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二次創作総合スレ


1 :2010/08/22 〜 最終レス :2020/04/26
とにかく総合的ー
作品を投下してもいいしー
二次創作系スレ住民の交流とかー雑談とかー
二次創作関連のスレ立てとかーまとめとかーそれに関する質問とかー
書いてみたけど訳ありで投下する場所がないなーって時とかー
落ちたスレを立て直すのが面倒な時とかーまぁ色々ー
前スレっぽいのー
二次創作総合
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1219908735/
関連っぽいのー
他に行き場所の無い作品を投稿するスレ3
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1281009558/
【アンテナ】創発で投下を見かけたらageるスレ2
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1281007663/
【まとめ】創発板ウィキ・Wiki編集スレ2【保管】
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1280991457/

2 :
大丈夫かいなこのスレw
保守せず落とした方がいいのかな

3 :
だが即死回避
守備範囲が広すぎて使いづらいのは否定しない

4 :
まだ即死回避してないぞー

5 :
テンプレが妙に和むなw

6 :
即死回避

7 :
総合スレってあると便利だよね
保守

8 :


9 :


10 :
10だと思いますがもし違っていたらすいません……

11 :
1〜33番の二次創作小説SS(Side Story)のコミケや通販予定はないでしょうか?
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、いちいち読み込みに行くらしい・・・)
のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル PC版は テンポ,ロード問題が改善して 快適です。
(初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!) 初恋ばれんたいん スペシャルはゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけに SSがないのが とても惜しいと思います。
(初恋ばれんたいん スペシャル PC版は XPで動作可能です。)
2. エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。 (音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。)
同じワーランドシリーズなのに ファンタスティックフォーチュンSSは多いのに似ている 魔法学院物なのに ネギま、ゼロの使い魔 SSは多いのに
エーベルージュのSSがほとんどありませんでした。

12 :
3. センチメンタルグラフティ2
センチメンタルグラフティ1のSSは多いのにセンチメンタルグラフティ2のSSがほとんどありませんでした。
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定でセンチメンタルグラフティ2の
主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE ?輝く季節へ?』の茜シナリオ
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。(システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)
センチメンタルグラフティ2 VS ONE 〜輝く季節へ〜の茜シナリオを比べてみました
センチメンタルグラフティ1の主人公 田中 一郎 = 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司 永遠の世界に
センチ1の主人公 田中 一郎は交通事故で死亡 = 城島司は 「えいえんの世界」に旅立つことになる。
センチメンタルグラフティ2の主人公 椎名耕平 =ONE 〜輝く季節へ〜の主人公 折原 浩平
センチメンタルグラフティ1の12人のヒロイン = 里村 茜
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。) SS
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
個人的には 「呪い」 と「花言葉」 を組み合わせた百合奈 シナリオは Canvas 最高と思います。
Canvasの他のヒロイン SSは多いのに Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSSがほとんどありませんでした。

13 :
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
似ている 伝奇バトル吸血鬼作品なのに 月姫、Fate、痕(きずあと) SSは多いのに
MinDeaD BlooDのSSがほとんどありませんでした。
8. Dies irae
9. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒 SS
10. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世 SS

14 :
11. TYPE-MOON
(1) 逆行最強化断罪スーパー慎二がペルセウスを召還する SS
(2) 凛がイスカンダルを召還するSS
(3) 逆行最強化慎二 OR 四季が 秋葉、琥珀 OR 凛を断罪する SS
(4) 原作知識有憑依最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ)
慎二 OR 四季が秋葉、琥珀 OR 凛を断罪する SS
(5) ロアの転生体が 慎二
(6) アルクェイドに 吸血されて 死徒化
(7) ロアに吸血されて 死徒化
12. ゼロの使い魔
(1) 原作知識有 助演 憑依転生最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ)SS
(ウェールズ、ワルド、ジョゼフ、ビダーシャル)
(2) 原作知識有 オリキャラ 憑依転生最強化 SS
(タバサ OR イザベラの 双子のお兄さん)
13. とある魔術の禁書目録
(1) 垣根 帝督が活躍する OR 垣根帝督×麦野沈利 SS
(2) 原作知識有 垣根帝督 憑依転生最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ) SS
(3)一方通行が上条当麻に敗北後もし垣根帝督がレベル6実験を受け継いだら IF SS
14. GS美神
(1) 逆行最強化断罪 横島×ダーク小竜姫のSS(非ハーレム 単独カップリング ルシオラ も除外 )

15 :
15. EVA
(1) 逆行断罪スーパーシンジ×2番レイ(貞本版+新劇場版)のSS
(2) 一人目のレイが死なないで生存そのまま成長した一人目のレイが登場する(二人目のレイは登場しない)
P.S
エヴァンゲリオンのLRSファンフィクションで、レイの性格は大体二つに分かれます。
1.白痴幼児タイプのレイ
LRSファンフィクションで大体のレイはこの性格のように思えます。
白痴美を取り越して白痴に近いレイであり、
他人に裸や下着姿を見せてはいけないという基本的な常識も知らず、
キスや性交等、性に関する知識も全然無いか、それともほとんどありません。
このタイプの場合、逆行物では、シンジがレイに常識や人間の感情等を一つ一つ教えていくという「レイ育成計画」になってしまいがちです。
このタイプは、アニメのレイに近いと言えるでしょう。
2.精神年齢が高く、大人っぽいレイ
1番の白痴幼児タイプとは違って、他人に裸や下着姿を見せてはいけないという
基本的な常識くらいはあり(見られたとしても恥ずかしく思ったりはしないが)、
キスや性交等、性に関する知識は理論的に知っており、自分の自我が確立している、
(命令には絶対服従だが)感情表現がより豊富です。
このタイプの場合、 コミックスのレイに近いと言えるでしょう。

16 :
16. BlackCat
(1) BlackCatの禁書目録のクロスオーバーSS
(2) イヴ×リオンのSS
17. 鬼切丸
鬼切丸×鈴鹿のSS
18. MURDER PRINCESS
カイト×ファリスのSS
19. 式神の城
玖珂光太郎×結城小夜 OR 玖珂光太郎×城島月子のSS
20. 大竹たかし DELTACITY 全2巻
21. ヴァンパイア十字界
蓮火×花雪 OR 蓮火×ブリジット
22. 地獄少女
(1) 不合理な 地獄少女の被害者(e× 看護婦、1期の看護婦、2期の 拓真を助けに来てくれた若い刑事、秋恵) 家族・恋人が 地獄通信に 地獄少女と仲間たちの名前を書くSS
(2) 極楽浄土の天使 OR 退魔師が 地獄少女と仲間たちを断罪するSS
(3) 拓真の 地獄少年化SS
二籠の最終回で拓真が地獄少年になるのかと思ってたんですが・・
地獄少年 ジル : 所詮この世は弱肉強食。 強ければ生き弱ければ死ぬ。
拓真 : あの時誰も僕を守ってくれなかった。
守ってくれたのはジルさんが教えてくれた真実とただ一振りの超能力
・・・だから 正しいのはジルさんの方なんだ。

17 :
23. 真・女神転生CG戦記ダンテの門
ダンテ× ユーカのSS
24. スレイヤーズ
魔竜王ガーヴが慎二に転生 ワカメ魔竜王シンガーヴ無双
25. るろうに剣心
志士雄真実が禁書世界に転生
26. CODE:BREAKERととある魔術の禁書目録のクロスオーバーSS
27. ガンダムWとエヴァのクロスオーバー SS
28. ロードス島戦記 IF
(1) ナシェルのロードス統一
(2) ロードス島戦記の破壊の女神カーディス復活 VS ロードス連合軍
(3) 新ロードス島戦記の終末の巨人復活 VS ロードス連合軍
29. ときめきメモリアル4
30. WHITE ALBUM2
31. Canvas3
32. Piaキャロットへようこそ4
33. クドわふたー

18 :
FFXIの二次創作も投下していいの?

19 :
どうせ誰も使ってないスレだし好きにすりゃいいんじゃね?

20 :
>>19
サンクス。ちょっと過疎ってたから、レスはもっと遅くなると思ってた。
投下よりも雑談がしたくなったw
>>19もアマチュア小説家?どんな話書いてる?
俺はFFXIを題材にしたミステリ書いてるよ。

21 :
私はただのヲチ板・最悪板住民です。
この板には主に痛い子を観察しに来ているだけなので、
残念ながらあなたのご期待にはそえません。

まともな人と雑談したければ
【雑談】 スレを立てるまでもない相談・雑談スレ23
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1283085334/
のほうをおすすめします。

22 :
>>21
親切にありがとうー!

23 :
この板に来てる理由は意地悪いのに妙に親切な奴だw

24 :
こんなSSがどうしても読んでみたい
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1281253478/

25 :
ゼロの使い魔のルイズが陸自の小隊するってな二次SSを考えてんだけど
始まりが重要だからいきなり演習中の61式戦車が並んで的に向かって
砲撃をした所へサブタイトルを入れるか
冬の寒さが身に染みる早朝 ジョギングをしてる男が止まると
車道からキャタピラの音が聞こえてジーゼルエンジン音が近づいて
来て振り向くと演習地に向かう61式戦車の隊列が男を通り過ぎ
男は物怖じせずまた走り出しサブタイトルインってなパターン
を考えてるんだけどどちらが読者を引き込めやすいかな?
 

26 :
別のスレでそのくらい自分で考えろと言われてなかったか?

27 :
◎ 同人誌の小説 30冊目 ◎
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/2chbook/1280722789/
【読み手】同人小説を語る【書き手】
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/doujin/1252937999/

28 :
台詞系ってありなの?

29 :
ありだよ

30 :
自分の書いてるssで
キャラに「WRYYYYYYYYY!!」的な奇声を言わせたいんだが。
     ↑以外で何かいいもの考え付く?
一応自分では
「ZHAAAAAAAAAAAA!!」
を思いついたんだが・・・
条件
アルファベット3文字(最後は伸ばす)
最後は伸ばしやすい音 ex) A Y I O etc
      にくい音 ex) T R X C etc
字面だけだと、どういう風に発音するのかわからないものほどいい。(出来れば読み方もほしい。無理だったら無くてもいい。)
ハイテンションになっているのがわかる。
なんか範囲狭そうだけど、何か意見をください。m(..)mオジギ
(日本語あってるのかな・・・)

31 :
やっぱり書いた物を批判されるとへこむな。
いや感想があるだけで、読んでくれただけで
十分ありがたいんですけどね。
ちょっと切ない。

32 :
>>1なんかわかんないけど乙なの

33 :
二次創作データベース
http://www42.tok2.com/home/sslink/

34 :
なにげに復活後一度も投下ないのか

35 :
ここに来たばかりなんだけど最初に来たばかりの人ってどこに行けばいいの?

36 :
投下したいのとか見たいののジャンルが決まってるなら、雑談スレで聞けば、どこがいいか教えてもらえると思うぜ
決まってないなら勢いあるところ適当に回ってみたら?

37 :
うぃ、さんきゅー
一応ここに来るまでに書いてたしオリジナル作品で異能バトル書きたかったからそれっぽいの探してみるわ

38 :
ここら辺が該当するけど、過疎ってるから奨められるかは微妙なライン
まあ、色々見てみて

【邪気眼】厨二病で創作するスレ【EFB】
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1283123495/
ファンタジーっぽい作品を創作するスレ 2
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1281160180/

39 :
ギアスの二次で何か面白いのある?
あとナデシコで昔あったdown from darkness?だっけ、あれの続きってないの?

40 :
ときめきメモリアル・葉鍵SSのキャラクターの名前をメモ帳で
エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、初恋ばれんたいん スペシャル、Canvasのキャラクターの名前で変えながら
SSを読んだがSSの大部分が違和感のためつまらない。

41 :
ときめきメモリアル・葉鍵SSのキャラクターの名前をメモ帳で
エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、初恋ばれんたいん スペシャル、Canvasのキャラクターの名前で変えながら
SSを読んだがいくつのSSは意外におもしろい

42 :
キャラの外見を著しく変化させた二次創作ってやっぱ受け悪いの?
元が中学生とか高校生を大人視点で書くとか

43 :
>>42
二次創作は読み手がある程度設定を知ってるから
そこを描写する手間がないっていうのがあるんだけど
それと同じようなノリでオリジナル要素の入った物を書かれると
前提の説明が欠落してて読みづらいことが多い
反応が悪いんだとすればそういう説明不足、あるいは
説明を上手く作中に盛り込むことが出来てない可能性の方が高いと思う
あとは単純に好みの問題
ぶっちゃけ元々のキャラが好きで二次創作を読むのに
そういう特殊な設定を追加されると二次創作というより
二次創作作者の半分オリキャラみたいになっちゃうから
イメージ違っちゃって読めない、読みたくないって層は一定数居る気がする
けどコレは単なる好みの問題だから、二次創作とはいえ創作なんだし
好きに書いちゃうのもありだと思うよ

44 :
成人したシンジが後輩を導くエヴァとかは見たいな

45 :
http://sonimcity.web.infoseek.co.jp//adaltn/yuukoadult001.html


46 :
今ゲームの二次を書いてるんだけど再構成ものだから台詞収集が辛い

47 :
オリキャラ入れようと思うんだけど
原作の持ち味を壊してしまうかもしれないな……
でも入れないとバランスが取れない……
皆はどうしてる?

48 :
入れなくても済むように工夫する
もしくは徹底的にキャラを消す、セリフもほとんどなしで、容姿の描写も最低限、名前も出さない

49 :
エーベルージュ SS二人の写真
校門を出る時に、二人でトリフェルズ魔法学園の校舎を眺めていた。
長い時間だったような気もするし、短い時間だったような気もする。
そんな生活を送った校舎、校庭などの思い出の場所を名残惜しそうに見つめていた。
いずれ、切なさを覚え胸を痛めるであろう過去に変わる場所を。
そんな場所と時間には、もう二度と戻れないのを、俺は実感していた。
手に持っている卒業証書が、学校との決別を促しているような気がして少し憎らしくさえ思えた。
「いろいろ‥‥‥あったよね‥‥‥」
ノイシュが、校舎を見つめながら、小さくつぶやいた。
「そうだな‥‥いろいろあった‥‥」
俺も校舎を見ながら、そう答えた。
あの窓から、四季に変わる街を見下ろした事もある。
あの場所で、寝ころんで空を見上げた事もある。
その隣には、いつも一緒に居てくれた人がいた。
今横に居てくれる人がそうだ。
俺は横に居るノイシュを見た。
ノイシュはいつのまにか俺を見ていた。
目と目が合うその瞬間、言葉はいらなかった。
ノイシュは小さく笑った。
涙の跡が、俺にはとてもいとおしく感じられた。
「俺達さ‥‥‥‥」
「なに?」
「忘れないよな。ここを。ここでの事を」
「‥‥‥うん、忘れないよ。いつまでも」
再び、俺達は校舎を見つめた。
どちらからともなく、手を求め合い、握りあっていた。
雪の降る聖夜に、寒い手が温もりを求めようとした事もある。
熱かった夏の夜に、かすかに小指が触れ合って、ドキっとした事もある。
いつも俺達の手は遠かった。触れ合うほどに近くにあったのに。
だけど、今は違う‥‥

50 :
てす

51 :
.

52 :
age

53 :
t

54 :
あのーちょっと質問なのですけど
女神転生と式神の城を合わせたような作品を書いていて
ここに載せても構わないんでしょうか?
色々な所を見て該当しそうなところがここ位しか見当たらなかったので・・・

55 :
二次創作ならここでおk
二つの作品を合わせたことを前面に出しているなら、
クロスオーバースレ もいいかもしれない
(携帯なんでリンク貼れなくてゴメン、板内検索してみて)

56 :
わかりました
途中までしか出来ていませんがそれでも良かったら貼りますね

57 :
遥か昔、平氏と源氏の戦いがあった。
その戦いは後に壇ノ浦の戦いと呼ばれるものであり、平家の者は船の上にいた。
源氏との戦いは劣勢を極め、幼き帝は従者と共にある決断を迫られた。
敵への軍門へ下るかそれとも入水を図るか。
右も左もわからぬ幼き者にはそれが何を意味するかわからずじまいだった。
だが、既に従者達は決断を決め、帝を抱きかかえると海へと飛び込む者に続き、次々に死を選んでいく。
水の中、死が近づいてきていると悟った帝は手にしていた剣から何かの声がきているのがわかった。
「そなたの命、ここで絶やすわけにはゆかぬ。我が力を持って救おう」
柄に嵌め込まれた蛇眼の形をした宝石から、赤い光が出ているのが見えると、気づいた時には陸の上にいた。
周りには誰もおらず、辺りには波の音が聞こえるだけだ。
手にしていた剣もなく、砂浜のみがあるだけであった。
程なくして、三種の神器である天叢雲だけが行方知れずとなり、
八咫鏡、八尺瓊勾玉のみが京へと返されることになった。
また、その幼き帝も行方知れずとなっていた。

時は流れ、歴史の一部として語られている壇ノ浦の戦い。
人々が戦争の惨劇の事も過去として忘れ去ろうとしていた中、東京で一人の人間によって事態が動きはじめていた。
梅雨の降る時期の深夜。
吉祥寺の商店街近くにあるゲームセンターから少年が友人二人と出て行く。
笑顔で出てくるところ、機嫌がいいようだ。
「それじゃ、また明日な」
少年は手を振って別れの挨拶をすると、二人と離れて反対方向の道に進んでいった。
先ほどのゲームの音楽を自分の頭の中で流し始めると遊んでいた記憶が刻一刻と思い出させる。
次第に商店街から少し離れて路地に入り、歩いているとなにやら妙な感じがして振り向くが何も無い。
一歩一歩が自然と重くなっていき、空気が重い。
夜遅くには変質者や通り魔などが出てもおかしくはないが明らかにそれらとは空気が違う。
急に後ろの方で大きな音がして驚いて振り向く。
「・・・・・・」
少し待ったが何か来るわけでもないことを確認すると歩いて行く。
何かがおかしい。少し急ぎ足で本屋へと向かった。
小さな書店に入ると見慣れた店員がいた。
少年は真っ先にカウンターに向かって在庫があるかどうか聞く。
「いらっしゃい。君か」
「おじさん、アルカディア入ってる?」
店員が少年に言われると手馴れた手つきで差し出す。
左のポケットに入れていた財布から小銭を出すと少年はバラっと台の上に乗せた。
「580円だ。毎度あり!」
少年は店を出て流し読みをしながら歩く。
街頭の薄光で読み、自分の名前が載っているのを確認すると本を閉じ、家に向かって走り出した。
辺りが暗くなっていてその少年にはわからなかったのだろうが、先程の近くの石壁には無数の弾痕があった。
家に帰ると母と父が出迎えた。
母が夜遅くまで遊ぶ息子を心配する。
だが息子は心配ないといった表情で答えた。
「どうせ常連客と対戦でもやってたんだろう?それでついつい熱くなってこんな時間までかかった」
父は的確に言って息子は笑う。
「ばれてたか。それじゃ風呂はいるわ」
「パジャマなら洗面所に掛かってるから。明日は実技の筆記テストでしょうけど、あまり遅くならないようにね」
母親から忠告を受けると風呂場へと向かう。
ザパーっと湯が溢れる音を流して湯船に入ると、先ほど起こった事を少し考える。
先程の大きな音はゲームの中で鳴る音。
外でゲームの音が聞こえることはまずありえない。
少年は考えようとしたが明日は少し忙しいのであとから調べることにしようと思った。
顔をお湯の中に入れてジャバジャバと洗い、顔の油脂分を少し取っていく。
湯船から上がり、風呂場から出るとドライヤーで黒髪を乾かしていく。
「こんなもんかな。あとは歯磨いてと」

