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またまた騙されて創作発表板に飛ばされた訳だが 4
☆異世界ファンタジーの大設定を考えるスレ【1】★
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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第110章
【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜
【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!
- 1 :2017/09/13 〜 最終レス :2018/10/17
- ――「ブレイブ&モンスターズ!」とは?
遡ること二年前、某大手ゲーム会社からリリースされたスマートフォン向けソーシャルゲーム。
リリース直後から国内外で絶大な支持を集め、その人気は社会現象にまで発展した。
ゲーム内容は、位置情報によって現れる様々なモンスターを捕まえ、育成し、広大な世界を冒険する本格RPGの体を成しながら、
対人戦の要素も取り入れており、その駆け引きの奥深さなどは、まるで戦略ゲームのようだとも言われている。
プレイヤーは「スペルカード」や「ユニットカード」から構成される、20枚のデッキを互いに用意。
それらを自在に駆使して、パートナーモンスターをサポートしながら、熱いアクティブタイムバトルを制するのだ!
世界中に存在する、数多のライバル達と出会い、闘い、進化する――
それこそが、ブレイブ&モンスターズ! 通称「ブレモン」なのである!!
そして、あの日――それは虚構(ゲーム)から、真実(リアル)へと姿を変えた。
========================
ジャンル:スマホゲーム×異世界ファンタジー
コンセプト:スマホゲームの世界に転移して大冒険!
期間(目安):特になし
GM:なし
決定リール:マナーを守った上で可
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし
========================
- 2 :
- 【キャラクターテンプレ】
名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
特技:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:
【パートナーモンスター】
ニックネーム:
モンスター名:
特技・能力:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:
【使用デッキ】
合計20枚のカードによって構成される。
「スペルカード」は、使用すると魔法効果を発動。
「ユニットカード」は、使用すると武器や障害物などのオブジェクトを召喚する。
カードは一度使用すると秘められた魔力を失い、再び使うためには丸一日の魔力充填期間を必要とする。
同名カードは、デッキに3枚まで入れることができる。
- 3 :
- 【キャラクターテンプレ】
名前:赤城真一/Shinichi Akagi
年齢:17歳
性別:男
身長:174cm
体重:66kg
スリーサイズ:細身だが筋肉質
種族:人間
職業:高校生
性格:熱血、健康不良少年
特技:剣道、バイクの運転
容姿の特徴・風貌:ウルフカットの黒髪、濃い茶色の双眸。服装は赤いTシャツの上から学ランを羽織っている。
簡単なキャラ解説:
日本の湘南で生まれ育った高校二年生。
中学時代は地元で名の知れた不良少年だったが、高校に進学してからは比較的更正した。
実家が剣道道場を営んでおり、剣道の腕前は全国大会にも出場したことがある程。
高校進学と同時にアルバイトを始め、貯めた給料でバイクを購入した(ホンダのホーネット250)。
バイクに乗るのが趣味だったが、最近は友人の勧めで始めた「ブレイブ&モンスターズ!」にも熱中している。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:グラド
モンスター名:レッドドラゴン
特技・能力:頑強な爪や牙を使った格闘戦、炎のブレス、高速飛行
容姿の特徴・風貌:全身を覆う赤い鱗と、左右一対の翼、琥珀の二本角を持つ中型のドラゴン。
簡単なキャラ解説:
「竜の谷」に生息する火竜であり、韻竜と呼ばれる貴重な古代種の末裔。
まだ幼生なので、成体に比べるとサイズは大きくないが、韻竜に相応しい高度な知能と戦闘力を誇る。
【使用デッキ】
・スペルカード
「火の玉(ファイアボール)」×3 ……対象に向かって火球を放つ。
「火球連弾(マシンガンファイア)」×2 ……無数の小火球を放つ。
「炎の壁(フレイムウォール)」×2 ……眼前に炎の壁を生成する。
「燃え盛る嵐(バーニングストーム)」×1 ……強力な炎の嵐を繰り出す。
「大爆発(ビッグバン)」×1 ……特大の火球を生成して放つ。
「陽炎(ヒートヘイズ)」×1 ……陽炎によって幻影を作る。
「火炎推進(アフターバーナー)」×3 ……自身の後方に炎を噴射し、高速移動する。
「限界突破(オーバードライブ)」×1 ……魔力のオーラを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「漆黒の爪(ブラッククロウ)」×1 ……パートナーの爪や牙などに、漆黒の気を纏わせて硬化させる。
「高回復(ハイヒーリング)」×2 ……対象の傷を癒やす。
「浄化(ピュリフィケーション)」×1 ……対象の状態異常を治す。
・ユニットカード
「炎精王の剣(ソード・オブ・サラマンダー)」×1 ……炎属性の魔剣を召喚する。
「トランプ騎士団」×1 ……剣、盾、杖、銃を持った4体の騎士人形を召喚する。
- 4 :
- 見上げる空の左半分には、燃えるように鮮やかな紅が広がり、もう片方は暗い海の底のように、冷たい蒼で染まっている。
――月は東に、日は西に。
そんな言葉を体現している美しい光景だったが、その空の下に取り残された少年――赤城真一には、とても景色に見惚れている場合ではない理由があった。
「……おいおい、ここは一体どこなんだ?」
彼はほんの小一時間ほど前まで、日本の湘南に住む平凡な高校生だった。
中学の頃は少しばかりやんちゃをし過ぎたせいで、悪目立ちしてしまったこともあったが、ただそれだけだ。
毎日地元の高校へ通い、放課後はバイク屋のアルバイトに精を出す、ごく一般的な高校生。
そして、彼は今日も江ノ電に乗り、帰路についている最中だった筈。なのだが――
「寝過ごしてどっか遠くの駅まで来ちまったのか? いや、それにしても、江ノ電の沿線にこんな場所なんてなかった筈だけど……」
真一が気付いた時、そこは見知らぬ線路の上だった。
足元には、ところどころ崩れたレール。
付近には、古いステーション……のように見えなくもない廃墟。
そして、地平の彼方まで広がっている、見渡す限りの荒野。
最初は寝過ごして遠くまで来てしまったのかと思ったが、こんな駅は江ノ電の沿線上には存在しない。
そもそも、ここが日本なのかどうかさえも怪しい。
真一は眉間の辺りを指でつまみ、必死に記憶を辿ってみるが、それらしい心当たりは全くなかった。
思い出せることといえば、いつも通り授業を終え、帰りの電車の中で「ブレイブ&モンスターズ!」の対戦でもしようかと、アプリを立ち上げたくらいだ。
その後、唐突に真一の記憶は途切れ、いつの間にやらこの場所に立っていた。
しかし、吹き付ける風の感触や、砂の匂いはまさしくリアルそのものであり、白昼夢の中に迷い込んでしまったということも考えにくい。
ならば、ここは一体どこなんだろうか? 自分は何故、こんな場所にいるのだろうか?
とりあえず誰かと連絡を取ろうとスマホを起動してみるが、電波は圏外でアンテナ一つ立っていない。
真一は仕方なく近くの廃墟へと足を進め、手掛かりになるものでも見付からないかと探索を試みようとする。
だが、その直後、廃墟の壁を突き破って、何かが砂地の下から躍り出た。
真一の前に現れた“それ”は、俄には信じがたい姿形をしていた。
「サンドワーム……! ウソだろ!?」
それは真一も熱中している「ブレモン」に登場する、サンドワームという種族名の大蛇であった。
このような荒野や砂漠を生息地としており、全身は甲殻類みたいに頑強な皮膚で覆われている。
そのため、物理攻撃に対して高い防御力を誇り、強力な猛毒も持ち合わせているので、かなり厄介なモンスターとして知られている。
――しかし、それはあくまでもゲームの中の話だった筈だ。
- 5 :
- 『シャアアアアアーッ!!』
サンドワームは巨大な口から涎を垂らしながら、眼下に捉えた真一を獲物と見定める。
これが現実なのか、夢なのかなど、こうなってしまってはどうでもいい。
思考よりも先に動物的な恐怖に襲われた真一は、文字通り脱兎の如くその場から逃げ出した。
「冗談じゃねえ、何だってんだ一体!!」
真一は日本人高校生としては、かなり足が速い部類の少年だったが、それでもサンドワームと比較すれば相手にならない。
サンドワームは砂地の上を這って進み、瞬く間に彼我の距離を詰める。
自身のすぐ背後に迫る吐息の感触で、最早ここまでと真一が歯を食いしばった瞬間、不意にポケットに入れたスマホが振動を始めた。
『もー、何やってんだよ! 早くキミのパートナーを召喚して!!』
そして、真一はスマホの振動と同時に何者かの声を聞いた。
――いや、それは「聞いた」というよりは、もっと脳内へ直接響き渡るような声だったのだが、声の主が誰かを気にする余裕などありはしない。
ともかく、その指示通りに慌ててスマホを取り出すと、画面上には何故かブレモンのアプリが起動されていた。
ブレモンはオンラインゲームなので、電波の入らない場所ではログインすらできない筈なのだが、それを見た真一には何か確信じみた予感があった。
真一は縋るような思いでスマホを操作し、画面に表示された〈召喚(サモン)〉のボタンをタップする。
――その瞬間、強烈な閃光がスマホから迸り、真一の眼前に“何か”が現れた。
それは炎を帯びた右腕を振り被り、鋭い一撃でサンドワームの巨体を吹き飛ばす。
「……まさかお前、グラドなのか?」
真一の眼前に立つそれは、全身に真紅の鱗を纏い、頭部には琥珀の二本角。
そして、背には一対の翼を有する、レッドドラゴンの姿そのものであった。
こうして、この異世界で真一とグラドは邂逅を果たす。
しかし、彼らの出会いは、後に二つの世界を揺るがすことになる、勇気と友情の物語の始まりに過ぎなかった。
【参加者募集中!】
- 6 :
- 質問
そちらのキャラの関係者でも構いませんか?
幼馴染的な
- 7 :
- このスレは育たない
- 8 :
- >>6
問題ないです
楽しみにお待ちしております
- 9 :
- 名前:崇月院なゆた/Nayuta Suugetuin
年齢:17歳
性別:女
身長:163cm
体重:ヒミツ
スリーサイズ:83-59-85
種族:人間
職業:高校生
性格:世話好き かわいいもの好き 負けず嫌い
特技:家事全般
容姿の特徴・風貌:
肩甲骨までの長いストレートヘアをシュシュで左側に纏めたサイドテールと、頭頂部のアホ毛
気の強そうなつり目がちの整った顔立ち、学校指定のセーラー服
簡単なキャラ解説:
赤城真一の自宅の隣に住む幼馴染。
学校では優等生で通っており、生徒会で副会長をしていることもあり教師の受けは上々。
成績優秀、運動神経も人並み以上で学校ではゲームの「げ」の字も出さない。
「ブレイブ&モンスターズ!」に関しても、なんとなく暇潰しで始めたエンジョイ勢……
と思いきや、実は実家でのバイト代のすべてを「ブレイブ&モンスターズ!」につぎ込むガッチガチのガチ勢。
学生なので限りはあるものの同年代のプレイヤーより遥かに重課金している。
赤城真一に「ブレイブ&モンスターズ!」を勧めた張本人。
実家は寺。「なゆた」という名前で幼い頃からかわれたのが心の傷になっており、周囲には「なゆ」と呼ばせている。
成績優秀だが肝心なところで抜けている、いわゆるポンコツ属性持ち。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:ポヨリン
モンスター名:スライム
特技・能力:変幻自在の身体、耐久力に優れる
容姿の特徴・風貌:
普段は60センチ程度の水色で楕円形の物体
硬さは通常グミキャンディー程度だが、命令によってゲル状になったり硬化することも可能
簡単なキャラ解説:
「ブレイブ&モンスターズ!」のマスコットキャラにして序盤のザコキャラ。
ぷよぷよしたボディとつぶらな瞳で人気。レア度は最低レベルだが、実は鍛えると強い。
なゆたのえげつないデッキのコンボによって、低レアだからと舐めプしてくるプレイヤーを狩りまくる日々。
【使用デッキ】
・スペルカード
「形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)」×2 ……瞬間的に硬くなる。
「形態変化・軟化(メタモルフォシス・ソフト)」×2 ……瞬間的に軟らかくなる。
「形態変化・液状化(メタモルフォシス・リクイファクション)」×1 ……瞬間的に液体化する。
「毒散布(ヴェノムダスター)」×1 ……毒を振りまき対象に継続ダメージを与える。
「分裂(ディヴィジョン・セル)」×3 ……瞬間的に二対に分裂する。重ねがけで更に倍々で増える。水フィールドだと更に倍
「再生(リジェネレーション)」×2 ……パートナーに継続回復効果を与える。
「麻痺毒(バイオトキシック)」×1 ……対象を麻痺させしばらく行動不能にする。
「限界突破(オーバードライブ)」×1 ……魔力のオーラを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「鈍化(スロウモーション)」×1 ……対象の素早さを著しく下げる。
「融合(フュージョン)」×1 ……合体する。
「高回復(ハイヒーリング)」×1 ……対象の傷を癒やす。
「浄化(ピュリフィケーション)」×1 ……対象の状態異常を治す。
・ユニットカード
「命たゆたう原初の海(オリジン・ビリーフ)」×2 ……フィールドが水属性に変化する。
「民族大移動(エクソダス)」×1 ……とにかく大量のスライムを召喚する。
- 10 :
- >>8
こんな感じで。修正希望箇所等ございましたら仰って下さい。
- 11 :
- >>10
「THEヒロイン」という感じで、とても魅力的なキャラだと思います
特に問題などはないですので、導入文の投下をお願いします!
