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【とうとう】奈良音ゲー事情part.10【二桁】


1 ：2011/11/24 ～ 最終レス ：2018/05/13
どっせーい

2 ：
スレ立て乙
そして妖精さんお疲れさまです

3 ：
Lincle Linkとかどうもやる気にならないな

4 ：
FABI

5 ：
スコア力低いからネロ出せねえ

6 ：
夏のうたげに　夢を見て。
灯る明かりに　酔いしれて。
照らされた影は、まだ待ちわびて・・・
そっと浴衣を引き出して。扇子もひとつ添えまして。
赤く塗られたかんざしに、そろいの帯も締めまして。
…貴方好みに、染めました。
きゅっと。握り締めた右手が、待ちぼうけ。
ただ、この手、引いて、歩いて欲しかった。
ただ君を想って・・・ただ君を想って・・・
飾り付けた　女、一人。
喧騒の中、ふらふらり。
ほんの少し、ほんの少し、
耳を塞いで、泣き笑い。
ひとり、見上げた、夏の空
きらり、きらりと、灯る花
照らされた影は、まだ待ちわびて・・・うごけない

7 ：
ラウンドワンの音ゲーにいる黒服うぜーな。
選曲の時に台から離れて毎回連れの所までしゃべりに行くなよ。

8 ：
青い青い空の下　熱い太陽と風のダンス
焼けた素肌に　とびきりの笑顔 I'm feelin' so good
もっと熱くなって
( I wanna dance together & forever コノママ何処ニダッテ )
行けるはず　because you're here with me
( with the sun we're gonna make it better イツデモ笑イアッテ)
確かめる　so happy happy days
( I wanna dance together & forever コノママイツマデデモ )
色あせないさ　my special memory
( with the sun we're gonna make it better イツデモ何処ニイテモ)
la la la la la so happy happy days

9 ：
らうんこの高校生がウザいのは同意
しかも万年九段のあいつ以外にもカップルでちゅっちゅする奴出て来たしマジうっとおしいんだけど・・・

10 ：
ラウワンって寺1台になったん？

11 ：
モテない君の嫉妬 ﾜﾗ

12 ：
劣化自慢厨

13 ：
あ

14 ：
ElishaだけEXつかねえ

15 ：
ほんまにElishaだけやろな？

16 ：
せやろか？

17 ：
過疎

18 ：
せやね

19 ：
SP穴reunionEX難！

20 ：
ラウワンのカップル、不細工同士でいちゃつくからマジで見てて吐き気がする
あれ公害だろ

21 ：
デブスの脚見てたら吐きそうになった

22 ：
ま～たモテない君の嫉妬か

23 ：
なんでブスに嫉妬するんだよ…

24 ：
>>23「なんでブスに嫉妬するんだよ…
なんでボクはブスに嫉妬してしまうんだよぉぉぉ！！」

25 ：
年末年始の休みに半年ぶりにゲーセン行った。

26 ：
妖精さん化物過ぎるっす

27 ：
発狂十段様ですか

28 ：
最近の猫は盛り上がってるか？

29 ：
猫の話題を振るとヤツが降臨するよ

30 ：
>>29
ライムです

31 ：
猫はニートグループが回しプレイしてるイメージしかない
どうでもいいけど

32 ：
猫はオワコン
北京のステマ

33 ：
さぁスレが盛り上がってまいりました

34 ：
パセリ楽やわ～

35 ：
ニートグループって誰？

36 ：
↑おまえ

37 ：
と俺と

38 ：
猫の元常連で音ゲー離れした奴多いよー
北京でやってるのたまに見るけど

39 ：
ストーカーこわ～

40 ：
Twitterでjubeatタダクレ自慢した奈良のバカｗｗ
本人はみんなの誤解とか言って友達のせいにしてるが実際クレ入れてるっぽい

https://mobile.twitter.com/#!/mogri0122

41 ：
暴力団が経営するゲーセン

42 ：
ラウンドワンおじさん

43 ：
ウィークリーまだ～？

44 ：
過疎りすぎだよ

45 ：
ウィークリー来たな
ラウワンの奇声あげる万九REKKAは十段取れたのか？

46 ：
奈良で一番盛り上がってるゲーセンは？

47 ：
ゲイ専じゃなくレズ専教えろ

48 ：
北京の寺が２台になるってホンマかぇ？

49 ：
奈良に和尚おらんの？

50 ：
和尚らく、いませんね！

51 ：
ポップン専門の人、奈良登美ヶ丘イオンのボタン柔らかいよ
音ゲーはポップンと太鼓しか無いけどね

52 ：
誰か奈良にもっとゲーセン作って～

53 ：
キャノンってあれからどうなったの？

54 ：
伝説となった…

55 ：
他県からロケの質問です。
BOOK245(245北京 ゲームアトム)にDDR5thMIXが稼働してるみたいですがDDR-Naviでの情報が11年10月で止まっていて
現在も稼働しているのか気になっています、近くで稼働してた5thが撤去され少し恋しくなり
少し遠出して遊びたいと思いましたので現状を存じている方がいましたら教えてください

56 ：
うごいてるよ

57 ：
うねうね

58 ：
北京は立地以外は天下一

59 ：
>>56
ありがとうございます、今度の休みの日に遊びに行ってみようと思います。

60 ：
個性的なクプロを作りたい！
作りたいよぉ～～

61 ：
ヌッ！

62 ：
ぬるぽ

63 ：
ガッ

64 ：
おーい！だれかいませんか～？

65 ：
へんじがない　ただのしかばねのようだ
ビョーン　ビョーン

66 ：
何か面白い話してください(*^^*)

67 ：
ラウワンの音ゲーコーナーって朝までやってるの？
公式見ると24時でアミューズメント〆るっぽいんだけど

68 ：
新年度宮城から奈良にくるんだがかなりの過疎っぷりだね
大丈夫かい環境？
あとオススメのゲーセンありますか？

69 ：
canon shit

70 ：
>>69
・・・
できれば稼働してる筐体の種類数聞きたいがまあいいや
ファンタジーアイランド天理店が一番近いんだがここは音ゲー稼働してるかな

71 ：
CUE奈良
ラウンコ
北京
アイビス
のどれかでいいんじゃね。どこも環境は悪くはないかと。

72 ：
>>70
音ゲーなら公式から稼働店舗調べられるぞ

73 ：
>>71-72
CUE奈良調べてみたらなかなかの駅近だったからよさそう
あとは動物園状態になってないといいが・・・
レス助かるよ

74 ：
皆伝前提でSPA冥ハードは5人か
案外居ないもんだな

75 ：
天理だったら自転車で北京が一番いいんじゃね

76 ：
>>75
仕事で奈良に滞在するので最初自転車は厳しいかな
自転車買ったら色々ゲーセンお邪魔させてもらいます

77 ：
どの音ゲーやるかわからないからなんともね

78 ：
>>75
ラウンドワンはよく動物園になるからお気をつけて

79 ：
奈良スレが盛り上がってうれピー(T-T)

