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ゲームキャラ・バトルロワイアル Part4


1 :2011/03/16 〜 最終レス :2018/10/17
様々なジャンルのゲームキャラを用いた、バトルロワイアルのクロスオーバー企画、
『ゲームキャラ・バトルロワイアル』のスレへようこそ。

【使用上のご注意】

『ゲームキャラ・バトルロワイアル』には、版権キャラクターの暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
CEROで言えばD辺りに相当するかもしれません。
この作品は『バトルロワイアルパロディ』です。
苦手な方が読むと、後々の嫌悪感の原因となったり、
心や体などに悪い影響を与えたりすることがありますので、絶対におやめください。

☆前スレ
ttp://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1297423778/

☆まとめwiki
ttp://www29.atwiki.jp/gamerowa/

☆したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13051/

参加者名簿
4/7【東方project】
● 霧雨魔理沙/○博麗霊夢/○十六夜咲夜/○レミリア・スカーレット/ ● アリス・マーガトロイド/ ● 風見幽香/○東風谷早苗
3/7【ポケットモンスターシリーズ】
○レッド/ ● グリーン/ ● キョウ/○サカキ/ ● シルバー(金銀ライバル)/○アカギ/ ● タケシ
4/6【ファイナルファンタジーW】
○セシル・ハーヴィ/○カイン・ハイウィンド/ ● リディア// ● バルバリシア/○ルビカンテ/○ゴルベーザ
1/5【メタルギアシリーズ】
● ソリッド・スネーク/ ● ハル・エメリッヒ/ ● サイボーグ忍者(グレイ・フォックス)/ ● リボルバー・オセロット/○雷電
3/5【ペルソナ4】
○瀬多総司(主人公)/○花村陽介/○里中千枝/ ● 天城雪子/ ● 足立透
1/4【星のカービィ】
● カービィ/ ● メタナイト/ ● デデデ大王/○アドレーヌ
2/3【ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
● アイク/○漆黒の騎士/○アシュナード
18/37

2 :
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる
生き残った一人だけが、元の世界に帰る+ひとつだけ願いを叶えてもらえる
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる

【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収
(義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される

「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選択 
 必ずしもデイパックに入るサイズである必要はなし
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムは企画頓挫の火種、注意


3 :
【「首輪」と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ
(例外はなし。不死の怪物であろうと、何であろうと死亡)
開催者側は、いつでも自由に首輪を爆発させることができる
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい
(下手に無理やり取り去ろうとすると、首輪が自動的に爆発し死ぬことになる)
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである
(実際に盗聴されているかどうかは、各企画の任意で
 具体的な方法や、その他の監視の有無などは各企画で判断)
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると、首輪が自動的に爆発する

【放送について】
放送は六時間ごとに行われる。

放送内容
「禁止エリアの場所と指定される時間」
 →出来るだけ離れた地点を二〜三指定。放送から二時間前後で進入禁止に
「前回の放送から今回の放送までに死んだキャラ名」
 →死んだ順番、もしくは名簿順に読み上げ
「残りの人数」
 →現在生き残っている人数。
「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」
 →内容は書き手の裁量で

【状態表について】
SSの最後には必ず状態表を入れ、今どんな状況なのかをはっきりさせる。



4 :
【場所/何日目/時刻】
【キャラ名@作品名】
[状態]:健康とか怪我の具合とか色々
[装備]:武器とか防具とか
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
(支給品を確認したら支給品の名前@作品名を記入。現実世界から出す場合は@現実で)
[思考]
基本方針:ゲームに乗るかどうか等そのキャラが行動する元になる考え
1:
2:1から優先順位が高い順番に行動方針を記入。4とか5とか作っても大丈夫だし減らしてもおk
3:

【使用例】

【A-1/一日目/深夜】
【霧雨魔理沙@東方project】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ポーション×3@FFシリーズ、金属バット@ペルソナ4
[思考]
基本方針:ゲームを止める
1:アリス達と合流する
2:やばそうな相手には自分から関わらない

支給品解説
【ポーション@FFシリーズ】
HPを小回復する液体。

【金属バット@ペルソナ4】
主人公専用の武器だが、他の人でも扱うことは可能かと思われる。
クリティカル率がやや上昇する。



5 :
【予約について】
予約はしたらば(ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13051/1254284744/)で行います。
予約する人はトリップをつけて「○○(キャラ名)と××を予約します」と書き込んで下さい。
予約期間はは原則として5日です。事情があったりするときは追加の延長(2日程)もできます。
延長したい場合は、再び予約時と同じトリップをつけて延長を申請して下さい。
が、延長を連発するのは避けて下さい。
何らかの理由で破棄する場合も同様です。キャラ追加予約も可能です。

予約期限を過ぎても投下されなかった場合、その予約は一旦破棄されます。
その時点で他の人がそのキャラを予約する事が出来るようになります。
また、前予約者も投下は可能ですが、新たな予約が入った場合はそちらが優先されます。

【荒らしについて】
荒らしや煽りは徹底スルーで。どうしても目にとまるのなら
専用ブラウザを導入してNG登録すること。


6 :
スレ立て乙です
では続きを投下します

7 :

◇◇◇
その村は不気味な程に閑散としていた。
ホラー映画の舞台になっていたと聞かされても何の違和感もなく納得するだろうなと雷電は思った。
当然、人が住んでいる気配などない。
「ひどい場所ですね! ずっとこんなところにいたら息が詰まりそうです!」
全員の気持ちを代弁するように早苗は言った。
「幻想郷とやらも、こういう所ではないのか?」
「こんなお化け村と一緒にしないで下さい! 幻想郷はもっと活気がありますよ。ね? 霊夢さん」
霊夢はちらりと早苗を一瞥したが、すぐに黙って前を向いた。
早苗は思わず俯いた。
サカキの説得もあって、霊夢は二人に敵意を向けることはなくなったが、やはり未だに心を許してはいないようだ。
「あ、あー……、そうだ。ここから脱出できたら、その幻想郷とやらに行ってみてもいいか? 少し興味があるんだ」
雷電が場の空気を変えようと話題を変えた。
早苗はぱっと明るくなって、すぐにそれに飛びついた。
「大歓迎です! 雷電さんなら神奈子様や諏訪子様も気に入ってくれます!」
「神奈子と諏訪子。神だとか言ったな」
アカギが前を向いたまま言った。
「はい、そうです。あ、言っておきますが、私だって神様ですよ。現人神というやつです!」
自慢げに早苗はそう言った。
「信仰を命とする神。人よりも上に位置する存在でありながら、人に依存しなければ生きていけない。……フフ、幻想郷という世界は面白いな」
嘲笑するようなアカギの言葉に早苗はむっとするも、肩に置かれたサカキの手によってその気持ちは萎んでいった。
雷電は、その様子を見て少なからずサカキを見直していた。
彼はこの短時間で、早苗という女性の人格を正確に見抜いていた。彼女がどんな発言に腹をたてるのかをよく理解している。
雷電でさえ彼女の特殊な思想には未だ馴染めていないというのにだ。
「確かに幻想郷は面白い場所だな。一度でいいから神という存在に会ってみたいものだ」
「まったくその通りだな」
サカキとアカギはそう言って笑う。仲が良いのか悪いのか、傍目からはよくわからなかった。
「……あの、それで……霊夢さん。少しは思い出しました?」
「思い出すも何も、私はアンタなんか知らない。神奈子や諏訪子なんて神も聞いたことない」
つっけんどんなセリフ。
見かねて雷電が口を挟んだ。
「早苗。気持ちはわかるが、あまり無理強いはしない方がいい。こういうことはじっくり時間を掛けた方が──」
「私は記憶障害なんか起こしてない! いたって正常よ! ただ気付いただけ。サカキ様が私にとっての神だって。……サカキ様。本当なんです。信じて下さい。私は……」

8 :
支援

9 :
「分かっている。だからそんな心配そうにしなくていい。私は霊夢を信用している」
「ディアルガによって時間軸の違う人間を殺し合いに参加させているんだろう。厳密に言うなら、ここにいる霊夢は早苗の知る霊夢ではないということだ」
それは村に向かう道中にアカギから聞いた話だった。
伝説のポケモンといわれるもので、今のところ現在の状況を説明できる唯一の存在。
時間移動と空間移動を行うディアルガとバルキアを使えば、世界創世さえ可能だとアカギは言っていた。
何故最初にそのことを言わなかったのかと雷電は詰問すると、
「ポケモンという存在を信じてもらってからでないと、話しても意味がないと考えた。下手に話しても、よりポケモンに対する理解を遠ざけ、混乱するんじゃないかと思ってな」
と、至極当然のように言っていた。
確かにその通りだし、その情報を開示するタイミングも、霊夢の状態を考えれば完璧といえるだろう。
彼女は自分が正常だと考えている。だからこそ、他者から記憶障害だと言われれば当然のように反発する。それは霊夢を刺激し、いらぬ争いを生む元になりかねない。
アカギの説明に早苗は未だ半信半疑のようだ。しかし、サカキも信じたその情報に、霊夢は一応納得している。今重要なのはその一点だ。
「だが、わざわざそんなことをする必要性が感じられないな」
「案外、今のような状況を楽しむため、という風にとれなくない」
「そうなると、主催者はかなり遊び心の持った者というわけか」
ペラペラと喋る二人。最初に会った頃の確執などなかったかのようだ。
そのころころと変わっていく話題についていけず、自然と他の三人は閉口した。

10 :
支援

11 :


それに最初に気付いたのはサカキだった。
「何かが光っている」
村の中を歩いていると、突然サカキがそう言ったのだ。
彼の指さす方向を全員が見つめる。確かに、何かがぼんやりと光っている箇所があった。どうやら建物が光を放っているようだ。
すぐに行ってみようということになり、五人はその光が放出する場所へと向かった。
そこは神社だった。
早苗と霊夢は懐かしそうに辺りを見回し、他の三人は物珍しそうに周りを観察する。
鳥居を潜り、しばらく歩いたところにある本殿。光っていたのはそこだった。
奇妙なことに、その光は電球などによるものではない。まるで本殿が意思を持って光を放っているように、建物全体が薄ぼんやりと輝いていた。
「……私が行こう。皆はここで待っていてくれ」
そう言って、サカキが拝殿へと足をかける。
「あ! 土足で足を踏み入れるとは何事です!」
「私もお供します! 一人では危険です!」
同じ巫女でもまったく違う反応をみせる。
だがどちらかといえば早苗の方が巫女らしい。霊夢は本殿が踏み荒らされることもまったく意に介していない様子だった。
「……早苗。今はそんなこと言ってる場合じゃない。それに、こんな古ぼけた神社に神様がいるとは思えないが」
雷電の素朴な疑問に、早苗はふふんと鼻をならした。
「どれだけ社が廃れていようと、神を祭る場所には神が宿るものなのです。神棚だって、大きさは違えどその性質は神社と同等のものです。当然神様は宿ります」
「……こんな場所にも神がいるというのか?」
「正確には分霊というものですね。他の場所で祭っている神を招き寄せてその力を借りているのです。分霊しても神の力は衰えることがありませんから、実質的には本家と同じだけの神徳が得られるというわけです」
「つまり、ここに神がいるわけではないが、その力はある……と?」
「んー……、まあそういうことです!」
どこか曖昧だったが、彼女は言い切った。
「なるほど。随分と便利なものだ」
アカギにとってむしろ感心したのは、今まで馬鹿な行動しか目に映らなかった早苗が比較的まともな知識を披露していることだった。
「わかった。靴を脱ごう。これで問題ないだろ?」
サカキは素足で拝殿へと足を踏み入れる。
「霊夢。お前は皆と共に待っていろ。心配するな。おそらく誰もいないだろう」

12 :
支援

13 :


本殿の中を少し探索すると、サカキの目当てのものをすぐに見つけることができた。
「……ふん。案の定か」
そこにはクリスタルがあった。どういう原理かはわからないが、光を放ち、その場で浮遊している。
「二つ目。やはり何か意味があるらしいな。これには」
意味のないものが二つも用意されているとは思えない。おおかた、いくつか集めることで効果が発揮されるアイテムなのだろう。
サカキはそれを躊躇することなく手に取ると、そのままバックの中に入れた。
「……誰だ?」
それは直感だった。根拠があったわけではない。しかし、その場に誰かがいるような気配がしたのだ。
「姿を隠している者が、誰だと聞かれて正体を明かすと思うか?」
どこからともなく声が聞こえる。
いる。何者かがここにいる。姿が見えないだけだ。
支給品の効果か? いや、姿を隠さなければならないような参加者が近くにいるというのなら、既に自分の命はない。
もしや……
「しかしそれでも明かすのが私流だ」
何もないところから男が現れた。
サカキからすれば、それは魔法のような光景だった。
「……それで? わざわざ参加者に接触した理由を聞こうか」
内心の興奮を抑え、サカキは言った。
「大した理由ではない。少し、貴様の持つそれを調べたかっただけだ。どうだね? しばらく預けてはもらえないか。ほんの十分もしない内に用事は終わる。この機会を逃せば何かと面倒なんでね」
これほど心の内の読めない男をサカキは見たことがなかった。
敢えて参加者という言い回しをしたことについても、わざと姿を現したのではないかというこちらの読みに対しても、一言の感想も言わない。
サカキは迷うことなくクリスタルを男に投げ渡した。
「良い判断だ」
にやりと男は笑い、その場に座り込むと一人作業をし始めた。
ゴーグルを装着し、奇妙な機械でクリスタルを入念に調べている。
「何も言わずに渡してくれた礼だ。聞きたいことを教えてやろう。調べている間だけだがな」
サカキに躊躇も遠慮もなかった。
「貴様達の目的は何だ?」
「私は雇われた身に過ぎん。崇高な目的とやらは、神にでも聞くんだな」
「神? この神社のか?」
「いいや。この世界の主さ」
その言葉に、サカキはますます引きこまれた。
「このクリスタルには何の意味がある」
「四つ集めたら真実を知ることができる、とだけ言っておこう。今はそれ以上の付加価値があるかもしれんがな」
「それを調べるために?」
「お前の考えている通りだよ」
これで三つの重要な話が聞けた。
敵は神で、ここは神の世界。そして、神の中にも不信得者がいるということ。
「一つ目はレッド。二つ目はアシュナードという狂王が持っている。三つ目は……未だ誰の手にも渡っていない。これも含めて計四つだな」
聞いてもいないのに男は重要な情報を喋ってくれた。どうやら自分を気に入ってくれたようだ。
好都合である。
「何故そんな重要な情報を参加者である私に教える」
「雇い主は公平な闘争をお望みだ。一方の力が強ければ、もう一方を強くする。色々と予期せぬ事態が続いたのでな。情報がとあるチームに流れ過ぎた」
「……公平な闘争を私が助長すれば、こちらに得はあるか?」
初めて、男は黙った。
「私を雇え。使えるぞ。私は」

14 :
支援

15 :


本殿の中を少し探索すると、サカキの目当てのものをすぐに見つけることができた。
「……ふん。案の定か」
そこにはクリスタルがあった。どういう原理かはわからないが、光を放ち、その場で浮遊している。
「二つ目。やはり何か意味があるらしいな。これには」
意味のないものが二つも用意されているとは思えない。おおかた、いくつか集めることで効果が発揮されるアイテムなのだろう。
サカキはそれを躊躇することなく手に取ると、そのままバックの中に入れた。
「……誰だ?」
それは直感だった。根拠があったわけではない。しかし、その場に誰かがいるような気配がしたのだ。
「姿を隠している者が、誰だと聞かれて正体を明かすと思うか?」
どこからともなく声が聞こえる。
いる。何者かがここにいる。姿が見えないだけだ。
支給品の効果か? いや、姿を隠さなければならないような参加者が近くにいるというのなら、既に自分の命はない。
もしや……
「しかしそれでも明かすのが私流だ」
何もないところから男が現れた。
サカキからすれば、それは魔法のような光景だった。
「……それで? わざわざ参加者に接触した理由を聞こうか」
内心の興奮を抑え、サカキは言った。
「大した理由ではない。少し、貴様の持つそれを調べたかっただけだ。どうだね? しばらく預けてはもらえないか。ほんの十分もしない内に用事は終わる。この機会を逃せば何かと面倒なんでね」
これほど心の内の読めない男をサカキは見たことがなかった。
敢えて参加者という言い回しをしたことについても、わざと姿を現したのではないかというこちらの読みに対しても、一言の感想も言わない。
サカキは迷うことなくクリスタルを男に投げ渡した。
「良い判断だ」
にやりと男は笑い、その場に座り込むと一人作業をし始めた。
ゴーグルを装着し、奇妙な機械でクリスタルを入念に調べている。
「何も言わずに渡してくれた礼だ。聞きたいことを教えてやろう。調べている間だけだがな」
サカキに躊躇も遠慮もなかった。
「貴様達の目的は何だ?」
「私は雇われた身に過ぎん。崇高な目的とやらは、神にでも聞くんだな」
「神? この神社のか?」
「いいや。この世界の主さ」
その言葉に、サカキはますます引きこまれた。
「このクリスタルには何の意味がある」
「四つ集めたら真実を知ることができる、とだけ言っておこう。今はそれ以上の付加価値があるかもしれんがな」
「それを調べるために?」
「お前の考えている通りだよ」
これで三つの重要な話が聞けた。
敵は神で、ここは神の世界。そして、神の中にも不信得者がいるということ。
「一つ目はレッド。二つ目はアシュナードという狂王が持っている。三つ目は……未だ誰の手にも渡っていない。これも含めて計四つだな」
聞いてもいないのに男は重要な情報を喋ってくれた。どうやら自分を気に入ってくれたようだ。
好都合である。
「何故そんな重要な情報を参加者である私に教える」
「雇い主は公平な闘争をお望みだ。一方の力が強ければ、もう一方を強くする。色々と予期せぬ事態が続いたのでな。情報がとあるチームに流れ過ぎた」
「……公平な闘争を私が助長すれば、こちらに得はあるか?」
初めて、男は黙った。
「私を雇え。使えるぞ。私は」

16 :
しむらー!同じレスだそれはー!

17 :
ふっと男は笑う。
「その自信といい、遠慮のなさといい、なかなか気に入った。だが、私の一存では決められん」
男の目的が闘争にあるというのなら、ここは事実がどうであろうと雇うと言うべきところだ。それだけのことを考える頭をこの男は確実に持っている。
これは男にとっての信用の証。そうサカキは捉えた。
「貴様の部下になることも、私は一切異論ない。どのような任務が下されようと、私なら応えられる」
「任務は何者かが下すものではない。時代が、世界が全てを決めるのだ。誰もが流動する相対敵と戦っている」
「貴様にとって今の敵が、ここにいる参加者というわけか?」
「現段階で、我々の目的はほぼ達成している。それでも尚このゲームを続けるのは、色々と思惑が錯綜した結果だといっていいだろう。要するに──」
突然、男の言葉が止まった。
「なんだ? 何か見つけたのか?」
「……クックック。これはこれは。雇い主には……やはり報告するべき問題だな」
男は機械やゴーグルをしまうと、クリスタルをサカキに手渡した。
「非常に助かった。おかげでいらぬ手間を取らずに済んだ。改めて礼を言おう」
「礼などいらん。私のことを、その神とやらに言い含めてくれたらそれでいい。少し色をつけてもらうと個人的には嬉しい限りだがね」
「優勝者を決める必要性はない。我々はただ殺し合わせたいだけなのだ。できるだけ醜く、できるだけ無様に。その過程で人が死ぬのなら好都合。とまあ、そう考えている。
……とりあえず、お前に教えられるのはこれくらいだ。これらの情報を知り、どう動くかはお前次第。お前にとっての相対敵が何者なのか。次に会う時までにその答えを用意すると言うのなら、雇い主には私が進言してやろう」
男は携帯のような小さな端末を投げ渡した。
「雇い主からの情報提供だ。せいぜい賢く使え。あくまで生き残るためにな」
端末を操作すると、現段階で生きている参加者が表示された。さらにそのプロフィール。各参加者の最新のスタンス。様々な有益な情報がこの端末には詰まっていた。
「……その助言は貴様の意思か?」
「言っただろう。私はお前を気に入ったとな。下手なことをして死なれれば、……まぁ寝覚めくらいは悪くなる。快適な睡眠は健康維持に必須だろう? 私もこれで、けっこう歳なのだよ」
数秒間、互いに見つめ合う。それは腹の探るための僅かな時間といってもよかった。
「了解した。お前の求めるものと相容れるかどうかは知らんが、その答えは用意しておこう」
「雇い主の機嫌次第では、早い段階からお前を引き入れることを了承するかもしれん。せいぜい精進するがいい」
男はそれだけ言い残すと、再び何事もなかったかのように消えてしまった。
今度は気配も掴めない。完全にこの場からいなくなったようだ。
「……けっきょく、何が目的なのかは読み切れなかったか」
わざわざ隠さなければならないほど、雇い主の目的は秘密裏に行うべきものなのか。それとも……
「っと。さすがに時間を食い過ぎたな。そろそろ戻るか」
一応、今の同行者達のプロフィールを確認し、サカキはその端末をしまった。

18 :
支援

19 :


「どうだった? 随分と時間が掛かったようだが」
何食わぬ顔で帰って来たサカキに、アカギが言った。
「何も問題はない。探索に時間が掛かっただけだ。まさかただの結晶体があっただけだとは思わなかったのでな」
そう言って、クリスタルを取り出して見せる。
「これが光っていただけだ。大したことではない」
「何だこれは?」
「さあな。我々の走光性を利用して、バトルロイヤルでもさせたかったんじゃないか?」
「ふん。私達は虫だというわけか」
「少なくとも主催者側から見れば」
「……それ、持っていくのか?」
雷電の問いに、サカキは頷いた。
「何が必要になるかわからんからな。まぁ、最低でも懐中電灯の代わりにはなるだろう」
けっきょくサカキは、予期せぬ来訪者のことは誰にも言わずじまいだった。

ずっと歩き通しだったため、休息を取ろうということになり、近くの民家へと五人は入った。それなりに広く、部屋も四つほどある。
主催者側の趣向なのか、日本風の家の中に丸テーブルや椅子が置いてあり、かなり浮いたインテリアとなっていた。
「お邪魔しまーす!」
大声で早苗は言った。
変なところで律儀である。
雷電が適当に棚を開ける。そこには今まで誰かが住んでいたかのように、服が丁寧に畳まれていた。
「色々と物資が調達できそうだな」
その言葉を皮切りに、全員で家の中を物色をすることになった。
各々が自分の興味ある場所を調べる。五人もいれば、すぐに必要なものは揃うだろう。
「……サカキ。ちょっといいか?」
サカキが一人で棚を調べていると、ふいに雷電が声をかけた。
「何か見つかったのか?」
「いや、そういうわけじゃなく……その、アカギのことなんだが」
「アカギ? 彼がどうした」
サカキが視線をアカギに向ける。彼はちょうど、奥の部屋へと入って行ったところだった。
「正直言って、俺はあいつを信用していない」
「……それはまた唐突な告白だな。共に行動していた仲間だろう?」
「俺と早苗はアカギと会ってすぐにサカキ達と出会った。だから……」
「時間が浅いから信用できないと?」
「そうじゃない。実を言うと……」
サカキは雷電から事のあらましを聞いた。
ポケモンを使うアカギを早苗が妖怪だと判断したこと。その彼女を黙らせるためとはいえ、非情な行動に出たこと。殺しを厭わないと明言したこと。
そして、何か別の目的があるのではないかということまで。
「……確証がないな」
しかし、サカキはそう言って雷電の言葉を否定した。
「確かに私は、最初彼に疑われたりもした。しかし、それはこの場においてはごく自然な考え方だ。
殺しを厭わないというのも、君と違い、自分の身を守る力がない我々にとって最低限の覚悟といえる。誰も好き好んで人をRわけじゃない。だからこそ、早苗君も生きている。そうだろう?」
サカキの言葉は正論過ぎるほど正論だった。
雷電は、アカギがサカキを怪しいと言った時、ただの印象だと言って相手にしなかった。しかし、それは自分も同じだ。アカギが何か別の目的の為に動いているという考え方は、ただの直感に過ぎない。言うなれば、それもただの印象だ。
「確かに……考え過ぎていたのかもしれない」
「早苗君が大事なのはよくわかるよ。だが、常に視野を広めておかなくてはならない。そうしなければ、また妖怪にしてやられるかもしれんぞ。なにせ、妖怪というのは人と大差ない者までいるくらいだからな」
「……ああ。悪かった。突然こんなことを言い出して」
「仲間の心理状況を確認するのは重要なことだ。むしろ、よく打ち明けてくれたと礼を言いたいくらいだよ」
そう言ってサカキは笑った。
「あ、いや……。そう言われると立つ瀬がないな」
雷電は苦笑して礼を言うと、早苗のところへと戻って行った。

20 :
支援

21 :


「妖怪退治の基本はやはり問答無用が一番です!」
「まあね。いちいち相手の話聞くのも面倒だし」
「……いや。やっぱりそれは聞くべきじゃないか?」
早苗がいつもよりテンション高め(普段から高いのだが)に話し、それを軽い調子で霊夢が受け返す。
最初に出会った頃の気まずさはいつの間にかなくなっていた。
ディアルガによる時間移動が記憶違いの原因だということを霊夢が信じ、サカキが地道に説得を繰り返した結果だ。
それに何より、霊夢にとって自分と同じ境遇の者というのはどこか親しみ深いものがあったのだろう。
二人の会話は時折ついていけないこともあったが、雷電は微笑ましい気持ちで見守っていた。
サカキとアカギはこの場にいない。二人で話し合いたいことがあるということで、別室にいるのだ。少し気にはなったが、霊夢のことも含めたより深い情報交換だという意見に納得し、今はこうして早苗と二人で霊夢の面倒を見ている。
サカキのいない所での霊夢は至って普通だ。これも彼を支えにしている結果だとは分かっていても、その自然な振る舞いを見ていると、案外病気もすぐに治るのではないかと、そんな甘い期待をしてしまうのだった。

ところかわって、別室。
大きな丸テーブルを挟んで、二人は対峙していた。
その椅子の座り方だけでも対照的。
サカキはどっかりと座り、マナーもへったくれもなく足をテーブルに置いている。棚から見つけ出してきた葉巻を吸う姿はどこからどう見ても悪人のそれ。
対してアカギは針ほどの隙も見せない心構えで静かに座っている。
「貴様のおかげで随分とやりやすかったぞ。アカギ」
みなまで言わずとも分かる。サカキがこれほどまでに素早くグループに溶け込めたのは、アカギの悪印象が早苗と雷電にとって強過ぎたからだ。
「その態度を見る分には、やはり私の事を知っているようだな」
「噂程度には。貴様の地方にはあまり詳しくない」
アカギの組織は、宇宙エネルギーの開発を掲げているが裏では伝説のポケモンを使って新たな世界を創世しようとしている。裏の世界に精通するサカキは、ここに来る以前からアカギがどうしようもない企みを胸に抱いていることを知っていた。
「私は詳しいぞ」
アカギはあくまで表情を変えずに口を動かす。
「ロケット団を結成し、世界を震撼させた一人の男、サカキ。突然姿を消した謎の男。トキワジムのリーダーがその男であったことに世間が気付いた当時はかなりセンセーショナルだったぞ。ジムリーダーは厳選されたポケモン使いの称号だからな」
「奴らの情報網はザル同然だ。貴様も同じ穴のムジナならわかるだろう?」
「確かに。だがそのため我々のような人間は力をつけることができた」
一瞬の沈黙。
もう立て前は必要なかった。
「うまく仕込んだな」
「霊夢のことか? ふん。まだまだだ」
「しかし、よく調教されている。何より、命令に逆らわないところがいい。私の駒はどれも駄目だ」
「やり方が悪い」
「君のようにはできんさ。どうやってあんな便利な道具を作った? 後学のために教えてくれ」
どうしようかとサカキは迷う。が、褒められるのは嫌いじゃない。
サカキは自分の左手を見せた。
「……小指がないな。確か、霊夢も同じ傷を」
「私がつけた」
アカギが目を細める。
「奴に恐怖というものを心底植えつけてやった。その上で、私が恐怖を克服する様を見せつけてやった。一発だったよ。何とも打たれ弱い女だ」
正確にいえば、何にも捉われないという霊夢の基盤ともいえる性格があった結果だった。
多少なりとも恐怖というものを今までに抱いたことがあったのなら、これほど簡単に折れたりはしなかっただろう。
何にも縛られず、負の感情に囚われたことのない霊夢だからこそ、短時間であれだけの人格矯正ができたのだ。
「まさかそんなことで……」
アカギは言葉をなくしてしまっているようだ。
「ククク。支配者足る者、道具の一つも作れないでどうする」
「……君はそういう発想をする人間か」
「当たり前だろう? 部下は大事にするが、命令を遂行するだけの道具には利用する以外に価値はない」
「では、どうして身を挺して彼女を庇った?」
「ああいう腑抜けた奴らには、お人好しの仮面を被った方が効果的だ。早苗と霊夢が知り合いだということも含め、かなりの好印象に繋がると踏んだ」
抜け目ない奴め。
アカギは内心そう罵倒した。

22 :
支援

23 :
「……君のスタンスを聞いておこうか」
「脱出の手段は多いに越したことはない。そして、一番効率的なのが優勝であるという事実は誰にも曲げられん。要はそういうことだ」
「なるほど。多少ニュアンスは違えど、だいたいは私と同じか」
「ディアルガの件は一応礼を言っておこう。貴様にとっての切り札だったのだろう?」
「君が現れた時点でその優位性は崩れたよ」
ディアルガとバルキアの件は、自分一人が知っていてこそ優位を保てるものだ。サカキが他の二人にばらしてしまう可能性がある以上、もはやそれは切り札とはいえない。
サカキがどの時間軸からここに呼ばれたのか。それはアカギには分かりようのないことだ。
もしかしたらディアルガ達のことは知らなかったのかもしれない。しかし、そんな小さな可能性に賭けて黙っておく程の情報ではない。
情報を渋るのは、その行為がばれないという確信があってこそするものだ。ばれてしまえばそれだけで不審感を抱かれることになる。それはあまりにもリスクが高い。
「殊勝だな。しかし、貸し借りはもうなしだ。あの雷電とかいう小僧を戒めてやったからな」
「戒める?」
怪訝そうにアカギは聞いた。
「貴様が怪しい、だそうだ。どうする? 私としてはここで殺しても一向に構わんぞ。戦力はもはや充分過ぎるほどにある」
「……彼でなく私を取るということか」
その言葉に、サカキはクックと笑った。
「どちらが有能かは明白だろう? 早苗は霊夢が抑える。奴に固執する理由はないな」
「下手な行動は取らない方がいい。さしたる障害にはならない。君がそのように戒めてくれたのだろう?」
「なかなか冷静じゃないか」
「私は神になる男だからな」
アカギはそう言ってにやりと笑う。
つられて、サカキも笑った。
それは交渉成立の証だった。
「先程、主催者側からの干渉があった」
端末をテーブルの上へ置いてアカギの方へと滑らせる。アカギはそれを手に取ると素早くモニターを表示させた。
「……先程、私のことを詳しく知らないと言ったのは嘘ということか」
「当然だ。簡単に手の内を明かす馬鹿がどこにいる」
サカキは、これまでに自分が得た情報を全てアカギに話した。
クリスタルのこと。主催者側にいる男のこと。その男の会話から得た情報のこと。
「奴は優勝に拘らないと言っていた。つまり、うまく動けば複数人でも生き残れるということだ。どうだ? 最高のカードだろう?」
「ああ。最高だ。全財産をベットしても申し分ない程にな」
アカギは端末をサカキに返した。
二人は立ち上がった。
サカキは葉巻の火を靴で消し、適当な場所に捨てた。
「その葉巻。吸わないのか?」
「親切なおじさんを演じるには、少しばかり印象が悪い。ストックはちゃんと持っているがね」
「……まったく。マメなことだな」
扉を開け、談笑していた三人に向けてアカギは言った。
「もうしばらく休憩してからここを出よう。今のうちに準備をしておいてくれ」

24 :
支援

25 :


「サカキさん。ポケモンって本当に妖怪じゃないんですか?」
サカキが雷電と早苗を呼び寄せると、開口一番に彼女が聞いてきた。
「定義は人それぞれだ。君がポケモンというものがどういうものか分からないように、私にも妖怪というものが何なのか分からない」
「はあ。……うーん。じゃあけっきょくよくわからないままってわけですか」
「そうでもないぞ。たとえ妖怪でも、有効活用はできると考えてはどうだ?」
「有効活用?」
「ポケモンはモンスターボールに入れれば所有者の言う事を忠実に聞いてくれる。たとえポケモンが妖怪だとしても、妖怪退治に使ってはいけない理由はあるまい? むしろ、両者で凌ぎを削ってくれる方がこちらとしても好都合」
「なるほど! さすがはサカキさんです! 頭良いです!!」
早苗的に、その理屈は納得のようで、今にも拍手しそうなくらいに新たな発見を喜んでいた。
こっそりと雷電がサカキに耳打ちする。
「正直助かった。どう説得すべきか迷っていたんだ」
雷電のその言葉に、サカキは笑みを浮かべて小さく頷いた。
「それで霊夢のことだが、アカギと相談して決めたことを君達にも守ってもらいたい。簡単に言うと、あまり彼女を否定せず、刺激を与えないようにサポートするというものだが、一応君達の同意を得てからにしたいと思ってな」
「無論反対などしない」
「私もです! 霊夢さんが治る為なら何だってしますよ!」
「……助かるよ。本当に、出会ったのが君達でよかった」
その言葉に、二人は暖かい笑顔で応えた。
「そういえば、アカギはどうした?」
「霊夢を襲った人間について本人から話を聞きたいそうだ。大丈夫。彼はやり方を心得ているよ」

26 :
shienn

27 :

◇◇◇
「霊夢。少しいいか?」
サカキと早苗、雷電が別の部屋で話し合っている時、ふいにアカギがそう声をかけた。
サカキ達は、アカギと決めた霊夢の対処などについて話し合っている。無論、霊夢には知らされていない。彼女はただサカキに待っていろと言われたから待っているだけだ。
「……何?」
霊夢はアカギをあまり好きになれなかった。サカキと同じ、いや時にはサカキ以上にリーダーとして場を取りまとめる様は、霊夢にとってあまり面白い光景ではなかったのだ。
霊夢にとって、サカキは神。全てにおいて絶対の存在。そのサカキよりも上に立とうとするアカギを本能的に嫌うのは当然といえる。
「そう邪険に扱わないでくれ。少し君に話しておきたいことがあっただけだ」
「悪いけど、今は気分じゃないの。そういう話は──」
『貴様のおかげで、随分とやりやすかったぞ。アカギ』
突然、サカキの声が聞こえ、霊夢は目を見開いた。
アカギの手には四角い機械が握られている。
「テープレコーダーだ。録音した音声を聞くことができる。君には少しショックな内容だが、伝えておいた方がいいと思ってね」
このテープレコーダーはサカキと合流する以前、早苗から譲り受けたものだった。
「……一体何なの。あなたとサカキ様がどういう会話をしたのかは知らないけど私は……」
「いいから黙って」
それでも文句を言おうと口を開くが、テープから流れる内容が核心に近づくにつれて、段々と閉口していった。
『奴に恐怖というものを心底植えつけてやった。その上で、私が恐怖を克服する様を見せつけてやった。一発だったよ。何とも打たれ弱い女だ』
『まさかそんなことで……』
『ククク。支配者足る者、道具の一つ作れないでどうする』
霊夢の冷え切った表情。それが驚愕へと変わっていった。
『……君はそういう発想をする人間か』
『当たり前だろう? 部下は大事にするが、命令を遂行するだけの道具には利用する以外に価値はない』
霊夢の手が震えているのが、アカギにもわかった。
「で、でも……サカキ様は……私を庇ってくれた。だから──」
『では、どうして身を挺して彼女を庇った?』
『ああいう腑抜けた奴らには、お人好しの仮面を被った方が効果的だ。早苗と霊夢が知り合いだということも含め、かなりの好印象に繋がると踏んだ』
霊夢の言葉は、もはや紡がれることがなかった。
「……まさかと思っていたんだ。それで、少し引っ掛けてみた。……残念だよ」
そう。アカギは、サカキと共同戦線を組むつもりなど鼻からなかった。
あの交渉の場は言うなればブラフ。
こちらに協定の意思があると見せかけ、霊夢を瓦解させるだけの言葉と、サカキが持つ情報を得るためのもの。
アカギにとって、サカキの存在は邪魔以外の何物でもない。
雷電達の信頼を即座に得る演技力。人を束ねるに足る手腕。何よりも恐ろしい人心掌握術。
アカギには、もはやサカキはデメリットしか生まない存在だった。
サカキは優秀だ。しかし、優秀過ぎる人間は時に毒となる。
自分以上に駒をうまく使える人間はいてはいけないのだ。
「君にとって、あの男は神だった。しかし、彼は君を何とも思っていない。君を道具としか考えていない。……彼は、君にとっての全てだったのに」
「……せ……ない……」
「そうだ。もはや、君の精神を繋ぎ止める方法は一つしかなくなった。……いいんだ。全てを解き放てばいい。君は何も悪くない。悪いのは、君を騙したあの男だ」
霊夢がサカキをR。そして、サカキを殺した霊夢を私がR。これで不確定要素は全て消える。
目の前で人を殺した人間をR。正義はこちらにあるのだ。早苗はともかく、雷電なら理解するだろう。
扉の隙間から、サカキの背中が見える。無防備な背中が。
さて。あともう一言、彼女に殺人へと漕ぎ出すための勇気を与えよう。
「大丈夫。誰が何と言おうと、私が君を許そう。私が……君の神になろう」
霊夢は、自分のデイバックから鋭利な包丁を取り出した。刃物恐怖症を治すために、自分の意思でバックにいれた包丁。刃物を克服し、サカキに褒められようと思っていた包丁。
(悪いなサカキ。主催者に関する情報はありがたく頂いておく。新世界の礎となってくれ)
アカギは、極上の笑みを浮かべて心の中で黙祷した。

28 :
支援

29 :

◇◇◇
「霊夢はそれなりに自尊心が高い。彼女を怒らせるようなことは極力控えよう。たとえ冗談であってもな。そうやって、徐々にこちらが導いていけばいい。時間は掛かるだろうが、正常に戻る可能性はある」
「わかった。大した協力はできないかもしれないが、俺にできることなら喜んで力を貸す。何かあれば言ってくれ」
サカキは雷電に礼を言うと、早苗と向き合った。
「早苗君。君はさっきのように、できるだけ彼女の話相手になってやってくれ。何だかんだと言っても、やはり似た境遇の君には親近感があるようだ」
「任せて下さい!」
そう言って敬礼する早苗に、サカキは微笑んだ。
「ああ。頼りにしている」
ふいに、扉が開く音が聞こえた。
サカキが振り向く。
その隙間から、入って来るのが霊夢だとわかる。
「どうした? 待っているように言っておいたはずだが。何か問題で……も……」
サカキの言葉は、途中で掻き消えた。
早苗は思わず手で口を覆い、雷電は驚愕で身動き一つできない。
ぎらりと光る包丁。それを霊夢は手に持っていた。

そこには、血濡れの博麗霊夢がいた。

「霊……夢。何だ……それは?」
やっとの思いで、サカキは口を開いた。
「ああ、サカキ様! 見て下さい。ほら、これ」
そう言って霊夢は血がべっとりとついた包丁を見せつける。
奥の部屋には、仰向けで倒れているアカギの姿が見えた。
「克服したんです。ほら! もう全然平気なんです!」
興奮冷めきらぬ様子で、ぶんぶんと包丁を振り回す霊夢。頬についた血が、鈍く光っている。
雷電は、その様子を見て思わずぞっとした。
「本当は誰よりも先にサカキ様に聞いて欲しかったんですけど、お忙しいようでしたから……。でもちゃんと敵は殺しました! 
ほら見て! 見て下さい! 私がやったんですよ。この手で、この包丁で殺したんです。凄いでしょう!? 
ああ、本当に……どうしてあんなに怖がってたのか不思議なくらい。とても自信がつきました。恐怖なんてもうありません。どんな敵が来てもサカキ様を守れます!」
ぺらぺらと口早に喋る霊夢。その嬉々とした様子は、まるで子供のそれだ。
「……あ、ああ。そう……か。それは……」
戸惑いがちに近寄り、ぽんと肩を叩く。
「つ、疲れただろう。雷電達と少し休息を取るんだ。服もこんなに汚れてしまっている」
「ああ。そうですね。確かにこの格好じゃ、他の参加者と出会うと何かと不便です。近づいてくれないと刺し殺せないですもんね」
そう言って笑う霊夢。その笑顔は純真無垢なものだった。
「雷電。任したぞ」
雷電は声すら出せず、その場で頷いた。
「……大丈夫。治療に関する最低限の知識は持ち合わせている。彼女が暴走しないように見張っていてくれ」
雷電にだけ聞こえるように呟き、慌ててサカキは部屋へと駆け込んだ。

30 :
支援

31 :

ぱたん
ドアを閉め、先程まで急いでいた様が嘘のようにゆっくりと血まみれの男に近づいた。
「勘違いするな。別にお前を嵌めたわけじゃない。貴様が勝手にしっぺ返しを食らっただけだ」
アカギは生きていた。腹を刺され、血が噴出しているが、必死にその箇所を押さえている。
「……残念だ。本当に残念だよ、アカギ。君なら私の部下になれたのに。幹部になっても差し支えない能力を持っていたのに」
サカキはあくまでゆっくりとした動作で、アカギのバックから医療道具を取り出す。
「……い、いつ……霊夢に……指示……を……」
アカギはサカキと合流してから、ずっと二人を監視していた。サカキがいない時も、霊夢を監視することで二人が会話する状況を作らないように動いていた。
事実として、それは成功していたはずだ。
「指示などいらない。貴様のテープレコーダーを、私からの殺害の指示だと奴が勝手に解釈しただけだ」
霊夢はサカキを神として認識している。彼が自分の仕えるべき神だと本気で信じている。
彼女にあるのはただそれだけだ。妖怪は問答無用で倒すべきだと考えているのと同じ。彼女にとって、サカキを信仰することは当たり前のこと。
たとえサカキ自身から自分を拒絶されようと、彼女にとっての神はサカキなのだ。
本物の神に諭されようが閻魔に説教されようが、その性格が一切ぶれなかったように、霊夢の本質は変わらない。
一度霊夢に植え付けられた感情、価値感は、まず抜けることがない。
誰に対しても平等に接し、何事にも縛られないというのはそういう意味だ。霊夢の中で確立された信念ともいえるそれは、消えることなくずっと霊夢の中で残り続ける。
アカギを刺したあの時、霊夢には何の感慨もなかった。そこには恐怖も、戸惑いも、決意すらなかった。
あるのはただ、この男を殺せばサカキが喜ぶという厳然たる事実。
自分の思うように生きてきた霊夢は、ここに至り、サカキの思うように生きるという道を見出し始めていた。
「支配者に必要なのは心を知ることだ。道具だろうと部下だろうと、その者を理解しなければ人を真に動かすことはできない。……貴様は心を否定した。人を代替物のある駒だと信じ、その心を疎かにした」
それは、アカギにとって必然とも言うべき隙だった。心を不完全なものと否定し、心のない世界を作ろうとしたアカギ。それが悪のない世界へと繋がると信じ、それを正義に生きてきた。
人を理解しようという試みは、それを脳裏に思い浮かべただけで、アカギの信念を裏切るものだった。
おもむろにアカギの傷口に消毒液をかける。
呻き声。しかしサカキは意にも介さない。
「貴様は神になると抜かしていたな。貴様にとって支配者と神は同義語かもしれんが、私から言わせればまったく違う。
神は人を嘲笑う。支配者も同じだ。だがその本質はまるで違う。神は崇められ奉られる。しかしな。支配者は“崇めさせる”のだ。“奉らせる”のだ。
似て非なるもの。貴様はその認識を吐き違えた。だからこそ、貴様は満足した。雷電と早苗という駒を手に入れ、それ以上を求めなかった。支配することを考えなかった。それは貴様の驕りだ。人間でありながら、自分を神だと勘違いした貴様のな」

32 :
支援

33 :
とん、と床に奇妙な文様の瓶を置いた。
「私に支給されたアイテムだ。これを飲めば、その傷も回復するだろう」
アカギの目が今までにないほどに見開き、そちらへと這いずる。
しかしサカキは気にせず、ガーゼで傷を圧迫して包帯を巻く。
「……ほ、包帯……など…いらん。……その……瓶……を……」
サカキが邪魔をして瓶を手にできない。治療を続けるサカキの腕をどけようともがく。渾身の力で腕を引き剥がそうともがく。
しかし、重傷であるアカギには無理やり治療するサカキをどうにかできるものではない。
震える手を伸ばす。しかし瓶までの距離はあまりにも遠い。
(私は……Rんのだ。……世界を……心のない……感情なんてない…世界を……作るまでは……!)
走馬灯のように過るアカギの過去。
優秀な頭脳を持ちながら、一人孤独に生きてきた人生。機械ばかり弄り、友達と遊ぶこともなかった子供時代。
誰もが彼を誉めた。誰もが彼を見本とするように自分の子供に言い聞かせた。
全ては大人の価値感。
それを押しつけられたアカギと同年代の子供。
妬み、恨み、怒り。
そんなものもう見たくない。なくなるべきだ。そんな不完全なものは、なくなるべきなのだ。
「心」を軽視した? 神を目指した驕り? 
そんなもの知らん。私の目指すものは、私が理想とするものは、たとえ誰であっても否定はさせん。私が見つけた、私だけの道だ。私だけの覇道だ。こんな男に、邪魔されるわけにはいかない!
「良い目だ。決して諦めることのない目。野望に燃えた目。つくづく、貴様は私に似ている」
サカキは、瓶をアカギの目の前に置いた。
「飲むといい。貴様をここでRのは、少々惜しい」
アカギは、もうサカキの言葉など聞いていなかった。
この男の思惑などどうでもいい。こうして救いの手を差し伸べるというのなら、喜んでその手を握ろう。
そして後悔するがいい。これほどの屈辱を受けてそのままでいる私ではない。
アカギは乱暴に瓶を掴むと、そのまま一気に飲み干した。