- 12 :
- そもそもまだお前一人しか居ない訳だがw w
- 13 :
- 「誰か一人」が来なくなって、続行不可能とか言い出さなければいいんですけどねェ〜〜〜〜
- 14 :
- ゲームとしてのブレイブ&モンスターズ!って元ネタがあるの?
- 15 :
- ハンドルネームってアルファベットのみ?
- 16 :
- それトリップと勘違いしてない?
- 17 :
- 違う違う
名前の欄って本名/ゲーム内でのハンドルネームなんでしょ
ハンネの部分はアルファベットだけなのかって聞きたいのよ
- 18 :
- あ、単なるよみがなとしてアルファベット入れてるだけ?
なら勘違いスマソ
- 19 :
- >>14
元ネタなどは特にないです
「ブレイブ&モンスターズ!」という架空のソシャゲが大流行しているって世界観の話です
>>15
分かりにくかったら申し訳ないのですが、漢字の読み方をローマ字表記しているだけなのでハンドルネームはないです
あくまでも生身の人間が転移する話なので、基本はキャラの本名での参加となりますが、訳あって実名を隠しているという設定ならアリです
- 20 :
- >>6です。
>>11
ありがとうございます。
また質問なのですが、学校やブレモンのシステムなどは捏造してもよろしいのでしょうか?
何か弄られると困る設定などあれば仰って頂けるとありがたいです。
- 21 :
- >>20
設定については敢えて空白にしている部分も多いので、こちらが明記している箇所以外は好きに弄って頂いて構わないです
各々で設定を出し合って世界観を作るというのも、面白いところだと思いますし
- 22 :
- >>21
ありがとうございます。では、遠慮なく。
- 23 :
- キャラシート見てて思ったけど種族の欄はいらない気がした
人間以外書きようがないし
- 24 :
- >>23
転移した人間ではなく、現地人(ゲーム世界の住人)を使いたいという場合も許可しようと思っていたので、一応種族欄は設けてありますね
- 25 :
- >>24
なるほど把握
- 26 :
- 「……どこ? ここ……」
どこまでも続く、見渡す限りの荒野。
生命という生命のすべてが死に絶えたようにも見える、荒涼たる光景の中に立ち尽くし、崇月院なゆたは呆然と呟いた。
なゆたは湘南にある隼ヶ峰(はやぶさがみね)高校の生徒会で、副会長を務めている。
今日も人当たりのよさと生真面目さだけが長所の生徒会長とふたり、放課後の生徒会室で資料整理に追われていたのだ。
時刻が午後五時を回り、生徒会長が帰宅すると、なゆたは生徒会室でひとりになったのをいいことに、スマートフォンを取り出した。
帰る前にちょっとだけ、今や世間で知らない者のいない大人気ソーシャルゲーム「ブレイブ&モンスターズ!」をしようと思ったのだ。
――が。
スマートフォンの液晶画面をタップし、ブレモンのアイコンに触れてアプリを起動させた瞬間――
なゆたの身体は隼ヶ峰高校の生徒会室ではなく、見たこともない荒野に投げ出されていたのだった。
「……はぁー……」
ぽかんとした間の抜けた表情のまま、スマートフォンを右手に握りしめたなゆたは息を吐く。
ひゅうう……と乾いた風が頬を擽り、シュシュで纏めたサイドテールと制服の短いプリーツスカートを揺らしてゆく。
いかにも気の強そうな眼差し以外は概ね整っている、まずまず美人と言っていい顔立ちの少女であるが、今は呆然自失といった表情だ。
ほんの数瞬前まで見慣れた生徒会室の中にいたというのに、一瞬で荒野のど真ん中に放り出されては無理もない。
はっと我に返ると、まず白いニーハイに包んだ太股をギュッとつねる。
「痛った!」
痛い。――紛れもない現実である。第一、白昼夢など見るほど耄碌してはいない。ピチピチ(死語)の17歳だ。
ならば、これはいったいどういうことなのか?
ふと、足許にレールが敷いてあることに気付く。錆びつき、もう長い間使用されていないであろう線路だ。
線路は前方にずっと続いており、その果てに何やら人工の建築物のようなものが見える。
周囲には他にランドマークになりそうなものはない。あるのは乾いた大地と、美しくもどこか不吉に見える紅蒼の空だけだ。
スマートフォンは圏外。これでは救助も呼べない。
「……なんなのよ、もう……! 意味がわかんない!」
ここがどこかもわからない。ブレモンのアプリも起動できない。
早く帰ってログインしなきゃ、デイリーログインボーナスをもらいそびれちゃう――。
そんなどこか呑気なことを考えながら、なゆたはとりあえず建築物らしきものの方向へ歩き出した。
ここに突っ立っていてもしょうがない。まずは行動、トライアンドエラーである。
と、その瞬間、遠くに見える目的地から突然何かが飛び出すのが見えた。
人間を一呑みにしてしまうくらいの大きさの長虫。それが、同じく遠くに見える人のような影に向かってゆく。
なゆたは瞠目した。もちろん、現代日本での生活においてそんな生物に遭遇したことなどかつてない。
「な……、なに? あれ……!?」
もちろん、なゆたの独語に答えを与える者などいない。
しかし、なゆたの相手をしようと出現した者ならば、いた。
なゆたの前方の柔らかい砂地が不意に隆起し、ざざざ……と音を立てて、巨大なロープ状の生物が現れる。
それはたった今遠くの建築物に出現したものと同じ、見たこともない異形の長虫だった。
- 27 :
- いや、見たことがないというのは誤りである。
なゆたはこの怪物を見たことがある。見たことがあるどころか、『見慣れている』。
それは大人気ソーシャルゲーム「ブレイブ&モンスターズ!」のモンスター、サンドワームだった。
「サ、サササ、サンド……ワーム……!」
これは夢か、幻か。どちらにしてもリアルすぎる。
キシャアアーッ! とどこからか耳障りな叫び声を上げ、サンドワームが襲い掛かってくる。
節くれだった胴体の先端にぽっかり空いている巨大な口が、なゆたを養分にしようと迫る。
なゆたは間一髪危ういところで避けると、こけつまろびつ駆け出した。
「な、なんなのよ、なんなのよ、なんなのよーっ!」
必死で走るものの、脚がもつれてうまく行かない。一方のサンドワームはここがホームグラウンドとばかりに距離を詰めてくる。
挙句なゆたはほんの小さな地面の凹凸に足を取られ、どっと前のめりに転倒した。
「……ぅ、う……ぁ……」
サンドワームが涎を垂らしながらにじり寄ってくる。なゆたは絶望に蒼褪めた。
こんなワケのわからないところで、ゲームの敵キャラなんかに喰い殺されるなんて。
まだ、捕まえてないレアキャラが沢山いるのに。アイテム合成してないのに。マンスリースコアランキング更新してないのに。
こんなトコロで、死んじゃうなんて――。
そのとき。
『もー、何やってんだよ! 早くキミのパートナーを召喚して!!』
声が、聴こえた。
「……へっ?」
思わず頓狂な声を出してしまう。
見れば、ずっと硬く握りしめていたスマホの液晶画面が明滅している。
液晶画面いっぱいに、手塩にかけて育て上げたパートナーモンスターが映し出されている。
『ここから出して!』と言わんばかりに、ぽよん、ぽよん、と飛び跳ねている。
圏外でネットに繋がらないときは、タイトル画面を見ることさえできないはずなのに――。
自らの置かれた状況も忘れ、なゆたは液晶画面に語りかける。
「……出せ、って。そう言ってるの?」
ぽよん、ぽよん。
「そんなことが……できるの? あなたは、ゲームでしょ?」
ぽよん、ぽよよん。
「……信じても……いいの?」
ぽよよんっ、ぽよんっ。
「わかった。わかったよ……あなたを信じるよ。それなら!」
荒唐無稽なことを考えているのは、わかってる。そんなバカなことなんてない、ということも。
でも、それをやらずにはいられない。
- 28 :
- 「おいで! ――ポヨリン!!」
なゆたはパートナーの名を呼ぶと、大きく右手を振って左手に持ったスマホに表示された〈召喚(サモン)〉のボタンをタップした。
その、途端。
『ぽよぽよ、ぽよよん、ぽよよよよ〜〜〜んっ!!!』
スマホが眩い光を放ち、液晶画面が不意に盛り上がる。
と、そこからぼよんっ!と弾き出されるように、60センチ程度の水色の球体が飛び出してきた。
白目のない黒くてくりくりした双眸と、愛嬌のある口。つるつるすべすべ、ぷにぷにの身体。
シンプル極まりない顔立ちは、某太鼓ゲームのキャラクターのそれに酷似しているかもしれない。
なゆたの召喚に応じて出現したのは、「ブレイブ&モンスターズ!」の看板キャラにしてマスコット的存在。
初めて冒険に出たプレイヤーの九割九分九厘が初陣の相手にする、基本中の基本モンスター。
スライム、だった。
「……で……、出た……」
なゆたは驚愕するしかない。
出現したスライム、なゆたがポヨリンと名付けたパートナーモンスターは、サンドワームと真っ向から対峙した。
なお、相変わらずぽよぽよと小さなジャンプを繰り返している。
ポヨリンとサンドワームが対峙している、その光景。
それにも、なゆたは見覚えがあった。
(……これ。ゲームと一緒だ……。わたしがいつもやってる、「ブレイブ&モンスターズ!」の画面と……!)
いまだにここがどこなのかわからないし、自分がなぜいるのかもわからない。
こんなバケモノがいる理由も不明だし、ゲームキャラクターであるはずのポヨリンが実際に現れたのも意味不明だ。
だが。
(……ゲームなら……勝てる!!)
それだけは、ハッキリしている。
握りしめたスマートフォンが輝く。見れば、いつもの見慣れたバトルコマンドが表示されている。
なゆたが得意としているスペルカードのデッキが展開され、選ばれるのを待っている。
で、あれば。
あわや虫のエサかと思っていたが、俄然心に余裕が生まれてきた。
「西関東エリア・ランキングベスト20を舐めんじゃないわよ! この……コモン素材風情が!!!」
素早くスペルカードの一枚ををタップし、ポヨリンに指示を送る。
自分の十数倍もの長さ、大きさを誇るサンドワームを前にしても臆することなく、ポヨリンは強く地面を弾いて跳躍した。
- 29 :
- 「やっぱり『サンドワームの甲殻』しかドロップしないか。この素材はダブついてるからスルーね……」
絶命したサンドワームを調べながら、小さく息をつく。
サンドワームは甲殻による高い防御力を誇り、猛毒をも有するモンスターということで危険視されている。
が、それは「ブレイブ&モンスターズ!」を始めてそう日が経っていないプレイヤーの話である。
二年前、このゲームがリリースされる前から事前登録しており、今も湯水のように課金しているプレイヤーからすれば雑魚でしかない。
実際なゆたもポヨリンもピンピンしている。重課金者にしてランカーの面目躍如である。
「おいで! ポヨリン!」
『ぽよぽよ! ぽっよよよ〜んっ!』
なゆたが大きく両手を広げると、ポヨリンは大きくジャンプしてなゆたの胸に飛び込んできた。
画面を見てイメージしていた通り、すべすべでぷにぷにの素敵な触り心地だ。
実体化と、マスターに抱擁される喜びを現すように、ポヨリンが頬擦りをしてくる。
なゆたはしばらく犬でも相手にするようにポヨリンとじゃれ合った。
「さて。ポヨリンのお蔭で、身の安全は保障されたわけだけど」
それから、気を取り直して現状を整理する。
サンドワームとポヨリンが出現し、スペルカードが使えたということは、ここは「ブレイブ&モンスターズ!」の中なのだろうか?
