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安価でオリキャラ作ってバトルロワイアル

非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part35


1 :2014/03/03 〜 最終レス :2015/03/05
1999年刑行された小説「バトル・ロワイアル」
現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。
基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前の登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などの発表は書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!
前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part33
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1360577722/
非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html

2 :
Part34が「datが存在しません。削除されたかURL間違ってますよ。」
と表示され消滅してしまっているようなので
Part35を立てました

3 :
投下します。

4 :
と思いましたが何か落ちてはいなかったようなので
元通りPart34をwikiとリンクさせました
何だったんだ?
お騒がせしてすみません

5 :
調べたら重ねで35立ててたようなので引き続きここを使って投下するようにしましょうか。
wikiやチャットに書いておきます。

6 :
了解です、落ちてると思っていたらまだ残っていたのか……

7 :
投下しまっす ちょっとえちぃです

8 :
36話 確信がもてるもの
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「アア……ウッ……ウゥ」
とある民家の一室、男女の洗い息遣いが響く。
ベッドの上で、裸になった二人の獣人の少女と少年が身体を交えていた。
ぐったりとした猫の少女、君塚沙也の顔に、狼の少年、ノーチラスは己の白く濁った液を大量に振り掛ける。
「んん……スゴイ量……スゴイニオイ……もう四回目なのに、良く出るねノーチラス君……絶倫だね」
「自分でもちょっと驚いてるよ……」
「私の身体……気持ち良かったでしょ?」
「ああ、凄く良かった……」
「ふふ、嬉しい」
満足そうに感想を述べるノーチラスを見て沙也もまた喜ぶ。
彼女にとって自分の身体で男が悦ぶ事は、自分の存在価値を再認識する事が出来るとても幸福な時だった。
「シャワー浴びてくる」
「ああ」
沙也は汗と体液に塗れた身体を洗いに風呂場へ向かう。
あの部分からノーチラスの精がとろりと、太腿を伝って流れ落ちる様がとても淫靡であった。
「はぁ〜」
沙也が部屋から出た後快楽の余韻に深く息を吐くノーチラス。
以前の殺し合いで寸での所で捨てられずに終わった童貞を捨てる事が出来た。
この殺し合いで出会った、テトに似た容姿の猫族の少女、君塚沙也。
淫らな彼女にリードされ、存分に彼女の身体を味わった。
豊満な胸を揉みしだき、舌を絡ませてキスをし、身体を舐め回し、激しく腰を振り、濃厚な種をたっぷりと注ぎ、振り掛けた。
自分でも信じられないぐらいに乱れた。とても気持ちの良い時を送れたとノーチラスは思う。
(こんな事ばかりしてられないってのは分かってるんだけど……また、ヤりてぇな……)
未だ興奮冷めやらないノーチラスであった。
そしてしばらくして、沙也が帰ってくる。
勿論全裸。ノーチラスは一応汗を拭いて服を着ていた。
「お待たせ」
「お帰り……は、早く服を着てくれ」
「またヤりたくなっちゃう?」
「そうだよ……早く」
「ふふふ、可愛いなぁ」
ニヤけながら沙也は自分の服を着始める。
わざとらしくあの部分や胸、尻を強調しつつ。
ノーチラスは必死に沙也の生着替えから目を逸らし興奮しないように自制した。
「着終わったよ」
「よし」
「ノーチラス君の結構大きかったねぇ……ズル剥けだったし……ヤりたい時はいつでも言ってね」
「……そ、そうだ、沙也、これからどうするかだけど」
沙也の誘惑を振り払う為に真面目な話を振るノーチラス。

9 :
「流石にずっとここに籠ってアレしてる訳にも行かないだろ?」
「そりゃあね……私も分かってるけど」
「俺は、そうだな……取り敢えずは、殺し合いに乗っていない奴を集めようと思ってる。
そうすればこの首輪を外す方法も見付かるかもしれない。
首輪さえ外せれば、主催者達に反抗するなり逃げるなりも出来るようになる筈だからな」
殺し合いに抗う為の自分の考えをノーチラスは沙也に話した。
「ノーチラス君も結構考えてるのね、ただの変態じゃなかったんだ」
「失礼だな! ……そう思われても仕方無いとは俺も思うけど」
「でも、その考えには賛同するよ。協力する」
ノーチラスの考えに賛同の意を示す沙也。
自分の身体を存分に味わってくれたノーチラスに対し、沙也は好意を抱いていた(但し恋愛感情では無い)。
勿論性的な目的で彼と一緒に居たいと言うのも会ったが、何にせよ彼の力になろうと思っていたのであった。
「ありがとう」
「それじゃ景気付けにもう一発どう?」
「それはやめておく」
「ケチ!」
何かと行為に持っていこうとする沙也に自分の身体が保つのがどうか心配しながらも、
協力者が得られた事をノーチラスは心の中で喜んでいた。

【黎明/F-5住宅地佐々木家】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]疲労(中)
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラス君と行動。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也と行動。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。

◆◆◆

10 :
ノーチラスと沙也が乳繰り合っている民家からそう遠くない路上。
「ちと、疲れたな……」
古びた西洋刀を持った学生服姿の少年、油谷眞人が呟く。
古城を後にして東の住宅地へとやって来てしばらく彷徨いていたが、今の所誰も居らず足に疲労が溜まる一方であった。
「適当な家で休むか……」
眞人は適当な民家で休憩を取る事にし、近くに有った「島田」と言う表札の掛かった家へと入って行った。

【黎明/F-5住宅地島田家前】
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:生き残る為に殺し合いに乗る。
        1:民家でしばらく休む。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※君塚沙也とノーチラスの居る佐々木家からはそれ程離れていません。
    ※土井津仁の容姿のみ記憶しました。

11 :
投下終了です

12 :
投下&スレ立て乙です
ヤリあってる声が漏れてピンチになりそう(小並感)

13 :
投下します

14 :
37話 それぞれの思い出映し出す
「おい、テトのねーちゃん」
「ん……ん」
少年の声と揺り起こされる感覚で、猫獣人の少女テトは目を覚ます。
熟睡していたようで、口からは涎が垂れ落ち、座卓をべっとりと汚してしまっていた。
「ああ、小鉄君……」
「良く寝てたみてぇだな……すげぇ涎垂れてるぞ、拭けよ」
「え? あらら……」
小鉄に指摘されてテトは備え付けの布巾で己の口元と座卓の上を拭く。
「一通りこの旅館の中を見て回ってみたけど、どうやら俺達以外は誰も居ねぇみてぇだ」
「そう……あ、そうだ、小鉄君」
「ん?」
「さっき獣人の事、知らないって言ってたけど……」
テトは気になっていた事を小鉄に尋ねる。
小鉄は獣人の存在を知らないと言っていたが、テトの生きる世界においては獣人は人間にとって最早身近な存在になっており、
少なくとも小鉄のような小学生の年齢で「獣人を知らない」と言うのは考え難かった。
しかし、しばらく小鉄から話を聞いていく内、段々とその理由が分かってくる。
小鉄から聞かされた西暦、歴史、文化――――同じ所も有るが違う所の方が多い。多過ぎる。
それらの事から導き出される答えは。
「……これは……でも、そう考えるしか」
「どうしたんだ?」
「……私と小鉄君……住んでいる『世界』が違うのかも」
「?? どう言う事だ?」
テトが言い出した事が理解出来ず聞き返す小鉄。
「つまり、私の居る世界と小鉄君の居る世界は全く違う異世界だって事……パラレルワールドって言えば良いのかな」
「……」
やはり理解出来ない小鉄。
彼の思考能力ではテトの言いたい事を推し量るのは困難のようだった。
テト自身も荒唐無稽な事を言っているかもしれないと思ったが、小鉄が虚言を吐いているようにも思えず、
それ以外に説明する手立てが見付からなかった。

15 :
「悪い、俺には難し過ぎて良く分かんねーや」
「無理も無いわ……自分でも訳分からないと思うし……でも、
それ以外に上手く説明出来ないもの」
「まあ、でも、今はそんな事どうでも良いんじゃね?
世界がどうのこうのってよりもさ、この殺し合いで生き残る事を考えた方が良いと思うぜ」
「そうね……」
小鉄の言う通り、彼の世界と自分の世界の違いを追求した所で答えなど出ないであろうし意味も無いだろうから、
殺し合いの中で生き延びる為に思考した方が自分達の為になるだろうとテトは思う。
「俺はこれから友達ののり子達を捜しに行こうと思ってるけど、ねーちゃんはこれからどーすんだ?」
「私は……特に決まってないや。どうしようかなあ」
「ねーちゃんはこの殺し合いに友達は呼ばれてねぇのか?」
「……」
小鉄の問いにテトは少し間を置いてから答えた。
その表情は微かに険しくなっていた。
「クラスメイトは何人か居るけど、特別仲の良い人は居ないから、進んで捜そうとは思ってない」
太田やト子達、自分を辱めた連中や裏切った友は殺してやりたいとは思えど進んで捜し出そうとも思わなかった。
ラトに関しては未だに複雑な想いでどうするか決めかねていたが、結局は捜す気になれない。
その辺りの事情を詳しく説明するのは小学生である小鉄には重過ぎるとテトは思い、簡潔に言うに留めた。
小鉄も特に問い詰めるような事はしなかったが、テトの表情や声の様子から何か事情はあるであろう事は察した。
「そうなのか……けど、ねーちゃん一人だろ?」
「うん」
「じゃあ、俺と一緒に行かねぇか?」
「え?」
急な申し出に少し驚くテト。
小鉄からすれば、テトはこの殺し合いにおいて初めて出会った、
殺し合いに乗っていない(テト本人は一度もそう言っていないが彼女の言動から小鉄はそう判断した)参加者であり、
また、どことなく放っておけない気がしていた、それ故に共に行かないかと提案した。
「良いの?」
「ねーちゃんが良ければ俺は全然構わねぇんだけど……」
「……」
しばしテトは考える。
別段仲間が欲しい訳では無いが、断る理由も無い。
一瞬、仲間に誘う振りをして隙を突いて襲おうとしているのではとも邪推したが、
それならば自分が熟睡している所をわざわざ起こしたりはしないだろう。

16 :
「……分かった。小鉄君、一緒に行っても良いかな」
「よし決まりだな。宜しくなねーちゃん」
「うん、こちらこそ」
テトは小鉄の言葉を信じ、提案を呑む事にした。
(取り敢えずテトねーちゃんを連れて行くとして……のり子達はどこにいんだろうな)
心の中で小鉄は今どうしているか分からない友達や担任教師の事を思う。
西川のり子、鈴木フグオ、土井津仁、金子翼、春巻龍。
自分と同じくらいタフなのり子、仁はまだ大丈夫だとは思うが、フグオや金子先生、春巻はどうか。
今まで、命の危機に瀕した事は何度か有った、だが結局は生き延び、すぐに元通りの生活に戻った。
だが、今回ばかりは生きて帰れるかどうか分からない。
(畜生……今度ばかりは、今までと違う……早くのり子達を捜さねぇと)
こんな不安は、今まで生きてきて初めてではないか、と、小鉄は思った。

【黎明/E-6温泉旅館客室】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:今の所は殺し合う気は無い。
       1:小鉄君と行動する。
       2:太田達及び貝町ト子は殺してやりたい。ラトは複雑。他のクラスメイトについては保留。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
    ※大沢木小鉄が自分とは別世界の人間だと判断しました。
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、ローバーR9の弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。のり子達を捜す。
       1:テトのねーちゃんと行動。
       2:俺達、生きて帰れるのか?
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※テトが別世界の人間だと言う事を、余り理解出来ていませんが、何となくは分かったようです。

17 :
投下終了です。

18 :
投下します。

19 :
38話 うさぎは寂しくても死にません
兎の獣人の少女、ソフィアはA-3エリア西南端に存在する古い木造の平屋民家に身を潜めていた。
錆が浮き出たトタン屋根、木枠の戸や窓等、かなり年季の入った家である。
「面白い物何も無いなぁ……」
暇潰しに面白そうな雑誌でも無いかと家の中を漁っていたソフィアだったが、
この家の住人はお年寄りだったようで、有るのは歴史小説やら医学の本やら訳の分からない宗教本ばかり。
ソフィアのような若者が満足するような本は置いていないようだった。
「何もねーよ……もういいや」
諦めて居間の畳の上に寝転がるソフィア。
壁に掛けられた、これまた古そうな木目調の日付と曜日が表示されるタイプの大きな壁時計を見ると、
殺し合いが始まってからおよそ四時間が経とうとしていた。
最初、神社にて野原みさえと交戦し、逃亡して以来ソフィアは誰とも遭遇していない。
彼女自身は特に仲間を集めている訳では無いし、
危険人物と遭遇しないでいるのだから、特に不都合は無いし幸運だろうとソフィアは思う。
完全に発狂していたみさえが今どこでどうしているのかは知らないが、もう二度と会いたくは無かった。
「あんまり進んで動いてもしょうがないわね……。
しばらくこの家に厄介になろうかな」
現在居る家にしばらく身を潜めていようと決め、ソフィアは寝転びながら大きく身体を伸ばした。

【黎明/A-3西南端部新今家】
【ソフィア@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、睡眠薬@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。無理な戦いはしない。
        1:しばらく民家(新今家)に身を潜める。
        2:武器になりそうな物を調達する。
        3:野原みさえには二度と会いたくない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。

20 :
投下終了です。短いです。

21 :
投下します。ちょっと長くなったので前半後半に分けます。
前半「さよならありがとう、この次に逢う日には」

22 :
39話 さよならありがとう、この次に逢う日には
森の中を歩き続けている野原しんのすけと北沢樹里。
二人が出会ってから今まで、殺し合いに乗っている者、乗っていない者、
或いは家族、クラスメイト、いずれにも二人は遭遇していない。
「明るくなってきたわね」
樹里が空を見上げて言う。
空は白み、日の出が刻一刻と近付いている事を示す。
「おっ、樹里おねえさん」
「どうしたの? しんのすけ」
「あそこに建物が見えるゾ」
しんのすけが指差す先には確かに建造物が見えた。
木々に隠れたそれは民家のように見える。
「休憩出来そうね……行こう」
「ほっほーい」
長時間、足場の良いとは言えない森の中を歩いてきた二人は疲労していた。
故に民家が有るのなら是非そこで休みたいと思っていた。
しかし、建造物に近付いた二人が目にした物は。
「うおー、ボロボロだゾ」
「うわぁ……これは」
朽ち果てた木造の民家――廃屋であった。
ガラスは所々割れ、庇(ひさし)は腐って落ち掛け、屋根から草まで生えており、
かなり長い事放置されている事を窺わせる。
二人は中を覗いて見るが内部も酷い有様で、黴と埃の臭いが鼻を突き、
畳敷きの床は腐って波打っている上に本や衣類の残骸だらけ、天井から板がカーテンのように垂れ下がり、
箪笥や本棚がひっくり返ってると言う有様。
壁に色褪せボロボロになったカレンダーが掛かっていたが、何と1982年と書かれている。
とても落ち着いて休めそうな状態では無い事はすぐに分かった。
辺りを良く見れば、同じような廃屋が幾つも建ち並んでいた。
傾いた木製の電柱や、草に埋もれた錆だらけの廃車等も確認出来る。
「ここは……廃村ね」
「はいそん?」
「人が住まなくなった村の事よ。
そう言えば森の中に廃村が有るって地図に描いてあったっけ……。
何にしてもこの家はちょっと休めそうに無いね……他にも家が有るし、もうちょっと状態の良い家を探そう、しんのすけ」
「分かったゾ」
二人は休憩が可能な程度に状態の良い廃屋を探し始める。

23 :
◆◆◆
「ここは……」
倉沢ほのかは廃村へとやって来た。
白んできた空の下、廃屋群がぼんやりと薄暗い視界の中浮かび上がる。
「ここに居るかなぁ」
憎き北沢樹里を捜し出すべく、ほのかは廃村内へと足を進める。
長い間手入れのされていない道は草によって侵食され、消えかかっている有様で、
お世辞にも歩きやすいとは言い難かった。
それでもほのかは何かに取り憑かれたように歩みをやめる事は無い。
一刻も早く、北沢樹里から裕也を取り戻さなくては。
ほのかの頭にはそれしか無かった。
(どこに居るのかなぁ……北沢さん……)
雑草を踏みしめながら、ほのかは北沢樹里の姿を捜し続けていた。
そして。
「……!」
ほのかの足が止まる。
前方、少し離れた所に、二つの人影を発見した。
片方は恐らく小さな子供、もう片方は、まだ遠目で暗くて良く分からないが、自分と同じ制服を着ている風に見えた。
樹里の他にも女子生徒は何人か居る、だから樹里では無いのかもしれないが、接触する価値は有る。
「あれは……誰なのかな」
ほのかは見付けた二人に向かって歩いて行った。
◆◆◆
「どこもかしこもボロ過ぎるんだけど……とても休める状態じゃない」
「オラもう疲れた……」
まともに休めそうな家が見付からず、辟易する樹里としんのすけ。
かと言って外で休むのもかなり無理が有る。
どうしたものかと考える樹里。
「お?」
その時、しんのすけがある物を発見する。
それは、こちらに向かって歩いてくる人影だった。

24 :
「おねえさん、誰か来るゾ」
「え?」
しんのすけに言われ、樹里が確認する。
まだ距離が離れていて、薄暗い為顔までは良く分からないがどうやら自分と同じ制服の、女子生徒のようだった。
「おねえさんと同じ服着てるゾ」
「……」
その女子生徒が次第に、顔が分かる距離まで近付いてくる。
そして、樹里がその女子生徒の正体に気付くのと同時に、女子生徒から声が発せられた。
「ようやく見付けましたよ、北沢さん」
「……倉沢、さん」
それは因縁深き、倉沢ほのかだった。
「おお! また綺麗なおねえさん!」
しんのすけは樹里に続いて現れた「綺麗なお姉さん」に興奮して目を輝かせたが、
直後に、ほのかから発せられているただならぬ雰囲気を感じ取り我に返る。
ほのかは微笑みを浮かべていたが、樹里にはほのかから自分に向けられる殺意、憎悪がはっきりと読み取れた。
「貴方が生き返っているなんて……あんなに念入りに殺したのに」
「……」
「まあ、私も死んだんですけどね……いや、そんな事はどうだって良いです……。
……裕也君はどこですか? 北沢さん」
「は?」
困惑する樹里。一体何の事か分からなかった。
この殺し合いに、ほのかの捜す「海野裕也」は居ない筈。
そもそも、海野裕也は、ほのかが殺してしまったではないか。
誤殺だったとは言え、それは揺るがない事実だ。
「ちょ、ちょっと何を言っているの? ゆ、裕也はこの殺し合いには居ないじゃない。
それに、裕也は、倉沢さん、貴方が」
「ああ、やっぱり、やっぱり隠すんだ」
「いや、ちょっと」
「分かってましたけどね。分かってましたよ。うふふふふふふふふふふふふふふ」
樹里が反論を試みるもほのかは聞く耳を持たない。
その様子から彼女が正気では無い事は明らかだった。
「お、おねえさん!」
ただならぬ気配に居ても立っても居られなくなったしんのすけが意を決してほのかに話し掛ける。

25 :
「何ですか?」
「樹里おねえさんは何も隠して無いし嘘なんて吐いてないよ!
オラと樹里のおねえさんはずっと一緒だったけど、ここに来るまで誰とも会ってないゾ!」
「しんのすけ……」
力強い声で、しんのすけは樹里を庇った。
それに対し、ほのかは無表情だったが、やがてしんのすけに向かって口を開く。
「しんのすけ君、でしたね。私は倉沢ほのかと言います。
……貴方は確か、見せしめで殺されたあの赤ちゃんの」
「そうだゾ。ひまのお兄ちゃんだゾ」
「……しんのすけ君。貴方は知らないでしょうけど、貴方と一緒に居るその人はとても酷い人なんですよ」
「え?」
「北沢さんは、私から大切な人――裕也君を奪ったんですよ。
しんのすけ君、貴方の妹と同じぐらい、私にとって大事な人だった、裕也君を、
この女は、寝取って、私から! 奪ったの!!」
突如激高したほのかにビクッと身体を震わせ驚くしんのすけ。
樹里はとてもばつの悪そうな面持ちである。
ほのかの言っている事は事実――――愛餓夫に足を撃たれて陸上選手になる夢を失い、
自暴自棄になり、ほのかの恋人・裕也を誘惑し、行為に及んでしまった。
「裕也君と一緒に島から出る為に、一生懸命頑張ってたのに。
間さん、壱里塚君、久世さん、神崎君、長谷川さん、吉良さん、太田君。
みんなみんな殺して……もうちょっとだったんだよ?
ねえ、裕也君はどこ? 北沢さん、答えて、答えて、答えて、答えて、答えて!」
もはや丁寧口調すらかなぐり捨てたほのかはまくし立てながら装備している56式自動歩槍の銃口を、
樹里としんのすけの方に向ける。
このままではまずいと樹里はどうにか打開策を講じようとする。
だが、自分が蒔いた種とは言えほのかはもうまともに対話出来そうに無い。
その時、しんのすけは樹里もほのかも思いも寄らなかった行動に出た。

「ケツだけ星人!! ぶりぶりー! ぶりぶりー!」
「「は?」」

尻を丸出しにして言葉で説明するのが困難な奇妙な踊り(?)を始めたのだ。
完全に呆気に取られる樹里とほのか。
一瞬、彼の気が狂ってしまったのでは無いかと樹里は思ったが、
目の前のほのかがしんのすけの動きに気を取られて自分から目を逸らしている事に気付き、しんのすけの真意に気付く。
(そう言う事ね! しんのすけ!)
すぐさま樹里は行動を起こす。

26 :
「うらぁっ!!」
ほのかに向かって突進し、渾身の体当たりをお見舞いした。
不意を突かれたほのかは簡単に突き飛ばされその身体を強く地面に叩き付ける事となった。
その際に持っていた銃も手から離し落としてしまう。
「しんのすけ! 逃げるよ!」
「おお!」
樹里はしんのすけを小脇に抱え、全速力で森に向かって走り出す。
以前の殺し合いでほんの序盤でしか発揮出来なかった、自慢の脚力を思う存分に発揮する。
ほのかは身体の痛みを堪えながら立ち上がり、落とした56式自動歩槍を拾い上げ、
逃げて行く二人に向けて引き金を引いた。
その表情は鬼そのものだった。
ダダダダダダダダダッ!!
発砲炎により辺りが断続的に明るくなり、無数の銃弾が銃口から放たれるが、樹里は止まる事無く森の中へと消えて行った。
「逃げた……! ああ、もう!」
悔しさの余り地団駄を踏むほのか。
追い掛けようとも思ったが、樹里の足の速さは知っていた。
自分では到底追い付けないだろうと、追跡する事は諦める。
「まあ、良いです……逃がしませんよ北沢さん。
必ず、必ず再び捜し出して、次は逃げられないように両足を撃ち抜いてあげます。
絶対、絶対に、裕也君を取り戻してみせますから」
樹里達が走り去った方向を見据えてほのかは自分の決意を述べた。
彼女は、狂った心がそれに拍車を掛けていたのかもしれないが、どこまでも海野裕也一筋で、
彼の事になれば見境が無くなり、周りが見えなくなった。
それ故に、背後から忍び寄る、千切れた電気コードを持った人狼の青年には気付かなかった。
人狼の青年は素早くほのかの細い首に電気コードを巻き付け、思い切り絞め上げた。
突然の事にほのかはパニックに陥り、苦しみながら首に巻き付いたコードをどうにかしようとするが、
大人の男の力で絞め上げられるコードは少女の力では最早どうしようも無く。
涙を流し、泡を吹き、小水を漏らし、激しくのたうち回った末に、ビクビクと身体を痙攣させ、ほのかは死んだ。
しかし彼女にとってはこれで良かったのかもしれない。
愛する裕也の居る世界へと今度こそ旅立てたのだから。

【倉沢ほのか@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  38人】

◆◆◆

27 :
人狼の青年、コーディは森の中を歩き、廃村へ辿り着いた。
そして、黒髪の少女が、茶髪の少女と小さな子供の二人と相対している場面に出くわす。
コーディは隠れて三人の様子を窺った。
黒髪の少女は突撃銃を持っており、二人組の方も何の武装を持っているか分からない。
今持っているバール、ステーキナイフ、電気コードで三人一気に殲滅出来ない事は無いかもしれないが、
不確定要素も多く、無理せずにしばらく様子を見る事にしたのだ。
そして突然小さい子供が、尻を丸出しにして奇声を発しながら奇妙な踊り(?)を始めた。
何をしてるんだとコーディは首を傾げたが、程無く茶髪の少女が黒髪の少女を突き飛ばし、子供を脇に抱えて走り出した。
どうやら子供は黒髪の少女の気を引こうとしたらしい。
黒髪の少女は逃げていく二人に向けて発砲したが、仕留め損なったようで、悔しそうに地団駄を踏んでいた。
コーディは今がチャンスだと思った。
一人になった黒髪の少女に背後から忍び寄り、千切れた電気コードでその首を絞めた。
少女は激しく暴れたが、コーディの凶行を阻むには至らず、程無く絶命した。
「結構可愛いな」
今は泡を吹き、涙を流し、顔も鬱血し、失禁までしており無惨な様となってはいたが、
良く良く見れば黒髪の少女はかなりの美少女であった。
ならばR前に身体を愉しんでおけば良かったとコーディは少し残念に思った。
「悪いね、俺も生き残りたいからさ」
コーディは少女が持っていた突撃銃と、デイパックの中に入っていた予備のマガジンを回収した。
強力な武器が手に入り喜ぶコーディ。
「さて、長居は無用だな、ここから離れよう」
先程の銃声を聞き付け人が集まってくるかもしれない。
長い間歩いて疲労も溜まっているので戦闘は避けたかったコーディは、コンパスを取り出し、
東南の方角を目指し、再び森の中へと入って行った。

【早朝/D-1廃村】
【コーディ@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(12/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、バール(調達品)、ステーキナイフ@自由奔放俺オリロワリピーター、
     千切れた電気コード@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:東南に向かう。どこかで休みたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※北沢樹里と野原しんのすけの容姿を大まかに記憶しました。
    ※千切れた電気コード@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーターは倉沢ほのかの首に巻き付いたままになっています。

【後半へ続く】

28 :
投下終了です。後半は絶賛執筆中です

29 :
後半「さよならありがとう、もっといいこになってるから」投下します。

30 :
39話後編 さよならありがとう、もっといいこになってるから
北沢樹里は、倉沢ほのかに対し、海野裕也を奪った事を詫びたいと言う気持ちが確かに有った、が、
実際に彼女と相対し、その殺意と狂気に触れた結果、謝罪する事は出来なかった。
ただただ、生き残る為にほのかから逃げる事しか出来なかった。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
森の中、廃村から走ってきた樹里は息を切らしながらも立ち止まり、背後を振り返る。
ほのかは追ってきていない。どうやら振り切る事に成功したようだ。
「ハァ、ハァ……やったよ! しんのすけ! 逃げられたみたい」
脇に抱えたしんのすけに嬉しそうに話し掛ける樹里。
「うん、良かったゾ……」
それに返答するしんのすけ。しかしその声色は弱々しかった。
「……しんのすけ? どうかしたの……ッ!?」
明らかに様子のおかしいしんのすけを地面に立たせようとした所、しんのすけは崩れ落ちた。
上着の赤いシャツの胸元に穴が空き、周囲の色が異常に濃くなっている。
それが血液だと言う事に気付くのに、そう時間は掛からなかった。
「ゲホッ、ゴホッ!」
口から大量の血を吐くしんのすけ。
「しんのすけ!? しんのすけ!! ああ、何で!?」
狼狽する樹里。なぜしんのすけがこんな事になっているのか。
傷は背中まで貫通していた。いや、背中から胸に貫通したのだろうか。
先程、逃げる時にほのかによる発砲が有った。
樹里には当たらなかった。だが、脇に抱えていたしんのすけには当たった。
それ以外にこの傷の原因は考えられなかった。
「どうしよう……血を止めなきゃ……でも……!」
とにかく血を止めなければと思ったが、そのような手当が出来る道具等持ち合わせてはいない。
「お、おねえ、さん、オラ、う、撃たれたんだよ、ね?
な、何だか……変な、感じ、だゾ」
「喋っちゃ駄目!」
しんのすけが言葉を発する事を制止する樹里。
だが、しんのすけは無視して続けた。
「オラの……ケツだけ星人、おねえさんの役に、立って……良かった、ゾ。
おねえさん……怪我は、無い?」
「大丈夫だよ! 私はどこも怪我してないよ! アンタのお陰だよ、しんのすけ!」
「……オラ……死ぬんだね?」
「……っ」

31 :
そんな事無い、と樹里は言いたかった。
だが、しんのすけの様子を見れば、医療に関して素人の樹里でももう長く無い事は明白であった。
「……オラ、ひ、ひまを殺した、あの、おにいさん達を、許せないゾ……。
だから、父ちゃんや、母ちゃんや、シロをさ、捜し、て、あの、おにいさん達、を……やっつけ、て、
一緒に、お家に帰って……ひまの分まで、生きようって、お、思ったん、だけ……ど、も、もう、駄目、みた、い」
「そんな……そんな……」
「おねえ、さん……お願いが、有るんだゾ」
「……何?」
溢れ出そうになる涙を堪えて樹里は、遺言になるであろうしんのすけの言葉に耳を傾けた。
「オラの、家族に、会ったら……一緒に帰れなくて、ゴメンって……。
でも、ずっと、悲しまない、で……頑張って、生きて帰ってって……。
今まで、一杯、一杯、イタズラしたりして、ゴメンって……次は、きっと、いいこにうまれるからって」
しんのすけの目から大粒の涙が溢れる。
死ぬ事への恐怖、無念、寂しさも勿論有ったが、それよりも、
大好きな家族を悲しませる結果となった事への罪の意識の方が強かった。
それが、大粒の涙となって現れたのだ。
「分かったよ」
樹里はもう、それだけ言うのが精一杯だった。
「……ありがとう……おねえ……さん……」
安心したのか、しんのすけは死の苦しみが襲う中、微笑みながらお礼を言った。
程無く、しんのすけは目を閉じ、やがて、息が絶えた。
「……しんのすけ」
樹里はしばらく呆然としていたが、やがて、声を殺して泣き始めた。
ませてはいたが、その明るく朗らかな、そして、妹の死を乗り越え家族と共に生き残ろうとした強い心に、
一度死を迎えて気分が沈んでいた樹里は救われていた部分が有った。
時間にしてみれば、五時間程にも満たない、短い時間ではあったが、確かに彼は「仲間」だった。
以前の殺し合いでは一度も手に入れられなかったもの。
失っていた大切な何かを、しんのすけは思い出させてくれたのだ。
静かな森の中に、くぐもった少女の嗚咽が響いていた。

……
……

32 :
父ちゃん、母ちゃん、シロ、ごめんなさい。
オラは、ひまの居る天国へ行きます。
みんなを捜して、一緒に帰ろうと思っていたけど、もう、それも出来なくなっちゃった。
オラの最期の言葉、樹里のおねえさんにみんなに伝えて貰うように頼んだゾ。
樹里おねえさんなら、きっと約束を守ってくれる。
鉄砲を持った怖いおねえさんから逃げる時、オラを脇に抱えてくれた、優しいおねえさんなんだゾ。
みんな、オラは死んじゃうけど、いつまでも泣いてちゃ駄目だゾ。
泣いてたって、オラも、ひまも帰って来ないんだから。
だから、頑張って、お家に帰る方法を探してね。
みんな、色々イタズラして困らせたりしてごめんね。
それで、こんな事言うのも、何だけど。
オラは、楽しかったゾ。
父ちゃんと母ちゃんの子供に生まれて、シロに出会えて、ひまのお兄ちゃんになれて。
本当に、本当に楽しかったゾ。
また、生まれ変わっても、オラは、
父ちゃんと、母ちゃんと、シロと、ひまわりと、一緒に、なりたい。
また、みんなで、いっぱい、いっぱい、たのしく、すごして――――。

【野原しんのすけ@アニメ/クレヨンしんちゃん  死亡】
【残り  37人】

【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)、深い悲しみ
[装備]出刃包丁@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        2:しんのすけ……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞きました。

33 :
投下終了です。

34 :
投下します。

35 :
40話 回答しない問題みたい
D-4エリア市街地。
明るくなってきた街中を、遠野、稲葉憲悦の二人は歩いていた。
「先輩達見付からないなぁ……今どこで何してるんだろう」
ひで以外のクラスメイト、特に野獣先輩こと田所やKMR、MUR達と未だ再会出来ない事を遠野はぼやく。
その今の所唯一再会したクラスメイトであるひでは殺し合いに乗っていて、憲悦共々殺されそうになった。
殺し合いが始まり大分時間が経つが、果たして野獣先輩達はまだ生きているのだろうか。
遠野の不安は募る一方であった。
「遠野、そろそろどこかで休もうぜ。ずっと歩いてきて疲れちまったよ」
そんな遠野をよそに、憲悦は休憩しようと言い出す。
知人の心配する遠野の心情は勿論憲悦も察してはいたが、所詮は他人事。
そこまで気遣える程彼は繊細では無かった。
「そうですね……後二時間程すれば放送も有りますし……どこかで休みましょう」
本心ではまだ捜索を続けたかった遠野だったが、同行者である憲悦の意見を無碍にも出来ない。
また、放送の時刻も近付いて来ている。放送を聞くのなら外より中の方が比較的落ち着いて聞けるだろう。
そう考え、遠野は憲悦の言う通り、適当な家で休息を取る事にした。
「ん?」
「どうしたんですか?」
「足音だな、近くに誰か居るぜ」
憲悦の言に遠野が耳を澄ませると確かに足音が聞こえた。
すぐ目の前に十字路が有り、足音は遠野達から見て左手側の道から聞こえる。
つまり真っ直ぐ行けば足音の主と鉢合わせになる。
問題は足音の主が殺し合いに乗っているかどうかだが。
「どうする? 遠野」
「……接触してみましょう」
遠野は足音の主とのコンタクトを試みる事にした。
もしかしたらクラスメイトかもしれないし、もし向こうが乗っていなかったとすれば逃げ出すといらぬ誤解を招きかねない。
「乗ってたらどうすんだよ」
「逃げましょう」
「……」
遠野の決断に不安を覚えつつも、憲悦は遠野に従う事にした。
思い切って、足音の聞こえる道路へ身を乗り出した。
乗り出すと同時に、遠野は持っていたモーゼルKar98kを構える。

36 :
「!」
足音の主――セーラー服姿の黄金色の毛皮を持った狐獣人の少女は、突然出てきた遠野と憲悦の二人に驚いた表情を見せる。
その表情を確認した遠野は銃口を地面に逸らし、少女に向かって話し掛けた。
「……驚かせてすみません、僕達は、殺し合いには乗っていません」
「ほ、本当?」
「本当です。警戒の為に銃を向けてしまいましたが……すみません」
「……私も乗ってない」
狐少女――フラウも遠野と同じように戦意を否定した。
「それは良かった」
「おいおい遠野、あっさり信じちまって大丈夫かよ」
「乗っているなら問答無用で襲い掛かってくるでしょう」
疑念の晴れない憲悦を説得する遠野。
無論これだけで安心材料になるかと言えば厳しいのは彼も分かってはいたが、かと言って、
確実に殺し合う気が無い証拠を見せろと言った所でそれはまず不可能であろう。
憲悦はまだ腑に落ちない様子だったが疑ってばかりいても仕方無いと思い、一先ずフラウを信じる事にしたが、やや高圧的な態度を取った。
「あの……」
「おい姉ちゃん、取り敢えず信じてやるけど変な真似すんなよ? 俺ら一度殺されそうになってるからな」
「稲葉さん……すみません、あの、僕は遠野って言います。こちらが同行して貰っている稲葉さん」
「おう」
「私はフラウ……」
取り敢えず殺し合いに乗っていない事は信じて貰えたようだ、とフラウは安堵する。
彼女にとって遠野と憲悦はこの殺し合いで二番目に遭遇した参加者であった。
一番目は警察署で出会った春巻龍である。
そう言えば今頃春巻はどうしているだろうと、フラウは少し思った。
「適当な家で休もうと思ってたんだが、お前も来るか? フラウ」
「良いの?」
「良いだろ? 遠野」
「フラウさんが良ければ……」
「それじゃ私も一緒に行くよ。色々、話したい事も有るし」
折角出会った殺し合いに乗っていない参加者、情報交換をした方が得策だろうとフラウは判断する。
先程憲悦が言っていた「殺されかけた」と言う話も気になった。
フラウ自身はまだ危険な目には遭っていないが、殺されかけたと言う証言はやはり殺し合いは進行しているのだと言う事をフラウに再認させる。
(そう言えば前の時も、ケトルの時まで、誰かと交戦したりはしなかったなぁ)

37 :
「それじゃそこの家に入りましょう。フラウさん……フラウさん?」
「え? あ、ごめんなさい……今行く」
遠野、憲悦、フラウの三人は「天川」と言う表札の掛かった民家へと入った。

【早朝/D-4市街地天川家】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]疲労(中)
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:先輩やクラスメイトを探す。
        2:稲葉さんと行動する。フラウちゃんと情報交換する。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
    ※稲葉憲悦が「リピーター」である事を知りました。
【稲葉憲悦@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]疲労(中)
[装備]自動車用緊急脱出ハンマー@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:積極的に殺し合う気は無い。寛子を探す。
        1:遠野と行動する。民家で休む。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
【フラウ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]筋肉のデザートイーグル(7/7)@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式、デザートイーグルの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:遠野君、稲葉さんと情報交換する。
       2:ゲームに乗っていない、かつ能動的に反抗する意思の有る参加者を探す。
       3:クラスメイトについては保留する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。

38 :
投下終了です。

39 :
投下します。

40 :
41話 BAD COMMUNICATION
柏木寛子と西川のり子の二人は、D-3エリア南端部に存在する、D-4エリア市街地へと続く橋を渡っていた。
病院にて触手獣人少年による襲撃を受け、同行者だったレナモンが命懸けで二人を逃がした。
レナモンの安否を気にしつつも、彼女の意思を無駄にしない為に寛子とのり子は前に進む。
「街中なら、隠れられそうな場所も多いでしょ」
「せやな。もうウチ足疲れてもうたわ……早く隠れられる場所探そ、寛子ねーちゃん」
「そうね」
二人は市街地へと足を踏み入れる。
幾つか車が路肩に停められ、店舗はシャッターが閉じられている所も有れば開店時同様の状態で放置されている所も有った。
とても静かな、不気味な表通りを寛子とのり子は歩いて行く。
その二人を、路地の物陰から窺う男が居た。
図書館にてクラスメイトとその同行者を殺害しようとしたが、返り討ちに遭い殺し損ねた、ひでである。
襲った二人を取り逃がした後、しばらく図書館内を彷徨いていたひでだったが、
図書館にはもう誰も居らず、また他に人が来る気配も無かった為、図書館を後にし市街地へと向かった。
そして今に至る。
(よーし、今度はあの人達だ……)
装備しているFN P90を携え、ひでは路地裏を飛び出し、足音を立てないようにして二人に背後から近付く。
路肩に幾つも停められた自動車に隠れながら、少しずつ、確実に銃弾が当てられる距離まで接近する。
この時、寛子の少し前方をのり子が歩くような形になっていた。
そして、ひでが適度な距離まで近付き、いよいよ二人に向けて銃口を向ける。
後は引き金を引くだけだ。ひではそう思った。
殺人への抵抗感など最早全く沸き起こらなくなっていた。
「あっ、そうや寛子ねーちゃ……」
のり子が何らかの話を振ろうと寛子の方に振り向いた。
その時、表情が凍り付いた。
寛子の背後に、車の陰から銃と思しき物を構える男の姿が見えたのだ。
「のり子?」
のり子の異変に気付いた寛子が声を掛けた。
直後、のり子は寛子の身体を押し退けた。そして手に持っていた自分の支給品である手斧をその男に向かって投げ付けた。
それと同時に、男――ひでが引き金を引いた。
どうして自分がこんな行動を取ったのか、のり子は自分自身でも分からなかった。
考えるよりも先に身体が動いていたのだ。
その気になれば、寛子を見捨てて自分だけ逃げる事だって出来た筈、だがその気にならなかったからこの行動を取った。
元々縁もゆかりも無い他人だったにも関わらず殺し合いと言う状況下で一緒に行動してくれたと言う事実が、
自分だけ逃げると言う選択肢を咄嗟の判断でのり子に取らせなかったのかもしれない。

41 :
結果、放たれた銃弾の雨に、のり子は晒された。
胸と首と頬と左目の辺りに穴が空き、肉片と鮮血がアスファルトに飛び散り、のり子の意識は消えた。
一方のひでも無傷では済まなかった。
のり子が投げ付けた手斧が彼の額に当たる。
「あ゛っ!!」
その衝撃で後ろに倒れるひで。銃撃も弾が切れた事により中断される。
手斧は刺さりはしなかったものの、額が割れドクドクと血が溢れ出す。当然激しい痛みも伴った。
「……のり、子」
のり子に命を救われる結果となった寛子はしばし状況が飲み込めず呆然としていたが、やがて状況を把握すると、
持っていたTNOKの拳銃(通称)を、のり子を撃った男の方に向けて構えた。
「よくものり子を!!」
怒声を発し、寛子は引き金を何度も引いた。
ダァン! ダァン! ダァン! ダァン! ダァン! ダァン! 
「痛い!!」
一発がひでの右肩に命中し、悲鳴を上げるひで。
逆に言えばシリンダーに装填されていた六発全て撃ったのに一発しか当たらなかった。
痛みに喚き散らしながら、ひでは路地裏に逃げ込んで行ってしまった。
寛子はひでを追撃しようとして、思い止まる。
のり子をこのままにしてはおけなかった。
寛子は仰向けにアスファルトの上に横たわったのり子の元へ近付く。
「……っ」
ついさっきまで明るい関西弁で喋っていた少女は、今や左目の部分にぞっとするような穴の空いた、
物言わぬ屍と化し、アスファルトの上に赤黒い水溜りを作っていた。
開いたままの残った右目は虚空を見詰めている。
のり子は自分を助けてくれたのだ、元々は赤の他人に過ぎない、少しの間行動を共にしただけの自分を。
あの襲撃者に先に気付いたのはのり子だったのだから、のり子だけ逃げる事だって出来ただろう。
だがそれをせず、のり子は捨て身で自分を助けてくれた。
(私が、先にあいつに気付いていれば、もしかしたら)
自分が先にあの男に気付いていれば、のり子も死なずに済んだかもしれないと、寛子は悔やむ。
その場合自分が殺されていたかもしれなかったが。
何にせよ、のり子は死んだ。
いくら後悔した所で、どうにもならない事は寛子にも分かっていた。

42 :
【西川のり子@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  36人】

【早朝/D-4市街地】
【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]疲労(中)、悲しみ
[装備]TNOKの拳銃(0/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式、.38SP弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いをするつもりは無い。憲悦とは会いたくない。
        1:のり子……。
        2:どこか隠れられそうな場所を探す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。
    ※ひでの外見は余り把握出来てません。

◆◆◆

「ねぇもうほんと痛い……」
裏路地に逃げ込んだひでは、額と右肩の傷の痛みに苦しんでいた。
無視できない量の血液が傷口から流れ落ち、ひでの衣服や地面を汚す。
手当てが必要な事はひでにも分かった。
「ふざけんなよぉ……どこかで手当てしなくちゃ……」
悪態をつきながら、ひでは手当て出来る場所と道具を探し始めた。

【早朝/D-4市街地】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]後頭部に打撲、背中に軽い打撲、額に傷(出血多し)、右肩に盲管銃創(出血多し)
[装備]FN P90(0/50)@現実
[所持品]基本支給品一式、FN P90の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:クラスメイトと会っても容赦しない。葛城蓮(虐待おじさん)に対しては特に。
       2:傷の手当てをする。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※稲葉憲悦、柏木寛子の容姿のみ記憶しました。

《支給品紹介》
【手斧@現実】
小型の斧。片手で扱えるサイズ。「ちょうな」とも。

43 :
投下終了です。

44 :
投下します。

45 :
42話 Exists onry sever lonesome and cruel reality
土井津仁はF-4エリアに存在する警察署を訪れた。
このバトルロワイアルの会場内で唯一確認出来る法執行機関だが、今はその役割は失って久しい。
それなりに大きく目立つ施設なので、内部に誰か居る可能性は高かった。
「行くか」
仁は警察署の玄関を潜って中に入った。
当然かもしれないが、今署内に警官の姿は無い。
今の所は他の参加者の姿も見当たらない。
調達した鉄パイプを右手に持っているが、もし通常の警察署で同じ格好をしていれば、
間違い無く御用となるだろうと仁は思った。
「誰か居るかな」
警察署内の探索を仁は始めた。
◆◆◆
「があああああああああ……があああああああああ……」
宿直室、春巻龍は敷いた布団の上でいびきをかいて寝ていた。
大口を開けて涎を垂らし鼻提灯まで膨らませているその様は殺し合いの下に居ると言う緊張感は微塵も感じられない。
布団の周囲には空になった食物の包装や容器、飲み物のペットボトルや缶、漫画本に雑誌、携帯ゲーム機等が散乱している。
フラウと別れてから、春巻は警察署に籠っていた。
同じく殺し合いに呼ばれている教え子達は放置して自分の身の安全を優先したのである。
これだけ聞けば教師失格の人間の屑がこの野郎……と言う風になるのだが、
「教え子達はタフだから大丈夫だろう」と言うある種の信頼を寄せての行動だったので、
一概にそうは言えない訳無いだろいい加減にしろ!
兎にも角にも、春巻は見付けた宿直室を根城にし、
支給品の食糧や宿直室の冷蔵庫や戸棚等から見付けた食品、飲料を飲み食いしたり、
署員の私物と思われる漫画本や雑誌、携帯ゲーム機を発見しては持ち込んで読んだり遊んだりと、
割と悠々自適な時間を過ごしていた。
そしていつしか彼は眠ってしまった。
無人とは言え警察署で自分の家のように寛いだ末に殺し合いの最中に関わらず眠れるのは、
彼が経験してきた数々の遭難で培われた異常な程の適応能力のおかげか。
そんな春巻の居る宿直室を、一人の参加者が訪れる。
◆◆◆

46 :
42話 Exists onry sever lonesome and cruel reality
土井津仁はF-4エリアに存在する警察署を訪れた。
このバトルロワイアルの会場内で唯一確認出来る法執行機関だが、今はその役割は失って久しい。
それなりに大きく目立つ施設なので、内部に誰か居る可能性は高かった。
「行くか」
仁は警察署の玄関を潜って中に入った。
当然かもしれないが、今署内に警官の姿は無い。
今の所は他の参加者の姿も見当たらない。
調達した鉄パイプを右手に持っているが、もし通常の警察署で同じ格好をしていれば、
間違い無く御用となるだろうと仁は思った。
「誰か居るかな」
警察署内の探索を仁は始めた。
◆◆◆
「があああああああああ……があああああああああ……」
宿直室、春巻龍は敷いた布団の上でいびきをかいて寝ていた。
大口を開けて涎を垂らし鼻提灯まで膨らませているその様は殺し合いの下に居ると言う緊張感は微塵も感じられない。
布団の周囲には空になった食物の包装や容器、飲み物のペットボトルや缶、漫画本に雑誌、携帯ゲーム機等が散乱している。
フラウと別れてから、春巻は警察署に籠っていた。
同じく殺し合いに呼ばれている教え子達は放置して自分の身の安全を優先したのである。
これだけ聞けば教師失格の人間の屑がこの野郎……と言う風になるのだが、
「教え子達はタフだから大丈夫だろう」と言うある種の信頼を寄せての行動だったので、
一概にそうは言えない訳無いだろいい加減にしろ!
兎にも角にも、春巻は見付けた宿直室を根城にし、
支給品の食糧や宿直室の冷蔵庫や戸棚等から見付けた食品、飲料を飲み食いしたり、
署員の私物と思われる漫画本や雑誌、携帯ゲーム機を発見しては持ち込んで読んだり遊んだりと、
割と悠々自適な時間を過ごしていた。
そしていつしか彼は眠ってしまった。
無人とは言え警察署で自分の家のように寛いだ末に殺し合いの最中に関わらず眠れるのは、
彼が経験してきた数々の遭難で培われた異常な程の適応能力のおかげか。
そんな春巻の居る宿直室を、一人の参加者が訪れる。
◆◆◆

47 :
宿直室から響いてきたいびきに誘われ仁は宿直室の中に足を踏み入れる。
そしていびきの主が自分の良く知る人物であった事に息を呑んだ。
(春巻先生! ……まだ生きていたのか)
仁や、小鉄、のり子、フグオ、金子先生の担任教師、春巻龍。
知人と図らずも再会した仁だったが嬉しさは無い。
自分は殺し合いに乗っている。
例え知人と再会出来ても殺さなければならないのだ。
とは言っても、春巻が相手では、例え殺し合いに乗っていなかったとしても余り喜びはしなかっただろうが。
見れば彼が寝ている布団の周りには食べ物飲み物のゴミやら雑誌やらが散乱し、ここで自由な時を過ごしていた事が窺えた。
仁は春巻が既に死んでいる事も想定していたがどうやらずっとこの場所に留まり生き延びていたらしい。
(いつも通りだなぁ、春巻先生……僕達を捜そうなんて思いもしなかったんだろうな……。
別に全然期待なんてしてなかったけど……)
ぶれない春巻に苦笑いを浮かべる仁。
しかしその笑みもすぐに消え、冷徹な表情へと変わる。
春巻は完全に熟睡している――――今なら容易く始末出来る。
仁は春巻の頭部を見下ろせる位置まで移動し、そこで、春巻の頭部に狙いを定めて鉄パイプを振りかぶった。
このまま鉄パイプを何度も振り下ろせば、簡単に殺せる筈だ。
「ごおおおお……むにゃむにゃ……」
「……」
今まさに命の危機に瀕している事など露知らず、気持ち良さそうに眠っている春巻。
そして、仁は、パイプを振り下ろせずにいた。
(何してるんだ僕……今更迷うなよ)
イベントホールで女子高生を殺した時も、廃城で男子高生を相手に戦った時も、
抵抗なんて無かったのにどうして今更躊躇うのか。
普段煙たがっているとは言え、多くの時を一緒に過ごしてきた事には変わり無い、だからここに来て迷うのか。
(優勝目指すんだろ? 小鉄っちゃん達も、先生も、Rって……決めただろ!)
心の中で自身を叱咤し、迷いを振り払おうとする仁。
しかし、もたついていたせいで仁にとってまずい事が起きてしまう。
「ん……ん?」
「!」
春巻が目を覚ましてしまった。
安眠から目覚めた春巻龍の視界に映った物は、見覚えのある顔。
坊主頭に額に星印の有る、強面の少年。

48 :
「仁……?」
寝ぼけ眼ながらも、春巻はそれが教え子の一人、土井津仁である事を認識した。
「何やってんだちょ……ん?」
同時に、仁が寝ている自分の頭上で、鉄パイプと思しき物を振りかぶっている事にも気付いた。
それを確認した途端、春巻の眠気が急速に覚めていった。
「うおおあああああああ!!」
次の瞬間、仁が絶叫しながら、鉄パイプを春巻目掛けて振り下ろした。
全力で身体を横に転がせる春巻。
そしてほんの一瞬前まで春巻の頭が有った辺りに鈍い音を立てて食い込む。
「何すんだホイ!? 仁!?」
「死んで、貰います」
息を荒げながら、春巻を睨んで仁が殺意を剥き出す。
その表情には殺意のみならず、どこか辛さが籠っていた。
これ以上は、春巻と会話する訳にはいかない。
これ以上躊躇っていれば、自分は春巻を殺せなくなってしまうだろう。
迷いは捨てろ。心を鬼にしろ。友達だろうが、担任だろうが、殺さなければならないのだ。
仁は必死に自分に言い聞かせていた。
「R!」
そしてなりふり構わず、春巻に向かって鉄パイプを振り回す。
「うわあああぁあああ!!」
悲鳴を上げながら、紙一重で鉄パイプによる殴打を避ける春巻。
しかし、このままでは間違い無く殺されてしまうだろう。
仁は本気で殺しに掛かっている。何とかしなければ。
そうだ、あれが有る――――春巻はゴミの中に手を突っ込み「それ」を取り出した。
「それ」は、春巻の支給品であり、ゴミに埋もれていた為、仁は気付かなかったのだ。
大型自動拳銃、オートマグ。
これを使えば切り抜けられる。殺されずに済む。
だがそれが意味する事に、この時の春巻は考えを巡らせるだけの余裕が無かった。
両手でそれを構え、引き金を引いた。
ドォン!!
狭い部屋の中、爆発音にも似た音が響き、銃など撃った事も無い春巻は余りの反動に引っくり返って壁に頭をぶつけてしまう。
そして、仁は。

49 :
「あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っ」
右手の手首から先が無くなり傷口から噴水のように血液が噴き出し、それを驚愕と苦悶が混ざった表情で仁が見詰めていた。
床に転がった鉄パイプに握られたままの手が殆ど肉塊のようになってこびり付いている。
オートマグの強力な.44AMP弾の弾丸は、子供である仁の右手など簡単に吹き飛ばしてしまったのだ。
「あ゛あ゛あ゛ーーーーーー!!?」
今まで感じた事の無いような激痛に半狂乱になり床に転がってのたうち回る仁。
止めど無く噴き出す血は部屋中を赤く汚していく。
春巻はそれをブルブルと震えながら見守る事しか出来なかった。
「あはっ、あはは」
突如、仁が笑い出す。
明らかに笑える状態でないのに笑い出したと言う事は、彼が壊れてしまった事を意味していた。
「てく、び、手首、無くなっちゃったあははははははははははははっ、
あはははははははははっハハハはははははっあは、あははは、はは、は――――」
狂った笑いを一頻り上げた後、仁は自分の血と春巻の出したゴミですっかり汚くなった布団の上に崩れ落ち、
ピクン、ピクンと何度か痙攣を起こし、そして、動かなくなった。
「あ……あ」
震えたまま呆然としている春巻。
彼が仁を撃った事自体は恐らく正当防衛であろう。
しかし、理由や状況がどうあれ、彼には「教え子を、知人を殺した」「人を殺した」と言う現実が重くのしかかった。
「ヴッ……ア゜エ゛エエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」
漂ってくる濃厚な血臭に、春巻は強烈な吐き気を催し、抑える間も無く嘔吐した。
寝る直前まで飲食していた為に吐瀉物は多く、長く苦しむ事になる。
何度も何度も嘔吐を繰り返し、胃液すらも吐き尽くす。
血の臭いに加え吐瀉物の悪臭まで加わり宿直室は最早その役割をもう二度と果たせないであろうレベルにまで汚濁していた。
「あっ……かっ……あ゛っ……」
ようやく嘔吐を終えた春巻の目には涙が滲んでいた。
幾度もえずいたせいでの涙も勿論有った。
だが、実際は、教え子を殺してしまった事への罪悪感からの涙であった。

50 :
【土井津仁@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  35人】

【早朝/F-4警察署一階宿直室】
【春巻龍@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]後頭部に軽いコブ、吐き気、罪悪感、悔恨
[装備]オートマグ(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式(食糧全て消費)、オートマグの弾倉(2)
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。でも一応小鉄達の事も心配ではある。
       1:仁……どうして……。
[備考]※少なくとも元祖!にて再び小鉄達の担任となった後からの参戦です。
    ※フラウのクラスメイトについての情報を得ました。

《支給品紹介》
【オートマグ@現実】
1969年に発表、1970年より発売された世界初のマグナム弾を使用する自動拳銃。
構造や素材、弾薬に問題が有り動作不良が多く商業的には成功しなかったが、
独特の美しいデザインから人気は高い。
本ロワの物は.44AMP弾仕様の最も生産されたモデル。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。何か同じ文2回連投してしまった すみません

51 :
投下します

52 :
43話 廃村探検してガチ死体を発見した件
虐待おじさんこと葛城蓮、シルヴィア、ガルルモンの三人は、森を抜けて廃村へと到着した。
辺りはかなり明るくなっており、草木に埋もれた廃屋群の様子がしっかりと見て取れた。
「廃村か……誰か居そうだな。おいガルルモン」
「何? 蓮さん」
「お前、犬なんだから匂い嗅いで誰か居るかとか分からねえのか?」
「いや、俺、警察犬じゃないんだけど……それに俺、モチーフ狼だから」
「できねぇのかよ……(落胆)まあ良いか、休めそうな場所でも探そう」
放送の時刻も迫ってきている為、一先ず休めそうな場所を探し始める三人。
それなりの規模を誇る廃村に先客が居る可能性も否定出来なかった為、警戒しながら廃屋を調べて行く。
しかしどの廃屋も風化が激しく、休めそうな場所は中々見付からない。
「ここは駄目だな、床がもうグチャグチャだ……一体何年放置されりゃこんな風になるんだ?」
「蜘蛛の巣が凄い、埃も……あ、カレンダー……ええ!? 1978年!? 古っ……」
「ああっ、駄目だ! 駄目な床だこれ……抜ける! 抜ける! あっ!!」
廃屋の状態の悪さと格闘する蓮、シルヴィア、ガルルモン。
そのような感じで四、五軒程回るが、やはり休める程に状態の良い物件は見付からない。
更に、途中で三人はある物を発見した。
物と言うよりは、人であった。
シルヴィアと同じ制服を着た人間の少女が横たわっていた。
目は開いたまま動かず、口から血の混ざった泡を吹き、ぴくりとも身動きしない。既に息は無いようであった。
首に紐状の物で圧迫された痕がくっきりと残っていたので、どうやら絞殺されたらしい。
「シルヴィア、お前と同じ制服だけど……」
「ああ、私のクラスメイトの倉沢ほのかだ」
「……そうか」
そしてその少女の死体は、シルヴィアのクラスメイトの一人である倉沢ほのかだった。
シルヴィアは特にほのかと親しかった訳では無かったので、悲しむ事はしなかったが、
仮にもクラスメイトとして存じている人物の死には多少なりとも思う所は有った。
ほのかの持っていたデイパックには基本支給品以外は入っておらず、恐らくほのかを殺害した者が、
奪い去ってしまったのだろうと蓮とシルヴィアは推測する。
「……その子、殺されてからまだそんなに経ってないように見えるけど、
もしかして、その子を殺した奴がまだ近くに居るんじゃないか?」
ガルルモンがそわそわしながら二人に言う。
彼の言う事は一理有ると蓮とシルヴィアは思った。
ほのかはまだ殺されて時間が経っていないのか、それともそれなりに時間が経過しているのかは判断しかねたが、
仮に前者だとしたら、近くにほのかを手に掛けた犯人が潜伏している可能性は十分に有った。
無論後者であり、既にこの廃村には自分達以外誰も居ない可能性も否定出来なかったが、
どちらなのか断定出来ない以上、この廃村は休息場所には適していないのではないか。
「確かにその可能性は有るな……この廃村で休むのは少し危ないか……。
休めそうな家も今の所見付からないしな」
「それじゃ、どうする?」
「南の方に行ってみるか……工場や図書館、そのもっと南には街が有るみたいだからな。
と言ってもその前に森の中で放送聞く事になるだろうが……少なくとも休憩はまだお預けだな」
結局、三人は廃村での休憩を諦め、しばらくは南下する事に決定した。

53 :
【早朝/D-1廃村】
【シルヴィア@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]デトニクス スコアマスター(7/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、スコアマスターの弾倉(3)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター
[思考・行動]基本:蓮(虐待おじさん)と協力して殺し合いを潰す。殺し合いに乗っていない者を集める。
        1:蓮(虐待おじさん)、ガルルモンと行動。しばらく南へ向かう。
        2:サーシャを捜したい。他のクラスメイトは遭遇次第対応を考える。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※葛城連(虐待おじさん)のクラスメイトの情報を当人から得ました。
    ※倉沢ほのかの死亡を確認しました。
【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、手榴弾(2)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:クラスメイト(特にひで、KBTITこと拓也)や殺し合いに乗っていない参加者を集め、殺し合いを潰す。
        1:シルヴィア、ガルルモンと行動。しばらく南へ向かう。
        2:襲い掛かってくる者には相応の対処をする。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※元動画準拠なので、本名は「葛城蓮」、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※シルヴィアのクラスメイトの情報を当人から得ました。
    ※シルヴィアが一度死んだ事、殺し合いが二回目である事、以前の殺し合いに乗っていた事を知りました。
【ガルルモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:死にたくない。生き残りたい。
        1:生存率を上げる為に二人(虐待おじさん、シルヴィア)についていく。しばらく南へ向かう。
[備考]※アニメのガルルモンとは別人です。性別は♂、性格は小心者です。

54 :
投下終了です

55 :
今回、長いので前編・後編分けます。
まず前編投下します。
44話 Paradise is Nowhere(前編)

