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【アンテナ】創発で投下を見かけたらageるスレ3
【評価】創作物の批評依頼所【批判】
THE IDOLM@STER アイドルマスター part8
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魔王「安価で勇者倒すか・・・」
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ファラオ島(はらおじま)

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル 3rd 第十部


1 :2014/11/18 〜 最終レス :2015/10/25
                __.....  -- ―‐ --  ....__
                filヽ、_        _,r'il゙i
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                |=rヾ ll l l ll   l l l,r''ヽ=|
                |=|  ヾ l l ll  .l.l /   |=|
                |=l    ヾl ll  lレ′  |=|        進行が遅くても
                |=l      ヾ,ヅ     |=|      ジョジョロワは俺の祖国なんです
               r、V             Vヘ       ・・・パロロワには思い出がある
               |ヘl(      、 li r     )lイ|       何処へ行っても必ず読んでしまうものなんです
                |.ト| `r‐toッ‐ィ_}l_ノr toッ‐ァ゛|ノ|
              l.ト|  " ̄´":i  ヾ" ゙̄` |ノ|
            ヾ|ヽ    { |        / |<      投下があったら呼んでください・・・
              ノノll U  ', :L.     U lト,ヽ     どこでもすっとんで駆けつけますよ
           f⌒>{.ll lU    ヾノ     Ul l } <⌒i
          ヽr゙ |l.| ',l   ー‐--一   l/ l.| ゙tノ
            ,r'"ヾ|   ',   ====="  /  リ`ヽ、
        /   |    ',   t=   /   |   \_
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       ー-- 、      ヽ     /        /:::::::::::::/
           `ヽ、    ヽ   /     ,. -―/:::::::::::::/

このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください
この企画は誰でも書き手として参加することができます
詳細はまとめサイトよりどうぞ

まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/
前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第九部
http://maguro.2ch.sc/test/read.cgi/mitemite/1399093617/

2 :
名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
※第一回放送を迎えましたので上記のズガン枠キャラクターは今後の登場は不可能です。
Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス
Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ/○ロバート・E・O・スピードワゴン
Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO
Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影
Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ
Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○空条承太郎/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ
Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ホット・パンツ/○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/
○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ/○ディエゴ・ブランドー
JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆
恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ
ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー
バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド
ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ

3 :
さて、いよいよ……というべきか、このバトルロワイヤルも佳境に差し掛かった、と言って差し支えないだろう。
ここまで多くの命の炎が燃え尽き、そしてその場には必ず何かしらの戦いがあった。
全てを賭けた棒倒しも。鼠と猫の狩り合戦も。親の敵に取り入られ、そして裏切る一人の軍隊も。
それらを否定するわけじゃあないんだけどさ。
やっぱどうも――こう『グッと来ない』感があってさ。
やっぱ“戦い”ってのはこう、思いっきりぶん殴って、思いっきり蹴り返されて。
裏をかいたり意表を突いたりなんかしない。そんなクリーンな『ドツキ合い』がさ、グッと来ないかなあ?わかる?
あ、いや、良いんだよ人の価値観だから。単に俺が複雑な心理戦が苦手だってのもあるし。
ともかく――今回はそんな『グッとくる戦い』の話だ。
登場人物……人物と言っていいのか?うーん、とりあえず『異形が二頭』と表現しようかな。
で、だ。本当はここで皆に話の流れを“実況”するところだけれども、それもやっぱり違う気がする。
ここでブラフォードが爪を立てる。
それをバオーが身をひるがえして回避、勢いのまま刃を振りかざす。
……なんて言ってたらいつまでたっても終わりが見えない、せっかくのスピード感が削がれちゃう気がしてね。やっぱりグッと来ない。
だからとりあえず今回は彼らの戦いを『解説』させてもらうよ。
なーに、君たちの目なら俺が話すまでもなくこの激闘さえもしっかりと見極められるだろうさ。

●●●

4 :
まず最初に必要なものは、各々が戦いに――あるいは全てに――対して持っている『目的』だ。
黒騎士ブラフォード“だったモノ”は、もう完全に本能のまま戦ってる。
主君であるディオへの忠誠心と、自分が捨て去った世の中への怒りは確かにあるが、恐竜と化している現状、これらはもはや行動の第一原理ではなくなってしまった。
一方の来訪者、バオーの目的は、ご存じ「こいつのにおいを止めてやる」の一言に尽きる。
これも確かに本能に従った戦いだが、何がブラフォードと違うかって、中の人、って表現はマズイか。橋沢育朗がこの本能を承知し、理解し、彼自身の目的ともした事だ。
『欲望と意思が同じベクトルを向くのは一番厄介な事である』たしか君らに一番初めに話したね。
まあ、ブラフォード恐竜にはもうそれを厄介事だと認識するほどの脳ミソはないんだけども。
と――話しておいてなんだけど、この『目的』だが、それだけでは決着の要因には、そりゃあならない。
この場においてはどちらが正しいとか、人として間違ってる――まあヒトじゃないけど――とか、そういう事を説く必要性は全くないんだし。
だけども、どうしてもこれを話さないで次に行ってしまうと、この戦闘がなんだったのか、その意義?意味?価値?……まあそういうモノがなくなっちゃうからね。

●●●

さて、ここからが本題だ。次に解説するのはもちろん『スペック』さ。
この二人がガチンコで殺し合いを続けられるための――さっきの目的をメンタル面とするなら今度はフィジカルの面。
黒騎士ブラフォード。現在ディエゴの能力によって身体は恐竜のそれと化した。
装備品、なし。厳密にいうなら――スレッジハンマーは足元に転がっているし、恐竜化する際のパンプアップではじけ飛んだ甲冑もそこらに散らかっている。
だがまあ、いわゆる全裸装備という奴だ。まあ恐竜にとっては身にまとい、手に持つ武器は不要だろう。むしろ邪魔なんじゃあないだろうか。
だが、その代わりに鋭い爪と牙、強靭な尾と鱗に覆われた皮膚、力強い膂力を生み出す筋肉はさらに強化された上に恐竜の優れた動体視力を手に入れた訳だ。
対するは橋沢育朗。現在その身体は生物兵器・バオーとなっている。
装備品、こっちもなし……何期待してるんだ?全裸じゃあない。袖の破れたジャケットとベージュのチノパンは着てるさ。
だがまあ、武器や防具に該当する装備は一切ないし、ブラフォード同様にバオーにも必要ないものだ。
と、解説したのはフィジカルというか……いわゆる“見て呉れ”だが、どうだろう。そんな大差ないんじゃあないか?

5 :
が――それは否。
どうだろう、今でこそお互いが怪物として存在しているが……その中身は。
比べるまでもない。中世に英雄としてその名を轟かせた騎士と、異形の力に目覚めて一週間かそこらの少年。
戦いの年季の違いだとか、茶道部が甲子園に挑むとかいう表現でさえ生易しく聞こえる。
やっとハイハイが出来るようになった赤ん坊をリングに放り込んでアシュラマンと戦わせるような、とでもいうべきか。つまり……

『基本スペック』では圧倒的にブラフォードが勝っているッ!

●●●

とは言え――とは言えだ。
肉体のスペックのみで勝敗が決まる訳ではないのが戦いというモノでもある。
とすれば次に彼らの戦いにおいて必要な要素は『能力』であるのも当然の成り行きだろうね。
そして……異能、その点に関してバオーはブラフォードどころか、そこらのスタンド使いよりも多くを手に入れていると言って良いだろうッ!
掌からは万物を溶解させる体液を放出するし、皮膚を硬質化させた刃は育郎自身の機転と成長で電撃を纏う剣となった。
状況に応じてそれを“セイバー・オフ”させれば、帯電させることは出来なくとも遠距離での攻撃を可能にさせる。
もちろん電撃攻撃を単体で行う『ブレイク・ダーク・サンダー』自体も彼の武装現象として、時に拳に乗せ、時に足元の水たまりを媒介とし、ブラフォードを襲う。
そうして距離を置いたブラフォードを襲うのは、両腕から飛ばされる刃だけではない。
自然発火する体毛、『シューティング・ビースス・スティンガー・フェノメノン』。
――しかしッ!だがしかし!
『バオーに数々の能力があるのは』確かだが、
『ブラフォードに異能がない』などと俺は一言も言っていない!
そうッ彼にはあるのだ!自分の接近を許さない、雨のように襲いくる髪の毛を打ち落とす手段が!それは――

“意外!それは 髪の毛ッ!!”

●●●

6 :
かつて、スピードワゴンは『それ』のことを、
「ヤツの髪の毛は筋肉でもついているのか!」と評し恐れた。
だが、髪の毛はあくまでも髪の毛でしかないし、筋繊維でもない。
ブラフォードの髪の毛を『死髪舞剣』という技に昇華している根拠は植物に多く見られる『膨圧運動』というものである。
植物が細胞内の水分量を調節することで膨らむ、あるいは萎む運動の事であるが――
もともとブラフォードが人間だったころから敵の手足に絡みつく程度には動かすことが可能であったし、
屍生人となってからはこの能力を応用して相手の血を吸う事すら可能になった。
それが恐竜となった今。
血液どころか肉そのものを食い――吸血する必要がなくなった今、その力はある意味で屍生人の時代のそれより劣化しているのかもしれない。
しかし、最初に言った通り、彼は今本能で戦っている。
つまり――その髪の毛をどうやって使うのが得策かを本能で理解した、理解できたということ。
目の前に迫りくる障害を束にした髪で叩き落とす。
思い切り散開させた髪でバオーの手足を縛り自分自身が飛びかかる。
とても技と呼べるようなものではないが、死髪舞剣のさらなる応用編、と言ったところだろう。
……もちろんバオーも抵抗はする。しかし拘束されている現状、自然と攻撃手段は身体を動かさずに発生させられるブレイク・ダーク・サンダーに限られる。
水分たっぷりの髪の毛。そこに伝わる高圧電流での攻撃は果たして“効果はバツグン”だろうか。
――否、これも否。
『電気抵抗』というのは電気が流れる導線の太さに大きく関係する。
「水鉄砲は穴が小さい方が勢いよく遠くまで飛ぶという事だ」という理論ももちろん存在するが、それと同時に、
「水撒きをするならホースでチマチマやるよりもバケツをひっくり返す方が一気に多くの水が流れる」という理屈である。
つまり一本一本が1ミリにも満たない髪の毛では大した電流が流れないのだ。
ましてや先の膨圧運動は細胞内の水分量を調節するもの。水が少なくなれば電撃は流れなくなるのもまた当然。
有利なのは依然としてブラフォード。無論、黙ってやられるバオーでもない。
切断した足をくっつけて動かすことが出来るような回復力の持ち主であるバオーは己の肉がちぎれるのも無視して髪の毛を振りほどく。
……これはおそらく『寄生虫バオー』が痛覚を持たないことも要因の一つだろう。
仮に拘束する側とされる側が逆だったらどうだろうか。おそらく恐竜の事だ、パワーで振り切ってもその後の機動力と攻撃力はダダ下がりになることは想像に難くない。

●●●

7 :
――と、そんなやり取りが何度も続く。
殴れば殴り返され、蹴れば蹴り返され、斬れば斬られ、髪を振り回せば髪で打ち落とされる。
とは言っても……戦闘時間そのものはそんなに長引きはしなかった。
考えてみようか、例えばボクシングのタイトルマッチはどうだろう。何ラウンドもの殴り合いこそあれど、途中にはセコンドが入り、実際に殴りあっているのは一度に三分間。
戦闘行為の、というか攻防の密度が高くなればなるほど体感時間と実際の時間との差は大きく開くものなのだ。

二人が“変身”してから8分22秒。ブラフォードが屍生人の状態で初撃を放ってからカウントしても9分47秒。

異形の片方が崩れ落ちる。
決着がついた。

●●●

――最後に解説するのは当然『勝因と敗因』だ……二つある。

『感覚器官』
そして
『そいつに触れることは死を意味する』
という事だ。

●●●

8 :
最初にバオーの戦闘におけるスタンスを話した。
『こいつのにおいを止めてやる』と。皆も知っている通りの事さ。
――さて、この“におい”とは、一体なんだ?
バオーはあくまでも寄生虫。宿った肉体の表面を鱗で覆うなどの変身を行いはするが、何も整形手術をするわけではない。
犬に宿ったバオーなら鼻は長く耳はとがった形に、人間に宿っていれば目や耳も残したままに『武装現象』を完了させるのだが――
その時、宿主の感覚器官は全く機能しなくなっている。
視覚も聴覚も嗅覚もバオーには関係ない。手足の感触や痛覚、そして喜怒哀楽と言った感情さえも関係ないのだろう。
そして、それらのすべてを頭部の触覚で理解するのだ。
つまり……われわれ人間の脳では、バオーがそれらの感覚を“どういうモノとして受け取っているのか”を表現できないのである。
ゆえに『臭い』でも『匂い』でもなく、便宜上『におい』と――そう言っているに過ぎないのだ。

対するブラフォードは……いや、この場では『恐竜は』と表現するか。
彼の感じる“におい”は、今度は我々が鼻で感じる“臭い”と同様のものだ。
もっとも現在、橋沢育朗の体臭がどうなっているのかは不明だし、さまざまな戦闘がおこり、現在進行形で土埃の舞うこの戦場では嗅覚はほぼ機能してはいないと言える。
とすれば何でもって彼らは敵を認識するのか。
それは『動体視力』――先ほど話した恐竜のスペックの一つだ。
これもまたわれわれ人間が考えているそれよりも数倍、数十倍の感覚で理解はしているのだろうが……
一つだけ弱点がある。
それは『ゆっくりの動きには対応しきれない』という事。
昆虫の複眼などとは違い、あくまでも一対、たった二個の眼球で動くものを理解するのだから、目のピントを合わせる筋肉の動きに隙が出来るのだ。
『向こうから勢いよく迫ってくるもの』に対応はできても『それまで止まっていたものが急に目の前で動き出した』場合には対応できない、と言えば伝わりやすいだろうか。

これらの違いを踏まえて戦いを振り返ると……
バオーは終始“におい”で相手を把握、正確に攻撃を仕掛け続けていた。
一方でブラフォードは迫りくる敵、あるいは自らが敵に接近する際の“動きを目で見て”戦っていた。
やがて、というほど時間の経過がなかったのは先に言った通りだが、とにかくバオーが成長したのか、それとも育郎の知識が後押ししたのか、次第に戦術が変わっていく。
シューティング・ビースス・スティンガー・フェノメノン、そして射出するリスキニーハーデン・セイバーを中心に、さらに投石なども交えた飛び道具を主体にしていったのだ。
そして……それらのすべてに的確に迎撃を行うブラフォードの目には怒涛の攻撃の影から『ゆっくり迫りくるバオーの姿』は映っていなかった。
恐竜の両頬に群青色の掌が触れた時にはもう遅かった。
いくら髪の毛で縛り上げようが、爪で刺そうが薙ぎ払おうが全て無意味だった。
恐竜の顔がドロドロに溶けてなくなっていく。
決まり手――バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン。
まさに『そいつに触れることは死を意味する』という訳である。

●●●

9 :
さて……どうだ?彼らの激闘を君らの目で追う事は出来たかい?
だがね、これで終わりじゃあなかったんだ。
変身を解く育朗。
目の前の死体を見て、やはりどうも複雑な気分のようだ。
いくら自分を襲う敵だったとはいえ、戦士としての自覚を持ったとはいえ、やはり根は心優しい少年なのだから。
――そりゃあもちろん「やっぱり怖くなったから戦うの止めま〜す」なんて言うような真似はしない。
完全に液状化した頭部から転がり落ちた首輪を一瞥し拾い上げ、止めておいたバイクのデイパックに仕舞い込んで再び歩き出す。
己の身体を隠すことはもうしない。
袖は破けてしまったし、ウロコ状に変質化し始めた皮膚がその面積を広げても、それが己の肉体だと心に刻んでいるからだ。

……気がついたかい?
確かに橋沢育朗は『バオー』で皮膚は人間状態に戻っていようがウロコのように硬質化し始めている。
だがそんな急激に鱗が腕全体に広がるか?いくら激闘で経験値を積んだとしても?
思い出してくれ、ブラフォードは最後に何をしたか。
恐竜化したその爪でバオーを何度も傷つけていたんだぜ?

