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【なりきりリレー小説】ローファンタジー世界で冒険!4


1 :2014/02/21 〜 最終レス :2018/10/17
有り得ないけどどこかにあるかもしれないもう一つの地球――
これは、科学と魔法の混在する不思議な世界で紡がれる、脚本無き冒険活劇。
可能性は無限大! 主人公は君自身!
物語の世界を駆け抜け、誰も見た事のない伝説を紡ごう!
詳しくはこちら
いやはての書庫〜ローファンタジー世界で冒険!まとめwiki
http://www48.atwiki.jp/lowfantasy/pages/1.html
避難所
時空の狭間―多元円環世界掲示板―
http://www1.atchs.jp/lightfantasy/

2 :
>「うーん……そりゃあ多分無理だな。
アイン・ソフ・オウルっていうのはある日突然よく分からんクッソ汚い淫獣に与えられる便利能力じゃない。
その人が持つ世界のこと、つまり存在そのものなんだ。
繋がってるんじゃなくてそれ自身ってわけ 」
「ふーん。ってことは魔力の類いではないってことなのね。
じゃあアイン・ソフ・オウルの力って
(私は超常的な印象を受けたのだけど)
実際は肉体から生み出されている解析不能の不思議な力ってことでいいの?」
フォルテの言う人のもつ世界。
それは一見、魂などに分類されるようなオカルト的な分野にもみえる。
でもフォルテは分割出来ない人の存在そのものだと言う。
「っていうかフォルテ。
あんたやたらアイン・ソフ・オウルのことに詳しいのねぇ」
今ごろになってフォルテのことを不思議に思う。
童話の妖精のように現れた少年。
彼と会ったときからアルテナの人生は変わった。(良くも悪くも…)
>「そんな訳で便利に付けたり外したりはできないんだけど、
途中で性質が変わる事は無くは無いみたいなんだ。
見て。脳が都市管制システムに接続されてるみたいだ。
彼女の精神を通して都市管制システムへのアクセスを試してみて欲しい。
何か分かるかもしれない」
「へぇ…。なるほどねぇ。私、危うく間違うとこだったわ。
なぜって怠惰のアイン・ソフ・オウルの力って恐ろしく強いじゃない?神様的にすごいの。
だから余計な心なんてほとんどないのかもって思ってた。
生まれてすぐに生体コンピューターに接続されたと思ってたし……。
でもそれは間違いだったのね」
フォルテに聞いたアイン・ソフ・オウルの仕組み。それは人のもつ世界。
としたら最強の怠惰が元からそれのみの純粋な怠惰のはずもない。
過去に人としての人格、怠惰を生み出した過程もあるはずなのだ。
「えっと、どうしよ。
都市管理システムにアクセスするだけでいいのかな?
少女が呼びかけに答えてくれたらいいんだけどね……。
もしダメならコレクターで少女の夢のなかにクラッキング(侵入)することも可よ。(精神のみ)」
アルテナはコレクターを一同に
手渡すと、
自身も髪飾りのように身に付ける。
そしてサイコハンマーで静かに装置を叩いた。
「できたらゲッツ君にも手伝ってほしいんだけど……。
マーくんだけでファイアウォールを破れるかしら…」
アルテナは作業をはじめた。

3 :
>「ふーん。ってことは魔力の類いではないってことなのね。
じゃあアイン・ソフ・オウルの力って
(私は超常的な印象を受けたのだけど)
実際は肉体から生み出されている解析不能の不思議な力ってことでいいの?」
そう聞かれて少し考える。
ゲッツを見ていたら確かに肉体から生み出されている、と見えなくもないけど
上位のアイン・ソフ・オウルはむしろ人間みたいな肉体を持ってない奴が大多数だ。
大昔のよく分からん神々とか母さんとか母さんとか。
「どこから生み出されているかは分からないけど存在の本質は肉体じゃないんだなあ、きっと。
少なくとも悪い物に取り付かれてる、なんて都合のいいもんじゃないから
憑き物を取るように怠惰だけを祓うのは不可能ってこと。
魔力の類いかもしれないけど”ただの”魔力ではないのは確かだな」
そう、アインソフオウルは魔法とか異能とか、そんなチャチなもんじゃねえ!
もっと恐ろしい物の片鱗が見えるぜ……!
>「っていうかフォルテ。
あんたやたらアイン・ソフ・オウルのことに詳しいのねぇ」
「この世界は人の心で出来ているんだ――って言ったら信じる?
オレもバニブルの地下にいる凄い人に教えてもらっただけなんだけど。
信じるなら後で教えてあげる。
あ、バニブルっていっても国家司書じゃないぞ、もっとすごい人」
元国家司書ヴェルザンディ、現――傲慢のアイン・ソフ・オウルの事を少し思い出す。
あの人の場合は国を想う鋼の意思が皮肉にも厄災の種の恰好の苗床となった。
厄災の種はその人が持つ性質を極限まで悪の方向へ暴走させる。
ヴェルザンディだけじゃない、ミヒャエルもそうだ。あれ? という事は……?

4 :
「コイツも厄災の種のせいか……!?」
>「へぇ…。なるほどねぇ。私、危うく間違うとこだったわ。
なぜって怠惰のアイン・ソフ・オウルの力って恐ろしく強いじゃない?神様的にすごいの。
だから余計な心なんてほとんどないのかもって思ってた。
生まれてすぐに生体コンピューターに接続されたと思ってたし……。
でもそれは間違いだったのね」
「確かに枢要罪には最初っから神様的にすごい奴もいる。でもコイツは多分違う方の部類だな……」
>「えっと、どうしよ。
都市管理システムにアクセスするだけでいいのかな?
少女が呼びかけに答えてくれたらいいんだけどね……。
もしダメならコレクターで少女の夢のなかにクラッキング(侵入)することも可よ。(精神のみ)」
コレクターを身に付け、浄子さんに声をかける。
「浄子さん、本人が聞いてほしいと思っている心の声は聞こえるんだよな?
コイツが今の状態から脱する事を望んでいるのが本当なら、いけるかもしれない。
オレも手伝う」
さっきの顕現戦と同じ要領で、相手の領域を乱さないように静かに入っていく作戦。
そうだな、コイツはまさに”眠り姫”。
この曲は人間として生きた時代が無けりゃ話にならないのだが、駄目で元々だ。
「永遠に続くような 木々の道はまるで深海
一度だけくれたキスに  よく似た風が吹く森
永遠に続くような 木々の間で辿る星屑
連れて行って欲しかった 私とあなただけの場所
恋した胸が痛くて この体横たえても 蘇る言葉 
息吹 求めた愛は儚く 思い出を抱いて眠る 私は眠り姫」

5 :
>「――私は怠惰の世界の具現。アイン・ソフ・オウル、バアル・ペオルの代弁者。
…………私は怠惰を得ぬ代わりに怠惰以外を得ている。
故に、死という怠惰を持たぬ故に私は生きている。――――私をRことはかなわない」
「バアル・ペオル?」
私は怠惰の世界の具現と名乗りし者はバアル・ペオルという人名おそらくは名前と
その代弁者であると語る。
そんな最中、アルテナがホバークラフトを操って自分達回収するつもりらしい。
同時に攻撃を続けるがフォルテによって強化された彼女自身の持つハンマーによる攻撃も
機銃による攻撃も耐え凌ぎ、難なく顕在している。
だがその事自体には脅威を感じつつあるがそんな事が重要では無い
幸いにも簡単に身体を動かせるほどになってきたがそれよりも続く言葉に真剣に耳を傾ける。
>「……揺らがんな。……それでは、私の妹を起こすことは叶わん。
マモンは貴様らならば奴を起こせると語っていたが――期待はずれだったようだな」
「…………私は、上がりたいのだ。この世界から、このシステムからの開放を。
朽ちているのに朽ちることを許されず、眠りたいのに眠ることを許されぬ。
それを貴様らが終わらせてくれると聞いた故に――ここに居る。…………まだだ、まだ足りん」
>「私は怠惰を許されない。死しても、眠りたくとも、座したくとも」
「何を言っているのだ…?先ほどからお前達はいやお前は――」
この世界のシステムから解放されたい、確かにそう言っている
アインソフオウルとはこの世界の主導権を狙う存在ではないのか
いや偶々目前に居る存在はそれに当て嵌まらない例外なのか。
そんな事を思い悩んでいるうちに機銃による攻撃によって代弁者と名乗った奴に当たると
その姿―まさしくミイラというべき容貌をしているのである。
「これは!?」
死んでいるのも同然としか言えないのにも関らず怠惰の力でこのような姿になっても
生き続ける事を強いられている、そうとしか思えないほど酷い物である。
だがそんな事も所構わず、ゲッツは今だ全快とは言わない状態でも
ゲラゲラ笑いながら、首を締め上げられると頭蓋骨のみを残して消えてしまうのであった。
>「あ、私……」
「こういった事は初めて故戸惑うのは当然だろう。慣れろとは僕は言わないよ
助かった、ありがとう」
こういった直接戦闘には余りやったことは無いのだろうその事に関しては
その反応は当たり前だと出来る限り優しい諭し、今は精一杯の笑顔でありがとうと礼を言うる
しかしすぐに元の戦闘時の様子に戻る。
相手もこの程度では死ぬような存在では無いだろう。

6 :
>「私を滅ぼすには、怠惰を滅ぼさねばならん。
……会わせてやろう、待っていたんだ。僕は――僕と妹を終わらせてくれる人を」
案の定想像通り、未だに声を上げ今度は待ち望んでいたようにそのような言葉の後に
突如都市管制システム、アシュラ・ クロックの座する原子力タワーが変わっていく。
正確には上階を除き、全ての外壁が朽ちゆき骨組みを残して消えていく
そして雷と共に砕かれ、地下へと一気に落ちていった。
「此処は…」
ゲッツ達が壁を砕き入っていく中、此方も身動きする分は問題なくその先に入る。
だがその先に居たのは一人の少女だった。
>「――――そうだ。彼女が僕の妹。怠惰のアイン・ソフ・オウル。バアル・ペオルだ」
正確には死んでいるに等しいというべきだろう。
それを機械によって無理矢理延命している
いや延命しているというのは正しくない、生かされているのが正しい。
そんな彼女も怠惰のアインソフオウルの力でもその生命維持を朽ちさせる事はできないらしく
それだけは健在でそれ以外は朽ち果てていくという異常な状態であった。
だが目の前の彼女とて好き好んでやっている訳では無いだろう、既に他にもこの力による犠牲者は
今も出続けているがこれは――
>「なーんか妙な話だな……。
コイツが本当に怠け者で何もしないのなら最初に彼女を機械に繋いでこの状態にした誰かがいたはずだ。
まさか年金受給の引き伸ばし目的じゃあるまいし。一体誰が何のために……?
それにゲッツ、前来た時はこんな事にはなってなかったんだろ?」
奇しくもフォルテと同じ意見であり、このような事をする存在がいなければ
こんな事にはならないだろう、それ故にこの少女への哀れみや同情ではない
このようにした者に対する烈火の怒りが湧き上がる。
「何だこれは…!?人の尊厳など踏み躙られ、ただ辱められているだけではないか!!」
なんという事だろう、この少女も被害者に変わらない
自分であれば今すぐ此処で楽にしてやったほうがずっといいとさえ思う
此処までされて生きてきたのだ、彼女の気持ちを察すればそうした方が良い。
そして外の者達もこうしている間に死んでいる者もいれば早い手段がそうなるが
だがそれは独善という物だ、そういう考えが頭に過ぎる
もっとも普通にRことが出来るかも分からないし
その手段以外にも何か無いかアルテナやフォルテ達も模索を始めている。
「仕方あるまい、都市管理システムのアクセスコードを渡せば
世界守護者委員会の電子戦部門に何処までか判らんか手伝わせる事もできるが?」
渡されたコレクターを受け取りながら電子戦部門に応援要請をしようかと言った後
持っているPADA型COMPから全身から電撃を発する小さな妖精らしき者を召喚する。
「グレムリン、お前なら機械類に関して得意分野だろ手伝ってやれ」
「しょうがねぇなオイラも力貸してやるよ」
仲魔の中で唯一機械類に関しての逸話があり詳しいだろう
グレムリンを呼び出して何かの手伝いにならないかと遣わせるのであった。

7 :
>「輪廻からハズレしものか」
>「で、その子とあなたを怠惰から解放しろっていうの?
>散々やっといて随分とむしのいい話じゃない。まあ、本人たちに悪気はないのかもだけど……」
「私達には、何も変えることが出来ない。私達にできる事は、何も出来ないという事だけなのだから。
――それこそが、怠惰のアイン・ソフ・オウル。そして、彼女が静を司り、私が動を司っている」
怠惰のアイン・ソフ・オウル。それは究極の安寧にも繋がる力。
無限の停滞。死もなく、生もなく。ただそこに或るという、その無機質さ。
数百年の停滞。この土地が科学の都市となる遥か昔からこの土地を穏やかに維持し続けてきた意志。
それこそが、平穏のアイン・ソフ・オウル。そう、今此処にある怠惰のアイン・ソフ・オウルの前身だ。
>「なーんか妙な話だな……。
>コイツが本当に怠け者で何もしないのなら最初に彼女を機械に繋いでこの状態にした誰かがいたはずだ。
>まさか年金受給の引き伸ばし目的じゃあるまいし。一体誰が何のために……?
>それにゲッツ、前来た時はこんな事にはなってなかったんだろ?」
「ああ。……確か、アレだったっけか――割りと最近だぜ?
神魔大帝の野郎がなんか可笑しくなった――ああそうだ、ローファンタジアのあの時の数ヶ月前からか。
そんぐらいから色々もっと変になってきていたぜ?」
「――マモン。それが、平穏のアイン・ソフ・オウル。地位の位の僕の妹を、天位に至らせ、歪ませた存在だ。
……ああそうだ。永久の夢を見続けていたあの子の夢を歪ませた。歪み、歪んだ結果――狂っていった。
安穏の夢は、悪夢に変わったんだ。……僕には、なにもできない=Bだから、待つしか無かった。こうして」
顕現の語る名。それは、この場の6人の中の4人は知る名だった。
暗躍する枢要罪。――強欲のアイン・ソフ・オウル、マモン。
彼の振る舞いによって起こった災厄。それが、この地を死地に変える事だったのだろう。
>「そんな訳で便利に付けたり外したりはできないんだけど、途中で性質が変わる事は無くは無いみたいなんだ。
>見て。脳が都市管制システムに接続されてるみたいだ。
>彼女の精神を通して都市管制システムへのアクセスを試してみて欲しい。何か分かるかもしれない」
>「できたらゲッツ君にも手伝ってほしいんだけど……。マーくんだけでファイアウォールを破れるかしら…」
>「仕方あるまい、都市管理システムのアクセスコードを渡せば
>世界守護者委員会の電子戦部門に何処までか判らんか手伝わせる事もできるが?」
「……すまん。僕は、何も出来ない。僕の持つ権限は、彼女を守ることだけ。
この都市の全ては、奪われている=Bそう、かの強欲によって、ね」
皆が前向きに対策を考えていく中、髑髏は何もすることは無かった。否、何も出来ないのだ。
――何も出来ない。何も出来なくすること以外の何も出来ない、それが怠惰のアイン・ソフ・オウルという存在。
それ故に、ただ彼らは待ち続けることしか出来なかった。何の力にもなれない事に、骸骨はカタカタと顎を鳴らして歯噛みする。
そして、竜人はと言えば、己の特技である破壊行動――と言っても物理ではないが――が回ってきた事に破顔する。
未だに鋼の義手はその形を歪ませながら、新たに成長を続けている不安定な状況だが、図太い竜人はもはや微塵として気にしている様子はなかった。
ゆっくりと歩みだし、拳の骨を鳴らしながら、竜人はコンピュータの前に仁王立ちをし、豪放な笑い声を響かせて。

8 :
「――……よーするにその、アレだろ?
なんだ、そのよくわかんない機械の中に入ってる壁的なのぶっ壊しゃいいんだろ?
うっし、任せろ。そういうんのが俺の仕事よ――なあ、当然だろうが。任せな。
とりあえず俺がこのシステムに無理やり繋がって、中までぶん殴りに行く。
だからお前さんそのハンマーで他の連中と俺の精神つないでくれや。……一人だと流石にキツいしな。
浄子。アルテナ。お前さん達はアイン・ソフ・オウルっての知らねーだろうが、一つ覚えておきなァ。
――常識は通用しないぜ? アイン・ソフ・オウルにとっては、俺ルールが世界の真理≠セ。ま、それだけ覚えときゃ後は俺とか、俺よかよっぽど強いエス平とかが何とかする。
うっし……ッ!! おら、往くぞォァ!!」
凶暴な笑み。煌々と漏れ出す混濁とした赤黒色の不気味な発光。怠惰の影響を受けずに居られるのは、その発光の影響か。
また、その光の周囲に居る限りは、激しい倦怠感や疲労感を感じるものの致命とはならないレベルに抑えられる事となる。
そして、竜人はアイン・ソフ・オウルに対する知識を持たぬ二人にシンプルな説明をしつつ、作戦とも言えない適当な発言をして、拳を振りぬいた。
ディスプレイを突き抜ける拳。そして、生体金属製のその義手が、回路に接続しその精神を無理矢理にシステム内に送り込んだ。
――アルテナが繋げば、皆の感覚には朽ちた世界≠ェ映る。
無数の花々が咲き誇る、広大な草原。そこには、しかしながら命が無い。命の輝きが微塵もない。
生きる歓びも、朽ちる哀しみも。そこには存在していない、枯れる事も萌ゆる事も出来ずに、ただそこに或るだけ。
輪廻転生すらを拒絶する怠惰の世界。そこを歩む、竜人。一歩を踏み出す度に、足元の草が枯れ果て腐り落ちていく。
「――コイツが」

9 :
「ああ、そうだ。彼女が怠惰のアイン・ソフ・オウル。お前たちが倒さなければならない俺達の同類だ――――」
唐突に空間は白に埋め尽くされていく。凍えていく世界、絶対零度に埋め尽くされる凍結した草原の光景。
その凍結の中心地に座するのは、安楽椅子に座す――一人の少女。バアル=ベオル。
そして、竜人の呟きに呼応して、白い世界に青の色彩が割り込み、怠惰の世界から居場所を略奪し降臨した。
「――――なぁ? さあ、倒すが良い。悪だ、そこに居るだけでそこに或るだけで否応がなしに世界を侵す。
望むも望まざるも関係ない。それこそが、アイン・ソフ・オウル。俺も、貴様らも、彼女も同じ――そう、同じ災厄だ」
立つのは、蒼い髪の男。――強欲<}モン。
いつも通りに整いきった顔を皮肉げに歪ませて、男は少女を指し示す。
演劇のように大げさな動作と抑揚を含ませて紡がれる声。そして、その言葉はむしろ倒す事を望んでいるような言葉。
そして、間違いなくこの状況に置いて、この少女を倒さないことにはこの地もこの世界も救われない。
かつての交響都市艦フェネクスの様な、仕組みを感じさせる予定調和のこの気配。
嫌な笑顔を浮かべながら、蒼い男は凍結する少女の傍らに侍り、ゆるやかにその頬をなぞりあげた。
>「永遠に続くような 木々の道はまるで深海
>一度だけくれたキスに  よく似た風が吹く森
>永遠に続くような 木々の間で辿る星屑
>連れて行って欲しかった 私とあなただけの場所
>恋した胸が痛くて この体横たえても 蘇る言葉 
>息吹 求めた愛は儚く 思い出を抱いて眠る 私は眠り姫」
フォルテの歌が響く。それは、空間を飛翔し、アイン・ソフ・オウルとしての干渉力を持って世界を芽吹かせる。
永久を望んだ少女の心の琴線を揺れ動かすそれは、しかしながら余りにも強い凍結の意志によって阻まれる。
凍っているどころか、停止している彼女の心を再起動させるのは、至難の業といえるだろう。
この少女を守る凍結の檻こそが、この都市のシステム最大防壁。アシュラ・クロックの防衛システムだ。
「ああ、欲しかったがあまりに醜悪でな。どれ、貴様らにくれてやろう。
どうせ、なにも出来ないんだ。俺が代わりに使ってやった方が有意義だろうし――なぁ?」
「ッッ!!何を行ってやがる――いいぜ、テメェもそいつも纏めてぶん殴ってやらァ――――ッ!!」
地面を蹴り、駆ける竜人。音と共鳴するように力が増し、振りぬかれる拳は熱を持って少女を解き放とうとする、が。
――6つの腕にて阻まれ、轟音を持って竜人は数百mを吹き飛ばされた。
天空を飛翔し、頭から地面に叩きつけられ、膨大なる鮮血をまき散らす竜人。
仮想世界とは言えど、もはやここは常識の埒外の世界。ここでの死は、現実でも適用されるものと成る。
「……ッ、ごは――ァ。……おい、――流石に、デカくね? ……殴り放題じゃねぇかァ!! なァ!! オイィ!!」
吐血しながら、立ち上がる竜人。己を吹き飛ばし、己を瀕死に貶めた下手人を視界に収め、目を見開く。
歓喜。いくら殴ろうとも砕けようのない、その異様な威容。
身長200m程の鉄くずを寄せ集めた三面六臂の巨躯。阿修羅を思わせるが、神聖性など欠片も見せぬその異形。
3面は全て人のそれでは無く、停止した時計が顔の部分にはあしらわれている。
巨大な手。そして、いつの間にか天には強欲のアイン・ソフ・オウルのアヴァターである、人手の蜘蛛が顕現していて。
蜘蛛の8つの脚の先の手の五指から伸びる糸がその阿修羅に絡みつき、支配を行っているのだった。
「――コレは俺の仲間だが俺のモノ≠セ。だから貴様らにそうそう呉れてやる気は無い。
掛かってくるなら来い。コレは――強いぞ?」
6つの腕を振りかぶり、歯車が軋みを揚げる悲鳴の如き音が吟遊詩人の歌を塗り替えた。
敵対するは、強欲に操られる怠惰の力。――ここからは、常識外れの世界の始まりだ。

10 :
「また…厄介なのが…」
状況はアサキムにとって最悪…マモンがいる…
しかし…
「まぁ…いいか…対策は一応ある…」
(龍王五行烈破!)
大地が流動し上手い工合にマモンへと襲いかかる。
「簡単なはなしだ…奪うというのは…他人から無理やり取り上げるということだ」
「では、もともと俺の物ではなく自然なものつまりは誰のものではないならどうだ?」
「それはむしろ頂くに近いんじゃないか?」
ちょっとこどもだましでしかも屁理屈に近い…
「龍王の牙は強欲を欲する…意味はわかるな?」
その流突はマモンのみを襲う
アサキムの指揮下ではなく既に暴走に入っている
(もともと俺のものじゃないし…)
(まぁ…気休め程度にはなるか…)
(いい加減アイン・ソフ・オウルの生成に入らないと…)
アサキムは強く念ずる…今欲しいものを

11 :
>「――マモン。それが、平穏のアイン・ソフ・オウル。地位の位の僕の妹を、天位に至らせ、歪ませた存在だ。
……ああそうだ。永久の夢を見続けていたあの子の夢を歪ませた。歪み、歪んだ結果――狂っていった。
安穏の夢は、悪夢に変わったんだ。……僕には、なにもできない=Bだから、待つしか無かった。こうして」
>「……すまん。僕は、何も出来ない。僕の持つ権限は、彼女を守ることだけ。
この都市の全ては、奪われている=Bそう、かの強欲によって、ね」
「またあのヤローか!」
しかし強欲と怠惰って常識的に考えてあまり仲良くないと思うんだけど、そんな物を奪って何がしたいのだろうか。
ゲッツとアルテナさんによって精神が、少女の精神と連結した都市管制システム内に送り込まれる。
「ここは……」
気付けば一面の花畑。それは決して朽ちる事のない、時の止まった草原。
しかしゲッツが歩いたところの草だけが枯れ果てていく。これも厄災の力?
ついに姿を現したバアル=ベオルは安楽椅子に座し、動く様子は無い。
精神世界でまで寝てるのかよ……! こいつは厄介だぜ!
>「――コイツが」
>「ああ、そうだ。彼女が怠惰のアイン・ソフ・オウル。お前たちが倒さなければならない俺達の同類だ――――」
何故か当然のごとく現れるマモン。
「こんな所にまで出てきてんじゃねえ!
お前の顔は見飽きたぜーっ! よく言うだろ? 美形は三日で飽きるってな!」
>「――――なぁ? さあ、倒すが良い。悪だ、そこに居るだけでそこに或るだけで否応がなしに世界を侵す。
望むも望まざるも関係ない。それこそが、アイン・ソフ・オウル。俺も、貴様らも、彼女も同じ――そう、同じ災厄だ」
「同じじゃねーしお前がこうした癖によく言うよ!
まさか付き合って下さいって言って断られた腹いせにやったんじゃないだろうな!?
強欲と平穏が仲良く出来る訳ないだろアホか!」
少女を倒すように促すマモンを煽ってみるがこんなんで動じるはずはなく。
明らかにこれは罠だ――でも、だからといってどうすればいい?