56 :
44話 Paradise is Nowhere(前編)
レジャー施設内、金子翼は宿泊施設区画の通路を歩いていた。
それなりに長い間レジャー施設内を探索しているが今の所、人影は見当たらなかった。
もっとも施設は広大であり、全てを回り切れた訳では無かったが。
「……」
とある客室の前で翼は立ち止まる。
微かに中から呻き声のようなものが聞こえたのだ。
翼は手に持ったピッケルの柄を強く握り締め、その客室の扉のノブに手を掛ける。
鍵は掛かっていなかった。
「うう……う」
「え、何これは……(困惑)」
客室へと足を踏み入れた翼は思いも寄らない光景に当惑する。
確かに人は居た。
しかしその人――恐らく中高生ぐらいの少年は、パンツ一丁で椅子に拘束されている上に、
全身にミミズ腫れや赤い蝋燭を垂らされた痕が有り、更に坊主頭でその頭にもまた蝋が垂らされ、
彼の周囲には彼の物と思われる髪の毛が散乱していた。
一体何が有ったのかは分からないが、少年が想像を絶する体験をしていたと言う事だけは翼にも想像出来た。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
余りの惨状に自分が殺し合いに乗っている事も忘れ、翼は椅子に拘束された少年に声を掛ける。
「誰だ……? あの二人じゃない……?」
視線を翼に向け直す少年――壱里塚徳人。
部屋に入ってきた人物が、自分を調教、もとい拷問した二人では無い事を見て取るや否や、必死に助けを乞い始めた。
「頼む助けてくれ! この縄解いてくれよ!!」
彼は(元々は徳人が巴とKBTITを襲ったのが原因だったが)長時間に渡り犬狼獣人少女原小宮巴と、
ゴーグル色黒男KBTITこと拓也による拷問を受けていた。
坊主頭になっているのも、拷問により無理矢理剃髪をさせられた為である。
巴とKBTITの二人は「食事をしに行く」と言い残して現在は不在であり、そこへ翼がやってきた。
最早心も身体も限界に達していた徳人は恥も外聞も無く、老け顔ではあるが自分よりかなり年下であろう子供に、
涙目になりながら救難を妖精したのだ。
今の徳人にとっては、あの二人から逃れるまたと無いチャンスだったのだから、翼が殺し合いに乗っているかどうかなど考えていなかった。
翼もまた、彼の必死な様子に応えて、拘束している縄を解こうと徳人の背後に回った。
だが、そこで彼は思い止まる。
自分の本来の目的を思い出したのだ。
ここでこの男を助ける必要など無いではないか。さっきは思わぬ光景に気を取られていたが、
拘束されていて動けないと言うのなら、好都合だ――――翼はそう思った。
「おい、どうしたんだ? 早くしてくれよ、助けてくれるんだろ?
そこに鋏が有るから、それで縄切れるだろ?」
翼の様子が変わった事に気付かない徳人は翼が本気で自分を助けてくれると思い込んでいる。
もう少し警戒出来たであろうが、そこまで配慮する余裕などもうこの時の徳人には無かった。
翼は徳人が顎で示した場所を見る。
確かに散髪用と思われる鋏が置かれていた。
恐らくこの鋏と、すぐ傍に置かれているバリカンでこの少年の髪を切ったのだろう。
だがそんな事はどうでも良い――――翼はピッケルを床に置くと、鋏を手に取った。

57 :
「そうだ、それでこのロープを切ってくれよ……頼む」
「……」
「なあ、聞いてるか? おい……おい?」
翼が返事をしなくなった事に戸惑う徳人。
とても嫌な予感がした。
思えば、この子供に自分は助けを求めたが、この子供は殺し合いに乗っているかどうかなど分からない。
今自分は拘束されていて身動きが取れない。
もし、この子供が殺し合いに乗っていたとすれば?
徳人の顔から血の気が引いた。
そして、次の瞬間には、先程まで逃れようとしていた二人に向かって助けを呼んだ。
「原小宮!! 拓也ぁ!! たす――――」
だが、その大声は翼が徳人の口を左手で塞いだ事により中断される。
そして、徳人の喉に、鋏の刀身が深く突き刺さった。
灼熱にも似た激痛を感じると同時に、呼吸が出来無くなり徳人の口からごぼごぼと血が溢れ出た。
ひゅー、ひゅー、と空気の漏れる音も聞こえた。
消えていく意識の中で徳人が見た物は、惨劇を目の当たりにしても己の義務を果たし続ける照明器具と、
白い歯を剥き出しにして嗤う、中年男性のような顔の子供の表情だった。

【壱里塚徳人@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  34人】

少年が完全に動かなくなった事を確認すると、翼は鋏を引き抜き床に放り投げた。
背後から刺したおかげで返り血を浴びたのは右手だけで済んだ。
洗面所に向かい、翼は右手に付着した血を洗い流す。
これで、この殺し合いにおいて彼は二回目の殺人を行った。
いや、一回目は相手は犬だったので、厳密に言えば、殺人を行ったのは今回が初めてと言う事になる。
これでいよいよ後戻りは出来ない。
(随分冷静だな僕、人を初めて殺したのに)
自分で疑問に思う程、翼は冷静だった。
冷静では無く、ただ単に感覚が麻痺してしまっているだけなのかもしれない、とも思ったが。
置いたピッケルを拾い再び装備し、少年の物と思われるデイパックが有ったので漁るが、
役に立ちそうな物は何も入っていなかった。
少年をここに拘束して拷問を加えた人物――少年が死の直前に叫んだ二つの名前がそうだろうか――が、
恐らく没収してしまったのだろう。
これ以上部屋には何も無いと判断し、翼は出入口へと向かう。
少年を拷問していた人物は、少年の言によれば食事をしに行ったとの事なのでやがてはここに戻ってくるだろう。
待ち伏せて襲おうとも一瞬考えたがもし相手が銃火器等を装備していたら返り討ちにされる可能性も有る。
少年が叫んだ名前は二つ、と言う事は少なくとも二人は居る。数の上でも不利だ。
ここは早々に撤退すべき――――翼はそう考えた。
◆◆◆

58 :
「いやぁ、色々有って良かったねタクヤさん。まぁそんなに食べなかったけど」
「まるでバイキングのようになってたな。誰が用意したんだろうな……まあ良いか」
雑談しながら、犬狼少女の原小宮巴と色黒ゴーグル男のKBTITこと拓也は元居た宿泊棟の客室へと向かう。
多目的ホールと思しき広間にバイキング形式の料理が並べられていた為、そこで料理を食べて腹を満たした。
何か細工(毒入り等)が有るのではと最初二人は疑ったが特にそんな事も無かった。
「ああ、あの壱里塚君どうしようかな〜殺しちゃおっか?」
「いやRのは流石に可哀想だろ……散々痛めつけたんだし、椅子に縛り付けたまま放置しといて良いんじゃないか?」
「あらぁ温情的なんだねタクヤさん。そうだねー殺しちゃうとそこで苦痛も終わっちゃうしねー。
動けない状態で放置プレイさせて絶望させるのもアリかなぁ」
部屋に残してきた壱里塚徳人の処遇について二人は話し始める。
そして宿泊棟手前の通路の、幾つかソファーやテーブルが並べられた広くなった部分に差し掛かったその時。
宿泊棟の方から歩いてきた見知らぬ少年と鉢合わせになった。
「ん? あなた誰?」
「……っ!」
「あ、おい! 待てよオイ!」
おっさんのような老け顔の小学生ぐらいと思われるその少年は、二人を見るや否や逃げ出してしまう。
少年を追い掛ける二人だったが、少年の逃げ足は早く、また建物内の通路が入り組んでいた為、見失ってしまった。
「逃げちまったぜオイ……あいつ、何で逃げたんだ? 俺らが殺し合いに乗ってると思ったのか?」
「……多分別の理由じゃないかなぁ。あの子から血の臭いしたよ」
「何?」
「ほんの微かだけどね」
獣人種である巴は少年から発せられた微量の血臭を嗅ぎ取っていた。
「怪我してる風でも無かったし……そう言えばあの子宿泊棟から来たよね」
「……! 壱里塚の奴大丈夫か?」
「行ってみよ」
巴とKBTITは急ぎ徳人の元へと向かった。
しかし部屋に戻った二人が見た物は、椅子に縛られたまま、首から血を流して息絶えた徳人の変わり果てた姿だった。
「やられたね」
「何てこった……」
落胆する二人。
もっとも、巴はこれ以上徳人を痛めつける事が出来なくなった事、
KBTITは死なせるつもりは無かったのに死なせてしまった事に対して、と、二人共理由が異なっていたが。
床に、徳人の散髪に使った鋏が血塗れで転がっていた。恐らくこれが凶器だろう。

59 :
「やっぱ鍵掛けといた方が良かったね。どうせ逃げられないから大丈夫だと思ってたんだけど、
誰かが侵入する可能性を考えていなかったなぁ」
「死なせる気は無かった、許せ壱里塚……」
KBTITは開いたままの徳人の目をそっと閉じさせてやった。
「やっぱり殺したのは……」
「さっきの子供じゃないかなやっぱり。血の臭いがしたのも説明がつくし。
洗い流したけど完全に臭いまでは消せなかったんだと思う。
逃げたのは……壱里塚君から私達の事でも聞いたのかな?」
状況や、先程の少年の様子、巴が嗅ぎ取った血の臭い等から、二人は先程の逃げた少年が徳人を殺したのだと推測する。
「あんな小さい子供が殺し合いに乗ってんのか……おっさん顔だったけど」
「子供だからって殺し合いに乗らないなんて理屈は通らないよ。
生き残りたい、その為に実力行使するって考えは子供にだって出来るでしょ」
「まぁ、そりゃあな……」
「ともかく、この部屋はもう使えないね」
客室内は徳人の血によって汚れ、濃厚な血の臭いも漂い、とても通常使用出来る状態では無くなっていた。
特殊清掃会社に依頼しなければならないレベルである。
「結構ここで時間潰したし、そろそろ移動しようか……って言っても、放送までの時間考えるとそんな移動出来ないと思うけど」
「そうだな……コイツの死体はどうする?」
「放置で良いんじゃない?」
徳人の死体の扱いについて尋ねるKBTITに現状で放置を提言する巴。
苦楽を共にした仲間ならともかく元はと言えば自分達(特に巴)を襲って、挙句返り討ちされ、
自分達に拷問地獄を味わわされた言ってしまえば愚か者の壱里塚徳人の死体など、
椅子に縛られたまま放っておけば良いんだ上等だろ? と言うのが巴の意見であった。
KBTITもこれに同意したが、せめてもの情けと布団のシーツを徳人の遺体に掛けてやった。
「タクヤさんって楽しそうに拷問する割に結構優しい所有るよね」
「そうか?」
「まあ良いや、行こっか」
巴とKBTITは徳人の遺体の有る客室を後にした。
ほぼ時を同じくして、レジャー施設一階では騒ぎが起きていた。

【後半に続く】

60 :
前編投下終了です。後編執筆中……

61 :
後編投下します。

62 :
レジャー施設一階に有るボーリング場。
銀鏖院水晶は、カウンターの陰に隠れていた。
何故隠れているのか、それはひとえに襲撃を受け、追われていた為である。
(何なのよあの犬の化物は……!)
レジャー施設を訪れた水晶は、探索中に巨大な犬に襲われた。
その犬は青と白の毛皮を持ち、背中から赤い二対の触手が生えていた。
獣人が存在する世界に生きる水晶でも見た事の無い動物である。
言葉を発していたので意思疎通は可能のようだったが、こちらの話を聞いてくれそうな雰囲気では無いように見えた。
「どこに居るんだ……出てこいよ!」
その犬――ガオガモンが水晶を追ってボーリング場に入ってくる。
目は充血し涎を垂らすその様は誰が見ても正気とは思えない。
実際彼は既に錯乱しており、目に映る者全てを敵として認識し、排除せんと動いていた。
ボート乗り場で白い狼の男を惨殺した後にレジャー施設を訪れ、しばらく徘徊した後に同じくレジャー施設を訪れた水晶を発見した。
そして襲い掛かり今に至る。
(このままじゃまずい、ハッキリ分かるわね)
何か打開策を講じなければ、確実にあの犬に殺される。
しかし、水晶が今持っている武器は鉄パイプ一本のみ、これだけであの犬を倒せるような実力は水晶には無かった。
まともに向かって行っても勝ち目はゼロに等しい。
(仕方無い、能力を使おう)
水晶は自分の超能力を使う事にした。
彼女は物体を内側から握り潰すサイコキネシスと、透視能力を使う事が出来たが、
身体(胸の事では無い)や技量が未熟であった為、能力を行使すると肉体に相応の負担が掛かった。
それ故、以前の殺し合いでも同様だったが、可能な限り行使するのは避ける方向で動いていた。
しかし今はそうも言っていられない。
水晶はカウンターの向こうを透視し始める。
自分の事を探す巨大な犬の姿がはっきりと確認出来た。
意識を集中させ、額に汗を滲ませながら、犬を倒せそうな手段を探す水晶。
一方のガオガモンは水晶がそのような事をしているとは露知らず涎を垂らしながらその姿を探していた。
「どこだー」
(何か、何か無いの……あっ)
水晶が注目したのは、天井に設置された大型モニター。
ボーリングのスコア等を表示する為の物だ。
かなりの大きさで重量も相当有りそうだがあれがもし頭上に落ちればあの犬も無事では済まないであろう。
(よし)
水晶は更に意識を集中させ、モニターと天井を繋ぐパイプ部分に向けてサイコキネシスを発動させる。
同時に二つの超能力を発動させ、水晶の肉体に掛かる負担は想像を絶する物となっていた。
汗が溢れ、疲労と動機、身体中の痛みが水晶を襲う。
しかし、やめる訳には行かない。
そして、ついにガオガモンの頭上のモニターの取り付け部分が悲鳴を上げ始めた。

63 :
メキッ、バキッ
「ん? 何の音だ?」
頭上から響いた音に、ガオガモンは上を見上げる。
そこには巨大なモニターが存在していた。
バキッ!!
一際大きな音を立てて、モニターがガオガモン目掛けて落下する。
金属の塊と言っても差し支え無い、かなりの重量を誇る大きなモニターは、
容赦無くガオガモンの上半身を押し潰す。
「ガッ! があああぁああっ、ああ」
即死は免れたものの、頭部を含む上半身を圧迫され、呼吸がまともに出来ず苦しみもがくガオガモン。
その隙を突いて、水晶はカウンターの陰から飛び出しガオガモンの脇を駆け抜け逃走する。
「このおおぉお!! 待てえぇええガハッ!」
モニタをどけようと四苦八苦しながら水晶に向かって怒声を放つガオガモン。
(この施設から離れよう……!)
能力行使による負担で身体の疲労や痛みを感じていたが、それらを我慢し水晶は必死に走る。
あの巨犬が再び行動を始めるまでにそう時間は掛かるまい。
手負いとなった獣は凶暴になると言うが恐らくあの犬もその例に漏れないだろう。
今度向かってこられたらもう立ち向かう術が無い。
無様かもしれないが、建設現場の時のように撤退すべきだと水晶は判断した。
エントランスホールまで戻ってきたその時。
「ん? ねえちょっと……」
「!」
後ろから声を掛けられ、思わず水晶は立ち止まって振り返った。
二階への階段に、自分とは違う学校の制服を着た犬か狼族の獣人の少女と、
ゴーグル或いはサングラスを掛けた、色黒で上半身に比べ下半身が貧弱そうに見える人間の男の姿が見えた。
「……アアアァアアアアアアアアーーー!!!」
ほぼ同時に、空気を揺るがすような咆哮がボーリング場の方から響いてくる。
階段の二人は何事かと驚いている様子だったが、水晶にはその咆哮の主が分かっていた。
あの二人に構っている暇は無い。水晶は踵を返しレジャー施設玄関口へと走った。
「おい!」
男の方が呼び止めようとしたが、水晶は無視してそのまま玄関を潜って走り去った。
◆◆◆

64 :
「行っちまった……そういや今の何だ? 獣の雄叫びに聞こえたぞ」
「一階の、どこかから聞こえてきたっぽいけど」
巴とKBTITが雄叫びの出処を探ろうとしたその時。
逃げて行った銀髪の少女が出てきた通路から今度は青と白の毛皮を持ち背中から赤い触手の生えた巨躯の犬が飛び出してきた。
頭部から血を流し、とても興奮しているようだった。
モニタをどかし、怒りの雄叫びを上げ、犬――――ガオガモンは逃げて行った少女を始末しようと追撃してきたのだ。
もっとも、モニタが落下したのが少女の超能力による物だとは彼は知らなかったのだが。
「フゥー……フゥー……! どこだ!! 銀髪女!! 出てきやがれ!!」
怒りで完全に忘我状態となり少女の姿を求め怒鳴り散らすガオガモン。
「何だあの犬!? あんなデケェ犬見た事無ぇぜ」
「私も背中から触手の生えた犬は初めて見るなぁ。あっ、さっきの咆哮はあの犬かな?」
「あぁ!? 何だお前ら!」
巴とKBTITに気付き、ガオガモンが二人を睨む。
血塗れで牙を剥き出し眉間に皺を寄せながら睨めつけるその様は正に凶獣。
「お前ら、銀髪の人間の女を見なかったか……?」
「銀髪のぉ? ……さっき玄関から逃げてったあいつの事か?
って言うかお前、頭から血が出てんぞ大丈夫か?」
「クソォ! ……まあいいか……」
ガオガモンは巴とKBTITの方を見ながらニヤリと嗤う。
その表情から、二人は彼の明確な殺意を感じ取り、身構えた。
「いきなりモニターが頭の上に落ちてきて、血がどばどば出て、追い掛けていた女にも逃げられて、
とってもムシャクシャしているんだよ……憂さ晴らしさせてくれよぉ!!」
理不尽な理由を並べた後、ガオガモンは階段の二人に向かって突進した。
巴は持っていたウィンチェスターM1912散弾銃を構え、引き金を引いた。
ダァン!!
「……ウヴウウアアァアアァアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
12ゲージの散弾はガオガモンの右前足を吹き飛ばした。
激痛に悲鳴を上げてのたうち回るガオガモン。
「タクヤさん、アイツは殺しちゃっても良いかな?」
「流石にあんな奴に向かってこられたらキッツイぜ……お前に任せる」
「分 か っ た」
止めを刺すべく巴はフォアエンドを操作し空薬莢を排出、次弾を装填しつつガオガモンへと近付く。
「あっ、ああ……く、来るな……来るなっ」
ダァン!!
「アアアァアアァア!!?」

65 :
背中の触手の左手側を散弾によって千切り飛ばされる。
最早この時点でガオガモンの戦意は完全に消え失せてしまっていた。
それと同時に狂乱していた精神状態も正常近くまで戻ったが、戻るタイミングが余りにも悪かったとしか言いようが無い。
迫り来る巴に恐怖を感じ、ガクガクと身を震わせ、耳を伏せ、涙を流し、失禁までしていた。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい! ごめんなさい! ごべんなざいぃい!
死にたくなかったんだ! 怖かっただけなんだ! 生き残りたかっただけなんだよぉお!」
「ふーん、で?」
「すみません!! 許して下さい!! 何でもしますからぁっ!!」
「……ん? 今何でもするって言ったよね?」
巴が聞き返す。
その様子に望みが出来たと思ったのかガオガモンが食い下がる。
「する! するよ!! 何でもするよぉ!! だから、だからあっ」
「そっかーじゃあ……死のうか」
ダァン!!
望みなど最初から無かった。
散弾によって上顎から上をミンチにされ、ガオガモンは死んだ。

【ガオガモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ  死亡】
【残り  33人】

「えげつ無ぇなお前……」
やや引き気味でKBTITが巴に言う。
自分の人の事は余り言えた立場では無いが、
平然と散弾銃で人の(この場合は犬だが)頭を吹き飛ばせる巴を少々畏怖していた。
「まぁそれ程でも……コイツ何か持ってないかな」
ガオガモンの持っていたデイパックを漁る巴。
「おっ、これは良さげなのが」
「何だ?」
「ほら、見なよ見なよ、ほら」
巴がKBTITに見せた物は短機関銃。
予備の弾倉も五個セットでデイパックの中に入っていたようだ。
本体にセロテープで貼り付けられていた説明書によれば「ニューナンブM66短機関銃」と言う名前らしい。

66 :
「タクヤさんの支給品ってボディーブレードだったよね」
「ああ、役に立たないと思って捨てちまったけど……」
「これ使いなよ。私はショットガンが有るからさ」
「ありがとナス!」
KBTITは巴からニューナンブM66短機関銃と予備弾倉五個を受け取った。
その後、当初の予定通り、玄関を潜ってレジャー施設を後にした。

【早朝/B-3レジャー施設】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(3/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)、警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。レジャー施設から移動する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴と行動。レジャー施設から移動する。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。

◆◆◆

金子翼は施設外壁の非常階段を降りて外に出た後、同じく非常階段が設置された岸壁を降りる。
途中、施設の方から獣の咆哮や銃声らしき音が聞こえた。
(中で誰かが戦ってるのかな……あの犬みたいな顔の人やサングラスの色黒のおじさんかな?
まあ、気にする必要は無いかな……)
もしかしたら戦っているのが自分が優勝させようとしている大沢木小鉄である可能性も考えられたが、
あの施設内を一通り回ってみて小鉄の姿は見当たらなかったので恐らくそれは無いだろうと、
翼は自分に言い聞かせる。万一と言う場合も有るがそんな事を考えていてはきりが無い。
やがて翼は市街地へと辿り着き、適当な家に侵入して休息を取り始めた。
サイドボードの上に置かれた時計に目をやれば、第一回目の定刻放送の時間である午前六時が、
かなり近付いてきている事が分かった。

67 :
「もうすぐ六時……六時になれば放送が有る……小鉄っちゃんは今どうしてるんだろう」
前述したように、翼は小鉄を優勝させ生きて帰らせるべく殺し合いに乗っている。
現在、二人の参加者(内訳は犬一匹、人間一人)の命を奪っているが、
もし、放送で小鉄の名前が呼ばれたら? その時、自分はどうする?
翼は、考えたくはなかったが、考える。
(もし、小鉄っちゃんが死んじゃってたら……そんな簡単に死ぬとは思えないけど……。
その時は……僕も死のう)
翼は本気でそう考えた。
小鉄の事が大好きだった翼は小鉄の為ならどんな努力も惜しまない。
カンニングさせる為に猛勉強をして成績を上げたり、
クリスマスプレゼントとして小鉄が好意を寄せる菊池あかねのハーモニカを盗んだり、
火災の恐ろしさを教える為に図らずもではあるが小鉄の家を燃やしたり。
全て小鉄が好きが故の行動なのだが当の小鉄からは常軌を逸した行動にドン引きされる事も多々有った。
彼にとっては大沢木小鉄と言う人間は、生きる理由そのもの。
だから、小鉄が居なくなるのなら、生きる理由も無くなるのだから、死ぬのも当然の事。
それ以前に優勝させると言う事は自分も死ぬと言う事になるが、
小鉄がRば自分も死ぬと思っているように、小鉄の為なら自害も厭わない。
金子翼とはそう言う人間である。

【早朝/B-2市街地木村家】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
        1:小鉄っちゃんは生きているかな……。
        2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。
    ※原小宮巴、KBTITの外見のみ記憶しました。

◆◆◆

68 :
A-3エリアの崖下。銀鏖院水晶は岸壁に背をもたれて乱れた呼吸を整えていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
超能力の行使と、散々走ってきた事で、水晶の疲労はかなりの物となっていた。
放送の時刻も迫っている事も有り、どこか休める場所を確保する必要が有るだろう。
ふと前方を見れば小規模の住宅地が有るのが見える。
「あそこで、休もう……」
棒のようになりつつある足に鞭打ちながら、水晶は住宅地を目指す。

【早朝/A-3崖下付近】
【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(大)
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝し「愚民と自分は違う」事を証明する。
       1:住宅地で休める場所を探す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の名前を記憶しています。
    ※能力には特に制限は無いようです。
    ※原小宮巴、KBTITの容姿のみ記憶しました。

《支給品紹介》
【ボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃん】
しなる棒状の筋トレ器具の一種。中央のグリップを握って前後或いは左右に振って使う。
「アッパレ! 戦国大合戦」において野原ひろしがこれを使い敵総大将大蔵井高虎の顔面に強烈な一撃を食らわせた。
【ニューナンブM66短機関銃@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
新中央工業(現ミネベア社大森製作所)において試作された短機関銃。
「短機関銃」の名を冠する唯一の国産銃器だが試作のみに留まった。9mmパラベラム弾を使用する。
元ロワにおいて滝口信方に支給されその後久木山忠則に渡るが一度も発砲する事無く役目を終えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。

69 :
投下します。

70 :
45話 結末の価値分からないまま
野原みさえはふらふらとしながら、B-2エリアからC-2エリアへ向かう橋を渡っていた。
その精神は相変わらず変調を来したまま。
しかし、当初のように血走った目で泡を吹きながらと言う醜態は無くなり、目は虚ろではあったが、
外見だけならば落ち着いているように見えた。
左肩の傷が痛んだが、行動の妨げになる程では無い。
「……あれは、ガソリンスタンド?」
みさえは前方に小さなガソリンスタンドを発見する。
誰か居るだろうかと、他参加者の姿を求め、みさえはそのガソリンスタンドへと歩いて行った。
第一回目の定時放送の時刻が近付いてきていたが、その為の落ち着いて放送を聞ける場所を確保しようと言う考えには至らないようだ。
「誰か……居る……?」
建物に近付き窓越しに内部を覗き込む。
内部は自販機やテーブル、椅子等が置かれた待合所のようなスペースになっており、奥に事務所へ続くと思われる扉が有った。
カウンターが有るのであそこで車の点検等の会計を行っていたのだろう。
入口の扉の取っ手に手を掛けて引いてみると、扉はすんなりと開いた。
サーベルを片手に、カウンターの裏を覗く、が、そこには誰も居なかった。
奥の扉のノブに手を掛け回す。今度もすんなりと扉は開いた。
こじんまりとした事務室がみさえの視界に映る。
「……?」
事務室に入った途端に、みさえの耳にある音が聞こえる。
それは寝息だった。しかもかなり近い所――――自分の左手側から聞こえた。
顔を左に向けてみる。
「!」
寝息の主にみさえは少し驚いた。
それは灰色の身体を持った、竜人であった。
壁にもたれて座って眠っている彼――――呂車は、実際には竜人では無くガーゴイルの獣人であったのだが、
みさえにそんな違いが分かる筈も無く、分かったとしてもそんな事はどうでも良い事だっただろう。
「寝ているの……?」
今まで何度も家族と共に冒険を繰り広げ、その中で幾多の人外と遭遇してきたみさえにとっては、
呂車の外見は多少驚きはしたものの、それだけであった。
異常を来した精神もそれに拍車を掛けていたのかもしれないが。

71 :
それより、この獣人は寝ていた。
ならば、仕留める絶好のチャンスではないか。
外見を見るに、筋肉質で大柄な体躯を誇っており、まともに戦えば力負けする可能性も有った。
しかし寝込みを襲われればひとたまりもないだろう――――だが。
「ん……」
唐突に呂車は目を覚ました。
「〈いかん、眠ってしまった……〉」
ガソリンスタンドに身を潜めている内にいつの間にか眠ってしまったらしい。
目を擦りアクビをしながら辺りを見回す。
すると、自分の右手側に見知らぬ人間の女性が立っていた。
「〈ん? 何だお前は……〉」
中国語で話しかける呂車。しかし女性の右手に抜き身のサーベルが握られているのを見て表情を一変させる。
「うらあああっ!!」
「!!」
直後、みさえは叫びながらサーベルを呂車に向かって振り下ろした。
間一髪でそれを避ける呂車。
サーベルの刀身は呂車が背をもたれていた壁に当たり、壁に深い傷を作る。
起きてしまったがまだ覚醒しきっていないなら大丈夫だとみさえは思ったが、そう上手く事は運ばなかった。
呂車はみさえの首元を勢いを付けて掴んだ。
かなりの衝撃が有り、みさえはむせながら持っていたサーベルを床に落としてしまった。
「〈何だお前は!? 殺し合いに乗っているのか?
危ない所だった……危うく斬られる所だった……〉」
「うぐ……は、放して……放しなさい……!」
呂車の手から逃れようともがくみさえ。
自分の言っている事が伝わっていないと見た呂車は、一度咳払いをして片言の日本語でみさえに語り掛け始める。
「オマエ、何だ? 殺シ合いに、乗ッテるのか?」
「……私は、私はっ」
もがきながらもみさえは返答した。
「ひまを、生き返らせないといけないのよ……!
優勝すれば、願いを一つだけ叶えてくれる……だから私は優勝して、ひまや、一度死んじゃう事になる、
夫や、しんのすけを一緒にっ、生き返らせて、またみんなで一緒に暮らすのよぉっ!!」

72 :
みさえの表情と声は正に鬼気迫るものであり呂車も気圧された。
しかしだからと言って彼女の主張には同意しかねたが。
そしてこの時点で、呂車はみさえが開催式で見せしめで殺された赤ん坊の母親だと言う事を思い出す。
「……お前ハ馬鹿か?」
「は?」
「あんな口約束が守られると本気デ思ってルのカ? 自分の夫ヤ、息子モ殺スつもりカ?
一度死んンでモ、生き返ラセれば良いとソンナ風ニ思ってルのナラ、自分ヲ恥じロ」
呆れと侮蔑を込めた口調で呂車が言う。
それが癪に触ったのか、逆上したみさえは呂車に向かって怒鳴る。
「うるさい……うるさいうるさいうるさい!!
あんたなんかに何が分かるって言うのよ!! ひまを生き返らせるにはそれしか方法が無いのよ!!
家族が一人でも欠けたらもう野原家じゃ――――ぐえっ!?」
聞くに耐えられなくなり、呂車はみさえを投げ飛ばした。
身体を壁や床に強打したみさえは身体中の痛みと呼吸困難に襲われ苦しむ。
「ゴホッ! ゴホッ、ゲフッ……!」
「〈お前の殺し合いに乗る理由は良く分かった。
だが、俺も易々と殺されてやる訳には行かないんでな。悪いが眠って貰うぞ」
中国語でそう言うなり、呂車はみさえの後頭部付近に手刀を食らわせた。
小さい呻き声を発し、みさえは昏倒し床に伸びてしまった。
「〈サーベルは没収だな〉」
みさえが装備していたサーベルを回収する呂車。
更にみさえのデイパックを調べると拳銃と予備の弾倉が入っていたのでこれも回収した。
(銃を使われないで良かった……だが支給品は一人一種の筈……と言う事は誰かから奪い取ったか? まあ良い……)
何にせよこれでみさえは武装を失う事になるが、殺し合いに乗っている者を無力化するのだから問題無いと彼は理由付けした。
気を失ったみさえを事務室に残し、呂車は自分の荷物を持ってガソリンスタンドを後にした。
放送の時刻が近付いていたが、気絶させたとは言え危険人物と一緒に居る訳には行かない。
始末してしまう事は簡単だったが、呂車はその気にはなれなかった。
よくよく考えれば、野原みさえもこの殺し合いに巻き込まれ、自分の娘を目の前で無残に殺された被害者なのだ。
眼前で愛娘を殺され、そのショックの大きさは想像に難くない。
それで心が壊れ、主催者達の言葉を鵜呑みにして暴走してしまったとしてもおかしくない。
それにこの殺し合いには彼女の息子、夫、飼い犬も一緒に呼ばれていた筈。
みさえをR事は、彼らから母親を、伴侶を、飼い主を奪う事になる。
それを思うと、呂車は彼女に殺されかけたとは言え、その命を奪うのは気が引けたのである。
自分の命が数分先まで有るかどうかも分からない状況下で甘い考えだ、とも思ってはいたが。

73 :
それにまひろが言っていた「死者の蘇生」を完全に否定する事も出来ない。
何故か――――呂車自身が一度死んだ筈なのに生き返っている身だからだ。
少なくとも、この殺し合いを運営する何者かは、死人を蘇らせる事が出来る何らかの力或いは技術を持っている事は確かであろう。
しかし、例えそうだとしても、野原みさえの行動は最善である筈が無い。
ガソリンスタンドから遠ざかりながら呂車は思っていた。

【早朝/C-2ガソリンスタンド事務室】
【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神に異常、左肩に擦過銃創、全身にダメージ、気絶
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝してひまわりを生き返らせる。
        1:(気絶中)
        2:しんのすけ、ひろし、シロはひまわりと一緒に生き返らせる。
[備考]※幾分落ち着いたようですが正常な思考は出来ません。
    ※ソフィア、呂車の容姿のみ記憶しました。

【早朝/C-2ガソリンスタンド周辺】
【呂車@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、S&W M56オート(11/15)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル、S&W M56オートの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。殺し合いに乗っていない参加者を探す。
       1:ガソリンスタンドから離れ、放送を安全に聞ける場所を探す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※AOKの容姿のみ記憶しました。
    ※野原一家の事を開催式の時にある程度把握しています。

74 :
投下終了です。

75 :
投下します。

76 :
46話 墓、用意しといたからお前らの為に
A-5エリアに存在する墓場を、野原ひろしとラトの二人は訪れていた。
日本式の墓石のみならず、十字架を模した西洋式の墓石も並んでいる。
良く整備された綺麗な墓地であったが、ひろしはとある墓石に刻まれた名前に驚く。
「おい、何だよこれ……!?」
その墓に刻まれていた名前は「野原ひろし」、彼の名前であった。
隣に並ぶ墓を見ていくと「野原みさえ」「野原しんのすけ」「野原ひまわり」「シロ」と、家族全員の墓が有った。
「野原さん」
「ラト、こいつを見てくれ……俺の墓だ。家族のも有る」
「……他の墓を見てみましたが、どうやらこの墓地には殺し合いの参加者全員の墓石が有るようです。
僕や、僕のクラスメイトの墓石も有りました」
「何!?」
墓場に存在する墓石は全部で53個。
それは、この殺し合いの参加者52人と、見せしめで殺された野原ひまわりの墓であった。
ほぼ間違い無く運営側の連中の仕業だろう。
自分達が催したゲームで死ぬであろう人々の為にわざわざ墓を作るなど悪趣味以外の何物でも無い。
「俺達が殺し合いで死ぬ事を見越して、ご丁寧に墓を用意したってか……ふざけんじゃねぇ!」
ガスッ
憤慨したひろしが自分の墓石に蹴りを入れた。
直後に足の痛みに苦しむ事になったが。
「いててててて!」
「大丈夫ですか? ……気持ちは分かりますが落ち着いて」
「ああ、すまねぇラト……」
ラトの気遣いと足の痛みによって幾分冷静さを取り戻したひろし。
もっとも、ラト自身も表情に出さないだけで憤りを感じていたが。
寛容な彼でも、参加者全員の墓をあらかじめ用意しておく運営側の性質の悪さには嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
その後、二人は敷地内に建てられていたプレハブ小屋へと向かう。
扉には「管理小屋」と書かれたプレートが貼られていた。
鍵は掛かっておらず、ひろしとラトは容易に中へと入れた。
置かれていた古い所々破けている革製ソファーに、ひろしは腰掛ける。
ラトは外の様子を窺っていた。
「今、何時だ?」
管理人が使っていたと思われるスチール製の事務机の上に置かれたレトロな目覚まし時計にひろしは目をやる。
第一回目の放送予定時刻である午前六時まで残り一時間を切っていた。
ひろしとラトはこのプレハブ小屋にて放送を聞く事にする。

77 :
放送では死亡者と禁止エリアが発表される。
果たして今何人の犠牲者が出ているのか、自分の家族は、クラスメイトは生きているのか。
不安に思いながら、ひろしもラトも放送の刻を待つ。

【早朝/A-5墓場管理小屋】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]健康
[装備]コンバットナイフ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:家族を探す。殺し合いを潰す。
       1:ラトと行動する。墓地管理小屋にて放送を聞く。
[備考]※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※ラトのクラスメイトの情報を彼より得ています。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:野原さんと行動。墓地管理小屋にて放送を聞く。
       2:クラスメイトも気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。

78 :
投下終了です。
タイトルを 墓、用意しといたからお前らの為に(優しさ) に変更します。

79 :
投下します。

80 :
47話 先輩に相談だ
民家の中で息を潜める、野獣先輩こと田所浩二、KMR、太田太郎丸忠信の三人。
リビングにて、自分の支給品であるリボルバー拳銃を右手に持ちながら、カーテンの隙間から外を監視する太田。
その背中を僅かに疑念の籠った目で見るソファーに座ったKMR。
(ちょっと先輩に相談しようかな……)
KMRはソファーから立ち上がり、二階に行っている野獣の元へ向かう。
太田はちらっとKMRの方に目をやったがそれだけですぐに見張りに戻った。
野獣は民家二階の一室に有る本棚を漁っている最中であった。
そこへKMRがやってくる。
「先輩、ちょっと良いですか」
「お? どうしたKMR」
「太田さんの事なんですが……」
「太田がどうかしたのか?」
「これは、僕の勝手な思い込みかもしれませんが……太田さんはどこか信用し切れません」
自分が心配している事を野獣に打ち明けるKMR。
「……太田さんはどこか、僕達に完全に心を許していないような気がするんです。
いざと言う時は例え僕達を犠牲にしてでも自分の命を守ろうとするような……。
さっきも言ったように、僕がそう思っているだけなので……ただの妄想かもしれませんが……」
全て自分の思い過ごし、恐怖からくる猜疑心や被害妄想なのかもしれない。
仲間として同行してくれている太田に対してとても失礼な事を言っていると自覚こそしてはいたが、
KMRはどうしても相談せずには居られなかった。
「うーん……」
野獣は黙ってKMRの言に耳を傾けていた。
KMRの懸念も分からなくは無い。
よくよく考えてみれば、太田とは数時間前に出会ったばかりであり、彼の人柄についてはまだ完全には把握出来てない。
その真意も分からない部分が多く、あくまで見た目から来る雰囲気だが、善人のような感じはしなかった。
ただ、今現在は太田は自分達の仲間として行動し、何の危害も加えてきてはいない。
自分やKMRの不安も所詮は証拠の無い憶測でしか無い以上、太田をどうこうする事訳にもいかない、野獣はそう考えKMRに返答した。
「確かにな、KMR。お前が心配するのも分かる。
太田は何を考えているのか分からない所も有るから、完全に信用するのは危険かもしれない」
「先輩……」
「でも、今の所、敵意を向けられてる訳でも危害を加えられた訳でも無いしな……。
貴重な仲間である事も事実だし、今は様子を見ようと思うんだけど、お前どう?」
「それは、そうですが……」
難色を示したKMRだったが、結局は先に述べたように太田に対する疑念は現時点では自分の憶測でしか無い事を思い出し、
野獣の意見に同意する形に落ち着いた。
「……分かりました。すみません、こんな事を相談して」
「謝る必要なんかねぇよ。状況が状況だし、心配すんのもま、多少はね?」
「はい……」
「そういや太田は今何してんだ?」
「一階で見張りをしていましたけど……」
……
……

81 :
己の支給品である古いリボルバー拳銃・コルト ポリスポジティブ.32コルトニューポリス弾仕様を右手に持ちながら、
太田太郎丸忠信は見張りをしていた。
尤も、同行している野獣とKMRの為と言うより自分の身の安全の為だったのだが。
今の所、外を歩く者の姿は見当たらなかった。
野獣の後輩と言うKMR。
自分を見る目が明らかに不信を湛えており、余り自分とも喋ろうとしない為、自分に対し疑念を抱いているであろうと太田は思っていた。
先程KMRは二階へと上がって行ったが恐らく野獣の元へ向かったのだろう。
自分の事で相談でもしに行ったのだろうか、野獣に妙な事を吹き込まなければ良いがと、太田は懸念した。
自己の生存率を少しでも上げるには、同行者の存在は重要。
的が複数居ればそれだけ攻撃も分散する事になり、いざと言う時は囮にでも盾にでもすれば良い。
それ故に同行者を失う事になるのは彼としても避けたい所である。
一定の信用を得る為に野獣とKMRに疑念を抱かれないよう振舞ってきたつもりだったが、どうもKMRは勘が鋭いらしかった。
あまり疑心を抱かれるようであればその内、野獣とKMRとは別れなければならなくなる可能性も有るだろうと、太田は思案する。
(そういやもうすぐ放送だな)
太田は壁に掛けられた時計に目をやる。
第一回目の定時放送の時刻が迫っているが、果たして何人の犠牲者が出ているのか。
愛餓夫、吉良邑子、壱里塚徳人、貝町ト子、そしてテト、と、関係の深いクラスメイトも居るが、
あくまで自分が生き残る事を優先する太田は特に気にしていない。
他のクラスメイトも然りである。
いや、強いて言うならテトは気になった。心配しているとかそう言う事では無い、薄汚れた欲望の延長線上であったが。
自身が薬漬けにしているト子に協力させ、餓夫らと共にテトを弄び、嬲った。
その時の興奮と快感は今でも太田の脳裏に焼き付いていて離れない。
出来る事なら、もう一度味わいたいとも思っていた。
彼女にした仕打ちが、彼やクラスメイトが経験した「最初の殺し合い」が起きる要因となり、
彼が一度命を落とす遠因となった事など彼は知る由も無い。

82 :
【黎明/D-4、E-4境界線付近高田家】
【野獣先輩@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]竹刀@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合う気は無い。遠野達や殺し合いに乗っていない参加者を捜す。
        1:太田、KMRと行動する。但し信用し過ぎないようにする。
[備考]※動画本編、バスガイドピンキーに気絶させられた直後からの参戦です。
    ※太田太郎丸忠信から彼のクラスメイトについての情報を大まかに得ています。
    ※KMRの進言を受け、太田を少々警戒するようになりました。
【太田太郎丸忠信@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]コルト ポリスポジティブ(6/6)@現実
[所持品]基本支給品一式、.32コルトニューポリス弾(12)
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を最優先とする。その為には手段は選ばない。
        1:野獣、KMRと行動する。いざと言う時は盾に使う。
        2:テトはもう一度会ったら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野獣先輩から彼のクラスメイトについての情報を大まかに得ています。
    ※KMRが自分に不信感を抱いていると薄々察しています。
【KMR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康、太田太郎丸忠信に対するぼんやりとした不信感
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:生き残る。殺し合いはしたくない。
        1:野獣先輩、太田さんと行動。でも太田さんはどうも信用出来ない。
        2:クラスメイトを捜したい。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※太田太郎丸忠信に対して不信感を抱いてます。

《支給品紹介》
【コルト ポリスポジティブ@現実】
1907年にコルト社が開発した小型ダブルアクションリボルバー拳銃。
法執行機関向けに設計され、1900年初頭に法執行機関市場で大成功を収めた。
本ロワに登場するのは.32コルトニューポリス弾仕様。

83 :
投下終了です。

84 :
投下します。

85 :
48話 聞こえない胸の吐息
炎上する時計塔から退避した、MUR、気絶して彼に背負われた鈴木フグオ、貝町ト子の三人は東へ進んだ。
道中、フグオが目を覚ますが、同行していたアルジャーノンの死を目の当たりにし、すっかり気落ちしてしまった様子だった。
そんなフグオを励ましつつ、MURとト子は歩き続け、やがてC-6エリアのガソリンスタンドへ辿り着いた。
しかし、そこでも血腥い光景が広がっていた。
ガラスが割れた待合室は血で真っ赤に染まり、首を飛ばされた少年の死体が転がっていたのだ。
それを見たフグオは悲鳴を上げ、建物に近付くのを嫌がった。
やむを得ず、MURがフグオと共に残り、ト子が様子を見に行く事になった。
「こいつは……」
転がっていた首を見て、ト子は死体がクラスメイトの鈴木正一郎である事を確認した。
以前の殺し合いでは、一度遭遇した事が有る。
正一郎を利用する形で、ト子は邪魔に思っていた同行者の麻倉美意子を殺害した。
その後、正一郎がどうなったのかは分からないが放送で名前を呼ばれていたので彼も自分と同じく一度死んだのだろう。
そして、この殺し合いでも命を落とした。
「……あの時は利用して済まなかったな、鈴木」
以前の殺し合いでの事を正一郎の亡骸に向かって詫びるト子。
ただ、謝罪と言うより弔いの言葉の代わりのような物だった。
「ん?」
そしてト子はある物を床で見付ける。
時間が経っているのか、乾いて変色していたが、それはどうも精液のようだった。
これを見た瞬間、ト子は鈴木正一郎を殺したのが誰か想像が付いた。
一方、外で待機しているMURとフグオの二人。
ふとMURが時計塔の方に目をやると、遠くからでも燃えているのがはっきり分かり、黒煙が立ち上っていた。
「……」
俯き無言のフグオ。
いきなり殺し合いに巻き込まれ、無理矢理死と隣り合わせになり、赤子の首が爆発する様を見せ付けられ、
同行者が目の前で無残な殺され方で死に――――普段、大好きなお菓子やジュースを口にしたり、
友達と遊んだりして平穏な日々を送っていたフグオにとって、このバトルロワイアルと言うゲームは余りにも過酷な現実であった。
(フグオ君……辛そうだゾ)
何か言葉を掛けてやりたいと思うMURだったが、気の利いた台詞が浮かばない。
MURにはフグオより少し年上ぐらいの妹が居り、可愛がっていた。
それ故に、妹と同年代のフグオが落ち込んでいるのを放っておく事も出来なかった。

86 :
「MURさん」
「おっ、ト子ちゃん。戻ったか」
そこへ建物内を調べ終えたト子が戻って来る。
「一通り中を見てきた。ついでに首輪を解析する為の工具も調達してきたよ。
……あの死体は私のクラスメイト、鈴木正一郎だな」
「それは本当か?」
「間違い無い……まぁ、仲が良かった訳では無いから悲しくは無いがな。
下手人は……恐らくでは有るが、私達を襲ったケルベロモンだろう」
「どうしてそう思うんだゾ?」
「床に血と一緒に精液が飛び散っていた」
「あっ……(察し)」
時計塔にてMUR達を襲ったケルベロモンは、アルジャーノンを殺害した時に射精をした。
どうやら、殺しで性的快感を得る異常性癖を持っていたようで、
ガソリンスタンドの鈴木正一郎殺害現場にも精液が残存していたと言う事は、
首を飛ばすと言う残虐かつ人間離れした手口も合わせて、彼を殺害したのもケルベロモンであると言う事の証拠になり得る。
同じ性癖を持っている他参加者が居る可能性も微粒子レベルで存在したものの、ほぼ断定して間違いは無いとト子は思っていた。
MURはケルベロモンが射精した時にはまだ気絶していたが、後にト子より話を聞いていた。
「ここはとても休めそうに無い、別の場所を探してみた方が良いと思うんだが……」
「そうだな……フグオ君、もう少し歩く事になるけど、大丈夫か?」
「……大丈夫プリ」
MURの問い掛けに、フグオは力無く答えた。
余り大丈夫そうには見えなかったが、放送の時刻も迫ってきている為、
MURとト子はフグオを連れてガソリンスタンドを後にした。
(フグオ君もこんな殺し合いに巻き込まれなければ、平和な日常を友達や家族と過ごせていただろうに……。
運営の奴らがますます許せなくなってくるゾ)
小学生に命のやり取りを強要するバトルロワイアルの運営に、MURは憤りを感じていた。

87 :
【早朝/C-6ガソリンスタンド】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実、ケルベロモンの首輪
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:休めそうな場所を探す。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田とその取り巻きには会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:休めそうな場所を探す。
       5:首輪を解析したい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※鈴木フグオのデイパックは当人に返しました。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康、落ち込んでいる
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:MURさん達と行動する。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。

88 :
投下終了です。

89 :
追記
MURの妹と言うのはニコニコ動画の淫夢関連作品でたまに出てくる
東方のルーミアをMURの妹として登場させる作品が元ネタです
なぜルーミアがMURの妹になっているのかは自分もよく知りません

90 :
投下します。

91 :
49話 泣き出した女と戸惑い
大沢木小鉄とテトは、旅館を出立し、雪原地帯を越えて廃墟と化した城へとやって来た。
旅館にて、テトはゴム製の長靴を発見、これを調達した為、今度は足を濡らさずに済んだ。
一方の小鉄は冷たい雪も外気も物ともせず、足が濡れようがお構いなしと言った様子で、とにかく元気だった。
「小鉄君、足大丈夫?」
「ヘーキヘーキ! これぐれえ何ともねぇぜ」
今まで炎上するアパートの中に図らずも突っ込んだり、脳天に鉛筆が刺さって生死の境を彷徨ったり、
極寒の猛吹雪の中図らずも全裸になった上倒壊した家屋の下敷きになったりしても生還してきた小鉄にとって、
単なる雪と寒さなど何ら障害になり得ない。
「頑丈ね、小鉄君……」
「まあなー」
テトは小鉄のタフさを再認識した。
「そろそろ放送も有るし、この城の中で一度休むとしましょう」
「分かったぜ。にしてもでけー城だな〜ボロっちぃけど」
二人は半開きになった正面玄関を潜って廃城の中に足を踏み入れる。
かつては壮麗だったであろうエントランスホールだが、無人となってどれくらいの月日が経過しているのか、
床は埃や天井や壁からの細かい瓦礫、鳥の糞等で酷く汚れ、
侵入者が荒らしたのか椅子やテーブル、蝋燭台等の調度品があちこちに散らばり蜘蛛の巣が張っていた。
窓ガラスもあちこちが割れたり、窓枠ごと消えていたり、植物が侵食したりしている。
「埃と黴と、鳥の糞の臭いが……休めそうな部屋は有るのかしら」
「くっせぇな……でもこれだけ広いと、他に誰か居るんじゃねぇか?」
「そうね、気を付けないと……」
小鉄の懸念通り、城内で他参加者に遭遇する可能性も考慮しつつ、テトと小鉄は休息出来そうな部屋を探し始める。

◆◆◆

サーシャは、学校の廊下に立っていた。
「……あれ? ここは」
周囲を見渡すサーシャ。
見覚えが有った――――紛れも無く、自分が通っている高校だった。
しかし、静かで、人の姿がどこにも無い。
「どうして? 私は……確か」
「サーシャさん」
「!」
背後から声を掛けられ、サーシャは振り返る。
そこには、以前の殺し合いで自分を殺そうとした久世明日美が立っていた。

92 :
「く、久世さん!?」
サーシャは瞠目する。
殺されそうになったから、だけでは無い。
彼女は以前の殺し合いで、放送で名前を呼ばれていた――――つまり、死んでいる筈。
「……サーシャさん、逃げるなんて酷いじゃない。
私はアナタを救いたかっただけなのに……」
「……」
「あの後、私、アナタを見付けようとして、頑張ったんだけどね」
「……え?」
突如、明日美の身体のあちこちに小さな穴が空いて、そこから真っ赤な液体が止めどなく溢れ始めた。
それは、明日美の足元に流れ落ち、大きく赤い水溜まりを作っていく。
突然の出来事を、サーシャは呆然と眺めていたが、同時に確信する。
やはり、明日美は死んでいるのだと。
「こうして、私は死んじゃったの。
でも、大丈夫だよ? だって、こうして、サーシャさんに会えたんだから。
さあ? サーシャさん? 私と一緒に、あっちの世界に、行こう? 行こう? 行こう? 行こう???」
血塗れの顔に優しい笑みを浮かべながら、両手を翳し、明日美がゆっくりとサーシャに近付いた。
「う、あ、うわあああああああああああ!!!」
サーシャは逃げ出した。
悲鳴を上げて、明日美に背を向けて逃げ出した。
しかし、程無く、誰かとぶつかってその動きは止められる。
「痛いじゃない、サーシャさん」
聞こえた声は、麻倉美意子の物。
サーシャは声の方向に、恐る恐る視線を向ける。
確か、以前の殺し合いの時、自分は麻倉美意子の――――。
「痛いのはもう勘弁だよ……喉、ぐちゃぐちゃになっちゃったんだあああああ」
喉の部分が切り裂かれ、原型を留めぬ程に破壊された、麻倉美意子が立っていた。
無論、生きていられる筈が無い、それ以前にサーシャは以前の殺し合いで彼女の死体を確認している。
「うあ、あああ」
もはや言葉が出なくなるサーシャ。
気付けば、周りには血塗れのクラスメイト達が立っていた。
身体に穴が空いていたり、酷い切り傷が有ったり、身体の一部を欠損していたり、全員、惨い有様になっていた。
「う゛っ……ゴホッ!」
突然、吐き気に襲われ、サーシャは込み上げてきたそれを吐き出す。
それは、血。
自分の手が血に塗れていく。
首や腹の辺りが熱い。
見れば腹が抉れていた。首も、見えないが、きっと同様だろう。
クラスのみんなは笑っていて。
そうだ、自分も、銃弾を受けて、もうこの世に――――。

93 :
……
……

「……あああぁぁああああぁああああ!!?」
絶叫と共に、サーシャは覚醒した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
とても息が荒く、身体は汗でびっしょりと濡れていた。
立ち上がって辺りを見回すが、血塗れのクラスメイトはどこにも居ない。
そればかりか、今居るのは学校ですら無く、自分が隠れている廃城のホールであった。
自分の身体も、汗まみれな事以外は、何とも無い。
「……夢……?」
窓からは陽の光が差し込んでおり、どうやら自分はいつの間にか眠ってしまい、そして悪夢を見てしまったらしい。
「……はああぁ……」
あの地獄そのものの光景が夢であった事に一先ず安心するサーシャ。
何故あのような夢を見てしまったのだろうか。
いや、一度殺し合いで壮絶な体験をしてしかも一度Rば、それが悪夢となるのも無理は無いだろうか、と、サーシャは思った。
「今、何時なの?」
夜が明けているのだからかなり長い間眠っていたのだろう。
サーシャは自分のデイパックから基本支給品の時計を取り出して時刻を確認する。
もう既に、第一回目の放送の時間が迫っていた。
「かなり寝てたのね……寝ている間に襲われたりしなくて良かった」
寝込みを襲われ命を落とす危険も有った。
それでいて無事であったのは幸運だったと彼女は思う。
「……あれ?」
しかし、サーシャはすぐに自分が完全に無事な訳では無い事を知る。
股間の辺りに違和感を感じた。
汗で全身濡れていたのでそれだとも思ったが、股間の感触は汗にしては不自然であった。
そして漂ってくるアンモニア臭で、サーシャは確信に至った。
「おしっこ、漏らしちゃった?」
失禁である。
悪夢にうなされ、サーシャは寝ている間に小水を漏らしてしまっていたのだ。
顔を真っ赤にして、自分の痴態にショックを受けるサーシャ。

94 :
「嘘でしょぉ……やだあぁあ……私もう18なのにおねしょなんて……ううっ……」
情けなさ過ぎて、じわりと涙が浮かび始めた、その時。
「あれ……? サーシャ?」
「!」
聞き覚えの有る声で自分の名前を呼ばれた。
その声の主は、以前の殺し合いにおいて、サーシャが最終的には殺そうとまで考えていた人物の物。
声の方向に顔を向けると、やはり、そこには見知らぬ人間の少年と共に、その灰色の猫族のクラスメイトが居た。
「テト……?」

◆◆◆

城内を見回っている最中、テトと小鉄は女性の悲鳴を聞いた。
間違い無く城のどこかからであった。
落ち着いて休み、及び放送を聞く為、二人は悲鳴の元を確認する事にした。
殺し合いに乗った人物と遭遇した時の事も考え、テトは小鉄から受け取った小型自動拳銃、ローバーR9を、
小鉄はテトから受け取った小刀、ドスを装備している。
「ここかしら……」
そして二人はとあるホールの中に入った。
相変わらず荒れ果てた部屋で、壊れた棚等が放置されていた。
その中に、テトは見覚えの有る姿を発見する。
「あれ……? サーシャ?」
クラスメイトの、紺色のハーフ猫族の少女、サーシャだった。
向こうもこちらに気が付いたようで、驚いた様子で顔をこちらの方に向ける。
「テト……?」
「ねーちゃんのクラスメイトか?」
「そうよ……さっき、悲鳴が聞こえて……貴方?」
「こ、来ないで!」
近寄ろうとしたテトをサーシャが拒んだ。
テトはサーシャが自分を警戒しているのだと最初思ったが、すぐに別の理由だと分かった。
サーシャから、アンモニア臭が漂ってきていた。
「……あれ? 何か、おしっこくさ……」
「やめてぇ! やめてよぉ……」
「……サーシャ、貴方……」
「うっ……うっ……ううぇええん……」
知られたくなかったのだろう、崩れ落ちてサーシャは泣き始めてしまった。
テトと小鉄は困惑気味で、しばらく立ち尽くしていた。

95 :
【早朝/E-5廃城】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、困惑
[装備]ローバーR9(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)
[思考・行動]基本:今の所は殺し合う気は無い。
       1:ええ……。
       2:小鉄君と行動する。
       3:太田達及び貝町ト子は殺してやりたい。ラトは複雑。他のクラスメイトについては保留。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
    ※大沢木小鉄が自分とは別世界の人間だと判断しました。
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康、困惑
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。のり子達を捜す。
       1:ションベン漏らしてるぞこの青い猫のねーちゃん……。
       2:テトのねーちゃんと行動。
       3:俺達、生きて帰れるのか?
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※テトが別世界の人間だと言う事を、余り理解出来ていませんが、何となくは分かったようです。
【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]身体中汗で濡れている、失禁、恥辱、嗚咽
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:……。
        2:クラスメイトの事は気になるが今は保留する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※油谷眞人の容姿は把握していません。

《支給品紹介》
【ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
小刀。元ロワにおいて倉沢ほのかに支給され海野裕也と北沢樹里の殺害に使われた。

96 :
投下終了です。
もっと過激なSS作りてぇなどうすっかな〜俺もな〜

97 :
第一放送投下します。

98 :
50話 第一放送
午前6時。朝日がバトルロワイアルの会場を照らす。
会場の至る所に設置された特別製のスピーカーから、放送開始を知らせるチャイムが鳴り響き、放送が始まった。
『えー、ン゛ン゛ッ、現在生き残ってる方々、どうも、お久しぶりです。じゅんぺいです。
えー、午前6時となりましたので、第一回放送を開始したいと思います。
まず、禁止エリアから、発表します。
午前7時より、A-6、B-3、C-1、F-5。
繰り返します。午前7時より、A-6、B-3、C-1、F-5の四つのエリアが、禁止エリアとなります。
間違って入ってしまい、首輪が爆発したりしないように、ご注意下さい。
では続いて、現時点での死亡者を発表します。
愛餓夫
AOK
青砥日花里
アルジャーノン
壱里塚徳人
一般通過爺
INUE
ガオガモン
吉良邑子
倉沢ほのか
グリフォモン
ケルベロモン
シロ
鈴木正一郎
土井津仁
西川のり子
野原しんのすけ
フーゴ
レナモン
以上、19人です。
残りは33人となっております。
我々の主が、非常に良いペースだと喜んでおり、ました。
ので、この調子で生き残っている皆様、ン゛ッ、更に奮闘して下さい。
それでは、次の放送は昼の12時になります。
これにて、第一回目の放送を終了致します』
放送終了を知らせるチャイムが鳴り響き、会場は再び静かになった。

【残り  33人】

99 :
投下終了です。

100 :
投下します。

101 :
51話 しょくしゅ注意報 其の弐
暫く身を潜め、睦み合っていた民家を後にしたノーチラスと君塚沙也の二人は北方向へ向かい、警察署を訪れた。
そこで二人は、一階宿直室にて、小学生ぐらいの少年が息絶えているのを発見した。
何が有ったのか、右手の手首から先が千切れ飛んでおり、
傷口から噴き出したと思われる大量の血液で宿直室は赤く染まっていた。
「可哀想にな……」
「随分強面だけどまだ小学生ぐらいなのにねぇ……にしても随分散らかってるわね」
宿直室は血塗れとなっていたが、お菓子の袋や空のジュースの缶やペットボトル等で散らかっていたり、
今は少年の死体が横たわり血で汚れてしまっているが、布団が敷かれていたりと、誰かが寛いでいた形跡が有った。
この少年がこの部屋で身を潜めながら過ごしていた所を襲撃されこうなったのか、
それともこの部屋を使っていた人物は別に居るのか、それを判断する証左は二人には示せなかった。
その後、署内を一通り探索し、少年の死体以外には誰も人は居ない事を確認し、
ノーチラスと沙也は放送まで警察署で過ごす事となる。
それまでに二回程行為を行った。
そして午前6時となり第一回目の定時放送が始まる。
放送を行ったのは開催式の時の二人組の片割れ、じゅんぺい。
相変わらず滑舌の悪い声で、咳払いをしながらじゅんぺいは放送内容を読み上げた。
『えー、ン゛ン゛ッ、現在生き残ってる方々、どうも、お久しぶりです。じゅんぺいです。
えー、午前6時となりましたので、第一回放送を開始したいと思います。 まず、禁止エリアから、発表します。
午前7時より、A-6、B-3、C-1、F-5。 繰り返します。午前7時より、A-6、B-3、C-1、F-5の四つのエリアが、禁止エリアとなります』
「さっきまで俺達が居た住宅街が入っているな」
「危なかったね」
ノーチラスと沙也が居た民家の有るF-5エリアが禁止エリアの一つに指定された。
図らずも禁止エリアから退避した形になったが、例えF-5エリアに残っていたとしても、
実際に禁止エリアになるのは一時間後なので放送を聞いてからでも退避する余裕は有っただろうとも二人は思う。
他の禁止エリアはいずれも現在位置からは遠く離れているので今の所は気にする必要は無さそうだ。
『では続いて、現時点での死亡者を発表します』
いよいよ死亡者の発表が始まる。
一層耳を澄ませるノーチラスと沙也。
特にノーチラスはクラスメイトが複数人居る為尚更であった。
『愛餓夫』
「いきなりか」
一番最初に呼ばれた名前はノーチラスのクラスメイトの一人、愛餓夫。
仲が良かった訳では無かったが、それでもクラスメイトの死が伝えられれば思う所は有る。
『AOK』
『青砥日花里』
『アルジャーノン』
『壱里塚徳人』
ノーチラスのクラスメイト二人目である。
愛餓夫同様、仲が良かった訳では無くノーチラスは少し溜息をついた程度で次の名前を聞く。

102 :
『一般通過爺』
「これはどう見ても名前じゃないよな……」
「私もそう思う」
『INUE』
『ガオガモン』
『吉良邑子』
『倉沢ほのか』
今度は二人連続でノーチラスのクラスメイトの名前が呼ばれる。
そう言えば自分は一度死んだが、他のクラスメイトはどうなのだろうか。
ノーチラスが思案する間も無く死亡者の発表はまだ続く。
『グリフォモン』
『ケルベロモン』
『シロ』
『鈴木正一郎』
ノーチラスのクラスメイト五人目。
『土井津仁』
『西川のり子』
『野原しんのすけ』
『フーゴ』
『レナモン』
『以上、19人です。 残りは33人となっております』
死亡者の発表が終わった。
最初の六時間の内に19人が脱落した。内、五人がノーチラスのクラスメイトであった。
更に、開催式の時に見せしめで殺された赤子の家族の内、赤子の兄と飼い犬も命を落としたらしい。
(そういや俺、前の時は一回目の放送前に死んじまったな……)
そう思うと、感慨深い物が有るとノーチラスは思った。

103 :
『それでは、次の放送は昼の12時になります。 これにて、第一回目の放送を終了致します』
第一回定時放送が終了する。
「ノーチラス、クラスメイト何人か呼ばれたの?」
「仲の良い奴らじゃなかったけどな……そうだとしても、クラスメイトが死んだって聞かされるのは嫌な気分になる」
「まあ気持ちは察するけどねぇ……にしても19人……結構死んでるね……私とノーチラスがエッチしてた間にね」
「あ、ああ、そうだな……」
「でも私の時も最初の放送までに17人ぐらい死んでたしこんな物なのかな」
「そういやお前も二回目だったか……」
ノーチラスと沙也はお互いが一度殺し合いに巻き込まれ、命を落とした身であると言う事は互いの口から既に聞いていた。
嫌々ながらノーチラスが自分の死に様を沙也に話した時、沙也に笑われ赤面する羽目となったが、
同じ殺し合いを経験した者同士と言う事で親近感が強くなった。
それと比例し行為も激しく快楽も強まったとか。
「前の時は同行してた人が堅物で一回も出来なかったから今回は前よりはマシだと思ってるよ」
「そんな理由でか……」
「そんな理由って何よ! 立派な理由でしょ!
……まあ良いけどさ、そう言う訳だから、エッチについては自重はしないからね? 宜しく」
妖しく微笑みながら、沙也はノーチラスを見て言った。
ノーチラスは苦笑いを浮かべつつも、満更でも無いといった様子であった。

◆◆◆

警察署に裏手から近付く一人の影。
全身から触手を生やしたリカオンの少年、小崎史哉。
彼はその身体がずぶ濡れで、水を滴らせていたが、何故か。
警察署の対岸に有る病院にてレナモンを惨殺した後、史哉は獲物を求め病院及びその周辺を徘徊していた。
明るくなり放送の直前ぐらいになった時、彼は唐突に渡河を始めた。
川の向こう岸に獲物を求めた、本能的な行動であり、廻り道をして橋を利用すると言う思考力はもう彼には無かった。
川は中程でも腰まで浸かるぐらいの深さで、史哉はずぶ濡れ、足元を泥だらけにしながらも渡り切る事に成功する。
そもそも今の彼にとって、身体が濡れようが汚れようが関係無かったのだが。
渡河の最中に放送が有ったものの、前述の通り知能が殆ど失われている彼は、放送など全く意に介さなかった。
「ウ……ウウ……」
唸り声を発しながら、史哉は警察署の小さな裏口へと歩いて行く。

◆◆◆

104 :
ガシャアアン!!