最近はVRもだいぶ進歩してきたが、ヘッドセットなどつけた覚えはないし、第一こんなにリアルではあるまい。
といって病気や幻覚の類とも思えない。健康優良児のなゆたである。
結局、何もわからないということだ。はぁ、と一度息をつく。
「結局、あそこへ行くしかないってわけね……」
遠くに見える、崩れかけた建築物に視線を向ける。
そういえば先程、サンドワームに襲撃された人影を見たような気がした。もし、その人が事情を知っているならしめたものである。
逆に危険な存在であったとしても、ポヨリンがいれば安心であろう。
西関東エリアのマンスリースコアランキングでは、20位を下回ったことのないなゆたである。
抱いていたポヨリンを下ろすと、ふたたび歩き始める。
まずは、一人(と一匹)旅を解消するため。協力者を募るため。
一緒に、物語を紡いでゆくために。
【一路廃墟へ】
- 30 :
- >>19
ありがと
デッキの種類や効果は全部オリジナルなのね
- 31 :
- test
- 32 :
- それは、まるでお伽噺のような光景だった。
真一の眼前で対峙する、紅蓮の飛竜と甲殻虫。
しかし、グラドの纏う熱気が、敵から感じられる確かな殺意が――この光景が、夢でも幻でもないことを証明している。
『グルルルルルルッ……』
グラドは口の端から炎の吐息を漏らしながら、低い唸り声を上げて、サンドワームを睨み付ける。
先程は鋭い鉤爪で一閃されたサンドワームであったが、よく見てみれば大したダメージを負っているようにも思えない。
ゲームの中では、サンドワームは物理攻撃に強い耐性を持っているモンスターだった。
だとすれば、こいつを倒すには一体どうすればいいか――
『ほらほら、パートナーが力を発揮するためには、キミの協力が不可欠だよ? 早く指示を出さないと!』
――と、そこでもう一度、さっきの声が頭の中に響いた。
相変わらず耳から入るのではなく、直接脳内を刺激されるような不思議な感覚だったが、言っていることは理解できる。
そして、真一は握り締めたスマホに再び目を落とすと、画面上にはまさしくゲーム通りのバトルコマンドが表示されていた。
あの時は〈召喚(サモン)〉のボタンをタップし、グラドを喚ぶことができた。
ならば、こいつはどうだろうか――
「食らいやがれ――〈火の玉(ファイアボール)〉!!」
真一はスマホを操作して、スペルカードをプレイする。
すると、次の瞬間には虚空に火球が現れ、サンドワームの胴体を穿ち貫いた。
- 33 :
- test
- 34 :
- 【キャラクターテンプレ】
名前:うんちぶりぶり大明神(本名:瀧本)
年齢:25
性別:男
身長:175
体重:58
スリーサイズ:肥満ではないが筋肉もついてない
種族:人間
職業:会社員(総務課)
性格:卑屈だけど声は大きい
特技:運営を煽るためだけのクソコラ編集技術
容姿の特徴・風貌:毛羽立ったオールバックによれよれのスーツ
簡単なキャラ解説:
今月の残業時間が80を超えた社畜。ただし残業理由は仕事量ではなくソシャゲに夢中なため。
『ブレイブ&モンスターズ!』を長らくプレイしているが、ガチ勢ではなく課金も少額。
主な活動場所はゲーム内ではなくフォーラムやツイッターの公式アカウント。
重箱の隅を突くようなクソリプや批判スレッドを毎日大量に立てる古式ゆかしきフォーラム戦士。
仕事中も暇を見つけてはフォーラムで暴れまわり、既に3回アカウントを凍結されている。
何度BANされてもめげずに似たようなアカウント名で運営や信者と大論戦を繰り広げていたため、
ゲーム内では悪い意味で『明神』の名前が有名になった晒しスレの常連。
批判のためだけにゲームの仕様に精通し、多分ガチ勢より詳しい(自慢)。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:ヤマシタ
モンスター名:リビングレザーアーマー
特技・能力:剣、槍、弓、杖など多彩な武器とそのスキルを扱うことができる
回復力が高く、破壊されても別の鎧に憑依することで復帰が可能
容姿の特徴・風貌:
つやつやしたハードレザー製の全身鎧。兜の中身はどどめ色の靄が入っている。
その靄の中から付属部品である様々な武器を取り出したりしまったりする。
簡単なキャラ解説:
死者の怨念が取り付いて魔物と化したいわゆる『動く鎧』。
その中でも最下級のモンスターで、材質も鋼鉄ではなく序盤に買える革製の鎧。
材質相応のみじめな防御力のため序盤の冒険者の稼ぎどころとして愛される悲しき存在。
しかし軽さゆえに前衛・後衛問わず『誰でも着れる』という特性は、取り憑く怨念を選ばないということであり、
育成すれば職業適正を問わない多彩なスキルを覚えるスルメのような持ち味の魔物である。
フレンドのいない明神はこのソロ性能の高さに目を付けて重用していた。
ちなみにニックネームは明神の職場の上司(怖い)。
【使用デッキ】
・スペルカード
「工業油脂(クラフターズワックス)」×3 ……ねばねばした油を撒き散らす。時間経過で硬質化するため乱発すると他人に迷惑
「終末の軋み(アポカリプスノイズ)」×1 ……騒音を立てて敵の集中力を奪う。普通にうるさいので他人に迷惑
「幽体化(エクトプラズム)」×2 ……自分の肉体から幽体離脱する。その間本体は無防備。攻撃力はないが目障りなので迷惑
「迷霧(ラビリンスミスト)」×3 ……濃い霧を散布して、範囲内にいる全ての者の視界を奪う。本当に迷惑
「黎明の剣(トワイライトエッジ)」×2 ……パートナーの武器に光属性のオーラを纏わせ攻撃力上昇
「万華鏡(ミラージュプリズム)」×1 ……対象の分身を3つ出現させる。分身は対象の半分のステータスで自律行動可能
「座標転換(テレトレード)」×2 ……指定した2つの物体の位置を入れ替える
「濃縮荷重(テトラグラビトン)」×2 ……一定範囲にかかる重力を二倍に引き上げる
・ユニットカード
「武具創成(クラフトワークス)」×2 ……任意の武器か防具を複数生成する。他人も装備可能
「奈落開孔(アビスクルセイド)」×2 ……近付く者を引きずり込む亜空間の入り口を生成。閉じると出られない
【参加希望です。所用につきすぐには参加できないけど近々参加したいと思ってます】
- 35 :
- 『キシャアアアアアアッー……!!』
火球を受けたサンドワームは、おかしくなったように身悶えしながら、壮絶な絶叫を轟かせる。
幾ら全身を甲殻で覆われているといっても、所詮は芋虫なのだ。
物理には耐性があっても、こういった炎属性の攻撃には滅法弱いのが弱点である。
そして、怒り狂ったサンドワームは、獰猛な牙を思い切り見せ付けながら、凄まじい勢いでグラドに躍り掛かる。
だが、飛竜のスピードを以てすれば、そんな攻撃など止まっているようなものだった。
「飛び上がって躱せ、グラド! そのまま反転して……ドラゴンブレスでトドメだ!!」
真一の指示を受けたグラドは、その場で飛翔してサンドワームの体当たりを回避。
更に上空でクルッと身を翻すと、今度は下方の敵を目掛けて、口から猛烈な炎のブレスを吐き掛けた。
――これぞレッドドラゴンと称するべき、必殺の一撃。
弱点の炎を全身に浴びたサンドワームは、しばらく断末魔の雄叫びを上げ続け、やがて身動き一つすらしなくなった。
「ふぅー、何とか片付いたみたいだな。……ん、何だこりゃ?」
九死に一生を得た真一が思わず息を吐いていたら、スマホが「ピロッ」と音を鳴らした。
その画面上には、ドロップアイテムを入手したことを意味する文面が表示されており、律儀にもこういうところまでゲームの中と同じだった。
結局ここがどこなのか、何故自分がこんな場所にいるのか、謎は全く解消されないままだ。
唯一の手掛かりになりそうなスマホとにらめっこをしていると、上空からゆっくりと降りてきたグラドが、真一に対して嬉しそうに鼻を擦り付けてくる。
「……ああ、そうだな。お前のおかげで命拾いしたよ。サンキューな、グラド」
真一はそんなグラドの頭を優しく撫で付け、それに応じるようにグラドは尻尾を揺らす。
こうして見ていると、つい先程まで勇敢に戦っていたレッドドラゴンと同じだとは思えないくらいだ。
しかし、彼らの間に存在する確かな絆が、やはりこの竜は自分の相棒であることを示している。
「にしても、結局ここがどこかなのかは分からんし、やっぱあの廃墟を調べてみるしかねーのかなぁ。
……って、あれはひょっとして人じゃないか? おーい、そこのアンタ! ちょっと待ってくれー!!」
思い悩むも妙案が浮かばず、最初に考えていた通り廃墟の散策へ踏み出そうとする真一。
だが、そこで不意にこちらへ歩いて来る人影のようなものを見付け、両手を大きく振りながら呼び掛けた。
右も左も分からない、こんな状況なのだ。
遠くを歩いているどこかの誰かが、少しでも情報を持っている人間ならばいいのだが――さて、どうだろうか。
【戦闘を終え、廃墟に向かって来る人影を呼び止める】
- 36 :
- 【うお、投下が被ってしまった。失敬】
- 37 :
- テストて
これさ
一人でやってて面白いか?
- 38 :
- >>34
【歓迎します! 投下はいつでも大丈夫なので、お待ちしております】
- 39 :
- まだ参加者がGM含めて一人のスレ
- 40 :
- やるならやるで完走するまでやれよなー
>>1くんなりきり板にいた頃から途中で放り投げてるでしょ?
- 41 :
- ユニットカードは2種類って決まっているの?
カードの名前は漢字(カタカナ)て決まっているの?
- 42 :
- >>41
>>2のテンプレみる限りでは2種類みたいですね
名前については言及されてないようなので、参加者の裁量かと
- 43 :
- >>42
も少し詳しくお願い
>>2には
>合計20枚
>同名カードは、デッキに3枚
このくらいしか構成条件がないけど、他にもあった?
- 44 :
- なんでスレ主じゃなくて名無しが答えてんのw
- 45 :
- >>41
【それらの決まりは特にないですね。
合計20枚、同じカードは3枚までというルールだけです】
- 46 :
- なんかもう自演自分で認めてるな
このスレ色々臭えわ
- 47 :
- >>46
お前には一体何が見えてるの?
いい加減Rよキチガイ
- 48 :
- >>2のテンプレにはスペルカードとユニットカードの説明しかないのですよ
だから他のカードというのは無いのかと思うよ
しかし>>45で決まりはないと言うことなので、スペルカードやユニットカード以外もありなんかな
- 49 :
- ありなんかなじゃなくてさ
何で名無しがまるで既に参加者のような言い方してるの?
キャラの酉付けて書き込めや自演カス
それとももうID変わったから無理なのかな?
- 50 :
- えっ名無しはだめなんか
そうなんか
ここまで自演
- 51 :
- 「……なるほどね」
ポヨリンとふたり、荒野を歩きながら、なゆたは右手を顎先に添え得心したように呟いた。
この地に放り出された直後はあまりの突拍子ない事態に混乱し、頭がうまく働かなかったが、だいぶ落ち着いてきた。
それを踏まえて考えると、この場所がどこなのかということがおのずと分かってくる。
「ブレイブ&モンスターズ!」は、GPS機能を用い実際にフィールドワークすることで様々なモンスターをゲットする。
実際の地点地点によって捕獲できるモンスターは異なり、プレイヤーは実地でそれを確認していく。
その際の画面はスマホのカメラ機能を使い実際の景色を投影したものと、バーチャル空間を表示したものを選択できる。
なゆたはリアリティ重視で、普段は現実世界の景色を背景に設定していたのだが――
「……これって。バーチャルモードの景色……だよね」
バーチャルモードでは、現実世界の地名の代わりに場所ごとにいかにもゲームらしい名前の地名がつけられている。
記憶によれば、ここは確か『赭色(そほいろ)の荒野』……だっただろうか。
豊かな生命を育む緑がすべて死に絶え、ただ毒を持つ長虫だけが生息するという赤土の地。
難易度としては、中級以上のプレイヤーが腕試しで来るような場所だ。
むろん、重課金プレイヤーであるなゆたにとってはとっくに狩り尽くし、掘り尽くした場所なのだが。
「まぁ、場所はわかったとして。問題は、どうしてわたしがここにいるのかってことよね」
位置情報がはっきりしただけで、自分が生徒会室から一瞬でここへ連れてこられたことに関しては、やはり何もわからない。
いずれにせよ先へ進むしかないということだ。
『ぽよぽよ……ぽよ〜ん?』
ふと、傍らのポヨリンが鳴き声をあげる。
見れば、シンプルな顔にどこか心配げな表情を浮かべ、なゆたのことを見上げている。
基本的に知能がないに等しいと言われているスライムだが、ポヨリンはなゆたがすべての財と時間を注ぎ込んだ特別製だ。
ステータスはカンスト、スキルマ、挙句に限界突破とやれることはすべてやってある。
当然、INTも高い。――あくまでスライムにしては、だが。
「心配してくれてるの? ありがと、ポヨリン」
屈み込み、にっこり笑ってポヨリンの頭を撫でる。……頭しかないのだが。
一人旅であれば不安に押し潰されそうになっていただろうが、ポヨリンがいてくれるなら心細くはない。
どんなレアモンスターを捕獲しても図鑑を充実させるだけで育成はせず、ポヨリンだけに尽くしてきたなゆたである。
その絆は生半可なことでは壊れはしない。
「大丈夫! ポヨリンのおかげで、わたしは元気いっぱいだよ! さあ――行こう! この世界の謎を解かなくちゃ!」
『ぽよっ! ぽよよ〜ん!』
勢いをつけて立ち上がり、ぐっとガッツポーズをしてから、廃墟の方を指差す。
ポヨリンもやる気充分らしく、ふんすふんす! と鼻息(?)を荒くしている。
一人と一匹は、地面に敷かれた壊れた線路をたどって廃墟へと近付いていった。
- 52 :
- 「……あれは……」
廃墟に先客がいる。なゆたは右手で額に庇を作り、目を眇めて注視した。
人だ。やはり、先ほど人がサンドワームに襲われているように見えたのは見間違いではなかったらしい。
現在サンドワームの姿がない辺り、きっと自分と同じようにモンスターを召喚して窮地を脱したのだろう。
その証拠に、人影の傍らに真紅のドラゴンが寄り添っているのが見える。
レッドドラゴン。レアキャラだ。竜の谷というエリアに棲む、強力なモンスターである。
最初期に回せるガチャでもごく低確率で排出されるらしく、リセマラをする輩は多いが、出たという報告は滅多にない。
そんなレアキャラを持っているプレイヤーといえば……。
「んっ? んんん? ……んんんんん〜〜〜〜っ???」
どこかで見たことのある学校の制服と、どこかで見たことのあるウルフカット。
学ランの胸元から覗く、赤いシャツ――。
>あれはひょっとして人じゃないか? おーい、そこのアンタ! ちょっと待ってくれー!!
