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【三題使って】 三題噺その4 【なんでも創作】


1 :2012/08/21 〜 最終レス :2018/10/17
三つのお題をすべて使って創作するスレです。
創作ならなんでも可。
折を見て新しいお題を出し合います。
過去のお題の投下もどうぞ。
お題の提出は一人一題まで。早い者勝ちです。
お題クレクレ以外はsage推奨です。
初代スレ 三題噺
http://namidame.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1219901189/
前スレ 【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1287933564/

2 :
前スレはdateおちです。

3 :
あらー乙

4 :
スレ立て乙です。
では早速お題「復活」。

5 :
お題(その2)「チーズトースト」

6 :
もう1個だれかお題くれ

7 :
くるま

8 :
高鳴る胸を抑えながら、私はさっきまで使っていた工具を仕舞い、長い眠りについていた相棒を起こすべくシャッターを開ける。
ヤンチャだった頃にブイブイ乗り回していたが、家庭を持ってからというもの、色々な事情があって泣く泣くシャッターに眠らせるしか無くなった―――――――相棒。
真っ赤な塗装に美しい曲線が目を引くスポーツカー、ディーンを私は今日、復活させる。思い返せば、とし子に散々売れ売れと言われてたなぁ……。
だが今日の日まで耐えに耐えてきて良かった。仕事が落ち着いてきてそれなりの役職に就けたし、子供もグレる事無く真っ直ぐに育てる事が出来た。
ようやく、とし子からも諦めというか乗ってもいいわよ的なお許しを貰えたし、今日はもうバリバリ乗り回すぞ!
「パパー!」
お、隆か。どうした?
「凄いカッコいい車だね! 僕も乗って良い?」
勿論良いに決まってるじゃないか! ディーンもきっと喜ぶに決まってる!
それにしてももう十年間位乗って無かったが、欠かす事無く整備だけは続けてきて良かった。
お陰でいつでも走りだす事が出来る。早く隆を助手席に乗せて爽やかな風を感じながらドライブに行きたい所だ。
「ようし隆、助手席に乗りなさい! すぐに出発しよう!」
「うん!」
隆が元気良く助手席に座る。しっかりとシートベルトを付けてあげて、私もシートベルトを付ける。
キーを差しこんで回すと、ディーンが勇ましく復活の声を上げる。おぉ、ディーン、嬉しいか。私もお前の復活に心躍っているよ。
それに、今の私には大切な息子という存在もいる。いつか隆が成長したら……いや、まだ早いか。
「準備は良いかい? 隆」
私が顔を横に向けてそう聞くと、隆は何も言わず、ただ深く頷いた。
目が輝いている。やはりこの子にも、私と同じ血が――――――――スポーツカーに震える男の血が流れている様だ。
逸る胸を抑えて、私はゆっくりとギアを入れて、少しづつディーンを眠りから目覚めさせていく。
重圧ながらも美しく響くエンジン音に恍惚としながら、私はアクセルを踏み込んで、いざ―――――――。


9 :
私は頭を抱えて自宅のソファーに座っている。
あまりにも興奮しすぎて、ディーンを飛び出させた時に後ろから自動車が来てるとは気付かなかった。
幸い、その後ろから突っ込んできた(と言っても私のミスなのだが)自動車はそれほどスピードを出していなかった為、私と隆に怪我はなかった。
無かったが、ディーンの後方部分は大きく凹んでおり、修理費が洒落になっていない。おまけにぶつかってしまった相手との諸々もある。
とし子は只でさえ隆の教育費が大変なのに! と久方ぶりに本気で怒っており、もうしばらくディーンには会えそうにない。
どうしてこうなった。一体私が何を……いや、何をというより、完全に私のミスなのがどうしようもない。
「パパ……」
隆……。
「車、大変だったね」
「ごめんな、隆。私は危うくお前を大変な目に遭わせるところだった。いや、遭わせてしまった……すまない」
私の謝罪に、隆は大きく首を横に振って、言う。
「そんな事無いよ。ビックリはしたけど……パパが怪我とかしなくて良かった」
あぁ、何て優しい子なんだ……。本当にこの子が私の息子で良かった。
「あ、そうだパパ。お願い事があるんだけど良い?」
「ん? 何だい?」
この子の頼みだ。何だって聞くつもりだ。
「あのね、学校の自由研究で試してみたい事があるんだけど」


「あの車の上でパンの上にチーズのせたらトロけるか試してみても良い? お父さんのあの車だったら、前が平べったいからパンとか他の物乗せても焼きやすそうだもん」

「……オーブントースターを使いなさい」
「それじゃあ駄目なの。研究の内容は車の上でも食べ物は焼けるのかって研究だから。それに」

「ずっと乗ってない車なら置物と変わらないよね?」




10 :
投下終わりました
色んな意味ですみません

11 :
乙です!
たしかにクルマのボンネットで目玉焼きを焼いてみたいと思ったことはあるww
「チーズトースト」の処理は上手いと思いました。GJ!
ただ、細かいことなのですけど
お題を“そのままのかたちで”織り込んでも良かったのでは? 
このお話なら、セリフにも違和感無く織り込めると思いました
まあでも、そこは柔軟で良いのかも。
また投下して下さい!

12 :
 審判の日は近いということだ。
 その日時については諸説あるが、遅くともあと半年以内、一部の司祭によると今日の午後12時37分21秒に主は光臨するらしい。
おれは車内のデジタル時計に目をやった。その時刻まではあと10分ほどだ。
1ヶ月前からも1週間前からも1日前からも1時間前からも、そんな予兆はまったく感じられない。
大地震が起こるとか、巨大なハリケーンが吹き荒れるとか、空から魚が降ってくるとか、レミングスが異常な大移動をするとか、
ましてや死者が次々と蘇るとかそういったことはまったくない。だからおそらく今日ではないのだろう。
 主がどのようにして現世に降り立つのかについても、喧々諤々な議論が交わされている。
最もポピュラーなのはミケランジェロがシスティーナ礼拝堂に描いたフレスコ画のような光臨である。
蒼穹の空に稲妻が走り、主は眩き光輪から雲に乗って現れ、人々を裁くわけだ。多くの人々がこの場面を夢に見たらしい。
また場景は違えど、似たように主の光臨を夢に見た者は多数いる。方舟に乗って大海からやってくる夢、
天から伸びた街道を、白馬の馬車に乗って駆け下りてくる夢、夢の形は千差万別だが、
興味深いのは人々がまったく同じ日にそれらの夢を見たということだ。だからそれを最後の審判への啓示だととらえるのは、極自然なことだろう。
 しかしながらおれはそんな夢は見ていない。もともと信心深いわけではないから、神の啓示なんてものはどうでもいい。
だがおれの家族や友人はみんなその夢を見ている。そうなるとおれだけ見ていないというのはどうも肩身が狭い。
最近は彼らがおれを見る目つきが変わったように思える。おれの疑心暗鬼だろうか? 
いやそうではない。明らかにおれに対する態度が不敬になった。どうも巷では、啓示を受けなかった者は裁かれ地獄におちる罪人だという噂が流れているらしい。
ばかばかしい話だ。ならば啓示を受けたやつはみな天国へいくのか? 死刑囚にだって夢を見た者は多い。
確かにおれは敬虔な教徒でもなければ、博愛主義者でもないが法を犯すようなことはしていない。
天国にいきたいわけでもないが、勝手に罪人扱いされてはたまったものではない。

