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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル 3rd 第九部


1 :2014/05/03 〜 最終レス :2014/10/12
                       _
                   /-‐-\
                    ノ ,=u=、ヽ、        __人__人__人__
        /~ト=.   //      \\      )         (
       /ヽ_ノノ三  〈 ,/ o二〔咒〕二o `、 〉   )  場 読  (
      , く   _/三.__   \_ト、_______,.イ_/    )   合 ん   (
    /   ./三./ ノ }三 ハ|テェェv:レェェラレ.、      )   か ど   (
    /、__ /=/`ー' /三..ヾ〈   「|_|〉   〉ソ     )   | る   (
   /   ,/丶 /三三三. |  l'ニミ!  |'l      )    ッ    (
   /  /ヽ、 /三三三. - .」\`==-'/i|       )       (
  /,/ _,∠ -┬―‐┬┬‐=="'' ‐<..,,_|_|"'''‐-、  ⌒Y⌒Y⌒Y⌒
,.-:「  ;:'''       !   :! L..ノノ三- 、_  ハ.  iヘヽ、
 /|:! ,!   ::::-=二王 ̄三 ̄ ̄        `'′入oヽ ´‐\
 |:|:! | i'''"""    !  ̄ !丁 ヽ三.  ト、 ̄o ̄]ニヽ ヽ'''""ヽ
 || ! ! ,|   ,;:::-┬―――三'三.   |  ̄ ̄ lニヽoヽ__,,,...`、
 || !| |    ::::  l三|=  |三.      |     ノ_,ヽ. ヽ_,,,.|
 ヽ|l,l|l___;;;;;__ノ三!=  /三三      ̄ ̄_,,.. -ヽ. ヽ
    ̄ ̄::::三三/= /三三三    """ ̄

このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください
この企画は誰でも書き手として参加することができます
詳細はまとめサイトよりどうぞ

まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/
前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第八部
http://maguro.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1377772518/

2 :
名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
※第一回放送を迎えましたので上記のズガン枠キャラクターは今後の登場は不可能です。
Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス
Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ/○ロバート・E・O・スピードワゴン
Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO
Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影
Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ
Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○空条承太郎/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ
Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ホット・パンツ/○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/
○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ/○ディエゴ・ブランドー
JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆
恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ
ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー
バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド
ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ

3 :
711 : ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 02:56:18 ID:rNPueYv2
容量オーバーで新スレ立てようとしたんですが……なんかうまくいきませんでした。
AAも何選べばいいかわからなかったし。
とりあえずこっちに一回投下します。


なぁ、億泰。お前、『ゾンビ』って知ってるか。
でかい鳥……お前が言いたいのは『トンビ』だろ、このマヌケ。
ゾンビってのは死んでるくせに生きてるような人間のことだ。
わけのわからん呻き声をあげながら腐った目をして歩き回る輩のことを言うんだ。
「この俺のように、な」
形兆は自虐的に笑うと右腕を上げた。それを合図にバッド・カンパニーが一斉に銃を目標へと向けた。
青い顔をしたまま動かないシーザーに狙いを定める。

考えてみれば俺の人生は生きながら死んでるも当然だった。
親父を殺した時やっと俺の人生は始まるんだ。それはつまりRまでは始まってもいないってことだ。
生きているのに、生きていない。傍から見たらくだらねェと言われても仕方ないだろうな。
けどなァ、億泰……あいつは違ったな。あのクソッタレな仗助は違ったんだ。
あのでか頭のせいで俺は思っちまったんだ。希望を持って生きることを、望むことを許された気がしちまったんだ。
「戦隊整列ッ!」
だからだろうな、あの電気のスタンドが見えたときドジこいてお前を助けるなんてことしちまった。
笑えるぜ! あんだけぞんざいにお前を扱ってたくせに今更この俺が兄貴面とはな!
さらに笑えるのが救ったはずのお前が先に逝っちまったってことだ!
なんのために……って気がしたぜ。俺は間違ってる、そう神様に面と向かって唾かけられた気分だ。
せめて死ぬのは俺のはずだろう? お前は何もしちゃいないはずだ。
後戻りできないとこまでいたのはこの俺のはずだ! おっかぶるのはこの俺だったはずなんだ!
「かまえッ!」
ああ、そうとも。俺は裁かれて当然の極悪人だ。
まっとうに生きれるはずがない宿命の人間だ。
なら! ならばこそ! 生き延びちまった今!
あんときお前をかばったように、今日だって誰かを救うために行動したいと思うだろうがッ!

「うて――――ッ!」

4 :
712 : ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 02:59:17 ID:rNPueYv2
合図とともに民家の影からも、足元に広がる兵士たちも、上空を旋回する兵器たちも。
一斉に銃口から火を吹かせ、耳をつんざくような音が辺りにこだました。
銃弾はシーザー、ではなく、その後ろに立つ二人に向かって放たれた。
周りに重音と硝煙が立ち込める中、形兆は懐から一枚のトランプカードを取り出した。
それはカンノーロ・ムーロロのスタンド。DIOが形兆にかした首輪。
それを形兆はためらうことなく、バラバラに引き裂いた。
形兆は反逆する。
DIOの操り人形であることを拒否し、生きながら死んでいくことを否定する。

「聞いてんだろ、DIOッ! 俺はあんたに忠誠なんか誓わないッ!
 アンタは恐怖で人を操れると思ってんだろう。洗脳して、人を征服した気分になってんだろう。
 けれども! 人の心まで好きにできると思うなッ!」

煙が晴れたころ、そこに立っていたのは無傷の男二人だった。
サーレーとディ・ス・コの額に張り付いた肉の芽がざわり、と身をよじらせた。
「形兆、お前…………!」
「話はあとだ。来るぞッ!」
二人のゾンビは命じられるまでもなく、己の使命を悟る。
裏切り者には死を。クラフトワークが宙に固定した銃弾を乱暴に殴りつけた。
シーザーと形兆の頭上を弾丸が飛び交っていく。
そして、それに合わせるようにディ・ス・コが指を振るうと銃弾は向きを変え、二人の脳天めがけ降り注いだ。
体制を低くしたまま二人は転がるように散開する。
スタンド、クラフトワークとチョコレイト・ディスコ。形兆のバッド・カンパニーではすこぶる相性が悪い。
「シーザー、走るぞッ!」
「何か策があるのか?」
「ある。あることにはある。だが……」
あらかじめ逃走ルートに潜めていた兵士たちが援護するよう、銃を放つ。
苛立ち気な悪態を後ろに、形兆とシーザーは走っていく。
シーザーは形兆を見る。暗く、冷たい目は変わらないままシーザーを見つめ返していた。
それは確かに覚悟を決めた目だった。己の命をかけてでも守るべきものを見つけた、男の目!
シーザーは頷く。
『信頼』ッ! シーザーの中に芽生えたのは形兆に対する、赤子が親に持つような信頼関係だった。
どんな無茶をしようとも。どんな危険を冒すことになろうとも。
そして! 例えどちらかが死ぬことになろうともッ!
シーザーの中に後悔はなかった。一度ならず二度、救われた命。形兆を助けるにはそれだけで十分な理由だった。
形兆はシーザーが頷くのを確認すると、策を伝える。
しばらく走ると、二人はそのまま二手に分かれた。
追手を振りほどこうと緑の兵士たちが殊更懸命に銃を放っていく。
サーレーとディ・ス・コが十字路にたどり着いた頃には、二人の姿は影も形も見当たらなかった。


5 :
713 : ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 03:00:27 ID:rNPueYv2
「ちくしょう、どこ行った!?」
後方から放たれた銃弾を固定しながらサーレーは喚く。
苛立たしい相手だった。銃撃の元をたどったところでいるのは形兆でなく、そのスタンド。
その上バッド・カンパニーを一体、二体潰したところで形兆へのダメージは薄い。
かと言ってやみくもに走り回ったところで本体を見つけることはできない。
「ゲリラ戦法だ」
ディ・ス・コがぼつり、とつぶやいた。わかってることを耳元で言われて余計苛立ちが募った。
使えねぇ相方だ、あえてそう聞こえるよう毒づいたがディ・ス・コの返事はなかった。
サーレーは胸ポケットから一枚のカードを取り出す。ダイヤのジャックは沈黙したまま返事をよこさない。
ムーロロのウォッチタワーとバッド・カンパニーでは数が違う。
情報戦では敵わない。逃げにまわられた今、サーレーとディ・ス・コには打つ手がなかった。

まかれたか。

怒りと屈辱が二人の心に湧き上がる。同時に心臓を鷲掴みにされたような恐怖も。
二人はムーロロを通してDIOより、形兆の監視とシーザーの抹殺を任されていたのだ。
任務の失敗はDIOの失望を招く。それは考えたくもない、足元が崩れるような恐怖だった。
それだけは……! それだけは絶対に避けなければならないッ!
しかし焦れば焦るほど形兆の作戦は効力を発揮した。
撃っては姿を隠し、気を抜いた頃を見計らって銃撃する。サーレーとディ・ス・コはがむしゃらに走るほかなかった。
湧き上がる感情をひた隠し、二人は走り続ける。それでも形兆とシーザーは見つけられなかった。
やがて二人がすっかり疲弊しきった頃。諦めと絶望に徐々に体を蝕まれた頃。
考えたくもない未来を、二人が考え始めたまさにその瞬間。
その時、道の先から声がした。
「全隊、一斉砲撃ッ!」
考える間もなく、サーレーは反射的にスタンドを構えた。
ディ・ス・コはサーレーの後ろに隠れ、同時に後ろからの射撃を叩き落としていく。
形兆が姿を現していた。その足元に黒い影がわだかまる。
黒い影が次第に濃さと広さを増していく。宙に浮かぶ者もいる。タイヤを転がし這うものもいる。
バッド・カンパニーの全兵力がそこには集まっていた。兵士も、タンクも、アパッチも、パラシュート部隊も。
形兆はここでケリをつける気だった。後先を考えない、全兵投入だッ!

「うて――――ッ!」

6 :
714 : ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 03:01:44 ID:rNPueYv2
サーレーの周りに止めきれないほどの銃弾が固定されていく。
固定された銃弾が放たれた銃弾に押され、玉突きのように徐々に押し込まれていく。
ディ・ス・コの周囲3メートルにはびっしりと銃弾が散りばめられている。
どれだけ素早くスタンド能力を発動しても後から後へと兵士が湧いてくる。ディ・ス・コの表情にはっきりと恐怖が浮かび始めた。
弾丸が土埃を巻き上げ、硝煙が辺りを霧のようにおおった。
攻撃はまだやまない。空薬莢が雨のように降り注ぐ音があたりに響いた。
サーレーとディ・ス・コは気がつかない。目の前の攻撃を凌ぐことに懸命で、形兆の狙いに気がつかない。
土煙にまぎれ、迂回する影。ディ・ス・コのそば、わずか1メートル足らずの位置まで近づく。

「!?」

影から伸びでた手がディ・ス・コの手首を掴む。
咄嗟のことに驚き、固まった隙に形兆がもう片方の腕でディ・ス・コを抱きかかえるような体制を取る。
顔と顔がつきそうな程の至近距離。
ディ・ス・コの目に映ったのは血走った形兆の目、歯をむき出しにした凶暴な笑み。
形兆の背後から銃声が響いた。
バッド・カンパニーの銃弾は正確無比に形兆を突き抜け、ディ・ス・コの体を打ち抜いた。
ディ・ス・コは何が起きたか訳も分からず、喉の奥から血を吐き出した。
続けざまに放たれる銃撃。今までよりもさらに激しく放たれた銃弾が形兆とディ・ス・コの体を揺らし、あたりに血の海を作っていく。
チョコレイト・ディスコに飛び道具は効かない。全て撃ち落とされ、無効化される。
ならば撃ち落とされない距離で撃ち抜けばいい。ゼロ距離で死角からの一撃。
形兆の覚悟は自身の命をかけた一撃だった。文字通り体を張った攻撃。
そしてそれはまだ終わっていない。
「シーザー!」
咳き込みながら形兆が叫ぶ。血の海に倒れ込みながら、形兆は合図を送った。次なる狙いはサーレーだ。
クラフトワークの能力は触れたものを全て固定する能力。打撃、斬撃、銃撃ではダメージを与えられない。
サーレーの足元まで伸びた血の海に手を突っ込むと、シーザーは波紋の呼吸を練った。
形兆の血を伝い、しびれがサーレーの体に走る。
だが固定されない攻撃ならば! 直接ふれず、モノを媒介しない波紋ならばッ!
されど痺れは一瞬だろう。血の海といったところでそこから出れば波紋から解放される。足を離せば逃れられる。
「それを……待っていたッ!」

7 :
715 : ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 03:02:08 ID:rNPueYv2
しかし形兆にしてみれば、その一瞬で十分だった。
サーレーの動きが止まったと同時に、生き残っていた兵士たちが一斉に狙いを放った。
サーレー目掛け、でなく、その首輪めがけ火を噴く銃口。
縦断を放ったところで、体に触れれば固定される。しかし火薬が詰まった首輪ならば! サーレーの体に触れない首輪ならば!
弾丸が迫るのをサーレーはただ見ることしかできなかった。
しびれを振りほどこうと、必死で手をあげようとするが無駄だった。
狙撃兵が放った銃弾は几帳面な形兆らしく、一ミリも逸れることなくサーレーの首輪に着弾する。
短いボンッ、という音に続いてどさりとなにか重いものが倒れる音が聞こえた。
サーレーの首と、サーレーの胴から新たに勢いよく血が噴き出した。
地面を覆うように広がっていく生暖かい感触を感じながら、形兆はそっと目を瞑る。
ようやく終わった。そう感じるとどっと疲労が押し寄せてきて、形兆は意識を手放しかける。
満足したわけではない。父を殺してもいないし、癒してもいない。
やりきったと胸を張るには不十分だと分かっていたが、それでもここでおしまいだとどこかで囁く自分がいた。
暗くなる視界の中、鬼のような形相で叫ぶシーザーが見えた。
形兆は最後になにか言ってやろうかと思ったが、血がこみ上げ、言葉が出ない。
耳元で必死に叫ぶシーザーの声が聞こえる。それも徐々に遠くなる。
そして……―――





8 :
716 : ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 03:03:18 ID:rNPueYv2
「これで満足かよ」
誰もいない道の真ん中で、シーザーはそう呟いた。
血で手を真っ赤にしながら、誰に言うでもなくそう言った。
返事をする者はいない。先まであたりを走り回っていた小さな兵士たちも、姿を消してしまった。
策を聞いた時点でこうなることは分かっていたはずだった。
ゼロ距離から自分の体を死角に一人目を始末。自らの血で辺りを覆い、波紋で足止め。
動けなくなった二人目を形兆のスタンドがトドメをさす。完璧だった。
ただ一点、形兆が死んでしまったという点を除いては。
形兆は自ら死を望んだのだろう、と思った。
シーザーは天を仰ぎ、そっと自らの胸元に手をやった。
そこには形兆が一ミリのズレもなく鮮やかに打ち抜いた銃創の跡が残っている。
形兆の体を打ち抜きながら、且つディ・ス・コに致命傷を与える。それができるほどの技術を形兆はもっていたはずだ。
「あばよ」
立ち上がりがけに、シーザーはそっと形兆の顔に手をやった。
安らかに目を閉じさせ、頬を歪めて唇を動かす。形兆の死に顔が僅かな微笑みに変わった。
俺は死なない。死んでやるもんか。
シーザーはそっと呟いた。そんな安易な道を選んでなるものか。不用意に手放してなるものか。
生きて、生きて、生き抜いてみせる。泥臭くても、血生臭くても、しがみついて這って進んでやり遂げてみせる。
そうでなければ示しがつかないのだ。リサリサに、スピードワゴンに。そして虹村形兆に。
その気持ちだけはありがたく頂戴しておこうと思った。
立ち去りかけたとき、微量の波紋が足元を伝わせ、三人の体に波紋を流す。
サーレーとディ・ス・コの額に張り付いた肉の芽は、しばらくもがいた後、砂となって消えた。
シーザーはもう振り向かない。目指す先は東。DIOの館へ、そして川の上流へ。
「待ってろ、DIOッ!」
かすかに残ったシャボン玉が、血の池から湧き上がる。
三つの遺体が残された街路地。
真っ赤に染まったシャボンが宙を舞い、ゆらり、ゆらりと揺れていく。


【ディ・ス・コ 死亡】
【サーレー 死亡】
【虹村形兆 死亡】
【残り 49人】

9 :
717 :BLOOD PROUD    ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 03:04:29 ID:rNPueYv2
【C-2 カイロ市街地 北西/ 一日目 日中】
【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発、体力消耗(大)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック
[道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム、ダイナマイト6本
    シルバー・バレットの記憶DISC、ミスタの記憶DISC
    クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
0.???
1.ティベレ川を北上、氾濫の原因を突き止める?
2.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
3.DIOの秘密を解き明かし、そして倒す。
4.DISCについて調べる。そのためにも他人と接触。
【備考】
※シーザーは形兆の支給品、装備、道具を回収しました。
※サーレー、ディ・ス・コの死体の周りにデイパック及び所持品が放置されています。
 ディ・ス・コが所持していたシュガー・マウンテンのランダム支給品も放置されています。
※カイロ市街で大規模な銃撃戦が起こりました。あたりに銃声が響き、建物に銃創が数多く残っています。
718 :BLOOD PROUD    ◆c.g94qO9.A:2014/05/02(金) 03:09:22 ID:rNPueYv2
以上です。誤字脱字、矛盾点ありましたら教えてください。
>星環は英雄の星座となるか?
ハードボイルド承太郎が好きです。
それに対する仲間たちのリアクションもベネ。
康一君の一言とか、ティムの観察眼とか、仗助の気遣いとか、ジョセフのワンパンとか。
HEROES大集合で大所帯ですが、さてどうなることやら。
今の予約が来れば空条邸にほとんどの参加者が集まるので期待です。
>血の絆
DIOvsジョルノのお膳立てが完全に整ったので次の人が書きやすそうと思いました。
こういうパスは私としては舌なめずりするほど美味しいと思いました。
あとそこにジョナサンを突っ込むというのも美味しい。さらにジョルノ+フーゴも美味しい。
さらにさらにここにヴォルペが入ってきたらもう止まらない。
そんなこんなでこっちも続きが楽しみです。

10 :
スレ建て、代理投下、乙です

11 :
投下アンドスレ立て乙
形兆も意思を貫ぬくことができたんだな・・・

12 :
遅くなってしまい、非常〜〜〜〜に申し訳ありませんでした。
予約した作品ですが、なんとか完成しました。
一応メイン書き手である自分が、予約期限をぶっちぎるのがデフォルトになってしまっている…… 本当に申し訳ないです。
最後にもう少し推敲したいので、投下は本日5/12の午後9時頃から行いたいと思います。
またしても長めな作品なので、支援に来ていただけると助かります。
それでは、よろしくお願いします。

13 :
その心意気やよし。
支援させてもらおうじゃないか!