突然、静かだった警察署内に派手な音が響き渡った。
驚くノーチラスと沙也。
「何だ!?」
「裏の方から聞こえたけど……」
「今の音はただ事じゃないぞ……行ってみよう」
二人は裏手へ様子を見に行く事にする。
ノーチラスは十八年式村田銃、沙也は日本刀とそれぞれの支給武器を装備し戦闘になった時に備える。
そして二人が目にしたのは。
「何だ、こいつ!?」
「うわっ、キモッ……!」
無残に破壊され床に転がった裏口の扉と、全身から触手らしき物が生えたリカオン獣人の少年だった。
「ヴヴヴヴ……」
唸り声を発しながら、少年が二人に向けるその双眸は獣そのもので全く友好的な雰囲気は感じ取れない。
そもそも意思疎通が出来るかどうかも分からなかったが、ノーチラスは村田銃を構えて警告した。
「止まれ! 動くな!」
「ガアアア!」
しかしリカオン少年はノーチラスの威嚇など全く意に介さず、物凄い速度で右手の触手を伸ばし襲い掛かる。
その触手はノーチラスを狙っていた。
「!!」
身を屈め、紙一重でノーチラスは触手を避ける事に成功した。
触手はノーチラスと沙也の背後の壁に深々と突き刺さり、大きなひび割れが広がった。
その破壊力が如何程の物か思い知るには十分過ぎる有様で、ノーチラスと沙也はこのリカオン少年が、
とんでもない危険人物であると再確認する。
「こいつ!」
迷ってはいられない、こいつは間違い無く自分達を殺そうとしている。
ノーチラスは村田銃を構え直し、引き金を引いた。
ダァン!!
11.15ミリの銃弾が、黒色火薬による激しい硝煙と共に銃口から放たれる。
旧い時代の、現在主流の無煙火薬より威力の弱い黒色火薬使用とは言え、小銃弾には変わり無い。
急所に当たれば勿論、急所を逸れたとしても命の保証は無い。
そして銃弾はリカオン少年の右肩を貫通した。
「グゥッ」
少年は呻いた、だが、それだけであり動きを止める様子は無かった。

105 :
「駄目だ効いてない! 逃げるぞ沙也!」
「わ、分かった!」
沙也の手を引いてノーチラスは退却する事を選択した。
触手を伸ばして遠距離からも攻撃する上に小銃弾も物ともしない頑丈さ、まともに相手するには危険過ぎる。
「ア゛ァァアアア゛アァアア!!!」
走る二人の背後から、少年の雄叫びが響いた。
必死に走った末、ノーチラスと沙也は警察署正面玄関を潜り外へ飛び出した。
二人は振り向くが、まだリカオン少年の姿は見えない。
しかし署内から壁か何かを壊すような音や、咆哮が響いておりしかも近くなってきている事から追跡するのを諦めてはいないようだ。
「なるべく遠くに逃げた方が良いな、良し、町の方へ行こう沙也。隠れ場所も曲がり角も多いだろうし撒けるだろ」
「分かった!」
二人はリカオン少年を振り切るべく、遠くに見える市街地へ向かい始めた。

【朝/F-4警察署周辺】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラス君と行動。市街地方面へ逃げる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(0/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也と行動。市街地方面へ逃げる。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターであり事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。

◆◆◆

106 :
小崎史哉の身体の内部は、彼に巣食う触手の正体である寄生虫がその体積を増大させており、
見かけには分からないがかなり体重が増している上、重心のバランスも狂っていた。
それ故に動きは緩慢であり、素早く走る事は出来ず、
獲物に全力で走り去られたら触手を伸ばして捕縛でもしない限りはそのまま逃げられてしまう可能性が非常に大きい。
病院の時もそうだったが、今回も標的にした狼と猫の少年少女に逃走を許してしまう。
署内の壁や天井、備品を手当たり次第に壊しながら史哉は玄関へと向かった。
八つ当たりしている訳では無い。そのような感情は彼にはもう残っていない。
寄生虫の力により破壊衝動が増幅されている為であった。
玄関の扉も束にした触手でぶち壊し、史哉は外へと出る。
「……」
遠方に見える市街地。そこへ向かって走って行く先程の二人の姿を史哉は捉えた。
病院の時とは違い、今度は逃げた相手の行き先を掴んだのだ。
それに、市街地ならば、あの二人を見失ったとしても他の参加者が居るだろう。
「ウゥウウ……」
発した唸り声を誰か聞く者が居れば、微かに歓喜の色が滲んでいるように聞こえただろうか。
史哉もまた、二人のように市街地に向けて歩き出した。

【朝/F-4警察署玄関前】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]ずぶ濡れ、右肩に貫通銃創、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
        1:市街地……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
    ※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
    ※ノーチラス、君塚沙也と同じく市街地方面へ向かいます。

《支給品紹介》
【十八年式村田銃@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
1880年(明治13年)開発の単発ボルトアクション小銃「十三年式村田銃」の改良型。
明治時代の日本陸軍が制式としていた。
元ロワにおいて丹羽三矢に支給されるが、上神田ための手に渡り内水直之とコンラートの殺害に使われる。

107 :
投下終了です。

108 :
投下します。

109 :
52話 人間の屑がこの野郎……
油谷眞人はF-5エリア住宅街のとある民家にてしばらく休憩した後、E-4エリアの市街地方面へと出発した。
近くに二人の参加者が民家に隠れ乳繰り合っていたのだが彼は気付かなかったようだ。
そしてE-4エリア市街地の、東端部に当たる場所に差し掛かった時、第一回目の放送の時間となった。
『えー、ン゛ン゛ッ、現在生き残ってる方々、どうも、お久しぶりです。じゅんぺいです。
えー、午前6時となりましたので、第一回放送を開始したいと思います』
「相変わらずひでぇ滑舌……」
開催式の時と同じく滑らかで無いじゅんぺいの弁舌に苦笑する眞人。
放送ではまず禁止エリアが発表される。
午前7時、つまり今から一時間後にA-6、B-3、C-1、F-5の四つのエリアが禁止エリアになるとの事。
先述の通りF-5エリアは眞人が休憩していた場所であり、出発して正解だったと眞人は安堵した。
続いて死亡者の発表になり、19人の名前が呼ばれた。
現在の生き残りは自分を含め33人。
眞人にはこの殺し合いに知人は居ないので重要だったのは死んだ人数と残りの人数だ。
『我々の主が、非常に良いペースだと喜んでおり、ました。
ので、この調子で生き残っている皆様、ン゛ッ、更に奮闘して下さい。
それでは、次の放送は昼の12時になります。
これにて、第一回目の放送を終了致します』
放送が終了し、再び会場が静けさに包まれる。
「残りは俺入れて33人か……今の所は特に問題らしい問題は無いな。
……前の時みてぇに、運営の連中が妙な気まぐれ起こさなきゃ良いが」
以前の殺し合いでも眞人は生き残る為に殺し合いに乗り、キルスコアを稼いでいた。
だが、運営の狼獣人の男が気まぐれを起こし、生き残り全員を集めて男とのジャンケンで生存者を決めると言うルールに変更された。
眞人の奮闘は全て無駄に終わり、その上、眞人は男とのジャンケンに負け、一度目の死を迎えた。
彼が危惧するのはそうした気まぐれを今回の殺し合いの運営が起こさないかどうか。
優勝し生き延びる為に殺し合いに乗り、戦っているのだからそれらが無駄になるような真似だけはしないで欲しいと眞人は願った。

◆◆◆

市街地の路地裏、飲食店のゴミ置き場脇に有る裏口の小さな階段に、春巻龍は腰掛けていた。
表情は暗く沈んでおり、いつもの彼が浮かべている能天気さは微塵も感じられない。
警察署にて、正当防衛だったかもしれないが、春巻は自分の教え子の土井津仁を死に至らしめた。
その後、何をどうしたのか、良く覚えていない。
気が付いた時春巻は市街地の路上に立っていた。
警察署を出て市街地までやって来たのだろうが、教え子を殺害したショックによる錯乱のせいか、
道中の記憶が殆ど欠落してしまっていた。
今までどんな問題行動、犯罪行為をしでかしてきても、
彼は大して罪悪感を感じなかった(彼に悪意が一切無い、遭難して追い詰められていたなど一応それなりの理由が有るのだが)。
しかし、教え子の殺害と言う行為は、春巻にかつて無い程の、それこそ押し潰されてしまいそうな程の罪悪感を感じさせていた。

110 :
そして第一回放送にて、彼は仁と同じく教え子の西川のり子が死んだと知らされる。
「のり子、死んでしまったのかホイ……」
馬鹿で元気な、この殺し合いにも呼ばれている大沢木小鉄と並ぶ活発かつタフな関西娘、西川のり子。
春巻も幾度となく彼女からの鉄拳制裁を受けたりした。
しかし小鉄らと共に引越しを手伝ってくれたり、優しい面も持っていた。
そんな彼女が死んだ、とじゅんぺいは言っていた。
どこで、どういう最期を遂げたのかは分からないが。
「……今まで、どんな目に遭っても生き延びて、きたけれど……」
数々の遭難を乗り越えてきた春巻だったが、今回ばかりはもう生きて帰れないかもしれないと悲観する。
突然殺し合いに巻き込まれ、仁に殺されそうになり、その仁を殺した事で、彼はすっかり精神的に参ってしまっていた。
「俺はどうすれば……」
弱った思考力なりに彼は考える。
死にたくない。
殺し合いには乗りたくない。
一人は淋しい。
怖い。
助けて欲しい。
頭を抱え、ガクガク震えながら、春巻が導き出した結論は。
「みんなを、捜すちょ……!」
生き残っている生徒――――小鉄、フグオ、金子翼を捜し出し、仲間にして貰う事だった。
仁を殺した自分を受け入れてはくれないかもしれない。
だがそれでも春巻は教え子達を捜し出したかった。
孤独はもう今の彼には耐えられそうに無かったから。
誰かと一緒になりたい。教え子で無くても良い、殺し合いに乗っていない者と会って一緒に居させて欲しい。
あの時――――警察署でフラウと別れるんじゃなかった。
あの時一緒に行っていれば、こんな淋しい思いも、仁をR事だって無かっただろうに。
春巻はフラウと別行動を取った事を、今になって激しく後悔した。
「行くホイ……」
春巻はゆっくりと立ち上がり、身を潜めていた裏路地から、表通りへ出た。
「あぁ? おい」
「え……」
出た直後に、一人の少年と鉢合わせになる。
中高生と思しき、黒い学ラン姿の長身の少年で、抜き身の剣を装備していた。

111 :
「あ、あの……」
春巻はその少年が殺し合いに乗っていない可能性に賭けて、彼に話し掛けた。
しかし、その賭けは失敗に終わる。
少年は無言で、春巻に向け持っていた剣を振ったのだ。
ヒュンッ
風を切る音と同時に、春巻の左肩から腹にかけて、浅く致命傷には至らないものの袈裟型の傷が出来、赤い液体が滲み出た。
「……あああああぁああぁああ!!?」
傷の痛み、突然に向けられた殺意、精神的ショックで、春巻は絶叫した挙句尻餅を突く。
この少年が殺し合いに乗っている事はもはや明らかであった。
少年は春巻を睨みにがら剣を右手ににじり寄って来る。
このままでは間違い無く殺される。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
「やめてくれぢょ!! 嫌だ!! やだああああぁああああああぁあ!!! やだあああ!!」
恐怖に駆られた春巻は少年を一瞬驚かせるぐらいの大声で悲鳴を上げながら逃げようとした。
だがすぐに足がもつれて倒れ込んでしまう。
春巻は自分の支給品である大型自動拳銃を所持しデイパックの中に入れていたが、この時彼はその事を完全に失念してしまっていた。
涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして、春巻は土下座して命乞いを始めた。
「お願いじます!! 殺さないでぐだざいぢょ!! 命だけは!! 命だげは勘弁じでぐれホイ!!!」
アスファルトに額を擦りつけ、大粒の涙を流し鼻水と涎を垂らし、小便まで漏らし震えながら、春巻は命乞いをした。
このような必死の命乞いなど、彼の人生の中で生まれて初めてであっただろう。
「……チッ」
余りに情けない春巻の姿に、苛立ったのか少年が舌打ちをした。
「おい、おっさん」
「ひっ!!」
「行けよ。見逃してやるよ」
「え? い、良いのかチョリソー?」
あっさりと命乞いを受け入れてくれた少年に驚き、思わず聞き返す春巻だったが。
「テメェなんかR気にもなれねぇよ。俺がやんなくたって野垂れ死ぬわ!
余計な体力使いたくねーんだよこっちだってよ! オラとっと失せろや!! ウゼーんだよクソが!!」
「うっ、あ、ああぁああっ!!」
少年に凄まじい罵声を浴びせられ、春巻は漏らした小便を垂らしながら走り出した。
普段から周囲に迷惑ばかり掛けている厄介者で。
教え子を殺してしまって。
命乞いして醜態を晒して敵に情けを掛けられて。
泣きながら、小便を漏らしながら逃げて。
自分は、生きている価値など少しでも有るのか。

112 :
「あああぁああ、ああぁああああああぁあ……」
嗚咽を漏らし、小便を路上に垂らし、
傷心しきってかつて無いぐらい精神が追い詰められた哀れな男は宛も無く走り続ける。

【朝/E-4市街地東部】
【春巻龍@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神的疲労(極大)、中程度の錯乱状態、後頭部に軽いコブ、
    上半身前面に浅い袈裟の傷、嗚咽、失禁、宛も無く走っている
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式(食糧全て消費)、オートマグ(6/7)@現実、オートマグの弾倉(2)
[思考・行動]基本:自分は……生きている価値なんて有るのだろうか。
       1:助けて欲しい。
[備考]※少なくとも元祖!にて再び小鉄達の担任となった後からの参戦です。
    ※フラウのクラスメイトについての情報を得ました。
    ※油谷眞人の外見のみ記憶しました。
    ※かなり精神的に追い詰められています。正常な判断が下せるか怪しいです。

◆◆◆

裏路地から出てきた男を、油谷眞人は殺そうとした。
しかし、男は泣き叫び失禁までしながら眞人に命乞いをした。
それでも殺そうと思えば殺せたのだが、男が見せるあまりに情けない見苦しい有様に、眞人は虫唾が走り、
R価値も無いと見做して逃がした。
その際散々に罵った所、泣きながら男は逃げて行った。
「……ったく、R気も失せるわ、あんな奴」
吐き捨てるように言うと、眞人は他の参加者を探し始めた。
その逃がした男が、深夜に古城にて交戦した少年の担任教師である事など、彼は知る由も無い。

【朝/E-4市街地東部】
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:生き残る為に殺し合いに乗る。
        1:他参加者の捜索。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※土井津仁、春巻龍の容姿のみ記憶しました。

113 :
投下終了です。
春巻殺そうかとも思ったけどもうちょっと生きさせます

114 :
投下します。

115 :
53話 健康レ☆プ! カレー料理人と化したソフィア
第一回目の放送が終わり、A-3に有る民家・新今家の中の原小宮巴とKBTITは、
放送によって得られた情報を書き込んだ名簿と地図を見返す。
「AOKとINUEと爺が死んだのか……仲が良かった訳じゃねぇけど、クラスメイトが死んだって言われると悲しいなぁ……」
「私は知り合いと言うか親しい人は居ないんだよね……あ、戻ってきた」
巴が戻ってきたと言ったのは、現在居る新今家に先客として居た兎獣人の女性、ソフィアである。
その表情は心無しかやつれているように見え、苦しげに腹をさすっていた。
「おいおい、大丈夫かソフィア」
「……これは完全に食中毒ね……間違い無い……」
「おねーさん、何か悪い物でも食べたの?」
「戸棚に入っていた饅頭、あれだと思う……ちょっとパサついていたような気がしたし……ヴッ! またっ……」
つまみ食いをした挙句、食中毒と化したソフィアは再びやってきた腹痛に、
今しがた出たばかりのトイレにまた向かう。
最早ひり出し過ぎて肛門が傷んでいたが、そんな事は食中毒の原因及び彼女の生理現象はお構い無しであった。
「まぁおねーさんは置いといて……これからどうしようかタクヤさん」
「うーんそうだな……」
トイレからのソフィアの呻き声と脱糞音をBGMにしながら二人はこれからの行動指針を話し合う。
「人が集まり易そうな所は……やっぱ市街地だな!
俺は市街地回ってくのが良いと思うんだけど」
「市街地、ね」
KBTITは市街地が人が集まり易いと踏んだ上で、自分のクラスメイトや殺し合いに乗っていない参加者を集めるのに、
市街地を回って行こうと言う考えを示し、巴もそれに賛同する。
無論、殺し合いに乗った参加者と出くわす危険も有ったが、その位の危険は覚悟しなければならぬだろうと妥協する。
ルートは多少距離と時間は掛かるものの、今居る場所から北へ向かって小学校の有る市街地、
そこから更に東へ抜け、商店街の有る市街地に行こうと言う事になった。
「あ、ああ……もう大丈夫でしょ……お尻痛い……」
「あ、おねーさんお帰り。放送の情報は……」
「いや一応、トイレの中でも聞けたから……大丈夫」
トイレの中で用を足している間でもソフィアは一応放送は聞いていた。
死者の名前の中には見せしめで殺された野原ひまわりの兄、しんのすけと飼い犬のシロの名前が有った。
娘に続いて息子まで喪った両親はどうしているだろうか、特に神社にて交戦した母親のみさえ。
完全に狂っていたが、息子も死んだと聞いて、果たしてどうなっているのかソフィアは少しだけ気になった。
二度と会いたくは無かったが。
「そっか……私達これからの事について話してたんだけど」
「え? 私、あなた達のグループに組み込まれてるの?」
巴の言にソフィアは意外そうな表情を浮かべる。
巴とKBTITに(自宅では無いが)庇を貸しはしたが、二人の仲間になったつもりでは無かったからだ。

116 :
「え? 俺達と一緒に行かないのか? 折角なんだし一緒に行こうぜ。
どうせお前一人なんだろ?」
「うーん」
ソフィアは考える。
この二人に同行する気は元々無かったが、考えて見れば一人よりも複数で行動した方が自分の生存率も上がるだろう。
結局ソフィアは二人と一緒に行く事にした。
「良いわ。私で良ければ仲間になるよ」
「おっ、良いぜぇー宜しくな」
「宜しくねおねーさん、でも一度仲間になったんだから裏切るような真似はやめてね?
でないと……おねーさんの頭が無くなっちゃうかもしれないから」
「は、はは……」
散弾銃をちらつかせながらソフィアに釘を刺す巴。
それを見て引き攣った笑いを浮かべながら、ソフィアは同行すると言ったのは早計だっただろうかと心の中で少しだけ後悔していた。

【朝/A-3西南端部新今家】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(3/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)、警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)、ソフィアと行動。
        2:市街地を回り仲間集め。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴、ソフィアと行動。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
【ソフィア@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]食中毒(回復中)、肛門に痛み
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、睡眠薬@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。無理な戦いはしない。
        1:巴、KBTIT(拓也)と行動する。
        2:武器になりそうな物を調達する。
        3:野原みさえには二度と会いたくない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※食中毒のせいで何度も排便を余儀なくされ、肛門が痛んでいます。

117 :
投下終了です。

118 :
投下します。

119 :
54話 行き着く運命の最終形
放送を聞いた呂車は、死者として呼ばれた19人の中に、
ガソリンスタンドにて交戦した野原みさえの息子、しんのすけと飼い犬のシロが入っていた事が少し気掛かりだった。
(飼い犬ならまだしも、息子まで喪ってしまった事になるな……あの女はどうするのだろう)
みさえは精神に異常を来している様子で、優勝して娘や、死ぬ事になるであろう自分の家族を生き返らせて、
また家族一緒で暮らすのだ、などと言う世迷い言を吐いていた。
どうするのか、と呂車は思ったが、どうもしないだろう。
死んだ息子や犬も一緒に生き返らせれば良い位にしか思わないに違い無い。
(あんな女の事など俺にはもう関係無いだろう。これ以上気にするのはよそう……)
みさえやその家族の事を自分が考える必要は無いと思考を切り替え、
呂車は前方に見える建物を見据えた。
地図によればそれは図書館のようだった。

◆◆◆

穴が空いた本やそこから千切れ飛んだらしいページの紙が散乱し雑然とした図書館内。
空の薬莢が幾つも転がっている事から銃撃戦でも有ったのだろう。
しかし人狼の青年、コーディはそれらの事は大して気に留めず、読書スペースの椅子に座りながら、
放送で得られた情報を一通り書いた地図と名簿を見る。
禁止エリアはどれも現在位置からは離れており今の所は気にする必要は無さそうだ。
「飯でも食うか……」
小腹が空いたのでコーディはデイパックの中から基本支給品の食料と水を取り出し軽い朝食を始める。
「……あんまり美味くねぇな」
渋い顔をするコーディ。
基本支給品の食料は安物なのか、余り美味しいとは言えない代物であった。
しかし空腹は否定出来ない為、我慢してコーディは食料を口の中に放り込む。
取り敢えずは空腹を満たせたので、椅子の背もたれに体重を掛けて一息付くコーディ。
「ん……」
しかし、入口の方から聞こえてきた音に彼の耳がピクリと動く。
その音は入口の扉が開いた音であり、要するに誰かが訪れてきたと言う事だ。
「誰か来たな……」
コーディは傍に立てかけてある、廃村にて少女を殺害し奪った56式自動歩槍を手に取り、本棚の陰に移動して様子を伺い始めた。
そしてしばらくして、彼の視界に灰色の身体を持った竜人種と思しき男の姿が映る。

◆◆◆

120 :
図書館に入った呂車だったが、目に入った光景は図書館とは思えない位に荒れていた。
椅子がひっくり返っていたり、穴の空いた本や破れたページ、大量の空薬莢が床に散らばっていたり、
本棚や壁に無数の穴が空いていたりしている。
どうやら今さっきでは無いようだが銃撃戦が有ったらしい。
(もしかしたら死体が転がっているかもな……もしくは他に誰か居るかもしれん)
戦闘が有ったのなら、犠牲者の死体が転がっている可能性が有る。
それでなくても、誰かが身を潜めているかもしれない。
先刻みさえから没収したサーベルを片手に呂車は奥へと進む。
「誰か居るカ?」
一応、日本語で声を掛けてみるが返事は無い。
誰も居ないのか、警戒して隠れているのか、こちらの隙を窺っているのか。
ダァン!!
答えは三つ目のようだった。
銃声が響き、呂車の左頬を銃弾が掠める。
「くっ!」
即座に身を屈めてテーブルの下に隠れる呂車。
(クソッ、乗っている奴か……まずいな)
テーブルの下に隠れたとは言え、テーブルの木製の板程度では銃弾など防げまい。
向こうはこちらの位置をある程度把握しているだろうから一刻も早く移動しなければ。
呂車はハイハイをするような形でテーブルの下を這う。
不格好であったがそんな事を気にしている場合では無かった。
ダァン! ダァン! ダァン!
狙撃手は攻撃の手を緩めず呂車に向けて発砲を続ける。
呂車が危惧した通りテーブルの板など簡単に貫通してしまい、固い床にヒビを入れて深々と食い込む銃弾。
「ぐぅ!」
銃弾の一発が呂車の尻尾を抉った。
苦痛に顔を歪ませながらも、どうにか呂車は狙撃手が居る位置から離れた場所の本棚の陰に移動する事に成功した。
「〈くそっ……〉」
尻尾の傷を見て呂車はぞっとする。
肉が抉れ真っ赤な血に混じり白い骨らしき物まで見えた。
傷口から流れ出た血液が床に跡を作っている。
(さて、これからどうする……)
傷の痛みを堪えながら呂車は狙撃手への対抗策を何とか打ち出そうと必死で頭を働かせる。
しかしその思考は中断させられた。
本棚が倒れてきたのだ。

121 :
「なっ――――!?」
突然の事になすすべも無く、呂車はうつ伏せの状態で本棚に胸から下を圧し潰される状態となってしまった。
「グアアァアッ!! う゛っ……ぐぅうう!」
本棚は木製、とは言え大量の本が収められている上に本棚自体も大きくその重量はかなりの物だ。
苦しさにもがき必死に本棚をどかそうとする呂車だったがビクともしない。
倒れた本棚は呂車を潰している物だけでなく何列もの本棚がドミノ倒しのように重なって倒れていたのだ。
誰が本棚を倒したのか、それは明白。
呂車の元に、突撃銃を手にした雄の人狼が近付いてくる。
「思い切って本棚ドミノ仕掛けてみたけど、大成功したな……」
人狼の青年は呂車が完全に動けなくなっていると見ると、突撃銃に付属しているスパイク型銃剣を起こした。
「弾は節約しないとねぇ」
「……っ」
もはや、ここまで。
呂車にもう対抗手段は何一つ残されていない。
何の因果か再びこの世に生を受けたと言うのに、結局何も出来なかった事が口惜しい。
そして人狼の青年は、銃剣を呂車の後頭部に突き刺した。
ザクッ
「げっ、ア! ア゛ッァア!!」
「暴れると痛いぞ〜」
コーディがふざけ半分で忠告するが暴れなくても十二分に痛い。
なまじ高い生命力のせいで呂車はすぐにはRずそれが余計に苦しみを長引かせる結果となった。
何度も、何度も人狼は呂車の首を銃剣で刺した。
血がドクドクと溢れ、呼吸もままならず意識も遠のき、完全に致命傷となる。
間も無く自分は死ぬだろう、呂車は思った。
(……神が、居るのなら……何の為、に……俺に、再び……命……を、与えた……の……だろ……う……)
消え失せていく自意識の中、自分の二回目の人生の意味を、誰にとも知れず呂車は問うた。
その答えは返ってくる事は無く、彼の再び与えられた命は消える事となった。

【呂車@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター  死亡】
【残り  32人】

◆◆◆

122 :
突発的に思い付いた、本棚をドミノのように倒して灰色の竜人を潰してしまおうと言う作戦は見事成功した。
竜人(実際はガーゴイルの獣人だがそんな事はコーディは分からない)は死にはしなかったものの、
本棚の下敷きとなり完全に動きを封じられ、それによってコーディは容易く仕留める事が出来た。
その辺に落ちていた紙――書かれている内容から元は家庭の医学関係の本のページだったらしい――で、
56式自動歩槍の銃剣に付着した血を拭き取り、竜人が持っていたサーベルを回収する。
鞘や、他の所持品も有るだろうが、恐らくデイパックごと本棚の下と思われる。
本棚をどかして回収するのは面倒な事この上無いので、コーディは竜人の荷物を漁るのは諦め、
抜き身のままサーベルを自分のデイパックへ突っ込んだ。
「あーあもう滅茶苦茶だよ」
図書館内の惨状を見て思わずコーディは呟いた。
元々散らかっていたがそこへ自分のやった本棚ドミノ倒し、更に竜人の男の死体、そこから流れ出た血液も加わり、
下手をすれば閉館に追い込まれかねないレベルにまで荒れ果ててしまっている。
「まあ別に良いか、移動しよ」
とは言っても、今は図書館の職員も居ない殺し合いの真っ只中、
自分の命の保証も無いのに所詮は他人事の図書館の心配をする必要など全く無い。
コーディはこれ以上図書館には用は無くなった為、他の場所へ向かうべく玄関へと歩いて行く。

【朝/D-3図書館】
【コーディ@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(8/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、バール(調達品)、ステーキナイフ@自由奔放俺オリロワリピーター、
     サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:どこへ行こうか……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※北沢樹里と野原しんのすけの容姿を大まかに記憶しました。

※D-3図書館の中、本棚の下に呂車の死体及びデイパック
(基本支給品一式、サーベルの鞘、S&W M56オート(11/15)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル、S&W M56オートの弾倉(3))が有る

123 :
投下終了です。

124 :
投下します。

125 :
55話 GIRLS BE BRAVE 〜少女よ勇気を持て〜
しんのすけの死後、樹里はひとしきり泣いた。
泣いた後、しんのすけの死体を近くの太い木の根元に安置し、涙を拭う。
ずっと悲しんでいる訳にも行かない。
しんのすけに助けられた命で、自分に出来る事――即ち、殺し合いの打倒――をしなければ。
彼の荷物から、回転式拳銃スコフィールドリボルバーとその予備の弾を回収する。
無断で持っていくのは気が引けたが、今持っている出刃包丁だけでは心許無かった。
先刻の倉沢ほのかのように銃を持っている相手と戦う事になったら出刃包丁などでは到底太刀打ち出来ない。
「こんな所に放置してごめんね、しんのすけ……アンタに助けて貰った命を無駄にしないように私、頑張るから……」
物言わぬしんのすけに向かって誓言し、樹里は歩き出した。
歩き続け、どうにか森を抜け、樹里はそれなりの規模を持つ工場を発見する。
気付けば放送の時間も近付いていたので、落ち着いて放送を聞くべく樹里はその工場へと入った。
しかし、工場の生産ライン区画にて、一人の死体を見付ける。
「餓夫……!」
それは以前の殺し合いにて、自分の足を奪い絶望させた張本人、愛餓夫だった。
機関銃か何かで撃たれたのか身体中に穴が空き、血溜まりの中で屍と化していた。
以前の殺し合いでも放送で名前を呼ばれていたので餓夫は死んだのだろうが、
この殺し合いでもこの男は落命してしまったらしい。
「生き返ったのにまた死んだのね……ざまあみろ……」
以前餓夫の死を知った時より遥かにテンションの低い口調で「ざまあみろ」と言う言葉を餓夫に吐き捨てる樹里。
会ったらそれなりの制裁を加えてやろうと思っていたが既に死んでしまっているのならどうしようも無かった。
社員食堂として使われていたと思われる広い部屋で樹里はパイプ椅子に腰掛け、放送の時刻まで待った。
時計が午前6時を回り、チャイムが鳴り響き第一放送が始まった。
まず禁止エリアが指定され、A-6、B-3、C-1、F-5の四つが選択される。
一番近いのはC-1だが、全く行く予定も無く通り道ですら無い為、気にする必要は無さそうだ。
そして、死者として19人の名前が呼ばれた。
クラスメイトはさっき見付けた愛餓夫の他、壱里塚徳人、吉良邑子、何と廃村にて遭遇したばかりの倉沢ほのか、
鈴木正一郎が死んだと言う。
しんのすけの名前も当然呼ばれ、更に彼の飼い犬だったシロの名前も呼ばれた。
「倉沢さん……あの後、誰かに殺されたの?」
自分がしんのすけを抱えて逃げたその後に、倉沢ほのかは何者かに殺害されたのだろうか。
取り敢えずはこれでほのかに命を付け狙われるという心配は無くなったものの、樹里はどこかすっきりしない気分だった。
気になったのはしんのすけの両親の事だ。
「息子も娘も、愛犬も、喪ったって事になるよね……」
子供二人と飼い犬を喪った両親の悲しみは察するに余り有る。
これから先、もししんのすけの両親と会う事が有ったらしんのすけの事をどう説明すれば良いのかと樹里は悩む。
自分がしんのすけの死の遠因と言っても良かったからだ。

◆◆◆

126 :
虐待おじさんこと葛城蓮、シルヴィア、ガルルモンの三人は、
D-2エリアの森の出口付近にて第一放送を聞いた。
「俺のクラスメイトはもう三人死んでんのか……くそっ」
蓮のクラスメイトの内、AOK、INUE、一般通過爺が呼ばれた。
親友のKBTITこと拓也や、ひでは呼ばれなかったがだからと言って素直には喜べなかった。
「鈴木は死んだのか……」
シルヴィアも、いずれも親しい者では無かったが、クラスメイトの名前が何人か呼ばれた。
以前の殺し合いにて自分を殺害した、鈴木正一郎もどこかで命を落としたらしい。
今度会ったら殴ってやろうともシルヴィアは思っていたのだがそれも叶わなくなった。
気に掛けているサーシャの名前が呼ばれなかったのは幸いだったが。
「19人、結構多いなぁ……」
ガルルモンはこの殺し合いに知り合いは誰も居なかったので、重要だったのは死者の数であった。
「さっきの子供、やっぱり野原しんのすけだったか」
「そうだね、名前も呼ばれたし間違い無いみたい」
「確か、開催式の時に見せしめで殺された子の……」
三人が話題に出したのは、廃村から現在の場所に来るまでに見付けた小さな子供の死体の事。
その時は確証が持てなかったが今の放送で名前が呼ばれた事で、
死体が開催式の時に殺された野原ひまわりの兄、野原しんのすけであった事を確認する。
彼の身体には恐らく銃で撃たれた物と思しき傷が有り、それが致命傷となったようであった。
シルヴィアが以前やらされていた殺し合いはクラスメイト同士で、しんのすけのような小さな子供は居なかった。
前の時は殺し合いに乗ってクラスメイトを皆殺しにする決意までしたシルヴィアでも、
幼い子供の死を目の当たりにして少し思う所が有った。
それと同時に、改めてこの殺し合いの首謀者達への憤りを強める。
蓮もまたシルヴィアと似たような気持ちだったが、ガルルモンは自分の命が無事ならそれで良いと言う考え故に、
二人のような気持ちにはならなかった。
放送後、三人は森を抜けてすぐの所に有る工場へと足を踏み入れる。
金属板をプレス加工して何らかの部品を製造していたと思われるその工場は、
金型が洗浄作業の途中で放置されていたり、フォークリフトが荷揚げしたまま停まっていたりと、
操業途中で作業員が居なくなったかのような様相を呈していた。
そして三人は生産ライン区画にて、野原しんのすけに続きもう一人の死体を発見する。
「こいつは……愛餓夫じゃないか。私のクラスメイトの一人だ」
「本当か。酷ぇな……全身穴だらけになってやがる」
「うえ……」
死体はシルヴィアの言う通り、彼女のクラスメイトの一人、愛餓夫だった。
全身に空いた穴や、近くの床に大量の空薬莢が散らばっている事から射殺されたようである。

127 :
「気の毒にな」
「何だか冷静だなシルヴィアさん」
「ああ? 何だガルルモン……こいつとは別に仲良くなんか無かったからな。
そもそもこいつは女子からの評判は最悪だったし」
「そう……」
「こいつを殺した奴がまだ近くに居るかもしれない。シルヴィア、ガルルモン。注意しろよ」
三人は工場内の探索を続けた。
そして、食堂や談話室等が有る区画にて、生きている参加者と出会う。
「誰?」
その参加者――シルヴィアと同じ制服に身を包んだポニーテールの少女は、
三人の姿を認めて驚いた様子だった。
「北沢? 北沢じゃないか」
「え? ……シルヴィアさん?」
「あの子もお前のクラスメイトか? シルヴィア」
蓮の問いにシルヴィアは頷いた。

◆◆◆

「アンタらは殺し合いには乗っていないのよね?」
遭遇したシルヴィア達三人に訊く樹里。
三人は戦意を否定した。尤も最後まで生き残った一人が優勝出来るこのゲームで、
複数人で行動している時点で殺し合いに乗っている可能性は低いと言えた。
「北沢、あんた一人か?」
「野原しんのすけって子が一緒だったけど……死んだわ」
「うん? お前しんのすけと一緒だったのか。森の中で死体を見付けたぞ」
「……」
物憂げな表情で頷く樹里。
「生産ラインの所でも死体を見付けたけど……あれ、あんたか?」
ガルルモンが生産ライン区画で死体となっている愛餓夫の殺害犯が樹里では無いかと疑る。
直後にシルヴィアと蓮の厳しい視線がガルルモンに飛びそれを察したガルルモンは萎縮した。
「違う。私が来た時にはもう餓夫は死んでた……これまでの事詳しく話すよ」
愛餓夫の殺害を否定した後、樹里はこれまでの経緯を三人におおまかに、しかし可能な限り正確に話した。
森の中でしんのすけと出会った事。
妹を殺されながらも悲しみを乗り越え、殺し合いに抗う決意をしたしんのすけに心を打たれた事。
廃村にて以前の殺し合いにまつわる因縁の有る倉沢ほのかと対峙し殺されそうになるも、
しんのすけの機転を利かせた行動のおかげで窮地を脱する事が出来た事。
しかし、逃げる時にほのかが撃った銃弾のせいでしんのすけは致命傷を負い、命を落とした事。
話が終わる頃には疑念を抱いていたガルルモンも、樹里が嘘を言っているようには見えなかったのか、態度を軟化させた。

128 :
「その『倉沢ほのか』の死体は俺達も廃村で見付けたが……そんな事が有ったのか」
「倉沢さんは廃村で死んでたの?」
蓮に樹里が尋ねる。
「ああ。首を絞められて殺されたようだった」
「そう……私としんのすけが逃げた後にやっぱり誰かに殺されたんだ……」
「北沢、あんた、前の殺し合いの時に倉沢と何が有ったんだ?
殺意を抱かれるなんてよっぽどの事だぞ」
「う……それは……」
シルヴィアからの質問に困り顔になり言葉を濁す樹里。
ほのかから憎まれる事になった理由は簡単に言えば、彼女の恋人を寝取った事に有る。
それを正直に説明してしまって良い物かどうか樹里は迷った。
「まあいいや、言いたくなさそうだし……今そんな事を聞き出しても意味が無いしね」
幸いにもシルヴィアを始め三人共それ以上は追求しなかったので、樹里は安堵した。
「自己紹介してなかったな。俺は葛城蓮。名簿には何故か分からないが『虐待おじさん』で登録されてる」
「俺は、ガルルモン……さっきは疑ってごめん」
「北沢、私達と一緒に来ないか?」
シルヴィアが樹里に自分達のグループに入らないかと持ち掛ける。
「良いの?」
「良いだろ? 二人共」
蓮とガルルモンに確認を取るシルヴィア。
二人共、特に反対せず、すんなりと話は纏まり、樹里はシルヴィア達と行動する事になった。

129 :
【朝/D-2工場】
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        2:シルヴィアさん達と行動する。
        3:もし、しんのすけの両親に会ったらどうする?
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞いています。
【シルヴィア@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]デトニクス スコアマスター(7/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、スコアマスターの弾倉(3)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター
[思考・行動]基本:蓮(虐待おじさん)と協力して殺し合いを潰す。殺し合いに乗っていない者を集める。
        1:蓮(虐待おじさん)、ガルルモン、北沢と行動。
        2:サーシャを捜したい。他のクラスメイトは遭遇次第対応を考える。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※葛城連(虐待おじさん)のクラスメイトの情報を当人から得ました。
【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、手榴弾(2)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:クラスメイト(特にひで、KBTITこと拓也)や殺し合いに乗っていない参加者を集め、殺し合いを潰す。
        1:シルヴィア、ガルルモン、北沢と行動。
        2:襲い掛かってくる者には相応の対処をする。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※元動画準拠なので、本名は「葛城蓮」、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※シルヴィアのクラスメイトの情報を当人から得ました。
    ※シルヴィアが一度死んだ事、殺し合いが二回目である事、以前の殺し合いに乗っていた事を知りました。
【ガルルモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:死にたくない。生き残りたい。
        1:生存率を上げる為に蓮さん達について行く。
[備考]※アニメのガルルモンとは別人です。性別は♂、性格は小心者です。

130 :
投下終了です

131 :
投下します。

132 :
56話 聞こえますか、愛する人よ
「……そんな……」
放送を聞いたひろしは絶望感に襲われた。
死者として呼ばれた19人の中に、息子のしんのすけと飼い犬のシロの名前が有ったのだ。
信じたくなかったが、目の前で娘を殺されている以上、放送が嘘では無い事は分かっていた。
「野原さん……」
ラトはひろしに掛けてやれる言葉が見付からない。
彼もまた、クラスメイトが何人か放送で呼ばれていたが、ひろしの事を放置出来なかった。
「ひまわりだけじゃなくて、しんのすけも、シロも……!
畜生、畜生!! ちくしょおおおおおおおおおおおお!!!」
床に突っ伏し、ひろしは慟哭した。
愛する妻との間に生まれた愛の結晶は、突然巻き込まれた理不尽な殺人ゲームによって、呆気無く崩れ散ったのだ。
脳裏に蘇る、子供達のはしゃぐ声。もう二度と戻れない楽しかった家族全員での団欒の時。
「ううっ、あああああ……!! ああああああ……!!」
人目も憚らず、大粒の涙を流して泣き叫ぶひろし。
ラトは沈痛な面持ちで、何も言えず号泣するひろしを見守る事しか出来ずに居た。
「うっ……うっ……」
そして悲しみの余り、正常な判断力を失ったのか、ひろしは早まった行動に出てしまう。
自分の武器であるコンバットナイフをおもむろに手に取ったかと思うと、刃を自分の首に刺そうとしたのだ。
「!」
まずいと思ったラトはナイフを持つひろしの手を掴んだ。
「やめるんだ野原さん!」
「放せ! 死なせてくれ!!」
「馬鹿な、死んでどうするんです!」
ラトは掴んだひろしの手を床に思い切り叩き付け、ナイフを手放させてそれをすかさず奪い取った。
ひろしは取り返す気力も無いのか、再び咽び泣き始めてしまった。
「うああ……ああああ……」
「……野原さん、貴方まで死んでどうするんですか」
聞いていないかもしれないと思ったが、ラトはひろしに語り掛ける。

133 :
「そんな事をして、しんのすけ君やひまわりちゃん、シロ君が喜ぶとは僕には思えません。
それに……奥さんがまだ生きているのに、貴方は奥さんを見捨てて一人にするつもりですか?」
「あっ……」
ひろしはハッとなる。
そうだ、ラトの言う通り、まだ妻のみさえがどこかで生きている。
きっと彼女も放送を聞いて、自分と同じように悲しみに暮れているだろう。
ここで自分が子供達の後を追うような真似をしたら、みさえはどうなる?
(……そうだ、俺は何馬鹿な事してんだよ……)
生きなければ、生きてみさえを捜し出し、一緒にこの殺し合いから脱出しなければ。
しんのすけ、ひまわり、シロも、きっとそうする事を望んでいる筈だ――――ひろしはそう自分に言い聞かせ、自分を奮起させた。
「……そうだな……ラト、お前の言う通りだ……。
ここで俺が死ぬ事なんか、きっとしんのすけもひまもシロも望んじゃいない……それに、みさえが一人になっちまう」
「野原さん」
「すまねぇ、ラト……馬鹿な事しちまって。
でも、もう大丈夫だ、俺は生きる。生きてみさえを見付けて、このクソッタレな殺し合いから脱出する!」
涙と鼻水でくしゃくしゃになり、真っ赤になった目で見据え、鼻声になりながらの宣言。
お世辞にも、格好が良いとは言えなかったが、とても力強かった。
まだ完全に立ち直った訳では無いだろうが、一先ず自害は思い止まってくれたようで良かったとラトは安心する。
奪い取ったコンバットナイフを、ラトはひろしに返却した。
「……ラトも何人か、クラスメイトが呼ばれたんだよな」
「覚悟はしていましたが、いざ呼ばれるとやはり残念です……」
ラトのクラスメイトで呼ばれたのは愛餓夫、壱里塚徳人、鈴木正一郎、吉良邑子、倉沢ほのかの五人。
自分が好意を寄せていたサーシャ、逆に自分に好意を寄せていたと思われるテト、深夜に交戦した銀鏖院水晶は呼ばれなかった。
呼ばれた五人は決して親しかった訳では無い、特に徳人については、
彼の持つ獣人への思いの事で話をしたが平行線に終わった記憶が有る。
だがそれでも先程ひろしに言ったように、クラスメイトが死んだと聞かされると気分が良い物では無かった。
「もう少し休んでから出発しましょう。
野原さんの精神はまだ完全には落ち着いていないと思います」
「悪いな……」
「謝る必要なんて有りませんよ」
もうしばらく休息してから二人は出発する事にした。

134 :
【朝/A-5墓場管理小屋】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神的ショック(大)、深い悲しみ
[装備]コンバットナイフ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:みさえを探し、殺し合いを潰て生きて帰る。
       1:ラトと行動する。
       2:しんのすけ……シロ……。
[備考]※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※ラトのクラスメイトの情報を彼より得ています。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:野原さんと行動。しばらくしてから出発する。
       2:クラスメイトも気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。

135 :
投下終了です。

136 :
投下します。

137 :
57話 刻み込まれた傷は癒せる場所もなくて
E-5の廃墟の城の中。
「のり子と仁が、死んだのかよ……」
放送で友達二人の名前が呼ばれ、愕然とする小鉄。
同行者のテトは自分を辱めた太田一派の内、太田以外が尽く死んでいる事を知って内心喜んでいたが、
小鉄の事を考え表に出さないようにしていた。
サーシャもまた小鉄を気遣うのと同時に、放送内容に一喜一憂する。
やはりクラスメイトの名前が殺し合いの放送で呼ばれるのは辛かった。
反面、想いを寄せていたラトや、生徒会仲間のノーチラスはまだ生存している事を知りそれについては安堵する。
以前の殺し合いの時は、ノーチラスの死は第一放送の時点で知る所となったからだ。
「小鉄君……」
心配そうに小鉄に声を掛けるテト。
小鉄は涙を流し、友人の死を嘆いた。
「畜生! どうして、あいつらが死ななきゃいけねぇんだ……!」
時には喧嘩したり被害を受けたりもしたが、のり子も仁も大切な友達だった。
もう二人に会えないのかと思うと、どうしようも無く悲しかった。
恐らく彼の人生で、初めてと思える程の悲しみであろう。
そんな小鉄を、やり切れない表情でテトもサーシャも見詰めていた。
(前の時、クラスの皆もこうして悲しんでいたのよね……)
自身が黒幕となっていた、以前の殺し合いの事を顧みるテト。
小鉄のように、あの殺し合いの時、放送で友人や仲間の死を聞かされ、
クラスメイト達は――当然、隣のサーシャも――悲しんでいただろう。
そう思うと、テトは自分がいかに恐ろしい事をしたのかと思い知らされた。
「絶対許さねぇぞ……! この殺し合いを起こした奴ら……!」
涙を流しながら、小鉄は主催者達への怒りを燃やし、改めてこの殺し合いを潰す事を誓った。
「大丈夫? 小鉄君」
「……ああ、もう大丈夫だサーシャねーちゃん。
ずっと泣いてばかりいたら、のり子と仁に笑われちまうしな」
「身体だけじゃなくて心も強いね、小鉄君は……」
思った以上に立ち直りの早い小鉄にテトが賞賛の言葉を掛けた。
三人はその後、北西の市街地を目指す事と相成った。
殺し合いに乗っていない参加者を捜すと言うのも有るが、サーシャの入浴及び着替えを確保すると言う目的の方が大きい。

138 :
「おしっこ臭くてごめんね……」
申し訳無さそうにサーシャが二人に言う。
放送前まで眠っていて悪夢にうなされたサーシャはおねしょしてしまい、
更に時間が経って悪臭が漂うようになってしまっている。
臭いもさる事ながら、股間の感触がとても気持ち悪く、一刻も早く何とかしたいとサーシャは思っていた。
「さっさとサーシャのねーちゃん着替えさせねーとな……町の方に行けば何とかなんだろ」
「ちょっと距離有るけど、大丈夫? サーシャ」
「大丈夫……じゃないけど、歩かなきゃしょうがないのは分かってるし……」
可能であれば余り動きたくなど無かったが、歩かなければ町には行けないのでそうも言っていられない。
三人は市街地目指して城を出発した。
(テトには聞きたい事が有るけど……今は町に行って身体を洗うのと着替える事の方が先決ね)
サーシャは以前の殺し合いについてテトに聞き出したい事が幾つか有った。
以前の殺し合いの真の黒幕がテトであるとサーシャは確信していた。
故に、何故あの殺し合いを起こしたのか、何故一度、ラトを死に至らしめたのか、その真意を聞きたかった。
だが、もし真意を知ったとして、その時自分は冷静で居られるのかサーシャには自信が無い。
以前の殺し合いにおいてテトへの殺意を感じた程なのだから。
少なくとも今のテトは自分達と同じように首輪をはめられて殺し合いをさせられている参加者の一人であり、
殺し合いに反抗する側に立って行動している。
彼女と同行している小鉄もテトを信用しているようだ。
もし自分がテトに危害を加えるような事になれば小鉄も敵に回す事になるだろう。
折角得られた同行者を失う事は避けたかった。
そう思うと、果たしてテトに問い質すべきか否か。
サーシャは股間の嫌な感触に苛まれながら自問自答していた。

139 :
【朝/E-5廃城周辺】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ローバーR9(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)
[思考・行動]基本:今の所は殺し合う気は無い。
       1:小鉄君、サーシャ行動する。市街地へ向かう。
       2:太田及び、貝町ト子は殺してやりたい。ラトは複雑。他のクラスメイトについては保留。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
    ※大沢木小鉄が自分とは別世界の人間だと判断しました。
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]悲しみ
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。フグオ、金子先生、春巻を捜す。
       1:テトとサーシャのねーちゃんと行動。
       2:のり子、仁……。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※テトが別世界の人間だと言う事を、余り理解出来ていませんが、何となくは分かったようです。
【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]身体中汗で濡れている、失禁
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:入浴と着替えがしたい。
        2:テトと小鉄君と行動。
        3:テトに前の殺し合いについて問い質すべき……?
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※失禁と汗で悪臭が漂っています。

140 :
投下終了です。

141 :
投下します。

142 :
58話 すくいきれないもの
C-6エリアのガソリンスタンドを後にしたMUR、ト子、鈴木フグオの三人。
ガソリンスタンドにて首を飛ばされた惨殺死体を目にしてから、フグオの気分は落ち込み気味だった。
何とか元気付けたいと思うMURとト子だったが、何を言っても気休め程度にしかならない事は分かっていた。
歩いた末、D-5エリアのイベントホールに辿り着く。
放送の時刻も近付いていたので三人は放送を聞く為と休憩する為にイベントホールの中へ入る。
しかし、第二小ホールとプレートの掛かった扉を開けてホールに入った時、制服姿の少女が倒れているのを発見した。
「……!」
フグオが反応し、ガクガクと震え出す。
「俺が見てくる」
「いや私が行く。あの制服は私の学校の……私のクラスメイトに違い無い。
MURさんはフグオの傍に居てやってくれ」
「分かったゾ……」
フグオをMURに任せ、ト子が倒れている少女の元へ向かう。
少女はやはり、ト子のクラスメイト、吉良邑子だった。
首が有り得ない方向に捻じ曲がって鼻と口から血が溢れており、どうやら首の骨をへし折られて殺されたようだ。
「吉良……」
ト子は哀れみは感じなかった。
吉良邑子はあの時、太田達と一緒になってテトを辱めていた一人だ。
元々仲も良くなかったし、別に彼女が死んでも思う所は無い。
テトが彼女に弄ばれる事になる原因は自分が作ったのは、十分分かってはいたが。
「うう……」
「大丈夫だゾフグオ君……おっ、ト子ちゃん、どうだった?」
「やっぱり私のクラスメイトだ、吉良邑子って言う……死んでる」
「キャプ……!」
「フグオ君! ……ずっとここに居るのはまずい、別の部屋へ移動しよう」
「ああ」
フグオの怯え方を見て早急に場所を移した方が良いと二人は考え、第二小ホールを後にした。
先刻のガソリンスタンドと違い、幾つも部屋が有るのが幸いである。
別のホールへ移動した三人は、置かれていたパイプ椅子にそれぞれが腰掛け身体を休める。
そして第一放送が始まる。
放送の主は開催式の時の二人組の片割れ、じゅんぺい。
相変わらず、滑舌が悪く咳払いの多いスムーズでない喋り方だった。
禁止エリアから発表され、指定されたのはA-6、B-3、C-1、F-5の四つのエリア。
約一時間後の午前7時より禁止エリアとなる。
「どこも遠いゾ」
「取り敢えず今すぐに動く必要は無さそうだな」
「……」
続いて、死亡者の発表。
じゅんぺいが淡々と、死亡した参加者の名前を読み上げた。
その数、19人。残りはMUR達を含めて33人らしい。
呼ばれた名前の中には、MURのクラスメイトが三人、ト子のクラスメイトが五人、フグオの友達が二人、含まれていた。

143 :
「そん、な……のり子、仁……」
「フグオ君……」
「……」
仲の良かった友達二人が死んだと聞かされショックを隠せないフグオ。
それを見てMURとト子も掛けられそうな言葉が見付からなかった。
MURもト子もクラスメイトが呼ばれたとは言え親しい者は誰も呼ばれていない。
特にト子は愛餓夫、壱里塚徳人、吉良邑子、鈴木正一郎と、
太田一派や以前の殺し合いで因縁の有る者が尽く死んでおり却って都合が良いと思える位である。
だが、フグオは、いつも仲良く遊んでいたとても大切な友達が二人も呼ばれたのだ。
その悲しみは想像に難くない。
「……うっ、う……うああああぁあああ……!」
その場に膝を突き、大粒の涙を流して、フグオは泣いた。
ホールに太った少年の慟哭が響く。
殺し合いの最中に大声は危険なのだが、フグオが泣くのを止める事など二人には出来なかった。
「うっ……うっ……」
「フグオ君……だ、大丈夫か?」
「……っ……ううっ……」
MURに付き添われ、フグオはどうにか立ち上がって椅子に座り直した。
しかし、泣き止むにはまだ時間が掛かりそうだ。
「しばらくはフグオは動かせないだろうな」
「仲良しな友達が死んだなんて聞かされれば無理も無い、
俺だって、呼ばれたのがまだそれ程付き合いの無い奴だったからまだ良かったけど、
野獣や遠野、KMRが死んだって言われてたら、フグオ君と同じように泣いてたと思うゾ……」
「そうだな……」
フグオの様子を見て、MURの話を聞いて、ふとト子は思う。
(私が死んだら、泣いてくれる人は居るだろうか)
自分が死んだ時、悲しんでくれる者は居るのか。
あの日より前のテトならば、恐らくは泣いてくれたかもしれないが、今となってはもう望めまい。
自分は普段から人付き合いも悪く、性格も悪いと自覚はしている。
おまけに太田に薬漬けにされ良いようにされ、クラスからも浮いていただろう。
唯一の友人と言っていいテトも自分の薬欲しさに裏切った。
以前の殺し合いにおいても裏切りと謀略を駆使し、多くのクラスメイトを陥れたり死に至らしめた。
最後には殺され、蘇生して今に至る。
自分は紛う事無き、人間の屑だ。
泣いてくれる人が居るか? そんな事を考えるのもおこがましい。

144 :
「……どうかしたか?」
ト子が何か考えているのを見てMURが尋ねる。
「え? ……いや、何でも。私は首輪の解析を始めるよ」
適当に誤魔化して、ト子は時計塔にてケルベロモンの死体から手に入れたケルベロモンの首輪を、
ガソリンスタンドで調達した工具での解析を始める事にした。
ト子の様子を少し気にしつつも、MURはフグオの近くの椅子に座り、ふぅと一息ついた。

【朝/D-5イベントホール第三会議室】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し、回復中)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:フグオ君が心配だゾ……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田には会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪を解析する。
       5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]深い悲しみ、精神的ショック(大)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:……のり子、仁……何で……。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。

145 :
投下終了です。
この辺にぃ、美味いラーメン屋の屋台……昔は来てたんだよなぁ軽トラックのなぁ

146 :
投下します。

147 :
59話 Secret Strategy
水晶はA-4エリア(数十メートル北へ行けばもうA-3エリアになる位置)の民家の中にて第一放送を聞く。
自分のスタート地点である建設現場の有るA-6エリアと、
放送前まで居たレジャー施設の有るB-3エリア、他に二つのエリアが禁止エリアに指定される。
レジャー施設にも建設現場にももう行くつもりは無く、他二つのエリアも遠い為、これについては今は気にする必要は無さそうだ。
死者の発表では19人の名前が呼ばれた。
水晶のクラスメイトも五人呼ばれたが、彼女は特に気にする事は無かった。
建設現場にて交戦した野原ひろしとラトの名前は呼ばれなかったので、まだ生きているらしい。
ただ、ひろしの息子であり、見せしめで殺されたひまわりの兄に当たるしんのすけと、飼い犬のシロの名前は放送で呼ばれた。
残された野原夫妻はきっと悲しみに暮れているだろうが、やはり水晶にとってはどうでも良い事である。
「これからどうしようか……うっ、これ、美味しくない……」
お世辞にも美味いとは言えない基本支給品の食料品を頬張りながら、水晶はこれからの行動について考える。
参加者を探し出し仕留めていくのなら、人が集まり易そうな場所へ向かうのが良いだろう。
それならば市街地――――北方向の小学校の有る市街地へ向かおうか。
「もっと良い武器が欲しい所ね」
現在の武器である、建設現場にて調達した鉄パイプを見ながら言う水晶。
この他には、現在居る民家の中を漁って手に入れた、文化包丁と鎌ぐらい。
正直、これは心許無かった。
銃とまではいかずともちゃんとした刀剣類ぐらいは欲しい所であった。
水晶自身が持つ超能力は、レジャー施設にて行使してみてその時に特に規制は掛けられていない事は分かったものの、
そもそもが使えば身体に負担が掛かる代物なので規制されていない事は余り意味を為していない。
以前の殺し合いでも水晶は能力の行使は可能な限り控えるようにしていた。
武器を手に入れるには他参加者から奪うのが一番手っ取り早いだろうがその為の武器に乏しい。
「て言っても、無い物ねだりしててもしょうがない事も分かってるし」
何とか今は手持ちの武器と、多用出来ない超能力で戦うしか無いだろうと水晶は結論付けた。
食料の包みを部屋の隅の小さなゴミ箱に放り込み、水晶は鉄パイプとデイパックを持って立ち上がり玄関へ向かった。
「ん?」
しかし玄関の戸を開けようとした時、遠くから微かに人の声と足音らしき音が聞こえ水晶は動きを止める。
そっと戸を開け、恐る恐る外の様子を確認する水晶。
すると、数十メートル先に、三人の参加者が居るのを発見した。
かなり近くに隠れていたのだろうか、今の今まで水晶は彼らの存在には気付かなかった。
向こうも自分の存在には気付いていなかったのだろう。
よくよく見れば、三人の内二人はレジャー施設にて自分を呼び止めた獣人の少女と男のようだった。
もう一人は見た事の無い兎の獣人の女性である。
三人共、水晶の方には視線を向けておらず今現在も水晶には気付いていないようだ。
やがて三人は水晶の居る方向とは反対方向、つまり北の市街地に向かって歩き始めた。
(後をつけて行こう……)
水晶は三人を尾行する事にして、音を立てないよう気付かれぬよう追跡を始めた。

148 :
【朝/A-4北端部田中家前】
【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(大)
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式、文化包丁(調達品)、鎌(調達品)
[思考・行動]基本:優勝し「愚民と自分は違う」事を証明する。
       1:三人(原小宮巴、KBTIT、ソフィア)を尾行する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の名前を記憶しています。
    ※能力には特に制限は無いようです。
    ※原小宮巴、KBTITの容姿のみ記憶しました。

◆◆◆

「それじゃ、北の市街地に行ってみようか」
巴がKBTITこと拓也と、ソフィアの二人に言う。
「さあ何が有るかなぁアッハ」
「警棒どうも、巴」
武器を持っていなかったソフィアに巴は元々の自分の支給武器である警棒を譲っていた。
「私とタクヤさんは銃持ってるしねぇ。おねーさんにも戦って貰わないと困るし」
ソフィアにそう言いながら、巴は視線をソフィアの後方、つまり南の方へ移す。
何かの気配を感じたような気がしたが、特に動く影は見えない。
(んー? 気のせいかな)
「どうかしたか?」
巴の様子を気にしたKBTITが彼女に尋ねる。
「何でも……さ、行こうか」
取り敢えず巴は何事も無かったかのように答えたが、後でそれとなく感じた気配の事を二人に伝えておく事にした。
そして三人は北方向の市街地に向け歩き始める。

149 :
【朝/A-3西南端部新今家前】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(3/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)、ソフィアと行動。
        2:市街地を回り仲間集め。
        3:何か気配を感じたような……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
    ※銀鏖院水晶の気配を感じましたが確信には至っていません。後に二人にも気配の事を伝えるつもりです。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴、ソフィアと行動。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
【ソフィア@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]肛門に痛み
[装備]警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、睡眠薬@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。無理な戦いはしない。
        1:巴、KBTIT(拓也)と行動する。
        2:野原みさえには二度と会いたくない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※食中毒のせいで何度も用を足したおかげで肛門が痛んでいます。