80 ：
REKKAきんもー☆

81 ：
三条のCUEにたまにいる手首皿がキモい

82 ：
奈良の寺で一番メンテしっかりしてるところはどこですかね？
やっぱ北京なのかな？

83 ：
そうだね

84 ：
北京の寺が2台ならなぁ・・・

85 ：
橿原市に南京が出来れば全て解決！

86 ：
パセリをチャージしてあるのに現金でゲームする人いるけどなぜ？

87 ：
パセリはＰＦ用に、とか！

88 ：
俺GATE会員じゃないから詳しくは知らないけど
たぶんその人はAMUパスを使っているGATE会員だと思う
（中略）
で、もう色々と面倒だしお金と手間隙かかるから
bitcashチャージでGATE機能を堪能しつつ現金プレーてことじゃね　↓中略の中身
・知ってる人。間違ってたら訂正お願いね
GATE有料会員の月額費はPASELI残高からの引き落としだから、
通常プレーでPASELI使ってると、bitcashでチャージするのが面倒くさい
で、AMUパスからICOCAに引継ぎすればチャージ問題は解決するはず
ICOCAをゲーム機にかざしてIDをメモして、そのIDに引き継ぐ
普通にJRで現金入れればすぐチャージできるから便利だよね
カード変更するにはプレーデータの引継ぎをさせる必要があるのだけど、
その為にはドコモ、SB、auどれかの携帯で
コナミDXという携帯サイトの会員（有料）に入会する必要があり・・・
これパソコンとか、ウィルコム携帯、アイホンじゃ無理なんだよね確か。
だから人によってデータ引継ぎのためだけに
携帯の新規契約もしくは機種変更が必要になる

89 ：
土日にCUE奈良店にお邪魔させて頂きましたー
弐寺の待ちが凄く長いところでしたね。ポプに避難しました。皆伝もいるしオッスマンもいるし
見ていて楽しかったです。ｌｉｎｃｌｅの大罪まとめてあるのは良かったｗ
ただ指2台でリフレクとボルテなしは残念・・・
めっちゃカシャカシャする筐体だったなあ

90 ：
奈良はどこ行っても弐寺が埋まってる事多い気がする・・・

91 ：
深夜の新大宮ラウンドワンオススメ

92 ：
北京の寺２台計画の実行まだ～？

93 ：
そんな計画あるんだ？
是非とも実現してほしいなー

94 ：
猫の寺三台になったらしいね

95 ：
ホンマにぃ？

96 ：
フェスタ楽しみやな～

97 ：
多分このスレ見てるの俺一人

98 ：
俺が付いてるだろ？

99 ：
奈良は寺うまい人多いのぅ

100 ：
せんとくん「俺の後光でインパルス！」

101 ：
>>99
どのへんからがうまいの基準なのかわからんけどそんなにいるか？

102 ：
赤段位は上手い金色はやばい

103 ：
九段からうまいとか何の冗談だ

104 ：
>>103
奈良のスコア力はヤバイぞ

105 ：
>>104
万年のREKKAさんチーッスww

106 ：
奈良のスコア力は一部の層だけ、それいつも言われてるから(迫真)

107 ：
うまいのは一部の層だけって地方ならどこでもそうなるんじゃないか？

108 ：
びっちぃ十段おめ

109 ：
フェスタに出てる人の景品すごいな
行くのかみんな？景品の人がすごいのか？

110 ：
奈良でメンテ良い液晶筐体ってありますか？
久しぶりに高田CUE行ったら皿が重く感じたなぁ

111 ：
ラウワンくらいか

112 ：
ありがとう
明日時間あったら行きたいなあ
あと、高田CUEのプレミアムフリーが400パセリなのはびびったwww
高すぎやろwwww
奈良の相場はこんなもんなんかな？

113 ：
高田は高い もっと安いとこあるよ

114 ：
北京が15分200P? K猫が10分183P、ラウワンが10分203Pだったはず
それ以外のゲーセンはデフォ設定じゃないかなー

115 ：
Pフリーは北京が一番安いと思うよ

116 ：
サンクス安いな
結局行けなかったけど今度休みで帰省するときはラウワンいこ

117 ：
きみたちおちんちんらんど大和高田店忘れてないか？

118 ：
誰か音ゲー専門のゲーセン作って～

119 ：
あぁ＾～書き込みがないんや＾～

120 ：
らんらんらんど高田はたまにかわいい弐寺してる子がいる
段位は低いけど可愛いからいいや

121 ：
最近寺始めたんだけどラウンドワンの片方の筐体明らかに音小さくね？
土日とかの周りに人が多い日に至っては曲がほとんど聞き取れないレベルなんだけど

122 ：
高田CUEの寺、2Pの皿重かった。
あそこリフレクは消えたの？

123 ：
>>120
そんな子おらんやろ

124 ：
かわいい女の子とは誰も言ってない
そういうことだろ？

125 ：
いるよ、金髪の女の子
付き合いてー

126 ：
二段か三段

127 ：
見に行こ

128 ：
8月10日（木）14時30分56秒

129 ：
奈良音ゲー界の格差は広まる一方である
これは大問題だ！

130 ：
なんか格差あるんか？

131 ：
奈良の皆伝は1pサイドばっかだな

132 ：
最近アイビスかしはらにリフレクゴリラがいて怖い

133 ：
奈良って、マジでレベル低いのな
パンジャ(奈良)
テメーだよ!!

134 ：
いまさらだけど>>94は本当？

135 ：
＞>134
五月頃に行ったけど二台だった

136 ：
よっしゃー 発狂十段抜けたぜ

137 ：
レイジ穴のBP4出た…

138 ：
ラウンドワンって平日の夜人多い？
静かなときに音ゲーやりてえんだよなあ

139 ：
ラウンドワンのいいところは、簡単な曲をやっていても、
他の客に「すごーい！」と言われるところです

140 ：
>>132
ホームがアイビスなんだけどあの人木曜によくいるね

141 ：
７月はこのスレが盛り上がりますように…

142 ：
∩（もっこり）

143 ：
やったぁ☆

144 ：
みんな一文字でいいからカキコして
ボク寂しいよ(T-T)

145 ：
ω

146 ：
穴レイジFC頑張るぞー

147 ：
ラウンドの弐寺の1Pのボタンなんであんなに重いん？
芝なのか？

148 ：
北京の弐寺が一番しっくりくるんだが
あれに近い感覚の店ってどっかないかな？
北京はなかなか独占出来なくてしんどい・・・台数増やしてくれ

149 ：
新ノ口にある所も結構いい感じじゃね？

150 ：
>>147
店員からリゾアン筐体の方のバネが太いとは聞いた
あそこじゃやる気起きない


151 ：
猫の右の筐体のボタンがいい感じやん？

152 ：
7月も半分きったのに…
書き込み10て…

153 ：
北京にあるタッチするタイプのあの音ゲーっているか？
あれならリフレクの方がよかったと思うんだけど
別に邪魔じゃないからいいんだけど

154 ：
>>152
7月半ばで暇なのは高校生以下だけなんですけど
>>153
DJMAXか何か？

155 ：
珍しい音ゲーがあるのが北京のいいところ(*^^*)
５鍵とキーマニが無くなったのは寂しい

156 ：
北京ってどこの店の事ですか？猫はやっとわかりました！最近はゲームも涼しくていい感じ。今日はどこのゲーセンに遊びに行こうかな(笑)