13 :
 あるいは、神には神の定めた法があるのかもしれない。おれは知らぬ間にその法を破ったのだろうか。
おれと同じように夢を見なかった人々は、なにか重大な罪を犯した?
 おれは首をふった。知らぬ法のことなど考えても詮無いことだ。いずれにせよ、おれが天国にいくか地獄で焼かれるかはその日になればわかる。
 天国と地獄。
 啓示の日からこの存在を強く意識するようになった者は多い。やはり皆天国へ行きたいのか、慈善活動を行う人々が急増しているらしい。
それに反比例して、犯罪件数は激減している。教会には連日、懺悔に訪れる人々で鈴なりの行列が出来ている。
 しかしおれにはどうも、あの世の実在というものが信じられなかった。人はRば焼かれて灰になり土に返るだけだ。
死は人が死体になること以上の意味はもたない。いつごろからか、おれはずっとそう考えてきた。
これは今でも変わらない、もしおれも啓示を受けていれば考えを変えただろうか? 
本当に主が現れておれを裁くとき、おれは天国にも地獄にもいかないのではないだろうか。
 突如、燦爛たる輝きが辺りを包んだ。
 目の前が見たことも無いような純白に覆われる。
 おれは急ブレーキを踏んだ。タイヤがけたたましく鳴き、車体が大きく揺れる。激しい衝突で体が一瞬弾き飛ばされ、シートベルトが体に食い込む感覚があった。
 どうやら車はなにかに衝突して止まったらしい。横転はしていないようだが、眩い光のせいで現状が把握できない。
 時計も見えないが、おそらく例の時刻なのだろうと予想した。
 これが光臨なのか? 主が近くに復活し後光を放っているのだろうか。だとしたら迷惑な話だ、裁きを受ける前に死にかけた。
 だがしばらくして、そうではないことがわかった。
 発光しているのは他の誰でもない、おれの体だった。
 これはどういうことだ?
 おれは自分の体を見回した。といっても視力が戻ってきたわけではない。
不思議な感覚だが目ではない何かか直接視界を脳に伝えている。周囲のあらゆるも存在そのものが、脳の中でゆらいでいる。
そのゆらぎから、おれの胸部が眩く発光しておれを包んでいることがわかった。そしてこの光がほんのりと熱をもっていることが解った。
 これは人体発火というやつだろうか。ならばこの光はプラズマかなにかか? 
おれはこのまま焼かれるのだろうか。これが裁きなのか。
 しかしおれの体から炎は吹き上がらなかった。しかし周囲のビジョンから、おれ自身が凄まじい熱量を放出していることを知る。
おれの体はほんのり温かいだけだが、この光は信じられない熱をもっているらしい。おれの車のアルミボディが溶け出している。
シートは発火して、ベルトもチーズトーストの様にバリバリ音を立てて引き千切れた。
 おれは慌てて外へ出た。気づけば服は跡形もなく消し炭になっている。
アスファルトの道路は溶け出して半液状化し、街路樹も次々と炎を立ち上らせる。そればかりではない、
周囲の家々も業火に焼かれ、慌てて飛び出してきた人々もまさしく人体発火にもがき苦しんでいる。
 人肉の焼ける臭いというのはこうも不快なのか。
 おれはそう感じたが、一方で焼け死んでいく人たちに対して罪悪感も哀れみも恐怖も感じないことに気づいた。
おれのせいで彼らは苦しんでいるというのに、そこからなにも感情が生まれてこない。

14 :
 白熱の輝きの中でおれは悟った。
 やはり今が最後の審判の時なのだ。
 そしておれは裁かれる側なのではなく、裁く側なのだと。
 啓示をうけなかったおれの様な人間は、主が叩くガベルとして選ばれたのだ。おそらく世界各地で同じようなことが起こっているのだろう。
 おれが道を歩むとあらゆる物、人が炎を吹き上げた。しかし例外があった。
数人ばかり、何事もなくただおれに対して平伏し、祈りを捧げている者がいる。おそらく彼らは天国へゆく人間なのだろう。
彼らのゆらぎが天へと昇っていくのを感じる。ということは焼かれている者たちは地獄へいくわけだ。
そうなると地獄へ行く人間の方が大多数ではないか。彼らがどんな罪を犯したのかは知らないが、神の法は容赦がないらしい。
 道に向こうに、別の発光体が見えた。こちらに向かってきている。おれと同じく白光しており、どんな人物なのか姿形は不鮮明だ。
おれとの距離がだんだんと縮まる。やはり向こうの光を浴びたものは燃え盛っている。あと数メートル。向こうもおれには気がついているはずだ。
 光と光が交錯した。
 脳に伝わるゆらぎのビジョンにさほど変化はない。薄い霧の中に入ったようなものだ。
 光の核となる相手の容姿がはっきりとしてきた。老婆だ。しっかりとした足取りで歩みを進めている。
 おれのゆらぎと相手のゆらぎが交じり合う感覚がした。目線があったということだ。しかしおれも彼女も何も言わず、お互いに行き交った。
 彼女のゆらぎは遠ざかり、遠ざかり、おれの感知の外へといった。
彼女が通った跡は焼け野原ですでにおれが裁く余地はなさそうだった。おれは方向変えて中心街へ向かうことにした。
  発光体と発光体が出会っても、なにも起こらない。この事実についておれは考えた。あそこで発火している人間は地獄へいく。
地獄がどんなところかは知る由はないが、少なくとも地獄の住人として存在を認められるわけだ。
 だがおれ達はどうなるのだろうか。全てが終わった時、おれ達はどこへいくのだろうか。裁く側といっても、おれは神ではない。
神の道具にすぎない。その事は自明で頭の中で自然と認識できた。ならば用が済んだ道具はどうなるのか。
 おそらく、裁きが終わってもおれ達はどこへも行かないのだろう。おれ達がガベルとして選ばれたのは何も神に目をかけられたからではない。
 天国も地獄も信じなかった事。それがおれ達の罪なのだ。今ではそのことがはっきりと解る。
天国と地獄に疑念を抱いていたからこそ、おれ達がそこで人々を送り込む役目を担ったのだ。
自分が送り込む場所の存在を疑うわけにはいかない。しかしおれ達はそのどちらにも行くことを許されない。
 道具は処分もされず、ただ捨て置かれるだけ。
 それがおれ達に対する主の裁きなのだ。
 おれは天を仰いだ。創世以来空に浮かぶあの発光体に、おれは手を伸ばした。

                                                       END

15 :
おわりです。
お題書き忘れたけど「復活」「チーズトースト」「くるま」です。「くるま」は「車」になってますが勘弁してね

16 :
面白いgj

17 :
まさかこのお題でこんな話がくるとは
うまい具合に予想が裏切られて面白かった
GJ

18 :
 榴弾に吹き飛ばされて、私の左脚は血煙の向こうに消えた。超長距離から飛来した7.62mm
弾は一瞬のすれ違いで右の視力を奪っていった。その日から私は傷痍軍人としての生き方を、
得た。
 後悔はない。戦況が最悪の峠を越える夜を生き延び、そして勝ったのだ。侵略の暴威はもう、
この国を侵すことはない。
 車椅子で故郷を目指す。唯一の肉親である祖父の眠る地へ。
 山羊を飼っていた。平凡で、緩やかな日々が私を形作った。祖父は全てに於いて私の師だっ
た。読み書きから天候の機微、人との接し方まで、人生に必要なことは皆、彼から学んだ。
 祖父は傭兵だった。精強を誇る国の輸出品として各地を転戦し、心に傷を負って帰還した。
山里に篭り、人を避け、折れた心を一人で繕っていた。
 私を引き取った理由を、祖父はただの気紛れだといって、それ以上には答えなかったが、今
なら少し解る。欠落の形が似ていたのだろう。彼と私はその時、同じように損なわれていたの
だ。
 上り坂を、ゆっくりと進む。急ぐ理由はない。共に出征した幼馴染は一足先に還り、悠久の
内に眠っている。取り分けて勇敢だったと、彼を知るものは口を揃え、それが嬉しかった。
 膝に載せた包みが、かさかさと鳴る。色の濃い、全粒粉のパンと、やはり色の濃い、山羊の
チーズが二人分。精白度の高い白パンに憧れた日を、少しこそばゆく思い返した。
 奪うより助けよと祖父は言い、だから私は衛生兵として志願した。支給された拳銃は結局、
一発の銃弾も放たなかった。必要に迫られなかった幸運に、感謝を。
 やあ、見えてきた。石を組み、萱を葺いた懐かしき我が家。ただいま、おじいさん。
 これは私の、魂の復活への道のりを綴るひとり語り。暖炉に火を入れたら、あのチーズトー
ストを焼いて、欠いてしまった心をもう一度、取り戻そう。大丈夫、ここは私の故郷。あの子
が自分の足で立てたように、私もできる。