――言い方を変えるとするなら、この戦いでの真の勝者はこの場にいなかった男、ディエゴかもしれない。
そう。彼は立ち去る際にブラフォードを『リーダー』としたのさ。
お気に入りのドノヴァン恐竜と同様もともとの人間のスペックが高かったことに加え、ドノヴァンとの決定的な違いは“直接的な戦闘力が高い”こと。
そして『スケアリー・モンスターズ』の能力の本質……というか、本来の持ち主、フェルディナンド博士の能力は、リーダー恐竜を媒介に恐竜化の感染者を増やすこと。
つまり『そいつに触れることは死を意味する』ってところかな。
さてさて、本当に『スケアリー・モンスターズに触れたものは』になってしまうのかどうか。橋沢育朗の未来やいかに?
その話はまた今度にしよう。
――どうだい?グッとくる話じゃあなかったか?やっぱり異形との殴り合いはスカッとする気がするんだよねぇ〜。
さっきもさ、ここにゴキブリでてさぁ。殴りかかってくるもんだから見事に返り討ちにしてやったんだよ。でさぁ――

【ブラフォード 死亡】
【残り 35人】

10 :
【D-5 北東部 地下/1日目 午後】
【橋沢育朗】
[能力]:寄生虫『バオー』適正者
[時間軸]:JC2巻 六助じいさんの家を旅立った直後
[状態]:全身ダメージ(中:急速に回復中)、肉体疲労(中)、恐竜化の兆候(?)
[装備]:ワルサーP99(04/20)、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾・黒煙弾×2)
[道具]:バイク、基本支給品×3、ゾンビ馬(消費:小)、打ち上げ花火、
    予備弾薬40発、地下世界の地図、ブラフォードの首輪、大型スレッジ・ハンマー、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルを破壊
1:少年(ビットリオ)を追う?
2:具体的な目的地は不明・未定
[備考]
1:ブラフォードの基本支給品ならびに武器のスレッジハンマーを回収しました。
2:ブラフォードに接触したため恐竜化に感染した疑いがあります。
(実際に感染していたのか?恐竜化するまでの制限時間は?など詳細は後の書き手さんにお任せいたします)

11 :
以上で投下終了です。
最近ハマったテラフォーマーズの影響で妙なうんちくや解説まみれになってしまいました。
……というか動きの描写は99%ブッチして。大丈夫なんだろうかこれw
したらば投下ののち多少の文章表現の変更は行っていますが、それ以外に展開等の変更は行っておりません。
誤字脱字、話の矛盾、読みにくい等々ありましたらご指摘ください。それではまた次回。

12 :
保守・・・せっかくの本スレも過疎だなしかし

13 :
遅くなりましたがウィキ収録いたしました。時系列がややずれていますので少々不安がありますが。
不足等々ありましたらご連絡ください。

14 :
過疎らせない(イケメン顔)
3rdは好きキャラ不参加・死亡でちっと追いそこねてるけど
ここに一般の感想書いていいみたいだしまた来るぞ

15 :
今日でジョジョロワ3rdが三周年だそうなので記念カキコ

16 :
おお!何はともあれおめでとう!

17 :
元◆/SqidL6HL.です。したらばにてトリバレしたので今回から変更しました。まだ一話しか投稿してなくて良かった……
それでは三周年記念のお祝いと共に、シーザー・アントニオ・ツェペリ、パンナコッタ・フーゴ、イギー
本投下開始します。

18 :
パカラッ、パカラッ、パカラッ……

「乗馬なんてのは金持ちの優雅なご趣味と思ってたんだが、なかなかどうして車やバイクとはまた違うこの『一体感』ってのもいいもんだな」

向かい風を受けながらシーザー・アントニオ・ツェペリは馬を駆る。
ひとり、悲しみを背負いながら。

◆ ◆ ◆

ディ・ス・コとサーレーを倒し、形兆に別れを告げたシーザーはまず進路を南東に取り、DIOの館へとたどり着いた。
DIOを倒すための手掛かりがないかを調べるためだったが、ざっと見た限りDIOの素性やスタンドの弱点に迫れそうなものは見つからない。
また波紋による生命探知にも反応がなく、結果としては空振りに終わり、早々に探索を切り上げることにした。
一見徒労に終わったように見えるだろうが、実際のところ彼にとってはある意味幸運な事だった。
ゲーム開始から半日、シーザーは常に『間に合わなかった』。泉のほとりで貫かれていたか弱い少女、友人スピードワゴン、恩師リサリサ、そして虹村形兆。
いくら強靭な波紋戦士と言えども、若干二十歳の青年である。頼れる仲間も無くこの短時間であまりに多くの死に触れたせいで、表には現れずとも
シーザーの心は確実に消耗していた。
もしそのまま探索を続け、塔の最上階でポコロコとスループ・ジョン・B、まだ僅かに体温の残るミスタとミキタカの凄惨な死体を発見してしまっていたら、
きっとこの後の衝撃にはとても耐えられなかっただろう。

19 :
探索の最後にと入った図書室には戦闘の跡があった。比較的新しい血だまりといくつかの銃痕、ブーツに粘りつく血の具合から見て重傷を負ったものがまだ
近くにいるかもしれないと外に出たシーザーは見つけてしまったのだ。



「先…………生…………」



すでに分かっていたことだ。むしろこのような形でも再会できたことに感謝すらしなければならない程この地には異常で、残酷な死が蔓延している。
もし逆の立場だったら?母のように慕っていた師はきっと極限まで感情を抑え込み、冷静かつ気丈に振る舞うのだろう。
ならば自分もそれに倣うべきだ。

(わかっています、自分はここで崩れ落ちてはいけない。泣き叫んでもいけない)

もう十分涙は流したのだから。
ゆっくりと膝を折ると、恐れるように、乞うように、震える手を伸ばす。

(ですが……ですが先生)

リサリサの頬にそっと指先が触れ

(お許しください)

――――――――――――そこに生命の波紋は感じられなかった。

「あ……ああ……今は……今だけは……!!」
ついにシーザーは感情を押さえきれなかった……リサリサの体をしかと抱きしめると、後から後から悲しみの涙があふれてくる。
だがしかし、それでもわずかな嗚咽をこぼすのみで、泣き叫ぶことだけはしなかったのだ!
それは師の教えとのギリギリの妥協点だったかもしれないし、敵を呼び寄せない為の冷静な判断だったかもしれない。
別れの時間を誰にも邪魔されたくない気持ちもあったかもしれない。あるいはそれら全て……

20 :
大きな穴を掘れそうな場所はDIOの館の庭ぐらいだったが、忌まわしい吸血鬼に関わる場所など御免だった。
戦いに巻き込まれないよう通りから奥に入った民家のベッドに遺体を横たえると、十字架の代わりにチェストに置いてあったエジプト・アンクを握らせる。
そうして短い祈りを捧げ終わるころにはようやく涙も乾いていた。
名残を惜しみながらも民家を後にすると今度こそ気持ちを切り替え、遺体に感じた不自然さについての考察を始める。
(先生の遺体は綺麗なもんだった……いや、『綺麗すぎた』!)
衣服こそあちこち破れてはいたが、事実リサリサの体には見る限り目立った外傷はなかった。
ただ一点、首を彩る二本目の輪――――紅い指痕を除いては。
(おそらく先生もここに来てから複数回は戦闘をしていただろう。その度に波紋で癒していたとすれば傷が見当たらないのは不自然ではない)
だがリサリサが死に至った最後の戦いにおいて、負傷した跡が見当たらない。この遺体の状況は、リサリサが身体を拘束あるいは意識を失うなど、
行動不能の状態にされた上で素手で首を絞められ、窒息死した事を示していた。
(波紋使い相手に先生が遅れをとることは考えられないし、柱の男なら尚更そんなまだるっこしいやり方はしない。必然的に先生を殺した奴は
 『相手を無傷のまま行動不能にすることが可能な能力』を持つ者、つまりスタンド使いに限られる)
動きを封じることはできるが直接攻撃することはできない。スタンドの多様性からいって、そういう能力の存在を今更疑う必要は無いだろう。
ならばなぜ素手なのか、という疑問が浮かぶ。石で殴るなり川に沈めるなりする方が力もいらないし手っ取り早い。周囲に武器になるものが無かった訳でも
ないのにあえてそうした理由は何なのか。怨恨、快楽殺人の線も疑われるが……と、そこまで考えたところでシーザーは唐突に思考を打ち切った。
可能性はそれこそいくらでもあるし、推理や考察もいくらでもできる。だが真実が如何なるものであろうとも、犯人が『明確な殺意をもって』リサリサを殺したことは
確かな事実であり、それで十分だった。
(先生を殺した奴が今も生きてるのか死んでるのかはわからんが、ひとつだけ言えることがあるぜ。たとえどんな事情や理由があったとしても、
 既に動けない先生の首をわざわざ絞めてまでとどめを刺すようなゲス野郎を、俺は『絶っっっ対に許さねえ』ってことだ!)

リサリサが息子ジョセフの為に狂気へと身を堕としたことも、その果てに瀕死の傷を負い、DIOの息子、ジョルノが癒したことも。
殺された時点で既に波紋を使えるような状態でなかったこともシーザーにはわからない。
そしてシーザーが言う所のゲス野郎――――蓮見琢馬がリサリサを殺した理由も、心も、まだ知ることは無い。

◆ ◆ ◆

21 :
リサリサとの悲しい再会はシーザーに希望をもたらす事こそなかったが、ひとつの区切りはついた。
後は何としてでも生き抜いて、同じくどこかで生きているJOJO、シュトロハイムと合流する。そうして柱の男たちを倒し、主催者を倒し、皆で脱出する。
この先の戦いやまだ見ぬ仲間の事を考えると力が湧いてきた。皆のためにもやるべき事はたくさんある。
そうして次にシーザーは川の上流へという当初の目的から離れ、一旦西へと戻る事にした。丁度すぐ近くに禁止エリアがあるので一度自分の目で見て
情報収集をしておきたいという考えからだ。
「サン・ピエトロ大聖堂か。教皇様のお力も主催者どもには通じなかったみたいだな……ん、あれは馬か?」
広大な広場の石畳はさんさんと降り注ぐ午後の日差しを照り返し、白く輝いていた。
光に紛れて一瞬見落としてしまいそうになったが、広場の中央に一頭の白馬が座り込んでいる。
参加者以外の生き物を見かけたのも初めてだが、どこかで見覚えがあるような気がして近寄ってみると、額には特徴的な星の模様。
そこでやっとシーザーの記憶がつながった。そう、まさにティベレ川で拾ったDISCに映っていたのと同じ馬なのだ。
「マンマミーヤ! 本当に居たとは……って馬だけ見つけてもこのレコードもどきが何なのかわからなけりゃ意味無いんだけどな。
 鞍がついてるってことは誰かの馬なんだろうが、おい、お前のご主人はどこ行っちまったんだ?」
一応聞いてはみるが、返事は無い。手綱を引っ張ってみても動こうとせず、閉じた目を開けようともしない。無反応というより意識そのものが無いように見える。
この馬の状態とDISCが関係している事は間違いないのだろうが、シーザーにはそれ以上どうすればいいのかわからなかった。
無理もない話だ。1939年時点から飛ばされてきたシーザーはそもそもコンパクトディスクやレーザーディスクといったDISCに酷似した記録媒体の存在自体を
知らない。仮にレコードからの連想で記録媒体だというところまでたどり着いたとしても、それを再生機器に『差し込む』という概念が一般に浸透したのは戦後、
カセットテープやビデオテープが普及してからの話であり、レコードと8mmフィルムしか知らないシーザーはどのみち途方に暮れるしかないのだ。
だからこの場合幸運だったのはむしろ馬の方だろう。
頭をひねるシーザーの手からうっかり滑り落ちたDISCが綺麗に額の星に当たったのだ。
「こ、これは!? 円盤が馬の頭にズブズブ吸い込まれていくぞ!!」

ブルルルルルッ!

