :
逆襲の外道魔法使い編

主な登場人物

リベラ・エルバ・アイスロン

ティナーの貧民街で、ワーロック・アイスロンに拾われた娘。
本名のリベラ・エルバに、養父の姓であるアイスロンを加えて名乗る。
己の出自や境遇については、十分理解しており、養父であるワーロックには頭が上がらない。
年頃になって、自我が強くなるに連れ、彼に対する感謝と尊敬の念は、愛情へと傾き始めているが、
表向きには良い家族を装う。
当のワーロックは娘の感情に薄々気付いているが、バーティフューラーの呪いがあるので、
一欠片の望みすら無い状態。
しかし、それも含めて養父を愛しているのだから、業は深まる一方である。
その半面で、養父への愛が真なればこそ、離れるべきかと迷う心もあり、未だ告白には至らず。
リベラ自身は共通魔法使いだが、ワーロックの魔法を一部受け継いでいる。
性格は養父に似て、平穏を愛する、大人しい娘になった。
魔法資質は並程度で、魔法色素は黄。
時は魔法暦520年、共通魔法社会に復讐を企む、外道魔法使いの噂が立つ。
そこへ図った様に、リベラの義弟ラントロックが蒸発。
嫌な予感がした彼女は、養父と共に、義弟ラントロックの行方を追って、禁断の地を発つ。

7 :
バーティフューラー・トロウィヤウィッチ・ラントロック

ワーロック・アイスロンとバーティフューラー・カローディアの実子。
女系魔法使いの血統に生まれた、『男の魔女<メール・ウィッチ>』。
母の影響が強く、人を魅了する性質を持っているが、父の魔法は全く使えない……と言うか、
引き継ぐ気が全く無い。
母は彼が十の時に死去。
偏愛的に母を慕っていた余り、無能の父を蔑み、忌み嫌っている。
父が旅商の為、余り家に居付かなかったのも、原因の一。
ラントロックは誰もが見惚れる美少年でありながら、義姉であるリベラに複雑な感情を抱いているが、
当人には弟としか見られていない。
14歳になると本格的な反抗期を迎え、「家族」と言う関係を自ら壊す為に独立する。
その後も父への憎悪は凄まじく、頑なにアイスロン姓を名乗りたがらない。
やさぐれて世を皮肉っている物の、本来の性格は父に似て、任侠心が強い割に、
度胸が少し足りない、素直な性格の愛され系。
強大な魔法資質を持ち、魔法色素は母と同じく七色に変化する。
旅先で知り合った精霊魔法使いコバルトゥス・ギーダフィを、「小父さん」と称して慕うが、
彼には「詰まらない男」だと言われる。
その他の旧い魔法使いと出会った際にも、何かと父と(主に人格面を)比較されるので、
父への反発は強くなる一方だ。

8 :
コバルトゥス・ギーダフィ

壮年の精霊魔法使いの男。
各地を旅する自称ベテラン冒険者。
顔は良いのに、相変わらずな女好きの性質が災いして、未だ所帯を持てない。
旅先で偶々リベラと知り合って、彼女がワーロックの娘と知って以降、密かに先回りして現れ、
然り気無く助言をし、窮地に駆け付ける、足長小父さんを演じている。
ワーロック・アイスロンには、憧れに似た奇妙な感情を抱いており、それがリベラを誘惑すると言う、
歪な形で表れる。
リベラが性質的にワーロックと似ているのも、彼女に拘る理由だ。
しかし、実子のラントロックには、「父親に似ていない」と言う理由で、やや冷淡。
だが、確かに彼をワーロックの息子と認めており、時折相談に乗ったりする。
一方ラントロックは、コバルトゥスを恋敵と知りながら、父には無い物を求めて、彼に憧れている。
コバルトゥス自身はラントロックの感情に理解を示しつつも、養娘リベラと実子ラントロックに悩む、
ワーロックの複雑な事情を理解しており、自分がリベラを引き受ければ、全て丸く収まると、
考えている節がある。
元から、俗に言う「(性格が)クソ(な)イケメン」だったが、成長したリベラとの出会いで、
より磨きが掛かった模様。

9 :
ルヴィエラ・プリマヴェーラ

旧暦から生きる『悪魔族<デモンカインド>』の魔法使い。
容姿は黒いドレスを着た、蒼い肌のグラマラスな美女。
強大な魔法資質を持ち、あらゆる奇跡と逆奇跡を起こす、闇の魔法を使う。
人が不幸に足掻き、喘ぐ様を愉しむ、破滅的な性格。
彼女が戯れに各地で撒いた災いの種が、魔法暦520年を迎えて、今、花開く。
諸悪の根源にして、打倒されるべき存在。

10 :
ワーロック・アイスロン

落ち零れの共通魔法使いの男が、十数年放浪の旅を続けた結果、新しい魔法使いになった。
優柔不断な性格も、不惑を越えて、幾分落ち着いた様子。
だが、妻に先立たれ、養娘リベラに想いを寄せられ、実の息子ラントは養娘に好意を抱くと言う、
家庭内三角関係に頭を抱えている。
彼としては、養女にも実子にも、関係の無い人と一緒になって欲しい。
そこに加えて、コバルトゥスが邪な目的でリベラに近付くから、悩みの種は増えるばかり。
『素敵魔法<フェイブル・マジック>』と言う、奇跡の魔法の使い手だが、使う機会を自ら制限している為、
その発動は滅多に見られない。
Loveisallの呪文を完全に使い熟せる様になっても、人前で使うのは恥ずかしいらしい。

11 :
……と言う話を、何時か作ろうと思っている(今とは言っていない)。

12 :
最後の冒険者

古の時代――旧暦と呼ばれる頃――、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
偉大なる魔導師は一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えると言う、膨大な作業を成し遂げた。
その思想に共感し、その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が共通魔法を世界中に広めたが、
それは『古い魔法使い達<オールド・マジシャンズ>』の特権的な地位を脅かす行為だった。
偉大なる魔導師と『共通魔法使い<コモン・スペラー>』達は、時の権力者に迫害されたが、
彼等は決して諦めず、各地で同志を募り、遂に決起する。
新たな魔法秩序を巡る戦い――『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』の始まりである。
魔法大戦には多くの魔法使いが、我こそ新世界の支配者にならんと参戦した。
戦渦は世界中に拡がり、世界その物を蝕んで行った。

13 :
激しい戦いが3年も続いた結果、1つの小さな島を残して、全ての大陸が海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
唯一残った小さな島の東岸に、沈んだ大陸に代わる、1つの大陸を浮上させた。
それが私達の唯一大陸。
共通魔法使い達は、100年を掛けて唯一大陸に6つの『魔法都市<ゴイテオポリス>』を建設し、
世界を復興させた後、8人の高弟を中心に魔導師会を結成した。
そして、共通魔法以外の魔法を『外道魔法<トート・マジック>』と呼称して抑制した。
こうして新たな魔法秩序、私達のファイセアルスが完成したのである。
今も唯一大陸には、6つの魔法都市と、それを中心とした6つの地方がある。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、砂漠のグラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、豊饒のブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、極寒のエグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、商都のティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、山岳のボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、常夏のカターナ地方。
共通魔法と魔導師会を中心とした、新たな魔法秩序の下で、人々は長らく平穏に暮らしている。

14 :
『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、魔法大戦以降、封印された。
大戦の跡地――嘗て1つの小さな島だった場所には、禁呪クラスの失われた呪文が、
数多の魔法使いと共に眠っていると云う。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は禁断の地と名付けた。

15 :
時は魔法暦200年、開花期と呼ばれる頃。
共通魔法文明の成長が、最も著しかった時期。
共通魔法は益々発展し、人々の生活は益々豊かになり行く、希望の時代。
しかし、魔法暦200年は共通魔法の発展に、翳りが見え始めた頃でもある。
大陸中を大魔導路と共通魔法結界で覆う、大魔導計画の中止によって、大陸の僻地開拓熱は、
最早嘗て程の勢いを失っていた。
魔導師会に先駆けて、幾つもの秘境を拓いて来た冒険者達も、冒険を諦めて日常に戻る者が、
増える様になって来た。
大陸極北点到達、最高峰ガンガーの制覇、周辺小島群の発見、主立った偉業は殆ど達成され、
開拓すべき土地が、残っていなかった事もある。
そこで冒険者達は最後の開拓地を求めて、グラマー地方の西に挙って群がった。
グラマー地方の西、唯一大陸の西端に在るは、禁断の地。
魔法暦の始まりから200年間、冒険者達の進入を拒み続けて来た、最後の秘境である。

16 :
ここに6人の若き冒険者が居る。
君には6人の中から、物語の主人公となる人物を選んで欲しい。

1人はグラマー地方出身だ。
優れた魔法資質を持ち、大抵の共通魔法は使える。
特に炎の魔法が得意だ。
魔法大戦の六傑に憧れ、「蒼焔(そうえん)」を自称する。
しかし、彼は魔導師ではない。
勉強に飽きて、魔法学校の中級課程を卒業した後、冒険者になった。
才能に頼り、修練を怠った、愚か者だ。
自分の能力なら、禁断の地を制覇出来ると、表立っては言わないが、密かに信じている。
尤も、全く根拠が無い訳ではない。
彼は妖獣退治等の危険な依頼を、幾つか熟した経験がある。
公平な目で見れば、初心者上がりの中級者よりは、少し上位の実力。
戦闘では魔法主体だが、それなりに武器も使える万能型。
単純な戦闘能力では、6人の中で最も強い。

17 :
1人はブリンガー地方出身だ。
立派な体格だが、心根は優しく、穏やかな性格。
ブリンガー地方民の平均的な性質だな。
だが、動植物にも情けを掛ける所は、少々行き過ぎている。
彼は金儲けや名誉ではなく、動植物の調査をしに、禁断の地へ入りたいと言う、学者肌の人物だ。
振る舞いは知的で、欲気に欠ける。
良い事だと思うかも知れないが、冒険者としては考え物。
先を急ぐ事が無いし、臆病に見える位、慎重だ。
前進に犠牲や多大なリスクを要する場面では、迷い無く引き下がるだろう。
その為に、他の冒険者達とは、反りが合わない事もあるかも知れないな。
戦闘能力は、魔法・武器・遠近、全部そこそこと言った所。
技術は無いが、体力はあるし、腕力も強い。
彼の生物の知識は、禁断の地の怪物相手にも、活かせるかも知れない。

