TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼
ネギまバトルロワイヤル31 〜NBR ]]]T〜
ゆっくりしていってね!!! 創作発表スレ27
リレー小説 気合いで頑張れ
【TS】性転換で創作発表 2【総合】
リレー小説「アメリカ滅亡」
私メリーさん3
魔王「勇者怖くね?」
エルドランシリーズSS総合スレ4
ジャンク屋「ロボットとかバトルとか」
【創作居酒屋】 細雪 Part1

非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part34


1 :2014/02/03 〜 最終レス :2014/07/28
1999年刑行された小説「バトル・ロワイアル」
現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。
基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前の登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などの発表は書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
 〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!
前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part33
http://engawa.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1360577722/l50
非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html

2 :
YAZAWAです。
これが噂のクソスレ?いいじゃない。いい感じじゃない。
何てゆうの、こう、>>1の情熱?魂の叫びって感じ?ソウルってゆうの?
そういうのYAZAWA、嫌いじゃないんだよね。
ここにいる人達、何?2チャンネラーってゆうの?
すごいYAZAWAにインタレスティングもってくれてるわけだけども、
そういうのってさ、YAZAWA的にもやっぱ嬉しいわけよ。
まぁ、YAZAWAとしてはこれからも走り続けるわけで、
それはいくらジジイになろうが、そのスタンスを変えるつもりは、
ダイレクトに言うと、無いわけよ。
ここにいる人達も、何てゆうんだろ、こう、どんなにジジイになってもバカやってるYAZAWAを暖かい目で見守って欲しいよね。
言いたいのはそれだけ。
それじゃあバイバイ。

3 :
50話 砂の城 投下します。

4 :
50話 砂の城
二人の獣人の女子高生が島の役場を訪れる。
一人は犬狼の少女、原小宮巴。もう一人は狐の少女、都賀悠里。
「この島の役場だけど、誰か居るかなー?」
「気を付けて行こう、巴……」
「おーけー」
お互いに散弾銃――――巴はウィンチェスターM1912、悠里はフランキスパス12――――を携え、
役場の中へと入って行った。
そして入るなり、二人の参加者と遭遇する。
紫色の毛皮を持った巨躯の雄犬と、茶髪ツインテールの少女。
少女は巴の悠里に向けて突撃銃を構え、銃口を向けていた。
対する巴と悠里もまた散弾銃を犬と少女に向けて構え、威嚇する。
「何だお前ら……殺し合い乗ってんのか? お?」
紫犬が高圧的な口調で巴と悠里に尋ねる。
巴は一瞬眉をしかめたが、大人しく返答した。
「乗ってないよ。銃向けてんのはそっちが向けてるからだしぃ」
「「……」」
巴の返答を聞いた後、犬と少女が顔を見合わせ、程無くして少女は銃を下ろし犬は警戒の態勢を解く。
信じて貰えたようだ、と、安堵する悠里。巴は相変わらず無表情。
巴と悠里もまた、構えていた散弾銃を下ろした。
巴はともかく、悠里は内心逃げ出したい程に恐怖を感じていた。
「すみません、いきなり銃を向けて……」
ツインテールの少女が巴と悠里に頭を下げる。
「良いよ良いよ。警戒するのはこの状況じゃ当たり前だもんね。
私は原小宮巴。こっちのおっぱい狐のおねーさんが都賀悠里さん」
「おっぱい狐って、まあ、そうだけど……」
「ヒュー、良い女だねぇ」
「ちょっとリクハルド」
「おっと……俺は今呼ばれた通り、リクハルドっつーんだ。
んでこいつが俺の同行者の舘山瑠夏。俺らも殺し合いには乗ってねぇよ」
互いに自己紹介し、殺し合いに乗ってない事を明かす。
「ここにはリクハルドさんと舘山さんの二人だけ?」
悠里がリクハルドと瑠夏に訊くと、二人の表情が少し曇る。
「今は二人だ」
「今は?」
「……説明する」
リクハルドが今までに起こった事を巴と悠里に話す。
この役場へ来た時は江木瀬理奈と言うもう一人の仲間が居て、
ジャスティーナと言う獅子獣人の女による襲撃を受け、瀬理奈は殺されてしまった事。
しかしそのジャスティーナも、リクハルドと瑠夏による性的な拷問の末に、二階女性トイレで首を吊り自害した事。
二人の死体は二階の奥の倉庫に安置していると言う事。
瑠夏が持っている突撃銃はジャスティーナが持っていた武器だと言う事。

5 :
「そんな事があったんだ」
「大変だったね……」
やはり無感動な表情と口調の巴に対し悠里は鎮痛な面持ちで言う。
「リクハルドさんに舘山さんだっけ? 私達もここに居て良いかな?
長い事歩いてきて疲れちゃった。ねぇ? おねーさんも疲れたでしょ?」
「確かにねぇ……良い、かな? 二人共」
「ああ、構わねぇぜ」
「良いですよ。宜しくお願いします」
巴と悠里は、リクハルドと瑠夏と共に島役場に留まる事にした。
……
……
リクハルドは狐少女・都賀悠里の事が性的にとても気になっていた。
長身で爆乳、スタイルは抜群。
更に裸の上にブレザーを羽織り胸元を強調し、ちらりと見えたが穿いていない。
見た目からして性に奔放であろう事は予想がついた。
リクハルドの食指が動くには十分過ぎた。
「ヤりてぇな」
「リクハルド、都賀さんとしたいんでしょ」
瑠夏もリクハルドの気持ちは察していたようで、少し呆れ気味に言った。
「アタリだ。滅茶苦茶良い女だぜ。上玉だぜぇ。
ああ、我慢出来ね……行ってくら!」
「行ってらっしゃい……」
遂に欲望を抑え切れなくなった紫犬は悠里の元へ向かった。
「まあ、リクハルドは私の物って訳じゃないし……」
少しの寂しさと嫉妬を感じた瑠夏はそう自分に言い聞かせた。
そんな事は露知らず、リクハルドは悠里に猛アタックを仕掛ける。
「リクハルドさん?」
「なぁ、悠里、お前……エロい身体に格好してんなぁ……ゲヘヘ……男を誘う格好だよなぁ?」
「……あれ? もしかして……私としたい?」
「話が早ぇじゃねぇか。良いだろ? どうせ普段からヤりまくってんだろぉ? ん?」
「……うふっ、まあね……」
悠里の目が変わる。淫靡な女狐のそれに。
二人は一階奥にある宿直室へと歩き始めた。

6 :
(今まで災難続きだもん、良いよね……)
元々、行為が好きな悠里。この殺し合いで巴と出会った時も自分を慰めていた。
死と隣り合わせな状況にずっと置かれてきたのだから、一時でも良い、快楽に身を任せ自分に褒美を与えても良い筈。
悠里はそう考えた。
途中、巴と遭遇し、悠里は何か難癖をつけられるのではと心配になった。
「おねーさん、リクハルドさんと一緒にどこ行くの?」
「え、あー……」
「ああ、分かった……お盛んだねぇ」
悠里とリクハルドが何をするか察したのか牙を覗かせニヤリと笑う巴。
「うっ、巴……」
「ああ、心配しないで。止めないよ。思う存分楽しんできたら良いよ」
「う、うん」
「お前も一緒にヤるか? 巴。お前も良くみたら中々良い身体してんじゃねぇか。何なら悠里と一緒に可愛がってやっても……」
「私は良いよ」
「ああ? そうか。んじゃ、行こうぜ悠里」
悠里とリクハルドは奥へと消えて行った。
そして暫くして、二人の喘ぎ声が聞こえ始めた。

【午前/D-6/島役場一階】
【原小宮巴】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(4/6)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(12)
[思考]1:殺し合いを潰す。
    2:危険人物は容赦無く排除。
    3:おねーさん(都賀悠里)と行動。
    4:島役場に留まる。リクハルドと舘山瑠夏は信用出来そう?
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。

7 :
【都賀悠里】
[状態]興奮、リクハルドと行為中
[装備]フランキ スパス12(7/7)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(14)
[思考]1:死にたくない。
    2:リクハルドと愉しむ。
    3:巴と行動。
    4:島役場に留まる。リクハルドと舘山瑠夏は信用出来そう?
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
【リクハルド】
[状態]興奮、都賀悠里と行為中
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、暗視ゴーグル、脇差
[思考]1:殺し合う気は無いが襲い掛かってくる者には容赦しない。
    2:悠里と愉しむ。
    3:ルカと行動。
    4:襲い掛かってきたのが良い女だったら犯して食う(食わない場合もある)。
[備考]※特に無し。
【舘山瑠夏】
[状態]健康、リクハルドに若干不満、都賀悠里に若干嫉妬
[装備]56式自動歩槍(20/20)
[持物]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、H&K VP70(13/18)、H&K VP70の弾倉(3)、
    ダン・ウェッソンM715(6/6)、.357マグナム弾(12)、壊れたゲームキューブ本体、除草剤、1メートル定規
[思考]1:殺し合いはしない。
    2:リクハルドったら……都賀さん羨ましい。
    3:暇を見付けてリクハルドと、する。
[備考]※特に無し。

8 :
投下終了です。

9 :
51話 炎上路線 投下します

10 :
51話 炎上路線
貯水池の畔にて休んでいた青飛竜フーベルトゥス、紫髪の少女由比真奈紀、
茶髪ツインテールの少女野沢佳美。
「そろそろ移動した方が良いか?」
フーベルトゥスが真奈紀と佳美に提言する。
貯水池の周りはプレハブの倉庫が有るだけで他は何も無くかなり見晴らしが良い。
つまり自分達の姿が丸見えで、殺し合いと言う状況下ではかなり危険である。
倉庫は固く施錠され中には入れない。
貯水池はいつまでも身を休めるのには適してはいない場所だった。
「そうね」
「でも、どこへ行きますか?」
真奈紀と佳美もフーベルトゥスに同意するが、佳美がフーベルトゥスに行く宛ては有るのか尋ねた。
「そうだなぁ、どうする真奈紀ちゃん」
「え? 私に振るの? 訊かれてるのフーさんなのに」
唐突に話を振られ不満気な真奈紀だったが渋々自分の持物から地図を取り出して行き先を思案する。
「ここは?」
そう言って真奈紀が地図上で指差したのはD-6に有る島役場。
現在自分達が居る貯水池からそう離れてはいない。
「島役場か。だけどどうして島役場を選んだんだ?」
「比較的近いし、人が集まり易そうでしょ? 私達みたいに乗ってない人が来るかも」
「乗ってる奴も来るんじゃないか?」
「そうかもしれないけど、危険を恐れてばかりって訳にも行かないでしょ。
って言うか、私に行き先求めたんだから文句言わないでよ」
「あ……うん、すまん。よし、島役場に行くか……良いかな? 佳美ちゃん」
「はい、大丈夫です」
三人の次の行き先が決定する。
早速三人は出発の準備に取り掛かろうとした。
ガサッ。
「「「!」」」
しかしその時、近くの茂みから物音が聞こえ、三人は茂みを注視する。
「誰かいるのか?」
フーベルトゥスが茂みの方に向かって声を掛ける。
「待って! 殺し合う気は無いから……今からそっちに行くわ」
返事は女の声、それも若い少女の声だった。
茂みから出てきたのは和服風の戦闘服に身を包んだ狐の尻尾と耳を持った少女。
(可愛い……)
一目見てフーベルトゥスは狐耳の少女を襲いたい衝動に駆られたが、
流石に今はそれどころでは無いと自制し少女に問い掛けを行い始める。

11 :
「君、名前は?」
「劉恵晶。字は正宇。恵晶で良いよ」
「そうか、恵晶ちゃん、殺し合う気は無いと言っていたけど、本当か?」
「本当よ」
「ふぅん……どう思う二人共」
真奈紀と佳美の意見も聞こうとするフーベルトゥス。
「うーん、信じても良いんじゃない? もし殺し合いに乗ってて、私達をR気が有るなら、
わざわざ大人しく出てきたりはしないんじゃないかな」
「私も、由比さんと同じ意見です」
「分かった。と言う訳で、恵晶ちゃん、君の言う事を信じる事にする」
「……ありがと」
「俺達も殺し合いする気は無い。俺はフーベルトゥス。まあ見ての通りワイバーンだな。
こっちが俺の仲間の由比真奈紀ちゃんと、野沢佳美ちゃん」
「こんにちは……三人はここで何してたの?」
「休んでたんだよ。北の集落で半竜人の女に殺されそうになったんだ。
そいつから逃げてきて、ここで休んでたって訳」
恵晶に、貯水池に自分達がやってきた経緯を大まかに説明するフーベルトゥス。
ついでに、半竜人女性の特徴も話し始める。
「ふむふむ……黒いロングで、巨乳、手足が緑竜のそれで、角と尻尾有、翼も有ると。
しかも三人殺害している可能性が非常に高いと」
「俺達を襲った時に遣った自動小銃の他にも、爆弾か何か持ってるかもしれない」
「成程ね……」
ふと、恵晶はフーベルトゥスの後方に目をやる。
「……!」
倉庫の陰から何者かが、こちらに向けて何かを投げるのが見えた。
その「何者」かは、ほんの一瞬しか見えなかったが、たった今フーベルトゥスが言った、
半竜人の女性の特徴と合致しているように見えた。
しかし今はそれよりも投げられた物の方が重要だった。
「くっ!」
投げられた物が何なのか、即座に理解した恵晶は横に向かって駆け出した。
三人はなぜ恵晶が突然駆け出したのか、直ぐには理解出来無かった。
理解出来たのは、自分達の傍に黒っぽい拳大の何かがバウンドした時。
その時にはもう全てが遅かったが。
ドガアアアアアアン!!!!
黒っぽい拳大のそれ――――手榴弾は、バウンドした直後に炸裂し、爆炎を巻き起こした。
爆心地のすぐ近くに居た三人は爆風に吹き飛ばされ、炎で焼かれ、破片を全身に受け文字通り「吹き飛んだ」。
大袈裟に悲鳴を上げる間すら無く、三人の身体は黒焦げになり、バラバラになった。
周囲に抉れた地面の土と、三人だった物が降り注ぎ、爆発の衝撃で思わずうつ伏せに倒れ込んだ恵晶にも降り掛かった。

12 :
「……」
伏せていた頭をゆっくりと上げ周囲の様子を伺う恵晶。
土埃と硝煙が巻き起こり、視界は効かない。
火薬と、微かに血肉の臭いがした。
自分は今銃を持っているが、相手の姿が視認出来無い以上迂闊に攻撃するべきでは無い。そう恵晶は判断する。
立ち上がり、恵晶は再び駆け出す。
この現場からの離脱が目的である。
自分が生き残る事こそが第一の目的なのだから、無理をして敵を倒す事は恵晶の行動指針には含まれていなかった。
ダダダダダダッ!!
「くっ!」
銃撃音が聞こえ悪態をつく恵晶。
明らかに自分を狙った発砲である。
「〈殺されてたまるか!!〉」
母国語でそう叫び、恵晶はひたすら走り続けた。
そしてどれぐらい走っただろうか、はぁはぁと息を切らしながら恵晶が立ち止まる。
呼吸を整えつつ周囲を見回すが、追い掛けてきている者は居ない。
遠くに煙が見える、あそこが貯水池だろう。
かなり遠くまで走ってきたと恵晶は思った。
そして、どうやら先程の襲撃者を撒けた、一先ず自分の危機は去ったようだ、とも。
「〈はぁ、はぁ……あの女〉」
恵晶は自分や三人を襲った襲撃者の事を思い返す。
恐らく、フーベルトゥスが言っていた半竜人の女性だと思われた。
ほんの一瞬見えた外見の特徴、爆弾と自動小銃と言う所持武器が一致していた。
確定、では無いが、八割方そうだと考えて良いだろう。
出来るならもう二度と遭いたく無いと、誰かに殺されてはくれないかと恵晶は思う。
「〈あの三人……お気の毒に。もし仲間になれれば私の生存率も上がったんだけどなぁ〉」
複数のグループに入ればそれだけ自分が狙われる確率も減る、そう思って彼女はフーベルトゥス達三人に取り入ろうとしたが、
それも先程の襲撃によって立ち消えになってしまった。
ふと前方を見ると市街地が見える。
東の方には軍事施設跡と思しき物も見えるので現在位置は恐らくC-6であろう。
「〈市街地の方行ってみようか……〉」
恵晶は市街地――――南部集落の方に向かって歩き出した。

13 :
【フーベルトゥス  死亡】
【由比真奈紀  死亡】
【野沢佳美  死亡】
【残り17人】
【午前/C-6/道路】
【劉恵晶】
[状態]疲労(中)
[装備]ノリンコNP-40(10/10)
[持物]基本支給品一式ノリンコNP-40の弾倉(3)、S&W M2(6/6)、.32リムファイア弾(12)
[思考]1:自分が生き残る事を優先する。
    2:弱そうな参加者は脅して装備を奪うか、場合によっては殺害してしまおう。
    3:南部集落へ向かう。
[備考]※貯水池での襲撃者がフーベルトゥスの言っていた半竜人の女性(沢谷千華)であると確信しています。
◆◆◆
「一人逃げられたかぁ……ま、良いや」
小さなクレーターの出来た貯水池の畔で、見るに堪えない状態となった飛竜と少女二人の死体を、
G3A3自動小銃の銃口で啄きながら半竜人の女、沢谷千華は言った。
「あの時逃がした三人とまた会えて、しかも仕留められただけでも良しとしよう。
でも、凄いわねぇ手榴弾の威力……三人の荷物も吹き飛んじゃったけど」
第一回放送前に殺害した男性から入手した、MkII手榴弾。
三発の内二発を使用したが何れも大きな戦果をもたらしてくれた。
後一発残っており、装備しているG3A3自動小銃を始めとして装備も充実している。
武装面で心配する事は無いだろうと千華は考えた。
「さあて、次はどこに行こうかしら……」
次の行き先を思案する千華。
そしてその目に映ったのは、運営本部である学校の先に広がる市街地であった。
【午前/C-5/貯水池】
【沢谷千華】
[状態]背中に二発被弾(盲管銃創だが行動に今の所支障無し)
[装備]H&K G3A3(0/20)
[持物]基本支給品一式、H&K G3の弾倉(3)、マウザーHSc.380ACPモデル(7/7)、
    マウザーHSc.380ACPモデルの弾倉(3)、三十年式銃剣、ニューナンブM60(4/5)、.38スペシャル弾(5)、
    MkII手榴弾(2)、マッチ、ボウイナイフ
[思考]1:面白そうなので、殺し合いに乗る。
    2:次の行き先は……。
[備考]※フーベルトゥス、由比真奈紀、野沢佳美(三人共名前未確認)の死亡を確認しました。
    ※劉恵晶の容姿のみ記憶しました。

14 :
投下終了です

15 :
52話 からっぽな空の下で 投下します。

16 :
52話 からっぽな空の下で
リゾート街にて仲間二人の命と引き換えに、参加者の首輪を手に入れた保土原真耶。
その後仲間二人と襲撃者の装備を回収し、山を迂回して田園地帯に辿り着く。
そこで彼女は空に立ち上る黒煙を発見する。
「あれは?」
焚き火かとも思ったがそれにしては煙の規模が大き過ぎるし、
何よりこの殺し合いの最中に焚き火をしている者が居るとも思えない。
万一に備え右手に大型リボルバータウルスレイジングブルを握り、黒煙の元と思われる場所へ真耶は歩いて向かう。
「何これ……何があったって言うの?」
そこで見付けたのは、全壊し燃え上がっている民家だった。
門柱に「松林」と言う表札が掲げられたその民家は母屋と納屋に分かれていたようだが、
母屋が完全に倒壊し黒煙を上げて炎上していたのだ。
周囲には母屋の物と思しき破片が散らばっており、どうやら爆発したらしかった。
「そう言えばさっき歩いてる時、爆発音みたいなのが聞こえたけど、
ここのだったのかな……多分そうだよね。何が有ったんだろ」
いくら殺し合いの最中とは言え家一軒が爆発するなど余程の事であろう。
爆発物を支給された参加者が、松林家を襲撃したりでもしたのだろうか。
炎上する瓦礫の下には、犠牲者の死体が埋まっている可能性もあった。
「あんま想像したくないや……何も無さそうだし行こう」
いつまでもここにいても仕方無いと、真耶は松林家を後にした。

【午前/D-4・E-4境界線付近/松林家】
【保土原真耶】
[状態]右脇腹に擦過銃創
[装備]タウルスレイジングブル.500S&Wマグナムモデル(4/5)
[持物]基本支給品一式、.500S&Wマグナム弾(10)、スパタ、十八年式村田銃(1/1)、11.15mm×60R弾(7)、
    コルト ジュニア(6/6)、コルト ジュニアの弾倉(3)、コンラートの首輪
[思考]1:殺し合いをする気は無い。
    2:首輪を解析したい。
[備考]※特に無し。

17 :
投下終了です。

18 :
投下終了です

19 :
test

20 :
スーパーお久しぶりですアンド新スレおつです!
四字熟語ロワ38話「最終戦U」投下します。

21 :
「――――――ウオォオオオオオオオオオッ!!!!」
 ばきり。床面がきしむ音がした。
 ぐらり。天井からぶらさがる、シャンデリアから帯を垂らしたようなモニュメントがゆらいだ。
 どど、ど、ど。
 前を見据えた切磋琢磨の放つ威圧感はもはや可視化されて擬音すら成す。
 風が流れる。一流バッターのスイングが風を呼び込むように。
 あるいはトラックの走り抜けた先を風が埋めるように。
 拳に込めた力の流動が、周りの大気さえ震わせて、
 唸りながら、うねりながら、一点目指して吸い込まれていく。
 戦闘開始から数分。早くも放たれるはかつて先手必勝を屠った全力の一撃。
「“拳語り”か。くだらん」
 出し惜しみなどしない赤毛の青年を前に、傍若無人はつまらなそうな顔をした。
「暑苦しいのは苦手でな。語る前に止めさせてもらおう」
 傍若無人は前に斧を突きだす。
 寸分の狂いなく、切磋琢磨の構える拳の先へ。
 凛。
 腕の先端と斧の先端、点と点の衝突は空間に静寂をもたらした。
 拳語り発動せず。爆発しようとしていたエネルギーが、振り切る前に殺された。
 
「……さすが最後の敵なだけはあるな」
「感心している場合か?」
 遅れて、
 拳を振り切れば纏うはずだった風だけが再度現れて、傍若無人の短髪を強く後ろに撫でた。
 そのころにはもうすでに、傍若無人は次の動作に映っていた。
 左で正面を固めながら右で大きく斧を振りかぶる。
「己の斧は――重いぞ」
 傍若無人の斧。両刃の片手斧、全長は大男の片腕とほぼ同じ。
 刃の大きさはそうでもない。柄の太さもそこまででもない。
 大剣のほうの《りんりんソード》と比べても同等かそれ以下といった軽斧の部類だ。
 通常であればその斧から繰り出される斬撃に、重いという言葉には見合わないだろう。
 使い手が傍若無人でなければ。
 重くはならないだろう。
 筋繊維の盛り上がりが見えた。放たれる前に、限界まで引き絞られた弓のようだった。
 切磋琢磨は後ろへ一歩。目はしっかりと斧を見る。
(……“銘”?)
 一瞬、握りこむ手の奥に斧の“銘”が描かれているような気がした。
 気のせいかもしれない。握る指の隙間から少しの窪みが見えて、すぐに見えなくなった。
 視界から消えた。
 切磋琢磨の左腕、肘から手首にかけての部分に一筋の血線が走った。
「!?」
「ガードしたか。だが、己の斧でも傷は付く程度の硬さのようだな」
 感覚信号が痛みを認識すると同時に、遅まきに耳に音が届く。
 斧を振った音、反射で上げた防御腕に斧の刃が掠める音、傷口が生成された音。
 切磋琢磨は一歩下がっていた。その一歩で、斧の射程から逃れているつもりだったのだが。
(思っていたより奴の踏み込みが深かったか――! しかも、“防御”の型に傷をつける威力!)

22 :
支援

23 :
 
 びゅう。遠心力を推進力に、
 振り子の要領で放たれていた二撃目を、切磋琢磨はさらに距離を取って避けた。
 二歩。いや、三歩か。それだけ下がれば確実に避けられる。
 だがそうして下げさせられ続けてはいけない。
 背後では初手の交戦で気絶に追い込まれた二人がまだ倒れている。
 “二人を守りつつ、傍若無人の持つレーダーを時間内に破壊する”
 それが切磋琢磨の勝利条件だ。退くことはできない。
 
(しかも、横に避けるのもダメだ。紆余と一刀両断のほうに向かわせないために、
 俺は奴と向かい合っている必要がある。直線状での戦闘……まるで老師と同じだな)
 一刀両断には「後ろを振り返るなよ」と言われたが、こうも似せられるとやはり思い出してしまう。
 あの優しすぎる最後の掌底、小さくなっていく老師の背中。
 無力だった自分。たくさんの教えてもらったこと。
 強さを求めることの意味。……あれから《強く》なった自分。
「どうした。向かってこないのか。“あれ”は最後まで己に向かって来たぞ」
 切磋琢磨の心境を読んだかのように、傍若無人は東奔西走の話をした。
「あれも不思議なモノだった。ほんの一時間にも満たない邂逅で繋がりを結び、弟子を守ろうと拳を振るう。
 自分の記憶すらおぼつかぬ世界で、他人のために死のうとする。全く、理解に苦しむモノだ。
「……」
「己はな、切磋琢磨。他人のために力を使う、というモノが理解できないのだ」
「……!」
「力とはリソースだ。自分が持てる財産だ。生きていくために、使っていかなければならないものだ。
 他人のために使ってしまえば、そのぶん己は財産を失う。生きづらくなる。
 あれもそうだった。周りなど考えずに全力を自分のために使えば己と渡り合えたものを、
 切磋琢磨と言うモノを守って。くだらない死に方だ」
 傍若無人は淡々と言った。
「そして切磋琢磨もまた、くだらない死に方をする」
「――そんなことはさせない」
 切磋琢磨は彼の言葉に食い下がる。
 あからさまな挑発に熱くなりつつも、握った拳は硬いまま、芯からは動じていない。
「お前の考え方は分かった。やっぱり、名前通りの傍若無人だ。
 “放送”でお前が戦う理由を言ったときから、思ってた。お前は自分のためにしか戦っていない」
「そうだな。己が信じるのは己だけだ。だから強い」
「でもその強さは、孤独だ。昔の老師と同じだ。ひとりぼっちだ。
 俺の信じる強さは……老師が教えてくれた強さは、“ひとりぼっち”のお前には負けない!」
「勝利宣言は勝ってから言うことだ、モノども!」
 恫喝とともに死合は再開する。
 傍若無人は右に構えた斧を引きながら、左の足で前に踏み込む。
 そのまま流れるような動作で前方の虚空に左掌底を放つ。
 二の型・突進、香車の型を使用して空中飛び込み前転していた切磋琢磨は
 掌底のインパクト点で型を解き、ライダーキックへと移行しようとしていた所だった。
「くッ!」
「読めるぞ」
 次に傍若無人は空中の切磋琢磨に向かって斧を縦に振るいつつ
 左の腕は引いてボクサーじみたガード体制に入る。
 切磋琢磨は先の掌底をぎりぎり防御型に移行することでいなすも、空中で勢いを殺されている。
 それでも向かってくる斧を裏拳で弾き、反発でサイドに重心を移動。
 視界もおぼつかないまま空中横捻りからの鋭い回し蹴りを放ち、それは傍若無人のガードへと吸い込まれていく。

24 :
支援

25 :
 
「だったら……押し切る!!」
「ぬ……!」
 体勢すら正しくない、普通なら放つことすら困難な回し蹴りだが、切磋琢磨のそれは重い。
 しっかりと固めたガードの上からでも傍若無人の腕をみしみしと鳴らす。
 さらに地面に付くまでの間に、切磋琢磨はもう二撃は放つことが出来てしまうだろう。
 人間の限界点のみならず物理的限界点も越えていく。
 《切磋琢磨》はそういうルール能力だ。きちんとそれを傍若無人は知っている。
 知っているから対処ができる。
 普通ならば苦悶に顔をゆがめてもおかしくないところ、
 傍若無人は涼しい顔をして、右足による蹴り上げ動作。
 落下中の切磋琢磨を飛ばすと見せかけて相手の意識を足へ向け、上方から斧を横薙ぎに振るう。
 薙ぎきった斧に血は付いていない。反動を利用して再度振る。
 空中に軌跡だけが残る。切磋琢磨は全て避けている。だが空中でのさらなる連撃は防いだ、
「一の型待機、解除――起き兎!」
 いつの間にやら切磋琢磨は地面に降り、
 傍若無人の懐へしゃがみからバネ仕掛けのように勢いよく顎下アッパーを放っていた。
 首を軽く横にずらして回避。鼓膜が拳圧で異常な音をたてる。近い。逆に言えば反撃圏内
 「ははっ」、と笑い声がした。
 切磋琢磨は楽しんでいる
 斧をさらに斜めに振るう。当たればどこかを欠損させる斧、
 尋常の相手ならば恐れをなして退く。だが退かない。
 傍若無人の前でいま、極限に戦闘に集中した切磋琢磨は、前に進むことを止めてこない。
 むしろ凶刃を軸に自らの次の攻撃へと繋げている。
 それは紙一重の繰り返し。一ミリでもミスれば即死亡の危うすぎる戦闘組み立て――
「読めて……」
「いても、関係ない!!」
 戦闘組み立ての内容だけをみれば押しているのは明らかに傍若無人だ。
 前回優勝者としての知識と経験、それ以前にもおそらくは軍服を着るような場所で戦闘経験を積んだのだろう、
 切磋琢磨の攻撃を先読みして初動を抑え、場をコントロールし、十全な攻撃ができている。
 なのに相手のHPを削ることができない。自分のHPばかりがガードの上から削られていく。
 立ち回りで完封しているにもかかわらず……単純な戦闘能力のみで、押されている。
「当たればやばい斧、だったら当たらなければいい。
 攻撃が全部読まれている? だったら読み切れなくなるまで、速く! 多く! 拳を打つ!
 がむしゃらでも、めちゃくちゃでも! 進めれば! 前に踏み出せれば、それでいい!!」
「自らを危険にさらすことも厭わぬか……!」
「そうだ。俺はひとりじゃない! 仲間が後ろにいることが、俺を支えてくれる!」
 切磋琢磨はさらに加速した。傍若無人の肩、脇腹、左太もも、同時に打撃音が響く。
 血の線が飛ぶ。三つの打撃と交差した傍若無人の斧は切磋琢磨の右足首を半分斬っていた。
 ぱかりと割れて空気が入る。アキレス腱が逝ったか。痛みを感じる前に次の打撃を叩きこむ。
 拳さえあればいい。
 それだけあれば切磋琢磨はいつまでだって戦っていられる。
「四の型、爆発」
 全てを置き去りにしていい。周りは考えなくていい。
 楽しめばいいと紆余曲折が言った。だからそれだけ、ひとつだけ。
 他を任せることができるから。切磋琢磨は、傍若無人より、《強い》。
「――明眼連武!!」

26 :
 
 考える前に体が動くようだった。最適な状態に握った拳が高速ジャブを連打する。
 斧を両手で横に構え、傍若無人はひとつひとつを捌いてくる。七、八、九、
 十で反撃がくるその前に次の行動に移る。
 斬られた足を強引に地面に叩き付け、
 反動で跳躍しつつ傍若無人の斧の柄をするりと掴み、
 軸にして回転、半月の軌跡を描けば頂点、そこからかかと落としを脳天へと刺す。
 上手くずらして肩で受けられるが、見越して両足で傍若無人の首を絡めにかかる。
 傍若無人はすばやく脱力し、
 切磋琢磨の足のホールドが極まりきる前に下へとしゃがみ抜ける。
 同時に両手を前に突き出して軸斧を動かす。
 さすれば斧を掴んだままの切磋琢磨は後方へ動かされ――るはずだった。
 傍若無人の視界に、掴んだ形のまま外された、グローブの脱け殻が映った。
「……!」
 次いで背中に足裏の感触、すぐに離れてすたりと降りる音。
 さすがの傍若無人も歯噛みする。
 “乗り越えられた”。
 このミスは大男にとってとても大きい。
 アキレス腱のダメージなどモノともせずに走る切磋琢磨には、傍若無人では追いつけない。
 乗り越えられた時点で、レーダーを破壊しに行く切磋琢磨を止めることが出来ないのだ。
 誤算は三つ。
 一つ、仲間を守るかと思われた切磋琢磨が、周りを気にせず攻めてきたこと。
 二つ、我武者羅な攻めから、“倒して”進むのだと傍若無人に思わせ、
 “乗り越える”という選択肢を完全に隠してきたこと。
「……待て、切磋……!?」
 
 そして三つ目は、
 傍若無人が後ろを振り向いたとき、
 レーダーがすでに死体の首から消え、地面に落ちて壊されていて。
 靴を脱ぎ捨て素足となった切磋琢磨が、すぐそばで、拳に風を集めていたこと。
「当たるかは賭けだったけど、案外俺は得意だったのかもしれないな、“靴飛ばし”」
 ばき、ばきり。床面がきしむ音はさらに大きく。
 ぐらり。天井からぶらさがるモニュメントは再びゆらぐ。
 風が流れる。握られた拳へと吸い込まれていく。傍若無人の対応は、間に合わない。
 傍若無人の三つ目の誤算は。
 “切磋琢磨には飛び道具が無い”と、思ってしまったこと。
「さあ、語り合おうぜ傍若無人。お前の強さと、俺の《強さ》を」
「切磋……琢磨……!」
 老師のこと。仲間のこと。
 これまでの戦いのこと。これからの未来への願い。
 切磋琢磨は四の型・爆発、“拳語り”に様々な想いを載せて。
 放つ。
 拳圧が生み出す熱気が視界をゆがませるほどの一撃が、やはり床をみしみしと鳴らす。
 みし、りと。また鳴った床が――ばきり、と。鳴って。
 ばきり?
 ――ばきりって、何の音、
 だ?

27 :
支援

28 :
支援

29 :
 
「……哀れなモノの誤算は一つ」
 視界が下方向にずれていくなかで、
 傍若無人が悠々と、上段に斧を構えながら、言った。
「この場に己が仕掛けたものが、あれで終わりだと思ったことだ」
 床が
 抜けた。

◆◆◆◆

 イモムシのようにもぞもぞと。床からなかなか起き上がれないながらも、
 戦闘が行われている方へ顔を向けようとしていた紆余曲折はそのとき聞いた。
 ばきり。カーペットで覆われた娯楽施設の床、
 切磋琢磨がちょうど居た場所が、踏み込みの力に耐え切れず抜けた音だった。
「……!!」
 本来ならばありえない。 
 カーペットの下はコンクリートのはずだ。床が抜けることなんてない。
 つまり、傍若無人は……斧で破壊し穴を空けた床に上から薄板を張り、
 さらに上からカーペットを敷きなおして、場を平たい床に見せかけていたのだ。
 こうしておけば、必要に応じて斧で簡単に足場崩しができる。
 今回は切磋琢磨の踏み込みが強すぎたせいで自分から罠にかかる形になってしまったが、
 これは「場」を最大限に活かすための傍若無人の当然の手だったのだろう。
 思えば――あの一刀両断vs傍若無人の長い報告の中に、こんな言葉があった。
 傍若無人の斧は床を破壊する威力だったと。
 そこで気づくべきだった。
 傍若無人が床に罠を仕込んでくる可能性に、至るべきだった。
(まずい、な……タクマさんにはもう少し粘ってもらわないといけないんだけど……)
 奥歯にぐっと力を入れて悔しむ。
 レーダーは破壊できたが、切磋琢磨が稼がなければいけない時間はまだ残っている。
 勇気凛々と優柔不断が到着する前に彼が死んだら、作戦は失敗だ。
 耳に届くは――切磋琢磨の唸るような悲鳴。
 傍若無人のあざける様な声もする。
 どうやら、腕に甚大なダメージを入れられたらしい。
 斬られただけならいいが、切り離されている場合はかなり危ない。
 切磋琢磨がここでRば。次に死ぬのは紆余曲折と一刀両断だ。
 ここには死ぬために来たわけではないのに。
(それと……それはどういうことなんですか、リョーコさん……?)
 紆余曲折にとって気がかりなことはもうひとつあった。
 階段下に伏せて完全に動かない一刀両断。
 さまざまな違和感ある行動から傍若無人と繋がっていると思われた彼女は、
 紆余曲折を守る形で傍若無人の攻撃を受け、間違いなく瀕死のダメージを受けてそこに転がっている。
 すべてが杞憂で、繋がりなんてなかったのか?
 それはありえないと紆余曲折は思う。
 でも、この場にて寝返るでもなく、
 いきなり傍若無人の手によって戦線離脱したという事実が、
 紆余曲折の中にあった確信をあやふやなものへと変えていた。

30 :
支援

31 :
 
(本当に……)
 だから紆余曲折は問う。誰にも聞かれないように心の中で。
(……本当に、“うまくいく”ん……です、よね?)
 そのときだった。
 包帯越しに、彼の目は強い明るさを感じた。
 どうやらメインフィールド、切磋琢磨vs傍若無人の状況が、また変わったようだった。

◆◆◆◆

 傍若無人の斧には銘がある。
 四文字のその銘は、かつて先手必勝に支給され、
 いま優柔不断が持つ《百発百中》の銃と大男の斧が同じような武器であることを示している。
 《蟷螂之斧》と名を打たれたこの斧には、さすがジョーカーというべきか、強力な効果があった。
 《絶対の掟たるルール能力に、ささやかな反抗をする》。
 すべてを斬り裂く刃にほんの少し耐えたり、
 強化された肉体の鉄のような防御にもダメージを与えることができるルール能力。
 対四字熟語専用武器と言っても過言ではないこれであれば、
 主催のルール能力によって造られた《娯楽施設》の床を破壊することは容易だった。
「ハァーッ……ハァーッ……」
 この斧の力を使い、床に罠を仕掛けるという案を実行した傍若無人は、
 研ぎ澄ませた上段の一撃によって、罠にかかった切磋琢磨の左腕を肘から断ち切ることに成功した。
 今も血が切断面から床に垂れ続けている。
 処置をしなければ遠からず切磋琢磨は死ぬだろう。そうすれば傍若無人の勝ちはぐっと近くなる。
 しかし。
 それでも。
 
「ハァーッ……」
 傍若無人は目の前に映る七色目の光に、人知れず唾を呑みこむ。
「……俺はまた、《強くなった》。
 腕はやられたけど、これで戦力的にはプラマイゼロだ」
 片腕から紅い血を流しながらも。
 紫色の光の中、乱れた呼吸を再度ととのえて。赤毛の男はしっかりと構えを取る。
 四点流・一の型――待機。
 グローブと靴を捨て、片腕を失ってなお、
 切磋琢磨は基本の構えを崩すことなく傍若無人に対峙する。
「さあ」
 そして言う。
 宣言する。
「……“仕切り直し”だ、傍若無人」

32 :
支援

33 :
 

34 :
遅くなりましたが投下終了です。今年もよろしくお願いします。

35 :
投下乙です こちらこそ宜しくお願いします。
では自分も投下したいと思います。

36 :
53話 手探りでくわえ込む自己欺瞞
表通りの建物の間、細い路地から、赤いTシャツ姿の少年下斗米規介は顔だけを出し、
100メートル程前方の島役場の様子を窺う。
次の訪問先を島役場にしようと考えていた規介だったが、役場の建物の正面玄関付近に人影が発見し、
すぐに路地に身を隠し、様子を窺い始めたのだ。
遠目からで分かりづらいが、ツインテールの少女で、銃を持っているようだった。
玄関で一人武器を持って立っていると言う事は、見張り役だろうか。
(見張り、って事は中に仲間がいんのか?)
見張り役の存在は、島役場建物内に仲間が居ると言う事を示唆していた。
規介は思案する。
例えあの見張り役の少女を倒せたとしてもその時点で中に居る仲間に気付かれ攻撃を受けるだろう。
役場内に何人いるのか、どれ程の武装を持っているのか分からない。
正面からのアプローチは流石に無謀だと、規介は判断する。
ならば役場の裏はどうか。
規介は細い路地を進み、役場の裏手を目指し始める。
そしてどうにか見張りの少女に気付かれないように役場の裏手へやってきた。
「誰もいねぇ」
見張りの姿は見えなかった。
ブロック塀と門柱の先に役場の裏口が見えるだけ。
「見張り置くなら裏にも置いとけっての……行くか」
規介はイングラムM11サブマシンガンのグリップを強く握り締め、裏口へと小走りで走り出す。
ところが、門柱を通り抜けようとした時、足に何かが引っ掛かる感触を感じた。
直後、ガランガランガラン、と音が鳴り響く。
「!?」
驚いた規介が周囲を見回すと、塀の裏で空き缶を縦に連ねたオブジェのような物が激しく揺れて音を鳴らしていた。
そしてそれは釣り糸と思しき糸で繋がっていて、先程の引っ掛かる感触はその糸を自分の足が引っ掛けたためだと、
規介が理解したのとほぼ同時に、裏口の扉が乱暴に開け放たれ紫色の大きな犬が規介に向かって突進する。
「ガアァッ!!」
「うわああぁあ!」
吼えたけりながら犬は規介に飛び掛かる。
咄嗟に右腕で顔を庇う規介だったがその右腕に犬の牙が食い込み、更に後ろに押し倒される。
その際に持っていたイングラムを落としてしまった。
「この糞犬!!」
「グオッ!」
背中を強か打ち付け呼吸困難になり更に右腕に激痛を感じながら、怒声を発して犬を払い除ける規介。
落としたイングラムを必死に探し、そして見付けるとそれを拾おうと立ち上がろうとする。

37 :
「ガルルルルゥ!!」
「うぐおっ!?」
しかし背後から犬の体当たりを受け、再び地面に倒れ込む。
「この野郎……! ……っ!? 何だ、身体が、痺れ……!?」
突然、規介の身体を痺れが襲う。
身体の感覚が麻痺していき、口も上手く回らなくなり身動きが取れ無くなる。
「……リクハルドさんの牙には麻痺毒が有るの。しばらく痺れて動け無くなるよ。
だよね? リクハルドさん」
「ああそうだ」
「……!!」
規介の視界に自分を見下ろす、灰と白の毛皮を持った犬狼獣人の少女が映り込む。
その目には生気が感じられず、感情が読み取れない。
両手で抱えているのはショットガンだった。
「こんにちは、侵入者さん」
「……ッ」
規介は自分の迂闊さを呪った。

◆◆◆

「……へぇ、つまり、殺し合いに乗っていて、もう二人殺していて、私達もR気だったと。
そう言う事だね? 下斗米規介君?」
「……おう」
島役場一階のロビーの柱に、下斗米規介は縛り付けられ、犬狼獣人の少女・原小宮巴による尋問を受けていた。
規介の顔には抓られたりした痕が残っている。
巴の質問にちゃんと答えなければ、巴による拷問が待っていたからだ。
「原小宮さんの作った警報装置が無かったらまずかったですね……」
玄関先で見張っていた舘山瑠夏が言う。
規介が引っ掛かった役場裏口付近の装置は巴が仕掛けた物だった。
空き缶や釣り糸で作った即興の警報装置である。
「作っといて良かったよ。頑張った甲斐が有ったね。
……じゃあ、死のうか?」
散弾銃の銃口を規介の顔に向ける巴。
死を覚悟し、規介が固く目を瞑る。
傍で見ていた狐娘都賀悠里、瑠夏もこれから起こる惨劇を予想して目を逸らす。
リクハルドのみ、平然としていた。

38 :
「……と思ったけど」
しかし、巴は引き金を引かず、銃口を下ろした。
殺されるとばかり思っていた規介は恐る恐る目を開けて、怪訝そうな目で巴を見る。
悠里、リクハルド、瑠夏もまた同様に不思議そうな表情を浮かべていた。
巴は危険人物は容赦無く排除すると言うスタンスを取っていたため、確実に引き金を引くとばかり三人は思っていた。
「ここで撃つと確実に後始末めんどくさいんだよねー。
私達ここを拠点にしてるし……武器も奪ってあるから取り敢えず生かしといてあげる。
変な真似したらすぐにRけどねぇ。後縛ったまんまだから。宜しく」
「……」
呆然とする規介を尻目に、巴は他のメンバーに解散を命じた。
「はぁ……」
取り敢えず命の危機は去ったようだが、武器も奪われ拘束され何も出来無い。
自分が生かされた理由も「拠点を汚したくないから」と言う物で、つまりその気になればいつでもお前を殺せる、
と言う意味でもあった。下手に抵抗すれば容赦無く制裁が加えられるだろう。
今の自分は本当に無力な存在だ、と、規介は苛立ち紛れに溜息をついた。

◆◆◆

「何か、意外だったなぁ」
「何が?」
「いや……巴、間違い無くあの子Rと思ってたから……」
役場一階、視聴覚室にて、巴と悠里が会話する。
悠里が話題に出したのは先程捕縛した侵入者、下斗米規介に巴が下した処遇についてだった。
「さっきも言ったけどさぁ、掃除が大変になっちゃうからね。
ただでさえ二階とか汚れてるのにこれ以上汚したくなかったし、弾も無駄遣いしたくないし。
それに、誰も殺されてないからね」
「……じゃあ、誰か殺されてり怪我させられてたら」
「ああもうそん時は容赦無く、ズドン! してたよ?」
「……はは」
やっぱりこの子は怖い、と、悠里は再確認した。

【午前/D-6/島役場一階】
【原小宮巴】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(4/6)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(12)、イングラムM11(15/32)、
    イングラムM11の弾倉(5)、シグザウエルP226(13/15)、シグザウエルP226の弾倉(3)
[思考]1:殺し合いを潰す。
    2:危険人物は容赦無く排除(但し状況にも依る)
    3:おねーさん(都賀悠里)、舘山さん、リクハルドさんと行動。島役場に留まる。
    4:下斗米規介は後始末が面倒なので取り敢えず殺さないでおく。但し変な真似をしたら即処刑する。
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
    ※島役場裏口付近に特製の警報装置を仕掛けました。

39 :
【都賀悠里】
[状態]健康
[装備]フランキ スパス12(7/7)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(14)
[思考]1:死にたくない。
    2:巴、リクハルドさんと舘山さんと行動。島役場に留まる。
    3:下斗米君は放っておいて大丈夫かな?
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
【リクハルド】
[状態]健康
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、暗視ゴーグル、脇差
[思考]1:殺し合う気は無いが襲い掛かってくる者には容赦しない。
    3:ルカ、巴、悠里と行動。
    4:襲い掛かってきたのが良い女だったら犯して食う(食わない場合もある)。
[備考]※特に無し。
【舘山瑠夏】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(20/20)
[持物]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、H&K VP70(13/18)、H&K VP70の弾倉(3)、
    ダン・ウェッソンM715(6/6)、.357マグナム弾(12)、壊れたゲームキューブ本体、除草剤、1メートル定規
[思考]1:殺し合いはしない。
    2:リクハルド、原小宮さん、都賀さんと行動。
    3:暇を見付けてリクハルドと、する。
[備考]※特に無し。
【下斗米規介】
[状態]右腕に噛み傷、柱に縛り付けられている、屈辱
[装備]無し
[持物]基本支給品一式
[思考]1:畜生……。
    2:何とか逃げられねぇかな……。
[備考]※原小宮巴ら四人に自分の名前は言ってあります。また、四人の名前も聞いています。
    ※麻痺は既に治っています。

40 :
投下終了です

41 :
初めまして。これより此方で非リレーロワ作品を書かせていただく者です。
題名は「混沌ロワイアル」

【ルール】
・参加者48名で殺し合いをし、最後まで生き延びた一人が優勝者として元の世界へと送還される。
・全員が死亡した場合、優勝者なしのゲームオーバーとなる。
・参加者間のやり取りに反則はない。
・優勝者には褒賞として、如何なる願いをも叶える権利が与えられる。
【持ち物】
・基本的にそのキャラクターの固有武器や道具についての没収は無し。
・一人に一つ「ディパック」が支給される。内部は4次元構造となっていて、重量を無視することが可能。
・基本の支給品として、「地図、懐中電灯、コンパス、食糧、参加者名簿、筆記用具」が全員にデフォルトで与えられる。
【放送及び禁止エリア】
・放送は六時間ごとに行われる。
・放送ではその六時間の内に死亡した参加者の名前、そして進入禁止エリアが発表される。
・禁止エリアに侵入すると、15秒のカウントの後首輪が爆発する

【時間表記】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24

1 2 3 4 5 6 7
A 森 森 森 森 川 森 神
B 森 管 森 ネ 川 箱 森
C 森 野 野 野 川 野 野
D 森 野 諏 街 川 学 街
E 野 デ 街 街 橋 ハ 街
F 野 街 街 病 川 川 川
G 野 街 街 街 街 研 街
諏=諏訪原市@Dies Irae
管=管理局本部@魔法少女リリカルなのは
ハ=ハートランド@遊戯王ZEXAL
箱=箱庭学園@めだかボックス
ネ=ネアポリス@ジョジョの奇妙な冒険

42 :
ぽた、ぽた。
雫の滴り落ちる規則的な音声が、絶えず連続している。
最早誰も居なくなった、暗澹と沈み込んだ客席を彭と見やり、男は何を語るでもなく吐息を溢した。
閉ざされた静謐の内では、極々小さな声音さえも大きく響く。
ぼんやりと天窓から差し込む真夜の寂光が照らし出した男の顔(かんばせ)は、端正でありながら一介の人民の其れとは明確に異なっていた。肌は白黒黄の何れにも属さない、ヒトの素肌を彩るには聊か無骨が過ぎよう黒銅色。
鮮烈な朱さを湛えた前髪と、壮麗な輝きをもって靡く黄金の後ろ髪。
八百萬の生命総てを圧して余りある、圧倒的な質量を誇った神の魂を孕む偉丈夫。
彼は一つの世界を統べる者。
影法師が如く暗躍を重ね、己の抱く大望を遂げるべく永きに渡り非道を尽くした悪逆の化身。
本来迎えるべき結末では、この悪神は“希望”の一閃を前に討滅され、消える筈だった。
だが彼はその結末へ叛き、一度は敗れた現実を歪曲させ、暴虐者を体現するような蛮行を催した。
「後は祈るばかりか」
淡白に独りごち、“神”は座椅子の山へ背を向け、やがて虚空へと姿を溶かしていった。
既に、本来会し並ぶ道理がなかった者達は時空、空間の垣根を超えて邂逅を果たしつつある。
最初の魂が召されるまでも、そう時間はかかるまい。
全ては順調に働いている。
く、と堪え切れぬとばかりの微笑を口端から漏らし、今度こそ本当に、客間へ生きている生物は一つたりとも存在しなくなった。
生きている、生物は。
冷たい床へ倒れ臥す、上流階級を思わせる未だあどけなさを残した少女。
本来喉があろう場所には痛ましく大穴が口を開け、今もなお止め処なく少女の血潮を流出させている。
せめてもの幸は、痛みを感じる間もなく終わらせられたことか。
蟲毒の呪術を編んだ者達が本気を出したなら、如何に矜持の高い人物であろうと精神死させる程度は易い。
勇敢に立ち上がり、異を唱え、そして惨殺された少女――神代璃緒、またの名をメラグ。
兄を慕い、気丈に振る舞い、全ての真実を知らされても尚怯え窮することなく生きた彼女は、あまりにも呆気無く死んだ。
だが彼女の死は、決して無意味なものではなかったと言えよう。
彼女の叛意が、彼女の殉死が、賽を投げたのだ。
運否天賦。生きるか死ぬかの遊戯へ、生を求める者達は耽溺することを強いられた。
あまりにもつまらなく、度し難いほど在り来りな序幕を超えて、神が主宰するゲームは開幕した。
それ以上に語ることなど無い。
神が現れ、言った。
貴様達には、殺し合いをして貰う。
蒙昧めらの膿んだ脳味噌はその意を介するのに十数秒もの時を要したが、駄々を捏ねたところで運命は変わらない。
ドン・サウザンドは哀れな蟲毒の毒虫たちへ諧謔の眼差しを向けるでもなく、唯その姿を無感情な瞳で見下ろしていた。
彼の決定は覆らない。殺し合いは直に始まり、ヤツの宣言した勝利条件が満たされない限り終わることはない―――ここまで来れば、誰一人としてドッキリ企画を疑う者なぞありはしなかった。

43 :
そうして立ち上がったのが、神代璃緒。
最初は挑発の口火を切り、余程切羽詰まった状況に置かれていたのか、普段の彼女らしくもない激情を剥き出した。
面倒になる前に、ドン・サウザンドは自身が持ち得る“権限”を行使することで、一歩たりとも動かぬまま彼女を殺害せしめた。
彼女を殺したのは、その細首へ艶めかしく巻き付いた鉄の首輪だ。
首輪の内部には特殊なエネルギーが濃縮されている。
一度爆ぜれば、どんな強靭な肉体の持ち主であろうと確実にR――そういう品物。
殺し合いが激化しなかった場合を踏まえれば、主催者の側からでもゲームを動かせるペナルティシステムの存在は有難い。
殺し合え。
ドン・サウザンドの冷徹な命が下される。
生き抜いたならば、貴様らの望むモノをくれてやろう。
――そうドン・サウザンドが口にした瞬間。
壇上にいた彼からは、何名かの表情があからさまに変異したのをありありと見て取ることが出来た。
それもその筈だ。生き抜く為だけでは動かずとも、願いを叶える大義が絡めばどんな悪にもなる存在を幾らか参加者に潜り込ませたと、“あの男”がひどく楽しそうに言って笑っていたのをよく覚えている。
最後の箍は外され、彼らは抵抗の余地すらも奪われて、蟲毒の舞台へとその身を移された。
Rか、願うか、それとも抗うか。
どう出ようとも構わない。全ては計算の内、予定調和の範疇を出ない道理に過ぎない。
無貌の悪魔が笑い転げる。羽虫の飛舞にもよく似た音質から奏でられる、ノイズめいた巧笑――神に比べればずっとずっと下品で、それゆえに付け入る隙を悟らせない悪辣極まる演出家。
やがて、重厚な鐘の音が響き渡った。
午前零時を告げる音色。即ち、始まりの火蓋は切って落とされたのだ。
回り始めた歯車は、もう誰にも止められない。
―――最後に笑うのは、誰なのか。

【神代璃緒@遊戯王ZEXAL  死亡】

【混沌バトルロワイアル  開幕】

44 :
名簿
【Dies Irae】5/5
○藤井蓮/○遊佐司狼/○ラインハルト・ハイドリヒ/○ヴィルヘルム・エーレンブルグ/○ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン
【魔法少女リリカルなのは】5/5
○高町なのは/○高町ヴィヴィオ/○アインハルト・ストラトス/○ジークリンデ・エレミア/○ファビア・クロゼルグ
【Public Enemy(自作小説)】5/5
○ミネット/○アガメムノン/○アロンダイト/○シオン・ナナクサ/○ノクターン
【遊戯王ZEXAL】5/5
○九十九遊馬/○神代凌牙/○V/○W/○ベクター
【ジョジョの奇妙な冒険】4/4
○ディアボロ/○リゾット・ネェロ/○プロシュート/○ペッシ
【TIGER&BUNNY】4/4
○鏑木・T・虎徹/○バーナビー・ブルックスJr/○ユーリ・ペトロフ/○ジェイク・マルチネス
【アイアンナイト】3/3
○丑鎮鉄兵/○姫神翼/○ユキ
【とある魔術の禁書目録】3/3
○上条当麻/○一方通行/○浜面仕上
【めだかボックス】3/3
○黒神めだか/○球磨川禊/○都城王土
【デート・ア・ライブ】3/3
○五河士道/○夜刀神十香/○時崎狂三
【魔法少女まどか☆マギカ】3/3
○暁美ほむら/○美樹さやか/○佐倉杏子
【ワンパンマン】2/2
○サイタマ/○ガロウ
【デッドマンズQ】1/1
○吉良吉影
【PARADISE LOST】1/1
○ジューダス・ストライフ
48/48

45 :
これにてオープニング及び名簿、ルールなどの投下を終了いたします。
元は別所で進めようかとも思っていたのですが、自作小説や何より体験版しか情報の公開されていないゲームの要素を絡めたりする上では此処が一番適当かと思った次第です。
また、参加者の追加や削除なども気紛れに行う可能性がありますので、ご了承いただければ幸いです。
第一話の投下は プロシュート、ノクターンの二名を予定しております。
それでは、これから何卒よろしくお願い致します。

46 :
新ロワ乙です。
最近過疎気味な非リレーロワなんで新しい書き手さんは大歓迎ですよ!
てな訳で自分も投下します

47 :
54話 VOICELESS SCREAMING
商店街を歩く肥後正則と荒津文護。
無人の商店街は風の通り抜ける音しか聴こえず、自分達の足音が良く響くような気がした。
幾つもの店が軒を連ねているが営業している店は一つも無い。
「人の居ない商店街って結構不気味なんだな」
辺りを見回しながら正則が言う。
隣を歩く文護も同じような事を思っていた。
「確かに……集落なら参加者が多いと思ったけど誰とも遭遇しないな。
まさか俺達以外生き残っていないって事は……」
「それは無いと思うがな……さっき、俺らがやってきた方角、丁度田園地帯の方か?
そこから爆発音聞こえたし……爆発が起きたって事は誰かが何かをしたって事だからな」
「確かにそうだけど……」
「そう言えば、この近くに島役場が有った筈だ。そこなら誰か居るんじゃないか?
行ってみないか荒津」
「そうだな……行ってみようか……」
二人は南部集落に存在する筈の島役場に向かってみる事にした。
◆◆◆
商店街の一角に有る金物屋を、油谷眞人は漁っていた。
歴史の有りそうな古い佇まいのその店には工具や補修材、建築資材の類が一通り揃っていた。
武器として使えそうな物も多い。工具は勿論、スコップや苅込鋏と言った園芸用品、パイプや丸棒と言った建築資材もそう。
眞人は手持ちの武器、大型自動拳銃デザートイーグル.50A.Eの他にいざと言う時の為の予備武器も欲しいと考えていた。
デザートイーグルは非常に威力が高く当てればほぼ一発で相手を仕留められるが、
朝方にサキュバスの少女に対して使ってみた時に、眞人は強烈な反動を感じた。
反動が強ければ連射は利かない。それに眞人は元々銃に関しては素人。
連射云々の以前に反動の抑え方も全く慣れていない。狙っても至近距離以外では外す恐れが大いに有った。
そして外した隙を突かれ返り討ちにされる危険も。
弾の数にも限りが有る。弾が無ければ幾ら強力な拳銃もただの鉄の塊なのである。
そう言った事を考慮すると、緊急用の武器は必要であった。
「こんなんで良いか……」
そして眞人が選んだ物は鉄製の丸棒。
長さ80センチ、直径は2.5センチ程、パイプでは無く中は空洞では無いので重量が有る。
それを自分のデイパックに突っ込む眞人。
「他は……良いか。あんま欲張ってもアレだしな」
他にも武器になりそうな物は当然沢山有るが、欲張って持ち過ぎても邪魔になるだけだと眞人は判断する。
そして予備の武器を手に入れた眞人は金物屋を出ようとした。
「ん?」
だが、ガラス戸の向こうに二人の人影を見かけ眞人の足が止まる。
正確には、一人と一匹――――作業着姿の犬系獣人の男と、灰色の大きな犬。
二人は眞人には気付いていないようだった。

48 :
「早速こいつを試してみるか」
眞人は装備を丸棒に切り替え、そっと入口戸を開き、足音を立てないように外に出る。
自分に気付かず歩く二人の背中を認めた。
「やってやら……」
丸棒を握り締め、眞人は二人に向かって駆け出す。

◆◆◆

背後から足音が聞こえ、正則と文護は後ろを振り向く。
その時にはもう、パイプと思しき物を振りかぶった黒い学ラン姿の少年がすぐそこまで迫っていた。
「!!」
正則は咄嗟に身を伏せる。
直後、数瞬前まで正則の頭部が有った場所をパイプが風切り音を鳴らしながら通り抜けた。
「このっ!!」
「ッ!」
文護が少年に向かって体当たりを仕掛けた。
かなりの勢いで突き飛ばされ、少年はアスファルトの上に転がる、が、すぐに体勢を立て直し、
文護目掛けてパイプを薙ぎ払った。
バキッ!!
「ガァア!!」
鈍い音と共に短い悲鳴を上げて文護が弾き飛ばされた。
「あぐうぅううあああああ」
右頬を押さえながら悶える文護。
上顎の右の牙が折れ、口が血塗れになり、残った左目から涙が滲んでいた。
「荒津!!」
苦しむ文護を見て正則が駆け寄ろうとする。
だが少年がそれを許さない。再び正則に標的を変更し襲い掛かる。
「このガキ!!」
怒声を発し、正則は持っていたアンカライトナイフで少年に反撃を試みる。
既に一人を(不覚とは言え)殺害している正則に今更殺人への抵抗は無かった。
少年に向かってアンカライトナイフを振り回す。
だが。

49 :
ガン!
「ぐうぉあ!!」
正則の右手にパイプがヒットし、その衝撃でナイフは宙を舞い、五メートル程離れた路面に金属音を立てて落ちた。
右手の激痛に悶絶する正則。もしかしたら骨が折れたかもしれない。そう思う程の激痛。
そしてそれが正則に少年が付け入る隙を作らせてしまった。
少年は正則の脳天目掛けてパイプを渾身の力を込め振り下ろした。
「――――――!!!」
視界が大きく揺らぎ意識が一瞬で遠くなる。
路面に叩き付けられ、正則の視界一杯に広がるのは灰色のアスファルト。
いや、赤い雫が飛び散っている。自分の頭から流れ落ちているようだ。
音が遠い。頭痛が酷い。思考が定まらない。
ニ回目の衝撃。
三回目。
四回目。
どこが天で、どこが地なのかも分からない。分かる事はただ一つ。
自分はもう、死ぬ。
死ぬのだ。
死ぬのなら。
死ぬのなら――――会えるだろうか。
先だった妻子に。
それなら、むしろ、こうなった方が幸せでは無いだろうか。
身体中の感覚が消失してゆき、音ももう聞こえなくなり、視界はただ、赤い。
でも、正則にははっきりと見えた。
かつて自分が精一杯の愛情を注いだ妻と息子の笑顔が。
ああそうだ。
仕事が終わって家に帰ってきたのだからちゃんと言わないと。

「ただいま」

ぐしゃっ。

四度目の衝撃。
肥後正則の脳天は完全に破壊され、彼の意識も永遠に消失した。

50 :
【肥後正則  死亡】
【残り16人】

◆◆◆

はぁはぁと肩を上下させながら、眞人はたった今鉄丸棒で撲殺した犬系獣人の男の死体を見下ろす。
何度も殴打した頭部は見るも無残に弾け、アスファルトには血溜りが出来ている。
「エグいな結構……」
自分で作り出した惨状の感想を呟く眞人。
そして、眞人は残っている灰色巨犬の方を向く。
「う……う」
口元を血塗れにした犬はブルブルと震え怯え切った目で眞人を見ていた。
その姿からは戦意は微塵も感じられない。
眞人が血塗れの丸棒を片手に、犬にゆっくり近付く。
「やだ、やだ、やだ、やだやだ、こっ、殺さないで、殺さないで」
「……」
「あああああ!! 殺さないで下さい!! 殺さないで下さい!! 助けて!! やだああああ……殺さないでよぉお!!」
小便を漏らし涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら犬は必死に眞人に命乞いをする。
それを見ている内、眞人は段々と呆れにも似た感情を抱くようになり、犬に対する殺意も薄れていった。
余りの情けない犬の姿に、R気も失せてしまったのである。
「そんなに死にたくねぇのか。んじゃ、助けてやる」
「え……?」
きょとんとした表情を浮かべる犬。
「R気も失せた。どうせお前じゃ長生き出来ねぇだろうし。じゃあな」
嘲るように言うと、眞人は犬を放って歩き始めた。
途中、犬獣人の男が持っていたナイフを拾い、その時、犬の方を振り向く。
犬はブルブル震えているだけで、自分を追ってくる様子は無い。
どうやら本当に戦意を喪失しているようだと眞人は判断し、その場を後にした。

