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1 :2011/10/17 〜 最終レス :2018/10/17
創発発のキャラクターで創作するスレです。
もちろん新たなキャラを創作するのもアリ。
ハルト閣下は専用スレがあるのでそちらでやったほうが喜ばれるます。
作品まとめ
創作発表板@wiki - 創発発のキャラクター総合
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/300.html
キャラまとめ
創作発表板 裏まとめwiki - キャラクター
http://www1.atwiki.jp/souhatsu_ggg/pages/35.html
避難所
創発発のキャラクター総合in避難所2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1293469882/l50
前スレ
【無限桃花】創発発のキャラクター総合3【H・クリーシェ】
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1281113345/l50
関連スレ
【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ 3作目
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1283782080/l50
ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1283595918/l50

2 :
>>1

3 :
>>1
                                 ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
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4 :
さりげなく、まとめも対応してた。乙。

5 :
念のため

6 :
ところで足土寄生って何と読むのだ?

7 :
そくど規制?

8 :
うん、そくど

9 :
暴走族や危険な運転をする走り屋を取り締まる寄生か。




いい奴じゃね?

10 :
発子「ねえ、桃花……あなたが出会ったなかで一番弱かった寄生はなにかしら……
こうと考える寄生でもいいわ……」
桃花「寄生に強い弱いの概念はない、あれは人にとりつき蝕むモノ、ただそれだけだ」
発子「質問が悪かったわ、子供が遊びで話す
トバイアス・アンドリオンと甲鱗のワームどちらがふさわしいか?
その程度の話でいいわ」
桃花「……足土寄生というモノがもっとも弱い、だが手にあまる」
発子「足土寄生……名前は強そうね」
桃花「例えばあなたの前に足土寄生がいるとする、半分に距離を詰めた、
すると……あなたの速度は二分の一になる」
発子「……」
桃花「更に距離を半分詰めた、すると速度は四分の一に、また半分につめた、更に遅く、八分の一に……
近づくにつれ速度は減衰する……さて問題、足土に到達するのはいつ?」
ゴゴゴゴゴゴ
桃花「私は、一生たどり着けない気がする……」

11 :
混ぜ方うまいなw

12 :
 帰宅して玄関を開けて、無造作に靴を放り投げて、歩き出す前に靴下まで脱いで、裸足で冷たい廊下の上に立つ。
 外は雨が降っていたので、履いてた靴は陰干しするべく乾燥剤を入れた下駄箱に押し込んで、濡れた傘は下駄箱の影に立てかけておく。
 時計を見ると、夜の八時になろうとしている頃だった。早く帰ったわけでもないし、遅くもない。私にとってはそんな時間帯だ。
 部屋着に着替えるより先に冷蔵庫を開けて、ペットボトルに入った冷たいジュースをラッパ飲みして、また冷蔵庫にしまう。
 ここまでやって、私はようやく帰宅した、と自分で思のだ。玄関を開けてからここまで、ルーティンワークとして一つにまとまっている。
 そして、冷蔵庫の影に隠れている小汚いソフトボールを見つけて、私はため息をついた。
「……また部屋ん中うろうろして。落ち着いてられないのかしら」
 私はそれを持って、居間に移動して、テーブルの上にそれをそっと置いた。
 それに一瞥くれてから、さっさと上下スウェットの部屋着に着替え始める。着替えながらも、ちらちらとそれに視線を送るが、それはぴくりとも動かずに、ただのソフトボールのままだ。
 着替えて、服を丁寧にクローゼットにしまって、テーブルの前に座る。改めてコップに注いだジュースを飲みながら、そのソフトボールを指でちょいちょい突いてみる。
「おい、いい加減馴れろよ。一人の時は動き回るクセに。それとも腹減ってスネてんの?」
 ソフトボールは突かれるまま、テーブルの上をころころと転がるだけだった。
 にしても汚いボールだ。定期的に洗ってはいるが、ほっといてもスグに汚れてしまう。泥が染みついたならまだしも、新陳代謝で垢が出てくるような、脂ぎった汚れ。後でまた洗おう。こんなのが私が居ない間に私の部屋をうろついている、となると、正直気持ち悪い。
 このボールは、ちょっと前に海に出かけた時に拾って来た物だ。
 寄生という化け物を二匹ほど始末して、その時にお世話になった海の家の爆乳お姉さんに別れを告げ、一人で海岸沿いを歩いていたら、コレが浜辺にぷかぷか浮いていた。
 私は脚を止めて、じっと見つめた。なぜならば、ほんの微かに、ホントにちょっとだけ、寄生の力を感じたから。
 私が近づくと、ぷかぷか浮かんだソフトボールからは、先端が赤く輝く触覚らしきものが数本伸びて、もぞぞと像みたいな、芋虫みたいな脚みたいなのが伸びて、げっ歯類の前歯のような歯が上下左右斜めから生えた、身体の半分ほどを占める大きな口を開いた。
 そして、横に浮かんでた木片を触覚で掴んで、ビート版代わりにして、ばちゃばちゃと泳いで逃亡を図った。
 しかし、波に押されて前に進むどころか押し流されていた。
 それでもめげずに一生懸命逃げようと、このソフトボールの寄生は水面を短い脚で叩いている。
 何分くらい見てたかは忘れたけど、浜辺の波に負けて引いては戻るコイツをじっと見ていたのを覚えてる。 
 引いては戻り、引いては戻り。ぱちゃぱちゃと水飛沫をあげながら必死こいて逃げようとする謎の生物と、突っ立ったままじっとそれを見ている私。
 差し込む夕陽と、ざーざーと静かに奏でる波打ち際。我ながら、それはもうシュールな光景だったと思う。

13 :
 あまりに健気で可哀想なんで、とりあえず拾ってみると、そのまま触覚や脚は引っ込めて固まってしまった。ただのソフトボールになった。
 普通なら寄生はぶっRところなんだけど、コイツは怯えて、出来る限り私に寄生だと気付かれないように擬態している。モロにばれてるのは置いといて。
 こんな奴は見た事がない。寄生を大量に生み出した当の私ですら、こんな奴は知らない。
 なんかRのも可哀想な気がして忍びないし、寄生である以上はほっとく訳にも行かず。
 判断力が低い優柔不断な私は、とりあえず持ち帰る事にした。
 そして、しばらくコイツを飼育して、現在に至る。


    ※


「もう三か月もウチに居るのか」
 夏の海の時は汗をかくほど暑かったが、今はもう夜になると寒気がする季節だ。
 その程度の期間、コイツを飼育しているが、いまだに懐かれたとか、こっちの存在に馴れたとかいう様子はない。私が近づくと、初めて見つけた時のようにソフトボールのフリを決め込むか、すべてをさらけ出して逃げようとする。
 かと言って、食事を与えると目の前で堂々ともぐもぐ食べ始めるので、結局は馴れたのか。
 板チョコを半分に割って目の前に置くと、細長い、先端が赤くぼんやり光った触覚が数本伸びて、チョコを丹念に嗅ぎまわる。それが食べ物だと解ると、もぞもぞと脚を出して、やたらと大きな口を開け、器用に触覚を使ってチョコを口まで運び始める。
 食事の時は非常におとなしく、ゆっくり、もぐもぐと食事をしている。
 しかし、ふと思ったのだが、コイツが食べたチョコは一体どこに行くのだろうか。
 寄生という化け物は基本的に霊的エネルギーそのものである。なので、単体では食事どころかエネルギーを補給する事自体が出来ない。文字通り、ほかの何かに寄生し、それ自体を我が物にすることによって成り立つ。単体では無意味なのだ。
 人間に取りつけば、それは人間と同じ生活サイクルで生きる。普通に食事を取り、休息し、生命を維持するのだ。
 同様に、妖怪の類に取りつけば、それは妖怪と同じになる。
 見た事は無いが、機械の類に取りつけば、おそらくは外部から電源なり燃料なりを補給するだろうし、電磁波という実態のないものに取りついた奴は、おそらく電磁波が発生するメカニズムそのものを利用していると考えられる。
 動物なら動物らしくだろうし、植物なら植物と同じになる。
 それが寄生なのだ。
 既存の生命や、妖怪、物に取りついて、それに成り代わる。
 では、こいつはどうだろう?
 何に取りついているかと言えば、捨てられたソフトボールだ。そもそも生命なんて維持する必要がない、ただの物質だ。
 物質に取りつく奴が居ない訳ではないが、たいがいは別系統のパワーソースを持っている。いわゆる九十九神や、それこそ機械など。電磁波などはそれそのものがエネルギーだ。
 でもコイツは、ただのゴムの塊に過ぎない。
 自ら動くわけでもなく、自分で動かなければただのボールである。こいつにソフトボール本来の動きをさせようと思ったら、グラウンドでキャッチボールやらティーバッティングをしないといけない。
 もちろんそんな事したってコイツのエネルギー補給にはならないとは思うけど。

14 :
 相対性理論によると、物質はエネルギーと置き換えられる。つまり、コイツが食べた物は本来ならば別の物となるか、エネルギーにならなければならない。
 だが、コイツはトイレにも行かなければ、先ほど述べたようにエネルギー補給そのものが必要ない。食った物がほぼ完全に消えて、せいぜい垢みたいな汚れが出てくる程度だ。完全なまでにエネルギー保存の法則を無視している。
 某美人物理学者が言ってたように、どこかの多重次元にでもエネルギーが逃げているのだろうか。もし三次元空間に食った物が全部戻ってきたら、それは中々の量になっているだろう。全部エネルギーに置き換わったら、関東一円を消滅させる程度の核爆発が起こる。
 しかし、コイツはそんなのお構いなしに、もぐもぐとチョコを食べる。もちろん、何も起こらない。仮に寄生状態で動くエネルギー補給をしているのだとしても、明らかに容量オーバーなのに。不思議だ。
 ちなみにコイツ、何でも食べるわけじゃない。特に鶏肉が大嫌いで、意地でも食べない。それどころか、私が鶏のから揚げでも食べようものならば、悲壮感溢れるくらいの勢いで攻撃してくる。攻撃力は皆無だけど。
 それはもう酷い暴れっぷりで、無視して食べてると、大泣きしながら部屋の中を暴れ回る。まるで鶏肉を食べる事自体が許せないかのようだ。
 最初こそウザい程度くらいに思っていたけど、あまりにも悲しそうな表情をするのでこっちが辛くなる。おかげで最近は自宅で鶏肉料理は一切口にしない。
 と、どうでもいい事を考えながら見ている。
 あっという間にチョコは無くなってしまった。
 
「……ん?」
 食べ終わったコイツは、じーっと私の飲んでいたジュースを見つめている。
 どこに目があるかは解らないけど、見ているのは解る。
「はいはい」
 指でコップを押して、目の前に持っていってやると、触手で掴んで持ち上げて、がぶがぶと飲み始めた。
 チョコと同様に、コップの中のジュースは未知の空間へと押し流されていく。この時点で飲み食いした量はコイツの体積の半分を軽く超していると思われる。
 豪快にげっぷをして、飲み干したコップはちゃんと私の方へと返してくる。さっき食べたチョコの包みも、自分で丸めて自分でゴミ箱に捨てる。躾が要らないのだけはとても助かる。
 チョコの包みについてある当たりのマークを見つけたら、それだけはよけてテーブルの上に残して行く。私がこれを集めているのを知っているらしい。
 この当たりのマークを七つ集めると金のなんとかファイトが貰えるらしい。今から楽しみだ。
 ゴミ箱に丸めた銀紙を捨てて、再びテーブルの上に戻ってきたこいつは、触手で私の手をぺちぺちと叩いて、おかわりを要求してくるが、食べ過ぎは良くないし、そもそも食べる必要もないので我慢させる。けっこうしつこく要求してくるが、私がダメと言えばたいがい諦める。
 一度だけ、あんまりしつこいモンだから、パチッと電撃出して脅かした事があった。
 そしたら、よほどビビったのか、大口開けて触手も脚も全てさらけ出し、びろーんと伸びて失神してしまった。
 脅かす程度のつもりだったのだが、コイツにとっては恐怖以外の何でもなかったようだ。
 そして、チョコを貰えなくて落ち込んだのか、えらいげんなりしてテーブルの上でうなだれてしまった。面倒な奴。
 ちなみにコイツ、名前は路歩崩。じぽほう、と読む。
 寄生の名前が大半が自分で勝手に名乗るので、名前の由来は解らない。
「ほれ、なんか言ってみろ」
「うア、おーむ……」
 突っつくと、鳴き声のような喋り声のような、どちらともつかない声を出す。
 寄生の言語能力は、取りついた物に左右される。人間に取りついた場合、その人間が持つ言語能力をそのまま引き継ぐ。もちろん、言語に限らず、あらゆる知識や技能まで引き継ぐ。
 他の可能性としては、取りついた物が元来非常に高い知能を持っていて、それが寄生されることによって、言語能力を発現する。コイツを拾った時に戦ったイルカの寄生はその類だろう。