18 :
1人はエグゼラ地方出身だ。
力自慢で、頭を使う事が苦手、力押し一辺倒の大馬鹿者。
何でも腕力で解決したがる。
それなりに魔法も使えるが、他人との連携は苦手。
危険を顧みない無謀な性格を、自分でも理解していて、相談役を求めている。
そう言う意味では賢い。
冒険者としては駆け出しだが、喧嘩慣れしているので、殴り合いには滅法強い。
反面、探索では見落としが出易い。
それを補う仲間も必要になる。
戦闘では常に前に立ち、敵の注意を引き付けるだろう。
彼にとって、敵に背を向けるのは恥。
撤退には仲間の指示が不可欠だ。

19 :
1人はティナー地方出身だ。
小柄で素捷く、お喋りな明るい性格で、場を和ませるムード・メイカーになるだろう。
ティナー地方の商家の者で、禁断の地には、金儲けにやって来た。
故に、金にならない事は大嫌いだ。
金も宝も命あっての物種と言う考えから、引き際を間違える事はしない。
非力で単独での戦闘能力には期待出来ないが、連携魔法は得意。
拾った物の鑑定が出来るのも長所。
何でも持って帰る訳には行かないのが、探索と言う物。
取捨選択は重要だ。
また観察眼が鋭く、敵に明らかな弱点があれば、直ぐに見抜くだろう。

20 :
1人はボルガ地方出身だ。
両親が冒険者で、幼い頃から共に冒険へ赴いていた為、若くしてベテランの雰囲気を漂わせる。
しかし、カターナ地方で活動するのは初めてなので、何も知らない者には侮られるだろう。
知識・経験共に豊富で、冒険に必要な事は、確り心得ている。
如何なる状況にも適応出来る能力を備えており、戦闘でも探索でも頼りになる。
彼の言う通りにしていれば、先ず間違いは起こらないが、先輩風を吹かしたがる為に、
少々説教臭い。
人によっては、疎ましく思うだろう。
今、禁断の地には、大陸中から多くの冒険者が集まっている。
彼は顔が広いので、もしかしたら知り合いと出会すかも知れない。
その時は、助言や協力を得られるだろうが、妙な因縁を持ち越す事も有り得る。

21 :
1人はカターナ地方出身だ。
お気楽と言うか、呑気と言うか、とにかく不思議な人物で、冒険者には向かない性質に思われる。
先ず、冒険者を志した理由からして、異様である。
何とか公学校を卒業したは良いが、就職先が見付からず冒険者に。
開花期の勢いが衰え始めたと言っても、この時代は未だ未だ、余程選り好みしなければ、
普通に希望した職に就ける。
それなのに、彼は志して冒険者になった訳ではない。
何もやる気が無く、取り敢えず面白そうだから、冒険者になったのだ。
よって、知識も準備も能力も、彼には足りない物だらけ。
のらくらした性格で、付き合う人も限られるだろう。
彼の冒険は図太い神経と、幸運だけを頼りにする事になる。
ワイルド・カードに成り得るか?

22 :
ゲームブック方式と言うか、場面場面で選択を提示するので、それで展開が変わる話にしたい。
レスが無くても適当に進めるので、お気軽に。
多数決ではなく最初の意見を優先します。

23 :
蒼焔さんが実力派厨二みたいで気になる

24 :
>>23
良いIDだから彼の名前はルース君にしよう。
ルース・イスダル・ソハラディア。

25 :
グラマー地方の西端 レフト村にて

若き冒険者ルース・イスダル・ソハラディアは、第一魔法都市グラマーの西門から、
夕陽の荒野と砂漠の死都を越えて、今回の冒険の拠点となるレフト村に着いた。
禁断の地への挑戦は、命懸けである。
優れた魔法資質を持つルースにとって、夕陽の荒野と砂漠の死都を渡る旅は、
然して危険な物ではなかったのだが、問題は日数だ。
第一魔法都市グラマーからレフト村まで、距離にして約2街。
途中に物資を補給出来る場所が無い上に、移動に最短でも2日は掛かるので、
無一文になっては帰れない。
それにも拘らず、ルースは他の冒険者と同じく、荒野と砂漠を越えた。
彼の胸には功名心と冒険心。
禁断の地――今まで誰も、中心地まで辿り着けなかった、伝説の地。
嘗て、幾多の魔法使い達が争い、散って行った場所を、ルースは己の目で見てみたかった。
そして、出来る事なら、偉大な発見の1つや2つでもして、冒険者として名を残したかった。
勿論、簡単でない事は解っている。
100年以上、名のある冒険者が何百人と挑んでも、栄えある成果を手に出来たのは、
指折り数える程だ。
しかし、それで恐れていては、冒険者は名乗れない。

26 :
レフト村は狭い集落だが、今は冒険者で賑わっている。
道で擦れ違う者は、殆どが物々しい格好をしており、この村の住民でない事は一目瞭然だ。
村民の人口より、冒険者の方が多いのではないだろうか?
人が多く集まる所は、金が集まる所でもあり、商人の姿も見られる。
一方で、人が増えれば、犯罪も増える。
特に冒険者には、ならず者が多い。
その為、犯罪を取り締まる、魔導師会の執行者が、村の各所に配置されている。
執行者が冒険者を見る目は、冷たく厳しい。
それは同じグラマー地方民である、ルースに対しても同様だ。
悪さをしたら許さないぞと言う、脅しを込めて睨まれる。
ルースとて実力なら魔導師に引けは取らない積もりだが、流石に魔導師会を敵に回す様な、
命知らずな真似は出来ない。
故に、不愉快ではある物の、外方を向いて、遣り過ごす他に無い。

27 :
ルースは先ず村の施設を確認した。
彼に必要そうな施設は、全部で5つ。
大きな酒場、中級・低級の各宿、それに魔法道具店と、冒険者向けの店。
所持金は20万MG。
この日の為に、今まで稼いで貯めた金の殆どを、下ろして来た。
安宿に泊まって、食事は最低限で済ませるなら、2ヶ月弱は滞在可能だろう。
ルースは考える。
先に宿を確保しようか?
旅の疲れもある。
個人で活動する積もりなら、長く泊まれる安宿が良い。
それとも酒場に行って、仲間を募る?
1人より2人、3人の方が、諸々の費用が安上がりで済むかも知れない。
様子を探りに、行き成り禁断の地に突入しても良い。
本格的な攻略の前に、雰囲気を掴んでおくのも大事だ。

28 :
自分なら慎重に行きたいが
キャラクタ的には酒場につっこんだほうが、色々と起こしてくれそう

29 :
ルースは取り敢えず、村の大きな酒場に向かう事にした。
古い木製の看板には、ボトルとグラスの絵が、新しい塗料で描かれている。
店の名前は『西の最果て<ウェスト・エンド>』。
普通、こんな小さな村に、大きな酒場は必要無い。
即ち、この酒場は完全に、冒険者達の憩いの場として、用意された物だ。
酒場は村唯一の食事処でもあり、入り浸っている客の殆どは、食堂の無い安宿に泊まっているか、
或いは宿すら無い者。
当然、柄の良くない者が多い。
ルースはグラマー地方民なので、昼間から酒を飲む事はしない。
一般的なグラマー地方民にとって、呑んだくれは軽蔑の対象だ。
故に、彼は酒場に余り良い感情を持っていないのだが、冒険の情報を集めるには最も効率が良い。
ルースは酒場に踏み入り、充満している酒の臭いに眉を顰めながら、中を見回した。
残念ながら、顔見知りは居ない。
その代わり、カウンターに情報屋の姿を見付けた。

30 :
冒険者の始まりは、傭兵の様な物だった。
職の無い暇人は、他にする事が無いので、酒場に屯する。
その性質を利用して、酒場で人材を募集したので、冒険者と言えば、酒場に屯する物と言う、
常識が生まれた。
そこで依頼人と冒険者を繋ぐ役割をしたのが、情報屋と言う職業だ。
復興期の中頃まで、情報屋と言う職業は無く、依頼は酒場のマスターが仕切っていたが、
冒険がグローバル化するに連れて、情報を専門に扱う組織が発達した。
その歴史は割愛するが、情報屋は冒険者には欠かせない、相方の様な存在。
今回の様に、1つの拠点を大勢で攻略する時は、既踏破エリアの情報を後進に教えたり、
メンバー集めの仲介をしたりする。
勿論、只ではないが……。

31 :
グラマー地方の情報屋は、フュー・ジールと言い、太陽の紋章のローブを着ている。
『火の魂<フュー・ジール>』は元は酒場の名前で、各地に支店を展開する内に、情報を扱う様になった。
ルースは客には目も呉れず、真っ直ぐ情報屋に向かって行き、カウンター席に腰を下ろしながら、
こう声を掛けた。
 「アーレ」
「アーレ」と言う挨拶は、グラマー地方のみで通じる、冒険者同士の合言葉。
同業者、或いは関係者である事を示す、挨拶である。
 「アーレ」
情報屋は同じ調子で鸚鵡返し、続けた。
 「『蒼焔のルース』……だね?」
ルースの記憶では、この情報屋とは面識が無い。
それにも拘らず、名前を知られていると言う事は、それなりに名を上げた証だ。
ルースは少し気を好くした。
 「俺も有名になった物だ」
 「君は期待の新人だから。
  今時、2つ名を自称するなんて、余程自信が無いと出来る物じゃない」
半分馬鹿にされているのだが、ルースは気付かない。
彼の頭は、新しい冒険の事で一杯だ。

32 :
ルースは透かした態度で尋ねる。
 「何か役に立つ情報は無いか?」
 「そうだね。
  先ずは1000MG寄越しなよ」
情報屋は笑顔で応える。
これが実績ある冒険者なら、幾らかヒントでも貰えただろうが、生憎ルースには未だ、
その価値は無いと判断されたのだ。
ルースは渋々1000MGを支払う。
 「毎度。
  はっきり言うけど、今の君では苦労するだろうね。
  入り口で付近を彷徨くのが限界じゃないかな?
  独りで行動するのは、お奨めしない」
金を受け取った、情報屋は冷たく言い放つ。
具体的な事は何一つ言わなかったので、人によっては、小馬鹿にしている様に聞こえるだろう。
しかし、誤解してはいけない。
情報屋は金を貰っている以上、忠実な仕事をする義務がある。
詰まり、これが500MG分の情報であり、ルースの正当な評価なのだ。
ここは堪えて、理由を尋ねるか?
追加料金を取られるが、もっと確実な情報を教えて貰えるだろう。
それとも素直に仲間を紹介して貰おうか?
これも紹介料を取られるが、適切な人物を充てて貰えるだろう。
現在の所持金は19万9000MG。
金が惜しいなら、仲間も情報も諦めて、宿を取りに行くか、禁断の地に突入するか選べる。