19 :
思ったより長くなったうえに全然まとまらなかったけど、とりあえず

20 :
「よくぞここまで辿り着いた……若き勇者よ……」
 しゃがれた声で荘厳な台詞を言い放った主は、その口元に深く刻まれた皺を大儀そうにつり上げて笑みを作った。
 どす黒い闇を携えた眼光、己が強大さを天空に指し示すようかのように鋭くとがった耳、ちぢれて長く伸びた銀髪、
その手に備えた凶悪極まりない鉤爪、涎を滴らせた無数の歯が嫌らしくぬめって光る。
 この世界を地獄の底へ突き落さんと企んだ魔王は、その邪悪さを微塵も隠さずに眼前の勇者をしかと見据えた。
 邪悪の権化そのものである魔王に立ち向かう勇者は、剣を握る手にいっそうの力を込め、勇敢な眼差しでもって
魔王の視線に受け応える。
「我が父によって一度は冥府へと屠ったその身、いかにして復活を遂げたかは知らぬが、二度目はないぞ! 魔王!」
「ククク……強がりを吐きおる……威勢がいいのは結構なことだが、ここにくるまででもはや精根尽き果てた、といった
 様子のようだがな、その出で立ちを見ると……なあ、勇者よ……?」
 言われて勇者はぐっと言葉を詰まらせた。
 認めたくはないが魔王の指摘はもっともで、魔王の居城攻略だけで相当の労力を費やしたがために、実のところ
疲労は限界に達しようとしている。勇者の隣で肩を並べる仲間たちもそれは同じで、表立って苦しい素振りを見せるような
真似は決してしないが、『今の自分たちでは魔王を倒すことはできないかもしれない』という絶望感によって皆の心が
支配されようとしている様を、勇者は密かに感じ取っていた。
「図星か……その若さ……嫌いではないぞ……」
「なんとでも言うがいい。生憎と今の俺は、貴様と無駄な言葉を交えるほど心の余裕を持ち合わせてなどいない!」
 それが合図となった。
 あとはもう互いの腕力で語り合うのみ、とばかりに一転して辺りは静寂に包まれた。
 じり、と数ミリ分にじり寄った勇者の剣閃が迸るのは、その数瞬後の出来事である。

21 :
「なぜ、どうしてオレの斬撃が効かないんだ!」
 歯噛みするように、斧を携えた戦士が叫ぶ。
「物理攻撃だけじゃない。あたしの、どんな属性の攻撃魔法も効いてないみたい……」
 黒のとんがり帽子をかぶった魔法使いも肩で息をしながら呟いた。
「皆落ち着け。一度は俺の親父が死の間際まで追い詰めたはずだ。奴とて不死身なわけがない。必ず何か
 弱点がある。そのはずなんだ」
 勇者はそう鼓舞するが、一方の魔王はただ不吉な笑みを湛えたままじっと様子を伺っている。
「もしかして……」
 と、胸元のネックレスを握りしめながら、僧侶が一つの疑問を差し挟んだ。
「魔王に通常攻撃でダメージを与えられない――ならば、回復効果でダメージを受けるんじゃないかしら。
 実はアンデッド系の種族だとか……」
 その呟きに勇者はハッとした。
「どの道このまま同じ攻撃を続けても変わらないんだ。僧侶、やってみてくれ」
 こくりと僧侶が頷く。短い詠唱を発すると同時に、手に清らかな白いオーラが集まってきた。
「せあぁぁぁぁぁ!」
 気勢を上げ、僧侶は手中のオーラを魔王へ向けて放った。
「ぬおぉ!?」
「やった! 効いてるみたいよ!」
「いいぞその調子だ。どんどん撃ってくれ」
 勇者はそう叫んだが、しかし続く魔法が唱えられることはなかった。勇者が不審に思って、
「? どうした僧侶」
「え、MPが……」
 さっきまでの勢いはどこへやら、一転して青ざめた顔の僧侶を見て、他の三人はその意図を悟った。
 魔王の元へ辿り着くまでにもかなりギリギリの戦いを強いられてきたのである。すなわち、僧侶の表情は、
もはや一発の回復魔法も撃てないほどにMPが底を尽きたことを意味していた。かくいう勇者も気がつけば
MPはほぼ無いに等しい。考えてみれば、魔王と戦う直前までの戦闘で、数少ない手持ちの回復アイテムすら
使い尽くして凌いできたのだ。そろそろ限界が近づいてきているということだろうか。
 思えば無謀な戦いだったのかもしれない。これまで不屈の闘志で困難を払いのけ、パーティを盛り上げてきた
勇者も、半ばそんな感情に囚われそうになった。
 ――回復アイテム。

22 :
「お前ら、回復アイテムまだ持ってるか!?」
 勇者が勢い込んで聞くと、僧侶と戦士は力なく首を横に振った。
 もしかしたら回復魔法ではなくとも、回復アイテムで同様の効果が得られるのではないかと期待していたが、
そもそも持っていないのでは試しようがない。再びがっくりと消沈した勇者が、返事のなかった魔法使いにも
念のため聞いてみる。
「魔法使い、お前は?」
 すると、何を思ったか魔法使いは戦闘態勢を解き、無言でつかつかと魔王へ歩み寄った。あまりに意表を
つかれたからか、魔王もその様子を呆然と見守るのみで、ほとんど何もできずに懐への侵入を許していた。
「お、おい、魔法使い……」
 魔法使いはその黒いマントの裾から一枚のチーズトーストを取り出したかと思うと、無造作に、魔王の口へ押し込んだ。
「むごぉ!」
 その瞬間、確かに魔王がダメージを受けるエフェクトを発した。
「…………え?」
 そう、この世界での回復アイテムとは、チーズトーストなのである。素のままで持ち歩くと色々な意味で
不便なため、冒険者たちからは大変不評なアイテムである。
 魔法使いは、一体どこへそんなに隠し持っていたのか不思議なほどの量のチーズトーストを次から次へと取り出し、
黙々と魔王の口にねじ込んでいく。傍で見ていて正直怖い。
「あの……魔法使い、さん……そのあたりで辞めてあげたほうが……」
 本来魔王を討伐しにきたはずの勇者が思わずそんな言葉をかけるが、もちろん魔法使いは聞く耳を持たない。
 これはあとになって判明したことだがどうやら彼女はチーズトーストが大好物で、回復アイテムとかそういったこととは
無関係に、常に大量のチーズトーストを持ち歩いているらしい。
 かくして、世界は救われたのだった。
終(お題:復活、チーズトースト、くるま)

23 :
投下続いてますが、自分も「復活・チーズトースト・くるま」で一つ、2レスでお邪魔します

24 :
 「遅刻遅刻!」
  俺の名前は日野 狂馬(くるま)! あっつあつのチーズトーストをくわえながらダッシュで登校中さ!
  こんな時、曲がり角で転校生の美少女とぶつかるってのが王道なんだよな。
  よーし、張り切ってぶつかるぞ! そう思って左右確認もせずに突っ込む!
  車がやってきた! 僕は死んだ。
 ――暗転。繰り返し。
 「遅刻遅刻!」
  俺の名前は日野 狂馬(くるま)! あっつあつのチーズトーストをくわえながらダッシュで登校中さ!
  …
  ………
  車がやってきた! 僕は死んだ。
 ――暗転。繰り返し。
 「遅刻遅刻!」
  …
  ……
  ………僕は死んだ。
 ――暗転。繰り返し……