15 :
 もう一つは、人間以外で言葉を操る存在。神や、妖達に寄生した場合。
 例を上げると、私の知る限りでは最強の寄生、悪世巣。元は日本中で信仰された神の一体だ。光り輝く炎の尾を持つ、狐の妖怪、御前稲荷。いわゆるお稲荷さん。
 長く生きているだけあって、知識も賢さも、そしてその強さも、本来ならば私よりはるかに上だ。真正面から挑めば、おそらくまともに戦う事すらできないかもしれない。
 寄生となった悪世巣も、当然その能力を持ったまま寄生となった。むしろ、寄生である事が弱点ともなっただろう。本来であれば無敵の能力も、寄生の弱点までをも取り入れてしまったのだから。
 また、たとえ妖でも、元から言葉を操れない存在ならば、寄生となっても言葉は操れない。
 妖は人が創る物だ。故に、人が望む姿を取る。
 好む好まざるではなく、人がそう思えば、そういう姿になってしまう。
 例えば、ウチのクソジジイことバカ天狗の婆盆は……あ、彼は寄生ではなかった。べらべら喋るし。ともあれ、人がただ暴れ回る暴力や怒りや憎しみの象徴を思い描けば、それはそのまま妖の始まりとなるのだ。
 八岐大蛇のような、数多い人間の怒りの結晶のような怪物は、そのようにして誕生した。
 そして、コイツである。目の前でチョコのおかわり貰えなくて、テーブルの上でうなだれているコイツ。
 何の寄生かと言えば、ソフトボールだ。オリンピック種目のソフトボールで使うソフトボールだ。もちろん喋るわけがない。ていうか、まず自分から動く物体ではない。寄生が好んで寄生する物とは思えない。
 でもコイツ、喋るし、おまけに食べる。さらに言うなら、泳ごうとまでした。
 考えてもみよう。ソフトボールがそんな真似するだろうか。たとえ寄生といえど、寄生は「取りついた物」の能力を受け継ぐ。だから、本当ならばソフトボールの寄生なら、ただのソフトボールと変わらないはずなのだ。
 なので、私の予想では、コイツは元は別の寄生だったのではないか、という結論に行きつく。
 恐らくだが、当初は言語能力がある、そこそこの化け物だったろう。だが、何かしらの原因で、それが打ち砕かれた。寄生の力も発散してしまって、仕方なく、命からがら、そこら辺に落ちていたソフトボールに寄生し直して、現在に至る。
 砕かれる前の寄生の力を少しばかり受け継いだまま。
 何かしらの原因を考えると、やっぱり他の寄生だろうと考えられる。
 寄生の力は寄生でしか払えない。つまり、コイツは自分よりはるかに強い別の寄生に苛められたかなんかして、力を大きく失ったのだ。今も寄生でいられるのは、ある意味で奇跡だ。本当ならそのまま消滅していてもおかしくはない。
 となると、前に電撃で脅かした時にビビりすぎて失神したのも合点がいく。私の電撃は純度百パーセントの寄生の力そのものだ。過去の経験がトラウマにでもなっているのだろう。それを思い出して、恐怖のあまり失神した。
 前にコイツを苛めた寄生がどんな奴か気になるほどだ。きっと、とんでもなく恐ろしい顔をした鬼かなんかに違いない。
「……あ」
 うなだれていたコイツは、気が付いたらそのまま寝ていた。
 それも触覚は出したまま。もっとも、これもいつもの事。自分から寝床に潜る事もあるけど、たいがいはどこでも寝てしまう。
 はっきり言えば隙だらけ。とても、最初に逃亡を図ったとは思えないほどに堂々と眠っている。
 一向に懐かないし、言う事はあんまり聞かないけど、やっぱり、少しは私に馴れてはいるらしい。
 眠ったコイツを鷲掴みにして、段ボールを切ってこしらえた寝床に放り投げた。中に敷いた毛布の上に、どさっと転がるが、コイツはそのまま眠ったまま。
 投げるなんて酷いと思われそうだが、そもそもコイツはソフトボール。投げられてしかるべし。
 ……寄生を飼っているなんて、余所に知れたらどう言われるだろうか。
 実は、まだ誰にも内緒で、こっそり飼っているのだ。
 私にたまに仕事を持ってくる某組織なら、血相変えてさっさと始末しろと言うのだろうか。それとも、サンプル目的に譲ってくれとか言うのだろうか。
 同じく、私と同様に寄生と深く関わり合った私の育ての親にも教えていない。きっと彼なら、ひとしきり笑った後に、「好きにしなさい」とか言うだろう。

16 :




   ※
 


 晴れた朝だった。
 昨日は面倒なのがさっさと寝たので、私は一人で深夜まで某電子掲示板で呑みながら遊んでいた。
 日付が変わった頃に寝て、目が覚めたら、朝の九時くらい。昨日の夜は雨が降っていたが、朝にはすっかり雨雲もろともどこかに消えていた。
 寝起きのぼんやりした頭で、ぼけーっと部屋を見回した。
「うん?」
 カーテンが僅かに開いていた。そこから、日の光が差し込んでる。
「あいつかよ。外にでも出たいのかな?」
 私はカーテンの前に立って、一気に開けた。やっぱり居た。窓のレールの上の際どいスペースに立って、じーっと外を見ているソフトボールの化け物。
「ちょっと、なに窓にへばりついてんだよ。外の人に見られたら……あ」
 昨日の雨は、朝方まで降っていたらしい。
 私が目覚める少し前に、雨は過ぎ去ったみたいだ。
「これ見てたの?」
 ソフトボールの化け物は、珍しく私の問いかけにも応えず、じっと窓の外を眺めている。
 遥か空の向こう、雨上りの、綺麗な虹が私にも見えた。

おわり

17 :
投下終了

18 :
そんで酉の一部をミスるというw

19 :
投下乙
これが路歩崩ペット化計画か
七つ集めると金のなんとかファイトてwww

20 :
投下乙。一体何がもらえるんだろうw
http://loda.jp/mitemite/?id=2590.jpg

21 :
乙ーなるほどそうなるか。
しかし寄生は身内化するといちいち可愛いなw

22 :
彼方の家の窓でけぇw

23 :
そこはかとない切なさが…

24 :
バスト72のアイドルに見えた

25 :
でも72ってめっちゃ小さいよなw

26 :
塗り壁のこと悪く言うなよ!

27 :
http://loda.jp/mitemite/?id=2597.jpg

28 :
やめろwwwwwww

29 :
まあ彼方もバストはうわなんか雷g

30 :
直りん「大量の胸パットはさめば?」

31 :
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2602.jpg

32 :
ひなのさん何してんすかwwwwwww
にしても珍しいセクシーショットwww

33 :
ひなのもなにしてんのw

34 :
はっちゃんの投票が最近止まったなと思ってたら謎太郎が桃花を捕える位置についていた件。

35 :
とある少女にまつわる話をしよう。
彼女はまだ平和だった頃、最果ての地にある村で捨てられているのが発見された。
齢は三つほどだろうか。肌や髪の色はこの辺りの人々と異なり、また言葉を喋らない。
そして手には白亜色の石のようなもので出来た腕輪をはめていた。
村人は彼女を迎え入れるかどうかで大いに争った。
当時、大国の一つが魔界の門を開き、異界の化け物を引きつれ世界征服をし始めた頃で
この最果ての地にも少ないながらもその魔物たちが進行してきていた。
もしもこの娘が魔物の子供だとしたら?
そういった不安が村人たちに広まっていたのだ。
魔術師がいればわかるかもしれないがそういった類の者はいない。
そんな論争を止めたのはその村の大地主の一人だった。
「こいつは俺が引き受ける。何かがあれば全責任を負う」
大地主の家は歴史も古く、まだ現当主も信頼に厚かったため
村人たちはこの娘を男に任せることにした。
それから時は十年後に移る。
娘は一人の美しく強い剣士へと成長した。
魔物たちの進行により、その世界では村単位で自衛団を持つことが当たり前となっていた。
それゆえに子供たちは小さいころから厳しい剣の修行を受けてきたのだ。
そしてある一定の実力を得たものは正式に自衛団として村を守る仕事を担ってきた。
娘も例外ではなく、明日の試験に合格すれば自衛団入りとなるはずだった。
その事件が起きなければ。
当日。好天に恵まれ、試験は予定通りの時刻より始まることとなった。
期待と不安を感じながらも訓練生は思い思いにその時刻を待っていた。
試験会場の広場ではその準備が整えられている。さほど手の込んだものがあるわけでもないが
これを見に来る村人たちの席を準備しなければいけないのだ。
ふと会場に影が落ち、雲でも出たかと村人が天を仰いだ。
影は何のためらいもなく、その巨体で村人を潰した。
赤い巨体とそれに見合う巨大な翼。鞭のような鋭く長い尻尾と人の腕よりも太い爪が付いた手足。
その生き物はドラゴンと呼ばれる魔物だった。
今までいわゆる下級と呼ばれる魔物しか来ることがなかった村に突如出現した上級魔物に村人たちは
逃げる間もなく殺された。
すぐに自衛団が来るものの前述の通り、この村には下級程度の魔物を相手する装備しかないのだ。
ドラゴンは向かってくる人間たちを少しだけ尻尾を動かし、肉片へと変え
逃げる人間には火の息と建築物の瓦礫を飛ばすことで殺していった。
試験のために待機していた娘は尋常じゃない空気を感じ取り、広場に着いたときには
見る影もないくらい破壊されつくした町並みと血の海、そしてそこに鎮座するドラゴンの姿があった。
ドラゴンは娘を一瞥する。それだけで娘は動けなくなった。
生物としての絶対的な強者が目の前にいる。自分という弱者がどれだけ努力しようとも乗り越えられるほどの。
逃げ出したいはずなのに足が動かない。ドラゴンが長い尻尾をやおら持ち上げる。
確実な死が目の前に迫ってきたとき、娘はあるものを見つける。
自分をここまで育ててくれた当主の死体を。
次の瞬間、振り下ろされた尻尾は宙を舞ったと壊れた家屋に落ちた。
娘が拾われたときから付けて来た白い腕輪は今、彼女の手の中で剣となっている。
その後は一瞬だった。尻尾を切られたことに驚いていたドラゴンは次に首を切り落とされたのだ。
鉄の剣を歪め、魔法すらも通らぬというドラゴンの肌を呆気なく切り裂いたのだ。
村人たちが見たのは、血まみれの広場に佇む赤い少女とそれと混ざることのない白を持つ剣だった。
その娘の名は大地主ソーニャ家の養子、シカという。

36 :
桃花乙。相変わらず読みにくそうですらすら読める文w
これが例の自警団か。

37 :
>>35
おー彼女の話か

38 :
一応、元・無限桃花なんだよなシカ

39 :
そして物語はさらに五年後から始まる。
シカ・ソーニャが十八歳のときのこと。風の噂によると世界の大部分は既に支配されたと言う。
あの惨劇以降何度か上級の魔物が来たもののソーニャの活躍により、危険は回避されていた。
誰もがソーニャこそが自衛団の団長になるべきだと言ったが本人はあまり乗る気にならず
結局副団長にすらならなかった。
「みんな期待してたのになんでならなかったんだ?」
ソーニャが拾われてから十五度目の冬。新団長選出が終わった後日のこと。
団長に選ばれた青年はソーニャにそう尋ねた。
ソーニャはしばしの間考えを巡らせた後、懐から一枚の手紙を出した。
「私は行ったことないが……。ここより南に向かった先に町がある。そこから手紙が来たんだ」
青年はそれを受け取り、読む。堅苦しい文章を噛み砕いて言うとこういうことだ。
『力を貸して欲しい』
「なるほど」
青年は納得がいった。青年はソーニャのことをよく知っている。あの日試験を受けるはずだった同期だからだ。
ソーニャは正義を強く信仰している。助けを乞われればそこに馳せ参じてしまう。
「行くんだな」
「正直すごく迷った。ここだって上級の魔物が来る。でも町は……その大きさ、人の密度ゆえにここより来るんだ。
 私の骨を埋める場所はここだと思っている。だけど今だけは、今だけは町を助けに行かなきゃいけないんだ」
「ああ、村のことは任せろ」
ソーニャと青年は曇天の下、共に誓い合う。
数週間後、ソーニャは村を出て、町へと向かった。
余談ではあるが青年はソーニャに好意を持っていたが、ソーニャはそんな気は毛頭なかった。