33 :
蒼炎さんと他人の絡みをもっとみてみたいので仲間を紹介

34 :
ルースは情報屋の口振りに反感を抱いたが、脅したり、声を荒げたりと言った、
大人気無い振る舞いはしなかった。
だが、これ以上情報屋の「情報」に対して、金を払う気分にもなれなかった。
 「じゃあ、誰か紹介してくれ」
それでも今までの経験から、情報屋の情報自体は信頼出来る物だと、ルースは理解している。
情報屋が「単独行動は推奨しない」と言うならば、それは正しい情報。
故に、同行者を求める。
至極単純な道理。
 「そうしたいのは山々なんだが……」
情報屋は言葉後を濁す。
 「今の所、フリーの腕利きの冒険者は居ないし、君を受け入れてくれそうな所帯も無い。
  荷物持ちでも良いなら、どこか入れてくれるかも知れないが?」
 「冗談じゃない」
 「だろうね」
情報屋の態度は、ルースの性質を知り尽くしている様。
恐らくは、同じ組織の仲間に、彼の為人を伝え聞いているのだろう。
良い意味でも、悪い意味でも、ルースは注目株には違い無い。

35 :
情報屋は暫し思案した後、ルースに提案する。
 「蒼焔のルース君……紹介料は安くしとくからさ、お守りをしてみないかい?」
 「お守り?」
 「要するに、君より実力の無さそうな人をフォローするんだ」
 「どんな奴だ?」
 「悪い奴じゃない。
  500MG払ってくれるなら、直ぐに紹介しよう」
ルースは少し迷ったが、会うだけ会ってみて、合わなさそうだったら断れば良いと、500MG払った。
 「おーい、クレーク!」
500MG受け取った情報屋は、大声でテーブルに座っていた男を呼び付ける。
男は無言で徐に立ち上がり、ルースと情報屋に向かって悠々と歩いて来た。
酒場の木床が音を立てて軋む。
何と言う威圧感。
男は標準的な体格のルースより、一回り大きい。
 「クレーク、そこの彼が案内してくれるそうだ」
情報屋がルースを指して言うと、クレークと呼ばれた男は、背を屈めて礼をする。
 「私はクレーク・ユーグフと言います。
  宜しく、お願いします」
 「待ってくれ。
  俺は未だ、お前と行くと決めた訳じゃない」
馬鹿丁寧な挨拶をされたルースは、それを取り消す様に、慌ててクレークを制した。

36 :
情報屋は2人の遣り取りを見て、半笑いで背を向ける。
 「後は当人同士で、上手く話を付けてくれ」
これ以上は感知しないと言う意思表示だ。
ルースとクレークは向き合って、暫し沈黙した。
先にルースが口を利く。
 「俺は『蒼焔<ブルー・ロー>』のルース」
 「ブルーさん?」
 「違う、『蒼焔<ブルー・ロー>』だ」
 「ああ、ブルーローさん」
 「そうじゃない、俺の名前はルースだ」
 「ルースさん?」
クレークは今一つ理解していない様子ながら、改めて自己紹介する。
 「私はクレーク・ユーグフ。
  禁断の地に同行してくれる、仲間を探しています」
彼は見掛けこそ厳ついが、嫌に礼儀正しく、旅服も皺が少なくて、余り着熟れていない印象を受ける。
何より瞳が清い。
それがルースには気になった。
 「不躾で悪いが、あんたは冒険者って感じがしないな。
  『駆け出し<フレッジリング>』にしても妙だ。
  何が目的で、禁断の地に行くんだ?」
自分より体格の大きい相手に、ルースが堂々と接する事が出来るのは、己の魔法資質が故である。
魔力を捉える魔法資質は、彼我の魔法資質の差を理解する助けになる。
腕力で劣っていようが、十分に魔法資質で上回っていれば、どんな巨漢も恐るるに足らない。
逆に、クレークにもルースの魔法資質の高さは伝わっている。
それが魔法資質の機能なのだ。

37 :
ルースの無遠慮な態度にも、クレークは顔色を変えず応対する。
 「私はブリンガー地方で、性無い学者をしている者です。
  これまで禁断の地に入った学者は、何れも魔法学が専門で、優秀な魔導師でした。
  故に、魔法的な影響や魔法生物が主たる関心事で、それ以外の観点からの考察が、
  大きく欠落していると感じます。
  私は地理学的、生物生態学的な観点から――」
滔々と語り出したクレークだが、生憎とルースは長話が嫌いである。
 「もっと端的に説明してくれ。
  何が目的なんだ?」
 「……学術調査です」
薀蓄を遮られて、クレークは不服そうな顔だが、ルースは気に留めない。
 「こんな僻地下りまで、態々学者様が来なくても、誰かに依頼した方が、安上がりだろうに」
 「見識の無い者の報告なんて、当てに出来ません。
  自分で現場を見なくては」
そう言い切るクレークに、ルースは少し好感を持った。
 「見上げた根性だ。
  それで、何が出来る?」
 「私は『在野研究者<フィールド・ワーカー>』です。
  今まで、それなりに危険な所へも赴きましたし、体力には自信があります」
ルースの問いに、クレークは力強く答える。
ルースは大きく頷いた。
どうせ本格的な探索の前に、現地を下見する必要がある。
クレークは全くの素人ではない様だし、学者の道楽に付き合うのも悪くないだろう。
 「良いだろう。
  宜しく、クレーク」
 「は、はい、お願いします、ルース……さん?」
2人は固く手を取り合った。
ルースの所持金は残り19万8500MG。

38 :
>>33
仲間の名前もIDから取ったよ。
今回は選択無し。

39 :
禁断の地は砂漠の近くに在りながら、緑の豊かな森となっている。
しかし、その隣に在るレフト村は、乾いた砂が舞う荒野の中。
禁断の地との間には、緑の境界線が引かれている。
不思議な事に、禁断の地の緑は、レフト村や周囲の砂漠を、決して侵食しない。
グラマー地方の半分が砂漠に埋もれているのは、禁断の地の「穢れ」に因る物。
故に、生き物が棲息しないのだ。
禁断の地を覆う緑は呪われた色で、そこに住まう物達は尽く呪われている。
一部では、そんな迷信が未だに囁かれる。

40 :
ルースとクレークは早速、禁断の地に向かう事にした。
ルースはクレークに探索の準備をして来るよう伝えると、自分だけ一足先に、
禁断の地の入り口で待機する。
本格的な探索をしないなら、特別な準備は必要無いと言うのが、彼の考えだった。
増上慢ではない。
冒険に必要な最低限の物は、常に身に付けている。
それに禁断の地は過去に、何千何万と言う冒険者が訪れた場所。
しかも、今は数十年振りの『繁忙期<ラッシュ・アワー>』で、ルースは流行の後追い――詰まり、
乗り遅れた方なのだ。
当然、浅いエリアは先行者に探索し尽くされていて、目星い物は何も無い。
その代わり、危険も駆除されている。
学術調査が目的なら、先を急ぐ事は無いだろうし、今日一日は日が暮れるまで、
のんびり付き合えば良いと、ルースは思っていた。
数点して、クレークがルースと合流する。
彼の装備は、旅服にハンティング・ブーツ、頭にはハンター・ハットを乗せ、腰には複数のポーチ、
右手には伸縮式のロッド、そしてバックパックを背負った、冒険者としては至って普通の格好。
コメントする様な所は特に無く、ルースはクレークを従えて、禁断の地に入った。

41 :
禁断の地の入り口には、2人の執行者が立っていたのだが、彼等は今将に魔境に挑もうとしている、
ルース達を呼び止めたりしなかった。
挨拶も何もせず、全くの無視。
2人の執行者は、「魔法大戦の遺物」と呼ばれる、禁断の地に棲息する凶悪な魔法生物が、
村に侵入しない様にする為の、見張りと守衛を兼ねて、配置されている。
執行者にとって、守るべきは村の治安であり、禁断の地で冒険者が何をしようと、どうなろうと、
関知しないと言う事だ。

42 :
いざ、禁断の地。
緑の絨毯を踏み締め、数巨歩いた所で、ルースは突然悪寒に震えた。
反射的に足が止まる。
 「どうかしましたか?」
彼の直ぐ後ろを歩いていたクレークが、異変を察して声を掛ける。
 「何か、感じないか?」
ルースは逆に問うたが、クレークは何も感じていない様で、不思議そうな顔をするのみ。
 (……何とも思わないのか?)
ルースが感じたのは、森中に分布している、幾つもの小さな気配。
それも今まで感じた事の無い、奇妙な魔力の纏い方をしている。
動物とも植物とも、無機物とも有機物とも付かない。
その全てが連動して、自分達を監視する様に、動いているのだ。
 「見られている」
ルースは態と短い言葉で教え、クレークの反応を試した。
 「ええ、変な気配は感じていますよ」
意外にも、クレークは同意する。
しかし、軽く答えた事から、重大な脅威とまでは認識していないと判る。

43 :
ルースには「幾つもの小さな気配」が、何か巨大な物の統制下にある様に思えてならない。
深入りすれば、牙を剥かれると言う、確信めいた予感がある。
クレークは魔法資質がルースより低い為に、連動する夥しい小さな気配に、気付けないのだ。
……だが、この事実をクレークに伝えるべきか、ルースは迷った。
飽くまで、巨大な物が潜んでいる「様に思える」程度。
唯々不気味と言うだけで、何の確証も無いし、差し迫って危険な状況にあるとも言えないので、
危機感を訴えても伝わり難いだろう。
一端の冒険者が、『魔境<イーリー・ホーント>』を前に、怖気付いていると思われるのも困る。
あれこれと独り思案に耽るルースに、クレークが声を掛ける。
 「ルースさん、先に進む前に、この辺りを少し調べても良いですか?」
 「ああ、俺は周囲を警戒しておく。
  余り遠くに行くなよ」
当初、浅いエリアを探索するだけなら、然して対策は必要無いと、ルースは高を括っていたが、
甘い考えだった。
これが百年以上に亘って、進入者を阻んで来た、伝説の秘境なのだ。
 (流石は、禁断の地……)
ルースはクレークの所作と、それに反応する小さな気配を、注意深く観察した。
クレークはビンに土や苔、木の皮を詰めたり、急か急かノートに何かを書き込んだりしているが、
その内容まで気に掛ける余裕は、ルースには無かった。
約1角後、一通り近辺を調べ終えたクレークは、ルースに謝る。
 「済みません、時間を取らせてしまって。
  さあ、行きましょう」
先に進みたいのは、ルースも同じだったが、その意思とは逆に、気分が乗らない。
ずっと魔力の探知に集中していたので、神経が消耗しているのだ。
しかし、未だ撤退には早過ぎる。
ここはクレークの自由に進ませて、自分は警戒に専念するべきだろうか?
それとも先輩冒険者として、やはり自分が先導するべきだろうか?