34 :
支援

35 :


雷電は後悔していた。早苗も自分と同じ気持ちだということはその青ざめた顔を見れば明白だ。
未だ興奮冷め切らぬ霊夢を見て、心底どう接するべきか分からなかった。
戦闘狂なら大勢見てきた。人をRことを造作もなくやってのける人間達と何人も相対してきた。
しかし、その中でも彼女は別。性質が違う。人をRことに何の感情も抱いていない。愉悦も、躊躇も、全てない。サカキのため。ただそれだけの理由で、彼女は何だってできる。それが彼女にとっての生きることで、それだけが彼女の支え。
突然、大きな音がした。
「誰か! 誰か来てくれ!!」
思わず早苗と顔を見合わせ、慌てて中へと入る。
そこには、テーブルを巻き込んで倒れるサカキと、中国の文様の入った瓶を片手に絶命しているアカギがいた。
「……間に、合わなかった」
項垂れるサカキ。その腕は、アカギにやられたであろう引っかき傷でいっぱいだった。
「突然、水が飲みたいと行って暴れたんだ。私は止めたんだが……」
蛇口から流れ出る水。アカギは水を飲んでいる途中で死んだのだろう。顔の辺りが水で濡れていた。
「急性体力失調……」
1945年、日本の広島に原爆が投下された。その影響で大火傷を負った人間が、執拗に水を欲しがり、それを少し飲んだだけでショック死するという現象が起こった。
その要因というのが急性体力失調である。水を飲むという行為で、自分の安全を確信してしまい、その安堵感からショック死してしまうというもの。
瀕死のアカギがどう思ったのかは分からないが、とにかく彼は水を飲むことで、ほんの少し安心感を得てしまった。それが急性体力失調を引き起こしてしまったのだろう。
アカギの様子から、死んでいることは明らかだ。しかし、雷電は脈を取らずにはいられなかった。
当然、脈は動いていない。
「なんということだ……」
「私が悪かったんだ。私がもっと必死に彼を止めていれば。彼の傷は、致命傷ではなかったのに……!!」
「……自分を責めるな。見たところ、サカキの治療は完璧だ。サカキのせいじゃない。……これは、回避できない不幸な事故だった」
「不幸? それは違うわ。これは幸運よ。私が引き起こした、ね」
霊夢の軽い声が雷電に届いた。
「こいつはサカキ様に仇なした。当然の報いよ。ねえ早苗。あなたもそう思うでしょ?」
「え……?」
「あなた。こいつのこと妖怪だなんだって言ってたじゃない。……ああ。なるほどね。そういうことか。妖怪だからサカキ様を陥れようとしたんだ。これで合点がいったわ」
妖怪。
そう。確かに早苗はポケモンという単語を受け入れられず、アカギを妖怪の首領か何かだと勘違いしている節があった。アカギに恨みもある彼女なら、ざまあみろとでも言うべきところなのだろう。
しかし、アカギの凄惨な死に様を見て、霊夢の血濡れた姿を見て、早苗はすっかり委縮してしまっていた。
「早苗。大丈夫か?」
ふと、聞こえたのは雷電の声。自分を心配し、自分を大切に思ってくれる存在。
そうだ。ここで自分が迷っていてどうする。自分は雷電を導かなくてはならない。こんなところで迷ってなどいられない。
「……だ、大丈夫です! そうですよ。アカギさんは妖怪のボスでした。これは……当然の…報いです……」
言葉はどんどん小さくなっていく。誰がどう見ても無理をしている。
しかし、霊夢は気付いているのかいないのか、ふっと笑った。
「あんたならそう言ってくれると思ったわ」
霊夢は少しあからさまなくらいにサカキにすり寄った。その様子はまるで主人にじゃれる子犬のようだ。
「ねぇサカキ様。私、ちゃんとうまくできましたよね。サカキ様のお役にたてましたよね」
サカキは、雷電の方を見た。
何も言えない。しかし、それでも雷電は頷くことしかできなかった。
「……ああ。よくやった。偉いぞ」
頭を撫でてやると、本当に嬉しそうに霊夢は笑った。
雷電も早苗も、その笑顔に思わず顔を背けた。

36 :
支援

37 :


霊夢は今、血濡れた服を脱いで、新しいものに着替えている。まるで推し量ったかのように霊夢が来ていた特徴的な服が社務所にあり、それを雷電が取って来てくれたのだ。
サカキは考え事があると言って、一人違う部屋で葉巻を吸っていた。
今回の件。終わってみればこちらの大勝利だった。
裏切り者のアカギは死に、彼の駒だったモンスターボール二個と、雷電と早苗を手に入れた。この収穫は非常に大きい。
だが、それを手放しに喜ぶ気にはサカキはなれなかった。
確かに今回、サカキは勝てた。しかし、それはやはり運が良かったからだ。
サカキとアカギは似ている。もしも二人の境遇が正反対だったら。どうなっていたかは分からない。
それどころか、もしもアカギが自分の信念にさえ拘らなければ、同じ状況であってもうまく立ち回っていたかもしれない。
(レッドのおかげ。……と、考えるべきかもしれんな)
サカキは一度負けている。未来に敗北することを知っている。
自分は神などではない。
まして完璧などではない。
それを知っていたからこそ、地道な演技で雷電達を味方につけ、アカギに露骨な情報提供をした。あれは仲間の証であると同時に、彼を試すものだったのだ。
それがあったからこそ、いずれ起こったであろうアカギの裏切りを早計なものにし、こうして未然に防ぐことができたのだ。
誰かと接触し、うまく仲間に引き入れることができた時、一番に考えなければならないのが裏切り行為だ。そしてそうなった場合、やはり一番にターゲットとされるのは博麗霊夢。精神的に不安定な彼女をうまく利用すれば自分の手を汚さずに人を殺せるのだ。
だからこそ、サカキはアカギ達と出会う前に保険を打っておいた。
サカキという神の考え方。支配者であるサカキが、常に彼女を観察し、試しているという固定観念。
それらを霊夢に植え付けておいた。
今回の状況は、サカキが想定していたものと大して変わらないものだった。
雷電も早苗もアカギに対し敵対心を持っていた。
そのためにアカギは博麗霊夢を使ってサカキを殺そうとした。皆から病気だと認識され、精神的に不安定だと言われる彼女を。
これからも駒を増やしていこうと考えるアカギなら、サカキをRとしても自分に害が被らない方法をとる。
要するに、霊夢に罪を着せるというもの。サカキがそうしたように。
案の定、アカギはサカキが予想していたように行動し、そして墓穴を掘った。
霊夢はあまり頭を使うタイプではない。しかし、恐怖を克服することに対する真剣な気持ちは本物だった。恐怖の克服は神に近づくための崇高な行い。そう霊夢は考えていた。
霊夢は自分の感情に素直な人間だ。嘘をつけないし、つく必要もないと考えている。
アカギの行いをサカキによる殺害命令だと勝手に認識したのは霊夢の意思だ。
全て霊夢の独断。だからこそ、霊夢はアカギを殺し興奮した状態でも下手なことは言わなかった。命令通りに遂行したとは言わなかった。何故なら、実際に命令されたわけではないからだ。
(これで霊夢は、また一つ使える人間になった)
早苗に対する仲間意識が多少強い気もするが、それでも自分が命令を下せば彼女をRことができるだろう。
彼女は人を殺したことで、躊躇なく殺人を行える人間になった。その意味は大きい。
今回の行動は、彼女の意思によるものだ。ポケモンにはできない判断で、彼女はサカキのために働いた。彼女は、命令を命令以上に遂行できる者になりつつあった。
忠実な部下。サカキはそういう人材を大事にする。それが支配者にとって必要な人間だということを知っている。
しかし、霊夢はまだまだだ。ポケモンよりは使えるが、それでも所詮はただの道具。彼女が自分の部下となるにはもう一皮むけてもらわなければならない。

38 :
支援

39 :
早苗と雷電も多少労力は掛かるが、なかなか良い道具だ。
早苗の危険思想はうまく扱えば参加者を減らす役に立つだろうし、雷電も押しに弱いところがある。十分教唆は可能な上、防衛の為の攻撃ならばこちらが指示せずとも行ってくれる。
お人好しの二人だ。もしかしたら身を庇って敵の攻撃を防いでくれるかもしれない。
(……それにしても、雷電の奴。私が霊夢を本気で心配しているだと?)
それはその通りだ。なにせ、彼女は脱出の鍵となる人物なのだから。しかし、その後の言葉が気に入らない。
(彼女に対する優しさなど、私は持ち合わせていない)
そんなものがあるはずがない。確かに彼女は自分にとっての部下になりつつある。
だがそれでも、不要となれば切り捨てるだけの存在であることに変わりはない。そんなものに優しさなどというものを注ぐメリットなど皆無。いやむしろデメリットだ。下手な情は判断を鈍らせるだけなのだ。
(所詮は道具。ただ黙って私の為に働けばいいのだ)
道具は使役してこそ道具。有益だからこそ道具。
サカキはそれを扱うだけだ。
しかし、もしも霊夢が、自分にとっての部下足り得るのなら……。
支配者は、部下のために動かなければならない。それが、サカキの思う自分の理想の姿で、その信念こそが世界を掴むものだと信じている。
サカキは無理やり思考を別のものに移した。
ポケットから端末を取り出し、それを眺める。
これだけの戦力を手にした今、もはや無理をして仲間を集める必要はなくなった。
レッドの悪評も、道具達への影響以外に考慮すべき点はない。そしてその影響も、大して考えなくても済むだろう。
『霊夢をこんな目に合わせた人間は私と顔見知りだった。その人間はきっと私達の悪評をばら撒いているだろう』。そう二人に言っておいたのだから。
雷電も早苗も本気でそれを信じていた様子だった。
人は、最初に得た情報を信じる傾向がある。実際の信頼性は同列のものだとしても、自分が最初に見聞きしたことだからという、ただそれだけの理由でその情報を信じる。
たとえレッドに吹聴された人間が現れても、もはや雷電達がそれを信じる可能性はかなり低い。
唯一、霊夢と早苗の知り合いである霧雨魔理沙が直接接触してきた場合は非常に厄介なことになったであろうが、端末を見る限り彼女は死亡している。
魔理沙がいなくなったというのなら、この問題はもはや解決したも同然だ。誰がどう説得しようと、彼らを言い包めるのは容易いだろう。
戦力は揃った。クリスタルも私の手にある。
端末を操作し、リアルタイムで映り変わる参加者のスタンス表を眺めながら、改めてこの道具の便利さに感心する。
「……なんだ。使える人間など一人もいないじゃないか」
生存している人間のプロフィールを確認し、サカキは呟く。
もはや、サカキにこれ以上の駒は必要ではなかった。アカギのような裏切り者を作る可能性があるため、頭脳派の人間を引き入れることももうしたくない。考察ならば自分ができる。わざわざ人を求める必要などない。
「今回の私の相対敵はアカギだった。次は……、クックック。そうだな。参加者全員というのも面白いかもしれん」
自分の悪評を聞いた人間は皆殺し。他の連中は情報を聞き出してR。全て状況次第だが、基本的なスタンスはそれでいいだろう。
あくまでも自分は影で動き、できるだけ人を減らしておく。
主催者がこちらに接触してきたということは、他の参加者にも接触する可能性があるということ。
自分よりも有能な人間を見出されても困るのだ。ただそれだけで、主催者がこちらへ干渉してこなくなるかもしれない。現状、最も効果的な脱出手段をそんなことで失うわけにはいかない。
自分の命は最優先。あくまで参加者を皆殺しにするのはその次。
しかし確実に、参加者の数は減らす必要がある。
ふと男の忠告を思い出すが、それをすぐに一蹴する。
もはや新たな仲間を引き入れること自体が危険だ。よほど有用な情報を持っているともなれば話は別だが、そんなことはまずないだろう。
ならば殺し合うしかあるまい。それがこの場所で、それが参加者に割り当てられた役割だというのなら。
「乗っていようが乗っていまいが、もはや関係ない。全て根絶やしにする。ククク。この急造のロケット団でな!」
そして、神に取り入り、ついでにそいつをも引きずり下ろす。
人間を支配するのはいつだって人間だ。神などの出る幕などないということを教えてやらなければならない。
サカキはこれからのことを思い、愉快そうに笑った。

40 :
支援

41 :

【チーム ロケット団】
【サカキ@ポットモンスター】
[状態]:健康、脛に軽傷 左小指欠損(治療済み) 服が埃だらけ
[装備]:M1911A1の予備弾(21/21)
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(ナッシー)@ポケットモンスター モンスターボール(ケーシィ)、モンスターボール(リザードン)、リポビタンD、治療道具一式、ロープ、テープレコーダー、端末機、クリスタル、葉巻を何本か
[思考]
基本方針:神に取り入る余地を残しながらも、脱出方法を探す
1: 参加者を根絶やしにする。有益な情報を持っている者がいれば、聞き出してからR
2: 他のクリスタルを探す為に施設を回る。
3:博麗霊夢の理想の神でいる
4:利用できる者は利用する。
5:レッドの事は保留。
※この場所が博麗大結界に似た何かで形作られているのではないかと考えています。しかし、あくまでも仮説の一つであり、それに拘るつもりはありません。
※テープレコーダーの内容は二重録音によって消去しました。
【端末機】
生存している参加者のプロフィールと、最新の簡単なスタンスが載っている端末。
【博麗霊夢@東方project】
[状態]右足の太ももに銃創(貫通傷、治療済み)、左小指と薬指欠損(治療済み)、興奮状態、 妄信状態?
[装備]ミニ八卦炉@東方project、血濡れの包丁
[道具]基本支給品一式、デデデ大王のハンマー@星のカービィ、Ipad@現実
[思考]
基本方針:全てはサカキ様のために
1:サカキを邪魔する人間はR。
2:知り合いと再開しても、サカキが気に入らなければ……
3:レッドを警戒
※これを異変だと思っています。
※マルクの裏に黒幕がいると思っています。
※金属板(Ipad)は山小屋で拾ったものです。霊夢は使い方がまったくわかりません。
※刃物に関するトラウマを克服しました

42 :
支援

43 :


認識が甘かった。霊夢のことを、心のどこかで軽視していた。これはその結果だ。
どうにかして止められなかったのか。そのことばかりが頭を過る。
俺はアカギを信用していなかった。しかし、彼が殺し合いに乗っていなかったことも事実だ。
……いや。もしや乗っていた……のか? 
霊夢と二人きりになった時、サカキと仲違いさせようとしたんじゃないだろうか。
それならば先程言っていた霊夢の言葉も納得がいく。
もしもそうなら、アカギは何という悪党だ。
結果的に自分が死ぬことになったとはいえ、病気である霊夢をさらに情緒不安定にさせるようなことを言って、あまつさえ彼女を使ってサカキを殺そうとした。
過程だけじゃない。結果として、アカギは最悪なことをした。霊夢に人を殺させた。それは、彼女が正常に戻ったとしても必ず尾をひくものだ。一生拭い得ない罪だ。それを、背負わせた。
これはどうにかして霊夢から真実を聞く必要がある。それを聞いたうえで、もしも自分の憶測が当たっていたのなら、今回のことは当然の報いというものだ。
しかしそうなれば、ますます俺は霊夢を支えてやらなければならない。アカギがそういう男だということを薄々感づいていながら、俺はずっと放置していたんだ。
霊夢にしてやれること……。
それは、サカキのために働くことだろう。今の彼女の心の支え。それを守る手助けを俺はしなければならない。
サカキは信用できる。あの男には、どこか人を惹きつけるものを持っている。
早苗を守り、霊夢を守り、そしてサカキを守る。
難しい。果てしなく難しいことだ。しかし、それでもやるしかない。それが俺の使命だというのなら。

【雷電@メタルギアシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)疲労(中)全身に裂傷
[装備]:強化外骨格、スローイング・ナイフ(2/3)
[道具]:基本支給品一式、確認済み支給品1〜2、グリーンの全支給品一式(未確認)
[思考]
基本方針:妖怪退治をしながら仲間探し。サカキの指示に従う
1:何としても三人を守り通す
2:霊夢に対する罪悪感
3:ハル・エメリッヒとの合流
4:グリーンのためにも自分の出来ることをする
5:リボルバー・オセロットを警戒
※MGS2エンディング後、MGS4本編開始前からの参戦
※人間の体を成してないものは全員妖怪で、人間に化けている妖怪もいると思っています。また、妖怪は等しく人間の敵だと思っています
※霊夢を精神的な病気だと思っています

44 :
支援

45 :


霊夢さん……。確かに、私は妖怪退治をしてきました。その気持ちは今でも変わっていません。
けれど……、死体がこれほど気持ちの悪いものだとは思わなかった。これほど嫌悪感を催すものだとは思わなかった。
……でも、妖怪は退治しなくてはなりません。雷電さんの知り合いを殺した妖怪たちを。
そのための手段がRことしかないのなら……。うー、……駄目です。
やっぱり決心できない。霊夢さんの姿が目に焼き付いて離れない。
私はどうするべきなんでしょうか。妖怪退治も満足にできない私。でも、私が雷電さんや霊夢さんを導いてあげないといけない。
……そうだ。私が導いてあげないといけないんだ。
くよくよしてる暇なんてありません! 怖いと言って逃げている訳にはいかないのです! 
妖怪は有効活用すべきだというサカキさんの助言に習い、ここにいる妖怪たちを一掃してやりましょう! Rのは怖いから……あくまでもやっつける程度で。
今回の件で、自分の力だけじゃ妖怪を倒せないことはよくわかりました。
私はアカギさんに騙されてました。恐怖すら覚えていました。でも、私だけでは無理でも妖怪同士をぶつけ合えば、勝機はあるはずです。
今思えば、神奈子様も妖怪から信仰をもらっていました。妖怪の有効活用はそれと変わりありません。
むしろ素晴らしいくらいに効率的です! こんなやり方に気付いたサカキさんはやっぱり頭が良いです!
そう。サカキさん。あの人は、どこか人を従わせる才能のようなものがあるみたいです。
霊夢さんをずっと支えてきたあの人なら間違いは起こさないはず。雷電さんもそのつもりのようですし、しばらくはあの人に従いましょう。
待ってて下さいね霊夢さん。必ず、私があなたを治してみせますから。

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:気分が悪い。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2
[思考]
基本方針:神奈子様の仰るとおりに。とりあえずサカキに従う
1:妖怪を有効活用! 効率良く妖怪退治です!
2:霊夢さんは私が治してみせます!
3:仲間探し
4:雷電に妖怪退治の何たるかを教える
5:ゴムボールの妖怪(メタナイト)と次に合う時は逃がさない
6:ピエロの妖怪を退治して、元の世界に帰る
※霊夢を精神的な病気だと思っています。

【アカギ@ポケットモンスター 死亡】
【残り 17人】


46 :
支援

47 :
途中でこんがらがってミスったりしましたが、これで投下終了です
支援ありがとうございました。本当に助かりました

48 :
投下乙です。
サカキさんのカリスマが滲み出す。そしてアカギが死亡。
これで完全にポケモン勢はマーダーだけに。霊夢が怖い……
雷電と早苗は彼が危険だと気付く時がくるか。今後に期待です

49 :
投下乙です。
サカキがアカギに支配者の何たるかを見事に示しましたね。
順調に手駒が揃ってきて、ついに参加者根絶やしを決意したサカキ。
雷電と早苗はサカキの本性に気づくことができるのか?更に狂気が増した霊夢。
先が気になります。
有名な全選手入場、ゲームロワ版つくりました。
参加者のプロフィールを参考にしましたので、ネタ要素はたぶんないです。
少しでも楽しめたら幸いです。

50 :
マルク「地上最高の殺し合いを見たいか――――ッ」
観客「オ――――――――――――!!!!」
マルク「ボクもサ ボクもサみんな!!」
マルク「参加者入場!!!」

全参加者入場です!!!!
白い悪魔は生きていた!! 更なる研鑚を積み人間凶器が甦った!!!
新生FOXHOUND隊員!! 雷電だァ――――!!!
博霊大結界はすでに我々が完成している!!
博霊の巫女 博霊霊夢だァ――――!!!
跳びつきしだい突き刺しまくってやる!!
バロン王国竜騎士団隊長 カイン・ハイウインドだァッ!!!
全国の有名旅館なら我々の歴史がものを言う!!
天城屋旅館の次期女将 大和撫子 天城雪子!!!
真の支配を知らしめたい!! ロケット団 サカキだァ!!!
ポケモンリーグは1階級制覇だが殺し合いなら全階級オレのものだ!!
トキワのジムリーダー グリーンだ!!!
殺人事件捜査は完璧だ!! 特別捜査隊リーダー 瀬多総司!!!!
幻想郷のベスト・メイドは私の中にある!!
紅魔館のメイド長が来たッ 十六夜咲夜!!!
絵を描くことなら絶対に敗けん!!
絵画実体化能力見せたる 画家 アドレーヌだ!!!
バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
八十稲羽署の新米刑事 足立透だ!!!
デイン王国から狂王が上陸だ!! 13代国王 アシュナード!!!

51 :
心の無い世界を作りたいからギンガ団を結成したのだ!!
神の力を見せてやる!!アカギ!!!
 
メイドの土産にベルトとはよく言ったもの!!
吸血鬼の奥義が今 実戦でバクハツする!! 紅い悪魔 レミリア・スカーレットだ―――!!!
クリミア軍大将こそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの男がきてくれるとはッッ アイク!!!
闘いたいからここまできたッ キャリア一切不明!!!!
ジョウト地方のポケモントレーナー シルバーだ!!!
オレはプププランド最強ではないポップスターで最強なのだ!!
御存知仮面の騎士 メタナイト!!!
ジュネスの本場は今や八十稲羽にある!! オレを驚かせる奴はいないのか!!
花村陽介だ!!!
小さァァァァァいッ説明不要!! 20cm!!!
カービィだ!!!
弾幕は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦弾幕!!
幻想郷から霧雨魔理沙の登場だ!!!
ベルトはオレのもの 邪魔するやつはハンマーで思いきり殴り思いきり叩くだけ!!
プププランド”自称”大王 デデデ大王
信仰を増やしにここへきたッ!!
現人神 東風谷早苗!!!
人形繰りに更なる磨きをかけ ”七色の人形遣い”アリス・マーガトロイドが帰ってきたァ!!!

52 :
今の自分に死角はないッッ!! 暗黒騎士・パラディン セシル・ハーヴィ!!!
セオドア大陸の剣技が今ベールを脱ぐ!! デイン王国から 漆黒の騎士だ!!!
弟の前でならオレはいつでも暗黒期だ!!
魔道士 ゴルベーザ 偽名で登場だ!!!
兵器開発の仕事はどーしたッ 技術者の炎 未だ消えずッ!!
造るも壊すも思いのまま!! ハル・エメリッヒだ!!!
特に理由はないッ 正々堂々戦うのは当たりまえ!!
ゴルベーザにはないしょだ!!! 四天王最強!
ルビカンテがきてくれた―――!!!
カンフー映画で磨いた実戦足技!!
稲羽市のブルース・リー 里中千枝だ!!!
実戦だったらこの人を外せない!! 妖怪最強 風見幽香だ!!!
超一流忍者の超一流の忍術だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
セキチクシティのジムリーダー!! キョウ!!!
FOXHOUNDはこの男が壊滅させた!!
隠密潜入のエキスパート!! ソリッド・スネークだ!!!
若き王者が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ チャンピオンッッ
俺達は君を待っていたッッッレッドの登場だ――――――――ッ


53 :
加えて負傷者発生に備え超豪華なリザーバーを5名御用意致しました!
ニビシティのジムリーダー タケシ!!
傭兵 サイボーグ忍者!!
ミストの召喚師!リディア!
四天王の紅一点 風のバルバリシア!
……ッッ  どーやらもう一名はジョーカーとして暗躍している様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ

54 :
以上です。
元ネタの選手数と、ロワの参加者数が一人しか違わなかったので作りやすかったです。

55 :
それにしても参加者がどんどん死んでくなこのロワ

56 :
投下乙です
サカキ…アカギよりカリスマなさそうなんて思っててスマンかった
一度負けている分の強さか、なるほど
そしてネタキャラと思ってた早苗さんの健気さがちょっと可愛く見えてきたぞ
ところでサカキ様の状態表、だいぶ前から【ポットモンスター】になってるんよねw
響きのシュールさにツッコミ入れるタイミングを逃してて指摘が遅れてしまった

57 :
ポットモンスターwwwww
面白いからもうこのままでいいよサカキ様www

58 :

ロケット団が安定してきてるな、内部に不穏の種がほとんどない
三勢力的の内もっとも体力的なダメージも少ないし
それにしてもこのサカキ、外見はゲーム版より真斗ポケスペ版のサカキのイメージだ
人心掌握術に知恵が回る、まさに一般人マーダーにふさわしい
だが笑どころはポットモンスターが全部持ってったww

59 :
ポットモンスター(想像図)
http://www3.nhk.or.jp/anime/kasumin/chara/images/chara_pot_img.gif

60 :
ポットモンスター光臨wwww
えっ?>>59さんが書いたんですか?

61 :
思いっきりNHKのカスミンってアドレスに書いてあるがなw

62 :
真っ先に思い出したのがこいつだったんだ、すまない…
ヘナモンって早苗さんに真っ先に退治されそうだよね
ポットモンスター、意外とみんな気づいてなかったんだな
てっきり分かっててツッコんでないのかと思ってた

63 :
そういえば現在位置が記入されてないけど、どの辺りなんだろう?
ゴーストタウンってことはB-5かD-2辺り?

64 :
投下乙ー、頭脳戦というか心理掌握戦というかがゾクゾクして凄く面白かった
そしてボス対決はサカキに軍配が上がったか…
アカギは心を否定したせいで、結果としてその敗因となったのがまたしんみりと来る

更新の多いこのロワが今のしんどい時期の数少ない楽しみになってるよ
書き手さん達、これからも応援してますわー

65 :
全選手入場ネタも投下されてマジ盛況ロワ状態だなww嬉しいww

66 :
逆に考えて、なんでこんなに盛況なんだろうな。
実は純粋なマーダーがレッドしかいなくて、ほとんどが(主催も)対主催だから?

67 :
明らかに初期より書き込みが増えてる……これは嬉しいことだ。
逆にレッドがまだ殺し合いを続けようとしていることに驚き

68 :
レッド、サカキ、霊夢、セシル、カイン、アシュナード辺りが危険だな
霊夢とセシルに至っては、もう完全に狂ってる

69 :
せしるマギカは狂ったフリだけどね
スタンス見れる道具で表示されるスタンスってまさか

70 :
そのまさかだろう。

71 :
>>66
俺の個人的なマジレス
参加人数が少ない上に作品が少なくてしかも有名作ばかりで
キャラやらなんやら把握しやすい上に
参加者の少なさに輪をかけて書き手がポンポンいい意味で殺してくれるから
最近のロワの中ではテンポがマジ良い
おかけで空気キャラがいないしロワ内での各勢力状態や因縁やらが把握しやすくて、
俺途中参加だがあっさえり追えたもんよ、素晴らしい

72 :
>>70
サカキ「出番がない気がする」って表示されてたのかwwww
そりゃこれ以上仲間作んねーってなるわ

73 :
おお、メタいメタい
あーんそんなメタい道具出されるんならもうちょっと頑張ってマジメに書けばよかったー
「二人はプリキュア」とか「せしる☆マギカ」とかサカキ様混乱するだけだろ女子高生的に考えて
そういえばこのロワってステルスいないね
ステルスのいないロワって話が暗くなりすぎず、テンポよく話が進む気がする
えーりんがステルス対主催だけどモロバレだから問題ないよね

74 :
展開的には超まじめなのに、妙なところでネタが入るサカキ様ww

75 :
レッドさんがステルスに転向しただろ
でもこれから騙す相手がホモ変態って認識をしてるっていうね

76 :
そういやまだ状態:健康なのってツンデレ組だけじゃね?
レッドさんは何だかんだ言っても一般人+利き腕使えない状態だから
下手するとさくっと返り討ちに遭うかもしれん

77 :
スタンス表示へのお前らの反応に吹いたw
確かにそんな奴ら「何だ。使える人間は一人も居ないじゃないか」だよなw

78 :
レッド「ホモの変態カップルだああああああああああああああ!!!!!!!」
これを見た瞬間のサカキ様の心境はいかほどだっただろう

79 :
サカキ「解せぬ」

80 :
・瀬多、千枝、レミリア、咲夜、アドレーヌ、漆黒組
・アシュナード、カイン組
・サカキ、霊夢、雷電、早苗組
・花村、ルビカンテ、レッド組
・セシル
・ゴルベーザ
戦力的にはどこもバランスが取れているような気がする。

81 :
良い感じにグループが分かれてるね
満身創痍でさえなければ瀬多グループが一番戦力は充実しそうだけど、
今は全員ボロボロだからなぁw

82 :
対主催の命運がホモの変態カップルにかかっているという事か

83 :
楽しい会話の所申し訳ないですが投下させていただきます。
番外的なもので、かなり危ない描写があるので指摘おねがいします

84 :
  
「我輩の城でそんな輩はいないぞ。まったく、忙しいのに……次はこの作戦でピーチちゃんを……」
「魔法使いの格好をした子?ここにはいないわ。で、あなたも私にチャレンジする子?この私の水ポケモンで……え?ポケモンをもっていないの?」
「巫女服の子?私は知らないわよ。......にしても私の他に生存者が居るなんて。このゾンビが溢れる町で……ちょっと!一人じゃ危険よ!?」
「花好きの阿婆擦れ?知らないな。それより、お前。アカリスを捕まえたらここに連れてきてほしい。机が壊れてしまってな……」
「えー?巫女さん?うーん、知ってるけど、古手、って苗字だからアンタの探してる子じゃないと思うよ。……あ!バイトの時間だからおじさんはもう行くね!」
「ぽえーん。みんなしらんとです。メイドなんてものは。ぼくらはめいどにはいきませんです。たぶん」
「ザビー教に入ってくれたら教えて……?信仰しないんデスか?……残念ですね〜。まぁ最初からそんな人知りまセ〜ン」
「あーら、久しぶりのお客さん。GBミュージックへようこ……え?メイド?知らないわ。……ちょっと!?冷やかし!?」
「ワシはミュートシティに何十年も住んどるが巫女服を着た子なんて今までに見かけた事がないぞ。……お、第三レースが始まった。アンタは賭けんのか?」
「強い女性で、花が好き……?そんな女は見てないな。強い女性って聞く、と春麗を思い出すな。イライザは強くないし。すまんが他を当たってくれ。」
「変にテンションが高い、緑髪の女の子?なんだそりゃ?ヤク中の象徴か?まぁ、このロスサントス……いや、サンアンドレアスには絶対居ないぜ」
「博麗霊夢?誰だいそれは?博麗神社に巫女なんて居たのか?……紫。変な冗談はよしてくれ。それと入り口からの入店を頼む」
 
☆ ☆ ☆

85 :

宇宙空間に漂う二人。先ほどは成り行きでパイロンとかいうエネルギー生命体を撃墜してきた所だ。
彼女達が生身でも平気なのは妖怪であり式神である所為か。それともなんらかの術がかかっているのだから平気なのかもしれない。
 
「紫様。いい加減に何を目的に人探しをしてるのか、私にも説明してください」
「藍。貴方に説明しても信じてくれないでしょう。それに貴方は全ての物事を倫理的に考えるからこの事を説明しても理解出来ない筈よ」
「では、私にも理解出来るように、一言で仰ってください」
「いうなれば、異変ね。きっと」
「異変なら、またいつもの様に、誰かが解決するじゃないですか。紫様動く必要は……」
「今までの異変を誰が解決してきたかを、明確に知っているの?」
「逆に質問しますが、それを知る必要があるのですか?」
 
八雲紫は言葉が詰まる。今のところ、それを知っても自分にはメリットがない。
いや、メリットがない状況を作らされていたのか。それさえもわからない。
いま、幻想卿に異変が起きている。たまたま私は幻想卿の外に用事があり、そのお陰に異変に巻き込まれずにすんだ。
博麗霊夢、霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド、十六夜咲夜、レミリア・スカーレット、東風谷早苗、八意永琳、蓬莱山輝夜の存在が消えている。
幻想卿に、最初から存在しなかった事にされているのだ。幻想卿で、彼女達を知るものは私以外いなくなっていた。
紅魔館には主が居らず、そこに住んでいる門番と魔法使いとその使い魔はそこに住んでいる理由さえ忘れている。
竹林に住む不死の子は虚ろな目をしながら何百年前と同様、当たりの妖怪に退治という名の危害を加えている。
守矢神社の神様二人はなぜ幻想卿に移住してきたのか思い出せないらしい。
人形使いの家と魔法使いの家は完全に失せてしまっていた。
博麗神社はあるにはあるが、周辺や境内が森に変貌していて誰も近づこうとはしなかった。
つまり、森の中にポツンと立っている謎の建物と化している。妖怪が住んでいるとかいう噂はたつ始末で、それが神社と知っている人物でさえ少なかった。
……なぜか博麗の巫女がいないのに幻想卿は安定しているのは幸いな事だ。だがいつ博麗大結界が崩壊するのかはわからない。
これは不味い事態だ。だからこそ博麗霊夢を探すのだ。スキマを駆使し、異世界を回り、そしてなぜか世界を救うことになったり。
こんな事をしていては幻想卿が崩壊してしまうかもしれない。
何が起きたかは予想がついている。外の世界から何者かによって拉致された。
幻想卿を知り尽くしている私はすぐに幻想卿に住む者の仕業ではないとわかった。
だがわかった所でそれはどうしようもないことだ。なにせ世界の可能井は広い。時間軸、次元軸、『if』の軸。
その三つが交じり合うお陰で見つける事ができない可能性は無量大数の彼方にあるのだ。
だが探さずには居られない。

86 :

 
「……藍、貴方は一回幻想卿に戻します」
「えっ?もうちょっと外の世界を満喫したかったです」
「イレギュラーが起きたのだから。こんな事は二度としないわ。なにかあったらこれで連絡してちょうだい」
「……これは?」
「携帯電話とその説明書」
「ほうほう、これが噂の……」
 
幻想卿へのスキマを開き、言葉を言い切る事ができなかった藍を押し込む。
藍を幻想卿に戻す理由は、幻想卿に何者かのコンタクトがあるかもしれないからだ。
もっとも、橙が留守番をしているが、彼女一人じゃ如何せん心配だ。
これまでに1000以上の世界を巡った。これからも巡るだろう。見つかる気はしない。
向こう側からのコンタクトがあればすぐに迎う事が出来るのだが……
ため息を付き、またスキマを広げる。次の世界を覗き込むとサイケデリックな色の世界と鳥人間。
この世界を捜索するのか、と、またため息をついてしまった。
 
☆ ☆ ☆
 
「やあや、えーりん」
「貴方、仕事は?」
「息苦しいったらなんの。あいつ等さ、ここらをウロチョロしてるからね〜。ほら」
 
廊下が見える窓を見るとあのポケモンが浮遊して瞑想していた。話しかけるのは遠慮しておいた方がいいだろう。
そしてその隣には私を睨み続ける女神。……私、何か悪い事をしたのだろうか?
 
「あれ?マルクは?マルクとイントロクイズしたかったのになー」
「マルクは今あっちの部屋よ。……それより、あいつ等をあの部屋に近づけてはないでしょうね?」
 
マルクはボスとやらにお願いをしている最中である。戻ってこない事からきっと駄弁っているのだろう。ボスとは確かそんな性格だ。
あの部屋というのは姫がいる部屋である。彼らが姫に近づこうならばどんな手でもつかって殺してやる。
もっとも今すぐ殺してやりたいのだが。

87 :

 
「大丈夫だ。あの部屋を開くとエネルギーに吸い込まれて死ぬ、と言っておいた」
「そんなんで効果あるのかしらね」
「充分効果あるよ。漠然的な説明なのに誰も近づこうとしない。ゼロ以外はね。もっともゼロも近づいても開こうとはしない」
 
なるほど、神もどうやら自分の命が惜しいらしい。(イザナミという例外がいるが)
それに彼らは私達の仕事内容がわからないだろうし、そういった理由からそんな漠然な理由でも信じたのだろう。
ただゼロだけはイザナミの思惑はわかっているらしい。人間なら力技でこちらが勝つだろうが、彼を今R事はこちらにはデメリットだ。
 
「それで、君は思いついた?」
「…?なにを?」
「外に連絡を送る方法さ」
「馬鹿にしているの?」
「いや別に」
 
こいつはどこまで人の神経を逆撫でれば気が済むのだろうか。外の世界にコンタクトを取るなんて現時点では不可能だ。
あの二体のポケモンが、あの遺伝子ポケモンとかのせいで操られ空間が閉じており外からも中からもコンタクトは不可能。
この空間を移動できるのは、あの神達だけだ。自分とマルクとイザナミはここを管理しているので外に出る事は不可能。
それもわかっているのにイザナミはその質問をしてきたのだ。
 
「……話しかけないで。二度と」
「おいおい、だから俺は中立の立場で君寄りなんだって。そんな拒絶することもないでしょ」
「拒絶するわよ。私の邪魔ばかりして」
「俺には君をどうだってできるんだぜ。ゲーム機の事も言ってないんだから」
 
押し黙ることしかできなかった。確かにこいつには借りがある。
ゲーム機の事をあいつらにいったら私は参加者諸共、抹殺されるだろう。当然輝夜も。
それだけはならない。絶対に。
 
「……ないわ。勝ち目はない。貴方にも」

88 :

「おいおいそんな自分を卑下しないでよ。それはそれで困る」
「貴方って困ってばっかね」
 
そういうとイザナミは押し黙った。まるで自分がさっき押し黙った様に。
……なんだ。イザナミが私に不味い事を言ったように、私もイザナミに不味い事をいったのか。
 
「……確かに困ってばっかだ。人の望みについては、何回やっても良い結果は得られない。打破してもそれまでだ」
「……何の話よ」
「なんでもないよ。じゃ、頑張ってるえーりんにヒントをあげるよ。120円で」
「……………。」
 
最初に言った、「良い結果は得られない」という言葉が気になったが、ヒントがほしかったのでそれをスルーし財布から120円を出した。
もっともこいつは休憩室にある自販機のジュースが飲みたいだけでヒントなんて挙げる気は無いかもしれない。
だがこいつは120円を貰わない限りこの部屋を出ることはないだろう。キスよりはマシだ。三枚の効果をイザナミの手に乗せ
「あ、やっぱりドクターペッパー飲みたいからあと30円」
「………はい。」
 
る前に銅色の硬貨をイザナミの手から二枚取り、穴の開いた銀色の硬貨を乗せる。
ヒントなんて期待はしていない。こいつがここから出てくれればそれでいいんだ。
 
「ありがとね。じゃあ、ヒント挙げちゃうよ〜!」
「えっ」
「えっ」
「なにそれこわい」
 
だが本当にヒントをくれるとは思わなかった。150円で今後の運命を握るヒントを売る神が居ていいのだろうか。
まぁいいか。幻想卿の神々も大体こんな感じだ。
 

89 :

「あいつらいるだろ?」
「ええ。それが」
 
イザナミが指を見えないように廊下の方に向ける。そこにいたのは先ほどと同じ通り女神がこちらの部屋を向いており、ミュウツーの方は瞑想を続けている。
女神が訳の分からない字の書いてある本を読み始めている以外は変わらない。目を背けたくなるような光景だ。
 
「神々ってのは自分優先で物事を考える」
「それは貴方も?」
「ふふん、どうだろうね。で、神々は無駄にプライドが高い。それは君もわかるだろ?」
 
確かに神々は無駄にプライドが高い。だがそれがどうしたのだ。徒党を組んだ神々を相手にするのは荷が重過ぎる。
こちらの勝機は無いに等しい。
「……そして自分が最強だと思っている」
「……まさか神々同士で潰しあいさせる気?」
「そのまさかさ」
「呆れた。なんていうか非現実的すぎるわ」
「…………ちょっとまって」
 
イザナミがアゴにわざとらしく指を置いて思考し始めた。
ここまで男のふりをするとは。少し間違っている気がする。
 
「……もしかして、えーりんさ。あいつらが徒党を組んでると思っているの?」
「!」
 
そうか、そういうことか。奴らは徒党を組んでいる訳ではない。
奴らは利害の一致で一緒に行動しているだけだ。自ら願う事を叶える為に一緒に行動しているだけであって彼らは仲が良い訳ではない。
それに比べて最初からここにいるマルク、イザナミ、私は比較的仲が良いほうだ。(最初からいるボスは仲が良いのか微妙なところだが)
 
「月が誇る頭脳って以外と明晰じゃないんだね〜。正直がっかり」
「情報が少ないと答えを間違えるものよ、チェスだって相手側の陣地が見えないだけで勝利するのが難しくなる」

90 :

 
そうだ、なんて事を聞いたのだろうか。これなら勝てる可能性が出てきた。
彼女達の誰かに接触をし、仲間割れを起こさせる。嘘の情報を流す。
……もっとも近づくのも難しいが、そうこう言っている場合ではない。彼女達の中で比較的安全な者は、ゼロか。
そんな事を考えているとイザナミの胸ポケットから騒々しい音楽が流れる。
携帯とやらの着信音だろう。先ほど鳴ったものとは違うところをみると先ほどの『恋人』ではないらしい。
イザナミは電話に出る事はなかった。 
「……もしかしたら君の敵は1人減ったかもね」
「あら、嬉しい内容ね。それで、その発言の意味は?」
「ゼムスが離反した。まったく大馬鹿者だよ。あいつは最後まで自分が最強だと思っているみたい」
 
ふと廊下を見ると女神と遺伝子ポケモンは消えていた。
そうか。やはり彼女達は仲が良い訳ではない。裏切り者は全力で潰しにかかるらしい。
だが、離反などするはずが無い。甘い言葉で誘われない限り。
だからこそ、私はイザナミにそれを聞くことにした。
 
「……それで、まだ気になることがあるんだけど」
「ん?なんだい?」
「ゼムスの離反は貴方が仕掛けたことでしょう?」
「勿論。アイツの思想は危険だったし、正直邪魔」
 
その言葉を軽く言うと私から貰った100円玉でコイントスをし始める。
うら、と言うと、やはり裏だった。なんでわかるの、と質問してきて話題を逸らさせようとしたが、それだけはならない。
 
「貴方が、少しでも自由に動ける様に目を減らす為?1人ぽっち減らした所で自由度は上がらないわよ」
「うーん。えーりんの推理は半分当たってる。でも外れてる」
 

91 :

そういうとイザナミは出口に体を向ける。飲み物代ありがとう、というと部屋を出て行ってしまった。
もっと知りたい事が沢山あったのだが。
入れ替わるようにマルクが戻ってきた。口の周りにカロリーメイトの粕が沢山ついているのを見て思わず笑みが零れてしまう。
久しぶりに笑った気がする。大丈夫。私にも運が回ってきた。
マスターボールの中身を挿げ替えた事も、ゲーム機を支給品に仕込んだ事も。全てが上手くいっている。
……贅沢を言うが、博麗霊夢が拾った端末機「ipad」が対主催の手に早く渡る事も願っておこう。
博麗霊夢はその端末をまだサカキにも、東風谷早苗にも、雷電にも喋っていない。重要な物だとは思っていないのだろう。
なにせあのゴミ屋敷にあったのだからゴミ同然に扱っているかもしれない。それは勘弁してもらいたい事だが、サカキの手に渡るよりはマシだ。
……運が回ってきたと同時にイザナミへの疑問が強くなった。私へのデメリットばかり作ったと思ったら今度は私を助けるような真似。
逆に考えればこのヒントは罠かもしれないのだ。慎重に行動しなければ。
 
☆ ☆ ☆
 
「どういうことだゼムスよ。そなたは我々の目的を忘れてしまったのか」
――――愚か者め。
 
会場の外。鏡写しの向こう。真っ暗で星が綺麗だ。そして見えるのは月。そして機械仕掛けで顔がある謎の星。
ずっと夜だということと島の半分が殺し合いを観測、監視する為の建物がある以外は参加者がいる会場とほぼ同じだろう。
真っ暗な海がその月と謎の星を写す。そしてゼムスはその月がよく見える所にいた。アスタルテとミュウツーの方を向くとニヤリと笑う。
 
「私の分は揃った。だが、お前らの分はない」
「……そうか。そなたは自分の望みだけを叶えたいのだな」
――――1人分は充分にある。だが、我々の分は無いではないか!
 
