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【シェアード】学園を創りませんか? 5時限目
- 1 :2012/12/29 〜 最終レス :2018/10/17
- 創作発表板に生まれた少し変わった学校、私立仁科学園。
このスレは、そんな仁科学園の世界観をSSや設定だけに留まらず、様々な表現で盛り上げ、また創っていくスレです。
貴方が創った生徒が学校の一員として誰かのSSに登場したり、気に入った生徒を自分のSSに参加させる事が出来ます。
部活動や委員会を設置するのもいいでしょう。細かい設定として校則を考えてみたり、制服を描いてみたりなどはいかがでしょうか。
また、体育祭や文化祭などの年間行事及び、生徒達の絆を深めるイベントや
仁科学園以外の学校や、生徒たちのバイト生活等世界観は仁科学園の外にまで広がります!
皆さんの想像力で、仁科学園の世界観を幅ひろーく構築していきましょう!
このスレはシェアードスレ(世界観を共有する)です。
ちょっとでも興味をもったらまとめWlikiをみて下さい。きっと幸せになれるはずです!
まとめWiki
http://www15.atwiki.jp/nisina/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12930/
過去スレ
【シェアード】学園を創りませんか? 4時限目
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1281230460/
学園を創りませんか? 3時限目
http://namidame.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1267344255/
学校を創りませんか?part2
http://namidame.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1248533055/
学校を創りませんか
http://namidame.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1248087645/
- 2 :
- ※避難所スレ
【シェアード】仁科学園校舎裏【スクールライフ】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1297603322/
申し訳ない、避難所変わったの気づかずそのままコピペしてしまいました……
- 3 :
- >>1
乙です
いつの間にか落ちてたんだ、そんなに容量いってたんだねえ
- 4 :
- >>1マジ乙
わんこ氏頑張ってたからなwそら容量いっぱいにもなるわなw
- 5 :
- http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=32454637
- 6 :
- >>1乙
新スレオメ
- 7 :
- さぁーてネタがないぞーw
- 8 :
- ネタもないが、人も片手で足りるくらいしかいないんだよな……
限界集落かよっ
- 9 :
- 耳当てが落ちて、拾ったら雪が付いていた。
黒鉄亜子はまたそれを耳に当てたら、すぐに溶けて冷たさは気にならなくなったけど、溶けて垂れた滴が頬を伝った。
それのほうが冷たかった。
缶コーヒーを開けようとしたら、手袋が邪魔でなかなか開けられない。意固地になって開けようとしてたら、横から手が伸びて缶コーヒーを奪われた。
「あっ!」
パキッと音が鳴る。
帰ってきた缶コーヒーは開けられていた。
「……ありがと」
「なんでもっと厚着しないの?」
「そっちこそ」
そっぽを向いて一人先に歩いたけど、連れ合いはのんびり歩いて寒そうに手をポケットに突っ込んで、時折思い切りくしゃみをした。
襟のファーが鼻をくすぐるらしい。
まだのんびり歩いていて、急ぐ様子はなく、亜子は急かした。
「お兄ちゃん!」
「急がなくても蕎麦は逃げないってばー」
また、黒鉄懐はだらだら歩いた。
仕方ないと、亜子は数歩戻って、兄の手を掴んで急げ急げと引っ張った。脚をもつらせて転びそうになりながら懐は付いていく。やがて二人とも走り出して、寒い夜の街を二人で急いだ。
亜子の首に巻いて肩にかけただけのマフラーがはためいた。
「走らないのー!」
「急がないと!」
「だーかーらー蕎麦は逃げないってばー!」
「逃げちゃうんだから! 鈴江先輩のとこの年越し蕎麦!」
「喰いそびれてもいいじゃないのー!」
「食べたいっていいだしたのそっちでしょ!」
「テンション上がってついて来るって言ったのそっちでしょー!」
「だってせっかく大晦日だし!」
「毎年くるでしょー」
「あっ!」
- 10 :
- 亜子が立ちどまって、つられて走っていた懐は止まれずに、雪に脚を滑らせて派手に転んだ。
小さくジャンプして足元を滑って行く懐をスルーして、亜子は天を見上げた。
「お兄ちゃん雪!」
電信柱に激突して停止した懐が涙目で天を見上げた。
雪だ。
「あーほんとだー」
「お兄ちゃんなんでそんなテンション低いのよ!」
「えー寒いしー」
立ち上がって体に付いた雪を払う。
亜子が寄ってきて、また手を掴んだ。
「急ごう?」
「あー。うん」
歩き出す。
「あっ」
「今度は何?」
「あけましておめでとう」
「え?」
「日付かわったよ」
「ほんと?」
「うん」
「あけましておめでとう。お年玉はあげないぞ」
「いらないもん」
「ほら急ぐよ。神社のタダ蕎麦が売り切れる」
「うん」
兄の手に抱き着いた。
急ごう。
「離しなさいよー」
「やだ」
また兄の手を強くつかんだ。
初詣だ。
- 11 :
- こんな感じしか用意できんくてごめんち!
- 12 :
- 仲良しだなあ。おつおつー
- 13 :
- この兄妹ラブラブのラブじゃないですか!(下衆の勘繰り)
最初の耳当ての下りが良いなと思ったけど、実体験からかな? なんかそんな感じがした。
これ見ると懐もなかなか複雑なやつだなと思う。
- 14 :
- シェア系が息してない
- 15 :
- 創発板全体が虫の息
- 16 :
- ここ動いてるほうよw
- 17 :
- もうすぐバレンタインだね……
- 18 :
- 投下すっぺ
- 19 :
- その日の事を思い出していた。
霧崎は読んでいた本を閉じて、誰も座っていない机の席を見た。
「なんだ貴様は騒がしい。今すぐ口を紡ぐか部屋から出るか、さもなくばR」
「うわひっで。このお姉ちゃんひっで。年端も行かぬ少年になんて事言うの」
「貴様は人の神経を逆なでする事にかけては天才なのは理解した」
霧崎は自分より頭一つ小さな中等部の少年が目障りで仕方なかった。幼さを残した顏で、図書室は静かにすべし、そんな常識クソ喰らえとばかりに机に乗ってぎゃんぎゃんうるさい子供相手にイラついていた。
その金髪の髪にも無性に腹が立った。
まだ子供だろうが。
「お姉ちゃん何読んでんの?」
「貴様には関係ないだろう」
「えーいいじゃん」
「だいたい先輩相手にタメ口とはいかんともしがたい。武力による解決も辞さない」
「なんだとー。やるならやってや……ああごめんなさいアイアンクローはやめて痛いです」
思いっきり爪を立ててこめかみに指を食い込ませた。
暴力に頼るなんて事は好まなかったし、腕力は至って普通程度の霧崎だ。本気で喧嘩になれば相手が中等部であろうとも相手は男で勝ち目はないが、この少年相手ならなんとなく多少は許されそうな気がした。
初めて見る顏だったが、なんとなくそう思った。
今の所、第一印象から評価は最低ランクを某白衣男と競っている状態だ。
「痛いよ! 痛いよ!」
「騒ぐな童っぱよ。ここをどこと心得るか」
「……!」
「畏れ多くも静謐たるべき図書館で喚く愚行を見逃す私ではないのだぞ」
「……! ……!」
「なんで血管ぴくつかせて耐えている」
「だって騒ぐなって言うから……」
「はー……」
ぱっと手を離すと、額に爪の跡が合って、薄く皮がめくれていた。もう少しで出血したかもしれない。やり過ぎた、とその場で反省はしたが、肝心の相手を見てすぐにまぁいいか、と思ってしまった。
けれど、一応は。
「大丈夫か?」
「痛い」
「すまないやり過ぎた」
「いいのです妹のほうが怖いから」
「ん?」
「なんでもないです」
よほど我慢していたのか、顔面を紅潮させて息を荒くしていた。
霧崎は手に取っていた本を机に置いて、少年にもちゃんと椅子に座るように指示した。意外にもおとなしく従ったので、拍子抜けした。
- 20 :
- 「なんなのだお前は。本を読むような顔にもみえない。名を名乗れ」
「はい。中等部三年の黒鉄懐です。騒いだのは誤りますだから先生には言わないでこれ以上ヘイトを重ねたらヤバいの」
「普段の素行が悪そうなのは見て取れる」
「お姉ちゃん怖い」
「いきなり中々の暴言を吐くものだ」
「だって隅っこで近寄りがたいオーラ出してるし。魔女みたい。近寄ったら喰われそう」
「ふむ。多少なりとも今の発言は腹が立つ」
「綺麗な顔して損でっせ。もっとこうフランクな感じで」
「それは性に合わんな。まぁいくらか機嫌は良くなったが」
「なんで?」
「褒められて気分が悪い訳がない」