【昼/E-5/南部集落商店街】
【油谷眞人】
[状態]疲労(中)
[装備]鉄製丸棒(調達品、血塗れ)
[持物]基本支給品一式、デザートイーグル(6/7)、デザートイーグルの弾倉(1)、アンカライトナイフ
[思考]1:生き残るために殺し合いに乗る。
    2:次はどこに行こうか……。
[備考]※D-4・E-4境界線付近の松林家の爆発を確認しました。
    ※四人組(東員祐華、伊神嘉晴、レオノーレ、白峰守矢)の容姿のみ記憶、また、四人は死んだと思っています。
    ※荒津文護の容姿のみ記憶しました。

51 :
◆◆◆

「肥後、さん」
少年が立ち去った後、文護はアスファルトに血溜りを作る同行者の元へ近寄る。
頭蓋骨が砕け中身が飛び散った正則は、生きていない事は瞬時に判断出来た。
「……」
しばらく無言で立ち尽くす文護。
「……ふふっ」
しかし唐突に笑い出す。
「あはっ、ハハハハハハハ、ハハハハハハハハ」
涙を流し涎を垂らし、血走った目で笑う文護。
突然殺し合いに巻き込まれ、右目を失い同行者を立て続けに失い牙も一本失い、
彼の精神は最早、限界であった。
笑いながら、ふらふらと、小便と垂らしながら、文護はすぐ近くの肉屋へと入る。
しかし目的は肉などでは無い。陳列された肉を通り過ぎ奥の住居スペースに進入する文護。
居間を乱雑に漁り、見付けた炎上コードを手に取ると、
店舗部分に戻り、同じく見付けてきた椅子に上って天井の梁にコードを括りつける。
そして自分の首にコードを巻き付け外れないように結ぶ。
彼はついさっき、死にたくないがために命乞いをした事すら忘れていた。
「もういいや。もうどうでもいいや」
壊れた笑いを浮かべた犬は。
「これで、おーしまい」
椅子を勢い良く蹴飛ばした。
文護の身体が天井の梁からコードによってぶら下がった。
首に巻かれたコードは容赦無く文護の呼吸と血流を遮断する。
濁った呻き声を発し、泡を吹き、涙と鼻水を垂らして、文護は前足後ろ足をばたつかせる。
ぎりぎりと、梁が軋むが、文護を絞首する延長コードはびくともしなかった。
そして終わりの時が訪れる。
無意識の内に首のコードに両前足を引っ掛け、その体勢のまま文護は動かなくなった。
残った左目は開いたままで、涙を溢れさせ、虚空を見詰め、瞳孔が大きく開いていく。
だらりと開いた口から舌と共に大量の唾液と血反吐が垂れ落ちる。
肉屋の店先に、大きな灰色の犬の肉体が、ゆらりゆらりとぶら下がっていた。

【荒津文護  死亡】
【残り15人】

52 :
投下終了です。
おじさんはねぇ! ケモノがねぇ! 首を吊るって言うシチュが大好きなんだよ!(マジキチ)
……ドン引きしてもいいのよ

53 :
なんでまた落ちてもないのに次スレ立ててんだ

54 :
ん? 「datが存在しません。削除されたかURL間違ってますよ。」
って出たんだが、落ちてないのか……じゃあ修正してこよう

55 :
鯖が変更したんだよ

56 :
お騒がせしてすみませんでした
こっちに投下を続けたいと思います
では投下します

57 :
55話 行き着く果てまで色の無い枯れた未来に水をあげよう
田園地帯での悲劇の後、レオノーレと白峰守矢は東へ進み、南部集落の商店街を訪れていた。
そこで一つの惨状を発見する。
まず、路上に作業着姿の犬系獣人の男性が、頭を潰され血を流して倒れていた。
そしてすぐ近くの肉屋の店先には灰色の大きな犬が首を吊ってぶら下がっている。
「これは酷いわね……何が有ったの?」
「相討ち、って訳では無さそうだけど……うっぷ」
「大丈夫? 守矢君」
二つの死体の凄惨な様を見て気分を悪くする守矢と、それを気遣うレオノーレ。
気分が悪くなるような死体を見たのは島の西のトンネルを通った時以来である。
「何とか大丈夫……でも、ここから早く離れたい」
「そうね……」
二つの死体は形容し難い異臭を漂わせ、この手の死体に守矢よりは慣れているレオノーレでさえも参りそうな程。
とても死体の所持品を漁る気にもなれないため二人は早々に先へ進もうとする。
「ねぇ」
「「!」」
その時、女性の声が聞こえ、二人は声の方向へ顔を向ける。
そこには裸にマフラーと言う出で立ちの、白い毛皮を持った狐獣人の女性が立っていた。
右手には大きなリボルバーを持っている。
「なぜ裸マフラーなのか」と二人共面食らったがすぐに気を取り直し、狐の女性と向き合う。
「私は殺し合いには乗ってないよ」
白狐女性は戦意が無いと二人に告げる。しかしおいそれと信じるのは危険である。
レオノーレと守矢は警戒した。
「本当に乗ってないの?」
レオノーレが白狐女性に尋ねる。
「本当だよ。うーんどうやったら信じてくれるかな……これで良い?」
白狐女性は持っていたデイパックと銃を地面に置き両手を上げる動作をする。
彼女なりの殺し合いに乗っていないと言うアピールだと言う事は二人にもすぐ理解出来た。
「……分かったわ。信じる。良いかな? 守矢君」
「大丈夫だと思う」
正直な所、まだ信じても良いかどうか迷う部分は有ったが、疑ってばかりいてもきりが無い。
二人は白狐女性を信じる事にした。

58 :
「私は保土原真耶って言うの」
「私はレオノーレ、こっちが一緒に行動してる守矢君」
「どうも」
「しかし、これは酷いね……何が有ったの二人共?」
真耶が二つの死体を交互に見て二人に尋ねる。
「ここで話すのも何だから、取り敢えずそこの店の中に入ろう」
死体が二つ放置され、しかも目に付き易い場所で長くなりそうな話をするのは危険と判断し、
レオノーレはすぐ近くに有ったパン屋に入ろうと指差す。
真耶は承諾し、三人はパン屋へと入る。
美味しそうなパンが陳列されていたが三人は特に腹は減っていない。
「さっきの死体だけど、私達が来た時にはもうあんな状態だったわ」
「そうなんだ……本当、この殺し合いは地獄だね……。
田園地帯の爆発してた家と言い……」
「「……!」」
「ん? どうしたの? 二人共」
明らかに二人の顔色が変わり、真耶が少し戸惑う。
「その家、母屋と納屋に分かれてて『松林』って表札が掲げられてなかった?」
「ああ、うん」
「その家、僕達も行ったんです。それで、僕達が行った時に爆発しました」
「ええ? どう言う事?」
「元々僕達は四人で行動してたんです。僕とレオノーレさんと、東員さん、伊神さんって言う二人と。
それで、四人でその家に立ち寄って、僕とレオノーレさんが納屋、東員さんと伊神さんが母屋の方を調べようって事になって。
それで……僕達が納屋を調べてる時に、母屋が爆発したんです」
「突然爆発したの?」
「分からないわ……誰かに爆弾を放り込まれたのかもしれないし、爆弾が仕掛けられてたのかもしれないし。
何が起きたのかは知る由も無いけど、確かなのは、家が爆発して、東員さんと伊神君は死んだって事」
「……」
この二人も自分と同じように仲間を失っているのか、と、心の中で真耶は思った。
そして、真耶は自身がしようと思っている事を二人に話し始める。
「私、首輪を解析して外そうと思ってるの」
「「!」」
「首輪のサンプルも有るよ、ほら」
自分のデイパックから首輪を取り出し二人に見せる真耶。
二人は確かにそれが参加者の首に取り付けられている首輪だと言う事を確認する。
しかし確認すると同時にどうやってこれを手に入れたのか、と言う疑問を二人は抱く。
レオノーレがそれを真耶に尋ねる。
「それ、どうやって……?」
「……死んだ仲間から取った」
「……」
辛そうな表情を浮かべる真耶を見て聞くべきでは無かったかと後悔するレオノーレ。
そもそも首輪を入手すると言う時点で誰か他の参加者が落命していると言う事は予想出来るのだから。
首輪を取るには、その参加者の首を切断でもしない限り不可能。外せないのだから。

59 :
「言い訳するけど、私が殺した訳じゃないよ」
「あ、うん、分かってる。真耶さん疑ってる訳じゃないから」
「なら良いんだけど……」
「あの、保土原さんはこれからどこに行く予定なんですか?」
守矢が真耶に尋ねた。
「取り敢えず工具でも調達して……その後は……特に決めてないなぁ」
「なら私達と一緒に行きましょうよ。首輪を解析するって事は、他の参加者の首輪も外そうとしてるんでしょ?」
「まあ、そう言う事になるかな」
「私達、島役場に行こうと思ってるの。目立つ建物だから、人が集まりやすそうでしょ」
レオノーレが真耶に提案する。守矢もレオノーレと同じ意見のようだった。
真耶はしばし考え、そして返答する。
「そうだね……私も一人で生き残ろうなんて思わないし、良いよ。一緒に行こう」
返答は、レオノーレの提案を受け入れる物だった。
レオノーレと守矢の二人は喜ぶ。
まだ不確定では有るが脱出の糸口になり得る人物と出会えたのだから。
三人は商店街で工具を探した後、島役場へ向かう事にした。
【昼/E-5/南部集落商店街】
【白峰守矢】
[状態]健康
[装備]サバイバルナイフ
[持物]基本支給品一式、ピアノ線
[思考]1:殺し合いはしない。
    2:レオノーレさん、保土原さんと行動する。商店街にて工具を探した後島役場へ向かう。
[備考]※樊欽の外見のみ記憶しました。
    ※油谷眞人の存在には気付いていません。
【レオノーレ】
[状態]健康
[装備]62式7.62mm機関銃(200/200)
[持物]基本支給品一式、7.62mm×51ベルトリンク(200)
[思考]1:殺し合いはしない。
    2:守矢君、保土原さんと行動する。商店街にて工具を探した後島役場へ向かう。
[備考]※樊欽の外見のみ記憶しました。
    ※油谷眞人の存在には気付いていません。
【保土原真耶】
[状態]右脇腹に擦過銃創
[装備]タウルスレイジングブル.500S&Wマグナムモデル(4/5)
[持物]基本支給品一式、.500S&Wマグナム弾(10)、スパタ、十八年式村田銃(1/1)、11.15mm×60R弾(7)、
    コルト ジュニア(6/6)、コルト ジュニアの弾倉(3)、コンラートの首輪
[思考]1:殺し合いをする気は無い。
    2:首輪を解析したい。
    3:レオノーレさん、守矢君と行動。商店街にて工具を探した後島役場へ向かう。
[備考]※特に無し。

60 :
遅れましたが投下終了です

61 :
投下します

62 :
56話 己の居場所は己で作るものなり
E-6、南部集落東端部、変電所付近、二階建ての古い民家。
寝室として使っていると思われる二階の洋間に、バーテンダーの青年七塚史雄は身を潜めていた。
その表情は疲労の色が滲み、着ている制服は皺だらけ、土汚れだらけになっている。
(仕事の服だってのに……しょうがねぇか。自分の命掛かってんだから、服なんて気にしてられねぇよ)
自分の服の状態を見て、史雄は思う。
ここまで汚れてしまうと最早代わりの服を買わなければならないだろうが、
今は数秒先の自分の命すら危うい殺し合いの場、命と服、天秤にかけるまでも無い。
(もうここから動かないようにしよう……)
今居る民家に可能な限り隠れている事を決心する史雄。
当たり前かもしれないが一箇所に留まって動かない方が安全なのである。
動かなければ殺し合いに乗っている者と遭遇する可能性もぐんと低くなる。
向こうが自分の隠れる家に侵入でもしない限りは。だがこの近辺、民家など幾らでも有る為、その中から、
自身が隠れる家に相手が巡り合う確率はかなり低い筈――――史雄はそう考える。
「今は何時だ?」
ふと、壁に掛けられた時計に目をやる史雄。
現在の時刻は午前11時を回った所だ。
殺し合いゲームが始まって丁度11時間が経過したと言う事になる。
後一時間もすれば二回目の放送が始まる。
現在自分を含めて何人が生き残っているのだろうかと史雄は思った。
「ああ、帰りてぇ」
日常に戻りたいと、史雄は切に願う。
先輩に注意されながらも何気無く働いていたあの日常が、今となってはとても懐かしく、恋しい物に思えた。

【昼/E-6/南部集落変電所付近・寺内家】
【七塚史雄】
[状態]疲労(中)、衣服が土で汚れている
[装備]S&W M1(5/7)
[持物]基本支給品一式、.22ショート弾(14)
[思考]1:死にたくない。
    2:今居る民家に出来る限り隠れている。
    3:殺し合いに乗っている奴とは会いたくない。
[備考]※劉恵晶を危険人物だと判断しました。
    ※第一回放送の情報を劉恵晶の地図と名簿より得ました。

63 :
投下終了です

64 :
投下します

65 :
57話 燻る思いは憂い募らせる
島役場には現在、五人の生存者が居る。
その内四人、犬狼獣人少女の原小宮巴、狐獣人少女の都賀悠里、犬型モンスターのリクハルド、ツインテール少女舘山瑠夏は、
殺し合いには乗っておらず、残る一人、ツンツン頭の小柄な少年の下斗米規介は殺し合いに乗ってはいるが、
巴ら四人を襲おうとして捕縛され役場一階の柱に拘束されていた。
「おい、何してんだ」
規介が目の前でぐつぐつ煮え滾るおでんをお椀によそう巴と瑠夏を睨み付けながら言う。
おでん云々はどこから用意したのか知らないが見るからに熱そうであった。
規介は最早嫌な予感しかしなかった。
「何って、お腹空いてるでしょ下斗米君? でもそのままじゃ物食べられないだろうから、私が食べさせてあげる」
「その大根とか凄い汁染みてるよ巴ちゃん」
「イイねぇ」
「やめろ……やめろ……」
「何が? おでん食べさせてあげようとしてるだけじゃん、遠慮なんかしなくて良いんだよ?
ほぉら、こんなに煮えて……美味しそうでしょぉ?」
「やめてくれよ……(絶望)」
規介に逃れる術は無かった。
巴と瑠夏の笑顔は、まさに悪魔の微笑みに思えた。

「ハッ…ハッ…アッー! アーツィ! アーツ! アーツェ! アツゥイ!
ヒュゥー、アッツ! アツウィー、アツーウィ! アツー、アツーェ! すいませへぇぇ〜ん!
アッアッアッ、アツェ! アツェ! アッー、熱いっす! 熱いっす! ーアッ!  熱いっす! 熱いっす!
アツェ! アツイ! アツイ! アツイ! アツイ! アツイ! アー・・・アツイ!」

おでんを美少女二人に食べさせて貰えている少年の悦びの声が役場に木霊した。

◆◆◆

第二回放送時刻である正午12時まで一時間を切った頃。
島役場に新たに三人の生存者が現れた。
ツナギ姿の虎獣人の青年、黒い学生服姿の人間の少年、紺色の毛皮を持ったブレザー姿の狼獣人の少年。
「おにーさん達も、殺し合いには乗ってないの?」
散弾銃を三人に突き付け威圧しながら巴が尋問する。
他にも悠里が同じく散弾銃、瑠夏が突撃銃、リクハルドが長い舌を垂らしながら巴と同じく三人を警戒していた。

66 :
「俺達三人共乗ってない。だから、その、銃を下ろしてくれ。
そんな物向けられたんじゃまともに話も出来ないだろ」
「……そ。分かった」
虎の青年に請われ、巴は向けていた銃口を下ろす。
他の三人も警戒態勢を解いた。
「俺は深谷明治。バイク屋で働いてる」
「長沼陽平っす。中学生です」
「舩田勝隆です。高校生です」
来訪者三人はそれぞれ島役場に居た四人に自己紹介を行う。
それに四人も自己紹介で返すが、柱に縛り付けられている規介は巴からその名前が語られた。
「何で彼は縛られてるんだ?」
明治が巴に規介が縛られている理由を訊く。
口の周りに痛々しい火傷の痕が出来た規介の方へ視線を方に向けながら、巴が答える。
「ああ、下斗米君はね、私達を襲って殺そうとしたから、とっ捕まえてふん縛ってあるって訳。
何かもう二人殺してるらしいよ?」
「「「!」」」
顔色が変わった明治ら三人が規介の方を見る。
規介は無言だが、反抗的な視線を明治達や巴達に送っていた。
「殺しちゃっても良いんだけどね、汚れるし。後片付けがめんどいし。
野放しにする訳にも行かないから、こうやって縛りプレイさせてるんだ。分かったかな?」
「お、おう……所で口に火傷してるようだけど」
「私と舘山さんとでおでん食べさせてあげたんだけど下斗米君ったら遠慮するんだもん。
折角食べさせてあげるって言ってるのに」
「あっ……(察し)」
明治は規介の身に何が起きたのか、十分に察する事が出来た。
……
……
明治は自分が首輪を手に入れてそれを分解して調べた事、そして分解して分かった事を、
紙に書いて巴達四人に伝える。
首輪には盗聴器が仕掛けられており、参加者の会話は全て運営側に筒抜けになっているらしい事。
故にこうして筆談を行っている事。
更に首輪を解除するには精密機械に詳しい者の力が必要不可欠である事。

67 :
〈ここに精密機械に詳しい奴はいないか?〉
そう書いて明治は四人に見せるが四人共首を横に振った。
念の為規介にも見せるがやはり返事は否定。
〈もしかしたらと思ったんだがやっぱりそう甘くはないか〉
人が集まり易い場所ならばもしやと思ったがやはり現実はそう上手く行かないと明治は肩を落とす。
それならば島役場以外の他の生き残りに賭けるしか無い、が、果たして今自分達を除き何人が生き残っているのか。
と言うより、広い会場でいるかどうかも分からない「殺し合いに乗っていない精密機械に詳しい参加者」を捜索するなど、
はっきり言って現実的では無い。
だがここまで来て諦めたくは無いと明治は思う。
脱出の糸口が見えるのに、諦めて殺し合いを受け入れる事などしたくない。
「もうすぐ放送だな」
リクハルドが言う。
皆がロビーの壁に掛けられた古い時計に目をやる。
第二回目の放送の時間がすぐそこまで迫っていた。
取り敢えずは総員、役場にて放送を聞く事となった。

【昼/D-6/島役場】
【原小宮巴】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM1912(4/6)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(12)、イングラムM11(15/32)、
    イングラムM11の弾倉(5)、シグザウエルP226(13/15)、シグザウエルP226の弾倉(3)
[思考]1:殺し合いを潰す。
    2:危険人物は容赦無く排除(但し状況にも依る)
    3:おねーさん(都賀悠里)、舘山さん、リクハルドさんと行動。島役場に留まる。放送を聞く。
    4:下斗米規介は後始末が面倒なので取り敢えず殺さないでおく。但し変な真似をしたら即処刑する。
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
    ※島役場裏口付近に特製の警報装置を仕掛けました。

68 :
【都賀悠里】
[状態]健康
[装備]フランキ スパス12(7/7)
[持物]基本支給品一式(食糧少量消費)、12ゲージショットシェル(14)
[思考]1:死にたくない。
    2:巴、リクハルドさんと舘山さんと行動。島役場に留まる。放送を聞く。
    3:下斗米君は放っておいて大丈夫かな?
[備考]※リクハルドから島役場にて起こった事の顛末を聞きました。
【リクハルド】
[状態]健康
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、暗視ゴーグル、脇差
[思考]1:殺し合う気は無いが襲い掛かってくる者には容赦しない。
    3:ルカ、巴、悠里と行動。放送を聞く。
    4:襲い掛かってきたのが良い女だったら犯して食う(食わない場合もある)。
[備考]※特に無し。
【舘山瑠夏】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(20/20)
[持物]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、H&K VP70(13/18)、H&K VP70の弾倉(3)、
    ダン・ウェッソンM715(6/6)、.357マグナム弾(12)、壊れたゲームキューブ本体、除草剤、1メートル定規
[思考]1:殺し合いはしない。
    2:リクハルド、原小宮さん、都賀さんと行動。放送を聞く。
    3:暇を見付けてリクハルドと、する。
[備考]※特に無し。
【下斗米規介】
[状態]右腕に噛み傷、柱に縛り付けられている、口元に火傷
[装備]無し
[持物]基本支給品一式
[思考]1:何とか逃げられねぇかな……。
[備考]※おでんを食わされ火傷を負いました。

69 :
【深谷明治】
[状態]健康
[装備]ハンティングナイフ
[持物]基本支給品一式、スチールパイプ、分解した首輪(神室さつき、更級亜矢)、工具一式(調達品)
[思考]1:精密機械が理解出来、かつ殺し合いに乗っていない参加者を探す。
    2:島役場に留まって放送を聞く。
[備考]※首輪を分解しましたが内部構造の完全な把握には至っていません。
    ※首輪からの盗聴に気付きました。
【長沼陽平】
[状態]健康
[装備]ステアーAUG(18/30)
[持物]基本支給品一式、ステアーAUGの弾倉(5)、トンファーバトン、村田刀、M67破片手榴弾(1)、
    キャップ火薬鉄砲、キャップ火薬(8発×12)
[思考]1:殺し合いはしたくない。
    2:勝隆、深谷さんと行動。島役場に留まって放送を聞く。
    3:殺し合いに乗っていない参加者(精密機械に詳しい人優先)を探す。
[備考]※勝隆が変態であると認識しました。
    ※首輪からの盗聴に気付きました。
【舩田勝隆】
[状態]興奮
[装備]ベネリM1スーパー90(3/3)、
[持物]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(4)、M67破片手榴弾(1)、災害個人用救急セット、
    長軸ドライバー、カップラーメン詰め合わせ
[思考]1:殺し合いをする気は無い。
    2:陽平、深谷さんと行動。島役場に留まって放送を聞く。
    3:適度に自慰をする、出来れば犯されたい。
    3:殺し合いに乗っていない参加者(精密機械に詳しい人優先)を探す。
[備考]※性的な行動は控えようと考えています。やめようとはしません。

70 :
投下終了です

71 :
投下します

72 :
58話 第二回放送(俺オリロワ3rd)
「なんかダレてきちったなー」
殺し合いの運営責任者を務める狼の男、吉橋寛和は退屈そうに背伸びをする。
彼は殺し合いの運営を何度も任されているが、
最後まで参加者達の動向を見たいと思う程興味がわく時も有れば適当に終わらせてしまいたい程つまらなくなる時も有る。
今回の殺し合いは後者の方に分類された。
特に見所らしい見所も無く、寛和は投げやり気味になってしまっていた。
「ダレてきちゃったんですか?」
寛和の補佐役、黒髪ポニーテールの少女岩岡朋佳が彼の様子を見て言う。
「ダレちった。何かなぁ今回の殺し合いはどうも盛り上がりに欠けるっつーか……。
刺激が足りねぇっつーか……あ、そうだ(唐突)」
「どうしました?」
何かを思いついたらしい寛和。
朋佳を手招きしてその思いついた何かを話す。
それを聞いた朋佳は呆れの籠った笑みを浮かべる。
「あなたと言う人は……本当に酔狂な事を考えますね」
「それ程でも」
「褒めてる訳じゃないです」
「へっへっへっ、それじゃあ、第二回放送の時に生き残りの奴らに伝えるとするか」
「色々準備しなければならない事も有るので、作業員や兵士にも伝えて下さい」
「おう」
寛和は座っていた椅子から立ち上がると、管制システムが置かれている部屋へと向かった。

……
……

そして正午12時、第二回目の放送が始まる。
『はい、お昼だ。二回目の放送始めるぞ。
死んだ奴を先に発表するぞ。

73 :
荒津文護
伊神嘉晴
ヴェロニカ
内水直之
宇都野霊華
江木瀬理奈
上神田ため
コンラート
島田長常
重本あいこ
ジャスティーナ・オールドカースル
ジョン・ブラナー
高谷泰明
東員祐華
西見由妃
丹羽三矢
野沢佳美
菱木晄
肥後正則
フーベルトゥス
由比真奈紀
由木英久
以上22人。残りは15人だな。
んで、禁止エリアなんだが……今回は無しだ。
と言うより、今有る禁止エリアを全て解除する。
何故そんな事をするのかって思うだろ? 思うよな?
具体的にはまだ伏せるが、これからお前らの元に迎えをよこして俺が居る学校へ来て貰う。
今生き残っている全員に、生きて帰る為のチャンスを平等に与えてやるよ。
全員、今居る場所から動かない事。それと迎えが来たら指示に従って行動する事。
下手な真似したら……分かってるよな? 分かるよな?
それじゃあそう言う事で、ハイ、宜しくゥ!』
放送が終わる。
吉橋寛和の真意とは?

【残り15人】

74 :
投下終了です

75 :
投下します

76 :
59話 運営の言うとおり〜はっぴょう〜
放送を聞いた島役場の生存者達は、皆一様に今の放送の内容がよく理解出来ていなかった。
「禁止エリアを解除? 迎えをよこす? 生き残り全員に平等に生きて帰れるチャンス?
何だそりゃ……一体何をしようってんだ?」
陽平が皆が思っている疑問を言葉にする。
放送の中で運営の吉橋寛和は、全ての禁止エリアを解除し、参加者達に迎えをよこし運営本部の学校まで来て貰うと言っていた。
何やら『生存者全員に生還出来るチャンスを与える』らしいが、一体何をしようと言うのだろうか。
分かりはしなかったが、恐らくと言うか間違い無くろくな事では無いと、それだけは全員同じように思っていた。
そして暫くして「迎え」がやってくる。
大きな軍用トラックが、島役場の駐車場に入ってくるのを、島役場のメンバーは確認した。
トラックの中に二人、荷台に二人、合わせて四人の黒い軍服に身を包み自動小銃と軍刀を装備した兵士が乗っている。
駐車場の中央付近でトラックが停車し、兵士達が降りる。そして役場の中へと入っていく。
助手席に乗っていた恐らく四人の中で一番階級が高いと思われる人間の男の兵士が、島役場の生存者達に向かって、
所持品を全て置いてトラックの荷台に乗るように命じる。
「あの、学校に行って何をするんですか?」
悠里が兵士に尋ねるが、
「……詳しい事は学校に行ってから司令自ら話す」
と言うだけで教えては貰えなかった。
所持品を捨てる事に抵抗感は有ったものの、従わなければ殺される事は予想がついたので、全員大人しく従うしか無かった。
拘束されていた下斗米規介も数時間ぶりに自由となる。
原小宮巴、都賀悠里、リクハルド、舘山瑠夏、下斗米規介、深谷明治、長沼陽平、舩田勝隆は、トラックの荷台へと乗り込んだ。
そして、兵士達もトラックに乗り、学校に向けて出発する。

……
……

十数分で学校に到着した。
「総員降車」
「ほら降りろ」
荷台の猫獣人の女性兵士、馬獣人の兵士が巴達に降りるよう命じる。
高圧的な態度に眉を顰める巴達だったが、大人しく従う。
殺し合いが始まってから禁止エリア扱いとなっていた、運営本部の置かれた木造校舎の学校。
広い校庭には銃を携えた兵士十数人が立っている。
妙な動きをすれば即座に射殺されてしまうだろう。

77 :
※タイトルを変更します

「ここで暫く待機。他の生存者もじきここにやってくる」
階級の高い人間兵士が巴達に言う。
その言葉通り、別のトラックが三台、学校にやってきた。
そして荷台から下ろされる生存者。
「何をする気なのかしら……」
「学校……」
「乗り心地悪かった……」
ビキニアーマーの少女、レオノーレ。
金髪の黒竜人少年、白峰守矢。
裸マフラーの白狐女性、保土原真耶。
「何なんだよ……何が起きんだよ」
「……」
バーテンダーの青年、七塚史雄。
狐耳の女傭兵、劉恵晶。
「着いた? よっと……」
「何だってんだ?」
半竜人の女性、沢谷千華。
長身の少年、油谷眞人。
「……これでこの殺し合いの生き残り全員がここに集まったって事か」
明治が集められた参加者の数を数えて言った。
「あら、あなたは」
「よ、よお、また会ったな……」
二度と会いたくないと思っていた劉恵晶に再会してしまい顔が引き攣る史雄。
(ああ? あの二人はあん時の……生きてたのか。他の二人がいねぇって事は、死んだか)
眞人は田園地帯にて目撃した四人組の内の二人、レオノーレと守矢を発見する。

78 :
「はい注目ー」
そして朝礼台の上から一人の狼の男が生存者達に向け声を掛けた。
この殺し合いの運営責任者、吉橋寛和。
朝礼台の後ろの方に岩岡朋佳も立っていた。
生存者達が寛和の方へ注目する。
「こうして直に会うのは開催式の時以来だな。お前らここまで良く頑張った! 64人いた参加者が半日で15人!
ここまで生き抜いたお前らはさぞかし実力と運に恵まれてるんだろうな。
そこでだ、放送でも言ったけど、お前ら15人全員に、生きて帰れるチャンスをやる。
一人一人が、俺とサシで勝負だ」
そう言って握った拳を顔の前に持ってくる寛和。
サシ――一対一を意味する言葉、そして勝負と寛和は言った。
(タイマンでもすんのか?)
眞人が思う。
「あー、安心しろ。サシで勝負っつっても、殴り合いとかじゃねえよ。
女の子も居るしな。じゃあ何で勝負するかって? それは――――」
少し言葉を切って、寛和は「生きて帰れるチャンス」の正体を明かす。

「ジャンケン、だ」

15人はしばし呆気にとられた。
ジャンケン――――わざわざ説明されるまでも無い、グー、チョキ、パーで勝ち負けを決める遊び。
それを今から、生存者一人一人と寛和とでやろうと言うのか。
「お前らが勝てば、その場で首輪を外して、生還決定だ。
だが、俺が勝ったら、無論、そいつは死ぬ。オーケー? ……単純明快で分かりやすいだろ?
要するに『運試し』って訳だ。ここまで生き残ったお前らの『運』を試すのさ」
楽しそうに寛和が弁舌する様を15人は無言で見詰める。
ほぼ全員、その眼差しに込められているのは寛和達に対する怒り。
突然拉致してきて殺し合いをしろと命じて、今度はジャンケンで生き死にを決める。
身勝手と言う言葉では片付けられないその様に、生存者達は怒りを感じずにはいられなかった。
「んじゃあ、ぼちぼち始めっとしますかね。朋佳、頼むぜ」
「はい」
朋佳が朝礼台の上に昇り、ファイルを見ながら生存者達に向かって指示を始める。

79 :
「それでは、今からランダムに名前を呼びます。呼ばれた順に、朝礼台の前へ一列に並んで下さい」
少し間を置いて、朋佳が名前を呼び始める。
「下斗米規介」
「うっ……」
最初が自分だと思ってもいなかった規介は少し面食らうが、すぐに朝礼台の前へ向かう。
「都賀悠里」
「劉恵晶」
「舘山瑠夏」
次々と名前が呼ばれていき、呼ばれた者から並んでいく。
「レオノーレ」
「来たわね……」
「レオノーレさん……」
列へ向かうレオノーレを守矢は不安気な面持ちで見詰めた。
「舩田勝隆」
「七塚史雄」
「保土原真耶」
「長沼陽平」
「原小宮巴」
「深谷明治」
「沢谷千華」
「リクハルド」
「油谷眞人」
「白峰守矢」
最後に守矢が呼ばれ、15人全員が朝礼台の前に一列に並んだ。

80 :
「以上15人、生きる。
……それでは、始めます。審判は私が努めます」
そう言うと朋佳は朝礼台の近くに居た兵士にファイルを渡し、代わりに二つのリモコンらしき物を受け取った。
そして、寛和によって最初のプレイヤーの名前が呼ばれる。
「下斗米規介、まずお前からだ。さあ、上がってこい」
「……っ」
規介がごくりと唾を飲み込み、ゆっくりと朝礼台へと上がって行った。
他の14人は散開し、朝礼台の上での生死を賭けたジャンケンを見守る。

【終了条件変更】

【吉橋寛和に勝ったなら終わり】

81 :
投下終了です。
今回のこの展開は現在週刊少年マガジンで連載している
「神さまは言うとおり弐」が元ネタです

82 :
訂正「神さまの言うとおり弐」でした

83 :
投下します

84 :
59話 ひろかずの言うとおり〜うんだめし〜

朝礼台の上で向かい合う、下斗米規介と吉橋寛和。
「……本当、なんだな?」
「あ?」
規介が寛和に尋ねる。
「本当にあんたにジャンケンで勝てば、生きて帰れるんだな?」
「……ああ。勿論だ。嘘はつかねぇよ」
「……分かった」
「それじゃあ、行くか?」
寛和の問いに、こくりと規介が頷いた。
「セット」
朋佳が開始の合図を送り、二人が身構える。
他の生存者達は固唾を呑んで勝負を見守る。
そして、ついに始まった。

「さーいしょーはグー」

互いに「グー」を出す。

そして。

「ジャーンケーン……」

「ポン」

寛和は「パー」
規介は「パー」
「あいこ」。

「…………〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!」

85 :
ガクガクと規介の身体が大きく震え出し、股間から染みが広がりアンモニア臭のする液体が染み出す。
目から大粒の涙が溢れ、その顔はしわくちゃになってしまった。
(怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいこわいぃいいい!!!)
規介の心は完全に恐怖に支配された。
ジャンケンぐらい彼もやった事はある、だが、「命が掛かっている」と言うだけで、ジャンケンはここまで恐怖を感じるものになるのか。
(こんなにこわかったっけ!? ジャンケンってぇ!?
つーか何だよこれ……殺し合いなんだったんだよぉ!?
俺が二人も殺したのは……生きて帰るためだろうがよぉ!?
なのに、こんな……ジャンケンなんかで決めんなよ……こんなの、完全に運じゃん)

「あーい」

(運に運命、任せるしかねぇじゃん!)

「こーで」

(生きたいじゃん……逃げ道ねぇじゃん)

「しょ」

(出すしかねえじゃんよぉおおお!!!!!!!)

寛和は「グー」
規介は「チョキ」

寛和の勝ち。

ニヤリと、寛和が嗤う。
朋佳が、右手に持ったリモコンを規介に向ける。

「……ふっざけんなよお……」

短い電子音の後、規介の首が飛んだ。

86 :
※もしかしたら途中で連投規制されるかもしれません
【下斗米規介  死亡】

「はい、次ー上がってこー」
死体処理を行う兵士を尻目に、寛和は次のプレイヤーを呼ぶ。
二番手は、都賀悠里。
悠里の身体は小刻みに震え、その顔には恐怖の色が滲んでいた。
行きたくない。やりたくない。でも、やらなければきっと殺される。
「おねーさん」
「……行って、くるね」
巴にそう言うと、悠里は震える足に必死に力を込めて、朝礼台の上に足を進める。
そして、ついさっきまで規介が立っていた場所に立つ。
「おーう、本当にエロい格好、エロい身体だぜ。
こんな状況じゃなければベッドに誘いてぇぐれえだ」
「……どうも」
「……じゃあ、行くか」
「セット」
第二回戦が始まる。
悠里は泣き出しそうなのを必死に堪え、身構えた。
「さーいしょーはグー」
互いにグーを出す。
「ジャーンケーン……」
「う、ああぁあああああああぁあああああ!!!!」
恐怖を振り払うためか自棄になったのか、悠里は叫んだ。
「ポン」

寛和は「グー」
悠里は「パー」

悠里の勝ち。

「……あ……あ」
勝った、と、信じられないものを見るような表情を悠里は浮かべた。
朋佳が左手のリモコンを悠里に向けて操作する。
爆破の時とは異なる電子音の直後、首輪が外れ朝礼台の上に金属音を立てて落ちた。
悠里の首にあった冷たい感触が消える。

87 :
「都賀悠里、生きる。」
朋佳が悠里に告げた。
そして、ギャラリーから歓声がわく。
「やった、やったよぉ……!」
悠里もまた、泣きながら喜びの声をあげた。
「それでは、あちらの方でお待ち下さい」
朋佳が指差した先には「合格者席」と書かれた小さな看板と、ロープによる囲いが有った。
勝った者はあそこで残りの勝負の様子を見届けろと言う事だろう。
兵士二人に誘導される中、悠里は他の生存者、特に、行動を共にした巴達に向かって叫ぶ。
「巴! みんな! 絶対勝って! 勝ってね! 一緒に生き残ろう!!」
それを聞いた巴や他の島役場組も頷く。
とにもかくにも、これで寛和の言葉が嘘では無いと証明された。ジャンケンで寛和に勝てば首輪を外して貰える。
「はい次。劉恵晶。上がってこい」
寛和が恵晶を呼ぶ。
恵晶は覚悟を決め、朝礼台に上る。
(こんな所で死にたくない……ジャンケンに負けて死んだ、なんて……笑い者にも程が有る。
今まで傭兵やってきて、時には身体も売ってきたのは、ここでこんな死に方するためなんかじゃない)
絶対に勝って生き残る、と恵晶は心の中で誓う。
「セット」
そして三回戦が始まる。
「さーいしょーはグー」
「ジャーンケーン」
「ポン」

寛和は「パー」
恵晶は「グー」

寛和の勝ち。

「え、ちょっ……」

血の気の引いたその表情のまま、恵晶の首が宙に舞った。

88 :
【劉恵晶  死亡】

「はい次。舘山瑠夏」
「うぅう……!」
四番手の瑠夏が呼ばれる。
「……行ってくる」
「ああ」
リクハルドにそう告げると、怯えた表情のまま瑠夏は登壇した。
「セット」
「やああぁあちょっと待って! ちょっと待って!」
「さーいしょーはグー」
「ま、まだ心の準備がっ……!」
「ジャーンケーン」
「ポン」

寛和は「チョキ」。
瑠夏は。

「……おい、何だそりゃ」
寛和が呆れた顔で指摘するのは瑠夏の出した手。
パーなのかチョキなのか良く分からないものである。
恐怖と緊張、そして焦燥の余り、瑠夏は自分でも良く分からない手を出してしまった。
寛和に指摘され、自分の手を見る瑠夏。
「……はは、何なんでしょう、これ?」
涙目で寛和に訊く瑠夏。それが彼女の最期の言葉となった。
「ちゃんと出せやボケ」
首と胴体が泣き別れになった瑠夏に向かって吐き捨てるように寛和が言い放った。

【舘山瑠夏  死亡】

「ああ、舘山さん……!」
「……ルカ……っ」
「……」
瑠夏の死に際し悲しみを露わにする合格者席の悠里、そしてリクハルド。
巴は無表情では有ったが少しだけ目を細めたので、その死に決して無関心と言う訳では無いようだった。
「あのな、後出ししたりちゃんと出さなかったりしてもアウトにするからな?
……それじゃあ次、レオノーレ」
「……!」
「レオノーレさん……」
「……大丈夫よ守矢君……絶対、生き残ろうね……」

89 :
朝礼台へと向かうレオノーレを、心配する面持ちで見詰める守矢。
この殺し合いで初めて会った彼女だが、いつ死ぬか分からない中、共に行動してくれた。
身体も重ね、温もりを感じ合った。
死んで欲しくなど無い、生きて欲しいと守矢は願う。
それはレオノーレも同じであった。
朝礼台の上で、寛和と向かい合うレオノーレ。
「またこりゃエロい格好に身体だよなァ。お前、15歳だったっけ? まさにロリ巨乳だな。
お前あの守矢って竜人のガキとヤったんだろ? 気持ち良かったかぁ?
ああ、首輪に盗聴器が有ってな、お前らの会話は聞こえんのよ」
「……気持ち良かったわよ?」
「へえ、正直だな」
「だから、絶対生き残って、もう一度守矢君とする」
「……そうかい」
「セット」
五回戦が始まる。
「頑張れ……レオノーレさん、勝って……勝って!」
守矢はレオノーレに声援を送る。
レオノーレは顔を守矢の方へ向け、微笑みながら頷いた。
「さいーしょーはグー、ジャーンケーン……」
「ポン」

寛和は「グー」。
レオノーレは「チョキ」。

寛和の勝ち。

「あ、あ……レオノーレ、さ……」
絶望の表情を浮かべる守矢。
最期の瞬間、レオノーレは守矢の方を向いて、笑みを浮かべた。

「――――ごめんね、負けちゃった」

笑みを浮かべながら、泣いていた。

そして、首が飛ぶ。

「レオノーレさああああああああああああああああん!!!!」

守矢少年の悲痛な叫びが校庭に響いた。

【レオノーレ  死亡】

90 :
投下終了です

91 :
投下します

92 :
59話 ひろかずの言うとおり〜しんげき〜
「一緒に生き残ろうって……言ったのに……」
レオノーレの敗死を目の当たりにし、落涙する守矢。
そのレオノーレの死体は兵士達によって無造作に片付けられる。
「ここまで五人やって、勝ったの一人だけじゃねぇか……!」
「じゃあ、ここにいる人、殆ど死ぬって事じゃん……!」
余りに無情な現実を前に、絶望感を露にする史雄と真耶。
他の生存者達も――巴と千華は涼しい顔をしていたが――前述の二人と似たような面持ちだった。
ジャンケンで勝てば良い、ただそれだけの事が、生存者達には監獄の塀よりも高い障壁のように思えてならない。
負ければ問答無用で「死」なのだから。
「はい、次」
しかしそんな生存者達の気持ちなどお構いなく、寛和は次の順番の者を呼ぶ。
「舩田勝隆」
「……っ」
紺色狼の少年、舩田勝隆。
「……行ってくるよ、陽平」
「ああ……絶対勝てよ」
朝礼台へ上る勝隆。
その時陽平が見た勝隆の表情は、最初に出会った時とはまるで別人のように凛としていた。
「さて、変態君。気分はどうだ? 首輪から盗聴してたんだけどよ、ちゃーんと聞こえてたぜ?
お前がオナってた時のヨガリ声」
「……そうですか」
やはり聞かれていたのかと思うと、勝隆は少し身体の芯が熱くなったが、自制の心がそれに勝る。
流石に今はそんな場合では無い事ぐらい勝隆も理解していた。
「流石、動じねぇか」
「絶対勝ちますよ。勝って、生きて、また好きな事をするんです」
「……良い目してんなぁお前。あんなヨガリ声あげてた奴と同一人物とは思えねぇ」
強い意志を宿した双眸、そして表情を見て、寛和は感想を述べる。
「よーし、じゃあ宣言してやろう。俺は次、チョキを出す」
唐突に次に出す手を宣言する寛和。
何事かと戸惑う他の生存者達、冷静に寛和を見詰める勝隆。

93 :
「じゃあ、グーを出せば俺は勝てるんですね?」
「ああ」
「……分かりました」
「よぉし……行くぜ?」
「セット」
第六回戦が始まる。
「さーいしょーはグー」
「ジャン」
「ケン」

「なーんてな♪」

ここで、寛和は宣言を反故にした。出した物は「パー」であった。
「ああっ」と、生存者達が絶句する。誰もが勝隆の敗北を覚悟した。
しかし――――勝隆の手には「チョキ」の形になっていた。
「……チッ、反応良いなお前」
「……」
勝隆の首輪が電子音の後に外れ、朝礼台の上に音を立てて落ちる。
「舩田勝隆、生きる。」
朋佳が勝隆に告げ、生存者達から歓声が沸いた。
勝隆は生存者達の方に向き、疲れ切った様子ではあったが笑顔を浮かべ、小さくガッツポーズを決めた。
レオノーレの死で悲しんでいた守矢も、涙を拭いて、ジャンケンに勝利した狼の少年を祝福する。
そして兵士達に連れられ悠里の待つ合格者席へ歩いて行く勝隆。
「みんな! 勝って生き残ろう! 陽平……待ってるから! みんな勝って! 絶対勝って!」
残りの生存者達に向かって、勝隆は精一杯の声援を送った。
それによって、生存者達の心は幾許かではあったが勇気付けられる。
難しい事では無い、ジャンケンに勝てば良い。勝てば生き延びられるのだと。
「はい次! 七塚史雄」
「よっしゃ行くぞォォォオオ!」
大声を張り上げて勢い良く朝礼台へ上がるバーテンダーの青年、七塚史雄。

94 :
「セット。さーいしょーはグー。ジャーンケーン、ポン」
寛和は「チョキ」、史雄は「パー」。
寛和の勝ち。
【七塚史雄  死亡】
「次、保土原真耶」
「真耶さん頑張って!」
「行ってくる! ご主人の元へ絶対帰るんだぁあ!」
守矢の応援を胸に、主人の元に帰るべくゲーム機擬獣人化女性、白狐の保土原真耶は勝負に臨んだ。
「セット。さーいしょーはグー。ジャーンケーン、ポン」
寛和は「パー」、真耶は「グー」。
寛和の勝ち。
【保土原真耶  死亡】
「長沼陽平」
「うおお見てろ勝隆! お前に続くぞぉおお!」
「セット。さーいしょーはグー。ジャーンケーン、ポン」
寛和は「グー」、陽平は「チョキ」。
寛和の勝ち。
「陽平……!」
勝隆の願いも虚しく、長沼陽平の首は宙を舞った。
【長沼陽平  死亡】
「原小宮巴」
「巴! 勝って!」
「おねーさん……」

95 :
悠里が自分を応援するとは思ってなかった巴は少し驚いた表情を浮かべる。
当の悠里も、最初巴と出会った時は、自業自得の部分も有るとは言え殺されかけたのだから印象は最悪だった。
だが以降は共に行動し、自分に危害を加えるどころか気遣ってくれる場面が多くなっていったので、
悠里は巴に対し十分な仲間意識を持つようになっていた。
そして、巴もまた、悠里の事を大切な仲間だと感じていた。
にこり、と、巴が笑みを浮かべる。
今まで殆ど無表情だったが、その笑顔は普通の少女と何ら変わりの無い、屈託の無いものであった。
「巴……」
「頑張るよおねーさん。一緒に生き残ろうね」
「うん、うん……!」

だが。

現実は非情なもので。

寛和は「チョキ」、巴は「パー」。

寛和の勝ち。

「巴ええぇえええ……!!」

首と胴体が別れた犬狼の少女に向かって、悠里は悲痛な叫びを上げた。

【原小宮巴  死亡】

残りは、五人。

96 :
投下終了です

97 :
投下します

98 :
59話 ひろかずの言うとおり〜きょうのよきひに〜
ゲーム運営司令、吉橋寛和とゲームの生存者との生死を賭けたジャンケン対決。
ここまで、2勝8敗。
10人挑戦して勝ったのは、2人。
余りに低過ぎるその勝率に、沢谷千華を除く四人の士気は大いに鈍る。
だがそんな事は関係無いと言わんばかりに、寛和は11番手の深谷明治を呼ぶ。
逃げ出したい気持ちを必死に抑え、明治は朝礼台の上に立った。
「お前、首輪外そうとしてたっぽいな。でも残念だったな。こんな事になっちまって。
まああの首輪は分解したからってそう易々と外し方理解出来るような代物でもねぇんだけど」
「……一つ聞かせてくれ」
「あ?」
「……どうしてこんな事をするんだ? 人の命を何だと思ってる」
震えながらも、明らかな怒りを込めた表情と口調で、明治は寛和に問いかける。
「……何でこんな事をするかって? うーんそうだなぁ、俺らも『上』の言う事に従ってるだけなんだよなぁ」
「……『上』?」
「あんま言えねぇけど俺らの上司と言うか頭よ頭。まあ聞いた話によれば?
『選別』らしーよ? 大勢と戦わせて競い合わせて、優秀な奴を選ぶとか何とか?」
「何だよ、それ……」
「まあ、俺らは実行役だから『上』の考える事なんざ良く分からねーのよ。俺らを問い詰めたって無駄って訳だ。
それより、今重要なのはそれじゃないだろ?」
「……」
寛和の言う通り、今やらなければならない事はこの殺し合いの意義を追求する事では無く、
ジャンケンで勝ち、生き残る事である。
明治は覚悟を決め、身構えた。
「セット」
11回戦の開始。
「さーいしょーはグー」
「ジャーンケーン」
「ポン」
寛和、明治共に「グー」。
「あいこ」である。
「あーいこーで、しょ」
再びあいこ。
「あーいこーで、しょ」
またしてもあいこである。
明治はなりふり構わず絶叫してしまいたかった。
今まで感じた事の無い緊張感、恐怖感で、押し潰されてしまいそうに、気が狂いそうになる。
早く終わってくれ、早く楽にさせてくれと、心の中で明治は叫ぶ。
程無く彼の願いは実現する。

99 :
寛和は「グー」、明治は「チョキ」。
寛和の勝ち。
「あ……」
明治の首もまた、弾け飛んだ。

【深谷明治  死亡】

「ハイ、次だ次。6連勝狙っちゃうよ〜。沢谷千華」
「……」
12番手、半竜人女性、沢谷千華。
今までの勝負を冷静に観戦してきた彼女はいよいよ自分の勝負の番となっても落ち着いていた。
「お前さん、殺害数トップだったぜ。結構戦えるみてぇだけど、何かやってたの? そう言う戦う系の職業みたいなの」
「色々」
「ふーん。塾の社会科講師やってるって聞いたけど……まあ良いか。
それじゃあ行くぜ?」
「良いわ」
「セット」
12回戦の始まり。
「さーいしょーはグー」
「ジャーンケーン」
「ポン」
寛和は「パー」、千華は「チョキ」。
千華の勝ち。
「沢谷千華、生きる。」
「あー連勝記録ストップしちまったか……悪運も強ぇーんだな」
「どうも」
「次! リクハルド! 上がって来い!」
「来たか……」
続いて、13番手、犬型モンスターのリクハルド。
朝礼台の上で後ろ足で立ち上がる、すると丁度人狼種の獣人のような格好になった。
「お前、ジャンケン出来るか?」
「ああ」
そう言ってリクハルドは右前足で「グー」「チョキ」「パー」を作って見せた。
「大丈夫そうだな。それじゃあ行くぞ?」
「良いぜ」

100 :
「セット」
13回戦の始まり。
「さーいしょーはグー」
「ジャーンケーン」
「ポン」
寛和は「チョキ」、リクハルドは「グー」。
リクハルドの勝ち。
「リクハルド、生きる。」
「かぁーっ、また負けた……」
「へへっ、これでまた女をヤれるって訳だ」
「次ー。油谷眞人」
二連敗を喫し少し不機嫌な様子で、寛和は次の順番である油谷眞人を呼ぶ。
朝礼台に上がる眞人。
(こんな所で死にたかねぇ……俺が殺し合いに乗ったのはジャンケンで負けて死ぬためなんかじゃねぇ)
「セット」
(俺は、ずっと自分の拳で道を切り開いてきた)
「さーいしょーはグー」
(なら、出す物は一つだ)
「ジャーンケーン」
(俺は……)
(自分の拳を信じる!!)
「ポン」
寛和は「パー」、眞人は「グー」。
寛和の勝ち。
自分の拳に全てを託した少年は、呆気無くその命を散らした。

【油谷眞人  死亡】

101 :
残るは一人、黒竜人少年、白峰守矢。
「よーし、いよいよ最後だな。トリを飾るのはお前だぜ、白峰守矢」
「……」
朝礼台へ上がる守矢。
合格者席へと映った都賀悠里、舩田勝隆、リクハルド、沢谷千華が勝負の行方を見守る。
「どうだ? 今の気分は? ん?」
「……何と言いますか、自分でも驚くぐらい、落ち着いています」
「ほう? さっきツレの女が死んだ時えらい悲しんでたのにか?」
馬鹿にするような寛和の物言いに一瞬眉を顰めた守矢だったが、それでも穏やかな様子は崩さなかった。
「あの時は確かに凄く悲しかったです。でも、悲しんでばかりもいられないって事も、分かってましたから。
レオノーレさんも、きっと僕に生き延びて欲しいって思ってる。僕はそう思ってます」
小学生の少年とは思えないような凛とした表情と言葉に、思わず寛和も感心した。
「お前、本当に小学生か……それじゃ、やるか?」
「……」
無言で、守矢は頷いた。
そしていよいよ最後の勝負が始まる。
(勝つ。勝って生きるんだ)
「さーいしょーはグー」
双方、グーを出す。そして、次からが本番。

102 :
「ジャーンケーン」

「ポン」

寛和は「グー」。

守矢は「パー」。

守矢の勝ち。

「やっ……た」

この瞬間、バトルロワイアルは幕を閉じた。

【都賀悠里】
【舩田勝隆】
【沢谷千華】
【リクハルド】
【白峰守矢】
【以上、五人――――生きる。】

103 :
投下終了です

104 :
投下します

105 :
60話 半信半疑、泳いでみるのも悪くないよ
ジャンケンに勝った後、僕達五人は学校のとある教室に通され、そこで吉橋寛和から労いの言葉を掛けられた。
そしてジュースやらお菓子やらを出された。
ささやかな祝賀会のつもりだったのだろうけど、嬉しくも何とも無い。
って言うか殺し合いさせておいてジュースやお菓子で労えると思っているんだろうか。
いや、出される物は問題じゃないんだけど。
最初、僕と都賀さん、舩田さんは警戒して手を付けなかったが、沢谷さんとリクハルドさんは普通に食べていた。
「毒は入ってない」とリクハルドさんが言ったので、恐る恐る僕達も食べる事にした。
普通に美味しかった。
「さて、何か質問有るか?」
唐突な質疑応答の時間。
まず手を上げたのは舩田さん。
「どうして、俺達が選ばれたんですか?」
「……この殺し合いの参加者に、って事か?」
「はい」
「……んー、抽選」
「え?」
「抽選だよ抽選。あんま詳しく言えねぇけどな」
「……はぁ」
舩田さんは余り納得していないように見えた。
と言っても、どんな理由であろうと、こんな殺し合いに連れて来て良い理由にはならないと思うけど。
次に沢谷さんが手を上げた。
「あなた達って、何者なの?」
大勢の人間を拉致してきてかつ高度な技術で作られた首輪をはめ、装備品を用意して殺し合いをさせる事の出来る、
吉橋寛和ら運営の人間達は一体何者なのか。
それは僕も気になるし、都賀さん、舩田さん、リクハルドさんもきっと気になる筈。
「それはー……うーんそうだな、何て言うんだ? あんま細かくは教えらんねぇけど。
ちょっと大規模な何でも屋って感じかな?」
「何それ」
「えらーい人達の願い事、叶えてあげたりしてんのよ。色々な手を使ったりしてね」
「……それって、この殺し合いは、例えば――政府が絡んでたりするの?」
「……それは想像に任せるよ」
「ちょっと、質問にちゃんと答え――――」
「沢谷さんよ」
少し声のトーンを落として、脅しつけるように吉橋寛和が沢谷さんに言う。
「あんただって無事に帰りたいだろ? なら余計な事は聞かない方が身の為だぜ」
「……」
沢谷さんはなおも反論しようとしていたが、結局はそこで質問を切り上げてしまった。
だが沢谷さんの行動は間違っていない。
首輪を外されたとは言え、僕達はまだ敵陣の真っ只中に居るのだから、下手な真似をすれば簡単に殺されてしまうだろう。

106 :
「他に無いか? ……無いなら俺は戻るぜ。しばらく五人で雑談でもしてな」
そう言うと吉橋寛和は、傍に居た兵士二人を連れて教室から出て行った。
戸が閉められ、鍵を掛ける音が聞こえる。
廊下には見張りが置かれているようで、窓越しにその姿が確認出来た。
僕達五人は、無言でしばらく過ごしていた。
「……あの」
不意に、舩田さんが僕達に声を掛けた。
「もし良かったら、連絡先交換しませんか? ……こんな言い方変かもしれないですけど、
この殺し合いで生き残った人同士、何かの縁かもしれないです、し……どうでしょうか?」
連絡先の交換――そう言えば、この殺し合いが無ければ、僕達は多分、絶対会う事も無かったんだよな。
こんな形での出会いなんて嫌過ぎるけども。
そしてこの殺し合いが終わって家に帰る事になれば、連絡先でも言わない限り、僕達は恐らく二度と会う事も無い。
この殺し合いを生き残った者同士でしか分からない事も有るだろう。
それなら、連絡が取れるようにしておいた方が良いかな。
「……良いよ。私、住所と学校と電話番号、メアド教えてあげる」
「俺は違う世界からなんだが、まあ一応、俺の所属してる群れのアジトの場所教えてやる」
「私も……」
「ぼ、僕も」
僕達は教室内にあった紙とペンを使って互いの連絡先を教え合った。
そして程無く、教室のスピーカーからハウリング音が響く。
声は吉橋寛和のものだった。
『そろそろだが準備は良いか。お前らには一旦眠って貰う。その間に俺らがお前らをそれぞれの家まで運ぶからな。
ああ、警察とかに言っても構わないぞ。どうせ有耶無耶になるだけだしな。
それじゃあ、お疲れさん。多分もう二度と、会う事も無いだろう。じゃあなー』
放送が終わった直後ぐらいから、仄かに甘い匂いが漂ってきた。
そして、段々と眠たくなってきた。
催眠ガスか何かだろうか。
「み、みんな……」
後少しで意識を失う、と言う時、舩田さんの声が聞こえた。

107 :
「また会おう……また……」
「分かった」って言おうとしたけど、もう何も出来なくなっていた。
僕の意識は、深い眠りの中へと堕ちて行った――――。

◆◆◆

「さてと、眠ったみたいだから、予定通り送り届けてくれや」
「了解しました」
参加者達の送還を担当する部隊の隊長に指示を出し、寛和は司令室のソファーにもたれて一息つく。
これでまた一つ殺し合いが終わった。
「ふぁー、疲れたなぁ」
「お疲れ様です」
「おお朋佳。悪ィな、急な俺の思い付きに付き合って貰って」
「まあ、たまには良いと思いますよ。しょっちゅうやられたら困り物ですが」
「言えてら……それじゃあ俺らも後始末して帰るとすっか」
「はい」
「久々にガ○トのオムライス食いてぇ」
「吉橋さん味覚が幼稚だってそれ一番言われてますよ」
「うるせえ!」
しばしの雑談の後、寛和と朋佳は今回のゲームの残務処理を始めた。

108 :
投下終了です

109 :
エピローグその1投下します

110 :
61話 重ねた月日に交わした言葉を胸に
僕は自分の家に帰ってきた。
気が付いた時には自分の部屋で倒れていて、目を開けると、お父さんとお母さんが泣きながら僕の名前を呼んでいた。
二人は僕を抱き締めた、僕も泣いた。
落ち着いてから、僕は、僕が居なくなった時の事をお父さんとお母さんに尋ねた。
朝に僕が部屋から出てこない事を不審に思ったお母さんが部屋に行ったら、もう僕は居なかったらしい。
床には着ていたパジャマが脱ぎ捨てられていて、洋服ダンスが開けられていて、靴箱には僕がいつも履いている靴――殺し合いで履いていた靴――が消えていて。
ベッドの上には封筒に入れられた手紙が置かれていてそこにはこんな事が書かれていたと言う。
『前略、白峰嘉行、春奈夫妻様。御子息、守矢君はこの度特別ゲームへの参加権を獲得されました。
従って守矢君をゲーム会場へとご案内させて頂きます』
きっと、僕以外の参加者の家にも、似たような置き手紙をしたのだろう。
僕は何が起きたのか、出来るだけ分かりやすく二人に話した。
二人共信じられないと言った表情だったが、やがては信じてくれた。
「怖い目にあったんだね……良かった……良かった」
「お母さん……」
「本当に、どうなるかと思った……帰ってきてくれて良かった」
「お父さん……」
僕も本当に、帰ってくる事が出来て良かったと思った。

……
……

警察からの事情聴取があったり、友達のお見舞いが来たりして色々大変だったけど、着実に元の生活に戻りつつある。
警察の人の話では、僕と同じ時期に行方不明になって、その中から三人帰ってきた人が居ると言う。
きっと、都賀さん、舩田さん、沢谷さんの事だ。
僕は警察の人に殺し合いの事について話した。
「君もか……だが、生きて帰ってこれただけでも……」
「? ……どう言う事ですか?」
「……ニュースになったりしてもすぐに忘れ去られてしまうが、全国で行方不明者が定期的に、それも30人から50人、
多い時には80人も出て、一人も帰って来なければ、数人帰ってくると言う事件がここ数年で何回か起きてるんだ」
「ええっ……」
そう言えば以前、そんな事がニュースになっていたような気がする。
でも、気付いたらそういったニュースも無くなっていったような気もした。

111 :
「恐らく、彼らも君と同じ事をさせられたのだろう。
警察も捜査はしているんだがね……適当な理由がついて捜査が打ち切られてしまったり、捜査員の中からも行方不明者が出たりして、
結局、誰が何のためにしているのか……有効な手がかりは掴めていないんだ。
まるで……大きな力が、圧力を掛けているようにね」
「……」
初老、と言う言葉が良く似合うその刑事の人は、苦々しい表情で語ってくれた。
警察からの帰り道、僕はお父さんの運転する車の中で、ある事を思い出す。
僕のクラスメイトに、かつて久木山凌河と言う、白犬獣人の男の子がいた。
僕とも仲が良くて、変態で、一緒に気持ち良い事をして遊んだりもした。
その子はお父さんともエッチな事をしていて、僕も混ぜて貰った事もある。
でもある日突然、凌河とそのお父さんは居なくなった。車も家もそのままに。
そして二度と帰って来なかった。
凌河の家は今も二人が居なくなった時のまま、廃屋になりつつある。
もしかしたら、いや、多分、間違いなく――――凌河とそのお父さんも、殺し合いをさせられた――――そして帰ってこなかったと言う事は、二人はもう――――。
「雨が降ってきたな……」
運転するお父さんが呟く。
言われた通り外はいつの間にか曇り、雨が降り始めていた。
僕の今の心を現すかのような、灰色の曇天の空が広がっていた。

◆◆◆

殺し合いから二ヶ月ぐらい過ぎた頃。とある日曜日。
僕は電車で少し遠く離れた、都市、と言う程では無いけどそれなりに賑やかな街へとやって来た。
噴水の設けられた広場で、とある人物二人と待ち合わせする。
「守矢君!」
「ごめんな、遅くなった」
そして二人がやって来た。
都賀悠里さん、舩田勝隆さん。
二人共殺し合いの時は制服だったけど、カジュアルな服を身につけている。