58 :
準備を終えると母親に就寝の意を伝えると2階へと上がり、妹がちゃんと寝ているかどうか確認した。
よく寝ているようだ。少年は戸をゆっくり閉めると小声で「おやすみ」と言う。
そして自分の部屋に入ると鞄の中身を確認して、布団を捲り上げる。
「さーてと、ゲーセンから帰ってきてから調べるとするか」
背伸びをして力を抜くとベッドの中へと身を投げた。

小さく声が聞こえる。
徐々に声は大きくなり、はっきりと聞こえるようにまでなった。
「名を述べよ、光に選ばれし者よ」
少年は目を開けると辺りには暗闇が広がっているだけだったが、声だけはわかった。
「誰だよ、こんな夜中に」と思い、問いかけてみるが先ほどと同じ言葉が繰り返されるだけだ。
少年は自分の名を答える。
「妖瑕洸二だ」
名を告げると声が響く。
「汝の行く末に見えるのは法と秩序。その二つを守るべく、定めに従い、道を歩むが良い」
その言葉が終わると凍るような光が洸二を包むが、それは瞬時に自分の足元から現れた影により打ち消された。
「洸二、お前の知らぬ運命を見せよう」
先ほどとは違う声が響くと、目の前に扉が現れた。
手をかけるとガチャリという音と共に暖かな光が彼を包みこんでいく。
光が収まると、洸二は木造の家の中にある部屋の中にいた。
左手の扉が開き、一人の少女が入ってくると自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ。
だが、別の声が同時に聞こえ、「父上」と言ってるようにもとれた。
それに答えるかのように手で頭を撫でると、奥から一人の同年代らしき女性がやってきた。
「あなた、どうされましたか?」
聞き覚えのある声が聞こえ、その姿を見ると、洸二は目を疑うが二人ともフっと消える。
外から声が聞こえてきて、見てみると自分と似た顔をした男性と銀髪の女性が話ながら歩いていて、洸二に向かって言った。
「クシナダとスセリはどうしたのだ?」
「父さん・・・母さん?」
洸二は自分でもよくわからない感覚に捕らわれた。
父が目の前にいるが、その姿はいつもいる仲間の一人だった。
何がおこったのか理解しようとしたが、二人がフっと消えると同時に光の玉が発生し、自分に向かってくる。
次は石作りの神殿の前に居た。
ここはどこなのか辺りを見回すと、右手の丘の上に大きな木があり、木の下には女性が佇んでいた。
絹の服に身を包み、彼女は洸二を見つめていた。
洸二は彼女に近づくと先程の女性だと認識する。
一体彼女は誰なのだろうか?自分が知っている誰かのはずなのだが、そこまではわからなかった。
彼女はその細い腕を洸二の手をとるように出すと、洸二は握りしめた。
すると、空から神殿の辺りに光が降り注いでいく。
眩さに一瞬目を閉じた後、開くと丘の下に火の海が広がっていた。
そして、海の中から先程の少女と洸二と同じ年齢位の女性が息を上げながら出てきた。
少女の背にはこうもりのような翼があり、女性には蛇が体に巻き付いていた。
洸二は助けようとするが、先程握り締めた腕を彼女が引っ張った。
「行ってはなりません。その者は呪われた運命を背負ったものなのです」
自分に警告するかのように言う。その目は二人に対し、冷たいものだった。
そして、空から4本の光が注がれると二人を囲む。
「これか、楽園を追放された母子は」
「愚かな、何故戻ってくるのだ」
声が二人を愚弄していると女性と少女が何かを呟き始めた。
「・・・た」
「お父さん・・・」
何か言っている?
女性は聞いてはいけないと言うが、彼には心の中でひっかかるものがあった。
「あなたーー!!」
「お父さぁーーん!!!」
自分に言っている。女性の制止を振り切り、二人に手を差し伸べようと駆け出したが目前に血渋きが飛ぶ。
「永遠に魔界を彷徨っていればいいものを・・・」
二人が槍に貫かれているのが目に入ってくると、洸二は絶叫した。

59 :
「うわぁっ!!」
目が覚めた。辺りをちらほらと見て確認すると自分のベッドの上だ。
明かりをつけて鏡で顔などを見るがどこにも血はついていない。
「夢か・・・」
普段ならゲームの夢でも見るものだが今回は違った。
洸二は台所に向かって気晴らしに水を飲むと部屋へと戻っていった。
手を見つめると小刻みに震えている。
悪夢であれば、明日は悪いことが起きるのかもしれない。
テストだというのに悪い知らせである。
目が覚めると朝日がカーテンの隙間から差している。
洸二はベッドから降りるとカーテンを開いた。
何気のない朝日が瞳に差し込んでくるのを見て、夢の事が嘘のように感じ取れた。
吉祥寺の住宅街の路地に自転車で通る人が目に入ってくる。
「ご飯よー起きてらっしゃい」
扉越しに下の階から母親の声がすると眠たい目を擦りながら洸二は扉を開け、下へと降りていった。
居間につくと、食卓の上にジャムを塗った食パンが大きな皿の上に置かれていて、横にレタスと胡瓜の簡単なサラダが皿の上に置かれてある。
「今日は午前授業だから別にいいのに」
「朝くらいしっかり食べていきなさい。集中できないわよ?」
しょうがないなといった顔をして洸二はパンを口に放り込んだ。
ふと隣の椅子を見ると、よく隣に妹が座って朝ごはんを食べるのだが、今日は遅い。
「母さん、月奈は?」
「あら、そういえば・・・月奈ー!ご飯よー!」
母親が声を出して妹の名を呼ぶが返事がない。
顔を渋くしてまったくと母親がため息をついたが、洸二はふと、夢のことが気になった。
「母さん、ちょっと見てくる」
洸二は二階の妹の部屋に入るとベッドを確認した。
何やら布団に覆い被さっているようだが・・・。
「月奈、何か怖い夢でも見たのか?」
洸二がそう言うと、妹がゆっくりと顔を出した。
黒いロングヘアにヘアバンドをつけ、幼さの残る顔。
月奈は兄の姿をじっと見つめた後、静かに口を開いた。
「お兄ちゃん・・・?」
「何か、あったのか?」
「・・・ううん。何でもない」
妹は起き上がり、深呼吸をするとベッドから飛び出して一安心したような顔をして、降りていった。
夢の出来事が妹の姿に重なる。
真夜中に見た夢は何かを指し示すものなのだろうか。
ぼーっとしている彼の体には既に夢の事が嘘だという感覚は抜けていた。

60 :
支度を終えると洸二は自転車に乗って学校へと向かった。
商店街を通り過ぎ、隣町近くの高校へと向かってペダルを漕ぐ。
今日はテスト最終日。
朝早くから学校に来ている生徒がいるが、今日は実技関係の筆記試験なのでそれほど人数は多くなく、洸二の後から入ってくる生徒が多かった。
3時限目終了後、周りはクタクタの様子だがそんな中、友人の久珂光太郎(くがこうたろう)が話しかけてきて、離れた席からもう一人の友人である七月夕平(ななつきゆうへい)が寄ってきた。
3人でテストの結果を話しながら帰りの準備をする。
鞄に勉強道具を詰め終わると待っていましたと言わんばかりに互いに財布を見せ合い、洸二は5000円程しかないのを見て顔を渋くした。
「家帰って調達してくるわ」
「わかった。どこで待ち合わせする?」
うーん、と3人で悩んだが光太郎が沈黙を破って待ち合わせ場所を秋葉原にしようと言った。
洸二は軽く挨拶を交わしたあと、真っ先に教室を出て廊下を走っていく。
廊下を出ると生徒達の声がちらほらと聞こえてきて、みんなテストのことが気がかりのようだ。
5月下旬の高校3年次の中間テストで、推薦試験を狙っている人はここの成績が関係するためだ。
「おい、お前どうだった?」
「いけるとは思うけど・・・まだ安心できないな。お前は?」
「ギリギリいけるかどうかだな・・・駄目だったらセンター利用だしな」
歩く生徒の中を紙一重でかわして上手く抜けていく。
廊下の曲がり角のところを曲がろうとした矢先、頭をゴツンとぶつけた。
頭を手で押さえながら何に当たったのか、確認してみると見慣れた女子だった。
「ってー・・・小夜か」
違うクラスの水瀬小夜(みなせさや)。
少し幼い顔立ちをしているが、洸二の学年では10本指に入る位の美人と評判である。
「ご、ごめんね洸二君」
「わりぃな、小夜。今急いでるんだ!」
鞄を取って走り抜け、小夜は頭を押さえて少年の後ろ姿を見ながら、ぼそぼそと呟いていた。
「洸二君・・・」
洸二は家に帰り、鞄を片付けて自転車に乗り吉祥寺の駅へと向かった。
途中、銀行に寄り、秋葉原の駅につくと光太郎が待っていて夕平が後からやってきた。
少年達はあるきなれた道を歩くかのように秋葉原の街中を歩いていくとある場所について中に入っていった。
階段を昇るとビデオゲームの筐体が数多く置かれたフロアがあった。
「さてと、それじゃまた後でな」
3人ともばらばらに向かっていくと台に座って50円玉を投入口に入れる。
同時にスタートボタンを押して遊び始めた。
4時間程経つと夕平が先に席を立つ。
「こんなもんか。まだ練習が必要だな」
年季の入ったプレイヤー達が見ていた中、グラディウスIIIの台から立つと光太郎のところへ向かった。
「夕平か・・・今日は不調だわ」
「安定しないだろそれ」
「大往生は流石になぁ」
人盛りが出来ていた怒首領蜂大往生の台から立つと洸二のところへ二人共向かった。
人が複数人いるところを見ると盛り上がっているようだ。
「雷電やってるんだったよな?」
「DXの方だな。上手い具合に行ってるんだろう」
見始めて20分後、ゲームが終了すると洸二が席を立った。
「二人とも終わってたのか」
「テスト明けとしてはまずまずだな」
回りの人間が小さく拍手をしていた。
洸二はそれに答えるかのように軽く手振りをする。
夕平が携帯電話の時計を見るともうこんな時間だと言う。
洸二と光太郎は店内を出て街中の自動販売機でジュースを買うことにした。

61 :
「また来るか。今度はどうする?」
「今度の土曜日に会おうぜ。待ち合わせ場所は高楼公園な」
光太郎が言って洸二と夕平も帰ろうとした直前、大きな轟音が秋葉原の街に響いた。
少年達は一体何なのか気になって音のしたところへ向かうとトラックが店に突っ込んだところだった。
「4時頃に飲酒運転かよ」
光太郎は呆れたように言うが洸二は男が出てくるのを見て変な感じを受け取った。
「ナイフ持ってるぞあいつ・・・」
夕平が男の右手を見て言った。
男は辺りを見回すと野次馬にきた民間人の一人の手を取る。
洸二はまずいと思って走りだしたが横を大きな影が過ぎ去る。
影は男に対し、拳をぶつけた。
そして、男はナイフを手から滑らせ、大きく吹き飛んだ。
「トラックに乗ってくるとはとんだ命知らずだな」
「あんたは・・・」
洸二は男に殴りかかった目の前の男性に声をかける。
後ろから来た夕平は男を見てハっと気づいた。
「神取礼司さん?」
「おっと、七月さんのところの息子さんか」
洸二は夕平と男が面識を持っているのに驚き、どうなのかと聞いた。
「同業者でな。うちの会社の取引先の人なんだ」
「部品を買いに来たんだが、偶然出くわしてしまったみたいだな」
礼司という男は笑いながら言う。
ナイフを持った男を殴ったというのに笑っていられることに洸二は驚いていた。
光太郎が洸二の肩を叩き、携帯電話を取った。
「一応、警察に連絡しておこうぜ。あの人が疑われるとまずいぜ」
光太郎は礼司の拳にメリケンサックがついているのを指差して言った。
洸二も連絡するべきだろうと判断して、状況把握、そして現場維持に徹した。
「よくこんなナイフ持てるな」
飛ばされたナイフを手に取ってみると、市販されているサバイバルナイフだろう。

62 :
手に持つとずっしりとした感覚が伝わってくる。
これを持って先ほどの女性をRという事を想像すると洸二はゾっとした。
早いところ後にしようとすると、男が立ち上がる。
「おい、洸二!」
「野郎、まだやろうっていうのか」
光太郎から注意されると洸二は後ろを向いた。
男は声にならない声を上げている。
「グッ・・・ギギ・・・」
男が漂わせる禍々しい空気に洸二は息を呑み、ナイフの感覚が鋭くなっていった。
『亡者如きが俺の前に立つな!』
頭の中に不思議な声が聞こえたと思うと手に持ったナイフを構えた。
自分ではない誰かが振るうような感覚。
「何する気だ!?ガキが使っても怪我するだけだ!」
その後、すぐに男は絶叫し、姿を変えた。
まるで地獄に住まう餓鬼のような姿に光太郎は軽く舌打ちをすると何かの呪文を呟き始め、左手を化物に向けると言葉と共に発動する。
「破魔!」
左手から滲み出た光は札となり、化物の腕を縛って動きを封じ、洸二は間髪をいれず、ナイフを逆手に持って首筋を狙って払う。
礼司が止めようとした瞬間に男だった者の首が飛んだ。
しばらくの間洸二は目を瞑っていたが、横に転んでいた首を見て驚いた。
「っ・・・!」
夕平は驚いていたが少しして我に返り、洸二に寄る。
「おい、洸二、大丈夫か?」
気が動転しているようだが洸二は落ち着いて話す。
「あ、ああ。これ・・・俺がやったのか」
「お前がやるようなもんじゃない。俺がやるようなもんだ。札でも持っていれば良かったかな・・・」
光太郎は慣れた手付きで服を払っていたが少し手が震えていた。
「とりあえず帰るぞ。面倒なことになったらごめんだ。礼司さん、失礼します」
「お、おお、怪しまれないように帰れよ」
光太郎と夕平は近くの自販機でジュースを買うと洸二に渡す。
洸二は自分の手を見つめていたが光太郎が名前を言うと気づいた。
「ああ、悪いな・・・」
右手に持っていたナイフにも気づき、洸二は脇に捨てた。
「まさかこんな所でお前のまじないに助けられるなんてな・・・」
「ばーか。れっきとした陰陽術だっつーの」
先程の光太郎が放った光は陰陽術の一つで、金縛りのような術である。
光太郎とは付き合いが長く、この事も知っていたが、この様な事に用いたのは初めてだ。

63 :
二人に連れられて帰宅すると夕飯の時刻になっていた。
夕飯を食べながらテレビを見ると緊急ニュースが流れている。
秋葉原でトラックが突っ込んだ事件と公園で殺人事件があったニュースが今日の大きな出来事のようだ。
洸二は夕飯のチキンナゲットの最後の1個を食べると箸をおいて、部屋へと入る。
「・・・少し調べてみるか」
パソコンの電源を入れ、「緊急ニュース 殺人事件」と入力。検索をかけると大きいニュースサイトに当たった。
『2009年5月28日。東京都吉祥寺、高楼公園にて殺人事件発生。遺体の近くに魔方陣らしきものが描かれていたが関連性は不明。警察当局はオカルトとの関連性は否定。傷跡から予測すると、噛み傷があり、猛獣の可能性が高い。現在調査中』
これ以外に情報は出ていなく、調べてもまだ情報が入ってきてないところも多い。すぐに出回るものではないだろう。
部屋を出て、妹の部屋へと向かう。
「あ、お兄ちゃん、調べてた?」
妹の月奈もパソコンを使って、気になって調べていたようだ。
普通のニュースサイトを見るところ、洸二とは違う。
「何だか、怖い・・・」
「通り魔でもなさそうだしな・・・井の頭公園の時効もそろそろ過ぎるはずだけど」
「・・・お兄ちゃん、メガテンのやりすぎだよ。いくらなんでもそんな偶然・・・」
夜間ではなく、白昼で起きた事らしい。
物騒になるなと思いながら近い公園の事も頭にポッと思い浮かんだ。
「そういえば15年にもなるんだな・・・井の頭公園の事件から」
ゲーム中の出来事が頭の中に映るが昨日の夢の事も気になっていた。
「月奈、実際にメガテンの事態になったらどうする?」
「急に言われてもわかんないよ・・・」
当然の反応だろう。洸二は笑い半分で月奈の頭を手で撫でた。
小夜は家で食事をしながらテレビを見ていた。
バラエティ番組を見ていると突然ニュース速報が入る。
「高楼公園で殺人事件・・・?」
気になってNHKにチャンネルを変えると早速ニュースが流れている。
「お母さん、近くで事件があったみたい」
「あら、本当。嫌だわ」
台所で料理をしていた母親が向かってくる。父親は今日は仕事で遅くなるらしく心配になる。
「ちょっとお父さんに電話で連絡して。早く仕事切り上げて帰ってきなさいって」
「うん。わかった」
小夜は家の受話器を取ると父に電話を入れる。
「お父さん?今日は早く仕事終わるようにってお母さんが言ってるから早めに帰ってきてね。私が迎えにいっても・・・あ、やっぱりだめ?それじゃ、早くにね」
5月の終わり。徐々に事態は動き始めていた。

