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【ファンタジー】ドラゴンズリング5【TRPG】


1 :2018/01/23 〜 最終レス :2018/05/14
――それは、やがて伝説となる物語。

「エーテリア」と呼ばれるこの異世界では、古来より魔の力が見出され、人と人ならざる者達が、その覇権をかけて終わらない争いを繰り広げていた。
中央大陸に最大版図を誇るのは、強大な軍事力と最新鋭の技術力を持ったヴィルトリア帝国。
西方大陸とその周辺諸島を領土とし、亜人種も含めた、多様な人々が住まうハイランド連邦共和国。
そして未開の暗黒大陸には、魔族が統治するダーマ魔法王国も君臨し、中央への侵攻を目論んで、虎視眈々とその勢力を拡大し続けている。

大国同士の力は拮抗し、数百年にも及ぶ戦乱の時代は未だ終わる気配を見せなかったが、そんな膠着状態を揺るがす重大な事件が発生する。
それは、神話上で語り継がれていた「古竜(エンシェントドラゴン)」の復活であった。
弱き者たちは目覚めた古竜の襲撃に怯え、また強欲な者たちは、その力を我が物にしようと目論み、世界は再び大きく動き始める。

竜が齎すのは破滅か、救済か――或いは変革≠ゥ。
この物語の結末は、まだ誰にも分かりはしない。

ジャンル:ファンタジー冒険もの
コンセプト:西洋風ファンタジー世界を舞台にした冒険物語
期間(目安):特になし
GM:なし(NPCは基本的に全員で共有とする。必要に応じて専用NPCの作成も可)
決定リール・変換受け:あり
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり
名無し参加:あり(雑魚敵操作等)
規制時の連絡所:ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1334145425/l50
まとめwiki:ttps://www65.atwiki.jp/dragonsring/pages/1.html
       
新規参加者は常時募集していますので、参加希望の方はまずはこちらのテンプレで自己紹介をお願いします。
(単章のみなどの短期参加も可能)

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:(大体の体格でも可)
種族:
職業:
性格:
能力:
武器:
防具:
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

過去スレ
【TRPG】ドラゴンズリング -第一章-
ttp://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1468391011/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】
ttp://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1483282651/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリングV【TRPG】
ttp://mao.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1487868998/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリング4【TRPG】
ttps://mao.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1501508333/l50

2 :
>「指環の勇者というのは君たちのことか?ラーサ通り総責任者の
 ガレドロ・アルマータより伝言を預かっている。」
>「ガレドロ爺からか!?どんな内容なんだ」

山道を下る道中で、ダーマ魔法王国からの使いが現れた。
各地の反乱はおさまり、王は王宮に戻りエーテル教団の信徒以外の者を無罪としたという。

「ということは……オーカゼ村の者達も無罪ということだな!」

>「村に戻って晩飯だ!洗脳も溶けてるだろうし、村のみんなと宴会でもしようぜ!」

「そうだな! ……ん?」

一件落着を喜びつつも、はて、何か忘れているような――と思うティターニア。
当初はジャンが父親と母親に会うためにここに来たはずなのだが、すっかり初心が忘れ去られているのだった。

「まあ――良いか」

ジャンの両親がどんな人物かは少し見てみたくはあったのでそこは残念だが
出稼ぎに行っていて事件に巻き込まれるのを逃れたということならそれはそれでいいだろう。
尤も、村に行ったら案外しれっと帰ってきているかもしれない。

《そんなに悠長に構えていていいのですか? だってハイランド連邦共和国に宣戦布告って……》

テッラが心配げに語りかけてきた。
そこに誰も突っ込まずにひとまずめでたしめでたしな雰囲気になっているので、突っ込まずにはいられなかったのだろう。

「ああ、あれは他国の首府を殲滅しにいく以上形式上宣戦布告という形を取らざるを得ないのだろう。
実際はハイランドは多数の国の集まりみたいなものだからな。
ここにまで情報が流れて来るぐらいだ、各州から見てすでに首府の異常は自明。
進撃といっても形式上の降伏勧告の後素通しという形になるだろうな。
つまり……援護するから行けという我々に対するゴーサインだ」

そしてシノノメに話を振る。

「シノノメ殿――しっかりいい物を食べて英気を養っておくのだ。
出発したら早速闇の指輪の力を使っての移動中の隠密をお願いすることになる。
いったんアスガルドに立ち寄り情報を得たり装備を整えるとしよう。
ダーマの外に出るのは初めてだな? アスガルドは面白いところだぞ。
――ああ、忘れておった」

ティターニアはシノノメに改めて右腕を差し伸べて言うのだった。

「ようこそ――指輪の勇者一行へ」

【第六話完!】

3 :
前スレが全く書けなくなったので急遽スレを立てた。
750kbまで書けると思いきや730だったのだな……。

第六話お疲れ様!
一応締めてしまったが数日中に次章開始するのでその間リアクションや幕間などあれば自由に書いてもらって一向に構わない!
もしくは次章の最初にくっつけてもらってもOK。
本編で言っている通り新規募集期間兼ねて1ターン程アスガルドのシーンを入れようと思う。
今からだとかなり後発参加にはなるがまだ指輪使いの枠が2つ(エーテルの指輪が出て来るのは最終盤にしても光は次で出てきそう?)空いてるので興味のある方は遠慮せずに是非。
(誰も来なければジュリアン殿とかに使ってもらう手もあるのだがやっぱり指輪は参加者が一つずつ持つのがベストだと思うゆえ……
しかし6話は新規は来なかったし最終的に7人になると1シーンで回すには多すぎるからシノノメ殿とフィリア殿が二つやってくれてるのは丁度良いなと思っておる)

4 :
キアスムスを訪れた一行が酒場で食事をしていると、通りでにわかに騒ぎが起こる。
街の中にアックスビークの群れが入り込んで走り回り、大捕り物が繰り広げられているのだった。
加勢する一行だったが、アックスビークの一匹が店に突っ込んでいく。
悲痛な叫びをあげる店主だったが、居合わせた魔族の少女がそれを瞬く間に屠る。
彼女はキアスムスの処刑執行人のシノノメであり、スレイブの古い知り合いでもあった。
執行人であるため町の人々から爪はじきにされているシノノメは、
一行に食料の買い出しの依頼をもちかけ、自らの屋敷の一室を宿として提供することを申し出る。
ジャンは最初難色を示したが、最終的には依頼を受けて、彼女の屋敷に泊まることになった。
そこに、ジャンの師匠でラーサ通りの総元締めであり、正体は王の隠し牙であるガレドロが突然訪ねてきた。
彼は、闇の指輪が良からぬ形で封印を解かれぬように、
体調不良で表舞台に姿を見せていないとされている王が実は大陸全土に封印を施し続けていると告げ
良からぬ者の手に指輪が渡る前に、闇の指輪を手に入れるように一行に依頼する。
そして、チェムノタ山に闇の指輪がある可能性が高いこと
そのふもとのジャンの故郷がエーテル教団によってすでに村人が洗脳されて支配されてしまったこと、
それを口実に村人が全員死刑になったことを告げる。
そして弟子であるジャンのために、処刑人のシノノメの足止めをしようと試みるガレドロ。
しかしシノノメはそれを退け、一行が指輪を手に入れれば魔王が体調不良を装う必要もなくなり、
恩赦によって村人が助かるという道を示し、一行に同行し力を貸すと力強く言うのだった。
翌朝オーカゼ村に行ってみると、村人はひとっこひとりおらず、教団の建物に入ってみると留守番らしき者達だけが残っていた。
彼らをのして情報を聞き出すと、村人は洗脳されてチェムノタ山に連れていかれたということが分かった。
急いでチェムノタ山を登ると、中腹で、教団の者に連れられた村人たちに追いついた。
村人たちを連れているのは、一人は黒犬騎士アドルフ、もう一人は天戟のアルマクリスだ。
一行が姿を現すと、アドルフはアルマクリスに一行の足止めを命じ、自らは山頂へと急ぐ。
戦闘の混乱に紛れてジャンは村人たちを逃がすことに成功。戦闘にも勝利する。
一行はアルマクリスにとどめを刺さなかったどころか傷の治療を施してから先を急ぐのだった。
しかしアルマクリスは目覚めた直後、アドルフが駆る猟犬により始末され闇に取り込まれることとなる。
一行が山頂にたどり着くと、アドルフが老竜ニーズヘグと問答をしていた。
ニーズヘグは闇の竜テネブラエの影の一つであり、一行とアドルフに一方的に指輪の試練を持ちかけるのだった。
試練とは、それぞれの最も思い出したくない記憶との対面。
それぞれの記憶が投影された異空間で苦戦する一行の前に、アルマクリスが現れ力を貸し、全員無事に試練をクリアーした。
現実世界に戻ってみると、アドルフだけが試練に耐えられず骨と化していた。
彼の最も思い出したくない記憶とは、幼い頃に姉メアリに光の指輪を贈ったこと。
指輪の魔女とはヒトを乗っ取る指輪そのものだったのだ。
闇の指輪を具現化し、ふさわしい者は進み出よと告げるニーズヘグ。
皆の後押しを受けて、シノノメが闇の指輪に触れた瞬間、彼女は闇に包まれる。
まだ最後の試練が残っていたのだった。
闇に取り込まれて共に闇の指輪の一部となったアドルフとルマクリスが、シノノメを乗っ取り指輪の器にしようと仕掛けてきたのだ。
しかしシノノメは彼らを退け、指輪に乗っ取られることなく無事に戻ってきた。
ニーズヘグは試練は終わりだと告げ、闇の指輪を手に入れた一行は山頂をあとにする。
下山中に王の使いが現れ、王の勅命によってオーカゼ村の人々は無罪になったと一行に告げる。
ひとまずこの地での案件は一件落着となり、オーカゼ村で宴会をしようと山を下っていく一行であった。

5 :
*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. 第7話開始.。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*

一行が乗った飛空艇は、敵の本拠地ソルタレクへ攻め込むに先立って、情報収集と準備を整えるためにアスガルドへと向かっていた。

これまでのあらすじ

古竜が復活する

とりあえず古竜に対抗するために?指輪を集めよう

指輪を集める旅をしているうちに指輪の魔女なる悪い奴が明らかになってくる
その正体は遥か昔からいろんな人を乗っ取り続けている悪い光の指輪っぽい

地水火風闇の指輪を手に入れて次は光の指輪。
いよいよ指輪の魔女の本拠地に攻め込もう←今ここ

「……というわけだ」

――と移動式ミニ黒板に記しつつ、ティターニアは最近仲間になった者達に今までの経緯を簡単に説明していた。
もっと詳しく知りたい方はこちらを読んで頂ければ大体分かると思う。
ttps://www65.atwiki.jp/dragonsring/pages/12.html

尚、次のアスガルドはどさくさに紛れて仲間に加わるチャンスである。
そうこうしているうちに、飛空艇は魔術学園都市アスガルド内のユグドラシアの着陸場に到着した。
降り立ってみると――何故か生徒たちによる人だかりが出来ていた。

「指輪の勇者様ご一行だ!」「あっ美少女とイケメンが増えてる!」
「あの超美形は帝国の伝説の魔術師の白魔卿じゃね!?」「マジで!?」
「サインください!」「わーわーきゃーきゃー」

「お主ら、儂を通さんか!」

人だかりにまぶれながらやっとこさダグラスが前に進み出てきた。
彼は、スレイブとシノノメを一瞥すると、こちらが何も言わずとも察したのだった。

「――見事風の指輪と闇の指輪を手に入れたようじゃな」

「…… 一応極秘の旅のはずなのに何でこうなっておるのだ?」

「……いや、儂は上層部にしか言ってないはずなのだが……。知らん、断じて知らんぞ」

何でと聞いたものの、大体想像はつく。
上層部がつい「ここだけの話」で一般導師に教える→導師から「ここだけの話」で生徒に情報が漏れる→秘密じゃなくなる
といったところだろう。
しかし本来敵国のはずのダーマにも公認されているぐらいだから、もはや秘密にしておく意味もあまりないのかもしれない。

6 :
「しかしどちらにせよ遅かれ早かれ公開事項じゃ。次の任務は我々の全面的なバックアップのもとに行ってもらうことになる。
そなた達にはソルタレクのエーテル教団へ突入してもらうことになる」

「ソルタレクは今どうなっているのだ? 突入するのに援護が必要なほどなのか?」

「それは……オベロン殿から説明してもらおう」

ダグラスが示した方向から、ティターニアがよく見知ったエルフの男性が進み出てきた。

「ティターニア、無事だったか」

「父上――!」

現エルフの長の夫である彼は、首府ソルタレクでドリームフォレスト州の代表として執政に携わっていたはずなのだが、
彼がここにいるという事自体、ソルタレクがもはや普通の状態ではないということを示しているのだった。

「今や街全体がエーテル教団の牙城だ。
私は幸い早いうちに異常を感じたから脱出できたのだが……執政官だった者の中にも何人か取り込まれてしまった者がいる」

前回はここに来た時はまだエーテル教団が水面下でソルタレクの冒険者ギルドを操っているといった段階だったが、
一行が暗黒大陸に行っている間に、エーテル教団が本格的に動き出したらしく
ソルタレクは誰がどう見ても異常な事態となっているらしかった。
通常の統治機構はとうに壊滅。
今や首府ソルタレクは教団の武装勢力に包囲され、普通には近づけない状態となっているそうだ。
そしてここユグドラシアには反乱軍の拠点として、教団に対抗しようとする者が集結しているらしかった。
そこで、集団で派手に攻め込んでドンパチやっている隙に指輪の勇者一行が内部へ潜入という単純明快な作戦である。

「決行は一週間後――たまたまダーマの侵略軍が首府に攻め込むのと同時になる予定だ」

「うん、そうだな。たまたまだな」

もはや裏で手を組んでいるのは明らかなのだが、一応敵国同士という建前らしい。
ダグラスが続ける。

「それまでそなた達は英気を養ってくれ。
儂とオベロンは反乱軍を取りまとめておく。もしもその中でそなた達と共に潜入するに相応しい者がいたらそちらに付けよう」

こうして一行は暫しユグドラシアに滞在することになった。
学園内で情報収集をしてもいいし、街を探索してもいいし、反乱軍の様子を見てみるのもいいだろう。

7 :
>「無事だったか……!」

スレイブ様の、緊迫の抜け切らない、しかし安堵を含む声。
随分と心配をかけてしまったみたいです。
私なら全然平気です。なんだったら笑みの一つでも見せて、安心してもらいましょうか。
……少し私らしくなくて、かえって心配させてしまったり、しませんよね?
そうして振り返ると……ティターニア様が、目の前にまで駆け寄ってきていました。

>「シノノメ殿……見事試練を潜り抜けたんやな! 良かった……良かったよ……!」

「……エルフって、意外と温かいんですね。私の体温が低いだけでしょうか」

……指環なんかよりも、この包容の方が、私にとっては価値があるものです。
そんな事言ったら怒られちゃうかもしれませんけど。
ずっと、ずっと得難いと……いえ、得られる訳がないと思っていたもの。他者の、ぬくもり……。

>「……悔しいが我からも礼を言うぞ。結果オーライという言葉が古来より存在するからな」

「……私からも、お礼申し上げます。
 終わってみれば、短いけど満ち足りた、そんな旅が出来ました」

頭を下げると、闇竜は声を発さずに、小さく口角を上げました。
その笑みが意味するところは私には分かりません。
お人好しが過ぎるという嘲笑なのか、それとも別の意味があるのか……。
だけどこの旅を通して分かった事は……

「その思わせぶりな笑みも、今は快く感じられます。
 大事なのは、それだけで。
 そこに含まれた真意は、私には分かりませんけど……分かる必要も、ないんですよね」

別にその意味が分からなくても、それならそれでいいって事です。

執行官が、首を斬る相手の心や人生を知る必要がないように。
何も分からなくても……私は、私にとって大きな意味のある旅が出来た。
それは、どれくらいの割合かは分からないけど彼……テネブラエのおかげでもあって。
私は彼の笑みが、そんなに不快じゃなかった。いえ、むしろそれを見られて、良かったとさえ感じている。
大事なのは、たったそれだけ。
私はずっと……考えても仕方のない事を、考え続けていたみたいです。

……っと、余韻に浸っている場合じゃありません。
まだやるべき事は残っています。オーカゼ村の皆さんの安否を改めて確認して、
ガレドロ様に無事指環を手に入れられたと連絡して……。
私は、ジャン様達の後を追いかけます。
この指環に関しても、きっとお話しなくてはいけませんしね。
……とは言え、どのタイミングで、その話を切り出せばいいんでしょう。

>「指環の勇者というのは君たちのことか?ラーサ通り総責任者の
 ガレドロ・アルマータより伝言を預かっている。」

なんて考えていると、空から竜騎兵が降りてきました。
あの隊章は……黒の小隊。
私達が指環を手に入れられなければ、オーカゼ村に差し向けられていたはずの部隊。
村の人達の洗脳は解けていた。何も起きてはいないはずですが……

8 :
そんな心配を密かにしていたのですが、どうやら杞憂だったみたいです。
魔王様は既に私達が指環を手にした事を悟り、離宮を出て、国中にお触れを出したとの事。
流石は、ダーマを覆うほどの結界を張れてしまう魔王陛下。手が早いです。

>「ということは……オーカゼ村の者達も無罪ということだな!」
>「村に戻って晩飯だ!洗脳も溶けてるだろうし、村のみんなと宴会でもしようぜ!」

「……オーク族の民族料理、ですか。楽しみです」

……ジャン様達と違って、まだ私の事を受け入れられない方は、いるかもしれません。
私がどう吹っ切れたって、私は魔族の執行官。
だけど、それももう怖くありません。考えても仕方のない事ですから。
そんな事に頭を悩ませるより、初めて食べるご飯にでも夢中になっていた方が、ずっとマシです。

>「シノノメ殿――しっかりいい物を食べて英気を養っておくのだ。
  出発したら早速闇の指輪の力を使っての移動中の隠密をお願いすることになる。
  いったんアスガルドに立ち寄り情報を得たり装備を整えるとしよう。
  ダーマの外に出るのは初めてだな? アスガルドは面白いところだぞ。
  ――ああ、忘れておった」

……闇の指環を使って、お願いする?
あの、待って下さい。私は……

>「ようこそ――指輪の勇者一行へ」

ティターニア様は清々しい笑顔で私に手を差し伸べました。
……私は、まだ執行官ですから。
この指環は手に入れるだけ手に入れて、お譲りしようと思っていたのですが。

私はそんな事を考えていて……だけど、ふと、気付きました。
……私の背後に、誰かがいる事に。
刃が、鞘の内側を滑る音が聞こえる。

ティターニア様も、ジャン様も、スレイブ様も、誰も気付いていない。
闇の指環を持つ私だけが気付ける、誰か。

9 :
いえ、誰かじゃない。見なくても分かります。
そこにいるのは、闇の試練で出会った私の幻。

あの時、私は彼女の正体を問おうとして……取り合われなかった。
だけど、なんとなく正体は分かっていたんです。
そして今、確信しました。

……あなたは、

「……はい。私で良ければ、あなた達の力になります。私を、一緒に連れて行って下さい」

あなたは……指環の勇者になれなかった、私。
スレイブ様と再開出来なかったのか。あの夜、僅かな勇気が出せなかったのか。
何かの理由で指環を手に入れられなくて、執行官を続けた、そんな未来の私。

闇とは……負の感情の象徴、そして理解出来ず、未知なるもの。
つまり……未来もまた、闇の属性の範疇。
だから私だけが感じ取れる。

「あの……だけど、少しだけお時間を下さいね。
 父に手紙を出さなくてはなりませんから。
 それに……皆さんが買ってきてくれたお食事も、ちゃんと食べておきたいですし」

……背後の気配が消えていく。

……大丈夫です。私は、あなたには決してならない。
あなたが生まれてくる未来は、もうどこにもない。
私はちゃんと、指環の勇者になりますから。




「……そう言えば、光の指環は何故、魔女を生み出すモノになってしまったんでしょうか。
 元は、かつて指環の勇者と共に世界を救った指環のはずなのに……」

10 :
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「――え?どこ見てるのかって?」

「そんなの決まってるでしょ?ジャンさんと、ティターニアさんだよ。
 あとフィリアちゃんと、えーとなんかカッコいい人と、お人形さんみたいな子」

「うん。今ね、槍を持った強そうな人と戦ってるよ。でもジャンさんの方がもっと強そう」

「え?ああ、うん、見えてるよ。この子が見せてくれるの」

「あっ、今終わったみたい。やっぱりジャンさんの方が強かったよ。
 それにカッコいいね。普通にやっつけちゃえばよかったのに」

「……ううん、ホントは良くないんだよね。
 ああやって、無茶してでも、やらなきゃいけない事があるんだよね。
 ジャンさんだけじゃない。あの人達はみんな、それが出来る」

「すごいなぁ……私も、あんな風になりたいなぁ」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)


11 :
【第六話お疲れ様でした!隙あらば自分語りって感じになっちゃったけどとても楽しかったです。ありがとうございます。
 次の章も楽しみだなぁ……】

12 :
>>11
お前荒らし扱いのマーク出てんぜ?
どこ荒らしてきたのよ?