112 :
「久しぶりです。二ヶ月ぐらいですかね……」
「そのぐらいかな……」
「立ち話も何だし、適当にレストランにでも行こう」
僕と二人は語り合う場に相応しい場所を探し始める。
そして、有名ファミリーレストランを見付けそこに入った。
「いらっしゃいませ。お客様は三名でしょうか」
「あ、はい」
「禁煙席と喫煙席がございますが」
「禁煙席で良いです」
「かしこまりました、こちら空いてるお席をご利用下さい」
「そこの窓側で良いかな守矢君、悠里ちゃん」
「良いですよ」
「おっけー」
禁煙席の窓側の席に僕達は座った。
そして、殺し合いから帰ってきてからの事を話し合う。
都賀さんも舩田さんもやはり僕と同じように警察に事情を聞かれたが、僕の時と同じような感じだったらしい。
「取り敢えず、ヤりまくったよ。手当たり次第男友達と。何であれ殺し合いから生き残れたから、
生きてる喜びを感じまくったの」
「は、はあ」
「俺もね、ひたすら掘って貰って種付けして貰って、精子も出しまくった。
うん、いつも通りだね……」
「そ、そうですか……」
「今じゃあさ、あの殺し合いは現実だったのかなって思う時も有るよ。
本当は夢でも見てたんじゃないかって。周りがいつもと変わらない、変わら無さ過ぎるのを見てると」
「俺も……でも、夢じゃあないんだよなぁ……」
「そうですね……」
あの殺し合いは本当に現実だったのか、とは僕も思った事はある。
でも、夢だった事にするなんて出来そうにない。
今でも首にはめられた金属の首輪の感触は容易に思い出す事は出来る。
それに、レオノーレさん、東員さん、伊神さん、他のみんな――――を、夢だった事になんて出来る訳無い。
それは都賀さん、舩田さんも同じ気持ちだろう。
「そう言えば、沢谷さんとリクハルドさんは」
「沢谷さんは忙しくて来れないって。リクハルドさんは連絡がつかない。だって電話番号とかじゃないし……」
「そうですか……」
「うーん、折角レストランに来たんだから何か頼もうよ」
「そうだなぁ。守矢君も好きなの、ほら、俺奢るから」
「良いんですか?」
「良いって良いって」
いつまでも湿っぽい話をしててもしょうがない。
僕達は今、生きているんだから、前を向いて生きるしかない。
それがレオノーレさん達、死んでいった人達へのせめてもの弔い――――僕はそう思っている。

113 :
【俺のオリキャラでバトルロワイアル3rd:白峰守矢、都賀悠里、舩田勝隆――――END】

◆◆◆

守矢達のいるレストランの、喫煙席。
「あぁ〜うめぇなぁ」
一番奥の席でオムライスに舌鼓を打つ、狼の男。
向かいの椅子に、黒髪ポニーテールの少女が座り、彼女はドリアを食べていた。
「ようやく休暇取れて良かったぜ。ここの所殺し合いの運営続きだったからな」
「吉橋さん、あんまり大声で言わないで下さい」
「おっといけね。まあ流石にこの辺に反抗組織の奴はいねぇと思うけど……」
「ポテト頼みます?」
「おっ、そうだな。すいませんー」
「はい、ご注文お伺いします」
「山盛りポテト一つ……以上で」
「かしこまりました」
店員が注文を受け厨房へと去っていった。
少女は熱々のドリアを、そして狼の男はオムライスを口に運ぶ。
周囲の客達は、この二人が超法規的組織の人間であり、数十人の命を最後の一人になるまで競い合わせる殺人ゲームの運営を、
何度も行っている事など、知る由も無いだろう。

【To Be Continued……?】

114 :
投下終了です
後二話ぐらいエピローグを投下したらこの俺オリロワ3も完結です
次のロワの構想練らなくちゃ(使命感)

115 :
投下します

116 :
62話 白黒で終わるより赤白と閉じたいのよ
大勢の参加者を最後の一人になるまで殺し合わせる殺人ゲーム――バトルロワイアル。
その殺人ゲームから俺――リクハルドは生還した。
優勝した訳じゃない。運営のヨシバシって奴の急な提案で始まったジャンケン対決で、俺は勝ったから生き延びる事が出来た。
俺の他にも、別世界の奴が四人生き残った。
その中で俺が知っているのは、狐獣人の娘の悠里と、狼獣人の小僧の勝隆。
悠里は今も元気にしてっかな? あいつの身体は中々気持ちが良かったな。
他にも行動を共にした奴はルカ、エギ、巴、フカヤ、陽平と居るが、みんなジャンケンで負けて死んじまった。
俺だって、下手したら今ここに生きて居なかったかもしれない。
さて、俺は今どうしてるかと言うと、まあ、いつも通りだな。
森の中で適当に旅人やら冒険者やら商人の一団やらを仲間と襲って、可愛い女が居たら二つの意味で美味しく頂く。
やる事は殺し合いを経験する前もした後も何も変わらねぇって訳だ。
「おい、見てみろリクハルド」
「お?」
仲間の一匹が何かを発見したようだ。
見れば、高級そうな造りの馬車が街道を走ってくる。
大方、富豪の家族旅行か何かだろう。
護衛と思しき騎兵も随行しているが、四人ぐらいじゃあな。
どうやら危険意識が足りないらしい。まあ、絶好のカモ、って奴だ。
「行くか?」
「よし、やるぜ」
近付いてくる馬車に、俺と仲間達は狙いを定めた。
この生き方は死ぬまでやめないだろうな。
良いのさ。俺は自分のやりたいように生きるだけだ。

【俺のオリキャラでバトルロワイアル3rd:リクハルド――――END】

◆◆◆

117 :
さて、まず何から話そうかな。
うん、ありのままを話そう。
私――沢谷千華は、殺し合いから生き延びてしばらくした後、異世界に飛ばされた。
何を言ってるのか分からないと思うけど実際に起こっちゃってる事なんだから仕方無い。
どうも、中世ファンタジーっぽい世界のようで、
何でもとある国が滅んで、支配者の国と復讐者の国と反乱同盟の三つ巴の戦乱が起きようとしてるとか。
それで、私が今居るのは支配者側の国らしい。
最初は驚いたけど慣れてくるとこの世界、この国もかなり面白い所が沢山有るから適当に観光していたんだけど。
何やらとある騎士団が団員を募集しているらしいね。
その騎士団、前の戦争で壊滅状態になって、新しい団長になってから経費削減される一方で落ち目になって、
来る戦乱で栄光を取り戻したいとか何とか。
この国の所属で能力さえ有れば、種族年齢性別問わないと。
ふぅん、面白そう。
あの殺し合い以降、また退屈な日々だったから、良い刺激になりそうね。
それも、本物の戦争と来れば。
「すみませーん……あ、そこの青龍刀下さい」
私はその辺にあった武器屋で青龍刀を購入し、その騎士団の面接を受けに向かった。

……
……

そして、無事に騎士団に入団し、私はしばらく団員の皆と交流したりして過ごした。
副団長に三食魚肉ソーセージ一本ずつと言うキツイジョークをかまされたり、
とある団員が騎獣として伴っている大きな鳥を良い子良い子しようとして脳天をつつかれたりと、酷い目にも遭ったが。
いよいよ戦争の時がやってきた。
集まった団員達の前で若き団長が演説を行う。
「支配者の国の民、常に支配者であれ」と言った内容だった。
私はこの国どころかこの世界の人間(半竜人)でも無い、そんな私がこの国の、騎士団の力になろうなんておこがましいんじゃないだろうか、
と、一瞬難しい事も考えたりもしたけどすぐに忘れた。
滅多に無い実戦を味わえる機会、楽しまなきゃ損でしょ?
死なない程度に頑張ろ。

【俺のオリキャラでバトルロワイアル3rd:沢谷千華――――END】

118 :
投下終了です。
千華は某イラストサイトでとある企画に参加させてます

119 :
最後のエピローグ投下します。
今回登場は既に死亡した筈の……

120 :
63話 冥界に堕ちし凶獣
俺は、死んだ。
絶望して、狂って、首を吊って苦しんで、死んだ。
なのにどうして俺は今、意識が有って、大地に立って、呼吸もしているんだろう。
そして、ここはどこだろう。
荒涼とした大地が広がっている。
ここは、あの世なのか? だとしたら、天国なのか、地獄なのか。
いや、俺は天国に行く資格は、恐らく無い。ならここは地獄か?
刺されて潰れた筈の右目は、開いているようだった。
だが、殆ど見えない。
首には、首吊りに使ったコードが巻き付いたままになっていた。
あの金属製の首輪は消えていたが、首に巻かれたコードの感触はあの首輪程では無いにしろ邪魔に感じた。
だが、解く事は出来ない。
解こうとして、俺は死んだ。
勝手に絞まってしまうのだ、まるでコードそのものが意思を持っているかのように。
そして、俺はどうやら死んでもすぐに復活する、化物になってしまっているようだった。
俺はもう死ぬ事は無い。死んでもすぐに生き返る。
だが、痛みや苦しみはそのまま残っている。
腹も減る。来るものも来る。性欲だって沸く。
自分がどうしてこんな事になったのか、どうして俺は殺し合いに巻き込まれた挙句、どことも分からない場所で化物として蘇ったのか。
理不尽過ぎる。どうして俺が。俺がそんなに悪いのか。どうして俺がこんな仕打ちを。
憎しみ、怒り、妬み。
ぶつけたい、誰かに。
生きている奴――――生きていて幸せそうにしている奴に、俺の受けてきた苦しみ痛みを分けてやりたい。

……
……

気が付くと俺は、洞窟のような場所に居た。
ここは何だ?
所々に、生活の痕跡が有るが。

121 :
「おい」
不意に男の声で声を掛けられる。
見ればそこには、燃えるような赤髪を持った男が立っていた。
犬のような耳、毛が生えた手足から見るに人間では無い。
「何だお前、入団希望者か」
「……?」
何の事を言っているんだろう。
「どうなんだよ答えろ。Rぞ」
男はかなり威圧的な口調で俺に言う。
R、か。俺はもう死んでるし、死んでもすぐに生き返るけど、痛いのは嫌だな。
「俺はもう死んでる」
「あ? そうなのか?」
「今、死んでもすぐに生き返るけど、痛いのや苦しいのはそのまま。
実体の有る幽霊って奴なんだろうか。
俺は――――ある殺人ゲームに巻き込まれて、狂って、首を吊って死んだ筈なんだ。でも、気付いたら、知らない所で。
自分は、化物になっていて―――何なんだよ、何で俺はこんな目に……辛いよ、苦しいよ、痛いよ。
生きてる奴が、生きてて幸せな奴が妬ましいよ……苦しみを分けてやりてぇよ……」
最後の方は、俺は嗚咽混じりだった。
悲しくて、悲しくて、悔しくてたまらない。
幽霊になっても、泣けるんだな。
「そうか、じゃあ、俺と一緒に来いよ」
「は?」
「俺も一度死んでる。そして俺も、生きてる奴は嫌いだ。
……お前のような奴を集めてるんだよ、今な。
入団条件は一度死んでいる事。所属国、出身国は問わねぇ。
のうのうと生を享受している奴らに、死んだ奴の苦しみを味わわせてやるって事だ」
「……」
目の前の男はニヤリと嗤いながらそう弁舌する。
この男も死んでいるのか? そうは見えないけど。
いや、だけど……この男についていけば、俺の目的も果たせるのだろうか。
俺の心も晴らす事が出来るんだろうか。
「あんたについていけば、俺の心は満たされるのか? 俺は救われるのか?」
「それはお前次第だな」
「……そうか」

122 :
何の因果で俺がここに居るのかは分からないし知りたくも無い。
でも、これが、俺の第二の人生(犬生)なら、俺は、存分にそれを満喫しようと思う。
生きている奴への復讐、それが今の俺の、「生きる」目標。
幽霊なのに生きると言うのもおかしな感じだけど。
「あんたと一緒に行く! 一緒に生きてる奴らを殺してやろう!」
「良い意気だな、分かった。お前を俺の団の一員に加えてやる。
……お前、名前は?」

「――――荒津、文護」

これが、俺の新たなスタートだ。


【俺のオリキャラでバトルロワイアル3rd:荒津文護――――END】

123 :
これにて俺オリロワ3rdは全話投下終了です。
ようやく完結に漕ぎ着けた……後半グダってきてたのは恐らくいつもの事。
見てる人居るのかどうか分からないけど、一応挨拶をば。ありがとうございました!
次ロワの構想を練らなくちゃ(二度目の使命感)

124 :
追記:文護も千華と同じく某所で新たに活躍させてるキャラです

125 :
新ロワOP投下します
ロワ名「俺得バトルロワイアル7th」です
OPタイトル「余りの惨劇に精神崩壊寸前!! 戦慄の殺人ゲームへようこそ……」

126 :
0話 余りの惨劇に精神崩壊寸前!! 戦慄の殺人ゲームへようこそ……
学校の体育館「のような」広いホールに、50人近い人間、や、人外が集められている。
あくまで「体育館のような」場所。
体育館と言うには、バスケットボールのゴールやウィンチロープは愚か窓も扉も見当たらない異常な構造。
それでも「体育館のような」と言わしめているのは、正面にあるステージのせいである。
やがてステージの裾から二人の男が現れた。
黒いパンツ一丁の上にウェイターのようなベストと蝶ネクタイと言う異様な格好。
片方は背が高く肩に刺青らしき物が有り、もう片方は身長がやや低めで少し腹が出ていた。
「えー、皆様、こちらに、ンンッ、注目して下さい」
背が高い方の男がステージ上のマイクを使って話し始める。
お世辞にも滑舌が良いとは言えない上に大きく咳払いをするその様は人々に好印象は与えない。
「えー、皆様、突然集められて驚いていると思います。
集まって、えー、我々の主(あるじ)が、えー、皆様をここへご招待致しました。
なぜ招待されたのかと言いますと、皆様に、あるゲームをして頂くため、です」
「主」とは何か? 「ゲーム」とは何か?
多くの者が疑問を抱く。
そして男の口から「ゲーム」についての疑問に対する答えが明かされる。
「そのゲームとは、バトルロワイアル。
これから皆様には、殺し合いをして頂きます」
多くの人々が、男に対し「何を言っている」と言う視線を送る。
「申し遅れました、私、このゲームを司会進行を務めさせて頂く、じゅんぺいと申します」
「同じく司会進行させて頂きます、まひろと申します」
「以後お見知りおき下さいませ」
「おいお前ら!」
一人の男がじゅんぺいとまひろに向かって怒声を上げる。
「いきなり連れてきておいて、今度は殺しあえだと?
冗談じゃないぜ! ふざけんのも大概にしろ!」
「そうよ! 今すぐ家に帰しなさい!」
「とーちゃんとかーちゃん怒らせると恐いんだゾ!」
「アン! アン!」
男の妻と息子と思われる二人、飼い犬と思われる白い犬も一緒になって、じゅんぺいとまひろに向け抗議の声を上げる。
他の者達も概ね、親子と同じ気持ちのようだ。
それを見てじゅんぺいとまひろは顔を見合わせる。

127 :
「やはり、自分達の立場をお分かり頂けてないようですね」
「無理も有りません。丁度良いですし、首輪の威力を見せて差し上げるのが上策かと」
「そうだな、そうするか。
……えー、皆様の首、首輪がはめられていますよね?」
じゅんぺいの言う通り、人々の首には金属製と思われる黒い首輪がはめられていた。
何人かが首輪に触れてみるが外れそうには無い。
「その首輪は皆様に、ンンッ、確実に殺し合いをして貰う為の物です。
無理に外そうとしたり、逃げようとしたり、ゲームの邪魔をすれば、
その首輪は爆発する仕組みになっています」
爆発する――その言葉を聞いて、青ざめる人々。
首に仕掛けられた爆弾が爆発すれば死ぬと言うのは、火を見るよりも明らかである。
触れていた何人かはすぐに手を離した。
「我々がリモコンで操作して、爆破させる事も出来ます。
今から、えー、首輪の爆発を実演したいと思います。
皆様も、首輪が爆発すればどのような事になるのか、知りたいと思いますので。
ほら、お前、用意しろ」
「分かりました」
じゅんぺいの指示を受け、ステージの裾へ向かうまひろ。
そして程無くして、檻を乗せた台車を押しながらまひろが再びステージ上に現れる。
その檻の中には、不安気な表情を浮かべる、黄色い服を着た女の子の赤ん坊が入れられていた。
「「「ひまわり!?」」」
先程抗議していた親子が吃驚の声を上げた。
その赤ん坊は、夫婦の娘であり息子の妹であった。
「野原ひろしさん、野原みさえさん、野原しんのすけ君。そしてシロ君。
この子は、えー、見ての通り、あなた方の家族、野原ひまわりちゃんです。
この子の首にも首輪がはめられているのがお分かり、頂けるかと思います。
それではこれより、首輪の効果を見せたいと思います」
「やめろ!! ふざけるな!!」
「やめて!!」
「ひまを返せぇぇぇええ!!」
「アン! アン!!」
大切な娘を、妹を取り返そうと野原一家がステージに向かって走り出す。
だが、見えない壁により弾かれ、四人共床に倒れてしまう。
「びえええぇえええ!!」
恐怖と不安に耐えられなくなったのか、ひまわりが泣き始める。
その悲痛な泣き声に、野原一家以外の人々にも、憐憫の情を抱く者が何人か居た。
しかし、じゅんぺいは泣き声を聞いて耳障りだとでも言わんばかりにひまわりを睨み付ける。
まひろは特に表情を変えなかった。
変えなかったが、どこからともなく取り出したリモコンを、ひまわりに向ける。

128 :
「やめろぉおおおおお!!」
「嫌あああぁああああ!!!」
「ひまわりぃいいいぃいいいいいい!!!!」
「アン!!!」
野原一家が絶叫する。
そして、無慈悲に、リモコンのスイッチが押された。
ぱぁん、と言う炸裂音がホールに響き、泣き声も消えた。
野原一家の絶叫も消え、ホールは静寂に包まれた。

【野原ひまわり  死亡】

「これで首輪の威力は分かって、頂けましたでしょうか。
よし、それじゃ、片付けろ」
「はい」
落涙し放心する野原一家を尻目に、ひまわり「だった物」が入った檻が乗った台車をステージの裾へ持って行くまひろ。
そしてまひろがステージへ戻って来る。
「戻ったか。じゃあ、ルールの説明、頼んだぞ」
「任せて下さい」
殺し合いのルールの説明がまひろによって始められた。
「それでは殺し合いに移って頂く前にルールの大まかな説明をさせて頂きます。
この殺し合いは特別にご用意した会場の中で最後の一人になるまで行って頂きます。
最後の一人になった方のみが『優勝者』となり、家に帰れます。
また、好きな願いを一つだけ叶える権利を副賞として贈呈致します。
反則行為は一切ございません。会場に有る施設の利用及び破壊も自由でございます。
首輪について改めて説明致します。
首輪は無理矢理外そうとする、禁止エリアに侵入する、ゲーム進行を著しく妨害する行為を行う。
主にこの三つの禁止行為にどれか一つでも抵触すると、先程のように爆発します。
首輪は完全防水、耐衝撃性となっており、我々が持っている特別な鍵を使用するか、専用の信号を送らない限りは、
外す事は出来ません。禁止エリアにつきましては後程ご説明致します。
参加者の方々一人一人に、支給品の入ったデイパックをお渡しします。
このデイパックは、特殊な構造となっており、死体を含む参加者、著しく不定形な物、明らかに大き過ぎる物以外は、
何でも入れられ、重量も変化しません。
但し、デイパックが激しく損傷しますと収納物がばらけ使用不可能になりますので、ご注意下さい。

129 :
支給品は全参加者共通の物として、ルールの書かれた冊子、地図、名簿、コンパス、懐中電灯、懐中時計、
筆記用具、水と食糧が入っています。
この他に、武器や防具と言ったランダム支給品が一つ有ります。
ランダム支給品は役に立つ物とは限りません。これは男女、種族問わず、平等に優勝のチャンスを与える為の措置です。
つまり当たり外れが有りますので、必ずご確認頂きますようお願い致します。
0時、6時、12時、18時の一日四回、定時放送を行います。
内容は主に死者及び禁止エリアの発表となります。
禁止エリアについてですが、放送から一時間後に出現します。入ると首輪が作動しますのでご注意下さい。
また、地図の外及び上空100メートル以上も禁止エリアとさせて頂きます。
12時間、新たな死者が出なかった場合、その時点での生存者全員の首輪を爆破します。
優勝者は無し、ゲームオーバーとなります。
参加者が全員死亡しても同様です。
最後になりますが、特殊な能力を持っている方に関しましては、その効力を大幅に弱体化させて頂きます。
ゲームの破綻に繋がりかねない物に関しましては使用を不可能とさせて頂きますので、その点はご了承下さい。
ルールの説明は以上となります。
質問が有りましたら受け付けます」
「……ハイ」
「ガオガモンさん」
青と白の毛皮を持った、背中から赤い二つの触手が生えた大きな犬がまひろに質問する。
「優勝したら、本当に帰れるんですか?」
「帰れますよ。但し、最後の一人だけです」
「はい……」
「土井津仁君」
続いて、額の星印が特徴的な坊主頭の強面の少年が質問する。
「一つだけなら、どんな願いでも叶えられるんですか?」
「はい。死者の蘇生、大金が欲しい、等」
「……」
「他に質問は有りませんか?」
まひろが尋ねるが、もう質問する者は居ないようだった。

130 :
「それでは、ゲームの始まりとさせて頂きます」
じゅんぺいが開幕の宣言を行う。
直後、参加者達は猛烈な睡魔に襲われ次々と意識を失い倒れていった。
その中で、野原一家は、完全に意識を無くすその直前まで、まひろとじゅんぺいの事を、
涙を流しながら睨んでいた。

……
……

「ご苦労だった、二人共」
もう一人、男がステージの上に現れ、じゅんぺいとまひろに労いの言葉をかける。
長身で、どこか陰を感じさせる面立ち、そして甚平を着たその男に、二人は軽くお辞儀をする。
「こんな感じで大丈夫ですかね? 平野さん」
「ああ、上出来だじゅんぺい君。まひろ君も」
「ありがとうございます」
「さて、それでは始めようか……」
甚平姿の男――平野源五郎は、これから始まるゲームに期待を寄せ、笑みを浮かべる。

【GAME START】

131 :
《運営側》
【ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ】3/3
○じゅんぺい/○まひろ/○平野源五郎
《見せしめ》
【アニメ/クレヨンしんちゃん】0/1
●野原ひまわり
◆◆◆
【オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】4/4
○アルジャーノン/○小崎史哉/○コーディ/○青砥日花里
【オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】5/5
○稲葉憲悦/○フーゴ/○柏木寛子/○君塚沙也/○ソフィア
【オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】3/3
○油谷眞人/○呂車/○原小宮巴
【パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】15/15
○愛餓夫/○壱里塚徳人/○太田太郎丸忠信/○鈴木正一郎/○ノーチラス/○ラト/○貝町ト子/
○北沢樹里/○吉良邑子/○銀鏖院水晶/○倉沢ほのか/○サーシャ/○シルヴィア/○テト/○フラウ
【ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】10/10
○野獣先輩/○遠野/○KMR/○MUR/○ひで/○AOK/○虐待おじさん/○KBTIT/○一般通過爺/○INUE
【漫画/浦安鉄筋家族】6/6
○大沢木小鉄/○西川のり子/○鈴木フグオ/○土井津仁/○金子翼/○春巻龍
【ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】5/5
○レナモン/○ガオガモン/○グリフォモン/○ケルベロモン/○ガルルモン
【アニメ/クレヨンしんちゃん】4/4
○野原しんのすけ/○野原みさえ/○野原ひろし/○シロ
52/52

132 :
投下終了です。
キャラは色々独自の解釈とかも加わるので元のキャラが跡形も無くなる
場合がございます

133 :
投下します

134 :
1話 平穏レ☆プ! バトロワプレイヤーと化した先輩
野獣先輩(田所浩二)は冷たいアスファルトの上で目が覚める。
「クォクォア……」
立ち上がって周囲を見回す。
自分が今居るのは、街灯がぽつりぽつりと灯る夜の商店街のようだった。
「俺は……どうしたんだっけか。
確か、クラスのみんなで修学旅行に出かけて……」
殺し合いが始まる以前の記憶を辿る野獣。
彼はとてもそうは見えないが中学三年生である。
クラス全員で修学旅行に出掛けたが、途中のバスの中で眠ってしまい、起きた時にはクラス全員が眠っており、
そして直後にガスマスクを被ったバスガイドに鈍器で殴られ、気絶した。
「それで目覚めたらこの殺し合い……どうなってんだよ……これがBR法って奴なのか?」
野獣の住む国には「BR法」なるものが存在していた。
有り体に言えば、中学三年のクラスから抽選で対象クラスを選んで殺し合いをさせると言う物で、
今回のゲームの内容と殆ど一致している。
野獣は自分達がBR法に選ばれたのだと思った。
だが、そこで一つの疑問が生じる。
(でも、クラスの奴らも居たけど、知らない奴らの方が多かった……)
開催式が行われたあのホールには野獣のクラスメイトも数人居たが、
それより見知らぬ人間の方が多かったように思えた。
BR法だとすればクラス単位で行われる筈であるし、何より対象者は中学生の筈なのに、
あの場には明らかに中学生では無い者も居た。
中学生に見えない自分が言える事では無いとも思ったが。
(いや、難しい事は後だ。まず今はどこかに隠れよう)
見晴らしの良い場所で考え事はまずいと判断した野獣は、取り敢えず近くの文具屋の入口に近付く。
驚いた事に施錠はされていなかった。
店の中は薄暗い非常灯が灯っていて辛うじて行動出来るぐらいには明るい。
カウンターの奥に隠れ、野獣は支給品を確認する。
「竹刀か? これ?」
出てきた物は剣道で使われる竹刀だった。

135 :
「脅しには使えるか……どうすっかな〜これからな〜」
これからの事について考える野獣。
首には首輪――下手に外そうとしたり逃げようとしたりすれば、開催式の時の赤ん坊のようになる。
あの時の赤ん坊の家族の悲痛な叫びは今も野獣の耳に残っていた。
ならば殺し合いに乗るか?
「いや、無理だろ……遠野やクラスのみんなをRなんて出来ない」
野獣は殺し合いを拒否する。
遠野、MUR、KMR――大切な友人、クラスメイト達を殺してまで生き残ろうとは思えなかった。
まずクラスメイト、そして、この殺し合いに乗っていない参加者を捜そうと野獣は決心する。
ガララ……。
「!」
文具店の入口扉が開く音が聞こえ、野獣は硬直する。
そして店内を照らす懐中電灯の光。
誰かが入ってきたと言う事は良く考えなくても分かる。
一体誰が? 果たして殺し合いに乗っているのかいないのか? 接触を図るべきか?
緊張の中考える野獣。
「おい、誰かいるのか?」
声が聞こえる。若い男の声だ。
野獣は迷ったが。
「カウンターの奥に居る。俺は殺し合いには乗っていない。そっちは?」
接触は不可避だと思い、自分からも声を掛ける事にした。
「そうか、俺もやり合う気はねぇ。出てきてくれねぇか?」
「本当か?」
「本当だ」
「……今から行く」
意を決してカウンターから出ていく野獣。
懐中電灯の光を当てられ眩しそうに顔の前に手をやる。
光に目が慣れてきて、侵入者の顔が分かるようになってきた。
学生服姿の背の高い少年のようだった。
◆◆◆

136 :
「俺は田所浩二……名簿には『野獣先輩』で登録されてるけど。
野獣で良いよ。そっちは?」
「太田太郎丸忠信。太田で良い」
どうやら危険な人物では無さそうだと、太田太郎丸忠信は判断し自己紹介する。
「あんたがこの店の中に入っていくのが見えたからよ」
「そ、そうなのか……やっぱり道路の真ん中で考え事してたのはまずかったなぁ。
でも乗っている奴じゃなくて良かったよ」
「ああ……」
どうも、この野獣なる男は警戒心は強い方では無いようだと太田は考える。
ならば好都合だ、とも。
太田は確かに殺し合いには乗っていないが、かと言って殺し合いの打倒を目指す積極的な反主催の立場を取っている訳でも無い。
自分が生き残る事こそ最優先事項。
その為に利用出来る者は利用する。
「前の殺し合い」でもそうやって生きてきた――結局は殺されてしまったが。
死んだ筈の自分が今こうして生きているのは何故かとも思ったが、そんなものはどうでも良いだろう。
重要なのは「再び殺し合いに居る」と言う事で、再び生き残るための行動を取らなければならないと言う事だ。
「乗っていないのなら一緒に行動しないか? 太田」
「ああ、良いぜ」
「良いねぇ〜、それじゃ、はい、ヨロシクぅ!」
この野獣先輩――田所浩二ははっきり言って戦力としては期待出来ないが、
いざと言う時には盾には出来るだろう。
太田はそう判断する。
【深夜/D-4商店街西区文具店】
【野獣先輩@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]竹刀@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合う気は無い。遠野達や殺し合いに乗っていない参加者を捜す。
        1:太田と行動する。
[備考]※動画本編、バスガイドピンキーに気絶させられた直後からの参戦です。
【太田太郎丸忠信@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を最優先とする。その為には手段は選ばない。
        1:野獣と行動する。いざと言う時は盾に使う。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
《支給品紹介》
【竹刀@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ】
ひでと虐待おじさんの原作にて、虐待おじさんがひでを叩くのに使っていた竹刀。

137 :
投下終了です。
地図はWikiに収録してあります
ttp://www51.atwiki.jp/aspurand1106/pages/262.html

138 :
投下します

139 :
2話 RUN,RUN,RUN
川の水は月明かりを反射しキラキラと輝いている。
茶色の喋るアラブ馬のアルジャーノンは、C-5エリアの川辺にて自分の今の状況を整理する。
「俺は死んだ筈じゃないのか……?」
彼は以前にも殺し合いに巻き込まれ、そこで頭を撃ち抜かれて死んだ筈であった。
だが今こうして生きている、何故か?
「あいつらが、主催の連中が俺を生き返らせたってのか?
死者の蘇生も出来るとか言っていたしな……でも、まさか……」
「うーん……」
「ん?」
声が聞こえ、その方向を目を凝らして見てみるアルジャーノン。
するとすぐ近くに帽子を被った太った少年が倒れているのを発見した。
既に襲われたのかと思ったが目立った傷は見当たらないのでどうやら目覚めていないだけのようだ。
この少年とは別に知り合いでも何でも無かったが、小さい子供をこの殺し合いの場に一人放置しておくのは気が引ける。
「おい、起きろ坊主」
アルジャーノンは右前足を使って少年を揺する。
すると少年はすぐに目を覚ました。
「ふああ……おはようキャプー……あれ? ここはどこプー?」
「気が付いたか」
「お馬さんが喋ってるキャプチュ」
「(変な語尾だな……)おう、俺はアルジャーノンって言うんだ。見ての通り喋れる馬だな。
安心してくれ、俺は殺し合う気は無ぇ。名前、何てんだ?」
「鈴木フグオ……殺し合い、そうキャプ、僕達殺し合いをしろって言われて……」
自分が置かれている状況を思い出したフグオは不安そうな表情になる。
無理も無いとアルジャーノンは思った。
見ればまだ小学校低学年か中学年程の子供に見える。
そんな子供が命のやり取りを迫られる殺し合いなどと言う異常状況に放り込まれて平然としている方がおかしい。
「フグオ、お前、この殺し合いに友達は居たりすんのか?」
「うん。小鉄っちゃん、のり子、仁、金子先生、春巻先生」
「そうか……お前は殺し合う気は無いのか?」
「そんなの無いプー、殺し合いなんて出来ないキャプ」
「だよなぁ。それなら俺と一緒に行動しないか? 一人じゃ不安だろ。俺もだけど。友達も探したいだろ?」
「良いの?」
「ああ、ここで会ったのも、何かの縁だろ」
「分かったキャプ……宜しくキャプリコーン」
アルジャーノンの申し出をフグオは快諾した。
二人は取り敢えず落ち着ける場所を探そうと言う事になり、アルジャーノンは自分の背中にフグオを乗せる。
「……!」
その直後、アルジャーノンは異様な殺気を感じた。
考えて見れば、見晴らしの良い場所で長い間留まっていれば狙われる危険は当然高くなる。
その事を失念してしまっていた。

140 :
「フグオ、しっかり掴まってろ」
「え?」
「狙われてる、逃げるぞ!!」
「うわっ!」
駆け出すアルジャーノン。
そしてアルジャーノンとフグオ目掛けて草むらから飛び出す大きな黒い影。
全身を黒い生体外殻で覆われ、両肩に犬の頭部を模した飾りが有り、一本一本がサバイバルナイフの如き鋭さを持つ爪を持った、巨躯の犬。
その風貌は地獄の番犬「ケルベロス」を彷彿とさせた。
「ガアアアアアアッ!!」
咆哮しながら、その黒い獣はアルジャーノンとフグオ目掛けて爪を振り下ろす。
「ぬおおおおおお!!!」
間一髪でその斬撃を回避する事に成功するアルジャーノン。背中のフグオも無事だった。
もし当たっていれば二人共容易に引き裂かれ命は無かったであろう。
急いで逃げなければ、確実に殺される。
黒い獣は明確な殺意を持っている。
「しっかり捕まってろォォォオオ!!」
「ギャブリィイイ!!」
全速力で走るアルジャーノン、その背中に必死にしがみつくフグオ。
かつて競走馬であったアルジャーノンはここまで全力で走る事など怪我をして以来無かったが、
彼自身が驚く程、往時の足の速さは衰えてはいないようだった。

……
……

どれぐらい走っただろうか、もう黒い獣の姿は見当たらなかった。
息を切らしふらつくアルジャーノン。
疲れてはいたが、生きている事を確かめる。
「アルジャーノンさん、大丈夫プー?」
「あ、ああ……久々だなこんなに走ったのは。昔競走馬だった頃を思い出す」
「あっ、アルジャーノンさん、あそこに建物があるキャプ」

141 :
フグオが指差す先には時計塔と思しき建造物が存在していた。
「時計塔か……あそこなら一息つけるかもな。ずっと外彷徨いている訳にもいかないし行ってみよう」
「キャプチュ」
二人は時計塔へ向かって歩いて行く。

【深夜/B-5、B-6境界線付近道路】
【アルジャーノン@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:フグオと行動する。時計塔へ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
        1:アルジャーノンさんと行動。時計塔へ向かう。
[備考]※本編最終話〜「元祖!」開始までの間からの参戦です。

◆◆◆

142 :
「逃げられたか……くそっ」
ケルベロモンは悔しがった。
馬と太った人間の子供、楽勝かと思っていたら逃げられてしまった。
自分の油断、慢心が有ったかと反省する。
「逃げられたものは仕方無い、次の獲物を探そう……」
気持ちを切り替え、ケルベロモンは索敵を始める。
彼は「狩り」と称して殺戮を行う事にこの上無い悦びを感じ、時には性的興奮まで覚える程の異常性を持っていた。
余りに節操の無い殺戮ぶりに、同種からも忌避されていた。
今回の殺し合い存分に暴れられる良い機会をくれたと主催側に感謝の念を抱く程である。
「狩りってとっても愉しいし気持ち良いのになあ、何でみんな分からないんだろうか」
自分の感性を理解してくれない同種への愚痴を呟きながら、ケルベロモンは獲物を探す。
その行先にはガソリンスタンドが有った。

【深夜/C-5、C-6境界線付近道路】
【ケルベロモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:狩りを愉しむ。
        1:獲物を探す。
[備考]※性格は作者のオリジナルです。

143 :
投下終了です

144 :
訂正。
金子先生は元祖からの登場人物のようなので
フグオの備考欄の部分を後程修正します

145 :
投下します

146 :
3話 遠く遥か向こう、ずっと見つめながら
ひまわり、オラの妹。
時々ケンカもしたけれど、大切な妹で、大好きな家族だった。
光る物が好きで、イケメンも好きで、母ちゃんに似てる所も有って。
――どうして、どうして死ななきゃいけなかったの?
――どうしてあの人達は、オラの妹を殺したの?
――ひまが、何をしたって言うの?
あんなに泣いて、オラ達に助けを求めていたのに、助ける事が出来なかった。
何も出来なかった。
ひまわり、ごめんね。
ごめんね――――。

……
……

深夜の森の中。
月明かりによって辛うじて辺りの様子は把握出来たがそれでも進むには何かしらの光源が必要な程の暗さ。
その中で、赤い上着に黄色い半ズボンを着た五歳児、野原しんのすけは泣いていた。
見知らぬ土地の見知らぬ森で独りきり、尚且つまだ五歳なら不安と恐怖で泣いてもおかしくない、が、
彼が涙を流しているのはそういった理由では無い。
この殺し合いの開催式において、彼の妹である野原ひまわりは首輪の威力を見せるための生贄として殺された。
それに対する悲しみ、妹を殺した者達への怒り、
助けを求めて泣いていた妹に何もしてやれなかった自分への怒り、遣る瀬無さ、悔しさ。
それが渦巻き、涙となって彼の目から溢れ出していた。
「……っ」
ふと、しんのすけは同じくこの殺し合いに呼ばれている自分の父、母、飼い犬の事を思い出す。
自分がこうやって悲しんでいるように、両親と飼い犬もどこかで悲しんでいるのだろう。
しんのすけは腕で涙を拭い、深呼吸をしてきっと前を見据える。
「父ちゃん、母ちゃん、シロを探さなくちゃ」
確かに、ひまわりを喪ってとても悲しい。まだ油断すれば涙が出そうになる。
だがいつまでも泣いていたってひまわりは返ってこないし、何も事は進まない現実も、しんのすけは分かっていた。
泣いている暇が有るのなら、どこかに居る筈の両親、飼い犬を捜し出して合流し、
このゲームからの脱出の方法を探すべきだと思った。
しんのすけは自分のデイパックを開けて、懐中電灯を取り出し、点灯させて名簿を見る。
読めない難しい漢字が沢山並んでいたが、自分の家族や友達の名前の字ぐらいならしんのすけも知っていた。
どうやら自分の家族以外に知り合いは居ないらしい。
次にランダム支給品を確認する。

147 :
「鉄砲だゾ……」
出てきた物を見て息を呑むしんのすけ。
それは大型のリボルバー拳銃。予備の弾もセットで入っていた。
S&W社が大昔に製造していた中折れ式の.45口径シングルアクションリボルバー「スコフィールド」。
しんのすけにはそこまでの詳細は分からなかったが、
手にしたそれが玩具等では無く人を殺せる本物の武器であると言う事は察する事が出来た。
本来ならば当たりに入る支給品なのであろうが。
「お、重い……大き過ぎるゾ」
しんのすけには重量、大きさ共に不適格でとても使えそうに無かった。
仕方無くしんのすけはスコフィールドをデイパックの中に戻した。
懐中電灯で辺りを照らす。
安物らしく余り明るく無かったがそれでも暗闇を照らす事が出来るだけ有難かった。
「ここはどこなんだろ……」
周りを見ても木、木、木ばかりの森。
どっちに行けば何が有るのか、それが特定出来そうな目印など何も見当たらない。
かと言って立ち止まっていても仕方が無いので、しんのすけは取り敢えず歩き始めた。
◆◆◆
「生きてるし、足も有る……」
森の中、少女、北沢樹里は自分が生きている事、自分の足が有る事を再確認する。
彼女は以前にも殺し合いに巻き込まれ、陸上選手を志していた彼女にとって命の次に大切な足を失い、
自暴自棄になり、クラスメイトの女子が付き合っていたとある男子を寝取ってしまい、
その女子の逆鱗に触れ、命を奪われる事となった。
だが今、樹里は生きている。
失った筈の足も有る。
これで「再び殺し合いに参加させられている」と言う状況でなければ、樹里はもっと素直に喜んでいたであろう。
「また殺し合いだなんて……」
自分が再び殺し合いゲームの参加者になっていると言う現実には落胆を隠せない。
そして名簿を見た限りでは、一緒に以前の殺し合いに巻き込まれていたクラスメイトも何人か居るらしい。
死んだ筈の者もそうでない者も。
自分の足を奪った愛餓夫、命を奪った倉沢ほのかも居るようだった。

148 :
「……」
これからの事について樹里は考える。
愛餓夫は出来れば再会などしたくない、再会してしまった場合は、相応の制裁は加えるつもりではあったが。
何しろ自分を絶望に叩き落とした張本人なのだから。
倉沢ほのか。
彼女とは餓夫とは別の意味で会いたくは無かった。
自分を殺したから、と言う理由も有るが、そうなってしまった経緯は、自分に原因が有ると、樹里は思っていた。
足が元に戻り、冷静な思考が出来る今だからこそ、こういう考えが出来るのだろう。
以前の殺し合いで足を失い自暴自棄になり、自分を介抱してくれた男子――海野裕也に当たり散らした挙句、
勢いで事に及んでしまい、それをほのかに見られてしまい、裕也共々激高し、錯乱したほのかに惨殺された。
あの時の自分はもしかしなくてもどうかしていたのだろう。
ほのかに対し、本当に済まない事をしたと、樹里は心の底から思う。
きっと、ほのかはこの殺し合いで自分と会えば、自分を殺そうとするだろう。
それ故に、樹里はほのかとは会いたく無かった、が、
自分がしてしまった過ちの事を詫びたいと言う気持ちも有った。
死にたくないから会いたくない、でも謝罪はしたい。
何とも自分勝手な、身の程知らずな考えか、と、樹里は自嘲する。
「どうしたら良いんだろ……」
考え込む樹里。
その時、視界にライトの光が踊った。
「!」
慌てて近くの太い木の幹に隠れる樹里。
だが、ライトの主は既に樹里に気付いていたようだ。
「誰か居る?」
聞こえたのは子供の声。どうやら男の子らしい。
記憶が正しければ開催式の時に見せしめの赤ん坊を取り返そうとしていた家族の一人の声と同じ。
確か、野原しんのすけ、だっただろうか。
もし同一人物ならば、家族の一人を主催に殺されて、それで殺し合いに乗ると言うのは考え難い。
可能性はゼロでは無かったが。
出て行ってコンタクトを取るべきか逃げるか迷ったが。

149 :
「今行くよ……」
結局出て行く事にした。
万一に備え、右手には支給品である出刃包丁を握り締める。
幹の陰から出た樹里にライトの光が当たり、眩しさで思わず左手を顔の前に翳す樹里。
「おお、綺麗なお姉さん」
少し喜んだ風な子供の声が聞こえる。
目が慣れてきてその子供の顔を見れば、少なくとも敵意は無い事は判断出来た。

【深夜/E-1森】
【野原しんのすけ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]健康、目が少し腫れている
[装備]懐中電灯(基本支給品)
[所持品]基本支給品一式(懐中電灯装備中)、S&Wスコフィールド・リボルバー(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、
     .45スコフィールド弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしない。父ちゃん、母ちゃん、シロを探す。
        1:綺麗なお姉さん(北沢樹里)と話をする。
[備考]※特に無し。
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]出刃包丁@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:今の所殺し合う気は無い。
        1:愛餓夫は会いたく無い。会ったら相応の制裁を加える。倉沢さんは……。
        2:目の前の子供(野原しんのすけ)と話をする。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※倉沢ほのかに対し謝罪したい気持ちが有るようです。

《支給品紹介》
【S&Wスコフィールド・リボルバー@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
S&W社が1875年にM3リボルバーを元に開発した中折れ式シングルアクション回転式拳銃。
名前は開発に携わったジョージ・W・スコフィールド少佐に因んでいる。
出典元のロワにおいて沖元実沙に支給、その後コーディに渡り数人の参加者を撃ちR事になった。
【出刃包丁@現実】
和包丁の一つ。魚を捌くための包丁であり、現代では肉を切るにも使われている。

150 :
投下終了です

151 :
投下します
登場:野原みさえ、ソフィア(オリキャラ)

152 :
4話 夢のENDはいつも目覚まし来たりて笛を吹く
ひまわり
私の大事な娘
時々手が掛かって皆を困らせる事も有ったけれど
本当に可愛い
大切な娘

「だった」



――――モウ イナイ


どうして。

どうして。

どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして

153 :
何で、死ななきゃいけなかったの?

何で、殺されなきゃいけなかったの?

かえして

かえして

かえせ

かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ
かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ

ひまわり

どうやったら

もどってくる?

154 :


そうだ

ゆうしょうすれば ねがいをかなえてくれる


しんのすけや ひろしや しろもいるけど

だいじょうぶ


ひまと いっしょに  いきかえらせれば だいじょうぶ


だいじょうぶ

ひま

まっててね


まま    がんばるよ


◆◆◆

155 :
兎獣人の女性、ソフィアはゲーム開始直後から、いきなり交戦状態となっていた。
神社の境内にて、人間の女性が襲いかかってきた。
その手にはサーベルが持たれ、出鱈目に振り回しているだけで避けるのは難しくは無いが、それでも脅威には変わり無い。
「ちょっと、待ってって……」
「ひまわりぃい、待っててねぇえ」
「……!?」
その女性は良く見れば、開催式で見せしめに殺された赤子の母親、確か野原みさえだっただろうか。
声も表情も目も、とても正気では無い。
自分の子を生き返らせる為に、殺し合いに乗ったと言うのだろうか。
だが、息子や夫、飼い犬も居る筈。
「ねえちょっと、あなた、野原みさえさんでしょ?」
「!」
野原みさえの動きが止まる。
「どうして私の名前を知っているの?」
「いや、開催式の時にあのじゅんぺいとか言う奴が名前言ってたじゃない。
それより、あなた、見せしめに殺された赤ちゃんを生き返らせたいから殺し合いに乗ったの?」
ソフィアの問いに、みさえは狂った笑みを浮かべながら答える。
「そうよぉ。みんな殺してぇ、ひまを生き返らせるのっ、しんちゃんもひろしもしろも、
こっ、殺しちゃうけどっ、ふふふっ、だいじょうぶ一緒に、生き返らせるからっ。
ははっ、ははははははははははははは」
血走った目、涎を垂らしながらうっとりして語るその様子は、みさえが完全に狂ってしまっている事をソフィアに認識させる。
これはまともな会話は不可能だと判断し、ソフィアはさっさと逃げる事にした。
ソフィアの支給品は睡眠薬で、目の前でサーベルを振り回す女性に対抗する手段には足り得なかった。
そもそも無理に女性を始末する必要も無い。
「逃がさないわよおおおおおおお」
「うるさい! キチ○イになんか構ってられないのよ!」
全速力で走り出すソフィア。
みさえはサーベルを振り回しながらソフィアを追い掛けたが、追い付く事は出来ず、見失ってしまった。
「逃げられたああああぁああ、ひま、ま、のためにごろ、さなきゃいけないのにっ、でもいいもん、つぎにいくものお」
呂律の回らない口で喚き散らしながら、ふらふらと、みさえは他の参加者を探し始める。
今の彼女を普段の彼女を知る者が見ればその余りの変わりように愕然とするだろう。
気丈であり、優しくあり、時には男勝りだったのが普段の野原みさえ。
だがその「野原みさえ」はもはや居ない。
愛娘を目の前で惨殺された母親は、簡単に壊れ、もう正常な思考は出来ない。
自分が自分自身への「破滅の道」を作っている事になど気付く筈も無い。

156 :
【深夜/A-2神社】
【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]発狂
[装備]サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝してひまわりを生き返らせる。
        1:しんのすけ、ひろし、シロはひまわりと一緒に生き返らせる。
[備考]※発狂し正常な思考が出来ません。
    ※ソフィアの容姿のみ記憶しました。

……
……

野原みさえから逃げ切れた事を確認し、取り敢えずほっと胸を撫で下ろすソフィア。
出来れば二度と会いたくないと思った。
「折角生き返れたのにすぐに死んだら不運にも程有るからね……」
ソフィアは以前、別の殺し合いに巻き込まれ、死亡した身であった。
何をどうやったのかは分からないが、再び生を与えられたのだから、何としても生き残らなければと思う。
前回は積極的に殺し合いに乗っていたが、今回は生き延びる事を優先とし、
戦闘はやむを得ない場合にのみ行うと言うスタンスを取る事にする。
それ以前に武器を探さなければならない。
「どこに行こうかな……」
これからの行き先をソフィアは思案する。

【ソフィア@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、睡眠薬@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。無理な戦いはしない。
        1:武器になりそうな物を調達する。
        2:野原みさえには二度と会いたくない。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。

《支給品紹介》
【サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
元ロワにおいてケトルに支給された西洋刀。ケトル曰く「所々刃こぼれを起こしている」らしい。
【睡眠薬@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ】
原作において野獣先輩が遠野に飲ませるアイスティーに仕込んだ睡眠薬。
サッー!(迫真)

157 :
投下終了です。

158 :
投下します

159 :
ハロー、ハロー、ハロー。皆様どうお過ごしでしょうか。
私は現在トチ狂った思考をした青年に、普通ではありえない殺し合いを強要されています。
このままでは私は死んでしまうかもしれません。
しかし、希望はまだあります。あのトチ狂った青年は『十人』生き残れるといいました。
四十人の内の十人。恐らく殺し合いを加速させる為の青年の考えでしょう。
しかし、こう考えることができます。
殺し合うことなく、生還できることが可能であると。
普通の人ならば殺し合いなどはしません。普通はね。
だから僕は極めて常識的な行動をしているのだ。
禁止エリア? 一時間の猶予があるさ。
任意で爆発? 二十四時間の猶予があるさ。
そんなわけで僕は殺し合いに乗らずに、隠れています。
場所は病院。飛ばされた場所がそこだったので。
さっきまでは冷静な思考ができずに震えてましたが、時間に余裕ができたので落ち着けました。
……伝えることが無くなったのでレポートを終了します。

□□□

160 :
特に意味の無い、用途の無い報告書をボイスレコーダーに納めて、大きく息を吐く。
私物ではない、自分に支給されたランダム支給品の一つをデイバッグにしまう。
デイバッグを傍に置き、ごろりとベッドに寝転がった。
「やることないな……」
病院の三階の、とある病室のベッドに仰向けで寝ている男――田中仲他は独り寂しく呟いた。
暇を潰す為にボイスレコーダーを使用していたが、この時代では珍しい使い捨てのボイスレコーダーだったらしく、一回きりだった。
他に支給された道具としてトマホークが支給されているが、殺し合いはしないと決めたのでデイバッグにしまっている。
そうじゃない使い方を模索し、何か的のような物があればと思ったが、考えてみればここは公共の建物である。
あったとしても手元が狂って物を傷つけてしまう可能性があるので、それはよくない。
これ以外に支給された物は、基本支給品を除いては何も無かった。
「異常はなし、っと」
物で暇を潰す手段以外に、行動で暇を潰す手段もあるといえばある。
……あるといえばあるのだが、二つしかないのが難点か。
しかもその二つの内一つ、病院の探索は子供の頃に行ったので今改めてする必要は無い。
それにメリットも何も感じられないのでパス。
残ったのは病院に近づく者の監視。変化に乏しいので更に暇になる。
ので、やはり手段は無かった。
「そうだメモ帳と鉛筆があるじゃんか。それで暇を潰そう」
思い出したのは、基本支給品にあったメモ帳&鉛筆。
直ぐにデイバッグから取り出して、メモ帳を開いて脇にあったテーブルの上に置き、何かを書こうとした。
ぽきっ。
「……あー」
思いのほか強く押し付けすぎたのか、鉛筆の芯が根元から折れてしまう。
残念なことに鉛筆削りは支給されていない。病院内にもあるわけがない。
鉛筆をテーブルに放り、そのままの状態でベッドに倒れこむ。
「無い、なあ」
手立てが無くなった事に溜め息をつくと、田中は横になり静かに窓の風景を見つめる。
暇を潰す最後の手段、睡眠は行わないつもりだった。
いつ病院に誰かが入り込んできてもおかしくない状況では、寝るに寝れないからだ。
寝ている隙に誰かが病院に侵入して、発見されて殺されてはたまったものではない。
その時は殺し合いなんてしない、とかいうのは取っ払って迎撃するつもりである。
まあ会ってみないと分からないのだが。
「……暇だ」
自分の無趣味さを嘆き、また溜め息を吐いた。

161 :
【A-3/病院/一日目・日中】
【田中 仲他】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、トマホーク、ボイスレコーダー(使用済み)
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らないで生還する
1:病院に隠れる
2:暇
【参加者特徴】
【田中仲他(タナカ ナカタ)】
普通という言葉に執着し、普通という言葉に心酔する高校一年生
自らの平均的な能力に誇りを持ち、それ以上やそれ以下の能力を持つ者を見下す
上記のおかしなことを除けば普通の感性を持ち、常識的……常識的?
普通に生きてきた為、趣味が無きに等しい

□□□

投下終了です

162 :
投下乙です。
普通でいるって事は結構難しい
自分も投下します

163 :
5話 The Salvation
「何だってのよ……!」
白髪の猫耳少女シルヴィアは、沼地の畔にて襲撃を受けていた。
兜のような物を被った鳥の頭、蝙蝠のような翼、獣の胴体、蛇のような尻尾。
さながらファンタジーに登場する「グリフォン」のような生物。
実際、その生物――厳密には電脳世界のデータが実体化した存在――は「グリフォモン」と言う名前であった。
「チョロチョロと逃げ回りおって、さっさと諦めれば楽になれるぞ」
10メートル程上空をホバリングしながら、尊大な口調で眼下のシルヴィアに言い放つグリフォモン。
「ふざけんな!」
怒声を放ち抵抗の意志がまだ残っている事を示すシルヴィア。
だが、戦況はシルヴィアが不利であった。
何しろ相手は空を飛んでいる、それに動きも機敏で、今の所は繰り出された攻撃は全て回避する事に成功していたが、
疲労が募って動きが鈍くなれば必然的に回避行動も難しくなる。
ならば反撃を、と思うかもしれないが、シルヴィアが今持っているのは自転車のチェーン。
飛び道具でも無い「辛うじて近接武器としての効果が期待出来る」程度の代物。
とてもグリフォモンに太刀打ち出来る装備品では無かった。
勝ち目が薄いのなら無理に戦わず逃げれば良い、のだが、前述したようにグリフォモンの動きは機敏で、しかも上空を飛び回ってるため視界も広い。
逃げようとしても先回りされてしまうのである。
つまり現状、生き延びるにはどうにかしてグリフォモンを倒すしか無かった。
(くそ……どうすれば良い……)
必死に逃げ回りながら対抗策を考えるシルヴィア。
しかし、何ら有効策は浮かばずただ時間が過ぎ体力を消耗していくだけ。
グリフォモンはシルヴィアを一気に殺そうと思えば殺せたが敢えてそうはしなかった。
いつでも殺せると言う余裕と、甚振ってやろうと言う意地悪さが有った故に。

「伏せろぉ!!」

突然、男の声が響いた。
それはシルヴィアに向けられた叫びのようだった。
「!?」
驚くシルヴィアだったが、言われた通りに身を地面に伏せる。
そして上空を飛ぶグリフォモン向かって、黒いボールのような物が地上から投げられる。
それは正確にグリフォモンに向かって飛んで行った。
「何だ?」
グリフォモンには、その投げられた物が何なのかは分からなかった。

ドガアアアアアン!!!!!

164 :
辺りが一瞬真昼のように明るくなり、爆発音と同時に地上の草が波紋を広げるように揺れる。
そして、地上にパラパラと降り注ぐのは、ついさっきまでグリフォモン「だった物」。
焼け焦げた肉片がシルヴィアの上にも降り掛かり「うわっ」と声を発してシルヴィアはそれを払った。
払い除けた後で、どうやら自分は助かった、いや、助けられたらしいと悟る。
「おい、大丈夫か?」
シルヴィアの元に駆け寄る、人間の男。
「あ、ああ。何とか……あんたが助けてくれたのか?」
「そうだ。遠くから襲われてるのが見えたからな……立てるか?」
「大丈夫……」
ゆっくりと立ち上がるシルヴィア。
爆発音で誰かが来るかもしれないので、一先ず、西の方に見える森の中へ隠れそこで話をしようと言う事になった。

【グリフォモン  死亡】
【残り  51人】

◆◆◆

全く困ったものだ、と、葛城蓮――別名虐待おじさん――は思わざるを得なかった。
学校のクラスメイト達と一緒に修学旅行に向かった筈なのに、下手な事をすれば爆発する危険な首輪をはめられ、
殺し合いをさせられている。
参加者にはクラスメイトも何人か居る。
特に親しいのは、ひで、KBTITこと拓也の二人。
ひでは親しいと言うよりは、普段弄り倒している子分のような存在だったが。
拓也の方は親友と言っても差支えは無い。
蓮は殺し合いを否定し、潰す事を決意する。
クラスメイトやその他の人々を殺して一人だけ生き延びようとするような人間の屑にはなりたくない。
そもそも、赤子を家族の前で平気でRような連中が口約束を守るとは到底思えない。
クラスメイトや、殺し合いに乗っていない者を探しこのふざけたゲームを潰そうと蓮は思う。
ただ、憂慮している事も有る。
クラスメイトの中から殺し合いに乗る者が出る可能性。
全員とは合流出来ない可能性。
特に、ひでや拓也が死ぬ可能性。
何より自分が死ぬ可能性。
それらの可能性を考えたくは無かったが、否定出来る状況では無いと言うのもまた事実。
更にもう一つ、いざと言う時、自分は「人」を殺せるのか、と言う事。

165 :
「おい、大丈夫か?」
「あ、ああ。何とか……あんたが助けてくれたのか?」
たった今、蓮は鷲とライオンが融合したような生物に襲われていた猫耳(?)の少女を救助した。
支給されていた三つの手榴弾の内一つを、飛んでいた生物に向けて投げつけ、爆殺した。
手榴弾など生まれて初めて使ったが、思いの外上手く行った。
ただ、躊躇う事無く殺せたのはその相手が「人」では無かったからだ。
この殺し合いの参加者の中には、開催式の時に幾つか見かけたが明らかに「人」では無い者もいる。
無論それらの者が全員殺し合いに乗るとは思っていないが、乗っていて、襲いかかってくるのであれば躊躇い無く殺せるだろう。
だが、襲いかかってきた者が「人間」或いはこの少女のように「人とそれ程変わらない容姿」であったらどうか。
「殺人」とは本来忌避すべきもの――しかし身を守るため攻撃しなければ自分が危うくなる時だってある。
更に言えばそれが自分のクラスメイト相手で、万一、ひでや拓也だったのなら。
「全く困ったもんじゃ……チッ……」
「え?」
「いや、何でも無い、こっちの事だ」
蓮の心配事は尽きる事は無い。

◆◆◆

シルヴィアは一度死んだ。
今やらされているものとは違うクラスメイト同士の殺し合いにて、この殺し合いにも参加している鈴木正一郎の手によって殺された。
その時の痛み苦しみは今でもはっきりと思い出せる。
だが、身体の傷は全て消えている。
死に至る程損傷したと言うのに痕跡すら無い。
開催式の時のルール説明で「死者を生き返らせる事が出来る」といった事を言っていた。
とすれば主催側の者達が自分を蘇らせたと言うのだろうか。
そんな事が有り得るのか――とも思ったが死んだはずの自分が今こうして生きているのだから、
現実として受け止めるしか無い――と、シルヴィアは思った。
この殺し合いにはクラスメイトもかなりの数が参加させられているようだった。
自分を殺した鈴木正一郎、そしてかつて複雑な感情を向けていたサーシャ。
シルヴィアは今回の殺し合いには積極的に乗るつもりは無かった。
以前の殺し合いとは、真逆のスタンスである。何故か?

166 :
――心当たりは有るには、有った。
(こんな気持ちになれるのは、やっぱアイツのお陰なんだろうか)
この殺し合いには呼ばれていない、助平で軽い性格、しかしその実熱い心を持ったとあるクラスメイトの事を、
シルヴィアは自分の命を救ってくれた男と共に森の方へ向かいながら思い返していた。

【深夜/F-1沼地周辺】
【シルヴィア@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]肉体疲労(大)
[装備]自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:取り敢えず積極的に殺し合う気は無い。
        1:男(虐待おじさん)と話をする。
        2:クラスメイト達(特に鈴木正一郎とサーシャ)については今は保留。
        3:もっと良い武器が欲しい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、手榴弾(2)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:クラスメイト(特にひで、KBTITこと拓也)や殺し合いに乗っていない参加者を集め、殺し合いを潰す。
        1:猫耳少女(シルヴィア)と話をする。
        2:襲い掛かってくる者には相応の対処をする。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※元動画準拠なので、本名は「葛城蓮」、平野源五郎とは面識が無い設定です。

《支給品紹介》
【自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
自転車の駆動部に使われているチェーン。強度はそれなりに有るので上手く使えば武器や防具になる。
元ロワにおいて君塚沙也に支給されるが何の役にも立たなかった。
【手榴弾@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
ロワでお馴染みのピンを抜いて投擲するタイプの手榴弾。詳しい種類は不明。
元ロワにおいて松村友枝に3個支給されるが、友枝が扱い方を誤り彼女諸共自爆して見せ場は無かった。

167 :
投下終了です。

168 :
投下します。

169 :
6話 足りないものはいつも……
ああ、どうしてこんな事になったのだろう。
折角裕也君と一緒に島から逃げようと頑張っていたのに。
私――倉沢ほのかは、一度死んだ。
正直死んだ時の事は良く思い出せない。
でも今はそんな事はどうでも良い。
今、私は前とは別の殺し合いに参加させられている。
死んだ筈の自分がどうして今生きているのか、この殺し合いは一体誰の手によるものなのか、
分からない事は沢山あるけれど、それより重要なのは、
一緒に居た筈の裕也君がどこにも居ない事、そして――私から裕也君を奪おうとした憎い女が、
あの時殺した筈のあいつが、私と同じように生き返っていると言う事。
きっと裕也君が居ないのはあいつのせいだ。
あいつが――北沢樹里がまた私から裕也君を奪おうとしているに決まっている。
あいつを探し出して裕也君を取り戻さなきゃ。
取り戻して、今度こそ、一緒に――――

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「!?」

◆◆◆

全裸の男、INUEは奇声を発しながら、一人の少女に向かって走っていく。
助けを求めているのか、邪な思いが有るのか、気が狂ってしまったのか、それは分からない。
そしてその少女にとっては、見知らぬ男が全裸で奇声を発しながら突進してくると言う事実が認識出来ればもう十分であった。
少女は手にしていた突撃銃をINUEに向ける。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

それを知ってか知らずか、INUEはなおも突進し続けた。

ダダダダダダダダッ!!