12 :
>「ッッ!!何を行ってやがる――いいぜ、テメェもそいつも纏めてぶん殴ってやらァ――――ッ!!」
いつも通り、細かい事は置いといてとりあえずぶん殴るという方法で硬直した状況を動かすゲッツ。
しかし異形の鋼鉄で出来た化け物に阻まれ、盛大に鮮血を撒き散らしながら吹き飛ばされる。
バーチャル世界にしては妙にリアルじゃね!?
>「――コレは俺の仲間だが俺のモノ≠セ。だから貴様らにそうそう呉れてやる気は無い。
掛かってくるなら来い。コレは――強いぞ?」
その心は蜘蛛の糸に絡め取られ停止した時計……ってところ。
コレをどうにかしない限りどんな歌も届かないって事か!
「気を付けろ、此処で受けたダメージは現実にも適用されるってやつかもしれない……!」
アサキム導師が龍を召喚しマモンに攻撃を始める。
今あんまり強い技は使えないんじゃなかったっけ? まあいっか、精神世界だし深く考えたら負けだ。
でも今このマモンに攻撃しても意味は無い気がするんだよな……。
これはバアル・ベオルの記憶、もしくはアシュラクロックの機構の中に刻まれたプログラムであって本体じゃない気がする。
龍はアサキム導師の支配下というわけではなく、暴走状態にあるようだ。
「導師様、あの龍ちょいと借りるぜ!
おいアシュラ・クロック! 最強の防衛システムならしょーもないチャラ男一匹に乗っ取られてんじゃねえ!
バアル・ベオル、お前の世界はこれじゃないだろ? だって毎日いい天気ばっかじゃあ干からびちまうだろ?
たまには雨も降らないとな! 行くぜモナー!」
目の前の異形や少女に向かってでは無く、彼らの精神世界であるフィールド全体に向かってそう宣言して。
モナーをギターに変化させ、フィールドの波長にチューニングする。
「Lulala li lalilula lulala li lalila Lulala li lalilula la la li lalia…」
それは天翔ける龍神に恵みの雨を乞う歌。”乞うは、雨”――

13 :
「陽炎揺らめく 神は怒りに燃え立つ  朽ちゆくは人ばかり 祈り届かぬ
ひび割れた大地 往く者の命削り 耐えざる渇きに 涙も落ちぬ
雲よ 渡れ 我等の上に 鈍く染まれ 雨を連れて いざや!
雨を乞い謳え 言の葉に祈り乗せ 天を恋う詩で 水を呼び 地を満たせ
祈り謳 奉らん」
パーティーの他のメンバー達はアシュラ・クロックとの激闘の真っ最中。
後ろに控えるマモンと二人っきりのような形になる。
間奏に入った時に、マモンに独り言のように語りかける。
「お前の当面の目的は全ての枢要罪を掌握すること……だろ? その先はまだ分かんないけどさ。
お前に一つだけ感謝したい事がある。
今まで半信半疑だったけどアイン・ソフ・オウルの性質が変化する事があるって本当に本当なんだな。
お蔭でなんとかこの世界も捨てたもんじゃないかなって思えた。本当はお前だって……いや、何でもない」
――待ってるんじゃないか? 変えてくれる誰かを。
最強にして最凶の罪として生を受けた呪われた運命を終わらせてくれる誰かを。
そんな訳――無いか。一瞬頭に浮かんだその考えを振り払い、すんでのところで口をつぐむ。
万が一そうだとしても、その先にあるのは絶望だけだ。
枢要罪の性質を変えられる程のアイン・ソフ・オウルなんて存在するわけがない。
「砂混じる井戸の底 水は僅かばかり 絶えざる日差しに 涙涸れ果つ
声よ 届け 遥かな空に 遠く響け 神の国へ いざや!
天翔ける龍よ 今こそ目覚めの時 雨を乞う詩で 干天の慈雨を呼べ
神楽歌 奉らん」
雲一つ無かった空には暗雲がたちこめ、雷鳴が鳴り響く。
そしてついに雨が降り始めた。
「でもな、変えられるからって悪い方に変えちまうのは頂けないな。
殴り合いは出来ないけど……これがオレの戦いだ! お前の世界には負けねー!」
雨が瞬く間に豪雨へとなる中、最後のフレーズを歌い上げる。
この雨が凍てついた世界を融かし、戦況に何らかの変化を及ぼしてくれる事を願いながら。
「いざや! 雨を乞い謳え 言の葉に祈り乗せ
天を恋う詩で 水を呼び 地を満たせ 祈り謳 奉らん 」

14 :
ローファン避難所
http://jbbs.shitaraba.net/internet/20237/
/*避難所に貼るのもアレなので、こっちに用意しておきます*/

15 :
>「……すまん。僕は、何も出来ない。僕の持つ権限は、彼女を守ることだけ。
この都市の全ては、奪われている=Bそう、かの強欲によって、ね」
だが怠惰の顕現―彼女の兄にはそれは出来ないという事らしい。
守るという行動以外の自由は与えられていない
その事に関して強烈な感情が湧き上がる
自分と所詮は同じ存在ではないかと―
歯を強く噛み締めて、
「ッ!ならば直接強欲のアイン・ソフ・オウルを倒すしか
方法はないようだな、彼女の為にもそして君の為にも」
何処かでシンパシーのような良い様の無い感覚についてようやく自覚する。
やはり似ている、彼女はかつて己が言葉では語り尽くせず今でもとても大切な災厄の聖女と呼ばれた最愛の人と
役目こそは正反対だが様々な者達を守る存在となった己との境遇が似すぎていた。
だからこそこの二人を強く責める事は自分には出来ないのだ。
そう理解した時、呼び出したグレムリンをCOMPに呼び戻して
静かに少女の精神と連結した都市管制システム内に入る前に
「彼女を救い出す、もうあの時と同じ選択をするのは二度とゴメンだ…」
そう呟いた後、確かに強い決心を秘めて固く誓うとそのまま都市管制システム内に入っていった。

16 :
まるで場面が切り替わるよう次に視界に広がった光景は
朽ちた世界だった。
正確に言えばそれはある一定を除いた部分を除いて
広大な草原で全てに置いて全てが止まっているような
喜びも無く悲しみも無く永遠の停滞、その一言で済んでしまう様な無感動そのもの。
しかし除いたある一部分とは空間事まるで凍らせた
完全に冷たい心の底からいやそれ以上に冷え切るような空間の中心に居るのは
一人の少女―バアル=ベオル。
それは完全にその凍結による停滞に囚われているのか或いは篭ってしまっているのか
そんな最中に彼女とは別の色彩である青が差し込んだ世界が移り込んでくる。
>「ああ、そうだ。彼女が怠惰のアイン・ソフ・オウル。お前たちが倒さなければならない俺達の同類だ――――」
>「――――なぁ? さあ、倒すが良い。悪だ、そこに居るだけでそこに或るだけで否応がなしに世界を侵す。
望むも望まざるも関係ない。それこそが、アイン・ソフ・オウル。俺も、貴様らも、彼女も同じ――そう、同じ災厄だ」
「貴様ぁ!!ぬけぬけとほざくなぁ!!!」
フォルテが歌を歌いそれによる歌は少女の心に届いたが
支配する静寂の凍結はそれを許さなかったようですぐに元に戻ると同時に
無命剣フツノミタマを召喚すると同時に一気に飛び掛ろうと掛け抜け始める。
>「ああ、欲しかったがあまりに醜悪でな。どれ、貴様らにくれてやろう。
どうせ、なにも出来ないんだ。俺が代わりに使ってやった方が有意義だろうし――なぁ?」
更にその言葉と共に三面六臂の巨躯でありながら所詮は阿修羅とは似ても似つかぬ異形が
遮るように立ち塞がり、ゲッツの攻撃を物ともせずフォルテの歌すらも書き換えようとしていた。

17 :
>「――コレは俺の仲間だが俺のモノ≠セ。だから貴様らにそうそう呉れてやる気は無い。
掛かってくるなら来い。コレは――強いぞ?」
「同じ災厄だと!?」
阿修羅のような異形に対して黒い魔力の十字剣―無想剣を大量に出現させた後
それをぶつけるかと思いきや陣形を取るように並び変わり
「同類だと!?自分の物だと!?」
防御陣形態である封・無想剣を取りただひたすら勢いを付けて
異形に向け駆け抜けると、一気に飛翔し叫ぶ。
「ふざけるな!!!」
そして攻撃を掻い潜りながらフツノミタマを槌に変えるとその重さで落下速度が更に加速
振り下ろすと同時にその巨躯に着地し思いっきり叩きつける。
「目覚めた力と本質は確か同じかもしれない、けれど心の在り様がそれを望まない以上
貴様のような奪う事しか出来ぬ者とは断じて違う!!!」
叩き付けた直後に瞬間的に槌からハルバートに変えた後刃の全体を今度はその巨躯に向けて
引き摺って傷つける様にかつての自分が救えなかった最愛の彼女を最後まで救おうとした
その時の心情とまったく同じ心境の中全速力で走ることを再開しながら
「彼女が生きてその心を持ち続けているのなら!少しでも揺らす心があるのなら!
彼女は意志を持った人間だ!!だから!」
巨大な身体の異形の上を全速力で駆け抜けながら只ひたすら真っ直ぐに駆け抜ける。
全てが凍る白の世界に向けてたたただひたすら長い道程を全力で駆け抜ける。
「物言わぬ物でもない!!誰の物でもない!!」
そして最後の道から勢い良く駆け下りる。
「彼女は物じゃない!!」
駆け下りた先に落ちて行く最中にわざと引き摺って傷を異形につけていた
ハルバートをまた無命剣フツノミタマに変えて振り下ろしながら向かうのは
白の世界に閉ざされた安楽椅子に座る平穏のアイン・ソフ・オウル――いやバアル=ベオル
というたまたま災厄の力を持ってしまったただ一人の少女。
「貴様が望んだとおりに物や力を奪う事が出来るのであっても、
誰かの心までは決して奪わせたりしない―彼女の心は僕が守る!!!!」

18 :
とっくに脱ぎ捨てた仮面を纏っていては分からなかった表情は彼女を守りたいと全力で
そして真剣に見つめる瞳がバアル=ベオルを捉える。
だがフォルテの歌すらも掻き消す凍結の檻が襲い掛かる。
しかしそんなアシュラクロックの防衛システムなんてものに負けるつもりは毛頭無い
唱えるのは
「無命剣よ!!!!!我が命の輝きで!!!」
エスペラント―ビャクの全身を凍結しようとする勢いが素早く覆う中で
それでも体温や熱は失われる処か更に内側から燃え上がる。
その程度の凍結などでは凍らせる事が出来ないと証明するように
「道を!!」
己と彼女が歩くあるいは歩こうとしている道を
その言葉の通りに照らし活路を開く為
「照らせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
己の心にあるのは太陽―いやそれ以上の滾るマグマのような熱情、何人たりとも止められない
絶対零度さえも融解させる熱き魂が己を奮い立たせ立ち向かう事とそれを体現する炎を現すように
無命剣フツノミタマに自身の持つ全ての力を捧げ
己を覆おうとし、彼女を囲っている凍結の意志ごと全てを燃やし尽くし溶解させるが如く
今の持てる全身全霊を賭けた金色の炎の嵐が巻き起こり、エスペラントを覆っていた
凍結はすぐに蒸発し、勢い良く暴風のように激しくそして劫火のように燃え盛り
凍結の檻に向かってフォルテの歌と共に激しくそして盛大にぶつかる。

19 :
>「同じじゃねーしお前がこうした癖によく言うよ!
>まさか付き合って下さいって言って断られた腹いせにやったんじゃないだろうな!?
>強欲と平穏が仲良く出来る訳ないだろアホか!」
「――ックハハハ!! ああそうだ、仲良く出来ないさ。
出来ないからこそ、奪ったのさ。そして、俺は与えてやった。
平穏すら超える、究極の安息を、なぁ? ――いやはや、ここまで怠惰との相性が良いとは思わなかったがな」
鋼の化け物を、マモンはアバターのその巧みな手指で操作し、支配する。
自在に操られるそれは、文字通りマモンの支配下にあるようで、その巨体であるにも関わらず、速く正確。
この、あらゆるものを奪いとった上で本来の実力かそれ以上を引き出す技能こそが、強欲の強欲たる所以。
極めて厄介な世界≠ナあると同時に、戦いにおいてはこれほど卑怯な力もそうあるまい。
「てンめェ……ッ!! 喧嘩売ってきたやつぶちRのは良いがちょいとゆるせねェぞ!!
ああそうさ――俺も、テメェも!! クズだ! カスだ! テメェも俺も大差ない悪性だ!!
だがなァ!! だからって他の連中を引きずり込むのは――ッ、違ェだろうがァアァァアァッ!!」
6つの腕の隙間を縫いながら、あさっての方向を向いた腕を無理やり筋肉で戻し、走り抜けるゲッツ。
駆け抜ける軌跡には、血液が赤いラインを引く。現実においても恐らく、この傷は反映されただろう。
そして、表情に有るのは、怒り。それは、他の者達の善意からくる怒りではない。
悪意を良く知るが故の、マモンと同類≠ニして理解できる、悪であることからの怒り。
悪性の波動が、かなり不利ながらも、青い世界とぶつかり合い、僅かに赤黒の世界を主張していた。
>「簡単なはなしだ…奪うというのは…他人から無理やり取り上げるということだ」
>「では、もともと俺の物ではなく自然なものつまりは誰のものではないならどうだ?」
>「それはむしろ頂くに近いんじゃないか?」
>「龍王の牙は強欲を欲する…意味はわかるな?」
「――自然なものは自然のもの≠セろう? 確固とした所有の意思が無い分、より奪いやすい。
要するに、だ――貴様はやはり、世界≠理解できていない。猿にも劣るなァ――詰まらん。
……あァ――そうだ。呉れてやろうか、珍しく。なあ? ……厄災の種をッ!!」
眼前に襲い来る、大地の流れの群れ。
それ単体が自然そのものならば、世界そのものならば。奪うまでもない。
無色の力ほど、アイン・ソフ・オウルに染め上げられやすいものはないのだから。
侮蔑するような瞳でアサキムを睨めつけるマモンの手には、黒色の宝玉、厄災の種が握られている。
それは、これまでのそれよりも濃度の高いもの。どう転ぶかわからない、悪性の世界に、意思に満ちたもの。
――力を失い、純粋な無色の存在と化したアサキムにそれが押し付けられれば、どうなるかは容易く理解できるだろう。
黒の絵の具を水に垂らす様に――透明な水は、黒く濁る。そう、アサキムが――闇に、悪に染め上げられる。
無垢だからこそどこまでも進化できる、可能性を与えられたアサキム。だがしかし、それはまた弱点でも有るのだ。
手に握る種をこれみよがしに見せびらかし、口元には下卑た笑みを浮かべる青髪の男。
掲げた種が中に浮かび上がり、黒い波動となってアサキムを襲う。掠りでもすれば、それはアサキムの無垢な世界を汚染するだろう。
それは、ある意味ではこれまで持ち得なかっただろう、悪を知ることとなる。
正義しか、義務しか、任務しか知らないシステム$みたアサキムに、今後何らかの変化を――良いか悪いかは分からないが――与える事となるだろう。

20 :
>「導師様、あの龍ちょいと借りるぜ!
>おいアシュラ・クロック! 最強の防衛システムならしょーもないチャラ男一匹に乗っ取られてんじゃねえ!
>バアル・ベオル、お前の世界はこれじゃないだろ? だって毎日いい天気ばっかじゃあ干からびちまうだろ?
>たまには雨も降らないとな! 行くぜモナー!」
響き渡る歌。次第に天候が変わり、そしてその音響にしたがってゲッツの世界に変化が現れる。
厄災の世界に次第に美麗な世界観が加わっていき、赤黒の世界は徐々に中和されていく。
膨れ上がる力。迫り来るアシュラ・クロックの拳を前に――ゲッツの拳は、水気を帯びた。
幾度も鮮血を散らす内に、アシュラ・クロックに変化が起こりゆく。――即ち、錆つきだ。
唯の雨ならば、水気ならば通用しない。だが、フォルテもゲッツもアイン・ソフ・オウルである。
フォルテの紡いだ世界観を、ゲッツの厄災が相手の加護を貫いて届かせる。その組み合わせは、魂の経絡が繋がるゆえに可能だったものだろう。
それを理解するマモンは、己の支配力を増し、ゲッツの拳からの干渉を防いでいくも、それでも極わずかづつアシュラ・クロックの挙動は鈍っていく。
>「お前の当面の目的は全ての枢要罪を掌握すること……だろ? その先はまだ分かんないけどさ。
>お前に一つだけ感謝したい事がある。
>今まで半信半疑だったけどアイン・ソフ・オウルの性質が変化する事があるって本当に本当なんだな。
>お蔭でなんとかこの世界も捨てたもんじゃないかなって思えた。本当はお前だって……いや、何でもない」
「――理解できるかよ、お前如きが」
一言。血を吐くような言葉。珍しく饒舌に語らぬマモンの碧の瞳は、異様な威圧を含んでいて。
降り注ぐ雨の群れには、ゲッツの世界が混入する。それは、次第にマモンの力の隙間を縫い始めて。
>「貴様が望んだとおりに物や力を奪う事が出来るのであっても、
>誰かの心までは決して奪わせたりしない―彼女の心は僕が守る!!!!」
>「無命剣よ!!!!!我が命の輝きで!!!」
>「道を!!」
>「照らせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
「――ッハハハハハ――――――ッ!!
良いなァ!! ああ、そうだ。それで良い、それが良いッ!!
それだけの輝きでなければ奪う価値が無いッ!! ――さあ来い、来いッ!!」
アシュラクロックの防衛システムとぶつかり合う、無名剣。氷の群れと衝突する、その熱量の群れ。
それでも、ゲッツとフォルテの力によって、アシュラ・クロックは防護も強度も失いつつ有り。
凍りついた世界もまた、優しい雨と苛烈な力によって溶かされつつ有る。そして、そこに命の熱が駆け抜ける。
炎は凍結の世界を溶かしていく。エスペラントの力は、アイン・ソフ・オウルではない。故に、通常であれば届かない。

21 :
だが、今は別だ。妖幻、厄災という二つのアイン・ソフ・オウル。それぞれでは地位に届くかどうかと言えるその力。
しかしながら、フォルテのそれは音律という形で解き放たれるゆえに範囲性に優れる。
そして、ゲッツのそれは範囲に劣るが出力に勝る。それらが複合する事で、互いに相乗効果が生み出されていた。
フォルテが楽器で、ゲッツがアンプのような関係といえばよいだろうか。フォルテの放った力とゲッツの放った力が重なることで、一時的にアイン・ソフ・オウルの干渉力が増していたのだ。
フォルテの力は、調和にも通じるもの。音律によって調律され、仲間と共鳴する事でアイン・ソフ・オウルではないものも極僅かながらもアイン・ソフ・オウルの干渉力を分け与えられる。
世界交錯/クロスオーバー=B複数世界の混合という、通常ではありえない現象。
我を主張する事でこの世に力を発露する中で、互いの我を主張しながらも混ざり合うその異質。
絆の力≠ェ、最終的にエスペラントの力を前へと通させた。
――ひときわ強い閃光。
閃光が晴れたその先には。
朽ち果て、ミイラと化したバアル=ベオルと、それを冷たく見下ろすマモンが居た。
バアル=ベオルは、朽ち果てた顔で穏やかに笑み、マモンの頬に手を伸ばし。マモンは、それを静かに払う。
「サびしイ……人。逝きマしょう。……やっと、終われた。やっと、始まル」
目線だけが動き、怠惰の顕現を視界に映し。一瞬だけ、少女の時を彷彿とさせる幻覚を残して。
顕現と、バアル=ベオルはこの世からその存在を消失させた。
だが、怠惰の世界は失われていない。今この瞬間、強欲のアイン・ソフ・オウル≠ヘ、怠惰を手に入れた≠フだ。
「――ハ。誰よりも富む俺が寂しいとは。やはり俺は、お前が嫌いだったよ。バアル=ベオル」
一言そう言い残して。仮想の世界は、次第に崩れていく。
芽吹きを止められた花々が咲き誇り、アシュラ・クロックは朽ち、崩れていく。
仮想の世界からパーティは放逐され……現実世界へと立ち戻り。
「……ッてめェ逃げんじゃねぇぶちころすぞゴルァ!!」
現実の、原子力タワー最上階へと、立ち戻っていた。
バアル=ベオルの座っていた生命維持装置には、一輪の、霜の着いた青い花。
そして、ありがとうという血の書き置きだけが、そこには残って。
また、都市の停滞は、戻りつつ有った。機能を停止していた機械達が、一斉にエラーメッセージを響かせ始める。
非常用システムが未知に転がる人々を次々と病院や診療所に収容していく。止まった時が動き始めたように。否、本当に止まっていた時が動き始めたのだ。
そして、原子力タワーになだれ込んでくる非常用ロボット。裸のゲッツに対して、機械の群れは真っ先に襲いかかってきて。
「じゃ、まだ――ッ!!」
蹴りによってその非常用ロボは外へと追いだされて、直後にゲッツは吐血して地面へと倒れこむこととなった。
他の負傷も有るし、一旦情報収集も兼ねて診療所に行っても良いかもしれない。

22 :
>「――理解できるかよ、お前如きが」
いつもの余裕綽々な芝居がかった口上が影を潜めている。
こいつがマジになっているのを初めて見た。
下手な鉄砲数うちゃ当たるで何かしら真相に掠る部分があったのだろうか。
探りを入れようにも、状況がそれを許さない。
エスさんの猛攻を受けるマモンは、すぐに何時もの調子に戻ってしまった。
>「――ッハハハハハ――――――ッ!!
良いなァ!! ああ、そうだ。それで良い、それが良いッ!!
それだけの輝きでなければ奪う価値が無いッ!! ――さあ来い、来いッ!!」
今こんな事を考えては不謹慎だが、エスさんはマモンにとってきっと恰好の対峙しやすい相手なのだ。
熱い正義の心を持って真っ直ぐに悪に立ち向かう正統派ヒーローは、マモンの劇場型犯罪には欠かせない存在なのだろう。
正統派ヒーローとはちょっと違うけど、ごちゃごちゃ考えずに素直に殴りに行くゲッツもそう。
でもそれは、罠だと疑いながらも結局マモンの劇場型犯罪に乗るしかないオレだって一緒である。
雨の中ゲッツの拳を叩き込まれ、完全防水加工のはずのアシュラ・クロックは運悪くぶっ壊れた。
ゲッツの厄災の世界観が、オレの世界を相手に届かせてくれている、完璧な連携。
アイン・ソフ・オウルの力同士が連携するということは、その瞬間は世界が重なりあっているという事だ。
片方が無我の境地に至る事で完璧なシンクロを実現する例なら以前見た事があるが、普通は我の強い世界同士は喧嘩するはず。
そこにエスさんがトドメを刺しに行く。
普通ならエスさんはこの世界の住人ではないからアイン・ソフ・オウルの力は持たないはずなんだけど…
オレ達の力がエスさんにまで影響を及ぼしてる!?
そして閃光が炸裂し――哀れ、少女は運悪くミイラになってしまいましたとさ。
――いや、運よく、かな。
たとえマモンの思う壺だったとしても、これが少女にとっては唯一の救いだったのだ。
>「サびしイ……人。逝きマしょう。……やっと、終われた。やっと、始まル」
>「――ハ。誰よりも富む俺が寂しいとは。やはり俺は、お前が嫌いだったよ。バアル=ベオル」
現実世界に戻るとそこには、ありがとうという書置きと一輪の花だけが残っていた。
これで……よかったんだよね?
「ゲッツ、終わりを望んでいる相手を終わらせてやるのは厄災とは別の何かだと思うな。
ま、まあ生きた美少女にお礼してもらえないのは残念かもしれないけどさ……って何で裸!?」
精神世界のダメージが服にまで反映されたというのか、何たるハイテク。
裸の変質者を排除すべく警備ロボットが集まってくる。
>「じゃ、まだ――ッ!!」
ゲッツは警備ロボットを蹴散らすと、そのまま吐血して倒れた。可愛そうに、そんなにショックだったのか。
無理もない、最後に一瞬見えた生前の姿、かなりの美少女だったもんねえ……。
出来る事なら、あのヤローに歪められる前に戻してあげたかった。
霜のついた花の上に水滴が落ちる。あ、れ……? オレ泣いてる?
「いけない、目にゴミが入ったみたいだ。そうだ診療所に行こう。
エスさん、導師様、その裸芸人の運搬お願い!」
と、いつも通り超人達に雑用を押し付けて歩き出す。
診療所へは、道に寝ている人を運ぶロボットに付いて行けばすぐに辿り着きそうだ。

23 :
))「いけない、目にゴミが入ったみたいだ。そうだ診療所に行こう。
エスさん、導師様、その裸芸人の運搬お願い!」
(無責任なやつだ)
「引き受けたよ」
その裸芸人の首根っこをつかみながら引きずる
(発現は無理だったか…)
自身に新たなる力とも息吹とも思える感じ…これは天のアインソフオウルを授かった時に似ていた
「ある程度イメージができたということか?」
勝手な独り言を吐きながら進む
(…しかしまったくてが出せんししかも技を持ってかれるとは
俺も老いたか)
…悔しい今はその念しかなかった
(必ず完成させ彼奴を!)
アサキムの決意は硬かった

24 :
それを見て何故か視界が歪んで見える
このような時になぜ仮面を纏わなかったのか、と少し悔いながらも
「僕には本当に正しかったのか断定は出来ないししちゃいけない。
間違っても命が宿った者はその宿った者の物だから所詮は生命を守る存在に過ぎない者が
不自然とはいえ生かされた命を停止させてもいいのかそんな権利があるのか分からない、けれど」
間違っていなかった―かつて花環《リース》を巡る戦いで再会した尊敬する漢<漢気の超人>
その時の言葉と認められた嬉しさ、それと同じようにバアル=ベオルの言葉は
所詮自分の救えなかった最愛の人間と重ねているだけかも知れない。
けれどそれは言葉では言い表せないほどの塞き止められない感情と同じように頬を伝う。
流れる物を隠そうとした際、近くに居た何を思ったのかフォルテが流した涙が落ちた場所が
視界に入り、見つめると其処にあるのは霜の着いた青い花。
そっと手を伸ばし、フォルテの涙が落ちた一輪の花を手に取り
「天に召する魂よ―汝の来世に祝福が在らん事を」
完全に消え逝った命と青い花に向けて
かつての純粋で優しかったそのままで在り続けたのであれば
今でも同じように言うであろう人の子としてバアル=ベオルにを祝福し死者を見送る言葉を送り
その言葉共に当時と同じか出来るかは分からない
けれど可能な限り慈しみと優しさに溢れる笑顔を向けた。
>「――ハ。誰よりも富む俺が寂しいとは。やはり俺は、お前が嫌いだったよ。バアル=ベオル」
>「……ッてめェ逃げんじゃねぇぶちころすぞゴルァ!!」
だがそれも束の間、目を向けねばならない現実に引き戻され
マモンは消えそしてゲッツも共に元に戻りいつの間にか裸になっているゲッツは
倒れてアサキムに引き摺られている。
ならば運ぶのは奴に任せておこう、そう考えフォルテやこの場に居る全員に向けて
あることをお願いいや懇願する。

25 :
「この花は…僕が持っていても良いかな?どうしても持っておきたいんだ
彼女を忘れない為にも…そして僕の決意を見た時に思い出す為に」
そしてこの言葉と共にある事を決意する。
今回は偶々運が良かった故に彼女を助けられた
しかしそれは逆にいつ何時一つでも嚙み合わないあるいは欠ければ成立しない
儚く脆い物だ、何時でも起こせるという訳でもない
だからこそこのような事に頼らず解決できる手段と方法の確保をしなくてはならない。
「(アインソフオウルに対抗する手段――その最も最短手段はアインソフオウルその物になる事)」
方法に限れば恐らく二択しかないその内の一つが、世界守護者委員会の回収した厄災の種を利用した
武器あるいは兵器を作るという物もあるが不安要素が大きすぎるのと信頼性については
何が起こるか分からない以上安易に運用するのは危険で不安定なな吊り橋を渡っているような物―
それを考えればおのずと答え最後の一つに限られ、アイン・ソフ・オウルになるという物しか無くなるだろう。
しかしそれになるのか何時どうやってなるのか、そして自分ではなれるのかどうか
調べなくてはならない事やしなくてはならない事は山済みだろうが。
>「いけない、目にゴミが入ったみたいだ。そうだ診療所に行こう。
エスさん、導師様、その裸芸人の運搬お願い!」
>「引き受けたよ」
「仕方ない手伝うよ」
先に持ち上げていたアサキムの引き摺っていたゲッツの身体を持ち上げる。
「しかし分かっているのかゲッツは?仮にもそれぞれ世界では
相応に高い立場の人間に運ばれて居る事は」
こちらとしてはそんな事で如何こう言うつもりは無いが
仙界や世界守護者委員会に居る自分達の部下や見知る人間が居れば
なんと言われるのやら、そんな事を囁きながら診療所へ向かう。

26 :
>「引き受けたよ」
導師様がゲッツを引きずっていく。
>「この花は…僕が持っていても良いかな?どうしても持っておきたいんだ
彼女を忘れない為にも…そして僕の決意を見た時に思い出す為に」
何かを決意した様子のエスさんが花を持っておきたいと申し出る。
無言で頷き、賛同の意を示す。彼の言う決意とは一体何だろうか。
>「ある程度イメージができたということか?」
アサキム導師が独り言をつぶやく。
自身に与えられた新たなアイン・ソフ・オウルの力の事を言っているのだろう。
そういえば、エスさんはあれだけ強いのにアイン・ソフ・オウルではないらしい。
>「仕方ない手伝うよ」
>「しかし分かっているのかゲッツは?仮にもそれぞれ世界では
相応に高い立場の人間に運ばれて居る事は」
「多分分かってないんじゃないかな? ごめんよ、オレではそのデカブツをどうしようもないから」
と、返しながら考える。
それぞれの世界――つまり、エスさんもアサキム導師も別の世界の人。
アサキム導師はアイン・ソフ・オウルの力を持っているから
この世界の人ではないからアイン・ソフ・オウルにはなれない、とは限らないということか。
というかガイア出身の母さんもバリバリのアイン・ソフ・オウルだしむしろ何でエスさんだけアイン・ソフ・オウルではないんだ!?
そんな事を考えているうちに診療所にたどりつく。
中は道で寝ていた大量の浮浪者で満員状態。医療用ロボット達が慌ただしく治療にあたっている。
ゲッツは適当に寝かされて点滴とかぶっ刺された。
次第に意識を取り戻した浮浪者達が騒ぎ始める。
「私は何をしていたんだ? 早く持ち場に戻らなければ」
「そんなに慌てなくてもいいぜ。アシュラ・クロックならぶっ倒しといたし」
「何ィ!? 全知全能の神たるアシュラ・クロック様をぶっ倒しただと!? 世界はお終いじゃぁああああああ!!」
「えー、こちらインペリア、アシュラ・クロックはぶっ倒された模様です!」
「そうですか……。やっとバアル・ベオル様は本当の平穏を手に入れたのですね……」
「そうだよ……って何でその名前を知ってんだ!?」
アシュラ・クロックの正体は多分最高機密事項だったはず。
振り向いた場所にいたのは、寝間着の少女のような外見の人物だった。

27 :
「アシュラ・クロック――永遠の平和を望んだ人々の叡智の結晶。
それ最後の仕上げに、バアル・ベオル様は自ら望んでパーツの一部となったのです。
しかし人間の精神では永遠の平穏に耐えられるはずはなかったのです。
やがて時を経て、バアル・ベオル様は心の奥底で終わりを望むようになった……。
そんな心の隙に付けこんだのが、あの男、マモンです。
自分なら終わらせてやる事が出来ると……。
でも終わらせてくれたのはあなた達でした。本当にありがとうございました」
「あ、どうも……」
それを聞いて、複雑な気分で曖昧な返答をするしかなかった。
完璧にマモンのシナリオ通りだが、同時に終わりを望んだ一人の少女を救ったのは確かなのだ。
「ところで……君、誰?」
「もし遅れました。わたくしはピロウ、一応ここインペリアの最高幹部でバアル・ベオル様のお言葉を受ける侍女をやっておりました。
侍女といっても実際にはサイバー世界にダイブしてのコンタクトなので寝て夢を見るだけの簡単なお仕事なんですけどね〜」
「アイツを止めなきゃ! この都市ってすごい最先端いってるんでしょ!? マモンがどこに行ったか分かる?」
「そいつピンポイントでは流石に……。
でも飛びぬけて大きい《セカイ》――例えば枢要罪の反応なら分かるかもしれません。
都庁に一緒に来ていただけますか?」
とりあえずアシュラ・クロックがぶっ壊れたからといって都市機能全部が停止したわけではなさそうで一安心だ。
よく考えると警備ロボットや医療用ロボットは普通に動いてるからそりゃそうなんだけど。