違う板で使ったことのあるものだったのでトリ変えました

40 :
乙。館にくる五年前か

41 :
桃花乙ー

42 :
最果ての地よりおよそ一週間ほど歩いたところに町がある。
ソーニャは知識としてはそれを知ってはいたがそこへ向かう機会などはなかった。
物資の運搬も行商人が執り行うし、それの護衛も専用の兵士が付く。
ソーニャにとっての遠出はせいぜい村の少しはずれにある森へ狩りに行く程度のことだ。
もちろんこのような長期間に渡り、村の外へ出たこともない。
村の高き塀に囲まれたその内部こそがソーニャにとっての全世界であり、それ以外は夢物語に過ぎなかったのだ。
そのためソーニャは期待していた。どのような未知の体験が待ち受けているのか。
しかし三日ほど過ぎたところでソーニャは一つの結論に達した。
「……思ったより普通だな」
それも当然である。なぜならソーニャは町へ向かう道を歩いているのだからだ。
その道は舗装されているわけでないにしろ、背の高い草木など無く見晴らしも良い。
少しあるけばちょっとした林があるがわざわざ逸れて行く必要もない。
散々『町の外には危険な魔物がいっぱいいるんだぞ』と脅されてきたがある程度賢いらしく焚き火がある限りは寄ってこない。
最初は期待に溢れていた物の今となっては萎んでしまった。
ソーニャは簡素な寝床を用意し、そこに横になって届けられた町の資料を読んでいた。
町にだってそれ相応の大きさの自衛団がいる。おそらくは村と比べ物にならないほどの大きさだ。
最近町に雌のドラゴンが襲来したことがあったそうだ。
ドラゴンというのは種類にもよるが繁殖期になると一所に留まることが多い。
その候補地として人里が狙われることが多いのだ。
なにせ町には守りの塀がある。外敵と言えばその辺をうろちょろ動く小賢しい人間のみ。少し薙げば死に絶える。
ついてに食料にもなるし一石二鳥。ドラゴンからしてみればそういうことになる。
だからこそ人にとって一番身近かつ強大な敵であるドラゴンの討伐は魔物進行以降大きな課題の一つに上げられる。
ちなみに言うとかつて村に降りたあのドラゴンは腹をすかせた老いぼれであったということがわかっている。
繁殖期のものに比べれば天と地……ほどでないにしろ大きな差がある。
町に襲来したというドラゴンはまさしく繁殖期でそれを討伐したというのだ。
おそらくその人員的損害の穴埋めにソーニャに白羽の矢が立ったというのが事の顛末だろう。
ソーニャは資料を鞄にしまい、眠りにつく。もうすぐ四日目の朝が来る。

43 :
何この王道ファンタジー。鬼みたいだったシカがいまのところ普通の人に見えるなw
乙っした。

44 :
村を出て七日目。ソーニャは草原を歩いていた。
吹く風は優しく、足元の小さな草は静かに揺れている。
少しだけ高い丘の上でソーニャは目的地を目視する。
草原の中に突如現れた高い防壁。色合いから考えると石で出来たものなのだろう。
防壁の上には人の歩けるスペースがあるらしく緑の点が動いている。
その防壁の奥に見える赤茶色の屋根と白い壁の家々。
「あれが町か……」
遠景から見るだけで村よりも遥かに大きいことがわかる。十倍、いやもっとだろうか。
緑の海を横断する茶色の線はあの地へと伸びている。
この調子なら正午前には辿り着けるだろう。そう思いつつソーニャは歩き出した。

45 :
薄汚れた防壁を見上げる。近づいてみると石を組んで建てられたことがよくわかる。
高さはおおよそサーニャの五倍はあるだろうか。村にある木で出来た防壁ですらサーニャの三倍程度で数ヶ月かかった。
この高さや広さを考えるとおそらくは数年、数十年とかけて作ったのだろう。
だがそれと同時に平穏を手に入れた。これだけの防壁だ。早々に壊れることはない。
ゆえに空からの襲撃に警戒し、それに対しての備えをしている。
これほどの規模の設備を整えることは出来ないが中の設備で村にも流用できるものもあるかもしれない。
どうせならそういったものを持ち帰って村の発展に役立てよう。
「そこのお前。何をやっている」
ソーニャが一人で頷いていると門番の男に咎められた。
慌てて懐から一枚の手紙を出して男に手渡す。
最初は胡散臭げな目つきをしていたが手紙を読んだと同時にその顔色は一変し
「そ、そうしょうお待ちくださいませ!」
と噛みながら戻っていった。
ソーニャもそれに付いていき、門の前で待つ。
門は二種類あり、一つは荷馬車などを通すようであろう大きなこれまた石で出来たもの。
もう一つは人用の小さな門。
小さいのはさておきとしてこの石扉を人力で開けるのはおそらく不可能だろう。
しかし何かに仕掛けを使ったところでこんな重そうな物を動かせるのだろうか。
言うまでもないが村には石扉などない。木で出来たものを紐を引っ張って開けるのだ。
しかし村のあんな小さいものでも何人かが力を合わせないと開けることが出来ない。
この大きさで石となると何十人もの男たちが開けるのだろうか。
その図を想像して少しおかしくなる。
そこに丁度荷馬車を引いた行商人らしき一行が辿り着いた。
主人らしく男がソーニャをじろじろ見ながら門番の男に紙を手渡す。
門番の男はそれを読んだ後、紙を主人に手渡し小さなベルを鳴らした。
それは目を疑う光景であった。石扉がゆっくりとだが一定の速度で開いていくのだ。
口を開けて見ている人間が珍しいのか門番の男がソーニャに話しかけてきた。
「なんだい、うちは初めてか?」
「あ、ああ。そうだ。私は村から出ることがなかったからな……」
「村って言うとなんだい。まさかあの秘境にあるとか言う最果ての村か。まさかな」
「そのまさかだ」
「おっとこれは失礼。そういえばあの村には魔法使いがいないと言う話だったな」
「ということはこれが……」
「そうだ。いわゆる魔法ってやつさ」

46 :
軽口の門番が言うには先ほど鳴らした小さなベルも魔法道具の一種であの音に反応して扉が開閉するようになっているそうだ。
さすがにこのベルは売ってはいないが一般人にも魔法の道具は販売されているらしい。
そういった道具は町中にある魔法工房で作っているそうだ。魔法に疎いソーニャには信じがたい話だ。
門番の話を聞いていると先ほど手紙を渡したほうの門番と中年の男がやってきた。
彼らは総じて緑を基調とした服を着ているが中年の男は門番のそれよりも少々豪華に見える。
軽装の鎧をしていることから自衛団の者であるのはわかる。
中年の男はソーニャを見て驚いた顔をした後、それを打ち消すために歪んだ笑みを浮かべた。
「え、や、これは遠方から感謝致します。や、これは、ええ、まさかこれほど若い、ええ、女性だったとは」
なんだろうか。言葉の間に一言入れないと喋れないのだろうか。
とりあえずそう言った言葉を飲み込み、男の言葉を待つ。
「え、あ、私はこの町の自衛団の補佐官、といった立場のですね。ええ、そういった人間です」
「これからご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」
型通りの挨拶をして、お辞儀をする。確かに見た目は普通の中年だし言葉もあれだが補佐官である以上は
そこそこの実力を持つ男なのだろう。
しかしそもそもにしてその補佐官という役職は村にはなかったのでいまいちどのようなものかわからない。
「え、や! むしろ頭を下げるのはこちらのほうです。ええ、あの『白騎士』のソーニャさんに、ええ、来ていただけるなんて」
「ほう。あんたが、いやあなたがそうでしたか」
先ほどまで軽口を叩いていた門番まで言葉を改める。ソーニャは混乱する。そもそもしろきしってなんだ。
確かにソーニャは白い服装を好む。それに持つ武器も白いし、ついでに髪も白い。
ふとかつて村の団長になった青年が言っていた言葉を思い出す。
「世の中には二つ名をいうその人間をわかりやすく示した名があるらしい。
 お前は全身白いしそのままの名前が付けられそうだな」
彼はこれのことを言っていたのだろう。どのようにして伝わったかはわからないが
ドラゴンを切り伏せた白い騎士がいるというのが行商人を仲介に町へと広まったのだろう。
知らぬは本人だけ。と言ったところか。そもそも馬に乗れないのに騎士なのか?
色々な物事に不安を感じながら、ソーニャは中年の男に案内されつつ町へと足を踏み入れた。
投下終わり

47 :
投下乙。ほとばしる田舎者のオーラw

48 :
「え、あ、ここが噴水広場ですね。ええ。よく待ち合わせに使われていますね」
補佐官の説明を受けながら町を歩く。町の風景全てが目新しい。
そもそもあの噴水とかいう水の吹き出る物体はなんなのだ。どういう仕掛けで水が出ているんだ。
広場には遊んでいる子供たちや出店などで活気に溢れている。
「あ、ここですね。ええ。自衛団本部となります」
中年の男が建物の前で立ち止まる。ソーニャはその建物を下から上と見上げる。
豪華絢爛、と言いたいところだがぱっと見特別な建物には見えない。路地裏の住居とさして変わらない。
出入り口にかけられている看板だけがこの建物の役割を示している。
「え、あのですね。自衛団の集合にですね、ええ。時間を少々いただくことにですね。ええ。なるのでですね。
 お先に部屋のほうに案内をですね。させていただいてですね。時間まで休んでもらおうかと」
ソーニャはそれを快諾した。
七日間の旅で服は汚れているし、何よりも湯浴みをしたい。
一応川が近くにあるときは寄っていったがその冷たさは身に染みた。
「あ、えっとですね。ソーニャさんの部屋はですね。ここから近いんですけどね。
 今、従者のほうが来ますのでね。あ、来ましたね」
補佐官の指差した方向から緑の服を来た女の子が走ってくる。
ソーニャたちの前に着くと背筋を伸ばし、右手で敬礼をした。
「わたくしが本日よりソーニャ様の従者となりますコユキであります!
 至らぬところありますでしょうがどうかよろしくお願いいたします!」
「えーっとシカ・ソーニャです。こちらこそよろしくお願いします」
歳は十五ほどだろうか。背は低くソーニャよりも頭一つ小さい。
服も刺繍が少なく一番簡素なものだ。おそらくは入団したばかりの新兵だろう。
腰に下げた真新しい剣が目に眩しい。走ってきた割には息の乱れがないということはそこそこ鍛えられているのだろうか。
それにしてもぎこちない笑顔だ。おそらくはこういう挨拶に慣れていないのだろう。
とは言うもののソーニャだって慣れていない。村にいた頃はこのような挨拶をする必要などなかった。
「コユキ。粗相のないようにですね。ええ。案内しなさい」
「了解しました!」
そう言い残して補佐官は本部へ行ってしまった。
直立不動の敬礼で補佐官がドアの向こう側へ行くまで見送った後、その場でくるりと回転してこちらを見た。
「それではお宿のほうへご案内いたします! ソーニャ様!」
「……様付けはやめてくれないか。なんだかむずむずする。それとそんなかしこまらなくてもいいよ」
「え、あれ。そうですか。すみません」
年相応の笑みをこぼす。先ほどのがちがちした状態よりかよっぽど話しやすい。
本部の横の路地裏に入ったところでコユキが歩きながら話しかけてきた。
「同い年でドラゴンを討伐した人と聞いていたのでもっとこう筋肉むきむきの男性かと
 思っていたんですけどまさかこんな綺麗な女性だったなんてびっくりしましたよ」
「ああ、それはあの補佐官にも言われたな」
それ以上にこんな可愛い子が同い年であることに愕然としている自分がいる。
ソーニャは子供の頃からずっと鍛えられてきたし仕方ないと言えば仕方ない。
「多分自衛団みんなが驚くと思いますよ。みんな男だと思っていますから」
「一体どんな風に私のことが伝播したんだ……」
「白い甲冑を身に纏った騎士って聞きましたね。あ、ここですね」
本部から歩いて五分程度だろうか。普通の住居が立ち並ぶ路地裏に宿はあった。
周りの家屋よりも大きく、看板も出ているので間違えることはないだろう。
玄関を開けるとベルの軽い音が部屋に響いた。

49 :
案内された部屋は最上階にあり、階全て貸切という待遇だった。
とは言っても何部屋あろうが結局使うのは一部屋だけだ。
そのことをコユキに言うと
「私もこの階の部屋使いますから大丈夫ですよ」
と答えてくれた。一体何が大丈夫なのだろうか。
私は窓から路地裏を眺めることが出来る部屋を選んだ。
最上階は一番お値段の張る部屋らしくほかの階よりも部屋数が少なく、部屋は大きい。
なんと言っても浴室が素晴らしかった。
ソーニャが三人入ってもまだ余裕がありそうなくらい大きい浴槽。
温水が出る装置。浴槽から見上げれば外の風景が見える。
コユキに話すとこっちでは水道というのが整っていてどのような場所にも水は行き届き
なおかつ魔法道具を使うことにより温水にすることが出来るそうだ。
村では水を引くことはあっても管を通し、遠くまで運ぶなんてことはしたことがなかった。
温水だって大きな釜に水をたっぷり入れた後、焚き火で温かくさせるぐらいだ。
ぜひともこの技術を村へと持ち帰り、風呂を各家に設置したいと密かに誓った。
風呂を満喫して後、コユキが用意してくれた新しい服を着る。
緑の服を着るのかと思ったが柔らかい布で出来た白い服を渡された。
「さすがに真っ白すぎないか?」
「白騎士ですからね!」
「いや、だがこれはさすがに……」
「仕方ないですね。それではこの鎧を……」
「待て、それも白いぞ。あ、でも軽いな……」
結局コユキを折らせ丈夫そうな茶色の皮鎧を付ける事にした。
その代わり、部屋は服と鎧で溢れ返っている。
片付けるのは後にして、再びソーニャたちは本部へと向かった。