150 :
投下終了です。

151 :
投下します。

152 :
60話 かさなる影
D-4エリア、天川家の中に身を潜めていた遠野、憲悦、フラウの三人。
遠野と憲悦は、フラウから彼女のクラスメイトの事と、以前にも自分が殺し合いをしていて、
そこで一度命を落とした筈だと言う事を聞かされる。
「お前も二回目なのか」
「え? って言う事は稲葉さんも?」
「そうだよ(肯定)、結構この殺し合い、二回目の奴が居んのかな?」
同じような境遇だと知り一気にフラウに近親感を持つ憲悦。
出会った時の警戒心などとうに吹っ飛んでしまったようでその調子の良さに遠野もフラウもやや呆れ顔であった。
そしてフラウは自分のスタート地点である警察署にて出会った春巻龍についても話した。
「どうしても動きたくないって言うから、彼を置いて一人で来たのよ……」
「仕方有りませんよ、それはフラウさんのせいじゃありません」
「そいつ学校の先生なんだろ? んな様で良く教師になれたな、いやまあこんな状況じゃ教師の責務もクソもねぇか……」
結果的に春巻を見捨てた形になったフラウに二人は同情的であった。
一方の二人からフラウには、図書館において交戦したひで含む遠野のクラスメイトの情報がもたらされる。
自分のクラスメイトから命を狙われた時大きなショックを受けたと遠野から聞かされた時、
フラウは以前の殺し合いでの、自分が幼馴染のケトルにしてしまった仕打ちの事を思い出し、他人事では無いと感じた。
その後しばらくして第一放送の時刻となる。
禁止エリアの発表の後、19人の死者の名前が呼ばれた。
遠野のクラスメイト三人、フラウのクラスメイト五人、深夜に死亡を確認した野原家の飼い犬シロと飼い主であり、
見せしめで殺された野原ひまわりの兄の野原しんのすけの名前が呼ばれた。
遠野はクラスメイトが三人呼ばれたものの、自身が特に心配している野獣先輩こと田所浩二、
KMR、MURの三人の名前は呼ばれず安心した。
しかし安心した直後、罪悪感に襲われる。
(何を安心してるんだ僕は……クラスメイトが三人死んだんだぞ。
他にも大勢の人が死んでいるって言うのに……)
理不尽な殺し合いに巻き込まれ命を落としていった人々に遠野は申し訳無く感じた。
図書館にて自分と憲悦を襲ったひでもまだ生きているらしい。
ひでは完全に殺し合いに乗っていた、呼ばれた死亡者の中には恐らくひでに殺害された者も居るだろう。
そう思うと、無性に平和だった学校生活の時が懐かしく思えた。
(寛子の奴はまだ生きているみてぇだな)
憲悦は捜している柏木寛子の生存が確認出来たので満足していた。
捜している動機は不純そのものであったものの、一応は彼女の事を思ってると言えよう。
(私のクラスメイトは五人死んでるか……)
フラウも遠野と同様、自分のクラスメイトが放送で呼ばれその数は五人と遠野よりも多かったが、
いずれもフラウとは親しくは無い者ばかりであり、悲しみや悔しさと言った感情は湧いてこない。
そもそもこの殺し合いには彼女にとって思い入れの強い人物は一人も呼ばれておらず、
正直な話、フラウにとっては死者の発表は残り人数の確認以外に意味は持っていないような物だった。

153 :
(私、薄情だな……)
冷淡な考えをする自分をフラウは心の中で嘲った。
(そう言えば春巻さんの名前は呼ばれなかったけど、教え子さんの名前二人呼ばれたわね……)
警察署にて別れた春巻龍は名前を呼ばれなかった為まだ生存していると思われるが、
彼から聞かされた彼の教え子五人の内、二人が放送で名前を呼ばれた。
みんな結構強いから放っておいても大丈夫などと言って春巻は捜そうとしなかったが、やはり大丈夫では無かった。
とは言っても彼が捜しに出た所で前述の二人が死なずに済んだ確証は無いのだが。
今も警察署に居るのかそれとも別の場所に移動しているのかどうかは分からないが、
春巻は今どのような心境なのだろうと、フラウは少しばかり気になった。
三人に三者三様の反応をもたらした第一放送が終了する。
「禁止エリアはどれも遠いみてぇだな。すぐ移動しなきゃならねぇって事は無さそうだ」
「そうですね……」
「遠野暗ぇな……呼ばれた奴とは仲が良かったのか?」
「いえ、そんなには……でもやっぱりクラスメイトとして一緒に過ごしてきた人が死んだって言われると……」
「お前は優しい奴だなあホント……フラウも何人か呼ばれたみてぇだけど」
「うん」
「あんま悲しそうじゃないな、前の時に何か有ったか?」
「いや、そう言う訳じゃ無いけど……」
厳密には無い訳では無かったが、今回死んだ五人にまつわる物では無いので、
話す必要は無いと思ったフラウは適当に言葉を濁し誤魔化す。
遠野も憲悦も若干気にはしたものの、それ以上は特に探るような真似をしなかった。
「まあ良いか、腹ごしらえでもしようぜ」
憲悦の提案により、彼を含む三人は基本支給品の食料で朝食を取る事にした。

【朝/D-4市街地天川家】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:先輩やクラスメイトを探す。
        2:稲葉さん、フラウさんと行動する。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
    ※稲葉憲悦、フラウが「リピーター」である事を知りました。
    ※フラウのクラスメイトの情報を当人より得ています。
    ※春巻龍の特徴をフラウより聞きました。
【稲葉憲悦@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]自動車用緊急脱出ハンマー@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:積極的に殺し合う気は無い。寛子を探す。
        1:遠野、フラウと行動する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
    ※フラウが自分と同じ「リピーター」である事を知りました。
    ※遠野、フラウのクラスメイトの情報を当人達より得ています。
    ※春巻龍の特徴をフラウより聞きました。

154 :
【フラウ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]筋肉のデザートイーグル(7/7)@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式、デザートイーグルの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:遠野君、稲葉さんと行動。
       2:ゲームに乗っていない、かつ能動的に反抗する意思の有る参加者を探す。
       3:クラスメイトについては保留する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※稲葉憲悦が自分と同じ「リピーター」である事を知りました。
    ※遠野のクラスメイトの情報を当人より得ています。

◆◆◆

D-4エリアの市街地に有る古い民家の中。
「ああもう痛い……」
先の戦闘の際に額と右肩に受けた傷が痛みぐずるひで。
一応下手糞ながら自力で手当をして血は止まったものの、痛みはそう簡単に消えてはくれない。
「おじさんはまだ生きてるみたいだし、まだ僕やおじさん入れて33人も残ってるんだもんなぁ……」
先程の放送で、個人的に死んで欲しいと願う虐待おじさん(葛城蓮)や、
図書館にて出会い、殺し損ねた遠野やその同行者の稲葉の生存を確認し、更にまだ自分含め、
生存者が30人以上居ると言う事実を知り、ひでは優勝までの道程はまだ遠いと落胆した。
「痛いんだよもぉ〜」
行動しようにも傷の痛みで動く気も起こらない。
虐待おじさんに普段痛め付けられていると言うのも有るが元々ひでは痛みに敏感であった。
「もうちょっとここに居よ……」
ひではもうしばらく休んでから行動を開始する事にした。
休んだとて痛みが和らぐとは限らないのだがそこまでは考え付かなかった。

【朝/D-4市街地五木家】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]後頭部に打撲、背中に軽い打撲、額に傷(応急処置済、止血)、右肩に盲管銃創(応急処置済、止血)
[装備]FN P90(50/50)@現実
[所持品]基本支給品一式、FN P90の弾倉(4)
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:クラスメイトと会っても容赦しない。葛城蓮(虐待おじさん)に対しては特に。
       2:傷が痛むのでもうしばらく民家の中に隠れている。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※稲葉憲悦、柏木寛子の容姿のみ記憶しました。

◆◆◆

155 :
実はそれ程離れていない別の家に一人の参加者が隠れている事などひでは知らない。
その参加者は、ひでの右肩の傷を作った張本人、柏木寛子である。
彼女もまた、民家に身を潜め放送を聞いていた。
(憲悦の奴はまだ生きてるのね)
死者の19人の中に憲悦の名前が無かった事を残念がる。
以前の殺し合いでも似たような事が有ったと寛子は追憶した。
かつて同行していた西川のり子の名前は勿論の事、その友人の一人である土井津仁の名前、
そして病院にて自分達を身体を張って逃がしたレナモンの名前も呼ばれた。
やはりあの後、レナモンはあの触手の化物に殺されてしまったのだろう。
そのレナモンが助けてくれた命も、のり子の方は潰えてしまった。
のり子が生きていれば、レナモンや、友人の死を悲しんだだろうと寛子は思った。
他に、見せしめで殺された野原ひまわりの兄、野原しんのすけと飼い犬のシロの名前も呼ばれた。
これで野原夫妻は子供二人と飼い犬を失った事になる。
「悲しんでるだろうな……」
野原夫妻が自分の子供、いや家族を大切に思っている事は開催式の時の様子から容易に想像出来た。
知らず知らずの内に自分の家庭、両親の事と重ねる。
自分もあんな両親が欲しかった、と。
そうすれば、家出もせず、憲悦の性奴隷になってしまう事も無かったかもしれないのに。
殺し合いに巻き込まれなかったかどうかは分からないが。
「……と、こんな事考えてても仕方無いね」
寛子は思考を切り替え、テーブルの上に広げた地図と名簿を仕舞い、
気分転換にシャワーでも浴びようと浴室へ向かう。
脱衣所で衣服を脱ぎ、洗面台の鏡の前に立てば、首輪だけを身に着け全裸になった自分が映る。
「首輪で全裸って、エロいなぁ……ははっ」
みっともない格好に自嘲気味に笑う寛子。
巨乳でスタイル抜群の恵まれた身体。
学校にちゃんと通っていた頃は言い寄ってきた男も居たものだ。結局全て断ったが。
だが、綺麗に見えるこの身体は獣の欲望ですっかり汚されてしまっている。
憲悦に監禁され、性奴隷としてほぼ毎日犯されてきたのだから。
「……」
寛子は浴室に入り、シャワーの栓を捻って湯を出し、身体を洗い始めた。
熱い湯が身体を万遍無く包み、汗や汚れを洗い落とす感覚に、寛子は安らぎを覚えた。

【朝/D-4市街地上汐家】
【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]全裸、シャワーを浴びている
[装備]
[所持品]基本支給品一式、TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ、.38SP弾(6)
[思考・行動]基本:殺し合いをするつもりは無い。憲悦とは会いたくない。
        1:シャワーを浴びて、その後は……どうしようかな。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。
    ※ひでの外見は余り把握出来てません。
    ※西川のり子の友人知人の情報を当人より得ています。

156 :
投下終了です。

157 :
投下します。

158 :
61話 MY BAD FELLOW
第一放送を聞き終えた、野獣先輩こと田所浩二、KMR、太田太郎丸忠信の三人。
「遠野やMURはまだ生きてるみたいだけど、INUEに一般通過爺、AOKが死んじまったか……」
さりげなく先輩を呼び捨てにしながら、放送で呼ばれた名前が線を引かれ消された自分の名簿を見て野獣が言う。
KMRもまた同じように名簿を見て、確実に殺し合いが進んでいる事を再認識した。
二人にとって親しい人物の名前は呼ばれなかったとは言え素直に喜べる筈も無い。
一方の太田は、クラスメイトが五人呼ばれていたが悲しんでいる様子は全く無かった。
「太田さんも、クラスメイトが呼ばれたんですよね」
「ああ、つっても、別にどうでも良い奴ばかりだけどな。呼ばれた連中は」
「ええ……何か酷くないですかその言い方」
酷薄とも取れる太田の物言いに引き気味のKMR。
太田からすれば、呼ばれた五人の内、愛餓夫は舎弟であったものの使い走りに過ぎず、
吉良も壱里塚も以前テトの一件でつるんだ事は有ったが普段仲が良い訳でも無く死のうが生きようがどうでも良い存在。
倉沢は以前の殺し合いにて自分を死に至らしめた張本人、鈴木に至っては以前の殺し合いにて交戦し殺害するに至った為、
この二人に関しては死んでくれて好都合と思える程であった。
「オイオイ、クラスの連中全員と仲良しこよしな訳ねーだろ」
「そりゃそうですけど……」
「まあまあ二人共落ち着け」
口論になるかもしれないと二人を仲裁する野獣。
KMRはまだ何か言いたげだったが大人しく野獣の言に従い引き下がる。
一方の太田は涼しい顔であった。
「何か腹減ったなぁ……何か食おうぜ。腹ごしらえが必要だろ?」
野獣は唐突に食事する事を二人に提案する。
単純に空腹を来たしていたと言うのも有るが、気まずい空気を何とかしたいと言う思いも有った。
「そうですね、何か食べておきましょう」
「……」
幸いKMRも太田も同意してくれたので野獣の心遣いも無駄にはならずに済んだ。

◆◆◆

ふらふらと町中を歩く春巻龍。
泣きじゃくった後の顔は酷い有様で、股間の辺りが先程失禁した事によって濡れ、悪臭を放っていた。
「もう嫌ちょ……どうしてこんな事に……俺は……」
うわ言のように泣き言を繰り返す春巻。
彼の精神はもうボロボロであった。
衰弱した精神は、正常な思考力を鈍らせていき、全てを悪い方向に考えるようになっていく。
一人は寂しいから、助けて欲しいから、と、捜そうと決めた生き残りの教え子達に対し、春巻は一方的に疑念を募らせていった。
「アイツらに会えた所で何になるちょ? こんな俺なんて、拒絶されるに決まってる……俺は、俺は人間の屑だホイ。
いつも、みんなに迷惑掛けて、呆れられて、煙たがられて、そうだちょ、こんな俺が、アイツらが助けてくれる訳無いんだチョリソー。
俺が、俺が間違っていたんだちょ、俺、俺が」
春巻の心の中で自分自身に対する自虐の言葉が何度も何度も反芻し、彼の心は負の面に蝕まれていく。
そして、ついに彼の心は破綻を迎えた。

159 :
「ふっ、ふふっ、あはははははは! あーはっはっはっはっはっはっはっ!!!」
突然、けたたましく笑う春巻。
その双眸は血走り、正気のそれでは無くなった。
静かな住宅地に、絶望と狂気を湛えた笑い声が響く。
「誰も味方なんて居ないんだちょぉ! でも死にたくない! だったら、だったらあああ!
みんな殺して俺だけ生きて帰るホイ! 小鉄も! フグオも! 金子も! あの時会ったフラウもさっきの男もみんなぁ!
殺してやるホーーーーイ!!! うぁたあああーーーーーーー!!!」
最悪の結論を導き出した狂った馬鹿教師は、怪鳥音を発しながら声高らかに殺し合いに乗る事を宣言する。

◆◆◆

野獣達三人は民家の台所にて、
コンロの上にカレーの入った鍋が置かれたままになっているのを見付け、それで食事を取っていた。
しかしその最中、外から男の笑い声が聞こえ、三人の食事をする手が止まった。
「何だ今の!?」
「外から聞こえましたけど……」
驚き戸惑う野獣とKMR。太田は気にしつつも再びカレーを口に運び始める。
笑い声の後、今度は男が何やら喚き立てる。
「誰も味方は居ない」「みんなR」と言った物騒な文言が聞き取れ、どうやら殺し合いに乗っているらしかった。
声の調子から、正気では無い事も三人は察する。
「やべぇよやべぇよ……多分と言うか間違い無く乗ってる奴だぜ」
「かなり近くに居るんじゃないですか?」
「待て、落ち着けお前ら」
動揺する野獣とKMRをカレーを食い終えた太田が宥める。
「向こうは多分俺らが家の中に居る事は知らねぇだろ。息潜めてやり過ごすぞ」
男は自分達が民家に隠れている事を知らない筈。
このまま身を潜めていればやり過ごせると太田は二人に進言した。
野獣とKMRは進言を受け入れ、太田と共に息を殺し、三人は外に居るであろう男をやり過ごさんとした。
「……」
しかし、ここで太田はある物に注目する。
それはコンロ台の上の油汚れに塗れた小さな換気扇であった。
換気扇は、カレーを温める際野獣がスイッチを入れたので小さいモーター音を発しながら回っている。
調理の時に換気扇を点けるのは当然、だが、この殺し合いの中では?
参加者以外の人が居ない状況で一つの民家の換気扇が回りそこからカレーの匂いがしていたら?
太田の顔が急速に青ざめていく。

160 :
「野獣、KMR――――」
逃げようと二人に言おうとしたその時、勝手口の扉が乱暴に開かれ、男が押し入ってきた。

◆◆◆

動いている換気扇、そこから漂ってくる食欲を唆るカレーの匂い。
この民家の中には誰か居る――――そう直感した春巻はその民家の勝手口へ向かう。
目的は一つ、中に居るであろう人間をR為だ。
勝手口の古い木目調の扉を乱暴に開けると、読み通り中には三人の参加者が居た。
何れも知らない顔で、自分の姿に驚いていた。
「ほぁきーーーーーん!!」
対話などする気は更々無い春巻は、奇声を発しながらオートマグを三人に向けて構え、
最早躊躇う事も無く引き金を引いた。
ドォン!!
鼓膜を破りかねないような轟音が台所の中に響き、三人の内の髪を逆立てたような髪型の青年が、
腹に大きな穴が空いて大きく後ろへ吹き飛んだ。
「き、KMRァ!」
すぐ隣に居た顔にイボの有る青年が、吹き飛ばされた青年の物と思われる名前を叫ぶ。
そんな事は意に介さず春巻は今度は学生服姿の少年に銃口を向けようとした。
「てめぇ!」
少年が怒声を発し、持っていた何かを春巻に向けた。
この少年もまた銃を持っていたが、春巻がそれに気付いた時には、お互いに銃の引き金を引いていた。
二種類の銃声が重なった。
「がっ……」
少年の方は胸部を.44口径のマグナム弾が貫通し、KMRと同じく後ろへ吹き飛んだ。
「あぐぁ!?」
一方の春巻にも、その鳩尾の辺りに少年の持つリボルバーから放たれた.32口径の弾丸が深々と突き刺さった。
「あがああああああ!!」
先刻、別の少年に剣で斬られた時とは別種の激痛に悲鳴を上げる春巻。
それで怯んで戦意が失せてしまったのか、元入ってきた勝手口から逃げ出してしまう。
通りに出て数メートル走った所で彼の身体に異変が起きる。
「ゲホッ!」
口から溢れる大量の血液。
それと同時に、春巻は自分の意識が休息に混濁していくのを感じた。
前に進もうとしても足に力が上手く入らず、口から溢れ出た血はアスファルトの上に垂れ落ち赤黒い染みを作る。
先程鳩尾付近に食らった銃弾がそれらをもたらしている事は、春巻にも十二分に察せた。
察せた所で、何の手立ても彼には出来なかったが。

161 :
「い、あ……俺、死ぬのか、ちょ?」
遂に歩けなくなり、両膝を突いた春巻は、本能的に自らの命の終わりを感じ取った。
今まで幾度となく遭難し命の危機に晒されてきた事によって、野生の勘のような物が鋭敏になっていたのかもしれない。
次第に意識も薄らいでいき、視界もどんどん暗くなっていく。
「い、嫌、嫌だちょ、し、死にたく……」
いくら必死に意識を繋ぎ止めようとしても、彼の身体の各器官は、
生命維持に必要な活動を次々と停止していき、彼を無慈悲に死へと向かわせた。
数々の遭難劇を経て、炎天下や猛吹雪や猛獣ひしめく中へ放り込まれてもなお生き延びてきた春巻龍だが、
ここに至り遂にその命の火は消えようとしていた。
「嫌、だ……こ、てつ……ふぐお……かね、こ……たす……け……」
狂ってしまった上での事とは言え一度は殺意を向けた教え子達に春巻は助けを乞うも、届く筈など無く。
程無くアスファルトの上にうつ伏せに倒れ、ゴポッと大きな血の塊を吐き出し、目を見開いたまま、春巻は動かなくなった。
教師としても人間としても駄目だった男は、理不尽な殺し合いに参加させられた末、見知らぬ土地で独り寂しく、この世を去った。

【春巻龍@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  31人】

◆◆◆

太田がポリスポジティブの引き金を引くのと、男が持っていた銃の引き金を引いたのは殆ど同時だったようだ。
「がっ……」
胸の辺りに強烈な衝撃を感じたかと思ったら、身体が後ろに吹き飛び、血飛沫と虫食い状の天井板が見えた。
良く考えなくても自分が胸を撃たれたのだと言う事は分かった。
そして間も無く、再び与えられた自分の命も消えると言う事も。
自分だけでも生き残れるように立ち回ろうとしたが、やはりバトルロワイアルと言うゲームはそうは甘く無かったらしい。
以前は第二放送後まで生きられたと言うのに。
(流石に前みてぇに、上手く行かねぇって、事か……)
そう思った直後、太田太郎丸忠信の意識は闇に飲まれ、二度と戻って来る事は無かった。

【太田太郎丸忠信@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  30人】

◆◆◆

162 :
唯一、無事で居られた野獣。
太田はもう息が無いように見えたので、まだ息が有るように見えるKMRの元へ近付いて、野獣は呼び掛ける。
「おいKMRァ! しっかりしろ!」
しかし、腹部に空いた穴を見て野獣はぞっとした。
大きく空いた穴からは黒に近い色の血液が溢れ出し、止まる気配が無い。
もう助からない、野獣は本能的にそう感じた。
「せ、せんぱ、ゴホッ……!」
「喋るなKMR!」
「先輩、は、腹が、とても痛い、です……」
血を吐きながら、野獣に苦しみを訴えるKMR。
野獣はテーブルの上の布巾で傷口を押さえて止血を試みるも、無駄であった。
「KMR! 死ぬなKMR……!」
「……せん……ぱ、い……」
野獣の必死の願いも虚しく、程無くKMRの動きが止まる。
それが何を意味するかは明らかだった。
「KMR? おい、KMR……」
もう無意味だと分かりつつも、野獣はKMRの名前を呼ぶが、当然返事は返って来る事は無い。
悲しみに顔を歪ませながら、野獣は開いたままのKMRの両目をそっと閉じた。
先程の男がどうして自分達がこの家に隠れているのが分かったのか、野獣には心当たりが有った。
台所に有ったカレーを温めた時、換気扇のスイッチを入れたのだ。
そこからカレーの匂いが外に漏れ出し、それが元で気付かれたのだろう。
いや、そもそも参加者以外の人間が一人も居ないこの状況で、換気扇が動いている家が有ったら怪しむのは当然。
何れにせよ、自分が換気扇を動かしてしまったのがこの惨事に繋がったのは事実であろうと野獣は思った。
言い換えれば、二人を死なせたのは自分、とも言えるのだ。
「……俺が換気扇回さなければ、こんな事には……すまねぇ、すまねぇKMR! 太田……!」
悔恨の念に駆られた野獣は、屍と化した二人に向かって涙を浮かべながら謝罪の言葉を述べ続けた。

【KMR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  29人】

【朝/D-4、E-4境界線付近高田家】
【野獣先輩@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]深い悲しみ
[装備]竹刀@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合う気は無い。遠野達や殺し合いに乗っていない参加者を捜す。
        1:KMR、太田……。
[備考]※動画本編、バスガイドピンキーに気絶させられた直後からの参戦です。
    ※太田太郎丸忠信から彼のクラスメイトについての情報を大まかに得ています。
    ※春巻龍の外見のみ記憶しました。彼が死んでいる事にはまだ気付いていません。

163 :
投下終了です。
最初書き込もうとしたら「ユーザー設定が消失しています!」って出てビックリした
板が移転したっぽいな

164 :
投下します。

165 :
62話 残酷すぎる結末に目をそらしているだけ
野原みさえは呂車に気絶させられた後、しばらく意識を取り戻さなかった。
ようやく目覚めた時には、時計の針は6時をとっくに過ぎており、第一回放送は終わってしまった後だった。
「ああ、放送聞き逃しちゃった……」
内容が気になったものの、聞き逃してしまった物はどうしようも無い。
みさえは立ち上がって自分の周りを見る。
「私のサーベルが無い……!」
自分の武器であるサーベルがどこにも無くなっていた。
デイパックの中の、夜明け前に殺害した青年が奪った拳銃と予備マガジンも無くなっていた。
十中八九、自分を気絶させたあの竜のような怪物が持ち去ってしまったのだろう。
みさえは悔しがった。
「ちくしょう、ふざけやがって……!」
優勝しなければならないのに、武装が無くなってしまってはその道程はますます険しくなってしまう。
足踏みをしている場合では無いのだ。
優勝して、ひまわりや、最終的には死んでしまうであろうしんのすけとひろし、シロを生き返らせて、また家族全員で暮らす。
その願いの為、邁進しなくてはならない。
「代わりを探すしか無いわね……ここはガソリンスタンドなんだから、工具ぐらい有るでしょ……」
代わりになる武器を、みさえは探す。
ガレージに移動し、工具等が収納されたスチール製の棚を漁り、大きめのモンキーレンチを手に取った。
サーベルや拳銃に比べれば見劣りするものの、十分に武器足り得る。
「これで良いわ……さぁて、いつまでも休んで居られないわ……頑張らなきゃ……」
当座の武器を確保したみさえは不気味に笑いながら、ガソリンスタンドを後にした。
彼女が聞き逃した放送では、息子・しんのすけと飼い犬・シロの名前が呼ばれた。
遠くに離れた夫・ひろしは放送を聞き悲嘆に暮れ、自殺未遂を起こす程取り乱した。
だが「どうせしんのすけ、ひろし、シロが死んでもひまわりと一緒に生き返らせるのだから」程度にしか考えてない、いや、
考えられなくなっている今の状態のみさえが放送を聞いていたとして、果たして夫と同様に悲しんだであろうかは疑問である。

【朝/C-2ガソリンスタンド】
【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神に異常、左肩に擦過銃創、全身にダメージ
[装備]モンキーレンチ(調達品)
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝してひまわりを生き返らせる。
        1:他参加者を捜し出してR。
        2:しんのすけ、ひろし、シロはひまわりと一緒に生き返らせる。
[備考]※幾分落ち着いたようですが正常な思考は出来ません。
    ※ソフィア、呂車の容姿のみ記憶しました。
    ※第一放送を聞き逃しました。しんのすけ、シロの死を知りません。

166 :
投下終了です。

167 :
投下します。

168 :
63話 Crucial Stage
金子翼にとって、放送における最大の関心事は小鉄の名前が呼ばれないかどうかであった。
そして放送では、クラスメイトの西川のり子、土井津仁の二人が呼ばれてしまったものの、肝心の小鉄は呼ばれなかった。
「良かった、小鉄っちゃんはまだ生きてるみたい」
死んだ二人に対し後ろめたさは有ったものの、小鉄が少なくとも現時点では生存している事を確認出来、翼は安堵する。
「でもそうだよね、小鉄っちゃんがそんな簡単に死ぬ訳無いよね」
冬場でも半袖で走り回り車に撥ねられたり高所から地面に落下しても平気で居られる程の、
桁外れのタフさを持つ小鉄ならば、殺し合いの状況下でも生存していられるのは頷ける。
だが、それもいつまで続くか分からない。
早く小鉄を優勝させなければ、小鉄が死んでしまう、或いは自分が死んでしまうかもしれない。
もっとも翼は小鉄の死が分かった時点で自身も後を追うつもりで居たが。
放送後、翼は基本支給品の食料で軽い食事を済ませ、しばらく休んだ後、身を潜めていた民家を出立する。
武装は今右手に持っているピッケルの他、民家を漁って調達した牛刀包丁がデイパックの中に入っている。
これからの行動指針は当面は引き続き、他参加者を見付け殺害する事。
但し相手と自分の装備と実力の差も考慮して、明らかに自分が不利ならば撤退もする。
小鉄の為とは言え、命を無駄には出来ない。
そうしてしばらく町を歩いていた翼。
「!」
三人の参加者を発見し、急いで物陰に隠れ様子を伺う。
(あの二人は……)
三人の内二人は見覚えが有った。
先刻、レジャー施設内にて拘束されていた少年を殺害した後に鉢合わせた、獣人と男に間違い無い。
もう一人の兎のような女性は知らなかった。
(あの二人、多分あの後死体見付けたよな……いや縛られていたから仲間では無いとは思うけど。
それ以前にこっちは一人、向こうは三人、数的に不利だな。やり過ごした方が良いか)
翼が三人を回避しようと考えたその時。
「ねー、隠れてないで出てきてよ」
「!!」
犬或いは狼の少女が呼び掛けを行った。
気付かれたのか、と翼は焦る。
しかしどうやら実際は違うようだった。
「おー、大人しく出てきてくれたねー」
「え?」
自分はまだあの三人の前に出ていないぞと、妙に思った翼が恐る恐る物陰から顔を出して様子を見る。
すると三人は自分の方には背を向けて別の人物と対峙しているようだった。
先程の呼び掛けは自分に対する物では無かったらしい。

169 :
(何だ、僕の事じゃ無かったのか……良かった、このまま逃げよう)
まだ気付かれていないのなら好都合だと、翼は音を立てないようにそっとその場から逃亡した。

◆◆◆

「ねー、隠れてないで出てきてよ」
町中を歩いている途中、巴は唐突に後ろを振り向き大きな声で言った。
同行していたKBTITこと拓也とソフィアは何事かと思ったが、程無く巴の行動の意味を知る所となる。
巴が向いている方向、つまり今通ってきた道の路肩に停められた車の陰から、銀色の髪を持った少女が出てきた。
「おー、大人しく出てきてくれたねー」
巴が感心したように言う。実際に感心している訳では無かったが。
三人で隠れていた民家を出発した時から感じていた、自分達をつけてくるような気配。
思い切って呼び掛けてみたら、思ったよりあっさりと出てきてくれた。
「おお? お前、レジャー施設ん時の……」
「だねえ。エントランスホールで会ったねえあの子」
しかも巴とKBTITはその少女に見覚えが有った。
放送前にレジャー施設にて、青犬ガオガモンに追われていた少女に間違い無かった。
「……」
少女の方は巴達を睨んでいる。
どう見ても友好的な雰囲気では無い。
そもそもコソコソと尾行していた時点で友好的も何も無いだろう。
「レジャー施設のさ、入口んとこで会ったよな? 覚えてるか? 俺と巴の事」
「……ええ」
「そっかー覚えていてくれたんだねー。
私が巴でこっちがタクヤさんとソフィアさんね。タクヤさんは名簿にはKBTITで載ってるけど……貴方の名前は?」
「銀鏖院水晶」
「ぎんおういん、みきら? 凄い名前……まあ良いや。
……水晶さんさ、さっきまで私達の事コソコソ後つけてきてたでしょ?」
単刀直入に巴が切り出す。
「……そうよ」
水晶はあっさりと尾行の事実を認めた。
それならば次に聞きたいのはその理由だ、と、巴は質問を続ける。
「んー? どうしてそんな事してたのかな? 住宅地からだよね? 私達の事つけてたのさ」
「気付かれてたの……」
「何と無く気配はしてたんだけど確証得られなかったから黙ってたんだよねぇ……まぁそれよっか理由よ理由」
「理由、は……」

170 :
理由を答えようとする素振りを見せる水晶は未だ三人の事を睨んでいた。
一体いつまでそんな目をしているつもりなのかと巴が咎めようかと思った、その時、頭上から物音が聞こえた。
何かが弾けたような金属音。
「いてっ」
何かが頭に落ちてきて軽い痛みを感じる巴。
路上に落ちたそれは、ボルトだった。
三人が頭上を見上げると、電信柱の中程辺りに取り付けられた「あずま寿司」と書かれた看板が落ちそうになっていた。
「こういう事!」
水晶が叫んだ直後、バキッと一際大きな音と同時に看板と電柱を繋いでいた金具が破断し、
大きな金属製の看板が落下する。
落下地点の真下に居たのは巴。
「うわ!?」
さしもの巴もこれには驚き素っ頓狂な声を上げるが、
ガシャアアン!!!
「あぶな……」
寸での所で避ける事に成功した。
「巴、大丈夫か!?」
「何とか……」
自分を気遣うKBTITに問題無いと告げる巴。
近くで見ればかなりの大きさで重量も有る事が分かり、もし直撃していたら間違い無く重傷、
下手をすれば命を落としていたかもしれない。
「あっ、水晶居なくなってるんだけど……」
「「えっ」」
ソフィアの言に巴とKBTITが水晶が居た方へ顔を向けると確かに居ない。
恐らく左右どちらかの細い路地に逃げ込んだのだろう。
「コソコソついてきた上に逃げるなんて……次会った時はじっくり話聞きたいねぇ」
持っているM1912の先台で左手の平をポンポンと軽く叩きながら、半笑いを浮かべて巴が言う。
その仕草や声の様子から、殺気が滲み出ているのをKBTITとソフィアは感じた。
しかし、先程まで何とも無かったのに何故こんなタイミング良く看板が落ちてきたのか。
直前に水晶が「こういう事!」と叫んだのも気になった。
(あの子、何かやったのかな……超能力とか? いや、分からないけど)
それとなく推測してみる巴に恐る恐ると言った様子でKBTITが話し掛ける。

171 :
「巴」
「ん?」
「あいつ、追うか?」
恐らく巴は水晶を追撃したいであろうと思ったKBTITはそう巴に尋ねたが、返答は意外な物だった。
「んにゃぴ、いいでしょ。わざわざ追う程の物でも無いと思うし。
たった今自分で次会った時は〜なんて言っておいて矛盾してるかもしんないけど」
「分かった……とにかく誰も怪我しなかったから良かったな、先へ進もうか……」
「そうね……」
巴、KBTIT、ソフィアの三人は水晶の事を少し気にしつつも、当初の指針通り歩みを再開した。

【朝/B-2市街地】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(3/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)、ソフィアと行動。
        2:市街地を回り仲間集め。
        3:水晶さんは次会ったらじっくり(意味深)話を聞きたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
    ※銀鏖院水晶の名前と外見を記憶しました。また、彼女を危険人物と認定しました。
    ※金子翼が近くに居た事には気付いていません。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴、ソフィアと行動。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
    ※銀鏖院水晶の名前と外見を記憶しました。また、彼女を危険人物と認定しました。
    ※金子翼が近くに居た事には気付いていません。
【ソフィア@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]肛門に痛み
[装備]警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、睡眠薬@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。無理な戦いはしない。
        1:巴、KBTIT(拓也)と行動する。
        2:野原みさえには二度と会いたくない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※食中毒のせいで何度も用を足したおかげで肛門が痛んでいます。
    ※銀鏖院水晶の名前と外見を記憶しました。また、彼女を危険人物と認定しました。
    ※金子翼が近くに居た事には気付いていません。

172 :
◆◆◆

尾行が露見した時は焦った水晶だったが、咄嗟に頭を働かせて状況を切り抜ける方法を考え出した。
考え付いた方法は、サイコキネシス能力により三人の頭上に有る金属製の看板を落とす事。
看板が落ちてくれば三人は当たらなくても驚きはするだろう、その隙に逃げる、そういう算段であった。
無論誰かに当たってくれても一向に構わなかった。
結果、看板が突然落下してきた際に三人には当たりはしなかったものの驚かせ隙を作る事に成功し、
水晶は脱出する事が出来た。
サイコキネシス能力を発動させようとしていた時、恐らく三人にとっては自分達を睨んでいるように見えただろう。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
細い裏路地をしばらく走り、三人から大分距離を取れたと思われる所で走るのを止めた水晶は、
乱れた呼吸を整え、壁に背をもたれ休む。
走った事も有るが、先程の超能力の行使により疲労していた。
「全く、これじゃ格好が付かないわ……はぁ、はぁ……逃げてばっかりよ……」
ここに至るまでろくな戦果をあげられていない自分に苛立ちを隠せない水晶。
優勝し、今度こそ愚民と違う事を証明する、それが水晶がこの殺し合いに乗った理由。
しかし現実はどうか。
まだ一度も交戦相手を仕留められていない上に形勢不利に陥って逃げているばかり。
余りにも格好悪過ぎる。こんな事で優勝など叶うのかと水晶は自問自答した。
「いいや、まだまだよ……こんな所で、足踏みしてられないわ……もう前みたいに惨めな死を迎えるのは御免ですもの」
以前の殺し合いでの自分の無様な最期を思い出し、もう二度とああはなるまい、その為に頑張らなくてはと自らを奮い立たせる水晶。
その水晶を狙う一人の参加者が居た。
年不相応に老けた顔のその少年は、右手にピッケルを持ち水晶に向かって駆け出す。、
「!!」
水晶がその少年に気付いた時には既に眼前にまで迫っていた。
少年――――金子翼はピッケルの鋭い刃を水晶目掛けて振り下ろす。
ガスッ
鈍い音が鳴る、しかし水晶は無傷である。
自身のデイパックを盾にしてピッケルの一撃を寸前の所で防いだ為だ。
デイパックに深々と刺さったピッケル、その様が如何にその一撃が強力だったかを物語っていた。
「くっ!」
攻撃に失敗した翼はピッケルを引き抜き水晶と一旦距離を取る。
水晶もまた、鉄パイプを構えて戦闘態勢を取った。
見たところ、老け顔ではあったが自分より年下の子供であり、自分と同じ近接武器を使用しているのなら、
先程の三人よりは自分にも勝ち目が有ると踏んだのだ。
「「……」」
互いにしばらく睨み合いを演じた後、動いた。
鉄パイプとピッケルが力強く当たり金属音が市街地に響く。
水晶と翼は鍔迫り合いの状態となる。

173 :
(こいつ、結構力有る……!)
少年だからと侮っていたが、意外に力が有る事に驚く水晶。
単純に自分が非力なだけなのかもしれなかったが。
「うおお!」
「ッ!」
翼が唸り、水晶のパイプを弾いた。
水晶は大きく体勢を崩されてしまう。
(決める!)
その隙を突き、翼がピッケルを横に薙ぎ払った。
そのまま行けばピッケルの刃先は水晶の胸か腹に刺さったであろうが、超反応を発揮したのか、
水晶はパイプの両端を持ってその薙ぎ払いを受け止める事に成功する。
受け止めた衝撃で両手が痺れるが、そんな事を気にしている余裕は水晶には無く、切り抜ける方法を必死に模索した。
そして考え付いた方法は、男にとって最も痛いと思われる攻撃。
少年の股間に思い切り蹴りを入れたのである。
「オポッ!?」
変な声を上げて翼は水晶から離れピッケルも落とし股間を押さえて悶絶した。
今自分が敵と交戦している事すら忘れさせる男にしか分からない壮絶な痛み苦しみが翼を襲う。
そして当然、翼に隙が出来る。
それを水晶は見逃さない。
鉄パイプを翼の脳天目掛けて、力の限り振り下ろした。
ゴンッ!
「がっ……!」
一際鈍い金属音が響き、股間を押さえていた翼は今度は頭を押さえて苦しむ。
正しく脳が揺れるその衝撃と激痛に、一気に彼の意識は遠のく。
(し、死ぬ……?)
本能的に自分の死を感じ取った翼、しかしそれでも尚、反撃しようと先程落としてしまったピッケルに手を伸ばそうとする。
しかしそんな事を水晶が黙って見ている筈も無く無慈悲に翼の頭に再び鉄パイプを振り下ろした。
ゴスッ!
「あ゛っ」
再び脳天に一撃を加えられ、更に意識が遠のき視界が暗くなっていく。
頭の上から生暖かい液体が流れてきて自分の眼鏡のレンズに赤い筋を作っているのは朦朧とした中でもはっきり分かった。
まだ、まだ自分は死ぬ訳には行かない。
敬愛して止まない大沢木小鉄の為に、頑張らなければいけないのに――――。

174 :
しかしそんな彼の思いも虚しく。
ガンッ!!
三度目となる振り下ろしを加えられた直後、遂に翼の意識は途絶えた。
「はぁ、はぁ、はぁ……! やった……?」
少年が地面に付し、頭から血を流して動かなくなったのを確認すると、水晶は鉄パイプを振り下ろすのを止める。
三人と相対した時の能力の行使、そこから離脱する為の逃走、そして今の交戦で、息切れと疲労はかなり大きな物になっていた。
身体中が汗まみれになり湿った衣類が水晶に嫌な感触を与える。
「ようやく逃げずに済んだわね……」
今まで黒星ばかりだったがどうやら今回、ようやく白星を挙げられたと、水晶は笑みを浮かべた。
デイパックに穴を空けられたのは不覚だったが、中身を確認してみた所、
奇跡的に所持品にダメージは無く、デイパックの機能にも問題は無かったようで、水晶は安心する。
少年の持ち物も漁る水晶だったが、自分が持っている武器と殆ど変わらなかった為、回収はしなかった。
「行こう……」
もうこれ以上この少年の近くに居る必要は無い。
さっきの三人がまだ近くに居るかもしれない、恐らくと言うか間違い無くあの三人は自分が敵だと判断しているだろうから、
一刻も早く見つかる可能性の有るこの近辺から離れた方が良いだろう。
水晶は疲労で少しふらつきながら、その場から歩き去った。
……
……

三人組を回避した後、翼は市街地を索敵して回っている内、銀髪の中高生ぐらいの少女を発見し、襲撃した。
しかし、返り討ちにされ、撲殺されてしまった、かに見えたが。
「う……うう」
少女が去ってしばらくして、死んだと思われていた金子翼は意識を取り戻した。
鉄パイプによる殴打で頭部に重傷を負い、気絶こそしたものの、辛うじて一命は取り留めていた。
少女は翼が完全に死んだと勘違いし、念入りに止めを刺す事をせず立ち去った、それもまた翼の命を救う結果に繋がった。
「生きているのか、僕は……うっ……ぐ」
頭痛と目眩にふらつく翼。
死には至らなかったとは言え、軽視出来ない傷を負ってしまった。
頭からはかなりの出血が有り、眼鏡や顔面、上着までも赤く汚してしまっている。
縫合が必要なレベルの傷かもしれない。
いや、鉄パイプで何度も頭部を殴打されているのだから、頭蓋骨にダメージを受けている可能性が非常に高い。
何にせよ、本来ならすぐに病院に行って処置を受けた上で、入院し絶対安静にしなければならないぐらいの重傷だろうと翼は思った。
(そう言えばさっきの女の人って……)
翼は水晶の姿に見覚えが有った。
翼が遭遇を回避した三人組、その三人が相対していた人物。
良く姿を確認した訳では無かったが特徴的な銀色の髪だけは覚えており、それがさっきの少女と一致していた。
本当に同一人物かどうかは分からない、もし同一人物ならあの後、三人を倒したのか逃れたのかどちらでも無いのか。
それは翼には分からないし、今はそんな事はどうでも良かった。

175 :
(規制解除されたと思うので残り投下)
今の状態で無理に行動しようとすれば今度こそ命の危険が有る、交戦など以ての外。
無茶は厳禁なのは、良く考えなくても分かる。
(放送が終わって、行動始めたばかりだけど……これじゃしょうがない……どこかに隠れて手当して……休むしか……)
まだ行動開始からそれ程経っていないが、事ここに至っては致し方無い、と、
翼は再び身を潜められそうな場所を探し始めた。
「小鉄っちゃん、ごめんね……」
どこかで生きているであろう、自身が尊敬している少年に謝りながら。

【朝/B-2市街地】
【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(大)
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式、文化包丁(調達品)、鎌(調達品)
[思考・行動]基本:優勝し「愚民と自分は違う」事を証明する。
       1:一先ず三人(原小宮巴、KBTIT、ソフィア)から距離を取る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の名前を記憶しています。
    ※能力には特に制限は無いようです。
    ※原小宮巴、KBTIT、ソフィアの容姿のみ記憶しました。
    ※金子翼(名前未確認)が死んだと思っています。また、彼から既に離れています。

【朝/B-2市街地】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]頭部にダメージ(出血、打撲、頭痛、目眩有)
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、牛刀包丁(調達品)、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
        1:どこかに隠れて手当して休む。
        2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。
    ※原小宮巴、KBTIT、ソフィア、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。

176 :
投下終了です
連投規制掛かってしまいかなり間が空いてしまいました、すみませんでした
まあ今は自分以外ほとんど来ないから大丈夫だとは思うけど

177 :
52話 人間の屑がこの野郎…… の後半部分を以下のように修正します
・・・・・・・・・・・・・・・
【修正前】
裏路地から出てきた男を、油谷眞人は殺そうとした。
しかし、男は泣き叫び失禁までしながら眞人に命乞いをした。
それでも殺そうと思えば殺せたのだが、男が見せるあまりに情けない見苦しい有様に、眞人は虫唾が走り、
R価値も無いと見做して逃がした。
その際散々に罵った所、泣きながら男は逃げて行った。
「……ったく、R気も失せるわ、あんな奴」
吐き捨てるように言うと、眞人は他の参加者を探し始めた。
その逃がした男が、深夜に古城にて交戦した少年の担任教師である事など、彼は知る由も無い。
【修正後】
裏路地から出てきた男を、油谷眞人は殺そうとした。
しかし、男は泣き叫び失禁までしながら眞人に命乞いをした。
それでも殺そうと思えば殺せたのだが、男が見せるあまりに情けない見苦しい有様に、眞人は虫唾が走り、
R価値も無いと見做して逃がした。
その際散々に罵った所、泣きながら男は逃げて行った。
「……ったく、R気も失せるわ、あんな奴……前の殺し合いでもあんな奴居たなそういや」
似たような光景を眞人は以前の殺し合いでも見ていた。
同行者を眞人に殺され、更に顔を殴られた雄の妖犬が、今の男のように必死に命乞いをし、
結果、今の男と同じように眞人は呆れてその犬を見逃した。
もっとも、その時は今の男程、罵声を浴びせなかったし、その犬も結局眞人が去った後死んでしまったようだが。
「まあ良いか、さて、他の奴捜すか」
眞人は気持ちを切り替え、索敵に戻る。
逃がした男が、深夜に古城にて交戦した少年の担任教師である事など、彼は知る由も無い。
・・・・・・・・・・・・・・・
以上です。

178 :
投下します。

179 :
64話 サブリミナルローテーション
市街地を歩いていたノーチラスと沙也。
ふと、沙也がノーチラスに話を振る。
「ねぇノーチラスってさ」
「うん」
「超能力使えるんだよね」
「ああ、衣服を分解出来る奴がな」
「ちょっとやってみてよ、私に」
余りに唐突かつ無茶なお願い、ノーチラスは無論速攻で拒否する。
「お前全裸になるだろうが……」
「良いよ! 来いよ!」
「良い訳無いだろ! いい加減にしろ!」
いやらしい笑みを浮かべながら無理を言う沙也に、本当に淫乱だと呆れるノーチラス。
言う通りにして全裸にしても恐らくと言うか間違い無く沙也は怒る事も恥じらう事も無いだろうが、
だからと言ってやる気にはならない。流石にその位の分別はノーチラスだって持っていたし、沙也の身の安全も考えていた。
「服が無いと防御力が無くなるだろ……大怪我する確率が高くなるぞ」
「あー、それもそうか……して欲しいけどな〜……じゃあ今はやめておくわ。
無くなっても良い服とか手に入れたらやって貰いたいなぁ」
「おう考えといてやるよ」
ノーチラスと沙也の問答には一応の決着は着いたようだ。
警察署にて触手の怪物に襲われ、逃げてきた二人。
市街地へやって来てからしばらく危機らしい危機は訪れていなかったせいか、二人は少々緊張感が薄れていた。
それ故に人目に付き易い市街地の歩道で、下らない話を始めてしまった。
そんな二人を、曲がり角から少しだけ顔を出して様子見する少年。
殺し合いに乗り索敵中だった油谷眞人である。
顔を引っ込めて、恐らく自分と同年代と思われる狼と猫の少年少女への対応を練る。
先刻殺害しようとした男は余りの情けないみっともない様に呆れて追い返してしまったが、あの二人はどうなのだろうか。
(何か話してたみてぇだけど、こんな殺し合いん中で呑気にお喋りとはなー、さてどうすっかな)
あの二人を襲うか否か眞人は思案する。
こちらは一人、向こうは二人、数の上では不利では有るがどうやら周囲への警戒は怠っている様子。
強行突破すれば一気に仕留められる気もするが、確実では無い。
見た所、猫の方は日本刀だからまだ良いとして、狼の方はライフルと思しき物を持っているのでもし反撃されれば非常にまずい。
(……やめるか)
考えた末、眞人は安全策を取り、二人は無視して行く事にした。
踵を返して立ち去ろうとした、が。

180 :
グシャッ
「あっ」
うっかり、落ちていたアルミ缶を踏んづけてしまう。
静かな市街に、アルミ缶が潰れる音は良く響いた。
恐らくあの二人に気付かれるであろう位に。
(やべ、気付かれたか?)
その場で静止して耳を澄ませる眞人。
眞人の危惧通り、ノーチラスと沙也は今の缶が潰れた音をしっかり耳にしていた。
ただでさえ静かで些細な物音でも目立つ上、獣人である彼らは普通の人間より聴力に優れ、聞き逃さなかった。
「何か聞こえたよね?」
「聞こえたな、そこの曲がり角の方から」
(やべえ、バッチリ気付かれてやがるな)
油断していたのは自分もだったと眞人は反省する。
「どうする? 見に行ってみる?」
「ちょっと待て、声を掛けてみよう……」
曲がり角の向こうに居るであろう物音の主に向かってノーチラスは思い切って声を掛けてみる。
「誰か居るのか?」
「……」
眞人は応じない。
ここで接触してしまうと色々と面倒である。
このまま走って逃げてしまおう、そう考えた眞人は走り出した。
駆け出す音が聞こえそれが遠ざかって行くのを認めたノーチラスと沙也は、物音と足音の主を追い掛ける。
しかしすぐに路地裏に逃げ込まれ、後ろ姿を見る位しか出来なかった。
その上得られた外見の情報も、黒い服、どうやら人間で男、程度の事。
「逃げちゃったね……誰だろ、って言うか、何で逃げたんだろ」
「うーん」
男が逃げた理由としては二つ、ノーチラスは思い付いた。
「怯えてたのか、俺らを殺そうと隙を窺ってたけど気付かれてまずいと思って逃げたのか、どっちか」
「乗ってたのかな」
「確かめようが無いから何ともな。どっちでも無いかもしれないし、何にしても余り友好的では無さそうだったな。
……下手したら俺ら襲われてたかもしれない……」
「ちょっと、油断してたかなー私達」
しばらく襲われる事も誰とも会う事も無く、平和だったせいか、警戒を怠っていた感は否めないと、二人は省みる。
自分達がいつ命を狙われるか分からない過酷なゲームをさせられていると言う事実をきちんと踏まえなければならない。

181 :
「とは言っても、お前は淫らな事はやめるつもりは全く無いんだろ?」
「そうだよ」
「……お前らしくて良いと思うよ、うん」
もっとも、沙也に関しては根本の部分、つまり淫乱な部分は何ら変化は無いので、
そんな反省も意味が有るのかどうか疑問符が付くのだが。
一方、二人から逃れ、裏路地へ逃げ込んだ眞人。
「追っては来てねぇみてぇだな」
振り向き、あの二人が追ってきている様子は無い事を確認し、一先ず安心する眞人。
しかし程無くして、あの二人から逃げてきた形になったのが無様だ、と眞人は悔やみ始める。
安全策を取り二人を回避し逃げる判断を下したのは他ならぬ自分、それは分かっている。
だが、思えば以前の殺し合いでは、自分は一度も相対した者から逃げなかった筈だ。
即興のトラップを思い付いて二人一緒に殺害した事も有ったし(事後確認だが)、
犬獣人の中年男と犬の二人組を襲い、中年男の方を殺害してもう一人の犬の方も圧倒した。
それらの時の自分の武装は、鉄製の丸棒。今持ってる古びた剣とそうは変わらない。
そうだ、数の上での不利など、武装の上の不利など関係無かったのだ。
何故自分はそれを忘れていたのか。
「やっぱ俺の性には合わねぇや」
最早、どのような相手でも避けたり逃げたりはすまい。
自分より強かろうと、武器が優れていようと、数で勝っていようと立ち向かって行ってやろう。
眞人はそう決心する。
それを彼の覚悟の良さと取るか、ただの現実が見えない愚か者と取るかは人それぞれであろうが。

182 :
【午前/E-4市街地】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラスと行動。
        2:しばらくは市街地を回る。
        3:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
    ※いつ頃からかノーチラスを呼び捨てにしています。
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(0/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也と行動。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
        3:しばらくは市街地を回る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターであり事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。

【午前/E-4市街地裏路地】
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:生き残る為に殺し合いに乗る。
        1:他参加者の捜索。
        2:どんな相手でも逃げたりしない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※土井津仁、春巻龍、ノーチラス、君塚沙也の容姿のみ記憶しました。

183 :
投下終了です。

184 :
投下します。

185 :
65話 しょくしゅ注意報 其の参
廃城を出発し、市街地へとやってきた小鉄、テト、サーシャの三人。
まずしなければならないのは廃城にて失禁してしまったサーシャの身体を洗う事が出来、
着替えが調達出来る場所を探す事。
と言うよりそれが目的でこの市街地へやってきたような物だった。
「あそこで良いんじゃねーか?」
小鉄が指差したのは、個人経営の古い洋服店。
住居も併設されているようで、条件は十分に満たすと思われた。
「うん、あそこなら、大丈夫そう……早いとこ、身体綺麗にして着替えたい」
サーシャも納得したので、三人は洋服店の中へと入って行った。
「先に風呂入る!」
「分かったわ、じゃあ私と小鉄君で着替えを探すよ」
衣服を漁るよりも、まずは身体を洗いたい、そう思ったサーシャは風呂へと直行する。
サーシャが入浴している間に、テトと小鉄の二人で彼女の着替えになりそうな衣服を探す。
当然店先に置かれている物は全てこの店の商品なのだが、店主は不在で咎める者など誰も居ない。
二人は遠慮無く並べられている衣類を漁った。
一方、風呂場でシャワーを浴びるサーシャ。
汗や尿で汚れてしまった自分の、青い毛皮に覆われた身体を入念に洗う。
熱い湯が身体を流れる感触に少し心安らぐ。
(傷、ホントに全部無くなってるわね)
改めて自分の身体を観察する。
以前の殺し合いの時に出来た筈の傷は全て消えている。
銃で腹や首を撃たれ、抉られたのだから、治ったとしても何らかの痕跡が残ると思うのだがそれらは見当たらない。
更に一度死んだ筈の自分を蘇生させたのだから、この殺し合いの黒幕は一体何者なのかとサーシャは思わざるを得ない。
(そろそろ出ようか、十分綺麗になったしね)
身体が綺麗になったと見たサーシャは、シャワーを止めて脱衣所へ移動し、バスタオルで身体を拭く。
「入るわよ……」
「テト」
タイミング良く、テトが着替えを持ってくる。
「ありがとう……小鉄君は?」
「流石に女の子の裸を小学生に見せる訳には行かないと思って、居間で待ってて貰ってるわ」
「そう……」
「じゃあ、私も待ってるから……」
着替えをサーシャに渡し、テトは小鉄を待たせている居間へ向かう。
(……どうしようかな)
服を着ながら、サーシャは以前の殺し合いについてテトに聞くべきか考える。
この殺し合いでテトと出会った時から聞き出そうかとは思っていたが、失禁した事や、
テトの同行者で事情を良く知らないと思われる小鉄の事を考えたりして未だ聞く事に至っていない。
しかし、今の内に聞いておかなければもう一生聞く機会は無くなるかもしれない、
今の彼女は自分達と同じ参加者なのだ、いつ万一の事になるのか分からないのだから。

186 :
(やっぱり聞いてみよう)
小鉄を巻き込むかもしれないが、やはり聞いてみようとサーシャは決心する。
居間にてサーシャの戻りを待つ小鉄とテト。
しかしテトはそわそわとして落ち着かない様子であった。
(絶対サーシャ、前の殺し合いの事について私に聞くわよね……どうしようかなぁ)
サーシャは以前の殺し合いにおいて、黒幕が自分である事を察している節が有り、
更に殺意も抱いていた事を、テトは把握している。
恐らくと言うか間違い無く、以前の殺し合いについての話をサーシャは自分に対して切り出すであろう。
そうなったら、テトは、包み隠さず全て打ち明けるつもりだった。
謝って許して貰おうなどとは思っていない、許して貰える筈も無いだろう。
もしサーシャが激高して自分に襲いかかってきた時は、その時はその時だ。
「おっ、サーシャねーちゃん」
「あっ……おかえり」
「うん……」
そうこうしている内に、サーシャが二人の元に戻る。
嫌な臭いもすっかり消え、石鹸の香りを漂わせ綺麗になったサーシャはテトの近くに座った。
「「……」」
互いに無言なテトとサーシャ。
テトはいつ話を切り出されるのかと、サーシャはいつ話を切り出そうかとドキドキする。
「台所行ってくら」
そんな二人の雰囲気を知ってか知らずか、小鉄は何か食べ物或いは飲み物を探そうと台所へと向かった。
居間にはテトとサーシャの二人きりとなり、気まずい空気が流れる。
(聞くなら今しか無い……!)
サーシャはついに口火を切った。
「テト?」
「何……?」
いよいよ来るかと、少し引き攣り気味で返事するテト。
その反応を見て、聞かれるのを予想していたなとサーシャは思いながら、続けた。
「単刀直入に言うけど……前の殺し合いの黒幕は……貴方ね?」
「……そうよ」
テトはあっさりと認める。
誤魔化す必要も、意味も無いからだ。

187 :
「……貴方は早い内から、察していたみたいね」
「どうしてあんな事を? どうしてラトを? 貴方とラトは、付き合っているのだと思っていたのに」
思わず声に険がこ籠ってしまうのを感じながらも、サーシャはテトを問い質す。
しかしこれでも、思っていたよりは落ち着いていられているとサーシャは思った。
「……」
テトは少し間を置いてから、話し始めた。
「殺し合いが起きる前、修学旅行の前……貝町ト子、知ってるよね?」
「うん、貴方とは仲が良かったと思うけど」
「その子に裏切られて、私は太田に、―――されたの」
「えっ……!?」
絶句するサーシャ。
テトの身体が心なしか震えているように見えたが、気のせいなどでは無かっただろう。
俯き加減で、テトは自分が殺し合いを企図するに至るまでの経緯をサーシャに説明する。
親友と思っていたト子に裏切られ、太田達に暴行を受け、その時、最愛の人だと思っていたラトは助けには来てくれなかった。
絶望し、ラトを逆恨みし、二階堂永遠と卜部悠と共謀し、クラスメイトを巻き込んだ殺し合いを考え実行した。
目的は、無論、自分を裏切り、犯した者共への復讐も有ったが、それ以上に、
クラスメイト達、果ては共謀した二人も生贄にして「自分だけのラト」を作り上げる事だった、と言う事を。
「……」
サーシャは呆然として、言葉を紡げなかった。
身勝手な理由、の一言で片付けるには、テトの語った経緯は余りに壮絶過ぎたから。
虚言を吐いている風にも、とても見えなかった。
「……これを聞いて、サーシャ、貴方はどうする?」
「!」
「貴方が前の殺し合いの時に、私を問い質そうとしていた事、殺意を抱いていた事は知ってる。
今、私は貴方に事の次第を話して、私は貴方の目の前に居る……貴方は、私をどうしたい?」
「……テト」
サーシャは考える。
以前の自分であれば、テトに向かってより感情を昂ぶらせたり、殺しに掛かっていたかもしれないが、
今となってはそのような気はすっかり鳴りを潜めてしまっていた。
テトに対してあれだけ抱いていた憎しみ、怒り、殺意が嘘のように薄らいでいる。
彼女の話に同情心を抱いてしまったのだろうかとサーシャは思う。
どんな理由が有ろうと、自分やラトを一度死に追いやり、
無関係なクラスメイトをも地獄へ突き落とした張本人なのは間違い無いと言うのに。
「……テト、私は――――」
自身の結論をサーシャがテトに伝えようとした、その時。
ガシャアアン!!
「うおわぁぁ!!」
「「!?」」
台所の方から、何かが派手に破壊される音と小鉄の悲鳴が響く。
驚いたテトとサーシャは、やむを得ず話を中断して台所へ急行する。

188 :
……
……
台所にて冷蔵庫や戸棚を漁る小鉄。
ジュースや菓子類を見付け、それらを自分のデイパックの中に詰め込む。
「にしても、このバッグすげーな、いくらでも入るし重さも変わらねぇ。
フグオだったら食い物大量に詰め込みそうだな……いや、今ジュースやお菓子詰めてる俺が言えた頃じゃねぇか。
こんなモンで良いかな?」
そろそろテトとサーシャの待つ居間へ戻ろうと小鉄が思ったその時。
フー……フー……
ザッ……ザッ……
どこからか聞こえてきた、荒い息遣いとやけに重く響く足音に、小鉄は動きを止めた。
「何だ……?」
辺りを見回し音の出所を探る。
そして、格子のはめられた、磨硝子の窓の向こうに異様な物が見えた。
人に近いシルエット、そこから幾つもの管のような物が蠢いている、小鉄には形容し難いシルエットが通り過ぎて行った。
と思った直後。
ガシャアアン!!
「うおわぁぁ!!」
裏口の木製扉が文字通り「粉砕」され、思わず小鉄は悲鳴を上げてしまう。
先程聞こえた息遣いと足音の主が、扉の残骸を踏みながら入り込んできた。
ボロボロの、血塗れになった学ラン姿のリカオン獣人の少年、その全身から触手が生えて蠢いている。
中でも、右腕から生えた触手達が束のようになっており、それで扉を破壊したようだった。
胸元に、小さな名札が有り、そこにはどこかの中学校の名前と「小崎史哉」と言う名前が書かれていた。
「な、何だコイツ!?」
「小鉄君! 大丈夫……う、うわあ!?」
「何この化物!?」
駆け付けたテトとサーシャも、小鉄同様触手だらけの獣人の姿を見て驚愕する。
「グルルルルル……!」
リカオン少年は明らかに友好的では無い眼差しを三人に向け、
唸り声を発しながら、触手の束と化した右腕を振り被る。
そしてそれは天井を破壊しながら、小鉄目掛けて振り下ろされた。
バキィ!!
「だあああ!」
間一髪で小鉄は触手の振り下ろしを避ける。
代わりに木製の古い椅子が犠牲となり無残にぺしゃんこにされた。
もし小鉄に直撃していればひとたまりも無かったであろう。
リカオン少年の明確な殺意を感じ取ったテトは装備していた小型自動拳銃ローバー9をリカオン少年に向けて発砲する。

