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オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd Part2


1 :2011/08/09 〜 最終レス :2018/10/17
オリジナルキャラてバトルロワイアルをするというスレです。
様々な人々の感情が交錯し、一つの物語を作る。
それが、バトルロワイアル。
まとめwiki
http://www10.atwiki.jp/orirowa2nd_ver2/
前スレ
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1283567387/

2 :
状況まとめ
【出場枠】
○愛沢優莉/○藍葉水萌/○板垣退助/○猪目道司/○イリアム・ツェーン/○イロハ/○オーヴァー/○カイン・シュタイン/○片嶌俊介/
○加山圓/○琥珀愛子/○逆井運河/○椎名祢音/○宍岡琢磨/○篠田勇/○白井慶一/○田崎紀夫/○トーマス・A・エジソン/○葉桜加奈子/○花緒璃乃/
○ファンガール・J/○フィクション/○フランツ・O・ブリュデリッヒ/○フランドール・オクティル/○魔王/○真琴真奈美/○御木魚師/○溝呂木桐子
28/30
【一話死亡枠】
●聖澤めぐる/●劉厳/●二階堂永遠/●橘蓮霧
【予約一覧】
>>540
◆BUgCrmZ/Lk氏:イリアム・ツェーン、葉桜 加奈子、フィクション 〜2011/08/11(木) 22:03:00.30
>>543
◆4mUKylJw5c氏:龍造寺さくら、安田智美 〜2011/08/12(金)12:16:11.03

3 :
前スレが容量オーバーだったので立てました
投下途中の方、気づかれましたら続きをどうぞ

4 :
投下乙です
時間表記の件(テンプレで明記する?ってやつ)など、テンプレについても一度話し合った方がいいかもしれませんね
それでは続きを投下させて頂きます

5 :
支援

6 :

しかしここで異変が生じた。
旋回し再び攻撃しようと考えたところで、少女達が崖から身を投げたのだ。
罠か、もしくは逃走の算段でもあっての行為なのか――
分からないが、とにかく追いかける気力はなかった。
下手においかけて、途中で変身が解除されでもしたら目も当てられない。
今はとにかく休憩しよう。
変身というカードのアドバンテージを活かすためにも。
手に入った武器とスキルカードを使いこなすためにも。
……しかし一人だと休憩がなかなか取れないのではないかということに気がついた。
常に気を張らねばいけない。
ましてやこちらの武器はダイバーズナイフ一本。
あまり悠々とは休めないだろう。
ならば、いっそ同盟も視野に入れるか。
途中で裏切られる恐れはあるが、少なくとも放送までは同盟を組んでくれるだろう。
もっと言えば、誰かと対決するまでは、割と安全だと言える。
切り捨てるタイミングではないからだ。
もしくは、力の強い善人に保護してもらうか。
演技をすれば何とかなるはずである。
一応、まだ硝煙の匂い一つ付いてないし。
そして、やはり期を見て裏切る。
こっちの場合、利害がはっきりしている同盟と違い、相手の善意などという不確かな物に頼らざるを得ないので、出来ることなら避けたいが――
まあとにかく、誰かに会ったら考えよう。
そう思いながら、もう少し安全そうな休息場所を求めて重い足を動かし始めた。
そして、ふと思い立ち崖を覗き込む。
罠にしては時間が経ったし、逃げたのならどの道手遅れだろうから、問題ないと判断してのことだ。
本当ならずっと待っていた可能性もあったのだが――そこまで頭が回らなかった。
ただ、誰かを騙して保護される際、正体を知った者が生きているか死んでいるか知っておきたかったのだ。
「…………いいな」
ぼそりと、呟く。
海面には、二枚のスカーフが仲良く漂っていた。
それはまるで生前の姉妹のようで。
自分はもう愛しい人とあんな風には寄り添えない。
そのことに胸をチリチリと痛めながらも、崖を背に一層重くなった足を動かし始めた。

【一日目・黎明/B−3 山岳】
【椎名祢音】
【状態】疲労(極大)
【装備】ダイバーズナイフ
【スキル】『変身』
【所持品】基本支給品×2、不明支給品×0〜2(確認済み、武器はなし)、不明スキルカード×1
【思考】
1:片嶌俊介以外全員R
2:しばらく休む。場合によっては同盟の結成や保護対象として演技をすることも視野に。

7 :



 ☆  ★  ☆  ★  ☆



好きなものが違ったから、いつも一緒には居られなかったね。
それでも二人、彼氏と長続きしなくて、イベント事ではいつも一緒に居たよね。
お父さんもお母さんも必死に働いていたから、いつも二人ぼっちだった。
だけど寂しくはなかったんだよ。
……ねえ。何でだか分かる?
私ね、ずうっとずうっと思っていたことがあるんだ。
だけど、決して言えなかった。
だって、小っ恥ずかしいじゃない。
母の日とか父の日みたいに、姉妹に対して日頃のお礼を言える日があればもっと普段から言えたのにね。
最期だから、言うよ。
一度だけ、もう二度と言わないから。
あんな怖いこと、本当に出来た理由。
最期まで、笑顔を保てた理由。

貴女が傍に居てくれた――それが、理由なんだよ。

今回も、普段でも。
貴女の存在、結構大きかったんだよ。
本当に、ありがとう。
貴女が居てくれて本当によかった。

                     万事で私をすぐに追い抜く、生意気だけどいつも笑顔で周囲を照らしてくれる、私の大切な妹。
ずっとずっと大好きだよ――――
                     いつでも私を見守ってくれる、クールに見えて可愛い所も持っている、私の優しいお姉ちゃん。


8 :
以上で投下終了です。
変身の能力が強すぎる等、問題がありましたらお気軽にどうぞ。

9 :
あと、白井の状態表を変更します。疲労のこと忘れてた……
【白井慶一】
【状態】健康、襟元が血濡れ

【白井慶一】
【状態】やや疲労(ハイになっていて忘れている程度)、襟元が血濡れ
に変更します。
個人的に、Wikiにはスキルカードのまとめも欲しいかなあと思ったり。
前スレ落ちたら見直せないですし。

10 :
投下乙!
一色姉妹切ねぇ…泣きそう
変身する度に疲労困憊するリスクがデカイので十分バランスは取れてるかな

11 :
イリアム・ツェーン、葉桜 加奈子、フィクション投下します

12 :
私に支給された参加者候補名簿に載っていた名はそれはもう多種多様なものだった。
一国の女王や著名な企業家に軍人や研究者、果ては犯罪者や殺し屋などの裏社会の人間まで網羅しており統一性などありはしない。
強いて言うなら日本人が多いのが気になるところか。あと魔王ってなんだ。
知った名は、個人的な知り合いを含めても約3分の1と言ったところだ。
その中でも厄介なのはやはり裏社会の人間。
状況にかかわらず、襲い掛かってきそうな劉厳のような戦闘狂や快楽殺人者。
そして何より危険なのはプロの殺し屋だろう。
素人殺人鬼が相手ならば襲われたところで後れを取るつもりはないが、玄人相手となるとそうもいかない。
この名簿にある裏のプロは知る限り5人。
まず、未空澄鈴とリリヤ・ハリラのコンビ。
実戦担当の未空澄鈴と後方支援担当のリリヤ・ハリラ。
警護から暗殺まで一通りこなす武闘派で、割と運河みたく何でも屋に近い。
単体であれば何とかならないこともない相手だが、連携を取られると厄介な相手だ。
だが、良くも悪くもプロフェッショナルである二人が、無意味に殺し合いに応じる可能性は低い。
乗るとしても状況に確証を持ってからだろう。
次に、香港マフィアの用心棒。王凰。
一時期失踪していたらしいが、その辺の詳細は不明だ。
中国武道の達人で、いわゆる戦闘狂。
弱者に手を出すタイプではないが、未空リリヤと違い積極的に戦闘行為に応じる危険性は高い。
一対一の格闘では勝ち目はないので、できれば出会いたくはない。要注意。
そして、過剰殺人者オーヴァー。
この名簿に載っている中で、もっとも出会いたくない相手だ。
昔の仕事で一度だけ、奴の仕事が行われた後を検証したことがあるが、あれは人間の所業ではなかった。
屋敷は一面血塗れ、子供もペットも一切の隔てなく肉片と化していた。
現場後を見ただけで分かる、あれは目撃者の始末などという次元ではなく、目についたものすべてRキリングマシンだ。どう考えてもイカれてる。
彼が参加者候補どまりであることを祈るばかりだ。
最後に、フィクションだが。
残念ながら、かつていたとされている暗殺者ということ以外、彼に関してはほとんど情報がない。
言い訳するわけではないが、私の諜報能力がどうこうという話じゃない。
裏稼業に生きる者なら誰でもその名は知ってる。だが彼が何者であるかは誰も知らない。
一度も目撃されたことなく、髪の毛一本すら証拠を残したことがない。あまりの痕跡のなさに、人物像すらつかめない。
奴は幽霊だ、宇宙人説なんて暴論が警察や諜報部のあたりで真面目に飛び出す始末だ。今となっては笑えない話だが。
偶然起こった事故や、誰かが成し遂げた完全犯罪を我々が勝手に一人の犯行と断定し、フィクションという架空の暗殺者を作り上げたのではないかというモノすらいるくらいだ。
完璧すぎるまでの仕事の痕跡だけが彼がいたという証拠である。
要するに、フィクションとは実在を証明しただけで称賛されるUMAみたいな存在である。
「――――それで、ボクに何か用かい?」
そんなUMAみたいな存在が、今、私の目の前に立っている。
なぜこうなったのか、時は少しさかのぼる。
■■■■■■■■

13 :

行動を開始した直後、私はこちらに近づく人の気配を感じた。
慌てて茂みに身を隠すと、気配を殺し様子を窺った。
「…………です」
風に乗って僅かに声が聞こえる。
話し声だろうか?
だが、それはおかしい、感じられる気配も足音も一人分だけだ。
ならば、独り言だろうか?
「それから……になって…………で」
とぎれとぎれながら、言葉の内容が耳に入ってくる。
少し距離が遠いか。
そっと聞き耳を立てる。姑息などと言うなかれ。
盗み聞きも立派な情報取集の一つだ。
「……なんです……フィクションさん……」
フィクションさん?
予期せず聞こえた不穏な単語に思わずギョッとする。
いや単語としては不穏でもなんでもないのだけれど、名簿に目を通した直後ということもあり、この状況では驚くに値するものだった。
様子を確認するため、そっと茂みから顔をだした。
そこにいたのは制服を着た少女と和服姿の男の二人組だった。
先ほどの声は少女のモノだ。
つまりあの男がフィクションと呼ばれた男という事か。
あれがフィクションなのか?
あれが、あのフィクションか?
遠目から見る限り達人のような凄みや、殺人者特有の狂気といったある種の恐ろしさは感じられない。
というより、あの男からは何も感じない。
気配すらない。
本当に、何もない。
…………試してみるか?
あれが本物かどうか。
本来ならば関わるべきではない。
このまま身を隠してやり過ごすのが正解だ。
だが、正体不明の暗殺者の正体を明かせるかもしれない。
その好奇心に元諜報員の血が騒ぐ。
そっと足元から小指の爪くらいの大きさの小石を拾い上げる。
これなら当たったとしても大事には至らない。
これをぶつけてどう対処するかを見る。
まあ本物のフィクションかどうかの判断までは至らないとしても、少なくとも素人か玄人かの判別はできるだろう。

14 :

茂みに身を隠しながら、男に狙いを定める。
確実に当てれる距離まで三歩。
外さぬようしっかりと狙いを定める。
残り、二歩、一歩。
距離が近づく。
後、半歩。
「あ、加奈子ちゃん。ストップ」
だが、唐突に男が足を止めた。
「…………っ!?」
予想外の動きに思わず反射的に体が動いてしまった。
勢いよく放たれた石礫は狙いを逸れ、男を掠める事すら無かった。
やられた。
気付かれていたのか。
どう対処するとか、躱すとか躱さないとか以前の問題だ。
外させられた。
「いやまぁそんなに落ち込むほどでもないさ。
 攻撃に意識の行くまではうまく隠れてたと思うよ?」
明後日の方向を向きながら、何でもないような声で男が声を上げた。
それは明らかに私に向けられた言葉だ。どう考えてもバレている。
これ以上隠れても無駄だろうと観念し、素直に茂みから姿を出した。
「……私もまだまだということですね」
ひとまず両腕を上げて降参の意を示す。
好奇心猫をR。
彼が本物だというのならこの場で殺されてももおかしくはない。
何せ相手は冷徹で冷酷な伝説の暗殺者なのだから。
どう切り抜けたものか、と思案するが、意外にも相手は対して気にする風もなくこちらを見据える。
濁っても澄んでもいない、ただ底が見えないほど深い青い瞳。
「それで、ボクに何か用かい?」
■■■■■■■■

15 :

「先ほどは失礼しました。私はイリアム・ツェーンと申します」
改めて二人の間に姿を見せて頭を下げる。
男の正体の見極めはまだ保留だ。
先ほどの件から男が素人ではないのは確かだが、それがフィクションであるということと=という訳ではない。
「私は葉桜加奈子です。よろしくおねがいします」
そう言って、男の横にいた少女がペコリと可愛らしく頭を下げた。
その様子を観察する。
どこからどう見てもただの女子高生だ。
伝説の暗殺者の相棒としてはどう考えても不釣り合い。
私の疑惑に満ちた視線に気づいたのか、男の方が答える。
「協力者だよ、脱出のためのね」
協力者ねぇ。
いったいどんな思惑があるのか。
「脱出のための協力者ということは、あなたは脱出を考えているのですか?」
「当然。こんなところに長居する趣味はないんでね。
 さっさと終わらせて、いつも通り家に帰って寝るとするさ」
……本当だろうか?
平和的解決を望んでいるという話は、なんの力もなさそうな女子高生を連れていることから、多少信憑性のある話だが。
終わらせるにしてもあるかどうかも分からない脱出方法を探すよりもフィクションなら”正攻法”の方が早いだろう。
それもそう信じさせるための策かもしれない。
いや、あのフィクションがそんな回りくどい事をする必要があるか?
ちらりと視点を女子高生の方に向ける。

16 :

「加奈子さん、あなたは彼とはもともとのお知り合いか何かですか?」
「いえ、私もさっきであったばかりですよ?」
「では、彼の名はどうやって知ったのですか?」
「どうって…………普通に名乗られましたけど?」
何故そんなことを聞くのか、といった顔の少女。
その線は薄いと思ってはいたが、既知である可能性は消えたか。
というより、この加奈子という少女。
動きの素人くささといい、これまでの反応といい。
フィクションの事なんて何も知らない完全な一般人で間違いない。
仮にこの男がフィクションを騙る偽物だとしても、こんな相手を騙す必要があるだろうか?
虎の威を借るにも虎の存在をしらなければ借りたところで意味がない。
というか、本物だったとしても正体不明の暗殺者が普通に名乗るなよ。
ため息をついて、男に向き直る。
「単刀直入に訪ねましょう。
 あなたが"あの"フィクションなのですか?」
「さぁ? 君が言うのがどのフィクションかは知らないが、そう呼ばれていたこともあるね」
何ともつかみどころのない、はっきりとしない回答だ。
フィクションの模倣犯など星の数ほどいる。彼もその一人である可能性は否定できない。
だが、今のところここにフィクションがいるということを知っているのは、名簿を配られた私だけ。
この場で、その名を名乗る人物がいるという一致は偶然として片づけていいものではない。
もしかしたら本名フィクションさんなんて奇特な名前の人である可能性もあるだろう。
だが、この男は、反応からしてフィクションを識っている。
「それで、ボクが君の言うフィクションだった場合、どうしようっていうんだい?」
試すような声。
まあ、確かに知的好奇心が先行してその後はあまり考えていなかった、というのが正直なところなのだが。
伝説の暗殺者が目の前にいたら何をするか。
考えるまでもない。暗殺者にお願いすることなんて一つだろう。
「そうですね。ここはひとつお仕事でもお願いしましょうか」
■■■■■■■■

17 :

「仕事の話ねぇ。まあ今は臨時開店中だし、話くらいは聞くけど。
 加奈子ちゃんも待たせてるんだし、出来れば早く済ませてほしいかな」
内容が内容なだけに場所を変え、加奈子さんには少し外してもらった上で話を切り出す。
もちろん周囲の安全は確認したうえで、何かあってもどうにかなる場所に待機してもらった上でだ。
「劉厳という男をご存知ですか?」
「名前くらいは。確か指名手配中の格闘家だっけ?」
「ええ。では、その劉もこの場に参加者として呼ばれてることはご存知ですか?」
「初耳だね。で、その劉を始末しろと?」
「いいえ。ターゲットは劉ではありません。
 というより劉はもう死亡しています、つい先程すぐそこの広場で殺されました」
「へぇ」
「偶然ですが私はその現場を目撃したのですが。
 その下手人、殺してくれません?」
あえてストレートに告げてみる。
相手の反応を伺ってみるが、表情に変化はない。
つまらなさ気というか、どこか興味なさ気な顔のままだ。
「なんでその男を? 別に君は劉と親しかったってわけでもないんだろ?」
「身の安全のためですね。相手は人間とは思えない化け物でしたから
 はっきりって私ではどう逆立ちしても勝てる相手ではさそうですし」
「そんな化け物を殺せって? 無茶を言うね」
「ええ、ですからあなたに依頼するんです。
 私の知る限り、あの化け物に匹敵できそうなのはあなただけですから」
これはホント。
運河は……まぁ化け物退治の役に立つとは思えないし。
あの化け物相手だと他の殺し屋連中でも勝ち目は薄い。
というか、王凰やオーヴァーなんかとは直接交渉自体したくない。
「知る限り、か。
 まるでほかの参加者が誰なのか知っているような口ぶりだね」
流石に目ざとい。
まあここで変に勘ぐられても面倒だし、隠すようなことでもないか。
「ええ。私の支給品に参加者候補の名簿がありましたので。
 その中でもあなたの名前は少し抜けてる」
「なるほど、それは随分と過大評価だねぇ。ボク割と喧嘩弱いよ?」
「ご謙遜を。あなたほど高名な暗殺者はいないでしょうに」
私の世辞のような言葉に男は僅かに眉をしかめた。
「それ、あんまり嬉しくない評価だなぁ。名前が売れるなんて三流の証だし」
「あなたの場合は例外でしょう?」
「いや、どんな理由であれ名前が売れちゃったのは割とショックだったんだぜ?
 そんなつもりもなかったしね」
『フィクション』の場合名前の売れ方が他の三流とは理由が違う。
一度や二度ならまだしも、不可能犯罪に近い行為を繰り返されれば弥が上にも話題になる。
ほとんど都市伝説の扱いに近い。

18 :

「まぁそれでも依頼したいっていうんなら別にいいけど、自分で言うのもなんなんだけど、ボクは結構高いよ?」
「ええ、構いませんよ。ここから脱出できたらいくらでもお支払いしましょう」
「脱出したらってことは、つまり君がこの場で死んだらご破算ということだ。酷いね。
 それに生憎、前金制なんだ。それじゃ依頼は受けれない」
「……わざわざ前払いにしなくとも、あなた相手に支払いを渋る命知らずはいないでしょう?」
「そうでもないさ、取立ても面倒だしね」
そういう問題なのだろうか?
ともかく本人的には大真面目っぽいので、譲る気はなさそうだ。
「けど、この場で私に支払えるものなんてありませんよ?
 大抵のものは没収されてますし。まさか体で払えとでも?」
「それはいいね。ちょうど手は欲しい所だったんだ、キミは何が出来るんだい?」
つまり、私が使えるかどうか。有能さを示せということか。
彼の目的、脱出につながる成果を。
少し思案し、バックの中からあるものを取り出す。
「それは?」
「劉の首輪です」
どうやってとったのか、なんてくだらないことは互いに言わない。
わかりきったことだ。
「で? それをキミが解析すると。出来るのかい?」
「ええ、情報収集と解析が私の専門分野ですから」
機械工学は専門外だけど、それは言わない。
専門家を探しだすのも予定のうちだ。
「ふーん。まあいいや。前払い分としてはそれでいいよ。
 依頼を受けてやってもいい。ただし幾つか条件がある」
「条件?」
「まずひとつ、仕事をするにも道具がなければ話にならない。
 とりあえず君の持ってる武器を全部渡してもらおうか」
「武器って……私にこの戦場を素手で行けと?」
「ああ、情報収集が専門なんだろ?
 だったら武器なんてなくてもいいんじゃない?」
酷い。
この人酷い。
カツアゲかよ。
「……せめて護身用の武器くらい持っておきたいんですが。
 私が死んだらあなたにとっても不利益でしょう?」
「そう? 別にどっちでもいいんだけど、正直あまり期待もしてないし」
……正直過ぎるだろこの人。
いや、単純に私に対する期待感の現れか。
信頼されていない。
初対面なのだから当然と言えば当然なのだが、舐められてるのは癪だが仕方あるまい。

19 :

「わかりました。劉厳の支給品は回収してありますので、こちらは差し上げます。
 落としどころしてはこれでいいでしょう?」
「まぁそうだね。それでいいよ。
 あ、地図とか食料とかの日用品はいらないから」
意外と細かい。
しぶしぶながら荷から支給品を見繕う。
「あぁそうそう。君の支給品の参加者候補の名簿。
 それももらっていいかい?」
「……ええ、それはかまいませんが?
 私はもう確認しましたし中身はだいたい覚えてますから」
「ああ、ありがとう」
幾つかの支給品とともに参加者名簿を手渡す。
「次の条件だけど、依頼を受けたとしても、行動の優先順位としてはボクの目的を優先させてもらう。
 もちろん脱出の手掛かりを探しながら索敵はするが、索敵のための索敵はしない。かまわないかい?」
「ええ、それで構いません」
状況が例外的すぎるため、ある程度の妥協は必要だろう。
この場においては彼も巻き込まれた側だ。
この条件は仕方ないところだろう。
「じゃあ最後の条件、というか大前提なんだけど。
 実際相手を見て倒せないと思ったら、依頼からは手を引かせてもらうよ」
「ちょっと待ってください……それって、総合すると。
 索敵もしなければ見つけても勝ち目がなければ戦わない、ってことですか?
 それじゃ依頼を受けたって言わないんじゃないですか?」
というか、そんな話はない。
一つ一つの条件はともかく、積み重なると流石にない。

20 :

「うーん。そうだなぁ。キミはムサシ・ミヤモトを知っているかい?
 生涯無敗の剣豪なんだけど。何故彼が負けなかったか知っているかい?」
いきなり何の話だ?
「さぁ? 単純に強かったからじゃないですか?」
「違うね。それもあるけど、負ける相手と戦わなかったからさ」
……なるほど。
そういう話か。
「つまり、あなたも同じだと?」
「まあ、そんなところ。それがヘイホーってものだろう?
 ボクはできない依頼は受けないんだ。その是非を確かめもせず依頼を受けるなんて結構特例なんだぜ?」
特例。
特例ねえ。
「それに、君の条件だって似たようなもんだろう?」
む。確かに。
私が首輪を外すすべを手に入れられる保証はない。
曖昧な報酬に曖昧な報酬。
なるほど、これはイーブンなのだろうが、すでに支給品を渡してしまった分こっちが不利か。
渡してしまった以上、断っても得がない。契約が成立してから渡すべきだったなクソ。
そこまで相手の思惑通りなんだろうが、食えない男だ。
「そうですか…………そうですね。わかりました。その条件を呑みましょう。
 ちなみに聞いていいですか?」
「なんだい?」
「コレまで依頼を断った経験は?」
「ん? そうだなぁ、そういえばないね。ま、たまたまさ」
本当に、食えない男だ。
■■■■■■■■

21 :

「とりあえず、成果にかかわらず、正午に一度落ち合おうか。
 場所はそうだなぁ、なるべく人目に付かない方がいいかな」
「でしたら教会はどうです?
 市街から外れてますし、別段人が集まるような施設でもないですし」
「そうだね、そうしようか」
と、言うわけで、ある程度の情報交換の後、合流場所を決めてフィクションとはそのまま分かれた。
合流場所に現れてない場合は、まあそういう事なので言うまでもないことだ。
そしてしばらく行って完全に姿が見えなくなったところで息をついた。
「はぁー、緊張したぁー」
エージェントの顔を取っ払い緊張を解いたと同時に、どっと汗が出た。
途中まで訝しんでいたが、しばらく話してて分かった。
アレは、本物だ。
私だって普段の美少女イリアム・ツェーンちゃんとスーパーエージェントイリアム・ツェーンの顔くらいTPOに応じて使い分けてる。
けど、あいつにはそれがない。
あまりにも感情のぶれがなさすぎる。
多分あいつは、あの調子で人も殺せる。
表面はまともだが、根っこの部分で壊れてる。
「まったく、化け物だらけね…………この島は」
かと思えば葉桜加奈子のような一般人もいる。
本当に、選考基準が謎だ。
しかし、我ながらよくぞ度胸とハッタリだけであの交渉を切り抜けたものだ。
報酬はいくらでも払うといったものの、あんなもんもちろん嘘である。
というより、目下就活中の私に金なんてない。
だが、あの場ではあの回答で正しい。
化け物は化け物同士潰し合ってくれればいい。
相討ちになれば支払もせずに済んでさらにベストだ。

22 :

問題なのはフィクションが依頼を達成し、互いに無事に脱出できた場合にどうするかだが。
無事に脱出できてる時点で最悪とはいえない。
今後を考えられるだけ現状よりましだ。
うまくいかなかったらいかなかったでそれはそれだ。
フィクションが死んだところで私にはなんの痛手でもない。
殺し屋なんてそんなもの。
後腐れなくて結構だ。
渡した支給品の方も劉のモノをまるまる渡したっていうのは嘘で、使いやすいモノは確保してあるわけだし。
例えばこのM36レディ・スミス。女性向けの護身銃だ。
こんな豆鉄砲があの化け物を倒す役に立つとも思えないし、私が持っておくという判断は悪くない。
つまりどう転んでも損はない。
もっとも、取引がなくとも私は首輪を解除するために動くだろうし。
依頼がなくとも見の危険が迫れば彼はあの男をRだろうが。
彼の意識が少しでもそちらを向いて、少しでも早く危険要素を排除してくれるよう動いてくれれば御の字だ。
ちょっとした保険というより、伝説の暗殺者に依頼してみたという思い出依頼である。
どちらにせよとりあえず、私の動きに変わりはない。
首輪解除のために技術者を探して、後ついでに運河も探す。
ああそうだ、あのフィクションに会えたこと、運河に会えたら自慢するとしよう。
【一日目・黎明/C-5草原】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】なし
【所持品】基本支給品×2、不明スキルカード(確認済)、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.参加させられてるであろう逆井運河を探す
2.首輪を解析できる技術者を探す
3.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
※参加者候補の名前は記憶しています
■■■■■■■■

23 :

「結局、イリアムさんと何の話をしてたんですか?」
「ま、大した話じゃないさ」
10分ほど二人で話した後、戻ってきたのはフィクションさんだけだった。
イリアムさんはそのまま行ってしまったそうだ。
「なんだかお互い知ってる風でしたけど、イリアムさんとお知り合いだったんですか?」
「いや、初対面だよ。少なくともボクは彼女のことなんて知らなかったし」
いつものことながら含みのある言い方だ。
相手を知らないが、相手は自分のことを知っているかもしれない。ということだろうか?
「……ひょっとしてフィクションさんって有名人?」
「ハハハ。いやいや、まさか。
 それより加奈子ちゃん、面白いモノも手に入れたんだけど」
そういってフィクションさんが取り出したのは一枚の紙切れ。
「? なんですかそれ?」
「参加者候補の名簿らしいよ。
 快く彼女に譲ってもらったものなんだけど、後で一緒に見ようか」
【一日目・黎明/C-5草原】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
基本:日常に帰る
1.フィクションと協力して脱出方法を探す
【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1〜3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.とりあえず町に行って情報収集
2.板垣退助が見つかったら殺せそうならR
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています

24 :
投下終了です

25 :
投下乙です!
一色姉妹、仲が良くて可愛いなぁ。
そしてねおんちゃんもかわいすぐる。崖を覗き込んだ辺りがぐっときた。
展開によっては、俊介はこの時点で生きていない可能性もあるわけで
それがなおさら切ない。ただ、タイトルが見当たらないのですが…

そしてフィクションが板垣退助と対決するかもしれない…
板垣はヨグスよりも強そうな印象があったけど、
フィクションもかなり手ごわそうで…
対決の行方が今から楽しみです。

26 :
遅れましたが、投下します。

27 :

前略、お父さん、お母さん。
元気にしてますか?
私、さくらは元気です。
一時はどうなるかと思った法英高校での生活は、充実しているものになっています。
優しくていい友達に囲まれて私は文武ともに日々の成長を感じているところです。
あ、そうそう。
私、生徒会長になったんだよ!
詳しくは知らないけど、私が特待生だからって理由だなんだとか。
お陰で中々休めない事もしばしば。
けれど、お母さんたちの為にバイトは続けるつもりだし、こっちで一所懸命、私なりにやってくつもりです。
お父さん、お母さん。
私、頑張って二人に安心して暮らせる様に頑張るからね。
だから、こんな娘だけど、これからも支えてください。
それじゃあ、お父さん、お母さん。
今日も行ってきます。

龍造寺 さくら

◇◆◇◆◇◆◇◆


28 :

「お父さん…お母さん…」
私は手に握られた手紙を見ながら、そう呟く。
昨日の夜に書いた、お父さんとお母さん宛の手紙。
次の日の朝、ポストに投函して、二人に何気ない生活の報告をしようと、安心しきっていた夜。
けれど、そんな朝は私に来なかった。
来たのは、ヨグスという人が私たちに殺し合いを強制的にさせようということ。
その殺し合いに私はたまたま巻き込まれた、ということ。
そして、私は今、この『殺し合いの参加者』としてここに居ること………。
そういえば、法英高校独特の白を基調としたブレザーと『生徒会長』と書いている腕章まで丁寧につけられているらしい。
…わざわざ丁寧に、なにしてくれたんだ、と思っちゃう自分がいたりもする。
さて。
もう一度、手紙を見る。
何故か目覚めた時から私が握っていたこの手紙。
あのヨグスさんが私に意図的に持たせたかどうかは分からないけれど、私にとっては、唯一『日常』を感じれるモノ。


29 :
すいません、遅れました

けど、そんな『日常』は手紙以外私から奪われ、『非日常』が私には与えられた。
理不尽な、迷惑な『非日常』。
私からすれば、無用のもの。
「…とりあえず、これからどうするか考えなきゃ」
私に与えられた多くの無用なもの。
その内の1つがこのリュックサック。
この中には役に立つものが色々入ってるとかなんとか。
試しに中を見ると地図とか、コンパスとか。
それと、コッペパンとか、食べるものが色々。
「コッペパン…小学校の給食以来だなぁ…」
当時の私の家の経済事情は、今よりも厳しかった。
今はまだ毎日食べるものに困るもので済んでいたけれど、昔は住むものさえ、着るものさえどうしようもなくて、給食費なんて払えなかったもん…
それで何度、クラスから苛められて、お母さんたちが泣いて私に謝ったか…
(…お母さん、お父さん。二人はまったく悪くないよ)
私は苛められてお父さんやお母さんが泣くのは見たくなかった。
だから、必死に勉強して今の法英に特待生として入った。
お父さん、お母さん。
二人とも心から喜んでくれた。
それが嬉しかった。
それから、私を馬鹿にする人は居なくなったし、昔に比べればお父さんは職を見つけたし、それでなんとか最低限の生活は出来る様になったからいいんだよね。

30 :
「帰りたいよ…」
お母さんと、お父さんと。私と。
またいつか、裕福な訳じゃないけど、幸せに溢れる生活に戻りたい。
早く、ここから抜け出したいのに。
―――今の私には、どうにも出来やしない。
私は強くない。
だから、これっぽっちも戦える手段を持っていない。
せめて何か武器を…と思ったものの、出てきたのはビデオカメラ。それと、SDカード。
完全に外れをわたされたんじゃないか。
普通だったら、飛びついてまで欲しい物なのに、今はこのやる気の無さと無力感で手が伸びない。
…私は…
私は結局、なんの為に殺し合いに呼ばれたんだろう。
漫画はあまり読んだ事は無いけれど、私はすぐ殺される、1コマだけしか出てこない役目なのかな。
…運無さすぎるよ、私。
「…あれ?」
と、私はそこであるカードが視界に入った。
見た目は至って普通のカード。
けれど、これは確か…


31 :
(最初言われた、スキルカード…)
効果は期待出来ない。
ハッタリかもしれない…。
でも、こんな不運な私に、残された希望はこれしかない。
…でもせめて、『落とし穴を作る』とか、『相手が不運』になるとか、そんなんがいいなー。なんて思ったりもした。
そう思いつつ。私はカードに書かれた文字をフツーに読み上げた。
「…えーと、『ある魔法少女の魔法能力』?なにこれ、やっぱ外れ―――」
そう言いかけた時、私の体が光に包まれた。
今まで体験した事の無い、眩しい光。
私はおもわず、反射的に目を瞑る。
…数十秒程、続いた光。
収まった頃合いを見て、私はその瞼を開いた。


32 :
「うー…なんだんだっだろう…さっきの光…」
訳が分からない。
使ったら必ず光るのだろうか。
…まぁ、私からしたら、『ある魔法少女の魔法能力』なんて名前、ちょっと期待はしてたんだけど。
「どんな能力か分からないし、やっぱ…外れかぁ」
空を見上げ、両腕を空へと伸ばす。
気がついたら真っ暗。
夜なのかな?時間の感覚さえ分からないからどうだろう。
私の目に写るのは、空で光る星達と、青色のフリル付きの袖だけ。
それ以外は、なにも…?
「青色のフリル?」
私の制服に、ワンポイントながら水色は使われている。
けど、こんな濃い青色は使われてなかったハズ。
それにフリル?フリルはスカートだけだし…
なにより、法英高校は、普通の白色の袖…。


33 :
少し止まる。
空から両腕へと視線を下ろして行く。
両腕の袖は、可愛らしい青色を中心とした、何処か爽やかな、けれどそれを感じさせない程度の派手な柄。
腕章は見当たらない。
一先ずそれが肩まで続き、さらに下に目をやる。
胴体。
お姫様みたいなまた青を中心としたまたドレスのような可愛らしい服。
けれど動きやすい様に、全体的にスッキリとした感じ。
ちなみに制服は白。デザインは人気があるとは聞いたけど、ここまでかわらしくはない。
でもスカートは動きやすさを求めたのか膝より上、いやこれ見えるんじゃないかってくらい短く、かつハイソックスを履かされている。
…うちの学校は膝上は禁止なのに。
「…信じられない」
その姿は、端から見たら完璧にお姫様。
『魔法少女』と言われても納得出来る風貌だった。
魔法少女。
漫画の中の様な…女の子の憧れを、今私は体験しているんだ。
「…ん…なに?」
そんな私に、次は頭の中に文字が流れ込んで来た。
どうやら、この魔法能力の説明らしい。
「近接戦闘…?双剣…?魔法…?」
何やら次々と入ってくるので、私の頭はパンク気味。
けど、なんか嘘臭い。
いくらなんでも…魔法なんて…


34 :
「…一先ず、何処か落ち着いた、建物に入ってから考えよ…」
説明に戸惑い、いまいち状況が掴めない私。
落ち着かせる意味合いを込めて、荷物の中に入っていただろう地図を開こうとした時。
「めぐるーーー!」
「え?ちょっ!」
やけに大きな声。
それと同時に押し倒される私。
下はコンクリート。
…背中が痛いよ。
でも、いきなり何!?
「えっ?えっ?」
あわあわと焦る私を尻目に仰向けの私にまたがっている、声の主が分かる。
年は私と同じくらい。けど、その風貌は最近の女子高生、といった感じ。
化粧はしてないけど、活発で綺麗な印象。
同じ女子高生とは思えない、綺麗な人。
その綺麗な人。私は知らない人だ。
つまり、他人。
(どうして私に…てか、めぐるって?)
考える私を見ず、女の人は大きく息を吸って、口を開いた。


35 :
「いやー、アタシも驚いたよ!目ぇ覚ましたら殺し合いだもん!マジ困ったよ〜でね、アタシそこいらどうしようもなくうろうろしてたらさ、アンタが居たんだ!嬉しくてさ!つい飛び乗っちゃった!ごめんね!お詫びになんか奢るからさ!許して!」
「あの…」
「あっ!その前にこの殺し合いぶっ潰さないと…でもアタシ、なんか魔法使えなくなっててさ〜、前衛後衛出来ないみたいなんだよね〜。あっ、もしかしたらあのスキルなんちゃらに取られてるかも…めぐる、アンタは…その姿を見ると、大丈夫みたいね。あーんしんあーんしん」
「えっと…」
「スキルにされた時は大丈夫。アタシ、他人の能力取れるスキルになってるからさ!だから誰かに取られてたら、アタシが奪う。それでカンペキ!それでいつものサイキョーコンビが戻って万事休す!…いや、万事解決…まぁ別にいいや!いいよね!別に!うん!」
「…」
「同じ学校の知り合いはいるっちゃいるけど、正直アタシ一人で大丈夫かな〜て思ったけど、めぐるがいるなら心強い!じゃあ、とっととあの馬鹿をぶちのめしに…」
「あの!」
沈黙。
綺麗な女の人は、これでもかと言わんばかりに早口で私に言い寄ってきた。
ついでに今のやり取りは一分おそらく無い。
最近の女子高生って、早口がトレンドなのかな?
…どうでもいいか。とりあえず、伝えないと。
「あの…私…龍造寺です…」
「えっ?」
「龍造寺さくら…龍を造る寺で、平仮名のさくらと書いて龍造寺さくらです…」
「…」
またしても、沈黙が訪れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


36 :
「いやー、悪かったね!ごめん!この通り!許して!」
ぱちん、と顔の前で手を合わし、私に謝る女の人。
さっきまで嬉しそうだった顔は、何処か申し訳なさそうになっている。
私は「いや、べつに構わないので…」と返した。
すると、また女の人はぱぁぁ、と明るくなって、私に話しかける。
「ほんと!?ありがとね!あっ、自己紹介、まだだったね!私、安田智美!安田財閥の安田に、智美は…うーん…いい例えが見つからないからいいや」
「智美ちゃん…」
女の人、いや、智美ちゃんは明るい調子を取り戻して、何処か嬉しそう。
見た目は普通の女の子。でも、さっき言ってためぐるという人が疑問に残る。
「あの…よかったらで良いんだけど…1つ、いい?」
「ん?なになに?おねーさんに何でも聞いてみなさくら!」
「…めぐるって?」
「…あー」
『めぐる』と聞いた智美ちゃんは、今度は嬉しそうな顔を普通の顔に戻す。
普通の顔はさっきのはしゃぎっぷりを感じさせない、綺麗な顔立ち。
ファッション雑誌の読書モデルになってそうな、ありふれた、親しみのある可愛さだった。
智美はちゃんはその長い茶髪をバツが悪そうに髪を掻きながら私に返した。


37 :
「…信じられないなら、そう言って」
「うん」
「……アタシ、魔法少女なの。一応、今は能力が取られちゃってるから、『仮』だけどね。あっ、めぐるは同じ魔法少女仲間なのよ」
やっぱり。
そうじゃないと、こんな服装の人に抱きついたりしない。
あ、って事は…
「めぐるって人も、この殺し合いに…」
「居るかも、ね。それはそれで困るけど」
「…」
真剣な顔立ちになる智美ちゃん。
今は、何処か落ち着いた、さっきの女の子とは違う、『戦う少女』の姿。
「めぐるはね…体が弱くて…その魔法能力で生き延びてるもんだったの…」
「…」
「それまで病院にしか居なかったから、友達、アタシだけでね…アタシとめぐるは、毎日闘いながら、楽しくやってた…」
「そうなんだ…」
「それが…どうしてこんな…」
「…」
「あはは…暗くなっちゃったね。じゃ、これからどーしようか…」
「智美ちゃん」
智美ちゃんを呼ぶ私。
今の智美ちゃんは、普通の女の子。
私より、めぐるって女の子の方が、この能力は使えると思う。
だから―――
「能力は、めぐるちゃんと会った時に渡す」
「…」
「それまでは、私が魔法少女になるよ。智美ちゃんが能力を取り戻して、めぐるちゃんと会って、二人がこの殺し合いを止めるまで…」
「…でも!魔法少女は…そう簡単に…」
「智美ちゃん、私。決めたよ!それが、ここで私がやるべき事なんだよ!」

38 :
「さくら…じゃあ、私がめぐるの能力を…」
「それだと、智美ちゃんの能力は?」
「…」
智美ちゃんは強い、と思う。
戦える自信は無いけれど、私が希望を持つ唯一の道はそれだと思うから。
智美ちゃんに下がらせるのは嫌だ。
私だって、とんでもない事を言ったと思う。
怖いに決まってる。喧嘩なんて、ろくにした事無い私が闘うなんて…
お父さんとお母さんの下に帰る為に進むべき道はこれなんだって。
神様が言ってるみたいなら。
「…分かった。ケド、無理すんなよ」
「うん」
「アタシ…拳銃渡されてるらしいから…いざって時はアタシがなんとかする…」
「うん!」
「いい、さくら…めぐる見つけるまで、死なないでよ」
「智美ちゃんもね」
「…ははは」
智美ちゃんは、バツの悪い顔で、私に笑った。
◇◆◇◆◇◆◇◆

39 :
…ふざけんな。
魔法少女なんて、これっぽっちも夢がある事じゃない。
あの妖精は、めぐるの魔力を吸い取る為に契約したんだ。
元々病弱なめぐるは、魔法能力を取られたなら、前よりもっと弱ってるはず…。
…めぐる。
頼むからさ。
その服は、さくらが着ている白の魔法服は、アンタが一番似合ってるんだよ。
さくらはこんな事言ってるけど、さくらも守らなきゃならない。
その場の感情に任せた言葉なんて、すぐに揺らぐ。
それは…アタシが一番分かる。
めぐるの前にそう主人公気取って死んでいった奴等が居たから…
ねえ、めぐる。
死なないでよ。
さくらも死なせない。
アタシも、アンタを早く見つけて死なせない。
その為だったら、私はなんだってする。
殺し合いに乗る奴が居たら、さくらの代わりに私がR。
だから、待ってろ、めぐる―――――――!