25 :
 この流れを見ていた背広の男。
「…あまりに酷いな、これは」
 呆れたその声に答えるは、ボサボサな髪をバンダナで縛った、やせ型の若い男。
「あはは、すみません。何せもうベテランも中堅も誰も居ないですから、まだ素人が実験している程度の段階なんです。
しかしあれですなあ、同じ場面を繰り返してるだけなんですが、これはまるで復活しているかのように見えますねぇ。はっはっは」
 背広の男が問いかける。
「これは漫画とかで良くありがちなテンプレートという奴か。しかし何故、わざわざ『チーズ』トーストと明記したのかね」
「いや、たいした理由はないんですけどね」
 若い方の男――つまりはゲームの開発担当者は、記念すべき試作アプリを動かしていたスマートフォンを操作し、画面の電源を切る。
 そして他に誰もいない元社員食堂を見回し…冷蔵庫を指さしてこう皮肉った。
「我が社の財政はまさしく火の車、食堂も閉鎖されて久しいですからね。今冷蔵庫に入ってるのは、私が家から持ってきたチーズとパンくらいなものでして。
一応社運を託された再生復活プロジェクトなんですから、もうちょっとお金を回して欲しいもんですよ」 (終)

26 :
盛況のうちに次の御題おねがいします

27 :
「帰還」

28 :
「忘れ物」

29 :
「流星群」

30 :
なんかネタおもいついたのに忘れてしまった・・・

31 :
「あ、ながれぼしだー」
 娘の声に空を見あげれば、そこには彼女の言葉通り、数多の流れ星が煌めいていた。
 まるで流星群のようなそれは、そのひとつひとつが有人の大気圏突入カプセルだ。
「そうか……もうそういう時期なんだな」
「そういうじき?」
「ああ、今の時期は皆戻ってくるんだよ」
 舌っ足らずな娘の反問に、私は微笑みを浮かべながら答えた。
 「帰還者の流星(メテオリターナ)」と呼ばれるその現象は、いつも決まってこの時期、
ちょうど暑さが盛りを迎え、入道雲が最も大きく自らの存在を主張する時期に起こる。
 ようは、形を変えた帰省ラッシュだ。
 ――そう言ってしまうと途端に情緒がなくなってしまうような気がして、私の唇は苦笑の
形に歪む。訝しんでいるのか、首をかしげる娘に、私は
「皆、宇宙で暮らすようになったけど、毎年夏のこの時期になるとね、この星に帰ってくるんだ」
 科学万能のこの時代、最早人はこの星を必要としない。コロニー技術が発達し、人の寿命に
等しい期間の宇宙滞在が可能になった。さらには、宇宙塵からのコロニー補修・製作資材の
自己生産が可能になった昨今、この星――地球に人々が戻らなければならない理由は
どこにも無い。
 無いはず、なのだが――
「どうしてかえってくるのー?」
 それでも、人はこの星に、宇宙での生活を一時中断してまでして戻ってくる。
 なぜなのだろうか。
「……皆、忘れ物をしているのかもしれないな」
 そして、それを探しに来て、でも見つからなくて……なんとなく、そんなイメージが
私の頭の中に浮かぶ。
「うっかりさんだねー」
「そうだね」
 娘の笑顔に、私も笑顔を返す。
 昔の習慣、その名残り。まあ、そういう情緒の無い考え方の方が、現実的なのかもしれない。
 でも、星に残した忘れ物を探しに、流星群が降り注ぐ――そんな風に考えた方が、なんだか
浪漫があっていいんじゃないかと、そんな風に私は思った。
「ほら」
「うわー、たかいー」
「よく見えるだろ?」
「うん! あ、また」
 今日から数日、この流星群は降り続ける。
 この星に忘れた大切な物を取り戻すために。
 ――うん、やっぱりこの方がいいな。
 肩車した娘とともに空を見上げながら、私は再度そう思うのだった。
                                                  おわり

32 :
お題をお願いいたします

33 :
つ「ミシシッピ川」

34 :
>>31
乙です!
お題が無理なく織り込まれて、すっきり纏められていますね
さすが! というかなんというか。GJです!

お題、間に合えば
「とんぼ」


35 :
帝国

36 :
「ミシピッピ川帝国独立をここに宣言する」
大学の食堂で向かい側に座っていた松本がそう言った。
「はあ?」
取り合えず、そう返す。
「ミシピッピって語感いいよな「ミ」と「シ」と「ピッピ」だぜ?」
「……はあ」
何かよくわかんない。
「ミシピッピ、じゃ無くて、ミシシッピだ」
隣でカツ丼を食べている鈴木がそう言った。
「マジで!? シッピなの? ピッピじゃないで!?」
「ああ……マジで、信用できないならググれ」
そう言うと鈴木は器用にグーリンピースを箸で摘むと口の中に放り込んだ。
「そう言えば何でカツ丼にグリーンピース乗ってるんだろうね?」
ふと疑問を口にした。
「これはな、酢豚の中のパイナップル的な存在だ」
そう言いながら鈴木は最後のグリーンピースを箸で摘んだ。
そして、しげしげと眺め、感慨深くため息をつくと、それを食べた。
「うむ、グリンピースはやはり塩茹でに限る」
鈴木はもぐもぐと味わいながら頷いた。
「……ふと気になってたんだけどさ、グリーンピースだよ? グリンピースじゃなくて」
取り合えず突っ込んでおく。
「何!? それは本当か!?」
そう言いながら、鈴木は二、三口噛んだのだろう米粒を知らずと私に飛ばしてきた、
……ばっちい。
「おい! ミシピッピ川帝国が独立すんだぞ!! 何か言えよ!!!」
「ああ、ついでに言うと、それが成長したのを甘く煮込んだのがうぐいす豆らしいよ、今ググって知ったけれども」
松本を放置して、私は携帯を弄る、因みにスマホだ。
「ミシピッピ川帝国万歳!! ミシピッピ川帝国万歳!! 全員起立! 国歌斉唱! 長淵のとんぼッ!!!」
そんな感じで私の昼休みは経過していくのだ。

37 :
とんぼはどこいったんだ

38 :
「ミシシッピ川にさ、ヤゴとワニが居んだよ。な、そうぞうしてみ。レッツイマジン」
「で、ミシシッピの河川のマングローブが田畑の為に焼き付くされそうになってんの。もうすこしでトンボになれるヤゴ逹の根城があるってのに」
「ミシシッピの主ワニはそいつぁ許せねぇってんで人間をガブガブ噛み千切ってくわけ。ボートの底から噛み砕いて、沈んだところをばりばりやっちまう」
「でも人間もバカじゃないから、そのうちワニを取っ捕まえちまうんだよ。もう、あれだよね、革バックにされちゃう」
「ヤゴ逹はワニが時間を稼いでくれたお陰で無事蜻蛉になって、ミシシッピの夕景を咽び泣いて翔んでく。ありがとう、ありがとう、この恩必ず返します、一生、いや、何代掛かってでも、仇を討ちます、つって」
「トンボは何代も掛けて、水場を飛び飛びに進んで、やがてメキシコに着く。メキシコのバッタさん逹に仇討ちを頼むために」
「バッタ逹は仇とかどうでもよかったけど、飯は大好きなんだよね」
「びゅーんと大量のバッタが翔びまくって、やがて何代か掛けてミシシッピ川にたどり着いて、赤黒い悪食の餓鬼に変身する。転化って奴だ。リミットブレイクだよね。超級武神覇斬」
「こうしてミシシッピの帝国は大飢饉に見舞われたってわけ」

39 :
>>36
なんか、こういう「がやがや」した雑談いいなあ。
「帰還」「忘れ物」「流星群」で投下します。

40 :