28 :
この手のスレを見るたびに、TRPG関連スレが増えるべきなのだとつくづく思う

29 :
 リーフ・ウィステリア。
かつて星の巫女の側近を勤め、今はフォルテの一行に同行する女。
危険な場所に赴いた時や、戦闘時には姿を眩ませることが多いのだが、安全になったと判断するや唐突に現れる事が多い。
今もまた、どこからともなく診療所に現れてフォルテの傍で佇み、ピロウの会話を静かに聞いている。
「今は古代や中世ではありません。
ここは、現代勇者らしくネットや文明の利器を駆使しましょう。
どうも戦ってばかりで、情報を収集して分析する作業が欠落しているような気がしますしね。
この機械都市で各地の情報収集が出来れば、今後の方針を定めることも出来ます。
枢要罪が力を行使すれば、影響も一国規模のはずですから、大規模な異変が現れているでしょう」
 リーフはピロウの提案を聞くと間髪を入れずに同意して、都庁へ行くよう促す。
「それと、闇雲にマモンや他の枢要罪を追うより、対抗手段を得る事の方が重要ではないでしょうか。
戦力バランスを考えて、敵がほどほどに勝てる戦力しか出して来ないのはゲームやアニメや特撮の中だけです。
僥倖あって一角が欠けたとは言え、それこそラスボス級の戦力はまだ七体も残ってるんですよ。
運よく生き残れる状況を何度も続けられる保障なんて、何処にもありません」
 リーフはそう告げると、診療所の扉を開けて外に向かった。
目と首を忙しなく動かして、周囲に輸送機が無いかを探す。
インペリアの基幹道路にはオートウォーク、動く歩道が設置されていた。
今は機能を停止して、ただの歩道になっているようだったが。
対して、自動車やバイクのようなスタンドアローンの機械は問題なく動いているようだ。

30 :
引きずられるゲッツの肉体には、もはや数えることが不可能なほどの傷が刻まれていた。
アイン・ソフ・オウルとしての覚醒により、通常の生物から隔絶した存在となったゲッツ。
並の傷ならば死には至らないものの、枢要罪との戦いであれば、その限りではない。
今回も、この前も、幾度も。奇跡に奇跡が重なったが故に、ゲッツを含むパーティは生き残り続けてきた。
が、そのどれもが辛勝。どれもが綱渡りのような、ぎりぎりの攻防の上での勝利のようなものだった。
なぜ、彼ら枢要罪とこちらのパーティはこれほどまでに違うのか。
それを理解する事無しには、きっとこの先の戦いを生き抜くことは困難だったのかもしれない。
浅い息を漏らし、全身から血液をまき散らしながら引きずられる竜人は、思考を巡らせた。
このままでは、いけない。――それだけを、思う。
ゲッツは、戦いを好む、殺し合いを愛する、滅びを許容する。
だが、簡単な死は望まない。圧倒的な敵と、死闘を果たし、自分の可能性の全てを使い切った末に死するならば良い。
だが、思う。まだまだこんなもんじゃない≠ニ。
だから、こんなもんで終わらないために、まだ死ぬ訳にはいかない。そう思って。
超人と仙人に引きずられる竜人の、朦朧とした意識は――またゆっくりと闇の中に沈み込んでいった。
血の海に揺蕩う、悪竜と聖人の夢を脳裏に描きながら。

診療所において、アシュラクロック、その他についての話を繰り広げる一行。
そして、細心の技術によって、ゲッツの肉体は修繕されていく。
と言っても、鋼の心臓とアイン・ソフ・オウルによって、その肉体は容易く再生していくのだが。
数分もすれば、肉体の持つポテンシャルと都市の技術によって、ゲッツは致命の域から脱し始めた。
規格外の体躯を寝せるためにストレッチャーを複数つないで、拘束されてゲッツは眠りについていた。
>「アイツを止めなきゃ! この都市ってすごい最先端いってるんでしょ!? マモンがどこに行ったか分かる?」
>「そいつピンポイントでは流石に……。
>でも飛びぬけて大きい《セカイ》――例えば枢要罪の反応なら分かるかもしれません。
>都庁に一緒に来ていただけますか?」
「――ッ、マモンッ! ああそうだ、あいつブチ殴り殺してやんねぇとよォ……!!」
そして、マモン。枢要罪の筆頭たる力の持ち主の名を聴いた瞬間、ゲッツの寝こむストレッチャーが軋みを上げた。
ぶちりと拘束を引きちぎりながら立ち上がるゲッツ。
これまで積み重なり続けてきたダメージもあり、その姿は普段ではありえないほどにふらついている。
「……行こうぜ。」
濃色の肌から僅か以上に血色を失わせつつ、ゲッツはゆっくりと歩んでいく。
そして、機能停止していた輸送機を見つけて、ゲッツは鋼の義手をそれに叩き込み、無理やり起動させる。
ふらつきながら中の椅子に座り込むと、ゲッツはぐったりと己の背中を輸送機に預けた。

31 :
>「それと、闇雲にマモンや他の枢要罪を追うより、対抗手段を得る事の方が重要ではないでしょうか。
>戦力バランスを考えて、敵がほどほどに勝てる戦力しか出して来ないのはゲームやアニメや特撮の中だけです。
>僥倖あって一角が欠けたとは言え、それこそラスボス級の戦力はまだ七体も残ってるんですよ。
>運よく生き残れる状況を何度も続けられる保障なんて、何処にもありません」
「……たしかにそうだわなァ」
輸送機に揺られる中、ゲッツはリーフの言葉を聞いて、同意を示す。
ゲッツは戦闘狂で馬鹿ではあるが、一方的にやられるのを良しとはしない。
軋む身体で全体を見回して、己の中の漠然とした感覚を言葉に表していく。
「アサキムもエスペラントも……、まアアレだわな。俺よか遥かに強えよ。
だけどよ、……その強さは、この世界じゃァ通用しねえんだろうさ。
……アイン・ソフ・オウル、要するに連中も俺らも自分ルールの塊なんだしさ。
それに勝てるのって、結局アイン・ソフ・オウルじゃねェの?」
単純な言葉を垂れ流していくゲッツ。だが、それは本質である。
己の理で世界を染め上げるアイン・ソフ・オウル。
それに、通常の世界の力で対応しきれないのは、至極当然のことなのだから。
そうしている内に輸送機は都庁へと辿り着き――彼らは都庁の世界観測室へと辿り着く。
重厚な扉の奥に存在する、無数のモニターが繋がるそれは、観測のみを目的とした部屋。
怠惰の力によって機能を一時的に停止していたものの、それらは怠惰が滅された事で再起動を開始していた。
メインモニターが再帰動し、全世界の地図が表示される。
中央大陸、そして東西南北に別れる4つの大陸と、無数の小島の群れ。
それが、この星だった。
「――ほォ……すげェなこれ。木の一つ一つまで見えるぜ?」
異様な解像度は、20m×10mのサイズで木々から人の顔までを表示させて見せていたのである。
そして、ピロウの操作によって、世界の歪みを観測するモードへと移り行き――。
3つの大きな歪みが、画面には表示されていた。
リューキューに2つ。恐らくこれは、虚飾と傲慢。
そして、ミストロード。その地に座するのは紛れも無く、色欲だったろう。
歪みが解消されつつ有る地は、ここ――インペリア。
行方の分からぬ者は、暴食、憂鬱、憤怒――そして、強欲。
強欲以外の3人は、そもそも姿を見せていない。あの蜘蛛の手の上にも、3名は現れていない。
あの3体は、もしかすると――まだ封印が溶けていないのかもしれない。そう考えることも可能だったかもしれない。
此処から先どうするかは、話し合いによって決めるしか無い。
アイン・ソフ・オウルと対向する術を身につけても良いし、虚飾と傲慢、色欲を追うのも良いだろう。

32 :
))「アサキムもエスペラントも……、まアアレだわな。俺よか遥かに強えよ。
だけどよ、……その強さは、この世界じゃァ通用しねえんだろうさ。
……アイン・ソフ・オウル、要するに連中も俺らも自分ルールの塊なんだしさ。
それに勝てるのって、結局アイン・ソフ・オウルじゃねェの?」
「いかにもそうだ…」
アサキムは天のアインソフオウルをもっていたが
あくまでもそれは自世界で形成されたもの
純粋にここで作ったのとは違う。
「まぁ…こちらの世界に愛され始めているから…もう大丈夫なはずだ」
…ゆっくりといきを吸い
「…必ず叩き潰そう」
))3つの大きな歪みが、画面には表示されていた。
リューキューに2つ。恐らくこれは、虚飾と傲慢。
そして、ミストロード。その地に座するのは紛れも無く、色欲だったろう。
歪みが解消されつつ有る地は、ここ――インペリア。
行方の分からぬ者は、暴食、憂鬱、憤怒――そして、強欲。
強欲以外の3人は、そもそも姿を見せていない。あの蜘蛛の手の上にも、3名は現れていない。
あの3体は、もしかすると――まだ封印が溶けていないのかもしれない。そう考えることも可能だったかもしれない。
「なるほどな…3つの根源有りか…」
…今回の戦も荒れるなとか思いつつ
「ミストロードへの道は俺が開こう…必ずとは言えないが当てがある」

33 :
>「多分分かってないんじゃないかな? ごめんよ、オレではそのデカブツをどうしようもないから」
だろうな、言うまでも無いではないか。
思わず微苦笑してしまうと
「別に構わんさ」
その一言のみ返し後は閉口したまま診療所まで向かう。
診療所周囲は浮浪者等が多数居たが、掻き分けて中に入る
そしてゲッツを医療ロボットに任せた後、周囲の浮浪者たちが
バアル・ペオルのことを揃って口にしていたのである。
その存在は最初から知られていた訳でもなく、極秘中の極秘だったらしいが
理由はある一人の少女―ピロウの口によりすぐに分かった。
>「アシュラ・クロック――永遠の平和を望んだ人々の叡智の結晶。
それ最後の仕上げに、バアル・ベオル様は自ら望んでパーツの一部となったのです。
しかし人間の精神では永遠の平穏に耐えられるはずはなかったのです。
やがて時を経て、バアル・ベオル様は心の奥底で終わりを望むようになった……。
そんな心の隙に付けこんだのが、あの男、マモンです。
自分なら終わらせてやる事が出来ると……。
でも終わらせてくれたのはあなた達でした。本当にありがとうございました」
「………」
その話を聞いてゆっくりと懐に仕舞ってある青い花に手にやり
そのまま彼等の会話を聞き続ける。
>「アイツを止めなきゃ! この都市ってすごい最先端いってるんでしょ!? マモンがどこに行ったか分かる?」
「そいつピンポイントでは流石に……。
でも飛びぬけて大きい《セカイ》――例えば枢要罪の反応なら分かるかもしれません。
都庁に一緒に来ていただけますか?」
>「今は古代や中世ではありません。
ここは、現代勇者らしくネットや文明の利器を駆使しましょう。
どうも戦ってばかりで、情報を収集して分析する作業が欠落しているような気がしますしね。
この機械都市で各地の情報収集が出来れば、今後の方針を定めることも出来ます。
枢要罪が力を行使すれば、影響も一国規模のはずですから、大規模な異変が現れているでしょう」
「一理あるし特に拒む理由など何処にも無い、行こうか」
そんな事を言った後、いつの間にか起きていたゲッツもその言葉に従う
>「……行こうぜ。」
そしてリーフは輸送機を発見し、それを無理矢理ゲッツが動かす。
全員が乗り込んだ後、周囲を確認し何も問題ないと判断した際に最後
輸送機に乗り込んだ。

34 :
その輸送機の中での会話でリーフからそしてゲッツからは耳が痛い事を
今回の出来事でよく理解して居る考えを改めてこの場で言われる。
>「それと、闇雲にマモンや他の枢要罪を追うより、対抗手段を得る事の方が重要ではないでしょうか。
戦力バランスを考えて、敵がほどほどに勝てる戦力しか出して来ないのはゲームやアニメや特撮の中だけです。
僥倖あって一角が欠けたとは言え、それこそラスボス級の戦力はまだ七体も残ってるんですよ。
運よく生き残れる状況を何度も続けられる保障なんて、何処にもありません」
>「……たしかにそうだわなァ」
>「アサキムもエスペラントも……、まアアレだわな。俺よか遥かに強えよ。
だけどよ、……その強さは、この世界じゃァ通用しねえんだろうさ。
……アイン・ソフ・オウル、要するに連中も俺らも自分ルールの塊なんだしさ。
それに勝てるのって、結局アイン・ソフ・オウルじゃねェの?」
「否が応でも今回のいやアシュラクロックや他のアインソフオウルとの戦いで元々分かっていたことだ。
それが今後の戦いでは僕達の命運を決める決定的選択の時が今此処で来たという事他ならない
故にその対抗手段についてはいろいろ考えているさ」
彼と彼女の言葉はまったく持って正しい。
だが既にその事については此方としても調べ、そして作製する計画も
考えられる全てを実行しなければ何時どうなるか分かった物ではない。
だから可能な限り手を打っておくのがこの場で唯一アイン・ソフ・オウルではない
自分が出来る事に違いないのだから。
そうして都庁に辿り着きそのまま世界観測室呼ばれる部屋に向かうと
怠惰に力により何らかの影響は間違いなくあっただろうが、現在は問題なく稼動しているようだ。
メインモニターには恐らくこの惑星、この世界全体の物と思われる地図が表示されている。
>「――ほォ……すげェなこれ。木の一つ一つまで見えるぜ?」
「これで世界の動向を監視していた、とすれば末恐ろしいものだ」
自分の見知る世界でも恐らくこれに該当する機能や媒体はあったが
これは更に技術的に発達したこの都市のテクノロジーの粋なのだから比べ物にならないだろう。
もっとも世界守護者機関にもこれに少なくても劣らない情報機器技術を要しているが、良い勝負と言ったところだ。
その状態から世界の歪みを観測する場面に切り替われば、大まかに三つのみが表示されていた。
内訳はリューキュー二人、ミストロードに一人。
「リューキューに二人か、近くには帝都トキオがあるがライドウ達が必死に防いでいるから
リューキューに一人立ち止まっているのか、それとも其処に二人居なければならない理由があるのか…」
なぜ二人のアイン・ソフ・オウルがリューキューに居るのかそれが単純に疑問が浮かんだ。
帝都トキオに向かうつもりだったのだが、帝都全体が風水や陰陽道を駆使し余りにも強力な邪悪な存在にさえ
容易に大規模な襲撃は出来ないように外部に対して本格的な結界が張り巡らされている。
そして国家所属の実力の高い悪魔召喚師達や彼が客分として連ねている葛葉一族が守護の任について
この出来事を既に予知しているはず。
いかにアイン・ソフ・オウルとて彼等に勝てずにリューキューで立ち往生しているのか
それともアイン・ソフ・オウルの力で制圧も出来るのに敢えてせず、リューキュー自体に目的があり
わざと立ち止まっているのか。
そんな考えを抱きながら、次に注目したのはそれは何処の国家群でもなければ
都市でも無い、ポツンと表示されているそれは不可思議に感じられた。

35 :
「ミストロード、か。やはりどこかで聞いた事がある―」
だがどこでだ?そう思った矢先、すぐ傍に一人の現代戦用の彼女専用に作られた
忍装束を纏った彼女が出現する。
「主様、その事について情報収集に一段落付いたのでご報告に参りました」
静葉であった。彼女はエスペラントの前で何かの書籍を抱え、至近距離までやってくるが
アサキムの言葉に反応する。
>「ミストロードへの道は俺が開こう…必ずとは言えないが当てがある」
「いえ失礼ですが、さすがにアサキム導師様や関係者様でも
そして私たちでも<資格>が無ければ
入る事は愚か見る事は不可能かと思われます」
そして取り出した書籍はある研究家がこの世界の伝承や民族から
この世界の外側からも同じような話を収集した本であり
ミストロードについて書かれた項目を開いた。
「以前主様に調査を命じられ、その為に調べていたのですが
そして無作為による出現場所変化、資格が無ければ入る事も見て触ることも出来ない
と此処に書いてあります、そしてその資格も他の文献を調べられる限り広域補助機関
との協力であっても見つかりませんでした」
なるほど、つまりは入る方法は誰にも分からないらしい
それをアサキムはどうやってクリアするのか?
「確かに軽く読み返しても資格が無ければ見て触ることも出来ない徹底振りだな
この文献が正しければ、其処までの芸当が出来る以上我々が強引に侵入しても
何も問題なく行動が出来るのかは怪しい物だな」
それが視覚面だけなら幻覚やらその類なら分かるが資格がなければ触れられない
という部分に関してはいわく物体に対する干渉は不可能である、これは
資格無き者には概念やそれ以上の力が働いていると見た方が良いらしい。
「で、その資格というのは分かったのか?」
「いえこの場所はあくまでも知名度は低い民俗や都市伝説に属するらしく
目撃者に関して話を聞こうにも情報網には一向に引っ掛かりません。
どの文献にも記されていませんし」
相当厄介な場所にアイン・ソフ・オウルは偶々資格を持っていたのか
或いはその力で強引にねじ伏せたのか分からないが
潜伏されてしまった物だと、考えていた。

36 :
>「――ッ、マモンッ! ああそうだ、あいつブチ殴り殺してやんねぇとよォ……!!」
「うぇえ!? もうちょっと寝てなよ! 明日の朝のワイドショーの時間ぐらいまで!」
と言ったところで言っても聞かない事は分かり切っていた。
いつになくフラフラしてるんだけど……戦ってぶっ倒れるのはもはやお約束だからそんなに心配してなかったけど大丈夫かよ!?
>「……行こうぜ。」
「……ですよねー!」
輸送機での移動中、リーフやゲッツが戦力増強の必要性を語る。
それを聞いて超人のアサキム導師やエスさんが神妙な面持ちで思案している。
こいつらがそれならオレは論外じゃね!?
偉い人達が言うにはオレもアイン・ソフ・オウルらしいんだけど一体何の能力があるというんだ。
たまたま運よく条件にはまって呪歌の効果が増幅される事があるのは分かるのだが……。
今までに出会った巷のアイン・ソフ・オウル達は当然自分の能力を分かりきってるようだ。
そりゃそうだ、アイン・ソフ・オウルは自分ルールの極致なんだから当たり前。
彼らに見られるような自分ルールを貫き通す狂気的なまでに純粋な強い意思や根性、オレにはそんなものはない。
ま、いっか! 考えても仕方ないし。
そうしているうちに、都庁に到着し、世界観側室に案内される。
>「――ほォ……すげェなこれ。木の一つ一つまで見えるぜ?」
>「これで世界の動向を監視していた、とすれば末恐ろしいものだ」
要するにグーグルアース……じゃなかった、グーグルネバーアースを超凄くしたような感じ。
東の大陸から西の大陸へのルート検索をすると真ん中の海をカヤックで渡る羽目になるのはお約束。
「げぇ!? 誰も見てないと思って超スタイリッシュなV系吟遊詩人にあるまじき変顔とかできねーじゃん!」
「ツッコミどころそこぉ!?」

37 :
おふざけはそこそこに画面は世界の歪みを観測するモードに切り替わり、いよいよ本題へ。
観測できる枢要罪らしきものは全部で三体、リューキューに二体、ミストロードに一体。
エスさんによると、ミストロードに入るのはかなり難しそうだ。
となるとすぐ行けるのはリューキューの方だが、一体でも勝てる保証はないのに二体同時に相手取るのは自殺行為。
リューキューに二体もいるのは帝都トキオに行こうとして足止めをくらっている可能性もあるとのこと。
「ならさ……帝都トキオに行ってみない? 枢要罪二匹の狙いはそこかもしれないんだろ?
それにあそこってパワースポットとかたくさんあるしいかにも新たな能力に目覚めそうじゃん!」
「それがいいかもしれなせんね。最近は厄災の種を研究しているとかいう話も聞きましたし。
知り合いの天皇直属のデビルサマナーに紹介状を書いておきましょうか」
「国家所属のデビルサマナーの存在自体都市伝説レベルの眉唾ものらしいのに天皇直属って……」
「はい、表向きは国の名を冠した歌手グループとして活動しているそうですよ」
「マジかよ!」
ピロウはテキトーにもとい流暢に紹介状をしたためる。
「よろしければ転移ゲートにご案内しますので準備が出来たら声をかけて下さい」

38 :
リーフは諸問題を検討中の周囲を他所にスマートフォンを弄り、華麗な指捌きで収集した情報をメモしている。
「厄災の種を研究……ですか。
おそらく、今までに見た中では教皇ミヒャエル・リントヴルムX世の三主召喚。
ヴェルザンディ国家司書の禁呪『天使と悪魔の墳墓』が、厄災の種の力を限界まで使った術でしょうね。
三主召喚は、かつて勇者と謳われたボルツ氏を葬り去りましたが、天使と悪魔の墳墓はアサキム導師の前に無力も同然でした。
個体差が無ければ、厄災の種一つから得られる力はどれほどなのか、大体の目安となりそうですね……」
 などと呟きつつ、リーフはスマートフォンから目を離す。
そして、ピロウが紹介状を書き終わったのを確かめると、そっと彼女に近づいて質問を発した。
「そうだ、ピロウさんにお伺いしたい事があるのですが宜しいでしょうか?
情報は聞くべき時に聞いておかないと、後で聞く機会を逃した事にモヤモヤしてしまいますからね。
それで……聞きたい事と言うのは、バアル=ペオルを妹と呼んでいた存在の事です。
どうも普通の存在ではないようでしたが、あれは何者だったのでしょうか?」
 問い掛けの内容はバアル=ペオルの顕現について。
そして、リーフはしばらくピロウと話し合い、その会話が終わると今度はエスペラントにも声を掛けた。
「ところで、星の巫女にお聞きになった事があるのですがビャ……。
じゃなくて、エスペラントさんは世界から力を供給してもらう技術を使われているとか。
それは、どこからどうやって行われてるのか、教えて頂くことは出来ないでしょうか?
私はこの世界自体から力を供給されていると思ったのですが、そうなると一つの疑念が出てきます。
供給の実体は収奪ではないのかという疑念が、です」
 声量を潜めるリーフ。
「まず、ネバーアースは個々の知的生命の持つ世界が、一つに群れ集まって出来たものという話はご存知ですよね?
となると、力の供給元も世界を構成する一部、意志ある生命たちということになります。
アイン・ソフ・オウルもネバーアースを構成する一部と言えますが、彼らが他者へ力を供給するとは考え難いです。
となると、力の供給は世界を構成する大部分の一般人の力を消費して行われている可能性があります。
多くの想いが一つに纏まれば、一般人でも世界を作り変える現象『奇跡』を起こすとフラター・エメトは断定していました。
だから、原理的には普通の人の微細な小世界でも、大量に掻き集めれば強い干渉力を持っておかしくないとは思います。
ですが、枢要罪に対抗できる量の世界をネバーアースの人々から収奪してしまうと果たしてどうなるのか……。
……と、つまりそういう懸念を抱いている訳です」
 エスペラントからの返答を聞き終わると、リーフは急に背景へ溶け込むかのように存在感が薄くなっていく。
もちろん、今までと同様に会話相手や荷物持ちとして支障が出る訳ではないのだが。

39 :
))「いえ失礼ですが、さすがにアサキム導師様や関係者様でも
そして私たちでも<資格>が無ければ
入る事は愚か見る事は不可能かと思われます」
「問題ない、入る方法は外からだけじゃない」
そういうと、デバイスをとりだしあるものを出す
「こいつは、仙界の創生時に書かれたとされているものだ」
「それによると、【強き念を持ちしもの霧の道の扉を開き閉めん】と書いてあるんだ」
「これから推測するに強き念を持ちしものは(サイコドライバー)の事を指していると思われる。
サイコドライバー
「汎超能力者」と呼ばれる念動力、精神感応能力、透視能力、予知能力など様々な超能力を持つ者を指し、
その力は神にも喩えられる。なお、「汎超能力者」自体は元から存在するESP関連用語だが、その別称である
「そして、サイコドライバーでありさらミスキーロードに出這入りしている者を知っている」
…そして一呼吸おき
「まぁ…正規方法と言えるかどうかもわからない方法で入るのはリスクがあるがな」
ちゃんとした入り方じゃない…そういうのには大抵負荷がかかるものだ。
「まぁ…まともな方法が俺からはこれしか推奨できんすまんな」

40 :
そしてミストロードに関する行動に対して選択肢は二つ
現状提示されている物がある。
>「問題ない、入る方法は外からだけじゃない」
「こいつは、仙界の創生時に書かれたとされているものだ」
「これから推測するに強き念を持ちしものは(サイコドライバー)の事を指していると思われる」
「それによると、【強き念を持ちしもの霧の道の扉を開き閉めん】と書いてあるんだ」
アサキム自身が言うにはミストロードに出入りしている者を知っているらしく
その者に協力を頼み、内部からその道を明けて貰おうという事だ。
だがその方法にもリスクが伴うらしいが
「仮に其処までして入ったとしても今の我々にはアイン・ソフ・オウル一柱を倒せるほどの力は無い。
最終手段として取っておくべきことではないのか?」
今から何の準備もなし突入する、これは考えてみれば今の自分達からすれば自殺行為となんら変わらないのでは無いか?
そう思ったので率直に口に出してあくまでも入る手段は何も無い時の最後の一手とすべきだと思った。
>「ならさ……帝都トキオに行ってみない? 枢要罪二匹の狙いはそこかもしれないんだろ?
それにあそこってパワースポットとかたくさんあるしいかにも新たな能力に目覚めそうじゃん!」
そして提示された第二の選択肢はアイン・ソフ・オウルが居るリューキュー近くに存在している
帝都トキオに向かわないかというフォルテからの新しい能力を開花させる為のきっかけになるかも知れないというもの。
そして続けてピロウからは厄災の種を研究している、という事を伝わる。
「強ちその選択は間違いでは無いな、トキオには僕が客分としてだが連ねている者達も居るし
世界守護者委員会のこの世界での拠点もあるしそして私自身の伝手で協力してくれている研究者達から
成果を確認する為一度見に行こうかと思っていた」
元々世界守護者委員会の関連機関及び活動拠点が帝都トキオに存在しており、また厄災の種に関して
様々な方面からの研究や実験を行うように命じていた者の一人であるエスペラントは
その成果を確認と頼んでいた兵器及び武器の製造についての経過を見に行く予定だったので
フォルテの提案は渡りに船であり、非常に都合が良かったと言える為賛成の意を告げる。
そしてなにやらピロウは天皇直属のサマナーに知り合いが居るらしく紹介状を書いてくれるとの事だったが
>「はい、表向きは国の名を冠した歌手グループとして活動しているそうですよ」
「確かに本当だが、それは一部だけだ。さすがに全員ではないぞ?
だがよくサマナーだと分かったな、思った以上に彼等は天皇直属だから
尚更守秘義務は厳しいと聞いていたが」
国家所属のデビルサマナーの存在は眉唾扱いはされている為、存在しないという事になっている。
しかしそれでも秘密裏の公務員のような物と質を可能な限り重視した育成と輩出により年々それなりの数が居たはずであり
それを含めても相応の数がいる以上、云十人単位のグループでは収まりきれないほどに人数は存在している以上
ほんの一部が表の世界の立場としてそれを取ったというに過ぎない。
仮にも統治者を守る者達である以上、素性がバレるのは非常に気を使っている為家族ですら知られてはならない
天皇直属の彼等の素性を知っているこの少女は何者なのか、という疑問が湧き上がるものの
考える合間も無くすかさずリーフが疑問を尋ねてくる。