40 :
投下終了です

タイトルは『魔法少女になりました!』
タイトルはエロ漫画より

41 :
>>40
志村〜状態表、状態表!
魔法少女コンビに期待したいところだけど
めぐるちゃんはもう死んじゃってるけどどうなることやら
そして全参加者決定
○愛沢優莉/○藍葉水萌/○板垣退助/●一色亜矢/●一色麻矢/○猪目道司/○イリアム・ツェーン/○イロハ/
○オーヴァー/○カイン・シュタイン/○片嶌俊介/○加山圓/○琥珀愛子/○逆井運河/○椎名祢音/○宍岡琢磨/
○篠田勇/○白井慶一/○田崎紀夫/●橘蓮霧/○トーマス・A・エジソン/●二階堂永遠/○葉桜加奈子/
○花緒璃乃/●聖澤めぐる/○ファンガール・J/○フィクション/○フランツ・O・ブリュデリッヒ/
○フランドール・オクティル/○魔王/○真琴真奈美/○御木魚師/○溝呂木桐子/○安田智美/●劉厳/○龍造寺さくら
30/36

42 :
投下乙です。感想は後日ゆっくりと……
タイトル付け忘れていました、申し訳ありません。
タイトルは『片手だけつないで』でお願いします。

43 :

うわうわうわ。状態表を忘れていた。
【一日目・深夜/D-2】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】小型拳銃
【スキル】
【所持品】基本支給品、
【思考】
基本:めぐるととっとと会って、早くこの殺し合いをぶっ潰す
1.さくらに無理はさせない
2.めぐるを早いとこ見つける
3.歯向かう奴は倒す
※どの小型拳銃は不明。残弾も不明ですので、後の書き手様に任せまする。
【龍造寺さくら】
【状態】健康
【装備】無し
【スキル】『ある魔法少女の魔法能力』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3
【思考】
基本:魔法少女の代役を果たす
1. 聖澤めぐるに会い次第、能力を渡す
2. 生きて帰る。
※能力の使い方を理解していません。


44 :
 ああ、現在位置はD-2か…。
 意外と近くに、めぐるは居ますよ……!

45 :
参加者が出揃ったので現在地と職業まとめ、高校二年多ッ
http://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0090.jpg
【大学生】
琥珀愛子:??大学
田崎紀夫:??大学
トーマス・A・エジソン:??大学
【高校生:三年生】
白井慶一:??高校
橘蓮霧:??高校
【高校生:二年生】
龍造寺さくら:法英高校、生徒会長
加山圓:秋月高校
葉桜加奈子:秋月高校
片嶌俊介:??高校
篠田勇:??高校
安田智美:??高校
一色亜矢:??高校
一色麻矢:??高校
【高校生:一年生】
藍葉水萌:元??高校
【高校生:学年不明】
二階堂永遠:??高校
【中学生】
聖澤めぐる:??中学三年生
ファンガール・J:??中学二年生
【小学生】
椎名祢音:??小学校
イロハ:??
【王族・騎士】
フランドール・オクティル:王女
カイン・シュタイン:騎士
フランツ・O・ブリュデリッヒ:騎士
【社会人】
愛沢優莉:看護師
花緒璃乃:キャバクラ嬢
溝呂木桐子:ホステス
猪目道司:バー経営者
真琴真奈美:刑事
御木魚師:ヤクザ
逆井運河:なんでも屋
板垣退助:総理大臣
【無職】
イリアム・ツェーン:元エージェント
フィクション:元殺し屋
宍岡琢磨:元証券会社
【その他】
魔王:魔王
オーヴァー:殺し屋
劉厳:格闘家

46 :
 バラエテイに富んでいる…ようでいて、意外と若年、青少年世代が多いのね。
 ていうか総理大臣だけ色んな意味でアレ。

47 :
祢音ちゃんの新規イラスト。次は誰を描こうかな…。
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0390120-1313167683.jpg
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0390119-1313167683.jpg

48 :
>>47
おお、素晴らしい。
小学生は最高だぜ!
同じロリ枠のイロハちゃん希望しておくw

49 :
>>48
 そんなに欲しいか? このいやしんぼさんめ!
http://iup.2ch-library.com/i/i0390208-1313175698.jpg

50 :
のwwwwりwwwwおwwww

51 :
のりおwwwwwww祢音ちゃんの次にそれはやめてwwwwww伏兵すぎwwwwww


一文で分かる!生存者30名!
【キャラ一覧】
愛沢優莉…ガチレズってレベルじゃねーぞ!相手いねーし!
藍葉水萌…勇者の汚い方
板垣退助…自由は死すとも、板垣死なず!
猪目道司…マジキチ中年親父。道司さんはめぐるにひどいことしたよね。
イリアム・ツェーン…現在無職。ハローワークに行かせてやって。
イロハ…無口な方のロリ。加山君は健全です
オーヴァー…唯一、真面目なマーダー
カイン・シュタイン…汚いな流石騎士汚い
片嶌俊介…片嶌「やっぱり小学生は最高だぜ!」ロリコンめ!
加山圓…貴重な真面目な人…よかった…!真面目がいて…!
琥珀愛子…性能高杉だろうこのシスター(自称)…
逆井運河…Mr.アンラッキー。でもMr.ラッキー
椎名祢音…唯一のロリ奉仕マーダー。幼女。祢音ペロペロby片嶌
宍岡琢磨…宍岡「幼女とアハーンなんて羨ましい!R!」あれ、違う?
篠田勇…綺麗な方の勇者
白井慶一…慶一「テトリス俺めっちゃ強いよ!あれ、違う?」
田崎紀夫…皆大好きのりおくん!趣味?秘密。
トーマス・A・エジソン…発明王と同姓同名の発明王。(・A・)デンキガホシイ!
葉桜加奈子…加山R。RじゃなくてR
花緒璃乃…彼女にまともな人を会わせてあげて…
ファンガール・J…清々しい程の厨二…嫌いじゃないわ!
フィクション…え?いたの?分かんなかアッー
フランツ・O・ブリュデリッヒ…・O・←顔文字みたいだよね(・O・)キシドーヲツラヌク
フランドール・オクティル…頑張れお嬢様。負けるなお嬢様。
魔王…魔王様マジ生活的。着いていきたい…
真琴真奈美…まなみん「ゴキUZEEEEEE!…でも、守ってあげてもいいかな」
御木魚師…ゴキ「あー、まなみん服従させたいなぁ…そして、こう…グヘグヘ」
溝呂木桐子…32才って実はこんなかじゃ老けてる方じゃ〈この説明は粛清されました〉
安田智美…魔法少女さとみ☆ヤスダ。もうなにも怖くない。
龍造寺さくら…カードキャプターさ○らですね、分かります

死んだ奴らはまた後日

52 :
>>24
おお、イリアムさん頑張ってる!
フィクションは板垣相手に撤退を選ばず戦えるのか……
戦ったらとんでもないことになりそうだw
>>43
さくらちゃんええ子や……
目当てのめぐるは死んでるわけだが、魔法少女コンビは果たしてどうなるやら……
そしてこのロワでは肉弾バトルな暗殺者やらが跋扈してるが、魔法は活躍できるのか!?
>>47
祢音ちゃんえろいよ祢音ちゃん(;´Д`)ハァハァ
>>49
おwwwwwまwwwwwwwえwwwwwwwww
お呼びびじゃねえよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>45>>51
まとめGJ!
個性派揃いながら、結構共通点持った奴らが集まってるってかんじだなー。

53 :
片嶌俊介、宍岡琢磨、愛沢優莉、オーヴァーの4人を予約します

54 :
片嶌オワタwww

55 :
片嶌「三対一か…まったく、ハードな闘いになりそうだな。」

56 :
(勿論性的な意味でね)

57 :
片嶌が三人を手篭めにする展開か、胸熱

58 :
祢音「誰にでも激しいんだね…」

59 :
それじゃあ片嶌ハーレムはっじまるよー

60 :
「待たせたな」
 衣服を整えた片嶌俊介は宍岡琢磨に向き直った。
 その間も片嶌に突きつけられた銃口は一時も外されることはなかった。
「本当にやるつもりか…………?」
「当たり前だ」
 返す言葉に迷いはない。
 二人の間に取り交わされた一つの賭け。
 宍岡の銃弾を放ち、片嶌が生き残ったら片嶌の勝ち。片嶌が死んだら宍岡の勝ち。
 たったそれだけのシンプルな賭けだ。
「そんなことよりも、何か使えるモノはあったのか?」
 着替えを待つとともに宍岡は片嶌に十分な時間を与えてやった。
 その間に支給品の確認は済んでいるはずだ。
 宍岡が全力で攻め、片嶌が死力を尽くし守る。
 宍岡にとってそうでなくては意味がない。
「では行くぞ――――ゲームスタートだ!!」
 開始を告げると同時に、宍岡は躊躇うことなく引き金を引いた。
 対する片嶌はそれよりも一瞬早く。
「――――スキルカード【ブレーキ】!」
 己のスキルカードを発動させた。
 片嶌を中心に空間が展開する。
 空間に囚われた弾丸が勢いをなくし空中で静止する。
 カランという音をたて、弾丸が地面に落ちて床を転がる。
 それを見て、片嶌は安堵したように息を吐き。
 それを見た、宍岡は口の端を吊り上げた。
「――――面白い」
 そう言って、宍岡は再度銃口を片嶌に向け直した。
「なっ!? 防いだじゃないか!」
「一発だけとは言っていない!」
 タン、タンとリズムよく放たれた弾丸は2発。
 片嶌はこれを横っ飛びで回避した。
 日頃の練習の成果か、その跳躍力は並ではない。
 そこに容赦なく迫る追撃の弾丸。
 その数は先ほどと同じく2発。
 片嶌は跳びぬいた勢いのまま横に転がり、机を盾にしてその影に隠れた。
「ふん。それで隠れたつもりか?
 ――――スキル【魔弾の射手】」
 宍岡がそう宣言した瞬間、弾丸が青い光を帯びた。
 銃弾が放たれると同時に空気の壁を破る炸裂音が響く。
 音速を超えた弾丸は、壁となるはずの机を豆腐のように貫き、片嶌の脇下を掠めた。

61 :
「どうした! さっきのスキルを使って止めてみせろ!!」
 宍岡が叫ぶ。
 その挑発に片嶌は乗らない。
 いや、乗りたくても乗れない。
 【ブレーキ】は発動までに能力十数秒のインターバルが必要となる。
 回復まであと数秒。
 だが、相手の武器がスキルによってライフルの如き威力となった今、机ごと打ち抜かれるのがオチだ。
(……2……1……0ッ)
 内心でスキルの回復を確認した片嶌は、意を決し机の影から飛び出した。
 それを迎え撃つ、宍岡。
 スキル【ブレーキ】。
 宍岡もその名から大体のスキル効果は想像できる。
 銃弾の勢いにブレーキをかけられるのならば、攻撃を当てるのは不可能だ。
 だが、その防御は絶対ではないと宍岡は見ている。
 発動から停止までの僅かなタイムラグがあるはずだ。
 ならば、その隙を【魔弾の射手】にて強引に貫く――――!
「――――【ブレーキ】!!」
「【魔弾の射手】――――!!」
 宣言ととともに互いのスキルが発動し、正確に片嶌の頭部に弾丸が放たれる。
 舞う鮮血。
 正確に片嶌に放たれた弾丸はその頭部を貫き――――否。
 放たれた弾丸は、片嶌の眼前で静止し、額の皮を破り紙一重で静止した。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 その成果を確認するよりも早く片嶌が宍岡を制圧せんと飛びかかる。
 全身のバネを使って、拳銃を持つ右腕に両腕を伸ばす。
 だが、
「――――甘い」
 宍岡は左腕で伸ばされた両腕を掴むと、一本背負いの勢いで片嶌を投げ飛ばした。
 そして、そのまま流れるような体術で片嶌の上に馬乗りになると、額に銃口を突きつける。
 スキルも意味を成さないゼロ距離。
 笑わない男と呼ばれた宍岡が楽しげにニィと口の端を吊り上げて言った。
「弾切れだ」
 ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
「いいのかよ、こんなところで使いきって」
「安心しろ、予備の弾ならある」
「…………まさか、それで続けるとか言わないよな」
 片嶌の言葉を宍岡はふん、と鼻で笑う。
 先ほどの攻防。
 宍岡の攻撃を凌げたのは片嶌の力ではなく、スキルの力だ。
 だが、そのスキルを偶然引き当て、使いこなしたのは紛れもなく片嶌の力だ。
 宍岡はそれを認める。
「いや――――お前の勝ちだ」
 そして初めて人間に向けて引き金を引いた瞬間の興奮と、想像やシュミュレーションとは違う思い通りに事が運ばない歯がゆさ。
 それはまさしく宍岡の望むモノだった。

62 :
 宍岡にとって、目的など善でも悪でもどちらでも構わない。
 これ以降もあの興奮が味わえるのならば、この男の目的の先にそれがあるのならば、宍岡としては言うことはない。
「約束通り、お前の目的に付き合ってやるよ」
 そう言って宍岡は手を伸ばした。
 あまりにも予想外に素直な行動に、それが握手を求めているのだと片嶌が気づくのが少し遅れるのも仕方のない事だった。
「あ、ああ。よろしく頼む」
 片嶌の認識が追いつき、それを受け入れようと手を伸ばす。
 その刹那、片嶌は背後でガラスの割れる音を聞いた。
 同時に目の前から響くスコンという軽い音。
 見れば、宍岡の額からナイフが生えていた。
 いや違う、生えたのではない。
 どこかからナイフが投擲され宍岡の頭部に突き刺さったのだ。
 宍岡の体がゆっくりと後ろに倒れる。
 とっさにナイフの飛んできた方向を見れば、そこには凄まじい勢いで迫り来る襲撃者の影が。
 息つく暇もなく襲撃者は窓ガラスを突き破り、破片をまき散らしながら机の上に着地した。
 その姿を見た瞬間、片嶌の全身を言いようのない悪寒が奔った。
 と同時に、片嶌は是も非もなく全力でその場を飛びのいた。
 瞬間、それまで片嶌がいた場所を紫電が貫いた。
「がは…………ッ!」
 壁に強かに背を打ち咳き込む。
 着地など考えている余裕はなかった。
 いや、そうでなければすでに死んでいた。
「ハァ…………」
 そんな片嶌の様子を見ながら楽しげに息を吐いた襲撃者の口元が釣り上がる。
 ヒビ割れた亀裂のような歪んだ笑み。
 そこから放たれるのは、さっきまでのやり取りがお遊びに感じられるほどの、圧倒的な殺意。
 片嶌はチラリとその足元に転がる宍岡の体を見た。
 もう、動きはしない。
 脳裏に浮かぶのは確実な死の予感。
「……なんで、こんなこと」
 襲撃者は答えない。
 宍岡は、人を殺してみたかったなどという男だ。
 確かにまともな男ではなかった。
 だが、己のルールに沿って負けを認めれる男だった。
 少なくとも言葉は通じた。
 だが、目の前の男には説得や取引など無意味だ。
 まるで野生の獣に襲われたよう。
 言語など通用しない。
 この場を切り抜けるには、生き残るためには自分の力で何とかするしかないのだ。
 机の上に乗ったまま、襲撃者が剣を振るう。
 瞬間、穂先より雷光が走り、片嶌の肩口を打った。

63 :
「がぁ……………ッ!?」
 まるで強力なスタンガンでも食らったよう。
 電流が全身を駆け巡るような感覚に片嶌の動きが止まる。
 この隙に相手が距離を詰めればそれで終わり。
 もともと二人の間には接近戦ならば一瞬で決着がつくほどの実力差がある。
 だが、襲撃者はそれをしない。
 襲撃者が警戒しているのはただ一点、片嶌のスキルである。
 放たれる雷光を【ブレーキ】で防ぐことは不可能である。
 片嶌が弾丸を防げたのは、あくまで引き金を引かれるタイミングに合わせてスキルを発動させていたからに過ぎない。
 弾丸が放たれてからスキルを発動していたのでは、とっくの昔に彼は風通しの良い頭になっていただろう。
 だが、この雷鳴の場合は違う。
 雷撃を放つのに必要なアクションは刀を振るう事だけ。
 放たれる一撃は音速を超える雷速。
 剣の軌道をなぞるように放たれる攻撃を回避するには【剣技】のスキルを持つ相手の攻撃を避けるだけの技量が必要となる。
 宍岡ならまだしも、片嶌はそんな技量は持ち合わせていない。
 だが、接近する動きに対してなら対応は可能だ。
 トドメを刺そうと近づいてくる相手に対して【ブレーキ】を使えば、相手の動きを止めその隙に逃げることだって可能だろう。
 それ故に、襲撃者は迂闊に近づく真似はせず遠距離から確実に仕留める算段を取った。
 そして、その慎重さは片嶌にとって幸運であった。
 相手がジワリジワリと追い詰めるつもりならば、その隙に反撃の一手を打つことができる。
 宍岡との戦いの切り札としてポケットに忍ばせておいた切り札を取り出す。
 本来の支給品の数を知らない片嶌にはあずかり知ることのできない話なのだが、それは椎名祢音が彼に残した支給品であった。
 パチン、と雷鳴が弾ける。
 それを合図にするように片嶌はそれを目の前に投げつけ、同時に宣言した。
「――――――――【ブレーキ】!」
 ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
 片嶌がオーヴァーに投げつけたのは閃光弾だった。
 投擲されたモノが閃光弾であると瞬時に判別したオーヴァーは、咄嗟に両目を手で覆った。
 だが、その程度で閃光弾の光は遮断しきれなかった。
 視界が白に染まり、閃光が目を潰す。
 光の晴れたころには既に片嶌は逃げ仰せた後だった。
 だがそれはおかしい。
 あの状況で閃光弾を使えばその被害は片嶌にも及んでいるはずである。
 目を焼かれた状況で動くことなどできない。
 だというのに、片嶌が逃げる事が出来たのは何故か?
 スキル【ブレーキ】は自らに向かう物理現象を停止させる能力だ。
 それは光とて例外ではない。
 そして、何より重要なのは、制止するのは自らに向かうモノに限定されるという事。
 つまり、相手に向かう光は停止しない。
 その応用によっては、その範囲にいながら自らは閃光弾の威力を味わうことなく一方的に相手にその被害をもたらすことが可能なのだ。

64 :

「……………ちっ」
 オーヴァーが舌を打つ。
 目を細めてあたりを見渡してみる。
 完全に見えないという訳ではないが、物体の輪郭が朧気に判別がつく程度まで視力が落ちている。
 すぐに快復するとは思うが、ひとまずオーヴァーは逃げ出した片嶌を追うのを諦め、冷静に快復を待つことにした。
【一日目・黎明/E-2学校】
【オーヴァー】
【状態】視界不良
【装備】サンダーソード
【スキル】『剣技』『平賀源内のエレキテル』『雷剣士』
【所持品】基本支給品
【思考】
1.視力が戻るまで待機
2.この場にいる全てを皆殺し
3.最後にヨグスもR
【宍岡琢磨 死亡】
※宍岡琢磨の支給品はその場に放置されています
※サバイバルナイフは宍岡琢磨の額に刺さっています
※スキルカード【魔弾の射手】は宍岡琢磨の死体の上にあります
 ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇
 愛沢優莉は一部の欠けた奇妙な閃光を見た。
 光が放たれているのは確か地図で言うところの学校のある方角だ。
 何事かと視線を向ければ、そこには必死の形相で走りくる男が一人。
 男は優莉の姿を確認したかと思うと、僅かに進路を変更し駆け寄ってきた。
「……はぁ……はぁ……はぁ……っ!
 殺人鬼がいるんだ! ここにいちゃ危ない! 逃げよう!」
 そういうや否や男は優莉の手を取って走り出だした。
 優莉は有無を言わせぬ急展開にあっけにとられ、引かれるままに駈け出してしまった。
 手を引く男、片嶌からすれば、いつ追いついてくるとも知れない殺人者の恐怖に冷静な判断を下せる余裕はなく。
 ただ偶然出会った目の前の女を殺人鬼の脅威から逃がしたいという純粋な親切心だった。
 自らが手を引く女もまた殺人者であることも知らず、片嶌は走る。
 そして彼の受難は続く。

65 :
【一日目・黎明/F-2橋の手前】
【片嶌俊介】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】なし
【スキル】『ブレーキ』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)閃光弾×2
【思考】
1.この場から離れる
2.弥音を探す
【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】『病の呪い』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
0.え? なに?
1.殺し合いに乗る
2.F-4病院を目指す
【備考】
※ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。

66 :
投下終了
片嶌ハーレムといったな、あれは嘘だ

67 :
投下乙!
ああ宍岡…片嶌生き延びやがったww
元が一般人でも工夫次第で対抗できるのがいいな
新スキルゲットでオーヴァーがますます強くなられたようだが…
なんか危ない娘と組んじゃった片嶌の明日はどこへ

68 :
投下乙!
流石ロリコンの名前は伊達じゃないな…
オーヴァーさんはいつまで魔改造されるのか…

そしてついに30人の内から死者が…
宍岡さん南無南無。

69 :
 うへへ。
 ちょっと時間が出来たので少しばかり手間掛けた片蔦ハーレムの支援絵でも先に投下してやれ、と思っていたら、SSの方が先に投下されてしまった、ってな寸法でさぁ。
http://uproda.2ch-library.com/416922X1k/lib416922.jpg

 しっしーは長生きできるキャラでもなかった感あるけど、もはやこれは狂気の差。
 しかしこの男、つい先程まで幼女とナニしていた変質者とは思えないイケメンぶりである。

70 :
Not Found…

71 :
 失礼、テムレイ。
 ちょとミスったので改めて。
http://uproda.2ch-library.com/416926kOL/lib416926.jpg

72 :
おお、GJ!これはすごい!
誰とは言わんがジョジョキャラにしか見えないお方が……w

73 :
うおおお…超恰好いい…GJ!
とりあえずイロハちゃん置いときますね
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0393717-1313511731.jpg

74 :
あんたら凄いな、速度もはええw
幼女!幼女!

75 :
>>71
>>73
四人ともかっこいい! 宍岡さんは完全にジョジョww
そしてイロハちゃんかわいい! ペロペロ
>しかしこの男、つい先程まで幼女とナニしていた変質者とは思えないイケメンぶりである。
まあなんだかんだでまっとうな主人公属性もってるのこいつと篠田くんと加山くんくらいだかなぁ
片嶌はロリコンだけどw

76 :
初期スキルカード
作ってて気づいたけど安田智美のスキルカードが抜けるね
多分作中描写からブレインイーターだと思うけど
愛沢優莉【病の呪い】
藍葉水萌
板垣退助
一色亜矢
一色麻矢
猪目道司【未来予知】
イリアム・ツェーン
イロハ
オーヴァー【平賀源内のエレキテル】
カイン・シュタイン【その歌をもて速やかに殺れ】
片嶌俊介【ブレーキ】
加山圓【五感強化】
琥珀愛子【復讐するは我にあり】
逆井運河【二分の一!】
椎名祢音【変身】
宍岡琢磨【魔弾の射手】
篠田勇
白井慶一【<<]]巻き戻し】
田崎紀夫
橘蓮霧【剣技】
トーマス・A・エジソン
二階堂永遠【ネクロマンサー】
葉桜加奈子
花緒璃乃【光あれ!】
聖澤めぐる
ファンガール・J
フィクション【ブラックアウト】
フランツ・O・ブリュデリッヒ
フランドール・オクティル
魔王
真琴真奈美
御木魚師【パブリックエネミー】
溝呂木桐子
安田智美【ブレインイーター】?
劉厳
龍造寺さくら【ある魔法少女の魔法能力(めぐる)】

77 :
未登場スキル一覧
【●REC】
【FaceBook】
【GPS】
【ある魔法少女の魔法能力(智美)】
【エターナルフォースブリザード】
【エネルギードレイン】
【ゴッドハンド】
【シュレーディンガーの猫】
【ハニートラップ】
【マッチセラー】
【ものまね】
【加速装置】
【我が胎の愛すべき蠱】
【給仕募集】
【血流操作】
【剣豪】
【航海術】
【高速思考】
【骨葬の儀式】
【殺人読本】
【自己再生】
【自動蘇生】
【赦されざる者】
【守護神の虫唄】
【重力操作】
【植物操作(プラントオペレート)】
【神の声】
【追憶の書庫】
【痛いの痛いの飛んでいけ】
【飽食の晩餐】
【密毒】
【落とし穴】
【霊媒】

78 :
そういやよぐっさんはメンバー確定したらお知らせするって言ってたけど、名簿はいつ配られるんだろう
やっぱり第一放送のタイミング?

79 :
もう確定しているといえば確定してるけど、タイミングとしては区切りの方がいいかもね

80 :
藍葉水萌、篠田勇、魔王を予約予約。

81 :
魔王様の運命やいかに?
↓魔法少女に変身した龍造寺さくら。
ttp://iup.2ch-library.com/i/i0398152-1313931249.jpg

82 :
なんというプリキュア
そして相変わらず無駄にエロいっすw

83 :
さくらカワイスギワロタ
いづも乙です!

予約ですが、どうも筆が進まないので破棄します。
また機会があれば、予約させてください。

84 :
ファンガール・J、田崎紀夫、猪目道司の三名を予約します

85 :
ではでは↑の予約投下します

86 :

退屈だ。
そう思いながら、私は一人何もない空間で寝転ぶ。
何もないというのは正確ではないし寝転ぶというのも正確ではないか。
ここはとある少女の意識の中。
私は意識の海を漂うクラゲのようなものだ。
意識の海には全てがあり何もない。
肉体など存在しなければ、当然寝転がるなどという行為もできない。
それが私二階堂永遠という存在だ。
この会場の人間すべてをゾンビにしてやるのが私の夢であり役割なのだが。
まだまだゲームは序盤。
死体が増えるまでやることがないというのが正直なところだ。
そうだな、退屈しのぎに本でも読もうか。
意識の海にずらりと並ぶ、記憶という名の彼女の本を。
■■■■■■■■
未来人か。
なるほどなかなかに面白い。
もっとも彼女からしてみればその自覚はなく、自分が未来人なのではなく周りが過去人なのだろうけど。
だけれど未来と言っても世界は思いのほか劇的な変化はなく、現代と対して代わり映えしない。
技術水準は向上し、世界は惑星を飛びだし宇宙へと向かっているようだが、変なチューブを走る車もないし、人々はギンギラな全身タイツも来ていない。
なんとも夢のない話だ。
彼女は未来の生活水準からみてもそれなりに裕福な家庭に育ってきたようだ。
そのせいか欲しいモノを欲しいままに与えられ、ずいぶんと甘やかされて育ったみたいだねぇ。
その中でも興味を持ったのはヲタク文化か。いい趣味だ。
彼女の時代ではすでに衰退した文化なようだから、読み漁っているのはヲタク文化が最も発展した現代の資料が主なようだね。
両親が歴史文学を調査する職に就いていたこともあり、資料確保には事欠かない環境だったようだしね。
だが、その一方で学園生活では、その奇特な言動のせいで周囲から浮いていたようだね。
人間が外れたものに冷たく容赦ないのはいつの世も変わらないということか。悲しいねぇ。
もっとも、本人は気にしてないようだけれど。
いや、正確には気にしていないふりをしていただけか。
読み漁った冒険世界に意識をやって、本当の自分は別にいるという設定を創り。
だから、こんな馬鹿な奴らと付き合う必要はない、そう思い込んでいるようだ。
だからと言ってわざわざトイレで昼食をとる必要はないと思うのだけど、よくよくわからないね。
彼女のパーソナリティとしてはこんなところか。
おっと、少し熱中しすぎたか。
いつの間にか、彼女は二人組の男と接触したようだ。
脂ののった太った男が田崎紀夫。小柄な中肉中背の男が猪目道司だったか。
確か田崎はごく普通の大学生だが、猪目の方は連続殺人犯だったはずだ。
ふむ。友好的な顔をして二人一緒に並んでるあたり、なるほど、猪目はそういう道を選んだか。
なかなか面白い展開だ。

87 :
「それ何のコスっすか? オッドアイとかマジパネェ、マジパネェっすよ!」
「ふふふ。この漆黒の力を秘めた我が衣に目をつけるとは、なかなか見どころがあるじゃないの」
見れば、興奮気味な田崎と彼女が会話を弾ませていた。
まあ、田崎からすればコスプレ女子中学生ってだけで崇めるに値する存在なのだろうけど、このノリで迫れば普通の女の子はドン引いちゃうだろうね。
そうでなくとも、いわゆる思春期の女の子というのは田崎のような典型的なヲタクは嫌いそうなものだが。
しかし彼女は田崎に同類の臭いを感じ、いわゆる同志に出会えたことに彼女は内心でかなり喜んでいるようだ。
未来ではそういう趣味は希少なようだからね、その手の仲間に出会えたのは初めての経験なのだろう。
表には出さなようにしているみたいだけどその喜びは割とバレバレだ、まったくかわいいものだ。
しかし、私が言うのもなんだが、彼女はいささか警戒心が足りないな。
彼女の心理的には、いつも妄想していた状況が現実になっている興奮状態が半分、殺し合いという恐怖を誤魔化すための虚勢が半分と言ったところか。
どちらにせよ周囲に対する注意力が足りなさすぎる。
ほらほら、キミが田崎と盛り上がってる最中で、猪目がキミの肢体を見ながら下卑た笑いをしているよ。
「盛り上がってるところに水を差してわるいんだが。
 状況が状況だ、話を戻していいかい?
 というより既に死者も出ている。つい先ほど俺たちも少女の死体を見たところだ。
 間違いなく危険人物がいるヤバイな状況だ。
 こんなところで単独行動は危険だ、なるべく集団行動をとった方がいいと思って俺と彼は行動を共にしているんだが。
 どうだい、キミも俺たちと一緒に行動しないかい?」
危険人物がいる、か。
よく言う。
大したタヌキだ。十中八九君が殺したんだろうに。
それにしても、女の子の死体か。
興味をそそられるね。
今はどうしようもないけど。
「ふん。時空の使者であるこの私の下僕として共に行きたいというのならば、考えてやらなくもないわ!」
「ありがとうございます!」
いやはや、テンション高いね二人とも。
猪目は二人のやり取りを見て若干引いているけども。
まあ正常な反応だ。
一番の異常者であるこの男が正常というのも皮肉な話だけど。

88 :

「……そ、そうかい。まあなんにせよよろしくな。お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんじゃないわ。私はファンガール・Jよ!」
やれやれ。
まんまと話の流れは猪目のペースだね。
彼女は変な興奮状態になってろくに判断力が働いてないみたいだし。
まあ、初めて趣味を共有できる人間が現れたのだから、普段の彼女の生活を思えば分らないでもない、かな?
まあ、私としては彼女に死なれたところでスキルカードに戻って次の所有者を待つだけなのだけど。
少しだけお節介を焼いておこうか。
私としても、憑りつくならむさい男よりは女子中学生の方がいいしね。
まあ、今の状態の私にできる事なんて、無意識に介入する程度なのだけど。
少しだけ彼女の意識に介入する。
これで彼女はなんとなく猪目に対して受け入れがたい感情を抱くようになったはずだ。
まあ、なんとなくはなんとなくに過ぎないので、明確な意思には逆らうほどの強制力はないけれど、今私ができるのはこの程度。
後は彼女次第かな。
ま、どう転ぼうと構わないけれど、せいぜい退屈させないで欲しいね。
【一日目・黎明/C-7林】
【ファンガール・J】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『ネクロマンサー』(浸食率11%)
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、果物ナイフ、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.とりあえず田崎達と行動する
※猪目がなんとなく気に食いません
【田崎紀夫】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.ファンちゃんマジパネェktkr!
【猪目道司】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】『未来予知』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品2〜4
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.ファンガールをどうするか?

89 :
投下終了です
誰かほかに書いてる人はいんのかね〜

90 :
投下GJ!
早速二階堂さん視点かー、その発想はなかったw
電波とバカと異常者なはずが一番の常識人パーティーか、愛子さん達を彷彿とさせるなw
しかしあっちと違ってこっちの異常者は内に牙をむく可能性があるから、これからどうなることやら……

書きたいけどネタが出ない……
ネタはあるけど書かれたばかりのロリコンだし、あいつばっか進めてもなぁという気持ちがあるのだよ……

91 :
投下乙!
浸食率低いと何も出来なくてニート状態な二階堂さんマジ可愛い
何気にファンガールと紀夫がいい感じだぞw
ロリコンは…別に進めてもいんじゃね?ネタになるし

92 :
サルベージ

93 :
とりあえずさくらペロペロ

94 :
一週間待って書いてる人いないっぽいんで
篠田勇、魔王、板垣退助、藍葉水萌、真琴真奈美、御木魚師、トーマス・A・エジソン、葉桜加奈子、フィクション、加山圓、イロハ
を予約します
まあ、顔見世程度の登場の人も多い(というか殆ど)のであんまり期待しないでね

95 :
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
期待しています

96 :
 私生活が忙しくって描きたくてもなかなか時間取れない。
 がんばてくださーい。

97 :
遅ればせながら投下します

98 :
「…………そんな」
ポツリと葉桜加奈子が戸惑いの声を漏らした。
その原因はフィクションが手に入れた参加者候補名簿を見たことに起因する。
「知り合いでもいたのかい?」
「はい……えっと友達と、学校のクラスメイトや先輩が何人か」
そこには彼女の通う秋月高校の生徒の名前が多くあった。
そして、なにより彼女を戸惑わせたのは無鉄砲で無茶ばかりする幼馴染の名前である。
「…………何人か?
 加奈子ちゃん。その学校の人間が何人いるのか具体的にわかるかい?」
加奈子の心情を知ってか知らずか、フィクションは加奈子の心配とは別の質問を投げかけた。
「……えっと、私の知らない人もいるかもしれないですけど、知ってる人だけなら秋月の生徒は八人いますけど」
「ふーん。八人、ね」
ふむ、とフィクションは加奈子から得た情報を吟味する。
七十名弱のうち八人が同じ高校から選ばれている。
比率としては全体の1割程度だが、先ほど出会ったイリアム・ツェーンやフィクション自身のように候補は日本だけでなく世界中から選ばれているとなると、その数はさすがに異常だ。
「それよりも、フィクションさんはどうだったんですか?」
「ん? どうって?」
と、フィクションが思案しているところに、今度は加奈子が問いかけた。
「その……お知り合いの名前とかなかったんですか?」
「ああ、二人ほどあったね」
あまりにも平然と答えるフィクションに少しだけ加奈子は戸惑いを見せた。
「心配じゃないんですか?」
「そうだねぇ。まあ一人は放っておいても心配いらないだろうけど。
 イロハちゃんの方は危ないかもね。心配と言えば心配かな」
イロハちゃんという親しげな呼び方。
これまでのフィクションにない感情めいたものを感じられたように加奈子は思えた。
「そのイロハちゃんってひょっとして、ご家族ですか? 娘さんとか妹さん?」
加奈子からすれば、何でもないような問いだった。
だが、フィクションはこれまで見せたこともないような、ひどく驚いたような表情を見せた。

99 :

「家族? …………家族か。まあそうなるのかな?」
考えたこともなかったな、と誰に言うでもなく小さくつぶやいた。
その呟きの意味は加奈子には、いや、きっと彼にも理解できないものだった。
「ま、なんにせよあくまで候補だから、気にし過ぎてもしょうがないさ。
 一応、行動目標には含めておこうか。とはいえ、この広い会場で特定人物を探すのは骨が折れそうだけど。
 なにか人探しに便利な道具でもあればいいんだけどね」
「そういえばこんなのが私の支給品にあったんですけど…………望遠鏡か何かだと思うんですが」
そう言って加奈子が取り出したのは筒状の棒のようなものだった。
「ああ、それはライフルのスコープだね。
 それが支給品なら多分、他のパーツもあるはずだね」
「これですか? よくわからなかったんでそのまま放置しちゃってたんですけど」
そういって加奈子はケースにしまわれたバラバラのパーツを取り出した。
「ま、ライフルを隠して運ぶばないといけないような職業じゃない限りは使う機会もないし実用性も低いからね。
 知らなくてもしょうがないさ。貸してみてもらっていいかな?」
「あ、はい。いいですよ」
フィクションは加奈子から受け取ったパーツをまるでパズルを組み立てるようにスラスラと組みたててゆいった。
銃を扱う姿が似合う外見ではない、それどころか、和服にライフルなどミスマッチもいいところだ。
だというのにライフルを扱う姿は自然体、違和感など感じられない。
違和感があるはずなのに違和感を感じないことに違和感を感じる。そんな奇妙な光景だった。
「これで完成だよ。はい加奈子ちゃん」
「い、いえ、いいですよ! そんな…………銃なんて」
慌てて両手を振って、手渡されようとした完成したライフルの受け取りを拒否する加奈子。
「いやいや、撃つ以外にも結構便利なんだよ、ちょっと重いけどこうしてスコープを覗けば望遠鏡代わりになるし」
そういってフィクションはスコープを覗きこみ。
次の瞬間、躊躇いもなくその引き金を引いた。
■■■■■■■■

100 :

「そういやさ、お前スキルカードってなんだったの?」
藍葉水萌の襲撃を受け傷を負った魔王に、肩を貸しながら病院に向かう途中、思い出したかのように篠田勇がそう訪ねた。
「まだ確認しておらぬ、なんじゃいきなり?」
「いや、回復系のカードかもしれないじゃんか。そしたら病院まで行く手間省けるだろ?」
「おお。それもそうだな。さっそく確認してみるか」
そういって魔王は自らの荷を確認する。
基本的に二人ともファンタジー世界にどっぷりの人間なのでスキルカードという超常の道具に対して特に抵抗なく受け入れている。
「こ、これは…………!」
「どうした、当たりか?」
自らのカードを確認した魔王が驚愕の声をあげる。
何事かと篠田は、後ろから魔王のカードを覗きこんだ。
「…………プ。ガッハッハ! なんだそりゃ!?
 魔王が落とし穴って! 支給品の釣竿といい地味すぎだろお前!?」
魔王に配られたスキルカードは【落とし穴】。
効果もそのまま落とし穴を作る能力である。
魔王らしからぬ地味さであった。
「う、うるさい。そういう貴様はどうなのだ篠田よ!」
「オレ? オレはコレだよ」
ふふん。と上機嫌に笑うと篠田は見せつけるように指に挟んだスキルカードを突き出した。
「ぐぬぬ。【重力操作】か……なんかラスボスっぽい能力じゃのう」
「羨ましいか、へっへっへ」
回復系ではなかったものの、ひとまずスキルカードを宣言しておく二人。
そんなことをしながら足を進めるうちに、町の外観が見えてきた。
「お、町が見えてきたぜ」
「そうだな、って………………なんじゃあれは?」
その町の入り口。
傍らにある電柱の上に、なんか筋肉ムキムキの大男が立っていた。

101 :

「……まさかあれ、お前の元手下かなんかじゃねぇだろうな?」
「いやいや、そのようなわけなかろうが。あのような奴知らぬわ」
「あっそ。どっちにしてもまともな人間にはとても見えねぇけどな」
魔王にも引けを取らない巨体に遠目でもわかる威圧感。
威風堂々佇むさまは風格すら感じる。
「わが名は板垣退助! 自由を愛するものである!!
 汝らに問おう! 自由は何か!?」
唐突に電柱の上から男が叫んだ。
「おいおい、話しかけてきたぞ、どうするよ」
「決まっておろう」
「だな」
魔王と篠田は互いに頷きあうと、クルリと踵を返して進路を変更。
「無視じゃ」
「無視だな」
危ない人には関わらない、安全第一がもっとうの篠田と魔王である。
「――――自由!
 それは己が我侭を貫き通す事!
 すなわちそれを押し通す力こそ自由の象徴!」
「おい、なんか勝手に自分で答え言い始めたぞ」
「知らぬ知らぬ。無視無視」
振り返ることなく早歩きでその場から離れる二人。
「我らの自由を奪うヨグスの行為は赦されるものではない!!
 故に!! 我ら力を合わせ奴に自由を奪った代償を支払わせるべきだ!
 貴殿らもそうは思わぬか!?」
板垣の呼びかけに、二人は僅かに足を止めた。
板垣の目的は勧誘のようだ。
打倒ヨグスを掲げるその演説自体は共感に値する内容だ。
彼らも変人と関わるのは御免だが、協力者は少しでも欲しい状況だ。
我侭は言っていられないかもしれない。
そう思い直し、二人が少しだけ振り返る。
その瞬間、二人が見たのは、頭から血しぶきを上げて電柱から崩れ落ちる板垣の姿だった。
■■■■■■■■

102 :

「ちょ、ちょちょ、ちょっと何撃っちゃってるんですか!?」
突然の発砲に度肝を抜かれ加奈子は思わず叫んだ。
「ああ、ごめんごめん。手が滑った。
 でも大丈夫。今の弾丸で”死んだ人”はいないから」
「もう、当たり前です!」
あまりにも呑気なフィクションの様子に加奈子は大きくため息をついた。
「……やっぱりそれ預かっておきます、フィクションさんに持たせておくのも危なそうだし」
「そう、それは何より」
しぶしぶながら加奈子はフィクションからライフルを受け取る。
実弾の誤射など下手したら死人が出ていたミスをした直後だというのに、フィクションに悪びれる様子はない。
当然である。
先ほどの発砲は誤射で等ではなく狙って撃った弾丸なのだから。
フィクションからしてみれば、ターゲットと思しき相手をたまたまスコープの先に見つけたからとりあえず撃ってみただけの話だ。
なぜか思い切り狙いやすいところにいたわけだし、その好機を見逃す理由もない。
命中は確認した。
だが、仕留めきれたわけではない。
弾丸をぶち込んでも死なない相手とはなるほど確かに化け物に違いない。
だが、傷つけて傷つく相手なら、殺して殺せない道理はない。
弾丸を受けて血を流したのならそこまでの相手ではないだろう。
「ま。依頼続行かな、とりあえず」
加奈子のお小言を聞き流しながら、伝説の暗殺者はそう、小さくつぶやいた。
【一日目・黎明/D-5草原】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】折り畳み式ライフル(5/6)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品0〜1
【思考】
基本:日常に帰る
1.加山圓や知り合いと合流したい
2.フィクションと協力して脱出方法を探す
【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1〜3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.イロハと加奈子の知り合いを探して合流。オーヴァーはとりあえず放置
2.機会があれば板垣退助をR
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています
■■■■■■■■

