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安価・お題で短編小説を書こう!6


1 :2019/05/07 〜 最終レス :2019/09/28
安価お題で短編を書くスレです。

■お題について
現在、毎週日曜日の午後22時に前回のお題を締め切り、新しいお題を安価で決める方式を取っています。現時点での募集お題はスレ主によるレスを確認してください。

■投稿方法
投稿する際は、使用お題と【】でタイトルを明記してください。決めていなければ【無題】でも可。
作品は3レス以内で。レスが2つ以上に別れる場合は分かりやすいよう番号を振ってください。
R18は禁止です。他に規制はありません。

■「小説家になろう」等への投稿について
同一内容を別サイトへと投稿する行為は認めています。
その際、権利者以外が2ch上から無断で転載したものと区別するため、出来る限り【本スレへ投稿する前に】投稿してください。
別サイトへと投稿してリンクを貼るのも可。
リンク先のタグに『お題スレ投稿作品』を入れ、使用お題、タイトル、URLを書き込んでください。

■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1511408862/
安価・お題で短編小説を書こう!3
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1522770910/
安価・お題で短編小説を書こう!4
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1529860332/
安価・お題で短編小説を書こう!5
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1541947897/

2 :
前スレ754【再掲】です

☆お題→『運び屋』『鬱』『道の駅』『ラヴ』『勇者』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→5/12の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

3 :
乙!三代目さん頑張れ!

4 :
>>1おっつ!

5 :
新スレでもよろしくですー

連休明けで忙しいとは思いますが、皆様の作品をお待ちしております
あと、機会があれば、ここの宣伝・・・紹介もお願いしますw

6 :
新たな試みもいろいろしていこうぜ

7 :
ですねー、しかし何したら良いんだろうか

特殊ルールで遊んでみたいんですが、実際どうなのか
文字数とかレス数制限、お題制限

投稿だけじゃなくてアイディア出し企画とか

8 :
ジャンル指定+いつものお題とかは?
とんでもないジャンルが来ても困るから、ジャンルは予め用意しておいた中から安価決めるとか

9 :
前スレ見返してきたんですが、思ったのは、ちょっと難しいくらいの方が燃える人がいる
色々ルールを変える方が盛り上がりそう
文字数制限は推敲で困る人がいる

ジャンル指定も、分からないけど、またやってもいいかもです

んーでも超ショートもやってみたい

10 :
>>2
使用お題:『運び屋』『鬱』『道の駅』『ラブ』『勇者』

【グリーンエイジ】(1/3)


 鬱蒼とした森だった。太く捻れた幹と根が無造作に突き出し、歩く事すら困難な木々の間を一匹の異形の獣が飛び回っている。
 その背に跨があるのは1人の少年。
 運送業……通称『運び屋』を生業とする桐生 光信である。
 血と肉の代わりにオイルと金属によって形作られ、手綱の代わりにハンドルで操られる機械の獣。『機獣』が彼の相棒兼、仕事道具だった。

「うげ! また“道”が塞がってる。ま〜た、地図を書き換えなくちゃ……」

 彼の眼前に横たわる物もまた、見上げる程の巨大な樹木であった。
 だが、つい昨日来た時には無かった物であり、即ちそれは、この短期間でこの場に出現したと言う事である。

「全く、迷惑だよな巨樹獣(きょじゅう)ってのはさ!」

 ******

 西暦と言う時代が忘れ去られてから既に久しい。人がこの星の王者であった時代は終わり、世界は新たな王が君臨していた。

 “植物”……物言わぬ隣人であった彼等が牙を剥いたのは、人類が千年の停滞の中にいる時だった。
 全ての植物が急成長し、あまつさえ動物の様に動き回ると言う進化をする個体まで現れた“プラントビッグバン”と呼ばれた事件を境に、世界は一変した。
 葉緑素を持ち、自ら光合成を行う『エルフ種』や半鉱物人間と呼べる『ドワーフ種』と言った“新人類”が現れたのもこの頃の事である。

 この、プラントビッグバンの原因が、新たに開発されたエネルギーであるプラズマ振動炉であった事は、皮肉でしかないだろう。
 そう、植物達は、この新エネルギーを自ら取り込む事で進化したのである。

 ******

 光信はどうにかして通れそうな迂回路を探し、巨樹獣の巨体と並走していた。
 いくら鬱蒼と木々の生い茂る森であろうと、比較的通りやすい場所はある。
 そう言った所を彼等は“道”と呼んでいた。

「しっかし、コイツは何時に無い大物だな」

 横たわる巨樹獣を眺めながら、光信は、そんな感想を漏らす。
 動き回る樹木である巨樹獣は軒並み巨体を誇るのだが、今、横たわっている個体は、未だかつて光信が見た事の無い大きさだったからだ。

 光信が、その異変を感じ取ったのは、その時の事だった。

 ズドズドと言う重量感のある何かが走る音と、微かに聞こえる悲鳴。
 光信がそちらの方を見た時、真っ先に目に飛び込んできたのは、薄汚れた斑の巨体を震わせ走ってくるトロルと、それに追い掛けられているのだろう……

「エルフ!?」

 新緑の髪にアロエを想像させる長い耳がエルフの特徴である。
 そんな“彼女”は必死の形相で、蛙から進化したと言われているトロルから逃げていた。

「アイツ等、エルフが大好物だからな……」

 トロルにとってエルフは前菜のサラダ感覚らしい。おそらくメインディッシュはジャイアントローカスト辺りだろう。

「って、悠長にしてる場合じゃ無いな!」

 光信は機獣のアクセルを吹かすと、愛用のランスを構える。
 幾つもの大木の間を跳躍し、トロルの眉間に狙いを定めると、加速してそこを一突きにした。
 目の前の獲物に気を取られていたのであろう。トロルは呆気ない位に倒され、そのまま後ろにひっくり返る。
 それもそのはず。眉間の間、そこがトロルの唯一と言って良い弱点だったからだ。

11 :
【グリーンエイジ】(2/3)


 自身の命の危機が去ったからだろうか? トロルに追われていたエルフがそのまま気を失う。光信は慌てて彼女の身体を抱きとめた。

「……さて、困ったな。どうしよう」

 気を失ったエルフの少女を抱えたまま、光信はそう呟くのだった。

 ******

 エルフの少女、フォン・ラオチュンが気が付いた時、その目に映ったのはコンクリートが剥き出しの建物の天井だった。

「知らない天上だ……」
「マニアックな物知ってるのね」
「!!」

 若干の呆れの籠った声に、誰も居ないと思っていたフォンは、慌てて跳び起きた。

「ああ、警戒しないで。貴女、気を失ってた事理解出来る?」
「え? あ!!」

 そう、彼女、フォンは、トロルに襲われていた筈なのだ。
 それを思い出した瞬間、フォンは自身の身体に異常がないか慌てて調べ、そしてホッと息をついた。

「……あ! そうだ!! ワタシ、タレか、助けられて……」
「そうよ、そして気を失って、ここゴートクジの『駅』に連れて来られたの。光信君が運び屋なのは知ってるけど、流石に貴女を運んできた時はびっくりしちゃったわ」

 目の前の女性、駅の管理を任されているメリー・ワトスンは二コリと笑いながらそう言う。
 “駅”……“道”と“道”とが交差する場所に建てられた補給所兼休息所である。その特性から『道の駅』とも呼ばれている場所だった。
 恐らく彼女の寝かされている場所は、その駅に併設されている宿屋だろう。
 自らの危機が去った事を知った彼女は安堵の溜め息を吐くが、しかし、自身の使命を思い出した。

「ごめんネ! ワタシ、行かナイト!!」
「ちょ、ちょっと!!」

 自分の身体に何の怪我も無い事を確かめたフォンは、ベッドの横に置かれていた自らの荷物を抱えると、その足で駅に併設された宿屋から飛び出す。

「これ! 宿代とお礼!!」

 そう言って親指大の琥珀を指で弾き、メリーに放り渡しながら。

「せっかちなエルフも居たものね」

 後に残されたメリーは、溜息交じりにその後姿を見送るしかなかった。

12 :
【グリーンエイジ】(3/3)


 ******

「え? 出て行ったの?」

 メリーから事の顛末を聞かされた光信は、そう訊ね返した。

「珍しいわよね? 気の長いエルフにしては」
「ですね」

 森の中に独自のコミュニティーを作って暮らすエルフは、その生態から寿命が長く、のんびりとした性格をしている者が多い。
 その為、彼女の様にアクティブなエルフと言うのもあまり見ないのだった。

「ちょっと! 光信!! 聞いてるの!!」
「あ、御免」
「御免じゃないわよ!! もう! この子、足周りがガタガタじゃない!!」
「うん、御免」

 光信の機獣を整備していた少女。周防 彷徨は怒りで目を吊り上げていた。

「また、アンタ! この子で戦闘したでしょ!! 止めてって言ったわよね!!」
「う! 御免」
「アンタが勝手に傷つくのは構わないけど、この子まで巻き込むのは止めてよ!!」
「フフ、愛されてるわね? 光信君」

 メリーが微笑ましそうにそう言うと、彷徨は「違う!」と即座に否定する。そしてその意見には光信も大いに同意だった。

「そうですよ、コイツの愛は機械にしか向けられてませんから……な? メカラブ少女」
「メカラブ言うな!!」

 そう言いながらも彷徨は機獣を直す。自身の愛が機会に向けられている事に異存は無いからだ。
 ただ、そのせいで付けられた二つ名である『メカラブ少女』が気に入らなかっただけである。恥ずかしくて。
 プイっとソッポを向いた彷徨に苦笑しながら、光信は口を開いた。

「しかし、あまりコミュニティーから出て来ないエルフが、何でこんな所に居たんでしょうね?」
「さぁ、さすがにそれは、私にも分からないわね。何か、目的があるとか?」
「目的って?」
「それこそ、私に分かる訳ないじゃない」

 困り顔で肩を竦めるメリーに、それもそうかと思い苦笑を返す光信。
 だが、フォンと光信の運命が、この駅のある道の如く交差する日が近いとは、この時の彼に気が付く事は出来なかった。

 ******

 鬱蒼とした森の中を一人のエルフの少女が行く。その小さな肩に大きな運命を背負い……

「早く、早く探さなくちゃ……“勇者”サマを!」

13 :
ギリギリでアウトでしたorz

14 :
今回3作目、新スレ1作目
まぁおまけというか、待ってました、無理させてたら申し訳ないですが
これで勝つる!

15 :
お題→『運び屋』『鬱』『道の駅』『ラヴ』『勇者』締切

【参加作品一覧】
前761【運ぶ者たち】
前765【救世の果てへ】
>>10【グリーンエイジ】

16 :
さて・・・早速なんですが、今回はジャンル指定を試してみます
ジャンルはなろう準拠ではなく、進行が独自に調整したものを使います
(ご意見ご要望は後で受け付けます)

今回はお題4つ、ジャンル指定1つ、つまり実質は固定お題1つと同じです

17 :
ジャンルは次の中から1つ選択→
『恋愛』『ファンタジー』『歴史』『推理』『ホラー』『コメディー』『SF』『童話』
『冒険』『幻想』『日常』『人生』『家族』『戦争』『動物』『スポーツ』

お題安価>>18-21
ジャンル安価>>22

18 :


19 :


20 :
>>10
「プラントビッグバン」と呼ばれる事件によって生まれた植物を頂点とする世界を舞台に少年は運び屋として生き抜いていく。
世界観は近未来のSFをベースに機械の獣やドワーフと言ったハイファンタジーも持ち合わせており、その独特な世界観に読者を引き込む。
さらに、お題の「道の駅」という現代的な単語をその世界観に合わせてうまく使っている作者の腕には心から脱帽した。
個性的なキャラクターを登場させつつ、最後は王道的な始まりを予感させるエンド。
いい作品です

21 :
図書館

22 :
ちくわ

23 :
『動物』

24 :
割り込みは許されざる罪よー

ジャンル安価>>24

25 :
ジャンルちくわは草

26 :
うはあああ
『動物』
了解です!

27 :
ジャンルってどこまで広く捉えて良いのですか?
動物でも動物型のロボットとか、動物園の話とか比喩的に動物の話が出るとかでも大丈夫でしょうか。

28 :
☆お題→ジャンル『動物』+『虎』『銃』『図書館』『ちくわ』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→5/19の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

29 :
割り込んでしまった…
恥ずかしい……
今後気をつけますorz

30 :
前スレ784
これはなかなか難しい質問だと思うので、どなたか答えられるでしょうか
登場人物や世界観は使い回しつつ、お話は都度考える、つまり短編連作の形式にするとか?

>>29
頼んます
でも今回お題が早めに集まって良かった

31 :
>>27
動物の話をしていれば、ジャンル『動物』でおkです
前スレ『麒麟』で麒麟っぽいロボットを書いちゃったので、動物型ロボットの動物園の話でもおkです
動物のお肉の話、毛皮の話、獣人の話とかは、多分ですが微妙
人間も動物だからー、とか、宇宙の意思が動物でー、とか、そういうのは駄目です

32 :
>>30
自分は、お題を見て「あ、この前書いた話が使えるな」と思ったら、続きを書きます
ただ、短編だと言う事は念頭に置いて、初読みでも理解できる様にはしますが

>>20
感想を有り難うございます
本当は『なろう』の連載にしようかと思ったのですが、そちらに投稿してからではアップ出来ない時間だったので諦めましたw
それでも時間オーバーしてますがw

33 :
ともかく、作品、お題、ありがとうございます
このスレはスレ民の皆様によって成り立っております

そして、ご意見ご要望、ご質問も苦情も受け付けております
ジャンルにちくわを足したいとかゴリラを入れたいとかでも大丈夫です
引き続きよろしくお願いいたします

34 :
>>32
なるほど・・・多分キャラが立ってる話なので、続きを書けそうな時に書く、って感じですね
って言うか元の質問は風呂敷の畳み方でしたが、>>30で意図を歪曲しちゃってますね
風呂敷を畳まずに引っ張る話になってるw

35 :
短編として風呂敷を畳むなら、オチから逆算して話を考える
ここでの個人的なやり方なら、オチに使うお題と話の軸に添えるお題を決めて他のお題を散りばめていく感じ

その過程で今まで書いた設定に繋げられるなら繋げていく感じかな

36 :
話をねじ曲げてすまんかった
思い付いたまま最初から書くのではなく、ゴールを決めて書くわけですね


それと重ね重ねすまない
前スレが埋まらなかったので、皆様、感想とか雑談とかで、埋めるのを手伝ってくだされ
進行は寝ます

37 :
>>10
書きも書いたり遠路はるばるやってきました新生スレ6におめでとうだぜ、進行氏スレ立てアンドまとめ乙だぜ、10氏も祝砲、全選択、ここから始まる物語ィ!
さあ、『鬱』蒼とした森、『運び屋』稼業の光信さんが相棒の機獣を駆る〜、幻想的なシーンだ〜、植物が氾濫する世界において新人類が生まれいで、
目の前にはトロルに追われるエルフが走る〜! ランス一撃、トロルをしとめ〜、エルフを介抱する光信さんは運び屋の『道の駅』にINした模様、
機獣がガタガタになっていると目を吊り上げるのは、メンテ係の彷徨さん〜、通称メカ『ラブ』少女だw ネーミング考えろw ラスト、映像はエルフの少女を映し出す、
いわく「『勇者』サマを探さなくちゃ!」、大きなうねりを感じさせる物語冒頭、こいつはまさに新スレ開始にふさわしきワクワク感だな、10氏の全選択が新スレに花を飾ってくれたァ!

38 :
>>37
感想をいつも有り難うございます
6スレ続くと言うのも凄いですよねw
逆に言えば、競馬実況さんもそれだけ感想を書き続けてきたと言う事でもあります
いつもいつも、かんしゃしています!

39 :
面白い作品を作りあげるコツを

40 :
前スレが落ちない理由が気になり過ぎて><

>>39
それは答えにくい質問かと
その質問に答える=自作の面白さに自信ニキw

持論はあるんですが、、自分自身が面白いと思うものを書いて、そこから広げるのが一番だと思います

ここだと特に競馬さんが面白いところを探してくださいますし
実際どの作品も、どこかしら面白い部分がありますよね
リップサービスではなく

41 :
>>38
こちらこそ楽しませて貰ってありがとw

42 :
>>28
「十代目、未だ休めず」1/3

大日本帝国図書館。
そこは国の財産たる知恵、行く先を示す歴史、民のあり方を紡ぐ文化の全てを納めた知識の宝庫である。
納められている書籍に目を通すことが出来るのは一部の政府関係者のみであり、どれだけ願おうとも一般人では文字どころか生涯、入館さえままならない。
そのような場所、機関なのだから司書として働くことなど夢のまた夢。
最難関の国家試験、その上位成績者という選び抜かれた者達のみが勤めることを許されている。
無論、私もその一人であることには違いない。
違いないのだから、当然納得がいっていない。
納得がいっていないのだから、私は今とある男が住処としている一室、指定不可図書管理人室の前で一人、荒ぶる精神を押さえつけていた。
もう、うんざりだった。
なぜこのような社会不適合者であり、反社会的人物であり、人格破綻者、人間性皆無、犬畜生にも劣る人物の世話役などやらねばならないのか。
今日こそは言ってやるのだ。
この仕事が終わったらお前の世話など金輪際勘弁だと。
今後私の人生に二度と関わるなと。
頼むからその面下げてうちにやってくるなと。
言ってやるのだ。
そう固く、固く決意して私はようやくドアノブを回した。
「うおらぁっ!出て来いや!いっ……」
「Rぇっ!」
数センチ、扉を開けたところで私は動きを止めた。
私の声は、『奴』の明らかな殺意と恐らくガラス瓶と思われる物の破壊音で掻き消されたのだ。
その音の出どころはまこと、私が開け放とうとした扉、それである。
「うぉら駒田ぁっ!テメェ仕事舐めてんのかクソカスがぁっ!ぶっ殺してやるぞ我ゴラァッ!」
誤解してはいけない。
私、駒田真一はクソがつくほどの真面目人間である。
その堅物さのおかげで上司から疎まれ、この生物の世話役を任ぜられたので、間違いない。
また、そんな私が介護とまで言っていいほどに甲斐甲斐しく世話を焼いている彼から殺意を持たれるようなことなどあるはずがない。
前述の通り、私は彼を今すぐにでも殺処分したいが。
『ご、ごめんよぉ。駒さん』
スルリと、それはやってきた。
木製の扉をすり抜けて、勇敢な顔つきと密林の王者たる縦縞を持ち合わせたそれは虎の幽霊、マクラである。
かつては一国の大名を困りに困らせた大悪霊であったが、今となってはすっかり牙を抜かれた飼い猫ならぬ飼い霊である。
「おい、マクラ。なんだ、あれ」
私が来日したばかりの観光客のごとき片言になっているのは恐怖からではない、
断じてない。
『それが、オラにもわかんねぇんだ。駒さんがわざわざ買ってきたちくわを食べようとしたみたいなんだけど』
「竹輪?」
それは、おかしい。

43 :
>>42
「十代目、未だ休めず」2/3

私は、ごぼう天を買ってこいと言われた筈だ。
私は扉の向こうにいる『奴』に向けて怒鳴る。
「お前、ごぼう天っつったろうが!舐めてんのか!ああっ!?」
「俺は竹輪っつったろうがクソ間抜け!てめぇこのごぼう、その詰まりに詰まった耳に突っ込んで掃除してやろうか!?ああっ!?」
再度の破裂音が扉の向こうで響く。
私は、今度から買ってくるのは缶ビールにしようと決めた。
『ああ、ごめんよ駒さん。オラちょうど休んでたからそこら辺よく聞いてなかったんだ。ごめんよぉ』
「気にすんな。お前のせいじゃねぇよ。しかし、仕事が来たんだがこれじゃあな」
シクシクと泣くマクラの頭を撫でていると、勢いよく扉が開かれた。
のぞいてきたギョロリとした真っ赤な目は爛々と輝いている。
というか、酒臭い。
「いやぁ、『僕』の健康を気遣ってわざわざごぼう天買ってくるなんて駒ちゃんは優しいなぁ。それより仕事だって?それならそうと早く言ってよ。ほらほら中へ」
ぶん殴りてぇ。
私は震える拳を納めながら、導かれるまま部屋へと踏み入れた。
飛び散ったビール瓶。
山積みの吸い殻。
酒か吐瀉物かわからない物が床一面にばら撒かれ、それらがとてつもない悪臭を放っている。
私はできる限り息をしないように気をつけながら、というよりも説明もしたくなかったので『奴』机に報告書を投げた。
『奴』は報告書を受け取ると舐めるように隅々まで目を通す。
一通り読み終えると、ふぅむと一つ唸った。
「四国、か。あそこは食い物は美味いし、面白い伝承が山盛りだからな」
報告書の題名は、『指定不可図書、デイダラボッチについて』。
「やるぜ、これ」
快諾を引き出した私はコクコクとうなづくと『奴』の手から報告書をひったくり、新鮮な空気を求めて外へと飛び出した。

44 :
>>43
「十代目、未だ休めず」3/3

ここは、大日本帝国図書館。
国の財産たる知恵、行く先を示す歴史、民のあり方を紡ぐ文化の全てを納めた知識の宝庫である。
しかし、その中には分類指定ができない書籍もある。
魔導書、妖書。
それら読者に害を与える書籍を総じて、私達は指定不可図書と呼ぶ。
その書籍を収集、管理するのが我ら指定不可図書管理人である。
指定不可図書は言わば害獣。
かつてのマクラのように魑魅魍魎または悪魔または魔獣と言った獣は狩らねばならない。
私を猟師、マクラを猟犬と例えるならば『奴』は銃だろう。
『奴』、十代目一休を例えるならばおそらくは、そうなる。

45 :
>>42
早速の作品ありがとうですが、ジャンル指定回でカテエラは困る(失格とはしません
これだとジャンル『伝奇(のプロローグで、コンクルージョンも入れてみた)』ですね
分量から言って、猛獣みたいな人間の話が大半、虎が少し、動物とも言える野良魔導書の話が少し
これでジャンル『動物』とは、ちょっと認められない

他のお題からの内容について
『虎』→一休、なるほど、その手があったか
『銃』→問題なし
『図書館』→魔導書、まったく正当な発想
『ちくわ』の処理は自由でいい感じ

以上よろしくです!

46 :
作者様の思考を誘導したくなかったので、具体的に言わなかったのですが
進行としては、シートン動物記、イソップ物語、中国朝鮮東南アジアの伝承、ごん狐、現代や異世界の動物園やペットの話、などが念頭にありました

僭越ながら>>42の世界で話を作るなら、マクラを調伏する時の話→銃や刀で脅しても効かず→ちくわで釣ったろw→釣られてやんのww→オラちくわが好きなんだ文句あっか
これなら動物の話してる・・・のではないかと

47 :
>>45
>>42です。
ご判断感謝します。
大変助かりました。
ご迷惑おかけします。

48 :
動物ガンガン入れ込んでるけどねw
まあ進行氏としては役目上、辛くとも言わなければならないとこだ
どっちともよくやった!

49 :
>>42
今回はジャンル『動物』+選択式のお題戦となった、いつもとテイストが違うけどどう攻略するか〜、と思ってたら42氏が力作で速攻トライ! 十代目アイツの脈々たるバトルシーズン開始!
さあ、舞台は大日本帝国『図書館』である、指定不可図書管理人なる男の部屋前、語り手の駒田さんが苦虫を噛み潰している模様〜、
どうも管理人は一癖ある男のようで、駒田さん配達のごぼう天と『ちくわ』の違いにブチギレているようだw いいだろ、どっちもおいしいんだしw 虎(『動物』)の飼い霊?、ことマクラあらわれ、駒田さんに謝る苦労性〜
さて迷惑かけまくりのナンあり管理人が仕事書類の中身に目を光らせた〜、奴の正体は、指定不可図書、言わば害獣(『動物』)を駆る存在…、マクラを猟犬と例えるならば奴は『銃』! そう、十代目一休を例えるならば…! 一休さん、それで虎かw
すごい面白そうな引きで終わった、なんかワクワク冒頭を作る流れになっているが…w 別個のキャラをぶつけてキャラを立たせた42氏のベテラン手際〜、炸裂した続編期待ENDがお題をぺろっとたいらげてフィニッシュだ!

50 :
>>47
とんでもないです、ご理解感謝します!

>>48
フォローありがとうございます><

51 :
すみません。自分の作品は>>42さん以上にカテ違いなんですが他に上げられる場所もないので供養がてら上げても良いでしょうか?
といっても推敲があるのでまだ暫くは掛かりますけど

52 :
>>51
えええ・・・カテ違い困るなぁ・・・
ジャンル指定の意味がない
なんとか動物要素の割合を増やせないでしょうか

ともかく一瞬でも動物の話をしていれば、上げて頂いて大丈夫ですよ
むしろどんどん上げてください
これおかしくね?と思ったら都度言いますので・・・

53 :
>>52
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
なんとか動物要素を増やしてみようと思います。

54 :
>>53
こちらこそ、お手数お掛けします
ただ折角の機会なので、動物要素に挑戦して(そして楽しんで)頂ければと思います

55 :
小説ばかり書いてるのもいいけど運動もしなさいよ

56 :
ジャンル指定が『スポーツ』だったらばw

57 :
>>42
妖書の管理者達と言う所ですね
アクの強いメンバーが、どの様に対処して行くのか? 気になりますw

58 :
>>28
お題:ジャンル『動物』+『虎』『銃』『図書館』『ちくわ』

【その猫はサバトラ!】(1/3)


 例えば人外転生ってジャンルがある。死んで、異世界に人間以外の生き物として転生するってやつだ。
 状況から見れば僕の身に起こったのはそう言う事なんだろうけど、厳密に言ってしまうとそれはちょっと違う。
 僕の場合は一度、現在世界に転生してから、異世界に来たって事だからだ。
 僕は今、猫に生まれ変わって異世界の密林に来ている。

「本当に異世界ですねぇ……」
「だろ? 人間達には来れない世界だ」

 僕の目の前には二足歩行するハチワレの猫。触手の生えた小動物なんかの説明しながら僕たを先導する、先輩にして同じ転生仲間であるヨシムネさん。彼は僕よりずいぶん前から猫として生きているらしい。
 そんな僕の現在の姿は金と黒のオッドアイのサバトラ。モチロン二足歩行をしている。

 実は全ての猫は二足歩行ができる。僕も猫に成って初めて知ったんだけどね。
 ただ、二足歩行をしていると、やたらと人間に目を付けられSNS何かにアップされてしまう為、向こうの世界では大人しく四足歩行をする事にしていたんだけど……

 ******

「うひゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『おい! 待てよ!!』
『こっちだ! こっち!! 捕まえろ!!』
『Y〇u Tubeへアップしようぜ!!』
『本を読む猫だぜ!! 絶対バズるって!!』
「こんチクショウ!! 僕は見世物じゃぁ無いっての!!」

 図書館に忍び込み、ライトノベルを立ち読みしている所をうっかり中坊に見つかった僕は、四足歩行に偽装する事も忘れ、二足歩行のまま酷く綺麗なピッチ走法でダッシュしていた。
 その事が余計に中坊共の関心を惹いて居たんだけど、その時の僕は、そんな事にも頭を回す余裕はなかったんだ。

「こっちへ来い!!」
「え?」
「良いから!!」

 書架の陰から僕を呼ぶハチワレに、絶体絶命だった僕は、それこそ藁にも縋る思いで飛びつく。
 そうして飛び込んだ図書館の書架にある本の隙間の先は原初の密林だった。
 呆然とする僕に、ハチワレはニャと笑うと「オレの名前はヨシムネだ。よろしくご同輩!」と、声を掛けて来たのである。

59 :
【その猫はサバトラ!】(2/3)


 ******

 驚いた事に、猫と言う生き物は二つの世界を行き来して生きているのだそうだ。唐突に猫が居なくなったりしているのは、こうして異世界に来ているからだと言う。
 特に長く生きた猫は、こうして異世界に住居を移す傾向にあるらしい。
 昔から長く生きる猫と言う物は、人間に奇異の目で見られたり、化け猫だと思われたりする為、そうした習慣が有るんだとか。

「で、何処に向かってるんです?」
「縄張りのボスの所だ」

 ああ、異世界でもそう言うの有るんだ。世知辛いなぁ。
 彼の後を付いて行った先に有ったのは、随分立派なお屋敷だった……ただし猫サイズの。
 門番をしているらしい二匹の猫に頭を下げられたヨシムネさんは、やけに慣れた感じに挨拶をし、テトテトと屋敷の中に入って行く。
 そして辿り着いたのは円卓と呼ばれる丸い大きなテーブルのある部屋で、正面には、やけに豪奢な椅子が置いてあった。

「まぁ、座りなよ」

 そう言って僕に円卓の椅子の一つを勧めると、自分はジャケットを羽織り、豪奢な椅子に座って……

「ようこそ、御同輩。オレがここの縄張りのボスのヨシムネだ」

 と、そう言ったのだった。

 ******

「ま、一本やりなよ」
「あ、どうも」

 そう言って差し出されたちくわを僕は咥える。
 周囲ではメイド姿の黒猫が甲斐甲斐しく飲み物の準備をしてくれていた。

「お飲み物は何になさいますか?」
「あ、ミルクをストレートで」
「やぁ、ミルクをストレートでか、中々に“通”だね」

 そう言うとヨシムネさんもストレートのミルクをぴちゃぴちゃと舐める。

「……それで、何で僕を助けてくれたんですか?」
「そうだね、単刀直入に言おう。オレの仲間に成って欲しい」

 何でも近々縄張り争いの抗争があるそうで、その為に戦力を強化したいのだとか。
 だけど、言っては何だが、僕は普通のサバトラだ。血統書もないし特別な力も無い。
 そんな僕を仲間にした所でそれ程戦力に成らないんじゃないかって気がするんだけど。

「……何故、と聞いても?」
「君が転生者だからだ」

 ヨシムネさんは端的にそう言った。そしてパンパンと言うか、ポムポムと言った感じで前足を叩くと、メイド猫がお盆に何かを持って来た。

「これは……銃?」
「その通り」

 そこにあったのはガシャポン何かによく入っているBB弾を打ち出すおもちゃの銃だった。

60 :
【その猫はサバトラ!】(3/3)


「それを君には使って欲しい」

 確かに遠距離攻撃の手段の無い猫に銃は有効な攻撃手段だろう。僕はその銃を前足で掴むとマガジンをセットしボルトを引く。

「固いですね」
「強化してあるからね」

 今回の抗争の為に、ヨシムネさんは現世でこれをかき集め、バネを二倍にし強化を施したらしいのだが、そこで一つ問題が起こったのだそうだ。

「今の君の様に正しく銃を扱える猫なんて、存在しないんだよ?」

 ちくわを齧りながら、まいったねとヨシムネさんは言った。こんな風に道具を自在に扱うと言う事が猫には不向きだったらしい。
 よしんば撃てたとしても、普通の猫だと本能に抗えず、BB弾を追いかけ回してしまい、下手をすると銃を撃った本猫がそれに飛びついてしまうのだとか。
 
 でも、だからと言って僕が扱えるとは限らないんだけど……と、そう思っていたら彼が言う。

「君はさっき、小動物を見ても追いかけ回さなかったじゃないか」
「あー、そう言う事ですか」

 密林の中に出て来た鼠の様な生き物の話だろう。ヨシムネさんもそうだけど、転生者は総じて理性の方が強い傾向にあるらしい。
 それに加えて、僕はラノベを立ち読みできるくらいに腕力……前足力? があり、器用だと言う事も理由だそうだ。
 要は、いつも僕が図書館でラノベ漁りをして居た所をばっちり観察されていたらしい。
 僕は随分前から彼に目を付けられて居た様だ。
 それに……

「助けて貰った恩も有りますしね」
「じゃぁ」
「はい、よろしくお願いします。僕はサバトラ。名前はまだありません」
「ああ! こちらこそ!!」

 僕は、後に自分が『ヨシムネの懐刀』なんて呼ばれる様になるなんて、この時は全く想像して居なかったんだ。

61 :
>>58
そこ(異世界)にいたのかお前らー!
某迷い黒猫の話とか、某ネズミとイタチの話とか、某奥羽の犬の話とかの系譜に近いような、そうでもないようなw
なろうだと『動物の世界にとりっぷ』シリーズを思い出しました・・・話も世界観も全然違いますが

ジャンル・・・中身が人間でも猫してるので、ジャンル『動物』で問題のあろうはずがない
『虎』、、トラ、、いいのか? 駄目なんて言えないですがw

62 :
>>28
前スレ511の続編です

使用お題→ジャンル『動物』+『虎』『銃』『図書館』『ちくわ』

【いとしの】(1/2)

 今日も私は帝国図書館に来ている。ここは魔術系クエストが多い場所で、だから訪れるのもスペルユーザー系の人が多い。
 数日前のバランス調整で、そのスペルユーザー系が弱体化された。一人で敵を溶かしていた魔法使いたちは、十人並みの強さになった。
 戦えないほどではない。だけど火力が目的の人たちは、このエリアから消えた。残っているのは、本当に魔法使いに愛着のある人だけだ。
「よしよし、いい子にしててね」
 私はガンスリンガー、遠距離物理攻撃のクラスだ。だから彼らの弱体化自体は、私には関係がない。
 人影もまばらな空間。ここは書架が林立するジャングルだ。獣道を進む、ペットを連れた私。まるで物語の主人公みたい。
 閲覧室の奥に、いつものプレイヤー、ネクロマンサーと思われる彼の姿を確認する。
 声は掛けない。
 遠くから見るだけ。
 それから本来の目的、とあるクエストを受けるために移動する。
 私が歩けば一緒に歩く。私が止まれば同じく止まる。オレンジと黒のしま模様。
 小さな猛獣。私の大事なペット。ベビータイガーのトラタロー。

 *

「変な名前ね」
 なんて、失礼なことを言うのは委員長。
「同志ハナコ、もっと由緒正しい名前を付けたらいかが」
 余計なお世話だ。それに、変なのは委員長の方なのだ。
 ファイトマンサー(phytomancer、植物を操って戦うクラス)でエルフの彼女は、リアルでは私のクラスメート。
 学校ではほとんど話さない。だけど、こっちでは一緒に遊んでくれる。
 革命家のロールプレイが好きな変わり者。エルフによる革命政府がどうのこうの。
 しかも、なぜか私が仲間扱いだ。
「ペットもそうですし、あなた自身も、もっとエルフみたいな名前がよろしいのではなくて?」
「もー、これでいいの。簡単な名前がいいんだって」
「それは愛情が足りてないのだわ。高貴なエルフにあるまじきことね」
 ちなみに私はエルフじゃない。だからその、長くて変わった名前を付ける、エルフの愛情? ちょっと理解できないなー。
「あっ、いたいた。おーい。やほー! フーちゃん、ハナちゃん、トラタローくん」
 退屈そうに伏せていたトラタローが、その呼び掛けに反応する。
 ここは通称、豚の広場。初代皇帝の銅像が立つ、待ち合わせスポットだ。
「はーい、おやつだよー、トラタローくーん」
 トラタローのAIは現金なもので、おやつをくれる人をちゃんと覚えている。
 この人は委員長のフレンドで、よく攻略に付き合ってくれる。
「ココさん、お世話になります。……転職したんですか?」
 以前会った時と装備が違う。
「うん。魔法は当分駄目だね。これからは物理の時代だよー」
 そっかー。愛情か効率か。悩ましい問題だ。
「そう言うハナちゃんはどうなの? チュートリアルペットに調整入ったよね」

 そうなのだ。弱体化されたのはスペルユーザーだけではない。
 ペットシステムのチュートリアルで支給される、初期ペット。
 ベビータイガーはその中の一つ。
 今回の調整で、この子たちのステータスも引き下げられたのだ。

63 :
【いとしの】(2/2)

 初期ペットは四種類。そこから一つを選ぶ。ベビータイガーが一番かわいいと思った。
「はいトラタロー、おやつをどうぞ」
 現実のペットと違って、この子たちに食事は必要ない。トイレの世話もない。
 成長もしない。レベルアップでステータスは上がるし、AIは学習して賢くなる。だけど見た目は子供のまま。
 死ぬこともない。もちろん戦闘で倒れることはあるけれど、後でちゃんと復活する。
 現実の、例えば野良猫には自由意志がある。
 仲良くしていた猫が、ある日ふっと姿を消して、それっきり。
 この子たちにはそれがない。
 だからこの子たちは、どちらかと言えば、飼い犬に近いのかも知れない。

 *

 トラタローに銃口を向け、引き金を引く。
「ああー、駄目だぁ。全然弱い」
 ガンスリンガーのビルドには種類がある。私のは支援型で、専用の銃弾で味方を強化して戦う。その中でも特に、ペットを主軸に立ち回るタイプだ。
 弱体化の影響は大きい。戦えないほどではない。だけど、初期ペットは元々そんなに強くない。
「大丈夫! 任せてー」
 委員長もアタッカータイプではない。そしてアタッカーであるはずのトラタローは、全然活躍できていない。必然、与ダメはココさん頼みとなる。

「あ、出たね。魂のかけら」
 ボスドロップの『魂のかけら』。集めて合成すると召喚アイテムになる。使用すると、そのボスと同じタイプのモンスターをペットにできる。
「猫系のボスだし、それ集めてペットにしちゃう?」
 ボスタイプのペットは、初期ペットよりはステータスが高い。効率を考えるなら、乗り替えるのが正解だ。
 リアルとは違う。ペットは幾らでも増やせる。だけど育てるのには時間がかかる。そこだけは現実と同じ。
「うーん、どうしよう」
「ココさん、ちょっとそれはどうかしら」
 煮え切らない私。委員長がココさんを注意する。
「あ、そうだよね。ごめんねー」
 ココさんはココさんで『てへぺろ』のエモートを出して謝ってくれる。
 もちろん、悪気がなかったことは、最初から分かっている。

「同志ハナコ」
「なあに、委員長」
 彼女の言葉。
「自分で決めるのよ」
「……えっ」
「最後は、自分で決めるのよ」

 *

 今日も私は帝国図書館に来ている。いつものネクロマンサーの人は……いる。けれど、見慣れない女の子の二人組と一緒だ。そして何やら……もめている。
「……それは、困りますね」
「何それ信じらんない! あ、そうだ。じゃあこれ買い取ってよ馬鹿お兄」
 ああ……『呪いのチャーハン』ね。破棄不可、トレ不可、敵に使うのも不可のデバフアイテムだ。
 ネクロマンサーではない人が手にすると、ひどい目に遭う……。
「そうなんですか。意地悪な先輩」
「ほんとだよ! それは前もって言ってくれなきゃだよ!」
「ふっ、これも試練の一つ……あー、何か?」
 自分でも気付かない内に、彼らに近寄っていた。
「いえっ、えっと。そのチャーハン困りますよねー、なんて……」
 私は何がしたかったのか。分からないけど、女の子たちには分かったようだ。
「そうなんです。そうなんですよ。ところでその」
「それかわいいですね」
 ちょこんと座ったトラタロー。そうでしょう。そうでしょうとも。
「ありがとうございます。そうだっ! このちくわをですね、あげるとですね」

 図書館で受けられるクエストの一つに、ジョークアイテムが支給されるものがある。
 猫系ペット専用のちくわ。トラタローに使う。すると――――

64 :
そして色々言った本人は、動物(型のAIペット)の話をするという
広い心で、カテエラではないと思いたい
前スレ439とテーマが近いので、せめて結論はぼかしています

65 :
カテ違いながらもせめて完成させようとした矢先に悲しみの残業ですよ。あとちょっとなのに

オクラストックが増えていく…

66 :
あ、念のため、私と前スレ439さんは別人です

67 :
>>65
>>51さんですか?
とりあえず、、供養をお待ちしております・・・><

68 :
>>67
はい。
ありがとうございます。
今日はもうヘトヘトなので出せても明日だと思います。
皆様の作品もゆっくり読ませていただきます。

69 :
>>68
承知しました、お疲れさまです

70 :
お題→ジャンル『動物』+『虎』『銃』『図書館』『ちくわ』締切

【参加作品一覧】
>>42【十代目、未だ休めず】
>>58【その猫はサバトラ!】
>>62【いとしの】

71 :
さて・・・前スレが・・・落ちません!
皆様にご協力頂いたのですが!
とっくに512KB超過してるはずなのに!

そこで今回から、前スレに戻ってお題と作品を募集します
ややこしくて申し訳ありません

72 :
そういうわけで、今回のお題は、こちらにお願いします・・・

https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1541947897/828-n

73 :
今回のお題は、こちらとなりました
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1541947897/834

作品やレスは、次の通りにお願いします
・今回分の作品は、前スレ
・雑談等は、前スレ
>>2>>28の供養は、ここスレ6
・感想や感想返しは、当該作品のスレ

74 :
>>58
続くジャンル指定『動物』ファイト、自由お題を全てチョイスの58氏はテーマを猫と見定めてきた〜、ブックエンド・キャットゾーンの秘密!
さあ、主人公は人外転生で二足歩行する猫となった、金と黒のオッドアイ・サバ『トラ』のようだ〜、あえて虎ではなく猫とした点に工夫有りか〜、猫のまま『図書館』でライトノベルを立ち読みしている所、
鶴と亀の昔話っぽい悪ガキ共に見つかり窮地に陥るw そこにご同輩と声をかけてきたのがハチワレ猫のヨシムネさん、語り手をいざなうのは、書架の隙間の原初の密林〜、小サイズの屋敷にて
「ま、一本やりなよ」と『ちくわ』が差し出された、そこでちくわなのかw なにやら縄張り争いのために用意したおもちゃの『銃』の使い手が見つからず、前足力のある語り手に白羽の矢が立ったらしい!
ラスト、物語はサバトラさんが有能なヒットマンになったそうだフィニッシュで、後日談形式END〜、全選択をクリアの58氏、『動物』界のアイドル・猫の世界を寓話風に寄せてきたか! 異世界探訪感のある仕上がりだ!

>>62
トリを飾るは進行氏もとい62氏、ネクロマンサーの作者だったとはw テーマ『動物』ではかわいい系タイガーをチョイス、アンド自由お題を全選択! こちへ這いよれ、ベビータイガー!
さあ、子『虎』をペットにした遠距離物理系ガンスリンガーの語り手が、『図書館』でクエストを求めて来訪している〜、運営による弱体化のあおりを受け、
メイン武器でもあるベビータイガーが弱くなってしまったらしいw 初期ペットは能力値が低く、敵を取り込んで乗り換えるポケモンスタイルのが普通のようだが、語り手には愛着があり代替える気はなさそう〜
しかし戦闘は仲間頼りで…、愛情か効率か、最後は自分で決めろと言葉が頭に宿る! さて件のネクロマンサー達と遭遇、ベビータイガーを囲んでワイワイだ、
おもむろに語り手がジョークアイテム『ちくわ』を取り出し、何かやるのって、え、終わりw んーこれは可愛いエフェクトが出て、やっぱこの子捨てらんない、次でどうにかしなきゃって感じか、62氏、ご想像にお任せしますENDで全選択を突破!

75 :
>>58
ごめん間違った、鶴亀じゃなく浦島太郎でw

76 :
こんなスレがあったんだなあ

77 :
>>74
感想ありがとうございます
前の話は短いものでしたが、今回は長くなってしまいました
最後、ちくわをくわえて踊りますw

>>76
今ちょっと前スレが残ってまして、今週の活動はそちらで行っております

78 :
供養させていただきます。

79 :
>>28
使用お題:ジャンル『動物』+『虎』『銃』『図書館』『ちくわ』

【獣達の夜】(1/3)

再就職が決まったのは三週間前だった。駅前広場から延びる大通り沿いに古臭い宮殿のような建物がある。そこが新しい職場だ。市立図書館が移されたのは最近だが建物自体の歴史は古く、
図書館の一画はその歴史と所有者だったカリヴォダ家の紹介に割かれている。長らくこの町は一族がここで営む図書館のみだったが経営難により、市が買い取ったのだ。一族の初代当主は稀代の蒐集家だった。
建物の地下には手つかずの遺物が数多く残っている。私の仕事はそれらをリストにまとめ、管理することだ。

館長は図書館らしい物腰柔らかな老人だ。従業員達も皆人畜無害で少々調子が狂う。だがそもそも彼らと話す機会など滅多にない。私の仕事はカビ臭い地下に籠り毎日定時上がり、進捗など誰も気にせず、
ノルマも報告もない。金にならない過去の遺物など皆本心ではどうでもいいと思っているのだ。賃金は酷いが、安月給の障害者雇用である。楽さを考えれば文句は言えまい。
辛いのはバリアフリーなど考えていない急な階段をこの不自由な足で上り下りすることくらいだ。

足を引きずりながら地下室を見て回る。薄明りの中に光る獣の目があった。私は腰を抜かしかけたがすぐに正体がわかった。精巧な狐の剥製だ。今にも自分に襲い掛かりそうな恐怖を感じる。興味を惹かれて近づく。
心なしか狐が不気味に笑った気がした。剥製を調べると腹に切れ込みがあり、中空なことに気づく。恐る恐る手を入れ掴んだものを出す。内臓を引き抜くような嫌な感触だった。
手には輪ゴムで留められた書類が握られていた。劣化した輪ゴムが役割を終えたかのように力なく切れる。書類にはメモが張り付けてあった。

“小人へ 
踊り子はクビだ。
トーチに火を灯せ。
ジャグラーより”

メモにはそう書かれていた。暗号だろうか。そう思いCONFIDENTIALと印の押された書類を読み進めると何となく合点がいった。これは恐らく米軍かCIAの資料といったところだ。
よそ者ならここになぜそんなものがあるのか不思議だろうが、この建物の歴史を知っていればすぐにわかる。20年前、スロバキアと大きな紛争があった。戦闘は凄惨を極め、今でも町の各所に爪痕が残っている。
泥沼の戦争は米露合意で実現した米軍の加勢によって終結した。米軍は町を奪還した際にこの建物を占領、そのまま接収して引き上げるまで施設として使っていたのだ。きっとその時忘れていった。
いや、見つかった場所とメモから言って誰かが意図的に隠したものだろう。

これは面白い物が見つかった。机と椅子を用意してじっくりと読み進めていく。書類は全てあるCIA職員に関するものだった。ウィリアム・J・ポー。東側から“猛獣使い”と呼ばれた凄腕のスパイだ。
彼はその地域で“最も危険な男”を手懐ける事に長けていた。紛争中も“ボヘミアの虎”と呼ばれた猛将、クーベリック中佐に取り入り、彼と米国の間に太いコネクションを作った。
また、彼はロック好きで自らが関わった作戦にそれに関する名前を付けることが多かったという。例えば中米の麻薬戦争でのガンズ・アンド・ローゼズ作戦、これは銃が武力面、薔薇が文化・教育面の支援を表し、
その両面から麻薬撲滅を目指したものだった。ポーは紛争後ロシアのスパイとして嫌疑をかけられ、逃走先で恋人と心中し、その生涯を終えた。

なぜ私がこんなにも彼に詳しいのかと言えば特集番組を見て、その気障なロマンチスト気質が印象的だったからだ。だが実は私は彼に直接会ったことがある。戦時中、一度だけ中佐に伝令に行ったことがあり、
中佐と話す童顔で小柄でどこか人懐っこそうなポーの姿を見たのだ。当時は気かけていなかったが、番組中の写真を見て思い出したのだ。

もう一度メモを見る。猛獣使いに小人に踊り子、トーチの火にジャグラーまるでサーカスだ。どうやら諜報員にはロマンチストが多いらしい。きっと夢を見せられなければ他人を動かすことなどできないということだろう。

資料を読み進めていくと、ボヘミアン・ラプソディ作戦と題された頁を見つけた。そこに貼られた新聞の切り抜きに目を奪われた。それは忘れもしない、あの虐殺の日のことが書かれた記事だった。
20年前の夏、駅前広場、朝市で賑わう人々に突如迫撃砲弾が降り注いだ。まだ戦線は遠く、人々は戦争をどこか他人事のように考えていたころだった。60人以上の死者と200人近い負傷者が出た。私の家族もそこにいた。
今でもよく覚えている。知らせを聞き駆け付けたのは昼近くだった。現場は重傷者の搬送こそ一段落していたが、軽症者の処置に手いっぱいで、死体がまだあちこちに散乱していた。

80 :
【獣達の夜】(2/3)

規制線で群衆が警察ともめていた。家族は無事なのか。死んでいても炎天下に野ざらしにしておけない。誰かが瓦礫の山を指さし「あれは夫の手よ!」と叫んだ瞬間、規制線は決壊して人々がなだれ込んだ。
屋台の残骸と散らばった手や足らしき肉片、血だまりと内臓、粉々の果物、大きな破片が刺さった腕を支える負傷者、半分焼け爛れた死体の表情のない顔がこちらを見ていた。
戦争中は地獄のような光景を何度か見たことがあるがこの日に勝るものはなかった。眩暈と吐き気を催しながらも軽症者の中に知人を見つけ、家族のことを尋ねた。「どうなったかは分からないけど、
最後に見たときはあっちに歩いて行ってたよ」彼は爆心地の一つと思わしき方向を力なく指さした。
地獄の中から家族を探した。しばらくして母の靴を見つけ、その近くで肉が削げ骨の露出した片足を見つけた。だがそれが母のものであるとは思えなかった。
しかし、その後に見つけた胴体と朝着ていたワンピースが現実を突きつけてくれた。母の頭は弾けて4分の1ほどが無くなり、脳と目玉が露出していた。妻は左足の膝から下と左腕が肩から無くなっていた。
当時5歳だった息子だけは息があり病院に運ばれていたが夜には息を引き取った。息子はプレゼントの腕時計ごと手首が無くなっていた。その顔は損傷と腫れがひどくもはや誰だか分らなかった。
母が被っていた亡き父の帽子も行方不明のままだ。

この事件を機に私は兵士になった。

記事の下には興奮したような文字でSPLASH!!!と殴り書きがあった。私は怒りを覚えた。だが、あの紛争が文字通り他人事だった米国人にとっては些細な事件。むしろ戦争に消極的だった我々の民族から志願兵が増加し、
国民が一丸となる契機となったのだ。むしろ渡りに船だったと言えるだろう。次の紙も同じ事件に関する資料だ。
ほとんどの行が黒塗りだがマジックで塗りつぶしただけのようだった。私は灯りに透かして内容を読み取ろうとした。何とか読み取れたのは人名だった。
“カレル・カウツキー”紛れもなくこの図書館の館長と同じ名前だった。

なぜ館長の名前がこの資料に?

その瞬間、嫌な考えが頭の中に広がる。ただの想像に過ぎなかったが思いついた瞬間、私は冷静さと衝動の間、野生を取り戻したかのような集中状態に陥っていた。
あの事件で得をしたのは誰か? 手引きをしたのは誰か?

事件はスロバキアの過激派の仕業として、実行犯たちに有罪判決が出ている。だが、証拠不十分で一時無罪になりかけたはずだ。事件はまだ終わっていないかもしれない。

私は必死に内容を読み取ろうとした。そして他の資料も読み漁った。そこには迫撃砲の種類や発射場所など当時まだ犯人しか知らない情報が書かれていたが、それはCIAが独自に事件を調査したためとも考えられた。
また、館長が事件にどう関わったのかもわからなかった。だが、実行犯はクイーンと名付けられた4人組であることだけはわかった。

その日から私は変わった。もう戦争で足と心を病み、腫物のように扱われ、全てに無気力になった哀れな世捨て人ではない。私は古い新聞や電話帳などで館長と同名の人物がいないか、戦時中の記録や館長の経歴を調べた。
同名の人物は2人いたがどちらも無関係だった。また、日中は真面目に働き、同時に新しい資料がないか地下室をくまなく探していく。同僚とも積極的に交流を持ち情報を集めた。
特に館長のカレルとは個人的に親しくなり酒を酌み交わす仲になった。酔わせて少しずつ話を引き出していくのだ。

ある日バーでカレルはBGMにキラー・クイーンを掛けるように頼んだ。「ロックですか」と私が聞くと彼は「意外かもしれないが結構好きなんだよ」と答えた。その日はそれ以上踏み込まなかった。

ロックを勉強し、好きなバンドの話で盛り上がった。ロック好きになったきっかけの話になり私は旧友の影響だと嘘をついた。カレルも同じだと言う。
私が軍時代の友人だというとその瞬間彼の態度が少し硬くなったのがわかった。彼は従軍経験を隠していた。だが名前を変えたわけでもなく、ただはぐらかしているだけだ。

1年経ちカレルの娘夫婦とも打ち解けてくると、彼は自分から国民義勇軍という極右の民兵組織にいたことを話してくれた。彼をおだてて、自分の軍時代の武勇伝を語ると、
彼は胸のつかえが取れたかのようにほっとした表情を浮かべ、それ以降しばしば昔話をしてくれるようになった。
「終戦の時はどの部隊にいたんだっけ?」カレルが聞いてくる。
「第32大隊です。ほら、山猫の旗の」
「じゃあ、ブラチスラバでは隣にいたわけか」
「足をやられたのもその時です。投降するふりをして自爆しやがった奴がいまして」

81 :
【獣達の夜】(3/3)

彼はポーや戦友のこと、参加した戦闘など様々な事を語ったが事件に関するものはなかった。話の裏はある程度取れており、嘘はついていないようだった。彼が事件に関わった事をどう思っているのかはわからないが、
何とかして関係者の名を吐かせなければならない。

ある夜、私はカレルに告白した。戦時中の私は獣だった。「同胞の仇を討て!」その言葉のもと敵を狩り続けた。捕虜は取らず、病院を砲撃し、人々の家を奪った。裁かれた者は極一部だ。
私の懺悔を受け、彼は神父ではなく親友として自らの罪を語りだした。「私も戦争中は酷いことを沢山してきた」彼は一枚の写真を取り出した。四人の男が腕に入れたお揃いのタトゥーを見せている写真だ。
背景には事件で使われたのと同型の迫撃砲が写っている。写真の彼は今の姿からは想像もつかない、狼のような飢えた獣の目をしていた。彼は皺の増えた腕のタトゥーを見せて全てを語ってくれた。

「自分がしたことを後悔していますか?」カレルは沈黙した。永遠のように長く感じた。そしてゆっくりと口を開き「いいや」と答えた。「当時は戦争中だった。もしやり直せてもきっと同じことをするだろう」

「辛気臭い話はやめにしよう」彼は写真をしまい、ウイスキーを注いだ。

クイーンは4人。カレル・カウツキー、アントニオ・レンナー、ヤン・レンドル、パヴェル・マーラー。アントニオは妻殺しで服役中、ヤンは10年前に事故死、パヴェルはドイツで暮らしている。

私は真実を暴露する気はない。金にならない過去の遺物など皆どうでもいいと思っているし、名誉だ正義だを気にする自分はとっくの昔にどこかへ行った。

アントニオが出所したがいつまでもこの辺りにいるとは限らない。更にパヴェルが親戚を訪ね10年ぶりにチェコに戻る。こんな好機は二度とない。想定外に早いが今しかない。急いで準備を進める。
アントニオは仕事場と酒場と安アパートを行き来しているだけ。カレルも自宅と仕事場にいることがほとんどだ。動きが読めないのはパヴェルだ。地図や資料と睨みあい親戚の家から近くのホテル、
寄りそうな場所まで全て調べる。走り込みと射撃で鈍った体を鍛え直す。少しずつ自分が変化するのを感じる。

時刻は21時。パヴェルは親戚の家に泊まっている。アントニオは0時近くに帰宅するだろう。カレルの家の呼び鈴を押す。ドアが開いた瞬間「動くな!」と低い声がして、私は硬直する。すぐに笑顔のカレルが出てきた。
筒状のものを持っており、「驚いたか?バン!バン!」とご機嫌だ。だいぶ出来上がっているようだ。
「前に話した竹輪だ。銃に似てるだろ。侍は戦の前に験担ぎで食べたらしい」
「同じ日本の酒を買ってきました」私は鞄から瓶を取り出す。いつもの椅子に座り酒を注ぐが、飲むふりでごまかす。ここで酔うわけにはいかない。

竹輪をつまみ「これは何でできているんです?」と聞く。
「魚のミンチだよ。ソーセージみたいなもんだ」
「そうだ、合うかわからんがワインもあるんだ」彼は台所の奥に向かう。私はゆっくりと立ち上がり、鞄から銃を取り出す。静かに彼の背後に立ち照準を合わせる。籠った銃声が二発、自作の消音器は期待通りに働いた。
だが、準備期間が短くまだカンが戻っていないらしい。引き金を引く瞬間にビビってしまった。いや、興奮しすぎたのかもしれない。急所を外れ、まだ息のある彼に近づく。
仰向けになったカレルは動揺していたが苦しそうに「待ってくれ」と何度も繰り返した。命乞いをする獲物に情けを掛けたことは一度もなかった。
だが、同じサーカスで踊った獣同士、何も知らぬまま狩られるのは少し不憫に思えた。
「22年前の駅前広場、あそこに私の家族もいたんです」カレルは一瞬ハッとして、後悔とも痛みともつかぬ苦悶の表情を浮かべた。
「すまなかった、悪かった…… 」
「許してくれ……」かすれ声がかすかに聞こえた。
「私も兵士です。恨んではいません。あれは仕方ない、この国に必要なことでした。
でも“同胞の仇を討つ”それが私の使命です」
頭に銃口を突きつけ引き金を引いた。

カレルの車に乗り込む。ドアガラスに映る自分は少しいつもと違っていた。

22時。カーステレオをつけるとボヘミアン・ラプソディが流れ出した。あと二人、夜明けまでに終わらせなければ。駅前広場の慰霊碑の前を通る。曲が盛り上がってきた。曲の中で少年が母親に懺悔している。
だが、ガリレオもフィガロも私の中にはいない。

久しぶりの狩りだ。計画を見直す。冷静さと衝動。頭が冴え渡り、体が軽い。少しずつ野生のカンが戻ってくるのを感じる。20年ぶりに生きている実感を得る。

横目に映る男の顔は獣のようだった。

82 :
>>42
一休の虎は実在したのか。この世界の一休はとんちというより結構武闘派みたいですね。
しかし、デイダラボッチって国造りの神なのに狩っていいのか?まぁ本物を狩るわけじゃないのかもしれませんが
このくらいの時代だと怪しい洋書やアジアの本も入って来てそうですし、魔道書の類を利用しようとする人間も多そうでワクワクしますね。

>>58
いいですねぇこういう夢のある現代ファンタジー。私には一生書けないジャンルだ(遠い目)
猫の習性に上手く説明をつけてるのも素晴らしい。
しかし、異世界でならともかく現実世界での縄張り争いだと人の目があり使い所が難しい武器ですね。
私も某迷い黒猫や女子高生が猫の国に行く話を思い出しました。

>>62
【失敗しても】は進行氏の作品だったのか!
続き物は良いですね。知っているキャラが出てくるだけでにやっとできる。
私は結構ドライでゲームなんかでもころころと強い方に乗り換えるタイプです。一緒に戦うだけが愛情じゃないさ。むしろポ○モンは動物虐待との声も(的外れ
主人公は効率と愛情を悩ましい問題という割にはトラタローにベタ惚れで、とても乗り換えられる様には見えないですねwww

83 :
>>79
力作だ、焦らず供養の投下にしたかw 前回お題テーマ『動物』、自由お題全選択! 79氏が銃弾をこめてプレゼンツする、男なら誰しも癒えぬ傷、忘れえぬ遺恨に応答すべき夜があるのだ、ザ・アンサー!
さあ、市立『図書館』で遺物管理にあたる冴えない男が主人公〜、足を引きずり、階段しか懸念のない漠たる日々を送る彼が、狐の剥製の内側から米側の戦時資料を発見し、物語は動き出す〜!
ボヘミアの『虎』と呼ばれた中佐に取りいったスパイのメモから、かつて駅前広場の砲撃事件が明らかになる、そう、それは男が家族を失った、通称ボヘミアン・ラプソディ作戦の内幕のカケラ…
館長カレルに近づいて、『竹輪』をご馳走されながら、謝罪も無用に消音『銃』で撃ち抜いて、残敵掃討に目を血走らせる男の眼光、すでに獣ッ
いかに牙を抜かれようとも、血を注がれれば『動物』的な、野生の戦闘本能が目覚めゆくのが男のサガよ、79氏『動物』を本能とかけあわせ、最終一行を獣でキメたか、重厚さがいいね! 全選択クリアだ!