 今夜たくさんの流れ星が見えた。
 夜を切り裂く流星群が最高の祝福を贈ってくれたのだと信じた。
 手にしている懐中時計は間もなく約束の時間。
 わたしははやる気持ちを抑えて歓迎の言葉を考える。
 「もうすぐお客さんがやって来るね」
 燭台は並びましたか。
 七面鳥は焼き上がりましたか。
 ワインは冷えてますか。
 宴の準備は整いましたか。
 小さなお屋敷の大広間でわたしは胸に手を当てて、まだ見ぬ人々が歓喜する姿を待ち望んだ。ざわざわの前のわさわさ。
人生で一番、鼓動高まる時間かも。だだっ広い大広間をわたしは檻の獣のように往復しているし、それをしていることで自分の存在を
確かめているようでもある。わたしは古ぼけて鍍金の剥がれた懐中時計をそっと握り締め熟した時を噛み締める。
 今度こそは。
 今度こそは。
 扉が開いて、こつこつとふしあなだらけの床を踏み鳴らすブーツの音が聞こえた。
 わたしは歩みを止めて、望まぬ訪問者を一瞥した。スミレだ。
 「ユリ。まだ、信じてるの?そんな迷信」
 スミレという子は声も目も考え方も醒めている。わたしはスミレの目線から逃れるようにカーテンに包まった。
 「亡くなった人たちが戻って来るとでも?」
 「そうじゃないの?だって……このお屋敷は」
 誰が名づけたのか『処女宮』と呼ばれるこのお屋敷。
 一度この世を離れた魂たちが再びこの世へと帰還する為に、汚れ無き少女を介してやって来る。また生まれ変わる為に。
 くるくると廻る転生と、遍く広がり四つの季節を跨いで巡る星たちの領域と重ね合わせて、その名が付いたと今は亡き老執事から聞いた。
 魂たちに最高のおもてなしする為、この『処女宮』は存在し、わたしは奮ってご馳走を用意する。
 この世がどんなに素晴らしいかってことを思い出してもらう為に。
 そして、決してあなたたちのことを忘れていませんってことを伝える為に。
 カーテンのドレスから抜け出すと同時に、スミレは一言でわたしを真実に突き落とす。
 

41 :

 「そんなことは迷信だよ。騙され続けてるんだよ」と。
 きらりとカーテンの隙間から懐中時計が顔を出す。
 スミレがそれを見逃すはずが無かった。
 「その懐中時計、懐かしいよね。ユリ」
 「これは……形見ですから。いつ何時もあの方は手放すことはありませんでした。この時計のお陰で幾多の人々を円滑に動かせたのです。
  そして、この時計の恩恵を受け、あの方の完全なる仕事をわたしは引き継ぐ為に。そしてあの方がこの時計を再び手にするために」
 「あり得ない」
 わたしが手にしていた懐中時計を引っ手繰ったスミレの顔は涙を見せないほど乾いていた。
 どうしてかわたしはそんなスミレのことが許せなかった。幾多の言葉で罵っても足りないぐらいに。
 「スミレの泥棒ネコ!忘れ物を忘れるようなことってある!?こんな大事なものを!返して!」
 「忘れることが悪いことって思うの?忘れることで救われるものもあるんじゃない!?」
 「……なに?この懐中時計を荼毘に付し、無機質な灰に還すとでも?過去をこの世から消し去ることが正義とでも?」
 「ずっと過去のものに囚われているユリは現実から目を逸らし続けるのがいいよ」
 そうかもしれない。
 ここに魂が還ってきたことは無かった。
 それでも、次を信じてわたしは賑やかな宴を準備していた。
 「執事のことなど、忘れなさい」
 もしかして。万が一。スミレの言うとおりに『亡くなった人たちが戻って来ることが無い』のなら、わたしの言動はばかげてる。
 亡くなった者が戻る保障も確証もない。ただの迷信、吹き込まれただけ。信じ続けたわたしに似合う言葉はただ一つ。
 『ばかの一つ覚え』
 悔しくて。悔しくて。わたしは目が滲んでくるというのに。鋭い剣で心臓を切り裂かれ、とめどなく血が流れるが如く溢れる涙。
 感情なんか御せなくて。
 「ユリにも夜空にも泣かれたわたしはどうすればいいのよ?」
 スミレがカーテンで流れる星を映し出す窓を遮っているのが、わたしの滲んだ視界に見えた。

    おしまい。

42 :
10日早いしし座流星群!
投下おしまいです。

43 :
みなさんおつおつ
17日に流星群か

44 :
どちらも乙
独特の雰囲気があって読みやすい

45 :
時々、自殺について考える。考えるだけじゃなく自殺したいと思う。
それでもきっと僕は自殺しないだろう。なぜなら自Rるほど綺麗な心をしていない。
思うのだけれど、腐った人間は自殺しないんじゃなかろうか? 分からない。
本当のところ、僕は自殺したいと思うだけで自殺したわけじゃないのだから。
いろいろな人間がいるのと同じように、自殺にもいろいろな形があるのだろう。
例えば――
 男は大地に寝転がり夜空を見ている。とても気温は低いが男はそれほど苦には思わない。
なぜなら死を決意してしまったから。死を決意してしまった後では肉体の苦痛は
ほとんど無感覚になる。だから、寒さなんてあまり感じないのだ。
男が寝転んでいる場所は樹海で黒く塗ったような木々や葉の間から星が見える。
流れ星が多いのは流星群なのかもしれない。でもそれ自体にはあまり興味が無かった。
興味が無いけれども、その流れ消えていく光は男の心の中にまで届く。
もちろん比喩的な意味だが、男はその光を心の奥底に感じることが出来る。
心の奥底の井戸にまで落ちて消えていくのが分かる。男の深い深い井戸の底に
もう枯れ果ててしまった井戸の底に届くのが分かる。
そして男は枯れてしまったと思った井戸の底に水が染み出ているのを感じる。そしてそれは男が死んでしまったと
泣いてくれる誰かの涙だと思う。
 電車に乗り込んだ後、忘れ物はないかと思ったが忘れたものがあるところで大したことではない
と思うと男は解放された気分を少しだけ味わう。
何故なら男は死を決意してしまったから、忘れ物など殆ど関係ないのだ。
 宇宙から帰還した人々のニュースを見ている。人々は笑顔だ。宇宙では筋肉が衰えて
地上に立つことも難しいと昔、聞いたような気がするが、宇宙でもトレーニングしている
映像が記憶に浮かぶ。宇宙飛行士も自殺したりするんだろうか? 男は思う。
そういえば、ソ連と呼ばれていた国の宇宙飛行士が自殺したんではなかったか?
あるいはそうかもしれない。きっと彼は見てしまったのだ。何を? あれを。
殆どの人が知らずに死んでしまうものを。たぶん死の淵にいる人間は不遜になるのだろう。
だからすべてを分かりきたっと思うのだ。男はそう思った。そう願いたかった。

46 :
>>45
乙です
死にゆく者の独白・・・という感じだけど、冒頭にあるように「僕」が「考える」だけで、きっとオチはないんだよね
個人的にはオチが欲しかったり。
それでも生きて行く意味を見い出すとか、自殺に至る過程に何があったかが徐々に明らかになるとか
なーんて、自分も書けないのにそんなことを言うもんじゃないな
文章は読みやすくて、その先が気になる、引きこむ冒頭なら大成功と思った
乙でした!