64 :
翌日、いつも通り学校に行く洸二だが案の定、様子が少し違っていた。
朝は母親が通学路は気をつけなさいよと言い、学校では昨日のニュースの話題で持ちきりになっていた。
戸を開けて教室に入ると光太郎がニュースサイトの記事を印刷した紙を持ってきていて夕平と話し合っている。
光太郎が洸二に気づくと内容を話した。
「高楼公園で殺人事件があったらしいぜ」
紙を手渡すと夕平が概要を話し始めた。
「被害者は全員死亡。体の一部も食われているみたいだ。まるで獣に噛み千切られた様な痕があるみたいだが、詳しいことはまだわかってないらしいな」
「メガテンと式神、どっちだろうな」と、洸二は笑い半分でかえした。
勿論、そんな作り話で片付けば苦労しないとは思うが。
「昨日のアレもあるしな。急な事件だよ・・・最近」
「光太郎、ベルが鳴るぞ」
朝礼が鳴り、席に座る。
「校内でも話題になっているが高楼公園で殺人事件があった。人のつかない路地に入ったり自ら危険を招くような行動は取らないように気をつけてほしい。それと秋葉原で起きた事件だが・・・」
担任の教師から昨日の事件についての注意があったが洸二は別に気にもとめなかった。
自分が首を刎ねて相手を殺したこと以外については。
テストの返却のみで今日の授業は終わる。
帰りに担任から事件の事で寄り道をせず帰るようとの注意があったが、そんなことお構いなしだ。
廊下を走っている途中、また小夜にぶつかった。
「洸二君、急いでるの?」
「少しな」
小夜は少し考えた顔をして鞄の中から札を差し出した。
洸二にはわからない文字で書かれているがお祓いか魔除けの類の紙なのだろう。
「お祓い用にね。最近殺人事件があったみたいだから」
洸二は別に必要ないと言いながらも小夜は持っていたほうがいいと言って、3枚の札を渡す。
廊下を走っていく彼の後ろ姿を見ながら、小夜はその姿をじっと見詰めていた。
ペダルを漕いでいつも通る通学路を走っていく。
話題になっている公園の近くを通ったが警察が犯人の捜索網を張っているだけだ。
家に帰ると月奈が出迎えた。
この手の事件が起きれば集会などがあるはずなのだが珍しく無いようだ。
洸二は部屋に入るとパソコンを立ち上げた。
昨日の時点では憶測でしかなかったものが多くの情報が飛び交っている。
いくつかのぞいていると詳しい状況がわかってきた。
人が行ったものではないらしく、獰猛な獣がやったということだ。
原因は調査中らしい。
「妖獣か魔獣どっちかか?でもダーク悪魔じゃないとこういうのやらないだろ」
馬鹿なこと言うなと思いながら、電源を落とすと財布と札を持って部屋を出る。
月奈がどこにいくの?と言うが、洸二は練習!と言って飛び出していった。
洸二が通うゲームセンターにつくと常連の人から声がかかった。
「よ、KOJ氏」
「橘さん」
スーツ姿の男が水を差し出してきたので受け取って飲む。
「学校終わったからこれからかい?」
「まぁね、大往生の稼ぎを練習して帰りますよ。ところで殺人事件と秋葉原の事件の話知ってます?」
「ああ、あれだね。女神転生っぽいけど」
「やっぱりそうですか?」
「同じだね。まぁ、不謹慎だし、近くだから気をつけないとね」
相手もゲーム好きなので会話が進む。
ここの人達は昔からゲーム好きなのでよく話が合う為だ。
若いプレイヤーも、ちびっ子もよく来るため洸二達はたまにアドバイスをしたりする。
ゲーセン自体が最近下火なのでこう育成することも大事だからだ。
「あ、KOJさん。スパ2XのCPU戦のコツ教えてください。リュウで」
「スパ2か。ちょっと待ってろ」
中学生の子が洸二に教えて欲しいことがあるらしく店内の戸棚にあるゲーメストの攻略本を持ってきて橘に一礼すると一緒に筐体へと向かった。
洸二自身も若手だが親がこの店の前身に良く通っていたらしく、結構顔は知れている。
「そういえば、KOJ・・・というより洸二君の親父さん見ませんね」
「仕事忙しいからねぇ。流石にもう年だよ。洸二君に任せたという感じかな」
橘という男と店の店長が洸二の父親について話し合っていた。

65 :
8時過ぎ頃。
洸二は適当なところで切り上げ、店を出た。
帰り道、自販機でジュースを買ってプルを上げる。
財布をジーパンのポケットに入れると今日のことを思い返していた。
「高楼公園の殺人事件か・・・」
あまり寄り道をしないで帰ろうとしたその時、不気味な気配がした。
振り返って回りを見渡すが誰もいない。
プツッと音がして、急に電燈が消え、辺りはすぐに暗闇になった。
「・・・昨日のか!?」
まるでブラウン管の画面に何も映ってないかのような光景。
少しすると浮遊する異形のものが目に入ってきた。
グロテスクな姿をした生命体の様だが、どこか憎めないコミカルな感じも受ける。
その姿を見て呆けていると口を開いて丸い弾を撃ってくるがシューティングゲームをやっているせいかごく自然に体が動き、避ける。
弾道から攻撃パターンを予測すると自機狙い、単発、速度は普通。
また攻撃を仕掛けてくるが既に見切りがついているため、いとも簡単に回避する。
避けながら洸二は攻撃方法を考えていた。
迂闊に手を出しても危険であるし何か道具がないか考え、とっさにジュースの缶を投げたが弾に当たると大きな音と共に弾け飛んだ。
被弾するとまずいと思った洸二は他に手立ては無いのかと考えると、小夜からもらった札を思い出す。
ポケットから取り出すと、垂れ下がった紙がピンと伸びる。
鉄板の様にも感じたが、敵に向かって投げつけると、真っ直ぐ飛んでいき、相手の体に貼りつくと元の紙の様に戻った。
その後、札に書かれた梵字、カーンの文字が光ると小さな爆発を起こして、後には残骸が残るだけだった。
2体目が続けさまに登場し、攻撃してくるが弾に突っ込みながら紙一重で避け、札を飛ばし張り付き、爆発。
一息ついて安心した瞬間、大きな音とともに巨大な敵が現れた。
洸二は一瞬驚くが、同じ様に札を飛ばした。だが、防がれた腕に傷を負わせただけだった。
敵の攻撃。遅い5way弾に加え、直進交差弾だ。
難なく避けながらあることを閃いた。
弾、それに札。
もしやと思って手を伸ばし、掌に力を籠めると赤い弾が撃たれた。
だが敵は怯んではおらず、構わず突っ込んでくる。
一瞬驚き、より強い力が篭ると、今度は赤いレーザーが撃たれてようやく敵が怯んだ。
それを見た洸二は、敵の攻撃を良く見て避けていき、レーザーを照射し続けると胸に風穴が開いた。
化物は絶叫を上げて倒れる。
しばらくすると周りに明かりがついた。どうやら終わったらしい。
「・・・何だったんだ?こいつら。昨日のアレと違うみたいだけど」
肩で息をしながら、周りを確かめると何もいないのを確認して家に向かった。
一歩一歩が足早になりながら、家路に着く。帰宅すると、月奈が出迎えて一安心した。
「お兄ちゃん、お帰り!」
その言葉を聞くと、洸二は琴線が切れたかのようにぐったりした。
「お兄ちゃん?」
「悪いな・・・風呂入って寝るよ」
洸二は一言告げると部屋へと入っていった。
翌日、洸二は起きると手に力を入れ、伸ばしたが出ない。気のせいなのだろうか?
今日は休みなので支度を済ませると、適当に台所の冷蔵庫に入っている果物を食べる。
「まだ9時か・・・」
時計を見た後、しばらく部屋で遊ぶと、母親がお昼だと言ったのできりのいいところで切り上げた。
昼食を食べると洸二は月奈を連れてゲームセンターに向かった。
洸二と月奈は別れて別々の場所へと向かう。
洸二が集中して練習するため、月奈は一人で向かいの筐体で遊ぶ。
こういうところでは一人で集中した方が良い結果が出ることが多いためだ。
そうして3時過ぎ頃、休憩がてらに何か買おうと思って月奈の肩を叩き、呼ぶと一緒に外に出た。
近くのコンビニでそろえようと思って住宅街の路地を歩く。
「何を買う?」
「甘いものが食べたい。それとお水」
「それじゃ、そこで揃えるとするか」
話しながら歩いていると、突然周囲が黒く染まった。

66 :
「な、なに?」
月奈は急に空気が変わったのに驚く。昨日と同じだ。
洸二はすぐに戦う体勢に入った。
妹は何も言わず、恐怖に怯えるが洸二は昨日の出来事があり、少し構える。
地面から相手が湧き出て、5、6体程こちらにまとまってきた。
3WAYと6WAY弾がまとまってくる。弾速は遅い。
洸二は月奈を左腕で抱きかかえると、引きつけて弾の端で回避。接近して蹴り飛ばし、レーザーで焼く。
「そっち!」
月奈が洸二の死角になる方向を見て言う。
敵4体がまわり込むように来るが上手く立ち回り、難なく避けてレーザーでまとめて撃ちぬく。
「これで終わりか?」
洸二は一息ついたが、月奈が奥にいる何かを察した。
地鳴りが響き、暗闇から敵が現れると、交差する高速の扇弾幕を撃ってきた。
手で自分を守るようにして月奈は構えたが、洸二は月奈を強く抱くと、小さな隙間をくぐり、レーザーを撃つ。
弾は早いものの対処法はわかっているためやりやすい。
ある程度撃ち込むとバラ撒き弾を撃ってきた。
「きゃあっ・・・!」
月奈は一瞬悲鳴を上げるが洸二は避けに集中し始めた。
次第に追い詰められていくが弾を撃ち込む。
「お兄ちゃん!」
月奈が叫び、被弾しようとした直前、周りに光の蛇が現れて敵の弾を弾き飛ばし、巫女装束を着た女の子が後ろから飛んできた。
見覚えのある顔。驚いた洸二は思わず言う。
「小夜!?何でここに」
「話はあと!今はこれに集中して!」
洸二は弾を撃ち、小夜は左手に持った玉串で攻撃を払いながら、右手から光弾を撃ち出す。
懐に入り込み、洸二は隙あらば直にレーザーを照射した後、すぐに離れる。
小夜は再生する部位に対し、攻撃を仕掛け続けて敵の攻撃を少しでも和らげようとする。
洸二の放ったレーザー敵の頭部に当たると相手が一瞬怯んだ。
洸二はチャンスだと思い、一気に近づく。
左手で右手をおさえ、手の平に一気に力を籠めると、巨大な緋色のレーザーが放たれ、数秒の後に、胴体を撃ち抜いていた。
敵は爆発と共に消え、少しすると元の路地に戻った。
小夜は肩で息をし、ホッとしていたがすぐに洸二の方に向く。
「間に合ってよかった・・・洸二君。神社に来て欲しいの」
「今コンビニに行く途中だけど、急ぎの用?」
「うん。大事な話」
息を上げながら答える洸二。
月奈のほうにも向いて真面目な顔をして言う。
「月奈ちゃんも一緒に来て。関係あることだから・・・」
有無を言わせない雰囲気で月奈もついていった。

67 :
小夜が住む神社に連れられてやってくる。
年のいった男と若い男が話をしていたようだ。
「お父さん、晋介さん。連れてきました。妖怪達に襲われているところを助けて・・・」
「小夜、ご苦労だった。初めまして洸二君、篠宮晋介という者だ」
洸二の方に向くと彼の長い黒髪が揺れた。
「小夜、おじさんはわかるけどそっちは?」
「えーと、これは・・・」
「私が説明しよう」
小夜には説明しづらい様で、洸二と月奈は小夜の父親から話を聞いた。
先ほど戦っていた化物は妖怪と呼ばれる者達で、小夜はその妖怪を掃討する妖伐隊という部隊の一員とのことだ。
妖伐隊とは全国各都道府県に設置されており、霊的被害から民衆を守ることや、神社等での行事執行等をこなす人達の事である。
ここは東京本部妖伐隊となり、東京23区それぞれに一つの部隊があり、第11区妖伐隊となる。
「小夜が所属しているのは私の替わりでね。まだ間もないんだ」
小夜の父親は去年10月初頭にあった事件で怪我をしてしまって復帰が無理だという宣告を受けていた。
替わりに娘である小夜が志願をして半年近くかかって正式に妖伐隊に入った。
「でも、どうしてこういう話を俺達に?」
「率直に言うと君達にも入ってもらいたいんだ」
晋介の呆気ない話に洸二は一瞬耳を疑った。
自分達は一般人なのに何故こういう話をするのかと洸二は晋介に問いを投げたがあっさりと返された。
「でも、君は妖怪を討ち倒したし、小夜と同じ力は持ち合わせているだろう?」
洸二は手をじっと見つめて、間を置いた。
「霊能力なのか?コレは」
「その通り。君みたいに持ち合わせている人は少ない。だからこそ君の力を借りたいんだ」
話を聞くと妖伐隊でこういう霊能力を用いて戦える人物はそれ程多くはなく、洸二や小夜のように戦えるのは極僅かという話のことだ。
「話をすると色々と長くなるんだが・・・とりあえずはこんなところだろう。洸二君、協力してくれるかい?」
「まぁ、小夜も一緒に居るなら面白そうだしいいかな」
「私もお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒なら面白そうだし・・・」
事の重大さとは裏腹な回答だったが学生のらしい回答だと思い、晋介はコクリと頷き、胸のポケットから携帯電話を取り出して連絡をした。
「こちら第11妖伐隊隊長篠宮晋介。先の件について話をしたいのですが・・・はい。二人の了承を得ました。適性検査等の日時はいつにしましょうか?」
晋介は隊の事務的な事を連絡しているようだ。
小夜はホっとして胸に手を当てながら洸二と月奈の所に向かっていった。
「ごめんね洸二君、いきなりこんな話になってしまって」
「別に気にしちゃいないって。それにしても小夜がそんな事になってたのに驚いたよ」
「それについては追々話をするつもり。頑張ろうね」
電話をしていた晋介が話終えて二人の方へと振り向いた。
「二人共、適性検査は明後日になる。学校が終わってからここの神社に来て欲しいのだけれど良いかい?」
二人は頷いて声を返した。
「よし。今日はもう帰ってもらっても結構だ。こちらで準備をしておくから二人は気楽にしてもらって構わない。それでは小夜のお父さん、これで」
晋介は小夜の父親に一礼すると神社から出て行った。
洸二と月奈も時間が経ったのを思い出し、小夜達に帰りの旨を伝える。
「帰り、気をつけてね」
小夜は二人の姿が見えなくなるまで手を振っていた。
帰宅後、玄関で二人はちょっと溜め息をついた。
「何だか大変な事になっちゃったねお兄ちゃん」
月奈は当たり障りの無いことを言う。
洸二は気張っていたのか疲れが出てきた。
「ああ、そうだな。母さん達に話をして驚かせたくもないし黙っているか」
母や父にこの事を話せば心配するであろうし、第一面白そうな事をわざわざ無くすような事はしたくなかったからだ。
「月奈、これ内緒な」
洸二は小指を出して合図をし、月奈も一緒に小指を出して指きりのポーズをする。
「指切った!」
親に気づかれぬよう、二人は小声でそう言って別々の部屋へと行った。

68 :
2日後、学校へ行くとテストの返却だけで授業が終了。
片づけをしている中、小夜が話しかけてきた。
「洸二君、適性検査の話だけど」
ゲームの事ばかり考えていた洸二は思って我に返って返事を返した。
無論、終わったら直行するつもりだ。
小夜はそれを聞くと教室を出て行った。
横で見ていた光太郎と夕平が何だという顔をしてやってきた。
「洸二、小夜が何か言ってたのか?」
「ああ、光太郎か。ちょっと用事があるんで、それで行こうと思ってるんだけど・・・」
洸二は丁度いい機会だと思い、光太郎と夕平を誘おうと思って声をかけると二人共承諾してくれた。
鞄を手に取ると洸二達は教室を出た。
「えーと、これがテスト用紙と・・・」
小夜は洸二に告げた後の帰りの準備をしていた。
周りの生徒は既に何名か下校の準備を済ませて出ていた。
そこの群から分かれた二人の男子生徒が小夜に寄っていく。
「小夜、もう準備はすんだのかい?」
「あ、狭間君にノブ君」
少し暗い顔をした少年と対称に明るい面構えをした少年が声をかけてくる。
二人共小夜のクラスメイトであり、このクラスで数少ない小夜の友人である。
「うん、後はこれだけ入れれば大丈夫。途中まで一緒に帰ろう?」
一声かけると小夜達は教室を出て階段へと差し掛かった。
「よぉ狭間君」
背後から嫌な声が聞こえた。小夜達はまたかといった感じで振り向かずに行こうとしたが一人の生徒が狭間の肩を掴んだ。
「無視をするなよ。弱い癖によぉ」
「・・・またお前達か」
相手にしちゃ駄目と小夜は言うがそれを男子生徒は跳ね除けるかのような手振りをした。
「引っ込んでろ!女の癖によ!」
「またあなた達のせいで狭間君が傷つくのよ、もうやめなさいよ!」
「あぁ?また俺に説教かます気かよ」
男子生徒は手を組んで音を鳴らすと殴るような素振りを見せる。
ノブという生徒はそれに対抗するかの様に構えた。
「相手なら俺が受けてやるよ。いつものようにな!」
「て、てめぇ・・・」
「ノブ、もういい。こいつはそれしか能がない単なる屑だ」
狭間にそう言われると男子生徒は頭に血が上ったのか胸倉を掴んだ。
「随分と生意気な口利くようになったもんだな、狭間よぉ!」
そして偶然か必然か洸二達が差し掛かった。
「貴様が・・・自分が悪いのを人にぶつけるな!」
「馬鹿な事はやめなさいよ!」
狭間が男子生徒に言い放ち、小夜は暴力を止めようとしたが、男子生徒は廊下の壁に勢いよく狭間を投げた。
光太郎は目を大きく開いて拳を握り、男子生徒を止めようとしたがノブが入った。
「ノブ・・・お前、何時までそんな根暗のインテリ野郎を庇う気だよ」
「てめぇらそろってネクラ共の集まりでもしてるのか?あぁ?」
歯痒くなるような言い振りに洸二達や小夜、ノブという生徒は手に力が篭った。
「ノブ、小夜、君達にまで迷惑かけられない。早く行け」
「狭間君、放っておけないよ」
狭間は二人に立ち去るように言うがノブの方はもう我慢ならない様子だ。
「この、クソッタレ共がああぁぁぁぁ!!!」
叫びながらノブという生徒は顔面に向かって拳をぶつけていこうとしたが
「ノブ!!!」
洸二が彼の名前を呼ぶと男子生徒を殴る寸前で止まった。