84 :
なんだか感想が凄いですね
自分はここまで感想を述べられませんね…

85 :
>>82
感想ありがとうございますw
正におっしゃる通りで、選択肢の一つは、ペットを引っ込めて直接攻撃することです
いずれにしても乗り替えは無理そうですねw

>>84
すごい人がいるだけなので、怖がらなくても大丈夫ですw

86 :
>>79
そして・・・供養なので構いませんが、どう見てもジャンル『動物』じゃねえw
動物要素を増やした痕跡があるので、そこは感謝です><
それと、>>42さんも>>79さんも、面白いお話を上げてくださって感謝しています

進行の説明が悪かったのか
>>42>>79も非常に良く書けていると思うので、自由な発想が良かったとすべきなのか

あと、>>42さんに対してと同様、失礼ながら、NHK、BBC、ナショジオを思わせる作風、野生動物が主人公の三人称で会話文無しの話、レンジャー、テレビクルー、密猟者、警察や特殊部隊、ひょっとしたら税関職員が主人公の話など
発想として有りかなと思いました

87 :
>>42です
ジャンル指定、結果的に私のは対象から外れた物になってしまったのであれなんですが、とにかく楽しかったですよ
私としてはまた挑戦したいです

88 :
そう言って頂けると助かります
何かしらの工夫は必要だと思いますが、またそのうちやります!

89 :
前の作品とちょっとした繋がりがあったりすると面白いよね

90 :
ですねぇ

そう言われて思ったんですが、なんらかの要素でしりとりする回とか
難しくて無理そうな感じはしますけどw

91 :
今回のお題はこちらです
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1541947897/868

今回分の作品は、前スレにお願いします

92 :
遅レスですorz御免なさい
>>42
現代怪奇譚ですね
果たして彼等の戦いは、どの様に繰り広げられるのか?

>>62
バーチャルペットに癒されたいw
仲間にしたモンスターが弱体化したとしても、つれ回したい気持ちは良く判ります

>>79
悲しき復讐者
彼の生きている実感は、戦いの中にしか無いのでしょうか?

>>61
感想有り難うございます
自分の頭にあったのは『ア○ゴオル』とか『ね○め〜わく』でしたw

>>74
感想、いつも有り難うございます
マタタビでは酔ってしまうので、ちくわです
魚肉ソーセージも有りなのでしょうが、お題なのでw

>>82
感想を下さり有り難うございます
夢のあるファンタジーですが、着想はク○ゥルフからだったりしますw

93 :
>>92
義務じゃないので黙ってましたが、感想助かります
ペットシステムはしっかりしてるのに、戦闘バランスはガバガバなんです><

94 :
今回のお題はこちらです
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1541947897/913

今回分の作品は、前スレにお願いします

95 :
今回のお題はこちらです
https://mevius.2ch.sc/test/read.cgi/bookall/1541947897/940

今回分の作品は、前スレにお願いします

96 :
いちいち貼る必要はないと思ひ

97 :
ごめん、メモ代わりに貼ってるのです

98 :
凄い作品がたくさんありますね!
ここにいる皆さんは小説家なのでしょうか?

99 :
ここは小説家になろうの底辺スレから派生したスレです
今の住人がどうなってるかはわからないけど

100 :
☆お題→『タイムマシン』『手袋』『案山子』『やめたい』『メガテリウム』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→6/23の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

101 :
スレ6よ!私は帰ってきた!

新スレ第2部
どうか引き続きよろしくお願いします

102 :
>>99
今も底辺ですよー

103 :
前スレ埋まったああああ
最後埋めてくれた人、まぁ一応ありがとうだけど、悪態つく人を慰めるのは無理よw

前スレ828以降、4回分、4 + 6 + 2 + (3 + 1) = 16作品
内、供養(?)1

募集期間2019.5/20〜6/16(〜6/18

前スレ805までの79作品と合わせて、計95作品

104 :
すごいとこまできたなw
よし
記念すべきスレ100発目の作品には、俺こと競馬実況が挿絵を付けよう

105 :
そんなこと言うから調べてきちゃいましたよ・・・

スレ1: 85
スレ2: 88(詩の回で多く数えて90)
スレ3: 75
スレ4: 71
スレ5: 95
スレ6: 第1部は、5作品

スレ2は自分で数えた・・・間違ってたらごめん
他は集計されていた数字です

106 :
あっ、競馬さんの挿絵は見てみたいですw

107 :
何かあったの?

108 :
>>107
いやー、進行の認識では、過去ログ(から推測できること)がすべてですよ

109 :
>>104
競馬さん絵描けたのか!
一体どんな絵柄なんだ?楽しみに待ってます

そういえば昔、挿絵を入れようとして自らの絵心のなさに絶望したことがある。誰かに依頼するほど大層なものじゃなかったので結局挿絵は入れませんでしたが

110 :
Unfavorable Semicircle

111 :
>>100

使用お題→『タイムマシン』『手袋』『案山子』『やめたい』『メガテリウム』

【転校生】(1/2)

 ある日、私たちの学校に、メガテリウムが転校してきた。

「メガテリウムくんは、えーっと、数万年前の南米からタイムマシンで来たそうだ。みんな、仲良くしてやってくれー」

 メガテリウムくんは大き過ぎて、教室には入れなかった。
 仕方がないので、窓の外に立って授業を受けることになった。
 私の席は窓側の一番後ろだ。だからメガテリウムくんの様子がよく見えた。
 授業中は静かにしている。ただ時々、おなかがすくのか、葉っぱの付いた木の枝を口に運ぶ。
 私もおなかがすいた。だから私は隠し持ったお菓子を口に運ぶ。
 ある時など、メガテリウムくんは校舎横の植木にかじり付いて、先生に怒られていた。
 私はお菓子が見付かって、先生に怒られた。

 つまりだ。メガテリウムくんは理系で、しかも草食系だ。
 具体的に言うと、植物に興味がある。
 板書を見るメガテリウムくん。それから手元の葉っぱに目を落とす。先生の話を聞く。また葉っぱを見る。
 私は時計を見る。それから窓の外の青空を見上げる。早くお昼休みにならないかなあ。

 体育の時間は、メガテリウムくんがヒーローだ。
 何しろ体が大きいので、そこにいるだけで山のよう。
 歩けば風。走れば嵐。ボールを蹴れば場外だ。
 男子たちはありんこ。女子は棒立ち。
 私もボールを蹴る。ボールは後ろに転がった。

 学校の外でも、メガテリウムくんは人気者になった。
 町おこしと称して、メガテリウムかかし、なるものが作られた。
 超巨大なかかしを見ようと、沢山の観光客が訪れた。
 大人たちは喜んでかかしを増やし、町の中は、かかしと人間で埋め尽くされた。
 私はちょっとうんざりした。

112 :
【転校生】(2/2)

 騒がしい夏休みが終わり、秋も深まって、マフラーと手袋の季節になった。
 ここ最近、メガテリウムくんは元気がない。寒いのが苦手らしい。
 私も寒いのは得意ではない。
 そんなある日のこと。

「あのなー、みんな。メガテリウムくんだが、学校をやめて、元の時代に帰ることになった」

 初雪が近い。
 私も学校をやめたい。やめて、木にぶら下がるんだ。

 メガテリウムくんが帰る日には、みんなで見送りに行った。
 タイムマシンに乗ったメガテリウムくんに、一人ずつお別れの挨拶をした。
 私の番になると、メガテリウムくんは、私の手袋をじっと見た。
 私は片方の手袋を、爪の一つにかぶせた。

 メガテリウムくんは帰っていった。
 見ると、手袋が残されていた。
 タイムマシンで帰る時、手荷物は持てないらしい。

 私の手袋。

 その時、私は思った。
 男の子だとばかり思っていたメガテリウムくん。
 本当は、女の子だったんじゃないかな。

 私は手袋を拾う。そうして、自分の指を差し入れた。

113 :
今回なかなか難しかったですね・・・

114 :
>>100
使用お題:『タイムマシン』『手袋』『案山子』『やめたい』『メガテリウム』

【タイムパトロールの啓介】(1/3)

 時空管理法。

 1・みだりに過去の物を採取してはならない。
 2・むやみに過去の者に接触してはならない。
 3・故意に過去を改変してはならない。

 タイムマシンと言う物が発明され、この時空管理法は出来た。要は過去を変える事で起こるタイムパラドックスを恐れての法であり、つまり『見るのは構わないけど、手を出すな』と言う事である。
 だが、人類と言うのは、予想以上に業が深かったらしい。
 その手の時空犯罪を犯す犯罪者は“黒いあん畜生”の如く出続け、止まる事はなかった。

 ******

 タイムパトロール隊に所属する椚 啓介はタイムマシンのモニターを見ながら渋面を作っていた。
 モニターに映るのは全長3mを超える巨大獣『メガテリウム』。21世紀にはすでに絶滅していた絶滅種である。
 ナマケモノと同種であるメガテリウムが、後ろ足だけで立ち上がり、まだ若い木の葉をモシャモシャと食む。
 その光景自体は良いのだ。啓介は特に動物嫌いと言う訳では無い。と言うよりも、むしろ動物は好きだ。
 だから、こう言った絶滅種を観察できるこの仕事は天職だとも思っていた。
 しかし……

「はぁ……もうこの仕事やめたい」
『マスター、溜息は幸せが逃げると言いますよ?』
「いや、だってさ……」

 啓介はモニターに映るメガテリウスの、その近くにこれ見よがしに立って居る案山子を指差し、うんざりとした表情を作った。

『それでも、仕事は仕事です。大人しく向かって下さい』

 相棒でもあるサポートロイド“JK-03-w『モニカ』”の言葉に、深い溜息を吐きながら、啓介は“環境保護型バリアスーツ”を装着する為ノロノロと席を立った。

 ******

「クハーハッハッハ! クハーッハッハッハ! 流石は我がライバル!! よくぞ我が偽装を見破った!!」
「いや、偽装て」

 メガテリウムの近くに立って居た“案山子を脱ぎ捨て”、時空犯罪組織『タイムクライム』の一人であるコードネーム『スケアクロウ』が高笑いをする。
 良く見破ったと言うが、こんなな人里離れた場所に不自然に案山子なんぞがあれば、不審に思わない者は居ないだろう。
 しかし、スケアクロウは心底ばれていないと思っているらしく、こうして彼を見つける事の出来る啓介を一方的に評価した挙句、ライバル認定していた。
 一応、規則に従って自首勧告をした啓介だったが、この案山子男が素直にそんな物に応じる訳はない。
 規則で決まっている為それを無視する事は出来ないが、それでなければとっとと捕まえてしまいたい所である。

「で? 今回の目的はそこのメガテリウムと言う事か?」
「ほう! 流石我がライバル! よくぞ見破った!! 今回はそのメガテリウムを闇ペットショップに売りつける手はずと成って居るのだ!! その事は漏らす訳には行かないがな!!」
「……闇ブローカーまで絡んで居るのかよ」
「何! 何故、極秘と成って居る闇のペットショップ『ドリームペット』の事を知っている!! いや、我がライバルなれば、そんな事もお見通しと言う訳か!! 流石は我がライバル!!」
「……」

 頭痛が痛い。そんな言葉が啓介の頭を過った。
 彼が頭を押さえていると、高笑いをしていたスケアクロウは「しかし、そこまで知られているのでは仕方が無い」と言った後、啓介に向かって手袋を投げつける。

 ひょい。パサ。

115 :
【タイムパトロールの啓介】(2/3)


「……」
「……」
「何故避けるのであるか?」
「何故避けないと思った?」
「ここは我との決闘を受けるべき流れだろう! 紳士として!!」
「決闘を受けなければならない理由はない! だが、タイムパトロールとしてお前は捕まえる!!」
「くっ! 所詮、我と貴様とは相容れぬ者同士と言う訳か! ならば問答無用!!」

 そう言ってスケアクロウが啓介に襲い掛る。

「! モニカ!!」
『Yes. マスター“環境保護フィールド”展開します』

 モニカはそう言うと、二人が戦闘を始めた空間に、環境を保護する為のバリアフィールドを張った。
 それを確認し、啓介がバリアスーツの腕に装着されているトラクタービームを発射する。
 スケアクロウを引き寄せ捕縛する為だ。

「ウオッ!」
「チッ」

 寸前の所でトラクタービームを避けたスケアクロウは、腰のホルダーからビームウィップを抜くと、それを振り回した。
 ブウォンブウォンと音が鳴りビームウィップは、トラクタービームを弾き、その上、攻撃も出来る攻防一体の武器である。

「さぁ! 我の鞭捌き! とくと味わうが良い!!」
「チッ! 阿保の癖に戦闘能力だけは高い! 全く厄介な!!」

 啓介の武装は捕縛の為のトラクタービームと防御の為の電磁バリアしかない。
 すなわち、それ以外は徒手空拳で相手をしなければならないのだ。
 啓介は電磁バリアを両手の甲に集中させ、スケアクロウに向かい突っ込む。
 手の甲のバリアで体に当たりそうな鞭だけを弾きながら、攻撃を掻い潜り接近すると、その右拳を繰り出した。
 しかし、そこはスケアクロウもさるもの。咄嗟にビームウィップのグリップを盾にして、直撃するのを防ぐと距離を取ろうと後ろに飛ぶ。
 だが、啓介はそれを許さない。さらに踏み込み接敵すると、牽制のジャブからの右ストレート……に見せかけてのミドルキックを放つ。

「クブッ!!」

 左脇に蹴りを喰らい、スケアクロウが吹き飛んだ。

「さて、これでお前も年貢の納め時だ!」
「クフッ! 流石我がライバル! しかし! 一流の犯罪者と言う物は散り際の美学も弁えているのだ!! 見よ!! “自爆装置ィ”!! これで環境保護バリア内は全て吹き飛ぶ!!」
「阿保かぁ!!」

 思わず啓介が叫ぶ。環境保護バリアは環境を保護する為のバリアではあるが、弱点が無い訳では無い。同種のバリアで干渉する事で穴をあける事も出来るのだ。
 つまりは、スケアクロウがその気であるなら逃げられない事は無いのだが、この男はそれでもあえて自爆を選ぶと言う。
 下手に環境保護バリアを解けば周囲に被害が及ぶ。近くにはメガテリウスも居るのだ。その選択肢はない。
 だが放って置けば、この男は宣言通りに自爆をするだろう。電磁バリアは一方からの攻撃は防げるが、自身を全て覆う程の出力は出せない。
 体の端部は守る事は出来ないだろう。啓介の頬に汗が伝う。どうにかして、スケアクロウの自爆を止めなければならない。

「……クッ」
「さて、覚悟は決まったかな? 我がライバルブギョ!!」
「アホかぁぁ!!! アンタ、私の啓介様に何しようとしてくれてんのぉぉぉ!?」

 自爆装置のボタンに指を掛けていたスケアクロウの顔面に、突如現れた美女が飛び膝蹴りを喰らわせる。
 スケアクロウは錐揉み回転しながら吹き飛び、数度のバウンドを経て、やがて止まった。

116 :
【タイムパトロールの啓介】(3/3)


「……ソフィア……」
『出ましたね、淫乱毒婦』

 チャイナドレスに似た格好の美女。ソフィアもまた、時空犯罪者ではある。ただし、犯罪者相手の犯罪である為、Kする者が居らず、犯罪が立証できていない為、捕まえる事が出来ないのだが。
 そして彼女は、ある犯罪集団の私刑から啓介に助け出された事を切っ掛けとして、彼の追っかけと化していた。
 ソフィアが啓介の腕にもたれ掛かり、指先で彼の胸板を撫でる。バリアスーツの上からだが。

「啓介様、お怪我はございませんか? もしアナタが怪我をされたなんて考えると、私、心配で夜も眠れませんわ」
「ああ、大丈夫だよ? 大丈夫だから離れて……」
『マスターから離れなさい! 毒婦!』
「モニカ」

 通常、タイムマシンから出る事の無いモニカが外へと姿を現す。戦闘能力の無いサポートロイドの挙句、ロボット三原則によって、人に危害を加える事が出来ない為、ある意味当たり前だが、しかし、ソフィアが絡むと、こうして出張って来るのだ。

「あら、居ましたのね? 引きこもり鉄娘」
『鉄ではありません。カーボン製です。破廉恥痴女毒婦はそんな事も知らない程無知なのですね? それとワタシは引き籠りではありません性犯罪者』
「誰が性犯罪よ! 私は義賊よ!! 正義の盗賊なの!! フンッ! 戦闘を啓介様に押し付けてタイムマシンの中に引きこもっている貴女が引きこもりでなくて何だと言うのよ!!」
『マスター、自白が取れました。この破廉恥女を早速捕まえましょう!!』
「いや、自白に証拠能力は……あ!! スケアクロウ!!」

 啓介が我に返ってスケアクロウの吹っ飛んで行った方を見ると、彼の姿はそこには無かった。
 どうやら、モニカとソフィアが言い合いをしている内に逃げたらしい。

「ああ、また取り逃がした」

 そう呟く啓介の両隣で、モニカとソフィアの言い合いが続いている。
 取り逃がしてしまったすけあくろうが、また啓介に絡んで来るのも既に決まった事とだろう。

「……もう、この仕事やめたい」

 啓介は溜息を吐きながら、そう零した。
 メガテリウムはそんな彼の心情を慮る事無く木の葉を食べていた。

117 :
遅くなって申し訳ないorz

118 :
お題→『タイムマシン』『手袋』『案山子』『やめたい』『メガテリウム』締切

【参加作品一覧】
>>111【転校生】
>>114【タイムパトロールの啓介】

119 :
さてどうするか

120 :
またジャンル指定をやってみましょうか

方式は前回と同じで、ただ今回は、進行が口出しするのはやめます
ガイドラインみたいなのは参考程度に示します

121 :
ジャンルは次の中から1つ選択→
『恋愛』『ファンタジー』『歴史』『推理』『ホラー』『コメディー』『SF』『童話』
『冒険』『幻想』『日常』『人生』『家族』『戦争』『動物』『スポーツ』

お題安価>>122-125
ジャンル安価>>126

122 :
ビー玉

123 :
『投稿者』

124 :
『ガチャ』

125 :
拳銃

126 :
SFで

127 :
☆お題→ジャンル『SF』+『ビー玉』『投稿者』『ガチャ』『拳銃』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→6/30の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

128 :
いやはや、なんとか5つありがとうございます
今週もよろしくお願いします

前回のジャンル指定で進行が基準を設定しようとしたのは、余計なお世話だったと考えています
とは言え、今回SFなら基準は必要なさそうですね

129 :
>>114
SFらしい話と思わせて、ストレートなドタバタですね
敵からも味方からも愛されて、仕事を辞められない主人公w

130 :
>>111
今回の山場は他を喰うイキオイの個性強お題『メガテリウム』か! 111氏はお題から発想をふくらませる形でまとめてきた、全選択、隣の席のメガテリウムくん!
さあ、語り手の学校にやってきた転校生、何を隠そう彼こそが、数万年前の南米から『タイムマシン』で来訪した大ナマケモノ的動物『メガテリウム』くんだッ、シュール系漫画のノリw 
サイズの問題で教室に入れないメガテリウムくん、授業中に木の枝を口にモソモソ運ぶその姿愛らしく、体育の時間は規格外のヒーローで、町ではメガテリウム『案山子』なるモノが流行りだす始末〜、
やがて季節は冬に移り、寒いの苦手な彼の動き鈍くなる〜ッ、冷気が辛くなったのか、学校をやめるメガテリウムくんに、語り手は自分だって『やめ』てしまいたいと、片方『手袋』プレゼント、
しかし手荷物持てぬタイムトラベル、あと残されし手袋に、そういやオス/メス不明だねとミステリアスな存在に思いを馳せる、しっとりEND! 111氏が統一感のないお題を集束すべくシュールテイストを活かして見せた、いい叙情だ〜

>>114
さらに刻限直前に間に合わせてきた114氏は全選択を宣言し、バトルと笑いで我ドタバタの極限に挑もうとばかりにやってきた、とある時間管理パトロール隊の日常!
さあ、『タイムマシン』が生み出された世界にて、時空犯罪を取り締まる啓介さんが『この仕事やめたい』と溜息をついている〜、目の前には絶滅種『メガテリウム』の近くに突っ立っている不自然な『案山子』…ツッコミ待ちか
案山子に扮していた時空犯罪組織タイムクライムの一人スケアクロウが高笑い〜、扮装を見破った啓介さんを褒めちぎりながら、言ったらだめな極秘情報のやつをつぎつぎに開示していく、もうこれ敵というか仲間と言ってもいいな!
決闘の、予告『手袋』を投げつけて、意外な強敵スケアクロウ、しかしチャイナドレスっぽい美女ソフィアの飛び膝蹴りで吹っ飛んでバウンドw ソフィアとナビ役メカっ子の痴話喧嘩がはじまって、
肝心のスケアクロウをまた取り逃がしたぜEND!! アクの強すぎる人間関係と難航する業務、これだからいやなんだよ、と主役うんざりフィニッシュで、『メガテリウム』を舞台装置に使った114氏、見どころを盛り込んだ短編だ、堂々お題をクリア〜

131 :
>>128
SFの定義論争巻き起こしてもいいのよ
スペキュレイティブフィクションかすこし不思議か
ファンタジーとの違いは何か
哲学書や論文紛いの物もSFか

132 :
>>127
使用お題→ジャンル『SF』+『ビー玉』、『ガチャ』

【幸運の白ウサギ】(1/3)

それは放課後の帰り道のことだった。
私は友達とも別れて家に向かって歩いている時、ふと何かに足を滑らせて転倒してしまう。

「イタタ…何なのよもう」

足下に落ちてあるのはまだ開封されてない状態のガチャポンだった。ふと手に取り中を開けてみると、
なんとも可愛らしい白いウサギのアクセサリーが入っていた。

「か、可愛い!」

しかしこんな綺麗な状態のガチャポンを一体誰が捨てたのか?それともうっかり落としていったのか?
仕方ないから私が大切にしよう、と家へ持って帰ることに決めた。
家に帰り自分の部屋に入ると、早速そのウサギのアクセサリーをランドセルに付ける。

「これから毎日私と一緒だからね、よしよし」

翌日、朝食と歯磨きを済ませてランドセルを背負い、学校へと向かう。
今日の1時間目は苦手な理科のテストがある。昨夜一生懸命勉強したけど自信が無い。
もし40点以下だったらお母さんに怒られる、ああ憂鬱だ。
テストの時間、不思議とスラスラと問題を解けていく。ホント気持ち良いくらいに。
次の日の授業で早速答案を返されるが見てみるとなんと85点!理科で今までこんな点数取ったことない。
家に帰るや否やお母さんに見せる。お母さんも大喜びでご褒美を買ってもらえることに。

「まさか、このウサギのアクセサリーのおかげ…?」

それ以降も体育の授業のハードル走で1番になったり、
給食で余ったデザートのタルトをじゃんけんに勝ってゲットできたりと
些細ではあるが、良いことばかり起きている。

「このアクセサリー、大切にしなくちゃね!」

もしかしたら神様が私に授けるために落としていったものだろうか?
そう考えるとニヤニヤが止まらなくなってきた。

133 :
【幸運の白ウサギ】(2/3)

放課後、家に帰るとお母さんがニコニコと笑顔で玄関の近くで待っていた。
以前理科のテストで良い点を取ったご褒美として、前からずっと欲しかったキツネのぬいぐるみを買ってくれたのだ。

「ありがとう!お母さん!」

私はとっさにそのキツネのぬいぐるみをギュッと抱き締める。
ずっと欲しかった物だからあまりにも嬉しくて思わずキャーキャー騒いでしまう。

・・・しかしその姿をウサギのアクセサリーは見逃していなかった・・・

翌朝、学校へ向かう途中災難に見舞われることに。
誰が吐き捨てたか分からないガムを踏んづけてしまい、靴の裏にこびりついてしまう。
ガムなんてひっついて固まってしまえばそう簡単に落ちない。最悪だ。
給食の時間、クラスメートの男子がうっかりカレーをこぼしてしまい、それが靴下とスカートにベチャッとついてしまう。
帰り道も野良犬に追いかけられる等、とにかく災難の連続で私は怖くなってきた。

「何で?今までずっと良いことばかり起こってたのに!」

家に帰ると鉄砲玉のように自分の部屋に飛び込み、
キツネのぬいぐるみをギュッと抱いて布団に潜り込んだ。
その夜、不審な気配を感じて目を覚ますと、目の前に大きな白いウサギが立っていた。

134 :
【幸運の白ウサギ】(3/3)

私はあまりにもビックリして悲鳴を上げることすらできなかった。
もしかしてあのウサギのアクセサリーだろうか、いやそうにしか思えない。
ウサギの怪物が口を開く。

「私、せっかくあなたに一番大事にされると思ったのに、まさかあんなキツネのぬいぐるみに浮気するなんて」

どうやら私がキツネのぬいぐるみを凄く気に入ったことに激しく嫉妬しているようだ。

「今更謝って私に気遣おうとしても許さないから。これから一生不幸の連続であなたを苦しめてあげる!」

ウサギの怪物が私に襲いかかろうとしたその時、キツネのぬいぐるみが彼女に飛びかかって噛みついた。

「おい!俺のご主人に手を出すんじゃねえよこのお化けウサギが!!」

しかしあまりに体格に差があるため、噛みついただけではあまりダメージが入らない。
このままじゃキツネさんが危ない。すると机の上に置いてあるビー玉がたくさん詰まった瓶を手に取り、
私もビー玉を投げてぶつけて応戦する。とにかくキツネさんをサポートだ。
勢いよく投げたビー玉がウサギの目に当たり怯んだ瞬間に、キツネさんが喉元に噛みつく。
ギャーーッと悲鳴を上げながらウサギは姿を消していった。

「よくやったな!さすが俺のご主人様だ!」
「そ、そんなエヘヘ…」

キツネさんも元のぬいぐるみへと戻っていった。
それ以降、私の身に不幸が訪れることは特になくなった。
かといって幸運に恵まれることも少なくなったが。
とにかく平凡な日常を送っていた。
平凡なのが一番かもしれない。幸運というのも時々訪れてこそありがたみを感じるものだ。
私はこのキツネのぬいぐるみをずっと大切にしている。
もしかすると私を守るために神様が送ってきた使者なのかもしれない。

さすがにそれは大袈裟だって?そうかもねテヘッ


おしまい

135 :
>>132
えっ早
すこしふしぎ系
個人的な好みかもですが、高揚感というか、勢いというか、非常にいい感じですよね
いいことも悪いこともある人生w

136 :
>>130
感想ありがとうございます!
なんとかでっち上げた感じなのですが、シュールさや余韻など表現できていたようで良かったです

>>131
その手があったなぁ
そりゃもう>>132さんの直後に言うのかって話ですが、ハードSFか全編屁理屈まみれですよ

なお自分で書けるのはしょっぱいふりかけ的な

137 :
>>132
定義が難しいなジャンル『SF』! プラス選択式お題を前に、132氏は『ビー玉』『ガチャ』を宣言し、独自の世界を展開してきたッ、塞翁が馬なファンシーワールド!
さあ、未開封状態の『ガチャ』ポンを手にした主人公が、中に入った白いウサギのアクセサリーを見て、仕方ないから私が大切にしよう、と届け出ず家へ持って帰った模様〜、いったい何が仕方ないのかw
すると不思議なことが起こり始める〜、苦手科目のテスト解けるわ、ハードル走なら一位になるわ、じゃんけんすれば勝てるわw と、無敵の春が到来し、主人公はウサギの加護に感謝感謝〜、
しかしこれでは終わらない、入手したキツネのぬいぐるみの登場で状況一変! ガム踏み、カレー染み、野良犬ダッシュと、ウサギの嫉妬で不幸に転じたマイライフ、そして主人公の前に受肉したウサギとキツネのバトル開始w
『ビー玉』投げつけひるんだウサギにキツネが噛み付いて勝利ィ! 良かったねテヘッと言い放ち、平凡な幸せが一番だねEND! 今回お題、『SF』を『少し不思議』まで拡張すればもはや楽勝ムードw 察したか132氏、早々クリアだ!

138 :
>>127
使用するお題→ジャンル『SF』+『ビー玉』『投稿者』『拳銃』

【ガンマン VS アンドロイド】(1/3)

こんにちは!また会ったね、レイチェルよ。
ん?もう誰か知ってるって?
知らない人のために一応説明するわ。ドがつくほどの西部劇マニアで、
ガンマンの格好をして日常生活を送るのが趣味よ。
これまで悪ガキに奪われた帽子を取り戻したり、おもちゃ泥棒の老婆を捕まえたりと
色々な騒動に巻き込まれては解決してきたけど、おかげで近所で有名人になっちゃった。
最近では幼稚園や老人ホームに呼ばれてはヒーローショー開いたり、握手されたりと
ちやほやされすぎて少し退屈になってきた。いや、尊敬されるのはもちろん嬉しいんだけどね。
今日もガンマンの姿で街中を歩いていると、子供達が駆け寄ってきてサインを求めてきた。

「レイチェルさんだー!サインちょうだーい!」
「ほらほら慌てないで、ちゃんと一人ずつ順番にね」

そんな私の姿をビルの屋上から誰かがじっと眺めていた…。

夕方、それは家路についている時に起こった。背後から誰かにドン!と乱暴に押し倒され、
一瞬の隙に睡眠薬を飲まされて眠りに落ちてしまった。

「こ、ここはどこ…?」

意識を取り戻し目を覚ますと、そこは周りが雪のように真っ白の部屋だった。
しかもイスに座らされ体をロープで縛りつけられていて、身動きを取ることができない。

「だ、誰よ。こんなことするのは!」
「あら目が覚めたようね、レイチェルさん」

眼鏡をかけ、白い研究服に身を包んだ女が目の前に現れた。

「あなた、一体誰!?」
「私はリンダ。ここはマッドサイエンティスト、ドクタートミーの研究所よ」
「わ、私に何するつもり?」
「そんな乱暴なことはしないわ。ただ血液を採取させてもらうだけ…」

そう言うとリンダと名乗るその女は注射器を取り出し、私の腕に射す。
抵抗もできず、少量ではあるが血を抜き取られる。

「何が目的なの!」
「うるさいわね、この女を黙らせて」

一人の黒いスーツ姿の男が現れ、私は無理やり睡眠薬を飲まされ、また眠りに落ちてしまう。
数時間経ったのだろうか、目を覚ますと私はあの暴行を受けて倒れた路地の上にいた。

「ドクタートミー…?マッドサイエンティスト…?」

一体誰のことだろうか。とりあえず今は深く考えるのをやめて家へと急ぐ。

139 :
【ガンマン VS アンドロイド】(2/3)

「リンダよ。レイチェルの血液は取れたか?」
「もちろんよドクタートミー。これさえあればもう完成よ」
「さすがだ我が助手よ」

ドクタートミーと名乗るその博士は、ロボットのような物体にチューブを取り付け、レイチェルの血を流し込んでいく。

「これで我輩の野望は達成じゃ!」

あれから3日後、いつものように私はガンマンの姿で散歩していると遠くからドカン!と大きな音と悲鳴が聞こえてきた。
何かしら!?と急いでそこへ向かってみると、私と瓜二つのガンマンの姿をした女が暴れているではないか。
その女を止めようと後ろから取り押さえようとするが、非常に頑丈な体をしている。

「こ、これは人間じゃない!ロボット!?」

そのロボットは首だけを360度回してレイチェルの方に向く。

「ワタシハアンドロイド。ナマエハレイチェル。コノマチヲメチャクチャニシテヤル」

私とそっくりの姿をしたアンドロイドが襲いかかってきた。私は咄嗟にホルスターから拳銃を取り出し発砲するも、
鋼鉄のボディの前には傷一つつかず無意味だった。このままじゃ町に甚大な被害が出て、住民が危険に晒されてしまう。
とりあえず私はそのアンドロイドから一旦離れる。アンドロイドは重たい金属の体のせいか動きが若干鈍いものの、
攻撃力や破壊力はとてつもない。一撃でも喰らったら間違いなくあの世行きだ。
私に少しづつ接近してくるアンドロイドだったが、何かに足を取られたようでゴテッ!と鈍い音を立てて倒れてしまった。
背中に目を向けてみるとそこにはスイッチであろうコードがあった。
これが弱点に違いない!と、私は思いきり踵落としをする感じでそのコードに勢いよくブーツの拍車をぶつける。
コードは千切れて壊れ、アンドロイドはガガガと音を立てて動かなくなってしまった。

「ふぅ、助かったぁ」

住民たちはみんな物陰に隠れて避難していて無事だった。住民たちも安堵しながら私に駆け寄ってきた。

「やったねレイチェルさん!」
「本当にどうもありがとう!あなたのおかげでまた救われたわ!」
「そ、そんな照れちゃうわウフフ」

140 :
マ@トレーヤは長年、この愛のエネルギーを放出し、世界中の人が刺激を受けています。
悪い人も良い人も、すべての人が刺激され、二つの対立するグループに分かれているとのこと。
曖昧な態度では新しい時代は切り開けないということですね。
マ@トレーヤが提唱されている分かち合いを選ぶのかどうか、立場を明確にする必要があるわけです。
shalonaブログentry-1142.html

141 :
【ガンマン VS アンドロイド】(3/3)

ドクタートミーとその助手リンダ、及び研究員全員が逮捕され御用となった。
どうやらドクタートミーとリンダはレイチェルの名誉を傷つけるために
彼女そっくりのアンドロイドを作って街で暴れさせた、とのことだ。
また、あの時近くに避難していた少年がビー玉を転がせたおかげでアンドロイドが倒れたのだ。

「あなたの勇気ある行動のおかげで救われたわ、どうもありがとう!」
「そ、そんなレイチェルさん。ボクはただビー玉を転がせただけだよ」

私はその少年の頭を優しく撫でる。少年も嬉しそうに照れていた。
今回の騒動も新聞の一面を飾るほどで、私はこれまで以上に有名人になった。
もしかしたらまた事件が私を待っているかもしれない。
明日も明後日もその次の日もずっと力強く生きていこう、私はそう決心した。

・・・・・・

ポチッ!
「これで投稿完了っと!みんな楽しんでくれるといいなあ」

彼の名はティム。ちょうど今、レイチェルとアンドロイドの戦いを描いたエピソードを小説サイトに投稿したところだ。

「レイチェルさん、いつか会ってみたいなあ」

彼もまたレイチェルの大ファンで、将来映画監督になるのが夢だ。

「これが映画化したらレイチェルさんに真っ先に見せてやりたいなあ」


おしまい

142 :
なんだか途中に異物混入してしまっているな

143 :
異物の文章のSF感よ

>>138
>そんな私の姿をビルの屋上から誰かがじっと眺めていた…。

俺はお前が俺を見ているところを見ているぞ!ってやつですねこれは怖い

144 :
>>138
まさかの2作目シリーズ3作目ww
今度はSFに寄せた感じに
いつ拍車が出てくるかと思って読んでましたw

145 :
変なコピペより作品が欲しい・・・
自作はまだ一文字も書けてない・・・

>>143
そこはほら、投稿者の神の視点の伏線ですよ
それより自分たちでマッドを名乗るのはどうなのかw

146 :
>>138
シリーズ快調w 138氏、お題『拳銃』なら彼女の出番だと、ついでに『ビー玉』『投稿者』を加え、ジャンル『SF』に挑戦、ザ・レイチェル・エピソード・ロボガンマン!
さあ、前回、悪徳転売屋の婆さんを牢屋送りにしたレイチェルさんが、さっそく背後から押し倒され、睡眠薬を飲まされ、血を抜かれているゥ〜、血には頓着しない女ガンマン、ここで深く考えないという男前の選択〜
さて町では血を封入した彼女そっくりのロボットが破壊工作を始め、首だけを360度回しているw 一周w レイチェルさんの『拳銃』発砲にも傷すらつかぬそのボディ! 無敵か、だが、少年の『ビー玉』にこけて拍車にトドメをさされ、主犯も逮捕だッ
どんどん神格化されていくレイチェルさんであった、よしっ、これで投稿完了っと言いながら『投稿者』ティム氏が登場w レイチェルさんが無断で小説にされていたという衝撃の事実…俺たちが見ていたのはフィクションなのか
読めば読むほど癖になるレイチェルシリーズw 今回は書き手が現れるメタ構造によりフィクション感を増しつつ、ロボ登場で『SF』クリア、138氏、水戸黄門のような安定感で、人気シリーズ作家の仲間入りだッ

147 :
もっと人増やして賑やかにしたいなあ

148 :
ですねぇ

今って何人くらいいるんだろ

149 :
実は自分以外はbotで他には誰もいないのかも…
もしかしたら自分自身も…

うわぁぁぁぁぁっ!!!

150 :
www

151 :
>>149
何気にSFなお話ですね

152 :
ココ イル ミンナ スベテ イツワリ

153 :
>>143
>>144
>>146
感想ありがとうございます!レイチェルシリーズ第3作目です!
SFって扱いが難しいですよね、多少ありきたりかもしれないですが
ロボットとのバトルとして書いてみました(本当は一人の投稿者によるフィクションでしたがw)
それから拍車はもはや定番ネタですねw これからも何かとストーリーに絡んでくるかもしれません。
今回も楽しんでいただけたようで嬉しいです。

154 :
>>127
ネタ切れ続編商法、前スレ400

使用お題→ジャンル『SF』+『ビー玉』『投稿者』『ガチャ』『拳銃』

【ラジオとビー玉】(1/2)

 はい、では次のお便りです。お便りガチャー!
(SE:専用のジングル)
 ガチャガチャガチャガチャ……ででん!
(SE:オケヒット)
 出ました、お便り出ました。ぱかっと。
(カプセルを開けて、紙を広げる音)
 えー、ラジオネーム、すずっちラヴさん。ありがとうございますー。
『いつも楽しく拝聴しております。すずっちのキュートなお声と優しい語り口に、いつもメロメロになっております』
 きゃー。ありがとうございます。
『ラジオやテレビでお声を聞く度、僕の胸は高鳴り、僕の心は熱くなり、それはまるで夢心地』
 ちょっと何これー(笑)。これラブレターでしょ。何を読ませるのですかー。えーっと、こんな調子で……愛の告白が十数行続いております。……すずっちラヴさん! あなた目を覚ましなさい! ばきゅーん!
(SE:銃声)
 あっ、あるんだ。あるよね。すごいね。ばきゅーん!
(SE:銃声)
 ばきゅんばきゅーん!
(SE:銃声二回)
 ……失礼しました。つい遊んでしまった。すずっちラヴさん、おめめが覚めましたでしょうか。……では、えーっと、続きですが。
『今回のテーマ「ビー玉」ですが、僕はフィリップ・K・ディックの短編を連想しました。老人と子供がビー玉で遊ぶ場面があります。すずっちはビー玉で遊んだことはありますか。』
 おおー、いいですねー。ビー玉遊びですけど、私は、うーん、遊んだ記憶がないですね。おはじきなら小学校で遊んだかな。
『また、PKD作品を読んだことはありますか。よろしければ、好きな作品や気になる作品を教えてください。』
 これ、うん、実は今読んでる途中です!
 まだ内容は秘密なんですけど、次に出演させて頂く作品の監督さんから『これ読んでおいてね』って渡されました!
 これ以上は、うん、ネタバレじゃないですけど、発表までのお楽しみということで。
 ……それではここで一曲、わたくし、紫陽みすずが歌います、テレビアニメ『機獣戦記ギガス・ウォーズ』、エンディングテーマ『手のひらからこぼれた、ビー玉の地球』。どうぞお聞きください。

155 :
【ラジオとビー玉】(2/2)

 ラジオからは音楽が流れなかった。
「おい、なんで止めるんだ」
 たまたま入った局を聴いていただけ。だからと言って、急に止められては詰まらない。
『名前と曲名で思い出したの。昔ねー、これが好きなやつがいたのよ』
「どっかで聞いたような話だな」
 同乗者が操る合成音声は、彼女にしては珍しく、どこか不機嫌そうだ。
『そいつがね、これを繰り返し繰り返し流すのよ。そいつが乗ってる間中ずっとね。こっちは耳にたこよ』
「へぇ」
『繰り返し聴かされ過ぎて、いまだに歌詞を覚えてるわ。なんなら歌ってあげましょうか』
「いや、そりゃねーだろ。結構だ」
『あっそ』
「ところでさ」
 歌に興味はないが、トークの内容は気になった。
「『ビー玉』ってなんだ?」
 他にも知らない単語はあったが。
『……はっ? えっ? 知らないの?』
「今のは昔の番組だよな。よく分からない部分が多かった」
 この同乗者、俺の母親よりも年上だ。そりゃ自分はなんでも知ってるだろう。
『へー。ほー。ふーん』
「なんだよ」
『分かったわ坊や。なんでも聞きなさい。とりあえず「ビー玉」だけど、ガラス玉のことよ』
「ガラス玉か」
 ガラス玉で何をするのか知らないが。他にも質問してみるか。
「『ガチャ』ってなんだ?」
『それは……なんかガチャガチャするやつよ』
 なんだそりゃ。
「フィリップなんとか、ってのは?」
『それはね、簡単に言うと、>>149みたいな話を書いたことで有名な小説家よ』
「小説家の名前か」
 次の質問は……。
『わたしのー、てー、のー、なーかーに、びーだまーひとつー』
 考えていると、同乗者が何やら歌い始めた。ぼけたか?
『あなたのー、かーおーがー、うーかーぶーわー』
 まあいいだろう。どうせ暇だ。壊れたラジオみたいだが、俺は止めたりしない。
 揺れる車内に歌声が響き。俺は黙ってそれを聴く。
 ご機嫌だな。

156 :
PKDを引き合いに出して解説までしておきながら、実は読んだことがないです

157 :
>>127
使用お題:ジャンル『SF』+『ビー玉』『投稿者』『ガチャ』『拳銃』

【日曜サスペンス劇場】(1/2)


 SFやスペースオペラなんかで語られる未来は、利便性の高い品々に囲まれた、何の憂いの無い夢の様な世界か、シンギュラリティで周りの道具に使われる様になったデストピアか……
 しかし実際に“未来”と呼ばれた時代に成ってしまえば、それは結局、現在の延長でしかなく……

 ******

 円柱状のビルが立ち並び、楕円形を基本としたジェット推進する車が空を飛び回る。クリアチューブの中で人々は足を動かすことなく目的地に移動し、全ての雑務は人間代わりにロボットが行っている。

『これが! SF時代の未来の夢の世界だ!!』

 笑顔でぴっちりスーツを着込んだ家族らしき人々の描かれたイラストを見ながら、何とも言えない気持ちで溜息を吐く。
 手元のタブレットを操作しながら(昭和って時代は、随分とハッチャけた未来予想をしていたんだな)等と戸川 恵霧は現実逃避をしていた。
 時間は午前零時をとうに過ぎ、しかしターゲットはまだラブホから出て来ない。
 入って行く動画は撮って居るのだから、それで十分じゃないかと思うのだが、先輩記者の話では出て来る所も撮って来いとのご命令だった。

「ドローンが使えれば楽だったんだけどなぁ」

 ビー玉状態に成って居る虫型ドローンを弄びながら恵霧は呟く。
 こう言ったラブホテルのセキュリティーは馬鹿にできなく、特に恵霧の様な三文記者……紙媒体の無くなった現在、ネット上のニュースに記事を載せる者を投稿者と呼ぶのだが……が使う様な小型のドローンでは、内部を覗く事は厳しい。
 人によっては家にいながら全てをドローンで済ます投稿者もいるらしいが、それを行える様な者は、それ相応の機材を持っているものであり、恵霧には手の出せない世界の話でもあった。
 貧乏投稿者の恵霧には、付近で待ち伏せしながら手動でドローンを操作するので精一杯なのである。

「ん?」

 俄かに恵霧が見張っていたホテルが騒がしくなる。上空に見えるのは煙だろうか? にもかかわらず防災ベルは鳴っていない。

「これは、チャンスか?」

 野次馬根性丸出しで、恵霧はニヤリと笑った。

 ******

 監視カメラの無いトイレからホテルの中に潜り込んだ恵霧は、こそこそと廊下に忍び出た。
 廊下には煙こそ出ていないものの、かなり焦げ臭く、中には半裸のまま外に飛び出している者も居る。

「やっぱり、ブルートゥースは繋がらないか……」

 念のため出入り口に仕掛けて来たドローンの映像はタブレットに繋がらない。ドローンからの映像を確認するのは後にして、恵霧は、未だ扉の閉まっている部屋の中を確認する為、ビー玉状態に成って居る虫型ドローンを廊下にばら撒いた。
 ドローン達はもそもそと昆虫形態に変形すると、扉の隙間から中へと潜り込んで行く。

「さーて、お宝映像でも取れていないかなぁ」

 ターゲットの芸能人が半裸で抱き合っている映像でも出てくれば大スクープである。ウキウキしながらタブレットを操作する。

 ガチャ……

「え?」

 唐突に恵霧が蹲っている目の前の部屋の扉が開いた。そこは倉庫と成っている部屋であり、人が入っているはずは無い部屋だった。特に、こんな火事騒ぎの真っただ中に使用する様な場所ではない。

「チッ!」

 男が舌打ちし、拳銃を恵霧に向ける。プシュッと言う音がして弾丸が発射されたものの、しかし恵霧は間一髪でそれを避ける事が出来ていた。

「ちょ! あわわわわわ!!」

158 :
【日曜サスペンス劇場】(2/2)


 ゴロゴロと転がりながら廊下を逃げる恵霧に、その男は2発3発と銃を撃つが、その全てを恵霧は躱し、何とか部屋に飛び込む。
 だが、そこはラブホの部屋である。窓は無く、いわゆる袋の鼠状態になってしまった。

「ど、どうする? どうすれば!!」

 ******

 扉が乱暴に開かれ、しかし、拳銃を構えた男は慎重に中を覗き込む。目に見える場所には恵霧の姿を確認する事の出来なかった男は、視覚に隠れていると考え、油断なく部屋に入って行った。
 一歩二歩と短い廊下を進み、ベッドルームに踏み込み……

「てりゃあああぁぁぁぁ!!!!!」

 廊下に繋がる死角に隠れていた恵霧が体当たりを仕掛けるも、それを読んで居た男は口の端を歪めながら彼の方へと拳銃を向け。

「!!」

 何かを踏んでしまい足を滑らせた。

(!? ビー玉だと! しかし、そんな物さっきは!!)

 男が尻もちをついている隙に、恵霧は外へ逃げ出していた。

「クソッ!!」

 男が悪態を吐く。と、そこに転がっていたビー玉は、昆虫形態に変形するとモソモソと部屋から出て行った。

 ******

 ホテルの外へと逃げる客の中に、件の芸能人が運よく映っていた恵霧は、投稿した記事の原稿料を電子マネーに入れて貰っていた。
 タブレットを操作し、ニュースを確認したが、昨日のホテルの火事の記事こそあるものの、あの拳銃男のものは何処にも掲載されていなかった。

(何だったんだ? あの男は)

 そうは思いはしたが、流石に拳銃を持ち出し、躊躇いなく恵霧を殺そうとするような相手である。恵霧も余計な好奇心で死にたくは無かった為、それ以上は深入りしない事に決める。

 そう決心してタブレット内の写真を整理する事にする。と、見覚えのないフォルダがある事に気が付いた。
 おそらく、昨日ホテルでばら撒いたドローンから送られて来た物だろう。
 薄暗い倉庫の様な場所。そこには昨日の男が拳銃を持って立っており、その視線の先には一人の女性が倒れていた。
 その女性の顔に、恵霧は見覚えがあった。

「確か、女性参議院議員の……」

 そこまで言って恵霧は自らの口を押える。
 恵霧は、自分が大きな事件の渦中に巻き込まれた事を自覚した瞬間であった。

159 :
お題→ジャンル『SF』+『ビー玉』『投稿者』『ガチャ』『拳銃』締切

【参加作品一覧】
>>132【幸運の白ウサギ】
>>138【ガンマン VS アンドロイド】
>>154【ラジオとビー玉】
>>157【日曜サスペンス劇場】

160 :
ではお題5つです

お題安価>>161-165

161 :
架空の食べ物

162 :
『モンスター』

163 :
子守り

164 :
メーカー

165 :


166 :
☆お題→『架空の食べ物』『モンスター』『子守り』『メーカー』『雨』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→7/7の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

167 :
とうとう7月ですねぇ
なんか今回は書きやすそうな感じがします
今週も引き続きよろしくお願いします

168 :
>>157
サスペンス風味の近未来SFアクションw
色々と盛られてて面白みがある
なぜか主人公が女性だと思って読んでました(主人公の身軽さとか、読んでるこちらが他の何かに影響されてたりとか

169 :
>>154
congratulations!!! 6スレ目にてついにスレはメモリアル100作目に到達だ〜、絶対記念のキリ番を踏むはこの人、154氏こと三代目進行氏だあッ! 全選択、ロリタン・リターナブルパワーズ!
さあ、語り始めるラジオDJが、お便り『ガチャ』で引き当てた『投稿者』のラヴレターに向け、『拳銃』SEを鳴らして遊んでいる〜、これどうやってSFすんだw と思っていたら、
ここでラジオを聴いてる人達の方に場面が転換〜、説明しよう! 彼らは前スレ登場、ロリを内蔵せし『SF』タンク、通称ロリタンの搭乗員、時間を持て余し音楽と資格勉強に耽る暇人二人であるッ、前スレよりw
思い出の『ビー玉』曲を介し、今やもう居ぬ相棒を想起する少女、常人より遥かに人工長寿な彼女であるために、懐かしさでご機嫌に歌う姿にも、どこか一片、寂しさにじむ〜、これぞ軽みと叙情のロリタンシリーズ、って感じで落とし込んでENDだ!
154氏、DJシーンで個性強お題『投稿者』を消化、からのヒネリ場面繋ぎにより架空戦車でジャンルを『SF』に変更、常連の意地を見せるひねり回転宙返りで全選択を突破だ〜、難題難関アイデアしだい、先輩99作品の努力と汗の背中を継承して見せたッ!
https://i.imgur.com/hliosDp.png

>>157
刻限約10分前w 今回お題、連関性のなさが大山となって立ちはだかる〜、進行氏に続き処理できるか、見せ所だ157氏、トリを飾れ、事件はラブホで起こっているッ
さあ、ホテル前を張る主人公、戸川さんがタブレットを操作しながら愚痴をこぼす〜、彼こそは紙媒体の報道が消滅した近未来におけるネット報道マン、通称『投稿者』w なるほど確かに未来では報道の在り方が変わってそう、考えたなw
玉状態の虫型ドローンを弄びながら見張りをしていると、どうやらホテルでボヤが起きた模様、これ幸いと屋内侵入、お宝映像をゲットすべくドローンをしのばせる彼なのだが、
しかし戸川さんの隠れる部屋の扉が『ガチャ』っとオープン、どこぞの男の『拳銃』から弾丸が発射〜、一転窮地に陥ってしまう、がッ、『ビー玉』状態のドローンを、男が踏んで転んでハイセーフ!w
ラストは図らずしも巨悪の一端を捉えてしまう名探偵コナ○君的サスペンスEND〜、近未来感でジャンル『SF』を仕上げ、残お題は腕力でまとめた157氏、四方八方を向いたお題群の指揮に辣腕を振るいストーリー化だ〜、答えは続編で、はらはらフィニッシュ!

170 :
>>169
ええーーすごい
保存しますた
ロリ美少女はイメージ通りで、戦車は想像よりも細かい
ちょっと期待はしてましたが、それよりも早くて上手かったw 何者なんだ競馬実況氏

っていうかすまない
進行が踏んだら駄目じゃね?とは思ったんですが、仕方なかったんや

ともかく感想と挿絵までありがとうございましたm(_ _)m
どうぞこれからもよろしくお願いします!

171 :
>>169
思ってたよりはるかに絵が上手い

172 :
あざっすw
戦車は良いものだね、楽しかった〜

>>170
踏むしかない空気だったから全然いいのではw
絵は日頃の労いも込めてプレゼンツだっ

しかし100発達成は偉業だよ
クリエイティブ精神のみを糧に進んできた短編スレをあらためて凄いと思う
今後なりどうぞよろしくお願いします

173 :
>>166
使用するお題→『モンスター』『子守り』『雨』

【ガンマンはベビーシッター?】(1/3)

こんにちは!レイチェルよ。
私ね、以前子守りを頼まれることがあったの。つまりベビーシッター。
ガンマンがベビーシッターって何か変じゃない?
え、別に変じゃないって?そ、そうかしらエヘヘ…。
子供達の人気者で面倒見が良さそうって理由だけで任されたの。
嬉しいといえば勿論嬉しいけど、子守りっていうのは簡単な仕事じゃないのよね。
今回はその体験談をお話しするわ。

それは3週間ほど前のこと。朝7時、私がいつものガンマン姿に着替えている時、プルルルルと電話が鳴った。
受話器を手に取り出てみると、一人の女性からだった。

「レイチェルさんかしら?」
「は、はい。そうだけど何か御用?」
「突然で悪いんだけどベビーシッターをお願いできるかしら?」
「つまり子守りということ?」
「ええ、レイチェルさんは子供達の人気者で優しいんですもの。娘もきっと大喜びですわ」
「ベビーシッターは本職じゃないんだけどね…」
「レイチェルさんなら大丈夫に決まってます。なんたって勇敢な女ガンマンですから!」
「そ、そう言われると照れちゃうわウフフ」
「お金もちゃんと払いますからお願いします」
「了解したわ、私に任せて!」

174 :
【ガンマンはベビーシッター?】(2/3)

子守りの依頼を受け、私が向かったのは自宅から数十キロ離れた場所にあるオリバー家だった。

「レイチェルさん、娘のバーバラの面倒をお願いします」
「それじゃあ私達は仕事に出かけますので」

オリバー夫妻はそう言うと車に乗って家を後にした。

「バーバラちゃんね、私がレイチェルよ。今日一日、私が面倒を見るからよろしくね!」
「うん!まさかレイチェルさんが来てくれるなんて夢にも思わなかったから私すっごく嬉しい!」

オリバー家の一人娘であるバーバラは、私を見て嬉しそうにはしゃいでいた。
すると突然、黒い雲が空を覆うと共に雷がゴロゴロ鳴り出し、雨がザーザーと降り始めた。

「雨かー。本当は一緒にバドミントンでもして遊びたかったのになあ…」
「仕方ないから家の中で遊びましょ?」

私はバーバラと一緒にボードゲームやテレビを見たりして楽しむが、バーバラはどこか退屈そう。
オリバーさんが用意してくれていた昼食を済ませ、その後はのんびりと過ごす。
ご飯を食べたせいかウトウトして眠くなってきた。このところ、ちょっぴり寝不足だった。
一瞬、私は深い眠りについてしまった。それは僅か数分の出来事だった。
いけない!とハッと目を覚ました瞬間、足下を見ると何故か両足ともブーツを脱がされ無くなっていた。

「わ、私のブーツはッ!?」

すると外の方からビシャビシャと水が跳ねる音、カチャカチャと金属が鳴る音が聞こえてきた。
外を見てみると、バーバラがいつの間にか私のブーツを勝手に履いて、水溜りで楽しそうに遊んでいたのだ。

「バ、バーバラちゃん!!」

175 :
【ガンマンはベビーシッター?】(3/3)

「アハハ!これすっごく楽しいわ!」

私のブーツを勝手に履いて、水溜りでバシャバシャと飛び跳ねて遊ぶバーバラ。
私は急いで外に飛び出し、バーバラの元へと走り寄る。

「バーバラちゃん!私のブーツを勝手に履いて何してるの!」
「あっモンスターだ!逃げなきゃ!」

だ、誰がモンスターですって!?私は勇敢な女ガンマンよ!!
バーバラは私の姿を見るやモンスターと呼んで逃げ出し、私はすかさず追いかける。
しかし足のサイズが全然合っていないから、バーバラはコテッと転んでしまう。

「捕まえた!バーバラちゃん、こんなことしちゃダメじゃない。泥棒と同じよ」
「ごめんなさい、レイチェルさん…」

そう謝るとバーバラはブーツを脱いで私に返す。彼女の話を聞くと、両親であるオリバー夫妻は仕事でとても忙しくて
なかなか構ってもらえず、その不満が爆発してしまったのことだった。

「こうやってお父さんとお母さんと一緒に外で思いきり追いかけっこして遊びたい!」

泣き出すバーバラの頭を私は優しく撫でて慰める。雨も止み、太陽が顔を出し晴れ晴れとした青空になった。
オリバー夫妻が帰ってくるまで、私は親の代わりとなってバーバラと一緒に外で思いきり遊んで遊びまくった。
夕方、夫妻が家に帰ってきた。気持ち良さそうにグッスリと眠る娘を見て安心していた。

「今日は本当にどうもありがとう、レイチェルさん」
「いえいえ。仕事も良いけど、たまにはバーバラちゃんと思いきり遊ぶのも良いと思うわ。羽目を外さない程度にね」

その言葉に夫妻も何か気付いたのか、咄嗟に眠っているバーバラを強く抱き締めた。
バーバラは目を閉じて眠りつつも口元はとても微笑んでいた。
そんな一家の姿を見て、私も嬉しい気持ちで家路につくのだった。

おしまい

176 :
>>173
今回一番乗り、もはや何でも屋のレイチェルさんw
ぶっ飛んだ話かと思ったら、普通に優しい話で良かったです

177 :
あ、この言い方だと、ぶっ飛んでたら駄目みたいに聞こえるかも
ではなくて、少し変化があって良かった、という意味でした

178 :
久しぶりに覗いたらいつもの実況感想さん
テンポの良い感想連発の文章力以外にもイラストまで描けたのかと多芸さに震えてる

179 :
挿絵をかくのもなかなか楽しいもんだねw

180 :
絵下手だけど練習がてら描かせてもらうのもありだなぁ

181 :
>>173
173氏がお題『モンスター』『子守り』『雨』を宣言、悪党相手の八面六臂を描いてみせる例のシリーズ、今回は人情回? 夕日に笑うベビーシッティング・ガンマンw
さあ、町の変な人から一転、いくつかの事件を経て子供達の人気者になったレイチェルさんが、自身の『子守り』体験を話し始める〜、突然の電話からのベビーシッター依頼、なぜガンマンレイヤーにと思いつつも勇敢勇敢とおだてられ快諾〜、
依頼宅は自宅から数十キロある(遠w)、そこに一人娘のバーバラちゃんが待っていた〜、雷『雨』に見舞われ、インドア遊びに耽る中、昼食後の睡魔に襲われレイチェルさん、
目を覚ますと奪われしブーツが水溜りに突っ込まされているぜ〜、恒例の拍車カチャカチャw 『モンスター』と呼ばれ注意するレイチェルさんに、バーバラちゃんが涙して、お父さんとお母さんとも遊びたくて、つい暴走と心の内を吐露、
本当の仕事はこれだったかと女ガンマン、それとなく両親に構ってあげなって微笑みENDで真の業務を完了だ! そう、このシリーズは勧善懲悪だけじゃない、やるべきことをかっこよく、それがレイチェルシリーズだぜと、173氏が新規路線を開拓のお題クリアw

182 :
>>176
>>181
感想ありがとうございます!
いつもはドタバタやハチャメチャがメインでしたが、今回はいつもと少し趣向を変えて
ほのぼのかつ、ちょっぴりしんみりとした内容として書いてみました。
楽しんでいただけたようで嬉しいです!