14 :
ぼちぼち始めていきます。
あまり時間がないので、もしさるさん食らったら、したらばの転載用スレを利用しますので、そちらもよろしくお願いします。
ウィル・A・ツェペリ、モハメド・アヴドゥル、花京院典明、ラバーソール、吉良吉影、川尻しのぶ、ジャイロ・ツェペリ、ビーティー、ドルド  投下します。

15 :
支援

16 :
.


Und der Haifisch, der hat Zahne
und die tragt er im Gesicht
und Macheath, der hat ein Messer
doch das Messer sieht man nicht.


.

17 :
ドイツ語…?
支援。

18 :
.
空条承太郎。DIO。カーズ。
誰も彼も、普通の人間とは思えない超常的な能力を持っていた。
あれだけ激しい戦いをなんとか逃げ延びはしたが、吉良吉影は重傷であった。
放送を終え、互いの生存を確認する。
あの戦いでは、誰も命を落とさなかったようだ。
ちぃッ、と、吉良は心中で舌を打ち鳴らす。
せめてDIOかカーズ、どちらかでも消し飛ばすことができていれば……
左手首が痛む。無理して『シアー・ハート・アタック』を酷使し続けた結果だ。
その代償を払った成果が得られなかったとこが、何より悔しい。
いや、あの場を生きて逃れられただけでも幸運と考えるべきなのだろうか。

「なにが起きたか…… ですか」

さて、どう答えるべきだろうか。
川尻しのぶと名乗ったこの女。おそらく川尻浩作、早人という2人の親族だろう。
親? 兄弟? 旦那? 息子?
近しい人間を亡くして間もないというのに、随分と気丈に振舞っている。
なにか他に、心の支えになるものでもあるのか。
ともかく、女の本性の見えぬうちに、下手なことを話すべきではない。
そう考え、吉良がすっとぼけた回答を返そうとしたちょうどその時、玄関から物音が聞こえた。
引き戸を開ける音だ。
そして、かすかに聞こえる足音。何者かが、この屋敷に侵入したのだ。
「誰か来ますね」
「え……ええ………」
しのぶを後ろ手に庇うような形で、吉良は侵入者への対応に備える。
開きっぱなしになった応接室の戸口から、緑色でスジのある光ったメロンのようなスタンドが顔を見せる。
スタンドは警戒を強める吉良を目に捉え確認すると、今度はその本体と思われる人間が姿を見せる。
赤く長い髪をした、日本人の学生のようだ。

「2人か?」
首肯する吉良。
「……承太郎はいないのか?」

続く少年の問い。今度は首を傾げつつ、黙ってしのぶの表情を伺う。
「……はい」
自然な受け答えだ。
と同時に、自分と承太郎のつながりを隠しつつ、しのぶと承太郎のつながりを確認する吉良。
この少年は、空条承太郎の仲間だろうか。
たしかに、ここは『空条邸』。空条の名に親しいものが集まってくるのは必然ーーー
こうなる可能性も十分にあった。
考えが甘かったか、と吉良は思い返す。

19 :
支援支援

20 :
「心配は無用。我々に敵意はない」

前置きもなく、突如背後から言葉が投げかけられる。
少年が現れた反対側。
吉良は振り向くと、庭に面した縁側に別の男がスタンドを携えて立っていた。
学生服の方は囮だった。本命はこちらだ。
(危なかった…… 有無を言わさず学生服を攻撃を仕掛けていれば、こちらの男に倒されていたかもしれない……)
身体の怪我もあり、即決即断の戦闘態勢を取れなかったことが、逆に幸いしていた。
この侵入者、あらかじめ吉良たちの位置をだいたい掴んでいたようだ。
そして、屋敷に侵入してものの数秒で挟み撃ちを仕掛けてくる。
なかなか侮れない。
「突然、奇襲のような真似をしてしまい申し訳ない。だが、状況が状況だ。
安易に他人と接触することは命取りになる。勘弁して頂きたい……」
そうはいいつつ、2人ともスタンドは出したままだ。
完全に警戒を解いたわけではないようである。
まあ、言葉のひとつふたつを交わしただけでは、吉良たちを信用するにはまだまだ足りないのは当然であるが。
だが、とりあえず、問答無用の戦闘だけは避けられた。
泥スーツの男といい、空条承太郎といい、吉良が最近出会ったのは問答無用の敵ばかりだった。
ここに来てようやくまともな人間が現れたことに、吉良は息を吐いて安堵する。
「おおそうだ! まずは名乗っておこう。そっちのは花京院典明。そして私は、占い師のモハメド・アヴドゥルだ」

だんまりを決め込む花京院を余所に、でかいアフリカ人のブ男、アブドゥルがそう自己紹介した。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

21 :
.

少々、時は遡る。

「これで全ては闇の中……か」
放送を終えた直後、ビーティーは静かに項垂れる。
すぐそばに座り込んだジャイロ・ツェペリも、大きく肩を落としていた。
麦刈公一を殺した犯人、その容疑者として最も疑わしい存在だったスティーリー・ダンは、既にこの世の者では無かったのだ。
ツェペリも表情に悲しみを見せる。直接会って、問いたかったのだ。
自らをスタンド攻撃した意図を。そして、自分たちに見せた善良な彼の姿は、偽りだったのかを。
そして、ストレイツォ。
若き日を共に過ごした旧友の死は、すでに戦士としての生命を奪われた老兵には大きなダメージだった。
各人が放送の結果に重苦しい反応を示している中、ドルド中佐のみが、内心苛立ちを見せていた。
(たったの18人か…… 最初は一気に半分も減ったというのに、やはり人数が少なくなるにつれ、ペースが落ちていくのは必然か……)
はやくゲームが終わって欲しいドルドにとって、この死者の数は物足りなかった。
仲間も居らず、優勝することしか頭にないドルドにとって、放送の結果などそんなものだ。
名前がわかる唯一の存在である橋沢育朗は、とっととくたばって欲しいのだがなかなかしぶといようなのだ。

「さて、もういいな。悔やんだところで始まらない。では、放送前に話し合った通り、まず俺ひとりで空条邸に出向く。
危険が無いことを確認すれば、合図を送る。その後、改めて全員でこちらに来てくれ」
立ち直りが早かったのは、モハメド・アヴドゥルだ。
彼とて、この放送には思うところが多々あった。
ポルナレフの遺言にあった、ブローノ・ブチャラティ。彼も死んでしまった。仲間であるアバッキオも一緒に。
見せしめでジョルノも死んでしまったので、残るは3人。彼らのうち何人が、レクイエムのことを知っているのだろうか。
だが、悔やんでも仕方がない。一刻も早く彼らと接触するためには、行動を止めるわけにはいかぬのだ。
空条邸より北東1kmほどにある小さなビルで放送を迎えた一行は、次の目的地をそこに選んでいた。
広いローマの地図のど真ん中に位置する施設であり、しかもそれは参加者の殆どに縁のある空条承太郎の実家なのだ。
いかなる理由をもってしても、立ち寄らない理由は存在しない。

22 :
「本当にひとりで大丈夫か? なんならオレも―――」
ジャイロが手を挙げて名乗り出るが、アヴドゥルはにべも無く返答する。
「いや、気持ちだけ頂いておこう。誰と遭遇するか分からぬ以上、この人数で動くのは危険だ。
ビーティーは戦うことはできないし、シニョール・ツェペリにも、無理はさせられない。
そんな中で、あの男から目を離すわけにはいかないからな」
アヴドゥルがドルドを一瞥する。ジャイロにも睨みつけられ、ドルドはやれやれといった雰囲気で肩をすくめた。
ズッケェロを始末したことを、まだ根に持ってやがるのか。
あんな野郎を生かしておこうとしたお前らの方がどうかしているだろう。
何を言っても、ドルドはそんな態度を変えなかった。
確かに正論かもしれない。間違っているのはアヴドゥルたちなのかもしれない。
だが、だからといってこの男の言うことを軽々と受け入れるわけにはいかなかった。
「気をつけてな、アヴドゥル」
ツェペリが拳を握り、檄を飛ばす。
アヴドゥルは笑顔で手を挙げて答えた。
「アヴドゥル…… 油断するなよ?」
ビーティーは自らの脇腹を親指で示しながら、注意を促した。
アヴドゥルは釣られて、ビーティーと同じように自分の脇腹に手を添える。
そこには、ビーティーから賜った『戒めのナイフ』を差してあったのだ。
「ああ、わかっている。『過信』はしない。―――行ってくる」
アヴドゥルはひとり、空条邸を目指した。
『空条』の名は我々にとっての正義であると同時に、多くの悪にとっての敵でもあるのだ。
スティーリ・ダンやJ・ガイルは死んだがしかし……
ラバーソール。ホル・ホース。最悪の場合、DIOがそこにいることまで想定して動く必要がある。
油断して殺されないように、か。
ふた回りも歳が離れている子供に、まさかこんなことを教えられるとはな。
アヴドゥルは自嘲し、しかしその言葉を心に噛み締めながる。
バイクに跨り、アヴドゥルは一路目的地を目指した。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

23 :
ローマの街には似つかわしくない、本格的な日本庭園。
その敷地内に足を踏み入れると、そこにはさらに似つかわしくない高級リムジンが停車している。
『法皇の緑』が目撃したものに間違いない。
「まさか自宅に戻っているとはな…… リムジン通勤とは、随分と結構な身分じゃあないか」
花京院が軽くジョークを飛ばし、ラバーソールがその隣で「ククク…」と小さな笑いを零す。
承太郎を殺せば、さぞ高得点だろう。
あわよくば花京院と相打ちにでもなってくれれば、それがラバーソールの最も希望する結末である。
まずは、『法皇』を屋敷の床下へ潜行させる。
普段はドブネズミどもの住処になっている軒下から、屋敷内の気配を探る。
屋敷にいるのは、2名。男ひとりと女ひとりだ。
承太郎だろうか…… いや、迷う必要はない。問答無用で、襲撃し制圧する。
ラバーソールがその手を、屋敷の引き戸に伸ばす。その時―――
「待て」
花京院はこちらへ近づいてくる、僅かなエンジン音を聞いた。
この音は―――オートバイだろうか?
北東の方角から、ゆっくりこちらへ近づいてくる。
ラバーソールへ目線で指示を出し、花京院たちは一旦屋敷の玄関前から退き、離れとなっている書庫の陰へと身を隠した。
やがて現れたのは、オートバイに跨った大柄な黒人男性。
その手には、長物の銃火器。おそらく、猟銃。
(モハメド・アヴドゥル―――!)
先の放送から生存確認は取れていたが、ここで遭遇するとはタイミングがいいのか悪いのか……
確かに彼は承太郎に匹敵する重要な標的のひとりだが、強敵だ。
中に承太郎がいるかもしれない。彼らふたりを同時に相手にするのは骨が折れる仕事だ。
前もって気が付いてよかったと、花京院は思う。
承太郎とアヴドゥルに挟み撃ちにされるのは御免である。
(しかし、ここで逃すのも惜しい相手だ。承太郎と手を組まれるとしたら面倒だし、始末しておきたいが……)
花京院は考えを巡らせる。
そして、ひとつの妙案に辿りついた。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

24 :
支援

25 :
屋敷の玄関前に辿り着き、アヴドゥルは『魔術師の赤』を出現される。
誰かに見られている気配を察したのだ。
元々、誰かと接触するのを覚悟の上で、オートバイなどという目立つ乗り物で屋敷に来たのだから。
善良な者なら歓迎であるし、悪意ある者ならば排除するまでだ。
アヴドゥルにはその自信と実力がある。そして、やらねばならぬ使命もあるからだ。
どこからの攻撃にも対応できるようアヴドゥルは臨戦態勢に入り、周囲を見渡す。
すると観念したかのように、離れの陰からひとりの男が現れた。
「やれやれ、降参だ。さすがだな、アヴドゥルさん」
花京院典明だった。そばには、彼のスタンド『法王の緑』。
思いがけぬ仲間との再会に、アヴドゥルの緊張が緩んだ。
ポルナレフが死亡し、承太郎も見せしめとして殺された。
ツェペリがワムウから聞いた話によると、ジョセフ・ジョースターも同時に死亡している可能性が高い。
だとすれば花京院(とイギー)は、唯一残されたアヴドゥルの仲間なのだ。
再会が嬉しくないわけがない。
「あなたも承太郎の家に来ているとは思わなかったですよ。ここで―――」
「待て花京院」
だがアヴドゥルは冷静だ。
簡単に流されはしない。熱くなりやすい性格だと自分でわかっているだけに、常に冷静であろうと心がけている。
「疑うようですまないが、お前のスタンドを、私の手の届く距離まで寄越してはくれないか?」
「えっ?」
突然の尋問のようなアヴドゥルの態度に、花京院は固まる。
しばし逡巡するも、アヴドゥルの有無を言わさぬ眼光に刺観念し、黙って『法皇』をアヴドゥルの元へと操作した。
下手な動きをすれば命取りだと、花京院は理解していた。
アヴドゥルは『法皇』のスタンドヴィジョンへと手を伸ばす。
(触れられない……)
本物だ。
アヴドゥルが警戒したのは、ラバーソールの『黄の節制』。
承太郎より聞いた話によると、ラバーソールが花京院に化けていた際、『黄の節制』は『法王の緑』の姿さえも完全に再現していたそうだ。
だが、『黄の節制』は実態のあるスタンド。アヴドゥルが手を伸ばせば、そのヴィジョンには触れられるはずだ。
つまり、この『法皇』は本物であるということ。
ならば……
「花京院……。その長い前髪を上げて、額を見せてくれないか?」
そこまでするか…と、花京院は嫌な汗を流す。
だが、黙って従うしかない。前髪を右手で抑え、額を露わにする。
肉の芽は―――――― 無い。

26 :
支援

27 :
.
(やれやれ、どうも神経質になりすぎていたようだ……)
ようやく、アヴドゥルは肩の荷を下ろす。
他人に化ける―――特に、過去に花京院に化けたことがある、ラバーソールという可能性。
もしくは、参加者たちの時代の差により生じうる、DIOの刺客だった頃の花京院であるという可能性。
ビーティーに感化されてか、それともバトルロワイアルの緊張感からか、つい疑り深くなってしまった。
「すまない、花京院。君を疑うような真似をしてしまった」
「いえ、仕方がない。この状況下ではむしろ当然でしょう。さすがだ、アヴドゥルさん」
頭を下げるアヴドゥルに、花京院はなんてことない素振りを見せた。
だがその内心は、今にも心臓が止まりそうなほどに、緊張が収まらなかった。
花京院―――否、彼に化けたラバーソール。
花京院の仕組んだ策は、偽物の花京院でのアヴドゥルとの接触である。
実際に花京院に化けて承太郎を襲撃しようとしたラバーソールの方が、「アヴドゥルの仲間である花京院」を演じることに長けているだろう。
それが、花京院の狙いだった。
(実際にはラバーソールが花京院に化ける際は、そのキャラクターまで似せるつもりはなかったのだが)
当然、ラバーソールは拒否したが、花京院は有無を言わせなかった。
ただでさえ花京院に対し痛い目をみた直後である。
最悪、花京院が敵側に着いたとすれば、花京院とアヴドゥルの二人を同時に相手にするハメになる(さらに屋敷には承太郎もいるかもしれない)。
あまりにも分が悪すぎる。ラバーソールは従うほかなかった。
『黄の節制』による外見の変装は完璧である。当然、額に肉の芽など現れないのだ。
ならばなぜ、アヴドゥルは『法皇』のヴィジョンに触れることができたのか?
その答えは至って簡単……
この『法皇の緑』は『本物』なのだ。
『花京院』の側ならば、『法皇』のヴィジョンが宙を浮いていても不自然はない。
情報をラバーソールに独占させない為、且つラバーソールを見張る為、且つ隙あらばアヴドゥルに奇襲をかける為、花京院は『偽花京院』の側に自らのスタンドを配置したのだ。
射程距離の広いスタンド使いならではの奇策である。
(花京院の野郎―――ッ! こっちは冷や汗もんのスレスレ演技だぜッ!! 調子に乗りやがってよォ―――!!)
まさかアヴドゥルが肉の芽の確認と、『黄の節制』の確認までしてくるとは思わなかった。
偶然が重なり、ラバーソールはアヴドゥルの追求を逃れることができた。
だが、これは逆に好機である。
始めにこれだけ疑われておけば、もはやアヴドゥルの信用は勝ち取ったも同然。
寝首をかくには、むしろ好都合といえる。
その後、アヴドゥルと花京院(ラバーソール)は二手に分かれて空条邸に進入。
吉良吉影、川尻しのぶの両名との接触を図るのだった。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

28 :
.