47 :
ありがとうございます。落ちって何かと考えると難しいですね。
僕はいわゆる「笑い」としての落ちは好きではないんで
別の形の落ちを――文学的な落ちとでも言うべきものを模索したいと思います。

48 :
そろそろお題の季節

49 :
じゃあお題1
「時間」で

50 :


51 :
霜柱

52 :
「もうこんな時期なんだね」
私の隣をまるで子供のように霜柱の上をサクサクと歩きながら姉がそう言った。
朝、いつもより少し早い時間。
気まぐれに早く起きた私と、これまた気まぐれに早く起きた姉は、気まぐれに肉まんとあんまんが食べたくなり、現在へと至る。
「おはよライネルリッチ」
ふと姉が呟いた。
「何?」
意味が分からなかったので、素直にそう返す。
「朝の挨拶、まだだったから」
そういいながら姉は無邪気に微笑んだ。
「それ……、さよなライオネルリッチ……」
地味なネタに、地味な突っ込みで修正を入れる。
「そうだっけ? 間違えちゃった、てへぺろ」
内心、うわぁ……、と思いながら無反応。
俗に言うスルーである、あえてシカトである。
「ちょっとー、何か言ってよー」
膨れる姉。
ふと、私も霜柱をサクサクしたくなったので、姉の反対側に回りこんでみる。
「ん? なあに?サクサクしたくなったの? まだまだ子供ねえ……」
……あんたには言われたくない。
心の中で突っ込む。
無言空間。
田舎の農道で霜柱をサクサクする音だけが二人分響いている。
その横をなにやら農業用機械を荷台に積んだ軽トラックが通り過ぎた。
……ふと、思ったことを口にだしてみる。
「今日はさ、何か百六十円ぐらいの奴食べたいんだけれど」
「贅沢は敵、欲しがりません勝つまでは」
「……あんたは何と戦っているんだ」
……ああ、今日はどう過ごそうか。
昼ごはん、何にしようか、晩御飯も。
美味しいもの食べたいな、そう思った。

53 :
>>52
乙です
「あれ、ライオネル・リッチーがお題だったっけ?」としばし考えてしまったw
うちの方ではもうちょっと寒くならないと霜柱サクサクは無理かな・・・好きだけど

54 :
お題いいかな?
いいなら「ポチ」で

55 :
じゃ、「猫」

56 :
「点描」

57 :
「そこに猫がいるわ」
 私の隣に座っていた彼女は虚空を指して呟いた。
 私には猫が見えなかった。
 壁面には等間隔に赤い点が並んでいた。
「壁の中に猫がいるわ」
 壁面の向こうに猫が居ることは有り得なかった。
 実際のところ壁は永遠に続いているのだから。
 彼女は指を鳴らして猫の注意を惹こうとしていた。
 私には猫が見えない。
「猫はこっちに来ないわ」
 壁はただそびえていた。
「壁から出てこないわ」
 彼女は壁の斑点に猫を見ているらしい。
「おいで、こっちへおいで」
 私は口を聞けなかった。
「そこにいる猫はこっちに来ないわ」
 私には猫が見えなかった。
 私は彼女の近くに居るつもりだった。
「その猫はポチだわ」
 点(ポチ)で描かれた猫は私には見えなかった。
「その猫はポチだわ」
 彼女には私が見えなかった。

58 :
新年あけましてお題ぷりーず

59 :
マイクロファイバークロス

60 :
電気

61 :
焼きそば

62 :
「ねえハニー、僕が前から欲しかった『マイクロファイバークロス』買ってくれないか?
 これがあれば車もピッカピカだし、家の掃除も週末くらいは手伝うさ。」
「やーねえダーリン、無駄なものばっかり欲しがって。
 それよりも、その安月給をなんとかする方が先でしょう? お金さえあれば何だって買えるもの。」
「わかったわかった、甲斐性の無い僕が悪かった。」
「下らないこと言ってないでさっさと焼きそば食べてよ。片付かないじゃないの!」
「ああ、それにしてもまだ焼きそばかい?」
「何よ! 文句ばっかり言うなら自分で作ればいいじゃないの!」
「いや、悪かった。ねえ、そういえば顔赤いけど、また飲みながら料理していたの?」
「そうよぉ、この前お友達と飲みに行ったバーで、電気ブランってのが美味しくて、それで……」
「昼間っからこんなブランデーを……」
「ブランデーじゃないわよぉ、電気ブランよ。違いの分かんない男ねえ!」
「ああ、僕は違いの分からない男だよ。君と結婚したことが間違いだと気付くのに半月もかかってしまったからね!」
そういうと、男は手近にあった電気ブランに手を伸ばし、勢いよく妻の頭頂部に叩きつけた。
粉々に割れる硝子のシャワーに噴き出す血飛沫、零れた先からしゅわしゅわと音を立てるアルコール。
手に残る重い感覚が、目の前の女の命を奪った事を証明する。
しかし男に後悔の二文字はなかった。
遅かれ早かれ、僕たちはこんな結末を迎えていただろう、と残ったボトルの残骸をゴミ箱に投げ入れながら彼は考える。
妻だったものの遺体を手早く風呂場に突っ込むと、男は台所に戻り、血と酒で汚れた床をボロ雑巾で拭き始めた。
そして、いつまでも落ちない血痕と取れない硝子の破片を見て力無く笑ったのだった。
「『マイクロファイバークロス』買っておけばよかったな。」

家の掃除から車のケア!証拠隠滅!口封じまで!
『マイクロファイバークロス』さえあれば何でもできる! 『マイクロファイバークロス』さえあればいつでも簡単!
あなたも『マイクロファイバークロス』を買って、精神的な掃除をしよう!
「お買い求めはフリーダイヤル、×××―××××ー××××だよ。」
「ダーリン素敵! 抱いて!」

63 :
でも、お高いんでしょう?


>>62
乙ですw
やっぱ「電気」の処理がネックになるお題かなと。電気ブランを持ってくるとはw
使い方の有り過ぎる語句は、無さ過ぎる語句と同じくらい扱いにくい気がします

64 :
>>62
乙乙〜
グラックユーモアたっぷりだなー
こんな通販嫌すぎるwww
という訳でお題は「園芸」

65 :
>>62
アメリカの通信販売かよwwww
お題はメイド

66 :
マイクロファイバークロス、欲しいなァ…
では「カプセル」

67 :
「パーカー様! どうか、どうかおやめください!」
昼下がりの穏やかな屋敷の書斎に、メイドのキャシーの叫び声がこだまする。
本棚の硝子戸を繊細に編み込まれた掃除用の布巾で丁寧に磨いていた彼女に
ほんのささいな提案のつもりで声をかけた雇い主のヘンリー・パーカーは少しうろたえる。
掃除の手を止めた女は足早に主人の元へと駆け寄った。
「ここは私の庭だ、君がとやかく言う問題じゃあない。」
「しかし、ここは生前奥様が大事にされていたお庭ではありませんか!」
ヘンリー・パーカーに仕えるキャシーは若く従順なメイドであるが、
彼女が主人の意見に反対したのは初めてのことだった。
「奥様は、園芸が大好きな方でした。特に、真っ赤な薔薇をいつも愛でておられました。
 あの濃厚な薔薇の香りはパーカー様もご存じでしょう?」
「もう彼女はいないんだ。薔薇園を持っていたとしても無駄だ。
 キャシー、君が今も管理してくれているんだろう? もうその必要も無い。」
パーカーは感情を抑えた様子でメイドに語りかける。
キャシーは一度深呼吸をしてから、さらに主人に喰ってかかった。
「だったら尚更です! 奥様のためにも、どうかこの庭を保護させて下さいませ。」
「君に言うつもりはなかったが、薔薇の匂いを嗅ぐと妻を思い出してしまうのだ…… それが苦しい……
 私の我が儘だとは重々承知しているが、分かって欲しい……。」
「大変…… 失礼致しました、パーカー様……
 それでも、一部の薔薇だけで良いのです、離れの花壇へ移植させて下さい……
 私は奥様にも忠誠を誓っておりました、もちろん奥様の死後まで続く果てしない尊敬を……」
思わぬところでパーカーの感傷に触れたメイドは、亡き女主人ローザへの思いを伝えると静かに書斎を後にした。

68 :