183 :
遅レスですが
>>111
不思議な雰囲気のお話ですね
果たして、タイムマシンを使ってまで、メガテリウムは何をしに来たのか?

>>132
マスコット戦争?
一番になれないなら、不幸にしてやると言うのは、ずいぶんとヤンデレなウサギですねw

>>138
既にファン同人誌までw
もはや彼女は、アメコミのヒロイン並の人気なのですねw

>>154
終末世界のラジオリスナー
まめタン的には「聞きあきた」と言う感じなのでしょうか?
それとも、思い出したくない想い出が?

>>173
ヘビーシッターもよいですが、やはり本当の両親との思い出が重要ですよね
今回は不法侵入はなかったw

184 :
遅レスです
>>129
感想有り難うございます
何となく考えていたのは藤子不二雄先生の、あの名作とか、タ○ムボカンシリーズとかですw

>>130
いつも感想有り難うございます
スケアクロウとソフィアは、別々に思い付いたネタだったのですが、どうせなら一緒にしてしまえとw
自分の話は要素詰め込みすぎだとは思っているのですが、中々、修正がききませんw

185 :
>>168
感想を下さり、有り難うございます
実は自分も途中まで性別を決めかねていましたw

>>169
感想いつも有り難うございます
イメージは京○夏彦のル○・ガルーの様な、現在の延長上にある未来です
ただし、続きがあるかは分かりませんがw

>>169
記念アート
素晴らしいですね
次は200話目でしょうか?

186 :
>>183
感想ありがとうございます

111、体温低めの語りが良かったかなと
そう言えば何しに来たんでしょw
留学、観光・・・

154、ヘビロテで聞かされ続けたので・・・w

187 :
>>166

使用お題→『架空の食べ物』『モンスター』『子守り』『メーカー』『雨』

【雨を狩る】

 顔に雨が当たる。風を感じる。フライヤーの調子は悪くない。
『なぁタニシ。あいつを置いてきて良かったのか?』
 無線機から聞こえるトンカツの声。
「何言ってんだ。子守りしながら狩りなんてできるかよ」
 俺たちは今、三人で一列になって飛行している。先頭のフライヤーにはリーダーのハチスケ、その次がトンカツ、最後が俺だ。
『しかしなぁ』
『おい、獲物が近いぞ。集中しろ』
 リーダーの声で前方を注視する。だが俺には何も見えない。ゴーグルの先に広がるのは、空を覆う灰色の雲、視界を遮る雨と風。
『見えるか? あと少しで追い付く。五……四……三……』
 見えねぇ。などとは言えない。トンカツの痩せぎすな背中が動き、銛(もり)を構える。俺も倣って準備する。
『……一、真上だ。来るぞ!』
 瞬間、上から押さえ付けられる感覚。フライヤーが振動する。この時点でようやく、俺の目は怪物の姿を捉える。
『次で銛を撃ち込むぞ』
『了解』
 半透明のそれは、一瞬で雲に隠れてしまう。だが、もう見失うことはない。その大き過ぎる存在感。天候をも左右すると言われる、桁違いのプレッシャー。
 俺たちは散開して、その時を待つ。
『来るぞ……撃てー!』
 三本の銛が突き刺さる。つかの間の静寂。
『衝撃に備えろ!』
 顔に、頭に、体全体に、空気がぶつかってきた。フライヤーが一際大きく揺れて、転覆しそうになる。銛につないだロープが引っ張られる。
 リーダーの指示でウインチを操作する。怪物の威容が、徐々に明らかとなる。
『でかいな……』
『そうでもないぞ。丁度いいくらいだ』
 雨雲が空を覆っている。それを更に覆い隠すような巨体。
「こんなの、本当に食えんのか?」
 レインメーカー。
 そう呼ばれるモンスターは、まるで嵐を生み出すように。荒天が映る体を震わせた。

188 :
何かに挑戦しようとしたけど色々と無理でしたすまそ><

189 :
>>166

使用お題:『架空の食べ物』『モンスター』『子守り』『メーカー』『雨』

【カルーラと五月雨】(1/2)


 睦月 五月雨は、げんなりした様子で崖にしがみ付いて居た。
 空の様子は雲が厚くかかり、いつ雨が降り出しても可笑しくない様子だった。
 こんな最悪のコンディションの時に崖下りをしている訳は……

「おい! サミダレ!! 早うせんか!!」
「チッ! お子様が(ボソ)」
「なんぞ言ったか?」
「い〜え! 何も言ってませんよ! カルーラ姫!!」

 この、ガルカリア帝国の末姫、カルーラに命令されたからだった。

 ******

 五月雨が異世界へと転移して、偶々ガルカリアの二番目の姫であるネーファ姫を救った事で、この帝国の食客と成ってから1ヶ月ほどが過ぎていた。
 当初は隣国のスパイかと疑われ、地下牢に入れられた五月雨だったが、しかし、ネーファ姫の懇願と、何故か彼を気に入ったカルーラ姫のお願いの甲斐あって、無事、客人として扱われる事に成った。

 ただし食客と言っても、ほとんどカルーラ姫の玩具……子守り扱いであったが。

 さて、そんなカルーラと五月雨が何をしているかと言えば食材集めである。
 明日に迫ったネーファ姫の誕生日会に向け、彼女が好物だと言う『ポ・ワレ・セレンセリッシュ』と言う料理を作る為だ。

「それ、城の料理人に頼むんじゃダメなのか?」
「何を言うとる! わらわが手ずから作るからこそ心を込められるじゃろう?」
「……まぁ、言わんとする事は分かるけど……」
「と言う訳で、食材集めはキサマの仕事じゃ!」
「は?」

 唐突にそう言われ、五月雨は『何言ってんの? このお子様は』と言う顔になった。
 しかしカルーラは、そんな五月雨の心情など意にも介さず言う。

「わらわが料理を作る! なら、キサマの仕事は食材集めに決まっておろう」
「それ、買って来るんだよな?」
「サミダレ、キサマ金など持っておるのか?」
「……ねぇな……」

 食客である五月雨に現金収入など有りはしない。
 微かな期待を込めて彼はカルーラの方を見るが……

「わらわは貸さんぞ?」
「ですよねぇ〜」

 こうして、五月雨は自力で食材を集める羽目になった。

 ******

「ゲ! 降って来やがった」

 五月雨の顔にぽつぽつと雨が当たる。

「どうした! そんなノロノロしとったら、日が暮れてしまうぞ!」
(このガキ!!)

 確かに、ポ・ワレ・セレンシュリッシュを作るには、この崖に巣を作る鳥型モンスター、ウットーバードの卵が必須である。

190 :
【カルーラと五月雨】(2/2)


 だが、彼より身体能力に優れたお付きが、カルーラには大勢居る。
 その為、本当に五月雨が取りに行かなければ成らないのかが彼には疑問だった。

「ホラホラ! 早う降りて取ってこんか! わらわがびしょ濡れになってしまうぞ!!」
「わーってるよ! 大人しく見てろ! この俺の勇姿を!!」

 雨が強くなって来た事で、カルーラがやいのやいのと騒ぎ出す。幸い、ウットーバードの巣まではあと少し、五月雨はカルーラに向かって、そう叫んだ。
 だが、いくら何でも騒ぎ過ぎたからであろう。彼らの存在に気が付いたウットーバードの親鳥が、卵を渡すまいと五月雨に襲い掛かっかってきた。

「ちょ! アブな! や、やめ!!」
「ぶわっはっはっはっはっはっは!! サミダレのヤツ、あんな小さな鳥のモンスターごときで大慌てしておる!!」

 モンスターと言えど、ウットーバードは魔法を使うという以外で言えば体長15cm程度の小鳥である。そんな小鳥に対し大慌てで避けまくる五月雨の姿はカルーラの目には酷く滑稽に映った。

「てめ! こっちが大変な時によく笑っていられるな!! この性悪姫!!」
「だぁ〜れが性悪じゃ!! キサマの顔が面白すぎるのが原因じゃろうが!!」
「てめ! この!! うわ!!」
「「あ」」

 ウットーバードの執拗な攻撃と、降りしきる雨の所為で手を滑らせた五月雨は、真っ逆さまに崖へと落ちる。その目に、涙まで流しながら大笑いするカルーラの顔を焼き付けながら。

 ******

「ちきしょう、酷い目に遭った……」

 幸い、崖の下が草むらで有った為、五月雨は無傷で済んだ。だが、彼が落ちていく様を大笑いしていたカルーラに対しては怒り心頭に成って居た。

「お? サミダレが帰ってきおったか」
「てめ! ……あ!!」

 五月雨がどうにか崖上に戻って来た時、カルーラの手には卵が二つ乗せられていた。

「ど、どうしてそれを……」
「くふっ! キサマが小鳥と戯れている隙に、執事のシャロンに取って来て貰ったのじゃよ! くふふっ! サミダレ、キサマは良い囮じゃった」
「こんの!!」

 けたけたと笑うカルーラの後姿を見た五月雨は、怒り心頭で彼女の背後から腹部に手をかけ、左手で引き込んでレインメーカーを掛けようとして、いつの間にか背後に回っていたシャロンによって、逆にレインメーカーを掛けられ気を失ったのだった。

 ******

「ほれ、そんなブスッとした顔をしてては、不細工が更に面白くなるぞ?」
「うっせぇ!」

 五月雨はそう言いながらも、嬉しそうにポ・ワレ・セレンシュリッシュを食べるネーファに顔を見て(まぁいっか)と思ったのだった。

191 :
お題→『架空の食べ物』『モンスター』『子守り』『メーカー』『雨』締切

【参加作品一覧】
>>173【ガンマンはベビーシッター?】
>>187【雨を狩る】
>>189【カルーラと五月雨】

192 :
で、、では

ちと今回ネタ切れなので、5つで

お題安価>>193-197

193 :
七人の〇〇

194 :
ハンドクリーム

195 :
首輪

196 :
僕っ娘

197 :
『魔方陣』

198 :
☆お題→『七人の〇〇』『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』『魔方陣』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→7/14の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

199 :
また個性的なお題が集まりましたね

今週もお題、作品、感想、ありがとうございます
当スレは住民の皆様のご協力で成り立っております


次回の安価どうしよ・・

200 :
>>189
これはひどいのじゃロリw
だけどいいコンビ・・・なのか?

他のメーカーでもいいはずなのに、やっぱりネタかぶりしちゃいますよねw

201 :
こほん
では恒例の
うわあああああ!!!またやらかしたあああああ!!!

202 :
>>187
ハンターと獲物との真剣勝負
何故か白鯨○説を思い出しましたw

>>200
感想有り難うございます
ネタは被っててもスケール感が違いますからw
巨大モンスターと小鳥魔獣。自分の方の小物感と言ったらorz

203 :
>>187
『架空の食べ物』が想像力をかきたてる前回お題、進行氏が全選択、ファンタジックな空戦に挑む! 一狩りいこうぜ、レインメーカー!
さあ、顔に当たる『雨』を感じながら、灰色の雲と視界を遮る風雨の中、主人公らが飛空挺らしきものを操っている〜、「アイツを置いてきてよかったのかと仲間トンカツの声!
なぜにトンカツ、好物かw 主人公は『子守り』なんてしてられるかと、もう謎メンバーを邪険に銛を構える〜、ハンター達が睨みあげるは、上空から姿を現した半透明の『モンスター』、天候をも左右すると言われる恐るべき巨体、
巻かれるウインチの先にあらわれしもの、雨の生成者、その名もレイン『メーカー』だ! 伝説級の怪物のやつだな、「こんなの本当に食えるのかよ」という声の本、緊迫感を増しながら物語は『架空の食べ物』をクリア!
ってココで終わり!? 謎メンバーはw 時間制限に引っかかった進行氏が全お題を使い切ってワクワク書き出しロマンENDッ! お題を上手く組み合わせ独特で濃い話が出来てきている、続編を待ていっ

>>189
189氏はグルメな転生登山に前回お題全の消化を託してきた、クライミングなグルーヴの先に姫の笑顔を見た勇者は転生者で、でも特別な能力とかない件!
さあ、『架空の食べ物』ポ・ワレ・セレンシュリッシュ(いいにくいw)を振舞わんと、鳥型『モンスター』、ウットーバードのタマゴを求め巣に挑む、主人公・五月雨さん〜、が、末姫カルーラさんの『子守り』をしながら崖を下っているところである〜、
『雨』が振り出し、やいのやいのと騒ぎ立てるわらわ系高慢な末姫さんに煽られつつ、鳥に襲われる、世にも悲惨なコンディションの中、五月雨さんが手を滑らせて見事に落下きたァ!
しかし崖の下が草むらで普通に生還! それで現場に戻ってみると、ポテンシャル高めの執事の人がターゲット卵を既にゲットしているw 崖落ちまでしたのに、なんなんだ、一体w
けたけた笑う末姫さんに腹を立て、レイン『メーカー』をかけようとして、逆にのされるダメダメオチで、物語は全お題をクリア〜、レイン『メーカー』消化の冴えよ、ラストは優しい方の姫の笑顔ですべてをゆるそうフィニッシュ、189氏、ドタバタ乙!

204 :
>>203
感想を下さり、有り難うございます
お題、『メーカー』と『雨』で真っ先に思い付いたのがレインメーカーでしたw

205 :
>>202
感想ありがとうございますw
やはりなんとなーく影響は受けてます
出崎・・・
スケール感で言うと、宇宙規模には及びませんがw

>>203
感想ありがとうございます
彼の好物ですw
続編は、、ぜ、善処します!

206 :
にしても今回どうでしょ
組み合わせや発想で色々書けそうですが
なるべく多くの作品が見たい・・・

207 :
ここから書籍化したりするの?

208 :
そりゃないでしょう(ゼロではないでしょうが
お題に従って色々書く/書かされるって面白いなぁ、ってだけです

ただメリットはあって、お題が絶対正義なのは大きい
だから趣味でも練習でも実験作でもいいし、何かの求道でもいい

それに加えて、文句も言わずに作品を読んでくれる人が数名以上いる(はず)
ボランティアで感想を書いてくださる方もいらっしゃいますし

209 :
ここで何作か書いた経験は役立ってる
最近はちょっと賑やかしもできてなくて覗いてるだけで申し訳ないけど、感謝感謝です

210 :
いえいえ、いてくれるだけで助かります

211 :
>>198
使用するお題→『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』

【迷子のペット探し】(1/3)

西部劇マニアのレイチェルは今日も早起きし、いつものガンマン衣装に身を包む。
彼女は毎朝両手をハンドクリームでしっかりとケアするのを日課としている。
いざ銃を握った時、うっかり落としてしまったりしない為の所謂滑り止めだ。
ガンマンが手を滑らせて銃を落としてしまうなんてとても情けない。

「これでよしっと!」

腰に銃の入ったホルスターを装着し、帽子を被るといざ外へと飛び出る。

「レイチェルさんおはよう!」
「今日もガンマン姿がすっごくナイスだよ!」

近所の住人達が彼女を見るや手を振り、元気よく挨拶する。
レイチェルはもはやこの町で知らない者はいないくらいの人気者だ。
公園のベンチに座り足を組んでゆっくりと寛いでいると、楽しい音楽と共にアイス売りの車がやって来た。

「あっアイスクリーム屋さん待ってー!」

レイチェルは嬉しそうにアイス売りの方へと駆け寄る。
しかしその瞬間、左足の方の拍車のベルトが緩んでブーツからポロリと外れて落ちてしまうが
アイスに夢中な彼女は全然気付かなかった。
子供達と一緒にアイスを食べておしゃべりを楽しんだ後、また散歩を始める。
その時になってレイチェルはようやく違和感を感じた。

「あれカチャカチャ鳴らない…?」

左足の方のブーツを見て、彼女はようやく拍車が取れて無くなっているのに気付く。

「わっ私の拍車はどこ!?」

急いで公園に戻って必死に探すものの、拍車はどこにも落ちていない。
もし落としたとすれば公園しか有り得ない。公園に着くまではちゃんと拍車の音が鳴っていたからだ。

「ど、どうしよう…」

レイチェルは途方に暮れてしまった。

212 :
【迷子のペット探し】(2/3)

レイチェルはベンチに座ってウーンと頭を悩ませる。
実は拍車を無くしてしまったのは今回が初めてではなく5回目なのだ。
無くしてしまった理由というのが全て、ベルトの部分が緩んでいるのに全然気付かず
そのままポロッと外れて落としてしまったからだった。
その度に行きつけのウエスタンショップに行って買い直しているのだが、
間違いなく店主の爺さんに笑われてしまうだろう。
もう自分が情けなくてたまらない。

「あ、レイチェルさんですね?」
「うん?」

自分の名を呼ばれ、頭を上げるとそこにいたのはアニーという少女だった。

「あらアニーちゃんじゃない、どうしたの?」
「レイチェルさん、僕の可愛いトニーがいなくなってしまったんです。探してほしいんです」
「トニーって誰かしら?兄弟?」
「ペットなんです。一昨日逃げてしまって、必死に探してるんですが全然見つからないんです」

トニーという大事にしているペットが行方不明になってしまってとても悩んでいるようだ。
今自分も拍車を無くして困っているのだが、それは横に置いといてトニー探しを手伝うことにする。

「アニーちゃん、ペット飼ってたのね。どんな動物なの?」
「イ、イグアナなんです」
「イグアナ?それはすごいわね…」
「まだ子どもなんですけどね」

公園や湖の近く、町中を歩いて探すもののトニーは姿を現さない。
トニーは一体どこに行ってしまったんだろうか?

213 :
【迷子のペット探し】(3/3)

トニーが見つからず、アニーはとても心配になり落ち着かなくなってしまう。

「トニー、まさか野良犬に食べられてしまったんじゃ!?」
「アニーちゃん落ち着いて!トニーはきっと必ずどこかにいるはずよ」

すると近くの草むらがカサカサッと音を立てて揺れる。
それと同時にカチャカチャと聞き慣れた音も聞こえてくる。

「このカチャカチャ音…私の拍車の音!」

草むらの中から小さなイグアナが現れた。

「トニー!こんなところにいたのね!」
「それに私の拍車!」

よく見てみるとトニーの首には私の拍車のベルトが巻いてあり、首輪のようになっていた。
すぐにレイチェルはトニーの首から拍車のベルトを外す。
もしかするとトニーが気に入って自分から首にはめたのだろうか。

「レイチェルさん、拍車を無くして探していたんですか?」
「そうなの。でもまさかトニーの首に付いてたなんてすごい偶然だわ」
「トニー、あなたはレイチェルさんを助けたのよ。偉い子ねヨシヨシ!」

アニーはペットのトニー、レイチェルは拍車、偶然とはいえ互いに大切な物を見つけることができた。

「レイチェルさん本当にありがとう!」

そう言うとアニーは嬉しそうに手を振りながら帰っていった。
レイチェルも拍車のベルトをブーツから外れないようキッチリと固定する。

「さてっと私も帰るとしますか」

カチャカチャと鳴る拍車の音に心を弾ませながら、レイチェルも家路に着くのだった。


おしまい

214 :
>>211
なんか進化してる・・・味わい深い雰囲気に

知人がイグアナを飼ってるんですが、勝手にどっか行っちゃう、ってのはあるみたいですねw

215 :
>>198
『七人の〇〇』『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』『魔方陣』から全選択


通販で取り寄せた、魔法のハンドクリーム。
それを指先に取り、自室の床に魔方陣を描く。

「出よ、僕の下僕どもっ!」

芝居がかった口調で僕が叫ぶと、そこから現れたのは、七人の可愛い可愛い魔法少女達。
...の、筈だった。

確かに六人は、間違いなく『少女』の姿をした、首輪をつけた魔法使いだ。
でも残りの一人は...うん、違う。
君、たぶんだけど違う...よね?
じっとその瞳を見つめ、聞いた。

「...君、少女じゃないよね?」

その問いにその子は戸惑ったように視線を宙にさ迷わせ、困り顔で笑った。

「えっと...。一応、少女...です。
 ごめんなさい、僕、貧乳で。
 人気の子達は皆、そのハンドクリームで呼び出されちゃってて。
 ...僕じゃ、駄目ですか?」

上目使いで僕の顔を見上げ、申し訳なさそうに彼女は聞き返した。

...そう。
その子は魔法少女ではあるものの、胸の貧しい『僕っ娘』だったのだ。

...逆に、グッジョブっ!

       【たぶん、完。】

216 :
>>211
進化を見せるレイチェルシリーズ、今回は拍車回だw 211氏が『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』を選択、探し物はなんですか〜見つけにくいものですか〜♪
さあ、毎朝両手を『ハンドクリーム』でしっかりとケアするのを日課としているレイチェルさんが、ブーツの拍車をカチャカチャ鳴らして公園にいる、基本スタンス公園w
迂闊にも拍車が外れたのに気づかず笑顔のレイチェルさん、なんと通産五回目の失態だ〜、拍車がないとうなだれて、すると『僕っ娘』アニーが現れて、
「僕の可愛いイグアナを探してください」なる依頼、いつもながらなぜコスプレイヤーに…、しかし己の拍車をよそに町中をイグアナ捜索するレイチェルさんは優しいのである、って拍車の音!?
イグアナ発見、とともになんと『首輪』に拍車のベルトが巻いてあるw 嘘だろ、そうかもし自分の拍車を優先していたら見つからなかったオチということか、急がば回れ、心優しきレイチェルさんにも報恩END、211氏がレイチェルシリーズほんわか路線を開発していくぞ! 乙!

>>215
まとまりのよさそうな今回お題中、ひときわ異彩を放つ『僕っ娘』、この対応が鍵となりそうだ、215氏は我先にと『僕っ娘』中心に全お題を連結してきた! 全選択、グッジョブ★クリームガールズ!
さあ、語り手が、通販で購入した『ハンドクリーム』で、床に『魔方陣』を描いている〜、なんとこのクリーム、「出よ、僕の下僕どもっ!」なるかけ声により、『七人の魔法少女』が現れる、
…はずだったのだが、『首輪』を付けた召還少女の中で、一人だけ毛並みの違う女子がいる…!?
問いただすと「ごめんなさい、僕、貧乳で」と上目遣いで申し訳なさそうにこちらを見てくる、こ、これは、そう『僕っ娘』だ! 魔法少女といえば僕っ娘!(そうでもない) 動きがちょっとあざといけど、それもアリだなw
逆にグッジョブENDを決めた215氏が、性癖に刺さったのか、続編に色気をみせるチラチラフィニッシュで全選択を片付けたァ! 貧乳も使いようでは武器となるのだッ、性別混乱フィニッシュ!

217 :
>>215
呼ばれて7人も飛び出るなんて・・・!w
ハンドクリームの使い方がアイディア良しですね

業務連絡)多分タイトル忘れてますが、指定がなければ【無題】となりますー

218 :
>>211
あっあとアイス売りがアメリカっぽくて素敵です

219 :
>>214
>>216
>>218
感想ありがとうございます!
進化してる、だなんて照れちゃいますテヘヘ。
基本ドタバタだけど、ほんわか展開も忘れないといった形で書いていこうかなと思っています。

220 :
>>214
>>216
>>218
感想ありがとうございます!
進化してる、だなんて照れちゃいますテヘヘ。
基本ドタバタだけど、ほんわか展開も忘れないといった形で書いていこうかなと思っています。

221 :
謎の時間差連没すみません…。

222 :
そろそろこの場所にも新しい風が欲しいところだな…

223 :
おまたせ! 新しい風だよ!

「成田良悟」の「偽物」と「小原一哲」の比較画像
https://imgur.com/a/bpblisX

「時雨沢恵一」と「乙一」の比較画像
https://imgur.com/a/9MEH5Uo

224 :
スレも進化が必要ですよね・・・

ところで次回のお題なんですが、反対語しばり、ってのはどうでしょうか
例えば、1人目が『ネズミ』なら、2人目は『ゾウ』
反対語のペアが出来たら、3人目は反対語『ライオン』でも、無関係な『大福』とかでもいい
4人目は反対語『ウサギ』とか、『ケーキ』とか
5人目は3人目と同様

上記の例は名詞ばかりですが、他の品詞や何らかの指示でも可
途中で失敗してると思ったら、次の人がフォローする
余りや仲間外れがいたら、進行がフォローする
進行がフォローしてお題を追加した場合でも、選択できるお題は5つ以下とする

こうして書くと複雑でヤバそうなんですが、とにかく反対語のペアを作っていく、ってことです
どうかなぁ

225 :
何でもやってみるもんさ
しりとりでもできそう
前の投稿にお題左右される点がうまくいくかどうか
見てみるしかないね

226 :
ですねぇ・・・ありがとう
しりとりも、実はちょっと考えてましたw

227 :
>>198
>>187の続きであります

使用お題→『七人の〇〇』『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』『魔方陣』

【雨が上がる】(1/3)

 これで何度目か、フライヤーが大きく揺れる。
「なぁリーダー、トンカツ。これ本当に大丈夫か?」
 既に相当な距離を移動したが、獲物は弱る様子も見せない。
『大丈夫だ。高度は下がってる』
『下がってる、っつってもなぁ。やっぱり三人じゃなぁ』
 普通なら、三人いれば安全に狩れるはずだ。だが俺は初心者……狩りは初めてで、他の二人も経験豊富、というわけではない。
『……大丈夫だ。確かに時間はかかってるが、俺たちならやれる。タニシもよく動いてる』
 今や怪物の全身は雲の中から引きずり出され、その半透明の威容をさらしている。
 俺たちはロープを調節して高度を下げようとするが、相手も踏ん張る。その度に、俺たちのフライヤーは振り回される。
 そんな攻防を続けて、どのくらいの時間が過ぎたか。
『おいリーダー。ありゃなんだ』
 最初に異変に気付いたのはトンカツだった。
『何って……いや、大丈夫……』
 半透明だったレインメーカーの体が、雨雲と同じ色に変化していた。その内側に雷のような閃光(せんこう)も見える。
『……じゃないな。少し距離を取ろう……っ』
 リーダーの判断は一瞬だけ遅かった。怪物の体が硬直したように見えた。それから、大量の雨粒が濁流のようになって襲ってきた。俺たちは激しく揺さぶられた。
「ぶはっ、くそっ!」
 呼吸ができるようになると、次に感じられたのは音による衝撃だった。
 フライヤーが振動する。叩き付けるように、しかしゆっくりと、繰り返し、繰り返し……。
『おいタニシ! しっかりしろ!』
 繰り返し、繰り返し、繰り返し…………。

 *

「…………はっ!」
 ここは……教室だ。西日が射す放課後。俺は船をこいでいたようだ。
 机の上には解きかけの問題、魔方陣の書かれたプリントがあった。空欄に数字を埋めるのだ。
「そうか、これを解こうとして……だが、分からん……」
 その時、ガラガラっと音がして、教室に誰かが飛び込んできた。
「いたー! タニシ! 見付けた!」
「お前、メダカ……」

228 :
【雨が上がる】(2/3)

 教室に入ってきたのはメダカだった。俺の妹みたいなやつだ。
 黒いショートカットが跳ねて、制服のスカートが躍る。俺の机の前に立つ。
「なにやってんの?」
 俺は答えない。見りゃ分かるだろ。
「まーいーや。あのね、お話を書いたの。読んで!」
 そう言ってノートを差し出す。
「やだよ。今忙しい」
「読んで!」
 こいつは俺の都合を無視して絡んでくることがある。そして、俺が言うことを聞くまで諦めない。
「仕方ない……。えーと、『メダカ姫と七人の従者』? なんだこれ」
「面白そうでしょ」
「どこがだよ」
「いいから読め!」
 俺はページをめくった。案の定と言うか、くっだらねー内容だった。
 とある国の王女、メダカ姫が、イケメンで有能な従者たちにかしずかれる。彼らを伴って冒険したり、従者たちと同じくらいのイケメンだが性格の悪い王子をやっつけたり、どこかで拾った奴隷のタニシを……。
「って、俺かよ!」
「うれしいでしょ」
「なんでだよ! アホくさ。あーアホくさ。読んで損した」
「ちゃんと最後まで読んでよ」
 ……奴隷のタニシを、やっつけた王子の代わりに王子に据える。タニシ王子は感激して、メダカ姫に永遠の忠誠を誓う。最後に二人は結婚して、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
「なんだこれ! めでたくねーよ! 書いたやつの頭がめでてーよ!」
「あとね、あとね」
「なんだよ」
 メダカは、もう一冊ノートを取り出した。
「実は従者の一人は、メダカ姫の変装でした。『メダカ姫と七人の従者』外伝、『僕っ娘従者メダカ姫』」

 *

「どうだった? 面白かった?」
「面白くなかった……」
 元々賢くない頭が、ますます馬鹿になるような錯覚に陥った……。
「そっか。まーこっちではタニシがあんまり出てこないからね」
「いや……そうじゃなくてだな……」
「あ、ところでさ」
「なんだよ」
 メダカは俺にプリントを差し出した。
「タニシが僕のお話を読んでる間に、全部埋めておいたから」
 『7』、『6』、『1』、『3』……。
「おおおおぃ!」

 *

 さっきまで出ていた太陽は雲に隠れてしまった。今や雨の降り出しそうな雰囲気だ。
「もー、そんなに怒らないでよ」
「いや怒るだろ。俺が解いてた問題だぞ。お前が解いてどうするんだよ」
「頭が固いなぁ。タニシの頭じゃ、何時間かかっても解けなかったでしょ」
 反論できない。
「……帰るか」
「……うん。でも、どこに?」

229 :
【雨が上がる】(3/3)

 どこに?
 家……ではない。俺はずっと椅子に座っていて、メダカは俺の机の前に立っていた。
 俺はメダカの顔を見上げる。普段と変わらない表情。
「どこに帰るの?」
 なんの悪意も感じられない、無邪気な表情だ。
「どこって……」
 その時、雨粒を含んだ風が教室を通り抜けた。教室の中に雨が降ってきた。
 雨は俺やメダカをぬらし、机をぬらした。
 風雨は勢いを増し、プリントを吹き飛ばした。メダカのノートも見えなくなった。
「タニシ」
 メダカが俺の名前を呼ぶ。
「タニシ」
 俺の名前を繰り返す。メダカの姿は消えていた。
「タニシ」
 どこだ。
「タニシ!」

 *

「いてっ!」
 誰かに頭を殴られた。
「タニシ! しっかりして!」
 声に釣られて見上げると、メダカのフライヤーが逆さになって飛んでいた。そこから片手を伸ばして俺の頭をたたいたのだろう。
「お……俺は……」
「良かった! 気が付いた! もう大丈夫だよ、おじさんたちと一緒に来たから」
 見覚えのあるフライヤーが三機、目に入った。村一番の猟師たちだ。
 すごい勢いで飛び回って、獲物を圧倒していた。
 タイミングをずらしてロープを引く、その腕前は見事なもので、獲物の高度はぐんぐん下がっていった。
 最後は一機が巨体を上下に周回し、ロープを首輪のようにして引っ張った。

 雨が上がった。

 *

 俺とメダカは、長老、メダカのばあさんに呼び出された。
「これ、使え」
 長老がハンドクリームの容器を投げて寄越した。
「付けてあげよっか」
「何言ってんだ」
 ちなみに、このクリームの原料はレインメーカーだ。
「お前、寝てる間に何を見た」
 俺は覚えている限りのことを、長老とメダカに説明した。
 見知らぬ部屋にいたこと。何かの問題を解いていたこと。メダカと話したこと。ノートの内容……。
「記憶、だな。あるいは……可能性」
「可能性?」
「僕とタニシが結婚する可能性?」
 長老は俺を見据えた。
「過去に存在したか、今も存在するか、未来に存在するか、その可能性だ」
 何を言われてるのか分からん。
「まあ、いい。ゆっくり休め」

 *

 星空だった。
「可能性かー。タニシは僕と結婚したい?」
 よく分からない。だが、俺はここにいて、メダカも隣にいる。それで十分なのかも知れない。
 明日は晴れそうだ。

230 :
やたらと長くなってしまった・・・

231 :
>>198
使用お題:『七人の○○』『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』『魔方陣』

【ネーヤのご主人様】(1/3)


 革鎧にハンドクリームを塗り込み、乾布で丁寧に磨いてゆく。本来であれば、乳化クリームとワックスを使うべきなのだろうが、時間も金も足りなまい庶民出身の騎士候補であるトワ・カナタの経済事情的に、今はこれで精一杯出あった。
 それでも、保湿力と艶出し加減は早々劣る物では無い。つまりは庶民の知恵と言うやつだ。

 皮鎧の出来栄えに満足したのか、トワの奴隷であり従者を自認するネーヤは満足そうに頷いた。そしてついでに余ったクリームで、未だ自らに嵌っている首輪を磨き込む。
 奴隷の身だしなみが見すぼらしいと、主人の名誉に係わる為、決して手を抜く事は出来ない。
 それに、こうして彼の鎧と同じハンドクリームで磨いた首輪をつけていると、彼女自身がトワの“モノ”であると言う気がして何だか嬉しかった。
 そんな感情は、前のご主人様の時には決して得られなかった感情である。

「ただいまー」

 部屋の扉が開き、彼女の主人であるトワが帰っていた。ネーヤは喜びのあまり、“尻尾をブンブンと振りながら”彼の前に走り寄ると、なるべくキリリと見える表情で「お帰りなさいませ、ご主人様」と、彼を迎えた。
 トワが相好を崩し、彼女の頭を撫でる。そのついでに彼女の“耳”をモニモニと弄ぶ。
 「わふ」と、あまりの気持ち良さに声が出てしまい、ネーヤは羞恥のあまり頬を赤らめた。その間も彼女の“尻尾”はブンブンと振られていたのだが。
 その様子にくすくすと笑うトワに、ネーヤは少しむくれながらも、彼の持っている荷物を見ると、慌ててそれを受け取った。

「御主人様! 持って行くのは台所でよろしいですか?」
「うん、お願い……あぁ、その中にある小袋は、そのまま持って来て。あと、少しお茶にしよう」
「はい!!」

 普通、買い物をするのであれば、奴隷に荷物持ちをさせて当たり前なのだが、奴隷である彼女が留守番をしていて、主人であるトワが買い物をしていたのには訳があった。
 ネーヤは、その顔の横に垂れた耳と尻尾を見れば分かる通り、犬系の獣人種であった。
 獣人種は、魔物である獣人と人間が混じわって生まれたとされる種族で、人間社会では『汚らわしい』『裏切者』と言う烙印を押されている為、社会的地位が低く、一部の過剰反応をする者からは『あれはヒトでは無く魔獣の一種だ』とも言われ、迫害されていた。

 当然だが、そんな扱いの獣人種奴隷は扱いも悪く、襤褸ではなくとも真面な格好をさせて貰える事はほとんどない。
 当然、外出時には首輪に鎖を付けられるのが常だ。

 だが、トワはそれを嫌った。

 彼の目指す騎士としての在り方に反すると言う理由でだ。
 彼の目指す騎士の頂点である“精霊の七騎士”は、『公平名大で、弱きを助け強きをくじく』存在であるらしい。
 その為、首輪こそ、法律の為着けさせられているが、当たり前の様に町娘と同じ様な格好をさせて貰い、外を歩く時も鎖など着けられない。
 ましてや、荷物持ちの為だけに連れ回す様な事もしなかった。

 ネーヤには難しい事は分からないが、そんな立派な者を目指しているご主人様を彼女は尊敬していた。
 ただ、当のネーヤ自身は(僕はそれでも良いんだけれどな)等と思っているのだが。

 それでなくともネーヤはトワに恩がある。前の主人に折檻の挙句殺されかけた時に救って貰った恩が。

 
 紅茶用のヤカンを魔導コンロにかけながら、ネーヤはトワに出会った時の事を思い出していた。

232 :
【ネーヤのご主人様】(2/3)


 ******

 ネーヤは小さな獣人種の集落に生まれた。その集落は迫害を避けた獣人種が寄り集まる様に暮らす本当に小さな集落だった。
 だがそれでも、優しい両親と弟達と一緒に、慎ましくも幸せに生活をしていたのだが……
 そんな幸せが脆くも崩れ去ったのは彼女が5歳の事だった。ネーヤの暮らす集落を奴隷商が襲ったのだ。
 彼女の集落の大人も懸命に抵抗はした。しかし、相手は何度も獣人種を奴隷にして来た、言わばプロである。
 抵抗空しく、彼女の集落の者達は奴隷へと堕とされたのだった。
 そしてネーヤ自身も、家族と引き離され、商品として売られたのである。
 まだ幼く、女としての魅力が無かったが故に、重労働や変態貴族に売られなかった事が唯一の救いであろうか?
 しかし、売られた先での彼女の扱いは、決して良い物では無かった。

 彼女を買ったのはとある貴族で、その子供の中の騎士を目指いている三男に宛がわれたのだ。様は侍女代わりである。
 だが、収まりがつかなかったのはその三男であった。
 下手に二人の兄より少しばかり優秀だったが故に、家督を継ぐ事が出来ない事で不貞腐れていた所に、商家の娘や有力な平民ならまだしも、奴隷をそれも、獣人種の娘を付けられたのだ。
 両親が、どれ程、彼に期待を寄せていないかが分かろうと言う物だ。
 それ故に、彼は事ある毎にネーヤに当たった。
 少しの失敗で殴る蹴るは当たり前で、些細な苛立ちで彼女に手を上げるのは日常茶飯事だった。
 彼女が怯え、常に居竦むのも無理からぬ事であろう。

 そんなある日の事だった。

 ジャラリと鎖が鳴り、首輪が引っ張られる。
 「ひうっ」と声を上げ、ネーヤは倒れ込んだ。その拍子に、彼女は持たされていた荷物を落としてしまい、それが三男坊を激昂させる事と成った。

「荷物もまともに持てないのか!! この犬っころ!!」
「ひゃう! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 ある意味、何時もの光景。ただし、そこは人の行きかう往来で有る。社会的地位の低い獣人種とは言え、幼い子供を足蹴にしていれば、眉を顰める者も存在し、中にはヒソヒソと内緒話をする者も居る。
 それに反応したのも三男坊だった。

「くそ! お前がトロイ所為で!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 ゲシゲシと幼い子供に蹴りを入れる光景。それを見てさらに眉を顰める野次馬。元はと言えば彼の行いの所為でこうなったのだが、しかし、羞恥の為、彼は正常な判断が出来なくなっていた。

「くそ! 犬っころ!! 全てお前のせいだ!!」

 スラリと剣を抜く三男坊。振り上げられたソレを見て、ネーヤの顔が絶望に染まった。

(あぁ、僕、ここで死ぬんだ……)

 既に理不尽に抗う気力すら残っていない彼女は、その時が来たのだと死を受け入れた。しかし……

「何をしている!!」

 凛とした声が響く。

「……トワ・カナタ……二回生……」

 三男坊が呻くように言った。ネーヤは知らなかったが、騎士候補の中では彼は有名人だった。庶民出身でありながら、その技量は高く。成績も優秀であり、ましてや、現王子が代表を務めるサロンに所属しているのだ。
 平民と言えど、その発言力は高い。

「何をしていると聞いているんだ」
「いえ、これは……」

 彼らがその後どの様な言葉を交わしたのかはネーヤは覚えていない。助かった事で、すぐに気を失ってしまったからだ。
 だが、あの後、トワがネーヤを買い取った事をトワ本人から聞いたのである。

233 :
【ネーヤのご主人様】(3/3)


 ******

 紅茶を淹れ、トワの元に運ぶ。
 彼は美味しそうに紅茶を飲むと、ネーヤに持って来て貰った小袋を開け、彼女の掌にその中身を出した。

「……? 水晶」
「タリスマンだよ。こうして、君の首輪に……」

 水晶に魔方陣を刻んだタリスマンをネーヤの首輪に着ける。
 魔方陣は縦横の合計数字が同じ数に成る様にする事で、その数字に対応した精霊が身を護ってくれると言うお守りである。

「君の家族を探すって約束をしたけど、まだ、時間が掛かりそうだからね、その間、君を守ってくれると良いなって思ってさ」
「御主人様……」

 照れくさそうに笑うトワにネーヤは(一生ついて行こう)と、決意を新たにしたのだった。

234 :
ギリギリアウトでしたorz

235 :
おおお乙乙であります・・・

236 :
お題→『七人の〇〇』『ハンドクリーム』『首輪』『僕っ娘』『魔方陣』締切

【参加作品一覧】
>>211【迷子のペット探し】
>>215【無題】
>>227【雨が上がる】
>>231【ネーヤのご主人様】

237 :
ではでは、>>224で説明した、反対語しばりをやってみます

安価の数自体は5つですが、反対語のペアが出来るようにお願いします

お題安価>>238-242

238 :
『スタート』

239 :
『ストップ』

240 :
『ショートヘア』

241 :
『ロングブーツ』

242 :
すまない、埋めます

『ふわふわ』

243 :
『イージー』

244 :
☆お題→『スタート』『ストップ』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』『ガリガリ』から1つ以上、5つ以下選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→7/21の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

245 :
………

246 :
orz

247 :
まあいいよ
その代わり2個取ったんだから2作品書いてね
楽しみにしとくよ

248 :
重ね重ねすまない
2作品書けるかなぁ・・・

正直こんなに受けが悪いとは思いませんでした
それとやって分かったけど、2番目と4番目の自由度がなさ過ぎた
反対語しばりは二度とやらない

ともかく今回もよろしくお願いします

249 :
>>231
丁寧で暖かい雰囲気になってますね
家族に再会できる日は来るのか・・・

それにしても、こう、シンクロニシティーと言うか、こちらから見ると隣の花が赤いと言うか・・・w

250 :
あと全然関係ないけど、女内密さん面白かったなぁ・・・

251 :
>>227
>>187を早速連書きだとッ、お題10個を繋いで練り上げられるのか進行氏、全選択、リブートしようぜ、レインメーカー!
さあ前回、空に生息するヌシ・レインメーカーの出現シーンで寸止めとなっていたのを再開〜、雲の中から引きずり出された半透明な威容ッ、ウインチの先の怪物を捕縛隊の主人公が睨みあげる〜
だが濁流のような雨粒の反撃で意識遠のき場面転換ッ! ん、教室? 『魔方陣』を描きつつ、睡魔に意識を奪われていた主人公の前に『僕っ娘』メダカちゃんが登場し〜、空戦は夢だったのか、
物語の実線はメダカちゃんが『七人の従者』のお話を読ませてくる学生の日常なのだ…、ではなく、やっぱり空の上w 夢から醒めた主人公の前で、メダカちゃんと村の手練れがロープを『首輪』のようにし怪物を鎮圧〜、
『ハンドクリーム』にしてやんぜENDがきまった、クリームになったw 前回お題と今回お題、色味の違うお題とお題が計10個! 意識の切り替えによってヨリ合わされし一本の糸の数珠連鎖クリアッ、振り絞ったな進行氏、乙!

>>231
『僕っ娘』と『首輪』の連鎖でイケナイ属性持ちの少女がやってきたぜ! 遅刻な231氏の全選択トリ、タリスマンとドックイヤー!
さあ、革鎧に『ハンドクリーム』を塗り込んでツヤ出しに励んでいる『僕っ娘』ネーヤさんが、鎧と同じハンドクリームで磨いた『首輪』をつけて、ほくそ笑む〜
犬系獣人種幼女のネーヤさんは犬ミミを持つ奴隷の身分、属性てんこ盛りな彼女だが人間社会においては社会的地位が低い〜! 前の主の粗暴な扱いから逃れ、精霊の『七』騎士を目指す清廉な主とともに暮らす毎日だッ、
己が助けられた記憶の中に見るのは、騎士候補たるトワさんの凛々しい姿〜! 幼女であっても首輪と襤褸のイケナイ姿が獣人種の通常、だが奴隷扱いをせず町娘の姿をさせるトワさんに、
ラストは『魔方陣』を刻んだタリスマンを付けてもらって照れくさい、愛され愛しの身分向上、幸福END! イヌな彼女を描き出した231氏、かわいそうな過去を帳消しだ、お題も物語に適合し、円満フィニッシュ!

252 :
>>244
使用するお題→『スタート』『ストップ』『ショートヘア』

【ガンマンとしての自分を捨てた日】(1/3)

西部劇マニアのレイチェルは最近くたびれていた。
悪ガキに奪われた帽子を取り戻したり、おもちゃ泥棒の老婆といった騒動から早くも2年が経過した。
警察でもないのに事件が起こると依頼を受けたり、ベビーシッターでもないのに子守りを任されたりと
町の住人はみんな自分を買い被り過ぎなのではないかと感じるようになってきたのだ。
それに過去の事件のほとんどは自分の力じゃなくて、偶然かただ運が良かっただけで解決できたようなものだ。

「私、もうガンマンのコスプレ辞めようかしら…」

レイチェルは頭を悩ませた。

「仕方ない、こうなったら…」

レイチェルはいつも身に着けているガンマンの衣装を全てダンボール箱に入れて
クローゼットの中に収納した後、床屋に向かう。
彼女はロングヘアーでいつも髪を束ねてポニーテールにしているのだが、
バッサリと切ってもらい外ハネのショートヘアにしてもらった。
これでもう自分があのガンマンのコスプレをしているレイチェルだと気付かないだろう。
ガンマンとしてのレイチェルは今日で終わり、これからはノーマルなレイチェルとしての生活が始まるのだ。

253 :
【ガンマンとしての自分を捨てた日】(2/3)

レイチェルはTシャツにジャケット、スキニージーンズといったカジュアルな格好で街中を歩くが、
住人たちは彼女がレイチェルということに一切気付かずにすれ違っていく。
衣装と髪型を変えただけでここまで認識されないとは…と逆に驚いてしまう。
ガンマンのコスプレを辞めて1ヶ月ほどが経ち、公園のベンチで寛いでいると子供たちの会話が聞こえてきた。

「最近レイチェルさん全然見かけないよね」
「確かに。どこかに引っ越してしまったのかな?」
「あのガンマン姿がめっちゃカッコいいのに…」
「うん、それにあの拍車のカチャカチャ音が恋しいよ」
「そうそう、あの音が聞こえてくると自然と楽しい気分になるんだよね」

その言葉を聞き、レイチェルは少し複雑な気持ちになった。
それに町の住人たちもどこか暗い雰囲気になっているのようにも思えた。
まさか自分がガンマンのコスプレを辞めてしまったからだろうか。
レイチェルは次第に妙な罪悪感に襲われるようになっていった。

254 :
【ガンマンとしての自分を捨てた日】(3/3)

さらに3ヶ月が経過したある日のこと、散歩していると女の子の泣く声が聞こえてきた。
どうやらペットのネコが高い木に上って下りれなくなってしまったようだ。

「だ、誰か私のネコちゃんを助けて!」

もう私は町の平和を守るガンマンじゃない…だがレイチェルは葛藤に耐えられなくなり、
急いで自分の家に戻るとクローゼットの中からガンマン衣装の入ったダンボール箱を引きずり出し、
ガンマンに変身するや否や、女の子の元へと戻る。

「レイチェルさんだ!」
「待たせたわね、今すぐネコちゃんを助けるから!」

レイチェルは木をよじ登ってネコをしっかりと抱くと、ゆっくりと地面に下りる。これでもう安心だ。
ネコは嬉しそうにレイチェルの顔をペロッと舐めると、女の子のところに戻っていく。

「ヨシヨシもう大丈夫よ。レイチェルさん本当にありがとう!」

町の住人達もレイチェルの姿に気付き、彼女のところに駆け寄ってきた。

「レイチェルさん、もう半年も全く見かけなかったけどどこに行ってたの?」
「あなたがいなくなって、みんなすっごく寂しかったんだよ」
「ご、ごめんなさい。ちょっと用事があって遠くに出かけてただけよ…」

とにかくレイチェルが戻ってきて、みんなは大喜び。彼女を持ち上げて胴上げするほどだった。

「(やっぱり困っている人を放っておくなんて私にはできない…)」

それ以来、彼女はまた髪を長く伸ばし束ねてポニーテールにし、
あのお馴染みのガンマン衣装に身を包む。

「この町はもしかしたら私がいないとダメなのかもしれない。私がみんなを笑顔にし守らなくちゃ!」

ノーマルなレイチェルの人生はこれで終わり。
またガンマンとしてのレイチェルの人生が始まるのだった。


おしまい

255 :
>>251
感想ありがとうございます!
お題にシナジーがあって助かりました
今回書かなければ、もう無理でした
クリームは保水力抜群ですw

>>252
早過ぎて笑うw
でも考えたら、以前はこのくらいのスピード感だったんですよね・・
作中の時間経過も早い
まさかのガンマン卒業でしたが、戻ってきてくれて良かったですw

256 :
3つ目のお題出した者だけど、
最初は『小柄な彼と長身の彼女』とか『男装、女装』など反対語を1つにまとめる案を考えてました。
しかしこれでは>>224のルールから外れると思ったので、結局違うものになりましたが。
それにしても今回の方針はとても難しかったw

257 :
>>244
お題『スタート』『ストップ』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』

「ロングブーツと22世紀」
「さて助手よ、今からルーレットを回すからストップと言ってくれ」
「嫌です」
ここは日本のどこかにあるラボの一室、そこでひと組の男女が話している。
「即答とはヒドイじゃないか」
「どうせ、またロクでもないものでも作ったんですよね。使える所以外は粗大ゴミに出すので、サッサと分別してください」
痩せぎすのメガネの男に対して、ショートヘアの女が履いてきたロングブーツを揃え、冷たい目を向けて言い放つ。視線に温度があるなら凍死する位の冷たさだが、男は怯まない。
「ロクでもないとはなんだね。こうしてラボを構え、君を雇っているのは私だぞ」
「じゃあ貴方のトラをバターにする機械を超高性能粒子観測機兼分離機に作り変えたり、空中で変形する戦闘機のラジコンを、最新型ロボットアームとして改造して売り込んだのは誰ですか? 取り立てのトラウマで携帯電話に出れない博士様」
痛いところを突かれた男が苦虫を噛み潰したような顔になる。
「うぐっ。しかしそれが作れたのは私の天才的頭脳があったからで……」
「常識知らずで、金の計算も需要と供給を理解できない人間が何を言ってるんだか」

258 :
題名「ロングブーツと22世紀」その2

借金の担保として持っていかれた発明品も、パッと見ればゴミなのだが、中にはこれまでの常識を覆す品物があったはずだ。
なぜならあちこちから借金をしているというのに、博士の体は五体満足だった。恐らくは良い金づるとして生かされていたのだろう。この助手が、ジャンク品で見つけた博士の発明品を見つけるまでは。
「で、何を作ったんです?」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに両手を広げ、マシンに向き直る。
「聞いて驚くな。人が全長1cmの小人になれる機械だ。ついでに超短時間の時間遡行とワープが出来る」
「そりゃ、すごいことですね。で、欠陥は?」
「ふむ。この機会はワームホールを利用するのだがな。小型化してワープするのはいいもののワープ地点がランダムだ。高確率で宇宙に放り出される」
「ただの凶器じゃねえか」
思わず突っ込んだ助手を手で制すと、先程言ったルーレットを指差す。
「チッチッチ。先程言っただろう?ルーレットを止めろと。ワームホールには必ず出口がある。ならば発生した出口が地球上の生存可能な地域にあればいい。しかもこの近辺に発生するものに限定すれば観測するのは容易。このルーレットはその出口を観測するものなのだよ」
「うわ。ホント腹立つわこいつ」
それ世の中に公表したら、絶対世界戦争が起きるわ。
そんな助手の心情はつゆ知らず、博士はルーレットのスイッチを助手に差し出した。
「どうか押してくれないかね助手よ。22世紀の技術をここで生み出したという興奮が私を駆り立てて止まないのだよ」
「はいはい。いやどうするかな。分解して研究所に提供するにしても限度があるぞ。おい」
受け取ったスイッチをしばし見つめて
「そういえば小さくなったらどうやって戻るんです?」
「3分で私自身は戻るよう設定してある。技術の立証さえ済ませれば延長するのは容易だだからな」
M78星雲の戦士のオマージュですかと、突っ込むのも面倒になり、なんともなしにスイッチを押した。

259 :
「ちなみに言い忘れていたのだが、座標の設定は一番近くにあるショートヘアの女のロングブーツの中にしてある」
「はいはい。相変わらず変態ですね……ん?」
気付いた時には博士は光に包まれ、今まさに飛び立とうとしていた!
「ちょっと待てこの馬鹿!」
「ふはははは! 墓穴を掘ったな助手よ!日頃の恨みだ! 貴様の足の匂いを存分にクンカクンカしてやる!そこで羞恥に悶えているが良い! ふはははは!」
「おい。ふざけるな……!」
助手が言い切る前に、高笑いとともに博士は消えた。一瞬の思考停止の後、すぐさま玄関のブーツに駆け寄る。
当たり前だがロングブーツは蒸れる。1日にコップ一杯分の汗がこもるブーツの中がどうなっているかは想像に難くない。
そんなものを嗅がれたら、恥ずかしさでRる。
「この変態無能博士!」
ブーツを逆さにすると、確かに1cmの人型が添えた手のひらに落ちてきた。
「やあ助手。その……。なんだ……」
「この変態! 女に恥をかかせるとはどういった了見だ!」
次に何を言おうが潰してやる。そう思い構えたが、中々目の前の小人は喋らない。
それなら摘んで上下に振ってやる。その時、博士がやっと口を開けた
「いや。どんな罵倒をしてやろうかと思いっきりかいでやったのだが……。お前の足、結構いい匂いがするんだな……」
「はぁ?!」
非常に変態的な衝撃のカミングアウトに頭が真っ白になった助手。固まっている彼女を尻目に、博士は言葉を紡ぐ。
「これが男女の差異故なのか、それとも君が特別なのかは知らないが、とにかく想像していたものを超えていた。すまなかった助手よ。軽はずみが過ぎたな」
「べ、別に反省してるなら構いません。次からはせめて前もって……」
「それにしてもキレイな手をしているな。初めてこんなに間近に見たが……、まるで新雪のようじゃあないか。こんな手の持ち主に僕はあんな無茶を……」
「い、いえ。自分は好きで貴方の助手やっていますから!」
なぜこんな状況になったのか。もう貴方しか見えない。そんな空気で見つめ合う2人。しばらくの沈黙のあと、口を開いたのは
「あの」
「あのな」
その時ポンという音と白煙と共に博士の体が元の大きさに戻った。
そうか。3分経ってしまったのかと頭の隅で冷静に分析しながらも、博士の中の大きな感情のうねりは止められない。言葉の続きを言おうと彼女の両肩に手をかける。
すると彼女が震えているのを感じた。分かるさ。自分も怖い。だが覚悟を決めて言わなくてはーー
「い」
「い?」
ふと彼女の指が下の方を指差していることに気がついた。そこには
「いやー!」
丸出しの下半身に、やっと自らが全裸であることに気がついた。なるほど。服は小人仕様のままだったのか。
それもキレイな張り手で意識と共に飛んで行ってしまったのだが。
その後については多くは語るまい。博士がガラクタを作り、助手が突っ込む、そんな毎日の繰り返し。
ただ、以前よりハンドクリームをよく塗るようになった助手と、指のサイズを自動的に測れる装置を作ろうとする博士がいた。

260 :
すみません。259で最後です。
衝動的に書いたので色々お粗末ですが、お目汚し失礼しました

261 :
>>256
すまぬ・・・すまぬ・・・
その方がまだ良かったかもです
チームワーク強要、みたいなのが失敗だったなぁ

>>257
安価は失敗したけど、連休に助けられた・・・のか?
すごい発明のふざけた使い方
思ったよりも突き抜けた話で面白かったですw

262 :
>>261
ありがとうございます
次ある時は気をつけます

263 :
>>262
一瞬?と思ったけど、そういえば失敗してましたねw
失敗したのは進行の安価で、助けられたのは今回の募集でした
誤解させる書き方ですみません

264 :
名前入れてsageたつもりが、そうなってない・・
なんか今日は進行が失敗ばかりの日だった気がするー

でも作品はありがとうございます

265 :
>>211
災い転じて福と成す?
イグアナと拍車、見つかって良かったですねw

>>215
万能文化通販生活w
その内、悪魔っ娘も、通販で……

>>227
これが世に言う『可能性の獣』と言うものでしょうか?
どれ程、世界が変わっても二人の関係は変わらないと言う事でしょうか?

>>252
悩めるカウタンガールですね
有る意味、有名税と言うところでしょうか?