記憶を取り戻した馬は勢いよく立ち上がると体を震わせ、嬉しそうにシーザーの周りをぐるりと一周してそのまま大聖堂の向かって左、
南側の列柱の方へと駆けて行った。
「おい待て! そっちは確か禁止エリアだぞ――――」
慌てて馬を追って走り出したシーザー。すると突如首輪がトーキー映画のようなザラついた声で『喋りだした』。

『オーノーだズラ。おめえ、もうだめだズラ。禁止エリアに入っちまったズラ』

……セリフの内容よりもまず人を小馬鹿にした言い回しにイラッとしたが、数歩後ろに下がると声がやんだ。

22 :
「なるほど、ここからが禁止エリアってことか。目に見える境界線が無い分爆発まで猶予を設けてあるんだな」
すぐには爆発しないことがわかると数歩進んでは戻ってを繰り返す。足だけを伸ばしたり首だけを入れてみたりと色々試した結果、どうやら首輪が境界線を
越えたかどうかが判定の基準だという事がわかった。
そしてシーザーの考えを補強するように視線の先――――『禁止エリア内』を馬が自由に駆け回っている。
「クソッタレ、これじゃあまんま首輪に繋がれた犬じゃねーか。しかし俺には機械の知識は無いときた。詳しそうなのはシュトロハイムあたりか……? それか
 俺より未来から来ている人間なら、こいつを外す手がかりを掴んでる奴がいるかもしれんな」
DISCの使い方も一応は理解したが、自分一人で試すには危険すぎるので一旦保留にする。今は何にせよ共闘できそうな人間に出会いたい。そう結論付けた
シーザーは馬に別れを告げて広場を後にすることにした。
だが広場の入り口まで来たところで後ろから襟をぐいと引っ張られ、首元に生暖かい息がかかる。
「悪いな、お前にかまってる暇はないんだ。さ、殺し合いに巻き込まれない内に遠くに逃げちまいな」
ブルブルブル、ブフゥーッ
馬はシーザーの前に回り込んで、何かを訴えるようにじっと見つめてくる。
「ひょっとして……乗れってのか?」
改めてよく見ると、何とも美しく鍛え上げられた馬体だ。その艶やかな毛並みは素人目にも十分な手入れをされているのだとわかる。
馬に合わせて作られただろう鞍はよく使い込まれており、馬名が小さく刻まれていた。きっと持ち主はこの馬に深い愛情を注ぎ、大切にしていたのだろう。
人の手が入っているとはいえ初対面の人間を嫌がったり警戒する馬も多いが、自分を目覚めさせてくれた礼に乗せてもいいと言ってくれたこの馬の心意気に
シーザーは胸が熱くなるのを感じた。

「じゃあ行くか『シルバー・バレット』!」

シルバー・バレットの真の乗り手であるディエゴ・ブランドー。
彼が奇しくも仇敵DIOと同じ名を持つことも、どれだけ素晴らしい技術と経歴を持つ騎手であり、どれだけ残忍で残酷な実利主義者か、
そしてこのバトルロワイヤルで犯してきた所業や企みも、まだ知ることは無い。

そうして話は冒頭へと戻る――――――――――――――

23 :
◆ ◆ ◆

パカラッ、パカラッ、パカラッ……

移動速度が飛躍的に上がった一人と一頭は念の為禁止区域に設定されたA-2を避けてカイロ市街地を斜めに抜け、地図の北端に到達。氾濫の原因はついに
分からなかったが、ジャコモ・マッテオッティ橋からティベレ川を越えて古代環状列石を一通り見て回り、小さな墓に花を増やしてからボルケーゼ公園で
シルバー・バレットの食事がてら休憩。のち他の参加者がいないか通りを細かく探しながら南下しシンガポールホテル、マンハッタン・トリニティ教会を抜けて
現在位置はD-4、ナヴォーナ広場。時刻はもうすぐ夕方に差し掛かるかといった頃合いだ。
「ここから東に行けば空条邸だな、さっきから漂ってた焦げ臭さはあそこからだったのか。よし、行くぞシルバー・バレット……どうした?」
近くの建物に上って空条邸からの煙を確認してきたシーザーは今度こそ他の参加者に遭遇することを期待して手綱を握る。が、当のシルバー・バレットが
首を嫌々と振って動こうとしない。
乗馬初心者のシーザーは手綱に軽く波紋を流すことで方向を伝えていたが、それが本当に補助程度の意味しかないくらいにシルバー・バレットは賢い馬だった。
時にはシーザーが波紋を流すより先に、手綱を握る手のわずかな筋肉の動きを感じ取って進路を変える事さえしてくれた。
駆ける速度も速すぎて乗り手に負担がかからぬよう、気遣いながら調節してくれていたおかげでシーザーは体力を十分回復できていたのだ。
それがここに来ての反抗である。さすがに只のわがままではないとシーザーも理解――――
「何だよ、やっぱボルケーゼ公園で俺が無理矢理木の葉ばっか食わせようとしたの根に持ってんのか? いや馬って首が長いんだから高いところの葉を
 食べると思うのは仕方無いことだと思うぜ。お前が芝生とか雑草しか食わないって知らなかったんだからな!」
――――理解まではいかなかった。当然ではあるが、やはり人と動物の相互理解は一朝一夕で上手くゆくほどお手軽なものではない。

「なあ頼むから機嫌直せよ……まいったな。こうなりゃ俺一人で走って行くしかないか」
空こそまだ青いが、柱の男たちの時間は確実に迫っている。一刻も早く共闘できる人間を探したいシーザーはじりじりとした気持ちでデイパックから
コーヒーガムを一枚取り出し、口に運ぶ。
『コーヒーガム』を。

『コーヒーガム』を!


ワンワンワンワンワンワンワンワンワンッッッツ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「おわああああああ! こっこっこっこっこいつは――――ッ 犬!?」

24 :
超スピードだとか瞬間移動かと思う位唐突に飛び掛かってきた犬に、シーザーはJOJOには決して聞かれたくない情けない悲鳴を上げてしまった。
しかし紙一重で避けてコーヒーガムを死守する辺りは流石である。一方犬はくるくるっと空中で回転して着地。
『ああ?おめーが今やるべきは地面に這いつくばって『どうぞお食べくださいお犬様』ってコーヒーガムを差し出す事だけだろうが』と言わんばかりに睨んでくる。
(なんつー犬だ……貧民街で残飯あさってる野良犬より意地汚ねー顔してやがる)
いや、この犬はきっと相当飢えていたのだろう。こっちを睨むのももしかしたら恐怖の裏返しなのかもしれない。強引にそう考えると何だか哀れに思えてきた。
思い直してガムをやろうとしたところ、犬はふと何かを思い出したようにシーザーの横をすり抜け、空条邸とは逆方向に向かって走り出した。
一度こちらを振り向いてワンと吠え、もう少し進むとまた吠える。
「あの犬……ついて来いって言ってるのか? あ、おいシルバー・バレット!」
シーザーの意見を待たずにシルバー・バレットも犬を追いかけて勝手に駆けだした。こうなればままよ、と手綱を握り直すとスピードを上げてついて行く。
目的地までは30秒もかからなかった。

◆ ◆ ◆

路地に張り出したオープンカフェのテントの下で、その少年は静かに横たわっていた。
右腕は肩から先が失われ、脇腹と左足も大きくえぐれている。とめどなく血を流していた赤黒い傷口は、今は砂で固められていて見えない。
正確には犬が少年の約10m以内に入ったところで突然砂が現れたのだ。
おそらくこれが犬の能力の射程距離。能力を発動した途端しんどそうに伏せの姿勢で舌を出したところからも疲労の色が伺える。
血液をたっぷり吸いこんでどす黒く変色した砂が少し崩れかけた。往復1分足らずであっても、この傷では流れた血の量はかなりのものになる。
それでも、少年が失血死する危険を冒してでも敵か味方かわからないシーザーに直接助けを求めなければならないくらい犬の負担は大きく、
追いつめられていたのだとシーザーは理解した。
「決死の覚悟で俺を呼んだんだな……わかった、もう少しがんばって止血してくれ。治療してみる」
さっき死守したガムを犬に放ると、すぐさま少年の体に波紋を流し込む。シルバー・バレットがそうしたように、少年に過度な負担がかからぬよう調節しながら
慎重に、迅速に。そのまま一時間ほど流し続け、何とか傷をふさぎ出血を止める事が出来た。犬に能力を解くように指示するとテーブルクロスを破いて包帯代わりに巻きつける。
「シルバー・バレット、さっきは勘違いして悪かった。お前には犬が近づいてきてたのがわかってたんだな……犬、お前もご主人の為に必死だったってのに
 意地汚いヤツだとか思って悪かったアデデッ! 何で噛むんだよ!!」
「アウオオ!」
忌々しそうに首輪と犬サイズのデイパックを見せつけてきた。
「あ、ああそうだな。お前もスタンド使いってことは参加者なんだよな。こいつと組んで行動してったってことか、さっきの発言は撤回する」
ペット扱いされたのが気に入らなかったらしい。しかも人間の言葉をしっかり理解している節がある。そして噛まれた手にはこれまた噛みつくしたガム。
シーザーは犬の知性に感心しながらも、内心めんどくさいヤツだとため息をついた。

25 :
支援

26 :
規制入ったかな…

27 :
「…………うう」
ようやく少年が目を覚まして弱弱しく辺りを見回す。体を起こそうとするのを静止して、砂山の上に畳んだテーブルクロスを置き、枕代わりにすると再び寝かせてやる。
「意識が戻ってよかった。俺の名はシーザー・アントニオ・ツェペリだ、お前は?」
「……パンナコッタ・フーゴ。その犬は……イギー。手当てをしていただいて感謝します」
「礼ならむしろ犬、いやイギーの方が相応しいさ。俺をここまで連れてきてくれたのはアイツなんだ」
「そうでしたか……すまない、イギー」
イギーはそっぽをむいてアギ、と一声だけ返してきた。だが、そのそっけない返事だけでもフーゴには十分伝わったようだ。
かすかに笑みを浮かべるフーゴにしかし、シーザーは伝えなければならなかった。
「フーゴ、はっきりと言おう。俺は波紋って技術でお前さんの出血を止めた。一応傷口も塞げた……だが、これ以上の治療となると俺にも難しい。
 つまり、お前は再起不能で……いつ死んでもおかしくない」

◆ ◆ ◆

最初にフーゴを見た瞬間、死体だと思った。
そう、マッシモ・ヴォルペとヴァニラ・アイスとの戦いで負った傷は当然致命傷で、イギーが止血した傷口もまた砂である以上じわじわと血は滲んでいた。
さらにシーザーを連れてくるのに能力を解いていた間の出血。トータルで見るとショックを起こすには十分だったのだ。
そうしてあと少し遅ければ尽きていただろうフーゴの命をシーザーが何とか食い止めた。今の状態は『死んで当然』から、『死んでもおかしくない』に引き戻したにすぎない。
たとえば設備の整った病院で輸血をしつつ長時間波紋を流し続ければ命だけは助かるだろうが、それでも失われた血や肉を再生することはできない。
あとはせめて苦痛を和らげるくらい……医師でないシーザーにできるのはここまでだった。
「覚悟はできています……死は怖くありません」
「言い残すことがあるなら今のうちに聞いておこう」
「大切な……仲間がいるんです……ナランチャ、トリッシュ。ここで出会った人たちと行動を共にしていました……
 東…………D-7……追ってきてい、るかも」
「わかった。必ず探し出してお前たちの事を伝えてやる」
「どこにいるかわからない……ミスタ。それから……生きていたんです…………ジョジョが……」
「JOJO!? やはり生きていたのか!!」
思わぬ名前にシーザーの心臓が跳ね上がる。この少年がJOJOを知っていたとは。ようやく手がかりが掴めた。
「あなたも知っ……のですか……ジョジョを……」
「知ってるも何も俺はあいつの仲間だ! あいつなら大丈夫、いつだって思いもよらねえ発想でピンチを切り抜けてきた奴だ。
 今頃平気な顔して俺たちの事を探し回ってるに違いないさ!」
「はは、ちがいないや……彼は、希望の光です。どうか……お願いします。トランプ使いのムーロロには気をつけて…………」
「ツェペリ家の男の誇りにかけて、お前の願いを承った。後は……自分が生きる事だけ考えろ」
「…………ああ……会いたいなぁ……」
最後はうわごとのようにつぶやくと、フーゴは焦点の合わない目を閉じて眠りについた。
だが『永遠の』眠りにつくにはまだ早い。
(フーゴよ……JOJOと同じくらい、お前だって俺の希望なんだぜ。どうか、死なないでくれ)
やっと、やっと『間に合った』のだから。祈るようにシーザーは波紋を流し続ける。
もしクリーム・スターターのDISCを自身に差し込んでいたなら、確実にフーゴを救えただろうが、その事をシーザーは知る由もない。
『ジョジョ』と『JOJO』。ふたりが心に思い浮かべた姿は似ても似つかない、けれども等しく黄金の精神を持つ別人であることも、今はまだ知ることは無い。

28 :
(はーやれやれ、やっと一息つけたぜ)
イギーは後ろ足で首元を掻いている。慣れない首輪を長時間付けていたせいでかゆくて仕方ないのだ。
(どうにか教会まで戻ったと思ったらいきなりバンバカ撃たれるわ、しょーがねーからフーゴの野郎の仲間と合流しようとしたら案の定途中で倒れられるわ、
 コーヒーガムの匂いに気付かなかったらあのままジリ貧で、下手すりゃ共倒れだったぜ)
ブルブルッと毛を飛ばすとあくびを一つ。
(まあ面倒なお荷物が片付いて新しい用心棒も手に入れた事だし、このまま東へ移動すりゃ予定通り合流できそうだ。盾は多い方がいいもんな。
 よしよし、俺の運もまだまだ尽きちゃあいねえぜ)
何ともひどい言いぐさである。が、しかしこの口の悪さだけで彼を判断してはいけない。
一時共闘しただけのフーゴを見捨てる事なく支え続け、助けを呼んできた。
ほんの一瞬コーヒーガムに気を取られたことは……事実だが、そのままタルカスの時の様に適当に媚を売って取り入った方が簡単なはずだったのに。
何よりフーゴを治療する間の一時間、大好物のコーヒーガムの追加をシーザーに強請りもせず止血をし続けた。
つまりイギーという犬は、そういう奴なのだ。
(そ−いう事だからよー、悪りいがおめーの行きたがってる教会方面に戻るつもりはないぜ?)
フーッ、フーッ、バルルルッ……
(おいおい、なに歯ぁむき出してんだ……やんのか? ああ!?)

「ところでお前ら……何をそんなに睨み合ってるんだ?」
主人の居る教会へ行きたいシルバー・バレットと、フーゴの仲間達と合流したいイギー。
二頭の決着がどうなるのか、そもそもどうしてこんなことになっているのか、シーザーには……やっぱりわからない。

29 :
支援支援!

30 :
【D-3 路地 / 一日目 夕方】
【どう猛な野獣タッグ+白馬の波紋戦士】

【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発(波紋で回復中)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレット
[道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム(1枚消費)、ダイナマイト6本
   ミスタの記憶DISC、クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
1.とりあえず二頭の決着がつくまでに次の行き先を考える
2.フーゴに助かってほしい
3.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
4.DIOの秘密を解き明かし、そして倒す。
【備考】
・リサリサの遺体はC-3の民家に安置されています。
・DISCの使い方を理解しました。スタンドDISCと記憶DISCの違いはまだ知りません。
・『ジョジョ』をジョセフの事だと誤解しています。
・シルバー・バレットとイギーがどうしてケンカを始めたのかさっぱりわかりません。
【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:右腕消失、脇腹・左足負傷(波紋で止血済)、大量出血
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.……(意識不明)
【備考】
・サン・ジョルジョ・マジョーレ教会から南東方向にイギーVSヴァニラ、フーゴVSヴォルペの戦闘跡があります。
・フーゴの容体は深刻です。危篤状態は脱しましたが、いつ急変してもおかしくありません。
【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.この馬にどっちが上か教えてやる
2.コーヒーガム(シーザー)穴だらけ(フーゴ)と行動、フーゴの仲間と合流したい
3.花京院に違和感。
4.煙突(ジョルノ)が気に喰わない
【備考】
・シルバー・バレットがサン・ジョルジョ・マジョーレ教会方面に行きたい事に気付いていますが、行かせるつもりはありません。
・二頭の決着がどうなったかは以降の書き手さんにお任せします。
※イギー・フーゴは一旦教会に戻りましたが、ジョンガリに発砲された為方向転換しました。撃たれた時の状況やジョンガリの詳しい行動は
  後の書き手さんにお任せします。

31 :
以上です。
遅筆な自分には過疎気味なくらいで丁度いいのですが、誰かにリレーしてもらうドキドキも感じてみたいですね。
それでは感想・ご指摘お待ちしております!