189 :
ダン! ダン! ダン!
9ミリパラべラムのフルメタルジャケット弾頭が三発、リカオン少年の胴体を抉った。
しかし軽くよろめきはしたものの、動きを止める気配は全く無い。
これはまともに戦っても勝ち目は無い――――三人は直感した。
「逃げよう!」
テトが退避を叫び、三人は店舗部分から脱出するべく、リカオン少年に背を向け走り出す。
しかし、それを少年が黙って見過ごす筈も無く、右手の触手の内一本を、三人に向け勢い良く伸ばした。
ドスッ
「あっ、が……!?」
「テトねーちゃん!?」
「テト!」
運悪くその触手はテトの胸元を貫通し、豊満なバストの間から赤くぬめりを帯びた触手が生えた。
「こ、のおおおおお!!」
口の端から血を垂らしながら、テトが牙を剥き出して怒声を発する。
触手に貫かれながらも、振り向きざまにリカオン少年に向けて、自身の能力を使い巨大な氷柱を作り出し、飛ばした。
「グガァアア!」
氷柱は見事にリカオン少年の腹部に突き刺さり、さしもの少年もその衝撃にバランスを崩し転倒する。
その間に、サーシャと小鉄はテトに突き刺さった触手を引き抜き、テトを抱えて外へと逃げた。
洋服屋からしばらく離れた所で、テトはへたり込んでしまう。
「テトねーちゃん、しっかりしろ!」
「テト!」
「……っ……ゲホッ!」
大量の血を吐き出すテト。
傷口付近は真っ赤に染まり、アスファルトが血塗れになる。
命に関わる傷を負っている事は明白であった。
「これ……もう駄目みたい……ここまでね、私……」
「何言ってんだよ!」
「ごめん、でも……もう、目の前も殆ど見えないのよ……身体に力も、入らない……」
「テト……」
「……でも、これで良いのかもしれない」
何を言い出すんだ、という表情で小鉄とサーシャはテトを見る。
全て悟ったような表情で、テトは静かに語った。
「……私はクラスの、皆を、勝手な理由で死なせた。
そんな私が、自分のしたのと同じような殺し合いに放り込まれて、生き延びようだなんて、虫の良い話よね……。
……これは当然の……帰結なのよ……私への、罰、なの……」
クラスメイト達を、特にラトを、自分の勝手で死に至らしめた自分が、この殺し合いで生き延びる事などおこがましい。
ここで死ぬのは、自分に対する罰。自業自得。当然の報いなのだと、テトは諦観し、受け入れる。
「何言ってるのよ」
しかしサーシャはそれを否定した。

190 :
「そんなの私は認めない! 確かに貴方のやった事は許される事じゃ無い、でも、それなら、
本当に罪の意識を感じているのなら生きて! 生きて罪を償うべきよ!」
声が震えながらも、力強く、サーシャはテトに向かって言い放った。
それは、洋服屋にて、サーシャがテトに言いかけた言葉でもあった。
「……つまり、死なないでって、事……?」
「……そうよ」
「はは、意外……サーシャから、そんな言葉聞くなん、て……そうだね……そうかもね……でも……」
テトとて、可能ならばサーシャの言う通りにしたかった。
だが、無慈悲にも彼女の肉体はその生命維持活動を緩やかに停止していき、彼女を確実に死へと誘う。
「無理、みたい」
「テト!」
「テトのねーちゃん……!」
自分が開いた殺し合いにて、見るに堪えない無残な死に方をしたクラスメイトは数多い。
そしてそのような死に方をさせた張本人である自分は、比較的綺麗な身体の状態で、
同行者二人に看取られながら、比較的穏やかに死ぬ。
何とも分不相応ではないかと、テトは自嘲した。
どこかで生きているであろう、かつての親友のト子、かつての想い人のラト。
ト子は殺してやりたいとまで思っていたが、事ここに至っては、もうどうなっても関する事では無い。
ラトは、出来る事ならもう一度会いたいと言う気持ちも有った、が、それは叶わなかった。
ただ、会わなくて良かったかもしれないとも思っていた。
そして、最期の言葉をテトは紡ぐ。
「……サーシャ……小鉄、君……あり……がとう……ごめん……ね」
そう言い終わった直後、テトの目が閉じられ、脱力してサーシャに寄りかかる。
小さく続いていた呼吸も止まった。
それが何を意味するのか小鉄もサーシャもすぐに察せた。
「テト? テト……」
「テトねーちゃん!」
もはや無駄だと知りつつも二人はテトの名前を呼んだが、もう閉じられた目は二度と開く事は無く、
返事が返って来る事ももう、無かった。
「畜生、畜生……!」
地面に拳を打ち付けて、小鉄は涙を流して嘆いた。
サーシャは涙こそ流さなかったものの、鎮痛な面持ちで、自分に寄りかかったままのテトの頭に手を添え、その死を悼んだ。

【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  28人】

191 :
【午前/E-4市街地】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]悲しみ
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、ジュースやお菓子(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。フグオ、金子先生、春巻を捜す。
       1:テトのねーちゃん……畜生……。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※テトが別世界の人間だと言う事を、余り理解出来ていませんが、何となくは分かったようです。
    ※小崎史哉の外見を記憶しました。また、彼の上着の名札を目撃した事により名前も把握しています(但し読み方までは分かっていない)。
【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]悲しみ
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:テト……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※入浴し、着替えました。
    ※テトから「以前の殺し合い」の真相を聞きました。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶しました。

◆◆◆

市街地へとやってきた、小崎史哉。
警察署で襲い、逃げられた狼と猫の二人を追ってやってきたがその二人の姿は見失ってしまった。
しかし史哉は気にせず、他の獲物を探し歩いた。
いつしか彼はどこかの家の裏庭に迷い込んでいた。
錆の浮き出た小さな倉庫や使われていないと思われる自転車が庭の隅に置かれ、家の裏口が見える。
ガスボンベや、格子のはまった窓から、裏口の向こうは台所であろう。
「ヴヴ……?」
家の中から物音がするのを史哉は聞き逃さなかった。
裏口へと向かい、史哉は右手に出来た触手の束で、裏口扉を破壊する。
ノブを回して開けると言う思考は既に出来なくなっていた。
「うおわぁぁ!!」
少年の悲鳴が響く。やはり内部には人が居た。
史哉の視界に驚愕の表情を浮かべる小学生位の男の子。
「な、何だコイツ!?」
「小鉄君! 大丈夫……う、うわあ!?」
「何この化物!?」

192 :
すっかり忘れてた……連投規制されて投下出来なかった残りを投下します
・・・・・・・・・・・・・・・
程無く少年の仲間と思われる二人の猫獣人の少女も現れる。
三人の獲物を見付け、傍からはそうは見えないだろうが、史哉は俄に喜び、その三人を殺しに掛かった。
灰色の猫の少女が、史哉に向け拳銃を発砲したものの、もはやライフル弾を撃ち込まれてもびくともしない史哉の肉体が、
拳銃弾を三発撃ち込まれた程度でどうにかなる筈も無い。
間も無く、形勢不利と見た三人が史哉に背を向け逃げ出した。
無論黙って史哉が見逃す筈も無い。
先程自分に銃撃を食らわせた灰猫少女の背中目掛けて高速で触手を伸ばす。
「あっ、が……!?」
見事に触手は少女の胴を刺し貫いた。
「こ、のおおおおお!!」
しかし直後、激高した少女が反撃に出た。
大きな氷柱を作り出しそれを史哉目掛けて飛ばしたのだ。
「グガァアア!」
氷柱は史哉の腹部に突き刺さりその衝撃で史哉は仰向けに倒れ込んだ。
さしもの史哉も巨大な氷柱を勢い良く腹に打ち込まれたらただでは済まなかった。
彼にしては珍しい苦しげな声を発し、氷柱を引き抜こうとする。
その間に三人は逃げて行ってしまう。
「ウグウウウッ……あ゛あ゛あ゛っ!!」
どうにか腹に刺さった氷柱を引き抜く事に成功する史哉。
しかし、傷口からは少なくない量の血液が溢れ、床に飛び散る。
普通の人間なら死亡してもおかしくない傷だが、身体に寄生し彼の触手の元となっている寄生虫のおかげで、
生命力が増大している史哉は致命傷にはならずに済んでいた。
かと言って、不死身では無い。
彼に巣食う寄生虫の「以前の宿主」のように肉体が重度のダメージを受けて損傷が酷くなれば、
史哉の肉体は活動を停止してしまう。
「肉体」は。
しかしながら、寄生虫そのものはそう簡単に死滅せず、
宿主の身体が限界に近付いた時、宿主を操って次の宿主に成りうる次の肉体を探すのだ。
「……つぎ……を……つぎの……から、だを……」
史哉の口から漏れたその言葉は、紛れも無く寄生虫自身の物。
ふらりふらりと史哉の身体を歩かせ、寄生虫は次の寄り代を探し始めた。

【午前/E-4洋服屋住居部分】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]ずぶ濡れ、右肩に貫通銃創、腹部に大穴(出血多し)、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
        1:次の……宿主……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
    ※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
    ※ノーチラス、君塚沙也、テト、サーシャ、大沢木小鉄の外見を記憶しています。
    ※肉体のダメージが大きくなってきた為、次の「宿主」となる人物を探しています。

193 :
投下終了です。遅れて申し訳有りませんでした
まあ誰も居ないから大丈夫だと思うが一応念の為
最近ペース落ちてますが執筆続けてます

194 :
投下します。二人死にます。

195 :
66話 Sacrifice Of The Vision
夜明け前と第一放送後しばらくして行われた戦闘によって、D-3エリアに存在する図書館の内部はすっかり荒れ果てていた。
床に散らばる無数の紙切れ、テーブルや壁に無数に空いた銃痕。
ドミノ倒しの如く連なって倒れた本棚にそれの下敷きとなって血を流して死んでいる灰色のガーゴイル獣人の男。
ただ、直接の死因は首の刺し傷のようだったが。
「こいつ、あの時の怪物じゃないの……」
図書館を訪れた野原みさえがガーゴイルの死体を見付ける。
それは紛れも無く、C-2エリアのガソリンスタンドにて、自分を気絶させて武器を奪っていった張本人だった。
「あはは、ざまあないわねぇ、あんだけ偉そうな事言っておいて、あっさり死んでるじゃないの……。
……私の武器が有る筈、どこなの……」
ガーゴイルの死を嘲笑った後、みさえは彼に奪われたであろう自分の武器がどこか探し始める。
しかし見付からない。どうやら彼と一緒に本棚の下敷きになっているらしかった。
本棚をどかすのはみさえの力以前に一人ではほぼ不可能に等しい。
「折角見付けたのに……これじゃどうにもならないじゃない」
武器を取り返せると思っていたみさえは落胆する。
尤も彼女のサーベルはガーゴイルを殺した者が持ち去ってしまっていたのだが、彼女が知る由も無い。
「……!」
落胆していたみさえの耳に、玄関方向から物音が届く。
誰かがやってきたらしい。
今持っている武器はガソリンスタンドでくすねたモンキーレンチのみ、真正面から挑むのは今のみさえでも無謀だと判断出来た。
やむを得ず、みさえは奥の方にある通路へと向かい身を潜めた。

◆◆◆

工場を出発して図書館へとやってきた、虐待おじさんこと葛城蓮、シルヴィア、ガルルモン、北沢樹里の四人。
そこで彼らが見付けたのは、荒れ果てた館内の惨状と、ガーゴイル獣人の無残な死体。
「これは酷いな、首を何度も刺されている。
状況から見て、本棚の下敷きになって、身動きが取れない所を滅多刺しにされたんだろうな」
「酷いね……それに、この有様。何度かここで戦闘が有ったみたいだね。いや、一回だけかもしれないけど」
死体や、図書館内の様子を見てそれぞれ感想を述べる蓮とシルヴィア。
「まだ奥が有るみたいだけど、誰か居たりしないかな」
図書館の奥の方を見ながら、樹里が他に隠れている者が居ないか懸念する。
それを聞いた蓮はガルルモンに様子を見てくるよう言った。

196 :
「ガルルモンちょっと見てこい」
「俺一人?」
「あ、言う事聞かないのか……」
「ヤーキクキク!」
「まあ確かに一人は危ないね、私も行くよ。蓮と北沢は待っててくれ」
シルヴィアがガルルモンと一緒に様子を見に行く事になる。
ガルルモンは少し安心しているようだった。
倒れた本棚達を乗り越え、ガルルモンとシルヴィアは奥の通路の中へ入る。
小さな個室が幾つか並んでいる、どうやら学習室のようだった。
扉のガラス窓からシルヴィアが中を覗くと、テーブルと向かい合うように置かれたパイプ椅子が有る質素な部屋が見えた。
「私はこっちを見てくから、アンタは反対側見てってくれ」
「あ、ああ」
ガルルモンは向かって左、シルヴィアは右の個室を見て行く。
個室は全部で八つ有り、何れも同じような構造と内装だった。
(ここ、来る時に見たけど辺りに何も無い、凄く辺鄙な場所なのに、わざわざ町から遠いここまで、
勉強しに来る人なんて居たんだろうか)
そんな事を考えながら、シルヴィアは右側の四つ目、つまり最後の個室の扉を開けて中に入った。
ドゴッ
「う゛あっ」
入った直後、シルヴィアは後頭部に衝撃を感じ、意識が遠のいてその場に倒れ込んだ。
(な……襲撃……!?)
そう思った直後に再び後頭部に衝撃が走り、シルヴィアの意識は途絶えてしまう。
「ここにも居ないか……あれ?」
通路に出たガルルモンは異変に気付く。
奥の個室の入口付近にシルヴィアの足が見える。
十中八九、倒れているようだった。
何故倒れている? 何か有ったからに決まっている。
「シルヴィア!?」
ガルルモンがシルヴィアの元へ駆け寄る。
しかし辿り着く直前に、個室から見知らぬ人間の女性が飛び出してきた。
驚いて立ち止まるガルルモン、それが命取りとなる。
女性はガルルモンの首に何かを素早く巻き付け、思い切り締め上げた。
「がっ!? ア゛ッ、ゲウウッ!? ヴッ!」
一気に呼吸困難になったガルルモンは必死に逃れようと暴れるが、女性は全く離そうとしない。
息苦しさに足をばたつかせ、助けを呼ぼうとしても声は出ず、口から泡が吹き出し目は充血して涙が溢れる。
「グッ、グッ、グッ、ヴッ」
白目を剥き、身体が痙攣し、いよいよ死が近い事をガルルモンは悟る。

197 :
(俺、死ぬの!? 死んじゃうの? 嫌だ!)
自分が死ぬと言う現実を受け入れられないガルルモンだったが、彼の意思と相反して、
彼の身体は生命維持活動を停止させていく。
(嫌だ、嫌だよ、こんな所で死にたくないよぉ!
こんな、訳の分からない、ゲームで、まだ、一度も、女とヤってないのに、ぃ!
ヤ、だ、たすけて、蓮さん、樹里、シルヴィ、ア、だれでもいいから、やだ、や、だ、しにた、く、な――――)
彼の願いは届く事は無く、ビクッ、ビクッ、と大きく身体が震えたのを最後にガルルモンは脱力し、死んだ。

【ガルルモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ  死亡】
【残り  27人】

◆◆◆

巨大な犬が動かなくなったのを確認すると、みさえは彼を首りRのに使った自転車のチェーンを解いた。
今しがた殴って倒した猫耳少女から奪い取った物だ。
他にも自動拳銃と予備のマガジンを回収した。
銃を使っても良かったがそれだと大きな音が鳴るだろうし、そうなると残りの二人もここへやって来て数的に不利になる。
それに限り有る弾薬は節約したい。
(ああでも、この犬結構暴れたからもう気付かれたかも)
みさえの危惧はすぐに現実の物となる。
「おいお前!」
読書スペースの方から残りの二人、男と少女がやって来たのだ。
「ガルルモンが! シルヴィアさんは!?」
「お前がやったのか!」
「……」
みさえは二人と会話するつもりなど毛頭無く、自動拳銃を二人に向け発砲した。
ダンッ! ダンッ!!
「うおっ!」
「く……」
二人は銃撃を避ける為死角に隠れる。
それを見たみさえはこのまま押し切れるのではと思ったが、直後、少女からの銃撃を受ける。
ダァン!! ダァン!!
幸い銃弾は当たらなかったが、力押しは無理だと判断し、
武器も手に入れたのだからさっさと逃げようと考えたみさえは奥に見える窓に向かって走ろうとした。
しかし、先程の猫耳の少女が意識を取り戻しており行く手を阻んだ。
「待て……!」
「邪魔よ」
怒りの形相で向かってくる猫耳少女に向かってみさえは引き金を引く。
ダンッ!!

198 :
「がはっ……」
銃弾は少女の胸に命中し、血飛沫が上がり猫耳少女は再び倒れた。
これ幸いとみさえは窓を目指して走る。
「シルヴィアさん!」
「ふざけんじゃねぇよオイ! 何やってくれてんだオラァ!」
背後から聞こえる怒声も無視し、窓に辿り着くとみさえはそれを開けて外に飛び出し、全力で図書館から離れた。
彼女が襲撃した四人の内の一人が、息子を看取った本人である事などみさえは知らない。

【午前/D-3図書館周辺】
【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神に異常、左肩に擦過銃創、全身にダメージ、図書館から離れるべく走っている
[装備]デトニクス スコアマスター(7/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、スコアマスターの弾倉(3)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、モンキーレンチ(調達品)
[思考・行動]基本:優勝してひまわりを生き返らせる。
        1:他参加者を捜し出してR。
        2:しんのすけ、ひろし、シロはひまわりと一緒に生き返らせる。
[備考]※幾分落ち着いたようですが正常な思考は出来ません。
    ※ソフィア、呂車、虐待おじさん、北沢樹里の容姿のみ記憶しました。
    ※第一放送を聞き逃しました。しんのすけ、シロの死を知りません。

◆◆◆

全員で行くべきだったと、蓮は自分の判断を悔やんだ。
ガルルモンは死に、シルヴィアも虫の息になっている。
「シルヴィアさん! しっかりして!」
「シルヴィア!」
「う……う……」
胸に空いた銃創からは夥しい量の血液が溢れており、致命傷である事を二人に示す。
止血出来そうな道具はどこにも無く、出来たとしてもその後の処置が出来ない、詰みの状態であった。
「くそっ……こんな所で……! 折角生き返れたって言うのに……ガハッ!」
「喋るなシルヴィア!」
「いいさ、蓮……もう、助からないよ……はは、前よりは、マシな死に方かな……」
既に死を覚悟していたシルヴィアは以前の殺し合いの時の死に方と今回の最期を比べ、乾いた笑いを浮かべた。
「ガルルモン、は」
「死んだわ……」
「そう、か……なぁ、二人共」
シルヴィアの言葉に二人は耳を傾ける。それはきっと遺言であろうから。
「生き残れよ、絶対に……蓮、あんたは、強いし頼れる、から……生きて、他に殺し合いに反抗している奴らと、
協力して……この殺し合いを、潰してくれよ……」
「ああ、必ずやってやるよ」
「……北沢、前の殺し合いであんたが何やらかしたのかは……知らないけど、
もし申し訳無いって思うのなら、生きな……生きて罪を償うんだ……」
「分かった、分かったよ」
「……」

199 :
もうシルヴィアには二人の顔も良く見えず、音も遠い。
そろそろか。
シルヴィアは最期の台詞を口にした。
「……サーシャに、会ったら……私の事……伝えて、おいて……私は……もう……眠……る……から……さ……」
「「!」」
シルヴィアの目が閉じられた。
そして、もう開く事は無かった。
「シルヴィア……くそっ……!」
「……」
やり場の無い怒りと悲しみ、悔しさが、生き残った蓮と樹里の心中に渦巻いていた。
二人を殺した女性こそが、自分が看取った野原しんのすけの母親、野原みさえなのだが、
突然の事態だった故に、樹里はまだその事に気付いていなかった。

【シルヴィア@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  26人】

【午前/D-3図書館学習室区画連絡通路】
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]悲しみ
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        2:……。
        3:もし、しんのすけの両親に会ったらどうする?
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞いています。但し襲撃者が野原みさえだと言う事にはまだ気付いていません。
【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]悲しみ
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、手榴弾(2)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:クラスメイト(特にひで、KBTITこと拓也)や殺し合いに乗っていない参加者を集め、殺し合いを潰す。
        1:シルヴィア、ガルルモン……。
        2:襲い掛かってくる者には相応の対処をする。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※元動画準拠なので、本名は「葛城蓮」、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※シルヴィアのクラスメイトの情報を当人から得ました。
    ※シルヴィアが一度死んだ事、殺し合いが二回目である事、以前の殺し合いに乗っていた事を知りました。
    ※野原みさえの外見のみ記憶しました。

200 :
投下終了です。
マーダー少ないのに対主催多すぎなんだよね、それ一番言われてるから

201 :
投下します。

202 :
67話 咲いて咲かせて眩しいくらいに、きっと笑えるから
獲物を探し、人狼コーディは市街地を歩く。
先刻殺害したガーゴイル獣人から奪取した突撃銃を持ちながら、人っ子一人見当たらない静かな通りを歩いていた。
(お? 近くに居るか?)
コーディの耳が、足音らしき物を聞き取り、ピクピク動く。
足音は複数居るようだった。
今持っている56式突撃歩槍ならば、乱射すれば一気に仕留められるかもしれないが、
相手の力量や武装によっては、こちらが必勝という訳では無くなる。
(隠れるか)
すぐ近くの民家の敷地へ入り、塀の裏に身を潜めるコーディ。
その塀には鉄柵の部分が有り、そこからコーディは十数メートル奥の曲がり角を監視する。
やがて、曲がり角から三人の参加者が現れた。
「狙えるかな?」
鉄柵の隙間から、コーディは三人に向けて突撃銃の照準を合わせ始めた。

◆◆◆

食事を済ませ、遠野、稲葉憲悦、フラウの三人は身を潜めていた民家を出発し、市街地を歩いていた。
主な目的は、遠野とフラウのクラスメイト、憲悦の知人柏木寛子、殺し合いに乗っていない参加者の捜索である。
「たまに、風に乗ってどこかから銃声らしい物が聞こえてくる以外は、とても静かですね……」
「そうね……」
「……っ」
曲がり角を曲がった辺りで、憲悦の鼻が何かを捉える。
「どうしました? 稲葉さん、少々足が止まってるようですが……」
「何か臭うな」
「えっ、僕は屁こいたりしてませんよ!」
「私もよ!」
「ちげぇよ! そういう臭いじゃねぇよ……獣の臭いだ、俺と同じ人狼族の臭いがする」
憲悦が嗅ぎ取ったのは、彼の同族の臭い。
決して屁とかそういう臭いなどでは無い。
つまり近くに憲悦と同じ人狼種が潜んでいる事を示していた。
「どの辺りに居るのか、分かる?」
フラウが憲悦に訊く。
目と鼻で、憲悦は臭いの元を探る。
そして目を付けたのは、自分達から見て斜め右上、つまり東北方向に有る民家。
厳密にはその民家の塀の辺り。

203 :
「!」
塀の鉄柵越しに自分達に銃らしき物を向ける、灰色の人狼の姿をはっきりと確認した。
ダダダダダダダダッ!!
市街地に銃声が響いた。
「あっ……」
遠野が呻く。
目の前で、憲悦の右上腕が抉れ、フラウが血を噴き出しながら奇妙なダンスを踊った直後、仰向けに倒れたのだから。
「隠れろ!」
呆然としていた遠野を、憲悦が引っ張って、二人は曲がり角の陰に隠れた。
右上腕を銃撃で大きく抉られた憲悦が痛みに顔を歪ませる。
フラウは仰向けに倒れ、血溜りを作ってもう動かない。生きているようには見えなかった。
「フラウさん、何て事だ……」
「俺の心配もしてくれや遠野」
「だ、大丈夫ですか」
「やられちまったぜ……畜生、痛ぇ……向こうは俺らを殺る気満々みてぇだな……お前は怪我は無ぇか、遠野?」
「僕は大丈夫です……」
「どうする、逃げるか?」
傷口を押さえながら憲悦が遠野に提言する。
相手は連射可能な銃を持っている。しかしこちらの銃は遠野のKar98Kライフル、フラウのデザートイーグル、
どちらも高威力ながら単発式。
近い距離だと相手の持つ連射式の銃の方が優勢だ。
一人がやられ一人が負傷、遠野も銃の扱いには慣れていない、ここは逃げた方が良いと憲悦は遠野に言うが。
「追ってこられたら面倒です、あいつは……僕がやります」
遠野から返ってきた返事は意外な物だった。
「お前、大丈夫なのか?」
「行きますよ」
決意の表情を浮かべ、Kar98Kを携えた遠野が、反撃のタイミングを窺い始める。
「……こっちから見て東北の方向の家だ」
憲悦が相手の大まかな位置を遠野に知らせる。
逃げる事も出来る、しかし遠野はそうしなかった。
図書館にて、クラスメイトのひでに殺されかけながらも逃げおおせた後、憲悦から「覚悟が足りない」といった事を言われた。
確かに、自分は心中ではクラスメイトは愚か、誰とも戦いたくない、傷付けたくない、殺したくないと思っていた節が有った。
それは普通の、人間として当たり前の感情なのかもしれない。
だが、この殺し合いと言う状況下では、そのような考えに固執していては、
自分の命や、自分と行動を共にする仲間の事を守れないのだ。
クラスメイトの事をいくら思っていても、そのクラスメイトに殺されてしまったのでは無意味。
自分や仲間の命、そしてクラスメイトを大切に思うならば、戦う覚悟をしなければならない――憲悦はその事を言ったのだろうと、
遠野は結論付けた。尤も、本人がそこまで考えて言っていたかどうかは不明だが。

204 :
ダダダダダッ!!
「くっ……!」
様子を見ようと角から顔を出した直後に銃撃され、顔を引っ込める遠野。
幸い弾が当たる事は無かった。
そして憲悦の言う通り、東北方向の民家、その鉄柵の塀越しに銃を向ける人狼の姿を捉えた。
「狙えるか?」
「やらなきゃならないでしょう」
「頼む」
「はい」
出来るとは言っていない、いや、言えない。
自分は銃の扱い、ましてや狙撃に長けている訳では無いのだから。
だが、やるしか無い事も遠野は分かっている。
「よし……!」
意を決し、遠野が再び顔を角から少し出す。
ダダダダダダッ!!
わざと銃撃させ、銃撃が途切れたその瞬間、角から飛び出し、Kar98Kを構えた。
サイトの先に人狼の姿を捕捉し、引き金を引くまで、一秒掛かるか掛からないかと言う早さ。
ダァン!!
7.92ミリの強力な小銃弾が、Kar98Kの銃口から発砲煙と共に放たれ、空気を切り裂き、真っ直ぐに人狼へと飛んで行った。
「グウッ!!」
人狼の悲鳴が聞こえた。
仕留めるまでには至らなかったものの、人狼の左頬を銃弾が掠め肉が弾け飛ぶ重傷を負わせる事に成功する。
人狼は怯んだのか、遠野に背を向け、民家と塀の隙間から奥の方へと逃げて行った。
しばらくKar98Kを構えていた遠野だったがそれっきり人狼は姿を現さなかった。
(撃退出来たか……)
一先ず安堵する遠野。
危機が去った事を察したのか、憲悦も曲がり角から通りに出る。
撃たれた右上腕を左手で押さえている様が中々に痛々しい。
「フラウさん……」
危機を凌いだものの、二人の前には残酷な現実が残された。
ついさっきまでこの殺し合いから脱出しようと共に行動していた狐の少女は、
今や身体のあちこちに酷い穴を開けた物言わぬ屍と化していた。
以前の殺し合いにて命を落とし、何かの因果で蘇生したと言うのに、彼女は再び殺し合いにて命を落とした。

205 :
「また俺達二人だけになっちまったな……折角仲間出来たってのに、クソッ、あの野郎……」
「……」
自分達を襲い、自分を負傷させフラウを死に至らしめた人狼に対して憲悦は悪態をつき、
遠野はフラウの開いたままの目をそっと閉じさせた。

【フラウ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  25人】

【午前/D-4市街地】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]悲しみ
[装備]モーゼルKar98k(4/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:フラウさん……。
        2:稲葉さんと行動。先輩やクラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
    ※稲葉憲悦、フラウが「リピーター」である事を知りました。
    ※フラウのクラスメイトの情報を当人より得ています。
    ※春巻龍の特徴をフラウより聞きました。
    ※コーディの外見のみ記憶しました。但し正確ではありません。
【稲葉憲悦@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]右上腕に貫通銃創
[装備]自動車用緊急脱出ハンマー@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:積極的に殺し合う気は無い。寛子を探す。
        1:フラウ……。
        2:遠野と行動。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
    ※フラウが自分と同じ「リピーター」である事を知りました。
    ※遠野、フラウのクラスメイトの情報を当人達より得ています。
    ※春巻龍の特徴をフラウより聞きました。
    ※コーディの外見のみ記憶しました。但し正確ではありません。

◆◆◆

「くそっ……痛ぇ……あんの糞人間……!」
裏路地をよろよろと歩きながら、左頬に酷い傷を負った人狼コーディが悪態をつく。
やはり一気に仕留められると考えたのは甘かった。
ライフル弾が掠めた左頬は肉が弾けてさながらイチゴジャムやミートソースを塗りたくったような有様となってしまっている。
どこかで手当する必要が有る、そう思ったコーディは適当な民家の裏口を開けてその中に入った。

206 :
「あ〜もうお腹空いちゃったよ」
「!」
「やだ! ねえちょっとやだ、おじさん誰!?」
奥から現れた少年なのか大人なのか今一判断がつかない男と鉢合わせになる。
「……坊や、ちょっと助けてくれないかな?」
少年(取り敢えずそういう事にしておく)に向かって、コーディは敵意が無いように装って話しかけた。
良く見れば少年は頭と右肩に傷を負っているが包帯を巻くなど手当した形跡が見られる。
つまりここには手当出来る道具が有るとコーディは踏んだ。
「な、何?」
「おじさん、怪我しちゃってさ……何か、手当出来る道具、持ってきて欲しいんだ」
「……」
少年はしばし間を置いてから、承諾した。
「分かった! ちょっと待っててねおじさん」
「頼む……」
台所から出ていく少年を見送り、取り敢えず自分の言う事を信じたようだとコーディは思った。
(あいつに手当の道具を持ってこさせて……一通り処置出来たらその後は……)
今後の行動についてコーディが考えていた時。
「持ってきたよ」
思ったよりも早く少年が戻ってきた。
「あれ? 随分早かったな……て!?」
コーディが絶句する。
少年が持ってきたのは医療道具でも何でも無い、黒く光る大きな銃だった。
「おい、お前!?」
「じゃあ僕が手当してあげるよ。大丈夫、一瞬だよ? 死んじゃえば楽になるよ」
白い歯と歯茎が良く見える程に口元を歪ませ、大きく目を見開き笑うその様は正に悪魔そのものだった。
コーディは自分の浅はかさを呪った。
手当の事ばかり考えていてこの少年が殺し合いに乗っているかどうかを計算に入れていなかった。
「よせ、やめ――――」
ダダダダダダダダダダダッ!!
制止の声も虚しく、少年の持つFNP90の銃口から無数の5.7ミリ銃弾が放たれ、
コーディと背後の棚や壁を穿った。
左頬のみならず全身を真っ赤に染めた人狼の青年は壁にもたれ、べっとりと血の跡を作りながら崩れ落ちる。
(俺と、した事、が……油断、し、た……)
薄れゆく意識の中、コーディは後悔し続けた。

【コーディ@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター  死亡】
【残り  24人】

207 :
◆◆◆

改めて、ひでは自分の持つP90の威力に見惚れる。
自分より強そうな二足歩行の狼もあっさりR事が出来るのだから本当に凄いと思った。
(でも、びっくりしたなぁもう。ちょっとお腹空いたから、台所に何か無いかと思って来てみたら)
多少は傷の痛みも薄らいできたひでは、空腹を感じ、しかし基本支給品の食料は味気無かったので台所に何か無いか探しに来た。
その時に裏口から侵入してきたらしい、人狼の男と遭遇した。
人狼は頬に酷い傷を負っていて、手当出来る道具をひでに所望した。
ひでは快諾し、彼に処置を施した――――永遠の安息を与えてあげると言う処置を。
「あっ、この狼さんも銃持ってる〜貰っとこ〜」
人狼が持っていた突撃銃、更にデイパックを漁り突撃銃の予備マガジンとサーベルを手に入れる。
他にバールやステーキナイフも有ったが、前述の二つと比べれば見劣りするのでひでは拾わなかった。
「そろそろ行こうかな」
傷の痛みも和らぎ、新しい武器も手に入れられ、それに今の銃声で誰か来るかもしれない。
そろそろ移動する頃合だろう――ひではそう考え、出発の準備を始めた。

【午前/D-4市街地五木家】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]後頭部に打撲、背中に軽い打撲、額に傷(応急処置済、止血)、右肩に盲管銃創(応急処置済、止血)
[装備]FN P90(38/50)@現実
[所持品]基本支給品一式、FN P90の弾倉(4)、56式自動歩槍(25/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター、
     56式自動歩槍の弾倉(4)、 サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:クラスメイトと会っても容赦しない。葛城蓮(虐待おじさん)に対しては特に。
       2:そろそろ移動する。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※稲葉憲悦、柏木寛子の容姿のみ記憶しました。

208 :
投下終了です。

209 :
投下します。

210 :
68話 Tomorrow
MUR、貝町ト子、鈴木フグオの拠るD-5イベントホールは、今の所平和であった。
見張りをMURに任せ、ト子は入手した首輪を解析する。
フグオは横でト子の作業を見ていたり、どこからか持ってきた雑誌を読んだりしていた。
(ううん……これは難解だな)
機械類に強いと自負するト子でも、首輪の内部を理解するのは至難であった。
精密、かつ高度な技術と部品が使われている。
一般でも手に入る部品も多く使われてはいるが、全く出所不明の、言わばオーバーテクノロジーと言っても良い物も多い。
死者の蘇生や四次元構造のデイパック等、主催者の技術力の高さを示す物は既に数多く出てきてはいたが。
(これは……)
分解した首輪の部品達の中で、ト子はある物に注目する。
小さなマイクのような物。
首輪からの警告音を発する物とも考えられたが、ト子は別の可能性を考えた。
即ち「盗聴」。
このマイクが盗聴器で、参加者間の会話は運営側に筒抜けになっている――――その可能性は否定出来ない。
(もしそうなら、私が首輪を外そうとしている事も知られてしまっているかもしれないな……)
もっと早く気付いていればとト子は思ったが今更どうしようも無い。
とにかくこれからは首輪の事に関しては出来るだけ口に出さないよう務める他無さそうだ。
そうト子が考えていると、フグオが話し掛けてきた。
「何か分かったキャプ?」
「んーそうだなあ……」
誤魔化しながらト子は傍に置いてあったノートとボールペンを手に取って一文を書き、それをフグオに見せる。
〈フグオ、ペンとノートを出せ〉
「……??」
〈いいから、言うとおりにしてくれ〉
一体何事かとフグオは思ったが、言われた通りに自分のデイパックからノートとボールペンを取り出す。
〈これからしばらくノートに文章を書いて話そう。理由は後でせつめいする〉
要するに筆談。
小学校低学年であるフグオにも分かりやすいよう、漢字を平仮名にしたり難しい言い回しは避けたりしながら、ト子はペンを走らせた。
〈かんたんに言うとな、このくびわから、私たちの話が、しゅさいしゃ(この殺し合いをひらいている人たち)たちに、
ぜんぶ聞かれているかもしれないんだ〉
〈本当?〉
驚いた表情を浮かべるフグオ。
思わず声が出そうになったが慌てて飲み込んだ。
〈くびわの中にしかけがあって、そこから聞かれているかもしれない。
ただ、聞かれていないかもしれない、そこはちょっと、はんだんに迷っている。
でも、聞かれているかのうせいは高い。
ばれるとまずいから、これからくびわのことは、こうやって文章でかいて話ししよう〉
フグオも盗聴の可能性が有る故に筆談の必要が有る事は理解出来たようで「わかった」とノートに書いてト子に見せた。

211 :
「……ええと、MURさんは」
MURにもこの事を伝えようと、ト子はMURの元へ向かおうとした。
しかしその時、ホールの扉が開き、MURが現れた。
「MURさん! どうしたんだ?」
「見張っていたらこの人達がやって来たゾ」
そう言ってMURはホールに二人の参加者を通した。
人間の男性と、黒猫の獣人の少年。
黒猫少年の方は、ト子は見覚えが有った。
「ラト? ラトじゃないか」
「貝町さん、久しぶりだね……」
「二人共殺し合う気は無いそうだ。信じて良いんだなゾ? 野原さん」
「ああ」
「野原……あんたは、もしかして野原ひろしさんか」
「そうだ」
ラトと一緒に居た男は、見せしめで殺された赤子、野原ひまわりと第一回放送で名前を呼ばれた野原しんのすけの父、
そしてシロの飼い主である野原ひろしであった。

◆◆◆

墓場を出発し、全焼した時計塔を通り過ぎて、
イベントホールを訪れた野原ひろしとラトは、出入口付近で見張りに立っていた青年を見付け、接触した。
最初は警戒していた青年だったが、二人が殺し合いに乗っていない旨を説明すると程無く警戒を解いてくれた。
「ラト……君がラト君か? じゃあ、ト子ちゃんのクラスメイトかゾ?」
「何故それを」
「ト子ちゃんは今俺ともう一人と一緒に行動していて、ト子ちゃんからクラスメイトの話は聞いているんだゾ」
「中に貝町さんが居るんですか?」
「居るゾ。案内するゾ」
MURに連れられ二人はイベントホールの中に通される。
すると確かに小さ目のホールの中に、ラトのクラスメイト、貝町ト子ともう一人、太った小学生くらいの少年が居た。
「ラト? ラトじゃないか」
「貝町さん、久しぶりだね……」
ラトにとって、貝町ト子は以前の殺し合い及び自分の死の遠因となった存在であり彼自身もそれは察していた。
自分の姿を見た時、ト子はやや表情を曇らせていたから、彼女もその自覚は有るのだろう。
ただそれらの事についてラトはト子を問い詰める気は全く無い。
今更そのような事をしても意味は無いし、彼女のみが悪い訳でも無い事、それもラトは分かっていた故。

212 :
「MUR、俺の妻……野原みさえを見ていないか」
「いや、見ていないゾ……」
自分の妻の事をMURに尋ねるひろしだったが色好い返事は聞けなかった。
念の為、彼に同行しているト子や鈴木フグオにも聞くが同様の返答。
ここでも妻に関する手掛かりは得られずひろしは肩を落とす。
「すまない野原さん、力になれなくて」
「いや良いんだMUR、気にしないでくれ」
口ではそう言うものの、ひろしは内心焦っていた。
今も妻みさえが生きているのかどうか分からない。
放送で息子と飼い犬の死を知った時、ひろしは悲しみの余り自害を試みる程に取り乱した。
傍に居たラトの制止によって未遂に終わったものの、精神的ショックは大きく、残った家族である妻の姿を強く追い求めるようになっていた。
もし、みさえまでも居なくなってしまったら、きっと自分は今度こそ本当に命を断つだろう。
誰の制止も振り切り、妻子達の後を追う事になるだろうと、ひろしは思っていた。
その後、ト子がイベントホール内で見付けた、同じくクラスメイトの吉良邑子の死体が有る場所へラトを連れて行ったり、
ひろしがフグオの事を励ましたり、銀鏖院水晶に襲われた事をひろしとラトが三人に話したりした後、
ト子が、先程フグオにそうしたように筆談で首輪についてMUR、ひろし、ラトに説明する。
一度聞いたものの、他にやる事も無いのでフグオも再び耳を傾ける。
内容こそフグオに伝えた物とほぼ同一ではあるが難しい漢字や言葉も使っていた。
〈盗聴までしてやがるのか、運営の奴ら、どんだけ性悪なんだよ〉
憤りを文面に表すひろし。
〈まだ、あくまで可能性の段階だがな〉
〈でも、警戒しておく事に越した事は無いと思うよ〉
〈そうだよ。下手したら、運営に首輪を爆破されちゃうヤバイヤバイ……〉
〈既に気付かれているかもしれないけどな……気付かれていない事を祈るしか無いか〉
〈それで、外せそうなのか?〉
ひろしが最も重要な事項をノートに書いてト子に尋ねた。
ト子はしばし考えてから、返事を書いて見せる。
〈もう少し調べてみないと分からない〉
まだ不確定要素が多く、無駄に希望を抱かせるのは酷だと思い、あえてあっさりとした文言でト子は答えた。
他の四人も、過剰な期待は避けるべきと言う事は分かっていたので、特に何も反論しなかった。
一段落着き、ト子は引き続き首輪の解析に取り組む。
「野原さんとラト君はこれからどうするんだゾ?」
「俺はみさえを探す。しんのすけもひまわりもシロも居なくなっちまった今、俺にはあいつしか居ない。
あいつにも俺しか居ない筈だから……」
「僕は野原さんを助けてあげたい、だから野原さんと一緒に行きます」
「あ、そっかぁ……」

213 :
ひろしもラトも自分達とは一緒に行けない事をMURは悟る。
しかし彼らは彼らの目的が有るのだから、無理に引き止めるのも無粋であろう。
「おじちゃん達、行っちゃうキャプ?」
「ああ、俺の奥さんを探さなきゃいけないんだ、ごめんな」
「気を付けてね……死んじゃ駄目プリ」
心配そうな表情で、フグオはラトとひろしに言う。
「ああ、お前も死ぬなよフグオ。勿論、MURとト子ちゃんもな」
「必ずまた会いましょう」
「当たり前だよなぁ? ト子ちゃん、フグオ君」
「うん……」
「ああ、そうだな」
別れの挨拶を済ませた後、ひろしとラトはイベントホールの玄関へと向かって行った。
MUR達もひろし達も互いにこれが永遠の別れにならない事を祈る。
名残惜しそうにするMURとフグオの傍らで、ト子は首輪の解析に集中していた。

【午前/D-5イベントホール】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し、ほぼ回復)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:フグオ君が心配だゾ……。
       3:野原さんとラト君、また会えると良いんだが……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、首輪を解析中
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪(分解)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田には会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪を解析する。
       5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。

214 :
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神的ショック(大)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:……死にたくない。誰かが死ぬ所も見たくない。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。
    ※「死」に対して敏感になっています。

◆◆◆

「俺ら以外に殺し合いに反抗している奴が居るって事が分かっただけでも良かった」
「はい」
「ト子ちゃんには首……」
「しっ!」
首輪の事を言いかけたひろしの口をすかさず塞ぐラト。
(そうだ、首輪の事口にするのはマズイんだった)
ひろしは先程のト子とのやり取りを思い出し、出かかった言葉を飲み込む。
「と、ト子ちゃんやMUR、フグオとまた、生きて会えると良いな」
「そうですね、無事にまた合流出来れば」
上手く誤魔化すひろしとラト。
流石にすぐに首輪をどうこうされはしないだろうが、念には念を押すに越した事は無い。
「これからどうするか」
「人が集まりそうなのは……」
ラトが視線を向けるのは、北方向に見える市街地。
地図で言うとD-4、E-4の二つのエリアで、商店街が有る広い規模の市街地である。
物資や拠点に成り得る場所が豊富で、参加者が集まり易いと見て間違いは無さそうだ。
ひろしの妻、みさえやラトのクラスメイトが居る可能性も高い。
危険人物と出くわす可能性も同じ位高いが、危険は覚悟しなければならないだろう。

215 :
「あの市街地、でしょうか」
「街か……色々有るだろうしな、他に特にアテも無いし、行ってみるか」
ラトの意見に賛同し、ひろしは次の行き先を市街地に定めた。

【午前/D-5イベントホール玄関】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神的ショック(大)
[装備]コンバットナイフ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:みさえを探し、殺し合いを潰して生きて帰る。
       1:ラトと行動する。市街地(D-4或いはE-4)へ向かう。
[備考]※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※ラトのクラスメイトの情報を彼より得ています。
    ※表面上は平静ですが、精神的にはやや危うい状態です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:野原さんと行動。市街地(D-4或いはE-4)へ向かう。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

216 :
投下終了です。

217 :
投下します。今回は前編後編に分かれます

218 :
69話 SYOKUSYU CHUIHOU W(前編)
一人市街地を歩く野獣先輩こと田所浩二。
少し前まではKMRと太田太郎丸忠信が同行者として居たが、今はもう居ない。
「! こいつは……」
路上で息絶えている男を発見し、野獣が足を止める。
近付くと、その男は紛れも無く、自分達を襲い、KMRと太田を殺した男だった。
太田を撃った時、この男も銃弾を受けていたが、それが致命傷となったのだろうか。
ざまぁ見ろ、と言おうとして、野獣は止めた。
二人の死には、自分にも責任が有ると思っていたからだ。
「銃が……こいつのだな」
男の手元には、KMRと太田を撃つのに使った大型の自動拳銃が落ちていた。
野獣はそれを拾い、自分のデイパックに押し込む。
生き残る為に少しでも多くの武装が必要だ。
愛する遠野の生死もまだ分からない、まだ死ぬ訳にはいかない、そう考えながら野獣は男の持ち物を漁り、
予備の弾倉も手に入れる。
「ん?」
ふと、気配を感じて後ろを振り向く。
電柱の陰からこちらの様子を窺っている、少女の姿が見えた。
「ファッ!?」
「待って、私は乗ってないわ」
戦意が無い事をその少女は訴える。
「本当か? 俺も、乗ってない」
「その人は……貴方がやったの?」
「違う、俺の仲間がやった……俺は田所浩二、名簿には『野獣先輩』って書かれてるけどな。
ええと、君は?」
「私は柏木寛子」
互いに自己紹介する野獣と少女――柏木寛子。
寛子は一先ず、目の前の青年が安全そうだと判断する。
一方の野獣は。
(かわいい)
そんな事を感じていた。
野獣は同性愛者であるが、寛子はそんな彼でも思わず「可愛い」と思ってしまう程の美少女だった。
しかし、すぐに「自分には遠野が居る」と、野獣は自身を戒めた。
「田所さん?」
「いやいや何でも無い、悪い。ええと、寛子ちゃん一人なのか?」
「今はね。西川のり子って言う女の子と、レナモンって言う人が居たけど、死んだわ」
「あ……悪い事を聞いちまったな」
「ううん、大丈夫」

219 :
表情を曇らせる寛子を見て、ばつが悪そうにする野獣。
寛子もまた、自分と同じように同行者を失って一人になったのだと悟った。
「俺もだ。一緒の奴が二人居たけど、殺されちまった。この男にな……。
殺された太田って奴が、こいつを撃って……多分それで死んだんだと思う」
「そうだったの……」
「……聞いても良いかな……寛子ちゃん、どんな奴に襲われたんだ?」
少し酷だとは思ったものの、寛子に質問する野獣。
寛子を襲ったのが、もしかしたら自分のクラスメイトかもしれない、それ故に気になって尋ねた。
「病院で襲ったのは、全身に触手の生えた化物。その時レナモンが殺された。
そして、のり子を殺したのは、車の陰に隠れてたし私が反撃したらすぐ逃げてったから、
良くは姿を見てないんだけど、背の低い男で、白いシャツに黒っぽい半ズボンを穿いていたわ」
「……背の低い……白いシャツに半ズボン」
触手の怪物はともかく、背の低い男の方には、野獣は心当たりが有った。
この殺し合いに参加している自分のクラスメイトの中で、一人、それに当てはまる者が居た。
ダァン!
「ファッ!」
「きゃっ!」
銃声が響き二人の会話は中断させられる。
銃弾は二人の近くの建物の外壁に穴を空けた。
「あれぇ? おかしいね、殺し合いの最中に道路の真ん中で立ち話するなんてね」
「……その声は!」
声の方向に野獣と寛子が向くと、銃を構え、頭と肩に包帯を巻いた背の低い男――ひでの姿が有った。
そして、ついさっき野獣が心当たりとして探り当てた相手でも有った。
「ひで!」
「田所くん、そしてあの時のお姉さん」
「あの時って……その傷、あの時私とのり子襲った奴ね!?」
「そうだよ。よくも僕を撃ってくれたね? お陰で痛かったよもぉ〜」
「何言ってんのよ、先に撃ってきて、のり子を殺したのはそっちじゃない!」
勝手な言い分を述べるひでに怒りを露にする寛子。
そして憤ったのは野獣も同様だった。
「ひで! お前何でこんな殺し合いなんかに乗っちまったんだよ! クラスメイトも居るんだぞ!」
「は? 何言ってんのさ田所くん、優勝した一人しか帰れないんだよ? 乗るしか無いじゃん」
「ふざけんな!!」
声のみならずその憤怒も迫真の野獣は、怒りに任せてひでに突進しようとした。
ダァン!!

220 :
「ンアッー!(≧Д≦)」
ひでが発砲し、銃弾は野獣の腹部に入り背中から突き抜けた。
5.7ミリと小口径で貫通力に優れているが、尚且つ人体などの柔らかい物体に命中すると、
弾が横転して衝撃を物体に最大限伝えようとするように設計されたP90の銃弾は、
頑健な野獣と言えどそのダメージは大きく、腹部を押さえて野獣は蹲った。
「田所さん!」
「アーシニソ……すっげぇ痛い、はっきり分かんだね」
「クラスメイトが何? 誰も蓮の奴に虐められてる僕を助けてくれない上に、笑って見てた人間の屑の事を、
今更気にすると思ってんの? そんなんじゃ甘いよ」
「え……?」
ひでの発言に野獣は意外そうな表情を浮かべた。
確かに普段の学校生活の中、蓮はひでをぞんざいに扱っている場面が良く見られたが、
それ程性質の悪いようには、少なくとも虐められている程には思えなかったからだ。
いや、見えていなかっただけなのかもしれないが。
「僕は決めたんだ、蓮の奴も、クラスメイトも、他の奴もみんな殺して、僕だけが生きて家に帰るんだ!!」
「ひで……!」
「……っ」
かなりの剣幕で、野獣と寛子に向かって宣言するひで。
その勢いに、野獣も寛子も瞠目してしまう。
「あ……?」
しかしこの時、寛子が瞠目する理由にもう一つ別の物が加わった。
ひでの後方、建物と建物の間の細い路地から、異形が現れたのを見付けたから。
それは、身体中から触手を生やしたリカオンの少年。
(あいつ……!?)
紛れも無く、病院にて寛子やその時一緒に居たのり子、レナモンを襲い、恐らくレナモンを殺したであろう、
あの触手の怪物であった。
「どうした、寛子ちゃ……ファッ!?」
「何だよ、後ろを見て……う、うわぁ!」
野獣とひでも、リカオンの少年に気付く。
「ヴヴ……グルルル……」
リカオン少年――小崎史哉は、相変わらず知性を感じさせない虚ろな双眸を三人に向け唸り声を発していたが、
寛子が遭遇した時とは様子が異なっていた。
全体的に身体に傷を負い、腹部には大きな穴が空き、内臓が飛び出している程に損傷していた。
肉体のダメージが著しくなってきた史哉、と言うより史哉の身体を支配する寄生虫は、
損傷の少ない新たな肉体――宿主と成り得る者を探していた。
「ひい! 来るな化物!!」

221 :
さっき手に掛けた二足歩行の狼どころでは無いとんでも無い異形を前にして恐怖に駆られたひではP90を乱射した。
ダダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
「ガアアアァアアアァア!!」
無数の5.7ミリの銃弾でその身体を更に損傷させられる史哉。
肉体のダメージはいよいよ深刻になり、彼の身体を支配する寄生虫が、一刻も早く次なる宿主を確保するべく、
史哉の身体を動かす。そしてひでの身体が触手に捕らえられ、史哉の元へ引き寄せられていく。
「やだあああああ!! やだ! うわ、ああ!!」
「ひで! ぐぅ……!」
思わず叫ぶ野獣だったが、傷が痛み悶える。
ひでがリカオン少年に捕らわれたのを見て、寛子は冷酷とも言える進言を野獣に行う。
「今の内に逃げよう!」
「なっ、ひでを見捨てろって言うのかよ!?」
「あいつは私達を殺そうとしたんだよ!?」
「うっ……でも、でも」
確かに寛子の言う通り、ひでは自分達に明確な殺意を向けていた。
事実、野獣は撃たれて負傷したのだ。
故に、無理をしてまでひでを助ける義理は無い。
だがそれでも野獣は逡巡した。ひでは今まで一緒に学校生活を過ごしてきたクラスメイトには変わり無かった故。
「田所さん!」
「俺は……」
「ライダー助けて!!」
助けを求めるひでの声が聞こえる。
野獣は迷い、そして決断した。
「よし行くど〜」
「は? ……あああああああああそんなあああ!! ヤーダヤメテミステナイデミステナイデヨ!!!」
寛子の進言を受け入れ野獣は寛子と共に逃亡した。
(許せ、ひで……)
しかしやはり割り切れない部分、後ろめたさも有ったのか、野獣は心の中でひでに謝った。
尤もそんな事、残されたひでには分かる筈も無いのだが。
「ふざけんじゃねえよ!! あのステロイドハゲ!! 今度会ったら絶対殺してやるううううあああ!!!」

222 :
口汚く野獣を罵るひで。
自分が殺し合いに乗っているのが原因、自業自得なのだがそんな事はひでに分かる筈も無かった。
史哉の触手から逃れようと、ひでは史哉に向かって尚もP90を乱射した。
しかし、頭部を半分以上失い、身体中穴だらけにし、アスファルトに血や肉片が飛び散ってもまだ史哉は動きを止めない。
そしてP90の弾倉が空になる。
予備のマガジンと交換しようとしたひでだったが、身体に巻き付く触手が邪魔をし上手く行かず、
挙句の果てにP90をうっかり落としてしまい攻撃手段を失った。
「やだ! やだ! ねえ小生やだ! ネーホントムリムリムリ!!」
狂ったように泣き叫び、触手の拘束から逃れようとひでは暴れた。
だが、目の前の化物はひでを殺そうとせず、品定めするような仕草を始め、ひでを困惑させた。
「ヴ……ヴ……」
「な、何? 何だよぉ……」
しばらくして、史哉は左手の平を、ひでの顔に向けて翳した。
史哉――もとい、寄生虫は、次の宿主として、ひでを選んだのだ。
「!!?」
史哉の左手の平が裂け、飛び出した「何か」は、ひでの口をこじ開けて体内へと入っていく。
「ヴォエッ!? ヴォエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!」
不快感と嫌悪感、恐怖感を露にし、必死に「何か」を吐き出そうとするひでだったが、抵抗も虚しく、
「何か」はひでの体内奥深くへと入って行った。
「ア、ァ……」
直後にひでは気を失ってしまう。
史哉の触手による拘束が解け、ひでがアスファルトの上に倒れると同時に、史哉もまた、
その身体を路上に横たえ、そして二度と立ち上がる事は無かった。
幾人もの参加者を屠ってきた触手の怪物は、遂に力尽きたのだ。
――傍から見れば、これで触手の猛威は無くなったように見えただろうが、現実は違った。

【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター  死亡】
【残り  23人】

◆◆◆

223 :
ひで、そして触手の怪物から逃げた野獣と寛子。
「うっ……オオン」
「田所さん!」
腹の傷口を押さえ、野獣が苦しみ出す。
寛子が傷の様子を確認すると、傷口の周りは赤く染まり、かなりの出血が有る事が見て取れた。
一刻も早く適切な処置を施さなければならないのは良く見なくても分かる。
「アー逝キソ……」
「しっかり! まずいわね、手当しないと……」
必死に善後策を考える寛子。
その時だった。
「先輩!」
「え?」
「……!」
突如、青年の声が響く。
驚く二人。そして、野獣はその声に聞き覚えが有った。
声の方向に二人は視線を向ける、そこには青年と人狼の姿が有った。
青年の方は野獣が、人狼の方は寛子が、それぞれ良く知る人物。
「遠野!」
「……憲悦」
そして二人の反応は、片や歓喜、片や嫌悪と、全くの正反対であった。

【後半に続く】

224 :
前半投下終了です。後半は現在執筆中です

225 :
投下乙です
野獣先輩が野獣って略されてるのがまったくそのとおりなんだけどなんか草
ちょっとまた読んでみようかなym氏ロワ…今回の面白そう
なんとか年内投下できました、四字熟語ロワ43話です

226 :
 
 勇気凛々は待っていた。
 スナック菓子を食べながら待っていた。
 ゲームセンターと服屋の間の、細い通路に置かれたベンチに座って、
 狭所に隠れるように待つ勇気凛々のそばには、スナック菓子の袋と置手紙があった。
 置手紙は、「戻ってくるまで待っていて」。
 話だけをするつもりじゃないだろうに、わざわざそう書いてあった。
 従いたくなかった、従いたくなかったけれど……勇気凛々は、待つことにした。
 待つほうが正しいだなんて、絶対に思いたくない。
 けれどそれでも、今回だけは、
 勇気凛々は、紆余曲折と一刀両断の二人の世界を、
 彼らが二人だけで世界を書き切ってしまうことを、尊重した。
 だって彼らは、ほかならぬ勇気凛々のためにそれを選択するのだから。
 止められるわけがない。
 これを止められる奴がいたら、よっぽどの馬鹿かヒーローだ。
「……」
 スナック菓子をつまんで口に運ぶ。
 涙辛い味も通り過ぎて、今はただ乾いた味だ。
 置き手紙には、優柔不断が死んだことも書いてあった。
 いま食べているスナック菓子の袋は、優柔不断のデイパックから調達したものだという。
 開始当初に食料品を調達していたのが最終戦メンバ―の中では優柔不断だけだったのは勇気凛々も確認している。
 だから本当の事だ。
 死ぬところを見たわけでもなく、死んだと声で告げられたわけでもなく、
 何もできないまま、勇気凛々を助けてくれた青年は、スナック菓子を残して本当に死んだ。
 勇気凛々には何もできなかった。
 思えばなにもできなかった、あのときも、あのときも、あのときだって。
 むしろ迷惑をかけ、邪魔して、間違ってばかりだった。
 なんでこんな自分が生き残っているのだろうか。
 死ななかったし、Rなかったのだろうか。
 スナック菓子を口に含んで噛みながら、ずっとそればかりを考えていた。
 でもやっぱり答えを出すことも出来なくて、ただ気が遠くなるくらいに時間だけが過ぎていって、
 時計はないからどのくらいだか分からないけど、少なくとも、スナック菓子の数だけは減っていって。
 勇気凛々は最後の一つを取った。
 ――その最後のスナックが、不意に横からかすめ取られる。
「え?」
「もぐもぐ」
 驚いて横を見れば、そこには見たことのない存在がいた。
「え?」
 驚いて目を瞬かせて、やはりそこには見たことのない幼女がいた。
「もぐもぐ。ねーおねーちゃん、これおいしいね」
「だ、誰ですかあなた!」
「うん、すっごくおいしいよ。まえもどこかで食べた気がするあじ」
「ちょっ、と、話……を?」

227 :
 
 驚いて手を伸ばすと、よく出来た3D映像だとか、霊だとか、そういう可能性は霧散した。
 ぷに、とその頬には触れることができた。――生きていた。
 突然現れた第三者、第三放送の直前に現れたそれは、
 幼稚園児が切るようなかわいげなフリルのピンクの服を着た、小学生前後の黒髪の幼女で。
「だれだろうね」
「……え?」
「わたしはだれなんだろう。なんで“ずっとここにいる”んだろう。
 わたし、じゅうなんねんも、なにを“待っている”んだろう。わかんないんだよね、わたし」
「待って、いる……?」
「うん。“じぶんを無くして ゆめのなか”。ここはわたしのゆめのなか。
 わかっているのはみっつだけ。
 ひとつはわたし、どうやらスナック菓子が大好きだってこと。ふたつめは、わたしはここからでられないし、
 ここに来たひとの前にあらわれることができるのは、のこりがふたりになったときだけなんだってこと」
 そして。彼女こそが。
「それで、みっつめは」
「三つ目は――きまりごと。ここに来た人は自分を失くす。そういうルールで、きまりごと。なんだよね」
 
 この娯楽施設の管理人であり、この世界の、ルールだった。
「……紆余さん!」
「あっ、もうひとりだー。こんにちは」
「ただいま、凛々ちゃん。そして……無我夢中ちゃん」
 ゆえに。 
 ボロボロになりながら遅れてその場に現れた少年は、
 無我夢中を、ルールを真っ直ぐに見つめて、宣言する。
「いきなりで悪いけど、無我夢中ちゃん。
 僕らは、君の求めている二人じゃないんだ。だから――ここを出させてもらうよ」
 紆余曲折の声が言いきられるとともに、放送が始まった。 

 ◆

 
 マイクテストも必要ないでしょう。なんなら放送も、必要がないくらいですね。
 もう生き残りは一か所に集まって、誰が生きていて誰が死んでるのかまるわかりなんですからねえ。
 それでも仕事は仕事、事務的にまずは死者から♪
 青息吐息
 傍若無人
 切磋琢磨
 優柔不断
  
 そして、一刀両断。
 以上が今回、死亡した四字熟語です。いやあ、楽しませてもらいましたとも。
 あとは禁止エリア、これはもうただの追加情報みたいなものですね。
 C-1 C-2。
 ここが今回指定される禁止エリアです。

228 :
 
 残っている施設部分の全てとなりますから、生き残ったお二方はお早めに逃げ出してくださいね。
 さて、第三放送もこれにて終わり。
 生き残りはたった二人となりまして、もう放送の条件以下の人数しかおりません。
 おめでとうございます。もうあなたたちがスピーカー越しの私の声を聞くことはないでしょう。
 あとは最後のひとりになるまで――――
 ……え? 三人いるって? 突然もう1人、ボーナスキャラじみて現れたと?
 それはびっくりですねえ、さぷらいずですね♪ なーんてね
(舌打ち)
 
 知っているんでしょう、もう聞いたんでしょう、傍若無人から。
 紆余曲折さん、あなたの持っているその紙に――すべて書いてあるんでしょう?
 なら私がわざわざ説明することもないんじゃあないですかねぇ?
 ああまあ、それでも事務ですので説明はしますとも。
 その子は無我夢中。
 かつて誰かにこの場所に置いてけぼりにされ、それからずっと誰かを待つ少女。
 待っているうちに、誰を待っているのかも、自分が誰なのかも忘れてしまった、四字熟語。
 そう、この娯楽施設は、彼女の……彼女の、夢の中に作られた施設です。
 そして私は、彼女の夢から覚めるための出口を、とある場所に隠しました。
 たった今からそれを解禁します。
 通れるのはオヒトリサマだけですが。
 最後の希望にすがって、せいぜいサガシテクダサイナ。
 うーん棒読み。……教えるの厳禁にしたはずなのに、
 もう解かれてるんだからつまらないですよねぇ。これでラスト二人を絶望させて、
 どんなに信じあった二人だろうと殺し合いで終わらせるってのが常套手段だったんですが……。
 ま、いいですよ。消化試合を許せるくらいには、今回の実験は面白かったですし。
 データもたくさん取れて大満足、結果も上々で研究は大躍進。
 主催として参加者に、少々出し抜かれるくらいのご褒美はあげてもいいでしょう♪
 
 あ、でもひとつだけ。紆余曲折さんにはお願いです。
 “まだ教えないでくださいね”? それは私が、ちゃんと直接。内々に伝えたいので。
 もし私の最後の楽しみを奪ったら……許しませんよ?