新たに3人、屋敷に現れた。
ウィル・A・ツェペリ、彼を背負うドルド中佐、それにビーティーの3人だ。
吉良らとの接触後、アヴドゥルはすぐに付近に隠れさせていた仲間たちを呼び寄せた。
空条邸の庭にでたアヴドゥルの『魔術師の赤』は火の玉を打ち上げた。
まるで打ち上げ花火のように花火のように、2発。
オレンジ色のそれは、日中ではさほど目立つ物ではなく、この周辺の空を注意してみていなければ気が付かないものだった。
事前の打ち合わせ通り、火の玉が1発なら危険、来るな。
2発なら、早急な危険は無し、来い。
という意味だ。
このことから、アヴドゥルは吉良、しのぶ、そして花京院についての警戒は(ある程度)必要ないと判断したとわかる。
「あれだけ死亡フラグまがいの別れのシーンの後で、随分あっけない再会になったな」
軽口を叩きながら、ビーティーはアヴドゥルに歩み寄る。
アヴドゥルは苦笑いを浮かべつつも、怪訝な表情を見せる。
「……ジャイロは外だ。用心のため、保険として待機させておいた」
アヴドゥルにしか聞こえない声で、ビーティーは囁いた。
ツェペリも、アヴドゥルの顔を見て頷く。
なるほど。
ドルドにツェペリの介助を任せたのは些か不満があるが、そういう役目ならばジャイロが適任だろう。
花京院はともかく、残り2人はまだ出会ったばかりだ。
男の方は大怪我をしていた。彼がどんな人物であれ、これまでの経緯などは聞いておきたい。
アヴドゥルに迎えられる彼らを、庭に面した応接室から吉良が睨む。
花京院に扮したラバーソールもまた、苦虫を噛みつぶしたような表情を必死に隠していた。
そして……
(面倒だな………)
離れの書庫に隠れ潜む本物の花京院もまた、予定より多い登場人物の数にイライラしていた。
これだけの数の仲間が潜んでいたのならば、アヴドゥルと接触すべきではなかっただろうか?
(しかし、あの川尻しのぶという女は、承太郎について何か知っているような様子だった……)
もう少しだけ、観察してみるか?
『法皇』で承太郎の行方さえ聞き出すことができれば、自分一人だけで追いかけるか。
正直、承太郎さえ仕留めることができれば、ラバーソールがどうなろうと、この場がどうなろうと、どうでもいいのだ。

29 :
空条邸の応接室に集合したのは、全部で7人。
アヴドゥルの一行のリーダーは意外なことに最年少のビーティーだった。
彼を中心に、向かって右隣にアヴドゥル。
アヴドゥルが脇に置いた猟銃を挟んで、川尻しのぶ。
吉良と、彼の左腕を治療するツェペリが並び、ツェペリの介助をするドルド。
最後に花京院(ラバーソール)、そしてビーティーに戻る形で円形に陣取った。
出会ったばかりの人物に無償で治療を行うことにビーティーは難色を示したが、ツェペリが頑として譲らなかった。
『魔術師の赤』の姿はアヴドゥルの意思によりとっくに消えているが、『法皇』はまだ花京院の側に佇んでいる。
花京院は素知らぬ顔をしており、他の者も、それについてとやかく言うことはない。
(花京院、どうかしたのか? ひどく落ち着かない様子だが…)
そんな中でビーティーだけが、例外的に、彼の挙動に若干の違和感を覚えていた。
「さて、蓮見さん。治療を受けながらで構わない。話してもらえないかな。その怪我はいつ、どこで、いったい誰にやられたのだ?」
『蓮見』と呼ばれたのは、吉良吉影だ。
アヴドゥルとの遭遇後、吉良は名前を問われ、そのとき蓮見琢馬と答えたのだ。
ストレイツォらといた時とは、状況が違う。
あの空条承太郎の中で、吉良吉影と言う人物が殺人鬼であるということは等式で結ばれていた。
承太郎のように顔を見て吉良とは認識されなかったが、吉良の名前を知っているかもしれないと思い、偽名を使った。
実際に承太郎から吉良吉影の素性を聞かされていた川尻しのぶもおり、吉良の判断は正解だった。
問題は、偽名でなんと名乗るか。
名簿にない名を名乗るわけにはいかない。
第2放送までの生存者の中で、日本人男性とはっきりわかるのは、11人。
その中から、吉良吉影、空条承太郎、花京院典明を除外。
良平、億泰のような親族がいる東方ジョウ助、虹村形兆も意識して除外。
残る6人の中から、無作意で蓮見琢馬の名を選んだ。
これは一つの賭けであったが、吉良は無事に突破した。
ここでツェペリと面識のある宮本の名でも挙げていたなら、吉良は嘘が即座にばれて窮地に陥っていただろう。
閑話休題。
「……地下の洞窟で、3人の戦いに巻き込まれました。とても人間とは思えない、化け物でした。
たしか、名前はわからないがコートを着た男と、後の2人は、カーズ、それにDIOと名乗っていたと思います」
「DIO――!」
ツェペリの波紋による治療を受けながら、吉良はこれまでの経緯を説明する。
意図的に承太郎の名前を隠し、さらに吉良自身はやはり無力な一般人を装った。
偽名を使った以上、近いうちに全員始末する必要がある。
ならば、わざわざ『キラー・クイーン』を見せてやることもない。
DIOの名を出したことで、アヴドゥルたちの興味はそちらに移った。
さらに奴らの詳細を話し、ツェペリからカーズがワムウの同族であることが推測された。
吉良にとってはワムウというのは新たな情報。
あのカーズと同等の危険人物とは気が滅入るニュースであったが、情報が得られたこと自体は幸運だ。

30 :
「しかし、DIOたちの戦いに巻き込まれて、よく無事でいられたものだ」
「はい。幸運でした……」
「だが、それだけでは説明が付かんな? 蓮見、その左手首の傷は普通じゃあない。毒か何かで溶かされたようだが?」
鋭い目付きでビーティーが睨む。
ドルドはその歪な形の手首に、杜王駅に見たバオー鼠の能力を連想する。
吉良はビーティーから目線を外らし、沈痛な面持ちを浮かべて語り始めた。
「こちらのは、別です。体に泥を纏った……スタンド使い……でしたか、それに襲われました。ストレイツォさんが身を挺して守ってくれなければ、私の命はなかったでしょう」
「なんと―――っ! そうか、ストレイツォが君と……」
必要のない嘘は付かず、そして自分にとって都合のいいストーリーを吉良は創作して話す。
ツェペリがストレイツォと知り合いである事も気が付いており、彼の名を出す事でストーリーにも真実味が増す。
(まただ。話題を逸らし、深い追求から逃れ、煙に巻いた。蓮見琢馬、この男、やはりどこかおかしい)
だが、ビーティーだけは吉良の言葉の不自然さに気が付いていた。
続いて川尻しのぶが話を始めたときも、吉良の不自然さは現れた。
吉良はしのぶの動きを常に気にしていた。
それは、今のしのぶが触れたものを爆破させる起爆材であり、不用意に他人と接触させたくないからである。
不自然の無いよう振る舞ってはいたが、ビーティに疑問を持たせるには十分だった。
「それで、空条さんはカーズという男に戦いを挑みました。私はこの空条邸で待つと、彼に約束を―――」
「なるほど。蓮見さんの巻き込まれた戦いのもう一人は、承太郎か。しかも、俺より年上の時代の承太郎とは…」
しのぶの話がだいたい片が付いた。
これまでの承太郎の動向。
ツェペリの気にしていたスティーリー・ダンと思われる人物を無慈悲に惨殺したことや、アヴドゥルが看取ったポルナレフの遺体を見つけたことまで、何一つ隠し事はしなかった。
そして、吉良吉影という男について。
吉良本人も知り得ない、未来の吉良としのぶの関係について。
吉良が川尻浩作に扮し、しのぶとひとときの結婚生活を送ることまで。
あまりの内容に吉良は呆気にとられた。
「しかしその承太郎って男は、蓮見がいながら構わずDIOたちとの戦いを続けたのか? 」
「…………」
「ああ、あり得るな。話を聞く限り、今の承太郎は何かがおかしい。まるでダーティハリー症候群だ。このまま放ってはおくわけにはいかん」
吉良に不信感があるビーティーが承太郎に対し不平を漏らすが、アヴドゥルはむしろ承太郎の現状に不安を感じている。
そして吉良は、綱渡りのような情報交換に疲弊していた。
今のところ致命的な矛盾は無いが、このままではいつかボロが出るだろう。
何か手を打たなければならない。
「だが、その承太郎が生きているという事は、同じように見せしめとなったジョセフ・ジョースターもまだ死んでいないということだろうか?
それにジョルノ・ジョバァーナも―――」
「うむ。花京院、君の意見を聞こう」

31 :
支援
もう少しスピード上げてもいいかも
規制引っかかったら代理投下しますよ

32 :
720 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:14:44 ID:G9cHNUZg
情報交換の指揮はアヴドゥルとツェペリが中心となり、他の者は黙って質問に答える側だ。
ドルドに対しはなんとも思わないが、沈黙を保つ花京院にはビーティーだけでなくアヴドゥルも違和感を覚えていた。
「……さあ。私からはなんとも言えないな。君と違ってシンガポールまでしか知らないし、ここへ来てからもろくな人間と出会っていない」
話を振られ、ラバーソールはなんとか切り抜けようとした。
だがその後すぐに、今度はラバーソールがこれまでの経緯を話をするターンが回ってきた。
花京院からはほとんど何も聞かされていないため、彼も過去を創作する。
水のスタンドを使うアンジェロと言う外道を始末した事、その際に、川尻しのぶの夫らしき人を死なせてしまった。
などと言う内容などだ。
吉良の語ったカバーストーリーと比べて出来が悪く、ビーティーから鋭い指摘がある度に、言葉を詰まらせていた。
(やはり、この花京院も、何かを隠している……)
(畜生ッ! このビーティーとか言うクソガキをぶち殺してやりてえ! しかしこの人数相手に、妙なことは出来ねえ……)
ラバーソールは焦燥を誤魔化し、『法皇』を見る。
スタンドには変化はない。
(花京院ッ! もう限界だぜ! なにか指示を寄越せッ! このままじゃあ――――――)
その後、今度はアヴドゥルたちが自分たちのこれまでの経緯を話し始めた。
ポルナレフの死、ホテルでの出来事、ワムウという男、ドルドの駆除対象である危険生物バオーについて等だ。
ビーティーに巧みな話術によりジャイロの存在はうまく隠され、ジャイロ無しでは知り得ない情報(主催者スティールの事など)も当然出なかった。
一通りの話が終わった頃、時計の針は既に午後2時半を回る頃だった。
「では、このままここで待機する。承太郎の帰還を待つのだ。異論のある者はいるか?」
アヴドゥルの言葉で、情報交換は締めくくられようとしている。
川尻しのぶの言葉を信じるならば、承太郎は必ずここへ戻ってくる。
まずは、それを待ち、合流の後にその後の方針を決定するという流れだ。
異論がでるはずもないが、若干1名は納得していなかった。
無論、ラバーソールだ。
(冗談じゃねえ… この人数に加えて、承太郎まで…… 花京院の奴は一体何をしているッ?)
そんな2人を余所に、アヴドゥルはビーティーを見る。
そろそろジャイロを呼び出していいんじゃないか?
そう問いたいのだろう。
まだ屋敷内にも不安要素は残っているが、ここらがビーティーとしても譲歩のし時だ。
いつまでも門の外で待たされ、ジャイロもそろそろ我慢の限界だろう。
ビーティーは目線でドルドに指示を送る。
アゴで使われることにやれやれとため息を付き、しかしドルドは静かに従う。

33 :
721 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:18:14 ID:G9cHNUZg
「少し外の空気を吸ってくる」
適当にそう言って、ドルドは立ち上がった。
ビーティーにとっての不安は蓮見(吉良)と花京院(ラバーソール)の2人だ。
彼らについて、アヴドゥルに注意を促しておくべきか?
蓮見は、ツェペリからの波紋の治療を終え、軽く体を動かしている。
溶かされた左腕はそのままだが、それ以外は普通に動くに問題ないほどにまで回復しているようだ。
花京院は……
(ム? 『法皇』の姿が無いーーー)
ドルドに指示を送った隙にだろうか?
常に花京院の傍らに構えていた『法皇の緑』の姿が、いつの間にか消えていた。
室内を見渡すも、その姿はない。
花京院が消したのか、それともどこか遠くへ操作させたのか?
いや、違う。
ビーティー同様に、花京院(ラバーソール)もきょろきょろとあたりを何かを探しているのだ。
(花京院? クソッ! 『法皇』はどこに行った? 花京院は何を考えている?)
(なんだ? 花京院も『法皇』を探しているのか? 自分自身のスタンドを――? 奴が自分で消したんじゃあないのか?)
「おや? 川尻さん、どうしました?」
ビーティーの考えは、アヴドゥルの言葉に遮られる。
川尻しのぶが突然立ち上がり、生気のない表情を浮かべている。
その手には―――
「川尻さんッ! あんた何を?」
猟銃だ。
情報交換の間、アヴドゥルが小脇に置いていた猟銃。
川尻しのぶは猟銃を水平に構え、そして射撃した。
発射された散弾は、縁側から庭へ出ようとしていたドルドの背中を打ち抜き、胸に大きな風穴を生み出した。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆

34 :
722 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:18:52 ID:G9cHNUZg
(なんだ? 銃声か!?)
屋敷内で、なにか異変が?
ジャイロ・ツェペリがビーティーの指示により空条邸の敷地外部にて待機をして小一時間が経過していた。
そろそろ待たされる我慢も限界に達していた頃、屋敷内から聞こえてきたのは、1発の銃声。
おそらく、アヴドゥルのもっていた猟銃だろう。
中で一体、なにが……?
ドルドが暴れたのか。それとも、別の敵か?
(どうする―――? 行くか? だが―――)
迷うジャイロ。
そこへ、さらに2発目の銃声が鳴り響く。
躊躇うことはない。ビーティーが自分を外に残したのは、こういう事態が発生した時を想定したからじゃあないのか?
ジャイロは鉄球を握りしめ、屋敷内部へと駆けだした。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆

35 :
723 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:19:51 ID:T2JU4awg
「グハァッ!」
ドルドの機械仕掛けの胴体の風通しは良くなり、そのまま動作を失い地面に倒れた。
突然猟銃を放った川尻しのぶは、うつむいてなにかブツブツと呟いている。
「川尻さんっ! あんた何をしとるんじゃあ! なぜドルドを撃った!?」
「その猟銃をこっちに寄越すんだッ! さあ早くッ!」
川尻しのぶによる突然の暴挙。
これには流石のビーティーも想定外だ。
何かしでかすとしたら花京院か蓮見だと思っていたからだ。
完全に油断していた。
「猟銃? 猟銃ですってぇぇぇ……?」
しのぶが口を開く。
目は虚ろで、呂律も回っていない。
「アヴドゥルさぁん! あなたにはこの『棒っきれ』が、『猟銃』に見えるのぉおお!?」
足下がふらつき、口からは涎が垂れる。
そして猟銃を再度構え、銃口はビーティーに向けられる。
(いかんッッ!)
「それじゃあっ! ちゃんと! よく見なさぁい!!」
「『魔術師の赤』ッ!!」
アヴドゥルはビーティーを庇って前に飛び出し、スタンドを繰り出した。
銃声が鳴り響くと同時に、『魔術師の赤』も高熱の炎を吹く。
牢屋の鉄格子すら一瞬で焼き付くす炎で、飛来する弾丸を相殺させるのだ。
このゲーム開始直後、屍生人たちから同じ猟銃で狙われたときも、この炎によって防ぎきった。
「ぐゥゥ……」
だが、あの時より至近距離で、しかもとっさにビーティーを庇った直後の銃撃だった。
しかも相手は女性で、ここは学校の教室よりも狭い空条邸の応接室だ。
そのため対応が遅れ、すべての散弾を防ぎきることはできなかった。
急所は守り抜いたが、散弾の一部が炎のガードを避けて、アヴドゥルのわき腹に命中した。
(くそっ なんて事だっ! 腹をやられた。これでは、炎のパワーも落ちてしまうッ! だが―――)
「スタンドだッ! 彼女はスタンド攻撃を受けているッ!」
ビーティーが叫ぶ。
アヴドゥル同様、彼もその結論に辿り着いていた。
川尻しのぶは何者かに操られている。
それが何者の仕業か?
それは、今のやり取りですべてわかった。

36 :
「花京院ッ! キサマかァッッ!?」
承太郎から聞かされた話でしか知らなかったが、花京院はDIOの配下だった頃、承太郎の高校の校医を操り、襲わせている。
そのときと状況が告示している。
肉の芽の有無は確認したはずだった、どうなっている?
だが、情報交換中も、花京院はどこか様子がおかしかった。
なぜもっと早く手を打たなかったのかと、アヴドゥルは悔やむ。
アヴドゥルは『魔術師の赤』の手刀を、花京院に叩き込む。
しかしーーー
「―――くそッ!」
花京院の腕が黄色いスライムで覆われ、攻撃は防がれてしまった。
ラバーソールの『黄の節制』である。
724 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:21:07 ID:G9cHNUZg
「「何だとッ?」」
アヴドゥルとビーティーが同時に叫ぶ。
スタンドは一人につき一体だ。
花京院にこんな芸当ができるわけがない。
蓮見が絡んでいるのか?とビーティーは視線を切るが、彼もまた事態を飲み込み切れていない様子で、腰を落として身を引いているだけだ。
突然の事態に、考えがまとまらない。
そして、アヴドゥルに攻撃されたラバーソールは、それ以上に焦っていた。
(畜生ッ! とっさに守っちまったッ! 花京院の野郎、俺を見捨てて、おっ始めやがったなッ!?)
すべては外にいる花京院の仕業だった。
『法皇』によって情報交換の様子を観察していた花京院は、空条邸での大乱闘を始めさせた。
承太郎がここに来る。
それは彼をターゲットとする花京院にとって好都合だったが、敵側であるアヴドゥルらの集団に行動されては、迎え撃つに都合が悪い。
花京院は、集団を崩壊させるプランを進めることにした。
ドルドが席を立ち、全員の意識がそちらに向いた隙をついて、『法皇』を川尻しのぶへ憑依さる。
そして、まず部屋を出ようとしていたドルドを銃撃。
その後、情報交換中にもっとも厄介だと判断したビーティーを始末しようとしたのだ。
『法皇』による操作を疑われるだろうが、問題はない。
なにせ、現場には『花京院』がいる。
罪はすべてラバーソールが被ってくれるというわけだ。
ラバーソールなどどうなっても問題はない。
『法皇』が暴れている以上『花京院』は言い逃れられないし、ラバーソールが正体を明かしたところで、アヴドゥルにとっては元々敵なのだから意味は無い。
そして、川尻しのぶがとりつかれている以上、『法皇』を攻撃できない。
アヴドゥルが花京院本体(ラバーソール)と交戦している隙を付き、『法皇』の攻撃でアヴドゥルを仕留める。
これで、花京院の勝利は確定する。
「アヴドゥルさぁぁん!! これは猟銃じゃあないわよねぇぇぇぇぇ!!!」
再度、弾を装填し、川尻しのぶがアヴドゥルを狙う。
炎の防御壁の威力は予想以上だった。
ビーティーから先に始末するつもりだったが、予定変更、アヴドゥルが先だ。
今の攻防でビーティーに身を守る能力がないのも明白である。
ここでアヴドゥルさえ押さえてしまえば、後はどうとでもなるだろう。

37 :
725 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:21:41 ID:G9cHNUZg
(まずい! もう一度攻撃されたら、今の俺では散弾を防ぎきれないっ! いや、花京院に捕まっているこの状態では、満足に動くこともできんッ!)
「パウッッッ!!!」
その刹那、ツェペリが飛び上がった。
座ったままの姿勢。腕の力だけでのものすごい跳躍で、ウィル・A・ツェペリは宙を舞った。
「やめんかァ―――っ!!」
(何ッ?)
花京院の予想を超える、ツェペリの超身体能力。
下半身不随と聞いて、侮っていた。
これが波紋の戦士の能力か。
飛び上がったツェペリの身体は川尻しのぶの身体を抱き留め、地面に押さえつけようとする。
だが―――

カチリ

(なんじゃとッ!?)
彼女の身体が床面に達するよりも早く、彼女の身体が起爆材となり、ウィル・A・ツェペリの身体は木っ端微塵に消し飛んだ。

「ウィル――――――ッッ!!」

奇しくもそれは、ジャイロ・ツェペリが応接室の縁側に辿り着くのと、ほぼ同じタイミングであった。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆

38 :
726 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:24:39 ID:G9cHNUZg

ローマ文化の町並みから、門をくぐればそこは日本庭園。
豪華な高級自動車に、アヴドゥルのバイク。
離れの書庫に、大きな池。
それらを横目に庭内を走り抜け、銃声のした屋敷の縁側を目指す。
ジャイロ・ツェペリが最初に見えたのは、縁側の廊下で倒れているドルド。
知らない奴とスタンド同士で取っ組み合いになっているアヴドゥル。
そして、自分と同じ姓を持つ異世界の友人、ウィル・A・ツェペリの身体が吹き飛ぶ光景だった。
(馬鹿がッ―――! 何故ノコノコ現れた? 何のためにお前を外に残したと思っているんだッ!? 
こういう場面になってこそ、伏兵のお前の存在が活きてくるのに―――ッ! もっと慎重に動けッ! 愚か者め!!)
心中で憤るビーティー。
どんな時も冷静沈着な彼とは違い、ジャイロは結構熱くなり易いタイプだ
銃声を聞いて、いてもたってもいられなくなってしまったのだろう。
本当ならばもっと現れるタイミングを図って欲しかったが、出てきてしまったのならば仕方がない。
「くそっ! どうなってやがるッ? どいつが敵だッ!?」
見極めないまま考え無しに飛び出してきたジャイロには、攻撃対象が定められなかった。
一発しか無い鉄球を構え、ジャイロは思案する。
ツェペリが爆死した側でうずくまる女か?
高そうなコートを着込んだ、見慣れぬ金髪男か?
いや、やはりアヴドゥルと組み合っている、長い前髪の少年が怪しいかッ!?
「女だジャイロ! 女を狙えッ!!」
ジャイロの迷いを、ビーティーの指示が一蹴した。
花京院が何かをしたのは間違いない。
だが、鉄球は1発だ。
謎の防御スタンドを繰り出した花京院の正体がわからぬ以上、貴重な攻撃手段を無駄に使うことはできない。
「女の腹に鉄球を叩き込めッ! その女は何者かに操られているッ!
お前の『回転』ならば、吐き出させる事もできるはずだッ!」
「お おうッ!」
まず優先して無力化すべきは、猟銃を持つ川尻しのぶだ。
猟銃には残弾が5発あった。
ドルドに1発。アヴドゥルに1発。弾はまだ3発も残っている。
しのぶが本当に『法皇』に操られているならば、解放してやらねば。
そうでないとしても、鉄球でしのぶを倒してしまえば、とりあえず猟銃の驚異は無くなるだろう。
「うおおおおおっ!!」
ツェペリの体当たりを喰らい倒れていた川尻しのぶを狙い、ジャイロの鉄球が放たれた。
回転する鉄球が身体を起こしかけていたしのぶの腹部に突き刺さる。
しのぶは低い呻き声を上げ、そして大きく開けられた口から、先ほどから見失っていた『法皇の緑』のヴィジョンが姿を現した。
『何ィィ―――ッ!?』
『法皇』を操る花京院にとっては想定外の攻撃だ。
しのぶの体内から『法皇』が強制的に引きずり出される攻撃など、予測できるわけがない。
身体から飛び出した『法皇』などよそに、側にいた吉良は、鉄球を喰らったしのぶを抱き留める。
そして、無防備に投げ出された『法皇の緑』―――。
アヴドゥルがそのヴィジョンを確認し、そして深い悲しみに襲われる。
やはり、花京院の仕業だったのだ。

39 :
支援

40 :
支援

41 :
727 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:26:06 ID:G9cHNUZg

(花京院―――ッ! 何故だッ! 何故お前が―――ッ!?)
「うおおおおおおお――――――ッッ!!!」
『黄の節制』に腕を捕まれたまま、アヴドゥルは吠えた。
身体を捻らせ、力の限りを尽くした回し蹴りを、無防備な『法皇の緑』の胴体へと叩き込む。
『グバァァァ!!』
強烈な一撃に見舞われ、『法皇』は苦しみを見せる。
やがて『法皇』のヴィジョンは力無く地面に落ち、そしてその姿を消した。
(よしッ! 『法皇』は仕留めたッ! あとは―――)
ビーティーとアヴドゥルは、同時に『花京院』へ視線を送る。
奴はまだ、『魔術師の赤』の手刀を黄色いスライムで防いだ状態のままだった。
つまり、『法皇』へのダメージが届いていない。
この『花京院』は『法皇』の本体では無かったッ!
ジャイロはまだ事の成り行きを把握できず呆然としている。
だがアヴドゥルは、既にすべてを理解しつつあった。
花京院とラバーソール。どういうわけかは知らないが、彼らがグルになって仕掛けていたのだ。
『黄の節制』のスタンド使いを知らぬビーティーも、ここで何が起こったのか、だいたいの予想が付いてきた。
こうなると、ジャイロの考え無しの参戦も、結果オーライで済ませられるだろう。
こちらの人的被害は、厄介なドルドと足手纏いのツェペリだけで済んだのだ。
あとは、アヴドゥルとジャイロの2人がかりで偽の花京院を倒して仕舞う。
そしてどこか近くで倒れているであろう、本物の花京院を押さえてしまえば、すべてが終わるのだ。








本当に、そうだろうか?

42 :
728 :---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:26:50 ID:G9cHNUZg
.
何か見落としている気がしてならない。
ビーティーは、事件の経緯を振り返る。
そうだ。
これではツェペリが爆死した事に対し、説明が付かない。
彼は川尻しのぶの身体に触れたとたん、爆死した。
明らかにスタンドによる攻撃だ。
だが、これは誰の能力だ?
どこかに潜んでいるであろう花京院の能力は、間違いなく『法皇の緑』である。
そしてこの偽花京院の能力は、おそらくこの黄色いスライムだ。
スライムを変形させて身体に纏い、変装すると同時に身を守るスタンドだろう。
どちらのスタンドも、条件に合わない。
アヴドゥルも知らぬ『法皇』の隠れた奥の手という可能性もあるが、やはり現実的ではない。
可能性として高いのは、更なる別の敵スタンド能力の存在。
ここで、未知の攻撃についてもう一度振り返る。
ツェペリは川尻しのぶの身体に触れたことにより、爆死した。
普通なら、ここでしのぶに触れる事が危険だと、誰だって思う。
だが、奴は違った。
鉄球に弾き飛ばされたしのぶを、真っ先に抱き抱えた奴。
それも、彼女を気遣っての行動ではない。
彼女の持つ武器、猟銃を手に入れるため。
そしてその他の状況を考慮しても、消去法でも、爆破の能力の本体は、奴以外には――――――

「さて、聞かせてもらうか? キサマはいったいーーー」
「アヴドゥルッ! 蓮見だッッッ!!!」
ラバーソールへ尋問するアヴドゥルの言葉を遮る、ビーティーの叫び声。
そしてそれと同時に鳴り響く、もはや聞きなれた轟音。
猟銃を水平に構えた吉良吉影の放った弾丸は、モハメド・アヴドゥルの胴体を撃ち抜いた。

★ ★ ★ ★ ☆ ☆ ☆ ☆

43 :
729 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:29:45 ID:G9cHNUZg
.


こいつは鮫だ こいつにゃ歯がある
   その歯は面に見えてらあ
こいつはメッキース こいつにゃドスがある
   だけど そのドスを見た奴はねえ


.

44 :
730 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:30:14 ID:G9cHNUZg
ラバーソールは窮地に陥っていた。
アヴドゥルの蹴りを防いだことによって変装がばれてしまった。
それでも花京院がアヴドゥルを倒してくれれば何とかなったかもしれないが、乱入してきたジャイロによって阻止され、『法皇』は『魔術師の赤』に倒された。
敵は、アヴドゥル、ジャイロ、そして得体の知れないビーティーという少年。
酷く不味い状況だった。
だが、その戦況は、一変した。
予想外中の予想外。まったく無警戒だった男による銃撃を受け、アヴドゥルは目の前で倒された。
(もしかして、助かったか?)
一瞬、ラバーソールがそう思ったのも無理はない。
だが、現実は甘くなかった。
未だ煙の立ち上る銃口は、続けざまにラバーソールに向けられる。
この猟銃は、2連発だ。
2発までなら、弾を込め直すことなく続けて撃つことができる。
(オイ! オイオイオイオイ! 待て待てッ! ふざけんなッ! やめろ!)
『黄の節制』に弱点はない。
ラバーソールは自らのスタンドについてそう豪語している。
ある意味では、それは正しい。
彼は油断することなく、もっと狡猾に戦っていれば、承太郎の『星の白金』にさえ遅れを取る事はなかっただろう。
ただし、それには「対スタンド」についてという条件が付随する。
『黄の節制』は弾力と柔軟性があり衝撃に強く、そして実体があり、触れた生物の肉を喰らう事ができるスタンド能力である。
相手が生物であれば、たとえ相手がスタンドだとしても、『星の白金』の壮絶なラッシュですら、防ぎきる事ができる。
また熱や冷気にも強く、その防御力の高さは全スタンドの中でも随一であろう。
ただし、『黄の節制』で喰らう事ができるのは、あくまで「生物」に限定される。
質量を持った無生物による、物理的、現実的な攻撃手段に対して、その防御力は発揮されない。
そして弾力ある物の弱点は、貫通力のある武器、すなわちナイフや銃器の類。
すなわち、猟銃という武器を向けられた『黄の節制』のラバーソールは、何の能力も無い一般人と変わらないのだ。
「待―――ッ!」
吉良の放った散弾が『黄の節制』のガードをいとも簡単に撃ち抜き、ラバーソールの頭部を腐ったザワークラウトの用に破壊した。
淡い野望を秘めたラバーソールという名の小悪党は、志半ばにその最後を迎えた。