41 :
>「ところで、星の巫女にお聞きになった事があるのですがビャ……。
じゃなくて、エスペラントさんは世界から力を供給してもらう技術を使われているとか。
それは、どこからどうやって行われてるのか、教えて頂くことは出来ないでしょうか?
私はこの世界自体から力を供給されていると思ったのですが、そうなると一つの疑念が出てきます。
供給の実体は収奪ではないのかという疑念が、です」
「ふむ…というと?」
自らに対する世界から力を供給する技術に関して詳しく聞きたいと尋ねられたので
その意図を先ずは最後まで聞いてみようと思い耳を傾ける。
>「まず、ネバーアースは個々の知的生命の持つ世界が、一つに群れ集まって出来たものという話はご存知ですよね?
となると、力の供給元も世界を構成する一部、意志ある生命たちということになります。
アイン・ソフ・オウルもネバーアースを構成する一部と言えますが、彼らが他者へ力を供給するとは考え難いです。
となると、力の供給は世界を構成する大部分の一般人の力を消費して行われている可能性があります。
多くの想いが一つに纏まれば、一般人でも世界を作り変える現象『奇跡』を起こすとフラター・エメトは断定していました。
だから、原理的には普通の人の微細な小世界でも、大量に掻き集めれば強い干渉力を持っておかしくないとは思います。
ですが、枢要罪に対抗できる量の世界をネバーアースの人々から収奪してしまうと果たしてどうなるのか……。
……と、つまりそういう懸念を抱いている訳です」
リーフが上げている疑問は要するにこの世界自体は多数の意思で作られた単一の意志ではない為
力を貸すとは考えにくく、そしてこの世界を構成している一般人からの力を奪っている故
アイン・ソフ・オウル達と対抗出来るまでの力を得ているのではないかという懸念というべき考えだった。
しかしこれに対してどう答えるべきかとも思ったが、少し困ったように
「なるほど。この世界の人達から力を奪って枢要罪と大差ない方法で力を得ていると考えたのか
…はっきり言って僕はどうやって力が供給されているのかは分からないいや知らないと言った方がいい。
僕はあくまでもこの世界の外側の多元世界に関する運営システムそのもの―自然の摂理というべき存在に取り込まれた存在だ、
しかも自ら望んでそうなった訳では無いからね。本当の詳しい原理は分からない
流れ込む時には自我を保とうとするので精一杯だから」
基本的にはその流れ込む力の源ははっきり言えば何処から流れてきているのかについて
正確な意味ではエスペラント自身でも理解していない。
それは自らの意思ではなく、世界に反逆した咎人としての罰として組み込まれた
多元世界を運営するシステムとそしてその多元世界にある世界自体一つ一つの意思による
直属の傀儡に過ぎないのだ、主に武力行使と多くの世界に影響を齎す前の異変感知防衛装置としてだが。
「だがなんとなく分かるつもりだし、それが正しいかは分からないが。
恐らくこの世界が力を貸さないのなら、この世界に関っていない正しく外側に存在している枠外
あるいは極めて遠く限りなく近いそれに連ねる大きな多元世界にある運営システムが直接僕に与えているのかもしれない」
この世界が自身に力を与えないのなら、この世界の外側つまりネバーアース外宇宙多元世界からの
直接の供給以外他ならないのだろう。元々この世界が助けて欲しいと言わないのならば此方に属する
多世界と自然の摂理というべきシステムが何らかの異変を感知して大きく此方に波及する前に阻止しろと、直接送られてきた
のならばそうやって力を与えたのだろう。そうでなければ頂天魔とのローファンタジアでの戦いの際に
多世界の世界侵略を企てた奴との戦いでの永久闘争存在化はありえないのだ同時に奴が
同じように世界からの力を不正な手段とは言え奪って糧にしていた事も。
「実際にその影響で多数の人間が死んだのかは僕には分からない。
それならば頂天魔の戦いでの事でローファンタジア以外にも大量の死亡者は出ていただろうと思うが
そんなニュースや知らせは出ていないしな。だからその方法で世界から力が供給されていたと僕は思う」
そんな自らの見解を話した後
>「よろしければ転移ゲートにご案内しますので準備が出来たら声をかけて下さい」
「ああとりあえず僕自身の用事はとりあえず終ったから付いていこう」
話すべきことは終ったのでピロウの案内に対して何時でも付いていけるようにしていた。

42 :
>「ミストロードへの道は俺が開こう…必ずとは言えないが当てがある」
>>「問題ない、入る方法は外からだけじゃない」
「待てや」
そう言ったアサキムの言葉を遮った一つの声が有った。
頭脳派とは程遠い、巨大な背丈を誇る竜人である。
しかし、その瞳はいつになく激しくギラついている。先ほどまでの戦いで気が高ぶっているのだろう。
厄災のアイン・ソフ・オウルに目覚めてから、次第にゲッツの暴力性は増しているのかもしれない。
「――ミストロードって、確かあれだろ。
フォルテのかーちゃんの宿敵居るんだろ? あのエロい熟女。
だがよ、エス平も言ってる通り入るのはなかなか難しいんじゃねーの。
あの土地一回喧嘩売りに言ったけど喧嘩買ってすらもらえなかったことあんだけどさ。
今思えば、あの土地を封じてる力も、アイン・ソフ・オウルかもしんねえ。
……で、だ。今日の俺は殺し合いだから珍しく冴えてる訳だがよ。
色欲のアレ見たろ? 魅了して支配するってー反則染みた力をよ。
間違い無えよ。ミストロードは、あのエロい熟女に魅了≠ウれていると思うぜ?
要するに、あの土地全部がエロい熟女の味方で俺たちの敵って訳だ。
アサキムが入る術を持ってたとしても、今までと同じように入れるとは限らねェ」
ゲッツに常識はない、ゲッツに知識はない、ゲッツに知能はない。
だがしかし、こと戦闘ともなればゲッツの頭の冴えは別人のようなレベルとなる。
ハイランダーとしての本能と傭兵としての経験が生み出す、戦闘以外には役立たぬ、戦闘のための思考回路が弾き出す結果だ。
そして、その結論はミストロードは明らかにヤバイ、明らかに不味いという事。
それを裏付けるような言葉が、ゲッツから更にゆっくりと吐き出されていく。
「で、もう一つ。エロい熟女はフォルテのかーちゃんと同じ世代だろ?
んで、だ。なりたての俺らとアイツらじゃあ、アイン・ソフ・オウルとしての年季が桁違いな訳よ。
――そんでもって、逆にリューキュー。ヴェルザンディとミヒャエルの居る場所。
ミストロードにアイン・ソフ・オウル1人。リューキューにアイン・ソフ・オウル2人。
数の上じゃあリューキューが強そうに見えるが良く考えてみろ。
アイツら二人と俺達じゃあ、アイン・ソフ・オウルとしての年季は大して変わんねえ。
違いが有るのは年季ぐらいだ。――さて、ひよっこの枢要罪が2体と、超年季入った枢要罪が1体。
どっちがヤバイかってのは、俺ですら分かると思うぜ?」
ゲッツが提唱するのは、年季がありアイン・ソフ・オウルの扱いを身につけている色欲のグリムよりは
まだ目覚めてまもなく、扱いに慣れていないだろう虚飾のミヒャエルと傲慢のヴェルザンディの方が与し易いという理論。
だが、理由としては間違ってはいない。
そして、入る術を見つけ難いミストロードよりはリューキューの方が向かいやすいという事もあった。

43 :
>「ならさ……帝都トキオに行ってみない? 枢要罪二匹の狙いはそこかもしれないんだろ?
>それにあそこってパワースポットとかたくさんあるしいかにも新たな能力に目覚めそうじゃん!」
「――それで良いぜ。トキオはアレか……、確か――なんだったか。
とにかく飯が美味いって評判だよな! もうこれ行くしかねェだろ、行くしかよォ!
とりあえずついたら飯な、飯よ! 正直ふらふらでヤバイから飯食わねーと戦えねぇしあとこの街飯不味そうだし!」
フォルテの提案にゲッツは考えるまでもなく即座に乗っかってくる。
傷だらけの竜人は、未だにコンディションは完璧ではなく、常よりも覇気や闘気も弱まった姿。
他の皆も食事や休息を挟まなければ、枢要罪との戦いに挑むなど夢のまた夢であるだろう。
>「ああとりあえず僕自身の用事はとりあえず終ったから付いていこう」
リーフとエスペラントの会話を小耳に挟みつつ、ゲッツは己の力のあり方にも意識を向けて。
意識を向けた所で結局理解できないのだから、己の中にある災厄の力について考える意思は食欲によって彼方に放り投げられたのだった。
そして、パーティはずらずら転移ゲートへとピロウの先導に従ってついていき、遂にゲートの前に立ち。
「さて、と。んじゃ腹減ったからちゃっちゃと向かおうぜ、ちゃっちゃとよォ」
一番乗り、とばかりに水泳のような綺麗なフォームで転移ゲートへと飛び込んでいったゲッツ。
そして、皆がその後にしたがって付いて行けば、その先で一悶着を起こしている竜人の姿が先ず目に入った事だろう。
「おうおうおう、なんだテメーら! ちょいと喧嘩売ってきた奴が居るからぶちのめしただけじゃァねえかよ!
あ? 邪悪な者でなければ襲いかからない? 邪悪じゃねーって邪悪じゃ! 見ろよこのキラキラした目! あとイケメン面!
俺様のどォこが悪人で邪悪なんだよアァン!?」
複数人のデビルサマナーに囲まれた竜人。
彼らは抜刀しており、生身のゲッツ相手に緊張した雰囲気が向けられていた。
そして、ゲッツの目の前の壁には昏倒した土蜘蛛が一匹。ゲッツの頬に一筋の傷が有った。
話を聞けば分かるだろう。どうもゲッツが邪悪な怪異か何かだとサマナーの使役する人外に誤認……誤認ではないかもしれないが
誤認された結果として、このような結果となっているようだ
サマナーの中に一人雰囲気の違う、練度の高い者が居る、それが恐らくこのサマナー達の総締めのようなものだろう。

44 :
「まぁそうか…言ってることは正論だな」
確かに魅了されているとしたら自分たちを拒み拒絶する可能性がある
「下手したら連絡が取れないかもな」
絶望視しかできない…だが…0じゃないはずだ。
そういう風に考えてたら
>「ならさ……帝都トキオに行ってみない? 枢要罪二匹の狙いはそこかもしれないんだろ?
>それにあそこってパワースポットとかたくさんあるしいかにも新たな能力に目覚めそうじゃん!」
「そういやあそこ、応龍やら神獣が眠ってて霊気が充満しているな」
「アマちゃんを、仕留める用意をするには持って来いすぎる場所だな」
アサキムは珍しくたのしそうな顔をしていた
とてもじゃないが仙人とは思えない顔を…
「向こうに着いたら悪いが別行動を取らせてもらおう」
そう告げると転移ゲートをくぐり
何も見なかったようにゲッツをスルーして行く

45 :
ベテラン一匹より新米二匹の方がまだましと主張するゲッツ。
皆単純な数で考えていたが、言われてみればそれもそうだ。
オレの提案にゲッツやエスさんも同意を示し、トキオに向かう流れとなる。
そんな中、リーフが一つの懸念を口にする。
それは、エスさんの力供給の原理は「みんなの元気をオラに分けてくれ!」方式なのではないかということ。
そうだとしたら一般ピープルから力を吸い取りすぎておっ死ぬ人が出るのではないかということだ。
それに対し、エスさんはおそらく世界の外側から力が供給されているのだろうと答える。
「オレもそう思うな。何処の世界に行っても同じように力が使えるんだろ?
なら個々の世界よりも上の次元から供給されてるんじゃねーの」
>「よろしければ転移ゲートにご案内しますので準備が出来たら声をかけて下さい」
>「ああとりあえず僕自身の用事はとりあえず終ったから付いていこう」
建物の奥の厳重に鍵がかけられた一室に、例によって旅の扉のような転移ゲートはあった。
>「さて、と。んじゃ腹減ったからちゃっちゃと向かおうぜ、ちゃっちゃとよォ」
真っ先に旅の扉にダイブするゲッツ。こいつが一番乗りとか嫌な予感しかしない。
「人外魔境が跋扈する地ですからくれぐれもお気をつけて」
ピロウに見送られ、転移ゲートに飛び込む。
♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

46 :
>「おうおうおう、なんだテメーら! ちょいと喧嘩売ってきた奴が居るからぶちのめしただけじゃァねえかよ!
あ? 邪悪な者でなければ襲いかからない? 邪悪じゃねーって邪悪じゃ! 見ろよこのキラキラした目! あとイケメン面!
俺様のどォこが悪人で邪悪なんだよアァン!?」
転移してまず最初に聞こえてきたのはゲッツの怒声だった。言わんこっちゃない!
「何っ!? 仲間がいたのか!」
こちらにも攻撃して来そうな勢いである。
「わーーーっ! 六階です……じゃなくて誤解です!
そりゃあ確かにいかにも悪役レスラーっぽく筋肉ムキムキで悪そうな顔してるけど
たまたま悪性のアインソフオウルってだけでいい奴なんです!
ほら、導師様も何か言ってやって! うぇええええ!? スルー!? っていうか何で君達もスルー!?」
何も見なかったように平然と出ていく導師様。
デビルサマナー達も何故か取り押さえようとせずにスルー。これが仙人オーラか……!
「むぅ、邪悪な竜人の仲間にしてはあまりに小物っぽい……!」
デビルサマナー達は反応に悩んでいる。
その隙によく訓練された雰囲気の人に近づき、紹介状を渡す。
その人からはストイックな僧兵のような風格さえ感じられる。
「ほら、インペリアの偉い人からの紹介状!」
紹介状を受け取り、神妙な面持ちで眺めるリーダーっぽい人。
数秒間の沈黙の後、ゲッツの方を見据え、一言。
「お主……裸芸人なのか」
「はぁ!?」
間違っては無いけどさあ! ピロウさん一体どんな紹介状書いちゃったの!?
まさか文字通りキャラクター紹介書いちゃったなんてことは……。
いや、それにしても裸芸人とは書かないだろ普通!

47 :
「これは大変失礼した。裸芸人に邪悪な者はいない。裸で何が悪い!」
あまりの展開に唖然とするオレ達を余所に、デビルサマナー達はああまたかといった雰囲気である。
「あーあ、また始まった……」
「脱ぎ癖さえ無ければ完璧なのに……」
「申し遅れた、私はこのチームのリーダー、クシャーナ・ギトゥーシ。
本当はあの者がリーダーだったような気がするのだが歌が下手なので降格させておいた」
「余計な事言わないでください!」
よく訓練された雰囲気は気のせいではなかったようだ。
彼はあらゆる意味でよく訓練された紳士であった。
「裸芸人は冗談として……ここに描かれているインペリアを解放したというのは真なのだな?」
「いやいや、今超マジだったよね!?」
「ところで紹介状にまずご飯でもおごってやってくださいと書かれているな……。
正確には我々の後輩グループへの紹介状のようだがまあいい、お詫びにザギンでシースーでも御馳走しよう」
ザギンは多分この国の地名なのだろう。シースーって何だ? 食べ物か?

48 :
>「オレもそう思うな。何処の世界に行っても同じように力が使えるんだろ?
なら個々の世界よりも上の次元から供給されてるんじゃねーの」
どうやらフォルテも自分とリーフの話のやり取りを聞いてそう思ったらしい。
この世界が力を貸さないならそう考えるのが妥当、とは違うのかもしれないが
似たような事を思う者はいるようだ。
>「さて、と。んじゃ腹減ったからちゃっちゃと向かおうぜ、ちゃっちゃとよォ」
>「人外魔境が跋扈する地ですからくれぐれもお気をつけて」
「ああ、私としては得意分野には近い方だが油断は出来ないのは重々承知している。
君達の行動次第でまたインペリアは変わるも元のように機械が支配する場所に変わってしまう
その事を肝に銘じ決して忘れてはならないようにな」
かつて機械に支配されていた狂気の都市に対してこれで最後になるのかそれともまた来るかは
まったく分からないが、それでもこの場所に十年、百年と言った年代が経った後同じ事を繰り返さないように
そんな余計なお節介とも忠告とも取れる言葉をこの場に居る全員に呟き
かつて機械に繋がれた一人の少女と彼女の兄が存在していたインペリアから立ち去る。
そして感慨に耽る間も無く転移ゲートから世界守護者委員会関連施設及び協力関係に当たる組織と集団が
存在している島国にして城砦である帝都トキオにやってくるのであった。
「アイン・ソフ・オウルがすぐ隣に居るから故に急がねばならんか…」
己自身がアイン・ソフ・オウルとなりて奴等に対抗するべきなのか
それともそれ以外の打ち破る方法があるのか、それをこのトキオで決めねばならない
何せすぐ隣には二柱のアイン・ソフ・オウルに存在しているような物なのだから。
そう考えてトキオ内に入ろうとしていた矢先だった。

49 :
>「おうおうおう、なんだテメーら! ちょいと喧嘩売ってきた奴が居るからぶちのめしただけじゃァねえかよ!
あ? 邪悪な者でなければ襲いかからない? 邪悪じゃねーって邪悪じゃ! 見ろよこのキラキラした目! あとイケメン面!
俺様のどォこが悪人で邪悪なんだよアァン!?」
目前では取り囲まれたゲッツとデビルサマナーが召喚したと思しき土蜘蛛が倒れている。
なにやらアイン・ソフ・オウルと察知したのかは分からないが少なくても敵と判断したからゆえ
このような事態となりサマナー達に囲まれたのだろう。
>「何っ!? 仲間がいたのか!」
>「わーーーっ! 六階です……じゃなくて誤解です!
そりゃあ確かにいかにも悪役レスラーっぽく筋肉ムキムキで悪そうな顔してるけど
たまたま悪性のアインソフオウルってだけでいい奴なんです!
ほら、導師様も何か言ってやって! うぇええええ!? スルー!? っていうか何で君達もスルー!?」
だが無責任にもアサキムは無視して干渉無用として先に何処か行ってしまう。
元より奴自身は仙人という所詮俗世に進んで関らん者達だからだろうか
必要な場合以外は余り人と関わらないのが基本なのかもしれない。
>「むぅ、邪悪な竜人の仲間にしてはあまりに小物っぽい……!」
そしてサマナーはゲッツに対してそのような事を言いつつもどうするか決めあぐねていた。
しかしフォルテはピロウからの紹介状を取り出すと此方からも更に念を押すべく鶴の一声を加えた。
「待て、彼等は私の仲間だ。その証拠として菅野白が、いや客分召喚師名無白が来たと
葛葉雷堂、猊琳、水明、火煉辺りの誰かかそして葛葉一族もしくはヤタガラス
に名前を出せば分かる」
そういうと紹介状を見ている者以外はざわめき始める。
受け取った方は何を書いたかは知らないが裸芸人とのことだが
他の連中はその言っている意味が理解できているようだ。
そんな最中にクシャーナ・ギトゥーシと名乗るこのサマナー達を束ねる者が
自分達を認めたらしい。明らかに裸だの何だのという言葉が聞こえたが
この際能力を買われているのなら自分としては何もいう事はあるまい。

50 :
>「裸芸人は冗談として……ここに描かれているインペリアを解放したというのは真なのだな?」
「そういう事になるな、私の名を聞いて嘘だと思うか?」
とりあえず仮にも葛葉一族か超国家機関ヤタガラスを知っている者達ならば
数多ある名前の一つとは言え知らない者は居ないはずであり、ただ淡々とありのままに述べる。
>「ところで紹介状にまずご飯でもおごってやってくださいと書かれているな……。
正確には我々の後輩グループへの紹介状のようだがまあいい、お詫びにザギンでシースーでも御馳走しよう」
「すまんが、とりあえず今は顔合わせだの済ませたい要件が幾つかあるのでな
私もそれに同行したいがこの二人を待たせる訳にもいかん。
だからもしも待たないようなら二人だけで行ってもらっても構わない」
わざわざ自分の要件に最初から最後まで付き合わせることもないだろうと考えて
敢えてそのようなことを言って待つようであれば断りを入れておく。
「悪いが此処からは恐らく別行動を取らせて貰う。
困った事や何かやりたい事があれば此処にいる彼等が助けてくれるだろう
それではな、出来ればザギンとやらでまた会おう」
そして先ほど出した名前で此処にいたクシャーナ・ギトゥーシ班のサマナーが連絡したようで
彼等とは明らかに雰囲気と服装が違う者達が数人現れる。
「ようこそ参られました、私達はヤタガラス及び葛葉一族から派遣された者です。
トキオ内のご案内もさせていただきます」
「では行こうか」
その言葉と共に足早というかあっという間にゲッツとフォルテ達の前から消えていなくなった。

51 :
 アサキムとエスペラントが去った後、クシャーナは自動車を用意してインペリアからの来訪者を目的地に運ぶ。
車内に妙麗寺浄子とアルテナ・ポレターナの姿は無い。
彼女たちはインペリアに留まったままか、さもなくば転送ゲートで別の地へ向かったのだろう。
 路面電車や乗合バスと擦れ違いつつ、送迎車がアールデコ風に整備された区画を走ること十五分。
古風な趣の旅館に辿り着くと、クシャーナは車を止め、二人の客人を中へ案内する。
建物の内部は障子や畳や掛け軸の内装が施されており、廊下の先には幾つかの個室と、宴会場の座敷が設えてあった。
「この朱雀亭は旅館なのだが、各地のデビルサマナーが集う社交場の一つでもあってね。
カフェー・パイフーや、帝都ホテルの黄龍閣と比べれば格式も落ちるが、それだけに雑多な階層のものが集まる」
 旅館の紹介がクシャーナの口から為されていると、薄暗い廊下を擦れ違う男が鋭い視線を送ってきた。
黄色人種の人間で黒髪黒目、身なりは糊の利いた黒いフロックコート、年は成人を少し過ぎた程度。
彼は微かに鼻を鳴らすと立ち止まり、傷だらけのゲッツの身体をじろりと見遣って、クシャーナに向き直る。
「クシャーナ氏、いくら朱雀亭と云えど、連れの格好はあまりに酷い。
これを放置しては、仁徳にも礼徳に悖ろうというもの。
小生が少しばかり見映えを良くして差し上げよう」
 男の口から発されたのは東大陸や近隣群島の固有言語でなく、どの大陸でも広く使われる共通語。
低く落ち着いた声で言いながら、彼はフロックコートの胸ポケットから筆ほどの大きさの金属棒を取り出す。
そして、視線を竜人から外さぬまま軽く一振り。
瞬間、銀色の光沢を持った棒の先端部から薄紫に光る靄が湧く。
靄は床に落ちると色と質量を備え、たちまち猿頭虎胴に蛇尾を備えた妖獣の姿を取って、御影石の廊下に佇んだ。
この金属の棒――封魔管と呼ばれる道具を用いた悪魔召喚こそが、デビルサマナーの一般的な召喚技法である。
「鵺よ、この者に治癒を……此処で強い血と瘴気の匂いを漂わされては悪魔どもが騒めく」
「滅痍[Media]」
 召喚士に命じられた異界の獣は、細く気味の悪い声で呪(カシリ)を飛ばす。
鵺、と呼ばれた妖獣が用いたのは、傷を呪う事で傷の存在を滅し、結果として肉体の毀損を修復する術。
この呪詛に分類される治癒術は、召喚士の魔力で干渉力を強化されている。
たとえ拒まれようとも傷を塞ぎ、全身の裂傷を埋めるべく、厄災の世界を持つ竜人に影響を及ぼす。
クシャーナはゲッツの頬傷が消えたのを確認すると、軽く顎を引いて同業者に目礼した。
「手を煩わせた、阿由羅城君。
後で治療するつもりだったが」
「八大竜王の示した八徳の体現は琉球志士の規範、礼には及びません。
それではクシャーナ氏、外つ国の方、小生はこれにて。
当節は霊的磁場の歪みで新たに発生した気場の類も珍しくなく、鎮域に私まで駆り出される始末。
そのような役儀がありますれば……戻れ、鵺」
 呼び掛けられた妖獣は形を崩して紫の靄となり、金属棒の先端に吸い込まれてゆく。
フロックコートのデビルサマナーが朱雀亭を出て行くと、代わって廊下には夕餉の香りが漂い始めてきた。
クシャーナは阿由羅城と呼んだ男の背を見送ると、客人に軽く紹介を行う。
「今のもデビルサマナーの一人で阿由羅城左宗。リューキュー出身だとか。
まぁ、座敷の支度も整ったようなので、まずは食事だ。
君たちが会うべき陛下直属の人物には連絡を入れておいたので、明朝にも此処を訪れることだろう。
それまでは我が国の郷土料理と温泉を堪能して、遠来の疲れを癒すといい」

52 :

名前:阿由羅城 左宗(アユラギ・サシュウ)
種族:人間
性別:男
年齢:22才
技能:悪魔召喚、剣術
外見:長身の黄色人種、耳が隠れる程度の黒髪、黒い瞳で目つきは鋭い
装備:呪的防護を施した黒いフロックコートにズボン、金毘羅景光(コトヒラカゲミツ)の銘を持つ刀、拳銃
出身:東大陸周辺の島、琉球(リューキュー)
身分:琉球志士、現在はフリーのデビルサマナー
目的:トキオで琉球王朝と幕府を解体するだけの武力を得て、開国派を中心とした新政府を琉球に樹立する
世界観:流転(万物が鬩ぎ合う動的状態の中からこそ、新たなものが生成される)
操作許可指定:NPC(条件無しで可能・解説役、進行役、なんでも可)
設定許可指定:NPC(条件無しで可能)
※悪魔召喚
魔的な存在を異界から呼ぶ技法。
儀式で呼んだ悪魔を携帯用の特殊金属管に封じることで、場所や時間に囚われず、彼らを使役する。
基本は三主神やマアトのようなネバーアース固有の神話体系ではなく、異界の伝承に基づく存在が呼ばれる。
阿由羅城は雷獣、土蜘蛛、野槌、鵺など、国津神系の妖獣を使役。

53 :
ここは、トキオのどこか
「ついたな…」
「ええ…」
アサキムと空気になりかけてたアヤカは扉を開く
そこには
「…おぉ!これは!」
「久しいなギリアム」
こちらはギリアム・エーガー
罪にとらわれた者
この者は今ここで全時空の次元干渉などの監視をしてる
「ミスキーろーどについて情報がほしい」
「…ミスキーろーどか…それについて一つ気になるものがある」
ギリアムは夫婦にコーヒーを差し出し
「…ミスキーロードはもともと定期的な空間湾曲によって発生する」
「だろうな…それは知ってるぞ」
「その断続的なパターンが消えた」
「…なんだと!」
…アサキムは戦慄した
「既に手遅れか…」
「残念ながらな…」
ギリアムはコーヒーを啜り
「まぁ…お前が考えていた方法は悪くないなサイコドライバーによって空間湾曲を仕掛ける」
「…盗聴とはお前最低だな」
「まぁいいじゃないか…で誰に依頼するつもりだ?」
「イルイ・ガンエデン」
「…まぁ可能性はあるな」
「掴めるか?」
「当然だ任せてもらおうか」
「感謝する…さて」
「おい、もう行くのか?」
「まぁな、時間が惜しい」
そういい、アサキムはアヤカとともに去る

54 :
天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。
天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。
天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。
天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。
天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。
天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。天然パーマ男R。バケモン。気色悪すぎ。

55 :
>「わーーーっ! 六階です……じゃなくて誤解です!
>そりゃあ確かにいかにも悪役レスラーっぽく筋肉ムキムキで悪そうな顔してるけど
>たまたま悪性のアインソフオウルってだけでいい奴なんです!
>ほら、導師様も何か言ってやって! うぇええええ!? スルー!? っていうか何で君達もスルー!?」
>「むぅ、邪悪な竜人の仲間にしてはあまりに小物っぽい……!」
そも、アインソフオウルというものの存在は公には知られていない、または都市伝説か伝承の類の存在。
そんなものを聞いてもよく分からない彼らの判断基準は、目の前の竜人の悪そうぶりと、目の前の吟遊詩人の小物ぶりだけで。
そして、いつもいつもゲッツの巻き起こす面倒事の度に収拾に当たるフォルテの人徳なのか、事態は次第に落ち着いていき。
「あァ!? 俺が小物ォ!? 喧嘩か、喧嘩売ってんのかァ!!」
またそこに面倒事をぶっこんでくる竜人。
しかしながら、こちらのキレ方も良く考えれば単なるチンピラと大差ない。
舐められたから舐められないようにメンチ切っているだけであり、田舎のヤンキーと同じ思考回路だ。
ただ、そのヤンキーにアイン・ソフ・オウルの力と巨体と戦闘技能と戦闘狂の気を加えただけだ。
切れつつも、フォルテにたしなめられ、腕を組んで他のサマナーを藪睨み。
全身から不機嫌オーラと殺気と戦意をまき散らしながらフォルテとのやりとりを眺めて。
直後。
>「お主……裸芸人なのか」
「やっぱりてめェ殺されてェかあああああああああああああああああああああ!!?」
胸ぐらを鷲掴みにしてそのまま殺そうとする勢いでブチ切れるゲッツ。
イラつきからのこれだ、どうしようもない状況。
発露するアイン・ソフ・オウルのオーラで服が破けていく。段々脱げていく。肝心な所は隠れているが、9割全裸だ。
9割全裸とは、服を着ていないのに謎の光や謎の煙やなにかで都合よく[ピ----]や[ピ----]が見えない状況を言う。
脱ぎ芸人VS脱げ芸人。この一触即発の状況を収めようと動いたのは、超人エスペラント。
なんともカオスな状況に、いつも通りの冷静さを持って干渉。いつも通りの顔の広さを使って場を收めてみせる。
>「待て、彼等は私の仲間だ。その証拠として菅野白が、いや客分召喚師名無白が来たと
>葛葉雷堂、猊琳、水明、火煉辺りの誰かかそして葛葉一族もしくはヤタガラス
>に名前を出せば分かる」
「……へ。てめェにャあとで絶対全裸土下座させてやんよォ。わかったか、あァん!?」
>「ところで紹介状にまずご飯でもおごってやってくださいと書かれているな……。
>正確には我々の後輩グループへの紹介状のようだがまあいい、お詫びにザギンでシースーでも御馳走しよう」
胸ぐらを掴んだ状態から、相手を置いて。
はん、と鼻を鳴らして一歩引いた。そして、食事の話が出た瞬間に、ゲッツは相好を崩した。
山の出身で、川魚は生で食べないのが基本のゲッツ――いや、何でも生だろうがなんだろうが食べるが。
兎に角、生魚を主とする食文化の生まれでも育ちでもないゲッツにとってシースーとは知らない食物。
だが、元よりマンドラゴラのつけものやらホムンクルスの活造りやらを食べてきた悪食ぶり。
大抵の食べ物は食べられる。食べ物でなくても食べようと思えば食べられる。大丈夫で、問題はなかった。
>「ようこそ参られました、私達はヤタガラス及び葛葉一族から派遣された者です。
>トキオ内のご案内もさせていただきます」
「へェ――出来るなァアンタ。
良いぜ、案内してもらおうじゃねえか。あと旨いものも食わせてくれよ?
んじゃ行こーぜ、あとあちーから窓開けてくれよ、エアコン嫌いなんでな」
現れた迎え。それに対して、いつも通りの傲岸不遜な態度を取ってみせる。
そして、車に乗り込むも、その巨体は高級車であってもぎゅうぎゅう詰め。
致し方ない部分はあり、ゲッツは窮屈な身体の上半身部分を窓から外に飛び出させていた。所謂箱乗りという奴だ。
ぶつかったらどうすると言う問題はあるが、大抵の車よりゲッツの方が強い為問題はない。