69 :
「洸二、お前・・・!?」
「洸二君?」
小夜が洸二に気づいたのは声が聞こえてからだった。
そして後ろの方で夕平が狭間に暴力を振るっていた男子生徒に対し睨みながら言った。
「谷川、ひ弱な生徒に対して随分な態度じゃないか」
「てめぇらは・・・」
洸二は狭間に寄って大丈夫かと言って肩を持ってその場を少し離れる。
小夜はハッと気づいて狭間に寄って行き、怪我がないかどうかを確認した。
全身を強打していたが打撲などはなく、少し手の先だ擦れて傷になっている程度だった。
「そうやって何時まで子供のように力を振りかざすつもりだ?どうせお前のことだ。テストのことだろう?」
「う、うるせぇ!てめぇらには関係ねぇだろ!」
「自分の非を認めないで人に八つ当たりするお前よりも狭間の方がよっぽど偉いぞ?少しは相手の事を考えてみたらどうだ?」
夕平が挑発していくと谷川は頭に血が上りきったようだ。
「・・・てめぇら!こいつをぶちのめせ!」
仲間にやらせるつもりのようだ。光太郎は呆れた息を吐いて前に出て向かっていった。
谷川の仲間達を一蹴し、谷川自身の腹に蹴りを入れると今度は背を肘打ち。
「歯、食い縛れ!」
追い討ちで顎にアッパーを入れる。
「がっ・・・て、てめぇ・・・」
更にノブが背中に蹴りを叩き込んだ。
顔面にも蹴りを入れようとしたが洸二がその足を手で受け止めた。
「っ・・・もうやめておけよ。これ以上やったらまずい」
「・・・っち!」
「お・・・・・覚えてろ、てめぇら、只じゃおかねぇぞ!」
お決まりのような捨て台詞を吐くと慌てて去っていく。
手に持っていたジュースの缶をこちらに投げつけてきたが洸二はそれを難なくキャッチし、頭に目掛けて一睨みした後、射抜くように投げ返す。
向こうで乾いた音がしたが気のせいだろう。
「神社に向かう前に部室に寄っていこう。あいつらがやってきても面倒だしな」
狭間の肩を洸二と小夜が担ぎ、光太郎達は野次馬で駆けつけてきた生徒達を払っていく。
洸二は狭間の肩を担ぎながら一階にある電子室に入っていった。
「大月先生、いるかい?」
部屋の奥でコンピュータを操作している眼鏡を掛けた教師がいた。
洸二達の所属する部の顧問教師が気づくと目線を合わせる。
「む、洸二に狭間君か。どうしたんだ」
「また谷川達にやられたんだよ。急いで保健の先生読んでくる」
洸二は小夜に任せると一足先に部屋を出ていった。
「まったく、またあいつらか・・・」
「先生、ここまでやったらそろそろ退学処分にしてもいいんじゃないの?」
小夜が狭間を椅子に座らせると大月に向かって言う。
ノブもそれに連なるように言った。
「先生、俺からも頼む。いい加減余裕もなくなる時期だというのにアイツら何を考えているんだ!?」
小夜とノブの言葉を聞いて大月は眼鏡を指で上げて言う。
「二人とも、気持ちはわかる。だが彼らを退学させるのも些か問題があるのだよ」
「メンツ、か」
夕平が皮肉をこめて言う。
「そのとおりだ夕平君。君の会社にもメンツがあるだろう。それは学校も同じことだ」
「・・・くそっ!あいつら!」
ノブは机を拳で叩いた。
「だが今までここまではしなかっただろう、あの生徒達も。私から報告をしておこう」
洸二が保健の先生を連れてくると狭間を見せた。
これで一安心だろうと洸二は一息ついて椅子に座った。
「そういえば洸二、約束はいいのか?」
光太郎が洸二に呼びかけると時計を見て気づく。
「あ、小夜早く行かないとまずくないか?」
「そうだった。すっかり忘れちゃってた。大月先生方、後の事はお願いします」
洸二達と小夜は保健の先生に狭間を任せて学校を後にした。

70 :
同時刻、吉祥寺本町。
賑わいが絶えないこの街で場違いかと思うような着物を着た少女が居た。
賑わいとは縁が無さそうな顔立ちをしており、静かに周りを見渡す。
誰かを探しているようであり、うろうろしていた。
「イザナギの転生体の殺害と美伶様を探しだして連れ帰るのが今回の目的なのだけれども・・・」
しばらく探し回っていると少女は溜息をついて通りにあった椅子に腰をかける。
人ごみの中をその小さな目で鋭く見たが彼女の探すような人物は見当たらなかった。
時たま、着物の袖の中から土蛇、ノズチの紋様をした小さな石を取り出して見るがこれといった反応はなかった。ある集団が目に付くまでは。
洸二達が彼女の視界に入ると持っていた石が小さく光輝く。
彼女はそれに気づくとすぐさま取り出して人ごみを見た。
「どこ?どこにイザナギが?」
どうやらこの石の反応はイザナギという人物の生まれ変わりに反応するようだった。
すっと彼女は立つと人ごみに紛れて洸二達を探していく。
光が絶えないように彼女が歩いていった先は神社だった。
そして洸二達は境内の中へと向かっている。
「あの三人の中にイザナギの転生体が・・・」
彼女は気づかれてはまずいと思い、鳥居の外から入ろうとしたが境内の境に手が触れると電撃が走ったかのような感覚と共に、見えない壁に当たった。
妖怪用の結界が神社に張られており、それが彼女を遮っていた。
「ただの神社ではないようね。ここは・・・私が一部を割ってからじゃないと入れそうにないか」
弱い部分は何処にないかと探し、木に巻きつけてある藁の縄と括りつけられている紙を見つけるとサッと寄って、彼女は手をかざすと氷が発生し、小さな刃を作りだす。
そして詠唱を始めていき、氷の刃の先に黒いオーラが纏われた。
「妖たる長である八岐大蛇の名において、雪姫にして我が母、雪奈の名において、この刃に妖の力を宿さん」
そして縦に一閃。少しの間を置くと木を切らずに藁の縄のみを絶ち切った。
境内の近くに手を触れる。先ほどの感覚はない。
「これで入れるようね。彼らを呼んで皆殺しにすれば一つ目は終わりか・・・」
彼女は袖の中から六角錐の紫水晶を取り出すと念じ始めた。
洸二達は吉祥寺にある小夜の家、八蛇神社へと向かった。
境内の中には晋介と月奈が待っていた。
「お兄ちゃん、遅いよー」
「悪い、ちょっといざこざがあって遅れちまった」
「晋介隊長、ごめんなさい。学校でちょっと・・・」
洸二と小夜が謝っていたがそれも気にせず、晋介は洸二の横に居る光太郎と夕平を見て誰だと洸二に問いかける。
「ああ悪い、友人なんだけど連れてきちゃ悪かったかい?」
「いや、いずれにしてももう遅いな。部外者を作るわけにはいかない。君達、名前は?」
光太郎と夕平はそれぞれ名前を告げると晋介は驚いた顔をした。
「久珂光太郎・・・!?あの久珂家の次期当主か!?」
光太郎は向こうが自分の事を知っていて驚いている。
「洸二君、場違いな人を連れてきてもらっては困るんだが・・・」
「洸二、一体どういう話なんだよ」
光太郎と夕平は洸二に疑問を投げかけて、話の中身をおおまかに説明を行った。
妖伐隊の事、妖怪達の事などを話し、洸二達がスカウトされた事もだ。
「へぇ、それで神社に用があったんだな」
「最近の事件もそれが関係しているのか・・・?」
「で、晋介さん、適性検査の内容っていうのは?」
光太郎と夕平が話の中身を理解する中、洸二はやる気満々で晋介に検査内容を聞く。
「何のことはない。君達の霊能力の測定と扱う度合いだ。これを使って行う」
晋介は胸ポケットの中から札を取り出すと妖怪達と同じ様な形をした物を作り出した。
小夜を除いた洸二達からすればどこかで見たことがある物。
それはグロテスクな頭部を持ち、腹部にも第二の頭部と取れるものがあり、洸二達の体験から言うと『ドプケラドプス』とさほど変わらぬ形をした物だった。

71 :
「検査用の人造妖怪だ。何十体かは用意してある。君の能力を見る限りでは結構出来そうだからね」
洸二は目の前の敵をみて呆気ない顔をしていた。
こんな物で自分の能力を測るものかと思って、洸二は晋介に確認をする。
「そうでないと検査にならないからな。ではやってくれ」
洸二はその言葉を聞いて左手をグっと握って力を込めると妖怪が振っている尻尾に飛び乗り、腹部の頭に目掛けて突き出すようにして力を解放する。
すると大きな光弾が放たれて頭部へと直撃し、瞬時に妖怪は活動を停止し、札に戻った。
晋介は次なる妖怪を作り出すと月奈も向かっていく。
「『退魔師』か・・・妖怪相手とは聞いていたけどこんなのが適性検査ねぇ」
光太郎は知ったような口をして言う。
彼自身は陰陽師の名家に育った男でその家の四拾五代目の当主になる者であり、霊能力関係の仕事についても情報は広く聞いている。
洸二達に占星術や姓名判断等をする程度だったが先の秋葉原で起きた事件のような事も光太郎を筆頭とした陰陽師がする筈なのだが、細かい話を抜きにすれば退魔師は同業者と考えて良いだろう。
晋介が先ほど場違いな人間だと言ったのはこの為である。
「さてと、俺もやらせてもらっても良いかな?」
光太郎が名乗りでて晋介は少し困った顔をしたが人造妖怪を作る。
「そこの君と一緒にやってもらおうかな」
夕平は突然の事に少し驚きはしたが彼自身は霊能力だとか陰陽術等とはあまり関心がなかった。
だが今の洸二達を見て少し興味が出ていたところだった。
「わかりました。やり方を教えてくれませんか?」
夕平の回答に晋介は一つの紙を取り出した。
「まずこの紙に振れて掴んで欲しい。霊力を感じ取って字が浮かんでくる」
晋介の言葉の言うとおりに夕平は紙を掴んだ。
すると洸二が小夜から貰った札に書かれた梵字が浮かび上がってきた。
キリークの文字が浮かび上がってきたがそのうち文字から眩いばかりの光が放たれて紙は火で炙った時のように燃えて消えてしまった。
夕平は何が起こったのかわからず、晋介に慌てて聞く。
彼は興味深そうに起こったことを把握していた。
「(このようなケースは今までないはずなんだが、彼の持ち合わせる霊力が許容量以上を越えていた為か?それとも何か別な要因か?)」
「どうすれば?」
夕平の声ではっと我に返った。
「いや、検査には問題はないんだが突然の事態でね・・・こっちが困っている位さ。やり方についてはまず手を伸ばして手の平に力を籠めるようにする。そして頭の中でどんな風に自分で攻撃したいかイメージしてくれれば自然と洸二君達みたいにできる」
夕平は晋介から離れて光太郎のところへとやってくる。
「こういう事初めてだから光太郎頼むぞ」
「お前もやってみ、案外楽しいぜ」
そういうと光太郎は彼の背後に霊気で出来た球を作り出して妖怪へと攻撃させた。
夕平は妖怪が攻撃してきたのに対して反射的にバリアを作りだして、弾を反射させていった。
「これは・・・!?」
「そうそう、そんな感じさ。一気にやるぜ!」
光太郎が一気に攻め込み、妖怪の懐へと入っていく。
夕平は晋介に言われたとおりのやり方をすると手から三日月型の弾が5Wayで連続的に放たれていった。
そうするうちに晋介の出した妖怪はあっという間に力を失い札へと戻ってしまった。
「小夜、この感じだと二人も入隊許可を出しても構わなさそうだね」
「え、ええ。でも光太郎君と夕平君にはあまり・・・」
「あまり?」
「その、普通の高校生だからこういう事には関わらせたくないって・・・」
「小夜、甘い事を言っては困る。都の守護の為に知った者は死か強制加入のどちらかだ。洸二君と月奈君はあれが関係しているからこうやって誘ってもらったが夕平君は運が悪かったと思ってもらうしかないだろうね。光太郎君は例外だとしても」
妖伐隊の隊則の一つとして部外者が発生した場合は直ちに『処理』するか部隊への強制加入がある。
洸二達が光太郎達を連れてきたのはまずかったのだがこの現状を見ればそうでもなかったのかもしれないと晋介は判断した。
小夜と話をしている内に晋介は空気の違いを感じ取る。
殺気とは違う何かが張り詰めていく。
「小夜、神社の結界は常に完全にしているはずだったな?」
「は、はい」
晋介は洸二達に中止だと言って辺りを見回す。
「何かが尾行していた様子は?」
「あ、ありません」
「じゃあこの空気は一体誰が?」
晋介は境内の中を見れる視界で凝視したが誰も居る気配はなかった。
そして一間置くと上空に妖怪が現れた。晋介が作り出した妖怪ではなく実際の妖怪。
攻撃してくると洸二達は即座に飛び避ける。

72 :
「なんだなんだ、奇襲か!?」
月奈は相手を目視して数を確認すると凝視して自身のロングヘアーの先から光線を出して相手へと狙い撃つ。
洸二はそれに続いて一匹ずつ正確に熱線を狙い撃ちを始めた。
「光太郎、俺達もやらないと」
「わかってる!」と夕平に相づちをうって返すと光太郎は秋葉原で使ったのとは別な陰陽術で敵を拘束して光球からの攻撃で倒していき、
夕平は敵に突っ込んでいって攻撃を乱反射させて隙をつきながら三日月弾で攻撃をしていく。
晋介も札と霊気で作り出した弓矢で攻撃をしていたが敵の様子がおかしい事に気づく。
「小夜、この様子だと妖怪達は合体する。剣の用意をしてくれ」
小夜は呼応して一枚の札を取り出すと詠唱に入る。
「天照大神の名において、それは一刃の刃でありながら雨雲を呼ぶ神の御剣、己が主の窮地を救う剣となれ・・・」
小夜の詠唱の合間、妖怪の攻撃が横を刺しかけたが洸二が放った熱線によって防がれた。
「退魔剣、八束!」
地面に円陣が描かれ、中に五芒星が描かれたその中心から光輝く剣が出現し、小夜はそれを一気に抜く。
「それを洸二君に!」
命令を聞いて小夜は洸二に向かって走っていき、敵の攻撃を退けながら手渡しした。
「敵が合体しはじめたらこれを使って叩き斬って。一網打尽にできるはずだから」
相づちを返すと洸二は寄ってきた妖怪を一薙ぎして切り払う。
妖怪達の数が少なくなってきたところで彼らの様子が一遍し、群を成すかのように集まり始めた。
小夜の合図が聞こえると共に洸二は構えるとそ群へと飛び掛り、一刀両断をかける。
すると妖怪の群は切っ先から真っ二つに分かれ、活動を停止した。
洸二と小夜はホっと一息すると光太郎達が寄ってくる。
「洸二、やるじゃねーか」
「洸二君、小夜君、二人とも大丈夫か?」
洸二と小夜は無事な事を伝える。
「それにしてもこの妖怪達は一体どうやって・・・」
晋介は動かなくなった妖怪の残骸を見ながら呟く。
この神社だけでなく、妖伐隊の活動拠点となる神社には結界が張られており、妖怪達は通常入って来れなくなっているのだ。
それが破られたという事は強い力を持つ妖怪が結界の要を察知して破った。
そうとしか晋介には考えられなかった。
「小夜、すぐに要となる部分を探して修復をしておいてくれ」
「は、はい!」
小夜は洸二達と別れて境内の木を調べに行った。
「これじゃあ検査どころじゃないな・・・」
「晋介さん、どうするの?」
「いや、今の戦いぶりを見れば君達は合格だ。それに、光太郎君と夕平君も入隊してもらう」
「えっ、本当ですか?」
「隊則で部外者は一切作らない事になっている。もし入隊を断れば君達をここで消さなければならない・・・。いいね?」
光太郎はわかりきった声で応答し、夕平はそれを聞いて震え声ではいと言った。
「君達の場合、学校が帰るついででいいだろう。ここへ寄っていって常に何が起きているかチェックすること。
それと妖怪達と遭遇した場合は先ほどのように戦って処理してくれて構わない。
他の隊からの救援要請が出てくるかもしれないけれどそれに関しては後日追って連絡するよ。それでは解散してくれ」
晋介が告げると洸二達は境内を出て、それぞれ別れて帰っていった。
同時に小夜が戻ってくる。
「晋介さん、誰かが縄を切った後がありました。木には傷一つついていないので多分、妖怪じゃないかなと・・・」
妖怪。だとしても先ほど相手にした妖怪達ではこの結界を破る力は持ち合わせてはいない筈だ。
少し間を置いて彼は口を開く。
「小夜、修復したら戻って構わないよ。僕も調べておきたい。縄は?」
「もう直しましたので、これです」
手渡しした縄には切れたところに小さい氷が固まっていた。
「ご苦労だった。それじゃ僕もこれで帰るとするよ」
「帰りはお気をつけください。晋介隊長」
晋介と小夜が境内から居なくなると木の上で待っていた少女がすっと降りてくる。
「戦いを見ていたけれども誰かは判別できなかったわ。ここから出るにしてもまた要を破る必要があるか・・・」
少女は静かに先ほど小夜が直した要を同じ風に破ると神社から出て行く。
「イザナギ、一体あの三人の誰なのかしら・・・」
とぼとぼと歩いていって吉祥寺の街中へと消えていった。

73 :
次の日、学校へ行くと光太郎と夕平が何やら話し合っている様子だ。
洸二は気になったので話に参加すると武器について相談してたらしい。
「お前は小夜から剣貰ったからそれでいいだろ?俺らはどうするっていう話なんだが」
言われてみれば光太郎と夕平は武器らしいものは持っていない。
「光太郎は鈍器でもいいんじゃないのか?ホームセンターにあるハンマーとか」
「冗談じゃない。あんなもん振り回していたら逆に疲れるって」
「となると剣か。今時その手の刃物は手に入りそうにないぞ。どうするんだ?」
「とりあえずこれで代用するわ」
手を広げて何かを握りしめるような構えをとると白い色をした薄い霊気の刃が出来る。
「なんだあるんじゃないか・・・」
「一応、斬れるからいいけどよ、洸二が貰った剣みたいにはいかないから、何かないと・・・」
「夕平は?」
「俺はバタフライナイフをどこかで手に入れる。鞄に入れておけば最近の事件と関連して護身用とも言えるからな」
「そっか。持ってきたのは不味かったかな・・・あれ」
洸二はロッカーを指差すと剣が布に巻かれて入っているのが二人の目に入る。
光太郎は少々驚いたが妖怪達が襲ってくるのなら仕方がないだろうと思う。
一回小夜に管理をどうすればいいか訪ねたほうが良いと夕平は提案して洸二は休み時間にでも聞くことにした。
それから放課後、洸二は小夜の元に剣を持って尋ねにいった。
「小夜、ちょっと聞きたいんだけどこの剣どうやって管理したらいい?」
布で巻きつけてキツく縛り付けてあった。
小夜はそれを見てちょっと屋上まで来てと言われ、一緒についていく。
「ここなら人目もつきそうじゃないね。洸二君、鞘を作り出すからちょっと待ってて」
小夜は手を強く握って念じると霊気を固め始めた。
そうして見る見るうちに鞘の形状へと変化していく。
「はい。これで布で縛る必要もなくなるよ。後、この剣だけど洸二君が持っていて良いし、万が一の為に学校にも携帯していいよ」
「妖怪が出るかもしれないのはわかるけども、大丈夫なのか?」
「うちの学校、ロッカーの中まで見る先生いないだろうから平気だろうし、洸二君達なら部活の一環でっていうことで言い訳もできるから大丈夫じゃないかな?」
小夜の言い分を考えるとその事も理解できる。
洸二達が所属している部、電子部は普段から何やってるかわからない部活動でゲームの研究や解析をしていたりとか何か新しい遊びでも出来ないかとかそういう事が他の生徒からすれば目に付く。
「まぁ、何とかなるか。それじゃ小夜、一旦今日は帰るよ」
「あれ?神社は?」
「母さんから、月奈を向かえに行けって言われてるんだ。ここ最近事件続きで物騒だからってさ」
「そっか。それじゃまた後で会おうね」
学校が終了して家に帰ると、月奈を迎えに行く準備をする。
念のため洸二は学校へ所持していった八束の剣を腰につけて行く。
玄関から飛び出て、洸二は自転車に乗った。
吉祥寺から駅へ抜ける途中、光太郎が偶然洸二と出会った。
「よう洸二、小夜のところか?」
「悪いけど母さんに月奈を向かえに行くように言われていて今学校に向かうところなんだ」
「そっか。それじゃ俺は一足先に向かってるぜ。お前も後で来いよ」
洸二は先に自転車を走らせて光太郎と別れる。
光太郎は駅前をプラプラし、商店街を見ながら小夜のところへ足を向けていた。
二人は気づかなかったのだろうが、昨日小夜の神社へやってきていた少女が二人を目にして凝視していた。
そして石を取り出して二人を見て、洸二が離れていった後、石には変化は見られず光太郎が離れると石から光が消えていった。
「あれがイザナギの転生体・・・か。思ったより早く見つかったわ」
少女は光太郎に気づかれぬように上手く人ごみに紛れながら彼の後をつけていった。