103 :

板垣退助に狙撃は通用しない。
どれほどの遠距離射撃であろうとも彼は殺気や機微と言ったものを本能的に感じ取り、回避することが可能だ。
故に狙撃など恐れるに足らない。
だが、その弾丸は違った。
弾丸に意志など込められて無いように。
それこそ当たり前のように放たれた弾丸に殺意などなく。
その弾丸は板垣の本能という防衛網を超え、彼の後頭部に直撃したのだ。
だが、あえてもう一度言おう。
板垣退助に狙撃は通用しない。
それは本能により回避能力という意味でもあり。
直撃すら耐えうる化物性という意味でもあった。
「ぐぬぬう……っ!!」
電柱から落下し、地に落ちた板垣が唸りを上げながら立ち上がる。
とはいえ、流石の板垣と言えど弾丸を頭部に受けて無傷とはいかない。
頭部から血液を垂れ流しながら、憤怒の表情で眼前の二人をにらみつける。
どこから弾丸が飛んできたのか。
誰が弾丸を放ったのか。
何故板垣を狙ったのか。
その真相をこの場にいる全員が知らない。
「…………よかろう。我に敵対するのであれば容赦はせぬ」
ただ、その攻撃はあまりにも完璧な不意打ち過ぎた。
板垣からすれば目の前にいる二人が何らかの方法で攻撃したとしか考えられない。
本能で周囲索敵ができる板垣だからこそ、確信をもってそう思った。
「ちょ、待て、誤解だ!」
「無駄だ。来るぞ!」
篠田の弁明も虚しく、板垣が動く。
踏み込まれた地面が砕ける。
弾丸のような加速。
小山のような巨体が駆け抜ける。
迫りくる様はまるで重戦車。
もっとも、その程度で怯む二人でもないのだが。
方や異世界の支配者たる魔王。
方やその魔王を相手取った勇者である。
その程度の相手、見慣れている!
二人は直線で迫る板垣を冷静に左右に展開し回避する。

104 :
「クソ、仕方ねぇ。その傷じゃ戦えねだろ、下がってろ魔王」
「いや、下がるのは貴様だ篠田!」
「うぉわ!?」
風切音と共に篠田の眼前を巨大な尻尾が通過した。
鞭のごとく振るわれた尾が板垣を打つ。
板垣は十字受けでコレを受けたものの、衝撃までは押し殺せず地面を削り後ずさる。
そこにいたのは、それまでの魔王ではなかった。
その外見は凶悪さを増していた。
頭部には角が突き出し、背に生える蝙蝠のような翼と鞭のようにしなる長い尻尾。
人と魔が入り乱れる、それは正しく―――魔王。
「第二形態!? いきなりかよ!」
かつて篠田も戦ったその姿。
その時は、一度追い詰めた上で奥の手として出されたものだった。
だというのに今回は魔王はいきなり本気だ。
それだけの相手ということか。
「があああああああああぁぁ!!」
「ふんぬうううううううぅぅ!!」
空気が炸裂するような衝突音。
超重量級の二人が互いに駆け出し、真正面から衝突する。
「…………なっ!?」
驚愕の声。
よもや人間に力負けするとは誰が思おう。
押し負けて吹き飛ばされたのは魔王だった。
「しゃーねーな。やっぱオレがいないとか!?」
篠田は自らに向かって飛んでくる魔王の体を、跳び箱のように跳んだ。
板垣からすれば、魔王の巨体に隠れた死角から突然篠田が現れたようにしか見えないだろう。
飛び上がった篠田が空中で縦に一回転し、その勢いのままエストックを振りおろした。
不意を付かれた形となった板垣はコレを躱せず、エストックの穂先が彼の胸元を薙いだ。
だが、

105 :

「な、に………?」
驚愕の声は篠田のものだった。
篠田の一撃は肌に僅かに跡を残したのみで、血を流すどころか皮膚すら切れていない。
いくらエストックが刺突用の剣であったとしても、これはあり得ない話だ。
「肌に粗塩を擦り込んである。古代の拳闘士はそうすることで切れにくい体を作り上げたという」
「いや、そういう次元じゃねぇだろこれ!」
篠田が突っ込みという名の叫びを上げるが、板垣は容赦なく鉄球のような拳を振りかぶる。
攻撃の直後。篠田の体制は崩れている。
なによりその身は今だ空中にある。
故にその一撃は、回避は不可能。
「篠田――――ッ!」
魔王の叫びも虚しく。剛。と唸りを上げて放たれた拳が篠田の脇腹に直撃した。
篠田の体が紙屑のように吹き飛ぶ。
はたして何メートル飛んだのか。
地面を何度かこすり、ゴムまりのように跳ね、勢いを弱めた後、やっとその体は停止した。
「ッ! 問題ねぇよ、クソッ!」
だが、篠田は跳ね上がるように起き上がり、すぐさま体勢を立て直す。
派手に吹き飛ばされたように見えたが、吹き飛ばされる直前に重力操作の能力により自身を無重力に設定していたのだ。
つまり吹き飛ばされたのはではなく自ら吹き飛んだ。
「…………それでもこのダメージってありえねぇだろ」
そういって篠田は脇腹をさする。
重力をなくすというほぼ完璧な消力であったはずなのに、内臓にはズシンと重い痛みが残っている。
何の工夫もなく直撃すればどうなっていたことか、想像に難くない。
「しかし、えらい飛ばされたな…………」
見れば、数百メートル先で魔王と板垣が衝突している。
無重力状態だったとはいえ人間のをここまで飛ばすとは尋常ではない。
見る限り魔王は劣勢。
篠田は一刻も早く援護に駆けつけようと足に力を籠めて。

106 :

前に進むのではなく、全力で横にその場から飛びのいた。
それとほぼ同時に篠田のいた場所を斬撃が掠めた。
「あははっ! こんな派手に戦ってたら見つけてくれって言ってるようなものだよね!」
「クソ、めんどくさいのが! それどころじゃねェってのに!」
現れたのは篠田とは違うもう一人の勇者、藍葉水萌。
水萌は立ちふさがるように篠田の道をふさぐ。
「どけよ。今はお前の相手をしてる場合じゃねぇんだよ」
「そんなに向こうが心配? 篠田のくせに魔王と仲良しだなんてホント、勇者の面汚しもいいとこねあなた」
「うるせぇよ」
「通りたいんなら力づくで通ってみれば?」
「言われなくても!」
水萌に向かって篠田が駆ける。
篠田も勇者の端くれだ、その動きは常人を凌駕するような加速だが、それでも水萌からすればまだ遅い。
このまま真正面から来るのならば、是非もない。
返す刃で一刀両断にしてお終いだ。
だが、その予測を裏切り、篠田は地面を強く蹴った。
自らを再度無重力に設定して跳びあがる。
自身の重力を操作したその跳躍は遥か高く、水萌の身体能力を持っても捕えきれない。
水萌の遥か頭上を越える軌跡を描き、篠田は跳ぶ。
「あはっ。すごいジャンプだね。けど、そんな程度で逃げられるとでも、」
「――――――――逃げるかよ」
言ってカクンと、ありえない軌道で篠田の体が落下を始めた。
「――――重力三倍」
篠田の体が上空から水萌に向かって一直線に落下する。
その勢いのまま、篠田は剣を振り下ろした。
「くっ!?」
咄嗟にフランベルジュで受ける水萌だったが、圧し掛かる重量は篠田の全体重×3。
その圧力に押し切られ水萌が膝をつく。
三倍近いレベル差を覆すには十分な威力だった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そのまま剣を振り切り水萌を吹き飛ばす。
代償としてその負荷を一身に受けたエストックが叩き折れたが、それを気にせず倒れこむ水萌の脇を篠田は走り抜けた。
■■■■■■■■

107 :

魔王と板垣の死闘は激戦を極めていた。
突き。防ぎ。打ち。捌き。叩く。
常人であれば一撃でも食らえば絶命するほどの超重量級の打撃戦。
押されているのは魔王である。
地力の差というより、水萌から受けた傷が大きく響いていた。
そしてついに板垣のバットどころか、大木すらへし折りそうなローキックにより魔王の体制が崩れた。
そこに迫る追撃のアッパーカット。
「五倍スタァ―――ンプ!」
「篠田!?」
そこに、ギリギリのタイミングで上空から篠田が介入する。
強化重力の加速落下を利用した蹴りにより、突き上げられた板垣の拳を撃ち落とす。
だが、五倍の重力を籠めたその蹴りを物ともせず、板垣の拳は止まらない。
「嘘ぉ!?」
その拳は直撃から若干軌道が逸れたものの、投げ捨てられるような形で篠田の体が吹き飛ばされる。
その先には魔王が。
重力強化によって篠田が重量を増していたことも相まって、体制の崩れていた魔王はこれを受け止めきれず、二人仲良くゴロゴロと地面を転がった。
「……よう、長旅だったな篠田。いらんお客さんまで引き連れて」
「そりゃどうも。で、どうするよこの状況?」
二人は立ち上がりながら現状を顧みる。
前門の板垣、後門の水萌。
見れば、先ほど振り切った水萌が追いついている。
「こいつ一人でも手に余るというのに、藍葉まで加わられたらさすがに無理だ。何とか逃げる事だけ考えろ」
「は、魔王からは逃げられないとは聞くが。まさか魔王から逃げる相談されるとはな。だが、同意見だ」
逃れる事すら困難な、正しく絶体絶命の状況である。
このままの流れならば確実にやられる。
何かこの危機的状況を変える流れがあれば。
「はーい。仲良く何の相談かしら。さっきはよくもやってくれたわねぇ。
 でも恨んでなんかないわ。ちゃんとあなたもそこの魔王も平等に殺してあげるから!」
たどり着いた水萌が楽しそうな笑顔で吠える。
だが、板垣は対照的に眉をひそめた。
「貴様――――今、平等といったか?」
流れが、変わった。
■■■■■■■■

108 :

「…………なんだあれは」
加山圓は強化された視力でその戦闘を見ていた。
四人の男女が入り乱れ殺し合うその様。
誰かが悪漢に襲われているのなら、助けたいと思う心はあるが。
誰が正義で悪なのか。
誰が被害者で加害者なのか。
その光景からは何一つわからない。
いや、ひょっとしたら全員が加害者で、全員が殺し合いに乗っているのかもしれない。
魔王としか形容し難い見た目をした化け物。
これまでの自分の常識の中ではありえない存在。
もはや存在が人類の範疇を超えている。
筋肉隆々の大男に関しても見た目からしておかしい。
正直日常生活なら絶対関わり合いになりたくない類の相手だ。
見た目だけで言うのなら、制服を着た女子高生が一番被害者然としているのだろうが。
実際、その少女が最も積極的に戦闘に及んでいるように見える。
なら残った最後の青年がまともかといえばそうでもない。
他と同じく明らかに戦い慣れた動きをしているし、動きからして魔王と協力体制にあるように見える。
全員が怪しく、全員が危険人物に見える。
だがそれ以前に、たとえ被害者が明確だったとしても、あの戦闘は介入できるレベルではない。
全員の動きの次元が違う。
加山は自らの弱さを認める。
剣術をかじった程度の自分などこの場においては弱者だろう。
そのうえで自らの身の振り方を決める。

109 :

無茶はできない。
なにせ彼は一人ではないのだ。
加山は傍らにいる少女を見る。
己の死は同時に少女の死に等しい。
綱渡りをするような慎重さが求められる。
無鉄砲のままではいられないのだ。
「イロハちゃん。進路を変えよう」
イロハは加山の言葉を疑問に思うでもなく、素直にコクリとうなずく。
加山はその戦闘に介入しないことを決める。
二人は知らず離れてゆく。
北に彼らを求める人物がいることも知らずに。
その決断がなにを意味するのか。
【一日目・黎明/F-5市街近く】
【加山圓】
【状態】健康、過剰感覚による若干の気持ち悪さ
【装備】小太刀
【スキル】『五感強化』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本:徹底的に抗う
1.この場から離れる(北は避ける)
2.イロハを守る
【イロハ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品×1〜2
【思考】
1.マドカに付いていく
■■■■■■■■

110 :

「何かしら素敵なおじ様。
 安心して頂戴、あなたもちゃんと殺してあげるから」
板垣を舐めるような視線で見つめ、クスリと笑う水萌。
対する板垣が感情を抑えたような表情で水萌を問いただす。
「それが貴様の平等か?」
「ええ、私はすべての生命を平等に扱っているの。動物も虫も草木も全てね。
 だから全体の事を考えたらなら、人間を滅ぼした方が世界のためだと思わない?」
板垣の怒気が高まり、一触即発の空気が加速する。
そしてこの展開、水萌と板垣が争ってくれるなら篠田たちにとって好都合。
篠田と魔王の二人は無言で合図を起こり、その隙に逃れる算段を立てていた。
「そのような身勝手な理由で生命活動という基本的人権を損害するその行為。
 許すまじ―――――――!!」
板垣の怒号が響く。
瞬間、板垣の巨体が完全にその場から消失した。
あり得ない次元の爆発的加速。
その動きは、これまでとは完全に別物だった。
板垣は感情によってその戦闘力を大きく変動させるタイプのファイターだ。
今、板垣は怒りによってリミッターが完全に解除されている。
だが、水萌も伝説とまで呼ばれた勇者である。
この一撃に反応し、剣の腹に片手をそえ板垣の拳を受け止める。
ただ、そんな行為は無意味だ。
正面から正拳を叩き込む。
それだけのシンプルな攻撃もこの次元まで昇華すれば、必殺になりえる。
ペキリと、空き缶をつぶしたような嫌な音が鳴った。
板垣の巨大な拳はフランベルジュを根元からたたき折りその勢いのまま水萌の顔面にめり込んだ。
藍葉水萌の体はプロペラのように横回転しながら宙を舞い。
傍らを流れる川までたどり着いたかと思えば、回転しながら小石のように水の上を跳ね滑って行った。
「……ぁ…………ぁ………っ」
対岸で静止し、地面に転がる水萌の口から喘ぎのような声が漏れた。
生きている。
だが、それもかなり危うい。
プライドもあり、それには頼らなかったが、緊急事態だ。
最後の力を振り絞り、荷物の中に手を伸ばす。
かすかに指先に触れる感覚。
「…………………自……己さ、い…………生」
息も絶え絶えになりながらも、指先に触れたスキルカードを宣言する。
それと同時に彼女のプツンと意識は途絶えた。
■■■■■■■■

111 :

トーマス・A・エジソンとであった真琴真奈美と御木魚師の二人だったが。
ひとまずエジソンと行動を共にすることにし、発電所に向かう途中だった。
「お。まなみん、誰か倒れるぜ」
「だからその呼び方は止めろと……ってなに?」
言われて、御木の指す方向を見てみれば、そこには制服姿の女子高生が倒れていた。
警察官である真琴はもとより、御木も下っ端とはいえ裏社会の人間だ。
怪我人や死体も、ある程度は見慣れてるため、警戒はあれど動揺はない。
だが、もう一人は違った。
「う、うああああああああ〜〜!!
 死体! 死体だ! 死んでる! 誰かが殺した! 誰だ! 人殺しはよくない!!」
途端にパニックに陥るエジソン。
「落ち着いて、まだ死んでると決まったわけじゃないから!」
真琴が一喝するがエジソンは止まらない。
分けのわからない言葉を喚き散らし続ける。
真琴は眉間にシワを寄せて頭を抱える。
「あーもう。ゴキ、私が見てくるから、お前はトーマスさんを落ち着かせておいてくれ」
「え。ちょっとまなみん、そりゃねぇって!」
ゴキの抗議を無視して真琴は周囲を警戒しつつ少女に近づいてゆく。
そして少女のもとにたどり着くと、そこは警官、迅速に脈拍をとり生死を確認。
生きているものの意識はなく、命に別状はないとは現段階では言い切れない、危険な状態だ。
外傷、特に顔の損傷がひどく、裂傷や腫れがひどい。
「かわいそうに女の子だろうに…………」
美しかったであろうその面影は見る影もない。
真琴は少女を慈しむようにそっと髪を撫ぜた。
「どうどうどう。落ち着こうぜ、ジンたん。
 あ、どうだったのまなみん、生きてた〜?」
エジソンをなだめながら御木は戻ってきた真琴に問いかけた。
「ああ、まだ息はある、かなり危険な状態に違いないが」
「それで、どうするの?」
「このまま放っておくわけにもいかんだろ。運ぶぞ手伝えゴキ」
「えぇっ、マジっすか?」
「どうせ目的地は病院なんだ、いいから来いッ!」

112 :

嫌がる御木を引きずりながら真琴は少女へと近づいていった。
少女の状態は一刻を争う。
外傷は酷く、その顔はかつての面影などない。
それ故に真琴たちは気付けなかった。
自分たちの抱えた少女が、世間をにぎわせた殺人鬼であることに。
知らず、爆弾を抱えてしまったことを彼女たちはまだ知らない。
【一日目・黎明 E-3川沿い】
【真琴真奈美】
【状態】健康
【装備】H&KMP5(30/30)
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、H&KMP5予備カートリッジ
【思考】
1.少女を病院に運ぶ
2.御木、トーマスと行動を共にし、守る。
3.オーヴァーが居る…?
【御木魚師】
【状態】健康
【装備】特殊手錠、ケブラー防弾ヘルメット
【スキル】『パブリックエネミー』(AM8時以降再使用可)
【所持品】基本支給品
【思考】
1.真琴と行動を共にし、なんとかこの状況から逃れる。
※特殊手錠
 一見ワイヤーのついたごく普通の手錠。
 何か特殊な仕掛けがあるらしいが、御木しか確認していない。
【トーマス・A・エジソン】
【状態】健康
【装備】
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
1.発電所で電気を使えるようにする。
2.その後病院へ行って首輪をレントゲンで調べる。
【藍葉水萌】
【状態】瀕死、再生中
【装備】なし
【スキル】『自己再生』
【所持品】基本支給品、手榴弾×4
【思考】
1.????
■■■■■■■■

113 :

それは、冗談のような光景だった。
「…………一撃かよ」
あの藍葉水萌が一撃でやられた。
生死は不明だが、ただではすんでいまい。
争っている隙に逃げ出す算段だったが、あまりにも一瞬でケリがついたせいでそれもおじゃんだ。
「さて、次は貴様らの番か」
板垣が篠田と魔王に向き直る。
「…………しかたねぇな、やるしかねぇか」
「とはいえ、真正面からいっても先ほどの焼き直しにしかならんぞ」
「お前はな。さっきは不意に一発もらっちまっただけさ、今度はそうはいかねぇよ」
そういって篠田はクラウチングスタートのような構えをとる。
「どうする気だ?」
「決まってんだろ、半端な攻撃が効かねぇんなら、デカイの一撃叩き込む!」
無重力の足取りで篠田が駆けた。
風に流されるような軽い動きで、板垣の眼前まで迫る。
その動きに対し板垣は撃退の一撃を放つが、拳圧に流される羽のように篠田が跳んだ。
「重力十倍!!」
板垣の真上を取った篠田が上空から重力を叩きつける。
だが、板垣は機敏なサイドステップでその効果範囲から抜け出し難を逃れる。
「ちぃ!」
篠田が舌を打つ。
この【重力操作】は強力なスキルではあるのだが、使用してみて、篠田はいくつかの弱点を認識していた。
一つは発動の遅さだ。
自身の重力を操作する場合は問題ないのだが、外部の重力を操作する場合はそうもいかない。
能力を発動させるのに座標指定と能力発動のツーステップが必要となり、若干のタイムラグが生じる。
並みの相手であればそれで問題ないだろうが、この板垣退助相手ではそうもいかない。
本能による危機察知能力。
そしてどのような状況でも反応できる身体能力。
当てることは困難と言える。
そしてもう一つは消耗の激しさ。
二倍、三倍程度であれば、大した消耗ではないのだが、五倍を超えたあたりからかなりの消耗になる。
最大の百倍など下手に使うことなどできないし、使ってはずしては目も当てられない。
使うにしても確実に当てられる状況を作れた場合のみだろう。
そして、自身にGをかける場合、Gが高ければ攻撃力は増すが当然かかる負荷も倍増する。
感覚としては自分にかけれる重力は五倍が限界だろう。
五倍での奇襲はすでに失敗している。
となると、やはりそれ以上のGを直接相手に圧しつけるしかない。

114 :

「なるほどな、ならば任せろ篠田!」
篠田の意図を察した魔王が板垣に突撃する。
突撃した魔王は、板垣に密着しがぶり寄つに組んだ。
腕力は互角。
確かに、これで動きは止まった。
重力操作の狙いを定めることも可能だろう。
だが、完全に密着した状態で魔王まで能力に巻き込んでしまう。
ならばどうするか。
「――――――――スキル【落とし穴】!」
「ぬぅ!?」
組みながら魔王が叫ぶと、板垣の足元に空洞が出現した。
足場を失った板垣はなすすべもなく穴に落ちた。
だが、穴の深さは1メートル程度、落ちたところでダメージにはならない。
つまり、これはただの足止めに過ぎないという事。
「ナイス魔王!
 ――――自重で潰れろデカブツ!!」
魔王が身を引き、その場から離れると同時に、待ってましたと篠田が叫ぶ。
二度とないチャンス。
ここで決めるしかない。
範囲を落とし穴の位置に固定。
そこに向けて能力を最大開放。
上空からたたきつけるように解放する。
「重力――――――百倍!!」
地球上ではあり得ない超重力が板垣の全身に圧し掛かった。
板垣の体が初めて完全に崩れ、蛙のように地面にへばりついた。
「オマケだ」
そういって魔王はその膂力をもって人間大の岩を持ち上げた。
放り投げられた岩石はその範囲に入った途端に強烈な重力に従い超加速を得て落下する。
爆発したような破裂音とともに砂埃が舞い上がる。
「……八ァ…………八ァ…………八ァ。やったか?」
最大出力である重力百倍を使った反動か、篠田は立っていることすらままならないほど体力を消耗していた。
バタリと仰向けに倒れこみながら、その成果を確認する。
辺りを舞う砂埃が風に流され薄まってゆく。
砂埃の晴れた先には、血濡れの鬼神が立っていた。
■■■■■■■■

115 :
支援

116 :
板垣退助。
彼は己が意志を貫き通すために、ありとあらゆる力を身に着けてきた。
国内最高峰の大学を首席で卒業し若くして政界に革命をもたらした知力。
また、政治活動との二足のわらじながら一代で築きあげた財閥の財力。
そして、自由主義国日本の初代総理大臣としての権力。
一国を率いる指導者としてのカリスマ性を放つ魅力。
その身一つでロシア軍を殲滅した圧倒的な暴力。
故に彼は地上最自由。
繋ぎ止められぬアンチェイン。
何者であろうとも彼を縛ることなどできない。
「八ァ……八ァ……やべぇな、こりゃ……絶体絶命ってやつ?」
息も絶え絶えになりながら、篠田が立ち上がろうとするがもはや体力は底をつきそれすらもかないそうにない。
折れた剣を杖代わりにして何とか立ち上がれるという有様だ。
「さて、どうするよ魔王。…………魔王?」
返答がないので篠田が視線を向けると、魔王は何やら思案している顔だった。
「……おい、何考えてんだ」
「助かる方法に決まっておる。
 だが、二人とも助かるのはどう考えても無理だな」
「んじゃ一人が足止めでもして、その間に一人が逃げるか?
 ま、今のオレじゃ逃げ切るような体力はないがな」
「いや、そうでもないぞ?
 なにより逃げはお前の専売特許であろう?」
そう言って魔王が篠田の胸ぐらをつかむ。
「おい……ちょっとまて、何のつもりだ、魔王」
ここにきて篠田も魔王の意図を察した。
睨みつける篠田の眼光に魔王はふっと皮肉気な笑顔を返した。
「決まっておろう、自分で走れないなら、流されろ――――!!」
ブンと、魔王は膂力だけで篠田を放り投げる。
抵抗する体力は篠田にはない。
放り投げられた篠田はそのまま川に着水し、その勢いに流される。
「テメェ何かっこつけようとしてやがる! ふざけんなクソ魔王―――――――!! ガボッ、ガッ」
叫びも水に飲まれる。
かき分ける体力もない。
溺れるように篠田は水の流れに呑みこまれていった。
【一日目・黎明/E-3川中】
【篠田勇】
【状態】疲労(極大)
【装備】なし
【スキル】『重力操作』
【所持品】基本支給品、フラッシュグレネード×4
【思考】
0.……魔王
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす
■■■■■■■■

117 :
支援

118 :
「ほう。仲間を逃がし自らが我に討たれる道を選んだか。見上げた覚悟だ」
板垣は敵を称賛する。
おそらく板垣ならば、魔王を突破し篠田を追撃することも可能だっただろう。
だが、板垣は魔王の覚悟に敬意を払い無理に篠田を追うようなまねはしなかった。
「は。勘違いするなよ人間。奴を逃がしたのではない。
 貴様をRのに、奴が邪魔だっただけの話だ」
「ほう?」
だが、違う。
その板垣の勘違いを、魔王は嘲笑う。
魔王の言葉は嘘ではない。
魔王には第三の形態が存在する。
「――――見せてやろう。魔族の王の真の力というモノを」
その身が人外のそれに変貌していく。
それは伝説に存在するドラゴンそのもの。
その体躯は漆黒に染まり、全身から傷口の様な眼が開く。
禍々しさは筆舌に尽くしがたい。
『GAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』
断末魔のような雄叫びが響く。
そこにはもうそれまでの魔王は存在していなかった。
そこにいたのはすべてを壊し。すべてを殺し。すべてを滅ぼす悪魔。
この姿になってしまったが最後。
彼は理性を完全に失い、敵も味方も判別なく周囲を破壊し尽くすまで止まらない、真の魔王と化す。
目の前の敵を殲滅すべく魔界の王が降臨した。
【一日目・黎明/E-4平地】
【板垣退助】
【状態】頭部にダメージ(中)、全身にダメージ(大)
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明カード1枚、不明支給品1〜2
【思考】
基本:自由を愛し、平等に生きる
1.闘いを挑む者には容赦しない
2.自由を奪う男(主催)を粛清する
【魔王】
【状態】最終形態、ダメージ(大)疲労(大)、背中に火傷
【装備】なし
【スキル】『落とし穴』
【所持品】基本支給品、釣り竿
【思考】
1.GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

119 :
投下終了、支援に感謝
最後にさるっちった
まあ、動かしてかき乱すだけのお話

120 :
投下乙です
板垣強すぎワロタ
銃弾効かないわ異世界組相手に一歩も引かないわ
魔王が早くも第三形態でなんだか序盤なのに最終決戦の臭いがw

121 :
投下乙
フィクションなにやってくれてんのwww
板垣マジチート、勇者と魔王を圧倒するとかなんだよこいつww
まなみんたちも爆弾抱えちゃったし、回復したらヤバイなこりゃ

122 :
現在地を更新
ttp://www10.atwiki.jp/orirowa2nd_ver2?cmd=upload&act=open&pageid=39&file=ori2map_022.jpg

123 :
地図乙
全体的に中央のEFラインに集まってきてるな

124 :
【思考】
1.GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
わろたwwwwwwwwwwwwwwwww乙

125 :
地図乙です
加山君、板垣を避けたはいいけど面倒な所に突っ込んでるなw

126 :
もし魔王が負けたら後板垣に対抗できそうな奴って…?
オーヴァー辺りとも戦えそうな萌佳でも即死とかインフレやべぇww

127 :
いいことを教えてやろう、板垣はこう見えて実は対主催なので倒す必要はない
まあ両方生き残って暴走マーダーと最強マーダーが暴れてくれるのがロワ的にはベストだけどww

128 :
初期スキルカード
>>76に蛮勇引力の分を追加

愛沢優莉【病の呪い】
藍葉水萌【自己再生】
板垣退助
一色亜矢
一色麻矢
猪目道司【未来予知】
イリアム・ツェーン
イロハ
オーヴァー【平賀源内のエレキテル】
カイン・シュタイン【その歌をもて速やかに殺れ】
片嶌俊介【ブレーキ】
加山圓【五感強化】
琥珀愛子【復讐するは我にあり】
逆井運河【二分の一!】
椎名祢音【変身】
宍岡琢磨【魔弾の射手】
篠田勇【重力操作】
白井慶一【<<]]巻き戻し】
田崎紀夫
橘蓮霧【剣技】
トーマス・A・エジソン
二階堂永遠【ネクロマンサー】
葉桜加奈子
花緒璃乃【光あれ!】
聖澤めぐる
ファンガール・J
フィクション【ブラックアウト】
フランツ・O・ブリュデリッヒ
フランドール・オクティル
魔王【落とし穴】
真琴真奈美
御木魚師【パブリックエネミー】
溝呂木桐子
安田智美【ブレインイーター】?
劉厳
龍造寺さくら【ある魔法少女の魔法能力(めぐる)】

129 :
未登場スキル一覧

【●REC】
【FaceBook】
【GPS】
【ある魔法少女の魔法能力(智美)】
【エターナルフォースブリザード】
【エネルギードレイン】
【ゴッドハンド】
【シュレーディンガーの猫】
【ハニートラップ】
【マッチセラー】
【ものまね】
【加速装置】
【我が胎の愛すべき蠱】
【給仕募集】
【血流操作】
【剣豪】
【航海術】
【高速思考】
【骨葬の儀式】
【殺人読本】
【自己再生】
【自動蘇生】
【赦されざる者】
【守護神の虫唄】
【重力操作】
【植物操作(プラントオペレート)】
【神の声】
【追憶の書庫】
【痛いの痛いの飛んでいけ】
【飽食の晩餐】
【密毒】
【落とし穴】
【霊媒】

130 :
話題も無いので話題を振ろう。

このロワのバスト比べみたいなのはどんなんだと思う?
俺は絶対にまなみんはBのクセにパット入れてCぐらいだと思う。
異論は認めない。

131 :
 一番の巨乳はのりちゃん。
 二番目はたいちゃん。

132 :
>>131
wwwww
それは胸囲の問題ではなくカップの(ry

133 :
今回はロリが多めで目立っておっぱいな娘はあんまし居ない印象でござる

134 :
ヒロインポジにいるのがどいつもロリ年齢だからなーw
>>45を参考にすると、高校生以上の女性はほとんどがアレなのばっかりというのも一員かとw

135 :
 姫なら結構居るヨ。
 一人は元泡姫、だけど。

136 :
age

137 :
支援あげ

138 :
早速過疎化……
まぁ、これでオリキャラ系の需要がないのがはっきりしたか……

139 :
あれ、これって予約してもいいんかな?

140 :
いいよ

141 :
 2chの方がアクセス規制に巻き込まれてしまったので、緊急避難的に以前の仮投下スレに投下させていただきました。
 てかあそこは引き続き使って良いのかしらん?
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14052/1281450330/96-


142 :
どうなんだろう……
前回参加してないから分からないや
とりあえず代理投下します

143 :
【早朝:逆井運河】
 死んでいる。
 どこをどう見たところで、既に死んでいる。
 ぎょろりと見開かれた目に、弛緩した舌がだらしなく開いた口から覗き、乾いた涎の跡が白み始めた空の下に見えている。
 今ここに倒れている少女は、間違いなく死んでいるのだ。
 どこをどうしたところで、この事実は覆らない。
 
 さて。まさにこれこそが自分の運命だ。
「誰か別の人間と会いたい」 と願った結果、真っ先に「死体と巡り逢う」 ということ。
 運命に弄ばれし男、逆井運河にとっては、予定調和ともいえる展開。
「…はぁ〜…。死にたい…」
 思わずそう声に出す。
 特にこれという意識も意図も無く、ただただ息を吐くが如く出されたその言葉。
 その言葉に反応があったのも、まさしく逆井の不運の成せる業だろう。
 何より、少女の死体の前に佇んでいるところほど、誰かに見られたくない場面というものは無い。
「話せば分かる」という言葉は、逆井の辞書にはない。
 あったとしても、そこの意味には、「徒労」としか書いてないのだ。
 話せば話すほど怪訝に思われ、説明すればするほど信じて貰えない。
 経験から、逆井は即座に逃げ出すことを選んだ。
 とはいえ逃げたところで、たいていは捕まる。
 それでも、何かしらの弁明をして信じられず、人殺し呼ばわりされてエライ目に遭うよりは、逃げている最中に転んで頭を打って死んでしまう方が、まだマシな様に思えた。
 そうだ。やってもいない殺人の汚名を着せられるのは、なんとしても避けたい。
 そう考えてから、ああしまった、今、俺、「なんとしても避けたい」と思っちまった、と後悔する。
 糞。
 せめて、少しはマシな方に陥って欲しい。
 背後で誰かの声が聞こえる。
 しかしもう足を止めるわけにはいかない。
 走る。逆井は走る。走り続けて逃げ続けて、背後を見ている暇もない。
 せめてこんなときくらいは…と思った瞬間、足元の石に蹴躓く。
 無様に倒れて這い蹲るが、それでもばたばたと藻掻いては、まだなんとか立ち上がろうとする。
 死にたがりのわりには、諦めが悪い。何せ諦めてどうにでもなれと思ったところで、むしろそうなるほどにどうにもならないのだ。
 緩い斜面にころりと半回転する。
 半回転して視線が背後を向くと、そこには球体そのものに見える丸まるとした男。
 男は走っているのか歩いているのか。いや、むしろ転がっているんじゃないかという態で、これならば普通に走っていて追いつかれる心配は無いのだが…。
 逆井が先程足を取られた石に、その丸い男までもが足を取られた。
 さて、今ここは緩やかな斜面になっている。
 自分は転んで、その緩やかな斜面を転がった。
 追ってきた丸まるとした男も、自分同様に転がった。
 その結果、どうなるか?
 おむすびころりんすっこんこーん♪
 逆井の頭の中で、昔話の中の一節がこだました。

144 :
 
【早朝:田崎紀夫】
 
「もしかしたら、友達かもしれないし…」
 そう言って少しうつむいた電波系女子中学生ファンガールの言葉に、紀夫はいささかどぎまぎとした。
 紀夫はまだ彼が会っても居ない某バスケ部員などと違い、小中学生に欲情するタイプではない。
 巨乳好きだし、どちらかというと「年上のお姉様に優しく手ほどきをして貰いたい」なんていう願望があったりする。
 しかしだからといって、目の前で哀しげに目を伏せた女の子を無碍に出来るわけもないし、そもそも年下だろうと年上だろうと、女性という存在にまるで免疫がない。
 紀夫はそれまでの浮かれたテンションから一転。
 自分達が先程見た、見も知らぬ少女の死体について話した後のファンの様子に、思わず息を呑む。
 曰く、ここに連れてこられる前に、友達と一緒にいたのだ、という。
 そして、紀夫達が見た少女の特徴は、どうにもその友達と似ているように思える、という。
 だから、そこに案内してくれないか、と。
 共にその死体を見ていた猪目は、しかしそれには難色を示す。
「良く言うだろ? "犯人は現場に戻る"って。
 ヘタに戻ってバッタリ、ってのは、僕ぁ御免被りたいんだけどなぁ…」
 そんな風に言われると、たしかにそうかもしれないとも思う。
 しかし、ちらりとファンガールの顔を見てしまうと、なんとかしてあげたいとも思う。
「あの、俺…」
 意を決して、紀夫は声に出す。
「俺、こう見えても、柔道3段なンすよ!
 もし怪しい奴が現れたら、ズバーンと、ぶん投げちゃいますから! や、マジでマジで!」
 果たしてその宣言通りに、怪しい奴は、居たのだ。死体の直ぐ側に。
 柔道が得意、という人間は、得てして足が短いことが多い。
 足が短いというのは、重心が低いと言うことだ。そして重心が低いというのは、相手を投げるのにも、投げられないようにするのにも向いている。
 馬鹿でお人好しの田崎紀夫は、様々な面で柔道の神にだけは愛されていた。
 小柄な癖に体重があり、何よりその重心の低さは見事なほどだ。
 勿論、柔道の神以外には、そっぽを向かれてもいる。
 特に、徒競走の神(なんてのがもし存在するのなら)からの嫌われぶりと来たらたいしたものだ。
 とにかく、「走る」という行為に、これほど適さない体型の人間も居ないだろう、と言うほどに。
 すぐに見失うだろう。誰もがそう思う。何せ、必死で追いかけている紀夫自身、そう思っているのだ。
 しかし、慌てているからか本気じゃないのか、紀夫からすれば羨ましいほどにスマートな(というか、中肉中背でごく普通な)体型の怪しい男は、よろよろと巧く走れていない。
 走るのはヘタでもスタミナはバツグンな紀夫は、なんとか結構な距離を追い続け、終いに男が転んだ。
 しめた!
 そう思ったのも束の間、紀夫は男と同じ場所で躓いて、同じように緩やかな斜面を転がり落ちた。
 紀夫にダメージがないのは勿論、男の身体がクッションになったからだ。
 そして当然、男はその分さらにダメージを負っている。
 絡み合う二つの肉体は、どちらも荒く息をしている。
「こ、この…ハァ、ハァ…あや……あやし…ハァ…ハァ…」
 この、怪しい奴め、捕まえたぞ。
 紀夫が言いたいことは、こうだ。
 実際に口にしているのは、ほぼ言葉にはなっていない。
 逃げていた男の方も同様で、何かをもごもごと口にしているつもりのようだが、それは殆ど言葉になっていない。
 まだ白み始めたばかりの薄暗い空の下、荒い息と言葉にならぬ呻きだけが周囲にこだまする。
 ぬるり。
 何かが、紀夫の手を滑らせた。
 何だろうかと考える暇もなく、今度はそれが、身体を滑らせる。
 再び男の身体の上にのしかかる格好になった、と思ったが、それも違った。
 先程まで組んずほぐれつ絡んでいた男の身体からは、脈打つ血流と、呼吸の動き。そして何より、ほてった体温が感じられていた。
 しかし、違う。
 今、紀夫がのしかかる形になった身体からは、何も感じない。
 いや、冷たく、そして妙に強ばった感触と、鉄錆びた臭気が感じられている。
「ふあぁあああぁ〜〜〜」
 逃げていた男が、息とも悲鳴とも取れぬ声を漏らす。
 紀夫も又、ほぼ同時に、同じ様な息とも悲鳴ともつかぬ声を漏らしている。
 そこにあったのは、首を切り落とされ、血の海に浸かった、筋骨隆々の大男の死体であった。

145 :

【早朝:ファンガール・J(本名:金山純子)】
 これは良いチャンスだ。
 デブの紀夫と、にやけエロ親父猪目の話を聞いて、私こと、類い希なる時空戦士であるファンガール・Jはピンと閃いたワケさ。
 彼ら2人が既に見ていたという少女の死体。
 もしその死体にスキルカードが残っていれば、自分が手に入れた【ネクロマンサー】のスキルを試せるかもしれない。
 死体を蘇生して従わせる、なんて、素晴らしくウットリするようなスキルではあるが、いざ実戦という場で突然使ってみて、どれほどの威力を発揮できるかは心許ない。
 蘇生した死者が、昔の古典的ゾンビムービーの様な、うーあーうーがー言うだけの、ノロノロ動く死体であったりしたら、それこそ何の役にも立たない。
 それに、カードにあった但し書きによれば、使えるのは放送があるまでの間に1回のみ。
 だとしたら、早朝にあるはずのそれの前に、その1回分を使っておきたい。
 この素晴らしい閃きを実行するため、私は一芝居打つことにした。
 適当な話をでっちあげ、もしかしたらその死体は友人かも知れないなどと嘯く。
 言葉少なげにそう言ったのは、でっち上げられるネタがあまり思い浮かばなかったからなのだが、それがむしろ、不安に苛まれる美少女という雰囲気を醸し出した……と、我ながらにそう思う。
 にやけエロ親父は難色を示したが(ったく、いけすかないオヤジだ!)、見事なまでに単純馬鹿であるおデブの紀夫は大いに同情し、自分が守るから一緒に行こう、等と息巻いてきた。
 その勢いに押されてか、渋々ながらの態でにやけエロ親父もそれに従う。
 これで、死体探しパーティーの結成だ。
 あー、ヤバイ。
 頬が緩む。
 なんかオラ、ワックワクしてきたぞ! 
 生の死体(ん? 今何か変なこと言った?)をまた見れるってのもそうだけど、やっぱりこのスキルカードの力を確認出来るのがたまらない。
 なんてったって、最初にあたしに支給されてていたのは、【ものまね】のカード。
 要するに、それだけじゃ何の役にも立たないカードだったのだから! (ほんと、ヨグスってマジ信じられない!)
 にやけそうになる顔を見られぬように、うつむき気味に顔を伏せながら、前後をおデブと親父に挟まれて歩く。
 おデブは盛んにこちらの様子をうかがい、何とも益体もないことを喋っている。何だよ俺の心のカレーBest5って、しらねーよ。
(ってか、もしかしてこいつ、私のこと元気づけようとしているつもりなのか? それ、けっこう笑えるけど)
 まあ、こいつはそこそこ趣味も良いし、お人好しで便利そうだから、少しは相手をしてやっても良いだろう。
 気に障るのは、後ろにいるエロ親父だ。
 こいつは、確かに会ったときから一貫して、「もっとも」な事しか言わない。
「みんなで協力して助け合おう」だの、「困難に立ち向かおう」だの…。
 要するに、胡散臭い。
 俗物も俗物、俗から生まれた俗太郎、みたいな顔をしているくせに、こんなときこんなに場所で、何言ってやがる?
 美少女相手に浮かれまくっているおデブ紀夫の方が、遙かにマシだ。
 だいたい顔からしてエロ親父のくせに、美少女相手に何の反応も示さないのも怪しい。
(勿論反応されてもキモいだけだけどね)
 何れにせよ、このにやけ親父の猪目という奴は、なんだか妙に、気に入らない。
 そんな事を考えていると、急に生暖かい壁にぶつかった。
 それは文字通りに肉の壁で、要するに立ち止まったおデブ紀夫の背中だった。
(うわ、じっとり汗ばんでる。キモっ!)
 顔を上げ、前を見ると、白み始めた空の下に、ぽつんと立ち竦む男が一人。
 些か、焦る。ちょっと、なんだよこの想定通りの展開!?
「…はぁ〜…。死にたい…」
 突然、男がそう呟いた。また自殺志願者かよっ! どんだけ死にたがりがいるんだよ!?
 そう心の中で突っ込むより早く、おデブ紀夫が走り出した。
 あとはもう、無様な追いかけっこの始まりだ。 
 おいおい、俺が守るよ、的な事言ってたけど、そのもったらもったらは何なのよ。
「おい、紀夫くん!」
 うしろでにやけ親父が名前を呼んでるようだったが、聞こえちゃいない。
 おデブの頭の中はもう、この男が殺人犯で、そいつを捕まえてやらねば、という事にでもなっているのだろうか。
 あっけにとられている私たちを置いて、鈍足のくせに早速と姿が見えなくなっていった。