32 :
お疲れ様でした。フーゴ延命なってひと安心。

33 :
投下乙です
師のために悲しみながらも教えを守ろうとするシーザーの姿がまさにらしいですね。
そしてイギーとシーザーのおかげでフーゴはなんとか命は繋ぎ止めたけど果たして…?動物組の決着に期待w

34 :
過疎化防止にひとこと追跡表っぽいもの作ってみたので貼っておくなど。
●ジョナサン・ジョースター
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
DIOから「この血の運命」を聞かされた。ジョースター家大集合で決着をつける。
●ジョセフ・ジョースター
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
ジョナサンにエリナの死を伝える。一家総出でDIOを退治しに行く。
●シーザー・アントニオ・ツェペリ
177:「君の知らない物語」まで。
リサリサの死に動揺しつつもフーゴの命に『間に合った』。
●ルドル・フォン・シュトロハイム【予約中】
168:「Trace」まで。
ペットショップとの激闘後、JOJOたちを見送った彼の思うところは。
●ワムウ
163:「星環は英雄の星座となるか?」まで。
JOJO(ジョセフ)とジョウスケとの再戦を夢見て地下を散策中。
●カーズ
175:「窮鼠猫を噛めず」まで。
宮本に命令、首輪解除の考察、そして屈辱の敗戦への怒り。暇そうに見えて結構やることは多そう。
●花京院典明
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
ジョースター家とDIOの決着を援護する決意。肉の芽の屈辱もあるが……
●イギー
177:「君の知らない物語」まで。
シーザーを呼び寄せフーゴの治療。でもシルバー・バレットが気に入らない。
●DIO
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
ジョジョと出会い、ジョルノと出会い、そして『Dio』と聖人の遺体。野望が燃える。
●東方仗助
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
全ての元凶とも言えるDIOを討伐しに向かう。が、空条邸にももう一度向かいたいところ。
●広瀬康一【予約中】
168:「Trace」まで。
ペット・ショップ戦が終わりやや放心気味?仗助たちが立ち去った後彼はどうするのか。
●小林玉美【予約中】
169:「トリニティ・ブラッド」まで。
カジノ現場に向かうアナスイを追うか、ジョニィの決断に従うか……を決めるトリッシュの忠実な犬。
●噴上裕也【予約中】
168:「Trace」まで。
ジョセフ、承太郎、そして仗助の去り際に最後に話した男。彼が嗅ぎ取った匂いは……
●宮本輝之輔
175:「窮鼠猫を噛めず」まで。
柱の男にやたらと縁がある。自由を求める彼がカーズを出し抜くことができるのか?
●吉良吉影
166:「悪の教典」まで。
平穏を求め続け空条邸での大量殺人を敢行&成功。しかし彼を襲うのはあの『弓矢』だった。
とりあえずここまで。需要がありそうなら後半も作る。

35 :
需要ならここに!
4部組の再会・密集率が何気にすごい(玉美も空条邸に来る可能性あるし)
後半も是非に!

36 :
なんか凄いの来てたw
ここにも期待してる奴が一人いるので、ぜひ後半もお願いします&#8252;&#65038;

37 :
需要ありそうだし後半
●ジョルノ・ジョバァーナ
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
ジョナサンも父、DIOも父。父と父の決着を付けにいざ。
●ナランチャ・ギルガ【予約中】
169:「トリニティ・ブラッド」まで。
フーゴについていくと考えているが周りが周りだしどうなるやら
●パンナコッタ・フーゴ
177:「君の知らない物語」まで。
ヴァニラと戦い、その結果気絶中。実質的な時間軸はその前の『獣の咆哮』止まり。
●トリッシュ・ウナ【予約中】
169:「トリニティ・ブラッド」まで。
玉美の飼い主。追うのはアナスイたちか、ジョナサンたちか。
●プロシュート
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
千帆の頼れる兄貴から彼女の仲間にランクアップ。でも千帆自身の方針が不明瞭なので過疎化しそう。
●セッコ
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
角砂糖くいながらDIOの下へ戻る。彼が次に口にするのは角砂糖なのか人肉なのか。
●空条承太郎
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
娘&F・Fとの因縁も晴らしてチームJOJOの中心核に。読み返してたらこいつらもう教会乗り込んでるんだよねと改めて実感
●エルメェス・コステロ【予約中】
168:「Trace」まで。
シーラEが起きるのを待っているうちにチームが分断(というかジョジョ組が離脱)したが今後の彼女はどう動くのか。
●F・F
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
入れ物である『空条徐倫』としてではなくF・Fとして承太郎と和解。1st、2nd、3rdと毎度バラバラなスタンスなんだよね彼女。
●ナルシソ・アナスイ【予約中】
169:「トリニティ・ブラッド」まで。
現在の行動方針はあくまで『徐倫の意思を継ぎ承太郎を止める』。現在彼らがどうなってるかも知らずに一人空条邸へ。
●ジョンガリ・A
171:「因縁と希望を背負う集い星」まで。
DIOを守る狙撃手だが、現状撃っていい相手はごく僅か。身を潜め続けて空気化しなければいいが……
●ジョニィ・ジョースター【予約中】
首筋のアザに導かれるように教会に向かう。原作中ではジョニイのアザは明確にされてないけど気にせず書き続けるのがここの書き手のすごいところ。
●マウンテン・ティム【予約中】
168:「Trace」まで。
戦闘や火事のことをシュトロハイムと議論中。さすが保安官。
●ルーシー・スティール
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
肝っ玉の座った囚われの美少女。何?座ってるのは遺体の頭部?やかましいわ!
●ディエゴ・ブランドー
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
DIOとDioの夢の共演。というと聞こえはいいが遺体が揃ったとき彼はどう動くのか。
●蓮見琢馬
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
妹に差し出した手を振り払われ、いよいよ戻るところがなくなってきた兄。実は未だにスタンドに名前をつけていない(フラグおっ立て)
●シーラE【予約中】
救急車から逃げ遅れて気絶。能力そのものも復讐者としての覚悟も強いんだけどその分書き手が持て余し気味なのか?
●カンノーロ・ムーロロ
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
亀に揺られてDIOの下へ。ばら撒いていたトランプも随分収束してきた気がする。目の前の琢馬とセッコをどうあしらうのだろうか。
●橋沢育朗
176:「激闘」まで。
メルテッディン・パルム・フェノメノンでブラフォードに勝利。でも恐竜化?行くあてもないし放置されたら一気に空気化しそう。

38 :
以上、まとめてみた。
投下順で言えば一番早い(長いこと次作が書かれてない)のは吉良か。
あとは柱の男組は日が沈むまでのこの数時間にもう一作品書かれるかどうかといったところだろうか?

39 :
千帆抜けてね?

40 :
ほんとだ抜けてた、すまぬ。書いてはあったんだ、コピペがだな……(言い訳
●双葉千帆
174:「されど聖なるものは罪と踊る」まで。
まさかのセッコ手懐け、そしてプロシュートに仲間と認められる。今後も小説を書き続けられるのだろうか

41 :
おおっ、サンキュー。
今回のロワはジョースター一家勢揃いもそうだけど、戦闘力に乏しいキャラ(玉美、宮本、千帆、ルーシー辺り)が
意外と生き残ってるのも特徴だな。1thのジョージみたくなるか?今後に期待。

42 :
破棄宣言ないままwikiトップページの予約消えてるけど大丈夫なのか?
まあ日数的には相当経過してるから仕方ないっちゃあ仕方ないが

43 :
wikiやしたらばで複数回呼びかけがあったにも関わらず放置してるし、問題ないんじゃない?
ただ、なまじエースだっただけに他の書き手さんが遠慮して待ち続けた挙句過疎が進むってのもアホらしいし
一度議論なりしたほうがいいのかもしれんね。

44 :
追跡表超乙!
ただの聴衆なんで予約のへんわからんけど心配だな。単に忙しいだけだといいけど。

45 :
追跡表乙。保守。

46 :
アニメ始まったな!

47 :
月報です
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
177話(+1) 35/150 (-0) 23.3 (-0.0)

48 :
保守。このままだと月一本ペースでさえなくなってしまうのか・・・

49 :
味噌もクソも無い内容でも良いから
せめて進めて欲しいとか思っちまう

50 :
味方サイド最大勢力がそれぞれ予約破棄されたり音沙汰なかったりだからなあ。
それ以外を動かすとしても…主催者サイドはいまいち思惑も情報も見えてない感じ。
どれか動けば全部動くんだろうけど…

51 :
っても書き手側からすればハードルガン上がりだしいざ投稿しても最近じゃ感想もイマイチ少ないしで、
そりゃモチベーションも上がらんわ
と、文句だけじゃ何なので話題を振ってみる。
今生き残ってるキャラの中で実現して欲しい組合せってある?自分はエルメェス兄貴とその他女子達とのガールズ(?)トークが読んでみたいw

52 :
予約来てたな、アニメ効果だろうか

53 :
>>51
結構夢の組み合わせって実現してるんだよね、ジョースター集合とかDIODioとか。
その辺踏まえて俺が推したいのはシュトロハイム×ワムウ。
原作じゃお互いのこと知りつつ(というかナチスが一方的に)ニアミスで本人同士出会ってなかった気がする。
そういう「ありそうでなかった」を見たいかな

54 :
夢の組み合わせなあ
思いつけるならそこにたどり着けるように書いてるだろー
思いつけないのが不味い
書きたいと思ったら感想なんかどうでもよくなるし
書きたい=最低でも自分だけは面白い・読みたいと思ってるもんな

55 :
肩の力抜いて考えていいのよ?
ありえなさそうなシチュエーションでも、語るだけならタダだしね

自分はそうだなー、いまさり気に注目してるのは蓮見かな
色々要素持ってるし、ひとまずの目標だった千帆との接触も果たされたけど目の前で他の男にかっ攫われて(語弊有り)不完全燃焼に終わったし、なにかをやりたい気持ちもあるけど何をすればいいのか分からないという精神的に迷走状態にあるし…
今の状態でDIOと会ったらどうなるの?いやいや空条邸組と先に出会っちゃったら?とか考えちゃうね
あと上でも言われてるけどガールズトークは見てみたい、とくにルーシーなんかは原作でも同年代の女の子とのやり取りとかほとんどなかったから他の女の子との会話が見てみたい、トリッシュとはそんな時間なかったしね…
あとは、そうだなぁ…今の展開切り抜けられたらジョナサンとジョルノのやりとりもみてみたいかもな。この二人に関してはどんな話をするのかさっぱり分からん。今後に期待
カーズはある意味一番自由に動いてるから今後会う人によって心理戦だったりガチバトルになったり地獄絵図とかしそうになったりでいい意味で怖い、スタンド知識も身についちゃってるから爆弾要因になりそう

勢いのまま語ってしまった。なんだかんだ言ってジョジョロワが好きなんだと再確認したわ

56 :
保守。そろそろ進展が欲しいな

57 :
仮投下来てたな! ここで言うのもなんだが乙!

58 :
吉良吉影、本投下開始します。

59 :
サン・ピエトロ大聖堂のバルコニーから望むローマ市内は施設や区画が置き換わったことによる違和感を差し引いても尚、
まさに絶景という他ない程の美しい景色を保っている。
今にも落ちてきそうな程青い空の下で二人きり、雲と時間が穏やかに流れてゆく。

(まるで新婚旅行にでも来たみたいだな)

この状況で何を馬鹿な事を、とも思いかけたがやはりそのまま甘い時間を過ごすのも悪くないと思い直し、手摺に乗せられた
彼女の右手に自分の左手をそっと重ねる。

「しのぶ……」

60 :
◆ ◆ ◆



夢の中の彼女は柔らかく微笑んでいた。
繋いだ手は、温かかった。









「お目覚めかな」
「……その声には聞き覚えがある。だが会話をするのは少し待ってくれないか……ああ、あった」

吉良吉影は冷たい床の上で身を起こすと軽く目を擦りながら手探りでデイパックを引き寄せ、ペットボトルの水をぐいと飲む。

「知ってるか? 人は夜寝ている間に大体コップ一杯分の汗をかいている。
 目覚めてすぐに水を飲むと、失われた水分を補うと同時に交感神経を刺激してよりスッキリと体を覚醒させることができるんだ。
 今は朝ではないが、こういう何気ない行為を大切にすることは質の高い生活を送る為に必要だと私は考えている。
 その愛すべき穏やかな生活を無遠慮に蹂躙してくれた主催者が私に何の用向きだ、スティーブン・スティール」

その部屋は全体的に薄暗く、端にゆくほど暗くなっているため広さは正確にはわからない。
正面の壁一面に埋め尽くされたディスプレイの明かりを背にして、姿勢よく肘掛椅子にかけた主催者が放送よりも低い声で答える。

「逆だよ。私が君を呼んだのではなく、君がチャンスをものにしたのだ吉良吉影。
 君はあのライターから出てきたスタンド『ブラック・サバス』の力でここに飛ばされてきた」

言われて掌を確認するが、特に負傷はしていなかった。

「本来あれは君のように矢で貫かれた者のスタンド能力を目覚めさせるというスタンドだが、
 今回は仕様を変えて私のもとに転送し、特別な支給品をプレゼントするというラッキーイベントにしたんだ、おめでとう」
「このイカレた催しをゲームと言うだけあって凝った仕掛けだな。だが私がもしあのスタンドを倒していたらどうするつもりだった?
 そもそもライターを必要としない参加者がずっと持ちっぱなしにすることだってあるだろう。失礼だが……少々ずさんではないか?」

実際吉良が路地裏に入りさえしなければ、ブラック・サバスの奇襲を回避できた可能性は十分にあったし、もし空条邸を燃やす際に
別のもので火をつけていたなら今ごろライターは燃え尽きていたことだろう。
ゲームを盛り上げるためのイベントならばもっと目立たせるべきなのではという吉良の疑問はもっともなものだ。

61 :
「それについては主催者として不備を認めるよ。このゲームには特殊な能力を持たなかったり、
 使いこなせていない者も多数参加していた。だから一種の救済として、生き残る見込みが少ない者たちの中から
 無作為に抽出して持たせておいて、あえて貫かれた者こそが幸運を得られるという趣向だったんだが……
 まあ、失敗だった。正直忘れていたくらいだ」