7.62ミリの銃弾の雨がINUEの身体を穿ち、INUEは全身を穴だらけ、血塗れにされ、絶命した。

【INUE  死亡】
【残り  50人】

170 :
◆◆◆

「何考えてるのこの人……」
突然現れた全裸の男が完全に息絶えた事を確認し、忌々しげに言うほのか。
以前の殺し合いにおいてある出来事により精神が破綻した彼女はクラスメイトを何人も殺害した。
今においても、その精神は異常を来したままで、今更人一人殺害するのにも何の忌避感も持たない。
「何か持ってる……?」
ほのかは男の所持品を漁る。
しかしデイパックに入っていた物は基本支給品の他には、ロボットの玩具が有るのみ。
ロボットの玩具を地面に放ると、ほのかは歩き出した。
「自分から裕也を奪おうとしている」北沢樹里を探し出すために。
そして、裕也を取り戻して、一緒になるために。

【深夜/C-1滝周辺】
【倉沢ほのか@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]精神に異常
[装備]56式自動歩槍(21/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)
[思考・行動]基本:裕也君を見付けて二人で脱出する。他の人達は皆殺し。
        1:北沢樹里を探し出して裕也君を取り戻す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※この殺し合いに海野裕也が居ると、また、北沢樹里が海野裕也を連れ去ったと思い込んでいます。

《支給品紹介》
【56式自動歩槍@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
有名な突撃銃AK47を中国のノリンコ社がコピーした物。
スパイク型の銃剣が特徴。世界に出回っているAK47コピーはおおよそがこれらしい。
性能はオリジナルより幾分劣ると言われている。
元ロワにおいて呂車に支給される。その後ジャスティーナ、舘山瑠夏と持ち主が転々とする。
【カンタムロボ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
クレヨンしんちゃんの中で登場するアニメ(劇中劇)「超伝導カンタム・ロボ」に登場する主役メカの玩具。
正式名称は「超電導 カンタム・ロボ」で、作品初期からしんのすけが愛用している玩具の一つ。

171 :
投下終了です

172 :
投下します

173 :
7話 ひどくありふれたホワイトノイズをくれ
ブレザーを着た犬狼獣人の少女、原小宮巴は、レジャー施設の中を散策していた。
「だーれか居ないかなー」
散策しているとは言っても警戒は怠らず、右手には支給品である警棒を握っている。
以前の殺し合いで支給された散弾銃と比べると随分支給品のランクが下がったと巴は思う。
「以前」と述べたが、巴は殺し合いに巻き込まれるのは二度目である。
一度目の殺し合いで、巴は死んだ筈だった。
運営責任者の男の思い付きによって始まった、その男とのジャンケン対決で敗北し、首輪を爆破されて殺された。
だが、気が付けば自分は生き返っており、今度はじゅんぺいとまひろと言う妙な男二人が進行役を務める別の殺し合いの参加者になっている。
こんな事になるとは誰が予測出来るだろう。
死んだと思ったらまた殺し合いなのだから。
(おねーさんは無事に帰れたのかな)
ジャンケンに勝利し首輪を外されていたかつての同行者の事を思い返す巴。
「おーい」
「!」
不意に声を掛けられ足を止める。
現在位置はゲームセンター。
辺りを見回すと、ゴーグルかサングラスを掛けた、色黒で、上半身が筋肉質なのに下半身が痩せ気味と言う、
アンバランスな体格をした男が居た。
声を掛けたのはどうも彼らしい。
「誰? おじさん」
どう見ても中年に見えるので、巴は「おじさん」呼びをする。
「何ぃー何つった今もう一回言ってみろうぇー?」
すると、その男は滑舌の良くない口調で、少し怒った様子で巴に聞き返す。
「いや、おじさん……」
「おじ↑さん↓だとふざけんじゃねぇよお前! お兄さんだろォ!?」
「……」
怒り出した男にしばし呆然とする巴。どう見ても「お兄さん」と言う年齢には見えない。
だが、騒がれても面倒なので巴は大人しく言い直す事にした。
「お兄さん」
「よぉし……って、またやっちまった……悪ぃなおじ↑さん↓呼ばわりされるとつい我を失っちまうんだよなぁ。
俺は拓也って言うんだ。名簿にはKBTITって載ってるけどな」
「私は原小宮巴……急に声を掛けたけど、おにーさん、私に何か用なの? 殺し合いには乗ってるの?」
「いや乗ってねぇよ。こんなふざけたゲームに乗るつもりなんて全く無ぇ。
俺のクラスメイトだっているしな。ああ、声を掛けたのは、俺のクラスメイトの事知らないかと思って」
「いや、おにーさんが初めて会った人だよ……クラスメイト?? おにーさん、学生なの?」
「おう、中学生だ」
「は?」

174 :
信じられないと言った表情を浮かべる巴。
お兄さんと呼べるかも怪しい外見のこの男が「中学生」、自分より年下だと言うのか。
いやそもそも中学生ならば高校生である自分が「お兄さん」呼びするのはどうなのか。
「……おにーさん、私をからかってない?」
「えー? 何言ってんだよ。こんな状況でふざけたりしねーよ当たり前だろおめぇー」
「本当に中学生、なの……じゃあ私より年下って事になるんだけど……ええ……(疑念)」
どうやっても信じきれず、困惑する巴。
「おい、動くな!」
「「!」」
闖入者が現れる。
二人は声の方向へ視線を向ける。
散弾銃を自分達に向ける少年の姿が確認出来た。
「何だよお前……そんな物騒なもん向けんなよ、オイ」
拓也が少年に向かって警告するが少年は聞く耳を持っていない様子である。
「早速獣人を見付けられるなんてついてるな……」
「え? 何? 私に用事?」
少年は巴の方を見て嫌な笑みを浮かべる。
それに気付いた巴が少年に問う。
「あぁそうだ。お前に用があるんだよ。おい、おっさん。この女置いて行くって言うのなら見逃してやるよ」
「あ? 何?」
「だから、おっさん――――」
「おっさんだとふざけんじゃねぇよお前!!」
「!?」
拓也の取った行動に、少年も巴も目を見張る。
少年が向けていた散弾銃の銃身を掴んだかと思うと、少年の腹に渾身の蹴りを入れたのだ。
散弾銃を向けて威嚇していれば動けないと油断していた少年は不意打ちに対処出来ず、
後ろに倒れこみ腹を抑えて咳き込む。
持っていた散弾銃は拓也に奪われた。
「げほっ、ごほっ……この、野郎……」
「野郎じゃないよ女の子だ、よっ!」
「!!」
立ち上がろうとした少年の頭を、巴は警棒で殴り付けた。
少年は卒倒し、動かなくなってしまった。

175 :
「ナイス拓也さん」
「おう、大丈夫か巴……こいつ、死んだのか?」
「ううん、気を失ってるだけみたい」
「……こいつ、お前の事目当てだったみたいだぞ? てかさ……お前、着ぐるみじゃないの?」
「え? 違うよ。本物だよ」
「まじか……」
拓也の世界では巴のような獣人は架空の存在である。
巴の事を見付けた時も拓也は彼女が着ぐるみか何かを着ているのだと思っていた。
一方の巴は不思議そうに拓也を見る。
彼女の世界は人間と獣人、その他人外が共生しており、獣人を着ぐるみだと勘違いするような人間はまず居ない為だ。
しかし、二人共今はそれどころでは無いと判断し気絶した少年の方に視線を向ける。
「どうしよっかな、私を襲うつもりだったっぽいし。何かしてやりたいな」
「俺も手伝おうか」
「良いの? 二人でお仕置きしようか、じゃあ」
「かしこまり!」
初めて出会ったとは思えない程意気投合している巴と拓也は、少年を引き摺って「お仕置き」に適しそうな場所を探し始めた。

◆◆◆

壱里塚徳人は「獣人」に対し屈折した感情を抱いた少年である。
分かりやすく言えば「獣人相手限定のサディスト」と言ったところだろうか。
獣人が苦しむ姿、悶える姿を見て喜ぶと言う趣味を持っていた。
クラスメイト同士での殺し合いに巻き込まれた時、彼は獣人狩りを始めた。
しかし結局、一人も狩れず彼は落命する事になる。
そして二度目の生を受け、彼は再び殺し合いの舞台に立った。
クラスメイト以外にも、多くの獣人が居る。
彼は自分の心の中に、なぜ自分が生き返ったのかと言う疑念よりも獲物の数が増えた事、再び狩りのチャンスがやってきた事への、
歓喜の感情が沸き起こるのを否定出来なかった。
支給されたウィンチェスターM1912散弾銃を手に、徳人は第二の「獣人狩り」を始めようとした。
そして最初の獲物は、レジャー施設のゲームセンターで発見した、青いブレザー、自分とは違う学校の生徒と思われる、
犬か狼の獣人の少女――――になると、徳人は少女と一緒にいた色黒のサングラス男に不意打ちを食らうまでは思っていた。
現在、彼は気絶させられ、獣人の少女とサングラス男に引き摺られている。
壱里塚徳人少年はこれからどうなってしまうのか。
次回に乞うご期待。

176 :
【深夜/B-3レジャー施設・ゲームセンター】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。少年(壱里塚徳人)に「お仕置き」する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???、ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:クラスメイトを探す。
        2:巴と行動。少年(壱里塚徳人)に「お仕置き」する。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
【壱里塚徳人@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]頭に打撲、腹部にダメージ、気絶
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:獣人狩りをする。人間は必要な時以外危害は加えない。
        1:(気絶中)
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※原小宮巴とKBTITによって運ばれています。

《支給品紹介》
【警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
警官が所持する金属製の棍棒。
元ロワにおいて狼獣人少女藤森真海が自慰に使用した。
【ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
ウィンチェスター社初のハンマー内蔵式散弾銃。
ポンプアクション式散弾銃デザインの基礎を築き“パーフェクト・リピーター”の別名を持つ。
元ロワにおいて原小宮巴に支給された。

177 :
投下終了です

178 :
投下します

179 :
8話 友達の為に心を鬼にする人間の鑑
最初に人狼の男、稲葉憲悦と遭遇した時、遠野は我が目を疑った。
遠野の世界において人狼は空想上の生物の筈だった為である。
しかし、話が通じる事、積極的に殺し合う気は無い事が分かると、遠野は警戒を解き現在は共に行動するに至っている。
「稲葉さんも人を探しているんですか?」
「ああ。柏木寛子っつーんだが……17歳の茶髪の女だ」
「僕も早く、先輩やクラスメイトと合流したいと思ってるんですが……」
互いの探し人について話し合っていた時。
グシャッ
背後から何かが地面に叩き付けられる音が響く。
二人は恐る恐る後ろを振り向く。
「……!」
遠野は息を呑んだ。
自分達が歩いてきた道路、その中央付近に、先程までは無かった筈の白い犬の死体が有った。
現在遠野と憲悦が向いている方向から見て左手側は崖になっており、その上にはレジャー施設が有るが、
この犬は崖上から落ちてきたのか、辺りに血や肉片が飛び散り、目を背けたくなるような惨状と化していた。
良く見れば首には首輪を嵌めておりこの殺し合いの参加者である事を示していた。
「何て酷い……」
「この崖の上から落ちてきたのか? いや、落とされたのか?」
崖上を見上げる憲悦。暗くて良く分からないが、動く影は見当たらない。
「あれ? 良く見たらこの犬……あの見せしめで殺された赤ちゃんの家族じゃないか」
「あ? そういやそうだな……」
その白い犬は、見せしめとして殺された野原ひまわりの家族の一員、シロだった。
シロの身に何が起きたのか、時は少し遡る。
……
……
崖上のレジャー施設、その裏手。
崖際にて、白い子犬、シロは涙を流していた。
(どうして、どうしてひまちゃんが死ななきゃいけなかったんだ……)

180 :
時折悪戯をされ酷い目にも遭わされたが、大事な家族だった野原ひまわり。
だが、その小さな命は、じゅんぺいとまひろと言う謎の二人によっていとも呆気無く奪われた。
(許せない、絶対許さない!)
ひまわりを殺したあの二人に、今まで感じた事の無い激しい怒りを覚えるシロ。
あいつらの言いなりになんてなるものか、と、殺し合いを否定する。
しんのすけ、ひろし、みさえも自分と同じように悲しんでいるだろう。
まずは三人を探さなければ。
シロがそう決心して行動を起こそうとした時。

ガンッ!

背後から、硬い物で頭を殴られた。

「!!?」
視界が大きく揺らぎ、意識が消えかけ、シロはその場に崩れ落ちる。
激しい頭痛が襲う。
起き上がろうとするが上手く行かない。
その内、シロは浮遊感を感じる。
誰かの手によって抱きかかえられ、運ばれている。
混濁する意識の中、シロは自分を抱きかかえている人物が崖に向かっている事を確認する。
そしてその人物が自分をどうしようとしているのかも察した。
逃げなければ。
だが、身体は全く言う事を聞いてくれない。
頭から垂れてくる赤い液体で視界が赤く染まり何も分からなくなる。
自分はここで死ぬのか。
(嫌だ、死にたくない、僕は、ここで殺されちゃうの?)
(いや、だよ、まだ、しんちゃんと遊びたいよ。しんちゃんのお父さんやお母さんとも、い、しょに)

シロの身体が、宙を舞う。
重力に従い、崖の下のアスファルトへと真っ逆さまに落ちていく。

(しん、ちゃん)

地面に激突する直前、シロの脳裏にはっきりと浮かんだのは、大好きな大好きな――――――。

181 :
【シロ@アニメ/クレヨンしんちゃん  死亡】
【残り  49人】

◆◆◆

「ごめんね……でも、小鉄っちゃんの為なんだ……」
中年のように老けた眼鏡の少年、金子翼は、
たった今、その辺に落ちていた石で頭を殴り付けた上に、崖から落として殺害した白い犬に向けて、
謝罪の言葉を述べると共に、自分の思いを吐露する。
白い犬の物と思われるデイパックを開けて中身を漁る翼。
彼の支給品は、彼が敬愛してやまない大沢木小鉄のリコーダーで、彼は嬉しく思ったが、
この殺し合いを戦う為には武器が必要だった。
そして出てきた物はピッケル。
登山の時の杖として使われている物だ。
先端は鋭く十分武器に成りうる。
翼はそれを回収し、装備した。
「小鉄っちゃんの為に頑張るんだ……」
大沢木小鉄を優勝させる為に、殺し合いに乗り、小鉄以外の参加者を皆殺しにする。そして自分は自決する。
それが金子翼のこの殺し合いでの行動指針であった。
全ては小鉄の為に。彼は己の心を鬼とすると決めていた。
「行こう」
ピッケルを携え、翼はレジャー施設へと歩いていく。

【深夜/C-3レジャー施設裏手】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
        1:レジャー施設に入って参加者を探す。
        2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。

◆◆◆

182 :
そして話は現在に戻る。
「可哀想に……埋めてあげたいけど、穴を掘れるような道具は持っていないし」
「そんな事やってる暇ねーだろ。放っておくしかねぇよ」
「そうですね……」
忍び無かったが、遠野と憲悦は白い子犬の死体をそのままにしておく事にした。
そして二人は歩みを再開する。

【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:先輩やクラスメイトを探す。
        2:稲葉さんと行動する。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
【稲葉憲悦@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:積極的に殺し合う気は無い。寛子を探す。
        1:俺は死んだ筈なんだが……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。

《支給品紹介》
【小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族】
大沢木小鉄が大巨人(記憶喪失のプロレスラー)を召喚する時に使うリコーダー。
今回のロワで吹いても大巨人は来ない。ただのリコーダーと化している。
【ピッケル@現実】
積雪期の登山に使う鶴橋のような形の道具。
氷雪の斜面で足がかりを作る、滑落時の滑落停止、杖代わり等、用途は幅広い。
先端は刃物そのものなので十分武器足り得る。

183 :
投下終了です

184 :
投下します

185 :
9話 Flower garden of the moonlit night
夜の帳の中でも、一面に咲き誇る花達はその美しさを損なう事は無い。
そして花畑の中を通る道で、茶髪セミロングの少女、柏木寛子は目を覚ます。
「私は死んだ筈なのにどうして……」
寛子は以前にも殺し合いをさせられ、そこで落命した筈だった。
従って今現在自分が生きて立っている事に加え、別の殺し合いに参加させられている事実は、
理解するのには少々時間が必要だった。
「何だかなあ……どうしようかなこれから……」
また殺し合いの中に居ると言う現実にうんざりしつつ、名簿を見ようとデイパックを開ける寛子。
月明かりだけでは明度が足りず、目立つ危険は有ったもののやむを得ず懐中電灯で名簿を照らす。
殆どが知らない名前だったが、数人、以前の殺し合いでも居た名前が有った。
寛子を性奴として飼っている鬼畜人狼、稲葉憲悦の名前も。
「あいつも居るの……」
憲悦と再会したいなどとは、寛子は微塵も思っていない。
以前の殺し合いにて一度だけ再会してもうそれで十分だと思っていた。
肝心の自分の支給品は何なのだろうか、と、寛子は更に奥深くまでデイパックを漁る。
出てきた物は小型のリボルバー。弾は装填されており、予備の弾も有る。
以前の殺し合いでも同じようなリボルバーを支給されたがそれとは異なる物のようだった。
リボルバーにセロテープでおざなりに貼り付けられていた紙を開くとそこには、
「忘れるな、下北沢暴力団員殺害事件」とだけ書かれている。
そんな事件聞いた事無い、と、寛子は首を傾げる。
自分がニュースや新聞をろくに見ていないせいかもしれないが。もしかしたら自分が小さい頃、
生まれてもいない頃の事件なのかもしれない。
しかしそれとこの銃が何の関係が有るのか、この銃がその事件で使われた凶器だとでも?
「まあどうでも良いか」
この銃の由来など今考えなくても良いだろうと、寛子は思考を切り替えた。
リボルバーを右手に装備し、懐中電灯を消す。
光を誰かに見られたかもしれない、早々に移動した方が良いだろう。
そう判断し、足元に気を付けつつ寛子は歩き出した。

【深夜/E-2花畑】
【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式、.38SP弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いをするつもりは無い。憲悦とは会いたくない。
        1:どこかに隠れたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。

186 :
◆◆◆

リカオンの獣人の少年はふらふらと花畑の中を走る道を歩く。
その目は虚ろで生気を殆ど感じない。
身体のあちこちから服を突き破って、紫色の触手のような物が飛び出しうねうねと動いていた。
彼の後方には、一人の老人が倒れていた。
顔面には穴が空き、後頭部までその穴は貫通している。
白目を剥き、苦悶の表情を浮かべその老人は息絶えていた。
下手人は、リカオンの少年――小崎史哉である。
右手の平から伸びる触手が赤く染まっていた。
史哉は何故、老人を殺害したのか。
殺し合いに乗っていたから? 恐怖で錯乱していたから? 老人が襲い掛かってきたから?
否、そのどれでも無い。
そもそも、現在の彼には「自分の意志」と言う物は皆無に等しかった。
小崎史哉は、殺し合いに参加するのは二度目である。
以前の殺し合いの最中、彼は「寄生虫」に身体を乗っ取られた。
その「寄生虫」とは、軍の極秘開発機関によって生み出された、宿主の身体能力を底上げする、しかし、
宿主を完全に取り込んで暴走する危険性を秘めたとんでもない代物であった。
それに寄生された史哉は、程無く寄生虫に身体を支配され、理性を失い、殺戮マシンと化し、
幾人もの参加者を惨殺した末優勝者となった。
だが、怪物に成り果てた上に軍の機密に関わる物を身体に宿した史哉は、外には出せないと判断され、
運営が派遣した戦闘ヘリによりガトリングの掃射を受けて跡形も無く「処分」されてしまった――筈だった。
しかし、小崎史哉は蘇った。
その身体に寄生虫を宿した危険生物の状態で。
今の彼に目的らしい目的は無い。
有るとすれば唯一つ――発見した者は全て、殺し尽くす事、だろう。

187 :
「……!」
そして彼は、暗闇の向こうで微かに光が動くのを見付ける。
明らかに人工的な光。例えば――懐中電灯。
「……あそ……こに……居る……」
抑揚の無い、掠れるような声で呟くと、史哉は光の見えた方向へと向かい始めた。

【一般通過爺@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  48人】

【深夜/E-2花畑】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]健康、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
        1:光……誰か……居る……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
    ※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
    ※柏木寛子が居る方向へ向かっています。

《支給品紹介》
【TNOKの拳銃@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ】
暴力団員TNOKが所持していた小型のリボルバー拳銃。詳しいモデルは不明。
原作本編においてDBに奪われ一転攻勢された挙句、尻を撃たれTNOKは殺された(これが「下北沢暴力団員殺害事件」)。
本ロワでは.38口径と言う事にしている。

188 :
投下終了です。
タイトルはGoogle翻訳で「月夜の花畑」と言う意味です

189 :
 時間の経過した死体の首を切っても、血はどろりとしか流れない。
 新たに手にした知識だった。
 まったく、英単語や歴史の年号、数学の公式を詰め込んでいたはずの頭の中が、
 たった半日でずいぶんと血生臭くなってしまったものだ。
 走る足は休ませぬまま、勇気凛々はそんなことをふと考えた。
「……なあ、大丈夫か? 凛々ちゃん」
 少し目線が下がっているのを気づかれたか、
 横について走っていた優柔不断が心配そうに尋ねてきたので、勇気凛々は言葉を返す。
「ええ。今も手が震えてるし、すごい吐き気もしますよ。だから総じて、大丈夫です」
「なるほどだったら大……大丈夫じゃないじゃんそれー!?
 すまんマジで! 無理でもオレがやりゃよかった!」
「いやいや、優柔不断さんには無理ですよ。
 さっきわたしが作業してる後ろで、めちゃくちゃびびってたでしょう?」
「ぎく」
「ふふっ。見てましたからね、わたし。ちゃあんと」
「ぎくぎく」
「ちゃあんと見てましたからね横目で」
「は、はずかしい……ッ! オレより小さな子が真剣に汚れ役をやっている横で、
 正直おしっこちびりそうなくらいびびっていたあの時の顔をまさか見られていただなんて!」
「超はずかしい顔でしたね」
「追い打ちやめてえ!」
「ホントなにやってるんだろうこの人って思いました」
「ひぃ呆れられちゃってる!」
「……でも。だから大丈夫でした」
「え?」
「優柔不断さんは、わたしに、じゃなくて。わたしと一緒に、びびってくれてましたから」 
 柔らかい声で、勇気凛々は言う。
 優等生で、ヒーローであろうとした過去の自分には、まず出せないだろう声だ。
「ひとりじゃないって、思わせてくれたから。だからわたしは。怖くなかったです」
「!」
「だから――ありがとう、です、優柔不断さん。
 わたし、貴方に救われて、本当に良かったと思いました」
「!!!」
 
 二人は娯楽施設の中に入る。
 両サイドに雑貨屋テナントとパンクな服屋が並び、
 反対側にはにはゲームセンター、お茶専門店などが立ち並ぶのが見える。
 吹き抜けの上には薬局などの影も見える。C-2の一階の風景だ。
 ここより少し北、C-1の中央階段では現在、最後の決戦である最終戦が行われている。
 優柔不断と勇気凛々の二人は“対主催側”の作戦を遂行するため、
 一度逆方向のA-2へと走って、
 そこに斃れる鏡花水月の死体から首輪を入手してきたところだ。 
「り、りんりんちゃんが。ありがとうって俺に。もう死んでもいい」
「……優柔不断さん、感極まってる場合じゃないです。
 “正しい作戦”を実行するなら、
 一刀両断さんに伝えた三十分という時間より早く、中央階段に到達しなければいけません」
「はっそうだった」

190 :
 
 足を止めかけた優柔不断を急かして二人はさらに走る。
 あとは辿り着くだけ――しかし急がなければならない。
 もし、“対主催側”にいながらその動きに不審点があった一刀両断が“マーダー側”だった場合、
 彼女は傍若無人にこちらの作戦をリークする可能性がある。
 その場合、奇襲が三十分後ということがバレてしまい、奇襲が意味をなさない。
 「だから、二十分」そう紆余曲折は優柔不断に言った。
 「凛々ちゃんをなるべく早く説得して、二十分で全ての準備をしてもらいます。 
  A-2との往復を考えると、非常に厳しい時間になりますが……お願いします」と。
「今、たぶん十五分くらいです。足を止めてる時間も無ければ、
 他のことを考えている余裕もないですよ。早く“準備”に取り掛かりましょう。
 その先に何が待っているかは、分かりませんけど。あの大男は、わたしたちで倒すんです」
 ちなみに優柔不断は走りながら“正しい作戦”をすでに勇気凛々に教えている。 
 作戦は、プロセス自体は変わらない。
 勇気凛々が奇襲することにより傍若無人に致命的な隙を作り、そこを切磋琢磨が叩くというものだ。
 “正しい作戦”は、その奇襲の方法をさらに先鋭化させたものだ。
 大男のルール能力、その弱点。
 それを突いた最適な奇襲の方法を実現するのに、首輪が必要不可欠だった。
「ああ、そうだな。あいつ倒したところで、その先なんか分かんねーけど」
 優柔不断はデイパックから血のついた首輪を取り出し、釣り糸を巻きつけながら吐き捨てる。
「とにかく今は、あいつを――《首輪しか見えてない》あの大男を、盛大に驚かしてやろうぜ!」
 二人は二階へと続く階段を駆け上がっていく。
 レストラン街を抜けたら、中央階段はすぐだ。
 そして彼らの到着と共に……この最後の戦いは、あっけなく終わるだろう。
 《人をモノとしか見れない》大男は、そのルール能力の裏を読まれて、負けるのだ。
 
   
◆◆◆◆

 傍若無人の視界には紫色の光が映っていた。
 対戦相手の身体から発される、《ルール能力による光》だ。
 仕切り直しだと宣言したその《光》は、能力の発動を知らせたのち、徐々に弱まり消える。
 あとには「首輪」だけが残る。
 空中に浮いた、「首輪」だけが――モノだけが残る。

191 :
 
 《彼の目に人の姿は映らない》。
 《当人が自分の一部だと認識しているもの、服やグローブなども、彼の目には映らない》。
 《ルール能力が起こす、先ほどの光のような現象》
 《各人が自分の一部とは認識していない、包丁や銃などの武器、あるいはデイパック》。
 《そして、「首輪」。大男の目に映るモノはそれらだけ》。
 傍若無人のルール能力《傍若無人》はそんな、言葉通りのルール能力だ。
 破顔一笑の《破顔一笑》を回避することができること以外になんの使い道もない、最悪のルールだ。
「行くぞ、傍若無人!」
 視界制限の中で傍若無人もまた、ずっと薄板を踏むような戦いを強いられていた。
 素手が武器である目の前の「首輪」はデイパックも置いてきているため、
 先ほどまでは宙に浮いた「首輪」だけが、そこに相手がいるということを教えてくれていた。
 今はそれに加えて、右腕から離れて空中へと垂れる「首輪」の血液も《見える》。
 よって傍若無人の情報制限は少しは緩和されている。だがやはり格闘戦相手は神経を使う。
「二の型、突進――疾槍!!!」
 もちろん戦えぬわけではないし、不利になるというほどのことでもない。
 すべては計算によって補える。
 前方、
 「首輪」が発奮し声を発する。
 「首輪」は一直線に向かってくる。
 「首輪」の傾き具合は比較的高いことから、身体を前に突き出していることが想像できる。
 傍若無人は「首輪」の中心から、「首輪」の身体部分を貫くように中心線を試算する。
 中心線は正中線。
 人間の身体の構造上、その線を狙って攻撃すれば狙いを大きく外すことはない。
「単純なモノだ! まだ直線で戦いたいか!」
 斧を薙ぐ体制に入る。
 リーチの長い致命武器で相手を寄せ付けないことで、認識の誤差をある程度ごまかし、
 さらに斧を潜り抜ける方法を数パターンに限定することで、対処方法を画一化する。
 横に薙がれる斧に対しての基本は、
 @飛んで躱すか、
 A潜って躱すか、
 B振り切るまでいったん待つかだ。
 どれを向こうが選択したかは「首輪」の動きで判断可能。
 その選択に対する次の行動も大脳に織り込み済み。当然イレギュラーも考慮済み。
 戦術的な相手の動きのコントロールに加え、 
 声、床を踏む音、近くに来られれば息遣いや汗の香りなど、
 目以外の情報も加味する。それらを総合して大男は「首輪」と、
 一見してルール能力で視界が制限されているとは思えない戦闘を演じきっていた。
「おう!! 何度だって……真正面からぶつかってやる!!」

192 :
 
 「首輪」が加速。イレギュラー。
 《強化》による速度上昇をもって振られる前に突っ込むつもりなのだ。
 アキレス腱が切られている事実は一体どこに行ったのか? 全くもって驚異的だ。
 傍若無人は対処する。
 振る手前、斧を後ろに引いていた体勢から、
 そのまま床に倒れこむことで「首輪」の攻撃を回避しにかかる。
 腕は《見えない》が、その攻撃距離の最大値はここまでの戦闘で把握済みだ。
 どのタイミングでなら綺麗に避けられるかは、容易く計算できる。
 チリッ。
「……!」
 しかしイレギュラー・セカンド。
「届いた、ぜ。七点流、五の型――“変節”、延長」
 あるはずのない場所に「首輪」の指先があり、その貫手が傍若無人の服をかすめた。
 かすめただけ、だが、
 七段《強化》した「首輪」の鋭い槍は薄生地の黒シャツを破き、皮膚を数枚えぐる。 
 水が沸騰した時の気泡のように、切れた毛細血管から血の球がぽつぽつと湧き出る、
 完璧なタイミングで避けたはずなのに何故――?
 傍若無人は一瞬そう考えそうになり、しかしすぐに思い至る。というか相手が教えてくれた。
 七点流。
 その名を聞くのは、はじめてだ。
「切磋琢磨……《進化》したか! 技すらも!」
「そうだ! 俺は今、師を!
 老師の全てが詰まった四点流、そのものを“発展”させた! ――六の型、“気導”!」
 「首輪」がふざけた動きをした。
 床を転がり追撃を回避しながら傍若無人が振った斧に対し、「首輪」は足を使わずに後ろへ跳躍、
 次の瞬間にはヨーヨーが引っ張られるようにして元の位置へ戻ってきたのだ。
 意味不明だ。
 五の型“変節”の仕組みは恐らく単純だ……間接を外すことで物理的に腕を伸ばしたのだろう。
 しかしこのアクロバティックな動きはどうにも説明がつかない!
「空気の壁を叩くことで反発により俺を移動させた! それだけだ!」
「……化けモノが!!」

193 :
 
 暴虐的な速度で攻めてくる「首輪」を、傍若無人はひたすら受ける。
 アキレス腱を、ひいては左腕を切っておいて本当に良かったとしか言えなかった。
 六の型“気導”を使うには足の力はもう足りず、使えるのはどうやら片腕となった拳だけらしい。
 空を飛ぶようなことは出来ないし、使用と同時の攻撃動作もない。
 それでも六の型の人間離れした動きは傍若無人の計算を狂わせるには十分だったし、
「“変節”、発展――増節!!」
 五の型のほうも関節を伸縮させるだけかと思いきや、
 明らかに人体を構造レベルで変化させる挙動を実現しており、総じてふざけていた。
 《七段の強化》。
 七は虹の色数であり、虹は文字紙の招待状のインクの色であり、
 四字熟語にとって四の次に大切な数字だ。
 虹色をなぞっていた《強化》の光が七色目を数えたということは、
 それはつまり、《切磋琢磨の完成》を意味する。いや文字だから《完筆》か。
「厄介、な、モノだ……!」
 目の前の「首輪」は、たったさっきを以ってして、ヒトから文字に化けたのだ。
「だが……」
 傍若無人は目を凝らす。同時に五度ほど拳撃が肉をかすめて身体に血を刻んでいく。
 骨にヒビを入れるほど強く身をよじって回避する。なおも目を凝らす。
 認識を再定義。
 完全に《文字化け》したのであればそれはもうヒトではない。ヒトではないのなら、
「《見えた》ぞ、“切磋琢磨”」

194 :
投下終了です。続きは近日!

195 :
投下乙です
では自分も投下します

196 :
11話 汚濁の御子

柔らかい受肉を露わにした果実が
鉄屑の上を血を噴きだしながら転がる様に
明確に鋭敏に僕は絶望に侵食された

「すみません、あの……」

お母さんごめんなさい
お婆ちゃんごめんなさい
先生ごめんなさい

「あ、の?」

僕を死刑にしてください!

「あ゛っ! あ、ア……がっ」

汚れちまった悲しみは 倦怠のうちに死を夢む
汚れちまった悲しみに いたいたしくも怖気づき
汚れちまった悲しみに なすところもなく日は暮れる

今日は、アドルフ・アイヒマンが逮捕された日なんですよ(暗黒微笑)

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

◆◆◆

197 :
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」
男の絶叫を聞き、ガーゴイルの獣人、呂車が天井の方を見る。
現在位置は一階の校長室だが声は二階から聞こえた。
何が起きたのかは分からないが、自分以外に誰かが居る事は確かだと呂車は思う。
「〈只事じゃないな、行ってみるか……〉」
中国語でそう呟き、支給品である火掻き棒を右手に持ち呂車は二階へ向かう。
火掻き棒が武器になるかどうか甚だ疑問では有ったが、丸腰よりはましだと彼は考える。
そして二階の廊下で、しゃがみ込んで何かを漁る白いTシャツを着た青年を発見した。
そのすぐ傍には顔に鎌らしき物が刺さり仰向けに床に倒れぴくりとも動かない少女の姿。
少女は恐らくもう死んでいる。
青年が少女を殺害したのだろうか、先程の絶叫はこの青年の物なのだろうか。
「!」
青年が呂車の存在に気付き振り向く。
窓から差し込む月明かりに照らし出されたその顔は薄ら笑いを浮かべていてとても正気には見えない。
逃げた方が良さそうだと本能的に呂車は思ったが、その直後。
「ハハハハ!」
青年は右手に持った物を笑いながら呂車に向ける。
反射的に身をか屈める呂車、直後にパンッと乾いた音が廊下に響き周囲が一瞬だけ明るくなった。
青年が持っていた物は拳銃だった。
話を聞いてくれそうな状態では無い、早々にこの場から離脱しなければ殺される。
呂車は持っていた火掻き棒を青年に向かって投げ付けた。
「うっ!」
火掻き棒が肩に当たり怯む青年。その隙に呂車は窓を開け、そこから飛び出した。
二階から飛び降りそのまま地面に着地、はせず、翼を広げて飛び上がり、そのまま学校から離れた。
「〈あの少女はあいつが殺したのだろうか、多分そうだろうな……だとするとあの絶叫は何なのか。
まあそこはどうでも良いな……この殺し合いも危ない奴が揃ってそうだ〉」
呂車は殺し合いに巻き込まれるのは二度目である。
一回目の殺し合いにて彼は殺された筈だったが、どう言う方法かは分からないが蘇生させられたようだ。
しかし再び命を与えられても結局似たような殺し合いの場に居るのでは大して意味が無いように呂車は感じている。
前回は殺し合いに乗らなかったが今回もそのようにするつもりであった。
主催側に反抗する意思の有る者を集めて、殺し合いを転覆させたい。
先程持っていた火掻き棒を青年に投げて失ってしまったので武器も調達する必要が有るだろう。
そう考えながら、呂車は着陸出来そうな場所を探す。

……

198 :
……

青年――AOKは窓から飛び去って行った竜のような生物をぼんやりと見詰める。
特に追撃もせず興味を失ったかのように窓から離れ、先程鎌で殺害した少女のデイパックを再び漁り始める。
彼女のデイパックには自動拳銃が入っていた。
ならば予備の弾薬も用意されているのでは無いか――――有った。予備の弾倉が三つ。
それをAOKは自分のデイパックに入れる。
AOKはクラスメイト達と共に修学旅行へ出掛けた筈だったのだが、
バスの中で眠ってしまい、目覚めた時には首輪をはめられ殺し合いをしろと言われた。
そして見せしめとして幼い赤ん坊が無残にも殺される所をAOKは見た。
元々強いとは言えなかった彼の精神はいとも簡単に破綻を来す。
スタート地点の学校内で出会った見知らぬ少女を有無を言わさず殺害し、武器を奪った上に、
その後現れた竜のような生物に銃撃を加えた――弾は当たらず取り逃がしたが。
今の彼は、自分以外の人間を、自分を殺しに来る殺人鬼としか認識出来無くなっていた。
【青砥日花里@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター  死亡】
【残り  47人】
【深夜/B-2上空】
【呂車@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、飛行中
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。殺し合いに乗っていない参加者を探す。
       1:降りられそうな場所は……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※AOKの容姿のみ記憶しました。
    ※支給された火掻き棒@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーターはB-2小学校二階廊下に放置されています。
【深夜/B-2小学校二階廊下】
【AOK@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]精神に異常
[装備]S&W M56オート(14/15)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、S&W M56オートの弾倉(3)
[思考・行動]基本:他人に会ったら全員R。クラスメイトでも容赦するつもりは無い。
[備考]※動画本編にてバスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※呂車の容姿のみ記憶しました。
    ※支給された鎌@現実はB-2小学校二階廊下に青砥日花里の死体に刺さった状態で放置されています。
《支給品紹介》
【火掻き棒@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
焚き火の時に火加減を調節する為に使う金属製の棒。某ゲームにおいて主人公が終盤まで主力武器にしていた。
元ロワにおいては長野高正に支給された。
【鎌@現実】
除草に使われるごく普通の草刈鎌。
【S&W M56オート@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
元ロワにおいて苗村都月に支給された自動拳銃。
恐らくS&W M59の間違いと思われる。

199 :
投下終了です

200 :
投下します

201 :
12話 信用する事の難しさ
「ひまわり、ひまわりぃ……」
男――野原ひろしは泣いていた。
長女である赤子、野原ひまわりを目の前で殺されたのだ。
愛する我が子を喪った悲しみ、何もしてやれなかった、助けてやれなかった自分への悔しさがひろしに涙を流させる。
同時に、何の躊躇いも無く小さな命を奪い去ったまひろとじゅんぺい、そしてこの殺し合いを開催した主催者への激しい怒りを覚える。
「くっ……」
腕で涙を無理矢理拭うひろし。
いくら泣いてもひまわりは戻って来ない。今出来る事を優先するべきだと自分を奮い立たせる。
この殺し合いには、長男のしんのすけ、妻のみさえ、飼犬のシロも居るのだ。
これ以上大切な家族を失う訳にはいかない、皆を探さなければ。
無論、殺し合いなど乗るつもりは無かった。
願いを何でも一つだけ叶える、死者を生き返らせる事が出来るなどとまひろは言っていたがそんなものは殺し合いを激化させる為の方便に決まっている。
願いならともかく、死人を蘇らせる事など出来る筈が無い。
ひろしはデイパックを開けて名簿を取り出す。
家族以外に知り合いが居ないかと心配したが、名簿を見る限り家族以外に知っている名前は無い。
しかし名簿にはざっと見て50人は名前が書かれている。
この殺し合いがいかに規模の大きい物かを物語っていた。
次にランダム支給品。
出てきた物は大型のナイフ。
鞘から取り出すと、鋭く研がれた刃が姿を現した。
玩具などでは無い、本物の人を殺傷出来る武器である。
当たりの部類に入る支給品ではあったが、これを使う機会が来ない事をひろしは願った。
「ここは何なんだ?」
辺りを見回すひろし。
コンクリートや配線、配管等が剥き出しになった壁や天井、床。
置きっ放しの工具や建築資材。
どうやら建設中の何かの建物らしい。
窓と思われる開口部から入る月明かりや、部分的に灯る作業灯のお陰でそれ程視界は暗くは無い。
それなりに規模が大きいようなので、自分以外にも参加者が居る可能性は高い。
それが自分の家族が否か、殺し合いに乗っている者か否かは分からないが。
「行くか……」
周囲に警戒しつつひろしは行動を始める。

◆◆◆

202 :
「また殺し合いをやる事になるなんて」
銀髪を持った同世代の女子と比べても小柄な少女、銀鏖院水晶は忌々しげに呟く。
彼女にとって――彼女に限った話では無いが――殺し合いは二回目となる。
一回目の殺し合いにおいて彼女は殺し合いに乗り、「愚民」と蔑むクラスメイト達を襲って回っていたが、
最終的にはその「愚民」の一人によって殺害された。
「認めないわ……私が『愚民』に劣るなんて絶対に……」
とある宗教の教祖の娘として生まれ育ち「神の娘」を自負する水晶は、
一回目の殺し合いでは「神の存在を知らしめる」事を目的として殺し合いに乗っていた。
そして今回の殺し合いにも乗る気で居る。但し目的は以前とは微妙に異なり、
「愚民と自分は違う、自分は愚民と同等それ以下では決してない事を優勝する事で証明する」と言う物。
だが、まずは武器を調達する必要が有った。
水晶に支給された物は、大きな兎のぬいぐるみ。
何の特殊な仕様も無い普通のぬいぐるみだった。
当然武器には成りえないし、水晶はぬいぐるみで遊ぶような年では無い。
完全に外れの支給品であったぬいぐるみを、水晶はもう既にその辺りに放り捨てていた。
どうやら現在自分が居るのは何かの建物の建設現場のようなので資材や工具で武器になりそうな物が見付かるかもしれない。
まずはそれを探そうと、水晶は探索を始めた。
程無くして、長さ1メートル程の鉄パイプが並べられている場所を発見する。
その内の一本を水晶は手に取った。
少し重いが、扱える範囲では有る。
当面はこの鉄パイプを武器にしようと水晶は決めた。

◆◆◆

「ん?」
ひろしは人影を発見する。
銀色の髪を持った少女。背の低さから小学生かと思ったが、学生服らしき物を着ているので、
中学生或いは高校生のようだった。
「!」
少女の方もひろしの存在に気付いたようで視線をひろしの方へ向ける。
「あ、えーと……」
思わず少女に語りかけようとするひろし。
その幼い外見から、殺し合いに乗っている事など想像出来なかったのだろう。
それ程警戒もせずに接触を試みた。

◆◆◆

203 :
「あ、えーと……」
水晶が遭遇したその男は、少しおどおどとしながらも、水晶に話しかけ始める。
慎重な様子が男の表情と口調から伝わってくるので、
全く警戒していない訳では無いようだが。
自分の容姿が幼いのを見て警戒心が薄らいでいるのだろうか。
そう思うと、自身の容姿に少なからずコンプレックスを抱いている水晶は不快な気持ちになった。
何にせよ、この殺し合いの中、やる気になっているかもしれない他参加者に容易に話しかける
この男の行動は褒められたものでは無いが。
そして実際、水晶はやる気になっている。
「誰ですか?」
「ああ、驚かせちゃったかな。俺は殺し合いには乗っていないよ」
「……」
男は殺し合いには乗っていないと言う。
それに対し水晶はしばし間を置いてから、
「私も乗ってません」
嘘を吐いた。
「そうか、そりゃ良かった……」
男は素直に水晶の言を信じてしまったようである。
やはり警戒心は薄いようだ。
それなら好都合だと水晶は心の中でほくそ笑む。
友好的な振りをして、隙を突いて殺してしまおうと画策した。
「俺は野原ひろし。君は?」
「銀鏖院水晶」
「ぎん、おう、いん、みきら?? か、変わった名前だね……」
「……野原ひろし……あなたは……確か」
男の名前を聞いて、水晶は思い出した。
見せしめで殺された赤ん坊の女の子、野原ひまわりの父親では無かったか。
わざわざじゅんぺいが家族全員の氏名を呼んだので記憶していた。
「開催式の時に見せしめで殺された子のお父さん……」
「あ、ああ……そうだ……あの子、ひまわりは俺の娘だった。
目の前で助けを求めて泣いていたのに、何も出来なかった……ぐっ……」
自分の心情を吐露し涙ぐむひろし。
実子を目の前で無残に殺されたのだからきっと辛いであろう。
それは水晶にも十分に察せる、察せた所で彼女にはどうでも良い事だったのだが。
「すまん、取り乱しちまった……」
「無理も有りませんよ」
「ありがとう……」
表面上はひろしを気遣う素振りを見せる水晶。

204 :
「……野原さん、あれ」
しかし次には、野原ひろしを亡き者にする為の行動を始める。
ひろしの後方を、何かが有るように指差す。当然何も無い。ひろしを陽動する為の虚言。
「ん? どうした?」
そしてひろしは水晶の思惑通り、彼女に背を向けてしまう。
水晶はひろしの背中目掛けて鉄パイプを振った。
「ぐあっ!?」
背中に一撃を食らったひろしは前のめりに倒れ込んだ。
「み、水晶ちゃん……!?」
「こうもあっさり引っ掛かってくれるなんて思いませんでした。
殺し合いの中で見ず知らずの人を簡単に信用するなんて……」
「殺し合いに乗っていないってのは嘘だったのか……!」
「目の前で娘さんに死なれたんですよね、でも大丈夫、すぐに会わせてあげますよ!」
水晶は鉄パイプを振りかぶった。

ダァン!

しかし、振り下ろす動作は突然の銃声によって中断される。
何事かと驚く水晶とひろし。
そして二人の視線は、いつの間にか部屋の入り口付近に現れた、黒猫の獣人の少年に向かう。
少年は右手に拳銃と思しき物を持っており、銃口を天井に向けていた。
「ラト?」
水晶はその黒猫少年に見覚えが有った。
以前の殺し合いで、首輪を爆破され殺された筈のクラスメイト、ラト。
「そこまでだ、銀鏖院さん」
穏やかな、澄んだ声で、ラトは凶行に走ろうとする水晶に向かって制止の言葉を掛ける。
「あなたも生き返ったのね」
「ああ……それより、君は、殺し合いに乗っているのかい」
「……そうよ」
「考えを改めるつもりは……無いだろうね」
「……」
ラトは拳銃の銃口を水晶に向ける、だが引き金は引かない。
「ここは大人しく退いてくれないかな」
水晶にそう提案するラト。
その口調はやはり穏やかだったが、言い知れぬ威圧感が有った。
少なくとも水晶が下手な事を起こせば、ラトは容赦無く引き金を引くであろう事は、水晶にも、
呆然と二人のやり取りを見詰めているひろしにも想像出来た。
悔しそうに顔を歪める水晶だったが、まだ殺される訳にはいかないと素直にラトの言う通りにする事にした。

205 :
「覚えてなさい……」
捨て台詞を残し、水晶は逃げ去って行った。

【深夜/A-6建設現場】
【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝し「愚民と自分は違う」事を証明する。
       1:一先ず撤退。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の名前を記憶しています。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※支給品の殴られウサギ@アニメ/クレヨンしんちゃんは放棄しました。

◆◆◆

「……大丈夫ですか?」
「あ、ああ、助かったよ」
自分を助けてくれた黒猫の少年に礼を言うひろし。
獣人の外見の彼に対し特に驚かなかったのは今まで家族と共に何度も大冒険をしてきた中で、
多くの人外と遭遇してきた為であろう。
「背中を殴られちまったけど、何とか……うっ」
「しばらくは休んでいた方が良いです」
「くそっ、家族を探さなきゃいけないのに……」
一刻も早く家族を探し出したいと言う気持ちが逸るひろしだったが鈍器で背中を殴られたダメージは無視出来なかった。
「ラトだったか? お前は殺し合いには……乗ってないよな?」
水晶の事もあってかラトに戦意について尋ねるひろし。
殺されかけていた自分を助けてくれたのに殺し合いをやる気になっているとは思えなかったが念の為に。
ラトからは当然と言うべきか、否定の答えが返ってきた。
「乗っていません。と言っても信じてくれるような証拠は出せませんが……」
「い、いや、信じるよ……命の恩人なのに疑うなんて何やってんだ俺」
「この状況なら仕方ありませんよ、警戒するのは当然です」
「悪いな……」
「ここは余り安全な場所では無いようですね、もし良ければ一緒に行きますか?」
「ああ、そうするよ」
ひろしはラトの申し出を受け入れ一緒に行動する事にした。
現在居る建設現場はお世辞にも安全な場所とは言えないので二人はまず「比較的」安全な場所を探し始める。

206 :
【深夜/A-6建設現場】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]背中にダメージ
[装備]コンバットナイフ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:家族を探す。殺し合いには乗らない。
       1:ラトと行動する。
[備考]※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]S&W M56オート(14/15)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、S&W M56オートの弾倉(3)
[思考・行動]基本:???(少なくとも殺し合いに乗る意思は無い)
       1:男性(野原ひろし)と情報交換をしたい。一先ず安全そうな場所を探す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。

《支給品紹介》
【コンバットナイフ@現実】
頑丈で切れ味の鋭い大型の軍用ナイフ。
【殴られウサギ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
桜田ネネ及びその母親が過度のストレスを感じた時に殴り付けている大きなウサギのぬいぐるみ。
【S&W M56オート@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
元ロワにおいて苗村都月に支給された自動拳銃。
恐らくS&W M59の間違いと思われる。

207 :
投下終了です。

208 :
◆HOBBYロワイアル

【デッドマン・ワンダーランド】4
玉木常長/千地清正/興緒唐子/東弦角
【デュラララ!!】2
平和島静雄/セルティ・ストゥルルソン
【ヘルシング】5
アーカード/アレクサンド・アンデルセン/セラス・ヴィクトリア/ヤン・バレンタイン/ゾーリン・ブリッツ
【ベルセルク】3
ゾッド/ワイアルド/モズグス
【テラフォーマーズ】1
ミッシェル・K・デイヴス
【ドリフターズ】2
ジルドレ/ジャンヌ・ダルク
【黒執事】 2
セバスチャン・ミカエリス/グレル・サトクリフ
【ウサビッチ】1
キレネンコ
【ブリーチ】3
エス・ノト/マスク・ド・マスキュリン/グレミィ・トゥミュー
【HAPPY TREE FRIENDS】1
フリッピー
【GANTZ】1
ぬらりひょん
【ブラックラグーン】4
レヴィ/バラライカ/ヘンデル/グレーテル
【ドリフターズ】2
島津豊久/ジャンヌ・ダルク
【スーパーマリオ】5
マリオ/ルイージ/クッパ/ワリオ/ボスパックン
【Fate/Zero】4
セイバー/ランサー/バーサーカー/キャスター
【ハンコック】1
ジョン・ハンコック
【アイアンナイト】4
丑鎮鉄兵/ユキ/沼沢/天地善次郎
【クレイモア】1
クレア
44/44

はじめまして
新しく非リレーロワ始めさせていただきます

209 :
すいません。携帯からの投稿が思ったより難しいので、掲示板の方から進めさせて頂きます

210 :
投下乙です
携帯からは難しそうですね……新ロワ乙です
自分も投下します

211 :
13話 僕の修羅が騒ぐ
――優勝すれば好きな願いを一つだけ叶える――
坊主頭、小学生とは思えない目付きの悪さ、額の星印が特徴的な少年、
土井津仁はイベントホール内の控室の一つ、その中で椅子に座りながら思考する。
開催式の時にまひろが言っていた優勝者の特権について。
仁の質問「何でも叶えてくれるのか」に対しまひろは「死者の蘇生、大金等」と回答した。
死者の蘇生はともかく、大金を得られると言う話は、
仁にとっては少なからず魅力的であった。
彼の家は「超」の字が付く程の「貧乏」である。
自宅は廃屋と間違われ廃墟特集の本に写真が載ってしまう程のあばら家。
父親は飛び降り自殺し母親と二人暮らしをしているが、
その母親は性格に問題が有り何か仕事を始めても短期間で離職してしまう。
従って慢性的に金欠であり、家の隣の墓、寺からお供え物や電気を盗む、
友人に食事や金銭を無心するといった生活を余儀なくされていた。
夏になれば冷房など無いので家は灼熱地獄と化し、冬になれば冷房も無いので家は極寒地獄と化す。
命の危機に瀕した事も一度や二度では無い。
「お金が有れば」と、一体今まで母親と共に何度思ったか分からない。
優勝すればどんな大金でも手に入れられるのか?
それこそ、自分と母が一生を過ごせられるような。
だが優勝するという事はこの殺し合いに自分と同じように呼ばれている友人達や、先生が全員死ぬという事。
友人達の死と引換に大金を得たとしても素直に喜べるのか?
「小鉄っちゃん、みんな……」
考え、悩み抜いた末、仁が出した結論は――――。

◆◆◆

イベントホール施設内、幾つか有るホールの一つ。
少女、吉良邑子は自身の支給品を確認していた。
「むぅ……」
出てきた物は、瓶入りのカルピス原液三本。不満顔をする邑子。
カルピスが好きな訳でも飲みたい訳でも無い。そもそも原液のままよこされても困る。
原液のまま飲む者も居るには居るだろうが少なくとも彼女はそういう趣味は無かった。
吉良邑子が今欲しいのは武器。
この殺し合いで戦い勝ち残り、優勝する為の。

212 :
「武器を探さなきゃ……優勝して英人様の元へ戻らなきゃいけないのだから」
熱に浮かされたように邑子は呟く。
マゾヒストの気が有り「主人」を追い求めていた彼女は、所属するクラスでの修学旅行に出掛けた際、
今行っている物とは別の殺し合いに巻き込まれた。
その殺し合いの最中、とある男子生徒を「主人」と定め、以来、奉仕するという名目でその男子生徒の指示を仰ぎその通りに行動していた。
とは言え、指示を多分に曲解していたのだが。
そして結局の所、邑子は落命してしまう。
だが蘇生し、現在の――二回目の殺し合いのプレイヤーと化した。
邑子の今回の殺し合いでの目的は、優勝し「主人」の元へ帰還する事。
「英人様、絶対、貴方様の元へお戻りしま――――」
ガチャ。
「!」
ここには居ない「主人」への決意を口にしていたその時、ホールの扉が開いた。
開いた扉の方へ向く邑子。
そこには、小学生ぐらいと思われる坊主頭の少年の姿が有った。
手には箒と思しき物を持っている。
(子供……? 小学生かな)
自分は今、ろくな武装を持っていないが、小さい子供程度なら何とかなるのではと邑子は考える。
しかし次の瞬間、その少年は物凄いスピードで邑子に向かって走り出した。
突然の事に驚く邑子。
身構えようとした時にはもう手後れだった。
強烈な一撃が邑子の脳天に入り、辺りに箒の破片が散らばる。
致命傷に至る程では無かったが衝撃はかなりの物で邑子の意識は揺らいだ。
そんな中、細い腕が自分の首に巻き付くのを感じた。
それが邑子の感じた最期の知覚となる。
ボキッ
鈍い音と共に、吉良邑子の意識は途絶え、二度と戻る事は無かった。

【吉良邑子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  46人】

213 :
◆◆◆

――ついにやった。自分は人を、殺した。

首の骨をへし折って殺害した、中高生と思われる女性の死体を見下ろし、
土井津仁は自身がしでかした事を彼なりに、必死に、現実として受け止めようとしていた。
心臓の鼓動が今までに無い程早い。
脂汗が額から染み出してくる。
口の中が異常に乾く。
これが「人殺し」を犯した者の心情なのかと仁は思う。
しばし深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
とは言っても余り落ち着けはしなかったのだが。
「もう後戻りは出来ないんだ」
自分に言い聞かせるように、仁は呟く。
彼は考え、悩み抜いた末に、殺し合いに乗り、優勝を目指す事を選んだ。
友人達と先生の死を乗り越え、もしも遭遇したのならその手に掛ける事も厭わないつもりである。
母と何度も夢見た、一生を安寧に過ごせる程の金を手に入れる為に、土井津仁は戦いに身を投じる。

【深夜/D-5イベントホール第二小ホール】
【土井津仁@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝し、大金を得る。
       1:武器になりそうな物を探す。
       2:小鉄っちゃん達に会っても容赦する気は無い。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※支給品はポセイドンの箒@漫画/浦安鉄筋家族でしたが、損壊した為放棄しました。

《支給品紹介》
【カルピスの原液@漫画/浦安鉄筋家族】
現実のカルピス原液と同じだが、浦安鉄筋家族のキャラ、鈴木フグオの好物なので当該作品の出典として扱う。
フグオは原液のまま飲んだり、また、点鼻薬や目薬にしたりもしている(本人曰く何にでも効くらしい)。
【ポセイドンの竹箒@漫画/浦安鉄筋家族】
激怒神社の神主、ポセイドン笠原の箒。彼の武器でもある。至って普通の箒。

214 :
投下終了です

215 :
投下乙です!四字熟語ロワ投下します

216 :
 
「《見えた》ぞ、“切磋琢磨”」
 
 文字ならば。認識できる。
 蟷螂の斧。ルール能力に反抗し、文字をRための刃が、
 視界に完全に敵の姿を捉えた傍若無人によって振られ、切磋琢磨の右腕を断ち切らんとす!
「もうその拳は、己には届かん!」
「来い、傍若無人!」
 切磋琢磨も構えを変える! 四の型・爆発か? いや、違う。あれは……。
 あれは、

◇◆◇◆

 その時だった。
 傍若無人は、見た。

「――――!」

 視界の端に銀刃が見えた。
 同時。蹴る音。手すり。
 “上”。
 それはこの戦いにおける。傍若無人の初手と同一。

 イレギュラー・サード。
 奇襲。

 ついに来たか。
 傍若無人は斧を振る動作は止めないまま声の方向へ目線。
 上方の空中に「首輪」と大剣。
 《りんりんソード》。――勇気凛々。
(上空からの攻撃。己の弱点を的確に突いてきたな。これは……)
 傍若無人にとって空中の相手からは得られる情報が少ない。
 先ほど切磋琢磨にまんまとレーダーを破壊されたのも。
 斧を起点にされ飛び上がられ。空中を使われたからというのが大きい。
 そこへこの的確な奇襲。訝しむ。
 傍若無人は。《傍若無人》のルール能力が突き止められた可能性を思案した。
 ありえぬ。とは断ぜぬ。傍若無人はその可能性を考慮に入れた上で、 
 シミュレート。
 斧は。このまま。目の前の切磋琢磨に縦に振るう。
 その後。勢いを利用して斬り上げ上空の「首輪」へと繋げていく。
 おそらく大剣で受けられる。踏み込み押し込んで吹き飛ばす。
 次いで片手を放して正面をガードする。
 斧を回避しジャブに移行してくる切磋琢磨はこれで止める。
 腕は軋んで半死だろう。が。奇襲さえ防げば二対一にも問題なく対処できる。
 強くなりすぎた切磋琢磨にとっては。もはや逆にチームプレイは足かせとなる。

217 :
 
 さて。その後の手は。後々の手は。
 あるいはこの方法はどうか。あるいは。
 傍若無人は鈍化した時間感覚の中で数パターンの戦闘フローチャートを組む。
 斧はもう振り始めている。結論。八割方対処可能。
 残り二割。イレギュラーの可能性を高速検討。
 心配無しとは断ぜぬ。
 可能性が。可能性を。可能性は。
 周囲がスローモーションになるほどの高速思考の中で傍若無人は。ある可能性に思い至る。
(待て。あれは――本当に――勇気凛々か?)
 ここに居ぬもう一名。
 優柔不断。
 の存在が脳裏に浮かぶ。
 勇気凛々の《勇気凛々》は文字武器の具現化。それ自体が能力。
 具現化させた《りんりんソード》は他人に使わせることができるはずだ。
 もしいま見える「首輪」が勇気凛々ではなく優柔不断であり。
 こちらのルール能力を把握したうえで。
 わざと《りんりんソード》を持って飛び降りてきているのだとしたら。
 空中からの奇襲には。《りんりんソード》の重さをごまかす意味も含まれているとしたら。
 あの少女が今。
 己の死角に居る。
(成程な。だが――その程度では――己は揺さぶれぬぞ、モノども!)
 傍若無人は。斧を振るう。
 眼前、切磋琢磨に向かって――“振るって投げる”。
「!?」
 切磋琢磨は反応遅れ、るも避けようとする、しかし背後を思い出す。
 一刀両断。紆余曲折。狙いはそちらだ。
「ぐっ……ぬッ、おおお!!防御ッ!!」
 切磋琢磨は三の型「防御」を駆使し鋼と化した腕で弾くしかないだろう。
 無理な体勢からの弾き動作、それも《蟷螂の斧》。
 血しぶき。
 しばしの硬直。
 そして弾かれた斧を傍若無人は、
 フィギュアスケートのような回転跳躍をしながら再度掴み、掴んで勢いそのまま、
 斧を空中の「首輪」へと思い切りぶつける!
「なッ、……!」
「二度は同じ手は食わん」
「が、はっ」
 ただし。フライパンで殴るようにして。蟷螂の斧の、横の平たい面をだ。
 《面で殴れば、ただの鈍器》。ルール能力は発動しない。
 ホームラン。潰れたカエルのような低い声を出しつつ「首輪」が横方向に飛んでいく。
「……り、んりん、ちゃん!」

218 :
 
 次の瞬間《りんりんソード》が消える。「首輪」が死にかけの声で叫ぶ。
 《消失と再出現》による奇襲のつもりか。
 だが、先の跳躍時の回転で、傍若無人にはすでに勇気凛々も見えていた。
 三つ目の「首輪」は中央階段のちょうど中央。
 天井からぶらさがる、シャンデリアから帯を垂らしたようなモニュメントのその真下に。
 その場所に向かって傍若無人は首を向けた。
 《りんりんソード》が「首輪」の横に《再出現》し、浮かんでいる。
 まだ攻撃態勢には移れていない。傍若無人の方が、一歩先だ。
 「首輪」の中心線に向かって。
 傍若無人は自らの持ちうる攻撃力の頂点を合わせにいく。
 イメージは槍。
 優柔不断にぶつけたフライパンの斧の、持ち手をギリギリまで長く持ち替えながら、
 さらに身体を捻り真反対を向く。着地。足を大きく開く。
 一歩、踏み込むと同時に捻られた身体を解放し――蓄えたエネルギーごと、
 斧の先端を「首輪」の腹部に向かって押し出すように。
「“暴虐ノ――――――槍玉”」
 その攻撃はビリヤードのキューが白球の中央を突くような正確さで、「首輪」へと吸い込まれていった。
 これで終わりだ。傍若無人はそう自負した。
 「首輪」の位置から弾きだされた想像上のシルエットに。
 傍若無人の斧の先端が。
 刺さり。
 刺さって。
 抜けていった。

 疑問の言葉を発する暇なし。
 虚空を突いた攻撃は、ストッパーを失った特急列車と成り、傍若無人自身の体勢を大きく崩す。
 さらに新たなイレギュラーが生まれて大男を襲った。
 《りんりんソード》が、こちらへ向かって来る。
 「首輪」から連想されたシルエットの持っていたリーチを大きく逸脱し、
 大剣がまるで、自立意思を持つようにして傍若無人の開いた懐へと迫り。
 そして鋭く舞う。
 傍若無人の肩から腰にかけて一閃。
 傷。
 痛み。
 次いで。剣の位置が変わったことで。
 新たに傍若無人の視界に、「首輪」が映った。
「“見えました”、傍若無人。貴方の、負けです」
 大男に攻撃を加えた四つ目の「首輪」は。
 かつて心機一転のボウガンを防いだときのように。幅広の《りんりんソード》で自分の首輪を隠していた。
 隣にもう一つの、ダミーの首輪を配置して。
 “ひとり分、自分の位置をずらして、誤認をさせた”。
 ダミー首輪を操作していたのは優柔不断。
 天井のモニュメントへと釣り糸で引っかけ、そこから垂れる帯に隠すように、静かに中央階段へと降ろした。
 自身もまた《りんりんソード》で二階から跳躍し、傍若無人の目を引いた。
 すべては一瞬のため。
 勇気凛々による奇襲を完成させ。
 切磋琢磨の大技を決めるための、二重三重の撹乱作戦。

219 :
 
「七点流、七の型」

 傍若無人は苦し紛れの膝蹴りで勇気凛々を攻撃する。
 勇気凛々はかわさず《りんりんソード》を盾に受け、その反動で後方へ逃れた。
 それでもさすがに傍若無人。
 床を転がり威力を消さんと試みるも、勇気凛々は柱へと叩きつけられる。
 背中を衝撃が打ち、少女はこひゅうと肺から息を吐かされた。たった一撃で。なんて世界だ。
 しかし彼女は笑った。
 大それた風が吹いているわけでもないのに、左方から巨大な力の高まりを感じていた。

「“終点”」

 その力は、切磋琢磨の右こぶしにすべて集まっている。
 最後の型は終点にして集約点。
 生きるために使っている全エネルギーを心臓と拳のみに集約し、
 ただ一つの拳となって相手へぶつけるための型。
 爆発もしない。虹色の光が出たりもしない。ただ全てがぶつかりあうだけ。
 こちらの全てをぶつけ。
 あちらの全てを引きずり出し、終わらせるための拳。
 切磋琢磨はそれを――これまでの高速戦闘からすればひどくゆっくりと。
 がら空きの傍若無人の脇腹へ。
 繰り出した。
「……俺たちの明日のために。ここで終われ、傍若無人!!!!」
 そして。
 最終戦は、終わった。

◆◆◆◆◆

 ええ。
  
 

 殺し合いはまだ、終わっていませんよ。

◆◆◆◆◆

220 :
 
 紆余曲折。一刀両断。優柔不断は、戦闘不能。
 勇気凛々はすぐにはダメージ回復できず。おしなべて満身創痍の中央階段。
 その中央。
 終点にて、切磋琢磨と傍若無人。
 二者の全てが静かにぶつかり合い、数秒、時が止まったかのように空間が硬直する。
 そして。
 ――傍若無人が大の字に倒れる。
 口から血を吐いて、その場へと沈んでいく。
「……ぐ、ぬ」
 全てを引きずり出され倒された大男の、呼吸は弱く目はうつろ。しかし意識はある。
 最終戦の勝利条件に則って、傍若無人は殺されてはいない。
 まだ聞くことがたくさんあるからだ。
「待て……動、くな」
 切磋琢磨がその上に馬乗りになる。
 彼もまた呼吸は荒く、疲労が目に見える。
 左腕からは未だ血が流れ、早急な手当てが必要だ。
 けれど、切磋琢磨はそれを気にしていない。
 どうせ傍若無人は負けたのだから、
 早急に手当てし、まず命を確保してから、脱出手段を聞くのが正解のはずだ。
 しかしその前に彼には、やることがあるようだった。それ以前に。聞くことが。
 
「はぁ……、お前……いや、あんた……どうして? どうしてだ?」
「……」
「どうして……おかしいぞ。ありえ、ない。はぁ……あんた、なんで、“同じ”なんだ」
「……」
「ど、うしたんです、切磋琢磨さん?」
「なんでだ。ふざけてる。こんなの……はぁ……なんで、あんた」
 彼の様子がおかしいことに気付いたのは、
 階段の柱にもたれかかるようにして休んでいた勇気凛々だ。
 切磋琢磨の表情がおかしい。
 哀れむような。驚くような。戸惑う様な複雑な表情で傍若無人に疑問を投げている。
 勝利の喜びがそこにないことに一抹の不安がよぎり、勇気凛々は声をかけた。
 だけどその言葉が聞こえていないかのように、切磋琢磨は錯乱じみた言葉を吐いた。
 終点の交錯にて。
 全てをぶつけ全てを引きずり出して、
 ある種、傍若無人と深い深い“拳語り”をしたのだろう切磋琢磨が。
 こう言ったのだ。

「傍若無人。あんた、……“誰のために戦ってたんだ”?」

.