脳内に劈くようなミュウツーの声ががゼムスを襲う。
そして無数のシャドーボールが無軌道ではあるがゼムスを狙う。
ゼムスは、それを、避ける。
 
が、ならなかった。

92 :

 
「なっ!?」
 
唐突に体が動かなくなった。なぜだ。
 
「フォックスダイって便利だね〜。こうやって愚かな行動をする奴を誰にも気付かれることもなく仕留めることができる。」
ゆっくりとイザナミが砂浜に現れた。波がイザナミの足を定期的に濡らす。手に持っているのはペットボトルと注射器だ。
最初で最後の一本を使ってしまった、とイザナミは付け加えた。
「がああああ!?」
 
全てのシャドーボールがゼムスに命中した。だが死ぬ事は無い。
 
「離反!?……どういうことだイザナミよ!?話が違うじゃないか!」
「うわー、しぶといね。フォックスダイでも死なないなんて。でも麻痺はしてるみたいだ」
 
女神が少しずつゼムスに近づく。どこから取り出したのか散弾銃を持つ。
ミュウツーがイザナミにゼロはどうしたかと聞くとイザナミは休憩室でマッサージ機に座ってたよ、返事をした。
それを聞いたミュウツーはテレポートで消えうせた。結果ここにいるのはゼムスとイザナミとアスタルテだけだった。
 
「お、おい!イザナミよ!話が違うではないか!私との約束はどうなるっ!?」
「約束?ああ、君が一方的にしたものだろう。俺が離反に手を貸すわけが無い」
 
イザナミはドクターペッパーの栓を捻る。すると炭酸が強かったのか三分の一が吹き出てしまい砂浜に零れ落ちる。
だがイザナミは気にする事なく飲み口を口に当て、喉を動かす。
 
「なんだとっ!?お、お前が」
「黙れ。最後まで鬱陶しいぞ」
アスタルテが喉であろう部分を散弾銃で撃つ。だが死ぬ事はない。彼だって耐久力はある。

93 :
 

94 :

フォックスダイの影響で体こそ動かないものの、死ぬ事は無かった。
「がっ!?」
「なかなか死なぬな。私こそ、こうやって、苦しませて、死なせたくは無い。弱点を教えるがよい」
だがゼムスは喋ることはできない。仕方なくアスタルテは何度も銃ででゼムスを息絶えるまで引き金を引いた。何十回、何百回、何千回と。
ゼムスは最後に、我の魂はどうとかこうとか言ったが、アスタルテは気にせず弾丸を打ち込んだ。結果として砂浜には肉塊と弾奏が絡み合った。
とどめを刺した事を確認するとアスタルテはイザナミのほうに近づいていく。
 
「なぜ早く言わなかった?」
「そんな怖い顔しないでよ女神ちゃん、それで、何を?」
「ゼムスが離反しようとしていた事だ。奴の言動からするにそなたはゼムスが離反しようとしていた事を知っている」
「言うタイミングが無かったもんでね。アイツが俺に離反の提案をかけてきた時に言えばよかったかな?」
「……そなたに一任するのが間違いだったか。次はないぞ、イザナミよ」
「大丈夫だよ女神ちゃん」
 
色情魔め、とアスタルテが呟き、自分達が先ほどまで居た建物に歩き始めた。
それを聞いていたイザナミは苦笑いをしながらゼムスの死体に近づく。
 
「……あらら。これは酷い」
 
それ以上ゼムスの死体に近づくことはしたくはなかった。
正直、こんなに上手くいくとは思わなかった。
自分がゼムスに「やつらを出し抜けば自分の利益があがるぞ。大丈夫、誰にも言わない」と言い、離反を促させる。
すぐに離反したのを見るととても滑稽な話だろう。結果としてアスタルテとミュウツーの怒りを買い、殺された。
彼女達には完全にゼムスが勝手に離反してるのだと思っているのだが、実際は自分が離反させたといっても間違いない。
空を見上げるとその星がこちらを見下ろす。
だいたい、1人分は揃っていてもマルクが居ないとアレは起動しない。
 
「……しかし、面白いじゃないか。欲望ってさ。……はぁ」
 
ある感情を押し殺し、自分も建物に戻ることにした。
戻っている途中、また携帯がなる。どうやら『恋人からのラブコール』らしい


95 :

☆ ☆ ☆
「ばっちりOK貰ったのサ!」
「そうよかった。じゃあ、今すぐ」
「ちょっと、待つのサ」
 
マルクが戻ってきて言った事は開口一番それだった。かなり順調じゃないか。
今すぐ仕事に取り掛かってもらいたいのだがマルクが待ってほしいといった。
急いでいるのに、何だというんだ。マルクは誰にも聞かれないように、そして盗聴器に拾われないように私の耳に口を近づけた。
 
「人質の部屋も入ったのサ」
「え!!?」
「え、えーりん!声が大きいのサ!」
 
あまりにも非現実な事に声を張り上げてしまった。
人質の部屋はイザナミとしか入れない。それなのに何故?
 
「えーりんを安心させたくて、ボスにおねがいしたのサ。ボス同伴だったけど」
「……そう。ありがとね、マルク」
 
頭を撫でてやる。ああ、この子は本当に良い子だ。私を安心させる為にこんな事をしてくれるなんて。
だが、二度とこういうことはしては貰いたくは無かった。
ここまできてリスクを犯すようなことはしたくない。今は怒る気にはなれなかった。
 
「輝夜ちゃんは元気だったのサ。というより本当に人質に部屋とは思えないぐらい豪華だったのサ」
 
確かに人質とは名ばかりで、こちらの手違いで連れてきてしまった、のが正しいのだ。(もっとも本来の意味合いで姫が利用される可能性もあるが)
手違い、というのは拉致するときに巻き込まれた者達である。つまり輝夜の他にもいるのかもしれない。
それが気になったので聞いてみる事にした。


96 :
「姫の他に誰かいた?」
「居たのさ。帽子を被った少年と、それと、」
 
マルクが押し黙った。
口を動かすが、言葉を発するのが苦しいのだろうか。
 
「……ローザがいたのサ。ずっと僕をずっと睨んでた」
「!…………貴方が悪い訳じゃないわ」
 
マルクを慰める。だが、私の頭の中は疑問で埋め尽くされた。
彼女は首を跳ね飛ばされ死んだ筈だ。よく似た別世界のローザって訳でもないだろう。
ではなぜローザが人質の部屋に生きている状態でいるのだろうか。もしや蓬莱の薬か?
それをマルクに聞く気にはなれなかった。なにせマルクは参加者、人質に「悪」を演じ接触しなければならないのだから。
姫と、帽子の少年。......きっとレッドが固執している子だろう。彼らも最終的には救い出さなければ。
倒すべき敵は減った。会場の参加者をこちらに来させることが出来れば私の勝ちは決まったものだ。
その時が来るまで、こちらの敵を減らすことを考えなければならない。やることは多すぎるが、これぐらいが丁度良い。
 
☆ ☆ ☆
数刻前。
 
「へいへいへーい、皆元気なのサ〜?」
 
硝子の向こうに豪華な装飾、そしてPC、漫画本、テレビゲーム、etcetc…。しかし彼女達はそれを手に取ることはない。
この強化硝子には無数のヒビが入っているが穴が開くことはない。そして硝子の向こうのすぐ目の前には壊れたイスが転がっていた。
黒髪の少女はじっとマルクと、その男を睨み続ける。
死んだはずだったローザもマルクを睨み続ける。少年はまだ状況がわかっていないが、マルクと彼がロケット団の様な悪というのはわかるらしい。
男が葉巻に火をつけ、壁によりかかる。


97 :

「……えーりんはどこ?」
「秘密なのサ。でも確実に無事で無傷だってことは教えてあげるちょ〜」
 
輝夜は永琳が何をさせられているのは知らない。
人質、というのは拉致をする時に、たまたま近くにいたとか、性格が似ていた、とか些細な理由で間違って連れてこられた者達だ。
傍迷惑という言葉が彼女達に相応しい言葉である。
できるなら彼女達を逃がしてやりたいが、この計画を知る者をこの世界の外に出すわけにはいかなかった。
 
「セシルは大丈夫なのっ!?」
「うーん、それは言えないのサ。でも生きていることだけは確か」
 
ローザが声を張り上げマルクに質問をする。参加者の情報を彼らに教えるのは禁則事項に含まれているので教えることはできなかった。
それに教えられたとしても彼女にセシルが今どういう状況かを言うのは余りにも酷だ。
ああ、カインとセシルは本当に可哀想だ。生きているのに彼らはローザの為に殺し合いに乗ったなんて口が裂けても言えなかった。
 
「ねぇ!どうなってるの!?君たちは何者なんだっ?」
「落ち着くのサ、ゴールド君。僕からはまだ言うべき言葉じゃないのサ」
 
レッドが固執している少年、ゴールド。彼はレッドと同じく頭が良い。だからこそよく考えて発言するタイプなのだろう。
違いはレッドの様に心が腐っておらずポケモンを心の底から愛していることぐらいだろう。他は殆ど同じであった。
人質の中で一番接触しやすいだろう。どうにかして接触しなければならない。
そんな事を思考しているとボスが葉巻を吸い終わった。
それはこの部屋から出なければならない事を意味した。
 
「それにしてもよかったのサ。みんな元気そうで。じゃ、僕はこれで〜」
 
部屋を出るとき、ボスがマルクに人質に接触した理由を聞いた。
マルクは永琳を安心させたい、と正直に言うとボスは、お前は良い奴だな、と言い頭を撫でた。
 
そしてその部屋に残ったのはローザ、ゴールド、輝夜の三人だけ。


98 :

 
「…….どうなってるのかしら……セシルは大丈夫なの……?」
「本当にムカつく妖怪ね」
「落ち着いて、ローザさん、輝夜さん」
 
二人が文句を言ったり項垂れたりする度にゴールドは宥めたり慰めたりしていた。
それでも輝夜とローザは気持ちを静めることはできなかった。
輝夜はぶつぶつ言いながら下を俯き、漫画本らしきものを読みはじめた。
ローザは輝夜よりも俯き、気分を沈ませる。
ローザは先ほどまで、首と胴体が分かれている状態だった。
蓬莱の薬のよる所為。ただし再生速度は大幅に遅いタイプ、と先ほど輝夜は言った。
もっとも再生の早いタイプがあったりするのは知らない、と付け加える。
つまり彼女は不死の状態で、参加者に首輪という見える恐怖を植えつける為に一度殺された、ということになる。
実は、輝夜と自分は先にこの部屋に連れてこられ、何が起きたか理解できず情報を交換しあっていた。
もっとも幻想卿の話は非現実であり到底信じられなかったが、彼女がポケモンの存在を知らない所を見ると信憑性は増してきた。
その時はこの建物の外で何が行われているかはわからず、二人で永琳の無事を願い、そして自分のポケモンの無事を願っていた。
すると、唐突に、部屋に死体が投げ込まれた。それを見た自分と輝夜は悲鳴を上げ、嘔吐こそはしなかったものの、ずっと気分が悪かった。
だがそれで終わらなかった。その死体が、ゆっくりと再生し始め綺麗な女性に変わったのは驚いた。
彼女と情報交換をして、そこで初めて外で不特定多数による殺し合いが行われているのを知ったのだ。
永琳が参加させられているかもしれない、と輝夜がそこで喚き始め、それからずっとこんな感じだ。
あのポケモンは無事だ、と言ったのだから無事なのだろう。彼が自分達に嘘をいうメリットはないだろうし。
それに明晰な頭脳を持っているのだから案外、参加者ではなく運営の方を担当させられている可能性もある。
その事を告げても彼女は喚く一方だったが。しかし、なぜ今頃になってマルクとやらがこちらに来たのだろうか。
先ほどまではガソリンスタンドの制服をきた男が何度も様子を見に来るだけであって、こちらに喋りかけることは殆どなかった。
しかし、いまさっきは違った。マルクはこちらに喋りかけてきたのだ。今頃になって大体的なアピールをこちらにしてきたのは可笑しい事だ。
……まてよ?
 
「……こちらの味方?」
「えっ?ゴールド君、何て言ったの?」


99 :

ローザが自分の言葉に反応する。だがまだ自分の考えが纏まっていないので返事を返すことはできなかった。
こう考えてはどうだろう。マルクがこちらに接触したのは些細な理由なのかもしれない。
それこそガソリンスタンドの男が、暇だからこの部屋に来た、と同じように。
彼は、元気そうでよかった、と言っていた。それがそのままの意味だとしたら?
僕らの安否確認をしたかった。それだけの理由なのかもしれない。
それに、彼はローザを殺した。そこだ。そこが可笑しい。R必要があるのに、蓬莱の薬を飲ませた。
彼はローザをRのを拒否して、蓬莱の薬を飲ませたのかもしれない。 
確信はない。だが、彼のあの神経を逆撫でし苛々させる台詞は全て演技だとしたら?
彼は味方だということになる。
 
「……確証はないけど、二人とも僕の話を聞いてくれる?」
「……えぇ、いいけど」
「つまらない話だったら承知しないわよ」
 
とりあえず、自分の推理を彼らに話すことにした。もっともこの内容を彼らに話してもここから出られないのに代わりは無いけど。
 
☆ ☆ ☆
 
「そう、やはり予想通りだったか、うん、うん、あー、干渉はできるだけ避けてって言ったじゃないか……うん。そう、わかった。じゃ、また連絡してね」
 
イザナミは電話を切る。まったく、あいつは少し扱い辛い。
数時間前は気持ち悪いぐらいのテンションで意気揚々と会場を駆け回っていたのに今は冷静に任務を遂行するとは。自己暗示とは怖い物だ。
しかしやはり予想通りだった。逆にこの予想が外れてしまったら、と冷や冷やしていた所である。
 
「……でさ。あんまり君にはこの部屋を出てもらいたくないんだけど」
 
今イザナミがいる部屋はボスの部屋だ。すまんな、とボスは上辺だけの謝罪をする。
やはり掴めない男だ。
 
「ゼロは君に不信感を持ってる。他二名も君の存在をよく思ってはないし。下手したら殺されちゃうよ」


100 :

 
そこまで嫌われるとはな、俺に自由はないのか、と男はまた言った。
 
「自由はあるほうさ。俺とえーりん、マルクはあいつらにずっと睨まれ続けてる。中間管理職は辛いもんさ」
 
すまんな手数をかけて。それで、その飲み物はなんだ?、と男はイザナミの持っているペットボトルを指差した。
イザナミは黙ってペットボトルを彼に渡す。彼は栓を捻り飲み口を口につける。
うますぎる、と言いながら全て飲まれてしまった。せっかく買ったものが、とイザナミは心の中で悪態を付いた。
 
「あー、まぁ、業務連絡だけさせてもらうよ。ゼムスが離反したから抹殺した。以上」
 
やはりな、と男は言うが、イザナミは彼に返事も応答もせずに部屋から出て行った。
そんなに怒るとは。あとで同じ物を買って返そう。ついでにカロリーメイトも挙げれば機嫌は直るか。ついでに、レーションも。
 
さぁ、自分も仕事に戻ることにしよう。大団円には程遠そうだが、前に進むしかない。否、進む事以外はする必要はない。
得てして、こういうものはそういうものだ。全ては大義の為。大いなる意思の為。
 
【ゼムス@ファイナルファンタジー4 死亡】


101 :
投下終了
危ない描写が何箇所かるので何か問題ありましたら指摘お願いします

102 :
結構拙いですが感想を
『神と支配者  ◆dGUiIvN2Nw』
亀ですが、投下乙です。
さらに狂気になった霊夢が(ロワ的に)美味しいと思ったり、そうしてくれたアカギさんを心の中で賞賛するとか、
自分の中のロワ脳が強く反応しちゃうほど読んでて楽しかったです。
『心一つあるがまま ◆S33wK..9RQ』
投下乙です。
ディアルガパルキアを飼いならすミュウツーマジスゲー。
ゼムスはあっさり死んでしまったけど…まさか、な。
マルクは本当にいい子だなぁ、それだけに悪役を演じさせられていて可哀想だ。えーりん頑張ってくれ。
などと思いました。今後も主催側で個々がどのように動くかが気になります。
で、たぶん書き手が気にしていると思われる事の一つ「ローザの復活」については、自分は何も思いません。
パワロワ界隈では「ロワ内での死者蘇生」がタブーとされていますが、復活したのは見せしめ役で参加者ではなかったですし、
自分としてはここゲーキャラロワなら上手く活かせると信じているので、このまま進めちゃっていいかと思います。
最後に、
 「 ま た ゆ か り ん か ! 」
っと、他のロワを見てきた自分は思いましたw
まあ、元々布石もありましたし、今後の紫の登場を楽しみにしています。

103 :
投下乙です
問題は個人的には見あたりません
ゼムスが死んだけど、これは……フラグ?
主催面子が無理ゲーだったけど、そうか仲が良くなければこうなることは目に見えてたのかな
そして パイロンさんを成り行きで倒しちゃうゆかりん半端ないw

104 :
◆S33wK..9RQ氏のSSを読んでいたら紫はこんな世界も訪れたんだろうとネタが浮かんだわん。
「さっきは化け物と勘違いしてすまなかった。ところで、あんたはどこからここに来たんだ?………えっ、次元の狭間から出してくれるのか?」
「脇を晒した巫女?いや見ていないよ。それより僕達が鏡を取って来るまでの間、彼女…じゃなくて、この犬を見ていてくれないか?」

105 :
机が壊れたアカリスの世界がどこだかわからねぇ……
>>104
どっちもわかんねぇ……

106 :
>>104
FF5とDQ2かな?

107 :
誤字報告
×脳内に劈くようなミュウツーの声ががゼムスを襲う。
○脳内に劈くようなミュウツーの声が是夢須を襲う。
あと幻想「郷」な。幻想「卿」じゃ人物の位だよw
>先ほどは成り行きでパイロンとかいうエネルギー生命体を撃墜してきた所だ。
きっと、相当手加減したんだろうなぁパイロンさんw紳士だからww

108 :
>>107
誤字報告で誤字ってどうする自分w
是夢須じゃなくてゼムスだw

109 :
>>107
指摘ありがとうございます。
かなり前(IN THE〜)のSSの時に『幻想郷じゃなくて幻想卿な』って逆の指摘をされたことがあるのですが、やはりこちらの漢字であってましたか。
私の書いたSSの全てが『幻想卿』となってますのでこれから修正させていただきます。
>>105
コンカーって調べると幸せになれます

110 :
>>104
ちょっと寂しかったので>>104さんのFF5世界とDQ2世界をSS内に加えさせていただきました。
問題あったら言ってください。すぐに消します

111 :
>>110
うおぉ、朝起きてスレ見てみたら、ただのネタで書いたものが作品に組み込まれていた!?
恐縮です。

112 :
雪子原作で「人を殺した思い出なんかいらない」みたいなこと言ってたけど、殺しちまったなぁ

113 :
念のため修正報告。wikiの全ての『幻想卿』を『幻想郷』に修正しました。

114 :
雪子は俺的死亡者ランキングではかなり上位
一位はアイクかな。……あぁ、なんで死んじゃったんだよアイクぅ
まぁそのおかげで綺麗な漆黒が見れたわけだが

115 :
雪子さんはみんなを守るのに精一杯だったんだよきっと……

116 :
花村陽介、ルビカンテ、レッド投下します。

117 :

陽の光が燦々と差し込む草原、そこを歩くのは三つの影。
それぞれが同じ方向へと向けて歩を進めている。
学生服に身を包み先頭を歩く少年、花村陽介。
ところどころ擦り切れボロボロになった衣服を着て、引きずるようにして足を運ぶ少年、レッド。
そしてその中でも一際目を惹く、ゆうに二メートルは越えそうな程の巨躯を持つ男、ルビカンテ。
「いやー、しかしあれだ。レッド、さっきのあれは本当に誤解だからな。いやマジで。おいルビカンテも何とか言えよこの野郎」
「この私が何をしたというのだ。それに先程も男に色情沙汰などはないと言ったであろう」
「何度も言わなくてももう分かってるよ陽介。でも君たちに出会えて本当によかった。もし出会えなかったことを思うと……」
赤い服の少年、レッドがうつむいて答えた。
レッドは先刻、花村陽介とルビカンテの二人と偶然遭遇したばかり。
その後、紆余曲折を経て彼らと共に行動することになった。
「心配すんなって。俺とルビカンテで守ってやるからもう大丈夫だ」
「そうだ。私がいればどんな魑魅魍魎だろうと一瞬にして焼き尽くしてやろう」
彼らの行き先はタウロスタウン。
そこに他の参加者が身を潜めている可能性が高いと判断し、向かうことにした。
町には隠れる場所も役に立つ施設も多いだろ?案外、みんなそこにいるかもしれないぜ。それに病院に行けばレッドの怪我だって少しは治せるしな、と陽介は言う。
「其処に強者はいるのか?」
まだ見ぬ相手との戦闘を欲するのはルビカンテ。
正々堂々とした戦いを心情とする武人。
「どうかな?だけどその可能性はあると思うぜ。それにアンタ自身さっき知り合いがいるかもしれないって言ってただろ?」
最初の放送の時点で、ルビカンテと関係のある残りの参加者はセシル、カイン、ゴルベーザの三人。
セシルとカインとは殺し合いが始まる以前からも因縁のある相手。
特にカインとはこちらでも一悶着あったばかり。
それにゴルベーザはルビカンテの主に当たる人物。
一刻も早く合流するべきである。
勿論彼らがこの先にいるとは限らないのだが、可能性が零ではない以上行かないわけにはいかなかった。

118 :
「……そうだな。セシルとカインは元より、ゴルベーザ様とは一刻も早く合流しなければならない。主の命を受け、主を守り、主の為に尽くすのが部下の務め」
「そういうこった。それにレッドだって早くその怪我少しは良くしたいだろ?」
一人後ろを歩くレッドに、陽介は振り向いて答えた。
「そうだね……」
レッドに気遣い明るく話しかける陽介に対し、レッドも優しく笑みを浮かべ頷いた。
その本心は真逆の作り笑いの笑顔で。
レッドは花村陽介とルビカンテと遭遇した時、自分の目に飛び込んだ衝撃的な状況を前に、自分の選択を読み違えたかと焦りを生じたが、それは杞憂だったようだ。
花村陽介は明るく気さくな少年だ。
合流してからというもの、ほとんど笑みを絶やさずにいる。
年齢もレッドとそう違わないだろう。
怪我をしているレッドに、怪しむ様子など一切なく親切に接してきた。
こんな状況なのに疑いもせず、よくそんなに軽々しく近づけるものだとレッドも関心したぐらいだ。
そんな人物を利用しない手はない。
ルビカンテという男もそう心配する必要はないだろう。
初めて見たときはルビカンテの放つその雰囲気、佇まいに圧倒されたが、別に難しい人物ではないことが分かった。
そもそも人間なのか、この男は。
おそらく、それ相応のかなりの力を持っているに違いない。
参加者の大半は一掃できそうな気がするぐらいだ。
(花村陽介にルビカンテ、ここにきて最高の“仲間”を手に入れたよ。
この二人と共にいればしばらくは安泰。
その時がくるまで充分役に立ってもらおう。
唯一気になるのは、さっきも僕に干渉してきた『あいつ』だ。
何の目的かは知らないが、邪魔するなら容赦はしない。
そして最後は必ず僕が勝つ。
今までだってずっとそうだったんだ。
ポケモントレーナーとして連戦連勝、負けなし、チャンピオンになるのだって全然難しくなかったじゃないか。
僕の妨げになるものは全部やっつけてこれたんだ。
今回だって絶対に大丈夫さ。何も問題はない。何も……)
「そういえばその怪我……、たしかサカキって奴にやられたんだっけな?」
陽介がレッドに尋ねる。
三人は合流してから簡単な情報交換を行っていた。
互いの知る参加者や人間関係などについての簡単な情報交換を。
陽介は特別捜査隊のメンバーについてを。また自身のペルソナ能力についても少し説明した。ルビカンテはともかく、レッドは陽介のペルソナを見て少し驚いた様子を表した。
ルビカンテはセシルとカイン、そしてゴルベーザについて。
レッドはサカキについてはただ襲われたとしか話さなかったので、陽介に尋ねられて詳しく説明することにした。

119 :
「そうさ。奴にやられたんだ……。あの残虐非道な男に……」
「一体どんな奴なんだそいつは?」
「ロケット団っていう悪の組織のリーダーさ。罪のない善良な市民たちに対し悪行の限りを尽くす最低な男だよ」
「ロケット団……。聞いたことないな。ルビカンテはあるか?」
「いやないな」
「そんな大それたこと仕出かす奴らなら知らないほうがおかしい。変だな」
「テレビのニュースとかでも連日のようによく見るよ……」
「……だけど俺はそんなニュース見たことも聞いた事もない。てことは……」
顎に親指を当て、
少し間を置いて陽介は話した。
「……もしかしたらさっきの話も冗談じゃないのかもな」
「さっきの話?」
「ああ、レッドと出会う前、ルビカンテと少し話してたんだ。お互いの住む所とかの。そしたらこいつ月の民とか何とか言いだしてさ。さすがに俺もその時は信じられなかったんだけど、今になってよーく考えてみればあながち嘘じゃねーのかもって」
「どういうこと?」
「……もしかするとレッドも、てか俺たちはみんな違う世界に住んでるんじゃないかってこと」
「え、違う世界?」
「いわゆるパラレルワールドって奴?確証はないしちょっと話が突拍子すぎるとは思うんだけどさ」
「本当に?まさか?」
レッドは目を丸くして陽介に尋ねた。
「疑うのも無理ねーよな。俺だってまだ信じてない。でもルビカンテの言う月の民、レッドの言うロケット団。両方とも俺は今日初めて聞いた。それに二人が嘘を言っているようには思えない。だからもしかしたらそうなのかもって。
大体ルビカンテを見てみろよ。こんな変な格好した大男なんて見たことあるか?いやないね俺は。だろ?」
「変な格好とはなんだ。私からすればお前のほうがよっぽど奇抜な格好よ」
「どう見たって普通の学生服だっつーの!まあとにかくパラレルワールドだか何だか分からないけどその可能性もあるってことだ」
二人のやり取りをレッドは無言で見つめた。
陽介に対しレッドは平行世界の存在についてあたかも初めて耳にしたように答えたが、勿論そんなことは前から予測がついていた。
序盤に遭遇した博霊霊夢の人間離れした異能の力。
先程のサカキとの鉢合わせの時に生じた歴史の矛盾。
どう考えても何かがおかしい。
それに気づかないほどレッドも愚鈍ではなかった。
「なるほど……パラレルワールドか。だとしたらさっきの巫女もそうなのかも……」
「巫女?」
「うん。夜に彼女に襲われたんだ。不思議な力を使っていた。超能力って言えばいいのかな……。この腕も彼女にやられたんだ……」
レッドは、痛々しく折れ曲がった右腕に悲痛な表情で目を向ける。
陽介も同じ表情で見つめた。
「ひでぇなそいつは……。名前とか聞いてないのか?」
「さすがに名前までは……。ただサカキとその巫女は一緒に行動していたんだ。お互いに協力しているんだと思う。かなり危険な奴らだよ……」
「そうか……要注意人物だなそいつらは。まぁとにかく安心しろって。もしそいつらが来たら俺とルビカンテで守ってやるからさ。それにこの先の町には病院もある。その怪我だって少しは良くなるさ」
「ありがとう……陽介……」
落ち込む様子のレッドを励まそうと必死に言葉を紡ぐ陽介。
その真っすぐで裏表のない陽介にレッドは本当に感謝した。
(こんな僕を信じてくれて本当にありがとう。僕に寝首を掻かれるその時までちゃんと守ってくれるよね、陽介……)
真心こめた誠心誠意の感謝ではなく、うわべだけの虚礼虚文の感謝で。

120 :

彼らは歩く。
眼前に広がる無人の草原を。
「なあルビカンテのおっさん」
「なんだ?」
「あんた、一応俺の師匠なんだよな?だったら何か一つぐらい凄い技教えてくれよ。こんな状況だしさ、こう、すぐに覚えられるような技とかないのかい?」
「フ、戯けが。一朝一夕で身に付く技など無いわ。お前のそのペルソナもそうだろう?」
「そうだけどさ」
「そんなもの身につけても無意味。付け焼き刃の技などかえって重荷になるだけよ」
「なるほどね……。まあ確かにそうだな」
「だが――」
「だが?」
「だが、一つ私から教えられるとすれば、それは此処だ」
そう言ってルビカンテは自身の胸に手を当て、続けた。
「心。気持ち。信念。口に出すのは簡単だ。しかしそれがあると無いとでは全く違う。戦う理由だ。私も常にゴルベーザ様への一心で戦っている。勿論、強き者との戦いも理由の一つだ。
何の理由も無しに戦うのでは全力など出せん。心涼しきは無敵なり。陽介、お前にはあるか?戦う理由が?」
陽介は見知った仲間の顔を浮かべる。
その中には既に命を落とした天城雪子の姿もあった。
稲羽市で共に過ごし、共に助け合い、共に戦った仲間たち。
彼らと共に過ごした時間は、決して忘れることのない最高の時間だ。
仲間がいたから今の自分がここにいる。
彼らの為なら何も迷いも恐れもない。
陽介は胸を張ってはっきりと答えた。
「ああ、あるぜ。ありがとよ“師匠”。これで気持ちの整理がついたぜ」
「フ。別にお前の為にではないわ」
「またツンデレかよ。ハハハ。あんたに出会えて――あんたの弟子になれて良かったよ。ありがとうな」
ルビカンテは無言のまま答えない。
ルビカンテの只でさえ赤かった顔が、また少しうっすらと濃くなったような気がした。
そして一言呟いた。
「ツンデレ……、悪くない。いい響きだ」
そんな二人の会話を後ろで静かに聞くレッド。
思わず胸に浮かべた――くだらない、と。

121 :
それから幾分程の時間が過ぎた。
朝の気配はすっかり何処かへ消え失せ、空からの清々しい光が辺りを照らす。
端から端まで見渡せそうな程の快晴。
目的地まではもうまもなくの所に来ていた。
視界の先に少しずつその町並みが見えてくる。
大小様々な建造物が凸凹のようにそびえていた。
タウロスタウンは四方を海で囲まれている。
町に行くためには二カ所の橋を渡る以外に方法はない。
三人はその内の一つ、西側の橋に向かっていた。
幸いここに辿り着くまでの間、他の凶悪な参加者に遭遇することはなかった。
参加者の数は今も刻々と減り続けている。
それに伴い、参加者の遭遇率も下がってきているのだ。
「ふう。この橋を渡ればようやくタウロスタウンだな」
「ゴルベーザ様はいるのだろうか」
「やっとここまでこれた。少し疲れたよ」
橋の前で歩を休める三人。
彼らの眼前には広々とした町がどっしりと構えている。
無言で佇むその町は少し不気味に見えた。
「でも、無事ここまでこれて良かったな」
「油断するな陽介。この先に何が待っているかは誰も分からないのだぞ」
「へいへい分かってますよ。とりあえずまずはレッドの治療をするため病院にいこうぜ。ええと、ケンコー病院?ふざけたネーミングだぜ全く」
「ありがとう陽介。僕のためにここまでしてくれて。君だって仲間が心配だろうに。何て礼を言ったらいいか……」
「いいんだって、そんな気を使わなくても。困った時はお互い様だろ?」
陽介はニッと笑みを浮かべる。
相変わらずの態度で接する陽介に、レッドは少し呆れたがとりあえず笑って答えた。
「さて、じゃあ行くか」
「ああ」
「うん」
町に向けて歩み出す三人。
親友や主君と再会したい者。
強敵と再戦したい者。
理由は違えどそれぞれが目的を持ってここにいる。
願いが叶うのかは分からない。
たどり着いた先に何があるのかも分からない。
それでも彼らは先へと進む。
三者三様の思いを抱き、彼らは橋を渡り始めた。

122 :
【B-4/1日目/午前】
【花村陽介@ペルソナ4】
[状態]健康
[装備]熟練スパナ@ペルソナ4
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1(武器にはならない)、スタンドマイク@星のカービィ
[思考]
基本方針:殺し合いはしない。まず仲間達と合流、その後行動方針を決める
1:瀬多総司、里中千枝を探す為にタウロスタウンに行ってみる。
2:ルビカンテと行動を共にする
3:カイン、サカキ、巫女(博霊霊夢)、雷電、東風谷早苗を警戒。
4:まさかパラレルワールド?嘘だろ?
※カインの名前はルビカンテがカインと呼ぶのを聞いています。
※作中からの登場時期に関しては真ルート突入前、ペルソナはジライヤ。足立に関しては頼りない刑事の印象です。
※FF4世界の事を聞きましたが、信じてません
※ルビカンテからセシル、カイン、ゴルベーザについて簡単な説明を受けました。

【ルビカンテ@ファイナルファンタジー4】
[状態]ツンデレのルビカンテ
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品未確認×2
基本方針:ゴルべーザ様を探し、指示に従う。強者との戦いを望む。
1:花村陽介と行動を共にする。戦いを通じて自分の技を教える。
2:強者との戦いの為、町へ向かう
3:カイン、サカキ、巫女(博霊霊夢)、雷電、東風谷早苗を警戒。
※作中からの登場時期はカインと面識がある以降。死亡後、または直前と判明。
※花村陽介が自分の弟子になりたいと思っていると勘違いしています。また、ツンデレという言葉を敬意ある戦士に送る言葉だと思っています。
※花村陽介から雷電と東風谷早苗の容姿を聞きました。
※花村陽介から瀬多総司、里中千枝、天城雪子について簡単な説明を受けました。

【レッド@ポケットモンスター】
[状態]:右手首損傷、右肩脱臼(右腕は使い物にならないレベル)、精神疲労少、精神的安堵感および高揚感、痛覚麻痺、帽子無し。
[装備]:はがねの剣、コルトパイソン(5/6、服の下に隠している)
[道具]:基本支給品一式、極細ワイヤー10m(残り5m)、はがねの剣@FE、コルトパイソン(5/6)@現実、クリスタル
[思考]
基本方針:生きて帰り、少年と再戦する
1:陽介とルビカンテに守ってもらう。頃合が来たら裏切る
2:巫女(霊夢)とサカキの悪評を言い回す
3:カイン、サカキ、巫女(博霊霊夢)、雷電、東風谷早苗を警戒。
4:『彼』が鬱陶しい
5:ルビカンテを警戒(ホモかもしれないので)
6:クリスタルは誰にも渡さない。
※サカキを『3年前のサカキ』と認識しました。
※花村陽介から瀬多総司、里中千枝、天城雪子について簡単な説明を受けました。
※ルビカンテからセシル、カイン、ゴルベーザについて簡単な説明を受けました。

123 :
投下終了です。
何かありましたらお願いします。

124 :
投下乙です!
ツンデレがなぜかカッコいい言葉に昇華してる……だと?

125 :
投下乙!
パラレルワールドに気付いたか。
さすがは花村。特別捜査隊の推理要員なだけあるな
レッドのかき回し具合では面白いことになりそうなチームだ
あと、細かいですがひとつ指摘
雪子は第一放送後に死亡したので、花村はそのことを知らないはずです

126 :
投下乙です
ツンデレの所がちょっと良い場面のはずなのに
何故か微妙に笑いが込み上げてくるw

127 :
長らくお待たせ致しました! ようやく完成したので投下したいと思います
びっくりするくらいの情報量の上に今まで通りの文量ですので、
読むだけでもかな〜り疲れると思いますが、余力のある方は矛盾がないか探していただけたらと思います

128 :
【月と地上の狭間 とある高原の邸宅】
「……と、いうわけよ。協力お願いできるかしら?」
優雅にティーカップに口をつけ、八雲紫は不敵に微笑む。
その向かいに座っている女性、依姫は、どこか渋い顔をしながらも彼女の話を聞いていた。
「はっきり言って、あなたの話はまったく信用できる要素がない」
「そうね。確かに証拠として提示できるものは何もない。でも、何かが起こっていることは確実よ」
それを聞いて、依姫の隣で桃を頬張っていた豊姫が、場の空気に似合わぬ天真爛漫な笑顔を見せる。
「その何かに八意様が関わっている証拠くらいは見せてほしいところねぇ〜」
(へらへらしている割に、押さえるべき点をよく分かっている。さすがに月を束ねる姉妹なだけはあるか)
もぐもぐと口を動かし、「ん〜、おいしい」などと呟いている豊姫を見て、紫は思う。
やはり一筋縄ではいかない様子だ。しかし、だからこそ味方になれば心強い。
「月を欠けた満月に置き換えて、月と地上の道を閉ざそうとする異変が以前起こった。その異変を解決した者は、誰が異変の犯人だったのか、その存在をまるきり忘れてしまっている」
「……確かに。そんなことをしようとするのもできるのも、八意様くらいね。けれど、私達はその存在が消えるということ自体を疑っているの。また何か適当なこと言って、月の都を荒らそうとか考えてるんじゃないの?」
カップを傾け、紅茶を啜る。
あくまでも自分のペースを崩さぬように、ゆっくりとした動作でカップを置くと、紫は口を開いた。
「私の見解はこうよ。誰かが世界に無理やり干渉したことで、世界が無理やり修復作業を行った。全ての事象は繋がっているの。どこか一つが狂えば他の全てが狂ってしまう。その狂いを治す一番の方法が、存在をなかったことにするというもの」
「世界の意思でってこと?」
依姫は思わず眉をひそめる。
「ごく自然な現象ってことよ。世界が世界として成り立つためのね。この世が三次元であることをあなたは説明できる?」
世界というものがどういう仕組みで動いているのか。それは月の民であろうと理解できないものだ。

129 :
何故存在が消えるのか。その疑問は、何故地球が三次元的な物体であるのかを解説するに等しい疑問だ。
「しかし私も姉様も、そしてあなたも、八意様のことを覚えている」
「私は世界の外にいたから干渉を免れた。あなたたちはすでに彼女との関係は希薄なものとなっているわ。この世に運命というものがあって、それを辿るようにして私達は生きているとするなら、おそらくあなた達は金輪際彼女と出会うことがなかったということよ」
綿月姉妹が幻想郷と関わることが金輪際ないのであれば、八意永琳の存在を忘れる必要などない。世界の観点で見て矛盾は起きないし、辻褄合わせをする手間も省ける。
「荒唐無稽だわ」
依姫の言う通り。紫の説にはあまりにも空想が多過ぎる。
「けど、実際問題できなくはないわよ? 龍神様だって、やろうと思えばそれくらいできるだろうし」
確かに紫の説は空想の産物だ。しかし、絶対ないとは言い切れない。少なくとも一割は可能性がある。
「それに、どちらにせよ存在が消えているという事実は変わらない。説明はできなくても、これが異変だということは変わらないわ。まぁ信じるか信じないかは、あなた達で勝手に下調べでもしてちょうだい。それこそ、私がとやかく言っても仕方のないことだし」
「あなたは幻想郷の住人や八意様が、別世界に拉致されたと考えているのね」
豊姫はテーブルに置かれた籠の中から、よりおいしそうな桃を厳選し、それを手に取る。
「その通り。そしてそれは、あなた達からしても無視できないことのはず」
紫はおもむろに椅子から立ち上がった。
何をするつもりかと綿月姉妹が身構える。が、紫は意外にも、その地面に手をつけただけだった。
「お願いします。私は、幻想郷を失うわけにはいかない。あなた方の力が必要なのです」
依姫と豊姫は思わず互いに見つめ合った。
そして、どちらからとも言わず薄く微笑んだ。
まるで、合格だと言わんばかりに。
「顔を上げなさい、地上に住む穢れ多き妖怪。元より、あなたの言う異変は私達も感知していた」
「今回の件は、少しあなたを試していたのよ。私達も協力者を探していた。自力で異変に勘付き、その本質をも見抜けたあなたなら、協定を結ぶに十分な人材だわ」
「あらそう?」
先程までとは違い、軽い調子で立ち上がり髪を靡かせる。
「ああよかった。こちらとしても、これくらいのことに気付けない相手なんて協力に値しないから」
「……敢えてこちらの思惑に合わせていたってわけね。ほんと、地上の住人は食えないわ」
「あら。あなた達ほどじゃないと思うけど?」
そう言ってクスクスと笑う。
これで力は確保した。あとは道だけ。敵の居所さえ見つかれば、一気に叩ける。
「それじゃあ、戦力の方はあなた達に任せるとしましょうか。月の民が本気を出せば、大抵の輩は潰せる」
「そこは信用してもらいたいところね。力なら、誰が相手でも負ける気がしない。問題は敵の居場所だけど、それも姉様とあなたがいれば問題はなさそうだわ」
「その通り」
頷く二人。そこには確固たる自信があった。月の民であるプライドと、千もの時を生きる妖怪としてのプライドが。
紫は、机に置かれたティーカップを掲げた。
「月と地上の住人による、最初で最後の協定。その勝利と成功を祈って」
綿月姉妹も紫に合わせてカップを掲げる。
酒は自粛した。これからやらなければならないことがたくさんある。
そう。酒ならいつでも飲めるのだ。この異変が解決すれば。
紫は澄ました顔でカップに口をつける。
名前も顔もわからない。しかし、必ず引きずり出し、生きてきたことを後悔させてやる。そう強く思いながら。

130 :

◇◇◇
【殺し合い会場 D-4】
全員が放心していた。
それだけゼルギウスの語った話は想像を絶していた。
正の女神、アスタルテ。負の女神、ユンヌ。
人を作り、世界を作った二神。
暴走し、人を絶滅の危機に追いやったユンヌをメダリオンに封印したアスタルテ。
彼女が目覚める時、人が未だに争い、戦火に塗れているというのなら、人を滅ぼすことを明言した女神。
「……私は。私の主は、彼女を目覚めさせ人を滅ぼそうとしていた」
それは、漆黒の騎士からすれば相当の勇気がいる告白だっただろう。
せっかく手にした仲間が、この告白で自分を拒絶するかもしれないのだ。
「私は人に絶望していた。誰からも疎まれ、自分の居場所を作ることができなかった私に、主セRンは居場所をくれた。主に仕えること。それが私にとって、ただ一つの生きる糧だった。
……許してくれなんて言わない。今ここで、自害してもいい。何の償いにもならないだろうが」
全員が黙っていた。
もしかしたら。漆黒の騎士がセRンを止めていたら、この殺し合いは開催されなかったかもしれない。
それは誰にも肯定できないことで、しかし誰にも否定できないことだった。
「……あーもう! 暗いのやめ! なしなし!!」
千枝が立ち上がりぶんぶんと手を振る。
「漆黒さんが何をしようとしてたかとか、そんなんもう関係ないよ。漆黒さんは仲間! んで、今は私達を助けてくれてる。それだけわかれば万事OKっしょ」
千枝は満面の笑みで漆黒にそう言った。
その明るい笑顔が、皆にも広がっていく。若干、本当に若干、不安そうに見守っていた咲夜も頬を緩める。
皆の自分を受け入れてくれる笑みが、漆黒の騎士に眩しく映った。
眩し過ぎて、涙が出てくるほどに……。
「……ありがとう」
今はこんな言葉しか送れない。
しかし、漆黒の騎士は誓った。
咲夜だけじゃない。千枝も、そしてここにいる全員も、私は守らなければならないと。
騎士として、仲間として、彼らを守り抜こうと。

131 :

漆黒の騎士の話が終わり、誰が何を言うこともなく休息をとることになった。全員が疲労困憊の中、次の放送くらいまでは体力回復に努めるべきだと誰もが思っていたのだ。
全員が、横になってすぐに寝息を立て始めた。それだけ先程の戦いは厳しいものだったのだ。
瀬多が目を覚ました時、起きていたのはアドレーヌだけだった。
見れば、皆きちんと治療されている。全てアドレーヌがやってくれたのだろう。
「……どれくらい眠っていた?」
目頭に手を添え、瀬多は聞いた。
「二時間くらいだと思います……」
幽香の亡骸があった場所は土で盛り上がっている。
その隣には少しだけ小さな墓が二つ。おそらく、ベトベトンとカービィのものだろう。
どの墓にも、小さな花が添えられていた。
「幽香さんには……ひまわりを、添えてあげたかったんですけど」
アドレーヌは泣いていなかった。
ぎゅっと手に力を込め、涙を耐えていた。
「そうか……」
そっと、優しく抱きしめてやる。アドレーヌの身体の震えが、瀬多にも伝わってきた。
(辛いよな。辛いに決まってる)
瀬多自身だって、少し気が緩めば崩れ落ちるくらいに泣き喚く自信がある。
だというのに、自分の大切な人がこうも立て続けに目の前で死んで、辛くない訳がない。自分以上の悲しみを、アドレーヌは背負っているのだ。
「ノロケならからかってやろうかと思ったんだがな」
木の影で横になっていたレミリアが唐突に言った。
「起きたのか」
「ついさっきな」
むくりと起き上がり、手を広げたり握ったりしている。身体の調子を確かめているようだ。
動かす手を眺めながら、レミリアは口を開いた。
「また随分、人が死んだな」
軽く言うレミリアに、瀬多は押し黙った。
そう。死に過ぎた。あまりにも酷い結果だ。
「自分のせいだ、なんて思ってるのか? 相変わらず」
「……俺が魔理沙に固執しなければ、こんなことにはならなかった。イザナミの思惑に気付いていれば、こうはならなかった」
足立がどういう人間かは分かっていた。有無を言わさず再起不能にしていれば、少なくとも幽香とベトベトンは犠牲にならずに済んだ。
「アドレーヌにも言えることだが、お前達人間は少し物事を背負い過ぎる傾向があるな。出来もしないのに勝手に背負って押し潰れる。まったく、馬鹿みたいじゃないか?」
レミリアらしい理屈だと思う。
だが
「背負わずには……いられないんです」
アドレーヌが言った。
「人は弱いから。悲惨な現実を受け入れられないから。その現実を、少しでも良くしようって考えて。そうしたら、けっきょく背負うことになっちゃうんです」
「……人間というのも面倒な生き物だな」
レミリアのことだから、馬鹿丸出しだとでも言って切り捨てられるだろうと考えていた瀬多にとって、その言葉は意外なものだった。
ゴルベーザに対する怒り。幽香の死に対する怒り。それらは妖怪特有のものであったとしても、最初に出会った頃のレミリアからは少し考えられないことだった。
(レミリアも、成長してるってことか)
人間を知り始めている。人間に感化されてきている。
それが良いことなのか悪いことなのか。……いや、きっと良いことなのだろう。