何か思い出したのだろうか、スティールが一瞬遠い目をした後渋面を作る。

「そちらの失態などどうでもいい。さっさと……
       『禁止区域内に……入ったぜ……吉良吉影……』――――!」

一歩踏み出した瞬間首輪から警告メッセージが流れる。
吉良はスティールを睨み付けると元の位置に足を引き、再び静寂が戻る。

「そこから動くことも、スタンドを出すこともこの場においては禁止行為とさせてもらうよ」
「試しただけだ。それより、こんな所に私を拘束しておいて無駄話がしたいだけなのか? その間に参加者が減ってくれるなら
 願ったり叶ったりだが、どうせなら有意義な会話をしたい――――ここがどこなのか、貴様の目的が何なのか、とかな」

この時点で吉良は無害な一般人の顔を完全に捨てていた。
吉良側から見れば平穏な生活を突如かき乱した無頼な輩に対する怒りの顔であり、
スティールから見れば獰猛な生贄の反抗的な顔であり、
第三者から見れば……殺人鬼のような顔である。

対してスティーブン・スティールは道化の顔をした。

「それらを私から直接聞いて何になる。
 タネを知っているマジックが楽しいか? 犯人がわかっている推理小説でワクワクできるか?
 君らの役割はもちろん殺し合い勝者を決める事だが、もし、も・し・も、ゲームを破壊しようなどという無謀極まりない冒険を考えているなら―――
 それこそ推理小説のようにわずかな手がかりを探し、こちらが想像だにしないあっと驚くような手口でここまで辿り着いて見せればいい!
 君たちが見せてくれる、その『過程』にこそ価値があるのだからな!!」

哄笑と共に煽ってくるスティールに吉良は終始無言を貫いた。
やや長すぎるくらい、大柄な体に相応しい肺活量で笑い終えると、道化は主催者へと戻る。

「放送ではああ言ったが、参加者としての義務を忘れなければ多少の回り道は黙認するよ。さっき言った通り
 楽しませてくれるのであれば、こちらとしては問題ないからな。
 さあ、これが追加の支給品だ。返品交換は受け付けないから、戻ってから開けてくれたまえ」

62 :
スティーブンが椅子から立ち上がるとコツコツと足音を立てて歩み寄る。
逆光のせいか眼鏡の奥の表情は見えないが、豪奢な封筒を通してスティールの手の感覚が吉良へと伝わってきた。
この封筒を爆弾に変えて爆破してやりたい気持ちをこらえて受け取るとデイパックにしまう。

「では会場に戻ってもらおう。場所の希望があれば伺うがどうする?」
「ふん、ならばサン・ピエ―――」



「その前に、私からもプレゼントを贈呈させてもらっていいかな?」


 
◆ ◆ ◆



吉良から見て左、暗がりに慣れた目でも見えないさらに奥から音も無く現れたその男は、レッドカーペットの中心を歩むように優雅な歩調で
スティールの横に並び立った。
彼の登場に驚くスティールと対照的な自信と威厳に満ち溢れた佇まいは、それだけで二人の上下関係を如実に示している。
スティールの無言の問いかけに薄い笑みで応えると、男は朗々と自己紹介を始めた。

「私の名はファニー・ヴァレンタイン。年齢43歳、君とは違う世界の合衆国大統領であり、今回のゲームの企画・主催を務めさせてもらっている。
 スタンド名はD4C(Dirty Deeds Done Dirt Cheap )。物質に挟まれる事により別次元に移動する能力だ。また、別次元から物や人間を
 連れてきて同一世界に同時に存在させることもできる。ただし同じ者同士が出会った場合は、互いに引き寄せられ消滅する」

ハッキリした発音と、大声でなくとも良く通るバリトンはスティールとはまた違う演説向きの声質に感じられた。
もし、彼が杜王町の町長選挙で演説したなら誰もが迷わず投票し、ついて行きたくなるような奇妙な安心感すらある。
だがスタンド能力まで明かすというのは明らかに異常だ。訝しみながらも吉良は探りを入れる。

「つまり君たちの認識にズレがあったのは全て私の能力によるものだ。ひとつ謎が解けて良かったな」
「参加者共をチマチマと一人づつ集めてきたという訳か。主催者自ら裏方仕事とは、なんともご苦労な事だ。
 二人きりでこれだけの準備をするのはさぞ骨が折れた事だろう。それとも他に使える部下を持っているのか?」
「お気遣いありがとう。だが私一人でもできる事は色々あってね……そうだな、例えばD4Cで君を150人集めたとする。かち合って消滅しないよう
 一人づつ個室に閉じ込めて首輪を爆弾に変えてもらう。後は参加者を監視しつつ任意で爆発させてもらう、ってのはどうだ?」

これには吉良も不快感を隠せない。

63 :
「そんな顔をするなよ、例えだ、例え。実をいうと興味がわいたのさ。君は現在殺害数トップ3に入る実力者だ、
 今話した内容はゲームを盛り立ててくれた礼とでも思ってくれればいい……」

バレている。
このゲームの性質や放送、そしてこの部屋のモニター類からいってリアルタイムで監視され続けている事は間違いないが、
それでも確実に証拠隠滅したはずの殺人を見られていたという事実が吉良の心臓を一瞬締め上げた。

「安心したまえ、私はプレーヤーに不正に干渉したりはしないさ。
 君はゲーム開始からその素晴らしい頭脳を駆使して無力な人間を装い、生き延びてきた。
 だが、いくら殺人鬼とはいえ所詮は一般人しか相手にしたことが無いという点がネックだ。カーズ、DIO、空条承太郎……
 百戦錬磨のあの三人と鉢合わせした時は正直終わりだと思ったが、幸運にも離脱に成功。
 そして空条邸での一連の殺人と証拠隠滅。あの手際の良さは驚嘆に値する」
「貴様……!」
「単純に力ではかなわない敵を相手にどこまで渡り合えるか今後も注目しているよ。ああ、最後にアドバイスをひとつ――――
 あの『手首』は、バレないように気を付けたまえ」


大統領が口を閉じるより早く吉良の唇と瞼、そして体全体が大きく震えはじめる。
だが次に吉良が口を開けるより早く視界は再び黒く閉ざされ、そのまま意識が遠のいてゆき……消えた。



◆ ◆ ◆



は……あ―――――――っ……

吉良が会場内に戻ったことを確認すると、スティールは肺の奥から漏れるに任せて空気を吐きだした。

「これで消化不良のイベントもこなせたな。次の放送のネタにできるんじゃないか?」
「……」

スティールの座っていた椅子に腰かけて組んだ足先をリズムよく上下させながら、しかし口調は冷ややかに大統領は尋問を始める。

64 :
「私の存在や能力などは取るに足りない情報だ、ジョニィ・ジョースターやルーシー・スティールが既に広めているからな。
 だが貴様はそれを越える何かを吉良吉影に渡した……違うか?」
「ブラック・サバスによるこの施設への転送も、支給品の追加についても最初の取り決めの通りだ。逸脱はしていない」
「それは正確さに欠けるというものだな。まず第一に、吉良吉影が転送されたのはこの隣の、無地の壁以外何もない部屋だ。
 いくら君が大柄とはいえわざわざこちらに連れてくるのは手間だっただろう。
 第二に、渡す支給品の数や選別は君に任せる事で合意していたが、一部制約があったはずだ。
 『私の目的を大きく妨害する恐れのある物』は除外。特に、SBRレース関係者の物品には慎重を期する……とな」

すくっと立ち上がるとスティールに歩み寄る。主催者という名の哀れな道化から流れ落ちる汗を目に留めると
唇の端を吊り上げ、一転陽気な声へと変わる。

「それにしても今回はやけに喋りのキレが悪かったじゃないか。あんな間延びした高笑いでは周囲を観察する隙を作ってやってるようなものだ。
 あの手のタイプを煽るなら、秘密の暴露やこちらの絶対的有利を強調してプライドをずたずたにしてやる方が効果的だぞ。
 見たろ? あの顔を。奴の思考はもう私への憎悪と殺意で一杯のはずだ」

スティールは愕然とした。
大統領は自分の企みを見抜いた上で吉良を挑発しにやって来たのだ。

「私は――――泳がされていたのか?」
「主催側として君を引き込んだ時点で、当然この程度の抵抗は想定していた。が、いささか油断をしてしまっていたようだな。
 恥を忍んで正直に言おう。私は吉良と君とのやり取りを見て、初めてこの部屋の異変に気付いた。
 君が何を渡したのかも本当に知らない」

ドグゥッ! 大統領のスタンドがスティールの腹に鈍い一撃を見舞い、スティールはもんどりうって倒れた。

「私はこの一発で今回の君の行為を許そう……油断していたとはいえ私の隙を突いた君への賞賛と自らへの戒めを込めて、
 支給品が私にとって不都合なものであったとしても回収はしない」

それは公正さを重んじるが故なのか、余裕をもって状況を楽しんでいるだけなのか。スティールに大統領の心はわからない。

「だがこの世の幸運はやはり私に味方しているらしい。あの頭が切れるプライドの塊のような快楽殺人鬼が大人しく君の思惑通りに動くと思うか?
 君の妻を前にして欲望を押さえられると思うか?」
「……ッ!」
「まあせいぜい細い希望にすがり付けばいい。君が他に何を仕込んでいるかは知らんが、今後の監視は強化させてもらうぞ」

65 :
うずくまったままのスティールの肩をポンポンと叩くと、来た時と同じ優雅な足取りで音も無く退出する。
ひとり残されたスティールは痛みが引いても尚、その場を動けずにいた。


まだあきらめてはいない。まだ策はある。
D4Cを打ち破れるただ一人の男もまだ生きているし、
正義の心を持った者たちもまだ多くいる。
だがそれでも! 自らの能力を晒し、幾度となく自分を殺した者を放っているのに!
それでも尚大統領は遥か高みから自分とルーシーを見下ろし、支配してくるのだ!!

一体何が大統領の余裕の源となっているのか、最終的に何を目指しているのか。
こんなにも近くに居ながら一つとして真実にたどり着けず、ただ従わされ踊らされている自分の無力さが情けなくて呪わしい。
強要されたとはいえ参加者達を煽り立て、その生命を侮辱したのは事実だ。ならばこの結果は大統領に立ち向かう事もできず、
せめてと自分ひとりの願いを叶えようとしたエゴへの罰なのか。



「ルーシー…………………ル………シ……………… …… …」



誰にも届くことのないつぶやきは細く切れ切れに暗闇に響き渡り、溶け、消えた。



◆ ◆ ◆



「本当に気持ちの良い空だな。高く澄み渡っていて……」


大聖堂の正面バルコニーからの思いがけない素晴らしい景色を目に焼き付けながら、吉良は先程までの出来事を思い返す。

66 :
あの時スティールがわざと自分に見せたディスプレイには監視カメラによるものだろう、何十もの映像が細かに切り替わりながら会場のどこかしこを映していた。
確認できたのは空条邸前に集まっているグループと、煙が見える位置のどこかの路上らしいグループ、
さらにサン・ジョルジョ・マジョーレ教会の地上と地下ではそれぞれ戦闘が行われているようだった。
それを踏まえて吉良は教会や空条邸の煙を見渡せるサン・ピエトロ大聖堂を選んだ。
慣れ親しんだ町に、自宅に全く未練が無いと言えば嘘になるが、地下通路が存在しない点ではこのヴァチカン市国一帯も杜王町と同じく
安全なエリアと言えるし、何より空間を転移することで自分の足跡を完全に消し去ることに成功した。これでしばらくは時間を稼げる。

「『スロー・ダンサー』か。名前だけじゃあどんなものか想像がつかんな」

ひとしきり景色を堪能してから渡された封筒を開けると、追加の支給品は二枚あった。
一枚は確認しただけでしまい込む。問題は二枚目だ。中身を記した印刷の文字の下に、手書きでメッセージが添えられていたのだ。

『ジョニイ・ジョースターに渡せ。彼だけが使える』

封筒を渡す手から感じた震えと同様に荒れた文字からは、スティールが大統領に無理矢理従わされていて、事態が逼迫している事が読み取れた。
おそらく監視の隙をついて仕込まれたメッセージは、『どうか大統領を倒してくれ』といったところだろう。
直接中身を見れば使い方がわかるかもしれないが、紙に戻せない以上迂闊に開ける事は出来ない。仕方なくこれもしまう事にした。
そしてジョニイ・ジョースターに接触するかどうか。これについては慎重に判断しなければならない。
スロー・ダンサーを使うことで大統領のところに辿り着ける、あるいは倒せる可能性が上がる。嘘ではないだろうしそれなりにメリットもあるが、
だからといって安易に接触できない理由がある。

吉良の目は捕えていた。
ディスプレイのひとつに映る空条邸の前に集まった参加者たちの中心に居た、忘れもしない空条承太郎の姿を。
あそこにいた正確な人数まではわからなかったが、少なくとも敵対している者同士の距離の取り方ではなかった。燃えつきたと思っていたポリタンクを
囲んでいた事からも、あれが火事ではなく放火である事に感づいていると思った方がいい。
そしてもし、あの一行の中にジョニイ・ジョースターがいたならば、最悪接触した途端に問答無用で攻撃の対象となるだろう。

――杞憂、という言葉がある。
古代中国の杞の人間が『もしも空が落ちてきたらどうしよう』と、ありもしない可能性を心配した挙句に衰弱してしまったという故事にちなんだ言葉だ。
こと自らの殺人を隠し通すことに賭けて吉良は絶対に近い確固たる自信を持っていた。持ち前の高い能力とキラー・クイーンの力をもってすれば
犯行の露見など有りうるはずも無いのだし、そのような事態はまさしく『杞憂』だったからだ。昨日までは。

67 :
吉良はしのぶの右手に目をやると、すこし表情を和らげた。

「ん、ああすまないちょっと考え事をね―――他の女の事なんて考える訳ないだろ? ほら、そんなに拗ねるなよ」

ついに吉良にとっての杞憂は杞憂ではなくなり、空は今にも落ちてこようとしている。
この時間はおそらく自分にとって最後の「平穏」だ。吉良吉影は重々理解している。だから今は彼女とこうしていたかった。
胸に湧き上がっていたどす黒い気持ちを静めるとしのぶの右手首を一瞬強く握り、次に優しく両手で包み込んで口元へと運ぶ。

「しのぶ……」

彼女の人差し指をゆっくりと下唇に押し付ける。そのまま指を滑らせると今度はつるりとした爪で上唇をなぞる。

「君は……ステキだ……」

幾度かの往復ののち薄く開いた口で彼女を迎え入れると、待ちかねたように指全体を愛撫し始める。
歯でなぞって硬い骨の形を確かめ、薄い肉をこね回し、吸い、また歯を当てて。
甘噛みするたびにぎこちなく動く指の感触を楽しみながら第一、第二関節の皺を緩急をつけながら舌で舐め擦ってゆく。

シャブッ

チュパチュパ

ペロン、ペロンペロン

舌の動きは初めはゆっくりと、しかしだんだんと熱がこもったものに変わってゆく。合わせるように息が荒くなり鼓動が早鐘を打つ。
まるで自身の興奮と熱を分け与えるかのように吉良は甘やかな彼女を味わい続けた。



◆ ◆ ◆



「不要だと思ってはいたが、捨てずにとっておいて良かった。君の趣味じゃあないかもしれないが――プレゼントだ」

空条邸で回収した支給品を一枚開いて宝石のついた指輪を取り出すと、優しく薬指に嵌めてやる。
しのぶの年齢を重ねた手には少しデザインが若すぎるかもしれないが、吉良の目にはとても似合っているように見えた。
特別形が良かったり美しい訳でもない。というか、そもそも好みな訳でもない。それなのにこの手には惹かれるものがある。
あたたかくて……安らぐような。
この『彼女』に比べればサンジェルマンの袋に入れたままの『彼女』のことなど、もはやどうでもいいことだ。

68 :
「これは平穏を望む私の主義に反することで非常に不本意ではあるが、私は大統領を排除しなければならない敵と認識した。
 今の状況から奴に辿り着くのは困難なことだろうが、自分への試練と受け取ったよ」

大統領のあの余裕ぶりからして、おそらくスティールの工作にも気付いている可能性が大きい。
参加者に対してあれだけの監視体制を敷いて管理しておきながら、忠誠心の無い部下を信用して野放しにしておくような低能のはずはないからだ。
いかにして空条承太郎達の目をかいくぐるか、リスクを冒してでもジョニィを探し出し接触するか否か。
大統領の能力だけでは説明のつかない事象も多々見受けられる。課題は山積みだ。

このゲームの真なる主催者、合衆国大統領ファニー・ヴァレンタイン。
自分の本性を知ってしまった男。
スタンド能力を自ら晒し、情報を与えてきた男
犯行をバラしはしないと慈悲を与えてきた男。
空条承太郎、カーズ、DIO。彼等には敵わないと言い切った男。
高みから見下ろしながら一連の屈辱を浴びせかけてきたあの男には、もはや死をもって償わせる以外道はない。
吉良にとって大統領はもはや承太郎以上に憎き存在となっていたのだ。



ふと繋いだ右手首に目をやると、指輪がきらりと光る。

(まだ、Rのですか?)