221 :
 
 
  
 
  
「それはお前には知ることはできねーよ、タクマ」
 そして切磋琢磨は。
 己が胸から刀が生えたのを感じた。
「な」
「!?」
 切磋琢磨が、そして勇気凛々が目を見開く。
 大男に跨る赤毛の青年の背後、ジャージ姿の女性が静かに立っている。
 立って、日本刀を突き刺している。
 切磋琢磨の、心臓へ。
 いつの間に?
 疑問を返す間もなく、その女性は――。一刀両断は、そのまま刀を、前へ突き出した。
 疲れ切った切磋琢磨の身体はその動きにつられるように前へ倒れこむ。
 《全てを切り裂く》日本刀の切っ先は。
 傍若無人の身体も、貫く。
 
「だって――もうそいつは何もしゃべらない。
 あたしが今から、お前と共にRから、だ」
 一刀両断は横に振り抜いた。
 切磋琢磨と傍若無人。二名の心臓が、真っ二つに裂けた。 
 
「……さて。状況を確認するぜ」
 ごとり。と。何か致命的なものが失われたような雰囲気が、重く、あたりに充満した。
 その恐ろしく濁った空気の中で、ひどく軽快に彼女は語り始めた。
「傍若無人と切磋琢磨は今死んだ。この場の最大戦力は失われた。
 次に強いのは誰だ? 今から戦って、殺し合って、生き残るのは誰だ。
 さあ。この殺し合いで、いま一番有利なのは誰だろうな? まあ、聞くまでもないか」

 ひどく楽しそうに。狂気を孕んだ目で。
 一刀両断は笑った。そして竹を割ったような声で言った。

「あたしの勝ちだろ? これ」

 二人の亡骸からは、赤い血が流れ続ける。
 血の水たまりに浸かった彼女の、それは勝利宣言だった。

【傍若無人 死亡】
【切磋琢磨 死亡】


【――残り、四名】

222 :
投下終了です。
次回「最終戦W」も、なるべく近いうちに!

223 :
投下乙です。
私も新ロワ投下させて頂きます。
タイトルは「CV三上枝織ロワイアル」でお願いします

224 :
名簿です。
【ゆるゆり】1/1
○赤座あかり
【たまこまーけっと】1/1
○木更木夕子
【ONE PIECE】1/1
○アリー
【みんな集まれ!ファルコム学園】2/2
○アイシャ/○モナ君
【氷菓】4/4
○神田/○佐山/○森/○飯塚
【わーなびっ.jk】1/1
○高槻もらる
【咲-Saki-】1/1
○門松葉子
【イクシオン サーガ DT】1/1
○エカルラート・ジュピトリス・セントピリア
【BTOOOM!】1/1
○ミホ
【進撃の巨人】1/1
○クリスタ・レンズ
【這いよれ! ニャル子さん】1/1
○グタタン
15/15

225 :
(ここは一体……)
あかりはごらく部にいたはず…。
何故周りがまっくらなんだろう。
「ようやく集まったようですわね」
目の前に立体映像が出て、和服の女性が現れた。
この人があかり達を集めたの?
「さて、私は商売繁盛の神で稲荷大神五柱の一神に属しております、
 大宮能売神と申します。ミヤちゃんとお呼びくださいな」
その女性は自分を商売繁盛の神と名乗った。
 
「皆様に集まっていただいたのは他でもありません。
 今日はちょっと……、殺し合いをしていただきたいのです。最後の一人になるまでね」
え…殺し合い…!?
いきなり何を言いだすの…?
まあ、たぶん悪ふざけか何かだろうけど。
「皆様の首に首輪がついておりますよね?これはこの殺し合いから
 逃がさないためのものです。つまり殺し合いから逃れようとすれば
 爆発して、死ぬ事になる訳です…と言っても、これだけでは
 信じられないでしょうから…」

226 :
あかりの首を見ると首輪は確かにある。
でも、殺し合いをしないと爆発するって…?
そう考えていると、目の前の映像に別の女の子が現れた。

「この方を利用させて貰って、信じていただくとしますわ」
「ちょ!?ちょっと何をするつもりよ!」
「はいはい、大人しくしてくださいませ」
ピッ
「え…何今の音…?まさか…」
ボン!
っ!?
首輪が爆発した!?
女の子の首が吹き飛んで転がっていく…、まさか本当に。
「これで信じていただけましたわね?では説明を続けましょうか。
 殺し合いについてですが、これから小さな場所へ皆様を移動させます。
 つまりここで殺し合っていただきます。
 無論この舞台から何らかの方法で脱出なんと馬鹿な事をしなければ
 基本的にルールはありません。一人で戦おうが、複数で戦おうが、
 隠れてやり過ごそうが構いません。
 …構いませんが、状況によっては、殺し合いが進まなくなる事態も発生します。
 なので、私達はこの島に12のエリアを設けました。
 これをこれから6時間ごとの定時放送でエリアを2つ指定し、そこを禁止エリアと
 し、少しずつエリアを狭める事にさせて頂きますわ」
女性は説明を続ける。
先程の衝撃により頭がパニックを起こしつつも、あかりはどうにかあの人の
説明を頭に入れ続けた。
「当然禁止エリアに入れば、首輪の爆破対象になります。こうする事で皆様の殺し合いが
 円滑に進むようになる訳です。
 …さて、ルールそのものは以上ですね。ではそろそろ皆様には舞台にあがっていただきましょうか。
 この島へ飛ばす際に、一緒にデイバッグも飛ばします。
 この中には最低限の食料と、コンパス、地図、名簿、ランダムに武器が一つ支給されます」
「さあ、皆様。頑張って殺し合いをして生き残ってくださいね。
 お客様の為にもね」
お客…?
もしかしてこの殺し合いって……
そう考えてる間に、あかりの身体に不思議な感覚がしたと思うと同時に、
暗闇の空間からあかりの身体が消えた。
【ラミア@魔界王子:死亡】
【残り15名】

227 :
これにてOP投下終了です。
続いて第一話「気配無きバトン部部長」を投下します。

228 :
(なんて事…殺し合いをしろだなんて…)
普段通り学園を過ごしていたら、何の脈絡も無く
いきなりここへ飛ばされ、殺し合いをしろと言われた。
訳がわからない。どうしてこんな事に…。
(とにかく悩んでいても仕方が無い、ここだと目につくしどこかへ移動しないと…)
地図を見て確認すると、どうやら自分がいるのはA-1の海岸のようだ。
ここは周囲に何も無く、非常に人目につく。
早い所移動した方が良さそうと考え、すぐに行動を移そうとする。
だが、不幸にも、その僅かな間に人目につく場所にいた事が災いする。
(名簿を見る限りでは、私の知り合いは食堂担当のモナ君だけ…まずはモナ君に――――)
そこで彼女の意識は永遠に断たれた。

「ふう…まずは一人ね」
脳天を両断された少女の死体を見ながら、赤髪の少女、木更木夕子は呟く。
(思ったより罪悪感は感じない…、不思議ね、何でかしら?
 でも、これは好都合かも)
初めて人を殺したにしては、それ程動じなかった。
何故かはわからない。だが、動じないなら、それはそれで良い。
生き残る上で、躊躇する要素があるようでは致命的になるのだから。
(私も早くここから離れないとね…、何がなんでも私は生きて帰る、大好きなバトンを
 続けるためにも…!)
【一日目/深夜/A-1・海岸】
【木更木夕子@たまこまーけっと】
[状態]健康
[装備]日本刀
[道具]基本支給品一式
[思考]
 基本:最後まで生き残る。
 1:参加者は全員皆殺しにする。
【アイシャ@みんな集まれ!ファルコム学園  死亡】
【残り14人】

229 :
以上で第一話投下終了です。
残りは後日、近いうちに…よろしくお願いします。

230 :
失礼しました。
ちなみに主催者は「大宮能売神@いなり、こんこん、恋いろは」でよろしくお願いします

231 :
投下乙です。
自分も投下したいと思います
俺得ロワ7 14話 ああ逃れられない!(カルマ)

232 :
14話 ああ逃れられない!(カルマ)
ひでは、D-2エリアに存在する工場の生産ラインを眺めていた。
ベルトコンベアやプレス機、幾つものスイッチが並ぶ操作盤、現場での事務作業に使うと思われる机、
作業者が書き残したらしいホワイトボードのメモ書き。
金属板をプレスして部品を作るラインのようだと言う事は想像出来る。
何の部品かまでは良く分からないが。
「あれぇ? おかしいね、誰も居ないね」
生産ラインは、終業して片付けられたと言うより、作業中に全ての従業員が消えてしまったような感じであった。
機械の電源や、天井の照明等はONになったままで、梱包途中のダンボール箱、書き終わっていない日報が放置されている。
しかしひでが今興味を持っているのは別の事だ。
「これ、玩具じゃないよね」
ひでの手に持たれている、黒色の大きな物体。
それは、FN社のサブマシンガン――厳密には「PDW」と言うジャンルの銃器にカテゴリされるが――P90。
デイパックの中には本体と共に説明書と、予備のマガジン五個が入っていた。
玩具などでは無い本物の銃が、今まで一般人として生き、実銃になど縁は無かったひでの手の中に有った。
「カッコ良い〜」
しかし、ひでは銃に対して恐怖よりも興味と好奇心を大きく抱いていた。
文字通り「新しい玩具を与えられた子供」のように目を輝かせている。
ゴンッ
しかし、P90を眺めていたひでに水を差す者が現れる。
後頭部に衝撃を感じ、ひではP90を落として倒れ込んでしまう。
ひでの後ろには、右手にスパナを持った不細工顔の少年が立っていた。
「へっ、良い武器持ってんじゃねぇか。悪いけど貰うぜ」
少年――愛餓夫は薄ら笑いを浮かべながら、ひでの持っていたP90を拾い上げようとする。
「やめて!」
「!」
頭痛に苦しみながらも、ひでは自分の銃を取り返そうと餓夫の胴体にしがみつく。
「この、放しやがれ!」
「やーだ! やめてボクノ銃トラナイデ! トラナイデヨ!」
「うるせぇ!」
「痛い!」
ひでを振り払おうと蹴りを入れる餓夫だったが、その行動は逆効果をもたらした。

233 :
「痛いんだよォォォ!」
逆上しあらん限りの怒声を発しながら、ひでは渾身の力で餓夫を突き飛ばす。
その力はかなりの物で、餓夫は二メートル近く後方に吹き飛ばされ、プレス機の台座に身体を強打した。
その際にひでから奪ったP90を床に落としてしまう。
「うっ……がっ」
金属で造られた大型機械に身体を強かに打ち付ければ大抵の人間は無事では居られない。
餓夫もまた然り、身体の激痛に悶絶し、動く事が出来なかった。
「ああああああああああああああ!」
喚きながら、ひでは床に落ちていたP90を拾い上げ、銃口を餓夫に向ける。
「!? や、やめ」
餓夫は制止の声をあげたが、無情にもP90の引き金は引かれた。

ダダダダダダダダダダダッ!!

銃弾の雨が餓夫の身体を容赦無く貫き、餓夫はあっと言う間に血塗れの肉の塊に変えられてしまった。

【愛餓夫@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  45人】

「ワーオ」
P90の威力を目の当たりにし、ひでは目を見張る。
人間が簡単に穴だらけになってしまった、とても凄い威力だ。
自分がとても大きな力を持ったようにひでには感じられた。それは錯覚以外の何物でも無いのだが彼が気付く筈も無い。
屍と化した餓夫を見下ろすひで。
「ヴォエ!」
濃密な血の臭いが鼻をつき、ひでは思わずえずいてしまう。
餓夫の身体中に空いた穴から漏れ出す血液の臭気が既に辺りに漂い始めていた。
だが、吐き気を催した以外は、ひでは「平然」と言っても良いぐらいの様子であった。
初めて殺人と言う行為を犯したのにも関わらず、彼の心の中には罪悪感や後ろめたさは殆ど無い。
「……この人が悪いんだ……僕の銃を取ろうとするから……」
そうだ、自分は悪くない。
悪いのはいきなり後ろから頭を殴ってきた上に自分の武器を奪おうとしたこの男だ。
自分は自分の身を守って武器を取り戻しただけ――だから、悪い事でも何でも無い、とひでは結論付ける。

234 :
「あ、そうだ……僕、このゲームでどうするか決めてないや」
今更ながら、ひでは殺し合いにおけるスタンスを考える。
そして程無く決定する――ゲームに乗り、優勝を目指す事を己のスタンスとした。
この殺し合いにはひでのクラスメイトも数人呼ばれていたが、
特別仲の良い者は居ない。むしろ、その内の一人、葛城蓮にはいつもいじめられていた。
この機会に日頃の恨みを晴らしても良いだろう、他のクラスメイトも、相対するのにはひでは全く躊躇いは無かった。
既に人を一人殺している。何にしても、自分はもう後戻りは出来ない。
ひでは自覚こそ無いにしろ、明らかな狂気に蝕まれながら、殺し合いに身を投じる。

【深夜/D-2工場生産ライン区画】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]後頭部に打撲、狂気
[装備]FN P90(24/50)@現実
[所持品]基本支給品一式、FN P90の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:クラスメイトと会っても容赦しない。葛城蓮(虐待おじさん)に対しては特に。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。

◆◆◆

「おお、こりゃまた酷いな」
濃いグレーと白の毛皮を持った、痩せ気味の人狼の青年、コーディは全身に穴の空いた少年の死体を発見する。
工場内を彷徨いていた時に、機関銃か何かの銃声を聞き、恐る恐る様子を見に来た結果だ。
辺りには大量の空薬莢が散らばり、血の臭いに混じり硝煙の臭いも嗅ぎ取れた。
しかし、野生の人狼であり、命のやり取りには慣れているせいか、コーディはそれ以上少年の死体には興味は湧かなかった。
「こいつを殺した奴はもう居ないみたいだけど……何か持ってないかな」
少年の所持品を漁るコーディ。
そしてデイパックの中から、根元から千切られた電気コードを発見する。
強度と長さは有る為、拘束や首を絞めたりするのには使えそうだと、コーディはその電気コードを手に入れた。
コーディ自身も武器は一応持っている。
彼に支給されたステーキナイフ。
本来武器では無いが無いよりはましだと思いコーディは装備していた。
しかし、ステーキナイフと千切れたコードだけでは心許無い。
素手で戦う事も一応は出来るが、相手の武装次第ではそうもいかない。
それを考慮すれば武器の調達は急務であった。

235 :
コーディにとって、今回の殺し合いは二回目となる。
一度目の殺し合いでは彼はゲームに乗り、数人を殺害するも、最終的には落命した。
今回の殺し合いゲームでもコーディは、ルールに則り殺し合いをするつもりで居た。
前回は参加者の中に数人知人が居たが今回は一人も居ない、その分殺し合いもやり易いと言えた。
「工具でも漁ってみるか……」
コーディは武器になりそうな工具を探し始めた。

【深夜/D-2工場生産ライン区画】
【コーディ@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]健康
[装備]ステーキナイフ@自由奔放俺オリロワリピーター
[所持品]基本支給品一式、千切れた電気コード@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:武器になりそうな物を調達する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※ひでの存在には気付いていません。

《支給品紹介》
【FN P90@現実】
FN社が1987年に開発した「Personal Defence Weapon」(略してPDW)と言う比較的新しいカテゴリに属する短機関銃。
貫通力、ストッピングパワーに優れた特殊弾薬を使用する。
自作ロワにおいて倉沢ほのかが愛用していたが、そのロワにおいてはなぜか200発と言う有り得ない装弾数だった。
【千切れた電気コード@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
何らかの大型家電から千切られた電源コード。強度と長さは有るため、使い道は有るかもしれない。
元ロワにおいてはフェリックス・クレイグに支給され、後に遠矢英教の手に渡り、古澤由樹を絞Rるのに使われた。
【ステーキナイフ@自由奔放俺オリロワリピーター】
ステーキを切り分けるのに使うナイフ。
元ロワにおいて浅井貴光に支給され、その後エマヌエルの手に渡ったが特に活躍の場は無かった。

236 :
投下終了です。

237 :
テスト

238 :
投下します
俺得7 15話 Imitation Soul

239 :
15話 Imitation Soul
灰色の毛皮を持った猫獣人の美少女、テトは、銀世界の中を一人歩いていた。
「寒い……」
降雪こそしていないが、とにかく寒い。
少なくとも薄手の学生服で歩いて平気で居られるような環境では無い。
息は当然白くなり、風も刺すように冷たく、雪の積もった地面は歩く度に小気味良い音を立てて足跡が付く。
履いている靴と靴下が雪で容赦無く濡れ、足先に不快感が募る。
「……はぁ、何でこんな事になってるんだろう」
今自分が置かれている状況にテトは納得がいかなかった。
テトは、クラスメイトのラトと言う黒猫獣人の少年に好意を抱いていた。
ある日、ラトに告白しようとしていた時、友人の貝町ト子から急に呼び出された。
何の疑いも無く、テトはト子の元へ赴き、そして体育館の裏で――――。
クラスの男子三人、女子一人に、思い出すのも憚られるような、辱めを受けたのだ。
テトはラトが助けに来てくれると信じていたが、その思いは届かず。
身体と心をボロボロにされ、友人に、
好意を寄せていた相手に裏切られ――ラトに関しては些かテトの言い掛かりのようなものだが――テトの心に深い闇が生まれた。
そして、テトは三人の協力者を得て、とある狂気の計画を立て、実行した。
修学旅行に出たクラスメイト全員を拉致し、孤島に閉じ込め、殺し合いをさせる、バトルロワイアル。
そう、今現在自身がさせられているゲームと全く同じ物を、テトは主催していた。
目的は、自分を蹂躙した者達、裏切ったト子とラトへの復讐、そして、ラトを――自分だけのラトとして、生まれ変わらせる事。
結果的に、目的は全て果たされた。
テトは、用済みとなった協力者達を始末し、自分の望む姿のまま、自分が望む、自分がなすがままのラトと共に、
二人だけの時間を過ごしていた――――筈だったのに。
気付いたら、自分が殺し合いをさせられる側になっていた。
何も着ていなかった筈なのに、いつの間にか通っている高校の征服を身に着けていて。
開催式の時に、死んだ筈のクラスメイトの姿が何人か確認出来て。
そこには、憎い憎い太田太郎丸忠信や――――ラトの姿も有った。
しかしテトは直感的に分かっていた。
開催式の時に見掛けたラトは、自分が蘇らせたラトでは無い、と言う事を。
要するに、自分がクラスメイト全員を犠牲にしてまで成し遂げた事は、全て水泡に帰した。
そればかりか今度は自分が殺し合いをさせられる側となり、復讐相手も復活し、状況は悪くなっていた。

240 :
テトがそれを認識した時、どれほどの失望感に苛まれたかは想像にかたくない。
「……あれは」
前方に何かを発見するテト。
林の向こうに建造物が確認出来、そこから煙――いや、湯気と思しき物が立ち上っている。
地図を開いて確認する。
該当しそうな建物は、E-6エリアの温泉旅館。
「取り敢えずあそこに行こう……もう寒くて……」
温泉旅館なら暖を取れる筈。
先客が居るかもしれないがそんな事を気にしていたら行き倒れてしまうだろう。
テトは前方に見える温泉旅館を目指し、寒さと冷たさでかじかむ両足に鞭を打った。

【深夜/E-6温泉旅館付近】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]寒さによる体温低下、両手両足先が寒さでかじかんでいる
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:???
       1:温泉旅館で暖を取る。
       2:太田やト子、ラトの事は……。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。

241 :
投下終了です

242 :
投下乙です。ホントに自作ロワメンツはいつみても懐かしい……
実はキャラメイク数人参加してたりもするし(1話も書いてないけどね)
四字熟語ロワ40話「最終戦W」投下します

243 :
  
 日本刀の柄を二本指で掴んでぷらぷらと遊ばせながら、ジャージ姿のそいつは言った。
 オレたちに向かって。
 勝利宣言を――たったひとりで、した。
 たったひとりで。
 二人殺した。
 ……はあ?
「は、……はあ?」
 …………はああああああぁあああ!?
 待て待て待て待て待て待て待て待て!!!!!!!!!
 それを床に這いつくばって薄目で見ていたオレ、優柔不断は、
 一回心の中で「はあ?」って言って、そのあと口に出して、もう一回心の中で言って、
 それくらいにはパニクった。パニックてとにかく、
 脳が理解を拒否した。ノイズがかかるみたいに思考がまとまらなく××、
 ×××××オレたちは××××××××、
 ××勝ったはずで××、
 ×だって×、
 ××××殺して?××××何で××××ちょっと、××××待てよ、オイ。
 おい。
 ×××おい。
「おい! ……痛ッ!」
 オレは立ち上がろうとした。思ったよりダメージがあった。すぐには立ち上がれなかった。
 痛みを抑えて何とか立ち上がろうと、
 もたもたしていたら先に凛々ちゃんが一刀両断に斬りかかっていた。
「一刀両断さん! あなた、何をッ!!」
「言ったろ」
「!? う、くっ、」
「“あたしには感謝するな”って」
「きゃあぅ、かはッ!!」
 一刀両断はふらふらさせていた《一刀両断》の日本刀をきちっと立てて一閃、
 突っ込んでいく凛々ちゃんに向かって斜めに太刀を振った。
 前のめりに潜り込んで、凛々ちゃんはその刃を躱す。
 背中を見せる形になったが剣を《消失》させ、
 片手を床に付きながら、もう片方の手にソードを《再出現》させて、
 そのまま回転しながら跳ね返る勢いで喉を狙ってソードを突き出す。
 この間二秒もなかった。
 なのにまた翻った日本刀があっさりとりんりんソードの刃自体を《切断》した。
 たまらず凛々ちゃんは《消失再出現》、体制を立て直そうとする。
 しかし隙を突かれ足払いを受けて、
 バランスを崩したところをさらにお腹を蹴り上げられ、くるりと宙に浮かされて、あぶない、
 不味い、一刀両断は浮いた凛々ちゃんの心臓に向けて日本刀の刃先を――差し込もうと、
 その突き
     攻
     撃が、《曲がる》。
「!」
「……へぇ」

244 :
 
 攻撃軌道が《曲がっている》間に、その場に乱入してきた者が凛々ちゃんを押し飛ばした。
 凛々ちゃんは床に勢いよく叩き付けられ、乱入者もバランスを崩して床に倒れる。
「う、……ぅ」
「っ……どういうことですか、リョーコさん」
 見えない暗闇の中で、音のみを頼りに戦闘地点に突っ込んでいったのだろう。
 ギリギリで凛々ちゃんを救った紆余くんは起き上がりながら一刀両断の方を向き、
 包帯の下から睨む。
 問い詰める。
 そうだ。オレもようやく状況に追いついて、いろいろと把握してきた。
 だから声を! とにかく今の感情を! 無理やり立ち上がりながら、オレは叫ぶ。
「そうだ! そうだぜ! なんでこんなことになってるんだ。
 だって今さっき、オレたちは傍若無人に勝利して――!
 それですべて終わるはずだったんじゃねえのかよ! なあ! どうして、」
「ふうん、そういう話だったのか?
 ――なあ紆余。お前、どういうシナリオを頭ん中で描いてたんだ?」
「……」
「どうやら、お前の思い描いたのとは、ずいぶん違うものになっちまってるみたいだけど?
 いちおう、訊いてやるよ」
 オレの叫びは横から斬られ、
 澄ました調子の一刀両断が上から目線で紆余くんを挑発した。
 床では凛々ちゃんが浅い吐息。しばらくは動けなさそうだ。
 傍若無人の一撃で柱に叩きつけられたダメージも回復しない中で、激しく動きすぎたのだ。
 つまり、この場での一刀両断の優位性はさらに高まるばかり。 
「答え合わせをしようぜ。あたしの思ってるお前と、お前の思ってたあたしの、さ」
「……リョーコさん」
「さあ。言え」
「……」
「言、え。」
 刀を翳して。
 答えなければどうなるか、を言外に匂わせながら一刀両断がさらに挑発した。
 紆余くんは、悔しそうな声のトーンで。口を開き、その場に全てを吐露した。
 ゆっくりと。
 苦虫を噛むような口調だった。
「……僕は。
 作戦会議の、最後に……優柔不断さんたちにこう言いました。
 リョーコさんが僕に付いているのか。傍若無人に付かされているのか。
 最終的な結論は土壇場で判断するしかない。と。
 “すべてが杞憂である”場合に加えて。
 “傍若無人に付くフリをして、開始と共に傍若無人を裏切ってこちらに付く”、
 という可能性が残っている以上、戦力的にも、戦闘前に、リョーコさんを無力化するわけにはいかなかった」
 そう。一刀両断に疑心を抱いたオレたちには、
 そもそも最終戦に一刀両断を連れて行かない、
 あるいは開始と共に切磋琢磨に不意打ちで無効化してもらう……そういう選択肢もあった。
 でも紆余くんはそれをしなかった。
 裏切られるリスクを取ってでも、そうすることを望まなかった。
「そして。リョーコさんが最終戦の開始とともに、どちらに向かって寝返ろうと。
 どちらにせよ、傍若無人を倒せば――貴女は僕の元に戻って来てくれると。そう言いました」
「……へえ。なるほど、なるほど」
「そう、思っていました。だからそのまま。……僕は。あなたを、助けようと」

245 :
 
 紆余くんは一刀両断の言動や行動を疑いこそすれ、
 一刀両断自身のスタンスは疑わなかった。
 信じていた。だから、助けようと、していた。
 オレたちも、紆余くんほどじゃないが、感覚的には同じように思っていた。
 一刀両断は約束(ルール)は守る。と。
 例え傍若無人にその契約(ルール)を上書きされてしまっていたとしても。
 向こう側にいるのだとしても。それは変わらないはずだと、信じていた。
 そして、傍若無人を倒すことが最終戦の勝利条件である以上、
 傍若無人さえ倒せば一刀両断の契約(ルール)は解け、紆余曲折との契約(ルール)に戻り、
 最終戦はそこで終わりになるはずだ、と。
「でも……違ったんですね、リョーコさん。あなたは。違ったんだ」
「ああ。そうだな。その通り。百点満点の百点満点で、だからこその、大間違いだ」
 
 なのに結果は……違った。
 一刀両断は傍若無人を、殺し。
 切磋琢磨も、殺した。
 “どちらの仲間でもなかった”。
 つまり。最初から。
 一刀両断は。今までずっと。一人だった。
「ありがとう。――本当に、ありがとな。紆余。
 お前ならあたしのヒントから、正解を導き出すと思ってたぜ。
 そして傍若無人を切磋琢磨に倒させてくれるって、あたしはちゃんと信じてた。
 信じていたから、あたしは死んだふりで万全にフェードアウトできてたんだ。誇っていいぜ」
 一刀両断は嬉しそうに話す。
 オレはその声を聴いてひどくきもちわるくなった。
 なんなんだ、あんたは。
 そう言おうとしても声が出ない。
 それくらいにひどい気分になった。
「お前らの読み通り。 
 あの後あたしは傍若無人に負けて、あいつの言葉に従った。これが正解だ。
 傍若無人との“契約”も大体お前らの考え通りだよ。
 一つ目は、対主催側に潜り込んで、嘘の情報を流すこと。
 あいつの弱点であるルール能力を悟られないように撹乱すること、これが一つ。
 二つ目は、もしもの時の助っ人役、だ。
 最初に傍若無人があたしを攻撃すんのは既定路線だった。で、
 負けかけたときに、それこそ奇襲で、あたしがあいつを助ける役目を負うはずだったんだ」
 だってそりゃ、あいつからしたらあたしが疑われているはずがないんだし、
 実際あたしに攻撃もしてるんだからなあ――さぞ意表をついた一撃になったはずだぜ。
「保険のつもりだったんだろうな、あたしの存在は。
 全員Rのはひとりでやるから出来る限り邪魔すんなって釘も指されてたよ。
 結局あいつは、ただの戦闘狂だったってことなのかもしれねえな。
 ……だからこそ、すげー騙しやすかったけど」
 と一刀両断は笑った。
 オレは、手を硬く握りしめて震えさせていた。
 怒りとかなんかその辺のやつが蛇口から漏れていた。
 心の蛇口から。血まみれの感情が。どばどばと。
 それを目線に入れずに一刀両断は続ける。続けてぜんぶを笑い飛ばす。

246 :
 
「まあなんだ、そうして契約を“させられた”あたしは、難しい演技を要求されたわけだ。
 すなわち――」「“契約を守っている体を保ちつつ、僕たちにも疑われる”ような演技」
 紆余くんが言葉を挟み込む。
 何かを言わなければ、紆余くんも感情を抑えられないのだろう。
 言葉を途中で切られて、一刀両断は少し不機嫌な顔になった。でもまた笑う。
「はっ、正解、正解。さすがだよ、紆余」
「……」
「そうじゃなきゃ、今の状況は作れないからな。
 傍若無人に寄りすぎたら、お前たちはルール能力を暴けずに殺されて、傍若無人が残る。
 だがお前らの方に寄りすぎたら、今度はタクマが傍若無人を圧倒しちまう。
 万全な準備とあたしの全力の参加がありゃ、あの弱点の前に苦戦も何もないはずだろ?
 で・どちらにせよ、“あたしが勝てない”やつが残って。“あたしの勝ち”が無くなるわけだ」
「……必要なのは一度欺いて、そのあと推理させることだった。
 最初に立てた作戦をギリギリで変更させて、可能性を五分五分にもっていって。
 出来る限りタクマさんと傍若無人の、両方を消耗させる……そうして」
 そうして。一刀両断にとって目障りな存在の、同士討ちを。
 漁夫の利を狙う。
 それこそが、一刀両断の、作戦。
 たったひとりで――優勝するための。作戦だった。
「最初から……最初から、そのつもり、だったんですね。リョーコさん。
 あなたは最初、から……約束(ルール)のために命を捨てる宣言をすることで、
 自分がまだ優勝を狙っていることを……隠し通してきた……」
「うん、そうだな。騙されてくれてありがとな、紆余」
 にこり。
「でも一手、遅いよな。だってもう、作戦は成功しちゃってんだから、さ」
 そう言って、くるりと日本刀をまた、手で遊ばせて。
「もうここから先は消化試合だ。ボロボロのお前らをあたしが順番に殺していく。
 それでゲームセット、実験終了。語るほどの話でもねー、つまらない終わりだ……ははっ」
 ははは、はははははははっ。と。一刀両断は満面の笑みで嘲笑う。
 その笑みは――他人の気持ちを弄んだ奴の笑みは。
 オレの怒りを頂点に達させるのに、十二分なまでに、充分なものだった。
 なんだよ……なんなんだよ。
 てめえは。ずっと。ずっと。ずっとずっと、ずっと! ずっとオレらを! 笑ってたのか!
「……ざけんなよ」
「あ?」
 ざけんな。
 オレは。
 優柔不断は。
 自分の懐に、手を入れた。
「まだだ。まだ終わってねえぞ一刀両断。
 オレはお前には《斬られない》し。オレはちゃんと、お前を“殺せる”」
 一刀両断がオレのほうへ振り向いた時。
 オレはすでに、紆余くんから譲り受けた《百発百中》の拳銃の銃口を、一刀両断に向けていた。
「逃げろ、紆余くん、凛々ちゃん。こいつは――オレがなんとかする!
 でも。できねえかも、しれねえから! お前らは逃げて、少しでも回復してくれ!!」

247 :
 
 オレは凛々ちゃんたちに逃げるよう促す。
 大丈夫。握った銃は《百発百中》。外すことはない。
 どれだけオレがヘタレようとも引き金を引けば弾は一刀両断を貫く、はずだ。
 だからこれは、オレがやらなければならない。
 これはオレの役目なんだ。オレの、戦いなんだ。
「優柔不断、さん……!」
「逃げろっつってんだろ! えっと、そっちの方向だ!」
「……すいません方向はさすがにちょっと分からなくて」
 それはそうだった。
「ええとじゃあ……おいどう伝えようこれ!」
「大体右です、紆余、さん……大体70度くらいの位置に。道が」
「凛々ちゃんのも少し分かりづらいぞそれ!?」
「おいそこコントしてんなよ。
 ……はぁ。しかし紆余、お前。さすがの保険だぜ。
 なるほど、確かに銃弾はちょっと《一刀両断》は無理かもな。そうか。っはは……。
 そうだな……じゃあ、ラストゲームだ。優柔不断。凛々、そして、紆余」
 ひゅん。と空気を切り裂く音。
 日本刀の切っ先が1の字を描いた。
 中央に置かれていた、傍若無人のダミーが座るソファー地のベンチが斬られた。
 斬られた傷から、中の綿や羽根が勢いよく吹きだして舞う。
 それらは中央階段を照らすライトに反射して――ちらちらと無機質に輝いた。
 少し緩みかけた空気も、切り裂かれて引き戻される。
「紆余。今のお前の向きから見て、2時の方向だ。C-2方面への道はそっちだ、
 だから逃げろ。勇気凛々と一緒に、無様に逃げてみろ。あたしに殺されないように」
 一刀両断は冷たく指示した。
「こいつを殺してから、あたしはそれを追いかける。それが、最後のゲームだ」
 オレはそのゲームの開始を、
 銃を一刀両断に向けながら、見守った。 
「さあ、始めようぜ。
     殺し合いの、終わりを」
 
◆◇

248 :
続きは避難所にて投下しておきます。ゆっくりお読みください。

249 :
投下します

250 :
次第に鬱陶しくなって存在すら迷惑となり、軽い会釈しかしなくなる者もいたり。
別段嫌いというわけではないので、日常的に会話をするくらいには普通な関係の者もいたり。
母親はとっくの昔に死んでいて、今は何とも思えない者もいたり。
そもそも母親と会ってない者もいたりと。
子供の頃は母親が好きだった、そういうのは割りと良くいる事だろう。
マザーコンプレックスという言葉がある。
この国では専らマザコンと略され、意味は母親に強い愛情と執着を持つ人の事を指す。
母親に愛情を示す者即ち"気持ち悪い"という概念がこの国では定着している為に、使われる時は相手を侮辱し見下す時くらいであろう。
そういったマイナスイメージを抱えれば何をされるか分かったものではない。
過酷なイジメは勿論の事、今まで仲が良かった友人と別れてしまうかもしれない。
大体の人間は社会的ハンデを背負う事を恐れて、カミングアウトは絶対にしない。まあ賢い選択といえる。
だが隠す選択肢を取れど、ふとしたキッカケからバレてしまう事もある。
母親の呼び方で勘ぐられて、たまに出かけた先で友人に遭遇して、うっかり口を滑らせて。
結果彼らの精神はズタズタのボロボロになって、最終的には自殺をしてしまう。
では自殺をしない人間とはどういう人か。
精神的にも肉体的にもある程度タフネスである事と、母親が自分の生きる指針である事。これら二つを併せ持つ人間は自殺はしないだろう。
タフネスな彼らは罵詈雑言にも暴力にも屈さず、母親を悲しませない為に生き続ける。
引き篭もる、精神を病む、そういった事も無く今日も彼らは生き続ける。
助けを呼べば良いのに。
声を上げて叫べばいいのに。
そういった救いを求める行為を一切しない彼らは、今日も生き続ける。
まあ、無慈悲に粉砕されるのがオチだが。

□□□

彼のマザコンのレベルは途轍もなく高く、他のマザコンを寄せ付けないくらいに終わっていた。
母親なしでは生きられない程に依存し、母親がRば自分も死ぬと固く決意している男。
母親が死ぬまで自分はRないと、彼は殺し合いに乗り生き残って母の元に帰ろうと決めた。
「ママが待ってる……ママが待ってるんだ……!」
母親の為ならば殺人さえも躊躇せず、歪んだ愛は誰にも止まらない。
右手には剃刀を、左手には催涙スプレーを。デイバッグに入っていた支給品は当たりの部類だったようだ。
どうせなら銃とかの遠距離系が欲しかったが、贅沢は言ってられない。
「どこだよ、どこにいるんだよぉ……」
次第に鼻息は荒くなり、口元からは涎が垂れて目は血走っていく。
ゆったりと森の中を歩き、どこかに獲物はいないかとキョロキョロと辺りを見回す。
正気など彼にはあるわけも無く、大量の死体を見てから彼はおかしくなってしまったのだ。

251 :
「殺してやるぞぉぉぉぉ……」
彼はそれなりに優しい人間だった。
友人の頼みは出来る範囲で引き受けたし、困っている人がいれば助言したり手助けしたりしていた。
だが友人にカミングアウトしたその日から。
いつの間にか世界は敵だらけになっていた。
友人からボコボコにされるのは当たり前で、他人からは避けられる日々。
どうして、何故、ぐるぐると巡る思考は答えを見出せない。
それでも彼は望んだ。もう一度あの日に戻れる事を。
それでも来なかった。現実は非常である。
「……! 見ぃつけたぁ……!」
依存が深くなるのは当然の事といえよう。
味方がいない。いいや、家族に一人いるではないか。
生きたくない。いやいや、母親が悲しむから駄目だ。
学校を辞めたい。でもそれは母親が悲しむから駄目だ。
母親がいるから、自分はまだ頑張れる。
だから彼は過酷な環境でも生活する事が出来たし、母親がいなければ彼は当然の如く死を選んだだろう。
ニヤリと笑みを浮かべた男は、起こさないようにゆっくりと岩の上で寝ている男性へ近づいていく。
「死んじゃえぇ!!」
大きな声を上げて寝ている男性の首元へ剃刀を振り下ろし、喉元を掻っ切ろうとする。
動きは素人でも見切れるような、大振りで緩やかな動作だった。
簡単に人を殺せると、慢心してしまっていたのだろう。
「――安眠妨害はお断りします」
ハンマー一閃。
マザコン男――湖桷匁の右頬にハンマーが叩きつけられた。

□□□

いきなりの大声に反応して起きてみれば、目の前には血走った気持ち悪い男がいるではないか。
しかも両手に武器。これはいけないと思って左に置いてあったハンマーを横薙ぎに振り払う。
デイバッグに武器が入っていて良かったと安堵し、同時にこれしか入っていなかった自分の不幸さを呪わずにはいられない。
岩の上で寝ていた男――日形絶斗は、思いの外ハンマーが襲ってきた男性にクリーンヒットした事に驚いていた。
「気絶してるな……うわー、まーた俺の悪い癖が……」
自分の悪い癖の一つ。その名も"想定外の自体で何かをするとやらかす"ということ。
今回の想定外の出来事は"誰かに襲われる事"でやらかしは"クリーンヒット"だろう。
案の定攻撃を喰らった男性は最初の気持ち悪い顔のまま、気絶して横たわっていた。
「まあいいや。殺しとこ」
ここでも悪い癖の"異常な状況下にあっても冷静に思考ができる"が出てしまっていた。
このまま気絶した人を置いておけば、もう一度襲われるのは確定的に明らかだ。
それに何処かへ捨てておいても誰かを襲ってしまうだろうし、そしたらそこで処理しなかった自分が悪いみたいで後味が悪い。
それは嫌だ。それは面倒くさい。岩の上に置いたハンマーを再び手に。
「よいこらせ」
彼の頭部にハンマーを勢い良く振り下ろす。

252 :
頭部は以外に頑丈らしく、一回振り下ろしても少しだけ音を上げるだけで割れたりはしない。
痛みと衝撃で襲ってきた男性が起きたが構わず振り下ろす。
「いたぁ……あ"っ!?」
男性は何やら声を上げているが、気にせず振り下ろす。
「い、たい……! や、め」
振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。
「や、っやめ、てっ」
振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。
「助け、てくだ、さ」
振り下ろす。今度は手応えがあった。男性がビクッとはねる。
振り下ろす。頭蓋骨が割れる音。男性がビクッとはねる。
振り下ろす。頭蓋骨が完璧に割れる。男性がビクッとはねる。
振り下ろす。柔らかい脳が潰れる音。男性がビクンとはねる。
振り下ろす。脳漿だとか血だとか飛び散る。男性はピクピクと痙攣する。
振り下ろす。もう男性は動かない。
振り下ろす、のを止める。これだけやって生きているなら見事としか言い様がない。
「さて、もう一度寝よう」
一仕事を終えたかのような爽快感に包まれた彼は、ハンマーを岩の上に置き、自分もごろりと岩の上に寝転がる。
「あーあー……やーになるぅー……」
面倒くさい事が連続して起こったので、彼の頭は思考放棄と睡眠を要求していた。
これも悪い癖の一つである"面倒な事になると思考放棄をしてどこでも寝る"というのが出てしまったらしい。
こうなると自分では止められないから従うまで。
自然の節理には逆らえない。
日形絶斗は再びの眠りについた。
【湖桷匁 死亡】
【F-5/森/一日目・日中】
【日形 絶斗】
[状態]健康、睡眠中
[装備]なし
[道具]支給品一式、ハンマー
[思考・行動]
基本:面倒くさい
1:寝る
【参加者特徴】
【湖桷匁(コズミ モンメ)】
重度のマザコン。母親無しでは生きられない程に依存している。
今でも母親と一緒に風呂は入るし、一緒に布団で寝る。
友達にそれをカミングアウトしたがために、壮絶なイジメにあってしまう。
恋人は必要無いと思っているし、母親が死んだら自分も死のうと思っている。
□□□
投下終了です

253 :
投下乙です。
◆YOtBuxuP4U氏
ああーいよいよ終焉も近いって感じですね
どういう結末を迎えるのか楽しみです
◆2C/2roNgWQ氏
J( 'ー`)し「匁ちゃん、どこに行っちゃったのかしら……」
自分も投下します。16話 バトロワ・脱出の裏技
登場:MUR、貝町ト子、アルジャーノン、鈴木フグオ

254 :
16話 バトロワ・脱出の裏技
B-6エリアに存在する時計塔。
修道院としての役割も担っていたのか、礼拝堂や食堂、寝室、図書室等も存在していた。
一階談話室にて、坊主頭の青年、MURはこれからどうするべきか考えていた。
「殺し合いなんて出来る訳無いゾ……」
殺し合いに反抗する意思を述べるMUR。
泣き叫ぶ赤ん坊を家族の目の前で首を吹き飛ばしてRような者達の言いなりになどなりたくなかった。
そもそも、元々クラスで修学旅行に出掛けた筈なのに、どうしていきなり殺し合いをしなければならないのか。
「野獣やKMR、他にもクラスメイトの奴が何人か居るようだし……。
探し出して合流するゾ。他にも殺し合いする気の無い人が居れば良いんだけどな」
クラスメイトの捜索、及び殺し合いに乗っていない参加者を発見する事を当面の目的と定め、
支給品であるハーネルStg44突撃銃を装備しMURは行動を始めた。
……
……
ジャージ姿の少女、貝町ト子は、時計塔一階の図書室にて目を覚ました。
「……私は生き返ったのか」
自分の身体を一通り見回し、独りごちる。
ト子は一度、別の殺し合いに巻き込まれそこで命を落とした身の筈だった。
ミサイルで上半身を粉々に吹き飛ばされて、生きていられる筈が無い。
だが、今こうして生きている。
それだけでも信じ難い事だったが、何より驚いたのは、死ぬ前は有った筈の薬物への依存心が、
今は微塵も感じられないと言う事だった。
「一体どうして……主催の連中の仕業なのか?」
自分を蘇生させたのも、薬物依存を消し去ったのも、
恐らく、と言うより間違い無くこの殺し合いの主催一派が絡んでいるだろうとト子は考える。
まひろとじゅんぺいにそんな芸当が出来るとはとても思えないが、
考えられるなら二人の言っていた「主」だろうか。
何にせよ、大規模な殺し合いを開催し、人を生き返らせ薬物中毒を消滅させられるだけの技術と財力が有る、
とんでもない人物である事は疑いようが無いだろう。
ともあれ、薬物依存が無くなっていると言う事はもう太田太郎丸忠信の言いなりになる必要も無いと言う事。
自分の行動を妨げる物は何も無いと言う事だ。

255 :
「……」
もしもあの時――テトを太田達に売ったあの時より前にこうなっていれば、
テトもあんな目には遭わなかった筈だと、ト子は思う。
(いや、そんなのはただの言い訳だ。私は自分の勝手の為にテトを太田達に売ったんだ。
その事実は変わらない……私は――――)
ガチャ。
「!」
過去を省みていたト子の思考は扉が開く音によって中断させられた。
音のした方向に目をやると、扉を開けた状態でこちらを見ている坊主頭の男の姿を発見する。
「誰だ?」
「待つんだゾ。俺は殺し合いには乗っていないゾ」
男は戦意を否定した。しかし、ト子からすれば簡単に信じる訳には行かない。
「本当か?」
「本当だゾ。その言い方からすると、君も乗っていないのか?」
「……今の所はな。でも、自分の身が危なくなったら、戦う気では居る」
「つまり、積極的に誰かを襲うつもりは無いって事か?」
「ああ……あんたは信じても良さそうだな。私は、貝町ト子」
ト子は警戒を解き、自己紹介をする。
「俺はMURって言うんだゾ。名簿にはアルファベットで載ってるゾ。何でか分からないけど」
続いて男も自分の名前を述べた。
早くも殺し合いに乗っていない参加者を見付けられたのは幸運だとMURは喜ぶ。
貝町ト子と言う少し変わった名前の少女。
エントランスホールへ移動して、彼女と情報の交換を行い始めるMUR。
MURが自分は中学生だと言う事を話すと、ト子はかなり驚いた。
「中学生!? ……いやいやちょっと待て、どう見ても私より年上だぞ」
「何年か留年してるんだゾ……確かにト子ちゃんより年上だけど、まだ中学生なんだゾ」
「そ、そうなのか……」
「クラスメイトも何人かこの殺し合いに呼ばれているから、何とか見付け出して合流したいと思ってるゾ」
「私も……クラスメイトが何人か居るな」
名簿を見ながらト子が言う。
その表情からは何か思う所が有る様にMURには感じられた。
互いの知り合いの情報を簡潔に交換した後MURがト子に尋ねる。
「ト子ちゃんはこれからどうするつもりなんだゾ?」
「この首輪をどうにかして外したいと思っている」
自分の首の首輪に触れながらト子が自分の考えを述べた。

256 :
「本気か? 下手に弄ってもこの首輪は爆発するってまひろが言ってたゾ。
ト子ちゃんだって見ただろ? あいつらが赤ちゃんの首を吹き飛ばすのを」
「ああ……だけど、この殺し合いを潰すにしても、この首輪をどうにかしなければならないだろう。
私達参加者の命は、この首輪によって主催の連中に握られているんだから」
「確かにそうだけど……」
ト子の言う通り、殺し合いに本気で反旗を翻す気なのであれば、運営が参加者達の生殺与奪を握る鍵となっている、
参加者全員の首にはめられた首輪を排除する必要が有るだろう。
何しろ運営は好きな時に首輪を起爆させられるし、逃げようとしても同様に起爆するのだから。
しかし、下手に弄っても同じく起爆するこの首輪をどうやって外すと言うのか、そんな方法が存在するのか。
MURは疑問に思う。
「外すって言ってもどうするつもりなんだゾ?」
「私は機械弄りには自信が有るんだ」
ト子には首輪の内部構造さえ分かれば、首輪を解除出来る自信が有った。
自室のパソコンや音響機器を自作する程の工学的知識と、一度見た機械の構造を決して忘れない記憶能力を、
彼女は有していた。
「首輪の内部構造さえ分かれば……」
「成程。となると……首輪のサンプルが必要になるって事だな?
それも、破損が無い完全な状態での」
「そうだ、察しが良いな。MURさん」
内部構造を調べるには完全な、破損の無い状態で首輪を手に入れるのが望ましい。
しかし無理に外そうとすれば爆発するのにどうやって無傷のまま入手するのか。
しばらく考えた二人は同じ結論に達する。
「首を切り落とすでもしない限り不可能だろうな……死体、最悪は殺し合いに乗ってる奴を倒してでも」
「考えたくは無いけど俺もそれしか方法が思い付かないゾ……」
死体の首を切断して手に入れる、最悪の場合は殺し合いに乗っていて尚且つ説得も望めない者を斃してでも。
それ以外に二人は首輪を手に入れる方法は思い付かなかったし、恐らく存在しないだろう。
だが、脱出の為とは言え、人の首を切断すると言う行為に多大な抵抗感が有るのは言うまでも無い。
例えそれが死体であったとしてもだ。
しかし不可避であろう事も二人は分かっていた。
「……首輪についての話は一先ずここまでにしよう。
あっ、そうだ(唐突)、俺の支給品はこの突撃銃だったけどト子ちゃんは何なんだ?」
「私は……」
ト子はデイパック内を探り、自分のランダム支給品を取り出す。
それはトンファーバトンであった。
「上手く使えるだろうか」
「武器じゃない物を支給されるよりは良いと思うゾ……ん?」
MURが何かに気付き、玄関大扉の方に視線を向ける。

257 :
「どうした?」
「外から物音が聞こえたゾ。話し声も……誰か来るゾ」
「それは本当か?」
「多分な。取り敢えず、隠れて様子見しよう。
ト子ちゃん(玄関の方)見てないでこっち来て」
MURとト子はホールの、玄関付近が見える物陰へと移動し、様子を窺う。
しばらくして、玄関扉が開いた。
中に入ってきたのは、茶色の馬と帽子を被った太った少年だった。
「広いキャプー」
「誰か居そうだな」
(子供と馬……あの馬喋ってる!? いやまあ獣人が居る位だし喋る馬が居ても別におかしくは無いか……)
(馬が喋るのか……(困惑) いやそれより、あの二人は安全なのかどうか)
心の中で同じ事に対して驚きながらト子とMURは訪問者二人に対し様子見を継続する。
馬と少年が安全な人物であるか否かを判断する為。
見た目や雰囲気、複数行動を取っている等の状況証拠から二人が殺し合いに乗っている可能性は低く見えたが、
まだ確証を持つには至らない。
「さっきの黒犬野郎みてぇな奴は本当に勘弁だぞ……殺し合いに乗ってない奴なら大歓迎だ」
「小鉄っちゃん達居ないかなぁ」
発言の内容から、馬と少年はここに来るまでに何物かに襲撃され命からがら逃げてきた事、
そして殺し合いに乗っていない参加者と合流したがっている事、
更に帽子を被った太った少年の方はこの殺し合いに友人が呼ばれており会いたがっている事――が読み取れた。
つまりあの二人は殺し合いに乗っている可能性は低い――MURとト子はそう判断する。
そして、二人に接触する事を決意した。

◆◆◆

謎の黒犬の襲撃から逃れ、辿り着いた時計塔。
茶色の牡馬、アルジャーノンとその背中に乗る太った少年、鈴木フグオは時計塔の中へと足を踏み入れた。
彼らを出迎えたのは広々としたエントランスホール。
二階へ上がる階段、テーブルと椅子が有り、壁や床、天井は綺麗に掃除され、装飾が施された美しい内装だった。
そして多少の会話をアルジャーノンとフグオが交わした直後。

258 :
「おーい」
ホール内に男の声が響き、アルジャーノンとフグオはびくりと反応する。
物陰から、坊主頭の青年とジャージ姿の少女が現れる。
「驚かせて済まない。俺達は殺し合いには乗っていないゾ」
坊主頭の青年は戦意が無い事をアピールする。
「ほ、本当か? 俺達も乗っていないけど……ずっと隠れてたのか?」
「あんたらが安全かどうか様子を窺っていたんだ。
会話を聞かせて貰った……その内容からあんたらは殺し合いには乗っていないと思ったんだ」
アルジャーノンの疑問に少女が答えた。
正直アルジャーノンとフグオはまだ疑念が捨てきれなかったが、
疑ってばかりでも仕方無いと思い、坊主頭青年とジャージ少女の事を信用する事にした。
「俺はMURって言うゾ」
「私は貝町ト子」
「俺はアルジャーノン……」
「鈴木フグオキャプ」
四人はそれぞれ自己紹介をする。
情報交換をする為、四人はエントランスホール西から通じる食堂へと向かった。
特にMURとト子が気になっていたのはアルジャーノンとフグオが襲われたと言う黒い犬であった。
危険人物の事は知っていた方が後々遭遇した時に対処の幅も広がると言う事だ。
「黒いでかい犬だった。鋭い爪と牙を持ってて、いきなり俺達に襲いかかってきたんだよ。
間違い無く殺し合いに乗っているよ。恐怖で錯乱してるって訳では無くてはっきりと俺らをR気で来てた」
襲撃された時の事を出来るだけ詳しくMURとト子に話すアルジャーノン。
しかし、月明かりが有ったとは言え深夜の暗い中でしかも切羽詰まった状況だった為、
「黒い犬」の詳細な特徴までは伝えられなかった。
「ごめんな……あんま詳しい姿は分からないんだ」
「いや、十分だゾ。ありがとう……逃げ切れて良かったな」
「やはり殺し合いに乗っている奴は居るんだな……そうだ、フグオだったか?
お前はこの殺し合いに友達が居るのか」
「うん」
ト子がフグオに彼の友達の事について尋ねる。
フグオは名簿を見ながら自身の友達と担任教師の事を話した。
「小鉄っちゃん、のり子、仁、金子先生、春巻先生……あ、金子先生は『先生』ってついてるけど、
あだ名みたいな感じで、小鉄っちゃん達と同じ僕のクラスメイトキャプ」
「そうか……会いたいだろう」
「うん……みんな無事だと良いんだけど」
心配そうな表情を浮かべるフグオ。
突然殺し合いに巻き込まれ、同行者が居るとは言え心細いフグオは友人達との再会を強く願っていた。

259 :
「気持ちは分かるゾ。お兄さんも、フグオ君と同じようにクラスメイトが沢山この殺し合いに呼ばれてるんだゾ」
「私も……だ」
「そうなのかプー。MURのお兄さんも、ト子のお姉さんも、友達に会いたいキャプ?」
「お、そうだな。会いてぇなぁ……」
「……ああ」
MURに比べ、ト子はどこか後ろめたそうな感じに言った。
その様子にアルジャーノンが気付いたが特にその理由を尋ねる事はしなかった。
もう少し話をしようと思ったMURとト子だったが、アルジャーノンとフグオの疲労の色を滲ませた表情を見て、
一度休ませた方が良いと判断する。
「疲れてるだろう二人共。確か寝室が有る筈だから、休むと良いゾ。
話の続きはその後でも良いだろう」
「そうするよ……」
「分かったキャプ」
「案内する」
アルジャーノンとフグオはト子に連れられて寝室へと向かった。

◆◆◆

「ただいま」
「おお、おかえりト子ちゃん」
アルジャーノンとフグオを寝室へ送り届けてきたト子がMURの元へと戻る。
「しばらくあの二人を休ませてその後、首輪の話をしよう(提案)」
「そうだな、そうするか」
「しかしだ……あの二人が言っていた黒い犬以外にも、殺し合いに乗っている奴は大勢居るんだろうな……。
その中にクラスメイトが居ないと思いたいけど、多分、そうもいかないゾ」
「……」
ト子は自分のクラスメイトの事――特に、テトの事を思い浮かべる。
この殺し合いで彼女に再会したとしたら、自分はどうすれば良いのだろうか。
謝るのは当然だ。だがきっと謝ったって許しては貰えないだろう。
自分を殺しにかかるかもしれない。
罪の意識が有るのなら黙ってテトの手に掛けられた方が良いのかもしれないが――――。
その前に首輪は何とかしたい。
自分は助からなくても、行動を共にしているMUR達や他の参加者、そしてテトの首にはめられた死の枷を外して、
彼らが生き残れる望みを少しでも大きくしたい。
それは、自分なりの罪滅ぼしの方法、なのかもしれない。
椅子に座って天井を見上げながらぼんやりとト子は思った。

260 :
【深夜/B-6時計塔一階食堂】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]ハーネルStg44(30/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、アルジャーノン、フグオ君と行動。
       2:首輪を手に入れる。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※黒い犬(ケルベロモン)の情報を得、危険人物と判断しました。
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]トンファーバトン
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、アルジャーノン、フグオと行動。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田とその取り巻きには会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:首輪を手に入れ解析したい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※黒い犬(ケルベロモン)の情報を得、危険人物と判断しました。

【深夜/B-6時計塔一階寝室】
【アルジャーノン@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:フグオ、MUR、ト子と行動する。
        2:時計塔寝室で少し休む。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
    ※黒い犬(ケルベロモン)の姿は詳細には覚えていません。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
        1:アルジャーノンさん、MURさん、貝町さんと行動する。
        2:時計塔寝室で少し休む。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
    ※黒い犬(ケルベロモン)の姿は詳細には覚えていません。

261 :
てすと

262 :
投下終了です
遅くなってすみません
連投規制に引っ掛かってしまいました

263 :
投下します。
17話 踊る狂狗! ガオガモン 登場:フーゴ、ガオガモン

264 :
17話 踊る狂狗! ガオガモン
大きな池の畔に造られたボート乗り場。
オール式のボートの他、スワンボートも繋留されている。
僅かに水音が響くのみで、辺りはとても静かだった。
「また殺し合いか……」
白の毛皮に黒目、青い瞳を持つ狼獣人の青年、フーゴは桟橋の上で機嫌の悪い表情を浮かべていた。
殺し合いに巻き込まれ、命を落とした、かと思えば、復活してまた殺し合いをさせられると言う、
理不尽この上ない展開に、苛立ちを隠せない。
「生き返ったってまた殺し合いの中じゃ何の意味も無ぇよ!
……取り敢えず支給品でも見るか」
最早起こってしまったものに幾ら文句を付けても仕方無いと観念し、
フーゴは桟橋の街灯の下に移動し、自分の支給品を確認する。
「何だこりゃ?」
出てきた物は小瓶に入った大量の錠剤。
ラベルには大きな文字で「流血」と書かれている。
おおよそ薬品の類には似つかわしくない物騒な言葉だ。
しかも、ラベルにはその言葉以外、効能も原材料も製造元も何も書かれていない。
少なくとも、まともな薬剤では無い事は察する事が出来た。
「訳の分かんねぇ薬だけかよ……前の時はサブマシンガンだったってのに」
以前の殺し合いでの支給品と比較して、今回の支給品の落差に不平を漏らすフーゴ。
そのフーゴの背後から忍び寄る大きな影が有った。
青と白の毛皮を持ち、背中から赤い二つの触手を生やした巨躯の犬。
「!」
気配に気付いたフーゴが後ろを振り向く。
街灯の明かりに照らされ、気配の元が良く視認出来た。
「何だお前……ん? お前、開催式の時、まひろに質問していた犬じゃねぇか?」
「ああ、そうだよ……なぁ、あんた」
「あ?」
「まひろは『優勝すれば生きて帰れる』って言ってたけど、本当だと思うか?」

265 :
唐突な犬の質問。
「……」
しばし考えた後、フーゴは返答した。
「さあな、俺に訊かれても困るよ……ただ『死者を生き返らせる』的な事も言ってただろ?
あれは本当だと思うぜ」
「どうしてそう思うんだ?」
「俺は一回死んでるんだよ」
「!?」
「言っとくが冗談でも何でも無いマジ話だ。
俺は別の殺し合いで、首と胸を撃たれて死んだ筈なんだよ。
でも今こうして生きている。傷も綺麗に消えている。
じゃあ誰が俺を生き返らせたのか……この殺し合いの主催者だろうな。
じゅんぺいが言っていた『主』とか言う奴が怪しいが……少なくとも、まひろとじゅんぺいでは無いだろ。
……信じる信じないはお前次第だけどな」
「……」
「あー、お前の質問にまともに答えてねぇなこりゃ、悪い」
「いや、十分だよ。ありがとう」
「?」
「まひろが言っていた事は信じても良さそうだ」
少しトーンを落とした声でそう言うや否や、犬は背中の触手でフーゴに掴みかかった。
突然の事に、フーゴは避ける事も出来ずあっさりと捕らえられてしまう。
大きな触手の手はフーゴの首をがっちりと掴み、その身体を持ち上げた。
「グッ、ガァ……!」
苦しげな呻き声を発しながら、犬の触手から逃れようともがくフーゴ。
だが、触手はびくともせず、首を締め上げる力は更に強くなっていく。
息が出来ないだけで無く、首の骨が軋む音も響き始め、耐え難い苦痛がフーゴを襲う。
「俺は決めたよ……優勝して生きて帰る。
こんな所で死にたくない、もっと生きていたいからさ……。
死人を蘇らせられるのが本当なら、優勝すれば帰れるってのもきっと本当だよ」
「な、何だその、超理論は」
死人を蘇らせられるのが本当だとしても、優勝者を生きて帰すのが本当だとは限らないと、
フーゴは言おうとしたが、犬が触手に込める力を更に強くして、それは叶わなかった。
「あぐ、ァ……!」
「希望が見い出せたよ。ありがとう、ええと……白い狼さん。そして――――」
「や、め……!!」
「さようなら」

ゴキッ

266 :
鈍い音が響き、もがいていたフーゴの身体がビクンと大きく震えた直後、糸の切れた操り人形のように脱力した。

バシャアン!!