132 :
「それに今回の件は、誰がどう見ても私のせいなんです」
その確信があるような言い方に、思わず二人ともアドレーヌを見つめた。
「あのメダリオン。……本当は、私が持っていたんです。最初に支給品を見せ合った時に、見落としていたんです。放送があった時、私はあれを見つけてました。……それを、……もっとはやく、瀬多さんに……」
瀬多はメダリオンのことを知っていた。だから、瀬多に知らせてさえいれば、こんなことにはならなかった。
それはアドレーヌにとって、どうしようもなく深い後悔だった。
「メダリオンに触ったのか?」
「……はい」
攻略本に載っていた情報では、メダリオンに触れることができる人間は正の気が強い人間だけだった。
アドレーヌも生の気が強かった。だからこそ、触れても何も異変が起こらなかった。ならば、今回の件はアドレーヌのせいとは一概には言えない。
自分が触って何ともなかったのだ。まさか触れただけでその人物が凶暴化するような恐ろしいものだとは思えない。
必然的に、そのメダルの優先度は下がり、いつしか忘れてしまう。おそらく、そういった効果も考えて、イザナミはこれを支給したのだろう。
「俺はアドレーヌを怒らないといけない」
しかし、瀬多は敢えてそう言った。
「アドレーヌ。皆が君に逃げろと叫んだあの時。足立に殺されかけたあの時。君は、自分を諦めただろ。自分が生きることを諦めた。それは、絶対にしちゃいけないことだった」
アドレーヌは何も言わない。何も言わず、ただ俯いている。
「たとえ今回の騒動がアドレーヌのせいだったとしても、それでも生きることを諦めちゃ駄目だ。それは……死んでいった大勢の人を裏切る行為だ」
裏切る、という言葉にアドレーヌは震えた。
たとえどれほど辛くても、苦しくても、死んだ人達の意思を裏切ること。それだけはしてはいけないことなのだ。
「俺達は生きなくちゃいけない。どんなことがあっても、強くあらなければいけない。それが、死んだ人達を生かすことになる。無駄なんかじゃなかったっていう証になる。
彼らの強さと生き様を、俺達は後世に伝えていかないといけない。伝えることで、きっと彼らは生き続けるんだ」
そう思い続けることで、立っていられる。
だからきっと、彼らの死は価値あることだったんだ。
そう信じたい。いや、信じると決めたのだ。

133 :

突然、右手がうずいた。
「どうかしました?」
「……例の発作だ。休憩はもう十分だと言いたいんだろうな」
果てしなく面倒な呪いをかけられたものだと、内心愚痴る。
だが、これは自分も合意の上での契約だ。文句も言っていられない。
「この発作は、俺の意思に反応する仕組みになっているらしい。つまり、俺がイゴールに近づく行為だと認識すれば発作は引いていく。別に動き回らなくてもいいってことだ」
瀬多は立ち上がり、回収したオタコンのバックからゲーム機を取り出した。
「二人とも、悪いが少し付き合ってもらうぞ」

ゲーム機を操作し、例の選択肢を画面に映し出す。
好きな情報を教えてくれるというイザナミからの褒美である。
主催者は誰か。目的は何なのか。そして、ここはどこなのか。
「なんだこれは?」
「イザナミからの情報提供だ。この三つのどれかを教えてくれるらしい。オタコンはこの答えを保留していたらしいが、こんなところでぐだぐだやってられるほど俺達に余裕はない。さっさと決めて、ゲームをクリアしなくちゃいけない」
「……その口ぶり。既にどれを選ぶかは決めているというわけか」
漆黒の騎士が身体を起こし、そう言った。
「身体は大丈夫なのか?」
「今のところ問題はない。……話を続けてくれ。瀬多の決断力がどれほどのものか、確認しておきたい」
漆黒の騎士、ゼルギウスは知将である。その高い戦闘力と類稀なる知略でベグニオンの将軍の座についた。
グループのリーダー格の男がどれほどのものか。それを確認する必要があると考えるくらいの知性は、漆黒の騎士も優に備えていた。
そんな漆黒の騎士の考えを理解しているからこそ、瀬多は彼を無視して話を続ける。
「この選択。俺は二番、主催の目的を知る為に使おうと思っている。信頼性に欠ける不確かな情報だが、真実を教えてくれると言うのなら、これが一番知りたい」
当然のことながらクレームが飛んだ。
「はあ!? そんなもの知ったところでどうなるってのよ! ここは断然三番でしょうが!」
「……お嬢様。どうかしたのですか?」
そのレミリアの声に、咲夜が目を覚ましたようだった。遅れて千枝も目を擦りながら身体を起こしている。
せっかくなので全員に集まってもらい、話を進めることにした。
「どうして二番を、という意見が出たが、他の皆はどうだ? もし選ぶとしたらどれにする?」
千枝、咲夜の二人が迷わず三番の『この島がどこにあるのか』を選んだ。アドレーヌは首を傾げて決めかねている様子で、漆黒の騎士は元より意見を言うつもりはないようだ。
普通に考えて、主催の正体も開催理由もこちらには何の関係のない話だ。そんなものを聞くよりも、ここがどこかを知った方が脱出に有利のはずである。
「何故二番なのか。その答えは簡単だ。他の選択肢は、この三択を迫られた時点で簡単に推測できるからな」
どよめきが起こる。漆黒の騎士だけが、じっと瀬多を見つめている。
「……おい。本当にわかるのか? ここがどこなのか」
レミリアの静かな問いに、瀬多は頷いた。
「イザナミは殺し合いを進めなければならない。どういう目的があるにせよ、それは確かだ。だというのに、脱出のキーである情報を渡すなんておかしいとは思わないか?」
自分達を助けようとしている助っ人が主催側にいることを理解した今、イザナミの目的はあくまで殺し合いを進めることにあると見ていい。
そうなると、場所を特定するような情報をおいそれと参加者に渡すとは考えづらい。
何故なら自分達のいる場所というのは、そこから脱出する者にとって必ず突き止めねばならない障害で、逆を言えばそれさえ分かれば様々な解決策を編み出すきっかけとなるのだから。

134 :
「脱出されるのは奴だって嫌なはずだ。なのに、そのキーとなり得る情報を無償で教えようとしてる。それは、絶対に破られない自信があるからだ。……さて、それならここは一体どこだ?」
瀬多の問いに、千枝は口元に手をやって考える。
「えーっと……、太平洋のど真ん中……とかは駄目だよね。首輪を外せたら出られるし」
「……もしかして、結界が張ってあるの? それなら場所を知られても何の問題もない」
「まあ、そんなものがあるのなら当然施しているだろうな。だがそれはあくまで保険だ」
そう。イザナミが用意した呪縛はそんなものではない。結界だって壊せばそれで済むはずなのだ。絶対に破られないというわけじゃない。
「絶対に逃げられない場所。それは、逃げ場のない場所だ」
「逃げ場所がない……?」
「世界だよ」
全員の思考が一瞬止まった。
「ここは殺し合いの世界。人が殺し合うためだけに存在する世界なんだ。だからたとえ海を渡ろうと、待っているのはこの島のみってわけさ。まぁおそらく、それを知られないように何か細工はしているだろうが」
ここにいる全員が、驚きで声を出せなかった。
「ちょ、ちょっと待って! それってつまり……、ここは小さな地球ってわけ?」
「その通り。だから俺達は逃げられない。何故なら、世界を渡り歩く力も技術も、神ではない俺達は持ち合わせていないからな」
千枝は思わず放心する。咲夜は動揺を隠そうと必死だし、アドレーヌは先程から驚いてばかりいる。レミリアは無表情だが、元々脱出に関しては瀬多任せだ。大した危機感もないのだろう。
「イザナミが絡んでいる時点でだいたい想像はついていた。だが、今回の件で確信した。俺達は世界を移動しない限り、奴らの顔すら拝めない」
世界を越えて集められた参加者。国産みによって日本を創世したイザナミ。これらの要素は瀬多の推理を補強するものだった。
そして、ここにきて現れた三択の情報提供。その自信に裏打ちされた行為は、これくらいのハンデがなければまずしてこないだろう。
「主催の正体は神に他ならない。そしてここは、神が用意した殺し合いの世界だ」
有り得ない。という言葉は誰も使わなかった。
何故なら、彼らは既に有り得ないことに巻き込まれている。そして、それを実現できる神を、既に二人も知っているのだ。
「ここまで言い切るとは。さすがだな、瀬多総司」
漆黒が薄く笑う。
「……そうだな。これはただの仮説。何の確証もないことは否定しない」
「だが、信じるに値する仮説だ。戦には絶対などという言葉は存在しない。そんな時に必要なのが、将の英断だ。今回の考察は、君にそれができるという証明になった。君の意見に従おう。ここは二番だ」
漆黒の意見に、反対する者はいなかった。
全員の顔を見つめ、その意を確認する。
「よし。じゃあ、二番を選ぶぞ」
瀬多は躊躇なくカーソルを二番に持っていき、ボタンを押した。

135 :

『ピンポンピンポンピンポーン! 大正解〜〜〜!!!』
瞬間、イザナミの声が響き渡る。
『いやぁ、運がいいねぇ君。他の選択肢を選んでたら首輪爆発してたよ〜』
さっと、アドレーヌが顔が蒼くなる。
「大丈夫。ただのはったりだ」
『その通りでーす! はったりでーす!』
まるでこちらの動向を察知しているかのようなタイミングでイザナミは言った。
『ちなみに、情報も教える気もありませーん! ただの時間稼ぎでーす!』
「は!? ちょ、ちょっと何言ってんのよこいつ! こっちは散々──」
「少し黙りなさい。声が聞こえない」
咲夜に無理やり口を押さえつけられ、うーうーと唸る千枝。
しかし、瀬多はじっとイザナミを見つめ、その言葉に全神経を集中させていた。
『当然だよねー。こんな重要なこと、主催者の俺が教えるわけないもんね☆ あ、怒った? ごめんごめん。まぁでも、実はヒントはあげてるんたよ。
間接キッスじゃないよ。ちゃぁんと、く・ち・う・つ・し・で☆ とある人物にだけ、だけどね。そいつを探し出して聞き出せば? まぁ、そいつも気付いているとは思い難いけどねー。所詮は小僧だから』
(何だかんだと言いながら、色々教えてくれてるじゃないか)
小僧というからにはその人物は男で、おそらく高校生辺りだろう。
(……ん? 待てよ。これはひょっとして……)
『アイラブユーフォーエバー。でも俺は、ちゃぁんと人だって愛してまーす! というわけで、イザナミちゃんからの貴重な情報提供で・し・た☆』
そこでイザナミの姿は画面から消えた。
「どこまで人を舐めたら気が済むんだ。あの神は」
レミリアが毒づく。
「いや。……これは重要なメッセージだ」
必死で頭を働かせながら、瀬多は呟くように口を開く。
「アイラブユーフォーエバー。イザナミという名前。小僧。そして、口移しでヒントを与えたという言葉。わざわざ間接キスじゃないと言っているところを見ると、これは奴自身が直接ヒントを話したと言いたいんだろう」
「だから何だ? そんなことがわかったところでどうにもならないじゃないか」
「アイラブユーと言ったんだぞ。そして、続く言葉を見るに、これは人に対して向けられた言葉じゃない。人じゃない誰かに対する言葉だ。こんな回りくどい言い方、何の意味もなくするものじゃない。
このセリフは、誰か特定の人物を匂わせる言葉だ。そして、言う必要もないのにわざわざ自分の名前を明かした。これらの情報は、一人の参加者を指している」
「あ! そうか!!」
千枝が突然叫んだ。
「瀬多君のことだ! イザナギとイザナミ。世界を作った二人は夫婦だった。愛し合っていた!」
いつだったか、瀬多と二人、図書館で勉強していた時に日本神話について少しだけ調べたことがあった。自分達のペルソナが日本の神になぞらえられていることに気付いた瀬多が、興味本位で本を漁っていたのを、千枝は横で見ていたのだ。
「もしかして、クリスタルを手に入れた場所……ですか?」
「そうだ。それしかない。あそこで俺達は、思いもかけずヒントをもらっていた。そうイザナミは言いたいんだ」
イザナミの言葉がぐるぐると頭を回る。だが、何も思いつかない。
(なんだ。あいつは何を言っていた?)

136 :

──真実なんて虚構だ。君達が真実だと判断したこと。それこそが真実なのさ──
(……違う。一番それらしい言葉だが、何も思いつかない。このフレーズじゃない)
しかし、それ以外に奴が仄めかすように言っていた言葉などない。何かほんの少しでも違和感を覚えたフレーズはなかったか。
瀬多は長考する。しかし、いつまで経っても答えは見つからなかった。
「あ、そうだ」
五分程経っただろうか。千枝が咲夜の方を振り返った。
「みんなに教えとくべきじゃない? ほら、ゲーム機に触れたら味方が増えるってやつ」
(……ゲーム、機?)
「ああ、そうね。あんたもちょっとは頭が回るじゃない。……猿くらいの知能はあるのか」
「おいこらちょっと待て! 普通に聞こえてんぞ!! 猿くらいの知能はってなんだ! あたしは人間! 人間並みの知能しか持ってない!! つか、それ以前は猿以下だと思ってたってこと!?」
「そうね。まぁ犬くらいはあったんじゃない?」
「があああ!! むかつく!! まじむかつくこの女!!」
──これも、ゲームを面白くするためだ──
イザナミの言葉。それと同時に別の言葉が浮上する。それはイザナミのものではなく……

──最高のゲームとは、何でしょうか──

瞬間、瀬多の中で何かが符号した。
「そうだ! 確か、……確かイゴールも!」
喧嘩を始めていた咲夜達が止まる。それを止めようとしていた漆黒の騎士も、慌てていたアドレーヌも、愉快そうに見ていたレミリアも、全員が瀬多を見つめる。
「くそっ! そういうことだったのか! イゴールとの会話があったから違和感に気付かなかった。……いや違うな。イゴールとの会話の時点で、気付くべきだったんだ」
「瀬多。少し落ち着いて、私達にもわかるように説明してくれ」
漆黒の騎士にそう諭され、瀬多は慌てて頷いた。
大きく深呼吸。
(落ち着け。今は冷静になるところだ。この情報を受け、冷静に相手の真意を読むべきところだ。浮かれるところじゃない)
瀬多はそう自分に言い聞かせ、慎重に口を開いた。
「……イザナミは、この殺し合いをゲームだと言った。自分がゲームマスターだと明言した。しかし今思えば、あれは失言中の失言なんだ。イザナミからしてみれば」
ゲームマスターとはゲームの中心に位置する存在だ。その存在を通して、全員がゲーム内の役割を果たす。
「あいつは、ゲームのキャラクターが本当は喋るべきところだと言っていた。しかし、そのキャラクターはマルクという主催者だ。これはマルクの存在を軽視しているということで、そもそもあの段階で言うべき言葉じゃなかった」
自分をゲームマスターだと例えたイザナミが、マルクをゲームのキャラクターとして比喩するということは、彼がゲームの駒だということを意味する。要するに、マルクは参加者である自分達と同等の存在だと明言したことになるのだ。
しかしそれは矛盾している。何故なら、イザナミは主催者をマルクだと偽っていたのだ。自分が裏にいることを隠し、マルクこそが諸悪の根源だと思わせていた。
だからこんなところで、自分の口から自らがゲームマスターだと語ることは、とんでもなく作為的な行為なのだ。

137 :
「イザナミにアスタルテ。もはや主催者候補は完全に出揃っている。そこにマルクが付け入る隙は、まぁなさそうね」
マルクはただのピエロだ。ギャラティックノヴァを使って騒動を起こしはしたが、それ単体では何の力も持っていない。そんな者が主催者だと考えるよりは、神であるイザナミが主催者だと考えた方がしっくりくる。
しかし、それをイザナミが隠していたこともまた事実。
「自分を神と断言した時点で容易く論破されることではあるが、それでもわざわざ言う必要はなかった。つまり、イザナミはゲームという言葉を使う必要がなかった」
「何だそれは? まるでその言葉を使いたいがために、敢えてマルクを傀儡だと教えたとでも言いたいようじゃないか」
「その通りだレミリア。その通りなんだ。あの段階で、イザナミにどんな思惑があったのかはわからない。わからないが、その目的の一つがそれであることは間違いない」
「ゲームという言葉が、どんな意味を持つんですか?」
「正確に言えば、ゲームじゃない。奴は、ゲームという言葉から、“遊び”という言葉を連想させたかったんだ」
イゴールの言い回しも、今思えば不自然だった。
遊びにルールを付与したものがゲーム。そして、ゲームがこの殺し合いだと言う。
しかし、言葉の定義としては若干それは違う。遊びにもルールは存在するし、そもそもそうでなくては遊びではない。あの時は何とも思わなかったが、今思うと、その矛盾は異常なほどに際立っている。
「千枝。遊部、という言葉を聞いたことはないか?」
「え? あ、あたし!? うーん……わかんない」
突然名指しされ、慌てながらもきっぱりと千枝は言った。
「古代、朝廷で神事に奉任した役職の一つだ。その役どころを簡単に説明すると……、魂を鎮める職業」
それは、漆黒の騎士もアドレーヌも知るはずのない情報だ。何故ならこれは、日本史に関する知識がなければ知り得ないものなのだから。
「遊びという言葉の起源がそれだ。そしてそこから生まれたのが神遊び。いわゆる、神楽舞いってやつだ」
思わず漆黒の騎士がストップをかける。
「ま、待ってくれ。聞いたことのない話ばかりでついていけない。まず神楽舞いというのはなんだ?」
「別名、神楽。神座という言葉が転じた言葉で、神事を行う際に行われる歌舞だ。以前は神憑りを行い託宣することを目的としたものだったが、今では神事の際における神の奉納の舞いとされている」
全員が首を傾げているところを、千枝と咲夜だけが「聞いたことはある」といった様子で、頷いていた。
「天の岩戸伝説というものがある。太陽の神である天照大御神が岩に閉じこもり、世界が闇に閉ざされた時、天宇受女命は舞いを踊ることで岩から出すことに成功した。
その踊りが神楽、神遊びの起源だといわれている。天宇受女命の子孫、猿女君が宮中で鎮魂の義を携わっており、このことから神楽の元々の意味は招魂・鎮魂・魂振を行う為の儀式だと考えられているんだ」
「……要するに、イザナミのゲームマスターという言葉は、その鎮魂とやらを取り仕切る立場にある、と言いたかったわけか?」
漆黒が腕を組みながら呟く。瀬多は思わず微笑んだ。
「知識なしでついてくるのは厳しいんじゃないかと思っていたが、さすがだな」
「要点だけだ。話は半分も理解していない」
「それだけわかれば十分だ」
瀬多は改めて漆黒の騎士の有能さに感心した。
参加者内でもトップクラスの力を持ち、さらに頭脳明晰。
天は二物を与えるとはこのことか。
そう考え、その天に喧嘩を売ろうとしているかもしれないことを思い出して苦笑する。

138 :
「この殺し合いは、神遊びをさせるためのもの。俺達は、世界という巨大な神楽殿の中で、神楽を踊らされているってことだ」
イゴールの定義でいえば、遊びにルールが付与されたものがゲーム。ここでいうゲームが殺し合いで、遊びが神遊びなのだとしたら。
殺し合うというルールが加えられた神遊び。それがこの殺し合いの正体。そう瀬多は考えたのだ。
「私達は、誰かの魂を鎮めるための生贄ってわけ? 要は、墓への供え物として私達の魂を必要とした」
「じゃあ、その死んじゃった人ってのは誰? すんごい偉い神様?」
咲夜と千枝の言葉に、瀬多は首を振った。
「違う。二人とも鎮魂という意味を勘違いしている。鎮魂は、決して死者に対して行われるものじゃない。元々、生者に対して行われるものだったんだ」
鎮魂、と聞いて一番に連想するのは、死者を鎮めるというものである。現在の風習では確かにその認識は間違っていないが、元々の意味合いとしては少し違う。
「日本は古来から、魂というのは不定着なものとされてきた。ほら、昔話でよくあるだろ。魂が身体から抜け出すって話が」
「ああ、確かに」
千枝が頷く。
小学校の図書館に置いてあるような怪談話によく出てきたことを千枝は思い出していた。おじいさんが眠っている間に魂が抜き出て、浮遊霊となって彷徨うような話を読んだことがある。
「生者であろうと、魂は出たり入ったりするものなんだ。そこで鎮魂の儀式というものがある。要は、出たり入ったりする魂を元々の身体に押し込もうっていう考え方だ。
鎮魂祭という行事があって、それは天皇の魂を体内に納め、活力を高めるために行われている。毎年の恒例行事なんだが、それほど日本人は魂を不定着なものとして見てきたんだ」
鎮魂とは、魂を鎮めるのではなく、肉体に魂を定着させるもの。それが本来の意味なのである。
「……要するに瀬多は、この殺し合いがとある肉体に魂を定着させるものだと言いたいわけか?」
漆黒の言葉に、瀬多は頷いた。
「こいつを見てくれ」
攻略本のとあるページを開いて、瀬多は皆に見せた。
カービィの英雄伝。ギャラティックノヴァを悪用するマルクを倒す話だった。
「ギャラティックノヴァ。何でも願いを叶えてくれる星、だそうだ」
「おいおい。そんなものがあるのなら、それこそ主催の目的なんてどこ吹く風じゃないか。これを使って叶えればそれでいい」
「それはおそらく不可能なんだ。何故なら、ギャラティックノヴァの力を使ったマルクは、カービィに一度負けている」
そう。それはギャラティックノヴァが不完全なものだという証明に他ならない。
「もしもだ。もしも、ギャラティックノヴァを肉体に見立て、そこに魂を集めていたとするならどうだ? 
不定着な魂を、肉体を破壊することで完全に追い出し、本来の身体とは違う、別の肉体に移し替えていたとするなら。そしてそれがギャラティックノヴァという入れ物だとするなら、こういう考え方はできないか? 
主催者の目的は魂の収集。この殺し合いは、輪廻転生の世界を作るための足掛かりだと」
その言葉に全員がぎょっとした。
「世界を作る!? そんな馬鹿げたこと────」
「を、したんだろう? 女神アスタルテは」
漆黒の騎士は黙って頷いた。
「イザナミの目的ははっきり言って不明だ。しかし、アスタルテの目的はわかる。もしも彼女がこの殺し合いに一枚噛んでいるのなら、その目的は世界創世に他ならない。そうだな、漆黒?」
「ああ。確かにその通りだろう。女神は人間を滅ぼすべきだと考えているが、同時に人間を愛していた。闘争もなく、平和のみを考える人間だけが暮らせるより良い世界を作ることが、女神の目的だと考えて間違いない」

139 :
「そういう仮説をたてれば、面白い符号が続々と出てくるんだ。たとえば、さっき説明した天の岩戸伝説。太陽の象徴である天照大御神を呼び戻すための方法が神遊びだったわけだが、元々太陽というのは生命の象徴として使われている。
それを踏まえれば、これはこういう風にもとれないか? 神遊びを行うことで、命をなくした世界を再び生命の住む場所へと変えた。要するに、生命溢れる世界の再構築。これは世界創世の構図だった」
「天の岩戸伝説に則り世界を創世する。そのための舞台役者が私達……」
聞けば聞くほど荒唐無稽な話だ。しかし、それを否定する要素はどこにもない。
「この天の岩戸伝説。一説によれば日食現象を表したものだともいわれている。そして、日食現象というのは死と再生を表す隠喩。太陽を司る天照大御神が岩戸に隠れるということは、その存在の死を意味する。それが神遊びによって生を得て、世界を再び照らし出した。
俺達参加者が滅んだ時世界は暗黒となり、また俺達の死の舞いによって天照大御神は姿を現すっていうわけだ」
岩戸に隠れた太陽。それが参加者の全滅を表している。そして、ギャラティックノヴァへと昇る魂、鎮魂こそが天宇受賣命による神遊びで、天照大御神の復活はその神遊びによって作られた世界のことを表す。
天の岩戸伝説を見立てた世界創世。それがこの殺し合いの正体。
確かにそれは、まったく矛盾なくこの殺し合いの本質を説明していた。
「……その面白い符号とやらはまだあると?」
「誰かが世界を創世したいと考えたとしよう。しかし、その力を持っていても必ず世界は悪い方向へ向かってしまう。人間は争いを止めず、自分の思う世界が作れない。どうにかしたい。そう考えた時に、ギャラティックノヴァを見つけた」
漆黒の騎士の目が大きく開かれる。
「……まさか」
「だがギャラティックノヴァには、悪い人間、負の闘争というものが認識できない。何故なら、それはあまりにも漠然としたもので、人によって定義が変わるからだ。ギャラティックノヴァは言葉通りにしか受け取らない。言葉という不完全な伝達手段を用いて願いを叶える。
だからたとえ正に満ちた世界を、正の気しか持たない人間を作ろうとしても、それはギャラティックノヴァが厳選したもので、自分の意に当てはまるものではない可能性があった。それを解消するには……」
「……認識、させればいい。……そうか。それが殺し合いを開いた理由。私達の闘争を、自分の世界にはいらない事象を抹消させるための……!」
殺し合い。それは時に、戦争よりも大きな負の感情と悲劇を生む。
疑心、殺意、利己心。
この場所は、確かに人間の醜さの集大成といえた。
その集大成を認識させ、あるいは自分達の価値感に合わせて厳選し、そんなことが起こらないような世界を作ってくれと願えば、理想の世界は創世される。
「実は、千枝の言っていた仮説は一見的外れなようで、かなり真実に近い仮説だったんだ」
「へ!? わ、私なんか言ってたっけ?」
「ゲーム機の機能だよ。助っ人は一体どうやって自分達を助けるつもりなのかっていう話になっただろ? 
あの時、魂だけを取り出して新しい肉体に移し替えるんじゃないかって言ってたじゃないか。あれが実はこの世界自体の機能で、しかもその魂の入れ物、新しい肉体は既に決まっていた。ギャラティックノヴァという、どんな願いも叶えられるスペックを備えた星に」
図らずも、千枝はこの殺し合いの本質を突いていたということだ。
それを指摘した本人が一番驚いているようだが。

140 :
「マナという言葉を聞いたことはあるか? 超自然的な力の概念で、映画やゲームにもよくでてくるものなんだが、要は世界に宿る生命エネルギーのようなものだ。日本神道ではそのマナを外来魂と言うらしい」
千枝も、マナという単語は耳にしたことがあった。
「依り代という言葉があるように、日本では古来からあらゆるものに神や精霊が宿るとしてきた。海、山、大地、太陽、といったものにな。その神や精霊のことを、総じて外来魂と呼ぶんだ」
あらゆるものに外来魂が宿る。そして、その外来魂がマナと呼ばれる生命エネルギー。この世にある全てのものは、その生命エネルギーがあって存在することができるのだ。
「あらゆるものに宿るエネルギー、力が外来魂と言うなら、こういう考え方もできないか? 
俺達の肉体にもそのエネルギー、外来魂は宿っているはずだと。そして、それが俗に言われる魂であるとするなら、俺達の魂は海や大地の外来魂の代替物として使えるんじゃないかって」
魂という世界を創世するためのエネルギー。それを集めるのが、この殺し合いの目的の一つなんじゃないか。そう瀬多は言いたいのだ。
「……世界創世を企む者にとって、私達の魂は最高のエネルギー体ってわけね」
「神も認めない濁った魂はマナとして世界の礎にしてしまえば効率が良い。神が良しとする魂は、転生される魂の候補としてギャラティックノヴァに仕舞い込んでしまえばいい。
そうして厳選された魂と、使用者の望まぬものを認識したギャラティックノヴァに再度お願いをするんだ。より良い世界を作って下さい。……まさに大団円だな」
全員が押し黙った。
そのあまりに壮大なスケールに、皆が圧倒されていた。
天の岩戸伝説になぞらえた殺し合い。負の感情を認識させる殺し合い。魂を収集するための殺し合い。
瀬多が提示した三つの仮説。その全てが一つの目的を指し示している。
世界創世という、これ以上にない程の強大な目的を。
「どうだ? 漆黒。お前はこの仮説、どこまで信じる?」
難しい顔をして、ずっと地面を睨みつけていた漆黒に、瀬多は聞いた。
「……この仮説には確証がない。空想を空想で塗り固めているだけだ」
「だが、全てがうまく符号する」
「そうだ。ここに至って、全ての情報がそれを指し示している。その事実は無視できない」
漆黒は、しばらく考え込んでいたが、やがてすっと手を掲げ、指を三本立てた。
「三割だ。まず女神アスタルテ、ギャラティックノヴァが絡んでいない可能性が一割。ゲームという言葉がイザナミによるミスリードである可能性が四割。そして──」
「イゴールの言っていた真実とやらが二割、か」
瀬多の呟きに、漆黒は頷いた。
「そうだ。主催者側は敢えてヒントを出していた。つまり、真実に自力で辿り着くことを想定、または期待していた。ならば、イゴールと再度出会った時に聞ける真実は、また別のものということになる」
ここでばれるような真実なら、わざわざイゴールが契約までさせていた理由がなくなる。イゴールの知る真実は、瀬多が示した仮説とはまた別のものであるはずなのだ。
「三割、か。高いんだか低いんだかよくわからない数値ね」
「だが、命を賭けるには十分な確率だ」
漆黒の言葉に思わず全員が彼を見つめる。
が、誰も反論はしなかった。
「……確かに、現状最も可能性の高い仮説であることは認めないといけないな」
「で、でも……それがわかったところで、一体どうやってここから脱出するの?」
千枝の疑問は、単純だが的を得たものだった。
「俺達だけじゃ、ここから脱出することは不可能だ」
瀬多は簡単にそう言ってのけた。

141 :
「ここから脱出するための道は何とか見つけることができるだろう。魂を収集するというのなら、その魂が通る道筋があるはず。
奴らの絶対的な自信から見て、ギャラティックノヴァはこことは別の世界にあると考えていいだろう。ならば魂が通る、唯一ここから抜け出せるか細い一本の道を見つけ出せば、あとはそこを突き抜けるだけだ。だが、突き抜ける方法を俺達は持っていない」
「その道とやらはどうやって見つけるつもりなんだ?」
「それは博麗霊夢か東風谷早苗を見つければ何とかなるだろうと考えている。ここが巨大な神楽殿だというのなら、天宇受女命を祭る神社があってもおかしくない。
神憑りか、または本物の神楽でも踊ってもらうか、おそらくそれで魂の通った軌跡がわかる。それがこの世界に開いた唯一の抜け道だ」
「でもそれで終わり。道がわかったからといって、どうにかなるものでもない。けっきょく、私達はその道を渡る力がないってわけね」
「ああ。だから負の女神に頼るんだ」
「え? でも、私達を助けようとしている人達が外にはいるんですよね。その人には頼らないんですか?」
「負の女神はともかく、主催者側に助っ人がいるという情報はあまりにも不確かなものだ」
アドレーヌの素朴な疑問に、漆黒が答えた。
「漆黒の言う通りだ。それに、イザナミの思惑も計りかねているところがある。主催者側が一枚岩でないことはわかるが、それ以上の情報はわからない。こんな状況で贅沢を言うようだが、不確定要素はできるだけ排除したい」
漆黒の言葉から、メダリオンに負の女神が封印されていることは確定している。
しかし他の情報は、全てが不確定だ。ゲーム機のことも、もしかしたらただのブラフかもしれない。クリスタルも、ただ殺し合いを促進させるだけのアイテムかもしれない。
そんな状況で、いるかもわからない助っ人の助けを当てにするのはあまりに悠長だ。
「じゃあ結局、私達はその負の女神が復活してくれるのを待つしかないってわけ?」
「実はそうでもない」
瀬多がごそごそとバックを漁る。霧雨魔理沙のものだ。
「こんなものを見つけた」
そう言って瀬多が取り出したのは、マスターボールというものだった。
どんなポケモンも捕まえることができるというレアなモンスターボールだ。
「攻略本によると、戦力強化のためのポケモンが入っているらしい。ゲームでいうところの隠しアイテムってやつだ」
そう言って、手の中でボールを弄ぶ。
「ついでに、こんな紙切れも張り付いていた」
一枚の紙を全員に見せる。
そこには、『三度目の朝まで、クリスタルを』とだけ書かれた。
「なにこれ? ふざけてるわね。何のメッセージにもなってない」
「三度目の朝までにクリスタルを集めろってこと? それとも三度目の朝まで待てってことかな。つか、三度目の朝って、いつまで待たなくちゃいけないのよ」
一回目の放送で既に十人もの参加者が死んでいた。このままいけば、三度目の朝を迎える頃には、既に殺し合いは終了しているだろう。
「おそらく、これは奴らの保険だったんだ」
千枝の疑問に答えるように瀬多は言った。
「三度目の朝まで縺れる程に戦力が拮抗しているのなら、その拮抗を崩すだけの力を与えようとするのは殺し合いを促進したい側からすれば当然の考えだ。
戦力の度合いによっては一気に殺し合いは加速する。自分達が介入できない分、道具で殺し合いを促進させる。これはその布石だろう」
主催者の目的が負の感情を認識させることにあるとすれば、できるだけ長い時間をかけ参加者同士で殺し合ってくれた方がいい。疑い合い、憎み合って。
自分達の力だけで殺し合ってくれた方がいいのだろうが、それでも戦力を増加させたところで参加者が抱く負の感情は変わらない。三日も経てば、それなりに負の感情のサンプルは集まっているという推測もあったのだろう。

142 :
「じゃあクリスタルってのは?」
「よく見てくれ。クリスタルを、のところ。修正ペンか何かで塗り潰して、その上から文字を書いたって感じじゃないか?」
全員が紙を凝視する。
よく見なければ分からないが、確かに瀬多の言う通り、事前に書いてあった文字を消して上書きしたように見える。
「た、確かに……」
「それに、筆跡も少し違う。つまり、『三度目の朝まで』というキーワードを書いた人物と、『クリスタルを』というキーワードを書いた人物は別人だとうことだ。
要するに、ここに書きたいキーワードに二人の間で齟齬が生じていたということ。それはつまり、このボールに対する考え方が違うということで、言うなれば──」
「目的が違う……。そっか! 私達を助けようとしてる側と、してない側!」
千枝が手を叩いて叫ぶ。
「その通り。そして当然、さっき話したボールが殺し合いの保険だという考え方は、助っ人側には成り立たない。助っ人からすれば、自分は怪しまれず、且つ参加者ができるだけ目減りしない、そんなタイミングで切り札を渡したいはずだからな」
ゲーム機も人と積極的に接触しなければならない機能があった。クリスタルも、四つ集めなければ意味がない。
それらは参加者に移動を強制させるもので、助っ人側の主張としては、全て殺し合いを促進させるものというわけだ。
「攻略本に情報が記載されているところを見ても、これは元々殺し合いを促進させたい人間が用意したもの。だから『三度目の朝まで』というキーワードはこの際無視していいんだ。問題は『クリスタルを』のところ。
このマスターボールはロックがされていて使えないんだが、そのロックは時間じゃなくてアイテムによって外れる。その鍵がクリスタルだとみてまず間違いないだろう」
そして、その中身も間違いなくすげ変わっているはずだ。参加者側により有利なものに。
「ふん。随分と遠回しな伝え方だな。もっとストレートにできなかったのか?」
「たぶんできなかったんだろう」
瀬多には、どういうやりとりがあったのか、手に取るようにわかった。
この思わぬ助っ人は、おそらく支給品を比較的自由に扱える立場にあった。そこでゲーム機やらマスターボールやら、色々と細工をすることができた。
マスターボールの鍵をクリスタルにしたのは、長期的に見ればクリスタル争奪戦が始まるのを予期してのことだろう。だからこそ、助っ人は主催者にこう言った。
『クリスタルの重要性を示唆すれば、もっと殺し合いは加速するんじゃないか』と。
おそらくは歪曲的な言い方だったのだろう。あくまで主催者本人が気付くように仕向けた。それで急遽とってつけたようにクリスタルという単語をいれた。
支給品に関する仕事が助っ人の仕事だというのなら、そういった些細な変更も助っ人に任せていたとしても何ら不思議じゃない。
紙を変えず、わざわざ書き直したのは、先程の瀬多の推理を参加者にさせるためだ。助っ人の存在に勘付いている人間なら、これが重要アイテムだと気付くだろうし、そうでなかったとしてもクリスタルという単語は無視できない。
これで助っ人は、自分の伝えたい情報を何の危険もなしに参加者に伝えることとなった。

143 :
支援

144 :

しかし、と瀬多は思う。
いくらなんでも、この助っ人は動き過ぎだ。切り札なんて一つでいい。いや、一つだからこそ迷彩が効き、敵の裏をかけるのだ。たとえ負の女神だけではここから脱出できないと考えていたとしても、もう少しやりようがある。
この助っ人は、好き勝手にやっても許されるという何らかの自信があったのだろう。主催者側から直接許可をもらっているのか、詳しいことはわからないが、どこかその存在は特別視されているような気がする。
だが、いくら許されるからといって、こうも重要アイテムをこちらに支給したのでは、誰かに反感を買ってもおかしくない。それだけ焦っているのかもしれないが、どちらにせよ少々展望をないがしろにし過ぎている。
それも作戦の内なのかどうか。その真意を瀬多は知りたかった。
(助っ人か。本当にいるのなら、どうにか連絡を取りたいものだが……)
そんなことを瀬多が考えていた時だった。
突然、奇妙な機械音が辺りに響いた。
「な、何の音────」
アドレーヌの声を瀬多が人差し指をたてて黙らせる。
瀬多のその様子を見て、全員が押し黙る。その音がどこから聞こえるのかを、全員が聞き耳をたてる。
「……あれ? もしかしなくても私?」
そう。その音は確かに千枝のバックから聞こえる。
慌ててバックに手を突っ込む。
しばらくごそごそとバックを漁り、そこから取り出したのは拳銃の形をしたライターだった。
奇妙な音は、そのライターが発していた。
「ちょ、ちょっとちょっと! なにこれ爆弾!? ……あ! 咲夜が逃げる!! おいこら! なにあんただけ保身に走ってんのよ!!」
一目散に逃走を計る咲夜に、千枝はダイブしてしがみつく。
その反動で二人は転倒。咲夜が引き離そうとしても、千枝は決して力を緩めない。
「ちょ、ちょっと千枝!! 死ぬなら自分一人で死になさい!!」
「うっさいボケ!! どうせならお前も道連れじゃー!!」
ぎゃーぎゃーと喚く二人。
離しなさい!! とか、死んでも離さん!! とかいうやりとりを繰り返していると、ひょいとアドレーヌがライターを手に取った。
色々と弄っていると、カチャリという音と共に形が変形した。
ちょうど銃身とグリップの境目の場所を軸に、への字に曲がる。
「あれ? これライターじゃないみたいですよ」
トリガーガードを少し押すと、それが勢いよく引っ込み、への字だった銃がさらに鈍角を広げる。
そこにきて、ようやく瀬多もこれが何なのかがわかってきた。
「少し貸してくれ」
アドレーヌに差し出された銃を手に取り、自分が思い描く完成形に合わせてピースを動かす。
ライターは面白いようにカチャカチャと音をたてて変形していく。
「アドレーヌでも冷静なのに。まったくお前達二人ときたら」
レミリアが呆れたようにため息をつく。
「え!? 私も!?」
「まったく。千枝ときたら」
咲夜があっけらかんと言った。
「お前だけは絶対に許さん!!」
再び咲夜に飛びつこうとした千枝を、瀬多の「できたぞ」の声が止めた。
「それは何だ?」
漆黒の疑問も無理からぬこと。彼の世界では、“これ”は存在しないのだから。
「携帯電話だ。遠くにいる者と連絡をとることができる」
漆黒は便利なものだと感心して、ライターだったものを見つめる。
変わらず鳴り響く携帯の、ボタンと思しきところに指を添える。
「俺が出る。いいな?」
全員が頷く。
瀬多はその電話の主に当たりをつけながら、ボタンを押した。

145 :

◇◇◇
【??? ラウンジ】
永琳は悩んでいた。
イザナミの思惑が分からずに? 神々をどうやって出し抜くかを考えて? 
否。
それは目の前の自動販売機に対するものだった。
「ツチノコって……おいしいのかしら」
何千年と生きる彼女も、ツチノコを食べたことはない。
興味はある。興味はあるが、……買いづらい。
なにせ、他のものと比べて段違いな程に高いのだ。散財はしたくない。
悩む永琳。しかしそんな彼女にまったく頓着せず、ツチノコのボタンを押した男がいた。
ガタンと音がし、自動販売機の中から串に刺さったツチノコを取り出す。
「食わないのか?」
「……それ、おいしいの?」
「味は保証する」
にやりと男は笑った。
がぶりと一口。
しかし、様子がおかしい。何か飲みこみづらそうにもごもごと口を動かしている。
ようやく飲みこみ、男は一言呟いた。
「……腐ってる」
……買うのは止めておこう。
永琳は適当に保存食を選び、自販機から取り出した。
「マルクがお世話になってるわね」
「あいつをどうにかできないのか? 休憩中も仕事中も付き纏われて、正直困ってる。いつの間にか俺の膝の上に座ってるんだ」
クスリと永琳は笑う。
「あなたに懐いているのよ」
「子供に懐かれたのは初めてだ」
「女性に口説かれたことは?」
「何度か。手痛いしっぺ返しをくらうのがほとんどだったが」
そう言って、男は苦笑する。
「今回は違うわよ」
男は黙ってツチノコを口に頬張る。
腐っていたのではなかったか。そんな疑問を、永琳は呑みこんだ。
「俺はお前を信用してない。俺の相棒もな」
「私は信用してるわ。あなただけだけど」
「そりゃ光栄だ。嬢ちゃんにそうまで言われたら、さすがに下心が出てくる」
「存分に出しなさい。けど一つ訂正。私は嬢ちゃんじゃないわ」
「おばあさんか?」
永琳はにこりと笑う。
「間違ってはいないけど、レディに対して言う言葉じゃないわね」
「失敬。俺はダブルオーセブンのようにスマートじゃないんだ」
「気障な男より、ワイルドな男の方が好みよ」
「用件は?」
先程までと同じく軽い口調。
しかし、その雰囲気は明らかに違う。

146 :
「私を自由にしてほしい」
「……それはどういう意味だ?」
一気に、男の警戒心が上がる。
「そのままの意味よ。私はただ自由にしてほしいだけ。姫と私の自由を保証してくれるなら、私は神の意思に従うわ」
どう答えたものかと考え、男は彼女に合わせることにした。
「……俺の権限じゃどうもな」
「ゼロに進言して」
「あいつが俺の言う事を聞くと思うか?」
「聞くわ。あなたの言う事ならゼロは聞く。あなたを蘇らせたのは、ほとんどゼロの意思といってもいいのよ?」
一体誰がそんなことを頼んだと言うのだ。
そんな愚痴にも近い言葉を呑みこみ、男は黙ってツチノコを口に運ぶ。
「お願い。私達を救って。私がどれほどの危険を冒してこんなことを頼んでいるか、わかってくれるでしょう? 私達はただ、静かに暮らしたいだけなの。世界を作ろうが何をしようが私達は構わないわ。だから……」
「……泣き落としは止めてくれ」
ツチノコを平らげ、近くのゴミ箱にそれを放り捨てると、男はさっさとその場を去ろうとする。
先程までの様子から、呼び止められるかと思ったが何も言ってこない。
振り向くべきじゃない。そう思うが、けっきょくため息と共に振り向いていた。
男は、すぐに永琳の異変に気付いた。
どこかあらぬ方向を向いている。しかし、その顔はあまり付き合いのない男でもわかるほどに蒼白だった。
「どうかした──」
突然、永琳の華奢な身体が男に縋りついてきた。
「だ、駄目。何もかも早過ぎる! お願いボス。私の一生のお願い! 叶えてくれたら何でもする。だから、だから姫を解放して! あなたに私の一生を捧げる。だから──」
「おい待て! いきなりどうしたんだ。少し落ち着け」
「私には姫しかいないの! 姫がいなくなったら私は……」
それ以上、言葉が紡がれることはなかった。
俯き、ただ黙って男に縋っていた。
「……おい。お前ひょっとして──」
「わー! お二人って仲が良かったんですねー。ヒューヒュー」
どこから湧いて出たのか、イザナミが腹立たしいほどにうまい口笛で捲くし立てた。
「二人の逢引をお邪魔するようで悪いんだけどぉ、そろそろお仕事に戻ってもらってもいいかな? 我ら中間管理職、やるべき仕事はたんまりあるんだよね、これが」
永琳は、先程までの取り乱しぶりが嘘のように、何も言わずにくるりとこちらに背を向けると、そのまま歩いて行ってしまった。
男は永琳のことが少し気になったが、けっきょく追いかけるようなことはしなかった。
何故かむしゃくしゃする。
男は葉巻を取り出して口にくわえた。

147 :
「神という奴は、随分と神出鬼没だな」
「人智を越えた存在だからね。それにしても安心したよ。古参同士でありながら、君と永琳は仲が悪かったからね。上司である俺からすればけっこう心配してたんだ」
「あの嬢ちゃん、妙なことを言っていたぞ。姫を解放しろとかどうとか。……お前、何か変な事を吹き込んだんじゃないだろうな」
「あっはっは! 一体何を吹き込むって言うんだよ。まるで俺が彼女を利用してるみたいじゃないか。俺とえーりんは、あんた以上にふか〜い仲なんだぜ? なにせ俺達、チューまで済ましたくらいだからさ」
「…………」
捉えどころのない神だ。
そう心の中で毒づく。
「それよりさぁ。つい数時間前に俺が言ったことも忘れちゃったの? あんまり外に出るなって言ったじゃない。なんちゃって老人だからって、ボケた振りは止めて欲しいなぁ」
今の男の体は、全盛期と同じ肉体だった。
ビッグボスという名を冠されたあの時と同じ。
そのことにありがたいと思ったことは今のところない。元々、こういう最先端技術というやつはあまり好きではないのだ。
……いや、魔術というものだったか。どっちにせよ、胡散臭いことには変わりない。
「お前、嬢ちゃんを脅しているのか?」
男のその言葉に、イザナミはきょとんとし、それからすぐに高笑いした。
「いきなり何言ってんのさ。俺がどうやって彼女を脅すって言うんだよ。わかってる? 俺をここに閉じ込めてるのはあんたらなんだぜ?」
「マルクから聞いた。参加者から溢れた奴らの牢獄。あそこに嬢ちゃんの大切なお姫様がいるらしいじゃないか」
「だから? 俺ってば、お姫様には何も手出ししてないよ?」
無実を証明するように、手を広げてみせる。
「手を出さなくても、脅しの材料にはできる」
「おーい。そろそろ俺も怒るよ? 輝夜ちゃんを勝手に連れて来たのはあんたらじゃないか。それを無視して俺を悪者扱いかい? 酷い話だねぇ。俺は文句も言わずにあくせく働いてるってのにさ」
その静かな怒りは、確かに本物のように思える。だが、本物らしい演技ができる人間を、男は何人も知っていた。
「……仕事に戻る」
「それがよろしい」
男はイザナミに背を向け、監視部屋へと足を進める。
監視組という役職に割り振られた男は、仕事といってもモニターを見つめるだけだ。やる気など初めからない。
いつもならその不毛な仕事について考え憂鬱になるところだが、今回はまったく別のことを考えていた。
八意永琳。
先程の会話、最初は彼女の策略かと思った。しかし、それにしては真に迫るものがある。
彼女の言い方。あれはまるで、“円卓の神達が姫を人質に取っている”とでも言いたげだった。完全にこちらを敵と見做し、しかし自分では何もできないと考えている。そんな感じだった。
だがそれはおかしいのだ。何故なら神達は、八意永琳のことも、参加者から省かれた者達も、“何の拘束もしていない”のだから。
男は彼女を、“イザナミの腹心”だと考えていた。それが今、揺らぎつつある。
(嬢ちゃんとは、あとでゆっくり話し合う必要がある)
男はこの殺し合いが始まってから、ずっとここで働いていた。永琳もそうだ。しかし、男はずっと彼女を避けてきた。敵かもしれない相手と仲良くするほど男はお人好しじゃない。
(何かがおかしい。何かが噛み合わない)
そんな胸が悪くなるような奇妙な違和感を感じつつ、男は監視部屋へと入って行った。