56 :
そして、十数分走れば一つの旅館にたどり着く。
ほー、と関心した様子のゲッツ。にかりと笑みを浮かべて、フォルテの方を向けて。
「これボロいな! ブレス吐きゃ2秒で消し炭になりそうだぜ!!」
と、身も蓋もない言葉。それでも古い建造物に少し好奇心を覚えている様子。
正しくは、その建造物に染みこむ、妖気や魔力の類に――だが。
すんすんと鼻を鳴らして、楽しそうな様子のゲッツ。そして、そのまま歩いていく。
廊下を我が物顔で闊歩する。そして、すれ違いざまの男に、ゲッツの意識が惹かれた。強い、と。
>「クシャーナ氏、いくら朱雀亭と云えど、連れの格好はあまりに酷い。
>これを放置しては、仁徳にも礼徳に悖ろうというもの。
>小生が少しばかり見映えを良くして差し上げよう」
「あー、コレか。別に肉食って一晩寝ときゃ治るし服も生えるけどなァ。
ま、してくれるっつーならしてもらおうじゃねーの。頼むわ、おう」
>「鵺よ、この者に治癒を……此処で強い血と瘴気の匂いを漂わされては悪魔どもが騒めく」
>「滅痍[Media]」
悪魔どもがざわめくとの事だったが、ゲッツの存在は人よりも竜寄りであって。
むしろ悪魔などの同類に近い、人外と言えたかもしれない。
やる気になれば封魔管にゲッツを封じて使役する事も可能なのだ。魔なのだから。
「おーおー、俺の世界≠抜いてくるたァ――器用じゃねェか。
今度闘ろうぜ。きっと楽しいからよォ」
己の世界の防護を貫いて、回復を行うその男の技量に素直に感心するゲッツ。
そして、そんなものを見せられれば戦闘狂の気が疼くのは当然で。
いつも通りの苛烈の笑みで、ゲッツは喧嘩の誘いをするのであった。

57 :
>「八大竜王の示した八徳の体現は琉球志士の規範、礼には及びません。
>それではクシャーナ氏、外つ国の方、小生はこれにて。
>当節は霊的磁場の歪みで新たに発生した気場の類も珍しくなく、鎮域に私まで駆り出される始末。
>そのような役儀がありますれば……戻れ、鵺」
>「今のもデビルサマナーの一人で阿由羅城左宗。リューキュー出身だとか。
>まぁ、座敷の支度も整ったようなので、まずは食事だ。
>君たちが会うべき陛下直属の人物には連絡を入れておいたので、明朝にも此処を訪れることだろう。
>それまでは我が国の郷土料理と温泉を堪能して、遠来の疲れを癒すといい」
「――へェ。……おい阿由羅城ィ! 俺ァゲッツだ! 覚えときなァ!!」
去っていく男の背に、暴力的な声量で己の名前を名乗り、満足気に鼻を鳴らし。
鼻が捉えた食事の匂い、それに対してゲッツの腹部は素直な反応を見せて地響きのような轟音を響かせた。
クシャーナの勧めに素直に従い、ゲッツはフォルテを方に担ぎ、小走りで個室に向かうのであった。
そして、個室に向かえばそこには懐石料理と幾つかのトキオ料理が用意されていた。
見栄えを重視し、淡い色彩、薄い匂いが特徴のその料理の群れを見て、ゲッツは両手を合わせていただきますと宣言。
「むぐ。あぐ。……おぉー、薄いけどうめーなコレ。ウチの寺院の修行中の飯もこんなんだな。
もっとしょぼいけどよ。ただ、アレだな。量すくねーな。
おう、うなじがエロいそこのねーちゃん! このおこわ? とかいうのその入れ物ごとくれね?」
わっしわっしと料理を口に放り込んでいくゲッツ。作法も何も有ったものではない。
そして、用意された食事のあらかたを食べ終えたが、まだまだ物足りない様子。
目をつけたのは、おひつに入ったおこわだった。中居さんから受け取ったそのおひつの中身は急ピッチで減っていき。
数分後には用意された汁物もご飯物も何もかもが、この竜人の胃の中に飲み込まれていた。
「――げふぅー……。あー……久々に和む。
ってかこの床いいな――草の匂いして外で寝てる気分になるし」
腹をぽんぽんと叩きながら、ゲッツは大の字で地面に寝っ転がる。
食欲にも睡眠欲にも忠実な、身長2mの巨大な子供のような男が、そこにはいた。

58 :
>「やっぱりてめェ殺されてェかあああああああああああああああああああああ!!?」
「この世界脱いだら強くなるとかいう設定無いんだからキャストオフすんなよ!?」
本人は裸芸人は不本意らしい。
そりゃあ考えてみれば好き好んで脱いでるわけじゃなくて勝手に脱げてるだけだもんねえ。
ちなみに公然わいせつ罪の成立は故意性が要件になっているらしいが
わざとじゃないんです!と全裸で主張して信じてもらえるかどうかは……甚だ疑問である。
結局エスさんが超人の交友関係か何かで場をおさめる。
彼は色々やる事があるらしく、別行動をするらしい。
>「悪いが此処からは恐らく別行動を取らせて貰う。
困った事や何かやりたい事があれば此処にいる彼等が助けてくれるだろう
それではな、出来ればザギンとやらでまた会おう」
裸芸人ユニットではない案内役も駆けつけ、高級車に乗せられて移動する。
なんだか大事になってきた。
でかすぎて車内に入りきれてない約一名はそんな事に気付いてないみたいだけど……。
付いた先はいかにも高級そうな旅館。いつのも調子で暴れたらシャレにならんぞ。
大丈夫かな……と見てみると意外に感心している様子。と思いきや。
>「これボロいな! ブレス吐きゃ2秒で消し炭になりそうだぜ!!」
「おぉい! 文化財消し炭にしましたー!とか言ったら流石にテヘペロでは済まんぞ!」
そこでクシャーナの解説が入る。
>「この朱雀亭は旅館なのだが、各地のデビルサマナーが集う社交場の一つでもあってね。
カフェー・パイフーや、帝都ホテルの黄龍閣と比べれば格式も落ちるが、それだけに雑多な階層のものが集まる」
なるほど、ここはどっちかというと気軽な方の部類なのね。
それにしてもこのボロい恰好は流石に浮いてないかい?
早速眼光鋭いお兄さんに睨まれてるよ!
>「クシャーナ氏、いくら朱雀亭と云えど、連れの格好はあまりに酷い。
これを放置しては、仁徳にも礼徳に悖ろうというもの。
小生が少しばかり見映えを良くして差し上げよう」
そう言って魔法のステッキのようなものを取り出すお兄さん。
舞踏会用にドレスアップしちゃう?
そう思ったがコイツの場合どう考えても舞踏会じゃなくて武闘会だな、うん。
そんな冗談は置いといてオレ達はデビルサマナーの召喚術を目の当たりにする事になる。

59 :
>「鵺よ、この者に治癒を……此処で強い血と瘴気の匂いを漂わされては悪魔どもが騒めく」
「あっ、そいつに回復魔法は……」
効かないどころか下手すりゃ逆効果になる事もあるドM仕様。
慌てて止めようとするが、発動してしまった。
>「滅痍[Media]」
オレの心配を余所に、ゲッツの傷が綺麗に治る。
>「おーおー、俺の世界≠抜いてくるたァ――器用じゃねェか。
今度闘ろうぜ。きっと楽しいからよォ」
厄災の世界を突破する事が出来る程の練度。そこはまあ超凄いけど理解は出来るとして。
逆効果にならずに回復の効果をそのまま及ぼせるのはどういうことだ?
西方では回復魔法は聖に属するというのが常識だけど、こちらではまた違うのかもしれない。
考えてみれば某有名RPGで言うところの白魔法や僧侶魔法には例外的に攻撃魔法もあるのに
その逆が無い方がむしろ不思議なのかもしれない。
>「八大竜王の示した八徳の体現は琉球志士の規範、礼には及びません。
>それではクシャーナ氏、外つ国の方、小生はこれにて。
>当節は霊的磁場の歪みで新たに発生した気場の類も珍しくなく、鎮域に私まで駆り出される始末。
>そのような役儀がありますれば……戻れ、鵺」
「新たに発生した騎馬……」
牛型の馬やキリン型の馬やハリボテの馬が駆け抜けるカオスな競馬ゲームの映像が脳内で繰り広げられる。
漢字変換間違いしている事にはほんの少し後になってから気付くのだが
なんだかよく分からないが大変だと言う事は分かった。
どうやら気場≒パワースポットだそうだよ。

60 :
>「今のもデビルサマナーの一人で阿由羅城左宗。リューキュー出身だとか。
>まぁ、座敷の支度も整ったようなので、まずは食事だ。
>君たちが会うべき陛下直属の人物には連絡を入れておいたので、明朝にも此処を訪れることだろう。
>それまでは我が国の郷土料理と温泉を堪能して、遠来の疲れを癒すといい」
ここにはあんなレベルのが他にもごろごろいるのか……。やべーぞこりゃ!
そんな心配を余所にゲッツの肩に担がれて個室へ。
そこに用意されていたのは、華美になりすぎないながらも落ち着いた華やかさのある料理の数々。
「すごいなコレ! 芸術作品みたいだ……! 戴きます!」
超スタイリッシュな吟遊詩人たるもの東方のテーブルマナーも完璧である。
まず箸を持って決めポーズするんだろ?
え、それは”西方の人の間違ったトキオのイメージ”的なガセネタだって!? 知らんがな。
ずらりと並んだ美しい料理を見渡して一言。
「寿司が回ってない……だと!?」
なるほどね、回ってない寿司の事をシースーと言うのね。
ゲッツも肉が足りん!とか言ってちゃぶ台をひっくり返す事もなく(ゲッツにしては)行儀よく食べている。
>「むぐ。あぐ。……おぉー、薄いけどうめーなコレ。ウチの寺院の修行中の飯もこんなんだな。
もっとしょぼいけどよ。ただ、アレだな。量すくねーな。
おう、うなじがエロいそこのねーちゃん! このおこわ? とかいうのその入れ物ごとくれね?」
唖然としているお姉さんの代わりに様式美的に突っ込んでおく。
「大食い番組のロケじゃねーよ!?
というのは重々承知なのですが何分燃費が悪い物で……恵んでやってくれると大変嬉しいです」
結局用意された食べ物を食いつくし、今度は寝始めた。
マジで大食い大会にでも出れば賞金稼げるのに。
>「――げふぅー……。あー……久々に和む。
ってかこの床いいな――草の匂いして外で寝てる気分になるし」
この流れでいくとこんな所で寝てんじゃねーよ! と言うところなんだけど
確かに寝っころがって下さいと言わんばかりの床だよなあ。ま、そういう事でいっか!

61 :
「少しお休みになられますか? こちらの部屋に用意しておりますのでどうぞ」
すでに手際よく宿泊する部屋まで用意してあるらしく、案内されるままに付いていく。
ベッドは無く、草を編んだような床(タタミというらしい)に布団が直接置いてあるトキオ式。
部屋の両縁が厚紙みたいな素材の横開きの扉みたいなんだけど……これ向こう側どうなってんの?
スライドさせてみるとあっさりと開いた。そこでは……
「今日の議題は他でもない、我々の世界征服についてだ」
「先輩枕デカすぎィ!」
「ああ、特別に頼んで大きいの用意して貰ったんだ」
「そこ、私語は慎め!」
淫夢ファミリーが作戦会議を行っていた。何も見なかった事にしてピシャッと扉を閉めた。
つーか何でお前らがここにいるんだよ!
「何だコレ!?」
「この国では隣の部屋と襖一枚で隔てられているだけの事が珍しくありません。
とはいえ襖の向こうから何が聞こえてきても何も聞こえなかった事にするのがこの国の美学らしいので心配ありません」
「つまりこっちも聞こえなかった事にしないといけないって事!?」
……うん、無理! というわけで襖に耳をくっ付けて情報収集である。
野獣先輩の先輩の司会で会議は進む。
「八大竜王は聞いた事はあるな?
「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」を司る原初の戦いの時に枢要罪と戦いそれを滅した存在だ」
何でそんな事知ってんの!?
毎回思うけど情報収集力だけは凄いよねこいつら! それを全く生かせて無いのが残念すぎるけど。
「この国のお偉いさんは最近この国で発生している新たな気場は何らかの形で復活したそれらの仕業かもしれないと踏んで
手練れのデビルサマナーを調査に行かせているのかもしれないという噂だ」
ホモ達にざわめきが広がる。
普通に考えたらトンデモ学説以外の何物でもないが
確かに悪性の枢要罪の方だけ復活しまくって善性の方が現れたらいけない理由はない。
自分ワールドの展開はアイン・ソフ・オウルの力そのものだしなあ。
それにそうだとしたら枢要罪がトキオに入ってこない説明も付いてしまう。
もしも味方に付ける事が出来れば枢要罪と戦うに当たってこれ程心強い存在はないだろう。
「……だってさ。明日天皇直属の人達が来たらそれとなく聞いてみよう」
丁度情報収集に行っていたらしいリーフが返ってくる。
「ここに来ている温泉の源泉あたりも最近気場が発生したらしくてその頃から温泉の評判が急によくなったそうですよ。
HPとMPが全回復したような気がするとか微妙に能力値が上がったような気がするとか。
明日までやる事もありませんし偵察に行ってみますか?」

62 :
帝都トキオ 座標位置不明 とある集落・名称葛葉
エスペラントが居る場所は闇が支配していた。
蝋燭で照らされる通路を出た先は正に一寸先は闇というその物
感覚が失われるほどだが、そのまま歩いた所で壁も手すりも無い永遠の闇の中を歩き続けるかと思った。
しかし手馴れた足取りである一定の場所を歩いて立ち止まるとエスペラントの位置のみに彼のみを照らし出す
一筋の光が照らされると何処からとも無く彼に話しかける者が数人、いやそれ以上かも知れない気配を感じる。
『情報のやり取りや現場での戦いでは我が葛葉と会うこともあるだろうが』
『私達の前で顔を見せるのは随分と久しいな、そなた』
声も性別もバラバラ、威厳があったり好奇心や温かみもあるなど
エスペラントを見る眼差しも同じように様々であった。
「中々機会がありません故にお許しを。此方で会うのは初めて、になるのは間違いないですが」
『確かにそういう事になるな…挨拶はこれくらいにして本題に入ろう』
『アイン・ソフ・オウルについての情報についてだな』
「はい」
『それについては今此処で聞くよりも纏めた書籍がある、それを君に渡そう』
「ありがとうございます」
『だが君が一番知りたがっていた事は他にある聞いたが?』
「………はい」
それはアイン・ソフ・オウルについて一番聞きたい事だった。
率直にそれを敢えて尋ねる。
「アイン・ソフ・オウルになる方法についてです」

63 :
その後、エスペラントは全て終わり歩きながら
再び蝋燭で照らされた通路を歩きながら思い悩んでいた。
―――なるほど、ならば今この場で言っておこう。
―――それは確かに可能だ、しかし
―――君は多くの世界に繋がり、そして其処から力を得ている存在と化している。
―――だが恐らくアイン・ソフ・オウルは隔絶した一つの世界に匹敵する
―――それ故に一切の外部からの力を受け付けず
―――受け付けるとしても本来のアイン・ソフ・オウルとしてはその力は
―――世界の力の支援や供給を得た本来の状態よりも下がるだろう。
しかし攻撃が通じるようになり、己の枷から解き放たれるというメリットも存在する以上
力が下がったとしてもとても魅力的な面にさえ考えられてしまう。
「………クッ!」
立ち止まり通路の壁を思わず殴る。
それは完全に解放される事を意味している、言うまでも無く嬉しい事ではないか
何を迷う事がある、今すぐ研究室に向かい兵器開発と並行している
アイン・ソフ・オウル化の研究に身を差し出せば良い。
しかしそれでは自分の中で命よりも大切な宝物を捨てる事と同義。
それは枷にして自らの守る意義を助け救う為の力の源でもある以上
だからこそ悩み苦しむ、人々の願いと祈りを自らが背負った為に。
「(どうすればいい、僕は)」
そして再び歩き、外へ出るための出口を目指すがその足取りは只管重い
一時間以上歩いていたかのような感覚に囚われながら、集落の中に出ると
外は既に日は落ちて周囲は街燈に照らされている。
「もう既に夜になっております主様」
そう言って背後を守るように立つ静葉が現れる。
「もうフォルテやゲッツの所に行っても遅いだろうな」
「はい、残念ながら。しかし葛葉の里の方々は私達の為に歓迎の宴を為さって下さるようです。
わざわざ高級寿司職人の方が何人も出張で来られているようで」
「其処まで歓迎してくれるなら無碍にもする訳にもいかん、お誘いを受けよう。
そこまでしてもらった以上はな」
二人はその歓迎の宴へとそのまま足を運ぶ、今はその選択に関して悩むのはやめよう
今は宴を楽しむ事にしようと考えを切り替えてその後は酒を飲み、高級寿司を満足するまで食べて
そのまま静葉と共に一日を終えた。

64 :
 国立書籍院の一室で紙を捲る音だけが静かに響き、その度に紙魚の浮いた一葉一葉が洋灯の光に照らされる。
古びた紙に書かれているのは、トキオ周辺の地形や水脈、土地の伝承や歴史。
卓上に並べられた文献の読者は、阿由羅城左宗だった。
彼は椅子に座り、小卓に古びた書を幾つも並べ、近隣の霊域について調べている。
とりわけ、地図と竜の伝承が入念に調べられた。
微に入り細を穿って、端から端まで隅々に目が通される。
 全ての書物は漢字で綴られていた。
漢字とは東大陸、央漢国で発祥した象形文字だ。
トキオやリューキューでも一般的に使われる文字であり、阿由羅城も漢字の読解を苦としない。
そもそも、阿由羅城の姓と名も漢字なので、これは当然といった所か。
「一里四方で大百足が出没……。
叡寧寺の気場は、紅沢の気脈が噴出孔を変えただけならば、さして強い魔が現れなかったのも道理。
海瀬親王邸も、所詮は建材の霊木に惹かれて小さき妖が集ったに過ぎない」
 文献の閲覧者は、頁を繰りながら細い呟きを漏らす。
阿由羅城の目的はトキオの治安維持ではなく、新政府を樹立することにある。
それも幕府、反旗を翻した領主、開国派の志士、どの勢力にも超越者の位階に属する者が犇くリューキューに。
流動しているかのような停滞を動かし、新たな秩序を確立するには、大きな武力が必要だった。
妖を操り、神獣を使役し、魔軍を従える悪魔召喚師としての力が。
「容易に従属する程度の小悪魔など無用。
必要なのは鬼神にも届き、魔王にも比肩する力だ」
 洋灯が発する橙の光を顔に浴びた阿由羅城は、脳裏に描いた未知なる悪魔に向かって囁く。
人界の存在ではないが故に悪魔と呼ばれる異形の種族たちは、異界の接点となれるような地にしか棲息しない。
必然、霊格の高い土地は悪魔召喚師の猟場。
しかし、誰も及ばない程の高みに立つ妖異を掌とするのは至難の業。
自らを凌駕する力を従えるのならば、策を弄さねばならない。
そう考えた彼は、先ほど己が通う社交場の悪魔召喚師たちに、日中の調査で得たばかりの情報を流していた。
「八乙女(やおとめ)山が、大きな魔の出現で界を歪ませつつある」と。
「霧の外側からは何も気配を感じ取れないにも拘らず、内側は無数の竜蛇の眷属が蔓延る魔境と化していた」と。
 八乙女山は市内に運ばれる温泉の源泉が湧き、常に山全体を湯霧が覆う山地だ。
市内から遠くない位置にあり、気場が確認されてからまだ二日も経っていない。
阿由羅城の警告が流布されれば、深度の高い調査をする為、明日にでも能力の高いデビルサマナーが向かうだろう。
先行者を生ける盾とし、戦いで疲弊した悪魔を狙って、成果を攫おうとする情報源の意図を知らず。
 出立すべき刻限を明朝と定めると、阿由羅城は洋灯の火を消して書籍院を出て行った。

65 :
――次の日。
……え? 温泉イベントはどうしただって? そんなもんカットだカット。
胸筋やら虚乳しか無いのに描写したところで誰得である。
巨乳美少女やロリBBAや美人人妻の温泉イベントが見たい人は創発避難所で連載中の番外編へGOだ。(メタ発言自重)
というわけでとにかく次の日。朝ごはんを食べ終わるのを見計らったかのように、クシャーナが現れる。
「件の陛下直属のチームが到着した。君達に折り入って話したい事があるらしい」
いかにも密談に使いそうな厳重に鍵がかかる部屋に通され、向かい合って座る。
5人組のうちの真ん中のリーダーっぽい人が口を開く。
「私はジョージ・マシゲル。この陛下直属のデビルサマナーチームのリーダーを務めている。
君達の活躍は聞き及んでいるよ。
我が国の優秀なデビルサマナー達が何度も調査に行っても全く歯がたたなかったあのインペリアを解放するとは恐れ入る」
「いやあそれほどでも。……で、依頼は気場の調査だよね? 行き先は温泉の原泉かな?」
大体話の展開の予測が付いたので単刀直入に切り込む。
回りくどい会話なんてしていたら本題に入る前にゲッツが寝てしまう。
「あ、ああ。いかにも、依頼はそのとおりだ。ただし行き先はそこではない」
ジョージさんは少し面喰いながらも続ける。
「君達にはリューキューに行って情報収集をしてほしい」
「ああ、リューキューね。……リューキュー!?」

66 :
そもそもリューキューは枢要罪が二匹もいるからレベル上げしてからにしようってこっちに来たんじゃん!
それなのに何が悲しゅうて今すぐ行かにゃあならんのか。
必死に抵抗を試みるオレ。
「嫌だよ枢要罪が二匹もいるし自分達で行けよ!」
「行きたいのは山々なのだが世を忍ぶ仮の姿のはずのアイドル稼業が人気が出てしまい収録で農作業をしなければならない。
街中をうろついてファンに囲まれても身動きが取れなくなるしな……」
「何でアイドルが農作業するんだよ意味分からん!
オレだってV系吟遊詩人だから街中をうろついたらファンに囲まれるし!」
と、依頼の受理不受理を巡って不毛な攻防戦をしていたところ、ゲッツが口を開いた。
「ごちゃごちゃうるせーな。ならまだ売れてないチームに行かせればいいじゃねえか。
似たようなデビルサマナーのチームがどうせたくさんあるんだろ? よく知らねーけど」
そうだビシッと断ってやってくれ!
「それは残念だ、リューキューには水着美女がたくさんいて料理も絶品だと聞くが……」
「そこまで言うなら行ってやろうじゃねぇか、なあフォルテ」
「おぉい!?」
こうして、リューキュー行きツアーが決定してしまった。

67 :
 ジョージから話を聞いたリーフが思案し、彼に問いを投げた。
「リューキューへの入国は、どうすれば良いのでしょうか?
あの国は鎖国をしてますから、空間転送装置の類も置いてないですよね」
 問いに頷きが返される。
「リューキューと国交のあるツガル(東日流)国の船が、トキオ最南西のヒムカ(譬武伽)港を経由する。
そこならば、密航も不可能ではない。
ヒムカ港までは葛葉一族から派遣された者に案内してもらうと良いだろう」
「向かう先の情報については、教えてもらえますか」
 リーフからさらなる問いを受けると、ジョージは机の上に一枚の地図を置いた。
描かれているのは、周辺海域に幾つかの群島を従えた縦長の島。
地図の余白には漢字で琉球と書かれ、その下に共通文字でリューキューと補足されていた。
「リューキューは北部の北山(ほくざん)、中央の中山(ちゅうざん)、南部の南山(なんざん)の三地域から成り。
それゆえに三山統一王国との称を持つ島国の国家。
これら三地域の統一を為した王家が、行政機関である幕府を使って国内を治めているというわけだ。
まあ、この辺りはネットで調べれば充分に分かることだがな」
 リューキュー国の由来を簡便に語ったジョージは、しかし――と続ける。
「現在、王家の支配は揺らいでいる。
鎖国解除を求める勢力が開国派の志士を率いて、北山の一部を占拠。
志士の内乱に乗じて、大名(だいみょう)と呼ばれる地方行政官たちも中央政府に不服従の態度を示し始めた。
この諸勢力はいずれも異様に巨大な力を持つ者を多数抱えている」
「アイン・ソフ・オウルですか?」
「おそらくは。
東方諸国でも古来から後光の如き燐光を発して戦うものがいて、彼らを覚者や神人などと呼んでいる。
それらが数多生まれてくるリューキューには、人の力を開花させる何らかの秘密があるのだろう。
枢要罪と名乗るものたちが向かった理由も、その辺りにあるはずだ。
彼らに先んじて力の源泉を突き止められれば、君たちにとっても有益。
だが、遅れを取ればフェネクスやインペリア以上のジェノサイドが行われる可能性も高い」
 リーフの表情が曇った。
「……リューキューの調査には、トキオの方々も力を貸していただけるんですよね?」
「無論だが、帝都の意向としては島の混乱を此方まで波及させないことが第一。
正面切って大量のデビルサマナーを派兵すれば、リューキューそのものと交戦することになりかねない。
今は国内にも幾つかの異変を抱えていることもあって、申し訳ないが影ながらという形になる」
「そこをなんとか」
「少数の精鋭を派遣することは、陛下にも進言しておく。
人選を終えれば向かわせることを検討するが、我々だけではなく現地での協力者も欠かせないだろう。
大名の中には勢力を増すため、他国と取引することも厭わないものもいる。
幕府側にも外国と接触して情報を売り渡すような奸佞の鼠賊が紛れていて、彼らも状況次第で利用できるだろう。
開国を求める志士たちも、思想からして協力が期待できるかもしれない。
いずれの勢力と接触するかで、リューキューの調査難度も変わってくるだろう。
ああ……それと支度金として琉球通宝を五十枚と、檜の棒を用意したので持っていって欲しい」
 机の上に金貨を収めた袋が置かれ、重い音を立てた。
リューキューは両・分・朱・文の四種の通貨単位を持ち、それぞれの価値は(1両=4分=16朱=10000文)となる。
この琉球通宝はリューキューのみで通用する貨幣で、一枚が百文に相当し、おおよそ鰻丼一杯の貨幣価値。
巾着袋の隣に置かれた檜の棒は、小さな菊の紋章が刻印されており、こちらは身分証明に使えとのことだった。