屍と化した白狼獣人の青年を池に放り捨てる犬――ガオガモン。
フーゴのデイパックを漁って、錠剤の詰まった「流血」と書かれた瓶を取り、自分のデイパックに押し込む。
「優勝してやる、死にたくない、死にたくないからね……! 絶対、絶対に優勝してやる」
薄ら笑いを浮かべながら語るガオガモンの双眸はとても正気のそれとは思えぬ程にぎらつき、
口の端からは涎も垂れ落ち糸を引いている。
彼の心は、彼自身も気付かぬ内に、狂気に蝕まれていた。

……
……

気付くべきだった。
最初にあの犬が質問をしてきた時点で、その質問の内容から犬の意図を読み取れる筈だった。
俺とした事が、完全に油断していた。
折角生き返れたのに、また殺し合いをさせられて。
折角生き返れたのに、また、殺される。
俺が生き返った意味は一体何だったんだ。
俺は何の為に再び命を与えられたんだ。
いや、死ぬのは俺の不注意のせいか。
ははっ、全く、情けなくて、笑っちゃうぜ――――。

267 :
【フーゴ@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター  死亡】
【残り  44人】

【深夜/B-4ボート乗り場】
【ガオガモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]狂気
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???、流血@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:殺し合いに乗って優勝を目指す。
[備考]※狂気に侵されています。まともな思考が難しくなっています。

《支給品紹介》
【流血@漫画/浦安鉄筋家族】
重度の肩コリに悩む菊池あかねに頼まれ「世紀末薬局 天国堂」という名の怪しい薬局で土井津仁が購入した薬。
天国堂の店主(死にかけの老人)曰く、
「火星から持ち帰った黄色い砂と中国の伝説の秘獣豚猿の脳ミソを調合した特効薬」らしい。
「劇薬なので一日一錠で充分」と店主が警告していた通りその効能は凄まじく、
誤って一気に一瓶分服用してしまったあかねは極度の興奮状態に陥った上、
身体中の血管という血管が破れ大流血するという惨事に発展してしまった。

268 :
投下終了です。

269 :
投下乙ですー!
四字熟語ロワとうかします

270 :
 中央階段広間の中央、ジャージ姿の一人の女性が佇む。
 その目線の下に、前のめりに床に倒れている青年の姿があった。
 青年はもう動かない。
 残酷にも眼窩の奥、脳髄を貫かれて、血の涙を流しながら、もう二度と動かない。
 でも、それをやったのは女性ではない。
 女性はなにもしていない。
 女性が持つ刀では青年の脳は絶対に《貫けない》。
 青年が床に倒れているのは、青年が銃の引き金を引いたからだ。
 《百発百中》の銃は今、青年から少し離れた場所の床に転がっている。
 それは非常に奇妙なシルエットに変形している。
 銃身の大部分が、撃鉄に近い部分まで。内部爆発したように裂けて中身を露出している。
 ころり、と。
 そんな奇妙な状態の銃口から零れ落ちたのは、通常ならば銃身から出てくるはずのない、
 小さな鉄のカケラだった。
 銃身の爆発と共にそれらの鉄片の一つは、青年の目を穿った。
 刃物ではないその鉄片は火薬による加速を以って、青年の脳へ到達した。
 鉄片。
 元は鉄で出来た盾の一部だった、鉄片。
 包帯の切れ端と一緒に、銃口の奥に詰められて。
 《発射さえすれば狙った場所へ飛んでいく》その銃を、爆弾へと変貌させた、鉄片。
 その持ち主は誰だったか。
 それを《小さく切り刻ませ》、誰が銃口へ詰めたのか。
 それを、爆弾であると知りながら、誰が青年に託したのか。
 殺し合いはまだ、終わっていませんよ。と。小さくつぶやいたのは、誰なのか。

「さてと。……それじゃあ、そろそろ行くか」

 ジャージ姿の女性はそれをもちろん知っている。
 そして、だからこそ行かなければならない。彼女が信じた、彼の元へと。

「約束は、ぜんぶ守らなきゃ、だからな……」

 それは――彼女がこのバトルロワイヤルで行った、すべての約束を、遂げるための。
 一刀両断の。最期の歩みだった。

【優柔不断 死亡】

           【残り――三名】
.

271 :
 
 頭が非常に痛く……ちかちかとくらくらが混ざって。
 それでもわたしは歩きます。守るべき人の手を引いて、ああ、まるでヒーローのよう。
 敗戦の敗走でさえなければ、そう思えたかもしれません。
「凛々ちゃん。……身体は大丈夫? 痛む?」
「無理を、すれば。動かせなくはありません。すいません、不甲斐なくて」
 娯楽施設、C-2エリア。
 わたし、勇気凛々と紆余曲折さんはふたりきりで、
 一刀両断さんの言うラストゲームに則って、このエリアまで逃げてきました。
 逃げて、きました。優柔不断さんを、犠牲にする形で。
 くやしさと申し訳なさで、わたしは背筋から暗いものがこみあげてくるのを感じました。
「本当に……不甲斐なくて……。優柔不断さんっ……!」
「凛々ちゃん……」
「優柔不断さん。大丈夫じゃ、ないですよね。わたし、また、守れなくて、見抜けなくて。
 やられてばかりで、誰かを犠牲にして……どうしてわたしは、こんなにばかなんでしょう」
「……仕方ないよ。リョーコさんにあのタイミングで裏切られるなんて、
 僕にもぜんぜん、予想できなかった。……凛々ちゃんは、悪くない。
 とにかく、今は優柔不断さんを信じよう。
 そしてその上で、……優柔不断さんが負けた場合にも備えるんだ」
「……紆余さん」
 しかし、紆余さんになだめられました。
 一番つらいのは紆余さんだろうに。……紆余さんも、我慢してるのに。
 わたしが泣き叫ぶわけにはいきません。わたしは、つとめて冷静になろうとしました。
「そうですね……どうします? 施設から出ましょうか?」
「僕は出ないほうがいいと思う。
 外は開けすぎてて、発見された場合のリスクが高い。この近くで、隠れよう」
「近く……テナントの中でしょうか」
「だね。できれば、出入りできる面が広い、交差点角のテナント」
 わたしたちが今いるC-2は、先ほどまで居た中央階段よりひとつ南のエリアに当たります。
 9エリアのうち、4エリアが禁止区域になったこの娯楽施設には、
 自由に歩ける部分が5エリア、施設部分はここと中央階段の2エリアしか残っていません。
 他はすべて駐車場エリアで、確かに紆余さんの言うとおり、かなり開けた場所です。
 高い場所から見渡されれば発見されてしまいますし、
 車の下や中に隠れるのは《一刀両断》を思うと危険極まりありません。
 ならば、遮蔽物が多く、相手を迎え打てる、このエリアのどこかの店を使った方がいいはずだ。。
 という紆余さんの言葉は、わたしも合理的だと感じました。
 こんな状況になっても冷静に考えることのできる紆余さんは、やっぱりすごいと思います。
「隠れる場所……を、一番慎重に決めよう。……地図はある?」
「あ、はい」
 紆余さんに従って、デイパックから地図を取り出します。
 娯楽施設全体の概略図の裏に、フロアごとのテナント位置が書いてあります。
 わたしはその中、C-2に並ぶテナントをじっと見て、周りの景色とも見比べつつ良い場所を探します。
 薬局……喫茶店……洋服屋に、バーガーショップ……そして。
「そうなると……こことかでしょうか?
 っと、見えないんですよね。すいません。ええと、ゲームセンターです」
 わたしが提案したのは、ゲームセンターでした。

272 :
 
「広さはテナント2つ分くらい……奥行きもけっこうありますし、
 雑音に紛れる形で隠れれば、一刀両断さんからも見つかりにくいかも……?」
「……」
「あの、紆余さん?」
「あ……ごめん。ちょっと、疲れがさ。
 ゲーセン。そうだね……悪くないと思う。
 そこに、しよう。凛々ちゃん。悪いけど、案内してくれるかな」
「え、その……は、はい」
 いったん反応が止まった紆余さんを不思議に思いましたが、反対も無く、
 わたしはゲームセンターに向かって、紆余さんの手を引いて行きます。
 紆余さんの手は非常に冷たく、ひどく緊張しているようでした。
 早く安心させてあげたい……という気持ちが生まれます。
 あるいは自分が安心したいだけなのかもしれませんが、
 とにかくわたしたちは、混乱のさなかで。安心できる場所を探していました。
 いろんなことがありすぎて――こころがつかれきっていて。
 一体何を信じればいいのか分からなくなったあやふやな現実を、安定させたいと。
「……けっこう、五月蠅いですね」
「だね」
 しかしゲームエンターに入ってみると、ゲームの音が思ったよりも大きく、
 わたしはチョイスを少し間違えたかな、と思いました。
 音ゲーにシューティングゲー、UFOキャッチャーにレースゲーム、カードゲーム。
 ゲームセンターはこれらの筐体が常に音を出していて、音密度がすごい場所です。
 ゲーセンなんて行くようなキャラじゃなかったのか、その密度はわたしの頭をさらにくらくらさせました。
 こんなに大きな音がする場所に長時間いるのは気が疲れそうだし、
 それに、これじゃあ逆に、外からやってくる相手が立てる音を拾うことも出来なくなりそうです。
 わたしは十数歩ほど歩いてテナントの中央部まで入ったところで、耐え切れなくなり、地図をもう一度取り出して、
「やっぱり、ここは少し……他の場所へ行きませんか?」
 きびすを返しながら紆余さんに、そう言いました。
「いや、ここでいいよ、凛々ちゃん」
 すると。
 紆余さんは私の手をぐいっと引きました。
「え?」
 いや、別に手は引いてないのかもしれません。その場に留まって動かなかっただけなのかも。
 でもわたしは急に紆余さんがついてくるのをやめたせいで前へ進み切れずに、
 反動でうしろに、
 こてんと音を立ててしりもちをついてしまいました。
 地図を取り出すために空けていたデイパックから、内容物がこぼれだしてしまいます。
「あ、」
「ああ、ごめん。拾うね」
 紆余さんは慌てたようにその場にしゃがむと、床に落ちたものを拾いはじめました。
 ――呆然としながらわたしはそれを見ています。
 立ち上がるのも忘れるほどでした。
 紆余さん。
 紆余、さん?

273 :
  
「あの、紆余さん」
「ごめんね。リョーコさんが来る前に決めなきゃいけないのに」
「あの、えっと、紆余さん。あの……」
 わたしはちかちかした頭のなかで感情を混線させながら、何を言えばいいのか考えました。
 紆余さんがわたしのデイパックから落ちたものを拾っています。
 食料品や、ペットボトル、ルール用紙。拾って、デイパックに戻しています。
 ボウガンを拾いました。わたしはそれを呆然と見ています。何もできるはずがありません。
 おどろくしか、ないからです。
 確かにそんなに遠くに落ちたわけでもないけれど。
 紆余曲折さんは。
 わたしが床に落としたものを全部“的確に”拾って、デイパックに戻していたのです。
「ああ、なにやってんだろ……リョーコさんに殺されちゃうな、こんなんじゃ」
「……リョーコ、さん」
「うん。リョーコさんだよ。一刀両断さんじゃなくて、リョーコさん」
 あっ、と、わたしは思い出します。
 実際にはわたしはその場面に居合わせたわけじゃないんですが……そういえば、
 優柔不断さんがわたしに銃を見せながら作戦を説明してくれた時、こう言っていました。
 ――紆余は、あいつは。
 ――あいつにとってのリョーコさんが、
 ――リョーコさんじゃなくなったんじゃないかって疑ったんだ。
 そして恐らくですが紆余さんは、優柔不断さん達に作戦を説明するときも、
 “リョーコさん”ではない“彼女”を想定するときは、“一刀両断さん”と呼び直していたはず、なんです。
 信頼関係を疑った紆余さんの中で、それが信条(ルール)であるはずなんです。
 でも……でも。
 だったら。おかしいですよね。

 紆余さんも傍若無人も裏切ってひとりで優勝すると言い放ったあのひとを。 
 どうして紆余さん、あなたはリョーコさんと呼び続けているんでしょうか。
 そして、どうして。
 どうして紆余さんはわたしに、ボウガンの射出口を向けているんでしょうか。

 そして……そして……もうひとつ。
「どうして。どうしてなんですか、紆余さん。合いません……つじつまが、合いません。
 だってわたしも優柔不断さんも、ちゃんと見ました。見て、確認したのに。
 タクマさんだって何も言ってなかったじゃないですか。まさか、そんな……どこから……いつから?」
 今、明らかに。
 紆余さんは、“見えています”。
「……分からないことと言えばさ」
 狼狽するわたしに向かって、紆余さんは言いました。
「凛々ちゃんにはひとつ、分からないままのことがあるんじゃないかな」
「え……」
「ほら、優柔不断さんもそうだったみたいだけど。自分が自分じゃなくなったようなことがあったって。
 それは放送を聞いたと同時に元に戻ったって……そういう話を聞いたんだけど」
「それは……それは、傍若無人が知ってると思って」
「うん。考えないようにしてた、だろう? 分かってる。
 でもね、凛々ちゃん。その問題の答えは簡単なんだ。四字熟語が、消えた。それだけなんだよ」

274 :
 
 紆余曲折さんはわたしにボウガンを向けたまま、
 もう片方の手を使って、顔に巻いていた包帯を少しずつ外していきます。
「きっと、凛々ちゃんたちは同じ人の影響――第一放送で死んだ人の名前から見て、
 多分心機一転さんだと思うんだけど――のルール能力を受けてしまっていたんだと思う。
 そして放送で名前が呼ばれることで、四字熟語が消えた。
 四字熟語が及ぼしていたルール能力が無くなって、二人は元にもどった。
 特に複雑に考える必要はない、主催の言葉通りだったんだよ。でも、明確には書かれてないことだった」
 だから、利用させてもらったんだ。
 紆余曲折さんは傷だらけの顔を再び外気に触れさせながら、静かにそう言い放ちました。
 その顔は。傷だらけのずたずたです。
 顔中を刃物でかき回されたかのような傷跡がまだ化膿しつづけていて、
 おもわず目を背けたくなるくらいに凄惨な光景、でした。
「利用……って。でも、紆余さん、あなたは今も、そんな顔じゃないですか」
「うん」
 紆余さんは肯定します。何を肯定しているのかわたしにはいまいち分かりません。
 だって紆余さんがこうなったのは第一放送の前。
 破顔一笑という人のルール能力によって、だと聞いています。
 その破顔一笑さんの名前は、第二放送でもう呼ばれました。だから、
 さっきの紆余さんの論に従うのであれば、もう紆余さんの顔は治っていなければおかしいはずなんです。
 矛盾しています。傷が治ってない……そのまま残っているなんて。
「じゃあ、なんでまだ、傷が……傷……」
 傷が……残ったまま。戻っていない。
 戻っていない、けれど。
 今、紆余曲折さんの顔にある傷は。“ぐちゃぐちゃ”じゃなくて、“ずたずた”だ……。
「うん。賭けだった。とっても分の悪い、賭けだった。
 自分でもバカだと思うくらいにバカな賭けだったけど。幸い、成功したんだ」
 紆余さんは淡々と言いました。 
「放送が終わって……その規定(ルール)を推測したあと。
 僕は一刀両断さんに頼んで、わざと“自分の顔をずたずたに”してもらったんだよ、凛々ちゃん。
 みんなの目を欺いて――最後の最後まで守られて。最後の最後に、うらぎるために」
 紆余曲折さんはわたしに向けて、しっかりと両目を向けました。
 ……ああ、なんで。言葉はひどく平坦なのに。
 ひどいくらい冷たくて無機質なのに。
 紆余さんの、久しぶりに光を浴びただろう目は。
 どうしてこんなに、泣きそうなくらいに潤んだ、弱弱しい瞳なんでしょうか。
「だからさ……僕“たち”の、勝ちなんだ。
 そして……きみの負けなんだよ、凛々ちゃん。きみは今からこのボウガンで、」
 僕に殺されて、それで終わりだ。
「僕が殺して。それで全て――終わり、なんだ……そういう、約束(ルール)なんだ!!」
 泣きながらそう言われて。
 わたしは……かなしすぎて、なにも、言えません。
 紆余さんがこのままわたしを殺してしまうのを、もう、見ているだけしかできなくて、
 そしてそれは、その結末はたぶん、一番悲しいことなんだって……分かって、いるのに。
 無力でした。

275 :
投下終了、後半に続きます

276 :
投下乙です
避難所の後半も読みました はぇ〜すごい展開……
自分も投下します。18話 薄氷 登場:KMR

277 :
18話 薄氷
夜の市街地、とある道路に有るバス停。
青年、KMRはバス停に置かれた椅子に座り、俯いて考え込んでいた。
「ああ、死にたくない……」
震えた声で呟くKMR。
クラスの皆で修学旅行に出掛けた筈なのにどうしてこんな事態になっているのだろうか。
殺し合い――バトルロワイアル。
最後の一人が決まるまで参加者同士殺し合わなければならない死のゲーム。
首には爆弾付きの絶対に外す事の出来ない首輪。
無理に外そうとすれば死。
逃げようとすれば死。
ゲームを妨害すれば死。
優勝出来なくば死。
死、死、死――――今となっては「死」はもう身近なものなのだ。
死にたくない、まだ生きていたいとKMRは切に願う。
だが当然願っているだけでは事態は何も好転しない。
泣こうが叫ぼうが、誰も助けてくれない。
考えなければならない、この殺し合いで生きる術を。
この殺し合いにはKMRのクラスメイトも何人か呼ばれている。
特に親しいのは所属している空手部の先輩である、野獣先輩こと田所浩二とMUR、
水泳部所属で田所を慕っている遠野の三人。
彼らならきっと頼れるとKMRは思った。
すぐにでも捜しに行きたかったが、今は深夜で暗く視界も悪い。
そのような状況で、下手に動き回るのは得策では無い、KMRはそう思った。
「もう少し、明るくなるまで……どこかに隠れてよう」
明るくなり視界が開けてから三人を捜す事にし、KMRはしばらく身を潜められそうな場所を探し始める。

【深夜/E-4市街地】
【KNR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:生き残る。殺し合いはしたくない。
        1:野獣先輩達を捜索する。他のクラスメイトも並行して捜したい。
        2:どこかに身を潜めて明るくなるのを待つ。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。

278 :
投下終了です。
「薄氷」は「うすらい」と読みます

279 :
あっ、状態表の名前間違えてる
正しくは「KMR」です誰だよKNRって

280 :
投下します。俺得7 19話 Consultation room
登場:西川のり子、レナモン

281 :
19話 Consultation room
F-2エリアに存在する病院。
規模は決して大きく無いが、一通りの医療設備は揃っている。
現在時刻は深夜だが、院内の廊下は一部の部屋は明かりが灯っておりそれ程暗くは無い。
「うわぁ凄い、フサフサやんなぁ」
「そうだろう」
一階診察室にて少女、西川のり子は二足歩行の狐のような生物の尻尾を触っていた。
そのふさふさとした心地良い触感が気に入ったようでこれでもかと言う程のり子は尻尾を触る。
狐のような生物――レナモンも嫌な顔一つせず満更でも無いと言った様子である。
西川のり子とレナモンは病院内で遭遇し知り合った。
明らかに人間では無い上自分の常識外の生物であるレナモンに最初は戸惑い怯えていたのり子だったが、
話が通じ温厚であり害が無いと知ると打ち解けるのにそう時間は掛からなかった。
「ふぅ、また触ってもええかな?」
「ああ」
「小鉄達は無事なんかな……はよ会いたいわ」
のり子は殺し合いに呼ばれている友人達の事を気に掛ける。
元気な馬鹿少年・大沢木小鉄、食べる事にかけては右に出る者の居ない太っちょ少年・鈴木フグオ、
強面だが友達思いの少年・土井津仁、良く家に皆で遊びに行く老け顔少年・金子翼、
何故教師を続けているのか疑問に思う程の馬鹿教師・春巻龍の五人。
「今すぐにでも捜しに行きたいんやけどなホンマは」
「月明かりが有るとは言え、外は暗くて見通しも悪い……暗がりから急に襲われる可能性も有る。
まだ動かない方が良い。気持ちは分かるが」
「うーん……」
レナモンに引き止められ唸るのり子。
レナモンも当人が言った通りのり子の心情は察してはいたが、
暗い夜道を、いつ命を狙われるか分からない状況下で、どこに居るか分からない知人の捜索をさせるのは、
リスクが大き過ぎる。そう思いのり子を引き止めた。
病院内は全てでは無いが一通り見回り一応の安全は確認している(襲撃を受けたらこの限りでは無いが)。
現時点では、明るくなるまで診察室に留まるのが上策だとレナモンは判断した。
(何でこんな事になったんやろ)
診察用のベッドの上に寝転び白い無機質な天井を見詰めながら、のり子は物思いに耽る。
友達との騒がしくも平和な日々、しかし気付けば見知らぬ土地に連れて来られ殺し合いをさせられている。
見せしめで殺された赤ん坊と、その家族の悲痛な叫びは今ものり子の耳に残って離れない。
そしてそれら一連の悲劇は、まだ小学生の子供に過ぎないのり子の心に大きなショックを与えていた。

282 :
(死にたくないなぁ……お父んやお母んに、会いたいなぁ)
普段世話を焼いているだらしがない両親、しかし大好きな両親。
生きて帰れるのか、再び、両親に会えるのか。
溢れそうになった涙を、のり子はぐっと堪えた。

【深夜/F-2病院】
【西川のり子@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしたくない。死にたくない。
        1:レナモンと行動する。小鉄達を捜したい。
        2:明るくなるのを待つ。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
【レナモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いをする気は無い。
        1:のり子と行動。
        2:明るくなるのを待つ。
[備考]※性別は♀、アニメのレナモンとは別人、性格もオリジナルの設定です。但し口調等は参考にしています。

283 :
投下終了です。
タイトルは「診察室」の意味です

284 :
投下します。20話 地獄の番犬の爪は闇を切り裂いた
登場:鈴木正一郎、ケルベロモン

285 :
20話 地獄の番犬の爪は闇を切り裂いた
C-6エリアのガソリンスタンド。
事務所内にて、鈴木正一郎の「二回目」のバトルロワイアルはスタートした。
「まさか、また殺し合いをやる事になるなんてな……」
正一郎は一度目の――クラスメイト同士の殺し合いにおいて、
主催に反抗し、ゲームに乗ったクラスメイトを倒すスタンスを取っていた。
これだけを聞けば聞こえは良い。
しかしその実、彼は偏った自分の正義感に基付き、殺し合いに乗っていないクラスメイトまでをもその手に掛けていた。
そうして己の正義を信じ行動していたが、次第にその自信も揺らぎ始め、
そして最期には散弾銃で頭を吹き飛ばされると言う凄惨な死に様を遂げた。
しかし今、彼は何らかの方法によりこの世に再び生を受け、別の殺し合いの場に立っている。
名簿を見ればクラスメイトの名前も数人確認出来る。
自分が殺したシルヴィア、自分に麻倉美意子を殺させた貝町ト子、
若狭に首輪を爆破され殺されたラト、自分を殺した太田太郎丸忠信、他にも何人か居る。
ランダム支給品はチェーンソー。
以前の殺し合いでも似たような物を武器として使っていた。
シルヴィアと麻倉はそれで殺害したのだから、記憶に新しい。
「今回は間違えない、絶対に……」
固い決意の表情で正一郎は言う。
以前の殺し合いでの自分は倒すべき相手を見誤っていた。
最初の宍戸亮太郎はともかく、他に自分が殺した者達は、よくよく顧みれば、
皆改心しようとしていたり、殺し合いに乗ってすらいなかった者ばかりでは無かったか。
自分は間違っていたと認めざるをえない。
謝した所で到底許されはしないだろうが、正一郎は心から申し訳無く思った。
二度目の生で、自分が為すべき事。
殺し合いを潰す事――――正一郎は判断する。
しかし以前のように、曖昧な材料で相手を殺し合いに乗っていると断じるような安易な真似はやめるべきと己に課す。
本当の正義は、その先にある筈だ――正一郎は思う。
ならば、早速行動を起こさなければ。
正一郎は事務所から待合所へ向かう扉を開けた。
薄暗い非常灯の灯った待合所の、大きなガラス窓の向こうには幾つか並ぶ給油機。
「……?」

286 :
給油機の向こうで何かが動いたような気がして、
正一郎がその辺りを注視する。
夜の闇にすっかり溶け込んではいたが、それはかなり大きな四足の獣のようだった。
「!?」
そしてその獣は次の瞬間には正一郎目掛けて猛烈な勢いで迫ってきた。
ガシャアアン!!!
分厚い強化ガラスが粉々に砕け散り、正一郎は抵抗する間も無く黒い巨大な獣に床に押し倒される。
待合所のテーブルや椅子、観葉植物が獣とぶつかり吹き飛ばされる。
「一人目」
獣の口から青年の声で言葉が発せられた直後、鋭い爪を持った前足が薙ぎ払われ、正一郎の首が飛んだ。
正一郎の頭部はバスケットボールのように跳ね、部屋の片隅の自動販売機にぶつかり床に転がった。
こうして、鈴木正一郎の二回目の生、及びバトルロワイアルは、いとも呆気無く、その幕を閉じた。

【鈴木正一郎@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  43人】

◆◆◆

「んっ……はぁぁっ……これこれぇ」
身を震わせ恍惚とした表情を浮かべる黒い巨犬、ケルベロモン。
ガソリンスタンドに居た人間の少年の首を飛ばして殺害し、彼は己の欲求を満たし、痺れるような快感を感じていた。

287 :
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、あっ、はぁぁぁあああああっ、いくっ、いくぅぅぅうううぅぅううっ……」
ビクン、ビクンと更に大きく身体を震わせた後、大きく口を開けだらしなく舌と涎を垂らし、
ケルベロモンは、床に白く濁った液を撒き散らした。
それは紛れも無くケルベロモンの体液――殺戮により彼は性的絶頂に達したのだ。
「んんっ……気持ち良い〜……これだから殺しはやめられないんだよぉ。
ふふっ、一杯出た出た……」
怒張した己のモノと、床に大量に飛び散った汁を愛おしげに見詰めるケルベロモン。
「もっともっと気持ち良くなりたい……まだまだ獲物は沢山居る筈だ。
まだまだ楽しめるね……ん、これ、チェーンソー? ……貰っておこう」
少年が持っていたチェーンソーを拾い自分のデイパックに入れ、
その後ケルベロモンは次の獲物を探す為にガソリンスタンドを後にした。

【深夜/F-2病院】
【ケルベロモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]快感
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???、チェーンソー
[思考・行動]基本:狩りを愉しむ。
        1:獲物を探す。
[備考]※性格は作者のオリジナルです。

288 :
投下終了です。久々にちょっとえろっちぃネタ。

289 :
投下します。21話 瞳は色褪せて、何も見つけられなくて
登場:大沢木小鉄、テト

290 :
21話 瞳は色褪せて、何も見つけられなくて
日本は千葉県、浦安市に住む小学生の少年、大沢木小鉄は、
有り得ない程の元気さ、タフさ、そして馬鹿さを持っていた。
遊びはいつでも全力投球、夏休みの時などは睡眠を殆ど取らずとも全く平気で居られる驚異的な体力と行動力を有し、
また、脳天に鉛筆が刺さる、自動車に撥ねられる、火災現場に突っ込むなど命の危機に瀕してもその都度、
人並み外れた回復力を発揮し後遺症も全く無く生還を果たしてきた。
いじめっ子気質な面は有ったものの基本的には快活な性格で、友達も多い。
そして大抵の事に物怖じしない胆力も持っていた。
そんな彼でも今回巻き込まれた殺し合いゲームには、流石に恐怖を感じていた。
「どうしてこんな事になっちまったんだ?」
温泉旅館の客室の一つ、座卓の前に座り、大沢木小鉄は自分の置かれた状況に疑問を呈する。
つい昨日まで何も変わらないいつも通りの日常を送っていた筈だと言うのに、
突然見知らぬ場所に居て、爆弾付きの危険な首輪をはめられ、殺し合いをしろと謎の男二人に命令されたのだから、
不満を覚えない方がおかしい。
首輪の威力を見せる為だと称し、男二人――じゅんぺいとまひろは、
殺し合いの参加者である家族の目の前で年端もいかない赤ん坊を爆殺した。
その光景は小鉄も目撃しており、今まで自分が死にそうになったり他人が死にかけたりするのは何度か覚えが有り見てもきたが、
本当に人が死ぬ所は初めて見た。
「ふざけんなよ……殺し合いなんて出来る訳ねぇだろ」
怒りを込めて小鉄が言う。
「のり子にフグオ、仁、金子先生、春巻も居るみてぇだしな。
あいつらをR事なんて出来ねぇよ……勿論他の人達もだ」
恐怖は感じていたし、死にたくないと言う気持ちも有る。だが、殺し合いを肯定する事は出来ない。
大事な友達をRなんて出来る訳が無い。当然の事だ。
春巻は別段友達では無いしむしろ嫌いな部類に入る人物だったが、
流石に本気で死んで欲しいとまでは思っていない。
ランダム支給品は、ローバーR9と言う小型の自動拳銃。
説明書と、予備のマガジンが三つ、セットで小鉄に支給された。
当然、本物の拳銃の使い方など小鉄は知らない。
説明書が添えられていたが、彼には理解出来る代物では無く、結局装備する事は叶わなかった。
「とにかくのり子達を探さなきゃな……。
この旅館の中でも見て回るか」
小鉄は自分の荷物を持って客室を出た。
◆◆◆

291 :
テトはようやく温泉旅館に到着した。
長時間雪原を歩いたせいで身体は冷え切り、足はびしょ濡れになっており、一刻も早く暖を取って休みたかった。
旅館玄関の自動ドアをくぐり抜けると、綺麗に掃除された落ち着いた雰囲気のフロントが彼女を出迎える。
靴を脱いでそれを片手に持って上がると、絨毯敷きの床に濡れた足跡がくっきりと残った。
「客室は……」
案内図を見て客室が有る場所を探すテト。
「!」
しかし案内図を指でなぞっていた時、テトは微かに人工的な物音を聴く。
普通の人間ならば聞こえなかったであろうそれは、獣人であり人間より聴力の優れる彼女には確かに聴こえた。
「誰か居るの?」
音のした方向へテトは声を掛ける。
「待ってくれ、俺は殺し合いには乗っていない」
通路の角から出てきたのは丸刈り頭の小学生と思われる少年だった。
「俺、大沢木小鉄って言うんだ。この旅館の中を見て回ってたんだけど……」
「そうなの……私はテト。ずっと雪の中歩いてきて、この旅館にやって来たの。
私も……殺し合いには乗っていないわ」
「おーそうか。ねえちゃん着ぐるみ着てるのか? 猫みたいな見た目してんな」
「え? 着ぐるみ? いやそんな物着てないよ?」
「じゃあ本物なのか? すげえ!」
「……? 獣人ぐらい知ってるでしょ?」
違和感を感じ、テトは尋ねる。
テトの世界において獣人は既に一般認知されており、小鉄の反応は彼女にとって妙であった。
「じゅう、じん? 何だそれ? 聞いた事ねぇぞ」
「ええ??」
真顔で答える小鉄にテトはますます困惑する。
嘘を吐いているようには見えない、そもそも嘘を吐く理由も無いだろうが。
(いや、そんな事より今は……)
ここでテトは当初の目的を思い出した。
「ああ、話の途中で悪いけど客室探さなきゃ……」
「そうか姉ちゃんずっと歩いてきたって言ってたもんな。ごめんよ。
客室ならあっちの方だぜ、案内してやるよ」
「ありがとう」
テトは小鉄に案内され客室へと向かい始める。
「テトのねーちゃん、おっぱいでけーな。俺のねーちゃんよりずっと」
「いっ!? どこ見てんのよ!」
胸の事を言われて赤面するテト。
もっとも小鉄はいやらしい気持ちでは無く単純に驚いている様子だったのだが。
その後、客室の一つに入りようやくテトは落ち着く事が出来た。
小鉄は引き続き旅館内を探索する、また来ると言い残して客室を後にした。
備え付けのヒーターを点けて靴と靴下を干し、座卓に伏すテト。

292 :
「はぁ……疲れた。さっきの小鉄って子、獣人の事知らないって言ってたけど……後で詳しく聞いてみよ」
小鉄には後程詳しく話を聞くと決め、次にクラスメイトの事について考え始める。
名簿に有るクラスメイトの名前は自分を除き14人。
その内自分と関わりが深いのは六人。
愛餓夫、壱里塚徳人、太田太郎丸忠信、ラト、貝町ト子、吉良邑子だ。
ラト以外は殺してやりたいとテトは思う。
自分を辱めた太田達は元より、自分を裏切って太田達に売ったト子も同様。
ラトに関しては複雑であり、会いたい気持ちも会いたくない気持ちが半々である。
それ以外のクラスメイトについては保留する事にした。
「……ちょっと寝よう」
疲労感と、暖房の温もりからか、テトを眠気が襲う。
少し眠っても罰は当たるまいと、テトは座卓に伏したまま目を閉じた。
程無く、寝息を立てテトは眠りについた。

【深夜/E-6温泉旅館客室】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(大)、睡眠中
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:今の所は殺し合う気は無い。
       1:(睡眠中)
       2:しばらく旅館で休む。後程小鉄君に詳しく話を聞く。
       3:太田達及び貝町ト子は殺してやりたい。ラトは複雑。他のクラスメイトについては保留。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
    ※大沢木小鉄を自分と同じ世界の人間だと思っています。

【深夜/E-6温泉旅館のどこか】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、ローバーR9の弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。のり子達を捜す。
       1:旅館内の探索。後でテトねーちゃんの様子を見に行く。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※旅館内を探索しており正確な現在位置は不明です。
    ※テトを自分と同じ世界の人間だと思っています。

《支給品紹介》
【ローバーR9@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
アメリカのローバー社が開発した小型自動拳銃。
航空機用のアルミ複合材をフレームに採用し、総削り出し加工で製作する等「高級」な小型拳銃となっている。
但しとある銃器誌のレポートでは「購入直後は装填不良に悩まされた」とされ信頼性に難が有るとも言われている。
元ロワにおいて皆川宏介に支給されるがすぐにヴィヴィアン・ルークに奪われ、その後クローイの手に渡るが、
結局一発も発砲しないまま出番を終えた。

293 :
投下終了です。

294 :
投下します。俺得7 22話 フラウは行動する/春巻龍は動かない
登場:フラウ、春巻龍

295 :
22話 フラウは行動する/春巻龍は動かない
F-4エリアには警察署が存在していた。
しかし今は勤務する警官の姿は一人も無く、その役割は全く果たしていない。
果たせるとすれば、殺し合いの参加者達が身を隠すのに使う拠点としての機能、であろう。
「それじゃあ、春巻さんはこの殺し合いに教え子が何人か居るんですね?」
「そうだちょー」
一階のオフィスにて、学生服姿の狐獣人少女、フラウは、
署内で出会った男、春巻龍と会話していた。
春巻はフラウに自分が小学校教師だと言う事、この殺し合いに教え子が数人呼ばれている事をフラウに話し、
その名前や特徴等も一緒に伝える。
一方のフラウも、この殺し合いに呼ばれている自分のクラスメイトの名前と特徴を春巻に話した。
「フラウはこれからどうするつもりだちょ?」
一通り互いの知り合いの事を話終わった頃、春巻がフラウに尋ねた。
「さっきも言ったけど、殺し合いをする気は有りません。
何とかして、殺し合いを潰したい……その為にまず、殺し合いに乗っていない人を見付けて仲間にしようと思ってます」
「でも、そんなに上手く行くかホイ?」
「正直難しいと思います……でもだからって、殺し合いを肯定する事は出来ません」
「そりゃまあそうだけど……」
「春巻さんはどうするんです?」
今度はフラウが春巻に訊く。
「俺は余り動きたくないちょ……死にたくない」
「でも、教え子が居るんじゃ……」
「アイツら、みんな結構強いちょ。多分放っておいても大丈夫だと思うホイ。それに俺アイツらに嫌われてるし」
「ええ……」
とても教師たる者の言葉とは思えないとフラウは呆れる。
同行しても貰えなさそうなので、フラウは単独で行動する事にした。
「それじゃあ私は行きます。春巻さん気を付けて。
本当にいつ、命が危険に晒されるか分かりませんから」
「分かった……フラウも気を付けて行けホイ」
フラウは春巻の返しに対し頷くと、自身に支給された大型自動拳銃・デザートイーグルを右手に持ち、
警察署の玄関へと歩いて行った。
その背中を、春巻はぼーっと見送った。
「行っちゃった……はぁ、どうしてこんな事になったんだちょー」
頭を抱え、自分の現状に嘆息を漏らす春巻。
どうしてこんな、バトルロワイアル――殺し合いなどと言う理不尽なゲームをしなければいけないのか。
今まで散々問題を起こしてきた自分にバチが当たったとでも言うのか。

296 :
確かに自分は今まで散々、厄介事を招いてきた。
自宅アパートを火事で失い、担任クラスの教室に住み着いて生徒から顰蹙を買ったり、
空腹に耐えかね八百屋をやっている生徒――この殺し合いに呼ばれている鈴木フグオ――の家を襲って、
野菜を強奪したり(言うまでも無く立派な窃盗及び器物破損である)、
紙飛行機作りにはまってありとあらゆる紙を紙飛行機に作り変えて同僚から咎められたり、と、
少し思い出しただけでもかなり有る。
だが、もしバチが当たってこうなったのだとしてもすんなりそれを受け入れる程春巻は人が出来ていない。
人が出来ているのなら前述の問題など起こさなかっただろうし、
そのような往生際の良い人間なら今まで何度も彼を襲った遭難で、彼は生き延びる事など出来なかっただろう。
(殺し合いはしたくない、でも生きたい、死にたくないちょ……。
しばらくここに留まっていよう、下手に動かなければきっと安全だちょ)
春巻は教え子達を捜しに行く事はせず、今居る警察署に留まり己の安全を優先させる事に決める。
身勝手な行動に思われるかもしれないが、教え子達――大沢木小鉄、西川のり子、鈴木フグオ、金子翼――は、
いずれも普通の小学生とは比較にならない体力、耐久力が有る。
特に大沢木小鉄に至っては超人とも言って良い程、例え殺し合いに放り込まれたとてそう簡単に死にはしないだろう。
そう春巻は考えていた。彼なりの考えは一応有るのである。
「何か食べるホイ……」
春巻は自分のデイパックから基本支給品の食料を取り出し、軽い食事を始めた。

【深夜/F-4警察署一階】
【春巻龍@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。でも一応小鉄達の事も心配ではある。
       1:しばらくは警察署に留まり動かないようにする。
[備考]※少なくとも元祖!にて再び小鉄達の担任となった後からの参戦です。
    ※フラウのクラスメイトについての情報を得ました。

◆◆◆

狐の少女・フラウは、現在参加している物とは別の、
クラスメイト同士の殺し合いにおいて一度死を迎えた身である。
どうやって死んだ筈の自分が生き返ったのか、
何の因果で再び殺し合いをさせられているのか、それはいくら考えても分からない。
確かなのは生き返っただけで以前と置かれている状況は然程変わっていないと言う事と、
今回の殺し合いにはクラスメイト以外の人間も参加していると言う事、
そして今回の殺し合いの運営に携わる連中も、以前の殺し合いでラトの首輪を見せしめで吹き飛ばした若狭と同様、
冷酷極まりない性質なのだと言う事、であろう。

297 :
(名簿見たけど、英人や由佳ちゃん、ケトルは居ないみたいね)
名簿に載っていたクラスメイトの名前の中にフラウの親しい人物は居なかった。
前回の殺し合い、フラウは友人の玉堤英人、間由佳の為に、殺し合いに乗るとまでは行かないが、
危険人物を排除すると言うスタンスを取っていた。
当初は純粋に二人の為だったのだろうが、しかし、殺し合いと言う異常状況下のせいか、
彼女の自覚が無い内にその思いは妄執とも言えるものへと変貌していった。
そして、とある出来事が切欠で遂にフラウは錯乱し、その時傍に居た友人のケトルに対し危害を加えるような事をしてしまい、
それが彼女の死に繋がる結果となってしまった。
(冷静になった今だからこそ言えるのかもしれないけど、あの時の私、もしかしなくてもどうかしてた……)
前回の殺し合いでの己を省みるフラウ。
(英人もきっと、理由が有ったんだと思うし……ケトルは何も悪くないのに、
あんなに追い詰めてしまって、結局それで私は……本当に申し訳無い事をしたわ。
この殺し合いには居ないから、会って謝る事も出来ないけど……。
……今、私が出来る事は……)
フラウは今回の殺し合いで自分に出来るであろう事を考え、見出した。
ごくごく純粋かつ簡単、この殺し合いを潰す事にした。
その為にはまず、殺し合いに乗っていない参加者を集める事が上策だろうとフラウは考える。
但し先程の春巻龍のように、乗ってはいないが全く行動する気の無い者は避けた方が良いとも思った。

【深夜/F-4警察署一階】
【フラウ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]筋肉のデザートイーグル(7/7)@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式、デザートイーグルの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
       1:ゲームに乗っていない、かつ能動的に反抗する意思の有る参加者を探す。
       2:クラスメイトについては保留する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※自分が以前に殺し合いをしていた事、一度死んでいる事は春巻龍には話していません。

《支給品紹介》
【キンニクのデザートイーグル@アニメ/クレヨンしんちゃん】
劇場版「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」においてSMLのエージェントの筋肉(コードネーム)が所持していた、
イスラエル製の大型自動拳銃。劇中においてひろしがこれを持って筋肉を威嚇したが、
直後にあっさり奪われ羽交い締めにされた。

298 :
投下終了です。
描写が足りないような気がするが夜勤で気力が出ないのでご容赦下さい

299 :
投下乙ですー
四字熟語ロワ投下します

300 :
 一刀両断は。だれひとり裏切っていなかった。
 すべての契約を、守っていた。
 傍若無人を殺したのも、それ自体が傍若無人との契約の内だった。
 契約内容は――勇気凛々を助けること。
 あの少女を助けれられるのであれば。代わりに、自分を殺してもいいと。
 そう、大男は言ったらしい。
 ゲームセンター中央部でその真実を聞かされた紆余曲折と勇気凛々は、
 あまりにも突拍子のないその話に、負荷がかかりすぎたPC画面のようにフリーズした。
「」
「」
「あー。まあ、やっぱ簡単に理解できるわけ、ないよな。
 まあ、分かんなくてもいいんだよ。どうせ今からやることは同じだ」
 薄暗いゲームセンターの店内、
 二人がフリーズしているその周りで、誰も触っていない格闘ゲーム筐体の画面は、
 客引きのためのCPUデモンストレーション・バトルを流している。
 ハッ、トッ、ヤァッと掛け声を発しながら派手なエフェクトを出す4人のキャラクターの乱戦。
 ボクシングスタイルの男、アーミー装備の大男、
 日本刀を構えた和服の女に、小柄な剣士の少女。
 互いに一歩も引かない大乱戦の後、立っていたのは――といったところでタイトル画面に戻る。
 立っていたのは、誰だろう? ぼんやりとその画面を見ながら紆余曲折は考えた。
 巻き込まれ、複雑に絡み合った思惑の糸。
 それぞれの登場人物にあっただろう望み、願い、守りたかったもの。
 戦って、殺し合って。結局のところ、誰が一番、やりたいことを遂げられたのだろうか?
 この中で選ぶのならそれは一刀両断なのかもしれない。でも……。
「とりゃ」
「え」
 と、
 紆余曲折が泥のような思考から引き上がろうとした瞬間だった。
 手刀だった。
 一刀両断がいきなり、手刀を振り下ろした。
 おもむろに勇気凛々の後首に振り下ろされたそれは、
 刃物ではないので彼女の首を切断したりはしなかったが、意識は奪った。
 ぱたり。
 何かを発言する暇すら与えられずに、
 勇気凛々は倒れた。

【勇気凛々 気絶】

301 :
 
「……あの、リョーコさん。凛々ちゃんの扱い雑すぎませんか」
「? あたしが受けた契約には、
 邪魔者に延髄チョップして気絶させてはいけないとは無かったぜ」
 しれっとした顔で一刀両断は言う。そして、
「さて。これで邪魔者は今度こそゼロってわけだ。
 長かった――実に長かったけど、やっとすべてが終わった。
 覚えてるよな、紆余? やーっとあたしたちは、他愛ない話ができるようになったんだ」
 といって両手を広げて笑みを浮かべた。
「あ、……、はい。でも……」
 しかし、紆余曲折はなんともいえない表情で、床に倒れた勇気凛々を見る。
 確かに勇気凛々が倒れれば、意識があるのはふたりだけ。
 最終戦が始まる前に二人でした“約束”を叶えることができる条件は整う。
 ただ――正直言って、事態が呑み込めない。
「その前に、その……もう少し、説明が欲しいです、リョーコさん」
「なんだよ。そこはあっさり分かるか、でなくとも分かったつもりになっとけよ。話進まないだろーが」
「そう言われても……ええと。
 傍若無人は、勇気凛々を助けようとしていた。
 ……さっきリョーコさんが言ったのは、そういうことでいいんですよね」
「ああ、そうだ」
「全くどんな動機でそんなことになっていたのかは分かりませんが、
 確かにそう考えてみれば、腑に落ちることもいくつかあることには、あります」
 紆余曲折は振り返る。
 例えば、傍若無人がこの殺し合いで殺したのは、最終的には3名。
 東奔西走、破顔一笑、そして青息吐息。
 これらは最初に殺した東奔西走をのぞけば、殺し合いに積極的だった四字熟語たちだ。
 単純な無差別マーダーなら別に問題はないが、傍若無人はそもそも、
 殺し合いの進行を円滑にするために送り込まれたジョーカーであったはずだ。
 いくら金のためという建前があるとはいえ、
 乗っている者を殺してお咎めなしというのは少し不審に思うところもあった。
 しかし、理由を当てはめれば。
 傍若無人の殺人は、単純に自分の目的を遂行するためのものだったと回答できる。
 自身と同様に制限ルールを課せられた、イコール強い参加者であろう東奔西走。
 出会い頭に勇気凛々に致命的なダメージを与えるかもしれない破顔一笑。
 最終戦のために邪魔になる本当のラストマーダー、青息吐息。
 すべての殺人が、理不尽に行われたものから、計画的に行われたものへと、変貌する。

302 :
 
「他にも、自殺を試みていた凛々ちゃんの前に現れたそのタイミング。
 最終戦を開いた理由……確かにそれであれば色々なことに説明がつくと思います。
 でも説明がつかないことが、二つ――」
「1.どーして勇気凛々を助けようとしてることを隠していたのか。
 2.そもそも、面識ねえはずの勇気凛々をどうして助けようとしてたのか、だろ」
「……はい」
 かつてを思い出させるような思考への割り込みだった。
 会話に割り込んできたのは、つまらなさそうな顔をした一刀両断だ。
 彼女は、デイパックから一枚の紙を取り出す。
 顔写真つきの名簿だ。
 その裏に、サインペンでなにやらいろいろ書いている。
 面倒そうに一刀両断は紆余曲折にその紙を押し付けた。
「もう説明めんどくせーから、こいつを読め。
 死んだ傍若無人のデイパックの中に入ってたやつだ。
 懇切丁寧に、あいつの全部がここに書かれてるよ。こんなに詳細に書かなくてもいいってほどに。
 もうあれこれ考えんのも疲れてきたとこだろ? 手っ取り早くいこうぜ」
「それが一番手っ取り早いのなら、そうしますが……」
 押し付けられた紆余曲折は、その紙をじっくりと見た。
 書いてあったマークや文章、
 あるいは図形などを、じっくりと。見ることになった。

 そして知ることになる。
 このバトルロワイヤルで、全ての望みを遂げたものが居るとするならば。
 それは傍若無人であるということを。
「……!!」
 
 ――かつて傍若無人は自らのことを“主催の尖兵”だと言っていた。
 主催側だと、何度も強調してきた。
 つまり、傍若無人は、参加者ではない。
 参加者に適用されている“ある条件(ルール)”に、傍若無人は当てはまらない。
 
 そしてもう一つ。“呼び名”だ。
 すべてをモノ扱いして。ほぼすべての参加者に、モノとして呼びかけていた傍若無人は。
 紆余曲折が、一刀両断をリョーコさんと呼ぶのと同じように。
 特定の人物に対しては、“モノ”ではない、あからさまな呼び方をしていた。
 そう呼ぶ意外に、ありえないほどにだ。
 モノだなんてとても言えない。だって、彼と彼女たちの関係は。助けなければならなかった、理由は。
「こんな……こんな、ことが。あっていいんですか。
 傍若無人……凛々ちゃん……“そして、奇々怪々”。そんな。だって、こんな」
「それ以上は、ここでは言うなよ。もし起きてたら凛々が聞いちまう。
 色々あって疲れてるだろう凛々に、今これを聞かれるのは、まずいだろ?」
 雑音が飛び交うゲームセンター、一刀両断は人差し指を唇に当てた。
 そしてほんの少し儚げに、言った。
「屋上に、行こうぜ。あたしたちの始まりの場所で、ぜんぶぜんぶ、終わらせよう」

◆◆◆◆

303 :
今回ぶんは投下終了です。
傍若無人さん真実は前回の番外編と合わせて、もう読み返せばほとんど分かると思うので
この話の中ではもうあまり触れません 42話は紆余くんとリョーコさんの話になります

304 :
投下お疲れ様です!
初めまして。
今回、此方で『Fate/Another factor』という作品を執筆させていただく者です。
元ネタは言わずもがな某聖杯戦争。
如何せんこの界隈で書くのが初めてなので、此方で細々と完結まで頑張らせていただく所存です。
バトロワと呼んでいいのかとやや躊躇いはございましたが、別所の方に聖杯戦争モノも開催されておりましたので、連載へ踏み切らせていただきました。
それでは投下いたします

305 :
 かつん。
 かつん、かつん――静謐の中に、軍靴の音が響いていた。
 規則的に響くその音声は心を安らがせる子守唄の音色宛らに美麗であったが、この場所が如何なるものかを鑑みれば血と硝煙の芳香が否応なしに染み付いた装束は余りに不似合い、不釣り合いだと言うより他ない。
 此処は教会だ。神の名と救済を盾に凡百の民と異教徒を虐殺し尽くしてきた世界最大規模の巨大暴力装置――基督の教えを説き礼を排する聖域である。
 掲げられた十字架はきらびやかな黄金を湛え、ステンドグラスの向こう側より降り注ぐ陽光は穏やかな初夏の安らぎに満ちていた。端的に言って平穏。争いを感じさせるのは、それこそ一人の存在以外にはなかったろう。
 この少女は雪のように白かった。
 髪も、肌も。色素が真実抜け落ちて、漂白されているように見える。
 けれどその双眼は血染花を連想させる朱色だ。怪談奇談に語り継がれる百鬼化外魑魅魍魎をその色彩からは連想しそうなものだが、如何せん容姿とは人の価値観すらも容易く覆す、人間が生まれ持った最大の兵器である。
 少女は掛け値なしに美しい。齢が齢なだけあり、綺麗というよりは可愛いと呼んだ方が適切であろう顔立ちだが、じっと身動きをせずにソファにでも腰掛けていたならアンティークのビスク・ドールと見紛っても何ら可笑しくはない。
 黒衣の黒と白貌の白がコントラストを生み、神話から抜けだした天使然とした少女は壇上で待つその男へ歩んでいく。
 彼女は基督の教徒ではない。
 信仰することを否定するつもりはないが、特定宗派に跪くことはまず有り得ないと断言できた。彼女自身、己はそういうモノでないと把握している。その上で、幾つかの釦を掛け違えつつも、結果神へ縋ることは論外と切り捨て歩んできたわけだ。
 さて、では彼女は何をしに此処まで来たのか。
 精々が十代に入りたてといったところの背丈から推察すれば、学校行事か何かの成功を祈念すべく、なんてのがお誂え向きの理由だろうが、生憎とそれは的外れも良いところ。
 
 「……、ほう。随分と遅かったね、白貌ちゃん」
 「皮肉のつもりだとしたら落第点ですよ、トンプソン神父」
 これは失敬。
 言って、トンプソンと呼ばれた神父は口許を押さえる。
 もう老人と呼んでいい年頃だろうに、様々な意味合いで衰える気配がないことで有名なこの教会の主と少女が顔を合わせるのは初めてだったが、どうもこの手の人種は苦手だと改めて印象付けられる以外に新たな発見はなかった。
 手玉に取られるということが生粋嫌いなのだ。莫迦と主に折檻を食らったことも一度や二度ではない。しかし彼の要望に反逆するようでどうにも恐れ多いのだが――生まれ持った性というやつばかりは、改善するにも難儀する。
 
 「しかしね。実際君待ちも同然だったんだよ、白貌ちゃん。令呪を持つ者は既に六人揃っている。一昨日六人目が現れた」
 「つまり、開戦は今夜にでも……と?」
 「まさか。それでは土地勘のない君に余りにもアンフェアだろう。三日は事前準備の時間を与えるつもりだし、どうも三番目に此処へ駆け込んだ少年が乗り気ではないようでね。令呪が返上される可能性が高い」
 懸命だ――そう少女は思う。
 男の癖にだの何だのと阿呆らしい精神論を語るほど愚かしいこともないだろう。フィクションの世界とは訳が違う。鉄火場においては程度を弁えず蛮勇に走った者から死んでいき、またそういう者こそ一番殺し易いのが道理。
 覚悟がないならば、戦場に立つべきではない。力及ばず野垂れ死になどと、笑い話にもなりはせぬ。
 「というわけで、開戦までは猶予がある。それまでの内に拠点を拵えるなり地理を叩き込むなりするといいさ」
 「当然そのつもりです……尤も、然程込み入った仕掛けは無用となるのが見えています故、程々にさせて頂きますが」
 「ほう。――ああ、読めたぞ。君が狙っているのは“アレ”か」
 「はい」
 少女の顔に迷いはない。
 良い面構えだ。トンプソン神父は内心高評価を下す。
 これよりこの少女が身を投じる“とある戦争”に於いて、彼女の選び取らんとしている選択肢は紛うことなき最善手である。堅実に勝利を獲りたいならばコレ、といっても良い。
 話には聞いていたが期待以上か。これならば、成程願望器に認められるワケだ。
 
 「――――私は、セイバーのサーヴァントを召喚します」

306 :

 そもそも、聖杯戦争とはなんであるか。
 聖杯戦争――それは奇跡を叶える『聖杯』の力を追い求め、7人の魔術師が7人の英霊を召喚して競い合う争奪戦。
 
 マスターと呼ばれる七人の魔術師が、あらゆる願いを叶えるたった一つきりの聖杯を奪い合う殺し合い。
 何百年も前から伝わってきた聖杯の儀式。世界各地で行われる聖杯の争奪戦は全て聖杯戦争と呼ばれるが、冬木という地のソレを基軸とし行われる此度のソレは、他のものと決定的に異なる。
 何故、魔術師がマスターと呼ばれるのか。このマスターとは階級を表す呼称ではなく、単に"主"を意味する。つまりは、この聖杯戦争に参加するマスターと呼ばれる魔術師は、ある存在の主ということだ。
 その存在こそ、サーヴァントと呼ばれるモノ。
 サーヴァントとは、すなわち使い魔である。七人のマスターの数だけ存在する、異なった役割クラスの使い魔たち。
 使い魔とは、本来魔術師の代理で遣いをする程度の能力しか持たない。おとぎ話に登場するような魔女が飼う黒猫や鴉、本来の使い魔であればそのイメージが十分当てはまる。
 だが、万能の釜たる聖杯を奪い合う聖杯戦争において使役される使い魔が、ただの使い魔であるはずがない。
 サーヴァントは『かつて、あるいはこれから存在し得る英雄』である。
 歴史で語られる者。
 神話に謳われる者。
 実在、幻想を問わず、人々に語り継がれる偉業を為した人物を"英雄"と呼ぶ。
 そうした人々は人々の想念によって祭り上げられ、死後も英雄としてあり続けることになる。人間側の守護者たる、英霊と呼ばれる精霊に人の身から昇格するのだ。
 人間以上の存在、本来であれば魔術師はその力の一端を借り受ける程度のことしか出来はしない。
 しかし、聖杯戦争システムはそんな常識など易々と無視して、英霊を召喚し、マスターに仕える使い魔なんてものにしてしまった。それだけでも、この形式の戦争の景品とされる聖杯の出鱈目ぶりが魔術師には理解できるだろう。
 とは言え、流石の聖杯も七人の英霊をそっくりそのまま呼び出すことは出来なかったらしい。
 英霊が形になり易いよう、システム側が"器クラス"を用意した。それは顕現した英霊の仮初の名であり、在り方である。
 剣の騎士、セイバー。
 槍の騎士、ランサー。
 弓の騎士、アーチャー。
 騎乗兵、ライダー。
 魔術師、キャスター。
 暗殺者、アサシン。
 狂戦士、バーサーカー。
 
 基本的にこの七つのクラスのいずれかの在り方を持つ英霊が冬木の地に召喚され、聖杯戦争において己がマスターを守る盾となり、他のマスターを砕く剣となる使い魔、サーヴァントとなる。
 それこそが冬木の地にて行われる聖杯戦争。
 他の地ではありえない、人知を超えた英霊同士の最強の競い合いだ。
 そう――“本来は”。
 冬木の聖杯はイレギュラーだ。
 簡単には再現など出来ないし、その途方もなさは一度でも魔術について学んだ者ならばすぐに理解できようもの。
 故に誰もが羨み、畏れる。
 半端な気持ちでそこへ身を投じれば命を落とすが、万一にでも勝ち抜いた時に得られる恵みたるや真実桁違い。
 
 だが。
 東洋の島国、日本より遥かに離れた異国イタリアの田舎町に――かつてない完成度の聖杯が観測された。

307 :
 純度は大聖杯に負けずとも劣らず。
 未だ未知数な箇所が多いことを踏まえても、十二分にあらゆる願望を成就できるだけのエネルギーは備えている。
 万能の願望器、此処に出現……その所有権を求め、サーヴァントを従える権利を有した魔術師達が世界中から今この地へ集いつつあった。台湾の魔嬢と呼ばれた彼女・杏紅花(シン・ホンファ)もれっきとしたその一人だ。
 紅花の右手の甲には、三画の刺青が浮かび上がっている。これは聖痕(スティグマ)にも等しい徴。名を、令呪。
 
 聖杯からマスターに与えられる、自らのサーヴァントに対する3つの絶対命令権。
 英霊の座から英霊を招くにあたり、聖杯を求め現界するサーヴァントが、交換条件として背負わされるもの。
 その一画一画が膨大な魔力を秘めた魔術の結晶であり、マスターの魔術回路と接続されることで命令権として機能する。
 急拵えの仕事ではあったが冬木のシステムを模倣することで、当地の魔術協会は聖杯戦争を成り立たせんとしたのだった。
 サーヴァントにこれを用いた命令以外に従う義務はない。
 いわば暴れ馬を従えるための手綱なのだ。それだけに無駄に消費するなど言語道断。サーヴァントにも望みがあって戦いに参加している以上ある程度の共闘は自然と期待できるが、寝首を掻こうと思われたなら人間の力で対抗することはまず不可能だ。
 聖杯に選ばれた者達の殺し合い――バトル・ロワイアルにも似通った儀式。
 当然無血開城で幕を閉じる筈はなく。
 血と嘆き、断末魔の絶叫があることは確約されている。
 この少女も又、そういう可能性が例外なく己にも存在することを理解し反芻した上で、尚この役割を曲げることなど出来ぬと立ち上がり、覚悟を決めた上で聖杯戦争へ身を投じたのだ。

308 :


 「なるほど。流石というべきか……その様子では、触媒も既に?」
 「無論。聊か集めるのには難儀しましたが、確実に望み通りのカードを引けるでしょう」
 紅花にはとある後ろ盾が存在する。
 というのも、今回彼女が聖杯戦争を戦い抜くマスターとして抜擢されたのはそのバックアップ直々の推薦だ。
 魔術結社『四海幇(スー・ハイ・パン)』の白魔嬢――落ち目に瀕しているとはいえ、表向きのマフィアとしてはかなりの力を持つ集団が送り出した虎の子、それが彼女。
 高い戦闘能力と資質、有能な人材を根刮ぎ失ってきた彼らに残された最後の鬼札と言って差し支えなかった。失敗は出来ない。誰もがそう肝に銘じているからこそ、多少の無理は道理に変わっていったらしい。
 紅花とて、扱いに難のあるキャスターやバーサーカーのクラスを引いていたなら危うかった。
 だがセイバークラスとなれば、ほぼ確実に勝利は約束されたようなもの。セイバー、アーチャー、ランサー……俗に言う三騎士クラスの中でも頭ひとつ抜きん出た最優を僕として戦うことが出来るのだ。これで、どうして臆する理由が出てこよう。
 
 「監督役として背中の一つでも押してあげようと思っていたが、この分だと不要なようだ。全く恐ろしいね、亜州の白貌鬼と呼ばれただけのことはある。しかし疑問に思わずにはいられないな? そんな君なら、もっと行き場などあったろう」
 「…………」
 「何故態々黒社会組織などに与したんだい? ましてや四海幇。十年も前に事実上解散まで追いやられた敗残者共……とてもじゃないが正気とは思えないね。何なら代行者にでもなれるよう、私が口利きでも――」
 「――――黙れ」
 かちゃっ――そんな無機質な音とは裏腹に、杏紅花は殺意を剥いていた。
 グロック17の銃口が、魔物の眼球めいた威圧感を孕んで神父の眉間へ向けられる。
 ヴァリー・トンプソン神父は高名な魔術師だが、その所以は基本的に彼が有する知識の質量にある。魔術師としても決して落第点ではないにしろ、四海幇の魔嬢、亜州の白貌鬼と呼ばれる紅花と交戦すれば抹殺されるのは自明だ。
 専門分野の外へ出れば、どんな優秀な人材も容易く磨り潰されるのが現実。時には万能な人間も存在するだろうが、その総量が凡人、才人の数と比較して遥か遙かに少数なことは語るまでもない。
 
 「それ以上私を、お義父様を侮辱するというならば……明日の朝日を拝めると思わないことだ」
 「おお、怖い怖い……いえ、煽るつもりなどない。今のは確かに私に非があったね。謝罪しよう」
 この通りだ。
 両手を挙げ神父が述べると、渋々といった様子で拳銃は下ろされた。
 あのまま尚も軽口を叩いていたなら、まず間違いなく紅花は本気で殺しにかかっていただろう。
 これから始まる聖杯戦争の監督役を手に掛けるなど到底正気の沙汰ではないが、白貌鬼の異名がどういう意味かを少し想像すれば彼女が狂気に堕ちていることは言うまでもなく理解できる。紅花が彼を苦手と思ったように、彼もこの手の人種は苦手だった。
 狂言回しの天敵は獣。理性を度外視して行動してくる存在こそ、策士・軍師というチョキに対してのグーである。
 
 「……要件が済みましたので、これで失礼致します」
 とはいっても、紅花だってここで短気を起こすことのリスクが分からない阿呆ではない。
 最悪ペナルティを課されたとしても不思議はないし、そうなれば強烈な痛手となるのは確実だ。
 もう一度琴線を刺激される前に立ち去らせて貰う。実に賢明な判断だった。

309 :
 「聖杯が降臨した後にでもまた会おう、白貌ちゃん。その未来に、幸福のあらんことを」
 「似合わない真似はやめてください。気持ち悪いです」
 「手厳しいねえ」
 教会の扉が重々しい音を立て閉ざされる。
 これで聖堂の中にはヴァリー・トンプソンただ一人となった。やれやれ、とんだお嬢さんだ……困ったように漏らすと、神父はふっと蝋燭の火を吹き消した。――さて。憶測が正しければ、直に件の少年が令呪を返上に現れる頃の筈だ。
 神父とは人の心へ触れる仕事。懺悔を聞く時も、教えを説く時も。他者の心理に常に触れている彼らには、ある程度人間の動向を予測するスキルが自然と備わっていくものだ。楽な仕事ではないが、やり甲斐は確かにあるといえる。
 
 「でもね、『紅花ちゃん』。騎士が最後に必ず栄華へ辿り着くだなんてお伽話はいい加減卒業した方がいい。でなければ、その慢心はいずれ必ず君へ災厄を齎すよ。……と言っても、もう遅いのだけど。ああ、怖いねえ怖いねえ――」
 戦争の導火線は灯された。
 もう誰にも、戦火が燃え盛るのを止められない。
 聖杯はすぐそこに――七人の求道者達が、その生誕を待っている。



 これは、運命を外れた物語――――


.
 