「う……、うわ――――っ!! 真ちゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
聞き覚えのある、いや、聞き間違えようのない声がこちらへ向けて投げかけられる。
なゆたは思わず両手を大きく上げ、ぶんぶんと振って叫んだ。ついでにポヨリンよろしくぴょんぴょん跳ねる。
相手は幼馴染の赤城真一に間違いない。お隣同士、親の代から家族ぐるみの付き合いをしてきた間柄だ。
彼が中学時代、荒れに荒れていた頃は少しだけ付き合いも疎遠になっていたが、今はその関係も修復されている。
なゆたは息せき切って真一へ駆け寄った。
「真ちゃんもこっち来てたんだ! あ〜……でも当然か! でもまさか、ここで真ちゃんに会えるなんて!
よかった〜〜〜〜〜〜!!!」
なゆたは嬉しそうに駆け寄ると、ためつすがめつ真一の全身を見た。紛れもない本物だ。
「ねえ、真ちゃん! 真ちゃんはどうしてこんなところへ飛ばされちゃったのかわかる?
わたしは生徒会室でアプリ起動させたら、いつの間にかここにいたんだ。で、サンドワームに襲われて、
でも絶体絶命ってときにこのポヨリンが助けてくれて、あー、ここはブレモンの世界なんだなーって。
けど、どうやってわたしがここへ来たのかは全然わからなくて――」
知った顔と会えた嬉しさからか、マシンガンのようにまくしたてる。
それからしばらく、とりあえずの情報交換をするものの、やはり結果は『わからん』という一点しかなかった。
廃墟の崩れた壁に腰掛け、白いニーハイソックスに包んだ両脚を交互にぱたぱたさせながら、なゆたは眉をしかめる。
「んー……やっぱり、真ちゃんにもわかんないか……。手詰まりだなぁ」
はー、と小さく息をつき、ポヨリンに視線を向ける。
ポヨリンは最初いかついレッドドラゴンのグラドを警戒していたが、少し経つとすっかり慣れたのか足元に纏わりついている。
敵意のないモンスターに対しては人懐っこい性格なのだ。
- 53 :
- 「じゃあ〜……とりあえず、この廃墟調べてみる?」
ひょいっと壁から下り、両足で地面を踏みしめる。短めのプリーツスカートの裾がひらりと躍る。
廃墟を調べれば、もしかしたら誰か他にも自分たちと同じ境遇の人間を発見できるかもしれない。
ブレモンにはギルドやコミュニティがあり、フレンド機能もついている。助け合いは大事だ。
自分と真一だけではまだ戦力として心もとない、という意識もある。
自分とポヨリンのタッグなら大抵の相手に負けないという自負はあるが、念には念を入れておく必要がある。
体力が兆単位もあるレイドボスなどに出られた日には、いくら自分たちでもとても太刀打ちできないからだ。
加えて……
「っと、その前に。真ちゃん、デッキ見せて」
何を思ったか、不意に右手を突き出す。スマホをよこせ、と言っているのだ。
真一から半ば無理やりスマホを取り上げると、液晶画面をフリックしてスペルカードを確認する。
そして、ため息をつく。
「スペルカード、攻撃系ばっかりじゃん……。そりゃ派手だし手っ取り早いけどさぁ……。
でも、全部単発の攻撃スペルだし、それじゃコンボが続かないよ?
ブレモンはタクティクス! 戦術が大事なんだから! それ、わたし口すっぱくして教えたよね?
レッドドラゴンは最強クラスのモンスターだけど、性能だけに頼ってちゃ上は目指せないよーって!」
人のデッキにダメ出しする始末。基本世話焼きというか、お節介な性分である。
重課金プレイヤーの自分と違い、ブレモン初心者の真一はまだまだ戦い方に粗が多い、と思っている。
加えてこんな状況だ。悠長に真一が上達するのを待ってはいられない。
「っても、今はデッキ再構築してる時間はないし、まずは安全な場所を確保しなくちゃね。
さ、行こ! 廃墟探検へ!」
真一にスマホを返すと、廃墟探検なんて小学校のころ以来だね、などと呑気に言う。
ポヨリンを抱き上げて胸にぎゅっとかかえ込むと、なゆたは楽しそうに笑った。
【一緒に廃墟探検?】
- 54 :
- ついさっきまでは東と西の最果てで相対し、空模様を二分していた月と太陽であったが、
サンドワームから逃げ回っているうちに、いつの間にやら夕日は沈みかけ、夜の帳が下りて来ていた。
ただでさえ見知らぬ場所で右往左往しているというのに、こんな状況で夜を明かすなどたまったものじゃない。
そこでようやく自分以外の人影を見付け、両手を振り回しながら呼び掛ける真一だが、彼の声に応じたのは予想外の人物だった。
>「う……、うわ――――っ!! 真ちゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
「おーい! ……って、お前……なゆ!?」
それは、真一の隣の家に住む少女――崇月院なゆたであった。
真一となゆたの関係は、幼少期を更に飛び越えて親の代から続く、いわゆる幼馴染だ。
真一は幼い頃に母親を病気で亡くしているため、このなゆたが母に代わり、真一と妹の夕食を作りに来てくれることなども珍しくない。
まさに、家族ぐるみの腐れ縁。そのなゆたと、よもやこんな場所で出くわすとは思っていなかった。
>「ねえ、真ちゃん! 真ちゃんはどうしてこんなところへ飛ばされちゃったのかわかる?
わたしは生徒会室でアプリ起動させたら、いつの間にかここにいたんだ。で、サンドワームに襲われて、
でも絶体絶命ってときにこのポヨリンが助けてくれて、あー、ここはブレモンの世界なんだなーって。
けど、どうやってわたしがここへ来たのかは全然わからなくて――」
真一は「だからいい加減、真ちゃんはやめろって!」などとツッコミつつ、矢継ぎ早に捲し立てるなゆたと問答を交わす。
と言っても、正直こちらもロクな情報を持っているわけではない。
分かることと言えば、このスマホを――正確にはブレモンのアプリを使って、グラドを喚び出したり、スペルカードを発動できたというくらいだ。
「しかし、ここがゲームの世界だって? んなこと言われても信じられるか……って言いたいところだけど、実際にこいつらを見ちまった後だからなぁ」
真一は首をクイッと動かし、傍でじゃれついているグラドとポヨリンの方に視線を向ける。
足元のスライムに纏わり付かれ、グラドは何やら困ったような表情を浮かべていた。
>「じゃあ〜……とりあえず、この廃墟調べてみる?」
「ああ、そうだな。そろそろ完全に日が暮れちまいそうだし、最悪でも野宿できそうな所くらいは確保しといた方がいい。
こういう場所の夜って、かなり冷え込むんだろ?」
なゆたのスカートがヒラっと捲れそうになるのを見て、思わず目を背けつつ、人差し指で頬を掻きながら返答する。
真一はあまり学校の勉強に熱心な方ではないが、放射冷却という言葉は覚えていた。
こんな風に日差しが強く、乾燥しているような土地では、夜になると急激に大地が溜め込んだ熱エネルギーを吐き出してしまうというやつだ。
>「っと、その前に。真ちゃん、デッキ見せて」
さて、話も纏まりようやく廃墟探索へ繰り出そうとしたところで、なゆたがこんなことを言ってきた。
>「スペルカード、攻撃系ばっかりじゃん……。そりゃ派手だし手っ取り早いけどさぁ……。
でも、全部単発の攻撃スペルだし、それじゃコンボが続かないよ?
ブレモンはタクティクス! 戦術が大事なんだから! それ、わたし口すっぱくして教えたよね?
レッドドラゴンは最強クラスのモンスターだけど、性能だけに頼ってちゃ上は目指せないよーって!」
「むっ……まーた、そんなこと言いやがって。
だから攻めて攻めまくるのが、俺とグラドの戦い方なんだって! ……見とけよ、いつかこれでギタギタにしてやるからな」
なゆたに勧められてブレモンを始めた真一だったが、それからというもの、何かにつけてこういうダメ出しをされるのだ。
まあ、未だになゆたと対戦して、まともに勝てた試しがないのだから仕方ない。
真一はレッドドラゴンという超レアを引き当てたにも関わらず、何度なゆたと対戦しても、最弱の筈のスライムに翻弄されてしまう。
無限に増えまくるスライムを殲滅するため、〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉などの上級スペルを入れてみたりもしたが、これまで有効に使えたことはなかった。
いつかはなゆたとポヨリンを圧倒してやりたいと思っているが、今のところは言われるがままになっておくしかないだろう。
- 55 :
- >「っても、今はデッキ再構築してる時間はないし、まずは安全な場所を確保しなくちゃね。
さ、行こ! 廃墟探検へ!」
そして、場所は移り変わり廃墟の中へ。
内部には当然灯りなどは点いていないが、いい具合に天井が崩れて月の光が差し込んでいるので、全く視界が利かないわけでもなかった。
ちなみにグラドは幼生といえどドラゴンなので、サイズ的に連れてくることができなかったため、建物の外で待機させている。
「……ここは、やっぱ駅なんだな。つっても、しばらく使われた形跡はなさそうだけど」
外から見た印象通り、やはりここが駅であるということは、中に入ってすぐに分かった。
と言っても、日本で使われているそれとは大分構造も違い、一見すると豪華な西洋風の館などに見えなくもない。
「この先が、外で見たレールに繋がってんのか。って、あれ……」
『おーい、こっちだよー! 早く早くー!』
廃墟の奥まで進み、ホームのような空間を調べていた時、何かその先に朧気な光が灯っているのが見えた。
その直後、またしても脳内に響く不思議な“声”。
真一は一度振り返り、なゆたと目配せを交わしたあと、足早に光の差す方へと進む。
そして、ホームの先端部まで出ると、そこには何者かが手摺りに腰掛け、二人の姿を見据えていた。
『やーやー! まったく、待ちくたびれたよ。ボクはスノウフェアリーのメロ。
ボクらみたいな種族にとって、ここは本当に暑苦しいんだから勘弁して欲しいよね』
その正体は、白銀の髪と白い肌を持つ小柄な妖精――スノウフェアリーだった。
本来は雪原などに登場する筈の種族が、何故こんなところいるのかも気になるが、今はそれどころではない。
彼女こそ、ここへ訪れてから何度も真一に語りかけて来た声の主だったのだ。
メロと名乗ったスノウフェアリーは、夜空を照らす月光を背景に、ニコニコと満足げな笑みを浮かべていた。
【廃墟の中でNPC登場。ちなみにNPCの扱いは自由にしようと思いますので、他の方が操作してもOKです】
- 56 :
- >>41>>48
【質問の意図を勘違いしてたら申し訳ないのですが、「ユニットカード」を2種類しか入れちゃいけないという決まりはないです。
しかし、カードの種別は「スペルカード」と「ユニットカード」の2つです】
- 57 :
- イマイチ「スペルガード」と「ユニットカード」が判らんので質問
スペルカードはプレイヤーの能力の手札
直接攻撃したり、回復したり
基本単発
ユニットカードはアイテムやフィールド操作、モンスター召喚?
アイテムやフィールド操作は永続?
モンスターはパートナー以外も使える?
