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311 :
今更>>256の続きを書いてみた
作中の季節? そんなものは知らん!


「…………」
 ある日、エフラムは最寄りの駅近くの公園にいた。今日は以前からキヌと約束していた遊びに行く日である。
 もう気心が知れた仲であるのだから家まで迎えに行くとエフラムは言ったが、キヌが待ち合わせというものをやってみたい、と言い出したので
 現在エフラムは待ち合わせの最中だ。
「早すぎたか……?」
 遅れてはいけないと早めに出発したはいいが、用心しすぎたのか予定時刻の30分前に到着してしまっていた。
 何をして時間をつぶすかとエフラムは考えたが、すぐによく知る気配が近づいてくるのが感じ取れた。
「あっ……は、早いね、エフラム」
「あ、ああ……お前もな」
「うん……待たせたら悪いなと思ったら何か……」
「そ、そうか」
「あのさ……これ……変じゃないかな?」
 恥ずかしげにそう呟くキヌの姿は、普段の丈の短い和装とは違っていた。
 ブラウスの上にカーディガンを羽織り、ロングスカートに足元はスニーカー、手には小ぶりなハンドバッグといった完璧な洋装である。
 普段の活発な印象とは違い、落ち着きと愛らしさを感じさせる恰好にエフラムは思わず息を?んだ。
「…………」
「……や、やっぱり変……かな」
「い、いや、そんなことはないぞ。よく似合っている」
「……ほんと?」
「ああ、似合い過ぎてどう褒めればいいのか言葉が出てこなかったくらいだ」
「や、やだなあ……そんなに言わなくていいよ」
 嬉しさと気恥ずかしさがない混ぜになったキヌの心情を表しているのか、後ろに見える尻尾がゆらゆらと揺れている。
 いつも目にしている恰好よりも肌の面積ははむしろ下がっているのにも関わらず、キヌから感じられる例え様のない色香にエフラムは僅かに
 動揺したが、こんなことではいけないとすぐに自らを律した。
「サラとノノとかにも手伝ってもらって選んだんだけどさ……こういうのまともに着るの初めてだから」
「本当に似合っているから安心していいぞ」
「も、もういいよ……。エフラムも、その服いい感じじゃん?」
 普段のエフラムは大抵、訓練のためにトレーニングウェアを着ているか、それ以外のときはTシャツにジーンズのようなラフな格好をしている。
 今日のエフラムはポロシャツにジャケットを合わせ、下はチノパン、足元はブーツといった、いかにもお洒落をしているという姿だった。
 本人の顔立ちの良さも合わさり、絵だけでみればこれからモデルが撮影をするみたいだとキヌは思った。
「褒めてくれるのは嬉しいけどな……これはお前と同じであいつらとか、妹達に選んでもらったやつなんだ」
「あはは、エフラムそういうの興味なさそうだもんね」
「さて……そろそろ行くか?」
「あ……うん」
「どうかしたか?」
「えっと……その……」
 キヌは何か言いたげな様子でちらちらとエフラムを見たり手を組んだりを繰り返していたが、少し経ってからか細い声で口を開いた。
「手……握ってみたいかな……とか……」
 それを聞いたエフラムは一瞬考え込んだが、すぐにキヌに向き直ると、何も言わずにキヌの手を取った。
「あっ……」
「俺から言うべきだったな。手を繋いでいこうか」
「……うん。よーし、行こ! 今日は思いっきり楽しんじゃうつもりで来たんだからね!」
「おい、引っ張るなって……今日は俺が案内するんだったろ?」

312 :
「豊かな自然や小動物と触れ合える癒しの場、おいでよしっこくの森にようこそ」
「え? あ、はい……」
「デート中の様子だが道はしっかり整備されているので安心されよ」
「う、うん……」
「近くには喫茶しっこくハウスもあるので休憩の際は是非立ち寄られよ」
「エフラム……」
「何だ?」
「この辺の人ってみんなあんな感じで……こういう名前の付け方してるの?」
「いや、ここくらいだ。……多分な」

「わー! 高い! すごいねー! アタシの家どのへんかなー?」
「流石に高いな……俺も導きの塔の最上階まで来るのは初めてだ」
「そこの者、いくら柵があるとはいえそのように乗り出そうとするのはやめよ」
「あ、ごめんなさい……」
「人は弱く、いつどんな困難に苛まれるか分からない。だが私の信徒となり加護を受ければそのような……」
「……?」
「その、少しいいか」
「何か?」
「そいつは一応稲荷神なので、そういうのは……」
「あ、初めまして。お稲荷様やらせてもらってるキヌだよー」
「何と……」

「んー! この料理おいしい!」
「そうか、気に入ってくれたならいいが……」
「この俺が作っているのだからな、当然だ」
「あはは、この人面白いねー」
「カムイ様のご家族ということで急遽シフトを変更したが正解だったな。フェリシアだと何ををやらかすか分からん」
「カムイの家族……エフラムと……やだもうアタシまだ指輪はもらってないよー?」
「……面白い娘だな」
「何を言いたいのか分からないが、その目はやめてくれ」