50 :
シカがなんかいい子w

51 :
再び本部前。
おそらく中で私のことを待っているであろう自衛団の面々。
なんとなく緊張してしまうが隣にいるコユキがこんなのだし案外若いのが多いのかもしれない。
とは言っても第一印象というのは大事だ。ある程度堂々と行くべきだろう。
「本会議室にいるので行きましょうか」
コユキに先導されながら本部の敷居を跨ぐ。
最初に入った部屋には男が一人だけ椅子に座って何かを書いていた。
机の上には短剣や銃などの武器をはじめ、さまざまなものがまとめて置かれている。
在庫の確認をしているようだ。ついでに来客の相手でもするのだろう。
「おはようございます!」
「おはようございます」
コユキに続いて、慌てて挨拶をする。
男はちらっとこちらを見た後、大あくびをしながら手を少し挙げ、再び作業に戻った。
どうやらあれで挨拶を返したつもりらしい。この時、ソーニャは何か嫌な予感を感じた。
入ったところの小さな部屋から廊下に向かい、奥へと歩いていく。
横幅はさしてなかったがどうやら奥行きは結構あるようだ。
コユキが扉の前で止まる。
「ここですね。多分みんな揃っていると思うのでどうぞ」
大丈夫だ。きっとコユキみたいな人がいる。
そう意を決してソーニャはドアノブを捻った。
五秒後、とても残念な気持ちに満ちた。
部屋は大きな部屋に長机と椅子を並べ、壇と黒板が設けられている。
外を向いた壁は一面窓になっていて、とても採光がとれている。
まだ日中ではあるため部屋の中は光に満ちている。
なのになんだ。この集合している自衛団から漂う気は。
なぜそんなに目つきが荒んでいるんだ。
壇上にいた補佐官が私を見ると、こちらにやってきた。
「今丁度ですね。ええ。あなたのことをですね。話していた。ところですよ」
着いて来いと言わんばかりに前を歩いていく。仕方なく着いて行き、壇上に上る。
壇上から部屋を見渡す。なるほど。男ばかりだ。
「えー、この方がですね。『白騎士』シカ・ソーニャさんですね」
補佐官がちらっとこちらを見る。ソーニャは咳払いをしてから挨拶をした。
「最果てにある村から来ました。シカ・ソーニャです」
頭を下げると拍手の代わりに笑い声が上がった。
「おいおい、おっさん。冗談きついぜ? そいつがドラゴンを殺したっていうのか?」
頭を上げると一番奥で手を組んでいた男が笑いながらこちらを見ていた。

52 :
いきなり一人称にシフトしてきやがった。にしてもなんという王道ファンタジーw

53 :
なんかAA化されてたんでこっちにも貼ってみようと思って。
             ___
           ,.'-==-`ヽ
   ○' ⌒`○  (__(__(__) !   流石姉さんー
   /i /、 ,ヽ!ヽ  从゚ー ゚<,b |
   /cリ ゚ヮ゚,リ ヽ /( ‖ .i⌒l|
  /./ E発ヨ/ ̄ ̄ ̄ ̄/| |ゝ
_/ 廴てつ/      ./_.|,,,,>___
     \/____/. (u つ

54 :
男は立ち上がり、こちらに歩いてくる。
大きい。多分この部屋にいる人間の中で一番。
筋骨隆々で短髪。使い古された装備はその男の今までの戦いの歴史と言える。
「全身白ずくめにして『白騎士』か。はっ、おっさん面白い物をありがとう。
 おい、嬢ちゃん。白いドレスのほうが似合ってるんじゃねぇか?」
部屋にいたほかの男たちが一斉に笑い出す。
コユキは出入り口でおろおろしているし補佐官が助け舟を出すとも思えない。
自分でどうにかするかと口を開こうとした時、驚くべきことに補佐官が口火を切った。
「あーえー、副隊長。席には戻らなくてもいいですが話の途中なので壇上から下りてください。ええ」
副隊長は舌打ちをすると壇上から降りて、席の間の通路に座った。
「ええ、すみません。ソーニャさん。この者たちは、えー、少々礼儀知らずなもので」
弱気な中年に見えたがよくもまぁそんなことを本人たちの前で言えるものだ。
こちらに向いている視線は敵意となって自分に注がれていることに気づかないのか。
それともそれを物ともしない何かが補佐官にはあるのか?
「えー、疑問にですね。思う人もいるとは思いますがね・この方は間違いなくシカ・ソーニャです。
 えー、証拠が欲しい人はですね。役所までですね。来てください。ええ」
先ほどと打って変わって誰も何も言わない。補佐官はさらに話を進める。
「えー、今、我々の町はですね。先日のドラゴンの襲来によりですね。
 大変な損失を、ええ、受けました。特に急務とされるのはですね。
 町の修復はもちろんのこと、次回の襲撃に備えての防衛の強化、となります」
この辺は読み通りだろう。町の修復についてはまだ見ていないので
どれほど破壊されたかわからないがいつ来るかもわからない次回に備えるぐらいの程度なのだろう。
「ええ、つきましては、長老会議にて二つの事項が決定しました。
 一つは自衛団の予算の増加。もう一つは『白騎士』シカ・ソーニャさんを隊長に任命すること」
これを聞いた時、補佐官以外の人間が驚きか抗議の声を上げた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 隊長なんて私は聞いていないぞ!」
「おい、おっさんふざけんなよ! なんで今日来たばっかの人間が隊長になるんだよ!」
このときばかりは先ほどソーニャに嫌味を吐いていた副隊長と意見が一致する。
というか補佐官以外はみんなそうであろう。
補佐官は手を挙げて、ソーニャたちに落ち着けと促している。
が、一向に効果は無い。
「私は村でも誰かの上に立ったことが無いんだぞ。
 そんな素人が隊長なんて務まるはずがない。そもそも副隊長がいるのだから繰り上がりでいいではないか」
「その通りだ、嬢ちゃん。むしろ俺ですら兄貴の後釜なんざ恐れ多いっつーのになんだ?
 てめぇは町を守りたいのか? それとも滅ぼしたいのか?」
「お、落ち着いてください。ええ。これは長老会議のですね。決定です。
 抗議のほうは私のほうではなく役所のほうにですね。お願いします。
 もしもですね。これ以上何かを言うようであればそれ相応の手段をですね。取らなければいけませんね」
副隊長の顔が憤怒に満ちる。だが喉まで来ているであろう言葉を口から出さない。
そのまま出入り口のほうへ向くとコユキが扉を開け、そのまま出て行った。
それに続き、部屋に居た男たちが出て行く。みな、怒りに顔を歪ませている。
なぜ何も言わないのだ。こんな大事なことなのに。なぜ。
男たちが全員出て行ったところで補佐官が出入り口に向かう。
「ええ。それでは私は失礼します。コユキ、亀のほうへですね。連れて行きなさい」
「了解しました!」
コユキの敬礼に見送られながら補佐官も出て行く。
一人、ソーニャだけが何も納得出来ずに壇上に取り残されていた。

55 :
ドキドキ

56 :
長老会議。この町のあらゆる物事を決定する場所。要は政治を行うところだろう。
会議はさまざまな部門の長、十二人が参加している。
ここでの決定事項はほぼ絶対であり、反対意見の場合は一応役所のほうで受け付けている。
とは言ってもある程度の反対意見が集まらないと意味もなく、今まで反対意見について会議が行われたことはない。
また選出された十二人も過半数が母体が町役場の人間なので要は全て役人の言うとおりになるというわけだ。
「それって会議する必要あるのか?」
「まぁ稀に意見割れして国民投票になったりしますね」
亀という場所に行きがてら、コユキからこの町の話を聞く。
「今回の場合は自衛団の隊長が欠席扱いなのでうちからは補佐官が出てるんですよね」
「副隊長が出るんじゃないのか?」
「最初はそういう予定だったんですけどね。役所のほうから召集をかけられたのは補佐官でした」
ということは補佐官は役所とべったりと考えてもおかしくないな。
それ相応の手段というのも役所からの何かなのだろう。
村ではそういう機関はなかったから想像でしかないが罰金や何かしらの懲罰のことを指しているに違いない。
「そういえばこれから行くとこについて説明してませんでしたね。
 これから亀と呼ばれている人のところに案内します」
「人? 亀というのは仇名なのか」
「ええ、私は先生と呼んでいます」
いくつかの角を曲がり、そのたびに人気がなくなっていく。
最初は扉が付いていたのに段々と左右は壁しかない。
既に陽は傾き始め、高い建物に囲まれた路地に暗い影を落としている。
時々出っ張った何かに足を取られそうになりながら、コユキに着いていく。
「着きましたよ。ここが先生の家です」
暗がりの中に建つ一軒の建物。周りの石造りの家と明らかに異なる木で出来たちぐはぐな建物。
そこだけが別世界の場所かのような錯覚を覚える。それほど周りの建物からも、現実からも剥離している。
コユキは扉を叩かず、そのまま中へ入っていく。
「せんせー! ソーニャさんをお連れしましたよー!」
何の躊躇いもなく、明かり一つない家の中にそのまま入っていく。
付いては行くもののどこで靴を脱げばいいかすらわからない。というか土足のままでいいのか?
「あ、ソーニャさんは待っててください。下手に歩くと危ないんで。ここ」
上げていた足をゆっくり後ろに戻し、家の外へ逃げようとした。
扉が勝手に閉まった。誰もいないはずなのに。置く場所を失った足を慎重に下ろす。
建てつけが悪いに違いない。つま先を軸に回転してドアノブを捻ろうとする。
ない。それどころか扉にも手が当たらない。目の鼻の先にあったはずなのに。
唯一の明かりの漏れどころだった扉が閉まり、完全な闇がソーニャを囲む。
何かの気配を感じ、腰の獲物に手を添える。小さな、引きずるような音。
決して恐怖に囚われてはいけない。この状況だからこそ混乱せずに心を落ち着かせる。
気配を目で追う。見えるわけではない。ただもしも何かがあったとき。
場所がわかったほうが斬り易い。ただそれだけだ。
「シラけるねぇ」
灯りが一つ点き、闇を払う。
不健康そうな少女が手に灯りをそのまま持っていた。
「もっと反応してくれないと面白くないだろう」
「お前が……」
亀か。その言葉は悲鳴で遮られ続くことはなかった。
ソーニャはこの声を知っている。間違いない。コユキだ。
悩むよりも早く。声の元へと行くために暗がりに足を踏み入れた。

57 :
ソーニャたちは木で出来た丸い机を囲って座っている。
目の前に置かれた紅茶を手に取り、少し飲む。
「コユキ。感触はどうだった?」
「もっとほかに言うべきことがあるでしょう!」
コユキが立ち上がりながら机を叩く。机の上に載っていた細々としたよくわからないものが
ぐらぐらと揺れる。
「あれは僕が召喚したんだ。戦闘には使えそうにはないが悪戯に使えそうかなと」
「戦闘に使える物を召喚してください!」
不健康そうな少女は大げさにため息をつき、やれやれと頭を振るう。
「つまらないじゃないか」
これにはソーニャも嘆息を漏らした。初めて会う魔法使いがこれというのはあまりにも酷いじゃないか。
しかしながら補佐官がコユキをここに連れて行くように指示をしていたことから
自衛団絡みでなおかつそこそこ重要な人物であることは間違いないはずだ。
コユキはあまりの言い草に言葉を発することが出来ないようだ。
「ぐぬぬ」
と歯を食いしばりながら漏らしている。
一方の魔女の亀は自分の淹れた紅茶を飲んで落ち着いている。
先ほど何があったのか。それを話すのは簡単ではある。
簡単ではあるがそれを話してしまえばコユキの名誉に関わる。
正直もしもソーニャが同じ辱めを受けていたらとてもじゃないが立ち直れない。
「さて、あんたがシカ・ソーニャか」
魔女はソーニャのほうに体を向ける。
おそらく歳は私と変わらない。小食なのか、とても痩せ細っている。
目の下にはクマがはっきり見て取れるほどあるし、第一印象が不健康そうでも仕方ない。
黒髪はぼさぼさで適当に後ろに纏めている。衣服は白衣を着ている。
しかし何よりも気になるのはその目付きだ。何かが引っかかる。眠そうだとかそうではなく何かが。
ソーニャが魔女を観察していたのと同じように魔女もじっくりとソーニャを観察している。
魔女はふんと鼻を鳴らした。
「全身白ずくめだから白騎士。馬には乗れるの?」
「乗ったことすらない」
「今度から白雲剣士とでも名乗ればいい」
何を言っているのかよくわからず相槌が打てない。
魔女は別にソーニャの返事を期待していたわけではないようですぐにコユキのほうを向く。
「コユキ。帰っていいぞ」
「次に言う言葉はそれですか!」
先ほどの再現かのように机を叩く。
「どうせこの白いのの後の予定なんて大したものはないんだろう?
 今日は僕がこいつに飯を食わせておく。だから帰ってろ」
「……それで納得して帰るとでも?」
「お前が納得するかどうか。それを僕が重要視するとでも思ってるのかい」
コユキはとても残念そうな表情を浮かべながらこちらを向く。
「ソーニャさん……。先に宿に戻っていますのでどうか命と貞操と誇りを守って帰ってきてください」
「約束……しよう」
無論約束せずともそれは守り通してみせる。多分。
コユキは一つ頷くと席を立って階下へと降りていった。
扉の閉まる音が遠くでした。これでこの家にはおそらくソーニャと魔女しかいない。
魔女は席を立ち、壁際にあった本棚から本を一冊取り出す。
「いくつか質問する前に自己紹介ぐらいはしておこう。
 僕は亀。この町の魔法使い協会の会長を務めている。が、専らほとんどのことは副長がやるから
 事務的なことは彼に頼んでくれ」
そういえば門番が魔法工房というものがあり、一般向けの魔法道具を製作していると言っていた。
とてもじゃないが目の前の魔女が『一般向けの』魔法道具を製作するとも思えない。
協会を作るほどであるならばそこそこの魔法使いがこの町にいるということになる。
「当然ながら亀は仇名。こんな風に自宅の篭っていることが多いから自分で名づけた。
 なかなか皮肉が利いてていいと思っている。ちなみにこの仇名の前はホーエンと名乗っていた」
「本名はホーエンというのか」
「いや、違う。それはあんただって同じはずだな。シカ・ソーニャ」
何を言っているんだ。先ほどと同じように対して意味のない発言なのか。
魔女の目付きが鋭くなる。今まで目の前にいた人物だとは思えない。
「僕の名もあんたの名も一緒だ。無限桃花」