 では、お待ちしております

 ◆

「……という、ことなんだ」
「……そうなんだー。じゃあ、おわかれだね」
「また私が話に加われない流れですかこれ?」

 ◆

 カーペット地の床。
 紆余曲折と勇気凛々が並んで歩く。
 どちらも何といったらいいのか分からないといった様子で、非常にぎくしゃくしている。
 おあずけ状態の勇気凛々については、どちらかといえばむかむかしている。
 その後ろを、しばらく無我夢中はひょこひょこと、名残惜しそうに付いてきていた。

229 :
 
 でも、娯楽施設の入り口。
 一刀両断が少し前にガラスを切り倒して侵入した中央入口まで来たところで、
 小さな少女の足は止まり、それ以上は進まなかった。
「あー。ここまでかー」
「……そうだね。君は施設から出られない。待たなきゃいけないから。
 でも僕たちは……生きるためにここから出なきゃいけない。君をまた、置いていく」
「私は話に置いてけぼりです」
「えー。せっかくひさしぶりに人に会えたんだから、あそびたかったなあー。
 前のおじさんたちはあそんでくれたのに、おにいちゃんたち、せっかちだよ」
 間の抜けた声で話す無我夢中の姿は霊体じみて消えゆく。
「き、消え……!?」
「うん、おねーちゃん。わたしはまた消えるの」
 施設から二人が出ていくことで、出現条件が満たされなくなり、またフラグが立つ前の状態に戻るのだ。
 勇気凛々が驚く横で、もう“知っていた”紆余曲折と無我夢中の反応はそう大きくは無かった。
「ごめんね、無我夢中ちゃん。いつかきっと、また来るから」
「え? こんなところにどうしてわざわざくるのー?」
 もっともな疑問を投げる無我夢中に、紆余曲折は目を逸らしながら言う。
「それが、約束(ルール)のひとつ、だからね」
「……?」
「助けてあげてくれと書かれたんだ。僕のしらないところで勝手に書かれた僕への連絡事項にさ。
 だから僕は、君の事を助けなきゃいけない……まあ、できたら、だけどね……」
「びみょうにだんていてきじゃないあたりがちょっとこわいね〜。……でも、うん。じゃあ、やくそくね!」
「うん、約束だ」

「「ゆびきりげんまん。紆余曲折は必ず、無我夢中を助ける」」

 ――嘘ついたら? ――ハリセンボン呑ます! ――魚なんですか……?
 と、小さな約束が交わされて。
 そして――本当の本当に舞台装置でしかない彼女は、
 そこで再び煙のように施設の空気に溶けて消えた。
 娯楽施設が禁止エリアになる。
 娯楽施設から、生者が消える。
 遺されたのは未熟な少年と、消えた少女よりは少し大きく、でも幼い少女。
 そしてたった3エリアの、駐車場。
 
 ◆

230 :
 
「それで」
 口を閉ざしていた鈴留めのポニーテール、勇気凛々は切り出す。
「私は何から聞けばいいんですか、紆余さん」
「――だいたいのことは、悪いけど教えられない。
 この傍若無人からの連絡事項も、見せることは今禁じられちゃった」
 紆余曲折がぺらり、と懐から紙を出す。
 勇気凛々の所に赤い目印をつけた傍若無人の特別名簿、
 その裏に書かれたクリティカルな情報は、たった今主催から共有を禁じられてしまった。
 曰く、そのほうが楽しいからというレベルのひどい理由で。
「ごめん。本当にこれに関しては、ごめんと言うしかないと思う。
 せめて今、先に言ってしまえば、凛々ちゃんへのダメージも少しは減らせると思うんだけど……」
「回りくどい言い方にしかなってないですよ、紆余さん。
 もう分かりましたから。“私がなんで傍若無人に守られてたのか。”これは言えないってことでしょう?
 私にだけ伝えてはいけないとされる情報はこれくらいだと思いますし」
「いや、その……さっきの女の子のこととかも、たぶんダメなんだよね……」
「……え? あの子と私になにか関係があるんですか?
 それこそおかしい話、ですけど……だって、確か奇々怪々は……」
「あーあー、えっと! そこを詰めすぎると怒られそうだから、ちょっと待った!」
 慌てふためいた紆余曲折に勇気凛々は閉口する。
 もう追求しない方がいい話題だと判断したのだろう。正解だ。
 紆余曲折は今のうちとばかりにまくしたてる。
「……奇々怪々は嘘は言ってない。彼女の言葉は確かにルールだった。
 でもね、ルールにはいつだって、抜け穴があるものなんだ。隙のないルールなんてない。
 ひねくれた解釈をして……自分の都合のいいように捻じ曲げることが、いくらだって出来る」
 ルールってものはそういうものなんだ、と一拍。
「その上で。僕がいま、とりあえず言えるのは、……脱出口の場所だけなんだ」
「さっきの放送で、もう解かれてると言われていたやつですか?」
「うん。まずは脱出口の場所に行こう。推理も道ながら話すし、そこまで行けば話せることも増える」
「……釈然としませんが、そう言われては返す言葉も……いえ」
 歩き出した紆余曲折を追いかけようとした勇気凛々が、足を止める。
「ひとつだけ。加えて訊いてもいいですか、紆余さん」
「答えられることなら答えるよ」
「一刀、両断さんは」
 その四字熟語を呟くと、紆余曲折が目を見開いた。
「あのひとは……どうやって逝ったんですか」
「……」
「それに……優柔不断さんのことも。何か聞いていたらでいいんです。教えてくれませんか。
 みんなに生かされた私が……生かしてくれた人がどうやって死んだかを。
 どんな言葉を最後に言ってたのか、どんな表情で逝ってしまったのかを、知らないままだなんて。
 嫌です、そんなのは。私は、私は……守られてばっかりだったけれど。
 だからこそ、私を守ってくれた人のことを、全部背負いたい。それが私の、勇気凛々(いきかた)なんです」
 胸を張って言われた紆余曲折は、伏し目がちにため息を吐く。

231 :
 
「……そうだね。僕の配慮が足りなかった。それについても、道すがら話すよ」
「はい」
「だから、行こう。もう僕は、周り道をしたくない気分なんだ」
「わかりました。で……どこに行くんですか?」
「A-3。僕の推理が正しければ、そこに脱出口はあるはずだよ」
 A-3といえば地図の左下であり、娯楽施設からもっとも遠い場所だ。
 見たところ駐車場しかないし、意識的にも立ち寄る意味がまったくないエリア。
 何かを隠すにはもってこいの場所といえるだろう。
 それでいて、残り3エリアになるまで禁止エリアにもなっていない。
 さらに言えば、傍若無人の初期位置もこのエリアだったことが、特製地図から読み取れる。
「確かに……これだけ状況証拠がそろえばもう決まりといってもいいですね」
「それだけじゃないよ。もう一つ、確定的なヒントが、この紙には書いてあった」

 曰く――“脱出口に至るチャンスは、参加者全員に存在していた”。

「これを踏まえて、すべての要素を照らし合わせれば。
 脱出口はA-3エリアにある、“あるラインの上”に間違いなくあることが分かるんだ」
「……?」
「と言っても、タクマさんから聞いてなかったら、僕も思い至らなかったんだけどね……」
 紆余曲折は言いながら、傍若無人の名簿の一点を指差す。
 顔写真付き名簿に載せられたひとつの四字熟語。
 オレンジのヘルメット風帽子を被った、チャイナ服の小柄な老人――東奔西走。
 彼の初期位置はA-2と書かれており。
 そして、そのルール能力は――“東西にしか動けない”。
 東奔西走は、“初期位置の東西にしか、自力では動くことが出来ない”。
 つまり。
 脱出口に至るチャンスが、参加者全員に存在しているのならば。
 東奔西走が“ひとりで”脱出できるような位置に脱出口が無ければ、おかしいのだ。
「きっと、外周に近い茂みの中だと僕は思う。
 普通は探さないし、どう手をつければいいのかも分からないところだから。
 どういう形で開いてるのかは分からないけど、それは実際に見てみようってことで――」
「……はい」
 いろいろあったけど。
 もう行こう。
 紆余曲折が差し出した手を、勇気凛々は握った。

【一刀両断 死亡】
【無我夢中 フラグ消去のため再退場】 

                         【残り――二名】

232 :
投下終了です。
今回は今回で情報開示の順番とか心情描写どこまで描くかとか
めちゃくちゃ迷ってたら
好みのロワが立て続けに開いたりでずいぶん遅くなってしまいました
次回44話「遊戯終了」で本編は終了…かな…!?
忙しいですがたぶん1月中にはなんとか!

233 :
投下乙です+お久しぶりです
ああ、いよいよ終盤ですね……でも一人だけ、それじゃどちらかが!?
……と言った所で自分も久々に投下します。
SYOKUSYU CHUIHOU W(後編)です

234 :
69話 SYOKUSYU CHUIHOU W(後編)
図書館での戦闘の後、虐待おじさんこと葛城蓮と、北沢樹里は、南下して商店街の有る市街地へやって来た。
仲間として一緒に行動していたガルルモンと樹里のクラスメイト、シルヴィアは図書館にて死亡した。
蓮達を襲撃し、二人を殺害せしめた人間の女性は逃走。
そして樹里は、女性に心当たりが有った。
「図書館で襲ってきたあの女、やっぱり……」
「心当たりが有るのか? 北沢」
「多分……野原みさえ、だと思う」
女性の特徴が、かつて樹里が野原しんのすけから聞かされた母親の特徴とほぼ一致していた。
「見せしめで殺された赤ん坊の母親か」
「そう、そして、私が一緒に居た野原しんのすけの母親でもある」
「何だってこの殺し合いに乗ってやがるんだ……」
「分からない……」
蓮と樹里は疑問に思う。
自分の娘を残酷な方法で目の前で殺され、息子と飼い犬も命を落としたのになぜみさえは殺し合いに乗っているのか。
放送で息子と飼い犬の死を聞いて精神に悪影響を来しそれが元で殺し合いに乗ってしまったのか、
それともそれ以前から殺し合いに乗っているのか、だとしたら目的は優勝して娘を生き返らせるつもりなのか。
実際の所は本人に直接問い質しでもしなければ分からないだろう。
「馬鹿かよおいなぁ! 自分の娘殺した奴らの言いなりになるなんてよぉ! 生きている家族の事考えねぇのかよ!」
「私に言われても」
「ああ、悪い……」
みさえへの怒りを露わにする蓮を宥める樹里だったが、彼女も同様の気持ちは有った。
その後しばらく道路を警戒しつつ歩いていた二人だったが。
「ん?」
「誰か居る……」
前方に、横たわって動かない全身から触手のような物を生やした獣人と、
蹲って苦しそうにしている少年を発見する。
「あいつはまさか……」
蓮はその少年に見覚えが有り、気付いた時には駆け出していた。
「あっ、蓮さん!」
慌てて蓮を追いかける樹里。
少年との距離が狭まるにつれ蓮は確信する。
「ひで!」
間違い無く、蓮が探していたひでだった。
「何コイツ……」
樹里はひでの傍に倒れる触手の獣人に息を呑む。
どうやらもう生きてはいないようだが、獣人が普通に存在する世界に生きる彼女でも、見た事の無い異形だった。
一方の蓮は、触手の怪物の事は一応気にはしたものの、ひでの事を優先した。

235 :
「ひで、大丈夫か!」
ひでに呼び掛ける蓮。
だが、応答は無く、代わりにゆっくりとひでは身体を起こして、蓮の方を見た。
「……ひで?」
「……アァア……アァ……」
その目は虚ろで、焦点も定まっておらず、言うなれば魂が抜けたような様子だった。
嫌な予感がして、樹里が蓮にひでから離れた方が良いと言おうとしたその時。
「がえ゛っ」
ひでの口から、棒状の何かが飛び出し、蓮の顔面を刺し貫いた。
「――――は?」
目の前で突然起きた事に、樹里は状況を即座に飲み込めず呆然とする。
棒状の何か、は、触手だった。
黒っぽい、紫っぽい、とにかくそんな色をした触手に蓮の頭部は完全に串刺しになっていて、
蓮は小刻みに痙攣し、白目を剥いて、何も喋らない。
この時点で、蓮が死んでいる事はもう明らかだった。
そして触手がひでの口の中に引っ込み、触手を引き抜かれた形になった蓮は路上に仰向けに倒れる。
灰色のアスファルトに赤い水溜まりが広がった。

【虐待おじさん@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  22人】

「……れ、蓮、さん、あ、あ??」
未だ混乱している樹里の目の前で、ひでが「変化」し始めた。
身体のあちこちから、皮膚を突き破って触手が生えていく。
無意識の内に樹里は後ずさりし、ひでと距離を取る。
本能的に恐怖を、危機を感じたのだ。
「……う゛う゛う゛う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ひでの、もはや元の彼とは異なる別の意思を宿した双眸が、樹里を睨み付けた。
「ああ……うああああああああああああああ!!!」
悲鳴を上げ、恐怖に慄きながら、樹里は逃げ出した。
抜けそうになる腰を必死に奮い立たせ、我武者羅に、ひたすらに、触手の怪物と化したひでから逃げるべく走った。
……
……

236 :
走り続け、走り続け、樹里はとある裏路地にて、
ようやくその足を止め薄汚れた建物の壁にもたれ、乱れた呼吸を整える。
「ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ……」
足が、いや、身体全体がブルブルと震えて止まらなかった。
あの触手は一体何なのか?
何故あんな物が人体から生えてきた?
傍で死んでいた獣人の少年も、似たような触手を身体から生やしていたが、関連は有るのか?
いくら考えても分からない、分かる筈も無い。
答えなど導き出せないと思い、樹里は触手の事は一旦考えるのを止める事にした。
確証が持てるのは、あの触手、引いては触手人間と化したひでは危険極まり無い存在だと言う事。
「蓮さんまで殺されちゃった……一人になっちゃったよ」
悲しげに樹里は言う。
しんのすけ、シルヴィア、ガルルモン、そして蓮。
彼女と行動を共にした者達は、尽く死に絶えてしまった。
一度過ちを犯した自分が、心を入れ替えて殺し合いからの脱出を目指そうなどとおこがましい、
とでも言わんばかりの展開だと、樹里は下らない思い込みだとは分かりつつも、そう思わずにはいられなかった。
陰鬱な表情を浮かべながら、樹里は裏路地で身体を休める。

【午前/D-4市街地裏路地】
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(精神的、肉体的共に大)
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        2:これからどうしよう……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞いています。図書館の襲撃者が野原みさえだと確信しています。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。

◆◆◆

ひでの肉体、そして頭脳は、触手の母体たる寄生虫によって完全に支配されてしまった。
最早、ひでとしての意識は皆無に等しく、ひでとしての記憶も断片的にしか残っていない、
前宿主の小崎史哉と同じく寄生虫の操り人形となってしまっていた。
「あぁ、今日も、学校、楽しかっタ、なぁ」
口から発せられるのは唸り声や、断片的なひでの記憶をなぞった支離滅裂な言葉ばかり。
「早く、帰っテ、宿題、しなキャ」
本当に帰ろうなどとは、宿題しなければいけないなどとは露程も思っていない。
全て宿主であるひでの記憶、それの残滓による物。
先に述べたように、もうひでの意識は存在しない。
あれ程殺意を向けていた虐待おじさんこと葛城連を殺害し、その屍を前にしても何ら反応を示さないのがその証拠と言える。

237 :
ひでの身体を乗っ取り、望み通り新たな宿主を得た寄生虫は、それまでと同じように獲物を捜し始めた。

【午前/D-4市街地】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]触手人間化、後頭部に打撲、背中に軽い打撲、額に傷(応急処置済、止血)、右肩に盲管銃創(応急処置済、止血)
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、FN P90(0/50)@現実、FN P90の弾倉(4)、56式自動歩槍(25/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター、
     56式自動歩槍の弾倉(4)、 サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:……殺……す……敵……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※小崎史哉の寄生虫に身体を支配されました。人間としての理性、記憶は殆ど残っていません。

◆◆◆

民家の中、居間に置かれたソファーに、腹部に包帯を巻いた野獣先輩こと田所浩二が横になっていた。
「先輩、痛みますか?」
傍に居た遠野が心配そうに野獣に訊く。
「ヘーキヘーキ、とは、いかねぇな……あ痛てて……いや〜キツイっす」
気丈に振舞おうとした野獣だったがやはり傷の痛みは誤魔化せず顔を歪める。
どうにか止血には成功したものの、銃弾で身体を貫かれたのだから無理は禁物だった。
「何か必要な事が有れば、何でも言って下さいね」
「ん? 今何でもって言ったよね? それじゃ……Hな看護してください!」
「流石にまずいですよ! 傷が開いちゃいますって」
「だろうな、しょうがねぇなぁ……」
何だかんだで、野獣と遠野は二人の時間を満喫している様子である。
そんな二人の幸せな時間を邪魔しては悪いと、右上腕に包帯を巻いた稲葉憲悦と柏木寛子は別室に移動していた。
憲悦と二人きりになるのは寛子にとっては避けたかったが、
家が小さく部屋数が限られており、また、どうせ一人で別の部屋に行ったとしても憲悦はずけずけと乗り込んでくるであろうから。
やむを得ず一緒に居る事にしている。
「あっちのお二人さんお熱いねぇ〜羨ましいわ〜」
「そう……(無関心)」
野獣と遠野を冷やかす憲悦の振りを冷ややかな視線と共に受け流す寛子。
次に憲悦が何を要求してくるか大体察せたのでさりげなく距離を取り警戒する。
程無く予想は的中した。
「俺らもぉ、アツアツになろ……」
「そぉい!」
「ガァッ!!」
抱き付こうとした憲悦の丸出しの股間に、寛子は強烈な蹴り上げを行った。
靴と靴下越しに雄のモノの感触が伝わり嫌悪感を覚える。
「〜〜〜〜〜〜っ」
「アンタのやろうとする事なんてお見通しなのよ」
「この……精子が減っちまうだろォ!」
涙目になりながら憲悦は股間を押さえて軽く跳ね男として最大級の苦しみを凌ごうとする。

238 :
「はぁはぁ、ったくつれねぇなぁ寛子ちゃんよォ。
折角再会したんだぜ? 前の殺し合いで一回会ったけどな、もっと喜べよぉ」
「……」
寛子が嫌がる理由を分からない程憲悦は愚かでは無い、全て分かっている上で今のような言動を取っているのだ。
故に性質(タチ)が悪い。寛子が憲悦を嫌悪する理由の一端である。
「まぁ、安心しろよ。ここでお前に手ェ出すと多分遠野に止められるだろうからな。あいつは正義感が強ぇ」
「理性的、ね?」
「二回も殺し合いやってりゃ、生き残るのに仲間の存在が必要だって事ぐれぇ分かる。
折角一緒に行動してる奴の不興買うような真似はまずいって事もな」
「ふぅん……」
こういう所も、自分がこの人狼を嫌う理由の一つなのだと、寛子は思う。
ただの性欲に身を任せる淫乱では無いのだ、稲葉憲悦と言う男は。
頭も切れ、必要な場面では合理的な判断も下せる。
ただの淫乱ならば、寛子が憲悦の元から逃げ出すチャンスも見出せたかもしれないが、
前述のように頭も回るため、全て先手を打たれてしまうのだ。
「おっ、何だよ何だよ〜寛子。お前、もしかして遠野に妬いてんのか〜?」
「は!? 何で私がアンタなんかの為に……馬鹿じゃないの? イミフだしイミフ」
けらけら笑いながらからかってくる憲悦に、嫌悪感剥き出しで寛子が反論するが、憲悦には効かないようだった。
「稲葉さん、柏木さん」
ここで、野獣の寝る部屋から遠野がやってくる。
内心良かったと寛子は思った。いつまでも憲悦と一緒は厳しかったからだ。
「おお遠野、愛しの彼との甘い一時は堪能出来たか?」
「えっ、あ、ええと……」
「冗談だ、で? 野獣の具合は?」
「あ、取り敢えず大丈夫、だと思います。と言っても、僕は医者じゃないのではっきりした事は言えませんが……」
「……安静が必要なのは間違い無いと思うわ」
「はい……」
胴体を銃撃され、腹部から背中にかけて貫通銃創が出来てしまっている野獣。
現在の所は容態は安定しているように見えるが、下手に動かすのは危険だと言う事は、素人目でも判断出来た。
「先輩を撃ったのはひで君だと、先輩から聞きました……」
「確か、図書館で襲われたって聞いたけど、憲悦から」
「だからあの時、殺しときゃ良かったんだよ、そうすりゃお前の先輩が撃たれる事も無かったかもしれねぇのに。
まあ、寛子から聞いたが、触手の化物にとっ捕まったらしいし多分死んだだろもう」
「……」
憲悦の言う通り、図書館でひでを撃っていれば、野獣が負傷させられる事は無かったかもしれない。
つまり、野獣が負傷したのは自分の甘さのせいでは無いのか――――遠野はそう思ってしまう。
「憲悦、もうちょっと気遣いなさいよ」
「へーいへい……」
「……遠野さんのせいじゃないよ、だから、そのー……余り気にしないで、って言うのは無理かもしれないけど……」
「ありがとうございます……」

239 :
寛子の言葉は嬉しかったものの、やはり遠野は自分を責めずにはいられなかった。
「んじゃ暫く野獣は動かせねぇな……俺らも動けねぇな」
「私は動きたい気分だけど……」
「おいおい待てって、まさか一人で行く気かよ。危ねぇだろ」
「アンタと一緒の方が危ないっての!」
「まあまあ柏木さん、その、気持ちは何となく察しますけど、稲葉さんの言う通り一人は危険ですよ」
遠野は憲悦本人から彼の寛子への扱いを聞かされていた為、寛子が憲悦から離れたがっている気持ちを察する事が出来た。
だが、憲悦が心の底から寛子の身を案じて言ったのかはともかく、彼の言う通り一人で行かせるのは危険であった。
「……分かったわよ」
渋々、寛子は了解した。
一応遠野は憲悦に寛子に無茶をするなと釘を刺したが「ワカリマシタ」という酷く棒読みの返答しか返ってこず、
遠野と寛子の心中に不安が残る結果になる。
「良かったらお二人とも先輩の居る部屋に……」
「あ、良いの! 行く行く! 行く!」
「チッ」
「チッって何だチッって! さっきワカリマシタっつったでしょ!」
結局寛子と憲悦も、野獣の居る部屋に行く事になった。
寛子と二人きりになれなくなって不満顔の憲悦と対照的に寛子は安心したように笑みを浮かべる。

【午前/D-4市街地佐藤家】
【野獣先輩@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]腹部から背中にかけて貫通銃創(処置済、今の所命に別状無し、但し安静が必要)
[装備]竹刀@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合う気は無い。殺し合いに乗っていない参加者を捜す。
        1:遠野に会えて良かった。他のクラスメイトは……。
        2:しばらく安静にする。
        3:遠野、寛子ちゃん、稲葉さんと行動。
[備考]※動画本編、バスガイドピンキーに気絶させられた直後からの参戦です。
    ※太田太郎丸忠信から彼のクラスメイトについての情報を大まかに得ています。
    ※春巻龍の死亡を確認しました。
    ※怪我については無理をすると危険です。
    ※ひでは死んだと思っています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶しました。

240 :
【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式、.38SP弾(6)
[思考・行動]基本:殺し合いをするつもりは無い。
        1:憲悦が不安。
        2:田所さん、遠野さんと行動。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。
    ※ひでは死んだと思っています。
    ※西川のり子の友人知人の情報を当人より得ています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶しました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
連投制限が怖いのでここで投下終了宣言させて頂きます。
あーあもう年末だよ(悲嘆)昔より執筆ペースが落ちてる、はっきり分かんだね

241 :
投下します。今回は短いです。

242 :
70話 窓際の夢
B-2エリア、「前本」と表札の掛かった民家に、頭に大怪我を負った金子翼は身を潜めていた。
古ぼけた和室に座布団を枕にして横になり、時折襲う頭痛に悩みながら身体を安静に保つ。
頭部に頑張って巻いた包帯には血が滲み痛々しい。
「ああ、いてて……」
先刻、銀髪の女子高生と交戦した時、手酷くやられてしまった。
手当てをして休んだお陰で大分痛みは和らいだ、気もするが、動けるようになるまではまだ掛かりそうだ。
ふと、翼は戸棚の上に置かれた時計に目をやる。
この民家にやって来てからおおよそ一時間が経過しているようだった。
「くそ、一時間ぐらい、無駄にしちゃったか……」
嘆く翼。
小鉄を優勝させる為に戦わなければならないと言うのに思うように行かないのが苛立たしかった。
怪我をして安静を余儀無くされればされる程、無駄に時間は流れていく。
今は生きているかもしれぬ小鉄が、数分後には死んでいるかもしれないのに。
ああ、情けない。何と情けない。
翼は不甲斐無い自分を呪う。
「もう少し、もう少し休んだら出発しなきゃ」
いつまでも休んでなど居られる筈が無い。
そうだ、この程度の怪我がどうした、小鉄ならこの程度の怪我で動じないだろう。
自分は戦わなければいけないんだ、尊敬して止まぬ大沢木小鉄の為に。
最早強迫観念じみた様相を呈し始めた小鉄への想いを胸に、翼は頭痛を堪え出発の準備を始める。

【午前/B-2市街地前本家】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]頭部にダメージ(出血、打撲、頭痛、目眩有、処置済)
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、牛刀包丁(調達品)、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
        1:休んでなんて居られないよ……。
        2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。
    ※原小宮巴、KBTIT、ソフィア、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。

243 :
投下終了です。

244 :
ようやく完成したので投下します。

245 :
71話 コラテラル・ダメージ
D-2エリアの工場に、銀鏖院水晶は辿り着いていた。
そしてそこで、B-2市街地にて一度対峙した三人組を再発見する。
犬狼獣人少女の原小宮巴、色黒サングラス貧弱下半身のKBTITことタクヤ、兎獣人女性のソフィア。
図らずも、三人と同じ道筋を辿ってきてしまったらしいと水晶は思う。
(気付かれてないわよね……?)
大型の何に使うのか分からない機械の陰から三人の様子を窺う水晶。
数時間前に三人を尾行していた時と似たような状況になっていた。
ただ、今度はあの時のように気付かれている様子は無い、ように見える。
どうやら誰かの死体を発見して調べているようだった。その死体の着ている服は、水晶が通う高校の男子制服に似ていたが、
水晶の居る位置からでは詳細は分からなかった。
(見付けたと言っても、迂闊には手を出せないんだけど……)
再び三人を発見したからと言って、すぐには何も出来ない。
水晶の武装は鉄パイプ、包丁、鎌だが、巴はショットガン、KBTITはサブマシンガンを持っているのだ。
正面から立ち向かっても勝目は薄い。超能力も、辺りに有効利用出来そうな物が見付からないし、身体への負担も考慮しなければならない。
(何かしてやりたいんだけどなぁ……あっ、移動する)
有効な対処法が思い付かぬ内に、三人が移動を始めたので、水晶も気付かれぬよう後を付ける。
後を付けてばかりであの三人のストーカーのようだ、と自嘲しながら。
◆◆◆
工場へとやってきた原小宮巴、KBTITことタクヤ、ソフィアの三人。
かつて機械の喧騒に包まれていたであろう工場内は今は作業員も居らず機械も静止しとても静かであった。
「おい、死体が有るぞ」
「本当だ」
「全身蜂の巣ね……気の毒に」
三人が無残に殺された少年の死体を発見する。
不細工な顔をした学生服姿の少年は、機関銃のような物で全身を穴だらけにされ殺されたようで、
空の薬莢が大量に床に散らばっていた。
「うおっ! 危ね」
「大丈夫? タクヤさん」
空薬莢を踏んで転びそうになるKBTIT、それを心配する巴。
「下半身鍛えてないからじゃないの?」
「うるせえ!」
「冗談よ。それ、その子のデイパックかしら」
ソフィアがKBTITをからかいながら、少年の物と思しきデイパックを発見し、中身を漁る。
しかし、基本支給品以外には何も入っていない。
状況からして、少年を殺害した者が持ち去ってしまったのだろうか。

246 :
「駄目、何も入ってないわ」
「そうか……しかしこいつ、死んでから随分経ってんじゃねぇか? 少なくとも、今から一時間以内とかそんなんじゃねぇと思うぞ」
「そうだねえ。銃声も聞こえなかったし、血も乾いてるみたいだし、臭いし。
つい最近殺されたのなら、殺した奴がまだ近くに居るかもしれなかったけど、その心配は無いかなあこれなら」
少年が殺されて間も無かったらば、その下手人がまだ近くに潜んでいる可能性も有ったが、
殺されてかなり時間が経っている事が少年の亡骸の様子から窺え、その危険は薄いと三人は判断する。
「んじゃあこれ以上、この人の死体には用事は無いから休める場所探そっか二人共」
「そうだな、歩き疲れちまったからな」
「うん」
不細工少年の死体に用が無くなった三人は休憩に使えそうな場所を探す。
程無くそれは見付かった。工場作業員が利用していたであろう小さな食堂。
古びた会議用の長テーブルが四つ置かれ、錆が浮き出たパイプ椅子の座席、使い込まれたシンクや冷蔵庫、電子レンジ等、
全体的に年季の入ったお世辞にも綺麗とは言い難い部屋だった。
しかし、そのような事に拘る三人では無く、パイプ椅子に腰掛け一息付く。
「あ〜疲れたな〜」
「結構歩いたよなぁ。今の所、最後に出会った奴は、町で俺らの後つけて逃げてった水晶の奴か」
「そうね、ここまで乗っている奴に襲われたりはしてないけど、それ以前に誰とも会ってないのよねー」
B-2市街地にて銀髪の少女、銀鏖院水晶による尾行を巴が看破し、彼女を問い質した所逃げられてしまった。
その水晶以降、三人は誰とも遭遇していない。
戦闘が無いのは良いが、仲間を集める事も出来無いと言うジレンマが有る。
他にも、自分達以外に生き残りが、殺し合いに抗う者がどれだけ居るのか分からない、と言う不安も有った。
「まあ、会場の真ん中らへんに有るでけぇ街にでも行きゃ、誰かと会えんだろ。
蓮の奴、まだ生きてっかな……あいつなら簡単に死なねぇとは思うけどな」
親友の心配をするKBTIT。
巴は支給品の水を口に含み、ソフィアは椅子の背もたれに体重を掛けリラックスと、三人思い思いに休息していた。
◆◆◆
死体はクラスメイトの愛餓夫だった。しかしそんな事はどうでも良い。優先すべきはあの三人の事だ。
部品が収納されたスチールラックの陰より、三人が入って行った食堂の方を見る水晶。
方法によっては一網打尽に出来るだろう、その方法が問題だったが。
(どうする?)
自分の命にも関わる事だ、しっかり考えなければならない。
正面突破は危険、超能力行使も得策では無い、ならば何か使えそうな物は無いかと辺りを見回す水晶。
「……!」
見付けた物は部品棚の中に有るナットと、壁沿いに置かれた消火器。
あれを上手く使う事が出来れば。
水晶は三人の元へ攻め入る算段を頭の中で組み立てる。
◆◆◆
「見張り立てておいた方が良いんじゃない?」

247 :
ソフィアが提案する。
「じゃあ、ソフィアさん行ってきて」
「こういうのってジャンケンとかでしょ普通」
「言いだしっぺの法則って……知ってるかな?」
「ジャンケン! ジャンケン! ジャンケン!!」
「分かったよもぉー」
折れたのかただ単にからかっていただけなのかは不明だが、
巴はソフィアの主張を聞き入れジャンケンで見張りの順番を決める事にした。
結果、ソフィア、巴、KBTITの順番で見張りを十分ごとに交代する事となった。
「チッ」
「行ってらっしゃーい」
「何か有ったらすぐ知らせろよ」
「行ってきます……」
結局最初に自分が行く事になってしまい、不満の表情を浮かべながらソフィアは食堂を出て入口付近に立ち見張りを始める。
ソフィアが見張っている位置から見えるのは、工場区画の入口、無機質な通路、ロッカー室や湯沸室へ続くと思われる幾つかの扉。
少なくとも誰かが食堂に近付けばすぐに分かる位置にソフィアは陣取っている。
「さっさと十分経たないかしら……」
小声でソフィアはぼやく。
ずっと周囲を警戒するのは精神的に疲労するのだ。
早く交代の時間になれ、ソフィアは心の中で願わずには居られない。
一方の食堂内では、巴とKBTITが後どれ位この工場に留まるか話し合っていた。
「十分ずつ交代だと、丁度30分で一巡する訳だな」
「んじゃ一時間ぐらいは居られるかな? 何も無ければだけど。
あーでも、タクヤさんクラスメイト心配だよねえ?」
何事も無ければ一時間程はこの工場に留まっていられそうだが、
クラスメイトを捜しているKBTITの事も考慮しなければならない。
「いや、気にすんな。確かに心配だけどな、だからって無茶してもしょうがねぇ」
「んーそう言うなら」
KBTITは気遣いは無用と伝える。
口で述べたようにクラスメイト達、特に親友の蓮の安否は気になるが、
一人で行動しているのならまだしも、仲間が居るのだから、無茶をして仲間を危険に晒す訳には行かない。
そうKBTITは考えたのだ。
そして巴もそれを受け入れる。
やがて最初の10分が経つ。
「そろそろ交代の時間だねぇ。んじゃ行ってくるねー」
「おう」

248 :
巴がウィンチェスターM1912を携え、ソフィアの元へ向かう。
一方のソフィアは支給品の時計を見てそろそろ交代だと安堵していた。
(あー、そろそろ交代の筈)
安心していたソフィア。
そして、巴が食堂の扉を開けて廊下に出たその時。
ガンッ
ソフィア、巴、そして食堂内のKBTITの耳に、物音が聞こえる。
工場区画の方からだ。明らかに人工的な音で、つまり、明らかに誰かが居ると言う事だ。
「……何か聞こえたよね?」
「聞こえたねぇ、誰か居るねぇ」
「……おい、今音がしたぞ?」
「うん」
「そんな、やっと交代出来ると思ったのに……」
「誰か居るのー?」
落胆するソフィアを尻目に巴は工場の方に声を掛ける。
返事は無かった。誰か居るのはほぼ確実、だと言うのに何も返答が無いのは何故か。
考えられる理由は一つ、警戒しているか、殺意が有るか、だ。
さてどうする、三人は考える。
全員で確かめに行くか? しかしそれだと全滅の恐れが有る。
かと行って一人ずつ行くのも得策とは思えない。
さあ、どうするべきか、三人は中々結論を出せずにいた。
やがてその結論は出た、が、出したのは三人では無かった。
工場区画から、銀髪の少女が通路に飛び込んでくる。
彼女の手には黒いホースの付いた赤い円筒が持たれていた。
そして三人はその少女に覚えが有ったものの、それを口に出すよりも彼らの視界が白く染まる方が早かった。
◆◆◆
水晶が考えた作戦――作戦と呼んで良い物かどうかは別にして――は以下の通り。
@工場区画内にナットを適当に投げて物音を出す。
A三人は様子を見に食堂から通路へ出てくるだろうから消火器を撒き散らし視界を奪う。
B武器を奪うなり消火器で殴るなりしてR。
何だよ、お前の立てた作戦ガバガバじゃねぇかよ(呆れ)
とにもかくにも、水晶は行動を起こした。
途中、兎のソフィアが見張りに出た事以外は特に異変は無く、ガバガバ作戦通りに事を進め、消火器を撒き散らす所までは上手く行っていた。
「うわ! 何だよオイ!? ゲホ、ゲホ!」
「ま、前が見えなっ、うあ、目が! 目が……!」
白煙の中から聞こえる狼狽の声に、しめた、作戦通りだと水晶は喜ぶ。
そしてすぐさま空になった消火器を振り回しながら白煙の中に突撃する。
自分以外に味方など居ないのだ、周りに配慮する必要は無い。
ゴン!!

249 :
「がっ」
鈍い音と共に聞こえた男の悲鳴。
ガァン!!
「……!!」
今度は女の悲鳴。巴かソフィアかどちらかは分からないが、何にしても後一人。
もう少しで私の勝ち――水晶は勝利を確信した。
ドゴッ!!
三度目の鈍い音が響く、が。
倒れたのは水晶だった。
消火器が重い音を立てて床に転がっていく。
「がああ……っ!?」
左頬を押さえて悶える水晶。歯が数本折れ口の中を切り、顔が血塗れになっていた。
何が起きたのか水晶は分からなかったが、すぐにそれを理解する所となる。
「やってくれたね〜」
「!!」
水晶の視界に映ったのは、白煙の中、ショットガンを持って仁王立ちする犬狼獣人の少女、巴の姿。
表には出していなかったが、水晶を見下ろすその双眸からははっきりと憤怒の感情が読み取れた。
「水晶さん、また会えて嬉し……くはないね。
やっぱり殺し合いに乗ってたんだねぇ? だからレジャー施設の時も街で会った時も逃げたんでしょお?
街の時看板落ちてきたけどあれ水晶さんの仕業なのかなあ? まあそれはどうでも良いや。
……ああ、殺しておけば良かったなぁ。失敗したなあ」
「……っ」
一方的に話しながら水晶ににじり寄る巴。
決して荒い口調では無かったもののはっきり分かる殺意のオーラに床に尻をついたまま後ずさる水晶。
恐らくショットガンの銃床で殴られたのであろう左頬や折れた歯の痛みに構っている場合では無く、
この場を切り抜ける方法を必死に模索する。
ほんの数十秒前まで自分が優勢だった筈なのに一転攻勢され、立場が逆転してしまった。
何か、何か方法は無いのか。
必死に考える水晶だったが。
ガスッ!
「ぎゃッ!!」
水晶の胸元に巴のつま先が勢い良く食い込む。
一切の容赦の無い強烈な蹴りを受け再び悶絶する水晶。
肋骨にヒビが入った、或いは折れてしまったのではないかと思う位の激痛と苦しみだった。

250 :
「があああああ……!!」
「でも、水晶さんがやる気になってるって事が確認出来て良かった。じゃあ、死のうか」
ニコリと笑いながら、巴は水晶に無慈悲な死の宣告を下した。
「待っ……」
水晶が言い終わらぬ内に、その胸元に散弾が撃ち込まれ、血と肉片が辺りに飛び散り、水晶は絶命した。
愚民とは違う事を証明せんと二度目の殺し合いを動いていた彼女は何ら成果を上げる事無く再びその命を落とした。
顔を撃たれなかったのは、せめてもの慈悲だったのだろうか。

【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  21人】

◆◆◆

制服に付着した消火剤を手で払いながら、巴はKBTITとソフィアの安否を確かめる。
「タクヤさーん? ソフィアさーん?」
「うっ……ぐ……ゲホゲホ……いてて……」
「あっ、タクヤさん」
KBTITは生きているようだった。
顔面に一撃食らったらしく、鼻血を出してゴーグルのレンズにもヒビが入ってしまっている。
「うわー痛そー、大丈夫?」
「何とかな……水晶の奴は」
「そこに転がってるでしょ。殺したよ。もう乗ってるのは確実だったし」
「ソフィアは?」
「ソフィアさーん」
巴は倒れているソフィアに声を掛ける。だが。返事は無くピクリとも動かない上、頭から大量の血が流れ出し、
床に赤い水溜まりが広がっていた。
それを見た時、二人は最悪の事態を予想した。
それでも念の為に二人はソフィアの元に近付き確認する。
「希望を持って」では無く「念の為」な辺り二人のソフィアに対して感じている存在価値が知れる。
結局の所、ソフィアは息絶えていた。
「あーあ、死んじゃった」
「悲しいなぁ……」
「まぁ仕方無いか、冥福を祈るとして……休憩は出来たし、先に進もうか、タクヤさん」
「そうだな」
あっさりと切り替え、巴とKBTITは工場の出口へと向かう。

251 :
――いくら何でも、扱い悪くない……?

どこからか聞き覚えの有る声が聞こえたような気がして二人は振り返ったが、
そこにはソフィアと水晶の死体が横たわるのみだった。

【ソフィア@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター  死亡】
【残り  20人】

【午前/D-2工場】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(2/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。
        2:工場を出て南の市街地へ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴と行動。工場を出て南の市街地へ向かう。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。

252 :
久々に投下します。

253 :
72話 欲しがってた物はここで見つかりますか?
遠方から、銃声、悲鳴、怒号が時折風に乗って聞こえる。
殺し合いが始まってから早10時間近くが経とうとしていた。
狼獣人少年ノーチラスと、猫獣人少女君塚沙也は、今に至るまでどうにか生き存えていた。
特に怪我も無く、健康状態も良好なのは幸運だっただろう。
「疲れるよねぇ」
「何がだ?」
「ずっと気を張ってなきゃいけないってのはさ」
「ああ……」
沙也が漏らした言葉に同意するノーチラス。
大好きな性行為を我慢して絶えず警戒を怠らないようにしているのは、沙也にとっては大きな負担だろうと彼は思う。
「くそエッチしてー」
「今は我慢な」
「はぁ……あれ」
「どうした」
「誰か居るよ」
「……!」
ノーチラスと沙也は前方およそ50、60メートル程先に、人間の女性の姿を認める。
右手には拳銃と思しき物を持っているのが確認出来た。
そして女性もこちらに視線を向け、女性も二人の事を認識した事が窺える。
直後、女性は無言で持っていた拳銃を二人に向けて構え、発泡してきた。
ダン! ダン!
「うわっ!?」
「いい!?」
驚くノーチラスと沙也。
どうやら、女性は殺し合いに乗っているらしかった。
急いですぐ近くの細い路地に逃げ込む二人。
「くそっ、乗っている奴かよ!」
「危なっ……どうしよ」
「無理に戦う事は無い、逃げよう」
路地の奥へ逃れようとする二人だったが、金属製の扉が立ちはだかる。
沙也がノブに手を掛けるが、無情にも施錠されていて開かない。
「駄目、開かない。鍵が掛かってるみたい」
「何だって!」
蹴破ろうとも考えたノーチラスだったが、扉はかなり重厚な作りのようで、蹴破れそうには見えずやめた。
逃げ込んだつもりが自分達から袋小路に入り込む結果となってしまった。
足音が通りの方から近付いてくる。女性は間違い無く自分達を追撃してきている。
左右は窓も無い壁で、残された道は女性と交戦する他無かった。

254 :
「俺に任せろ」
銃を持った相手には銃で対抗する、と、ノーチラスが迎撃に出る。
沙也は心配そうな面持ちで行く末を見守る事にした。
ここはノーチラスを信じるしか無かった。
深呼吸をした後、ノーチラスは路地から飛び出し、村田銃を構え引き金を引いた。
ドォン!!
女性は怯んだ、が、当たった様子は無く、すぐさまノーチラスに向け二発発砲した。
すぐに路地に身体を引っ込め銃撃を回避するノーチラス。
(真っ直ぐ狙ったつもりだったんだが……やっぱり上手く行かないか)
心の中で当てられなかった事を悔やみつつ、ノーチラスは村田銃のボルトを引いて空薬莢を掻き出す。
発射によって空薬莢は熱を帯びていたが気にしてはいられない。
上着のポケットに入れておいた予備弾を取り出し、薬室に押し込んでボルトを押し込む。
このように十八年式村田銃は、傍から見ても次弾装填には手間が掛かる銃である。
ましてや銃に不慣れなノーチラスなら尚更。
とにかく次弾を込めたノーチラスは再び路地から飛び出して村田銃を構え発砲した。
ドォン!!
しかしやはり当たらず、またしても反撃の発砲を受ける。
ヒュンッ
「……っ!」
今度もどうにか避けるが、ノーチラスの耳元を弾が掠めたようで不気味な風切り音を聞き、
ノーチラスは背筋に悪寒が走るのを感じた。
単発でしか撃てない旧式ボルトアクションライフルと、連射可能で取り回しも良い拳銃では、後者が優勢だ。
(このままじゃまずい……)
焦りの色を顔に滲ませるノーチラス。
沙也は黙って見守っていたが、その表情には不安が見て取れた。
女性と二人の距離は縮まる一方、次で決めなければいよいよ危うい、ノーチラスはそう考えた。
「今度こそ!」
三度目の正直――ノーチラスが三度の発砲を行おうとした。
その時。
「止まって!」
突如、少女の声が響き、ノーチラスは動きを止めた。
あの女性の物にしては若すぎるし、ましてや沙也の声でも無い。

255 :
「誰?」
「……あの声、まさか」
ノーチラスは少女の声に聞き覚えが有った。
通っている学校の生徒会に彼は所属しているが、そこで良く聞いた声。
恐る恐る路地から声のした方向を確認するノーチラス。
そこには女性の方に拳銃らしき物を構える、青い猫獣人の少女の姿が有った。
「サーシャ!」
その猫少女の名前を、ノーチラスは呼んだ。
◆◆◆
テトを看取った後、悲しみをどうにか乗り越え、サーシャと大沢木小鉄の二人は、
それぞれの知人や殺し合いに乗っていない参加者を捜すべく市街地を歩いていた。
テトが持っていた(元々は小鉄の支給品でテトに譲った物だったが)小型自動拳銃ローバーR9とその予備弾倉は、
サーシャが持つ事となった。彼女の支給品は武器になるような物では無かった。
道中、銃声が聞こえ、二人が駆け付けると、人間の女性と狼獣人の少年が銃撃戦を繰り広げていた。
狼少年は路地から反撃するも、女性に押されている様子である。
「うお、撃ち合いしてやがる。晴郎にーちゃんに見せて貰った映画みてぇだ」
「映画だったら良いんだけどね……あれ、ノーチラス?」
狼の少年をサーシャは知っている。
クラスメイトのノーチラスに相違無かった。
撃ち合いをしていると言う事はどちらかが、或いは両方が殺し合いに乗っているか、誤解によるトラブルか、はたまた別の理由か。
その理由などサーシャには分からなかったがとにかく銃撃戦を止めなければと考える。
「小鉄君、隠れてて。止めに行く」
「マジかよ、気を付けろよ……」
小鉄を近くに停車された車の陰に隠れさせ、サーシャはローバーR9を持って通りに躍り出た。
「止まって!」
女性に向けてローバーR9を構えて大声で叫ぶ。女性は動きを止めサーシャの方を見る。
「サーシャ!」
路地のノーチラスもサーシャに気付き名前を呼んできた。
ちらりとノーチラスを見て笑顔を浮かべ、すぐに女性の方へ向き直るサーシャ。
「私はサーシャと言います、貴方は?」
「……野原みさえ」
「野原さん、ですね?」
名前を聞いてサーシャは思い出す。
彼女は確か、開催式の時に殺された赤子の母親だと。
放送では息子と飼い犬の名前も呼ばれていた、そんな彼女が、殺し合いに乗っているのだろうか、とサーシャは思う。
「貴方は、殺し合いに乗っているんですか?」

256 :
野原みさえを問い質すサーシャ。
ノーチラスに対しその質問をしなかったのは彼は乗っていないだろうと言うある種の直感のような物が有った為。
ただの思い込みとも言うのだが。
「……」
みさえは返事をしなかった。
ダァン!
代わりに、拳銃をサーシャに向け発砲した。
「……!」
幸い、サーシャに弾は当たらなかったが、この行動を以てサーシャはみさえが殺し合いに乗っていると判断する。
みさえの銃は弾切れを起こしたらしく、急いで弾倉を交換しようとしている。
この隙を逃す手は無い――サーシャはローバーR9を構え直し、引き金を引いた。
タァン! タァン! タァン!
三発の銃声が通りに響く。
「きゃあっ!?」
みさえが悲鳴を上げてよろめく。
右上腕を押さえていいる、どうやら弾が命中したようだ。
「く、くそぉ!」
悪態をついてみさえは逃げて行った。
ひとまず、銃撃戦は終わりを告げる。
「……もう大丈夫、かな。小鉄君、出てきて良いよ」
「ふぅ、危なかったぞサーシャねーちゃん……弾が当たらなくて良かったな」
危険な行動に出たサーシャに呆れの言葉をかける小鉄。
サーシャはそれを聞いて少しばつの悪そうな顔をした後、ノーチラスの元へ駆け寄る。
そして彼に声を掛けようと思った時、動きが止まった。
ノーチラスの背後に居た、猫獣人の少女の姿が、一瞬テトのように見えた為だ。
小鉄も似たような反応をする。
「どうした?」
「テト?」
「テトのねーちゃん……!?」
「え……私? いやいや違うよ」
「……ああ、ごめんなさい、に、似てた物だから」
「なわけねーよな……」
「……ノーチラスと最初に会った時思い出すわぁ。私、そんなにそのテトって子と似てる?
あ、ちなみに私は君塚沙也って言うの」
少しうんざりした様子で、君塚沙也と名乗った猫少女は言う。
容姿のみならず声も似ているとサーシャと小鉄は思ったが、
これ以上は沙也の機嫌を損ねるだけであろうなので口には出さなかった。

257 :
「一応聞くけど、ノーチラスと、君塚さん? は、殺し合い乗ってないよね?」
「乗ってない」
「同じく」
「分かった……」
「テトに会ったのか?」
サーシャと小鉄の様子からそう考えたノーチラスは二人に尋ねる。
「……うん」
「ちょっと前まで一緒に居たけど……死んだ。殺されちまった」
「! ……そうか……ここで立ち話するのも危ないな、どこかに隠れよう」
色々聞きたい事は有ったが、外で立ちっ放しで話をするのは目立って危険である。
ノーチラス、沙也、サーシャ、小鉄の四人は近くのうどん屋の建物へと入って行った。

【昼/E-4市街地】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、ジュースやお菓子(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。フグオ、金子先生、春巻を捜す。
       1:サーシャのねーちゃんと行動。
       2:このノーチラスってサーシャねーちゃんのクラスメイトか。
       3:君塚って人テトのねーちゃんそっくりだな……。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※テトやサーシャが別世界の人間だと言う事を何となくは分かったようです。
    ※小崎史哉の外見を記憶しました。また、彼の上着の名札を目撃した事により名前も把握しています(但し読み方までは分かっていない)。
    ※野原みさえの容姿、名前を把握し、彼女を危険人物だと判断しました。
【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ローバーR9(3/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)、???(武器になる物では無い)
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:小鉄君と行動。
        2:ノーチラス、君塚さんと情報交換。
        3:君塚さん、テトに似てるなぁ……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※入浴し、着替えました。
    ※テトから「以前の殺し合い」の真相を聞きました。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶しました。
    ※野原みさえの容姿、名前を把握し、彼女を危険人物だと判断しました。

258 :
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラスと行動。サーシャ、大沢木小鉄の二人から話を聞く。
        2:しばらくは市街地を回る。
        3:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
    ※いつ頃からかノーチラスを呼び捨てにしています。
    ※野原みさえの容姿、名前を把握し、彼女を危険人物だと判断しました。
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(0/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(8)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也と行動。サーシャ、大沢木小鉄の二人から話を聞く。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
        3:しばらくは市街地を回る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターであり事を本人から聞いています。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶、彼を危険人物と判断しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて土井津仁の死体(名前未確認)を発見しています。
    ※野原みさえの容姿、名前を把握し、彼女を危険人物だと判断しました。

◆◆◆

とある、シャッターの降りた古い店舗、そのシャッターにもたれて野原みさえは小休止していた。
銃撃を受けた右上腕がズキズキと痛み、押さえる左手の指の間から赤い液体が滲み出る。
通りで出くわした狼と猫の頭をした少年少女を襲ったが、別に現れた猫の少女に阻まれた上、
持っている銃の弾切れと、相手の銃撃で負傷させられた事により形勢不利と見て退却した。
図書館での戦闘はみさえの勝利だったが、今回はそう上手くは行かなかった様子。
「いったぁい……」
苦痛に顔を歪めるみさえ。
今まで、家族と共に幾度も大冒険を繰り広げ、オカマ魔女の蹴りを受けたり、
国連特殊機関のエージェントの振り払いで壁に叩き付けられたり、
謎の追跡集団のパンチを顔面に受けたりと痛い目を見てきた覚えは有れど、銃撃をまともに受けたのは初めてだった。
学校にて殺害した青年にも撃たれたがその時は掠めた程度、しかし今回は見事に腕に穴が空いた。
恐らく今は命に関わりはしないだろうが、出血は少なくなく、痛む。
弾丸は貫通せずに腕の中に残ってしまっているらしい。
本来なら病院に行って適切な治療をしなければならないレベルの傷。
今後の行動に支障が出るであろう事はみさえにも容易に予想は出来た。

259 :
「……駄目、止まってなんか居られない」
予想は出来たが、だからと言って、休んで居られるものか、と、みさえは自分を奮い立たせた。
優勝して、家族一緒にまた暮らす。
自分は優勝しなければならない、怪我したからと言って立ち止まる訳には行かぬ。
「頑張れ……頑張るのよ、私」
自分に言い聞かせるが如く、何度も何度もみさえは同じ言葉を繰り返す。
彼女の歩んだ後には血が点々と続いていた。

【昼/E-4市街地】
【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神に異常、左肩に擦過銃創、全身にダメージ、右上腕に盲管銃創
[装備]デトニクス スコアマスター(0/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、スコアマスターの弾倉(3)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、モンキーレンチ(調達品)
[思考・行動]基本:優勝してひまわりを生き返らせる。
        1:他参加者を捜し出してR。
        2:しんのすけ、ひろし、シロはひまわりと一緒に生き返らせる。
[備考]※幾分落ち着いたようですが正常な思考は出来ません。
    ※ソフィア、呂車、虐待おじさん、北沢樹里の容姿のみ記憶しました。
    ※第一放送を聞き逃しました。しんのすけ、シロの死を知りません。
    ※ノーチラス達から離れた場所に居ます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。連投規制こわいのでここで宣言

260 :
投下します。

261 :
73話 SCANNER
貝町ト子が首輪の解析を始めてから、およそ四時間程が経過した。
ト子の目の前、机の上には首輪の部品達が広がっている。
「……」
頬杖を突いて考え込むト子。
四時間程かけてどうにか首輪の内部構造はおおよそ理解する事が出来た。
しかし、それ故に、自力での首輪解除は非常に難しい事も理解出来てしまう。
無理矢理外そうとすれば首輪は起爆する、どのようにしてそれをさせずに安全に首輪を外すか。
その方法を考えなければならない。
「むぅぅ……」
ト子は思わず唸り声を発する。
解除法が分かれば、自分やMUR、フグオのみならず、先刻会ったラトや野原ひろしのような、
殺し合いに反抗している他の生存者達の首輪も外して運営に反乱を起こす事も可能になる筈。
それだけに自分の責務は非常に重い物だと、ト子は思っていた。
今更「やっぱり無理だった」などと言う結果には出来ない。
「ト子ちゃん、少し休んだらどうだゾ?」
「MURさん」
ト子が疲労の色を顔に滲ませていると見たMURが心配して声を掛ける。
「ああ、そうだな……」
そう返事しつつ、ト子は手元のノートに鉛筆を走らせた。
金色の文字で「HB」とだけ印刷された緑色の軸に、銀色の金具、白いぐにゃりとした消しゴムの付いた、
恐らく100円均一ショップで12本入り100円で売られている中国製と思われる、いかにも安物と言う感じの鉛筆は、
これまた安っぽい作りのノートの上にざりざりと音を立ててト子の言葉の代わりとなる文章を綴る。
〈首輪の構造は大体分かったが、解除方法を探すのは骨が折れそうだ〉
ト子の首輪への所見を読み、MURもノートに筆記する。
〈分かった。でも、ト子ちゃん、あまり思い詰めないで欲しい〉
「……?」
書かれた文章を見て、ト子は意外な表情を浮かべMURの顔を見た。
MURやフグオに自分が気負っている事を打ち明けた覚えは無いのだが、どうやらMURにはお見通しだったらしい。
MURはノートに続けて書く。
〈もし無理だったとしても別の方法を考えれば良いゾ。ト子ちゃん一人に背負わせる真似はしない〉
それを読んで、ト子はふふっ、と微笑み「ありがとう」と返事を書く。
どことなく池沼(失礼だが)な印象を受けるMURだが、とても優しく、思いやりの有る人間の鑑だとト子は感じる。
(とは言っても、首輪が外せなかったら恐らく万事休すなんだが)
と言う突っ込みも心の中で入れはしたものの、それでもMURの気遣いには痛み入った。
「少し休むよ」
「そうした方が良いゾ」
ト子は机の上の工具類や首輪の部品達に布を被せ、少し休憩する事にした。

262 :
「そう言えばフグオは?」
「控え室で寝てるゾ」

……
……

控え室、畳敷きになっている所で、鈴木フグオは横になり眠っていた。
死と隣り合わせの殺し合いに巻き込まれ、死を目の前でまざまざと見せ付けられ、友達二人が死んだと聞かされ、
彼の精神は疲れ切り、いつしか睡魔が襲い、眠ってしまったのである。
フグオは夢を見ていた。
小鉄と、仁と、のり子と公園で遊んでいた。
でも、気付けば三人とも居なくなった。
広い公園に、フグオただ一人が取り残される。
いくら大声で三人を呼んでも、返事は返ってこず、姿も見付からない。
一人ぼっち。
一人ぼっち。
一人ぼっち。
フグオは、涙を流した。
夢の中でも、そして現でも。

【昼/D-5イベントホール】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し、ほぼ回復)
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:フグオ君が心配だゾ……。
       3:野原さんとラト君、また会えると良いんだが……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。

263 :
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]トンファーバトン@現実
[所持品]基本支給品一式、工具箱(調達品)、ケルベロモンの首輪(分解)
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。少し休もう。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田には会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪を解析する。
       5:私が死んだら……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。
    ※首輪の内部構造をほぼ理解しましたが解除方法はまだ模索中です。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]精神的ショック(大)、睡眠中
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:(睡眠中)
       2:……死にたくない。誰かが死ぬ所も見たくない。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※銀鏖院水晶が危険人物である事を野原ひろしとラトから聞いています。
    ※「死」に対して敏感になっています。
    ※イベントホール内の控え室で寝ています。

264 :
投下終了です。
劇中の鉛筆はキャン・ドゥとかで手に入るのをモデルにしてます

265 :
投下します。

266 :
74話 虚ろな魂
どうにか動けるまでに回復した金子翼は、隠れていた民家を出発し東へと進んだ。
途中、ガソリンスタンドが有った為立ち寄るが、多少争った形跡が有る以外は何も無かった。
しかし、その次に立ち寄った工場では、三人の死体を発見する。
中高生ぐらいの少年は全身穴だらけ、同じく中高生ぐらいの銀髪の少女は腹部に大きな穴が空き、
兎の頭の女性は頭から血を流し、それぞれ死んでいた。
消火剤をぶちまけた跡も有る。
「あれ、この人と、この人は」
少年以外の二人には翼は覚えが有った。
銀髪の少女は西の市街地にて交戦し、重傷を負わされた。
兎の女性は同じく西の市街地にて、レジャー施設の時の二人組と一緒に居た女性に違い無い。
他の二人の姿は無い。この銀髪の女性もしくは少年と交戦した結果、兎の女性が死んだのか、
それとも別の理由が有るのかは分からなかったが、とにかくここで戦闘が有った事は確かのようだ。
ただ、少年は他の二人に比べ死んでからかなり時間が経っているように見えたので、
少年と銀髪少女、兎女性の死は関係性は薄いのではとも思う。
「何か持ってないかな」
死体となった三人のそれぞれの荷物を漁る翼。
三人の死の経緯について考えるより自分の武装を強化する事の方が先決。
しかし、少年は何も持っておらず、兎女性は警棒、銀髪少女は鉄パイプ、文化包丁、鎌と、今自身が持っている近接武器ばかりが見付かる。
「一応、持っていこうか……」
近接武器ばかり増えても仕方無いのだが、それでも無いよりはましだと、翼は警棒、鉄パイプ、文化包丁、鎌を回収する。
飛び道具、銃やボウガン(使いこなせるかどうかは別として)が欲しいと思う翼であった。
その後、工場を後にして翼は南下し、今度は図書館へと立ち寄る。
そこは酷く荒らされていた。
読書スペースは銃痕だらけで、破れた本の破片が散らばり、椅子も引っ繰り返り、ドミノ倒しのように本棚が倒れる有様。
司書の者が見れば頭を抱えるような光景。
倒れた本棚の下には灰色の竜のような生物が下敷きとなり、首から血を流して死んでいた。
「!」
奥の方から話し声が聞こえる。
慎重に、翼は「勉強室」と言うプレートが貼られた通路の入口を覗き込む。
何やら大きな縞模様の有る犬の死体を調べる、あの獣人の少女と、色黒の男の姿が有った。
(あれは確か……)
翼は二人を知っていた。
レジャー施設にて一瞬だけ鉢合わせた、あの二人に間違い無かった。
衣服が少し白く汚れているのは、消火剤と思われる。
同行者の一人を失っている筈だが特にそれを悲しんでいる様子は無いようだ。いやそのような事はどうでも良いと、翼は思案する。