【監督役:ヴァリー・トンプソン】

310 :
ステータスが更新されました▼
セイバー陣営
Saber/???  
Master/杏紅花(シン・ホンファ)
アーチャー陣営
Archer/??? 
Master/???
ランサー陣営
Lancer/???
Master/???
ライダー陣営
Rider/???
Master/???
キャスター陣営
Caster/???
Master/???
アサシン
Asassin/???
Master/???
バーサーカー
Berserker/???
Master/???

杏紅花
サーヴァント:セイバー
読み:シン・ホンファ
誕生日:2月14日/血液型:O型
身長:141cm/体重:35kg
イメージカラー:白
特技:射撃(銃、アーチェリー)、ラテアート
好きなもの:お義父様/苦手なもの:人参
天敵:???
台湾黒社会の魔術結社(マフィア)『四海幇』の組員にして、上位幹部の杏力宏(シン・リーホン)の養子。
敬愛する父と親愛なる組織へ聖杯を持ち帰る為、セイバーのサーヴァントを喚ぶための触媒を携え聖杯戦争に参ずる。
先天的に色素欠乏症を患った所謂アルビノで、可憐な容姿も相俟ってよくドールのようだと称される。
常に敬語で話し礼節を弁えた人間だが、己の信ずる義父と仲間を侮辱された時ばかりはその限りでない。曰く策士殺しの質であり、張り巡らされた罠を力ずくで突破し命を狙ってくる魔獣めいた側面を持つという。
異名は『台湾の魔嬢』『亜州の白貌鬼』。主な得物はグロック17だが、他に魔術礼装も一つ保有しているようだ。

311 :
以上で投下終了となります!
今回は本編暫定主人公の紅花ちゃんにとりあえず出演いただきましたー。
タイトルは『Act:0 Alea jacta est - 白魔嬢』となります

312 :
お二方投下乙です
自分も投下します
俺得7 23話 だけど踏み出さなきゃ何も見えない
登場:油谷眞人、サーシャ

313 :
23話 だけど踏み出さなきゃ何も見えない
油谷眞人は一度死んだ、
殺し合いゲームに巻き込まれ生き残る為にゲームに乗り、何人かその手に掛けてまでやっとの思いで生き延びていたが、
運営者の気まぐれによって行われたジャンケン対決で敗北し、首輪を爆破されて命を落とした。
しかし今、彼は復活し、別の殺し合いの参加者となっている。
支給されたメリケンサックを右手拳にはめ、懐中電灯で辺りを照らし、廃城の廊下を歩く。
「もうちょっと良い武器を探さないとな……」
眞人は今回の殺し合いにも積極的に乗る姿勢でいた。
その為には武装の強化が急務。
元々喧嘩が得意な眞人にとってメリケンサックはある意味適正の有る武器だったが、
流石にこれだけで殺し合いを生き抜けると思う程、眞人は自惚れてはいない。
ダンスホールだったらしい広い部屋に足を踏み入れる。
古びたグランドピアノが置かれている以外は特に何も無いように見えた。
ボロボロになったカーテンが風になびいている。
「ん……」
ホールの床に剣が転がっているのを発見する眞人。
恐らくどこかに飾ってあった物を誰かがここに持ってきて放り出したのだろう。
「無いよりマシか」
眞人はメリケンサックを外して上着のポケットにしまい、その剣を拾い上げる。
一応本物のようだが刀身は錆だらけの上刃こぼれも有り切れ味は期待出来そうにない。
しかし重量は有るので打撃武器としては使えそうだ。
当座の武器を確保した眞人は、ホールを後にして廃城内の探索に戻った。
眞人が去った後、ホールの隅、倒れた大きな棚の陰から、
青猫獣人の少女が恐る恐る顔を覗かせる。
「行った……?」
少女――サーシャはホールに入ってきた者が居なくなった事を確認するとほっと胸をなで下ろした。
もしかしたらクラスメイトだったのかもしれないが危険を冒してまでそれを確かめるのは怖かった。

314 :
彼女も眞人と同じく、一度殺し合いに巻き込まれ命を落とした身である。
眞人の物とは違う、彼女が属する高校のクラスメイト同士での殺し合い。
一度壮絶な死を遂げ、元々余り強いとは言えなかったサーシャの精神は確実に弱まっていた。
(もうあんな思いは嫌……死にたくない……。
下手に動かないようにしよう……ラトや、ノーチラス、シルビーも居るみたいだけど……)
クラスメイトの事は気がかりではあるが、命あっての物種である。
サーシャは、少なくとも明るくなるまでは廃城に隠れている事を選択する。

【深夜/E-5廃城】
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:生き残る為に殺し合いに乗る。
        1:しばらく古城内を探索する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※サーシャの存在には気付いていません。
【サーシャ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:死にたくない。
        1:明るくなるまでは動かない。
        2:クラスメイトの事は気になるが今は保留する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※油谷眞人の容姿は把握していません。

《支給品紹介》
【メリケンサック@現実】
拳にはめて打撃力を強化する為の金属製の武器。「ナックルダスター」が正式名らしい。

315 :
投下終了です

316 :
投下します 俺得7 24話 必要悪
登場:シルヴィア、虐待おじさん、ガルルモン

317 :
24話 必要悪
森の中の開けた場所、そこで虐待おじさんこと葛城蓮と、
白髪の猫耳少女シルヴィアは情報交換を行っていた。
「つまり私は一度死んでいるんだ。別の殺し合いでな」
「すると、殺し合いをするのも二回目なのか」
「ああ」
自分が以前にも殺し合いに巻き込まれ、そこで一度死んだ筈である事を蓮に話すシルヴィア。
殺し合いに乗っていた事も包み隠さず話した。
「うーん……」
にわかには信じ難い話である。
しかしシルヴィアが嘘を吐いているようには蓮には見えない。
そもそも、修学旅行のバスから経路不明の拉致をされ、先程は見た事も無い喋る大きな獣と遭遇したりと、
既に常識の範囲には収まらない事象が多々発生しているのだから、
今更シルヴィアの話の内容のみを疑うのもおかしいであろう。
シルヴィアもまた、本物の猫耳と尻尾を持った、人間外の姿をしているのだ。
「信じられない? いや無理も無いよな」
「いや、信じるよ。もう色んな事が起きちまってるしな。お前の話だけ疑うのも変だ」
「そうか……だけど、さっき言ったように前の殺し合いには私は乗っていた。
そんな奴を本当に信じて、くれるのか?」
殺し合いに乗っていた経験の有る自分の事を蓮は本当に信じてくれるのか。
シルヴィアの問いに蓮は答える。
「殺し合いに乗っていたとしても、今のお前はもうその気は無いんだろ?
乗っているんだったら、さっきお前を助けた時、逃げるか俺を襲うかしていた筈だ。
もう一度言う。信じるよ」
「……ありがとう」
「俺はこの殺し合いを潰す。その為にクラスメイトや、俺達と同じようにゲームに乗ってない奴らを集めて、
運営の連中に反抗する。協力してくれシルヴィア」
自分の考えを示しシルヴィアに協力を仰ぐ蓮。
それは彼がシルヴィアを信用している事を示していた。
「ああ。良いよ。その考えに乗る。私もサーシャを捜したいしね」
そして蓮からの申し出をシルヴィアは快諾した。
「宜しくな。シルヴィア……さて、と、これからまずどうするか」
「夜だし視界が悪いからな……月明かりが有るとは言え……森の中だから尚更……」
「あ、あのー」
「「!」」
突然聞こえた男の声に、蓮とシルヴィアは身構える。

318 :
「誰だ!」
「待ってくれ! オレは殺し合いには乗っていない、今からそっちに行く!」
蓮とシルヴィアが注視する中、声の主が茂みから出てくる。
それは縞模様を持った巨躯の白狼だった。
今度は喋る狼かと蓮は思う。
「お前、名前は?」
「オレ、ガルルモン……」
「いつからそこに居たんだ? 私と蓮の話をずっと聞いてたのか?」
「あ、ああ。オレ、ここの開けた場所で休んでたんだ。そしたら、声が聞こえてきたから隠れて、
それでアンタらがやって来て……」
「つまり俺達の話ずっと聞いてたのか?」
「ああ! 聞いてた。な、なあ! 殺し合いに乗ってないんだろ?
頼むよ! オレも仲間に入れてくれ!」
懇願するガルルモン。
逞しい外見に似合わず小心者の彼は、殺し合いに反抗しようとする蓮とシルヴィアの話を聞き、
彼らの仲間になれば自分の生存率が上がると考えた。
尤も、正直にそうは言えないので話を聞いて共感したように装ったが、
彼の頼り無さそうな雰囲気は否が応も無しに蓮とシルヴィアは感じ取っていた。
「どうする? 蓮」
「……」
「オナシャス! 何でもしますから!」
頭を下げて必死に頼み込むガルルモン。
「ん? 今何でもするって言ったよね? じゃあ、お前の支給品ちょっと見してみろよ」
「え? あ、うん」
ガルルモンは蓮に言われるがまま、自分の支給品を見せた。
それは.45口径の自動拳銃、デトニクス スコアマスターであった。
予備の弾倉も三個付属して支給されたようだ。
「良い武器持ってんじゃねぇか。よし、お前、これ、俺らにくれよ」
「え?」
突然の要求にガルルモンは思わず抗議の色を滲ませた返事をする。
それを聞いた蓮は語気を強めて威圧し始めた。

319 :
「何でもするって言ったよなぁ? 何でもするって言ったのに早速しないっておかしいだろそれよぉ!」
「い、言ったけど……」
「どうせアンタの四足じゃ銃なんて使えないでしょ。大人しく寄越しなよ」
蓮に便乗してシルヴィアもガルルモンに攻勢を掛けた。
「うう……」
二人の勢いに押されるまま、ガルルモンはスコアマスターと弾倉三個を蓮に渡した。
「シルヴィア、お前これ使うか?」
「良いの? じゃあ……」
「よし分かった……おい、ガルルモンだったな?
仲間にしてやるけど、俺やシルヴィアの言う事ちゃんと聞けよ? さっき自分で何でもするって言ったんだしな」
「む、無茶な事はさせないでくれよ?」
「おう、考えといてやるよ(させないとは言っていない)」
「……」
早くもガルルモンはこの二人に接触した事を後悔し始めていた。
一方の蓮とシルヴィアは良い具合の使い走りが出来たと喜んだ。

【深夜/E-1森】
【シルヴィア@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]デトニクス スコアマスター(7/7)@現実
[所持品]基本支給品一式、スコアマスターの弾倉(3)、自転車のチェーン@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター
[思考・行動]基本:蓮(虐待おじさん)と協力して殺し合いを潰す。殺し合いに乗っていない者を集める。
        1:蓮(虐待おじさん)、ガルルモンと行動。
        2:サーシャを捜したい。他のクラスメイトは遭遇次第対応を考える。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※葛城連(虐待おじさん)のクラスメイトの情報を当人から得ました。

320 :
【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、手榴弾(2)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:クラスメイト(特にひで、KBTITこと拓也)や殺し合いに乗っていない参加者を集め、殺し合いを潰す。
        1:シルヴィア、ガルルモンと行動。
        2:襲い掛かってくる者には相応の対処をする。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※元動画準拠なので、本名は「葛城蓮」、平野源五郎とは面識が無い設定です。
    ※シルヴィアのクラスメイトの情報を当人から得ました。
    ※シルヴィアが一度死んだ事、殺し合いが二回目である事、以前の殺し合いに乗っていた事を知りました。
【ガルルモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:死にたくない。生き残りたい。
        1:生存率を上げる為に二人(虐待おじさん、シルヴィア)についていく。
        2:でも早速心折れそう。
[備考]※アニメのガルルモンとは別人です。性別は♂、性格は小心者です。

《支給品紹介》
【デトニクス スコアマスター@現実】
アメリカのデトニクス社が製造販売していた自動拳銃。M1911クローンの一つ。
競技用拳銃として設計されている。.45ACP弾使用モデル。
余談だが映画「コマンドー」にてベネットが使っていた拳銃はこれ。

321 :
投下終了です。これで全員登場させた。
さあ次からは黎明だ……。

322 :
投下お疲れ様です、執筆ペースが早くて羨ましい……!
自作ロワはパロロワ知ってちょっとした頃に読んだので懐かしいなあ。
Fate/AF、投下します。
今回は連投規制に引っかかるかもしれないので、途中避難所を利用することになるかもしれません

323 :
 
 トゥルビネ。
 日本語で、つむじ風。
 祖国を発ってから一日と半分くらいが経過した頃、ようやっと私は目的地の田舎町へ辿り着くことができた。
 いくら外国だからってまさか路面バスのシステムがまったく日本と違うなんてことはないだろう――そう高を括ったのが見事に仇となり、日本のものとは微妙に違うシステム、マナーなどに翻弄されすっかり疲れきってしまった。
 整理券とお金を支払って這々の体でバスから降りる。思わず深い溜息が溢れだした。
 
 「あはは……ほんっっっとーに疲れた…………」
 笑う門には福来ると言うから精一杯笑顔を取り繕うも、案の定渇いた笑いにしかならない。どだい生まれ育った県外にもまともに出たことのないような世間知らずが、ガイドも付けずに海外渡航する時点で相当に無茶苦茶なプランだったのだ。
 思い出すとあまりの己の馬鹿さ加減に真剣に死にたくなってくるので、自虐はこの辺りにしよう。……くすっ。気付けば今度は本当に自然に笑っていた。遂に辿り着いたんだ。事の発端は、戯れにぺらぺらと捲っていた旅行誌の中にあった小さな町の紹介記事。
 
 ――、一目で。ここしかない、と感じた。
 
 少女漫画じゃないけれど、一目惚れという心理現象にひどく近しい惹かれ方だったと思う。細かしい説明なんてどうでもよくって、ページの隅っこに慎ましく貼り付けられた町並みの写真や自然の絵図の、その全てが魅惑的で蠱惑的で仕方なかった。
 思い立ったが吉日、それ以外は全て凶日――どこかで聞いた文句を思い出して、私はすぐに準備を整えた。いつも鈍臭くて失敗ばかりの私なのに、あの時はすごく手際よく準備できたなあ。恋する乙女は、やっぱり盲目だ。
 恋とはちょっと違うし、同じにするなんて失礼だと思うけれど。
 すうううっ――鼻孔いっぱいにイタリアの空気を吸い込んで、意気揚々と歩き出す。使い古したスニーカーのボロボロ加減も今はどうしてか絵になると感じてしまう。この時の私は、兎に角冷静ではなかったから。
 
 私の名前は、相沢彩月(あいざわ・さつき)。
 歳は19歳で、今年大学に進学したばっかりだ。
 一応日本人なら誰もが聞き覚えのあるだろう名門校なんだけど、あいにく私の脳味噌では高度な授業にはあまりついていけてないのが実情だったりする。でも自由度は学生の頃とやっぱり段違いに高いと、私は日々痛感させられ続けた。
 こうやって一人旅に出るなんてことも、高校生じゃあいろんなルールが邪魔をして出来なかったろう。
 そんなだから、なんだか複雑でもある。大人になるって悲しいことだね。あはは――
 とまあ、自己紹介はこの辺にして。
 歩き始めて程なくすると、向こう側に建物がいっぱい見えてきた。
 どうやら住宅街に差し掛かったらしい。外で世間話をしている主婦らしき人達や散歩中の老人、犬の散歩をする子供……こういうところは万国共通なんだなあと、少し感心させられる。
 感心ついでに勇気を出して話しかけてみよう。
 幸いにも、イタリア語は高校の選択科目で履修していた。言っても学校で習うのなんて初歩の初歩レベルで、各地の微妙な訛りやスラングまでカバーできているとはとても言い難いんだけど……大丈夫。このくらいなら、きっと通じるはずだ。
 「すみません、少しお時間よろしいでしょうか」
 「――ン? 何だい嬢ちゃん。日本人か?」
 「え……はい、そうですが……」
 試しに話しかけた金髪の男の人に、予期せず聞き返されて少しだけ狼狽える。ライダースーツを着た、なんだか今時って感じの人だ。言っても私よりは歳上だろう。背丈はともかく、雰囲気がどこか大人っぽい。
 でも何より驚いたのは、こっちはイタリア語で話しかけたのにあっちは日本語で返してきたことだった。しかも結構流暢だ。いや勿論そっちの方が有難いといえば有難いのだけれど。
 「へえ、やっぱりそうか! いやああんたの国には日頃からお世話になってるよ、このバイクだってそっちの車会社から友達のコネで安く買ったもんなんだけどもう最高でさあ……!! やっぱスピンが違うぜ、スピンが!!」
 「は、はあ……」
 

324 :
 困った。
 外人はノリがいい生き物だなんて分かってるけども、いざ実際目の当たりにするとこうも対応に困らされるものなのか。
 メイド・イン・ジャパンのブランドが海外でものすごい意味を持っているとはよく聞く。所詮某巨大掲示板の都市伝説みたいものだと思ってたのに、全く予想だにしないところで伝説が本物であることを知ってしまった。
 そんなこっちの心境など露知らない様子でマシンガントークを続ける男の人。その勢いに気圧されつつも、おずおずと口を開く。私は免許持ってないしバイクの薀蓄を語られても半分だって理解できないから、本人だってなんか可愛そうだ。
 いや一番かわいそうなのはどう考えたって私だけども。百人に聞いたら百人がスタンディングオペレーションしながら答えるくらい私だけど。そんなことを訴えても仕方ないので、兎にも角にも当初の要件を伝えてしまうことにする。
 「あ、あの。実は私、このトゥルビネに旅行に来たんです」
 「それでこの前なんかライバルのケビンと――って、んん? 旅行……そりゃ物好きだなあ嬢ちゃん。あんたみたいな若い娘が楽しめる洒落たものなんて此処にはないぜ。俺もダチの手伝いでアメリカから飛んで来たんだけどまあつまんねーの。
  イカしたディスコもなけりゃゲーセンもウン十年前の絶滅危惧種みてえなシューティングしかねえ。真新しいもんったら、最近新調された図書館くらいだろ。まあスマホでパパっと調べた方が早いけどなあ」
 「そうではなくて。……景色を」
 景色?
 鸚鵡返しに疑問符を浮かべる彼に、私はこくり頷く。
 
 「この町で一番綺麗な景色が見られる場所。知りませんか」
 

 ……星を見るのが好きな子供だった。
 いつからそうだったかはよく覚えていない。
 でも、お父さんは昔お母さんとプラネタリウムを見に行ったからだって聞いている。
 私のお母さんはとっくの昔に亡くなった。私が小学校にあがるよりも前に身体を壊して、病院で精密検査を受けた時にはもう手遅
れだったらしい。“らしい”というのも、私はお母さんについて殆ど覚えていることがなかったりするのだ。
 嫌いだったわけじゃない。むしろ、多分私はお母さんっ子だったんだろうなと思ってさえいる。きっと甘えん坊で、いつも困らせてばっかりだったに違いない。
 私がお母さんについて覚えている記憶は一つだけ。
 ……とっても寂しいことだけど。たったひとつだ。
“ 彩月。あなたが大きくなったら、きっといつか。自分の命よりも大切な人と出会う日が来るわ。だから、その時――後悔しない行動を取るのよ。お母さんみたいに、ならないようにね…… ”
 ――そう、無味乾燥とした病室の中で一言伝えられた思い出。ただそれだけが私にとってのお母さんの姿であって、後は話で聞くことしか出来ない、なんだかとっても遠い存在になってしまっている。
 
 お父さんからプラネタリウムの話を聞いたその日から、私はますます天体観測に勤しむようになっていった。夜に出かけることはできなかったから、お父さんが寝静まったのを確認して自分の部屋の窓から空を見上げる。
 天体望遠鏡はお小遣いを貯めて自分で買った。目玉が飛び出そうな値段だったから、リサイクルショップに頼ったのは秘密だ。
 毎日、毎日毎日――星が見える日は、どんなに忙しくても空を見た。
 いつしか星座には誰よりも詳しくなっていた。理科の授業でも、天体の分野になると人が変わったように高い成績を取ることが出来た。みんなから褒められて、勉強熱心な子だと言われて。けど、そんなのちっとも嬉しくなんてなかった。
 嬉しいとか、嬉しくないとかじゃない。そんなの眼中になかった。私は、自分が好きだから空を見ていただけなんだから。
 
 ――――本当に? ううん、それだけじゃないはずだ。
 人は死んだら、お星様になるんだよ。
 そんなお伽話を耳にして、私は胸を踊らせた。
 あの星の中に、お母さんがいる。話したことすら碌に覚えていないお母さんが、今も見守ってくれている。一目でいいから見てみたい。微笑んでほしい。……今思えば、なんともバカバカしい話だけど。当時の私は、夢しか見ていなかった。
 海外旅行なんて出来るほどうちは裕福じゃなくて。でも、ずっと小さな頃から、海の向こうの国から見上げる星空はどんなものなんだろうと思っていて。何年越しか分からないけど、とにかく此処に、ようやく私の夢のひとつが叶うというわけだった。
 もちろん星を見るためだけじゃなく、もっと大事な理由もあるのだけれど。
 とりあえず今は、夢を叶えたい。後のことはそれから考えていけばいいだろう。

325 :
 「そっか! それなら、裏山の展望台に登ればいいと思うぜ?」
 
 私の質問に、彼はにかっと笑ってそう答えた。
 トゥルビネは山に隣接した地域で、そこは裏山と呼ばれているようだ。指差された方向を目を凝らして見ると、確かに一部整備された空間が存在するのが確認できる。……あそこなら、町も一望できるし星も綺麗に見えそうだ。
 ぱあっと表情が明るくなるのを感じる。「喜んでくれたみたいで何よりだぜ」と屈託のない笑顔で笑われて、とたんに気恥ずかしくなって顔を背けた。顔が真っ赤になっているのが自分でもわかったから、ぺこりと頭を下げてたたたた、と小走りになる。
 ちょっとどころじゃなく失礼なことは承知の上。だが羞恥心には勝てなかったよ……。
 
 「あっ、最後に一つだけ聞いてもいいかな!」
 背後から、彼の呼び止める声がかけられて私は振り返らないまま足を止める。
 なんですか――返すと、彼はこう聞いた。
 「その腕……怪我でもしてるのか? 俺はこう見えても医者でな、なんなら薬を処方してもいいんだが……」
 腕。
 怪我。
 私は反射的に自分の右手に視線を落とす。そこには包帯が巻きつけられている。自分で巻いたものだ。特に怪我をしたわけではなかったが、少し気味の悪いモノが出てしまったから……こうして隠すことにしていた。
 事のあらましは一週間ほど前になる。旅行の計画を立てながら、いつも通り惰性で講義を聞き流している時。突然、右手に鋭い熱を感じた。焼けるような熱さに只事ならぬものを感じた私は席を立ち、洗面所で手を冷やすことにしたのだが――。
 すると、どうだ。十分が経過した頃には、プロが入れた刺青のように見事な形をした“痣”が浮かび上がってきたではないか。洗っても、薬を塗っても治る気配はない。それどころか、痛みや痒みさえ訴えることがなくなった。
 皮膚癌の類かとも思ったけど、癌でこんな模様が浮き出るだなんて聞いたことがない。言い知れぬ奇妙なものを感じた私は半ば逃げるような勢いで包帯を巻き、取り急ぎ痣が消えるまで手を隠すことで緊急の処置としたわけである。
 しかし――どうしたものだろう。
 診てくれるというなら甘えてもいいかもしれないが、如何せんこの包帯の下を人に見せるのは抵抗があった。気持ち悪いと罵られたらどうしよう。そんな想像が湧いてくる。……臆病な私は、それ以上考える前に声をあげていた。
 「大丈夫です。ちょっと火傷をしただけですから、心配しないでください」
 そうか。
 彼はそれで納得したのか、私に何か言ってくることはなかった。ただの親切心にも素直になれず疑ってしまう自分の浅ましさに鬱屈とした自己嫌悪の情を催しつつ、私は逃げるようにその場を後にした。
 

 取り急ぎ、簡単な食事と飲み物でも確保しておこう。今晩泊まる宿もだ。
 いくらなんでも手持ち無沙汰で海を渡るほど馬鹿ではない。贅沢をすればいざ知らず、普通に一日二日お腹を膨れさせるくらいなら使ったところで全然痛くないくらいの額を準備してきている。小さい頃からこつこつお年玉を貯金していたのが幸いした。
 野菜を見ても日本ではまず見かけないものばかりで、なんだか新鮮だった。とはいえ流石に片っ端から買って行く真似はしなかったが。せっかくの旅行なのに自炊するというのもなんだか味気ないし、折角だから出来上がっているものを食べ歩きしようか。
 消沈気味だった気分を立て直すためにも努めて明るく振る舞い、手始めに砂糖漬けにしたフルーツを買ってみる。……甘い! 和菓子ともまた違った砂糖と果汁の甘みが絶え間なく押し寄せてくる。でもくどくなく、後味はあっさりとしていた。
 満喫とまではいかずとも束の間の非日常的体験を楽しみながら、私は日が暮れるまでの時間を潰していく。その片手間にお世話になる宿を探すつもりだったが、そちらについてはフルーツを買った直後に手頃な場所を見繕うことができた。
 少しばかり予算オーバーとなってしまうのはこの際致し方なしだ。
 背中のリュックサックはもうすっかりぱんぱんになっていた。折りたたみ式の天体望遠鏡が持ち物を圧迫するのは勿論、使いもしないのに記念記念と買い込んだアクセサリーや雑貨が所狭しと犇めいている。
 

326 :
 「……ふう」
 そうこうしている内に、いつしか空はオレンジを通り越し薄紫色へ趣を変えていた。トゥルビネの商店街に夜も活動する屋台などはないらしく、続々と店のシャッターが降りて行き、あれほど活気付いていたのが嘘のように町は閑散としていった。
 聞き慣れない鳥の声が哀愁を誘う。子供の頃、友達と遊んでいてこのくらいの時間になるとお別れしなくちゃならないから、得も言われぬ寂しさを感じていたのを思い出す。あの頃は、毎日が楽しかったなあ。
 学校に行って、友達と遊んで、帰ってきたら宿題もせずに遊びに飛び出す。寂しさを胸にお父さんの待つ家へ戻るとほかほかのご飯が用意されてて……それを食べていっぱいお話して、星を見てからぐっすり眠って、また明日――
 
 「…………、……」
 いつからだろうか。
 いつから――そんな当たり前が、当たり前でなくなってしまったんだろうか。
 徐ろに足を止める。底抜けにノスタルジックな心境が、心臓の脈動と同時に身体中へ流出していく。全身が石化していくようだった。寂しい。寂しい寂しい寂しい寂しい――ぎゅっ、と。弱気を押しRように拳を握り締めて私は石化を解いた。
 もう私は子供じゃない。19にもなって未だにこんな弱さを露呈している方がおかしいのだ。
 
 「こんなことなら、なりたくなんてなかったなあ…………」
 
 大人になんか、なりたくなかった。
 昔はあれほど強く、早く大人になりたいと願っていたのに、今ではこんなにも子供へ戻りたいと願っている。でもそれは決して叶わない望みだ。時の流れはいつだって一方通行で、逆流することだけは絶対に出来ない非情なもの。
 誰もいない街路に立ち尽くす。ふと気が付くと、視線は包帯へ向いていた。この下には、あの朱い文様がまだ残っているんだろうか。――、ふと。なんだか無性に、あれほど不気味だと見ないようにしていた“それ”が見たくなった。
 ゆっくりと手が包帯の結び目をほどいていく。はらはらと帯が解け、同時に顕になっていく肌。どくどくと胸が高鳴る。何故かは分からない。でも今、自分は言い知れない興奮状態にあるのだと辛うじて脳が理解していた。
 朱が、見える。
 薄れてなんかいない、それどころかいっそう濃くなっているようですらある。その全貌を見ようと、更に包帯を解き放たんと生唾を呑み込んだ――その時。私は息の根が止まるほどの衝撃と共に手を止めることを余儀なくされた。
 「……なんだろう。カツアゲ……かな」
 近くの路地裏から、何やら言い争っているような声が聞こえる。さっきまで聞こえなかったところから察するに、最初は彼らなりに紳士的な物言いと態度で金品を巻き上げようとしていたんだろう。
 ……でもなかなか出さないから業を煮やして恫喝に出た、というところか。あの手の人種はどこにでもいるなあ、と呆れに似た感情を抱きながら、我に返ったように包帯を腕へ巻き直していく。
 ああいう輩のことは好きではない。むしろ嫌悪すらしているのが正直なところだ。関わり合いになって折角の一人旅を台無しにされたら敵わないと、自分に言い聞かせながら私は宿へ戻ろうと一歩を踏み出し――
 「――――、……?」
 足が止まった。
 その理由は聞こえる喧騒に交じる声の種類に、一つ明らかに浮いたものが混じっていたからに他ならない。子供の声だ。年端もいかない女の子――悲鳴ではなかったと思うけど、まさかそんな齢の女の子が破落戸と一緒に行動しているとも思えない。
 間違いない。女の子相手に良からぬ連中がちょっかいを出し、思い通りに運ばなかったか反抗されたことで逆上し今まさに口論へ発展しているのだ。……流石に、いけない。私は脳に火花が散るような感覚を覚えるや否や、喧騒の方角へ歩き出した。
 女の子を傷つける男なんて、最低だ。女の身分からそう言うとなんだか傲慢に聞こえるけれど、私は昔からどうしてもそういうことが許せない、許容できない質らしい。それで泣きを見たことも確かにある。でも、後悔したことは一度だってなかった。

327 :
 だから、いつも自信を持つことの出来ない私はこの時、珍しく抜群の自信を胸に動いていた。路地へ入っていき、そのまま薄暗く狭い建物の隙間を縫うように歩む、歩む。やがて、私は騒ぎの中心点へと遂に辿り着き――瞠目させられた。
 「えっ――」
 三人の男が、倒れていた。
 昏倒しているだけのようだが、見事なまでにのされてしまっている。そんな彼らの中央で、一人立っているのは女の子だった。お人形さんみたいな肌と髪の……アルビノっていうんだろうか。とにかく真っ白で、綺麗な娘だ。
 手には何も持っていない。護身用のスタンガンか何かで制圧したというならまだ分かるけど、彼女はどうやら己の肉体一つで大の男三人を鎮圧してのけたらしかった。予想だにしない光景に目をぱちくりさせていると、……女の子が、こっちへ気付く。
 しまった。彼女の表情が、そんな色合いに染まる。その反応はなんだか落ち着いた雰囲気とアンバランスでかわいい。けれどほっこりしている暇はないようで、暫く固まっていた女の子が私に向かって努めて落ち着いた様子で話しかけてくる。
 「あの……もしかして、ご心配をお掛けしてしまいましたか」
 「え!? あ、それは、うん……危ない目に遭ってないかなって思って駆けつけたんだけど、要らなかったみたいだね」
 「……ごめんなさい。完全に私の不手際です」
 「う、ううん。私が好きでやったことなんだから……ほら、頭上げて」
 申し訳無さそうに頭を下げる女の子に、私は慌てて頭を上げてと訴える。……その雰囲気通り、かなり“できた子”みたいだった。ちょっと礼儀正しすぎる気もしたけど、この子はきっと貴族か何かなんだろう。
 それなら護身術として素人程度簡単にいなせる武術を会得していたっておかしくはないし。そうして私が無理矢理自分を納得させていると、女の子は――黙って、私の右手を見つめていた。
 「……えと」
 「少し、よろしいですか。大丈夫、時間は取らせません」
 きゅっと、私の右手を小さな両手でやさしく掴んで。彼女は、私の目を見つめて言う。
 不思議な眼だった。色素欠乏が齎した真っ赤な瞳をじっと見つめていると、何故か心が空っぽになっていくような錯覚を覚える。陳腐な表現だが、吸い込まれるような深さとはこういうものを言うのだろう。
 目を反らせず、身体もびくともしない中。包帯が、剥がされていく。素肌が外気に触れる奇妙な感覚。そして程なく、あの血のように紅い文様が曝け出された。彼女は静かにそれを指でなぞり、じっと見つめて観察する。
 いつの間にか身体は動くようになっていた。この子が私の目から視線を外した瞬間、身体を覆っていた奇妙な感覚が一瞬で消えてなくなったのだ。……ひょっとすると、暗示――催眠術のようなものを、施されていたのかもしれない。
 「やっぱり――貴女」
 「もしかして……だけど。“これ”、なんだか分かるの?」
 
 恐る恐る問うと、彼女は「はい」と強く一度頷いて。
 そして、その懐から黒光りする金属の何かを抜き放った。
 すごく手慣れた手付きでくるりと一度弄ばれ、がちゃりと奇怪な音を立て私の頭へと向けられる。―――見覚えは勿論あった。いや、真っ当な人生を送っている者ならば、こういう形の武具が存在することを知らないワケがない。
 拳銃だ。
 彼女は、それをすごく自然な動作で私へ向ける。
 そのまま、細くてしなやかな、絹みたい色の指が引き金へかけられて。
 ――――銃声。

328 :

 鼓膜を引き裂く、ひどく暴力的な音響が黄昏時の影路地を擘いた。
 何処か他人事のような心境でそれを聞きながら、相沢彩月はぼんやり思う。
 
 ――ああ、これは死んだ。人並みに平穏な人生を送ってきたと自覚している彼女にとってこういう想いを懐くのは初めての経験だったが、いざ実際回避不可能な“死”に曝されてみると存外心は騒がない。
 
 無気味なまでの静けさが、彩月の心を満たしていた。。朝方の微風さながらに落ち着いていて淀みなく、何者にも妨げられずひたすらゆっくりと。でも決して止まることもなく迫ってくる。
 
 銃弾という凶器を身体に通された者が綺麗にRるのは映画の中だけだ。実際に鉛の塊を頭蓋に受けた日には頭部が醜く歪んで砕けて、まず間違いなくまともな死に様なんて晒せない。
 
 そういえば、インターネットのウイルスか何かでショットガン自殺に失敗した男性の画像を見たことがあったっけ。綺麗な死に方が出来ないのも嫌だけど、あんな風になるのも嫌だなあ――状況を鑑みると能天気にも程がある不満を胸に抱えたまま。
 
 彩月は、赤い飛沫が舞うのを見た。
 

 「――――えっ?」
 
 ……しかし、吹き飛んだのは彩月の頭ではない。
 弾は彼女の視界のすぐ真横を通り過ぎ、少し後ろで炸裂して飛沫を散らした。
 
 ぴしゃりと後頭部に血潮がかかる。気持ちの悪い感覚を、しかし彩月は気にしている暇がなかった。少女が大きく踏み込むと、彩月の手を強引に引っ張って自分の背後へ隠すように移動させたからだ。
 
 状況を理解する前に再度の銃声が鳴り、また心地悪い水音と空になった薬莢が地へ転がる音が引き続く。でも今度はそれにくわえてもうひとつ、追うように続く音響が存在した。
 
 ぐしゃり――なにか濡れた物が地面に落ちる音。
 
 音の正体がいったい何であるかまで、彩月はしかとその二つの眼で視認していた。
 
 それとほぼ同時に彼女は薄ぼんやりとしたままの、けれど奇妙に覚醒した思考で悟る。自分はきっと、もう逃げられないのだと。あの時、路地に入ってはならなかった。この黄昏は即ち、私の人生(ジャンル)を決定付ける分岐点であったのだ――――

 「ひ……!」
 
 「悲惨な光景ですが、目を瞑らないで下さい。しっかり見ていて。……私も、貴女のような素人を庇いながら戦った経験はありません。善処はしますが、いざとなれば貴女だけでも走って逃げて貰うことになります」
 
 
 それに、こんなもので終わりじゃあありません。
 
 少女がそう言うと、つい先程銃殺された筈の“そいつ”が数を成して現れる。
 
 ――“そいつ”を一言で言い表すなら、狗だった。
 
 ドーベルマン、という犬種がある。大型の体躯と強い力で番犬としても重宝されるそれと、今自分達へ確かな悪意をもって襲い来る存在は同一の形を有していた。黒い体毛に四足歩行、頭もどう見たって狗のものである。
 
 ただ一ヶ所、眼だけが異質だ。腐乱死体を連想させる黄色い瞳がぶくぶくと粟立ち、腐敗した膿を血涙の如く垂れ流している。
そんなモノが、都合六匹。先のを合わせれば七匹だ。どう見たって普通の沙汰ではない。
 慣れた手付きでグロック拳銃を使いこなす年下の少女もまた然り。
 
 映画の中でしか見なかったようなセンセーショナルが、今目の前で現実に繰り広げられている。それは、彩月の心へ激しい恐怖をもたらした。
 

329 :
 「ティンダロスの猟犬か――惨い真似をする。英霊の召喚に先んじ厄介者を処分しようという魂胆らしいが、浅ましいな」
 
 唾棄するようにそう吐いて、少女は顎を外れんばかりに開き向かってくる捕食者の咽頭へ極めて冷静に鉛弾を叩き込んだ。しかしそれだけでは襲撃者は絶命しない。舌打ちをすると、もう一度。
 今度は上顎から頭蓋にかけてを貫通させるように銃撃する――そこまでこなして漸く、一匹を絶命させることが出来た。
あれらは痛覚を持っていない。並々ならない耐久力もそうだが、痛みの感覚を放棄した気狂いもまた厄介なものだ。
 
 生物とは学ぶ生き物。痛みを味わい、学習し、それを避けるように動くもの。にも関わらずこの狗にはそういう概念自体からして欠落している。従って肉体の崩壊は免れないが、それを度外視した突撃を行う分にはこれ以上の逸材はないだろう。
 
 「ね、ねえ君っ!」
 
 「説明は後です。逃げるのももう少し待ってください。大丈夫、直に片付きます」
 
 
 二匹が同時に飛び掛かってくるが、下顎にカウンターのアッパーカットを打ち込み脳震盪を引き起こさせ、そのまま盾にして死亡させる。
死体は目眩ましに擲ち、動きをほんの一瞬なれど阻害された狗の眉間をグロックが穿った。
 膿んだ眼の猟犬達は実に現実離れした存在であるが、それらを単騎で拮抗どころか完全に圧倒してのける彼女の技はそれ以上に逸脱している。
 
 相手は人外の法理で肉体改造された獣のなれの果て、謂わば魔獣。
 
 対する少女は魔術的効果に自身の補助を求めることもなく、人間の編み出した科学の産物である拳銃一丁でそんな化物どもを制圧している。歯牙にもかけずに、ただ鏖殺していくのだ。
 
 武道家の舞いにも似た美しい流れ作業で狗達は次々肉片へと変わり、あれだけ絶望的に見えた六匹の猟犬達で最早原型を留めている個体は一つたりともありはしなかった。
 ふっ、と銃口から昇る硝煙を吹く少女。弾を補充し、再びグロックを懐へと仕舞い込む。
 
 それから彩月の手を強く握って、先導するように走りだした。
 「ちょ、ちょっと……さっきから、何が起きてるの……ッ!?」
 「……貴女、本当に何も知らないんですね。慌て方が演技のそれじゃない」
 「当たり前でしょ! 私はただ、この町に旅行に来てるだけで――!」
 「…………旅行」
 彩月が語った言葉を、少女はかぶりを振って否定した。
 「いえ、それは有り得ません。貴女は自分の手に顕れたその刻印がどんなに大きな意味合いを持つか、理解していないんです」
 「確かに、ちょっと偶然じゃ考えられないような形だとは思うけど……じゃあこれって何なの!? 私――私、これからどうなっちゃうの!?」
 「落ち着いて! ……これから、貴女を教会へ連れて行きます。あそこには薄汚い連中も手出しできない筈ですから。まさかあの神父とこうも早く再会しなければならなくなるとは予想外でしたが、致し方ありません」
 少女が脳裏に思い描くのは、あのいけすかない神父の笑顔だった。

330 :
 心底鬱屈としたものを感じつつ、追手の代わりに派遣されたらしき蝙蝠の使い魔を射Rる。
 ここでふと、彩月は違和感を覚える。確かに人込みは消えたし、皆家に引っ込んでしまったようだが……それでもまだ黄昏時だ。誰もが寝静まる深夜ならばまだしも、こんな時間からあれほど銃声を鳴らしているのにどうして誰も異変と思わないのか?
 疑問を察知したのか、問いを彩月が投げかけるより先に少女が説明した。
 「心配は要りません――というのも、なんだか皮肉な話ですが。どれだけ暴れても、直接的に危害でも加えない限りはここら一帯を覆っている魔術が解けることはないと思われます。
  ティンダロスの猟犬……第三帝国の鬼畜の末裔までもが、この地へ降り立つ聖杯を欲しているらしい」
 「第三帝国……聖杯……? それに、魔術って」
 「監督役がそこまで講義してくれれば良いんですけど、あれはどうにも信用ならない男です。教会へ着いた後にでもざっとお教えしましょう。今は、ただ一つだけ覚えていれば十分ですよ。――そう、ただ一つ。貴女はもう、逃げられない」
 どくん。
 その言葉には――まるでこちらの心臓を鷲掴みにするような重みがあった。
 それっきり、何か喋ろうとしても言葉が浮かんでこなくなる。走り続ける疲れはいつの間にか感じなくなっていた。でも自分よりずっと小さいのに、この子は凄いなあ……そんなことを考えていると、彩月は「あ」と漏らす。
 「ねえ」
 「はい?」
 「私、相沢彩月っていうんだけど……君は?」
 「杏紅花(シン・ホンファ)」
 少女は、顔だけでちらっとこちらを振り返って、締めるように言った。
 「それが、私の名前です」

331 :
規制解けたので改めてこちらで投下終了をば。
さらっと伏線を撒きつつ女の子を増やす作業。

332 :
東京都大田区蒲田養豚場在住の豚
http://www.pixiv.net/member.php?id=4073008

333 :
投下乙です。
自分も投下します。
俺得7 25話 涙を勇気に変えてみせましょう
今回から時間帯が黎明になります

334 :
25話 涙を勇気に変えてみせましょう
殺し合いが始まって早くも二時間程が経とうとしていた。
まだまだ夜の闇は会場を厚く覆っている。
ゲーム会場北部の森の中を歩く、五歳児野原しんのすけと女子高生北沢樹里。
「早くとーちゃんとかーちゃん、シロに会いたいゾ。
樹里おねえさんも、お友達に会いたい?」
「え? うーん……」
しんのすけと樹里は森の中で出会った後、歩いている間にお互いの知人の情報を交換していた。
樹里はクラスメイトの事は特徴程度を話し、関係性など余り具体的な事は言っていない。
故にしんのすけはクラスメイト=樹里の友達と考え会いたいかどうか尋ねた。
倉沢ほのか、愛餓夫は言うまでも無く会いたくない存在だが、
他のクラスメイトについては会いたいとも会いたくないとも言える、微妙な所である。
そこまで親しい者が居ないのだ。
「そうね、二人ぐらい会いたくないのが居るけど、他はまあ、会いたいかな」
「どうして会いたくないの? 仲が悪いの?」
「まあ、ちょっと……ね」
会いたくない理由の詳細を話す気にはなれずはぐらかす樹里。
「オラのとーちゃんとかーちゃんもよくケンカするけど、すぐに仲直りするゾ。
オラとひまもよくケンカしたけどやっぱりすぐに仲直りして……」
そこまで話した所で、しんのすけが言葉を切った。
彼の脳裏に、妹・ひまわりの最期の表情と叫びが蘇る。
「……しんのすけ?」
突然黙ったしんのすけを心配する樹里。
「樹里おねえさん」
「何?」
「オラ、ひまを殺した、じゅんぺいとまひろって言うおにいさん達を絶対に許さない……。
だから、おにいさん達の言う事なんて聞かないゾ。
殺し合いなんてしない、とーちゃん、かーちゃん、シロを探して、この殺し合いをメチャクチャにするんだゾ」
拳を固く握り締め、しんのすけは樹里に自分の決意を語った。
震えた声だったが、力強さが籠っていた。
五歳児らしからぬその態度と発言に、樹里は感心を禁じ得ない。

335 :
「強いね……しんのすけは」
「オラ頑張るゾ! おねえさんもオラと一緒に頑張って欲しいゾ」
「良いよ、協力するよ」
樹里はしんのすけの考えに賛同し、殺し合いに反抗する意思を明確にした。
以前の殺し合いで自分が犯した罪に対する償いと言う気持ちも込められている。
「よし行くゾ〜! 出発おしんこ〜!」
「あ、ちょ、待って待って!」
掛け声と共に走り出したしんのすけ。
それを慌てて樹里は追い掛けた。

(ひま、お兄ちゃん頑張るゾ。天国から、見守っててね……)

【黎明/E-1、D-1境界線付近の森】
【野原しんのすけ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]健康、目が少し腫れている
[装備]懐中電灯(基本支給品)
[所持品]基本支給品一式(懐中電灯装備中)、S&Wスコフィールド・リボルバー(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、
     .45スコフィールド弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしない。父ちゃん、母ちゃん、シロを探す。
        1:樹里おねえさんと行動する。
[備考]※北沢樹里のクラスメイトの大まかな特徴を聞きました。但し樹里とクラスメイトの詳しい関係性は聞かされていません。
【北沢樹里@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]出刃包丁@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。
        1:愛餓夫は会いたく無い。会ったら相応の制裁を加える。倉沢さんは……。
        2:しんのすけと行動する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※倉沢ほのかに対し謝罪したい気持ちが有るようです。
    ※野原一家の詳しい特徴をしんのすけから聞きました。
    ※以前の殺し合いの事はしんのすけには話していません。

336 :
投下終了です

337 :
投下します

338 :
「――悪いけど、無駄は省かせてもらうよ」

【藁畝薊 死亡】

□□□

無益だよなあ――公園のベンチに仰向けに寝そべりながら福富安兵衛は気だるそうに言葉を吐いた。
殺し合いの主催である男、砕崩覇轟に対するメリットがこの舞台から何ら感じられない。
万が一このイベントが成功して10人が帰れたとしても、他の死んだ90人の親族やその他は黙らないだろう。
何日も、何十日も帰らない我が子を心配しない親はいない。
何日も、何十日も消えたままの老人を心配しない家族はいない。
何日も、何十日も職場に姿を見せない社員にムカつかない上司はいない。
何日も、何十日も姿を見せない有名人を不審に思わないマネージャーはいない。
連絡をして、探して、通報して――果たしてあの男が逃げ切れるかどうか。
警察を舐めてはいけない。マジになればきっと血生臭い会場も、死体があちこちに転がるこの島も一日くらいで見つかる。
それに至るまでの過程は一ヶ月くらいかかりそうではあるが、そうなれば彼は捕まり、間違いなく死刑。
「無意味で、無価値で、無駄死だ」
どうしても彼の狙いが分からなかった。
人が殺し合う様とか団結して立ち向かう様が大好きな酔狂な輩か、はたまた何らかの目的を持った者の犯行か。
いずれにせよ、生き残れれば解決しそうな事柄ではある。
覇轟とかいう主催に聞けば普通に話してくれそうだし。何より真面目そうだ。
……いや、こんな殺し合いを開いている時点で真面目とは言いづらいが。
しかし間違いなのかもしれない。実はこんなフザけたイベントに真面目だったりとか。
「……そう思うだろ? そこのえーっと……あ、死んだんだっけか」
首を左に回して、ベンチの後ろを見やる。
そこにあったのは脳天に黒い穴が空いていて制服を着た女性の死体だった。
目は見開かれたままで、手には殺傷能力も充分にあるエアガン。
辺りには打ち抜かれた際に飛び散った脳漿と血が散乱していた。
「これも無駄死に、だな。無用な行動を起こすから……」
死体から目を背けるように体全体を右に回して、公園の風景が目に入るようにする。
思い返せばあれは瞬間的な出来事だったし、まさしく刹那だった。
人生で銃を突きつけられたのは初めてで――同時に銃を他人に向けて発砲し、殺害するのも初めてだった。
しかし実際にやると意外に呆気なく、ただ無常さを感じさせるのみ。
人を殺したという感触が得られないのは、実際に触れてないからか、それとも死ぬ様を見てないが故か。
少量の血は浴びたが、やはり少なすぎる。
どちらにしろ、考えるにしては無意味な内容だった。

339 :
「……ここから離れないと駄目じゃないか」
そんなどうでもいい思考より先決しなければならないのは、この場から離れることだ。
このままベンチで無気力に寝そべったままでは、近くにあった死体を自分が殺したということは一目瞭然。
殺したということはつまり(発見した側から)自分は殺し合いに乗っているというあらぬ誤解を受けてしまう。
ならば誰もいない内に、ここから立ち去るのが賢い行動であろう。
こればかりは無意味だとか言ってられない。
「どうしてこう、面倒くさいのが連続するんだか……」
ぼやきながらも公園から離れる為に渋々とした様子で、安兵衛はベンチから立ち上がる。
死体には目もくれず、彼は歩き出した。
【G-2/公園/一日目・日中】
【福富 安兵衛】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ベレッタ93R
[思考・行動]
基本:無駄に行動せずに、無気力に
1:この場から離れる

□□□

【福富安兵衛(フクトミ ヤスベエ)】
無駄な努力はなるべく避けてきた高校三年生。現在は引き篭もり。
無精髭にぼさぼさの髪。無愛想だとよく言われ、無気力に毎日を過ごしている。
無意識の内に起き上がって、無意味な時間を過ごし、無味の飯を食べる、そんな生活を過ごす。
無闇に使わなければ使い切れないくらいには金がある。
【藁畝薊(ワラウネ アザミ)】
将来有望な大工の娘で彼氏持ちの高校二年生。
明るい性格で腕っ節も非常に強く、誰からも好かれるような女性。
彼氏との関係も良好であり、幸せの絶頂にいた。
しかしバトルロワイアルの会場に呼ばれてしまい、彼氏は目の前で死亡してしまう。

□□□

投下終了です

340 :
投下乙です
自分も行きます 俺得7 26話 目と目と目と目
登場:原小宮巴、KBTIT、壱里塚徳人、金子翼

341 :
26話 目と目と目と目
レジャー施設内には宿泊出来る区画が存在し、幾つかの簡素な客室が並んでいた。
その客室の一つで、少年、壱里塚徳人は犬狼獣人少女の原小宮巴、
身体の上下のバランスが悪い色黒サングラス男、KBTITことタクヤの二人に、
悶絶フルコースを受けさせられ文字通り悶絶していた。
気絶させられている間にパンツ一丁の姿にされ、椅子に縛り付けられ、
意識を取り戻してしばらくしてからその悶絶フルコースは始まった。
身体中を鞭打たれたり、糸を付けた洗濯バサミを乳首を含む上半身にびっしり付けられた上で
それを一気に引っ張られたり、熱々のお湯を掛けられたり、蝋燭を垂らされたり。
最初こそ威勢良く抵抗していた徳人だったが、次から次へと試される責め苦の前に、
完全に心が折れ今はもはや悲鳴を上げながら拷問に苦しんでいた。
「う……あ……あ」
パンツ一丁で椅子に縛られた徳人は現在、身体中をミミズ腫れだらけ、蝋燭の蝋に塗れ、
洗濯バサミの痕が至る所に残り、憔悴しきった表情を浮かべている。
「オーイ、パンツ一丁坊主、気分はどうだ?」
KBTITが徳人に問い掛ける。
「最悪に決まってんだろ……」
涙声で徳人が答える。KBTITを睨み付けるその目にもうっすら涙が浮かぶ。
「ねー、壱里塚君だったよね? どうして私の事襲おうとしたのかな?」
今度は巴が徳人に尋ねる。
「……俺は獣人の苦しむ顔が見たかったんだよ」
「は?」
「獣のくせして人間と同じように生活してるお前ら獣人が俺は好きじゃねえんだ」
「……何それ。獣人差別なんてあなたいつの人なの? 廃退思想論者って奴?」
「……ああ?」
巴の話に疑問符を浮かべる徳人。
彼の世界においては獣人族に対する差別感情は一昔前に比べれば減ってはいるにせよ、
周知される程度には残っている。
しかし巴の言は、その差別感情がもはや遠い過去の遺物のような言い草である。
ましてや「廃退思想」などと言う単語は聞いた事も無かった。

342 :
「まあいいや。それより壱里塚君。
今あなたはこうして縛られて色々されてるんだけど、どうしてこんな目に遭ってるのか分かってる?」
「……お前を襲ったからだろ」
「うん、それもあるね。でももう一つ有るよね、ねぇタクヤさん?」
「そうだな」
「え?」
何の事か分からず困惑する徳人。
答えられないと見ると、KBTITが徳人の髪を(優しく)掴み顔を自分の方に向けさせる。
「ぐうう……」
「思い出せねぇのかよお前オオン? 俺の事『おじさん』呼ばわりしやがっただろ? それのバッツだよ」
「い、いや、どう見たっておじさん……」
「また言いやがったなこの野郎! もっと罰を与えなきゃ(使命感)」
「あっ、こんな所に散髪セットが」
そう言ってバリカンと散髪用の鋏を徳人に見せ付ける巴。
あたかも偶然置いてあったように言っているが当然どこからか調達してきた物だ。
「何すんだよ……っ!?」
「あのさぁ……バリカンと鋏でやる事っつったら一つしかねーだろ」
「私は鋏、タクヤさんはバリカンね」
「……っ」
楽しそうに笑みを浮かべる巴とKBTITが、限り無く悪魔に見えた。
「髪なんか必要ねぇんだよ!」
「やめてくれよ……(絶望)」
自分の髪が蹂躙されるのを、徳人は絶望しながら受け入れるしか無かった。

◆◆◆

レジャー施設内を、右手にピッケルを持ったおっさん顔の少年、金子翼が歩く。
施設内は証明が点いており、音楽も流れ、人が一切居ない事を除けば営業時と変わらない様子だった。
「これだけ広いなら誰か居るでしょ……でも探索大変そう」
レジャー施設はかなりの規模で、一人で隅々まで見て回るのは骨の折れそうな作業だった。
「全部は流石にきついなぁ、回れる所だけにしよう」
そう言うと翼は、他参加者を探す為に施設の奥へと歩いて行った。

343 :
【黎明/B-3レジャー施設宿泊エリア】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]散髪用鋏(調達品)
[所持品]基本支給品一式、警棒@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:KBTIT(拓也)と行動。少年(壱里塚徳人)に「お仕置き」する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※壱里塚徳人とKBTITを同じ世界の人間だと思っています。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康
[装備]バリカン(調達品)
[所持品]基本支給品一式、???、ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:巴と行動。少年(壱里塚徳人)に「お仕置き」する。
        2:クラスメイトを探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
【壱里塚徳人@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]頭に打撲、腹部にダメージ、パンツ一丁で椅子に拘束されている、身体中に鞭と蝋燭と洗濯バサミの痕、絶望
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(12)
[思考・行動]基本:獣人狩りをする。人間は必要な時以外危害は加えない。
        1:やめてくれよ……(絶望)
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※原小宮巴を自分と同じ世界の人間(獣人)だと思っています。

【黎明/B-3レジャー施設通路】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
        1:レジャー施設内で参加者を探す。
        2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。

344 :
投下終了です

345 :
投下乙です
タクヤさんの優しい暴力がキッチリ再現されてて草。+114514点

346 :
感想どうもです
では俺得7 27話 しょくしゅ注意報 投下します
登場:レナモン、西川のり子、柏木寛子、小崎史哉

347 :
27話 しょくしゅ注意報
レナモンは診察室前で見張りをしていた。
診察室内では同行者の少女、西川のり子が休んでいる。
「ん?」
懐中電灯と思しき光を認めたレナモン。
光の元が有ると思しき方を振り向けば、のり子より幾分年上と見られる少女の姿が見えた。
「誰だ?」
「待って、私は殺し合いには乗っていない」
少女――柏木寛子は殺し合いに乗っている事を否定する。
「本当か?」
「本当!」
「……分かった、信じよう。私はレナモン。お前は?」
「私は柏木寛子よ」
「お前一人か?」
「うん、私一人。他には居ない」
「分かった。こっちはもう一人仲間が居るんだ。診察室の中に……」
レナモンが寛子を診察室の中へ通そうとしたその時。
ガシャアアアアアン!!
「ひゃあああああ!?」
診察室の中からガラスが砕け散る大きな音とのり子の悲鳴が聞こえた。
何事かとレナモンと寛子の二人は診察室の中へと突入する。
そこで二人が見た物は。
「何だこいつは!?」
「うわっ……!?」
「あ、ああ……レナモンねーちゃん……!」
腰を抜かして床にへたり込むのり子、そして、身体のあちこちから触手らしき物を生やした、
リカオン獣人の少年の姿であった。
少年――小崎史哉は、寛子が使っていた懐中電灯の光を追って病院までやってきた。
悪く言えば寛子が彼を連れて来たような物だったが、そのような事を寛子が知る由など無く、
そもそもそれは言い掛かりと言う物だろう。
「アァァァア゛ァァア……」
「こいつは話が通じそうな奴じゃないな、のり子! 早くこっちに来い!」
本能的に危険を察知したレナモンはのり子に向かって指示するが、
のり子は恐怖で腰が完全に抜けてしまって上手く動けない。

348 :
「ウウウヴァッ!!」
史哉が唸り声を上げ、のり子に襲い掛かろうとした。
まずいと思ったレナモンは、自分の周りに複数の木の葉を出現させ、それをリカオン獣人に向け勢い良く飛ばす。
レナモン種の必殺技「狐葉楔」である。
「ガアアアアアッ!!」
鋭利な刃のような木の葉が胴体に突き刺さり、仰け反る史哉。
その隙にレナモンはのり子の元へ駆け寄り、その手を掴んで立ち上がらせた。
「ね、ねーちゃん!」
「早く!」
そして急いで診察室から出ようとした。
だが、レナモンの左足首に史哉の触手が巻き付き、床に引き倒した。
「うぐっ!」
「! ねーちゃん!!」
「レナモンさん!?」
「寛子! のり子を連れて逃げろ!」
「え!? でも……」
「こいつは私が何とかする。早く!!」
逡巡する寛子に向かってレナモンが必死に叫んだ。
「……っ、行こう!」
「何するん! 待って! レナモンのねーちゃん……っ!」
寛子はのり子の手を掴むと病院玄関の方へと走り出した。
のり子は同行していたレナモンを放っていく事に抵抗を感じていたが、寛子に手を掴まれている以上、
一緒に走るしか無かった。
「くそぉっ!」
レナモンもこのまま黙って殺される気は無かった。
再び狐葉楔を打ち込もうとした、だが、それよりも早く数本の触手がレナモンの腹部を貫いた。
「がっ……あ」
レナモンの口から大量の赤い液体が溢れる。
腹回りの白い毛皮も今や真っ赤に染まっていた。
自分の死を、最期を、レナモンは悟った。
「のり子、寛子、どうか……無事、に」
ブチッ
上半身と下半身に分断され、その意識が消えるまで、レナモンは二人の身を案じていた。

【レナモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ  死亡】
【残り  42人】

349 :
歪んだ窓枠、砕けたガラスや医療器具が散乱、そして辺り一面にレナモンの血肉が飛び散った診察室は、
見るも無残な凄惨な有様と化していた。
尤も史哉はそんな事は気にも留めなかったが。
「……い……ない」
廊下に出るが先程の二人の姿はもう見えない。
まだ病院内に居るのか、外に逃げたのかは史哉には分からない。
だがどちらでも構わない、探すだけだ。追うだけだ。
史哉は血塗れの触手を引き摺って歩き出した。

【黎明/F-2病院】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]身体のあちこちに木の葉が刺さっている(行動に支障無し)、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
        1:さがす……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
    ※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
    ※柏木寛子、西川のり子が外に向かって逃げた事は知りません。

◆◆◆

病院から南に離れた、F-2エリアに流れる川の北側の川原。
「うう……レナモンねーちゃん」
悲嘆に暮れるのり子。寛子もまた沈痛な面持ちを浮かべる。
二人共、レナモンの生存については諦観していた。
(そうだ、私、銃を持っていたんだった……使えば良かった……)
自分が拳銃を持っていた事を思い出し、これを使えばレナモンも助かったかもしれないと寛子は後悔する。
「ねーちゃん」
「え?」
「ねーちゃんも、殺し合いには乗ってないんか?」
目の涙を拭いながらのり子が寛子に尋ねる。
のり子にとっては寛子は初対面で名前もまだ知らない。
「うん、乗ってないよ。私、柏木寛子って言うの」
「ウチは、西川のり子や……」
「……病院に来て、見張りをしていたレナモンさんに会ったのよ。
それで、お互いに殺し合いはしてない事を確認して、中に同行者が居るって言われて診察室の中に入ろうとした時に、
あなたの悲鳴が聞こえたの」
「そうなんや……あいつ、ガラスぶち破っていきなり入ってきたんや。
何なんあれ!? あんなん見た事無いわ……」
獣人等の人外が普通に存在する世界に住んでいる寛子も身体中から触手の生えた獣人など見た事が無かった。

350 :
「これからどうしよう」
のり子が言う。
明るくなるまでレナモンと共に病院に留まる予定だったがそれも破綻してしまった。
「私と一緒に行く? のり子」
「ええの?」
「一人で放っておく事なんて出来ないよ」
寛子はのり子を連れて行こうと思った。
自分よりかなり年下の、恐らく小学校低学年位と思われるのり子を放っておく気にはなれなかった。
彼女が知らない所で、母性が働いていたのかもしれない。
「分かった、一緒に行くわ。よろしゅうな、寛子ねーちゃん」
「こちらこそ。それじゃ、一先ず隠れられそうな場所探そうか……」
共に行動する事となった寛子とのり子は、
身を潜められそうな場所を探す為、歩き始めた。

【黎明/F-3北側川原】
【西川のり子@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]悲しみ
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いはしたくない。死にたくない。
        1:寛子ねーちゃんと行動する。小鉄達を捜したい。
        2:レナモンねーちゃん……。
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。
【柏木寛子@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]健康
[装備]TNOKの拳銃(6/6)@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式、.38SP弾(12)
[思考・行動]基本:殺し合いをするつもりは無い。憲悦とは会いたくない。
        1:のり子と行動する。
        2:どこか隠れられそうな場所を探す。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※小崎史哉の外見のみ記憶し、彼を危険人物と判断しました。

351 :
投下終了です。

352 :
投下します。俺得7 28話 I'LL KILL YOU
登場:油谷眞人、土井津仁

353 :
28話 I'LL KILL YOU
廃城をしばらく探索していた油谷眞人であったが、
特に人も見付からず――実は参加者一人とニアミスしているのだが彼は気付いていない――、
そろそろ廃城から移動しようかと考えていた。
「ん……?」
廃城一階のホールにて、眞人はようやく一人の参加者を発見する。
額に星印の有る、人相の悪い小学生ぐらいの少年であった。
(やっと一人居たか)
ようやく発見した参加者は比較的簡単に倒せそうな小さい子供と見て眞人は不敵な笑みを浮かべる。
しかしその余裕はすぐに消えた。
「!?」
眞人が目を見張る。
少年――土井津仁は凄まじいスピードで眞人へ突進する。
その手には調達した鉄パイプ。
(やべぇ!)
危機を感じた眞人は咄嗟に横に跳んだ。
ガアン!!
一瞬前まで眞人が居た場所に鉄パイプが振り下ろされる。
床にヒビが入る程の威力であった。人間の頭部などひとたまりも無かったであろう。
仁はすかさず回避した眞人に向けて追撃を始める。
ガン、ガン、と、仁の鉄パイプと眞人のサーベルがぶつかり合う音がホールに響く。
(何だこのガキ!? 強ええぞ!? とんでもねぇ動きしやがる)
星印少年の予想以上の強さに焦りの色を見せる眞人。
(一気に仕留めてやる……!)
一方の仁は勝機を見出し一気に攻勢を仕掛けようとする。しかし。
「舐めんな!!」
「グッ!?」
一瞬の隙を突き、眞人が仁の腹に蹴りを入れる。
仁の身体は数メートル後ろへ吹き飛び床を転がった。
ゲホ、ゲホ、と咳き込み、苦しむ仁。
「調子乗ってんじゃねーぞ……」
怒りの表情をその顔に湛えながら、止めを刺すべく眞人が仁ににじり寄る。