★ ★ ★ ☆ ☆ ☆ ☆

45 :
731 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:31:30 ID:G9cHNUZg

「あ…… アヴドゥル………」
敵は前髪の男じゃあ無かったのか?
続け様にその前髪も射殺され、ジャイロは呆然とする。
ビーティーに蓮見と呼ばれた金髪男。
猟銃に最後の1発を装填し、その銃口はジャイロに向けられた。
「ジャイロ!」
ビーティーの声で、ジャイロは目覚める。
ドルドやツェペリが誰に殺られたかはわからない。
前髪の長い青年が何者だったかもわからない。
だが、この野郎は目の前でアヴドゥルを殺しやがった。
何がなんだかわからないが、その事実だけは間違いない。
「キサマァァァ―――ッッ!!」
激昂したジャイロが鉄球を放る。
もはや3発目の射撃になる吉良は手慣れた構えで猟銃を向けるが、引き金を引く寸前に鉄球が炸裂し、猟銃を弾き飛ばした。
「チッ―――」
吉良は舌打ちをする。
鉄球は猟銃に当たった後、嘘みたいな軌道を描き、綺麗にジャイロの掌に収まった。
(面倒な技だな、あの鉄球…… スタンドではないようだが、ツェペリの波紋と同様、人知を越えた超技術と言うわけか……
だが……)
「『キラー・クイーン』………」
吉良がここにきて、初めてスタンドを繰り出した。
猫を思わせる耳を持つ、女性的なフォルムを持つ人型のスタンドヴィジョン。
どこが無力な一般人だ、とビーティーは憤る。
これが奴のスタンド能力『キラー・クイーン』。
(ツェペリを一瞬で爆殺したスタンド能力――― その発動条件は―――?)
ビーティーの考えのまとまらぬまま、ジャイロは身構える吉良へ再び鉄球を投げ付ける。
猟銃を失った吉良に残された攻撃手段は、自らのスタンド能力だ。
弧を描く軌道で迫る鉄球に対し、『キラー・クイーン』は
ハエ叩きのように右腕を振るい、鉄球を叩き落とした。
だが……
「ヌゥ―――?」
鉄球は回転している。『キラー・クイーン』の掌が鉄球に触れた瞬間、回転のエネルギーにより両足の力を一時的に麻痺させた。
さらに回転の勢いに飲まれ、吉良の身体は大きく転倒する。
この一投は囮だった。
ジャイロはまず足を奪い、吉良が動けなくなったところで、次の鉄球で勝負を決めるつもりだったのだ。

46 :
支援

47 :
732 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:32:26 ID:G9cHNUZg
「待てジャイロ! その鉄球は―――ッ!?」

だが吉良の考えは、さらに上を行った。
鉄球は標的に命中した後、正確無比な軌道を描き、投擲手の元へ返っていった。
そう、鉄球は攻撃の度に、本人の手元に戻っていくのだ。
「……その鉄球は既に『キラー・クイーン』が触れている。」
「その鉄球に触れると爆発するッ!!」
「何ッ!?」
ビーティーの声は間に合わなかった。
否、もはやそれも関係無かったかもしれない。
吉良は鉄球を「起爆材」でなく「爆弾」に変えていた。
ジャイロが鉄球に触れずとも、『キラー・クイーン』がスイッチを押せば、鉄球はジャイロの至近距離で爆発を起こす。
鉄球を『キラー・クイーン』の掌で触れられた時点で、ジャイロは既に詰んでいたのだ。
「くそったれが……」
『第一の爆弾』の直撃を受け、ジャイロは吹き飛ぶ。
もはや戦闘を続けられる状態ではない。
吉良吉影は鉄球によって転ばされたものの大したダメージもなく、起きあがるとスーツの皺を治し、ネクタイを正し始めた。
そしてビーティーの方をチラリと見た後、猟銃を拾い上げ、ジャイロに歩み寄る。
ダメージは大きいが、即死には至らなかった。
だが無意味だ。
『キラー・クイーン』はジャイロ・ツェペリの身体に触れ、皮膚の表面を爆破する。
確実なとどめを刺され、ジャイロ・ツェペリは死亡した。
ビーティーは唇を噛み、頂垂れる。
もはやどうしようも無い。戦える人間は、もう誰も残っていない。
ビーティーは、負けたのだ。


★ ★ ☆ ☆ ☆ ☆

48 :
733 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:33:34 ID:G9cHNUZg

吉良吉影は、空条邸に集まった参加者たちの処置について悩んでいた。
問題なのは、偽名を名乗らざるを得なかったことだ。
他人の名前を語ってる以上、どうしてもいつかはボロが出て、バレる。
そうなる前には、必ず始末をつける必要がある。
空条邸に集まった全員を皆殺しにする案は初めからあった。
だが、吉良にとっての最大の危険人物は空条承太郎だ。
川尻しのぶによれば、承太郎ももうじきここへ現れるかもしれない。
一筋縄では行かぬかもしれないが、川尻しのぶの接触爆弾さえうまく利用すれば、承太郎を倒せるという自信もあった。
承太郎さえなんとかすれば、あとはどうとでもできるだろう。
それならば、その時が来るまで沈黙するという選択肢も大いに有効だったのだ。
アクシデントは、花京院による反乱行為。
彼が戦闘を開始したため、穏やかに承太郎の帰還を待つという道は断たれてしまった。
そして、「引き返し不能点(ポイント・オブ・ノー・リターン)」は、ツェペリが川尻しのぶの接触爆弾によって死んでしまった時だ。
それまではしのぶを誰にも触れさせないように注意していたが、戦いが始まり、しのぶが猟銃をとって暴れたことで、防ぎ切ることができなかった。
これで、承太郎を川尻しのぶで殺害するというプランはほとんど実現不可能となった。
さらに、ツェペリ爆死の原因を探られれば、吉良は必ず容疑者として疑いをかけられる。
こうなってしまっては、全員R以外、選択肢はなかった。
ここまでくればビーティーとしのぶは無視できる。
戦闘能力の高いアヴドゥル、何を考えているのかわからない花京院(ラバーソール)を続けざまに射殺。
最後に残ったジャイロ・ツェペリを、1対1の勝負で見事下した。

49 :
支援

50 :
734 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:33:57 ID:G9cHNUZg

すべてを終えた吉良は、無表情に肩をすくめる。
そんな彼に、足元から消えそうなほどに力のない小さな声が聞こえてきた。
「蓮見…… キサマ………」
吉良は目を丸くして驚いた。
まさか、まだ息があったとは……
腹に散弾を喰らったはずのアヴドゥルだ。
おそらく、銃撃の瞬間にスタンドで防御し、即死を免れたのだろう。
実に見事なものだ。
アヴドゥルはまだ、諦めたはいなかった。
吉良の足元で、短剣を握り、振り上げている。
ビーティーより賜った、『戒めのナイフ』だ。
アヴドゥルにとっての最後の武器―――だが、アヴドゥルには、もう力を込め、振り下ろすだけの気力が残されていなかった。
もはや戦士としては引退せざるを得ないが、その根性だけは立派なものだ。
敬意を払い、教えてやる事にした。もはや、隠す意味も無い。
「すまないな、アヴドゥルさん。蓮見琢馬と名乗ったが、あれは嘘だ。私の本当の名前は―――」
猟銃の最後の1発を、瀕死のアヴドゥルの脳髄に撃ち込んだ。
「―――"Killer"だ。」
おっと、このタイミングの名乗りだと、聞こえる前に死んでしまっていたかな?
などと思い、吉良は笑った。

★ ★ ☆ ☆ ☆

51 :
735 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:34:41 ID:G9cHNUZg

「やはり、あなたが、吉良吉影だったのですね……」
アヴドゥルに留めを刺したあと、吉良は女性の声に呼ばれ、振り向いた。
いつの間に意識を取り戻したのか、川尻しのぶが起き上がり、床に座ったままこちらを見ていた。
死んだような目で、吉良の殺人をじっと見ている。
おそらく今なにが起こっているのかも、何となく理解しているだろう。
その上で、川尻しのぶは取り乱すことなく吉良を見ていた。
吉良は迷ったが、全員の死亡確認を先に済ませることにした。
ジャイロとアヴドゥルにそれぞれとどめを差し、花京院(ラバーソール)の様子も見るが、彼は即死していた。
残る一人。吉良は縁側の廊下を見る。
最初に川尻しのぶに銃撃されたドルドだ。
驚くことに、吉良が目線を向けた瞬間、彼はピクリと動いた。
生きているとは驚きだ。
傷口から機械が見える。
どうやら彼はサイボーグだったようだ。
今更だが、吉良はこのバトル・ロワイアルの参加者たちの多種多様な常識外れさに、やれやれと肩を落とす。
(畜生…… なんてことだ…… こんなハズじゃあなかった……のに……)
ゲーム開始時からのドルドの行動方針は、お人好しの集団にとけ込み、馴れ合い、そして隙をついて優勝することだった。
ビーティー、アヴドゥル、ツェペリ、ジャイロというメンバーは、彼にとってその理想を体現したような連中だった。
その後合流した3人も、同じようなタイプの人間だと思ってしまった。
身を隠すには絶好の、羊の群れ。
その羊の群れの中に、イレギュラーな存在が紛れ込んだのだ。
花京院と言う、肉食の羊。
そして吉良吉影と言う、羊の皮を被った怪物が……
吉良は猟銃内に残った空薬莢を爆弾化させ、指で弾き飛ばした。
放物線を描き、爆弾は正確にドルドを攻撃する。
「やめっ―――」
身体を引きずってでも逃げようとしたドルドであったが、吉良吉影は甘くはない。
ドルド中佐のちっぽけな野望は、白く光る閃光と共に、永遠に葬られた。

★ ★ ★ ☆

52 :
736 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:35:06 ID:G9cHNUZg

「あなたに会いたいと…… あって話をしたいと、ずっと思っていました。
でも、実際に会ってみると、何を話していいんだか……」
川尻しのぶは、再び吉良に語りかける。
吉良もしのぶの目を見つめ返し、そして優しく問いかけた。
「何故、私が吉良吉影だと……?」
「……承太郎さんの言っていた特徴に合う、というのも確かにあるんですけれど…… それ以上に、雰囲気が……
ミステリアスというか、ロマンチックというか、言葉では言い表せない不思議な感覚が、あの時のあの人によく似ていたから……」
それに、と川尻しのぶは付け加える。
アヴドゥルたちが始めに屋敷に現れた時、吉良はしのぶを庇うような動きを見せた。
それが、猫草に襲われた時に自分を助けてくれた、夫の姿と重なったのだと言う。
吉良には理解ができなかった。
川尻浩作となった自分としのぶの結婚生活の話は聞いていたが、だからと言って殺人鬼である吉良を肯定する理由にはならない。
だが同時に、吉良はしのぶの話を聞き、味わったことの無い安らぎを感じていた。
川尻しのぶ…… 彼女は、一体何者なのだ?
人生で初めて、両親以外の人間から、『理解』されたような気がした。
「………吉良、さん。」
思わず吉良は、しのぶの右手を取る。
この人を殺してしまって良いのだろうか。
これまで一度たりとも殺人を躊躇ったことのない吉良にとって、初めての迷い。
このまま、しのぶと2人で生き残ることはできないだろうか。
あのボニーとクライドのように、ふたりきりで。
他の誰にも理解されなくとも、ふたりで生きていくことはできないだろうか。

(………なんてな)
馬鹿な事を考えるんじゃあない。
そんな事、できるわけがない。
そんな未来に、明日はない。
川尻しのぶの美貌は、その手首だけを残して綺麗に消滅した。
足手纏いを抱えて生き残れるほど、このゲームは甘くない。
そもそも一人しか生き残れないこのゲームにおいて、他者を助けるなど愚の骨頂である。
だが、これだけは間違いない。
川尻しのぶと言う名の女性は、吉良吉影にとって永遠に忘れられない存在となっただろう。

★ ★ ☆

53 :
737 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:38:09 ID:G9cHNUZg
.

さて、あと一人。
「逃げようとは、考えなかったのかな?」
「おまえがそれを許すとは思えなかったからな。少しでも長く生きるためには、何もしないことが最善だと思っただけさ」
あわよくば、わずかに稼いだこの数分間に空条承太郎が帰還することを願っていたが、それも叶わず終いだった。
じっと睨みつけるビーティーに対し、しのぶの手首を懐にしまいながら歩み寄る。
そしてビーティーがスタンドの射程距離に入ったところで立ち止まり、問いかけた。
「何か言いたいことはあるか……?」
「……貴様、これまでに、いったいどれだけの人間を殺してきた?」
吉良の質問に対し、ビーティーは臆することなく質問で返す。
今までの吉良の殺人を見て、その手際の良さに驚いた。
バトル・ロワイアルだから殺しているんじゃあない。
この男は、本物の反社会性人格障害<サイコパス>だ。
ダイイングメッセージを遺したところで、意味はないだろう。
この吉良吉影という男が、証拠を残すとは思えない。
「ふぅむ、そんなものが最期の言葉でいいのか? 実のところ、覚えていない。
お前は今までした自慰行為の回数を覚えているのか?」
ビーティーに対し、吉良はフザケた返答をする。
ブラックなユーモアに例えたジョークに、吉良は笑った。
だが、ビーティーはそんな吉良のくだらない戯れ言を一蹴する。
「違うな。その例えは、見当違いもいいところだ。
貴様にとっての殺人は、自慰行為なんかじゃあ無い。ただのゴミ掃除だ。
ただ、自分の犯行が露呈する事を恐れた、逃げの手段に過ぎない。
大方、川尻しのぶにやったように、女の手首を持ち帰るためだけにやっているだけだ。
死体愛好趣味の、変態ヤローが!」

54 :
C

55 :
738 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:40:00 ID:G9cHNUZg
吉良の表情から笑みが消えた。
自分の衝動と異常性癖を簡単に見破られ、しかもそれを罵倒された。
と同時に、大量殺人鬼としてのちっぽけさを、叩きつけられた。
確かに吉良に、チャールズ・ホイットマンの気持ちは分からない。
彼にとって殺人とは手段であり、目的ではない。
そしてそれの主な用途は、証拠隠滅だ。
その事実を突き立てられることは、吉良にとって想定外の侮辱だった。
犯罪者としての誇りなどが持ち合わせているつもりないが、吉良は如何ともし難い苛立ちを、自分の半分の時間も生きていない少年に対し、覚えていた。

ビーティーは悔しかったのだ。
吉良吉影の不審さには、はじめから気が付いていた。
ただ、それ以上に目立つラバーソールの存在と花京院の暗躍に気を取られ、一手遅れを取ってしまった。
また、自分に戦う力があれば、こうはならなかった……
敵の不審さに気が付いても、それをアヴドゥルたちに伝えるタイムラグで遅れをとってしまった。
この男のやり口を見るに、公一を殺したのもポルナレフを殺したのも、この男ではないだろう。
結局自分は、なんの真相にもたどり着けぬまま、ここで死ぬのだ。
ビーティーはアヴドゥルの遺体を見やる。
彼の手元からこぼれ落ちた、『戒めのナイフ』―――
『過信』していたのは、自分もだった。
自分の知力さえあれば、どんな困難にも立ち向かえるものだと、自惚れていた。
この敗北は、どう考えても自分の力不足。
それが、何より悔しかった。
「小僧―――ッ!」
吉良吉影に胸ぐらを捕まれて、持ち上げられる。
体が小さく力も弱いビーティーは、反抗することもできない。
「イカレた変態の糞野郎に、しかるべき報いを……!」

56 :
739 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:40:29 ID:G9cHNUZg

心臓を爆破され、ビーティーは息絶えた。
精神的には、ビーティーは勝っていたかもしれない。
だが、それだけでは何の意味もない。
知力も、推理力も、精神力も、圧倒的な暴力の前には何の意味も持たない。
名探偵は、策を弄する「殺人犯」には勝つことができるかもしれない。
だが、常軌を逸した「殺人鬼」にだけは、どうやったって適わないのである。

【ウィル・A・ツェペリ 死亡】
【ラバーソール 死亡】
【ジャイロ・ツェペリ 死亡】
【モハメド・アヴドゥル 死亡】
【ドルド 死亡】
【川尻しのぶ 死亡】
【ビーティー 死亡】
【残り 42人】

★ ☆

57 :
740 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:40:55 ID:G9cHNUZg

最後の最後でビーティーに思いも寄らぬ反撃を受けたが、しかし気にしていても仕方がない。
今すぐにでも、承太郎が現れたっておかしくはないのだ。
川尻しのぶという武器を失った以上、このまま承太郎を迎え撃つのは厳しい。
なにより、今の大量殺戮で体力を消耗しすぎていた。
だが、このまま立ち去るわけにはいかない。
ここには、「吉良吉影の戦闘形跡」が残りすぎている。
処理しなくてはならない。
証拠隠滅のシナリオはもう考えてある。
だが、ビーティーに指摘された事をまた繰り返さなければならないという事が、非常に頭にきた。
時計を見ると、もうすぐ午後3時になる。
10分で…… いや、5分で片付ける。
まず、室内から必要な物をかき集める。
情報交換に使った資料、アヴドゥルの持っていたバイクのキー、ラバーソールの所持品からは首輪、しのぶの持っていた地下の地図など。
未開封の支給品ももちろん回収した。
ドルドの所持品の中にライターがあったのは、特に都合がよかった。
それらを纏めてデイパックに積め、庭に放り投げる。
所持品は準備完了だ。
次は、犯人とヒーローを作る。
アヴドゥルとジャイロの遺体を担ぎ、吉良は庭へ出た。
ジャイロの遺体にはもう一発爆発を食らわせ、身体を丸焦げにさせる。
まるで、『魔術師の赤』にやられたかのような、燃死体が
できあがった。
ジャイロの遺体を屋敷のそばに仰向けに放置し、傍らには猟銃を捨ておく。
空薬莢も当然ばらまいておく。
そしてアヴドゥルの遺体は、ジャイロの正面にある庭の池の中に放り込んでおいた。
『バトル・ロワイアル』が幻覚であると思い込んだ犯人モハメド・アヴドゥルは、空条邸に集まった参加者の皆殺しを決行。
全員を焼きRも、最期の最期で猟銃を持ったヒーローのジャイロ・ツェペリと相打ちになり、池に沈んでしまったのだ。
ジャイロの遺体に銃痕は無いし、アヴドゥルの遺体には猟銃による傷しかない。
ジャイロは丸焦げだし、アヴドゥルは水没。
遺体から正確な死因は調べられないだろう。