「あら綺麗と言われて機嫌が良くなるとはちょろい……すみません冗談ですハードカバーでぐりぐりしないで」
「お前は扱い辛いな」
「よく言われます」
「自覚していたか」
「改善する気もないけど」
「これは素晴らしく性質が悪い」
「てへへ」
「褒めていないぞ」
霧崎はまた本を開いた。
目を落とし、文字を追った。
「あ、そうだ」
少年が両手を差し出した。
「なんだ?」
「今日は何の日?」
「ああ言いたい事は分かった」
「よし来た話が早い。チョコおくれ」
「うぬぼれるな。お前にはまだ早いしくれてやる義理もない」
「義理じゃなくてもいいよー。余り物でも」
「うん。余ってもあげたくない」
「えっ、ひでぇ」
「欲しいのなら私が義理でもいいからあげてもよい、と思える人物になる事だな」
「うん頑張る」
「お前、今なにも考えずに頑張るとか言っただろう」
「口に思考が追いつかないの」
「それはバカと呼ばれる人種だな」
「お姉ちゃんお名前は?」
「なぜ聞く?」
「だめ?」
「構わんがなんとなく言いたくない気がする」
「なにそれ」
- 21 :
- 先ほどまで読んでいた文章の続きを見つけ、行の頭からもう一度読み直した。
そのまま、頭一つ小さな少年に名乗った。
「霧崎だ。お前は黒鉄だったか」
「はいそうです」
「静かに本が読みたい。用がないならもう帰れ」
「そうします」
「じゃ、さようなら少年よ」
「さようなら霧崎様」
「様はどこから出てきたんだ、おい」
またハードカバーで頭頂部をぐりぐりしてやった。
本を机に置いた。
誰も座っていない席の前に立って、思い出していた。
二年も前だ。
「あの時から様を付けていたな」
ふふ、と小さく笑って、あの時の自分より頭一つ小さな、幼い顔の少年を思い出した。
「世の中不思議だな。あの時の残念な子供がそのまま大きくなってもっと残念になった」
「えっ酷い」
「当たり前だバレンタインの義理チョコの余りを回収して回るバカなんて残念以外の何者でもない。せめて義理でもいいから普通に貰えばいい物を」
「普通に貰いますぅ〜。でも余り物でもありがたく貰うもったいない精神を持っているだけですぅ〜」
「やっぱり残念だ」
そういって、机に腰かけた。
椅子を引くのが面倒だった。
普通に座るより座高が高くなる。あの時は自分より頭一つ小さかった少年は、今は自分より頭一つ大きい。机に座って目線の位置を高くしても、まだ少し届かなかった。
目立つ金髪はそのままに、本当に中身は同じでそのまま大きくなったような印象だ。
手にしたゴミ袋には市販のチョコが入っていて、義理以下の余り物が溢れていた。
「霧崎様ったら余り物すらないんだもの。俺の胃袋にはまだ若干の余裕がありますよ?」
「知った事か。余りが出るような計画性の無い人間に見えるか?」
「んー。全く」
「だろう?」
「そもそも面倒でだいたい用意しないしな」
「えっなにそれ」
「私がチョコ配って回るような人間に見えるか?」
「全く見えません」
「だろう」
脚を組んで、少し前かがみになって、ゴミ袋を持って立つ黒鉄懐のがっかりした表情を見た。
- 22 :
- 「本当に不思議なモノだな。どうすればそんなにデカくなる? 昔はあんなに小さかったのに」
「ご飯いっぱい食べた」
「まぁそうだろうな。落ちてる物も食べそうだ」
「さすがにそれは……」
「冗談だよ。それよりもう下校の時間だ。さっさと帰れ」
「えー」
「いいから帰れ。もう図書館の鍵を閉めないと」
「ちぇっ」
懐がゴミ袋の口を閉じて、丁寧に縛っている。それを肩に担いだが、これでは見た目はチョコ泥棒だ。
はー、とため息をついて、ポケットからチ○ルチョコのきな粉を一個取り出して頬張った。
部屋を出ていく懐に続いて、霧崎も部屋を出て、明かりを消すと鍵を閉めた。
「じゃーお先しますー」
「うむ」
「まだ寒いなー」
「私は鍵を返しに暖かい暖房のある職員室に行かねばならん。お前は寄り道せずに帰るように。先輩からの忠告だ」
「わかりりました霧崎様」
「様はやめろとあれほど」
少し睨むと、懐は明らかに怯えて、逃げるように距離を取った。
「もー冗談だし―! だいたいずっと前から言ってるんだから慣れてよー!」
「ずっと前からやめろと言ってるだろ」
歩を進めて、懐の前に立った。
両腕を組んで、睨みつけた。
「なんですか……」
「お前はほんとに変わらないな。いや、第一印象が最悪だったのがよくここまで持ち直したというべきか……」
「てへへ」
「褒めていない」
「はい」
「あ、そうだ」
「なんです」
「これ」
- 23 :
- 霧崎は鞄から小さな包みを取り出した。
赤いチェック柄の包みに、リボンが付いた小さな箱。チョコの包みに見えた。
「え? くれんの?」
「そうだ」
「あ、ありがとうございます……」
「なにかしこまっているんだ」
「だってなんかくれるとは予想だにしていなかったというかなんというか」
「私は義理は果たすんだ」
「やっぱ義理なのね」
「当たり前だ。さぁそれ持ってさっさと帰れ」
「はい。じゃ、さようなら霧崎様」
「さようなら。……って様はやめろ」
その場で別れて、廊下を反対の方向へと歩いて行った。
少し振り返って見てみると、懐は先ほどの包みを持っていたゴミ袋ではなく鞄に入れていた。
ふふ、と笑って、霧崎は職員室へと向かっていった。
ちなみに渡した包みの中は、バレンタインチョコの形をしたレンガ、である。
「お前にはまだ早い、かな?」
【Witch & Littlelion】
おわり。
- 24 :
- 「仁科学園マルクス主義革命同盟による犯行声明が発表されました……」
ニュースはそのまま爆破現場の様子を映し出す。
駅前のロータリーと広場には、大量のがれきが積みあがっていた。
被害に遭った駅と駅ビルはその原型をとどめておらず、今もなお黙々と黒煙を巻き上げている。
道路は吹き飛ばされた車がそこらかしこに横転しており、消防車の侵入を阻んでいる。
おそらくそこには多数の死傷者がいるのは間違いない。
アナウンサーは淡々とした様子で、犯行グループの犯行声明を読み上げた。
憲法9条の堅持、北朝鮮主導の社会革命の実施、過去に逮捕された仲間の釈放……。
極左グループによるいつもの犯行声明となんら変わることのない、いつもの共産主義礼賛の美辞麗句。
高木和也はその様子をアジトのテレビで眺めていた。
私立仁科学園高等部二年四組の生徒である。
普段はとても真面目な、かなりの優等生の部類に属する。
バスケットボール部のフォワードのレギュラーであり、また社会科学同好会の会員。
おそらくここまでなら、誰もが高木を優れた生徒だと思うであろう。
だが一方で、高木は私立仁科学園マルクス主義革命同盟の幹部に顔が利いた。
というより、彼らの革命思想に理論的根拠を吹聴し、過激化を煽った張本人でもある。
もっとも高木自身は同盟のメンバーではない。
社会科学同好会は弁論部とともに政治思想や社会問題などを討論する定期会を持っているのだが、
高木はそこで知り合ったメンバーに、巧みに、かつ効果的に彼らを洗脳したのだ。
今回のこの爆破事件は、もちろん高木の手によるものではない。
まさしく先鋭化した同盟のメンバーたちによる、渾身の仕事である。
計画実施のために半年以上の時間をかけ、そして今日、ようやくこのテロが結構されたのだ。
ここまでの計画をやってのけたメンバーたちを、高木も大したものだと感心した。
だが、高木はこの爆破事件には何の感慨も持っていなかった。
高木の仕事はこれから始まるのだ。
高木の傍らには安田芳江が寝息を立てている。つい先ごろまで、二人は交わっていた。
安田は私立仁科学園の英語科の教員。独身で、まだ二十代半ばの若い美人女教師だ。
高木はベッドの脇のテーブルから、タバコの箱を取り合げた。
一本、タバコを取り出すと、それを口にくわえ、マッチで火を点ける。
テレビの画面に映し出された爆破テロの凄惨な現場に比べ、ここは異様なくらいに静まり返っている。
遠くの国道から、わずかにトラックの走るエンジン音が聞こえてくる。
高木はタバコの煙を思い切り吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
ブラインド越しに差し込む午後の陽ざしの中で、その白煙はゆっくりと部屋の中に広がってゆく。
そのたばこの煙を通して、高木は再びテレビの画面を眺めた。
どうやら現場に警察の関係車両が到着したようで、無数の赤い回転灯が画面の中で閃いている。
アナウンサーの話では、間もなく国防軍の特殊処理隊が到着するとの話だ。
- 25 :
- 「ねえ、私にもタバコ、ちょうだい」
芳江が甘えた声で高木に声を掛けた。どうやら芳江も起きたようだ。
高木は無言で自分の加えていたタバコを芳江に渡す。その間も高木の目線は画面を見続けていた。
横で芳江がタバコを吸い、煙を吐き出した。芳江は体を起こし、テーブルの上のミネラルウオーターに手を伸ばす。
柔らかな乳房が、高木の目の前で揺れた。ブラインド越しの陽ざしが、芳江の生白い肌を眩しく照らす。
「俺にも、飲ませてくれる?」
高木は言った。その間も目線はテレビの画面に向けられたままだ。
芳江は自分で一口飲むと、ペットボトルの口を高木の口元に差し出した。
「いや、先生から口移しで飲ませてくれないかな?」と高木は言った。