354 :
(まだ、まだ死ぬ訳には行かない……!)
仁は腹の痛みを堪え、ホールの窓へと走り出す。
ガシャアアン!!
そして窓に飛び込み破ると、そのまま外へ飛び出し走り去っていった。
「な!? クソッ、何てタフなガキだ……」
大人(と言っても眞人はまだ少年と呼べる年齢だが)の力で腹を思い切り蹴られ、吹き飛ばされてもなお、
立ち上がって走れる星印少年の頑強ぶりに驚かされる眞人。
「一歩間違ったら殺されてたな……」
相手が小さい子供だと思って侮ったのが拙かったと、眞人は自戒する。
一度殺し合いを経験していると言うのにこの体たらくは良くない。
再び惨めな死を迎えるのは御免であった。
「俺も城から出るか」
もう十分廃城探索は堪能した、他の場所を回ろうと、眞人もまた廃城の出口へ向かった。

【黎明/E-5廃城周辺】
【土井津仁@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]腹部にダメージ
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝し、大金を得る。
       1:一先ず城から離れる。
       2:小鉄っちゃん達に会っても容赦する気は無い。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※支給品はポセイドンの箒@漫画/浦安鉄筋家族でしたが、損壊した為放棄しました。
    ※油谷眞人の容姿のみ記憶しました。

【黎明/E-5廃城一階】
【油谷眞人@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]古びたショートソード(調達品)
[所持品]基本支給品一式、メリケンサック@現実
[思考・行動]基本:生き残る為に殺し合いに乗る。
        1:廃城から離れる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※廃城内に居るサーシャの存在には気付いていません。
    ※土井津仁の容姿のみ記憶しました。

355 :
投下終了です。

356 :
投下します。俺得7 29話 オカァーサン……オカァーサン……。
登場:AOK、野原みさえ

357 :
テスト

358 :
何だか「さくらが咲いてますよ」って出て書き込めないので
避難所に行きます

359 :
投下します。30話

360 :
30話 1.2. step to you
ラトと、彼が建設現場にて水晶に殺されかけていた所を救難した野原ひろしの二人は、
建設現場を離れ北に向かい、林の中に身を潜めていた。
ひろしの愛娘、ひまわりは、ラトと同じように首輪の爆破の見せしめとして殺された。
それも有って、ラトはひろしの事が他人事に思えなかった。
ラトは自分のクラスメイトの情報と一緒に以前の殺し合いについてもひろしに話した。
「つまり、お前は前にも殺し合いをさせられて、一度死んでいるってのか…」
「信じられないかもしれませんが……」
「……いや、信じるよ……ひまわりと同じ死に方をしたのか……」
「すみません、思い出させてしまって……」
そのつもりが無かったとは言え、ひろしに辛い場面を思い出させてしまった事を詫びるラト。
「いや、良いんだ。気にしないでくれ。
……死んだお前が生き返っているって事は、まひろの奴が言っていた事は本当なのか?」
「恐らくは……一体どんな方法を使っているのかは分かりませんが」
「……」
開催式の際にまひろが言っていた「死者の蘇生」。
そんな事有り得ないと思っていたひろしだったが、ラトの身の上話を聞いて少し考え込む。
「娘さんを……生き返らせられるかもしれないと思いますか?」
ひろしが何を考えているのか察したラトが尋ねる。
「……悪い、ちょっとだけ考えちまったよ。
でもな、その為には、しんのすけも、みさえも、シロも、お前も、他の全員も死んだ上で、
俺一人生き残って、優勝しなくちゃならないって事だ。
……そんな物は御免だ。
そんな、犠牲を払って、例えひまわりが生き返ったって、嬉しくも何ともねぇ。
ひまわりだって、そんなの喜ばねぇ筈だ……俺は、家族と合流して、この殺し合いを潰す。
じゅんぺいとまひろの二人をぶん殴ってやる!」

361 :
ひろしは自分の思いをラトに吐露する。
自分一人生き残って優勝して、それでひまわりを生き返らせたとて、
家族全員が揃わなければ一体何の意味が有ろう。
何より娘を殺した者共の言いなりになるような真似など出来る筈も無い。
そのような事をして、家族に顔向け出来ようか、と。
「野原さん……」
とても強い人だと、ラトは感心せざるを得なかった。
「僕も協力しますよ野原さん。一緒にこの殺し合いを潰しましょう」
「ああ」
「一先ず、もう少し明るくなったら、移動しましょう」
日が出て明るくなり視界が良くなるまで、ラトとひろしは待機する事にした。

【黎明/A-5墓場周囲の林】
【野原ひろし@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]背中にダメージ
[装備]コンバットナイフ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:家族を探す。殺し合いを潰す。
       1:ラトと行動する。明るくなるまで待つ。
[備考]※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ワルサーPPK/S(6/7)@パロロワ/現実
[所持品]基本支給品一式、ワルサーPPK/Sの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。
       1:野原さんと行動。明るくなるまで待つ。
       2:クラスメイトも気になる。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※銀鏖院水晶を危険人物と認定しました。
    ※能力の制限については今の所不明です。

362 :
投下終了です。
今回はさくらが咲いてますよは出なかったか

363 :
投下をしまっす 出来るかな

364 :
31話 そうです僕は馬鹿なんです
「おいひで、焼きそばパン買ってこいよ。勿論お前の金でな」
「ええ……何で僕が」
「お前あれー……口答えすんだな? お前、今日から……サンドバッグだな」
「やだ! やだ! ねぇ小生やだ! わかったわかったわかったよ、もう!」
「買ってきたよ……」
「おう……エェッ!? ふざけんじゃねぇよオイ! 何でスパゲティパン買ってきてんだおいオラァ!」
「焼きそばパン売れ切れちゃってたんだよぉ」
「本気で怒らしちゃったねぇ! 俺のことねぇ! 本気で怒らせちゃったねぇ!」
「や、やだやだ! やだ! やだちょ、痛い痛い痛い! あああああああああああ!!」
……
……
葛城蓮に虐められていた時の事を思い返すひで。
反抗しても力づくでねじ伏せられていたが、今はサブマシンガンと言う強い武器を持っている。
蓮だってきっと簡単に倒せる筈、ひではそう思っていた。
今の自分なら何も怖い物など無い、とも。
「ん……」
そしてひでは前方に建物を発見する。
それなりに大きな建物で、内部の明かりは灯っているようだ。
「行ってみよっと」
ひではその建物目指し再び歩み始めた。

◆◆◆

遠野と稲葉憲悦は図書館を訪れていた。
館内は照明が灯っており明るかったが、受付にも読書スペースにも人の姿は無い。
規模はそれなりで本は一通りジャンルは揃っているようだった。
「結構広いですね……」
「奥の方も見ておこうぜ。誰か隠れているかもしれないしな」
遠野と憲悦は、警戒しつつ図書館内を見て回る。
遠野はモーゼルKar98kライフル、憲悦は自動車用緊急脱出ハンマーを装備している。
それぞれの支給品だ。
本棚と本棚の間の通路を一列一列確認する二人。
他に、書庫や事務室、学習室、朗読室、視聴覚コーナー、裏口付近も回る。
人影は見当たらなかった。

365 :
「どうやら誰も居ないみたいですね」
「そうみてぇだな、ニオイもねぇし……ちっと休もうぜ」
「はい」
安全だと判断した遠野と憲悦は読書スペースに戻って休息する事にした。
「今の所、殺し合いに乗った人とは遭遇してはいませんけど……さっきの白い犬の事も有るし、
乗っている人もそれなりにいるんでしょうね」
「そりゃあ52人も居るんだからな。一人や二人ではきかないだろ」
「僕のクラスメイトにも乗っている人が出てるんだろうか……」
「そういやクラスメイトがこの殺し合いに居るって言ってたなお前」
この図書館にやって来るまでの道中、
歩きながら遠野と憲悦は互いの知り合いについて軽くでは有るが情報を交換し合っていた。
「はい。稲葉さんは、確か柏木さんと言う人を捜してるんでしたっけ?」
「ああ」
「まだ詳しい事伺って無かったんですけど、彼女さんですか?」
「性奴隷」
「は?」
思わず聞き返す遠野。
「だから俺の性奴隷だよ。柏木寛子は」
「え、そう言うプレイとかでは無くて?」
「マジモンだ。親が仲悪くて家出してきたとか何とかで、金が欲しいから身体買ってくれって言ってきたんだ。
可愛かったし丁度玩具欲しかったから、上手く騙して拉致って性奴隷にしたってワケ」
「えぇ……(ドン引き)」
「前の殺し合い……あ、そういや話してなかったな。
俺、殺し合い二回目なんだ。前の殺し合いで一回死んでるんだよ」
「え、何それは」
唐突な新事実の告白に遠野は今度は驚きの表情を浮かべる。
「だから、俺も驚いてるんだよな。死んだと思ったらこうして普通に生きているんだから。
寛子の奴も前一緒の殺し合いに居て、俺は一度会ったきりだったんだけど、あいつも死んだらしいんだよなぁ。
つまり俺も寛子も一度死んで生き返った、って事になるな」
「本当ですか……」
「信じらんねぇか? 無理もねぇけどな、流石にこんな事冗談で言わねぇよ」
「いえ、信じますよ……あの、やっぱりその柏木さんと会ったら」
「無論、ヤるつもりだ。溜まっちゃってさぁ。あいつはきっと嫌がるだろうが、そんなの関係ねー」
「そ、そうですか……会えると、良いですね」
引き攣り気味の笑みを浮かべる遠野。憲悦の話の内容に引いているのは明らかだったが。
当の憲悦は特に遠野の反応は気にしていないようだった。

366 :
「……?」
ふと、憲悦の耳が微かに動く。
「どうかしましたか?」
「玄関のドアが開く音が聞こえた」
「え? 僕には何も……」
「俺はワーウルフだからな、人間より耳は良いんだ……誰か来たな」
「本当ですか……」
半信半疑の遠野も、足音がはっきり聞こえてきてようやく憲悦の言う通りだと思った。
いざと言う時の為に二人は武器をいつでも取れる態勢を取る。
そして、彼らの前に、一人の少年が現れた。
「! ひで君? ひで君じゃないか!」
遠野はその少年を知っていた。
少年は彼のクラスメイトの一人――ひでだったのである。
「お前のクラスメイトか?」
「はい」
「遠野君……?」
「ひで君、無事だったんだね良かった。大丈夫だよ。僕達は殺し合いには乗ってないから」
クラスメイトに会えて安心したのか、用心する事も無くひでに話し掛ける遠野。
しかし次の瞬間には、ひでは遠野が全く想像していなかった行動に出る。
持っていた銃を遠野と憲悦に向けたのだ。
「!?」
「……」
瞠目する遠野、身構える憲悦。
「ひで君何をするんだ!」
「見れば分かるでしょ? これから君達をRんだ」
「てめぇ、乗ってやがんな」
睨み付けながら憲悦がひでに訊く。
「そうだよ。僕はこの殺し合いに乗ってる。みんな殺して、優勝して、僕だけ生きてお家に帰るんだ!」
白い歯を剥き出しにし目を大きく見開いた狂気そのものの笑顔で、ひでが叫ぶ。
「そんな、どうしてそんな事!」
「うるさいな! そんな事どうだって良いだろ!」
遠野が殺し合いに乗る理由を尋ねてもひではまともに答えようとはしない。
ひでが脅しで言っているのでは無いと言う事は遠野も憲悦も感じ取っていた。
このままでは二人共命は無い、何とか切り抜けなければ。

367 :
(一か八か……!)
遠野は意を決し、かなり古典的な方法で切り抜ける事を考え、実行した。
「あ! あれは何だ!?」
遠野はひでの後ろを指差す。
勿論、何も無いのだが。
「えっ?」
ひではあっさりと引っ掛かりまんまと後ろを向いてしまった。
「今です逃げましょう!」
「よし……」
その隙を突いて遠野と憲悦は先程図書館内を探索していた時に見掛けた裏口へ走る。
「あ! 逃げるなぁ!!」
二人の逃走に気付いたひでは激高し持っているP90を二人の方向へ向けて乱射し始めた。
ダダダダダダダッ!! ダダダダダダダッ!!
無数の5.7ミリの銃弾が図書館内の壁や本棚に穴を空け、破れた本の紙が舞う。
しかし肝心の遠野と憲悦には一発も当たらなかった。
「ああああ逃げちゃやだああああ!!」
喚き散らしながら二人の後を追おうとするひでだったが、
床に散らばる本の破片である紙切れで、盛大に滑って、仰向けに転んだ。
「痛い!! 痛いんだよもぉ〜……あ……逃げられちゃった……」
床に強か身体を打ち付けた痛いに悪態をつきながら立ち上がると、もう既に二人の姿はどこにも無かった。
「ちぇっ、もう良いや……」
二人の追撃は諦め、ひでは別の獲物を探す事にした。

368 :
【黎明/D-3図書館】
【ひで@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]後頭部に打撲、背中に軽い打撲、狂気
[装備]FN P90(10/50)@現実
[所持品]基本支給品一式、FN P90の弾倉(5)
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:クラスメイトと会っても容赦しない。葛城蓮(虐待おじさん)に対しては特に。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※稲葉憲悦の容姿のみ記憶しました。

◆◆◆

「はぁ、はぁ……ここまで来れば、大丈夫かな……」
「ハァ……ハァ……」
遠野と憲悦は図書館を脱出し、必死に走った末に、
D-3エリア南端の市街地へ続く橋の所まで来ていた。
振り返って確認するがひでは追ってきてはいないようだ。
「遠野、お前ライフル持ってんだから撃っちまえば良かったのによ」
「無理ですよ、構える前に撃たれます。
それに……幾ら殺し合いに乗っているとは言え、クラスメイトをそんな簡単にRなんて……」
悲しげな表情で語る遠野。
ひでとは特別友好的だった訳では無い、だが、昨日までクラスメイトとして一緒だった者が、
明確な殺意を持って襲いかかってくると言う出来事は、遠野に大きなショックを与えていた。
ここまで恐ろしく、悲しい事なのか、と。
「まあ気持ちは分かっけどな……殺されちまったら元も子も無ぇぜ。
その内、嫌でもクラスメイトとやり合わなきゃならなくなるかもしれねぇ……覚悟は決めといた方が良い」
口調こそ軽くはあったものの、遠野の甘さを鋭く指摘する憲悦。
「……」
遠野は無言で頷くのみだった。

369 :
【黎明/D-3南端市街地への橋付近】
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]疲労(中)
[装備]モーゼルKar98k(5/5)@現実
[所持品]基本支給品一式、7.92mmモーゼル弾(10)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
        1:先輩やクラスメイトを探す。
        2:稲葉さんと行動する。
        3:ひで君……。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。
【稲葉憲悦@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター】
[状態]疲労(中)
[装備]自動車用緊急脱出ハンマー@現実
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:積極的に殺し合う気は無い。寛子を探す。
        1:遠野と行動する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の容姿と名前を把握しています。
    ※ひでを危険人物と認定しました。

《支給品紹介》
【モーゼルKar98k@現実】
第二次世界大戦時にドイツ軍が制式にしていたボルトアクション小銃。
構造、信頼性、命中精度等、当時の小銃としては優秀な性能を誇っていた。
BB先輩シリーズにて遠野がこれを持っているBB素材が有り至る所で使われている。
【自動車用緊急脱出ハンマー@現実】
交通事故や水没事故などで自動車内に閉じ込められたときに、
ウインドーガラスを割って車外に緊急脱出するために使用するハンマー。
今回登場する物は100円ショップで売られている安物。

370 :
投下終了です 大丈夫だったな
「さくらが咲いてますよ」また出るんじゃないかどうか
ヒヤヒヤする

371 :
投下乙です!
さくらが咲いてますよとはいったい……僕にも出るのかなあ
それと新ロワの聖杯戦争の人には超期待です
ちなみに、知ってるかもですが二次二次聖杯が↓で企画中だそうです。
ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/13744/
四字熟語ロワ42話 後半パート投下します! 終了宣言までに規制くらうかも

372 :
 
 気絶させた勇気凛々のそばには、置手紙を置いておいた。
 「戻ってくるまで待っていて」というその手紙をちゃんと聞いてくれるかは、彼女次第だ。
 紆余曲折は待っていてほしいと願う。一刀両断は、どちらでもよさそうだった。
「ひっさしぶりに、来たなー」
「相変わらず何もないですね」
「そうだな。でもま、広々としてていいんじゃねえか、気分的にも」
「……解放感は、確かにあります」
 だだっぴろいコンクリートの地平線、駐車位置の白線、空は無限の曇天。
 荒涼な空間に色を添えるように、たた、と前に駆けでて、
 両手を広げて一刀両断は伸びを紆余曲折に見せて明るく振る舞う。
「ああ、ホント――お疲れ様、だな――!」
「お疲れ様……そう、ですね」
「なんだよ。もっと喜べよ、紆余。お前、やり遂げたんだぜ。ぜんぶ」
「……」
「恥じることも、悩むことも、振り返ることもねえ。
 お前とあたしと、傍若無人の勝ちだ。これは完勝なんだよ、紆余」
「でも……リョーコさんは」
「あたしが死ぬのは最初から計算の内だろ? 気にすんなって。
 しょうがねーだろ、そうしなきゃ傍若無人の協力は仰げなかったんだ。
 お前だってアレ見ちゃあ、凛々をR選択肢はとれねーだろ。アレ見てRってのは鬼だぜ。
 さんざん鬼みてーなことやって何言ってるかってツッコミはあるだろうけど……」
「……」
「なあ、もう少し楽しくいこうぜ。最後の、時間なんだから」
 少し申し訳なさそうに、精いっぱい不安を隠した顔で、一刀両断は言った。
 それを見て紆余曲折は申し訳なさと悔しさでいっぱいになる。
「う……」
 楽しく行こうぜ、なんて言われても。
 今から死のうとしてる人と、どうやって楽しめって言うんだ。
「………………そうですね。楽しく、行きましょうか」
 文句の一つも言いたくなったけれど、紆余曲折はそれを呑みこんだ。
 無理してでも笑った。
 せめてそうしてあげたいと、思ったから。
 閑散とした屋上駐車場を歩きながら、二人は他愛ない雑談を始める。
「氷で塞がれたんですよ、口。あれはほんと酷かった」
「傍若無人に焼魚定食作ったんだけどな、あいつなかなか食べようとしねーの、猫舌かよって」
「ハンバーガーが大量に置いてあったんですけど怖かったので捨てて」
「優柔不断がへにゃへにゃしながら傍若無人に向かってったとこ、見せてやりたかったなあ」
 あのときはやばかった、だとか。
 あのときは本当にふざけてるとおもったとか。
 ひやひやしたこと、疲れたこと、驚いたこと、笑えたこと。
 娯楽施設内で経験したすべてのことを思い出すように、一緒に居なかった時間分を共有するように。
 喋り合う。
 記憶を奪われたこの実験で、二人にはここに来る前の思い出は少ない。
 だから、この実験での思い出を。
 なるべく楽しく。終わりまで。
 できればいつまででもそうして続けていたかった。

373 :
 
「……あ」
「……」
 しかしそんな雰囲気も長くは続かなかった。
 屋上駐車場には、二人の最初の場所には。
 コンクリートの地面に放置された、首なしの猪突猛進の死体がまだ倒れていた。
「……」
「……」
 どちらともなしに、動き出す。
 二人はその死体を、エレベーターホールの外の壁まで運んで立てかけて、
 自然と目を閉じて手を合わせ、冥福を祈った。
 激動の殺し合いで一秒を惜しんでやらなかったことをやり直すかのようなその行為を終えて、
 静かに喋り始めたのは、一刀両断だった。
 
「……あたしはさ」
「……」
「あたしは――弁護士を目指してたんだよ」
「弁護、士」
 それは、一刀両断の、夢の話。
 紆余曲折と出会う前の、一刀両断の、話。
「弁護士って、あの……異議ありとか言うやつですよね」
「いや、それだけじゃねーけど……まーだいたいそんな感じで間違ってねーか。
 ほら、あたしジャージ着てるだろ? 25にもなって高校のやつ。
 どうも六法全書片手に部屋籠りして、机にかじりついて勉強してるとこから呼ばれたらしいんだ」
 ジャージを掴んで見せびらかせながら一刀両断は言った。
 戦いでボロボロになったそれは、確かに学校などで指定されるようなもので、
 普通の25歳が部屋着でもなかなか着るものではない。
 着るモノに頓着する余裕がないくらいに、勉強していたのだろうことがうかがえた。
 
「笑えるだろ? あたしがスーツ来て、メガネかけて、きりっとした顔で法廷に立とうとしてたんだぜ。
 そのためにアホみたいな勉強量を急ピッチでこなして……散髪行く暇もねーから髪は伸びまくりでよ」
「……でも、それだけなりたかったってことは。立派な夢なんじゃないですか」
「そう思うだろ。でも、それは違うんだ」
「?」
「あたしは――あたしの夢は。あたしのものじゃないんだ。
 あたし自身が弁護士になりたいと思って勉強していたわけじゃ、ない」
「……え?」
「誰か他人のものなんだ。そしてあたしは、自分の意思で――それを背負った。
 重く、重く、一生それと付き合っていくつもりで。他人の夢を、自分の夢にした」
 ×××××。
 きっかけを思い出そうとすると、一刀両断の脳内には×印の霞がかかる。
 霞がかって、完全には思い出せない。しかし切磋琢磨ほどに、
 きっかけとなった出来事を完全に忘れてしまったわけではない。
 一刀両断が覚えている風景、思い出せる光景は、――どこかの交差点。
 バキバキに壊れている車とバイク。
 歪んでいるガードレール。
 頭から血を流しながら倒れている人。 
 傍に座って泣きながら叫んでいる、自分。

374 :
 
 ――どちらが悪かったのかは覚えてない。
 その後にした選択を思えば、自分が悪かった可能性が高い。
 とにかく救急車が来て、倒れている人を連れ去った。でもそれは遅速に過ぎた。
 葬式会場。参列、焼香、沢山の人が並ぶ。
 その中にひとり、呆然としながら、
 死んでいる人の持っていた法律の本を見つめる自分の姿を見つけた。
 正面に、花に飾られた遺影に移る×印だらけの顔があった。
 状況から考えて、全く知らない人だった可能性が高い。
 それでもその瞬間から、一刀両断にとってその人の顔は忘れてはいけないものになった。
 一刀両断は決意した。
 夢を引き継がなければならない、と。
「あたしは他人の夢のために殺し合いに乗った。他人の夢を殺して、他人の夢を叶えるために。
 でも、そんなあたしの決意は。夢を持っていないお前に殺されるくらい、弱かった」
「……」
「結局さ。他人の夢のために勝手に自分を犠牲にしていたあたしは、普通の人より弱くなってたんだな。
 だって、いくら犠牲にしたって、なにも相手からもらえやしないんだから。
 そんなことをすれば弱くなるのは当たり前だったんだ。
 気づくのが、遅すぎた――バカだよなあ。切り捨てたあとに気付いても、もう取り返せやしないのにな」
 悲しそうな顔で、一刀両断は呟いた。
 黙ってそれを聞いていた紆余曲折は、どう声をかけていいのか分からなくなった。
 誇りがあったと聞いた。
 一刀両断は、誇りを持っていた。
 彼女にとってのそれはきっと、やると決めたことを曲げないことだったのだろう。
 でもこの実験に来る前に、彼女が行っていたことは間違いだった。
 それを間違いだと気付かせたのは、自分だった。
 しかも自分は。
 この実験で一刀両断に命じたのだ。
 自分を犠牲にして、他人の盾になれ、と。
 その命令は一刀両断にとって、
 いったいどれほど皮肉で……そして残酷な命令だったのだろう。
「……それじゃ、僕は……」
「でもな」
 思わず目をそらしかけた紆余曲折に、一刀両断は言った。 

「お前に尽くそうと思ったのは、今の話とは全く関係ねーぜ?」
「……え」
「言ったはずだ。お前だから、盾になろうと思ったって。
 お前じゃなかったら。もっと利己的に、あたしを本当に道具みてーに使おうとして、
 あたしを隷属させる選択肢を取る奴が相手だったら……あたしはあの瞬間に舌を噛み切ってたよ」
「僕だから、って……どういう」
「それももう言ったはずだ。お前は、あたしを受け止めてくれたからだ」
「受け止め、る……」
「あたしを忘れないでいてくれるんだろ?」
「……あ」
 あたしを忘れないでくれ。
 お前が夢を手に入れるために、利用して殺した、この一刀両断を忘れないで欲しい。
 一刀両断はそう言って手を伸ばしてきたことを、紆余曲折は思い出す。
 そして紆余曲折は手を取った。かなり後、放送の後になってしまったけれど。
 使うと決めた。そして忘れないと決めた。
 一刀両断を忘れないこと。それは。一刀両断を受け止めること。

375 :
 
「お前は切り捨てない人間だ」
 一刀両断は紆余曲折の方を指差した。
「お前のルール能力は、どれだけ迂回させようがお前にたどり着くようにできてる。
 斬って終わりのあたしとは違う。自分に向けられたものを、最終的には、お前は受け止めようとしている。
 猪突猛進が死んだとき、あたしは泣けなかった。でもお前は泣いた。あのとき思ったんだ。
 こいつなら、全部背負ってくれるって。死んだ奴ら、全員の思いを背負って――未来に進んでくれるってな」
「未来」
「そう、未来だ。お前は、お前の夢のために、あたしを踏み越えていくんだ。
 そのための手伝いをあたしはした。そしてお前はそれを一生覚えていてくれる。
 こんなに嬉しいことは、ねぇぜ。なあ、そう思うだろ、紆余――?」
 お前が覚えている限り。あたしはお前の背中で一生生き続ける。
 だからお前は、未来へ行け。
 どうやら一刀両断が言いたいのは、そういうことだった。
 一刀両断が指差すのは紆余曲折ではなく。その先にある未来だった。
 紆余曲折はそれを理解し、
 そして……だから、笑顔で返した。
「……リョーコさんが背後霊だと、たびたび背中をどつかれそうですね」
「ははっ、そうだな。事あるごとに背中を痛ませてやるよ」
「そういえばリョーコさんに斬られたのも背中でした」
「確かにな。なるほどあたしはお前の背中に痛みを与え続ける存在になるわけだ」
「手加減してくださいよ。背中が曲がって老いたら車いすだなんて、僕は嫌です」
「お前が背中を強靭にすればいいだけの話だろ」
「えー……筋トレはめんどくさいなあ」
「筋トレは大事だぜ。筋肉を衰えさせないことが長生きの秘訣とはよく言う」
「そうですけど……いや、そうですね。ああもう、やりますよ筋トレ。長生きします。
 沢山生きて、いっぱい美味しいもの食べて、色んなところに行って……色んな……」
 言葉は途中で切れかけた。一刀両断はそれを繋いだ。
「色んな人と関わって、色んな世界を見て。
 沢山のことを通じて、沢山のことを学べ。やりたいことぜんぶやれ。
 あたしの信じたお前はきっとそれを全部やれる。あたしたちの分までなんて考えなくても、全部。
 だから、泣くなって。なあ」
「どのくらい。やれば。いいんでしょうか」
「お前がやりたいだけやればいい」
「……いつまで生きれば、いいと思います?」
「お前が満足するまで生きればいい」
「僕は……夢を見つけられると、思いますか」
「見つけられるまで、生きれるさ、お前なら」
「……」
「だからほら」
 一刀両断は両手を広げた。
 そして。紆余曲折が右手に持っている、ボウガンを見て言った。
「あたしの胸に、そのボウガンの矢を、くれ」

376 :
 
 紆余曲折に向かって、願った。
 それが止めようのないことであることを、紆余曲折は理解していた。
「もう、ですか」
 それでも思わず、口から出る。
 さっき優柔不断が死んでからまだ一時間も立っていない。
 ルールを鑑みればまだ二十三時間は死者が出なくても問題ない。
 だからそれは、できるだけ先延ばしにすべきことのはずだった。紆余曲折の中では。
「もうだ。むしろ遅すぎるくらいだぜ。もう充分、喋ったろ」
 
 でも、一刀両断はそんな甘ったるい考えを、やはり一刀両断するのだった。
  
「充分って……僕はまだ」
「少なくともあたしの話はこれで終わりだ。あとはお前が喋るだけ。
 その後は、もう何もない。ぜんぶ終わりだ。だからあたしは、死ぬ体勢に入った」
「リョーコさんは……生きたくないんですか?
 まだいいじゃないですか。もうちょっとくらい生きたって……」
「そりゃ生きたい。けど、それよりお前に生きて欲しいと思う気持ちのほうが強い。
 そしてあたしはこんな性格だからまどろっこしいのが嫌いだ。分かってるはずだぜ、紆余」
「分かってますよ!
 でも……僕だってリョーコさんに生きてて欲しいんですよ。なのに……」
「そりゃ嬉しい言葉だけどさ」
「なのになんで。僕を急かしてまで。こんなの……僕の意志は、無視ですか!」
 紆余曲折は涙声で叫んだ。
「一刀両断さんは……勝手に決めすぎなんですよ……」
「否定はしない」
「……僕は! 学校の勉強がつまらなくて、ゲーセンに逃げ込んだ。
 そのゲーセンでも人間関係で間違って、どこに行ったらいいかも分からなくなってた」
「……」
「夢も、居場所も無くて。空っぽの僕は自分すら失くして、死にたくない気持ちだけがあって。
 死にたくないだけの僕が生き残るなんてできるのかなんてゲーム気分で考えてた、
 けどリョーコさんは僕の願いを、「死にたくない」から、「生きたい」に変えてくれた!
 生きたいって理由で、戦っていいって……そう言われたとき、僕は救われた気がした」
「……紆余」
「それだけじゃない。リョーコさんはいろんなものを僕にくれた。何度も助けてくれて。
 僕が決断しきれないことを決めてくれて。間違ったことをしようとしたときにも、現れて止めてくれて。
 ……なのに、なのに僕が返すのがただRことだなんて、覚えてもらえればそれでいいなんて……」
 そこまで言い切ると涙をぬぐった。紆余曲折は前を見た。
 一刀両断はどう言葉を返したらいいのか分からないといった顔をしていた。
 そりゃあそうだろうと紆余曲折は思う。きっと一刀両断は、
 物わかりのいい紆余曲折なら、すぐに理解して殺してくれると思ってたんだろうから。
 でも、紆余曲折はそれで終わらせたくなかった。
 勇気凛々にボウガンを向けた理由と同じ。何もしないまま、生き残らされたくなんてない。
 そんなイージーモードで終わるのは。嫌だった。いや。ダメだと、思った。
「ふざけてる……納得、できません。こんな終わり、認めない」
「紆余?」
 だから。ただじゃ、殺さない。
「リョーコさん。決闘をしましょう」
「……は?」
 紆余曲折は、申し込む。

377 :
 
「きっともう僕が何を言っても、リョーコさんは自分を曲げない。
 リョーコさんを生かそうとするのも死ぬのを先延ばしにするのも説得はたぶん無理だ。
 だからその前に。リョーコさんを僕がR前に。僕がどれくらいたくさんのものをあなたに貰ったかを、あなたに見せる」
「……お前……」
「契約(ルール)違反じゃないでしょう? だって、僕はちゃんとリョーコさんをR気なんだから。
 でもリョーコさんは、殺される気でいないでください。全力で僕を殺しに来るんだ。
 それで僕が殺されてしまうようなら、僕はそんな期待をかけるほどの男じゃなかったってことで、
 リョーコさんだって諦めて生き残ろうとしてくれるでしょう……違いますか?」
「そうか……ははっ・……いや、違わねえ。違わねえよ、紆余」
 一刀両断は話を呑みこむと嬉しそうに笑った。
「そうだな! お前、そうだ!
 生き残らされるなんて嫌だもんな……ちゃんと殺し合わなきゃな!」
「そうです。僕はもう……逃げるだけじゃないってことを、見せるんだ。
 リョーコさんが僕のことを、未来に進める力があるっていうなら。
 それが本当かどうか、僕自身が知るために。僕は万全のあなたを越えなくちゃならない!」
「……ごめんな。あたしお前のことまだ舐めてたな。ただ喋って終わりなんてあたし達らしくなかった。
 いいぜ、受ける! 受けるぞその決闘、すぐにでも!」
「手加減は絶対に許さないですよ」
「するわけねーだろお姉さんを信じろ! お前こそ死んでも後悔するなよッ」
「死ぬなんてありえないんでしません!」
「生意気言いやがって――そういうお前が、あたしは好きだ!」
 日本刀を構え、一刀両断は即座に斬りかかる。
「おら行くぞ!」
「奇襲ですかフェアじゃないですね!
 でも僕も、リョーコさんのそういうところ、正直いって、好きですよ!」
「はっ、じゃー両想いってことだな!」
 紆余曲折はその奇襲を分かっていたかのように後ろに距離を取って避ける。
 避けながら牽制のボウガンを一発撃つ。一刀両断は弾く。
 銃弾ならまだしも縦に長いボウガンの矢なら側面を面で弾いてやれば無力化できる。
 だろうことを紆余曲折は読んでいた。
 だから、今の一撃はただの小手調べだ。
 ――お互い胸を弾ませながら相手を見つめた。紆余曲折は次なるボウガンの矢を込める。
 しんみりした、重い空気は二人の間にはもうなかった。すべては単純な話になった。
 勝ったほうの、勝ち。負けた方の、負け。
 
「おい言っとくが! 普通に放たれたボウガンくらいだったら今みてーに弾くぞあたしは。
 もっと工夫しろ、出来んだろ? 決闘申し込むくらいだ勝算がないなんて言わせねーぞ」
「さあどうでしょうね。内心めちゃくちゃびびってるかも」
「食えねーこと言うようになったな! ああちくしょう、楽っしいじゃんか!」
 そう長い戦いにはならない。下手をすれば、次の一合で決着するかもしれない。
 でももっと長く続けていたい。でもそんな手抜きはしちゃいけない。
 紆余曲折はまるでゲーセンで楽しく対戦していたあの頃を思い出した。
 ゲーセンではいつの間にか自分だけが強くなりすぎて、一緒に楽しめる相手がいなくなっていた。
 けれど今。
 目の前にいる一刀両断との、大好きなヒトとの戦いの、なんて楽しいことだろう。
 簡単なことだった。
 ゲームの中だけで戦うんじゃない。現実でも戦えばいいだけの話だった。
 それから逃げていたんじゃ結局、ゲームがつまらなくなるのも当たり前だ。
 夢が見つからないのも、当たり前だ! 現実を戦ってこそ、夢を掴めるんだから!

378 :
 
「だいたい分かりました。この一撃で決めます」
 ……二度ほど、応酬があった。
 もう一度矢をつがえながら、紆余曲折は一刀両断に宣言した。
「あたしも大体分かってきたな。次の一撃弾いて、今度こそ壁に追いつめる」
 一刀両断も宣言した。
 いま紆余曲折が居るのはエレベーターホールの壁の少し前の位置。
 気付けば追いつめられる直前の位置だった。
 《四秒迂回》しても逃げ切れるかどうか怪しい位置取りに追い込まれていた。
 やっぱりリョーコさんは強いなと紆余曲折は思った。
 でも、だから勝たないといけないんだと、強く心に刻んだ。
「これでさよならですね、リョーコさん」
 別れの言葉は。短く。
「ああ――じゃあな、紆余」
 お互いに、死なないつもりで――紆余曲折は。引き金を、引いた。

――――
投下終了。
43話「第三放送」へ続きます。

379 :
投下乙です ああ結末が気になる!
自分も投下します 短いです

380 :
32話 運と偶然とニアミスと
工場を後にした人狼・コーディはC-2エリアにて小さなガソリンスタンドを発見した。
建物内の明かりは灯っていない。
多少の夜目が利くコーディは遠目から建物内を見てみるが特に動く影は無い。
「ガソリンスタンドか……特に何も無さそうだな」
ガソリンスタンドに有る物で、武器として使えそうな物と言えば、工具類だろう。
だが、先刻の工場で工具類は漁った。
現在コーディはバールを装備しているが工場で調達した物だ。
再び似たような工具を漁る事も無いだろう、とコーディは考える。
(ちと疲れたから休もうと思ったんだけど……中に誰か居たら面倒だな……)
殺人そのものは容易い、だが、疲れている時には戦いたくない。
面倒と言うだけでは無く、疲労で動きが多少なりとも鈍っていれば返り討ちに遭う可能性も有る。
ガソリンスタンド内に動く影は見えなかったが、隠れている可能性も考えられる。
何にせよ今は敵と相対したくは無かった。
(北の森の方、行ってみるか)
コーディはガソリンスタンドの建物内には入らず、北方向に広がっている森へ行く事にした。
ガソリンスタンドから離れて行くコーディ。
結果的にコーディの判断は彼にとって正しかったと言えよう。
ガソリンスタンド内には先客が居た。
小学校にてAOKの魔の手から逃れたガーゴイル獣人の呂車である。
呂車は建物内のカウンターの影に身を潜めていた。
顔をカウンターから覗かせウィンドウガラスの向こうを窺う。
動く影は無い。
ついさっきまで殺し合いに乗った人狼が居た事を呂車は知る由も無い。
もしコーディがまだ居た時に呂車がカウンターから顔を出したり、コーディが建物内に入ったりでもすれば、
一戦は回避出来無かったであろう。
(誰も居ないか)
そう判断して呂車は再びカウンターの陰に隠れる。

381 :
(取り敢えず明るくなるまではここに居よう……)
カウンター裏の壁に貼られたグラビアカレンダーや、
タイヤやオイルの広告ポスター等を見詰めながら呂車は会場が明るくなるのを待つ。

【黎明/C-2ガソリンスタンド】
【コーディ@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]健康
[装備]バール(調達品)
[所持品]基本支給品一式、ステーキナイフ@自由奔放俺オリロワリピーター、
     千切れた電気コード@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[思考・行動]基本:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
       1:北の森へ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※呂車の存在には気付いていません。
【呂車@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いを潰す。殺し合いに乗っていない参加者を探す。
       1:明るくなるのを待つ。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※AOKの容姿のみ記憶しました。
    ※ガソリンスタンド内に隠れています。コーディの存在には気付いていません。

382 :
投下終了です

383 :
投下します

384 :
33話 血と炎のカーニバル
時計塔には現在四人の参加者が依っている。
MUR、貝町ト子、アルジャーノン、鈴木フグオの四人。
いずれも殺し合いには乗っていない。
「首輪のサンプルねぇ……」
「キャプチュー」
ト子から首輪解除に関する話を聞かされたアルジャーノンとフグオ。
首輪のサンプルが有れば首輪を解除する方法が見付かるかもしれない、解除出来れば、
脱出への糸口が見える、と言うト子の説明にアルジャーノンとフグオは生還への希望を抱かずには居られない。
「実際に中身を見てみないと何とも言えん。だから、私から言うのも何だが、過度な期待はしないでくれ」
それを見越して二人に釘を刺すト子。
解除出来るか否かは彼女が言った通り実際に首輪の中身を見てみなければ判断出来ない。
「ああ分かった……」
「分かったプリー」
「あ、そうだ(唐突)、外の様子を見てくるゾ」
唐突にMURが自分の武器であるStg44を持って外の様子を見に出掛けた。
時折唐突な行動に出る彼に他の三人は困惑しつつも今では慣れたようだった。
MURは正面玄関の扉を開け、時計塔正面に広がる庭園を見渡す。
少しずつ夜明けが近付き段々と明るくなりつつあるとは言えまだまだ暗い。
夜明け前の外の空気は肌寒さを感じさせる。
「うーん、ちょっと寒いゾ……でも、特に異常は……」
異常は見当たらないとMURが判断しようとした、が、庭園の一部、暗がりになっている場所に視線を移した時、MURの表情が変わる。
その暗がりの所で何かが動いたような気がした。
最初は目の錯覚かと思ったが、よく見ると、そこには確かに何かが居た。
そして「それ」は全身が漆黒で、闇に紛れている――――そこまで分かった時「それ」は暗がりがら跳び上がり、
MURの目の前へと着地した。
「何だコイツ!?」
驚きの声を上げるMUR。
「それ」は、黒い身体を持った大きな犬だった。
しかし、全身が光沢を放つラバーのような質感の甲殻的な物で覆われ所々に筋繊維と思しき物が露出し、
四本の足にまるでナイフのような鋭い爪が付いたその姿は、MURが知る犬のそれとは余りにかけ離れていた。
「獲物見ーつけた……君の他にもこの建物の中に何人か居るみたいだね?
ニオイがするから分かるよ……?」
黒い巨犬は人間の言葉を発した、が、既に喋る馬と会っているMURはそこには特に突っ込む事はしない。
(そう言えば、フグオ君やアルジャーノンが言ってた黒い犬って……もしかしてコイツか?)
先刻にフグオとアルジャーノンから聞かされていた話を思い出すMUR。
もし目の前の犬がフグオとアルジャーノンを襲った犬だとすれば、間違い無く殺し合いに乗っている。

385 :
「お前は、殺し合いに乗っているのか?」
確認の為、黒い巨犬に問うMUR。
返答は彼の予感通り、肯定であった。
「そうだよ。思う存分殺しが出来るんだ。こんな良い機会、逃す手なんか無いだろ?」
「くっ……!」
MURは持っていたStg44を構えようとした。
しかし、黒犬がMURに強烈な体当たりを喰らわせる方が早かった。
背後の玄関扉はぶち破り、ホール内をバウンドした挙句壁に激突し、うつ伏せにMURは倒れたまま、ピクリとも動かなくなった。
「人間ってホントに脆いなぁ……うーんこの程度じゃまだまだ気持ち良くなれないや」
MURが死んだと思った黒犬――――ケルベロモンは、
時計塔内へと足を踏み入れ、内部に居るであろう他参加者を探し始める。
程無く、目的の物は向こうから現れてくれた。

◆◆◆

尋常では無い大きな物音が聞こえ、ト子達三人はエントランスホールへ飛び出した。
そこで見た物は、壁際でうつ伏せのまま動かないMUR、
破壊された玄関扉、そして黒い身体の巨大な犬。
「居た居たぁ〜、うっふふふ」
ト子達の姿を認め、獲物を見付けた時のそれと同じような嬉しそうな表情を浮かべる黒犬。
その様子を見て、三人は更に黒犬が激しく危険な思想を持っていると判断する。
「ん? あれ? そこのおデブちゃんと馬は……また会ったねぇ」
「な……? お前、まさかあの時の!?」
「僕達を襲った大きな黒い犬キャプ……!?」
黒犬の言で、アルジャーノンとフグオはこの黒犬が数時間前に自分達を襲撃した巨犬と同一人物だと知った。
「また会えて嬉しいなぁ……今度は逃がさないよぉ!」
歓喜の声と同時に、黒犬はト子達に飛び掛かった。
その牙が捉えたのは、アルジャーノンの首。
黒犬は三人の中でまず彼を選んだ、彼は運が無かった。
瞬く間に首の骨をへし折られ、アルジャーノンは呆気無く、そして二度目となる死を迎えた。

【アルジャーノン@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター  死亡】
【残り  40人】

386 :
「ああ、アルジャーノン……!」
目の前でアルジャーノンが惨殺されるのを見て戦慄するト子。
「はぁぁぁ……ん……やっぱり……イイね」
ブルブルと身体を震わせ、目を細め口から血の混じった涎を垂らし天井の方を向く黒犬。
「!?」
ト子は信じがたい光景を見る。
黒犬の股間から、赤い肉の竿がそそり立ち、それが脈打って床に白い液を飛び散らせていた。
それが何なのかは、良く考えなくても分かった。
(嘘……!?)
一体なぜこの黒犬は性的絶頂に達しているのかはト子には分からなかった。分かる筈が無い。
だが、殺しをしておいて精を撒き散らすこの黒犬が異常であると言う事は理解出来、ト子は嫌悪感を覚える。
「もっと、もっと気持ち良くなりたいんだぁ……! 次は君だよ……?」
「!!」
黒犬は次の標的をト子に定める。
牙をにいっと覗かせ嗤うその様は正に狂気を湛えるとしか言いようが無い。
「ああ、名乗っておこうかなあ。俺はケルベロモン……君はとても可愛いから、じっくり引き裂いて――――」
ケルベロモンと名乗った黒犬が嬉々として弁舌をしていた時。
ダァン!! ダァン!! ダァン!!
「ガアアアァアッ!?」
三発の銃声が響き、ケルベロモンが悲鳴を上げた。
何が起きたのかすぐには理解出来なかったト子だったが、ケルベロモンの脇腹から血が噴き出しているのが確認出来、
先程の銃声と状況を掛け合わせてケルベロモンが銃撃されたのだと悟る。
「そこまでだゾ……!」
怒りに満ちた男の声。
ト子とケルベロモンが声の方向へ顔を向ける。
そこには突撃銃を構えるMURの姿が有った。
「MURさん!」
「くっ、生きていたのか……!」
「空手部で鍛えた身体が役に立ったゾ……よくもアルジャーノンを殺したな! 銃殺も辞さない!」
仲間を殺された事により激しい怒りを下手人であるケルベロモンに向けるMUR。
「……人間風情が、舐めるなよ……この子は後だ、今度こそお前の息の根を止めてやる!!」
先程までの甘ったるい口調から一転し、本気の怒号と共にケルベロモンは口から火炎を吐き出した。
ケルベロモン種の必殺技の一つ「ヘルファイアー」である。
地獄の業火を表すその名の通り、人間等一瞬で消し炭にしてしまう程の火力を持った炎がMUR目掛けて吐き出されたのだ。

387 :
しかし、MURは紙一重でその炎を躱す。
それでもかなりの熱を感じたもののMURの動きを止めるには至らない。
MURはStg44を構え直し、狙いを定め、引き金を引いた。
ダァン!!
銃口から放たれたその一発の銃弾は、真っ直ぐにケルベロモンの首元へ飛んでゆき、
「ッ!?」
首筋を抉った。
「ガ、ア……! このぉお!! ……う、う?」
なおもMURに向かって行こうとしたケルベロモンだったが、
身体から力が抜け、ガクンと腰を落としてしまう。
意識がどんどん薄れていく。
首の傷口から鮮血がどばどばと溢れ出し、床に赤い水溜りが出来上がっていく。
「え? う、嘘、俺……死ぬの? こんな、こんな、人間なんかに」
ケルベロモンは人間などすぐに壊れる脆弱な存在だと思っていた。
だが、その人間に致命傷を負わされ、彼の命は消えようとしている。
その現実は、彼には受け入れがたい物だった。
「やだ……やだ……俺は、まだ……もっと……気持ち……よ……く」
思考は幾ら拒絶しようと、身体は血液の大量喪失によりその生命維持活動を続ける事が出来なくなり、
やがてケルベロモンはその巨体を横たえ血溜まりの中で動かなくなった。

【ケルベロモン@ゲーム/デジタルモンスターシリーズ  死亡】
【残り  39人】

「ト子ちゃん、大丈夫か?」
MURがト子の元に駆け寄る。
「ああ、私は大丈夫だ……MURさんこそ大丈夫なのか?」
「空手部で鍛えていたからな、ちょっと痛いけど」
「痛いで済むような状況にも見えなかったが……そうだ、フグオ!」
「あっ、倒れてるゾ!」
床に仰向けに倒れているフグオの所へ向かう二人。
「怪我はしてないみたいだな。気を失ってるだけみたいだゾ」
「あんな化物に襲われて目の前で同行していたアルジャーノンが咬み殺されたんだ、無理も無いだろう」
「アルジャーノン……悲しいなぁ……」
仲間の死を悼むMUR。
涙をも流す、が、かなり有り得ない軌道を描いて流れ落ちて行った。
「悲しんでばかりも居られないゾ……アルジャーノンの分も俺達は生きなきゃ(使命感)」
「そうだな……MURさん、今、アルジャーノンと黒犬の死体が有る。
首輪を手に入れるなら今じゃないか……?」
「お、そうだな」

388 :
MUR達が欲する首輪のサンプル。
今、死体が二つ有り、ト子の言う通り首輪を手に入れるなら今が絶好の機会だろう。
「アルジャーノンの首を切るのは気が引けるけど……やむを得ないゾ。
でも切断する道具はどうすっかな〜」
「確か、アルジャーノンが肉切り包丁を支給されていた筈……使わせて貰おう。取ってくる」
ト子は休息に使っていた部屋へ、アルジャーノンの支給品である肉切り包丁を取りに向かった。
「ん?」
漂ってくる焦げ臭さ。
見ればホールの一角から火の手が上がっている。
先程ケルベロモンが放ったヘルファイアーによる物だ。
「まずいな、消火器は……有った」
置かれていた消火器を手に取り消火を試みるMURだったが。
「……使い方が分からないゾ」
以前学校の防火訓練か何かで消防署の職員が消火器の使い方をレクチャーしていたような気もするが、
もうかなり前の話なのでよく覚えていない。
「えーと、これを、こうで、こうして……」
本体に記された手順を読みながらどうにか消火器を使おうとするMUR。
しかしその間に火の手はどんどん広がっていく。
「よし! じゃあぶち込んでやるぜ!」
ようやく準備が整い、MURは炎に向け消火剤を散布する。
しかし、既に消火器で消せるレベルの炎では無くなってしまっていた。
「……」
空になった消火器を持ったまましばし立ち尽くすMUR。
炎はどんどん燃え広がり、ホールの天井にまで達しようとしている。
「やべぇよ……やべぇよ……」
「MURさん、持ってきたぞ。ついでにフグオの荷物も……うわ! 燃えてる!」
戻ってきたト子が火災に驚く。
「消火器使ったけど間に合わなかったゾ……さっさと用を済ませてここから逃げよう」
一刻も早く首輪を回収して時計塔から避難しなくては。
MURはト子から肉切り包丁を受け取り、ケルベロモンの死体の元に向かう。
先にケルベロモンにしたのは、仲間として行動していたアルジャーノンの死体を損壊するのにまだ抵抗感が有った為である。
肉切り包丁を鋸のように使い、ケルベロモンの首を切断していく。
既に息絶えており、大量の血液が流出した後の為か、もうそれ程血は噴き出さなかった。
包丁越しからでも伝わる嫌な感触を堪えつつ、MURは手を動かし続けた。

389 :
ゴリッ、ブチッ。
そして生々しい音と共にケルベロモンの首と胴体が離れる。
それと同時に、念願の首輪を手に入れた。
包丁と首輪に付着した血液を、床に敷かれた絨毯で拭き取るMUR。
その頃には火災はいよいよのっぴきならないレベルになっていた。
煙も充満し始め、熱も凄まじく、ガラスが割れる音も聞こえる。
もはやアルジャーノンの首輪まで回収する余裕は無かった。
「このままじゃ焼け死ぬゥ! もう駄目だ、ここを出るゾ! フグオ君は俺がおぶるゾ!」
「分かった!」
未だ気絶したままのフグオを背負うMUR。
肥満体であるフグオの体重はかなりの負担であったがだからと言って見捨てる訳には行かない。
扉が壊され開放された玄関へとフグオを背負ったMURとト子は向かう。
【黎明/B-6時計塔】
【MUR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]全身にダメージ(行動に支障は無し)、鈴木フグオを背負っている
[装備]ハーネルStg44(26/30)@現実
[所持品]基本支給品一式、ハーネルStg44の弾倉(5)、肉切り包丁@現実、ケルベロモンの首輪
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。クラスメイトと合流したい。
       1:ト子ちゃん、フグオ君と行動。
       2:時計塔から避難する。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※貝町ト子のクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
【貝町ト子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]トンファーバトン@現実、鈴木フグオのデイパック
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合いはしないが、必要な時は戦うつもりでいる。
       1:MURさん、フグオと行動。
       2:テトと会ったらどうする……?
       3:太田とその取り巻きには会いたくない。他のクラスメイトとも余り会いたくない。
       4:時計塔から避難する。
       5:首輪を解析したい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※薬物中毒は消えています。
    ※MURのクラスメイト、鈴木フグオの知人の情報を得ました。
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]気絶、MURに背負われている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:殺し合いなんてしたくない。小鉄っちゃん達に会いたい。
       1:(気絶中)
[備考]※少なくとも金子翼登場から彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※MURのクラスメイト、貝町ト子のクラスメイトの情報を得ました。
    ※アルジャーノンが殺害される所を見て気絶しました。
※B-6時計塔にて火災が発生、消火されなければ時計塔は全焼します。
※アルジャーノンとケルベロモンの死体は時計塔エントランスホールに放置されています。
《支給品紹介》
【肉切り包丁@現実】
その名の通り肉を切る為の包丁。牛刀包丁とも言われる。
◇◇◇
投下終了です。

390 :
連投規制回避の為無理矢理本文中に投下終了宣言を
入れましたが分かり難いのでやはりちゃんと宣言します
投下終了です

391 :
投下します

392 :
34話 Everybody plays the game
太田太郎丸忠信と出会ってから、野獣先輩こと田所浩二はクラスメイトや、
殺し合いに乗っていない参加者を捜すべく太田と共に市街地を歩き回っていたが、
誰とも遭遇しないまま数時間が過ぎた。
「ぬわああああん疲れたもおおおおおおおん」
歩き疲れ愚痴をこぼす野獣。
「誰とも会わねぇな……遠くから銃声みたいなのはたまに聞こえてくるんだが」
「太田ァ……ちょっと休もうぜ」
「しょうがねぇなぁ……つってもどこで休むんだ?」
「こ↑こ↓なんてどう?」
野獣が指差したのは近くに有った民家。
二階建てのこじんまりとした家だ。
「別に良いけど……開いてんのか?」
「見てみよう」
玄関扉に近付きノブに手を掛ける野獣。
すると、扉はすんなりと開いた。
外部からこじ開けられたような痕跡は見当たらないので元々鍵は掛かっていなかったようだ。
「おっ、開いたぜ太田」
「そりゃ良かったな……中に先客居たりしねぇか?」
「大丈夫だって安心しろよ、お前と出会った店だって、
鍵開いてたけど俺来た時には誰も居なかったし。入って、どうぞ」
「ここはお前の家か」
自分の家でも無いのに上がるよう促す野獣とそれに突っ込みを入れる太田。
何はともあれ二人はその民家――表札には高田と書かれている――の中へと入って行く。
一先ず荷物を置こうと居間に入った。
「ファッ!?」
「! おい、居るじゃねぇか人!」
野獣の読み(?)は外れた。
居間には太田が予見した通り先客が居たのだ。
ソファーの上に男が横になっている。
寝息が聞こえるのでどうやら眠っているだけらしい。
「わざわざ起こす事も無ぇだろ、別の所行こうぜ」
男が殺し合いに乗っている可能性も無きにしも非ず。
わざわざ藪をつつかなくても良いと、太田は別の休憩場所を捜そうと主張するが。

393 :
「ちょっと待ってくれ太田」
野獣はそれを拒否する。
「ああ? もしかしてお前のクラスメイトか?」
「そうだよ。こいつは俺のクラスメイトのKMRだって、はっきり分かんだね」
「あー、こいつが……」
野獣のクラスメイトについて、太田は市街地を歩き回っている時に当人から大まかな事は聞かされていた。
太田もまた自分のクラスメイトについて、自分に不利が働かない程度のレベルで野獣に話している。
但し以前に殺し合いをしていた事は話していないし今の所話すつもりも無かった。
「おいKMR起きろよ。ホラホラホラホラ」
寝ているKMRを起こそうとする野獣。
クラスメイトでも殺し合いに乗っている可能性は否定出来無いと言うのに、
やはりこの男は警戒心が足りないと太田はつくづく思った。
「ん……んん……う!? うわああああ!?」
目覚めていきなり目の前に人が居たせいか酷く驚いてKMRは飛び起きた。
「落ち着けKMR! 暴れんなよ……暴れんな……俺だ、田所だよ」
KMRを宥める野獣。
次第にKMRも落ち着きを取り戻していく。
「せ、先輩……?」
「そうだ。大丈夫だ安心しろ……俺達は殺し合う気は無いからな」
「ああ、良かった……」
知り合いだと分かり安堵の表情を浮かべるKMR。
「お前一人か? 他には誰も居ないのか」
「はい、僕一人です。先輩達がこの殺し合いで初めて会った参加者で……そう言えば、先輩の後ろの方は?」
野獣の後ろに立っている太田についてKMRが尋ねる。
KMRから見てみれば太田は見知らぬ人物なのだから何者か訊くのは当然の事だった。
「ああ、こいつは太田って言うんだ。
商店街で会ってそれ以来一緒に行動してるんだよ」
「そう言うこった。宜しく」
「そうなんですか……僕はKMRって言います」
野獣から太田について説明され、自身も改めて自己紹介するKMRだったが、
彼は太田からどこか信用出来ないオーラを感じ取っていた。
表面上は大人しく同行しているがその腹の底に何か隠しているのでは無いか、と。

394 :
「KMR、俺達疲れ、溜まっちゃってさぁ……ここで休ませてくれよな〜頼むよ〜」
「良いですよ。僕もここ使わせて貰ってるだけですし……」
太田の事が気になったが、かと言って太田だけ追い出す訳にも行かないので、
KMRは大人しく二人を休ませる事にした。

【黎明/D-4、E-4境界線付近高田家】
【野獣先輩@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]疲労(大)
[装備]竹刀@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:殺し合う気は無い。遠野達や殺し合いに乗っていない参加者を捜す。
        1:太田と行動する。
        2:しばらくKMRの居る民家で休む。
[備考]※動画本編、バスガイドピンキーに気絶させられた直後からの参戦です。
    ※太田太郎丸忠信から彼のクラスメイトについての情報を大まかに得ています。
【太田太郎丸忠信@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を最優先とする。その為には手段は選ばない。
        1:野獣と行動する。いざと言う時は盾に使う。
        2:しばらくKMRの居る民家で休む。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野獣先輩から彼のクラスメイトについての情報を大まかに得ています。
【KMR@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]健康、太田太郎丸忠信に対するぼんやりとした不信感
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:生き残る。殺し合いはしたくない。
        1:野獣先輩と会えたのは良かった……でもあの太田って人はどうも……。
        2:クラスメイトを捜したい。
        3:しばらく民家で休む。
[備考]※動画本編、バスの中で眠らされた直後からの参戦です。
    ※太田太郎丸忠信に対してどこか怪しく感じています。

395 :
投下終了です。

396 :
投下します、が、容量大丈夫かな…

397 :
35話 となりのレジャー施設
銀鏖院水晶は、建設現場にてクラスメイトのテトに建設現場内で出会った野原ひろし殺害を阻止された後、
撤退し、建設現場を後にした。
そして現在、B-5エリアの道路を北方向へ歩いている。
外はだんだんと明るくなり、夜明けが近付いている事を示していた。
近くを流れる川のせせらぎが聞こえる以外は、とても静かだった。
「あれは……」
前方の、池の畔に何か施設が有るのを見付ける水晶。
地図と照らし合わせてみると、どうやらボート乗り場らしい。
「誰か居るかしら……行ってみよう」
水晶はボート乗り場に向かい始める。
別にボートに乗って遊ぼうと言う訳では無い、誰か参加者が居れば、相手の実力や武装にもよるが、
襲撃を仕掛けるつもりであった。
そしてボート乗り場に到着し、水晶は桟橋を歩き始める。
「うっ!?」
ある物を見つけ、驚く水晶。
桟橋の橋脚に引っ掛かるように、白い毛皮の犬か狼の獣人の男が水に浮かんでいた。
多分、と言うより間違い無く死んでいる。
首が有り得ない方向に捻じ曲がっているのでどうやら首の骨をへし折られて殺され、
その後に池に死体を捨てられたらしい。
漂う死臭や死体の痛み具合から察するに殺されたのは今さっきでは無いようだ。
(お気の毒……)
多少の憐れみこそ感じたものの、それ以上は水晶は獣人の男の死体に興味を持たなかった。
すぐ近くには獣人の男の物と思われるデイパックが放置されていた。
中身を漁るが、基本支給品しか入っていない。
ランダム支給品が何だったのかは分からないが、
恐らく獣人の男を殺した者が持ち去ってしまったのだろう。
待合所や事務所も見て回るが、誰も居ないし何も無い。
収穫はゼロだった。
「ちょっと疲れた……」
建設現場から長距離を歩き、足に疲労が蓄積していた水晶は、待合所のベンチに腰掛ける。
自販機で飲み物でも買いたかったが持ち合わせが無いので支給品の水で我慢する。
少しここで休み、その後はどこに行くか――水晶はふと崖の上に目をやる。

398 :
(そう言えばこの崖の上にレジャー施設があるのよね)
水を口に含みながら、水晶は次の行き先を決めた。

【黎明/B-4ボート乗り場】
【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(中)
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝し「愚民と自分は違う」事を証明する。
       1:少し休憩してから、レジャー施設へ向かう。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
    ※野原一家の名前を記憶しています。
    ※能力の制限については今の所不明です。
    ※支給品の殴られウサギ@アニメ/クレヨンしんちゃんは放棄しました。
    ※B-4ボート乗り場にてフーゴ(名前未確認)の死体を発見しました。

399 :
投下終了です 次スレ立てなきゃ……

400 :
立てられませんでした……誰か立てて下さいお願いします!

401 :2014/07/28
以前自分が間違って立てたのがまだ残っていたそうなので
こちらへ……
http://maguro.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1393846727/l50

ロボット物SS総合スレ 72号機
二人目のふみえさんも突然に
紙芝居と紙芝居見た後のちびっ子の会話
【ファンタジー】ドラゴンズリングV【TRPG】
新漫画バトルロワイアル第12巻
【リレー小説】すぐに死ぬ殺人鬼スネ夫 PART834
茨木敬くんの日常
ストライクウィッチーズワールドSS総合スレ
【リレー小説】隙あらば殺人鬼スネ夫 PART94
【スローライフ】南国の楽園バハラマルラTRPG
--------------------
テニプリ全般雑談 Part20
@@昔@@
壮絶な死に方をするゲーム
【書籍】 「十分に謝った」という傲慢〜大沼保昭著「韓中日歴史認識、何が問題か」★2[08/15]
♪吉右衛門】 播磨屋スレ(十七) 【歌又兄弟ほか♪
【凶悪】ブス男が苦手なモノを推測しよう!【ブサ】
昨年の九州ツアーが不評だったHKT48さん、今日のコンサートもやっぱり不評wwwwwwwwwwwwwwwwww
「正義の反対はもう一つの正義(キリッ)」→これ以上に無力な格言ってあるか? [603820617]
The Weeknd
【よしっ】ゴールドジム十三大阪 part3
AGEやるくらいなら黒子のバスケを日5にするべき
【池袋〜】有楽町線沿線【和光市まで】
茨城県の温泉 Part2
【不細工歌下手】宇多田ヒカス【中古でゴミ同然】 [無断転載禁止]©2ch.net
【新型肺炎】各地でにぎわい消沈 ホテルは空室投げ売りも
【国家の罠】佐藤優【ラスプーチン】3
【良い時計してまんなぁ】京都人特有の言い回しが「遠回しすぎて分かりにくい」とSNSで話題へ
【ファイトキッズ】コレクションポケット【パカパカ】
SMAPを仲直りさせるにはどうしたらいいかを本気で考察するスレ
必死なワタクの自演をご覧ください(笑)
TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