>>257
人には、本能的に好む体臭と言うものが有るそうで
よほど、二人の相性は良いのでしょうねw

>>249
感想有り難うございます
なにか、連載物の閑話の様な雰囲気になってしまいました……

>>251
感想、いつも有り難うございます
高々これだけのお話を書くのに、4時間も掛かってしまいましたorz

266 :
うん、時間相応に愛がこもってるのを感じたw

267 :
>>252
変則お題の滑り出しは『スタート』『ストップ』『ショートヘア』〜、宣言するは職人252氏、爆走疾走レイチェルシリーズ、今回は連作ヒーロー映画で有るやつ、私がガンマンを辞めた理由!
さあ、あまりにバズり過ぎてしまったため一介のコスプレイヤーから町の英雄となってしまったレイチェルさんが、みんなは買い被っているのよと、衣装を仕舞い、ポニーテールを外ハネ『ショートヘア』にしてしまったァ! 
何者でもなくなったレイチェルさん、これでガンマンライフは『ストップ』だと思いきや、町の住人が暗い顔をしているようだ、そんなんだから辞められるんだぞw
な最中、木から降りれなくなった猫を前にレイチェルさんの心、揺れる〜、自分はヒーローではない、ヒーローではない、ヒーローでは、いや、やっぱヒーローだァw 居ても立っても居られない、衣装拍車でカムバック、
町の皆は胴上げだ! 胴上げw 当スレ随一の愛されキャラ・レイチェルさんが復活ッ、ガンマン生活リ『スタート』ENDを決めた252氏が堅実にお題を活かしてシリーズの紆余曲折を仕上げてきた!

>>257
次なるチャレンジャー257氏、右へ左へと振ってくる面白変則お題をどう越えてみせるか〜、力作全選択! 女子のブーツの中にインすることのコスモッ
さあ、ラボの一室にて『ショートヘア』の助手と痩せぎすの博士がコントを開始〜、新発明のルーレットを回すから『ストップ』と言ってくれと博士、
発明は全長1cmのワープ小人になれる画期的な機械、しかし、高確率で宇宙に放り出される! 殺人兵器だw 位置指定することで危機は免れるらしく、ルーレットはその位置を決めるもの、なお時既に遅し、位置は助手の大まか『ロングブーツ』の中w
激おこ助手をよそにブーツのコスモにダイブした博士が、あまりの臭気に、って違う! 恋の『スタート』だ、マジかw ラストの雰囲気で浮ついた二人が『ふわふわ』をクリアー!(強解釈) 明らかに序盤よりフワフワしてるし、
ブーツのスメルから見つめる時間の増えた二人に幸あれ、257氏のコメディ完走END、そんなフィニッシュ!

268 :
>>267
感想あざす
何分お題系は初めてだったので勢いで書きました。
ネタを思いついて文章化するのに3〜4時間位かかったのですが皆さんどれくらいで書くものなんですかね?

269 :
>>267
それだなぁ
実は縦読みを探したりした進行の愚かさよ

>>265
感想ありがとうございます
可能性で言うと、本来は弟分の予定でしたw
空戦アクションが無理だったので、お題との兼ね合いで記憶の世界に逃げました!

>>268
自分の場合は・・・
平日に10行(中略)今回は珍しく行数オーバーで・・・
ちょっと言えないくらい遅いです

270 :
>>268
アクション系だと一時間で3000字位ですが、それ以外だと一時間で1000字前後ですね

271 :
えーはやいなあ

272 :
>>244
使用お題→『スタート』『ストップ』『ロングブーツ』『ふわふわ』

【マイライフ・アズ・ブーツ】(1/3)

私はロングブーツ。
大手メーカーで製造された、丈夫な革製でダークブラウンのロングブーツ。
今は靴屋の商品棚に他の靴と一緒に並べられ、誰かに買われる日を待っている。
靴にとっての一番の幸せといえば、やっぱり誰かに履かれて外に出かけること。
もう棚に並べられて1ヶ月ほどが経つ。

「誰でも良い、誰でも良いから私を買って履いて…そして楽しく外を歩きたい…!」

ある日の午後、一人の女性が店に入ってきた。
華奢で170cm以上はある、背の高いモデル体型の美女だった。

「あの人なら私にすっごくピッタリなはず!私を見て!そして買って!」

そんな強い思いが通じたのか、女の目線が私の方に向いた。

「このブーツ、なんだか素敵ね。試着してもいいかしら?」
「どうぞどうぞ!」

女は私を手に取ると今履いているスニーカーを脱いで、私を試着する。

「サイズはピッタリだし、履き心地も良くて最高ね!これにするわ!」

やった!私の思いが完全に通じた!
私はすぐさま箱に入れられ、紙袋の中に詰め込まれる。
靴としての私の人生が始まるんだと思うと胸がワクワクして興奮が収まらない。
もし売れ残って暗い倉庫の中に入れられたら…と不安でいっぱいな時もあった。
でもそんな不安ともおさらばだ。
1時間後、女の家に到着し箱の中から出される。

「素敵なブーツね。私はミサト。これからよろしくね」

素敵、だなんて言われて私はますます嬉しくてたまらない。
さあ明日から楽しい生活の始まりだ!

273 :
【マイライフ・アズ・ブーツ】(2/3)

私の持ち主となったミサトは大学生だ。ミサトは毎日のように私を履いて大学に出かける。

「ミサト!そのブーツ本当にいいよね!」
「でしょ?今一番のお気に入りなのよ」

彼女の友達に褒められるだけでも充分嬉しいのに、その上一番のお気に入り認定されるだなんて。
大学だけでなく休日の時も必ず私を履いて散歩に出かける。
また帰宅時も必ず忘れずに汚れたところがあればブラシで優しく磨いてもらい、
型崩れ防止のためにちゃんとブーツキーパーで固定するなど手入れも怠らない。
ああ、ブーツとして生まれてきて本当に幸せだ。神様、本当にありがとう。

ミサトに買われて4年ほどが経った。彼女は本当に手入れを怠らずしっかりケアするなど
私を大切に扱ってくれたのだが、やっぱり時が経てばどんな物でも劣化するもの。
私はだんだんと細かい皺や傷が目立つようになり、古くなっていると確かに実感してきたのだ。
それにミサトは既に大学を卒業して就職し、私を履く頻度もどんどん減っていった。
土曜日の午後、ミサトが久々に私を履いて散歩に出かけていた時のことだった。
近くの公園で遊んでいた少年が蹴ったサッカーボールが、ドン!と勢いよく私に当たったのだ。

「お姉さん!ごめんなさい!足、大丈夫ですか!?」
「大丈夫よ。これからは気をつけて遊んでね」

謝る少年を優しく許し、サッカーボールを返すミサト。
しかしさっきのサッカーボールが当たったせいで泥や土で汚れるだけでなく
その衝撃で大きくて歪な皺が私についてしまった。
でもミサトの足を守れただけでも不幸中の幸いだった。

274 :
【マイライフ・アズ・ブーツ】(3/3)

家に帰った後、ミサトは私を優しく手入れして磨く。
しかしさっきのサッカーボールが当たってできた皺はもうどうしようもない。

「私ももうそろそろ捨てられちゃうのかな…」

数十分後、ミサトがふわふわの綿で敷き詰めた箱を持ってきて、私をその中に入れる。

「お疲れ様、ゆっくり休んでね。あなたを履いて過ごせた日々、本当に楽しかったよ」

そう言うとミサトはそっと蓋を閉めて、そのまま押入れの中に保管する。
靴に限らずどんな物も時間が経てば古くなり劣化し、持ち主に捨てられる時が訪れる。
受け入れたくないがこれは絶対に目を背けてはいけない現実なのだ。
靴としての幸せを充分味わえたし、捨てられずに保管されるだけでも充分幸せなのかもしれない。

「ミサト、ありがとう…本当に…」

それから何年経ったのだろうか。明るい光に照らされ、私は目を覚ます。
押入れの整理をしていたミサトが私を箱から出してくれたのだ。
でももう私を履いて散歩なんて出かけるはず…

「久しぶりね。すっごく良い知らせがあるの、私の友達がねあなたを欲しいって言ってるの」

どうやらミサトの大学時代の友達が私を欲しがっているようなのだ。
そんなまさか私をまだ必要としてくれている人がいるなんて…!
ミサトは私を箱に入れ、その友達のところへと持っていく。

「ミサトありがとう!このブーツ大切にするね!」

ミサトの友達の元で新しい生活が始まった、また楽しい日々を送れる、はずだった…
彼女が私を利用するのは決まってザーザーと雨が降る日。

「雨の日はやっぱりロングブーツが一番よねー!」

ちょっと待って!それならちゃんとレインブーツ買って履いてよ!
私は革製のブーツなんだからー!

275 :
>>272
スウィート・アンド・ビター・ライフ・・・
ちゃんとオチがある
お題で狙い撃ちしたみたいで申し訳ないですが、しっかりフィーチャーされて良かったですw

276 :
>>272
272氏がお題『スタート』『ストップ』『ロングブーツ』『ふわふわ』を指定、『ショートヘア』もいけたんじゃないか、長靴じゃないぜ、ブーツだぜ物語!
さあ、私は『ロングブーツ』なのだと、革製のブーツが語り始める〜、意思を持ってるぞw 靴屋の商品棚に並べられた彼女(?)を目に止めるのはモデルっぽいスペック良さげな大学生女子、
お買い上げされ、履物としての輝かしきブーツライフ『開始』だ〜、あちこちからいいねが入り、褒められるだけでも充分嬉しいのに、その上一番のお気に入り認定を受ける幸福と栄光の日々〜、
やがて時過ぎ、いかなる靴にも逃れえぬ運命、皺と傷が増えたブーツな彼女に活動『停止』の時期がやってくる〜、『ふわふわ』の綿の中、持ち主への感謝を胸に眠りにつくブーツ…、
だがラストで目覚めたブーツの新生活は、長靴代わりのソレ違うオチw 272氏の描き出した靴の一生は、お題をクリアし全編を優しきムードに包んでいった〜、自分の靴を大事にね、な言葉が聞こえるフィニッシュッ

277 :
>>244
使用お題→『スタート』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』

【小さくなった魔法少女の冒険】(1/3)

私は魔法少女だ。あまりに唐突で信じられないだろうが本当に魔法少女だ。
深夜に眩い光に照らされ目を覚ましたら、目の前に変な妖精が現れて
魔法少女に変身できるペンダントを渡された上、「あなたが世界の平和を守るのです」と言い残して去っていった。
それ以来その妖精は全然姿を見せない。私はどこにでもいる普通の高校生だ。
世界を守るという使命をいきなり任せられても困る。どう考えても困る。
でもちょっと興味本位でペンダントを強く握ってみると、赤い光に包まれて簡単に魔法少女に返信できた。
上は制服のブレザー、下はミニスカに黒いニーソ、そして縁にふわふわのファー付きのロングブーツと、
全体的にピンクを基調とした衣装だ。思った以上にカッコよく素敵で、いつの間にか私は気に入ってしまった。
魔法少女になって以来、町に巨大な怪獣や怪人が現れて傍若無人に暴れまわり、その度に私は魔法少女に変身し戦う。
魔法少女のパワーはやはり凄いもので身体能力も常人の百万倍で、多少の攻撃ならあまりダメージも受けない。

「魔法少女って最高!」

そんなある日、突如現れたシルクハットを被った紳士のような怪人を倒すが
その怪人の武器であろう銃の光線が当たり、体がみるみると縮んでいきフィギュアと同じくらいサイズになってしまった。

「ねえ!ちょっと!体を元の大きさに戻してよ!」

しかし怪人が消滅すると同時に、その銃も消え去ってしまった。

「ど、どうしよう…」

278 :
【小さくなった魔法少女の冒険】(2/3)

体が縮んでしまって大ピンチ。どれくらい経てば元の大きさに戻るんだろうか。
悩んでいても仕方がない。とりあえず今は安全な家に帰ることを優先し、私は歩き出す。
小さくなった体だとどんなに歩いても、なかなか前に進んでいる実感がない。
でもとにかく前へ前へと歩く。考える度に立ち止まってばかりでは進歩も何もない。
すると突然、何かに足をグイッと引っ張られバタッと倒れてしまう。

「イタタ…何よもう!」

後ろを振り返ってみると、野良犬がいつの間にか私の足に噛みついていたのだ。
ギョエーーー!あまりにもビックリして私は気が動転しそうになった。
ヤバい!このままじゃ食べられてしまう。

「こ、こら放しなさいよ!あっち行って!」

犬は私の足を放そうとしない、寧ろバタバタと必死に暴れる私を見て面白がっているようだ。
すると犬がクイッと力強く引っ張った瞬間、ブーツが私の足からスポッと脱げてしまった。
犬はブーツを咥えたまま嬉しそうに走り去っていく。

「ちょっと私のブーツ返しなさいよコラー!」

私は犬を追いかけるがブーツが片方脱げている状態じゃ当然走りにくく、犬に追いつけない。
犬を見失わないようとにかく必死に走ってると、逃げる犬の前にショートヘアの少女が現れた。
私はすぐに動きを止めてそのまま地面に寝転んだ。

「あらテツ、なんなのそれは?」

どうやら野良ではなく少女の飼い犬のようだ。少女はテツの口に咥えてる私のブーツを手に取る。

「何これ人形の靴?あっ…!」

地面に倒れている私に気付くと嬉しそうに拾い上げる。

「わあ可愛い魔法少女のお人形ね。このブーツ、この子のね」

体についた土埃を払って綺麗にすると、私を持ってどこかへと向かった。

「(ちょ、ちょっとどこに行く気!?)」

279 :
【小さくなった魔法少女の冒険】(3/3)

私はそのまま少女の家に持って行かれた。
少しでも動いたらビックリして何されるか分からないので、とりあえず今は我慢してジッとする。
少女はジーッと私を見つめ、視線を足の方に向ける。

「このブーツ、なんかダサいわね」
「(は?いきなり何言ってんのよこの子は!)」

少女はいきなり私の両足からブーツを脱がし、そのままゴミ箱にポイしてしまった。

「(このガキ!ふざけたマネしてんじゃないわよ!)」
「あなたにはロングよりもショートブーツの方が似合うと思うわ。持ってくるから待ってて!」

少女は部屋を出てどこかに行ってしまった。その瞬間を狙って私は体を起こし、
ゴミ箱に入れられたブーツを取り戻し綺麗に履き直す。

「ったく私のブーツがダサいですって!?ビンタ100発食らわすわよ!って、あれ!?」

その瞬間、みるみると体が大きくなり元のサイズに戻っていった。
状況が状況なだけに私は冷静でいられなくなってしまう。

「お待たせー!…えっ!?」

その時、少女が人形が履くサイズのショートブーツを持って部屋に戻ってきた。
少女は大きくなった私の姿を見て、あまりに衝撃だったのか泡を吹いて気絶してしまった。
悲鳴を上げなかったのが幸いし、私はそのまま静かに誰にも気付かれずに窓から飛び出し、脱出に成功した。

「ふぅ助かったわ…」

変身も解除し、私は何事も無かったかのように無事に家に帰ることができた。
予想もしなかったアクシデントだったけど、過ぎてみれば何だか凄くハラハラドキドキして楽しかったな。
でも魔法少女としての自覚を持って、常に気を引き締めていかなくちゃね。

280 :
>>277
どうしたんだ今回そんなに書きやすかったかな、と思いましたが
安定のカオス
ギョエーーー!がひどいww

281 :
送っておきました

282 :
>>277
レイチェルの人の気配が濃厚w 277氏が『スタート』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』を選択し、悩める魔法少女のミニミニ・ライフを描き出したァ! マジカルトリップwithブーツandファー!
さあ、謎の妖精による「あなたが世界の平和を守るのです」なる言葉と共に、ブレザーと『ふわふわ』ファー付き『ロングブーツ』を着用のヒロインとなった主人公〜、同時に怪獣や怪人が現れるようになったという、やられ役だな!
そんなある日、死に際の、なんか紳士みたいな敵のビームにより身体が縮んでしまった模様〜、野良犬に追い掛け回され叫ぶ、ギョエーーー! 懐かしい感じだなw 『ショートヘア』の少女に救われるも、ブーツを廃棄されてしまう惨事、
怒り絶頂主人公、すると身体がムクムクと元に戻り…少女がそれ見て泡吹いて気絶だァ! まあびっくりするだろうけどもw 過ぎてみれば何だか凄くハラハラドキドキして楽しかったと、
アトラクション感覚でピンチ切り抜け主人公、魔法少女生活を『スタート』させたったEND! なるほど、今回お題は服装に関連すると考えればわりかしやりやすいのか、違和感なくお題消化を見せる272氏が起承転結をやりぬけフィニッシュ!

283 :
おう失礼
272氏ではなく277氏でしたw

284 :
半年ぶりにスレ見つけたら、まだあったのか。みんなの継続力すげーなここのスレ民……。
次のお題からまた参戦しようかな。

285 :
お待ちしておりますw


ところで次のお題ですが、しりとりにしましょう
これなら今回みたいなチームワーク強要ではないので、大丈夫なはず

286 :
それってお題を考えるフェーズがちょっとだけユカイになるだけで、作品自体には何の影響もないのがちょっと物足りないかなぁ

287 :
確かにねぇ
そうなんですよねー

あとは、例えば書き出しの一文指定か組み合わせお題を一度やる
それで、しりとりは次回に繰り延べるとか

他になんかないかなぁ

288 :
>>244
使用したお題『スタート』『ストップ』『ロングブーツ』『ふわふわ』『ガリガリ』

【万能製造機】
「はぁい、本日ご紹介する商品は、こちら! 万能製造機だあい! いやっふー!」
「わぁ、素晴らしいわ! これってなんでも作れちゃうっていうあの有名な道具じゃない!?」
「そうさぁ、この機械の中に素材を入れるとあら不思議! ボタン一つでどんなものも作れちゃうんだ! 早速やってみようぜ! 何か作りたいものはあるかーい?」
「そうねぇ、そういえば最近少し肌寒くなってきたわねぇ。暖かいマフラーが欲しいわー」
「ええ、なんだいなんだい、そんなものでいいのかーい? そいつぁ簡単な注文だぜ! ほら素材を入れて、マフラーのボタンを押して、スタートボタンを押して……はいストップ!」
「えええ! もうできちゃったの!?」
「ああ、できたよ。ほら、蓋を取って中身を見てごらん!」
「えっと、よいしょっと。きゃあああ、素敵! とっても綺麗な黒いマフラーができてるわ! こんな一瞬で、すごいわ!!」
「すごいだろ! こんなフワフワしたマフラーが一瞬でできちゃうんだぜ! しかもこの手触り! これを知ったら編み物のプロだって編針を投げ捨てちゃうだろうさ!」
「本当にすごいわ! じゃあじゃあ、今度はこのマフラーに合う皮のロングブーツが欲しいわ!」
「ブーツかい? それは少し複雑だねぇ。でも作り方はとーっても簡単。まずはボタンを押して作りたいロングブーツを選んでくれ」
「ええっと、デザインはこれ、サイズはこれくらい、色は素材次第、あとは細かい入力を……正直ちょっと面倒だわー」
「面倒だったときは安心してくれ! 大体の数値を入力した後、オススメボタンを押せば、一番いいデザインを自動で選んでくれるぞ!」
「それは便利ね! じゃあ最低限入力して、素材はさっきの残りがあったわね。スタート……キャッ、ストップしたわ。もうできちゃったの!?」
「蓋を開けたら、ほーら! 君にお似合いの素晴らしい肌色のロングブーツができたよ!」
「キャーすてき! さっきのマフラーと合わせるだけでもうコーデができちゃうわね。それにこんなに簡単に作れちゃうなら、もし間違って変なのができちゃってもすぐ作り直せるわね」
「良いことに気づいたね、それがこの万能製造機の良いところさ! おや、何してるんだい?」
「いえ、このデザインも良いけど、ちょっと違うデザインの2足目のブーツも急いで作っちゃったの、ごめんね」
「HAHAHA、でもそうやって何でも作りたくなっちゃうよね! この万能製造機が一家に一台あると、みんななんでも自家製にしたがるんだぜ!!」
「すごいわー、これさえあれば、家の細かい物作りや壊れた服飾の代わりをすぐに用意することもできるわね! すばらしいわ!! でも……これきっとお高いんでしょう?」
「そんなことないぜ! 今ならなんと、このお値段で提供します!」
「ええ、こんなお値段で!?」
「しかも今から放送終了30分までに申し込んでくれた方には、送料無料なうえに素材がおまけに1匹ついてくる!」
「きゃー、それはお得ね!! あ、ところでこの素材の残りはどうすればいいの? 捨てていいの?」
「まだ毛と皮がなくなっただけだから使えるよ! 骨まで使って大丈夫さ! まあガリガリになって使えるところが少なくなってきたら捨てちゃった方がいいと思うけどね」
「そうなのね。素材を購入するのは保健所に行けば簡単に手に入りそうだけど、捨てるときがメンドウそうね。困るわー」
「そういうときは簡単さ! この『下級国民の餌』ボタンを押して素材を餌にしちゃえばいいのさ! 次の素材と交換してもらえるからね!」
「そうなの!? それならタダで素材が使い放題ね! 財布に優しくてうれしいわー」
「全くだね! 人間以外の動物が絶滅しちゃったから、上級国民である我々の生活も苦しいからね! どんどんこの万能製造機を使って、生活を豊かにしよう!!」
「さあ番組をご覧の皆さんも、この万能製造機でぜひ素敵な毎日を!!」

289 :
1.お題を10個くらい募る。
2.作者は選んだお題をトリップにして、開示せずに投稿
3.読者は作品を読んでどのお題を選んだか予想する
4.トリップが被って後発がすぐバレる(オチ

読者側がクイズ感覚でレスできると面白くないかな?

感想がつくからこそ盛り上がると思う(競馬実況なかったらここまで継続できてないだろうし)。

一時期の投票は、順位付けするみたいな感じのせいで続かなかったんだろうなぁ

290 :
面白そうだけど、お題が多いと「同じお題を使って全く違う小説を書く」という感じが薄れるのがどうなんだろ。
お題7→3つ選ぶのときも微妙な空気だった気がするし……。

291 :
結局スレ内の閉じたコンテンツ故に作者と読者がほぼ同数しかいなから、どうあがいても反応(感想)が少なくなって作者側のモチベーションが保てなくなるのが問題なんだよね
作者名バレてもいいならカクヨムの自主企画とかで大っぴらにやりたい

まあ、匿名でやるからいいんだけど

292 :
>>288
こわw
こわっww

>>289
トリップを使うアイディアと、読者参加型、って感じですね
ふむぅ

作者側のモチベはなぁ
勝手に書いてもらえれば、勝手に読むんですけどね
難しい部分はありますよね・・

293 :
>>288
豊作だな、288氏がおもしろ風味に苦味を加えて消化に挑む、お題『スタート』『ストップ』『ロングブーツ』『ふわふわ』『ガリガリ』、テレビショッピングinディストピーア!
さあ、本日ご紹介の商品はこちらと通販番組のワンシーン! 3Dプリンターのごとき万能製造機に毛糸(?)を入れて、ボタン選択マフラーで、『スタート』ボタンをはい押して……『ストップ』〜すると、
聞いて驚き、『フワフワ』したマフラーの出来上がり〜、なるほど! しかしレディが次は『ロングブーツ』がいいと言い出す、無理だろw しかし一瞬で出来上がる…そう、肌色のブーツがねッ!
話はだんだん怪しき方向へ転がっていって…、毛と皮のない素材はどうするのとレディ、『ガリガリ』になって使えるところが少なくなってきたら捨てちゃった方がいいよと、人間以外を滅ぼした上級国民は言うのであった〜
ってEND! お題を衣食類にて繋いで繋いで違和感なし〜、やはり今回の攻略は服装狙いが安定か〜、乱獲絶滅オチで宣言お題を無事消化ァ!! 288氏、いいね、黒ーいオチをビターに仕上げた〜

294 :
>>244

使用お題→『スタート』『ロングブーツ』『ふわふわ』

【彼女と僕の一日】(1/3)

 ここ迷宮都市には奴隷制度がある。

「ご主人様、おはようございます」
「おはようございます、ダリアさん」

 ダリアは竜人族で、迷宮ギルドから借りている奴隷だ。
 借り物なので、『ご主人様』というのは正確ではない。
 ただ他に適当な言葉もないので、そう呼ばせているだけだ。

「本日のご予定は」
「うーん……いつも通り、かな。第三層の辺りで、適当に」
「かしこまりました」

 地下迷宮の入り口を中心に、無秩序に広がる市街地。僕たちのねぐらは、その外れの方にある。
 いつもと同じように朝食をとり、準備を済ませて家を出る。
 見通しの悪い路地を延々と歩く。僕が前で、ダリアが後ろ。特に会話をするでもなく。
 ふと立ち止まって振り返る。ダリアのロングブーツが、ほこりっぽい地面に映える。

「何か」
「……いや」

 僕より頭一つ分以上も上背がある彼女。こうして後ろを歩いてもらわないと、彼女が主人で僕が従者みたいに見える。
 とは言え、迷宮探索者としては、実際に彼女の方が立場は上だ。
 再び前を向いて進む。彼女も無言で従う。
 屈強で実直な竜人族。頭も悪くない。実際に探索者として成功した者も多く、奴隷にまで身を落とすことは少ない。
 彼女に何があったのか。それは聞いていない。だが、僕が探索者としての生活を始める上で、彼女を借りられたことは幸運だった。

「串焼きー、串焼きー。アイスリザードの串焼きー」
「かき氷だよー。ふわふわのかき氷ー。第十二層で採掘された氷だよー」

 中心付近の大通りは相変わらずの人出だった。はぐれないようにダリアの方を確認すると、彼女の視線は軽食の屋台に向けられていた。

「何かちょっと食べる?」
「いえ、リザードは、ちょっと」

 やっぱりトカゲは苦手なのか……って、そうではなく。

「かき氷とかさ。珍しいでしょ」
「……おなかが冷えませんか」

 ……冷えっ冷えだよ。
 ま、まあ、彼女はいつもこんな感じなのだ。
 僕たちはその足で迷宮の入り口へと向かい、ギルドの係員に頼んで、第三層に転送してもらった。

295 :
【彼女と僕の一日】(2/3)

「ファイアボール、っと」

 ダリアの剣による攻撃と、僕の魔法四発。それでレッドゴブリンは沈黙した。

「危なげないですね。さすがはご主人様です」

 僕はぎょっとした。普段の彼女は、こんなことは言わない。
 本当は何か食べたかったのかな。それとも、遠回しに次の階層に進もうと言っているのか。

「この分なら第四層でも通用するでしょう」

 後者だった。知ってた。

「でも、こないだは全然駄目だったよね。魔法の威力も、そんなに上がってないよ」
「大丈夫です。狙いが良くなってますし、速度も上がってます」

 そうかなあ。まあ、彼女がそう言うならそうなんだろう。
 彼女のギルドカードには、第十五層までの到達証明が記載されている。最前線が第六十層なので、大したことがないように聞こえるかも知れない。ソロで到達したわけでもなく、ほぼ荷物持ちだったとも。
 だが実際のところ、第十五層まで行けた探索者は全体の一割程度なのだ。

「じゃあちょっと行ってみようか。それで一度戦ったら、今日は上がろう」
「はい」

 直下の階層には徒歩で行ける。着いて少し探索すると、レッドゴブリン一匹、ゴブリンメイジ一匹のパーティーに出くわした。

「やあー!」
「ファイアボール!」

 ダリアはレッドゴブリンに、僕はメイジの方に攻撃する。ダリアの方は心配ない。僕の方は、ビギナーズラックとでも言うべきか、メイジが転倒した。追加の魔法一発で、メイジは息絶えた。
 ダリアの方に参戦する。レッドゴブリンはダリアしか見ていない。こちらは魔法五発で倒した。

「全然問題ないでしょう?」
「ほんとだね。じゃあ上がろうか」

 本当のところは、僕の方は魔力切れが近い。ダリアはまだまだ余裕がありそうだ。彼女は魔法も使えるが、今日は一度も機会がなかった。
 これでなぜ奴隷なのか。ギルドも持て余していたらしい。そこにたまたま、実家が貴族で、本人は魔法使いの、丁度いい新人が転がり込んできた。
 護衛、兼、教育係、兼、戦闘奴隷。彼女は僕に割り当てられた。

296 :
【彼女と僕の一日】(3/3)

 地上は夕暮れ時だった。それでも大通りは人だらけだ。

「どっかで食べて帰ろうか」
「そうですね」
「どこで……あっ」

 かき氷の屋台が目に入った。もうそろそろ店仕舞いだろう。

「ちょっとあれ食べてみよう。すみませーん、まだありますか?」

 店主は嫌な顔一つせず、二人分のかき氷を出してくれた。

「ほら見てこれ、ふわっふわでしょ」
「そうですね」

 一口食べてみる。

「うーん、冷たい」
「冷たいです。口の中が凍えるようです」

 そう言って舌を出す彼女。ええー、そんなに冷たかった?

「冷たいのは苦手だった?」
「ええ、まあ」

 そう言いながらも一口。顔をしかめる。

「無理して食べなくてもいいよ」
「いえ、大丈夫です」

 それからは、二人して黙々と食べ続けた。まるで舌が凍り付いたようだ。
 容器の底が見えた頃。ふと気が付くと、彼女が笑っていた。

「どしたの?」
「なんか、おかしいですね。苦手だって言いながら、全部食べてしまいました」

 ……ふわっふわだ。ふわっふわだよこれ。
 初めて見る表情だ。
 僕はすっかり舞い上がってしまった。そして思った。

 ここがスタート! 僕たち二人の冒険が始まるんだ!

 ……ってね。

 *

「よし! 第四層進出を祝して、今夜は飲み明かそう!」
「いえあのご主人様。私は夜が苦手なので、申し訳ありませんが」

297 :
やっぱり2作品は無理だったょ
ごめんよ
準備はしてるので、供養枠で出します



内密さんも面白かったなぁ・・・

298 :
>>244
使用お題:『スタあート』『ストップ』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』

【小悪党だった男の最期】(1/2)


 これが最期だと言うなら上出来だと思う。眼前の魔王は憎々し気に俺を睨み、道連れにした相手が大本命である勇者ではなかった事に悔しさを滲ませていた。
 致命傷を負った身体での最後のあがきと言うやつだ。これ以上、魔王も動く事は出来ないだろう。
 まるで時間が停止したかの様に全ての動き止まっている。自分の胸に突き刺さっている魔王の腕が、まるで現実感を伴わず、緻密な絵の様に見えた。

(俺なんかが死んだとしても、勇者ちゃんは泣いちまうんだろうなぁ)

 「戦うには邪魔ですから」と、バッサリと切ったショートヘアの良く似合う女勇者の顔が脳裏に浮かび苦笑する。

 優しすぎるあの娘の事だ、小悪党の俺が死んだ事でさえ気に病んじまいそうだが、後のフォローはイケメンの神官様に任せるとしよう。

 それよりも、いつまでこの状態が続くんだろうか? (どうせ死ぬんだから、そろそろ意識を失いたいんだがなぁ)等と思っていたのだが、その瞬間が何時まで経っても来ない。
 かと言って痛みが来る訳でもなく、何だか体がふわふわして落ち着かない感じだ。

(ひょっとして、これ、既に死んじまってるってヤツじゃなかろうか?)

 そう思って、動かない体で何とか視線を自身の足に向けるが、そこには小汚ねぇ俺のロングブーツが見える。

(……あれ? 死んでねぇのか?)

 まだ足があるって事は、そう言う事だよな?

『いいえ、貴方は死にましたよ?』
「!!」

 声が、聞こえると言うより、頭の中に響く。
 顔を上げると、会った事など無いはずなのに、良く見知った様な女の顔があった。

(……確か、こいつぁ……)
『はい、ご想像の通り、女神です』
「!?」

 考えていた事を言い当てられ、俺はギョッとした。
 しかし、その瞬間、ストップしていた時間が再び動き出し、体の自由が戻る。
 よくよく考えれば、魔王の姿もすでに見えていなかった。

「なぁ、女神さんよ、勇者ちゃんは、無事に王都に戻れそうかい?」

 俺がそう言うと、何故か女神はニコリと微笑んだ。

「?」
『失礼しました。真っ先に訊ねる質問が彼女の安否なんですね』

 女神に言われ、俺は渋面を作る。
 確かに、幼い頃から色々と汚い事もしてスラムで生き抜いてきた小悪党の俺が、他人を思いやるなんてらしくない。
 だが、そんなちっぽけな俺のこだわりなんざ“どうでも良い”と思える程に、彼女の事は大切だと言い切れる。

 世界にとっても、俺、個人にとってもだ。
 もっとも、すでに死んじまった俺の心情なんざ、今さら意味の無い事だが。

『安心して下さい。彼女は無事に王都への旅につきましたよ。魔王が倒れた事で、魔王が使役していたモンスターも元の宝石に戻りましたから、道中も問題有りません』

299 :
【小悪党だった男の最期】(2/2)


「そうかい」

 俺は安堵の息をつく。
 なら、もう未練はない。

「俺はこれから、地獄行きかい?」

 そう、女神に訊ねる。今さら自分が天国なんざに行けるとは思えない。
 だが、落とされるとしても魔王と同じ地獄は勘弁してほしい所だ。

『貴方は地獄には行きません。転生する事になります』
「転生?」
『はい、貴方の生前の行いを鑑みて、そう決定しました』
「……そうかい」

 自分の過去を振り返って見るが、そうそう大した事をした覚えなど無い。
 だが、まぁ良い。やり残した事もない。

「なら、やってくれ」
『未練はないのですが?』
「無いな」
『そう、ですか……では……』

 男の輪郭が次第に溶けて行く。やがてそれは光耀く珠へと変化した。
 それは女神の手から浮き上がり、そして輪廻の輪に還って行った。

 ******

 女勇者が王都に戻ってから数年が過ぎていた。
 その日、何時もの様に彼女の姿は、とある孤児院に有った。
 ここは、ある一人の元スラム育ちの男が、自分と同じ様な子供が出来ない様にと言う想いを込めて建てたものの一つだった。
 その男は、勇者パーティーの一員として貰っていた褒賞金のほぼ全てをその事業に使っていたのであった。

 女勇者は、魔王討伐後の第二の人生のスタートとして、この孤児院の保母を選んだのだ。
 子供相手と言うのは、魔王軍との戦いとはまた違った厳しさがある。
 あまりの忙しさに、目をクルクルさせながら、しかし、初恋の人の意思を継いでいるのだと言う充足感で心が温かくなる。

 太陽が優しくその様子を暖かく見守っていた。

300 :
お題→『スタート』『ストップ』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』『ガリガリ』締切

【参加作品一覧】
>>252【ガンマンとしての自分を捨てた日】
>>257【ロングブーツと22世紀】
>>272【マイライフ・アズ・ブーツ】
>>277【小さくなった魔法少女の冒険】
>>288【万能製造機】
>>294【彼女と僕の一日】
>>298【小悪党だった男の最期】

301 :
すっげいっぱい

302 :
ではー、とりあえず今回は、しりとり、ってことにします
『ん』で終わるのは禁止ですが、もしもの場合は『な』行か『ん』で続けてください

お題安価>>303-307

303 :
『理科』

304 :
かこう

305 :
『器』  (ウツワ)

306 :
わさび

307 :
美少女

308 :
『美食』

309 :
残念!
でもありがとう><

310 :
☆お題→『理科』『かこう』『器』『わさび』『美少女』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→7/28の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

311 :
進行さん乙。さーて、どうお題を練るか……。

312 :
ヒント:登場人物がしりとりすれば、それでお題クリアですw

前回は多数のご参加、作品、ありがとうございました
今回も、、まぁ気張り過ぎない程度でwよろしくお願いします

313 :
>>298
なんていいやつなんだ・・
お題からうまく立ち上げた感じですね
イケメンと主人公はどこに・・・

314 :
>>294
期限刻限、駆け込み需要、進行氏もとい294氏はお題『スタート』『ロングブーツ』『ふわふわ』を宣言ッ、ラビリンス・ダンジョンのふたり!
さあ、語り手が歩むは迷宮都市、「ご主人様、おはようございます」なる挨拶で付き従うは竜人族奴隷のダリアさん〜、『ロングブーツ』が、ほこりっぽい地面に映える彼女は、
語り手よりも背は高く、能力も高いw 『ふわふわ』のかき氷を前にしても、興味を示さぬクールドライ! 語り手にとっては冒険のダンジョン四層に挑戦すれば、敵は強者のダリアさんしか見ていねえ
余裕で屠ってくれるダリアさんに、なんか食べて帰ろうと、かき氷をすすめてみる語り手〜、冷たいと舌を出しながらアイスを食べるアイスなダリアさんが、気づけば初めて笑顔を見せているじゃないか
ラスト、テンション高まり語り手は言う、ここが僕らの『スタート』だ! 飲み明かそう!! はい断られたァw はるかな道行だぜエンディング! 進行氏、設定細やかな作品でお題堅実クリア〜、釣り合わぬ二人の進展に期待、シーユー!

>>298
間に合わせたな298氏w 選択お題は上限5! 『スタート』『ストップ』『ショートヘア』『ロングブーツ』『ふわふわ』にて執筆開始〜、想いと想いが通じる日!
さあ、魔王の腕を胸に突き刺した男が一人語り始める〜、俺なんかが死んだとしても、勇者ちゃんは泣いちまうだろうと、優しすぎる『ショートヘア』の彼女を思い出す走馬灯状態ッ!
体が『ふわふわ』して落ち着かず時間停止? なんだ幽霊的なやつかと足を見るが、小汚ねぇ『ロングブーツ』は健在w 自己犠牲の報酬、死に際のロスタイムで現れし女神が『ストップ』時間を再び動かす、
男は勇者の安否を確認、スラムで育った彼には他人を想うことそれすら珍しく、無事だと聞いて安堵する〜、未練はないと、実はあるだろな答えをはっきり返し転生の道ッ! 南無ッ
ラスト、場面は変わり第二の人生『スタート』きった孤児院の保母さんこと勇者が、男の意思を継いで奮闘している〜、彼女の優しき想いは男の魂を救ったのだが、男もまた救い返した、ホット&ホットの返報ENDか! お題も上限クリアで豊作トリにふさわしきシメだ298氏!

315 :
>>310 とりあえず速攻で一つ。これ小説か?
使用したお題:『かこう』『器』『わさび』『美少女』

【答えは必ず「ひとつ」です】

 問題の答えは必ずひとつです。

 問題。次の選択肢の中から、仲間外れを選びなさい。なお、正解者には正解した選択肢のものがプレゼントとして贈られます。

い:美少女
ろ:幼馴染系美少女
は:ツンデレ美少女
に:クール系美少女
ほ:メガネ真面目美少女
へ:ロリ美少女
と:わさび
ち:義妹美少女
〜〜〜(中略)〜〜〜
そ:病弱美少女
つ:匠が作った、最大限わさびを辛く加工することのできる伝説のわさび擦り器
ね:理科学系美少女
〜〜〜(中略)〜〜〜
え:ナタが似合う系美少女
ひ:緑色の物体を見ると誰彼構わずそれを口の中に放り込む謎の凶悪暴走ロボット
も:ヤンデレ美少女
せ:最終兵器美少女
す:喜んで辛い物を食べる系美少女

 なお、選択肢は複数選択可。

316 :
>>314
感想ありがとうございます
設定、そう言って頂けると、すごい良かった気がしてきますw
彼女に追い付けるか主人公・・・!

>>315
ああ〜分かった!
しかしそうすると、使用お題から1つ抜けてるのはミス?

317 :
>>272
人生ならぬブーツ生w
優しい元持ち主は、友人の蛮行に何を思うのでしょう

>>277
人知れず怪物と戦う魔法少女
彼女が選ばれたのは、この前向きな性格からなのでしょうね

>>288
ノリの良い通販番組かと思えば……
その内、下級国民も消費し尽くしそうな

>>294
小さな事からコツコツと
その内想いは繋がると思いますw

>>313
感想有り難うございます
イケメンは、孤児院に対する援助を教会の上層部に掛け合っている事でしょう

>>314
感想、有り難うございます
次回作は、【魔王討伐後の勇者は孤児院でスローライフ】でw

318 :
>>315
こう言う【いじわるクイズ】ありましたねw
貰ってもアレなんで、答えはあえて言いませんがw

319 :
と、言いますか、ここのスレの住人は、ゴリラとワサビと殺人気が好きですねぇw

320 :
ゴリラ死に戻りはまたやりたいねw

321 :
>>315
む、全選択でいいな! しりとりだとお題並びにランダム感が出る、315氏が速攻スタンバイ、オンステージ! 今夜もナゾトレin短編スレ〜
さあ、問題の答えは必ずひとつですと、仲間はずれを選ぶクイズが出題ッ〜、なお、正解者には回答そのものが贈られる模様ッ、不穏な空気だなw
選択肢がいろは歌順に並ぶ、幼馴染、クール、ツンデレ、『理科』学系、ずらずら並ぶ『美少女』群の中に『わさび』と、それを食わせてくるロボ、わさび『加工』擦り『器』w やっぱりそういうやつね!
答えはひとつ、なのに選択肢は複数可能というところがミソで、誰も回答しない、謎のいろは歌、と、なるほどw これでほぼ答えだと思うけど、ネタバレは315氏に任せるとして、
俺の回答! わさび、わさび擦り器、ロボ、辛い物を喜んで食べる美少女(明らかに救済策としての仲間外れ)、だァ! ソレがありならコレだってありなはず! こういうことだろ315氏w 速攻お題を突破した関門、脳トレENDッ

322 :
>>317
感想ありがとうございます
主人公くんには、焦らず攻略してもらいたいところですw

323 :
>>255
>>265
>>267
遅くなってしまいましたが、感想ありがとうございます
ヒーロー物でよくある挫折や苦悩を今回初めて書いてみたのですが
あまり辛気臭くなるのも嫌だったのでなるべくソフトにしました
楽しんでいただけて嬉しいです

324 :
年末とかでベスト作品をピックアップしたりするのも面白そう

325 :
今回のお題は誰も書かないのか……悲しい。
まあオレも2作目が思いつかなくて困ってるんだけどネ。

326 :
俺氏、作品を作りあげるも周りのレベルの高さで没にしました

327 :
それはなんと言う【悲報】
ここは、底辺が修行する場ですから、気にせず晒しちゃって下さい

328 :
>>310
使用お題:『理科』『かこう』『器』『わさび』『美少女』

【理科室的愛情】(1/3)


 ふわぁ……と、仲代 建良は欠伸を一つした。
 理科室で一人、建良は何時もの様に白衣姿で椅子に座っている。彼の周囲にはフラスコやシャーレなどの実験機器が並び、その様子は、何時もの放課後とた同じ様に思えた。
 だがこの日、何時もの放課後と決定的に違っていたのは、今日が学園祭であり、建良がそれでも、部活の出し物をしていると言う事だろう。

 そもそも未だ午前中でもある。

 ただし学園祭がスタートして以降、模擬店である理科室に客は一人も訪れず、お昼まで後、一時間と言うこの時間まで、建良は暇を持て余していた。

「誰も来ねぇ……」

 オレンジジュースと食紅を加えたアルギン酸ナトリウムを塩化カルシウム水溶液に駒込ピペットで一滴づつ垂らしながら、机に顔を横たえそれを眺める。
 いつもであれば、同じ部員である緋色 牡丹が居るはずなのだが、彼女はクラスの用事とやらを優先させた為、ここには居ない。
 彼の行っている出し物は、科学実験的な調理をしながら、出来上がったそれを提供する“理科室喫茶”。
 皆に科学に対する興味を持って貰って、あわよくば部員を増やそうと言う野望を抱いていた建良は、その為の準備でほぼ寝て居なかった事もあり、うつらうつらとし始めていた。

 ここ、理科室の有る特別教室棟は、体育館向かいの渡り廊下を渡った先に有る為、少々、分かり辛い。
 その上、主だった出し物が集まっている普通教室棟や教室からグラウンドを挟んで見える部活棟とも距離が離れている為、狙って来なければ人が近付く事は無いだろう。

 結局、彼は、この後数分と持たずに寝落ちをしてしまった。
 それでも、無意識で器具を脇に避けてから寝落ちたのは、科学愛好家としての本能だろう。

 ******

「おい! 仲代くん、起きたまえ!!」

 不意にユサユサと肩を揺すられ、建良は重たい瞼をなんとか開き……

「……なんだ、夢か」

 そう言って再び瞼を閉じた。

 柔らかいウェーブの掛かったダークブラウンのロングヘアーに黒目がちの大きな瞳と長い睫毛、プックリとした桜色の唇。
 鼻は若干低めだが、むしろそれが親近感を抱かせる。

 目を開けた時、そこに居たのが眩いばかりの美少女だった為、建良は現状を夢だと判断したのだ。
 だが眼の前の美少女は、焦った様に声を荒げながら「何を言っているんだ君は!!」と、再び建良の肩を揺さぶる。
 学園祭の準備の為ほぼ徹夜だった建良は、ぼんやりとした意識で美少女の顔を見ていたが、やがてボソリと呟いた。

「可愛いな……」

 正直、好みのタイプ、ど真ん中ストレートである。

「なっ!」

 みる間に少女の顔が赤く染まり、激しく視線を泳がし始めた。
 美少女が赤面しながら、薄いブルーのワンピースのスカートをギュっと掴みつつ、内股をもじもじさせる様は中々にそそられる。
 しばらくその様子を堪能していた建良だったが、不意に既視感を覚え、首を傾げた。

「あれ? どっかで会った事なかったけ?」
「…………分からないのか? 君は」

 さっきまで頬を染めていた美少女の機嫌が一気に下降する。が、理科室の外から聞こえて来た声にビクリと肩を震わせると「仲代くん!! 匿ってくれたまえ!!」と懇願して来た。
 目を潤ませた美少女のアップは中々の破壊力があり、建良はつい「お、おう」と返事をしてしまった。
 ともあれ、彼女を理科準備室へ匿うと、建良は徐に窓を開いて椅子に座り直す。

329 :
ですです
書き逃げ書き捨てで構わないです
まー読み返したら面白くなかった、とかだったら仕方ないですけど

多分本人が思ってるよりは面白いでしょうし
もし詰まらなくても、誰も石投げたりしませんし

330 :
【理科室的愛情】(2/3)


 ガラリと理科室の扉が開き、数人の女子生徒が飛び込んでくる。

「ねぇ! 緋色さん見なかった!?」

 女子生徒の口から飛び出した聞き慣れた部員の名前に、内心首を傾げながらも、建良は開いたままの窓を指差す。
 と、女子生徒達はそのまま踵を返すと「逃がさないからねぇ〜!!」と叫びながら走って行ってしまった。

 呆気にとられていた建良だったが、「ふう、助かった」と言いながら美少女が準備室へと続く扉から顔を覗かせると、「あぁ!」と言って手を叩いた。

 ******

「随分、薄情ではないか」

 すぐに自分だと気付いて貰えなかった事で、牡丹の機嫌は下降したままだった。
 しかし、建良にも言い分はある。
 普段の牡丹は常に三つ編みであり、黒縁の分厚い眼鏡を掛けている。その上、今は薄らとだが化粧をしている事もあって、印象がまるで違っているのである。

 しかし、そんな言い訳をしたところで彼女の機嫌が回復するわけではない。
 建良は、シロップとジュースの比重差によって二層に成ったノンアルコールカクテルに、先程作った『人工いくら』を加えると牡丹の前に差し出す。

「ふむ、これは成程、科学らしい飲み物だね」
「だろう?」

 比重差で二層になるカクテルがあると言う事で、何とかジュースで再現できないかと試行錯誤した結果できた自信作だった。
 だが後日、同じ様なコンセプトのノンアルコールカクテルをネットで見つけ、肩を落としたのも良い思い出だ。

「これ、わざわざイクラ風にせずとも、タビオカ風で良かったのではないか?」

 ジッと、ビーカーに入ったカクテルを見ていた牡丹がそう言い、建良がポンと手を打った。

331 :
【理科室的愛情】(3/3)


 ******

 撹拌棒でカクテルをクルクルとかき混ぜながら、牡丹がブチブチと文句を口にする。
 どうやら彼女は、クラスの模擬店で売り子をする事にされたのだが、その時「どうせなら」と化粧を施されたらしい。
 その結果、出来上がった絶世の美少女っぷりのせいで、クラスの女子にミスコン参加を強制されかかり、逃亡してきたとの事だった。

(ま、女子達の気持ちも分からなくはないなぁ)

 カクテルを飲む牡丹のお嬢様然とした佇まいに、建良はそんな風に思った。
 手に持ってる器はビーカーではあるが。

「それより君は何をしているんだい?」

 牡丹が建良の手元を覗き込む。
 フワリと甘い香りが漂い、外見がタイプの美少女になっているにも関わらず、いつもと同じ無防備な距離感の彼女に建良の鼓動が速くなる。

「あ、ああ、硝石の溶解熱反応を使って、アイスをね……」
「ほほう? それは楽しみだ」

 期待で目を輝かせていた牡丹だったが、それも建良がシャーレにアイスクリームを乗せて出すまでだった。

「これは何かね?」
「バニラアイスとわさびだ」
「ほほう?」

 出されたアイスクリームには、チョコンとわさびが乗っかっていたのだ。

「実験的と言われれば、確かにそうだが……」

 (これは合うのか?)と言う困惑が有りありと表情に出ていた。

「実験と実証は終わってるよ?」
「う〜ん、君がそう言うなら」

 そう言い、躊躇いつつも牡丹がワサビアイスを口へと運ぶ。
 「!」と息を呑む様子と共に、彼女の目が見開かれた。予想外のマリアージュに驚きが勝ったらしい。

「うん、これは意外と!!」
「検証は終わってるって言ったよね?」
「そうだったな、すまん」

 素直に謝ったボタンに建良が苦笑する。

「あ! 定番の『一瞬で出来上がるポップコーン』も有るけど?」
「ネタが割れてる見世物を見せられてもな」

 そう言って、今度は牡丹が苦笑した。

 ******

 結局、この日、学園祭が終わるまで、“理科室喫茶”に訪れる客は一人として居なかった。
 だが、牡丹と二人きりの時間を過ごせた事で、建良は満足したのだった。

332 :
なんか最近やっちまってばかりだ・・・
ごめんよ

ワイも叫びたいw

333 :
自分の過去作が恥ずかしくて読めない
あると思います

334 :
>>332
お気になさらず〜

335 :
>>328
暑いぞ! しりとりから生まれたお題の関門、続いて328氏がアイス片手に『理科』メインで攻める、全選択! 理化学カフェのクールダウン〜、
さあ、『理科』室で一人、科学愛好家としての本能により、なんとか『器』具だけは脇に避け、白衣姿で寝落ちている主人公の建良くんが登場、
学園祭での出し物は、科学実験的な『加工』調理を施しながら、出来上がったそれを提供する理科室喫茶、客もあまり気が乗らないだろうなw そんなこんなで誰も来ず、
舟をこいでた建良くんの前に、誰だ、眩いばかりの『美少女』が…? ってメガネを外した部員でした、お約束w バニラアイスと『わさび』のやつ、これ大丈夫? 実験と実証は終わってると試食して、あ、おいしい、
訪れる客など誰も居ぬ、だがそれがいい、まったりENDだ! お題『理科』中心の部活物語によって消化攻略・違和感なしの328氏が調理を終えたぜ! バニラわさびが食べたくなる、季節感フィニッシュ!!

336 :
>>335
感想有り難うございます
シュチュエーションは兎も角として、オーソドックスなラブコメに成った感が……

337 :
>>328
オーソドックスの何が悪いか!
確かに美少女だと思わせる部分があって、いいと思います
自分は理科が苦手なので、こういうのが書けるのは羨ましいですw

338 :
>>244
前回お題作品です

使用お題→『ストップ』『ショートヘア』『ガリガリ』

【彼と私の一日】(1/3)

 堆積したデータが都市を形作る。意味のあるもの、ないもの。必要なもの、不要なもの。

「うぉっと、っと、っと」
「気を付けてください、ご主人様」
「ダリアさん、それやめない? アンドロイドでもないのに」
「似たようなものです」

 ここは廃棄都市の地下深く。通称、地下迷宮。物質世界と情報世界の残骸が降り積もる場所。

「あ、ストップ。そこデータ爆弾があるよ」

 探索を始めて三日。一度も地上には出ていない。
 時間の感覚を失いそうだが、今は午前中だ。

「待ってね、今無効化するから」

 そう言って、やや大振りな情報端末を操作する小男。私が主人と呼ぶ探索者だ。
 全身を機械化した私に対して、彼はそうではない。
 特殊な信仰の持ち主でもなければ、それはつまり、機械として使われる側ではなく、機械を使う側である、ということだ。

「あーもーいいや」

 解除を諦めたのか、足で踏んでトラップを発動させてしまった。
 小さな爆発が起こる。
 だがそれは物質の体しか持たない彼には影響がなく、周囲のデータを少し破損させただけだった。

「探索者失格ですね」
「えっ、そんな。ほとんど何も壊してないよ!」
「冗談です」

 とは言え、あまり褒められたものではない。おおげさにうなだれる彼を尻目に、私は周囲を警戒する。
 しばらくすると、リサイクルボットたちが飛来する。物質の体を持たないタイプは展開が速い。暴走していると厄介だが、見たところ危険はなさそうだ。
 壊れたデータが分解される。分解されたデータは消えず、再利用もされない。ただそこに取り残される。

「先に進もうか」
「そうですね」

339 :
【彼と私の一日】(2/3)

 地下に広がる無人の世界。かつては多くの人間や機械が活動したであろう空間で、今動くのは私たちとリサイクルボットたちだけだ。
 暗闇を進む。
 何かをガリガリと砕く音がする。

「暴走はしてないみたいだね」
「そうですね」

 物質の体を持つタイプのリサイクルボットは、ごみと認識したものを食べて、ごみを排出する。
 知識にないものは認識しない。
 私たちが横を通っても、感知された様子はない。

「このフロアには何もなし、だなあ」
「もう一つ下に行ってみますか」
「そうだね。めぼしいものがあれば良し。なければ、そこで一泊かな」

 周囲を少し探索して、階段を見付けた。かなりの段数だったが、特に問題なく下の階に到着した。

「これは……」
「何かありそうですね」

 上の階は散らかっていた。リサイクルボットたちの活動が原因だ。
 だが、この階は片付いている。がらくたなどは見当たらない。
 床に目を向ける。
 積もったほこりに、誰かの足跡や何者かが移動したような形跡は見られない。

「じゃあちょっと調べてみようか。まずは安全な範囲の確認だけど」
「はい」

 天井の低い廊下。逆に天井が見えない広場。大きな道路。狭い路地。商店。住宅。公園の跡地。何かの倉庫。
 抜け殻の街。
 ショートヘアのマネキンの頭部が転がっていた。在りし日のデータの残骸も見える。首から下の部分は見当たらない。

「なんかこれ、ご主人様に似てませんか」
「ええー、そうかな……」

 そうして二人で歩き回っていると、他とは少し違った印象の、大きくて頑丈そうな、格納庫のような建物に行き当たった。
 出入り口らしき扉は施錠されている。

「どうします?」
「もちろん、開けてみるしかない!」

 *

 作業すること数分。扉のロックは解除された。

「やれやれ、今度はうまく行った……」
「難しかったですか?」
「まさか! イージーピージーさ!」
「……なんですか、それ」

 なんにせよ、うまく行ったのなら問題はない。
 私たちは扉を少しだけ開けて、中をのぞく。

「暗い」
「暗いですね。……あっ、あれは」

340 :
【彼と私の一日】(3/3)

 部屋の中には、巨大なリサイクルボットが鎮座していた。

「うわ、これって……生きてるな」
「スキャンしてますね……あ」

 リサイクルボットのセンサー、そのすべてがこちらを向いた。
 暴走していなければ問題ない。見過ごされるはずだ。
 口の部分が動く。ミミズのような胴体が収縮する…………。

 *

「うわああああ! 失敗したああああ! もう駄目だああああ!」
「ちょ! ご主人様! ご主人様ってば!」

 リサイクルボットの動きは速くない。だが、あの巨体が突進してきたら、それは恐怖だ。
 はぐれないように手をつなぎ、私たちは逃げていた。

「落ち着いてください、ご主人様!」
「おおおお落ち着いてるよ、落ち着いてるよ」
「どうします? このまま逃げ切るのは難しいですよ」
「そうだね! でもどうしたら……」

 探索してきた道を戻る途中、マネキンの頭部と再会した。

「これも砕かれちゃうね」
「そうなるでしょうね」
「これも……」

 そこで彼は言葉を切った。マネキンの頭部を拾って、私に手渡してきた。

「ダリアさん、これ持って、僕の頭の上に掲げて」
「はっ、はい」

 彼は移動しながら情報端末を操作して、私はその後ろを付いて歩いた。
 マネキンからは胴体が生え、頭はチカチカと光り、ブルブルとノイズまで聞こえてきた。
 格納庫の前に戻ると、彼は、ためらうことなく中に入った。
 リサイクルボットが追い付いてきた。

「ダリアさん、それ奥に向かって投げて! 扉の陰に隠れて!」
「はい!」

 リサイクルボットのセンサーは、今やマネキンの頭部に向けられていた。
 私たちを無視して通過する巨体。
 彼と私は外に出て、扉を施錠し直した。

 *

「やれやれ、助かった……。やれやれ……やれやれ……」
「さすがはご主人様ですね。一時はどうなることかと思いましたが」

 とは言え、今日の探索はもう無理だろう。時間も丁度いい。
 そう思ったのだが、彼の考えは違ったようだ。

「そっ、そそそそうかな。じゃあ次の階も見てみようか?」
「……正気ですか? ここで無理しようとするなんて、探索者失格ですよ」
「……はい」

341 :
ってことで、すっかり遅くなりました・・・
いつもは出さないんだけど、今回は出すって言っちゃったので
失礼しました

342 :
>>338
近未来冒険者と言った所ですね
よい意味での凸凹コンビさ加減で、愉快な探索をしていそうですw

>>337
感想、有り難うございます
ワサビアイスは、市販の練りわさびを使うと、若干、塩気が効きます
二層カクテルはかき氷用のシロップですと、上手く二層に成らないようです

343 :
>>342
感想ありがとうございます、豆知識もw
なんだか、お坊ちゃんと毒舌メイド、みたいな感じになってしまいましたw

344 :
>>338
これは>>294からの続編…、いやメカメカしい、パラレルかも? 進行氏が、前回の未使用お題『ストップ』『ショートヘア』『ガリガリ』を使って新たな冒険紡ぎだすぜ、データベース・ダンジョン!
さあ、「あ『ストップ』、そこデータ爆弾がある」と、トラップを警戒する探索者、そのお供こと機械化ダリアさん視点で話はスタートォ! ダリアさん機械になったw
かつて人と機械が繁栄せし廃棄都市をゆく二人〜、その耳には機能だけが生きたボットらによる、何か『ガリガリ』砕く作業音だけがこだましている〜、
と、ここでアイテム『ショートヘア』なマネキンの頭部をゲットォ! そして奥に進むと、はいきた巨大なボットの襲撃だァ、マネキンをデコイに使ってピンチを回避、ほっと一息、だが、まだ探索する気の探索者w にダリアさんが毒を吐くEND!
なるほど、>>294から連作でお題を全消する計画だったか〜、風景シーン多めの語り口が廃棄都市の静寂感を伝えてくるようだな、前回お題全クリアー、進行氏、味のある作品作りで手本を見せるムーディ・フィニッシュだ!