68 :
 続いて始められたのは、厄災の種についての会話。
机の上に幾つかの資料が広げられると、リーフは思い出したように口を開く。
「あっ、そういえばトキオで厄災の種の性質について研究していると聞きましたが、そっちは進んでますか?」
 1.周囲の知的生命の感情を増大させる作用を持ち、感情の抑制を難しくして、衝動的な行動を取らせる
 2.所持者に莫大な力を与える
 3.付近一帯に浮遊する魂を引き寄せて吸収してしまう
 4.封印を施そうとも、掛けられた封印の魔力を吸収するので封印不可
 5.一度に力を引き出し過ぎると破損する
「現在判明している厄災の種の特性は、このようなものだ。
周囲の存在の精神に影響を与える点が難しく、魔力を吸収するので特定の作用だけ封じるのも至難。
魔力を与えれば力も増すようだが、どこまで力を溜められるのかも、力を与え過ぎるとどうなるかも不明。
兵器として転用するなら、その辺りを割り切って使う他ないだろう」
「なかなか危険物ですね」
「それとフェネクスの虐殺だが、星霊教団主催の祭事中に死傷した者たち。
当然、星霊教団も蘇生術を試みたようだが、ただの一件とて成功例はなかったとか。
降霊術師に拠れば、厄災の種は周囲に漂う死者の魂魄を引き寄せ、魔力同様に吸収してしまうらしい。
それが作用したのなら、厄災の種を持つ者に殺されて魂を奪われれば、蘇生が不可能になるとも考えられる。
……現状で私から教えられる事はこの程度だな」
 ジョージとの会談を終えると、葛葉一族から派遣されたものたちがトキオ南西の港まで案内する。
蒸気機関車で島を横断すること数日の旅程。
案内者はエスペラントにも行き先を伝えていることだろう。
「アサキム導師の行方は分かりませんので、アヤカさんに連絡を入れておきますね。
空気になりかけてたもの同士、皆さんの知らないうちに彼女とメル友になっといたので」
 リーフはスマートフォンを使って、アヤカに現在地を伝えた。
今、我々はトキオ最南西の港にいます、と。

69 :
翌日、朝食後二人は葛葉の里を離れて蒸気機関車に乗りある場所に向かいながら
エスペラントは渡されたアイン・ソフ・オウルに関する書籍に関して
昨夜から読み始めた途中から最後まで項目に目を通し続ける。
内容はアイン・ソフ・オウルについての調べられる限りの詳細や
葛葉の英霊達が過去に関った者達やあるいは起こった事件・事故・事象についても
それと思しき物は事細かくその書籍の中には書かれていた。
「………」
パタン、と書籍を閉じると蒸気機関車から外の風景を覗き込む
目的地のある幾つ物の極秘研究施設や技術開発工廠等、およそ機密や世界の裏側を扱っているといえる
存在しない第三帝都府と呼ばれる場所に着くのもそうは掛からないだろう。
しかし、エスペラント自身は書籍に目を通してもやはり自分がどうしたいか
考えれば考えるほど悩み、答えは出ない。
「悩むのは当然です、これは簡単には決められないこと。
全てを決めるのは貴方なのですから、私はその選択に付き合います」
空いている片手に静葉は両手で持って抱えるようにしながらエスペラントを見つめる。
余計な事を言って不必要に惑わせてはいけないと考え、最後まで黙って信じようという
彼女はそうしようとしていた。その瞬間、エスペラントは一瞬だけ彼女をアイン・ソフ・オウルにしたらどうなるかとも
考えたが、それは悪魔の発想であり自分個人の為に彼女をそんな危険な賭けに出そうとした自体大間違いなのであると己の考えを恥じた。
イリューシャの二の舞にするような事を進んでするかも知れない選択等論外だ。
「ああ、済まない…いつも静葉には迷惑を掛けてばかりだな僕は」
「もう慣れましたというより、主様の進む道は普通の人とは比べ物にならないほど数奇でそして険しい茨の道
それを共に進むと決めた以上は、その覚悟はしなくてはなりません。私はとっくの昔に受け入れましたので
問題はまったくありません」
静葉が包んだ両手に対してエスペラントも書籍を置いて空いた片手で彼女の片手を
同じように掴んで見つめ合う姿勢になりながら、この手を絶対に離してはいけない一人なんだなと自然に再認識をする。
そんな当たり前の考えが今思い返すような自分を戒めながら、目的地までしばらくそのままでい続けた。

70 :
目的地―天皇が住むキョウト、第二帝都府と公式で呼ばれる場所ではない
機密書類上での秘密第三帝都府都市オオサカへ蒸気機関車が到着する。
事実上、大々的に公表されていないが近くに軍事機密の工廠と衛戍地=駐屯地がある地域だと
大陸外から来た人間は殆ど知らないし、オオサカの人間も混沌とした人種の坩堝の中心地である為
此処が表向きにされない施設の集合地・中継地点である事は知っている人間は知っているし
知らない人間は知らないまま一生死んでいく、その程度の噂話でしか話されない真相を知る政府の人間以外は。
その後、此処に来るまでに研究員達と協力者に向けた名産品を手土産に持ち
やってきたのは立派な総合商社―ではなく目立つ訳でもなく特に面白味のない地味な区画ににある
それほど高くは無くそこそこな大きさの社屋に辿り着く。
株式会社東亜商会―それがこの会社の名前である。地味な部類であるが表向きは社屋などに外見に金を回すなら
中身を充実させて力を入れろというのが創設者の理念である為、施設内全てが福利厚生やらが非常に充実しており
商売も大企業のランクを上から数えた方が早いくらい、手広く広げて成功している企業である。
だが、エスペラントが居る場所は本社では無く東亜商会では閑職や左遷先としている陸の孤島、という扱いである。
「(なるほど、想像以上に徹底した偽装だな)」
もちろん本当の姿は世界守護者機関及び超国家機関ヤタガラスの関連施設である。
トキオ政府の高級高官や天皇ですら手が出せない、触れられない触れてはいけない場所。
だからこそそんな場所がリストラ候補者や自主退職を願う者を送り込む場所だと誰が想像できるだろうか?
ただどうでもいい事だと認識しているエスペラントと静葉は中に入り、受付までやってくると
その時点で自分達の要件は既に伝わっているのでスムーズに進む。
「済まないが静葉、別室で渡された書籍の詳細について確認をしておいてくれ」
「了解しました、気を付けて下さい主様何かあればすぐに飛んで行きます」
厄災の種を扱う以上それは大げさとはとても言い切れず、分かったと
エスペラントが返事をすると渡された書籍を手渡し、手土産をもう一人の受付の人物に渡して
静葉とは分かれて案内する受付嬢の後を付いて行く。

71 :
受付嬢の案内で向かうは階層が降りて行く内に自然と地下と地上の完全な分かれ目である
扉の向こうは完全なる地下階層―本来の目的を行う重要区画へとガラリと変わる。
地下階層に向かうまでの階層は表向きは文字通り内部に力を入れている企業というだけで
割と華やかな部類ではあるが、地下階層ではそれを感じさせないより一層殺風景な場面が
続き、完全に占めているのだろう。
そんな事は今は些細な事であり、一旦受付嬢ではなく別の案内人―地下階層の研究者と思しき人物達と交代し地下階層を進み続ける
その際に周囲を自然と見ることになるが、全員何かしら特殊な防護服を着ている人間が
万が一を考えて伝達やら入力命令通りにしか動かない自我や感情の無いアンドロイドなどの機械で作業している光景が多く見られ
扱っている物が余りにも未知数なのと危険性が極めて高すぎる故に慎重に慎重を重ねた極限までの厳重の取り扱いをしていると思しき
厄災の種の保管、あるいは保管方法の実験や模索をしている光景がよく見受けられた。
「この階層はやはり厄災の種の保管方法についての研究をしているのか?」
「はい、物が物ですので尚更保管する事に関しても念には念を押さないと
それだけでもローファンタジアやフェネクスの二の舞になるでしょう。
危険な代物に対して幾ら配慮しても足りないですから」
それほどの危険性のある物なのだ、その考えは当然だろうと頷きながら
また別区画の所まで階層を降りて通り抜けする中間ゲートまでやってくると
其処まで案内したその階層の案内人が歩きながら
「此処から先はまた別の方が案内しますが、我々研究員ではありませんので」
「ああ、分かった此処までの案内ご苦労だった」
そして中間ゲートの間近まで案内すると、研究員達は自分の職場へと戻っていた。
直後に中間ゲートがゆっくり開くと同時に二人の姿が現れる
一人はチャイナドレスに身を包んだジト目の女性とシルクハットに紳士服を身を包んだダンディな紳士が居た。
「わざわざこんな所まで呼び出した上で研究やら
僕の頼み事を聞いてくれてすまないな菅野博士、サンジェルマン」
「面白い研究が出来るっていうのなら何処でも構わないけどね。
……死ぬほど興味ある大事な研究対象の現状観察をするのも必要だから(ボソ」
途中までそっけなく言っていたのが
最後の部分に関しては恥ずかしそうに言っているのは菅野史
ジプス―気象庁・指定地磁気調査部と呼ばれるある世界で
嘆かわしい限りだか弱者を救わず強者のみが生き残るべきという人物が局長であり
発端が自分達に都合良く世界を書き換えようとした者達を発端とした葛葉の末裔には違いない組織に所属しているが
事態解決後に置いて平穏となった世界での研究をしていたが、更なる知識の探求を理由に
世界守護者委員会にて出向と同時に事実上の席を置いている状態に近い。
ある平行世界に置ける世界の管理人を自称する者や唯一神を名乗る者達など
所詮多世界の敵、侵略者に過ぎない者との戦いを通じてエスペラントと知り合い共に戦い抜いたその世界に置いての公私共にパートナーだった人物でもある。
「何、君と私の仲だろう?王道に進む者に協力するのは私の最上の喜びだ。
それに面白い物を見せてもらったよ、今後装備や武器、道具を作る際に参考にさせてもらおう」
実に楽しそうにしている紳士の名はサンジェルマン伯爵―かつて
エスペラントが元々所属していた始まりの世界での先行調査隊での仲間である。
魔術魔法と言った超常的な技能を極めている為、その知識と能力は底知れず
この手の危険な物に関しての機微や扱いについても心得て任せられる人物だろう。
「早速だが此処に来た用件を済ませたい、案内してもらえるか?」
「此処でいつまでも立っているのも時間の無駄だからね、ならさっさとしようか」
「そうだね、じゃあ行こうか」

72 :
そのまま現状分かった事を纏めた発表室のような場所で菅野博士やサンジェルマン伯爵
そしてサポートをする学者や研究員が居る中で厄災の種についての性質からモルモットやらラット
実験動物を使った生物実験の成果についてなど委細を事細かく報告を受ける。
そして菅野博士、サンジェルマン伯爵は見解を述べる。
「はっきり言って、アイン・ソフ・オウル化についてはリスクが大きいと思う。
リスクの無い実験なんてものは無いけどそれでも生物の影響を考えた実験動物での事でも
ほんの一端を与えても下手すれば考えられないくらいの膨大な力が与えられていた訳だし」
「隔絶した個の世界、それの極致が正にアイン・ソフ・オウルというのは間違いない。
君がそれを望むとしたら、多くの世界を維持する為の防衛機構というシステムに取り込まれている以上
相性は良くない、其処から離れる独立した存在になれはするだろうが少なくてもそれ以上に強くはなれない
此処まで私なりに見た限りそう思うがね」
「エスペラント―だっけ?この世界の名前は?まぁそれは兎も角、なるとしたらそういう存在ならまず今までの力を
発揮出来なくなるのを覚悟をした方がいいけどね。そもそも永久闘争存在に関しても
アレは天災だから、人知の及ばない災害だから私でも調べようがないしどうしようも出来ない
そんな神の摂理のようなものより今回の厄災の種によるアイン・ソフ・オウルについて分かったのは
凄い事だし、これを技術で再現できれば生活処か文明が変わるんじゃない?」
「これは選択だ、リスクも大きく未知と危険が満ちているアイン・ソフ・オウル化を選択すれば
それこそ君は防衛機構から解放されるだろうがね。自由を望むなら選ぶがいい
今までの力を使えなくなるというのが代償になるが、世界レベルの呪縛から解放されるのなら
そこまでしなければならんのは君なら分かるだろう?」
「………アイン・ソフ・オウル化についてはもう少し慎重に検討したい
次は厄災の種の技術利用による兵装について見せてもらいたい」
これを直接突き付けられれば尚更後戻り出来ない決断だった。
後回しにして居る事は自分でも良く分かっているがやはり今すぐに決めて良い事ではない
自分の自由と引き換えに命よりも大切な者を守る力を失うかもしれないのだから
結局は枷とは言えその力を頼っている事に内心嫌悪し自嘲気味に笑みを浮かべていた。
「それはそれで正解なんじゃない?不安要素が大きい危険すぎる代物には変わらないんだし
まだ研究や実験途中だから、もうちょい時間掛けて確実に制御やら安定する方法やら
更に情報を得て調査を続けた後でも問題ないだろうし」
「今すぐその役目から解放されたいのなら話は別かもしれないが、君がそれを望むならそれでいいだろう。
さて次は兵装についてだが安全を期して安置している部屋に向かおうか」
その後再び場所を移動、もう一階層を降りて至る所に警告と危険物がある事を表示されている
隔離用の大型ゲートを潜り周囲には機器が氾濫しながらも真ん中にてたった一つだけ置いてある物があった。
サンジェルマン伯爵は近づいてなにやらコードを入力すると、置いてある封印装置らしきものから出てきたのは
ガントレット――籠手の形状をしている物であった。

73 :
「これは?」
「君の頼みである注文の品だよ、厄災の種の兵器技術に流用した
記念すべきその試作第一号さ」
エスペラントは籠手の形状の物にしている物に間近まで近づいて
直接触れられる距離まで来るとそれを更に近くで見つめるが
それは変哲も無いガントレット―ではなく異様な圧力というか重圧と言うべきか
言いようの無い途轍もない大きな力がその籠手から発せられているという事だ。
「――《悪なる右手》それがその兵装のコードネーム。一応機能が完全に使えるくらいには完成してるけど
まだ未完成なの、というよりはずっと未完成ってのが正しいと思うけど?」
「どういう意味だそれは?」
「そのままの意味さエスペラント君、それについてはこれから説明しよう」
菅野博士の言葉の意味を問うた時、サンジェルマンとフミの二人の説明が改めて聞かされることによれば
厄災の種は魔力を吸収する為、一定の封印が出来ないという事は何れも一定の制御法を駆使していれば何れは
その制御方法すらも受け付けなくなる可能性が存在する、それも確実でありそうなる時間も予想以上に早い事も
ならば、制御や機能を完全に完成させれば何れ限界が来るのであれば永遠に完成しない兵器にすれば良い
即ちそれは兵装と機能、制御、システムが厄災の種がそれ自体を乗っ取ろうとする以前に追い付かないほど驚異的速度で
超高速自己学習、自己進化、そして学習した事象への『探求』、兵器で言えば『技術』の、武術であれば『練度』の研磨
武装であれば、より軽く、より強く、より殺傷性等に様々な用途に長けた物に
技術であればより疾く、より正確に、より効率的な物に厄災の種への的確制御や力の抽出・蓄積・活用・流用等を行う
自己探求を行う機能の搭載をすれば、厄災の種の性質すらも利用した途轍もなく強力な兵器・兵装を可能にする
その目的を追求し、エスペラントの要望を加えた上での出来た物は《悪なる右手》という事。
「《悪なる右手》は私達は一切妥協せず手を抜かない最高の出来と自負してるつもりだけど
それでもやっぱり厄災の種としての性質を知った以上は何が起こらないから一切油断は出来ないから
逆に言えば出来る限りのことをやったつもり。ビャクの事だからそんな事お構いなしに使わざるを得ないっていうのなら
喜んで使うだろうけど」
エスペラントというこの世界での名前をまたすぐに忘れたのかように真の名を呼びながら
彼の性格を分かっているようにそんな事を言うフミ。
「分かっては居るがこの危険な種を利用した兵装を一番最初に使うという事は
君は自分自身を実験台・モルモットを買って出るということだ。
予想もしない出来ない様な事態になる事もありうるそれでも君はその《悪なる右手》を使うかね?」
サンジェルマン伯爵は彼を値踏み―いや見定めるようにその危険な道を行く若者に対して
その命運と行く末を決めると言っても過言でもなく、口調は次第に厳かな物に自然と変わり
半端な回答は一切認めないという雰囲気を纏った上でエスペラントに問う。
問われたエスペラントは少しの間目を瞑り、迷うことなくその答えを決める。

74 :
「ああ、そうしなければ勝てない戦えない奴等が居る。
そしてこの世界にもいやこの世界の外にも下手をすれば何れ手を伸ばすかもしれない
僕が命よりも大事な守りたい人達の笑顔を奪うというのならば、実験体でも何でもなってやる。
大切な物を沢山くれたあの人達だけは絶対に守りたいんだ」
ガントレット、《悪なる右手》を手に取り右手に装着する。
エスペラントに向かって音声が聞こえる
<対極致固有世界者兵器用多目的兵装《悪なる右手》起動確認>
<対極致固有世界者兵器用多目的兵装《悪なる右手》起動確認>
<装着者の専用認識コード初期登録を行います>
それからほんの数秒で使用者の特徴と象徴の脈動パターン
DNAやらエスペラントしか持ち得ない特徴を全て記録し
それ以外の装着者は使用できない用に強固なロックを掛けられる。
装着するだけではそのままで何も起きないが、あらゆる不正手段を用いて
ある最終プロテクトの一歩手前を破った時点で破壊―核爆発以上の爆破を用いて
《悪なる右手》を完全に破壊する、奪われる或いは乗っ取られた時でも最終手段として
登録者以外はそれぐらいしなければ大変危険な代物であった。
<装着者の専用認識コード初期登録を完了しました>
<専用認識コード初期登録を終えます>
<共に戦いましょう、貴方の大切な人々を守る為に>
<貴方の行く道に幸運が在らん事を>
その音声の後、静かになるとサンジェルマン伯爵は実に満足そうにいや
変わらないその姿勢と魂を見て感嘆の念と例えようのない喜びに包まれた満面の笑みを見せる。
「素晴らしい、その言葉が聞ければ大いに満足!充分だ!君は王道を歩む天性の逸材らしい。
やはり君は私がいや万人が好む王道を歩む者、そうだそうでなくてはならない!!
真なる英雄は!!!ヒロイックでなくては!」
目を剥いて途轍もない喜びようを見せており、これで絵本やファンタジー小説の最新作を
続編や新作を書かせる事が出来るぞ!リースや他の世界の出回るようにしないとな!など
いつもの悪い癖である王道英雄大好き病が出たらしい。
これでエスペラントがまた否定すれば更に自覚がないのは正しく天性の証、
私だけが知るのがもったいない多くの人に知らしめねばと言って尚更に大喜びするのだから
始末に負えないと言うかなんというか。
「これが無ければなぁ…いや悪くはないのだが」
「この人こういう事になるといつもこんな感じ?」
エスペラントも嘆息をしながら、フミも認めざるを得ない傑物である為
そんな人物がこんな状態になるのだから面白そうにフミは眺めていた。
しばらくこのままなので放っておくことにしてサンジェルマン伯爵から
菅野博士が取り次ぐように話を続ける。
「話は戻すけどサンジェルマン伯爵が言った事はその通りだから
まずは少しずつの試験やら実験をして安全性やら問題を見る物だけど
それをすっ飛ばしてるんだから、本気で何が起きてもおかしくないと覚悟しておいて
でもまぁある意味命の危険なんて問題じゃない代物に志願して装着してくれる人なんて
これから先もそうそう居ないだろうから、データを取れるという意味でも助かるけど」
あくまでも菅野史は科学者としての考えとしては自分の作った製作物のデータやらが取っておきたいと思うのであろう
知識欲の塊であるが故に尚更その部分は正直で貪欲な人物であるから、科学者らしいと言える。
しかしそれはあくまでも科学者としての彼女であり、一人の女性としてのフミは当然違う。
彼女の居た世界でのエスペラントの名前の苗字―婿養子であり戸籍上の夫菅野白の書類だけの関係ではない
幾多の戦いの中で育んだ絆と本当の愛情で本気で惹かれて今も愛する彼の妻としては違った。

75 :
「でもこ、交配実験の対象(二人の子供)だって生態観察を死ぬまで続けていかないといけないし
まだまだ別の交配実験の観察対象がほ、欲しいから。それに貴方は私の人生を賭けて生態とその過程・結果を記録と
研究をしていくと決めた最大の研究対象なんだから、簡単に死んでもらっても居なくなっては困る
死ぬまでずっと傍で見ていくと決めてるその設計と計画を壊さないで欲しい」
潤んだ目でやっぱり赤くなりとても恥ずかしそうにでも目は逸らさず言葉こそ上手く誤魔化しているつもりだが
それでもはっきりと自分の意思を伝えるフミに此処は一人の少年として男して真剣に答える。
「やっぱり僕みたいな不誠実で最低な人間にそう言ってくれるなんてね
……ありがとう、君の前にも必ず生きて姿を見せられるように努力してみせるよ。
でも子供達の事をモルモットのような言い方は止めて欲しい」
そんな彼女に対して笑顔を向けて、自分も正直な気持ちを告げた後
子供を実験動物のような言い方はかわいそうというより自らの子供達だけは
自由に生きて欲しいと考えている為、実験動物のような扱いは聞き捨てならなかったため
そこだけは真剣に願うとご、ごめんそんなつもりは無かったと正直に謝るフミ。
「英雄色を好むというのはやはり通例のようだね、本人にそのつもりはあろうが無かろうが
多数の異性が寄ってくること自体に例外が無い故にそれは必然かも知れないが」
「……そうだな、こういう事を言って尚更彼女達を貶める事をしてしまう一人の女性を愛せない僕は屑だ。
そして好意を持ってくれる相手に甘えてしまうのもやっぱり最低だな…」

サンジェルマンの指摘に対して自分は所詮恋愛を通した上で相手に話し
納得してもらった上で最後まで責任と誠実さを持ち尽くすと心底から決めていたが
やはりやっている事は身勝手で最低である事にはまったく変わらない。
そんな自分を愛してくれる彼女達に対して尚更自分の選択の結果とは言え
申し訳なく思うというジレンマを繰り返してきたが、フミは見ていられなくする何かが
そうさせ優しく彼を抱きしめてサンジェルマンを睨む
「本人同士が納得ずくならいいじゃん、私もその一人だし
他所や他人から文句を言われる筋合いはないんだけど?」
「別に責めてはいないさ、お互いの純粋な意志で合意と納得しているのなら
あるのならそれ以上は言わないよ。さてとりあえずは私は頼まれた仕事はしたが
作ってハイさよならは幾らなんでも無責任すぎる、アフターフォローとかもする為に
暫くはこの世界に残っているつもりだからね」
サンジェルマンが今後の事を考えて此処に残るべきだと判断しその事を告げると
フミも抱きしめたエスペラントをゆっくりと離れて
「私も興味深いし、此処にまだ残って研究や実験を続けてるつもりだから
データ収集したらとりあえず此処に来て。出来うる限りサポートはするから」
彼女も此処に残りアイン・ソフ・オウルや厄災の種の研究を続けるらしい。
ならば自分は目的を果たした以上長居する事も無いなと考え
「分かった、僕の要望を此処に来るまでに叶えてくれて非常に助かった。
そうでもしなければ戦いにすらならない強敵だからこれが必要だった
だからありがとう、君達の思いと努力は決して無碍にはしないよ」
素直に頭を下げて感謝をするとそれじゃこれでと
そのまま静葉の居る元へと戻り、其処には既に
案内者がフォルテ達の行き先を知らされることとなる。

76 :
))今、我々はトキオ最南西の港にいます、と。
そういうメールを受け取ったアヤカ
「で、どうすんの?」
「このままリューキューへ行く…」
アサキムは別ルートでリューキューに向かっていた
「まったく…あの馬鹿は」
と言うのもアサキムは空間観測後
いきなり仙界に飛ばされた。
そこで復活していた素戔嗚と話した
「あの男が禁忌に手を出したそうだな」
「……………」
「お前はどう思う…」
「知るか…俺のしったことじゃない」
「だが貴様は仙界の者だ」
「だがあいつは俺の管轄外だ」
「世の理をみだすのものを裁くのも我らの役目じゃろうて…」
アサキムはため息を尽きながら
「わかった…とりあえず試してくる……その禁忌判断は俺に決めさせろ」
「……いいだろう」
「あの馬鹿は……何を考えているエスペランドは……アヤカ」
「何?」
「………変更だ。エスペランドと合流する。」
「…御身が仰せのままに」
最悪Rしかない。
アサキムは覚悟を決める用意をしながら…大きく深呼吸をした
アヤカは。
「悪いけど静葉ちゃんと合流してから行くね」
と返信した

77 :
数日の列車の旅を経て、トキオ最南西の港に到着する。
案内の者によると、ここでエスさん達と合流する手はずになっているようだ。
港の待合所併設の喫茶店で待つ事とする。
アサキム導師組にはリーフが連絡を入れてくれたようだ。
「お二人ともトキオに着くなりそそくさと消えてどこに行ってたんでしょうねえ」
「さあ。超人の世界にはいろいろあるんでしょ」
と呑気な会話をしていると、リーフのスマホの着信音が鳴った。
リーフはすぐに内容を確認する。
「アヤカさんからの返信に気になる内容が……。
エスペラントさんが厄災の種を利用した兵器に手を出したそうです」
「えぇっ!?」
自分だけアイン・ソフ・オウルではない事に悩んでいる様子だったけどそこまで思い詰めていたとは。
厄災の種の危険性についてはジョージさんから詳しく聞いたばかりだ。
要するに物騒でとても兵器には出来ないという内容だったと思うんだけど……。
「しかもアサキムさんがそれを危険視して場合によってはコ○ス(はあと)ぐらいの勢いだから二人の動向に注意だそうです」
「そんな……」
厄災の種を兵器として使っていた人物として思い出されるのは、元バニブルの国家司書ヴェルザンディ。
彼女は国を守りたいという純粋な想い故に厄災の種に手を出し、その結果今や傲慢の枢要罪となってしまった。
それを考えれば、仙界の者であるアサキム導師の反応も至極当然といえる。
無論、流石にあの時のようにそのまま使用ではなく何らかの制御を施してはいるのだろうが。
とりあえず道中で喧嘩をおっぱじめていない事を願いつつ二人(二組?)が来るのを待つ。

78 :
【八乙女山】
 阿由羅城左宗は、彼我の力量差を見誤っていたと自覚する。
自分に先行したデビルサマナーたちは歴戦の術者で、戦力に於いて不足など無かったのは間違いない。
彼らは岩肌から地霊を呼び、魔界の妖魔と風の化身たる妖鳥を従え、自らも剣光を宙に描いて魔物の群を切り裂いた。
半人半蝮の魔物を雷火の矢で突き刺し、双頭の蛇魔を念動波で撃ち、瞬く間に調伏していく。
同業者たちは、阿由羅城の露払いとしての役目を十全に果たすはずであった。
 目算の狂いは、標的の力が予測を遥かに超えていたことにある。
八乙女山に現界した悪魔の正体は応龍。
天より堕ちたる龍の一派で、長大な黄土色の胴体と四足、鷹の翼を備え、数十もの眷属を率いる禍物。
古の時代に数多の悪鬼と戦って傷つき、零落した身体を各地の気脈で癒し続けていた存在だ。
名は伏契と言い、変幻のアイン・ソフ・オウルとして位階は地位級に属する。
 伏契は破滅の驟雨を降らせ、濁流の氾濫を起こして、自らの領域を侵すデビルサマナーたちを迎え撃った。
山をも削りかねない桁違いの魔力を受けて、力の劣る半数が即座に姿を消す。
そして、障壁を張って攻撃を凌いだ残り半分は、龍の唱える呪文を聞いて泥土に呑まれる以上の衝撃で戦慄した。
――我、地上に天を築かん――大地に墜ちる炎界の環[Megidora]――。
 応龍が太陽フレアを地上に顕現させる高位古代語呪文[Elder Ancient spell]を唱えたのだ。
魔術に長ける一人が異変に気付いた瞬間、蒼白い閃光が炸裂して視界を塗り潰す。
輝きの中で無数の樹木は瞬く間に燃え尽き、地面にも幾筋もの蒼炎が走った。
充分な距離を取っていたはずの阿由羅城も、熱風で全身の皮膚を惨たらしく焼かれ、焼けた岩盤へ無様に倒れ伏す。
身を守るべく作り出した障壁と、召喚した妖獣の群れは、青い灼熱の前に焼き払われていた。
 アイン・ソフ・オウルは想いで奇跡を起こす存在で、阿由羅城左宗もアイン・ソフ・オウルである。
ならば、彼も強靭な想いさえあれば奇跡を起こして、望み通りに応龍を降せるのだろうか……?
いいや――応龍もアイン・ソフ・オウルであり、その位階は阿由羅城よりも高い。
即ち、より質が高く、より干渉力が強く、より規模の大きい、より上位の奇跡を起こす存在。
勝てる道理は無い。ましてや自分の器より大きなものを従えることなど。
小さな池に大湖の水は収まらない。
「これほど力量差とは、己の見通しの甘さを……呪う他な、ない……」
 中空に浮遊する応龍を睨みつけ、阿由羅城は擦れる息を吐く。
眼前の悪魔は、今までに相対したことのない程の脅威だった。
致命傷を負った身では相手に手傷を与えるどころか、残る全ての仲魔を盾にした所で逃走は不可能だろう。
伏契が己の領土とした八乙女山は外界と隔絶しており、今や幾筋かの細い経路のみが出入口。
地位級以上のアイン・ソフ・オウルが持つ空間支配の影響で、空を飛んでも地を掘っても逃れることは叶わない。
 勝敗は決した。
帝都の異変を鎮圧すべきデビルサマナーの第一陣は敗れ去った。
勝者たる応龍が咆哮で告げると、眷属の龍蛇たちが一斉に骸へ群がっていく。
その光景を最後に阿由羅城は意識を途絶させ、同時に精神もあらゆる認識活動を止めた。