148 :
支援

149 :

◇◇◇
【殺し合い会場 D-4】
『はじめまして、と言うべきかしらね。瀬多総司』
「……それで合っていると思う。お前からすれば、知らない人間でもないかもしれないが」『私は味方よ。安心してちょうだい』
瀬多の疑わしそうな口調を聞いて、電話の主は間髪いれずに声を紡いだ。
「根拠は?」
『ゲーム機を支給したのは私。そう言えばわかるかしら?』
ゲーム機のことを知っているのは、おそらくイザナミと助っ人の二人だけだろう。イザナミの目的は不明瞭だが、アスタルテの目的ははっきりしている。彼女がこれを見つければ、即刻これを破壊しにくるはずだ。
「もう一つ、俺達に希望を託したな?」
『ああ。マスターボールのことね。驚いた。そこまでわかってるの?』
あまり驚いてなさそうな口調で彼女は言った。
「全てに言える事だが、何故あんな回りくどい真似を?」
『あなたならわかるでしょ? アイテムを支給するには相応の建て前が必要だった。それに、すぐに手にされても困るのよ。あなた達がそれなりに戦力を充実させてからじゃないと、あまり意味を成さないから』
「参加者が何人も犠牲になっても、か?」
『……否定はしない。たとえ犠牲を出したとしても、確実なタイミングでカードを切る必要があった。それが主催者達を倒す唯一の方法だと私は信じてる』
主催者達。
断定はできないが、やはりイザナミだけでなくアスタルテも関わっているということだろう。
「……信じよう。疑っていてもきりがない」
『賢明ね。ちなみに、主催者側に盗聴する術はないわ。……いえ。する必要がない、と言った方がいいわね。そういうわけだから、そっちからの情報提供に関して慎重になる必要はないわ』
仮にも主催者側の人間がそう言っているのだ。首輪や会場にそういった機能がついていないのはまず間違いないだろう。
『それで? あなたはどこまで知ってるの?』
「そっちの情報をまず話せ。長々と交渉するほどこっちは暇じゃない」
『どうやら、信用はされていないようね』
「その通りだ。命の危険を冒してまで無償で俺達を助けようと考えるお人好しが、そうそういるとは思えない」
それは助っ人がいるだろうと推測した時から、変わらず瀬多の頭の中にあった考えだった。
『いるにはいるんだけど。……まぁ、そうね。確かに、少なくとも私じゃない。しかし利害は一致している』
弁解の一つでもするかと思ったが、電話の主は意外にもその事実を認めた。
ここでいらない時間を使いたくないのは向こうも同じということだろうか。
どちらにせよ、この女性に対し油断はできない。
彼女は、あくまでも他の目的を達成する足掛かりとして自分達を助けようとしている。それはつまり、こちらの命など鼻からどうでもよく、それ故にいつでも自分達を切り捨てることができるということだからだ。
「それはお前の判断だ。お前の目的を知らない俺達が、そう簡単に頷くとは思っていないだろ?」
『思っている。私の助けなしに、どうやってそこから抜け出すつもり?』
「ただの島だろ。首輪さえどうにかすれば、すぐにでも抜け出してやるさ」
「あれ? でもさっき──」
千枝が口を挟もうとするのを、咲夜が慌てて止める。
会話の相手が敵であろうと味方であろうと、こちらからそうやすやすと重要な情報を漏らすことはできない。
『……いいわ。いがみ合っていても仕方ない。そこは神が作り出した一つの世界よ』

150 :
電話の主が話す内容は、瀬多の話したものと大して変わらないものだった。これで瀬多の推理が間違っていなかったことが判明した。それだけでも情報を渋ったかいがある。
わざと妥協してくれたのか。そもそもこの妥協さえも芝居で、間違った仮説を真実だと思わせたいのか。それはわからないが。
「こっちの推測とだいたい同じだな。よかったよ。これで様々な仮説が現実味を帯びて来た」
これはこちらが相応の知能を持っていることをアピールするためのものだ。彼女は自分の目的が参加者を助けることでないことを明言している。この辺りで、こちらの価値を示しておく必要がある。
『……頭はそれなりに回るようね。安心したわ』
そう言って、彼女は小さく安堵のため息をついた。
どことなく焦燥している様子が窺える。
「……大丈夫か? こっちに連絡するだけでも、かなり大変だっただろ」
『仕方ないの。これも全て、私の詰めが甘かったせい』
どういうことか詳しく聞こうとした時、すでに彼女は喋り始めていた。
『私の名前は八意永琳。十六夜咲夜が近くにいるわね? 確認を取って頂戴。私が信用に足る者かどうか』
瀬多は電話を中断し、咲夜と向き合った。
「八意永琳という名前に心当たりは?」
「……やっぱり彼女が助っ人だったの?」
「気付いていたのか?」
「薄々ね。私の知人の中では一番の天才よ。あまり詳しくはないけど」
なるほど。幻想郷の住人だったわけか。
瀬多の知る数多の世界の中でもかなり異色な世界。そこの住人なら、世界創世の手伝いができる者がいてもおかしくない。
「信用に足る人間かどうか、咲夜に判断させろと言ってきている」
「……彼女の目的は私達を助けるためじゃないって断言した?」
「した」
瀬多は躊躇なく頷いた。
千枝やアドレーヌが少しだけ顔をこわばらせる。が、今は構っている暇はない。
「ならたぶん、彼女の目的はお姫様ね」
「お姫様?」
「蓬莱山輝夜。このお姫様のためなら、たぶん彼女は何だってするわ。自分の命に代えても守ろうとするでしょうね」
人質か。
永琳の立場を瞬時に理解し、瀬多は携帯に耳を当てた。
「信用する。余力があれば、そのお姫様を救う手助けもしよう」
『……ありがとう』
それは、彼女の心の底から発されたものだということが、瀬多にはわかった。
『私の目的は、姫と共にここから脱出すること。神達を抹Rること。そのための刃が、あなた達』
「同じ土俵に立ったからといって、奴らを倒せるとは思えないが?」
『ユンヌの力を借りればいいわ。話は聞いているでしょう?』
神を倒すことができるのは神というわけではない。神の加護を受けた人間のみが、神にダメージを与えられる。
それは漆黒の騎士の話にもでてきたものだ。
「脱出の算段は?」
『……詳しくは言えない。博麗霊夢の持つipadを見つけなさい』
「ipad? それが脱出のカギか?」
『……その内の一つではある。かなり荒っぽいけど』
だんだんと読めてきた。
大っぴらにこれほどのキーをばら撒いたのは、おそらくブラフなのだ。ブラフを撒き散らし、そのどれもが充分に効力のあるもの故に主催者はそれらを無視できない。しかし、そのどれもが本命ではない。
瀬多は確信した。
彼女は、秘中の秘を持っている。

151 :
「……本命を教えてはくれないのか?」
『ユンヌに頼りなさい。彼女なら勘付いてくれる。この連絡が終わったら、たぶん私は死ぬ。脱出については彼女の指示に従いなさい』
それは瀬多にとって、聞き捨てならない言葉だった。
「おいどういうことだ!? そっちで一体何があった!」
『いいから聞きなさい。イザナミはユンヌに関しては黙秘するつもりでいるらしいわ。だからゲーム機に勘付いても、難易度を上げるだけに留めた。けれど他のものは分からない。くれぐれも慎重に扱って』
あくまでも先程と同じく冷静な口調。
相手に詳しく喋るつもりはないらしい。いや、その時間がないのか。とにかく今は、問い詰めるよりも聞くべきことを聞く時だ。
「……このマスターボールは、一体何が入っているんだ?」
『神よ。そのボールは少し特殊でね。神の力を封印する効果を持っているの。だからこそ誰にもばれずにそっちに送ることができたんだけど、それも見破られた。
……どうやら、イザナミは困難をあなた達に与えたいようだわ。その困難を乗り越えた末の脱出なら黙認する。たぶん、そういう考え方』
電話を切られそうな気配。慌てて瀬多は言った。
「イザナミの目的は何なんだ! 何か知っているなら教えてくれ! 奴は俺達に何をさせたい!」
『あなた達が倒すべき神の数は四人。イザナミ、アスタルテ、ミュウツー、ゼロ。本当はゼムスという奴がいたけど、そいつはもう死んだわ』
「おい! いいから質問に────」
『あなたは絶対に死んでは駄目』
突然そんなことを言われ、瀬多は思わず黙った。
『あなたには役割がある。イザナギというペルソナを冠するあなたには。マヨナカテレビ事件と同じ、重要な何かがあるはず』
「……重要な、何か? それはイザナミが言っていたのか?」
『……わからない。私は嵌められたのか、それとも慢心していたのか。もしかしたら、マスターボールがいけなかったのかもしれない。参加者にとって何の困難もないアイテムの支給が、彼を怒らせたのかも。
……私には、もはやおぼろげな情報だろうと縋りつくしかないの』
あまりにも弱々しい声。彼女が衰弱し切っていることが電話越しにもわかった。
「……何が起きたのかはわからない。だが、俺達にはお前が必要なんだ。自棄にならないで、今は俺達がそっちに行くのを────」
『イザナミの目的が何か。あなた達は、決してそれを蔑ろにしてはいけない。思考を絶やしては駄目よ、瀬多総司。
真実は、いつも自分がじかに見て、考えて、自ら選んだ所にだけ現れるもの。あなたの行く先に、真実に繋がる道があることを信じなさい。そして、イザナミと対峙する前に、全ての者にとっての真実を突き止めなさい。じゃないと、あなた達に勝ち目はないわ』
そこで永琳からの電話はぶつりと切れた。
「お、おい!! 永琳!! 返事をしろ!!」
電話が切れているとわかっていながら、それでも瀬多は叫ばずにはいられなかった。
「……八意永琳がどうかしたの?」
「……わからない。だが、かなり追いつめられている様だった」
永琳の言葉がぐるぐると頭を回る。
彼女は、自分を重要人物だと言っていた。マヨナカテレビと同じ何らかの役割があると。
彼女がそう感じた根拠は結局提示されなかったが。彼女自身、半信半疑の情報ということだろうか。

152 :

永琳がどう考えていたのかはわからない。しかし、自分がこの殺し合いのキーパーソンであるという仮説には、頷きづらい点があった。
あのメダリオンの騒動一つ取ってもそうだ。
あれは明らかにイザナミが仕組んだもの。そしてその騒動のさなか、瀬多は何度も死にかけた。一つ何かが間違っていれば、この世にいなかった。
もしも本当にキーパーソンなのだとしたら、そんな危険な真似を敢えてさせる必要などない。瀬多総司なら乗り越えられると信じていた、という考えなど論外。
瀬多は戦力的な意味だけでなく、精神的な意味でも仲間に頼っていたところがある。あの一連の騒動も、決して自分の力で乗り越えたとは思えない。
(やはりどう考えても、イザナミにとって俺が重要な人物だったとは思えない)
しかし、ただ一人だけ。自分を特別視しているような気がする人物はいる。
イゴールだ。
瀬多の前にだけ現れ、自分を見つけさせるためにわざわざ『血の契約』までさせている。
それに、今回の神遊びの仮説だって、イゴールの言葉がなければ絶対に気付かなかった。
だがイザナミは、自分の言葉でヒントを与えたと言った。あれだけ丁寧にヒントを与えてくれていたのに、イゴールの存在は匂わせさえしなかった。
もしも。もしもイザナミにとって、イゴールの存在が計算外のものなのだとしたら。誰にも知られたくなかった存在なのだとしたら。
参加者に接触したことを知り、慌ててその参加者を消そうとしたのなら。それがメダリオン騒動と、アドレーヌのシャドウを出現させた本当の目的なのだとしたら。
……辻褄は合う気がする。少なくとも、イザナミが自分を特別視していると考えるよりずっと自然だ。
永琳からしても、参加者である瀬多達からしても、イゴールは絶対に無視できない存在だ。なのに先程の会話では一切話題に上がらなかった。それは、永琳さえもその存在を詳しく知らされていなかったからではないか。
────私の役目は、お客人を助けることでございます────
あの言葉が真実なのだとしたら、イゴールは瀬多総司のために動いているということになる。
都合の良い考え方だろうか。しかし、そう考えられるだけの下地がある。
────再びこうして相対した時、真実をお教えしましょう────
────イザナミと対峙する前に、全ての者にとっての真実を突き止めなさい。じゃないと、あなた達に勝ち目はないわ────
イザナミの一番近くにいたであろう永琳が、真実の重要性を説き、イゴールがそれを教えてくれると言う。この符号の意味することは何なのか。
半信半疑だったものが、確信に変わっていく。
瀬多は、イゴールという存在の重要性を再認識した。

153 :
支援

154 :

◇◇◇
【??? 監視部屋】
「なるほど。これは想像以上に厄介ですね」
監視部屋。いくつものモニターが映像を映し出している。そこには今、二人の者が対峙していた。
一人はどこかひ弱そうなイメージのある長髪の男、セRン。もう一人は、道化師のような格好をしたマルク。
しかしどこかマルクの様子がおかしい。いつもの快活な様子はなく、彼はずっと押し黙っている。
マルクに添えるように杖を掲げていたセRンは、彼にしては珍しい複雑な表情だった。
これで邪魔者はいくらか排除できる。しかし……
そんなことを考えていると、突然後頭部に堅い何かが押しつけられる。
「そいつを離せ」
冷たく凍てついた声。
頭を銃で突き付けられていることに気付くのに時間はいらなかった。
どうやら彼は、本気で怒っているようだ。いつ頭を撃ち抜かれてもおかしくない。
「……別に危害を加えていたわけではありません」
「じゃあ今の状況はなんだ? 明らかにマルクは異常をきたしている」
「心配には及びません。少し記憶を見せて頂いていただけですよ」
掲げていた杖をマルクから離す。
すると、先程までずっと沈黙を守っていたマルクがぱちくりと目を瞬かせた。
「あ! ボスがいるのサ! いつの間に入って来たのサ」
「……ついさっきな」
セRンを睨みつけたまま、ボスは言った。
「銃なんか持ってるのサ! 喧嘩はよくないのサ!」
セRンはマルクの背に合わせるように屈み、微笑んだ。
「私も少々困っていたところなのです。マルクからもボスを説得してくれませんか?」
マルクはオーケー! と元気よくサムアップすると、ボスに向かい合った。
「ボス! 喧嘩は駄目なのサ!」
ボスはそれでもセRンを睨み続けるが、当の本人は悠々とそれを受け流している。
しばらくして、ようやくボスは銃を下ろした。
「喧嘩じゃない。銃のメンテナンスをしていただけだ」
「メンテナンス中に銃口を人に向けちゃ駄目なのサ! そんなの僕でもわかるのサ!」
「ああ。そうだな」
「ボスはダメダメなのサ」
「あー、ほら。わかったからさっさと行け。俺はセRンと話があるんだ」
しっしっ、とまるで動物を相手しているかのように軽くあしらう。
「ボスは自分勝手なのサ! 僕だってセRンとお話し中だったのに」
文句を言うマルクを無理やり黙らせ、部屋から出て行かせた。
恨んでやるのサー、と叫ぶマルクを無視してドアを閉める。

155 :
「……どういうことか聞かせてもらおうか?」
「先程言った通りです。彼の記憶を見せてもらっていた。ただそれだけですよ」
「……副作用はないんだろうな」
「先程のやりとりを見てもらえれば分かるでしょう? 安心して下さい。彼には何も危害を加えていませんよ。記憶の改竄もしていません」
一瞬迷うが、すぐにセRンを信じることにした。
この男は決して嘘をつかない。それは今までの付き合いからもわかる。
「記憶を見せてもらったと言ったが、何故今更そんなことを?」
「今だからです。ようやく八意永琳の術が解けたところですからね」
「術?」
質問と同時にボスは察する。彼女の急変は、おそらくその術が破れたことを察知したのだろう。
「八意永琳は、私がマルクを使って情報を得ようとすることを予測していました。だからそれに対する防衛策を講じていた。協力者に対して保険をかけていたということです」
マルクはその境遇からか監視組と仲が良い。それを利用して永琳は情報を集めていただろう。
そして、イザナミの目を盗むためにも二人が別行動を取るという作戦はそれなりに迷彩になったはずで、実際によく行われていた。
しかしそうなれば、当然マルクというアキレス健ができてしまう。
記憶を読まれる。
ただそれだけで永琳は圧倒的に不利になる。自分一人なら問題はないが、マルクにはそれに対抗する力がない。だからこそ保険を掛けていたのだ。
万が一にも記憶を読まれないように。
「しかし結局、それも無意味だったわけですが」
「……やはり何かやらかしていたか」
「やらかすどころの話じゃありません」
ゲーム機の存在は決して無視できるものではない。
参加者を助けられるだけのアイテムが殺し合い会場にある。それはセRン達にとって由々しき事態なのだ。
「俺もそのあたりを詳しく聞きたい。一体どうなっている。何故嬢ちゃんは俺達を敵だと認識しているんだ?」
イザナミはこの空間から出られない。いわば籠に買われた鳥。そんな彼が協力者として永琳を呼んだ。
が、“永琳にはここから出られなくするような制限はかけていない”。
何故なら、そもそも自分がこの場所から出られなくなることを提案したのは、イザナミ本人なのだから。
「円卓の神々はあまりに力の差があり過ぎる。だから制限を掛けよう。そう言いだしたのは、確かイザナミでしたね」
イザナミの持つ力を女神がある程度封印する。そうすることで女神の力も弱まり、円卓内の力を拮抗させる。それでようやく円卓は成立するのだ。均等な力を持った神達の集まりとして。
「イザナミはあまりに強過ぎた。だからこそそれを危惧するゼロに対し、力の制限と、ここから出られなくなることを提案した」
イザナミの役割は殺し合いの現場作りと監修。要するに、計画の全てを彼一人が仕切っている。
それは一番割に合わない役割ではあったが、それも仕方がないことなのだ。
そもそも彼の目的は、自分が世界を創ることではなく、“他の神が創った世界を観察すること”なのだから。

156 :
支援

157 :
「イザナミは円卓の中でも浮いた存在でした。他の神によって作られた世界。それを、自分の世界を維持する上での参考にしたい。それが彼の言い分でしたから」
「そうだ。奴にとって、俺達の願いを叶えることが自分の願いを叶えることだった。だからこそ、自分にとってマイナスになるような提案も進んで呑んだ」
「それが私達の知る真実。しかし、八意永琳には歪んだ情報が手渡されていた」
「なに?」
ボスが思わず顔をしかめて、セRンを見つめる。
「その内の一つが、“自分も神達に囚われている身なのだ”という嘘」
「おい! それは一体どういうことだ!!」
身を乗り出してセRンに詰め寄る。しかし、セRンはいつも通り澄ましている。
「そのままの意味ですよ」
その冷静な口調に、ボスも平静を取り戻そうとセRンから背を向ける。
葉巻を取り出し、それを口にくわえる。
煙を一気に吸い、そして吐く。
それだけで、だいぶ気分は落ち着いた。
「しかし……それはあまりにおかしいぞ。そもそも嬢ちゃんを呼んだのはイザナミの指示だ。それは嬢ちゃんがイザナミの手下だからだろう?」
イザナミは計画の準備も中盤辺りに差しかかった頃、八意永琳の力を借りたいと言ってきた。イザナミ自身は明言しなかったが、その言葉に誰もが彼女とイザナミは通じていると考えていた。
「私達は全員そう思っていました。しかし真実は違う。イザナミは彼女を脅していたんです。しかも、自分はあくまで“対主催”だと偽って」
蓬莱山輝夜を人質にされれば、八意永琳は必ず言う事を聞く。そしてその人質が、イザナミ以外の神によって連れて来られたのだと知れば、当然永琳は彼らに敵対心を抱く。
「自分は被害者面で、嬢ちゃんを操ってたってわけか……!」
「そうしてイザナミは、彼女に殺し合い会場を作らせた。本当はお姫様の命など、誰も関心を示していないのに」
イザナミでさえ、あの人質達に手を出すことは許されていない。円卓の神達からすれば、彼らは貴重な参加者候補である。不手際で連れて来られたからといって、今後絶対に不必要になるとは限らない。
そして、そもそも円卓の神達には参加者の生命などに興味はない。R意味も、生かす意味もないのだ。自分の世界以外のことなどどうでもいいと考えている。
だから八意永琳は、いつでも輝夜を連れて逃げることができた。
「だが、一体どうやってお姫様を連れて来たんだ? あいつはここに閉じ込められている。お姫様を連れて来ることなんてできない。だからこそ嬢ちゃんもそれを信用した」
「……つい数時間前の事件。もうお忘れですか?」
その言葉に、ビッグボスも勘付いた。
「おいまさか……!」
「自分に力を与えてくれた者が、ちょっとした頼み事をする。その者が不当な扱いを受けていることに不満を持っている者なら、さしたる手間もかからないことに首を横に振る訳がない」
「ゼムスか! あいつを使って人質を!!」
ミュウツーとゼムス。厳密に言えば、彼らは神と呼ばれる存在ではない。今はただ、その力をイザナミに与えられているだけだ。
日本の神には分霊という性質がある。自らの力、その神威を衰えることなく無限に増やすことができるというものである。
実は、ミュウツーとゼムスの身体にも、分霊によってその神威を分け与えられていた。要するに、彼らの身体にはイザナミの神霊が宿っているのだ。
魂振りという、魂の活力を上げる儀式を行うことで、その肉体の持つ外来魂、つまりはその力を底上げしている。
「おそらくは、その意図を何も伝えずに、あくまでゼムス本人の意思で動いてもらったのでしょう。
ここから動けない身で、話し相手の一人も欲しいと言えば、イザナミに恩のあるゼムスは気を利かせて連れて来てくれる。やり方次第では、その話し相手を蓬莱山輝夜一人に限定することは容易い」

158 :
ゼムスは月の民である。月の民で、蒼き星に住む人間達を皆殺しにしようとした悪人である。しかし、彼には彼なりの正義があった。
彼は月の民を愛していた。月の民であることにプライドを持っていた。
蒼き星の文明が月の民の文明に届いていない。だから届くまでの間眠っていよう。そんなことが月の民の間で話し合われた時、最初にゼムスの心に宿ったのは確かに不満だ。しかし、月の民の存続を危惧したのも確かなのだ。
蒼き星が月の民と同じ文明を持った時、こちらの移住を彼らが許可してくれるだろうか。そんな疑問がゼムスにはあった。
文明に開きがある今なら、たとえ反逆行為を受けても楽に対処できる。しかし、その技術が月の民と変わらない頃になれば。その無視できない技術を持った蒼き星の人間達が、こちらの存在を脅威に思い刃を向けてきたら。
月の民の損害は計り知れないものになる。それは彼にとって苦痛以外の何物でもなかった。
そもそも彼にとっての力とは、月の民としての力なのだ。個の力ではなく、あくまで月の民の力を誇示していた。それほどに彼は月の民を愛し、その住人であることを誇りに思っていた。
長きに渡る眠りは、月の民の進化を妨げるものである。それは肯定できない。月の民に被害が及ぶ可能性があるのなら尚更だ。
今は無知で、しかし今後脅威となりかねない蒼き星の住人を、ゼムスが良いように解釈することは不可能だった。
ゼムスは頭が良い。現実主義者だ。
だからこそ、彼の決断は蒼き星の人間達を滅ぼすこととなった。
確かにその行為は乱暴そのもの。彼がしてきたことも、決して善とはいえない。
彼は悪人だ。それは変わらない。
だがしかし、彼は極悪人ではない。
恩ある者に対し、それを平気で踏みにじるような者ではないのだ。
「なら、他の人質二人は……」
「囮でしょうね。良い具合に迷彩になっていると思いますよ。神達は参加者のプロフィールまで詳細に調べようとしない。
調べても、誰と誰が知人だとか、その程度でしょう。そういった観点からみればあの三人は、今回の参加者との関係などから言ってもまったく同列の者達です」
ゴールドとローザ。彼らを連れて来るのも簡単だ。輝夜とはまた別に、それと示唆する言動をゼムスの前で言ってやればいい。
「ただ一つ。嬢ちゃんへの影響を除けば、か。あの中に嬢ちゃんの知り合いが一人くらいまぎれても、そしてそれに気付いたとしても、誰も気に止める者はいない」
人質達が破格の待遇だということも迷彩になっただろう。たとえ輝夜と永琳が家族同然の仲だと知られても、単純に新たな世界の住人として永琳が連れて来たのだと考えるのがオチだ。
ここにいる者達は全員が何らかの役割を担わされている。その中で何の役割もない者が出歩くのは感心できない。
そのために体裁として牢屋に入ってもらい、世界が構築されるまで大人しくしていてもらう。どこにも矛盾はない。
八意永琳は円卓に座る権利があった。それを知る者達からすれば、蓬莱山輝夜の存在は、どうしても永琳が主体的に動いた結果だとしか思えないのだ。
事実、セRンもビッグボスもそう信じ込んでいた。
「イザナミは予定通りお姫様を手中に納めた。しかし、それを知られるのは少々厄介。まずないとはいえ、ゼムスがイザナミの意向に沿う為に人質を連れて来たと誰かに言う可能性もある。だからこそあの離反があった」
「死人に口なしってわけか」
ボスが吐き捨てるように言った。
「八意永琳にはゼムスが邪魔だったから排除したと説明したようですが、そもそも彼を呼んだのはイザナミです。危険思想を持っているというのなら、最初から呼ばなければ良い話。
なのに招き寄せたということは、何らかの利用価値があったということです。何も行動を起こしていない段階で、イザナミがゼムスを排除するわけがない」

159 :
今回の事件で不服そうにしていたのは女神アスタルテのみだ。確かにイザナミはゼムスの反乱を伝えることが遅れたかもしれない。しかし、彼のフォックスダイがなければ、まず間違いなくゼムスには逃げられていた。
ゼムスはイザナミの力によって既に神となっている。しかし、神を倒せるのは神、というわけではない。神の加護を受けたヒト。もしくは、ヒトの創りだした文明だけである。
そして文明とは、要するに人の作り出した武器である。
女神アスタルテは、神の加護を受けた武器でないと傷をつけることはできない。そしてそれはゼムスも同じなのだ。
彼の耐久力は凄まじいものがある。そうなれば、自然人間の武器でRには時間が掛かる。そのための時間稼ぎに、どうしてもフォックスダイのような身体の動きを鈍らせるものが必要だった。
ゼムスの離反に勘付いた直後にそれを他の神達に伝えたのでは早計も早計。まさに愚行とも呼べる行為。
しかしその点、イザナミの行動は称賛に値する。ゼムスを泳がせ、フォックスダイをうまく注射し、足止めのための準備をしてからゼムスの離反に備えさせる。
まさに非の打ちどころのない完璧な対処法だ。だからこそ、頭の固いアスタルテだけがイザナミに怒りを覚え、他の者達は逆に褒め称えたのだ。
セRンでさえもそれは同じで、だからこそアスタルテに対してイザナミに不備はなかったと懸命に説得し、どうにかその態度を改めさせたのだ。
結局、それもイザナミの仕組んだことだったのだとたった今判明したのだが。
「これで万が一にもイザナミの企みはばれない。しかも、その行為のどれもが自分の株を上げるもの。ふざけてやがるな」
怒りを放出するかのように、ボスは葉巻の煙を吐いた。
「本当は人質としての価値などない蓬莱山輝夜を、イザナミはまんまと人質として利用した。八意永琳からすれば、イザナミは自分と同じ境遇の、ある意味では味方。実際に力を封じられているイザナミの言葉を、おそらく彼女は半分以上信じたでしょう」
月の頭脳とまで言われる永琳だ。イザナミに何らかの枷が施されているのなら、それを見破るのは容易い。
彼女からすれば、それは円卓にも一種のヒエラルキーが存在することの証。そしてそうなれば、その一番下位に位置するのはどう考えてもイザナミ以外にいないのだ。
「しかし、そんな回りくどいことをする必要があったのか? イザナミが計画を進めるのに必要な人材だと言えば、お姫様は人質として活用されたはずだ」
ボスの疑問はもっともだ。
永琳に嘘をつき、神達を騙す必要はイザナミにはない。ただ一言、輝夜を人質として連れて来て欲しいと言えば、それで済む話しなのだ。
「実はあるんですよ。自分を対主催だと偽り、架空の人質を利用して彼女を使う理由が」
ボスは少しだけ考えてみる。が、まったく思いつかなかった。
「イザナミは、八意永琳に参加者を助けて欲しかったんです」
「なっ!?」
ボスは思わず絶句した。
それはイザナミの言っていた目的と相反するもので、自分達の目的と正面から対立するものだった。
「そう考えれば辻褄があいます。イザナミはその役割上、八意永琳と共に行動しなければならないことが多かった。八意永琳からすれば、もしもイザナミがお姫様を人質にとる憎き敵だとしたら絶対に反抗できない。しかし」
「同じ境遇の味方なら別。参加者を援助しても、見逃してもらえるってわけか!」
殺し合いの監修という貧乏くじを引いたのも、イザナミの策略の内だった。敢えてそれを引くために、自分が不利になる条件を次々と呑んでいったのだ。
力の制限。ここから出られないという足枷。それらは、疑い深いゼロの目をも欺いた。
今回の計画を一番よく知るイザナミは、殺し合いの監修に一番向いている者だ。
外に出られないというのなら、下手なことをしても数に任せて返り討ちにできる。そうゼロが考えるのは自然なこと。
しかし、そう考えさせることこそイザナミの目的だった。
もしかしたら、能力の拮抗を主張したゼロの思惑さえ、イザナミの策略の一つだったのかもしれない。
ボスは、思わずぞっとした。

160 :
「八意永琳の視点で見れば、イザナミは自分と完全に敵対するようなことはしないはず。何故なら、彼女の持つ情報から考えられるイザナミは、自分と同じ境遇なのです。そんな者が唯一の味方を敵に回す必要性など皆無。
たとえイザナミの目的が世界創世だとしても、自分を縛る神を倒すことを優先するはずだと八意永琳は考えた。
だからこそ、殺し合い会場から脱出するためのアイテムを参加者へ支給することができた。たとえばれてもほとんどノーリスク。八意永琳からすれば、神達を倒す最高の手というわけです」
実際、永琳は多くのアイテムを参加者に支給している。
ipad、マスターボール、ゲーム機。
そのアイテムの多さは、やりすぎと言っても過言ではない。しかし永琳からすれば、それはばれてもリスクの少ないもの。敵の敵はいるに越したことはない。そうイザナミが考えると見越していたのだから。
しかしイザナミの考えは違った。そのように永琳が考えること、それ自体がイザナミの思惑だった。
参加者にアイテムを支給する必要性を感じ、それを八意永琳にさせるだけの環境を作った。
もしもそれがばれたとしても、糾弾されるのは永琳。何故ならイザナミは、実際に何も行動を起こしていないのだ。
そんなことしているとは思わなかった。そう言うだけでいい。物的証拠が挙がらない以上、誰も彼を糾弾できない。
彼の非といえば、反乱分子を連れて来てしまったということくらいだろう。しかしそれも、彼女にしかできない仕事があったと言えば、誰も強く責めることはできない。
「……しかし、それならイザナミの目的は何だ? 俺達に世界を創らせることが目的じゃないのなら、何故こんな手の込んだ計画を?」
「……わかりません。全ての情報を集めれば、イザナミの目的が別にあることを指している。しかし、その指し示す方向はひどく曖昧です。先程私は、参加者を助けるのがイザナミの目的だと言いました。しかし、彼はそれを妨害している節もあるのです」
「妨害?」
「脱出のキーとなるアイテムの効果。それを発揮する条件をわざと厳しいものにしているのです。それに、そのアイテム自体を入手困難な方向へと持って行ったりしている。おかげで参加者はかなりの人数が死ぬことになりました」
「じゃあそれが目的というわけじゃないんだろ」
「では、一体何が目的なのでしょうか」
その言葉に、ビッグボスは押し黙った。
「八意永琳は、イザナミのことをこう評していました。自分にとって、唯一の敵だと」
それは永琳の立場からすれば有り得ない言葉。何故ならそれはイザナミ以外の敵を軽視する発言で、自分と同じ立場にあり、力を制限されて利害も一致している神に対して言う言葉ではない。
「彼女には、イザナミの目的だけがまったく分からなかったのです。だからこそ、彼女はイザナミをそう評価し、決して心を許そうとはしなかった。
私達は目的を知り得て初めてその者の行動を予測することができる。ゴールが見えて、初めてそのラインが見えてくるのです」
「しかし、イザナミにはそれがない……」
セRンは頷いた。
「彼は確かに力を制限されている。鳥籠の中にいる。しかしその実、情報戦という観点で、イザナミはここにいる全員を圧倒しているのです」
ボスは思わずうなった。これは確かに無視できないものだ。
イザナミはどうにかして排除しなければならない。
「さて。これで今の状況はだいたい理解できたでしょう。その上で、あなたに聞いておきたいことがあります」
セRンはビッグボスと向き合う。
今まで以上の真摯な瞳でボスを見つめ、口を開いた。
「あなたはこの情報を知り、どう動きますか?」

161 :

◇◇◇
【殺し合い会場】
「で? 放送が終わったらどうするの?」
永琳からの情報を共有し終わると、咲夜が瀬多に聞いた。
ちなみに、自分が重要人物であると明言されたことは黙っていた。その可能性は低いと思ったこともあるし、何より下手な情報を教えて彼らの判断力を鈍らせたくなかった。
もしも瀬多が重要人物だという話を聞けば、皆瀬多を守ろうとする。もしかしたら、自分の命よりも瀬多を重要視するかもしれない。それは絶対にしてはいけないことだと、瀬多は感じたのだ。
それにこれから提案することを考えても、その情報は妨げにしかならない。
「……二つのグループに別れよう」
それは、イゴールとの接触を今まで以上に重要視したが故の結論だった。
全員が眉をひそめる。当然だ。瀬多自身、この提案が裏をみる可能性が高いことを否定できない。
これは一種の賭けなのだ。
「一応、理由を聞いておこうか」
極めて冷静に、漆黒は言った。
「六人という人数は確かに心強いし牽制にもなるだろう。しかし、混戦になればあまりにも弱過ぎる」
たった一人がチームをかき乱すだけで、こちらはおいそれと動けなくなる。敵にとって六人も固まった的は攻撃を当てるに苦労しないだろうが、こちらは違う。
仲間に攻撃が当たらないように常に注意しておかなければならない。その心の隙は、ここ一番という場面で必ず不利になる。
「二手に別れれば戦力は分散されるが、その分機動力が上がる。そうなれば、探索だって効率的に行える」
瀬多は名簿を取り出し、全員に見えるように広げた。
「現段階で確認できている敵はかなり多い。その中でも実力者はかなりの人数だ。しかし同時に、殺し合いに乗っていない可能性の高い者もいる。東風谷早苗、雷電、花村陽介の三人だ。彼らとは早く合流したい」
時間が空けば空くほど、彼らが殺される可能性は高くなる。それは戦力になるだとか、そういう理屈抜きの考えだった。
「彼らが合流していると考えるのはあまりにも楽観的だし、支給品によって戦力増強が成されていると考えるのは論外だ。だからこそ、殺し合いに否定的なグループの中でも最大戦力と言ってもいい俺達が動く必要がある。
この殺し合いでもトップクラスの実力を持つ二人、レミリアと漆黒を中心にグループを編成し、仲間を早急に見つけて合流する。ベストとは言わないが、ベターではある」
「……少し私情が入っている気がする。花村陽介はお前の友人だったよな」
確かにレミリアの言う通りかもしれない。考えないようにはしていたが、無自覚に花村が生き残る確率の高い方法を選んでいるのかも。
だから、瀬多は敢えてそれを否定しなかった。
「そうだ。たぶん私情は入っている。だから反対したい者は遠慮なく反対してくれ」
本来ならば、私情が入っていようがいまいが、そんなことはどうでもいい話だ。たとえ私情が入っていたとしても、瀬多の言っていることは理に適っている。
作戦というからには、絶対の正解は存在しない。どんな作戦を選ぼうと、メリットデメリットは存在するのだ。
しかしそう言わないのは、自分が曲がりなりにもリーダーという役割を負っているから。皆の命運を預かる身としては、理屈だけでは動けない。
その作戦に命を張れる。そう言わせるだけの納得を皆にはさせなければならない。それは理屈とはまた違うものだ。

162 :
「わ、私は……それでもいいと思います……けど……」
瀬多を擁護するためか、アドレーヌが言った。語尾が小さく、自信がなさげなのは、戦力にならない自分が口を出す問題ではないと考えているからだろう。
千枝は無論、瀬多と同じ考えだ。レミリアも指摘こそしたが、どう転ぼうとさしたる興味はないらしく、あらぬ方向を見つめてぼーっとしている。
「……私情が入っていることについては、私は何も言わない」
意外にも、咲夜はそう言った。
「けど、それ抜きに考えてもリスクの高い作戦ね。混戦に弱いと言っても、場所を考えて歩けば問題はないでしょ?」
「二手に別れたい理由の一つには、クリスタルを早急に回収したいっていうのもあるんだ。……いや、それが最大の目的と言ってもいいかもしれない。
俺の勝手な思い付きなんだが、クリスタルはできるだけ早く、確実に回収しなければいけない気がする。根拠はかなり薄いんだが……」
「それでもいい。話してくれないか? 我々には聞く権利があると思うが」
漆黒に促され、瀬多は自分の考えを話した。イザナミとイゴールが決して協力関係を持っているわけではないということ。そして、もしかしたらイゴールが参加者側に協力的かもしれないことを。
「俺の勘でしかないが、クリスタルはおそらく最重要アイテムだ。それこそ、永琳の用意した脱出アイテムよりも重要なものかもしれない」
「よく言い切るな。お前がそう思う理由はなんだ?」
「イゴールの言っていた真実だよ。たぶんこれは、イザナミの目的に少なからず関係することだと思う」
イザナミの目的。それがわからず、永琳はかなり苦しんでいるようだった。
「永琳はイザナミとアスタルテ以外にも三人の神がいると言っていた。だが、その主催者達もイザナミの目的を把握してはいないんじゃないかと思うんだ。そしてもしそうだとするなら、全てが怪しくなってくる。
さっき俺が自信満々に喋っていた仮説。あれも全て、ブラフかもしれない。主催者達が勝手にそう思わされているだけで、実際は全然別の目的があるんじゃないか。
そう考え出すと、何もできなくなる。どう動けば奴の目的から外れるのか。それが分からないということは、結局ここから抜け出しても結果は同じなんだ。ただ奴の目的のために動かされ、死ぬだけだ」
「だが、真実を教えると言っているのはイザナミの手先だろう?」
「……実は、俺もよくわからない」
イゴールはイザナミの部下だとは一度も言わなかった。イザナミもそうだ。彼らの関係がどういうものか。それは瀬多にもわからなかった。
「イザナミの手先。そう考えた方が色々と納得がいく。だが、俺は少し違うと思う。イゴールは、マヨナカテレビの時も俺を手助けしていた。そして今回も、俺に味方をすると言っていた」
「だから手先ではないと? 少し楽観的過ぎないか?」
そう。楽観的だ。
先程助っ人を信用しない方がいいと言っていた自分が、その助っ人以上に不確定要素の多いイゴールを信じたいと思っている。
……いや。もしかしたら、あの場にいなかった彼女を信じたいと思っているのかもしれない。いつもベルベットルームにいて、困難な頼み事をしてきた彼女。
どれほどの発言権があるのかはわからないが、もしも彼女が進言してくれていたなら……。
瀬多が反論しようと口を開く。が、それを漆黒が手で制した。
「止めよう。この話はどこまでいっても水掛け論だ。今はそんなことを言い合っている時じゃない。
瀬多もわかっているだろうが、イゴールが味方だということを実証する証拠は何一つないんだ。それこそ、クリスタルを見つけ、イゴールから話を聞き出すまでは」
漆黒の騎士の言う通りだ。
しかしだからこそ、クリスタルは探す必要がある。瀬多の仮説が間違っているかどうか。それを判断する一つの材料になることは確かなのだから。
だが、瀬多はそう言わなかった。
そもそも、彼女が動いてくれているという考え自体が希望的観測でしかないことに気付いたのだ。

163 :
「漆黒の言う通りだな。悪い。少し熱くなってた。今は二手に別れるべきかどうかだけを考えよう。千枝とアドレーヌは賛成してくれているようだが、他の三人はどうだ?」
「……まぁ事実がどうあれ、イザナミを出し抜くためにはどうしてもクリスタルが必要。そう瀬多が考えるのなら、二手に分かれるという作戦も、私は別に異論ないぞ」
「お嬢様がそう言うなら私も認める」
レミリアが承諾し、咲夜も了承した。あとは漆黒だけだ。
「……本来なら、この作戦は拒否するところだ。この殺し合いという異常な環境の中で、戦力を二分するのは自殺行為に等しい」
漆黒は瀬多を見つめ、薄く微笑む。
「しかしそれ以上に、私は瀬多に敬意を表したくなった。だから、その敬意の証として君の作戦に乗ろう」
瀬多以外の全員が、漆黒の言葉の意味を計りかねて首を傾げる。
だが瀬多にはわかった。漆黒はこう言いたいのだ。
自分と仲間を天秤にかけ、自分が重要人物である可能性について言及しなかった。そのことに敬意を表する、と。
イゴールが瀬多にだけ接触してきた。それだけで瀬多総司という人物の重要性はかなり高い。
それに、永琳は咲夜という知人がいると知っていながらも終始瀬多と会話していた。リーダーであるからと言えばそれまでだが、ああいう場合は普通知人同士で会話するべきところだ。その方が話もスムーズに進む。
なのにわざわざ瀬多と会話していた。そこから、永琳も瀬多を重要視しているところがあると推測したのだろう。そして、永琳がそう考えているのなら、そのことを瀬多に伝えないはずがない。
だから漆黒はこう推理した。瀬多は、自分が重要人物だと言われながらも、それを黙っていたと。
本来この情報を伝えることは決して卑怯なことではない。むしろ、正確な情報を伝えなかった瀬多の判断に非があるともいえる。が、それでも、確証のない情報で皆を撹乱させることを避けた瀬多の決断を、漆黒は評価してくれたのだろう。
(……まったく。大した将軍じゃないか)
どうして自分がリーダーなんてやっているのか不思議なくらい、この男は将として、人の上に立つ者として、非常に優れた人間だ。
「じゃあ二つのグループに分けるぞ。主軸はレミリアと漆黒。一グループ三人編成だ。どちらのグループに入るかは個人で決めてくれ」
瀬多の言葉を受け、全員が動きだした。

164 :

◇◇◇
【??? 監視部屋】
ボスは、しばらくじっと動かずにいたが、やがて小さくなった葉巻を捨てた。
新しいものを取り出し、口にくわえる。煙を吐き出し、ゆっくりと口を開いた。
「どうするとは?」
「これだけの情報を得て、あなたはどう対処すべきだと思うか。それを聞きたいのです」
ボスは黙って葉巻をくわえる。
「イザナミの目的は確かにわかりませんが、その目的の足掛かりとして参加者を我々と同じ土俵に立たせる必要があった。自分は安全圏にいたままそれを成し遂げる。そのために八意永琳を呼び、彼女を動かしてまんまと罪を着せた。おそらくはそれが彼女の役割だったのでしょう」
「……だとしたら、こんなふざけた話もない。人質を取られ、必死に今の状況を打破しようとして、結局はそれが全て自分の首を締めているとは」
「八意永琳の持つ情報は、全てイザナミを経由しなければならなかった。だからこそ彼女は、イザナミをある程度信用し、またある程度疑わなければならなかった。
彼女が唯一信じることができたのは、円卓の神達の目的が世界創世であったことと、ここにお姫様がいること。つまり、人質を取られているということだけです。様々な仮説をたてることはできても、全ては憶測。それでも、最悪を想定して動く必要があった」
全てを信じれるほどイザナミは信用における者じゃない。かといって、疑ってばかりもいられない。疑い出せば全てが疑わしいのだ。
結局永琳が信じれるものは、不確かでも存在する理のみだ。
「イザナミはともかく、他の神達は絶対に信用できない。参加者達を殺し合わせるような連中が、まさか人質の殺害に躊躇するなど彼女は思わない。ましてお姫様の存在、自分の存在が神達にとってどうでもいいものだなどと、そんな楽観的な考え方はできない」
永琳にとって、神の行動は未知数だ。だからこそ、用のなくなった自分達がどのように処理されるのか、その一点に関しては最悪を想定しなければならない。
Rことに躊躇しない者達なら、協力者の殺害というのは一番リスクの少ない対処方法なのだから。
神は殺人に忌避感を覚えない。だからこそ永琳は従順であるべきで、しかし反旗を翻す下準備も進めなければならなかった。
「神達が不仲だということも、八意永琳からすれば決して自分で判断できるものではないのです。何故なら、それを知る程に彼女は他の神達と面識がない。
漠然とそれを感じ取っていたとしても、それを想定して動くにはあまりにリスクが高過ぎる。彼女は、彼女の意思に関係なく、イザナミの言葉があって初めて動くことができるのです」
神と下手な接触を取るのは、永琳からすれば一番避けたい行為だ。
神は傲慢で気まぐれ。それはつまり、必ずしも利害で行動するわけではないということだ。
少し自分のことを気に入らないと思えば、即座に人質をRくらいのことをしてきてもおかしくない。
自分と相手に圧倒的な立場の差があると誤認している永琳にとって、どんなことで輝夜を殺されるかまったくわからないのだ。