58 :
なん……だと……?
ていうか言えないけど立ち直れなくなるような悪戯好きだなw

59 :
「ムゲントウカ……?」
聞き覚えのない名前だ。
そもそもなぜ初対面の人間と本名が一緒でなくてならないのだ。
だがそれを真っ向から否定は出来ない。
なぜならばソーニャは十五年前、拾われた子供だからだ。
ソーニャにはそれ以前の記憶がない。仮にその名が付けられていたとしても覚えていない。
「最初見たときから何かを感じていたがこうやって対面するとよくわかる。
 姿かたちは我々とかなり違うが根っこは一緒。
 あんたも僕を見たとき何かしら感じたはずだ」
そうだ。この目付き。今までの人間と似て非なるそれ。
魔女は自分の席に着き、持ってきた本を開く。
表紙を捲った部分に大雑把な地図のようなものが書いてあった。
地図には白い線や赤い点、赤く斜線を引かれた地域などいろいろと書き込みされている。
「これは地図か?」
「世界地図。とは言っても旧世界の物を基に製作したものだから今とかなりの部分が食い違っている」
「新世界地図はまだないのか?」
「旧世界滅亡後千年以上経った今でも把握しきれていない。それほど世界の形が変化してしまったのだ」
かつて、今より千年以上前に今の我々とは異なる文明が繁栄した時代があった。
専ら旧世界文明と呼ばれているそれは魔法の類がない代わりに機械技術が大変優れていたそうだ。
どのようなきっかけがあったのか今となってはわからないが大国同士が戦争をし始めた。
戦火は見る見るうちに世界へと広がり、世界中に火の手があがった。
やがてそれは人をRだけではなく大陸を削り、星の形すら変えるほどの争いへと発展した。
何が、誰がそうさせたかはわからない。ただひたすら
敵国を潰し、全てを焦土にし、世界を荒廃させていった。
その世界にやがて一つの彗星が落ちる。
旧世界の終わりと魔法の起源と言われる彗星。
彗星は自分の欠片をばら撒きながらやがて地上へと落ちた。
この戦争と彗星の着弾を生き残ったのが今のソーニャたちの先祖である。
人々が気がついたときには世界はあまりにもその形を変えてしまっていた。
「2012の最終戦争と魔法の到来。この二つのせいで未だに立ち入ることの出来ない地域もある。
 僕は探検隊じゃないから安全な場所しか行ってないけど。この白い線が僕の旅した道だ」
「白い線って……これほとんど地図を横断しているぞ」
「世界横断したんだから当たり前だ。それよりもだ、この赤い点のほうが大事」
白い線の所々に押された赤い点。よく見ると下に数字が書かれている。
魔女が日記帳を捲り、あるページで止まる。
そこには写真が一枚と文章が書かれていた。
写真にはよく似た二人組みが写っている。
「これは双子か?」
「別人。片方は僕でもう片方は現地の人」
そう言うと再びページを捲る。
開いたページには先ほどと同じように双子の写真が写っている。
何も言わずさらに捲る。次に開いたところにもまた双子。
「全て現地の人で別人。僕は僕自身に類似した少女と旅の中で十二人に会った。
 ほぼ全ての人間が僕と同じ髪型をして一つの獲物を携え、そして本名が同じ名であった。
 その名が無限桃花」

60 :
カオスになってきたぞ。どうなるんだ。

61 :
人間と言うのは生物である以上老化するし、全ての個体に違いがある。
だが我々はその見た目に差はあれど特徴の共通点があまりにも多すぎる。
例えば前述した以外にもどれだけ記憶を遡っても生まれ育ったという記憶が存在しない。
ある日、突然この地に記憶を持って出現した。それが最古の記憶だ。
さらに老化するということもない。魔女を含めた十三人の『無限桃花』のほとんどが
その年齢以上の年数を生きている。中には八十年以上生きているという個体すらあったがその姿は少女のままだ。
ただ大きな相違点が一つだけある。
家族の存在だ。
十三人のうち五人が血縁の妹が存在したのだ。
その妹もまた我々と同様の存在らしいが、個体差はかなり大きかった。
我々の妹であるということ以外の共通項はないに等しい。
このことから我々は何者かが一定の画一化をした存在であり、人間とは根本的に異なる生物であるという結論に至る。
「あんたに会うまではね。シカ・ソーニャ」
ソーニャは難しい顔をしながら汁物を啜る。あっさりとした塩味のスープだ。具は少ない。
これを信用することが出来る人間なんてのは早々いないだろう。
目の前にいる魔女はどうみても人間だ。これで人間じゃないと言われても困る。
しかし実際には魔女は三十年ほど生きているようだ。とてもじゃないがそうは見えない。
「信用してないだろ。当然のことだ。僕があんたの立場だったら信用しないからな。
 だが同時に信用もする。本能的にといったところか」
「……それで私にどうしろと」
「どうもしない」
「へっ?」
思わず持っていた皿を落としそうになる。
「あんたは拾われるまでの記憶を持っていない」
「むしろその時のことも覚えてないな」
「使えない人間だ……」
魔女は嘆息をつき、残念そうにサラダを口に運ぶ。
「仕方ないだろ! そんな昔のこと」
「これだから脳味噌まで筋肉で構成された人間は嫌だ」
「言ってくれるじゃないか」
腰に挿していた剣を半液体化させて、右肘まで持ってくる。
一部を突出させて、硬化させればそれだけで刃になる。
だが魔女はそれを意に介することもなく、食事を進め自分の分を綺麗に平らげた。
ご馳走様と言うと食器を重ねて、流しがあるであろう方向に持っていった。
最初にやられたのでちょっと仕返しでもしてみようかとやってみたが魔女には無駄のようだ。
ソーニャも硬化を解き、輪にして腕にはめ、さらに残った最後の肉を口に運んだ。
魔女が食器を洗っている間、紅茶を飲んでゆっくりと休む。
思えば村にいる間、外に関しては町と大国の侵攻ぐらいしか意識して考えることはなかった。
こうやって世界地図を眺めたり、魔女のトンでも話を聞いていると世界の広さを改めて認識することになる。
この部屋ひとつ取っても見回す限りよくわからない物だらけだ。
しかしソーニャはその無知を恥じることはなかった。
仮にそれらが必要な知識であるのならば父親が教えていたはずだからだ。
ソーニャもあの小さな世界で暮らしていくつもりであったから知ることも無かった。
今は違う。こうやって見知らぬ土地に来て、暮らすということはほかのことも知らなければいけないということだ。
ちょうどここにはそれに適した人間もいる。
ソーニャは自分の紅茶を持ってきた魔女を見た。
「私はお前の言うとおり何も知らない。だから色々教えてほしいんだ。
 この町のこと。世界のこと。お前の言う十三人の我々のことも」
魔女はしばらく思案したふんと鼻を鳴らした。
「いい心がけだ。じゃあ最初にげっぷの止め方から教えてやろう」
「いや、そんな豆知識は別にいらない」

62 :
シカのツッコミがとても新鮮に感じるw

63 :
しばらく読んでない間に設定がすごいことに

64 :
夜の町を魔女と歩く。
ソーニャはある程度厚着をしてきたので問題は無いが魔女のほうは相変わらず白衣を羽織っているだけだ。
寒くないのかと聞いたところ魔法で問題ないらしい。つくづく魔法というのは便利なものだと思う。
背の高い魔法を利用した街灯のおかげでずいぶんと道は明るい。松明とは雲泥の差だ。
そのせいか陽は落ちたものの人通りがそこそこある。同時に治安が安定していることも裏付けている。
昼間、子供が多かった噴水広場は今は大人がの酒盛りの場と化していた。
村でもよく酒盛りはしてはいたがさすがに人数が段違いに違う。
夜だというのにこれだけ騒いで問題が無いのか、というくらいうるさい。
横にいた魔女が無言で飲み物を差し出す。お礼を言って受け取る。
ガラスの容器には透明な液体が入っている。水に見えるがまさかこんな場で水は貰うまい。
臭いを嗅ぐと案の定酒の臭いがした。
「この島から北に行ったところに大きな島がある。とは言っても世界の島々に比べれば小さい。
 旧世界の呼び名に従い、今でもその島は本州と呼ばれている。かつて日本と呼ばれた島だ」
「日本……」
「これはそこで生まれたという酒に似せて作ったものだ」
「旧世界の酒か……。とは言っても私は酒が飲めないのだが」
「飲め。今後そういう機会が多いから慣れろ」
仕方なしに少しだけ口に含む。
なるほど。まずい。
「私は牛乳のほうが好きだな」
横を見ると魔女が酒を一気飲みしていた。
全部飲みきるとソーニャの手にあった酒を取り、それも全部飲み干す。
空いた容器を持って、出店に向かう。容器を渡した後、今度は濃厚な紫色をした飲み物を持ってきた。
「葡萄の酒だ。飲んでみろ」
「……ブドウってなんだ」
「紫色の果物」
紫色をした正体不明の果物から作られた酒。しかし臭いは甘めだ。
意を決して口に含んでみるとなかなかおいしい。
「これは飲めるぞ」
「今度から酒盛りの場では葡萄酒を飲むと言えばこれが出てくる」
「覚えておこう。しかし町の案内ってもしかしてここのことだったのか?」
「夜だからこそ案内出来るからね。それと空を見ろ」
魔女が上を指す。見上げると相変わらずの星空がそこにはあった。
「空中からの進入を防ぐための魔法障壁が空には張られている」
目を皿にして見回すがどこにも壁など見えない。ただの綺麗な夜空だ。
「不可視化してるけどね」
「そりゃ見えないわけだな」
葡萄酒を一口飲み、夜空を眺める。なんだかんだで町に来て、最初の夜だ。
色々ありすぎてとても長く感じた。ソーニャは未だに色々と戸惑ってはいるがそれでも得るものは多かったと思う。
明日からは自衛団の一員として頑張らないといけない。その前に団長という地位をどうにかしないといけない。
「そういえば長老会議にはお前も出席しているのか?」
「無論」
「だとしたら私が自衛団の新団長になる会議にもいたはずだ」
魔女は残っていた自分の葡萄酒を飲み干す。
「自分がなぜ団長に選ばれたかが気になると」
「ああ。あと出来れば拒否もしたいのだが……」
「無理だな」
「えっ?」
「おそらく新人団長を理由に補佐官が長老会議に出るためだ。
 役所の人間が増えれば増えるほど多数決の場では強くなる。
 ドラゴン殺しの英雄を頭に据えるためではなく、より自分たちの思うように町を動かすための決定だ」
「そこまでわかっているなら反対意見を出して……」
「一応言っておくがこの町の歴史上、一度可決された事項が反対意見多数により再議されたことは一度も無い」
そう言い残して魔女は再び出店に向かった。真っ向からの否定。
魔女の言葉はソーニャの淡い期待を打ち砕くには十二分の言葉であった。
ほかに手はないのだろうか。そう思案していると後ろから聞き覚えのある声がかかった。