芳江はふふっ、と笑った。「だったら和也、横になってくれない?」
高木は芳江からタバコを取り戻し、それを大きく吸った。
タバコをビールの空き缶の中に放り込むと、煙を吐きながら仰向けに横たわる。
仰向けになった高木の上に、芳江は跨った。
まだ休眠中の高木のペニスのちょうど上に、芳江の陰部があてがわれる。
芳江の陰部の毛がチクリと高木を刺激する。また芳江の陰部はことのほか暖かい。
芳江は笑いながら長い黒髪を掻き揚げ、ペットボトルの水をぐいっ、と口に含んだ。
そのまま高木にキスをし、口の中の水を高木の中に注ぎ込む。
唇と唇の間から、水が漏れる。それは枕とシーツを濡らした。
僅かにタバコのにおいが混じった、女の濃厚な香りが、高木の口の中を満たす。
それと同時に高木は激しく欲情を感じ、自分の股間が熱く反応した。おそらく芳江も気づいただろう。
芳江はことのほか長い間キスを続け、高木の口の中に舌を挿入し、舌と舌を絡め合った。
水と唾液が入り混じり、くちゅくちゅという音を立てる。それが高木をさらに高ぶらせた。
それは芳江にとっても同じだったらしく、芳江の陰部が明らかに熱を帯び、潤ってくるのがわかった。
突然、芳江はキスをやめ、体を起こした。そしてそのまま体をずらし、高木のモノを口に含んだ。
幾分固くなりかけた高木のそれは、芳江の生暖かい口の中でもてあそばれる。
瞬く間に高木のそれは、完全に回復した。芳江はそれを口から吐き出し、頬ずりしながら笑った。
「和也って、若いのね」その声はどこか嬉しそうだった。
我慢しきれなくなった高木は、勢いよく体を起こすと芳江を抱きしめ、そのまま押し倒した。
既に芳江は充分に潤っており、高木はそのまま芳江の中に強引に侵入した……。
- 26 :
- ……携帯電話が鳴った。高木は寝転がったままそれを取り合げる。
「和也、用意はいいか?」
電話をかけてきたのは金正薫だった。私立仁科学園高等部二年八組。
父親は在日系組織の幹部であり、私立仁科学園の生徒の実に30パーセントは在日韓国人、朝鮮人だ。
この地域は土地柄、在日韓国、朝鮮系の人口が比較的多い。また、パチンコ業などの有力者も在日の者が多い。
そのためその子弟が、こぞってこの私立仁科学園に通うようになったのだ。
一方、高木はこの私立仁科学園に通う、通常の日本人学生である。中学受験で中等部から、ここに通っている。
「正薫か?大丈夫、すべては順調だよ。」
高木は冷静な声で答えた。仰向けに寝ている高木の上では、芳江が激しく悶えていた。
時折高木が下から突き上げると、芳江は痙攣しながら喘ぎ声を上げる。
芳江は正薫が懸想している美人女教師でもある。電話の向こうの正薫が、今のこの芳江の淫らな姿をみたらどう思うだろうか?
そう思うと、高木はおかしくてたまらなかった。日頃威張り散らす正薫に、一矢報いた気分だった。
「ん?和也、おまえ、女でも連れ込んでいるのか?」
どうやら正薫が芳江の喘ぎ声が漏れていたらしい。だが声の主がまさか芳江だとは正薫も思うまい。
「いや、別のテレビでAV見てたんだ。ニュースももうこれ以上の情報はでそうもないだろ?」
高木がそう答えると、電話の向こうで正薫が苦笑いした。そして「あんましヌキすぎるなよ」と一言言った。
「とりあえず、メンバーは全員、東亜運送の第七倉庫に集まってくれ。いいよな?」
高木は正薫にそう言った。
そこは爆破現場から学園と真逆の場所、海側に抜ける産業道路を経由してゆく脱出ルートの途上にある。
今高木がいるここから車でわずか数分。そして同時に、彼らの墓場になるだろう。
「ああ、逃走資金として200万ドル、親父が用意した。すべて現ナマだぜ、凄いだろ?」
正薫はそういうと、電話の向こうで高らかに笑った。
正薫の父親は、東亜グループという在日系の財団の幹部だ。金は唸るほどある。
釣られるように高木も笑う。もちろんその200万ドルも頂くつもりだ。
「それとお前らは全員武器を捨てろ。検問に引っかかったらお前ら全員終わりだからな」
高木は釘を刺す。念には念を入れなければならない。
「ああ、わかった。だが、本当に大丈夫だろうか?和也」
「任せろ。今こっちにはアサルトライフルや手りゅう弾まであるから、一晩そこで身を潜めとけば、検問も解けるさ」
そんな時間を食わせるつもりはない。悪いが今夜にはお前はひき肉になっているさ、と高木は思った。
一方、高木の上で芳江が幾度目かの絶頂を迎え、痙攣しながら崩れ落ちた。芳江は快楽で息も絶え絶えだった。
「いいか、正薫。しばらくプサンやマカオで遊んでいろ。半年もしたらほとぼり覚めて戻ってこれるさ」
「お前はそれでいいのか?和也」
「俺か?別にかまわんよ。俺は特にマークされてるわけじゃない。こっちの情報は逐次お前に送るから安心しろ」
そう、安心しろ正薫。まもなくお前の家族も全部そっちに送ってやるからさ、と高木はほくそ笑んだ。
「では、今夜八時にそっちに行く。それまで全員そこにいろ」
「わかった。ありがとう高木」
「いいってことよ。正薫。革命成就、王道楽土のためには、こんなの屁でもないさ」
そういって電話を切った。
電話を切った高木は、自分に圧し掛かっている芳江を抱きかかえると、そのまま押し倒した。
そして激しく芳江の中に突き入れる。芳江は悲鳴に近い喘ぎ声をあげ、高木が果てるまでに二度も達した。
間もなく高木も絶頂を迎え、芳江の中に大量のしずくを解き放った……・。
- 27 :
- 「ねえ、和也くんってさ、最初から革命とかそんなの、全然信じてなかったでしょ?」
芳江が物憂げにそう聞く。激しい情事で体力を消耗しきった芳江は、和也の腕の中に力なく横たわっている。
高木はしばらく無言のままだった。時折タバコを吸い、テレビの画面を見続けている。
「和也くんって、本当に怖い子ね」
芳江続ける。怖い子、と言いながらも芳江の声はどこか嬉しそうだ。
芳江は教師、すなわち仁科学園の正規の職員だ。
学園の内情のかなりの部分を和也は芳江から知った。
芳江はもう和也の言うことならなんでも聞くだろう。
今回のこの一件を終えたら、とりあえず芳江に庇ってもらうのだ。
自分は今回の件に、何も無関係。それは芳江が全て処理してくれる。
「大丈夫ですよ先生。俺はごみ掃除してるだけなんだから」
高木はそういった。テレビのニュース番組は爆破テロ事件の特番で持ち切りだった。
死傷者がすでに100名を超えていること、駅ビルは完全に崩壊し、鉄道が完全にマヒしていること。
交通機能が完全にマヒし、市内は戒厳令が敷かれていること。
それらのことをニュースは伝えた。
そして同盟の犯行声明……こんな同盟なんて、適当にでっち上げたものに過ぎないのだが。
それにしても軍用爆弾の破壊力の凄まじさに、高木は改めて驚いた。
時限式の起爆剤を装着させ、駅ビルの搬入口の駐車場に止めた搬入用トラック、
そして業者用のエレベーターで運び上げ、駅ビル七階の催事場に設置した二つの軍用爆弾。
それで都市機能が完全にマヒしたのだ。
その爆弾は、今夜もう一度爆発する。
「んじゃ、先生、俺これから行ってくるわ」
高木はそう言うと、ベッドから降りた。芳江はその高木の手首を握り、尋ねる。
「本当に大丈夫なの?危なくない?」
「大丈夫だよ先生。俺は死なないよ。」
そう言って高木は芳江に思い切りキスをした。同時に芳江の股間に手を潜り込ませ、秘所を指先で弄る。
芳江は高木の指の動きに、「うんっ」と唸り、股間に力が籠った。
一分近く高木はキスをしながら芳江の秘所を弄る。芳江の秘芽は充血し、その奥は再び潤んできた。
唇を離し、高木は芳江に微笑みかける。
「もう引き返せないんだよ先生。どうせ堕ちるなら、先生と一緒にどこまでも堕ちたいな」
高木は芳江の目を見つめながら、言った。そんな気など毛頭もないのだが。
心にもないような嘘を、ここまで真顔で平然と言える自分に、高木は少し驚く。
目の前の芳江は目に涙を浮かべ、可愛らしく頷いた。
自分よりも十歳ちかく年上の女だが、もはや芳江の心は完全に高木が掌握している。
「じゃあ、この続きは帰ってきてからするよ先生。朝まで寝かせないからそのつもりで」
そう言った高木はもう一度芳江にキスをし、今度は素早く立ち上がった。
立ち上がり、歩き出した高木の表情には、先ほどまでの笑顔など微塵もなかった。
ただひたすら冷たい、氷のような表情がそこにあった……。
- 28 :
- ……第七埠頭で爆発が起きたのは、午後八時過ぎだった。
だが、その爆発が起きたとき、そこに集っていた同盟のメンバーは全員死んでいた。
メンバー総数13名は全員、サブマシンガンで蜂の巣にされていたのだ。
そして爆破によって彼らの死体は全てバラバラになり、その原型などとどめることなくこの世から消滅した。
そして高木は、活動資金、逃亡資金その他、計450万ドルを手に入れ、再び芳江のマンションに戻った。
運搬には芳江の軽自動車を用いた。もちろん高木は無免許であり、実は今回の計画の一番のリスクはここだと高木は踏んでいた。
だが、警察も軍も駅ビル爆破事件に追われていて、警戒網は手薄だ、と高木は踏んでいた。
実際その通りだった。国道や県道ならいざ知らず、わずか五分の距離の移動なのだ。
検問ひとつなく高木は全てを済ませることができた。