13 :
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
って何?

14 :
家で不労所得的に稼げる方法など 
参考までに、 
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。 

15 :
>『これで終わりじゃよ。物語や伝承に語られるように、
 勇者たちは無事試練を抜け指環を手に入れました……めでたしめでたしというわけじゃ』

スレイブの問いに、老龍は悪びれもせずにそう答えた。
無駄に動揺させられたバツの悪さを抱えながらも彼は剣を納める。

>「まだめでたしとは言えねえな。指環の魔女――というかメアリの奴とエーテル教団をぶちのめしてからだ」
>『……ソルタレクへ行くのじゃな?今やあそこはエーテル教団の理想郷。
 今代の指環の魔女は随分と実力があるようじゃ』

「それは身に沁みて分かっている……次は遅れをとらない」

シェバトの宿屋での戦闘では、スレイブの最大の技を受けてなお黒曜のメアリを倒すこと叶わなかった。
単なる実力差と言えばそれまでであろうが、もっと根本的な部分で格の違いを感じたほどだ。
仮に指環の勇者5人が万全な状態で相対したとしても、攻撃が通用しないのではないかという、諦念めいた予感。
弱気を振り払うようにして、スレイブは己の頬を張った。

チェムノタ山頂の洞窟を後にした一行は、道中で一組の竜騎兵に遭遇した。
ブラックミスリルの竜騎鎧と戦斧は、ダーマ軍精鋭部隊のものだ。
思わず剣の柄に手を掛けるが、先方に交戦の意志はないようだった。

>「指環の勇者というのは君たちのことか?ラーサ通り総責任者の
 ガレドロ・アルマータより伝言を預かっている。」

読み上げられた書簡の内容は、闇の指環奪還に伴う本件の沙汰についてだった。
魔王は王宮へと戻り、エーテル教団を撃滅すべくハイランド首府ソルタレクへの進撃を決定した。
そして、貴族院の出した命令を勅令を以て撤回したという――

>「ということは……オーカゼ村の者達も無罪ということだな!」

「そうか……これが今日一番の朗報だな」

無邪気に喜ぶティターニアの横で、スレイブもまた安堵の溜息を吐いた。
エーテル教団の策謀に巻き込まれただけの、無実の村民たちが磔刑に処されることはない。
チェムノタ山で血みどろの死闘を演じた甲斐が、ようやくあったと言えるだろう。

>「村に戻って晩飯だ!洗脳も溶けてるだろうし、村のみんなと宴会でもしようぜ!」

「こんなこともあろうかとキアスムスで良い酒を仕入れておいたんだ。
 ジャン、あんたのご両親は飲めるクチか?30年モノの妖果酒だ、祝い事には最適だろう」

既に歓待を受けるモードに突入している呑気な男二人の後ろでティターニアとシノノメが何か話している。

16 :
>「シノノメ殿――しっかりいい物を食べて英気を養っておくのだ。
  出発したら早速闇の指輪の力を使っての移動中の隠密をお願いすることになる。
>「ようこそ――指輪の勇者一行へ」

「あー……ティターニア、水を差すようだが、俺と違って彼女には定職が……」

ほとんど成り行きでここまで同行させてしまったが、本来シノノメはキアスムスの執行官だ。
ジュリアンの差配で王宮を離れて自由に動けるスレイブとは違い、他国までおいそれと出られない身分である。
シノノメの力は正直惜しいが、ダーマと小康状態にあるハイランドへ連れ回すわけには行くまい。

>「……はい。私で良ければ、あなた達の力になります。私を、一緒に連れて行って下さい」

しかし、シノノメは何かを確信したかのようにティターニアの申し出を受けた。

「良かったのか?……その、お父上の事は」

スレイブの濁した問いに、シノノメは動じることなく答える。

>「あの……だけど、少しだけお時間を下さいね。父に手紙を出さなくてはなりませんから。
 それに……皆さんが買ってきてくれたお食事も、ちゃんと食べておきたいですし」

闇の指環を巡るこの旅路で、確かに彼女は道を見つけ、進むことを選んだのだ。
ならばスレイブがすべきことは、その前途を祝福し、多難を除くことであろう。

「そうだ、キアスムスで貴女に渡してなかったものがあるんだ」

オーカゼ村の宴会の席で、スレイブはそう切り出して自身の旅装をまさぐった。
出てきたのは封を切っていない瓶。中には調味液と、大ぶりの眼球が二つ浮いている。
――『飛び目玉の丸ごと煮』。『目玉亭』で購入した二瓶のうちの残りだ。

「貴女に買い出しを頼まれてこいつを買ってきたは良いが、微毒があることだし口に合うかわからなくてな。
 昨晩俺たちで毒見と味見は済ませておいたが……『仲間』になるのなら、もうそんな他人行儀は必要ないだろう」

トランキルの屋敷に泊めてもらった晩、スレイブ達は今後の方針を固めるために早々に自室へと辞した。
馬車一台ほどもある食べ物の山と、数世紀に一度の冒険譚を引っ提げて訪れたのに。
シノノメは、一人で食卓に座っていたのだ。

「……一緒に食べよう。同じ鍋を囲んで、これまでの冒険を肴にしながら」

酔っ払ったオーク達の歓声に包まれて、ダーマの夜は更けていく。

――――――・・・・・・

17 :
<アスガルド冒険者ギルド:練兵場>

ユグドラシアのお膝元として多様な文化と技術を受け入れているアスガルドには、国内でも有数の規模の冒険者ギルドがある。
ティターニアの厚意によってソルタレク攻略まで一週間の猶予を貰ったスレイブは、暫しの余暇としてギルドを訪れていた。
併設された練兵場の一角で、スレイブを囲むように人だかりが出来ている。
彼らに共通するのはギルド付きの冒険者であることと、得物として剣を得意とする剣士たちであることだ。

衆人環視に若干の居心地の悪さを感じながら、スレイブは剣を抜き放った。
切っ先を向けるのは、5歩ほど離れた位置にある鍛錬用の木人だ。
彼が踏み込みと共に剣を一閃、ニ閃すると、木人の表面に取り付けた金属製のプレートだけが弾け飛んだ。
袈裟斬りに深く切り込んだにも関わらず、木人本体には傷一つ付いていない。

「……ダーマの軍式剣術が一つ、『鎧落とし』。強固な甲殻を持つ竜種の外鱗を削ぎ落とす技だ。
 竜の分厚い肉質は剣の威力を吸収してしまう。だからこうして手首の返しを使い、鱗だけを的確に斬撃して斬り離すわけだな」

「おおー……」

スレイブの業前を眺めていた剣士たちが誰ともなく感嘆を漏らし、まばらな拍手が起きる。

「やっぱダーマの剣ってこっちの対人剣術とは全然違うなぁ。仮想敵からして別モノだ」

「ダーマの剣術を教えるのは良いが、参考になるのか?」

「まー八割がた興味本位だけどよ。こんな機会なかなかないし勉強させてもらうぜ」

ユグドラシアに着いた途端、スレイブはギルドの剣士達に引きずられるようにして練兵場へ連れてこられた。
現在は交戦状態にないとはいえ、元々ダーマとハイランドは敵対関係にあった国同士だ。
すわ、敵国の軍人を袋叩きに来たか――そう身構えたスレイブに、剣士たちは木人を見せて頭を下げたのだ。
ダーマの剣を教えて欲しいと。

「一週間後にはソルタレクへの進軍だ。それまでに何がしかモノにしてぇもんだがな」

「術理の単純なものから順に教えていこう。あんた達の既存剣術から応用できるものがいくつかある」

「気が利くねぇ」

ソルタレクへの侵攻開始まで一週間、正直言って手持ち無沙汰だったスレイブは言葉とは裏腹に乗り気であった。
この機会にハイランドの剣術を習得するのも良い。『アスガルド流剣術』という魔法剣の開祖がユグドラシアにはいたはずだ。
そして――

「それより、約束を忘れるなよ」

「わーかってるって!ちゃんと後でメシ奢るからよ!ギルド出たすぐのところに美味い屋台があんだよ」

スレイブはアスガルドの食文化に強烈に興味を牽かれていた。
ダーマから殆ど出たことのない彼にとって、アスガルドの玉石混交な食事は新鮮な驚きに満ちている。
剣の講義の対価として、冒険者達から地元のグルメの提供を受ける約束を取り付けていた。

18 :
「しかし頼んどいてなんだけど、軍式剣術を他国の剣士にホイホイ教えちまって良いのか?利敵行為になるんじゃねえの」

「問題ない。今教えているのはあくまでダーマ剣術の入り口でしかないからな。
 ……ダーマの剣は『化外の剣』、本来は魔族が用いる剣術だ。術理の深奥は、人間に再現できるものじゃない」

「あー……連中、身体の構造からして俺たちとは別モノだもんなぁ。ん?じゃあなんでお前さんはダーマの剣術使えてんの?」

「沢山練習したからな」

「そういう問題かぁ……?」

"鎧落とし"の動きを真似ていた剣士は、休憩とばかりに一息ついた。

「でもまぁ、あながち利敵行為ってわけでもないのかもな」

首を傾げるスレイブに、剣士は歯を見せて笑った。

「今度の作戦は表向きにはハイランドへの侵攻だけど、実質的にはダーマとユグドラシアの共同作戦だ。
 共通の敵なんて安易なきっかけだけどさ、これを期に両国の関係がうまくいったなら、俺たちは敵同士じゃなくなる。
 晴れてこの場は同盟国の技術提携ってことになるわけだ」

「……そんなにトントン拍子にうまくいくとは思えないが」

剣士の言葉に、スレイブは目を伏せる。

「うまくいくと良いな」

本心からそう呟いた。

【アスガルド逗留中。冒険者ギルドの練兵場で死亡フラグを立て合う】
【六章完走お疲れ様でした!まさに『旅』って感じのシナリオで楽しかったです!次章もよろしくお願いします!】

19 :
ごめん、ふらっとこの板来て初代スレをざっと見て思ったんだけど
このスレってもしかして梅津大輔…じゃなくて脱税オーク関係?
元ネタdisとかぼっち拗らせ感を含む嫌味っぽさがすごくそれっぽいんだけど
ばれると困るからなろうとかSS速報じゃなくて2chのマイナー板でこそこそやってるの?

ていうか今度は指輪物語に因縁をつけつつの指輪物語+グループSNE系かよみたいな呆れが
わかったわかった魔女はカーラで邪神復活阻止系なんだろと

20 :
濡れ衣だったらごめんね?
それじゃ

21 :
>>20
濡れ衣も糞も全く無関係です
中学時代あたりまで戻ってオリジナリティについて勉強してください
てか事情も知らずに口開けるなや蛆虫

22 :
まあここのメンバーは10分あれば地図、30分あれば世界観、1時間あれば伏線含めたストーリーぐらいは作れるからな

それできるのが水野良ぐらいだと思い込んでるんだろ

23 :
ジャンたちがオーカゼ村に戻ってみれば、既に村人たちが自らの仕事に励んでいた。
ただ一つ違ったのは、白黒のローブを着た教団の信者たちが村の広場に集められ、
手足を縛られ猿轡を口に嵌められていたことだ。

キアスムスから派遣された衛兵たちが信者たちを取り囲み、指揮官らしき羽飾りを
兜に付けた衛兵が厳しい口調で尋問を行っている。

「村人をどうやって操っていた?方法を詳細に答えろ。
 薬ならば製法、儀式魔術や呪いの類なら触媒と魔法陣の手順もだ」

「貴様らになぞ話すものか!エーテル教団万歳!メアリ様を称えよ!」

猿轡を一人だけ外された男は指揮官にそう怒鳴ると、後は何も語らず黙るばかりだった。
やがてうんざりしたように首を振った指揮官は、村長の家に入って何事か村長と話すと
オーク族の若者数名を引き連れて戻ってきた。

「暴力は好きではないんだがな……だが被害者の頼みとあっては仕方あるまい。
 我々は一旦キアスムスに戻る。彼らは好きにするといい」

日々の狩りと農作業、そして村人どうしの拳闘で鍛えられた彼らの肉体は筋骨隆々と呼ぶにふさわしい。
そんな彼らに信者たちは首を掴まれて引きずられ、村はずれの広場まで連れていかれた。

「爺ちゃん久しぶり!あの野郎どもどうなるんだ?」

「おおジャン!さっきはすまなかったのう、まさか村人が皆操られてしまうとは思わなんだ。
 日々の修練が足りんかったわい」

そんな光景に偶然通りがかった一行のうち、ジャンが村長に挨拶する。
村長もまたオーク族であり、緑がかった肌色に若者より衰えてはいるが
六つに割れた腹筋を見せつけるように腹の空いた毛皮のコートを着ていた。

「あやつらはしきたりに則り、拳闘裁判にて決める。
 勝てば無罪、負ければ大平原に手足を縛り放置じゃ」

「いつも通りか、変わってねえな……」

「それがオークというものじゃよ。さて、よき友人ができたようじゃが……
 これは宴をせねばなるまいな。ジャン、お前も手伝いなさい」

そう言って村長とジャンは村人に声をかけて集め、その夜は盛大な宴会となった。
宴会の中心ではアクアの指環を使った宴会芸が大層盛り上がり、
最後は拳闘でジャンが五人抜きしたところでお開きとなった。

そして次の日の朝、旅の準備を済ませたジャンが村長に一つの疑問を聞いた。

「そういえば今思い出したんだけどよ、父ちゃん母ちゃんはまだ出稼ぎか?
 バルデッドおじさんもいないみたいだけどよ……」

「……ダーマはハイランドに宣戦布告したんじゃよ。
 傭兵は皆かき集められ、今頃どこぞの港町じゃろうな」

「そっか……だったらあっちで会えるかもしれねえな。
 ありがとよ、爺ちゃん」

両親に久しぶりに会えるかもしれないという希望は叶わなかったが、
闇の指環を手に入れ、新たな仲間も増えた。
これでよいとジャンは満足し、仲間たちと共に飛空艇へと向かった。

24 :
――ソルタレク冒険者ギルドの襲撃から立ち直り、アスガルドは以前よりも活気に溢れた街となっていた。
崩された城壁はより頑丈に、壊された街並みはより華やかに。
怪しげな宗教団体から自分たちの国を解放するとあってか、街を歩く冒険者や傭兵、兵士たちの顔はやる気に満ちている。

仲間たちがそれぞれ自らのやるべきことをやっている中、一週間という時間でジャンは自分の本業に立ち返っていた。

「オラァ!アスガルド冒険者ギルドの者だ!
 てめえらが塩に白石灰を混ぜて量を増やしたのは分かってんだぞ!」

「既に逮捕状も発行されている!大人しく全員地面に伏せろ!」

つまり、冒険者として依頼をこなしていた。
この日は塩の業者が混ぜ物をしていたとして現場に衛兵と共に強行突入。
雇われていたならず者たちを殴り飛ばし無事全員取り押さえることに成功した。

(父ちゃん母ちゃんがダーマ軍にいるなら……たぶん最前線に出るはずだ。
 今頃はもう着いてる頃かな……)

一仕事終え、城壁の向こうに沈む夕日を眺めながらジャンは両親のことを思っていた。


《ハイランド連邦共和国:カルネージ諸島》

最もダーマに近く、対ダーマ魔法王国の最前線として要塞化が進んでいたここカルネージ諸島は、
皮肉にも今はダーマ軍の一大補給拠点となっていた。

カルネージ諸島の司令塔であるシュトローム要塞に居座っていたエーテル教団を
ダーマ海軍の傭兵部隊が夜間奇襲によって制圧、本来の機能を取り戻したためだ。

これによってダーマはソルタレクへの足がかりを手に入れ、
解放されたシュトローム要塞の司令官はダーマへの協力を約束した。

そしてその傭兵部隊の中に、白銀の錫杖を持った人間族の女性と
黄金の斧を持ったオーク族の巨漢がいた。

「ソルタレクまで行けばジャンに会えるかねえ。
 指環の勇者なんてみんなに崇められちゃって、調子に乗らなきゃいいけど。
 あの子は調子に乗るとすぐに転んじゃうから」