157 ：
北京はbook245のこと
国道24号線と25号線が交わるところ

158 ：
隣のマクドナルドが目印だよ

DJMAXやりにいこかな

159 ：
そういえばあの洗濯機ってどこか入った？

160 ：
>>159
アイビスに2台入ってるのを見たよ。

161 ：
テチニカ？だっけ
あれやってる人ぜんぜん見ないけど大丈夫か？

162 ：
maimaiでしょ
ラウンドワンにも4台入ってるぞ

163 ：
ラウワン流石に金持ってるなー。
よくあんな色物・・・もとい真新しい音ゲー一気に4台も入れれるね

164 ：
北京行って来ました。ゲームありました！でもメダルゲームは無いんです。でもまた行きます。

165 ：
北京は神メンテ
あと50年は潰れないでほしい

166 ：
おまんまんらんど大和高田店ももうちょっと触れてやってください

167 ：
CUEがアツゥイ！扇風機と待ち椅子どっかいったんすね～

168 ：
XGじゃないギタドラどこかにないですか？

169 ：
>>168
CUEにはあったよ

170 ：
北京の音げーで台パンしてる人見たことある人いる？
奇声？あげてる人は見たことあるけど笑いながらだったし・・・
ほかのスレで見るようなマナー悪い人見たことないから情報欲しい

171 ：
そんな情報得てどうするんwww

172 ：
>>171
たしかに

173 ：
ラウンコにダンエボ入らんかな。猫は常連の視線がなー。

174 ：
>>173
ラウンコなんて更に視線集めそうだがｗｗｗｗｗ

175 ：
ギタフリＸＧの攻略法とか有ります
http://www.freepe.com/i.cgi?154325147

176 ：
過疎ってんなぁ

177 ：
書き込むことあらへんからなー

178 ：
じゃあ北京の弐寺増やしてくださいカキコでもしとこうか

179 ：
郡山のイオンの弐寺のメンテってどうなん？

180 ：
過去スレに名前があったかどうかは知らんが奈良といえばみそちーとかいう40歳子持ちのオッサンがやばいｗ
腕前もずっと変わらない上にあの年でさなえちゃんのパパとか言ってるとか他のさなえちゃん使いに偉い失礼すぎるｗ

181 ：
ちょっと何の話してるか分からない

182 ：
Do Back Burn

183 ：
私怨かなんか知らんけど他所でやってくれ

184 ：
北京9月に寺と指増台するんだろ？
あんなタバコくっさいとこでよくやれるわｗｗ

185 ：
>>184
マジなら小躍りして通うわ

186 ：
>>184
それマジで？
なにが消されるんだろう

187 ：
今度奈良の大宮？ってとこに引越して音ゲのホームがラウンドワンになりそうなんで
知り合いに聞いたら音ゲにはクソが何人か湧くからキューが良いって言われたんだけど･･･
そんなに酷いの？

188 ：
そんなクソな奴いるか？
よく行くけど見たことないぞ
飲み物置きっぱなしにしていくオバカならいるけど

189 ：
あそこの弐寺はすごい

190 ：
まあ飽くまでラウンドワンだなーって感じだよ。特別酷いって事もない。
いける距離ならCUE行ったほうがいいかもしれない。

191 ：
ちょっと話すの渋られたけど聞いてきた
弐寺に曲かぶせするなら一言言うのがマナー知らないの？って言ってくるおっさんと
音ゲ全般腕がそこそこしかないのにやたらと自分より下の人を見下す良く喋るガキが居るって
後ディーバ？に凄いクラッシャーが居るから指やる時ちょっと辛いって
こんなの居るの？

192 ：
俺の行ってるラウンコと違うな・・・。
少なくとも俺がいる時間は至って平和に見える。
DIVAはなんかすごい音立ててる人がいた気がするが、やってないから知らない。
そんなキチガイみたいなおっさんとか、音ゲ全般やってるような奴っているの？
2つ3つぐらいならやってる奴いるけど・・・。

193 ：
はよらんらんらんど触れてやれよ

194 ：
てかどの音ゲーやるの？CUEにはXGとリフレク無かったような

195 ：
>>192
うーんそんな頻繁に居る訳じゃないのかなぁ･･･
音ゲ腕そこそこの人は指とか弐寺やってるの見たってさ、久しぶりに行ったらDDRやってるの見たって
目視してからプレイ中のcr消費して即効帰ったって言ってたから相当嫌いらしい。
>>194
主は弐寺で、しかも液晶じゃないと全く出来ないほやほや六段
リフレクとサンボルもちょっとやってる。

196 ：
九月はホモが湧く季節となりました

197 ：
んごは消えろ。ドカ踏みバーガンうざい

198 ：
>>195
液晶筐体、リフレク、サンボルならラウワン一択だわ
ここで言われてる連中も多少鬱陶しいだけで実害は無いから気にしなくていいんじゃないかな

199 ：
ラウワンの音ゲースペースはせまっくるしいんだよなぁ・・・

200 ：
わかる
待つ場所ないよね

201 ：
筺体が増えるのは喜ばしい事なんだが、最近だんだん狭くなっていってるｗ

202 ：
>>197
やだ(^o^)

203 ：
最近動いてたのにまたとまっとるがな！

204 ：
亀レス申し訳
10月の初旬には奈良に行くことになりそうだわ
ゲーセンはとりあえずラウンドワンに行く事にするよ、嫌になったらキューに行く
下手糞な六段が居たら温かい目で見てやってくれｗ

205 ：
猫は客おるか？今の店長はいい店長か？

206 ：
北京の弐寺と指が２台に増えるってどこ情報？

207 ：
猫って車移動だと何気に立地が悪いんだよなぁ。
市内からだといっそのことバイパス抜けていける高田方向のほうが楽に感じる

208 ：
寺のブラウン管のほうすごい色になってないか？ｗ
寿命なのか、それとも消磁とかしたら直るのかね、アレ。

209 ：
まぁ新作稼働したらディスプレイ変わるから

210 ：
大和郡山市に住んでます（JR郡山まで5分、近鉄郡山まで15分）
ここから近いと思われる、
①リフレクとサンボルが設置されてる店（できれば両方同じ店舗が良いが、なければ別々でも可）
②maymayが100円3プレイ以上できる店
以上を教えて下さい
①か②だけでもお願いします

211 ：
さっき北京の店員さんに聞いたところ、
弐寺は19日に新筐体が入って25日に古い方もバージョンアップ、指も一台増。
11月頃？にポップン2台ともアップデート、リフレクが2台入る予定もあるようです。

212 ：
んごおった。きんもー

213 ：
>>210
ラウワンならリフレクもサンボルもあるよ
洗濯機は200円だが

214 ：
全国で何台弐寺の新きょうたいの注文入ってるんだろうな

215 ：
>>213
どこのラウンドワンでしょうか？

216 ：
>>215
新大宮

217 ：
筐体いつ入りますか？　＿＿＿＿＿＿（博多弁で）

218 ：
>>216
ありがとうございます
橿原アイビスで木曜日は2クレジットできるとか聞いたのですが、ﾘﾌﾚｸとｻﾝﾎﾞﾙがあるか、洗濯機は何円何プレイかどなたか知ってますか？

219 ：
すみません、自己解決しました

220 ：
>>211
これはマジならかなり嬉しい。後はみーつまだな
でもどこに置くんだろ。

221 ：
>>220
DDRの旧台２台とテクニカが撤去らしい

222 ：
残念だけどしょうがない。DDRはいつ頃まで稼動予定ですか？
今あるのはEXTREMEとSuperNOVA2ですよね。
これ目的で遠征に行く人もいるので教えていただけると嬉しいっす