また正薫殺しや情報捜査など、高木は何も心配していなかった。そもそも高木は同盟のメンバーではない。
学園は今、学園紛争で学校施設の半分近くが不逞学生たちに占拠されている状態なのだ。
この中で特に目立った活動をしていない高木に疑いの目が向くわけがない。
現金はそのまま芳江のマンションに置いておくことにした。
芳江によると、埠頭の爆破の音はここまで響いてきたという。凄い爆発力なのね、と芳江は感心していた。
自分の教え子が十三人死んでいるのだが、そんなこと意に介していない様子だった。
実は芳江は正薫のことを嫌っていた。自分に明らかに欲情を抱いているこのドラ息子の生徒に嫌悪感を抱いていた。
それが木端微塵に砕けたのだ。しかも芳江が愛する男の手によって。むしろ嬉しかったのだろう。
一方、これだけの活動資金を現ナマで、番号綴りでない形で用意できるなんて、さすがパチンコ屋だなと高木は思った。
武器その他は、とりあえず次の作戦のためにとっておくことにした。
そして芳江名義で借りたコンテナ倉庫に運び込んだ。
これには芳江も同行し、二人してちょいとした中隊をフル武装できるほどの武器を運び込んだのである。
全ての作業を終えたのは午前二時過ぎだった。
すっかり疲弊した高木はそのまま芳江のベッドの中に横たわり、芳江ともどもセックスすることなく眠りこけた。
明日からまた、新しい戦いが始まるのだ。
- 29 :
- (*´∀`)つ凵・゚☆・゚凵ヾ(´∀`*)ノ゙ミ
- 30 :
- 仁科学園は昨今の少子化の煽りを受け、入学志望者数が激減、ここ数年、定員割れが続いている状況でした。
また、学園の運営母体である仁科財団が、長らく続く金融不況により、破産状態に陥りました。
その結果、当学園は昨日、破産宣告をすることになりました。
つきましては以下の事項をご連絡させていただきます。
1、当学園は、今後の経営は困難と認め、解散することとする。
2、現在の学園の運営については、管財人の管理の下で、とりあえず今年度末まで継続する。
これにより現在の最高学年の生徒の卒業は可能となる。
3、最高学年以外の学年については、逐次、他校への編入を検討。
なお、詳細は、後日あらためて説明会を開催する予定であり、追って通知する。
4、来年度の入学試験は取りやめ、以降、生徒募集は行わない。
以上
- 31 :
- ネコの日、おめでとうございます。
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- 32 :
- おかしい。荵のわんわん度なら一緒に消えていても不思議は(ry
- 33 :
- これはいい少し不思議
- 34 :
- 結局演劇はやるんだろうかw
- 35 :
- というわけで某スレの企画に乗って『霧崎』で
- 36 :
- わおーん!
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/259/download
- 37 :
- 犬相手に野球するとはさすが。
- 38 :
- 先輩!ホワイトデーですって!
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- 39 :
- 狼とか後輩が変な勘違いしそうなフレーズをw
- 40 :
- マンガも描けるのか!
多才だなぁ。
>>31
公園の名前がwさりげに背景うまい。
ルドルフとイッパイアッテナのあとがきをちょっと思い出した。
>>36
亜子ちゃんマジ今時のおしゃれJC。
亜子だけ耳尻尾がないんだな。
>>38
何そのウサギ棒マジウケル
ととろの冷めきった目www一言も喋らない何とも言えない空気がやばい
狼こええ。「食べちゃいます」の台詞がすごい後輩らしいと思った。
なんか俺自身は後輩を動物には喩えづらいんだけどwさすがにスッポンはあんまりだし。
- 41 :
- これは俺もまた絵を描かねばならないのだろうか
- 42 :
- 期待がうなぎのぼり
- 43 :
- 演劇部・黒咲あかね。
わおーん!に隠れておされぎみ。CVは…
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/413/akane+kurosaki.jpg
- 44 :
- あれ、サンプルボイスのボタン壊れてるぞ
- 45 :
- 仁科も夏休みですか?
水着だ!水着だ!
- 46 :
- 水着とかおまえなんてすばらしい発想を!
- 47 :
- 「先輩!水着です!夏です!え?夏なんて残すところもあと二週間?まだ二週間もあるんですよ!
ほら!見て下さい!わたし、閑花ちゃんの華麗なるビキニ姿を!黄色いフリルが胸元をキュートに演出してます!」
先輩こと先崎俊輔は困惑した。後輩こと後鬼閑花のビキニ姿が見えないのだ。
それもそのはず、閑花はきっちりと制服を身につけていたからだ。ただ、ブラウスの隙間からちらほらと見える
黄色い布切れが先崎を大いに不安の泥海へと陥れた。なのにも関わらず閑花は紺碧の海の輝きで先崎の腕に絡み付く。
ただでさえ暑い夏、目に入るものがゆらゆらと見える。それに加えて閑花の元気だ。むしろ……いらない。
「先輩!見えないんですか?おかしいですねー。はっ!分かりました!わたし、制服着てました!
だからですね!なるほどなるほど!じゃあ、おいそれと制服を脱ぐような閑花ちゃんではありません!
ここは勝負です!日本の夏は日本の伝統文化に触れましょう!野球拳です!ベースボール★パンチ!」
「俺に脱げとでも?」
「無問題!先輩に優しいルールです!買っても負けても閑花ちゃんが脱衣……、いわせんな!ばか!わたしの召し物を……」
- 48 :
- 「野球拳の意味無いな、それ。俺はしないけど!」
「先輩!お肉は腐りかけ、閑花ちゃんは脱ぎかけが美味しいんですよ!白いブラウスだけの閑花ちゃん、
脚の付け根からちらちらと見え隠れする黄色い水着。恥じらう閑花ちゃんに堪えられない先輩はぎゅっと閑花ち……」
きっと灼熱で頭がおかしくなってしまったのだろう。そう考えるしかない先崎は
閑花を置いて一人涼しい図書館へと消えた。閑花は仔犬のように先崎のあとをちこまかと追った。
「閑花ちゃんの水着は閑花ちゃんしか似合わないと……思うんです」
「わおー?意外にも似合ますねっ」
聞き覚えのある鳴き声。尻尾ぶんぶん、耳ぱたぱた。演劇部の久遠荵だ。しかし、似合うと評したのは
残念ながらも閑花の水着姿ではなかった。荵の前で恥じらう演劇部・迫文彦だった。
何故に後悔?荵の先輩である迫は後悔の念にかられながら学園の女子制服を着ていたのだ。 俯きがちに両手を握り締める眼鏡っ娘は太ももに涼しいものを感じた。冷や汗ではなく、無防備なるスカートからの空気だった。
教えられなければ男子だとはぱっと見で分からないクオリティ。間違っても演劇部を敵にまわしてはならない。
- 49 :
- 「迫先輩、男らしいですっ!シェパードみたいなハートですっ」
「スカート姿な俺にそんなことを言ってもな、久遠。確かに罰ゲームだからしかたないが」
軽い気持ちで迫と荵は勝負した。どんなことでも引き受けると。
「『女装』するって言ったから、男らしく女装したっ!迫先輩、かっちぶー!」
「俺は『除草』って言ったんだけどな……」
ふわりと風がすり抜けると荵と迫が身に纏うチェックのスカートが同時に揺れる。慣れないリボンを
ちらちらと触る迫に荵は人差し指でちょっかいを出した。迫が付けるセミロングのウィッグからは
ほんのりと無機質な香りがしていた。元々、小柄で細い方の迫にとってはある意味、女装して正解だったのかもしれない。
「あかねちゃんにも見せたかったなっ」
迫は眼鏡を曇らせて大いに断った。だが、自らを捨てる神あれば拾う愚民あり。閑花がじっと迫を見ていたのだ。
ゆらゆらと揺れるカゲロウサンシャワー。閑花の目にはきっととびっきりの美少女に見えたかどうかはさておき。
「し、閑花ちゃんの方がぜったいかわいいです!」
時折見せる男子の仕種に荵は人差し指で突き、時折見せる女装の香りに閑花は妬いた。
- 50 :
- 「男子になんか負けたくないです!ぜったい、ぜったい閑花ちゃんの方がかわいいです!」 「がんばれ!女の子!わおー!」
他人事のように吠える荵はさておき、後輩女子二人に見つめられる健全なる男子高校生。
恥ずかしいってレベルじゃない。これは恥だ!せめて卒業する際に
「わが高校生活に一片の悔い無し!」だなんて叫びたかったのに、そんな夢も潰えた。
それが本当に迫の夢かどうかはさておき、迫の理性もエンプティ。ほっとけば走り出しそうな勢いだ。
「久遠!そろそろ満足しただろ?」
「わたし、イヌだから分かりません!」
荵は尻尾をぶんぶんと振るので、迫は隣の少女に問い掛けた。
「久遠の友人だろ?久遠をなんとかしてくれ」
「わたし、あなたに妬いてますから。わたしの水着姿の方がぜったい……」
いや、今や敵は迫だ。迫に閑花ちゃんのはじける肢体を見せ付けてやれ!閑花は叫んだ。
「ベースボール★パンチやりましょう!」
「俺に脱げとでも?ってか、着替えさせてくれないか」
「無問題!先輩に優しいルールです!勝っても負けても閑花ちゃんが脱衣……、いわせんな!ばか!」
- 51 :
- 以上。
さすが迫先輩、「さすさこ」です!