「……ジャンならば大丈夫だろう。あの子はもう立派な戦士だ」

二人は要塞の見張り台に立ち、夕日に照らされながらジャンのことを話していた。
まだ小さかったとき、成長して見張り台に立つようになったとき、村を飛び出したとき…

「きっとソルタレクで会えるだろう。あの子は私たちの息子なのだから」

オーク族の巨漢は会話の最後にそう呟き、ただ沈みゆく夕日を眺めていた。


【六章お疲れ様でした!シナリオ主導するのは初めてでしたが面白かったです!
 展開を考えるのは大変でしたが……】

25 :
スレイブがギルドで剣士達の指導をする一方、ティターニアはジュリアンと共に、ユグドラシアで作戦に参加する術士達の指導にあたっていた。

「まさか生ける伝説の魔術師の白魔卿様にお会いできるなんて……!」「本物!?」「すげー!」

――実際にはジュリアンのサイン会のような状態になっており、ティターニアはその様子をニヤニヤしながら見ていた。
まさか一生のうちで実際にお目にかかれるとは思うはずもない伝説級魔術師が目の前にいるのだから、無理もない。

「おい、何で俺が見世物のような扱いを受けているのだ。そこのエルフ、見てないでこいつ等を追っ払え!」

「良いではないか良いではないか、人気者税ということよ……ん?」

そんな事態の中珍しく自分の方に寄って来る者がいたので目を向けてみると――

「導師様、お久しぶりです」

そこには、テッラ洞窟での戦いの後ユグドラシアに引き取られた獣人の精霊術士の姉妹の姿があった。

「シュマリ殿にホロカ殿! そなたらも作戦に参加するのか……!?」

「ああ、タダで居候させてもらってるからにはたまには恩返ししねーとな」

「そうか、押さない走らない死なない――それさえ守れば大丈夫だ」

「お、おう」

実際、集団戦において後方の魔術士部隊が走って逃げ惑う事態になったらそれはもう負けているのである。
そして今回の戦いはもちろん勝つ前提なので、そんな事態にはならないのだ、多分。

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26 :
そうして、出撃の日がやってきた。
作戦は簡単に言うと、地上部隊が街を取り囲む武装集団と戦闘開始、
その隙に指輪の勇者達が闇の指輪の力で隠密した飛空艇で内部に侵入というものである。

「竜達よ、そろそろ知っていることを全て教えてもらおうか。この期に及んで勿体ぶるのは禁止だ。
敵を知り己を知れば百戦危うからず、と昔から言うからな」

いよいよ指輪の魔女との直接対決に向かうに先立って、指輪の勇者達と、具現化したそれぞれの指輪の竜達が作戦会議を行う。

>「……そう言えば、光の指環は何故、魔女を生み出すモノになってしまったんでしょうか。
 元は、かつて指環の勇者と共に世界を救った指環のはずなのに……」

以前シノノメが口にしたこの疑問に、実体化したテッラが答える。

「ニーズヘグが光と闇の竜は我々四星竜とは性質を異にすると言っていたのを覚えていますか?
光の竜ルクスもテネブラエと同じく無数の影を持つ存在……。
今は恐るべき魔女と化した件の光の指輪も、もとは無数の影の中の一つだった。
その名はエルピス――」

その意味は、希望、そして予兆――未来を見通す予知の力をも意味する。
闇が象徴する絶望や未知なるものに対して、どちらも典型的な光の属性だ。

「そうか……予知の力を持つばっかりに絶望の未来を見てしまい、虚無に呑まれた――そうなのか?」

「ええ、おそらくは――
もしかしたら、全てを虚無で呑み込むしかこの世界を救う道はないと、分かってしまったのかもしれません」

「なに、恐れることはない。奴に対抗する切り札はすでに手に入れておるからな。
闇の司る属性の一つは未知――つまり言い換えれば無限の可能性だ」

そう言ってシノノメに頼りにしておるぞ、といった感じで目くばせするティターニアであった。

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27 :
皆六章の締め乙だ! シナリオを主導してくれたジャン殿は特にお疲れ様! 両親活躍の予感にwktk
一瞬戦闘開始までいってしまってもいいかなとも思って文末にレス途中の区切り的なのが入ってるんだが
シノノメ殿の時間軸がまだ前章の最後&今回思いがけず早く回ったので募集期間延長も兼ねて今回はここで止めとこうかな
もし何かネタがあれば作戦会議シーンで出し合いつつ気が向いたら移動シーンとかでじわじわ進める感じで

28 :
締めたのはお前だろうが。
なんか日本語おかしいぞ。

29 :
アスガルドに着いてから三日が経ちました。
私は今日も……街を当て所なく歩いていました。
様々な種族の、大勢の冒険者達が行き交うここ……玉石通りでしたっけ。
ここには色んな物が売られています。
数多の冒険者と共に集い、露店に並んだ奇妙な品々。
冒険者の為の武具やマジックアイテム……それに、見た事のない料理です。
丸焼きにしたワイバーンの赤子に、殻を向いて茹でた甲虫、それに……アレは、オオネズミの串焼き?

「おっ、どしたにゃ姉ちゃん。興味あるにゃ?
 ウチのオオネズミはこの近くの洞窟で取れた、虫だけ食べて育った奴にゃ。
 そんじょそこらのオオネズミ肉とは味が違うにゃ!」

店を広げるワーキャットが私の視線に気付いたようで、声をかけてくる。
ネズミ……ですか……流石にちょっと……
でもスレイブ様が買ってきて下さった目玉も美味しかったですし……。

「……おいくらですか?」

「おっ、見た目より勇気があるにゃ。その勇気に免じて銅貨3枚、どうにゃ?」

私は代金を支払って、串焼きを一本受け取りました。
……何故わざわざ露店の柱に解体前のオオネズミを吊るしてあるのでしょう。
アピールのつもりなのでしょうか……かえって人が寄り付かなくなるような。

そんな事を考えつつ、お肉を一口齧る。
……意外と、美味しい。
臭み消しがしっかりされているのか、気になるような獣臭さはありませんし、
味はまろやかだけど豊かな肉の旨味があって……虫を主食に育ったお肉、侮れません。
そう言えば餌が違うとか言っていましたけど、生息地によって味が違うんでしょうか。
……いえ、別に気になっている訳ではないんですよ。

それにしても……私がこんな風に通りを歩いて、食べ歩きが出来るなんて。
こんな日が来るとは思っていませんでした。
アスガルド……とても懐の深い街です。
戦いが始まるまでの短い時間では、この街の全てを見て回る事は出来ません。
それが残念でならない。

……だからちゃんと帰ってこないといけません。
またこの街を見て回ろうと思える気持ちのままで、帰ってこないと。

30 :
 
 
 
そして出撃の日がやってきました。
私達は飛空艇を使って直接ソルタレクへ侵入するといった算段のようです。
街の中は……どうなっているのでしょうか。
虚無に呑まれた市民との戦いになるとしたら、少しやりにくいでしょうね……。

甲板にはジャン様達と、指環から姿を現した竜達がいます。
無論、人の姿を取ってはいますが。

>「竜達よ、そろそろ知っていることを全て教えてもらおうか。この期に及んで勿体ぶるのは禁止だ。
  敵を知り己を知れば百戦危うからず、と昔から言うからな」

ティターニア様が竜に問いかける。

>「ニーズヘグが光と闇の竜は我々四星竜とは性質を異にすると言っていたのを覚えていますか?
  光の竜ルクスもテネブラエと同じく無数の影を持つ存在……。
  今は恐るべき魔女と化した件の光の指輪も、もとは無数の影の中の一つだった。
  その名はエルピス――」

口を開いたのは……確か、大地の指環に宿る竜、テッラ……でしたか。

>「そうか……予知の力を持つばっかりに絶望の未来を見てしまい、虚無に呑まれた――そうなのか?」
>「ええ、おそらくは――
  もしかしたら、全てを虚無で呑み込むしかこの世界を救う道はないと、分かってしまったのかもしれません」

「……何もかもが虚無に呑まれれれば、もう未来は見なくて済む。
 何の未来も残らないから……それだけの事かもしれませんよ」

エルピスがこの世の救いを求めているのか。
それとも自分が救われる事を求めているのか。
それは、戦う相手の行動原理という意味では、どうでもいいくらい些細な事。
だけど、読み違えれば無用な情けを生むという意味では、とても重要な事。

>「なに、恐れることはない。奴に対抗する切り札はすでに手に入れておるからな。
  闇の司る属性の一つは未知――つまり言い換えれば無限の可能性だ」

「もっと言い換えればどんなに悪い事でも起こるときゃ起こるって事だけどな」

「……アルマクリス?テネブラエはどうしたんですか?
 わざわざあなたが出てこなくても、ニーズヘグが出てくれば……」

「あー、あの爺な。こないだの試練で頑張りすぎて腰やっちまったから出てこれねえんだとよ。
 んなわきゃねーだろ!行くのだりいって素直に言えやクソ爺!
 なんであっちもこっちもドラゴン様が並んでる中に俺が突っ立ってなきゃいけねーんだよ!気まずいわ!」

「……もう少しマシな言い訳は思いつかなかったんでしょうか」

と、ともあれ……侵入から対光竜まで、私は責任重大です。
ですが……正直なところ、不安はあまり感じません。
そんなものを自分の中で膨らませたところで物事はいい方向に転びませんから。
それに……

31 :
「それにしても、闇の指環と同化した影響ですか?また悪ぶるのが上手くなったみたいですね」

「あん?」

「最悪の事態になんて、させる気ないんでしょう?」

「……うるせえよ」

肌が痺れるような、そんな錯覚すら感じる気迫……。
幼馴染であり、愛する人の……直接的ではないにせよ仇であるメアリに対して、
彼が今どのような思いを抱いているのかは分かりません。
ですが……頼りになるのは間違いないはずです。
彼も……姿は見せないけど、指環の中で同じくらいの気迫を滾らせている、もう一人も。

「……離陸の準備が出来たみたいですね。いよいよ……」

船に魔力が巡り、駆動音が響き出す。
……その音に紛れて、背後で何か音がしました。
足音、何者かがこの甲板に降り立つ音。
私は右手に長剣を作り出すと同時、咄嗟に振り返り……

「……あれ?びっくりさせちゃった?」

そこにいたのは……この子は、確かラテちゃん?
飛空艇の下から、ここまで、登ってきた……?
どうやって……まさか装甲の継ぎ目に指をかけて?気配も感じさせず?
記憶を失っていて、戦えないと聞いていましたが……。

「ジャンさん、ティターニアさん、わたしも一緒に連れていって。
 お願い……わたしも、みんなの力になりたい。
 みんなと一緒に戦って、みんなみたいにカッコよくなりたいの」

……記憶が回復した、訳ではなさそうですね。お二人の反応を見る限りでは。
少なくとも一つ言える事は……

「……今からこの子を説得して、降ろしている時間はなさそうですね」

既に進軍を始めているであろう地上部隊との足並みを乱す訳にはいきません。
私のその言葉を聞くと、ラテちゃんは満足げに鼻息を鳴らし、胸を張る。

「ねっ、言ったでしょ?ギリギリで飛び乗れば、きっと連れてってもらえるって」

そして微笑みを浮かべながら……姿の見えない何者かに向けて、そう言いました。

32 :
 
 
 
到着までの間、私達は船内で装備の最終確認などをしていました。

「回復した、と見るべきなのでしょうか」

その中で私は小さく呟く。
言葉にするべきなのか分からないけど……皆さんならそうそう心を乱す事はないはず。
だったら、不明な事は出来る限り減らしておいた方がいい。私はそう考えたのです。

……執行官として数多の種族の肉体を切り刻み、死体を検めてきたトランキル家は、
処刑だけではなく医療の技術も培っていました。

「……記憶喪失は、原因が常に肉体にある訳ではありませんが、病は病。
 その症例は……僅かですが、私にも学んだ覚えがあります。
 記憶喪失になった者が回復した例は、更に僅かですが、存在しました」

私はかつて学んだ事を、目を閉じ記憶を辿りながら言葉に紡ぐ。

「肉体的な原因であるならば、時間の経過や回復魔法によって記憶が回復する事はあったそうです。
 精神に原因があるのなら、時間が解決してくれるという事も……」

だけど、あの子の場合はそのどちらでもなさそうです。
だとしたら……

「あるいは……また新しく記憶を積み上げて、一つの人格を得る。
 それも……ヒトとして社会に復帰出来るという意味では、回復、と言えます……」

……恐らくは、彼女の変容は……この例に含まれるでしょう。
それがジャン様とティターニア様にとって喜ばしい事なのかは……聞かずにおきましょう。

33 :
名前:ラテ・ハムステル
年齢:18
性別:女
身長:153cm
体重:57kg
スリーサイズ:わりと健康的
種族:半人半獣
職業:なし

性格:「カッコいい」に憧れる怖いもの知らず。

能力:かつてのスキルと半人半獣の身体能力……の名残り、土属性のコントロール。

武器:手足、土属性の力で形成する武器、エルダーミミックの死骸。

防具:手足、土属性の力で形成する防具。

所持品:古い日記帳の数々、おやつ、エルダーミミックの死骸

容姿の特徴・風貌:赤毛のポニーテール、真っ赤な瞳、子供っぽい容姿。

簡単なキャラ解説:
はじめまして!私はラテ・ハムステルって名前みたいです!
みたい、って言うのは……私、よく分かんないけど一回記憶を全部失くしちゃったみたいなんです。
だからずっと子供みたいに、ジャンさんティターニアさんについていくばかりだったんだけど、
二人の旅を、二人が出会う人達を見て。そこで交わされる言葉を聞いて。
そうしている内に、なんだか最近、色んな事を考えられるようになってきました!

私の中にはふぇんら……あれ?ふぇんり、ふぇんりら……ワンちゃん!
ワンちゃんが住んでるんですけど、そのワンちゃん曰く

「一度全てが埋もれ、そこに新たに積み上げられたのがお前」とか、
「失われたのは中身だけ。肉体は、のーずいは以前と変わらない。ならば……こういう事もあるか」とか、

つまり……訳分かんないよねー!もっと簡単に言ってくれればいーのに!

まっ、いーや。ワンちゃんが魔法で見せてくれてたけど、
しののめちゃん?もあの山頂で言ってたしね。分からなくてもいい事もあるって。
大事なのは……これで私も、ジャンさんティターニアさん、それにみんなの力になれるって事!
そして私も……みんなみたいに、カッコよくなれるかも、って事。

ところで……この沢山の日記、これは記憶を無くしちゃう前の私が書いてたものみたい。
読んでみると、これがけっこー面白いの。
……あれ?これって書いた覚えはないけど自画自賛になっちゃうのかな?うわ、はずかしー!
まっ、一番新しいのだけは、ずっと前にジャンさんが読んじゃ駄目って言ってたから読んでないんだけどね。

で、読んでみて分かった事は……私はどうやら、カッコいい、が好きだったみたい。
それはもう、お金にならなくても、自分が危なくなっても、私はカッコいいを大事にしてた。
そんな前の私はきっと、とってもカッコよかったに違いない。
だから……今の私が、前の私みたいに、前の私よりももっと、カッコよくなれば。
ジャンさんもティターニアさんも、喜んでくれるよね。



【よろしくおねがいします】

34 :
>>33
参加を拒否します
雰囲気が悪くなるので

35 :
のーずいイカれちゃってるやつが

なにをいっても イミがない!

ラテは じえんをした!

36 :
異常者をこのまま放置するなよ

37 :
待機時間として与えられた一週間は矢のように過ぎ去り、ソルタレク突入の日が到来した。
地上部隊とは別働して空路でのソルタレク侵入を目指す指環の勇者一行は、飛空艇の甲板に集合していた。

>「竜達よ、そろそろ知っていることを全て教えてもらおうか。この期に及んで勿体ぶるのは禁止だ。
  敵を知り己を知れば百戦危うからず、と昔から言うからな」

ティターニアの計らいで設けられたのは、指環に宿る竜たちを交えての作戦最終確認の場だ。
力の大部分を未だ教団に奪われたままのウェントゥスは、幻体の維持さえも疲労するのか指環に篭ったままだった。

>「ニーズヘグが光と闇の竜は我々四星竜とは性質を異にすると言っていたのを覚えていますか?
 光の竜ルクスもテネブラエと同じく無数の影を持つ存在……。
 今は恐るべき魔女と化した件の光の指輪も、もとは無数の影の中の一つだった。その名はエルピス――」

「闇の指環同様、光の指環もまた一枚岩ではないということか……」

テネブラエの代理として出席させられ悪態を付いているアルマクリスを見ながら、スレイブは益体もない感想を漏らした。
ただの人間から紆余曲折を経て指環の化身へと成った男は、なんのかんのと言いながらも指環の勇者に協力してくれている。
しかし、アルマクリスがここに居るということは、黒犬騎士アドルフもまた指環の中に収まっているということだろうか。

>「そうか……予知の力を持つばっかりに絶望の未来を見てしまい、虚無に呑まれた――そうなのか?」
>「ええ、おそらくは――
  もしかしたら、全てを虚無で呑み込むしかこの世界を救う道はないと、分かってしまったのかもしれません」

『エルピスは……光竜の中で最も世界の在り方について案じておった。やり方に問題はあったがの。
 "指環の魔女"の創造も、世界を好き勝手に分割して為政者の真似事をする、ヒト共への牽制みたいなものじゃ』

スレイブの手の中にある風の指環が震え、ウェントゥスの声だけが響いた。

『今の世にあって、祖龍や儂ら七竜の影響力はあんまり大きくはない。
 ダーマは相変わらず魔族が支配しておるし、東のヴィルトリア……今の帝国じゃな、あっちはヒトの威勢が強い。
 儂らは祖龍の封印に力の殆どを使ってしもうたというのもあるが、まぁなんちゅうか、時代が変わったんじゃろ』

いつにもなく落ち着いた口調で、ウェントゥスは語る。

『この世界は儂らが産み落とした愛子のようなもんじゃが、いつまでも過保護にあれこれ指図するもんでもない。
 世界のことはそこに生きる命たちが決定し、営んでいくもの。
 それがこの数千年で儂らの出した結論じゃったが、エルビスはそれに納得しておらんかった。
 奴はヒト任せにして眠りについた儂らを腑抜けと断じ、単独で世界に対して手を加え続けておった』

「……それが、『指環の魔女』ということか」

38 :
『世界の営みに積極的に絡んで行こうっちゅうエルビスの姿勢が間違っていたとは儂も思わんよ。
 現に、こうして無軌道にヒトの跋扈を赦したせいで、祖龍もマジギレして復活しかけとるわけじゃしな。
 ただ結局のところエルビスのやり方は、世界を虚無に呑み込んで生まれた直後の状態に戻すことに近い。
 世界が生まれて幾星霜、ここまで積み上げてきた命の営みの全てを無に帰するのと同じじゃ』

「エルビスは何故そんなことをしようとしている」

『テッラが言うたじゃろ、それしか世界を救う方法がないと。"絶望の未来"を避け得る唯一無二の方法。
 それは、マジギレした祖龍が世界を滅ぼす前に、好き勝手落書きされた世界を、まっさらにする。
 ……まぁ身も蓋もない言い方をすると、運営に失敗した世界を一度消してなかったことにするってことじゃ』