74 :
そして月奈の通う学校の前で待っていると彼女が走ってやってきた。
「お兄ちゃん、迎えに来てくれたんだ!」
「母さんが行けっていうからな、小夜のところに寄って帰ろうか」
手を取って洸二は校門をくぐると何やら嫌な気配がした。
地面から何かが来ている。
月奈は洸二の様子を疑問に思って聞くと、小声で構えるように言う。
うなずくと月奈を自転車の後ろに乗せて洸二は思いっきりペダルを漕ぎ出した。
学校を出て交差点を通り過ぎるがまだ気配がする。
洸二は流石にまずいと思って人気のない路地に入り、左腰にぶら下げていた鞘から剣を抜く。
「お兄ちゃん、さっきから・・・」
しばらくすると段々と気配が強くなる。
「来る・・・」
構えてどこから来るか見る。目の前の道路が急に割れた。
月奈はそこに目掛けて手を伸ばすと、ロングヘアの髪の先から光線を撃たれた。
叫び声が聞こえると蛇のような化け物が出てくる。
敵は尻尾を振ってくるが洸二はそれを切り飛ばし、首筋目掛けて斬る。
蛇は首を少し後ろにやって避けたが、一瞬で反対の手でレーザーを照射。
首を焼き切る。
「もう、大丈夫?」
少しの間様子を見たが、特に動かなかった。
「大丈夫だ。もう動かない」
この街中で一人も襲わずに自分だけ狙ってくるのは妙だと思った洸二はすぐに小夜の神社へと走った。
着くと光太郎と夕平、そして晋介と小夜が待っていた。
「洸二か、遅かったけれど何か?」
晋介が洸二の報告を聞く。
それを聞き終えると値踏みをしたような目付きと少しの間を置いて話だした。
「君達、神話の知識は持ち合わせあるかい?」
「何だよ急に。広く浅くといった感じだけど一応の持ち合わせはあるよ」
「なるほど。それじゃ三種の神器についてもかい?」
晋介が神話関係の話をしだすと洸二は得意気に話し出した。
三種の神器、天叢雲、八咫鏡、八尺瓊勾玉。
この三つは現天皇が次の天皇へ変わる時の儀式に使われる神器であり、かつて日本の神、天照大神から授かった物。
八咫鏡と八尺瓊勾玉は現存しているそうだが宮内庁により門外不出の物となっており、天叢雲はどこへ行ったのか行方知れずのままということも。
「でもどうして俺達にそんな話を?」
「数ヶ月程の前の話になるんだが、天叢雲を除いた二つの神器が急に光ってね。残る天叢雲も何処かにあるはずなんだが・・・」
「それを探すのかい?」
「表立って動くことはないけども捜索自体は進められている。それともう一つ、所有資格を持つ御方を御守りする事も今後の任務の一つになってくる」
「それって皇室護衛官の仕事じゃ?」
「現天皇、皇太子様とは別にいる可能性が高いんだ。妖伐隊の仕事は妖怪討伐だけじゃなく人や要人を霊的被害から守るのも仕事の内だからね」
別な名前にすれば良いのにと洸二は思ったが口には出さなかった。
それ以外の事については今のところ特別視されるような事件はなく、先ほどの洸二のように妖怪が現れたら随時攻撃を行い、それを撃退して欲しいとのことだ。
洸二達は晋介と小夜に別れを告げて帰っていった。
小夜は洸二達の姿が見えなくなるまで手を振っていたが晋介はそれとは対照的に何か考えている様子だった。
「晋介隊長?」
「・・・仮に現天皇家とは別に所有者が見つかればその一族が本来の天皇家か。世間一般に知れたら一体どうなるんだろうな」
「洸二君達とそれは・・・きっと無関係ですよ。剣はきっと今の家に収まるはずです」
「僕の思い過ごしだと良いんだけどね」
晋介はそれを言って、神社を後にした。
小夜も境内の中にある自分の家へと帰っていく。
そして時同じくして木の上。そこには先日の少女が話を聞いていた。
「妖伐隊・・・か。もう随分話を聞いていなかったけれども再編されたのかしら。それに天叢雲の話・・・」
少女は木の上から飛び降りると晋介とは別な道で光太郎を追う。
「あれは平氏の一族の子孫、天皇家でないと振るえないと親方様から聞いたけれども。今はイザナギを追う方が先ね」

75 :
小夜の神社から帰った後、光太郎は自宅の縁側へと向かい、庭を見て腰掛ける。
「若様、何かお飲み物を用意しましょうか?」
「水を頼む」
昨日の戦いを思い出していた。
退魔師としての戦闘はシューティングと似たような感じでゲームでやるよりも結構楽しく、爽快感があった。
親の仕事の都合で幾度か戯れでやることはあったが実戦では初めてだった。
「今まで陰陽術とか学んでいたけれど、小夜のあれ、全然違ったな」
召使が持ってきた水を飲む。
「若様、主様が進学のことについて話があるそうです」
もう既に決まっているのにまだ話をしようというのだろうか。
夕食の時に話をするらしく、了承すると召使は下がる。
「ったく、推薦試験に決まっているっていうのにな・・・まぁ、心配するのもわかるけどさ」
頭を掻いていると背後から妙な気配がし、慌てて振り向く。
浴衣を着た銀色の長髪の少女が不気味な笑いを浮かべてこちらを見ている。
「女の子・・・?」
この時間帯なら警備は機能している。だとすれば何故この館の庭にいるのだろうか。
「いや、違う。妖怪か!」
「会えて嬉しいわ」
少女は一瞬飛ぶと、手を広げて光太郎に向かって氷柱を投げ撃つ。
咄嗟にそれを避けると光太郎は霊球を作り出して攻撃の準備をする。
召使の女性が音を聞いて即座に向かう。
光太郎は被害を広げないために彼女に逃げるよう手で合図をした。
「何だって言うんだ!」
「あなたを消せとの命よ。消えてね。イザナギ」
光太郎はその名前を聞いて一瞬戸惑ったが慌てる事なく次の攻撃を避ける。
少女がしてくる攻撃は実に単調だがフェイント混じりで突然の攻撃もくる。
警戒して避けながら、光太郎は隙あらば接近して霊球からのショットを一点集中させる。
結界が阻んでいるが攻撃の衝撃が響いている。ある程度撃ちこめば破壊できるだろう。
少女は仰け反るが攻撃の手をゆるめない。
「・・・これなら!」
予告なしのレーザー。だが、手を見ていたので軌道をすぐに捉えて避けた。
「うそ」
「彩京譲りだか知らねぇが見え見えなんだよ!!」
大きな隙が出来た少女に近寄り、顔面に右手によるストレートを打ち込む。
口から血を少し飛ぶがまだ重傷には至らない。
「っ舐めないで!」
袖の中から取り出した札を飛ばし、分身を作る。
双方による攻撃。一方は氷柱のWay弾のばら撒きで、もう一方は自機狙いだ。
光太郎は一方にショットを大量に撃ち込むと、分身はすぐに消えた。
「あっ・・・」
すぐさま接近して集中攻撃を浴びせると結界は脆くも破れ、強い衝撃により、少女が仰向けに倒れる。
光太郎は霊子による刃を作り、左胸に突き刺し、止めをさした。
「・・・美伶・・・様・・・」
少女は最後に言って息を引き取った。
「若様!お怪我はありませんか?」
「特にない。・・・親父に会いたい」
「あ・・・はい」
複雑な気持ちの中、光太郎は館の中に戻っていった。

76 :
夜、死体が見つかり大騒ぎになった。
やり過ぎたという思いが包むが自分の命を狙ってきている以上は仕方が無いだろうと思う。
光太郎は少女が言った言葉を思い返していた。
イザナギ、日本の創造神の夫婦の夫の方だ。
少し騒ぎが治まると父親が部屋に入ってくる。
「光太郎、入るぞ。一体何があったのだ。お前が無事で良かったが・・・」
「あの女・・・いや、妖怪は俺をR為に来たってさ」
ポリポリと頭をかきながら光太郎は平然と言う。
父親はその言葉を聞いて血相を変える。
「妖怪だと?お前の命を狙ってか?」
「理由はイザナギがどうとかって言ってたけど」
光太郎の父親は今の言葉に耳を疑った。
「光太郎、もう一度言え」
「だから言っただろ、イザナギ・・・って」
そう言うと少しの間を置いて、父親は部屋を出て行った。
呆気に取られたが自分の立場を理解する。
「・・・まっ、気にすることはないか。嘘か本当かわかりようないし」
居間に行くと父親が母親と話し合っていた。
やれやれといった顔をする。ふと、あの妖怪をどうするのか気になった。
「親父、あの妖怪どうするんだ?もう死んでるけどさ」
「あの妖怪の魂はまだ宿っている。利用させてもらう」
変な事を考えるなと思って少し外に出た。
「光太郎様、お怪我は・・・」
小さい女の子が光太郎を案ずる言葉を投げかけてくる。
彼はそれに応えて大丈夫だと言う。
「そろそろ、交代の時期だな。天美・・・」
「ええ、もう私の霊力ではこれ以上お体を維持させるのは限界があります」
「ちょっと出かけてくる。あまり心配するなよ」
天美という名前は2年前にこの世を去った彼の妹の名前である。
その体は今現在、光太郎の家にある式神達によって動かされており、受け答えも式神達によるものであって、天美自身の言葉ではないのだ。
家を出て、街中の本屋に入っていくと適当に雑誌を取って読む。
(魂をどうするんだろうな・・・)
父親が言っていた言葉が気になっていた。
それに、あの妖怪の姿は2年前に病を患って死んだ妹と似ている。
もしかすると・・・そんな事を考えたが望み薄だろうと思った。
葬式の時は洸二や月奈も一緒に参列して月奈と自分が酷く泣いたのも覚えている。
だから余計に期待してしまうのかもしれない。
それは妹なのか?それとも今、消えようとしている妖怪か?
久珂天美の体に式神の魂を入れた時から彼が疑問に思っていたことだった。
雑誌を読み終えると店を出る。
「そういえば、頼んでいたアームターミナルどうなってるかな・・・」
先ほどの雑誌のノートパソコンを見て知人にあるものを頼んでいたのを不意に思い出した。

77 :
連投規制があるので一旦時間置きますね
かなり長いのでスレに貼っていいかどうか・・・

78 :
なら最初から分けろwww

79 :
翌日、学校からの帰り道、吉祥寺の街中を歩いていると黒のリムジンが洸二の前に止まった。
窓が開くと見慣れた顔が目に入る。
「洸二、久しぶり」
久しく顔を合わせていない知人だった。
「久しぶりだな、春怜。学校の方はどうなんだ?」
「別に、普段と変わりはないわ。学校で勉強するのもいいけれど会社に行って色々と作るのが楽しいし。帰りだと思うから送る?」
「ああ、悪いな」
洸二は春怜という女性に言われて彼女の隣の席に座った。
彼女は夕平の妹で、洸二達とは別の学校へと通っている。
「それにしても最近物騒になったわよね」
東京で広がっている殺人事件の事だろう。
洸二は事件を起こしているのが妖怪なのを知っているので彼女には話さないようにした。
「オチオチ出かける事も出来なくなるよな、このままだと」
「ええ。ところで洸二、さっきから腰の辺りに何かつけてるけど・・・」
学校からの帰りだったので小夜から貰った剣を着けっぱなしだったのを春怜に言われて気づいた洸二。
彼女に関係させては不味いと思って慌てて言い繕う。
「ああ、これ俺達の部活で使うことになってな、本物の剣だ」
「へぇ、でもどうやって手に入れたの?」
小夜から貰ったと言えば怪しまれるだろうし、それにここまで立派な剣は都内の日本刀を扱う店でもない。
困った洸二は少し間を置くと切り出す。
「家を整理していたら出てきてな、それで使ってるんだ」
「ふーん。売ったら高そうね・・・鞘まで完備されているし」
彼女と小夜は仲が悪いというより、春怜自身が洸二を意識し、小夜が側に居るのを気にする為、小夜の名前を出すと不機嫌になるのが常であった。
その為洸二は言うのを避けた。
会話を終えて景色を見ていると手を重ねているのに気づいたが、そのまま気にしないようにした。
向こうは感触があったようだが無視していた。

80 :
洸二は家に着くと春怜に別れの挨拶を告げて、彼女の車が遠くへと去っていったのを確認すると小夜の神社へと向かった。
着くと誰も居らず、小夜が境内の中を掃除しているだけだった。
「まだ早かったみたいだな。何か変わったこととかは・・・ないか」
「うん、私の方もこれといって変わったこともないし他の隊からの連絡事項もあまり・・・」
「そっか。じゃあ先に帰るよ」
「ゲームセンターに行くの?」
小夜はまたかと言った風に洸二に問いかける。
洸二は笑って小夜に返したが彼女としては心配そうだった。
「あんまりゲームしてると進学に響くよ」
「そこんところは心配無用さ。親父の行った大学行くし、推薦書いてくれるからな。小夜は大学とか専門行くんだっけ?」
「・・・私は、行かないよ。このまま隊で働くつもり」
妖伐隊に入っている事をすっかり忘れていた洸二は思い出したかのように言う。
「そういや、そうだったもんな。でもあそこ給料とか出るのか?」
「大人の人に聞いたら出るみたいだって。それに私は大学とか専門学校行って何かしたいとかっていう事はないし・・・」
そういう人生も有りなのだろうと洸二は心の中で納得していた。
この時代に高校卒業して就職というのもかなり厳しい時勢なのだが、妖伐隊ならその心配もないだろうし、小夜なら親のコネもあるだろうから首を切られるという心配もないだろう。
尤も、隊で首を切られるという事は死を意味するのだが。
「んじゃ、今日はこの辺で帰るよ。二人と晋介さんに会ったら宜しく伝えておいてくれな」
「うん、帰り妖怪に気をつけてね。最近事件の件数が多くなってるみたいだから」
手を振ると洸二は帰っていく。そして彼が帰るとすれ違い際に光太郎がやってきた。
「小夜、そっちに変化ないか?」
「うん、これといったものは見られないし他の隊からの報告も特にはあがってないよ」
「そっか。昨日俺の家に妖怪が襲ってきてな、それがちょっと気になっていたんだけども」
「妖怪・・・!?」
光太郎は小夜に事のあらましを話した。
明らかに自分を狙ってきていたことやイザナギという謎めいた言葉。
小夜自身はイザナギという単語は良くわからないのだが光太郎は予測はついていた。
「で、もうそいつは殺してしまったからもう良いんだけど気になってな・・・」
「氷を使う女の子・・・雪女とか?」
「童話とかで出てくるような雪女とはイメージ違ったんだけどな。普通に弾撃ってきたし」
「晋介隊長が来たら報告しておくね」
「それじゃ、俺はこれで帰るよ。また明日な」
家に帰ってきた洸二は月奈がまだ帰ってきてないのに気づいた。
神社に寄っているのかもしれない。
居間の時計を見るとまだ5時だった。
「ちょっくら行ってくるかなぁ。でも眠いしな・・・」
洸二は自分の部屋に入ると掛け布団を上げてベッドに入っていった。
少し時間が経つと月奈が入ってくる。
「私も少し眠ろうかなぁ。夕平さんと一緒にお姉ちゃんの所は行ってきたし」
月奈は居間のソファーで寝ることにした。

81 :
それから7時頃、小夜の家に晋介が突然駆けつけてきた。
玄関のベルを鳴らして入ると小夜を呼ぶ。
「小夜、出動命令だ。妖怪達がこの吉祥寺近辺に集まってきているらしい」
「え、そうなんですか、わかりました。すぐに準備します!」
「集合場所は洸二君の家だ。住所は・・・同級生だから知ってるな。僕はこれから洸二君の家に行くから小夜君は二人に連絡を」
晋介はそう告げると家を出て行った。
小夜は学校の連絡簿から光太郎と夕平への電話をかけて出動の旨を伝えていく。
二人に聞くとすぐに行くとの事だ。
小夜は親に言うとすぐに出て行った。
家で夕食をとっていた光太郎は出る準備をしていた。
「妖怪か・・・この辺りに来ているのかよ」
自分の部屋の机の中から一枚の札を取り、玄関へと向かう。
「光太郎様、外へ向かわれるのですか?」
「ああ、ちょっと呼ばれてな」
天美の体に入っている式神が光太郎を気遣って言っているが彼は洸二の所へ向かうつもりだ。
「それでしたら私も連れて行ってください。霊能力で光太郎様をお守り致します」
「自分の事を考えろ。天美の体にもしもの事があったらどうするんだ」
既に死んでいる『彼女』だったが前述の通り、式神が入っている為、霊能力の行使も可能だ。
だが光太郎としては妹の体に傷がついてはいけないと思って連れて行くのをやめた。
「家で親父とお袋と一緒に居てくれ。今回はどうあっても連れてはいけないんだ」
そう言って突き放すように天美の体に入っている式神に宣告すると家を出て行き、洸二の家へと向かっていった。
向かう途中、妖怪達と遭遇したが特に驚くこともなく冷静に戦う。
洸二の家につくと、車があった。
「光太郎、来ていたのか」
軒先に夕平と晋介が居た。
「小夜は?」
「今、洸二君を呼びにいっている」
「そうか。数多そうだな」
濃くなる気配を感じて、少々不安になっていた。
普段は陰陽術を行使していたがお遊び程度で、本格的に使うのはこれが初めてだったからだ。
「今日は数が多い。安定パターンでいくか?」
夕平が言うが光太郎は即座に否定する。
「いーや、出来る限り攻めてそこから安全パターンをその場で取っていく判断をする方が良いだろうな」
「似たもの同士だな」
「お前もさ」
腕を互いに当てて少し笑っていた。
晋介は若干不安を感じていた。
果たして新米4名が上手く戦えるのだろうか。
小夜に関しては特に問題ないと思うが聊か力不足は否めなかった。
それに一般人である三人を連れてどこまで戦えるのか。
だが、洸二が居る。
彼の溢れんばかりの力は一体どこから来ているのだろうか。
「期待の新人っていう奴かな・・・」
達観した目で晋介は夜空に浮かぶ月を見上げていた。