267 :
(あの二人か……ちょっと面倒だな……)
レジャー施設で鉢合わせたあの後、二人は自分が殺した少年の死体を見つけたであろう。
状況からして自分が犯人だと見ている可能性、殺し合いに乗っていると見ている可能性は高い。
遭遇すれば間違い無く面倒な事になる。
翼は無事な本棚の陰に隠れやり過ごす事にした。
◆◆◆
工場にてソフィアを喪った悲しみを特に引きずる事も無く、巴とKBTITこと拓也は南下し市街地を目指していた。
途中、図書館が有った為、立ち寄ってみると、そこは惨憺たる有様だった。
あちこち銃痕だらけ、破れた本が散乱し、本棚がドミノ倒しの如く倒れ、
更には死体が三つも有り死臭が漂うと言うかなりの濃密空間となっていた。
「うわ、くっさ。この犬、オシッコとウンチ漏らしてんじゃん。汚ねー」
「首絞められて殺されたみてぇだな……こんなデカい犬絞めRなんてどんな奴だ?
しかし、レジャー施設ん時の奴以外にもデカい犬居たんだな」
「そっちに転がってる猫耳っ子の死体はっと……あれ、この子が着てる制服、水晶さんと同じ奴じゃん」
「ああ本当だな」
白髪の猫耳尻尾の少女が着ている制服が、工場にてソフィアを殺しKBTITを負傷させ、
己が返り討ちにした銀鏖院水晶が着ていた物と同一である事に気付く巴。
同級生、クラスメイトなのかもしれない。
「まー別に、どうでも良いんだけどね」
尤も、この少女と水晶の関係など、巴もKBTITも興味は無かったのだが。
「……」
何の気無しに、読書スペースの方へ続く入口の方へと視線を移す巴。
特に何も無いように見えた。
「どうした?」
「んー、何でも……もうここには何も無いみたいだし、そろそろ出ようか」
「分かった」
巴とKBTITは図書館から出るべく玄関へと向かう。
勉強室が並ぶ区画から読書スペースを経て、受付を抜けて玄関を潜るまで、何事も無かった。
(んー、何も無かったなぁ)
水晶の時のように、また誰かに尾行されているのではと思ったが、杞憂だったかと巴は結論付けた。
もし、もっと注意深くなっていれば、また、図書館内に死体が無く死臭が漂っていなければ、
彼女はレジャー施設にて一度会った、中年顔の少年を容易く発見出来たであろう。
結果的に何も起きなかったのが幸いであったが。

268 :
【昼/D-3図書館周辺】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(2/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。
        2:工場を出て南の市街地へ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
    ※金子翼が近くに居た事には気付いていません。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴と行動。工場を出て南の市街地へ向かう。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
    ※金子翼が近くに居た事には気付いていません。

◆◆◆

269 :
上手く隠れてやり過ごせたようだと翼は胸を撫で下ろす。
あの二人はどちらも銃を持っており、まともにやり合えば翼に勝ち目はまず無かったであろう。
頭の傷からの血の臭いを獣人少女に嗅ぎ付けられるのではとも危惧したが、
図書館内には既に有った三つの死体からの血や排泄物の臭いが漂っておりそれが幸いし、結局二人は玄関へと向かって行った。
二人が居なくなってしばらくして、翼は奥の大きな犬と猫耳尻尾の少女、二人の死体の元に近寄る。
犬は成人男性よりも大きく、白い毛皮に縞模様が有り、
絞殺されたようで充血した目は白目を剥いて、泡を吹き失禁、脱糞していると言う、かなり凄惨な死に様であった。
一方の猫耳尻尾の少女(念の為確認したがコスプレの類では無いようだ)は犬と比べれば綺麗な様子で、
胸を撃たれて死んだようだった。
(……そういえば、もう10時間ぐらい経つのか)
このバトルロワイアルが始まっておよそ10時間。
最初の6時間で19人が死に、第一放送から4時間程経った今、新たな死者は何人居るのか。
工場、図書館でそれぞれ三人ずつ、計六人の死体を見付けたが、
第一放送より前に死んだのか、それとも後に死んだのかは判断が付けられない。
だが、恐らく相当数の新たな脱落者が出ているであろう事は翼にも推測出来た。
「……っ」
一瞬、血溜りの中に倒れる小鉄の姿を想像してしまう。
「駄目だ、駄目だ……そんな事考えたら」
頭をぶんぶん横に振って、嫌な想像を振り払う翼。
その後、例によって犬と猫耳少女のデイパックを漁るも、収穫は得られず。
先に出た二人に気を付けつつ、翼もまた図書館を後にした。

【昼/D-3図書館周辺】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]頭部にダメージ(出血、打撲、頭痛、目眩有、処置済)
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、牛刀包丁(調達品)、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族 、警棒、鉄パイプ、文化包丁、鎌
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
        1:次の行き先は……。
        2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。
    ※原小宮巴、KBTIT、ソフィア、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
    ※原小宮巴、KBTITからは離れています。

270 :
投下終了です。

271 :
久々になります。投下します

272 :
「よっしゃきたぜーっ! かぁーっ! これだからやめらんねーんだよなぁーっ!」
ワンコイン1プレイ、もしくは6プレイのクレーンゲームは、私がプレイするゲームの中では得意分野の部類に入る。
オードソックスなクレーンのタイプ、はさみで糸を切るタイプ、へらですくうタイプなど、これまで様々なクレーンゲームをしてきた。
暇つぶしでクレーンゲームを一回だけプレイして、失敗したらすぐ帰る人とは違って、私は景品を入手する為には金も時間も惜しまず、入手できるまで粘る人だった。
例えば、情報原人でなければ大体の人が知っているであろう、メジャーな作品で人気のキャラのぬいぐるみ。
例えば、一部の人間がこぞって欲しがりそうな、深夜アニメとかゲームに登場するキャラクターの抱き枕とかクッション。
例えば、メジャーマイナー関係なく製作され、鑑賞用にしてコレクションとなりえるフィギュア。
例えば、それを景品にする意味はあるのかと声を大にして言いたい、通常の倍の大きさの袋のスナック菓子。
例えば、新品で買うならば諭吉さんを出さなければならない、携帯ゲーム機と据え置き機。
お陰でクレーンゲームの技術は上達していき、クレーンゲームで入手できる景品は殆どゲットしている。
入手した景品は私の趣味に合わないものが大半を占めていて、景品の末路は基本的に売って小金になるのが常だ。
そして私は稼いだ小金で、またクレーンゲームをプレイする。
どうして私は、クレーンゲームをプレイしているのだろう。
目当ての物は無いというのに、やる理由は無いじゃないか。
何を隠そう、私も暇つぶしでクレーンゲームを1プレイだけしてさっさと帰ろうと考えていた人間だった。
初めは取れない前提でやったので、多少の位置は考えてボタンを操作したものの、無理だろうなと思いつつ、クレーンが物を掴む様子をただじっと見ていた。
ところが私の予想に反して、クレーンは物をガッチリと掴んで離さずに、穴まで落とすことなく運んでいき、そして放した。
初めはポカーンとしていたものだが、状況を理解し始めた私の心に込み上げてくる感情は、驚愕でも困惑でもない、喜びであった。
人間とは実に単純な生き物で、私は景品を落とした時の、あの喜びの感情が忘れられていない。
だから未だに私はクレーンゲームをし続けている。
景品を落とした喜びを味わう為に、私はクレーンゲームをし続けている。
「くぅーっ! いいねぇいいねぇ、最高だねぇ! これゃあ売れるブツだぜ! ナイスあっし!」
先ほど入手したのは、私の記憶している限りでは少数しか生産されておらず、かなりのプレミアがつくフィギュアだったはず。
ネットオークションに出せばマニアがこぞって金を出すし、買い取りを実施している店に出せば、かなりの高値で買い取ってくれるだろう。
「いいもん入手したわーっ! 今日の気分は有頂天よーっ!」
と、景品を入手した喜びで私ははしゃいだ。
――その時間、ものの数秒。
ふと真顔に変わり、フィギュアを見つめる少女、飛騨真巳は吐き捨てるように呟く。
「……ま、生き残んなきゃ、ガラクタだがな」
絶海の孤島に拉致されて殺し合い……十人生き残れるとはいえ、悠長に構えていれば、呑気に気楽に動いていたら、死ぬことは間違いない。
十人の中に生き残るには、誰かしらと同盟を組んで他の参加者を殺し続けるか、人をRことを良しとせずにどこかへ隠れ続けて殺し合いが収束するのを待つか。
その中で確実に必要となってくるのは、自身の身を守り、人をRための武器が必要になる。
では武器は飛騨真巳には支給されたか――残念なことに彼女には支給されることはなかった。山ほどの百円硬貨が詰まった、財布を支給されたのみである。
持ち物は全て没収されたので、当然財布も没収されて手元にはないのだが、それなのにクレーンゲームができたのはこの財布のお蔭だ。
こんな状況ではクソの役に立たない金銭類を支給されて、私の目の前は真っ暗になりそうであったが。
いや、なりそうではなくなった、だ。前後左右は闇に包まれてしまって、どこに一歩を踏み出そうとも、それが致命傷になりかねないくらい真っ暗だ。
「フィギュアなんか欠片ほどにも役に立たねーわ。あーくそっ、無理やりテンション上げんじゃなかった。余計、気分が盛り下がる……クッソ腹立つなぁ!」

273 :
こんな出来事に巻き込まれたのに腹立つし、自分の運の無さに腹立つし、何よりも飛ばされた先がゲームセンターなのが腹が立つ。
支給された財布のも財布であるし、これは何かの当てつけとしか思えないのは、考える意味のない深読みだろうか。
もしかしたら財布にぎっしりと入った百円硬貨を駆使して、景品を入手しろという啓示かもしれないが、しかし入手できる景品の種類はどれもこれもゲーセン内とほぼ同一。
銃が入手できるわけでも、刃物が入手できるわけでもない。至って普通のクレーンゲームだった。
普通のクレーンゲームと違うのは、置いてある景品の殆どが、入手が困難なプレミア品であることくらいだ。
「そんな上手い話なんてあるわけないから、遊んでないでさっさと殺しあえ……ってことかねぇ。……ま、それこそ深読みだな」
支給されたのが百円硬貨の入った財布のみだったので、アーケードの景品に少しでも希望を持つのは仕方ないことだと思いたい。
なにせこのままでは、道端で拾った木の枝と小石がメインウェポンとなり、言葉がサブウェポンとなりかねないのだ。
一体何をどうして、どう立ち回れば、どうこうできるのだろう。これでは無垢な少年少女しかRことができないではないか。
こんな絶望的な状況では、生き残ることすら叶わない。
「あー、さてもうどうすりゃいいんだか……、さっさと隠れる場所を探した方がいいか、それとも……」
「あのっ!」
「……あん?」
声がした方向へ振り向くと、入り口付近に人がいた。
デイバッグを胸に抱えた少女――自分とは全く真逆の容姿を兼ね備えた、少女がそこにいた。
ショートヘアーで眼鏡をかけていて、身長は自分よりも少し小さく、今時の女子高校生のように可愛らしい服装をしていて、見ただけで庇護欲と嗜虐心をそそられる、美少女がそこにいた。
「わ、私は……えっと、雨梨楓って言います……」
「……で?」
「その……えっと、あの……私とっ! 協力しませんかっ!」
「…………へぇ」
顔を少しだけ赤くして目を強く瞑りながら、雨梨は協力関係を申し出て、ぺこりと頭を下げる。
ニヤリと真巳は笑い、帽子を深々と被りなおした。
【D-2/ゲームセンター/一日目・日中】
【飛騨 真巳】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、財布、フィギュア(プレミア)
[思考・行動]
基本:生き残る
1:話を聞く
【雨梨 楓】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品
[思考・行動]
基本:死にたくない
1:目の前の人に協力関係を申し出る
□□□
【飛騨真巳(ヒダ マミ)】
男性の言葉遣いで、男性物の服を着こなし、帽子を深々と被るのが癖で、一人称が「私(あっし)」の女性
故に男性に間違えられることが多いが、本人は全く気にする様子がない
胸は平坦というわけでもなく、そこそこある。本人は邪魔だと言って憚らない
クレーンゲームジャンキー。景品の為なら札を何の躊躇いもなく溶かしていく
【雨梨楓(アメナシ カエデ)】
ショートヘアー。守ってあげたくなる可愛らしさと同時に、嗜虐心をそそられるというのはクラスメイト共通の見解
読書が好きで休み時間はいつも読書。メガネをかけていれば地味になれると思っていて、伊達メガネをかけている
基本ぼっち。ぼっちでも耐えれる精神構造。話しかけないでオーラを放ち威圧。その結果恥ずかしがりやな性格に
参加者の中じゃマトモな一般人の部類

274 :
投下終了です。
訂正
×支給された財布のも財布であるし
○支給されたのも百円硬貨がぎっしりと詰まった財布であるし

275 :
投下乙です。テンションの差が激しい人だ
自分も投下します

276 :
75話 THE VERGE OF DESPAIR
市街地へとやってきた野原ひろしとラト。
車も人も通らない無人の町並みが二人を出迎える。
(みさえ……どこに居るんだ)
この殺し合いにおいて開催式の時より離れ離れとなっている愛妻の姿を求めるひろし。
「死角も多いですから、気を付けて下さい野原さん」
「ああ、分かってる」
ひろしとラトは周囲に気を配りつつ、市街地の中を歩いて行く。
ダァン……ダァン……。
「「!」」
突如どこからか銃声が響き二人は足を止める。
詳しい方向は掴めなかったが、そんなに遠くでは無いように聞こえた。
遠く離れていない場所で、銃撃戦が起きているのだろうか、少なくともひろしとラトから視認出来る場所では無いようであったが。
しばらくして銃声は止んだ。
「止んだか? ……誰か、殺されちまったのか……?」
「分かりませんが……銃声は三種類有りました。最悪の場合、三人が」
「……」
拳を握り締め、ひろしは憤りを隠せない声色で言う。
「馬鹿げてるぜ……どいつもこいつも、何だってこんな殺し合いなんかに乗っちまうんだよ」
ひろしとラトは、建設現場の銀鏖院水晶以外に殺し合いをやる気になっている参加者とは遭遇していなかったが、
至る所で見てきた死体や、第一放送で呼ばれた名前の多さから、水晶以外にも多数のやる気になった参加者が居る事は想像に難くない。
ひろしにはそれが納得出来なかった。
突然拉致してきて、一方的に殺し合いを迫り、家族の目の前で赤子を惨Rる。
そんな非道極まり無い連中の言いなりになるような奴らが許せなかった。
無論、首輪をはめられ命を握られているから、死にたくないからと、やむを得ない理由でルールに則っている者も居るだろうが、それを差し引いても、だ。
対し、イベントホールで会ったMUR達のような、自分達以外に殺し合いに抗おうとする参加者は、どれだけ居るのだろう、とも思う。
「……」
ひろしの様子を見て、ラトはある事を彼に尋ねたくなる。
しかしそれはひろしの逆鱗に触れかねない内容で、少し迷ったが――――結局、訊く事にした。
「野原さん、一つ訊いても良いですか」
「あ? ああ、何だ? 急に改まって」
「……こんな事を言うと、気を悪くされるかもしれませんが……」
言いにくそうにしながらも、ラトは質問を述べた。
「もし、奥さんが殺し合いに乗っていたら……どうしますか?」
「……な、何?」
突然の事にしばし呆気に取られるひろしだったが、やがて憤然とした様子でラトに抗弁した。
「何言ってんだ! あいつが、あいつがどうして殺し合いに乗るんだよ! そんな訳無ぇだろ!!」
「……目の前で自分の子供を殺されて、そして殺し合いの中でもう一人の子供も飼い犬も失って、
それに、まひろが言っていた『優勝者の特権』覚えています、よね」
「……っ」

277 :
この殺し合いの司会進行役の一人であるまひろの言った「優勝者に与えられる、何でも一つだけ願いを叶えられる」と言う褒賞。
それはひろしも良く覚えていた。そしてラトの言わんとする事も理解した。
わなわなと震えながら、ひろしは述べる。
「すると何か? お前は、みさえがひまわりやしんのすけを生き返らせるために殺し合いに乗っていると、そう言いたいのか?」
「いや……あくまで、可能性の話を――――」
ラトが言い終わらぬ内に、ひろしがラトの胸倉を掴みその身体を持ち上げる。
大抵の事には動じないラトも、流石にこれには怯んだ表情を見せた。
「ふざけんな!!」
「の、野原さん」
「それ以上馬鹿な事言うと許さねぇぞ!! 許さねぇぞ!!!」
「……」
凄まじい剣幕でラトに怒鳴るひろし。
その形相は怒りと悲しみが綯交ぜになっているようだった。
子供を二人、飼い犬を喪い、一度は自殺を図るまで追い詰められ、最後に残った自分の家族である妻、みさえを探すひろしに対し、
酷い事を言ってしまったと、ラトは自分の迂闊さを恥じる。
やがてひろしはラトを解放した。
「……すまねぇ、つい、興奮しちまって……」
感情的になってしまった事を、俯きながら詫びるひろし。
「いえ、こちらこそ、すみませんでした……」
ラトもまた謝罪の言葉を述べた。
二人はお互いに謝ったものの、気まずい空気が流れる。
その空気を変えたのは、ひろしでもラトでも無い、近くの路地から現れた少女であった。
「ラト?」
「……え?」
ラトは少女の方を向く。ひろしもまた然り。
視線の先に居た少女を、ラトは知っていた。
クラスメイトの一人、北沢樹里に間違い無かった。
◆◆◆
不意に聞こえた男性の怒号。
気になって、裏路地に居た北沢樹里は様子を見に声の方向へと向かう。
そして見付けたのは、人間の男と見覚えの有る黒猫獣人の少年。
(ラト……?)
黒猫獣人少年は、彼女のクラスメイトであり、以前の殺し合いでは若狭吉雄によって首輪を爆破され殺されたラトであった。
様子を見にきただけであったが、ラトなら殺し合いに乗っている可能性は低いと樹里は考える。
思い切って声を掛けた。

278 :
「ラト?」
「……え?」
ラトも、もう一人の男性の方も樹里へ視線を向ける。
「北沢さん?」
「そうだよ。北沢だよ」
「ラト、お前のクラスメイトか」
「はい」
「ええと、私は殺し合いには乗っていないよ。そっちも、乗ってない、よね?」
今更だとは思ったが、念の為に樹里は戦意の有無をラトと男性に尋ねる。
幸い返ってきた返事は否定であった。
「乗ってない」
「乗ってないよ。安心して」
「良かった……えーと」
「ああ、俺は野原ひろしって言うんだ」
「え?」
樹里の顔色が変わる。
野原ひろし――――つまりこの男性がしんのすけの父親。
そう言えば、しんのすけから聞かされていた特徴が一致していると樹里は思う。
「って事は、しんのすけ、君のお父さん」
「!? しんのすけを、知っているのか?」
樹里の言葉に大きく反応するひろし。樹里は少したじろいだ。
「は、はい。北の森の中で会って……」
「……あいつが死ぬまで、一緒に居たのかい?」
「……はい」
「そうか……良ければ、詳しく話を聞かせてくれないか」
「分かりました」
しんのすけの死の遠因が自分に有ると思っていた樹里は一瞬、ひろしの申し出に気が引けてしまったが、
断る事など出来る筈も無いと、今までの経緯を話す事にした。
外では危険だったので、すぐ近くの不動産屋の建物へと三人は入って行った。
◆◆◆
不動産会社の応接スペースにて、
ひろし、及びラトは、樹里から彼女の、しんのすけと行動していた時の出来事を大まかに説明される。
ラト同様、以前の別の殺し合いで落命した身である事。
今回のゲームスタート時は会場北の森で始まり、そこでしんのすけと遭遇し、一緒に行動する事になった事。
妹の死を悲しみ、しかしそれを乗り越えて、しんのすけはこの殺し合いを潰すと決意していた事。
しかし、廃村にて、以前の殺し合いで自分を殺した倉沢ほのかと出会ってしまい、危機的状況に陥るも、
しんのすけが機転を利かせてほのかの注意を引いてくれた為、脱出する事が出来た事。
だが、その時ほのかが撃った銃弾がしんのすけに当たり、致命傷となり、死んだ事。
最期の言葉も、樹里はひろしに伝えた。

279 :
「……そうか」
「……」
樹里から全てを聞かされた後、ひろしはしばらく黙っていた。
やがて、乾いた笑みを浮かべながら口を開く。
「廃村でしんのすけがやった奴な、『ケツだけ星人』って言うんだ。
あいつの特技の一つでさ、良くやってたよ」
「そうなんですか……」
「全く、あいつらしいや。ははは……」
呆れたような、納得したような、そんな笑いを少しの間した後、
急に静かになり、そして、俯きながら震えた声で、再びひろしは口を開く。
「……お前が謝る必要なんて、どこに有るんだよ……お前は何も悪くねぇよっ……!
このゲームが、非道過ぎるんだよ……クソッタレなんだよ……! ……うっ……うっ……」
顔を覆って、ひろしは嗚咽を漏らした。
樹里も、ラトも、沈痛な面持ちでひろしを見守る事しか出来なかった。
特に樹里は、ひろしに対し、自分が居ながらしんのすけを死なせてしまった事、また、自分の以前の殺し合いでの悪行が、
しんのすけが死ぬ遠因になってしまった事に、強い罪悪感を抱く。
但し、「以前の殺し合いで自分がした事」は、ひろしにもラトにも詳しい事は話していない。
どうしても話す勇気が出なかった。
「樹里ちゃん」
「は、はい」
不意にひろしに声を掛けられドキッとなる樹里。
ひろしは涙を拭い、目を真っ赤にしつつも、優しく告げた。
「ありがとう。しんのすけと一緒に居てくれて……あいつを、看取ってくれて」
「……」
その言葉に、樹里は黙って頷く事しか出来なかった。
胸が苦しかった。
自分は礼を言われるに値する人間なのだろうかと自問自答した。答えは分からなかったけれど。
「……しんのすけ君を看取った後、ここに来るまでは、どうしてたんだい?」
ラトが樹里に尋ねる。
ひろしを配慮しつつ、と言った様子であった。
樹里は説明を再開する。
しんおすけを看取った後、南下し、工場にて虐待おじさんこと葛城蓮、シルヴィア、ガルルモンと遭遇し、仲間に加わった事。
図書館にて、襲撃を受け、シルヴィアとガルルモンを殺されてしまった事。
市街地にて、蓮のクラスメイトであるひでを発見するが、そのひでが触手の怪物と化し、蓮は殺されてしまった事。
一人ぼっちになり、彷徨っていた時に、ひろしとラトの二人を発見した事。
「……以上です」
「君も、大変だったな……ありがとう、話してくれて」
「いえ……」
「シルヴィアさんも死んだのか……」

280 :
経緯を詳しく話してくれた樹里に礼を言うひろしと、クラスメイトのシルヴィアの死を知り憂い顔を浮かべるラト。
「……なあ、樹里ちゃん。図書館で襲ってきた奴ってどんな感じだったんだ?」
「え……」
ひろしにそう訊かれ、樹里は逡巡する。
図書館で襲撃してきた女性は、しんのすけから聞かされていた彼の母親の特徴と一致する所が有った。
つまり、あの女性こそがしんのすけの母親であり、ひろしの妻である野原みさえであるかもしれなかった。
「その女の人なんですけど、その……」
迷いはしたが、結局はありのまま話す事にした。
「しんのすけ君から、お母さん……つまり野原さんの奥さんの特徴を聞いていたんですけど……似ていたんです」
「な、何だって?」
ひろしが大きく身を乗り出し、驚く樹里。
すぐにひろしは座り直したものの、思い詰めた表情を浮かべる。
「い、いやあの、特徴が似ているなって思っただけで、本当にみさえさんかどうかは……!」
「あ、ああ」
慌ててそう弁解する樹里であったが、ひろしは上の空といった様子で返事するのみであった。
◆◆◆
自分の妻が、みさえが、殺し合いに乗っている。
そのような事はひろしには考えられなかった、いや、考えたくなかった。
それ故ラトにその可能性を示唆された時、彼は憤然とそれを否定したのだ。
家族共々バトルロワイアルと言うふざけた殺し合いゲームに参加させられ、理不尽な理由で自分の娘を目の前で惨殺された。
それなのに、殺し合いに乗るなど有り得るのか。
まひろは確かに、優勝者は一つだけ何でも願いを叶えられると言っていた。
死者を蘇らせる事も可能だと。それはラトや樹里と言う例が有るので、方法は知る由も無いが、事実であろう。
ラトや樹里が嘘を言っていなければの話だが、彼らがそのような嘘を吐く理由も考えられない。
死者の蘇生を目的として、つまり、ひまわりを生き返らせようとして、みさえが殺し合いに乗っている?
先程正にラトが示唆していた可能性である。
(みさえ……本当にお前なのか? お前は、殺し合いに乗っちまってるのか?)
ラトに激高した時も、心のどこかでは、みさえが殺し合いに乗っている可能性を肯定していたのかもしれない。
樹里の話を聞いて、ひろしの心の中では、その可能性が少しずつ現実味を帯びてきていた。
それ故に、ラトの時のようには取り乱さなかったのだろう。
もし、もしみさえがひまわりを生き返らせる為に殺し合いに乗り、優勝を目指していると仮定して。
運営連中が、口約束を履行してくれる保証はどこにも無い。
それ以前に、自分や、もう死んでしまったが、しんのすけやシロはどうする気なのか。
いや、ひまわりと一緒に生き返らせれば良いと考えている?
もしそうなら余りに短絡的過ぎる、余りに愚かだ。
そのような犠牲の上で、ひまわりを生き返らせる事が、ひまわり本人が喜ぶと思うのか。
(落ち着けよ、俺、まだみさえが本当に乗っちまってるかどうかなんて、分からないだろ?)

281 :
一度思考を切り上げて自分の心を落ち着かせるひろし。
完全にみさえが殺し合いに乗った物として考えてしまっていたが、ラトや樹里も言っているようにまだ可能性の話。
樹里が襲われた女性も、樹里自身が言っているようにみさえと特徴が似ているだけの別人かもしれない。
まだ望みを捨てるような時間じゃない、ひろしは自分にそう言い聞かせた。
必死に希望を持とうとしていた。

【昼/D-4市街地氷崎不動産】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]精神的ショック(大)
[装備]コンバットナイフ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:みさえを探し、殺し合いを潰して生きて帰る。
       1:ラトと行動する。
       2:みさえ……。
[備考]※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※ラトのクラスメイトの情報を彼より得ています。
    ※表面上は平静ですが、精神的にはやや危うい状態です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※北沢樹里の話を聞いて、野原みさえが殺し合いに乗っているのではと思い始めています。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:野原さんと行動。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※北沢樹里の話を聞いてクラスメイトのシルヴィアの死を知りました。
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(精神的、肉体的共に大)
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        2:野原さん……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞いています。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。

282 :
投下終了です。

283 :
投下します。

284 :
76話 しょくしゅ注意報 其の伍
触手の怪物と化したひでは、獲物を求め市街地を彷徨っていた。
その小柄の身体に全く似つかわしく無い、重苦しい足音を響かせながら。
体内に巣食う触手によって、身体の体積が増大しているせいであった。
「いっちねんセいになっタら……イっチねンせいニナったラ……トもだチひゃクニん……」
歪み切った声色で、童謡「一年生になったら」を歌うひで。
かつて、彼が小学生だった頃、当時仲の良かったクラスメイトの一人と一緒に、河原を駆け回りながら歌っていた物だ。
その遠い記憶をなぞって、ひでは歌っていた。
◆◆◆
民家の中に隠れる野獣先輩こと田所浩二、遠野、稲葉憲悦、柏木寛子。
重傷を負った野獣の容態も快方に向かっていた。
「どうですか? 先輩」
「大分マシになってきた……そろそろ動いても良さそうだな」
「傷口が開いたら大変ですから、無理はしないで下さいね」
野獣を気遣う遠野。
一方の憲悦と寛子はカーテンの隙間から外の様子を窺う。
「誰も居ないよね……?」
「少なくともここからは何も見えねぇな」
特に異常も無いと思って憲悦と寛子がカーテンを閉めようとした時。
「……?」
憲悦の耳が何かを聴き取り、彼は動きを止める。
「どうかした? 憲悦」
「シッ、静かにしろ。野獣、遠野、ちょっと静かにしろ」
寛子、そして野獣と遠野に静粛にするよう命じて、憲悦は耳を澄ませる。
聞こえてくるのは、歌。
どうやら童謡の「一年生になったら」のようだった。
最初は聴力の鋭い憲悦にしか聞こえていなかったが段々と他の三人にも聞こえるようになってくる。
殺し合いと言う状況下で、歌を歌っている時点で普通では無いのだが、何より四人が違和感を感じたのはその声色。
まるで専用の変声機械でも使ったかのように歪んでいたのだ。
「……ンでタべタいな……ふジさんのウエデ……オにぎリヲ……」
恐る恐る、憲悦と寛子が、再びカーテンの隙間から外を覗く。
そして絶句する。
二人が見た物は、全身から触手を生やした、小柄な男の姿。
それが歪んだ声色で歌いながらふらふらと道路を歩いていたのだ。

285 :
「……う、うあ!」
「ファッ!?」
いつの間にか憲悦と寛子の傍にやってきた遠野と野獣も、触手人間の姿を確認し、思わず声を上げてしまう。
直後に憲悦から叱責され、野獣と遠野は口を押さえた。
どう解釈しても、あの触手人間に見付かるのはまずいでは済まされない事態になる事は誰もが理解出来た。
「あれ……あの時の触手の奴じゃないの?」
小声で寛子が野獣に言う。
確かに、ひでと相対した時に現れひでを絡み取っていた触手の怪物、と野獣は最初思ったが。
「けど、あの時のは獣人、だったぜ? あれ、人間だよな」
外に居る触手の怪物は、素体とでも言えばいいのだろうか、が明らかに人間だ。
「……あれ、ひで君、じゃ……」
遠野が震えながら言った。
野獣、寛子、憲悦がもう一度触手人間を観察する。
確かにそれは、野獣と寛子にとっては数時間前に襲われ、触手の怪物に攫われた、
憲悦と遠野にとっては図書館にて襲われた、ひでその人だった。
「何でひでがあんな風に……俺らが逃げた後何が有ったんだ……!?」
「とにかくアイツに見付かると絶対良い事ねぇな、やり過ご……」
衝撃を受ける野獣、そして憲悦がひでをやり過ごそうと言おうとして、途中で言葉を切った。
ひでが自分の方を見ていた。
つまり、ひでがこちらの存在に気付いた。
「――――離れろぉ!!」
憲悦が叫ぶ。
四人全員が一斉にガラス戸から退避する。
ガシャアアアアアン!!!
凄まじい音が室内に響き、ガラス戸がフレームとカーテンごと薙ぎ払われ、破壊された。
ガラスの破片が部屋中に飛び散る、それぐらい強い勢いで破壊された。
ひしゃげたガラス戸のフレーム、カーテン、ガラスの破片達を踏み付けながら、触手をその身から生やしたひでが侵入する。
「アァアアアァァアアア……」
唸り声を発し、四人を見据えるひで。
その双眸に最早、元から無かったかもしれないが、知性の光は感じられない。
獲物を見付けた悦びからなのか、彼特有の大きく歯茎を露出させた不気味な笑顔を浮かべ、
それを見せられた四人は生理的嫌悪感を隠せなかった。

286 :
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛モ゛ヴヤ゛ダア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
耳を劈くような咆哮を発するひで。
何が「もうやだ」なのか。否、何を指す物でも無い。
先程まで歌っていた「一年生になったら」と同じ、彼がかつて良く発していたデスボイスの記憶をなぞり、
咆哮として発せられただけである。
「ひで君、もう、君を撃つしか無いんだね……!」
遠野がKar98Kをひでに向けて構える。
図書館の時のような躊躇はもう遠野には無かった。
ひでは間違い無く自分達をRつもりだ、躊躇っていては、大切な先輩や、仲間達、自分が死ぬ。
先輩を、仲間を、自分を守れ――――心の中で自分に言い聞かせ、遠野は引き金を引いた。
ダァン!!
それに続き、寛子もまた、自分の持っている小型リボルバーを構え、ひでに向け発砲する。
タァン! タァン!
「ヴああああぁアあア!」
胴体から被弾の証である血飛沫が飛び散り、ひでが呻く。
「そのまま撃て!!」
憲悦が銃撃する二人に命じる。
言われずとも、と言わんばかりに遠野と寛子は、ひたすらにひでに銃弾を浴びせた。
このまま行けば倒せる、誰もがそう思っていた。
しかし。
「イィダぁいモォォウ!!!」
口から血と唾液の混ざった汚い液を吐き散らし、ひでが四人目掛けて勢い良く触手を伸ばした。
寛子の胸部を貫通した触手は、背後に居た憲悦をも一緒に刺し貫く。
「え、え」
寛子は何が起きたのか分からない様子だった。
「がっ……マジか」
憲悦は吐血しながら、辛うじて状況が理解出来たようだった。
触手が引き抜かれると、寛子は銃を落としてその場に倒れ込み、血溜りを作って動かなくなる。
憲悦は背後の壁にもたれ、ズルズルと滑るように崩れ落ちた。
壁にペンキを塗りたくったような真っ赤な跡が残る。
再び命を与えられた鬼畜人狼とその奴隷少女は、呆気無い様で二度目の命を潰えさせてしまった。
【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター  死亡】
【稲葉憲悦@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター  死亡】
【残り  18人】
「稲葉さん、寛子ちゃん!?」
「そ、そんな」

287 :
二人の最期を見て野獣が叫ぶ。遠野が絶望したような表情を浮かべる。
その隙を突いたのかどうかは分からないが、ひでが今度は遠野に向けて触手を伸ばした。
「危ない遠野!!」
「うあ!!」
野獣が遠野を突き飛ばした。
それによって遠野では無く野獣がひでの触手に捕らえられ、ひで本体の元へ引き寄せられた。
「せ、先輩! 何してるんですか! まずいですよ!」
何故重傷を負った身で無茶をするのか。
遠野が悲痛な声を上げた。
「うおおおおお!! ひで、お前って奴は……! この野郎!!」
触手に絡み取られた状態で、野獣は先刻手に入れた大型自動拳銃を、至近距離でひでに向け発砲した。
ダァン!!
「があああアア!!」
.44AMP弾はひでの腹部を貫き、ひでが明らかな悲鳴を上げる。
直後に、ひでは右手を思い切り横へと払った。野獣を右手からの触手に捕らえたまま。
即ち、野獣を壁に思い切り叩き付けたのだ。
「ンアッー!!(≧Д≦)」
壁が大きく凹みヒビが入る程の勢いで叩き付けられた野獣は、そのまま床に落ちて倒れたままになる。
「先輩!!」
遠野が野獣の元へ駆け寄った。
ひでは唸り声を発しながら通りの方へ逃げ、そのままどこかへと去って行った。
この時点でひでを撃退する事には成功していたが、実質は敗北に近かった。
「先輩、しっかりして下さい……!」
必死に野獣に呼び掛ける遠野。
見れば、野獣の傷口に巻いた包帯が真っ赤に染まって血が滲み出し、野獣の口からも血が溢れている。
傷口が開いただけで無く、壁に叩き付けられ骨や内臓に深刻なダメージが及んでいるようだった。
最早手の施しようが無い、と、遠野は絶望する。
「遠野、大丈夫か……?」
「僕は大丈夫です……それより……」
「稲葉さんと寛子ちゃんは、死んじまったか……俺も、もう、駄目みたいだ……ゴフッ!」
「先輩!」

288 :
大量に吐血する野獣。
もう長くない事は本人にも遠野にも分かった。分かってしまった。
「と、遠野」
息も絶え絶えになりながら、野獣はもう霞んでその顔も良く見えなくなった遠野に向かって言葉を紡ぐ。
もうこれで最期になるのであれば、今まで心に秘めていた想いをしっかり伝えなければ。
自分の気持ちをしっかり伝えなければ。
「悲しむなよ……悲しむな」
「先輩」
「お前の事が、好きだったんだよ」
もう野獣には、目の前に居る筈の遠野の顔は分からなくなっていたが、
顔に掛かった雫から、どのような顔をしているのかは想像出来た。
返事を聞きたかったが、もう時間は残っていなかった。
告白で全ての力を使い果たしたかのように、急速に、野獣の意識は薄れていき、やがて彼は何も分からなくなった。
「先輩、先輩! 僕も、せ……」
遠野が返事をしようとした時には、もう、野獣は涅槃の顔で、二度と覚める事の無い眠りについていた。
「……酷いですよ、先輩……一方的に告白して、返事を聞かないなんて……ずるいじゃないですか……!
僕、まだ、返事をしてない……返事……聞いて下さいよ……うっ、あ……アッ、アッーーーーンッッ!!」
仲間が皆死に絶え、一人きりとなった中で、遠野は突っ伏し、物言わなくなった野獣に縋りながら泣いた。

【野獣先輩@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  17人】

【昼/D-4市街地佐藤家】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]深い悲しみ
[装備]モーゼルKar98k(0/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:先輩……。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでが触手の怪物になった事を知りました。
    ※フラウのクラスメイトの情報を当人より得ています。

289 :
◆◆◆

「ヴヴヴヴ……」
ポタポタと路面に血を垂らしながら、ひではふらふらと歩き続ける。
彼の負ったダメージは決して少なくない。
小銃弾、マグナム弾、拳銃弾をその身に受け、身体中穴だらけになっていた。
しかし、彼の動きは止まらない。
元々持っていた頑健さに加え、寄生虫の力により、彼の生命力は人間のそれを遥かに凌駕する物となっていた。
以前の宿主である小崎史哉、その前の宿主であるこの殺し合いには参加していない人物よりも、遥かに強力な生命力を。
まだまだひでは止まる事は無い。
次の獲物を探すべく、彼は歩き続ける。

【昼/D-4市街地】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]触手人間化、後頭部に打撲、背中に軽い打撲、額に傷(応急処置済、止血)、右肩に盲管銃創(応急処置済、止血)、
    胸部と腹部に貫通銃創(出血、行動に支障無し)
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、FN P90(0/50)@現実、FN P90の弾倉(4)、56式自動歩槍(25/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター、
     56式自動歩槍の弾倉(4)、 サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:……殺……す……敵……。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※小崎史哉の寄生虫に身体を支配されました。人間としての理性、記憶は殆ど残っていません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。(幸せなキスなんて)ないです。

290 :
投下します。

291 :
77話 顔も知らない友達ごっこで
はるばる歩き歩き、ようやく巴とKBTITこと拓也はゲーム会場中央部の市街地へと辿り着く。
ここに来るまでに実に様々な事が有ったと二人は回顧する。
具体的に言うと、「獣人の苦しむ顔が見たい」などという理由で巴に危害を加えようとした一人の少年を一から調教したり、
その少年が少し目を話した隙に殺されてしまったり、
背中から触手の生えた青い大きな犬に襲われたが返り討ちにして殺したり、
兎の女性ソフィアと出会って行動するようになった後、レジャー施設で会った銀鏖院水晶に看板を落とされたり、
工場にて水晶と再び遭遇しソフィアを喪ったもののこれを返り討ちにして殺したり、
図書館にて惨状を目撃したり、と、本当に色々有ったのだ。
「さぁ〜次はどんな出会いがあるのかな〜アッハ」
「殺し合いに乗ってる奴とは出会いたくねぇな……あーくっそ、まだイテェ」
鼻を押さえ痛がるKBTIT。
工場にて水晶に消化器で殴打され、鼻血は止まったものの痛みは残っていた。
「鼻折れてるんじゃねぇかこれ……」
「あんま触んない方が良いよ〜周りに気を付ける事も忘れないでね」
「分かってる分かってる」
辺りを警戒しつつ、巴とKBTITは市街地の通りを歩く。
◆◆◆
先刻に狼獣人少年と猫獣人少女から逃亡してから、油谷眞人は平穏無事な時間を過ごしていた。
要するに誰とも遭遇していなかった。
(別に戦うのが好きって訳じゃねぇけど)
好戦的と言う訳では無かったが、少し退屈だと眞人は思い始める。
「ん……」
しかしその退屈が解消される時が唐突にやってくる。
微かに足音と話し声が聞こえ、眞人は足を止めた。
前方の曲がり角の方から、その足音と話し声は聞こえるようなので、すぐ近くに停めてあった白い大型ワゴンの陰に眞人は隠れ、
スモークのフィルムが貼られた車の窓ガラス越しに様子を窺い始めた。
そして曲がり角から二人の参加者が現れる。
片方は犬か狼の獣人の少女で自分の学校とは違う学校の女生徒制服に身を包み、
もう一人はゴーグルかサングラスを掛けた色黒の人間の男。
スモークフィルムのせいで余計に色黒さに拍車が掛かっているように見えた。
二人は辺りを警戒しながら、眞人が隠れる車が有る通り方向へと曲がった。
一瞬獣人少女が自分の方を見たような気がしたがすぐに別方向を向いたので恐らく気のせいだろうと眞人は思う。
(二人共、銃持ってんな)

292 :
獣人少女も色黒男も、銃を所持している事が分かる。
対して自分が持っている武器は近接武器の剣とメリケンサック。
さあどうする。眞人は考える。
もうどんな相手でも逃げはしないと決めたのだから、逃げるのは無しだ。
(よし、後ろから一気にぶった斬ってやる)
眞人は自分の方向に背を向ける二人に向かって、車の陰から飛び出し、一気に駆け出した。
結論から言うと、やはり無理だった。当たり前だよなぁ?
「気付かないと思ってたの? そんなんじゃ甘いよ」
獣人少女が眞人を嘲笑いながら散弾銃を突き付ける。
色黒の男の方も同じように銃を眞人に向けていた。
やはり甘かったか、と、眞人は歯噛みする。
◆◆◆
背後から自分達を襲おうとした学ラン姿の長身の少年を尋問する巴とKBTIT。
「名前は?」
「……」
「なーまーえーはー?」
「ゆ、油谷眞人……」
巴の威圧を受け顔を顰めながら、少年は自分の名前を述べる。
「油谷眞人……あ、思い出した。貴方、私と同じ殺し合いに居たっしょ」
「あ?」
「私、原小宮巴。ほらー、ジャンケンの時、油谷君の前にやったんじゃん私」
「……ああ、そういや」
「何だ、知り合いか? 巴」
「知り合いって言うか……前に同じ殺し合いに居たってだけだけど。仲間だった訳じゃないよ」
少年の名前を聞いて、巴は少年、油谷眞人が、以前同じ殺し合いに参加させられていた人物だと言う事を思い出す。
一方の眞人も、巴に説明を受けて思い出したようだった。
しかし、お互いに、終盤のイベントまで全く面識は無く、再会を喜ぶなどといった事は全く無かった。
散弾銃の銃口をちらつかせ、巴は眞人に質問を続ける。

293 :
「まあそれは良いとしてぇ、ねえ? やっぱ乗ってるの殺し合い? 乗ってるの?」
「……ああ、乗ってる」
巴の質問に正直に答える眞人。
「お前乗ってやがるのかオオン? どうする巴」
「んーそうだねー……タクヤさん、油谷君結構体格良いよね?」
「あ? ……そうだなぁ、ハンサムなマスクと、均整の取れた身体(嫉妬)」
「……おいおい、何だよ、言っとくけどなオッサン、俺はそんな趣味は」
「オッ↑サン↓だとふざけんじゃねぇよオラァ! お兄さんだろォ!?」
「まあまあタクヤさん……大丈夫大丈夫、安心してそういうアレじゃないからさー。
油谷君、体格良いし、強そうだし、仲間にしたらさぞ役に立つだろうと思って」
「あぁ?」
「取引しよーよ油谷君」
唐突に取引を持ち掛ける巴に困惑する眞人。
仲間にしたら、と言っていたのでそれに関する事であろうと言うのは想像出来た。
そしてその想像はやはり的中していた。
「殺し合いなんてやめてさ、私達と一緒に殺し合いに反抗しよーよ」
殺し合いの放棄、そしてそれへの反抗及び自分達と行動を共にする事を、巴は眞人に提言した。
しかしこれだけでは取引とは言えない、まだ何か有るだろうと眞人は思う。
案の定「拒否したらサヨウナラね」などと、散弾銃の銃口を眞人の眼前にちらつかせながら巴が言った。
つまり命を保障する代わりに、殺し合いをやめ自分達と一緒に殺し合いへ抗えと言う事、これが巴が眞人に出した取引である。
◆◆◆
「……成程な、取引か……もしそれ断ったりしたら?」
「その時は勿論、貴方には死んでもらいます」
「……」
実質的に飲み込む以外の選択肢の無い「取引」とは「取引」と呼べるのかと眞人は巴に疑問を投げ掛けたかったが、
そんな事をした所で状況は何も好転しないだろう事も分かっていた。
言いなりになるのは癪では有ったが、今の状況を自分の勝利へと持っていく方法も見付からず。
「分かった……分かったよ」
渋々と、眞人は「取引」と言う名の「降伏勧告」を受け入れた。
「さーて新しい仲間も出来た事だし次行ってみよー次」
「……つったって、どうすんだよ」
「街歩きながら仲間探しって所だな。
俺のクラスメイトも同時進行で……つっても今何人無事なのか分からねぇけど」
「そだねーあーでもその前に放送どっかで聞かなきゃ」
(要するに、殺し合い反抗するつっても、有効な手立てなんてねーって事じゃねーか)

294 :
かなり大雑把な行動指針を聞かされ呆れる眞人。
殺し合いに反抗する意志が有るのは分かるが具体的な展望はとてもでは無いがこの二人には期待出来ないと感じた。
しかし今更逃げ出そうとすれば恐らく命を狙われるだろう。
言うなれば、この二人と出会ってしまった事が自分の不運なのかと眞人は悔やんだ。
「ほら油谷、モタモタしてないで来いホイ! クォーイ!」
「……」
KBTITに急かされ、絶望とまでは行かないが暗い表情を浮かべながら、眞人は巴とKBTITと共に行く。

【昼/D-4、E-4境界線付近】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(2/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)、油谷君と行動。
        2:市街地で仲間集め。
        3:油谷君が妙な真似をしたらすぐにRつもり。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※KBTITを同じ世界の人間だと思っています。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
    ※金子翼が図書館に居た事は知りません。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤で汚れている
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴、油谷と行動。工場を出て南の市街地へ向かう。
        2:クラスメイト、殺し合いに乗っていない参加者を探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※支給品はボディーブレード@アニメ/クレヨンしんちゃんでしたが放棄しました。
    ※金子翼の外見のみ記憶しました。
    ※金子翼が図書館に居た事は知りません。
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:指針変更、しばらくは巴とKBTITの言う通りにする。
       1:いつか隙を見て二人から逃げたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※土井津仁、春巻龍、ノーチラス、君塚沙也の容姿のみ記憶しました。
    ※巴とKBTITの言う事を取り敢えずは聞きますが、殺し合いを完全に放棄した訳ではありません。

295 :
投下終了です。

296 :
投下します。

297 :
78話 その行方、徒に想う……
放送の時刻が差し迫っていた。
この殺し合いにおいて二回目となる定時放送。
不動産屋の応接スペース、そのソファーに座る野原ひろし。
北沢樹里は事務机の上を漁り、ラトは閉められたブラインドの隙間から外を監視していた。
ひろしは樹里から話を聞いて程無くみさえを探しに行くと言い出したが、放送が近いとラトに止められてしまった。
(もうすぐ二回目の放送……今、どれくらい生き残ってるんだろ)
殺し合いが始まって早12時間、つまり半日が経とうとしている。
第二放送では何人呼ばれるのか、今、生存者はどれだけ居るのか、樹里は気になった。
思えば前回の殺し合いでは第二放送は迎えられなかったな、と思い出したりもした。
「はぁ」
溜息をつき、ソファーの背もたれに背中を預けて天井を見上げるひろし。
放送を待つこの時間がとてももどかしく感じる。
もしかしたら殺し合いに乗ってしまっているかもしれない愛妻、みさえは今どこで何をしているのか。
そもそもまだ生きているのか。
樹里の話の通り、本当にやる気になっているのか。
憂慮する事が多過ぎて、辟易としてしまう。それが溜息として外に出た形であった。
◆◆◆
「ハァ、ハァ……」
傷の痛みに顔を歪め息を荒くしながら、みさえは通りを歩いていた。
ふと空を見上げれば、太陽が真上に近付いており、昼の12時、つまり第二回定時放送の時間が迫っている事を示している。
どこかで落ち着いて、放送を聞かなければならない。
「どこか……有るかしら」
身を潜められそうな場所を探し始めるみさえ。
周りには民家の他に、幾つかの商店や飲食店、会社事務所が見えた。
その中でみさえが目を付けたのは、とある不動産会社の事務所。
「あそこで良いかしらね……」
みさえは不動産会社に向かって歩いて行った。
事務所の窓は入口に至るまでブラインドが下りていて内部の様子は外からでは窺い知る事は出来ない。
内部に誰か居る可能性も有り、みさえは右手に持つ拳銃の引き金に人差し指を添える。
そして入口のドアのノブに手を掛けた。
「……」
駄目であった。
入口はしっかりと施錠されていて開かない。
なら仕方無い、この不動産屋に拘る必要も無い、別の場所を探そうと、
みさえは早々に見切りを付けて不動産屋から離れ、先へと進んだ。

298 :
しかし、十数メートル歩いた所で、背後から物音が聞こえた。
扉の鍵が外される音と、扉が開く音、何やら揉めるような声。
みさえは背後を振り向いた。
開け放たれた不動産屋の扉、その前で慌てた表情を浮かべている黒猫のような頭をした少年と、見た目普通の人間の少女、
そして、良く見知った、濃い髭に角ばった顔の男性。
「みさえ!!」
「……あなた」
紛れも無く、自分の夫、野原みさえその人であった。
とても嬉しそうな表情で、目を潤ませながら、ひろしはみさえの事を見据えていた。
その様子から、自分の事を心の底から心配していたのだろうとみさえは思う。
自分がひまわりを生き返らせる為に殺し合いに乗っている事など露程も知らずに。
「生きてたんだな! って、怪我してるじゃねえか!」
自分とは違い、この絶望的な殺し合いの中でも「野原ひろし」は「野原ひろし」で在り続けていたようだ。
みさえは自分でも知らぬ内に安堵していた。
だが、その安堵にいつまでも浸っている事は出来ない。
「野原さん! 待って!!」
ひろしの背後に居る少女が叫んだ。
そう言えば、あの少女は図書館で殺した二人の仲間ではなかったか。
自分の事をひろしに伝えようとしているのか、別に伝わっても構わないが、さっさと済ませてしまうに越した事は無い。
みさえは右手のスコアマスターをひろしの胸に向けた。
「みさえ?」
ひろしの表情が凍り付く、当然だろう。
何、心配無い。しばし別れるだけ。
優勝して、ひまわりも、貴方も、どこかに居るだろうけどいずれ死ぬであろうしんのすけとシロも、生き返らせて、
また皆で一緒に暮らそうね――――。

ダァン!!

銃声が響いた。

◆◆◆

299 :
目の前で、ひろしが自分の妻に撃たれ、俯せに崩れ落ちるのをラトと樹里は目の当たりにした。
直後にひろしの妻、みさえはもう一発を発砲した。
「ぐぁっ……」
「ラト!」
ラトが腹の辺りを押さえて蹲る。
押さえる手の指の間から赤い液体が滲む。
「野原……みさえさん!!」
樹里はみさえに向かって大声を張り上げた。
「どうして、こんな事を!?」
きっとみさえを見据えながら、樹里は彼女を問い質す。
図書館で彼女に襲われ、二人の同行者を亡き者にされた時点で分かってはいたが、
みさえはやはり殺し合いに乗っている。
今、自分の夫すらも躊躇する事無く撃った事からも明らか、だが、その理由を知りたい。
その理由については予想はしていたが、あくまで予想だ。だから本人の口から聞きたかった。
「ひまを生き返らせるのよ」
「……!」
果たして、その予想通りの答えがみさえの口から語られる。
「夫も、しんのすけも、シロも、同じように生き返らせて、また皆一緒に暮らすのよ」
「貴方は、一回目の放送を聞いていないんですか?
息子さんも、飼い犬も、死んでしまったんですよ! この殺し合いのせいで!」
息子と飼い犬が死んだ事を知らぬのではと思い、樹里は事実を伝えた。
みさえは一瞬だけ表情を変えはしたものの、すぐにまた狂気を湛えた笑みに戻って応答する。
「そうだったの、でも大丈夫よ! ちょっとだけのお別れだもの。
私が優勝して皆生き返らせるから、大丈夫なのよ……!」
「狂ってる」、喜々と語るみさえを見て、樹里が抱いた感想だ。
しんのすけが死の間際まで案じていた母親がこの有様、どうしようも無く怒りと悲しみが湧いてくる。
横っ面を引っぱたいてやりたかったがそれよりも前に撃たれるのが落ちだ。
「だから、貴方達も、ひま、いや、私達の為に! 死んッ……」
不意に、みさえが台詞を途中で切った。
「がっ、あ……?」
そして突然、口から血を吐き出し、その場に倒れた。
困惑するラトと樹里が見た物は、コンバットナイフを手にして立ったひろしの姿。
穴が空いた胸元と同じように、コンバットナイフの刃は赤く染まっている。

300 :
「みさえ……もう、やめろ」
そう言った直後、ひろしもまた、みさえに覆い被さるようにして崩れ落ちた。

◆◆◆

ラトから可能性を指摘され、樹里から図書館での出来事を話され、
ひろしはみさえが殺し合いに乗っている可能性を考慮するようになった。
しかし、心のどこかでは、希望を捨てきれずに居た。みさえが殺し合いに乗っているなんて何かの間違いだと。
だがその希望は、みさえに胸を撃たれた事によって脆くも崩れ去った。
胸が痛い、苦しい。心情的な物では無く物理的、肉体的な意味。
意識が揺らぎ、何とも形容し難い気持ち悪さと寒さが襲う。ああ、もう駄目だ、自分は死ぬ。
本能的にひろしはそう感じた。
あの時、不動産屋の中に三人で身を潜めていた時、ブラインドの隙間から外を見張っていたラトが、
「誰か来る、静かにして隠れろ」と自分と樹里に言い、三人共カウンターの陰に隠れた。
そして、外の誰かは、事務所入口扉を開けようとしたが、ラトが事前に鍵を内側から閉めていた為開かず、
その誰かは入口が開けられぬと見るや否や、去って行った。
ひろしはラトに小声でどんな姿だったか訊いた。
ラトは何故か答えづらそうにしていた。その時ひろしは直感的に何かを感じ、ブラインドに向かって小走りで近付き外の「誰か」を確認する。
ラトと樹里の制止の声が聞こえたが、そっちのけであった。
そしてひろしは、不動産屋から離れて行く、良く見覚えの有る後ろ姿を見付ける。
そこからのひろしの行動は最早、反射神経のようで、鍵を開けて外に飛び出し、愛妻の名前を呼ぶまで、ラトと樹里が止める間すら無かった。
ついに、愛妻のみさえと再会したひろし。
結果、彼女に致命傷を負わされた。
二人の制止も聞かず、感情に任せた結果がこれだ。
自分の愚かさをひろしは憎む。
霞む視界、定まらぬ意識の中、ひろしが見た物は腹を抑えて蹲るラトと、みさえと樹里が対峙する姿。
樹里はみさえを問い質す。何故こんな事をするのかと。
みさえは答える。ひまわりを生き返らせて、死んだ他の家族も生き返らせ、また家族全員で一緒に暮らす為だと。
ラトの危惧は当たっていた。樹里の話の通りだった。
おまけにみさえは、一回目の放送を聞いておらず、今の今までしんのすけとシロが死んだ事も知らなかったらしい。
(馬鹿だよ、お前は、馬鹿だよ、みさえ……!)
みさえの後ろ姿を睨み付けて心の中で彼女を叱り飛ばすひろし。
そんな事をして、ひまわりが、しんのすけが、シロが、自分が、喜ぶ訳が無い。
他人の、大勢の犠牲の上で蘇らせた幸せなんて偽物に決まっている。
そんな事も分からないのか。分からなくなってしまったのかお前は。
ひろしの心の中で怒りと悲しみが綯交ぜになった激情が渦巻き、その目から涙が零れ落ちる。
みさえは目の前で更なる凶行を犯そうとしている。
ラトが撃たれ、樹里もまた殺されようとしていた。
止めなければ、何としても。
樹里の話からして、みさえは既に何人も手に掛けているのだろう。
ならもうこれ以上、みさえに罪を重ねさせる訳には行かない。
もうすぐ自分は死ぬ。みさえは説得に耳を貸す気配は無い――――なら、方法は一つだけ。

301 :
最期の力を振り絞り、ひろしは立ち上がり、装備していたコンバットナイフを、みさえの背中に突き刺した。
みさえの凶行は止まった。
彼女の命の鼓動も、もうすぐ止まるであろう。
「みさえ……もう、やめろ」
倒れたみさえに向かって、ひろしは優しく語り掛け、彼もまた、みさえに覆い被さるように崩れ落ちた。
必死に、みさえの顔が見える位置まで、自分の顔を持っていくひろし。
「あな、た……」
口元を赤く染めている以外は、いつもと変わらぬ愛する妻の顔がはっきりと見えた。
「みさえ……」
そっと、ひろしはみさえの頬に血塗れの手を添えた。
「もう、頑張らなくて良い。もう、良いんだよ……一緒に、し、しんのすけ達の、と、所……に、い、行こ……う」
自分は、みさえを殺した。みさえも、自分や大勢殺した。自分達は子供達と同じ所には行けぬかもしれない。
それでも、ひろしは、みさえにそう言う事しか出来なかった。
理由はどうあれ、みさえは家族の事を思って己の手を汚したのだから。
許されぬ、分不相応な願いだとしても、ひろしはみさえと一緒に、子供達の所へ行きたいと思った。
みさえが、ふっと微笑んで、言った。
「また、みんな、で……一緒、に……――――――」
言葉は最後まで紡がれる事は無く、みさえの目から光が消えた。
だが、ひろしにはそれは見えなかった。声が途切れた事が何を意味するかは分かったけれど。
視界が霞んでいる上に、大粒の涙が両目を覆い尽くし、もう、何も見えなかった。
「ああ……ああ……! 一緒に、皆で、一緒に……暮らそう、な……!」
その言葉を最後に、ひろしの意識も遂に終わりを迎える。
日本の埼玉県、春日部市に住む、平和な一家であった野原家は、
突如巻き込まれた理不尽な殺し合いゲームによって、一家全滅と言う末路を辿った。

【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん  死亡】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん  死亡】
【残り  15人】

◆◆◆

302 :
寄り添うようにして永遠の眠りについた野原夫妻を呆然と見下ろす、樹里とラト。
「……野原さん……」
「うっ……ぐ……」
「! ラト!」
苦しみ出すラトを気遣う樹里。
腹部の傷は、それ程出血はしていないように見えるが、腹を銃撃されたのだから軽傷の筈は無い。
「大丈夫……急所は、外れているみたいだから……それより、銃声が響いた。
ここから離れよう……野原さん達を、このままにしておくのは気が引けるけど……」
「歩けるの……?」
「ああ、何とかね」
銃声が響いた故に、殺し合いに乗った者がやって来る可能性が有った為、
樹里とラトはひろしとみさえの武器を回収した上で、その場を後にした。
(ラト、本当に大丈夫かな……)
やはりラトの傷の具合が気になる樹里であったが当人が大丈夫だと言っている以上、
現時点ではラトの言う通りに野原夫妻が横たわる場所から離れるしか無かった。
太陽はほぼ会場の真上に来ている。
第二回目の放送はもうすぐだった。

【昼/D-4市街地】
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腹部に盲管銃創(出血有、現時点では命の危険が有るかどうかは不明、行動には今の所支障無し)
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)、デトニクス スコアマスター(6/7)@現実、スコアマスターの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:北沢さんと行動。野原さん達の所から離れる。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
    ※北沢樹里の話を聞いてクラスメイトのシルヴィアの死を知っています。
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、悲しみ
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、
     モンキーレンチ、コンバットナイフ@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:ラト、大丈夫かな?
        2:野原さんが……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。

303 :
投下終了です。次第二回放送の予定です
そろそろオリキャラロワやりたいと思ってる今日この頃

304 :
投下します。

305 :
79話 第二放送
「あーあ、野原ひろしと野原みさえも死んじまったなァ、これで野原一家は全滅って訳だ」
どこに有るとも知れない、バトルロワイアルの運営本部。
参加者達の生存状況を知らせる確認用モニターを見て、じゅんぺいがせせら笑う。
開催式の時や、第一放送の時には見せなかった凶悪そうな笑みである。
「資料によれば今まで数々の冒険を繰り広げ、危険を乗り越えてきたようですが……今回は駄目だったみたいですね」
じゅんぺいに対し、まひろは何ら変わらず礼儀正しい振る舞いだ。
「しかし平野さんも良くこんなゲーム思い付くよな」
「そうですね……でも、確か、昔出版された小説を元にした、と言っていましたよ」
「マジか、あの人以外にもこんな事考える奴居んだな」
「とは言っても、それを実行してしまうのが流石平野さん、と言いますか……。
そろそろ、二回目の放送の時間ですね。次は私の担当ですので、準備をしてきます」
「おお、分かった」
第二回目の放送の準備を行う為、まひろは席を外す。
◆◆◆
正午。
バトルロワイアルの会場に、二回目となる定刻放送が鳴り響く。
生存者達の耳に届くのは、高めの礼儀正しい男の声。
『えー、テスト、テスト……。
現在生き残っている方々、お久しぶりでございます。まひろでございます。
お昼の12時となりました。第二回目の定時放送を始めます。
まずは禁止エリアから。
午後1時より、D-1、E-4、E-6、F-2。
繰り返します。午後1時より、D-1、E-4、E-6、F-2です。
では続きまして、新たな脱落者の発表です。