44 :
1日置いてレスが無い時は、書き込み時間の小数点以下1桁で勝手に判定します。
奇数ならクレークを先に、偶数ならルースが先。
どうなるかな?

45 :
クレークさん

46 :
反応の鈍いルースに、クレークは再び声を掛けた。
 「どうしました?
  具合悪いですか?」
能天気な奴めと、ルースは苛付きながらも、平静を装う。
 「いや、どうと言う事は無い……。
  クレーク、ここからは、あんたが先行してくれ。
  進行のペースも、あんたに合わせる。
  だから、一々俺に確認を取らなくて良い。
  俺は後方から周囲を警戒しておく」
ルースの提案を、自分への配慮と受け取ったクレークは、申し訳無さそうな顔をする。
冒険者としては初心者で、進行を止めている自覚があるのだから、そう思い込むのも宜なるかな。
 「あ……、済みません」
 「気にするな」
誤解させる積もりは無かったのだが、上手い具合に勘違いしてくれたので、ルースは訂正しなかった。

47 :
それから数針、クレークは数巨進む度に足を止めて、採取や観察を繰り返したが、その間に、
これと言った問題や危険は発生しなかった。
相変わらず、無数の怪しい気配が自分達を監視している――様に、ルースは感じるが、
それだけで全く変化が無い。
好い加減に慣れ始める。
 (俺の気にし過ぎか?)
気を張っているのが馬鹿馬鹿しくなる。
未だ村から半区も離れていない。
幾ら何でも、こんな所で生死を懸ける事態にはならないだろうと、慢心しそうになる。

48 :
数点後、後発の冒険者達が、2人を追い越して行った。
彼等は擦れ違い様に、何をやっているんだと、ルース達を奇異の目で見る。
冒険者は誰も、我先にと禁断の地の未踏破領域へと向かう。
浅いエリアには何も無いと判っているし、早くしなければ、誰かに先を越されてしまうだろう。
そんな中で、未だ村に近い所を、彷徨彷徨(うろうろ)しているとなれば、奇妙に思われて当然だ。
彼等はルースが振り向いて、目が合いそうになると、ついと視線を逸らし、挨拶もしない。
人見知りな訳ではなく、これが普通の態度なのだ。
特に、禁断の地の様な、同業者が多く集まる未踏破領域では、互いがライバルになり得る。
予め取り分を決めた仲間以外とは、協力すべきでない。
それは不要なトラブルを招く。
仲間であっても、人は欲に目が眩む物で、他人に命を預けるのは難しい。
緊急事態でもないのに、下手に馴れ合ったり、ライバルを助ける様な真似はしない。
緊急事態であっても――いや、緊急事態「だからこそ」、人を信用してはならない。
現実の見えない者から、蹴落とされるのだ。
故に、冒険者はクールでドライ、そしてシビアであれと言われる。

49 :
更に数点後、先を歩いてたクレークが、倒木を跨いだ後、急に小さな呻き声を上げて蹲った。
 「ぐっ……!」
 「どうした?」
ルースは回り込んで尋ねる。
クレークの右足首には、虎挟みが食い込んでいた。
幸い、発条(バネ)付きの本格的な罠ではなく、簡易な仕掛けの物だったが、
挟み部分に毒が塗られていないとも限らない。
 「間抜けな罠に掛かったな。
  自分で治せるか?」
 「ええ、大丈夫です」
クレークは虎挟みから足を抜くと、傷口に手を当てて、共通魔法を唱えた。
浅い傷を治す程度なら、誰でも出来る。
共通魔法とは便利な物だ。
ルースはクレークが傷を治している間、虎挟みを取り上げて調べた。
特殊な仕掛けは無く、毒が塗られていた形跡も無い。
実に良心的な罠だ。

50 :
魔法による応急手当てを終えたクレークは、その場で足踏みして、傷の治り具合を確かめる。
そして、忌々し気に呟いた。
 「一体誰が、こんな事を……」
 「この程度で一々腹を立てていたら、身が持たんぞ」
ルースはクレークを諌める。
 「俺達冒険者にとって、同業者は商売敵だ。
  積極的に敵対はしないが、ライバルは少ない方が良い。
  足の引っ張り合いは珍しくない」
 「だからと言って、こんな事が許されると!?」
クレークは憤慨したが、ルースは冷たく突き放した。
 「罠としては、優しい方だと思うが?
  ここは禁断の地、都市法の及ばない無法地帯。
  横取り、闇討ち、何でもあり。
  警戒してない奴が悪い。
  この罠は警告みたいな物だ。
  その気になれば、数角で死に至る様な、猛毒を仕掛ける事だって出来た。
  尤も、そこまでやる奴は、もう『冒険者』とは呼べないがな」
ルースの説明が少なからずショックだった様で、クレークは呆然としている。
確かに、在野研究者には想像も付かない世界だろう。
 「怖気付いたか?
  今から引き返すか?」
 「……いいえ、進みます。
  これからは気を付けるので」
ルースが挑発気味に訊ねると、クレークは険しい表情で断言した。
彼の足取りは、明らかに慎重になっていた。
さて、そろそろルースは、禁断の地の雰囲気に慣れて来た。
強がるクレークを抑えて、自分が前に出るべきだろうか?
それとも、未だ後方で警戒を続けるべきだろうか?

51 :
ここは前に出てみては……?

52 :
了解。
2つ訂正があります。
1つは>>32の「500MG」の所で正しくは「1000MG」。
挨拶料500+情報料500で1000と書こうとしたけど面倒臭いから取り消した名残。
もう1つは「在野研究者」で正しくは「野外研究者」。
在野研究者は大学に在籍していない民間の研究者で、フィールドワークとは無関係。
最初から辞書引いておけば良かった。

53 :
ルースはクレークを呼び止める。
 「まあ、待てよ。
  あんた罠探知の魔法、知らないんだろ?」
 「罠探知?
  そんな魔法が?」
クレークは半信半疑と言った風に問い掛ける。
罠を見抜く魔法等、普通に生活していれば、縁の無い物だ。
彼が知らないのも無理は無い。
 「どんな魔法ですか?
  呪文を教えて下さい」
クレークはルースに手間を掛けさせない様、自分が魔法を使う積もりだった。
ある程度の魔法資質を有している事が前提になるが、呪文さえ知っていれば使えるのが、
共通魔法の強み。
しかし、ルースは意地悪く断る。
 「嫌だね。
  探知系の魔法は、探索に欠かせない物だけに、使えるだけで重宝される。
  簡単に他人に教える訳には行かんよ」
 「私達は同じ『仲間<パーティー>』でしょう?」
 「馬鹿を言うな。
  今日出会ったばかりで、1日限りの付き合いになるかも知れないのに、仲間も何もあるか?」
正論を吐かれ、クレークは口を閉ざした。
冒険者とは世知辛い商売なのだ。
 「それに探知系魔法の効力は、魔法資質の高さに比例する。
  あんたの魔法資質じゃ不足だ。
  ここからは俺が先導する。
  先を急ぐ様な事はしないから、安心しな」
 「……はい」
クレークは不満気な表情だったが、ルースの好意を素直に受け取り、黙って彼に付いて行く。

54 :
素人のクレークの手前、見栄を張った物の、実はルースは複雑な魔法を複数同時に扱えない。
魔法学校で高度な詠唱描文技術を、修得しなかった為だ。
彼は周囲に気を配りながら、罠探知の魔法を使う事は出来ない。
だが、自分達を追い越して行った冒険者が居る事で、怪しい気配への警戒感は大分薄れていた。
先行者の身に何かあれば、痕跡が残る。
彼等を無視して、自分達だけが襲われるとは考え難い。
今の所、目立つ道は1本で、迷う心配も無い。
森の中の道は、特に整備されていないのだが、何度も冒険者が探索に入るので、
最初は獣道程度だった物が、邪魔な草を刈り、石を除けてとやっている内に、
自然と道幅が広くなって、立派な道になる。

55 :
時々クレークに呼び止められながら、ルースは森の深いエリアへ向かう。
進めば進む程、木の生える密度が高くなり、木漏れ日が徐々に細り、暗んで行く。
 「不気味ですね……」
唐突に、クレークが零す。
ルースは一旦立ち止まり、ジャケットの内ポケットから懐中時計を取り出して、時刻を確認した。
出発は南の時、現在は南西の時と半角を少し過ぎた頃。
 「西の時が近くなったら、引き返そう。
  妖獣の類に襲われると危ない」
本来なら、夜間探索や野宿も行うべきだが、今日は程々で引き揚げる積もりだった。
クレークが冒険慣れしていれば、また違う判断も出来たが、そんな事を言っても仕方が無い。
ルースの提案に、クレークは意見する。
 「この辺りは未だ大丈夫だと思いますよ。
  小型の動物しか棲息していません」
 「何故そんな事が……って、あんたは学者だったな」
 「ええ、生物生態学が専門です。
  足跡や糞、食べ残し、マーキングの跡……妖獣も魔法生命体も、生き物なんですから、
  生活していれば、何らかの証拠が残ります」
遭遇前から、棲息する生物の種類が判るなら、意外に役立ちそうだなと、ルースは考える。
しかし、今から予定を変更する気は無かった。
危機回避等の緊急性が無く、柔軟性を求められる場面でもないのに、不用意に予定を変更すれば、
思わぬ落とし穴に嵌まる。
 「悪いが、予定は変えない」
 「私は構いませんが……、良いんですか?」
 「深入りするには、準備不足だ。
  よく言うだろう?
  『未だ行ける』は、『もう危ない』」
クレークは抗議しなかった。
経験のあるルースに従うのが、賢明と判断したのだ。

56 :
ルースはクレークに明かり魔法を使って貰い、薄暗い森の中を行く。
あれから罠らしい罠は無いが、無い無いと油断していると、引っ掛かるのが罠と言う物。
警戒を怠る事は出来ない。
進行が順調なのは、未だ浅いエリアだから。
過去、何千何万と言う冒険者を退けた禁忌の領域が、1日や2日で制覇出来るなら、苦労は無い。
そんな事を考えながら、道を歩いていたルースは、又も悪寒に襲われた。
足が止まり、冷や汗が噴き出す。
 「ルースさん……」
クレークは神妙な声で、ルースに呼び掛ける。
魔法資質がルースより低い彼にも、環境の変化が解ったのだ。
 「ここが第2エリアと言った所かな……」
恐らくは、一定の地点に到達する度、ルース達を監視する無数の気配が、徐々に濃くなるのだろう。
その様に予想して、ルースは探知魔法を使いながら、境界を前後した。
……やはり1本のラインを境に、突然雰囲気が変わる。
ルースは悩む。
ここから先は、今までとは違うと予想される。
多少の危険は予想していたが、それ以上の事が起こるかも知れない。
予定よりは数針早いが、大人しく引き返すか?
それとも、「冒険者」らしく危険を覚悟で進むべきだろうか?