223 ：
>>218
アイビスは木曜は寺以外全部100円2クレ
洗濯機は通常100円2曲設定

224 ：
DDR２台残ると聞いていたのに、、、せめてEXTREMEは残してくれ～

225 ：
A‐GRIFとか言う奴今作は一曲たりとも和尚すんなよ

226 ：
ラウンドワンってちゃんとアップデートされてる？

227 ：
>>225本人に直接言えば～? ﾜﾗ

228 ：
判定どっかいった

229 ：
>>225
前作和尚してた人ってこの人なの？
Burning heat!DPA和尚してよ

230 ：
その人ってSP皆伝だっけ？
明らかにスコアが低くてSPも代行の気がすんだけど

231 ：
和尚してる時点で底辺でしょ

232 ：
CUE新大宮って液晶になったの？

233 ：
奈良ラウワンでe-passとaimeカード盗られたわｗ
その窃盗犯最近よくラウワン来てるから気をつけてね

234 ：
おはよう

235 ：
猫にリフレク入るみたい

236 ：
リンクル末期に猫行ったら1プレイ90パセリだったんだけど今もそうなの？

237 ：
新作になったら100に戻る

238 ：
過疎りすぎやろ

239 ：
そうだね

240 ：
DDRプレイヤースレに居座ってるんごってなんなの？最近めざわりなんだけどリアルでもあんなんなの？

241 ：
誰それ？
ＤＤＲなんて今時誰がやってるんだ

242 ：
北京の皆伝にギャラリーいてワロタ

243 ：
詳しく

244 ：
CUEは皆伝レベルなんて日常ちゃはんじなのに

245 ：
CUE以前と比べて鍵盤堅くなってないか？

246 ：
旧きょうたいの方の1Pは堅い気がする

247 ：
KACお疲れ様でした！

248 ：
IIDXの乱盛り上がってまっか？

249 ：
NHA全譜面埋めなきゃいけないけど、集計対象のSP10人DP3人上位が全難易度プレイしてるの北京ぐらいじゃないかな。

250 ：
もし第２回IIDXの乱があるなら所属店舗を１つに集約(？)したら有利に勝ち進めるかもね。

251 ：
奈良県のプレイヤーのほとんどがここを見てればな

252 ：
いつの間にか北京にリフレクビート入ってた！

253 ：
>>236
音ゲー90パセリになってたよ。

254 ：
奈良でもうポップンの新作入ってる場所なんてあるの？

255 ：
昨日CUEでDPうまい人と和尚のやつが同じタイミングでいたの見てなんか笑っちゃった

256 ：
ふおあ～
ミスったもうしわけないです

257 ：
みんなは北京の寺の新きょうたいの判定
の数字いくらにしてる？

258 ：
ポップン４曲設定の店ある？

259 ：
>>258
奈良北部は全滅じゃないかな、南部は遠いからわからん
CUE3曲
奈良ラウワン3曲
登美ヶ丘イオン3曲
ASPAワールド3曲
大阪なら梅田のタイトーとアム茶は4曲だったけど

260 ：
今日はフェスタやで！

261 ：
>>260
初めて行こうと思うが勝手がわからない・・・

262 ：
フェスタ行ってきた
ポップンのスコアがえげつない人がいてまだまだ奈良も行けるんだなと思った(小並感)

263 ：
ラウワンのmaimaiってまだ３曲２００円なの？

264 ：
せんとくんじゃね

265 ：
集まれBOOKの森

266 ：
BOOK245のみなさん、IIDXの乱頑張ってくださいね！

267 ：
嫌

268 ：
たまにKCAT行くんだが、ガン見してくるガキどもがウザい。
土日に行くし立地的にもお察しなのは承知なんだが、ホントウザい。

269 ：
ダンエボは見られてもしゃーない

270 ：
並んでないのに並ぶ用のイスに腰掛けてるじじいの方がうざい

271 ：
kcatの指やってるやつきもい

272 ：
北京の指やってるやつもキモい

273 ：
ガンダムが動物園なら北京の指は幼稚園だな

274 ：
自分が上達しないからって2ちゃんで憂さ晴らしwwww
ダッセェwwwww

275 ：
DDR

276 ：
高の原イオンにポップンリフレク指が入ったね
厳密には京都府だけど

277 ：
そこまできたら弐寺いれてくれよな

278 ：
寺あったら通ったのに。ラウワン一人暮らし大杉

279 ：
北京の旧筐体の皿重すぎない？

280 ：
重い、新筐体の方より少し重いかな程度にして欲しい。

281 ：
イオンモール

282 ：
旦那が必死で稼いだ金で音ゲー三昧wwwww
うらやましいですwwwww

283 ：
SDVXの設置店を調べてるんですが、以下の3店舗以外にどっかありますか？
・ラウンドワン奈良店
・KCATツインゲート店
・ゲームアイビスかしはら店

284 ：
無い

285 ：
CUE置いてないんだ。意外だわ

286 ：
高田ＣＵＥは指リフも遅かったし新機種入れるの消極的なイメージ
おかげで指入れてすぐ過疎ったから大損してんじゃないかねぇ

287 ：
ところで奈良からすぐ行ける範囲の京都とかにゲーセンってないのかな？
阪奈走って大阪kcatぐらいの距離感で京都方面

288 ：
CUE高田にDDRがある！
って思って行ったらまさかの旧筐体とかもう本当にビックリした！
もう何がなんだかわからなくなって、エレクリ×1.5でやって、
頭がパーン！って

289 ：
DDRって北京とラウワンぐらいだっけ？
ラウワンDDRは扇風機無し+自販機の値段で凶悪やなぁ

290 ：
>>289
高田のも新DDRだよ
3月から新しく稼働するってのを先月知って行ってみたら旧筐体だった

291 ：
猫の寺はまだ旧筐体ですか？
そして鍵盤はまだフワフワですか？

292 ：
大阪K猫からなら伏見ラウワン、ドッセは割と近かったな。

293 ：
CUE高田って9のつく日音ゲー2クレ？HP見ても載ってなかったから教えてください。

294 ：
月曜・木曜・９の付く日が音ゲー100円２クレらしい
なぜか先週ポップンだけ他の日も100円２クレだった気がするが

295 ：
奈良のCUEってDDRあったっけ？

296 ：
あるよー

297 ：
奈良で格ゲーってどこ行けば対戦出来るの？
もしかして普通は大阪か京都まで出てるのかな

298 ：
三条CUEのDDR反応悪すぎる気がするんだけど
白筐体はここでしかやったこと無いからこういうもんなのかなー。
あ、せめて音量あげてください

299 ：
8月11日(日)は北京でフェスタやで～

300 ：
そういえば誰も高田CUEのDDRに触れないなｗ
あれ旧筐体だったけど、どっかからの譲りものかな
だとしたら何処のだろう、あれ

301 ：
猫の弐寺左筐体、鍵盤反応悪いこと多い、右筐体でしかプレイしない人もよく見る。

302 ：
猫の寺は両方とも鍵盤フワフワ
もうちょっと固くてもいいと思う

303 ：
週三であの時間にゲーセン行けるとかどんな生活してるんですか？羨ましいです。

304 ：
世の中には自分の想像もつかないような
生活をしている人がたくさんいるんです

305 ：
>>304
ニート乙

306 ：
三条CUEのDDRは環境酷いなぁ。
すぐ裏のmaimai側には扇風機+待ち椅子があって
DDRにはどっちもないというのが酷い。音量負けも酷い…
あんなにやる気ないのになんで筐体買ったんだろう