そう言われたような気がしたが、即座に頭から消した。少し悲しそうに見えたのも、気のせいだ。

(私はもはやほとんどの参加者の中で「殺人鬼」として扱われていてもおかしくない。このイカレたゲームのルールとして強制されているとはいえ、
 そもそも殺人とは社会的に許されない行為であり殺人者は裁かれるべき対象だからだ。私は当然それを正しく認識しているからこそ、
 今まで気を使って暮らしてきた……不幸にして人を殺さずにはいられないサガを背負ってはいるが、それでも、そう生まれついてしまった事
 自体は決して『悪』ではないし『罪』でもない筈だ!)




「君と一緒に脱出したいんだ。私について来てくれ―――できればその先も、ずっと」

69 :
何故それを生きている彼女に言えなかったのか。
全てをさらけ出したとしても彼女ならばきっと、ほんの少し悩んで、そしてついて来てくれただろうに。
愛をもってこれまでの罪も受け入れ、共有してくれただろう。
彼を善き方角へ導く聖女となり得たかもしれないのに。
何故? どうして?









――――それは彼が『吉良吉影』だから。







【C-1 サン・ピエトロ大聖堂 / 一日目 午後】

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(大)、全身ダメージ(小)疲労(小)
[装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着)、
[道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、
    地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2〜3(しのぶ、吉良)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.大統領をR。
1.空条承太郎をR。
2.優勝を目指し、行動する。
3.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。
※バイクは一緒に転送されて、サン・ピエトロ大聖堂の広場に置かれています。ポルポのライターも空条邸から吉良と一緒に転送され、回収されました。
※吉良が確認したのは168話(Trace)の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、
  地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。
※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。

支給品紹介
【結婚指輪】
ドルドに支給。

アナスイが寝ている徐倫にこっそりはめようとしたが、寝ぼけた徐倫に窓から投げられてしまった指輪。
せっかく大金はたいたのにあんまりである。

現在は川尻しのぶの右手首に嵌まっている。

70 :
以上です。
仮投下からの修正はライターの情報を追加したくらいです。
もともと首輪の考察をしていたら150人の吉良のネタが浮かんだので、大統領に言わせたいと思って
前後の流れを作ったらこうなりました。
今年は少しでも投下が増えるといいですね。それではまた次回作で。

71 :
投下乙です
サバスの矢がそんな仕組みになっていたとは…オエなんとかさんは素直に刺されてればなんとかなっていたのでは?
まあ過ぎたことを言ってもどうにもならないので危険対主催に鞍替えした(?)吉良のこれからに期待ですね
act4なら確かに大統領を打ち倒せるかもしれないけどジョニィに渡るかどうか…

月報も一緒に失礼します

話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
178話(+1) 35/150 (-0) 23.3 (-0.0)

72 :
投下乙です
サバスの矢のフラグの回収をこんな風に持ってくとは思いもよらなかったです。オコエ…オエモ…オエなんとかさんはただ運が悪かっただけなんだ…
吉良は主催側の情報とか参加者のある程度の情報、教会組+ジョニィとの接触フラグもたったしどうなるやら、そんなに素直に動くとも思いませんが。
そして最後のしのぶさんへの心境がぐっときた。噛み合ってるような噛み合ってないようなどこまでも交わらないというか、まあ吉良ならこうなるよねって感じです。
久々の主催組の動きに心躍りました。今後も楽しみにしています。

73 :
遅くなったが投下乙です。
単純な吉良サバス戦とタカをくくっていたらまさかの主催者介入で驚きました。こういう繋ぎ方があるんだなぁ。
今後のフラグもきっちり立って行って期待が高まります。

74 :
吉良が矢に刺さってバイツァな展開かと思ってたら度肝を抜かれました。
この出来事が対主催者行動の肝になるかどうかってところですね。

75 :
ようやく予約が増えてきて嬉しい限りだぜ
贅沢だってわかっちゃいるが支援絵も増えないかな。SSと絵で二度楽しむのが好きなのだ

76 :
したらばにて◆LvAk1Ki9I.氏のご意見を頂きましたので先に投下させていただきます。

77 :
『強くてニューゲーム』――という言葉がある。

元々はRPGだかのクリア後特典で、一度クリアした状態でもう一度最初から遊べるというものだが……
この『強くて』は一体何が強いんだろうか。考えたことはあるかい?

思うにこの『強い』のは、何も強力な魔法が使えるとか、優秀な武器を装備してるとかいうことではないと思うんだ。
――や、君らに前に話した強者の定義とはそりゃあ違うよ。まあ聞けって、重要なのは次だ。

俺はね、“知っていること”こそが『強い』んだと思う。
ここでこういう敵が出てきて、この洞窟にはどんなアイテムが落ちていて。
用がない――そうだな、大体街の入口にいて地名を教えてくれるような――そういう連中には声すらかけない。知ってるんだから。

と、ここまで話したところで――今回の登場人物たちは、そういう『用のない』……言い換えれば“知らない”連中だ。
時は日暮れ、場所は倒壊した空条邸からやや離れた民家。それじゃ、始めよう。


●●●


「それで、仗助くんたちは?」
屋内の安全を確かめ、リビングに各々が陣取ったのち、最初に口を開いたのは広瀬康一。その内容は至極当然。
その他の面々も似たようなセリフを投げかける。
落ち着いたら話す、そういったきりここまで無言を通し続けたその顔に対して少々の不信感を抱きながら全員が黙ったところで、やっと噴上が……答えを知る者が、口を開く。

「……行っちまったよ。
 あぁ――いや、話が前後するが、シーラっつったな、割と元気そうでなによりだ」
「えぇ、おかげさまで。
 ……で、そのお礼も言いたかったのよ。行っちまった、ってどこに?」
名前を出されたシーラEが挨拶と同時に、これもまた全員が聞きたがっているであろう言葉を代弁する。

「先祖代々の因縁を晴らすんだとさ」

78 :
今度は即答した噴上の、ともすれば開き直ったかのようなその言い草に何人かが顔をしかめる。
――だけではなかった。どしどしと足音を立てながら歩み寄り、噴上の胸ぐらをつかんで引きずり起こしたエルメェスの額には青筋が浮かんでいる。
「で?それで黙って見送っちまったのかよ、そこは『俺を倒してから行け』とかいうセリフを吐くところだったんじゃあねーのかッ!アァ!?」
「――面と向かって足でまといだと言われちゃあ仕方ねえだろ」
噴上も怯まずその瞳をまっすぐ見つめ返す。いや、睨み返すと行ったほうが差し支えないだろう。それほどまでに二人の間の空気は尖っていた。

「二人共落ち着け――俺も色々言いたいことはあるが、まずは彼の言い分を聞こう。全て聞いてから文句なりなんなり言えばいい。このままでは話が進まないぞ」
マウンテン・ティムが割って入らなければどうなっていたことか。舌打ちをしながらも手を離すエルメェスを見て安堵する康一。シーラも似たような表情だった。

「……で?改めて聞かせてみろ、お前があいつらを見送る羽目になった理由を、全員が納得いくように」
彼らを宥めるついでに穏やかな口調でティムが噴上を促す。噴上は軽く咳払いをし、ゆっくりと、しかし確実に語り始めた。


●●●


「じゃ、じゃあ今から急げば仗助くん達に追いつけるんだね?」

自分の話が終わったとアピールするように一息ついた噴上を確認しまっさきに口を開いたのは、やはり広瀬康一だった。
よほど友人のことが心配なのだろう。自分自身の不甲斐なさを悔いているのだろう。
そして――彼はこの同胞たちがすぐに賛成し、奮起してくれると信じて疑わなかった。それゆえに、

「俺は反対だ」

と、今まで静かだったのが不思議なくらいにダンマリを決め込んでいたシュトロハイムの一声を咄嗟に理解できずにいた。
そして、それを見かねてか、康一が次の疑問を口にする前に言葉を繋ぐ。

「いいか、俺はキサマらよりも柱の男、そして吸血鬼については良く知っている。
 無論、その過程で石仮面のことも知り得たし、それを被り吸血鬼となったディオという男、そしてその関係者、すなわちジョースターの一族のことも調べ上げた」
「なるほど。だったら尚更加勢してやったほうがいいんじゃあねーのか?俺だって黙ってあいつらを行かせちまったこと、後悔してるんだからよ、こう見えて」
そういう噴上を手で制しシュトロハイムが続けた。
「いいか、彼らはこの殺し合いの場に連れてこられる前――いや、それよりもさらに以前。
 俺の知るジョジョ、つまりジョセフから見ても50年来の、さらに言うならジョセフの祖父ジョナサン、さらにその父のジョージからの長く深い因縁がある」

79 :
「だからアイツ等だけで決着つけさせてやれってか、それは流石に考え方が古臭すぎやしないか?ナチのおっさんよ」
凄んだのはシーラだった。康一も慌てて口を開く。
「そ、そうですよシュトロハイムさん。それでもし仗助くん達が殺されでもしたら、僕らが見殺しにしたようなものじゃあないですかッ
 そうでしょう?そうですよねッみんなッ!?」

ぐるりと仲間たちの顔を見回し、最後に康一と目があったのはマウンテン・ティムだ。
その強い眼差しに答えを求められたように感じてゆっくりと吐き出す。

「康一くん――

 残念だが、今回ばかりは俺もシュトロハイムと同意見だ。彼らの戦いに水を差すわけにはいかない」
その意外な一言にシュトロハイム以外の全員が目を見開く。

「君らの気持ちはよくわかる。普段の俺なら力づくでもシュトロハイムを説得しただろう。
 だがね……因縁だとか仇討ちだとか、そいったものは、当人同士でしか決着をつけられないものなのさ」
「仇討ちか――確かに、それは自分の運命に決着をつけるためにある。そうだな、アタシらが邪魔するのはナンセンスって訳か」
「言われてみれば――あたしたちはジョースター家ってもん、何も知らないもんな。そんな連中に宿敵を倒されても、勝った気はしないだろうな」
「そんなッ!エルメェスさんまで何言い出すんですかッ!?シーラさんもッ」

すがるような気持ちで噴上を振り返る康一。
その顔はさらに青ざめることになる。

「……すまねぇ、康一。ここまで言われちまったら俺にも何も言い返せねえ。
 それに――分からんでもねぇ、って部分もある。
 もし、もしも……アケミやレイコ、ヨシエに関わることだったら俺も誰にも邪魔されたくはねぇ、と思う。何も知らねぇ奴が口出すんじゃあねぇってな」


●●●


ついに孤立してしまった康一。
泣き出しそうな顔のまま玄関の方へ駆け出す。自分ひとりでも向かおうという覚悟がその背中に見て取れた。

だが、その肩を掴んで離さないものが一人、他ならぬシュトロハイムである。

「は、離して下さいよッ!僕だけで行きますからッ!あなた達がそんな薄情な人たちだったとは思いませんでしたよ!」

80 :
「落ち着け康一。

 ――『栄光の代価』という書の中でピット・ファイターのカマールという男がこういう言葉を残している。
 『真の強さは行動の中にある。そう思わん奴を弱虫野郎というんだ』とな」

「あなたに言われたくないですよッ!行動しようとしないあなたなんかにはッ」

ブンと手を振りほどく勢いのまま振り返った康一の目に飛び込んできたのは、先程までとはうって変わって穏やかな表情のシュトロハイムだった。
その口角が釣り上がる。それはいつもの不敵なシュトロハイムの表情。
「誰が行動を起こさんと言った?なぁお前たちィッ!?」

その一言から先はあっという間だった。全員が矢継ぎ早に言葉を発する。

「そうだ康一くん。俺たちは行かないとは一言も言っていないぞ」とティム。
「そうそう、行き先こそ違うがな」とエルメェス。
「ああ。俺たちに出来ることをしてやろうぜ」と噴上。
「まっ、そういうことよ。動きたくてウズウズしてるのはあなただけじゃあないのよ」最後にシーラEが付け加えた。

「で、でも出来ることって一体……」
あまりの展開の速さに目を回す康一がゴニョゴニョと呟いた。もちろん答えを用意していないシュトロハイムではない。

「いい着眼点じゃあないか康一ィッ!
 だが分からんか!彼らの決着に水を差そうとしてるのは“我々だけじゃあない”のだよオォッ!」
「いちいちうっせーな、相変わらず」
エルメェスが茶化す。同時に噴上が懐から何かを取り出した。

「ま、そういうこった。例えば――こいつみたいにな。
 さっきまでこのトランプ、足生えてたんだぜ。スタンドだろーな。間違いなく」

その言葉にぴくりと反応したのは勿論シーラ。
「どこで拾ったの?その『ハートの4』のカード。
 でも――まあ、あのクソならやりかねないわ。
 彼らの戦いに……大げさに言えば人生に、マヨネーズとシロップをぶっかけてグチャグチャに混ぜるような真似をね」


●●●

81 :
 

82 :
……ここから先は、全員のセリフが簡単に想像できるだろ?