306 :
稲葉憲悦
太田太郎丸忠信
小崎史哉
柏木寛子
ガルルモン
KMR
虐待おじさん
銀鏖院水晶
コーディ
シルヴィア
ソフィア
テト
野原ひろし
野原みさえ
春巻龍
フラウ
野獣先輩
呂車
以上18人となっております。残りは15人です。
次の放送は夕方6時となります。
それではこれにして、第二回目の放送を終了させて頂きます。ご健闘をお祈り申し上げます……』
慇懃な締めの後、二回目の放送は終わりを告げた。
◆◆◆
「ご苦労だった、まひろ君」
放送を終えたまひろを平野源五郎が労う。
「残り15人か。予想以上のペースだ。次の放送を迎える前に、決着が着いてしまうかもしれないな」
「そうですね……ですが、殺し合いに乗っている参加者はめっきり少なくなってしまいました。
一固まりになって動かない人達も居ます」
「ああ、だが、ひで君だったかな? 異世界の寄生虫に身体を乗っ取られた彼が、良い働きをしてくれると思っているよ」
これからが楽しみだ、とでも言うように、平野は不気味に笑う。

【残り  15人】

307 :
投下終了です。

308 :
投下します

309 :
80話 滲み続ける絵画
古めかしい佇まいのうどん屋の中。
ノーチラス、君塚沙也の二人と、サーシャ、大沢木小鉄の二人は、お互いに持っている情報を出し合った。
「仁だ」
「え?」
沙也から警察署で見付けた少年の死体の事を聞かされ、小鉄が応答する。
「坊主頭でおでこに星印が有ったんだろ? なら、間違いねぇよ。
そいつは、俺の友達の、土井津仁だ」
「そ、そうなんだ……」
「くそっ、仁……一体何が有ったってんだよ……!」
聞けば、仁は警察署の、散らかった宿直室の中で、片手首を失い血塗れになって死んでいたと言う。
彼の死そのものは既に第一放送にて知っていた小鉄であったが、その死に様を聞かされて、
一体彼の身に何が起きたのだと嘆いた。
よもや、自分や、仁の担任である男によって殺されたなど小鉄は知る由も無い。
「……触手の怪物に、襲われたのよね?」
小鉄の事を気に掛けつつも、サーシャがノーチラスに訊く。
警察署にて、仁の死体を発見した後に、ノーチラスと沙也は全身から触手が生えたリカオン獣人少年の襲撃を受けた、
と、サーシャと小鉄は二人から聞かされていた。
その触手の怪物は、特徴等から、サーシャと小鉄、テトを襲い、テトを死に至らしめた怪物と同一であると、サーシャと小鉄は確信していた。
「ああ」
「私達も襲われたわ……多分と言うか間違い無くノーチラスと君塚さんが戦ったのと同じ奴だと思う」
「そうだ、その化物に、テトのねーちゃんも……あ、俺、あの化物の服に付いてた名前、見たぞ」
「本当か? 何て書いてあったんだ?」
ノーチラスが小鉄に怪物の衣服に着いていた名札の名前について尋ねる。
難しい漢字は読めなかった小鉄は辛うじて分かる「小」と「史」の二文字をノーチラスに伝えた。
ノーチラスは名簿を開いてその二文字が入っている名前を探し、結果、該当するのは「小崎史哉」と言う名前のみ。
「確か、こんな漢字だった」
「それじゃ、間違い無さそうだな。あの触手野郎の名前は『小崎史哉』だ」
「何者なのかなあいつ、元々は普通の人間、と言うか獣人だったと思うけど……この殺し合いの中でああなったのかな」
「別に、正体なんてどうでも良いじゃん。間違い無いのはあれは話も通じない超危険人物だって事。
オマケにめっちゃ頑丈みたいだしさ、ノーチラスがライフルぶち込んでも効かなかったし」
「テトが、大きな氷柱を飛ばしたりもしたけど、それでも倒れなかったし……まだどこかに居るのかしら……」
四人はしばらく触手の怪物について話していたが、やがて第二回目の放送の時間になった為、
全員が会話を切り上げて放送を傾聴する。
今度の放送主は、開催式にて司会を務めた二人の片割れ、まひろであった。
……
……

310 :
放送が終わる。
まず、指定された禁止エリアはD-1、E-4、E-6、F-2。
その内、重要だったのはE-4エリア。
ノーチラスと沙也が会場中央部の市街地に進入する時、東側より入った。
その町の入口はE-4エリアに有り、そこから現在位置のうどん屋はそう離れてはいない。
つまり自分達はE-4エリアに居る事はほぼ間違い無く、早急に退避する必要が有った。
さもなければ首輪が作動し、開催式での野原ひまわりと同じ運命を辿る事になってしまう。
死者の発表では18人の名前が呼ばれた。
サーシャ、ノーチラスのクラスメイトも数人、無論、テトの名前も含まれていたが、サーシャが気に掛けていた、
シルヴィアの名前も呼ばれた。
「また会えなかったな、シルビー……」
「サーシャ……?」
「前の時も一回も会えなかったから、気になってたんだけど……」
以前の殺し合いに続き、今回もまた再会は果たせなかったとサーシャは無念に思う。
また、小鉄の担任教師である春巻龍の名前も呼ばれる。
「春巻も死んじまったのか……」
小鉄は、悲しみこそしなかったが、全く無関心でも無い。
教師の癖をして、教師らしさなど皆無で、生徒達に舐められ知能も低く数々の奇行や騒動、
異常なマイペース振りで煙たがられ、小鉄自身も多分に漏れず彼を邪険にする事が多かったが、
何だかんだで本気で嫌っては居なかったのだろうと思っていた。
本気で嫌っていたなら少しも気にならないだろうから。
もう振り回されなくて清々する、と心の中で吐き捨てたものの、小鉄の気分は晴れなかった。
「放送の前に私達を襲った、野原みさえの名前も呼ばれたねぇ、夫と一緒に」
「そうね……腕に弾が当たったと思うけど、あれで死んだのかな……」
野原夫妻の名前も呼ばれた。これで野原一家は全滅した事になる。
野原みさえは放送前にノーチラスと沙也、そしてサーシャと交戦し、サーシャが撃退したが、あの時はまだ生きていた。
自分の銃撃で負った傷が元で死亡したとも考えられたが。
「私の撃った傷のせいかな」
「あの状況では何も悪くはない、気にするな。お前は俺達の事を助けてくれたんだから」
ノーチラスが気遣い、サーシャは「ありがとう」と返した。
その様子を見て、性行為の時とは大違いだと心の中で沙也はノーチラスを再評価する。
「しかし……だ、小崎史哉の名前も呼ばれるとは」
「あれ、本当に死んだのかなあ」

311 :
ノーチラスと沙也が言及するのは、放送前に議題に上がっていた「小崎史哉」の名前が呼ばれた事。
無論、サーシャと小鉄もそれについては気になった。
あの触手の怪物が死んだのか、本当に? と、四人全員俄かには信じられなかった。
既に話したように、銃弾で穴を空けても氷柱を打ち込んでも動きを止められなかったと言うのに。
しかし放送が嘘偽りとも思えない、ので、触手の怪物こと小崎史哉は本当に死んだのだろう。
活動を止められなかったとは言えテトの氷柱で大きく損傷を与えられていた為、それが元で死んだのか、
それとも誰かが撃破したのか、興味は有ったものの。
「とにかく、色々考えたい事は有るとは思うが……まずはE-4から避難する方が先決、だと思う」
「そうだね」
「うん」
「おう、分かった」
四人共一先ずE-4からの避難を優先する。
それぞれ荷物を纏めると、うどん屋より出発した。

【日中/E-4市街地うどん屋周辺】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ドス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、ジュースやお菓子(調達品)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。フグオ、金子先生を捜す。
       1:サーシャのねーちゃん達と一緒に行動。E-4エリアから避難する。
       2:春巻……。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。
【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ローバーR9(3/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9の弾倉(3)、???(武器になる物では無い)
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:ノーチラス、君塚さん、小鉄君と行動。E-4エリアから避難する。
        2:シルビー……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※テトから「以前の殺し合い」の真相を聞きました。まだノーチラスには話していません。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。

312 :
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]又兵衛の刀@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。生き残りたい。
        1:ノーチラス、サーシャさん、小鉄君と行動。E-4エリアから避難する。
        2:ノーチラスの超能力を体験してみたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ノーチラスのクラスメイトの情報、及び彼がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて発見した死体が土井津仁である事を確認しました。
【ノーチラス@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]十八年式村田銃(1/1)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、11.15mm×60R弾(7)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:沙也、サーシャ、小鉄と行動。E-4エリアから避難する。
        2:殺し合いに乗っていない参加者、クラスメイトの捜索。
        3:しばらくは市街地を回る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※超能力の制限に関しては今の所不明です。
    ※君塚沙也がリピーターである事を本人から聞いています。
    ※触手の怪物が「小崎史哉」であると確認しました。
    ※油谷眞人の外見は殆ど把握出来ていません。
    ※警察署にて発見した死体が土井津仁である事を確認しました。

313 :
投下終了です

314 :
投下します

315 :
81話 いいひと
ぽっかりと心に穴が空いてしまったような気分で、遠野は街中を歩いていた。
先刻、怪物と化したひでに襲われ、同行者である野獣先輩こと田所浩二、稲葉憲悦、柏木寛子の三人を殺されてしまった。
三人の死を悼んだ後、野獣と寛子の持っていた拳銃と予備弾薬を少々気が引けながらも回収し、
遠野は傷心したまま三人の元を離れ現在に至る。
特に、遠野に喪失感をもたらしていたのは、敬愛していた野獣の死である。
「先輩……僕はこれからどうすれば……」
遠野はすっかり希望を見失ってしまっていた。
先程行われた第二放送では、虐待おじさんこと葛城蓮、KMRの名前が死者として呼ばれたが、
先輩を喪った悲しみが強過ぎたのか、余り感じる所は無かった。
薄情な奴だ、と、自分で思いはしたが。
「いっその事、僕も……」
手にしているモーゼルKar98Kを見詰め、遠野は良からぬ事を考える。
最愛の人の後を追うか?
野獣先輩が居ないこの世界に何の未練が有ろうか、ならばいっその事自分も――――そこまで考えて、
遠野は静かに首を横に振り、その考えを止める。
(駄目だ、そんな事しちゃ……先輩が僕を助けてくれた意味が無くなってしまう)
野獣は自分が重傷を負った身であるのにも関わらずひでの攻撃から遠野を庇い、結果、致命傷を負い死んだ。
つまり、野獣は結果的に自分の命と引換に遠野を助けたのだ。
それを思い出し、自死を思い止まった遠野。
もし、自分がここで命を絶てば、野獣は無駄死にになってしまうではないか。
「まだMURさん、拓也さんが生きている。捜さなきゃ……(使命感)」
俯き加減だった顔を上げて前を見据える遠野。
先輩に救われた命を無駄にしてはならない。
先輩達の死を無駄にはすまい。
MURやKBTITこと拓也、その他、殺し合いに乗っていない参加者を捜そうと遠野は決意を新たにする。
だが、道程は平坦では無い。
先程の放送で、生存者は自分を入れて、たったの15人にまで減ってしまった。
最初52人も居たと言うのに、半日足らずで淘汰され、15人となった。
その中で自分以外の殺し合いに乗っていない参加者など見付かるのだろうか。
先述したMUR、KBTITも殺し合いに乗っていないとは限らない。
「いや、希望を持つんだ……持たなきゃいけない(戒め)」
MURとKBTITが殺し合いに乗っていない事、殺し合いに反抗する者が見付かる事を遠野は祈るしか無かった。
兎にも角にも、心機一転した遠野が町を歩いていると、二人の参加者と鉢合わせた。
互いに銃を向け合い、警戒態勢を取る。
二人組は、片方は黒猫の獣人の少年、もう片方は茶髪の美少女であった。
黒猫少年の方は腹に傷を負っているようだ。
「待って下さい、僕は殺し合う気は有りません」

316 :
戦意の無い事を二人に伝える遠野。
ゆっくりとKar98Kの銃口を下ろして発言に説得力を持たせる。
「本当ですか?」
「本当です!」
「……私達も、乗っていないよ」
二人の方も、戦う意志は無いと言い、銃を下ろした。
殺し合いに乗っていない参加者はまだ居たのだと、遠野は安堵した。
そして互いに名前を名乗る。黒猫少年は「ラト」、少女は「北沢樹里」と名乗った。
遠野もまた自分の名前を告げる。
そして、二人の名前に覚えが有る事を思い出した。
「フラウさんのクラスメイトですね?」
「そうですが……彼女をご存知で?」
「途中まで一緒でした。目の前で殺されてしまいましたが……」
「そうですか……ん……確か、遠野さんでした、よね? と言う事は、MURさんのクラスメイトですね?」
今度はラトの口からMURの名前が出て、遠野が強く反応を示す。
「MURさんを知っているんですか!?」
「ここでは目立ちますから、近くの建物の中で話しましょう」
「分かりました……」
ラトに促され、遠野はラト、樹里と共に近くの建物の中へと入った。
◆◆◆
野原夫妻の遺体の有る場所から離れた後、ラトと樹里は第二放送を市街地で聞いた。
禁止エリアに関しては、指定された四つの内、現在位置(と思われる)D-4エリアのすぐ隣、E-4エリアが一番近く、
取り敢えずはこの一つを注意するべしと二人は考える。
死者の発表で新たに名前を呼ばれたのは18人。
その内、虐待おじさんこと葛城蓮、シルヴィア、ガルルモンに樹里が、銀鏖院水晶とテトにラトが、
野原夫妻には二人共が、反応を示す。
(シルヴィアが言っていたサーシャはまだどこかで生きているのね)
当人より遺言を伝えてくれと頼まれている相手のサーシャは、放送では呼ばれなかった。
なので今の所はまだどこかで生きているであろう。
しっかり伝えてやらなければ、と樹里は思う。
(銀鏖院さん、それにテト……)
ラトは、銀鏖院水晶とはA-6エリアの建設現場にて一度交戦してそれっきりだ。
彼女は結局、死ぬまで殺し合いを止めなかったのだろうか。
また、テトとは是非再会して、以前の殺し合いについて聞きたい事が有ったが、最早それも叶わなくなった。
残念だ、とラトは溜息をついた。

317 :
そして放送後、再び町を歩いていた二人は、一人の青年と遭遇する。
一時の緊張の後、互いに殺し合いに乗っていない事を確認し合って警戒を解いた。
青年は「遠野」と名乗った。
ラトはその名前に聞き覚えが有った。
確かイベントホールにて出会ったMURのクラスメイトの一人では無かったか――――そう思って遠野に尋ねると、正解であった。
外では目立つ為、近くの建物の中に入り、ラトはそこで遠野に詳しい事を話し始めた。
「MURさんとは、D-5エリアに有るイベントホールで会いました。
そこを拠点にして居ると話していたので恐らく今もイベントホールに居ると思います。
僕と北沢さんのクラスメイトである貝町さんと、鈴木フグオと言う少年と一緒に居ました」
「つまり、MURさんは殺し合いには……」
「はい、乗っていません」
「良かった……」
少なくとも、MURは殺し合いには乗っていない、それが分かり安心する遠野。
(あの事も伝えておいた方が良いんじゃない? ほら……)
ラトに樹里が耳打ちする。
「あの事」と聞いて、ラトはすぐに何の事か察し、勿論だと言うように樹里に目で合図すると、
自分のデイパックからノートと鉛筆を取り出し文章を書き出した。
「?」
急にノートに何か書き出したラトに遠野は目を白黒させる。
やがて、書き終えた物をラトは遠野に見せた。
〈伝えたい事が有ります。ですがこれは声に出して言うとまずい事ですので筆談をお願い出来ますか〉
「??」
やはり何事か遠野は分からない様子だったが、筆談が必要だと言う事は分かったようで、
大人しく自分のデイパックからラトと同じようにノートと鉛筆を取り出し、返事を書いた。
〈分かりました。でも、何で筆談する必要なんか有るんですか?〉
〈先程話した、MURさんと一緒に居る貝町さんは、首輪を解析して外す方法を調べています〉
〈本当ですか!?〉
〈本当です。但し、貝町さんの言によれば、首輪の中に盗聴器が仕掛けられているとの事。
運営が参加者間の会話を盗み聞きしていると見て間違い無いかと〉
〈だから筆談を〉
〈そうです。詳しい事が運営に知られれば最悪遠隔操作で首輪を爆破される危険が有りますから、
これから先も首輪の事に関しては筆談でお願いします〉
〈分かりました〉
遠野が、MURと共に居る貝町ト子が首輪の解除を目指している一連の流れを一通り知った所で筆談は終了となった。
◆◆◆
MURは殺し合いに乗っておらず、また、彼と共に居る一人が首輪を調べている。
野獣達を喪って気分が落ち込んでいた遠野にとって嬉しい朗報の数々であった。
ただ、首輪の事に関しては、期待を持ち過ぎるのは良くないと自制もした。
今は調べている段階で、確実に外せるかどうかはまだ分からないのだから。

318 :
「ラトさん、北沢さんは、これからどうするんですか?」
遠野が二人に尋ねる。
「イベントホールに向かってMURさん達と合流しようと思ってます。
もう一度会うと約束しましたからね」
「なら、僕も一緒に行かせて下さい! お願いします! 何でもしますから!」
必死に二人に頼み込む遠野。
知人が居る場所へこれから向かうと言うのだからこれを逃す訳には行かない。
「勿論です、一緒に行きましょう」
「宜しくね」
「ありがとうございます!」
ラトと樹里は快諾し、遠野は笑顔を浮かべ礼を述べた。
しかしここで、ラトが腹を押さえて苦しみ出す。
「ラトさん!?」
「ラト! そうだ傷……」
「傷の事を忘れていた……」
「作者がですか?」
「何を言ってるんですか」
突飛な事を言い出す遠野に苦しみながらも突っ込みを入れるラト。
結局、MUR達の元へ向かうのはラトの手当をしてからと言う事になった。

【日中/D-4市街地】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]精神的疲労(大)
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(5)、TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ、
     コルト ポリスポジティブ(5/6)@現実、.32コルトニューポリス弾(12)、オートマグ(3/7)@現実、オートマグの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:ラトさん、北沢さんと行動。MURさんの元へ向かう。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでが触手の怪物になった事を知りました。
    ※フラウのクラスメイトの情報を当人より得ています。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。

319 :
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]腹部に盲管銃創(出血有、現時点では命の危険が有るかどうかは不明、現在処置中)
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)、デトニクス スコアマスター(6/7)@現実、スコアマスターの弾倉(2)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:北沢さんと行動。遠野さんを連れ、自分の怪我の処置後、イベントホールへ向かう。
       2:残りのクラスメイトが気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※首輪からの盗聴の可能性に気付きました。
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(4/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、出刃包丁@現実、.45スコフィールド弾(12)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター、
     モンキーレンチ、コンバットナイフ@現実
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:ラト、遠野さんと行動。
        2:サーシャに会ったらシルヴィアの遺言を伝える。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでが危険人物であると判断しました。
    ※首輪からの盗聴の可能性についてはラトから伝えられています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です
所持品の状況とか銃器の残弾数とかの把握がしんどい、はっきり分かんだね(疲弊)

320 :
ym氏投下乙です!
アイテムの把握ってめんどいですよね…
さて、四字熟語ロワを投下します。
レス規制があるのでキリいいところまでちょびっとづつ投下していく感じで!

321 :
 
「……なんだか、不思議な感じですね」
「え?」
「さっきまで殺し合ってたのに、また手を繋いで歩いて。すごくへんな気分、です」
「……そうだね」
「紆余さんは、優柔不断さんを殺して……わたしも殺そうとしたのに」
「……」
「それ以上のことが起こりすぎて、恨む暇がないですよ。ある意味、卑怯なくらいです」
「……そうだね。きっと優柔不断さんには、めちゃくちゃ恨まれてると思う。
 僕が一生償っても足りないくらい」
「……」
「殺されても、仕方ないくらいのことをした。
 というか……今ここで凛々ちゃんに殺されても、文句は言えないよ」
「……そんな報復じみたこと、わたしはできません」
「……」
「わたしは、絶対に。そんなことはしませんよ」
「……そうだね。たぶん優柔不断さんも、そんなことは望んでないと、思うけどさ」
「いやそれを紆余さんが言うのは……それこそちょっと変な感じですけどね」
「……そっか……そう、だね」
「いえ……しょうがないんですけど。
 だって……わたしを除けばもう、ここでそれを言える人は紆余さんしかいないから」
「……」
「……みんな、いなくなった、から」
「……」
「……」
「……」
「……色んなことが、ありました」
「……だね」
「色んな人が、色んな思いを抱えて、殺し合わされて……わたしたちが、残った。
 なんでだと、思います?」
「……」
「……」
「凛々ちゃんが残ったのは、」
「傍若無人と、一刀両断さんのおかげ。ですか」
「……うん」
「わたしはまだ……把握しきれてないですが、たしかに、ある意味ではそうなのかもしれません」
「……」
「けど、それだって……その作戦だって、成功しなかったかもしれないですよね」
「……」
「優柔不断さんが傍若無人からわたしを助けられなかったり。
 紆余さんが、一刀両断さんの真意に気づけなかったり。
 心機一転や、洒々落々……今と違う展開になる分岐点なんて、いくらでもあったと思います」
「それは、……可能性の話だよ、凛々ちゃん。実際こうなってしまったわけだし……」
「じゃあ紆余さんは、自分が生き残ったのはなんでだと思ってるんですか?」
「……」
「偶然、だとか。運が良かった、だとか。
 そういう話で済ませてしまったら……いけない気がするんです……わたしは」
「……」
「わたしは自分が生き残ったことに、理由が欲しいんですよ」
「理、由」
「そうです。理由、です」
「……」
「……」
「わたしは、わたしが生き残るのにふさわしい人間だったとは、やっぱりどうしても思えません」
「……」
「いっぱい、いっぱい考えました。紆余さんが、一刀両断さんとケリをつけてる間にも。
 スナック菓子を噛みながらわたし、沢山考えたんです」
「……」
「でも、どうしてわたしが生き残ったのか……答えは、出ませんでした」

322 :
「……」
「紆余さんは、どうですか?」
「……」
「……紆余さんは……どうして自分が生き残れたと、思いますか?」
「……」
「……」
「……そう、だね……」
「……」
「それは……きっと、確かな答えは出ない問題だと、思う」
「……」
「タクマさんが、最終戦の前に言ってたんだ。
 もしかしたら自分は、R側に回っていたかもしれないって」
「……」
「戦った凛々ちゃんなら、分かるよね。
 タクマさんは四字熟語になって、善悪より闘いを優先するようになっていた。
 それが曲がりなりにも善い方向に向かっていたのは、老師……東奔西走さんのおかげだ」
「はい」
「偶然の出会いが、それを生んだ。凛々ちゃんに分岐点があったように、
 タクマさんにも、分岐点はあって……奇跡的な偶然が、重なって今がある」
「……」
「そしてもちろん、僕もそう。みんなに分岐点はあった。全部……いろんなことの、積み重ねだ」
「……だから……偶然で、運。ですか?」
「うん。……。
 それも、あるのは。間違いない」
「……も?」
「少なくとも僕は、僕が生き残ったことに関しては……運の要素が大きいと、そう思う。
 ……でも、……僕は、僕と凛々ちゃんには、運が良かったっていうこと以外にも、共通点がある」
「……?」
「……」
「……」
「凛々ちゃんがまだ、なぜそうなったかまでは知らないこと……だよ」
「……ああ」
「……」
「守られていたこと……ですか」
「……そう。僕たちは、守られていた」
「……」
「僕はリョーコさんに。自分を守らせていた。凛々ちゃんは傍若無人に、その命を守られていた。
 命に換えてでも、生き延びさせるって意思を……僕らは誰かから向けられていた」
「……」
「それが、僕らが生き残る展開になった理由……要因のひとつだってことは、疑いようのないことだ」
「……要因」
「……うん」
「守られてたから、生き延びた……」
「……うん」
「それじゃあ……守られていた理由が。伏せられてる、わたしは……?」
「まだ答えを出せない、ってことになる」
「……」
「……」
「…………そう、ですよね……」
「……」
「……分かりました」
「……」
「今の話は……忘れてください。
 また後で考え直します。それよりも、さっきするって決めた話を……」
「……でも」
「……?」
「でも……ええとね、凛々ちゃん。僕から言葉にできることは、まだ……あるよ」
「……」
「……まだ、言わなきゃいけないことが……ある」

323 :
「……何ですか?」
「それは……」
 紆余さんは、そこで少し口を閉ざして、どう言えばいいのかを考え始めました。
 言いたいことはあるけれど、言葉にしづらいものだった、ということでしょう。
 ゆったりと歩く速度を遅め、わたしは紆余さんを待ちます。でも、そんなには待ちませんでした。
 紆余さんは、
 どこか悲しそうな、どこか寂しそうな声で、言いました。

「僕たちは」
「……」
「僕たちは。弱かったって、ことだ」
「……!」

「僕たちは、誰かに守られなきゃいけないくらい、……弱かったってことだ。
 強かったから生き残ったんじゃない、弱かったから、生き残ってしまったんだ。
 心も、体も。弱かったから何も出来なくて。真正面からじゃ闘えなくて。いろんな人に助けられて、
 生き延びて……ううん、そうじゃないな。死にぞこなって。……その結果として、今がある」
「……死にぞこなった……」
「うん。だからさ……それを忘れちゃ、いけないんだ。
 弱い僕たちがこうして生き残れるくらいに。真っ直ぐで優しい人たちに、囲まれていたことも。
 それに甘んじた、自分の弱さも。全部、呑み込んで……強くならなきゃいけない」
 強く成らなきゃ、いけない。それも、切磋琢磨のような数値上の強さじゃない。
 気の遠くなるような数十年後、寿命で死んでいくその時に、
 僕たちが殺してきた人たち、僕たちを生き残らせてくれた人たちに、胸を張って、
 「僕たちが生き残るべきだったんだ」って――そう、いつか言えるような。強い心と、強い生き方。
 最高の人生を。最高の未来を。

「生き残るのにふさわしい人間を。僕たちは、今から目指すんだ」

 と。紆余さんは最後にそう締めくくって、言葉を閉じました。
 わたしは……言葉を全て受け止めつつも。
 どこかで、それは答えにはなってない、はぐらかしだと、思ってもいました。
 ただ弱いから、というだけなら、他にもわたしたちと同じくらい未熟な人はいたかもしれないし、
 弱さを利用していくことを覚悟した紆余さんなんかは、わたしから見たら強い人だったとも思います。
 だから今の答えは……テストの答案なんかに書いてしまったら、きっと大きなバツを貰うでしょう。
 ……でも。
「理由は、後からもぎ取れ、ですか……」
「……だめかな」
「いえ。……いいと思いますよ。すっごい大変で――やりがいのある話、です」
 でもそれと同じくらいにわたしは、いいな、とも思って。
 ただの励ましでもあるだろうその言葉に、実際になんだか、励まされてしまいました。
 完璧じゃない答えでも。間違いな答えでも、それが正解ってこともある。
 わたしは分からないことだらけで俯いていた顔を……少しだけ、上に向けました。
「要は、過去も忘れないけれど、未来に目を向けようって……そういうことですよね?」
「そういうこと……うん、そうだ。大変なのはここからだってことだよ、凛々ちゃん。
 僕たちはここで終わりじゃないんだ」
「……ええ。脱出して、それで終わり……元の暮らしに戻れるだなんて、わたしも思ってないです。
 むしろ、これが始まりだったってくらいの長い戦いが、わたしには降り注ぐのだと、思います」
「……」

324 :
「わたしは……戦い、ますよ」
「僕も……そのつもりだよ。まあ、正直言うと、怖いけどね」
「……怖いのはわたしもです」
「あはは。いやさ、リョーコさんには、頑張るって言ったけど。
 頑張れることも示したつもりだけど。やっぱりどうにも、弱いんだ。
 実際ここから脱出して、その先で……頑張れるのかって考えると、不安で仕方がない」
「……じゃあ……」
「……」
「じゃあ、わたしは、こう言わなきゃいけないですね」
「……?」
「許しませんよ、紆余さん」
「えっ」
「あなたは優柔不断さんを、殺したんですから。
 あなたの辞書にはもう――優柔不断はないはずですよ」
「……あー」
 それは一本取られたな、と、紆余さんは笑って。
「そう言われちゃ、逃げられない。……分かった、もう逃げないし泣かないよ。弱音も吐かない」
「ええ。どんな紆余曲折があろうと。最期は笑って死にましょう」
「うん。約束だ」
 先ほど小さな女の子と紆余さんがそうしていたように。
 わたしと紆余さんもまた、小指と小指を絡ませて、
 何十年もの期限がある誓い(ルール)を、固く固く……取り決めました。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 こうして、こんにちは、が正しいのかもわからない、薄曇りの空の下。
 たくさんの車が並ぶ駐車場の景色の中を、わたしと紆余曲折さんは歩き続けました。
 並ぶ車は赤、青、白、黒、カラーリングに富んでお花畑のようです。
 ハリボテの鉄板だけで作られたそのお花畑には、温度も優しさもありませんが、
 生きることを、戦うことを、望むことを止めないと決めたわたしたちの、
 その周りだけはきっと、暖かかったと思います。

 ◆ 44 ◆
 
 そうして、気持ちを改めて固めたあと、僕はこの寂れた娯楽施設を、
 凛々ちゃんの歩幅に合わせて歩きながら、時間ある限り、喋れるだけのことを喋った。
 一人で歩いたあのスロープ。リョーコさんと過ごしてきた時間。タクマさんと戦ってきた時間。
 優柔不断さんこそ本当のヒーローだとリョーコさんが言っていたことや。
 そのリョーコさんが最後に僕とどんな会話をして、どんな顔で死んでいったのかを、
 全部、伝えた。――最後の場所にたどり着くまでのその回想会話は、長いようで、短かったと思う。

 ◇ ◇ ◇ ◇

325 :
 

 そして僕ら(わたしたち)はたどり着いて。
 そして、そこにあったものを見る(見ます)。
 それは。
 みんなが最初に見たもの。
 □と、/。
 真っ白な紙と、虹色のインクのペンだった(でした)。

.

326 :
投下終了です。
この長さのひたすら会話パートを書くのは初めてかも…
次は明後日投下します。

327 :
続きを投下します。

328 :
 ◇ ◇ ◇ ◇

 駐車場の端の茂みの前に、オーケストラの楽譜立てのようなスタンドが立っていて。
 真四角の紙はスタンドの真ん中に貼りつけられるようにして存在していて、ペンはそのすぐ下にあった。
 紆余曲折が進み出て、そのペンを手に取る。
「何を描くんですか?」
「ちょっとした四字熟語……かな」
 後ろからの質問に、彼は端的な答えを返す。
「なるほど、脱出口は自分で開けってことらしいね。
 悪い夢から醒めるためには、夢と現実の壁を壊す呪文を――って言葉だけは、
 傍若無人のガイドにも書いてあったけど。たぶん、これがそれなんだ」
「夢と現実の、壁を、壊す……」
 勇気凛々は茂みの奥を見る。そう言えば、洒々楽々と娯楽施設を回っていたときに試したことがある。
 この娯楽施設と、その外の街の間には、見えない壁があるのだ。
 その時は単に、ここから自分たちを逃がさないために壁が作られているのだと思っていた。
 しかし、ここが先ほど会った小さな女の子の夢の中だと知った今、
 茂みの奥の壁は、「夢と現実の境界線」という新たな意味を持っていた。
 そして、夢と現実の境界線を、あやふやにする言葉。
 ここが四字熟語バトルロワイヤルの会場だと言うことを踏まえれば、自然と答えは限定される。
 幸いにもその四文字は――教科書で習う、こともある。
「……“わたしは夢の中で、文字になって殺し合いをしていた”。ですか」
「そういうこと。”ふと目覚めてみると、文字じゃない自分がいる”」
「“わたしは文字になった夢を見ていたのか、それとも今の自分は、文字が見ている夢なのか”?」
「今回に限っては、“どちらにしても自分は自分”なんて言いたくないけどね」
 小話の間に、たった四文字の言葉は紆余曲折の手によって、さらさらと描かれていった。

 胡蝶之夢。

 夢と現実の境が曖昧になる四字熟語で、物語。

「よし」
 七色に輝くその文字を、紆余曲折は壁に貼りつける。
 すると壁は波打った。
 はたはたと揺らいで、シャボン玉の表面の乱反射みたいな鮮やかな虹色がくらり廻った。
 不思議と落ち着いた心で、勇気凛々はその現象を見ながら、綺麗だな、と思った。
 儚いくらいに綺麗な夢だ。
 紆余曲折が、こちらを向いて言った。
「じゃあ、ここで出来る最後の謎解きをしようか、凛々ちゃん」
「2人生き残る方法……ですね」
「うん。といっても、単純な言葉の綾なんだ。ルールの紙を見れば、すぐ分かることだよ」
 簡単な話なんだ、と紆余曲折は言い直す。
 デイパックから取り出したルール用紙の冒頭に、それは書いてある。

329 :
 
 『〇、”終了条件”
  この実験の終了条件は、「娯楽施設の中において、最後の一人の生者となること」です。
  最後の一人になった参加者は実験から解放され、後述の記憶操作で失った記憶を取り戻します。』
「この終了条件には、……他の参加者を全員殺せとは書いてない」
「あ……」
 言われてみたら腑に落ちた。
 最初に勇気凛々も、ルール用紙は隅々まで確認していた。
 紆余曲折が指差した冒頭のルールも目を通したことがある。けれどその時は、
 「最後の一人の生者となること」は「他の参加者を全員Rこと」とイコールで結ばれていた。
 でも、今は違う。ふたりいて、一人だけ脱出できるのなら、
 残った一人が優勝者になって、それで終わりだ。
「もっと言うなら、禁止エリアのルールも、娯楽施設の外が禁止エリアだとは書かれていない。
 首輪が爆発する条件(ルール)にも、娯楽施設から外に出ることは書かれていない。
 だからたぶん、首輪が付いたまま脱出しても、これは爆発しないんだ」
「ルールの裏を掻いた、文字通りの抜け道ってわけ、ですか……
 いえ、その表現は少し的確じゃないかもですが」
「そうだね。なにせ、傍若無人が知ってるということは……、すでにこの方法は、
 前回で思いつかれた突破法ってことだろうし。穴があることは向こうも承知の上なんだろうね。
 ルール自体に穴があることに気付けるかまでが、実験の範疇なのかもしれない。
 あるいは、楽しみを残すためにあえて穴を作っている。……そっちのほうが本命、かな……」
 先程の放送を思い出しながら紆余曲折は述懐した。
 ただ、浮かぶ疑問はそれだけではない。
「ところで、さっきの女の子の話も踏まえると。わたしたちは夢の中にいる、ってことでいいんですか?
 言われてみれば、わたしの記憶も寝る直前で途切れていましたけど……」
「……うん。僕も言われて、その可能性を見落としてたことに驚いたんだけど、そうらしい。
 ここはあの子の夢の中……で確定だよ。夢の中で寝たり気絶してたり、
 痛みを感じたり殺しあったりできるなんて、なんだか腑に落ちない話だけどね」
「ここが夢の中なら……夢から醒めたら、ベッドで起き上がる? んでしょうか。
 記憶はどうなるんでしょう?
 胡蝶之夢の主人公みたいに、起きた瞬間に自分本来の姿を取り戻す……?」
「おそらくは、そうなると思う」
「この実験で死んでしまった人達は。どうなるんですか? ここが夢なら、身体は生きている?
 それとも現実の身体が夢の中に連れてこられている? いえ、よしんば身体が生きていたとして、意識は……」
「……それは、傍若無人はたぶん、知っていたんだろうと思う。けど、教えてくれなかったよ」
「じゃあ、優勝者としてここに残った人は……?」
 と、そこまで言って、少し矢継ぎ早に質問しすぎたのを自覚したのか、勇気凛々が申し訳なさそうに目線を下げた。
 紆余曲折は気にしないでいいよ、と言ってからその質問に答える。
「それは教えてくれたよ。優勝者は、――主催の所に連れて行かれる、らしい」
「! ……それなら」
 瞬間、ぴり、と空気が張った。
 勇気凛々が紆余曲折を見上げて、二人は目を合わせる。
「そういう話なら、わたしが残ります」
「いや、――残るのは僕だ」
「――《りんりんソード》!」
 動いた。

330 :
 
 駆け出しながら《りんりんソード》を取り出した勇気凛々は、それを盾として押し込むような動きを取った。
 質量をぶつけることで紆余曲折を脱出口へと押し込もうという狙いだ。
 対する紆余曲折は、どうするか。
 おそらく避けるだろうというのが勇気凛々の読みだった。
 向こうからすれば、《死に急がば回れ》にてこの突進を迂回させ、その間に背後へ回り込み背中を推すだけでいい。
 と思っているはずだ。
 だから、勇気凛々はあえて直前で止まり、その後はただ歩くことにする。
 攻撃ではないから迂回されない。そしてゼロ距離攻撃ならば紆余曲折は迂回させることができない。
 十分に近寄ってから、ゼロ距離で《りんりんソードを柄から顕現させ》、顕現の勢いで紆余曲折の身体を押す。
 そうすれば紆余曲折を後ろに押し出して――。
 しかし、勇気凛々の推測は外れた。
 紆余曲折は勇気凛々の突進に対し、逃げずにただ手を伸ばした。
 ある意味で先の会話での約束の有言実行。
 彼は勇気凛々に向かって、ただ、真っ直ぐに、手を伸ばした。
「……!?」
 次の瞬間、《勇気凛々は、服を掴まれていた》。
「ごめんね。でも。“こっちの戦い”は、僕が貰うよ、凛々ちゃん」
「きゃっ」
 そのくらいは格好つけさせて欲しいんだ、と続けたあと、
 抵抗を試みた勇気凛々のすべての動作を《迂回》で後回しにしながら、
 紆余曲折は小さくあまりにも軽い少女の身体を、力任せに放り投げた。
 あまりにも簡単に、勇気凛々は脱出口へと投げ込まれる。
「う、紆余、さ……」
「大丈夫。傍若無人の書くことには、死ぬことはたぷんないらしいから」
「……わた、しは……こんな……」
「そんな幕切れは望んでない、よね。でも、それも大丈夫だよ。
 僕の推測が正しければだけど――そっちはそっちで、戦うことになるような気がするから」
「……」
「だから……“自分を責めるな、勇気凛々”」
「――?」
「だよ」
 紆余曲折は消えゆく勇気凛々に向かって、これまでとは違う声のトーンで言った。
 誰の言葉なんだ――と聞き返す言葉は、すでに現実へと消えていった口からは発されなかった。
 ゆらゆらと揺れる透明な壁が再び静かに固定されたときにはもう、勇気凛々の姿は無く。
 娯楽施設には一人の生者だけが残った。

                          『――――――ジジジジジ』
「……ふぅ」

 放送が始まる前の、静電気みたいなノイズが彼の耳を突く。
 気にせず、ぐるぐる目の少年はデイパックから、一枚の紙を取り出す。
 今回の実験の、後半の展開を左右したその紙には、
 これから少年がどんな存在に出会うかが……書かれていない。
 傍若無人は、主催については何も記さなかった。
 実験の本意やら、その主催者(奇々怪々は進行役だ)については、ここでも伏せられている。
 おそらくは、記すことが禁じられていたのだろう。
 書かれていたのは盤外のルールについてや、勇気凛々、そして奇々怪々のことについてのみだ。

331 :
 
 主催については、ただ一言――優勝者は主催に引き合わされる、とだけ。
 それだけが書かれている。
 紆余曲折はひとつだけ嘘をついた。
 主催に会っても死なないだろうなんて文言は、実は書かれていないのである。
 さらに言えば、こうも書いてあった。
 “勇気凛々を優勝させ、紆余曲折は脱出しろ”
 “そうすれば紆余曲折だけは、すべての因果から逃れられるはずだ”
 “脱出者には逃げる権利がある”
 “少なくとも――己のようには、ならない”
「さて。どうなるかな……」
 紆余曲折は、立ち向かうことを、選んだのだ。 


『ぴーんぽーんぱーんぽーん、っと。
 さあて、ルール通り娯楽施設の生者が一人になったので、実験を終了しますよ♪
 およそ13時間にわたる実験プログラムの遂行、まことにお疲れさまでした。
 さて。優勝者、紆余曲折さんには。エクストラプログラムとして。
 本実験の主催者である、“天飼千世”様との、――おはなしの時間を、設けます♪』

 こうして、数々の「紆余曲折」を経て。
 四字熟語バトルロワイアルは、終了した。

【四字熟語ロワ Test Finish】
 
【勇気凛々、脱出――残り人数が一名となったことにより】
【紆余曲折、優勝】

332 :
投下終了です。
ついに実験が終わった…
次は明日、「実験結果報告書」を避難所のほうに投下予定です。

333 :
投下乙です
ああ、終わったのか……一応、二人共生きているのか、お疲れ様です!
自分も投下します

334 :
82話 しょくしゅ注意報 其の六 〜絶対侵蝕〜
図書館にて獣人の少女と色黒の男をやり過ごした後、金子翼は会場中央の市街地へ到達し、そこで第二放送を聞く。
大沢木小鉄の名前は、今度も無事呼ばれる事は無く、翼は安堵した。
代わりに担任教師の春巻龍が呼ばれたものの、それについては「ああそう」程度にしか思わなかった。
「良かった、小鉄っちゃん流石、まだ生きてるなんて」
殺し合いに放り込まれても半日以上生き延びているのは流石大沢木小鉄だと翼は改めて感心した。
自分自身も同じように生き延びていたのだが。
「禁止エリアは、一番近いのはE-4……今居るのがD-4かE-4か判断が付けられないなぁ」
新しく指定された四つの禁止エリアの内、最も近いと思われるのは、会場中央市街地の東のほぼ全域を飲み込むE-4エリア。
何しろ、現在位置が、安全なD-4エリアか禁止エリア予定のE-4エリアのどちらなのか断定出来る材料が無い。
「西の方に行けば……」
西、D-4方面に向かえば、一先ずは安全の筈、そう考えた翼はコンパスで方角を確かめて西を目指し歩き始める。
◆◆◆
「ウッソだろお前、信じらんねぇ……蓮の奴が死んじまったなんてよぉ」
市街地にて第二放送を聞いた、原小宮巴、KBTITこと拓也、油谷眞人。
その内、KBTITが大きくショックを受けた様子で言葉を吐き出す。
彼のクラスメイトであり仲の良かった虐待おじさんこと葛城蓮の名前が、先の放送で死者として呼ばれたのだ。
「仲良かったんだっけ? タクヤさんその蓮って人と」
「ああ、缶ビール飲んだり、捕獲したての二十歳の少年を一から調教したり……くっ……」
「……」
涙混じりに蓮との思い出を語るKBTITに「色々突っ込みたいが突っ込んだら負けだろうな」といった視線を送る眞人。
確かこの男は中学生だと言っていなかっただろうか、二十歳は少年では無いだろ、と、やはり心の中で突っ込まずには居られない。
「悲しむ気持ちも分かるけど、今は西の方に行かないと……この辺もE-4かもしれないし」
「ああ、分かってる……」
珍しく巴が優しい口調でKBTITを励ました上で、行動を促す。
現在位置が禁止エリアに指定されたE-4である可能性も否定出来なかった為、急ぐ必要が有った為。
「首輪が爆発して死んじまったら、あの世で蓮に顔向け出来ねぇな……行こうぜ」
「立ち直るの早ぇなおっさん、あっ」
「また言いやがったな、もう許せるぞオイ!」
「許してくれんのかよ(困惑)」
「はいはい、行くよー」
小競り合いしかけたKBTITと眞人を適当に巴があしらう。
そして三人はE-4エリアから遠ざかる為に歩き出した。
◆◆◆

335 :
西へ向かうとは言ったものの、事はそう単純では無い。
市街地の道はいざ目的を持って歩いてみると突き当たりや曲がり角等が多く意外と複雑な構造になっており、
翼は思い通りに西へ進む事が出来ず、少し焦り始めていた。
(今僕はどこに居るんだ? まだE-4なのかそれとも……分からない、もっと西へ……)
もっと西へ行かなければ。
翼は我武者羅に歩き続けた。焦りから碌に辺りを警戒する事もせずに。
それが災いしたのかどうかは分からないが、彼は三人の参加者と遭遇してしまう。
「あら〜君は」
「お? お前……あん時の眼鏡小僧じゃねーかオオン?」
「何だ、知り合いか?」
「!」
しかも翼にとって悪い事に、三人の内二人は、レジャー施設で初遭遇し、図書館でやり過ごした、あの二人。
「逃げんじゃねぇよ!」
色黒の男が逃げる素振りを見せた翼に短機関銃を向けて脅し付ける。
翼はどうする事も出来ず、言う通りにするしか無かった。
「また会えて嬉しいなーボク」
「う……」
「色々聞きたい事は有るんだけど、今はちょっと時間が無いんだよねぇ」
獣人少女の話の内容から察するにこの三人も禁止エリアから避難しようとしているようだ。
なら今すぐ何かされる事は無いかと翼は予測し、そしてそれは当たった。
「だからお姉さん達と一緒に来てくれるかな?」
笑顔でそう言いながらも、散弾銃の銃口をちらつかせ、言う事聞かなければRと暗示する獣人少女。
今すぐ何かはされないにしても自分にとって全く良い方向では無い、翼はそう思った。
今まで上手くやってきたがいよいよ年貢の納め時らしい、そう諦観する翼。
「い、言う事聞きます。聞きますから、撃たないで下さい」
「よーし、言う事聞くんだな? それじゃあ……」
色黒男が何かを言おうとしたが、何故か途中で言葉を切った。
目の前の三人の表情が、どんどん強ばった物になっていく。
自分に対して、では無く、自分の背後を見てそうなっているように見える――――翼は後ろを振り向いた。
「……ア゛ア゛ア゛……」
路地裏からゆっくりと通りに出てくる、全身から触手らしき物が生えた小男の姿が有った。
未知の異形を前に、翼は口をパクパクさせ、悲鳴は疎か言葉すら出てこない。
一体こいつは? どうして全身から触手のような物が?
この時にさっさと逃げてしまえば良かったのかもしれないがこの時の翼はその判断を下す事が出来なかった。
そしてそれが彼の命運を決めてしまう。
「ヴガアアアアア!!!」
触手男が咆哮と共に、右手の触手の束、丸太の如く太い束を凄まじい勢いで翼目掛けて振り下ろす。

336 :
ぶちっ。
縦方向にぺしゃんこに潰され、周囲に赤い液体を飛び散らせて、翼はただの肉の塊になった。
赤くなって、アレになって、ゴミになった。
大切な友人の為にその手を汚す事を決意し戦ってきた老け顔の、やや歪んでいるながらも友達思いの優しい少年、
金子翼は、思い人の大沢木小鉄への別れの言葉を述べる暇すら与えられず、その生涯を終えた。
小鉄と再会しないままRたのは、彼にとって幸か不幸か、もう誰にも分からない。
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  14人】

◆◆◆

再び遭遇した老け顔少年とのやり取りの途中、少年の背後の裏路地入口から現れた異形の存在。
全身から触手が蠢く小男――――それに、老け顔少年は文字通り「叩き潰され」、只の肉塊にされてしまった。
突然現れた未知の存在に、KBTITと眞人のみならずさしもの巴も絶句する。
三人が正気に戻ったのは叩き潰された少年の血のシャワーを浴びてからだった。
「な、何だよ、コイツ……」
「眼鏡小僧……潰されちまったぜオイ……ん? ああ? ひ、ひで!?」
「え? ひで? タクヤさんのクラスメイトの?」
触手男の顔に、KBTITは見覚えが有った。
間違い無く、クラスメイトのひでだ。親友の蓮が良く虐めていたのを覚えている。だがこんな全身から触手など生えていなかった筈だが。
「風変わりな格好だねえ」
「こんな触手なんか生えてなかったっての!」
「おい、そんな事より、どうすんだこいつ」
「決まってるでしょそんなの」
「ひで、何か知らねぇけど、ここで落ちろ!」
巴とKBTITがひでに向けて銃撃を始める。
問答無用で人を殺害している時点で友好的な要素は皆無である事は明白、しかも明確な殺意を抱いている。
なぜひでがこのような状態になっているのかは分からないが、ここでひでを倒さなければ自分達が殺される事は三人共分かっていた。
「であイダいイイ゛!!」
銃弾の雨を浴び、悲鳴を上げて仰け反るひで。
しかし動きを止める気配は無い。
血をアスファルトに撒き散らしながら、ひでは三人目掛け触手を振る。
ビュンッ!!
異様に重い風切り音を立てて振るわれる触手の束。
三人は間一髪でそれを回避する。当たればほぼ確実に骨が持っていかれる、そんな勢いである。
「調子に、乗んな!」
「油谷!」

337 :
眞人が古びたショートソードを構えてひでに向かって行った。
KBTITが制止の声を上げるも、彼は無視した。
こいつを倒さなければ進む事は出来ないだろう、それに自分はどんな相手だろうと退かないと決めたのだ――――そんな思いが、
眞人を未知の触手怪物に立ち向かわせた。
「らあああああっ!」
威勢の良い掛け声と共に、眞人がひで目掛けてショートソードを渾身の力で振った。
ドカッ!!
「ア゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!」
古びているとは言え、相応の力で振られたショートソードの刃は、ひでの右腕を見事に斬り飛ばした。
触手の束ごと、地面に落ちるひでの右腕。
断面から、全身に空いた穴から、夥しい量の血液がアスファルトに流れ落ちる。
しかし、まだひでは倒れない。身体中の血液を殆ど失っている筈なのに、肉体が限界まで損傷していると言うのに。
「まだ死なねぇのかよ、いい加減くたばれ!!」
止めを刺すべく眞人がショートソードを大きく振りかぶった。
次の瞬間、ひでの口から鋭い触手が伸び、眞人の胸を刺し貫く。
彼が、虐待おじさんこと葛城蓮を葬り去ったのと同じ方法で、眞人は致命傷を負った。
「……そんなの、アリか、よ」
倒せると思ったのに。いけると思ったのに。結局、また死ぬのか。
何の因果か二度目の生を与えられたと言うのに、結局自分は――――。
口の端から血の筋を垂らし、自嘲気味の笑みを浮かべ、眞人の意識はゆっくりと遠のいて行った。
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター  死亡】
【残り  13人】
そして、眞人の殺害がひでの最後の抵抗のようだった。
ひでもまた、眞人と同じくアスファルトの上に倒れ、それっきり立ち上がる事は無かった。
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  12人】
「油谷……くそっ」
「あらあら油谷君……でもこの化物も死んだみたいだねぇ」
生き残った巴とKBTIT。
KBTITは眞人の死を多少なりとも悼んでいる様子だが巴は特にそんな素振りも見せず、散弾銃に弾を補充する。
一応巴も、眞人の死は残念には思っていたが、あくまで労働力、いざと言う時の盾が無くなってしまった、と言った意味合いでだ。
元々何か妙な真似をすれば即座に殺そうと考えていたので、その程度の認識である。
「この化物、死んだかな、本当に」
「死んだと思うけどな……」
巴とKBTITはひでの死体へとゆっくり近付く。
近付きながらKBTITは短機関銃のマガジンを交換した。

338 :
「ヴォエ!」
「大丈夫?」
「何とか……」
辺りにはかなりきつい血の臭いが漂い、獣の血を引く巴は平気だったものの普通の人間のKBTITは、
時折込み上げる吐き気を必死に我慢しながら進む事を余儀無くされる。
どうにかひでの死体の元に辿り着き、二人はその身体を軽く蹴ってみたり銃口で啄いてみたりした。
反応は何も無い。
「落ちたな(死亡確認)」
「大丈夫みたいだねぇ」
完全にひでが息絶えていると見て安心する二人。
何故ひでがこのような怪物と化したのかは分からなかったが、放置しておけば間違い無く脅威となっていた事だろう。
「油谷が命と引換に倒してくれて良かったぜ」
「感謝しなきゃねぇ、ありがとうね油谷君」
物言わぬ屍と化した眞人に二人は礼を述べた。
眞人を脅し付けて無理矢理仲間にしたのは無駄では無かったと巴は思う。
◆◆◆
眞人の死体の方へ向き、ひでの死体に背を向けていた二人は気付かない。
ひでの死体から、大きな百足のような血塗れの虫らしき生き物が這い出てくるのに。
「ひで」そのものは確かに死んだ。だが、ひでに巣喰い、彼を怪物へと変貌させた「寄生虫」は、しぶとくも生きていた。
――――この宿主ももう駄目だ、早く次の宿主に移らなければ。
――――こいつで良いか。
「寄生虫」は、次の「宿主」となる者を見定める。
KBTITの太腿の裏へと、跳び付いた。
◆◆◆
「うわ!? 何だオイ!」
「どうし、うわ、デカイ虫」
突然の太腿裏の感触に驚いたKBTIT、そして彼の太腿裏に血塗れの大きな百足のような虫が張り付いているのを確認して顔を顰める巴。
当然、その虫をKBTITはさっさと引き剥がそうとした、が。
「すわわっ!?」
虫は突然凄まじい早さでKBTITの身体を上り、そして。
「エ゛ッ!?」
「あっ」
彼の口をこじ開けたかと思うと、そのまま体内へと消えて行ってしまった。
「ヴォエエエエ!! ヴォエエ!!」
「あらら、大丈夫?」
「ハァ、ハァ……マジかよぉ、あの虫俺の胃袋に入っちまったぜぇ……」
百足(少なくとも二人はそう判断した)が体内に侵入したと言う事実にかなり困惑し、嫌悪感を示すKBTIT。
しかしいくら吐き出そうとしても全く出てくる気配が無かった。
まさか腹をかっ捌いて取り出す訳にも行かず、結局KBTITは自分の胃液が殺虫してくれる事を祈るしか出来なかった。
百足は有毒でありそれが消化吸収されるような事になればただでは済まない筈だがその事に関しては二人共考えは及ばない。

339 :
「頼むから大人しく腹ん中で死んでくれよ……クソッ、何だって人間の身体ん中に」
「虫も人の温もりが恋しかったんじゃない?」
「虫にモテたって嬉しくねぇよ」
「ま、それはそれとして、この、ひで君だっけ? デイパック持ってるし、漁らせて貰おうかな」
「畜生、他人事だと思いやがって……」
所詮他人事だと思って適当に返事をする巴に対しKBTITは恨み言を言う。
それも気にせず巴はひでの持っていたデイパックの中身を漁る。
すると、P90短機関銃と予備弾倉、56式突撃歩槍と予備弾倉、サーベルと、宝の山の如くの内容であった。
「わー大量。ほらほらタクヤさんこれあげるから機嫌直して」
「お前のじゃないだろ、まあ貰うけどな……」
短機関銃は巴、突撃銃とサーベルはKBTITが持った。
眞人の持っていた古びたショートソードも、彼の衣服で血を拭った上で巴が回収する。
「すっかり予定が狂っちゃった……そろそろ行こうか」
「ああ、そうだな」
当初の予定を思い出し、巴とKBTITは再び西方向へ歩き出した。
◆◆◆
「寄生虫」はKBTITの体内に痛みも無く根付き、ゆっくりと侵蝕を開始する。
だが、ひでの時や、その前の宿主、小崎史哉の時のようにすぐには完了しなかった。
――支配に時間が掛かる? どう言う事だ。
――この男は耐性でも持っているのか?
軍事目的で極秘に開発された寄生虫の侵蝕を遅らせるある種の耐性を、KBTITは持っていたらしい。
尤もそのような事は、本人は気付く筈も無い。
それにあくまで「遅らせている」だけだ。
――まあ良い、時間が掛かるだけで、この男もいずれは木偶人形だ。
KBTITの肉体と精神は、ゆっくりと確実に寄生虫によって蝕まれていく。
当人も、同行者の巴も、今はまだ何も気付かない。
気付いた時には、もう手後れ。

340 :
【日中/D-4市街地】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤と血で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、FN P90(0/50)@現実、FN P90の弾倉(4)、古びたショートソード
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。西方向へ向かう。と言うよりE-4から離れられればそれで良い。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤と血で汚れている、「寄生虫」に寄生されている(現段階ではまだ影響無し)
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(3)、56式自動歩槍(25/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター、
     56式自動歩槍の弾倉(4)、 サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴と行動。
        2:残りのクラスメイト、殺し合いに乗っていない参加者を探す。
        3:くっそ、蓮……。
        4:さっきの虫本当に大丈夫か?
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※「寄生虫」に寄生されています。現段階では異常は有りません。しかしその内に重大な事が起こります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
投下終了です。次スレがそろそろ必要か

341 :
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part36 [転載禁止]©2ch.sc
http://hayabusa6.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1425485657/
立てておきました!2chなんか専ブラ?だっけかのルールが変わるらしいけど
ここに問題は発生したりするのかな

342 :
 
「よし、あとは……バックアップ、っと」

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実験結果報告書
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13720/1332255203/695-700
サーバーにアップロードしますか?
 →はい
  いいえ

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 研究用のバックアップサーバーに仮報告書を入れ終わると、白衣の女は一つ伸びをした。
 実験の最終盤、生き残りの被験者たちが休憩と最終戦を行っている時間を利用して
 報告書を先にまとめてしまう試みはギリギリ成功といったところだ。
「……ふう。なんとか間に合いましたかね」
「あれ、雷鳥さん。半分寝ながら報告書も書いたんですか?」
 背伸びと欠伸を終えたところで、
 日も蛍光灯の光も指さぬ暗中の研究室扉がガチャリと開かれ、研究院生の大崎が入ってくる。
 大崎は雷鳥を慕う気持ちは強いが、ずけずけと踏み込んで来る人柄なので、
 基本的に研究者肌な雷鳥は少々苦手にしている。
「ええ」
「さすがです、すごいです。さすが私と以心伝心な雷鳥さんです」
「君と以心伝心にはこれまでもこれからもなりません」
「今、実験中なんでしょう? なのに夢と現実を同時に見れるだなんて……。
 私だったら興奮して夢に没頭しちゃいますのに! 本当にすごいですよ〜」
「半分はしっかり没頭しています。それにかなり神経を使いますから、あまり刺激しないでくださいね。
 予想以上に……疲れがきました……。まだメインイベントが残っているから気力は持っているものの、
 実験全行程を1人で制御するのは、少々骨が折れますね。次はもう少し、監視人員を増やして……」
「あ、それですけど」
「?」
「教授が次は大規模実験にするって言ってたじゃないですか」
「……? ええ、そうですね」
「あれ、めちゃくちゃ大規模らしいですよ」
 机に突っ伏した雷鳥の元にたたたたと近寄りつつ、大崎が弾んだ声で話す。
 めちゃくちゃ大規模、とは研究者らしくないアバウトな言い方で、少し気に障った。 
「五十人程度だと思っていましたが……」
「街一つを貸し切るらしいです! もう充分データは取れたから、実践に移るって……。
 私、そこにいる障害因子への宣戦布告の役を任されてしまいました! すごく楽しみですよ〜」
「……本当(マジ)ですか?」
 大崎の発言に、雷鳥も思わず言葉を崩して驚く。
 基本的に今までの実験は十六人〜二十人で行ってきた。
 次が大規模であるという話は聞いていたが、せいぜい倍か、行って百人だろうという予測だった。
 それが……街一つ? いったい、何人になるというのか?
「――うん。本当だよ。おそらく二千人規模になる」

343 :
 
 疑問への回答はすぐに出た。天飼教授が、部屋の電気を付けながら答えてくれたからだ。
 《どこにでも現れることができる》教授が突然そこにいることには、大崎も雷鳥ももう驚かない。
 ただ、雷鳥はそれでも疑問を重ねずにはいられなかった。
「に、せんにん……ですか? また急に何で」
「前からしようと思ってはいたこと、なんだ。条件がそろわなかったから見送っていたけどね。
 今回の因子の中に、丁度いい紐付けができる因子が居たんだよ。それを使う」
「街一つとなると――隠し通せなくなりませんか?」
「山の中のニュータウンだ。交通の便は電車一線といくつかの舗装山道で確保されているけど、
 密閉はしやすい環境にある。実験後は、有毒ガス発生による集団死で偽装するよ」
「……それで完全に塞げるとは」
「ならない方が、現実的だろうね。《千世の観測》でも良い未来になる確率は2割程度だ」
 博打さ、と教授は笑った。
「もちろん手は打つけど。次が分水嶺だと思ってくれていい。
 成功すれば、一気に理想の未来は近づく。失敗すれば全て終わり。
 それくらいの気持ちでやるつもりだよ――雷鳥もそのほうがやりやすいだろう?」
「何が。教授には何が《見えている》んですか。まさか、教授の未来に……」
「さあ……なんだと思う?」
 早くも大崎は蚊帳の外で、スマホをいじって遊んでいる。
 問いかけるだけ問いかけて、天飼教授もそこでスマホを取り出して時間を確認した。
 雷鳥は何も答えを返せていない。その代わり脳内は非常に早く回転していた。
 そういえば。
 実験開始の直前、流言飛語が仕事をお上に奪われたと漏らしていたのを思い出す。
 最後に彼女が確認しに行く予定だった参加者は。
 そして今回の、最終的な結果。・……なぜ? 《見えていた》のか?
 いや違う。《天飼千世》にそこまでの力はない。確定していないものは、可能性だけ。
 バトルロワイアルは、確定しないものに入る。ならば……。
「時間だ。“送る”よ、雷鳥」
「……ええ」
 思考は打ち切られた。
 どのみち思考しても答えは出ないだろうと、雷鳥はそこで考えるのを止めた。 
 なにぶん、今回の実験までで雷鳥の望みは半分以上もう叶ってしまったことが、
 彼女の追及欲を減退させる一因となっていた。
 そう、メインイベントがまだ終わっていない。
 最後の最後、種明かしの“おはなし”。
 主催と優勝者の”おはなし”の裏で行われる、彼女の最上の望み。
「あの子のベッドのある部屋まで、お願いします」
 それこそが、今回の実験を彼女が進行した理由なのだから。
「――いいや、その前に、先に行く場所があるだろう」
「え?」
 しかし、意気揚々と告げた場所は教授に否定された。
 ワンテンポ遅れて、後ろで大崎が「あ、レアカードゲット〜」と声を震わせた。
 不思議がる雷鳥に向かって、教授はその特徴のない顔の、目の下部分を指差す。
 
「洗面台だよ。お色直し」
 ずいぶん見れない顔になっているからね。と、そう告げて。
 肩を叩いて、“文字”は“ヒト”をねぎらった。
「大詰めだろう、綺麗な顔で行こうじゃないか。……実験監督、お疲れ様」

344 :2015/03/05
あ、タイトルに#を使ったからトリップが変わってしまった
けど投下終了です。意外とまだいけた
エピローグは書け次第……!

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