57 :
書き込み時間の小数点以下1桁が奇数なら引き返す、偶数なら進む。

58 :
すすむ!

59 :
「予定は変えない」――ルースは自分の言葉を曲げなかった。
未だ何も起こっていないのに、弱気になって引き返す等、冒険者ではない。
そう信じている彼は、少し語気を強めて言う。
 「行くぞ、クレーク」
 「えっ……、はい」
クレークは意外そうに小さな声を上げた後、了解の返事をした。
進むと言っても、ルースの足取りは慎重である。
罠探知と気配察知を交互に使い、進行ペースを落としてでも、不測の事態を避けるべく、
警戒に集中している。
自然と2人は無言になる。
 「……クレーク、獣が数匹。
  魔犬の様だ」
途中、ルースは索敵に引っ掛かった物を、クレークに告げる。
 「魔犬ですか?
  どの辺りに居ます?」
 「左前方。
  彼方(あちら)も此方に気付いた様だ。
  動揺している」
気配を察知する魔法は、常に逆探知される虞を孕む。
しかし、「見られていると判る」事と、「誰が見ているか判る」事の間には、超え難い壁がある。
この魔犬の場合は前者だ。
魔犬は己より強大な魔法資質を感じて、怯えている。
直ぐに襲い掛かって来る様子は無い。

60 :
ルースは無視を決め込んだが、クレークは安心出来なかった。
少し歩いた後、彼はルースに訊ねる。
 「魔犬、付いて来ますか?」
 「どうだかな……。
  追い掛けて来るって様子じゃないが、逃げ出すって様子でもない。
  気になるのか?」
 「魔犬は狡猾です。
  距離を保って付いて来る様でしたら、弱るのを待っているかも知れません」
妖獣退治の経験があるルースにとって、魔犬程度は幾ら数が揃っても、取るに足らない相手。
禁断の地には、魔犬如きとは比べ物にならない位、凶悪な魔法生物が棲息していると聞く。
そんな中でクレークの忠告は、用心し過ぎに聞こえる。
 「解った、留意する」
返事は口先だけで、余り気に留めない。

61 :
道形(みちなり)に数巨進んだ所で、ルースは前方に人の気配を感じた。
更に、複数体の妖獣と戦闘している事も判る。
妖獣は見慣れない大型の物が2体と、魔犬の類であろう小型の物が2体。
人の方はルースより魔法資質が低い物の、それなりに戦闘能力があり、善戦している。
救援に間に合わないなら、傍観に徹しようかと考えていたルースだが、今から急げば、
助けられそうなので、救援に行く事にした。
冒険者同士はライバルで、犯罪者染みた信用ならない連中も多いが、そうでない者だって居る。
その事を「冒険者」であるルースは、誰より知っている。
『忘恩者<イングレイト>』だったとしても、恩は掛け捨て。
一々咎めたり、惜しいと思ったりはしない。
 「クレーク、この先で誰か妖獣に襲われている」
 「それは急いで助けに行かないと!」
クレークはルースが助けに行かないと思い込んでいる様で、必死に訴えた。
少し前に、同業者への警戒を訴えたばかりなので、仕方の無い反応ではある。
 「ああ、そうだな。
  急ごう」
ルースの答にクレークは拍子抜けし、逆に訝った。
 「……ルースさん、何か目論見でもあるんですか?」
 「何も無い。
  冒険者だって人の子だ。
  良い奴も居れば、悪い奴も居る」
 「ああ、失礼しました。
  急ぎましょう!」
淡々としたルースの説明に、クレークは安堵した様に大きく頷くのだった。

62 :
ルースが先に立ち、クレークが後に続く形で、2人は妖獣と戦闘中の冒険者の元に急ぐ。
 「居たぞ!
  クレーク、あんたは後方で支援を頼む!」
 「はい……って、ルースさん!
  あ、あれは何ですか!?」
ルースとクレークが見た物は、緑色をした得体の知れない化け物だった。
熊の様な巨体で、全身に蔦を絡ませている。
 「し、知らん、俺に訊くな!
  あんたこそ、生物学者じゃないのか?」
流石にルースも動揺する。
彼は確かに、気配察知の魔法で、大型の妖獣2匹と、小型の妖獣2匹を捉えた。
小型の妖獣は予想通り魔犬だったが、大型の妖獣だと思っていた物が予想と全然違ったのだ。
クレークは目を見張って、怪生物を凝視する。
 「植物を巻き付けている?
  それとも体毛?」
 「分析は後だ!
  何だろうと関係無い!
  とにかく支援を頼む!」
ルースは覚悟を決めて、冒険者を助ける為に、火の魔法を唱えながら飛び出した。

63 :
今回は選択肢は無しで

64 :
ルースが自らを『蒼焔』と称するのは、得意の火系統の魔法で、青白い炎を操る事が出来る為だ。
青白い炎はH1万2000度以上の、鉄をも蒸発させる超高温。
勿論、瞬間最大火力であり、持続させるのは困難。
彼の炎は一瞬の青い閃きとなって、敵を灼(や)く。
魔力を極限まで圧縮させた、高速で飛ぶ極小の青い『火の玉<ファイア・ボール>』は、
傍目には光弾の様に映る。
 「BG4CC4!!」
右手に嵌めた白い耐熱手袋で、ルースが標的を指差すと、その先端から「黄色い」光弾が飛ぶ。
 (威力の減衰が早い!
  何時も通りとは行かないか……)
禁断の地に独特の魔力の流れが、共通魔法を妨害する様に作用している。
光弾の温度が通常の半分程度までしか上がらない。
それでも生物を仕留めるには十分。
光弾を撃ち込まれた緑色の化け物は、内側から燃え上がり、あっと言う間に火達磨になった。
パチパチ罅焼きの音を立てながら、全身を痙攣させて倒れ込み、沼田(ぬた)打ち回って果てる。
叫び声を上げる事も出来ない。

65 :
もう1体の緑色の化け物は、ルースの方が危険だと判断したのか、直ぐに狙いを彼に変えた。
激昂する様に両腕を伸ばし、掴み掛かろうとする。
ルースは化け物を睨み付け、共通魔法を唱える。
 「E16H1H3D4!
  F2A3、F2A3!」
『邀撃<インターセプション>』の火炎魔法で、接近して来た相手を直接燃やす。
外側からの燃やされ、緑色の化け物は、黒焦げになりながら蹲る様に縮まる。
先に燃やされた個体と同じく、ゴーゴーと激しい燃焼音の合間に、薪を燃やした時の様な、
パチパチと言う罅焼きの音が聞こえる。
2体の化け物を焼殺したルースは、気を抜く事無く、冒険者に目を遣った。
だが、彼は既に2匹の魔犬を始末した後で、ルースと目が合うと、両手の短剣を腰の鞘に納め、
先ず礼を述べる。
 「有り難う御座います」
ルースより少し小柄な、若い男。
戦い慣れている様子だが、邪気は感じない。
ここで漸く、ルースは気を緩める。
 「大丈夫か?」
 「ええ、見慣れない奴だったので、少し様子を窺いつつ、戦っていました」
よく見れば、彼は殆ど息が上がっていない。
これは救援に入るまでも無かったかと、ルースは少し後悔した。

66 :
状況が落ち着いたので、クレークも姿を現す。
 「終わりましたか?
  皆さん、無事で良かった」
 「はい、有り難う御座います」
冒険者はクレークにも礼を言う。
中々礼儀正しい好青年だ。
 「お2人は『仲間<パーティー>』?」
 「そんな所だ」
ルースが答えると、冒険者は不思議そうに2人を見比べ、更に尋ねる。
 「今から、この先に進むんですか?」
ルースとクレークは互いの顔を見合った。
そして同時に時刻を確認する。
日没の西の時が迫っている。
 「いや、今日は本格的な探索をする積もりは無い。
  これから村に引き返す」
ルースの答を聞いて、クレークは小さく安堵の息を吐く。
冒険者は人懐っこく笑った。
 「それは奇遇ですね。
  僕も帰ろうと思っていた所です。
  村まで御一緒しても宜しいですか?」
 「別に構わんよ」
ルースは快諾こそしないが、突き放しもしない。
余り馴れ合うのは好まないが、断る理由も無いのだ。

67 :
ルースと冒険者が話している短い間に、クレークは緑色の怪物の死骸を調べていた。
 「クレーク!」
 「ルースさん!」
帰還するぞとルースが声を掛けると、クレークは振り返って手招きする。
 「何か判ったのか?」
ルースと冒険者が近寄ると、クレークは蹲って死んでいる緑色の怪物の背を、開いて見せた。
鮮やかな色の肉が覗くと思いきや、中は緑の蔦が絡まって詰まっているだけで、何も無い。
血の臭いもしない代わりに、草を絞った汁の様な青臭さがある。
 「どうなってんだ?」
ルースと冒険者は揃って険しい顔をする。
クレークは推察した。
 「誰かが植物の塊を操っていたか、もしくは、植物の怪物だったか……」
 「動物みたいに歩き回る植物が?」
信じられないと言いたい所だったが、ここは禁断の地、何が起きても不思議ではない。
 「取り敢えず、ここから離れるぞ。
  これ以上、変な物に出会したくはない」
それは偽らざるルースの本音だった。