- 52 :
- 先輩!今日は12日の木曜日ですね!ワクワクしますね!
- 53 :
- なんかあったっけ?
- 54 :
- ホッケーマスクの後輩がとうとう実力行使に出るのか……!
- 55 :
- 「わおーん!13人の金曜日!13匹の怒れる仔犬だよっ」
「12人じゃないの?」
- 56 :
- 「マスカーレイ! マスカーレイ!」
「それハロウィン}
- 57 :
- ふと、まとめWiki見てて思ったけど。
上原梢ちゃん、部活入ってるみたいだけど部活は何だろう。
個人的にはバレー部とかやってそうに思う。ちっこい体でコートを跳ね回る姿想像したら堪らん。
- 58 :
- 何故か梢ちゃんが球と化してレシーブトスアタックされる姿が見えた
疲れているようだ。
- 59 :
- 放課後は援交やってるから、部活に出てないんだよ
- 60 :
- 梢&葱&亜子&千鶴&和穂&迫(男の娘化)
VS
黒鉄懐
変則6人制バレー。試合開始!
- 61 :
- なんかけっこう粘りそうだぞ懐www
- 62 :
- 亜子がいるんじゃ勝てるイメージがまったく浮かばないw
葱あたりが拾いまくりそうだし
- 63 :
- >>60-62
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/587/volley.jpg
扉絵は真田アリスだよ。
- 64 :
- 何を嗅いでるwww
- 65 :
- 土佐っ娘・浅野士乃ちゃんは一人暮らしなのかな。
いや、一人暮らしであって欲しい
- 66 :
- 士乃「葎ちゃん!物凄いものを作ったがよね!」
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/597/riccyan.jpg
- 67 :
- かわいいw乙です
- 68 :
- どこをアップにしておるwww
- 69 :
- まてそのペットボトルどこで手に入れたwww
- 70 :
- わおーん!お題下さい!
- 71 :
- お姉さん軍団
- 72 :
- 高等部3年
•神柚鈴絵
•真田アリス.ウェルチ姉妹
•霧崎
高等部2年
•秋月京
•天月音菜
•近森ととろ
「お姉さん」っぽい上級生あげてみた。
粒揃いですやん。
- 73 :
- あやめ先生を忘れるな
あとととろは違うだろw
- 74 :
- 水玉パンツ先輩!
水玉パンツ先輩じゃないか!
- 75 :
- 鈴絵先輩と亜子ちゃんお借りします。
おまけ
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- 76 :
- テンポよく神社の石段駆け登る足音に、リズムよく息切れする少女の胸。
小さな体に似合わずたゆらたゆらと弾む豊かな胸。後ろで縛った金色の髪が上下に揺れる。
一段一段登るたびに自分の力になってゆくと、黒鉄亜子はスニーカーでぎゅっと石段を踏み付けた。
制服姿の亜子はひらりとスカートひらめかせ、両腕をぶんと振って、トレーニングに身を費やしていた。この神社の石段を
何度も何度も往復。前時代的な鍛練だが、基本のキは侮れない。金色の髪が青空にくっきりと浮かぶ、空気の澄んだ夕暮れ前。
学校の近くの丘に鎮座する神にこの姿を見て欲しい……って、わけではないが、この柚鈴天神社に来ると何故か心が落ち着くのだ。
振り返れば遠くに校舎がぽつんと見える爽快感。それもまた、走り込みの途中の清涼剤か。
ふらふらになりながらも、亜子の脚はまだまだ力強く、表情も崩れることはなかった。
空手で培われた亜子の精神力で脚に溜まった乳酸など蹴散らしてやる。巧みな技で、抜きん出た実力で。
そう。亜子は空手の有段者だ。齢中三にして、この実力者だ。だが、それにあぐらをかいては真の有段者ではないと亜子は言う。
こうして日々鍛練を重ね、煩悩を払いのけた者だけに許される称号なのだ。迷いなど亜子にはいらぬ。
石段の頂上が見えてきた。灰色の石に苔の視界から、空の色が広がる瞬間が亜子を迎えていた。
周りの木々は緑鮮やか。
胸一杯に吸い込む空気。
足元すり抜ける風。
そして、真正面に飛び込む水玉模様。
「!!」
真っ白で柔らかな膨らみに散りばめられた水色の玉。亜子の目は同化するように水玉のように丸くなった。
見てはいけない物を見た。
いや、認めてはならない物を見た。
転んでいるのは年上の女性。
高等部のお姉さんの……おパンツなと。
「あっ。ごめんなさいね」
水玉模様の持ち主は石畳に伏した格好からお姉さん座りに切り替わり、柔らかなる物腰で水玉模様をスカートで隠した。
「急いでたら、石段で躓きましてね」
お姉さんは澄ました顔に戻って、カーディガンの砂埃を払っていた。立ち上がって初めて気付くグラマラスな体つきが亜子の目を奪う。
それにあわせておっとり感。年上に向かって失礼かもしれないが、亜子の感じた印象は『かわいい』だ。恥ずかしそうな顔を僅かに残して
制服姿のお姉さんは石畳の奥の社殿の方へと姿を消した。
さて、こちらはまだまだ思春期の扉を潜ったばかりの亜子だ。対応しきれずに心臓は激しく鳴る。石段を駆け登ったことに合わせ、
自分とは違う世界の住人と鉢合わせをしたことに……。
「みずたま?」
瞬きしても無駄無駄。
目を擦っても無意味。
いくら『水玉ぱんつ』が焼き付いた瞼を振り払おうとも、のれんに釘、豆腐に腕押し。つまり、糠にかすがいだ。
静かだった木々にカラスの声がこだまする。
- 77 :
- #
石段の頂に置いておいた亜子のスポーツバッグから、ドリンクを取り出して一口飲む。
喉を潤すドリンクがいつも以上に甘い。
亜子はトレーニングをおしまいにして鳥居を潜る。日が傾き始め、茜色に鎮守の森が染まっていた。赤と青のグラデーションが
一目で味わえる逢魔ヶ時。人の少ないこの時間が亜子は気に入っていた。やけにスポーツバッグが重く感じる。トレーニングの後だから。
しかし、いつも以上に重い。バッグからぶら下げたボクシンググローブが亜子のスカートをぶらぶらとなぞる。
(そうだ。絵馬だ)
今日、ここに来た目的は絵馬を奉納するためでもあった。
亜子の書いた絵馬は一目、まさか空手の実力者とは想像できないような彩りで、よく読めば、なるほど流石空手の実力者だと容易に
想像できる内容だった。バッグから絵馬をこっそりと出し、絵馬掛の前に立ち、人目を気にしながら絵馬を結ぶ。ウチの冷蔵庫から
独り占めしていたプリンをこっそり抜き出すような緊張感だ。ただ、お願い事を叶える事はカルメラほど甘くない。
こうしてみるといろんな人が柚鈴天神社にお願い事をしているもんだと、亜子は絵馬をがらりと手でなぞってみた。
奉納を終えた亜子に声が掛かる。
ついさっき、聞いたような声だ。
振り向いて目にした人物は……さっきまで石畳で転んでいた年上のお姉さんが白い装束、紅の袴に身を包んでいるではないか。
そうだ。水玉ぱんつのお姉さんは制服姿から巫女装束に変身していた。お姉さんは、この柚鈴天神社の巫女だ。
「あっ。さっきの……石段を駆け上ってた子だよね?」
「さっきはごめんなさい!お姉さん!わたし……見ちゃダメですよね!見てません!見てません!」
「え?何、何?」
他人の絵馬をまじまじと見つめてるようでごめんなさい。
そんなことはしていないんです!
涙目になった亜子は顔を夕焼けのように赤くした。
慌てて亜子はバッグをぐるりと廻して、ぶら下げたボクシンググローブを背後に隠した。何故だかは上手く説明できない。
声をかけてきたのが『水玉ぱんつ』のお姉さんだったからなのか。お姉さんから見れば、色恋に浮足立つような娘に見えるんだろうな。
でも、そんな娘が格闘技なんかやっちゃって……。わたし、強くなりたいです。なんてお願いしたら、お姉さん笑いますよね?