「あ、エフラムお兄ちゃん。どうしたの? 狐の神様!? ありがたや……商売繁盛お願いします」
「こら拝むな、今日は純粋に遊びに来たんだ」
「もしかしてデート中? これはとんだ野暮だったね。じゃあお店見ていきなよ! 服もアクセもいいのあるよ」
「ああ、そうさせてもらう」
「へえ、色んなのあるんだね。あ、あれ可愛くない?」
「ここの店の品揃えがいいのは分かるんだが……」
「わ、すごい。ねえエフラム、あの店狐のお面売ってるよ、うわ……何かすっごいお面あるけど……」
「たまに妙なのがあるんだよな……ああいうのを買うやつはいるのか? 売れるから置いているんだろうが……」

「ここがワーレンだな」
「アタシ港とか初めてだよ。何か面白そう!」
「ここは貿易港だからな、珍しいものがたくさんあるぞ。店はもちろんだが闘技場もあるし、活気のある場所だな」
「あ、何かやってるみたいだね」
「ワーレンの名物イベントだな、指定のマス目から出ないで押し寄せる敵をどれだけ凌げるかを競うんだ。好記録が出ると景品が貰えるぞ」
「面白そうじゃん、アタシもやってみようかなー」
「これは攻めよりも守りと持久力が試される内容だからな、どういう動きをするべきか……」
「あそこにいい記録を出した人が載ってるよ。あのドーガって人凄い記録出してるね」
「何でも様々な伝説を持つ凄腕らしい、俺もいつか手合わせしたいと思っているんだ」

313 :
「あー楽しかった! 色んなものいっぱい見れた!」
「結構歩いたが、疲れてないか?」
「へーきへーき、山で遊んでるときの方がずっと動いてるし」
 もうすっかり日が落ちた中、二人は家路についていた。
 エフラムの片手には二人でじっくり選んだものからキヌが衝動買いしたものまで様々な袋を下げられている。
 もう片方の腕にはキヌの腕がしっかりと絡みついている。二人で歩くうちにどちらが言い出すでもなくそうなっていた。
「結構買っちゃったなあ……ごめんね、持たせちゃって」
「気にするな、俺が好きでやってるんだ」
「でも、本当に色んな面白い場所があるんだねー」
「俺も名前しか知らない場所もかなりあるからな。正直なところ一日じゃ周りきれないぞ」
「それなら……また行く?」
「ああ、お前がそうしたいならな。また別のキヌが見られるかもしれないしな」
「も、もー! じゃあ今度はいつもみたいに着物にするかんね! オボロに選んでもらった可愛いのあるんだから!」
「ああ、楽しみにさせてくれ」
 じゃれ合いながら歩いていた二人だったが、不意にキヌが足を止めた。
「……この辺、エフラムのうちの近くだよね」
「そうだな、自然に歩いていたらいつの間にか来てしまっていたか。心配しなくても家まで送るぞ」
「…………」
「……キヌ?」
 エフラムが声をかけるが、キヌは足を止めてうつむいたまま何も答えようとはしない。
「どうした? やっぱり疲れてたのか?」
 心配したエフラムが顔を覗き込もうとするが、その前にキヌがエフラムの懐に飛び込んできた。
 不意を突かれたエフラムだったが、とっさに反応し、キヌを抱きとめる。
「おい、どうした?」
「あの……さ」
 キヌは顔を上げず、エフラムの胸に頬を寄せたまま口を開いた。
「今日は初めてだらけだったけど……アタシ……まだやりたいこと……ううん、言ってみたいことがあるの」
 今のエフラムの体勢ではキヌの表情を確認することはできないが、僅かに見える頬は上気し、呼吸も荒くなっているのが分かる。そうしていると
 いつのまにか両腕を背中に回され、身動きがとれなくなっていた。
「あのね……」
「……あ、ああ」
 キヌのただならぬ様子にエフラムはたじろいだが、同時にある種の予感もあった。
 この感じは何かを期待しながらお願いをするときの様子だなと今までのキヌとの思い出から瞬時に検索して答えが出た。
 キヌが濡れた唇で呟く。

「……アタシ……今日は家に帰りたくない……」



サラ「それから?」
キヌ「ほ、本当に言わなきゃダメ!?」
ノノ「当たり前じゃん! 色々アドバイスしてあげたでしょ?」
サクラ「き、気になります……」
キヌ「あぅ……」
ミルラ「羨ましいです……私も……」
チキ「わたしも撮影だけじゃなくてお兄ちゃんのために選んだ服でデートしたいなあ……」
ファ「ファもおにいちゃんともっとデートしたい!」
ンン「わ、私も……な、何でもないです」
エリーゼ「あたしはデートならお兄ちゃんと暗夜の地下街巡りしたいなあ……」
アメリア「訓練ばっかりじゃなくて……あたしもお洒落してみようかな」
サラ「で、どうしたの? どんなご奉仕したの?」
キヌ「な、何か質問というか誘導になってない?」
ノノ「あーきっとこうだよ、後ろから尻尾を弄られながら動けなくなるまで」
キヌ「わー! ちょっ!?」

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