58 :
741 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:41:18 ID:G9cHNUZg
次に吉良は、庭に止められている自動車に向かった。
キーはつけっぱなしだった。
少し移動させ、屋敷外壁に隣接するように停車する。
そして『キラー・クイーン』の腕力によって車体を小破させ、ガソリンタンクを取り出した。
吉良はタンクを持ち、屋敷内に戻る。
邸内を少し見て回り、家主である空条貞夫の衣装タンスを見つけた。
川尻しのぶによれば、承太郎が吉良の容姿の特徴を他人に話しているかもしれない。
返り血にまみれたスーツをいつまでも着ているわけにはいかないので、吉良は着替えることにした。
戸棚から適当な衣服を選ぶ。空条貞夫の休日用のラフな服装だ。
普段の吉良のイメージとはかけ離れたスタイルだろう。
ついでに髪型や髪の色も変えたいが、残念ながらそこまでの時間はない。
吉良は脱ぎ捨てた服を一つに纏め、ガソリンをかける。
そしてそのままタンクを担ぎ、そのまま屋敷の廊下を一周、ガソリンを巻いて回る。
吉良吉影の痕跡は、残りの遺体と共に焼き付くされてしまうのだ。
そう、狂ったモハメド・アヴドゥルの『魔術師の赤』によってな。
ガソリンタンクを邸内に捨てる。
準備完了。
自動車が破壊されているが、屋敷に隣接して停車したので、どうせ炎が燃え移り、その痕跡も無くなる。
庭に放ったデイパックを拾い上げ、アヴドゥルの使っていたオートバイに跨る。
そしてキーを刺し、エンジンを掛けると、ドルドの所持品から失敬したライターを点火させ、屋敷内に放り投げる。
時計を見ると、午前3時を少し回った頃だった。
5分かからずだ。間に合った。
短時間に7人もの人間を殺害した吉良吉影は、何食わぬ顔で空条邸を去っていった。

★ ☆

59 :
742 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:42:07 ID:G9cHNUZg

異様な暑さに、花京院典明は目を覚ます。
ここは空条邸の離れの書庫だ。
意識が戻って最初に気が付いたのは、自分が拘束されていないという事実。
気を失う前の事を思い返す。
『法皇』を川尻しのぶへと憑依させ、ドルドを射殺。
次にビーティーを狙ったところをアヴドゥルに阻止される。
その後何故かツェペリが爆死し、乱入してきた新たな男によって『法皇』はしのぶの体内から吐き出されてしまった。
そして身構えるまもなく『魔術師の赤』の回し蹴りをくらい、気を失ってしまったのだ。
作戦が失敗した今、花京院はアヴドゥルらに尋問でもされるものだと思っていたが、どうにもその様子はない。
時計を見ると、午後3時過ぎ。
気を失っていたのは15分かそこらのようだ。
(しかし、なんだ? この暑さは?)
とにかく情報が欲しい。
おそるおそる引き戸を開け、庭に出た花京院の見たものは―――

「なッ!!」

大炎上する空条邸の屋敷。
花京院が気絶している間に、屋敷の本邸は業火に包まれ崩壊しつつあった。
(どういう事だ? あの後、ここでいったい何が起こったのだ?)
吉良吉影の犯した1つ目のミス。
それは、本物の花京院典明の存在に気が付かなかった事だ。
元々『法皇の緑』や『黄の節制』のスタンド能力を知るアヴドゥルや、類稀なる推理力と洞察力を持つビーティーと違い、吉良吉影には屋敷に現れた花京院が偽物であることに最後まで
気が付いていなかった。
せめて、アヴドゥルを撃つのがあと10秒遅ければ。
もしくはラバーソールが散弾を受けたのが頭部でなかったならば、結果は違っていたかもしれない。
そして当然、屋敷の離れに潜んでいた本物の花京院典明の存在も、知らぬままだ。
離れであるが故に火の手も届かず、吉良吉影は虐殺の現場に(吉良の犯行を見ていないとはいえ)生存者を残してしまったのだ。
(池に沈んでいるのはアヴドゥルか? 奴がこれを? いや、しかし奴には動機がない。
池と屋敷の間には、焼死体が一体。これだけやられていては
他の連中は? 全員、炎の中か? 全員死んだのか? 何人か逃げたのか?)

60 :
735 :悪の教典 ---代理投下願います--- ◆vvatO30wn.:2014/05/12(月) 23:34:41 ID:G9cHNUZg

「やはり、あなたが、吉良吉影だったのですね……」
アヴドゥルに留めを刺したあと、吉良は女性の声に呼ばれ、振り向いた。
いつの間に意識を取り戻したのか、川尻しのぶが起き上がり、床に座ったままこちらを見ていた。
死んだような目で、吉良の殺人をじっと見ている。
おそらく今なにが起こっているのかも、何となく理解しているだろう。
その上で、川尻しのぶは取り乱すことなく吉良を見ていた。
吉良は迷ったが、全員の死亡確認を先に済ませることにした。
ジャイロとアヴドゥルにそれぞれとどめを差し、花京院(ラバーソール)の様子も見るが、彼は即死していた。
残る一人。吉良は縁側の廊下を見る。
最初に川尻しのぶに銃撃されたドルドだ。
驚くことに、吉良が目線を向けた瞬間、彼はピクリと動いた。
生きているとは驚きだ。
傷口から機械が見える。
どうやら彼はサイボーグだったようだ。
今更だが、吉良はこのバトル・ロワイアルの参加者たちの多種多様な常識外れさに、やれやれと肩を落とす。
(畜生…… なんてことだ…… こんなハズじゃあなかった……のに……)
ゲーム開始時からのドルドの行動方針は、お人好しの集団にとけ込み、馴れ合い、そして隙をついて優勝することだった。
ビーティー、アヴドゥル、ツェペリ、ジャイロというメンバーは、彼にとってその理想を体現したような連中だった。
その後合流した3人も、同じようなタイプの人間だと思ってしまった。
身を隠すには絶好の、羊の群れ。
その羊の群れの中に、イレギュラーな存在が紛れ込んだのだ。
花京院と言う、肉食の羊。
そして吉良吉影と言う、羊の皮を被った怪物が……
吉良は猟銃内に残った空薬莢を爆弾化させ、指で弾き飛ばした。
放物線を描き、爆弾は正確にドルドを攻撃する。
「やめっ―――」
身体を引きずってでも逃げようとしたドルドであったが、吉良吉影は甘くはない。
ドルド中佐のちっぽけな野望は、白く光る閃光と共に、永遠に葬られた。

★ ★ ★ ☆

61 :
すまぬ誤爆した

62 :
支援

63 :
考えたところで答えは出ない。
そんな中、花京院ひとり残された空条邸に、ある乗り物が到着した。
遠くからでもわかる火の手を確認し、スピードを上げて駆けつけた救急車のようだった。


【D-5 空条邸の庭 / 一日目 午後】
【花京院典明】
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[状態]:腹部にダメージ(小)、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵をR。
1.空条邸で一体なにが起こった?
2.空条承太郎を追跡し、始末する。
3.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実にRべき敵をR。
4.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。

※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。
※空条邸は炎上し、崩壊中です。屋敷内を探ることは常識的に考えれば不可能です。
※空条邸の庭にジャイロの遺体(身元がわからないほどの火傷)、そのそばに空の猟銃と薬莢、池の中にアヴドゥルの遺体が放置されています。


★ ★

64 :


何者かに付けられている?
はっきりとした確信はないが、なんとなくそんな気がする。
バイクでの逃走を図った吉良吉影は、目的地に杜王町エリアを選んだ。
身体を休めるには慣れ親しんだ町並みが楽であろうという口実の他に、地下通路がほとんど通じていないというのが大きな理由だった。
ツェペリによれば、DIOもカーズもワムウも、太陽の光に弱い。
そして承太郎も、彼らを標的としている以上は地下に通じる場所付近にいる可能性が高いだろう。
そう思い東へ進路を取った吉良吉影だったが、先ほどより背後から視線を感じるのだ。
(何者かわからんが、もし空条邸での出来事の目撃者ならば、今までの全てが水の泡だ。
始末せねばならない………)
急ハンドルを切り、路地裏に入る。
物陰に隠れ、追跡者の正体を探ろうとした。
だが、「影の中」はまずかった。この追跡者にとっては独擅場だ。

『おまえ…… 再点火、したな―――?』
「何ィ―――?」
吉良吉影の犯した2つ目のミス。
火種の選択肢を誤った。
「『キラー・クイ』………ッッ!!」
闇の中から現れた『ブラック・サバス』の弓と矢が、「キラー・クイーン」の掌を突き破った。

【E-7 杜王町エリア 路地裏 / 一日目 午後】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(大)、全身ダメージ(小)疲労(中)
[装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着)、
[道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、
    地下地図、紫外線照射装置、ランダム支給品2〜3(ドルド、しのぶ)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.空条承太郎をR。
1.なんだこいつ(ブラック・サバス)は?
2.優勝を目指し、行動する。
3.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
4.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
5.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。
※不要な所持品は空条邸に置いてきました。炎に飲まれて全て燃えてしまいました。
※キラー・クイーンが弓と矢に貫かれました。どうなるかは今後の書き手にお任せします。

65 :
代理投下してくださった方、支援に参加して下さった方、ありがとうございました。
したらば投下時に変更し忘れていた吉良の現在地を修正しました。
このタイトルで吉良メインの話は、書いてみたいとずっと思ってました。
ジョジョを知っていれば、貴志祐介著「悪の教典」を読んだことある人は、だいたい吉良吉影を連想するかと思います。
実写映画は個人的にイマイチなのですが、原作とコミック版は本気で面白いので、この機会にお勧めします。
1話でこれだけRのは、2ndの最終回を除けばジョジョロワ新記録のようです。
さすがにこれだけ一気に落とすのは、緊張しますね
いろいろ考えながら書いたので、裏話でも語る機会があれば、いろいろ説明したいかなあと思っています。
ではまた次回作でお会いしましょう。

66 :
投下アンド代理投下乙です
ここまで大量に脱落者が一気に出るとは
花京院はこのままだとHEROSプラス承太郎に遭遇しそうだが果たして

67 :
投下乙です。
気になったのですが、ハイエロファントがしのぶに入ったとき、爆破されないのでしょうか?

68 :
投下乙です
なんという大量殺人回…
吉良の邪悪さはケタ外れですな
ウィルもジャイロも死んでしまったか
時代を超えて出会えたツェペリの男2人が同じ相手に殺されるなんて、嫌な運命を感じる
放送を聞いた後、シーザーは自分と同じ姓を持つ者の死に何を思うんだろう
ビューティー達は最善を尽くしたと思うんだけど、どこが不味かったんだろう

69 :
投下及び代理投下乙です。
大量殺人回になってはいますが…HEROESがスタンド能力も含めて有能、かつ承太郎がアヴドゥルの性格を知っているので誤魔化されない可能性も高いなと。
花京院がどう出るかもポイントか。
欲を言えばこのままHEROESvs.DIO軍団が見たい所ですが、どうなるやら。

70 :
>>67
苦しいかもですが、法皇が触れているのは体の内側だからセーフという事でお願いします。
侵入前は(スタンドだから)実体がないので触れないという事で

71 :
投下乙!
心理戦あり乱戦あり人間ドラマあり、いやー楽しかった!
文字通り火薬庫が大炎上、そして矢に貫かれるKQ、えらい展開になってまんなあ・・・。
キャラそれぞれに見せ場があったのが良かった。特にしのぶさんを操る法皇。あれは肉の芽花京院じゃあないとやらない技だろうからなー。
吉良とビーティーの最後の掛け合いの台詞回しに原作のオマージュが効いてて良かったし、あとバトルロワイアルが幻覚と思い込んだマーダーアヴドゥルってのも、確かジョジョロワ1stの設定だっけか?こういうニヤリと出来る要素が多いってのも嬉しかった。

72 :
そしてその1stでジョースター卿が大活躍した後全然2ndと3rdで振るわないっていう

73 :
投下乙です
なんという大 虐 殺
ビーティー組が一気に全滅かあ
咄嗟の事態でも吉良の立ち回りがうますぎる
…まあ吉良は今ピンチだしシーラEが何が起こったかわかっちゃうし一時凌ぎでしかないのだろうけれども
そういう意味では花京院がこの後どうなるか期待ですね
1stのマーダーネタにはクスリとさせられましたw
月報もおいときますね
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
166話(+8) 42/150 (-11) 27.3 (-7.4)

74 :
正しくは、
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
166話(+8) 41/150 (-11) 27.3 (-7.4)
ですね。
BLOOD PROUDの時点から1ずつカウントがズレてるようです。
星環は英雄の星座となるか? で残り51人
BLOOD PROUD で残り48人
悪の教典 で残り41人になります

75 :
投下します。

76 :
サン・ジョルジョ・マジョーレ教会の地上部分。
巨大なステンドグラスを背に、椅子に座った大男が一人いた。
大男タルカスはその巨大な体を縮め、窮屈そうに横長のベンチに腰掛けていた。
足元にはボストン・テリアの犬、イギーが気だるげな様子で横たわっている。
ジョルノがDIOの元を訪ねてから十数分。
その間戦いが起きるようなこともなく、外から誰かが訪れてくるようなこともなかった。
まったくの平穏な時間。ステンドガラスが少しだけ傾いた日光の灯りを激しく反射させている。
風は無風でほのかに緑の匂いがしていた。混じって漂うのは教会特有の古めかしい匂い。
木と香料とカビが混じった匂いだ。タルカスは目を閉じると大きく息を吐いた。
体は休めつつも、精神は張り詰めたままだ。ほんの一瞬でも気を抜けはしない。
タルカスはジョルノから預かったブローチを握りなおした。特別変わった様子は見受けられなかった。

「長いな」

そう言うと、大きな手で乱暴にイギーの頭を撫でる。イギーは小さく唸ると、不機嫌そうに顔をしかめた。
可愛げのない仕草だったが、どこか人間臭いその仕草に思わず頬がゆるむ。
持て余した時間をそうやってなんでもないことに費やしながら、穏やかな時間を満喫していた……その時だった。
「……?」
かすかに、そしてゆっくりと―――地下へと続く階段から物音が聞こえた。
重たい何かを引きずるような音、小さな呟き、そしてまた引きずる音。
「ヴァニラ・アイスか?」
返事はなかった。だがタルカスの呼びかけを合図に物音は止まり、つぶやきも聞こえなくなった。
なにかおかしい。タルカスは脇に立てかけてあった槍を取ると、立ち上がる。
うずくまっていたイギーも顔を上げ、異変を嗅ぎ取ろうと鼻を鳴らしている。
「誰かいるのか? ヴァニラ・アイスか? DIOの手下か?」
地下へと続く階段は暗く、見通しが悪い。
あいかわず返事はなく、誰がそこにいるのかもわからない。
タルカスは階段の脇に吊るされたロウソクを見た。
壁に影は映らない。もしやタルカスに気がついて上がるのを躊躇しているのだろうか。

77 :
「お前はここで待っていろ。入口を見張っていてくれ」
低い声でイギーに指示を出す。今やタルカスの心臓はバネにはじかれたみたいに喉元まで飛びあがっていた。
暗闇から一斉目をそらさず、忍び足で階段に近づいていく。
階段に近づくにつれて手のひらが湿り気を帯びる。ぐっと槍を握りなおす動きに合わせて大きな影が壁の上に揺れた。
階段の一番上から暗闇を見下ろすと、螺旋状に下へと向かう階段はまるで底なし沼のように思えた。
一段一段を慎重に、噛み締めるように降りていく。右手に持っていた槍を左手に持ち替える。
息がつまりそうなほどの、緊張感だ。数旬の後、タルカスは意を決して一気に階段を駆け下りた……!