「気にしちゃう?」
はい。
水玉ぱんつ!を。
「大丈夫。あなたのお願いを見たりしないから」
わなわなと震える足が存在する。
込みあがる熱。
亜子に秘められた感情。
「ありがとうございますっ」
スポーツバッグからグローブをぶんぶんと揺らしながら、亜子はすっかり日の落ちた街へと駆けていった。
その姿、蜂のように舞い、蝶のように刺す。
お姉さん……神柚鈴絵は、明日もきっと晴れると思いつつ、夜の帳に溶け込んだ。
おしまい。
- 78 :
- お姉さま軍団(のうちの一人だけど)でした。
わおー!おしまい!
- 79 :
- 乙です
- 80 :
- そもそも空手はボクシンググローブ使わない。新空手なの?
- 81 :
- グローブ空手ってのがある
- 82 :
- 亜子ちゃんがかわいすぎる。
投下します。
- 83 :
- 兄とボロクソなケンカをした亜子は、家にいるのが窮屈になり町の喫茶店に逃げ込んだ。
些細すぎて覚えていない原因に亜子は苛立ちを隠せず、お冷やの氷を人差し指でぐるぐると掻き回す。
ケンカの結果は1ラウンド13秒右ストレートで亜子のKO勝ち。僅かな時間で完膚なきまでにたたきのめされた兄は、
大きな体を妹のベッドに沈めていた。
亜子は空手を習っている。
中学生とは言え、かなりの実力者だ。
ただ、空手が強くなればなるほど、女子としての力、すなわちパワーへの反発も否定すればウソとなる。
「強いね」よりも「かわいいね」が欲しい。
兄といるだけで、知らず知らずに自分の思い通りに物事が進まない苛立ち。
そんな気分さえも忘れさせてくれる喫茶店が気に入っていた。
なにより、店員がかわいい。と、亜子は自分の物のように愛でる。
亜子は喫茶店の店員をちらと見た。大正浪漫溢れる袴姿に白いエプロン。編み上げブーツが足元を引き締めて、
黒髪のツインテールが若々しさを印象付ける。歳は二十歳ぐらいか、ネコ目で明かりを追いながら給仕は暇を持て余していた。
この喫茶店はマスターの趣味に彩られている。明かりに、窓に、椅子、テーブル、食器、そして給仕に至るまでタイムスリップに
惑わされる。そんな喫茶店に亜子は心を落ち着かせながら、そして給仕に憧れを抱きながら注文の品を待つ。
「お待たせ致しました。シロノ・ワールです」
温かいデニッシュパンに冷たいアイスを乗せた『シロノ・ワール』。
マスターがどこぞの喫茶店に感化されて真似た一品だ。わざと区切りをずらしている所など憎らしい。
白と黒との対比が見た目を楽しませる。亜子は手を合わせるとゆっくりとシロップをシロノ・ワールにかけようと……。
「あっ」
アイスの上にイチゴが鎮座。赤白黒の3連単。オッズ三桁の万馬券。
「『あまおう』です。今朝、九州から届きました」
亜子には予期せぬ贈り物だった。給仕の娘は目を合わせることを拒んでいた。
あまくて、まるくて、おおきてく。
イチゴの概念を振り払う大振りなイチゴが存在感をアピールする。
「黒鉄くんの妹さんですよね?この間はありがとうございました」
「は、はい?わたしを知っているんですか?兄が何かを」
「この間、ここにいらしたときにしきりに妹さんのことを話してました。テーブルに乗りきれないほどの
ケーキやお菓子を並べているお客さんなんて、忘れようと思っても忘れられませんし」
俺の胃袋は宇宙だ?何、言ってるんだ。俺が宇宙だ。それに加え、金髪ロン毛の天突くほどの身の丈だ。
世界中の茗荷を食べ尽くしても、兄のことだけは記憶に残るはずだ。
「お冷やの氷を人差し指でぐるぐる掻き回してたんです。『妹がよくやるから俺にも染み付いたんだ』と、
スマホで動画を見せてくれました」
亜子は兄をまた右ストレートで打ちのめしたくなった。
いや、右ストレートだけじゃ足りない。畳を返すぐらいに再起不能に……。
「『あまおう』はお兄さんから教えて頂いたんです」
「マジで?」
「妹さんが初めてですね、このお店で頂くのは」
黒鉄の城に真っ赤なイチゴ。アンバランスさに亜子は頬を赤らめた。イチゴの味に記憶が逃げる。
第2ラウンドのゴングは、しばらく鳴らさないでおこう。
おしまい。
- 84 :
- また食べたい、シロ・ノワール。
ささもり堂のあまもっちゃん。
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/672/amamoto_shiro_noir.jpg
投下おわり。
- 85 :
- コナミ新長田店のR魔暴行歴あり中井貴之店長だけは、やめておいたほうがいい。
6年以上も居座っている。地元の住民からも、嫌われまわっている。 店長がかわれば、必ず行く。
- 86 :
- 開始13秒かw
- 87 :
- 遅ればせながら、あけおめですっ。
右から…久遠荵、近森ととろ、黒咲あかね、後輩ちゃん、黒鉄亜子。ん…天月音菜?
http://s-up.info/view/201201/142796.jpg
- 88 :
- いっぱいいる!
おつです
- 89 :
- お題下さい
- 90 :
- では早速お題です↓
学校に突如出現した魔壁によって世界と隔絶されてしまう生徒達が魔壁を破壊し生還するまでの物語。
さて
- 91 :
- .>>90
書きました。
『wall』
「どうあがいても、無駄だよ」
無駄だと分かると、嫌でも意地を張りたくなる。
薄い手で金剛石にも似た壁を叩いている黒咲あかねは、手を止めようとする声も気にしていなかった。
部活を終えて家路を急ぐ逢魔ヶ時、誰にもすれ違わずに廊下を駆ける一日の帳が降りる頃。黒咲あかねの行くてを阻む
一枚の壁がずんとそびえいた。見様には咎人を隔離するかの要塞にも見える。ただ、この地上に存在しえない物質で
この壁は固められているような感触だった。
見上げれば見上げるほど空が高く感じる。左右を振り向けば振り向くほど先が霞んで見える。
例えようのない世界にあかねはすんのあいだ思考を止めた。
この壁に出会う前に親友と別れた。
名は久遠荵。同じ部活、仔犬のような娘だ。
「あかねちゃんはもっと大胆になった方がいいよっ」
ころころした声があかねの中で響く。あどけなさと、イヌを掛け合わせたような娘だと、あかねは荵を評する。
だが、忘れ物を取りに校舎に戻った荵がいつまでたっても戻ってこない。どこへいったのだろう。
あかねは荵を探しに歩き始めた途端、これだ。
壁。
壁。
ちっぽけな自分を思い知らされる、硬い壁に阻まれた。
「……あがいてもって……。あがかせてくださいっ」
壁伝いに歩けば、出入り出来る場所はあるはず。あかねは壁の根本を注意深く眺めつつ、再び状況を捉らえようと試みていた。
歩き慣れた校庭が、見慣れた立木が、今や異質に見える。
「誰もいない……」
そうだ。
一番疑うべきは、自分以外の者を見かけないこと。荵と別れて、今まで誰とも会っていない。
あかねは巨大なる壁に気を取られて、気付くべきことを見事なまでにスルーをしていたことに呆れた。
さっきまで部室で共にいた先輩の迫ですら見かけないこと。あかねは迫をほんの僅かでも忘れかけた事実に後悔をしていた。
あかねと迫は演劇部だ。
ちょっと前まで部室で演劇論について意見を交わしていた。
ちょっと前まで迫の理屈にあかねは閉口していた。
ちょっと前まであかねは夢を語っていた。
「迫先輩。ロミオとジュリエットは女の子の夢ですっ」
「いろんな解釈も出来ると思うんだ。ロミオは二十歳過ぎた青年、ジュリエットはあどけなさ残る6歳児。
歳の差離れてるといえども、乗り越えられる障害が大きいほど胸打つと思わないか。いや、これは問題提起だ」
「そんなジュリエットいやですっ。こんな舞台、出ませんっ」
「勝手にしろ」
そんな頃が懐かしい。ほんのちょっと前のことなのに。長針が360度も廻らないうちなのに。
あかねの中で駆け巡る記憶とともに壁の間際を歩き続けていると、久方振りに人の声がした。
違う。
あかねには届かなかった、希望の絶望の声。
- 92 :
- 「どうあがいても無駄だよ」
あかねにその声が聞こえたのは、声だけでなく、ギターの弦の音と共にだから。
校庭を横切る渡り廊下の屋根の上、波打つ鉄板に腰掛けてギターを鳴らす一人の少女があかねを見下ろしていた。
高校一年生のあかねよりかは年上、落ち着いたたたずまい、白いシュシュで束ねた黒髪、そして涼しげな目元と片側を隠す前髪。
彼女は旅する吟遊詩人だと称しても疑われようはないだろう。ただし、彼女はあかねと同じ制服に身を包んでいるのが残念だ。
「ぼくも『魔壁』に阻まれた。見下ろそうとも、それさえ許されない」
「『魔壁』ですか?」
「校舎の屋上からさえも見上げる『魔壁』だ。まるで何かを恐れているように」
ギターの少女は脚を組み替えた。ちらと白い太ももがあかねの目を奪う。
「ぼくの名前は天月音菜。また、君に出会うかもしれない」
「分かるんですか?」
「なぜなら、この学園は鎖されているからね。チョココロネが食べたいんだけど、学園には売っていないからね」
「出口がないなんて、にわかに信じられませんっ」
「ぼくも君を追って、気付かれないことに信じられないけどね」
「え……」
「面白い、実に。この状況を楽しめればだけど」
口惜しいから、甘い洋菓子を。
残念そうに音菜は前髪をかき上げた。
ちらりと見える音菜の涼しげな瞳にあかねは吸い込まれそうになり、背筋を凍らせていた。
音菜のセリフの後に『魔壁』を一瞥したことで、あかねは信じられないことを許されない状況の破片を握った。
見れば見るほど『魔壁』が得体のしれない魔獣に見える。自分が演劇の台本を書くならば、そんな演技をさせる……
あかねの鼓膜に迫の言葉が蘇っていた。再び渡り廊下の屋根に目を向けたあかねには、天月音菜の姿もギターも捉えることはできなかった。
孤独。
孤独という言葉を繰り返せば繰り返すほど身震いをする。
荵は?