要するに『横槍入れるなんて無粋な真似は俺らがさせんッ!』ってことさ。
知らない奴らは知らない奴らなりに――彼らの誇りを守ろうとし、それこそが自分たちのやるべきことだと、そう言ったのさ。

もちろん行動も早い。シーラがムーロロに関する情報を可能な限り話して情報を共有。
スタンドそのものと言っていいトランプカードがあるから匂いの追跡は容易。

そこに罠があろうが何があろうが、目的はただ一つ!ってところだ。


――強くてニューゲームの話に戻るけど、つまりはそういう事なのさ。
勇者は勇者。表舞台で華々しく戦う。
かと言って、相手にされない連中が何もしないわけじゃあない。
彼らには彼らの戦いがある。王には王の……料理人には料理人の……


俺だってそうさ――君らが聞きに来てくれれば、いつでも話をしてあげよう――

83 :
 

84 :
【E-4北東部 民家 / 1日目 夕方】

【チーム名:新生・HEROES】

【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬15発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
0.ジョジョとDIOの因縁に水を差すトランプ使いは俺たちが倒す!
1.柱の男だけが脅威ではないのか…?

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:健康(ほぼ回復しました)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
0.仗助くん達とDIOの因縁に水を差すトランプ使いは僕たちが倒す!
1.色々考えるのはとりあえず後回し!仲間たちと共に戦って『成長』する
2.協力者を集める

【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:健康
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)、破れたハートの4
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す
0.仗助たちとDIOの因縁に水を差すトランプ使いは俺らがぶっ飛ばす!
1.トランプの匂いの元=ムーロロの下へ向かう
2.協力者を集める

85 :
【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
0.ジョジョ一族とDIOの因縁に水を差すトランプ使いはアタシたちが倒す!
1.運命への決着は誰も邪魔することはできない……
2.F・F……いや、今はよそう

【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミー』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:健康(回復しました)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本、ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者
0.ジョジョたちとDIOの因縁に水を差すトランプ使いは俺たちが倒す!
1.協力者を探す

※自分の能力+承太郎の能力で首輪が外せないか?と考えています。ただ万一の事があるのでまだ試す気にはなっていません

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:痛み(軽度〜中度に回復)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.ジョースター家とDIOの因縁に水を差すムーロロ、アタシが落とし前をつける!
1.このまま皆で一緒にいれば、ジョルノ様に会えるかも?

※ジョセフと仗助により傷自体は完璧に治されました
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません

【チーム全体の備考】
全員がカンノーロ・ムーロロについての知識をシーラから聞き、情報を共有しました。
(参戦時期の都合上シーラも全てを知っているわけではないので、外見と名前、トランプを使うらしい情報チーム、という程度です)
チーム全体の行動方針として、噴上の能力を頼りにムーロロのもとに到達するのが第一目的です。

86 :
最後の最後で連投規制につきしたらばにて挨拶しましたがこちらでも改めて。以上で投下終了です。

随分と端折った描写になってしまいましたが(いつものことですが)問題ないでしょうか……
久々に書くとうまく書けないものですorz

シーラが『ウォッチタワー』をどこまで知っているのかがイマイチわからないのでその点で問題があれば、ご意見伺いたいところです。
先に予約されてた◆LvA氏の話に大きくは関わっていないと思いますが、そのへんも合わせてご意見いただければ幸いです。

物語も終盤にかかってくると何気ない繋ぎ話って書きにくくなるんですよねぇ(苦笑
それでも需要があればまたいずれ、それではノシ

87 :
>>86
乙です。MTG…シュトロハイムは赤茶っぽい。
シーラとムーロロについては参戦時期も曖昧ですし、これで良いかと。
ムーロロのスタンド能力は厄介ではあるものの索敵と防衛能力が落ちている今、見つけ出せればぶち倒すまで行かなくとも容易に動けないように出来るか?
チームHEROESの残りのランダム支給品次第でもあり、こちらの山場と言った所でしょうかね。

88 :
投下乙です。
ここに来てついにムーロロが追われる側になりましたね。
琢馬やセッコといった強敵もいますが、コウモリ野郎の末路がどうなるか期待が高まりますw

89 :
投下乙です。
ヒーローは他のヒーローの戦いを邪魔してはならない…まさしく矜持ですね。
保安官のティムは康一側かと思ったけれど、そういえば彼は正当な決闘ならば殺人すら許される世界の住人だった。

シーラEのウォッチタワーについては恥パ2章が初見のようなので、備考にある『トランプを使う』以上のことは知らないと思われます。
彼らの共有している情報と残り人数からすればトランプの本体がムーロロだと推測するのは別に問題ないかと。


さて、未だに時間は取れませんがこれ以上遅れるのもどうかと思うので、少しづつでも投下していこうかと思います。
30分以上投下がない場合はその日の分は終わったと思ってもらって結構です。
それではジョナサン・ジョースター、ジョセフ・ジョースター、花京院典明、DIO、東方仗助、ジョルノ・ジョバァーナ、F・F、空条承太郎、ナルシソ・アナスイ 、ジョンガリ・A 、ジョニィ・ジョースター、ディエゴ・ブランドー
投下開始します。

90 :
―――さあ、相応しき舞台は整った。
待ち受けるは邪悪の化身と、その影に潜む貪欲なる獣……そこにある星は一つのみか、それとも二つか……?
挑むは集いし六つの星……ほんの一部、異なるものも混ざっている六つの星。

だが、全ての星にはまだ足りない。
未だに見えぬ最後の星は何処にか……まずはそこから話すとしよう―――


#


「アナスイ、こういう言い方はあれだけど……本当に『地下道』を選んでよかったのかな?」
「急がば回れという言葉もあるように、どう進むのが最善かは時と場合による……が、今は間違いなく『近道』を進むべきだ……
 承太郎さんを、一刻も早く止めなければならないからな………」

ナルシソ・アナスイとジョニィ・ジョースター、彼らは先程他の参加者たちと空条邸の近くにいて、そこから―――いや、細かい話は省こう。
重要なのは彼らが今現在、「二人だけで地下を西へと進んでいる」ことだった。

「………ジョータロー、ね……本当に、この先にその人も居るんだろうか」
「おまえにも大体の方角しかわからないし、誰かもわからない……なら余計なことは考えず、ただこの目で確かめるだけだ。
 まあ、相手に『まだ地上に出られないヤツがいる』ということを踏まえるなら……
 承太郎さんも同じものを感じ取ってヤツを追い、結局は陽の当たらない場所に行き着く……
 だったらこっちも最初から地下を進んだほうが手っ取り早い」
「………」

ジョニィ自身も半信半疑の感覚を彼以上に信用しているアナスイには、果たして何が見えているのか……
そしてアナスイは本当に自分の言いたいことを理解しているのだろうか……いくらか不安を残しつつもジョニィは走る。
やがて、位置的にはもう少しでサン・ジョルジョ・マジョーレ教会にさしかかろうかというところで……

「………ん?」
「どうした……居たのか?」
「いや……何でもない」

ふと立ち止まったジョニィにアナスイは問いかけるが、どうも要領を得ない。
歯切れの悪い答えを訝しみながらも時間が惜しく、アナスイは再び走り出す。
だがジョニィはそこで立ち止まり、考え事を始めていた。

(見間違いか……? あれは、Dioの恐竜―――だったような……)

視界の端にちらりと映った……ような気がする動くもの。
だが確証はないうえに、見えた方向は教会までのルートから大きく外れる横穴。
結局、ジョニィがどちらに進むのかを決断したのはそれから数分後のことだった。


………さて、ここでだいたいの者はある疑問が浮上しているのではないだろうか。
すなわち―――『この出来事はいつの話なのか』という疑問が。

その答えが明らかになるには、もう少しだけ話を先に進める必要がある。

91 :
#


「最後の一人は、とうとう現れなかった……か」
「……鐘楼から何度か射撃音がしていた。誰かが近くに来ていたとは思うんだが……」

サン・ジョルジョ・マジョーレ教会内部にて。
空条徐倫の顔でF・Fが呟き、ジョナサン・ジョースターもつられて言葉を漏らす。

「それが『そいつ』かどうかはわからん。たとえそうだったとしても、ここまで来れないようではDIOとの戦いには到底参加させられん」
「ジョナサンたちと別れてから数時間以上……ひょっとしたら『既に来ている』のかもしれませんし、命を落としている可能性も十分存在します。
 いずれにせよ、『彼』をあてにするのは現実的ではないでしょう」

それに答えるは空条承太郎とジョルノ・ジョバァーナ。
やや否定的な意見ではあるが、彼らもまた未練がないわけではなかった。

彼らが待っていたのは名簿に存在し、且つ現時点で名前を呼ばれていない最後のジョースター―――ジョニィ・ジョースター。
奇妙なことにジョースターという姓であるにも関わらず、この場の誰もが彼との繋がりを知らない唯一のジョースター。
数時間前にただ一度だけジョナサンが接触し、そのまま一方的に別れてきた男。

彼もジョースターの一族なら、同じように導かれて姿を現すのではないか……そう考えて一行は待機を選択していた。
だが、ジョニィが教会の扉を開けて入ってくることは終ぞなく……
これ以上待つと太陽が沈んでしまうというところで彼らは待つのを諦め、DIOの潜む地下へとその足を踏み出しかけていたのだ。

「ま、問題ねーだろ。なんたってこっちはこれだけ人数いるんだぜ? DIOのヤツはひとりだったんだろ?」
「……今もそうだという保障はどこにもない。
 それに人数など、ヤツに対してはほんの少し有利になる程度だ…むしろそれで油断して足元をすくわれるなよ……
 言っておくが、俺はここにいる誰かが危機に陥った場合、そいつを犠牲にしてでもDIOを倒すことを優先する……」
「おいおい承太「わかりました承太郎さん、ケガしたやつはおれが完璧になおしてやります。だから、思う存分やってください」………」

ジョセフ・ジョースターの軽口に承太郎が注意を促し、反発は東方仗助が押さえ込む。
仗助とて……承太郎もだが、犠牲などハナから出すつもりは無い。
それを理解しているからこそ、彼は不器用な承太郎に代わって言い返すのだった。

偶然……などでは断じてないだろう。
『運命』とか『引力』とか、そんな何かの元で時と場所を超え集結した『ジョジョ』たちは、ある意味自分たち以上に関わりが深い男の元へと進んでゆく。
そして、地下へと続く階段の入り口付近………先頭のジョナサンが振り返り、確認する。

「……みんな、覚悟はいいかい? それじゃあ……」


                           行
                           く
                           ぞ
                           !

92 :
全員の肯定を確認し、一行は地下の納骨堂へと突入を開始した……!
地上からわずかな光が届いてはいるが階段の下は明りが消されているのか何も見えず、まるで深淵を覗き込んでいるような感覚さえ覚える。
勿論、彼らはただ覗き込むだけではなく……その中へ足を踏み入れなくてはならないのだ………!

「………暗いっスね」
「懐中電灯は点けるな、明りは絶好の標的だ………波紋レーダーの反応は?」
「間違いなく『いる』……ヤツの生命の振動を感じる! 地下にいるのは、ヤツひとりだけだッ!!」

前後左右上下、全ての方向に注意しながら連れ立って螺旋階段を下りていく。
だが、地上と地下のちょうど中間あたりまで来たところで……



                          ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ オ ッ ! !


「!?」
「ゲッ! で、出口が塞がれちまったッ!!」

突如轟音とともに、地上へ上がる道が崩れたッ!
同時に、わずかに差し込んでいた光も閉ざされ完全な暗闇が訪れるッ!!

「まずは逃げ道をなくすか……ならおそらく、あいつが次に狙うのは―――!!」


                               「『世界』ッ!!」


ジョナサンの言葉の途中、承太郎だけはその声を聞いて理解することができた―――時が止められたことを。
だが一寸先すら見えない闇も相まって、DIOの姿を視界に捉えることができない。
即座に見ることを諦め、代わりに注意深く音を聞き……

ビュンッ!

「オラアッ!」

自分に向けてブッ飛んできた石を叩き落すッ!
そのまま追撃はなかったが……時が動き出したとき、承太郎は敵の本当の狙いに気づいた―――
彼らの足場である、階段が崩れ落ちたことでッ!!

(……石は、俺の行動を封じる囮だったかッ!!)

階段はそう簡単に崩れるようには見えなかったが、それは上から見た場合。
内側を最低限支える部分だけ残して削り取っておき、自分が石に気をとられている隙に別の攻撃で支えを破壊した…といったところだろう。

視界が闇に閉ざされた直後、しかも攻撃は時止め最中のため、階段が崩れたのを理解し対処できるのは承太郎だけッ!
その承太郎もすぐには時を止められず、皆を助けられないッ!!

結果、彼らは全員バランスを崩して落下……
納骨堂の硬い床に叩きつけられ気がついたときには―――

93 :
                「ぐっ……みんな無事かッ!? どこにいるッ!!?」

「な、何も見えねえ! どうなったんだ!!?」
                             「ど…どこから…い…いつ『襲って』くるんだ!?」



                       ―――完全に、お互いの位置を見失っていた!!


DIOがこの暗闇の中でどれだけ目が利くかはわからない。
だが彼は闇に生きる吸血鬼………少なくとも自分たちよりはずっと、見えているだろう。

さらに、警戒すべきはDIOだけではない。
最低もうひとり、先程出口を塞いだ敵がどこかにいる。
その正体が全くわからない以上、波紋レーダーに反応がなかったからといって油断は出来ない。
そうなると、すぐにでも自分を含め誰かが襲われてもおかしくない……パニックを引き起こすには十分すぎる条件だった。
しかし、そんな混乱する状況をいち早く打破するべく承太郎の声が響く。


                 「全員なるべく動くな! 近づくやつは誰だろうと構わず叩きのめせッ!!」


味方が下手に動かなければ、近づいてくるのは敵のみ……同士討ちは避けられる。
逆に援護も期待できなくなるが、ここまで来てひとりで戦うことに恐怖を覚えるような者はいない筈。
ある程度時間が経てば目が慣れた他の者が援護に入れるだろうから、それまでは各自で何とかしろ―――そんな意味をこめた指示。
彼の声に他の者は……


       「えっ……」            「お、おうッ!」     「ああ……!」
 「は、はいッ!」
                                                   「……わかった!」

             「……わかりました」


それぞれ異なる反応ながら、全員が返答した。
これにより、現時点ではまだ誰もやられていないことがわかった各自もわずかながら落ち着きを取り戻す。

(ひとまずはこれでいい……次の一手は………)

今この状況において最も頼りになるのは視覚ではなく聴覚。
地下は広く、柱も幾つか存在するため声が思った以上に反射するものの、返事で味方のだいたいの方向はわかった。
後は周りにも警戒しつつ、承太郎は自分の体に神経を注ぐ。
もし、DIOが時を止めたのなら自分がどうにかするしかないのだから。

(時を止めるタイミングを誤ってはならない……ヤツは今、どこにいる………?)