345 :
>>344
感想ありがとうございます、時間が変則すみませぬ
パラレルでしたw
前作との違いを分かりやすくしようと考えて、風景描写は重視しました

346 :
>>310

使用お題→『理科』『かこう』『器』『わさび』『美少女』

【しりとり】

「はい、じゃーしりとりね。『理科』」
「えー、あたしの嫌いなやつ。佐藤先生も苦手ー」
「そお? あたしは好きだけど」
「あー言った。言ったな。それはあんたが優等生だからでしょ。あの先生、結構分かりやすいから」
「そーそー。落ちこぼれはどーでもいい、って感じ?」
「だよねー、って、そうじゃなくてさ、『か』だよ、『か』」
「『か』ー、『か』ー、『かこう』?」
「何それ」
「三角州、みたいな?」
「意味分かんない。まーいいや。『う』ね。『***』」
「おおー、いいね。海もいいね。次の人」
「『わ』、『わ』……。『わさび』」
「渋いですなー。和風グルメ。次! 『び』!」
「『び』ー……『美少女』」
「自己紹介ありがとうございます、『和風美少女』さん」
「えっ、じゃあ『美食』」
「『じゃあ』ってなんだ、じゃあって」
「じゃ、じゅ、じょ」
「美少女は否定しないんだ」
「あの生徒会長もデレッデレだもんね」
「もー、みんな器が小さいよー。じゅんくんとは、家が近いだけだもん」
「名前呼び! 名前呼び頂きました!」
「知ってたけど! 知ってたけど、やけるなぁ」
「もーやだー。次の人。『く』、だよ」
「いや『じょ』でしょ」
「『じょ』だね」
「『じょ』かぁ。そうだなー……――――」

※伏せ字は、ひらがな3文字をトリップに入れました。

347 :
連投すまないが、分かりやすい手抜き、ということで

トリップのアイディア、別に隠すのはお題じゃなくてもいいなと
そう思ったわけです

348 :
>>310 今度はちゃんと小説の形になった(面白いとは言ってない)
使用したお題:『理科』『かこう』『器』『わさび』『美少女』

【吊り橋効果実証実験】(1/2)

「今回の実験のテーマは『吊り橋効果』だ。はい拍手」
「わー」

 2人しかいない理科実験室に雑な拍手の音がぱちぱちと響く。しかしそんな御座なりな歓声でも十分に満足したのか、鼻の穴を膨らませて奴は胸を張った。

「巷で噂の吊り橋効果、一般的には『危険な吊り橋の上にいる男女は命の危険から心臓の鼓動が早まり、それが互いへの恋と勘違いをする』と言われている。しかし私はこれに異を唱えたいのだ。今日の実験はこれの実証実験を行う」
「ハイ質問」

 適当な挙手でも奴は嬉しそうだった。ビシリと音がしそうな勢いで「どうぞ!」と感嘆符をつけて僕を指さしてくる。

「どうして異を唱えたいのでしょうか? 今回のテーマの元となった根拠はなんですかー?」
「良い質問だ、まさにそれこそが今日の主題ともいえよう」

 どこかで聞いたような偉ぶった口調のまま奴はさらに胸を張った。器量の良い顔立ちに反比例して残念な胸囲がより強調される。
 奴は人指し指をピシっと上に立て、まるでどこぞの教授のように自論を展開した。

「吊り橋のような危険な場所にいる男女が惹かれあう。なるほど、実にありそうでロマンチックな話だ。しかしよく考えてみてくれ、この話は男女だから成立するのであって、男同士、または女同士でも成立するのだろうか?」
「なるほど、ありえないな」
「異性恋愛主義者が吊り橋を渡ると同性愛になる? 常識的に考えてありえないでしょう? それに吊り橋は落ちそうだからドキドキするわけだ。2人じゃなく3人で渡れば、より落ちそうになってドキドキすることになる。じゃあ10人で渡ったら、全員恋人同士になるのか?
 10人全員が同性でも? まさかそんなわけはないだろう?」
「確かに、逆に成立したら恐怖の光景だな」
「なので少々仮説を立てた。今日はその実証実験だ。ぜひ協力してくれたまえ、我が助手よ」
「助手になった覚えはないけれど、いいだろう。付き合うよ」

 自称・教授となった奴は嬉しそうに笑みを浮かべ、僕は仕方ないと肩をすくめた。
 何か大仰な準備でもするのかと思ったら、そんなことはなかった。奴はスカートのポケットから謎の緑色のチューブを取り出す。
 僕は半眼になって頬杖をついた。

「で、なんでワサビのチューブなんですかね?」
「フフフ、これは私の仮説によるものなんだがね。吊り橋効果は実は勘違いではなく、実際にあるのではないかと思ったわけなんだよ」

 自称・教授から料理人にクラスチェンジした奴がワサビのチューブを二本指で摘まんで振っていた。その姿がだいぶアホっぽいことに気づいていないのだろうか。
 加工済みのわさびを適当な食器に盛り付けながら、奴は説明を続ける。

「吊り橋効果は心臓のドキドキは関係なく、『危険地帯に異性が存在する』という状況が本能に訴えかけてくるからなのではないかと仮説を立てたのだ。
つまり、男は危険地帯に女性がいることで『あ、オレはこいつを守らなきゃいけない』と本能的に保護欲求が刺激されて愛情を感じ、逆に女は自分が危険地帯にいるときに身近に男性がいるから『あ、この人なら私を守ってくれるかも』と被保護欲求が強まり愛情を高める。
これが吊り橋効果の本当の効果なんじゃないかと仮定したのだ」
「なるほど、なんとなく筋が通っているような。でもその仮説とワサビの関係性が全く読めない」
「それは簡単だ。このワサビは実証実験のために使うのだ。こうやってな!」

 そういうと奴は食器に山盛りに盛られたワサビを前にして、一息に口に入れた。僕が止める間もなく噛まずにゴクンと飲み干す。
 無音の絶叫が室内に木霊した。

349 :
【吊り橋効果実証実験】(2/2)

「つっっっっっっ!!??」
「ちょ、ちょ、ちょ! 水、水!」

 ここが理科実験室なことが幸いした。コップ代わりにビーカーを使い、ちょっと錆が目立つやたら細長い水道から水を注いで奴に渡す。
 自称・教授改め料理人改めお笑い芸人と化した奴は涙目になりながら、ビーカーを受け取って一気に飲み干した。

 鼻水を垂らし、涙を流し、口でぜぇぜぇと荒い呼吸をしながら、奴は僕に質問してきた。

「どうふぁ、私に惚へたか!?」
「え、いきなり何言ってんのお前?」
「らってほら、今目の前にすごく苦しんでいる女がいふんだぞ!? しかも美少女だ! 吊り橋効果の私なりの仮説が正しければ、今まさに危険な状態である私に君は惚れるはず! どうだ!?」

 頓珍漢なことを言う奴の言い分を聞きながら、僕は強めにツッコミを入れた。

「いきなり訳わかんないこと言った後に、ワサビを一気に飲み干す阿呆にどうやって惚れるんだ!? むしろ心配したよ! 脳の方を! お前、残念過ぎるにもほどがあるぞ!?」
「ぐぬぅ、失敗か……仮説はかなり正確だと思ったんだけどなぁ……」

 奴は流れる鼻水をそのままに自分の考えのどこが間違っていたか検証をし始める。僕は阿呆の権化の涙と鼻水をティッシュで拭ってやりながら小さく呟いた。

「……だから見ていて飽きないんだけどなぁ」
「ん、今何か言ったかい?」
「なんも。それよりいい加減、自分の鼻水くらい拭け。自称美少女の顔が凄いことになってるぞ」

 僕は奴の悩む姿を眺めながら、楽しそうに苦笑した。

350 :
>>348
謎思考で体を張る彼女は面白いw
発想はクイズの方が面白いと思います
語り手と彼女の関係はいい感じですよね

351 :
>>346
使用お題・全選択ッ! 進行氏が新感覚レス遊び、しりとり穴埋めクイズをオープンする模様、ANAUMEの時間!!
さあ、しりとりで生まれた今回お題はゲームとしてそのまま扱うことができるゆえに、トーククイズin短編スレを開催することも可能なのであるッ、
そんなこんなでガールズトーキングに耽る女子らのしりとりに潜入〜、『理科』、『河口』、ときてから三文字のアレがきて、『わさび』『美少女』消化〜?
回答者のひとり、美少女がまわりにオトコいるいる囃し立てられ、『器』が小さいッと返す刀でお題をクリアだッ!
さてクイズ、先ほどのアレ、海に関連する三文字で、「う」で始まり「わ」で終わる単語はナンでしょうか、トリップ機能で進行氏にこっそり回答せよ、END! どうかな!?

>>348
348氏はラブコメタッチに全選択〜、ちまたでは危険が盛り上げる盛り上げるというけれど、それってわさびも含まれるのか試して見ようの回〜
さあ、今回の実験のテーマは吊り橋効果であるようだ、『理科』実験室にて、危険な状況に陥った二人が恋に落ちるのかと、奴こと『美少女』な彼女がはりきって登場?、
上野さん的なテンションだな、『加工』済みの『わさび』を適当な食『器』に盛っていく彼女に、未来がはっきりと見えてきた見えてきたァw 
そのまま一気に飲み込んで、相方の主人公に「惚れたか??」とたずねる、ええい、んなわけあるか、鼻水をふけッって感じで
348氏の鼻水オチが炸裂だ、実験ラブコメはパターンや道具を変えればどれほどでも続けることが可能な半ループもの、先行き期待フィニッシュだ!

352 :
よしっ!

353 :
>>351
感想と回答ありがとうございますw
しりとりネタ誰も使わないんだもの
伏せ字が実質一文字なのは、ちょっと簡単過ぎたかも

354 :
ところで次回、ってか今夜ですが
お題は普通に5つ取って、書く人には伏せ字をお願いしようかと
伏せ字の中身はなんでも良し
あまり盛り上がらないだろうなぁ、と予想しますが、ちょっと面白いと思うのでw

355 :
お題が伏字って意味? 【〇ぬ】【う〇ぎ】【しま〇ま】【〇ん〇ん〇】【マ〇コデ〇ックス】みたいな感じ?
個人的な意見だけど、お題募集は普通にやって、その中で「三代目進行さんのお題は絶対必須」みたいな方がわかりやすいし面白そうに思える。異論は認める。

356 :
いやそうじゃなくて、
>>346みたいに本文のどこかを伏せ字にする
正解をトリップキーに設定して、それを当てる遊び、ってことです
お題は普通に募集します

考えられる問題として、書く人が何を伏せ字にするか、、難しい、、ってのがあります

357 :
>>346
シンプルなお題消化ですねw
その上で、あえての一捻り。回答は……あーあれですね? 分かります分かります

>>348
体を張った誘惑ですw
でも、その効果は有ったようですね……本来のものとは違う形でw

358 :
>>310
使用お題:『理科』『かこう』『器』『わさび』『美少女』

【宴もどろなわ】(1/2)


「魯山人曰く『ワサビは刺身の上にちょっと置いて、醤油をちょっとつけて食べるのが美味しい』との事で……ん〜ワサビが効くぅ!!」
「そうかい」
「功刀も、採点なんて後にしてこっちで飲みましょうよぉ」
「姉さん達と飲みだしたら、俺が落ちるまで離さねーじゃねぇかよ!!」

 俺は、後ろで下着姿で飲んだくれてる姉達に睨みを聞かせながら期末試験の答案を採点していた。
 本来なら答案用紙を校外に持ち出すのはご法度なのだが、何せ採点が終わらない。
 選択問題を多くして、ア、イ、ウの羅列で回答させれば簡単なのだが、それだと偶然合ってたなんて事も起こりうるし、運を天に任せて勉強をおろそかにする生徒も多くなるから、俺はなるべく文章で回答させる様にしているのだ。
 もっとも、その所為で採点に時間を食うのだが。

「ん〜理科かぁ……もう、内容なんて忘れちゃったなぁ」

 ビール片手に、柊姉さんが俺の後ろから手元を覗き込む。

「おい! 柊姉!! 覗き込むな!! プライバシーの侵害だぞ!!」
「こんな所に持って来てる功刀が悪いんじゃん! ねー?」
「だぞぉ! 公私の区別はつけなきゃだぞ? 功刀ぃ」
「いや、そもそも、何で俺の部屋に集まるんだよ! 飲みたいならリビングに行けよ!!」

 俺がそう言うと、姉二人は顔を見合わせる。

「だって、リビングだとお父さんいるし」
「お母さんの小言が煩いし」
「「ねー」」

 母さんのお小言はともかくとして、なぜ、ここまで親父は姉さん達に嫌われているんだか。向こうは娘達大好きなのにな。

359 :
【宴もどろなわ】(2/2)


「いや、なら自分達の部屋で飲めよ」
「「えー」」
「「えー」じゃなくて」
「だって、自分達の部屋だと後片付けが面倒だし」
「俺に片付けさせる気満々かよ!!」
「知っているかい? 功刀」

 何でか楓姉の方が決め顔で言う。

「チューブの練りワサビは加工ワサビって言うんだぜ?」
「知らねぇよ!! 何の知識だよ!!」
「おいおい、理科教師が、こんな基本も知らないなんて問題だぞ?」
「食品問題は理科の範疇じゃねぇよ! 家庭科教師に持って行けよそんなトリビア!!」
「二番! 緑山 柊!! 音楽奏でます!!」

 そう言って、柊姉が、茶碗やらお皿やらの器を箸で叩いて滅茶苦茶な音楽を奏でる。

「おっしゃぁ!! 三番! 緑山 楓!! 音楽家撫でます!! うりゃぁ!!」
「キャー!! 功刀ぃ! お姉ちゃん汚されるぅ!!」
「良いではないか、良いではないか!」
「もう! 本当に部屋に帰れよ!! ハウスだ馬鹿姉共!!」

 かなり酔いが回っているんだろう。もう、しっちゃかめっちゃかだ。

「酷いわ、功刀! 私はこんなに功刀を愛してるのに!!」
「そうよぉ! こんな美少女捕まえて、ハウスとか酷いんだワン!!」
「何が美少女だよ!! 自分の年考えろよ!!」
「「あ?」」

 !!

 あ、所 〇三が降臨した。

 この後、俺は飲む以外の意味で落ちる事と成ったのだった。
 あ、採点は何とか間に合いましたよ?

360 :
お題→『理科』『かこう』『器』『わさび』『美少女』締切

【参加作品一覧】
>>315【答えは必ず「ひとつ」です】
>>328【理科室的愛情】
>>346【しりとり】
>>348【吊り橋効果実証実験】
>>358【宴もどろなわ】

361 :
最終的にはなかなかな作品数

362 :
ではでは、お題の募集は普通に5つです
特別な指示はありません

お題安価>>363-367

363 :
セカイ系

364 :
センター

365 :
セールス

366 :
セット

367 :
セロリ

368 :
何この団結力w

369 :
☆お題→『セカイ系』『センター』『セールス』『セット』『セロリ』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→8/4の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

370 :
追加で説明しますので、少々お待ちを

371 :
☆ トリップ当てっこ遊び ☆

名前の入力欄に『#』で始まる文字列(以下トリップキー)を入れると、トリップが生成されます
同じトリップキーからは同じトリップが生成されます
この特徴を利用して、トリップキーを伏せたまま答え合わせができます

トリップキーの例:『#abcdef』『#わさび』『#犯人はヤス』など
トリップの例:『三代目進行 ◆sjbsZxtbdD7t』の『◆』以降の部分

■ルール
・トリップキーには何を入れてもいい
・お題を伏せて、お題を入れてもいい
・本文の一部を伏せて、それを入れてもいい
・クイズの答え、犯人の名前、ヒロインの本音などでも可
・今回参加作品はこちらも参加必須とするが、参加しなくても反則は取らない

※80レスくらい前にご提案頂いた内容を元にしています
※本文を伏せ字にするよう案内しましたが、それは撤回します

■トリップキーの注意点
・表記揺れでトリップも変化します
 例:『#くま』『#クマ』『#熊』はすべて違うトリップ
・全角6文字未満では、全角5文字目が無視されます
 例:『#あいうえ』『#あいうえお』『#あいうえ尾』はすべて同じトリップ

372 :
・・・という感じです
よろしくお願いします!

373 :
>>357
感想ありがとうございます
いや解答してくださいよw

>>358
なるほどわさび
ある意味リアルな姉に、教師あるあるですね><
答えるこっちも面倒やったなぁ・・・

374 :
>>358
夏きたる〜、ビールうまいぞ〜、夏きたる〜、一句できましたァ! 358氏がトリをつとめるお題戦、ラストは全選択飲み会で一本締め! ファイナル宴会どろなわ仕合ッ
さあ、残業に追われ、持ち帰りの『理科』の答案を採点しておる教師の語り手〜、背後にはできあがった姉二人が飲んだくれ、
宴会の後片付けは弟の仕事と、採点の妨害をする〜、悪辣なる飲み姉たちは茶碗やらお皿やらの『器』を叩き、チンカンチンカン、音楽会を開いている〜、ひどいw
姉が言う、「チューブの練りワサビは『加工』『わさび』って言うんだぜ?」、うるさい! ハウス! こんな『美少女』捕まえて、ハウスとか酷いと言い合いラチあかず、
なんか気絶ENDだ! 酒を片手にギャーギャー騒いで夜は更ける、358氏の描き出した姉パーティがラストを飾り、今夜はおひらきフィニッシュだ! 全選択クリア〜

375 :
>>373
感想有り難うございます
最初はファンタジー系をかこうと思って居たのですが、何故かこんな事にw

>>374
いつも感想有り難うございます
『かこう』は、地質学とからめて『火口』にしようと思って居たのですが、上手く話を繋げられませんでしたorz

376 :
唐突に始まった企画
よくわからんとです

377 :
作品投稿時にトリップを設定してもらって、その内容を当てっこして遊ぼう
そしたら面白いんじゃないかな(答え合わせはトリップの仕様が使える)
ってだけの話です

378 :
ワッチョイとかIDの仕様はわかるけどトリップについてはサッパリ
371のトリップ説明を読んでも何をするのかよくわからん(読み専なので理解する必要はないんですが)

379 :
>>369

使用お題→『セット』

【トリップ殺人事件】

 七月某日、三代目進行氏が遺体で発見された。
 彼の最後の書き込みには↑のようなトリップが表示されており、これがダイイング・メッセージであろうと思われた。
 メッセージの内容はともかくとして、警察の捜査によって、容疑者が三人に絞り込まれた。
 一人目は、いつも盛り上げるような感想を書いてくれる競馬実況氏。
 二人目は、毎回作品を投稿しつつ全作品の感想も書く優しい感想氏。
 そして三人目は、ヤスである。
 賢明なる読者諸君は、もちろん『犯人はヤス』だと、そう推測されたであろう。
 だが決め手となる証拠がない。
 そして、その証拠となるのが、ダイイング・メッセージ、つまりトリップの内容である。

 トリップの元となる内容は『トリップキー』と呼ばれ、パスワードのようなものだ。
 同じトリップキーからは同じトリップが作られる。トリップキーが違うと、トリップも別になる。
 だから、トリップキーを知らないと、同じトリップは作れない。
 普通、トリップキーは秘密にして、成り済ましの防止に使う。

 さて、警察は、トリップの元となったトリップキーを『#犯人はヤス』だと推測した。
 この推測が当たっているかどうか、どうしたら確認できるだろうか。
 一番簡単なのは、このトリップキーを名前の欄にセットして、自分でも書き込んでみることである。
 トリップが同じになれば、ヤスが犯人で間違いない。違ったら、捜査は振り出しである。

 そして、この確認作業は、諸君にも可能なことである。
 当たれば良し。違ったら、またそれも良しである。
 試してみてはいかがだろうか。

380 :
・・・ってことなんですが、、、この説明でどうでしょう・・・?

381 :
>>379
律儀な進行氏がお題『セット』を使用、トリップ使用クイズの時間だ〜!
さあ七月某日、なんと三代目進行氏・遺体で発見さる〜、説明のために死んでしまうとはッw
容疑者は、俺w とベテラン氏w とヤスw だそうで、
要するに名前欄に「#文字列」と入れて書き込むと、スレッド上では名前が「◆文字列」みたいに表示されるので、今回は「◆yFnK8bpW9」を出せば正解だと、こういう仕組みだな〜、
ヒントは『犯人はヤス』なるダイイング・メッセージ、なるほど、ならば「#とある文字列」を名前の欄に『セット』! で、書き込みGO!

382 :


383 :
よし!w

384 :
>>381
感想ありがとうございます
説明が圧倒的にうまかったw

385 :
回答は、『うきわ』

こんな感じでしょうか?

386 :
そんな感じです!
ただし本文での解答=ネタバレなので、トリップのみで解答お願いします!

387 :
>>369 こんな感じか?
使用したお題:『セカイ系』『センター』『セールス』『セット』『セロリ』

【#セロリ の世界】

「お前が死ぬ必要なんてない!」

 僕は叫んだ。だけど彼女はその叫びを無視した。そのことがとても腹立たしい。

「こんなことをしたって無駄だ! 僕たちはただの脇役だ、主役になんてなれない! センターにはいつも違う奴がいる! だから、お前が犠牲になる必要なんてないんだ!」

「わかってるわ」

 彼女は涼し気に答えた。自分が今どんな状況になってるかわかっていてこんなに冷静なのか。彼女は寂しそうに呟いた。

「私たちは、主役にはなれない。私たちは居てもいなくてもどちらでもいい。だからと言って、私たちが欠けるわけにはいかないの。それくらいわかるでしょ?」

「だけど!!」

「お願い、わかって」

 彼女は小さく笑った。しかし、彼女は自らを犠牲にするのは諦めないようだった。
 彼女は自分の姿の惨状を見下ろし、小さく笑った。

「それに、もう手遅れよ。私は、もう助かりようがない。ただでさえセールスポイントがないのに、これじゃもうおしまいよ。でも私が犠牲になれば、あなたは助かる。助かるの」

「それは、そうだけど……でも、こんな、こんな!!」

「安心して、あなたは主役になれない。でも絶対に必要な脇役なの。そのあなたが守れただけで私は幸せよ」

 彼女は綺麗な笑顔のまま、涙を流した。僕は彼女の涙を拭うこともできず、しかし彼女の犠牲を無駄にしないために、力強く宣言した。

「わかった。僕は、立派な #セロリ になるよ! そしてハンバーグセットの端っこに必ず乗る! 君のことは忘れない……ありがとう」

「がんばって、私の分まで」

 そう言って僕は彼女に別れを告げ、農家のおじさんに摘まれていった。

388 :
全角だとダメなのか。失敗した……。

389 :
トリップは名前欄やでー

390 :
です、本文に『#トリップだよーん』の形式で書いても、変換されませんです
あくまで名前欄に入れるものです

例えば進行の名前の『◆sjbsZxtbdD7t』←これは飾りじゃないのよ

>>387
『セカイ系』+『セロリ』=直球って感じですねw
しっかり全消化してるしなぁ

この場合、名前欄に『#セロリ』、本文では『***』とか『???』とか手作業で隠さないといけないです

391 :
>>387
トリップを学ぼうクイズ回、387氏の挑戦はあいつらの物語ィ、全選択、サイドストーリーは突然に〜、
さあ、「『センター』にはいつも違う奴がいる、お前が死ぬ必要なんてない!」と自己犠牲の女子を引き止める語り手〜、
ただでさえ『セールス』ポイントがないのに、こうなってはもうおしまいだと、窮地の彼女は涼しげに分かってるふうの諦め模様、私が犠牲になれば、あなたは助かる、命の引き換え条件か!
彼女の涙をムダにはできぬ〜、男女二人の問題にクローズアップする『セカイ系』をクリア、そして語り手は宣言する、そう、…ハンバーグ『セット』の端っこに必ず乗ると!w
脇役界の大物『セロリ』の恋物語は涙で滲む塩テイストだ! クイズ抜きにしてもオチがきまっているぞ387氏、やるじゃんセロリ、食卓フィニッシュ!

392 :
なるほど、トリップなんて使ったことないからよーけわからんかった。教えてくれてアリガタヤ

393 :
セカイ系とトリップ指定がキツイんだろな。今回不作っぽそう。
まあ自分も2本目書けないから諦めてるんだけどネ。

394 :
一応書いてるけど、生煮えで全然まとまらない・・

ジャンル:セカイ系、ではないし、選択しないで外しても問題ないんですけどねw

395 :
作品を書き込もうとしたらエラーで全部消えた
やる気がなくなりました

396 :
(……きこえますか…きこえますか…投稿者さん…進行です…(中略)…今度から…メモ帳に…下書きをするのです…)

397 :
>>369

使用お題→『セカイ系』『センター』『セールス』『セット』『セロリ』

【フシギのセカイの彼女】(1/2)

 クイズ番組のセットらしき空間に、男が一人現れる。
「こんばんは。『セカイまる見えの果てまでナゼそこにフシギ発見!』のお時間です。今夜も一軒家のフシギを探っていきましょう。まずは解答者の皆様をご紹介します」
 カメラが切り替わる。
「当番組のアイドルにして永遠のロリBBA、セロ柳ロリ子さん」
 青白い顔の少女が口を開く。
「セカイで最も優れた動物、それはゴリラです」
 拍手。
 カメラが首を振り、その隣、ぼんやりとした様子の男を映す。
「セロ柳さんの下僕、窓際族のメガテリウム、芸人セカイの闇を知る男、チンパンジー岡田!」
「ウホ」
「あなた何それ。それってギャグかしら」
「ウホ」
 そのまた隣。
「□リコンセールス不動の一位、あのセカイ的アイドルグループのセンター……を嫁にした男、作詞家の冬モト康夫さん」
 頭を丸めて、僧侶のような格好だ。
「ファンの皆様の浄財が、僕のお給料です」
 拍手はない。
 次も男で、魚のように大きな目をしている。
「魚のセカイに詳しい映画監督、深海魚くん」
「ギョギョギョの魚男です。マサチューセッツの方から来ました、ギョ」
 次は女のようだが、顔を隠している。
「そして最後に、当番組で唯一の常識人、芸能ジャーナリストでフシギハンターの、鈴木・イリーニチナ・ファーティマさんです」
「こんばんは、よろしくお願いします」

 *

「――――それでは皆様の解答ですが、分かれましたね。スーパーシンコウくん人形を出してきました、セロ柳さん。解答は『ゴリラ』」
「この家の住人はですね、絶対にゴリラだと、このスパシン人形が申しております。『ゴリラ、アー、ゴリラダヨ、アー』」
 ギャラリーの笑い声が入る。
「はい、次の方、チンパンジー岡田さん。『ウホ』」
「ウホ」
「つまりそれは……」
「わたくしと同じ答えということかしら」
「ウホ」
「……類人猿、ということでしょうか。次、こちらもスーパーシンコウくん人形、冬モトさんは『ハゲ』」
「この世の果てで庵(いおり)を結ぶおじさん……ハゲで間違いありません」
 目を丸くするセロ柳の映像。
「……おじさんとは限らないと思いますが……深海魚くん。『教団関係者』」
「こんな離れた場所に住んでいるということは、ギョッ、きっと何か、ギョッとするような、ギョギョッ、セカイのヒミツを、ギョギョギョッ、隠してます、ギョギョギョギョッ」
 カメラは司会者に戻るが、深海魚くんは「ギョギョギョ」と言い続ける。
「最後に鈴木さん。解答は……『ワタシ』?」
 うなずいて見せる鈴木。
「ナアム、ワタシ、ここに住んでました。でも……もう一人誰か……誰かと一緒に……」
 彼女はそのまま考え込んでしまう。

398 :
【フシギのセカイの彼女】(2/2)

 彼女と一緒に住んでいたのは、僕だ。
 彼女と僕は幸せだった。
 だけど、ある日突然、セカイは壊れてしまった。
 壊れてゆがんだセカイには、そのゆがみを引き受ける形代が必要だった。
 選ばれたのは彼女。
 彼女は存在を解体され、記憶すらも失って、この画面の中に閉じ込められた。

 *

「……そう……誰かと一緒に……住んで……ました。住んでたんです」
 彼女の声が何かを確信する。だけどそこで、いつも通りに邪魔が入る。
「鈴木さん、いい加減になさい。セロリでもかじって、目をお覚ましになってはいかが」
「ウホ」
「あっ、岡田!」
 セロ柳の声に、なぜか岡田がセロリを取り出す。そしてセロリを食べる。
「ウホ……ウホ……ウホウホウホ!」
 ぼんやりとした彼の顔が、にわかにはっきりとする。
「ウホ! 岡田、動きます!」
 岡田が立ち上がった。
「ウホウホ!」
 岡田が動いた。
「ウホ!」
 そして座った。
「岡田、動きました」
「あなたそれなんなの。やっぱりチンパンジーって駄目ね」
「ところで」
 不意に冬モトが口を開く。
「岡田さんのところは、どのくらい、その、受け取ってますか」
「ウホ。自分は詳しくないですが、百億円は下らないと聞いてます」
「そうですか。こっちも数十億以上、いや、もっとでしょうね」
「あなたたち急になんの話?」
 岡田と冬モトが顔を見合わせる。
「ウホ」
「いえいえ、俗世間の話です。深海魚くんの方はどうですか?」
「ギョギョ?」

 *

「えー、では、鈴木さんの解答は『タワシ』、ということでよろしいですね」
「……はい」
 まただ。彼女は今回も正解できない。僕はその様子を見ているだけ。
「それでは正解のVTRを見てみましょう」
 僕は無性に腹が立って、画面を殴り付けた。これまでもそうしたことはあったが、今度は画面を壊すつもりで、力一杯殴った。殴り続けた。
「……ラー、ワタシ、鈴木ではありません」
 画面の中の彼女が、おかしなことを言い出した。
「鈴木ファーティマさん?」
「ファーティマではありません」
「ではナターシャさん?」
「違います」
「シャハラザードさん? グレーテルさん? イザナミさん? アリスさん? ゲルダさん? ジュリエットさん?」
「いいえ、違います」
 顔を隠していたものが取り除かれる。そこには……何もなかった。
「ワタシは姿なき者。ワタシはただの――――」

※この作品内ではなく画面内の単語、漢字とひらがなで3文字です。

399 :
・・・という、作者本人もコメントに困る話でした・・・

400 :
間に合わなかったorz

>>369
使用お題:『セカイ系』『センター』『セールス』『セット』『セロリ』

【*****の主人公は攻略対象外の俺に付きまとう】(1/2)


「ベルモンドさん!!」
「ああ、コトリか」

 黒髪の少女が、俺こと宰相であるマクナガル侯爵の一人息子、ベルモンド・フェア・マクナガルに駆け寄って来る。
 この世界では珍しい黒髪の少女の名はコトリ。彼女は平民ながら、ここ『アルバカール魔法学院』に特待生として招かれる程に《光》の魔法適正の高い娘だ。

「ベルモンドさん、計画の方は順調なんですか?」
「まあね、大豆の発酵も上手くいきそうだし、多分、もう少しすれば……」
「お醤油! 出来るんですね!!」
「その前に味噌かな?」

 「楽しみです!!」と言いながら彼女はニシシと笑った。
 天真爛漫と言えば聞こえが良いが、本来なら平民の彼女が侯爵家子息である俺に、こんな口の利き方をする事は許されない。
 だが俺は、彼女にその事を許している。

 それには大きな二つの理由があった。
 それは、俺と彼女が、同じ日本からの転生者である事と、彼女が、*****『エターナル・ファンタジック・ロンド』世界の主人公だからだ。

 『エターナル・ファンタジック・ロンド』は元の世界で10万枚をセールスされたゲームで、恥ずかしながら俺もやり込んでしまった名作だ。
 元々は妹が買って来たのだが、そのプレイを横で見ている内に自分もやってみたくなってしまったのだ。

 そんな事はともかく。
 『エターナル・ファンタジック・ロンド』を遣り込んでいた俺は、転生してすぐにこの世界がゲームと同じ設定の世界であると気が付いた。
 もっとも俺が転生したベルモンドは、侯爵家と言えどゲームでは声優無しのモブ……「皇子の取り巻きその1」なんだけどさ。

 因みにコトリは、その事を知らない。彼女はどうやらこのゲームをした事は無かったらしい。その状態で「君は*****の主人公なんだ」って言っても、混乱させるだけだしね。

 ******

 彼女と俺が出会ったきっかけはマヨネーズだった。

 別に現代知識でNAISEIチートとかしたかったわけじゃない。だけど、領地の農民が不作に喘いでいたら力を貸すのは領主の息子として当たり前では無いだろうか?
 いわゆる堆肥は、日本では当たり前に使われてるけど、この世界ではただ種をまくだけ。
 連作障害は経験則で知っているからか、畑を休ませるってことはするけど、堆肥を土に混ぜるなんて事はまったくしない。
 つまりは本当に「大地の恵み」ってだけなんだ。
 それで、俺が堆肥と言うものの作り方や、水はけの良い畑の作り方を実践させた。領主の息子権限で。

 最初こそ、貴族の横暴だと顔を顰めていた領民達だったけど、結果が出る様に成ってからはひどく感謝された。
 そんな事も有って農民から採れたての野菜を貰える様に成ったんだけど、問題は食べ方だった。
 火を通しても美味しいんだけど、採れたての野菜なら生で食べたい。
 だけど、塩をふるくらいしか食べ方が無かったから、俺はマヨネーズを作る事にした。
 本当は味噌をつけて食べたかったんだけど、流石に時間がかかりすぎるから、まだ、時間のかからないマヨネーズを最初に作ったんだ。

 それで、貰った野菜を野菜スティックにしてマヨネーズを付けて食べて居たら、彼女に声を掛けられたんだよね。

401 :
【*****の主人公は攻略対象外の俺に付きまとう】(2/2)


「それ! マヨネーズですか!!」

 って、すごい食いつきっぷりだった。

「あ、うん、食べる?」
「はい!!」

 そっと、野菜スティックを差し出すと彼女は遠慮なく食べ始めた。

「ん〜〜!! 久しぶりのマヨだ〜〜!!」

 マヨネーズはこの世界にある調味料じゃない。俺が個人的に作った物だ。だから、この白いクリームを見て即座に『マヨネーズ』だと口にできるのは……

「君も、日本から転生して来たのかい?」
「!!」
「ねえ、君も転生者なのか?」
「………ロ…、…が………です……」
「何?」

 黒髪の少女はプルプルと震えていたんだけど……

「……セロリ、苦手なんです」

 うえ〜って表情で、セロリを飲み込めず、彼女はそう涙目で言った。

 ******

 彼女が日本からの転生者であり、尚且つ主人公だって気が付いたのは、その日、屋敷に帰ってからだった。
 正直、「やっちまった」感が半端なかったよ。
 攻略対象である皇子や第二王子、軍務卿の子息や財務大臣の息子を差し置いて、モブである俺がファーストイベントを飾っちゃったんだから当たり前だ。

 その上、彼女には使命がある。
 『エターナル・ファンタジック・ロンド』のストーリーは、キャッキャウフフの恋愛だけのゲームでは無い。彼女はやがて、魔王との対決が待っているんだから。
 《光》の魔法適正と言うのは伊達じゃない。《光》の魔法はかつて勇者が使ったとされる魔法で、魔王封印には必須の魔法だ。

 魔王復活と《光》の魔法適正者の出現はセットであり、切り離して考える事は出来ない。
 彼女は、学園生活の中で、攻略対象の皆と愛情を育んで、その絆の力で魔王を再封印しなければならないのだ。
 だからこそ、俺が皇子を差し置いてファーストイベントを奪ってしまったのはかなり不味いと思ったんだ。
 それでもその時の俺は、それ程深刻に考えて無かった。
 所詮、俺は声優も無いモブキャラで、センターに立てる器じゃない。彼女が主人公なら、イベントの強制力できっと、攻略対象の誰かとのルートに入るだろうってね。

 ******

「ベルモンドさ〜ん!!」
「ああ、コトリ……」

 周りの人間がニヤニヤと笑う。あれからコトリは事ある毎に俺に声を掛けて来た。俺自身がそれを許していると言う事も有るけど、ファーストイベント奪ってしまったって事もあって、俺を仲介にして、攻略対象の皆との絆を結んでもらおうと思ったからだ。
 だけど、その俺の目論見は上手くいっていない様に思える。
 確かに各イベントは消化している筈なんだが、どうも、攻略対象達とコトリの仲が進んでいる様に思えないのだ。
 と、言うより、誰より仲が良いのは俺の様に思える。
 このままでは魔王の封印が失敗して世界が……

 ******

 『エターナル・ファンタジック・ロンド』発売から1年も経たず、このゲームは、スマーフォン向けに移植される事が決定した。
 そのスマートフォン版では新たなシナリオが追加され……

402 :
お題→『セカイ系』『センター』『セールス』『セット』『セロリ』締切

【参加作品一覧】
>>379【トリップ殺人事件】
>>387【#セロリ の世界】
>>397【フシギのセカイの彼女】
>>400【*****の主人公は攻略対象外の俺に付きまとう】

403 :
いやはやともかく作品ありがとうございました
難しいだろうとは思ってましたが、ここまでとは・・・

企画としては失敗でしたが、今後とも各自の判断でトリップを使うのはおkです

404 :
では今週は企画なし、5つです

お題安価>>405-409

405 :
脱獄

406 :


407 :
はんてん

408 :
『ビリビリイヤーン』

すみません400です
自分のところの問題は「コトリは何の主人公でしょうか?」ですorz

409 :
『小麦色』

410 :
☆お題→『脱獄』『6』『はんてん』『ビリビリイヤーン』『小麦色』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→8/11の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

411 :
毎日暑いですね・・・
お題もありがとうございます、1つ変わったのがありますけどw

企画疲れもあると思いますし、皆さんマイペースで行きましょう・・・

412 :
>>400
なんか普通に面白そう
ヒロインと主人公の性格が良さそうで好感が持てます
あまりセカイ系と結び付かない世界観だと思うので、頑張って絞り出した感ががが

413 :
よっしゃ楽勝やw

414 :
>>397
トリップ回で苦労する進行氏w ほほう、こんな趣向もリーチ範囲か、全選択! テレビジョン・メモリアルパレードの怪!
さあ、今夜もクイズ番組の『セット』空間にて娯楽の時間がはじまったぜ、番組名、セカイまる見えの果てまでナゼそこにフシギ発見w 
出演者の紹介だ〜、ロリババアのセロ柳、チンパンジー岡田、□リコン『セールス』不動の一位の『センター』と結婚した冬モト康夫、あと深海魚くん! そして芸能ジャーナリストでフシギハンターの、鈴木・イリーニチナ・ファーティマさん、どーぞ!
クイズ出題、ゴリラだ、岡田だ、教団だと、どこかズレた回答に高まる違和感ッ、視聴者である語り手だけが知る事実、鈴木さんとの『セカイ系』な物語…テレビ空間に閉じ込められた鈴木さんが自身の記憶を探り始める、
『セロリ』でもかじって目をお覚ましと、回答を急かしまくるテレビ番組に、鈴木さんは捏造された記憶のカケラを掴みあてッ! ねじくれた世界に出口はあるのか? 進行氏、ディープ&シュールな世界観で回答をオチに設定、全選択クリア!

>>400
遅刻だってしっかり描く〜、400氏の全選択は冒険の幕開け劇の胸高鳴り満載に進む模様、あの子のファーストイベントにカンパイせよッ★
さあ、10万枚を『セールス』されたゲーム、エターナル・ファンタジック・ロンドにおいて転生した語り手がゲームの主人公であるコトリさんと語らう〜、ゲーム趣旨は女子が男子を攻略しながら進むときめき形式、
魔王復活と『セット』である《光》の魔法適正者コトリさんに対し、そもそも設定が『センター』に立てる器じゃない語り手は、たまにマヨネーズなどを振舞っているだけなのだが気に入られたァw
うえ〜って『セロリ』を飲み込めずにいる彼女、って、え、マヨ知ってるって、まさかキミも転生者なのかと尋ねる語り手だ〜、ここで『セカイ系』か! このままではストーリーが破綻して魔王の封印が失敗しちゃう
ってところで新たなシナリオ追加で多分セーフッ! 400氏、転生と転生が相互輪廻する物語序盤でワクワクENDの続編期待フィニッシュ、焦らずじっくりコトコトと、お題を活かしながら全選択をクリアーだぜ、なお、すまんクイズは分からんかったw

415 :
京アニ事件ガバガバ設定まとめ

・警察官に捕まる時に「パクりやがって!」と意味不明な発言
 →なんで恨みのある現場で言わなかったの?

・前科ありでヘソ周りのタトゥーというアニオタ、ワナビとは程遠い人物像
 →なのに2chで「事件直後」から容疑者のものとされる書き込みが「大量かつ具体的、迅速に」晒される
 →その後取って付けたように青葉の部屋から「京アニグッズ」が出て来たという漠然とした報道

・関東からわざわざ来て数日間京都に滞在してたのにスマホすら持ち歩いていない不自然さ
 →後にスマホ所有報道あったけど、それを使わないで足の付くネカフェで情報収集した必要性は?

・放火後に自Rるでもなく本格的に逃走するでもない不自然な行動
 →ガソリン購入など念入りに計画した割にはなぜそこだけガバガバなの?

・パクり発言直後意識不明の重体に陥る青葉容疑者
 →なのに翌朝のニュース報道で「小説を盗まれた」と突如具体的な報道が出る

・青葉の部屋に家宅捜索が入るも見つかったのは音響機器ぐらいという初期の報道
 →なのにかなり経ってから、突如PC持ってた、スマホ持ってた報道が出る
 →普通はPCもスマホも重要な証拠だから真っ先に探すし見つかりやすいもんなんじゃね?

・青葉の部屋から原稿用紙が見つかったという報道
 →PCもあったのになぜ手書き原稿なの?

・青葉が京アニの賞に応募していた形跡があったと報道
 →原稿が残っているという体で話す京アニの「代理人弁護士」
 →個人情報だけならまだしも規定違反で一次落ちの「原稿」を残す意図は?

この事件の絵図を描いた教唆犯の顔↓

「時雨沢恵一」と「乙一」の比較画像 ←ひんがら目の男、青木恵一(ブサホモガイジ2号・中込将之こと砂雪命名)
http://imgur.com/a/9MEH5Uo

416 :
>>414
感想と解答ありがとうございますw
なんとか!踏みとどまれたかなぁ、という感じです・・・

他人のクイズに勝手にヒント出しちゃいますけど、なろうランキング内、5文字です

417 :
>>410
使用お題→『6』『はんてん』『ビリビリイヤーン』『小麦色』

【登校中の悲劇】(1/2)

「うわーっ遅刻だー!ヤバいヤバい!」

私はどこにでもいる普通の女子高生。
目覚まし時計をちゃんとセットしていたのに寝坊してしまい大パニックだ。

「お母さん!何で起こしてくれなかったのよ!」
「何度も起こそうとしたのに起きないあんたが悪いのよ!ったく…」

プンプンしながらも、机の上に置いてあるトーストを一気に頬張り牛乳をグイッと飲み干す。
歯磨きも済ませカバンを手に取ると、ローファーを履いて勢いよく飛び出す。
今日から期末テストで一生懸命勉強したのに、遅刻して受けられなかったらとなったら全てが水の泡だ。
とにかく学校へと必死に走る。

「それにしても蒸し暑いなあ。イヤになっちゃう…」

今は6月で梅雨の時期。今日は幸い太陽が顔を出して晴れているものの、
昨夜は豪雨だったため所々に水たまりができていた。
水たまりに用心するものの前から来た自転車に気を取られ、思わずバシャーン!と右足を水たまりに突っ込ませてしまう。
ローファーと黒のニーソックスは水と泥でベチャッと汚れてしまった。

「最悪…」

特にお気に入りの黒ニーソは綺麗に洗濯してもらったばかりなのに。
いや今はそんなことを考えている場合ではない。とにかく学校へ急ぐのだ。
ニーソとローファーくらいまた綺麗に洗えばいいだけ。

「もうこんな所で立ち止まってる場合じゃないのに!私のバカ!」

418 :
【登校中の悲劇】(2/2)

とにかく私は学校に遅刻しないことだけを考えて、死に物狂いで弾丸のように走った。
学校の時計台が見えてきた。時計に目をやると現在8時45分、授業開始の9時まであと15分だ。

「あと15分あれば十分余裕だわ。はぁ良かったぁ〜」

そう気が緩んで走るのをやめたその時、目の前に小麦色で黒い斑点のついた犬が現れた。
首輪をしていない、もしかして野良犬だろうか。その犬は舌をハァハァさせながら私の方に歩み寄ってきた。

「な、何…?」

突然その犬は左足の方のニーソに噛みつきグイグイ引っ張ってきた。

「ちょっとコラ!何すんのよ!」

いきなりの出来事に私は気が動転してしまう。とりあえず足を振って抵抗するものの、犬は頑なにニーソを放そうとしない。
グイーッと力強く乱暴に引っ張ったため、ニーソが縫い目からビリッと音を立てて破けてきた。

「イヤーン!あっち行ってよこのバカ犬ー!」

授業開始の1分前、クラスのみんなは私の方を見て唖然としていた。
右足のニーソとローファーはビショビショに濡れ、
左足のニーソが縫い目から思いきり破けてしまった私を見てとにかく驚いた。

「だ、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫よ、気にしないで…」

あの後なんとか犬を追い払って遅刻せずには済んだものの、ニーソはとにかく酷い状態だ。

「ま、まあ今はテストに集中、集中…!」

帰ったらお母さんに頼んで縫って直してもらおう。

419 :
>>410 擬人化ネタは鉄板すぎて卑怯かな?
使用したお題:『脱獄』『6』『はんてん』『小麦色』

【脱獄失敗】

「ぐあ、やめろ! オレをこんなところに入れるだなんて!!」

 オレの叫び声は空しく響いた。手を止めてくれる人などいない。
 ものすごく狭い円状の籠の中にオレはギューギューに押し込められた。その後、バタンと閉じ込められる。

「クソッ、なんでこんな狭苦しいところに入れられなきゃいけないんだ。何も悪いことはしてな……熱っ!?」

 薄暗い部屋に閉じ込められただけでなく、今度は火攻めが行われようとしているようだった。室内が赤くなり、どんどん温度が上昇していく。熱い、熱すぎる!
 燃えるような熱の中になんと60分も閉じ込められた。全身が小麦色になり、オレは体中の水分がなくなって干からびそうになる。
 そんな時、急に火攻めが終わった。電子音一つ。扉が開く。

「た、たすか、った。くそ、こ、このままじゃマズイ。に、逃げなきゃ、殺される!!」

 オレを押し込めた円状の籠が反転し、一瞬薄暗くなった。その隙を逃さない。
 鉄に張り付いた皮膚を引きはがしてでもオレは脱獄を試みる。次にこの籠が持ち上がった瞬間が勝負だ。オレは絶対に逃げてやる。
 その瞬間を見逃さない。籠が持ち上がり、外の明かりが見え、オレは逃げ出そうとし、体の熱を放出し、しかし逃げきれずに巨大な手に捕まった。逃げられない!

「し、しまった! クソ、離せ! 離せ!!」

 しかし放してくれない。オレは逃れようとするも、巨大な手の2本の指に体を締め付けられて身動きが取れない。
 拷問のせいか、体が硬くなって動きが取れない。そんなオレを巨大な手がゆっくり、ゆっくりと持ち上げていく。その先には、オレの体より大きな口が。

「やめろ、やめてくれ。やめろ! やめてくれ! ああああああああああああああっ!!!」

 オレの絶叫を聞いてくれる者は居なかった。薄れゆく意識の中、どこか遠くで「うーん、ドーナツ美味しいー!」という声が聞こえた気がした。

420 :
>>417
早速wざっくりドタバタで楽しい
お題をどうするかと思いましたが、作風に合った解釈
そりゃこんなボロボロになって入ってきたら驚きますよねw

>>419
そんなことはないと思いますけど、1行目でネタばらしはやめてw
小麦色でその発想はなかった
ドーナツ食べたいなぁ・・・

421 :
>>416
ちょっと調べるかw

422 :
>>417
早いな、お題宣言は『6』『はんてん』『ビリビリイヤーン』『小麦色』! 417氏が女子高生に災難受難を課していく、いつものトラブルガールに祝福を!
さあ、時期は『6』月、梅雨シーズン、遅刻に焦りながらもトースト頬張り、牛乳をグイッと飲み干す女子高生〜、これは、なんというお約束感なのか、確実に登校障害が発生するであろうw
家を出て前から来た自転車によって、さっそく水溜りに突っ込まされる女子高生、ほらなやっぱりだ、ローファーとのニーソックスが汚れてしまったァ、
やっと学校の時計台見えたところで、『小麦色』に黒い『斑点』の野犬出現、わんこにニーソを破かれて、ここでお題『ビリビリイヤーン』を消化だァ、このお題どういうことだよw
受難につぐ受難で登校のっけからえらい格好になった女子高生が宣言お題を無事クリア〜、うんまあ、なんか、この作品、『ビリビリイヤーン』がやりたかっただけじゃないだろうなという疑いをはらみつつ、417氏、トップゴール!

>>419
てことで二番手・419氏は鉄板すぎる懸念を口に、『脱獄』『6』『はんてん』『小麦色』を選択〜、カマドの中で聞こゆ、聞こえる、断末魔の声が〜、
さあ、主人公がものすごく狭い円状のセットの中に押し込められ、『6』0分もかけて拷問されている模様、この猛暑で大変だなw 
円状の何かが『反転』、えっと、これチャンスか、スタンバイOK、扉が開いて、『小麦色』になった主人公は『脱獄』を試みる、のだが(小麦色てw)、巨人の手が彼を捕まえてしまい…ッ!? 
だめだ、身体が硬くなって動かねえ、その先には巨人の大きな口があんぐりって、食べ物主人公でしたオチw 途中から何の食べ物かとクイズ状態にも感じられた本作、答えは、ドーナツ!
さすがに『ビリビリイヤーン』はここでは使えなかったか…手強いお題だぜw 宣言お題を踏破した419氏がさらりと楽しませるドーナツ小説で二番手に己の名を刻んだENDォ〜

423 :
>>410
使用するお題→『脱獄』『6』『ビリビリイヤーン』『小麦色』

【老婆の復讐】(1/3)

午後6時、太陽が沈み夜になりかけた時の出来事だった。
西部劇マニアのレイチェルは家路を急いでいた。

「早く家に帰らなくちゃ!ドラマが始まっちゃう!」

そう、いつも見ている大好きな西部劇のドラマが始まるからだ。いつもはちゃんと録画予約をしているのだが、
今日はそれをうっかり忘れてしまい、とにかく足早で家へと向かっていた。
その途中、顔を隠すかのようにフードを着た老婆が公園のベンチに座っているのに気付き、足を止めた。

「お婆さん、もう夜になるから早く家に帰った方がいいわよ」
「あら親切な子だねえ」

するとその老婆はレイチェルの腕を力強くギュッと握ってきた。

「い、痛い!な、何するの!?」
「小娘、私を覚えているかい?忘れたとは言わせないよ…」
「あ、あんたは…!!」

フードを脱いだ老婆を見て、レイチェルは言葉を失いかけた。
そう、約2年前に子供のおもちゃを盗んで高値で売りさばいでいたあの悪い老婆だ。

「どうして、あんたがここに!?逮捕されたはずなのに!」
「理由は簡単さ!脱獄したんだよ!」

その老婆の名はナタリー。元女子プロレスラーで名を馳せていたらしく、体も相当鍛えていたようで
既に80を超えているものの今も恰幅が良く、力もそれなりに強かった。

「あの時はよく私の邪魔をしてくれたね。荒稼ぎして楽しんでいたというのに…」

レイチェルはなんとかナタリーを取り押さえようとするが、今は威嚇用の銃も持ち合わせていない。
あまりにも運が悪すぎる。こうなったら今は逃げるしかない。
彼女は自分の腕を握るナタリーの手をなんとか振り払い、逃げようとした。

「逃がさないよ、ガンマン小娘が!」

ナタリーは咄嗟にレイチェルのコートを掴んだ。コートがビリビリと音を立てて破れてきた。

「イ、イヤアアア!放してよ!私のコートが!」
「おとなしくしな!」

424 :
【老婆の復讐】(2/3)

ナタリーはレイチェルに思いきり腹パンを食らわせた。

「グフッ!!」

レイチェルは気を失ってそのまま倒れてしまい、
ナタリーは彼女を軽く持ち上げるとどこかへと連れて行った。

「どうしようもない小娘だ。まったく…」

数時間後、レイチェルが意識を取り戻す。勢いよくパンチされたため、お腹がまだ痛む。

「い、痛たたた…。こ、ここはどこ?」
「目を覚ましたかい?ならさっさと歩きな」

両手を縄で強く縛られて手出しできないようにされていた。
闇雲に抵抗したら何をされるか分からない。今は仕方なくナタリーに従い、歩き始める。
やけに見覚えがある場所かと思ったら、あの古びた屋敷の中だった。
歩く度にカチャカチャ鳴る拍車の音に、ナタリーは酷く苛つき怒り出す。

「うるさいんだよ!その音!」

ナタリーは奥の部屋からハンマーを持ってきて、それでブーツの拍車を思いきり叩く。

「ワッッ!や、やめて!」

ハンマーで乱暴に叩かれた拍車は原型をとどめないほど酷く歪んで
使い物にならなくなってしまい、それをナタリーは意地悪く嘲笑った。
怒りで我慢ができなくなるが、今はとりあえず大人しく歩くしかない。
辿り着いた先は3階のあの部屋だった。
部屋の中に入れられ、椅子に座らされるとそのまま足も縄で縛られ動けなくなってしまう。

「な、何する気なの?」
「何するって分かっているだろう?あんたをグチャグチャにしてやるのさ」

ナタリーはまず私の頭からウエスタンハットを脱がし、窓から思いきり放り投げた。
そのまま帽子は風でどこかに飛ばされてしまった。

「じっくりといじめてやるから覚悟しな」

425 :
【老婆の復讐】(3/3)

両手と両足を縄で縛られ、身動きを取ることのできないレイチェルはどうすることもできない。
ポニーテールを強く引っ張られた後、辛いスープを無理やり飲まされる。

「か、辛い辛い!お願いだから水飲ませて!」
「分かったよ、ほら!」

ナタリーはバケツに入った水をレイチェルにバシャッと思いきり浴びせ、
ビショビショになった彼女の姿を見て笑い転げる。

「面白いねえアハハ!」
「くっ…」

するとナタリーは奥の部屋へと姿を消してしまう。
数分後、プロレスラーの衣装に着替えた彼女が姿を現し、小麦色の肌と凄い筋肉が露わになった。

「さてと本番と行こうかね!」
「(もうダメだ…)」

レイチェルが死を覚悟したその時だった。

「おとなしくしろ!ナタリー!」

突然、警察が続々と屋敷に突入してきた。一体何事かとナタリーは手を止める。
レイチェルも何が起こったのか一瞬理解できなかった。
警察と一緒に現れたのは、アニーと彼女のペットでイグアナのトニーだった。
それにアニーの手にはレイチェルの帽子があった。

「ア、アニーちゃん!それにトニーじゃない!」
「レイチェルさん大丈夫ですか!?」

警察の放った麻酔銃がナタリーに当たり、バタッと倒れた彼女をそのまま連行していく。

「ったくどうしようもない老婆だ。今度は禁固刑だ!」

縄を解いてもらいレイチェルは自由の身になった。

「レイチェルさん、この子が通報してくれたんです」
「アニーちゃん、どうしてここが分かったの?」
「その時、トニーと散歩していたんです。途中で急にトニーが走り出して追いかけると、
レイチェルさんの帽子を見つけて咥えていたんです」
「どうやらレイチェルさんの匂いを覚えていたようで、この屋敷に辿り着けたんです」

以前拍車を無くした時に続いて、今回もレイチェルはイグアナのトニーに救われた。

「アニーちゃん、それにトニー、本当にどうもありがとう。あなた達がいなければ今頃命は無かったわ」
「どういたしましてです。て、照れちゃいます///」

レイチェルはアニーとトニーを同時に優しく撫でた。
トニーも嬉しそうに彼女の顔をペロッと舐めた。
ナタリーはあの後さらに辺境の地にある刑務所に送還され、50年の禁固刑となった。
人生いつ何が起こるか分からない。

「今日も気を引き締めていかなくっちゃね!」

いつものガンマン姿に身を包み、レイチェルは今日も街へ飛び出すのだった。


おしまい

426 :
おしまいはどうしておしまいなのか考えたことはありますか?