68 :
3人は来た道を引き返す。
ルースが先を歩き、クレークと冒険者は後ろで世間話をしていた。
クレークは素人なので、馴れ合いが悪いと思っていない。
冒険者の方は緊張感が無いのではなく、クレークを素人と判った上で、どちらかと言うと、
親切で接している様に思える。
自分と同じ位の年齢に見えるのに、随分余裕があるなと、ルースは感じた。
これまで分岐は無く、真っ直ぐ一本道だったので、辺りが暗んでも特に迷う事は無く、
3人は入り口まで戻れる。
ここで別れようかと言う時に、クレークは提案した。
 「ルースさん、宜しければ、今後も一緒に行動して貰えませんか?
  出来れば、今の方も一緒に。
  私は既に宿を取っているので、相部屋にすれば宿賃も浮きますよ」
突然の申し出に、ルースは少し考える。
今後もクレークと行動を共にするか?
彼は素人だから、どこかで足手纏いになるかも知れない。
そして、偶々知り合った冒険者とも一緒に行動するか?
経験がありそうなので、頼りにはなるだろうが、分け前は減る。
勿論、独りを選んでも良いし、クレークを差し置いて、彼と行動を共にする選択もある。
そして宿の問題は、どうするべきだろう?
クレークと行動するなら、彼の世話になって、只か折半か選べるだろう。
独りが気楽なら、自分で安宿か、中級宿か選べる。
相場は安宿が1泊3000MG、中級宿は2食付きで1泊7000MG。
宿賃が勿体無いと感じるなら、野宿でも良い。
選択は「誰と行動を共にするか」、「どの宿に泊まるか」、「宿賃の支払い」の3つだ。

69 :
書き込み時間の小数点以下1桁
0なら単独行動
1ならクレークと組んで、全面的に世話になる
2ならクレークと組み、宿賃を折半する
3ならクレークと組むが、宿は別に取る
4ならクレークと冒険者と3人で組み、宿賃は払わない方向で
5ならクレークと冒険者と3人で組み、宿賃も払う
6ならクレークと冒険者と3人で組むが、宿は別に取る
7なら冒険者と組み、宿賃を払って貰えないか相談する
8なら冒険者と組み、宿賃を折半出来ないか持ち掛ける
9なら冒険者と組むが、宿は別に取る

70 :
期待

71 :
1日待ってもレスが無かったら、自分でレスして書き込み時間秒小数点以下の1桁で、
選択肢を決定します。
今回は>69の書き込み時間が19:23:25.18なので8を選びます。
>>69の様な書き込みをした後でも、希望があれば選択肢の変更は受け付けます。
余り遅いと対応は難しくなりますが……。
結構無謀な選択をしても、全滅はしませんが、怪我をしたり、仲間と逸れたり、人が死んだりします。
全滅はしませんが、禁断の地の最深部に辿り着く前に、バッド・エンドになる事もあり得ます。
所持金が無くなれば、冒険者は冒険を諦めます。

72 :
ルースは少し思案した後、クレークの提案を断った。
 「悪いが、俺の目的は禁断の地を制覇する事だ。
  あんたのペースに合わせてたら、誰かに先を越されちまう。
  今日は今日として、組むか組まないかは、その時々で決めたい」
 「そうですか……、それでは仕方ありません。
  縁があったら、また組みましょう。
  今日は有り難う御座いました」
 「ああ、またな」
クレークは残念そうな顔をしたが、ルースの都合を認めて諦める。
信頼出来る人物は貴重だが、それ以上に、仲間は同じ志を持っていなければならない。
クレークの目的は先に進む事より、より詳しく禁断の地を調査する事にある。
目的の違う仲間と組んでいれば、どこかで齟齬が生じる。
今日の所は、現地を見ると言う目的がルースにもあったので、無闇に先を急ぐ事はしなかった。
だが、明日からは違う。
進退を判断する様な決定的な場面で、「意識の差」から来る意見の相違は、
大きなトラブルの元になる。
安請け合いしない方が賢明だ。

73 :
クレークと別れたルースは、森の中で出会った冒険者を呼び止めた。
 「待ってくれ、話がある」
冒険者は足を止めて振り向く。
 「僕に何か用?」
 「あんたは俺達より先に進んでいた。
  それで何か判った事は無いか?
  知っている範囲で良いから、教えてくれ」
ルースの問いに、冒険者は困った顔で答える。
 「大した事は判っていないよ。
  僕だって、今日初めて禁断の地に入ったんだ。
  一筋縄では行きそうにないって印象を受けた位だよ」
それだけなのかと訝るルースを見て、冒険者は苦笑した。
 「仮に知っていたとしても、教える義理は無いけどね。
  情報屋に聞いた方が早いよ」
冒険者は冒険で得た情報を情報屋に売る。
情報屋は様々な冒険者の証言を集めて、信用出来る情報を区別し、それを他の冒険者に売る。
他の冒険者は情報が錯綜しない様に、情報屋のみを頼りにする。
こう言う所でも、冒険者と情報屋は、互いに利用し合う関係にある。

74 :
彼の言葉に嘘は無いと感じたルースは、問いを変えた。
 「あんたは随分熟れている様だったが、最初から独りだったのか?」
 「そうだ。
  様子見序でに、どこまで行けるか試していた」
 「エリアの『変化』には気付いたか?」
 「エリア?」
 「入り口に近い所と、あんたが怪物と戦っていた所とでは、感覚が違っただろう?」
 「ああ、その事か……。
  確かに、ある地点で急に嫌な感じがした」
冒険者の答に、ルースは少し失望する。
嫌な感じが「強まった」、「強くなった」と言って欲しかったのだ。
彼の魔法資質はルースには及ばず、恐らくはクレークと然して変わらないか、より低いだろう。
だが、化け物2体と魔犬2匹を相手に、単独でも余裕を持って戦えていた所は、評価出来る。
敵に囲まれて、観察をしよう等と言う余裕は、並の神経では持てない。
かなり場慣れしているのは、確かだ。

75 :
ルースは最後の質問をした。
 「あんたは何が目的で、禁断の地に?」
 「勿論、未踏破領域に挑む為だ。
  僕は冒険者だからね」
それを聞いて、ルースは頷く。
 「俺と同じだな。
  良ければ、組まないか?
  取り分は半々で」
禁断の地の深部では、共通魔法の効きが益々悪くなると、ルースは予想する。
そこで魔法資質に頼らない戦闘が出来る、仲間が欲しい。
彼の誘いに対して、冒険者は暫し考えた後、肯定の返事をする。
 「……良いよ。
  独りでは厳しいと思っていた所だ。
  君の魔法は頼りになりそうだし、何より……僕を助けようとしてくれたんだから、
  悪い人じゃないだろう?」
ルースと冒険者は、どちらとも無く、自然に握手をする。
 「俺は蒼炎のルース」
 「僕はユンシェン・アックロー・ソクノシン。
  宜しく、蒼炎君」
ルースは訂正しようか迷ったが、クレークとの遣り取りを思い返し、面倒になりそうだから止めた。
 「宜しく、ユンシェン」
 「おっと、御免よ。
  僕はボルガ地方民なんだ。
  ユンシェンは名字だから、アックローかソクノシンと呼んでくれ」
 「……解った、アックロー」
こうしてルースはアックローと行動を共にする事にした。

76 :
自己紹介を終えた後、冒険者アックローはルースに尋ねる。
 「所で、もう宿は取ったのかい?」
 「いや、未だ」
 「僕も未だなんだよ。
  そこで提案なんだけど、お互いに金を出し合って、少し良い宿に泊まらないか?
  半額ずつ負担し合えば、安宿と大して変わらない値段で泊まれる」
態々申し出ると言う事は、何か考えがあるのかと、ルースは気になった。
 「構わないが、何か目的でも?」
 「宿に荷物を預けたくてね。
  食事やサービスの面でも、安宿よりは対応が良い」
嵩張る様な荷物は持っていない様に見えるが、何かしらの事情があるのだろうと、
ルースは詮索しなかった。
仲間とは言え、何でも彼んでも話し合う関係は期待していない。

77 :
2人はレフト村の中級宿、「ボルタラハ」に向かう。
夜になっても、村の中を歩く冒険者の姿は絶えない。
今から禁断の地に出掛けようとする集団もある。
ボルタラハに着いた2人は、3500MGずつ支払って、問題無く部屋を取る事が出来た。
部屋は十分に広く、4人位までは1部屋に泊まれそう。
ルースの所持金は19万5000MG。
さて、明日の行動を決めよう。
直ぐ禁断の地に向かうか、村の中で準備を整えるか?
禁断の地では魔法の威力が落ちたので、冒険者向けの店や、魔法道具店に寄って、
装備を整える必要があるかも知れない。
冒険者向けの店では、武器や防具の他に、食料や傷薬も買える。
魔法道具店では、魔法の武器や防具、それに魔法を防ぐアクセサリーや、
魔法を補助する道具が買える。
高く付くかも知れないが、酒場の情報屋から、情報を仕入れるのも、悪くないかも知れない。

78 :
まずは情報かな
奥地に行った後で、毒や石化能力を持つ魔物の存在を知っても大変だしね

79 :
翌日東の時、ルースはアックローと共に、宿の食堂でビュッフェ形式の朝食を取りながら、
本日の行動予定を相談した。
 「アックロー、俺は禁断の地に行く前に、少し準備をしたい」
 「ああ、構わないよ」
淡々と答えるアックローの皿には、肉や油が少ない、質素な物ばかり乗っているので、
ルースは心配になる。
冒険者は命懸けの職業。
食える時には、食えるだけ食っておくのが普通。
だが、これがボルガ地方の食習慣なのだと思い、言及は避けた。
 「酒場にも寄って、情報屋に話を聞こうと思っているんだが、何か聞いておきたい事や、
  言っておく事はあるか?」
 「それなら、僕も一緒に行こう」
 「助かる」
普段、仕事を請ける以外で、情報屋を利用しないルースにとって、アックローの申し出は、
素直に有り難かった。
情報屋とて人間。
全員が職務に忠実であれば良いが、そうとは限らない。
流石に、偽情報を掴まされる事は無いだろうが、侮られて足元を見られたり、
情報を出し渋られたりされては困る。
冒険者は性質上、法の庇護を受け難く、トラブルが発生した場合、一方的に責任を取らされたり、
そうでなくても自己責任で済まされる事が多い。
……いや、そんな心配も直ぐに無くなる。
禁断の地は最後の秘境。
ここを攻略されると、冒険者の仕事は殆ど残っていない。
禁断の地攻略は、冒険者にとって、己の名を上げる、最後の機会なのだ。