165 :

ビッグボスもセRンも、それぞれの神に通じている。セRンは言うまでもなくアスタルテの意思に従っているし、ビッグボスもゼロの理想の世界のために協力している。
ビッグボスとゼロは不仲だ。互いに互いをまるきり信用していない。しかし、ゼロが自ら犯した愚を再び犯そうと考えるとはビッグボスも思っていない。そう確信できるくらいには、ビッグボスはゼロの人柄を理解していた。
要するに、彼女が信用できる者は、神と通じていないと確信できるマルクただ一人だけだったのだ。
「……正直、私ならこんな環境耐えられませんね。自分よりも大切な者を人質にとられ、情報のほとんどがただ一人の者からしか与えられない。それがどれほど不安なものか。頭の良い者であればあるほど、底なしの恐怖に襲われ続ける。
情報を得ようと思えば、ただ一人の者に頼るしかない。それはつまり、裏を取る術がないということで、その者が敵ならば自分は思うように動かされるしかない。
……そんな地獄のような環境の中、よくあれだけ平静でいられたものです。その精神には、私も感服します」
聞けば聞くほど、永琳はイザナミに絡め取られている。誰かを助けようという願いさえも、イザナミによって操られている。
ビッグボスは、血が出るかと思うほどに手を握りしめた。
「彼女はもはや放ってはおけません。殺し合いを妨害する以上、彼女はこちらで排除しなければいけない」
思わず、ビッグボスはセRンを睨みつけた。
「ふざけるな! そんな不条理な話があるか! それに、お前の言ったことはイザナミの目的に加担することになる。それだけはあってはならない!」
イザナミの目的が何かはわからない。しかしこちらにその意図を隠す以上、確実に自分達にとってデメリットの生じる目的なのだ。
「わざわざ彼女を消す必要はない。事実を伝えれば、それで済む話だ」
「私達を敵だと認識している彼女が、それを信じると思いますか? 考えてもみてください。今までの人生で最悪の窮地を迎えていた。それが実は何でもなかったなんて、逆に誰も考えられません。それが長寿で、しかも人並み外れた知能を持つ者なら尚更」
「……俺は認めない」
「ボス! 今はそんなことを言っている場合ではありません! 我々の真の敵はイザナミです。それを忘れては──」
「忘れているのはお前だ、セRン。仲間は多い方がいい。彼女をこちらに引き入れる」
「下手なことをすればこちらの優位が崩れかねません! 我々がここまで情報を掴んでいることを、イザナミは知らないんですよ!
もしも八意永琳が裏切れば、もしくはイザナミに勘付かれたら、それでまた振り出しに戻ってしまう。思い出して下さい! あなたは、大義のためにこの殺し合いを終わらせなければならないのですよ!」
殺し合いの完遂。それが世界創世の要。
ザ・ボスの考える理想の世界を創る、これが最後のチャンス。そんなことは、ビッグボスにだってわかっている。
だが、ボスの脳裏にちらついて仕方がないのだ。先程の、嘆願する永琳の必死な姿が。
「……俺は、時代や世界のために戦っていた。それこそ政府や誰かの道具のようにな。間違いも多く犯した。何人もの罪なき人を死に追いやった。今思えば、正義も何もないただの殺戮だ。だけどな。……俺はいつも、自分の意思で戦ってきた」
何が正しいのか。そんなことは、今のボスにはどうでもよかった。
自分の意思。自分が何をしたいと思うか。それに従うことが、ボスにとっての正義だった。

166 :
扉へとボスは駆ける。
慌ててセRンが杖を構えるが、一発の銃声とともにそれは空を切り、地面へと転がる。セRンが持つ杖を、ボスが銃弾を当てて弾いたのだ。
「俺は悪の元凶だ。諸悪の根源だ。それは今も同じで、だから罵倒されても何をされても、俺は何とも思わない。
だが俺の意思だけは、誰にも否定させない。誰にも邪魔はさせない。俺は自分の意思で戦う。ただそれだけだ。……処罰なら、あとできっちり受けてやる。悪いな、セRン」
それだけ言うと、ビッグボスは扉から出て行った。
セRンはため息をついた。
まったく厄介な相棒を持ったものだと嘆きながら。しかし、だからこそセRンは薄く笑った。
彼は自分に似ている。人の悪意を許容できず、世界に流されることを許容できず、自分の意思だけを頼りにここまでかなぐり進んできた。ただただ純粋であったがために、人に、世界に毒され、苦しんできた。
そんな彼だからこそ、セRンは絶対の信頼を寄せているのだ。だからこそ、自分はこの真実をボスに話したのだ。
自分もビッグボスと同じだ。自分も、自分の意思に従う。
セRンは、できるだけ遅い所作で杖を拾うと、女神の所へとリワープで移動した。

167 :

◇◇◇
【殺し合い会場 D-4】
二手に別れる。その主軸が漆黒とレミリアである以上、二人がメンバーを選ぶのが常套手段ともいえる。
が、レミリアも漆黒も、それはしなかった。あくまで成り行きに任せ、自分達は口を挟まずにいた。
漆黒自身はそうすべきだと思ったわけではない。レミリアが何も言わずに黙っているから、自分もそれに合わせているだけだ。
彼女が静観している以上、こちらがみっともない真似をすることはできない。
(……仕方ないか)
漆黒は咲夜の騎士である。全員を守り抜くと誓いはしたが、やはり咲夜はこの中でも一番大切な存在だ。
しかし、咲夜はレミリアの従者だ。自分が何も言わなければ、咲夜はレミリアのチームに入るだろう。自分の剣の届かぬ場所に行ってしまうだろう。
仕方ないとわかってはいても、やはりそれは辛いものがあった。
「お嬢様。申し訳ありませんが、私は漆黒のチームに入ります」
そう考えていた漆黒だったからこそ、その言葉には心の底から驚いた。
「ああ、そうか。まぁ、死ぬなよ」
レミリアもそのことに対し、まったく引き止める素振りがないことにまた驚いた。
まるでそうなることを予期していたように、まったく動じている様子がなかった。
「……何をそんなに驚いてるのよ」
「あ、いや。……てっきり、レミリアと共に行くのかと思って」
咲夜はそれを聞き、盛大にため息をついた。
「そうしたいのは山々だけど、あなたを仲間に引き入れたのは私だからね。下手なことされても困るし、まぁ監視くらいしとかないと」
監視。そのままの意味でとれば、自分のことをまったく信用していないともとれる単語だ。
しかし、その意味がそれだけじゃないことくらいは、付き合いの浅い漆黒でも理解できた。
「それに、おそらくお嬢様は瀬多と組むでしょうから。それじゃあ一番面倒を見なきゃいけない奴を見れないでしょ?」
「面倒?」
どっちにしようかと迷っている千枝の襟首を咲夜はむんずと掴んだ。
「いたた! ちょっと咲夜!! 何すんのよ!!」
「あんたはこっち」
「勝手に決めんな!」
「周りをうろちょろされるのも迷惑だけど、自分の目で見てないと逆に不安になるから」
「私は子犬か!」
じたばたと暴れる千枝を無視して、咲夜は瀬多と向き合った。
「というわけで、いい? 瀬多」
「ああ。俺もこれが一番ベストな分け方だと思う」
瀬多の了承を得て、編成は決まった。
瀬多、レミリア、アドレーヌチームと、咲夜、漆黒、千枝チーム。
戦力、知力、お互いの信頼度。
それらを総合的に見ても、最適なチーム編成であることは間違いない。

168 :

「俺達の目的は仲間との早期合流。及び八意永琳が残したipadとクリスタルの回収だ。クリスタルの隠されている施設は、閑古島村、豪華客船マッハ、テトラ研究所。
咲夜達は村を経由。俺達は豪華客船を経由して、クリスタルを回収する。そうして最終的には発電所で合流する。それで問題ないな?」
全員が頷く。誰も反論する者はない。
これが、ここから脱出するベストの方法だと誰もが信じている。
「漆黒、千枝。二人とも、咲夜の言う事をちゃんと聞くように」
「……は? なによそれ」
瀬多の意図を汲みかねて、思わず咲夜が聞き返した。
「そっちのリーダーは咲夜だ」
「はあ!? 嫌よ私! 漆黒がやればいいでしょ」
「漆黒は最前線で戦うことになる。戦闘では漆黒の指示に従うのもアリだが、最終的な判断は他の人間がした方がいい」
瀬多の言葉に、漆黒も同意見だとばかりに頷いた。
指揮も漆黒頼り。戦闘も漆黒頼りとなれば、万が一漆黒が倒れた時の混乱が大きくなる。こと殺し合いにおいて、個の重要性はできるだけ分散した方がいい。そう考えての判断だった。
それにこの編成なら、咲夜が一番二人のことを理解している。リーダーという役回り上、仲間の人間性を理解しているかいないかというのは非常に重要なことなのだ。
それに、咲夜の冷静さと判断力はリーダーとなっても申し分ないもの。
このチームのリーダーに、咲夜以上の適任は他にいないのである。
「それなら千……わかったわよ。やればいいんでしょ」
「おいこら。なんで言いかけて止めた」
喧嘩に発展しそうな二人を置いて、瀬多は全員に声をかける。
「そういうわけだ。放送が終わり次第行動を開始する。各自それまでに色々と準備しておいてくれ」

169 :

◇◇◇
【??? 廊下】
ビッグボスは走った。息切れも気にせず、一人の女性を求めて走った。
「永琳!! どこだ! どこにいる!!」
誰に気付かれてもいい。とにかく下手な事をする前に彼女を見つける必要があった。
思い出すのは、ザ・ボスを撃ったあの時。死ななくてもいい人間を殺した、あの時。
自分の息子、ソリッド・スネークなら、ザ・ボスを殺さずに済む方法を見つけていた気がすると、ビッグボスは思っていた。しかし、そのスネークも死んだ。
……いや違う。世界の礎となったのだ。他の参加者も同じ。その魂は転生し、新たな世界で生き続ける。そうボスは信じている。だからこそ、こんな腐った計画に手を貸している。
かといって、自分がしていることを正当化するつもりもない。自分は極悪人だ。その認識を変えるつもりはない。
(だがそれでも。死ななくていい人間が死ぬのは、もう御免だ!)
廊下の角を曲がった時、ようやく永琳の姿を見つけた。
しかしその時には既に、彼女は一つの決意を済ませていた。そしてそれは、手に持った弓を見れば誰もがわかるものだった。
咄嗟にビッグボスは銃を構えた。
「永琳!! 馬鹿な真似は止めろ!!」
永琳は、こちらを見ようともしない。
「今お前がやろうとしていることは無意味だ!! 全て仕組まれたことだった!! だからそれを収めろ!!」
数秒の沈黙の末、永琳は口を開いた。
「世界は、いつだって不条理ね。何もかも思い通りにいかない。それでも私達は幸せだった。……それを、奴らが壊したのよ」
そこにあるのは確かな憎悪。しかし、その憎悪は永琳のものではない。イザナミによって植え付けられた偽物の憎悪。
「ああそうだ。世界はいつだって不条理だ。俺達は、いつもそれに振り回されて生きてる。それは変えることができない」
「ええそうよ。変えることができないの。なのにあなた達は、そんな当たり前のことすら壊そうとしてる。それを壊すために、私達が犠牲になってる。……もううんざりだわ。何もかも、もううんざり」
矢を手に取り、弦を引く。
狙っているのはビッグボスではない。その矢はゼロの部屋、その扉を狙い澄ましている。
円卓の神達に召集命令が下ったのだ。すぐにこの部屋からゼロが出て来る。
ボスはセイフティを外し、改めて永琳に照準をつける。
「この銃は女神の加護を受けている。たとえアンタでも、当たり所によっては死ぬかもしれない。弓から手を離せ。今ならまだ間に合う……!」
永琳は、その言葉を聞いてせせら笑った。
「間に合う? 一体何に間に合うって言うの? 既にサイは投げられた。私達の破滅というサイが。私にできるのは、それをどうにか最小にすることだけ。
情報を吟味するためなのかは知らないけれど、私にはそれをするだけの時間をもらった。だから、その時間にできることをする。それだけよ」

170 :

────ボスは二人もいらない。蛇は一人でいい────
生涯決して消えることのない言葉が、ボスの脳裏に蘇る。それを振り切るかのように、ボスは叫んだ。
「止めろ!! 俺は……お前を撃ちたくない」
「だったら撃たなければいい。そんな覚悟で撃鉄を引かないでちょうだい。……私は違う。私は死ぬ覚悟で……全てを捨てる覚悟で、この一撃を放つ」
ガチャリ。
そんな音と共に、扉が開き、ゼロの姿が現れた。
瞬間、永琳の右手がその弦から離れた。
ダアン!!
一発の銃声が鳴り響く。
少ししてから、ドサリと音をたてて永琳は倒れ込んだ。
慌ててボスは駆け寄った。ちらりとゼロを一瞥する。彼に怪我はない。
だが永琳は? 神の奇跡が授けられた銃だ。いくら不老不死の身体とはいえ、どれほどのダメージを与えるのかボスにはわからない。
「どうして……、死なせてくれないの……」
永琳は生きていた。
右肩を撃ち抜かれ、痛々しいほどに血を流してはいたものの、どうにか意識はあるようだ。
「喋るな! 今傷口を塞ぐ」
「死なせて。……私を死なせて。お願いだから……」
ボスの腕を掴みながら、永琳は涙さえ滲ませて懇願した。
「……死なせない。これ以上、世界のための犠牲者は必要ない」
啜り泣く声を無視して、治療を再開する。
だがしかし、それはすぐに中止となった。
「イザナミ……」
いつの間にか、そこにはイザナミがいた。
何も言わず、ただじっと倒れ伏している永琳を見つめていた。
文句を言ってやろうと口を開くが、結局何も言えなかった。
当然だ。セRンに言われたことを忘れたわけではない。
マルクの記憶をセRンが読んだことをイザナミは知らないのだ。それは情報戦において、ようやくイザナミより優位に立てたということである。その優位を壊すことがどういうことか、分からないボスではない。
「……何でこんな勝手なことしたんだよ」
その言葉に、カッと頭に血が昇る。
思わずイザナミに食ってかかろうとする。が、いつの間にか永琳を抱きかかえていたイザナミに、ビッグボスは何もできなかった。
「今回のことは、完全に俺の監督不行き届きだ。悪かったね、二人とも」
その白々しい態度に、ボスは歯ぎしりした。
「……ジョン。私を……助けてくれたのか?」
「俺をその名で呼ぶな!!」
思わず怒鳴る。
その時には既に、イザナミの姿はなかった。
結局自分がしたことは何だ? 彼女に対して何をしてやれた?
そんな負の想いに捉われる。自分の意思が選んだ結果は、永琳を苦しめるだけに終わった。
ビッグボスはよろめきながらも、ゼロに背を向けたままその場から去ろうと足を動かした。
「……ありがとう」
その言葉に、一瞬だけ足を止める。が、すぐにビッグボスはその場を後にした。

171 :

◇◇◇
【殺し合い会場】
「ちょっといい?」
瀬多が道具を整理していると、ふいに咲夜が呼びかけた。
「どうかしたか?」
「あなたとは、まだちゃんと話をしてなかったと思ってね」
隣に腰掛ける。
その姿は和服ではなくメイド服だ。ずっとバックに入れていたものがようやく乾いてきたらしい。
千枝にはコスプレ女と馬鹿にされていたが。
「千枝とは仲が良いのか?」
「どこをどう見たらそう思えるのか聞きたいくらいだわ」
この短時間で何度殺してやろうと思ったか、と、若干洒落にならないことを口にする。
「雰囲気、かな。千枝も、咲夜には本音でものが言えるみたいだ。彼女にしては珍しく、他人に甘えてる」
「想像しただけで寒気がするわね」
「……千枝は正義感が強い。そのせいで時々突っ走ってしまうこともある。だが、咲夜が見ていてくれるなら安心だ」
咲夜はため息をついた。
「ほんっと。何であんなお荷物を引き入れてしまったのかしら。今でも謎だわ」
心底迷惑そうな顔をする咲夜に、瀬多は思わず苦笑する。
「千枝はあれで、戦闘になったら驚くほど頼りになるぞ。勢いに乗っていたら、『どーん!』の一言で強敵を一撃の元に吹き飛ばすんだ。初めて見た時は唖然としたよ。皆で必死にダメージを蓄積していたのが嘘のような光景だった」
咲夜の脳裏に、千枝が蹴り一つで敵を星にしている様が浮かんだ。
「……それはまた。なんともシュールな光景ね」
「扱い次第では、かなり化ける逸材だと思う」
そう言って瀬多は笑う。
つられて、咲夜も微笑んだ。
「初めて見た」
「何が?」
「笑顔だよ。そうやってもっと笑ってた方が魅力的だと思う」
「あなたってスケコマシね」
間髪いれずにそう言われた。
「い、いや。俺は本当のことを言っただけで……」
「元の世界ではそうやって六股とかかけてたんだろうなぁ。ああ、まるで見えるようだわ。言い訳は断り切れなかったから。クズの常套句ね。女の敵だわ」
「待て待て! 事実として話を進めるな! 俺は一言も肯定してないぞ!!」
そんなやりとりで一頻り瀬多を弄り倒してから、咲夜は本題を切り出した。
「お嬢様をお願いね。今はまぁ安心だけど、時々カリスマブレイクする方だから」
「……カリスマブレイク?」
「肉体は精神を表すっていうでしょ? 要はそれよ。時々、肉体に精神が異様に反応しちゃうのよねぇ」
怪獣ごっこをしたがったりとか、と咲夜は呟く。
一瞬だけその様子を想像する。
……瀬多は聞かなかったことにした。
「まあでも、あなたの前じゃカッコつけたいみたいだから、そんな変な真似はしないと思うけど」
「何でも知ってるんだな。レミリアのこと」
「なんだかんだで付き合いも長いしね」
自分の知らないレミリアを、咲夜は知っている。
ふいに、それが知りたくなった。
「もう少し、レミリアの話を聞かせてもらっていいか?」
「もちろん」
薄く微笑んで、咲夜は言った。

172 :

「あの……」
遠慮がちに、千枝はレミリアに声をかけた。
「ん? ああ、瀬多の女か」
「ち、違う違う! ただの友達!!」
「ああ。噂のRってやつか」
「だから違うっつーのに!」
千枝はため息をついた。
「まったく。瀬多君が随分ご執心だったからどんな人かと思えば」
「ご執心? それは瀬多が言ってたのか?」
「これでもまあまあ付き合い長いからさ。瀬多君の様子を見ればわかるよ」
「ほ、ほー。そうかそうか。ま、まぁ下僕なら主をそう思うのは当然だが」
照れ隠しにもなってないぞ。というツッコミはさすがに無粋なような気がして止めておいた。
「……あのさ。その瀬多君のことなんだけど」
「瀬多がどうかしたか?」
「うん。瀬多君を、お願いね。ここに来て色々あったみたいだし。瀬多君って、弱音とか吐かないからさ。仲間に頼るってことを知らないわけじゃないんだけど、ちょっと心配で」
自分が言うなって感じだけどね、と言って千枝が苦笑する。
「またそれか」
「え?」
「本当に人間は背負いたがりだな。アドレーヌも瀬多も、お前も」
「…………」
「自分の目から離れる人間も背負うつもりか? 分をわきまえろ」
面倒くさそうに、レミリアはそう言った。
「……さっきの訂正。瀬多君、やっぱ見る目あるわ」
千枝は、レミリアの隣に座り込んだ。
「私は、雪子の死を背負うって決めたんだ。それを背負うからには、もう誰も死なせないって、そう決めた」
レミリアは何も言わなかった。
「これは覚悟だ。力も、何もない私だけど、自分にできることを精一杯やるための覚悟なんだ。私は瀬多君を死なせたくない。他の皆だって死なせたくない。その気持ちは、ずっと大切にしないといけないって。そう思うんだ。
たとえどんだけ荷が重くてもさ、頑張って抱えてたら、案外運べるもんかもしれないじゃん?」
死んだ人にできるのは、生きている自分を見せることだけ。立派に、その人の分まで生きている。そう胸を張って言ってみせることだけ。
そのためなら、千枝は何だって背負う覚悟だった。仲間全員の命。自分の命。それら全てを背負って、抱えて、それでも前に進む覚悟だった。
その覚悟がある限り、雪子の死は無駄じゃない。雪子と築いた絆は、雪子が死んでもずっと生き続ける。そう千枝は思っていた。
「……瀬多はまだまだ半人前だ。言われなくとも、ちゃんと見ててやるさ」
「そっか。あんがと。……なんだかんだで、あんたって優しいんだね」
「おいおい。私は悪魔だぞ。その言葉から一番遠く離れたところにいるのがこの私だ」
「わーそうなんだー。すごいすごい」
誰が聞いてもわかるくらいに棒読みだった。
「む。お前信じてないな? よし。なら私の悪魔伝を聞かせてやろうじゃないか」
そう言って、荒唐無稽ともいえるような嘘とも本当とも言えない話をレミリアは語り出した。

173 :

漆黒は、愛剣を手に持ち軽く振るう。
痛みはかなり引いたようだ。さすがに同じ技を繰り出すことは無理だが、それでも通常通りに剣を扱うことはできそうである。
試しに素振りをしていると、視界の隅にトコトコと歩いて来る者が見えた。アドレーヌだ。
「腕はもう大丈夫なんですか?」
それに気付いて素振りを止めた漆黒に、アドレーヌは話しかけた。
「そうだな。完璧とまでは言わないが、普通に剣を振るう分には支障はなさそうだ」
スキルによる回復も相まって、漆黒の治癒能力は高い。アシュナードほどではないが、それでも常人を遥かに超えるものがある。
「私に何か用か?」
「あ、はい。……えっと」
言いにくそうに、アドレーヌは言い淀む。
「私は、今まで自分と主君のためにしか剣を振るってこなかった。しかし、今は違う。私は、ここにいる仲間のために、全力で自分の力を使うつもりだ。全員を守り切る心積もりだ。無論、君も」
アドレーヌは自分の仲間だと、漆黒は強く言い切った。それを聞いて、少しだけ微笑む。
「……それじゃあ。もう一人、お願いしてもいいですか?」
アドレーヌはそう言うと、自分のバックから上海人形を取り出した。
「シャンハイ!」
元気よく、上海人形は声をあげる。
「これは?」
「上海人形です。瀬多さんがサカキさん対策に、って」
サカキと出会ったならば、極力戦いは避けるようにと言われてある。しかし、それにはこちらの有用性を証明しなくてはならない。神楽に関する考察は、瀬多にしかできないものだ。
だからこちらのグループには、それに変わる切り札が必要だと考えたのだろう。
「上海は、サカキさんの悪行を知っています。直接現場を見たこの子がいれば、何かと便利じゃないかと瀬多さんが」
まさかサカキの周りの人間が、全員霊夢のように妄信状態であるとは思えない。たとえ手駒がいるとしても、それはきっと騙されてのことだろう。
サカキは上海人形が生きている事を知らない。なら、上海人形に対する対策は何も取っていないはずなのだ。
純真無垢で、参加者ですらない人形が懸命に話しかければ、騙されている人がいても思い直してくれるかもしれない。
「しかし、いいのか? それは君と離ればなれになるということだろう?」
漆黒の言葉に、上海人形は心配そうにアドレーヌを見つめた。
「……はい。いいんです」
アドレーヌは、上海人形に向き合った。
「ごめんね。勝手に決めちゃって。でも、私も少し、一人で考えてみたいんだ。強いってどういうことなのか。幽香さんが言っていた強さって、何なのか」
上海人形がアドレーヌを自分と同じだと感じていたように、アドレーヌも上海人形に対しそう感じていた。
だからアドレーヌにとって、自分と同じである上海人形の慰めは誰よりも励ましになった。しかしだからこそ、それを手放さなければならないとアドレーヌは思った。それを手放してこそ、強さの意味がわかる。そんな気がしたのだ。
上海人形は少しだけ迷った素振りを見せたが、すぐに
「シャンハイ!!」
と威勢よく返事をした。
「次に会う時は、二人とも強くなって会おう。力はなくても、誰にも負けない強さを持った人になろう」
こくこくと強く頷く上海人形を見て、アドレーヌは微笑んだ。
「じゃあ漆黒さん。どうかこの子を、よろしくお願いします」
「心得た。この剣に賭けて、上海人形は私が守ろう」
強い決意と共に、漆黒は上海人形を受け取った。

174 :

◇◇◇
【??? 監視部屋】
「どうなりましたか?」
監視部屋へと戻ったボスに、開口一番セRンはそう聞いた。
「……お前が行動を起こす必要もなかった。あいつは……自滅した」
ボスは、事のあらましをセRンに説明した。
「……そうですか。彼女らしからぬ短絡的な行動ですが、そこまで追い詰められていたということでしょうね」
「女神は何と?」
沈んだ声は隠せない。しかしそれでも、ボスは聞いた。
「許せないと。何らかの罰を与えねばならないと仰っていました」
「だが彼女は、イザナミを出し抜く上で重要な──」
「女神はそんなことに頓着しません。会場に無断で介入した。このことにだけ重きを置く。そういう方です」
思わず、ボスは壁に拳を叩きつけた。
「もっと柔軟な発想はできないのか! あの女神は!!」
「それは無理でしょう。そもそも、誰かが自分を出し抜くなどと考える方ではありません」
「これだから神という奴は……」
そうやってボスが愚痴っていると、突然マルクが飛び込んできた。
「ボス!! 大変なのサ!! えーりんが……。えーりんが!!」
今までにないくらいに焦燥し切っている。
だが、ボスにできることは何もなかった。
「お願いなのサ。ボスの力で助けてあげて欲しいのサ! えーりんは何も悪くない。えーりんは、ただお姫様と一緒に、平和に暮らしたかっただけなのサ! お願いボス!!」
自分に懇願してきた永琳とマルクの姿が重なって見えた。
が、それを無理やり振り払う。
「……俺の権限じゃ、無理だ」
奇しくも、あの時の永琳に対して言ったものと同じ言葉を、マルクに伝えた。
「あのゼロって人にお願いしたらいいのサ!! ボスの言う事なら聞くだろうってえーりんが言ってたのサ!!」
ゼロ。円卓の神の一人であり、女神と同等の権限を持つ者。
確かに、今の永琳をどうにかできるのはゼロくらいだ。しかし
「マルク。……もう無理なんだ」
ゼロの目的は世界創世だ。殺し合いを完遂させることが目的だ。それを妨害しようとした永琳を、彼が助ける理由はない。
マルクが泣いている。セRンも、何ともない振りをしているが、本心では苦虫を噛んでいる。そしてボスも……
「この悲劇は、誰も望んじゃいないものだったはずだ」
そう。一人以外は。
イザナミ。あの飄々とした神。力を制限され、ここから移動することもままならない、格下の神。しかしだからこそ、誰よりも恐ろしく、誰よりも考えを読むのが難しい。

175 :
「……セRン。俺のことを女神には?」
「言うわけがありません。あなたは私が唯一信頼する人間ですから。先程のお礼は……そうですね。ツチノコ三本で手を打ちましょう」
ボスは苦笑し、「それは少し高過ぎる」と呟いた。
今はセRンの気遣いに、素直に感謝したい。泣きじゃくるマルクの頭を撫でてやりながら、ボスはそう思った。
「イザナミの目的は未だわからないまま。ですが私達は、どうにかして彼の先手を取らないといけません。……いえ。“彼女の”、でしたね」
セRンの言おうとしていることを分かりかねて、思わずボスはセRンを見つめた。
「私達の目的は殺し合いの完遂。ならば、参加者には殺し合ってもらえばいい。役割も何も関係なく、ただ殺し合ってもらえば」
「殺し合いに介入するってのか? だがそれは、円卓にとってはご法度だろ」
「許可をもらえばいいのです。どうせ不測の事態は起きてしまっている。それに対応するのは至極当然の行動です。イザナミが担わせた役割も全て関係なく、参加者は殺し合う。それで私達の願いは叶います」
早速、セRンは準備をし始めた。それにボスは反論するつもりはない。する気にもなれない。
ボスの頭にあるのは、今自分達がしていることは本当に正しいことなのか、ということだけだった。
(ザ・ボス。あんたの願う世界っていうのは……こんなものだったのか?)
それは、誰も答えてはくれない生涯の命題。何かを犠牲にして何かを得る。それが間違っているのかいないのか。それは誰にもわからないことなのだ。

176 :

◇◇◇
【殺し合い会場】
「アドレーヌ。そこにいたのか」
瀬多の声に、幽香とカービィの墓の前で座っていたアドレーヌはこちらを振り向いた。
「どうかしました?」
「いや。支給品の分配が終わったから、その報告をと思って。とりあえず、これはアドレーヌが持っていてくれ」
そう言って、瀬多はモンスターボールをアドレーヌに手渡した。ピカチュウの入っている、貴重な戦力だ。
「……いいんですか? また私、とんでもないことをしちゃうかも」
「アドレーヌ!」
思わず瀬多は叫んだ。
「あれは事故だ。君は精一杯やった。結果だけを見ちゃ駄目だ」
アドレーヌは、小さく頷いた。
ボールを軽く投げる。
音をたてて、中からピカチュウが現れた。
「ごめんね。私のせいで、お友達を……」
どこか沈痛な面持ちなピカチュウ。しかし、ぴょんとアドレーヌの肩に飛び乗り、頬を擦り寄せた。
「ピカ!!」
何と言っているのかはわからない。だが、とても力強い声だった。
「きっと、アドレーヌを慰めたいんじゃないか?」
アドレーヌはピカチュウを見つめた。
微笑んでみせるピカチュウのその姿に、自分にはない強さが見えた。
「人の命を背負うっていうのは、自分を責めることじゃない。これは重みじゃないんだ」
「重みじゃ……ない?」
「ああ。人は弱いから、何かを背負わなければ生きていけない。そうアドレーヌは言ったけど、俺は少し違うと思う。本当に強い奴は、何かを背負っている奴なんだ」
瀬多は、ぽんとアドレーヌの頭に手を乗せた。
「ここから先の答えは、自分で見つけないとな」
「自分で……」
「そうだ。人によって信じるものが違うように、強さの意味も人によって違う。俺に教えてあげられるのは、俺の思う強さだ。アドレーヌの思うものじゃない。それは、自分で見つけないと意味がない」
「そう……ですね。うん。私が見つけないといけないですよね」
何かを決心したように、アドレーヌは強く頷いた。
「あの、瀬多さん。メダリオンなんですけど、私が持っていてもいいですか? たぶん、あれに触れても大丈夫なのは私だけでしょうし」
強さの意味。それはまだアドレーヌにはわからない。
だが、それでも今できることをしよう。きっとそれが、強さを知る道なのだと信じて。
「ああ。俺も無論そのつもりだ。誰にも触れられないように保管しておいてくれ」
「はい。じゃああの、渡してくれませんか?」
「? アドレーヌが持っているんじゃないのか?」
「私が持ってたんですけど、なくなってるみたいでしたので。瀬多さんが持ちだしたのかなって思ってたんですけど」
瀬多は、どうにも嫌な予感がした。
「……よく確認したか? 本当に入っていなかった?」
「は、はい」
ただならぬ気配に、アドレーヌも若干緊張しながら答えた。

177 :

瀬多は全員を呼び出し、メダリオンの所在を知る者がいないか尋ねたが、全員が首を振った。
「おいどういうことだ? 誰かが隠してるとかじゃないだろうな。もうああいうのは御免だぞ」
毒物事件のことを言っているのだろう。
瀬多は、アドレーヌを見つめて聞いた。
「俺達が眠っている間、取り乱したりはしなかったか? 自分を必要以上に責めたりとか、そういうことは?」
「た、たぶん……なかったと思いますけど」
だとしたら、この事態は何だ? 何故メダリオンが見つからない。
あの騒動の中なら誰でもメダリオンを回収することはできただろうが、そんなことを誰が……。
「……おいおい。まさか、そんなことは……」
「何か心当たりがあるの?」
永琳は言っていた。イザナミはメダリオンのことを容認していたと。それはつまり、メダリオンが脱出に関する重要アイテムだということを知っていたことになる。
イザナミは毒物事件を引き起こし、メダリオンによって幽香を暴走させた。永琳の言うところの試練として。
だが、それがイザナミにとって、未だ試練となり得ていなかったとしたら。
「……くそ。それしか考えられないか」
「ちょっと瀬多君。わかるように説明してよ」
「メダリオンを持ち去られたんだ。おそらく、イザナミの息のかかった者に」
「……本当か?」
にわかには信じられない話だ。殺し合いの参加者の中に、まさか主催者と通じている人間いるなんて。
「それしか考えられない。……まずいことになった。会場内にイザナミと通じている奴がいたとすると、俺と永琳の会話を聞かれていたということになる。ipadの存在がばれた」
「ちょ、ちょっと! それって相当やばいんじゃないの!?」
「ああ。非常に厄介だ。……皆。悪いが放送を待っている時間はなくなった。早速出発しよう。今は一分でも時間が惜しい。放送はチームに別れて、移動しながら聞く。それでいいか?」
全員が素早く頷き、出発する準備を始めた。
最終チェックを済ませ、お互いのチーム同士で固まる。
時計を見ると、あと五分程で放送が始まるようだった。だが、放送で得られる情報は全員で聞かなければならないようなものではない。
この六人が再び揃うのは当分先の話になる。もしかしたら、六人が揃うのはこれが最後かもしれない。
それでも、全員が笑顔だった。
皆で生きて帰る。そんな強い決意が、全員の心にはあった。
「千枝。あまり飛ばし過ぎるなよ」
「わかってる。ちゃんと仲間にも頼るって。……瀬多君も、無茶はしないでね」
「ああ」
パン、と互いに手を合わせる。
言外に、絶対に死なないようにと言い含ませて。

178 :
「お嬢様。あまり我儘ばかり言って瀬多を困らせてはいけませんよ。私と違ってヤワですから、無理をさせて倒れられたら大変です」
「わかってるわかってる。適度に、な」
「ええ。適度に。倒れるぎりぎりまでこき使うのが主の務めです。下僕を殺さず、どこまで搾り尽くせるかが、主君の器を決めるのですよ」
「心得ておくよ」
そう言って、レミリアと咲夜は拳を突き合わせた。
「……なんだか物騒な会話が聞こえるんだが」
「あ、あはは。いくら咲夜でも冗談だよ冗談。……たぶん」
冗談のように聞こえないのが彼女達の怖いところだ。
「何が冗談なんだ? まぁ、私もそこまで無理を言うつもりはない。こいつもいるしな」
そう言って、ぽんとアドレーヌの頭に手を置いた。
「え? あ、あの……どういうことでしょう」
「ん? お前も一緒に来るんだろう? だったら、お前も私の部下だ。瀬多同様にちゃんと面倒みてやるよ」
それは、レミリアが初めてアドレーヌを認める言葉だった。
アドレーヌはしばらくぽかんとしていたが、やがて満面の笑みで頷いた。
「はい。ありがとうございます!」
「うし。じゃあ最後、全員で締めるよ! えーっと……じゃあ漆黒さん! テンション上がるやつお願いね」
「わ、私か? あまりこういったことをする機会がなかったから、どうすればいいのか……」
「こういうのはノリでいいの。ほら、漆黒さんなりのでいいから」
「わ、わかった。では僭越ながら」
ごほんと空咳をすると、漆黒は仰々しく剣を掲げた。
「我らの心を一本の剣とし──」
「長そうだから止めとこうか。じゃあレミリア!」
漆黒の騎士は若干項垂れているようだった。ショックだったのだろうか。
「貴様ら全員私に忠誠を誓い、その血を捧げることを──」
「なんか魂取られそうだから却下。じゃあ咲夜!」
「みんなベストを尽くして、神とかいうふざけた輩を潰しましょう。……死ななかったら」
「いいんだけどさー。最後の一文が不吉過ぎる」
「あの、千枝さんが締めればいいのでは?」
このままでは時間が掛かりそうだと感じ、見かねたアドレーヌが言った。
「え、私!? だってー、なんかこういうのって恥ずかしくない?」
「じゃあやらなければいいんじゃないか?」
「それはダメ! こういうノリは大事なんだから。……しゃあないなー。じゃあみんないくよ!」
恥ずかしいと言っておきながら、妙にやる気満々な様子で、千枝は腕を上げた。
「せーの! うおーやってやるぜーー!!」
「……え? 今の合わせるところ?」
「いや。それはさすがに無理だろ」
「だーもう! やっぱグダグダじゃんか!」
「というわけで、全員また無事に合流しよう。世界創世だか何だか知らないが、俺達が奴らの為に死んでやる義理なんてない。人間の力を神とやらに教えてやろう」
「「「「おー!!」」」」
綺麗に全員がハモッた。
「おい! 普通に締めんな! 私の苦労は一体なんだったんだ!!」
千枝の文句を軽く流し、瀬多チームと咲夜チームは、それぞれの目的地へ向けて出発した。
再び、全員が出会えることを祈って。

179 :

【D-4 一日目 昼】
【瀬多チーム】
共通方針:豪華客船にあるクリスタルを回収し、テトラ発電所で咲夜チームと合流する。
【瀬多総司@ペルソナ4】
[状態]疲労(中) あばら骨折 SP消費(小)、全身打撲
[装備] エクスカリバー@ファイナルファンタジー4
[道具]基本支給品一式 攻略本 銃の弾(残り15発)、不明支給品0~1 、携帯電話、携帯型ゲーム機、マスターボール、レッドの帽子、M1911A1(6/7)@メタルギアソリッド
[思考]基本方針:レミリアを手伝いながら、仲間と合流し殺し合いを脱出する
1. イゴールを見つけ出し真実を問いただす。
2. 死んでいった者のためにも、誇りをもって生きる
3. イザナミは絶対に許さない
※イゴールと『血の契約』を交わしました。瀬多は「イゴールを探索する」という目的を最優先しなければなりません。なお、瀬多がRば契約を知る者に契約権が譲渡されます。誰になるかはランダムです
【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]疲労(中) 魔力(中) 額に酷い裂傷 全身打撲(全て回復中)
[装備]なし
[道具]基本支給品一式
[思考]基本方針:主催者を倒し、どちらが支配者かを思い知らせる
1. 手下を作って脱出する。邪魔立てする奴はR
2. これ以上部下は殺させない
3, ゴルベーザを嫌悪
※時間さえかければ傷は治癒しますが、休息を取らなければ疲労感は回復しません
※弾幕を撃つのに溜めが必要。威力も制限されています
【アドレーヌ@星のカービィ】
[状態]疲労(小)、深い悲しみと強い罪悪感、 腹に打撲
[装備]ピカチュウのモンスターボール@ポケモンシリーズ
[道具]基本支給品一式、アドレーヌの絵描き道具一式
[思考]基本方針:ゲームには乗らない。できれば人も殺したくない
1. 自分にとっての強さを知る
2. もう人が死ぬのは見たくない
【ピカチュウ】
[状態]疲労(中)、全身打撲、PP消費(中)
[思考]
1, 自分にできることをする
2, レッドに会いたい
※レッドのピカチュウです。覚えてる技は「かみなり」「十万ボルト」「ボルテッカー」とあと一つです
※レッドと同じ時期につれてこられてます

180 :

【咲夜チーム 閑古島村経由ルート】
共通方針:閑古島村にあるクリスタルを回収し、テトラ発電所で瀬多チームと合流する
【十六夜咲夜@東方project】
[状態]疲労(中)、胸骨にヒビ、鼻の骨の陥没(治療済み、衝撃を与えるとまた陥没する恐れあり)、腹部に痣、顔に痣、全身打撲
[装備]虹の剣@星のカービィ
[道具]支給品一式(食糧はなし)、凹んだ防弾チョッキ、釘打ち機、銀の大剣@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡、不明支給品1~2
[思考・状況]基本方針;ピエロを倒して異変解決。油断はしない。幻想郷の常識は捨てる。
1, リーダー、嫌だなぁ……
3. 漆黒の騎士に共感。自分の幸せのために生きて欲しい
【漆黒の騎士@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
[状態]:疲労(中)、両腕に腫れ、額に大きな裂傷、頬骨あばら骨折、全身打撲、全身裂傷(全てスキルで治癒中)
[装備]:神剣エタルド 神剣ラグネル
[道具]:基本支給品一式 、上海人形
[思考]
基本方針:咲夜の騎士として彼女を守りながら自分自身を認めた生き方をする
1:仲間のために自分の力の全てを使う。
2:アシュナードは打ち倒す
※参戦時期はナドゥス城の戦い後です。
【里中千枝@ペルソナ4】
[状態]:疲労(中)、SP消費(小)、腹部に痣、全身打撲
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、万能薬×2@ファイナルファンタジー4、キラーボウ(13/15)
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1, 雪子のような人を出さないために戦う
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
【上海人形】
[状態]背中に大きな裂傷 (かなり荒い治療済み。汚い布と汚い糸でこれでもかと汚く縫われている。)
[思考]
1:強くなって、またアドレーヌと合流する
2:霊夢を助ける
※サカキと霊夢の会話は全て聞いていました。
※羽が無い為、空を飛べません。

181 :

◇◇◇
【??? 牢獄】
ゴールドはつい十分程前、突然牢屋から出された。
以前に牢屋へとやって来た男と、マルクの二人によってだ。
どうしたのかと聞いても、身体検査だとしか答えなかった。マルクに自分の推理のことを話そうかとも考えたが、眼帯をした男が敵か味方か判断がつかなかったので止めておいた。
途中、いやずっと、何者かに殺意さえ感じる視線で睨まれているような気がしたが、結局それが誰だったのかは分からなかった。
しばらく歩かされ、髪の長い男の前で座らされると、杖を掲げられ、何かを入念に調べられた。奥の方でじっとこちらを見つめる女性がいたが、その底冷えする視線が恐ろしく、ずっと目を反らしていた。
結局、彼らが探しているようなものは何も見つからなかったようで、すぐに牢屋へと帰されることとなった。ゴールドは、自分よりも先に連れられて行った二人が気になり、彼女達の安否を聞いたが、誰もその質問に答える者はいなかった。
牢屋へと戻り、今回のことが何かを調べるためだということまでは考え至ったのだが、その先はどうにもわからなかった。一体何を調べていたのだろうか。まさか自分の身体に爆弾でも仕込まれていたとでも考えているのだろうか。
ゴールドは、そんなことを思いながらどこか不安な気持ちを抑えられないまま、二人を待っていた。
しばらくすると、部屋へと入って来る者がいた。ローザか輝夜だろうと思って覗いたが、そこに二人の姿はなかった。
代わりに、銀の髪をした美しい女性がいた。彼女は肩を怪我しているらしく、眼帯の男に支えられてこの牢屋へと入れられた。
「少年」
突然その男に呼ばれ、思わず身構える。
「彼女が苦しんでいるようだったら、すぐに呼んでくれ。少し叫べば気付く所にいる」
それだけ言って、男は出て行った。
……もしかしたら、彼もマルク同様、良い人なのかもしれない。
「……う…く……」
苦悶の表情を浮かべる彼女を慌ててゴールドは介抱した。
巻かれた包帯からは痛々しく血が滲んでいる。
とりあえず横にして、毛布をかけてやると、幾分かマシになったのか、呻き声は聞こえなくなった。
「大丈夫? 僕はゴールド。何か用があればいつでも言って」
優しく声をかけるも、彼女は口を開こうともしない。喋れない程に衰弱しているわけではなさそうだが。
しかし、こういった場合はそっとしておくに限ると思い、それ以上は何も言わなかった。
「シルバー……」
突然、彼女の口から自分のライバルの名前が出た。思わず彼女の方を見つめる。
しかし彼女は、こちらを見ようともしなかった。
「シルバーが、どうかしたの? いや、それ以前に、どうして君はシルバーを知って────」
「死んだわ」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。