たとえばパートナーモンスターとしてグラドを出して、ユニットカードでレッドドラゴン2体、スライム1体だすとかもアリ?
- 58 :
- >>57
【スペルについては、攻撃したり回復したり、その他補助など……魔法効果全般という認識であってます。
ユニットカードの定義については、正直なところそこまで厳密に設定しているわけではないのですが、
とりあえず武器を出したり、建物を作ったり、何らかのオブジェクトを創造するカード全般はユニットという感じで。
効果時間は、戦闘中は持続する程度の認識でいいかと。
また、ユニットでモンスターを出すことは、「パートナーの補助程度で」なら可にしようと思います。
あくまでもパートナーモンスターを戦わせるのがメインなので、
その例ならレッドドラゴンを2体出すのはNGですが、グラドを助ける竜騎士の召喚はOKなど。
ぶっちゃけ今の段階では、まだ設定も固まりきっていないので、ある程度スレの流れや雰囲気で変更するかもしれません。
参加者さんの用意した設定などは大体許容したいと思ってるので、また質問があれば聞いてください】
- 59 :
- >>57
コテつけようか
お前の存在が
不自然オブ不自然
- 60 :
- なぜ名無しをそこまで嫌うのか
病気?
別に参加しないなら不自然だろうが気にすんな
- 61 :
- 名無しも参加者も全部一人の自演に見えてるらしいからな
ガチの病人に触れるな
- 62 :
- >>61
このスレ色々と不自然な点多い
それだけ
- 63 :
- 不自然www
笑た
- 64 :
- スマホって充電とかどうなってんの?
無限バッテリー?
- 65 :
- だから名無しで質問するなっての
罪もないPLが疑われるんだぞ
- 66 :
- と名無しが申してます
- 67 :
- >>66
ええと、君、だれ?w
- 68 :
- 私が不自然に思う点は元ヤンで比較的更生した人間が
はたしてホンダのホーネット250なんか買うのだろうか?
という点だけです
- 69 :
- >>67こいつはつまんねー
>>68はまあまあ
- 70 :
- >>68
ホーネット格好いいだろーが!
- 71 :
- パートナーモンスターの知能指数ってどのくらい?
今追いついたけど、レッドドラゴンもスライムも犬猫程度な感じだけど
1)会話可能なのかどうか
2)ゲームの世界の知識があるのか
3)実世界の知識はあるのか
4)自分がゲームキャラであることを自覚しているのか
5)スペルカードやユニットカードの知識があるか
- 72 :
- >>64
【スマホのエネルギー問題については、ストーリーに絡めるつもりなので近いうちに劇中で触れます】
>>71
【知能指数は個体差があると思いますが、プレイやーの言葉が分かる程度には頭がいい筈です。
例えばレッドドラゴンは声帯の関係で人語を話せませんが、人の言うことは完璧に理解してます。
劇中で登場させたスノウフェアリーのように、人語を話せるモンスターもいます。
2〜5についてはストーリーに関係する部分なので、今の段階では何とも言えないのですが、
異世界側の住人は基本的に「ブレイブ&モンスターズ!」というゲームの知識はないです。
また、プレイヤーたちが別世界からやって来た人間だということも、大半の者は知りません】
- 73 :
- >>72
ありがとね
人語は解するのはOK
プレイヤーとの連携はカードの知識がないと難しいでしょうし
プレイヤーの指示に従う、絆があるのはなんで?って話になりますし
データではなく生物としてのモンスターの立ち位置は物語の根幹部分に関わってくる部分ですものね
ここはパートナーモンスターは人語を解する犬猫レベルにしておいた方が良さそうですね
設定がしっかりして来たら後付で進化なりで知能指数上げてもいいですから
- 74 :
- 真一と話しているうちにすっかり日は落ち、夜になってしまった。
懐中電灯もなしに廃墟の中へ踏み入るなど自殺行為のようにも思えたが、予想に反して廃墟の中は意外と明るい。
天井の崩れた部分が明かり窓の役目を果たし、差し込む月の光が要所要所を照らしている。
とはいえ、暗いことには変わりない。先行する真一の後ろについて、ポヨリンを抱きしめながらおっかなびっくり歩く。
「し……真ちゃん、あんまり早く先に行かないで……。足元危ないんだから……。
やっぱり、グラちゃん連れてきた方がよかったんじゃない……?」
ポヨリンをぎゅっと胸に抱き、きょろきょろしながら言う。
もしグラドがいたなら、炎を吐いて周囲を明るく照らすことも可能だっただろう。
とはいえ、グラドのサイズでは翼が邪魔して廃墟の入口をくぐることが困難だったため、仕方ないのだが。
「ポヨリンに発光スキルを付与するべきかしら……」
そんなことを言う。ポヨリンの強化に余念のないなゆたである。
>「……ここは、やっぱ駅なんだな。つっても、しばらく使われた形跡はなさそうだけど」
「でも、こんな駅見たことないよ。ブレモンの世界にもあったかどうか……。わたしたちの住む世界にも、もちろんなかったし」
よく海外の映画などで描写されるメトロの構造に、それはよく似ている。
どこかゴシックな佇まいの壁や柱は、だいぶ古い時代のものだろう。こんなところに誰かがいるとは思えないが――
>『おーい、こっちだよー! 早く早くー!』
「ひゃああああああっ!?」
ホームに降り立ち、前方にぽんやり輝く光を見つけたと同時、突然脳内に響いた声に甲高い悲鳴を上げる。
思わずぎゅーっと強くポヨリンを抱きしめてしまい、ポヨリンもついでに『ぴきーっ!』と悲鳴を上げる。
声は、サンドワームとの戦いのときにも聞こえたもの。ポヨリンを召喚するようにと指示してきたもの。
とすれば、何か手がかりを持っているかもしれない。
なんとか腰を抜かさず踏みとどまり、真一とアイコンタクトする。
いずれにせよ、こちらには進むしか選択肢がないのだ。
ホームの先端に向かうにつれ、おぼろげだった光が強くなってゆく。
そして、ホームの端。これ以上は線路を降りて進むしかないというところで。
>『やーやー! まったく、待ちくたびれたよ。ボクはスノウフェアリーのメロ。
ボクらみたいな種族にとって、ここは本当に暑苦しいんだから勘弁して欲しいよね』
手すりに腰掛けたスノウフェアリーが、真一となゆた(とポヨリン)を待ち受けていた。
- 75 :
- スノウフェアリー。
この荒野エリアとは真反対の雪原エリアに出没するモンスターだ。
知能が高く、人語を解する。魔法を得意とし、鍛え上げれば氷雪系の強力な魔法を多様に使いこなす。
総じていたずら好きだが、心優しい者も多く一概に悪とは言えない。
倒すとたまに氷雪属性モンスターの強化素材『雪のかけら』をドロップする。
「……アンコモン……」
真一の背後で、ボソリと呟く。
アンコモンとはブレモンのモンスターやアイテムの等級である。
スノウフェアリーはレア度的に下から二番目のアンコモン。つまり別段珍しくはないということだ。
もちろんなゆたは捕獲済みである。なお、図鑑目当てで捕らえただけで育成はしていない。
ともあれ、このスノウフェアリーが自分たちにモンスター召喚の方法を教え、ここへ導いたのは間違いない。
……であれば。
「メロ、とか言ったわね。ひょっとして、あなたがわたしたちをこの世界に呼び寄せたの?」
ニコニコと笑っているメロに、ずいと一歩踏み出して訊ねる。
「どういうこと? ここはブレモンの世界ってこと? どうして、ゲームの世界の中にわたしたちが入っちゃったの?
何が狙いなの? ここから出るにはどうすればいいの? あなたはわたしたちを元の世界に帰せるの?
この辺に村とか街とか、安全に寝泊りできる場所はない? このままデイリーログインボーナス継続切れちゃわない?
運営に問い合わせた方がいい? あとこの辺でレアモンスター狩れる狩場とかない?」
真一と再会したときと同じマシンガントークだ。息つく暇もなく、一気にメロへとまくし立てる。
最後のあたりに変な質問が混ざっているのはご愛敬である。
「さあ、わたしの質問に答えてちょうだい。こっちはさっさと帰らなくちゃ、夕飯の支度とか色々あるんだから。
本当のことを隠したり、ウソを言ったりはしないでね。もし、そんなことをしたら――」
そう言って、胸の前で拳をボキボキと鳴らしてみせる。
「――狩る。わよ?」
本気だ。もしもメロが自分たちにとって有害な存在であるなら、躊躇いなく潰す気でいる。
ポヨリンもぽよんぽよんと跳ねながら、きゅぴーん! と剣呑に目を輝かせている。
「さ。ってことで、あなたの知ってること。一切合財話して?」
九割脅しの文言を告げながら、なゆたはにっこり笑って小首を傾げた。
【脅迫という名の情報収集】
- 76 :
- 荒野を冷ややかに照らす青白い月の下で、濡れた布を引き裂くような嬌声が耳朶を打つ。
叫びの主は、巨大な鶏の頭とトカゲの体躯をもった禍々しい造形の生物。
荒野を徘徊しては不運な旅人をその毒爪で縊りR危険なモンスター、『コカトリス』だ。
その声帯から発せられる雄叫びは獲物を狩り殺した快哉ではなく、断末魔に近かった。
「うるせえよ。時間考えろ時間」
普通に耳障りだったので俺はトドメを刺した。
といっても手を下すのは俺じゃなく、傍で長弓に矢を番える俺の"しもべ"だ。
革製の鎧で全身を武装した鎧武者にも見えるが、実際のところ武者ではなく鎧そのもの。
鎧に怨霊が憑依して生まれた生ける鎧と呼ばれる魔物の中でも、最低級に位置する『リビングレザーアーマー』だ。
革鎧が撃ち放つ矢によって既に無数の貫傷を作っていたコカトリスは、最後の一撃を頭部に受けて絶命した。
ピコン!と場違いな電子音と共に俺の手の中にあるスマホにリザルトが表示される。
EXPバーを微動させる僅かな経験値と、インベントリに入るドロップアイテムは――
「コカトリスの肉。ちっ、またノーマル素材かよ」
一回レアドロの霜降り肉をゲットして焼いて喰ったときの感動が忘れられずに、俺はコカトリスを狩り続けていた。
コカトリスは毒持ちの厄介なモンスターだが、安定して狩れる小ワザってのが存在する。
代表的なのが今俺がやってるような、奴の攻撃の届かない位置から一方的に遠距離攻撃しまくるいわゆる高台ハメだ。
荒野に点在する破壊された建物の上に安地を発見して以来、俺はここを拠点として不毛なモンスター狩りに励んでいた。
なぜかと言えば、食料が全然見つからなかったからである。
「おら、料理しとけヤマシタ」
ドロップしたての肉をインベントリから出して、指示を待っていたヤマシタ(革鎧のニックネーム)に放る。
ヤマシタは無言でそれを受け取ると、鎧の中からナイフを取り出して黙々と調理を開始した。
リビングレザーアーマーは戦闘力こそ低い低級モンスターだが、革鎧が装備可能なあらゆる職業のスキルを使うことができる。
狩人の持つ野外調理のスキルは俺の乏しい食糧事情にいくばくかの潤いをもたらした。
下処理を施した肉を一口サイズに切り分けて、一列に串を通して焚き火で炙るだけの野趣溢れる簡単調理。
荒野の植物モンスター、デザートローズの触手は毒棘さえ取り除けば強靭な串として使える。
肉の脂が溶けてブジュブジュいい出したら、その辺で拾った岩塩を削って味付けして『コカトリスの焼き鳥』は完成だ。
一口齧れば溜息が出る。
硬くて筋張ってて変な臭みがある上に全体的に生焼けと生ゴミみたいな焼き鳥の味にだ。
クソ不味い……俺料理とかしたことねーから気づかなかったけど、臭み消しってすげえ大事だったんだな……。
ネギかショウガみたいな香味野菜か、胡椒とかの香辛料が欲しい。
胡椒一粒が金一粒だった時代の価値観が今ならよく分かる。
こんな食生活続けてたら遠からず病気になっちまうよ。
「何やってんだろうな俺……」
今度は自分の状況の過酷さに溜息が出た。
いつものように会社のトイレでサボりつつ、ブレモンの公式フォーラムで信者相手にレスバトルを繰り広げていた俺は、
気付けばケツ丸出しで荒野のど真ん中に放り出されていた。
その時立ててたスレッドのタイトルまで鮮明に思い出せる。
『ブレモンはクソ、育成要素は死んでて課金スペルを買って殴るだけのゲーム』、確かこんなスレタイだったはずだ。
10分くらい気合入れて書いた長文を投稿しようと送信ボタンを押した瞬間、不意にトイレが真っ暗になった。
座ってた便座の感覚がなくなって、代わりに砂が尻に触れて変な声が出た。
今思い返しても、スレッド立てる前にケツ拭いておいたのが不幸中の幸いと言うほかない……。
- 77 :
- これが白昼夢や精神的な疾患の類でないのなら、俺がウンコしてる間に核戦争でも起きて全てが滅んだか。
あるいは度重なる荒らし行為にキレたブレモンの運営が超法規的措置で俺を秘密裏に拉致したかのどっちかだ。
まさかゲームの中に取り込まれたなんて、そんな一昔前のライトノベルみてーな展開はねえだろう。
荒野の中でブレモンのモンスターに襲われて、変な声に導かれるままにサモンに成功するまでは、そう思ってた。
認めねばなるまい。
俺は今、何の因果かソーシャルゲーム『ブレイブ&モンスターズ』の世界の中にいる。
夢なら別に覚めなくても良い。クソつまらん現実世界の不毛な伝票整理で一生を終えるよりかは楽しい夢だ。
ただ、この世界に向き合うスタンスを決めた俺に、もうひとつ厄介な問題が立ちはだかった。
腹が減った。
そして、メシがねえ。
RPGでもあるこのゲームには食料系のアイテムが存在こそするが、実情はほとんどフレーバー要素に近い。
スマホの向こう側で俺の代わりに動き回るキャラクターたちが、空腹で死ぬことはない。
まあ多分ゲームの演出上不要なシーンはカットしてるだけで、本当はなんかしら食ってんだろうけど、システムに反映はされない。
食料は不毛なお使いクエストのお届け物とか、一時的なステータス効果をもたらす、実用度の低いアイテム群だ。
貴重なインベントリ枠を食料系に割くプレイヤーはほとんどいなくて、俺もその例に漏れなかった。
僅かに持ってたパン(HP微上昇効果。味は雑巾みたいだった)は早々に食い切っちまって、
この草もろくに生えてないような荒野には食べられる野菜や木の実の類も望めない。
モンスターに食い殺されるよりも餓死の方が心配になるって始末だ。
早々に訪れた食糧危機に、俺が選んだ生きる道は……モンスターを狩って喰う、原始人みたいな狩猟生活だった。
『モンスターの肉』系アイテムは主に換金素材としてそこそこの確率でドロップする。
おそらくは魔物を狩って路銀に変えて旅をする、冒険者のロールプレイとして実装されたアイテムだろう。
そのままじゃ喰えたもんじゃないが、煮るなり焼くなりすれば当面の栄養源にはなるようだった。
幸い水は十分に確保できている。
エンカウント率を下げるアイテム『聖水』は実用度が高く、俺も常に限界までインベントリに詰め込んでいた。
なんか変な塩味がついてて明らか飲用に適した味じゃなかったが、まともな湧き水もない荒野で贅沢は言えねえ。
とまれかくまれ、今の主食はコカトリスの肉。いい加減腹壊すんじゃねえかとビクビクしている。
……どっかに街の一つもありゃいいんだが。
安全を確保した上で見て回れる範囲を検分した結果、ここがブレモン世界で言うところの『赭色の荒野』だってことは分かった。
だが中級者以上推奨のこのフィールドに、カジュアル勢の俺はあまり土地勘がない。
どっちに向かえば都市にたどり着けるかもわからない。そもそもNPCとか居るのかこの世界?