146 :
 さて、どうしたものか。
 一応、この死体を確認しなきゃならない。
 友達、なワケは当然無い。けどそういう建前でここまで来たのだから、まあ近づいても不審な事はあるまい。
 ちらと後ろを見る。
 ニヤケ親父は、走っていってしまったおデブ紀夫達の方へと、追いかけるでもなく歩いていってる。
 追うべきか、ここに残って待つべきか、判断しかねているというところだろうか。
 だとしたら、今がチャンスかもしれない。
 距離を確認する。けっこう離れているし、小声なら聞こえもしまい。
「……ネクロマンサー」
 どうやら首を絞められたと思われる女の子の死体の脇に座り込んで、小さくそう呟いた。
 ―――反応、無し。
 チッ! なんだよもう!
 これ、カードが使えないのか、それとも、この死体がカードを持ってないのか…。
 考えてみる。
 たしか、最初に会った自殺女は、死んだ直後に身体の上にカードが浮かび上がってきた。
 つまり、死ぬと一旦、カードは外に出る、ということか。
 で、この死体の上にはカードはない。
 何故かと言えば、こいつを殺した奴が持ち去った、という事…だよな、やっぱ。
 となると…だ。
 やっぱりこのカードの力を発揮するためには、直接自分で殺してから、カードを奪わずに【ネクロマンサー】のスキルを使う、というのが正しい、という事になるのか…?
 自殺女から奪った拳銃に意識をやる。
 けどなあ…。銃なんて撃った事無いし、巧くできるかなあ。
「駄目だなぁ、もっと巧く隠さなきゃあ」
 思案していたところに、丁度耳の後ろから、そう声がした。
 
 
【早朝:猪目道司】
 
「何よッ…!?」
 慌ててバッグの中の銃に手を伸ばそうとするが、猪目の手がそれを押しとどめる。
「い…痛ッ…何すんのよ!?」
 怒気をはらんだ声だが、それ以上に混乱と不安が現れている。
「いやね。だってお嬢ちゃんさ。
 全ッ…然、隠せて無いんだもんさ!
 嬉しそうにニヤニヤしてるし、死体見てるときだってどー見ても友達かどうかなんて気にしてる風じゃないしさ。
 その点僕なんかね。元から顔がニヤケ面! むしろ逆に怪しまれない、なーんつってね! なははは」
 笑っている。
 酒でも飲みながら冗談を言い合うときの中年そのものの口調で、饒舌にそう話している。
「ただ死体を見てみたいだけ、ってんなら、まあ分かるよ。うん。
 でも、違うよね。それにしちゃあ大げさな嘘だ。
 だから、お嬢ちゃんは死体そのものに用があった。
 そして多分それは、さっき呟いていた【ネクロマンサー】とかって言葉と関係がある…だよね?」
 苦々しい、とでもいわんばかりの顔をするファンガール。
「だ…だッたら何だっていうの…よッ!?」
「僕もね。スキルカードってのに、本当に不可思議な力がある、って事、もう知ってるの。
 使ったからね。【未来予知】だってさ。スゴイよねぇ。だって、本当に未来の様子が、見えちゃったんだもん! は、ははっ!」
 猪目の声音は、次第に躁病じみたものに変わっていく。
「だから、この娘も簡単に殺せちゃった」
   
 息を、飲んだ。
 叫び出しそうに開かれた口を、猪目がもう片方の手で塞ぐ。
「めっ! 駄目でしょ、おっきい声だしちゃあ。誰かに聞こえちゃうでしょ?
 おじさんね。大人でも子どもでもイケる口なんだけどね。
 ま、今は残念ながらタイミングが悪いよね。
 急がないと、紀夫くん帰ってきちゃうかもしれないし…って、こんな事話しているのも、よくないな、うん!
 善は急げ、って、言うじゃない?
 それじゃーばいばい! 元気でなー!」

147 :

【早朝:二階堂永遠】 
 溜息をつく。
 いや、実際には溜息なんてつけることはない。私は現時点で、意識だけの存在だからだ。
 それでも、私は溜息をついた。少なくともその意識の上では、だが。
 考え得る中でも、最悪な状況に物事が進んでいる。
 ゲーム開始から出会った中で、最も自分を所持して欲しくない相手が、私の本体である、【ネクロマンサー】のカードを所持してしまっているのだ。
 猪目道司。連続殺人犯。見るからに風貌も冴えない、どこにでもいるようなニヤケ面の親父ながら、平然と、日常的に人を殺せるサイコパス…。
 ああ、いやだ。
 私が最初に取り憑いた相手、未来から来た厨二病電波少女のファンガール・Jは、うかつにもこの男と2人きりになり、そして背後から組み付かれ、首を絞めて殺された。
 ファンガール自体、たしかに浮かれていたし注意力不足でもあったけれど、それでもこ男の観察力は侮れない。
 嘘をついて死体まで案内させたことに何か裏の意図があると見抜いて、さらには【ネクロマンサー】という呟きから、スキルカードを使って死体に何かをするつもりだとまで見当を付けた。
 猪目は、その言葉が死霊使いを意味する言葉だと言うことは知っていたらしい。
 死者蘇生、とまでは想像していなかっただろうが、所謂降霊術とか、イタコの口寄せみたいなもので、そこから自分の殺人が発覚するかもしれないと考え、即座に
口封じの決断をしたようだった。
 私からすれば、たまったものではない。
 
 ただ。
 少しだけ、楽しい事もあった。
 猪目は【ネクロマンサー】のカードを手に入れて、すぐさまたった今殺したばかりのファンガールにそのスキルを使ったのだ。
 そう、念願のゾンビ少女第一号の誕生である。
 ゾンビ化の効果には相当面食らってはいたが、この男そういう点ではやけに適応力がある。
 こりゃ死体を始末する手間も掛からなければ、ファンガールが居なくなった言い訳をしなくても済む、ということで、意外にアッサリそれを受け入れた。
 まあ言うなれば今いるのは、【ファンガール・M・J】 というところか。
 M、は、【ものまね】、のM。
 【ネクロマンサー】が疑似人格を与えるのは、厳密には死体ではなく、死体が持っていたスキルカードだ。
 ファンガールだった死体を、ファンガールの人格をベースに、【ネクロマンサー】カード所持者への忠誠心を加えた、【ものまね】のカードが動かしている…。
 要するに、そういう事だ。
 
 ああ、まったく猪目の奴、楽しそうにしている。
 それに引き替え、こっちはだんだん意識すらぼやけてきた。
 所持者の自我が揺らいでいけば、【ネクロマンサー】のカードである私は、所持者の意識を浸食して、最終的には支配することも出来る。
 しかしこの男、ファンガールなどとは比べものにならないほど、強固で強烈な自我を持っているのだ。
 むしろ今、その猪目の自我の強さに圧されて、自分自身の意識体としての自我を保ち続けるのも難しい。
 仕方ない、しばらくは眠っていよう。
 生ける死者達の世の夜明けを思いつつ、早いところ誰か、出来れば可愛らしい少女が、このイカレ殺人鬼を殺して、私を所持してくれることを願いながら……。
【ファンガール・J:死亡】


148 :
----
【一日目・早朝/C-5 劉厳の死体の近く】
【逆井運河】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『二分の一』、不明支給品1〜2
【思考】
1.死体だし、追っかけられるし、また死体だし、もう死にたい…。
【田崎紀夫】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.うわ、これ、死体っスか!? またスか!? また死体スか!?
【一日目・早朝/C-6 林】
【猪目道司】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『未来予知』 『ネクロマンサー』(浸食率0%)
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品2〜4 、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.ゾンビのファンガールと共に、紀夫でも捜すかな。
※以下、【ネクロマンサー】によって生み出されたゾンビ
【ファンガール・M・J】
【状態】外的損傷無し
【装備】果物ナイフ
【スキル】『ものまね』
【所持品】基本支給品、
【思考】
1.【ネクロマンサー】所持者に従う。


149 :
以上で代理投下終了です。
状態表のみ行数制限に引っかかったので、こちらの独断で分割させて頂きました。
申し訳ない。

ああ、ファンガール……
まあ、やはり一介の中二病患者とベテラン殺人鬼じゃこうなっちゃうよなあ。
ファンガールの一人称視点、面白かっただけに残念だけど、仕方ないね。
ようやく効力を発揮したネクロマンサーがどうなることやら……

150 :
投下乙
二階堂さんが封印されてしまった…殺人鬼スゲェwww
果たしてゾンビ化したファンガールちゃんの実力は…?

151 :
私を追い出したあんたらは良い気分か

152 :
誰か知らんが、もう好きに使っていいぞ

153 :
結局、オリキャラ系で成功したのは自作ロワだけか…

154 :
なるほどね

155 :
結構票入ったな

156 :
ほぼ一人の票だった気がしないでもないが
というかそんな情熱あんなら再開させろよww

157 :
初めまして、そうでない人はお久しぶりです。
現在、投票で決めた各パロロワ企画をラジオして回る「ロワラジオツアー3rd」というものを進行しています。
そこで来る11/3(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?
ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。
詳しくは
http://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
をご参照ください。

158 :
絵師さんは二人ともpixivで活動中のようだね

159 :
ロワラジオツアー3rd 開始の時間が近づいてきました。
実況スレッド:http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1351943650/
ラジオアドレス:http://ustre.am/Oq2M
概要ページ:http://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
よろしくおねがいします

160 :
代理投下します。

161 :
やってしまいましたなぁ=B
私はひたすら、脳内でそう呟く。

◇ ◇ ◇

162 :

あの生きる都市伝説フィクションさんがいなくなってしばらくしてのこと。私はとりあえず近くにあった電波塔のてっぺんに登っていた。
理由は単純。他人に迷惑がかからないようスキルをこっそり試し打ちしたかったし、地図と辺りの風景を照らし合わせたかったからだ。
え? どうやってわざわざ登ったって? 気にしないの、そういうのは。元エージェントよ私は。軽いってのこれくらい。
まぁとにかく、登ってね。まずさっそくスキルカードのパワーを解放して、そして試し打ちしたわけですよ。
そして満足したら、今度は一心不乱に地図を見ていたわけですよ。それはもう穴が空くくらいにはね。実際手汗で空いたわ、隅っこが。
で、その結果、気付いたことがあるのよ。いや、ぶっちゃけ気付きたくなかったんだけどこれ。
でも気付いちゃったからには、見て見ぬふりは出来ないんですよ、この問題は。
やってしまいましたなぁ。
実はね、首輪を解析するためのグッズとかメカとかが置いてそうな場所を求めてたの。技術者が腕を振るえるように、ね。
だから私はわざわざこんな高い場所で地図を見ていたんだけどね……どうも、それが出来そうな施設がないのよ。
いや、ホントに。だって見てよこれ。デパートにそんなグッズある? よしんばホームセンターチックなコーナーがあっても、ちょっと厳しいでしょ。
神社とか警察署でこんなもんどうにかなるわけないし……希望があるとすれば病院かな。でも病院に行ってX線検査しても、どうかなぁ。
実際ね……素人なら自転車直すような工具とかドライバーあればいいんじゃね?≠チて思うかもしれないけどね……無理よこれ。
見てよ、つなぎ目一つ無いでしょこれ。ドライバーがあってもさぁ、刺さんないわよ。こんな状態でX線検査してもさ、解決しないっしょ。
だからね、うん……やばい。ちょっと生半可なことじゃあ、この首輪は中を探れそうにはない。エージェントの目で、はっきりとそう分かった。
ほぼ詰んだわー。
やばいなー、どうしよっかなー。
いやー、首輪に対してアクション起こせないのも辛いけど、何よりもフィクションにどう言い訳すりゃいいか考えなきゃなのが辛いわー。
いっそこう、架空の世界に出てくるようなドラゴンがいてくれたりしないだろうか。出来ればこう、すっごく強そうな。
そんでもってぎゃおーとか言いながら熱いブレス吐いてくれたら、この継ぎ目のないガワ≠熄緕閧「具合に溶けて……その前に中身ごと溶けますよねー、わかります。
いや、まぁ、私のスキルでどうにかならないかな? とか思ってたりはするんだけどね。
私はさっき「ほぼ詰んだ」と思ったわけだけど、それが「ほぼ」だったのはそれが理由。
実はだ、今の私ってば……なんか凄い能力ゲットしちゃったわけなのよ。いや、本当に。
試し打ちもしたから分かる。このスキル自体はまったくもって素晴らしいものだ。
ご覧下さい。この凍り付いた電波塔を。

163 :

私に与えられたスキルカード。それは「エターナルフォースブリザード」とかいう、なかなか奇妙奇天烈な名前のものだった。
曰くこれは、対象を大気ごと凍らせる力らしい。ぶっちゃけ強すぎじゃないですか、と思って電波塔に登ったまま℃獅オ打ちしたんだけど……ほら、ご覧の有様ですよ。
もはやこの電波塔、電波塔じゃない。こりゃ氷山だ。しかもこう、タイタニックに大打撃与えられる類いの硬度の。
だから、もしやこのパワーで首輪を氷付けにしてしまえば、後は割るだけで安全に中身が見られたりするんじゃないかなと思うのよ。
……ただね、それを試す勇気は今はない。何せ首輪なんてまだ一つしか持ってないし、それが仮に凍った状態でも容赦なく爆発されると困る。
しかもほら、下手したら私の手首から先が吹っ飛びますし。それだけは駄目だよね。エージェントが片手吹っ飛ばしてちゃ話にならないですよ。
だからほぼ詰み≠ニはそういうこと。私はもっと首輪を集めなきゃいけない。そうじゃなきゃフィクションとの約束なんて絶対に守れない。
下手な鉄砲数打ちゃ当たる。危険人物相手ならば自分から喧嘩を売ることも視野に入れなきゃ。私は、闘いには無縁ではいられないらしい。
よし、そうと決まればじっとしているわけにはいかない。逆井運河を探しつつも、急いで首輪を集めないと。
だからとりあえず、誰か助けてください。
え? 急にどうしたって? いきなり助けを求めるとかエージェントらしくない? 支離滅裂?
いや、あのね、聞いて欲しいんだけどさ……実は私ね、動けなくなっちゃった!
さっきほら、足下の電波塔めがけてスキルを試し打ちしたって言ったじゃない? そして見事に電波塔は凍って、ね?
でさぁ……初めてだから、コントロール出来なかったのよ。だからほら、見てよ……足首まで凍っちゃってやんの。
本来は電波塔の先まででよかったのに、勢い余って氷がバキバキバキって私の足首まで侵蝕してね。そんでこれなのよ。
助けてー。
どうしようね、これ。レディ・スミスで叩きまくったら氷割れるかな? 割れたら良いな。割れませんかねぇ?
とりあえず自分でも頑張ってみるけど、もしも割れなかったら……ほぼ詰んだわー。
やってしまいましたなぁ。

【一日目・早朝/C-5電波塔のてっぺん】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康、足首から先が凍り付いて電波塔とドッキング、動けない
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】エターナルフォースブリザード
【所持品】基本支給品×2、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.やってましましたなぁ。ほぼ詰んだわー。助けてー。
2.参加させられてるであろう逆井運河を探す
3.首輪を解析できる技術者を探す
4.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
※参加者候補の名前は記憶しています
※電波塔が凍り付いています
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以上で投下終了です。
したらばがないとの事なので先日のラジオツアースレ(下記)に投下されていました。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1351943650/
しばらくはここを使うのもいいかも?
というわけで投下乙!
エターナルフォースブリザードが日の目を見たと思ったら自爆wwwwww アホスwwwwwwwww
マーダーに会う前に脱出したいですね!

164 :
投下&代理投下乙です
イリアムさん、登場話から失敗しかしてない気がするなw
探してる運河は近くにいるから早めに見つけてもらえるといいね!

165 :
代理投下します

166 :
じきに夜も明けようかという頃。
薄暗い山中で、足元すら見えぬ獣道を進む二つの影があった。
一つは姫フランドール・オクティルであり、もう一つは騎士フランツ・O・ブリュデリッヒの影である。
道なき道をかき分けるように先頭を行くのはフランツだ。
周囲への警戒を怠らず、後を行くフランドールのため獣道をかき分け最低限ながら道を整え進む。
その表情にはいまだ疲れの色は見えず、余裕すら感じられる。
対照的に、その後を行くフランドールの顔色は優れない。
見せぬようにはしているがその表情の端からは若干の疲労の色が覗いた。
それも当然。夜行訓練などによりある程度は慣れているフランツとでは溜まる疲労度が違う。
「フランドール様。このあたりで少し休息に致しましょう」
そう言ってフランツが足を止めた。
見れば、少し先に休憩に適しているであろう、比較的開けた平地が見えた。
その提案が自分を気遣っての事だと気づいたのだろう。
フランドールはその提案を否定するように首を振った。
「フランツ様、お気遣いは無用です。今は先を急ぎましょう。
 こう見えても私、山歩きは得意ですのよ?」
この言葉自体は嘘ではない。
フランドールは日頃から城を抜け出して動物や子供らと戯れるおてんば姫だ、山道には慣れている。
だが、整備された山道と獣道ではわけが違う。
加えて、夜道ともなれば、その歩き方も変わってくる。
更に異常なこの状況下における精神的な負荷。
どれも無視できるようなものではない。
「逸る心中はお察しします。ですが、逸ればこそ今はまだ無理をするべきではありません。
 時期日が昇ります、せめてそれまでは身を休めご自愛下さい」

167 :
この手の場面での定番である、自分が付かれたから休もうなどという、気の利いた事をこの武骨な男が言えるはずもなく。
フランツはただ、実直に自らの意思を述べた。実直で不器用な男である。
「……そうですね。申し訳ありません。少々気が逸っておりました」
だが、その裏表のない言葉が響いたのか、フランドールが折れた。
フランドールはフランツに感謝の意を表すと、腰かけに丁度良さ気な岩の上に腰かけ一息ついた。
少し緊張の糸を緩めると同時に、一瞬フラリとするような疲労が襲い掛かった。
そして自分が思っていた以上に気を張っていたことに気づく。
「出発は日の出の後に致しましょう。このような場所で申し訳ありませんが、それまではゆっくりとお休みください」
「承知いたしました。そうですね。それまでまだ時間がありますし、少しお話しましょうか。フランツ様」
「話、ですか?」
その言葉にフランツは眉をひそめる。
必要な事であれば自然とは口を付くが、改まって話をしようと言われると戸惑ってしまう。
彼にとっては女性を楽しませる話術など、あるいは戦闘などより難しい事なのかもしれない。
「ええ、私たちはまだお互いの事を知りません。一時とはいえ主従の誓いを交わした身。
 よろしければフランツ様のお話などを聴かせていただけませんか?」
そう言われては断るのも無粋である。
窮しながらもフランツは腹を決める。
当然、自分語りなど得意ではないが、女性の好む話を無軌道に話せと言われるよりかは、幾分かマシである。
「そうですね…………では、」
そしてフランツはポツリポツリと語り始めた。
友の話を。
■■■■■■■■
偽りの姫君、溝呂木桐子と騎士らしらぬ騎士カイン・シュタインがたどり着いたのは、市街の端にあるとあるホテルであった。
安ホテルと呼んで差支えないような飾り気のない施設だったが、贅沢を言っていられる状況でもない。
ここを一晩の宿と決め、まずは安全確認のためカインがホテル内へと先行した。
「姫様。一先ず待ち伏せやトラップと言った形跡はありませんでしたので、夜明けまではここで休むことに致しましょう」
一通り安全を確認したカインが戻ると、二人はいざという時のため脱出しやすい最下階の一室を陣取り、ようやくの休息に息を吐いた。
真っ先にベットに腰かけ身を休めた木桐子とは対照的に、カインは何かあればすぐに動ける入り口近くに起立する。
周囲にばれぬよう、明かりはつけていないため室内は薄暗く、これと言った娯楽もない。
「このまま休んでるだけってのも退屈ねぇ。
 そうだ、騎士様。何かお話しませんこと?」

168 :
唐突な木桐子の提案にカインはにこやかにに応じる。
「よろしいですよ。どのようなお話をお望みで?」
「そうねぇ。あなたの話なんてどうかしら?
 聞きたいわ。勇敢な騎士様のお話」
そう言って木桐子は誘うように笑う。
その笑みはあるいは妖艶であり、あるいは獲物を狙う蛇の様であった。
その言葉に互いの理解を深めようなどという真摯な気持ちはない。
少しでも相手の情報を知ることで、いざという時のための何らかの弱みを掴もうという魂胆である。
その意図に気づいてかいないのか、カインは変わらず笑顔で応じる。
「構いませんよ、と言っても私に誇れる武勇などそう多くはありませんので。
 つまらない話になるかもしれませんが、よろしければ私の昔話などを一つ」
そしてカインはスラスラと語り始める。
友の話を。
■■■■■■■■
カインがブリュデリッヒ家に従者として迎えられたのは13の時だった。
戻る宛ても住処もないカインはブリュデリッヒ卿の温情により屋敷の一室を与えられ、住み込みで小間使いとして働いていた。
そのためフランツとは同じ屋根の下で暮らしていたのだが、嫡男と小間使いでは立場が違いすぎるため、二人の接点などほとんどなかった。
彼らの関係が変化したのは、とある事件を切欠としていた。
それはカインがブリュデリッヒ家に住みついて1年が経とうという頃、他の使用人らと共にある一室の清掃を命じられた時の話だ。
その一室は他の部屋とは――少なくともカインが入室を許された部屋の中では――明らかに一線を画していた。
まず入室してすぐ目に入るのは壁際につりさげられたブリュデリッヒ家の家紋を模した巨大な旗である。
大理石で拵えられた床の上には、一般人には価値も計れないほどの豪華な絨毯が敷かれており。
壁際には厳かな鎧兜が立ち並び、調度品も一見してわかる一流品ばかりだ。
聞けば、この部屋は昨年、死去したブリュデリッヒ家の大祖父の部屋だという。
このような場所への侵入を許されるのは、着実に自らが信頼を勝ち得てきている証であると考え、周囲の心証をさらに高めるためカインは清掃に励んだ。
だが、その途中、カインはあるものに目を奪われ作業の手を止めた。
それは手のひらに収まるほどの小さな装飾だった。
それはブリュデリッヒ家の大祖父が先の戦乱での多くの武功を認められ陛下より賜ったという騎士の勲章。
その存在感は膨大であり。その絢爛豪華な装飾はさることながら、何よりカインの心をつかんだのはその在り方。
これこそが武力と権力と名誉の象徴。
カインの憧れる全てである。
その象徴に、彼の心は強く魅かれた。

169 :
その夜。カインは高ぶり抑えきれず、こっそりと大祖父の部屋へと忍び込んだ。
くすね取り自分のモノにするなどという大それたことは考えていない。
そんなことをすればどうなるかくらいは理解している。
まずいことだと理解しつつも、だた、どうしても一度手に取ってみたかったのだ。
掃除の際に最後に閉めておくと言って鍵は預かっていた。
そっと音を立てず鍵を開け、部屋の中に忍び込む。
当然中には誰もいない。
カインは吸い込まれるように勲章の前まで移動すると、そっとそれに手をかける。
それを手に取った瞬間、カインは言いようのない高揚感に包まれた。
それは人に、国に、全てに認められた証である。
己の存在を、己の武功を、己の名誉を。
他人のモノではなく、己の力でこの勲章を手に入れる事。
これこそが虐げられ、侮蔑されてつづけた男の、己の野心の到達点なのだと、この瞬間彼はそう確信した。

陶酔するカイン。
それを現実に引き戻すように。
ガチャリと、背後から扉が開く音が聞こえた。
「ッ!?」
カインが振り返ると、そこには慌てて扉から立ち去る小さな影が見えた。
影は一瞬でその場から立ち去ったため、その全容は把握できなかったが、その影が誰のモノであるかはすぐにわかった。
この屋敷に子供はカインとフランツしかいない。つまりあの小さな影はフランツのモノだ。
おそらく、夜中に部屋を抜け出したカインを偶然見つけ、何をしているのか気になりその後をつけていたのだろう。
尾行への警戒を怠った己の不覚に舌を打ちそうになるが、それよりも重大な事実に気付きカインの全身から血の気が引いた。
先ほどまで手に持っていた勲章がない。
慌てて地面を見れば、大理石の床に直撃した勲章は、装飾の一部が砕け欠け落ちてしまっていた。
勢いよく振り向いた拍子に落としてしまったようだ。
フランツに気付かなかった事。
鍵を閉め忘れた事。
目撃されてしまった事。
いや、それ以前に、そもそもらしからぬこんな愚行を犯した事。
いくつもの不覚が積み重なり今の最悪を引き起こした。
取り繕うこともできない、大失態だ。
終わった。何もかも。
絶望の中カインはそう思った。
失意に包まれながら、最低限の体裁を整え大祖父の部屋を後にした。
ブリュデリッヒ家の家宝ともよんでいいモノの欠損だ。
すぐに使用人の誰かが気づくだろう。
勲章を壊した瞬間をフランツが見ていたとも思えないが状況からして、追及されるのは間違いないだろう。
逃げ出してしまおうか、そう思えど行くあてなどない。
いつ呼び出され、首を切られるのか。
それから数日は、生きた心地がしなかった。
死刑を待つ死刑囚の気分だった。

170 :
だが、意外なことに数日たってもカインに何も御咎めが下ることはなかった。
激動する心中を隠しながらも日常は続く。
小間使いである彼に暇はなく、業務をこなしているなかで、数日ぶりにカインはフランツの姿を見ることとなった。
廊下で偶然すれ違う瞬間、カインが見たのは顔を腫らしたフランツの姿だった。
カインはその事情をそれとなく噂好きのメイドに聞いたところ。
大祖父の賜った大事な騎士勲章を、夜中に大祖父の部屋に忍び込んだフランツが誤って壊してしまったという。
あの顔は、その話に激昂した現当主であるブリュデリッヒ卿によるものであり、フランツはここ数日、謹慎と称して部屋に閉じ込められていたという話だ。
品行方正なお坊ちゃんがなぜそんなことをしたのか、などと噂好きのメイドはその後もいろいろとまくしたてていたが、カインの耳にはもはやそんな声は聞こえてはいなかった。
従者見習いという立場のカインが家宝に近い勲章を壊したとなれば、すぐさま屋敷を追放され路頭に迷うだろう。
最悪、この事態に当主であるブリュデリッヒ卿が激昂すれば、小間使いなど命を落としてもおかしくない。
だが、勲章を壊したのが嫡男であるフランツであったという事ならば話は別だ。
追放されることはまずないし、殺されることもあり得ない。
大目玉をくらうだけで済むだけの話だ。
その天秤を顧みれば、フランツがカインを庇うのは当然の事である。
少なくともフランツ自身は何の疑問もなくそう思っていた。
だが、カインの中では違った。
その時カインが感じた感情は一言で言い表せないほどに複雑なものだった。
当然のようにその選択を選ぶ、選べるフランツの環境、人間性への嫉妬。
最大級の弱みを握られた恐怖。
単純に助かったという安堵。
何を狙っているのかという猜疑心。
なにより、この行為を恩に着せるでもなく、何事もなくふるまうフランツの態度は完全に理解不能な代物であった。
その直後の話だった。
フランツが此度起こした愚行に対する罰としてお目付け役が付くこととなり。
年が近かったこともあるだろう、その役目を命じられたのはカインだった。
この命とともにカインは正式な従者として迎えられ、その地位を高めた。
カインの壊した勲章の罰としてフランツにお目付け役としてカインがつけられる。
なんとも皮肉な話だった。
あの日から二人の関係は変化した。
良くも悪くも、劇的に。
■■■■■■■■
「――――それから今日この日までカインは私を支え続けてくれました。
 彼は感謝して若し足りないほどの恩がある」

171 :
フランドールがフランツから聞いたのは、彼の従者であり騎士でもあるカインという男との昔話だった。
フランツの言葉の端々から、この場にいないカインへの信頼を感じとり、フランドールは笑みをこぼす。
「カイン様というのは、どのような方なのですか?」
フランツがこれほどまでに信頼を寄せる、カインという男がどのような男なのか。
この場にいないカインへの興味が湧き、フランドールはそう尋ねた。
「ハッキリとした性格故、誤解されることも少なからずありましたが。
 私などは違い何事も器用にこなす、とにかく優秀な男でした」
フランツはそう素直に友を評した。
己の持たぬ器用さを持ち合わせたカインは、憧れの対象だった。
フランツは少しだけ照れの様な表情を浮かべた後。
噛みしめるように口を開いた。
「そして、」
■■■■■■■■
「それで、それからその次期当主って子と友情を育んだって訳ね。素敵な美談ね」
話を聴き終え、木桐子はそう頷いた。
本心からではない。
水商売で鳴らした耳触りのいいただの相槌だ。
「ええ、屋敷に年の近い者がおりませんでしたので、それからは自然と。
 あれからもフランツには助けてもらってばかりで、彼には感謝してもしきれない」
嘘である。
もちろん野盗紛いの事をしていた過去はぼかしてあるし、その他の細かい部分も適当に脚色している。
何よりカイン自身がフランツへ向ける感情は、単純に友情とは言い難い。
この話の意図は、フランツを己の弱点として仕立てことだった。
「どんな人なの、そのフランツって人は?」
興味を持ったのか木桐子がフランツの話題に喰いついてきた。
「そうですね。私と違い、実直かつ誠実な真面目な男でした。
 家柄、実力、人柄どれを取っても非の打ちどころのない騎士の鑑の様な男ですよ」
流れるようにカインは友褒め称える。
心からの本心とはいかないが、客観的な事実としてカインも認めている。
そしてカインは注意しなければ気付かぬような一瞬の間の後。
確かめるようにように口を開く。
「そして、」

172 :
■■■■■■■■
『彼は私にないモノを持った、掛替えのない友ですよ』
持つ者と持たざる者。
器用な男と不器用な男。
それが互いに共通する真実だった。
【一日目・深夜〜早朝/C-2 山道】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える
【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える
【一日目・深夜〜早朝/F-5 市街地】
【カイン・シュタイン】
【状態】健康
【装備】スタンロッド
【スキル】『その歌をもて速やかに殺れ』
【所持品】基本支給品 、不明支給品0〜1
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.トウコと共に行動をし、情勢を見る。
※スタンロッド
 長さ60センチほどの金属製のロッド。スイッチを入れるとスタンガンの様な電撃を発し、触れた者を気絶させうる効果がある。
 数回使うと電気切れして、ただの固い鉄の棒同然になる。
【溝呂木桐子】
【状態】健康
【装備】魔王のドレス
【スキル】不明カード
【所持品】基本支給品 、液体の入った小瓶
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.カインと共に行動し、守って貰う。
※魔王のドレス
 魔王が女性の姿をするときに身につけるドレスの内一つ。非常にエロスなデザイン。
 防御効果など何らかの魔法効果が付与されている。
※液体の入った小瓶
 10p程度の小瓶に、何かの液体が入っている。説明書きがあったため、桐子はその効果が何かは知っている。

173 :
投下乙!
うーん、この2通りの騎士コンビ。
それぞれがそれぞれを補い合う感じだったんだろうなあと、思ったり。

174 :
ここに来て投下だと……
騎士コンビは、果たしてどうなるのかなあ。
ロワで騎士とか、嫌な予感しかしないですわw

175 :
投下します。

176 :
 

177 :
魔法少女。
一言で言ってしまえば、ファンタジーの生き物だ。
どのあたりが魔法少女なのかは、魔法少女ごとに異なる。
その中でも、めぐるの能力は異色の方だった。
私が思い描いていた、魔法少女とは遠くかけ離れた能力。
自分がもしあの能力だったら、きっと絶望していたと思う。
それでも、そんな能力を手に入れさせられても。
めぐるは、いつも笑っていた。

二人は相談の結果人が集まりそうな場所を目指す、ということを決めた。
地図との照らし合わせで、一番近かったランドマークが南の学校だったため、そこに向かうことにしたのだ。
歩きながら、二人は会話を紡いでいく。
日常生活のこと、好きな食べ物のこと、大切な友人のこと。
他愛もない会話を挟みながら、笑い、怒り、悲しみながら歩き続ける。
ここが、殺し合いの現場であることを忘れようとしているかのように。
「ねえ」
そんな会話の途中、ふと智美がさくらを呼び止める。
「やっぱ、言っとく」
さくらが振向いたとき、その顔は少し強張っていた。
「めぐるの能力について……」
聖澤めぐるの能力。
それは血液を代償に力を手に入れるというシンプルかつわかりやすい能力だった。
血液を消費すれば消費するほど、強大な力を手に入れることが出来る。
腕一本をカラカラにするほどの血液を消費すれば、素手の一振りでそこらの人間は即死させられるほどだ。
病院生活の聖澤めぐるが健常な肉体を手に入れることが出来たのは、この能力をじわじわ使っていたお陰だ。
但し、そのまま生活し続ければ血液が枯渇して死んでしまう。
だから戦いの場に身を投じ、血液を浴びて染み込ませる事によって、自身の血液を消費しないようにしていた。
彼女が魔法少女としての武器に双剣を選んだのは、近接戦闘を必要とし、大量の血を浴びることが出来るから。
聖澤めぐるは普通の生活を守るために、戦い続けていたのだ。
「嘘……」
思わず漏れた言葉は、否定。
「ホントだよ」
否定を、否定する。
「あのヨグスってのが、どーやってめぐるとアタシの力を抜き出したのかは知らない。
 けれど、本当にめぐるの力がそのままだったとするなら……」
一息ついて、智美はさくらへ警告する。
「もう一度言う、頼むから無理だけはすんな」
無言。
警告はさくらの心に届いたのかどうか、智美は知ることは出来なかった。
学校は既に、二人の目の前まで近づいていた。

178 :
 

179 :
「琥珀さん! 見てくださいよコレ! 発電所っすよ! マイクロ波でウニョニョニョ〜ンっすよ!?」
バカバカアンドバカ、バカにバカを上塗りしたようなキングオブバカの発言が脳を揺さぶる。
考えるだけでも頭が痛くなってくる、やはりまともに取り合わないのが正解だったか。
バカの思いつきのような「発電所に行きましょう!」という発言に付き合った結果がコレだ。
バカは大騒ぎ、電波シスターは何考えてるのかわからない。
先が思いやられる、いや既にもうどうしようもないのかもしれないが。
バカと電波を放っておき、巨大な画面に記された数々の情報を頭に入れていく。
マイクロ波による発電、明らかにオーバーテクノロジーである存在による膨大な発電量。
この会場の電気を全て賄えるほどの技術が、あんな小さなパラボラアンテナで実現できるというのか。
「まあ、宇宙人の技術だからムリもクソもないか……」
あの二人に聞こえないようにぼやく。
続けて操作盤をいじくり、様々な項目を閲覧してみる。
そのうちの一つ、監視カメラの映像を見ていたときだった。
何故だか分からないけれど引き込まれるような感覚に襲われ、その画面に釘付けになっていた。
何か嫌な予感がする、なぜかその画面から目を離すことが出来ない。
「璃乃ちゃん! パラボラ見に行こうぜ! パラボラ!」
その時、バカの声が頭に響く。
パラボラの映像を見ていた事を察してか、いやただの好奇心か。
電波女は既に言いくるめられ、あのバカについていくようだ。
流石に一人取り残されるのも面倒だと思ったので、私も渋々ついていくことにした。
それが、あんなことになるなんてこの時は全く考えていなかった。

少しずつ、視界が戻る。
足下にあるのは一人分の死体。
特に興味を引かれることなく、その上に浮き上がったスキルカードを体に取り込む。
技能は大いに越したことはない、より多くの技能があれば、殺人を容易にすることができる。
この場の全てを殺戮し尽くすと決めた以上、有利に働く物は全て奪い去る。
ただ、それだけ。
その時、耳に二人分の足音が聞こえてきた。
特に抱く感情はない。
生きている奴がいるのならば、Rだけ。

180 :
 

181 :
自信がなかった。
戦いの場に立ったことなんて当然あるわけもなく、ましてや人殺しの経験なんてもってのほかだった。
ああは言ってみたものの、やはりいざとなった時に彼女を守れるかどうかは正直言って不安である。
そもそも、戦いとはどうすればいいのか?
人をRとは、どういうことなのか?
今まで考えたこともなかったことが、頭の中でグルグル回って止まらない。
気がつけばただ足を動かすだけで、目の前の光景なんてまったく見ていなかった。
だから、反応できなかった。
「さくら! 危ない!」
その声に反応して意識を向けたとき、全身を貫くような痛みに襲われた。
「クソッたれ!!」
襲い掛かった雷をすんでの所で避け、拳銃を数発放ちながらさくらを抱えて脇に隠れる。
遠距離から放たれた光速の雷は、一般人のさくらには到底避けられない物だった。
自分は殺気を感じ取り先に一歩引いていたが、さくらはその強烈な雷に焼かれてしまった。
白と水色を基調としたドレスが薄く焼け焦げ、体中からは煙が立ち登っている。
「とも、み、ちゃ……」
「喋るな!」
声が弱弱しくなっている上、目に見えて衰弱しているのが分かる。
雷を放ってきた相手がこちらに向かっていることは分かりきっている。
拳銃を数発打ち込んだところで、どうにかできているとは到底思えない。
危機は迫っている、それは分かっているのに答えが見えない。
この状況ではさくらは戦うことは出来ない。
しかし自分の武器は拳銃のみだ。
雷を操るのが相手なら、圧倒的に分が悪すぎる。
この先に待ち受けるのは、二人とも死ぬ未来しかないというのか。
「あの、ね」
さくらが言葉を紡ぎ続ける。
今にも死んでしまいそうなその声は本当に弱弱しく。
それでも、智美の耳に届き続ける。
「めぐる、ちゃんに、よろ、しく」
その一言の後、さくらは笑った。
ああ、死ぬんだな。
自分のことは自分が一番よく分かっている。
体から力が抜けていくのが何よりの証拠だ。
いろいろ考えたが、やはり自分に戦闘なんて出来るわけも無い。
このまま起き上がったとしても、自分は微塵の役にも立ちはしないだろう。
いくら戦闘経験があって手には拳銃があるとはいえ、智美ちゃんがあの雷に一人で対抗するのははっきりいってムリだろう。
ではどうすればいいか、それを考えたときに智美の言葉が頭を過ぎった。
聖澤めぐるの能力は、血液を力に変える能力。
ならば、この身に流れる血を全て力に変えれば。
少なくとも智美ちゃんだけは生き残れるのではないか。
スキルカードは装着者がRば、その遺体の上に現れる。
ならば、やるしかない。
そうすれば、彼女は生き残れるのだから。
彼女は、この場所でやることがある。
自分もやることはあるが、この状況をどうにかできるのは彼女しかいない。
だから、彼女に全てを託す。
お父さん、お母さん。
先立つ不幸をお許し下さい。
ごめんなさい。
智美ちゃんへ。
絶対めぐるちゃんを見つけて、殺し合いを止めてください。
任せっきりになるけど、ごめんなさい。
ああ。
死にたく、ない、なあ……。

182 :
 

183 :
無感情。
目に映った二人の少女に対し、特に思うことも無く雷を放っていく。
一人が素早く反応し、此方に向けて銃弾を打ち込んできたのは意外だったが、特に驚くことも無い。
一歩ずつ確実に歩み寄っていく、命を確実に刈り取るために。
一歩ずつ、一歩ずつ、近づいていく。
その途中で、銃を撃ったほうの少女が現れる。
雷を浴びた方の少女のような衣装を纏いながら。
「テメぇだけは……」
少女が息をすうっと吸い込む。
「ぶっ飛ばす!!」
その一言と共に、少女は一瞬で自分の目前に現れた。
超速で振りぬかれるその拳に、全く反応することは出来なかった。
左頬に突き刺さるその力が、全身をふわりと浮き上がらせる。
そして自分の体が、まるでギャグ漫画のように。
空を舞った。
「……馬鹿野郎」
襲撃者の男を一撃で吹き飛ばした後、めぐるの衣装を纏った智美は小さく呟く。
さくらはあの一言の後、眠るように死に果てて行った。
浮かび上がった一枚のスキルカードと、青ざめた死体を見て全てを察する。
その身に宿る全ての血液を、力へと変換したことを。
「馬鹿ヤロォオオオオオオオオオオオ!!」
そのお陰でこの窮地を切り抜けることは出来た。
だが、その代償はあまりにも大きすぎた。
能力が無い自分なんて、こんなにも無力で、弱くて。
どうしようもないのだろうか。
「めぐる……早く逢いたいよ……」
親友の名を、この能力の本来の持ち主の名前を小さく呟く。
涙が一粒、ぽとりと落ちた。

184 :
管理部から少し離れた場所にある小型のパラボラアンテナ。
そこに近づくにつれてバカのテンションはうなぎのぼりに上がっていった。
バカっぽい単語の一つ一つが、イライラを加速させていく。
そして、ようやくその直下に辿り着いた時。
一人の人間が、超速でアンテナに突っ込んできたのだ。
「なッ……!?」
驚いたのはそれだけではない。
その男の全身から雷が発せられ、パラボラアンテナにその光が密集され、一筋の光となって男に打ち出された。
パラボラからの雷を、さらに自身の雷で相Rる。
そんなありえない光景に意識を奪われていた。
超人のような男が、空から舞い降りてくる。
「す、すっげ」
そこまで言いかけたバカの首が、瞬時に飛ぶ。
熟練された者の、疑いようの無い動き。
それを認識したとき、自分の視界が宙を舞う。
ああ、私も首を刎ねられたのか。
そう思ったと同時に、意識が暗転した。
「あなた、天罰が下りますよ」
一人残された愛子は、突然の襲撃者にその一言を放つ。
瞬時に二人を肉塊にして見せた男に、恐れの一つすら抱かずに。
「関係ないな」
男も、勿論恐怖しない。
恐怖する理由が無い。
「神なんざ、居る訳が無いからな」
その一言と共に雷を放ち、まるで日常生活のように一人の女子大生の体を真っ黒の炭へと変えていく。
天罰だろうがなんだろうが、恐れる物は何も無い。
自分に立ち向かう存在がいるのならば、Rだけだから。
次の獲物を求めて、オーヴァーは歩き出す。

185 :
  

186 :
【龍造寺さくら 死亡】
【花緒璃乃 死亡】
【白井慶一 死亡】
【琥珀愛子 死亡】
【一日目・早朝/E-2学校】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】小型拳銃
【スキル】ブレインイーター、『ある魔法少女の魔法能力(めぐる)』
【所持品】基本支給品、空のカード(残り9枚)、不明支給品1〜3(さくら)
【思考】
基本:めぐるととっとと会って、早くこの殺し合いをぶっ潰す
1.……バカ
※どの小型拳銃は不明。残弾も不明ですので、後の書き手様に任せまする。
※双剣はめぐるの魔法少女としての能力で生成された物です
【一日目・早朝/E-7・発電所、パラボラアンテナ傍】
【オーヴァー】
【状態】左頬にダメージ
【装備】サンダーソード、ヘルメット
【スキル】『剣技』『平賀源内のエレキテル』『雷剣士』『魔弾の射手』『<<]]巻き戻し』『光あれ!』『復讐するは我にあり』
【所持品】基本支給品、デザートイーグル、金属バット アンドロメダ星マジカル消臭スプレー、金槌、不明支給品×0〜1(愛子)
【思考】
1.この場にいる全てを皆殺し
2.最後にヨグスもR
----------
以上で投下終了です。

187 :
 

188 :
投下乙です。
さらば、出汁ガラトリオ!
そしてさくらちゃん……

189 :
短いですが、投下します

190 :
歩く。
歩く。
今にも倒れそうになりながら、歩く。
歩かなくては。
歩かないと。
ここで倒れるわけにはいかない。
せめて、どこかの岩陰に隠れなければ。
少し前までの自分の判断を呪う。
こんな崖まで深追いしなければ。
あの二人が山に逃げ込んだ時に諦めていれば。
そもそもあの二人を襲っていなければ。
最初からこの殺し合いなんかに乗らなければ……
「……っ!」
一瞬、頭に浮かんだ後悔に戦慄する。
私は一体何を考えているんだろう。
あの二人を死なせた私が、後悔するなんて許されるはずはないんだ。
もう、正義のヒーローには戻れない。
日常に戻る資格なんて、ない。
だから私はこのカードを使う。

「【エネルギードレイン】」

少し前に同じ能力を持った怪人と戦ったことを思い出す。
愛する人を守るためにすべてを壊そうとした悲しい人だった。
あの人は命は落としたけれど、大切な人は守り抜いた。
これは私の決意だ。
あの人と同じように大切な人を守るためにすべてをR。
これは私への罰だ。
一瞬でも人の命を奪ったことを後悔してしまった私への罰。

191 :
もう手をつなぐことはできない。
だけど、構わない。
私が後に戻ることはない。
私が後を振り返ることはない。
私が止まることは許されない。

私はこれから人を利用し、裏切り、Rだろう。
だから、最後に一言弱音を吐いて終わりにしよう。
殺した二人へか片嶌さんへかそれとも昔の自分自身へか、
誰に向けたものなのかは自分でもわからない。
でもこれは私の、椎名祢音の最後の言葉。

「ごめん…なさい」

自分の中でナニカが変わるった、そんな音が聞こえた気がした。

【一日目・黎明/C−3 山道】
【椎名祢音】
【状態】疲労(極大)、精神摩耗
【装備】ダイバーズナイフ
【スキル】『変身』『エネルギードレイン』
【所持品】基本支給品×2、不明支給品×0〜2(確認済み、武器はなし)
【思考】
1:????
2:片嶌俊介以外全員R
3:しばらく休む。場合によっては同盟の結成や保護対象として演技をすることも視野に。

192 :
投下終了です

193 :
投下乙!
うーん、もう戻れない決意ってのはこう、何回見てもツライっすなあ。
望みが叶うといいけれど……

194 :
集計おつかれさまです。
オリ2 v2 27話(+ 4)  24/30 (- 4)  80.0(- 13.3)

195 :
久々に来たら来てたage
智美ちゃんこれ精神やられちゃうじゃないですかーやだーwwwwww

196 :
愛澤、片嶌、篠田を予約

197 :
http://junko717.exblog.jp/
魔法をかけてあげよう、小便小僧に・・・
僕に魔法をかけて、小便小僧に・・・
この野郎、小便はかけんなよ・・・

198 :
魔王、板垣を予約

199 :
wktk

200 :
予約イイネ!