「……気のせいだったか」

しかしタルカスの予想に反し、階段には誰もいなかった。
一番下まで降り、辺りを見渡してみたが人影らしきものも見つからない。
ジョルノたちはどうやら納骨堂の奥の小部屋で話し込んでいるようだった。
ドアの隙間から漏れる光と会話から目をそらすと、タルカスは登ってきたばかりの階段に戻る。
神経質になりすぎていただろうか。確かに聞いたはずだったのだが……。
「……?」
だが踊り場にたどり着いた瞬間、タルカスは角の暗闇に目を奪われた。
子犬が蹲った影。最初はそう思えた。だが近づくにつれ、それが自分の勘違いだと気がついた。
片膝を付き、慎重にそれを拾い上げてみる。それは奇妙な形にねじ上げられた何者かの右腕だった。
死んでそれほど時間が経っていない、何者かの死体。
それを理解した瞬間、タルカスの全身から汗が吹き出した。
頭の中で警報が鳴り響き、今登ってきたばかりの階段を駆け下りる。
力の限り叫びながら、納骨堂の奥を目指す。一秒でも早く、この緊急事態を伝えるために。
「ジョルノッ! 聞こえないか、ジョルノッ! ここはまずい、何かただならぬことが起きて――――」
そこから先は無言だった。
タルカスの言葉をかき消すようにガオン、という音が響いた。
音が削れる音。音が無音になる音。
タルカスの体がひとりでに傾いていく。何がなんだかわからないまま、ただ重力に従い、タルカスの首が下を向く。
彼の目に映ったのは削られた右半身。吹き上がる血の滝。そして健康でたくましく脈打つ、自分の内臓たち。

「うおああああああああああああああああ―――ッ!!」



78 :
―――十数分前
「かけたまえ。楽にしていいから」
「失礼します」
古い扉がきしむ。甲高い音が響く。ロウソクが作った影が天井まで伸び、ゆらゆらと揺れている。
納骨堂の奥、長い間人に忘れ去られたような小部屋に二人はいた。
足の高いコーヒーテーブルを挟むように置かれた椅子を指差すと、DIOは片方の椅子に腰を下ろした。
ジョルノもつられて対面に座る。いつもの堂々とした様子はなく、緊張がジョルノの顔には浮かんでいた。
目の前にいるこの男が自分の父親。
手を伸ばせば直に触れることができるこの男性が、血を分けた本当の家族。
ジョルノにはまだ実感がわかなかった。
理屈でなく、本能が目の前の男のことを父親だと叫んでいても、どこか夢心地のような気がしていた。
それほどまでに、ジョルノにとって父親という存在は大きく、遠いものだった。
「……君は今、いくつになった? 何年生まれ?」
「4月で15になりました。生まれは1985年です」
「……そうか、そうだったな」
ぎこちない雰囲気が続いた。
会話は一方的で、したくもない腹の探り合いが机を挟んで行き交っていく。
聞かないでもいいような、会話のための会話。DIOがぼそぼそと問いかけ、ジョルノは短く、簡潔に答える。
時間が奇妙な流れ方をしていた。それほど長い時間は話していないはずなのに、やたらと秒針の回転が速いような気がした。
いくつかのくだらない質問を終えると、DIOがぱたりと口を閉ざした。沈黙が漂う。
どちらも息をRように、静かに呼吸をしていた。しばらく黙った後、DIOが言う。
その顔には困惑と、自虐的な笑みが浮かんでいた。
「まいったな、こんな時だっていうのに……。
 情けないな……それに恥ずかしいよ。一人の男としてこんな恥ずかしいことはない。
 ジョルノ……、私を許して欲しい。
 息子とせっかく会えたというのに何を話せばいいかわからないんだ。
 父親としてこういう時に、何を言えばいいかわからないだなんて!」
しゃべりすぎたと思ったのか、そこまで一息で話すとDIOは黙り込んだ。
少ししてから、ジョルノが口を開いた。
ジョルノは一言一言噛み締めるような、話し方をした。
「面を食らうのも無理はありません。それに……戸惑っているのは僕もです。
 僕はあなた以上に今うろたえていますし、戸惑っています。
 六歳の子供が初恋の相手を前に話すときだって、こんなまごつきはしないでしょう」
二人は互いに目を合わせた。
突然のことに困惑する気持ち。肉親との不意の再会に対する不安と喜び。
それを互いの目の中に見つけ、自然と笑みがこぼれる。
柔らかに微笑む父親を見てジョルノも笑った。その笑顔は年相応の、少年が浮かべるような笑みだった。

79 :
空気がはっきりと和らいでいく。DIOは膝の上で指を組み直すと、ゆっくりと言った。
先よりよっぽどリラックスした口調で、だが、責任感を感じさせる堂々とした喋り方をした。
「私はひどい父親だった。いや、父親と名乗ることすらおごがましい男だ。
 私は今こうやって君と向かい合っているが、正直言って君の母親の顔すら思い浮かばない。
 誰が君の母親かもわからない生活を、私は送ってきたんだ」
「…………」
「父親面するつもりはない。その資格は私にはないし、きっとそれはお互いを不幸にするだろう。
 だけどもしも君が許してくれるならば、君の幸せを祈らせてくれないだろうか。
 私の出来る範囲で君の人生を前向きなものにしたいんだ」
こんな殺し合いなんていう場で幸せなんて言ってもおかしな話だが。DIOが笑いながら最後にそう付け加えた。
その言葉を聞いた瞬間、ジョルノの胸を刺すような痛みが走った。
ジョルノは目を瞑り、気持ちを落ち着かせた。右手で心臓のあたりを鷲掴みにし、鼓動を整える。
喉もとまで、ほとんど出かかった言葉を飲み込んだ。
これから親子としての関係を作り上げていけばいいじゃないですか、と。
これからお互いのことを理解して、より深い関係になっていけばいいではないでしょうか、と。
ほんとうはそう言いたかった。でも言わなかった。
再び目を開いた頃、その目に迷いはなかった。
落ち着いた、理知的ないつものジョルノ・ジョバァーナがそこにはいた。
「それならばさしあたり一つ、お願いがあります」
「言ってご覧」
「僕のことはジョルノ、と呼ばずジョジョと呼んでください」
「……わかったよ、ジョジョ」
親しみの言葉に返事をするDIO。その顔は間違いようもないほどに、父親の顔をしていた。
その隙だらけのDIOに向かってジョルノは―――ゴールド・エクスペリエンスの拳を叩き込んだ。



80 :
暗黒空間はすべてを飲み込む。
モノも人も、なにもかも。核爆弾だって飲み込めるかもしれない。
「がッ、はァ…………ッ!」
冷たい床に顔を打ち付けながらヴァニラはもがき、苦しむ。
そう、すべてを飲み込む暗黒空間。スタンド『クリーム』の内部につながる暗黒空間。
だがしかし……増幅され続けるエネルギーはどうなる?
クリームはタルカスを襲った際、ジョルノが作ったブローチを飲み込んだ。
生命を宿したブローチが破壊されるとき、そのエネルギーは倍増され跳ね返る。
だが跳ね返る先はヴァニラのスタンド内だ。出口を失ったエネルギーは果たしてどこへ行き着くのか。
「つ……、ああッ……!」
すくなくともこの舞台ではエネルギーは暗黒空間内に少しずつ、飲み込まれていったようだ。
時が経つとともに次第に痛みは失せ、ヴァニラは這いつくばりながら呼吸を整える。
呼吸は緩やかに落ち着き、視界もクリアになっていく。
その視界に映ったのは、タルカスを引きずっていった跡。真っ赤な線はヴァニラを無視し、階段を登っていく。

 『―――同行者を、始末しろ―――』

(確実に仕留めなければ……。あのお方の、DIO様の期待を裏切るわけには……ッ!)
ほうっておいても死に行く身だとは分かっている。
半身をもぎ取り、血を滝のように流した後なのだ。もうどうやったって間に合わない。
だがヴァニラは震える足を無理やり動かし、階段を上っていく。
まだそれほどの時間は経っていないはずだ。まだ間に合う。
この手で直接、確実に始末してやる……!
任務を達成しDIOに直々にお褒めの言葉をいただくために、ヴァニラは体にムチをうち、階段を上る。

81 :
(くそったれ、手間かけさせやがるぜ……)
そのタルカスを担ぎ、イギーは出口へと走っていた。
階段を上り切ると、一目散に光の射すほうへ駆けていく。
ジョルノを助けようとは一切思わなかった。助けている暇なんぞ一秒もない。
タルカスを助けてやったのはほんの気まぐれだった。腐れ縁というやつだ。
執着はなかったが、今目の前で助けられる奴をほうって置けるほどにイギーは『落ちた犬(人間)』ではなかった。
血を含んだ砂は操るのに力がいる。
人二人分の重さをもつタルカスを運ぶのはいくらザ・フールといえど容易ではない。
ヴァニラ・アイスのスタンド能力は不明。それに加えてDIOもいる。状況は最悪だ。
イギーは人間の争いに興味がない。故にいま目指すべきはこの場を逃れること。
一歩でも遠く、DIOとヴァニラから離れること。

(げエッ! い、いつの間にッ!)

だがイギーの目論見は砂の城のように、もろくも崩れる。
顔に降りかかった影に顔を上げて、イギーは驚いた。
教会の入口の前、待ち構えるようにヴァニラ・アイスが姿を現していた。
回り込まれるなんてありえなかったはずであるのに。階段から入口までは脇道などなく、一本道だったのに。
咄嗟のことにイギーはスタンドを構えてしまった。本能的に戦いの構えを取り、ヴァニラに対して威嚇のポーズをとる。
相手に命を見逃してもらうよう請うことはイギーのプライドが許さないことだった。
だがそれでももう『バカ犬』の振りはできない。イギーは覚悟した。戦いは避けられない……!
出口までの距離を計算し、タルカスをかばいながらどう戦うか考える。
だがどれだけ考えても、このまま無傷で教会から脱出することは不可能に思えた。
(ち、ちくしょう……! )

しかし、息を詰めたような沈黙が流れ―――ヴァニラはイギーの予想だにしない行動をとった。
スタンドを引っ込めると、まるで道を譲るように入口を離れたのだ。
それどころか、もはやイギーたちは目に映らないかのように、そのまま階段へと向かっていく。
突然の行動にイギーは唖然とする。ヴァニラ・アイスとすれ違った瞬間、そっとその表情をのぞき見た。
ヴァニラはイギーたちのことを一瞥もしなかった。
ただまっすぐと階段に向かっていくその表情は何を考えているのか全くわからなかった。
(こ、コイツはありがてェ! 何が起きたかわからねぇが今のうちにずらかるぜ!
 ヴァニラ・アイス、あいつはやばいッ! 真正面からぶち当たったらとてもじゃねぇが無事じゃすまねぇ!)
タルカスを砂で持ち上げ、教会の外へ。背後からの攻撃を警戒したが、無事に外へと出ることができた。
ほんの少ししか経っていないというのに太陽の光を浴びるのがとても心地よかった。
イギーは改めて自分が死線をくくり脱げてきたことを喜び、生き残った安堵のため息を吐いた。
(こうしちゃいられねぇ。もう間に合わねぇかもしれねぇがおっさんの手当をしてやらねぇと)

82 :
足裏にレンガを感じながら路地を急ぐ。ここまでくれば一安心だ。
もはやなんの心配もいらない。いや、まったく今度ばかりはさすがにダメかと思った。
もう二度とあんな死線をくぐり抜けることはできないだろう。もう一度やれと言われてもきっと無理なはずだ。
タルカスにとっては不運だったが、こればかりは仕方ない。せめてどこか静かな場所で看取ってやろうか。
そうイギーが考えていた時だ。

本当にそうだろうか。

イギーは足を止め、振り返る。入口に待ち構えていたヴァニラ・アイスは姿を消していた。
どうやら本気でタルカスとイギーを見逃す気らしい。
匂いもなし。忍び足で近づいてくるような音も聞こえない。ためしにあたりに砂を飛ばして探ってみたが、こちらも空振り。
イギーは考える。
なんのつもりだ。一体何を企んで、どんな策にはめようとしているのか。
なぜさっき殺さなかった。これ以上ない絶対のチャンスだったはずなのに。
答えはわかっている。ほんとうはとっくにそれにたどり着いていた。
ザ・フールに一粒の涙がこぼれてくる。担いだタルカスの頬を伝い、乾いたスタンドを濡らしていく。
(あの野郎……ッ!)
半身をえぐり瀕死の大男。恐怖にすっかり縮み上がり、臨戦態勢を取った犬。
ヴァニラにとってイギーたちは始末する価値すらなかったのだ。
もしかしたら、万が一、億が一もないがこれらを始末する隙をつかれDIO様に危険が及ぶかもしれない。
そのほんのわずかなリスクの前に、イギーたちは敗れ去ったのだった。
タルカスは身も心も、文字通り張り裂けてしまいそうだった。
死んでも死にきれない気持ち。無念、その気持ちでいっぱいだった。
戦士としてこんな屈辱はない。戦いの土俵にすら上がれず、なんの結果も残せないまま自分は死んでいく。
惨めで情けなくて、でもどうしようもなくてタルカスは泣いたのだった。
命の最後の最後を振り絞って泣き声を喉の奥で噛み殺し、そうして彼はゆっくりと砂の上で冷たくなっていった。
イギーは何もできなかった。せめて安らかにタルカスがRるよう、傷口を砂で覆ってやるのが精一杯。
冷たくなった大男を地面に横たえた時、イギーを焦がすような怒りが湧き上がってきた。
(この俺が喜んだ……。ヴァニラ・アイスという人間に慈悲をかけられた時……。
 俺はあの一瞬、ホッとしちまったんだ。
 馬鹿な犬だと思われてよかった。これで助かる、俺は生き延びたッ!
 そう思っちまったんだ。そのザマがなんだッ、くそったれ!
 見ろよ、コイツの顔をッ! 見ろよ、この悔しそうな顔をッ!)
尻尾を向けていた教会へと向き直る。
ザ・フールを呼び出すと、イギーはフルパワーでスタンドを絞り出した。
街中の砂という砂を……川を越え、街を越え、ありとあらゆる場所から呼び寄せていく。
力を振り絞ったあまり、頭が割れんばかりに痛んだ。目の前がぼやけてみえ、足もとがふらつく。
(だがよォ……!)