307 ：
CUEにデラ新筺体はいらねぇかな～

308 ：
北京にボルテ入らないかなぁ
入ったら毎日やるんだけど

309 ：
わかるー
現状橿原や高田あたりに集中してるよね、ボルテ
なんか奈良ですごい上手いひといるんだっけ。
まぁわたしとしてはもっとDDRが増えてほしいんだけどね…
あと北京はオンラインが繋がりにくい気がするから、そこもなんとかしてほしいね。

310 ：
そういや北京でDDRしてる人って
おしぼりで靴とかパネル拭いてる事多いけどあれはマナー的に有りなの？
正直あんまり見てて気持ちいいものじゃないんだけど…

311 ：
おしぼりはたしか使い捨てですからねー。
上手いひとともなるとセオリーみたいなものがあって、それがおしぼり云々なんだろう、って思います。
わたしはたまに貰える、キンキンに冷やされたおしぼりで体を拭くくらいですかね、とか
自分語り。

312 ：
手を拭く為の物で床を拭くってのがなんか見てて抵抗あるんだよね
顔を拭くぐらいならともかくｗ

313 ：
三条CUEのポップン、ボタン全部新品になってる気がする
神

314 ：
>>309
北京は確かにオンライン全然繋がらない
ポップンは絶対に弾かれるしリフレクも対戦相手来ない
指だけはなぜかマッチングするがだいぶ待たされるわ

315 ：
質問なので申し訳ないですがageさせてもらいます
数年ぶりに出張ついでに北京にDDRをしに行きたいのですが
金曜日の夜や土日の状況はどんな感じか分かりますでしょうか
昔行った時はお昼だったので常連さんもそんなに居なかったのを覚えています

316 ：
土日は朝はすいてますね

317 ：
郡山イオンのゲーセンって環境としてはどうなの？

318 ：
メンテはしっかりしてると思うけど弐寺の鍵盤は固いほうかな

319 ：
北京のFESTAって次いつ？

320 ：
イオン行ってみたんですがPASELI無いんですね・・・

321 ：
イオンのメンテは良くないと思うけどなぁ・・・
寺とポプしか触ってないけどどっちもいまいちだったよ

322 ：
>>319
1/2だったかな

323 ：
えーーーイオンの寺は良メンテだと思うんだけどなぁ
３年前のオープン直後と比べるからそう感じるだけなんすかね
ってかいつの間にか寺の設置店舗増えてますね

324 ：
接地店舗増えた繋がりで奈良のラウワンにグルコス入ったらしいです

325 ：
ラウワンのグルコスは場所的にちょっとやりにくいな
リフレク前の太鼓と交換してくれ

326 ：
北京の寺はこれからも片方は旧筐体のままなんですかね？
やはり｢旧筐体しか嫌！｣って人は結構いるのかね？

327 ：
そんな簡単に入れ替えることが出来るほど筐体は安くないだろう

328 ：
ずっと気になってたけどゲーセンの筐体って購入？レンタル？
あと、PASERIで支払ったらゲーセン側は収益無しなん？

329 ：
収益無しなら何のために筐体置くんだよｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
太鼓移動でラウワンの音ゲーコーナーが更に狭くなってたな

330 ：
ラウワン密度高いし椅子少ないしでいるのがしんどい

331 ：
明日奈良のアミューズメントCUEでFREE大会やるらしいですね
https://twitter.com/CUE_nara/status/411563259649486848

332 ：
冬休みの期間だとやっぱ人多くなるんかね？

333 ：
北京のFESTAってどんな雰囲気？
小中学生の子供連れて行くような雰囲気じゃないかな？

334 ：
そもそも北京がそんな雰囲気の場所じゃないね

335 ：
でもFESTAの時は親子連れ結構いる気がするよ。

336 ：
というか前行ったときは子供が運営のお手伝いしてたよ

337 ：
俺一回行ったけど子供がDDRプレイしてたわ
背面プレイとかしててすごいと思った

338 ：
あけおめです。
とりあえず誰も気にしていないでしょうが、
去年の年の瀬に北京でぶちまけて運ばれていったのはわたしです
すいませんでした…
食中り中と思しき時にDDRやるもんじゃないですね
Stella DSPの県一はとりあえず戴けたのでよしとしますが…

339 ：
FESTA行きたかった・・・

340 ：
お餅おいしかったお

341 ：
今更だけど北京でDDRやってるちっさいこがKAC行ってたと知ってびっくり
更に14歳と聞いてびっくり
割と時間選ばずに見る気がするんだけど学校とか条例とか大丈夫なのかな…