つまりは祖龍に対するご機嫌取りに過ぎん、とウェントゥスは吐き捨てた。
ヒトの営みはおろか、ヒトに任せて眠りについた指環の竜達そのものを否定するようなやり方。
苦々しい想いは、おそらくウェントゥス自身にもダーマを放置していた自覚があるからだろう。

『……喋り疲れた。儂もうちょい寝とるからあとで起こしとくれ』

「責任重大だな」

スレイブは目頭を揉んでそう零した。

「エルビスは、今の世界の状態が『失敗作』だと、そう断じている。
 俺たちは奴に相対し、ヒトが営んできたこの世界が間違いなどではなかったと、証明しなければならない」

証の立てかたなど今この場で論じたところで意味はあるまい。
敵は光の指環が『世界の改竄者』として生み出した指環の魔女。
世界を白紙に戻すという途方もない野望は……必ず止めなければならない。

・・・・・・――――――

39 :
「現地の最終確認を行っていた斥候部隊から連絡があった。
 ソルタレク進撃の地上部隊が都市凱旋門へと集結し、交戦準備が完了したそうだ。
 カルネージ諸島のシュトローム要塞に詰めていたダーマ軍も既に出立している。
 ハイランドの地上部隊が凱旋門付近で戦闘を行い、ダーマ軍が横合いから包囲する手筈だ」

管制部隊から遠話で送られてきた暗号電文を翻訳して、スレイブは仲間たちに伝えた。
地上での交戦を陽動とし、隠密裏に飛空艇で空中からソルタレクへの侵入を果たす。
作戦の都合上、アスガルドから直接飛び立った飛空艇は、ソルタレクの防空警戒網ギリギリの空域に停留していた。

「ここから先は本当に後戻りは出来ない。改めて確認しておくが、本当に"その子"を連れていくのか?
 今からでも揚陸艇に乗せて地上部隊に保護してもらうことはできると思うが……」

スレイブが指摘したのは、ティターニアやジャンがラテと呼ぶ少女のことだ。
飛空艇の離陸の瞬間に地上から飛び乗ってきたらしき彼女に、スレイブはどう対応して良いかわからなかった。
『飛び立とうとする飛空艇に飛び乗る』という恐るべき所業を難なくこなした身体能力には目を見張るものがある。
しかし、その天真爛漫過ぎる言動は、いくつ命が散るとも知れない戦場に連れ込むには不安を否めない。

「厳しい言い方をするが、指環の魔女との決戦で子守りまでする余裕などないだろう。
 ティターニアやジャンがその子を庇って傷を負うことがあれば、それこそ本末転倒だ。
 その子とあんた達の双方が危機に陥るなら、俺はあんた達の方を優先するぞ。
 ……俺の"仲間"はあんた達だ。それだけは、憶えておいてくれ」

スレイブはラテの方を見ずにそう言った。
彼にとってはシェバトで初めて対面し、以降は飛空艇の中で留守番をしていた印象しかないが、
ティターニアやジャンにとってはかつての仲間であるらしい。
アスガルドとソルタレクの一度目の衝突の際に、敵の死を間近で見て心を砕かれてしまった少女。
彼女をソルタレクにつれていくことに、意味はあるのだろうか。

「じきに地上部隊の交戦が始まる。議論している時間はなさそうだな」

せめてもの抗議のように、スレイブは踵を返して飛空艇の窓から外を眺めた。

『……あっ、やばい。やばいやばいやばい』

不意にスレイブの指環からウェントスの幻体が飛び出し、焦った表情で窓に張り付いた。

『メアリの奴、シェバトから拉致ってきた儂の本体を出してきおった!』

「何だと」

飛空艇に備え付けの索敵用望遠鏡を覗けば、ソルタレクの上空に一匹の竜が顕現している。
その姿はシェバトの空に鎮座していた『風竜ウェントゥス』そのものだ。

「馬鹿な、ここはまだソルタレクの警戒空域の外のはず。気取られたのか!?」

『いや、敵意はこっちには向いとらん。儂の力じゃから儂に向けられたら一発で分かる。
 あれは……たぶん、表に集結しとるアスガルドの地上部隊を叩き潰すつもりじゃ』

シェバトという大都市を丸々一つ封鎖し得る竜の力があれば、地上を容易に蹂躙できるだろう。
この差配はメアリによるものか、あるいはソルタレクに押し込まれたエーテル教団の反撃か……

「マズいぞ……!侵攻部隊は対空迎撃の手段を殆ど持っていない。このままじゃ地上の戦線が瓦解する……!」

スレイブは仲間たちに振り向き言った。

「ティターニア、ジャン、シノノメ殿、行こう。シェバトで取り逃がしたウェントゥスを、撃墜する……!」


【ソルタレク上空にウェントゥスの本体が出現】

40 :
後の世にはこう語られる。『指環の勇者たちは飛空艇にて、お互いに視線を交わし合うだけで意思を統一した』
だが、実際のところお互いの意見を口に出し、話し合わなければ作戦の立てようがない。

>「竜達よ、そろそろ知っていることを全て教えてもらおうか。この期に及んで勿体ぶるのは禁止だ。
敵を知り己を知れば百戦危うからず、と昔から言うからな」

>「ニーズヘグが光と闇の竜は我々四星竜とは性質を異にすると言っていたのを覚えていますか?
光の竜ルクスもテネブラエと同じく無数の影を持つ存在……。
今は恐るべき魔女と化した件の光の指輪も、もとは無数の影の中の一つだった。
その名はエルピス――」

ジャンの隣に座っているアクアが、それに付け加えるように口を開いた。

「世界を管理するのがボクたち四属性ならば、光と闇の属性は生物の管理だ。
 エーテルは……最後の手段でしかない。この世界に未来はないと分かった時のための」

>「なに、恐れることはない。奴に対抗する切り札はすでに手に入れておるからな。
闇の司る属性の一つは未知――つまり言い換えれば無限の可能性だ」

>「もっと言い換えればどんなに悪い事でも起こるときゃ起こるって事だけどな」

闇竜の代理としてか、アルマクリスが姿を現す。
トランキルとの掛け合いを見るに、やはり指環の適性はあったようだ。
突入作戦において重要な役割があるだけにジャンは気になっていたが、これならば問題ないとジャンは考えた。

>「エルビスは、今の世界の状態が『失敗作』だと、そう断じている。
 俺たちは奴に相対し、ヒトが営んできたこの世界が間違いなどではなかったと、証明しなければならない」

「数えきれないぐらいのヒトを自分一人で裁こうなんてとんだワガママ野郎だ。
 そういう奴は一発ぶん殴ってやらなきゃ自分のやらかしたことを理解できねえ」

「……ボクの言いたいことは大体ウェントゥスが言ってくれた。
 でもこれだけは言わせてほしい。――どうかエルビスを、止めてくれ」

今までの旅で出会ってきた様々なヒトがいた。
悪人も善人もいたが、だからこそ世界は動くのだ。誰か一人の基準でそれを止めていいものではない。
指環の勇者というより、この世界を旅する冒険者としてジャンは改めて覚悟を決めた。

41 :
―――それからしばらくして、飛空艇はソルタレクの周辺空域へと近づいた。
雲の切れ間から見えるソルタレクは光竜が操っているのか、多種多様なワイバーンや
召喚魔術で呼び出されたのであろう異形の生物が上空を警戒するように飛び回っている。

「連中、ソルタレクを本気で守るつもりみてえだな。
 つまりあいつらには後がねえってことだ」

>「ここから先は本当に後戻りは出来ない。改めて確認しておくが、本当に"その子"を連れていくのか?
 今からでも揚陸艇に乗せて地上部隊に保護してもらうことはできると思うが……」

スレイブが気にしているのは、飛空艇が離陸する寸前に飛び乗ってきたラテのことだ。
最初は記憶が戻りでもしたのかと驚いたが、話を聞くうちにどうも様子がおかしいことにジャンは気づいた。
記憶は戻らず、だが力がある。空っぽになり、砕けた器を無理やり土で固めて埋めたようだとアクアは伝えてきた。

『壊れることはない……と思う。だけど、エルビスとの戦いには連れて行かない方がいいだろう。
 一度砕けた器はたやすく乗っ取られてしまうだろうから』

「連れていくぜ。アクアによりゃあ、指環ほどではないが強い地属性の力があるってんだ」

>「厳しい言い方をするが、指環の魔女との決戦で子守りまでする余裕などないだろう。
 ティターニアやジャンがその子を庇って傷を負うことがあれば、それこそ本末転倒だ。
 その子とあんた達の双方が危機に陥るなら、俺はあんた達の方を優先するぞ。
 ……俺の"仲間"はあんた達だ。それだけは、憶えておいてくれ」

「……飛空艇を守る奴は必要だろう。信者だらけの街をふわふわ飛んで何も飛んでこないわけがねえ。
 それに、ラテも仲間だ。俺たちが巻き込んじまったけどな」

これはお互いに譲れない問題である以上、話を続ける必要はなかった。
スレイブが振り向き、ジャンが武器の確認に戻った直後だ。

>『メアリの奴、シェバトから拉致ってきた儂の本体を出してきおった!』

「お前の本体、大活躍だなオイ……歴史に残る一場面ってやつだ」

飛空艇の窓から外を見れば、ソルタレクの真上に巨大な竜が翼を広げ、巨大な魔法陣を展開しつつあった。
この距離では飛空艇からの砲撃も無意味であり、詠唱が終わればアスガルドの地上部隊は壊滅するだろう。

42 :
>「ティターニア、ジャン、シノノメ殿、行こう。シェバトで取り逃がしたウェントゥスを、撃墜する……!」

「ああ、とっとと仕留めなきゃ地上がまずいぜ!」

ジャンが応じ、甲板に飛び出て指環の力を発動しようとした瞬間だ。
一騎の赤い竜騎兵が飛空艇の横から飛び出し、やや乱暴に甲板に降り立った。

「その必要はありません!我らダーマ軍が……奴を止めます!」

すると、ウェントゥスの本体に動きがあった。
巨竜の眼が光ったかと思うと、なんと頭がよろめき、姿勢を崩したのだ。
当然魔法陣は消え去り、巨竜は苛立ちを示すように大きく咆哮した。

「指環の勇者殿は無駄な消耗を避けてソルタレクに向かい、教団の首魁を早急に討ち取ってほしいとのことです!それでは!」

レッドミスリルの鎧を煌かせ、竜騎兵はウェントゥスの本体へ向かう。
どうやらダーマ軍は竜騎兵部隊を相当数投入したらしく、明らかに眷属の数が減り、巨竜も詠唱ができないでいる。

「……まさかここまで助けてくれるとは思わなかったぜ。
 信用されてんな、俺たち」

「で、どうする?ティターニア。このままソルタレクに突っ込むか?それともあの本体ぶちのめして風の指環に力を戻すか?」


【ウェントゥスの本体&眷属&魔獣VSダーマ軍竜騎兵部隊】

43 :
名前:「光竜」エルピス・プレースリー
年齢:20000万以上
性別:♂
身長:全長40m(細長飛行タイプ)
体重:170t程度
スリーサイズ:わりと良心的
種族:半龍半星
職業:光竜にしてスーパースター

性格:愉快痛快にしてサービス精神旺盛

能力:全光属性魔法

武器:全身とその存在そのものが武器である。

防具:光のうろこと強力な全身を纏うオーラ。

所持品:様々な古代語楽譜

容姿の特徴・風貌:ちょっとファンキーでロックなテカっている光龍

簡単なキャラ解説:
半分はドラゴンだが半分はスターである。
エーテル教団の影響でかなりダーク化している、龍族のスーパースター。
母親は星であるという言い伝えがある。
秘技は「エルピス・プレス」と「エルピス・ブレス」という強力なもの。
外見に反して、かなりフランクな性格。

【敵役として参加します。よろしくお願いします。】

44 :
今にも飛び立とうとしている飛空艇の甲板に、何者かが降り立った。

>「……あれ?びっくりさせちゃった?」

「ラテ殿!? どうやって……!? そなたもしや記憶が」

ラテは依然として戦える状態ではないはずだったので、ユグドラシアに保護してもらっておく予定だったのだが――
まさかここまで身一つでよじ登ってきたとでもいうのか。

>「ジャンさん、ティターニアさん、わたしも一緒に連れていって。
 お願い……わたしも、みんなの力になりたい。
 みんなと一緒に戦って、みんなみたいにカッコよくなりたいの」

記憶が戻ったわけではなさそうだ。
しかし、一時は全てが幼児退行してとても戦える状態では無かったというのに、
少なくとも身のこなしだけは元通り、どころか以前よりも機敏になっているようにすら見える。
その身に宿したフェンリルの力の影響かもしれなかった。

>「……今からこの子を説得して、降ろしている時間はなさそうですね」

「……ああ」

危ないから残っておけと言ってあっさり引き下がるわけもなく、この身体能力では物理的に降ろすのも不可能に近いだろう。
実際に戦いに出すかはともかく、とりあえず今は出発するしかなさそうだ。

45 :
*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*・*゚・*:.。. .。.:*・*☆*・*゚・*:.。. .。.:*・*☆*

46 :
飛空艇は順調に航行し、ソルタレク突入直前。
スレイブが最終確認という形を取りつつラテは連れて行かない方がいいのではないかと提案する。

>「ここから先は本当に後戻りは出来ない。改めて確認しておくが、本当に"その子"を連れていくのか?
 今からでも揚陸艇に乗せて地上部隊に保護してもらうことはできると思うが……」

>『壊れることはない……と思う。だけど、エルビスとの戦いには連れて行かない方がいいだろう。
 一度砕けた器はたやすく乗っ取られてしまうだろうから』
>「連れていくぜ。アクアによりゃあ、指環ほどではないが強い地属性の力があるってんだ」

『ええ、今のラテさんはフェンリルの力を宿している……大地の竜たる私と一緒なら強力な戦力にもなり得るはずです』

スレイブと同じく慎重論を唱えるアクアに対して、この際連れて行こうというジャンとテッラ。
様々な意見が飛び交う中、ティターニアは改めてメンバーを見まわした。
すっかり指輪の魔女が最大の敵のような気分になっているが、指輪を全て集めて祖竜をどうにかする、
というのが最終目標である以上、あと二人指輪の勇者が必要だ。
まずジュリアンの方を見てこっちはビジュアル的にも立場的にも何も違和感は無いか、
と思いつつ、続いてパックの方に視線を移してまじまじと見る。

「いや、別に駄目ではないんだがなんというかどっちかというと運転手兼アイテム管理係枠というイメージなのだよな……」

「ティターニア様! 思考が漏れちゃってるよ!? うん、そういうポジションじゃないのは自分でも分かってるけどさあ!」

>「厳しい言い方をするが、指環の魔女との決戦で子守りまでする余裕などないだろう。
 ティターニアやジャンがその子を庇って傷を負うことがあれば、それこそ本末転倒だ。
 その子とあんた達の双方が危機に陥るなら、俺はあんた達の方を優先するぞ。
 ……俺の"仲間"はあんた達だ。それだけは、憶えておいてくれ」

>「……飛空艇を守る奴は必要だろう。信者だらけの街をふわふわ飛んで何も飛んでこないわけがねえ。
 それに、ラテも仲間だ。俺たちが巻き込んじまったけどな」

「その通りだ。パック殿、そなたは飛空艇を守るという拠点防衛の重要な立ち位置なのだ」

パックを適当にそういいくるめ、皆の方に向き直ってふと真面目な顔になって告げる。

「今度は大丈夫だろう。彼女の心を砕いたのは指輪を求める者同士の争いだ――
でも今回は違う。裏で糸を引きそうなるように仕向けていた黒幕との対決だからな」

>「じきに地上部隊の交戦が始まる。議論している時間はなさそうだな」

せめてもの抗議のように言うスレイブだったが、その言葉の通り、議論している時間はなくなったのであった。
ソルタレク上空に現れたのは、巨大な翼竜。風竜ウェントゥス――その本体だ。

47 :
>『……あっ、やばい。やばいやばいやばい』
>『メアリの奴、シェバトから拉致ってきた儂の本体を出してきおった!』
>「何だと」
>「ティターニア、ジャン、シノノメ殿、行こう。シェバトで取り逃がしたウェントゥスを、撃墜する……!」
>「ああ、とっとと仕留めなきゃ地上がまずいぜ!」

「良い機会だ、こうなったらウェントゥス殿に本来の力を戻してやろうぞ――!」

一行が出陣しようとしたその時、一騎の竜騎兵が甲板に降り立つ。

>「その必要はありません!我らダーマ軍が……奴を止めます!」

「しかし竜に対抗するには指輪の力が……なんだと!?」

指輪の力が必要、そう言おうと思ったのだが、次の瞬間に目に飛び込んできたのは大きくよろめき姿勢を崩すウェントゥスの姿であった。
詠唱中の魔法陣は消え去り、差し当たっての地上部隊崩壊への秒読みはリセットされた。

>「指環の勇者殿は無駄な消耗を避けてソルタレクに向かい、教団の首魁を早急に討ち取ってほしいとのことです!それでは!」

>「……まさかここまで助けてくれるとは思わなかったぜ。
 信用されてんな、俺たち」
>「で、どうする?ティターニア。このままソルタレクに突っ込むか?それともあの本体ぶちのめして風の指環に力を戻すか?」

ウェントゥスの制圧を彼らに任せてこのまま突っ込んだ場合、
一番うまくいけば――つまり竜騎兵部隊が首尾よくウェントゥスを仕留めることに成功すれば、
無駄な消耗もないまま指輪に力も戻り、万全の状態で指輪の魔女と対決できるだろう。
しかし、制圧に時間がかかった場合は、風の指輪に力が戻らないまま対決となる可能性も否定できない。
それはまだマシな方で、最悪負けてしまった場合は地上部隊が全滅することになる。
そんな時、地上部隊からの緊急連絡が入ったらしく、パックが悲鳴のような声をあげる。

「ティターニア様、大変!!」

「なんなのだ、騒々しい」

「地上部隊に戦意喪失する者が続出してるって!」

「成程、先刻の魔法陣は精神に作用する類の術だったのか。ああ見えて不完全ながらも発動していたのかもしれないな――」

48 :
そう分析するジュリアンに、ティターニアが反論しようとしてあることに思い至る。

「しかし精神に作用する類の術は光と闇とエーテル属性の専売特許では……あっまさか……」

『指輪の魔女に抗おうとするウェントゥスはこちらにいる。
ということはあそこにいる方のウェントゥスは文字通りのエルピスの傀儡なのかもしれなません』

「やはり我々が出るしかないようだな――! 地上部隊が骨抜きにされる前に決着を付けるぞ!
パック殿、攻撃が届く距離まで接近だ!」

堅牢の大地の竜装【クエイクアポストル】を身にまとい、開幕妨害を仕掛けるティターニア。

「――グラビティプレス!!」

対象にかかる大地の引力――つまり重力を最大限まで増幅し、動きを鈍らせる妨害魔術。
特に飛空系の相手への効果は絶大で、並大抵の相手なら問答無用で地面に引きずり落とすことが出来る。
流石に相手は風竜ウェントゥス、一筋縄ではいかないが、それでもいくらかの足枷にはなったのだろう。
ウェントゥス本体は敵意のこもった目で一行を睨みつけた。

【我も前哨戦としてウェントゥス本体戦を持ってこようと思っていたところなので驚いた!