83 :
C

84 :
「……なんのようだ」
教会の横長のベンチに腰掛けたヴァニラがそう問いかけてきた。
入口から差し込む陽を背に、イギーは無言のままスタンドを出す。
体を膨らまし、唸り声を上げる。
威嚇ではない。怯えでもない。怒りだ。自らへの怒り。戦士の誇りを踏みにじった、ヴァニラへの怒り。
「…………」
ヴァニラはしばらく無言のままだったが、やがて答えるようにスタンドを構えた。
憐れむように見るでもなく、退屈そうに見るのでもない。
仕方ない、と言いたげな様子でクリームを繰り出す。イギーは砂を操ると、いつもの犬の形ではなく人の形でクリームを迎え撃った。
砂の手が床に転がっていた槍を取る。砂の大男はその体を膨らまし、ヴァニラを飲み込まんと叫んだ。
教会全体が震え、ステンドガラスが砕け散る。ヴァニラはまるでそよ風を受け止めるように穏やかな表情だ。
(ちっ、別に恩返しだとかじゃねぇからな。
 大サービスだ。あんな悔しげな様子で逝かれちまったらよォ〜、俺だって後味悪いからなッ!
 さぁ、どっからでも来いッ! この槍でけちょんけちょんにしてやるぜッ!)
小手調べとばかりに放った濁流を無尽蔵に飲み込むクリーム。
それが戦いの合図だった。
街中から集まった砂は天から降り注ぎ、教会の屋根をぶち壊しながらヴァニラの頭上に降り注いだ。
イギーの操る大男が槍を振り下ろす。空振りに終わった一撃は床板を砕き、天井を揺らし、建物全体を破壊していく。


【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地上/一日目 午後】
【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.ヴァニラ・アイスをぶっ飛ばす。
2.花京院に違和感。
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わない
【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)
   『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのK
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.イギーを始末する。

85 :
ゴールド・エクスペリエンスが放った拳は確実にDIOを捉えていた。
不意を付いた一撃目をボディに叩き込み、体制が崩れたところに、すかさず二発目をねじり込む。
そして三発目がDIOの表面に触れたまさにその瞬間。
一秒の隙もなく、コンマ五秒の時差もなく、完全に―――ジョルノの攻撃は空をきった。
ほんの一瞬前までそこにいたはずのDIOの体をすり抜け、ゴールド・エクスペリエンスの拳は虚しく宙をかく。
「どういうつもりかな、ジョジョ」
ジョルノは内心の驚きを隠しながら、すぐさま振り向いた。
視線の先には黄金のスタンドを脇に従え、こちらを見下すDIOがいた。
「僕はあなたたちとは相容れない存在だということです」
「理由を詳しく説明してもらおうか」
「ならば逆に問いましょう。なぜタルカスさんを襲ったのですか」
右胸のポケットに入れたブローチをそっと撫でる。
二つ対で作ったブローチの内一つはジョルノが持ち、片方はタルカスに渡した。
そのタルカスに渡したはずのブローチが『消えた』のをジョルノはスタンド越しに感じた。
反射するのでもなく、激しく揺れるのでもなく消滅。
それが意味すること、そしてそれが可能なもの、それをする理由を持つもの。
全ての元凶と思われるものは、目の前にそびえ立つ存在のみ。
二人の間を沈黙がしばらく流れ……DIOは嘲るように笑いを漏らした。
「君は羽虫を踏み潰すのにいちいち理由を求めるのかね?」
ジョルノは床を強く蹴り、DIOに向かって跳んだ。
怒りが頭の中で火花を散らし、視界が赤い靄で覆われる。
自分の勘違いであるという可能性は潰えた。DIOになんのことだかわからない、と困惑して欲しい希望は消えた。
この瞬間、ジョルノは父を失った。
父を好きになれるか不安な気持ち。
無条件の愛を注いでくれる家族という存在。
孤独感、正義の心、怒り、悲しみ、屈辱、諦め……。
ほんの一瞬のうちにジョルノの中で感情がうずまき、破裂した。
望んだはずの結末は最も残酷な形で終わりを迎えた。
抱いた夢は一瞬で崩れ落ち、こぼれ落ちる砂のように、二度とその手に戻ることはない。

「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」」

二つ重なった声が納骨堂に響き渡る。二人の間を無数の突きが行き交っていく。
互いの能力が朧げにしかわからない今、共に強く前に踏み込むことはしない。
「フン、蛙の子は蛙か……だが甘い。まさかまだこの私に思慕の念を抱いているのか、ジョルノ?」
「あなたは吐き気を催す、最悪の邪悪だ」
「褒め言葉として受け取ろう」
地面を拳で打つと、あらかじめ仕込んでおいた能力が花開く。
石畳の隙間から蔦が伸び、力強く咲いた木が天向かって伸びていく。
何もかもが崩れていく。ガラガラと豪音を立て、壁が、天井が、床が壊れていく。
そんな中でも二人は拳をぶつけ合う。
降りしきる瓦礫をもろともせず、崩れ落ちる足元を意に介さず。
全身全霊を持って二人は対峙する。
それぞれの信じる『己』を証明するために。

86 :
【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地下/一日目 午後】
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発
   『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロング・ウォッチタワー』 のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョルノ・ジョバァーナの血を吸って、身体を馴染ませたい。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア)
    地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.DIOを倒す。
2.ミスタ、ミキタカと合流したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。



【タルカス 死亡】
【残り 40人】

87 :
以上です。誤字脱字、矛盾点等ありましたら指摘ください。
代理投下終了です。

88 :
投下乙
戦えず死んだことに涙するタルカスも、それに義憤を感じるイギーも良い!!
イギーvsヴァニラアイスか…
原作ではポルナレフがいたが、今はイギーだけ。どうなるか
DIOはこうくるか・・・
ジョルノがただただかわいそうだ。色々な気持ちを裏切られたな
勝って欲しい

89 :
投下乙です
原作のバトルが再びこんな形で再現されるとは
ジョルノはジョジョとしてDIOと戦うことを選択した事を本当はしたくなかったんだろうな
ジョナサン、フーゴは間に合うのか

90 :
そういや、ジョナサンとフーゴがまっすぐ西に向かってるってことは…空条邸の近くを通るな。
問題はいつ通るかだ。隠蔽してる最中ならスルーだろうけど。

91 :
今の予約が来たら、動いてないのはカーズだけか

92 :
ジョセフ・ジョースター、ルドル・フォン・シュトロハイム、花京院典明、ペット・ショップ、東方仗助、広瀬康一、噴上裕也、空条承太郎、エルメェス・コステロ、ジョンガリ・A、マウンテン・ティム、シーラE
投下開始します。

93 :
盲目の狙撃手―――ジョンガリ・Aは静かに佇んでいた。
彼の視線………いや、顔を向ける先には五人の男女。
彼は決していなくなったわけではなく、相手のスタンドの射程距離を予測してギリギリ射程外から付かず離れずで追っていた。
というのも、ジョンガリ・Aにはどうしても気になる人物がいたのだ。
自らが監視する五人組、その中でも特に背の高い青年―――ただし、その名前すらジョンガリ・Aにはわからなかったのだが。
ほとんど視力の無い彼であるが、スタンド能力で相手の外見についての判別はできる。
可能なのは相手の身長や体格程度………しかし、それ故に理解してしまったのだ。
青年のそれは、記憶の中にあった自らの主と『同一』の部分が多すぎるということを。
無論、隅から隅まで同じというわけではない。
首から上などは明らかな違いがあるし、なにより自身の主は太陽の下には出てこない。
よく似た別人という線も十分あり得る。
だが、ジョンガリ・Aは青年―――ジョナサン・ジョースターの正体を知りたいという誘惑を払いのけられなかった。
もしかしたら、主と何か繋がりがあるのではないか………名簿を読めず、事情も知らぬ彼が一纏の望みを持つのは無理からぬことであった。
しかし、集団自体が敵か味方かもわからないこと、五人という大人数であること、数を減らそうにも残弾数の関係上無駄玉は使えないこと―――
そういった諸々の理由から彼らが別の参加者と遭遇するか、あるいは確実に仕留められそうなタイミングを待つ………
要するに状況が変化するまで監視し続けることを選択していたジョンガリ・Aだったが、意外にも先に状況が変化したのは自分の方だった。

第二放送の直前だったろうか、ジョンガリ・Aは『それ』に気付きすぐさま自身の背後へと狙いを定めた。
銃口の先、はるか上空にいたのは一羽の鳥。
首元にはスカーフ、頭には飾りつきの兜という、およそ鳥には似つかわしくない格好に彼は覚えがあった。
主の館の見張り役を務めており………おそらくは『しくじった』ハヤブサ。
一片たりとも油断はできなかった。
相手の凶暴さはよく知っていたし、なにより年月がたった今では向こうが自分を知り合いだと認識できるとは思えない。
だがそんな心配をよそに鳥は上空近くまで来ると『何か』を落とし、そのまま飛び去っていった。
やや離れた場所に落ちた後、ジョンガリ・Aの元まで歩いてきたそれは………一枚のトランプだった。
ジョンガリ・Aは風に飛ばされたトランプの位置を一枚残らず正確に把握できる能力の持ち主である。
いかに小さかろうが、いかに隠密行動をしようが、『空気の流れ』に関わる以上は認識が可能なのだ。
彼は瞬時に、落ちてきたトランプが『ずっと前から』会場のあちこちを動き回っていたのと同一のものだと理解した。
(何者かはわからないが、これまでの行為を考えても友好的でないことは確実………
 接近してきた以上は先手を取って始末するべき………)
だが無言のまま引き金を引こうとした次の瞬間、あろうことかトランプは人間の言葉で喋りはじめ………
『あーっ、待った、待った、ジョンガリ・A………人違いじゃあないよな?………DIO様がお呼びだ』
「………………!!」
向けられていた銃は、一瞬のうちに下ろされた―――

94 :
#

空を舞うハヤブサ、ペット・ショップは捜し人をしていた。
第二放送の少し前、DIOはカンノーロ・ムーロロというこの上ない『情報』を手に入れた。
だがそれにより、ペット・ショップは『ジョースター捜索命令』を実質お役御免となってしまったのだ。
変わりに命じられたのは伝言………というべきか。
―――ムーロロの情報によって残りの参加者のほぼ全員が把握できた中、DIOは残る部下であるジョンガリ・Aとコンタクトを取ることに決定した。
聞いた話では彼の外見は大きく変わっているようだが、それはおそらく『彼は相当な未来から来た』ということ。
今なおDIOへの忠誠心が残っているかはわからなかったが、うまくすれば戦力になるだけでなく『未来』の情報が手に入る可能性もあるのだ。
だがジョンガリ・Aの位置は微妙に遠く、他の参加者達もそれぞれが徒党を組み始めている以上、あまり時間をかけすぎると彼が戦闘に巻き込まれ命を落とす可能性もある。
そこで、伝言役となる『ウォッチタワー』のトランプを最も速く彼の元まで運ぶことが出来るペット・ショップが選ばれたというわけだ。
ペット・ショップ自身は正直この仕事に何の面白みも感じていなかったものの、DIO直々の命令となれば無視することもできない。
凶暴な性格とはいえ『戦ってはならない相手』は理解できるのだ―――

さて、特にトラブルもなく目的の人物の元へトランプを落とした(というよりもトランプの方から飛び降りていった)ペット・ショップ。
身につけるスカーフの中に潜むもう一枚のトランプから聞こえてきた声によれば、次の命令は―――空条承太郎の抹殺。
無謀というなかれ、この命令が出された時点では承太郎は一人きりであったのだから。
勝算はある―――少なくとも、かすり傷すら与えられずに殺される程愚かでも弱くもないという程度にはペット・ショップは信頼されていた。
トランプが指定する場所まで向かい始めるペット・ショップだったが、すぐに問題が発生する。
それは承太郎を見張らせていたトランプが気付かれて『始末』されてしまったこと。
元々ムーロロが探索に出しているのは赤スートの二十六枚、その内およそ四分の一は各地に散ったDIOの部下に持たせられていた。
地上と地下の区分もある以上、残りのカードで会場全体の参加者を把握するとなると、どうしても一方面に回せる枚数は少なくなる。
早い話トランプが始末されたことにより、ムーロロは一時的に承太郎を見失ってしまったのだ。
ムーロロにとって不運だったのは、この間承太郎が常に『乗り物』で移動していたこと。
『ウォッチタワー』が如何にスタンドといえど、本物のトランプを媒介にしている以上瞬間移動はできない。
トランプの移動速度では、乗り物に乗る承太郎を見つけても追いかけ続けることができないうえに、同乗して近づきすぎればまた『始末』されかねない。
この時点で、ムーロロが承太郎を監視し続けることは実質不可能となっていたのだ。
さらに言えば、ムーロロとしても他にやるべきことは山ほど存在するわけであり………
結果、ティムの馬で、そして救急車で知らないとはいえ甘くなった監視の隙間を縫うように承太郎は進んでいた。

一方ペット・ショップにしてみればあちらへ飛べ、今度はこちらに飛べと言われ、挙句の果てには謝罪の言葉と共にわからなくなった、である。
『マニック・デプレッション』の治療により疲労をほとんど忘れているため体力的には問題ないが、元々気が長い方ではないペット・ショップの精神面は荒れ狂っていた。
こんなことなら、妙な紙切れに頼るのでなく最初から自分だけで探せばよかった、と。
イライラは頂点に達し、トランプを引っ張り出して引き裂いてやろうかと思った矢先、視界にあるものが入ってくる。
―――それは、会場の一点から立ち上る煙であった。

95 :
支援

96 :
#

一路空承邸へと向かう救急車の車内。
運転を女性二人にまかせ、後部に乗り込む男達はつかの間の休息を取っていた。
外で併走するマウンテン・ティムを除けば六人。
走り始めてしばらく、すぐ襲い掛かる脅威は無いと判断した彼らは後方確認と左右の窓に一人ずつ、計三人まで見張りを減らし、残りは今後に備えてじっくりと体を休めていた。
特に、疲労が蓄積しているうえ碌に睡眠もとっていない康一などは死んだように眠りについている。
(承太郎さん………)
そんな彼らを順に治療する東方仗助は、左の窓から様子を伺う承太郎を眺める。
表情は相も変らぬポーカーフェイスだったが、その目は明らかに自分が今まで見たことのない目であり………
今の空条承太郎が自分の全く知らない一面を現しているということを否応無く理解させられた。
(俺も、こんな風になってたかもしれねえ………アンジェロにじいちゃんを殺されたときに
 髪型をけなされる以上にブチ切れて、家具どころか所構わず八つ当たりを繰り返すようなことに………
 そうならずに済んだのは、あんたがかけてくれた言葉のおかげなんですよ、承太郎さん………)
あの時の言葉、『生命が終わったものはもう戻らない』………
理由があるとはいえ、他者の命を奪い続ける今の彼から同じ言葉を聞かされたとして、納得はできるだろうか?
………できるわけがない。
(俺が………いえ、俺達があんたを止めますよ………
 あんたをこの殺し合いに乗ったクソッタレ野朗なんかと一緒にだなんて、絶対にさせやしません)
仗助が決意を固めたその時。
シュトロハイムと交代して右の窓から外を見張っていた噴上裕也が首を傾げつつ声を発した。
「おい、妙だぜ………妙な『臭い』がしやがる………」
その言葉に起きている者全員が彼に注目する。
応えたのは承太郎。
「妙………何の『臭い』だ?」
「………間違いねえ、こいつはガソリンの『臭い』だ。それもかなりプンプン臭ってきやがる」
敵襲なのか、それとも別の問題なのか。
判断しかねた仗助はとりあえず思いついた可能性について口に出してみる。
「………この車のガソリンが漏れてるって事か? なら俺の『クレイジー・ダイヤモンド』で―――」
「そうじゃあねえ………この救急車じゃなく、ずっと先のほうから臭ってきやがるんだ………」
噴上の返答が終わるや否や、運転席側にいたエルメェスが叫び声を上げる。
「ヘイッ! 大変だ! 遠くで煙が上がってやがるッ………あれはたぶん、火事だッ!!」
「「「「!!?」」」」
「………スピード上げるみたいよ。寝てるやつは放り出されないよう、叩き起こしときなさい」
続くシーラEの言葉を受け、慌てて後部の男達は眠る者を起こし始める。
―――休憩の時間は終わりだ。

97 :
支援

98 :
支援

99 :
#

「離してッ! お願いだからッ!!」
「バカ言ってんじゃあねえッ! どう考えても二次災害になるに決まってるだろうがッ!!」
燃え盛る空条邸の門前。
近くで救急車を降りて徒歩に切り替えた一行は、ここで意見が分かれていた。
―――『突入』すべきか否かで。
「中にいるやつが怪我してうごけねーなら、俺がなおしてやらなきゃならねえだろうがッ!」
「わかってるから落ち着けよバカ息子ッ! クソッ、どっかに消防車支給された奴はいねーのかッ!!?」
人数が多いとはいえ、残念ながら瞬時に火事をどうにかしてしまえる能力を持つ者はいない。
ならば、体を張ってでも中の様子を調べる必要があると主張する仗助や康一。
対して安全策を講じるべきであり、今は様子を見るべきだと主張するジョセフや噴上。
シュトロハイムが突入しようとする者を半ば力づくで押さえつけている間にも火の勢いは弱まることなく、屋敷を飲み込み続ける。
一方承太郎とティムは議論には加わらず、屋敷の庭や周囲など比較的火事の影響が少ない箇所を調べるため別行動を取っていた。
そして、同じく議論をよそに門の下でなにやらやっているのは女性二人………主にシーラE。
「エリィッ!」
彼女は『ヴードゥー・チャイルド』の拳で門の柱や、近くの地面を次々に殴りつける。
ひび割れたそれらは能力で唇の形になり、喋りだしたのだが………

『……………は命……めるだけ………』   『………ン通勤……………と結構………じゃ………か』
       『…………人数…多………………』      『…は今か…………踏み………………からそ………………ぶち…………もり…』
  『………………京院………疑………な真似………しまった』          『……………………ラ、ピ……モ………レラ♪』

「………ダメね、火事の音が邪魔で碌に聞き取れたもんじゃないし
 第一こんな入り口で重要な会話がされたなんて思えないわ」
「チッ、どっちにしてもこの火を何とかしないといけねーってワケか」
何らかの手がかりにならないかと思いスタンド能力を行使してはみたが、そもそも何を言っているか聞こえないのではどうしようもない。
ひとまず二人は結果を伝えるべく、未だ議論を続ける仲間の元へと戻る。
そこへ、屋敷の外周をぐるりと一周して様子を見て来た承太郎達も帰ってきた。
「承太郎さん、あんたの意見を聞きましょうッ!!」
彼ならば、中を調べる良いアイディアのひとつやふたつ思いついているのではないかと期待を込めて仗助は呼びかける。
だが承太郎が発したのは………予想外の一言。

              「………ここに来たのは完全な無駄足だった。すぐに出発するべきだ」

100 :
支援


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