数日後、薔薇の移動の準備に取り掛かったメイドは慌てた様子でパーカーへ報告に走った。
「パーカー様! 大変です! 薔薇園を掘り返した所、このようなものが……」
主人はメイドから品物を受け取ると、まだ少し土の付いた『それ』にべたべたと触れてみた。
「これは、一体何だと言うのだ? キャシー。」
「カプセルです! おそらく、奥様が埋めたものでしょう。失礼します……
 やっぱり、中には手紙のようなものが入っていました。読み上げます。」
『愛するヘンリー・パーカーへ
あなたが、もしくは使用人の誰かがこの手紙を掘り返している頃には、私はもうこの世にいないでしょう。
このカプセルを見つけたということは、薔薇園に手を入れようとしているということね?
あなたも園芸のよさに気付いてくれたとしたなら、これ程嬉しいことは無いわ。
もしそうなら、私が残した最後の贈り物だと思って、この薔薇園を守り続けて下さい。
土の柔らかさを感じ、薔薇の匂いを愛で、自然と一体になる心地よさ……
生きている間に、あなたと共有したかったけど、空からちゃんと見ているから、素敵な薔薇を咲かせてね?
メイドのキャシーには薔薇園のことを信頼してまかせてあるから、困ったことがあれば彼女に聞くと良いわ。
追記・スコップを使う時は、十分気を付けて下さい。
あなたの妻 ローザ・パーカー』
情感たっぷりにメイドが手紙を読み上げる。少しすると、小さな嗚咽が彼女の耳に届いた。
「ローザ…… 私は…… ああ、ローザ……」
「パーカー様……」
「ありがとう、キャシー。庭は潰さない。この薔薇園をこれからも守ってほしい。」
「うっ、うううっ、あっ、ありがとうございます! パーカー様、ああ奥様……!」

69 :


主人の介添をしながら、メイドは片側の口角だけを少し上げ、隣で杖を付いている男のことを鼻で笑う。
キャシーにとって盲目の主人を偽の手紙で騙すのは、使えないボロ雑巾で床を磨くよりたやすいこと。
そもそも、目の見えない夫が掘り返すことを望んでわざわざ庭にカプセルを埋める妻がどこにいるというのか。
違和感に気付けなくなるほどに、愛妻を失ったことがパーカーのぼけを増長させたに違いない。
彼が庭を潰すと言いだした時に内心キャシーはうろたえたが、
このくらいのトラブルは人生につきものだと考え、庭園を守る策略を巡らせたのだった。
美しく芳しい真っ赤な薔薇園ではなく、彼女が世界中から掻き集めた宝石と財宝の隠された黄金の園を―――――
彼女の右腕は杖をつきながら歩く主人のために。
彼女の左腕は彼女自身の輝く未来のために。
エプロンのポケットに忍ばせた真っ白なカプセルを人差し指で弄くり、爪で弾いて遊びながら、
悪意のメイドは新たな罠を構築し始める。
「ご主人様、もうすぐお薬のお時間ですよ。」
声だけは天使のような呼びかけに、パーカーは微笑んでああ、と頷く。
あの細君はすぐにくたばったというのになかなかどうしてこの男は死なないのだろう、と
何も見えない雇い主の目の前で、キャシーもにやりと悪魔のように笑った。

【侵略者キャシー・完】

70 :
ブラックだなw
でも現実に有りそうなことだ
乙!

71 :
いいのが来たので次のお題いきませう

72 :
では「リヤカー」

73 :
つ「手前味噌」

74 :
もう1個こないので
age(お題じゃないよ)

75 :
それでは「チョコレート」
>>69
まさかメイドをそんな風に料理してくるとは思わなかったwww

76 :
ハニーブラッド

 僕はチョコレートをパキポリ音を立てて食べる。チョコをくれたのはユキナで今日はバレンタインデーなのだ。
僕が貰ったチョコは1個だけで、だけどその1個が彼女の手作りだからそれでいい。
他の女の子のチョコなんて僕には必要ない。パキポリ。
「美味しい?」彼女がにこにこしながら聞いてくるので、僕はその笑顔をずっと見ていたくて美味しいよと答える。
そうすると彼女はもっとにこにこする。
でも正直な感想を言うとちょっと変な味がする。ビターでほのかにスイートでラブリーなハートの形をしたチョコレート。
ビターでスイートな味の中にちょっぴりメタルな感覚を僕の舌はキャッチする。
パキポリ。うん、やっぱり気のせいじゃない。味覚だけじゃなくて、僕の嗅覚もその異変をキャッチする。
人は嗅覚で味を脳に伝える。そして僕の脳はこの味を思い出す。
 これは鉄の味だ。
 でもチョコレートに鉄なんか入れはしない。チョコと一緒にアイアンをテンパリングする奴なんかいない。
鉄分を含んでてチョコレートに混ぜることができるもの。ほうれん草なんて可能性は僕には浮かばない。これ血じゃね?
 もう1かじりパキポリして僕の疑惑は確信に変わる。いや間違いなく血じゃん。
チョコの隠し味に血?そんなの聞いたことがない。っていうか誰の血だよ。
 僕はちらりとユキナを見ると、彼女はやっぱりにこにこしている。んで彼女のカーディガンの袖からちらりと手首が覗く。
その手首に包帯が巻いてあるのが見える。バシッ!と僕の頭にフラッシュライトがたかれるようにして、場景が浮かび上がる。
ユキナが自分の手首を切って血をチョコにポタポタ落として、それをぐーるぐーるとかき混ぜている。
コーヒーにミルクが渦巻くように、溶けたチョコに赤い血が渦巻いている。
 そんな光景を思い浮かべながら僕はチョコを食べきってしまう。
ユキナはにこにこして僕もにこにこする。
彼女の血が僕の中に混じったことを感じる。ほんの僅かな血だけど、彼女のものが僕と混ざり合う。
それだけで彼女の気持ちがわかるから僕は彼女に何も聞かない。

77 :
ユキナは僕と1つになりたかったのだ。僕を愛しすぎてるが故に。
愛とはつまりお互いで1つになって、1+1=1にするという事なのだ。
世界中のすべてを巻き込んでただ1つの存在が愛なのだ。
普通の人はそれをセックスでやる。だけど彼女はそれでは満足しなかったのだ。
だいたいセックスなんて一晩終わればまた1+1=2に戻ってしまう。なにより中に入り込んで1つになれるのは男だけだ。
これではあまりにも理不尽じゃないか。彼女はそう思って血を僕の中に入れようとしたのだ。
僕の胃に収まったユキナの血がそう教えてくれる。
 その日から僕は吸血鬼になる。
 僕はまだ高校生で吸血鬼になるには幼すぎるけど僕の精神は完全にユキナの血に飲み込まれてしまう。
僕は彼女の血をチューチューする。首からはしない。大抵は人差し指にちょっと傷をつけてそれにむしゃぶりつく。
たまには舌を少し切って、キスしながら彼女の口に溢れる血を唾液といっしょに飲み込む。
僕も彼女もそれで絶頂に達するからセックスはなくなった。

 だけどある日とうとうユキナが貧血で倒れてしまう。傷だらけの彼女の身体をみて、両親は不審に思い僕を疑う。
その傷から僕が血を吸いましたと告白しようとしたけど、彼女になにも言うなと止められる。
そんなことを言えば僕は頭のおかしい人間と思われて病院か刑務所に入れられてしまうからと。
でも僕は彼女の血が飲めないことで頭がおかしくなりそうだ。血は毎日身体の中で作られている。
彼女の血が飲めなければ、そのうち僕の身体を巡る血から彼女の血がなくなってしまう。
 結局全てはユキナの自傷行為ということで片がつく。そして僕じゃなくて彼女がおかしな病院にいれられる。
どこか遠くの病院で、ユキナの両親は僕に場所を秘密にしたまま彼女を連れて行ってしまう。
ユキナから連絡がないのは何故か考えたけど、彼女も僕に血を吸われるのはもう嫌だったのだろうか?
ユキナからやってきたことなのに?
順当に考えればそんなことはないだろう。
手前味噌な意見ではなく、僕はユキナの血を吸う必要があったしユキナは僕に血を吸われる必要があったはずなのだ。