>エルピス殿
テンプレは竜としての姿を現した時の設定、ということで良いのだよな。
(今のところエルピスは闇落ち(?)した光の指輪に宿っている光の竜の”影”で
当代の指輪の魔女のメアリを操っている存在なので)
早速だがもしよければウェントゥス本体がエルピスに操られている、という設定で
ウェントゥスの操作をお願いしたいのだがどうだろうか!
OKかやめとくか2日以内に返事くれると助かる!】

49 :
>>48ティターニア様

了解しました。
その方向で進めます。

50 :
>49
いきなりの無茶振り受けてくれてかたじけない!
では順番としてはこの位置(我の次)に入ってもらうということで早速よろしく頼む!

51 :
>エルピス殿
念のため確認しておくが一週間ルールなので明日の夜ぐらいまでにタノム!
がっつり導入とか無くてもとりあえず動かしてみる感じでも全然構わないので!
期限を過ぎると一応次の人に自動的にターンが移っちゃうルールなのでもし遅れそうな場合はそれまでに申告よろしく

52 :
エルピス殿が来ないようなのでとりあえずラテ殿よろしく!
ウェントゥス本体はいつも通りみんなで動かそう

53 :
>>52ティターニア様

すみません、多忙だったので、土日あたりまでお時間頂けると嬉しいです。

54 :
もうレス書き始めてるし全部書き直すのも嫌なので遠慮してくださいありがとうございます

55 :
そもそも次の土日までって二週間も一人で待たせるつもりですか
私そんなの付き合ってらんないですよ

56 :
【正直言ってテンプレの内容も怪しいし世界観からズレてますし他スレで愉快犯的なコテが出没してる時期に
こういうことされると疑ってしまうんですよね。
他の方も言ってますが二週間近く待たされるとテンポも悪くなりますし
順番飛ばされたと分かった数時間後にレスする辺り確信犯なのでは?】

57 :
【ティターニアさんの要請から2日の間、携帯で一報入れることすらできないほど多忙なら
 そもそも参加は難しいんじゃないかと思うんスよ
 難しいっつーのはエルビスさんにとって負担になるって意味じゃなくてね
 率直に言うと私たち他の参加者が迷惑するって意味ね
 少なくとも私は、悪意があろうがなかろうがまともに連絡とれない人と一緒にはプレイできないッス】

58 :
>>55
とりあえずお前は黙ってろ

59 :
>>皆様

お待たせしました。とりあえず延長反対意見多数ということで、
半星龍エルピス・プレースリーの参加権限を放棄させていただきます。
NPCとして動かしていただければと思います。長引かせて失礼しました。

60 :
ドラリンもそろそろ外部板移行を考えた方がいいと思う
これからクライマックスなのに、こういう妨害が入ると萎えるわ

61 :
>エルピス殿
折角参加希望してくれたのになんか済まない……。
でも1週間ルールは基本1週間以内にレスできる環境の人を募集しますという意味でもあるので
たまに1日2日遅刻する程度ならともかく流石に2週間近くかかるのが常態だとちょっと厳しいかもなので今回の辞退は正解だと思う
出番がまだ先だと思ってテンプレだけ投下したところにいきなり振ってしまったのが原因だとしたらマジで申し訳なかった!
お待たせしたら悪いと思ってつい……。
今後はたまたま手の付けられない時期と被ってしまった時は順番が回ってきた時点でパス宣言か順番変更申請するのをお勧めしておこう

62 :
>>60はハイパーウンコ荒らしで、そっち系列への引き抜きなので無視で

63 :
>「現地の最終確認を行っていた斥候部隊から連絡があった。
  ソルタレク進撃の地上部隊が都市凱旋門へと集結し、交戦準備が完了したそうだ。
  カルネージ諸島のシュトローム要塞に詰めていたダーマ軍も既に出立している。
  ハイランドの地上部隊が凱旋門付近で戦闘を行い、ダーマ軍が横合いから包囲する手筈だ」

スレイブさんがなんか難しそうな事を言ってる。
難しそうなって言うか、実際に難しいんだけどね!
でもなんとなくだけど意味は分かるよ!前のわたしの日記帳にも、それっぽい事が書いてあったもん。
つまり……遠くから延々石を投げて、嫌がって出てきたら必殺パンチ!って事だよね。
この場合の石はハイランドの人達の魔法とかで、必殺パンチはダーマのムキムキな兵士さん達!

>「ここから先は本当に後戻りは出来ない。改めて確認しておくが、本当に"その子"を連れていくのか?
 今からでも揚陸艇に乗せて地上部隊に保護してもらうことはできると思うが……」

「むー、スレイブさんったらひどい事言ってー。スレイブさんも見たでしょ?
 わたし、このお船の壁にしがみついて登ってきたんだよ?
 すごくない?ソルタレクでも大活躍間違いなしだって!」

>「連れていくぜ。アクアによりゃあ、指環ほどではないが強い地属性の力があるってんだ」

「ほらー!ジャンさんもこう言ってるし!ね?仲良くしよーよ!」

>「厳しい言い方をするが、指環の魔女との決戦で子守りまでする余裕などないだろう。
 ティターニアやジャンがその子を庇って傷を負うことがあれば、それこそ本末転倒だ。
 その子とあんた達の双方が危機に陥るなら、俺はあんた達の方を優先するぞ。
 ……俺の"仲間"はあんた達だ。それだけは、憶えておいてくれ」

「うわー!スレイブさんったらめちゃくちゃ頑固!
 まぁ分かってたけどねー!スレイブさん仲間思いだもん」

>「……飛空艇を守る奴は必要だろう。信者だらけの街をふわふわ飛んで何も飛んでこないわけがねえ。
 それに、ラテも仲間だ。俺たちが巻き込んじまったけどな」
>「今度は大丈夫だろう。彼女の心を砕いたのは指輪を求める者同士の争いだ――
  でも今回は違う。裏で糸を引きそうなるように仕向けていた黒幕との対決だからな」

「あ、今ジャンさんがすごくいい事言った!
 そうだよわたしもスレイブさんの仲間に入れてよー」

……でも、巻き込んじゃったなんて思われるのは、ちょっといやかなー。
前のわたしがどういう理由で記憶がなくなっちゃったのかは分かんないけど。
わたしのせいで二人が辛そうな顔をするのは、ちょっとどころじゃなく、いやだなぁ。

……わたしが、もっと前のわたしみたいに振る舞えたら。
ジャンさんもティターニアさんも、嬉しそうにしてくれるかな。

>『……あっ、やばい。やばいやばいやばい』
>『メアリの奴、シェバトから拉致ってきた儂の本体を出してきおった!』

「……え?ウェンちゃんの本体って事は……ドラゴン!?わー、生で見るのは初めてかも!」

まーシェバトに行った時も見てるはずなんだけど……。
あの時の私はまだあんまり色んな事を考えてなかったからなー、覚えてないんだよね。

64 :
>「ティターニア、ジャン、シノノメ殿、行こう。シェバトで取り逃がしたウェントゥスを、撃墜する……!」
>「ああ、とっとと仕留めなきゃ地上がまずいぜ!」
>「良い機会だ、こうなったらウェントゥス殿に本来の力を戻してやろうぞ――!」

「ふふーん、スレイブさん見ててよねー……じゃなくて、えっと……見てて下さいね、かな?
 わたしが頼りになるかわいこちゃんだってとこ、見せてあげますから!」

不敵に笑って、指をびしっと突きつけて、自信満々に!
……うん、日記の中のわたしはこんな感じの喋り方だったよね!
ちゃんと前のわたしみたいにならなきゃ。

>「その必要はありません!我らダーマ軍が……奴を止めます!」

って、えー?そんなぁ。カッコつけたばっかりなのにそりゃないよぉ。
てゆーかホントに大丈夫なの?
確かにそのちっちゃな竜で周りを飛び回れば、そう簡単には狙いを付けられないかもしれないけど。
動きを止め続ける事も難しいんじゃないかなー。
だってなりふり構わずにボディプレスされるだけでも地上の人達にとっては大損害になっちゃうよ?

>「指環の勇者殿は無駄な消耗を避けてソルタレクに向かい、教団の首魁を早急に討ち取ってほしいとのことです!それでは!」
>「で、どうする?ティターニア。このままソルタレクに突っ込むか?それともあの本体ぶちのめして風の指環に力を戻すか?」

「行こ……じゃなくて、行きましょうよティターニアさん。
 わたし達が助けてあげないと、ちょっと危ないと思いますよ」

なんだか不発に見えた魔法も、地上の人達には効いちゃってるみたいだし……。

>「やはり我々が出るしかないようだな――! 地上部隊が骨抜きにされる前に決着を付けるぞ!
  パック殿、攻撃が届く距離まで接近だ!」

そうこなくっちゃ。
スレイブさんに、わたしだってジャンさんの仲間なんだって見せつけてあげないと。
それに……

「……ジャンさん。ティターニアさんも。見てて下さいね。
 わたし、前のわたしみたいに、頑張りますから」

……だけど頑張るって言ってもどうすればいいんだろう。
ウェンちゃんの本体は空を飛んでて、しかもこっちと違って自由自在に飛び回れる。
普通に近づいたら撃ち落とされちゃうよね。
……と思ってたんだけど、ウェンちゃん(本体)はどうもわたし達に気付いていないみたい。
これは……あ、そっか。シノノメちゃんの闇の指環だ。
もう指環の力を使いこなしてるんだ。すごいなぁ。

>「――グラビティプレス!!」

そしてティターニアさんは……なるほどなるほど。
まずはウェンちゃんを地上に引きずり降ろそうって感じだね!
まっ、相手の有利なフィールドでいつまでも戦ってらんないもんね!
日記にも書いてあったよ。レンジャーたるもの地形を上手く利用して戦ってなんぼだって。
まっ、こんなお空のど真ん中で地形も何もないけど、それでもやりようは……

あっ、そんな事を考えてたらフィリアちゃんも動き出しちゃった。
甲板から飛び出して、蜂さんの羽でウェンちゃんに近づくと、そのまま翼を切り刻む。
すごーい、竜騎兵さん達よりもっと速い!

65 :
「……負けてらんないなぁ」

わたしは懐から銀貨を取り出す。
それを親指で上に弾くと……あら不思議、おっきな槍になっちゃった。

「種も仕掛けもございません……なんちゃって」

これはねー、わたしの中にいるワンちゃんの力なの。
ティターニアさんの指環と同じ、大地の属性。
銀じゃん、金属じゃんって?金属だって元を辿れば大地の一部だったんだから操れちゃうんですー。

『……ワンちゃんではない』

あっ、ワンちゃん。
このワンちゃんはねー、なんか気付いたらわたしの中にいたの。
声はすっごく怖そうだけど、ジャンさん達が遠くに行っちゃった時は
みんなの様子を見せてくれたり、実は結構優しいんだよ。

『貴様がいつまでも呆けていては、我が困る。それだけの事だ』

ふーん……でも、なんでわたしが呆けてるとワンちゃんが困るの?
……ま、いーや。それより早くあのウェンちゃんを落とさないとね。
えーと、まずはもう一枚コインを取り出して。今度は鎖を作ろうね。とってもながーい鎖を。
そんでもって槍に鎖を巻きつけて……せーのっ!

「フィリアちゃーん!これを使って!」

そう叫びながら、わたしは槍をぶん投げた。
もちろんフィリアちゃん目掛けてじゃないよ。
槍は流れ星みたいな速さで、ウェンちゃんの翼に突き刺さる。
いやぁ痛そう。

フィリアちゃんにあげるのは、鎖の方。
……うん、あっちも察してくれたみたい。
鎖を槍から外して、ウェンちゃんの周りを飛び回る。

うんうん、いい具合に巻きついてるねー。
めっちゃ飛びにくそうなのに頑張るなぁウェンちゃん。
だったら……

「……ねえねえワンちゃん」

『ワンちゃんではない。フェンリルと呼べ』

「……確かにその方が、前のわたしっぽいかな。
 それじゃ……ウェントゥスとフェンリルさんって、力比べをしたらどちらが勝つんですか?」

『こと力比べに限れば、あやつなど稚児と変わらぬ』

「フェンリルさん、子供相手に力比べした事あるんですか?大人気なくない?」

『……ものの例えだ』

「なーんだ、紛らわしい事言わないで下さいよ。まっ、いーや。
 それだけ分かれば十分……さぁ、地上に落っこちてもらいましょうか!」

わたしは鎖をぶん回そうと、ぐいっと引っ張って……あ、あれ?びくともしない。

66 :
「ちょっとー!どうなってんのさワンちゃん!」

『……その愚かさは器由来か。如何な名剣も心得なき者が振るわばなまくらと変わらぬ』

「名犬?」

『……我が力を十全に扱えるのは、我が心を知る者のみという事よ。
 なにゆえ、人の心で魔狼の肢体が使いこなせよう』

「む……難しくてよく分かんないからもういいです……。
 えっと……じゃあこれどうしよう。綱引きは下の人達にやってもらおっかな。それとも……」

わたしはちらりとジャンさんの方を見る。
いや、流石にね?
流石のジャンさんもこの足場でウェンちゃんが相手じゃ無理だとは思うんだけどね?

「……ジャンさん、ドラゴンとの力比べとか、興味あります?」



【そう言えば今回途中から敵役に転向したい(かも?)と思ってるんですけど大丈夫でしょうか】

67 :
>>66
頼むからこれ以上引っ掻き回すのはやめてくれ

68 :
>66
そういえば前から敵役やってみたいような事を言っていたな――
元々敵役参加アリのスレだし敵役化自体は全然OKだ
敵役化するのはラテ殿で合ってるかな? 一時の敵役化なら全然大丈夫だと思う。
長期的に敵役化となると負担が大きくなるかもしれないけどそれでも良ければ。
というのがシノノメ殿とフィリア殿が指輪ホルダーなのでこれから動かしてもらう必要があるシーンも出てきて両サイド操作になるかもしれないので……。

どっちにしても最後まで敵のままだとなんか寂しいので最終的には戻ってきてほしいな、と我は思う
特にラテ殿の場合一回精神崩壊した人を性懲りもなく戦場に連れてって敵化した挙句死亡ENDとかだと
あまりに救いが無いというか作中のジャン&ティターニアがあまりに立つ瀬がないゆえ……
(自キャラの処遇は各自の判断なので飽くまでも個人的な希望だ!)

69 :
わーいありがとうございます!
大丈夫ですよー私はこう見えてハッピーエンドが好きなんです。過程はともかくね!

70 :
>>69
ふざけんなks

71 :
ラテ
悪いことは言わん、今のうちに謝罪しとけ

72 :
>「ああ、とっとと仕留めなきゃ地上がまずいぜ!」
>「良い機会だ、こうなったらウェントゥス殿に本来の力を戻してやろうぞ――!」
>「ふふーん、スレイブさん見ててよねー……じゃなくて、えっと……見てて下さいね、かな?
 わたしが頼りになるかわいこちゃんだってとこ、見せてあげますから!」


スレイブの求めにジャンとティターニア、そしてラテが応じ、ウェントゥスの姿を間近で確認すべく甲板へ出る。
既に何らかの魔法を発動しようとしているのか、ウェントゥスの眼前に巨大な魔法陣が浮かび上がった。

「マズい……間に合わない!」

飛空艇の主砲でどうにか痛打を与えられないかと踵を返したスレイブの後ろで、何かが甲板に降り立つ音がした。
朱く輝くミスリルの鎧に身を包み、同じく鎧に覆われた竜に跨る魔族の姿に、スレイブは記憶から名を探り当てた。

>「その必要はありません!我らダーマ軍が……奴を止めます!」

「レッドミスリルの竜騎鎧……"朱の屠龍師団"か!」

ダーマの王都空域の防衛を担う特務部隊の一つだ。
その鎧の朱は例外なく、竜騎兵達が仕留めてきた竜の血によって染まったものだとされる手練の集団。
武勇に偽りはなく、大規模魔法を放たんとしていたウェントゥスが呻き、仰け反り、陣が破壊された。

>「指環の勇者殿は無駄な消耗を避けてソルタレクに向かい、教団の首魁を早急に討ち取ってほしいとのことです!それでは!」

伝令だけを残して戦場へと飛び去っていく竜騎兵を見送って、ジャンが感慨深く呟いた。

>「……まさかここまで助けてくれるとは思わなかったぜ。信用されてんな、俺たち」

「ああ……本国の防衛を手薄にしてまで兵力を寄越してくれたんだ。俺たちも応えなくてはな」

"朱の屠龍師団"は航空戦闘に特化した竜殺しのエキスパート達だ。
武装化されているとはいえ巡航艦であるリンドブルムでウェントゥスに接近するよりもリスクは減るだろう。
だが――それでもなお、一介の戦闘者とは一線を画する戦力を有すのが、指輪の竜という存在だ。

>「で、どうする?ティターニア。このままソルタレクに突っ込むか?それともあの本体ぶちのめして風の指環に力を戻すか?」
>「行こ……じゃなくて、行きましょうよティターニアさん。わたし達が助けてあげないと、ちょっと危ないと思いますよ」

選択肢は二つに一つ。竜騎兵を支援して確実にウェントゥスを墜とすか、任せてソルタレクに突入するか。
メアリとの決戦を控える指環の勇者の立場であれば、余計な損耗は避けるべきだろう。

『あの……儂の意見は……?』

性懲りもなくゴネはじめたウェントゥス(の搾りカス)を目線で黙らせて、スレイブは決断を待った。
逡巡すること数秒、沈黙は操縦手パックの悲鳴じみた報告によって寸断される。

>「地上部隊に戦意喪失する者が続出してるって!」
>「成程、先刻の魔法陣は精神に作用する類の術だったのか。ああ見えて不完全ながらも発動していたのかもしれないな――」

『えっなにそれ……儂の本体そんな魔法使えるの……?』

73 :
ウェントゥスの困惑も無理はない。風を統べるはずの風竜が、人心を歪ませる魔法を使っている。
おそらくは、ウェントゥスの魔力だけを使って別の者が術式を編んでいるのだろう。
そして術者は間違いなくエルピスと、その契約者たるメアリだ。

『エルピスのぼけなすがぁぁぁぁぁ……!他人のもの勝手に使うとかダメなことじゃろ!!どこまでも儂をコケにしおって!!』

数千年ちまちま溜め込んだ魔力を良いように利用されたウェントゥスが甲板の上で地団駄を踏む。
自分がシェバトで何をしようとしていたかについては完全に忘れているようだった。