182 :
「ここの同居人、ローザっていう女性がいるのよね。彼女が愛するセシルと友人であるカイン。この二人は殺し合いに乗っている。そして、リディアという子はもう死んだ。カインに殺された」
「ちょ、ちょっと待って!! それ、どういうこと!?」
冗談とは思えない。嘘とも思えない。
こんなところで、冗談も嘘も言うメリットなんてない。
「他にもあるわよ。ジムリーダーであるタケシ、四天王であるキョウが死んだ。そして、レッドが殺し合いに乗った。タケシの死は、ほとんどレッドによるものよ」
信じ難い事実がどんどん顕わになっていく。確かに自分は、情報が欲しかった。ここから抜け出すために、どうにかして外の情報が欲しかった。それが思いがけず得られたわけだが、その事実がこれほどまでに重いものだとは思ってもみなかった。
(シルバーが死んだ? ぶっきらぼうで我が強くて、でもポケモンに対する愛情は人一倍強いあいつが? それにレッド。シロガネ山で切磋琢磨したあの人が、殺し合いに乗っているだって? あれほど心躍ったポケモンバトルはなかった。そう感じさせてくれたあの人が?)
ほとんど混乱に近い状態のゴールドに、永琳はしがみついた。
「姫が、いたでしょ。蓬莱山輝夜という。私が知る情報ならいくらでもあげる。だから、姫に会わせて」
「ま、待って。僕だって知らないんだ」
ようやく、それだけ返事することができた。だが、永琳はその言葉が聞こえていないようだった。
ゴールドの身体を揺すり、懇願を繰り返していた。
「お願い。お願いだから、姫と話を────」
突然、扉が開いた。
そこから入って来たのは輝夜でもローザでもない。イザナミだった。
「暗い顔してるね〜」
いつもの軽口もどことなく重い。
永琳はゴールドから離れ、壁にもたれかかった。牢屋の外からイザナミが声をかけても、永琳は俯いた顔を上げることはなかった。
「……理由、聞いてもいいかな?」
「あなたに言う必要はないわ」
ゴールドそっちのけで話し始める二人。しかし、彼らに割って入るほどの勇気をゴールドは持っていなかった。
それだけ、二人の間に流れる空気は重く暗いものだった。
「冷たいねぇ。……ま、いいけどさ」
イザナミは小さくため息をついた。
「君がどう思おうと勝手だけど、俺は君と敵対するつもりはなかった。できるだけ穏便に済ませたいと思ってた。だから内密に処理してたんだ。けど君は……」
「本当に、過小評価だったのかしら……」
ぼそりと呟く永琳。話の筋を完全に無視した言葉に、ゴールドは首を傾げた。
イザナミはじっと永琳を見つめるが、それ以上彼女の口から言葉が漏れることはなかった。
「……そうだ。おみやげがあるんだった。うん。とっておきのものだよ。少なくとも、そうして放心することはなくなると思うな」
そう言って、袋をがさごそと漁る。
そして、イザナミはそのおみやげを牢屋の前に置いた。
それを視認し、ゴールドは我が目を疑った。途端、胃の中にあったものが逆流する。慌てて口を押さえ、何とかそれを止めた。
「君がずぅっと会いたかった人との再会だよ。野暮な真似はしない。俺はさっさと消えるよ」
そう言うと、イザナミはすぐにその部屋を去って行った。まるで、逃げるように。
永琳はゆっくりと顔を上げた。
そこには美しい黒髪を靡かせた、蓬莱山輝夜の首があった。
絶叫が牢屋の中を木霊した。

183 :
支援

184 :

◇◇◇
【??? 円卓】
「……随分と勝手なことをしてくれたもんだね」
円卓会議。その椅子にどかりと座ってイザナミが言った。
「それはおぬしの方だろう。あれだけのことをされておいて、何の処罰もしないなどと」
「その処罰がお姫様の処刑ってわけ? まったくふざけた話だよ」
永琳の処罰を決定したのはイザナミではない。だからこそ彼は怒りを感じているのだ。
「彼女の手は全て読んでいた。殺し合いの影響が少ないであろう時期に介入して破棄するつもりだった」
「ぬるい」
アスタルテは、イザナミの弁解をその一言で一蹴した。
「殺し合いに関しては俺に決定権があった。なのにあんたはそれを無視した。これはあんたの横暴だ」
「ならば他の者にも聞いてみるがよい。これは我々の総意であったはずだ」
少し間を置いて、ミュウツーの戸惑いがちな声が聞こえてきた。
────イザナミ。あなたの怒りも分からないではない。しかし、これは致し方ないことだ────
この円卓にいる者達にとって、永琳はイザナミの部下。その部下を勝手な判断で貶められたとなれば、イザナミの怒りもわかる。
イザナミが永琳の離反を伝える前に、アスタルテはセRンからその情報を得ていた。八意永琳の重要性を説かれていたアスタルテは、それ故に彼女の大切な存在であるという蓬莱山輝夜を手にかけた。
それはほとんど彼女の独断と言ってもよかったが、確かにこれは円卓の総意ではあったのだ。
ゼロだけは何も言わず、ただ黙って事の成り行きを見守っていた。
イザナミはあからさまに舌打ちする。
「女神ちゃん。一つ忠告しておくよ。もしもこれ以上勝手な真似をするようなら、俺は全力であんたを潰すぜ。できない、なんてさすがに思わないよな」
「……当然だ。力の拮抗が円卓を成り立たせている。ここにいる誰もが、私を殺し得る。そこにいる人間以外は」
そう。ゼロだけは厳密に言えば神ではない。神の力を授かってはいない。
それはゼロ自身が固辞したことだ。
「……話はそれだけ」
言葉少なに、イザナミは円卓から席を立った。

部屋から出て、しばらく歩いたところで、ゼロがイザナミを呼び掛けた。
「これを返しておく」
そう言ってイザナミに手渡したのは防弾チョッキだった。神の加護を受けた防弾チョッキ。
イザナミは、永琳に離反の兆しがあるとあらかじめゼロに伝えていた。そして、その対策にこのチョッキを与えていたのだ。絶対に自分が説得する。これを着れば最悪の事態は免れる。だから少しだけ時間が欲しいと、イザナミはそう言ったのだ。
「……予想。外れて欲しかったよ」
防弾チョッキを受け取り、イザナミは苦笑する。
「仕方がない。過去というのは、どうしても付いて回るものだ」
八意永琳は月の民である。しかし、お姫様である蓬莱山輝夜を連れ、穢れ多い地上へと逃走した。自分が作ってしまった蓬莱の薬のために。
月の都。それを存続させるための犠牲として、永琳は生涯命を狙われるはめになった。世界を作る礎に、無理やり組み込まれた。
追手から逃げる毎日。その中で、彼女が世界を憎んだとしても何ら不思議ではない。どうして自分達だけがこんな目に遭っているのか。そう思い、“自分一人だけ世界を作り、他の全てを抹消しようと考える”のも、分からないではない。
イザナミから防弾チョッキを渡された時、永琳の過去を聞かされたゼロが抱いた感想がそれだった。
「今回のことは心から同情する。もし何かできることが──」
「おいおいおっさん。いきなりどうしたのさ。あれだけ俺を嫌ってたってのに」
ゼロは、イザナミを怪しむ者の筆頭といってもいい。監視組というイザナミに対する目を設けたのも彼だし、イザナミに対する力の制限や外に出られないという枷も、ゼロが引き出した妥協案だ。
「……仲間がいがみ合うのは、辛いものだ」
ゼロはそれだけ言った。
誰よりもビッグボスを尊敬し、同士として、友として敬ってきたゼロ。
その禍根がどれほど深くとも、その想いに変わりはない。だからこそ、ゼロはそう言った。
「……ま、とりあえず礼は言っておくよ」
イザナミはそれだけ言うと、ひらひらと手を振ってその場をあとにした。

185 :


186 :
支援

187 :
しえん

188 :

◇◇◇
【??? イザナミの部屋】
「いやー愉快愉快。みんな面白いくらいに嵌まってくれるからさぁ。こっちも演技のしがいがあるってもんだよね」
自分の部屋。ソファーに座り、足を組みながイザナミは愉快そうに笑った。
「あんたも、いつもこういう気分だったのかな?」
『どうでしょうな』
電話の相手は、イザナミの恋人。イザナミにとって一番の切り札と言っても過言ではない存在だ。
「八意永琳はこれで潰れた。わざわざ泥を被って、ね」
イザナミは参加者にも最低限の希望、こちらに這い上がって来る可能性を僅かながらでも作る必要があった。だからこそ、八意永琳の行動を許容していたのだ。
そして、頃合いを見てマルクに掛けられた術をほんの少し解いてやる。それだけで、事態は面白いように自分の思う方向へと進んだ。
『今回の件で、あなたはより一層自分の身を危険に曝したことになりますね』
「まあゼロとは言わないよ。けど、最小限に抑えた。永琳のことはセRンとビッグボスしか知らない。何の支障もないよ」
『しかし、セRンは女神に報告を……』
「してないよ。セRンが伝えたのは、“八意永琳が反旗を翻した”という事実だけ。永琳と彼らにあった情報の齟齬も、俺が何かとんでもない企みを持ってるかもしれないことも、誰にも言ってない」
『ほぉ。しかし、よくわかりませんな。セRンの立場からすれば、主に全てを伝えるのは当然だと思いますが?』
「それが当然じゃないんだよねぇ。なにせ、女神ちゃんは頭がカチカチだから」
そう言って、イザナミはクックと笑う。
「たとえばさ。俺が何か他のことを企んでいると誰かが女神ちゃんに吹き込むとするじゃん。そうすれば、彼女が取る行動は一つだけ」
『あなたの抹殺、ですか』
「その通り。しかしセRン側、いや女神ちゃん側からすれば、それは最終手段にしたいんだよねぇ。今回の殺し合いは俺が主体で動いてる。
俺をRってことは、この殺し合いを中止するってことに他ならない。なんだかんだで、あいつらは俺がいないとここまで計画を動かすことはできなかった。それは計画が佳境に入った今でもそうさ」
『自分達の願いを叶えるには、あなたにはまだまだ生きていてもらわないといけない』
「しかも、もしかしたら女神ちゃんが返り討ちにあう可能性もある。セRンからすれば、そんな危険は冒せないよねぇ。彼女の死は、セRンにとっての希望そのものの死を意味するんだから」
セRンは人間を全滅させ、本来の美しい世界を作ろうとしている。そのためには、絶対に女神に死んでもらっては困るのだ。
世界創世が成功したとして、その指針となる者はやはり女神以外にいないと考えているし、世界創世が失敗したとしても、女神さえいればラグズもベオクも滅ぼすことができる。
セRンの願いには、必ず女神の存在が必要になってくる。
セRンの願い。それはある意味、女神の命やその忠誠心よりも勝るセRンの意思だった。
『ビッグボスはどうなのですか? 彼ならば……』
「一体誰に言うよ。俺の息がかかってない信用できる奴なんて、あいつの周りにいるかい?」
ゼロ、という考えはビッグボスにはできない。そんな簡単に信用できるほど、彼らの溝は浅くない。一度裏切られた経験は、必ずビッグボスに付いて回る。
セRン側からしても、他の神に出し抜かれる可能性を考えれば知らせない方がいいと考える。
ミュウツーは論外だ。今の段階で、イザナミの間者である可能性が一番高いミュウツーに、二人がそんな重要な秘密を知らせるわけがない。
「彼らは、今回の情報を得たことで俺に一歩先んじたと考える。まさか俺が、敢えてその情報を渡したなんて考えない。その慢心が毒になる。
人はさ。希望に逃げたがるんだ。自分の行動が全て読まれているなんて、そんなこと誰も考えたくない。それが、何とか相手を出し抜こうとして取った一手なら尚更ね。でも逆に言えば、だからこそ考えなくちゃいけないんだ」
本当に相手を騙そうと思ったら、その人物が予期せぬところに偽りの真実を蒔いてやればいい。そんな初歩的なことを、セRンは疎かにした。
「彼らは、今回の件が踊らされた結果であるとは絶対に考えない。えーりんはまったく逆の発想で俺に縛られていたわけだけど、俺からすれば彼女の方が、彼らよりも遥かに優れた存在だよ」

189 :


190 :
支援

191 :
現段階において、永琳がただの捨て駒であったことがばれたとしても、イザナミには何のデメリットもない。
そして結局、ばれたところでセRンもビッグボスも動けない。
イザナミをどうにかしようと考えるなら、まず円卓の神達を招集し、その事実を伝えなければならない。発言権が拮抗している彼らを集め、協議しなければならない。
しかし二人は円卓に座る権利を持っていない。神達を招集する資格もない。だから結局、二人は何もすることができない。
事態は何も変わっていないのだ。
その単純な事実に、セRンは気付かないだろう。イザナミを出し抜いたという気持ちは抜け切れない。先んじたという気持ち、優勢を維持したいという気持ちが、結局は行動を遅らせ、気付いた時には後手に回っているのだ。
しかし、永琳は慢心することはなかった。結果的に全てイザナミの予想通りに動いてくれたわけだが、彼女にはそれを覆す基盤があった。
だからこそ、イザナミは彼女を、唯一の敵だと評したのだ。
『しかし結局、誰もかれもあなたに絡め取られている。というわけですか』
「ここまでお膳立てを整えるの、なかなか大変だったんだぜ? 目障りなえーりんを黙らせる必要はあったけど、ゼムスの件を片付けてからじゃないとセRン達を思考誘導させられなかったからさ」
『蓬莱山輝夜が人質として機能しており、それを隠すためにゼムスは殺された。しかしそう考えさせること自体があなたの目的だった。いわば、ゼムスの離反とその抹殺。それこそがブラフだった』
「タイミングが良かったんだよねぇ。あまりにもゼムスの抹殺が早過ぎた。だからこそ、奴の存在は俺にとって何らかの価値があったはずだとセRンは考える。
その疑問にうまくはまる答えを用意してやれば、それを真実だと信じてしまう。だからこそ、ゼムスは人質を連れて来るための捨て駒、運搬係だったとセRンは確信したわけだ。
けど、実際は違うんだよな〜。俺の目的は、ゼムスの魂を早い段階で確保することだった」
これが今回動いたメリットの一つ。既に邪魔者となった永琳を排除し、ゼムスの魂を確保する。誰にもその真意を気付かれず、イザナミはそれをやってのけた。
『ゼムスが蓬莱山輝夜誘拐の口封じに殺されたと考えるセRン達は、その事実に重きを置き、自然と彼女以外の人質をブラフだと考える。これもあなたのシナリオ通り、というわけですね』
「ここに至って、俺が無駄に人質を持って来るわけないってのに。少し考えれば分かりそうなことだけどね」
『そう考えさせないために、敢えて情報をくれてやったのでしょう? それも、ゼムスの離反直後という最高のタイミングで』
「まあね」
セRンはマルクの記憶を読んだ。それが自分の意思によるものと信じ込んでいるなら、全てが噛み合い符号する情報とその仮説に、疑問を抱く余地などない。
『しかし、ゼムスの魂を一体どう使うつもりなのですか? 少し早過ぎる気がしますが』
「うん。こいつにはもう一仕事してもらわないといけないからさ」
そう言って、ちらりと横を見る。そこには、口を布で覆われ、手を縛られ、ガタガタと震えるローザの姿があった。
「ゼムスの真価は、肉体から解放されて初めて発揮される。彼には監視役として動いてもらうつもりだよ」
『監視役?』
「そ。監視役。ビッグボスが誰かと協力しようと考えるなら、それはやっぱりえーりん以外にいないだろうからね。
囚われの身で、発言権もない彼女を味方につけたところでどうってことないけど、保険は必要だろ? そのついでに、彼なりの試練ってやつを与えてみようかと思ってる」
『神を選抜する?』
「その通り。紛い物の神じゃない。本物の、創世神を選抜する試練をさ」
そう言って、イザナミはせせら笑う。
誰も事実に気付かない。そのことを嘲るように。
『しかし、試練とは一体どんなものを? ミュウツーはゴールドという少年。アスタルテは負の女神ユンヌ。ゼロはビッグボス。監視役をさせることで、ゼムスにどんな試練を与えるつもりなのですか?』
「人とのふれあいさ。簡単に言うならね。これ以上は秘密。まぁ、俺の想像通りにいくとは限らないし、不確定要素が多いのは他の奴らも同じだからさ」
そう。不確定要素は多い。
ふざけた態度を取ってはいても、イザナミは一切油断はしていない。こうして電話をしている間も。

192 :
『この世に絶対という言葉はない。しかしあなたは、よりそれに近い形に今の状況を持っていった。それは見事に成功している』
「いつ崩れるかはわからない。最後までもってくれるといいんだけどねぇ。俺達の悲願達成まで」
『我々の最終目的ですか。神の魂をもって世界を作る。そのための分霊ですからね』
ゼムスとミュウツーは、既に神と同等の存在となっている。彼らの外来魂に宿した神霊は、彼らの魂を神のレベルにまで引き上げることに成功していた。
「みぃんな自分の都合の良いように真実を置き換える。だからこそ、自分達が“生贄”のために呼ばれたなんて考えない。
まぁ当然だよね。何もかも制限された神が、まさか後ろで糸引いてるなんてまず考えない。力も、移動手段も、彼らを呼んだ時点でもはや俺には必要ないっていう簡単な事実に誰も気づかなかった」
『しかし、ゼロだけが問題だった』
ゼロは、イザナミの真意にこそ気付かなかったものの、イザナミを決して信用しようとはしなかった。ゼロがアスタルテにいらない事を吹き込まなければ、もっと楽に事態は動いていただろう。
「だが、それももう終わりだ。今回の件で、ゼロは俺の見方を変える」
『確信がおありで?』
「人間にはさ。俺達神からすれば、それはそれは理解できない同情と共感っていう感情があるからね」
今のゼロが持つ情報からすれば、八意永琳の離反は完全にイザナミを裏切る行為だ。仲間であるイザナミを。
ビッグボスと仲違いし、彼が離れて行ってしまった時、ゼロは極度の人間不信に陥った。それだけビッグボスの存在が大きかった。ゼロにとって彼は尊敬できる同士だったのだ。
イザナミと永琳。それに彼らの関係を匂わせるだけのカバーストーリーを与えてやれば、ゼロは理屈よりも感情を優先する。
最初は疑心もあったかもしれない。防弾チョッキを渡され、そんな話を聞かされ、作為的だと感じたかもしれない。
だが裏切られて尚永琳を庇うイザナミを見て。女神アスタルテによって勝手に輝夜を殺され、それを永琳に見せつけなければならなかったイザナミを見て。
彼がどのように考えを改めていったか。イザナミは想像に難くなかった。
「で? セRン達は、えーりんが参加者に接触したことは知ってるのかな?」
『いいえ。その時間はビッグボスと今後の相談をしていたはずです。それもあなたの予想通りなのでしょう?』
「まあね。じゃあそろそろ教えてもらおうか。えーりんの仕掛けた切り札を。ゲーム機、マスターボール。あともう一つは何があった?」
永琳が参加者に支給したという切り札を彼女自身に喋らせる。それは、以前に与えた永琳のミスリードを利用したもの。
彼女は、イザナミにとって重要な役割を瀬多総司が担っていると勘違いしていた。だから自分がどうにかなる前に、絶対に瀬多とだけは連絡を取らなければならないと考える。
そんな彼女が、ここで参加者への接触を試みないわけがない。
それも、今回動いたことに対する重要なメリットの一つだ。
『ええ。瀬多との会話の最中に洩らしていましたよ。どうやら博麗霊夢の持つIpadがそれのようです』
「他には?」
「それだけのようでした」
「……本当にそれだけ?」
「何か心当たりがあるので?」
イザナミは逡巡した。しかしすぐに思考を切り替える。
この男は瀬多の声しか聞いていない。全ての情報を把握できるとは限らない。
だからこそ、永琳の反応から怪しいと感じたクリスタルを調べさせた。万が一にも洩れのないように。

193 :


194 :
「心当たりなんてあるわけないじゃ〜ん。なんのためにお前がいるんだよ」
この会話は平行線。それを察してなのかは知らないが、男はすぐに話題を変えた。
『つくづく、あなたには驚かされますね。これほど用意周到な計画を、私は今まで見たことがない。心の隙を最大限に利用し、真実を覆い隠している。全てのピースがうまく噛み合い、膠着状態を作っている』
「そりゃどうも。仕事がなけりゃ酒でも奢ってやるところだけど、そんな機会はたぶん来ないだろうね」
『しかし、ピースが多ければ多いほど、ちょっとした綻びから全てが瓦解する。八意永琳を殺さなかったのは、あなたらしからぬミスですね。彼女がもしも立ち直ることがあれば、我々にとってかなりの障害になります』
「そりゃそうだ。俺にとっての敵は、今のところ彼女だけだからね」
そう言って、イザナミは笑う。
『……私は時々、あなたが何を考えているのか分からなくなります』
「えーりんはさ。ずっと分を弁えてたんだ」
『分、ですか?』
「俺がマルクを嗾けて人質の様子を見せた時にね。彼女は聞いたはずなんだよ。おそらくは、彼女が考えているであろう最高の“かけ橋”の在り処をね。なのに、彼女は実行しなかった」
まぁ、もし実行していたとしても失敗してたんだけどね。と、イザナミは呟く。
電話の相手の反応をイザナミは注意深く観察する。しかし、大した変化は見られない。
(当然か。この程度のことで動揺するような人間なら、こんな重要な役割を担わせようなんて思わなかった)
イザナミは構わず話を続ける。
「今回も、あくまで自分が死ぬことで場を収めようとした。その献身的な行為は、神の身にも届いた。サクリファイスってやつさ。それを見て、彼女は世界の為にRる者だと俺は認識した。今回の件で、彼女はようやく神の仲間入りを果たしたのさ」
『……なるほど。彼女もまた、候補の一人ということですか。それで監視役を?』
「俺達の目的に気付く者がいるとしたら、それはまやかしの真実に捉われない奴だ。仮初めの希望を信じず、絶望を経験し、それでもただひたすらに真実へと歩もうとする者だけ。
彼女は今回、希望なんて信じられない程の絶望を経験した。もしも俺達の目的に気付く者がいるとしたら、それは彼女に他ならない。あとは……」
そう言いかけ、「なんでもない」と言ってイザナミは言葉を濁す。その後に続く言葉は、イザナミにとってあまり信じたくないものだからだ。
「ま、えーりんが真実に気付いたところで、こっちとしてはどうでもいいんだよ。もはやえーりんに発言権なんてないに等しいんだし。たとえ万が一ビッグボス辺りに真実を洩らし、それが広まりそうになったとしても、監視役が事前に教えてくれるって寸法さ」
アスタルテの永琳に対する処遇が輝夜の抹殺であったことも、イザナミには想像の範囲内だった。円卓の神達には、永琳の重要性は既に説いてある。
イザナミが勝手に連れて来て、さらに反旗を翻した。その事実は確かに重いが、彼女の代わりを探す労力を考えれば、牽制として輝夜をRという結論に至るのは至極当然である。
そして、その判断はおそらくセRンによるものだということもイザナミには分かっていた。セRンだけは、イザナミの考える役割に当てはまらない。
彼はアスタルテの付属物であり、アスタルテの頭脳である。だからこそ、イザナミはセRンを操る。それがアスタルテを操ることに繋がるのだから。
今回の件で、イザナミはいつか永琳を排除しようと考えると彼は想定しているはずである。ならばどうにかそれを妨害したいと考えるのは当然だ。その結果が、拘留というものだった。
そこまでわかっていたイザナミだからこそ、監視役という保険がきちんと用意されていたのだ。
「自分の命より大切なお姫様が死んだ。ここで立ち直れるかどうか。えーりんの試練にはもってこいじゃないか」
『しかし、少しは申し訳ないと思わないのですか? 彼女には、神になる意思はなかった』
「意思なんて、あとでいくらでも付いて来る。俺がそうであったようにね。問題は、その人となりと矜持。自分の信念を、どこまで曲げずにいられるか。
何を正しいとするかは人によって千差万別だよ。それが本当に正しいものかどうか、そんなことは誰にもわからない。だからこそ、俺はこんなしちめんどくさいことをしてるんだぜ」
『あなたがそう言うなら、そうなのでしょうね』
「……お前は殺し合いのことだけ考えていればいい。わかってるな? 神をRのに、あの会場は最適だ。役割のない神には早々に退場してもらわなきゃいけない」
先程までとは違い、冷え冷えとする口調でイザナミは言った。

195 :
支援

196 :


197 :
『参加者はどうするので?』
「彼らの役割はユンヌをここに連れて来ることだけだ。しかし、それだけでは飽き足らずに這い上がり、神に刃向うっていうんなら……。まぁ、認めてやろうじゃないか。少なくとも試練の一つとしては使える」
『あくまで参加者は道具というわけですか』
「そんな当然のことをいちいち聞かないでほしいね。とにかくお前はうまく動いてくれよ。ボールに潜んでいるふざけた神を世界の糧にする。それを誰にも気取られずに協力してくれ。
セRンから色々と命令がくるだろうけど、臨機応変に対応してくれよ。参加者はあくまでも全滅させるつもりで」
『奴らの意思で、ですか?』
「そう。奴らの意思でだ。生きるか死ぬか、抗うか諦めるかは奴らが決める。俺達は、それを眺めていればいい」
『傍観者として?』
「その通り。メダリオンに関してはこっちで説得するよ。どうせユンヌだけじゃ何もできないんだ。事実を言ってやれば、奴らも納得するだろうよ。もはや円卓の過半数は俺の味方だからね」
様々な事件が起こり、そのどれもがイザナミの評価を上げるものだった。頭の固いアスタルテは頷かないだろうが、他の二人が賛同してくれればそれでいい。
『そういえば。一つ聞きたかったことがあります』
「なに? 今はそれなりに上機嫌だから応えてあげてもいいよ」
『真実を知る者は少なければ少ないほど好都合。なのに、何故イゴールに教えたのですか?』
イザナミはいつになく真剣な様子で黙り込んだ。
『彼は、あなたの示す役割を何も果たしていない。完全に個人で動き、しかも真実を参加者に教えようとまでしている。
そもそもクリスタルは殺し合いを助長させるためだけのものだったはずです。血の契約も、全ては彼の独断。このデリケートな計画にこんな不確定要素を放り込み、放置する理由は何ですか?』
「……それはまた今度。あいつはちょっと特別なんだ。一応、部下という体裁は取っているけどね」
『特別? 彼を使うことに何か理由があるのですか?』
「……良心の呵責、かな」
『それはまた訳のわからない話で』
「そう。訳のわからない関係なんだよ」
しばらくの沈黙。
『まさか八意永琳に誤った推測をさせたのは、彼のお気に入りを排除するためでもあるのですか? セRンを使って』
「どうだろうねぇ。御想像にお任せするよ」
『……まあいいでしょう。こちらとしても、きちんと報酬をもらえるというのなら、課された任務は全うします』
「そこは信用してもらいたいね。彼は駒の一つではあるが、ちゃんと君の願い通りにするよ」

198 :


199 :
しえん

200 :

電話を切り、携帯をしまう。まるで衰弱した子犬のようにこちらを見つめるローザに、イザナミはにこりと微笑んだ。
「そんなに怖がらないでよ。別に取って食おうなんて思っちゃいない」
イザナミがぱちんと指を鳴らす。部屋の隅から、すぅっと小さな神棚が現れた。
これで、ゼムスもこれからの話を聞くことができるだろう。
「ただ、そうだね。少しあんたの身体を間借りさせてもらいたいってだけだ」
ふるふると首を振り、どうにか後ろに下がろうともがく。
「居候の相手は、あんたからすればちょっと抵抗を感じる奴かもしれないけど、まぁ根はそう悪い奴じゃないんだ。自分の身体が消し飛んでもこっちの言う事を聞いてくれる。それだけで、十分人情に厚い奴だろ?」
イザナミはそう言って笑う。ゆっくりとローザに近づいて行く。
「でも何度も言うけどさ。ちょぉっと考えたらわかると思うんだよね。フォックスダイなんて怪し過ぎる注射。一体どうやって注射したのか、とかさ。
……まぁ、頑張って説得したんだよ〜って言えば、納得せざるを得ないってところはあると思うけどね。女神ちゃんは頭を使うタイプじゃないし、あの段階でゼロにはえーりんの離反を仄めかしていた。心情的には、誰もが俺の味方だったわけだしさ」
イザナミはローザのその華奢な身体をひょいと担いだ。いわゆる、お姫様だっこというやつだ。
「どう説得して注射したのか。そんな小さな疑問だけでは、誰もこうは思わないんだ。“最初からゼムスは、死ぬつもりで離反してくれた”、なんてね」
思わず、ローザの目が見開いた。
当然だ。一体誰が自分の命を投げ出してまで他人の言う事を聞くというのか。
「ゼムスは不思議な奴でさぁ。魂と肉体の定着が他の生命体よりも希薄なんだよねぇ。彼の強過ぎる意思が肉体という拠り所を必要としなくなった。
故に、彼は肉体という脆い入れ物から離れた方が強い。これはゼムス自身も薄々気づいてたことだったんだけど、俺がそれを保証したら、彼は疑うことなく信じてくれたよ」
ゼムスにとってイザナミは神。その神が、自分でもそうだと少しでも思っていることを肯定すれば、それを信じるのは当然だ。ゼムスにはイザナミを悪と考える要素が何一つない。だからこそ、彼はこの途方もない作戦に乗ったのだ。
「俺はゼムスを仄めかした。その結果離反した。けど、それ自体もゼムスは納得の上だったんだよね。ま、それでもリスクがあることに変わりない。なのに、何でこんな突拍子もない作戦に乗ってくれたと思う?」
ローザはもはや首を振ることすらできなかった。イザナミの語る計画の一部分。それは、ローザの小さな頭では到底計り切れるものではなかった。
「フォックスダイさ。今回の寸劇は、ゼムスにとってフォックスダイのワクチンを手に入れるための壮大なお芝居だったってわけ」
ローザの顔を見つめる。意味をいまいち掴みかねていることを顔色で判断すると、イザナミはさらに説明をし出した。
「フォックスダイは、特定のDNAをインプットすることで発症する究極のウィルスだ。認識酵素によってプログラムされたDNA。それが合致すれば活性反応を示し、体内のマクロファージに反応してTMFεというサイトカインの一種であるペプチドを生成する。
これが心臓細胞のTNFレセプターと結合し急激なアポトーシスを起こすことで死に至るわけだけど、こんな長ったらしい説明をしなくても、このウィルスが肉体にしか反応しないってのは無知な君でもわかるよね?」
どう反応すればよいのかわからず、ローザは小さくこくりと頷いた。
「だったら肉体をなくせば、そいつはもう安全圏ってわけだ。たとえ俺が裏切ろうと何をしようとね。
“正式なワクチンが存在しない”フォックスダイ。けど肉体と遊離したゼムスには、そんなものに意味なんてない。ゼムスはもう、誰にも殺せない無敵の存在となった」
肉体を捨てる。確かにそれは常人なら誰でも躊躇することだ。しかし、それが自分を無敵にすると知っていたなら。フォックスダイという、自分達の命を握るものが存在すると知っていたなら。
そこに大いなる意思と信念さえあれば、決断することは有り得ないことじゃない。
イザナミはゼムスをいとも簡単にRことができる。だからこそ、約束を反故にするとは考えない。わざわざフォックスダイを使ってRなんて回りくどいことをする必要はどこにもないのだ。
それに、イザナミが約束を違えないことを誓わせることのできるアイテムが存在する。そのアイテム、『血の契約』を使えば、ゼムスがこの提案を呑まない理由はなくなる。

201 :
支援

202 :


203 :
「知ってる? フォックスダイって、空気感染するんだぜ? 神となったゼムスにも効いたんだ。それが誰にも効かないなんて、そんなこと誰も保証できないよねぇ。
けど、そのことについては誰も何も反論しない。何故なら、“存在しない”んだからね。フォックスダイが空気感染するなんていう事実は」
イザナミは計画の立案者だ。当然、ギャラティックノヴァを持って来た張本人。そして、その段階からマルクはいた。自分以外の願いは決して叶えないようにという願いを実行させたマルク。
しかし、それを叶える前に、イザナミがギャラティックノヴァのことを知っていたかどうか。それは誰にも分からないことだ。
フォックスダイが空気感染するという事実。それを知る者の記憶を、ギャラティックノヴァによって全て消したとして、一体誰がその真実に辿りつけるというのだろうか。
フォックスダイの存在は極秘事項だ。それを知る人間は少ないし、神でもない人間の記憶を消すのに大したエネルギーはいらない。
計画を立案する前に、空気感染することを知る人物の記憶や記録を消してもらう。ギャラティックノヴァの持つ本来の力だけでも十分叶えられる願いだった。
んーんーと、何かを喋りたそうにローザがもがく。イザナミは大声出さないでねと念を押してから、布を取ってやった。
「そ、そんなことを私に教える意味はなに? もしかしてRつもり……」
「俺は意味のないことはしない主義だよ。君には役割がある。さっきも言ったけど、君の身体に一人居候を寄こしたいだけなんだ」
そう言って、イザナミは目の前にある神棚に目をやる。ローザも釣られてそれを見つめた。
「ここには神の魂が一つだけ入ってる。
さっきから話していたゼムスの魂さ。本来なら、君のようなただの人間にはキャパシティー不足なんだけど、好都合なことに君は蓬莱の薬を飲んでいる。紛い物とはいえ、神の魂を内包するくらいならしてみせるだけの肉体を、君は持っているというわけだ」
動揺する。しかし、それだけだ。イザナミの優しい口調から、本当に自分の命を奪うつもりがないことを直感的に理解できた。
「蓬莱の薬を飲ませたのはマルクの意思。そこに俺は何の介入もしていない。ただ想定しただけさ。マルクがギャラティックノヴァに鍵をしたのも、俺が追い詰めてそうさせた。ある意味、マルクは俺にとって一番の間者といえるかもしれないね」
記憶とは、事実を主観的な観測によって認識したものである。イザナミに操られていたという自覚のないマルクは、全て自分の意思だと感じている。故に、この真実はセRンにも分からないことなのだ。
「……やっぱり、マルクは私達の味方だったの?」
「マルクのような人物が必要だった。善意で動き、それ故に行動を操り易い彼がね。ギャラティックノヴァに制限を与えたのも、円卓の神達の離反に備えるため。神全員を監視するより、マルク一人を監視した方がやりやすいからね」
「……私達も、そのフォックスダイに感染している?」
「してるよ。ゼムスが感染し、ここにいる全員が感染した。ただまあ安心してよ。今のままじゃ死ぬことはない。さっきも言ったけど、フォックスダイは認識酵素によって特定されたDNAにだけ反応するんだ。その認識プログラムを俺はまだ組みこんでいない。
実はフォックスダイとはまた別のウィルスがここには配置されているんだよ。そうだな。便宜上、リトル・フォックスとでも言っておこうか。それはここにいる全員のDNA情報を持つウィルスでね。要は、これがフォックスダイの認識酵素の役割を果たしてくれるんだ。
子狐が迷い込んだら最後、フォックスダイはその効果を存分に発揮し、自分の宿主を殺してしまう。子狐がすり寄る宿主を、フォックスダイは自分がRべき親の狐だと誤認するってわけ。ナイスなネーミングだろ?」
「そ、それじゃあ……私達は、万が一にもここから抜け出せないってこと……?」
絶望の色を浮かべるローザに、イザナミは笑って言う。
「言っただろ? 配置しているだけだってさ。散布されていない以上、君達の命は保証されてる。それでも俺が命綱を握っているようなものなんだけど、……まぁ、あまりにも目に余ることをしない限りは、たとえ俺の命が尽きようとこれを発動させるつもりはないよ。
これはあくまで保険なんだ。君達の意思を見極めてない今の段階で使うつもりはないし、たとえ君達が脱出に成功しても、それはそれで放置するつもりだ。そこは信用して欲しいね」

204 :
イザナミは神棚に顔を向けた。
「ってわけだよ、ゼムス。あんたの役割は、この子の中でえーりんを監視すること。それが無事に済むようだったら、ちゃあんと世界を用意してやるよ。俺は、あんたの世界さえ見れれば他のものには興味がない。他の神は、あんたを創世神にするための生贄さ。
ただ、しかるべき時が来るまでは奴らを生かしておかないといけないんだ。だからこそ、えーりんの監視を君に頼みたい。理屈は分かるだろ? 聡明で、現実主義者の君ならね」
ローザの頭は既にパンク状態だった。イザナミの言葉は、そのどれもが真実味を帯びていて、しかしそのどれもが疑わしい。
電話でのやり取りを聞いていたローザからすれば、先程の話には矛盾が生じている気がする。しかし、彼女にはどちらが本当で、どこまでが本当なのかわからない。
そして、各々が与えられた情報の中で、それは確かな真実となるのだ。
イザナミがゼムスに与えた情報も、確実に制限されているはずだ。
たとえば、フォックスダイのワクチンが本当は実在していたとするなら。ゼムスはただイザナミに踊らされた結果、こうして監視役を担わされたことになる。
たとえば、リトルフォックスというウィルスが本当は存在しなかったら。結局ゼムスは優勢になど立ってはおらず、他の神達と立場はまったく同じだということになる。
どこまでが真実で、どこまでが嘘なのか。ローザにはそれがわからなかった。
ふと、イザナミがローザに顔を近づける。
ゼムスにもその声が届かないように、イザナミは口を開く。
「全ての者にとっての正しい真実。それを見極めようと思ったら、それは時に、とてもとても大変なのさ。
今までの記憶を少しいじらせてもらうよ。大丈夫。俺の部屋に来て、色々な話を聞いたことを忘れさせるってだけさ。
基本的に、君の身体は君のものだ。ゼムスの意思で、ちょぉっと意識が遠のいたり、自分が何をしていたのかを忘れちゃったりするかもしれないけど、基本的には無害だよ。
……それともう一つ。君はこれから全てを忘れるわけだけど、時が来たら全てを思い出すような仕組みがされている。もしもゼムスが、俺の思う形で試練を克服できたなら、君はそれを教えてあげるといいよ」
「……そんなことをするメリットが、あなたにはあるの?」
「あるよ。それが俺の目的だと言ってもいいくらいだ。試練を与え、真実を教えることがね」
そう言って、イザナミはローザの耳元に口を近づける。
そして、ぼそりと呟いた。
イザナミの知る、真実を。
ローザの目は大きく見開かれ、途端に身体が震えだす。
「あ……あ、……。じゃあ、……じゃあ私達は……!!」
「それじゃ。二人で仲良くね。ローザちゃん」
「待って! まだ聞きたいことが──」
瞬間、ローザの視界は、暗黒に閉ざされた。

205 :


206 :

◇◇◇
【月と地上の狭間 とある高原の邸宅】
「それじゃあ、早速打ち合わせに入りましょうか」
「敵の居場所はわかっているの?」
「だいたいは。そのために駆けずり回ってたのよ?」
紫はそう言って微笑む。
やはり八雲紫は重宝する。桃を頬張りながら、豊姫はそう思った。
「確かに協力はするけど、人手を集めるには時間がいる。私達も一枚岩じゃないわ」
「わかってる。でもおおよその段取りくらいは早めに決めておいた方がいいでしょ? 敵が何人いて、どれほどの力を持っているのかは分からなくても、有効的な攻略方法が────」
「なかなか良い紅茶を飲んでるじゃない」
聞き慣れない声。
気が付けば、三人でテーブルを囲んでいたはずが、四人になっていた。
そのアンノウン。青一色の服を着た女性は、まるでここにいるのが当然とでも言うように、椅子に座っていた。
三人ともが慌てて立ち上がり、すぐに距離を取る。驚愕を顕わにしながらも、全員がいつでも戦闘を開始できるように身構える。
「誰!?」
依姫が叫ぶ。
しかし、相手はまったく動じない。
カップを傾け。味わうようにその香りを楽しみ、こくんと飲み干す。
途端、むせかえした。
「……思った以上に、熱かったわ」
突然姿を現し、突然カップに手をつけ、突然むせかえる。
あまりにもシュールな光景だ。しかし、それ以上の薄気味悪さがあった。
彼女は余裕だ。表情、仕草、そのどれもが自然でリラックスしている。それがあまりに不気味。
ここにいる三人は、数多ある世界でもトップクラスの実力の持ち主だ。しかしそんな彼女達相手に、まったく気取られずここまで侵入してきた。
カップを置き、女は口を開く。
「私の名はマーガレット。力を司る者。本来なら、私の役目はとある人物の補佐だったわけだけど、どういうわけかここにいる。主の命令は絶対なの。……いえ、正確には主の主、かしら。ややこしいわね」
そう言って、薄く微笑む。
「……見張りはどうしたの?」
豊姫がいつになく真剣な表情でマーガレットを睨む。
彼女は微かに首を傾けた。
「ああ。そういえばそんな者もいたわね。あまりにも手応えがなかったものだから、誰の事を言っているのか分からなかったわ」
ぞくりと背筋が寒くなる。
今回の密約は、月の都でも最重要課題。最精鋭の護衛の元で行われていた。それをまったくこちらに気取られずに排除するだけの力を、彼女は持っているのだ。
「……何者かは知らないけど、ここに来てただで帰れるとは思わないことね」
依姫は、鞘から刀を抜きだした。
「手力男命よ。神をも引きずり出す力を我に与えよ」
ここにいる全員が実感する神の力。その力をその身に降ろし、依姫は剣を構える。
が、それを見てもマーガレットは笑みを絶やさない。
「手力男命か。私も好きよ。なかなか逞しい筋肉をしていそうじゃない? まあいいわ。勝負? 受けてたちマッスル」
マーガレットは突然吹き出し、九十点と言って愉快そうに笑った。
……こいつはただの馬鹿なんじゃないか? 
三人の脳裏にまったく同じ考えが宿る。
しかし実際は違う。彼女は聡明過ぎるほどに聡明だ。

207 :


208 :
支援

209 :
「お喋りが好きなようだけど、すぐに黙らせてあげるわ」
「あら、あなたはお嫌い? 私も、彼と出会うまでは興味もなかったけれど」
マーガレットはそこで初めて立ち上がった。
突如、マーガレットの手に古ぼけた本が現れる。周りに浮遊する何枚ものカード。その一つ一つに、凄まじい力を感じ、紫は思わず後ずさる。
依姫は、構わず手に持った剣を振り下ろした。
天にまで昇る一筋の閃光が、マーガレットを包み込む。
瞬間、大気が割れた。
建物は一瞬のうちに半壊し、地面をマグマが噴出するのではないかと思うほどに抉り、轟音が響き渡る。
吹き飛びそうになるほどの衝撃に、紫はその場にしがみつくようにして堪えていた。
しばらく身を屈めていると、衝撃が止み、ようやく周りを確認できるようになる。
地平線の彼方まで刻みつけた大地への爪跡。それに直撃したマーガレットの姿は見えない。当然だ。普通なら消し飛んでいる。
だが依姫はそれで終わらせるつもりはない。
「火雷神よ。その細胞の一つまで焼き尽くせ!!」
龍を司った炎が抉れた大地を包み込む。
全ての固有物を溶かし尽くし、大地が地獄と化す。灼熱が地面を覆い、そこに生きる生命の全てを焼きつくす。
「やったの!?」
「……いえ。まだよ」
紫の言葉通りだった。
大地は割れ、灼熱の地獄と化した。しかしそれでも、平然とマーガレットはその中心で宙に浮いていた。
目を疑いたくなる光景だった。あれだけの攻撃を受けて、傷一つついていない。
「その判断は最悪ね。今の私にそれは、力を与えているようなものよ。そうそう。主の主から一つ、あなたに伝言。“俺を倒すつもりなら、アメノミのおっちゃんでも連れて来るんだな”、だそうよ」
アメノミ。その言葉に、依姫は一人の神を連想する。
全ての民の先祖。初めて世界に生まれた絶対神、天御中主神。
依姫はここに至って、彼女の背後にいるであろう存在に勘付いた。
「まさか……。まさかあなたはイザ──」
「倒れちゃ駄目よ」
本を開き、一枚のカードを握りつぶす。
瞬間、マーガレットの目の前に、花を握った奇妙な女性が現れる。
「メギドラオン」
その言葉と共に、光の玉が振り落ち、光が全てを包み込んだ。

210 :


「ええ。無事任務は終了です。手応えは……まるでありませんでしたね。イザナミ様の御力のおかげ、と言っておきましょうか」
『またまたぁ〜。本気出したら俺より強い癖に』
「御冗談を。本物の神に勝てると思うほど、私は自惚れてはおりません」
マーガレットの立っている場所は、数十分前までは美しい高原だった。
が、戦闘の結果、草木は炭も残さず燃え尽き、大地はこの世の崩壊を彷彿させるほどに崩れている。
当然、先程まで紫達が密談していた家など欠片も残っていない。
マーガレットは、もう少し紅茶を飲んでおけばよかったと少し後悔しながら、崖のように切り崩れた大地の一角に腰をおろしていた。
「しかし、こうも戦力差があるとまったく緊張感がありませんね。このまま月の都を攻め落としても構いませんか?」
『はっはっは。そりゃ止めて欲しいなー。できるだけ、もう他の世界には干渉したくないんだ。今回のは特別』
「なんだか、あなたには特別が多いような気がします」
『自分に甘いんだよね〜。ついでに他の皆にも』
「ご機嫌なようでなによりです」
『うん。ご機嫌だよ。君達部下が、思った通りの成果を上げてくれてる。大満足さ』
「私としても、このまま予定通りに事が進んでくれるのを切に願っております」
『……ああ。アンタの頼み事のことかい? 大丈夫。念なんか押さなくても、あいつが死んだらちゃんと報告してあげるさ』
「死亡報告のことなど気にしてはおりません。主に聞けば、それで分かることですから。問題はその後の────」
『オッケーオッケー。神の名において約束しようじゃないか。でもさ。イゴールもあんたも、少しあいつに期待し過ぎじゃないの? まるで、あいつなら真実に打ち勝つとでも言いたいようじゃないか』
「主の意思は私には計りかねます。ただ私の意思は、別に彼に何かを期待しているわけではありません。私は知りたいだけなのです。自分が何者なのか。彼との出会いに意味があったのか。そして、本当の真実と向き合う者の強さを」
『たとえあいつが死んでも、かい?』
「生に意味はありません。意味があるのは、意思と絆。言葉の先にある想い」
『そうやって煙に巻くのが好きだねぇ。ま、君がそう言うのなら敢えて否定はしないよ。ベルベットルームの住人ってやつは、本当にいけ好かない奴ばっかりだ』
それだけ言って、イザナミは一方的に電話を切った。
ツー、ツーという音が聞こえる。マーガレットは電話をしまった。
「……それはお互い様よ」
ベルベットルームの住人達を代表して、マーガレットはそう言った。
きっと主であるイゴールも、同じ気持ちであるはずだ。
「ベルベットルームの住人は、皆、自分が何者なのかを探る定めにある。……私も主も、それを彼や他の参加者達に見出してもらいたいのかもしれないわね」

211 :
支援

212 :


213 :
人は他者を介さなければ自分を知ることができない。
似たようなことを著名な人間が言っていたような気がする。それは、自分や主にも当てはまるのだろうかと、マーガレットは考える。
ふと、イザナミの言葉が思い出される。
「たとえ彼が死んでも、私は何も感じない。……そんなはずないわね。死んで欲しくない。その気持ちは決して消えないもの」
それがどうしようもない我儘だと知っていながら、マーガレットはそんなことを思ってしまうのだ。
「たとえ彼が死んでも、彼の意思を継ぐ何者かがいる」
そう考えて、気持ちを落ち着かせることしかできない。
それが堪らなく悔しい。
「これも、住人の私に罪を犯させた、盗人のあなたのせい。けれどこの葛藤にも、あなたとの絆にも、意味があるというのなら……。いえ、止めておきましょう」
そんなことを考えるだけ時間の無駄だ。
マーガレットはすっくと立ち上がる。
彼女の後ろには月の精鋭部隊全員と綿月姉妹、そして八雲紫が倒れ伏していた。
全員が満身創痍の状態で、既に意識はない。が、死んではいないようで、わずかながらに胸が上下していた。
マーガレットはその中から八雲紫を担ぎ上げた。
「不本意かもしれませんが、あなたを私達の世界へとご招待致しましょう。これで私の役割もひとまず終わる。誰もが真実に追われ、縛られ、生きている。あなたも私も、そしておそらくイザナミ様も。
あなたというもう一つの歯車を得て、運命はどのように転がるか。私も楽しみにしております」
気がつくと、その場にいたはずのマーガレットは消えていた。八雲紫の姿もない。
そこにあるのは、焼け野原となった場所に倒れ伏す女性達だけだった。

214 :

◇◇◇
【??? イザナミの部屋】
電話を切り、イザナミは深く息を吐いてソファに凭れかかった。
さすがに、疲れた。
何か至らなかった点はなかったかと記憶を探る。数多もの綻びの可能性。しかしそのどれもが事前に知り得ることであり、対処のできるものであることを確認し、イザナミはようやく一息ついた。
一つだけ気になるのは、自分の切り札でもあるあの男。
裏切るとは思っていない。真実を知った彼が、自分のアキレス健をこうして差し出している。それだけで十分信用に値する。
それに、もしも裏切ったとしてもそれはそれで構わないのだ。頭のキレる彼のことだから、水面下では大人しくしているだろうし、ここまでくれば水面下だけでも大人しくしていてくれるだけで十分。
それに、自分は彼の意思を縛り過ぎている。それは決して、こちらの本意などではない。彼もまた、参加者の一人なのだから。
ふと、男に言われた言葉を思い出す。
八意永琳に対して申し訳ない気持ちはないのか。そう男は言っていた。
ある訳がない。あったとしても、それは彼女の意思を必要以上に縛ったことに対する不公平さに関することだけ。
しかし、それも必要なことだった。これからの行い、彼女の意思は、全て自由だ。最終的な結論は彼女にさせる。それがうまくいっただけで良しとするべき。
だが、確かにもう少しやりようがなかったのかと思わないこともない。姫に対する彼女の気持ちは本物だった。だから……
そこまで考えて自嘲する。
少し感傷的になっているかもしれない。
イザナミは、その考えを振り払った。この犠牲は遅かれ早かれ訪れるものなのだ。自分を正当化するつもりは毛頭ないが、それでもこんなことで感傷的になっているほど暇ではない。
イザナミは立ち上がり、一面窓となっている壁へと歩いた。そこにぽっかりと浮かぶ星、ギャラティックノヴァを見つめる。
全て想像通りに動いている。だが、その結末だけはイザナミにだって知り得ない。いくつもの可能性。いくつものゴール。そこへ到達するレールは、未だ敷かれていない。それを敷くのは自分ではない。
だからこそ、そのどれもが等しく公正に選ばれるよう、こうしてお膳立てをしている。自分は、傍観者として結末を見届けなければならないのだ。
俗に言われる勝利とやらを手にするのは一体誰か。
アスタルテか? ミュウツーか? ゼムスか? ゼロか? 永琳か? 俺自身か? それとも……
「……あんたがいれば、こんなこと考えたりしなかったろうにな」
帽子を眼深に被り、イザナミは一人呟く。
「まぁ、その想いすら利用してるんだ。泣き言なんて言う資格ないんだけどさ」
思い出すのは、楽しかった毎日。
あの人と共にいて、それだけで幸せだった毎日。あの当時は、世界も人も、何も興味はなかった。自分の興味は、ただあの人一人だった。
「……知ってる? えーりん。神は色情魔だけど、本当はとっても寂しがり屋なんだよ」
そこにいない者の名前を呼び、イザナミは一人笑う。
それは、とてもとても寂しい笑いだった。
【蓬莱山輝夜@東方project 死亡】

215 :


216 :
支援

217 :
投下終了です
勘の良い人は色々と気付いたかもしれない
何か矛盾やら質問があれば言ってください

218 :
なんか物凄くスケールがでかいんですけどw
全員が女神を殺せるってことは、もしかして主催側全員が
それを相殺できる「女神の祝福」持ち状態ですか?
だとしたら攻撃が通らNeeeeeeeee!