80 :
ルースとアックローは朝食後、速やかに酒場へ向かう。
昨日と顔触れこそ違うが、早朝だと言うのに、相変わらず酒場には多くの者が屯している。
酒と煙草の臭いが酷い。
ルースとアックローは情報屋が居るカウンター前に座った。
情報屋はルースを見るなり、半笑いで声を掛ける。
 「やあ、蒼炎のルース君、昨日の探索は上手く行ったかい?」
 「それなりにな」
 「今日は何の用?」
 「情報を買いに来た」
 「どんな?」
 「禁断の地の深部に関する情報だ」
ルースが情報屋と遣り取りしている間に、アックローは酒場のマスターと雑談を始めていた。
真面目に雁首揃えて聞き入るのも間抜けだが、少しは話に参加して欲しいと、ルースは思った。

81 :
情報屋は俄かに真面目な顔付きになる。
 「具体的には?」
 「禁断の地は特定の地点を通り過ぎると、嫌な気配が強くなる。
  あれの正体は何だ?」
ルースの問いに、情報屋は苦笑した。
 「余り馬鹿な事を訊かないでくれ。
  君程の魔法資質の持ち主が、判らない?
  共通魔法の物とは違う、魔力の乱れだろう」
金を取らないと言う事は、それだけの価値が無い情報と言う事。
冒険者の中には、態と簡単な質問をして、情報屋を試す者も居る。
人物を見て、信頼に足るか確かめるのだ。
情報屋はルースも、その1人だと認識した。
しかし、ルースは納得しない。
 「本当に、単なる魔力の乱れなのか?
  あの監視されている様な雰囲気が?」
情報屋は再び真顔に戻る。
 「……成る程、そう感じたのかい?」
ルースと情報屋は沈黙して、互いの肚を探る様に、暫し睨み合う。
やがて情報屋は観念した様に、小さく溜め息を吐いて、口を利いた。
 「私は少々君を侮っていた様だ。
  非礼の詫びに、君には只で教えよう。
  『同じ事を言う者は居たが、今日まで正体を掴んだ者は居ない』」
詰まり、「分からない」のだ。

82 :
知らないのだから、答は無い。
追及は無意味と悟り、ルースは新しく問う。
 「禁断の地は何エリアまである?」
 「どう言う意味かな?」
 「特定の地点を通過すると、嫌な気配が強くなる。
  そこまでの区間を1エリアとしての話だ」
 「たった半日の探索で、そこまで行ったのかい?
  君は本当に凄いね。
  それとも誰かに聞いたかな?
  どっちでも良いや、特別に安くしとくよ、3000MG払ってくれ」
安くして3000MGとは、一体どの程度負けてくれたのか、ルースは気になった。
そもそも相場が分からない。
だが、今は最高にクールな雰囲気だ。
吝嗇(けち)な話で水を差す積もりは無い。
彼は素直に3000MG支払う。
 「君の言う『エリア』を、我々は『深度<デプス>』と呼んでいる。
  現在確認されている深度はレベル5まで。
  そこから先は不明だ」
 「『深度5<デプス・レベル・ファイブ>』まで到達した冒険者が居るのか?」
純粋に気になった事を、ルースは訊ねる。
情報屋は金を取らずに教えてくれた。
 「残念ながら、今期は未だ」
 「今期?」
情報屋は一々気になる物言いをする。

83 :
ルースが話を止めても、情報屋は気にしない。
寧ろ、愉し気に話す。
 「禁断の地の『繁忙期<ラッシュ・アワー>』は、今回が初めてじゃない。
  それ位は知っているだろう?」
 「確か、『鏡の箱』が発見された『後』と、『神槍コー・シアー』が発見された『後』で、計2回。
  大発見がある度に、後追いの連中が群がる。
  『今期』ってのは3回目の『今』の事か……」
「鏡の箱」と「神槍コー・シアー」は共に、魔法大戦で共通魔法使いの敵対勢力が用いたとされる、
所謂「魔法大戦の遺物」である。
禁断の地の最深部には、歴史的にも価値のある遺物が、ごろごろ眠っていると伝えられている。
物だけでなく、外道魔法、危険な魔法として封印された、『失われた魔法<ロスト・スペル>』までも……。
情報屋は軽く相槌を打って、続きを語る。
 「『鏡の箱』も『神槍コー・シアー』も、深度5で発見されたと言う。
  特に、『鏡の箱』を発見したのは、魔導師会だ。
  それでも、禁断の地を制覇するには至らなかったと言う事が、何を意味するのか……解るな?」
ルースは息を呑んで、頷いた。
最深部到達は容易ではない。
しかし、そんな事は重々承知だ。
それでも挑むから冒険者なのだ。

84 :
情報屋は1つ息を吐き、間を取る。
 「大抵の冒険者は深度3で止まる様だ。
  今期は深度4まで行った者の話を聞けない。
  『行ったけれど、誰にも教えていない』だけかも知れないがね」
 「地図は無いのか?」
 「役に立たんよ」
普通、先行の冒険者はマッピングをして、それを情報屋や後発の冒険者に売り付ける。
レベル5までの道程は、ある程度は明らかになっている筈だ。
全く役に立たないと言う事は無い。
 「何故?」
 「1000MG」
 「ああ」
追加料金をを要求されたルースは、思案も躊躇もせず、支払った。
情報屋は金を手元に納めつつ、続ける。
 「『地図は使えない』。
  磁場が狂っている上に、地形が頻繁に変わる。
  それも知らない間に。
  1本道を真っ直ぐ歩いていたと思ったら、何時の間にか村に戻っていたと言う、
  間抜けな話もある位だ」
俄かには信じ難いが、情報屋が言うからには、そうなのだろう。
ルースは横目でアックローに視線を送ったが、彼はマスターとの世間話に夢中だった。
 (役に立たない……)
情報屋が金を取って嘘を教える事は、無いだろうと信じる。

85 :
話を聞けば聞く程、禁断の地とは人外魔境なのだと知らされる。
深度が上がるに連れて、共通魔法は益々通用し難くなるだろう。
少なくともレベル5まであると言うのだから、最終的には共通魔法が使えなくなる事も、
覚悟しなければならない。
そこでルースは尋ねる。
 「深々度では、どんな化け物が出るんだ?」
恐ろしい化け物に遭遇した時の、対処法を知りたいのだ。
 「2万MG貰おうか?」
 「流石に高い……」
1万MGを超える請求に、ルースは渋ったが、情報屋は涼しい顔。
 「種類が判明していて、その対策を聞くなら未だしも、どんなのが居るかと聞かれたら、
  そりゃなぁ……。
  命に比べれば安い物だろう?」
ルースは仕方無く、2万MGを払う。
約1週滞在分の出費は痛いが、未知の化け物に出会って、全滅しましたでは話にならない。

86 :
情報屋は代金を受け取ると、直ぐに話し始めた。
 「見た事も無い様な、妖獣や魔法生命体が跋扈していると聞くが、大体性質は決まっている。
  先ず、魔力の流れに敏感に反応する。
  探知系の魔法は使わない方が無難だろう。
  更に、魔法資質が高い者を集中して狙う傾向もある様だ。
  深度3以上になると、極端に魔法の通りが悪くなる上に、未分類の魔法まで使うらしい。
  それも攻撃、回復だけじゃなく、精神操作を仕掛けて来るとか……」
 「毒持ちとか、特に注意する奴は?」
 「解毒出来ない程の奴が出るとは聞かないが、大型の魔法生物には気を付けるんだな。
  やたら打たれ強く、生半可な傷は忽ち回復する上に、疲れを知らない戦闘狂で、
  逃走すら許してくれないと言う。
  『共通魔法を当てにするな』よ」
ルースは情報屋に釘を刺され、返す言葉を失う。
確かに、自分は魔法に頼っている部分が大きい。
魔法を使わなくても、それなりに戦える積もりだが、動きが鈍りはしないか心配だ。
顰めっ面のルースに、情報屋は言い添える。
 「ああ、忘れていた。
  これだけは覚えておいてくれ。
  『雷が鳴ったら、そこには近付くな』」
 「何故だ?」
 「知らない。
  前任者から、そう聞いた」
禁断の地は想像以上に恐ろしい所だと、ルースは感じる。
だが、それでも彼は冒険者なのだ。

87 :
ルースはマスターと談笑中のアックローに声を掛ける。
 「アックロー、用は済んだ。
  出るぞ」
その口調は少し強目。
アックローはルースが情報屋と話している間、ずっとマスターと話していた。
結局、何の為に付いて来たのか分からない。
 「ああ、分かった。
  じゃあ、マスター、失礼します」
アックローはルースに返事した後、マスターに別れを告げる。
その手には、来る時には無かった、革の水筒が握られていた。
 「それは何だ?」
ルースが尋ねると、アックローは得意気に笑う。
 「お酒だよ。
  少し分けて貰った。
  欲しければ、蒼炎君にも上げよう」
ルースは無言で首を横に振った。
グラマー地方民は、昼間から酒を飲まない。
 「おっと、そうだ……情報料を半分払わないと行けないね」
アックローは唐突に、ルースが情報屋に払った額の半分を、その場で手渡す。
3000と1000と2万の半分、1万2000MG丁度。
彼はマスターとの雑談に没頭していたとばかり思っていたので、ルースは驚く。
 「聞いていたのか?」
 「まぁね。
  耳は2つあるんだよ?」
アックローは冗談か本気か判らない、軽口を叩いた。
ルースの所持金は18万3000MG。
さて、次の選択は?
冒険者向けの店に寄るか、魔法道具店に寄るか、それとも禁断の地に向かうか?

88 :
魔法道具店で魔法を防ぐアクセサリーは欲しい所
しかし、魔法の武具の方は敵の感知に引っかかる……かな?