>「やはり我々が出るしかないようだな――! 地上部隊が骨抜きにされる前に決着を付けるぞ!
 パック殿、攻撃が届く距離まで接近だ!」

「先にウェントゥスを叩くか……了解した。シノノメ殿、闇の指環で隠蔽を頼む」

竜騎兵達が間断なく攻撃を加えているいまこの瞬間であれば、本体に気取られるなく接近は可能だ。
知覚外からの奇襲――こちらの持ち得る最大限の火力を集中させて、短期で決着を付ける。

>「――グラビティプレス!!」

初手からティターニアが重圧魔法を叩き込んだ。
巨大な体躯をもつウェントゥスを包み込むほどの大規模な魔法陣が展開し、巨竜の羽撃きが目に見えて鈍くなる。
指環と指環のぶつかり合い、まるでシェバト防衛戦の再来だが、敵はスレイブではなく風竜ウェントゥスそのもの。
そしてこちらには、スレイブがいる。

「俺たちも行こう、我が女王」

先駆けて飛翔するフィリアを追うように、スレイブも甲板から飛び出した。
虫精の女王と違って彼には翅も翼もない。寄る辺なき虚空へ放り出されれば、待っているのは自由落下のみだ。
しかし彼は一切ためらうことなく宙へと足を踏み出し、重力の虜となった。

「対空機動剣術――『砕麟』」

術式起動の鍵号を唱えれば、彼の纏う脚鎧の踵部分に小さな魔法陣が出現する。
『跳躍』の魔術。脚で触れたものに対して協力な反発力を付与し、矢を放つが如く自身を発射する術式だ。
飛空艇の側面装甲を蹴ったスレイブは、砲弾にも迫る速度でウェントスの横っ腹へと『着弾』した。

『装甲は俺が破る。防御の薄くなった箇所から痛打を叩き込んでやれ』

スレイブの遠話が響くと同時、一枚一枚が民家の戸板ほどもあるウェントスの鱗がひとつ、弾け飛んで宙に舞う。
ダーマ軍式剣術が一つ、『鎧落とし』。スレイブは跳躍術式でウェントスの体表を飛び回り、鱗を削ぎ落としていく。

>「フィリアちゃーん!これを使って!」

翼の鱗を剥ぎ落とした刹那、スレイブとフィリアとの間に鎖付きの槍が一本突き刺さった。
鎖で繋がった投擲の主を振り仰げば、飛空艇の甲板からラテがにこやかに手を振っている。

「……投げたのか、この巨大な槍を。あそこから?」

スレイブは信じがたいものを見た気分になって眉を開いた。
現在飛空艇はティターニアの魔法の届くギリギリの部分に滞空している。
ゆうに民家10軒はあろうかという距離に、バリスタでも投石機でもなく、ラテは膂力だけで槍を届かせたのだ。

74 :
「あの子を見くびり過ぎていたようだな……」

飛空艇での言動を恥じ入るようにスレイブは目を伏せ、そしてすぐに切り替えた。
ティターニアの重圧魔法のおかげで好き放題出来ているが、ウェントスはじきに戒めを解くだろう。
そうなる前に、出来るかぎり敵の勢いを削いでおきたい。

大槍を突き刺されたウェントスの体表からは、血潮の代わりに仄青い燐光が湧き出ていた。
燐光と同じ色をした風の指環から、ウェントスの幻体が飛び出した。

『この匂い……儂の魔力じゃ!』

「傷口から魔力が漏れ出ているのか……?」

『儂の本体は言わば、水でパンパンに膨らんだ革袋みたいなもんじゃ。穴を開ければ当然中身がチョロチョロ出てくる。
 濃密な竜の魔力じゃからほっといても霧散することなく、じきに本体へと吸収されるじゃろうが……』

幻体は両手を漏れ出た魔力へと突き出す。まるで、飼い犬を抱擁で迎え入れるかのように。

『汝の在るべき主へと還れ――我が魔力!』

空中を漂っていた燐光たちが、導きに呼応して飛来し、幻体へと吸い込まれていった。
指環越しに感覚を共有しているスレイブにも分かる。魔力が少しだけ戻ってきている。

『これじゃ!本体をボッコボコの穴だらけにして、滲み出た魔力を幻体の儂が回収する!
 傷口を補填する魔力をこっちがパクってしまえば本体は削れた身体を癒やすこともできん!
 ついでに儂も元気になって一挙両得じゃ!』

なるほど、とスレイブは鼻を鳴らした。遠話で仲間たちへとつなぐ。

『力の取り戻し方が分かった。刺突系の攻撃でウェントゥスの体表にいくつも傷穴を作ってくれ。
 できるだけ大きな傷が良い。そこから漏れ出した魔力を俺たちで回収する』

再び跳躍術式で本体の翼から背中まで跳び、長剣の切っ先を柄まで深々と突き刺す。
間欠泉のように溢れ出した魔力を全身に浴びて、スレイブは犬歯を見せた。

『全て奪い返すことができれば、俺たちの勝ちだ』


【ウェントス本体にプスプス穴開けて漏れてきた魔力を回収】

75 :
誤字だらけだろお前ドラリン舐めてんのか?

76 :
>「――グラビティプレス!!」

竜装を纏ったティターニアがまず先手として重圧魔法を叩き込む。
導師としての実力と指環の魔力が合わさり、空の支配者たるウェントゥス本体の動きが急に鈍くなる。
そこを好機としてスレイブ、フィリア、ラテが連携して槍を翼に突き刺し、
さらにウェントゥス本体へのダメージが加速していく。

>「……ジャンさん、ドラゴンとの力比べとか、興味あります?」

ラテの挑発的なその問いに、ジャンはニカッと笑って応じた。

「おう、ドラゴン相手は初めてだが興味は大アリだぜ!いっちょ止めてやらあ!!」

そう叫んで自らに気合を入れ、取り出した指環を静かに嵌める。
そして大槍を背中から両手に持ち替えて甲板に立て、ウェントゥスの本体に向けて掲げた。

「アクア、俺らも行くぞ!竜装だ!」

『根源たる水の魔力よ、指環の主に力を!……これが終わったらウェントゥスに今までの貸しを払ってもらおう』

「『大海嘯!!』」

掲げた大槍に水の一滴が落ち、やがて大きな雨となる。
それは一つの流れを作り、ジャンを巻き込んだその瞬間、彼は全身を蒼い竜の鱗で覆い二対の翼を生やした姿となっていた。

>『力の取り戻し方が分かった。刺突系の攻撃でウェントゥスの体表にいくつも傷穴を作ってくれ。
 できるだけ大きな傷が良い。そこから漏れ出した魔力を俺たちで回収する』

「水でパンパンに膨らんでるならよ……こういうやり方もアリだよな!」

二対の翼をはためかせジャンが向かった先は、加重と竜騎兵による執拗な一撃離脱に苦しむウェントゥスの本体。その正面だ。
三騎一組による一か所への集中攻撃と急速な離脱は、徐々にではあるが傷口を広げている。

だが、その中の三騎へとウェントゥスの巨木と見まごうばかりの右腕が薙ぎ払うように襲い来る。
既に十分な加速を得ている竜騎兵たちは横合いからの奇襲にとっさに対応できず、一人がとっさに目をつぶった瞬間だった。

77 :
「どおおおおらああああああいいい!!!!」

竜をその身に纏ったジャンが咆哮と共に竜騎兵たちの寸前で本体の右腕を両腕で押しとどめ、なんと押し返してすらいた。
さらには食い込んだ両腕をさらに突っ込ませ、魔法陣を展開する。

「アクア!制御はいらねえ、全力で魔力をぶちまけろ!」

『流れる水よ!力となりて敵を打ち倒せ!』

両腕から放たれる魔力の水流は鉄砲水のごとく噴出し、本体の右腕内部を蹂躙しつくした。
全てを魔力で構成したことで通常の武器では太刀打ちできないはずの身体は、同じ竜の魔力による破壊には耐えきれないのだ。

竜騎兵たちが続けていた一撃離脱によってできたわずかな傷口。
そこから水流に押し出されるようにウェントゥスの魔力が流れ出し、さらにウェントゥス本体は弱体化していく。

「よっしゃあ!これならいけるぜ、所詮は図体のでかい革袋だ!」

『本来ならもっと天候魔法とか大規模攻撃魔法があるはずなんだけどね……さすがはウェントゥスだよ、指環にその知識だけ逃がすとはね!』

本来なら相性の悪いウェントゥスに大きなダメージを与えたことに満足したのか、
アクアがやや皮肉めいた言い方でウェントゥスの幻体に念話を飛ばす。

「よし!あの巨竜は魔力の放出で落とせると見た!我ら朱の竜騎兵はぁーっ!」

「「「竜の血にて朱色なり!!!」」」

竜騎兵たちもさらに勢いづき、指揮官が檄を飛ばした直後、一撃離脱の戦法を解いて個別に動き始めた。
傷口を無差別に広げ、魔力放出をさらに広げるためだ。


【大型ボスでNPCとの共闘するのいいよね…したいだけですユルシテ!】

78 :
>「……ジャンさん。ティターニアさんも。見てて下さいね。
 わたし、前のわたしみたいに、頑張りますから」

「頼もしいな――しかし無理に前と同じようにならなくともよいぞ」

記憶はなくともラテはラテだ。
一時は精神崩壊状態となり、まともに社会生活が送れるようになるには記憶を戻すしかないと思っていたが、そうでもないらしい。
前と同じにはならなくても、これからの彼女が前向きに生きていけるのであればそれはそれでいいのかもしれない。

>「俺たちも行こう、我が女王」

フィリアとスレイブが、宙に身を躍らせ身一つで接近戦を挑みにかかる。

>『装甲は俺が破る。防御の薄くなった箇所から痛打を叩き込んでやれ』

>「フィリアちゃーん!これを使って!」

ラテがなんと飛空艇の甲板から鎖の付いた槍を投擲し、フィリアが鎖を使ってウェントゥスを簀巻きにする。
そして鎖を使って引きずり落とそうとするラテだったが流石に無理だったらしく、ジャンに振るのであった。

>「……ジャンさん、ドラゴンとの力比べとか、興味あります?」

>「おう、ドラゴン相手は初めてだが興味は大アリだぜ!いっちょ止めてやらあ!!」
>『根源たる水の魔力よ、指環の主に力を!……これが終わったらウェントゥスに今までの貸しを払ってもらおう』
>「『大海嘯!!』」

竜装をまとい二対の翼をはためかせ突撃するジャン。そこにスレイブからの念話が入る。

>『力の取り戻し方が分かった。刺突系の攻撃でウェントゥスの体表にいくつも傷穴を作ってくれ。
 できるだけ大きな傷が良い。そこから漏れ出した魔力を俺たちで回収する』
>『全て奪い返すことができれば、俺たちの勝ちだ』

「――シュートアロー!」

空戦に備え飛空艇に積んでいた矢を大量に、風の魔力を纏ませ空高く打ち上げる。
ウェントゥスの上空まで飛んだところで、風の魔力に代わって大地の重力の魔力が発動し、弾丸のような速度で豪雨のようにウェントゥスめがけて降り注ぐ。
矢を使っているとはいえもちろん通常の魔法攻撃の例にもれず、味方には当たらないご都合仕様だ。
そこにジャンが大技を決め、強烈な水流がウェントゥス本体に打ち込まれた。
矢が刺さった傷や竜騎兵たちがつけた傷から魔力が押し出される。

79 :
>『本来ならもっと天候魔法とか大規模攻撃魔法があるはずなんだけどね……さすがはウェントゥスだよ、指環にその知識だけ逃がすとはね!』

『ミニウェントゥスは自らを僅かな部分だけなんとか切り離した、と言っていましたが実際には違うのかもしれませんね。
魔力の大部分はあちら、ということは裏を返せばそれ以外はこちらにいるのかもしれません』

あの本体がウェントゥス本来の魔法を使っていないことを考えると、実は魔力だけが詰まった袋のようなものなのかもしれない。
どうやらこの戦い、思ったよりもこちらに分があるようだ。
そう思った矢先、ウェントゥス本体の体から細く幾筋もの閃光が走る。

「何かとてつもなく嫌な予感がするが……」

『まさか自爆!? なるほど、元から捨て駒のつもりだったということですね――』

「納得している場合ではないぞ!?」

自爆されれば甚大な被害が出る上に、魔力も雲散霧消して回収できなくなりかねない。
そこでティターニアは、ラテが手持無沙汰にしている、ウェントゥスに巻かれた鎖の端に目を付けた。
相手がすでに穴だらけの袋なら、全身にぐるぐる巻きになった鎖を一気に引いてやればとどめを刺せるはずだ。

「ラテ殿!」『フェンリル!』

ティターニアとテッラは、同時にラテとフェンリルに呼びかける。
フェンリルの力を全ては引き出せないラテだが、大地の竜のテッラと一緒ならフェンリルの力を引き出せるかもしれない。

『久々に竜と守護聖獣のタッグを見せてやりましょう!』

「我も手伝うゆえもう一度それを引っ張ってみようぞ――フル・ポテンシャル!」

ティターニアはラテと自らに身体能力強化の魔法をかけ、鎖に手を掛ける。

80 :
47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2018/03/01(Thu) 21:17
最近は、なりきり掲示板より
テーブルトークRPGの方が人気な気がしますねぇ。
それかみんな『ツイッターでなりきり』とかしているようです。

81 :
>「おう、ドラゴン相手は初めてだが興味は大アリだぜ!いっちょ止めてやらあ!!」

わお、すっごい自信。
私は正直、流石のジャンさんでも無理かなーなんて思ってたんだけど……ジャンさんはそうじゃないみたい。
だったら見せてもらおっかな。特等席で、ジャンさんのカッコいいところを。

>「アクア、俺らも行くぞ!竜装だ!」
 『根源たる水の魔力よ、指環の主に力を!……これが終わったらウェントゥスに今までの貸しを払ってもらおう』

あっ、早くもめちゃくちゃカッコいい!
ねえワンちゃん、わたし達もああいうの出来ないの?
……え?不可能?えーなんで……あなたがわたしを認める事なんてあり得ない?
うわ、ひっどーい。でも……前のわたしだったら、認められてたのかな。

>『力の取り戻し方が分かった。刺突系の攻撃でウェントゥスの体表にいくつも傷穴を作ってくれ。
 できるだけ大きな傷が良い。そこから漏れ出した魔力を俺たちで回収する』
>「水でパンパンに膨らんでるならよ……こういうやり方もアリだよな!」

っと、いけない。私ももっと頑張らなきゃ。
頑張って、カッコいいとこ見せて……そうすればもしかしたら、
前のわたしの記憶が戻ったりするかもしれないもんね。

ようし!それじゃ張り切って……張り切って、どうしよう。
穴を沢山開ければいいんだから、槍をいっぱい投げつけるとか?

……でも、たったそれだけでいいのかな。
ううん……前のわたしなら、もっとカッコよく出来たはずだよ。
例えば、めちゃくちゃおっきな槍を……なんて安直すぎるよね。ちゃんと投げられなきゃ意味がないし。
ウェンちゃんに飛び乗って大暴れ……は、スレイブさんがもうやってるし。
……どうしよう。何をすれば、どこまでやれば……わたしは、前のわたしみたいになれるんだろ……

>「ラテ殿!」『フェンリル!』

「わっ!……ティ、ティターニアさん?」

び、びっくりした……。
急に声をかけられ、手を取られて、わたしは少し裏返った声で返事をする。

『……小鼠。貴様の些少な懊悩など、我には到底理解し得ぬもの。
 だが……それが下らぬ、無意味なものであるという事は分かるぞ』

と思ったら、急にワンちゃんもわたしに声をかけてきた。
しかも大変失礼な内容で。一体どういう意味さ。

『考えているばかりで、事が上手く行くものか。
 矮小な貴様らに出来る事は、ただ全力を尽くす事のみよ。
 忌々しい指環の勇者共とて、そうしているではないか』

……そう言われれば、確かに。
そっか……全力を出す、かぁ。当たり前の事だけど……確かに、私はその事を忘れてた。
ワンちゃん、たまには優しい事も言ってくれるんだね……

>『久々に竜と守護聖獣のタッグを見せてやりましょう!』

……もしかして、テッラさんの前でいいとこ見せたかっただけだったりする?
いや、いいや。例えそうだとしても……ためになる言葉を聞かせてもらったのは、確かだもんね。

82 :
「……ぼけっとしてて、ごめんなさい、ティターニアさん。
 だけどもう大丈夫、いつでも行けます」

>「我も手伝うゆえもう一度それを引っ張ってみようぞ――フル・ポテンシャル!」

「……はいっ!」

わたしは渾身の力で鎖を引っ張る。
ウェンちゃんの体に鎖が食い込んでいくのが見える。
体中の傷に鎖がめり込んで、引き裂いている。
……だけど、まだ終わりじゃない。
ウェンちゃんはおっきなドラゴンで、こっちは飛空艇の上。
だから鎖で引っ張られたなら……ウェンちゃんには、いっそこっちに突っ込んでくるって手が打てる。

「……そうはさせませんけどね。見てて下さい、わたしの全力」

わたしは甲板の手すりに足をかけて、宙に飛び出す。
高く高く、ウェンちゃんの頭上を取るように。
そして宙返り……頭を下に、両足を上に。

コインを弾く。
空中に足場を作り出して、それが砕け散るくらい強く、蹴る。
コインが変化する事による反発力と、私自身の脚力。
それらが生み出す、鳥肌が立つような加速。

その中で私は……もう一度、槍を作り出した。
私の背丈よりの何倍も長い、大きな槍。
貫くのは……ごめんねウェンちゃん、頭を潰すよ。
一瞬で命を奪えば……自爆も出来ないよね。

そして……重い手応え。
血飛沫のように飛び散る魔力が私の頬を叩く。

「ふう……良かった……。ちゃんと当てられて」

もし狙いが逸れてたら、わたし地上に真っ逆さまだった。
危なかったけど……だけど全力を出すなら、これ以外に手はなかったもんね!

「ジャンさーん!ティターニアさーん!それにスレイブさんも!
 見ました!?わたしの全力!すごいでしょー!」

死ぬかもしれなかったという怖さが薄れていって、代わりに高揚感が溢れてくる。

「……少しは、前のわたしみたいにやれましたか?」

面と向かっては聞けないけど……わたしは思わずそう、呟いていた。

『ううむ……なんと愚かな。明後日の方向に吹っ切れおって。
 これではまたテッラに小言を言われかねん……』

……あれ?ワンちゃんなんか言った?