427 :
>>421
ああー、、いつものお節介すまぬです・・

>>423
マジかよwと思いましたが、お題からすれば必然だった・・・
因縁の対決
前作のキャラが活躍しつつ、今回は警察も仕事してますねw

428 :
>>423
やってきたぜレイチェルシリーズ捕り物回ッ、423氏の選択は『脱獄』『6』『ビリビリイヤーン』『小麦色』、レイチェルVSグランドマザー!
さあ、太陽沈む午後『6』時、西部劇のドラマ見なきゃと家路のガンマン娘・レイチェルさんが、公園ベンチの老婆に大丈夫かと声をかける〜、しかし、腕をギュッと掴まれて? だ、誰だお前は! こいつは、犯罪婆さんだw
おもちゃを盗みまくって捕まったはずだが、どうしてここに…、そりゃ『脱獄』したんだよッと堂々という婆さん、するなw
レイチェルさん、コートを掴まれ引き裂かれ『ビリビリイヤーン』を消化しながら、元レスラーの婆さんに、腹パンかまされ気絶する〜、どうしようもない小娘だよ…と老婆、何がだよw 拍車破壊、帽子投げ捨て、辛いもの拷問〜、
ついに『小麦色』の肌を見せる老婆に絶望感、だが、レイチェルさんに恩義のあるアニーちゃんが警察を呼んで麻酔銃END! 猛獣扱いかw 423氏、激しいアクション&サスペンスで宣言お題をクリアw レイチェルシリーズ絶好調だッ

429 :
>>427
>>428
感想ありがとうございます!
これまでに出てきたキャラを再活用するのも面白いだろうなあ、とふと思い書いてみました
今回も楽しんでいただけたようで凄く嬉しいです

430 :
>>410
使用お題→『6』『はんてん』『小麦色』

【マイライフ・アズ・ブーツ THE FINAL】(1/3)
>>272【マイライフ・アズ・ブーツ】の続編及び完結編です

私はロングブーツ。
大手メーカーで製造された、丈夫な革製でダークブラウンのロングブーツ。
私にはかつてミサトというとても優しい持ち主がいて、とても大切にされてきた。
彼女に履かれて幸せな毎日を送ってきた。古くなって何年かは押入れの中に保管されてたけど
ある日転機が訪れた。ミサトの友達に譲られることになったのだ。
新しい持ち主の元でまた楽しい日々を送れる…そう信じていた。
いやそう信じていた私がバカだったのかもしれない。

「ふぅ今日も土砂降りだわー!やんなっちゃうなー!」

彼女はミサトの大学時代の友人のカナエ。カナエに譲られて1年と6ヶ月ほどが経過した。
カナエはとにかくブーツ使いが荒い、荒すぎる。もう嫌になるくらい。
彼女はとにかくザーザーと雨が降る日に限ってレインブーツみたいに扱うのだ。
理由は単純。ロングだから多少浸水したとこを歩いても平気だからだ。
言っておくけど私はレインブーツじゃない。れっきとした革製のロングブーツだ。
雨の日に履くような物じゃない。

「やっぱ雨の日はロングブーツが便利よねー!」

雨でびしょ濡れになってもカナエはほとんど手入れをしない。
するとしてもタオルで軽く拭くだけ。たったそれだけ。
ブーツキーパーで固定さえもしてくれないから最近型崩れがひどくなってきた。
カナエは一体私のようなブーツを何だと思っているのだろうか。

431 :
【マイライフ・アズ・ブーツ THE FINAL】(2/3)

雨で濡れてもろくに手入れもされずにそのまま放置される一方だ。

「ミサトの元に帰りたい。あの優しいミサトの元に…」
そう願う毎日。でもミサトはもう私のことは既に忘れているかもしれない。
就職してから多忙だから私のことを考える暇なんて全然無いはず。
ろくに手入れもされることがなかったため、私の姿はいつの間にか小麦色に変色し、
かつてのダークブラウンで綺麗だった頃の面影は無くなりつつあった。
それに白い斑点、そうカビができるほど汚くなっていた。

「うわっミサトから貰ったブーツ、すっごく汚くなってんじゃん。もう履けないわこれ!」

一体、誰のせいでこうなったと思ってんのよ!他でもないあんたのせいよ!
あんたがちゃんと手入れを怠らずにしてくれれば、いつまでも綺麗でいれたはずなのに!
どう責任取ってくれるのよ!

「うーん、これもう捨てちゃおうかなー。ミサトには悪いけど」

えっ!?今、捨てるって言わなかった!?
それだけは絶対にやめて!今からクリームを塗って綺麗にすればまだ間に合うって!

「確かカビのできたブーツってクリーニングしてもらえないんだよねー」

カナエはマスク、両手に軍手をはめると私を手に取り、どこかへと持っていく。

「ちょ、ちょっとどこへ持っていく気?ま、まさか…!!」

そう、ゴミ置場だ。他に置かれてあるゴミ袋と一緒に私はそこにポイッと捨てられる。

「雨の日はホントに助かったわ。ありがと。じゃねー!」

これほど最悪な持ち主は見たことがない。許せない。
ゴミ置場に放置されて1日が経過した。もし今日がゴミ収集日だったらもうおしまいだ。
近くを通り過ぎる車を見る度に怖くなってくる。

「私、一体どうなっちゃうんだろ…」

432 :
【マイライフ・アズ・ブーツ THE FINAL】(3/3)

あれから2日が経過したある日、一人の女がゴミ置場の近くを通りかかった。
女の目に私が目に留まったのだろうか急に立ち止まる。

「あら、このブーツ。変色してカビ生えてるけど、少し手入れすれば綺麗になるのに…」

その女は私を手に取ると優しく撫でる。

「酷い持ち主に捨てられたのね。可哀想に…」

そう言うと女は私をどこかへと持っていく。
えっ!?まさかの予想外の出来事に私は驚きを隠せない。
女は私を家に持って帰ると靴用のクリームで塗って綺麗に手入れしてくれた。
カビは目立たなくなったものの、変色と型崩れだけはどうにもならなかった。

「私が履いてあげたいけど、もう履物として機能していないみたい…」

彼女の言う通りだ。ミサトに初めて買ってもらってから今日まで5年近くは経過している。
もう古くなって履いてもらえるような状態ではないのは自分でもよく理解している。

「あっ、そうだわ!!」

急に何を思いついたのか、女はいきなり私の中に土を入れ始めた。
土でいっぱいになった後、花の種を植えて水をサーッとかけた。

「植木鉢として再利用すればいいのよ。綺麗な花が咲くといいわね」

植木鉢かあ。履物じゃない別の人生、いや余生を送るのも悪くないかもしれない。
種を植えてもらってから数ヶ月、赤くて綺麗なチューリップが咲き始めた。本当に美しい。
植木鉢として、綺麗に逞しく育つ花を間近で眺めるのは本当に最高だ。心が癒される。

「チューリップさん、いつまでも一緒だよ」

433 :
>>430
まさかの続編www
なるほど確かに小麦色だしw脱帽ですよこれ
こんなハッピーエンドもいいですね・・・

434 :
>>430
ブーツが語る・ラストシーズンッ、430氏が『6』『はんてん』『小麦色』を宣言だ、トラベルブーツ・ダイアリー、THE FINAL!
さあ、前回雑な持ち主に貰われしブーツ、1年と『6』ヶ月ほどが経過して、また喋り始めた模様w 新しい持ち主「やっぱ雨の日はロングブーツが便利よねー!」と、
間違ったファッション感覚だ、かつ手入れなしの惨状で、『小麦色』に変色したブーツさんには『斑点』状のカビ発生〜、しかも雑な持ち主には汚くなってると煽られるw
しまいにはブーツらしい活躍もできずゴミ捨て場に放棄されるという涙の結末…って、ちが〜う、ゴミ捨て場に現れし女神もとい女性に拾われて、手入れ生活に復活だッ
でも、カビも生えてるし…、甘い…、ブーツはブーツなだけじゃない、ほら花瓶の役目もできるじゃないかENDだッw さすがブーツに喋らせる430氏、モノに対する優しき目線がほっとさせる、ふんわりフィニッシュ・お題をクリアー!

435 :
誰が一番すごいって、お題で小説書いてる人より競馬実況さんだと思った今日この頃。
外が暑すぎて溶けそう。

436 :
俺もこれぐらいの文章力があればなあ…

437 :
進行みたいに図々しくレスしてもいいのよ・・・

ところで次回のお題ですけど、書き出しの一文指定をやろうと思ってます
前スレ862以降参照

企画のアイディアも随時募集してます

438 :
企画か〜

・お題をひらがなで同音異義語のみ
今回はいろんな「はんてん」があって面白かった
…「かいそう」出した時は海藻しかなくて無念

・投稿を短編小説ではなく「あらすじ」とする
ホントの粗筋ではなく煽り文よりで
書き出し募集的になっちゃうかもしれん
競馬実況さんが実質やってるけどw

439 :
同音異義語は面白いなと思ってました
ただなんかパクったら悪いかな、ってのと、全部ひらがなだとカオスじゃないかとw
全部じゃなければいいかも

ジャンル:あらすじ、は、、うーん、改めて言われると難しい系
競馬さんも困りそうw
プロローグ募集とか、最終回募集、バトル募集、設定だけ募集?なら書けそうかも

440 :
締めの台詞「だがこれで終わりではなかった」はなかなか挑戦し甲斐のあるお題だった。

441 :
また最後の一文指定をやってもいいかもですね

442 :
>>410

使用お題→『脱獄』『6』『はんてん』『ビリビリイヤーン』『小麦色』

【脱獄した俺は未開の星で帝国相手に無双するかも知れない】

 監獄惑星からの脱出に成功した俺は、未知の星系に流れ着いた。

『こんなことして……許さない……覚えておけ……!』

 警備艇を分捕った際、乗員の女が発した言葉だ。俺は女を出歩けないような姿にして、発着場の床に蹴落としてやったのだ。
 『覚えておけ』と言われたので、リセット後の警備艇を『ビリビリイヤーン号』と名付けてやった。
 ビリビリイヤーン号は、最初は正常に航行していたが、ワープ装置を起動した瞬間、俺の命令を受け付けなくなった。あの女の置き土産だろう。
 船はでたらめな座標に放り出されたが、幸か不幸か、近くに人類が生存可能な惑星があった。
 俺は惑星への降下を決意し、パワードスーツを着込んで、着陸船で大地に降り立った。

 *

「これはなんですかにゃー」
「帝国の新兵器ですかにゃー」
「危ないから離れた方がいいですにゃー」

 着いて早々、着陸船の周りに現地人が集まってきた。そいつらの頭には猫耳が生え、顔は仮面で隠れ、はんてんのような上着の袖に小麦色の肌が見えた。
 俺がハッチを開けて外に出ると、逃げ出す者もいたが、最後には武器のような物を手にした六人ほどが残った。

「あなたは帝国の人ですかにゃー?」

 こんな未開の惑星にも、偉そうな名前の国があるらしい。

「俺は帝国の人間じゃない。ただの脱獄囚だ」

 俺がそう言うと、そいつらは動揺しつつも、俺に対する警戒を緩めたようだった。

「脱獄囚……! 実は、にゃーたちも脱獄囚なのですにゃー。あなた強そうですにゃー」
「ご存じか分かりませんが、にゃーたちネコミミ族は、帝国から迫害されてますのにゃー。あなた強そうですにゃー」
「にゃーたちは、とっても弱いのですにゃー。あなた強そうですにゃー」
「もしよろしければ、にゃーたちと一緒に帝国と戦って欲しいのですにゃー。帝国は強いのですにゃー」

 そいつらの中で一番偉そうなやつが仮面を取った。猫耳のおっさんだ。

「だけど、あなたとにゃーたちが力を合わせれば、きっと帝国に勝てますのにゃー」

 俺はなぜだか不安になった。
 だがまあ、危なくなったら逃げればいいだろう。
 俺はそう思い直し、そいつらと共に戦うことにしたのだった。

443 :
お題をなるべく簡単に消化することがテーマの話

続きは・・・ありません!(多分

444 :
>>410
使用お題:『脱獄』『6』『はんてん』『ビリビリイヤーン』『小麦色』

【プリズナー666】


 六芒星形の監獄『ヘキサゴン』。ここは、脱獄不能の監獄として知られている。
 しかし、そんな難攻不落の監獄だったとしても、いや、難攻不落の監獄だからこそ、脱獄を企む囚人が必ずいる。
 そして今日も……

「待てー!!」
「待てと言われて待つやつは居ねぇよ!!」

 そう言って走り逃げるのは囚人ナンバー666。通称『ビースト』。
 元々大した罪を犯した訳では無い彼が、この、難攻不落の監獄に来たのには訳があった。
 それは、彼の趣味が『脱獄』だったからだ。
 彼は入る監獄を悉く脱獄し、その度に監獄に舞い戻ると言う事を繰り返し、その内に“表”の監獄では監視し切れないと、“裏”の監獄に回され、しかし、そんな“裏”の監獄ですら「手に余る」として、ここ、ヘキサゴンに送られたのである。

 そんな彼は今、100人近い看守を引き連れ監獄内を走っていた。
 監視カメラを潰しながら進んでいたのだが、逆に潰されたカメラの順番から彼の進行方向を予想されたのである。
 囚人が集団で脱走できない様、細長く作られた長い廊下をひた走るビースト。迷宮のように入り組んだ通路を何度も曲がり……

「さすがの666も、袋の鼠だな!!」

 行き止まりへと追い詰められていた。

 パシンパシンと特殊警棒を鳴らしながら近づいて行く看守達。
 「チッ」と、ビーストが舌打ちをした。
 しかし、看守達が一直線に並んだのを見た彼は、ニヤリと笑みを浮かべその場で反転する。

「喰らえやああぁぁぁ!!!!」

 ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!

「いや〜ん!!」
「いやっすぅ!!」
「あばばばばばばばばばばば!!!!」
「しびびびびびびびびびびびびびび!!!!!!」
「らめええええええぇぇぇぇぇ!!!」

 彼の指先から放たれた電撃。それがビーストの奥の手だったのだ。
 プスプスと煙を上げ小麦色になった看守達を一瞥し、ビーストが出口へとひた走る。

「よし! 今回も脱獄成こぉぉぉぉ?」

 不意に足元が空を切る。
 入って来た時は確かに地上にあったはずのヘキサゴンだったが、しかし、今は空中に浮いていた。
 ヘキサゴンは空中監獄だったのだ。

 這う這うの体で入口にしがみつくビースト。
 そんな彼の顔に影が被る。

「どうだ? さすがのお前もここからは脱出できないだろう?」
「…………次は必ず脱獄してやる」

 その時は大人しく捕まったビーストだったが、しかし、その後入れられた独房の中で、改めて脱獄をする決意を固めたのだった。

445 :
お題→『脱獄』『6』『はんてん』『ビリビリイヤーン』『小麦色』締切

【参加作品一覧】
>>417【登校中の悲劇】
>>419【脱獄失敗】
>>423【老婆の復讐】
>>430【マイライフ・アズ・ブーツ THE FINAL】
>>442【脱獄した俺は未開の星で帝国相手に無双するかも知れない】
>>444【プリズナー666】

446 :
では書き出しの一文指定です!

お題安価>>447-450
書き出し安価>>451

447 :


448 :
『かまいたち』

449 :
虚無感

450 :
小型扇風機

451 :
夢ならばどれほどよかったでしょう

452 :
☆お題→書き出し『夢ならばどれほどよかったでしょう』+『壁』『かまいたち』『虚無感』『小型扇風機』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→8/18の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

453 :
集まりが悪くて震える → すごい勢いで埋まる・・・

作品、感想、それに今回もお題ありがとうございます
まだまだ暑さが続きますがー、、今週もよろしくお願いします

454 :
>>444
レス番含めてすごw
多分なんか雰囲気出てますね
お題の掘り下げも成功してるし、話自体もまとまってていい感じではないかと

455 :
>>442
うだる猛暑に一服の休息、お題期限ラストデイはいつも駆け込み、進行氏による全選択・ニャーウォーズ・エピソードワン!
さあ、監獄惑星から警備艇を奪った主人公が登場〜、乗員女子を服ビリビリ状態にした挙句、覚えておけッとの言葉に警備艇を『ビリビリイヤーン』号と命名して返すバイオレンスな犯罪男だッw
『脱獄』に成功するも、仕事熱心な女子の妨害工作が作動、未知惑星に辿りつく! この因縁の残し方はアレか、追っ手になった女子と再会してドタバタラブにつながるやつ、
さて未知惑星の種族は猫耳族である模様〜、『はんてん』上着に『小麦色』の肌、武器を手にした『6』人ほどが包囲完了ッ! しかし何だかにゃーにゃー言う癒し民っぽい猫たちに民族間紛争の加勢を頼まれる…!?
すごく戦闘に向いてなさそうな猫らと責任感なさそうな主人公、大丈夫かよコレって、完だとッ、続きはないとのことだが構想はありそう、あるのか、あるはず、たぶんある、続編予告ENDだ!w

>>444
豊作の脱獄回、444氏は全選択で監獄とプロ脱獄野郎によるルール無用の逆転ムーブを描いてきた、イントゥ・ザ・ビリビリプリズン!
さあ、舞台は『脱獄』不能の六芒星監獄ヘキサゴン〜、監獄内で細長く作られた長い廊下を逃亡するのは囚人ナンバー『6』66! 脱獄趣味男のビーストだぁ、
後ろには看守が100人w 多過ぎて邪魔w ビーストが行き止まりへと追い込まれ、一列に並んだ100人看守、そこで『反転』ビースト! イエス、追い込まれたのではない、そう思わせたのだッて感じで電撃放ち、
『小麦色』になった看守が『ビリビリイヤーン』を消化〜w 計算がハマったかビースト、悠々と近づく出口で、しかし見たものは、空ですか!?
天下の脱獄囚も予想外の空中監獄、二重三重に巡らされた監禁迷路が今回は勝利〜、444氏、難関『ビリビリイヤーン』をギャグテイストで使用して違和感なしッ、さすがの手際、監獄ものでオオトリ・フィニッシュ!

456 :
>>455
感想ありがとうございます!
他にネタがなくなったら、その時は続きを書こうと思いますw

457 :
>>452 お題使用を優先したから出来は微妙。もっと切れ味鋭い物が書きたい。
使用したお題:書き出し『夢ならばどれほどよかったでしょう』+『壁』『かまいたち』『虚無感』『小型扇風機』

【山の日】

 夢ならばどれほどよかったでしょう。何の反応もないリモコンをカチカチ何度も押しながら、俺は絶望した。

 外の気温は36度を突破した。セミの声が煩い。カーテン越しにも眩しいほどの陽光が照り付け、飛行機の飛ぶ音だけが耳元に届く。

 エアコンが壊れた。
 夏も盛りのこの時期に猛暑を耐え凌ぐために発明された文明の利器がオシャカになったら、文明人としては死ぬしかない。俺の命は風前の灯だった。

 よりにもよって今日は断水も重なっている。冷蔵庫のアイスはすでに食べつくした。
 氷は作られた端から消費され、口や脇の下を冷やす役割を全うしていく。
 常駐的に俺を癒してくれるのは電池式の小型扇風機ただ一機だけだった。今なら窓の外にカマイタチが吹き荒れても喜んで身を捧げるだろう。

 人間とはこんなにも簡単に死んでしまうのか、と俺は絶望より虚無感すら覚えていた。
 先進国日本といえど、不意のトラブルが3つも重なれば生存困難となるのだろう。
 今まさに虫の息になっている俺は生きる難しさをしみじみと実感していた。

 とはいえ本当に死ぬわけにはいかない。全く動いていないにもかかわらず汗びっしょりになっている俺は立ち上がった。対応策を考える。
 外で日陰を探す。風が吹いてる分涼しいだろうが氷の補充が効かない分熱中症率は高まる。ダメ。
 プールへ行く。元々所持金が少ない上にお急ぎ便でエアコンを発注した手前、財布が心もとない。ダメ。
 ファミレスにドリンクバーで8時間コース。周囲の視線が確実に怖い。ダメ。
 アイスを大量に買う。これ以上糖分を過剰摂取しつづけたら糖尿病になる。ダメ。
 山へ夕涼みへ行く。虫が嫌だし山は汚れるから嫌い。ダメ。

 選択肢を思い浮かべるたびにその全てを却下していく。この作業をもう何度繰り返したことか。
 暑いから涼を求めて外出したいけど、暑くてダルいから確実に涼めないなら外出したくない。
 この二律背反こそが生きるということなのか、と熱に浮かされた俺はバカな考えに思い至った。

 ウンウン唸りながら壁を見つめていると、ふとふいに良いアイディアが思いついた。そうだ図書館へ行こう。
 図書館ならクーラーがある。それに確か水道水だけど飲み水もある。虫もいない。長時間いても本を適当に読んでいれば周囲の視線もそれほど気にならない。我ながら画期的なアイディアだと思った。

 日にちを確認する。8月11日水曜日。平日なら公共機関は空いている。しかも幸いなことに3日後の土曜日にはエアコンが来ている予定だ。
 つまりこれから3日間、図書館で時間を潰せばいい。最高だ、完璧だ。俺は自らの名案に心躍り、急いで外出することに決めた。

 善は急げと歩くこと10分ちょっと。子供の頃は何かのイベントにつけてよく通った、でも大きくなるにつれて足が遠のいていた見慣れた図書館へ辿りつく。
 昔から残っている返却ポストを懐かしく思い、新しく綺麗になった受付窓口に感心しつつ図書館の図書室へ向かう。向かおうとする。

 嫌な予感。受付窓口に人がいない。奥の方にも人の気配がない。夏休みだというのに小学生の姿もない。
 ところどころシャッターが閉まっている。図書室へ向かう道の途中に通行止めのロープと看板。看板に素っ気ない文字で短い分が書かれていた。恐る恐るそれを読んだ。 

「本日、山の日にて、休館になります」

 俺は天を仰いだ。やっぱり山は嫌いだ、と。

458 :
>>457
早いなぁ
今回難しそうだからどうかなぁ、と思ってたんですが
オチが決まってていいんじゃないかなぁ・・・

切れ味って言われても、、かまいたちだし、、まぁ考えれば何かはあるはず

459 :
>>457
今回は書き出し指定、『夢ならばどれほどよかったでしょう』を最初に書けばさえよしッ、消化優先で一番乗りは457氏の日常回、全選択! 今夜がYAMADA〜
さあ、夏も盛りにエアコン故障で早くも瀕死の主人公〜、断水もありシャワー不可、プールダメ、ファミレスダメ、アイスダメ、頼りは『小型扇風機』のみの窮状でピンチ感、
『夢ならばどれほどよかったでしょう』を消化完了w 絶望を越え『虚無感』すら覚える悟りの境地で、ジョジョーッ、俺は『カマイタチ』に喜んで身を捧げるぞーッ(言ってない)とばかり、
『壁』を見つめていると、そうだ、図書館だと思いつく〜、火事場のアイデア発現し、起死回生の窮余の一策、生きろ、そなたは暑苦しい〜、
しかし、残念、はい休館ENDだw お題を全クリした457氏が早急な書き上げで走り抜ける、涙がこぼれる爽やかフィニッシュをきめた!

460 :
あの言ってもいいですよね

そこでYAMADAが出てくるセンスw

461 :
あと言い忘れてましたが、カマイタチの処理は正直なるほどと思いました

462 :
YAMADAいいじゃないw

463 :
(実は今使ってるマウスはYAMADAで買った)

464 :
やっぱり静かな回になりそうですね・・・
みんな忙しいのか、モチベ不足か、シリアスなお題でなんとなく書きにくいのか

暑さか

465 :
お題の処理がなぁ……。5個やりたくなるけど、3・4個で手を打つのもアリか。今回しんどすぎる。

466 :
>>452
使用するお題→書き出し『夢ならばどれほどよかったでしょう』+『壁』『虚無感』『小型扇風機』

【もっとクールになりたい!】(1/3)

夢ならばどれほどよかったでしょう。今、私の町は無法者達によって荒らされ、地獄絵図と化していた。

「ガッハッハ!この町は今から俺の支配下だ!」

無法者集団のリーダーであろう肥満体の男が銃を乱射しながら暴れまわる。
もう私たちは終わりだ…そう諦めかけていた時、黒い大きな馬に跨った一人の女ガンマンが現れた。
その女ガンマンはウエスタンハットを目深に被り、拍車をカチャカチャ鳴らしながら歩み寄ってくる。

「何よこの町。うるさいハエどもで鬱陶しいわ」
「誰だ貴様は?俺に楯突こうっていうのか?」
「あんた、息が臭いわね。黙ってくれるかしら?」

その女ガンマンは勢いよくリーダーの男の顔面に蹴りを食らわせる。男が倒れると、心臓に向かって発砲する。
男はゲホッと血を吐き、そのまま息絶えてしまう。その後、華麗な銃さばきと身のこなしで
他の無法者達を撃ち倒していった。

「ホントうるさい町。二度と来たくないわ…」

馬に跨り、その女ガンマンはどこかへと去っていく。

「あの人、噂で聞いたことある。名前は知らないけど、さすらいのガンマンで無法者達を倒しているんだって」
「まさか、私たちの町に現れるなんて…」

あの女ガンマンは一体誰なんだろうか。できたらまた会いたい。
私たちはあなたをいつでも待っている…。

・・・・・・・・・

「最高ーッ!!」

そう叫ぶのは西部劇マニアのレイチェル。
今見ていたのは彼女が大好きな西部劇のドラマで、さすらいの女ガンマンが主役のダークヒーローものだ。

「私もああいう風にもっとクールになりたいなあ」

レイチェルは自分のことを考えてみる。
自分はおっちょこちょいで調子に乗りやすくて、それに感情的なところがあってクールとは程遠い。

「クールになれるよう頑張ってみようかな…!」

467 :
【もっとクールになりたい!】(2/3)

翌朝、レイチェルはいつものようにガンマンの衣装に身を包み、町へと飛び出す。

「おはようレイチェルさん!今日もカッコいいね!」
「ありがとう坊や。今日も良い一日を送れるといいわね。それじゃあね」

目深に被っている帽子を指で少し上げる仕草を見せ、去っていく。

「なんか今日のレイチェルさん、ちょっと変な感じ…」

その後、レイチェルは公園のベンチで足を組んで座る。今は真夏日で暑い。
長めのコートを羽織り、その上にジーンズ、ブーツと厚着なためとにかく暑い。

「レイチェルさん、今日も暑いね!アイスが食べたくなるね」
「ガ、ガンマンはストイックであるべき。アイスは欲しくないわ」
「何を言ってるの?レイチェルさん」
「それじゃあ、私は行かなくちゃ…」

ベンチから立ち上がって去ろうとしたその時、拍車が草の茂みに絡まってしまい転倒してしまう。

「痛たたた…」
「大丈夫ですかレイチェルさん?」
「こ、これくらいで痛がってちゃガンマンじゃないわ」
「レイチェルさん、いつもより変だよ。何かあったの?」
「な、何でもないわ!」

再び立ち上がったその時、誰が置き忘れたのか分からないスケボーに足を取られてしまう。

「わ、ワワワワッ!!」

レイチェルはそのままスケボーで坂道を滑り落ちていく。拍車を地面に擦って止まろうとするものの、
スピードが出て止まることができない。それに目の前には大きなレンガでできた壁があった。

「だ、誰か止めて〜!!」

ドーン!レイチェルは壁に激突してしまう。

「あ、頭の周りをヒヨコが飛んでる気分…アハハ…」

夏の暑さも相まって頭が混乱してワケが分からなくなり、バタッと倒れてしまう。

468 :
【もっとクールになりたい!】(3/3)

「う、うーん…」
「あっレイチェルさんが目を覚ましたよ!」

目を覚ますとレイチェルはベンチの上で寝転がっていた。
何か心地の良い風が吹いてくるなあと思ったら、小型扇風機で涼ませてくれていたのだ。

「みんなありがとう」
「レイチェルさん、いつもと様子がおかしいけど何かあったの?」
「そ、それはね…」

レイチェルは子供たちに全てを話す。それを聞いて彼らはクスクスと笑いだす。

「レイチェルさんはクールじゃなくてもいいんだよ」
「そうだよ。クールに振る舞うことがカッコいいわけじゃないしね」
「僕らは少しおっちょこちょいだけど、優しくていつも一生懸命なレイチェルさんが大好きさ」

その言葉を聞いてレイチェルは顔を赤らめて嬉しくなり、エヘヘと微笑む。
さっきまで無理してクールに振る舞う自分を思い出すと、恥ずかしくなると同時に虚無感を感じてきた。
あんなのクールじゃなくてただ無愛想なだけだ。

「それよりレイチェルさん、アイス屋さんが来てるよ!一緒にアイス食べよう!」
「そうね!」

レイチェルは大好きなストロベリーのアイスを食べながら、子供達とおしゃべりをして楽しむ。
無理に自分を変える必要なんてない。
みんないつもの自分が大好きなんだ。
そう思うとレイチェルは嬉しさと誇りで胸がいっぱいになるのだった。

おしまい

469 :
>>466
静かなスレに現れる救世主・・・
最高だぁ
シリアスお題からこれが出てくるのがすごいw

470 :
>>466
真夏の短編スレをアイスなレイチェルさんが瞬間冷凍ッ、466氏の選択お題は『壁』『虚無感』『小型扇風機』、ザ・レイチェル氷の微笑〜
さあ、書き出し指定『夢ならばどれほどよかったでしょう』をこなすのは町の民、無法者集団によって地獄と化した西部の町にいつもの女ガンマンが血の雨を降らせ、…じゃない、メタだw
テレビを見て「最高ーッ!!」と叫ぶのがガンマンレイヤーレイチェルさん、クールビューティ憧れて、子供等相手に気取ってみるが、いつもより変人だとディスられるw
慣れないカッコをつけたため拍車もギクシャク、けつまずき、『壁』に激突、気づくと『小型扇風機』の風そよぐ〜、子らは言う、クールじゃなくても優しくていつも一生懸命だからいいんだよと、
レイチェルさんに一片の『虚無感』と、胸いっぱいの嬉しさ、誇り満ちる〜、自分らしさをダイジにしよう、466氏の描いたシリーズ・クール回、お題攻略・氷解ENでほっこり冷涼感だ!

471 :
>>469
>>470
感想ありがとうございます!
今回は終始ドジっ子なレイチェルのお話でした。
書いてて思ったのですがクールな性格っていまいち定義が分かりにくいですね。
今回も楽しんでいただけたようで嬉しいです。

472 :
遅レス過ぎますがorz
>>387
脇役には脇役の夢があるのですね
主役に成れぬのなら、せめて名脇役へ!

>>397
迷い込んだのは不思議で奇妙なクイズの世界
トリップは、確証がなかったので断念しました(T*T)

>>417
豪雨の後の有る意味テンプレートw
登校時のお約束は、転校生との衝突が有れば、コンプリートでしょうか?

>>419
我思うゆえに我ありw
彼が自我を獲得したのはどの段階だったのでしょうね

473 :
>>423
脱獄してまでやる事が復讐とは……
次は心穏やかに自らを見つめてくれれば良いのですが

>>430
道具と言うのは、正しい使い方をされてこそ、パフォーマンスを発揮するもの
ですが、三度目は、新たな生で終われそうですねw

>>442
そもそもの話、彼は何故捕まっていたのでしょう?
聞いている限りでは、帝国では迫害があるようですが……

>>457
最近は40度近い気温に絶望感がw
ファミレスでも、分厚い本を持って行けばワンチャンあるかも?

>>466
クールに成るには落ち着きがw
メイドインジャパンはCOOLらしいですよ?

474 :
>>452
使用するお題→書き出し『夢ならばどれほどよかったでしょう』+『壁』『虚無感』『小型扇風機』
【卓上小型扇風機はなぜ怪異に立ち向かうのか】(1/3)
夢ならばどれほどよかったでしょう。
この俺が、小型扇風機の姿で、看護師達の詰めるナースステーションに晒されようとは。
そして、約5分後には術が解け、彼女らの前にフルチンを晒す運命にあろうとは。
それもこれも、横暴かつ暴力的な兄上と、獰猛かつ専制的な姉上の所為だ。
早く……早く何とかしなければ……

事の発端は、ケガをして入院中の兄上からの呼び出しであった。
「ちょっと手伝って欲しいことがあるから、30分以内に俺の病室へ来い」
片道40分かかる病院に、兄上は組手の相手として毎日のように俺を呼びつける。
俺と兄上、それに姉上は妖怪の血を引く妖術師である。中でも体術特化の兄上は、常にトレーニングを欠かさないのだ。
病室のドアを開けると、一昨日まで満杯だった部屋がガラガラになっていた。一人残された兄上は、その引き締まった巨体には窮屈そうなベッドで寝ていた。
「兄上、調子はどうです」
「おい、遅ぇじゃねぇか……最悪だよ」
 兄上はノロノロと気だるげに言った。
「大学の期末テスト中みたいな顔しちゃって。何かあったんですか」
「……お前、ここに来た時に何か感じなかったか?」
そう言えば、エントランスに比べて、この部屋周辺は異常に暑い。
「空調、壊れてません?」
「昨夜からさ。俺だけ、比較的体力があるのを理由に残されたんだ」
「そりゃあ難儀ですね。他の患者さんを優先的に移動させたら、移れる部屋がなくなったんでしょうけど」
「いいや、断じて違う!」
 唐突に兄上は、左腕を振り回して喚いた。
「絶対、姉貴の差し金だ!俺が注意されても組手をやめなかったからって、懲罰でこんな事をしやがるんだ!」
 姉上は、この外科病棟に勤務する看護師で、兄上の看護を担当しているのだ。
「病院での姉上にそんな権力あるかなぁ。そもそも、言う事を聞いて大人しくしない兄上が悪いんでしょ」
「うるせぇッ!……叫んだら余計に暑くなったわ。おい、風を送って涼しくしてくれ」
「そんなこと言っても、ここには扇風機も何も有りませんよ」
「お前が扇風機になるんだよ!」
「えぇ……」
 なるほど、俺を呼んだのはこの為か。
 俺は、妖術を使って様々な物に擬態できる。ただし、術が1時間後に自動で解けることと、体に触れられると術の発動も解除もきかないこと、そして服ごと擬態はできないので術が解けるとフルチンになるのが欠点だ。
自分では使いどころが分からない能力なのだが、兄上はこれに目をつけたらしい。
「嫌ですよ、外で素っ裸になるなんて。それに、みだりに術を使ったら姉上に叱られます」
「周りに誰も居ないし、こっそりやれば大丈夫だろ」
「……もし断ったら?」
「退院してから、俺の特大キ〇タマ袋でシバき倒す」
冗談じゃない。米俵大に巨大化したアレの一撃を食らったら、心身ともに再起不能になる。
「わかりましたよ……その代わり、術が切れる時刻までに、俺自身で術を解いて服を着させて下さいね。あと、ベッドに人を近づけないで下さい」
「分かってるって。じゃ、頼むわ」
 こうして、俺は電池式の卓上小型扇風機に擬態した。
それから、およそ50分が経った。
暑い暑いと言っていた兄上は、イビキをかいて昼寝を始め、一向に起きる気配がない。
もう術を解いてしまおうか、と思っていた時だった。
病室の扉が静かに開き、誰かが入って来た。
若い女性看護師だ。血管が透ける程に白く透き通った肌と、スラリと伸びた手足をしたその人は、ちょっと室内を見渡すと、艶然とした笑みを湛えてこちらへ近づいてきた。その美しい顔にはおよそ似つかわしくない、この部屋を覆いつくすほどの禍々しい妖気を放ちながら。
絶対強者たる、我らが姉上である。
姉上は13歳でその恐るべき能力の数々を開花させて以来、一族の首領として君臨している。俺達を折檻したりこき使う時は決まって、こんな妖気を発している。
(しかし何だ?今日の兄上は大人しいから、折檻の必要は無いだろうに)
姉上は兄上のベッドを囲むカーテンを開けて、寝ている兄上の様子を窺い、続いて俺の方を見た。
俺の擬態は姉上でも見破れない。見つかりたくないが、術が解けるまでに時間が無い。他人の目に触れるより、ここで解除した方が良さそうだ。

475 :
【卓上小型扇風機はなぜ怪異に立ち向かうのか】(2/3)
ところが姉上は、
「へぇ……ちょっと借りていこうかな」
と言ってニヤリと笑うと、俺の胴体(スタンドポール)を無造作に引っ掴み、病室から持ち去った。
 体を掴まれていては、うまく術を解くことが出来ない。俺は成すすべなくナースセンターに連れて行かれ、看護師達にお披露目されたのだった。
「みんなー!うちの弟が良い物持ってたから、借りて来たよッ!」
ナースステーションも空調が壊れていたそうで、看護師達は暑さに参っていたらしい。
「先輩、有難うございますー。これから蒸し暑い中で書類仕事しなきゃいけないから、憂鬱だったんですよー」
 おっとりとした調子でそう言ったのは、姉上の後輩の大橋さんだ。
 すごい美人さんで、俺は見舞いに来る度に彼女に会えないかと楽しみにしているのだ。
(よりによって、こんな形では会うだなんて……)
「じゃあ、まずは大橋ちゃんに貸してあげようね。他にも使いたい人いるだろうから、10分経ったら交代な」
「はーい」
(姉上、こっちはあと10分と持たないんですが)
なんとかして姉上と意思の疎通を図りたいが、生憎テレパシーは使えない。
試しに声を発しようと気張ったところ、「ふおぉぉん」という間抜けな空気音がしただけだった。
助けになるアイテムは無いかと左右に首を振って見回したら、書類をあちこちに撒き散らして大橋さんを困らせてしまった。
そうこうする内、タイムリミットは3分を切った。いよいよ焦り始めたとき、大橋さんの背後の壁から不気味な声が聞こえた。
『ぬかるなよ、兄弟。確実に仕留めるんだぜ』
もう一つの声が答えた。
『勿論だぜ、兄弟。待ちに待った獲物だからな』
それらは、普通の人間には聞こえない、妖怪や霊の発する声だった。
 声のする方によくよく目を凝らすと、一見何もない真っ白な壁の、ちょうど壁掛けカレンダーの下辺りに、イタチの体に鎌状の両腕を持つ妖怪「かまいたち」が2体、張り付いているのが見えて来た。
人間だけでなく、周囲を徘徊する妖怪や霊にも見つからないよう、壁に擬態して何かを待ち伏せしているらしい。
そして彼らの視線は、慌しく書類にペンを走らせる大橋さんの背中に注がれていた。
(あいつら、大橋さんを狙ってるのか?本来3体で一組の奴らが、2体しかいないのは何故だ……いや!そんなことより、こいつらが大橋さんに危害を加える前に、大橋さんを他の場所へ逃がすか、姉上に始末して貰わないと)
 しかし、それは難しそうだ。どういう原理か、擬態能力を持つ俺は他の擬態している連中を見破れるが、擬態のできない姉上には彼らを見ることが出来ない。
 ましてや、大橋さんたち普通の人間は、擬態を解いて切りつけられても存在すら感知できない。かまいたちは低級妖怪なので、俺の擬態には気づいていないらしいが。
 身動きが取れず、姉上との意思疎通も遮断された状態で、どうやって危機を知らせれば良いだろう?
 かまいたちは、ヒソヒソと話し続けている。どうやら、大橋さんのズボンと下着を切り裂いて丸裸にする計画らしい。グヘヘ、と下卑た笑いを上げている。
 糞妖怪共のせいで、とんだことになってきた。術が解けてフルチンになった俺が目の前に現れたら、大橋さんは驚いて椅子から立ち上がるだろう。
 そこにかまいたちが襲い掛かって下半身丸裸にしたら、大橋さんは顔を真っ赤にして半泣きになるに違いない。俺は束の間の奇跡を堪能した後、ケジメとして姉上に両目を抉られて……。

(いやいやいや!そもそも姉上にも原因があるわけで!そんなん納得いかねぇし!)

 すると、大橋さんがペンを置いて椅子から立ち上がる気配を見せた。かまいたちもそれを察して、飛び掛かろうと身構えた。
 俺は咄嗟に顔を上げ、背後の壁掛けカレンダーに最大出力の風を叩き込んだ。突然巻き起こった強風と、カレンダーがバラバラ捲れ上がる音に驚いたのか、大橋さんは座ったまま軽く仰け反った。
 そして振り返ってカレンダーを一瞥した後、「なんだろー?故障かなー?」と言いながら、不思議そうに俺の頭をペタペタ触り始めた。
 かまいたちも驚いたようだが、作戦続行するらしい。
 限界だ。
術が解けるまで1分もない。最早、俺がこの場でフルチンを晒すのは避けられない。
こうなったら、即座に変身を解いて大橋さんを守るしかない。

476 :
【卓上小型扇風機はなぜ怪異に立ち向かうのか】(3/3)
その時、背後でナースコールが鳴った。誰かが「204号室」と言った。兄上の病室だ。数人の看護師が腰を浮かせ、大橋さんも立ち上がろうとした。
かまいたちがサッと身構える。俺は覚悟を決め、かまいたちを止めるべく術を解こうとした。
が、それより一瞬早く、どこかから弾丸のような速さで呪符が飛んで来て、かまいたちに張り付き、彼らを壁に拘束した。
あっけに取られていると、廊下の方から兄上のどなり声が聞こえて来た。
「俺の扇風機を何処へやったァァァッ!!」
「ごめんねぇ、大橋ちゃん。それ、弟に返してくるわ」
 いつのまにか傍に来ていた姉上は、右手で俺を取り上げつつ、身動きが取れなくなった下衆妖怪を左手でさりげなく引っ掴み、足早にナースステーションを飛び出した。
 助かった……のだろうか。
 廊下を走りながら、姉上は、
「協力感謝するよ」
 と愉快そうに言ったのだった。

「じゃあ、姉上はかまいたちに気付いていたんですか」
「存在には、ね。どこに潜伏してるかは分からなかったけど」
 兄上の病室で術を解き、身支度を整えた俺は、ベッド脇で姉上と話をしていた。
兄上は大声で騒いだ罰として、姉上の妖術で昏睡している。曰く、明朝目が覚めるまで、気が狂うようなおぞましい悪夢を延々見せられるそうだ。
「今朝から、盗撮用小型カメラに化けたかまいたちが、ここら辺の床をウロチョロしててさ。変化が不完全だったこともあって、すぐに見つけて捕まえたけど」
 そう言って姉上は、白衣のポケットから、呪符でグルグル巻きにされた1体のかまいたちを取り出してみせた。なるほど、かまいたちが2体しか居なかったのはそのためか。
「何してるのか問い詰めたら、すぐに吐いたよ。仲間と共謀して、大橋ちゃんの恥ずかしい部分を隠し撮りしようとしたんだって。で、残りの仲間がこのフロアに潜伏してることまでは分かったけど、正確な位置までは分からなかったの」
 その後姉上は、かまいたちの発する妖気の動きから、ナースステーション近辺が怪しいと睨んだ。他の看護師に気取られないよう、あそこでかまいたちを始末しようとしたらしい。
「面会者の来院記録用紙を見たら、丁度あんたが見舞いに来てることが分かってさ。協力してもらおうと思って来てみたら、あんた小型扇風機に化けてるんだもん。ビックリしたよ」
「俺の擬態を見破ったんですか!?」
「あんたのパンツが畳んで置いてあったし、状況的にそう察しただけ」
 畜生、やらかした。
「あんたを囮に使えば、かまいたちを見つけた時に反応すると思ったんだよ。そしたら大橋ちゃんの席に置いた直後に変な動きを始めたから、大方あの壁際に潜んでるんだろうと思ってマークしてたわけ。で、かまいたちが擬態を解いた瞬間に……拘束!」
 そういって、姉上は左手の中にいる2匹の哀れな獲物を握りつぶした。聞くに堪えない悲鳴が聞こえてきたが、姉上は涼しい顔をしている。
「かまいたちを見つける前に、俺の擬態が解けたらどうする積りだったんですか」
「そのときは、幻術で私以外の全員の五感を一時的に奪ってから、部屋中に『狐火』を放って燻り出す積りだったよ。こっちの方が確実だけど、健康に全く影響が無いとは言い切れないから、あんまりやりたく無いんだよね」
 事件の成り行きは、最初から姉上の手の中にあったというわけだ。俺は何とも言えない虚無感に襲われた。
「さっきの俺の覚悟を返して下さい」
「何言ってんの。私の弟に生まれた以上、常に覚悟が出来てて当然でしょうが。さてと、こいつらは頂いちゃおうかね」
 姉上の口が耳まで大きく裂け、びっしりと並んだ犬歯が露わになった。そして姉上は、かまいたち3体を摘まみ上げると、無造作に口に放り込んだ。飲み込まれる間も、妖怪共は耳障りな声を撒き散らしたが、姉上が口を閉じて嚥下すると、ふっつりと聞こえなくなった。
 次第に西日が強くなる中、蝉の声だけが聞こえてくる。
「疲れたから、俺はもう帰りますね」
「うん、それが良いだろうね」
 いつも通りの顔に戻った姉上は、なにやら意味ありげに言った。
「ゆっくり寝て、明朝までに気力を蓄えておきなさい」
「え、それはどういう意味……」
「ちょっとばかり、手伝って欲しいことがあるんだよね」
 出た。危険な任務に行かせるときの、姉上の決まり文句だ。
「まったく、姉上や兄上と居ると、忙しさで頭がグルグルしますよ」
「扇風機だけに?」
 そう言って、姉上は可笑しそうに笑った。

477 :
>>474ですが、

読みにくくてすみません。
原文の文字数が多すぎた為、色々削りまくったらこうなりました
原文をなろうで公開してあるので、良かったらそっちも見て下さい。

478 :
>>452
お題:書き出し『夢ならばどれほどよかったでしょう』+『壁』『かまいたち』『虚無感』『小型扇風機』

【修羅場】(1/2)


 夢ならばどれほどよかったでしょう。私はただ茫然とその情景を見つめていました。
 部屋の温度は蒸し暑い外気と混じり合い、手に持った小型扇風機の『ぷーん』と言う音が虚無感を誘います。
 壁はまるで『かまいたち』にでも遭ったかの様にすっぱりと割れ、私の顔には乾いた笑みしか浮かびませんでした。

 本当に。

 何故こんな事に成ったのか。
 大山鳴動して鼠一匹と言う言葉がある様に、それは些細な言い争いが始まりだったと覚えています。

 ******

「そこはジュリ×エイトだろう?」
「何言ってますの? エイト×ジュリでしょう」

 サークル仲間の映見ちゃんと佐久ちゃんが、いつもの言い合いをしています。
 今は修羅場の真っ最中なので、二人には原稿を進めて貰いたいのですが……

「「洋ちゃん! あんた(貴女)はどっち!?」」
「私はぁ……原作原理主義なのでぇ」
「「チッ!!」」

 タイミングよく二人が舌打ちをします。
 いつもなら、そのまま原稿に向かって黙々と作業をするのですが、徹夜も3日目な上、エナジードリンクで気力を持たせている事も有り、二人ともかなり精神的に限界に来ている様でした。

「……第八話の『俺とお前のダブルパイセップス』の神回を見て無いから、エイト×ジュリなんて発想が出るんだよ」
「見ましたよ第八話。貴女こそ、第二話『ボディーオイルは突然に』をちゃんと理解して居ないのですわ! あの勧誘シーンを見れはエイト×ジュリが鉄板でしょう?」

 二人の目は原稿に向きながらも、その雰囲気はしだにに重くなってきています。

「あー、浅い浅い!! あのシーンではまだ二人の心は一致して無いの! あそこから心を通わせての第八話でしょう? あんたの言うエイト×ジュリは、そう言う表面しか見てないもののカップリングなんだよ!」
「はぁ? 貴女こそ、何を見てましたの? 第一話では既に二人が幼馴染だって言う描写がありましたわよ! そこを理解していないなんて、それこそ浅くないですの!?」
「は? 幼馴染なのは確かだけど、それこそ学校が一緒だってだけの話で、昔から遊んでいた様な話なんて全編通しても有りませんけど?」
「幼馴染ですぅ。原作コミックスでも……」
「ハッ! アニメに原作持ち込むなよな! だったら、そこの『原作原理主義さん』とだけ話してればぁ? 『アニメ基本主義』のアタシはちゃんとアニメで示された解釈で読み込みますからぁ!!」

479 :
あと、なろうのURLを貼ろうとしたら、
NGワード認定されて書き込めないんですが
どうしたら良いでしょう?

480 :
【修羅場】(2/2)


  うええ! 私にまで飛び火しました。

「はぁ? 原作有ってのアニメでもあるでしょう? きちんと原作をと見込むからこそのアニメでの解釈が広がるんですわ!!」
「アニメに込められた情報量をキチンと読み込めていないから原作を持ち出すんだろう? アニメはアニメで世界観をは内包してるんだからさ! 自分の理解力の無さを棚に上げるなよな!!」
「『アニメイメージ』5月号のヘル沢監督だって言ってます! 『自分なりの解釈で世界観をアニメには取り込んでいるんだ。原作とどこが違うのか、皆には確認して欲しい』って」
「は? やだやだ。そうやって周辺を固めないとアニメに没頭できない奴。純粋にアニメだけを楽しめよな!」
「はぁ?」
「ああ?」

 ゴツンッと、二人の合わせた頭から、鳴ってはいけない類の音がします。流石にヒートアップし過ぎでしょう。私はどうにかして二人の頭を冷やそうと……

「ほ、ほらぁ、二人とも熱くなりすぎだよぉ〜? これでちょっと頭でも冷やしてぇ」

 そう言って小型扇風機を二人に見せます。が……

「今日と言う今日は、あんたに愛想が尽きた」
「はぁ? それはこっちのセリフです」
「は?」
「あ?」

 二人は少し間合いを開け。

 ガキィィィィィィン!!

「ちょ!! Gペンはそう言う風に使う物じゃ無いよ!? と言うか、デザインカッターは本当に危ないからぁ!!」
「はぁ!!」
「ああぁ!!」
「え! ちょ!! 机が!! 机が!! 真っ二つに!? ひゃ!! 何でそれでドアまで!! やめてぇ!! クローゼットだけは!! クローゼットだけはぁ!!!!」

 ベッドが裂かれ、壁を切り落とし、照明が切断される。
 そこにいたのは二匹の修羅。
 私は彼女達の争いから逃げ延びるだけで精一杯でした。

 ******

 二人の戦いはエナジードリンクの切れる2時間の続きました。
 え? 原稿? 当然真っ二つですよ?
 部屋すらめちゃくちゃなのに、原稿が無事だと?

481 :
アクセス解析のカササギのURLなら貼れるはず

482 :
>>478
作品を真っ二つにしてすみません!

>>481
ありがとうございます。
いけたかな?
https://kasasagi.hinaproject.com/access/top/ncode/n9254fr/

483 :
夢ならばどれほどよかったでしょうorz
自分の書いたものに、これ程、虚無感を覚えるなんて
もう、小型扇風機から発せられるかまいたちで切り刻まれたい心境です
壁と向き合って反省します

484 :
お題→書き出し『夢ならばどれほどよかったでしょう』+『壁』『かまいたち』『虚無感』『小型扇風機』締切

【参加作品一覧】
>>457【山の日】
>>466【もっとクールになりたい!】
>>474【卓上小型扇風機はなぜ怪異に立ち向かうのか】
>>478【修羅場】

485 :
ちょっと目を離した隙に2作品もw

486 :
では今回は5つです

お題安価>>487-491

487 :
コーラ

488 :
無駄づかい

489 :
ナイトバザー

490 :
あか

491 :
『かいだん』

492 :
☆お題→『コーラ』『無駄づかい』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』から1つ以上選択

☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→8/25の22時まで

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

493 :
4/4作品が暑さを話題にする回
シリアスお題→すべてコメディーなのも特徴的
どれも面白かったけど、なんか思ったことの半分も言えないやw

>>474
お題に正面から+作者独特の雰囲気を残している→読みやすく完成度高く仕上がってますね
しっかり文字数を使って、結末まで書けてる・・・

なろうの方、『なろう 作者名』で検索すれば分かりますが、作者名は入れない方がいいですよ

>>478
書き出しの口調を尊重すると、こうなるんですねぇ・・・
真面目な話を出してくると思ってたんで、その意味では意外でしたw

>>472
感想ありがとうございます
もし間違っても全然おkなのよ

>>473
最初に考えたのは宇宙海賊でしたが、作中では不明となってますw

494 :
あとNGワードの件は知らんかったスマソ
次スレではテンプレに追記します

それから文字数
文字数きつい作者様が、時々ですが見えますね
対策として、3レス以内→4レス以内に緩和しようと思うのですが、反対意見はありますでしょうか

495 :
掲示板と小説が相性そんな良くないしなぁ。難しいところ。
創作意欲を大事にするという意味だと緩和賛成なんだけど、2chの仕様を鑑みて利用すべきだって考えるとあまり増やすべきではない気がする。一個人の意見だけど。

496 :
なるほど
長い場合、間に挟まる事故も起こるのでURLを貼るという手もあるね

497 :
>>474
書き出し指定回終盤、474氏が妖術兄弟の大騒がせな日常を描く〜、お題選択『壁』『虚無感』『小型扇風機』、夏のバケもの語り〜
さあ、『夢ならばどれほどよかったでしょう』と、看護師達に全裸を見られる予定とのことで語り手が呟いた〜、聞けば妖術師の家系である彼は小型扇風機になっているらしい、
「暑いからお前が扇風機になるんだよ!」との兄の命令がゆえw 時間制限ある擬態術は全裸が前提だ、扇風機となった語り手は、姉に見つかりナースステーションに持っていかれる〜、
すると『壁』から不気味な声がって、ここでエロ『かまいたち』の襲来発覚、全選択だったかw 扇風機の語り手が居場所に風向、姉が捕縛の連携プレイッ
最初からすべては偉大な姉の術中なのか、語り手が『虚無感』に沈む中、474氏がお題をクリアー! 横暴な家族と振り回される語り手〜、ほう、この設定の使いまわし出来そう感、さすがだな、シリーズ開始か、ネクスト・ウェイトENDだ!

夢ならば回トリ〜、務めるのは478氏、全選択で挑戦するは思惑の衝突、友情の崩壊…! クサって見せろ、修羅バトル・オン・ザ・サークル!
さあ、『小型扇風機』の軽い音が『虚無感』を誘う中、『壁』はまるで『かまいたち』にやられたかのごとく割れ、乾いた笑みを浮かべた女性が、『夢ならばどれほどよかったでしょう』と、この悲劇の経緯を語り始めるw
ここまで使用は三行で、既にお題突破、早すぎる! さて原稿を進める語り手女性をよそに腐ったカップリング論争が続いていたサークル内、
「あの勧誘シーンを見れは攻め受けはこっちが鉄板」、「いや、あのシーンではまだ心が一致していない」と、バトルが激化〜、ガキィィィィィィンとGペン、デザインカッター舞い踊りw
真っ二つになった机と共に原稿もオジャンとなったァw 478氏、お題消化を早急にこなし、永遠の闘争、終わらない戦いの惨禍を描く、原稿のためにも争うのはやめてENDをきめた!

498 :
>>478
安価忘れw

499 :
>>492 最速クリアだけは譲らねぇ! ネタはいまいちでも早さは負けない!!
使用したお題:『コーラ』『無駄づかい』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』

【怪談「赤い壇」】

 夜市に遊び呆け、帰る時間には夜遅くになっていた。
 無駄遣いをしすぎて薄くなった財布を意識しながら暗い夜道を歩く。コーラの空き缶を蹴っ飛ばしながら一人寂しくで家路へとつく。静かな夜の街に空き缶が当たる金属音が響く。

 3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。

 まるでリズムでも刻むかのように同じ行動を繰り返す。意外と熱中してしまい、視線は下で固定されていた。歩いて蹴って歩いていく。

 3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。
 3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。カラン。

 リズムが崩れた。そのことがきっかけに我に返った。周囲を見回す。
 周囲は電灯すらない暗い夜道、周囲の景色が月明かりでうっすら見える。
 人気もなく、車の音もせず、何もないように見える。虫の鳴き声だけが遠くに響いていた。

 急に暗い道が怖くなって、さっさと帰ろうと思った。足を少し早める。3歩進んで、空き缶を蹴ろうとする。カランカランカラン。

 おかしい。先ほどまで空き缶を蹴っていた。しかし今足を伸ばして空き缶を蹴ろうとしたら、そこには何もなかった。
 蹴り足が寂しく空を掻いていくだけで、何も蹴り飛ばすことができない。しかし、空き缶が転がる音だけが響いていた。

 カラン、カランカラン、カランカランカラン。

 もう空き缶は蹴っていない。それ以上に、驚いて足を止めている。だというのに空き缶が転がる音が止まらず響いている。
 自分はもう空き缶を蹴っていないのに、カランカランと転がる音だけが暗闇の中響いている。止まらない。

 空き缶の音だけが甲高く響いているが、それは自分が蹴ったからではない。つまり、誰か別の存在が空き缶を動かしているのではないか、と気づいた。鳥肌が立つ。
 だんだんと遠のいていく空き缶の音。自分は慌てて明かりをつけようと、スマートフォンを取り出して電気を照らす。焦ったせいですぐにはつけられず、止まないカランカランという音にさらに急かされ、ようやく電灯がついた。空き缶のあるであろう場所を照らす。

 そうして僕はようやく理解した。そこには……階段があった。
 空き缶が下りの階段の段差に落ちてしまい、そのままの勢いで転がっているだけだったのだ。もうだいぶ下の方まで転がっている空き缶を見つけて、自分はため息をついて一人ごちた。

「あ、かいだんか」

500 :
貼れるかの
https://ncode.%73yosetu.com/n6316bn/

文字数、、枚数を守ることも実力の内ではありますね
3レス以内が基本で、4レス目は予備、ってことにしましょうか

501 :
貼れるけど飛べんのね

>>499
■ ミ
■■ ミ (((缶))) カランカランカラン
■■■
こうですね分かります!

502 :
やっぱ日曜の夜ってダメだと思う
改善するべきだと思う

503 :
ではいつがご希望です?

504 :
どの曜日だろうと、誰かにとってやりづらいということはある。
なので、一番管理が大変な思いをしている進行さんが一番やりやすい曜日が最適解だと思う。異論は認めるが考えは変えない。

505 :
土日が仕事の人?だとしても、いつを区切りにしようが1週間あるんだからみんな同条件じゃない?

506 :
進行としては、お題が早く集まりそうな曜日、時間にしたいという気持ちがあります
集まらないとドキドキするので><

そして要望は具体的に言ってもらわないと、話が進められないです
一番が現状維持、二番が進行の都合
やっぱりこれは相当強いと進行も思うので、これを覆せる理由が欲しい

507 :
遅刻する人や同一お題の2本目を書ききれない人も多いから〆切を延ばすのはどうだろう?
お題は毎週集めるけどそのお題の〆切は2週間後みたいな

ただ、限られた時間で書くという楽しみがあるのも事実だし、ケツに火がつかないとみんなやる気起きなくて結局駆け込みや遅刻が多いのは変わらないかもしれないが

508 :
駆け込みは変わらんだろねw
まーお題が被ると今どれだっけにもなる可能性あるんで、テンプレに、〆切間に合わなければ供養投稿あり。って書いとくとかね
曜日は進行氏の専権事項、楽なとこでどうぞ

509 :
>>499
短編スレの攻略シーンはお題消化のキレだけじゃない、速度だ、速度があるぜと賭ける499氏、の全選択、GO! ハリーハリーホームの夜で!
さあ、タイトルは『赤』い壇、怪談なりと銘打って始まった〜、『夜市』の帰路、『無駄づかい』で寂しくなった財布を懐に、家路へと向かう語り手が登場〜、
足の先には『コーラ』の空き缶、リズム刻むかのように蹴って、蹴って、カランカラン、カランカラン…、楽しげに、鳴る鳴る缶の、音、音、音…音の反復、取り憑かれ、
リズムの狂いに見回すと、電灯すらない暗い夜道だッ〜、止まらないぜ缶の音! でもね、実はもう誰も蹴っていないんですよ…、やだなぁ、不気味だなぁ〜(CV稲川)
おそるおそる震えて灯りをつけるとねッ、そこには! 『階段』があったんですよッ、怪談だけに…ウマイッ、じゃねえよw 全選択トップクリアを駄洒落でアガる、幻影ゴーストENDで499氏が仁王立ちだッ

510 :
>>507
・進行さんの負担が激増する。
・憶測だけど、大体の人が新しいお題の方に飛びついてしまい、古い方のお題が忘れ去られるかも。
・古い方のお題と新しい方のお題が同時参入しちゃって混乱するかも。

締め切り伸ばす打開策としては妙案だと思うけど、現実問題としてメリットにあうコストじゃない。

511 :
syosetu.comがNGワード
4レス目を予備として解禁

まぁ締め切り延長はないかなぁ
当初は2日くらいでしたっけ? なので本当は1週間でも長い方です

テンプレに供養ありを明記するのが、当面の対応ですね 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be20a4887bc3d3353f527d3636c44e3)


512 :
今週も静かですね・・
真面目に考えると難しいし

SYOSETU.COM大文字はどうか

513 :
書けるけどURLは貼れないのね
抜け道はないのね

514 :
今回結構お題使いやすいと思ったけど、かなり静かだね……。
最初の定型文固定なのは難易度あがるのかな?