82 :
ベッドから起きて夕食後、洸二はニュースを見ているとあるものが目に付いた。
見ていくと近くの公園でまた殺人事件が起こったらしい。
同時にベルが鳴った。
母親が行くと洸二を呼び、彼が玄関まで行くと小夜が巫女装束を着て待っていた。
「洸二君、出動命令だよ」
「ああ、わかった。で、その服を着ているということは・・・妖怪退治か」
「光太郎君と夕平君も外で待ってるの。洸二君も来てくれる?」
「もちろん。月奈も一緒で構わないな?」
「うん。早くしないと」
洸二は月奈を連れて家を出る。
「よう、洸二。二度目の実戦だな」
「実戦というか命懸けの遊びなような気もするけどな」
洸二と光太郎は冗談交じりに話しているが月奈は夕平を見ると側に寄る。
「夕平さん・・・私、戦うけど大丈夫かな」
「月奈・・・?お前もなのか?家で待っていればいいだろう」
夕平は月奈を家の中に帰そうとするが晋介が二人の手を取って止めた。
「夕平君、月奈君は後方から援護させてやってくれ。役には立てるだろう?」
晋介は仲裁するかのように言って二人に視線を持っていく。月奈は変わった反応を示していた。
「やっ・・・いやあぁ!」
叫び声と同時に凄い力で晋介の手を離し、夕平にしがみ付く。
その声を聞いて駆けつけてきた洸二はあちゃーといった様子で晋介に話をする。
「晋介さん、ちょっと悪いけど月奈にはあまり触れないでくれないか。俺達以外の男が触るとこうなんだ」
訳ありなのだろうと思って晋介は納得した。
洸二の家を出て路地に出ると洸二達を一列に並ばせ、頭数を確認する。
「全員、揃ったね。今回は吉祥寺の街中に蔓延る妖怪達を討伐する事だ。君達の他にも何名かの隊員が先立って行動をしている。もし見かけたら協力して欲しい」
「この近辺っていうことか」
「正確に言うと『この区』何だけれども君達は吉祥寺在住だからこの辺りを重点的にやって欲しいということさ。では任務を開始してくれ。
僕は武蔵野市以外の地域へと行かなければならないから小夜君に一先ず指揮を任せるよ。いいね、小夜君?」
彼女自身その言葉を聞いて不安を感じて一度拒否をしたが、彼が思ったのは経験等を踏まえた上での判断だった。
晋介はもう一言言って小夜に洸二達の指揮を任せると去っていく。
「・・・それじゃ、行こう。私が妖怪達の反応を示す地図とかを持ってるからそれを下にして倒していってね」

83 :
2009年6月19日22時14分。東京都吉祥寺高楼公園。
殺害された人物らの周辺を調べていた警察関係者が何か気配を感じる。
「なぁ、何か妙な感じがしないか・・・」
「まさか、ここは東京の市街地だぞ?」
そのまさかだった。背後から唸りを上げて、獰猛な妖獣達が迫ってきて襲いかかる。
気づいたところではもう遅い。肉を食いちぎり、内臓を鋭い爪で切り裂いていく。
同時刻の吉祥寺市街地。
洸二は剣で切りかかり残った妖怪を弾で一掃。小夜は破魔の術で攻撃。
光太郎は敵の中心へと札を投げ、爆発させる。
月奈は夕平の後ろからレーザーを狙い撃ちし、彼は敵の攻撃を反射させて倒していった。
周りを確かめていないのを確認すると洸二は剣を鞘にしまい、小夜に妖怪の有無を聞く。
札に写る地図に赤い光が沢山表示されている。
「まだいっぱいいるみたい・・・」
小夜の遅さにまどろっこしくなった洸二。
すると脳内に言葉が響く。
『奇稲田と須世理を置いて私と父でやるのが良いか・・・』
その後洸二は、光太郎と夕平にどのように分担するか聞く。
小夜は止めようとしたが洸二は聞かずに自分の判断で行動していこうとした。
いや、されていたと言ったほうが正しいのかもしれない。
「小夜は月奈と一緒に危険じゃないところで戦ってくれ。俺達は妖怪の反応が多いところへ行くよ。予備の地図とか持っているのか?」
「一応あるけど・・・本当に大丈夫なの?夕平君とか・・・」
「俺の事なら大丈夫だ。一人でもやれる」
彼自身はもう覚悟を決めていたようだ。
決まると3人に妖怪の反応を示す地図札を渡し、割り当てを決めた後、すぐに別々の道へと散っていった。
残ったのは小夜と月奈。
「一緒に行こっか」
小夜は月奈の手を引っ張って反応の少ないところへと向かっていった。
これは自分に自信がなかったからこその結果なのかもしれない。
自信喪失気味になっていたが気張ってやろうと思って歩みはじめる。
彼女も脳内に言葉が響いていたが洸二の様に聞き取れるものではなく、薄らと聞こえる程度だった。
薄らと響く程度であったがその言葉を聞くたびに彼女の胸は不安になっていった。
「どうしちゃったんだろう・・・私」
洸二は公園から出て、すぐそばの小学校の通学路に差し掛かる。
剣で斬りかかり、逃げる妖怪は熱線で撃ちぬく。
「奴ら、一体なにが目的だ?」
この先は吉祥寺の商店街になっている。
そこに妖怪達が流れ込めば惨事になるのは明らかだ。
秋葉原で起きた事件を脳裏に思い浮かべながら彼は走っていく。
『妖怪達め・・・妻と娘には手出しはさせんぞ』
脳内に言葉が響いていたが誰の言葉なのだろうか。
その言葉を聞きながら彼は目前に現れる妖怪達を討っていく。
一方、光太郎は住宅街で妖怪の退治をしていた。
札の爆発音が辺りに響き渡らないようになっているのか周りの家は誰も気づかない。
自分を追う敵が多いことに気がかりだ。
キリがないと判断すると、手から光弾を撃って牽制をした後、持ってきた札を手に取り、詠唱を行う。
「久珂家秘伝の式として眠りし守護霊よ・・・再び我に力を与えよ!我が名は四拾五代目久珂家当主、
久珂光太郎!紗希、来い!」
詠唱を終え、札を地面へと投げると人の姿をした式神を出す。
「若様、この者共の排除ですね?」
頷くと式神は命に従う。
空気中に浮かぶ霊子を結晶化し、弓と矢を作る。
「我は久珂家の式神、宮雨紗希。お命頂戴する」
光太郎と紗希と呼ばれる式神は一斉に攻撃を始める。
光太郎から放たれる光弾と式神が正確に、そして多数放つ矢の前には残る妖怪はいるはずもなく、彼ら
の目前から次々に消えていく。

84 :
夕平は商店街を回っていた。
「こっちに向かってきているか・・・」
明かりの消えた商店街で潜んでいる敵を適度に排除しつつ待っていると、妖怪達が向かってきて洸二が
追っているのが見えた。
やれやれと思いながら周囲に球状のバリアを張り、敵は相手が一人なのを確認すると一斉に攻撃を仕掛
けてきた。
「注意が足りんな」
敵の弾がバリアに触れると次々に光の輪となって消えていき、バリアの色が濃くなっていく。
次の瞬間にバリアを解除すると、光線が放たれて周りの全ての敵に向かって撃ち放つ。
それは正確に攻撃してきた敵へとホーミングし、撃ちぬいて行くが残った敵もいた。
追撃しようとしたが先の反動か体が思うように動かず、激痛が走る。
「っ・・・洸二!残ったのは任せた!」
その言葉を聞いたあと、洸二が残った敵へと襲い掛かっていく。
「自分で決めたのに、惨めだな・・・」
敵の攻撃を避けながら彼は路地裏へと入っていく。
小夜と月奈は離れないように動いていて、妖怪達を倒していた。
小夜が札で敵の動きを封じ、お払い棒で敵に弾を撃ち、倒す。
「8・・・9・・・10!」
月奈は目標を定めて、敵をレーザーで正確に撃ちぬいていく。
「もういない?」
「うん。映ってないから大丈夫だと思うよ」
妖怪の反応が無くなるのを確認してお払い棒をしまう。
すると、月奈の顔が変わった。
「どうしたの?月奈ちゃん」
「あ・・・あれ」
月奈は恐る恐る指を指す。小夜は後ろを振り向くと黄色く光る大蛇のようなものが地面から出てきてい
た。
小夜は慌てて札を見て確認するが反応が違い、妖怪ではないようだ。
札を投げるがすぐに避けられて二人の周りを囲んだ。
嗜める様子から、自分達をRつもりではないようだ。
月奈は見た目で推測してボソッと言った。
「・・・龍王ノズチ?」
「娘、何故名を知っている?」
耳に入ったのか、蛇が喋ってきた。月奈は驚くが頭で即座に理由をあれこれ考える。
「え・・・っと色々興味持って調べているうちに名前が載っていたからもしかしたらって。見た目が似
ているし」
「成程、今の人間でも知ってる者はいるということか」
「も、目的はなんなの?今、妖怪達が多く出ていてそれを退治しなくちゃならないのに」
小夜は恐る恐る聞く。
「我とて同じこと。主からの命である」
主は何者だろうと聞くが、ノズチという蛇は今は話をする時ではないと言う。
小夜と月奈は蛇の背中に乗る。意外と乗り心地は良いようだ。
地を這うノズチの動きは早く、退治は順調にすすむ。
「左に進んで、妖怪達が溜まってるから」
小夜の言う方向へと首を傾けると急なスピードで曲がっていく。
二人は振り落とされそうになるが必死にしがみ付いていた。
「す、すごい。本物の龍なんだ」
妖怪達が見つかると小夜は札を投げて牽制をかけるがノズチが尻尾で一薙ぎすると路地の壁へと吹き飛
び、只の塊へと変貌する。
「・・・後は商店街の方だから・・・右に曲がって!」

85 :
洸二は大体片付いたらしく、呑気に自動販売機で買ったビックルを飲んでいた。
大きな唸り音が奥の道から聞こえてくる。
何かと思ってビンを捨て、剣を構えると、向こうから蛇らしきものが向かってきた。
「・・・大蛇!?」
洸二は慌てて熱線を撃つが結界らしきもので防がれた。
「ちっ、こんな奴もいるのかよ!」
「待って、洸二君!」
力を溜めて撃とうとしたが小夜の声が聞こえたので慌ててやめた。
よく見ると、小夜が乗ってるのに気づいて驚く。後ろには月奈。
目の前で止まると二人が降りてくる。
「この大蛇は・・・?」
「ノズチだよお兄ちゃん」
その名前を聞いて驚く。
「ノズチ・・・!?龍王か!?」
「そなたも知っているのか」
小夜はノズチに乗ってきた理由を話した。
洸二は主と聞いて何かを思い浮かべて言葉を口にする。
「八岐大蛇か?」
ノズチは頷いた。八岐大蛇。日本の神話に出てくる龍だ。
妖怪とほぼ同じ見方を洸二はしていて疑問に思って、日本の妖怪退治なのに何故協力するんだと問いかけた。
ノズチが言うにはある人物を探す為にこの東京へとやってきた。
彼女は西洋の者、つまりは悪魔や天使からも狙われていて妖怪達もそれに誑かされているのではないのかと思っての行動のようだ。
少し待っていると夕平が来た。
「洸二、なんだこのでかぶつは?」
随分とでかいものが現れたものだなと思いながら寄る。
「・・・蛇か?これは」
「ノズチだ。若者よ」
夕平はその名前を聞いて面食らった。
向こうから光太郎がやってくる。なにやら隣に誰か居るらしいが。
「よう洸二、終わったのか・・・って!?」
「若様、これは・・・!」
紗希はノズチに弓を構える。
光太郎は手に力を籠めた。
小夜から話すと姿勢を解いた。
「協力してくれたのか・・・そりゃ悪かったな」
隣に目を向けると見慣れない女性がいたので洸二が聞く。
「隣は誰なんだ?見かけないけど」
光太郎と紗希は目が合ったと同時に目を背けた。
「・・・式神だよ。俺の家の」
「光太郎の家の式神?」
「そう。昔から、久珂家の跡取りはこの式神を使いこなすんだ。ほとんど片付いたのか?」
「ああ、俺と夕平の方も殆ど片付いたし、小夜は?」
札を手に取って見ると妖怪の反応はなくなっている。
夕平が少々疲れた様子で今日の襲撃はなんだったのかとノズチに問い質す。
「わからぬ。だがこの関東の地で何かしでかすつもりなのは間違いないだろう」
「またやってくるかもしれないな。早く天叢雲が見つかればいいんだけどな・・・」
天叢雲と聞いてノズチは目を細くした。
小夜はこれからノズチにどうするのかと聞く。
「妖怪達の暴挙を止め、その後はこの地で様子を見よとのお達しだ。どこかで滞在できればいいのだが」
「それだったら、私の神社が良いと思うよ。迷惑にならないし」
「すまぬな」
「それじゃ、俺達はここで。紗希、帰るぞ。小夜から晋介に任務完了だって言ってくれよ」
光太郎が帰っていくと夕平も続けさまに帰る。
残った三人はノズチの背中に乗り、神社まで一緒に行った。

86 :
ノズチの移動速度はかなり速く、あっという間に着く。
「では地中で眠ることにしよう」
ノズチは境内の中に入り、地面に潜っていった。
「それじゃ、小夜。報告はどうするんだ?」
「私からしておくよ。洸二君達は先に帰っていてね」
小夜の話の後、洸二と月奈は軽く就寝の挨拶をすると帰っていく。
帰り道、洸二は月奈にたずねた。
「月奈、ノズチって聞くとなにを思い浮かべる?」
「えっ?女神転生の龍王ノズチだけど・・・ペクヨン作ったりするときに便利でしょ?」
同じ風に捉えていて彼は笑った。
深夜、ノズチは目を覚まし神社の中を調べるように動く。
社の下、石垣の下などをくまなく見て回った。
微かに残った霊気がノズチの嗅覚に一人の人物だと告げる。
「ふむ。どうやらここで間違いないようだな」
母屋に目がいくとまだ明かりが灯っているのが見えた。
「美伶様の捜索が今回の命。あの雪姫の娘も動いているとなると只事ではないだろう・・・」
呟くと再び地面の中に入って眠りにつく。
小夜はごそごそ動いているのが気になって母屋から出てきたが何もなかった。
妖怪達の襲撃から翌日。
朝っぱらから光太郎が話してくると、彼は洸二の鞄に妙なものが入っているのに気づく。
「書類一式整ったのか?」
「ああ、問題なくな」
洸二は昨日、光太郎の側にいた女性が気になり問うがさらっと返された。
もっと知りたいと思ったがそれ以上光太郎は答えようとはせず、色々な事情があると思い、洸二もそれ
以上は聞こうとはしなかった。
放課後、職員室へと向かい推薦試験関係の書類を提出し、教室に戻るとみんな帰った後だった。
普段なら即刻ゲームセンターに行くのだが、妖伐隊の事もあって小夜が少し気になり、教室に行くと、彼女は机に座って教科書とノートを広げていた。
頭ごなしに覗くと小夜がこちらの気配に気づいて少し驚く。
「小夜、宿題か?」
「うん。家でしたくないから・・・」
「手伝うか?」
小夜が頷くと、洸二は待っていましたといわんばかりに張り切る。
教科書から参考にするところを教えて、問題のコツ、パターンなどを事細かに教えて洸二は小夜の宿題をさっさと終わらせた。
「やっぱり早いね洸二君」
「ま、所詮パターン化すれば勉強なんざ死ぬほど簡単さ」
机の上にある筆記用具をしまいながら言う。
「そうは言うけど・・・難しいよ」
「まだシューティングの方が難しい。緻密なパターンとランダム性がある。ちょっとやそっとでいくもんじゃない」
鞄にノートをしまって洸二と共に教室を出た。
小夜はお礼にお茶などを出したいらしく、小夜の家である母屋に寄っていかないかと言われた。
ぽりぽりとあごの下を掻いてどうしようか迷ったが寄っていく事にした。
校舎の生徒玄関へやってくると小夜と同じクラスの狭間が偶然通りかかって声をかけてきた。
「小夜、こんな時間までどうしてたんだ?」
「あ、狭間君。洸二君に宿題を手伝ってもらって一緒に帰るところなの」
その言葉を聞いて狭間は目を細くして言葉を紡ぐ。
「言ってくれれば手伝ってあげたのにな。違うクラスなのにすまない洸二」
「別にこれ位大したことはねーよ。それより狭間、光太郎とかは?」
「手製のプログラムがもう少しで出来るそうだ。ま、あれが三年間かけて出来た唯一の成果だろう。うちの部の」
電子部が出来た経緯は洸二自身が光太郎と夕平を誘って自分自身の為に作った部である。
目的らしい目的は特に無く、いつもやってる事と言えば市販ゲームの研究やら解析、個人でのプログラミング等といった趣味の範疇に収まるものでおよそ部活動とは程遠いものではあった。
そんな中、小夜のクラスからノブと狭間がやってきて5人で部活を始めることになった。
顧問の教師が何も言わないのは本人達がクラック行為や公共施設へのハッキングなどをしないからであって傍から見れば普通にパソコンを弄っている程度である。
「それじゃ、この辺で帰るわ、また明日な狭間」
「ああ、それじゃ」
小夜と一緒に校門を出て、いつも乗る自転車の後ろに彼女を乗せると、チリンチリンとベルを鳴らしながら神社へと向かった。

87 :
八蛇神社に着くと地面に変化が起きているのに気づいた。
何やら地鳴りがし、石垣がところどころずれていたりする。
見ている最中、すぐ側で石垣が動いた。
「ノズチが何かやってるのか?」
「土にあるゴミをとっているみたい。ここら辺は特に汚いって」
言われてみて確かになと思う。東京の環境はあまりよくない。
家の中に入り、居間でよっこらせといった風に座る。
小夜は2階へ行って勉強道具を片付けると台所へと行き、お茶をつぐ。
盆に湯のみを二つ持ってきた。
洸二は手に一つとって飲むと少々熱く感じた。しかしこれくらいがお茶としては良い塩梅だろう。
「あれ、小夜の母さんとかは?」
「あ、買い物かな?」
「そうか。にしても、ノズチが来たことに驚かないのか?」
「最初はね。でもペットを連れてきたくらいにしか思ってないみたい」
それを聞いて呆れた。
日本の龍であるノズチをペットと見るというのはどんな神経をしているんだと一瞬吹きそうになる。
「そういえば小夜、他の隊からの連絡とかで変わった事とかはないのか?」
「まだ何も。本部の方で吉祥寺周辺に妖怪達が襲い掛かってきた事について話し合ってるみたいだけれど他には・・・」
「ふーん。そっか・・・」
途中で洸二はあることが気になって聞く。
今まで空を飛ばず、地上からショットとレーザーを撃つ戦いだ。
だとすれば空に飛んで戦うときもあるのかと小夜に問いかけた。
「うん。そういう時は『浮遊札』を使って戦うの」
小夜は近くにあった引き出しから札をとり、腕に貼るとフワリと体が浮いた。
「こんなものを腕や色んなところに張って飛ぶんだよ」
洸二に一枚渡すと彼は胸に貼り付けてみて、体ごと宙に浮いた。
「お、実際に飛んでこういう風に戦うこともあるんだな」
「私自身はまだ経験したことないけど、空を飛ぶ必要がある時はこういうもので浮いて行くんだって」
小夜が以前から人伝の話ばかりなのが気になって洸二はちょっと突っ込みを入れてみた。
「なぁ、小夜、前から思っていたけど、ホントに経験不足っていうかそんな感じなんだな」
その言葉に小夜は胸を突かれたような感覚を受ける。
実際のところ、経験不足であり、先ほどの件では洸二が指揮を握っていた。
晋介から任されたが自分では無理なのだろうか。
「悪い、余計な一言だったか」
小夜がしょぼくれている様子を見て洸二は小夜に謝る。
「ううん、いいの。洸二君が皆の指揮を執ってくれた方が良かったのかもしれないし、私じゃ・・・多分無理だよ。
晋介さんに任せられたけど、出来そうにない。
だから洸二君がやってくれた方が纏まるかなと思うの」
「小夜、自信・・・ないのか?」
「うん。私、相談してみる。洸二君の側で支える形を取った方が良いのかもしれないし」
しばしの無言の後、洸二は立ち上がって小夜の手を取って握り締める。
「小夜、もう一回やって駄目そうなら俺に言ってくれよ。その時は補佐頼むぜ」
洸二に握られた手からは勇気と取れる熱が伝わってくる。
彼の言葉には自信に満ちていて小夜も自然と胸のつかえが取れていくような感覚にとらわれた。
その後、洸二はしばらく寛ぐと家に帰っていった。