『何でもないわ。愚か者め』

83 :
>>82文章きたねえからさっさと退場させろやゴミ虫

84 :
>「――シュートアロー!」

スレイブの要請にいち早く応えたティターニアが、飛空艇から魔力を纏った矢の雨あられを降らせる。
面制圧での魔法攻撃にも関わらずおそるべき精度だ。矢の嵐に身を投じたスレイブに、一矢さえも掠りはしない。
むしろウェントゥス側の迎撃を阻んで『道』が生まれ、おかげでまだまだ行動速度を上げられる。

>「水でパンパンに膨らんでるならよ……こういうやり方もアリだよな!」

一撃離脱を繰り返す竜騎兵を、うっとおしげに払い落とさんとするウェントゥス。
その巨腕へと飛び込んだジャンは、指環の力を解放し、一切の仮借なしに叩き込んだ。
さながら桶に満たされた水にさらに水を加えれば溢れ出すように、ジャンの魔力でウェントゥスの魔力が押し出されていく。

>『本来ならもっと天候魔法とか大規模攻撃魔法があるはずなんだけどね
 ……さすがはウェントゥスだよ、指環にその知識だけ逃がすとはね!』

吐き出された魔力を片っ端から回収するためにスレイブは飛び回り、その肩の上で幻体が口を開く。
仄青い燐光となった魔力が、幻体に呑み込まれていった。
アクアの皮肉交じりの遠話に、ウェントゥス(幻体)はにんまりと破顔した。

『ほーひゃろ!ほーひゃろ!わひはほれをみほしてうごいてほったんひゃ!』

「口にものを入れたまま喋るな」

>「よし!あの巨竜は魔力の放出で落とせると見た!我ら朱の竜騎兵はぁーっ!」
>「「「竜の血にて朱色なり!!!」」」

本体の体表を駆けずり回るスレイブと並走するようにして、竜騎兵たちが屠龍槍を突き立てていく。
スレイブが鱗を断ち落とし、間断なく竜騎兵の刺突が打ち込まれる。
言葉を交わさずとも、そこには緻密な連携があった。

「良い幸先だ……!このまま本体の魔力が枯れ尽くすまで――」

そのとき、ウェントス本体の体表から稲光にも似た光条が奔った。
漏れ出した魔力の光とは違う。もっと恣意的な、方向性を持った魔力。
この魔法の術式には覚えがあった。軍人ならば誰でも、戦場に出る前に習得させられる魔法だ。

「――自爆か!マズいぞ、退避を……!」

体内の魔力を暴走させ、肉体の炸裂と共に純粋な破壊力として解き放つ……自爆の魔法。
敵の総本山上空で自爆など選択するはずがないと甘く見ていたが、敵の狂気は想定の斜め上へと届いていた。
戦闘のために接近しすぎていたのが仇となったか、リンドブルムが破壊圏外へと逃れるにはあまりにも時間が足りない。

>「ラテ殿!」『フェンリル!』

絶望へのカウントダウン、針を止める呼び声はティターニアから発せられた。
正確には彼女と、彼女の指に収まった大地の竜の声だ。
そして応じたのは――大地の守護聖獣、フェンリル。

>「……はいっ!」

大地の名を冠する二つの力が、ウェントゥス本体に絡みついた鎖の両端を引く。
鋼の擦れ合う音とは別に、確かな悲鳴が、軋みが、宙を舞う巨竜から響き始めた。

85 :
ウェントゥス本体は、言わば水で満たされた革袋だ。
小さな穴を点々と空け、チョロチョロと水が漏れ出したところで、全て吐き出すには時間がかかり過ぎる。
ならば、革袋の中身を一気にぶち撒けたいときはどうするか。

――絞るのである。
鎖によって締め上げられたウェントゥスの本体から、燐光となった魔力が夥しい流れとなって搾り出されていく。
完成しつつあった自爆魔法は魔力の流れを大きく掻き乱されて、明滅し、砕け散った。

「……突っ込んでくるぞ!」

ウェントゥス本体は最後のあがきか、長い尾を波打たせてリンドブルム目掛けて吶喊する。
スレイブは振り落とされないようしがみつくのに手一杯で、突進を止めることができない。
代わりに、声を上げた。ウェントゥスの鼻先で既に跳躍の姿勢に入っていた、ラテへ。

>「……そうはさせませんけどね。見てて下さい、わたしの全力」

空中に形成した足場による、二段跳躍。頭上からの強襲。
飛空艇から槍を届かせるでたらめな膂力を、全て跳躍に費やした強烈な一閃が、ウェントゥスの頭蓋を穿ち貫いた。

「捨て身の吶喊……助けられたのは確かだが、あの歳の子が身につける技じゃないな……」

大きく動くウェントゥスの頭部に、身体ごと槍を直撃させてのけたラテの妙技。
ほんの僅かにでも狙いが逸れれば、ウェントゥスの鼻息にでも煽られれば、彼女に待っていたのは墜落死の運命だった。
この極限の綱渡りに、ラテは特段覚悟を決めたわけでもなく、まるで児戯のようにこなして見せた。
死を、破滅を、恐れていないのだ。

『お主も似たような歳で似たようなことしとるじゃろ……』

「俺のようになるべきじゃない、と言っているんだ」

>「ジャンさーん!ティターニアさーん!それにスレイブさんも!見ました!?わたしの全力!すごいでしょー!」

あっけらかんと生還を示すラテの姿に、スレイブは目頭を抑えて俯いた。
過酷な運命に疲れて、自身の命を顧みなくなった者を何人も知っている。その末路が一様に凄惨な死であったことも。
だが、ラテから感じるこの異質はなんだ?彼女の振る舞いはまるで――そう、舞台に上がった役者だ。

スレイブの知らない誰か。「あの人ならこうする」という行動を、ラテはなぞっているように見える。
恐ろしいほど、正確に。危ういほどの、実直さで。
と、そこでスレイブは思考を中断することとなった。しがみついた風竜の身体が燐光に包まれ始めた。

「ウェントゥスの本体が……崩壊していく……!」

頭蓋への一撃が致命となったのか、風竜ウェントゥスが一際響く断末魔を上げ、肉体を硬直させた。
傷穴の空いた場所から大小様々な亀裂が体表を走り、魔力が溢れ出していく。

『待っとったぞ、この瞬間を!いい加減儂のもとへ戻ってこい、風竜たちよ!』

スレイブの肩にさらにしがみついていた幻体がふわりと浮いて、光の粒となった魔力へ腕を差し出す。
しかし、先刻のように幻体へと集うかと思われた魔力は、一向に宙空から動かなかった。
ウェントゥスはいきなりキレた。

86 :
『あーー?なんで帰ってこんのじゃこのくそたわけども!儂の魔力なんじゃから儂が呼んだらパッと寄って来んか!』

「何を遊んでいる、早く力を取り戻せウェントゥス」

『いややっとるって!やっとるけれども!魔力が全然動かんのじゃ!
 呼びかけを無視されとるわけじゃない。なんちゅうかこう、別の場所からも引っ張る力が働いているような……』

「別の場所……だと?」

そのとき、本体の魔力がゆっくりと流れを作るように動いた。
ウェントゥスの幻体から遠ざかるように――ソルタレクの中心部へ向かって少しずつ、確実に引き寄せられている。

「竜の力と拮抗できるほどの、別の力――光竜エルピスか!」

ウェントゥス本体の敗北を契機として、光の指環もまた風の指環と同じように魔力の回収を図っているのだ。
風竜の魔力はウェントゥスの溜め込んだものであると同時に、長期にわたってエルピスによって汚染されてもいる。
つまり、どちらも魔力の主としての資格を有しているのだ。
あとは、飼い綱を引っ張る力がどちらの方がより強力かの比べあいになる。

『だ、ダメじゃ……馬力が違い過ぎる!』

力を回収しつつあるとはいえ、弱体化に弱体化を重ねたウェントゥスの幻体。
対する光竜エルピスは十全の力を振るえるばかりか、指環の魔女による支援も受けている。
拮抗しているように見えた引っ張りあいの構図は、やがてエルピスへと傾き、膨大な魔力がソルタレクへと流れていく。

「くそ……ここまで来て、また風の力を取り逃がすのか……?」

風の指環が力を取り戻すことができれば、来る指環の魔女との対決で必ず大きな手助けとなるはずだ。
否、常軌を逸した戦闘能力を持った魔女と戦い、生き残るには、火・水・地・風・闇の全ての指環が全力を出すことが必須。
ウェントゥスを取り逃がすのはあまりにも致命的な損失と言えよう。

「ジャンや、ティターニアや、シノノメ殿にフィリアに、あの子まで、命がけで対峙してくれたというのに」

押し寄せる自責の念に、スレイブは血が滴るほどに拳を握る。
だが、どれほど力に焦がれようとも、頼みの風の指環は力を失い、応えてくれることはなかった。
少しでも魔力を掻き集めようと腕を振るが、風を掴むことができないように、捉えようのない魔力は指の隙間から逃げていく。
眼の前が闇に閉ざされ、俯いたスレイブの眉間に、何かが飛んできて激突した。

「うぐっ……!?」

鈍い衝撃に面食らいながらも咄嗟に掴んだそれは、半ばで折れた刀身を短剣に研ぎ直した魔剣、バアルフォラス。
上空の風に煽られ、留め具からひとりでに外れてスレイブを殴りつけたのだ。
手も足もない魔剣が勝手に飛び跳ねたなどということは考えづらい。強風がもたらした偶然だろう。
しかしスレイブにはその偶然が、かつて共に戦った相棒による、活を入れた拳のように思えた。

「……そうだったな。すまない、忘れていたわけじゃないんだ」

87 :
ジャンが、ティターニアが、フィリアが、シノノメが、ラテが、そうであるように。
多くの仲間に囲まれ、もはや一人ではなくなった今も、なお。

「いつだって俺の傍には……お前が居るよな」

長剣だった頃と変わらない手応えを確かめるように、スレイブは短剣の柄を握り直す。
その光沢のない臙脂色の刀身を、今まさに吸い込まれんとするウェントゥスの魔力へ向けて、叫んだ。

「――呑み尽くせ、『バアルフォラス』!!」

88 :
瞬間、魔剣から放たれた不可視の"あぎと"がウェントゥスの魔力へ喰らいつく。
指環同士の引っ張り合いなどまるで意に介さないとばかりに、魔力の光を咀嚼し、残さず呑み込んだ。

『おお、おおおおお……!!』

ウェントゥスの幻体が身を震わせ、その身体が燐光を発し始める。
呼応するように、スレイブの指に嵌った指環の宝玉が、一際強い青白い輝きを放った。
思うまでもなく足元に風が渦を巻き、ふわりとスレイブの身体を持ち上げて宙を舞った。

『やたーっ!魔力が戻ってきおったぞ!!長かった……マジで長かった……!
 みておれよメアリ、覚悟しとれよエルピス!儂が全力を出す以上、貴様らは今日滅ぶ!ぜったい滅ぼす!!』

89 :
飛空艇への甲板に着地したスレイブをよそに、ウェントゥスの幻体が全身で喜びを表すように飛び回る。
非常にうっとおしかったので指環を宙にかざすと、幻体が『ぐえええ!』とか言いながら吸い込まれていった。

「元気になった年寄りがうるさいのは厄介だが――」

飛空艇に戻ってきた仲間たちへ、スレイブは拳を握ってみせた。

「風の指環はこの通り、元の力を取り戻せた。……これでようやく、俺も指環の勇者の一員としてあんた達の隣に立てる」

目を閉じ、感慨に打ち震えるスレイブは、数秒ほどそうしていた。
戦場での貴重な数秒を浪費したことにばつの悪さを感じながら、指環を嵌めた手でソルタレクの中心地を指差す。

「ウェントゥスの魔力を引き寄せる力は、あの辺りから放たれていた。
 つまりエルピスと指環の魔女は、おそらくあそこ――ハイランド王宮にいるはずだ」

ソルタレクはハイランド連邦の首府。
城下町の中心には、当然ハイランドの国家元首が住まう宮殿が屹立している。
ウェントゥスの魔力がそちらへ向かって引き寄せられていたということは、エルピスもまたそこにいるということだ。

「進もう。今度こそ、連中の野望を止めて……世界を救うんだ」


【風竜ウェントゥスを撃破し、風の指環が本来の力を取り戻す】

90 :
>『まさか自爆!? なるほど、元から捨て駒のつもりだったということですね――』

ウェントゥスを操る光竜は魔力を吸収される前にいっそ放出して破壊を選んだのか、
巨竜の内部からいくつもの閃光が迸る。

それは単純な自爆魔法であり、だが巨竜を形成する魔力量から考えてみれば
この戦場を丸ごと吹き飛ばすには十分だ。

指環の力である程度は封じ込められるかもしれないが、戦場に多大な被害を及ぼすことは間違いない。
ジャンが再び突撃しようとしたその時、ラテとティターニアが動いた。

>「ラテ殿!」『フェンリル!』

巨竜に絡みついた鎖を凄まじい膂力で引っ張り、巨竜の全身が締め上げられる。
翼すら満足に動かせないほどの拘束は、自爆魔法の完成を妨害するには十分だった。

最後の足掻きか、リンドブルムへの突撃もラテの投擲した槍によって正面から貫かれて止まる。

>「ジャンさーん!ティターニアさーん!それにスレイブさんも!
 見ました!?わたしの全力!すごいでしょー!」

「お、おう!しっかり見てたぜ!俺より力持ちになったんじゃねえか!」

巨竜の肉体が崩壊し、霧散する魔力の中で少女が微笑む。
それはかつての冒険者だった少女を思い出させるような笑顔だったが、どこか違うものを感じた。
だがジャンはその考えを頭を振って忘れ、手を振って応える。

>「竜の力と拮抗できるほどの、別の力――光竜エルピスか!」

後は魔力を回収するだけと思いきや、空に漂う魔力が徐々にソルタレクの中心へと向かう。
明らかに引き寄せられていると分かるその動きは、光竜によるものだ。

『ジャン!手出しはダメだ、こちらが魔力を吸収してはウェントゥスに力が戻らない!』

「かといって今からエルピスぶん殴りに行くわけにもいかねえぞ!」

91 :
仲間であるはずのスレイブを助けられず、思わず奥歯を噛むジャン。
しかし、スレイブにはまだ仲間がいた。

>「――呑み尽くせ、『バアルフォラス』!!」

日の光を反射することのない、紅色の刀身から見えない何かが放たれる。
それはかつて魔剣と呼ばれた短剣、スレイブの相棒にして半身。

>「風の指環はこの通り、元の力を取り戻せた。……これでようやく、俺も指環の勇者の一員としてあんた達の隣に立てる」

ウェントゥスは無事に魔力を吸収し、風の指環としての本来の力を取り戻す。
ジャンも一旦竜装を解いて飛空艇に戻り、スレイブに駆け寄った。

「これで指環の勇者全員集合ってわけか!後はあのでかい建物に殴り込めば全部終わりだな」

ダーマの竜騎兵部隊の集団戦術によって眷属や空を飛べる魔物はほぼ駆逐され、空は完全に制圧された。
地上での戦闘も術式が解除されたことで再びダーマ・ユグドラシア連合軍が優勢となり、今や城下町までエーテル教団を押し込んでいる。

連合軍の指揮官たちもほとんど勝利を確信しており、エーテル教団にこれ以上の手札はないように思われた。


――舞台は変わり、ハイランド王宮へと移る。
かつてハイランドが王制だったことを示すこの王宮は、連邦制に移行してからは
国のトップではあるが政治に関わることのない王族が厳かに暮らし、季節ごとに行事を行う場でしかなかった。

今ではエーテル教団の幹部たちが集い、あわただしく戦場の指揮を行う場へと変貌していた。
そしてその中心にいるのは、教団の支配者である『黒曜のメアリ』と、黄金の甲冑を纏った騎士だ。

騎士は竜を象ったフルフェイスの兜を被り、背後のステンドグラスから差し込む日光で光り輝く黄金の甲冑には無駄な装飾が何一つない。
腰には二振りの白銀に輝く大剣を携え、背丈はジャンよりも大きいだろう。

「……風竜が堕ちたか。地上での戦いも押されつつある」

兜の中から聞こえるのは、低い男の声だ。
感情は感じられず、事実のみを淡々と伝えるような、そんな言い方だった。

「だとしても構いませんわ。エルピス様の御力ならば、指環の勇者たちを始末するのは造作もないことでしょう」

騎士の隣に立つメアリはまるで気にしていないかのように語り、信者たちに指示を出す。

「市街地での戦闘は避けなさい。相手をできるだけ王宮近くまで引き込むように」

「……空を飛ぶものを落とす」

そう言って光竜エルピスは右の大剣を抜き放ち、ステンドグラスに掲げた。
すると光を浴びて輝く刀身が光を集中させ、やがて一条の閃光となる。
それは触れた物全てを切り裂く刃であり、ステンドグラスを貫いて飛び出たそれはソルタレクの空を薙ぎ払った。

当たった生物は種族を問わず真っ二つにされ、そのまま市街地へと墜落していく。
それは竜騎兵でも変わらず、音もなく迫りくる光の刃に次々と熟練の竜騎兵たちが落とされる。

そしてそれは、ジャンたちの飛空艇にも平等に向かっていった。

92 :
>「……はいっ!」

「いくぞ! とりゃあああああああああ!」

ラテと共に渾身の力で鎖を引っ張るティターニア。
竜装をまとい魔力によって強化されているとはいえ、元々が魔術師のティターニアの力自体は微々たるものだろう。
しかしラテに宿るフェンリルの力を引き出すことにおいては十分過ぎるほど功を奏したようだ。
ウェントゥス本体の体中に鎖がめり込み、その巨体を見る間に引き裂いてゆく。
しかし、そう簡単には終わらない。満身創痍のウェントゥス本体は最後の足掻きか、リンドブルムめがけて突っ込んで来ようとしていた。
慌てて魔法障壁を展開しようとするティターニアだったが――

「往生際の悪い奴め……ラテ殿!?」

>「……そうはさせませんけどね。見てて下さい、わたしの全力」

ラテが止める間もなくアイキャンフライしていた。
まるでサーカスの演者のように鮮やかに、槍でウェントゥス本体の頭部を貫く。

>「ジャンさーん!ティターニアさーん!それにスレイブさんも!
 見ました!?わたしの全力!すごいでしょー!」

「お、おう……!」

戦線に復帰したばかりとは思えないあまりの凄さに愕然とし過ぎて、そう相槌を打つのだ精いっぱいだった。
もうすっかり元通り、どころか明らかに身体能力が以前より飛躍的に向上している。
しかしふと感嘆の中に、ほんの少しの不安がよぎる。前のラテはあそこまで命知らずだっただろうか――と。
何はともあれついにウェントゥス本体を撃破したのであった。

>「ウェントゥスの本体が……崩壊していく……!」
>『待っとったぞ、この瞬間を!いい加減儂のもとへ戻ってこい、風竜たちよ!』
>『あーー?なんで帰ってこんのじゃこのくそたわけども!儂の魔力なんじゃから儂が呼んだらパッと寄って来んか!』