342 ：
中学生でそこまでのめりこめるほどの時間と金があるってことはお察しと通りだろ

343 ：
ちょっと過疎過ぎやで。
弐寺のオリコ作成が前作から無くなったからやな。

344 ：
このスレ見てる人いるん？

345 ：
おるでｗ

346 ：
>>345何か面白い話題ないっすか？

347 ：
奈良の音ゲーマーだけど　こんなスレがあったとは　ちょっと感動

348 ：
でも全然盛り上がらない。
北京のFESTAと同じくらい盛り上がらんかねぇこのスレ。

349 ：
ラウワンのDDR落ちすぎだけど新筐体には変わって欲しくない

350 ：
北京のスペース広がってたけど何か入れる予定あるの？

351 ：
三条CUEの臭い奴なんとかならんの。やばいってあれ

352 ：
眼鏡デブのやつか

353 ：
アンメルツ塗ったまま行ってる俺かもしれんわｗｗｗｗｗｗｗ

354 ：
夜勤明けで行ってる俺かもしれん
主にプレイしてる機種なに？

355 ：
ダボダボのチノパン履いてる人か
CUEフリプで見たけどマジで臭い
最近ラウワンにも来るから勘弁して欲しい

356 ：
自分が行った時はビーマニやってたよ。
頼むから風呂もしくは着替えてくるなりしてきてほしい。
密閉空間でありゃきつい

357 ：
何か急に盛り上がってますな

358 ：
数年振りに音ゲー再開(･∀･)
そして音ゲーと奈良で検索したらここ見つけて感動...！
でも直近の話題が臭い人ｗ

359 ：
>>358元皆伝のイケメン乙

360 ：
穴兄弟穴兄弟言ぅてた頃の勢いどこいってん！

361 ：
そんなことは言わずもがな
今でもそうですよ

362 ：
また定期過疎かい。
もうすぐ北京のFESTAやで～。

363 ：
過疎だねー

364 ：
いつも思うんだがみんなFESTAの情報どっから仕入れてるん？
常連じゃない人とか。

365 ：
俺以外に毎日このスレ見てる人いる？

366 ：
北京にSDVX入る報告来ないかなーと思いながらたまに見てる
そもそもスレ見る頻度より北京にいく回数の方が多いけれども

367 ：
週末深夜の北京て人多いっすか？
音ゲーに手を出す前はスロにやたら人いるの見ましたが

368 ：
まあ平日よりは多いんじゃね？

369 ：
アイビス橿原ってどうなの？ニコ動に動画上がってたけど、maimai人口は凄そうな

370 ：
北京の奈良物産コーナーいいねぇ～

371 ：
中学生の甥っ子からゲーセンに行ってみたいって言われてるんだけど
比較的綺麗というか威圧感の無いゲーセンってどこだろ？
北京がダメなのは判る

372 ：
郡山イオンでいいやん

373 ：
過疎りすぎ～

374 ：
ビートストリームどっか入れないの？

375 ：
猫に入ってるよ

376 ：
北京にSDVXいれてくださいお願いします

377 ：
イオンはPASERI対応にならんのかぇ？

378 ：
イオンはいまいち方向性が判らんなｗ
寺とかギタドラとかコア向けなのを置く割にはパセリ対応しないというのが

379 ：
イオンはPASERI対応にならんのかぇ？

380 ：
今日からmaimai入るとこあるっていってたのどこだっけ？

381 ：
露出狂をJKが撮影しうｐ→出会い厨「学校に通報されたくなければ俺に連絡しろ」→出会い厨情報割れ★7 [375826727]
http://fox.2ch.sc/test/read.cgi/poverty/1413415756/
犯人は橿原市付近のゲーセン常連(渡辺翔太ことヒナ、特徴は顎)らしい
協力求む

382 ：
>>381
【バカッター】盗撮した女子生徒を出会い厨が恫喝「通報されたくなければ連絡しろ！」 → 警察が調査へ [373518844]
http://fox.2ch.sc/test/read.cgi/poverty/1413605061/

383 ：
北京にSDVXとビーストいれてくださいお願いします

384 ：
北京の音ゲースペースがすげー縮小してて笑えないわ

385 ：
天理住みだから北京の次は猫かラウワンだから一気に遠くなるんだ
新機種もいれてほしい

386 ：
猫も隣の映画館無くなったが大丈夫かな
常連は変わらないだろうが一見客かなり減るよな

387 ：
確かに

388 ：
まぁこのKCATなぁ・・・

389 ：
ツインゲート自体場所が悪いんだよなぁ…
市内からだとまだバイパスで行ける橿原のほうが近く感じる

390 ：
ツインゲートでずっとあるのは猫と上の美容院とcoco壱ぐらいか？
覚えてる限りでOK牧場（パチ屋）、本屋喫茶、KONAMIスポーツクラブ、MOVIX、パスタ屋、クラブ？、美容院
ローソン他何個か撤退閉店してるな。
隣の観光ビルに至っては全部昔と変わってるし近くのフレンドリーまで消えたな

391 ：
それは甘い甘い甘い甘いキャンディー　ひと粒の涙

392 ：
誰か俺と和尚プレイしてくれ

393 ：
和尚は滅びろ

394 ：
誰かの悪口言おうや

395 ：
数年振りに北京行ったんだけど、その過疎化に驚いたというか寂しくなったというか…音ゲーのスペースが狭くなっててしょんぼり。

396 ：
音ゲースペース減ってから全くいかなくなったわ
なんか自分でもびっくりするほど音ゲー熱冷めた

397 ：
猫倒産ってマジかよ

398 ：
マジだった、入り口から機械やプライズがそのまんま見えて26日の18時閉店の張り紙がまだついてたな、
ホントに夜逃げみたいな閉店だわ

399 ：
高井重雄

400 ：
くさい

401 ：
http://www.youtube.com/watch?v=iZd_Mf4YhFY&sns=em

402 ：
新大宮ラウワン　
DDRに照明映り込み過ぎてまともに遊べない。
なんとかしてくれ

403 ：
アイビス木曜全音ゲー2クレから曜日機種別2ｸﾚにかわるみたい

404 ：
アイビスの弐寺ってまだextraないまま？

405 ：
パセリはずっと4曲設定だが、3曲の時期あったっけ？

406 ：
3+EXTRAか

407 ：
パセリだと111Pでextraアリ
100円だと3曲目やってもextra出ないねアイビスは

408 ：
逆に100円で4曲できる神ゲーセンあんの？

409 ：
コインプレーでEXTRA出ないのは今の弐寺の仕様だよ

410 ：
ステップアップしかやらないから100円でいいわw

411 ：
つか料金上がって以来音ゲーはプレイ料金という名の入場料に差はあれどそれ以外は全国共通設定のはず

412 ：
北京の寺のモニターヤバすぎやろ

413 ：
K猫ってまだ中に筐体とか置いてあるん？

414 ：
>>409
それ知らんかった…

415 ：
寺の待ち時間にプレイ中の人の情報を確認する奴のメガネ率wwwwwwww

416 ：
らんらんらんどがまさかの音ゲー増台してた、潰れた猫の奴かな？

417 ：
>>415 そんな奴いんのかよ。どこの話？

418 ：
最近のアイビスってどうなってるんだろう、全然行かなくなったからわからないですけど
DDR入ってたらいいなぁと思うこの頃、Ｘ筐体で

419 ：
らんらんの弐寺筐体たぶん元猫のだな、寺と指も？一台増えて旧ギタドラがなくなってたな
メンテ良いけどパセリチャージ機無いのだけ不便だわ

420 ：
アイビス今月28日に閉店だってね
橿原の音ゲーマーこれからどうすんの

421 ：
マジかよ、らんらんも流行ってるようには見えないし、高田ＣＵＥしか無くなったら移動電車の奈良南部民には辛い

422 ：
アイビスマジか普通にショックだわ
あそこ学生も結構見かけた気するけどな

423 ：
誰かおらんかえ

424 ：
ポップンしょぼすぎる。他にもあったら教えて

個人的ボタンの状況
北京→ガチムチ、メンテ良
ラウンドワン→普通、メンテ良(新筐体だからか？)
CUE二つ→普通、メンテ普通
天理の14、らんらんらんど、楽市楽座→ふにゃふにゃ、メンテ不良

425 ：
あへあへ～

426 ：
北部の人間はみんなどこいってんの？ラウワン？CUE？

427 ：
CUEはバイクおけなくなってから行って無いなー流石に駐禁怖すぎ…
駐車場みたいに提携できねーのかな

428 ：
>>427
ゲーセンはどこも不景気なんでしょうねぇ(´；ω；｀)

429 ：
高田CUEのデラやってるBEELZEってやつ

430 ：
BEELZE?