承太郎のその疑問は、すぐに明らかとなった―――

94 :
                   「我が因縁の一族であるジョースターよ、おそろいでようこそ………
                  わたしは逃げも隠れもしない…おまえたちの来訪を心より歓迎する………」


                       「「「「「「DIO(ディオ)ッ!!!」」」」」」


当のDIOの声が地下内に響き渡り……返された叫び声が幾重にも重なり、反射してゆく。
正確な位置はわからないが、そのドス黒い存在感を間違えるはずもない。

果たしてどう動いてくるのか……緊張が最大限になる中、DIOは彼らの叫びもどこ吹く風の口調で続けてきた。

「そう息巻くんじゃあない……先程振りの者、久し振りの者、そして初めましてと言うべき者も……
 せっかくこうして一堂に介する機会を得たのだ……それぞれ、このDIOに言いたいことのひとつもあるのではないか?
 わたしも、おまえたちそれぞれに聞いておきたいことがある……命の取り合いは、それからでもよいだろう」

相手の数がわかっているにも関わらず、この余裕……!
一見敵に囲まれた四面楚歌の状況でも、邪悪の化身は妖しく優雅に圧倒的存在感を示していた……!
だが勿論、彼の宿敵たる一族もこの程度で怯みはしない!

「勝手に話進めてんじゃねーぞッ! だいたい隠れもしないって、この闇に隠れてんじゃねーか! 人数差にビビッてセコイ手使おうって魂胆がミエミエだぜッ!!」
「そうだぜッ! それに歓迎するってわりにゃあ、随分乱暴な出迎え方じゃねーっスかァ―――!!?」

まず返すはジョセフと仗助。
彼らはどちらもDIOとは初対面であるものの、この数秒たらずで理解していた―――こいつは、間違いなく『敵』だと。

「話なら先程、終わったはず……これ以上語りたいというのならば、ひとりで勝手に喋っていればいい……」
「言いたいことが無いわけではない……だが、ぼくらはいまさら話し合いで済むような立場ではない……そうだろう?」

ジョルノの視線と言葉は、もはや自分の親に対するそれではなかった。
ジョナサンも戦闘態勢は崩さない……彼も先程、DIOとの話はついていたのだから。

「「………」」

そして、承太郎とF・Fは口を開きすらしない。
相手の時間稼ぎに付き合う気など毛頭なく、理由は別ながら口をきくのも忌々しかった。

皆の思いは一つ………
以前から彼を知る者も、初めて彼と会った者も―――このDIOは『倒すべき悪』だと『言葉』でなく『心』で理解していた………!

「クックックッ……どうやらわたしは相当嫌われているらしい……
 理由がわからなくもない者もいるが……まさか全員がそうとは心外というものだ……
 ならば仕方が無い…多少力づくでもこちらの質問に答えてもらうとしよう………」

それぞれの反応は概ね予想通りだったのだろう。
姿こそ見えないが、不敵な笑いを浮かべているであろうことは容易に想像できる。
全員が警戒する中………遂にその気配が動き出した―――!


かくして戦いは、始まった―――彼らの血統に深く深く関わる、運命の一戦が………!

95 :
#

―――理由。
人間が行動する裏には必ず理由というものが存在する。
どんなに崇高な行為にも下種な行為にも、そこには必ず……極端な話、なんとなくだとしても何かしらの理由があるものなのだ。
この理由の一番厄介な点は…『当人にしかわからない』ことである―――



「まずはおまえだ、我が『息子』よ」
「……父親面するつもりはないと、そう言っていませんでしたか」

DIOが向かった先にいたのは―――ジョルノ!
他の者もなんとなくその気配を察するものの、承太郎の指示に従いまずは自分の身を守ることを優先していた。
必然的にジョルノとDIO、一対一の状況が作られる……!

「どんな子供であろうと、生まれてくる親は選べん。
 それがどんなに下衆で、小物で、どうしようもない親だったとしても、そいつと親子である事実だけは何をしようが消せないのだよ」
「………」

まるで自分ではなく別の誰かに言い聞かせるようにクックッと笑うも、ジョルノは気にしない。
相手のペースに巻き込まれては先程の二の舞になるだけだ。
言葉は半分以上聞き流し、意識を集中……ゆっくりと相手が近づいてくるのを感じ取る。

「この闇は気に入ってもらえたかな? 先程おまえが教えてくれたことだ。
 時を止められても、視界が防がれていては意味が無い―――
 承太郎を封じる方法を、おまえがわたしにもたらしてくれたのだ……」
「ええ、かえって都合がいいくらいです……あなたの顔を見ずにすみますから」

吐き捨てるようにそう言いつつも、ジョルノは目を閉じていた。
あえて視覚を捨てることで、他の感覚を最大限にとぎすませるために。

「顔、か……そういうおまえこそ先程は今にも消え入りそうだったのが、この短時間で随分と面構えが変わったのではないか?」
「あなたに言われたとおり自分が何者なのか考え………答えを見つけただけです」
「フン、たかだか十数年しか生きていないというのに、まるで悟ったような口をきく……」

答え―――正確にはまだ掴みかけなのかもしれない。
だが少なくとも、もうあの時のように無様な顔など晒しはしないだろう。
まるで神話に出てくるパンドラの箱のように、『絶望』の後に『希望』を―――『光り輝く道』を見つけたのだから。

「それにしても、つれなくなったものだ……先程のおまえはまだ可愛げがあったというのに………
 さて、最後におまえはわたしを倒すべき、『悪』と言った……その理由を、聞いておこう」
「もはや、言っても『無駄』でしょう……親の心子知らずという言葉があるように―――」


                    「―――あなたにぼくの心は永遠にわかるまいッ!」


断固とした意思表示を返すと共に……闇の向こうから殺気が迫る!
今、ジョルノが居るのはサン・ジョルジョ・マジョーレ教会地下の納骨堂、螺旋階段近くにある柱のそば。

―――そこは、ある男が『子供を裏切った父親』に似たような言葉を言ったのと、全く同じ場所だった。

96 :
(………来るッ!!)

殺気が大きく膨れ上がる。
相手の腕が空気を切り裂く音が聞こえ、またしても『死』が迫ってくるのがよくわかる。
しかし、ジョルノは先程と比べ不思議なほど落ち着いていた。

―――なぜなら今の彼は、ひとりではないのだから。

(わかるぞ……相手がどうくるかッ!!)

目を閉じていてもはっきり感じ取れる。
相手の攻撃は自分から見て左前方、やや上からの腕によるストレート。
おそらくこれは牽制、防ぐか避けたところに本命の一撃が来るのだろう。
だが、ジョルノはあえて攻撃に自分から突っ込んだッ!!

                             「 無 駄 ァ ! 」

クロスカウンター気味に拳をあわせ、そのまま先へ進ませる!
狙われた顔面は体を傾けることでかすらせ、勢いを殺さないようにするッ!
そして、前に出た拳を目一杯突き出し……相手の腕の先へと叩き込んだッ!!


                            ド グ シ ャ ア ッ ! !

「……!?」

鈍い音が響いた瞬間、ジョルノは妙な感覚を覚える。
拳が空を切ったわけではない、確かに手ごたえはあった。
だが―――

(今、ぼくが殴ったのは『世界』ではない……?)

問題は、その手ごたえがスタンドではなく……別の何かだったこと。
考えられるのはDIO本体しかないが…果たしてそんなことがありえるのだろうか?
自分の能力全てを見せたわけではないが、スタンドをよく知るDIOが一撃を食らうことの重みを知らないはずがない。
暗闇とはいえ、迂闊に攻撃をくらうような位置まで近づいてくるなどありえなかった。
すなわち、考えられるのは………

(まさか、わざと受けた……? 何のためにッ!!?)

ジョルノはたまらず目を開ける。
『ゴールド・E』の拳を受けていたのはやはり、『世界』ではなくDIOであった。
その顔が笑みを浮かべているところからして計算通りらしいのは間違いないが、理由がわからない。
ジョルノのそんな反応も予想内だったらしく……殴られながらDIOが口を開いた。

「おまえのスタンドに殴られると感覚のみが暴走し、自分も含め動きがスローに見えてしまう……
 自分の体が動かないことさえ除けば静止した時を自分だけが認識できる、我が『世界』とほんの少しだけ似ている能力……
 だが、それはあくまで『人間』の場合……人間を超越したこの『吸血鬼』のボディならば、果たしてどうなるかな?」

DIOの隅から隅までブッ飛んだ発言にさすがのジョルノも驚きを隠せない。
能力を知っているのはともかく、本来避けるべき相手の能力を逆に利用しようなどと、しかも初手から…!

97 :
続きが気になる!

98 :
だが、その一方でおぼろげながら理解していた。
―――そんなオイシイ話が、ましてやDIOのような悪人にあるはずがない……ということを。

「まさか、暴走した感覚に体がついていけるとでも? そんなこと、できるわけがない……!
 そもそも先程も喰らわせたが、その時は―――!?」

が、ここでジョルノに迷いが生まれる。
先程の話し合いの最中、承太郎が言っていたことを思い出したのだ。

―――DIOの肉体は100年前のジョナサン・ジョースターのもの……そして話を聞く限りヤツの時間ではまだ完全になじんではいない。
どういう状態なのか正確にはわからんが……『肉体と感覚が合っていない』ため、100%の力が出せないとでも例えておこう。
だがヤツがジョースターの血を吸いそのEXTRACTを取り込んだとき、その肉体はヤツになじみ完全なものとなる………
血液の無いF・Fはともかく、他の者は決してヤツに血を吸われるな―――

………DIOの肉体(ボディ)についての話を。

「ありえない……おまえが追いついていないのが感覚か肉体かはわからないが……
 ぼくらのうち誰かの血を吸ったのならともかく、承太郎さんの話ではおまえの体は完全にはなじんでいないはず!
 そんな状態で、ましてや暴走した感覚には吸血鬼といえどついていけるわけがないッ!!」
「愚かな……おまえたちが人数をそろえ、くだらん作戦を立てている間わたしが無為に時を浪費していたと思うのか?
 わかるのならば、確認してみろ……」

必死に反論するも、相手の確信めいた口調にジョルノは思わず気配を探ってしまう。
星のアザの気配……自分たちが6人、DIOを合わせて7人のはず。

「……!!」

だが今、周囲にその気配は――――――『8つ』あった……!
最初にDIOと会ったときは気配がなかったのを考えると、自分たちが地上に脱出している間に現れた……それしか考えられなかった。

(やはり……やはり最後の一人は『既に来ていた』ッ!
 まずいぞ……この状況は、考えうる『最悪のシナリオ』だッ!!)

思えば気づくべきだったのかもしれない。
先程あまりにも手際よく『分散』させられた時点で、自分たちの手が読まれていることに。
自分たちと同じく、DIOもまた無策でくるわけがないことなど簡単に予測できたはずなのに。

「忠実なる……とまではいえないが、我が仲間がわたしの元まで運んできてくれた……
 殺し方が悪かったせいで血液がほとんど失われていたのが残念でならないが、先程までよりボディがなじむのがよくわかった……
 とはいえ圧倒的に量が足りん、この肉体はまだまだジョースターのEXTRACTを欲している……それも、きさまらを全員始末した後で解消するだろうがなッ!!!」

『ゴールド・E』の拳は止まらない。
こめかみに拳を食い込ませつつ、DIOは自分の感覚が『暴走』し始めるのを感じ取り…笑い出した。

「ンンンン………! 100年前に体を両断されたことがあるが……これほどまでにッ!
 するどい痛みをゆっくりと感じたことはなかったなァ… フッフッフッフッフッ……」

はたしてどうなるのかジョルノにも、DIO本人にすらもわからない。
これはDIOにとっても『賭け』であった……ただし、ローリスクハイリターンの『公平』ではない賭けであるが。
不気味な笑いを浮かべたまま、DIOの顔が歪んでいく。

……ジョルノに『見えた』のは、そこまでだった。

99 :
「チェスに限らずボードゲーム全般に言えることだが、このような遊戯は二手三手…場合によっては数十手先まで読まねば勝てん……
 何故、そんなことをしなければならないのだと思う………?」


感覚が暴走したDIOの声をジョルノは聞くことが出来ない。
正確には聞こえたとしても、恐ろしいほど早口のため何をいっているのかわからないというべきか。


「答えは――――――どうあがこうが『初手で詰みにはできない』からだッ!!!」


吼えると同時に腕を振るい、目にも留まらぬ速さで標的へとたたきつけ、すぐさま離れていく。
ジョルノが理解したとき、彼の腕……突き出したままの右腕は肩ごと、体に近かった左腕は二の腕から先がもぎ取られ、吹っ飛ばされていた……!
あまりにも一瞬過ぎる出来事……飛ばされた腕を生物化する暇すらないほどにッ!!

「うわああああああぁぁぁ――――――っ!!!!!」

―――遅れて、絶叫が静寂を切り裂く。

「ふむう……暴走した感覚が元に戻ったようだ……
 やはり時間にして1秒未満……『世界』の真の能力には遠く及ばん。
 だがそれでも、おまえ一人を『一手で詰ませる』には十分すぎる時間だったようだなァ……無様な息子よ………」

さすがに痛みまでは消えず、こめかみを押さえながらもDIOは勝ち誇る。
両の拳を失ったジョルノは体のパーツをつくれない……絶体絶命の状況。

「先程の言葉だが……わたしはおまえの意志をできる限り尊重するぞ……?
 おまえがセリエAのスター選手を目指そうが、闇社会に生きるギャング・スターを目指そうが口出しなどしない……
 そして、おまえがあくまでもわたしを倒そうというのなら……誠意を持ってその相手をし、おまえの命をもらいうけてやろう………」
「………………グッ!」

またしても全てを見透かすような目で射すくめられ、ジョルノが一瞬たじろぐ。
その光景―――見えないので音のみだが―――に耐え切れなくなったのは………

「ジョルノッ!! クソッ、誰か援護頼むッ! おれがジョルノをなおしに―――」

やはり、承太郎をもって『この世のどんなことよりもやさしい能力』を持つといわしめた男――――――東方仗助。
たまらず飛び出し……声を頼りに二人のほうへと全力で走るッ!
だが、ジョルノはもう戦えないと判断したDIOは彼から離れ………仗助の前に立ちふさがったッ!

#

「さて、おまえはジョセフの息子―――東方仗助といったか……」
「どきな……おれはジョルノをなおしてやらなきゃならねー……」

仗助も同年代の中では背が高いほうだが、目の前の男はさらに10センチほど上から見下ろしてくる。
だが、そんな相手の威圧感にも萎縮することなく目を合わせながら仗助は啖呵をきった。
DIOのほうも彼の睨むような視線をまったく意に介さず、先程と同じようなトーンで問いかけてくる。

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