201 :
出来たんで投下します

202 :
―――高校生片嶌俊介の同級生、西城幹事の談話

え?片嶌?…ああ、片嶌ね。知ってるぜ、そりゃあ。
知ってるも何も俺、同級生だし!で、何?
…えっ?片嶌がどんな人間か教えろ、だって?
物好きだなあ。よりにもよってタッちゃんや金村とか、ああいう人気株じゃなくて片嶌だなんてさ。
まああいつは出来る奴だし、隠れ人気は高いとは聞くがね…お、すまんすまん、独り言は俺の悪い癖だ。
んで、なんで片嶌の事を知りたいのか…って、理由は聞かない方が良さそうだな。
今さっき、バツの悪そうな顔しただろ。へへ。凄いだろ俺。
…顔に出てる。分かるんだぜー!俺!
あ、で、片嶌だよな。話戻すか。
片嶌はな、一言で言えばあいつは優れた奴だよ。
何より、勉強も出来るし、スポーツも、性格もなおよし。
ホントは俺らみたいな脳ミソまで筋肉出来ている奴らなんかいる所より、法英とか爽明館とか、鹿瀬とか。エリート階級にいるべき人間なんだよな、アイツ。
ただ、ただアイツはバスケがしたいってだけでこの高校に来たんだっ、て自分で言ってたよ。
意思の固さも、誰にも負けないって事かな。
…ん?他に何か無いのかって?
ああ。無い訳じゃない。ただ、アイツに関しては多すぎるんだ。言うことが。
アイツとあくまでもクラスメイト止まりの俺でもな。
ただ、ただこれだけは言っておきたい。いいか、アイツは………
んっ?ああ、やべ次家庭科じゃーん!!
わり、ちょっと急がなきゃ!ごめんな、また後で!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

203 :
「ここまで来れば大丈夫だろ…」
片嶌はそう呟くと額の汗を拭う。
ふう、と一息をつく。早朝故か、妙に肌寒い。
ただ体は火照ってはいる。尚更、気温との差で落ち着いてくる。
また、一息。
すると、襲いかかる疲労。ただ無心のまま、走り続けた為か、片嶌に襲いかかる。
普段なら…そう、高校バスケの名門、秋月高校で二年生ながらPG(ポイントガード)としてスタメン出場している程優秀な片嶌なら、こんなインターバル、屁でも無い筈なのだが。
今の彼に襲いかかるのは、宍岡との闘いや逃走による身体的疲労だけではない。
(…本当に、人が死んだ。俺の目の前で)
宍岡琢磨が死んだ事。
呼吸が落ち着いてくる程、あの光景が頭を過る。
片嶌とて、既に高校生とはいえ17だ。自分の祖父は病気で亡くなった事は、よく覚えてる。
ただ、天寿を全うした祖父の死と宍岡の死は根本的に違う。
死する事の理不尽さ。
急に死を与えられた現実。
祖父のように、愛する人々からも見送られず、死ぬ準備も出来ないまま、死を受け入れるこの状況。
(…俺も、死ぬのか?あんな風に)
片嶌を襲う、『死への恐怖』。
無情さ、やるせなさ、理不尽さ、悔しさ。
それらを押し殺して殺される、現実。
急激に体が固まる様な感覚。

204 :
「祢音…」
果たして、俺は守れるのだろうか。
あのいたいけな、純粋無垢な彼女を。
ただの非力な高校生の俺が―――
「ねえ、ちょっといい?」
ハッ、とする。
女の声。いきなり頭の中から現実へと引き戻される声。
声がした方向を向く。
そこに立つのは、ナース服の女。
眼鏡をかけ、髪の毛は黒色のショート。
垂れ目ながらも目は二重で、おっとりとしながらも何処か聡明さを感じさせる。
唇は弾力があり、肌は白い。
ピッチリとしたナース服の上から故か、更にその大きさ、形が分かる大きな胸。
少し汗がにじみ出ている故か、何処かそれさえも見てる者に不純な動機を伺わせる。
何処か庶民的で、でも何処か余裕のある、手の届かない雰囲気。
『白衣の天使』だ。
これでこそ、全男性が思い浮かぶ『ナース像』。
「ねえキミ、色々考えてる前に手を離してほしいなーって」
ナースの女はそう片嶌に言うと慈しみを持った、それでこそ微笑んだ。
それに対し片嶌は、「あっ」と発すると手を放した。
必死で気づいてもいなかった。
全力で逃げてる最中にあった、この女性の手を引き片嶌は逃げてきたのだ。
またこれも無心のまま。

205 :
「あ、あのー、すんません。いきなり引っ張っちゃって…俺、片嶌俊介っていいます」
やらかしたのかと不安になった片嶌はとりあえず謝り、名前を告げる。
敵意が無いのは示すため、両手をホールドアップ。
それを聞いた愛沢はクスリと笑う。
「謝らなくて平気だから、ね。片嶌君だっけ?」
「あ、はい」
「固まらないでいいから。気軽にいいわよ」
「…えーと…じゃあよろしく」
「よろしく。私、愛沢優莉。見ての通り看護婦やってるわ。大丈夫よ両手なんか挙げなくて。私も殺し合いはする気無いから」
真っ赤な嘘。愛沢は自分で話しながらも自嘲を覚えた。
本当ならば、この場でも殺せるのだ。自分の手で。すぐにでも。
愛沢の記憶が確かであれば、片嶌はただ人を助けたいが為に自分を引っ張って、ここまで連れてきた。
そんな馬鹿正直な人間は、おそらく人を裏切ったりする事はない、純粋な男。
それに、その時の眼は血走りながらも真っ直ぐであったのも、その一因。
ただ、愛沢優莉は考える。

何もこの場でR必要は無いし、一応表向きは友好を示すべきだ、と。

206 :
殺しには慣れている。
何人も、いや下手すれば何十人と患者を殺害してきた自分からすれば、別にRことなどどうだっていい。
しかし今は違う。
それはR相手が少なからず健康であることだ。
目の前の片嶌が今体力を消耗しているからといって、寝たきりの患者達とは違い片嶌は下手すれば逃げられるだろう。
そうしたらどうなる?自分の悪評が広まると少なからずやりづらい。
愛沢優莉は考える。
よく自分の表面上の、この殺し合いを裏で操る主、三城愛理沙が、よく言っていた事を。
『優莉ちゃんは何も考えなくていいの。人をどうRのも、用意するのも、根回しも、そして、貴女に人をどう殺させるかも。私が全部してあげるから、ね?』
(いつも、私の本質を見抜いた様な、そんな目であの人は見ていた)
自分が考えないが為に不易な事態に陥る事を、主である三城はいつも見抜いていた。
それは分かってる。だから深く考えなかった故に三城に弱みを握られてしまうのだ。
だからこそ。愛沢優莉は考える。
普段使わなかった頭をフル回転させて。
そして、結論。

片嶌俊介を、利用する。
この純粋な青年を自らの奴隷にする。
丁度三城愛理沙が自分にそうしたように。

207 :
(…こんな時まで、まるで二番煎じね)
こんな時に、やはりあの三城の存在が自分を動かしている。
三城が偽善とは思えぬ笑顔と雰囲気で自らに接近した事を思い出して。
不必要になれば、その時に殺せばいい。
この純粋で真っ直ぐな眼を、濁りきった、よどんだ眼にしてみせよう、と。
まずは、無害であることの証明の為に更なる情報交換がいるのかもしれない。だったらまずは。
「あの、片嶌君はこの殺し合いに知り合いは―――」
「お、おい大丈夫か!?しっかりしろ!!」
「…ん?」
片嶌に切り出した瞬間、片嶌は目の前にはおらず、川の沿岸に居た。
川から引っ張るように、1人の男を助けているのだろうか。
「愛沢さん!いきなりだけど手伝ってほしいんだ!運がいいことに看護婦さんらしいし…」
「え、あの片嶌く「くそっ、これどうすればいいんだよ愛沢さん!」
片嶌が、自分に真摯な表情で訴える。
仮にも、全力疾走した人間がどうして人を助ける気力まで残ってるのか。
愛沢は呆れながらも、どこか軽蔑に近い敬意を抱きながら、片嶌と男に近づいていった。
(…あれ?これ上手く行くのか凄く不安なんだけど)




愛沢優莉は、考える。
片嶌俊介は、純粋であると。

208 :
【一日目・早朝/F-3ホテル周辺】
【片嶌俊介】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】なし
【スキル】『ブレーキ』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)閃光弾×2
【思考】
1.目の前の人を助ける
2.弥音を探す
3.愛沢さんと協力
【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】『病の呪い』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
0.え?なに?(本日二回目)
1.片嶌を利用…したいなあ
2.殺し合いに乗る
3.F-4病院を目指す
【備考】
※ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。
【篠田勇】
【状態】疲労(極大)、気絶
【装備】なし
【スキル】『重力操作』
【所持品】基本支給品、フラッシュグレネード×4
【思考】
0.……魔王
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす

209 :
投下乙!
なるほど、積極的にRのではなく……
利用する立場から、利用される立場へ動こうとしているけれど、相手は純粋だからなあw

210 :
投下乙っす
私も書けたんで投下しますね

211 :
――――豪と、虚空を切り裂きながら板垣退助の剛腕が奔る。
板垣が放った一撃はまさに必殺。
直撃しただけで跡形すら消し飛ぶのではないかと思うほどの一撃が、人体急所である水月に正確に叩き込まれた。
だがしかし相手は人外。魔の頂点たる大魔王である。
これほどの一撃を受けながら、平然と魔王は反撃の一撃を繰り出した。
「むっ!?」
その一撃を躱さんと、その場を飛びのこうとした板垣が怪訝の声を上げ動きを止める。
何時の間にそこにあったのか。
見れば、魔王の腹から口のようなものが生えていた。
そしてその口が板垣の放った右拳に喰らいつき、その回避行動を封じていた。
咄嗟に力を込め、無理矢理拳を引きその高速から脱するも、そこに容赦なく魔王の鉤爪が振り下ろされる。
半端な刃物では傷つける事すらかなわなかった板垣の皮膚が容易く切り裂かれ、そのまま肉を抉り鮮血が舞う。
板垣がたたらを踏み、僅かに後方に下がった。
『■■■■■■■■■■■■■』
久々の肉の感触に歓喜するような、声ならぬ咆哮。
穏やかだったこれまでの姿とはかけ離れた、己が魔性を剥き出しにした魔王の姿。
だが、その魔性を、誰よりも恐れ、誰よりも忌み嫌っているのは他ならぬ魔王自身に他ならない。
強大な力は同時に、強大な凶暴性をも秘めていた。
その野生がいつ爆発してもおかしくない、魔王は常に、そんな危うい状態だった。
暴虐を是とし、殺戮を良とする。
そんな、価値観ならばよかったのだろう。
だが魔王は違った。
平和を愛し、日常を好む。
そんなあまりにも普通な、あまりにも人間的な価値観。
その不幸は魔王として生まれ。魔王にふさわしい力を持ちながら、魔王らしからぬ人間性を持ってしまった事にある。
故に、魔王は恐れていた。
己の力を、己の暴力を、己の暴走を。
そのため、普段の魔王は己の力を制御するために、その力の大半、実に七割を力の抑制に割いている。
それにより、暴力を律する理性と柔和な精神を獲得した。
それが俗に第一形態と呼ばれる姿である。
だが、魔王という立場上、自称勇者や騎士、冒険者との戦闘は少なからずあった。
中には強者もいる。
平和を好む性分とはいえ、素直に殺されるほどお人よしではないし。
自らの役割を放棄するほど無責任でもない。
そのために生み出したのが第二形態。
理性と本能の釣り合いが取れるぎりぎりのラインまで力を解放した戦闘用の姿である。
そして、この最終形態。
といっても、最終形態とは名ばかりである。
何のことはない、力を押さえつける事をやめただけ。
最終ではなく最初。
魔王の、真の姿だ。

212 :
『■■■■■■■■■■■■■』
押さえつける理性から解放された、人でも獣でもないモノの雄叫び。
破壊衝動の赴くまま、魔王は板垣へと襲い掛かる。
それに対し、板垣は身構える。
相手の次の攻撃を予測し、後の先で討つ心積もりだ。
来るのは、爪か足か、それとも牙か。
だが、意外!それは尾先!
人類には存在しない部位からの攻撃である。
完全に意表を突かる形となった板垣の身を、鞭のようにしなりを上げた尾先が強かに打ちつけた。
破裂するような衝突音。
100倍もの重力に耐えきった板垣の体制がぐらりと崩れる。
こうなるとさすがの板垣も認めざる負えない。
一国の軍事力に匹敵するとされている板垣退助の武力が、目の前の相手に完全に後れを取っているという事実を。
それも当然。相手は一国どころか世界を支配した大魔王だ。
賢者や戦士といった仲間もおらず。
伝説の装備も持たず。
拳ひとつで簡単に圧倒できる相手ではない。
だが、こんなことなど珍しい事ではない。
意外に思われるかもしれないが、苦戦など彼には珍しい事ではないのだ。
万の軍勢相手に疲弊し追い詰められた事もあった。
政界に蔓延る魔物どもを相手に苦戦を強いられたこともあった。
理解なき国民に理解を訴えかけるため苦心したこともあった。
そしてその全てを乗り越えてきた。
その全てに己が意志を貫き通してきた。
そのためにありとあらゆる力を手にし、ありとあらゆる手段を用いてきた。
そうやって、生きてきた。
そうやって、勝ってきた。
それが板垣退助の在り方である。
ヨグスの意図に縛られるを良しとせず、己の肉体のみを頼りここまで来た。
だが、本当の自由とは縛られぬことではない。
本当の自由とは自ら選択することだ。
自らの意志を貫くべく、自らの意思で全てを決め、実行することを言うのだ。
つまりコレを使わぬも自由。
そして使うもまた自由なのである。
故に、板垣退助は宣言する。
「スキルカード――――『血流操作』」
瞬間、赤い霧が辺りを覆った。
それは一面に蒔き散った板垣の血液が霧化したものだ。
だが、霧が一面に舞ったのは一瞬。
その一瞬で体制を整えた板垣に向かって、霧散した赤い霧が収束してゆく。

213 :
――――スキル『血流操作』。
それは自らの血液を硬質化、射出、霧化など多様な方法で操る汎用性の高い能力である。
だが、板垣が行った使用方法は実にシンプルなものだった。
何の奇をてらうこともなく、血液を凝固させて、ただ身に纏う。
血液の凝固作用を利用した高質化。
その強度は鋼にも勝るだろう。
それは鎧であり武器であった。
幾多のダメージを負った証である大量の出血が、この時より一転、完全なる凶器となる。
全身を赤き血の鎧で覆った、その姿はまさしく――――紅き鬼神。
鬼神が魔王に向かって真正面から突撃する。
拳を振りかぶる板垣。
その光景は、先ほどの焼き直しだ。
先程はその拳は通じなかった、だが、今は決定的に違う点が一つ。
板垣の拳の先に存在する、ひとつの巨大な紅い棘。
接点が少なければ衝撃は収束する。
つまり、面では通らなかった衝撃も点ならば――――貫ける。
『■■■■■■■■■■■■■!!』
これまでとは毛色の違う、痛みを訴えかけるような魔王の叫び。
板垣の正拳突きが魔王の分厚い腹部を破り、その孔から大量の赤い血液が噴き出した。
「ぬっ」
その返り血を浴びた瞬間、板垣の拳を覆っていた血液の鎧がドロリと溶けた。
酸の類か。と一瞬、訝しんだがそうではない。
なるほど、これが他者の血が混じれば無効化されるという特性か。
スキルカードを宣言した瞬間に頭に流れ込んできた情報と照らしあわせて、そう板垣は理解する。
つまり返り血を浴びる度に使用出来る血液の量が減っていくということ。
ならば、こちらの血液が尽きるか、相手の息の根が止まるか、此処から先は根競べである。

214 :
「ハァ―――――――――ッッ!!!」
打。
打。
打。
打撃に次ぐ打撃。
拳が肉を打つ音が打楽器のように鳴り響く。
隙間のない連打は嵐のようだった。
降るは拳の雨。
吹くは獣の雄叫び。
もはやどちらのものとも知れぬ血しぶきが飛び交い、戦場を彩る。
魔王を打った拳に返り血を浴びる度に、他の場所から血液を補填しあくまで攻撃を重視する板垣。
それに対して魔王も、攻撃に転化し薄くなった板垣の装甲を文字通り食い破る。
板垣もこれを防御はしない。
なぜなら、ダメージはそのまま攻撃力となる。
魔王の牙によって溢れた血液は再び装甲と化し、板垣の全身を覆ってゆくのだ。
ここからはもう、互いに完全に防御を捨てた命の削り合いである。
無論、ダメージが攻撃力につながる板垣と違い、魔王にノーガードの打ち合いに付き合う道理はない。
だが、板垣がそれを許さない。
パワー、スピード、タフネス。どれをとっても魔王のほうが上だろう。
人類の極地といえど、人外にスペックでは勝ち目がない。
だが、技は、武術家としての技量だけは板垣のほうが上である。
日々の鍛錬という積み重ねにより技を重ねる。
これが生まれついての化け物とは違う、人間の吟味である。
その技量を持って魔王の防御を許さず、攻撃をブチ当てる。
差異はあれどそれの繰り返し。
だがその過程、全てが常人なら触れただけで死に絶えるほどの苛烈さを持っていた。
永遠に続くかと思われた攻防、だが何事にも終焉は来る。
幾度目かの攻防。
魔王の爪が板垣を切り裂く。
だが、これまでとは明らかな違いが出た。
切り裂かれた傷口から血が吹き出さず、ただ白い脂肪が覗くだけだったのだ。
それは遂に板垣の血液が尽きたことを示している。
見れば、健康優良の象徴とも言える板垣の顔色が、見る影もなく青白くなっていた。
勝敗を分けたのは単純な体格差。
2m超の板垣は人間としては規格外の巨体だろう。
だが、魔王の巨大さは次元が違う。
体格に比例して、血液量もまた多いのも道理である。
板垣の全身を纏っていた血液の鎧も遂には右の拳を残すのみ。
対して、魔王は全身を穴だらけにしながらも今だ健在。
その生命力は超次元生物としての在り方をまざまざと見せ付けていた。
そして最後の血液を込めた板垣の一撃も、魔王を倒すに至らず。
返り血により全ては使用不可能になった。
これで、詰みだ。

215 :
「■■■■■■■■■■■!!」
理性ではなく本能で勝利を感じ取った魔王が歓喜の雄叫びを上げる。
雄叫びのまま大顎を開き、板垣の肩口から脇にかけて一口で食らいついた。
血の気のない肉を咀嚼するように顎を鳴らす魔王。
喰らわれる板垣は、喰らわれたまま静かに拳を引いた。
血液が底をつき、満身創痍となろうとも板垣の目には諦めの色など一片も帯びてはいなかった。
あくまでも勝利を、己が意志を諦めない。
否、違う、そうではない。
諦める諦めない以前に。
この状況、ここまで板垣の想定通りである。
この距離だからこそできる事がある。
構えるのは拳ではなく貫手。
密接したまま狙うは一点。胸骨の下部、水月。
更にいうならば、最初に打ち込んだ大きな傷口。
危険性を本能で察した魔王が、一刻も早くその息の根を止めるべく齧り付く顎に力を込める。
だが遅い。
勢いよく突き出された指先は、魔王の胸元に空いた大きな傷口に突き刺さった。
そして、板垣はその勢いを止める事無く突き刺した指を傷口に捩じり込み、抉り、抉り、抉る。
ドクドクと魔王から大量の熱き血潮が流れ出した。
それでも板垣は止まらず、肉をかき分けるように魔王の内側を蹂躙する。
強靭な生命力を持つ超生物をRには如何とするか?
板垣の出した答えは単純すぎるほどに単純だった。
狙うは外ではなく内。
臓腑を抉り、直接、心の臓を握り潰す。
いかなる生物であろうとも、心臓を潰されて生きていられるものなど存在しないのだから。
これを可能としたのは、布石として最初に打ち込んだ渾身の一撃はもとより。
お互い逃げられぬ零距離での密着。
全身の血が抜け、腕のサイズが一回り落ちていることも、また一つの要因だろう。
「■■■■■■■■!!!!!!」
断末魔の様な魔王の絶叫。
遂に、丸太のような板垣の腕が魔王の中に肘まで埋まった。
そして板垣の腕が、確かに脈打つその臓器をしかと握りしめた。
もはや、板垣を噛みRことすら忘れ、魔王は暴れ狂うように叫びをあげた。
「ぬぅん――――!!」
気合一閃。
魔王の抵抗も無視して、裂帛の声と共に板垣は魔王の心臓を握りつぶした。
「―――――――――――」
口からどこに残っていたのかと思えるほどの大量の血液を吐きながら、魔王が声にならない叫びを上げた。
魔王が上空に噴き出した血液が地に落ち、血の雨が降った。
そしてゆっくりと、その巨大が傾き、ドシンという地響きとともに辺りに砂埃が舞った。
板垣は、全身を返り血で赤く染めながら、その姿を見送る。
決着である。
人間、板垣退助の勝利だった。

216 :
勝利を収めた板垣はその余韻に浸るでもなく、早急にその場を離れた。
本当にギリギリの勝利だった。
ダメージは多く、なにより血を失いすぎた。
板垣でなければとっくに死んでいる状態だ。
意識があるのが奇跡のようなものである。
この状態を誰かに襲われてはさすがの板垣も言えどもひとたまりもない。
まずは何よりも失った体力を回復することが急務だ。
ここで板垣が取るべき選択肢は三つ。
一つ、どこか拠点を見つけ身を休める。
この状態で、安全な拠点を見つけるのは骨だが、幸いにも市街が近い。
身を隠す場所を見つけるのにそれほ苦労はないだろう。
問題はこれほどのダメージの自然回復を待つとなれば時間がかかりすぎるという点か。
二つ、栄養補給を行い積極的に体力回復に努める。
最低限の支給はあるものの、失ったエネルギーを補給するにはこの程度ではまるで足りない。
食料を探す必要がある。できるなら肉類が望ましい。
野ウサギなどの野生動物がいれば良いのだが。
三つ、病院をめざし輸血を行う。
直接血液を補充するもっとも適切な対処だが。
この舞台に用意された病院にどれほどの設備があるのかは怪しいところだ。
なにより新鮮な血液があるかどうかというのは非常に不明確だ。
どうするべきか。
慎重な判断が必要だろう。
【一日目・早朝/E-4とF-4の堺 平地】
【板垣退助】
【状態】全身にダメージ(極大)、血液枯渇、全身血塗れ
【装備】なし
【スキル】『血流操作』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
基本:自由を愛し、平等に生きる
0.体力回復に努める
1.闘いを挑む者には容赦しない
2.自由を奪う男(主催)を粛清する

217 :
.
.
.
.
.
.
.
.
.
..
...
..............
..........................................

一面の赤だった。
むせ返るような血の臭いが辺りを漂う。
池の様な大量の血溜まりは戦場の名残だ。
その中心に横たわるのは巨大な肉塊。
その肉塊が唐突に動いた。
いや、動いたというのは正確ではない。
巨大な肉塊が収縮し始めたのだ。
1tを超えようかという質量は人型のそれに収束する。
というより、初めの姿に戻っていったといったほうがわかりやすいだろう。
肉塊とは言わずもがな、魔王の死体である。
この場においてのは始まりの姿に戻った魔王、もちろん傷はそのままだが。
だが、命の尽きたはずのその肉体が、何故そのような動きを見せたのか。
「がッ――――ハ!」
死体が吐き出すように息を吐いた。
だが、心臓を失って生きていられる生物などいるはずもなく。
それは魔王とはいえ例外ではない。
大魔王は伝統的に心臓を三つ持つ。
板垣と同量、いやそれ以上の血液を失いながら、まだまだ血液量に余裕を見せていた正体がこれだ。
つまり、彼にはまだ二つ心臓が残っている。
端的に言うと、魔王は死んでなどいなかった。
とはいえ、臓器を直接握りつぶされた事には違いはない。
通常であらばショック死してもおかしくない。
それでもなお生きながらえているのは、魔王の強靭な生命力の賜物だろう。

218 :
支援

219 :
しえん

220 :
しえん

221 :
211 :熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o:2012/11/30(金) 02:28:17 ID:Gq1Yidzs0

「くっ―――――ぁ」
声を出すのも苦痛なほど胸が痛む。
当然だ胸には大穴が開いているのだから。
板垣から受けたダメージにより、魔王はその力の殆どを失ってしまった。
不幸中の幸いか、それにより押さえつけるべき力をも失った魔王は、理性を取り戻すこととなる。
理性を失っていたころの記憶は正確ではないが、前後の記憶から今の状況は魔王にもわかる。
まさか全力を出した大魔王が人間一人に負けるとは信じ難いが、己の状態からして信じざる負えないだろう。
ダメージは甚大、というより死にそうだ。
今すぐ生命力を回復させなければ非常にまずい。
幸いにも、その方法は知っている。
この場には材料も事欠かない。
簡単だ。
人間ヲ喰ラエバイイ。
「―――――!?」
あまりにも自然に脳裏に浮かんだ発想を必死で魔王は否定する。
魔の王、魔性の本能としての発想。
力を失い、凶暴性を弱めたと同時に、それを押さえつけるべき理性も弱まっている。
つまりは両方のバランスがとれていない。
今の魔王は、非情に危うい状態だ。
「…………篠田は、下流か」
流れる川を見ながら自分が放り投げた勇者を思う。
まずは彼との合流を目指そう。
今のダメージで一人でいるのは危険だ。
また板垣のような化け物に襲われたら為す術もない。
そしてなにより、もし自分が暴走したとして、篠田ならそんな自分を止める事ができる。
そう縋るように、魔王は勇者を求めて歩き始めた。
【一日目・早朝/E-3 川沿い】
【魔王】
【状態】ダメージ(瀕死)、疲労(極大)、精神不安定
【装備】なし
【スキル】『落とし穴』
【所持品】基本支給品、釣り竿
【思考】
1.篠田と合流
※E-4戦場跡に池の様な血だまりがあります
212 :ナナシサン・ゾルダート:2012/11/30(金) 02:30:16 ID:Gq1Yidzs0
OH...最後にサルったズェ
1レスだけですけどどなたか代理お願いします

222 :
投下来てた!乙です!
板垣人間やめすぎワロタwww魔王様に勝つとは…

魔王は生きてたけどちょっと怖いなあ…不安だ。

223 :
投下乙!
板垣さんこええwwwwwwww こいつ殺せる奴いるのかよwwwwwwwwwwwww
しかし魔王に危ないフラグが……どうなることやら

224 :
今まだ早朝行ってないのは誰?

225 :
黎明
真琴御木エジソン藍葉
加山イロハ
フィクション加奈子
祢音
黎明〜早朝
フランドールフランツ
カイン溝呂木
黎明〜早朝の四人と周りに誰もいない祢音は早朝描写なくても大丈夫かも

226 :
じゃあ加山とイロハ予約

227 :
わざわざ教えてくれた人ありがとう。
こっちが先だったすまぬ。

228 :
すんません、明日ぐらいまでかかります。

229 :
じゃあ俺はフィクション葉桜加奈子を予約するぜ

230 :
投下します

231 :
どうも、秋月高校二年一組、出席番号26番、葉桜加奈子です。
時刻は現在、午前5時を過ぎた辺り。
もうすっかり夜も明け、辺りには朝の気配が漂い始めてきた頃合いです。
この島(?)に拉致されてからはや5時間。
最初にフィクションさんに出会って行動を共にすることとなり、途中でイリアムさんと出会ってったもののすぐに別れ。
それ以降は特に誰に会うでもなく、本当に殺し合いを強いられているのか信じられなくなるほど何事もありませんでした。幸運にも、今のところ。
とはいえ、支給された拳銃は本物っぽいし(というか実際、フィクションさんが撃っちゃったしね!)冗談や洒落の類ではないのは私にもわかる。
何より、行動を共にしているフィクションさんに緊張感の欠片もないので、それを反面教師としてせめて私は緊張感を保とうと努めているのだ。
私も喧嘩なんて小学生の頃、幼馴染の圓をイジめる近所のガキ大将相手にして以来だけど、
私以上にこの人争いごとに向いてなさそうなんで、いざとなったら守って上げなければなるまい。
「ねぇねぇ加奈子ちゃん、疲れてきたんでそろそろ少し休もうよ」
「またですか、フィクションさん。市街地ならこのまま真っ直ぐ行ったらすぐですって。休むのはその後にしましょうよ」
「まあまあ、この年で夜通し歩きっぱなしはつらいんだって。少し迂回して、そこの木陰で休もうよ」
そのフィクションさんは、事あるたびにそう言って休憩したがる。
まあ私としても、何時間も夜道を歩くのはしんどいんだけど、にしてもすこし寄り道が多い。
真っ直ぐ最短距離を進めばとっくに地図で言うところの美術館辺りについているはずだったのに、迂回を繰り返し何故か今や病院近くである。
この五時間、ずっと行動を共にしているこの人だけど。
ここまで行動を共にして来たこの人がどんな人なのかというのを一言で言うと、まぁよくわからない人だ。
よくわからない、が服を来たような人だ。
まあそれは言い過ぎにしても、人物像がいまいちつかめない。
名前も変な名前っていうか、あだ名だって言ってたから、本名は別にあるんだろうけど。
常に飄々としていて緊張感というモノがなく。かと思えば、抜けているようで抜け目ないところもある。
人と争えないような貧弱な雰囲気を醸し出しながら、慣れた手つきで拳銃を組立てみたりしたのも謎だ。
色々と細かいことに気づくくせに、意外と結構適当だったり(というより無関心?)。
なにかと特徴的なのに存在感がないのも不思議な所だ。
そして何より、何か隠してる感じはひしひしと感じるが、その辺は今のところ詮索するつもりはない。
この状況で、その判断はバカだと思われるかも知れないが、話したいなら向こうから話すだろうし無理に秘密を聞き出すようなマネはしない。
とりあえず悪い人ではない、と思うし、その辺はとりあえず保留ということで。
最初の説明が本当ならば、時期に放送が流れる頃合いである。
フィクションさん曰く、そのタイミングで参加者の公開がされるんじゃないかという話だけど。
フィクションさんがイリアムさんから譲ってもらったという参加者候補名簿により私たちは一足早くその候補を知ることとなった。
秋月の生徒が多い。とはフィクションさんの指摘。
言われてみれば、知ってるだけでも私と圓はもとより。
圓の友達の宇都井くん。
1年から同じクラスの麻矢ちゃん。
麻矢ちゃんの双子のお姉さんである亜矢さん。
バスケ部のエースである片嶌くん。
いろいろと顔の広い西城くん。
そして一時的とはいえ在籍した彼女を含めて計8名。
多いといえば確かに多い(フィクションさんに言わせれば異常らしいが)。
私の知らない上級生や下級生も含めれば、ひょっとしたらもっと多いのかもしれない。

232 :
「ところで。加奈子ちゃん。本当にキミの学校って何か変な事やっないのかい?
 秘密の訓練してるとか、謎の人体実験をしてるとかさ」
それが引っかかるのか、フィクションさんは学校のことを気にしてくる。
「いやぁ、そんなマンガやゲームじゃあるまいし。
 本当に普通の学校ですよ。普通も普通の普通科ですよ。
 そりゃあ、最近ちょっとした騒ぎはありましたけど」
基本的にはごくごく普通の学校だと思う。
変な人が多いのは否めないが、それでも常識の範囲内だと思う。
「ちょっとした騒ぎって?」
「なんというか、まぁ一言では説明しづらいんですが、空からお姫様が降ってきましてですね……」
ある日、登校中の私と圓の目の前に空からお姫様が降ってきた。
何言ってんのかわかんないだろうけど、事実である。
パラシュート一つでヘリから飛び降りてきたのは本物のお姫様、フランドール・オクティルである。
え? そんな非現実的な体験した人間がマンガやゲームじゃあるまいし、とか言うなって? そりゃごもっとも。
「……フランドール・オクティルか。
 確か後継者争いでもめてる国の第一王女だったっけ」
「知ってるんですか?」
「まぁね。もちろん面識はないけど、仕事柄、各国の要人の顔と名前くらいはね」
そういやこの人の職業って結局なんなんだろう。
なんかその辺もぐらかされる感があるなぁ、いいんだけど。
「と言っても、その辺のゴタゴタはもう解決したんですけど。
 その時にフランが私たちの学校に特別留学生として転入するしないの騒ぎがあったんですよ。
 と言っても滞在して一ヶ月もたたずに、国に帰っちゃいましたけど」
本当に、本当に色々あったんだけどその辺の細かい話は、そのうち語る機会もあるだろうけど今は割愛。
「ふーん。そうか、そうだねぇ。
 小国の王女か…………自身はともかく、少し弱いか」
そう小さな声でぼつりと呟く。
少し弱い? どういう意味なんだろうか?
「他に何かないかい?
 事件と呼べるほどの事じゃなくてもいい。
 ここ最近君の学校で何か変わったことはなかったかい?」
「変わったとことと言われても…………うーん、あ」
少しだけ考えて、一つだけ、思い当たった。
「何かあるのかな?」
「いや、でも大した話じゃないですよ」
「構わないよ、嫌じゃなければ聞かせてもらえるかな?」
そうフィクションさんに促される。
特に話すのを嫌がるような話じゃないのだけど、少しだけ躊躇われる。
本当に大した話じゃないし、この状況だからこそ思い出された事でもある。
「ええっと。本当に大した話じゃないんですけど。
 二ヶ月くらい前の話なんですけど、変わった転校生が来たって少しだけ噂になったんですよ」
「変わった? どんなふうに?」

233 :
お姫様の転入話にすっかり話題を攫われてしまったけれど、そんなことがあった。
6月っていう、なんとも微妙な時期での転校だったので、少しだけ印象に残ってる。
その辺は家庭の事情もあるだろうし深くは気にしなかったが。
「クラスも違うし、あんまり詳しくは知らないんですけど、その子と同じクラスの友達から聞いた話だと、」
その転校生の話が、なぜ今それが思い出されたのか。
それは、その友人が言っていた『ある単語』が今の状況で強く印象付いた言葉と一致していたからだ、
「――――『宇宙人』みたなヤツだ、って」
それを聞いたフィクションさんが珍しく表情を崩し、眉をひそめる。
「宇宙人?」
「いや、あくまで例えですよ、例え」
確かに自称宇宙人に攫われたこの状況では笑えない例えに聞こえるかもしれない。
若干言いよどんだ理由もそれである。
「加奈子ちゃんはその転校生と直接話したりしたことは無いのかい?」
「クラスも違いますし話したことはないですね。何度か遠目に見たことくらいはありますけど」
「どんな風だった?」
「うーん、どんな風と言われても、注意して見てたわけじゃないんで…………なんというか、無表情、でしたね」
そして、たまたま私が見ているときだけだったかもしれないけれど、いつも一人だった気がする。
「…………うぅん」
思案するようにフィクションさんは口元に手を当て目を細める。
真剣に思い悩む表情は結構珍しい。
「ま、いいか」
あ、戻った。
実に短い憂い顔だった。
「どうせ今考えても情報が足りなさすぎるしね」
ははは、と適当に笑うフィクションさん。
まあこのほうがらしいといえばらしい。
「できれば加奈子ちゃんにはその転校生の事を知ってそうな人を教えてもらいたいところなんだけど、まぁそれはこの後にしようか」
「この後?」
その疑問に答えたのはフィクションさんではなかった。
辺りに音が鳴り響く。
「そ、候補じゃなくこれで本決まりするわけだし。その方が何かと都合がいいだろう?」
そう笑みのようなモノを浮かべながら、語りかけるフィクションさん。
その表情にわけもなく、少しだけ肌が泡立った。
――――『放送』が流れ始めたのだ。

234 :
【一日目・早朝/F-5 市街地近く】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】折り畳み式ライフル(5/6)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品0〜1
【思考】
基本:日常に帰る
1.加山圓や知り合いと合流したい
2.フィクションと協力して脱出方法を探す
【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1〜3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.イロハと加奈子の知り合いを探して合流。オーヴァーはとりあえず放置
2.機会があれば板垣退助をR
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています

以上
投下終了です

235 :
投下乙です!!
この二人は気になるなあ
てか秋月の人多いなw
さやかちゃんの法英…

236 :
投下乙
謎の転校生は果たしてこの殺し合いに関係があるのか
あと確かに秋月は多いなw
高二勢で秋月じゃないのはさやかちゃんの他には篠田君と智美ちゃんだけだしw

237 :
投下乙!
緊張感のない人が一番緊張感があるって言うなんとも矛盾した状況w
秋月八人か……これは何か重要な情報なのかも?