431 ：
　　　　　　　　 　 ,,. -─‐ ''"´￣　　　｀ヽ
　　　　　 　 ,. ‐'´　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　 　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　,ﾘ
　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.ゝ
　 　 !　　　　　　　　　　　　　　　　　 /／ 〈
　 　 |　　　　　　　　 ／⌒＞yヽ　　fr'"'、　}
　　　|　 　 　 　 　 , '　　 ´ （'´　`ｰ'´　　l　ﾉ
　　 │　　　　　　/　　　　　 ｀　　　　　　ﾚ'　 　 　　 今日、食堂でエマ中尉の髪型の話題で盛り上がった。
　 　 |　　　　　　（._　　　　　　 　 　 　 　 | 　 　 　 　全員一致で亀頭をイメージしていたらしい。
　 　 |　　　　　　 / -─- ､._　 　 　 __,..ヘ! 　 　 　　隅の方で味噌汁を啜っていた
　　　|　　　　r‐､ {　　ｰヮﾆﾆ`ｰ'　 〈ｩﾆ'‐.|　　　　 　ジャマイカンも吹き出していた。
　　　ヽ　　　| ,ゝ| !　　　　　　　　　ヽ、　|　 　 　　食堂を出ると、エマが顔を真っ赤にして
　　 　 }　 　 ヽ(､Ll　　　　 　 　 　 r:ﾝ'　l　 　 　 　青筋立ててこちらを睨み付けていた。
　　　 {　! { { /`ｰi　　　　　 _,. -─‐ｧ　 l ￣￣｀! 勃起したソレをイメージしてしまい
　　　 ,ゝﾄ､ヽ{　　{　 　 　 　 `ｰ-- ' 　 ,'　　　　|　吹き出しそうなのを必死に堪えていたのだが、
　　 i(　 ヽﾐ`ヽ　　ヽ､　　　　 　 ｰ　　 l　 　 　 　横でカクリコンが腹を抱えて大笑いしていた。
.　　 | `'''┴-- ､.._　　｀''‐､　　　　 　 ,!、　 　 亅 強烈なプレッシャーを感じた俺は、
　　　| 　 ＿＿＿__￣￣~ヽ` ｰ-r-‐ﾍ　ヽ　く´ 　すぐさまその場から逃げ出した。
.　　　!　 |=<>=<>=|　　　　ト､-､r=ﾆ⌒ヽ.）　ヽ 　後ろの方で、カクリコンの　
　 _,r=ゝ、 ￣￣￣　　　　 |　ヽ. ＼　｀ヽ }　/ 　　「前髪は抜かないでくれぇ」　という断末魔が聞こえた。　　　
　　　　　 `ヽ ー-----‐‐┴､　} 　 ヽ ﾚ',ﾉ./`ｰ- この日以来、誰もエマの髪型の話をする者は居なくなった。

432 ：
BEELZEなんか気持ち悪いし来ないでほしい

433 ：
ほっとけよ

434 ：
ゲーセンは気持ち悪い人が多いと思って行かなくちゃ

435 ：
私話しかけられたことありますよ

436 ：
どんなやつなん？

437 ：
高田CUEで肩脱臼ｗｗｗってうるさいわｗｗｗｗｗ

438 ：
自分から話しかけてくるわりに人を信用しない

439 ：
majarの姉？

440 ：
まじ無理

441 ：
本気できもい

442 ：
ツインゲートに映画館が新しくオープンするみたいだけど
猫の跡地にゲーセンは来ないのかな？

443 ：
べるぜ

444 ：
ちゅっちゅww
また懐かしいやつがブックでギターやってたわ

445 ：
べるぜまぢ生理的に受けつけないむり

446 ：
三条のcueの指一台になってたけど撤去か？

447 ：
べるぜ、消える

448 ：
べべべべべるぜ

449 ：
コナミタイムラインにもウザイことかいてるよな

450 ：
弟自慢激しいｗ

451 ：
猫跡地ゲーセン入るみたいだな、メダル板にアミパラどうの書いてあるからそれかな？
音ゲーはたぶん入るよな、なんにせよ嬉しいわ

452 ：
はらぺこべるぜ

453 ：
猫はクレサ結構やってたからなー
DDRとSDVXとチュウニズム入るといいな

454 ：
まじか！！現状北京とcueぐらいしかなかったから嬉しいわ

455 ：
べるぜ

456 ：
☆ 日本の核武装は早急に必須です。☆
総務省の、『憲法改正国民投票法』、でググってみてください。
日本国民の皆様方、2016年7月の『第24回 参議院選挙』で、日本人の悲願である
改憲の成就が決まります。皆様方、必ず投票に自ら足を運んでください。お願い致します。

457 ：
つかほんとにアミパラオープンするのか？
まさかパチ好きプロ市民に圧力かけられて開店できないとかじゃないだろな？

458 ：
確かに近日オープンから長いな、看板とかまだだったし、区切り的に4月1日かねなんでパチ好きプロ市民が出てくるんだ？ww
スロッカスだが開店楽しみに待ってるぞ

459 ：
やあ、みんな生きてるか？

460 ：
北京にボルテ入るまではRない

461 ：
猫跡地のアミパラ金曜からオープンしてたらしい

462 ：
べるぜ知ってるｗ

463 ：
べるぜ

464 ：
べっるぜ

465 ：
べるぜ

466 ：
べるぜ

467 ：
べるぜ

468 ：
　 　　　　　　　　　　　 　　　／￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　 |　＾o＾　|
　　 　　　　　　　　　　 　　　＼＿／
　　　　　　　　　　　　　　　 ／ 丶'　　ヽ:::::
　　　　　　　　　　　　　 　/ ヽ　　　 /　/::::
　　　　　　　　　　　　　　/　/へ ヘ/　/:::::
　　　　　　　　　　　　　 /　＼ ヾミ　 /|:::
　　　　　　　　　　　　　（__／| ＼___ノ/:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　/::::::::
　　　　　　　　　　　　　 　 /　ｙ　　　）:::
　　　　　　　　　　　　　　 / ／　　／::::
　　　　　　　　　　　　　／　　／::::
　　　　　　　　　　　 ／　　／:::::
　　　　　　　　　　（　　く::::::::
　　　　　　　　　 　|＼　　ヽ:::::
　　　　　 　 　 　 |　 .|＼　＼　:::::　　　　　　　　　べるぜ
　　 　 　＼　　　 .|　 .i:::　＼　⌒i::
　　　　　　 ＼ 　 |　/::::　　　ヽ 〈::
　　 　 　 　 　＼ |　i::::::　　　（__ノ:
　 　　 　　 　 __ノ　 ）:::::
　 　 　 　　 　（＿,,／＼

469 ：
べるぜ

470 ：
可愛い娘から声をかけてもらえるのを期待しながら寺をやり続けるゲームオタク

471 ：
べるぜ

472 ：
北京のパセリチャージ機どこいった？

473 ：
俺の胃の中

474 ：
結構前に故障したよ
メーカー送って修理しかできないらしく撤去中

475 ：
アミパラって盛り上がってんの？

476 ：
人は猫時代より多いんじゃね、設置機種は猫の頃より間違いなく多い

477 ：
べるぜ乙

478 ：
そういや水曜くらいに三条キューでユビートのカゴにニクソンの時計の忘れ物あったからカウンター届けたど

479 ：
べるべるぜ

480 ：
べるぜと一緒にいた男、前は違う女と歩いてたんだが

481 ：
きもいな

482 ：
昔から

483 ：
北京も色々変わったのう

484 ：
あまえんぼうさちゃん

485 ：
あの女いろんなゲセンで見るけどうるさいわ

486 ：
北京にボルテ入れてください

487 ：
べるぜ

488 ：
きもい

489 ：
奈良県のmaimai勢の子が大阪の女の子にストーカーして警察に連れて行かれた話おもろい

490 ：
べる

491 ：
べるべる

492 ：
べるべるべる

493 ：
イオンの寺のボタンはまり率は異常

494 ：
べるぜくんな

495 ：
イオンの寺のボタンはまり率は超異常

496 ：
a

497 ：
2018年はさらにゲーセン数減りそう

498 ：
ゲーセンにもいき放題の自動で稼げるブログナド
グーグル検索⇒『稲本のメツイオウレフフレゼ』

F7Y7Z

499 ：
三条は人増えてる？

500 ：
奈良ラウンドワン3月一杯をもって閉店ｗ

チーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン！ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

501 ：
ヨーカドーの後釜のダサイ名前のデパート！ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗうんこ杉ｗｗｗ

502 ：
４月８日を持ってラウンドワン新大宮店、閉店致しました！(´;ω;｀)

503 ：
速報
https://goo.gl/qU4521

504 ：
2018/5/5に北京のFESTAで寺大会あります

505 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

506 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

507 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

508 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

509 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

510 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

511 ：
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512 ：
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513 ：
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514 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

515 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

516 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

517 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

518 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

519 ：
.