道標になりそうなのは、荒野を横断するようにずっと先まで続いているレールだった。
……地道に歩くしかないか。
どの道ここにずっといたってジリ貧になるばかりだ。
『赭色の荒野』に出現するコモン敵くらいなら俺でも狩れるが、確かここには時間帯限定でPOPするレア敵がいた。
上級者でも苦戦するボス級の魔物に遭遇した時、今度こそ俺が生き延びられる保証もない。
とっとと安全地帯を見つけてこの先のことを考えよう。
串を綺麗に洗ってインベントリに納めた俺は、レールの向こうに見える巨大な建造物へ向かって歩き始めた。
物言わぬ死者の鎧、リビングレザーアーマーと共に。
【とりあえず導入をば。そっちの情報共有が終わったくらいのタイミングで乱入したいと思ってます
明神は基本ゲス野郎なので敵対します】
- 78 :
- 【それから質問なんですが、真ちゃんとなゆたちゃんのゲーム上のプレイヤーネームを教えてほしいです。
明神はテンプレの通りです】
- 79 :
- 名前:五穀 みのり(プレイヤーネーム:五穀豊穣)
年齢:18歳
性別:女
身長:165cm
体重:50kg(四捨五入)
スリーサイズ:87−60−88
種族:人間
職業:農業
性格:ドライ
特技:農作業、トラクターの運転
容姿の特徴・風貌:おっとりのした表情、茶髪ギブソンタック、ツナギの作業服と長靴
簡単なキャラ解説:
とある田舎の専業農家の後継ぎ娘、農業高校卒業後、家業を継ぐ
農作業で鍛えられた肉体は頑強にして壮健、持久力に優れる
代々続く農家であり己の立場に納得もしているが、周囲が青春を謳歌している中で男に縁のない農作業を続ける不満もあり
手間のかかるギブソンタックの髪型を保っているのはその反発心の表れ
大きな農家であり、かなり裕福
お金には困っていないが農作業は過酷であり、むしろ使い道がないのでどんどんブレモン!への課金量が増える
ただし農作業の間に遊ぶ程度なので、プレイングやコンボ構築の試行錯誤の為の時間は圧倒的に少ない。
故にレアカードが揃い戦闘力は高くともランキングに乗ってくることはなかった
「欲しいカード?出るまで買えばよろしいですやろ?
出現率1%って事は100回買えば必ず手に入るのであるわけやし、運任せよりわかりやすくてよっぽどええやないの」
【パートナーモンスター】
ニックネーム:イシュタル
モンスター名:スケアクロウ
特技・能力:防御能力が高く、回復・強化に優れる
150センチほどの案山子
顔はカボチャに目鼻を書き込み、眼深にとんがり帽子を被っている
案山子で所詮は藁の体で機動力や防御力は低い
しかし探知能力が高く、HPや回復力が高い
ダメージ反射を主体とするバインドコンボに適しているため拠点防衛には無類の強さを誇る
簡単なキャラ解説:
スマホ向けアンチウィルスソフト会社とのコラボ企画で、グッズフルコンプリート(総額15万円)&アンチウイルス契約者へのプレゼントキャンペーンで契約者に送られる特典モンスター
聖域(田畑)の守護者と銘打たれているが、石油王のコレクターズアイテムの象徴的な存在として見られている
ニックネームイシュタルはメソポタミアの豊穣神から
【使用デッキ】
・スペルカード
「肥沃なる氾濫(ポロロッカ)」×2 ……フィールド上を洪水が押し流し、与えたダメージ分回復
「灰燼豊土(ヤキハタ)」×2 ……フィールド上を業火が包み、与えたダメージ分回復
「浄化(ピュリフィケーション)」×3 ……対象の状態異常を治す。
「高回復(ハイヒーリング)」×2 ……対象の傷を癒やす。
「地脈同化(レイライアクセス)」×1 ……地脈の力を吸い上げ継続回復
「威嚇結界(フィアプレッシャー)」×1 ……範囲内の敵の攻撃力をダウンさせる
「来春の種籾(リボーンシード)」×1 ……致命のダメージを負ってもHP1残して復活できる
・ユニットカード
「雨乞いの儀式(ライテイライライ)」×2 ……雨を降らせてフィールドを水属性に変化させる
「太陽の恵み(テルテルツルシ)」×2 ……太陽を照らせてフィールドを火属性に変化させる
「荊の城(スリーピングビューティー)」×1……荊の城を出現させる。荊に触れたものは睡眠状態に
「防風林(グレートプレーンズ)」×1……林立する樹を出現させる。風属性や衝撃波を軽減
「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」×1 ……5体の藁人形を出現させる。身代わりとなり攻撃を受け、内1体は他の藁人形を受けた累積ダメージを反射する
「収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」×1 ……攻撃力0の鎌。累積ダメージがそのまま攻撃力になる
- 80 :
- 色々と質問させてもらい、ようやくキャラ完成
まだわかっていない部分が多いので、要説明部分や修正点ありましたらどうぞ
導入はまたその後で
- 81 :
- >「メロ、とか言ったわね。ひょっとして、あなたがわたしたちをこの世界に呼び寄せたの?」
>「どういうこと? ここはブレモンの世界ってこと? どうして、ゲームの世界の中にわたしたちが入っちゃったの?
何が狙いなの? ここから出るにはどうすればいいの? あなたはわたしたちを元の世界に帰せるの?
この辺に村とか街とか、安全に寝泊りできる場所はない? このままデイリーログインボーナス継続切れちゃわない?
運営に問い合わせた方がいい? あとこの辺でレアモンスター狩れる狩場とかない?」
>「さ。ってことで、あなたの知ってること。一切合財話して?」
『ちょ、ちょ、ちょっ……! やだなぁ、もう。こんなに愛らしいボクを脅かさないでよ〜。
そんな風に怖い顔してたら、せっかくの美人さんが台無しだよ?』
相対していきなり脅しに掛かってきたなゆたの形相に、流石のメロも笑顔を引き攣らせながら、胸の前でブンブンと両手を振る。
しかし、なゆたは説教をする時など、たまにこういった様子になることは知っていたが、この剣幕には真一も若干引いていた。
中学時代は「テメーどこ中だよ?」が口癖だった男がたじろぐのだから、中々のヤンキーっぷりである。
「おいおい、いきなりビビらせ過ぎだろ……
だけど、なゆが聞いたことを知りたいってのは俺も同じだ。わざわざ呼び付けたくらいなんだから、教えてくれる気はあるんだろうな?」
真一はなゆたを宥めつつも、メロに対しての質問は後押しする。
その問いを聞いて、メロは「こほん」と芝居じみた咳払いをしてから、ぷらぷらと泳がせていた両足を組み直す。
『もちろん。キミたちに会うために、わざわざこんな辺境の場所まで来たんだからね。
と言っても、ボクはただの使いっ走りだから、何もかも答えられるというわけではないんだけれど』
そんな前置きをしたあと、更にメロはこう続ける。
『もう気付いてるかとは思うけど、ここはキミたちが住んでいたそれとは別の世界――“アルフヘイム”なんだ。
そりゃ大昔は神様同士で戦ったり、様々な国が出来たり滅んだり、色んなことがあったらしいけどね。
ここ数百年くらいは特に大きな戦争もなくて、皆が平和に暮らしていたんだよ』
アルフヘイムとは「ブレイブ&モンスターズ!」の主な舞台となっている異世界の総称だ。
ちなみに作中では魔界と呼ばれている“ニヴルヘイム”と表裏一体の構造になっており、両者の神々が大喧嘩をした結果、世界がそういう形に区切られたという歴史設定がある。
『だけど、最近“とある異変”が起こって、この世界の生態系とか、国境なんかが滅茶苦茶になっちゃってさ。
ご覧の通りボクたちは何百年も平和ボケしてたから、自分らだけで戦うこともできなくて、にっちもさっちも行かなくなっちゃったんだよ』
一旦メロは言葉を区切り、両手をポンと打ってみせる。
『そ・こ・で! ボクたちの王様が、キミたちに目を付けたんだよ!
ボクも詳しいことは知らないんだけど、キミらの世界の住人はその“魔法の板”を使って、モンスターを自在に操る戦いのエキスパートなんだろう?
実際に見てみるまでは半信半疑だったけど、二人の技はもう見事だったよ!
何もないところからパッとモンスターを召喚して、すごい魔法も使いこなして……そっちの世界では、さぞや魔法技術が発展しているんだろうねぇ』
メロは腕を組みつつ、先程の戦いをしみじみと思い出す。
だが、そこでなゆたの質問とは、若干の食い違いがあることに引っ掛かるだろう。
メロはあくまでも、ゲームという概念のことは知らないのだ。
彼女にとって、ここは異世界アルフヘイム。そしてブレモンのプレイヤーは、モンスターを巧みに操る魔法使い。
それが彼女の認識なのである。
- 82 :
- 『……というわけで、まずキミたちにはこの国の王様に会って欲しいんだけど――って、あれ?』
メロがそこまで話し終えたあと、不意に上空から何か異音が聞こえてきたことに気付く。
ブブブブブ……と、不快な印象を受ける重低音は、徐々にこちらの方へと近付いてきているようだった。
「こりゃ、一体何の音だ? 虫の羽音っぽくも聞こえるけど……」
『あーらら。まったく“蝿の王”とは、つくづくツイてないね。
にしてもこんな果ての地にまで、あんな奴が現れるなんて、これも侵食の影響なのかな……』
メロは何やら不穏なことを呟きつつ、腰掛けていた手摺りからさっと飛び降りて、空中へと舞い上がる。
『ともかく! もうちょっとしたら、この駅に迎えが来る筈だから、そいつに乗って王様まで会いに来てよ。
あと、上にいる“あいつ”は多分襲って来ると思うけど、キミたちみたいな魔法使いならきっと大丈夫!