65 :
コツコツとなんか気になる設定出してきやがってw

66 :
「おうおうおうおう、これはこれはご機嫌如何ですか。嬢ちゃん」
「中隊長……殿」
本会議室で会った大柄な男、中隊長だ。
今は酒がほどよく回っているらしく、そのでかい顔はかなり赤みを帯びている。
同じ席に着いている男たちも自衛団の人間なのだろう。
「おいおい、殿なんてやめてくれよ。お前が俺の隊長なんだからよぉ」
「それはまだ承認していな……酒臭っ!」
席に座りながら肩に手を回し、顔を近づけてくる。が、その吐息を嗅いで思わず離れる。
同席していた男たちがふられたなーなどと野次を飛ばしている。
中隊長は大げさに落胆したような演技をした後、飲み物を呷る。
そのとき、魔女が容器を両手に持って帰ってきた。
「中隊長か」
「んー? 亀じゃねぇか。外にいるなんて珍しいな」
「面倒だがこれに教え込まないといけないからね」
そう言いながら容器をソーニャに容器を手渡す。先ほどと同じ葡萄酒のようだ。
「納得出来ねぇよなぁ。こんな小娘が俺たちの隊長なんてよぉ。
 兄貴の後釜がこんな奴なんてよぉ」
再び大げさな落胆をして、それに同席の男たちが深く頷く。
そういえば本会議室でも兄貴という言葉が出ていた。
「その兄貴と言う人が先代の隊長だったのか?」
「おう、兄貴は強かったぞ。それに体も俺よりでかかった」
中隊長はそう言って誇らしげに胸を張る。
目の前にいる人間が既にソーニャが遭遇した人間で最も大きいのだがこれ以上となると
何か別の生き物になるのではないかと疑ってしまう。
「誰にも振ることの出来ねぇ馬鹿でかい剣を振るってな。
 寄る敵を紙くずのごとくばっさばっさと切り裂いてる姿はまさしく二つ名の通りだった」
「二つ名?」
「兄貴の二つ名。それは『鉄の旋風』! まさしくこの町の英雄だった」
疑うわけではないがちらっと魔女を見る。目線が合って頷かれる。どうやら事実のようだ。
「だけどよぉ。そんな兄貴も殺されちまったんだ……。あのドラゴンに」
先ほどまでの雰囲気が一気に暗くなる。
その後の中隊長の暗い話すを聞く限りでは隊長は囮としてドラゴンに挑み、やられたようだ。
老いぼれのあれですらあの強さだったのだ。絶頂期のドラゴンなどあの比ではないはずだ。
「ドラゴンの鱗っつーのはよぉ。ちっとやそっとじゃ傷すら付かねぇんだよ。
 魔法だってそうさ。だからあいつは障壁を無理やり突破してきた。
 矢は通らねぇし、爆弾だって効果が薄い。だから魔法使いどもによぉ、大魔法を撃たせるために
 兄貴は囮となってドラゴンの前に出たんだ……」
町を守るべく、凶暴な魔獣の前に命を投げ出した英雄。
ソーニャは確かに町を守るためにやって来た。その意思は今より一層強くなっている。
だがもしも、英雄と同じ状況になった時。
躊躇せずに同じ行動が出来るかと聞かれたら即答が出来ないというのも事実。
おそらくは町の人間は次の隊長も英雄として見る。
それにソーニャが相応しいかと聞かれたら首を横に振らざるを得ない。
「だからこそ俺はお前を認められねぇ。だがお前が隊長であるという事項は覆せねぇ」
「私だって納得出来ない。しかし方法が……」
「ある」
中隊長がそう言って、ソーニャを見つめる。
赤ら顔ではあるが真剣な眼差しだ。
「隊長の座は兄貴の物だ。それは例えお前が本物だとしてもだ。
 副隊長がもう一人出来るぐらいならまだマシなほうだ」
「つまり副隊長に私もなれと?」
「そうだ。それほうがお前にかかる責任もちったぁ軽いし
 最悪俺が全部指示を飛ばせばいいからな。お前は人形にでもなってればいい。
 まぁ役所のおえらいさんの前では隊長らしく振舞ってもらうがな」
「辞退出来ない以上はこちらで細工をするしかないということか。
 だがそれなら最初から私が傀儡になってたほうがいいんじゃないか?」
「どちらでも構わんさ。それは今後考えればいい」
副隊長は残っていた酒を口に流し込む。
ソーニャは胸をなでおろす。辞退できるのが最善だが覆さないのならば仕方ない。
傀儡としてしっかり隊長の任をこなそう。最も何をするかわからないから副隊長に頼りっぱなしだろうが。

67 :
「しかしだ。お前の実力を俺たちはまだ知らない。
 自衛団の顔になる人間なんだし、ちったぁ強くないと示しがつかないと思わないか?」
とても嫌な予感がする。気づけば周りの人間がこちらを見ている。
どうやらここにいるのは自衛団の人間ばかりのようだ。
魔女のほうを盗み見したがあくびをしていた。味方はいなかった。
「何、実力を示せばいいんだ。簡単だろう? お前が本物ならな」
目の前の山がおもむろに立ち上がる。脇においていた獲物を手に取り、ソーニャを見下ろす。
「俺の名は『鉄骨折り』のビゼン。貴殿に決闘を申し込もう」

68 :
バトルかー!
ってビゼン勝てる気がしないのだがw

69 :
天を仰いで、星を眺める。幼い頃村の大人に戯れに教えてもらった星の図を思い出す。
図と言っても複雑なものではない。あの星は方角を知るのに役に立つ。あそこに並ぶ一連の星は冬に見られる。
星を指して教えてくれるもののソーニャにはどれかわかりにくく、理解するのには苦労した。
今でもあの時教えてもらった星は空で輝いている。
視点を地上に戻す。置かれていた机と椅子は空間を作るために端に寄せられている。
逆にそれはこの空間を囲む、防壁の役を成すようになった。
その防壁の中には三人の人間がいる。
ソーニャと副隊長ビゼン。そして魔女の亀である。
「安心しな。決闘っつってもそんな命のやり取りなんてしないさ。
 どちらかが降参するか審判が止めるまで。簡単なもんだろ?」
決闘のいうのはやったことはないがそのルールならば村での練習試合と同じものだ。
問題としては村では木刀を利用していたということだ。
「獲物は練習用とかのものはないのか?」
「ガキの遊びじゃねぇんだ。んなもんはない」
そういって副隊長は豪快に笑う。
副隊長の持つ剣は長く、また肉厚だ。撃ち合いなどしようものならすぐに競り負けるだろう。
だがあれだけの物を軽々と振ることは出来まい。故に勝つとしたらうまく大振りをさせて、その隙に付け込む。
副隊長が剣から鞘を取り、刃が光を受け、鈍く光る。
ソーニャも腰の剣を抜く。それと同時に周りがざわめく。
「ずいぶん柔らかそうな剣だな」
形を自由に変えることの出来る白い剣。抜刀するときも速やかに抜けるように剣身は曲がるのだ。
「私の剣は形を自由に変えることが出来る。今回は剣の形に固定して戦うがな」
「ほう。面白いもの持ってんな。いいぜ。別に好きな形に変えて。
 俺の剣だって魔力を打ち込んで威力増加させているんだ。
 お互い力を発揮しあわないと不公平っつーもんだろ?」
そう言って剣を構える。ただでさえ肉厚の長剣なのに威力増加の魔法を仕込んでいるとなると
尚更受けるわけにはいかない。形を変えていいというならば盾にして受けるのはあり……だろうか。
「お言葉に甘えさせてもらおう」
「もういいかい」
魔女が二人の間に入る。
ソーニャは頷き、副隊長は応、と答えた。
「それじゃソーニャ対ビゼンの試合を開始とする。始めっ」
戦いの火蓋が落とされた。周りの団員たちの野次がより一層大きくなる。
彼らにとってはこの試合も余興程度のものなのだ。
今一度正面の敵を見つめる。
背はソーニャよりもかなり高い。鎧は要所を守るだけの簡単なもので装備者の動きを邪魔しないようになっている。
審判がどの程度の攻撃で試合を止めるのかわからない以上、下手に手加減をすれば好機を逃しかねない。
「そう構えるな、お嬢ちゃん。そうだ、あと一つ。場外も負けにしておこうか」
副隊長が構えを解きながら大声で言う。ソーニャは言葉を発さずに頷いて返す。
場外も何も周りは自衛団の人間だ。飛び込もうものなら押し返してくる。
副隊長が再び構え、正面を見据える。先ほどとは違う目付きで。
殺意。その意思をひしひしと感じる。思えばソーニャはこれほど真正面から人間の殺意を受けたことは無い。
ソーニャの考えは甘かったのだ。一度剣を握った剣士が対峙してしまえばそれは殺し合いにしかならないのだ。
試合に負かすのではなく相手をR。そうでなければソーニャはここで死ぬ。
そう実感した時、副隊長が動き始めた。

70 :
長剣を右肩に乗せた形でそのまま直線に走ってくる。
あそこから出せるのは右からの振り下ろし。もしくは右横からの振り抜き。
ソーニャから見て左側からの攻撃が来るであろう。
しかし相手は副隊長だ。どのような攻撃をしてくるかわからない。
右手に持っていた剣を槍へと変化させる。相手よりも長い射程を持つ武器でけん制するのだ。
その槍を副隊長の進路方向に向ける。他の武器であれば避けられた際に武器を戻す隙が
発生するのだがこの武器の場合、手を動かさずとも高速で形を変えることが出来るのでこれでいい。
槍まで後数歩というところで副隊長は勢いそのまま剣を振り下ろした。
当然のことながらソーニャまではさらに数歩離れている。とてもじゃないが剣は届かない。
槍を払うだけならばあれほど大きな振りをしなくても落とせる。長剣ゆえにあの振りなのか?
獲物をすばやく縮め、小剣程度に戻す。そして剣が振り下ろしている途中で前に出る。
一度完全に振り下ろした剣を戻すには結構な力が必要となる。途中で止めるなら尚更だ。
再び剣を戻す前に小剣を首に寸止めすればそれで終わる。
だがソーニャは後退していた。
前へ出ようとする体を後退させるほどの向かい風。剣を振り下ろした理由。
想定外の攻撃による一瞬の隙。思わず閉じた目を開けたときには既に副隊長の剣は右後方に
大きく引き、構えている。一歩下がっても間合いからは逃げれない。
素早く左手に盾を形成。さらに衝撃を逃がすために逆方向に跳ぶ。
「じゃあな」
副隊長は確かにそう呟き、剣を振り抜いた。
鉄を石に叩きつけるような音。左手に襲う衝撃。
方向的にはそこだけ防壁がなく、噴水そのままが置いてある。おそらくその縁にぶつかる程度で済む。
「えっ?」
その噴水が足元を通過している。戦場は遠のいていく。
ソーニャの身は宙に飛んでいた。
このままでは負ける云々ではない。家屋の屋根に激突する。
盾を右手に戻す。右手を振るうと同時に鞭状に変える。
噴水の天辺あたりの出っ張りに引っ掛けた後、縮小。
戦場から離れていく体を再び、そして前回よりも速度を上げ戻っていく。
さらに勢いが付いたところで鞭から前方を覆う壁にし、さらに槍を生やす。
強度は落ちるが勢いを利用すれば人間ぐらい簡単に貫ける。
ソーニャの目には既に副隊長は映っていない。
そこにいるのは自身が討つべき敵なのだ。
着地の衝撃と同時に土煙が立つ。自衛団の悲鳴が聞こえるがそんなものはソーニャにとってどうでもいい。
獲物を剣に。相手は土煙が立った後も動いている。その動きは風を生み、煙の動きを変える。
剣を振り下ろす。硬い物に当たった。それで位置はつかめた。すばやく連続攻撃を繰り出す。
やがて土煙から抜けて、相手の姿を視認する。長剣を器用に動かし、こちらの攻撃を防御している。
一度攻勢になれば、後は攻撃し続けるのみ。重要なのは相手に攻撃態勢を取らせないほどの速さの攻撃。
相手は後ろへと下がりながら防御している。前に出て、相手の急所を狙う。
足が今までと違う動きをした。下には先ほどの激突でぶつかった時に出来た床の残骸が散らばっている。
剣で突きを放つ。同時に剣身を伸ばす。
突きは腹で止められたが相手との距離を離した。が、蹴り飛ばしてきた石がソーニャの腹に当たる。
苦しんでいる場合ではない。これはこちらの動きを止める一撃。
既に伸ばした剣は相手の横へと弾かれた。剣を縮退させながらさらに後ろへ。
長剣の軌跡が先ほどよりも近い位置で描かれる。同じ攻撃にはかからないように右へと逃げる。
相手の左側。左手に剣を移動させようとしてやめる。先ほどの衝撃で痺れて動かない。
振り下ろした剣からの切り上げから逃げるためにさらに距離を取り、お互いの攻撃が届かない位置へと移動する。
いや、ソーニャにとって距離など関係ない。
相手よりも長く、自分よりもはるかに長大な形に変化させ、右足を軸に回転する。
例え剣身が細くても遠心力を加えることにより威力を増加させる。
剣先が防壁に当たり、切り裂いていく。逃れることの出来ぬ間合い。
防御すればそのまま弾き飛ばせる。しなければ両断。
その攻撃を相手はしゃがみ、剣と床のわずかな隙間に逃れることで回避した。
しゃがみこんだ体勢から一気に床を蹴り、突進してくる。
繰り出せたのは全身を使った突き。だがソーニャの逃げた方向に合わせて、停止して攻撃してくるはずだ。
既に手元に戻った獲物を薄い半月上に延ばす。
あの時ドラゴンの首を切り落とした時のと同じ形に