219 :
投下乙
一気に話が動いたな
姫様があああ!相変わらずイザナミさんは外道やでえ…
クリスタルはポケモン勢が持ってるがどうする瀬多
ビッグボスかっこいいけど、えーりんカワイソス…

220 :
すげぇ…情報戦・心理戦を完全に操っているイザナミよりも、これを書き上げた書き手の方がおそろしいぜ(褒め言葉)
超乙です

221 :
投下乙です!
かなり凄い事になってる……えーりんはもう精神的にズタボロだな……
それでも頑張って欲しい。

222 :
前々から思ってたけど、えーりんってロワ補正でもかかってるかのごとく
参加させられたロワ全部で不幸のドン底ルートをいっつも通ってるよな…
これからの展開は、えーりんの持ち直し次第だな。

223 :
瀬多勢が脱出に向けて動いているところにアシュナードがどう絡むかwtkt

224 :
>>125
指摘ありがとうこざいます。wiki収録の際に修正します。
>>◆dGUiIvN2Nw
投下乙です。もの凄い情報量や展開にとても興奮しました。

225 :


226 :
祝! 五十話突破!!

227 :
凄いなー、50話までいくとは……
最後まで応援するぜ

228 :
50話か…ここまで長かったな…
リスタートしてから一年半ぐらい?
投下がない月もあったりしたけど、年末年始を境に一気にスピードアップ。
これも偏に、作品を投下してくれる書き手、作品を待つ読み手がいたからだね。

229 :
最初は書き手少なくて投下も月一でくるかどうかだったしな
それでもその数名の書き手諸君は見捨てないでこのロワの為に頑張って作品投下してくれた
書き手の皆に拍手だ
俺は読み手だが、これからも応援する

230 :
すまん、sageるの忘れてた

231 :
マップ見てんだけどさ、D-4に死者多すぎだろw
12人もいるw参加者の三分の一がそこで眠ってるのか…

232 :
多すぎっ、ていうか南側は騒動起こしすぎだろww
アシュナードといいセシルマギカといいww
それと比べて北側は比較的ドライでドロドロとした動きしかなかったな
霊夢とレッドの戦いや、サカキの洗脳もどき、アカギとバルバリシアの戦いとか
北側は頭脳で、南は肉体派って感じだな

233 :
ある意味南北格差が生まれてたよなw
誰か文才ある人に、用語集に入れてもらいたいぐらいだ

234 :
マップの参加者の現在位置表を大幅に変更しました。
以前の方がいい、という意見がありましたら即時修正します。

235 :
修正後のほうががわかりやすいし良いと思うよ
かなり前に地図CGI導入できるかどうかやってみたけど自分には難しくて駄目でした

236 :
前回はサカキ様に対して配慮が足りなかったので、今回は多めに配慮させて、いただきました。
瀬田 PT分断って王道の死亡フラグだけど仕方ないね!
レミリア そういえばまだ輪ゴムの手品のタネを教えてもらってない。
アドレーヌ 絵の具来た! でも勝てない!
咲夜 部下が一気に増えました。千枝、ちょっと黙ってて。
漆黒 サラマンダーから対主催にジョブチェンジしました。
千枝 やっぱ咲夜ムカツク!
ゴル兄 死神状態!
セシル せしる☆マギカ 理性、なくならないなぁ…
カイン かいん☆マギカ セシルをゴルに寝取られたけどアシュがいるからまぁいいや
アシュ アドレーヌに幽香を取られた!
雷電 参加者のみなさん、こんばんはー!ロケット団バトロワ支部の(ry
早苗さん もしもし、霊夢さん?どうしてそんなに元気なのー?
霊夢 私ね、(サカキ様を)信心したのよ!
サカキ 何だこのスタンス表は
レッド 見えないストーカーがうざいんですけど
ツンデレ 具体的にまだ何もしていないぞ!
陽介 やった!推理役ポジションきた!
マルク Oh, Please Please save her Erin...
えーりん ※ただいま不幸のドン底です。立ち直るまでもうしばらくお待ちください。
輝夜 ※完成しました
ゆかりん 誘拐された奴らを救出しようとしたら自分が誘拐されました。何を(ry
イザナミ ……知ってる?えーりん。ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ?
イゴール 真実はまたの機会に。
マーガr 依姫よりもお茶のがダメージ大きかったわ
アスタルテ ※頭が固すぎてコメントになりませんでした
ユンヌ ※物理的に硬すぎてコインみたいになりました
セRン イザナミに勝ちたい……
ゼロ イザナミが要注意なんだけど……ジョン。
ビッグボス えーりんは犠牲になったのだ……でも犠牲になる必要なんてなかった。
オセロット 落ち着いた^^
ミュウツー スマブラからの招待状がこないんだけどどういうことなの……
ゴールド ※ゲロゲロゲロゲロ
ゼロムス 来たッ!パワーアップ来たッ!これで勝つる!
ローザ ローザ無双の予感!
なんという事でしょう、参加者とそれ以外の人数が同じに…

237 :
>>234
乙!見やすくなってかなりいい。
>>236
こっちも乙!マジだ…生存者とそれ以外の人数が同じにw

238 :
確かにオセロットさんは終始テンション高かったなww

239 :
新しいスタンス表きてるwww
サカキ様困惑だろうなこりゃwww
そしてツンデレが無傷っていう
マップ編集乙!見やすくなってる!
SSタイトル元ネタ初めて見たんだけど殆どが楽曲名とかすげぇ……
最新話も一応楽曲だし

240 :
乙ですが、ミュウツーのスタンスがロワと関係ねぇw
アドレーヌのが前回と変わっていないのがちょっと寂しいかな

241 :
アドレーヌ忘れてたwww
誰か「修正してやる!」と言わんばかりに修正してくれませんかねぇ?(チラッ

242 :
アドレーヌ これで二人堕ちたか(ニヤリ
え? アドレーヌが黒過ぎるって?
知らんよ。そんなこと

243 :
アドレーヌ あれ?このままのポジションなら生き残れるんじゃね? or もう何も恐くない
自分ってセンスねぇ

244 :
書き込みが途絶えてポポポポーン

245 :
アドレーヌ たのもしい仲間がポポポポ〜ン!
もうこれでいいかな?

246 :
もうそれでいいんじゃね?
投下がなくて寂しい日々を過ごしています(´・ω・`)ショボーン

247 :
ああよかった人居た
俺以外全員ポポポポ〜ンしたかと思った(´・ω・`)

248 :
なんだかんだでもう終盤も近づいてきたし
ゆっくり待つお

249 :
終盤にもなれば否応なしに重要ポジのキャラが死んでくからな
感情移入の度合いもまた違ってくるんだろうなあ
それぞれのドラマが今から楽しみだ

250 :
ゆかりんってどうなるんだろう?
リザーバー部屋にでもつっこまれんのかね?

251 :
書き手がくるまで雑談でもするか
みんなどのキャラに注目してる?
ちなみに俺は、長鼻のおじいちゃん。まだ一回しか登場してないけど

252 :
GWだし一本くらいは投下されんじゃね?
長鼻のおじいちゃんてイザナミの仲間といえるわけでもないんだよな〜
俺はえーりんかな。イザナミが一番危険視しなきゃいけないのは確かにえーりんだ。
ここまでイザナミの手中にないのはえーりんの支給品だけだしねぇ。
えーりんVSゼロムスの月人決戦にめちゃくちゃ期待しちゃう。
命の光で敵を縛る永琳と、心の闇で敵を操るゼロムス。互いに天敵の関係にある。

253 :
俺はロケット団かな。こいつらが一番見てて危ない気がする。
スタンスはみんなバラバラだし、心身共にまともな奴もいない。
ツンデレ師弟withレッドも危ういけど、ロケット団に比べればまだ平和。
レッドは猫かぶってるし、近くにはアシュナードらもいるからどうなるか分からないけど。

254 :
コイキングって誰が持ってるんだ?
湖の近くにふしぎなあめが散らばってるからそこにいけば無双状態でアシュナード打倒も夢じゃないんだが

255 :
>>254
ピカチュウ「ギャラドスLv100ってそうなのー?」

256 :
おーい。皆生きてるかー
このロワの影響でP4やってみた。勿論瀬多って名前で
保守ついでに感想をば
一言で言えば、普通に楽しめる作品だった
まあ犯人は分かっちゃってるから、推理するってより伏線楽しんだ感じだったけども。それでも十分楽しめたよ。
ロワ本編でも出てきた、輪ゴムとか六股とかってのに、ちゃんと元ネタがあって地味に感心した。
P4に限らず、元の作品に愛があるとちゃんと文面から読み取れるものなんだね
もしそれが俺の勘違いだとしたら、とんでもない文才だと思う
雪子に掘れて、もう死んでて落ち込んだorzとか他にも思う所は数多にあったんだが、異常な長文になるので割愛
因みにイザナギつけて単独でイザナミに挑んだら、普通に瞬殺された。
このロワではそうならない事を祈ってる

257 :
>>256
愛が無ければ視えない
P4アニメ化するらしいし、原作やってない俺も楽しみ。
ところでなんでこんなに皆沈黙してるの?

258 :
元々書き手の数が少ないから仕方ない
投下が多かった時期はちょうど春休みだったしね
書き手に学生が多いのかもしれない

259 :
しかし、ここのしっこくは綺麗だな…。
アシュナードがいるのと、えげつなさがあまりないからかもしれんが。

260 :
他所だと戦闘狂として猛威を振るっているけどここだと咲夜さんの鼻に文鎮を突っ込んでいるからなぁ

261 :
ここの咲夜さんもめずらしくアンラッキーだよな
他のロワなら瀟洒にソツなく話を進めるんだけどここでは文鎮(ry
銃の発射時に時止めたり、その銃弾触っちゃったり…生存率上げる為に他の運を全消費してるとしか。

262 :
>>257
やたら番長贔屓する書き手が山口の広域荒らしだという噂があるからじゃないか

263 :
今31話の託された希望読んで、ちょっと興奮してる。
みんな本当にかっこよかった!特に改心したシルバー!
結局死んじゃったけど最後の最後であんな度胸見せてくれるとは!
今プレイしてるHGのおつきみやまで再会するのが楽しみになってきた!
後は、プププ勢の3人のやりとり見てグダグダなFF4勢との違いをなんとなく見せつけられたような気分になった。
FF4は未プレイだけどここまでの展開は結構ショックだ…
これからどうなるのやら…

264 :
山口の広域荒らしって、デビル猿以下仮面さんの事か?

265 :
最終回☆自演乙☆えぬしーぽんさんのことだろ

266 :
それは一体何を根拠に言ってるんだ?

267 :
ここのエースが、デビルガンダム戦のあの作者だってのは以前どこかで見た気がする。
メガテン大好きで、東方のキャラをわざと捻った使い方をしたがるというのや、
話の持っていき方、伏線の立て方とその昇華の仕方がそっくりだとか。
やる夫でやってた仮面の夢も、かなり似たやり方だったし。

268 :
文章の書き方だけなら現在の剣客の人にも似てるんだが。

269 :
そんな糞みたいな憶測はするだけ無駄だから何も言わず山口OCNを規制しとけばいい

270 :
まあそれが一番確実だわな
この書き手と同一人物かはともかく、黒とわかってるIPを規制しておかない理由もない

271 :
仮面さんが書いてると聞いてきました。
粘着ヲチャ―なんかに負けないで!

272 :
荒らし扱いされて憤るのはわからんでもないが、誤爆に特定上等で書いたのはアホとしか言いようがない
フシアナしてみれば身の潔白を証明できる、って言われるのくらい想像できただろ
むしろこれでしないのならそれこそ山口OCNのやつかという信憑性が増すだけだ

273 :
>>272
馬鹿はどこまでも救えないなあ、とあの人の代わりに俺がお前を笑ってやるよ。

274 :
>>273
これまた本人臭いなぁ、と誤爆民を代表して俺がお前を笑ってやるよ。

275 :
とりあえずこれ位にしとかないか?
このロワの事考えれば、これ以上話長引かせてもいい影響ないだろ

276 :
そんなことよりもまずは

277 :
自称作者が裏に現われて、本人かの証明もせずに毒を吐いたのか。
どこの書き手か分からないならともかく、
あんなに個人を特定できる書き込みだからな。
トリも出してないし、あれは成り済ましの荒らしだろ。
管理スレに対処をお願いするべき。

278 :
これもすべて仮面ってやつの仕業なんだ!
…これが案外冗談にならないから困る

279 :
とりあえずこのロワ内の毒を吐くのはともかく、確証もなく別ロワに喧嘩うるのはやめとけ

280 :
色々考えたけど、やっぱり書き込むことにした。
まず初めに、その問題になってるなんちゃらさんと俺は別人ですと明言しておきます。
まぁ、ここでそんなこと言ったところで何の根拠もなしに確定しちゃってる人には信じてもらえないので、
これは事情の知らない人達に対して、ということで
んで、自分がそのなんちゃらさんだと確定している人に言っておきたいことは山ほどありますが、とりあえず一つ
ソースを出せ
正直、これに尽きます。何を以て確信しているのか、事情を良く知らない私にはまるでさっぱりですが、
少なくとも本人でない可能性がある人間を罵倒するということがどういうことか理解できないほど子供ではないと
信じたいところです。
それと、どうやら理解してない方がいるようなのでわざわざ言いますが、誤爆スレは誤爆スレ。
ここでそこの話を持ってくるのはナンセンス以外の何物でもありません。
そもそもあそこは書き手が愚痴を言うためのスレであって、そこに書き込みをするということはそれだけ
この不毛で不名誉な話しに憤ってるということです。
良識ある人達には、このどうしようもない苛立ちと屈辱を分かっていただけるのではないかと信じます。

281 :

少し考えたのですが、ここでそのなんちゃらさんと自分が同一人物でないと証明できるかもしれない方法を挙げときます。
1、したらば管理人様にお願いし、なんちゃらさん(正直鳥も知らないからIPが公表されてるかも知りませんが)と
自分のIPが別のものであると証言してもらう。
ここのしたらばではいつも同じパソコンを使っていたはずなので、それと照らし合わせてもらえば証明にはなると思います。
それでも疑り深い人は色々といちゃもんをつけるのでしょうが、そこまではもう知らん
2、自分が投下している時間帯と、そのなんちゃらさんが投下している時間帯で被っていないか確認する。
さすがに同時投下までして保険を作るような人間はいないだろうという理屈です。たぶん流れたりなんなりで証明は
できないでしょうが
とりあえず、自分がそのなんちゃらさんだと言っている人間は、この二つを徹底的に調べてから仰ってください。
それをしないでぐちぐちと文句を言う資格はありません。

282 :
正直、こんなことを書かなくてはいけないということ自体にげんなりしてます。
そのなんちゃらさんが何をしたのかは知りませんが、こうして根拠もなしに罵倒している人達は、私から言わせれば
そのなんちゃらさんと同列の人間だとしか言えません。
そういうわけで、今の予約も取り消して、一旦ここから身を引かせてもらいます。最低でも、ほとぼりが冷めるまでは。
ただでさえ忙しいのに、投下するたびにうだうだとこんなことを言われていたのでは溜まったものじゃありませんから。
自分の作品を心待ちにして下さった方がいるなら、大変申し訳ありません。
好き勝手に書き殴っていた身としては、一人になっても、どれだけ忙しくても最後まで書き続けようと思っていたのですが、
このテンションでは少し無理そうです。
まあ、そんなこんなで後は好きにしてください。罵倒するなり何なりと。
忙しい身の上でこんな茶番に付き合ってはいられませんので、今回の書き込みで失礼させていただきます。

283 :
何キレてるのか知らないけどこうなったのは誤爆スレにわかりやすい毒吐いたあなたにも原因があるんじゃないですかね

284 :
誤爆でも言われてたけど、節穴すれば一発で疑い晴れるのに

285 :
途中までの話は判るが、予約消すくらいなら最初から予約しなきゃよかったんじゃね?
別に予約してからごちゃごちゃ言われたわけじゃなくて、ごちゃごちゃ言われてる最中予約したんだから

286 :
どんなに罵倒されようと俺はこのロワを応援し続けるよ。完結は何年後でも構わない。

287 :
そもそも、そのくだんの人がここにいるってこと自体、最初の最初からソースないんだからスルーしる
手当たり次第に認定して話題を拡散したがってる荒らしがいるだけだろ

過去ログ、全部読み返しても出てこない人を勝手に=で結びつけて好き勝手言うとか馬鹿じゃねーの

288 :
そもそも、
まずそのくだんの人が番長贔屓するほど好きかもソースがなくて分からない
この企画にくだんの人が関わっていることも一切ソースがなくて分からない
さらに氏とその人が同一人物であることもソースがなくて分からない
つまり、はっきり言って何もない、単なるいちゃもんじゃねーか
まずいるかどうかすら分からない人間が、ここで書き手やってて、しかも氏であるってどういう確率なんだよ

289 :
だからみんなスルーしてたのに反応したのが当の書き手だって話じゃん
よりによって人目に触れる誤爆スレでさ

290 :
俺だったら反応せざるをえないけどなぁ。
なにせ、当の書き手がかまってくれるまでずっとここに居そうな雰囲気だったし。

291 :
小田でスレタイもあげてここに誘導しておいたからいくら逃げても無駄だよ仮面さんwww
証拠がないって、情況証拠って言葉知ってる?w

292 :
荒らしに真正面からぶち切れられても困る。

293 :
>>277
早く対処のお願いとやらをしてこいよ、ほら。

294 :
誤爆スレとか見てない俺にはトランクス状態だぜ。
あんたら誰と戦ってるんだ?戦う必要のある相手なのか?

295 :
別にここのロワで問題起こしたり、他の書き手の作品を
ないがしろにした訳でもあるまいに。正直どうでもいい。

296 :
したらばに予約キタ━━━(゚∀゚)━━━!!かと思ったら、破棄になってた
で、本スレに今来たが、正直何が何だか分からない
とにかく、俺は書き手の皆さんをいつまでも待ってます

297 :
見えない敵と戦って書き手を一人失うとか斬新過ぎるな
その疑心暗鬼、SSでやればよかったのに

298 :
粘着してるやつ、むこうで凸誘導してるっぽいしその流れに乗って荒らしがきてるんだろうな
向こうの管理人さんにチェックのお願いしてきた

299 :
ふしあなすればいいのにね仮面さんw

300 :
仮面さんのライバル潰し、見て見たいですおw

301 :
>>277
毒吐いたのは本人だったわけだが
ねえねえ今どんな気持ち?

302 :
もう避難所進行した方がいいかもしれんね
閉鎖的な環境なら荒らしを閉め出せるし、書き手も迂闊な行動しなくなるだろ

303 :
>>298
おつかれ
その管理人さんがIP公表したら、パロロワ毒吐き別館のほうにも通報出そう、別館はしたらばだからIP照会もできる
むこうでも似たような書き込みが散見したし、もしそこのIPと別館のIPで合致するものがあれば
スパロワやらここやら別館やら各地で暴れ回ってるのがそいつだって確定するしね

304 :

避難所管理人はヤマグチipを晒すことを要求する

305 :
猿以下はp4さんを鬱になるまで追い込んだ
ゆるさねーぞ!

306 :
争いはやめるんだ

307 :
お前は鋼鉄!
止めるな!
猿以下はペルソナ使いだ
あいつをここで倒さないと多くのスレが潰される

308 :
だから仮面をこのスレもろとも潰すというのか!
このスレにはなんの罪もない住人がたくさんいるんだぞ

309 :
煽ってるのは単発が多く
複数回書いてても連続している
つまりここから導き出される答えは…

310 :
このスレは名探偵(笑)だらけだな
ロワやめて探偵ごっこでもしてろよ

311 :
お前らロワなんかクソやめてやる夫スレはじめようぜ

312 :
ほんと凸ばっかの屑の集まりだなあそこ

313 :
良く解らんが勝手に誤解されて槍玉に挙げられている件の人も災難だな

314 :
俺たちぎえぴー軍団小田紳士だ
文句があるならかかってこいよ
http://yy702.60.kg/test/read.cgi/gentleman/1307187756/l50

315 :
>>313
節穴しろよ

316 :
小田を潰したいからなんとかして問題を大きくしようとしてるだけにしか見えんな

317 :
ぎえぴーはやる夫界の神なんだお

318 :
ぎえぴーwwww

319 :
ここを凸の拠点にするか

320 :
裏小田スレにようこそ

321 :
仮面やウイルスやエレボスは小田に復讐しようぜ

322 :
……2chだからIPチェックされないとなったらここまで性格悪いんだな
関係ないところに凸入れて潰しに来るとかν速と変わらないじゃないか
ここ以外にも凸入れらてるしここじゃ作者さんが一人消えてしまうし踏んだり蹴ったりだ
はやく向こうの管理人さんも何か対応してくれ

323 :
また投下されるのをまったり待つ作業が始まるお(´・ω・`)
すんなり完結しないのもロワの醍醐味と思って気長にいく事にする

324 :
真面目な話さ、避難所進行にしたほうが良くない?
対応つってもしたらばで規制されたからって2chには書き込めるんだから意味無いぞ

325 :
それでも各地のしたらばではじけるし
毒吐きでもやってたから、毒吐きはしたらばだしそっちでの被害はなくせるぞ
あと単純に凸しまくってるのに管理者ガンスルーってどうなのよ
マジでしたらばに荒らし、煽りの掲示板って閉鎖の要請このままだと出さざるを得ん

326 :
猿以下さんをかくまうから荒らされるんだろ
避難所のyamagutiの書き込みを晒さない限り荒らしはおさまらない
俺も作者として参加して
まともに進行させないつもりだから覚悟しろよ

327 :
だからいるというならソース出せって影も形もなにもない人間を勝手に結びつけて出せとか
第一この人のどこをどう見ればくだんの人になるんだよ、全然違うじゃねえか

328 :
ID:Op9W8WG5
こいつもしかして仮面じゃね?
いつのまにか毒吐きの誤爆=2ch荒らし=小田の荒らしと勝手に決め付けちゃってるし、小田を異常に憎んでるしで
いくら自分が追い出されたからってみっともなさすぎるぜw

329 :
仮面がいる疑いのあるスレは潰されるべきだな

330 :
十中八九むこうの荒らしと毒吐きの荒らしは一致してると思うけどね
書いている内容がおなじすぎる、ここの人を例の人扱いしてるの両方で一人だもん

331 :
(まさかとは思うが、毒吐き63みたいなデビルガンダムの人についての毒もいっしょくたに考えているのだろうか…?
毒吐きでは仮面=ここの書き手という推測には誰もまともに取り合っていないはずだが…
仮面=dGと考えているのは君じゃないか、と教えるべきなのか…いや、よそう。
俺の勝手な推測で皆を混乱させたくない…)

332 :
ソースもなしによくここまでやるよな
引くわ

333 :
dgは投下前とか定期的に節穴しろよ
それぐらいできるだろ

334 :
>>330
「例の」で検索した結果ヒットするのは誤爆136のみ
その136はおそらく134なのだろうが、134が言ってるのは◆dG氏のことだな。
が、136は◆dG=仮面、とは言ってない。
136の内容は、134の自分の発言を受けて「荒らし行為をした仮面という人物は、毒吐きという特異な場所にいたからこそああいう行動に出た」という説明だ。
これを仮面=dG氏と直結できるのは被害者意識があるだろう言われた当人くらいのものだぞ

335 :
あとわいわいカキコだから通報しても無駄だと思うよ、わいわいはもう管理いる気配ないしね

336 :
わいわい無敵すからw

337 :
いや例のといっただけなのによくそこまで曲解できるね
毒吐きで猿以下だの言葉使ってやたらひろめようとした人と、向こうで凸扇動した人が同じといいたいのよこっちは
言葉尻押さえて曲解して断定ってどうなのよ

338 :
>毒吐きで猿以下だの言葉使ってやたらひろめようとした人と、向こうで凸扇動した人が同じといいたいのよこっちは
それこそソース出せって話なんだけど
まさか書いている内容が〜、口調が一緒だから〜とかいうんじゃないだろ?

339 :
http://yy.60.kg/yakusoku.html
>>335
ここから通報できるみたいだぞ、確認したら
規約に従って5日待ってこなかったら通報するわ

340 :
それは蓋が開けばわかるだろうさどっちが真実か

341 :
おいおい、自分が先に断定しといてそれかよw

342 :
戦争だw
猿以下戦争がはじまったぞ!
飯うまwww

343 :
>>341
>>328>>330
あんたのほうが10分ばかり先に言ってるんだが健忘症か?
疑問詞つけてるからとかいうならこっちも思うと推定でとめてたと返させてもらうが

344 :
おいおい、ID:/gLqPjno=ID:Op9W8WG5って自白したようなもんじゃねーかw
>>328はID:Op9W8WG5あてだぜ?
「自分が先に」って、これはID:Op9W8WG5、つまりあんたに言ってるんだぜ?
語るに落ちるとはこのことだな

345 :
と…すまんな、安価ミスだ
>>344の三行目はID:/gLqPjnoにだ

346 :
正直言わせてもらうとさー?
おまえら端から見たらまったく同じレベルだぞ
書き手庇いたいなら徹底的にスルーすりゃいいのにID赤くなるほど熱くなっちゃって
2chは規制されないからって好き勝手やってるのはどっちもどっちだ

347 :
いやソースもなしに人を断定すんなと言ったからお前の発言さかのぼって断定したのだしただけだぞ
さっきから妙な読解で一人合点して煽ってみたりお前はCか

348 :
まあ、昔同じ場所で暴れさせてもらった身から言うとID:Fd9EsJJhが一番えぬしーぽんっぽいんだけどなw
あの人、自分を餌にして人をおちょくるの大好きだったし
どうよ? 正解だったらまたどっかで一緒に面白おかしくやろうゼ

349 :
仮面さんのせいでロワスレが荒らされるのか
名探偵さん助けてw

350 :
わたしはぎえぴーを倒します

351 :
二次キャラの投票のほうに山口OCNの人がいたよ
そっちいったら?

352 :
この本スレを潰す

353 :
なにこのキモイ流れ

354 :
実際本スレ潰して避難所にうつったほうがいいかと
後仮面さん言うならソース出せ
そもそも別企画の人に触れるな

355 :
仮面が潰そうとしたライバルスレ
読まなくてもいいから乙をお願いします
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1302390543/
オッパーソン!

356 :
アロンソよ、余計なことはやめておけ。
今はまだ、自分のプレーの向上のみに専念する時。
そんなことをするのは10年早い。
(しかし、アロンソは精神的に油断が生じているのか? だとしたら、先は長くないぞ)

357 :
たまーに見るがなんで仮面に「さん」をつける人がいるんだろうな
デコスケ野郎なのか本人なのか

358 :
>>356
オイオイ、もう少しマシなレスしろよw
朝っぱらからカスレスなど読みたくねえぜw

359 :
へへ、複数のPCと携帯で十乙はつけたぜ?
猿以下さんざまあw

360 :
家庭ゲームのペルソナスレにも貼られてるな

361 :
471 名前:ぎえぴー ★[] 投稿日:11/06/06(月) 20:00:49 ID:???
テスティングnoid化完了しました。
管理スレのアレはdocomoです。

だってさ
どーすんの?

362 :
別ロワの書き手や誤爆スレや毒吐きスレに疎い俺には
今の流れをなにがなんだかさっぱりわからんぞ
誰か分かりやすく解説してくれ

363 :
なんかここじゃ、仮面というのがどこかのやる夫スレの書き手のように言われてたけど、毒吐き曰く荒らしみたいだな
情報が混濁していてやる夫スレ知らない俺にはわからん
というかほんと、ロワ外の話題持ってくるな

364 :
うるせぇ黙れボケ

365 :
さらに>>356が芸スポのコピペ荒らしの誤爆っていうのが・・・

366 :
書き手兼荒らしと思っとけばおk
厄介なのは書き手としての腕は立つところと荒らしとしては難度潰されても懲りないところ

367 :
このスレしか見てない俺からすれば>>364>>366のが荒らしに見えるんだが

368 :
◆dGUiIvN2Nw氏への粘着荒らしだからほうっておけ。
一々やる夫スレ時代の話を蒸し返しやがって。

369 :
何いってんだおめえ
俺はnc粘着だがこのスレの書き手には何の興味もないぞ

370 :
>>366
荒らしでも書き手としての腕があればいいと思うけどな
ロワ企画はコミュニケーションが目的じゃなくてSSが目的なんだから極端な話荒らしレスと作品だけでスレが埋まってても問題ない

371 :
だったら非リレーなりブログなりで一人でやってろよ猿以下仮面
俺は荒らしとリレーするなんざ御免だ

372 :
だが待って欲しい。
本当に仮面氏が荒らしをしたのか?
やる夫界の罠ではないか?

373 :
仮に仮面氏が荒らしであるとして、そもそも氏の荒らし行為とこのスレに何の関係があるんだよ?
特に荒らされた記憶なんてないんだが?

374 :
関係ないところにも難癖付けて話題ふりまこうって腹だろ
荒らしからしたら、その仮面って人のあることないこと好き勝手各地で言えれば勝ちなんだから
つまりスルー推奨以外ない、荒らしと対話すること自体無理なんだし

375 :
荒らし生息地のこのスレは潰す

376 :
やる夫界隈みたいな小さい界隈内ですら各所に迷惑かけて嫌われまくってる
オーダー速報って板の連中が荒らしてるんだよ
管理人も似たようなもので、こちら側の通報ガン無視!
こうやって外部との対立を煽って楽しむような基地荒らしばかりの板なの
通り魔に刺されたと思って諦めるか、徹底的に潰すかのどちらかしかないだろうね

377 :
猿仮面涙拭けよ
誤爆と用語スレで罪状を詳しく紹介されたからって小田を恨むのは筋違いだぜ

378 :
まあ小さいってもやる夫の人口はたぶんロワより多いけどなw

379 :
なんだ、お前らロワとは無関係だったのね。
よく来たわね、いらっしゃい。

380 :
やる夫作者の人口は1000人ぐらいか

381 :
意図誤爆で流れぶった切って嫌がられてる空気読まず何度も繰り返したり
各地でやたら必死に喧伝したり自分も同類に堕ちてるのは気付いてるのかね
糾弾する側はされる側より説得力がないと無意味なのに
やってる行為のせいで糾弾する側も馬鹿というか気違いにしか見えないのがどうも

382 :
仮面とかいう荒らしを知れたことは有益だったけどね。あ、もちろんソース元見に行った上での感想な
自ロワのしたらばで山口ocn規制しといたし、ここには悪いが有益な情報だったよ

383 :
どこのロワの管理人だか知らんがろくなもんじゃねーな
それを一々このスレに報告する必要がどこにあったんだよ

384 :
あそこしか考えられんが

385 :
>>381
仮面さんちょりーす

386 :
|∧∧
|・ω・`) そ〜〜・・・
|o旦o
|―u'
| ∧∧
|(´・ω・`)
|o   ヾ
|―u' 旦<コトッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ミ  ピャッ!
|    旦<ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14741/

387 :
>>386
これ、別のスレでも見たな
新しい別館でも作ろうってことなのか?

388 :
今の別館で規制された馬鹿共集めてIP採集でもしたいんじゃねえの
一ヶ月ぐらいしたらまとめて晒すとかな

389 :
俺は仮面さんの復活を信じてるよ。

390 :
てかやる夫もすっかり落ち目じゃねーか
ここ二年位ブログで取り上げられてるの見たことないぞ

391 :
あちらさんの主舞台はもう2chじゃないからねえ
まとめブログの類には取り上げられないんじゃないかな

392 :
いったい何のスレなんだか
創作も発表もする気が無いなら板違いだから出て行け

393 :
削除依頼しとけカス

394 :
それよりも埋めた方が手っ取り早い

395 :
そろそろ沈静化した…か?
元のまったりに早く戻ればいいな

396 :
だな
気長に待とうぜ

397 :
今日は七夕だな
生憎、天の川は見えそうにない天気だけど
このロワが無事完結することを祈っておくよ

398 :
投下が無いのは書き手の実生活が忙しいだけだよな?
いや、そうに違いない。夏休みになったらきっと予約がくるさ

399 :
気長に待ってるよ

400 :
早い所はもう休み入ってるんじゃないかな
節電で早まるかもしれないし

401 :
二人の書き手はもう戻ってこないだろ
1人は書き手をやめる趣旨を某に書き込んでたし
もう1人は戻ってくる気を失くしただろうし
dR氏にしか期待できない

402 :
>>401
マジか。それは初耳だ
書き手辞めるのかあ。気持ちは理解できるけども…辛いな
読んでるだけの身でおこがましいが、見捨てないでーって言いたくなる
自分ごとき何様だと思うけど。本当に
新たに書き手募ってみるとか?
お三方のクオリティに匹敵する程となればそれも難しいか…

403 :
ちょっと見ない間になんか人が離れるようなことでもあったの?
けっこう好きなロワなんだけどなぁ…

404 :
界隈最大規模のやる夫板である「やる夫U板」ならびに複数のやる夫板を長期間に渡って荒らし続けてやる夫界隈を全面規制された荒らしがいた
そいつは「第二次スパロボロワイアル」の最終回書き手兼、「やる夫が仮面の夢を見るそうです」の作者である山口ocnだった
普段から日常的に荒らしを行い、ロワに限らずいくつもの創作企画を混乱させたことがあると本人自ら語っている。ジャンプロワもその一つ
で、これまた本人の発言や作風、キャラの好みからここのエース書き手がその山口ocnと同一人物と疑いをかけられ、いろんなところから凸されて荒れに荒れた
渦中の書き手自身はフシアナすれば疑いは晴れるという住民の助言をスルー、誤爆スレで特定されやすいように毒を吐くも、同じくフシアナしたら?と言われ擁護されず。それがショックだったかしばらく書かない宣言。
IP把握しているはずのしたらば管理人も何故かまったく火を消そうとはせず、荒れる本スレを野放しに
で、荒らしが潜伏しているかもしれないロワに人が集まる訳もなく、焦土と化したのが現状

405 :
別館をアク禁にされたからここで演説ですね、わかります。
妄想乙

406 :
やる夫板の連中がクズばかりという以外まったくわからん

407 :
さすがに根拠もないのにやる夫系のにんげんを中傷するなよ

408 :
>>404のどこにやる夫板の人間がここを荒らしたと書いてあるんだ?
見当違いとしかいえんぞ

409 :
ここにいる書き手が山口ocnとやらである証拠すら無いのに叩くのは見当違いの中傷ではないのかい?

410 :
節穴すりゃ一発なのにな
荒らしをかくまうやつらは荒らしと同じ

411 :
っていうか、なんで避難所管理人は動かなかったの?
フシアナせずとも管理人が違いますと言えば一発収束しただろうに

412 :
結局なにが悪かったんだこれは

413 :
一番悪かったのは荒らし。
次に悪かったのは、フシアナせず、
トリもつけずに誤爆スレに書き込んだ挙句、
本スレで爆発した件の書き手。
その次が、未だ動こうともしない管理人。

414 :
後は、誤爆スレで情け容赦なくショットガンの人をなぶったのも、
件の書き手じゃないか。みたいな話もでてた気がする。
あそこまでボコボコにされると可哀相だった……。
誤爆スレに件の書き手がいた事が明らかになった事から、
仲間に擁護されなかったショットガンの人の哀れさが増す……。

415 :
早い話「やりすぎはよくない」って事ですか?わかりません!

416 :
ショットガンの人?

417 :
このスレは潰すから

418 :
要するにこのスレしか見てない人間にはわけもわからないうちに
荒らしを発端としてこのロワは終了したわけだな

419 :
好きなロワだっただけに残念だわぁ…

420 :
保守

421 :
このロワは更新されないんですか・・・残念です・・・

422 :
いちばん悪いのは、「いちばん悪いのは自分以外の誰か」と最後まで自己を省みないままの全ての住人ですよ
リスタートなんてしなければよかったのに

423 :
ここしか見てない俺からすれば、何が一番悪い以前に、何が原因で荒れて廃れたのかすらわからなかったな。
なんか外部も見てること前提みたいな流れだったみたいだけど、
SSの内容自体にそこまで問題はなかったし、このまま続けられるんじゃないの?

424 :
じゃあ自分で続きを書いたら?

425 :
>>423
そだよね。勝手に外部の人間が火病起こしてただけにしか見えないんだよね。

426 :
えっ、盛大に自爆した書き手がいるじゃないですか(棒)
誤爆で毒吐けば味方になってくれるとでも思ったんだろうけど浅はかでしたねw

427 :
いや、だから本スレしか見てない人間からしたらその誤爆もなんだったのかよくわからないし外部からなんか来たしかわからないんだってば

428 :
情弱自慢されても・・・
外部の人間引きこんだ要因の一部は書き手にあるのに、外部だけが悪いとか何言ってんのって感じ

429 :
情弱つうか他所に空気を持ちこむなってだいたいのスレで共通だよな?
ここの書き手の一人が他所でオイタしたのだとしてもこっちにわざわざその空気持って来なくてよかったんじゃね?
って思ってさ。

430 :
外部で迷惑かける書き手なら、遅かれ早かれ内部でも問題起こしてただろうから
もう、どうでもいい

431 :
「外部で毒吐きます。でもここには持ち込まないでね」
ギャグか? どんだけお花畑なんだよ
やったらやり返される、その大義名分与えといて自分らは安泰だとでも思ってんの?

432 :
ここでどうこう議論したところでもうこの企画は頓挫してるしなあ
かく言う自分も件の騒動は訳が分からなかった人間だが
書き手個人の事が原因で企画自体が潰れたってことはすごく残念に思ってるし
この企画を支えてきた、騒動と無関係な多くの人が納得いかないって思うのは当然だと思う
ていうかまだこのスレ見てるヤツいるんだなw正直驚いたw

433 :
勘違いだったらスマンけどたしか問題が発生したっぽい誤爆スレって毒吐きスレの一部だよな?
毒吐きスレが本スレでやったら荒れるからって自重する意味であるスレなのに毒吐きのネタをこっちに輸出んなよって言いたい。

434 :
誤爆で特定される毒を吐くのと本スレで毒吐くのとはどこが違うんだ?
だったら最初から酉つけて言えばいいだろ。それなら毒でも何でもなく書き手の意見だってことで誰も咎めたりしねーよ

435 :
隔離スレが祭りになるのと本スレが荒れるのじゃあ大違いだろ、運営的に考えて。

436 :
あっ、誤爆スレや毒吐きスレに関して色々と俺が疎い面があるのでそこら辺でツッコミどころあったらツッコミ入れてくれるとありがたいです。
間違った認識で書き込んでるとスゴイ恥晒してあとで悶々としそうなんで。

437 :
簡単に言うと、誤爆スレはパロロワ総合毒吐き的な位置付けだけど
あんまりストレートに毒吐くと即削除&アク禁されるという場所
で、あっちで毒が吐けなくなったおバカさんがこの辺にはうようよしてるってわけ
お前さんが相手にしちゃってるのはそういう連中だから、要は何が言いたいかというと
こいつらに何を言っても無駄だ、やめとけ

438 :
多分だけど>>437もかなりズレてる
まあ一方を悪者にしておいた方が収まりはいいんだけどね

439 :
書きたくても把握率低すぎて書けないんだよね

440 :
どんなに書き手がクズだろうが
SSを書かない奴に文句を言う資格はないよ

441 :
ほんとだよ。
ただ厳しい事を言っただけなのに、
管理人が捏造して追い出すとか……。
それに追随した各ロワの管理人もRばいいのに。

442 :
441は何の話?
捏造がどうこうって初耳なんだが?
あとSS書かない奴が〜理屈は管理してくれてる人に対する感謝とかにもまんま転用できる理屈なんだし
Rばいいのにとか言わないのw

443 :
>>442
追い出された自分は悪くないっていう
お花畑な人なんだろう
けっこうなロワがしたらば進行や総合版に移籍して
荒らせなくなっちゃったしね

444 :
仮面さーん

445 :
仮面さんやる夫界潰そうぜ

446 :
p4の新作ディスまってます

447 :
アニメでP4やってるけど、これ全話見たらここで書き手できるかもね。
アシュナードもよく知らないけど出さずに丸投げすればいいよね(チラッ

448 :
アニメ効果、あるといいですね・・・。

449 :
保守

450 :
ピカチュウおらんのか?

451 :
何度リスタートしても結果は同じ

452 :
リスタートもいいなあ

453 :
保守

454 :
リスタートしかないんじゃないの?

455 :
最後の投下が>>217の4月5日
もうまる1年以上投下ないからここは終わったって判断してもいいよね
誤爆では言えなそうなこと書いてくことにするよ

456 :
リスタートするにしても…

457 :
あげ

458 :


459 :
まだスレあったのか、リスタート前から覗いてたが懐かしいな

460 :
>大阪府三島郡島本町の小学校や中学校は、暴力イジメ学校や。
島本町の学校でいじめ・暴力・脅迫・恐喝などを受け続けて廃人同様になってしもうた僕が言うんやから、
まちがいないで。僕のほかにも、イジメが原因で精神病になったりひきこもりになったりした子が何人もおる。
教師も校長も、暴力やいじめがあっても見て見ぬフリ。イジメに加担する教師すらおった。
誰かがイジメを苦にして自殺しても、「本校にイジメはなかった」と言うて逃げるんやろうなあ。
島本町の学校の関係者は、僕を捜し出して口封じをするな
>島本町って町は、暴力といじめの町なんだな
子供の時に受けた酷いイジメの体験は、一生癒えない後遺症になるなあ

461 :
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

ZAO1U

462 :
ZC3

463 :2018/10/17
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

94C

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