88 :
それから二日後。
いつものように登校すると校庭で小夜が慌てて洸二達に向かってきた。
小夜は帰りに神社に寄っていって欲しいと伝えると教室へと帰っていった。
いよいよか、と洸二はわくわくしていた。
側に居た光太郎が話しかけてくる。
「どこら辺にあったんだろな?」
「さぁな、奈良か京都・・・そこ辺りじゃないか?」
流石にそこなら既に見つかるだろうと思って馬鹿だなと思いながら教室に入る。
そして放課後、神社へと向かった。
見ると小夜が晋介と話をしているところだった。
小夜は用意していた地図帳を広げて、洸二達に見せる。
「九州と本土の間にある海峡の底に埋まってるって報告があったの」
「海峡・・・関門海峡か?」
「壇ノ浦の戦いがあったでしょ?その時に剣が海の底に落ちたらしいの。ここ、ここ」
指で地図のある地点を指す。確かに関門海峡だ。
「・・・これまた、随分遠いな」
「平氏と源氏の戦いの時に沈んだまんまなのか」
光太郎と夕平は率直な感想を述べる。
「現地の隊員にも聞くと夜に海から赤い光の柱が立ってきているとの話だ」
「海中にあるのか・・・どうやって取れば良いんだろうな。ダイバーとかに調べてもらったのか?」
「いや、生憎深すぎてとても潜れるようなところじゃないんだ。もしかしたら何か別な物が必要かもしれない」
『天叢雲、そこに眠っていたのか・・・ならば私が取らねば』
洸二は一間を置いて晋介に言う。
「晋介さん、それ俺が取りに行くよ」
洸二が言うと周りの全員が振り向く。
「ちょっと気になってるんだ、さっきというか前々から変な声が頭の中に響いていてそれとも関係あるのかなと思ってるし」
「声?空耳とかそういうのではなくてかい?」
「随分前の話になるんだけど俺と月奈が夢の中で変な体験をしたからさ、それとも関係あるのかなってね」
晋介は話の詳細を聞くと洸二に行かせた方が良いのではないかと判断した。
だが彼一人で行かせるのは些か不安であり、誰か同行者を決めたほうが良いと思って眺めると小夜に目が行く。
「小夜、洸二君が向かう時に一緒に行ってくれるかい?」
「え、私がですか?」
「ああ、この中から選ぶとしても経験者の君が一緒の方がこちらとしても安心できるからね。
洸二君、手段については君に任せるが剣に損傷がないようにしてくれ。
今日の用件はそれだけだから後は解散して構わない」
晋介の言葉で洸二達は家へと帰っていったが、晋介は気になることがあった。
洸二の見た夢の中での出来事だ。
「奇稲田と須世理・・・?どこかで聞いた事があるような名前なんだけれどな」
日本神話には少々疎いので名前が気になる程度であったが、引っかかることがあったので帰ってから調
べることにした。

89 :
>>78
すみません、少し分けた方が良かったですね・・・
次の投下で作成分は全部投下できると思います

90 :
帰路の途中、洸二は夕平に声をかける。
「なぁ夕平、晋介さんは手段は問わないって言ってたよな」
「なんだ、聞こえてなかったのか?」
「そういうわけじゃない。だったら車でも別に良い話だよな」
洸二の言葉を聞いて夕平は呆気らかんとした表情をする。
「まぁ、それでも良いと思うが取るのに一日以上かかるんじゃないのか?」
「で、提案だ」
洸二は夕平にある車の話をする。
銀色で独特のフォルムをしたとある車。
全世界で303台という少なすぎる供給から今では幻とまで言われてすらいるが、1989年に発売されて尚、未だにそれに搭乗した人々を魅了してやまない。
「あの車を作れというのか・・・」
「それなら短時間で済ませれるだろうし、妖怪達と出会ったとしても迎撃できるだろ?やれるか?」
一間を置いて夕平は洸二に言う。
「車本体だけなら板金屋で無理な注文をすれば可能だ。だがホバークラフトとなると少し厄介かもな・・・春怜に相談してみよう」
そう言うと夕平は洸二と別れて帰っていく。
「お前も随分無茶を言うよな、幾ら天才肌の春怜でも無理じゃないか?」
光太郎が横で聞いていたのを達観視して言う。
「電車で行って一般人に迷惑かけたら元も子も無いと思うんだけどなぁ」
「まぁ、そこは自由にって言ってたからな。それじゃ、また学校で会おうぜ」
光太郎も別れて帰っていく。
ふと洸二はあることに気がついた。
今日は月奈が来ていない。
どこかで道草でもして遅れたのだろうか。
家に帰ってきた洸二。部屋に戻ると鞄などを片付ける。
玄関からただいまの声がして向かうと月奈が大きなハスキー犬を連れて入ってきた。
「遅かったな。それ、どうしたんだ?」
「捨て犬か野良犬みたいなの・・・何だかほっとけなくて連れてきちゃった」
「どうするんだ?その犬」
「これからお母さんに言ってみる。前に居なくなった犬と何となく似ていたりするし、飼っても良いかなって・・・」
彼女はよく犬を持って帰ってくることがあった。
大抵の場合、飼い主が見つかったりして返してしまうのだが、今回の犬は首輪等が付いていない辺り、見ると捨て犬だろう。
「ちゃんと飼えよ」
「うん。わかってる」
月奈は母親のところに向かっていった。
洸二もあの犬は少し気になったが月奈が世話するから問題はないと思った。
翌日、学校で推薦試験の手続きで帰りが遅れ、急ぎの帰り道、巫女装束を着た小夜と会った。
話をしようと思って寄ると地面が何か動いているような感じがした。
「ノズチが近くにいるのか?」
「私の真下にいるよ」
「何してるんだ?」
「晋介さんに言われて今、出向くところ。これから帰るの?」
携帯で時間を見ると、『ま、いっか』と言って小夜と一緒に行動することにした。
住宅街を歩き、吉祥寺から離れた街中に出る。
「こっちこっち、ここが晋介さんの居るビル」
小夜は洸二に向かって言って中に入って行こうとしたが、地面が急に揺れる。
「あれ、どうしたんだろ。ちょっと待ってて。ノズチ呼ぶから」
小夜は小さな路地に入るとノズチの名前を呼ぶ。
道路のコンクリートが割れるとそこから首を出してきた。
「あれから先は結界が張られており、進めぬ。何か用でもあったのか?」
「うん、少し用事があったからここで待っていて。終わったら来るから」
「承知した。では若い者二人で行くが良い」
ノズチは少し洒落を言うと首を引っ込めて地面へ潜っていった。
小夜は何を言われたのかよく理解できなかったが、洸二を連れてビルの中にあるエレベーターに乗った。
小夜はボタンを押し、晋介の居る階へとエレベーターを上がらせる。
晋介の居る部屋の前に立つと小夜はノックして彼の名前を呼び、足を踏み入れた。

91 :
「小夜、それに洸二君も一緒か」
「晋介さん、お邪魔だったかい?」
「いや、別にいいかな。さて、小夜、話があるという事だけども」
いつもは隊衣を着ていた晋介だったが今日は普通にスーツ姿でいた。
小夜は昨日の事が気になって今日、話をしてみようと思い、事の悩みを打ち明けた。
「成る程、洸二君の方が相応しいかも、という事か・・・」
晋介は少し洸二を見ると小夜へと視線を戻す。
「僕から言わせてもらうと洸二君にはまだ経験が足りない。だから当分の間は小夜、君が洸二君達の指揮を執って欲しい。
光太郎君は僕達の事を理解しているから例外としてね」
晋介の言葉を聞いて洸二は尤もだなと思って頷いていた。
小夜は晋介の言葉を静かに聞いていた。
「ということで小夜、これでいいかな。僕としてもこの判断が妥当だと思うんだけれども」
「は、はい。ありがとうございました晋介隊長」
「こっちもやれるだけは頑張ってみるから任せてくれよ」
「あと、今日の集会は僕が本隊との打ち合わせがあるから行かなくていいよ。二人に連絡しておいて欲しい」
洸二と小夜は了承するとビルを出た。
「ノズチ、いないの?」
小夜は先程の路地に入って道路に開いた穴に向かって呼びかけるがノズチからの返事はなかった。
「先に帰っちまったのかな。神社行ってみるか?」
洸二が言うと二人の側にリムジンが止まる。
「あら、洸二に、小夜さん」
夕平の妹である春怜が窓から声をかけてくる。
「春怜、どうしたんだ?」
「貴方がいるのが気になってね。それに小夜さんが一緒にいるのは?」
洸二は春怜と小夜の関係があまり良くなかったのを思い出すと慌てて言い分を作る。
「あ、これは小夜の方が用事あって俺はついでに寄っただけなんだよ」
春怜は目を細めて洸二と小夜を見る。
「本当に?夕方頃にこんな服着て用事って一体何の用なの?」
問い詰められて洸二は回答に困る。
小夜は隠し通せないと思って言う。
「春怜、これは私の個人的な相談で洸二君はただ一緒に行ってくれただけだから何も関係ないの」
「ふーん・・・そこまで言うのならいいけど。あ、そうだ洸二、貴方から頼まれたものが少し出来たから見てくれる?」
「あ、ああ。分かった。小夜は?」
「先に帰ってるね。それじゃ」
小夜はそう言うと神社へと帰っていった。
洸二は少し悪いなと思いつつも、春怜のリムジンに乗った。
「まったく、いつまで洸二に付きまとうのよ・・・」
春怜は不機嫌そうに言い放つ。
春怜の会社に着くとガレージへと向かっていった。
その中にあったのは銀色のフォルムをした特殊な形状の車だった。
洸二は近づくなりに触れて手で感触を味わう。
「凄いな、本当に動くのか?」
「洸二、良く見て。あの車とは似てもいないわよ」
言われて良く見てみるとあの車とは形が異なっていた。
恐らくは市場に出ている車の一つだろう。
「今、板金屋さんに頼んで形から作ってもらっているの。二週間位でボディだけは出来上がってくるわ」
それから後の話を聞いていくとエンジン等も同時に作成しており、あとは浮かすメカニズムさえ何とかできればということだ。
「ホバークラフト機能とかで良いんじゃないのか?」
「それがどう計算しても無理なの。車体の重量に抵抗できるような物がまだできていないから・・・」
「何かの力で浮かせる事が出来てもか?魔法だとか霊力だとか・・・」
「魔法に霊力、かぁ。そんな夢物語実現できたら良いのだけれど・・・」
春怜は肝心要な所に頭を悩ませて愚痴をこぼす。この浮遊するという部分があの車の最大の特徴であるのだが。
洸二は携帯電話に着信が入って取り出すと光太郎から電話がかかっていた。
「洸二、今何やってるんだ?神社に行っても誰も居なかったんだけども」
「ああ、今日は集会ないから晋介さんに言われたんだ。連絡してなくて悪いな」
洸二は光太郎と話を進めていき、すぐに終えたが、横で春怜が気にしているのが目に入った。
「洸二、『集会』って、小夜さんと関係がある事なの?」

92 :
まだ気にしているのかと思って洸二は頭を掻く。
春怜が突っ込みを入れてきて白を切っているが最近の妖怪関係の事件の事もあって、妖伐隊の話もしてみることにした。
春怜はチンプンカンプンだったが洸二はそれでもわかりやすく説明をしていた。
「妖怪かぁ・・・それと天叢雲の話ね」
「それで、作って欲しいというわけだ」
「作るのは構わないけれど、実際にインターグレイの様なものは無理かもしれないわよ。今の技術じゃちょっと無理よ」
だよなぁと洸二は頭をガクっとさせた。
しばらくの間会話をしているとそろそろ良い時間になり、洸二は帰る事にした。
春怜は洸二の帰りを送ろうと会社の者に言ってそのまま帰らせた。
『私の夫に何時までも付きまとわないで欲しいものだわ』
洸二が帰った直後、自身の頭の中に謎の声が響いていた。
それから家に帰った洸二はいつものようにゲームセンターへと赴いた。
すると、あの橘という男が女性と女の子を連れてやってきていた。
「あれ、綾さんに月ちゃんも一緒なんですか?」
「ああ、洸二君か。丁度妻と買い物の帰りでね」
「直樹、あなたはここで遊びたいものがあるからって言ってたでしょ」
洸二は練習しようと思ったが、橘夫妻と話し込むことにした。
丁度、妖怪絡みの殺人事件の話をすると橘は興味を示す。
「殺人事件か・・・最近数が多いからね」
「橘さん、通行の途中とか大丈夫ですか?」
「外務省までは結構距離はあるけれども心配は要らないよ。街中を通っていくしあの辺りはしっかりと警察もいるからね」
橘直樹。洸二の父親とはこの店で知り合い、遊び仲間であって洸二とも面識があり、外務省の人間ながら遠くから通うという妙な男性である。
洸二は妖怪絡みなのは知っているのだが、流石に話すのは要らぬ心配だろうと思っていた。
「ところで洸二君、妖怪というのは知ってるかい?まぁ、君なら女神転生ユーザーだから知っていて当然だろうけれども」
橘から意外な声が出た。洸二はうーんと悩み、橘夫妻に突っ込まれて、今までの事を話す事にした。
妖伐隊は避けたかったのだが、最近の事件の関連性からして避けては通れないと思い、それも含めて全部話した。
「なるほどね。妖怪相手に君が、か・・・」
「ホントは話すべき事じゃないと思うんですけど、橘さん、内緒ですよこの話は」
「わかっている。それにしても天叢雲が壇ノ浦に埋もれていたという説が本当だったとはね。それを取るのに今、あれこれやっているというわけだね」
「ええ、速い車で行ったほうが迷惑にならなくて済むと思って」
橘は少し考えたような素振りをして、妻の綾に話をかける。
「綾、何か良い方法があったな?」
「今の話でしょう?私達の知り合いに話をかければ何とかなるかもしれないわよ洸二君、少し違った形で実現するかもしれないけど」
洸二はその言葉を聞いて、本当かどうか橘綾に尋ねると本当だと返ってきた。
「少し時間をくれれば実行できるかもしれないわ。どこで作っているの?」
「友人の七月春怜の会社で作っています。地下のガレージを借りて今フレームだけ板金屋に頼んでいるんですけれど・・・」
「それも全部してもらいましょう。ね、あなた」
「まぁ、そうだね。お金についてはいらないよ。こっちで準備するからさ」
「なんか、何から何までして貰って悪いなぁ」
洸二は時計を見るともう9時を回っていたので橘夫妻に帰りの挨拶をして帰ると、春怜に電話をかける。
「もしもし、春怜か?車の話だけどこっちで良い話見つかったんだ。それで・・・」
橘直樹はゲームセンター内の灰皿に吸殻を擦り付けるとふぅ、と煙を出す。
「あの車をこの世界で作るにはまだ技術の進歩が足りない。ここは私達が協力するのが良い方法だろう」
「ええ、それにその春怜ともお話しておきたいし」
橘夫妻は笑いながら話を進めると娘の瑠奈が話かけてくる。
「ねぇお母さん、お腹すいちゃった」
「そうね。あなた、今日はこの辺りで帰りましょう。
そう言って橘夫妻はゲームセンターを後にした。

93 :
光太郎は部屋でベッドで頭の後ろに腕を組んで横になっていた。
以前彼が殺した雪女の少女について光太郎の父が話していたのが今日実行されることになるので落ち着いていられなかった。
側には以前彼と行動を共にしていた式神の紗希と「妹」の天美がじっと落ち着いて佇んでいた。
部屋の扉を開けると父親が入ってくる。
「光太郎、準備ができたぞ」
「・・・ああ、わかったよ。もう少しだけ待ってくれ」
光太郎は不貞腐れたように言うと父親は渋い顔をして出て行く。
ベッドから降りると光太郎は天美に寄る。
「長い間、ご苦労だったな」
「いえ、若様。私のような物が役に立てただけでも十分幸せでした。妖怪に天美様のお体を渡すのは不安ですがこれも親方様の意向ですから」
光太郎は少し目を瞑ってゆっくりと頷くと二人に声をかける。
「二人共、向かうぞ」
紗希も分かりきったように呼応すると光太郎に連れられて屋敷の地下へと入っていく。
そこには五芒星と梵字が描かれた魔方陣にあの少女の体が中心に置かれていた。
光太郎の刃に貫かれた傷はそのままで止血だけがなされていた。
天美は少女の横に横たわると深呼吸をして目を瞑る。
「光太郎、覚悟はできているな?」
父親が奥から声をかけてくる。
「・・・仮に敵意があってそのまま攻撃してくるような事があればR、だな?」
「・・・うむ」
「万が一にも無いとは思いたいけどな・・・親父、やろうぜ」
光太郎と父親は手を構え、紗希は弓を取り出して準備をした。
呪文の詠唱が始まると魔方陣が輝き始める。
五芒星の中にいる二人の体が光始めると天美の体から紙の札が出てきて、少女の体からは光の球が出てきて天美の体へと入っていった。
「親父、魂はこれで移ったな?」
「ああ、間違いないはずだ」
光太郎は少し身体に痛みが走るのを感じながら立ち上がると天美の身体へと寄っていく。
脈に指を当てると鼓動を感じる。
「・・・う・・・」
「目が覚めたか?」
天美の身体が目をあけると彼女に入っている妖怪の少女が驚く。
「あなたは・・・イザナギ?それに、私、あなたに殺されたはずじゃ・・・」
「お前は別な身体に魂を移されて蘇生したんだよ。よく見てみろ」
彼女は光太郎に言われるがまま手や足を見てみる。そして隣を見ると自分が入っていた体が横たわっていた。
「何故こういう事をしたの?」
「丁度その身体に合う魂だったからだよ。それにもう一度得た命だ、こんな所で無駄にするつもりか?」
少女は見回すと光太郎の父親が構えているのと紗希が弓を引き縛っているのが見えた。
「何をしろというの?」
「その身体は俺の死んだ妹の身体なんだ。大人しくしていてくれれば危害も加えないしこの家で生活することを許可する。いいな、親父」
父親は静かに頷き、彼女は少し諦めたように目を瞑る。
「・・・わかったわ。私にはもう一つやらなければならない事があるからもうあなたの命は狙うことはしない。あなたと戦って敵わないということがわかったもの」
光太郎は天美の身体をギュっと抱きしめると少女は驚いて目を開ける。
「天美!ようやく・・・身体が戻ってきたんだな・・・」
「・・・天美?」
「光太郎、これくらいにしてわしは上がるぞ」
「ああ、わかったよ親父」
「それでは、若様、私も」
光太郎の父親と紗希は二人してこの部屋を出て行った。
「そういえば、名前聞いていなかったな。何て言うんだ?」
「私は・・・玲奈。妖怪の雪姫として名を馳せた雪奈の娘よ。・・・別に呼ぶのはあなたの妹の名前でも構わないわ」
「玲奈・・・か」