■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■

「全身に浴びた死の穢れで天へと戻れず、地に堕ちた邪龍か。
浅ましくも、今では流賊のように各地を渡り歩いて、気脈の力を喰らっては惰眠を貪る。
道を外れ、矜持を失った者というのは、見るに堪えないものだ」
「悪魔を使役するデビルサマナーとやらも不甲斐の無いことです。
ジャック、まさか貴方は彼らの二の舞を演じはしませんよね?
ええ、演じることなど決して許しません……無様な敗北の再演など」

79 :
そのままトキオ最南西の港に向かおうとも考えたが
間髪入れずにやってきたヤタガラス使者の一人からある情報を聞かされることになる。
それは八乙女山と呼ばれる場所で大きな魔―それこそアイン・ソフ・オウルと思しき
強大な悪魔が出現したことである。
しかしこの情報源も少しキナ臭い物を感じているらしく
確認と万が一の為に先遣隊のサマナーを送り出したらしい。
しかし、これは良い機会だと思った。
「その討伐、私も行こう」
天の配剤か、あるいは神の気紛れか
何れに在るにしろ無いにしろ《悪なる右手》の丁度良い
運用テストになると考えていた。
「ではフォルテ様達はどうされますか?」
「済まないが先にリューキューに入ってもらっても構わないと
伝えてもらえないか」
「了解致しました、主様」
そのまま放置しておくのも後々何か問題が起きる事も考えて
災いの芽を摘んで置いたほうが良い。
そう考えて静葉はまたもやフォルテ達とあるいはアサキム・アヤカ夫妻に
連絡をすると共に事態が事態なので悠長に蒸気機関車に乗ってはいられない。
適度に身体を動かすという意味で、直接そのままの足で八乙女山に全力で向かうことになる。

80 :
【八乙女山】
 二つの人影が山道を歩き、焼けた朽葉を踏み締め、白霧の中に乾いた音を響かせる。
足音の主は人妖の黒き精霊楽師、ディミヌエンド・レガート。
今一人の足音を立てたのは碧鱗を持つ竜人の僧武師、ジャック・カンヘル・チャーチル。
フェネクスドームで行われた星誕祭の決勝で、フォルテ・スタッカートの組と競い合った二人だ。
華麗なゴシックドレスを纏う精霊楽師は、山道半ばで不意に立ち止まると、冷たさを宿す妖眼を背後へ向けた。
「ああ……施術具ですか」
 ディミヌエンドは霧の中から現れたエスペラントの姿を認めて、そう囁く。
まるで、霧が囁いたかのように密やかな声で。
 エスペラントが八乙女山に到着するのは、阿由羅城を含む先遣の討伐隊が全滅して数日後となる。
帝都の中枢が第二陣の悪魔討伐隊を編成し、山麓へ向かわせようとする最中のことだ。
この精霊楽師と竜人の二人組もまた、エスペラントと時を同じくして、何らかの目的を持って此処に現れたのであろう。
「私はこの世界を一つの人体と看做しています。
塵芥の如き無数の小さき生命が一片の細胞で、数多の精霊は血液。
私たちのようなアイン・ソフ・オウルは人体の中の人体、さながら胎児といった所でしょうか。
だから、貴方のように人体として馴染まない存在は、器具に例えるのが適切というものです」
 主たる神魔コンツェルンの総帥に聞いたのか、或いは他の誰かに聞いたものか。
美貌の半人半妖は濡れる笑みを唇に浮かべて、エスペラントの在りようについてを仄めかす。
「一応、名乗っておきましょう。
私は万物を奏する楽師、ディミヌエンド。
……貴方が此処に来たのは、その玩具でお遊戯をするつもりで、ですか。
詩を作るには良い機会ですから、ぜひとも観賞させて貰いましょう。
玩具作りの苦心が無駄にならないと良いです、ねえ?」
 エスペラントが右腕に嵌める籠手を一瞥し、ディミヌエンドは微笑した。
隣に立つジャックは微かに首を動かしただけで、さして関心も無さそうに前方を見据えている。
霧の合間に覗く魔術の残り火と、大地を這う竜蛇の群れと、王者の佇まいで眷属の上に浮かぶ応龍の影を。
「……死の穢れで天に至れぬならば、地上に王道楽土を築いて余の物とするまで。
選別する生類は竜蛇の眷属のみ。余人余族は無用のもの。滅びよ」
 変幻の世界領域を律する専制者は、己が領土へ踏み込んだ異物に告げた。
伏契に眷属ならざるものを生かす理由は無い。
いずれ巨大な厄災が訪れ、数多の生命を淘汰すると予見した古き龍ゆえに。
造次顛沛、巨大な魔龍は闖入者に灼熱の洗礼を浴びせかけるべく、呪文の詠唱を始めた。
同時にディミヌエンドも歌い始め、ジャックというキャンバスが歌の色で塗り潰されていく。
「――天に散らばる無数の星。そして鏡のような月。けれど夜の闇は衰えることを知らない……」
「――反転、諸法無我」
――大地に墜ちる炎界の環[Megidora]――。
 応龍の呪文が完遂して、濃霧を揮発させる閃光が奔った。
爆裂する蒼炎の奔流がディミヌエンドにジャック、その背後にいるエスペラントをも呑み込む。
この蒼白い灼熱は他者の肉体のみならず、存在を削り、侵略していく、巨大な干渉力そのものだ。
高位古代語呪文は、投じられた魔力次第では常人が用いてすらアイン・ソフ・オウルを傷つけうる。
ましてや、導師アサキム・タグラスと同等の位階にある伏契が使ったならば、その威力は押して知るべしであろう。

81 :
八乙女山へと辿り付くまでの道中、その先遣隊が全滅したという知らせが届く。
第二の編成部隊が八乙女山に向かうのはそうえ遠くは無いだろうが
送り込んだ第一陣とて精鋭達も多く居ただろう。
ならばそれと同じ編成であれば二の舞になる事を考えれば、更に編成を考えねばならない
それを考えれば今までと同じように行かないなら、それ相応に時間が掛かる。
だからこそ自分達二人を送り込んで更なる様子見をするという事は当然のように受け入れられた。
「(だがそれでも我等は客人扱いだから、無碍にも出来んという事か)」
現在エスペラント&静葉は八乙女山に入るが、それと共に偵察役の機動力重視のサマナー数人が付いてきており
一定位置に着かせており彼等を経由して逐次現状の状況や情報が何があっても届くような形態を取っていた。
だからこそ援軍はしばらく後になる事を考えれば、安易に頼りにするのは危険だろうと考える。
それを理解し、報告のあった場所までやってくると気を引き締めたその際に二人の人物が現れる。
>「ああ……施術具ですか」
>「私はこの世界を一つの人体と看做しています。
塵芥の如き無数の小さき生命が一片の細胞で、数多の精霊は血液。
私たちのようなアイン・ソフ・オウルは人体の中の人体、さながら胎児といった所でしょうか。
だから、貴方のように人体として馴染まない存在は、器具に例えるのが適切というものです」
「………言いたい事はそれだけか?
生憎とお喋りをしている暇はない、失礼する」
突然現れた女の言葉に対してただ黙いた後、下らぬ話と判断し意にも返さず先に進もうとした際に
>「一応、名乗っておきましょう。
私は万物を奏する楽師、ディミヌエンド。
……貴方が此処に来たのは、その玩具でお遊戯をするつもりで、ですか。
詩を作るには良い機会ですから、ぜひとも観賞させて貰いましょう。
玩具作りの苦心が無駄にならないと良いです、ねえ?」
女は名乗る―ディミヌエンドと。
そうか、フェネクスに居た奴等だという事を思い出した。
どうも既に《悪なる右手》について勘付いたらしい
元々彼等に関する物を技術利用しているのならそれから発する波動かあるい何かしらの感知出来るのかもしれない。
「そんな下らん戯言を言いに来たのか貴様等は?だとしたらご苦労な事だな。
貴様等の期待通りになると良いが」
そんな皮肉で返すとどうやら眷属の群れを引き連れてお目当てのアイン・ソフ・オウルが来たらしい。
>「……死の穢れで天に至れぬならば、地上に王道楽土を築いて余の物とするまで。
選別する生類は竜蛇の眷属のみ。余人余族は無用のもの。滅びよ」
「悪いが死人を出さねばならぬ理想など貴様がどれほど高尚だろうと何を作ろうが知ったことでは無いし興味もない。
今は散っていた者達の魂と残された者達の為にその命で贖って貰おうか」
第一陣の先遣隊にも家族や待っている者達は居たのかも知れない
《悪なる右手》の性能調査というのもあるが死んでいった者達の敵も誰かが取らねばならない
それが自己満足であったとしても、自分が為さなければならないと考えた。

82 :
>「――天に散らばる無数の星。そして鏡のような月。けれど夜の闇は衰えることを知らない……」
>「――反転、諸法無我」
そしてその言葉を皮切りに伏契は爆裂する蒼炎―メギドラが放たれる。
しかしそれはエスペラントの知る従来のそれではない
アイン・ソフ・オウルが加わり更に強化された物だ
『全てには創造から開拓に始まり終焉ならば灰燼に終わる
 死と生は同一なりゆえに相克する
 死は生を求め生は死を求める
 無限と虚無に囚われる者よ求める物はと問えば
 解答せし言葉それは―――』
<攻撃魔法を感知、戦闘モード本格始動学習開始>
蒼炎の奔流が自らの身体とこの者達を包み込んだ
しかし、其処からエスペラントの全身からも眩い光を発する。
与えられし枷を放つその言葉は創られた意義を持つ超人にとっては与えられた特性にして方向
解放者達にその力とあり方の膨大な奔流の内ほんの一部を扱う鍵を与えられる
与えられた先からはその者個人に問われる
それが―――超人刻印(ツァラトゥストラコード)
蒼白い灼熱の跡に立っていたのは肌が赤く染まり、髪は白髪に変わる
オッドアイだったその瞳は黄金の瞳に統一されていた異様な雰囲気を発する
一人の超人。
「超人刻印――解放(ブースト)、固有名『』(無銘)構築完了」
<対極致固有世界者用吸収防御障壁発動情報登録対象伏契、記録開始>

何事も無かったかのようにその場に立っているその理由単純―
その攻撃がエネルギーであったからこそ『学習対象』として吸収し学習した。
だがそんな事は所詮机上の空論である、実戦でやったところでそれが出来るとも限らず
下手をすれば死ぬのがオチである。そんな馬鹿げた愚行すらも厄災の種という無茶苦茶な代物と
希代の天才傑物達が惜しみなく協力した技術の結晶の代物だからこそ信頼し
そんな死と大差ない馬鹿げた行為が出来た。

83 :
<最大出力展開により保有内蔵厄災種が二つ消滅しました>
<厄災種残数38、次元転送にて補充及び放出エネルギーで再生産をを行いますか?>
だがそれとて決して何の代償も無しに発動出来る物では無い
防ぐ為には場合によっては元々内蔵している厄災の種の力を最大限引き出す必要がある
それによってこうして厄災の種が破損し、使い潰すも同然になる事もある。
安全策上それも暴走する可能性があれば意図的にされた物なのだがデータさえ取れてしまえば最小限あるいはまったくのノーリスクで対策が取れてしまう
そんな事も可能となり、そしてそのエネルギーを元に厄災の種を作り出すことも出来るようになる。
「いや補充はしなくて良い、再生産と敵の力の解析によるデータと対策を最優先しろ」
<了解です、厄災種の使用により感情値が規定よりも上昇しています。抑制剤を使用しますか?>
その通り現在エスペラント自身殺意や暴力衝動、それぞれ合わさったような複雑ではあるが
気の済むまま暴れたいとすら思う感情が渦巻き始める為
非常時の為に感情を強制的に抑える特殊な抑制剤すらも《悪なる右手》には積み込んでいた。
それほどまでに例え薬漬けなろうともこの兵器を使う覚悟を―決意をしていた。
「この程度ならばまだ抑えられる、必要ない」
<正常な判断が出来る範囲内の命令は正当な物と判断します>
<それを逸脱した場合強制的に抑制剤の投入を行います>
安易にアイン・ソフ・オウルと化すという選択肢があればこのような事にはならなかっただろう
しかしそんな物は今更だ、此処までしなければ勝てないという敵は重々承知済みのはずだ。
だからその事に関しては何も言うまでもなかったそれが彼自身の「人間としての意地」
「そんな事今はどうでも良い、それよりも奴を何とかしなければならない
これから反撃と行こう、行けるか?」
<高速学習作業との平行はまったく問題ありません>
そうか、と呟いた際左手には召喚した禍々しい和弓が現れ
自らの右手には《悪なる右手》が弦を手に持つとそれを素早く引き
黒い膨大なエネルギーが収束していき、一瞬で矢の形状へと変わる。
そして形成にもまったく問題が無いのならば
<今現在の感情値の全てを上乗せした上で対極致固有世界者用矢形状弾、形成完了>
「ならば受け取れ!!この<偽悪なる一撃>を!!!!」
撃つのを躊躇う必要はまったく無いと言わんばかりに弦から放った瞬間
増大される感情をも放たれる武器に込めて威力を上乗せする―それも内に込められる
膨大な感情を発散させるにはどうすればよいのか?その解決法は武器としての威力向上と
ずっと貯め続ける事も無く発散できるという使用者の安全も考えた一石二鳥の機能として
組み込まれたそれによって放たれた黒い矢――<偽悪なる一撃>はとても太い黒き閃光として
存在を削り、アイン・ソフ・オウルに匹敵する限定的な「己の領域」とそれに対する「干渉力」を得る。
それはエスペラント自身が抱く膨大な感情であればそれは力を増していく
攻撃手段という一方向あるいはごく極めたアイン・ソフ・オウル一つの側面に過ぎなくても
彼には十分である、なぜなら
「これを持って貴様等アイン・ソフ・オウルに対して人間のままで人間の作った兵器で
戦えることを持って証明し!人間の力を持ってして最初の反撃する者として
貴様等に宣戦布告をする!」
野太い閃光を背後から発しながら凄まじい速さで伏契の元へと向かって
伏契の前に立ち塞がる幾多の眷属を全て吹き飛ばしながら差し迫る。
「世界守護者委員会の尖兵として!!!世界を守護する者として!!!
そして一人の人間として!!!」
「さぁ!!最初の反撃の始まりだ!!!!」

84 :
「…やはりね、対象確認した」
「まったく…仙界も面倒なことをおしつけてくれたもんだ…」
…応龍の生気が消えたから確かめてきてくれという命を受け
八乙女山に向かった二人
「…あれは、エスペランドさん?」
「じゃあ…あの右手の物が」
…異物を吸収せし小手…
「アサキム?」
「なんでもない…応龍の始末の許可は頂いているさっさと倒す!」
術式とともに…新たなアインソフオウルを解放する。
「神とて堕ちる時があるのか…ならさ」
アサキムは、黒銃(ジャッカル)を構え
「せめて…安らかに眠れ」
(ぶつかり合う衝撃)-Impact clash-
前方に術式を展開しうち放つ
銃の弾の貫通を手っ取り早く、強くする方法にスピードを上げるのがある
だが、それでは人が耐えられない
仙人であるアサキムでさえも限界がある
それを解消する方法が新たなアインソフオウルの「反転」
アサキムは自身の領域の総ての事象を反転させられることができるようになった
故に弾を自身の領域内で反射させることで弾の速度を上げに行っている
「…そろそろいいかな?穿て!」
その勢いが有り余っている銃弾を解き放つように応龍に放つ。

85 :
「あのー、フォルテさん」
リーフがスマホの画面を見ながらおずおずと言う。
「八乙女山に応龍を倒しに行くから先に行っててほしい、だそうです」
「はあ!? どっちから?」
「それが……両方」
「っざけんなぁあああああああああ!!」
何を考えてんだあの超人達は。
オレ達だけで行って枢要罪に会ったらどうしてくれる気だろうか、問い詰めたい、小一時間問い詰めたい。
あっちはあっちでまさか応龍の前で内輪もめする気じゃないだろうな。
これはオレ達も八乙女山に行った方がいいのではないか。
とはいっても、依頼受けちゃったし行くしかないんだろうなあ。
そうこうしているうちに案内の者がリューキュー行きの船が到着した事を知らせる。
「どうする? 行く?」

86 :
【八乙女山】
 天より降り注ぐ驟雨、驟雨が集まった濁流、濁流から立ち上る白霧、それが揮発した不可視の大気。
この常に変幻する粒子群こそが伏契の描く世界観の発露であり、同時に自己を防御する結界そのものだ。
それゆえにエスペラントの放った黒箭の一射も、霧の中を進む毎に威力を相殺されていく。
攻撃に反応して重さを増した霧が、轟音で歌う破滅の矢に絡みつき、推進力や破壊力を奪うのだ。
黄土の鱗で覆われた応龍の肉体に届く頃には、矢も世界への干渉力を奪い尽くされ、鋭い迎撃の鉤爪で打ち砕かれる。
「人間の力の証明だと? 世迷言を。
人であろうと龍であろうと鬼であろうと、万物生類は貴賎の別なく魂の奥に界を持つ。
強さの差を分かつのは、どちらの界が宏闊にして精緻であるかだ」
 応龍はエスペラントをせせら笑った。
互いの理解の違いは、生きる世界と言葉に持たせた意味の違いゆえだろう。
人ならざる龍は人間という単語に思い入れなど無く、数多い知的種族の一つを意味するに過ぎない。
 歌いながら両者の戦いを観覧するディミヌエンドも、エスペラントと同じく傷は無かった。
変化といえば、長い髪が流れる砂金の煌きを備えたことくらいか。
これは精霊楽師の体内に宿り、髪を闇の色に染めていた詩精たちが、ディミヌエンドの防御に伴って抜け出た結果だ。
黒髪の女の姿を持つ無数の詩精は、亡霊めいた半透明の体を多重に重ねつつ、今は主の盾となっている。
随伴していたはずのジャックの姿は、近くにいないのか確認できない。
「余の術を受けて無傷とは賞賛に値する者どもだが、宣戦を布告し、紛い物の黒墨で眷属を屠ったのは愚劣極まる。
このような愚行を許したのは、余が未だ失われた力を取り戻す途上だからであろう」
 八乙女山に燦々と差す朝陽の光と、赤貌白髪のエスペラントを瞳に写して、応龍は自答する。
一切の樹木が消えた周囲を見渡せば、眷属たる竜蛇は過半が失われており、己と外界を隔てる霧も滅されていた。
そう、山域全体を覆って異界と化していた霧の結界は破れている。
結界が除かれれば、後は一個の生命体としての耐久力が己の身を守る力だ。
「……ッグ、ヌ」
 それは濃霧が晴れ、浮揚する応龍の姿が現れた一瞬のこと。
超音速にまで加速した弾丸が硬い龍鱗を割り、胴と臓器を貫き、衝撃波で弾創から鮮血と肉を撒き散らす。
アサキム・タグラスが行った銃撃は、奇襲すべき絶好の機会を逃さず、再び結界が展開される前に伏契を穿っていた。
胴体を抉られた龍は口から血の涎を垂らしつつ、爛々と輝く双眸でアサキムを捉える。
負傷で昂る怒りが、応龍の周囲にまたも霧を生じさせた。
ただし、その範囲は先程より狭まり、もはや山域全体を濃霧の結界で閉ざす規模には至っていない。
「この複雑な陰陽の気の動きは仙者。
蒙に囚われた走狗どもが、挙って余を討たんとするか。
招来せよ、雨師」
 不快げに唸ると、応龍は風雨を司る龍としての権能を発揮した。
霧中から数千数万の驟雨を創り、その全てに槍のような鋭さを持たせ、旋回させつつ中心のアサキム一点に集約させる。
無論、この雨は単なる水の動きではない。
無数の雨は変幻の性質を持ち、突き刺したものを変質させ、腐食を加速させる性質を持つ。
「招来せよ、雷公」
 続いて応龍が放った呪願で、中空に生じた黒雲から一条の雷が応龍自身へ降り注ぐ。
全身に雷を帯びた黄土色の龍は、白濁した霧の虚空を翔けて、電光石火の速度でエスペラントに攻め来たった。
掠っただけで雷火の走る爪を振るわんとし、龍族の強靭な牙で喰らいつかんとして。

87 :
>「どうする? 行く?」
「――いや、ある意味じゃあよ。
あいつらと俺らだと、枢要罪相手だと俺らのほうがイケると思うぜ? ぶっちゃけよォ。
あいつらが応龍倒しに行ったのって、よーするにアイン・ソフ・オウルと戦う方法見つけるためなんじゃねーの。
……だったら、俺らは先に進んでおくべきだろ。あいつらだって修行したい時も有るだろうしなァ」
ゲッツは。フォルテの言葉に対して、否を返す。アイン・ソフ・オウルを倒すのは、アイン・ソフ・オウルの力のみ。
質と量の差はあるが、そもそもアイン・ソフ・オウルであるのと無いのとでは大きな差があるのだ。
そして、あの超人二人が戦いに赴いた。個の利よりも多の利を優先する彼らから考えれば、それはそうする意義が有る故の行動だろう。
そういう細かい事情を理解せぬまま、戦士の勘であの二人の戦いに意義を感じ、八乙女山に向かうのは辞めることとした。
「だからよ――ちょーっと先にリューキュー行って来ようぜ。
どーせ奴らだから瞬間移動とかで付いてくるだろうし。
……それに、ヴェルザンディに関しちゃ、ヴァルンとの約束もある。
俺ァイケメンだかんな。約束は守らなきゃなんねェだろ。なァ?
それに、てめェもあのえらそーな教皇に一言申したいんじゃねぇのか? あ?」
ごきりと首や全身から骨を鳴らす音を響かせ、口の端から瘴気を漏らして。
竜人は、にやり、といつも通りの適当な笑みを浮かべて、フォルテの頭を軽く小突く。
そして、ゲッツはフォルテをいつも通り肩に担ぐと、ひょいと船に飛び乗り、船を出すことにするのであった。
「――では、リューキューへ向かわせて頂きます」
そう船頭の女が言えば、リューキューに向かう船は、さほど長くない距離を進む。
そして、そのさなか、唐突に濃密な霧が当たりには現れた。
――強大な存在感が有るというのに、その本質が何かに覆い隠されているかのようにおぼろげであるという矛盾した感覚。
この空間は、既に二人のアイン・ソフ・オウルの領域である。そう、認識することが出来ただろう。
船が、止まる。この霧の中では、不用意に船を動かすことは困難と言えた。
そして――、船頭が二人の方へと歩んでいき、霧が俄に晴れる。
そこに居たのは、黒色の宝玉の収まる杖を持った、白髪の女であった。
「――久しぶりね。妖幻。そして厄災。
あの二人も色ボケ女も居ないようだけれど――ちょっと話でもしていかないかしら。
話題は、そうね。……私達の目的の一部、とか。……気になるんじゃない?」
白髪の女の傲慢の世界観は本来であれば全てを圧倒する程の力を誇るはず。
だがしかし、ここではその力の全容が見えはしない。それは恐らく、ミヒャエルの虚飾により虚ろに隠された結果。
そも、このヴェルザンディが、ヴェルザンディであるという証明すら無い。
だがしかし、此処にいて話をしようとしている意志は、間違いなくヴェルザンディであったと言えただろう。

88 :
>「――いや、ある意味じゃあよ。
あいつらと俺らだと、枢要罪相手だと俺らのほうがイケると思うぜ? ぶっちゃけよォ。
あいつらが応龍倒しに行ったのって、よーするにアイン・ソフ・オウルと戦う方法見つけるためなんじゃねーの。
……だったら、俺らは先に進んでおくべきだろ。あいつらだって修行したい時も有るだろうしなァ」
相変わらずの自信家である。だが。
ンなわけねーだろ!と少し前ならツッコんでいたところだが、ゲッツの戦いに関する判断は信用していい。
それにアイン・ソフ・オウルについてもオレより身を持ってよく分かっている。
>「だからよ――ちょーっと先にリューキュー行って来ようぜ。
どーせ奴らだから瞬間移動とかで付いてくるだろうし。
……それに、ヴェルザンディに関しちゃ、ヴァルンとの約束もある。
俺ァイケメンだかんな。約束は守らなきゃなんねェだろ。なァ? 」
「……ってか出くわすの前提!? オレああいうタイプは苦手なんだよな〜。
調子が狂っちまう」
ああいう奴らと対峙するのは、魂を映す鏡を突きつけられる感覚に似ている。
グリムみたいな完全にラリってる奴の方がまだ分かりやすくて組しやすい。
(能力面抜きで飽くまでも性格だけで言えばだが)
大体正気を保ったまま厄災の種を使うなんてそれ自体特大の狂気だ。
>「それに、てめェもあのえらそーな教皇に一言申したいんじゃねぇのか? あ?」
ゲッツに小突かれて思い出す。
そう言えば……前回あの教皇野郎に完璧に一本取られたんだよな。
しかもその後のエヴァンジェルの経緯が気に食わないからどうのって……。
だんだん腹が立ってきた。
「言ってやる。枢要罪、出るなら出て来いやぁああああ!!」
>「――では、リューキューへ向かわせて頂きます」
出発して間もなく、唐突に辺りは濃霧に包まれた。
ヤバい、ヤバいぞ! ここはすでに奴らのセカイだ!
「え? え!? もう出るの? マジで出るの!? あれ本気じゃなかったの、しーましぇーん!
ちょっと船頭さん、どこ行くの、そっちは危ないよ!」
と小物全開で騒いでいる間に霧は晴れ、枢要罪が姿を現す。
でも姿が見えるのはヴェルザンディ一人。おそらくミヒャエルは虚飾の力で姿を消しているのだろう。
あの傲慢暴走女ヴェルザンディにしてはちょっと気配がボケた感じだけど……
彼女はそんな事よりもオレ達の興味を引くのに十分な言葉を吐いた。
>「――久しぶりね。妖幻。そして厄災。
あの二人も色ボケ女も居ないようだけれど――ちょっと話でもしていかないかしら。
話題は、そうね。……私達の目的の一部、とか。……気になるんじゃない?」
お目付け役の超人連中も母さんもいなくて今はぺーぺーのアインソフオウルが二人だけ。
向こうからしてみたら潰すには格好のチャンスのはずだ。
とりあえず今は戦うつもりではない……ということか。話に乗ってみてもいいだろう。
私”達”……という事は共通した目的を持っているということか。
枢要罪の共通点なんて枢要罪である事ただ一点である。
どれもこれも原初にして最強の罪である故に、他の罪と相容れる事は難しいはずだ。
「そりゃあ気になるさ。この世で最恐の自己中どもが団結できるほどのすげー目的なんてあるのかよ」

89 :
自らの放ったその一撃は確かにこの山を支配していた霧―
この伏契の領域、世界と言っていい
だからこそ自ら放った一撃は応龍に当たる前に消滅した。
しかしその代わりにこの山を支配していた霧は大方消え失せた。
「貴様の言う事は確かに正しい、同じ土台であり真っ向勝負をするのであれば
だが、あくまでも同じ土台という部分だけだこの世界で重要なのは」
伏契を肯定しつつも、同じ環境下であり同じ戦いであればそれは正しい
しかし同時に戦いはどんな事でも起こりうるバーリトゥード(なんでもあり)
それに従ってやる理由などはない、ましてやエスペラントのような余所者(多世界を守る恒久戦士)には。
山を覆っていた霧が殆ど消え失せるまでは正しく予定通り
「さて、思い込みは後々に取り返しがつかない事がある。その最もな物は死――
果たしてそれに気づけるだろうか?」
自らの力が不完全だという言葉にニヤリと笑い、としながら
今説明してやる義理も無し、今種明かしするのは面白くは無い。
そう考えている内に次の手を打とうとした時、それはどこからとも無くやってきた
一発の銃弾が応龍の胴体を貫く、その主を見据えるとアサキムとアヤカ達がそこに居た
という事は――
「(一撃で一気に仕留めるつもりだったがアサキムめ、余計な事をしてくれたが…
同時に結界の有無も確認出来た、やはり間違ってはいないようだな)」
応龍の土手っ腹に穴を空けたアサキムにはそれぞれのプラスマイナスが重なって一切のゼロとなったので
一切感謝の気が無い物の観察して分かった事はそこまでの過程は間違っていないという事だ。
それを考えると《悪なる右手》を見つめ、開発してくれた者達は決して間違っていなかった
後は倒すまで自分の問題、ただそれだけを思うと
今度は応龍が起こって再び霧が発生する。
「やはり奴は余計な事をしてくれたな」
折角消したものがやはり元に戻り、折角消えたものを再度展開させたアサキムに対して
そう呟くが先ほどとは規模が小さくなり応龍の周囲のみに展開されたことは
まだ唯一の救いだろう。