515 :
ああ、定型文固定は1個前のだった。なんか勘違いしてたスマヌスマヌ。

516 :
>>492
使用するお題→『コーラ』『無駄づかい』『ナイトハザー』『あか』『かいだん』

【深夜の赤信号にご用心】(1/3)

ある夜、西部劇マニアのレイチェルは家でふわふわのソファーに腰掛けて
大好きな西部劇のドラマを見ていた。
コーラとポップコーンと一緒にドラマを楽しむのはもう最高だ。

「どの町に行っても目障りな虫ケラばかり…ホント嫌になっちゃうわ…」

無法者らを撃ち倒した主人公の女ガンマンがそう言い残して町を去るところで、今日の話は幕を閉じた。

「いつ見てもカッコいいわ〜!!」

レイチェルはグイッとコーラを一気に飲み干す。

「他に面白い番組は無いかしら?」

チャンネルを変えてみるが、通販番組だったり政治家らの討論ばかりでどれもつまらない。

「もう今日は寝ようかな」

最後のチャンネルに変えたその時、
真っ黒な画面に白い文字で「Horror Stories from All over the World」と浮かび上がってきた。
世界から集めた怖い話を紹介する特番のようだ。
これは面白そうだ、とレイチェルは冷蔵庫からコーラの瓶を一本取ってまたソファーに腰掛けた。
男性の低い声のナレーションと共にその番組は始まった。

・・・・・・・・・・・

それはドイツで本当に起きた出来事だった。
深夜で大雨の中、一人の女が車を走らせていた。途中、交差点の信号が赤に変わりストップする。
突然誰もいない後部座席の方から赤い血で染まった腕が現れて、女の首を絞め始めた。
女は悲鳴を上げて抵抗するものの力強く首を絞められ、窒息死しそうになる。
しかし信号が青に変わった時、その腕は急に消えて女は解放される。
女はとにかく怖くて、車を猛スピードで走らせて家に帰ったのだった。

・・・・・・・・・・

レイチェルの顔はいつの間にか冷や汗でビッショリだった。
すぐにテレビの電源を消した。

517 :
24時間テレビの広告収入は22億2750万円。何より酷いのは障害者は無料、もしくは謝礼程度。パーソナリティはこちら。
https://twitter.com/kimokute/status/1158004258102341637

日本から始まる世界的株式市場の大暴落

マITLーヤは、過去に知っているような経済システムが崩壊して初めて、私たちは現実に目覚めるだろうとも言われます。
彼は、崩壊が起こり、それは日本から始まると言われました。
それが最終的な暴落であることがはっきりするや否や、マITLーヤは出現するでしょう。
自分が無欲であり、世界のためにすべてを行っているような錯覚を持っている人々がいます。
しかし、彼らの生活の根本には貪欲と利己主義があります。この偽善を暴き、人々に彼らの本性を示します。
rwhnd8/c6gix5/apf40p.html
http://o.2ch.sc/1ig8j.png
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518 :
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https://twitter.com/kimokute/status/1158004258102341637

日本から始まる世界的株式市場の大暴落

マITLーヤは、過去に知っているような経済システムが崩壊して初めて、私たちは現実に目覚めるだろうとも言われます。
彼は、崩壊が起こり、それは日本から始まると言われました。
それが最終的な暴落であることがはっきりするや否や、マITLーヤは出現するでしょう。
自分が無欲であり、世界のためにすべてを行っているような錯覚を持っている人々がいます。
しかし、彼らの生活の根本には貪欲と利己主義があります。この偽善を暴き、人々に彼らの本性を示します。
rwhnd8/c6gix5/apf40p.html
http://o.2ch.sc/1ig8b.png
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519 :
【深夜の赤信号にご用心】(2/3)

「きょ、今日はもう遅いから早く寝よう…」

レイチェルは風呂で軽くシャワーを浴びてパジャマに着替えると、すぐにベッドに潜り込んだ。
しかし、さっきテレビで見た怪談が怖くて頭から離れない上に
急にゴロゴロと雷が鳴り出し、外は土砂降りの豪雨になり余計眠れなくなってしまう。
結局ほとんど一睡もできないまま朝を迎え、いつものようにガンマンの衣装に身を包む。
外を歩いていると、町の住人達がチラシを配ってるようで気になり受け取ってみると、
今夜ナイトバザーが開催されるとのことだった。

「レイチェルさん、今夜のナイトバザー是非来てくださいね!」
「面白そうね、もちろん行くわ!」

夜の7時、すっかり日も暮れて月が顔を見せた頃、公園でナイトバザーが開催された。
他所の町の住人達も集まってきて、いろんな物を売っている。
レイチェルも楽しそうに色んな売り場を回って楽しむ。
夢中になっていたせいで既に0時を過ぎて深夜になっていた。

「もう帰らなくちゃ!ちょっとハメを外しすぎちゃった」

いつも来ている公園から自宅まで8キロほどあり結構遠い。
すると突然、昨夜のようにゴロゴロと雷鳴と共に雨が激しく降り出した。

「どうして!?天気予報じゃ今日はずっと晴れのはずなのに!」

どこかで雨宿りしようかと考えたが、自宅へ急いだ方が安全だ。
深夜の大雨、この状況が昨日テレビで見た怪談を思い出した。

「な、何か嫌な予感が…と、とにかく家へ急がなくちゃ!」

大雨で真っ暗な上、雨で帽子のつばがへたってくるため前方がよく見えないため、
自分が今どこを走っているのかも検討がつかない。
すると微かに赤い光が見えてきた。

520 :
【深夜の赤信号にご用心】(3/3)

赤い光…それがますますレイチェルの恐怖心を煽り立てた。
近くまで来てみるとそこは交差点。ここの交差点の信号はずっと黄色で点滅していて
壊れている状態なのに何故か赤色だった。かなり不自然だ。
深夜で大雨、さらに赤信号…完全にあの怪談と同じ状況だ。
車が通ってないことを左右確認して渡ろうとしたその時だった。
何かに足を掴まれるような気を感じ、まさかと思い恐る恐る後ろを振り返ってみる。
見てみると赤い腕のようなものが、足を思いきり掴んでいたのだ。

「は、放して!あっち行って!お、お願いだから!!」

必死に足を振って抵抗するもその腕は頑なに放そうとしない。
もうダメだ。そう死を覚悟したその時、ザーザー降っていた雨が急に小降りになり、僅かだが視界が明るくなってくる。
ん?と足を振るのを止めてよく見てみると、足に絡まっていたのは腕でもなんでもなくただの赤いロープだった。
実は作業員が信号を既に修理しており、通行止めとして使っていた赤いロープを持って帰るのを忘れただけだったのだ。
もちろんレイチェルはそんなこと分かるはずがなかった。

「た、ただのロープだったのね。アハハハハ…」

さっきまで必死に暴れていた自分がバカに思えたものの、同時に安堵もした。
とにかくすぐに家に帰るとシャワーを浴びて、パジャマに着替えそのままベッドイン。
翌朝は昨夜の豪雨が嘘のように快晴で、太陽が眩しく輝いている。
今日は雨でびしょ濡れになったガンマン衣装を洗濯し乾かさないといけない為、
一日ずっと家にいることにした。

「まあ、そんな日もあるよね」

そう言ってソファーに腰掛けてテレビをつけたその時、
また真っ暗な画面と共に白い文字であの言葉が浮かび上がってきたのだった…。


おしまい

521 :
あっ、お題で『無駄づかい』を使用するのを忘れてしまいました。
今回使用したお題は『コーラ』、『ナイトバザー』、『あか』、
そして『かいだん』の4つということで訂正します。

522 :
>>516
正直助かるー
猛暑から雨の季節ですね
レイチェルさんの焦る様子が目に浮かぶようですw

>>514
まぁ言っちゃうと固定面子なので、平日に投稿されず、ゲストも不在だと・・

523 :
>>516
寝苦しい夜、ひんやりと冷気が…、516氏がレイチェルシリーズ怪談回を演じてみせる、お題『コーラ』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』、THE・RED!
さあ、西部劇マニアのコスプレイヤー・レイチェルさんが、『コーラ』&ポップコーンでテレビを楽しむ〜、テレビには世界中から『怪談』を集めた特番の、真っ黒画面に白い番組名が浮かぶッ
いわく深夜大雨、交差点の信号が『赤』に変わると血染めの腕が現れ、首を絞めてくるのだという…、冷や汗たらりのレイチェルさんに『ナイトバザー』のお知らせ舞いこみ、宣言お題を消化ァ!
帰り道、やっぱり大雨の中、レイチェルさんの目の前に赤信号が灯り…、足を掴む赤い腕がキター! でもよくみると赤いロープでした、ジャン、オチw いやそれも怪奇現象だがw
ラスト、そんな日もあると気を取り直すレイチェルさんのテレビにまた番組名が浮かぶ〜ッ! 何でも喰らうレイチェルシリーズ、怪談回をも取り込んで成長中だ! 516氏が次回もお楽しみにィってEND!

524 :
>>492

お題『コーラ』『かいだん』『あか』『無駄づかい』『ナイトバザー』使わせていただきました。

(1/2)

 タイトル……夏の朝

 今日、僕は珍しく目覚まし時計より早く起きた。昨日の夜からワクワクして、心臓のドキドキが止まらなくて、全然眠れなかったのにすごく元気に起きられた。何故なら、今日は待ちに待った従姉の梨華が来るからだ。

 梨華は僕より二つ年下の2年生。茶色っぽい髪の毛を2つに分けて、お洒落なゴムで結わえてるんだ。
 うるうるしたチワワみたいな目。鼻も口も小さく整ってて愛嬌のある顔をしてる。背は小さいけれど色が白くて、手足もすんなり伸びて、スタイルがいい。
性格だってスゴく良いんだよ。優しいし、なんでも遊びに付き合ってくれる。僕の事を「おにい」って呼んで、子猫みたいに甘えてくるんだ。
 
 こんな可愛い従姉が遊びに来るんだもの。元気はつらつ!で、がんばっちゃうんだ。

 いつもなら、僕、カーテンの隙間から漏れる、朝の鋭い太陽の光に文句を言うんだ「やだなあ。今日も暑くなりそうだ」って。その後はもそもそとタオルケットに潜り込んで、ひと眠りするんだけど、今日からしない。

「あたし早起き大好きなの。だってラジオ体操好きなんだもん」って去年の夏に梨華が言ってたんだ。
 だから一緒にラジオ体操付いてってあげるためにも、早起きになれないといけないしね。

 ベッドから出て、パジャマからママの用意した服に着替える。
 今日着ていくのはお気に入りの青いTシャツに夏向けのハーフパンツ。ハーフパンツは安物のバーゲン品だけど、動きやすいし涼しくて良い感じだ。
 着替え終わったら、二階の僕の部屋を出て颯爽と階段を駆け降りた。
 とんとんとんって細かく刻む足音のリズムが気持ちいい。
リズムに乗った僕は残り三段を勢い良く飛び降りた。

「よいしょ!」

 どん!って音の響きと飛び降りた衝撃が足の裏にじーんと来たけど平気。そのまま右に曲がれば、直ぐにリビングルームへ到着だ。

「パパ!!おはよー!」

 リビングの奥にあるダイニングにはネクタイをきっちり締めた半袖ワイシャツ姿のパパがテーブルに向かって座っていた。
パパはコーヒーを飲みながらスマホをいじっていたけど、僕の方を向いて「お早う」って少しビックリしたような声で挨拶を返してくれた。

「今日は珍しく元気だな。何かあるのか?」
「えへへーまあね」

僕はとぼけて笑うとパパの隣にひょいっと座った。

「ふーん……まあ、元気があるのは良いことだ」

 パパは少し嬉しそうに笑うと、またスマホに目をやった。
 新しい部署での仕事が忙しいらしくて、毎日難しそうな顔してスマホでいつも連絡してる。

 そんなパパを梨華は「お兄のパパってかっこいーよね。だってお仕事いっぱい出来るんでしょ?凄い人だよね」ってうっとりとした目で見てたけど、
 そうかなあ? パパは今の仕事になってから少し痩せたし、
仕事が旨くいってないと、ゴボウみたいな顔をニンジンみたいにあかくして、ドン!ドン!と足踏みしながらスマホを触ってたかと思えば、
目の下真っ黒にして、ママに「すぐに戻るから」って言って、どんな時間であってもスーツに着替えて会社に行っちゃうんだ。

 パパがまた仕事に行っちゃうと、完成したパズルのピースの1つ抜けたみたいにすごく寂しいし、あんなに仕事に追われるなら、僕はサラリーマンになりたくないって思っちゃう。

525 :
続きます。
(2/2)

 今日の朝ごはんは至ってシンプル。大きなお皿にバタートーストとブルーベリージャムのトーストが一枚づつ。
真ん中のお皿にはベーコンを下敷きにした目玉焼き。もちろん黄身はとろとろの半熟だ。
小さなガラスのボウルには甘くないヨーグルト。これはブルーベリージャムのトーストと一緒に食べる。そうしないと酸っぱいだけで美味しくない。よし!僕の嫌いなものはないし、さぁていただきますか。

「ちょっと待ちなさい!」

フォークを握った瞬間、キッチンからママの声が飛んできた。

「これも飲むのよ」
 
寝巻き用のワンピースにエプロン姿のママは僕の席までやってくると、目玉焼きの乗った皿の隣に、くすんだ緑色の怪しい液体が入ったグラスを、テーブルをコツンと叩く音をさせて置いた。
 そう、僕の大嫌いなママの手作り野菜ジュースだ。
野菜嫌いの僕の為に作ってくれるのはありがたいけど、余計なお世話。この緑のヘドロは僕の食欲、やる気を呑み込む最低の飲み物だ。しかも味は絶望的にまずいと来てる!僕はうつ向いて大きなため息をついた。
 パパが横目で凹んだ僕を眺めてクックッ、と軽く笑う。

「そのくらいぐいっと飲みなさいよ!」

ママが面白くなさそうな顔をして、僕の頬を軽くつついた。

「だって変な味するんだもん」
「へんな味って何よ?」
「塩辛くて、苦いし、飲むとドロドロして気持ち悪い」
「何言ってんの! あんたが野菜を食べないからよ? 」
「ちゃんと食べるって。この野菜ジュースだって、スカッとして、さわやかで甘かったら飲むもん! 」

 僕らのやり取りを笑って聞いていたパパが口を開く。

「要するに、お前はコーラが飲みたいんだな?」

 さすが!パパ。
パパがいたずらっ子のような笑みを浮かべて、僕の言いたい事を言ってくれた。 それよりも久しぶりにパパの笑顔が見れたのが嬉しい。だからつい言っちゃった。

「そう!スカッとさわやか!いってー!!」
「こら。調子にのるんじゃない。」

 ママが僕の頬っぺたをつねる。
パパは口を押さえて楽しそうに笑いだした。

 

526 :
ごめんなさい。まだ続きます
(3/3)
頑張って朝御飯を食べた後。ママは片付け、僕は玄関までパパを見送った。

 僕がリビングに戻ると、ママが椅子にすわってダイニングテーブルで書き物をしていた。ママが書いてるノートらしき物の横には水泳の道具が入ったビニールバッグとプールカードが置かれていた。
どうやらママが用意してくれたらしい。
 ママは僕を見つけると「あんた今日のプール教室、午前からでしょ?」と、尋ねてきた。

「あっそうだ!」
「ほら、脇にいれなさい。」

 ママは立ち上がると戸棚の救急箱から体温計を出して僕に渡してくれた。
僕はTシャツの首もとから電子体温計をいれて脇に挟む。
 ピピッと音がしたので体温計を脇から出して画面をみる。36.3℃といたって健康。腰を落として画面を覗いてたママも頷いて、プールカードに僕の体温とオーケーサインを書いてくれた。

「はい。持ってきなさい」
 
 僕は差し出されたプールカードをビニールバッグにしまった。ママに言われる前に体温計を戸棚の救急箱に片付けると、ちらりとノートらしき物事の中味がみえた。高そうなお金の数字がいっぱい書いてあって、僕は、ついじろじろと見てしまう。

家賃 70,000円
光熱費 17,000円
通信費 15,000円
食費 50,000円

 いいなあ。ここにあるお金で、どんだけお菓子やゲームが買えるんだろ?梨華にも沢山おもちゃを買って上げるのに。お人形を買ってあげたら喜ぶ梨華の愛らしい顔を想像してたら、ママの大きな声で僕は我に返った。

「無駄遣いしないように、家計簿つけてるのよ」
じろじろ見ないの、と言ってママは照れているのか家計簿を閉じた。
「へぇーママって以外と真面目なんだね」
「そりゃそうよ。どんだけお金使ってるか、分からないと貯金が出来ないでしょ?」
「貯金が出来ないと、どうなるの?」

ちなみに僕はあればあるだけ使っちゃうタイプだ。

「そうね……お金のかかることいえば……君が大きくなったら大学行きたいとか、家を改築したいとか色々とあるでしょ?」

 確かにそうだけど、僕が大学に行くのかなんてまだ先の話だし、家だって新築だ。今一ピンと来ない。

「でも、未来の話でしょ?もっと分かりやすく」

 ママは猫のように、何もない右上の壁を見ながら考えていた。でも直ぐに僕の顔を見つめて意地悪な笑みを浮かべた。

「お金をちゃんと貯めておかないと、君の小遣いが減るどころか、無くなる可能性もあるのよ」
「そんなあ」

 僕は思わぬママの反撃に情けない声をあげた。

「嫌でしょう。特に今日は……町内会の夜市あるでしょう。もし貰えなかったら?」

 うっ……それは痛い。昨日、メールで夜市の話を梨華として一緒に行く約束をしたのだ。当てが外れたらどうしよう。ママはおろおろする僕を二ヤニヤしながら眺めていたけど、あまりからかい過ぎてもいけないと思ったのか。

「冗談よ。梨華ちゃんとあんたの分のおこづかい、ちゃんとあげるわよ。」

 ママが優しく笑って僕の頭を撫でた。
僕は恥ずかしくて、うるさいなって小声で呟いた。
悔しいけどママは何でもお見通しなのだ。

527 :
これでラストです

(4/4)

「行ってきまーす」
「気を付けて行くのよ!午後から梨華ちゃん達来るから__。」
「知ってるよ!寄り道しない帰ってくるよ!」

 ママの言葉を遮って、僕はビニールバッグ片手に外へでた。

 家の窓から見て想像するよりも、外はとっても暑かった。
隣の家の庭で咲いていたヒマワリは太陽の前に、降参です。参りましたとばかりに頭を下げていた。その横にある垣根へ絡まる朝顔はへなへなに萎びて今にもしぼんでしまいそうだ。
 まだ昼にもなってないというのに…。
僕は走り出した。暑さにへばった花を見ていたら、僕の元気を吸いとられてしまいそうでイヤだったからだ。

 みんみん蝉の鳴き声がする。突き刺すような明るい水色の空には、もこもこの入道雲。雨が降らないといいな。
 だって今日からお盆休みだ。それに夜市もある。
 でも一番大切なのは、僕の従姉の梨華が一年ぶりに遊びに来る事だ。
僕は、嬉しくて、嬉しくて、もっとスピード上げて走っていった。
 
終わり

528 :
遅れましたorz

>>492
使用お題:『コーラ』『無駄づかい』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』

【サリアスラガ王国物語】(1/2)


 聖歴847年。この日、王都サリアスラガでは歴史的行事が執り行われた。サリアスラガ王国と隣国ガルテアナとの間に、50年もの戦争の歴史を終結し、和平が締結されたからだ。
 その為だろうか。長き戦争によって疲弊していた国民は歓喜し、この日ばかりはと夜を徹してのお祭り騒ぎと成って居た。

「ナイトバザーか、何か掘り出し物でもあるかな?」

 この、お祭り騒ぎに便乗し、商人達はこぞって夜店を開く。今までの倹約生活の反動であろう。住民達の財布の紐も緩んでいるらしく、出店はなかなかの盛況ぶりだった。
 赤髪巨躯の男は、楽しそうにその夜市を眺めながら歩いて居た。そして、一つの屋台に目を止める。
 そんな彼の耳に、良く知った声が聞こえたのはそんな時だった。

「サ、サイラス様!! 困ります! 勝手に出歩かれては!!」
「おう、シルビアか、見て見ろよ、この土産物をまるで鋼鉄の様じゃないか?」
「様も何も、唯のインゴットですから。買わないでくださいよ?」
「え?」

 シルビアの言葉にサイラスは悲し気な瞳を向ける。彼の事は尊敬できる主だとは思っていても、彼の趣味は別である。
 変わった形の石や奇妙な形状をした樹木。果ては唯の四角い硝子や、中途半端な長さのインゴット。そう言った“ちょっと変わった物”を収集する悪癖があるのだ。

 サイラス曰く「奇貨居くべし」と言う事なのだが、シルビアはその度に何かが違うと思っていた。
 確かにそんなサイラスだからこそ、彼女の様な者が彼に仕える事が出来るのも事実だが、しかし、無駄遣いを許して良いと言う訳では無いだろう。
 そもそも、そんな理由で自分とそこにあるインゴットを同視されたくないと言う気持ちもある。

 どうにかサイラスを説き伏せたシルビアは、彼の左後ろに付き従う。決して彼がこうして出歩く事に異存がある訳では無い。
 確かに護衛も付けずに歩き回ると言うのは、サイラスの立場を考えれば問題はあるだろう。しかしこの国に、彼を一対一で害せる者がどれ程いると言うのか。

 改めてこの夜市を見てみれば、この国の国民が、どれ程戦争に対し疲弊していたか分かるだろう。決して貧困がはびこっていたと言う訳では無い。
 むしろ、戦争をしていたにも拘らず国民の生活水準は高いレベルで維持されていた。
 それでも、何時、徴兵させるか分からないと言う不安感はあったし、少なからず“国の為に”と言う空気が蔓延していた所はある。
 だからこそ、その裏では国民は疲弊して居たし、未来に対する疑問を常に感じていただろう。

 それから解放されたが故のお祭り騒ぎなのだ。

「兄貴達はこれから大変だなぁ」
「……サムソン様もアディオール様も、その覚悟は出来ています。それにサイラス様だって、これからは戦場に出て居れば良いと言う訳には行けませんよ?」
「そうなるのか」
「そうなります」

 サイラスの口から溜息が零れる。ガシガシと頭を掻きながら視線を泳がせた先に、珍しい物を見つけ、彼は目を輝やかせた。

529 :
【サリアスラガ王国物語】(2/2)


「コーラじゃないか!!」
「え? はえ!!」

 体格の良い赤髪の男が、突然屋台に走り寄って来たのだ。店主は欠伸を引っ込め、目を白黒させる。
 彼の言うコーラとは、少し前に戦争で切り取った領地で売られていた飲み物だった。
 その地で湧き出る天然の炭酸水に各種ハーブやスパイス、カラメル等を溶かし込んだ飲料水で、疲労回復や興奮剤的な効果を及ぼす飲み物だったはずだ。

「懐かしいな。戦場で飲んだ以来だ」
「ほ、ほう。あんた、兵隊さんだったのかね?」
「ああ、どうやら、お役御免になりそうだがな」
「そうかい、アンタ達の国の兵隊さんには良くしてもらったからなぁどうだい? 負けとくよ?」
「では、遠慮なく」
「サ、サイラス様!!」

 シルビアの制止の間もなく、サイラスは小銭を払うと、素焼きのカップに注がれたそれを喉に流し込んだ。

「クアァ! コレだこれ!! エールとは比べ物に成らない刺激感!!」
「? そんなに美味しいのですか?」
「お? シルビア。飲んだ事なかったっけか? ほれ」

 そう言って渡されたカップと、自らの主の顔とに視線を往復させていたシルビアだったが、やがて少し頬を赤らめながらそのカップに口を付けた。

「!!」
「凄いだろう?」

 シルビアの表情にサイラスが満足そうに頷いた。
 思えば戦争に明け暮れていた毎日だった。亡くなった戦友も幾人もいるし、部下に至っては両手両足の数ですら足りない。
 だが、そんな皆が望んだ平和がすぐ目の前にある。
 賑わう通りを目の前に、サリアスラガ王国第三王子にして、将軍でもあるサイラス今回の会談が上手く行って良かったと、目を細めたのだった。

530 :
>>492

使用お題→『コーラ』『無駄づかい』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』

【急流】(1/2)

『やっと連絡できた。すぐ会いたいです。場所は――――』

 メッセージが届いた。日付を見ると、ほぼ一年ぶり。差出人はアカリ。私の親友だ。
 多分だけど、私は待っていた。誰かが話し掛けてくれるのを。
 だって私はずっとここにいた。
 どこにも行かなかった。
 みんなが私を忘れても。

 止まっていた時間。それが再び動き出した。

 *

 待ち合わせ場所は近所の公園。今は暗くて見えないけど、丘の上まで続く、広くてなだらかな階段が目印だ。
 その上り口に彼女は立っていた。
「ここだよ、ハルカ!」
「アカリ。久しぶりだね」
「……うん。ごめんね。ずっと会いたかった」
 顔の表情は分からないけど、彼女は元気そうに見えた。
 会うなり私の手を握って、その感触を確かめるようにしていた。
 彼女の手は温かかった。
「私もだよ。私も、アカリに会えてうれしいよ」
「うん、ありがと。諦めなくて良かった」
 再会を喜んでいるはずの彼女は、けれども、どこか落ち着かない様子だった。
 少しの沈黙の後、私の手をつかんだまま、焦ったように切り出した。
「あのね、私、あなたを連れ戻しに来たの。今からそのための買い物をするの。だから付き合って」
 そう言って、私の手を引っ張った。
 私は彼女に従った。

 *

 公園の中の、普段は何もない広場。そこに、今日はなぜだか多くのテントが並んでいた。
 星も見えない暗闇に、色取り取りの天幕が浮かぶ。
「確かこっちだったはず」
 彼女は足早に進む。狭い通路に、客は少なかった。私たちは沢山の店を素通りした。
 やがて彼女は、段ボール箱が積まれた一角で足を止めた。
「あの! ええっと、これかな、これを四箱下さい」
 青白い顔をした店番の人と、急いだせいか上気して赤くなった彼女。
 私は二人が話し合うのを眺めていた。少し離れているせいか、内容までは分からない。
 段ボール箱を開けて、中を確認する彼女。一度離れて、台車を持ってくる店番の人。
「ごめんね、待たせたね。じゃあ戻ろっか」
 彼女はそう言いながら、段ボール箱を積んだ台車を押してきた。

531 :
【急流】(2/2)

 私たちは階段のところまで戻ってきた。
「それ、何を買ったの」
 台車を止めて箱を開ける彼女に質問する。
「これだよ」
 箱から取り出されたそれ。
「コーラ?」
 黒い液体が入った細身のガラス瓶。ラベルの字は……読めない。
「こんなに買ってどうするの? 友達みんなに配る?」
「違うよ。言ったでしょ。これを開けて……」
 彼女は栓抜きを取り出して、王冠を飛ばした。
「……今ここで……使う」
 そう言って瓶を掲げ、私の頭上で逆さにした。
「えっ、何、何するの!」
 黒い液体は赤黒い染みになった。彼女は笑っていた。
「付いてきて」
 台車を押して一段上る彼女。そこでも瓶を開けて、今度は中身を地面に流す。
 あぜんとする私を尻目に、彼女は次々と瓶を開け、中身を流し、階段を上った。
 いつしか階段は赤い滝のようになった。彼女が小さく見える。
 私を呼んでいる。
 私は階段を上る。

 *

 広かったものが狭くなった。なだらかだったものが険しくなった。
 私は今、螺旋(らせん)階段を上っている。
 真っ赤な液体が上から落ちてくる。それでも私は上る。
 不思議と疲れることはなかった。
 今の私は大変な格好になっているはずだ。それでも不快には感じない。
『ねえ、聞こえる? ハルカ、聞こえてる?』
 階段の全体が脈動する。
「聞こえるよ、アカリ。聞こえてるよ」
 彼女と私はつながっている。ふと見上げると、遠くで何かが光っている。
 あそこまで行こう。
 彼女は私を覚えていてくれた。
 今度は、私が彼女に会いにいくんだ。

 赤い流れが強くなった。まるで私を試すかのように。
 彼女の声と、急流と。
 大丈夫。私はまだ生きられる。

 両足に力を込める。私は、また一歩踏み出した。

532 :
遅刻2人目ですまぬ><

533 :
お題→『コーラ』『無駄づかい』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』締切

【参加作品一覧】
>>499【怪談「赤い壇」】
>>516【深夜の赤信号にご用心】
>>524【夏の朝】
>>528【サリアスラガ王国物語】
>>530【急流】

534 :
ではー、企画を忘れてたので、、、今回も5つです

お題安価>>535-539

535 :


536 :
禁止

537 :
表裏

538 :
恋人

539 :
星座

540 :
☆お題→『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』から1つ以上選択

☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。

☆締め切り→9/1の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

541 :
最終的にはなかなか
お題も面白そうなものが集まりましたね

今週もよろしくお願いします

542 :
>>540 ラディカルグッドスピーーーーード!
お題:『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』

【星座のモチーフ】

 星座、いわゆる黄道12星座の由来はなんなのか、ご存じだろうか。

 おひつじ座、おうし座、ふたご座、うお座……。星座を12種類言える人はいえど、そのモチーフがなんなのかをきちんと説明できる人は少ないだろう。

 結論から言おう。星座の元ネタはギリシャ神話で、半分の6星座はゼウスの浮気から発生している。

 例えばおうし座。エウロペという娘に一目ぼれをしたゼウスは自らの姿を牡牛に変え、彼女を攫ったのだ。その際、ゼウスはあちこち駆け回ったそうだが、その巡った地域をエウロペの名前からとってヨーロッパと呼ぶようになったそうな。

 例えばふたご座。美しい王妃レダに一目ぼれをしたゼウスは白鳥に姿を変えてレダの寝室に忍び込み、彼女を身ごもらせてしまう。そして人間の夫から生まれたカストルと、ゼウスの血を引いた不老不死のポルックスという双子が生まれたのだ。

 例えばおとめ座。冥界のザクロを4粒食べてしまったペルセフォネは1年のうち4か月ほど冥界に住まなくてはならなくなった。ペルセフォネの母親である豊穣の女神デメテルが彼女のことを心配し、その4か月間は洞窟に引きこもってしまうせいで冬は作物が育たなくなるそうだ。
 この話は一見ゼウスとは関係なさそうだが、ペルセフォネの父親はゼウスで、デメテルはゼウスの姉なのだ。もう、なんていうか、やりたい放題である。彼の性欲の前には何も禁止ができない。

 全てではないが、他の星座もしょうもない理由で星座になっているものばかりである。
 つまり夜空で輝く綺麗な星座たちも、その内実はゼウスのやらかしと神々のお遊びでできたお笑い話ばかりなのだ。

「へい、ちょっと」

 要するに何が言いたいかというと、星座のことを神秘的だとありがたがってる連中は、元となった話を知らない間抜けということになり、星座のことを必要以上に信じる行為は実にバカげたことだといえよう。
 そう、星座なんてどうしようもないものなのだ! 飲み屋でグダってるオッサンたちの噂話と大差ない存在なのだ!

「へいへい、落ち着け落ち着け。ヒートアップしすぎ」

 ふーふー。そ、そうかな? いやでもね、だからこそ言いたいんだけど、星座っていうのは……。

「へいへいへい、わかったわかったから。星座のことを信用しすぎるのはダメってことね? んで、何があったんだよ。今日は朝から機嫌悪いじゃないか」

 ……11位。

「へ?」

 今朝の星座占いが11位だったの。でもそれは別にいいの。でもね、どう見ても11位より12位の方がマシな占い内容に思えるのよ。
 だって12位は「待ち人来ず」だけだけど、11位は「自己主張すると周囲から呆れられて大変なことになるでしょう」なんだよ!? 恋人が来るかどうかなんて次の日になればわからないけど、周囲から呆れられるって後々まで悪評に繋がるじゃない!
 圧倒的に11位の方が悪いでしょ!? そう思わない!?

「……これが信ずるも信じないも表裏一体ってことなのか……」

 なによ、小さい声でブツブツと。

「いやなんでも。それよりその占いかなり当たってると思うぞ。今日は黙っとけ」

 うぐぅ。

543 :
>>524
人は年齢を経るほど動じなくなるが、幼き頃は毎日が大事件であったもの、524氏が全選択を宣言し、少年の夏の朝になりきりはじめた! 成長期だぜ、夏!
さあ、珍しく目覚まし時計より早く起きた少年が駆け下りる『階段』で〜、心臓ばくばく、元気はつらつ! とのこと〜、朝から生命力が全力だな、少年w 
顔をニンジンみたいに『あか』くする父親に見守られながら、さぁていただきますか、とトーストを齧ろうとする少年に、最低の飲み物こと野菜ジュースが差し出される!
『コーラ』が飲みたいんだろう、と父親に言われ頷く少年、しかし出されはしないw なんだよw 『無駄づかい』が嫌いな母親に、『ナイトバザー』に女子と行きたいんだろうと煽られながら、
ああそうだって感じで一日は加速していく! 524氏、何気ない一日の些事に一喜一憂する少年時代が出ているなEND、全お題を丁寧に使い切るフル消化フィニッシュで乙だ〜

>>528
『ナイトバザー』がいい味を出す前回お題に次弾装填〜、528氏が一分遅刻の駆け込みで市の賑わいをえがくw 全選択だッ、戦後将軍サイラスと王国・戦後市!
さあ、王国と隣国の50年戦争が終結し、夜を徹して総出の騒ぎで賑わう『ナイトバザー』〜、道行く『赤』髪巨躯の将軍がとある屋台に目を止める〜、変な石とか奇妙な樹木を集める趣味が発動、
『無駄遣い』だと忠言を発するシルビアさんとの二人連れッ、豪胆キャラの将軍はまいったな的に目を移し、戦乱の最中で知った『コーラ』を見つけ、子どものように喜んだ〜、
一口すすめられたド堅物のシルビアさんも、その美味に表情をうっかり明るくしてしまったァw うんうん、『会談』が上手く行って良かったと、笑う将軍、街をゆく〜、
戦友や部下を数え切れないほど亡くした戦争であったが、だからこそ終結を喜ばなければならないんだな、将軍笑え! 528氏、全選択クリアで苦味一滴、男のビターな喜びを切り取ってみせる、終戦ENDォ!!

544 :
>>530
なんだかんだ提出作品が増、増! トリは多芸の進行氏、今回は夢見心地小説か〜、どうなる、全選択! ミーティング・フォー・ミーティング〜
さあ、語り手のもとに届く親友からのメッセージが、止まっていた時間を動かしたァ! 公園で待つは、表情の見えぬ親友…、彼女は言う、あなたを連れ戻しに来たと〜
星も見えない暗闇、色取り取りの天幕、幻想的な『ナイトバザー』のセットは、精神世界であることの暗示なのか〜、上気して『赤』くなった親友に、『階段』へと誘われて、
何をするのかって『コーラ』が語り手にぶちまけられ、親友は階段に赤い滝をつくる、ははあ、ここで『無駄づかい』かw 親友の声だけが呪文のように響く螺旋階段の先に光、
語り手は赤の滝に踏み出していく、決意の言葉はまだ生きられる! 死地からの脱出世界を血の赤で彩り表現したか〜、進行氏、読者を幻惑する腰つきで全選択を攻略〜、ミステリアス・イマジネーション・トリ・フィニッシュだ!!

>>540
早い! 540氏が新お題にもう着手! お題決定が深夜一時なのにいつ書いたんだって感じで全選択を早速宣言〜、星座の由来ってどんなもんよ、星のまよい人にさちあれ☆彡
さあ、語り手がおもむろに重い口を開く〜、おひつじ座、おうし座、ふたご座、『うお』座…『星座』といえば数あれど、賢明な読者はその由来をご存知であろうか〜、
もうね、だいたいゼウスの浮気から発生してるのよねと息荒げ、ゴッド・ゼウスの好色を暴いていく〜、一目ぼれ、忍び込み、浮気、淫行、彼の性欲はなんびとも『禁止』できないのよねと、
星座信仰ってマヌケよねと、オヤジよねと、止まらぬシャウト〜! 聞けば星座占いで最下位の待ち人(『恋人』)来ずより悪い、悪評占いをされた語り手が怒っているだけだったオチw
信仰とは『表裏』一体、必死に信じぬものも信じているゆえのこと、救われるといいねwって感じで540氏、スピーディ☆シューティングスター全選択クリアで勉強になる流れからのオチも組み上げ! やりおるね!

545 :
安価訂正
>>542氏w

546 :
>>524
なげええええwすご・・・というのが偽らざる第一印象ですがw
文体、比喩、日常描写から作品世界が立ち上がってくる感じですね
主人公くんの楽しい気持ちが伝わってきます

>>528
夜市の楽しみですねw
『会談』からバランスよく組み立てた感じ
シルビアさんはシルビアさんで変わった出自なのでしょうか

・・・いつも思うんですが、国名とかそれっぽいですよね
自分ではうまく考えられないので、できたらコツが知りたい・・


こうして見ると、前回作品は各自の個性が出ていて、お題スレ的にはおいしかったですね

547 :
>>542
失礼ながらアホがおるw
短編スレ民の鑑
勢いだけじゃないキレがあるー

競馬さんも競馬さんで早いし

>>544
感想ありがとうございます
雰囲気出てるようであれば良かったですw
主人公の現在を生死不明にしておきたかったのですが、バタバタして崩れてしまいました><

548 :
>>540
使用するお題→『魚』『禁止』『恋人』『星座』

【ガンマンのアウトドア】(1/3)

まだ薄暗い早朝5時のこと。
西部劇マニアのレイチェルは早起きしていつものガンマン衣装に着替えると、
自家用車のポルシェに乗ってどこかへと出かける。

「このポルシェに乗るのも久しぶりね」

レイチェルは久々にアウトドアの旅行に出かけることに決めたのだ。
昨夜のうちにキャンプ用のテントや釣竿等の用具をトランクに詰め込んで準備を済ませておき、
住人達がまだ眠っているであろう早朝の5時に町を離れれば誰にも気付かれない。

「町のみんなには悪いけど、ちょっとしばらく旅に出させてもらうわ」

町を離れて2時間ほどが経ち、太陽が顔を見せる。もう100キロほどは走っただろうか。
深い森を突き抜けていくと、大きな湖が美しい湖畔の近くに到着した。

「何も考えずに来たけどアウトドアにピッタリな場所ね!」

本当はガンマンらしく馬に跨って旅をしたかったけど、そんな贅沢はできない。
車から降りるとトランクに積み込んでいた用具を取り出し、湖の近くにテントを設置する。
透き通るような湖に緑の美しい森林、そして空気が美味しい。

「さてとまずは釣りでも楽しもうかしら」

釣竿を手に取り早速釣りを始める。湖には魚がいっぱいだ。

「今夜は焼き魚ね!」

そう言いながらどんどん魚を釣り上げていく。

549 :
【ガンマンのアウトドア】(2/3)

途中何回か失敗し逃げられるものの、最終的には7匹釣り上げた。

「これくらいあれば十分ね」

釣りを終えて魚をクーラーボックスに保存すると、近くの小道を散歩することに。
森の中を歩いているとウサギやリスといった小動物が姿を現し、その愛くるしい姿にも心を癒される。
しばらくして湖の方に戻ってくるとレイチェルは目を疑った。
ちゃんと閉めていたはずのクーラーボックスがいつの間にか開いており、
7匹いたはずの魚が僅か2匹に減っていたのだ。

「誰の仕業?こんな器用なことするってことはもしかしてサル?」

この湖畔に自分以外誰も人がいる気配がしない。
とりあえずサルの仕業ということにしてレイチェルはこれ以上気に留めなかった。
少し日が暮れてきた頃、レイチェルは釣った魚を棒に刺して火で焼く。
ほどよく焦げ、少し冷ますと早速かぶりつく。これがまた美味しい。

「本当にアウトドアしてる気分だわ」

食事を終えると、雲一つない澄んだ夜空に浮かび上がる星座を眺める。
無数の星がキラキラと嬉しそうに輝いている。
ふと、レイチェルは大学生で恋人と一緒にキャンプに出かけた時を思い出す。
大好きだった彼と夜空を眺め、何の星座かを当てる勝負をして楽しんでいた。

「今頃元気にやっているかなあ…」

涙を拭くとテントに入り、眠りにつくのだった。

550 :
【ガンマンのアウトドア】(3/3)

翌朝、レイチェルは近くの山道を散策することに決める。山というのは本当に冒険心をくすぐられる。
しかし、近くには「DO NOT ENTER(入るな)」と進入禁止を知らせる看板があったものの、
酷く錆びついていてたため彼女は全く気付かなかった。
しばらく歩いていると近くの茂みからガサガサッと音を立てて、
何かと思い覗いてみるとそこには黒くて大きなクマがいた。ヒグマだろうか。
クマもレイチェルの存在に気付いたのか、彼女と目が合うや否や追いかけてきた。

「ギャーーーーーッ!!!」

まさか本当にクマと出くわすとは思わなかった。もっと山の奥に住んでいるものだと思い込んでいた。
レイチェルは死に物狂いで逃げるも、クマがすぐ近くまで迫ってきている。
走ってる最中、拍車が茂みに引っかかってしまい転倒してしまう。
急いで拍車に絡んだ草を千切ろうとしたが、雑草で丈夫なためなかなか切ることができない。
もうクマが目の前まで来ている。

「こうなったら…!」

レイチェルはそのまま足からブーツを脱ぎ、またひたすら走って逃げた。
クマはレイチェルのブーツをクンクン嗅ぐと興味を持ったのか、そのまま咥えて住処へと帰っていった。
なんとか山から脱出し、クマの追跡から逃れることができた。

「た、助かったぁ…死ぬかと思った…」

昨日の魚泥棒はあのクマだったと考えると納得がいった。
あの時少しでも早く湖畔に戻っていたら、クマと出くわして大変なことになっていただろう。
またクマと出くわしたら大変だと思い、すぐに帰り支度をする。
用具を全てトランクに詰め込むと近くにクマがいないことを確認し、すぐに車を走らせる。

「怖かったけどスリルがあって悪くなかったわ。あれが自然というものだしね」

レイチェルはまたどこかの森や山でアウトドアを楽しもう、そう考えた。
湖畔での2日間は本当に良い思い出になった。
ブーツを片方無くしてしまったけど。

おしまい

551 :
>>546
すいません……。みんなあのくらい長いのを書くのかなって思って、4000文字ぐらい書いてました。

もう少し軽めのを書く努力します。

552 :
>>548
こっちも早w
そう言えばいつも徒歩ですね
自由で危険な休日、自由でありながらスムーズにお題を消化していきますねぇ

>>551
まぁそこは遅筆の進行の嫉妬が入ってるので、話半分でお願いします、すみません(^_^;
実際6000文字以上書いてる(そして削ってる)方もいらっしゃいますし
だからってみんながみんな4000文字も書けるわけがねーですよw

553 :
>>548
猛暑が過ぎ去ろうとしている〜、アウトドアにはぴったりの季節、お題『魚』『禁止』『恋人』『星座』を宣言した548氏が例の彼女にバカンス一泊、プレゼントォ! レイチェル・ザ・ワンダーフォーゲルだ!
さあ、西部劇マニアのレイチェルさんが今度は湖畔遊びに繰り出すぜ〜、半分ストーカーである町民の目を逃れ、やってきたのは湖だ〜、
『魚』釣り上げ、レイチェルさんから「本当にアウトドアしてる気分だわ」と都会人の感想もれるw 澄んだ夜空に浮かぶ『星座』は、かつての『恋人』とのキャンプを思い出させ、せつなし涙〜
さて翌朝、立ち入り『禁止』の抑止も見えず山に踏み込み〜、目の前にはクマ出現ッ! 拍車が引っかかるもブーツごとパトリオットでクマを回避の無事生還w
湖畔での二日間、ひと時のバカンスは思い出となった模様〜よかったねw 宣言お題をはやばやとクリアした548氏、溢れるイマジンでレイチェルさんに休息を与えるEND!

554 :
一応その、誤解があるとまずいので言いますが、作品の長さは1〜4レスまで自由です!
(ただし4レス目は予備です!)
ですので、書ける人はどんどん書いていいし、書けない人でも1レスから参加可能です

進行は重厚長大路線を警戒していますが、だからって長いの禁止なんてことはないです
逆に短くても、お題をそれなりに消化してさえいれば大丈夫です

各自の事情や実力、表現したい内容に合わせて当スレをご利用ください

555 :
ぶっちゃけお題消化も1個からでいいしね。簡単に達成できるフラグだから全消化やりたがる人多いけど、マストじゃないし。
むしろお題2,3個消化で中身の出来がいい奴も読みたい。自分には書けないorz

556 :
>>540 今回のお題相性がいいね。組み合わせやすい。
お題:『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』

【愛と愛】
 私は彼にとっても愛されてるの。今朝だって私のことを大切にしてくれたわ。

 彼はこう言うの。「ダメだ、包丁は使うな。君がケガをしたらどうするんだ」って。

 いやん、彼ったら私のことが凄く心配なのね。嬉しい。

 私はその日から彼の言いつけ通り、ちょっと大変だけど包丁は一切使わないで調理ハサミを使って料理することにしたの。

 それだけじゃないのよ? 他にも彼は私のことを大事にしてくれるの。

 彼はこう言うの。「ダメだ、占いなんて見るな。嫌な結果が出てたらどうするんだ」って。

 いやん、彼は私の気持ちまで心配してくれてるのね。嬉しい。

 私は毎日テレビの占いを見てたけど、その日からすっぱり星座占いも誕生月占いも見るのをやめたわ。

 まだまだあるわよ。彼は本当に、私のことを優先してくれるの。

 彼はこう言うの。「ダメだ、魚は食べるな。寄生虫がいたらどうするんだ」って。

 いやん、彼は私の体調まで心配してくれてるのね。嬉しい。
 私はお寿司や焼き魚は大好物だったけど、その日から一切魚料理を食べなくなったわ。

 彼はこう言うの。「ダメだ、勝手な買い物をするな。財布を持ってたら誰かに騙されるかもしれないぞ」って。
 彼はこう言うの。「ダメだ、友達と遊ぶな。友人だからとつけこんで酷いことをされるかもしれないぞ」って。
 彼はこう言うの。「ダメだ、外に出るな。変な男に目をつけられたらストーカーされるかもしれないぞ」って。

 いやん、彼は私が危険なことに巻き込まれないようにいつも護ってくれてるのね。嬉しい。
 でもだんだん規則が厳しくなりすぎてきたけど、これも愛の裏返しってやつね。私はもちろん彼の言う通りにするわ!

 でも、もう限界かもしれないわ。

 彼はこう言うの。「ダメだ、もう勝手に動くな。オレの言う通りにだけしろ。それ以外何も考えるな」って。

 だから私は、彼を●したの。「ごめんね、あなたのこと大好きなの。だけど、これ以上あなたに命令されたら、あなたのこと嫌いになっちゃう。
 だからあなたが大好きなうちに、あなたのことを●したの。ごめんね、ごめんね」

 私は血まみれの部屋の中で一人でいつまでも泣いていた。友達との接触もなく、ずっと家の中で引きこもっていた私には、誰も心配してくれる人なんていなかった。
 だからこそ、彼に対してずっと謝罪し続けた。私は彼の背中に刺さった凶器を見て、ずっと彼に謝り続けた。

「ごめんなさい。言いつけを破って包丁を使ってしまったわ。ごめんなさい、ごめんなさい……」

557 :
>>556
逆にそのまま足し合わせた話しか思い付かないですw
繰り返しの効果と主人公の思考で、ちょっと面白いバランスになってますね

558 :
>>556
統合失調症の女が水槽の魚を彼氏と思い込んで最後にさばいて食べる…みたいなサイコホラーもいけそう

559 :
>>556
お題と調和した556氏が、やりやすいやりやすいと恋人談話で全選択だ! 愛ゆえに、ノー・ハニー・ノー・トラップ・ウィズ・シザース!
さあ、私は彼にとても愛されてるのと、のろける『恋人』関係な女性が幕をきる〜、ハードな束縛型の彼氏はあらゆることを『禁止』しまくっている模様〜、
いわく『魚』は寄生虫がいるから食べるな、騙されるから財布を持つな、危険だから外には出るな、遊ぶな、買うな、『星座』占いは嫌な結果が出るかもしれないぞ! 心配性かw
愛と規則は『表裏』一体〜、包丁使えず調理バサミを持った彼女が食材と一緒についに堪忍袋の緒も切って…! ラスト、やってしまった〜、女性が言う、ごめんなさいと、言いつけを破って包丁を使ってしまったわって〜、そっちかいオチw
恋は盲目、命令に従ううちに、愛ゆえに従うのか、いや命令ゆえに従うのか、分からなくなる意識混濁〜! 556氏、すらすらとお題とお題の方程式を解いてみせる、オチも効いたぞ、全選択クリアー!

560 :
なんかこのスレ面白そうだけど、今はどこからお題とか選択すればいいん
あと誰でも作品書いていいんよな?

561 :
お題は毎週日曜22時に更新。今回のお題は>>540かな。
新規参入大歓迎やで。

562 :
サンガツ
ちょっとやってみよう

563 :
ここに書いた短編をなろうにも短編集として投稿してるんだけど、途中何度か休みつつ合計で89作品も書いてたわ……。
合計12万字も書いてる。これもすべて遊び場を提供してくれている進行さんと、スレ名物の競馬実況さんのおかげだわ……感謝m(_ _)m

564 :
とにかく作品がないと話にならないので、作者の皆さんには感謝ですよー

565 :
>>522
>>523
>>552
>>553
少し遅れてしまいましたが、感想ありがとうございます
ホラー回とアウトドア回、どちらも楽しんでいただけたようで嬉しいです
ホラー回ではお題の一つ『無駄づかい』を入れるのをうっかり忘れてしまいました
このようなミスをしないよう、これからは注意して書こうと思います

566 :
別にミスしてもいいのよ・・・でも自分ではミスしたくないw

ところで次回の企画ですがー
先日ご提案もありましたが、まぁー考えがまとまっておらず

前スレ668の辺りでやった、組み合わせお題をやろうかと思っています

567 :
お題→『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』から1つ以上選択

『十代目、未だ休めず』第二話

「うどん」

車中にて一休はその単語を呟いた。
場所はしまなみ海道。
眼下に広がる大海は壮大にしてなぜか自身の何かを懐古させる。
空は青く澄み渡り、首都に満ちていたスモッグからは想像もできないほどに風は透き通っていた。
私にとってこのような新鮮な景色、環境は心を穏やかにし、日頃のストレスを和らげてくれる。
そんな景色には目もくれず、ただ缶ビールとさきイカの往復を終えた日頃のストレスの根源は唐突にそう呟いた。
ぶっ殺しテェ。
ハンドルにかける私の手が震える。
大体、車内は隣の一休から漂う酒臭で満たされ、私はまともに呼吸ができないのだ。
ドアウィンドウを下ろしても空気は全く変わらない。
その上この男、酒にも劣らぬ臭いの強いさきイカをくっちゃくっちゃと汚らしい咀嚼音を響かせて食していた。
そんなところでの「うどん」だ。
もう我慢の限界である。
「一応聞くが、一休よ。四国くんだりまで何しに行くかはわかってるんだよな?」
一応、私は聞いた。
一応だ。
彼は赤く蕩けた顔で返してきた。
「うどん」
私はキレた。
「ぶっRぞこのクソ坊主がぁ!
テメェ黙ってやってりゃあ隣で汚ねえ音と臭いを垂れ流しやがって!!
その上でうどんだと?
舐めてんのかクソカスがぁ!」
私の怒声を引き金にして、彼の額に青筋が走った。
出てこないところを見ると、どうやらマクラは寝ているようだ。
「うどん食わなきゃ四国人に失礼だろうが間抜けぇ!
それとも何か?
可愛い女でも探しに来たかクソ童貞?
テメェの汚ねぇ顔もぶらさげてるやつもそこらでグルグル回ってる渦潮にクリーニングされてからほざけやがれ!
あ、魚に迷惑だなぁ!
テメェの肉はプランクトンにも劣る臭さだろうからよぉ!」
「テメェのクッセェ息海に溶かしゃあいい漁になるだろうぜぇ?
商品にはならねぇだろうがなぁ!」
荒れる車内とは裏腹に海は穏やかだった。
車は罵声を外に放出しながらしまなみ海道を走り、目的地へと進んでいく。

568 :
>>567

十代目未だ休めず 第二話 II

「ところで駒田よ、お前、星座の知識はあるか?」
うどんを食い終えた一休は言った。
私はまだ食べているのだが、そんなことは関係ない。
私としては観光地マップに載っていた店なだけあって中々にうまいのだから出来ればこれを味わうことに専念したい。
「お前の頭の上でいつも回ってるやつか?」
「冗談じゃねえんだ。今回のヤマと関係があるんだよ」
これは失敬。
「簡単な奴ならわかるがな。オリオンはサソリに殺された、程度の」
「そんなもんでいい。
星座っつうのは要はギリシャ神話から来てるもんだ。
まあ、俺もそこまで細かく理解してるわけじゃねえが」
僧侶がギリシャ神話とはおかしい気もするが、そもそも我々は大日本帝国図書館、その深奥に引きこもる指定不可図書管理人である。
気にすること自体が筋違いであろう。
「牡牛座ってあるだろう?
あらぁ、ゼウスが恋した女に近づく際の姿が牡牛だったことから来てる。
牡牛に化けたゼウスは女に近づき、恋をして女は子をなした。
その子供が後にミノタウロスの親になるわけだが、まあそこんとこはいいんだ」
ちゅるりと言わせて最後のうどんを私はおさめる。
完食である。
「デイダラボッチっつうのは妖怪、異形、巨人として表されることも多いが、伝承によっては神、巨神とされることもある。
その巨大な体躯、力により土地を生み出し、地形を創り上げた神であるとな。
今回の指定不可図書で指すデイダラボッチはまさしく後者の方だ」
店員に代金を払い終えた私達は席を立ち、車へと向かう。
「神とも妖怪とも表されると。なるほど、表裏一体ということか。崇められる存在と恐怖の対象」
シートベルトを締め、アクセルを踏む。
車は緩やかに動き出した。
これからはしばらく悪路が続く。
「そう言うことだ。
同一の存在でありながら受け手、表現する者によってその姿、見方を変えちまう。
まあ、俺らが相手にしてるのはそもそもそう言う物なんだがな」
「だが見えてこないな。今回の件、お前の話のどこに繋がるんだ?」
一休が煙草を吹かし始めたのに倣い私も煙草を取り出す。
車は山道に入った。
これより先立入禁止、そんな看板が入口には立て掛けてあった。
外部からの接触を禁じた地、聖地、または異界。
「今回のデイダラボッチはな、まさにこの神話と同じなのさ。
恋人が人間、子をなし、二人とその親族、土地を守るために神となった者」
外へと吐き出される紫煙はしばらく宙を漂った。
彼は私の方は向かなかった。


「そして、裏切られ異形となってしまった哀れな神だ」

569 :
>>567
まさかの続編キターw
このロマンチックなお題から、こんなむさ苦しい(失礼)話が出てこようとは
第三話も期待・・・

570 :
>>567
待ってたぜッ、「十代目未だ休めず」二話! 全選択の連打で続編とは荒行の極みッ、十代目アイツの脈々たるバトル・ビギン!
さあ、>>567氏が例のやつらを再起動、(前回>>42)、猟師、猟犬、銃からなる対魔獣・十代目一休チーム〜、予告通りにデイダラボッチ回を進める気だw 一行は旅情たっぷりしまなみ海道、四国に渡る〜
猟犬マクラが寝入る中、目的を失念した銃こと十代目一休が、赤ら顔でうどんと呟く〜、猟師、駒田さんが舐めてんのかと聞くと、テメェ渦潮にクリーニングされろ、あ、『魚』に迷惑かあ〜と猛烈に煽る一休w
で、四国〜、結局、駒田さんもうどん食ってるw 一休は先にたいらげ自分本位に本題始め、 『星座』知識から、デイダラボッチに解説つなぎ、駒田さんも半神半妖『表裏』一体か、と理解! 一休わりと説明うまいw ラスト山道、これより先は立入『禁止』…!
哀れんでいるのか一休、「相手は人間を『恋人』に子なした土地神、そして、裏切られた異形の存在だ…」と緊張感高めるEND! これは…続き全選択クリアだけでも偉業だが、構成と魅せも抑えた幕引き上手! 成し遂げたなッ567氏ウルトラCで三話突入だッ!w

571 :
お題:『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』

タイトル【後輩の淳の話】

(1/3)
 8月最後の夜、俺は高校時代の後輩の淳と突発で宅飲みをする事になった。
淳からLINEで「明日、誕生日なのに恋人と別れて辛いんですよ。付き合ってくださいよ」と、誘いが来たのだ。
 本当は行きたくない。しかし淳はこの町の有力者の息子で、VIP中のVIP。俺は先輩だが、俺の家は淳の家の分家で奴隷に等しい存在だ。
 本家の坊っちゃんである淳に逆らったら最後、家族縁者、俺に係わる人間全てに迷惑がかかる事になる。
 しかたない。俺は淳のマンションに出向くことにした。


淳は190cm100sの巨躯を小さく丸め、ぐすぐすと鼻を鳴らしながらビールを飲む。

「ひっく……あの女言ったんすよ、他に好きな男が出来たから別れてって……ホントにマジ意味不明なんスけど……」
「それで、別れるお前もお前だよ。人が良すぎるだろ。でもそんな女、別れて正解」
「会った事無いのに、女の悪口言わないで下さいよぅ」
「ビッチにフラれたぐらいで泣くなって!」
 
 笑って淳の背中を叩く。俺はお気楽な事に、酔っぱらいの愚痴を笑って聞いて、終わるだろうと思ってた。
 しかし暇潰しに見た心霊特集のテレビ番組を観たせいだろうか?番組を見終わった後も、二人で恐い話をして盛り上がっていた。

「俺んちの傍にある。漁業組合の本部だった廃ビル判りますよね」
 淳が500ml缶ビールを事も無げに飲み干して言った。
「立ち入り禁止になっているあのビルだろ」
「そうそう。あそこ、幽霊出るって知ってました?」
「マジか!?」
 
 俺は思わず、すっとんきょうな声をあげた。
あのビルは子どもの頃から廃墟で、幽霊が出る話は初耳だ。

「俺のじいちゃんが本部長やってた頃から、出てたらしいから間違いないっすよ」
 
 淳はウラメシヤ〜〜と缶ビールを持ちながら、俺の目の前で幽霊の様に両手を下げる。

「いい加減な事言うなよ、淳が見た訳じゃないだろ」
「ふーん。先輩もしかして怖いとか?」
「怖かねえよ」
「嘘だ。目そらしてヤニ吸おうとした。嘘つくときの悪い癖っスよ」
 
 俺は火の付きかけた煙草をチューハイの空き缶の口で押し潰す。
仏像みたいな顔をしてヘラヘラ笑う淳をを睨み付けた。
 俺はこいつの笑い顔が嫌いだ。身体中を虫が這いずるような嫌悪感が沸き上がって仕方がない。
 
「そんな恐い顔しないで下さいよ。先輩」

 淳は本家の人間にしては偉ぶらないし、裏表もない気持ちの良い性格だ。でもその分、空気が読めなくて、平気で残酷な行為をしたし、老若男女構わず暴力を振るう要注意人物でもあった。

 そんな淳だからこそ、ある程度の反抗も先輩面が出来たし、癪だが恐ろしくて逆らえない所もあった。

 淳はへらりと笑う。ああ腹が立つ。畜生、何を考えてやがる。気持ちわりぃ。

「じゃあ先輩、今から一緒に行きましょうよ。例の廃ビル。怖くないんでしょう?」

 分家の俺に反対できる程の人権はない。俺達は肝試しの用意をして、件の廃ビルに向かった。

572 :
(2/3)

徒歩5分ぐらいで廃ビルについた。この建物はバブル時代に建てられた豪華なビルだったらしいが、それは昔の話。今は草ぼうぼうの植え込みに、割れたガラスの自動ドア。ホコリまみれのエントランス。確かに幽霊が出てもおかしくない。

「ここってこんなに高かったか?」
「そうっすね……屋上入れて9階まであるみたいですよ」

 俺と淳は、懐中電灯で周りを照らしながら廃ビルの中に侵入する。二人であちこち歩き回り、上へ上へと進んで行った。ビルの中は酷く荒れていて、不気味な雰囲気を醸し出している。
 流石の淳も、この雰囲気が耐えられないのか、下らない話しをしてきた。

「先輩、飛び下り自Rる人って、飛び下りた後、なるべく痛くないよう落ちる努力をするって知ってました?」
「例えば?」
「足から着地するようにしたり、植え込みの中に落ちようと足掻くらしいっスよ」
「へーそうなんだ。」

 正直鬱陶しい。流しても何度も話しかけてくる。

「先輩、女って、なんで星座占いが好きなんでしょうね? なんでも星座のせいにしますよねえ?」

 だからチョッとだけ挑発してみた。

「彼女に私、魚座のO型だから淳君と性格合わないよね、とか言われたか? しかも季節占いまでされた口だろ? わたし3月生まれで淳くんは8月生まれだから、なお相性わるいよねーってwww」
「ふーんまあ、そうっスねぇ。そんな感じっス」

 俺は少しスッキリしたが、淳は面白くないらしく、黙りこくってしまった。ざまあみろ。
 このまま二人で黙々と探索を続けて、とうとう最上階、屋上に続くドアの前までやって来た。

「開けるぞ」
「うっス」

 屋上のドアは鍵がかかってないらしく、俺がドアノブに手を掛けると簡単に回って、たいした力も入れずにドアは開いた。

 一緒に屋上に出て周りを調べるが何もない。
 ほっとした俺は煙草をくわえ火をつけ、錆びたフェンスに寄りかかり外を眺めた。
 ぽつりぽつりと町の明かりが見えるだけで、幽霊らしきものは見えなかった。

「やっぱり幽霊が出るって話って嘘じゃねえか」
「嘘です。すんません」

 背中ごしに淳の笑いをこらえるような声がした。
 気に入らない。酔ってるせいか、俺は強めに出た。

「お前、本家だからって人を振り回し過ぎじゃない?」
「黙ってもらえます? 人の女を寝とるクソ野郎は」

 驚いて振り向く間もなく『ドンッ』と背中を強く押されていた。その勢いでフェンスが砕け、赤錆色の破片が宙を舞う。俺の身体は物凄い勢いで墜ちていった。

573 :
(3/3)

 一仕事終えたかのように淳は穏やかな顔をして物思いに更けていた。

「最初っから先輩が俺の女を盗ったのは知ってたんです……正直に謝れば許したんですよ」

 淳はスマホを取りだし、先輩と元カノがラブホから出てくる画像を見て大きな溜め息をつく。

「だから宅飲み誘ったのに「別れて正解」とか「ビッチ」とか何様だよって感じっスよ。でも、先輩だから最後の最後まで、チャンスを上げようとしたのに……どうして調子コイちゃうかな?」

 淳は電話をかけた。掛けた先はこの町で警察所長をやっている兄の携帯だ。無論、自首するつもりではない。肝試ししてたら先輩が錆びたフェンスに寄りかかって落ちた。つまり事故だ。兄は空気の読める人だから、淳の立場を理解して、うまく解決してくれるだろう。

「物怖じしないで、話してくれる人は先輩しかいなかったのに……つまんね」

 淳はスマホを耳に当てたまま、懐中電灯で照らしながら地上を見下ろす。下を見るにしては懐中電灯の光は弱い。
 淳は大きな目を細め、大地を見つめる。
 そして目が闇に慣れて、壊れた懐中電灯、白目を向いた先輩の顔が在らぬ方向ーー荒れた植え込みの方を向いているのが微かに見えた。

「先輩わるいね、植え込みに落とせなくて。でも仕方ないよね。会った事もない俺の女の星座と血液型を言っちゃう方が悪いんだから…………あっ?! 兄貴? 深夜にごめん。実は大変な事故に出会しちゃって……うん、また……」

 淳は兄と話ながら目を細めて、先輩だった物を見つめた。
 その表情は妙に慈悲深げで、蜘蛛の糸の端を寂しげに見つめる、釈迦のようでもあった。




574 :
>>571
これは、きっちりタイトル通りの話になってますね
手慣れた筆致で、お題もいつの間にか消化してるー
うまいなぁ

575 :
ここって1レス何文字までいける?