520 ：
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521 ：
.

522 ：
.

523 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

524 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

525 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

526 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

527 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

528 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

529 ：
.

530 ：
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531 ：
.

532 ：
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533 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

534 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

535 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

536 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

537 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

538 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

539 ：
.

540 ：
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541 ：
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542 ：
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543 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

544 ：
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545 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

546 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

547 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

548 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

549 ：
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550 ：
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551 ：
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553 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

554 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

555 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

556 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

557 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

558 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

559 ：
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560 ：
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561 ：
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562 ：
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563 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

564 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

565 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

566 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

567 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

568 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

569 ：
.

570 ：
.

571 ：
.

572 ：
.

573 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

574 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

575 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

576 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

577 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

578 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

579 ：
.

580 ：
.

581 ：
.

582 ：
.

583 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

584 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

585 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

586 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

587 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

588 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

589 ：
.

590 ：
.

591 ：
.

592 ：
.

593 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

594 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

595 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

596 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

597 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

598 ：
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599 ：
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600 ：
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601 ：
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602 ：
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603 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

604 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

605 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

606 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
こｂ黷ﾜたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

607 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

608 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

609 ：
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610 ：
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611 ：
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612 ：
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613 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

614 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

615 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

616 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

617 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

618 ：
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619 ：
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620 ：
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621 ：
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622 ：
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623 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

624 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

625 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

626 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

627 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

628 ：
.

629 ：
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630 ：
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633 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

634 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

635 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

636 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

637 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

638 ：
.

639 ：
.

640 ：
.

641 ：
.

642 ：
.

643 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

644 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

645 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

646 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

647 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

648 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

649 ：
.

650 ：
.

651 ：
.

652 ：
.

653 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

654 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

655 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

656 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

657 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

658 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

659 ：
.

660 ：
.

661 ：
.

662 ：
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663 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

664 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

665 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

666 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

667 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

668 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

669 ：
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670 ：
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671 ：
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672 ：
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673 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

674 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

675 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

676 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

677 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

678 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

679 ：
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680 ：
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681 ：
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682 ：
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683 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

684 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

685 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

686 ：
メジャーリーグの表現を借りるなら、4月19日の松坂大輔の敗戦は「タフ・ロス」ということになる。
直訳すれば不運な負け。
日本のファンにもすっかり定着したクオリティ・スタート（QS）、つまり6イニング以上、
自責点3以内という好投が報われず、打線に見殺しにされた敗戦を意味する。
もちろん反対語もあり、QSの条件を満たさずに勝利投手となることは「チープ・ウィン」と呼ばれる。
移籍後2試合目の阪神戦（ナゴヤドーム）での松坂は、7イニングを2失点で自責点1。
これまたMLBでの指標ではハイクオリティ・スタート（7イニング以上、自責点2以下）となる。
もっとも、ここに松坂の満足感はない。
「自分のミスからだから、悔しさしかない」と振り返ったように、自責点にならなかった1点は、
不運ではなく松坂自身の失策がからんでいるからだ。
4回、先頭の西岡の平凡なゴロを捕り損ね、グラブトスしたが間に合わなかった。
MLB挑戦前の西武での8年間で、実に7度のゴールデングラブ賞に輝いたフィールディングの名手。
しかも、最終スコアは1－2。
つまり、この1点が結果的には決勝点となったのだから、松坂本人はとても「タフ・ロス」とは思えないだろう。
もちろん、収穫が大いにあった敗戦だったのも間違いない。
最大のプラス材料は123球を投げきり、翌日以降も右肩に異変が起こっていないということだろう。
6回を終わったところで101球。試合前でのメドは100～110球だから、交代してもおかしくないところだ。
そんなプラス1イニング、22球に至った経緯には、ちょっとした裏話がある。
明かしたのは朝倉健太投手コーチだ。
「6回を投げ終え、ベンチに帰ってきた松坂さんに近づこうとしたんです。ところが、僕と目を合わそうとしない。
こちらとしては（故障後は）投げていない領域だったので、確かめる必要がある。
でも、行けるというのなら止める必要はありません。
こちらを見ようとしないということで、思いは伝わりました。
だから『行けますか？』ではなく『行きますね』と声をかけたんです」
年齢は松坂が1歳上。野球界のルールとして、こういうケースは互いに敬語を使う。
松坂は「朝倉コーチ」と呼び、朝倉コーチは「松坂さん」と呼ぶ。
近寄ってきた年下の上司（コーチ）が聞きたいことはすぐわかる。
目をそらすのが松坂の無言の答えだった。
年上の部下（選手）の言いたいこともすぐわかる。
朝倉コーチは瞬時に忖度し、質問から確認へと言葉を変えた。
望んで「行く」と決めた以上、打たれることは許されない。
しかし1死から福留孝介に右前打を浴び、糸原健斗にはストレートの四球を与えてしまう。
セットポジションになると制球が乱れる課題は、この試合でも見られた。
大山悠輔にもカウントを悪くしたが、何とか中飛に打ち取った直後、松坂は下半身に異変を起こしたかのような仕草をした。
ベンチから朝倉コーチとトレーナーがマウンドへ駆け寄ろうとベンチを飛び出したほどだが、両手を挙げて制した。
降板後の説明によると「足がつったような感覚になったが、投げられるんでそのままいった」。
あと1人。この回だけは投げ切らせてやりたい。
誰もがそう思ったとき、ナゴヤドームに「奇跡」が起こった。
2万6904人。もちろん阪神ファンもいるのだが、黄色のはっぴを着ている彼らさえ、松坂を応援しているように聞こえた。
自然発生の拍手と歓声。「がんばれ」「負けるな」。中日のベテランが「ああいう声援は聞いたことがなかったですよね」と目を丸くしていた。
松坂の背中が、観客の心に化学変化をもたらしたのだ。
しかし梅野隆太郎に初球を中前に運ばれて2死満塁。ここで阪神は一気に試合を決めるべく、好投の小野泰己に代えて、上本博紀を送ってきた。
見逃し、ボール、ボール。「松坂が押し出しする姿だけは見たくない」という思いもあったのかもしれない。再びスタンド全体の力と声が結集した。
応援されている松坂が「最初は何でそうなったのかわからなかった」と言う一体感。人の心を引きつける人間には、計算や何かをしてもらおうという欲求がない。
声援を背に投じた137キロでファウルを打たせ、平行カウントに戻した5球目。外角に逃げていく134キロのカットボールを、上本に振らせた。
「球数はシーズンに入ってから、試合の中で増やせればと思っていたんですが、いっぱい、いっぱいという感じではなかったんですよね」
ちなみに7回終了後は森繁和監督が直接、松坂に歩み寄り降板を告げている。了解しつつも余力を感じていたという松坂。
「タフ・ロス」という言葉には周囲からの同情だったり、不運を嘆くニュアンスが込められていると思うが、松坂にとっては悔しさと手応えをつかみとれる有意義な敗北だった。

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