90 :
先ほどの攻撃に対して応龍は更に霧から無数の雨が発生
雨粒一つ一つがおそらく強力な物であろうと看破し、
その間にも此方は待つほど少なくとも戦場ではお人好しでもなく
再び弦を握り、黒い矢を形成する。
「的が自ら飛び込むか―面白い、その決闘受けて立とう」
雷を纏い、そのまま電光石火の如く突撃してくる応龍をまずは遠距離から
<偽悪なる一撃>を発射し、計算した上で避ければ確実にエスペラントがずれる位置になる距離で
ぶつかり威力重視ではない為応龍周囲の霧が完全に晴れる。
「まずは一発目だ」
だがそう言いながらも既に後少しでその牙と爪が差し迫っている最中
一切焦りも見せずただ淡々と冷静にギリギリまで引き付けもはや目と鼻先に差し迫った瞬間
「ならば人間の力を思い知ると良い、存分にな」
そして<偽悪なる一撃>の二撃目が放たれた瞬間、真っ直ぐに応龍の元に差し迫り
それを弾こうと爪が襲い掛かるが一撃目を放った際に加算された感情+ギリギリまで力を貯めていたことでの
通常の一撃より向上したチャージショットが片腕の爪からど真ん中の手を貫通、応龍の爪が幾つか落下
そしてそのまま応龍の片目に突き刺さる。
『ギャァァおのれぇぇぇぇ!!』
応龍が痛み故に地面に墜落するまえにエスペラントは凄まじい距離の跳躍をし
それに関心を向けていられる状態ではなく、電光石火の速さで
激しく地面に激突する応龍・伏契。
「杭は打ち込んだ、此処からは互いの自力の戦いのみ」
そのまま応龍の身体に着地し、涼しげにそして挑発する。
第二撃として目に突立てた黒い矢は正しく霧いや結界を発生出来ない様に干渉する楔
直接突立てた事により結界発生をさせる能力に干渉(一時的な発生能力の収奪をしている)を行っている
もう一度霧を張りたければ黒い矢本体を引き抜くしかない。
「さて、隔絶した個の能力に胡坐を搔いていたようだが
本来の力のみで何処まで戦えるんだろうな?」
直接応龍の顔が見れる口元までやってくる。
見つめる目は憐憫でも蔑みでもない、一人の戦士として
一切の油断や隙を見せずただ見つめながら
エスペラントの周囲には黒い十字の剣が大量に出現させる。
「チェックメイト――」
仮に今エスペラントを食べようとしてもその瞬間口の中は剣山が突き刺さり
残った爪で切り払おうにもその瞬間手に突き刺さり切り刻まれ、炸裂させることも出来る。
文字通り一切の不審な動きを見せればその瞬間は死である、文字通り死ぬ気で後先考えるつもりでもなければ
詰んでいると言ってもいいだろうが。

91 :
 周囲に無数の剣を浮かべ、王手を告げるエスペラント。
彼に対する応龍の返答は一言。鷲のような猛禽類の翼を広げて曰く。
「――天地往来[Torapoto]」
 巨大な龍の口腔が開かれた瞬間、待機を続ける黒剣が一斉に伏契へと飛来した。
初撃の数本が迎撃として振るわれた腕に激突して炸裂し、応龍の爪と血肉を散らす。
残る十字の剣は、伏契の鋭い躱して懐に入り込み、鋭い牙や長い角、鼻面に同様の酸鼻を見せた。
しかし、さらなる追撃の刃は空気を裂いたのみ。
龍の巨体は霞の如く掻き消えていた。
忽然と消失した気配は、やはり忽然と八乙女山の中空に現れ出でる。
伏契は縮地の術を用って、己が肉体を一瞬にして山肌から空の高みへ移したのだ。
隻眼でもアサキムとエスペラントの両方が視界に入るよう、距離は充分に取られていた。
「……人間人間と煩きことよ。
霊力で妖精妖魔に、膂力や機敏さで獣人種に、強靭さでは魔獣や竜種に及ばぬことが、それほど口惜しいか。
さして、人であるとも見えぬ身で。
汝が余に意趣を返した所で、汝という一個の怪異の力を証明するに過ぎぬ」
 無傷の左眼でエスペラントを見下ろし、冷たき嘲りを吐く龍。
中空で浮揚する黄土色の蛇体は、白霧に霞むことなく明瞭であった。
力の掠奪を行う矢の影響で、今の伏契には自他の世界を隔てる霧の境界は無い。
アイン・ソフ・オウルを一個の国に例えるならば、偽悪なる一撃は、さながら国境壁を崩したようなものか。
とは言え、伏契という存在から変幻の世界を奪った訳ではなく、習得した術や応龍としての力を失わせた訳でもない。
「戦の趨勢とは常に変幻するもの。
王手と見えたものが窮地に変じることあらば、逆もまた真。
本来の力のみで何処まで戦えるか、だと?
千年の長きを過ごせば、数多の術策を得ると知れ――陽天の気は我が玉体を埋めん[Diarahan]」
 応龍が呪を唱えると、銃弾で貫かれた胴体が瞬く間に肉を盛り上げて傷痕を塞ぐ。
砕けた四肢と打ち砕かれた爪牙も、まるで蜥蜴の尻尾や鮫の歯のように新しき部位が生じて、欠損を癒した。
黒き矢が突き刺さったのままの眼球を除き、完治の魔術で拭ったように深傷が消え失せていく。
同時に応龍から力を掠奪する矢も、変異を見せ始めていた。
矢柄から枝のような又を幾重も伸ばし、矢羽から厚い葉を茂らせ、長く伸びた蔓の合間に白い妖花を咲かせて。
突き刺す相手から力を奪った分だけ、矢もまた己の力を増すということなのだろう。
「我が眷属よ、退け」
伏契が雷鳴の声で告げると、龍蛇の眷属が飛燕の勢いで散って行く。
投擲を警戒してか、蒼穹を背にした龍は眷属の離散に眼を遣らず、敵から視線を離すことはない。
「……さて、龍の力を見たくば存分に見るが良い。
雷雲を呼んで水雨を操り、地に水を溢れさせ、四海に波を起こす術を」
 応龍の咆哮で山の水脈が即座に崩れて決壊し、周囲は荒れ狂う濁流で満ちた。
無論、水流で押し流した程度では、相対する敵を倒せないと伏契も悟っている。
伏契の狙いは息吹。体内の気を炎に変えて地上へ向けて吐く。
「五行の理は歪め。水は火を扶けん」
 空の高みより一筋の火柱が墜ちると、水脈から溢れ出た温水は赫灼と輝く猛火に一変した。
紅蓮の色彩が広がって、八乙女山は界滅の炎で沈む。
水に属する龍が吐く炎は自然の火と違い、湿気を帯びて燃え上がる特性を持つのだ。
今や荒れ狂う濁流は赤熱の溶岩で、大気に漂う水飛沫すら灼熱の嵐。
エスペラント、アサキム、ディミヌエンドと姿無きジャックも、山域に残る者は誰一人逃れること適わず。
力の発露で一都市を壊滅させ得る存在。これが地位級のアイン・ソフ・オウルなのだ。
 そして、伏契が眷属に撤退令を出した理由も、これであった。
人とは思考形態も倫理も異なる生物なれど、庇護下の同族を殺さぬ程度の方針は持っている、ということだ。

92 :
さすがは腐っても地位級のアイン・ソフ・オウルいや応龍と言うべきか
チェックメイトと決めていた一手は容易くも打ち破られる。
「全てが貴重な素材(サンプル)として原型を可能な限り残しておこうと
考えていたが両目を潰しておくべきだったか、抜かった」
頭部をズタズタに切り裂いて置くべきだったかと悔やんで居たが
既に転移してしまった以上後の祭りという物。
>「……人間人間と煩きことよ。
霊力で妖精妖魔に、膂力や機敏さで獣人種に、強靭さでは魔獣や竜種に及ばぬことが、それほど口惜しいか。
さして、人であるとも見えぬ身で。
汝が余に意趣を返した所で、汝という一個の怪異の力を証明するに過ぎぬ」
「純粋なる能力だけを見れば確かにその通りだ、だが貴様等には勝っている物があるぞ」
自らの心臓を力強く指して高らかに叫ぶ
「他人を思いやり、自己を犠牲にしてでも助けようとする心の力だ!そんな素晴らしい力
だからこそ、普通の人間とは到底呼べない力を持っている僕が僕で居る為の
誇り!矜持だ!!」」
其処に恥ずかしいという気持ちも一切存在せず冷たき嘲りを受けても決して譲らぬ
信念と言っても良いその矜持を熱き魂と咆哮を持って向ける。
>「戦の趨勢とは常に変幻するもの。
王手と見えたものが窮地に変じることあらば、逆もまた真。
本来の力のみで何処まで戦えるか、だと?
千年の長きを過ごせば、数多の術策を得ると知れ――陽天の気は我が玉体を埋めん[Diarahan]」
「なるほど、年月を掛ければそれこそ幾多の術を得ていても不思議では無いな。
だが1000年程度歳月を迎えているとしても年数は僕に意味はないぞ?
そんな物は無意味だからな」
それこそいろいろな世界を駆け巡るという事は時間軸が当然異なる様々な平行世界や異世界が存在する。
エスペラント自身が赴いた世界によっては100億年以上経過をしている為
場合によっては彼を100億歳の年齢とも言える訳で、少なくても時が止まっているからこそ
常人や並大抵の者処では比にならぬ年を得ているとも言える為、その程度の年数を言われても
エスペラント自身には意味は無い、しかしその間に得た能力は脅威である事には違いないが。
ディアラハンによる回復により負わせた手傷を全快にまで回復―いや正確には
片目に打ち込んだ楔は回復までは出来なかったようだが、それでも効果を発揮している反面
力を吸収している為なのか、災厄の種を咲かせる花が発生しつつあった。
(不味いな、場合によっては早く決着をつけねばならないか)
此処には自分と応龍だけならまだしも他のアインソフオウルも居る以上
それが新たに出来てしまったり、回収されるリスクは極力さけたい。
その危険性は今この場で知れたことも幸運と言うべきなのだろう。
>「我が眷属よ、退け」
「何かを仕出かすつもりか、アサキム分かってるとは思うが」
突然眷属の撤退を命じたので、何か途轍もない事を仕出かす前兆として
それを感じ取り、ダグラス夫妻には警告をすると
此方も身構えて何が起きても良い様に細心の注意を払いながら
予め此方も距離を取り始める。

93 :
>「……さて、龍の力を見たくば存分に見るが良い。
雷雲を呼んで水雨を操り、地に水を溢れさせ、四海に波を起こす術を」
そして奴は水脈が一気に荒れ狂い始める。
何をするかと思えばこの程度では自分達は死ぬタマではない
そんな事は百も承知であろうと此処で笑う奴は居るだろう
だが今この戦場に置いて意味の無い事決して無い、慢心は即死を招く。
(何かあるな―このままで居ると不味い気がする)
水面の表面に浮いていたが、一時的に宙に浮かび上がったその時
>「五行の理は歪め。水は火を扶けん」
応龍の起こした火柱は荒れ狂った水脈と合わさり
もといその本来の能力を遺憾なく発揮し
水脈は赤熱の溶岩、灼熱の嵐が巻き起こり八乙女山を包み込む。
「そういうことか――」
逃れられぬ暴力そのもの、そしてそれがエスペラントを完全に飲み込んだ
しかし―――
<対極致固有世界者用吸収防御障壁発動>
吸収障壁を発動、此方に向かってきた全ての灼熱の嵐を吸収しながら
『サモン』
その文字が起動した時、一気にエスペラントは空中へと上昇―
そして応龍の攻撃が完全に届かない範囲まで移動完了すると
<最大出力展開により保有内蔵厄災種が五つ消滅しました>
<厄災種残数33、エネルギー利用による再生産により4つを付加します>
やはり逃れるまでに相応の数を使うとは思っていたが
凄まじいまでの殺意や怒りが沸き上がるものの
それを必死で押さえながら、血管が出ている事も気にせず
「アイン・ソフ・オウルの中でも強いらしいなぁ、今までと戦った
連中とは比べ物にならんなだから―――」
再び伏契の眼前に現れた際に現れたのは
魔人――神でも魔でも人でもない者達を全て引き連れた
超人であった。

94 :
「僕の出し惜しみの無い全力で遠慮なく迎え撃とう」
だいそうじょう、ヘルズエンジェル、ホワイト、レッド、ブラックペイルライダー
トランペッター、そしてマザーハーロットの乗る赤き龍の頭部にそれぞれ乗るアリスと
エスペラントが今その場に存在していた。
だがあともう一人、魔人がこの場に居た。
『開店休業中の最中に呼び出されたと思いきや面白いことになっているな』
赤が印象のその人ならざる姿で飛んでいるのは魔人ダンテ、人類を救った
魔界の剣士スパーダの息子、デビルハンターにして悪魔が泣く存在(デビルメイクライ)
「すまんね、此方は一切余裕が無い物でね最初から全力でいくよ」
『しかたねぇ、だが悪くは無いこの波に乗ってやるよ』
口振り的にはそういうものの明らかに楽しんでいるダンテに対して
何時もの事なので気にするまでも無い。
「あの応龍には全力で戦うんだ、さぁいくぞ
ランダマイザ!!」
『此処から先はR指定ライブだ!』
この瞬間、エスペラントが攻撃力・命中率(回避率)・防御力・魔法威力を
強制的に下げる技を掛けた後彼の魔人軍団の総攻撃が始まる。
それを見過ごす訳も無く散らばせる為に応龍は口から巨大な火柱を放ち
同時に散開、其処からメギドラオンや各持ち技である固有技のオンパレードであり
激しい弾幕とおぞましく同時に神々しい一撃の応酬が繰り広げられる。
だがそれを目晦ましとしてエスペラントを載せたマザーハーロットは伏契の元へ一気に近づく。

95 :
「貴様は言ったな、龍の力を見たくば存分に見るが良いと
だがそれは同時に龍としての弱点を持つ事を意味する」
エスペラントは禍々しい和弓では今度は無命剣フツノミタマを召喚すると
ある技の不思議であってどこかで見たようなあるいは見た事が無いような
そんな構えをし始める。
「悪しき龍(ドラゴン)はどの物語でも英雄に必ず殺される」
メギドラが飛んでこようともマザーハーロットを信じて気にせず
避けるか或いは吸収防壁を使って防ぎながらも
それが合図として距離を取っていた魔人達は一斉に
逃げようとあるいは距離を取ろうとする伏契に近づいて近距離で
同じように自身の持つ奥義を放ち始め、まるで足止めや拘束をするが如く
近づけば近づくほどマザーハーロットと乗っているアリスもその攻撃に同じように奥義と死力を尽くして
魔人達の猛攻は激しくなっていき、エスペラントもギリギリまで放出した厄災の種の副作用の力を
《悪なる右手》を介して全て込める。
振り払おうとする応龍の爪や牙を目の当たりにしながらも
絶妙にそして紙一重に避け続け、その一撃を確実に決める位置に着いた時同時にアリスとマザーハーロットが
応龍の一撃に吹き飛ばされ、その余波で自身も顔や身体が切り裂かれて全身から出血しようとも
ながらも迷い無く飛び出して首筋に迷い無く斬り込み振り払おうとする腕ごと一撃で
それはまるでバターを切る様にとても滑らかに断ち切り、首元にフツノミタマの刃が
当たると同様に凄まじい勢いで簡単に切り裂いていき
なぜこうも簡単に切り裂くのかそれはこの技がある者が長い年月と万金を費やして
開眼した竜をも屠るという技だから
「屠竜之技――生み出した者が開眼した時には竜がいなかった故
無用の長物として実用の役に立たないとされた物だ、修得するのには苦労したよ
しかしこれで決して役に立たない技ではなかったし、分かった事がある」
それは当然龍をR為に作り出された技、龍という属性を持つ者には致命的に相性が悪く
どんな龍に置いても必ず治癒する事も難しい命に関る傷を与え、それは必ず龍であれば
死に追いやる人が生み出した秘奥絶技。
「それは竜であり続ける限りどんな存在、形の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)には決して勝てない
ということだ、これで証明した」
皮肉にもその人が生み出した一撃が起死回生を図ることとなり
首の皮一枚という所まで差し迫っていた。

96 :
))「この複雑な陰陽の気の動きは仙者。
蒙に囚われた走狗どもが、挙って余を討たんとするか。
将来せよ、雨師」
「ご名答…だが貴様にやられる気もないし…」
その毒まみれの雨を受けながら
「ましてや、技を受ける気もない!」
(弾け…我が体!)
全神経を集中させ自身の領域内の雨を弾き続ける。
「リディエイト!」
そしてその集めし雨を今度は収束させて行く…
その間に…
))「五行の理は歪め。水は火を扶けん」
周りが一度に劫火につつまれる
「甘いな…五行転換!」
再び…意識を集中し、地面に震脚する。
するともとあった火たちが一気に水に変わる。
周りの自然状態も問答無用で変えてしまうのもアサキムの持つアインソフオウルだ…
「…消えな、過去の亡霊…」
その集めた毒水と今の戻した水を合わせ一気に放出する!

97 :
 エスペラントは己に随身する八体の魔人を呼び寄せ、伏契と対峙した。
異界の魔を統御して師団を作り上げる技量は、デビルサマナーとして一流以上と言えよう。
戦端を開く号砲として赤、緑、紫のランダマイザの三つの光球が撃たれ、伏契の六感全てを鈍らせた。
自己と外界を隔絶する境界壁さえ無ければ、原理を違えた異界の術とて有効なのだ。
そして、散開して戦陣を築く魔軍と、猛禽の翼で宙天を舞う応龍は戦う。
魔人たちの炎熱と雷撃の術が黄色の鱗を焼けば、伏契も龍爪と息吹で応戦。
変幻の世界観を黙示録の四騎士に刻み、意志を混乱させ、感情を狂乱させて互いに相打たせる。
治癒魔術の習得と精神を変調させる術が周知となると、残る魔人も攻撃の苛烈さを増して伏契に詠唱の暇を与えない。
 神秘の玄妙と秘奥を尽くす戦は、エスペラントの接近で佳境を迎えた。
魔軍の総帥は霊剣フツノミタマを振るって伏契の腕を斬り飛ばし、強靭な鱗で覆われた首元をも飴のように裂く。
そのまま鱗を割り、筋肉を断ち、頚椎まで寸断するかと思われた刹那。
龍の首を半ばまで裂いた刃が衝撃で止まる。
竜殺しの秘剣を止めたのは、強靭な意志が篭められた陽の気だ。
応龍の体内に流れる気が物理的な圧力として斬撃を止め、刃と気で力の拮抗を作り出す。
「竜は竜殺しに決して勝てない……それは汝の成心に過ぎぬ。
壺中から蓋を見て、天と確信するが如き蒙昧。
山河に生態、言語に伝承、心体、律法、善悪、常識、森羅万象あらゆるものは変幻せり」
 傷痕から体内の気を白い燐光として溢れさせつつも、伏契は己の世界観を揺らがせない。
「悪しき龍はどの物語でも英雄に必ず殺される、か。
水域の王たる龍をドラゴン風情と同視するなど笑止。
悪しき烙印を押されるのは、敗者として破れ去ったがゆえのこと」
 圧倒的な暴力と暴力がぶつかり合う。
しかし、一瞬が永遠にも感じられるような拮抗は、導師アサキム・タグラスの方術で崩れた。
山域を紅蓮に塗り潰す火炎流は、忽ち激流の氾濫に変貌し、渦巻く激水が一筋の矢と化して中空の伏契を射る。
「龍を水で攻めるとは……愚かッ」
 伏契は思念で水気を操って襲い来る攻撃を止めんとするが、波涛の疾駆は止まらない。
導師アサキムは伏契と同格の地位級アイン・ソフ・オウル。
さらにマモンに埋め込まれた厄災の種で、力と感情が増幅した状態。
水域の王たる龍の神通力とて容易く干渉を受けない。激流の矢は龍の胴を穿つ。
気の均衡が揺らいだ瞬間、屠竜之技を繰り出すエスペラントの剣が伏契の首を刎ねた。
残されし龍の首は胴体と共に山頂へ落ち、悄然とした有様で黄濁する水面に浮かぶ。
「こ、此処で命数、尽きるか……。
栄枯盛衰して万物は一新するが定め。
余の怨嗟と無念を今は勝者の慶福として味わうが良い……次の勝者に己が苦悶を献上するまで。
……我が眷属に遺詔を残す……地の底と湖沼の淵に潜みて殄滅の大禍に備え、此れを越えよ……」
 末期の呟きが水面を幽かに揺らす。
伏契が絶命すると龍の首は急速に朽ち、眼球に刺さった漆黒の矢は実のような珠を八つ実らせた。
変幻のアイン・ソフ・オウルの力が物質化した代物を。
色は伏契の霧と同じで、時に透明であり、時に白みを帯びて濁る。
厄災の種と同様に力の触媒として使え、ただ存在するだけでも周囲の存在に変化を促す性質を持つ。
厄災の種≠フような気の利いた呼称を誰かが付けない限りは変幻の欠片≠ニでも呼ぶべきか。

98 :
 八乙女山を見れば全ての樹木は焼き払われ、激流に引き裂かれた山肌は裾野に至るまで土砂崩れを起こしていた。
水に浸された山頂に立つアサキム夫妻の他に人影は無く、鳥や虫の声すら聞こえない。
遥か上に視線を転じれば、中天の陽とエスペラント。
離れた位置には両翼を広げる青き竜人がディミヌエンドを抱え、宙空に静止していた。
先の伏契が為した攻撃から救い出す意図で、掴み上げたものであろう。
精霊楽師の冷ややかな表情を見るに、感謝の念などは微塵も抱いていないようだったが。
アイン・ソフ・オウルゆえの事なのか、両者とも傷らしい傷は無い。
「英雄症候群を発症した餓鬼の御遊戯、実に楽しめました。
だいぶ拗らせているようで、数え切れないリプレイで擦り切れきったレコードの赴きです。
何故、異界人が必要も無いのに他所の庭へ入り込んで、ウロチョロとするのか疑問でしたが、得心も行きました」
 繊麗な声で微笑する黒の楽師。
「無用な挑発は止せ。今は奴等と敵対するような理由も無い。
此処が空振りだったのを見届けた以上は、もはや用も無いはずだ。戻るぞ」
 竜人は抑制の効いた声で言った。
「怖気づきましたか、ジャック。
それに、いつまで私に抱きついていると言うんです。さっさと離しなさい、この駄竜。
貴方の手を借りずとも、風の精霊を従僕とすれば浮揚など造作もありません」
 ディミヌエンドの喉からバレー音楽、レ・シルフィードの旋律が漏れ、それを無数の風精が唱和。
ふわりと浮き上がった黒の楽師は、応龍の骸と眼窩の小樹を一瞥するが、さして関心も無さそうに目を切った。
随行者をヒールで蹴り飛ばすと空の騎行を始め、西の彼方へ消えて行く。

99 :
>「竜は竜殺しに決して勝てない……それは汝の成心に過ぎぬ。
壺中から蓋を見て、天と確信するが如き蒙昧。
山河に生態、言語に伝承、心体、律法、善悪、常識、森羅万象あらゆるものは変幻せり」
>「悪しき龍はどの物語でも英雄に必ず殺される、か。
水域の王たる龍をドラゴン風情と同視するなど笑止。
悪しき烙印を押されるのは、敗者として破れ去ったがゆえのこと」
「ならばそれが正しいかどうか、貴様を打ち倒して証明すれば良い
それだけの話だ!!」
屠竜之技により確実に竜をR一太刀が首元に入った最中
やはりアイン・ソフ・オウル故の己の世界の力故か土壇場だからこそ本来の死力を尽くした結果か
その一撃を食い止める気―防ぐべく働く強固な圧力と竜を確実にR一撃が拮抗し
それ以上の展開と追従を一切許さない。
「ギリッ!!!!」
あと一歩という所で遮られたのだ、それは絶対なる力でもしやそのまま押し返されてもおかしくは無い
そして長時間になればなるだけ自分にとってはその一秒一秒が自分の命が磨り減らされている
そんな錯覚に陥りながら全身全霊を掛けてその刃を押し進めようと必死でもがく最中
>「…消えな、過去の亡霊…」
>「龍を水で攻めるとは……愚かッ」
地上からはアサキムの放った水気を操る渦巻く激水と伏契はなにやらその一撃の流れを操作しようとしたらしい
しかし力は同格のようでありその一撃は防ぎ切れず直撃、その瞬間竜殺しの一撃とそれを阻む意志が現れた強固な気との
拮抗は揺らぎ、僅かな優勢な力がエスペラントに巡った時拮抗の崩壊を意味する。
屠竜之技の一閃が終えた瞬間、既に応龍伏契の首と胴は既に分断されていた。
そして分断された瞬間、切断された首元から大量の出血が噴出し間近に居たエスペラントはそれを直に浴びながら
断ち切られた首は真っ先に地面へと落下し、共にエスペラントが踏みしめている胴体もそれに遅れて落ちてゆく。
>「こ、此処で命数、尽きるか……。
栄枯盛衰して万物は一新するが定め。
余の怨嗟と無念を今は勝者の慶福として味わうが良い……次の勝者に己が苦悶を献上するまで。
……我が眷属に遺詔を残す……地の底と湖沼の淵に潜みて殄滅の大禍に備え、此れを越えよ……」
「何にでも繁栄と衰退が付き物ということか…そしてこの世界も
ならば抗おう僕の出来る限界までね――自ら断ち切った命だ、忘れもしないしその恨みと無念も同時に背負って僕は前へと進んで生きていく。
死にたくてもRない命だけど、死ぬ時は潔く逝こうもしもあの世で会えるのならまた会おう」
伏契のいう事は世界でもそして人間でも在り得る栄える事も衰えることも誰にでもあること
自分は既に時間が止まっている存在であり、衰えもしなければ栄えることも無い
そんな自分でもいつかはこの応龍がいう通りになるのかもしれない。
更に自分達も何れは敗れ同じことになることと同族に対する最後の命令を残してその命を灯火が消え失せる。
「殄滅の大禍か、これも阻止しなくてはならないな必ず――」
重い胴体部分ゆえ、首よりも早く落ちていき
止めなくてはならないだろうこの現象について決意をしようと最中
盛大に落下し激突した。

100 :
激突と同時に起きた巨大な落下音ととても大きな水飛沫が巻き起こる
山頂と水面に落ちてきたのは巨大な龍の亡骸の胴体から一つの人影が起き上がる。
全身伏契の流血塗れであり、全身真っ赤に染まり上がった一人の男。
「これがジークフリートが倒したファフニールならば僕は完全な不死身になっていただろうね」
それは間違いなく生きていたエスペラントその人である。
しかし今の心情はとても言葉の通りに穏やかじゃなかった
異様に血が騒ぎ、暴れまわりたくてしょうがない
いや正確には他者をもっと傷つけ殺し、そして戦いたいのだ
そんな衝動に駆られて仕方が無い。
「くっそ―副作用が本格的に出てきたのか」
今までの力の行使の代償が今この場に纏めて出てきたのだろう
もう抑えては居られない
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
そして手に持っていた無命剣フツノミタマを振り下ろしひたすら
応龍の躯に突き刺し、それでも足らず振り下ろし其処から連続で切り刻む
其処から先はただただ目の前の死肉を損壊することしか考えられなかった。
「クソクソクソクソクソクソクソ!!!」
そして再度振り下ろした際に右手から何かが突き刺さると頭の中が一瞬真っ白に
全身から力が抜けて膝を付いて倒れる。
それにより《悪なる右手》が通告する。
<感情値が異常測定値を大幅に超えた事を感知、それにより抑制剤を使用しました>
エスペラントはそれにより少し頭がぼうっとするも冷静な思考を取り戻していき
「――フゥ、助かったよこれで冷静に考えられる」
真っ先にその対応に対して素直に感謝を述べた後
たまたま倒れた方向を見ると其処には切断した伏契の首が視界に入る。
そしてその先には目に突き刺した黒い矢からは八つの実が現れていた
「なぜだ…なぜあんな物が生えているんだ?」
<推測ですが、厄災の種が伏契の力を吸収しそれを物質化したと思われます>
「回収しないと不味いな―抑制剤のおかげか思うように立てないや」
<ならばお任せ下さい、私が引き寄せて回収しますので出来るだけ近くに向けて下さい>
《悪なる右手》にそう言われたのでなんとか身体の向きを直して装備している右腕を向けると
《悪なる右手》自体が光り出し、同時に黒き矢に宿りし八つの変幻の欠片も光り始め
一つ一つが突然浮かび、エスペラントの方向に向かい八つ揃うと目前で宙に浮いたまま止まる。


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