238 :
高校生の所属まとめ
【秋月高校】
葉桜加奈子
加山圓
片嶌俊介
一色亜矢
一色麻矢
白井慶一
宇都井健吾(不参加)
西城幹事(不参加)
田中伊知郎(不参加)
【法英高校】
龍造寺さくら
【不明】
篠田勇
安田智美
橘蓮霧
藍葉水萌
二階堂永遠
東海夏姫(不参加)
山田曜子(不参加)
志村春樹(不参加)
志村夏樹(不参加)
白井が麻矢と田中を知ってるので秋月っぽい
白井と片嶌が知らなかったので篠田は秋月ではないっぽい
さくらェ…

239 :
加山とイロハと後ついでにオーヴァを予約したいんですけど
◆zVAORjU2u0G9氏は状況どうでしょうか?
完成の目処がたってるなら諦めます

240 :
連絡遅れました。
予定が合わないので破棄します。すみません。
ちなみに、予約期間はどのくらいですか?

241 :
あ、別に氏の予約期間ではなくてこのロワで決められた予約期間の事です。
我ながらわかりにくい文章…

242 :
基本三日+延長三日ですね
その時点で予約がなければゲリラ投下もアリです

243 :
あざす!
次からは気を付けます…

244 :
それでは改めまして
加山、イロハ、オーヴァー予約しますね
期間は>>239からで(多分)大丈夫です
あと予約関連に限らずですけど
ルールやテンプレもまとめたいですね

245 :
↑の予約したやつら投下します

246 :
どうも、秋月高校二年一組、出席番号11番、加山圓です。
今現在、森の中にいます。
スキルにより強化された視力で目撃した、遠方で行われる人智を超えた乱戦に巻き込まれないよう、人気のない森を進んでいた。
朝露に濡れる森は深く、吸う空気が濃く感じる。
網目のような枝葉に光が遮られ、空はいまだに薄暗い。
地には木の根が貼り巡り、足場も凸凹が多く歩くだけでも非常に困難だ。
暗くとも夜目遠目がきく俺はともかく、まだ年端もいかないイロハちゃんには厳しい道程だろう。
「イロハちゃん、足元の木の根っ子とかに気をつけてね」
そう促すと、イロハちゃんはこちらの言葉に素直にコクリと頷いた。
だが、こちらの心配を他所にスイスイと危なげなく獣道を進んでゆく。
あれ? ひょっとしたら俺より森歩き上手いんじゃないか?
「…………イロハちゃん、少し止まろう」
最初に感じたのは、臭いだった。
おそらく今の自分以外なら気が付かないほどの微臭。
風に運ばれて微かに香る鉄の臭い。
この先で何か起きている。
どうする?
進むか戻るか。決断を迫られる。
どちらにせよ、ひょっとしたらこの場に安全な場所など無いのかもしれない。
ならば、何があったか調べるべきか。
この状況で情報に取り残されるのは死に繋がる。
慎重さも大事だが、時に大胆な行動も必要になるだろう。
なにより、この能力は斥候には適している。
相手に視認されるよりも早く、状況を捉えられるはずだ。
とはいえ、この先を調べるにしても、イロハちゃんを連れて行くわけにはいかない。
ここに一人で放っておくのもそれはそれで危険だが、辺りを確認する限り危険はなさそうである。
「イロハちゃんここで隠れて待っててくれるかな?
 すぐに戻るつもりだけど、もし何かあったらすぐに逃げるようにね」
何の疑問なく俺の言葉に頷くイロハちゃん。
ひとまず、発見されづらそうな木の陰にイロハちゃんを残して。
俺は一人、異臭の元を調べるべく、森の奥へと進んでいった。
■■■■■■■■
周囲を警戒しながら深い森を進んでゆく。
先に進むたび、徐々に匂いが濃くなってゆくのがわかる。
だか何かおかしい。
血は香るものの、その血を流しているであろう人影がどこにも確認できない。
確認できるのは各所にまだらに撒き散った血液だけである。
誰かが傷を負わされ、どこかに逃げ去った跡だろうか?
なにか悪い予感がある。
今すぐ引き返すべきだと思う心と、だからからこそ何が起きているのか知らなければという心がせめぎ合う。
明確な判断がつかないまま、足は誘われる様に前へ進む。

247 :
そこにあったのは、ぶちまけたような赤だった。
だが、そこに死体はなくその代わりに、拳大の塊のようなものがゴロゴロと転がっていた。
それがなんであるかを認識した瞬間、眩暈のような吐き気を覚えた。
「……………ぅ」
口元を抑える。
撒き餌のように広範囲にばら撒かれたそれは、バラされて砕かれた『人間の破片』だった。
これは酷い。
なぜこんな事を、ここまでする必要がどこにある。
ただRだけなら、ここまでする必要はどこにもない。
とても人間の所業とは思えない。
いや、野生動物でもここまで食い散らかすことはない。
私怨か。それとも単純に異常者か。
いや、
(撒き餌…………?)
ふと、先ほどの自分の発想に疑問を覚える。
瞬間。空気がひりつくような微かな違和感を肌に感じた。
そして遠方から聞こえた僅かな音。
その違和感に従い、躊躇うことなく全力でその場を飛びのいた。
同時に、炸裂音の様な雷鳴が轟き、それまで自分がいた位置を紫電が切り裂いた。
襲撃だ。
死体を撒き餌として、注意をそらすと共に、それに怯んだ瞬間を狙い打つ。えげつなさすぎる罠。
五感強化で触覚と聴覚が強化されていなければ、俺も気づくことすらできず丸焦げになっていただろう。
飛び退きざま、雷撃の射線上に襲撃者の姿をとらえる。
襲撃者はこちらに近づく気配を見せない。
その場から雷で射Rつもりなのだろう。
敵は雷を操るのようだ。
雷を操るなど常識で考えればあり得ない話だが、この場においてはそれを可能とする理屈を知っている。
『雷使い』、そういう”スキル”か。
だが、こちらとしてもそう簡単にやられるつもりは毛頭ない。
徹底的に抗ってやると決めたんだ。
容赦なく続けざまに放たれる雷撃を紙一重ながら躱してゆく。
もちろん、ただの勘で躱しているという訳ではない。
そもそも雷速で放たれる雷を何の根拠もなく躱せるはずもない。
ただ、俺にはこれから雷が辿るであろう軌道が”何となく”わかるのだ。
俺自身、雷について詳しいわけではなく、これは学校の科学教師が雑談がてら話した内容なのだが。
本来空気は電気を通さない。
そのため、落雷には空気を変質させ、雷の通る道筋を作る過程が必要となる。
それをなすのが先行放電(ステップトリーダー)と言われるもの。
その先行放電で作られた道筋を辿って初めて落雷電流(リターンストローク)は地面に落ちるのだ。
先行放電の速度は落雷電流の約1000分の1。
もちろん、それでも人間の目では捉えられない速度であるのだが。
しかし今なら、その瞬きにも満たないその瞬間を捉えることができる。
五感強化によって強化された動体視力はその一瞬を見逃さない。
つまり今の俺は、雷を避けられる。

248 :
これで幾度目か、雷を躱し続けるこちらに対して、相手は遠距離では埒が明かないと判断したのか。
遂に襲撃者が姿を現し、距離を詰めてきた。
矢のような速さで地を駆ける襲撃者。
片手には抜身のサーベル。
駆ける勢いをそのままに振りぬかれた一撃を、小太刀の腹で受けとめる。
そして衝撃をRように手首を返し、後方へ刃を捌く。
刃をいなされた襲撃者はそのまま後方へ駆け抜け、すぐさましなやかに身を翻しこちらに向き直った。
真剣を片手に対峙する。
互いの距離は2間にも満たない。
既に間合いである。
「――――――ふぅ」
呼吸を一つ。
焦るでもなく、まずは心を整える。
生憎と、真剣を突きつけられるのには慣れている。
まずは冷静に、敵を図るように見つめる。
年の頃は思ったより若い。
顔つきからして日本人ではないようだ。
目つきは鋭く、それでいて泥の様に濁って光が見えない。
そして口には歪んだ笑み。
その笑みのまま、敵が動いた。
眉間。首。心臓。
同時に放たれた突きは三つ。
狙いは正確すぎるほどに正確。
一片の躊躇もなく殺しにかかっている。
だが、こちらもそう簡単にやられはしない。
高速で放たれたその全てを見切り。
眉間を狙う一撃を躱し。首を狙う一撃を弾き。心臓を狙う一撃を小太刀で受けとめた。
身体能力も高く、有段者並の技量はある。
確かに強い。
確かに強いが。
敵わないというほどの絶対的な差は感じない。
視力強化により敵の太刀筋がすべて見えているというのも大きいだろう。
何より、ジイさん程の腕ではない。
ジイさんに鍛えられた読みと、この場で得た動体視力があれば、十分に対応はできる。
もっとも、それも剣術だけに限定するならば、だが。
「っ…………ぁ!」
受け止めた刃を通して雷撃が来た。
そんなことも出来るのかと驚愕する。
だが、大した威力ではない、おそらくは隙を生むための牽制だ。
その隙を突かれぬよう、咄嗟にバックステップで距離を取った。
だが、敵はその距離を詰めるでもなく、片腕を軽くこちらに突き出す。
また雷を放つのか。
そう思い、発動の瞬間を見逃さぬよう目を見張るが、そうではなかった。
放たれたのは閃光だった。

249 :
なんて奴。
こちらが眼がいい事を察して、速攻で潰しにかかってきた。
凝視してたのが災いした。
眼を焼かれる程の強力な光ではないが、一瞬視界を奪うには十分だった。
そして、雷とは違うスキルを使ってきた。
それはつまりこいつは複数のスキルを持っている。
おそらくは殺した相手から奪っているのだろう。
もちろん視界を奪われ無力化したその隙を逃すはずもない。
獲物を確実に仕留めるために敵が迫る。
絶体絶命の状況。
だが、次の瞬間響いたのは、肉を切り裂く音ではなく、甲高い金属音だった。
腕に感じる衝撃で、状況を確信する。
―――防げだ。
視力ではなく聴覚を頼りに足音でタイミングを測った。
そして首か心臓を狙うだろうという予測を基に、防御した結果だ。
攻撃位置の予測が外れたら、聴覚が強化されていなかったら、どちらでも命はなかっただろう。
実力というより、殆ど運だ。
何より視界を奪われたことに混乱して判断を誤っていたら終わっていた。
今になって日常的に行われていたあの時代錯誤な訓練の意味を理解する。
常に平常心を忘れるなということか。
そのおかげか、未だになんとか平静を保っている。
とは言え、何度も使える手段ではない。
追撃に対応するため、無理矢理にでも目を開ける。
わずがに霞むが見えないってほどじゃない。
だが、霞む視界で捉えた敵は何故か動くでもなく、興味深そうにこちらを見つめていた。
「………………ハ、」
放つ殺気の量は相変わらず。
だが、その質が変わる。
これまでの狩るだけの獲物を見る気配とは違う。
雷撃を躱し、剣戟を防ぎ、奇策すら防ぎきったこちらを戦うべき敵として認識したのだ。
「ハッハッハッハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――!!」
初めてその声を聞いた。
肌が泡立つ、全身を痺れるような圧倒的な悪寒が奔った。
こちらの覚悟を上回る、圧倒的な殺意。
それは、これまでの非ではない。
何の前触れもなく、敵が動いた。
瞬きの間に距離を詰め、同時に放たれた突きは五つ。
先ほどの三段突きに比べると狙いは散漫。
だが、圧倒的に――――速い!
一つは外れた。一つは躱せた。
一つは肩口を、一つは脇腹を掠めた。
最後の一つを何とか小太刀で受け鍔迫り合いとなった。

250 :
なんて速さ。
動きが明らかに変わった。
目では追える。
目では追えるが、完全には躱せない。
防御に適した小太刀で、防御に専念しても、それでも、キツイ。
そんな、ことが。
奥歯を食いしばり、竦みそうになる心を奮い立たせる。
冷静に考えろ。
これまで手加減していたとかならともかく、そんな簡単に人間が強くなるなんてありえない。
なら、相手のやっていることは単純だ、防御を捨てて攻撃しているだけだ。
逆に言えば、今が勝機である。
相手の防御は手薄、カウンターを叩きこむチャンスだ。
最も、それも相手の猛攻が防ぎきれればの話だが。
敵の勢いは止まらない。
乱暴なまでの強引さで鍔迫を弾くと返す刃で首を薙ぐ。
上体を反らしてその一撃を避けるが、横薙ぎの勢いのまま反転した相手の後ろ蹴りを喰らい吹き飛ばされた。
「ぐッ!」
吹き飛ばされた体制をすぐさま立て直す。
そして相手から視線を外さぬよう、前を見た。
その相手は、こちらに向けてまた先程のように腕を突き出していた。
雷か光か。
雷なら目をそらせば死ぬ。
光なら目をそらさなければ死ぬ。
敵は、手の内が明らかになったことを利用した究極の二者択一を迫る。
判断に窮した俺は全力で後方へ退いた。
それはひとまず距離を取るだけの、逃げの選択だ。
次の瞬間。放たれたのは閃光。
一面が白に染まり、一瞬、敵の姿を見失う。
先と同じく、音を追おうとするが――聞こえない。
どこからも、足音がしない。
この異常聴覚をもってしても、周囲の環境音以外、何も聞こえない。
完全に消えた。
だが、そんなことはありえない。
足音が聞こえないというのならば。
考えられる可能性は、その場を動いていないか、それともう一つ。
空中を進んでいるかだ。
「上か…………!」
その予測通り、光が晴れ、見上げた先には、今にも剣を振り下ろさんとする襲撃者の姿があった。
――――読みきった。
こちらが視覚以外にも聴覚で相手の一を察している事を悟り、その索敵方を回避したのは見事だろう。
だが、跳躍し落下するその状態では身動きは取れず、こちらの攻撃を回避することは不可能。
千歳一遇の勝機である。

251 :
「ぅおおおおおおおおおおおおォ!!」
躊躇いを消すように叫んだ。
ここで躊躇えばすべてが終わる。
振り下ろされる刃を半身になって躱し、突きを放つ。
相手をR覚悟を持って、狙うのは決して避けれない胸元の中心。
突き出した刃が、敵の胸元を突き破る。
肉を喰い破り、傷口からは、血が噴き出し、



【<<]巻き戻し】



物理法則すら無視して落下する体が”巻き戻る”。
それだけではない、わずかに噴き出した血液も体内に戻り、傷口も消えた。
同時に、確かに肉に食い込んだはずの刃が空を穿った。
言葉を失い、唖然とする。
これはスキルか。
これもスキルか。
空ぶった突きの勢いを殺せず、足が滑った。
なんて不運。
いや、いくらなんでも、これはない。
この程度でバランスを崩すような、そんな生ぬるい鍛え方はされていない。
こんなタイミングで、こんな不運は出来過ぎだ。
ありえない。
何らかの意趣返し。
与えられたダメージを別の形で返すスキルか。
またスキル。
こいつは、いったい幾つスキルを持っている?
こいつは、いったいこの場で、何人殺している?
巻き戻りが完了し、元の地面に着地した敵が迫る。
勝負は、相手がこちらに辿り着くまでに体制を立て直せるか否か。
だが、それ以前に、心が折れそうになる。
強すぎる。
体術だけではない。
幾多のスキルを持ち。
そのスキルを既に使いこなしている応用力。
―――――こんなヤツ、いったい誰が勝てる?

252 :
体制が崩れたこちらに、一片の容赦もなく『死』が迫る。
迷いなく迫る死神の影。
だが、瞬間。
それ以上に信じられないものが、視界に飛び込んできた。
何時の間にそこに来たのか。
己と敵と結ぶ直線上に、小さな影が立っていた。
目を引くような鮮やかな着物に、短く切り揃えられた艶やかな黒髪。
そして凍りついたような色のない黒い瞳。
見間違いようがない、イロハだ。
イロハが己と殺人者の間に、立ちふさがるように立っていた。
この相手が女子供であっても躊躇うはずがない。
確実に作業のようにあっさりと首を跳ねるだろう。
死ぬのか。
また、死ぬのか。
俺の目の前で。
俺を庇って、また誰かが死ぬのか。
両親のように。
こんな小さな子が。

冗談じゃない。

「ぁああああああああああああ!!!」
崩れた体制のまま、前に出る。
逃げるのではなく、少女を救うべく前へ。
だが、間に合わない。
敵はあまりにも早く。
俺はあまりにも遅い。
凶刃が少女に迫る。
「やぁめろおぉぉぉぉぉ――――!!」
悲鳴のような叫び。
そして、


「―――――――――なんだ、お前か」

253 :
支援

254 :
 

255 :
■■■■■■■■

「…………………………」

座り込んだまま呆然としていた。
立て続けに起こった事態に、理解が追いつかなかった。
止まることなどないと思われた凶刃は、少女の首筋に触れた辺りでピタリと止まった。
その手を止めた狂人は殺し合いの間ずっと張り付かせていた笑みを消して、つまらさそうに『なんだお前か』と呟いた。
そしてそのまま、睨むようにイロハと見つめ合うこと数秒。何も言わずに踵を返し去って行った。
何故奴が立ち去ったのか。
イロハちゃんとの関係はなんなのか。
というか何故イロハちゃんがここに。
そもそも何なんだアイツは。
疑問は幾つもある。
様々な疑問を込めた視線でイロハちゃんを見る。
「?」
可愛らしく首を傾げるイロハちゃん。
いや、ここでそんな顔されても困るんだけど。
「あー、まぁいいや。イロハちゃんは俺の命の恩人なことに変わりないしな」
あそこで彼女が現れなければ確実に死んでいた。
それだけは確かな事実だ。
今頃になって震えが来る。
あの死の嵐に出会って生きながらえていること自体、奇跡としか思えない。
北で戦っていた奴らとイイ、本当に化け物だらけだ、この場所は。
しかし、今はとりあえず。
「…………疲れたぁ」
緊張の糸が解けて力抜ける。
とりあえず今は、休息がほしい気分だった。

256 :
支援

257 :
【一日目・早朝/E-7 深い森】
【加山圓】
【状態】疲労、全身に細かな切り傷、過剰感覚による少々の気持ち悪さ
【装備】小太刀
【スキル】『五感強化』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本:徹底的に抗う
1.休みたい
2.イロハを守る
【イロハ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品×1〜2
【思考】
1.マドカに付いていく
【一日目・早朝/E-7・深い森】
【オーヴァー】
【状態】左頬にダメージ
【装備】サンダーソード、ヘルメット
【スキル】『剣技』『平賀源内のエレキテル』『雷剣士』『魔弾の射手』『<<]]巻き戻し』『光あれ!』『復讐するは我にあり』
【所持品】基本支給品、デザートイーグル、金属バット アンドロメダ星マジカル消臭スプレー、金槌、不明支給品×0〜1(愛子)
【思考】
1.この場にいる全てを皆殺し
2.最後にヨグスもR

投下終了
規制キツイっす
なんか加山くんがトンデモ科学で雷わかしてますけど、遅いつっても約150km/sなんで
たとえ見えても良い子はマネしないでね、死ぬから
これで後、早朝いってないのは真琴組だけかな?

258 :
【基本ルール】
 全員で殺し合いを行い、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
 原則として優勝者のみが帰還できる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はないが、指定エリア以外に侵入ることは禁止されている。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
 各プレイヤーは所有物を没収され、代わりに共通の支給物を支給される。
 支給物の内容は以下のものであり、そのすべてが「デイパック」に詰められている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「二日分の水と食料」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム1〜3個」「スキルカード」
【スキルカードについて】
 各参加者に一枚ずつランダムに支給される。
 宣言すれば記述されたスキルを取得できる。
 一度宣言すれば効果は永続、基本的に解除は不可能だが。
 所有者が死亡すれば再度カード化する。
【放送について】
 6時間毎に行われ、基本的には禁止エリアの発表と死亡者と残り人数を通知を行い。
 別途、連絡事項などがあればここで告知される。
【禁止エリアについて】
 放送毎に指定される。
 禁止エリアに踏み込んだ場合、首輪が爆破される。
 禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【作中での時間表記】(0:00スタート)
 深夜 : 0:00〜 2:00
 黎明 : 2:00〜 4:00
 早朝 : 4:00〜 6:00
  朝  : 6:00〜 8:00
 午前 : 8:00〜10:00
  昼  :10:00〜12:00
 日中 :12:00〜14:00
 午後 :14:00〜16:00
 夕方 :16:00〜18:00
  夜  :18:00〜20:00
 夜中  :20:00〜22:00
 真夜中:22:00〜24:00
【予約について】
 予約期間は3日。延長期間は3日。
 延長は3作以上採用された書き手のみ申請可能。
【修正に関して】
 修正(NG)要望を行う場合は、修正(NG)要求であるという旨を明確にしたうえで、問題点を詳細に記述してください。


とりあえずこんな感じ?
予約の延長縛りはこの状況だといらない気もするけど

259 :
投下乙
オーヴァーさん相変わらず強すぎワロチwww
そのオーヴァーと初めてまともに戦えた加山も頑張ったな
そしてイロハとの関係も気になるところ
ルールも乙

260 :
乙です。
更にオーヴァー強くなってるような…もうこんなん倒せる気しねーよwwwwww
加山は男前だなあ。何処かのロリコンとは大違いだ(チラッチラッ
まあとりあえずイロハちゃんはペロペロしときますね。
ルール乙です!予約の件は大丈夫でしょう。
ただこれで全員が早朝まで揃ったのかな?

261 :
あとは真琴ゴキエジソン組だけかな

262 :
そいつらが来れば放送か
長かったな

263 :
真琴、ゴキ、エジソン、みなも
予約

264 :
最後の組予約キタキタ!!
あと、おまけ
【生き残り一覧】
猪目道司…外道担当。ゾンビマスターに俺はなる!
逆井運河…不運担当。デブとぬるぬるプレイ
田崎紀夫…おまいら担当。意外と動けるデブ
イリアム・ツェーン…クルービューティ(物理)。電波塔の天辺で凍結中
安田智美…黄金の左を持つ魔法少女(物理)。この場で出会った友人と元の世界の親友を失う
オーヴァー…相変わらず唯一の真面目なマーダー。だがロリを見て手を止めるロリコン
加山圓…貴重な真面目な対主催。だがロリのために命を賭けるロリコン
イロハ…ダウナー系のロリ。かわいい
葉桜加奈子…一般人代表。今のところすごい平和
フィクション…やる気があるようなないような、とりあえず存在感はない
椎名祢音…唯一の奉仕マーダーとして頑張る幼女。非処女
フランドール・オクティル…綺麗な姫様。完全に改名されている
フランツ・O・ブリュデリッヒ…綺麗な騎士。童貞臭がプンプンする
溝呂木桐子…汚い姫様。貴重なBBA、ある意味希少
カイン・シュタイン…汚い騎士。ツンデレ臭がプンプンする
板垣退助…素手ゴロで魔王をブチのめした人類最強。殺せる気がしない。誰も信じないだろうけど対主催である
魔王…死にかけ。勇者に依存するヤンデレと化しつつある
片嶌俊介…お人よしなさわやかスポーツ少年。だがロリコン筆頭、片嶌だけはガチ
愛沢優莉…流され系マーダー。まさかの相棒欠場のなか一人でできるもん、と決意
篠田勇…綺麗な方の勇者。死にかけ。看護中
藍葉水萌…汚い方の勇者。死にかけ。再生中
真琴真奈美…知らずに同行者に狙われてたり、知らずに殺人鬼を抱え込んだり、いろいろ知らない間に大変な事になってる人
御木魚師…小物界の大物。まなみんに苛められて苛めたいマドサド
トーマス・A・エジソン…サリヴァン&パニック症候群

ロリコンだらけじゃないか! いい加減にしろ!

265 :
乙!これはひどい…
ロリコンかヤンデレしかいないぞこのロワwww

そんな中明らかに浮いている智美
まだ二話しかないのにこの過酷っぷりである

266 :
今更だけどオーヴァーの殺害者数6人ってすごいな
人数少ないから超えるキャラ出てこないだろうし
ゴキのパブリックエネミーが完全に死に能力になってるw

267 :
すみません、投下は明日になります…

268 :
だいぶ遅れましたが、投下します

269 :
「人が死ぬのはダメだ…人が死ぬのは、とても怖い事だ…」
少しまだ月の光が残る夜明け前。
後ろから、震え声が聞こえる。
その声はエジソンさんからだった。ガタガタと震えながら、完全に怯えている。
「おーいジンたーん、大丈夫かー?」
「人が…人が死ぬ……」
「あー、こりゃしばらくダメだな」
ハア、とため息。
ゴキだ。また大袈裟に外国のテレビドラマみたいに呆れている。
「…ねえまなみん、話変わるけどこいつ本当は死んでんじゃないのー?」
続けて私の後ろから、そう不満まじりの声が聞こえる。
また妙に飄々としている。
その背中には先ほど見つけた顔の怪我がひどい(おそらく)少女を背負っている。というか背負わせた。
何故か?
エジソンさんは間違いなくあんな姿を見てるだけで怖がってるから無理。
だから私が本当は背負いたいのだけど…いざ私達を狙う奴が出てきたらどう対抗するのか?
正直ゴキ一人じゃ無理だ。コイツはただの下級チンピラ。
私みたいにサブマシンガン持ってこられたら間違いなく蜂の巣。
て、事で私が一応前に居ていざって時には闘わねばならないから、私は選択肢から消える。
じゃあ結果的に背負うのはゴキになる。
その趣旨を本人に伝えたら、だいぶ本人は嫌がったが、最終的には渋々従った。

270 :
「なあーまなみーん、一つ思うんだけどさァ」
「手短に」
「この背負ってるのだけど」
ゴキは顎で後ろの少女を指す。
「この子、今ボッコボッコだけどぜってえ可愛いよなァ〜」
「蜂の巣にするぞ」
「ちょっ、向けるなってこええこええ」
…おそらく、ゴキは本心からそう思ってるんじゃない。
ゴキがそう言ったのは、ただ単な話題作り。
気持ちが伴ってない。またこれもいつも通り。
ただ―――ふと少女の顔を見る。
確かに先ほどは気づかなかったけどなるほど、よく見たら比較的無事な目は大きな二重瞼だし、殴られて変形してるとはいえ、パーツは整ってる印象がある。
流石に元の顔までは特定出来ないけど…。
おそらくこの場でなければかなり人気の女の子だったろうに。
そう考えると尚更腹が立つ。
この子をこうした相手に、この殺し合いを開催した奴に。
「まーそんなイライラすんなってまなみん」
表情に出てたのか。
相変わらず、コイツはそういう読み取るのが得意だ。…腹立つが、まあ別にいいか。

271 :
「うるさい。早く行くぞゴキ」
「あいあーい…あれ?」
いきなり止まるな。
「どうした?」
「なんか聞こえねェか?」
「…?」
耳をすます。
そう言われたら何処からか妙な声が聞こえる。
(敵か?)
私は身構えるが、どうも違う。
脳に、直接問いかける様な感覚。
…そうだ、この声は―――
「あ…あ…あいつだ…!!これが、始まった時の、あの声!!!」
エジソンさんが、高らかに、でも怯えるような事を伺わせて叫ぶ。
そうだ、こんな糞みたいなのを開催した、あいつ…
『―――やぁやぁ、久しぶりだね』
そんな私達を差し置いて、声の主ヨグスはそう切り出した。
当たり前のように、平然に。


【一日目・早朝 E-3とE-2の境】

272 :
【真琴真奈美】
【状態】健康
【装備】H&KMP5(30/30) 【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、H&KMP5予備カートリッジ
【思考】
1.少女を病院に運ぶ
2.御木、トーマスと行動を共にし、守る。
3.オーヴァーが居る…?
4.ヨグスの声を聞く。


【御木魚師】
【状態】健康
【装備】特殊手錠、ケブラー防弾ヘルメット
【スキル】『パブリックエネミー』(AM8時以降再使用可)
【所持品】基本支給品
【思考】
1.真琴と行動を共にし、なんとかこの状況から逃れる。
※特殊手錠
一見ワイヤーのついたごく普通の手錠。
何か特殊な仕掛けがあるらしいが、御木しか確認していない。


【トーマス・A・エジソン】
【状態】健康
【装備】
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
1.発電所で電気を使えるようにする。
2.その後病院へ行って首輪をレントゲンで調べる。
【藍葉水萌】
【状態】瀕死、再生中
【装備】なし
【スキル】『自己再生』
【所持品】基本支給品、手榴弾×4
【思考】
1.????

273 :
投下終わります。
大変遅れてすみませんでした。

タイトルは『邂逅か、それとも』

274 :
んでこのままヨグス予約

275 :
投下乙、なんだけど
放送予約するのはせめて放送前の他のバードを書いてる人がいないか確認くらいしてからにしような

276 :
放送の予約の際はそうなんですか…すみません。まだ勉強不足でした。今後は気をつけます。

277 :
じゃあ今日一日待って、誰も放送前を書いてる人がいなければ放送を投下してもおkとうことで
あと放送は全体に関わるとこだから期間設けてのコンペでもいいけど
最低一人は書くって人がいるみたいだから来ないってこともないだろうし

278 :
まー複数くればもうけものだけど、もし来たら来たで選び方が難しい気がするな
投票できるほど人いるか微妙だし

279 :
いやまあ、書いていいなら私も書きますけど、第一放送なんでコンペするほど多態性のある展開にならないと思うんですよね
無茶なことせん限りは、影響大きそうなのは禁止エリアくらい?
まあ人少ないとはいえ、放送止まると全体が止まるんで早めに次に移れるに越したことはないとは思いますが

話代わりますけど、そろそろしたらばって必要ですかね?
まあ個人的に連投規制がウザいので、正式な一時投下スレが欲しいってだけなんですが
避難所としてラジオスレ借りてますけど、いつまでも借りっぱなしってのは心苦しいので
必要なら借りてきますが、どうでしょうか?

280 :
とりあえず日付変わって誰も書いてなさそうだけど、どうする?
3日くらい自由投下期間設ける?
あ、したらばは欲しいです

281 :
したらば借りました
まぁあって損なもんでもないので
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15826/
とりあえず一時投下スレだけ作ったので、必要なときに利用してください
>>280
うだうだ曖昧になって時間かかるのが一番いやなのでそれでいきましょうか

282 :
したらば乙
あとは予約スレも必要かな

283 :
したらば乙。
日にち変わっても無いようじゃそれでいいだろ

284 :
仮投下スレに放送案投下しました
短いですがとりあえず
>>282
予約スレも創りました

285 :
今月からドリームカジノとかいうオンラインカジノが始まったみたいだけど
こういうのってマジで現金が稼げるのか?

286 :
放送案〆っていつまで?

287 :
26から3日なんで12/29 0:00が募集の締め
でそれまでに複数候補があれば29日中に投票かなんかでどれにするか決めて
このまま一作しか来なければ、それを本投下後に放送後パートの予約・投下が解禁
こんなとこかな

288 :
んじゃ放送投下します

289 :
やぁやぁ、久しぶりだね。ボクだよ。
定時になったので、最初に告知した通り放送を行う。
同じ放送は二度行うことはないので、各自聞き逃す事の無いように。
現時点で意識を失っている者は…………まぁ残念だったということで。
それでは、まずは禁止エリアの発表だ。
最初に説明したとおり…………説明したよね?
念のためもう一度、簡単に説明するけど、進入禁止領域に侵入すると死亡する。それだけの話だ。
そして禁止エリアは侵入禁止領域の追加だ。
地図の外なんて意図しない限り行くことはないだろうから大丈夫だろうけど。
こっちの禁止エリアに関しては意識せずにいると侵入してしまう可能性があるので注意することだ。
では発表する。
禁止エリアは『B-2』『D-4』『E-8』。
以上三つが禁止エリアとなる。
とはいえ現在指定エリアに放送の時点で侵入してしまっている者がいる場合もあるだろうから、一応猶予は設けてある。
各エリアが禁止エリアとなるのはこの放送からちょうど一時間後だ。
それまでは大丈夫だが、それ以降は、侵入すると死亡することになるので早めに離れるように。
さて、それではお待ちかね、参加者の告知をしよう。
と言っても、既に参加者名簿を各自の荷物の中に転送しいるので、各自で確認してくれ。
荷物ごと無くしてしまったモノは、近くのモノに見せてもらうといい。
…………………。
…………。
……。
確認したかい?
それではそれを踏まえた上で、この6時間で脱落した死者を発表する。
『聖澤めぐる』
『劉厳』
『二階堂永遠』
『橘蓮霧』
『一色亜矢』
『一色麻矢』
『宍岡琢磨』
『ファンガール・J』
『龍造寺さくら』
『花緒璃乃』
『白井慶一』
『琥珀愛子』
以上の12名だ。
丁度3分の1が脱落だ。なかなか悪くないペースだ。
上手く行けば今日中に帰れるかもしれないね。
もちろん帰れるのは一人だけなんだけど。
ひとまず今回の放送は以上だ。
これ以降も6時間ごとに同じ形式で行うこととなるので気に留めておくように。
そして、次の放送も生きて聞けることを目指してくれ。
それでは、さようなら。

290 :
投下乙です。
オーソドックスだけど、やっぱ安定感あるな
しかし30人強だから普通なら少ないはずがこれでも結構へってんだよなあ

結局放送はこれでいいよね?
長かった…始まって一年ぐらい?

291 :
殺害数
6名
【オーヴァー】橘蓮霧、宍岡琢磨、龍造寺さくら、花緒璃乃、白井慶一、琥珀愛子
2名
【椎名祢音】一色亜矢、一色麻矢
【猪目道司】聖澤めぐる、ファンガール・J
1名
【板垣退助】劉厳
【二階堂永遠】二階堂永遠
散々言われているけどオーヴァーさんパネェっすね

292 :
オーヴァーやべえな。
ただ一応戦闘出来る人間はまだ殺してないのよね
さくらちゃんは素人だし、琢磨は拳銃持ちとはいえただの人だし。
ガチ戦闘した加山はイロハがいたとはいえ結構耐えられたしなあ

293 :
ふとやってみた独断と偏見によるスキルカード込みでの生存者の強さランク分け
人外クラス
藍葉水萌、板垣退助、オーヴァー、椎名祢音、篠田勇、フィクション、魔王
逸般人(バトルができる)
イリアム・ツェーン、カイン・シュタイン、加山圓、フランツ・O・ブリュデリッヒ、安田智美
一般人(バトルができない)
愛沢優莉、猪目道司、イロハ、片嶌俊介、逆井運河、田崎紀夫、トーマス・A・エジソン、葉桜加奈子、
フランドール・オクティル、真琴真奈美、御木魚師、溝呂木桐子
今のところはまだ一般人が多いかな

294 :
一応まなみんは刑事だし銃扱えるから一般人と逸般人の間くらいじゃないか?

295 :
オーヴァーさんは超人に比べてスペックは低いけど一番頭使って戦ってる感があるわ

296 :
久々に祢音描いてみました
http://dl1.getuploader.com/g/nolifeman00/34/32496687_m.jpg

297 :
祢音prpr^ω^
これはどう見ても片嶌が得するな…

298 :
予約してたのを投下します

299 :
頭に響く天よりの声。
晴れやかな朝日とともに舞い降りたそれは、福音などではなく凶事を知らせる凶報である。
それはこの少女、安田智美にとっても当然のごとく例外ではない。
「――――――――」
幾多の名を聞いた。
漏らす声などない。
懐く感想もない。
何が呼ばれたのか。
何故呼ばれたのか。
それがどういう意味なのか、認識ができない。
彼女には受け入れられない。
「――――――――」
何故そこに聖澤めぐるの名が含まれていることが理解できない。
いや、少し考えればわかることなのだろう。
だが考えることを脳が拒否する。
考えてしまったらきっと何かが終わってしまう。
「…………めぐる」
だというのに、乾いた喉からその名は呟かれた。
自ら口にした言葉は、乾いた大地に水が浸み込むように彼女に現実を認識させる。
「めぐる、めぐる、めぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐる」
その名を繰り返す。
そう呼び続けることしかできない。
その度に侵食するように、親友の死が彼女の理解へと及び。
「ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
堰を切ったように感情が噴出した。
喉が張り裂けるような絶叫。
涙と叫びで全てを吐き出すような慟哭だった。
戦友だった。
親友だった。
今の自分の全てだった。
永遠に響き続けるのではないかと思われた絶叫もいつしか止まる。
すべて吐き出した後に音はなく、静寂が辺りを支配する。
辺りに動くものはない。
智美は蹲る様な体制のままで、唸るように呟く。

「―――――許さない」

それは誰に向けての言葉だったのか。
この舞台を生み出したヨグスに向けてか。
目の前で龍造寺さくらを殺したオーヴァーに向けてか。
それとも聖澤めぐるを殺した誰かに向けてか。
憎悪を込めた言葉は融けるように、誰に届くこともなく消えていった。

300 :
///////////////////////////////////////////
「12人、ねぇ」
放送を聞いた御木魚師は表には出さないものの、内心で焦りを感じていた。
既に12人の死者が出ているということは、当然殺した人間もそれだけいるという事である。
三分の一が死んで生き残りは早くも三分の二。
一人一殺してその全員が生き残っているとしたら、最悪の場合この島にいる二人に一人は殺人鬼になる計算だ。
そして御木は最悪を想定する。
それが生き残るコツだ。
御木は小悪党だが殺人という一線だけは超えちゃいない。
彼に騙された挙句、破滅して自殺した人間はいるのだろうが、それはノーカウントだ。
日本は治法国家である。ヤクザといえどそう簡単に人を殺せるわけではない。
そういうことが平然と出来るネジのイカれた野郎はすぐに御用になるのが常だ。
だがこの場は治外法権だ。
開始直後にホイホイと人をR奴が3人もいることといい、もしかしたら猪目だけじゃなく”そういう人間”を集めているのかもしれない。
もちろん言葉さえ通じれば猪目だろうと口八丁で乗り切る自信はあるが。そもそも言葉すら通じない相手ではそれも不可能だ。
この場は思った以上にヤバイ。
これまで危険人物に出会わなかったのが奇跡の様なものだ。
真奈美で楽しむ予定だったが、身の安全が第一である。彼は何よりも我が身が可愛い。
開始直後から行動を共にしている連中が殺人を犯している可能性はないだろうが、これから合う連中には最大限警戒が必要になるだろう。
その辺の人間性の見極めは真奈美やエジソンじゃ無理だ。
その見極めは御木が行うべきだろう、彼女らのためではなく、あくまでも己ために。
だが、御木は失念していた。
あまりにも近すぎて見逃していた。
と言うより、動ける存在として認識していなかったため見落としていた。
既に一人、異物が侵入していることを。
素性のしれない人間が、本当にすぐ近くにいることを。
ゴキン、と鈍い音が響いた。
「…………うわぁあぁあああぁぁあぁぁ!!!!!」
少し遅れて聞こえる、耳を劈くような悲鳴。
何事かと真奈美が声の方向を振り返れば、目に入ったのは悲鳴を上げながら脱兎のように駆け出すエジソンの後ろ姿。
そして、首が180度捩じれた、御木魚師の姿だった。

301 :
「13人目ね、これで」
薄い笑みを張り付かせたような声。
御木の体がゆっくりと倒れ、捩じれた頭から防弾ヘルメットがカランと落ちた。
入れ替わるのように、御木の背からスカートを翻して少女が降り立つ。
「貴様は…………」
真奈美目が驚愕に見開かれる。
あれほど酷かった顔の傷が、この短時間で完全ではないもののある程度見れるレベルまで回復している。
そして幾分か傷の引いたその顔には覚えがあった。
直接的な知り合いではなく、調査資料の中でだ。
それは前代未聞の大量殺傷事件を巻き起こした張本人。
「――――藍葉水萌!」
「あら、私って有名人」
名前を言い当てられた水萌は動じるでもなく、嗤いながら御木の体から排出されたスキルカードを回収する。
情報を聞き逃さぬようじっとしていたが、意識自体は放送のタイミングで覚醒していた。
あの老人、板垣退助からうけたダメージで頸椎を損傷してなかったのは幸いだった。
裂傷はふさがった。まだ見た目上は傷跡は残っているだろうが傷口がふさがっているなら十分だ。
赤黒い風船のように膨らんでいた顔の腫れは、顔の造詣が見て取れるレベルにまで引いている。
完全に砕かれ外れた顎骨も繋がっている。言葉を話すだけなら支障はないだろう。
鼻骨の粉砕骨折はまだチクチクと痛むが、呼吸はできる。戦闘には影響はなさそうだ。
いずれをとってもこの短時間で成せる次元の回復ではない。
「スキルってのも意外と使えるわね」
最強を自負する勇者のまさかの敗北。
油断していたというのも確かにある。
だが、それを差し引いてもあの老人は強い。身を持ってそれを実感した。
当然のごとく借りは返す。そうでなくともRが。
そのためにはレベルアップが必要だ。
だが、彼女のレベルはカンストしている。これ以上の成長は見込めない
ならば、装備を整えるしかない。この場合はスキルも含む。
「という訳で頂戴、あなたのスキル」
ペロリと赤い舌をだしながら踏み込んできた水萌に対して、真奈美はH&KMP5を構える。

302 :
「動くな!」
相手は大量殺人犯である。
容赦する道理はないし、容赦すればこちらがやられる。
何より殺人者は許せない。
相手の動きによっては、すぐさま引き金を引く覚悟を決める。
「うふふふ。おバカさん。そんなものが当たると思って?」
だが、銃口を突きつけられながらも水萌は余裕を崩さない。
不敵な笑みのまま水萌はさらに一歩、真奈美へと踏み出した。
「ッ!!」
その動きに、真奈美は反射的に引き金を引いた。
フルオートマチックで降り注ぐ9oパラベラム。逃げ場などない弾丸の雨。
だが、命を奪う事への躊躇いからか、足元を狙っていたのが災いした。
水萌は上に向かって跳んだ。
完成された勇者である彼女は、単純に身体能力が常人とは桁違いである。
見惚れるほど美しい伸身宙返りで弾幕の遥か上に弧を描くと、そのまま身を捻り真奈美の背後に着地した。
真奈美もその動きに対応すべく、振り返りながら残弾を撃ち尽くしたサブマシンガンの装填を行おうとするが。
それよりも速く手首を強かに弾かれ予備カートリッジを地面に落とした。
そのまま後ろ手に関節を固められ、真奈美は動きを封じられる。
少しでも腕をひねれば関節が破壊されるという体制のまま、水萌は真奈美の耳元に語りかける。
「スキルは使わないの?
 戦闘用のスキルじゃないのかしら?
 それともまだスキルを取り込んでない?
 まあ、どっちでもいいわ。殺してしまえばわかることだし」
水萌の腕に力が籠められ、ミシリと真奈美の骨が軋みを上げた。
関節が破壊されるその直前。
唐突に水萌は真奈美の拘束を放棄して、大きく後ろに飛びのいた。
同時に響く短い銃声。それが水萌を狙った第三者の存在を知らせいた。
「いい所だったのに、邪魔するのはだぁれ?」
水萌が銃声の先に視線を向ける。真奈美も水萌を警戒しながらも同じく視線を送った。
その視線の先に表れたのは小型拳銃を片手に構えた、青と白のドレスに身を包んだ少女だった。
「――――チッ」
現れた少女は舌を打つと、弾切れしたのか手にしていた小型拳銃を乱暴に放り投げた。
その少女の目を見た、真奈美の背に戦慄が走る。
フリルの付いた可愛らしい衣装に見合わない、その瞳は深淵の闇のよう。
深い絶望と殺意が入り混じった色だ。

303 :
「―――――魔法使い」
そう口を開いたのは水萌だった。
そして相手を見下すように水萌はくすくすと嗤う。
「魔法使い如きが、勇者に勝てるとおもってるのぉ?」
挑発的な水萌の言葉に対する少女の返答は端的だった。
「――煩い。人殺しは、R」
言って。双剣を生み出し、水萌に向かって対峙する。
だがそれを静止する声が響く。
「待て! 待つんだ。
 助けてもらったことには感謝する。だが危険だ。
 相手は凶悪犯だ。この場は警察官である私が例えこの身がどうなろうとも抑えてみせる。
 だから、君は下がってるんだ。
 それに、どんな理由があろうとも君が彼女を殺そうというのなら私は、」
「―――――煩い」
静止を求める声は、怨嗟のような声に遮られる。
「煩い。煩い。煩い煩い煩い! 煩い!
 あなたは逃げた仲間でも追ってれば?
 邪魔するなら――――Rわよ」
その気迫に思わず真奈美は押し黙る。
彼女にとっては、もはや何もかもが煩わしい。
目の前で殺人を犯した水萌は決して許せないが。
先ほどの銃撃が制圧ではなくRつもりで撃ったものだったなら、真奈美も殺している。
安田智美は――魔法少女は正義の味方ではない。
自らの目的を達するために力と契約した己の味方だ。
殺人者は許さない。
それは奇しくも真奈美と同じ信念ではあるのだが、その本質はまるで違う。
真奈美のそれは殺人という行為を恨み、行為者を逮捕するという形での許さないだが。
智美のそれは、目的のためなら、殺人者を殺して自らが殺人者になることは厭わないし。
そのためならば、無関係の人間を殺しても構わないと思う程度には矛盾している。
先ほど真奈美を救った銃撃もそうだ。
真奈美に当たっても構わないつもりで撃ったし。
そもそも彼女を救うつもりで撃ったのではない。
「ねぇ、その剣ってスキルで出したの? それともあなたの元々の力なのかしら?」
智美は答えない。
ただ殺意をギラつかせ双剣を構える。
そのつれない態度に水萌は肩をすくめる。
「そう。答えないならそれでもいいわ。私の経験値(かて)になりなさい、魔法使い」
「煩い。殺してやる。殺人鬼」

304 :
【御木魚師 死亡】
【一日目・朝 E-2】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】双剣
【スキル】『ブレインイーター』『ある魔法少女の魔法能力(めぐる)』
【所持品】基本支給品、空のカード(残り9枚)、不明支給品1〜3(さくら)
【思考】
基本:人殺しは許さない
1.目の前の女を排除する
※双剣はめぐるの魔法少女としての能力で生成された物です
【藍葉水萌】
【状態】顔面にダメージ(大)再生中
【装備】なし
【スキル】『自己再生』
【所持品】基本支給品、手榴弾×4 特殊手錠『パブリックエネミー』
【思考】
基本:板垣に報復。そのために装備とスキルを集める
1.経験値稼ぎ
※特殊手錠
一見ワイヤーのついたごく普通の手錠。何か特殊な仕掛けがあるらしい。
【真琴真奈美】
【状態】健康
【装備】H&KMP5(0/30)
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品
【思考】
1.エジソンを追う or 目の前の争いを止める
2.オーヴァーが居る…?
【一日目・朝 D-3】
【トーマス・A・エジソン】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
1.この場から逃げる

投下終了
>>296
小学生とは思えない露出っぷり
まったくけしからんですな、片嶌は死ぬといいよ
それでは皆様良いお年を

305 :
投下乙です!