71 :
副隊長つえーなw

72 :
渾身の力を込めて、全身を使って振り下ろす。剣は相手に当たらず、床を砕いた。
体を無理やり起こし、相手のほうに向ける。相手の体は横に転がるように回避したのでしゃがみこむような体勢を取っていた。
再び剣を振り上げる。右手一本のためわずかに時間がかかる。相手の左手が近くの石を掴んだ。
剣はやはり当たらない。先ほどと同じように床を削る。ソーニャの左側に逃げた相手を目で追う。
転がりながら石をこちらに投げた。先ほどよりも小さいし、無理な体勢から投げたために勢いもない。
ソーニャは剣を槍に変える。意味なきけん制ではなく相手を貫くために。
石はソーニャの左手に当たった。同時に激痛が走る。
体勢を立て直した相手がソーニャの左側に駆け込んでくる。動かない左手からの攻撃。
最初の一撃と同じ方向からの同じ攻撃。だがこれは好機だ。
左手に再び盾を形成。先ほどよりも大きな盾を。
動かない左手を右手で支えながら、体勢を低くし斜めに構える。
うまく剣が受け流すことが出来れば、その間に攻撃出来る。
前回よりも衝撃が少ない。威力の大部分は上方へと逃げた。しかしそれでも体が後退する。
足を立て、後退を止め右手に剣を持つと跳ねるように飛び掛る。
相手の剣とぶつかり、鍔迫り合いになる。離れなければ押しつぶされる。
だがここで退けば、相手の二撃目の攻撃が来るはずだ。これだけ接近した後に来る攻撃を
避けることが出来るのか。剣の向きを変え、力を逃がそうとしても相手はうまく合わせてくる。
徐々に体勢が押し込められていく。剣先を曲げて、相手に向かって伸ばす。
相手が離れ、圧力から開放される。これを使えば鍔迫り合いになっても問題ない。
獲物を槍状にし、床を蹴る。
「もういい。そこまでだ」
誰かの声が聞こえた。同時に足が動かせなくなる。
思わず前につんのめりそうになり、声をしたほうを睨んだ。
「なにをするんだ! まだ降参していないぞ!」
「狂戦士のほうが合ってるね。あんた」
「何を言っているんだ! 早く魔法をっ……!」
左手に何かがぶつかり、言葉を思わず中断する。
正面を見ると長剣を右肩に担いだ相手――副隊長が疲れた顔をしてこちらを見ていた。
「まーだ戦うっつーのか。お嬢ちゃん。右手一本で勝てるとでも思ってんのか?」
「現状戦っていただろ! そもそも左手だって痺れが取れれば動かせるようになる!」
魔女と副隊長が顔を見合わせる。そして指し示したかのようにやれやれと肩を竦めた。
「ソーニャ。それ、骨折って言うんだ」
「……えっ?」

73 :
なんだろう。シカがとても人間臭いw

74 :
決闘から三日後。
ソーニャは噴水広場で修繕工事を行っていた。
あの日、ソーニャの攻撃により派手に壊れた床を直すためだ。
左手は包帯ぐるぐる巻きにされた上、動かさないように添え木までされている。
当然と言えば当然の結果だ。決闘終了後に病院へと搬送されたソーニャはそのまま手術が行われた。
通常の医療技術に加え、魔法による治癒を重ねたおかげで左手は全治一ヶ月程度で済んだ。
魔女が言うには本来ならば全治まで戻すことも可能だが人間が痛みに鈍感になるのは困るので
必ず最後は人間本来の自己治癒に頼らせるそうだ。ソーニャの場合はそれに戒めの意味もある。
獲物を器用に使い、切り出された石をはめて行く。昨日より続いた作業もその日のお昼には半分ほどまで終了した。
昼休憩を取るために噴水の縁に腰を下ろし、昼食のために用意してきた弁当を取り出す。
ちなみにこの作業はずっとソーニャ一人でやっている。一人でやれと言われた。
「隊長初仕事が自分の後処理なんて間が抜けているというかなんというか……」
パンを頬張りながらごちる。今日の昼食は泊まっている宿からいただいたものだ。
あっと言う間に弁当箱が空になる。美味であった。
食休みをした後、作業を続けるかと思っていると見覚えのある影が走ってきた。
「ソーニャさん、作業は順調みたいですね」
走ってきたコユキは広場を眺めながら言う。
「明日中には終わる、はずだ。コユキが手伝ってくれればもっと早く終わるのだが」
「先生に釘刺されてるので無理です」
即答されてしまった。物は試しではあったがちょっと悲しくなる。
「えっとですね。今日は雨が降るそうなので傘を持ってきました。
 作業は雨が降ったら中断していいそうです。道具は本部に置いて構いません。
 あと今日は満月なので宿ではなく先生の家に直接向かってください」
「何かするのか?」
受け取った傘を弁当の入っていた鞄に仕舞いながら尋ねる。
「満月は魔物が活発になるじゃないですか。
 さすがに今日はソーニャさんは見学ですが先生のところでどんなことをするのか覚えてきてください」
「本部ではなく?」
「先生の家です。魔物が出現したときに現場へ早く行けますからね」
前回は見せてもらってはいないが何か乗り物でもあるのだろうか。
しかし魔物が満月になると活発になるというのは初めて聞いた。
思い返してみれば村でも魔物の襲撃があるのは月齢が満ちてきた頃だった……気がする。
「それでは伝言は以上です。私は他に任務があるのでこれにて」
コユキは敬礼をして、そのまま走っていった。満月の日だし彼女もやることが多いのだろう。
ソーニャは膝を叩いて立ち上がり、作業の続きに取り掛かることにした。
作業は思ったより順調に進み、全工程の八割ほど終えたところで雨がぱらつきはじめた。
言われたとおり、本部へと道具を持っていこうとすると本部から何人かの人間が飛び出してきた。
「アネゴ! 持って行きますよ!」
「怪我のところ濡れたら大変ですから早く傘を!」
「弁当箱とか宿のほうへ持って行きますよ!」
「あ、ああ。ありがとう」
決闘後から隊員たちのソーニャに対する態度はこんな感じになった。
怪我の功名というものだろうか。態度の急変っぷりにむしろソーニャが慣れていないぐらいだ。
特に姉御という呼び名。目の前にいる男たちはどうみてもソーニャより年上だ。
最初に呼ばれたときに反論したが年齢より心意気が大事らしい。
荷物を隊員たちに任せたソーニャは魔女の家へと向かった。
もうすぐ太陽が沈み、夜となる。

75 :
姉御www
しかしやはりなんか人間臭いw
鬼になるのはまだまだ先か。

76 :
どれどれ?

77 :
いつもの丸い机には大きな地図が置かれ、その周りを何人もの男が囲っている。
魔女は長い棒を使い、地図上の駒を動かしていく。
ということはさっぱりなく
机の上は相変わらずよくわからない小物でごちゃごちゃだし、魔女は本を読んでいるだけだった。
「一応呼ばれたようだから来たのだが……」
「椅子に座っていればいい。暇つぶしに本でも読む?」
「いや、そうじゃなくてだな……」
ソーニャが椅子に座り、頭を振るう。
「襲撃が来るんだろ? 魔物の。もっと戦闘準備なんか必要なんじゃないのか?」
「確かに満月に襲撃が来ることは多い。が、その規模は大抵小規模なものだ」
「魔物が活発になるとコユキが言っていたから上級の魔物でも来るのかと思っていた」
「満月に上級の魔物が襲撃したことは何度もある。先のドラゴンとかね」
よっこらしょっとと立ち上がり、部屋の端にずらりと並ぶ本棚の前に歩いていく。
基本的に物がごちゃごちゃしている部屋だが本周りだけは綺麗にしてあるので
余計に周りは汚く見えてしまう。
一冊の本を取り出し、持って来る。少々ほころびや破けが見え、古い本であることがわかる。
「ちなみにこれは自衛団の日誌の写しの一部。町の誕生と同時期ぐらいに自衛団も
 組まれたはずだからざっと五百年ほどの歴史があるわけだ」
「ごひゃく……」
「実際にここにある書物の大部分は日誌の写しでしかない。僕の魔道書なんて少ないものさ。
 これは今から四年前の日誌。この町でも最も被害の出た年だ」
古びた日誌を机に置き、ぺらぺらと捲っていく。そしてあるページで捲るのをやめた。
上部には日付が書かれており、八月二十日となっている。夏の盛りぐらいだろう。
横にはおそらく筆記者の物と思われる名前。そして満月という文字。
「魔法というのは月齢に深く関係している。
 月が満ちれば魔力も満ち、月が欠ければ魔力も失われる。
 今この世界にいる魔物というのは魔法によって人に強い敵意を向けるものを指している。
 故に魔力が最も満ちる満月の日はやつらの敵意もより一層強いものになるんだ」
「なるほど。魔力と関係していたのか」
「という仮説」
「仮説かよっ」
思わずガラじゃないことをやってしまった。
「魔物の定義なんて未だにはっきりしていないからなんとも言えない。
 魔法に関しても明日になれば常識がひっくり返る可能性が十分あるほど
 未知の部分が多い。とりあえず現状はこれで考えているという程度だ。
 最もこの日誌のおかげで満月に魔物の襲撃が多いというのは確実に言える」
「そのページのも満月と書いてあるな」
「『ファウストの狂乱』と呼ばれている夜だ。隊長になるならば知っておいたほうがいいだろう」
そういって日誌をこちらに向ける。筆跡はまるで震えているかのように乱れている。
読み間違いないようにゆっくりと読み進める。
事の発端は当時の魔術師協会会長のファウストがこの島が誕生した要因と思われる隕石の破片を発見したことから始まる。
この島は彗星落下時に本体より零れ落ちた破片が海に着水し、海底の大地を隆起させ出来たものだと考えられていた。
しかしその要因とされる破片はそれまで発見されておらず、あくまで推測の域を出るものではなく
仮にそうだとしても破片は島の地中深くに埋まっているので証明不可となっていた。
ファウストは島にて魔力に関しての野外調査をしている際に、異常な値の魔力残留を観測。
その後、周辺を捜索した結果隕石の破片と思しき小石を発見する。
町に小石を持ち帰った後、さまざまな実験を繰り返しこれを隕石の破片と正式に発表した。
ただ破片自体が放つ魔力が一般人に危害の及ぶほどの値であったため、とある民家の地下室に安置されることになり
その民家は後に隕石研究所と名を付けられた。
隕石発見から最初の満月にあたる事件当日。研究所にて爆発事故が発生したと自衛団に連絡が来る。
当直二人が現場に向かうと倒壊した民家の上にファウストがいたと言う。
自衛団がファウストに問うよりも早く一人を魔術により殺害。もう一人は逃走する。
連絡は自衛団全員および魔術師協会全員に行き渡り、ファウストの殺害の命が下った。
大量の犠牲者を出したもののファウストを殺害。その際、原因と思しき破片を破壊した。
犠牲者の多くは魔術師であり、これにより町の魔術師は大幅に減ることとなった。

78 :
数ページにわたる内容を要約するとこんなところだろうか。
「破片がファウストを狂わせたということか」
「そのときファウストが破片を所持していたからね。
 満月の力で増大した破片の魔力にあてられて狂乱化したということだ」
ソーニャは日誌を閉じて亀に渡す。
「しかしまさか最大の被害が人間によるものだったなんて……」
「もともとこっちには上級の魔物なんてほとんどいないし精々飛んできたドラゴン程度さ。
 先のドラゴンも確かにひどかったけどこの時に比べればましなほうさ」
突然部屋内に鐘の音が響く。続いて男性のやる気の感じられない言葉が続いた。
「えー、襲撃ですー。場所は十時方向ですー。数はおよそ二十。地上小型の魔物ですー」
「見計らったかのように来たね」
それを受けて魔女がのんびり立ち上がる。
さらに持ってきた日誌を棚に仕舞おうとしている。
「襲撃なんだろ。早く行かないと!」
「落ち着きなさい。そもそもそんな獣に毛の生えた程度の生き物がどうこう出来るほど
 この町はやわじゃないさ。とは言ってもあんたを現場に連れて行かなきゃならないしね」
「万が一というのもあるだろ」
「それじゃあちょっとだけ近道するか」
ソーニャが階下へ向かおうとすると亀はそれを呼び止めた。
亀は上を指している。
「屋上に行くよ」

79 :
snipped (too many anchors)

80 :
乙乙。

81 :

             .○' ⌒`○
            /i /、 ,ヽ!ヽ
           / .,cリ ゚ヮ゚,リ ヽ  唐突に急浮上!
          (/ ;⊂E発ヨつ\)
            ( (ノメ川メ○
             ノ爻ラr''
              ノ /

82 :
あえてはっちゃんでやるとはこだわりを感じるw

83 :
夕鶴「飽きたからあとよろしく」
円川さん「えっ」

84 :
夕鶴から禅譲された円川が最初にしたことは自分の権威づけであった
あらゆる物に自分の肖像を刻印し、己を型通った銅像を拝むように強制した
住民が反乱を起こさぬように獣たちをスレへと放った
その獣は十の頭と七つの冠を持ち、貧乳を冒涜する言葉を口から吐いた
ある者がこの獣の首を切り落としたが、またたく間に再生したので人々は恐れおののいた
識者はこの暴挙を諌めようとしたが、円川は識者たちを集めると毒蛇と蠍がうごめく穴へと突き落とし、
その断末を眺めながら酒を楽しんだ
この行為によって円川に意見を申し上げる者はいなくなった

85 :
サタンを放つなwww

86 :
夕鶴どのは力によって支配しようとした、だが私は違う。
円川「私は法によって治めたいと思っている。そこで、あなた達がどれだけ順法精神があるか確かめてみたい。
ルールを決める『私が射たものにむかって弓を射よ』」
臣下「ははっ!」
ヒュンヒュンヒュン
円川「お前、なぜ鹿をいなかった」
臣下「みんな射てますし、あれだけ刺されば充分かと」
チャキ ザシュッ!
臣下「ぎゃあー!」
円川「私が射たものを射ろと言ったはずだ!」
ヒュンヒュンヒュン
円川「お前、なぜ射なかった」
臣下「…あれは円川さまの愛馬でございます、恐れ多く」
チャキ ザシュッ
臣下「ぎゃあー!」
円川「私の決め事を守らぬ奴は必要ない!」
円川「あそこに見えるは倉刀だな」
臣下「はっ」
ヒュン ヒュンヒュンヒュン
ブスブスブスブスッ
円川「ようやく法に遵守できるようになったな」

87 :
倉刀ーーー!!!www

88 :
倉刀「どういうことなの・・・」

89 :
>>88
円川「万民我を貴ぶべしってこと、言わせないでよ恥ずかしい!
そんなとこより私と契約して創発板作家になってよ!」

移転作業を進める円川をよしとしない住人たちは攻勢を始める
しかし、彼らに恐るべき障害が立ちふさがる
デーン
虎牢関(仮名)にD君出現!
(BGMチェンジ)
円川「彼は私が数多のロリゲーと児ポ禁改正の礼を尽くして迎え入れた猛将。
そうやすやすと突破する事は無理よ」
D君「一食一晩の恩……辛いものだ……ここは通さぬ!」
デーン
味方勢力に被害甚大!
味方士気減少!