迫は?
誰も教えてくれない恐怖、そして『魔壁』。
「どうしようなか」
天月音菜に気を取られている間に周りもすっかり暗くなり、光を求めてあかねは校舎に戻った。
同じ境遇に合っているはずの迫に会うために。そして、屋上から学園を見渡すためだ。
まだ、教員たちや部活生たちもいるはずであろうのに、誰ひとりとも出会わない。よその次元に吸い取られたかのように、
あかね一人だけが廊下に足音響かせる。
「何がおこったのか、さっぱり」
案の定……いや、またしても目当ての演劇部部室には、迫の姿はなかった。
裏切りの後には救いあり。あかねの目の前に人影が再び現れたのだから、堪らず声をかけたくなる。
あかねから話し掛けようと近寄った瞬間。
- 93 :
- ……求めていたのはあかねの方ではないのか。
そうだ。話を仕掛けられたのだ。
「ここにもいたね」
「こ、ここに?」
「『ケモノツキ』たち。ようこそ、宇宙の楽園へ」
初めて耳にするフレーズであかねを迎え撃つのは、キツネ耳を生やし、秋の穂にも勝る尻尾を揺らしていた少女だった。
コスプレでもなく、どうやら本物のよう。脳内がなんだか理解することを拒否し始めるから、ぐるぐると目が廻る。
「戦いの準備は徐々に整い始めてますね。神がお気に召す戦果となれば……」
服の上からも分かるナイスバディ、黒髪が良質な墨のごとく艶やかで、落ち着いた物腰がキツネの威厳を引き立ている。
「間もなく戦いが始まります。愚かなる人間どもよ、裁きは終わったのだから。ですの」
「え?え?」
夢か、現か。
キツネ耳の少女がはたと姿を消した。
キツネにつままれるとは、まさにこのこと。何かにすがることも出来ず、ただただなすすべく。
キツネ耳の少女でもいい、天月音菜でもいいから、あかねは人影を探しに校内を走った。
廊下の窓からは依然としてそびえ立つ『魔獣』。普段は気にもしなかった街が急に恋しくなる。
じりじりとタイマーが回る時限爆弾を抱えている気分だ。今にもあかねの不安が破片を散らして火を噴きそうなのだ。
保健室、職員室、科学準備室、体育館、図書館。人が集うのに考えうる場所は探し尽くした。
「久遠っ。迫先輩っ」
部室で意見が違い、経験差を見せつけられたことさえも懐かしい。
パソコンルームの液晶モニタは沈黙を保って知らん顔。
迫を思い出すからと、あかねは迫と荵の名を呼ぶことを諦めた。
しかし、諦めきれないからもう一度。
「先輩っ」
「せ・ん・ぱ・い?先輩はどこですか!閑花ちゃんはここです!がおっ」
扉の開く音以上に喧しい声を張り上げてやって来た一人の少女。おかっぱ黒髪はロリっぽく、薄暗いモノクロームな部屋を
パステルカラーに染め上げた。
「あっ!?あかねちゃんがいる?先輩!先輩!先崎先輩がいないんです!尻尾ががびょん!」
あかねと同級生がいてくれた幸せ。後鬼閑花が救った、あかねの孤独。
いつもは学園を先輩、先輩ととある男子を追い回している、恋に恋する恋する少女。後鬼閑花という少女だ。
先輩のことを話さない日がないぐらい、閑花は先輩、先輩と色めき立っていることは、この学園に通うものなら皆知っている。
オオカミの尻尾を得ようとも、オオカミの耳を持とうとも、閑花の恋心は変わっていなかった。
閑花はオオカミの大きな尻尾でミニスカートを跳ね上げて、オオカミ耳をくるりと回した。
「後鬼も……ケモノツキ?」
あかねは一歩退いて、閑花の姿を目に焼き付けた。
突然。
意思を持ったのごとく一斉にパソコンのモニタに光が灯る。電撃を受けたのごとくHDが起動する。
チカチカとLEDが瞬き、物理的にディスクが削れる音にあかねと閑花は戦慄を覚えると、一歩足りとも身動き出来なくなった。
電脳が全てを支配した仮想現実の世界。だと、解釈しても間違わないだろう。
それは、一人の声で打ち破られた。
「戦いの時間です」
- 94 :
- あかねには聞き覚えのある声。
そして、見覚えのあるキツネ耳の少女。
全てのモニタが操られているのか、同じ顔が寸分違わずに映し出され、二人に語りかけてきた。
「わたしは『神乃狐(かみのこ)』ですの」
あかねはもう一度、モニターの中の少女の名を繰り返した。
「神は人間を見放しました。天地開闢以来、愚かなる生業の繰り返しだと。大地の支配者に人間を選んだことを悔やみました」
無機質に淡々とした、灰色がかった言葉。
あかねは息を飲み、閑花は目を見開いた。
「『このまま人間どものほしいままにしておくにはならない』。神は人間に太刀打ちすべく、動物たちに魔力を与えようとしました。
しかし、動物たちとはいえ、彼らは獣。魔力を持てど操るすべはありません。そこで、人間たちに憑依させることで意思を持たせ、
優性なる獣をえり抜き、新たなる支配者として大地に君臨させることにしました」
キツネ耳の少女・神乃狐は機械的な話を淀みなく続けた。
「神はこの学園に『魔壁』を築くことで結界を張り、『ケモノツキ』としての能力を保持する者だけを『魔壁』の内側に残したのです。
後は自然の摂理……闘争本能と理性知性を兼ね備えた『ネオ・サピエンス』が生き残るだけ。さあ。倒しなさい、生き残りなさい。
戦いの始まりです。獣の底からみなぎる魔法の叫びが聞こえませんか。覚醒するときですのよ」
薄暗い部屋に閑花を囲んで浮かぶ魔法陣。発光した幾何学模様が意味するものを理解は出来なかったが、
閑花は獣の尻尾から得たい知れぬ力を手に入れた感触を掴んだ。ただ、それは……戦うためのものだ。
ガシャンとけたたましいガラスの悲鳴が静けさを裂き、共に部屋の扉を薙ぎ倒して来襲した一人の……獣。
「久遠っ」
「わおっ」
あかねが校内を血の滲む思いで探していた久遠荵とこんな形で再会するなんて。
イヌの耳と尻尾を携えた荵がもんどり打ってパソコンルームに飛び込んできたのだから。
「荵!」
目の色が緋色に変わった閑花は荵から『ケモノツキ』の臭いを感じた。あかねには荵の周りに閑花と同じ
幾何学模様が浮かんでいることで、荵はもはや久遠荵ではないことを動物的に察知した。
「イヌはイヌ。オオカミなんぞには……。オオカミの血を絶つときだっ」
「何もできやしない人間に擦り寄る裏切りの獣に断種の裁きを!」
荵の口上を受けて、閑花が手を振りかざすと青白い炎が現れる。蛍が纏わり付く幻想を見ているようだ。
対して荵は尻尾を巨大なる鎌に見立て、ぶんと振りかざすと菜の花にも似た黄色い炎を尻尾の先から放った。
「わおっ」
荵が操る炎はやがて弧を描き、弓矢を形作る。きらきらと黄色い輝きを増しつつ、一つの武器に成り代わった。ぴんと張った
弦が冷酷なる武器としての指命を物語り、矢を携えた荵を一人のアーチャーとして成長させていた。それほどの霊力を弓矢は持っていた。
一方、閑花も同じく炎は一振の剣へと姿を変えていた。制服姿で刃を片手に構えるオオカミ耳の少女。息の音すら聞こえない。
どこで剣の心得を知ったのかなど、疑問に感じることすら愚かしい。二人が武器を持つ空気が全てを支配していた。
じりじりと間合いを計り、お互いに攻撃を仕掛けるタイミングを伺う。緊張と、そして、あかねにとってはクラスメイトたちが
なぜ武器を手に取らなければならないのかという、声にもならない疑問で部屋は糸が張り巡らされていた。
とにかく、あかねとしては二人の手を止めたい気持ちだが、人間の言葉を受け入れることなど出来ない二人の状況になすすべなどない。
- 95 :
- 「がおっ」
攻撃を仕掛けたのは閑花だった。
返り討ちを恐れぬ一撃は、まさにオオカミの威厳そのもの。光の筋さえ、冷厳なる畏怖をあかねに与える。
幸か不幸か刃は荵の手を掠めた。ただ、荵は弦を掴む手を緩めることさえ拒んだ。閑花が体勢を整えるまでに一矢報いたい。
荵は閑花の尻尾に向かい矢を放った。
「久遠っ」
「わうっ」
閑花の目の前に飛び出したあかねは無我夢中だ。荵は弓矢を一度下ろし、あかねの動きを冷静に緋色の目で見つめていた。