どうやら光竜エルピスが魔力を横取りしようとしているらしい。

「なんだと!? ならばこちらも総出で対抗すれば……」

>『ジャン!手出しはダメだ、こちらが魔力を吸収してはウェントゥスに力が戻らない!』
>「かといって今からエルピスぶん殴りに行くわけにもいかねえぞ!」

「そんな……! 待てよ、指輪以外で魔力をこちらに吸い寄せられるような手段……何かあったような気が……」

スレイブは、ティターニアが思い出すよりも早くその存在に気付いたようだった。

>「――呑み尽くせ、『バアルフォラス』!!」

「そ れ だ !」

かくして、風の指輪は本来の力を取り戻すことと相成った。

93 :
>『やたーっ!魔力が戻ってきおったぞ!!長かった……マジで長かった……!
 みておれよメアリ、覚悟しとれよエルピス!儂が全力を出す以上、貴様らは今日滅ぶ!ぜったい滅ぼす!!』
>「風の指環はこの通り、元の力を取り戻せた。……これでようやく、俺も指環の勇者の一員としてあんた達の隣に立てる」

>「これで指環の勇者全員集合ってわけか!後はあのでかい建物に殴り込めば全部終わりだな」

「こちらは指輪5つ、向こうは1つだけ、負けるはずがあるまい!」

>「ウェントゥスの魔力を引き寄せる力は、あの辺りから放たれていた。
 つまりエルピスと指環の魔女は、おそらくあそこ――ハイランド王宮にいるはずだ」
>「進もう。今度こそ、連中の野望を止めて……世界を救うんだ」

ウェントゥス撃破で景気付いた一行は、意気揚々とハイランド王宮へと飛空艇を進めていく。
しかし、その道中で異変は起こった。ハイランド王宮から放たれた閃光に当たった竜騎兵達が次々と落ちていく。
そしてそれは、一行の乗っている飛空艇をも撃ち落とそうとしていた。

「随分と手荒い歓迎だな……! パック殿、飛んでいては狙われる、急いで着陸だ!
シノノメ殿、闇の指輪で防御を!」

無論ティターニアも大地の指輪の力を使っての防護障壁を展開するが、
それだけでは防ぎきれる保証はない、しかし二重の防御ならどうにかなるだろうと思ってのことだ。
こうしてなんとか着陸に成功したが、急いで地面に降りた影響で王宮から少し離れたところに着陸してしまった。

「ティターニア様、オイラはどうすれば……」

「うむ、こうなったら共に来るしかないだろう」

この状況では再び飛んで離脱しようものならすぐに撃ち落とされそうだし、かといって飛空艇に残っているわけにもいかない。
なし崩し的に全員で突撃することと相成った。
こうして、市街地を王宮に向かって走る指輪の勇者5人+ラテ+その他二人(ジュリアン&パック)。
王宮にたどり着くまでにそれなりに妨害が入るだろうと思いきや――

「怖いほどに何も襲ってこないな……」

「わざと懐におびき寄せる作戦かもしれん。まあいい、どちらにせよ行くしかないのだから好都合だ」

そしてまるで一行に招き入れるように王宮の扉は開き、ついに一行は指輪の魔女と対峙するのであった。
その傍らに傅く黄金の甲冑をまとった騎士が、光竜エルピスだろうか。
一見メアリにエルピスが仕えているように見えるが、本当はメアリがエルピスの傀儡というのが実態なのだが。
指輪に宿る竜でありながら常に実体を持って具現化していることからも、他の竜との格の違いが伺える。
メアリが座る玉座の背後には、美しい水晶のようなものが飾られている。
ユグドラシア防衛戦にて奪われた、“無の水晶”≪エーテル・クォーツ≫――虚無の竜”クリスタルドラゴン”復活の鍵だ。

94 :
「よくぞここまで辿り着きました――指輪の勇者達よ」

一行を出迎えたメアリの仰々しい口上は、すぐに狂った哄笑へと変わっていく。

「ええ、本当に……よく辿り着いてくれました。5つも指輪を携えて。
カモがネギを背負ってきたどころの騒ぎじゃないわ。ククク……アーハッハッハッハッハッハ!
ついに……ついに今日この時、”虚無の竜”が復活する!」

「虚無の竜とは何だ? 古竜とは別の存在なのか!?」

「そうとも言えるしそうでないとも言えるわね。
全てを食らいつくす“虚無の竜”と、全てを司る”全の竜”――相反するこの二つがごちゃまぜになって伝承では古竜と呼ばれているわ」

「なんだと!?」

これが古竜を巡る伝承に各説で矛盾や混乱が多くみられる大きな原因の一つであることは間違いない。

「テッラ殿、知っておったのか!?」

『いえ……私もさっぱり……』

「無理もないわ。記憶操作は光の指輪――この光竜エルピスの十八番……相手が竜であっても例外ではないわ。
もう一つ面白いことを教えてあげましょうか。古竜は現時点ではまだ復活などしていない――虚無と全、そのどちらも。
全世界が私たちの情報操作にまんまと騙されたのよ。
もちろん、ご立派な指輪の勇者様や四星竜や闇の竜を焚きつけて指輪を集めさせここまで持ってこさせるためのね――!」

今まで古竜が復活したのを大前提に旅をしていただけに、にわかには信じがたいが、冷静に考えてみれば頷ける。
古竜が復活したらしいという漠然とした噂が世界を覆っているだけで、
実際に襲われた町を見たことはないのはおろか、具体的に古竜に襲われたという話すら一度も聞かなかった。

「少し喋りすぎたようね。大人しく指輪を全て渡しなさい――といってもそうはいかないでしょうね」

「全てがそなたらの掌の上で転がっておったというわけか……。
そんな周到な計画をここまできてご破算にしてしまうのも心苦しいが仕方あるまい」

光竜エルピスが白銀の大剣を構え、メアリを護衛するように立つ。
メアリが指輪を嵌めた手を掲げると、一行の頭上から無数の光線が降り注ぎ、戦闘の開幕を告げた。

95 :
・まさかの古竜はいい奴と悪い奴の二人いた!
・そして実は復活していなかった!
(古竜が復活した前提で話が始まった割には全く登場してないな〜というのをそのままネタにした形だ)
・メアリが虚無の竜を復活させようとしている! 世界がヤバい!
(前に出てたエーテルクオーツを拾ってみただけで特に先のことは考えていない!)

なんとなくのイメージ
虚無の竜・・・世界を破壊する系の属性はこっち
全の竜・・・創造主っぽい属性とか願い叶えてくれるとかいう属性はこっち
      エーテルの指輪くれそうなのもこっちかも
元々は同一存在だったのがどこかの時点で分かたれたのかもしれないし最初から全く別の存在なのかもしれない

戦闘開始まで進めてしまったが追加したいネタがあったら例によって自由に変換受けしてくれ!

96 :
>「お、おう!しっかり見てたぜ!俺より力持ちになったんじゃねえか!」
 「お、おう……!」

「えへへー!やだなぁジャンさん!わたしなんてまだまだですよぉ!」

わーい、ジャンさんに褒められちゃったー。これは幸先がいいぞぉ。

「ウェントゥスの本体が……崩壊していく……!」

……っと、いけない。早く飛空艇に戻らなきゃ地上に落っこちちゃう。
わたしはぴょんとジャンプして、飛空艇のティターニアさんの隣に着地する。

「ただいま、ティターニアさん!」

まだ戦いは終わってない。これからが本番……なのに顔が勝手にニコニコしちゃう。
だってわたし、段々と前のわたしに近づいていってるはずだもん。
この調子で頑張っていけば……きっと、ジャンさんもティターニアさんも……
「俺達が巻き込んだ」なんて……言わなくなってくれるよね。

強くて優しい、ジャンさんとティターニアさん。
わたしが何も分からないおばかさんになっちゃっても、ずっと一緒に連れて行ってくれた。

わたしが、今のわたしになったばかりの時の事を、実はわたしは覚えてるんだ。
ジャンさんもティターニアさんも泣いていた。
いつも大事そうに持ってるあの指環を、二人とも手放して泣いていた。
……だけど、今も二人は、一度は落っことした指環を拾い直して、旅をしてる。戦ってる。
指環を全部集めれば……わたしを元に戻す事だって簡単って、ジュリアンさんが言ってたから。

それはとっても嬉しい事……本当の、本当に、嬉しい事だよ。
でも……嬉しいのと同じくらい、悔しくて、いやな事なの。
わたしは、前のわたしの日記を読んだから……知ってるんだ。
旅って、冒険って……とっても楽しいものなんだって。

……別に、二人がこの冒険を楽しめてないなんて言うつもりはないけど。
それでもわたしが記憶を無くしたりしてなければ、その分だけ、もっと楽しい旅が出来てたはずだよね。
だから……わたしはもっと強くならなきゃ。
ジャンさんとティターニアさんの助けなんかなくても、前のわたしみたいにならなきゃいけないの。
このままずっと、わたしが二人の重荷になるなんて、二人の楽しい少しでも奪っちゃうなんて、そんなの絶対にいや。
だから……もっともっと、頑張らなきゃ。

……それにしても、スレイブさん遅いなぁ。
またウェンちゃんが何か遊んでるのかな。

「ちょっとー、ウェンちゃ……ウェントゥスさーん!はやくして下さいよー!
 さっきのジャンプ攻撃、もっかい間近で見せてあげてもいいんですよー!」

>『いややっとるって!やっとるけれども!魔力が全然動かんのじゃ!
 呼びかけを無視されとるわけじゃない。なんちゅうかこう、別の場所からも引っ張る力が働いているような……』
「別の場所……だと?」

って、あらら?なんだか不穏な雰囲気……。

>「竜の力と拮抗できるほどの、別の力――光竜エルピスか!」

げ、げえ!なんだかよく分からないけどヤバそうな感じ!
えっと、魔力を横取りされそうになってるんだっけ?
……そんなの、わたしにはどーしようもないよぉ!

97 :
「ちょ、ウェンちゃーん!スレイブさーん!頑張ってよぉ!」

あ、喋り方変えるの忘れてた!……けどそんな事気にしてる場合じゃない!
な、何か出来る事ないかな……あ、そ、そうだ!
当てずっぽうでお城に向かってなんか色々投げつけてみるとか……。

>「――呑み尽くせ、『バアルフォラス』!!」

「……って、アレ?」

もしかして、なんか上手くいった感じ?
……よ、良かったぁ。わたしなんにもしてないけど……。
ま、まぁそこはね?ほら、指環持ってないと指環の事はよく分かんないとこあると思うし、仕方ないよね!

>『やたーっ!魔力が戻ってきおったぞ!!長かった……マジで長かった……!
 みておれよメアリ、覚悟しとれよエルピス!儂が全力を出す以上、貴様らは今日滅ぶ!ぜったい滅ぼす!!』
>「元気になった年寄りがうるさいのは厄介だが――」
>「風の指環はこの通り、元の力を取り戻せた。……これでようやく、俺も指環の勇者の一員としてあんた達の隣に立てる」

「……あー、いーなぁ。わたしも欲しいなぁ、指環。
 ほら、わたしって明るいですし、光の指環の持ち主には相応しかったり……駄目ですかね」

なんて言いつつ、左右のほっぺに人差し指を添えてにっこりと笑ってみたり。
前のわたしってわりとこういうとこ、あったと思うんだよね。
後はレンジャーのスキルとか使えれば、もうかなりいい線まで来てる気がするんだけどなー。
そこんとこはこっそり練習したり、大地の力でそれっぽく見せてくしかないかなぁ。

98 :
>「これで指環の勇者全員集合ってわけか!後はあのでかい建物に殴り込めば全部終わりだな」
>「こちらは指輪5つ、向こうは1つだけ、負けるはずがあるまい!」
>「ウェントゥスの魔力を引き寄せる力は、あの辺りから放たれていた。
 つまりエルピスと指環の魔女は、おそらくあそこ――ハイランド王宮にいるはずだ」
>「進もう。今度こそ、連中の野望を止めて……世界を救うんだ」

「……そうですね。世界を救って……その後はのんびり、また旅をしましょうよ。
 わたし、ダーマの時は一緒について行けなかったから……今度は一緒に、行きたいです」

その時には、わたしも……記憶が戻ったり、してればいいんだけどなぁ。
それまでは……わたしがちゃんと、前のわたしみたいに頑張らなきゃね。

……あれ?なんだか今、地上の方で何かがぴかって光ったような。
それに、この風に巻き上げられて散っていく赤い色は……血?

「……っ、いけない。ティターニアさん!攻撃されてます!」

>「随分と手荒い歓迎だな……! パック殿、飛んでいては狙われる、急いで着陸だ!
 シノノメ殿、闇の指輪で防御を!」

あのお城から飛んでくる光の斬撃……う、うぅ、こんなに広範囲だとわたしには止めようがないよ。
ティターニアさんとシノノメちゃんが二人で防御してるけど……周りの竜騎兵さん達は……。

「み、みんな!こっちに集まって!もうお空の決着はついてるから!はやく!」

慌てて叫ぶけど、相手は光。速すぎる……みんなが次々に落とされていく。

「っ、この!」

わたしはお城に向かって全力でコインを投げる。
コインは空中で沢山の槍に変化して……すぐに光剣に切り落とされる。
無駄かもしれないけど……少しでも的を増やすくらいしか、わたしには……。

「――指輪の力よ!」

と……不意に響く、力強い声。この声は……フィリアちゃん?
女王蜂の羽を生やして……飛空艇から飛び降りて……

「だ、駄目だよ!それじゃフィリアちゃんまで!」

瞬きよりも速く、フィリアちゃんに閃光が迫る。
そして……光はフィリアちゃんの直前で、捻れるように動いて外れた。

「あ、あれ……?」

「強い炎は光を捻じ曲げる。わたくしにその技は通じませんの……あ、これはイグニス様の発想ですの。
 手柄は彼女の方に……わたくしは、先に下で待っていますの」

そう言うとフィリアちゃんは目にも留まらぬ速さで降下していく。
竜騎兵さん達をおっきなムカデさんで強引に捕まえて、拾い上げながら……良かったぁ。

>「怖いほどに何も襲ってこないな……」
 「わざと懐におびき寄せる作戦かもしれん。まあいい、どちらにせよ行くしかないのだから好都合だ」

「……急ぎましょう!ジャンさん、ティターニアさん!
 世界を救うなんて理由よりもまず……エルピスを、思いっきりぶん殴ってやらないと!」

99 :
飛空艇が着陸してフィリアちゃんと合流すると、わたしは我慢出来ずにそう叫んだ。
こんな事言っちゃなんだけど……あの竜騎兵さん達がいてもいなくても、この先の戦いに変化なんてない。
あの人達は大きな竜相手にはバチバチ戦えても……人の大きさをした、竜の力を持つ相手との戦い方なんて知らないんだから。
だから、だから今の攻撃は……何の意味もない、ただ命を奪っただけだ。
記憶を無くして、分からない事だらけのわたしにだって分かる、許しちゃいけない事だ!
つい、かっとなって叫んじゃったけど……前のわたしだって、きっとこうして怒ってたはずだ。

>「よくぞここまで辿り着きました――指輪の勇者達よ」

そして……お城に、王座の間に辿り着いたわたし達を出迎えるのは……。
わたしは初めて目にするけど……あの人が、メアリさん……。

>「ええ、本当に……よく辿り着いてくれました。5つも指輪を携えて。
 カモがネギを背負ってきたどころの騒ぎじゃないわ。ククク……アーハッハッハッハッハッハ!
 ついに……ついに今日この時、”虚無の竜”が復活する!」

メアリさんが何か難しい事を喋っている。
わたしにはその内容の全部を理解する事は出来ないけど……一つだけ分かる事がある。

100 :
>「少し喋りすぎたようね。大人しく指輪を全て渡しなさい――といってもそうはいかないでしょうね」
>「全てがそなたらの掌の上で転がっておったというわけか……。
 そんな周到な計画をここまできてご破算にしてしまうのも心苦しいが仕方あるまい」

それは別に理解出来ても出来なくても、わたし達のする事は変わらないって事。
メアリさんが右手を頭上に掲げる。瞬間、無数の光線がわたし達に降り注ぐ。
自分に迫ってくる分の光線なら、わたしにも防御は出来るはず。
だけど……ここはあえて、防御を捨てて前に出る!
だって、

「今度はちゃんと、聞こえるように言ってあげますの。その技はわたくしには通じませんの」

なんと言ってもこっちは八人パーティだから!
フィリアちゃんの炎を纏ったムカデが光線をねじ曲げ、逸らす。
おかげでわたしは素早くエルピスとの距離を詰められた。

床を大地の力で操作して、わたしの体を跳ね飛ばす。
同時に床を蹴り出して……食らえ!二重の加速からの必殺パンチ!
そのちょっとカッコつけた鎧と兜べっこべこにしてや……

「……浅はかだな」

……眩しい。そう思った時には、わたしは既にエルピスとは反対側の壁に叩き付けられていた。
右腕が燃えてるみたいに熱い。お腹も……触ってみると、ぬるっとしてる。
左手を顔の前に持っていく。動かすのがだるい……やっと視界に映った左手は、真っ赤に染まっていた。
フィリアちゃんが私のところまで下がってきて、指輪の力で治療してくれる。

「光の属性……それは邪なるものを退ける力。あなた達は指一本、エルピス様に触れる事は叶わない」

傷は……そんなに深くない。なのに……おかしい、指輪の力で治療をしても、全然塞がる気配がない……。
良くない……わたしの傷の話じゃなくて……。

「ふふっ……そう、あなた達は邪悪なの。あなた達こそがこの世界の不純物。
 それを決めるのはエルピス様。何故なら今やこの御方は……我らエーテル教団の崇める神なのだから」

この雰囲気、場の……空気……。

「分かるかしら。信仰を束ね、エルピス様はまことの神と成った。
 最早、あなた達の従える竜とは別格……」

調子に……勢いに、乗らせちゃった……。わたしのせいだ。
ウェンちゃんの時は、上手に出来たのに……前のわたしなら……もっと上手くやれたのかな……。
やっぱり、わたしじゃ……駄目なのかな……。

「……少しは、虚無を感じてもらえたかしら?あなた達の冒険はここでおしまい。
 さぁ……もうどこにも行けない閉塞感と、全てを失う喪失感に溺れながら、この神の園で息絶えなさい!」

無数の閃光が、またジャンさん達に襲いかかる。
フィリアちゃんが……わたしの治療さえしてなければ、あんな攻撃、怖くないのに。
速くて、鋭くて、手数も多い……シノノメちゃんが闇の力で防御しても、簡単に削り取られていく。
闇の指環と光の指環で、そんなにも力の差があるの……?

強いのは分かっていた……でもこれは、あまりにも……圧倒的すぎる……。
こんなの……こんなの……わたしに、なにが出来るんだろう……。


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