頑張って、コロっとやっつけちゃってね〜!』
などと極めて無責任なことを言ってのけながら、メロはそのままヒラヒラとどこかへ飛んで行ってしまった。
「お、おい……ちょっと待てって! あいつって一体誰のことだよ!? それに、他にも聞きたいことが――」
『グルルルルルルルッ……!!』
真一はメロを呼び止めようと手を伸ばすが、その瞬間、外で待機させていたグラドが獰猛な唸り声を上げ始める。
そのただならぬ様子に、慌ててホームから身を乗り出してみると、グラドは上空にいる“敵”の姿を見据え牙を向いていた。
そして、その“敵”の正体とは――
「……おいおい、あれはひょっとしてベルゼブブって奴じゃねーか?
かなりレアなモンスターだった筈だけど、何だってこんなところに!」
夜天から襲来する敵は、巨大な蝿の姿をしたモンスター――ベルゼブブだった。
蝿の形はしているものの、中身は上級悪魔であり、レア度に比例してステータスも非常に高い。
しかも厄介なことに、ベルゼブブは自身の周囲に“デスフライ”という蝿型モンスターまでも大量に引き連れていた。
このまま通り過ぎ去ってくれないだろうかという期待も虚しく、無数の蝿たちは既に眼下の獲物を見定めていた。
そして、まるで夜空が落ちてくるかのような勢いで、荒野に向けての急降下を開始する。
「ちっ、やるしかねーってわけか。……上等だ。行くぜ、グラドッ!!」
真一はホームから飛び降り、ポケットから取り出したスマホを握り締める。
それに呼応するかの如く、グラドは両翼を広げて雄叫びを放ち、月下の戦いは火蓋を切って落とされた。
【簡単な舞台説明&序章のボスキャラ登場】
- 83 :
- >>78
【特に捻りもないのですが、真一のプレイヤーネームは「シン」ってことで。
あらためまして、よろしくお願いします!】
>>80
【歓迎します! 修正点なども見当たらないので、そのまま待機お願いします。
ちょっとお待たせしてしまって申し訳ないのですが、とりあえずレス順は「真一」→「なゆた」→「明神」→「みのり」を維持するという形で】
- 84 :
- >>78 明神さん
【よろしくお願いします! 導入で笑わせて頂きました!
なゆたのプレイヤーネームは『モンデンキント』です。
フォーラムやスレではそちら様と幾度となくレスバトルを繰り返した仲かもしれません。
こちらフォーラムやスレでは淡々としたレスをするため、中の人は男性と思われている可能性大。
捏造上等で!】
>>80 みのりさん
【歓迎します! よろしくお願いします。
重課金勢のこちらを上回る廃課金勢ですね……。
絡むのを楽しみにしています!】
>>83 真一さん
【順番、了解しました。できるだけ早めに取りかかろうと思います。
かなり好き勝手に設定など書いてしまいましたが、もしご都合悪いようでしたらスルーか修正をよろしくお願いします】
- 85 :
- モンスターを仲間に出来る条件ってどんなんなの?
カードに封じ込めたり屈服させたりすんの?
- 86 :
- >>79
【×特技・能力:防御能力が高く、回復・強化に優れる
○特技・能力:耐久力が高く、回復・強化に優れる
あれこれ書き直してたので、修正忘れしてました
藁なので防御力・回避能力が低くどんどん攻撃食らうけど、HPと回復力が高いので倒れにくいという事で
>>83
【ありがとうございます。順番の件了解しました】
>>84
【よろしくよしなに〜
廃課金ではありますが、プレイ時間の短さもありフォーラムやスレは基本参戦しないし見る時間もないのでブレモン!の知識量では圧倒されそうですわ〜
どういった接触になるか、今から楽しみです】
- 87 :
- >>85
【それも劇中で明かそうかと思っていたのですが、基本的にはポケモンみたいなイメージですね。
野良モンスターのHPを死なない程度に削った上で、〈捕獲(キャッチ)〉というコマンドを使うと一定確率でゲットできます。
その他、ガチャを回したり、イベントなどの報酬として入手できることもあります】
- 88 :
- ここ死んだか
- 89 :
- >>87
回答ありがとー
- 90 :
- >おいおい、いきなりビビらせ過ぎだろ……
「……だって」
こちらを窘めてくる真一の言葉に、ぷう、と頬を膨らませる。
アニメやマンガの登場人物のように、どことも知れない場所の誰ともわからない者を無条件に信じることなんてできない。
それに、相手は自分たちを問答無用でこの異世界に引きずり込んだかもしれない輩だ。
疑ってかかることは大事である。
床にポヨリンを下ろし、いつでもメロを狩りにいけるポジションをキープしながら、彼女の話を聞く。
>もう気付いてるかとは思うけど、ここはキミたちが住んでいたそれとは別の世界――“アルフヘイム”なんだ。
「……アルフヘイム……。やっぱり、ここはブレモンの世界ってわけね」
メロの告げた言葉は、自分にとっても聞き覚えのあるもの。
光の世界アルフヘイムと、闇の世界ニヴルヘイム。
かつて和合していたふたつの世界は光の神々と闇の神々の戦いによって分断され、それが今なお続いているという。
その設定はゲームを最初にDLするとき、『Now Downloading……』の一文と共に画面に表示されるので、皆が知っているだろう。
しかし、そこからが問題だった。
>だけど、最近“とある異変”が起こって、この世界の生態系とか、国境なんかが滅茶苦茶になっちゃってさ。
ご覧の通りボクたちは何百年も平和ボケしてたから、自分らだけで戦うこともできなくて、にっちもさっちも行かなくなっちゃったんだよ
「新しいイベントってことね? いいじゃない。
最近はストーリーモードも粗方やり尽くして、素材集め周回しかやることなかったのよね。
でも、そんなイベントを開催するなんて告知、公式にあったかしら? 毎日チェックしてるのに……」
運営め……これは詫び石案件だわ……などとブツブツ言っている。
いまだにゲームだと思い込んでいるなゆたである。
>そ・こ・で! ボクたちの王様が、キミたちに目を付けたんだよ!
ボクも詳しいことは知らないんだけど、キミらの世界の住人はその“魔法の板”を使って、モンスターを自在に操る戦いのエキスパートなんだろう?
「……ふぅん……あなたたちの王さまって言うと――」
ブレモンに精通しており、有志による攻略Wikiの編集も手がけているなゆたである。当然、彼女らの王についても知識がある。
その王が、自分たちをこの世界へいざなった張本人なのだという。
とは言うものの、もちろん言われたことを鵜呑みにはしない。そもそも王に人をゲームの世界へいざなう力などないはずだ。
話の腰を折るのもなんなので、そういう設定なのねと自分を納得させる。
>実際に見てみるまでは半信半疑だったけど、二人の技はもう見事だったよ!
何もないところからパッとモンスターを召喚して、すごい魔法も使いこなして……そっちの世界では、さぞや魔法技術が発展しているんだろうねぇ
「あー……うん、まぁ……。そういうことになる……のかな? アハハ……」
わたしたちはこのゲームのプレイヤーで、あなたたちはゲームキャラ。なんて、言っても通じないに違いあるまい。
ゲームのキャラクターにツッコミを入れたところで仕方ない。なゆたは曖昧な愛想笑いを浮かべた。
- 91 :
- >……というわけで、まずキミたちにはこの国の王様に会って欲しいんだけど――って、あれ?
「ふむ。そこなら当面の衣食住は確保できそうね……って、結局しばらくは戻れないのかしら。
困るなぁ……明日、生徒会の役員会議があるのに……。え、なに?」
後頭部をぽりぽり掻いて、仕方なさそうに眉をしかめる。
と、不意に聞こえてきた耳障りな異音に、なゆたはきょろきょろと辺りを見回した。
それはよく夏場に耳にする、眠っていると耳元に飛んでくる蚊の羽音を、数百倍に増幅させたような――
>あーらら。まったく“蝿の王”とは、つくづくツイてないね。
にしてもこんな果ての地にまで、あんな奴が現れるなんて、これも侵食の影響なのかな……
>ともかく! もうちょっとしたら、この駅に迎えが来る筈だから、そいつに乗って王様まで会いに来てよ。
あと、上にいる“あいつ”は多分襲って来ると思うけど、キミたちみたいな魔法使いならきっと大丈夫!
頑張って、コロっとやっつけちゃってね〜!
「ち、ちょっとぉ! 待ちなさいよ、そんなこと勝手に――!」
こちらが何か言う暇もなく、メロはさっさと飛んでいってしまった。無責任なことこの上ない。
駅の外にいるグラドがうなり声を上げているのが聞こえる。何者かが近づいているのだ。
そして、月光の差し込む廃墟の崩れた天井から視界に飛び込んできたのは。
ちょっとした乗用車くらいはありそうな、巨大なハエのモンスターだった。
>……おいおい、あれはひょっとしてベルゼブブって奴じゃねーか?
かなりレアなモンスターだった筈だけど、何だってこんなところに!
「ベ……、ベルゼブブぅ!? ちょっ……冗談でしょ!?」
真一の言葉に驚愕する。
ベルゼブブ。ニヴルヘイム産の上級悪魔と呼ばれるレアモンスターの一体だ。
巨体に似合わぬ速度で自在に空を飛び回り、体当たりや酸の唾液、上級スペルなどで攻撃を仕掛けてくる難敵である。
デスフライという自らの眷属を常に従え、デスフライの群れを縦横無尽に操っての戦闘も得意とする。
生命力、攻撃力、防御力もきわめて高い。間違いなく初心者お断りのモンスターである。
倒すと稀に風属性モンスターの強化レア素材『蝿王の翅』をドロップすることがある。
「よりにもよって……! 厄介な相手ね!」
ポヨリンを自分の前方に配置し、身構える。
確かに、このエリアでは夜になると時間限定でベルゼブブが出現するというのは有名な話だ。
しかし、どう考えても今はこちらに分が悪い。
倒せない相手ではないが、ポヨリンとベルゼブブでは水と風、属性不利である。
今までもベルゼブブを狩る際、なゆたはフレンドとパーティーを組んで戦っていた。
しかし――今の仲間は真一しかいない。
真一のグラドとベルゼブブでは火と風でグラド有利だが、決定的なレベルの差というものがある。
初心者で遮二無二突っ込むことしか出来ない真一では、返り討ちに遭うのがオチだ。
- 92 :
- 「真ちゃん! ここは無理しないで、この駅の壁を盾にしながら戦って!
まずはデスフライから片付けて、徐々にベルゼブブの体力を――」
>ちっ、やるしかねーってわけか。……上等だ。行くぜ、グラドッ!!
「っておーいっ!? 人の話ィ!!」
こちらの話を聞きもせずに突っ走っていってしまった真一に突っ込む。
「ああもう! この……単細胞おばかーっ!!」
苛立ち紛れに叫ぶ。けれど、真一が直情径行なのは今に始まったことではない。
それこそ物心つく前から、自分は真一のそんな猪武者な行動の尻拭いをしてきたのだ。
今更何を言ったところで始まらない。と思えば、なゆたはすぐにスマホの液晶画面をタップした。
「誰でもいい! 誰か……誰か! 近くにいて!!」
なゆたが開いたのは、ポヨリンの戦闘コマンドでもスペルカードデッキでもない。
開いたのは『フレンド一覧』。
「ブレイブ&モンスターズ!」は戦闘の際、ソロで戦うかパーティーで戦うかを選択できる。
パーティーで戦う場合、GPS機能を使い自分の近くにいる他のプレイヤーを招待し、一緒に戦えるのだ。
一度共闘した相手にはフレンド申請することができ、互いの位置情報などを把握することもできる。
「――いた!!」
フレンド一覧の画面に、数人のプレイヤー名が表示される。
半分はかつて共闘し、フレンド申請して承認された知り合いのプレイヤー。
もう半分は見知らぬ他人、たまたまこの近くにいるらしい野良。
なんの戦術もなく突っ込んでいく真一とふたりでは、敗色は濃厚である。ポヨリンは無事でも、グラドは無事では済むまい。
この状況を打破するには、フレンドの力を借りるしかない。
「お願い――、応えて! わたしたちと一緒に戦って!」
建物の外では、グラドが大量のデスフライと、そしてその首魁ベルゼブブと熾烈な戦いを繰り広げている。
が、多勢に無勢だ。レベル上げの充分でないグラドがそう長持ちするとは思えない。
グラドが力尽きる前に、――誰か!