ゴキィィィィィ!!!!!ああ…合掌…

そして智美…あー…まあそうなるわなあ。
さくら死んでボロボロなところにめぐるだから…ここからどうなっていくか??
んでみなもちゃんはやっとスコア1か。意外と遅いな。

306 :
ゴキだけにゴキッってかwwwwwってやかましわwww

307 :
投下します

308 :
先ほどの腑抜けた叫び声の後、追われる側であった逆井運河と追う側であった田崎紀夫は、一旦その関係を忘れるかのように沈黙を作り上げた。
二人の眼前に広がる筋骨隆々の、毛深い男の体。
だがしかし、その屈強な肉体は赤く染まっていた。
だがそれが彼の筋肉に艶々とした輝きを与えていて、逆に気色が悪い。
次にツン、とした鉄の匂い。
…いや、鉄ではない。鉄というのにはあまりにも刺激臭だ。
そして何よりも。
目の前の肉体には、あるべきはずの首が無かったのだから、彼は殺されたのだろう、それは一目で分かる。
―――死体だ―――

その言葉が二人の脳内を駆け巡った。
紀夫はビビった。いきなり本日二度目の死体が自分の下敷きになっていたのだから。
運河もビビった。怪我人は今までの不幸故に見たものの死体はあまり見慣れなかった(寧ろ初見)のだから。
故にその妙な恐怖が、彼らに沈黙を与えたのだ。
彼らに与えられた沈黙は恐怖とともに、冷静を与えた。
追う追われるの関係を忘れさせる程の、また不思議な冷静さ。
いやそれは唖然に近いのか。
「…マジっすか…こんなん…マジっすか…」

309 :
そんななんとも言えぬ沈黙を破る第一声は田崎紀夫からだった。
死体から起き上がるように後退りしながらの言葉だった。
紀夫は、既に死体を見ている。
怖い物見たさのように、おそるおそる。
それは世間一般からしても残虐極まりない死体。
美しかっただろう少女を、青ざめさせ、穢れさせるような死体。
だが、違う。今眼前の死体は違うのだ。
『無惨にR』事だけを考えた死体。
首は切り落とされ、うつ伏せの死体の心臓と思われる部分には穴が貫いている。
近年の外国のB級スナッフビデオ(殺人を装った映画。ここではスプラッタ系を除く)でも、ここまで単純かつ残酷な殺し方はしないだろう。
それに、加えるとしたらこの死体の筋肉である。
紀夫はまずこの死体が生前手練れであると把握した。
柔道で三段(三段というと各地域の審査会で昇段試験を受けてよっぽどが無い限りは取れるが)の紀夫。
そのタチ故に一柔道選手としてある程度の大会に出場してきた。
そんな中ひょんとした拍子に全国大会3位になったりはした。
組み合わせの運の強さもあるものの、彼の実力は3段とはいえ筋金入りだ。
故に、これでもかと鍛えられた肉体は見てきた。
相撲取りの一見脂肪に見える紀夫の肉体。
知る方は多いだろうが、あれはほとんどが筋肉である。紀夫の体は寧ろ相撲取りに近い。
いや、相撲取りと比べると明らかに脂肪の比率は多いが。
…ともかく彼の体は受け身を取れるように、しっかりとした体幹を持つ為に、技の衝撃に耐えれるように仕上がっている。
だけれど、眼前の男は違う。

310 :
紀夫のように無駄な脂肪は無く、全身がまるでお手本のように出来上がっている。
しかし違うのだ。彼の体はボディービルダーのように見せるようではない、まさに獣のような肉体。
ここまでするのに、かなりの労力が必須だろう。それは絶え間ない努力で手に入れた、即ち『闘う為の肉体』である。
その『闘う為の肉体』が。
こうして眼前で惨くうつ伏せになっているのを見ると紀夫は危惧する。

―――ここまでの人間を、殺せる程の人間がいる―――?

一度は冷静になったものの、改めて恐怖を覚える。
何故、何故自分が呼ばれるのかと。
さて。
そんな紀夫を差し置いて逆井運河は考えていた。
いち早くこの状況から逃げる事を。
だが、どうする?
目の前の太った男は怯えているようだ。
ここで素早く逃げ出せば目の前の男は理解出来ずに着いていけず、逃走可能かもしれない。
だがもし、男が察知したら?
…次は逃げ切れまい。先ほどの逃走で、この太った男の体力は外見に似つかず自分よりも高い。
また長期戦となれば間違いなくまた捕まってしまうだろう。
ああ、それは面倒くさい。
方針は決まった。すぐにこの男が着いてこないように立ち去り、素早く逃げる。
運河は徐々に、徐々に尻餅をついた状態から太った男から離れていく。気づかれないうちに、慎重に、慎重に。
(今だっ)
そう思い飛び上がるように立ち上がった瞬間。
『―――やぁやぁ、久しぶりだね。僕だよ』
脳内に、軽快な声が響き始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

311 :
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…案外早いモノね」
いきなり私の脳内に話しかけてきた声。正直、よくぞまあヌケヌケと喋れるもんだ。
さっき武器を見た時は『気があう』とふざけつつ言ったが前言撤回。こいつはとんだ精神の持ち主だ。実験対象に仲良く話しかけてくるなんて。
私なら出来るか?いや出来ない。はい反語。
まあただこんな意味不明な、下手すれば100%キチ○イに思われる人殺し大会を開催する時点でこいつには躊躇は無いんだろう。
妙に腹が立つが、ここで立てて何になる。
そうある程度の区切りをつけて、放送に耳を傾けた。
んで。始まる声。

禁止エリアだとかは大切だが今の状況下でディパックから用紙か何かを取り出してメモするのは容易ではない。
仕方なしに、頭の片隅にでも置いておくのだけれど。
次に呼ばれた、死亡者一覧。
いや、フツー死んだ人呼びます?って率直に感じたけど、前述の通り相手には常識が無さそうなアンポンタンなのだから、諦めながらまたこれも耳を傾けた。
…ただ生憎私の知り合いは劉以外に呼ばれる事は無かったから、一切私には関係はないし、気が狂うなんて事は無かったのだけれど…てか全員で12人?
いやいやいや。
皆ハリキリすぎでしょ?『よーし、お父さんRPG-7撃っちゃうぞー』とか言ってんの?バカなの?
治外法権ってレベルじゃないでしょこれ。
まー、案外乗り気なのはやっぱりいるもんだなあ、と再確認したところで。

312 :
(オーヴァーを越える殺人狂でもいんのここには?)
溜め息。今ディパックから確定名簿を取り出して読もうとしたが、この状況下だ。まあいい。
「…もうこれ詰みでしょ」
私は足下を見る。うん。凍ってる。
さっきの『状況』はこの事。私、現在冷凍中。
頑張って砕こうとはしてみたけれど、これがまた妙に固い固い。【エターナルフォースブリザード】だなんて仰々しい名前らしく、フツーの氷とは作りが違うのか?気になるけど、今の私にはどうしようもない。
それに、このままだと非常にマズイ事になる。
凍傷だ。
今はまだ、多分大丈夫だろうが私がこのままだと間違いなく足に凍傷が起きる。
今はまだ軽いからいいかもしれないけどこれが続いたら?使い物にはならないだろう。だから、なんとしてでも、早く氷をなんとかしないと。
(…まあ…私にゃどうしようも出来ないんだけれどねー)
あー、クソッタレ。やっぱりこうなったら誰かに助けを求めるしかないのか。
出来れば、出来れば運河以外。あいつが来ると私は死ぬ。間違いなく死ぬ。
「周りに誰か居ないかなーっと」
足を固定されてるから視野は狭いが、私は辺りをなるべく見ようと首だけで努力。
結構位置が高いから、360度とはいえないがそのぶん奥行きでカバー。
目を凝らす。さながら獲物を狙う、鳥のよう。
いや、違う。高いとこから降りれなくなった助けを求める子猫のよう。
暗殺者の名折れ、だとか言われるかもしれないが別に構うもんか。
…………あ、居た。二人。ピザと痩せてる?うーん。顔はこっからじゃ分からない。
気づくかなあ。まあ気づくだろうなあ。こんな電波塔、現代アートでもないもんなあ。
これがゲームに乗ってたら私の人生はDEAD END。さて、どうなるか。
…気づいてくれますように。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

313 :
『それでは、さようなら』
…いやいやいや、これどういう事なんすか?
ファンちゃんが死んだ?あのファンちゃんが?
数時間前は、あんなに楽しそうに話していた女の子が?
それにファンちゃん含めて12人…いやいや。あり得ねーっすよこんなん。死にすぎでしょ。ヤベーッスよ。
えっ?まさか俺こん中で生き残らせる気っすか?
ムリムリムリムリ。逆に俺みたいな奴がよく生きれたぞって。
…うわ。こ、怖い。
な、なんすかこの怖さ。今日で二人死体見たけど…改めて確認っすよ。
いつ死ぬかが分からないって。それが誰であろうと不思議じゃないって。
…でも。怖いのを押さえて。
ファンちゃんが死ぬ前にした約束、果たさなくちゃ。
…さっき追ってた男は!?
…ん?妙に距離がある?まさか、逃げようと?
逃がす訳にはもういかないっすけど…何か!何か無いか…
あ。ディパック。
そういえば、なにか支給されてるかなんとか、そんな話…
(スキルカード…)
さっき、ファンちゃんが言っていた。
これには不思議な力があるって。ファンちゃん、言ってくれなかったんすけど。
…そうと決まれば。こいつを信じるしかない。
目の前の男は加速寸前。こいつとおいかけっこする訳には。
ディパックを漁る。地図、パン、弓矢…
色々あるのだけれど、俺に必要なのは、カードっす。
…あった!テレフォンカードくらいの大きさ。
これさえあれば、あいつを―――でもどうすれば?
…とりあえず口に出してみるっす。
「え、こ、骨そ…そう?骨葬の儀式!」

314 :
そう言った瞬間、地面からボコっと音がしたんす。
それは、水面から顔を出すように、一、二、三、四、五。
でも、でもそれは皆白くて、ヒビが入ってて。
さながら、骸骨…。
すると骸骨は、突然カタカタとその顎を動かし始めた。
「え何wwwやっと俺らの番www遅くねwwwもう一回放送なったよwww?」
「まあ大丈夫だろwww私らつえーしwww」
「ですよねーwww」
「さーて、ぼくらのマスターは……ピザwwwオワタwww永遠ちゃんみたいな美少女がええのにwww」
「おまwwwその名前禁止wwwwwwやべえwww笑えるwww」
…えっ?なんすかこれ。
妙に腹立つんすけど。この骸骨どもがスキル?
と、すると頭の中に急速に入ってくる情報。
(なんでも言うことを聞いて戦ってくれる、かあ)
と、なると。この骸骨は俺の手足って事すか。走るの苦手な俺からしたら、ありがたいっすね…。
まあ、信頼は薄いけど任せてみる価値はあるのかな?

315 :
「あの痩せた男を追ってほしいんすけど…」
『えっwwwやだwww』
『でもやだって言ったら俺たちあの人から消されるけど』
『ネタにマジレスwww百に承知なのにwww』
『骨だけに骨が折れるぜってか?やかましいわwwwwww』
『お前ら黙れwww言われた通りに従うぞwww…おいピザ!』
「お、俺っすか…?」
『止めるだけでいいんだよな?』
「し、進路を塞いでくれれば…」
『うはwwwwww楽勝www任せとけwwwwww』
そう笑いながら五体の骸骨は男に向かっていくっす。
男は既に走ろうとしていて。俺ならまたさっきみたいになるんだろうけど、骸骨たちは尋常じゃない速度で男の進行方向に走り込み、そして―――
『はい通せんぼwwwwww』
五体はあっという間に男を取り囲むようにして進路を防いでしまったんす。
うわ、骨たちすごい。
『これでいいwwwwww?』
「あ、ありがとうっす…」
『俺ら次の命令来るまで全裸待機w』
『元から全裸じゃねーかwwwwww』
『うwwwるwwwせwwwえwww』
…ともかく、これで逃げれなくなったのは確かっす。

316 :
こうなったら、逃がす訳にはいかない。
「さ…さっきの死体はやっぱあんたがやったんすか!?」
男が骸骨に狼狽えながら振り向いた。
完全に慌ててるっすね。しめた。
「お、俺細かい事分かんないっすけど…やっぱ、やっぱやったんならすぐにやめた方がいいっすよ!」
「……おい」
「もし、もしやめないなら俺が…」
「おい…俺はやってない」
「嘘だっ!」
…嘘だ。
必死すぎるっすよ、あきらかにそんなん。
目が泳いでる。
俺、わかるっすよ、嘘だって。こいつが黒だって。
猪目さんだって今危ないかもしれない。
ファンちゃんみたいな人は、もう出したくないっす。約束したから。始めてにひとしい、女の子との約束だから。
「…正直に言うっすよ…やったんだって…」
「あのなあ、落ち着いてくれないか。頼むから」
「やったに違いないっすよ!!!」
そうっすよ。
今、目の前の男が殺し合いに乗ってるんだろう。
こんなに短時間で人が死んでる状況で、眼前に死体があった人物が人殺しじゃない?
だったら?どうすればいいんすかね。
……ああ。分かった!
俺がここで、一先ずこいつ倒せばいいんすよね。
「…ファンちゃんが…ファンちゃんが死んだのだって…あの女の子が死んだんだって…あの男の人が死んだのだって…」
皆、皆。人殺しが悪いんだ。
ファンちゃんも、人殺しに殺された。
こいつだって、きっと。
「俺、柔道三段なんスよ。まあたかが三段いうけど、柔道って人を気絶くらいは出来るんスよね」
体を足を大股に。
腰をしっかりと据えて。
無いけど、黒帯を締めるモーション。
「田崎紀夫三段、新雪館所属。行くっす」
柔道に誇りは無いけれど。
俺に出来る事を、やらなくちゃいけないんすよね。
約束を果たす為にも。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

317 :
(おいおい、嘘だろ…)
面倒くさい事になった…。
目の前の太った男の雰囲気が変わった。
さっきまでの陽気なのは一変。今は目が鋭い。目つきだけで人を殺せるような。
そして、この体型。
腰を落とし、ジリジリと寄ってきている。間接技か?まあ、いずれにせよ厄介だ。
…だから逃げたいのに。俺の後ろには骸骨達がニヤニヤ(骸骨に表情あるのがおかしいけど)待ち構えている。
さっきの速度を見るに、もう逃げれないだろう。
「最悪だ…」
俺は何処まで運がないんだ。
改めて実感。誤解から、こんな目にあうなんて。
「もうやだ」
俺はそう呟いた。
目の前にはデブ。後ろには骸骨。
さあ、どうすりゃいいんだこんなの。

318 :
【一日目・早朝/C-5 劉厳の死体の近く】
【逆井運河】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『二分の一』、不明支給品1〜2
【思考】
1.死体だし、追っかけられるし、また死体だし、骸骨だしもう死にたい…。
【田崎紀夫】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『骨葬の儀式』、弓矢(?/?)
【思考】
1.ファンちゃんの為に頑張ってみる

【一日目・早朝/C-5電波塔のてっぺん】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康、足首から先が凍り付いて電波塔とドッキング、動けない
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】エターナルフォースブリザード
【所持品】基本支給品×2、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.やってましましたなぁ。ほぼ詰んだわー。助けてー。
2.参加させられてるであろう逆井運河を探す
3.首輪を解析できる技術者を探す
4.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
5.あの二人は気づくかな?
※参加者候補の名前は記憶しています
※電波塔が凍り付いています

319 :
(オーヴァーを越える殺人狂でもいんのここには?)
溜め息。今ディパックから確定名簿を取り出して読もうとしたが、この状況下だ。まあいい。
「…もうこれ詰みでしょ」
私は足下を見る。うん。凍ってる。
さっきの『状況』はこの事。私、現在冷凍中。
頑張って砕こうとはしてみたけれど、これがまた妙に固い固い。【エターナルフォースブリザード】だなんて仰々しい名前らしく、フツーの氷とは作りが違うのか?気になるけど、今の私にはどうしようもない。
それに、このままだと非常にマズイ事になる。
凍傷だ。
今はまだ、多分大丈夫だろうが私がこのままだと間違いなく足に凍傷が起きる。
今はまだ軽いからいいかもしれないけどこれが続いたら?使い物にはならないだろう。だから、なんとしてでも、早く氷をなんとかしないと。
(…まあ…私にゃどうしようも出来ないんだけれどねー)
あー、クソッタレ。やっぱりこうなったら誰かに助けを求めるしかないのか。
今だけ。
今だけでいいから、出来れば、出来れば運河以外。あいつが来ると私は死ぬ。間違いなく死ぬ。
「周りに誰か居ないかなーっと」
足を固定されてるから視野は狭いが、私は辺りをなるべく見ようと首だけで努力。
結構位置が高いから、360度とはいえないがそのぶん奥行きでカバー。
目を凝らす。さながら獲物を狙う、鳥のよう。
いや、違う。高いとこから降りれなくなった助けを求める子猫のよう。
暗殺者の名折れ、だとか言われるかもしれないが別に構うもんか。
…………あ、居た。二人。ピザと痩せてる?うーん。顔はこっからじゃ分からない。
気づくかなあ。まあ気づくだろうなあ。こんな電波塔、現代アートでもないもんなあ。
これがゲームに乗ってたら私の人生はDEAD END。さて、どうなるか。
…気づいてくれますように。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

320 :
投下乙です
田崎くんが思った以上に動けるデブだった
そして骨どものノリが軽ぃよwww
イリアムはマジどうすんだろ

321 :
投下乙
そういえば紀夫は柔道やってたんだ、すっかり忘れてたw
運河はさっさと諦めて楽になるべしそうするべし
あと、イリアムは暗殺者じゃなくて元エージェントですよ

322 :
(オーヴァーを越える殺人狂でもいんのここには?)
溜め息。今ディパックから確定名簿を取り出して読もうとしたが、この状況下だ。まあいい。
「…もうこれ詰みでしょ」
私は足下を見る。うん。凍ってる。
さっきの『状況』はこの事。私、現在冷凍中。
頑張って砕こうとはしてみたけれど、これがまた妙に固い固い。【エターナルフォースブリザード】だなんて仰々しい名前らしく、フツーの氷とは作りが違うのか?気になるけど、今の私にはどうしようもない。
それに、このままだと非常にマズイ事になる。
凍傷だ。
今はまだ、多分大丈夫だろうが私がこのままだと間違いなく足に凍傷が起きる。
今はまだ軽いからいいかもしれないけどこれが続いたら?使い物にはならないだろう。だから、なんとしてでも、早く氷をなんとかしないと。
(…まあ…私にゃどうしようも出来ないんだけれどねー)
あー、クソッタレ。やっぱりこうなったら誰かに助けを求めるしかないのか。
出来れば、出来れば運河以外。あいつが来ると私は死ぬ。間違いなく死ぬ。
「周りに誰か居ないかなーっと」
足を固定されてるから視野は狭いが、私は辺りをなるべく見ようと首だけで努力。
結構位置が高いから、360度とはいえないがそのぶん奥行きでカバー。
目を凝らす。さながら獲物を狙う、鳥のよう。
いや、違う。高いとこから降りれなくなった助けを求める子猫のよう。
失業中とはいえ一応エージェントだ。
その名折れ、だとか言われて笑われるかもしれないが別に構うもんか。
…………あ、居た。二人。ピザと痩せてる?うーん。顔はこっからじゃ分からない。
気づくかなあ。まあ気づくだろうなあ。こんな電波塔、現代アートでもないもんなあ。
これがゲームに乗ってたら私の人生はDEAD END。さて、どうなるか。
…気づいてくれますように。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

323 :
すんません…>>312の再々修正です…
>>321氏のご指摘、感謝します!暗殺者多いから気をつけないと…
したらばに書きましたが、タイトルは『Do you struggle against trouble?』でお願いします。

ここからチラ裏ですが、毒吐きで近々ロワ語りで当ロワが選ばれたらしいですね。
日程は1月6日…。

324 :
投下乙。迫りくるデブから逃れる術はあるのか。
水萌様描いてみました。
http://dl10.getuploader.com/g/nolifeman00/36/32666573_m.jpg

325 :
つ、遂にみなもにも絵が…いつもホントに乙です!
みなもかわいい…顔だけならやはり美少女か…

しかしpixivの方も含めるとこりゃ全キャラ書かれるぞきっと(チラッ

326 :
この前のロワ語りは乙でした
まさかあんなに話が進むなんてw
ちょっと嬉しかったり。

327 :
ロワ語りおもしろかったなw
そういや本編と参加者候補一覧眺めてて思ったけど
ロワ前、逆井運河に人探しの依頼したのは王凰だったりするのかな、中国人だし
そうなると運河が探してたのは篠田君になるな

328 :
ギリですが投下します

329 :
フランツ・O・ブリュデリッヒは流れる放送に耳を傾けていた。
彼の傍らには砂金の様な黄金の髪を朝日に輝せた美しき姫君がいる。
この場におけるフランツの主君。フランドール・オクティルである。
彼女は死者を悼み、黙祷を捧げている。
フランツもそれに倣い、静かに死者に向けて黙祷を捧げた。
放送によって知らされたのは、早くも1/3が死亡するという尋常ならざる事実であった。
人気のない山中に放り出されたというのはあるいは幸運だったのか。
否。犠牲者を出さないという主の掲げる理想からいえば、山中を抜けるのに時間を費やしたのは不運であるといえるだろう。
だが、その大量の死者よりも、気がかりなのは生者。
放送と共に配布された名簿に羅列された幾つかの名前である。
それらはフランツに僅かながらの動揺をもたらせた。
○カイン・シュタイン...
友であるカインがこの場にいるという事実は驚くべきことではあるのだが、これに関しては心配はしていない。
いや、まったく心配でないといえば流石に嘘になるが、同じ騎士という立場である以上、無用な気遣いはむしろ侮辱にあたるだろう。
それに、心配などせずとも、彼が自分などよりうまく立ち回るであろうことは想像に難くない。
○藍葉水萌...
○篠田勇...
それよりも目を引いたのは異世界より現れ消えた勇者の名であった。
救世の勇者と破壊の勇者。
両名の名がしっかりと記されている。
救世の勇者はしばらく我が国に滞在していたもが、主にやり取りを行っていたのは王や騎士団長を務める父であり。
一介の騎士でしかないフランツが直接会話を交わしたのは数える程度の事である。
父の勧めで一度だけ手合せしたこともあるが、向こうがこちらの事を覚えているかは微妙なところである。
破壊の勇者に関しては直接の面識はない。
だが、悪名ともいえる噂は嫌というほど耳に入ったし、近隣諸国からの御触れや人相書きで特徴は把握している。
その破壊の勇者が愛用していた大剣が支給されたのは縁といえば縁だろう。
漆黒を纏う大剣。
鋼よりも固く、それでいてゴムの様なしなやかを誇る特殊な鉱物から生み出された業物で、それに比例して重量も凄まじい。
フランツの様な大男には見合う大剣であろうが、これを女人の細腕で振るうというのだから恐ろしい話である。
だが、フランツに最も衝撃を与えた名はこれらではない。
相互理解のためにフランツが語った友との昔話。
それに対してフランドールが返し語った話もまた、友の話だった。
○加山圓...
○葉桜加奈子...
そして、この名は、まさしく先ほど語られた友の名であった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

330 :
―――オクティル王国。

周囲を高い山々に囲まれてた山岳国であり、その恵まれた地形から他国からの侵略の危機にさらされることもなく長らく平和を維持してきた。
鉱山から取れる鉱物の輸出が盛んであり、特に金の産出国としては有名で、主な財源として大いに国を潤わせていた。
その潤沢な財源をもって小国ながら、近隣諸国に高い影響力を持っている国だった。
だがある日、王が病に倒れたことからその平穏は崩れ始めた。
次期王位はフランドールの兄である第一王子が継ぐことがほぼ決定事項だった。
王子は才覚にあふれ、高い決断力を持ち、敵対者に容赦しない非情さを持つ、とかく優秀な男だった。
彼の即位に表立って不満を申し立てる者などいるはずもなく、王位継承は憂いのない問題だった。
だが、事件は起きた。
大使として訪れた異国の地で、王子がテロに巻き込まれ死亡したのだ。
第一王位継承者の急死。
その一報はまさしく青天の霹靂であり。
王が病に伏せたことよりも強く王国全体を揺るがせた。
死亡した王子の他に男児はおらず、王の直系たる遺児は女児であるフランドール一人。
王の余命はいくばくもなく、フランドールの婚儀の相手を見繕う余裕もない。
なれば、第二王位継承権を持つフランドールが女王として即位するのが順当かと思われた。
だが、これに異議申し立てたのが、現王の弟、フランドールの叔父にあたる副王である。
歴史あるオクティル王家の歴史で女が王位を継いだ事例はなく、フランドールの即位は好ましくない。
ならば、王の実弟であり直系である己が継ぐのが妥当であると。これが叔父の主張である。
もちろん、将来フランドールが婚姻を遂げ、子をなし、男児が生まれた場合には快くその席を譲ると付け加えて。
この異議申し立てに反論したのが大臣である。
現王と年の違わぬ叔父が即位したとして、同じく病で倒れられては二の舞である。
何より、第二王位継承権を持つ王女が即位するのが正統である。と真っ向から反発。
この争いを発端として、平和だったオクティル国は骨肉の後継者争いへと向かっていった。
王位を狙う叔父はもとより、王女を支持する大臣も、その実、政に無知な姫君を祭り上げ、傀儡として政権を握ろうとする目論見である。
更には叔父を囲う派閥の中には、密かに王女を亡き者にしようと企む過激な思考を持つ者までいる始末であった。
身の安全に関しては、大臣が送り込んだ護衛が守護しているものの、それも体のいい監視役である。
優しかった父は病に倒れ、頼りになる兄もこの世にはいない。
どちらの勢力が派閥争いに勝つか、どのような結果にるか、ただ天命を待つばかり。
渦中の姫君の置かれた状況は針のむしろだった。
そんな彼女の身を案じる者たちも確かにいた。
使用人を中心とした勢力。王女派である。
しかしながら、王女派は姫を慕う使用人を中心とした派閥であり、支援者も少なく発言力も皆無に等しい。
直接的に命を狙う過激派はもとより、王女の自由を許さず常に監視下に置こうという大臣の動きにも、表立った対応は不可能であった。

331 :
だがフランドール・オクティルという女は、そんな状況を甘んじて受けるような、何も動かず運命を受け入れるだけのような、そんな潔い女ではなかった。
国内の状況に関わらず外交は必要である。
小国であるオクティル王国は、むしろ国内が荒れているからこそ、それの弱みを見せぬよう外交に手を抜くわけにはいかない。
故に、国の顔役として兄の代役を務めるべく国外へと向かうフランドールの動きは両勢力にも止めようがない事だった。
もちろん、護衛という名の厳しい監視は付いていたが。動きを起こすには、まずこの監視を抜け出す事が必要であった。
そして公務を終え、帰国する飛行機の中で、彼女は監視の意表を突く方法で監視網からの脱出に成功する。
フランドール・オクティルが加山圓と葉桜加奈子の二人と出会ったのはその時の話である。
目撃者は出さないつもりだったが、落下点にいたのだからどうしようもない。
戸惑う二人を何とか誤魔化して、その場を後にした。それが出会いだった。
フランドールは、まずは事前に取り決めていた通りに女王派に連絡を取り、更に父と懇意にしていた諸国へと状況を伝える文を送った。
監視の目を逃れた今なら大臣に握りつぶされる事無い。
だがこちらの連絡を受け、向こうからの何かしらの動きがあるのを待つ間、どこかに身を潜める必要がある。
当然行く宛てはない。
逞しくも、彼女が人生初の野宿を決意したところで、朝に出会った少年、加山圓にまた出会った。
明らかに怪しい、事情も明かせない状況にあるそんな彼女を、圓は自身の住まう武家屋敷に招いてくれた。
慣れぬ暮らしに戸惑うこともあったが、加奈子もたびたび顔をだして、何かと身の回りのことを気にかけてくれた。
立場を隠していたので当然と言えば当然だが、王女ではなく一人の少女として扱われるのは新鮮な経験だった。
日本での生活は一ヶ月ほど続いた。
相手の出方を窺うため、あえて注目を浴びる行動をとったこともあった。
遂には、彼女の命を狙う刺客が送られ、その生命を彼らに守られたこともあった。
愛する祖国の行く末を左右する一ヶ月だったが、振り返れば充実した日々であったと思える。
誰も味方のいないあの状況で、あれほどまで親身になってくれた二人には感謝の言葉もない。
二人ともフランドールにとって得難い友となっていた。
だが、そんな生活の終りは唐突に訪れる。
死んだはずの王子が祖国に帰国したのだ。
そこからは電光石火の早業だった。
王子はあっという間に宮中をまとめあげると、今回の件に関する不穏な動きを材料に、副王と大臣と言った危険分子を追放した。
そして事件の片を付け終え、王子はフランドールを迎えに来日する。
自らの即位に当たって不穏分子を炙り出し、一掃するための策だったのだと、彼女に向かって事情を説明した。
そんな兄を、最後に圓が一発殴って、この件は終わりを向かえた。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

332 :
「フランドール様」
気遣うような声がかかる。
黙祷を続けていたフランドールは瞼を開き、長身のフランツを見上げた。
主の心痛を慮る、臣の気遣いを理解しながら、あくまで何事も無いように彼女は振る舞う。
「フランツ様。既に多くの犠牲者が出ています。
 山道も抜け、日も昇りました。これ以上の犠牲を出さぬよう道を急ぎましょう」
救える命を一つでも掬い取る。そのスタンスに変わりはない。
例え友がいるとわかったとしても、私情に走り彼らの探索を優先するわけにもいかない。
平等であることが統治者の努めである。
「心得ております。我が主よ」
主がそういう態度であるのならば、フランツとしてもこれ以上進言すべきことはない。
恭しく頭を垂れると、フランツは先陣を切る。
ようやく平地に降り立った騎士と姫は、全ての悲劇を止めるべく本格的に行動を開始した。
【一日目・朝/C-2 平地】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える
【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】勇者の剣・黒
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード
【思考】
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える

333 :
投下終了
途中でロワ書いてんだか何書いてんだか分かんなくなったのは秘密だ

334 :
あとロワ語りで出てたネタ
http://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0185.jpg

335 :
投下乙
断片的だった姫様と二人の関係がよくわかる話だった
そして何気に加山△
相関図もGJ

336 :
水萌と勇が異世界人で魔王やフランツや加山など殆どが同じ世界の住人だったのか
確かにそのほうが辻褄が合うな、永遠ちゃんマジボッチwというわけでもないのか

337 :
あ、でも水萌ちゃんて確か昔全国指名手配されてて資料を真奈美さんが持ってたような…
異世界から来たといってるけど実は日本から瞬間移動してきただけだったりして

338 :
すまん、勘違いしていた。フランツ←中世の人 フランドール←現代の人

339 :
推察込みだから確定ではないけど、出身世界は>>334で大体おkじゃないの

340 :
集計お疲れ様です。
オリ2v 36話(+9) 23/30(-1) 76.7(-3.3)

341 :
こうしてみると安定はしてるのな…

342 :
二桁まで惜しかったな
作品はそこそこ来てるけど雑談が少ないのよね

343 :
投下します

344 :
「確認しておくけど、こっちの言ってることはわかるんだよね?」
猪目道司は自分の殺した少女に話しかける。
その声に反応して少女の形をしたなにかはグルリと首を傾けた。
「ほら、ゾンビ映画とかだとゾンビって理性なくなって『あーあー』言ってるイメージじゃない?
 お嬢ちゃんの場合はどうなのかなぁって」
忠実に従うゾンビという実に都合のいい手駒を得たものの、それがどの程度使えるのか把握しておかないと話にならない。
知能がなければ最悪、手駒どころか邪魔になる可能性すらある。
「とりあえず、しゃべれるのかな? だったらおじさん返事してほしいんだけどなぁ」
「――――ええ、言語は正確に理解できます」
「ぉお」
返答がきたこととその声色に驚く。
返ってきた声は元となった少女の声色ではあるのだが、どこか無機質で無感情だ。
機械的、というより昆虫的。それまでの少女らしさは感じられない。
「じゃあ、いくつか聞いておきたいんだけど。
 君は、そのぉ、覚えているのかな。自分がどんな状態なのかとかさ」
「殺害された金山純子の肉体とスキルカード『ものまね』をベースとして、スキル『ネクロマンサー』の力でゾンビとして蘇らせた、といったところでしょうか?」
探るような問いかけに淀みなく答える。
質疑応答くらいならば問題ないどころか、認識は正確すぎるくらいに正確だ。
殺された事すら認識しているのか。
「なるほどなるほど。そこまで覚えているんだね。
 ちなみに誰に殺されたのかとかも覚えているのかい?」
少しの間。
相変わらずの平坦な声で少女は答える。
「私が殺された事を恨んでいるのかもしれないと考えているのでしたら、ご心配には及びません。
 殺されたのは金山純子という個人であり、同じ肉体を有しているというだけで私とは別物です。
 私はあくまで主人(マスター)に従う従者(サーヴァント)ですから、反逆はあり得ません」
マスターと来た。言動には元の人格の影響が見える。
意図を察せる知能もある。最低限の状況判断はできそうだ。
そしてその言葉を信じるならば後ろから刺される心配はなさそうではある。

345 :
 

346 :
「記憶とかってどうなってるんだい?
 その子の記憶を君は覚えてたりするのかい?」
「いえ、肉体は共有していますが、脳から情報を引き出すことはできません。
 あくまで私はスキルカードですから、私の見聞きしたことしか把握出来ません」
「じゃあその子を演じることはできない?」
その言葉に少女は切り替えるように目を閉じる。
「ふん。なめるんじゃないわよ。そのくらい余裕よ!」
「ほぅ、こりゃすごいね」
さすが『ものまね』のスキルを基にしたというだけあって、その再現度はたいしたものだ。
世辞抜きで、感心する。
多少の差異はあるのだろうが、おそらく親兄弟でもなければ見分けは付かないレベルだろう。
少なくとも昨日今日出会っただけの関係では違和感も感じないだろう。
「じゃあお嬢ちゃんはそのまま紀夫くんを追ってもらえるかな」
「いいけど、あんたはどうするの?」
「おいちゃんは、別の用事を思い出したんでそっちに行くよ。
 用事が終わったらすぐに追いつくつもりだけど、紀夫くんに関しては――――もう殺せそうなら殺しちゃっていいよ」
手駒は手に入った。
肉壁にしかならないデブなんて今となっては邪魔なだけだ。
それにコレはゾンビのスペックテストも兼ねている。
精神面は分かった、では肉体面は?
よくあるゾンビ映画のようにリミッターがハズレたりするのだろうか。
例えそうじゃなく失敗したとしても、猪目とファンガールもどきの関係性を知るものがいない以上、猪目の悪意が露見することはない。
ファンガールがゾンビになって猪目がそれを操っているなど、まともな発想では想像もつくまい。
露見する可能性としては、ファンガールもどきがゲロった場合くらいのものだが、これまでのやり取りからその心配はなさそうだと判断する。
「わかった。やってみる」
その指示になんの躊躇いもなく応じる少女。
人格をまねていてもその本質はあくまで猪目に従うスキルカードである。
「ああそうそう」
別れ際、思い出したように猪目が言う。
「ところで、お嬢ちゃんの事はなんて呼べばいいのかな?
 純子、ちゃんだっけ? それともファンガール? 『ものまね』ちゃんの方がいいかな?」
■■■■■■■■■■■■■■■■■

347 :
「お、あったあった」
猪目が探しもの、それは聖澤めぐるの死体である。
スキル『ネクロマンサー』。
ゾンビを生み出すこのスキルに。必要となるのは肉体となる綺麗な死体と、人格となるスキルカード。
殺害方法も絞殺であるため死体は外傷もなくきれいなモノだ。
まだ死後5時間程度のため死斑も血管外へ出ていない。
更に、都合のいいことにスキルカードを1枚余らせている。
というより、この少女から奪い取ったものなのだから、ある種この少女を動かすには御あつらえ向きだろう。
「返すよ、お嬢ちゃん」
そう言って、スキルカードを少女の死体の上に落とす。
もともと使い道がなさそうなスキルだったし、惜しくもない。
【給仕募集】
このカードをベースにしてこの少女を甦らせる。
指定した相手を忠実な執事・メイドにするだけの能力。
殺し合いに役の立たない能力を支給するとは何の酔狂かと思ったが、こういう酔狂に使うのならば悪くない。
「ちちんぷいぷい、あぶらかたぶらっと」
適当な呪文を唱えると、ビクンと、二度と動くはずのない少女の体が震えた。
赤い唇は青く染まり、元より白い肌はさらに白く。不気味なまでに白い。
可憐な顔はそのままにただ不気味さだけが張り付いている。
ムクリと立ち上がった少女は、両腕でスカートの裾を摘まんで、やうやうしく首を垂れた。
「おはようございます、ご主人様」
【一日目・朝/C-6 林】
【猪目道司】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『未来予知』 『ネクロマンサー』(浸食率0%)
【所持品】基本支給品、不明支給品2〜4 、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.メイドゾンビと共に、先行したゾンビを追う。
※以下、【ネクロマンサー】によって生み出されたゾンビ
【メイドちゃん(聖澤めぐる)】
【状態】ゾンビ、外的損傷無し
【装備】なし
【スキル】『給仕募集』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本.【ネクロマンサー】所持者に従う。
【一日目・朝/C-5 平原】
【ファンガール・M・J】
【状態】ゾンビ、外的損傷無し
【装備】果物ナイフ
【スキル】『ものまね』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本.【ネクロマンサー】所持者に従う。
1.紀夫の元に向かって殺せそうならR

348 :
短いけど投下終了
ゾンビが思考して喋れるのは、復活近いのでちょっとどうかと思いましたが、意見あればどうぞどうぞ

349 :
相関図:非参加者含めた版
http://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0187.jpg

350 :
投下乙!!
やったね智美、めぐるちゃん生きてるよ!
ゾンビだけど、まあしょうがないですよね(マジキチスマイル
んで、そのゾンビだけど、
俺が思うオリロワ2ndの基本原則は
・勢いとノリ
・ロリとロリコン
・誰これ構わず容赦なく死ぬ
で成り立ってるから大丈夫大丈夫。

351 :
久々に来てみた
停滞?