94 :
一方七月兄妹の会社の中では橘直樹が春怜の元に来ていた。
妻の綾も連れてだ。
洸二に話を持ちかけた計画の概要を話していた。
「話は伺いました。現在こちらでフレームだけは製作中ですがあの、少しいいですか?」
春怜は一間置くと一般人にはとても無理だろうという話を橘夫妻に向かって言った。
「まぁ、君からすれば一外務省の役人に過ぎない僕には到底無理に見えるだろうね」
「何が言いたいんですか?」
「君には絶対無理だと言える。だから僕はこうやって話をしにきたんだ」
「ですけど、あの車は今の技術じゃ無理で・・・」
話を聞いていた綾は少々痺れを切らしたのかスっと春怜のおでこに手を当てた。
「な、何ですか?」
少し言葉を呟くと強烈な眠気が彼女を襲い、そのまま眠りについてしまった。
「おい、綾、やりすぎじゃないか?」
「別にいいわよ。彼女の脳に直に働きかける方が今回は早いわ」
再び言葉を呟くと彼女も目を閉じた。
「春怜、声は聞こえている?」
つい今ほど、眠りから覚めると声が響いた。
辺りを見回すと暗闇だったが、海が広がっていた。
春怜は立ち上がると目の前に体に蛇を巻いた女性が立っていた。
その姿を見ると橘綾と似ていた。
「綾・・・さん?」
「今はわけあってこうして貴女の意識に話しているわ。あの人も言っていたけれども、
今のこの世界ではとてもではないけれど作れない代物だから私達が作ってあげるわ」
命令するかの口調で綾らしき女性は話していく。
「貴女はあの女からあの人を取り戻す事だけを考えなさい。娘も待っているわ」
「娘・・・?その人って?」
「貴女が良く知る身近な人よ」
話が進んでいると奥からローブを着た異形の者がやってきた。
「リリス様、こちらでございましたか」
その名前を聞いて春怜は身が竦んだ。
「ルキフグス、用意の方はどうなのかしら?」
彼女は振り返らずに言葉を言っていく。
ルキフグスと呼ばれた者は作成状況らしき事を告げると彼女と春怜に対して会釈をして去っていった。
「綾さん、あなたって・・・?」
「私達が作っているから貴女はあの人の事だけを考えなさい」
そう告げると言葉をつぶやき、春怜は目の前がフラッシュアウトしていった。
ハっと気が付いた時には橘直樹と綾が立って話をしていた。
「やぁ、目が覚めたようだね」
「あの・・・」
「さぁ、行きましょうあなた」
二人はそう言って出て行った。春怜はその場で黙っているだけだった。
しばらくして夕平が春怜のところにやってきた。
「春怜、光太郎の頼みだったコンピュータの調整が終わったぞ」
「・・・そう」
しばらく放心状態で春怜は椅子に座っていた。
夕平は橘夫妻と何かあったのかと聞くが彼女は何も無いと答えた。
「なら別にいいんだが、OSも入ってない空の状態だから後は任せるぞ」
そう言って夕平は部屋から出て行った。
春怜はボーっとしながらコンピュータを手に取ると自身の左腕に装着した。
「光太郎が頼んでいた物、ね・・・後でOS入れておかなきゃ」

95 :
その頃、洸二は家でゴロゴロとベッドに入っていた。
今日はこれといったこともなく普通に過ごすだけでどうも退屈だった。
「NINEでもやるかなぁ、でも7時以降じゃないとINする奴多くないしな・・・」
そのうちうつらうつらしていると洸二は眠りについた。
「・・・洸二、聞こえるか」
眠りについたはずの洸二だったが声が聞こえた。声の主を聞く限りでは小夜の神社にいるノズチだ。
すると暗闇だった目の前が一瞬で明るくなり、境内の中にいた。
「あれ?ここは神社か?」
ノズチが全身を地中から出していて洸二に話かけてきた。
「夢の中だ、洸二。少し気になっていた事があったのでな」
「へぇ、何だよ」
洸二はノズチに寄り、飛び乗ると小夜が背中で寝息を立てて眠っていた。
顔を少し触ってみると彼女の柔らかな肌が感触で伝わってくる。
「天叢雲の事だ。あれは我が主である八岐大蛇様がスサノオに一度殺されかけた時に出た物だ。それが今の帝の元に無いということが気になってな」
「ああ、それ色々と話があるんだ」
洸二はノズチに対して天叢雲に伝わる様々な話を伝えた。
源氏と平氏との戦いで行方不明になったことで関門海峡に沈んでいるという説の話や別名草薙の剣という話もだ。
「なるほど、人間達には色々な話が伝わっているのだな。
我が主から聞いた話では幼き帝を助ける時に一度だけ剣の柄に宿した蛇眼の石の力でどこかへ飛ばしたという話であったな」
幼い帝と聞いて洸二は頭の中で思考を張り巡らすとある名前が思い浮かんだ。
「そんな話聞いた事ないな・・・」
「我も主から聞いただけで詳しくは聞かされておらぬ、それに我はある人物を探しにここへ来たのだ」
「ある人物?」
「美伶様だ。美伶美久那と名づけられ、我が主の一人娘なのだ」
洸二はその名前を聞いて少し吹き出しそうになったがノズチが探している辺り、大事な人なのだろうと思ってこらえた。
「で、その人を探しにここにか?」
「うむ。幼い頃の姿しか我も見てはおらぬのだがその御方は天使と悪魔達、両方から追われていたのだ」
「どうしてなんだ?」
「それは主にもわからなかった。それで逃がしたのだ」
「ふーん・・・」
洸二はノズチがここに来た理由を聞いていてふと小夜に目をやったがまさかなと思いながらノズチの胴体から降りる。
「もう目が覚めても良い頃合だろう。境内の外へと足を向けよ。そうすれば意識が戻ってくるであろう」
洸二は言われてノズチに向かって手を振ると外へと向かって歩き出し、境内の外へと出ると景色がぼんやりと歪んでいった。
少し寝ぼけ眼だが洸二は月奈が声をかけて揺さぶっているのに気づいた。
「お兄ちゃん、ご飯だよ」
「ん・・・ああもうそんな時間か」
部屋の時計を見ると7時半だ。洸二はベッドから上がると大きくあくびをし、背伸びをしてから下へと降りていった。

96 :
れから2週間程経過した。
洸二はいつものように放課後、ゲームセンターによると橘直樹が店員と話しているのが見えた。
少し車の事が気になって洸二は橘に詳細を聞いてみた。
「橘さん、こんにちは!あれから出来たのか気になるんだけども・・・」
「ああ、洸二君か。車ならボデイとエンジンその他が出来上がってもう十分走れるようにはなったよ」
「本当ですか!試し乗りしてみたいんだけどもいいですかね?」
「また後日君のところにでも連絡するよ。製作所に置いてあって最終調整の段階だからね」
洸二は話を聞くと胸を躍らせながら筐体に向かおうとすると電話が鳴り始める。
何かと思って電話に出ると晋介からの電話だった。
「もしもし、晋介さん何かありましたか?」
「ああ、小夜が呼んでも出てこないから不思議に思ってね。君にちょっと来てもらおうかと思っていたんだ。それと、時間に遅れているから早く来るんだ」
洸二は携帯電話の時間を見ると集合時間を過ぎているのに気づいてさっさと店を出て小夜の神社へと赴いた。
「で、今日は以上だ。最近は妖怪達の活動は見られないが各自警戒を怠らぬように」
晋介はそういうと神社を出て行った。
彼からすれば小夜は風邪か何か引いて出てこないのだろうと思って特に気にすることでも無いと思った。
「んじゃ、洸二。俺はこれで帰るぞ。天美待たせると悪いからな」
「あ、光太郎さん、私天美ちゃんに会ってもいい?」
月奈がそう言うと光太郎は天美の身体にいるのが妖怪だというのを言おうとしたがここで言うと不味いと思って一瞬堪えた。
「あー、いいぞ。洸二、少し月奈を借りるぜ。夕平、頼んでいたコンピュータどうなってる?」
「あれか。もう動く段階で後は春怜に基本ソフトだけ入れてもらえば完成するぞ」
洸二は光太郎と夕平達が話しているのを何とも思わず、小夜の事が気になっていた。
回りの声も耳に入らずにだ。
「お兄ちゃん?」
「ああ、悪いな月奈。光太郎のところに行ってこいよ。俺は少し小夜の様子を見てくる」
「うん、わかった」
洸二は光太郎達が神社を出て行くのを見届けると小夜の家に入ろうとする。
すると地面がゴゴゴと鳴り響き、地を割るとノズチが姿を現す。
「どうしたんだノズチ?小夜の様子が少し気になってるんだが」
「我もだ。今日は一度も外には出ていないのが気になってな。父方や母方に聞いても目が覚めぬという事だ」
「・・・気になるな。ちょっと入ってみるわ」
洸二は小夜の家に入り、小夜の両親に軽く挨拶すると小夜の部屋へと入っていく。
小夜は布団の中でぐっすりと眠っていた。
息をしているのは聞こえるが洸二は妙な感じがした。
小夜の身体をゆすっていると窓の方からトントンと音がする。
ノズチが頭で呼びかけていた。
洸二は窓を開けてノズチの身体の一部を掴んで部屋に入れるとノズチは尻尾を小夜の額に当てた。
「これは、小夜が夢の中に閉じ込められているようだな・・・」
「え、それじゃ今日学校に来なかったのもそれでか」
「洸二、夢の中に入って小夜を助けるぞ」
「ああ、わかった。で、どうやって入るんだ?」
「我の身体に触れていろ。我が呪文で夢の中に入り込む」
洸二は了承するとノズチは呟きはじめ、やがて景色が波紋を描くように歪んでいって解けていく。
そして洸二はその場に倒れて眠り込んだ。

97 :
洸二は目を覚ますとノズチの上に倒れていた
ここはどこなのか。見渡しても木々があるだけだ。
「小夜・・・何処にいるんだ?」
「わからぬ。それにこの森も小夜が見ている夢かも知れぬし、何者かが作り出した夢かもしれぬ」
「・・・二手に分かれるのは危険か」
ノズチが地を這う。洸二は周りを見て怪しいところがないか探す。
行けども行けども森。そのうちあることに気づいた。
無限に同じところを行き来している。
このままでは不味いと思って、洸二はノズチの背から降りると回りをよく見る。
すると誰かが歩いたような足跡が見つかった。
洸二はノズチに言って追うように指示をすると女性が赤子を抱きかかえながら走っているのが目に入った。
「ノズチ、これは?」
「小夜の・・・記憶か?」
「待て!その赤子を渡せ!」
奥の方から声が聞こえて目を向けると洸二は目を疑った。
以前ノズチが話をしていた天使と悪魔が追っていたのだ。
すると突然風景が崩れ、次は夜の森の中に洸二とノズチは居た。
「今のは?」
「・・・まさか小夜が美伶様だとでも?」
二人は悩んでいると茂みの向こうから声が聞こえてきた。
「あなた、どうしたの?」
洸二は気になって覗くと女性が巨大な龍と話しているのが見えた。
その龍は首が八つあり、目が赤く染まっていた。
「菫か。この子の名前を考えていてな」
「私はこの子の名前を・・・」
その言葉でこの森は崩れ、次は暗黒が広がるだけだった。
「これは失礼、これ以上この娘の記憶を知られてしまうのはいささか都合が悪いと思いましてね」
後ろから声がして洸二は振り向くと山羊の頭をした者がこちらに歩いてきた。
「私は堕天使レオナルド。以後お見知りおきを、妖瑕洸二様」
向こうは名を告げるとこちらに対してお辞儀をしてきた。
洸二はレオナルドという名前を聞いて頭を思いめぐらせたがぱっと来ない。
するとノズチが先に口を割った。
「お主、日本の者ではないな?何故、小夜の夢に入り込んでいる?」
「我が王の意向からである者を処分せよとの命です。それで今まで探した結果、この娘が一致したのですよ」
その言葉に洸二は構えたが、レオナルドは指を指してこう告げる。
「この世界では貴方がたが使うような術式は効力をなしません。私達のようなものだけが力を振るえるので下手な真似はなされぬ様、お気をつけを」
だが洸二は止まらず、レオナルドに殴りかかっていった。
彼の右腕からストレートがレオナルドの顔に当たろうとしたが奴の手によってあっさりと止められ、そのまま洸二は身体が宙に浮き、腕を掴まれて地面に叩きつけられた。
「貴方様に危害は加えたくはありません。私の仕事はこの娘をR事ですから」
そう言ってレオナルドは手をパチンと鳴らすと暗闇から小夜の身体が浮かび上がってきた。
つかつかと歩いていくレオナルドを見て洸二はさらに飛び掛ってレオナルドを制止しようとする。
「やめろ!小夜に傷をつけるな!」
そしてノズチはすばやく小夜の前に立ち、尻尾を振り回し、レオナルドへと向けたが奴の体にはビクともしなかった。
「貴方達、無駄という事がわからないのですか?」
「小夜は俺の大切な人なんだ!手出しはさせない!」
「・・・口で言っても無駄なようですね。致しか有りません」
レオナルドはその言葉の後、洸二の手を振り払い、ノズチの尻尾を掴むと彼に向かって振り回して当てる。
衝撃で洸二は吹き飛ばされたが、すぐに体制を立て直して向かっていく。
ノズチは洸二とは別に回り込み、小夜を庇うように構える。
「洸二、そのまま一点に圧力をかけろ!」
「わかったよ!」
洸二はレオナルドの背に蹴りを叩き込むと、ノズチは体をうねらせて一点に向かって鋭く突きを入れた。
「・・・っく、少しはできるようですが所詮は人と妖怪ですね」
レオナルドには手応えの無い様で洸二の足と掴むとまた地面へと叩きつけ、足で洸二の頭を抑えた。
「さて、どうしましょうか・・・」
「くそ・・・小夜・・・」
「レオナルド、何をしているの?」

98 :
女性の声が聞こえてその声でレオナルドは手を止めて声の方を向く。
「リ、リリス様・・・!?」
「その人には手を出すなと命じたはずよ。それなのにお前は何をしているの?」
「こ、これはこの御方が私の邪魔をしてきたので・・・」
「下がりなさい。さもなくばRわ」
その言葉でレオナルドは洸二の頭から足を離してすぐさまその場から離れた。
リリスという女性は洸二に手を向けて言葉を呟くと手から光が放たれて彼の体から痛みが引いていった。
「た、助かったのか・・・?」
「大丈夫?洸二」
「ノズチにもそれを頼む。小夜を助けなきゃ・・・」
洸二はその場を後にして小夜に寄っていく。
その後ろ姿をリリスはまじまじと睨みつけながらノズチへと寄って洸二と同じような事を行った。
「すまぬ。お主もあの者の仲間・・・か?」
「いえ、仲間ではなく主よ。洸二に何があっては困ると思って来たのだけれども正解だったようね」
「そうか、小夜の目を覚ませさせねば」
ノズチも洸二の後を追って小夜に寄る。
洸二は小夜の名前を何度も呼ぶが小夜は答えを返さない。
「小夜!小夜!」
「この場で術が使えぬとなるとやはりあの者の仕業か・・・」
様子を見ていたリリスがこちらへと歩いてくる。
「洸二、あなたはこの子を助けたいのね?」
「ああ、そうだよ。小夜は大切な人なんだ。だからこうやって来てるんだよ」
洸二の言葉にリリスは一瞬沈黙して目を瞑る。
洸二とノズチが立って先程のレオナルドを探しに行こうと言って歩き出そうとするとリリスが言葉を割って話をしはじめる。
「洸二、今追っても無駄よ。レオナルドは夢の中から出たわ」
「え、それじゃもう小夜は・・・?」
「私が魔法をかければ意識は回復するわ。ただ一つ聞いておきたい事があるの」
「・・・なんだ?」
「あなたは春怜とこの子、どちらが大事なのかしら?」
リリスが出した質問は洸二にとっては唐突な質問だった。
どちらも洸二にとっては大切な友人であり、多少なりとも好意は持っている。
「そんな事言われても・・・両方大事だよ。どっちを選べだなんて言われても困る」
「そう、それじゃこの子が全てを消滅させる可能性を秘める子だとしたら?」
「・・・それはどういう意味だ?」
「あなたは一度夢を見たはずよ。この子と似た女性と共にいて春怜に似た女性とその子が殺される夢を」
「・・・まさか小夜がそれだとでも?」
「あなたが選ぶことよ。もしこの子がここで命を絶つ事になれば全ての消滅は少しだけ先送りされるわ」
洸二はその言葉を一つ一つ考えていくが洸二の頭には小夜が大切な人という事しか思い浮かばなかった。
「小夜は俺の大切な人なんだ。それにそれが起こるっていうんだったら俺は阻止する」
「・・・わかったわ。あなたの言葉を信じましょう」
リリスはそう言うと小夜に対して手をかざして言葉を呟いていくと小夜の体が淡い光に包まれていく。
「うーん・・・」
小夜の目がうっすらと開くと洸二とノズチの目が入った。
「小夜!」
「あれ?洸二君、ここは・・・?」
リリスは洸二と小夜の二人を見て睨みつけるような視線をする。
ノズチはそれを見て何か不穏な気配を感じて二人に帰るように言う。
「ああ、そうだな。リリスさん、助かったよ」
「ありがとうございました」
洸二と小夜はお辞儀をするとノズチに言われてこの夢から出て行った。
「洸二、あなたがこの世界を崩壊させない事だけを私は祈ることしかできないのね・・・」

99 :
目が覚めた。小夜の部屋の中だ。
ノズチも起きると洸二は小夜の頭を手で小突く。小夜は目を開けると洸二に抱きつく。
「・・・ありがとう。洸二君。助けてくれて・・・」
「だからって抱きつく必要ないだろ。離れろよ。ノズチも見てるぞ」
小夜はその言葉で慌てて周りを見る。
「あっ・・・」
見る見るうちに顔を真っ赤にする。
「小夜、本当に無事で良かった・・・」
「えっ・・・んっと・・・」
恥ずかしさで何も聞こえてないらしい。洸二はしょうがないなといった表情でそのまま神社を出た。

100 :
途中までですが以上が作成分となります
真・女神転生とかをやってる人ならすぐにピンと来るような内容だとは思いますが見ていただければ幸いです


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