なゆたは祈るような思いで、フレンドのプレイヤー名をタップした。
【劣勢と見てフレンド募集。既に申請済みでも野良でもOKです】
- 93 :
- 全属性と相関図よろ
- 94 :
- 『ブレモン』はクソゲーだ。
強いモンスターを手に入れようと思ったら重課金かリセマラは必須だし、
変に流行りに乗ったGPS連動機能のせいで都心と地方の在住者で入手できるゲーム内資源に格差がある。
丹精込めて育てた歴戦のパートナーよりもガキの小遣いで買える強力スペルの方が大抵の場合強いし、
肝心のレアモンスターはガチ勢どものマウントの取り合いの種にしかなってねえ。
なにより――
「俺のような善良プレイヤーをこんな意味不明世界に放り出しやがる……」
砂漠に棲息する大型モンスター、"初心者殺し"の異名をとるサンドワームが亜空間の穴に引きずり込まれていくのを眺めながら、
俺は誰に聞かせるでもなく吐き捨てた。いやマジで危なかった。思わずカード使っちまった。
『奈落開孔(アビスクルセイド)』。亜空間を開き、近付く者を区別なく飲み込む強力なユニットだ。
マジで区別なく吸い込まれてくから使い所を誤ると自分もやべえ諸刃の剣だが、サンドワームの巨体が良い遮蔽になった。
こんなところで貴重なカードを使うハメになるのは想定外だった。
この世界に降り立って間もない頃にもう一枚、『工業油脂』のスペルを使ってる。
デッキを確認してみたら、まだ『工業油脂』のリキャストは出来てなくて、使用不可のマークが付いたままだった。
ブレモンの設定通りだとすれば、カードのリキャストにはリアル時間で丸一日かかる。
安全なねぐらも確保できてない今の状況でカードを使い切るのは即ち死を意味していた。
「こういう不親切なところもクソゲーだっつうんだよなぁ、ヤマシタ」
俺のあとを無言で追従する革鎧は、やっぱり何も答えやしない。
俺はこの件について半年くらい前からフォーラムで改善案を提示してんだけど、公式の返答は『検討中』の一辺倒。
論戦を挑んできた信者達いわく、こういう部分に戦略性を見出してこそのゲーマーらしいけど、
カードの使用制限にリアル時間を使うってシステムは露骨にゲーム寿命を水増ししようとする魂胆が見え見えだよなあ?
この制限のせいでレベリングがいつまで経っても捗らず、パートナー単体で戦える狩場を廃人共が占領し始める始末だ。
リアルの方で経験値効率の良い敵の湧き場に廃人が溜まってんの見たことあるけど、炊き出し会場にしか見えねーよアレ。
おっと、話が逸れまくってるうちに目的地が近づいてきた。
果てしなく続くレールの先に、巨大な構造物が聳え立っていた。
レールがその中に引き込まれてるから多分これは駅なんだろう。
比較対象のない荒涼とした原野の風景のせいで距離感狂ってたけど、こりゃマジででけえ建物だ。
東京駅みたいな瀟洒なデザインの洋館。まさにファンタジー世界の駅って感じだった。
……ただ、このクソでかい駅にも、人の気配はない。
生活感のかけらも残ってない、あちこち風化が始まってる、こいつは形容しようもない『廃墟』だった。
荒野マップにはよくあるフレーバー建築だ。雨風凌ぐ以上の居住性は期待できそうにもない。
いやマジでどうすんだコレ。このままだと俺こんな色気もねー場所で干からびて死ぬの?
思わず頭を抱えた俺の耳に、猛獣の唸り声みたいな低い音が聞こえてきた。
「ヤマシタ!」
咄嗟に革鎧に俺を庇わせる。だが刻一刻と大きくなる音に反して俺の目には何も移らない。
いかにも洋風建築って感じの石畳の上で、荒野の砂粒が震えていた。
「反響……してんのか?ってことはこの音は、駅の中からか……!」
危機との対面を避けられたことで俺の頭もようやく回転してきた。
唸り声に思えたこの音。実際多分これ、羽音だ。クソでけえハエがぶんぶん飛び回ってるみたいな音。
その羽音の主に、俺は思い当たりがあった。
荒野に時間限定でPOPするレアモンスター、"蝿の王"『ベルゼブブ』。
そいつが駅の中で湧いているんだ。
- 95 :
- ここで俺の脳裏に二択の天秤が出現する。
つまりは逃げるか、戦うかだ。
ぶっちゃけヤマシタのステータスじゃあのクラスのモンスターには太刀打ちできねえ。
カードを上手く使えばやれないこともないだろうが、多分総力戦になる。デッキは空っぽになるだろう。
この状況でカードを使い切っちまうのはその後のリスクを考えるとかなりアホな選択だ。
そしてベルゼブブが俺の存在をまだ認識していない以上、そっとここを離れれば逃げ切るのは容易い。
――だけど、ベルゼブブ、超欲しい!!
カジュアル勢にはなかなかお目にかかれないクソレアモンスターだ。
中級者以上しか彷徨けないこの荒野で、しかもごく僅かな時間にランダムな範囲にポップするレイドボス。
必然的に時間の有り余ってる廃人が、しかも徒党を組んで連携を取らなけりゃ戦うこともできない仕様だ。
その希少性から、ヤフオクなりメルカリなりで売っぱらえばリアルマネーでも10万は下らない金銭的な価値もある。
そんな垂涎級のモンスターが、今、目の前に居るってのに……逃げる理由がゲーマーにあるか?
ねえよ。ねえだろ。ねえっつってんだろ!!!
一応、一応だが勝算もある。
この状況はスマホの中の画一化されたシステムとは違う。
俺が荒野でコカトリスを高台ハメできたように、アクションゲーじみた『地形』の概念が存在する。
遮蔽物をつかって隠れつつ遠距離から弓でチクチク攻撃し続ければ、勝てるんじゃねえの?
この際多少カードを切ったって良い。ベルゼブブにはそれだけの価値がある。
奴を……捕獲する!
そのとき、俺のスマホがブルった。
ベルゼブブに気取られないようマナーモードにしてたけど、こいつはブレモンアプリの通知音だ。
なんだこりゃ……フレンド申請?
ブレモンの対人要素はプレイヤー間でのバトルの他に、ベルゼブブのようなレイド級を相手にする際の共闘というシステムがある。
まあ俺フレンドとかいねーから詳しく知らねえんだけどな。
共闘するフレンドはいないが、俺のフレンドリストには名前がいっぱいだ。
フレンドになると、相手がどこにいるのかとか、どんなクエストの最中なのかが一目で分かる。
つまり、いつでも相手のところへ行って対戦を申し込めるようになってるわけだ。
下手にフレンドになっちまうと、四六時中対戦を申し込まれて非常にめんどくさい事態になることもある。
故に俺のような敵の多いプレイヤーにとって、フレンドリストとは敵対リストに等しい。
そしてフレンド申請という行為は――宣戦布告なのだ。
「上等だ……!でもちょっと待っててね今忙しいから」
俺は申請を送ってきた相手の名前も見ずに承認して、そのままマップを表示した。
革鎧を引き連れて、駅の構内を疾走する。
リビングレザーアーマーに金属部品が使われてなかったのは僥倖と言うほかねえ。
板金鎧はガチャガチャうっせーからな。
……あれ、待てよ。
今のフレンド申請、どこから送られてきた?
フォーラムでレスバした相手からゲーム内で申請送られてくることなんざ日常茶飯事だが、そもそもここは圏外だ。
外界――現実世界(?)から申請が送られてくるなんてことはあり得ない。
いやあり得ないとか言い出したらこの状況がそもそもあり得ねーんだけどそれは置いといて。
「まさか……」
そのまさかが、羽音の源まで辿り着いた俺の目に実証として飛び込んできた。
天井が砕け、夜空の見える駅のホーム。上空に飛び交う無数の眷属と、王者とばかりに君臨する蝿の王ベルゼブブ。
その複眼が敵対の視線を送る先に、二つの人影があった。
- 96 :
- 男と女。同じくらいの年頃の、似たようなデザインの制服を着た……多分高校生だろう。
女子高生と男子高校生が、それぞれスマホを手に、パートナーと共にベルゼブブと対峙していた。
この絵面を見てこいつらがこの世界の原住民だと結びつける間抜けはいないだろう。
「いたのか……俺の他にも、この世界に放り出されたプレイヤーが……!」
- 97 :
- その時俺の胸に過ぎった感情は、ようやう人を見つけた安堵なんかじゃあなかった。
――先を越された!
奴らがいつからこの世界に居るのか知らねーが、ベルゼブブと既に交戦を開始しちまっている。
やめろ、そいつは俺のもんだ。
ヤマシタに高校生たちへ弓を引かせようとして、どうにか思いとどまった。
三竦みになるのは悪手だ。そもそも連中は二人、俺は一人、数の上でも形勢は不利。
このままベルゼブブと敵対しつつ足を引っ張り合っても良くて双方共倒れ、悪けりゃ俺だけがぶっ殺されるだけだ。
何より、駅のホームはだだっ広い空間になっていて身を隠せるような遮蔽物がない。
これじゃハメ殺しも出来やしねえ。
ここは……一時的に高校生共に味方をしよう。
共闘してベルゼブブの体力が十分に減れば、俺が抜け駆けして奴を捕獲する。
そして戦いの中で連中の手札を観察し、闇討ちの手順を整える。
なんなら捕まえたてほやほやのベルゼブブでフルボッコにしてやるぜ。
「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
俺はいかにも高校生たちの加勢として馳せ参じた善良なプレイヤーを装って声をかけた。
まずは信用を勝ち取る。そのためにはこっちも身銭を切ってやらねえとな。
「デスフライが残っているうちはベルゼブブに防御上昇のバフが付く!先に眷属から落とすんだ!俺が隙を作ろう!」
スマホをたぐり、デッキから一枚のスペルカードを選択。
貴重な貴重な一枚だ。うまく機能してくれよ……。
「『工業油脂(クラフターズワックス)』――プレイ!」
スペルの効果が発動し、デスフライ達のはるか上空から、大量の液体が雨となって降り注ぐ。
強い粘性を持ったワックスだ。薄羽によって飛行するデスフライ達がこれを浴びれば、羽を動かせなくなり地に落ちる。
クソハエどものクソ鬱陶しい機動性が大幅に落ちるはずだ。
そして既にデスフライ達と交戦しているあのドラゴンの主ならピンと来るだろう。
降り注ぐワックスが、引火性の高い――『油』であることに。
【ベルゼブブ戦に乱入、スペルを使って油を降らせて支援】
- 98 :
- 【真ちゃん、なゆたちゃん、みのりさん、改めてよろしくおねがいします】
【フレンド申請を受けましたが、今後やりたいことの為にモンデンキント氏の名前までは確認してません。
ふつーにブレモン世界に巻き込まれた哀れな一般プレイヤーだと思って侮ってます】
- 99 :
- 自演やってて楽しいか?
- 100 :
- >>82>>92>>97
>「お願い――、応えて! わたしたちと一緒に戦って!」
なゆたの悲痛な叫びにも似た願いは近くにいたプレイヤーに届いたようだ
様々な思惑は交錯するも、同じくこの世界に転送された者たちがホームに集う
>「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
明神が声をかけた少し後、何かがなゆたの足元をぽんぽんと叩いていることに気付くだろう。
見れば30センチほどの藁人形が足元にまとわりついている
「はぁ〜い、こっちもいてるよ〜」
藁人形から発せられた声と同時に背後から肩に手をかけられる。
振り向けば五穀みのりが笑みを讃えて手を上げ挨拶をするだろう。
穏やかな表情としっかり纏められたギブソンダックの髪
上着部分をはだけ腰の部分で結んだツナギと黒いタンクトップであらわになる上半身のライン
そして長靴というどことなく場違いな格好ではあるが、各々が事情に関係なくこの世界に送り込まれたという事を表していた
「初めまして〜。2.3回やけど共闘したことのある五穀豊穣こと五穀みのりよ〜よろしくねぇ。
それにしても、スライムつこてトッププレイヤー張ってはるモンデキントさんがこんなかわいらしい女の子とは驚きやわ〜」
現在の状況を把握していないかのような和やかな挨拶とともに、自身の体によじ登りまとわりつく藁人形を指して、先ほどの種明かしをする。
「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」で呼び出される五体の藁人形はダメージ計算がリンクし、累積ダメージとして蓄えられる。
ゲームデータではそれだけなのだが、こちらの世界ではそのリンクが他にも適用されないだろうかとやってみたらトランシーバーのような機能も果たしたという事だった。
地形を利用した戦術然り、ゲームの設定やフレーバーに実際の機能との誤差や利用法による応用の幅が随分と広がっているようであった。
そこまで説明し、ようやくホームへと顔を向ける
「それで、あっちの男の子がモンデキントさんの彼氏さんかしらぁ?
まあ……いうのもあれやけど、結構なアホの子やねえ」
呆れるように苦笑いを浮かべ、肩を竦めて見せる
その意味はなゆたにも伝わるだろう、といより、なゆたが一番身をもって感じているであろうから
飛行する多数の敵を前に自分の身を晒してレッドドラゴンと共に戦っているのだ。
ゲームでは画面の外から指示を出すだけであるが、今は違う。
危険に晒される同じ場所に立っているのだから。
「ほやけどまぁ、アホな子ほどかわええともいうし、しゃぁないわなぁ」
戦う真一を見ながらクスリと笑い、藁人形を一体掴みスマホのように耳に充てた
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