352 :
ちまちまだけど一応、書いとるで
みんなもっと雑談してもいいのよ?

353 :
うーむ、前のロワ語りの時は滅茶苦茶話したんだがなあw
そんときだしつくして振る話題がねえええ

354 :
同じくw
早めに続き書いて話題を増やさないとなあ

355 :
じゃあ投下します

356 :
恐るべき殺人鬼の襲撃を辛くも退けたものの、その結果、加山圓は精神的にも肉体的にも疲労困憊となっていた。
そのため、ひとまず身を休めようとしていたのだが、休憩するにしても辺りは見る限り血と肉片のまき散らされた地獄絵図である。
流石にこの場に居続ける気にはなれないし、何よりイロハにこんな光景を見せ続けるわけにもいかないので已む追えずその場を離れ、深い森を後にした。
『やぁやぁ、久しぶりだね。ボクだよ』
そして場を移し、ようやく休息が取れると思った矢先の出来事だった。
どこから流れているのかすら不鮮明でありながら、だが確かに聞こえる声。
聞き覚えのあるその声が、この場に連れてこられる直前に聞いた声と同一のものであると気づくのにさして時間は必要なかった。
ふと時計を見れば、時刻は6時丁度。
脳内に直接響くかのように聞こえる、これが事前に告げられていた『放送』なのだろう。
いったいどんな内容が告げられるのか。
警戒心を強めながらも、聞き漏らさぬよう耳を傾ける。
まず放送によってもたらされた情報は『禁止エリア』についてだった。
何でも侵入しただけで死亡するエリアが追加されるという、どうにも聞き流せない情報である。
忘れぬよう慌てて荷を漁りメモを取りだしその内容を書き記してゆく。
告知された禁止エリアは『B-2』『D-4』『E-8』の三つ。
今いるエリアは地図で言うところの『E-7』エリアであるため、禁止エリアに指定された『E-8』エリアに近い。
誤って踏み込むことはないだろうが、注意は必要だろう。
『さて、それではお待ちかね、参加者の告知をしよう。
 と言っても、既に参加者名簿を各自の荷物の中に転送しいるので、各自で確認してくれ。
 荷物ごと無くしてしまったモノは、近くのモノに見せてもらうといい』
言われて荷物を確認してみれば、何時の間に紛れ込んだのか、参加者名簿と思しきものが確かにあった。
先ほどメモを取り出した時にはなかったものがある。底知れぬヨグスの力に、うすら寒いものを感じながらも、名簿を開きその内容に目を通す。
ずらりと並ぶ36の名。
日本人だけではなく外人のような名前もあり、多国籍にわたり多種多様である。
「って、姫さんまでいんのかよ……!?」
その中で、もっとも脅かされたのはとある事件で知り合った某国の王女の名である。
それだけではない。他にも、幼馴染にクラスメート、学校の先輩や近所の知り合いまでいる。
イロハの様な例外はあれど、北で激戦を繰り広げていた奴らや、先ほどであった男の様な殺し合いに則した化物が参加者の殆どであるのだと思っていただけに、知った名がいくつも連なっているというのは完全に予想外の事だった。
どんな基準で人選をしているのか。全くの謎である。
『確認したかい?
 それではそれを踏まえた上で、この6時間で脱落した死者を発表する』
天からの声に思考が引き戻される。
死者の発表。
その言葉に、全身が総毛立つような感覚を覚える。
それはつまり。
この名簿に載っている者は。
日常を共に過ごした同級生も。
子供のころから知る幼馴染も。
共にあれほどの事件を潜り抜けた姫様も。
全て今から死者として呼ばれる可能性があるという事。
そんな、こちらの気持ちを無視して、死亡者の名が淡々と告げられていった。

357 :
 

358 :
「――――――――」
思わず、無意識のうちに地面に拳を打っていた。
告げられた名は12。
呼ばれた中には、知った名がいくつかあった。
言いようのない無力感。
この殺意と悪意を持った化け物たちが跋扈するこの場で、自分が何ができたとも思えない。
それでも何かできなかったのか、そう思ってしまう。
打ち付けた拳にジワリとの痛みが感じられてきたころ、ハッとしてすぐ近くで佇むイロハを見る。
自分のことばかりでイロハを気にかけるのを忘れていた。
この少女も、自分と同じように知り合いが巻き込まれ命を落としているかもしれないというのに。
己の気のまわらなさに心底呆れながらも、イロハに向かって問いかける。
「…………イロハちゃん、大丈夫?」
何を問われたのか分からないといった風に、イロハは小首をかしげる。
放送の内容を理解できていないのか、それとも本当に思うところはないのか。その表情にこれといった変化はない。
言葉を話せないこともあり、この少女に関しては分からない事の方が多い。
イロハが名簿を確認した様子もなかったようなので、この場に知り合いがいるのかどうかすらわからない。
「この中にイロハちゃんの知ってる人っているかな?」
自分の名簿を開いてイロハに向かって問いかける。
その問いに、イロハはしばらく名簿を眺めてからふるふると首を横に振った。
名簿に知ってる名がないということは、この場に知り合いはいない、ということだろうか?
だが、先ほどの男は明らかにイロハを知ってる風だった。
どういう関係かまではわからないので、むこうが一方的に知ってただけという可能性もあるが。逆ならともかくそれは少し考えづらい。
「イロハちゃん、さっきのあの男ってイロハちゃんの知り合いなの?」
なので直接疑問を投げかけてみた所、この質問にイロハは肯定の意を示すように頷く。
「……えっと、どういう関係?」
思わず漏れたこちらの質問に、イロハは少し悩むような素振りを見せた後、小さな手足を動かし身振り手振りで応じてくれた。
なにやら答えを伝えようとするその様は大変可愛らしいとは思うのだが、答えとしては要領を得ない。
雰囲気的に険悪な関係ではなさそうである。
あの殺意の塊のような男と交友的な関係だというのも想像できないが。とりあえず知り合いなのは間違いないようだ。
なら、この名簿に名前がないのはどういう事だろうか?
この名簿に載っていない、あるいはジョーカー的な存在なのか。
もしくは、考えられるのはイロハの知る名と、ここに乗っている名が異なっている可能性か。
この名簿には魔王とかフィクションとか明らかに本名じゃない。偽名か異名みたいな名前も載っている(というか魔王ってのは北で戦ってた魔王っぽい奴だろこれ)。
奴もそうなのかもしれないし、他にも、そうであるというだけで認識できないイロハの知り合いがいるのかもしれない。
なんにせよ、いると分かった以上(あの男は例外としても)お互いの知り合いとの合流を目指したかったのだが。
イロハの知り合いを探すというのはいるかどうかも分からない以上、ひとまず保留にせざる負えない。

359 :
「…………となると、まずは加奈子と姫さんあたりか」
他にも知り合いは何人かいるみたいだが、探す宛てをつけるなら、まずはこの二人にしたい。
まぁ二人とも俺なんかよりもよっぽど逞しい女ではあるのだが、なんだかんだで女一人を放置しておくのは気が気でない。
探すにあたって性格上、あの二人が大人しくしているとも思えないので、おそらく人の集まる場所に向かっている可能性が高い。
ならば市街方向に戻るべきだろうか。
だが、その場合、北部で激戦を繰り広げていた奴らに出会う可能性や、先ほど立ち去ったあの男とまたかち合う可能性もある。
先ほどの戦いで生き残れたのは殆ど運だ。
また戦いになれば、今度こそ生き残る自信はない。
とはいえ、市街地を避けて移動するにしても、すぐ東の『E-8』エリアは禁止エリアに指定されているため移動は不可能。
北の発電所方向も死体の破片が撒き散らかされているため、できれば避けたい。
そして市街方向も除外するなら南しかないが、離れの小島が一つあるだけである。
そんな所に探し人がいる可能性は低いだろう。
西か南か。
西は彼女たちがいる可能性は高いが、リスクも高い。
南は彼女たちがいる可能性は低いが、リスクも低い。
どちらにするか、リスクと目的の両天秤だ。
自分だけじゃなくイロハのリスクも背負っているとなると迂闊な選択はできない。
だがそれでも、
「イロハちゃん。ここに俺の知り合いがいるみたいなんだ。
 だから少し危険かもしれないけど、人が集まりそうな市街方面に戻りたいんだけど、いいかな?」
こちらの言葉に何の疑いもなくイロハは頷く。
その様に、チクリと罪悪感の様なものを感じる。
自分の知ってる人間が自分の知らないところで死ぬなんてことは耐え難い。
これはそんな己のエゴだ。
この罪悪感は、そんなものにこの少女を突き合わせることに大してのものなのか。
いや、それだけではない。
疑うことを知らない無垢なこの少女に、応じると分かっていながら問いかけたことにだ。
己のエゴに巻き込んだ代償ではないが、この少女を守る。
その決意をより一層固めながらも、休息もそこそこに市街地に向かって動き始めた。
【一日目・朝/E-7 森】
【加山圓】
【状態】疲労、全身に細かな切り傷、過剰感覚による少々の気持ち悪さ
【装備】小太刀
【スキル】『五感強化』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本:徹底的に抗う
1.加奈子とフランドールを探す
2.イロハを守る
【イロハ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品×1〜2
【思考】
1.マドカに付いていく

360 :
短い繋ぎだけど投下終了
自己リレーばっかになってるけど、もっとみんな作品書いてもいいのよ?

361 :
乙です。加山君マジ主人公!ロリコンじゃ無理やったんや!

あ、板垣を予約しときます。

362 :
あー…ダメだ、ろくに進んでない
とりあえずは一旦破棄しときます…

363 :
投下します

364 :
椎名祢音は真剣な面持ちで放送に耳を傾けていた。
そして放送を聞き終え、静かに息を呑み天を仰いだ。
「……………よかった」
ひとまず最悪の事態だけは避けれたことに安堵の息を漏らす。
少女の望みは一つだけ。
それは己の勝利でも、己の生存でもない。
ただ一人、片嶌俊介を生きて元の場所に還すこと。
ただそれだけだ。
そう、ただそれだけのために、他の人間の生命を全て捧げる。
その覚悟を、決めている。
放送で同じ名字が二つ―――この手で殺した姉妹と思しき名が―――流れた時には、チクリと胸が傷んだけれど耐え切れないほどじゃない。
辛くて苦しいけれど、耐えられないほどじゃない。
幸いにと言うべきか、名簿を確認した限り、この場に片嶌の他に、祢音の知っている名はなかった。
誰であろうとR覚悟はできていたつもりだったが、それでも、知り合いがいないに越したことはないだろう。
それよりも気にすべき事は別にあった。
この六時間で十二人も死んだ。
そのうち彼女が殺したのはたったの二人だけ。
つまり、十名以上が他にいる殺人者によって殺されたということだ。
そんな奴らがこの狭い孤島に蠢いている。
もし、このまま同じペースで進んで行ったら、十二時間後には全員死ぬ。
このままでは守りたかったあの人も危ない。
「ダメだダメだダメだ」
そんなのは駄目だ。
それだけは、絶対に。
事態は火急を要する。
故に、休息を取るというプランは破棄せざるおえない。
一刻も早く残り二十二名を殺さなくてはならなかった。
だが、それには足りなさ過ぎる。
武器が。
時間が。
体力が。
彼女には何もかもが足りない。
休息を取らずに体力を回復させる方法はある。
先ほど得たスキル『エネルギードレイン』である。
これさえあれば数を減らせて武器を奪えて、更には体力も奪い取れる。
まさしく一石三鳥である。
故に、危険人物は排さねばならない。
危険でない人物も、全て奪って、殺さなければならない。
「…………はっ」
そんな思考に、自傷するように息を零す。
まさしく外道の所業。正義の味方とは程遠い。
今さら。
今さら何を思うのか。
何の罪もない人間を一方的に殺した時点で、今さら、そんな資格はもう。

365 :
「ッ…………!?」
深く沈みかけた思考を、祢音は慌てて打ち切る。
人の気配が近づいてきているのを感じたのだ。
誰か来る。
Rべき誰かが。
視線の先、まず祢音の目についたのは天をつくような大男だった。
その表情はどこか険しく、強面であることも相まって人を寄せ付けぬ雰囲気を感じさせる。
そして、その動きには見る限り隙がない。おそらく訓練を受けた軍人か何かだろう。
その傍らに守られるように佇むのは、美しい女性だった。
女である祢音ですら一瞬状況を忘れて見蕩れてしまうほどの美貌。
さながら美女と野獣。
不釣り合いであり、不釣り合いであるからこそ釣り合いが取れている、そんな二人だった。
そのうち一人、美女の方が祢音に向かって語りかけた。
「初めまして、私はフランドール・オクティルと申します。こちらはフランツ。
 私たちに戦う意思はありません。どうか警戒なさらず私の話をお聞き願えませんでしょうか?」
透き通るような凛とした声。
見る者の警戒心を溶かすような柔らかな笑み。
まるで、お伽噺のお姫様みたいだ、祢音は思わずそんな事を考えてしまった。
こんな状況でもなければ素敵な出会いになったのかもしれない。
けどR。
殺さなければならない。
問答無用で襲いかかるか。
それとも、善意を利用して懐に潜り込むか。
祢音の頭の中では目の前の二人をどうRか、それしか考えられていない。
屈強な大男が相手でも、万全の状態で変身が出来れば負ける気はしない
だが、体力の尽きた今の状態では変身は不可能である。
この状態で小さなナイフ一本で二人を相手にするのもかなり厳しい。
となると残る武器は『エネルギードレイン』だけ。
だが『エネルギードレイン』の効果範囲は手のひらのみと非常に狭く、複数を相手にするには向いてない。
何より、まだ一度も使用していないため、どの程度の効果が見込めるのかが不明だ。
油断させて懐に潜り込んだところを狙うにしても、それで狙えるのは一人が限度。
ならば、一人をエネルギードレインで吸い殺し、奪い取ったエネルギーでもう一人を変身してR、これがベストだ。
そんな殺害への算段を巡らす祢音の思考を知る由もなく。
無言を話を聞く意思があると捉えたのか、フランドールは言葉を次いだ。
「まずは、貴女のお名前を聴かせていただいても宜しいでしょうか?」
「……椎名、祢音です」
このまま無言で押し通すのは不自然と考え、ひとまず祢音は名乗りを返す。
Rことは決定済みだ。
時間をかけるつもりもない。
「……それで、なんですか、お話って?」
「私達はこの状況を打開すべく、ともに力を合わせ立ち向かう意志を持つ者を探しています」
「立ち向かうって……何か具体的な手段があるんですか?」
「今はありません。
 ですが、諦めず共に力を合わせ必ず希望は生まれると信じています」
その答えに、僅かながらに落胆する。
現実の見えていない、ただの理想主義者の意見だ。

366 :
彼女の望みは片嶌の生存である。
それが果たされるのであれば、その手を取ることもあっただろう。
だが、ただの希望論でしかない可能性に賭ける事なんてできない。
手をつないで共に歩む。そんな道はもう、選ぶことは許されない。
「貴女も同じ意志を持つ者であるのならば、どうか私の手を取り、そのお力をお貸しいただけませんでしょうか?」
言って、手を差し出すフランドール。
子供である祢音に対しても、保護や同情ではなく、あくまで対等な協力関係として話しかけている。
きっと、いい人なのだろう。
だが、対等には見ているが、こんな子供が殺し合いなどに応じるはずがないとタカをくくっているのも事実である。
出来れば大男の方を不意打ちで仕留めたかったが、向こうから手を差し出したというのなら、是非もない。
「――――ええ、貴女の力、頂きますッ!!」
差し出された手を、祢音はガッチリと両手で握り締める。
その瞬間、フランドールが膝からガクリと崩れ落ちた。
「!?」
両腕から流れこむ生命のエネルギー。
全身が満たされてゆく言いようのない感覚が祢音の全身を奔る。
それは命を直接喰らっているようであり、ある種、性行為にも似た恍惚を感じさせる。
「ッ!?」
だが瞬間、身の危険を感じた祢音は咄嗟に両腕を放しその場から飛びのいた。
その目の前を黒い残像が横切った。
それはフランツの放った斬撃だった。
予想以上に早い反応。そして思った以上に容赦がない。
一瞬でも飛びのくのが遅れていたら、彼女の両手は手首から断ち切られていただろう。
フランツはすぐさま、倒れこんだフランドールと飛び退いた祢音との間に身を割りこませ、盾のように立ち塞がる。
「フランドール様!?」
「…………大丈夫です。心配は、いりません。
 それよりも…………」
フランドールの顔は青ざめ息苦しそうにしているが生きている。
ドレインのスピードは祢音の予測を下回るほどではなかったが、全て吸い尽くすには離れるのが早すぎた。
絶命に至るほどのエネルギーは奪いきれなかった。
だが、それなりに回復はできた。
完全とはいかないが、部分的な変身ならば十分可能だ。
祢音を見つめる二人の目が驚愕に見開かれた。
見る見るうちに、幼く可憐だった少女の姿が、醜い化物の姿へと変貌していったのだ。
小学生特有の柔らかで張りのある肌が、ひび割れた石のように硬質化してゆく。
腕の爪は鋭く、肉など容易く切り裂く刃のようだ。
その脚の密度と弾力はタイヤのゴムを思わせる強靭さと靭やかさを兼ね備えていた。
そしてその背には、人間には存在しない部位、石の翼が生まれ羽ばたく。
全身変身ではなく、体力の消耗を抑えた四肢と翼の限定変体。
この二人もこの場でR。
もう後戻りなどするつもりはない。

367 :
「フランドール様。ご指示を」
忠実なる騎士は対峙する化物を睨みつけながら、主君に指示を仰いだ。
騎士とは主君に剣を捧げた身。振るう意思は主君ものである。
どのような指示にも異議を唱えず、ただ望みを叶えるべく全力を尽くすのが剣の務めである。
主君たる王女が下した決断は果たして。
「……殺さぬよう……制してください」
体力を奪われ息を切らしながら、それでもはっきりとフランドールはそう言った。
この期に及んでも、血の決着を望まぬ決断。それは戦いに血の流れる事を知らぬ戯言か。
否。彼女はそれを知っているし、何より自らが痛みを受けた直後だ。
それでもなお、甘言を唱えれるならば。
それは現実の見えない理想主義者などではなく、現実を見据えたうえでなお理想を唱える、もっと欲深い別の何かだ。
そして、その決断はフランツにとっても好ましい。
「御意に」
主の意志に応えるのが騎士の務め。
務めを果たすべく、フランツは無言のまま漆黒の大剣を上段に振りかぶる。
フランツほどの大男が、上段から繰り出す一撃は正しく必殺だろう。
それ故に、この構えは相手を殺さず制圧するには向いていない。
何故その構えを選択したのか。
見守る姫君は信じるのみである。
争いを好まぬ気質とはいえ、その技量は騎士団の中でも随一。
騎士の鑑とまで呼ばれた男である。
そして、代々武勲で功を上げてきたブリュデリッヒ家が賜りし名は'Overcome(打ち勝つ者)'。
その名を誰よりも体現しているのがこのフランツという男だ。
一度、戦うと決めた以上、その刃の波紋が曇ることはない。
そのフランツと対峙する祢音は、圧し掛かる様な重圧を感じていた。
上段に構えるその姿は、ただですら巨大なフランツの体躯が更に一回り大きく見で、威圧感が増す。
隙はある。
隙はあるが、上段の隙は誘いの隙だ。
その間合いに迂闊に入り込もうものならば、電光石火の一撃をもって一刀両断にされるのがオチだ。
だが、同時にそれが弱点でもある。
一度振り下ろした剣は、必殺であるが故にそう簡単にはきひ戻せず。
標的を仕留めそこなったならば、それはすなわち相手に死に体を晒すこととなる。
さらに言えば、既に剣を振り上げている以上、行動は限定され狙いも絞れるため、行動は読みやすい。
それでも素人には対応できないだろうが、生憎と祢音は素人ではない。
――――椎名祢音は改造人間である。
謎の組織『GODS』によりその身を攫われ、改造手術を施された、
肉体の改造が終わり、洗脳手術を施そうかという直前に、組織を脱出。
その後、自分を改造した連中をたった一人で壊滅させた経験を持つ。
以来も正体を隠しながら平和を脅かす存在と日夜戦い続けてた。
人間とは次元の違う身体能力を持った怪物や、あり得ない超能力を操る怪人たちを倒してきた。
今は変身のために必要なアイテムを没収されているためスキルに頼っているが。
それでも見た目にそぐわない数多の戦闘経験を誇る彼女に、教科書通りの上段など通用しない。
タンと、思いのほか軽い音と共に、祢音が駆けた。
瞬発力と持久性を兼ね備えた人外の脚力は、一足で最高速度まで到達する。
常人には消えたとしか見えない急加速、少なくともフランドールには見えなかった。
だが、フランツは捕えている。

368 :
 

369 :
巨大な体格と大剣を持つフランツの間合いは広い。
既にフランツの射程圏。
今にもその剣を振り下ろさんとした刹那、祢音の疾走は、あり得ない軌道をたどる。
その身に宿した両翼で空を切り、弧を描くように滑空。
空中を泳ぐように、完全に意表をつく形で、フランツの側面を捉えた。
殺った。祢音はそう確信する。
「くっ…………ぁっ!」
だが、驚愕の声は少女の口から零れたものだった。
必殺を確信した一撃を繰り出し、騎士の側面をすり抜けた少女は、そのまま着地もできず崩れ落ちる。
すぐさま立ち上がろうとするが、全身に力が入らない。
見れば肩口から切り裂かれており、右腕は腱を絶たれたのいくらもがいても何の反応もしない。
果たして何が起きたのか、少女が理解できたのは全てが終わった後でだった。
あれほどの速度で迫る祢音に対して一切惑わされず、放たれたのは済まし通すような一撃。
スレ違いざま、振り下ろされた一撃はまさしく閃光だった。
上段が来ると予測し、予測通りの上段が来たのに、祢音は反応すら出来なかった。
鮮やか過ぎる切り口には痛みすら無い。
Rほどには深すぎず、動けるほどには浅すぎない。
なんという技量。
たった一撃で、完全に無力化された。
変身や改造によって得た圧倒的身体能力や超能力とは全く違う。
ただひたすらに磨き上げられ積み重ねられた技術だ。
まさしく次元が違う。
先ほど心中で下した評価を改めざる負えない。
変身が完全だったとしても、果たして勝てるかどうか。
立ち上がれぬままの祢音にフランツ歩を詰め、剣の切っ先を突きつける。
「降伏を」
簡潔な一言。
圧倒的技量差を見せつける事。フランツの狙いはそこにある。
寡黙な騎士は黙したまま、抵抗は無意味だと雄弁に語っていた。
誰がどう見ても受け入れるしかない状況。
だが、このまま敗北を受け入れそうになる心を、唇をかみしめ必死で繋ぎ止める。
諦めるなどありえない。
諦めるなど許されない。
フランドールの態度からして、殺されることはないだろうが。
ここで拘束でもされようものなら目的が達せられなくなる。

370 :
――――思い出すのはあの雨の日。
組織を抜け出して、復讐を果たしたあの日。
純粋な人間ではないとはいえ、初めて人を殺したあの日。
最新技術を詰め込まれたそのスペックで、組織を壊滅まで追いやったものの、彼女自身も無傷とはいかなかった。
雨の中傘も差さずとぼとぼと歩く少女の両腕は、自分のモノとも誰のモノともわからない血で塗れていた。
そして、そんな血にまみれた両手を見て、自らを巻き込んだしがらみを破壊したものの、もう日常には戻れないと悟った。
彼女はそこで日常を諦めた。
『…………祢音か?』
それは偶然の出会いだった。
相手は近所に住む高校生だった。
『って、おい! 怪我してるじゃないか! どうしたんだ!?』
彼は少女の様子に気づくと、驚いたように駆け寄ってきた。
彼とはミニバスのコーチをしてもらってからの縁だ。
時折、彼の家に行ってバスケを教わったりもした。
それは在りし日の象徴のようで、諦めたはずの日常を想起させる。
そんな相手に、今の自分の姿を見られるのが酷く恥ずかしかった。
『放っておいてください』
居た堪れなくなって、突き放すようにそう言い放った。
そして視線をそらして、足早にその場を後にしようとして。
『放っておけるわけないだろ!!』
本気で怒るような声に引き止められた
『怪我してる女の子を、こんな雨の中に放り出せるわけないだろ、バカ!』
そう言って、彼は彼女の手をとった。
そしてそのまま、手を引いて、治療を施すべく彼の自宅へ向かって歩きはじめた。
戸惑いながらも、彼女はその手を振り払うことはできなかった。
その手は温かかだった。
繋がれた手から、凍りついた何かが溶けてゆくようだった。
血に濡れた手を優しく包んでくれた。
何も聞かずにキズだらけの手を引いてくれた。
たったそれだけの事だったけど。
たったそれだけの事が、嬉しかったんだ。
涙が出たんだ。
あの温もりを、彼女は忘れたことはない。
あの温もりがあったから、彼女は日常に戻れたんだ。
この力を、大好きなみんなを守るために使おうと思えたんだ。
彼がいたから彼女は正義の味方になれたんだ。
だから、彼女が彼を生かそうとするこの行為は彼から得たものを、彼に返すだけだ。
与えてくれた生きる希望を、還すだけ。

371 :
もう二度とこの手をとってもらえることはないとしても。
例え全てがなくなったとしても。
椎名祢音は片嶌俊介のために戦い続ける。
「―――――ぅああああああああああああああああああああああ!」
喉の張り裂けるような叫びを上げて、椎名祢音が立ち上がった。
敵の動きを封じるべく、的確にその身を切り裂いた。
その手応えがあったからこそ、動けないはずの相手が動いたという事態はフランツの反応を僅かに遅らせた。
その隙を逃さず、祢音は大きく後方に飛びのき、そのまま一直線にフランツたちとは逆方向に逃避した。
フランツはその背を追おうと踏み出した足を止める。
単純な速度ではフランツよりも祢音が上だ。追いつける速度ではない。
なによりダメージを受けたフランドールを置いていくわけにもいかない。
「申し訳ありません。取り逃がしてしましました」
騎士は主の前に向き直ると、申し訳なさ気に首を垂れた。
「いえ、見事でした。騎士フランツ」
その言葉に嘘はない。
目的こそ果たせなかったが、その力量は見事としか言いようがなかった。
初仕事としては及第点と言えるだろう。
「勿体ないお言葉。
 ですが、フランドール様。これからは無茶はおやめください。
 接触するにしても最大限のご警戒を」
そう騎士は苦言を呈する。
参加者との接触をする際には、まず彼女が話してみるというのは、フランドールの意向であった。
「いいえ、自ら踏み込まねば、信頼は勝ち得ません」
痛手を負ったにもかかわらず、姫君の信念に変わりはない。
あれほど圧倒的な技量を見せた騎士の鑑であるが、この筋金入りの頑固さを持つ姫君にはどうしたものかと頭を悩ませるのであった。
【一日目・朝〜午前/C-3 警察署近く】
【フランドール・オクティル】
【状態】疲労(大)
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える
【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】勇者の剣・黒
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード
【思考】
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える

372 :
.
.
.
.
.
.
..
...
..............
..........................................

「ハッ……ハッ……ハッ……!」
息が切れる
心臓の鼓動がうるさい。
口から心臓が飛びだしそうだ。
動けないはずの彼女が動けた、その方法は実に単純明快。
動けない体を動けるように、切られた神経を繋がった神経に”変身”させたのだ。
だが、この方法はいわば、外法。
変身がとけてしまえば傷は再び開くし、変身に使用したコストは戻ってはこない。
ただの一時しのぎにしかならず、先ほど得たエネルギーをすべて使ったどころか、収支はマイナスにしかならない。
だが、一時しのぎとはいえ、逃走は成功した、とりあえずはそれで十分だ。
だが問題はこの疲労。
襲撃は失敗。
回復するという目論見も破綻。
回復するどころかむしろマイナスだ。
エネルギーが足りない。
今すぐ何かで補充しないと意識が途絶えてしまいそうだ。
必死になって辺りを見渡すと、ほどなくして見つけた。
というより、見つけてくれと言わんばかりに何か喚いて騒いでいる。
「うわぁぁああ!! 人が死んだ! 人殺しがいるぞ!! 人が、」
それは目の前で人の死を目撃し混乱するトーマス・A・エジソンだった。
何かを騒いでるが、そんな声は祢音には聞こえない。
もはやそんなものを気にしている余裕などない。
最後の力を振り絞り加速し、その勢いののまま跳びかかる。
掴みかかると同時に限界が来て、変身は解けたが、勢いだけで縺れ合うように倒れ込む。
「うゎ!? 何だお前は!? ヤメろ! 暴力はキライだ! ヤメろ! ヤメろ! 放せ!」
なおも騒ぎ立てるうるさい口を左腕でふさぎ、そのまま顔面へ体重を乗せて押さえつける。
変身前でも改造人間である祢音の身体能力はそれなりに高い。
だが、体力も底をつき、右腕が動かないため上手く押さえつける事が出来ず、相手に暴れる隙を与えてしまう。
エジソンは手足をバタバタと振り回し、拘束を解こうと無茶苦茶に暴れまわる。
その力は成人男性にしては非力な部類だが、それでも本気で暴れる大の大人を子供が片腕で押さえつけるのは体格的に至難の業だ。

373 :
 

374 :
「ッ………うぅ! うーッ!」
「痛ッ!?」
エジソンは口元を押さえつけていた指を噛んだ。
手加減などない、ゴリゴリと噛みしめる歯が、柔い肉を破り血が滲む。
それでも祢音は決して手を放すことなく、必死で喰らいつくようにドレインを続ける。
「ぅぅううう!」
「このッ! このッ!!」
互いの口から洩れるのは獣のような唸りだけだ。
もはやそこに人間らしさなどない。
ただ殺そうと必死に食らいつく祢音。
ただ生きようと必死にもがくエジソン。
獣のように泥臭い命のやり取りだった。
だが、エネルギーを奪い続ける捕食者とエネルギーを奪われ続ける被食者では、その差は明確であり決定的だ。
時と共に、エジソンの指を噛む力や、暴れまわる勢いは徐々に弱っていき、最後には動かなくなった。
「ハァ……ハァ………ハァ……………ッ!」
息を切らしながら、動かなくなった男を見下ろす。
エネルギーとは熱量でもあるのか、手に伝わるのは冷たい感触。
エネルギーを吸い尽くされたその体に温かなどない。
生気を吸い尽くされた姿は干からびた木乃伊のようだ。
荒い息もすぐに整う。
傷までは治らないが、人一人の命を啜ったのだ、体力はだいぶ回復できた。
動かない右腕も、変身している間は動くようになる。いざとなれば問題はない。
当初の予定とはかなりずれたが回復という目標は果たせた。
次は武器だ。
死体を漁りその荷物を確認する。
支給品と思しきものは二つ。
粉末状の薬の様なもの。
どのような効果があるものなのかはわからない。
元の持ち主が捨ててしまったのか、それとも初めからないのか説明書の様なものは見当たらない。
そしてもう一つは鞭。
サーカスの獣使いが使うような長い鞭だ。
鞭など扱ったことはないが武器であることには変わりない。
未使用のスキルカードも見つけた。
躊躇うことなくスキルカードを宣言する。
「スキル【植物操作(プラントオペレート)】」

375 :
スキルカードが光となり、新たなスキルが体に染みこんでゆく。
新たなスキルの効果が頭の中で自然に理解される、それと同時に別のスキルが生まれるのを感じる。
【食人植物(マンイーター)】
植物越しにエネルギードレインを行えるスキル。
複合スキルの発生。
彼女にとって思わぬ僥倖である。
これで体力回復もやりやすくなった。
能力を活かせる森を目指すべきか。
いや、Rべき相手がいなければ意味が無い。
植物の少ない市街地は避けたいが、人の集まることろに行かなくては。
そう彼女は次の動きを考えながら。
もう自らが殺めた命を振り返ることもせず。
彼女は戻ることのできない道を突き進んでゆく。
【一日目・朝〜午前/D-3 中央付近】
【椎名祢音】
【状態】疲労(小)、精神摩耗、右腕不能、左腕指先に裂傷
【装備】ダイバーズナイフ、皮の鞭
【スキル】『変身』『エネルギードレイン』『植物操作(プラントオペレート)』『食人植物(マンイーター)』
【所持品】不明薬物、基本支給品×3、不明支給品×0〜2
【思考】
1:植物があり、人の集まりそうな場所を探す
2:早急に片嶌俊介以外全員R
【複合能力】『エネルギードレイン』+『植物操作(プラントオペレート)』
【スキル名】食人植物(マンイーター)
【効果】エネルギードレインを植物を通して行える
【持続】植物操作を使用している間
【備考】なし
【トーマス・A・エジソン 死亡】

376 :
投下終了
支援どもです

377 :
投下乙です
騎士と姫の初戦は善戦したけど敵を逃がしたか
逃げた祢音ちゃんは新しい能力を手に入れて貴重な首輪解除要因のエジソンが……
これ、もしかしなくても積んだんじゃw

378 :
あああ…エジソン死んだ…
ただ逆にこれはまなみんに期待ですね(ニッコリ)

そして片嶌イケメンすぎワロタwww

379 :
このロワのロリコンはかっこいい

380 :
某所で書き手紹介が流行ってるけどこのロワの場合、どんな感じになるのかな?
自分で書ければ一番早いんだろうけど文才も発想力もないからなぁ……

381 :
キャラメイクのテンプレ風じゃね?

382 :
これですな
【名前】
【性別】
【年齢】
【職業】
【身体的特徴】
【好きな事・もの】
【嫌いな事・もの】
【特技】
【趣味】
【備考】

383 :
投下します

384 :
放送が流れる。
配布された名簿に三城愛理沙の名はない。
おそらくどこかで高みの見物を決め込んでいるのだろう。
愛理沙が何を考えているのか私にはわからない。
こんな目に合わせされているにもかかわらず、それでも私は愛理沙を切り捨てられないし、愛理沙もきっと私を切り捨てられない。
その共依存といえる関係性は、切り捨てようとしても簡単に切り捨てられるものではない。
私は彼女の望むように、与えられた役割を演じるしかない。
殺人鬼としての役割を、先ほどであった少年を利用して。
その利用すべき少年を窺って見れば、何やら様子が少しおかしいようだ。
「どうかした? ひょっとして呼ばれた中に、知り合いでもいた?」
「……いえ、知り合い…………っていうか」
返るのはいまいち歯切れの悪い微妙な反応。
ああ、そういえば、彼はもともと殺人鬼から逃げてきたとかいう話だったっけ。
目の前で殺された誰かの事を思い出していたのだろう。
「…………それより彼の容態はどうですか?」
露骨に話をそらそうとしている感はあるが、まあいいだろう、追及するほどの話でもない。
彼の言葉通り、現在私は放送前に発見した男を診ている。
もちろんこんな濡れ鼠を診たくて診ているわけではない。
彼にせがまれ、身に着けているナース服をまさかコスプレだと言い張るわけにもいかず、半ば強引に看護を任されてしまったからだ。
簡単にとはいえ、しっかりと脈拍や外傷の有無を確認してしまうのは職業病か。
打撲や裂傷などの外傷が多く、体温の低下も見られるが、命に別状はなさそうである。
体力の低下した状態で水中に飛び込んだため、溺れて意識を失ってしまったようだ。
「そうね、意識を失っているみたいだけど、」
ふと、そこで言葉を切り、眠り続けるクランケの顔を見る。
その無防備さは、ある意味いつもの通りの獲物のそれである。
必然、ふと頭の中をよぎる思考がある。
(試してみようかしら…………?)
何を試すかなど言うまでもない。
スキルカードという名の病を発症させるという力である。
愛理沙の用意したオモチャがどの程度のモノなのか、無防備に眠るこの少年を利用して実験してみるのも悪くない。
だが何が発症するかはランダムというのがいまいち、使いどころを躊躇うところだ。
使えるか使えないかを判断するためにも試してみない事には始まらないのだが。
仮に実際に発症したとして、空気感染などでこちらも感染しては元も子もない。
仕方ないので、少しでもリスクを軽減して、使用するとしよう。

385 :
 

386 :
「――――少し、危険な兆候が見られるわね」
「危険な兆候、ですか?」
深刻な顔をしながら片嶌が問い返す。
よく見ず知らずの他人のためにそこまで深刻になれるものだと関心しながら、そっと眠る青年の頬に触れ『病の呪い』を発動させる。
これで成功、したのかしら?
即時発症で潜伏期間はないと思うのだが。
というかそうでないと使い物にならない。
「ええ、ただ詳しい検査をしようにもここじゃちょっとね。
 出来れば病院かなにかで検査をしたいのだけど、私一人じゃ彼を運ぶのは難しそうだし手伝ってくれないかしら?」
「任せてください!」
快く引き受けてくれる好青年。
という訳で接触感染のリスクは彼に負ってもらうとしよう。
地図を見て確認したところ、病院は1ブロック隣にあるようだ。
「そうね、病院はそう遠くなさそうだし、急ぎましょうか」
そう言って作り笑顔を浮かべながら片嶌の方を見る。
だが、その片嶌は意識を失った青年を背負ったところで、呆けたような顔をして固まっていた。
「…………なんだ、あれは?」
こちらに向けられたものではない、思わず漏れたといった風な片嶌の呟き。
誘われるようにその視線の先を辿ると、私も思わず言葉を失った。
そこにはこちらに近づいてくる異様な影があった。
それは見るからにボロボロで、全身が紅い血に塗れていた。
何より目を引くのは、ここからでも見えるほどの大穴が胸に開いており、看護師である私じゃなくても分かるくらいに、生きているのか不思議な容態だ。
いや、その状態でも動けるのは不気味だが、言葉を失った理由はそこではない。
獣の様な角や異様な色をした皮膚。
それが人間と同じ二足歩行で歩いているのが不思議でしょうがない。
それは、人ではなく、まして獣ですらなかった。
およそこれまでの生涯で目にしたことのない生物。
それは、魔王としか形容し難いモノだった。

387 :
【一日目・朝/F-3ホテル周辺】
【片嶌俊介】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】なし
【スキル】『ブレーキ』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)閃光弾×2
【思考】
1.篠田を病院に運ぶ
2.弥音を探す
3.愛沢さんと協力
【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】『病の呪い』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
0.え?なに?(本日三回目)
1.片嶌を利用…したいなあ
2.殺し合いに乗る
3.F-4病院を目指す
【備考】
※ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。
【篠田勇】
【状態】疲労(極大)、気絶、何らかの病が発病
【装備】なし
【スキル】『重力操作』
【所持品】基本支給品、フラッシュグレネード×4
【思考】
0.…………
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす
【魔王】
【状態】ダメージ(瀕死)、疲労(極大)、精神不安定
【装備】なし
【スキル】『落とし穴』
【所持品】基本支給品、釣り竿
【思考】
1.篠田と合流

388 :
投下終了

389 :
 

390 :
投下乙です。
マズい流れにマズい人が……
リア充高校生はどうなる、どうなれ!

391 :
唯一暴走止められそうな篠田を病気にしちゃって自ら首絞めてるな

392 :
乙!
これは光が見えないwww

393 :
月報集計お疲れ様です。
オリ2v 40話(+4) 22/30(-1) 73.3(-3.4)

394 :
保守

395 :
☆ 日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、☆
@ 公的年金と生活保護を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人に、
ベーシックインカムの導入は必須です。月額約60000円位ならば、廃止すれば
財源的には可能です。ベーシックインカム、でぜひググってみてください。
A 人工子宮は、既に完成しています。独身でも自分の赤ちゃんが欲しい方々へ。
人工子宮、でぜひググってみてください。日本のために、お願い致します。☆☆

396 :
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

ZOOBL8I8KZ

397 :
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

95WFN

398 :
SSH

399 :2018/10/17
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

EAB

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