78 :
 僕はいろんな手段を使ってユキナの行方を捜したけど見つけることが出来ないまま受験シーズンを迎える。
忙しさのなかで僕はユキナのことを諦めて、僕の吸血鬼も眠りにつくけどすぐに目を覚ます。
 大学に入った僕は色んな女の子と付き合って多くの血を吸う。ユキナと同じ血の味をした女の子を捜す。
僕はどの女の子が血をくれそうかどうか一目でわかるようになる。そういった女の子の血を僕は吸う。
だけどユキナと同じ血の味をした子は見つからない。
僕の中にいろんな血が混じって僕の身体は誰の血が流れているのかよくわからなくなる。
そしてその中にユキナの血が入っていないのが虚しくなる。
その虚しさを埋めるために僕はまた他の子の血を吸う。そしてまた虚しくなる。
 吸血鬼はもっと高貴な存在じゃなかったろうか。本当の吸血鬼はこんなに手当たりしだい女の子の血を吸ったりしない。
これじゃ僕はダニだ。
 そうか僕は吸血鬼なんて高尚なものじゃなかったのだ。僕はただのちっぽけな虫けらで、血を吸ってぶくぶく太ってしまいには動けなくなってしまう、
あの間抜けなダニなのだ。

 ダニは醜悪で病原菌を持ち込む害虫だから人に忌み嫌われて駆除される。
僕も周りの人たちに女の子の血を吸っていることがバレて忌避されるようになる。
そんな僕のことを他人は吸血鬼と呼ぶようになったのが僕には耐えられなかった。なぜなら僕は吸血鬼ではないから。
 それから僕は人里離れて山に篭る。うち捨てられた茅屋があって、そこに住む。
ここでは誰も僕を吸血鬼とは呼ばない。人間も居ないから血を吸う事もできない。
山には獣がいるけど僕は彼らの血を吸う気にはなれない。代わりに他のダニが彼らの身体にくっついて血を吸う。
そして僕の身体にもくっついて血を吸う。僕はライターの火を近づけてそれを引っぺがし、踏み潰す。
ダニはプチッと音を立ててぺちゃんこになり溜めていた黒い血が地面に染み込んでいく。
そして僕もそうならないといけないことに僕は気づく。
 僕は飛び降りるための場所をさがす。ここは山だからすぐに峻厳な崖が見つかる。
びゅーびゅー山風が正面から吹き付けてくる。僕が一歩前に出れば僕はぺちゃんこにはなれないだろうが、潰れることはできる。
でも僕の足は前に出ない。足が震えてる事に気づく。
僕は息を整えて前に出ようとするけど身体がいう事をきかなくて、岸壁で1時間ほど立ち尽くす。
自分の情けなさにほとほと嫌気がさした僕は茅屋に戻ることにする。

79 :
その帰り道にある木でおっさんが首を吊っているのを見つける。
僕が岸壁を探している時には無かったはずなので首を吊ったのは1時間以内かそこらだろう。
僕はどうしようかと逡巡するけどほっとくことにしてまた歩きだす。けどやっぱり気になるので戻っておっさんのとこへ行く。
糞尿の臭いが鼻をつくけど思っていたより臭くはない。口からはだらしなく舌が垂れていて、目は飛んで行った自分の魂を追うように天を向いている。
これが死んだ人間かーとしげしげ眺めてから僕は持っていたナイフでロープを切っておっさんがドサリと地面に落ちる。
 持ちあげようとしたが生きることを止めた人間の身体というのはものすごく重いということを思い知る。
仕方ないので僕は一度茅屋に戻って、そこに放置してあったリアカーを持って行く。そこにおっさんの身体を入れてまた茅屋へと戻る。
よっこらせとおっさんを床に寝かせる。だらしないので舌をしまって目も閉じさせる。そしてナイフでちょっと指を切って血を舐めてみる。
あれ?と僕は思う。
これはユキナの血と同じ味じゃないだろうか。
おっさんの人差し指をゴリリと切り落として、その血を僕は飲んで愕然とする。
これはユキナの血の味だ。なんでこんなおっさんとユキナが同じ血の味がするのか。
 僕の脳裏にユキナのあのにこにこ笑顔が浮かぶ。ユキナの体中についた傷を思い出す。
あの傷は全部僕がつけたものだったろうか。そうじゃない、僕がつけていない傷もあった。
あれはユキナが自分でつけた傷なのだ。なんのためにそんなことを?
 僕はおっさんを見下ろす。この血の味は死と絶望の味なのだ。生きることを諦めた人間の味なのだ。
やはり僕はユキナの血を吸う必要があったしユキナは僕に血を吸われる必要があったのだ。
僕はユキナが死んだことを悟って泣く。
ユキナを助けてやれなかった自分を呪って泣く。
おっさんの死体の前で大声で泣く。
 僕は泣きながらナイフを手にして、指に傷をつけ染み出た血を舐める。

ユキナの味がする。

僕は再び山奥へ入った。
 
                               (了)
 

80 :
以上リヤカー・手前味噌・チョコレートのお題です。
手前味噌の使い方が違うかもしれません。

81 :
乙乙
凄まじいものを見てしまったかのような読後感

82 :
乙!
読後も心拍数が上がりっぱなしだぜ

83 :

面白かったよ!
また書いてね

84 :
お題を下さいな

85 :
それでは
曇り空

86 :
虹の根元

87 :
オチがつかないので三題目を下さい。
「虹だよ、ねえ」
「ふん。お前、アレを先まで追ったことがあるか?」
「え? あ、あの、虹の先には夢が埋まっているって、姉さんが」
 指を東の空に向けて、弟が言ってみるが、生き延びることに擦り切れた姉の心には届かない。
「だからお前は馬鹿なんだ。虹の根元に埋まってるのは、父さんと母さんの墓だよ」
「ちっがうよ。そんな訳あるもんか!」
 だけどそうだ。幼い命を護ることだけを背負った姉が、最初に見たのは両親の最期。
「っ、声が大きいよ。西の森から奴らが来る。ここに伏せてな」
「うん、……でも?」
「うるさいねえ、私は大丈夫だよ」
 数世紀に亘る迫害を忍んだ一族の、最後の二人が反攻を試みる。一人はそれをそうと知って、
もう一人はそうと知らずに。
「……はっ、はは」
 血溜まりに姉が一人、残念そうに笑う。少しだけ、足りなかった。
「勝てないのか。ヒトには、どうしても……っ!」
 弟はここに、一人。他に誰もいない生を、厭でも継いで生きていく。
「姉さん、虹の彼方に、ほら」
 曇天に復讐を誓う男が、ひとつ。

88 :
では「ルビーの皿」

89 :
たくしあげ

90 :
お題リセットしましょう

91 :
「パンチラ」

92 :
「毛深い」

93 :
「眼鏡」

94 :
別にどうという事もなかった。
彼女が毛深い事に意味なんか無かった。
……多分、一時的には。
少し前に初めてキスをした。
つまるところファーストキス。
そして、なんか、顎の少し先がジョリっとした。ただそれだけ。
只それだけなんだ。
誰もがうらやむ美人さん、彼女は俗に言うそれだった。
只、只そう、何か夕方になると顎の辺りに青みが掛かるだけ。
只それだけの可愛い女の子。
少し前に歩道橋を渡った時に風が吹いた。
その時にスカートが翻ったんだ。
……もっさりしていたんだ。
……はみ出すほどに。
俺は、この厚ぼったいレンズの先にそれを見てしまった。
……俺は、俺はどうしたらいいんだろう。
なあ、誰か教えてくれ。
俺は、俺はどうすれば……。

95 :
まあ、そういうのすきなひともいるしw
久しぶりの投下乙乙!

96 :
「彼女」はわるいこじゃないぜ
乙乙

97 :
お題age

98 :
「地下鉄」

99 :
「太鼓」

100 :
age


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