90 :
D君そっち側かwww

91 :
ドッゴーーン
ウパ太朗 敗走!
ドッゴーーン
謎生物 敗走!
円川「さすがね、無人の野を駈けるが如く……」
住人「D来々! D来々!」
味方勢力動揺!
スイカ男「やろう、俺が相手だーーッ!」
ザシュッ
スイカ男(ちっ、浅い……)
D君「……」
はじるす破損!
ガシッ
D君「友からもらったこのロリゲ! 何の捨てる処がある」
ガリ ガリガリガリ
スイカ男「破損したエロゲーを……食いやがった!?」
敵兵「おお!」
敵兵「さすがはD君!」
敵勢力戦意高揚!
スイカ男「コイツが……Dか……」

D君とは!
ひとつ、好漢なり!
ふたつ、決して大人に興味なく!
みっつ、そして悟られず!
よっつ、ロリータと男の娘の嗜好を兼ね備え!
いつつ、そしてそれは、表紙絵詐欺のように美しさを基本とする!

92 :
マジ何者だよwwwww

93 :
ちょwwww途中からD君ネタになってるじゃねえかwwww
円川さん食われてるぞwwwww
                                        エンガワダケニネ

94 :
「93が円川陛下に召されたらしいぜ」
「そうか出世したな。ところで身元不明の死体が川に浮かんでいたらしいぞ」
「知ってるよ、首無くて胸に『罰』と刻んであったんだろ。物騒だな」

95 :
やたら狭く複雑な階段を抜けた先にあった屋上は人が五人も立てば満員になるほど狭かった。
先ほどから振り出した雨は弱いものの長く当たれば体を冷やしてしまう。
一応雨よけのコートは羽織っているがいかんせん寒い。
「いや、しかしここからどうやって現場へ行くのだ。ここには何もないじゃないか」
「魔法だよ。方角は十時の塔と」
亀は足元で何かをやっている。屋上の床には丸やらなんやらをあわせた複雑な図が書いてある。
これも魔術に用いる図の一つなのだろうけどソーニャには子どもの落書きにしか見えない。
作業が終わったらしく亀が立ち上がり、図の中心らしき場所に立つ。
「ここの円から出ないように。それじゃあ行くよ」
亀が聞きなれない言葉を喋り始めた。同時に足元の図を作る線が内から外へとなぞる様に光り始めた。
やがて書かれていた線が全て光り、さらに図の一部が一際大きく光る。
「転送」
亀の呟きと同時に体の感覚がなくなり、視界が真っ暗になった。
意識だけが夜の中浮いているような錯覚に捕らわれる。
その一瞬の後に体に重力が戻り、光が視界に入ってくる。
見たことのない場所だ。先ほど亀の言っていた十時方向にある監視塔なのだろう。
徒歩で来た人間がこの壁の上に登るための階段や襲撃に備えた装備などが置かれている。
壁の通路の途中に築かれているため中央を通路が横切っており、扉は設置されていない。
さほど広い空間ではないが足元に書かれている魔方陣も亀の家のそれに比べ手のひら程度の大きさと小さめになっている。
「試験的に作った転送魔方陣の居心地がどうだった?」
「ちょっと怖かったな。転送するときは目を閉じたほうが良さそうだ」
「時々気分を悪くする人間がいるものでね。あんたは大丈夫そうだね」
亀が外を見やる。何人かの自衛団と思しき人が弓を撃っている。
そのうちの一人がこちらに気づき、敬礼をする。
「これは亀じゃないですか。どうしたのですか?」
「新人教育」
外はまだ雨が降っているが亀は何も気にすることなく、出て行った。
ソーニャもそれに着いて行き、外を見渡す。
天気が晴れれば遠くまで眺めそうだが雨のために視界は通らない。
何かがぶつかる音が下から聞こえてくる。
「ちょっと下を覗いてみな」
亀に言われるがまま城壁から少しだけ首を出して覗いてみる。
高い。というのは置いといて。四つ足の獣が城壁に次々と体当たりしている。
その脇で矢が刺さった獣が倒れている。
「あれは……何をやっているんだ?」
「多分壁を壊そうとしているんですよ」
団員が矢を撃ちながら答える。これだけ群れていると外すほうが難しそうだ。
「魔物が人間に対して憎しみを持ったはいいものの頭は所詮獣程度らしく
 意味のわからないことをするときが多々ある。これもその一例だ」
確かに意味がわからない。
矢が刺さっているならともかく刺さっていない個体まで地面に伏せている。
まだ地面を掘って壁を潜るほうが現実的だ。
「たまーに仲間を踏み台にしてこっちに跳ぼうとしてくるやつもいるんですけどね。
 さすがに高すぎて届きませんけど」
「これなら放っといても問題ないのではないか?」
「いえいえ。こうやって来て頂いたのですからその恵みはちゃんと受け取るべきじゃないですか」
「恵み?」
そう言っている間に元気に自滅していた魔物たちが今はほとんどが地面にうずくまり動かない。
どうやら襲撃もここまでのようだ。どうするものかと見ていると横から自衛団の人間が何人か魔物に近づいていっている。
一人が魔物に刃物を刺す。ちゃんととどめを刺しているようだ。
その後、足を紐で縛り、肩に掛けて背負う。
「あの魔物は狼に似ているんですよ。だから革を防寒具に、肉はそのまま食料になるんです」
「肉を食べるのか? 魔物だぞ」
「いえいえ。魔物と言ってもちょっと人間に敵意の強い動物ですよ。
 一応魔法使いさんが処理の手伝いをしますが、基本的には動物の肉と同じです」
村でもあのような魔物の襲撃はあったがそれを利用するようなことはなかった。
魔法使いがいなかったからと言えばそれまでだが加工法を知っていれば冬の寒さも凌ぎ易くなりそうだ。
いや、よく考えれば行商人が売りつけてくる防寒具と言うのはこれから生産されているのではなかろうか。
ぜひともこの技術は持ち帰り、村に役立てたい。

96 :
「あれ、というか襲撃はこれで終わりなのか?」
「終わりだ。さて、帰るか」
「この程度なら本当に私が来る必要はなかったな」
「七割ほどはこの程度で済む。三割についてはあんたも出撃することになるものだ」
矢を撃っていた兵士が次々と監視塔の中に戻ってくる。
魔法で帰るものかと思っていたが亀は階段を降りて行った。
「言い忘れたけどその魔方陣、一方通行だから」
あくまでも試験運用ということか。
狭い階段を降りながら、襲撃を思い返す。
ただひたすら壁に体当たりを繰り返していた魔物。亀は意味がわからないと言っていた。
確かにこの丈夫な壁に体当たりを繰り返すなんていうのは自殺行為でしかない。
しかしこういった攻撃が例えば同じ場所にずっと繰り返されていたら。
もしかしたらこの丈夫な壁にも傷が付くのではなかろうか。
統率された意思を持って、それが成されているとしたら奴らにはそれを指示するもっと位の高い長がいる。
そこまで考えたところで階段が終わり、地上に辿り着く。
雨は相変わらずやまない。傘は手元にない。亀は既にいない。
ソーニャはため息をついた後、雨の中に飛び出した。

>>95-96 初襲撃  
以上

97 :
じわじわ伏線張ってるな。ていうか、食うんかwww

98 :
D君がいるかぎり虎牢関は落ちぬと考えた柏木は一計を案じます
まず、策を授けた少年を円川のもとへむかわせました
「偉大な円川様と停戦を結びたく、使者に参りました」
礼儀正しい少年、ジークフリードを気に入った円川は傍に置くに決めました
次にジークフリードは夕鶴へと接触を図ります
「偉大な円川様の先代、夕鶴様とよしみを結びたく」
夕鶴も少年を気に入り、手元に置こうとしましたが、それが原因で円川と仲違いをします
仲違いは内乱を生み、円川と夕鶴合い争い、首都は火に包まれました
これに乗じ、柏木の別動隊が首都を制圧、孤立したD君は流浪となって落ち延びました
え? ジークフリードがそんな真似出来ない?
それもそのはず、少年は髪を切って男装したジークリンデだったのです

99 :
なんぞw

100 :
「有り得ないね」
翌日。夜中に降っていた雨は明け方には止み、今は空が青く染まっている。
ソーニャが今日も元気に広場の修繕作業をしていると、亀が通りかかったので
話をするついでに昼休憩を取ることにした。
その際に昨日考えていた話をしたのだが返答は冒頭のものだった。
「壁は毎日修繕と補強を繰り返しているからあの程度の生き物が体当たりしたところで
 百年経っても壊されはしないさ」
「毎日……。ということは昨日やられていた部分も……」
「今頃は昨日よりも頑強になってるよ」
まさか毎日補強をしているとは思わなかった。ここまで自信を持って言い切るのだから
安心しても問題ないようだ。
「だけど統率する長がいるというのは合っているね」
「いるのか。あの群の長が」
「二本足で立つ魔物を時折見かけるからね。最も遠くで眺めているだけで攻撃はしてこないんだけど」
「討伐隊を組んで行かないのか?」
「わざわざ敵の縄張りに進入なんてしないさ」
亀が言うにはこの町と隣接する大きな森が奴らの住処になっているらしい。
森自体もかなり大きく、仮に討伐しに行っても見つけられない可能性だってある。
さらに森にはあの魔物よりも恐ろしい生き物がいると言う。
「あの魔物は普通の動物で言うなら狼に該当する。
 森の中には熊だとか猪だとかそういう魔物もいるからね」
具体的な名前を出されると想像しやすい。ソーニャも熊や猪は近くの森に生息していたので知っている。
魔物ではなかったものの討伐するには苦労した。そこでソーニャがふと疑問に思う。
「確か魔物は魔法によって人間に対して敵意を強く持つようになった奴って言ってたよな?」
「凶暴化したと言ってもいい」
「それじゃあもとからいた狼だとか普通の動物はどうなったんだ?」
「徐々に魔物化しているんじゃないかな。
 現在いる魔物の大体は元からこの世界にいた生物が魔法によって魔物化したわけだし」
「全部が魔物化するかもしれないということか……。待てよ、魔法をかけられて魔物化しているなら術者を仕留めれば止まるのか?」
「そもそも魔法にかけられてってのが仮説なんだけどそれが正しければ止まるね」
この世界にいるであろう魔物化させている魔術師。そいつを仕留めるだけでこの世界はかなり平和になるはずだ。
だがそれが未だに叶っていないということは……。
「最も術者は北の大国の王か側近だろうけどね」
ソーニャはため息をつく。
戦争が始まってから十五年以上。好転したという話は聞いたことがない。
この島だけでも徐々に魔物が増えてきていると言うのに、北の大国の術者なんてもってのほかだろう。
「北の大国には魔物は当然として魔族がいるからそう簡単には行かないだろうし」
「魔族というのは……戦争が始まった時にこの世界に来た奴らか」
「そうそう。あれはこの異界の生物だからね。そいつらに比べたら狼の魔物なんてノミみたいなものさ」
そう言って亀は立ち上がる。かなり長い時間話し込んでいたようだ。
今日中に修繕を終わらせて、明日からは通常業務に戻らなければ。
最も隊長が何をするかはわからないが。
立ち去ろうとした亀が何かを思い出したかのように立ち止まりこちらを見る。
「そうだ。あんた時計持ってる? というか知ってる?」
「持ってはいないが知ってはいる。昨日の十時の塔というのも時計を元にしたものだろ」
旧世界にあったいくつかの事柄はこの世界でも受け継がれている。
そのうちの一つが時間の概念だ。とは言ってもソーニャの居た村では時計が一個もなかったので
そういう考え方があるということしか習っておらず実際に使うことはなかった。
そもそも時計自体が結構高価で村人全員に行き渡らせることが出来なかったというのが大きいのかもしれない。
「時計なしで過ごしていたというのも信じられないが……。はい、これ」
渡されたのは手のひらサイズの物で、蓋が付いている。見ないときはこの蓋を閉じて懐に入れておくというわけだ。
天辺には鎖が付いているので腰に結んで置けば落とす心配もない。
「懐中時計というやつだ。この先多用するだろうから 大 切 に使ってくれ」
「あ、ああ」
なんだかすごい一部が強調された気がする。それほどこれは高価なものなのだろう。
亀を見送った後、改めて時計を見る。短い針がカチッカチッと時を刻んでいる。
鎖を腰に結び、懐に時計をしまう。長かったような短かったような修繕がもう少しで終わる。
『懐中時計』 以上


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