89 :
酒場を後にしたルースは、アックローと共に、魔法道具店に向かった。
その途次(みちすがら)、ルースはアックローに、今回の目的を告げる。
 「アックロー、今回は深度3の探索を中心にしたい」
 「情報屋の話が本当なら、否応無しに、そうなるだろうね」
冷静に応えるアックローは、捉え所が無い。
 「深々度では魔法道具さえ使えなくなるかも知れない。
  だが、今回そこまでは行かない。
  先ずは、変化する地形に惑わされず、確実に深度3を突破出来る方法を探す。
  これが目的だ」
ルースの言葉を、アックローは相槌を打ちながら聞く。
 「1日や2日では無理かも知れない。
  西の時になったら、村への帰還を目指すが、道に迷えば、帰還も困難になるだろう。
  一応『野営<キャンプ>』の準備はしておいてくれ。
  後は、魔法に対する防御を固めよう」
 「解った」
出発前の準備段階から目的を定めて、意識を共有しておくのは重要だ。
何を目的とするかによって、装備も心構えも違って来る。
 「何か意見は無いか?」
 「いや、無難な選択だと思う。
  僕としては、もう少し踏み込んでも良いと思うけど」
 「悪いな」
ルースが慎重になるのは、今まで共通魔法が探索や戦闘の中心だった為。
魔法が使えないとなると、アックローの足を引っ張る可能性がある。
それだけは避けたかった。
 「ああ、御免、文句が言いたかった訳じゃないんだ」
アックローは弁解したが、彼から見れば、ルースの計画は悠長に感じられる事だろう。

90 :
魔法道具店に入った2人は、それぞれ店内の商品を見て回った。
呪文の効果で、巻いている間に傷や怪我を治す、『魔法の包帯<マジック・バンデージ>』。
手の平に収まる、小型の『着火装置<ライター>』。
インク要らずで、何にでも自由に書けて、しかも綺麗に消せる、マジカル・ペン。
見た物を印紙に記録する、『写影機<フラッシュ・プリンター>』。
普通の鋏より切れて、刃毀れし難く、錆び付かない、『魔法の鋏<マジック・シザース>』。
どんな汚れも落とせる、『魔法の粉洗剤<マジカル・クリーニング・パウダー>』。
水で膨れる『超圧縮非常食<グロース・バン>』。
魔力が込められた魔力石は、用途によって形状が様々。
色々な物が置かれているが、この辺りは日用品だ。
そもそも魔法道具店とは、共通魔法を利用した道具を売る所で、武器や防具を扱う所ではない。
魔法暦100年代中頃なら未だしも、現在の魔法道具店には、一部のロッドやナイフ等を除いて、
武器や防具が置かれていない。
しかし、このレフト村の魔法道具店は違う。
刀身が高熱を帯びる剣、電撃の飛ぶロッド、衝撃波を撃ち出す砲、貫通力と高めた槍、
打撃を打ち返す盾……これ等は皆、平穏な共通魔法社会では必要とされない。
最早用済みの物として、「必要とされる所」に流れて来た物だ。

91 :
所が、魔導武器の数々に、ルースは興味を示さない。
今の所、用は無いと考える。
問題は防具だ。
魔法の効果を軽減するアクセサリーは、腕輪や首輪の様に直接身に着ける物から、
バッジやチェーンの様に服の上に着ける物まで様々。
どれも1万MG前後の値段で、安いとは言えない。
他には、魔法の効果で強度を高めた上着や、魔法陣を編み込んだスカーフ、肌着もある。
こちらも各数万MG。
 (魔法が使えないとなると、防御力も大事になるな)
そう思いながら歩いていると、ルースは良い物を見付けた。
魔法のローブである。
表裏両面に精緻な結界の魔法陣が縫い込まれており、これを着ていれば深々度でも、
共通魔法が使えるのではないかと予想する。
流石に遠隔魔法は使えなくとも、自分の傷を治したり、身体能力を上げる魔法なら行けるだろう。
それだけでも、使えるのと使えないのでは大違いだ。
ルースは値札を確認した。
 (高い……)
何と13万MG。
買える事は買えるが、滞在期間が大幅に短くなる。
不測の事態にも備えておきたいので、今から金を使い果たす様な真似はしたくない。
何を買うべきか、ルースは悩んだ。
所持金は18万3000MG。
思い切って出資するか、別の防具を買うか、それとも今はアクセサリーだけで止めておくか?
魔法道具店の店員は魔導師だ。
万引きは出来ない。

92 :
アクセサリー

93 :
然して迷わず、ルースはローブの購入を諦めた。
何も今急ぐ事ではない。
余り見えない先の事ばかり考えず、目の前の問題を1つずつ処理して行けば良い。
売り切れたら、その時は仕方が無い。
いざとなったら、自分で魔力伝導率の高い糸を買って刺繍する。
ルースは己に向けられた魔力を吸収して、魔力の流れを乱す、魔除けの腕輪を1対手に取った。
計2万MG。
魔除けのアクセサリーは、各所に適切な配置で装備する事により、効果を高められる。
元々持っていた、チェーン型の物とペンダント型の物と合わせて、それぞれ単体の性能の合計より、
約3倍の効果を発揮する。
アックローは武器や防具には見向きもせず、非常食を幾つか持っていた。
ルースは彼に尋ねる。
 「他に買っておく物は無いか?」
 「ああ、十分だ。
  蒼炎君こそ、買い忘れは無いかい?」
 「最初から、それなりの準備はしてある。
  1週以上村に戻れない事態にでも陥らない限りは、大丈夫だ」
 「それは頼もしい」
ルースとアックローは支払いを済ませ、魔法道具店を後にする。
現在、ルースの所持金は16万3000MG。
他に寄る所が無ければ、禁断の地に向かおう。

94 :
準備を終えて東南東の時、ルースとアックローは再び禁断の地に踏み入った。
今回はアックローがロッドを持って先に行き、ルースは彼の後に付いて行く。
森に入って直ぐ、やはりルースは無数の気配を感じた。
一瞬だが、足が止まる。
アックローは聡くルースの変化を読み取り、声を掛けた。
 「蒼炎君、どうした?」
 「……アックロー、あんたは何も感じないのか?」
 「君は何か感じるのか?」
2人は互いに見詰め合う。
やはりアックローの魔法資質は、ルースには及ばない。
 「ここから深度1だ」
ルースの言葉に、アックローは頷く。
2人は一本道を真っ直ぐ進み、深度2へと向かった。

95 :
ルースとアックローは1角と経たず、木々の枝葉が天を覆う、深度2に到達する。
灯火の魔法を使いたい所だが、そうは行かない。
前日に遭遇した緑色の化け物は、アックローを無視して、魔法を使ったルースに狙いを変えた。
あれは2体だったから良かった物の、正体不明の化け物に、集中して襲われては敵わない。
アックローは何の警戒もしていないかの様に、僅かも足を止めず、相変わらずの一本道を、
真っ直ぐ行く。
ルースには彼が足を速めていると感じられた。
 「急ぎ過ぎじゃないか?」
 「そんな積もりは無いけれど……?」
堪らずルースが呼び止めると、アックローは振り向いて、不思議そうに返した。
アックローは実の所、深度1から歩く速度を全く変えていない。
アックローが速いのではなく、ルースの足が無意識に鈍っているのだ。
不気味な気配と、何時も探索に使っている魔法を封じられた不安が、重く圧し掛かり、
彼を一層慎重にさせている。
 「もう少し周囲を警戒した方が良い」
 「十分、警戒している。
  目と耳を使って」
そう言いながら、アックローは側の地面をロッドで突いた。

96 :
ガサッと音がして、人の脛から先が埋まる位の、浅い穴が空く。
嵌まれば転倒するか、捻挫するだろう。
昨日クレークが引っ掛かったのと、似た様な罠だ。
致命傷に至る訳でもなければ、行動不能に陥る訳でもない。
アックローは首を捻った。
 「誰が何の為に、こんな物を仕掛けるんだろう?
  蒼炎君、どう思う?」
 「解らない。
  警告の積もり……でなければ、まるで子供の悪戯だ」
 「随分、親切な警告だ」
彼が何を言いたいか、ルースにも解る。
冒険者の嫌がらせにしては手緩い。
本気なら、致命的なタイミングで仕掛ける筈だ。
 「罠を警戒させて、進行を遅らせるのが目的なら?」
ルースの意見に、アックローは素直には頷かない。
 「それも考えられるけど……。
  いや、ここで言い合っていても、正解は分からないな。
  済まない、先に進もう、蒼炎君」
アックローは不自然な罠が、どうしても気に懸かる様だった。

97 :
深度2に入っても、道は1本で脇道が見当たらない。
昨日の様な化け物にも、全く遭遇しない。
 「静かだな」
ルースは寂し紛れに、アックローに話し掛ける。
 「魔犬は付いて来ているよ」
 「判るのか?」
 「僕は耳が良いんだ」
アックローは冗談か本気か判らない、軽口を叩いた。
 「恐らく、魔犬は僕等が化け物と遭遇するのを、待っているんだろう。
  遠巻きに隙を窺っている」
 「賢しいな」
 「でも、他の種と連携を取れる訳じゃないみたいだ。
  それが出来るなら、僕等は疾っくに襲われている」
昨日の緑色の化け物は、魔法生命体だったのだろうか?
禁断の地は謎が多い。

98 :
そこから数歩進んだ所で、ルースは更なる不快感に襲われた。
一段と強くなった気配に加えて、軽い耳鳴りと頭痛がする。
 「うっ……」
ルースは思わず顔を顰め、呻き声を上げた。
間髪を入れず、アックローが反応する。
 「大丈夫かい?」
 「ああ、この位なら何とか……。
  あんたは何とも無いのか?」
ルースの問い掛けに、アックローは少し困った顔をした。
己の魔法資質に引け目があるのだろう。
世間では魔法資質が高い程、優れた共通魔法使い、延いては優秀な人間と言う認識が強い。
 「……ここが深度3と言う事は判る」
アックローは気配こそ感じているが、ルースの様に身体にまでは影響が現れていない。
ルースは今日この瞬間まで、まさか魔法資質の低い者を羨む事になろうとは、想像出来なかった。
魔法資質の高さが、ここまで裏目に出るとは、完全に予想外だったのだ。
この調子では、深度4以上に入ったら、どうなるか判らない。
 (こんな状態で化け物共と戦えるのか?
  ……辛いな)
魔法を発動させるには、正確な呪文完成動作が必要になる。
身体の不調は、魔法発動の最大の障害だ。
出来るだけ化け物と遭遇しない事を、ルースは祈った。

99 :
深度3に入っても、分かれ道は無い。
敵にも全く遭遇しない。
只々続く静寂が、不気味さを煽る。
そして何事も起こらない儘、南の時を迎える。
 「蒼炎君、そろそろ昼飯時だけど、どうする?」
アックローは休憩するか否かを、ルースに尋ねて来る。
気分は優れないが、身体的な疲労は、然程でもない。
さて、ここで選択だ。
この場で休憩し、昼食を取るか?
それとも深度2まで引き返して、休憩するべきか?
休憩せずに、先に進むべきか?

100 :
書き込み時間の小数点以下1桁
1か4か7なら、ここで休憩
2か5か8なら、深度2まで引き返す
3か6か9なら、休憩しない
0なら……歩きながら昼食で


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