この空間を匂いに例えると、焦げ臭く、錆の匂いが立ち込めると言えようか。
「演劇のことだけどっ」
油断させようとあかねは荵に近づいてゆく。しかし、あかねの声などものとせず、位置を変えた荵はまた一つ矢を携えて閑花の脚を狙う。
動きを封じるつもりだ。しかし、二人とも、今やケモノツキ。ケモノの勘に揺すぶられ、閑花の剣で矢はたたき落とされてしまった。
「はっ!?」
「こっち。こっちだよ」
あかねの眼球に見覚えのある姿。
黒髪を束ねた、涼しげな目元の少女。
天月音菜が閑花の肩越しに手招きをしているのだ。どうやって、ここに?そんな疑問など後回し。あかねは天月音菜に駆け寄った。
そんなあかねの行動に怯んだのは閑花だった。ぐらりと足をふらつかせ、隙という隙を荵に見せたミステイク。
荵がそれを射ない理由などない。
「とにかく、見せたいものがある」
あかねを呼ぶ天月音菜は校庭の見える廊下の窓辺に走った。
窓からは今だにそびえ立つ『魔壁』が不気味さを夜空に描く。ただ、一つ変化が。不気味さも不変でないという希望か、
はたまた気まぐれという不気味さか。不気味さを打ち消すのは、音菜の手に収まるチョココロネ。甘ったるそうで、香ばしい。
「見てくれ。『魔壁』に揺らぎが」
確かに音菜が指差す先はゆらゆらと白く光るもやが『魔壁』に掛かる部分が見える。あかねの記憶が確かならば、
閑花と荵の戦いまでには確認出来なかった事象だ。
「神が全知全能だと信じているのかい?」
「わかりませんっ」
「ぼくは見つけたんだ。ケモノツキたちの戦いが始まると、一時的に神の魔力の影響が薄くなることを」
確かに『魔壁』は神の力でそびえ立っているのだろう。だからか、ケモノツキたちが魔力を発動するにあたって質量保存の法則が
当て嵌まる……と、音菜は言う。
「神の目を盗め……か。そう思わないか」
あかねは音菜が髪をかきあげる姿に心奪われていた。そして、ちょっとの隙に荵と閑花のことを忘れかけていたことが恥ずかしくなった。
音菜は落ち着いた物腰で、チョココロネを一口かじる。
「わかるかい。あのもやは……外界と通じているのさ」
裏づけはチョココロネ。
学内では売っていない物だ。だとすれば、外界に出ることが可能だとする一筋の光とも言える。
- 96 :
- 紫煙
- 97 :
- 「もしかしてっ」
「今しかない。神の目を盗め!」
閑花。
荵。
そして、今だに出会わぬ迫。
ケモノツキに選ばれね運命を持とうとも、選ばれる宿命を持とうとも、あかねにとっては大切な人。
彼らを見捨てて自分だけが甘い蜜を吸えというのか。あかねの頬は赤らんだ。
「もやが薄らいできた。戦いが終結しているんだ。あと、ながくて5分……」
天月音菜が窓を背に俯くと、あかねはその姿を見ていることが辛くなってきた。
「あと4分」
体の奥が熱い。何も出来ない悲劇の王女を演じているつもりか。
なんの為の感情だ。哀れんでもらう為のちっぽけなプライドか。
「あと3分」
「行きますっ」
あかねは走る。首輪を外されたイヌのようだ。
廊下を駆け、階段をすっ飛ばし、パソコンルームに馳せ参じる。
扉を開けると消えかけた魔法陣の中、苦悶の表情でうずくまる荵の姿があった。
「久遠っ。今、外界に連れ出してあげるからっ」
夢中になると重さなど関係ない。荵をお姫様抱っこで部屋から連れ出し、消えかけるもやへ走る。
見慣れた校内がラビリンスにも似ている魔を誘う。今、あかねが抱えているのは少女だ。ケモノでもない、血の通った少女だ。
外界に連れ出し助かる保障はないが、このまま神に弄ばれるよりかはマシだ。
- 98 :
- あと2分。
校庭の土が見える。
玄関のコンクリートなど冷たくはない。
あと1分。
ざっざっと砂埃が闇に舞う。
だんだんとあかねの腕が荵の体重で痺れてきた。血が薄らぐ。
あと30秒。
「わおっ……」
荵が目を覚まして跳ね起きる。
あかねの腕が悲鳴を上げて、荵を大地に落としてしまった。二人共に外界へのもや目前で地面に倒れ込む。
大地の冷たさは神への反逆の罰か。
あと15秒。
音菜はチョココロネをもう一口。
「また、外界で会おう」
と、言葉を残した。
あと10秒。
「久遠っ。許してっ」
「わ、わおーっ」
あかねは両手で荵を脇から抱え上げ、もやへと放り投げた。
あと5秒。
もやに吸い込まれたかのごとく、荵はそのまま姿を消し、同じくもやも消えて、再び『魔壁』が厳めしくそびえ立っていた。
いいんだ。
これでいいんだ。
もう、神など信じない。
だけど、ちょっとは神を信じていいかも。だって、奇跡が起きたんだから。
あかねは息を切らせながら冷たい大地に両膝を付いていた。
#
『魔壁』が現れて二日目。
依然として校内は閑散としていた。
あかねは誰かの姿を求め、敬虔な信者に負けないぐらい再び校内を巡礼するように歩く。
閑花も。
音菜も。
そしてキツネ耳の少女・神乃狐も。
どこに失せた。
そしてわかっていることは、ケモノツキたちはお互いに戦うこと。ケモノツキにはならない体質もあること。
- 99 :
- 「すごいですね〜。烏丸も憧れちゃいます〜」
無い物ねだりは幸せの証。
昨夜の出来事をあかねから聞いた烏丸アリサは、のほほんとさた返事で事態を甘い綿菓子のようにぱくつく。
あかねが烏丸アリサと出会ったのは生徒会室でのことだ。立ち寄った生徒会室が紙屑で埋まっていた。黒い墨が滲んだ半紙が
辺り一面に転がって、今までの魔法の世界と違い、一種異様な背景だったからあかねも肝を潰した。
「上手く書けないんです〜」
烏丸アリサは書道の筆を摘んだまま、自分の鼻を擦っていた。まるでケモノツキたちの戦いなどなかったのような、
烏丸だけの時間が流れていた。
制服姿で床に正座しているアリサには、獣の耳や尻尾がない所からあかねはケモノツキではないと判断し、軽く彼女の肩を叩いてみた。
あまりにも緊張感のないアリサは百年の眠りから覚めたぐらいに驚いて筆を真っ白な半紙に落とした。書きかけの文字が台なしに伏す。
「ご、ごめんなさいっ。せっかく書き上げていたのに」
「あうー。……いいんです〜。ゴミにしようか迷っていた所なので、むしろ諦めがつきました〜」
アリサは惜しそうにただの紙屑と化した半紙を丸め、後ろ手でぽんと塵芥の海に葬った。
黒髪を束ねた後ろ姿は純和風、前にまわればハーフのような顔立ちがエキゾチック。というスペックを持つ烏丸アリサは、
自覚しているのか、否か、書道の世界に再びふける。
「烏丸。外界に出られるチャンスがあれば出てみたい?」
「どうかなあ〜」
「ケモノツキの姿のまま倒れると、消えてしまうんだけど」
「それは嫌ですね〜」
いまいちはっきりしないアリサに半ばあかねは呆れつつ、迷い多いアリサの筆を見守った。
息遣いすら手に取れる気迫のなか、あかねはアリサの異変に気付いた。筆を動かす間と休める間、明らかにアリサの体がおかしい。
アリサが息を吐いて筆を止める刹那、微かにイヌの耳や尻尾が生えているように目に映るのだ。
「もしかしてっ」
「はい?烏丸、おかしいですか〜?」
あかねの言葉の続きを想像するのは容易だ。
ケモノツキになりかけている。
#
「まだまだ。地球の新たな担い手はまだね」
キツネ耳の少女は、校舎の屋上の柵に腰掛けて、学園をぐるりと囲む『魔壁』を眺めていた。
戦いの終焉まで待ちきれない様子で流れゆく雲を数えた。
数えれば数えるほど、自分が過ごした年数がバカになってくる。ぴょんとスカートを翻し、柵から飛び降りた神乃狐は、
自分の尻尾を膨らませた。同時に胸の大きな二つのものがやゆんよゆんと揺らいでいた。
「黒咲あかねは……保険ですの。あれほどのケモノツキになり易い子はいないし。お楽しみは取っておかなければね」
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