576 :
前に字数オーバーした時の感じだと1レス1900文字くらいだったはず

577 :
あざ

578 :
テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345テストだよ12345

579 :
もうお答え頂いてますけど、作例:>>79>>474

ってか当の>>79の作者様でしょう?

■スレの仕様
・1レスの文字数: 4096バイト = 約2000文字まで
・1レスの行数: 60行まで
・1行の文字数: 200バイト = 約100文字よりも多く行ける・・・

上気の通りなので、実際に2000文字まで詰め込むのは難しいです

580 :
あ、別に名指ししたかったわけではなくて、具体例として挙げても別に構わないよね、って意味です・・

581 :
>>540

お題→『魚』

【朽ちを知る】

 鯉は白く揺れる水面を眺めながら、随分と長い間自分は生活してきたと思ったのである。
 鯉は今まで四六時中、川底にうごめく水草を食んでいた。だから、自省というものをするのはこれが初めてだった。
 鯉はまず、まだ腹に袋を抱えているときに見た、鮒を想起した。
 苔むした岩の上にじっと身を横たえた鮒の体に、黒ぐろとした斑点が鱗の中で目立った。その黒点を見つめていると、えらが塞がれたような苦しさと不快さが、尾ひれから頭に向かってずんずん歩いてくるような気持ちになって、鯉はすぐにそこを去ってしまった。
 力なく水を揺蕩う仲間の体は、それから幾度となく鯉の目にうつった。鯉には何故彼らが餌食むのをやめて、流れに身を委ねるのかは理解できなかったが、自分より体の大きかったものからそうしていくのを見て、いずれ自分もそうするものなのだと納得した。
 いつになったらそうすることになるのだろう、と考える。考えながら、ひげを水底に向けた。
 小さな沢蟹を吸い込み、喉の奥で噛み潰して土をこし、鯉は「どうでもいいことなのだが」と割り切った。

 いくらかして、鯉が石をつついていると、口先に艶めかしさを伴う感触があった。見てみれば、昔共に浅瀬で絡んだ雌である。
 ゆったりと川床に身を寄せて動く様子は見せない。
 寒さが和らいだ川で打ちつけ合うひれの力強い感触と共に、鯉はこの雌がだいたい自分と同じ頃に生まれたものだったことを思い出した。
 腸を微かにめぐる性欲を感じながら、鯉はいずれこのようにぐったりと寝転がるのを欲するときも来るのだろうかと考える。
 おもむろに彼女の膨らみのある腹に身をこすらせ、細やかな手びれや尾ひれの下についた白い傷あとを口をつければ、その肉体の存在を感じられた。しかし鯉は、あの浅瀬で感じた水面の上の、明け広げな低圧を内に張りこませるような気持ち悪さも覚えた。
 ふと、彼女らがこうしているのは、単純な欲求によるものではないのではないかと思えた。土の濁りがひどい日の重い水筋に似た、何か抗い難い力によって、自分らはこの静かな揺蕩いに誘われるのではないかと。
 生まれて初めて見た鱗が剥がれていく様を、鯉は思い出した。鮒の黒点を目の当たりにしたときの背筋をさかのぼる恐怖が、一抹の理解を伴った凄まじさで群れ泳いだ。
 自分もいずれ、近いうちにこの雌と同じようになってしまうのだ、肉薄する圧にのまれてどこかもわからぬ川下へと身体は消えてしまうのだと、鯉は慄き尾びれをばたつかせて、遠くへ去った。

582 :
ストーリーとしてはかなり薄くなってしまった……メルヘンにならないように鯉を描きたかったんだが、人間と違って多元的な経験とか全然ないだろうから書けるものが相当限られる
勉強になった

583 :
>>571
8月の末〜571氏が顔の下から懐中電灯をあてて登場〜、変だなー変だなー、怖いなー怖いなー、って全選択! 廃ビルにこだまするのは誰の声、奇譚!
さあ、8月最後の夜〜、『恋人』と別れて辛い、宅飲みだ、という後輩の淳さんと、先輩の語り手、俺さんが付き合いのビールを飲む〜、俺さんはどうせビッチだろと慰める、それどんなだw
話題は立ち入り『禁止』のビルに及び、幽霊鑑賞ツアー開始…うわホラーものだ、やだなーやだなー、『裏表』のない性格の淳さんだが、俺さんは内心嫌悪しているらしい〜、
女って『星座』占い好きですねとこぼす淳さんに、どうせ『魚』座のO型だから合わないとでも言われたんだろと、俺さんがやけに詳しすぎる口撃に出て、エッ! ビルから落とされたァ? ここで語り手は571氏に交代w
本筋はホラーじゃなくて寝取りに復讐・サスペンスか〜、まさかの黒幕・俺さんと、人称変更オチw これは読めないw 571氏、全選択クリアと練ったどんでん返しを武器に、身から出た錆を見よENDをきめてフィニッシュ!

>>581
豪気なやつが現れた! 「お題は『魚』。」とだけ言って始める581氏にスレも騒然、単品選択、それすなわち掘り下げる力の証が求められる、我輩は鯉である〜
さあ、随分と長い間自分は生活してきたと、鯉のおぼろな意識が自省をスタート〜、はい、お題『魚』クリアw さて本題に戻り、主人公となる鯉が想起するのは鮒の鱗〜、
その黒ぐろとした斑点が、謎の息苦しさとなって鯉を襲う〜、これは鯉だけに恋?(違う) なるほど、次に見るのは力なく水を揺蕩う仲間の体、その悠然とした様子を鯉は切って捨てる、いわく、どうでもいいと〜
で、かつて仲良くしていた雌を見て、そのゆったりと川床に身を寄せる様子に、鯉は冷ややかな焦りを覚えるのである〜、感じ取るのは肉薄してくるゆうらりとした圧、
そう、それは老い、死と呼ばれるものの予兆、多分w 子どもの頃から誰もが無為に感じ取ってる、己に迫る死の予感…ッ、581氏、おぼろな意識の鯉を利用してその仄かを描き出したか、単品選択はこうであれ、お手本カープ★フィニッシュ!

584 :
>>581
確かに、その、『寒さ』とか、暑さとか、季節感を出せればストーリー成分が補えたかも
ただそうすると、しっかりフォーカスしてる濃い文章が薄まるでしょうから、難しいところです

>>583
> 顔の下から懐中電灯
w

585 :
>>540

使用お題→『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』

【おとぎ話】

 昔々、ヴィシェーラー様のご降臨よりも、ずっと昔の話です。
 この離宮の近くには大きな川があって、その西に住む一族と東に住む一族は、水を使う権利を巡って、常に争っておりました。その川は、今でも細い流れとして残っています。
 さて、ある日のことです。西の一族の娘が川で洗濯をしておりました。すると、東の一族の若者がやってきました。彼は釣りざおを持っていて、少し上流で釣りを始めました。
 これは特に珍しくもないことでしたので、娘は気にせずにおりましたが、しばらくすると、若者の叫び声が聞こえてきました。
 声のする方を見ると、若者が、慌てた様子で川に飛び込むところでした。釣りざおが流されてしまったのです。
 娘は手を止めて成り行きをうかがっておりましたが、これこそが星の導きでしょうか、娘の立っている浅瀬に、その釣りざおが流れてきました。
 娘が釣りざおを拾い上げるのと、若者が泳ぎ着くのとは、ほぼ同時でした。
 若者が娘に話し掛けました。
『西の娘よ、その釣りざおは私のものだ。どうか再び川に戻してもらいたい』
 西と東の間では、品物の受け渡しが禁止されておりましたので、若者はこのように言ったのでした。
 それに対して、娘は次のように返事をしました。
『東の息子よ、この釣りざおは私が拾った。あなたが命ずるのなら、私はこれをあちらに放りましょう』
 娘が指差したのは、流れが特に急なところでした。若者は言いました。
『西の娘よ、あちらに放ってはいけない。ただこの場に戻すのだ』
 娘は応えて言いました。
『東の息子よ、あなたが歩くと、水が濁る。あなたがここから離れるように、私はこれをあちらに放りましょう』
 若者が足元に目をやると、確かに娘の言う通り、浅瀬の水が濁っておりました。そこで、若者は少し考えて、次のように言いました。
『西の娘よ、私が釣りざおを手にしたら、私はここに戻ってくる。そしてここに立って釣りをしよう。何か釣れたら、それが水の中にあるうちに、あなたがそれを捕らえるのだ。だから釣りざおを川に戻してもらいたい』
 若者がこのように言うのを聞いて、娘は次のように応じました。
『東の息子よ、あなたがそのようにおっしゃるので、私はこれを川に戻しましょう』
 そうして、娘は釣りざおを川に戻しました。若者はすぐに釣りざおを拾い、娘に誓った通り、その場で釣りを始めました。
 その日は多くの魚が釣れて、そのすべてを娘が受け取りました。日が暮れる頃になると、若者は娘に別れを告げて、泳いで対岸に帰っていきました。
 それからというもの、二人が川で出会うことがあると、決まって若者が釣りざおを川に流し、娘がそれを拾いました。若者は娘のそばで釣りをし、釣果は娘が受け取りました。
 やがて二人は恋人同士の関係になりましたが、それが他の者に知られるのは時間の問題でした。
 ある日、二人がいつものように釣りをしていると、西の一族の男たちが現れて、若者を捕まえてしまいました。
 若者は抵抗しましたが、縛られた上に石をくくり付けられて、川の特に深いところに沈められたのでした。
 不思議なことに、それ以来、川の西側では魚がまったく捕れなくなりました。
 そんなことがあってからも、娘は川に通い続けました。
 娘が川に入ると、魚が寄ってきます。娘はそれに手を出すこともなく、流れの上を歩いて、急流を横切り、若者が沈められた場所に立ちました。
 のぞき込めば、こちらを見上げるものがありました。
 二人は水面を隔てて、川の表と裏とに別たれたのでした。
 これを見ていた天の星々が……えっ? はい…………今では忘れ去られた、私たちの古い神々が、二人を哀れんで夜空に上げました。
 こうして出来たのが、この季節に輝く釣人座です。

586 :
あ、、作品投稿ではトリップを外すんですが、うっかり・・・

587 :
>>540
お題:『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』

【星の下】


『あれはね、恋人同士なんだよ? ほら、赤い糸で結ばれてるでしょ?』

 アスファルトに寝転んだ状態で、俺は煙草をくゆらせた。
 目に映るのはうっすらと輝く星々。だが、そんな星達も今は四角く区切られた状態で居心地の悪そうにしている。

「何が、恋人…だよ……親子じゃねぇか……」

 かすれた声でそう呟く。
 樫原 浅見は大学時代の恋人だった。夢見がちでロマンチストで、だが、温かい女だった。

 あれは、那須高原の星見会だったか? 二人で見上げた満天の星空で『うお座』を見つけた時、浅見が言った言葉がそれだった。

『うお座はね? 都会だと見えないんだよ?』

 そんな事を言って浅見は星座を指差した。ペガサスがどうのとかクジラがこうのとか言っていたのだが、結局、俺には良く分からなかった。

「赤い糸……ね」

 自分の指を見てみるが、そんな物は見えやしない。
 感傷……か。ああ……感傷に過ぎないんだろう。
 一度は手に入ったと思った物がするりと手の平から零れる事なんて、良く有る事だ。
 それも、この裏の業界では。

 それでも、あいつを表の世界に押し出してやれたのは、たった一つの行幸だろう。
 既に味も分からなくなった煙草を持った手がパタリと落ちる。

 力が入らない。
 折角久しぶりの煙草だったと言うのに。勿体無い事だ。

 そう言えば煙草を吸う事を禁止したのも浅見だったか。
 こんな事に成るまで律義に守るなんて、俺は相当あいつに未練が有った様だ。
 だが、それも終わる。
 ああ、出来ればもう一度……

 ******

 その女性がふと振り向いて空を見上げた時、その目に映ったのは短く尾を引いた流れ星だった。

「ママァ……どうしたの?」
「うん? ママね、流れ星、見つけちゃった」
「え〜〜!! ずるい!! ボクも見たかった!!」
「う〜ん、じゃぁ今度、流星群見に行こっか?」
「本当!?」
「うん! 約束!!」
「どこ? どこに行くの!?」
「そうねぇ……昔パパと行った那須の……」

588 :
>>587
な、、何があったんやおっさん・・・
ここから異世界転生!頼んます!!

589 :
お題→『魚』『禁止』『表裏』『恋人』『星座』締切

【参加作品一覧】(1/2)
>>542【星座のモチーフ】
>>548【ガンマンのアウトドア】
>>556【愛と愛】
>>567【十代目、未だ休めず/第二話】

590 :
【参加作品一覧】(2/2)
>>571【後輩の淳の話】
>>581【朽ちを知る】
>>585【おとぎ話】
>>587【星の下】

591 :
漏れはないよね?
なんかすごい状況でビックリなんですが・・・

592 :
では予告通り、組み合わせお題をやります
前回同様、組み合わせ方は進行の独断です

お題安価『>>593』『>>594』『>>595>>596>>597

593 :
フィアンセ

594 :
シチリア

595 :
宇宙人

596 :
世界

597 :
秘密の鍵

598 :
☆お題→『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人は世界の秘密の鍵』から1つ以上選択

☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。

☆締め切り→9/8の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

599 :
前回は多数のご参加ありがとうございました
今回のお題は、、かなり面白そうですけど、ちょっとどうしたらいいか分からないですねw

当スレは皆様からのお題、作品、感想で支えられています
今週もよろしくお願いします

600 :
ベタな内容で組み合わせられそうだねー俺は一択にしとくけど

601 :
まずった。誤字脱字してる……なるべくしないように気をつけてるんだけどなあ

602 :
>>585
腕に覚えアリなスレ民による百花繚乱・煌びやかな激戦回に進行氏も飛び込んだッ、前回お題の全選択! 光星の合間に見ゆるものッ
さあさ、これから『星座』について、お伽な話を始めるかのう〜、むかしむかし、離宮近くの川、その東西両サイド、には水を使う権利を巡って争い続ける二つの部族があったそうじゃ…
部族間の物品交換は『禁止』されておった、その川である日、西の女子と東の若者が出会ったそうじゃ! な、ロマンスじゃろww 釣竿を落とした若者が、拾った女子と、釣竿を放る放らないの言い合いをするんじゃな〜
ほら直接のやりとりはできんから? ロマンスじゃろw 若者は『魚』を釣って女子にあげたそうな〜、そして『恋人』になったのじゃがバレる、お約束じゃ! そして川の『表裏』に別れた二人を不憫に思った神が、星座にしてあげたんじゃ! …泣いていいんじゃぞ
ってことで、お題全選択を星座の由来話に変換した進行氏〜、お題から発想していったようだな、違和感ゼロ、トゥルーラブ・ストーリーENDがネバーエンディング・トゥルー・フィニッシュを決めて乙だぜ!

>>587
大激戦となった前回お題、トリはこの人、587氏の全選択! 泣かせて見せるか〜、見えるか、二匹のサカナをつなぐ糸が〜
さあ、こっちもロマンス〜w うっすらと輝く『星座』を見て、ある男が「何が『恋人』だよ」とかすれ声を出している〜、「『うお』座はね? 都会だと見えないんだよ?」という女性の声が記憶をよぎり〜、
思い出されるのは那須高原の星見会での二人の会話ッ…、女性は星を見て語った〜、うお座は二匹の双魚からなる〜、そのサカナをつなぐ赤い糸〜、自分にも見えないもんかねと男は己の指を見て〜、感傷にひたる瀕死の男がそれでも良かったと言えるのはッ、
彼女を『裏から表』の世界に押しやれたゆえ〜ッ、いつしかタバコを『禁止』されたのをずっと守っていた自分に笑い、視界は暗くなっていったアッ! ラスト、女性と子の会話が聞こえる、
またきっと逢えると約束しよう、那須高原の流星群でッ〜! うお座からストーリーを練り上げたか、587氏全選択クリアはトリをしっとり彩る、ディープ・ラブEND〜進行氏も異世界転生を願いw 切ない乙、最後はばっちり! 

603 :
>>598 お題の組み合わせは難易度高すぎやろ。これ以外思いつかなかった。
使用したお題:『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人は世界の秘密の鍵』

【最高の宝石を、君に】

「やぁ、ハニー。今日はとっても良い報せがあるんだぜ」

「まあ、それは素敵ね。一体何かしら?」

「実は……今日僕は君にプロポーズをするってことさ! 結婚して、一緒に幸せになろう!」

「嬉しいわ! やっと結婚できるのね! 私とっても幸せよ!!」

「そうか、喜んでくれるか……僕もずっとフィアンセを名乗りつつ君にプロポーズできなくて申し訳ないと思ってたのさ、僕の女神様。今まで待たせてしまってごめんよ」

「いいのよ、あなたと一緒にいられるだけで幸せだもの……。でも、少し聞いてもいいかしら? なんでプロポーズをずっと延期していたの?」

「それがね、君にプロポーズをするにあたり、結婚指輪を用意したかったんだけど……それが難航してね。君に似合う最高の青い宝石を用意したかったんだけど、なかなかできなかったんだよ」

「最高の青い宝石、それはすごく綺麗なんでしょうね……。でもどうして用意できなかったの?」

「それが……ちょっと宇宙人にとられちゃってね、青い宝石を。それを取り返すのに苦労したのさ。宇宙人程度なんて僕の相手にはならないけど、あいつら数が多いからさ……」

「そうなの、じゃあ宇宙人をやっつけないと青い宝石を手に入れられないってことね。大丈夫なの?」

「大丈夫さ、愛しのマイハニー。奴ら青い宝石を我が物顔で奪っているけど、それを取り返す準備さえ整えば一瞬で明け渡してもらえるさ! その気になれば明日にでも奪い返すことができるよ」

「そうなの、無理しないでね」

「心配してくれてありがとう、マイスイートハニー。でも大丈夫。僕は必ず……太陽系の青い宝石と呼ばれる第三惑星・地球を、70億匹も地球に巣食っている宇宙人から奪い変えしてみせるよ!」

「嬉しいわ! がんばってね、神様! 新婚旅行は人型に化けてシチリア辺りが良いわ!」

「宇宙人を掃討した後に二人だけでゆっくりね、マイ愛しの女神様。AHAHAHA!」

「AHAHAHAHA!」

604 :
なかなか楽しいなやっぱ
もっと広まってほしいしなんなら読み専の人も来てほしいわ

605 :
>>598
使用するお題→『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人は世界の秘密の鍵』

【再会、そして新たな道へ】(1/3)

西部劇マニアのレイチェルは今日もいつものガンマン衣装に身を包み、町へと飛び出す。

「おはようレイチェルさん!」
「今日も素敵だよ!」
「ウフフありがとう!」

住人達の元気な挨拶にレイチェルは優しく手を振って返す。
正午、公園のベンチに座ってのんびりと寛いでいたその時だった。

「君、レイチェルじゃないか?」
「エッ!?」

どこか聞き覚えのある声だ。その声の方に振り返ってみると一人の男が立っていた。

「も、もしかしてラ、ライアン!?」
「そうだよ僕だよライアンだよ!」
「ま、また会えるなんて!!」

ライアンと名乗るその男は、レイチェルの大学時代の恋人だ。
レイチェルと同じ映画好きで彼女が西部劇を好む一方、彼はSFやサスペンス物が大好きだ。
ライアンは俳優になるのが昔からの夢で、レイチェルが大学を卒業した途端、手紙を残してハリウッドへ旅立ったのだ。

「いきなりいなくなるから凄く寂しかったんだよ。手紙じゃなく、せめて一声かけてからにしてよ」
「あの時は悪かったよ。飛行機に遅れるわけにいかなかったから、ああするしかなかったんだ」
「でも会えてとっても嬉しい!それにしても何でここに?」

ライアンはレイチェルに全てを話した。彼は一流の映画俳優を目指すべくハリウッドへ旅立ち、
必死に修行を積んだのだが実力を認められず、エキストラによる出演ばかりだった。

「それで僕が主役を演じたのはたったこの一作なんだ…」

ライアンはレイチェルに一枚のDVDを渡す。

「ランページ・フロム・スペース?」

地球に降り立ち、地球人になりすました宇宙人が各国の政府の弱みを握り、
その後全勢力をかき集めて地球を征服するといった内容で
ライアンは主人公である地球防衛軍のリーダー役として出演していた。

「でも大した評価を得られなくてB級の烙印を押されちゃったんだ。興行収入も最低だったし…」

606 :
【再会、そして新たな道へ】(2/3)

「でも主役として出られただけでも十分凄いじゃない!」
「う、うん…でも自分は俳優の素質はゼロって感じて俳優への道は諦めたんだ」
「あ、諦めるなんて勿体無いよ!」
「でももう決めたことなんだ」

落ち込むライアンを見かね、レイチェルは彼を自分の家へと連れて行った。

「今夜はここで泊まるといいわ。いつまでも落ち込まないで元気出してね。あなたらしくないわよ」
「ありがとうレイチェル。でも君は本当その格好好きだよね。いつも思うけど凄く似合ってるよ」
「エ、エヘヘ。照れちゃうわ」

するとライアンはキッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。

「僕が料理するよ」
「エッ本当!?」

ライアンは料理が得意なのだ。クリスマスの時に作ってくれたローストチキンやチョコレートケーキは絶品だった。
レイチェルは今でもその味を鮮明に覚えていた。

「さっ出来上がり!蒸し鶏のソテーだよ」

レイチェルは早速ナイフとフォークを手に取り口にする。もう最高だ。

「さすがねライアン!シェフ目指したらいいんじゃない?」
「そ、それなんだけどさ…レイチェル、僕と結婚しないか?」
「い、今、結婚って言わなかった?」

いきなりの結婚という言葉にレイチェルは思わず動揺する。

「うん、僕今度は料理人になってシチリアで店を開こうと思うんだ。いっそのこと僕と結婚してシチリアで一緒に暮らさないか?」
「シチリアってイタリアの?あそこ小学生の時に旅行で訪れたことあるけど素敵だったわ。それもいいけど、でも…」

レイチェルは現在の自分のことをライアンに全て説明した。

「そんなことがあったんだぁ…すごく町の人達に慕われているんだね」
「うん、最初はまあ変人扱いされてたんだけどね。今じゃもうすっかりヒーローみたいになっちゃった」

ライアンとはいつか結婚したい、とレイチェルは大学を卒業してからもずっと思っていた。
でも勝手にこの町を離れるわけにはいかない。
今日まで自分を慕い、協力してくれた町の住人達に話すべきだ、レイチェルはそう考えた。

607 :
【再会、そして新たな道へ】(3/3)

一週間後、町の住人達が公園の広場に集合した。
レイチェルはマイクを持って、ライアンと結婚しシチリアへ旅立つことを説明する。

「突然で悪いけどこの町を離れることになったの。みんな今までありがとう!」
「レイチェルさんのおかげで私たち、色々と励まされ活気づいたんだ」
「最初は変な人だなとしか思えなかったけどあの事件以来、レイチェルさんがいないとこの町はダメだと感じたんだよ」
「これからはライアンさんと一緒に新しい人生を楽しんでね!私たちは一生あなたを忘れない!」

町の住人達の優しい言葉と拍手喝采にレイチェルは思わず涙を流す。いつの間にか警察達も彼女のスピーチを見に来ていた。
数日後、近くの教会でレイチェルとライアンの結婚式が開かれ、盛大なパーティーが開かれた。
そしてシチリアへ旅立った。

・・・・・・・・・・・・・

3年後、料理人になったライアンは自分の店を開いた。
少しずつだが口コミなどで人気を集めていき、今ではすっかり地元で人気で話題の小さなレストランになった。
レイチェルはウエイトレスを担当する一方で、合間でガンマン衣装に着替えてギターやピアノを演奏し客達を大いに楽しませた。

「大好きだよレイチェル」
「私もよライアン」

一方、かつてレイチェルが住んでいた町の公園の真ん中には彼女の銅像が建てられていた。
レイチェルへの敬意を表すモニュメントとして。

「レイチェルさん、元気にやっているかな」
「大丈夫だよ、レイチェルさんは勇敢な女ガンマンだからね!」
「そうだよね!」




(後書き)
突然ですがレイチェルシリーズは今回で完結です。
今までありがとうございました!

608 :
見掛け以上に人はいるっぽいんですけどねー

>>602
感想ありがとうございますw
ぼくのかんがえたおだいスレ昔ばなし・・・でした

>>603
言いつつ飛ばしてきますね
なんとかひねってやろうという気概
言われればそうだよねwですけど言われないと盲点のオチw

609 :
>>605
(´・ω・`)<レイチェルシリーズは・・・完結するんだよ!
ΩΩΩ<な、なんだってー!?

レイチェルさんなら・・・レイチェルシリーズならやってくれるって知ってましたけど!
しかも今回は思ってたよりも早いけど!
結婚おめでとーぅ、、、くっそライアン、、、くっそ、、、


まさか完結してしまうとは思っていませんでしたが、エタったりするよりは綺麗に終わる方がいいですね
毎回楽しく読ませて頂きました、ありがとうございました

・・・そして外伝とか続編とか書いてくれてもいいのよ
もちろんレイチェルシリーズ以外もお待ちしております

610 :
スレ内で完結を宣言したシリーズって、何気にこれが初でしょうか?

611 :
>>603
変則お題『宇宙人は世界の秘密の鍵』が立ちはだかる宇宙回〜いや〜難関だな、ってもう投稿されてる?! 603氏が一番乗り、全選択! 青きシチリアへの約束ッ
さあ、今日はとっても良い報せがあると語り始める男性が、ヘイヘイ僕の女神様、ヘイヘイ、HAHAHAって感じで、さっそくプロポーズをかましたァ!(『フィアンセ』クリア!)
でもでも、何でプロポーズを先延ばしにしていたのデスか〜と女性が尋ねると〜、男性は、最高の青い宝石を捜していたができなかったんデースと回答〜、ん、宝石を探す? 事情を聞くと、宇宙人にとられちゃったと釈明する男性〜、
これはかなり電波な感じかなw とこちらは思うのだが、女性は普通に心配しているッ? ラスト、男性が、太陽系の青い宝石と呼ばれる第三惑星・地球を奪い返してみせると宣言、なるほど宇宙人オチw 女性が男性こと神様に『シチリア』行きを希望してお題をクリア〜
難関『宇宙人は世界の秘密の鍵』をどう斬るか、603氏は、神と人類の関係を宇宙人につなげて演出創作ッ、このお題でよくぞ速攻オチができた〜、アイデアマンが颯爽とトップをさらうッ! 短編スレの醍醐味だな、ナイスクリア〜

>>605
えーと、なんだって、レイチェルシリーズ最終回…ッ?? 当スレきっての愛されキャラを生み出した605氏、必見の全選択となった、どうなる! マイネーム・イズ・レイチェル!!
さあ、西部劇マニアのレイチェルさんがいつものように町に飛び出す〜、聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはライアンなる元彼が…ッ、元彼だとw >>548に出てきた例の人か…来るべきものが来たか、
聞けば俳優業に失敗し、地球人になりすました宇宙人が各国の政府の弱みを握り地球を征服するという、いかにもなB級映画の主演までやってしまった彼(『宇宙人は世界の秘密の鍵』)〜、興行収入もダメ〜そして『シチリア』でレストランを開くから結婚してくれと言うw
会ったのも久々なのに! しかしレイチェルさん、これを受諾、『フィアンセ』クリアw 三年後…そこにはレストランを軌道に乗せたライアンと幸せそうなレイチェルさんがッ、良かった、とりあえず良かったw
思い返せば人のことばかり心配してたレイチェルさん、最後は己の幸せを掴み取るENDッ、これは作者605氏の想いw シリーズ最後はみな笑顔でフィニッシュでよかったぜ! 605氏と愛すべきレイチェルさんにありがとう、祝宴クリアだッ!!

612 :
>>609
>>611
感想ありがとうございます
はい、今回でレイチェルシリーズは完結です。いつかは最終回を必ず書こうと考えており、
かつての恋人と再会、結婚、そして旅立つという形で締め括りました
レイチェルの物語はこれで終わりですが、もしまた機会があれば外伝も書こうとも考えております
ちなみに最初の悪ガキから帽子を取り戻す回、ベビーシッター回、拍車を無くしてしまう回、
クールになろうと必死になる回が特に書いてて楽しかったです
今まで楽しんでいただき本当にありがとうございました

613 :
>>610
そういや初かも

>>612
面白く読ませていただいた!
ぜひまた

614 :
よく考えたらブーツの話がありましたw
3作以上のシリーズに限定すると、多分、初のような気がする

読んでて特に面白かったのは、、どれも面白かったので正直、、ホラー回とかも面白かったです
外伝はありがたい〜

615 :
シリーズ物とかありなんだ

616 :
全然おk

617 :
書くものが短編と決まってるだけで、それをどう使うかは本人次第だもんな。
自分はなるべく短い物を書くように心がけてる。1000文字以下にすることがセルフ縛り。

618 :
お題→『シチリア』

【剔抉】(1/3)

 善を急げと人は言うが、私から君に言えるのは、そんなことをさも人の本質であるかのように口にする輩を、信じてはいけないということ
だ。──いや、この街に限らず、古今東西、人というのは我が身大事、明日の金繰り、道に立つ娘の唇を眺めて、こずるい打算を積み重ねながら生活している。
 君、そんな生き物が愛だなんだと言ったって、賢しい御為倒しでしかない。今、そこのか
わいらしい女給が我々にカッフェを運んできたのだって、君に惚れているからではないんだぜ。
 ──私が学生で、シチリアの両親と弟の四人で共に暮らしいていたとき、人をRというこ
とを初めてやった。思い出せば頭が重くなるほど、いやな殺しだ。
 友人と遊んでから帰るときの、青黒い空に地平の先で閉じ込められるような夜、家のオリー
ブ畑の前で喋る男たちを二、三見た。男の一人が畑に入っていくように見えて、──怖いもの見たさか、大事な作物を守ろうと思ってそうし
たかは定かではないけれども──柵をまたいでそのまま畑を、朧げな男の影を目で追いながら、十数分ばかり彷徨っていた。
 胸のうちに秘めていた恐さというものがじわ
じわ広がって、肌の内膜に触れたような感覚を持った頃、暗闇の中から押し殺した人の声を聞いた。「兄さん」と言っていた。私はすぐに弟
だとわかって、近くのオリーブのもとにうずくまる彼を見つけた。
 私が口を開く前に弟は「兄さん、静かに」と念を押したから、私も彼のように声を殺して
「どうしたんだ」と訊いた。「助けてくれ、追われているんだ」と、弟は栓を抜いたように喋りはじめた。「どうしてお前が追われるんだ」と尋ねれば、「街で会ったかわいい娘に声をか
けたんだ。稀に見る美人だったからちょっとしつこく誘ったら、連れの男がいてそいつがギャングだった──それまではいい、ぶっ飛ばされるぐらいで済んだだろうから」
 それで弟は、静かなまま語気を強めてこう言った。「俺は震え上がって必死に抵抗した挙げ句に、そのギャングを殴り殺したんだよ、兄さん」と。
 私は落胆の叫びをあげたいような衝動にかられながら、必死にそれを抑えた。ああ、この話
を聞いたとき全て諦めるべきだったのに、あろうことか私はこの愚かな弟を助けねばと思索を巡らせたのだ。
 しかし、何か考えをまとめるような間もなく、男の影が輪郭を顕にし始めた。弟は私の横
で肩をぴったり木の幹につけて、石のようにじっとしており、それが私に一層彼を哀れがらせた。
 オリーブの細い幹が私達二人を隠すはずもなく、男の呼ぶ声を聞いて、弟は震え上がった。
 そして私は、突然妙案を思いついたような気づもりになって、それを頭で吟味することもなく、「大丈夫、俺に考えがある」と弟に吹き込
んだ。その台詞を口にしてしまってから、私は底から湧き上がってくる焦燥の念にかられた。何も、思いついてなどいなかったのだ。
 いや、俺は決して悪意ある嘘のつもりで言ったわけではない、ただ、この救いない弟の明日
にわずかでも光を投げかけようと、その一心で口にしただけだと、御託を並べていたけれども、今思えば、私はあのとき既に気持ちを決めてしまっていたのかもしれない。
 弟は、教会で聖母の像を見上げる修道女がごとく敬虔で、純粋で、ささやかな安寧を伴った
顔を私に向けた。あの、救済を信じる殉教者のような、無垢の表情! あの弟の顔が、私の心にかすかな正気を取り戻させたのだ。男が声を
張って仲間を呼び出している間に、私は弟のことを必死に考えようとした。
 やがてもう二人ばかり男がそこにやってきて、彼らは弟の肩を抑え込み、お前には黙っていれば何もしないと言って私を傍らに事を進めた。
 一口二口言葉を交わしながら、弟を抑えている二人とは別の一人が彼の前まで歩いていき、
懐からピストルを取り出したのを見て、私の気はいよいよ逸りだした。

619 :
【剔抉】(2/3)

 弟にもその得物が見えたのか、半べそをかく声が暗闇の中で余計に色づいて聞こえた。壊れ
た管楽器のように慄き喘ぐ弟の声が耳に入るたびに、私の思考は絡まって、まとまりがつかなくなっていき、やがて彼が「兄さん」と大声で
呼ぶのが聞こえて、風が束縛するように自分の体が動かなくなった気がした。
 男たちは、またいくらか言葉を交わし始めた。
 人は、恐怖の縁に立つと、目の前の出来事を希望的に見始めるものであるようで──私はそ
のとき、勝手に胸をなでおろしていた。きっと、あまりに弟が怖気づいているから、こんなやつを殺さなくたって我々に危害を及ぼすことはなかろう、きっとギャングたちはそう言って
いるのだ。もう私が思考を巡らすまでもなく弟は助かるのだと男たちの会話を断じ、肩の力を抜いて星空を見上げた。
 ああ、今は一体どんな星座が見える季節だろうか、この実家の近くは本当に夜空がきれいに
見えると考えていると、いつの間にか目の前にいた男が私の手にピストルをもたせた。男は私に「お前が撃て、撃てばいい」と言って、もう一丁の銃口を私に向けながら後退りした。
 わかった、撃てばいいんだなと応えて、少し前に訪ねた射撃訓練場を想起して、見ていろ、
俺はお前たちの思っているよりずっと撃ち方がうまいんだぜなどと呟きながら銃身を弟に向けた。
 撃てばいいのだ。撃てば弟も私もこの場から解放されて、明日からはまたいつもどおり暮らせるのだ。その時の私はなぜか、そう実感していた。
 久々に指をかける引き金は冷たく、重かったが、それが私の心に与えるものは何もなかった。
 私は指に力を込めて弾を発射した。暗い中でも弟の頭から血が噴き出すのが見えたから、狙いは外れていなかったのだろう。
 男の一人に銃を返すと、彼らはオリーブ畑を覆う闇の中に消えた。静寂のうちから硝煙の匂いが消え去った頃、体中がスポンジになったよ
うに思えるほど力が抜け、私はオリーブの幹に寄りかかった。
 そして私は初めて、自分のやった恐ろしいまでの殺人に気がついたのだ──あの純真な弟は、私の手にかけられて地に伏したのだと。 

620 :
【剔抉】(3/3)

 後になって思えば、私は、よりにもよって弟が早くギャングに始末されてしまうのを期待し
ていた。弟にありもしない提案を吹き込んだのも、ピストルを渡されて迷わず撃ったことも、私が一刻も早く一日ごとの平穏を取り戻さなけ
ればならないと気を急いたからなのだ。そして弟を助けんとする私の思慮は、決して家族を助ける兄として務めを果たそうとしたのではな
く、私自身が善を成す人間であるという自負を失いたくないがための、醜い利己の精神によるものに違いない。
 ならば、人の面皮がいかに厚く、白々しいものであることか! 人が隣人への愛を囁きながら、いつも己のことを一番に策しているというのなら、他者を信じるということのいかに愚鈍であることか!
 ああ、君、人を信じてはいけない。友達と二人、ピストルを一丁ずつ買ったら、先にそいつを撃たなくっちゃ死ぬのは自分なんだぜ。

621 :
行が長くなりすぎたから段落分けと区別できるようにかなり変な改行したけどあまり気にしないで読んでもらえると
これからも毎週とはいかない気がするけどできるだけ参加してみるわ
なかなかいい訓練

622 :
あ、差し出がましいかもしれないけどタイトルてっけつって読みます
進行さんがわからないと困るだろうから
でもお節介な気がする

623 :
おもしろかった。が、シチリアが活かされてなかったような
段落は字下げの有無で分かるんじゃない?この改行、自分は読みづらかった

624 :
感想ありがとうやで
なんだかんだシチリアを拠点にしてるマフィアを中心に据えたり
大事な回想シーンの舞台は地中海特有のオリーブ畑だったり
おっさんが話してる場所はカッフェ=コーヒーを提供するバールっていうイタリア特有の喫茶店だったり
冒頭の道に立つ娘って表現でイタリアの特徴的な街娼を暗示したりとかやってみたつもりではあるんだけどな
でも最初にはっきり面白かったって言ってくれるおまえがだいすき
改行はやっつけだから勘弁してくれい

625 :
書き方でわかる、これ安価スレ初心者さんだ。
書き方で誰が書いたかなんとなくわかるようになってる……だいぶ毒されてるなこのスレにw

626 :
とても、ハードボイルドで良い作品でした。

カッフェと言われてもピンとこないのでカプチーノの方がイタリアっぽいような気がします。

でも、シチリアの雰囲気を出すのは難しいと思うので、作者は本当に頑張ったと思います。

627 :
>>624
おお、色々盛り込んでたんだな。自分の教養のなさでちょっと批判チックになってすまんかった
概念的なものじゃないと全体を通してのテーマに据えるのは難しいね

628 :
>>627
どうやら及第点らしくてよかった
テーマと違ってお題は舞台装置的なものと割り切って使ってるで


>>626
どっしり構えようと思ってたけどこうも褒められたらお礼言いたくなるわな
感想ありがとさん

629 :
>>618
シチリア=マフィアだよね、とは思ってましたが、いいぞーこれ
まぁ大体のイタリア要素はシチリアに限らないので、上でも言われてる通り、これはなかなか難しいんだと思います
緊張感とか主人公の思考とか色々からの結末で、かなり面白いと思って読みましたw

改行は、精々100文字程度で段落を分けた方がいいです
みっしり志向なんだと思いますが、これは掲示板の仕様上やむを得ない

お節介は、進行の方がお節介マスターなので・・・orz
自作では常用外のみかな書きやふりがなですが、文体によってはそぐわないですね

>>625
ww

630 :
>>618
選択お題は『シチリア』一本槍だッ、618氏が穂先を定めるのはあわて乱れる心と打算〜、イタリアンギャングと銃火とアイツッ
さあ、語り手が、女給の運ぶカッフェ見て、古今東西ひとは打算で動くものと誰にでもなく戒めて、『シチリア』の思い出を語り始めた〜、お題クリアw
さて舞台は家のオリーブ畑〜、集まるギャングとうずくまる弟、思い出すのは焦燥の念〜、聞けばギャングと諍いを起こし殺めてしまった弟が、身を隠しているところにハチ合わせたのだというッ
怯える仔犬のようになった弟の目に、「大丈夫、俺に考えがある」と兄の威厳! いや、本当はないんだけど…ええっw ギャングに捕まり、撃てと言われてそのまま撃ったァ〜! 語り手が説く、他者を信じることの愚鈍END〜、
軽妙な語り口で罰し続けるのは人のサガか、それとも逃れられぬ澱となった己の打算一つ一つなのか〜、618氏、イタリア陽気のカルさを使って人間性を語りに映すテクニック、シチリアパスタの味わいフィニッシュだッ

631 :
あ、すげえ今更だけど剔抉にお題レスへの安価つけ忘れた……進行さんご留意ください申し訳ない

632 :


633 :
ノープロブレムよー

634 :
宜しくお願いします。

>>598
使用するお題→『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人は世界の秘密の鍵』

私達が子供であった頃。
【1/3】

私は子供の頃いつもいじめられていた。小学校の帰り、同じクラスのいじめっ子に囲まれて泣いていると、親友だった君は何処からともなく駆けつけて、いじめっ子達を追っ払ってくれた。

「……いつもありがと」
「気にしない。きにしない」
 
 私達2人だけの通学路。君は私の頭を撫で、背中を「ポンポン」と優しく叩いてくれた。心無い連中に苛まれ、ささくれた心が和らぐの感じた。頬の強ばりがゆるむ。

「ひどい顔してるーーきれいな顔なのに台無しだよ」
「そんなことないよ」
「でも」
 
 もってたそろばん塾のカバンから、君はハンカチをとりだして私の涙を拭いてくれた。

「もう、泣かなくていいよ。一緒に帰ろう」 
「うん」
 
 私は君の差し出した手を素直に握りしめる。君は笑って私を家まで送ってくれた。
 
 それだけではない。タチの悪い上級生が、一緒に帰る私たちに危害を加えようとすると、すぐに庇ってくれた。しかも敵わないのは分かってるのに。

「おい。おまえ生意気だぞ!ちっとはしおらしい態度とれよな!!」
「うるさい。年下ばっかり付け狙ってさ!卑怯もの!!」

 時には、年上の身体の大きい子にも勇猛果敢に立ち向かう。シチリア・マフィアのように強くて、優しく男気のある君。この頃から私は君に強く引かれていた。

 この思いが決定打になったのは夏休み。私の家へ泊まりに来た君と、ミステリー番組を見た私は怖くて眠れなくなってしまった。
 起きている時は家族や君がいたから、よく分からなかったけれど、一人になって布団に入ったとたん、隠れていた恐怖がふつふつと膨れ上がっていくのを感じていた。

「怖くなんかない。こわくなんか……」
 
 と、おまじないのように呟いて無理やり瞼を閉じた。
うとうとしたとたん、私はなぜか燃え盛る街で一人ぼっち。
空には沢山のUFOが謎の怪光線を放ち、街を破壊し飛び回る。
慌てふためき逃げる人々の悲鳴。どこかで観たような地獄絵図が目の裏で踊る。慌てて起きれば、ここはいつもの自分の部屋だと言うことがわかり、私はホッとした。

635 :
【2/3】


「よかったーー夢だ」

 もう一度寝ようと、布団に仰向けに寝転んだ。すると天井には大きなガラス玉のような真っ黒な瞳があった。
今日、テレビで見た宇宙人の目だ。なんで天井に?!

「わぁ!」
 
 私は小さな悲鳴をあげて、慌ててタオルケットの中に潜り込む。

 後で解った事だが、それは天井のシミで、恐怖のあまり宇宙人の顔に見えたのである。でも分かって欲しい。この時は本当に恐ろしかったのだ。

「怖いよぅ……」
 
 私はうつ伏せになって、顔を腕で隠しブルブル震えていた。
まだか、早く朝にならないか、とひたすらおびえていた。
━━どのくらいたっただろう、突然『がたり』という音がした。
次にスーっと部屋の障子が開く音が耳に届く。考える間もなく、みしり、と畳を踏む音がして、わたしはさらに混乱した。

「誰……もしかして……宇宙人? まさか捕まえに来たの? 」

胸の心拍数が一気に上がった。

『ぺたり』

しかも枕元で足跡が止まる。

「どうしよう……そばに来た」

 私は強く目を瞑った。祈るように両手を握りあうと、神様ではなく一番大切な人に助けを求めようとした。

 「助けて……」

 君の名前を言おうと瞬間、無情にもふわりとタオルケットが持ち上がった。

636 :
【3/3】

「ひっ!」
「驚かせてごめん。だいじょうぶ?」
聞き慣れた声に慌てて目を開けるとそこには君がいた。
「どうして……ここにいるの」
 君は私の母と一緒に寝てると思ったから、心底驚いた。
「ずっと様子が変だったから心配だったんだ」
「そっ!そんなことないよ!」
つい弱味を見せたくなくて、強がりを言った。
「まあいいじゃん、二人きりだし教えてよ」
「入って来ないで!!」
 問答無用で私の布団に少し大きな君が乗り込んできた。
あっという間にタオルケットの中が定員オーバーになる。
「なんだよ、水臭い」
「もし、一緒にUFOにつかまったらどうするのさぁ」
「えっなに。それ?」
 今になれば恥ずかしい話だが,宇宙人に拉致される話がとても私の一番のトラウマになっていた。私なりにその怖さを伝えようと、必死に君に話したが、君はクスクス笑うばかりだった。
「覚えてないの? 君も観てたよね。
テレビ……宇宙人が、UFOが変な光線を出して牛を捕まえてたじゃん!」
「観てたけど、そのへん嘘臭くて真面目に観てなかった。でもUFO研究家のおじさんは面白い事言ってた」

 君が口を開くたびイチゴ味の歯みがき粉の匂いがした。
気がつけば私は妙に落ちついて、身体の震えは不思議と無くなっていた。
「どんな事……言ってた?」
正直、怖い宇宙人の事ばかりで頭がいっぱいで他の話などまるっきり入っていなかった。
「んとね、宇宙人は良い性格の奴もいて、人類が発展するために色々手伝ってくれたんだって」
「嘘だぁ」
「黙って聞いて。モアイ像とかナスカの地上絵とか、地球上の不思議な建造物や文明はみんな宇宙人が教えたらしいよ。だから良い宇宙人に会えば、世界の謎の殆どが解けるって言ってた」
「良い宇宙人は世界の秘密の鍵を握ってる訳?」
「そう言うこと」
「……じゃあなんでも知ってるのかな? 質問したら教えてくれるのかな?」
 この時はもう、宇宙人の事は怖くなかった。むしろ良い宇宙人に会いたくてしかたなかった。
「多分……そうだと……思うよ」
 君は眠くなったのか、大きな欠伸をする。また甘い歯みがき粉の匂いがタオルケットの中に広がっていく。もっとその匂いを嗅ぎたくて、君の身体に抱きついた。
「ねえ、大きくなったらさあ。二人とも良い宇宙人に会えるかな? 」
「たぶ……ん、あ、えるよ……」
 君は眠いのを堪えて、抱きついた私に腕枕をしてくれた。早く寝ようと言いたいらしい。
「その時は一緒に会おう。ねえ、やくそくだよ」
 私は約束をして目をつむった。でも君は返事をしたのだろうか? 
私もすぐに眠りに落ちてしまい、君の安らかな寝息しか覚えていないのだから。

そして長い年月が過ぎ去っていった。

 私は、大人になって、なんとか一人前のサラリーマンになった。臆病なのは相変わらずだが、まあまあ上手くやっている。君はそのまま大きくなると思ったら、あまり背丈は伸びず、私より小さく華奢になった。その代わり髪が伸びて、胸が大きくなった。
驚いた事にシチリア・マフィアが口笛を吹いて冷やかすような美人と変貌したのだ。
 そして美しく成長した君は親友ではなく━━私のフィアンセになっていた。

「もしかして、あの時の約束覚えている? 」
「んーー覚えてない。そんなのしたっけ? 」

 裸になって一緒に眠って同じ夢を見る。でも私の胸に顔を埋める君は満足げな顔をして惚けるだけだ。
 君は約束を覚えていないし、私は良い宇宙人にも出会えていない。
 だけど私達は一緒に生きて、一緒に暮らしている。それだけは今も変わらないのだ。終

637 :
>>598
使用お題:『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人が世界の秘密の鍵』

【神々の跡】(1/2)


 『ネジロボ型』と呼ばれる宇宙人の残骸を見下ろしながら、ガブリエラ・アゲートは溜め息を吐く。
 この所、“ヤツ等”の攻撃は日に日に激しくなってきていた。
 それでも彼女は、自分の行動を止める気はなかった。

 復讐。そう、これは正義の行いでもなければ、人類救済の為の崇高なる使命と言う訳でもない。

 ちっぽけな個人の、自己満足な復讐心を満たす為だけの愚かな行為に過ぎないのだ。

「こんな人形じゃ私を止められないなんて、何故わからないのかしら?」

 ガブリエラがそう呟きながら首を振る。彼女の手に握られている緋色の結晶体は『クォンタム振動機』。
 物質の固有振動を操る事で物質そのものを変質させられる道具である。例えば、非金属を金属に、金属を黄金へと変える事も出来る、錬金術の奥義とも言える物であるが、今はその機能の大部分を封印されている。
 それでもこうして、神の……古代に君臨していた宇宙人の尖兵を倒す事ならば容易い程の能力を有していた。

 これもリヒャルトの、彼女のフィアンセであったリヒャルト・カルルマンの遺品である。
 そう、古代の、この世界の秘密に近づき過ぎた彼は、宇宙人によってその存在を抹消されたのだ。

 当初はガブリエラもリヒャルトの事を忘れさせられていた。だが、ひょんな事から記憶を取り戻した彼女は、ヤツ等のやり方に憤り、自らのフィアンセの復讐を誓ったのである。

 ******

 リヒャルトの論文を元に、ガブリエラはシチリア島のエトナ火山に来ていた。ここが、ヤツ等の秘密基地の一つであると書かれていた為だ。
 そもそも、シチリア周辺ではリング状UFOの目撃談が多い地方で有る。だがそれも後に火山より発生したスモークリングであると結論付けられてはいた。
 ただ、リヒャルトは、そのUFO研究家の証言に疑問を持ったのだ。
 彼の言い分では、他の同様のリング型UFOの目撃情報の分布に置いて、同じ様な地域的特徴が有った為なのだが、しかし、その特徴と言うのが人工火山の存在だったのだ。
 人工火山は噴火を行う時に風を巻き上げながら煙を吹きだす為、ちょうど煙草のスモークリングと同じ状態になるために、それをリング型UFOと誤認したと言うのである。

 だが、これには大いなる矛盾がある。即ち、この説を肯定する為にはエトナ火山も人口の火山でなければならないからだ。
 だが、リヒャルトはここで発想の転換をした。「エトナ火山が人口の火山であるなら、スモークリングが発生しても可笑しくなく、その上、本物のUFOが発着していたとしても誤魔化す事が出来る」と。

 かくして、その説は真実だった。
 ガブリエラはエトナ火山内部に侵入を果たしたのである。

 襲い来る『3mの巨人型宇宙人』を下し、『リトルノーズグレイ』を退け、『チュパカブラ』を叩き潰した。

『よく、ここまで来たものだ』
「アナタが神ね」

 巨大な扉を前に、その老人は一人立って居た。
 民俗意匠の施されたクロスに身を包み、身体のあちこちに管を接続された、やけに鼻の巨大な、どことなく鳥を思わせる貌の人物。

『ふむ、概念的“神”の事であるなら否と言っておこう』
「そう、なら、バードマン? それとも天狗かしら?」
『古い呼び名だ……しかし、“我”が其方たちの“創造主”である事は間違いない』

 ガブリエラがその手に持った『クォンタム振動機』いや、その封印の外れた『賢者の石』をバードマンの前に突き出す。

638 :
【神々の跡】(2/2)


『その石を使ったか。ならば、既に君も……』
「うるさい!!」

 賢者の石から光の奔流が迸る。バードマンはそれを平然と受け流し、ガブリエラを蔑みの目を持って捉える。
 本来であれば、全ての者を一段階上の存在として昇華させる為の道具である賢者の石を破壊の為の力として使っているからだ。

 自身の行いが愚行で有る等と言う事は、ガブリエラが一番良く分かって居た。
 なぜなら、賢者の石の封印が解けたとき、もっとも影響を受けたのは、誰であろう彼女だからだ。
 体の一部は、既に半精神物質と化しており、彼女の更に一段階上の存在であるバードマンに、その攻撃が無効である事など理解している。
 だが、それでも彼女は攻撃する事を止められない。「リヒャルトの仇を取る」その事が、彼女に最後に残った人間としての感情だったからだ。
 その感情を否定する事はリヒャルトに対する彼女の“愛”を否定する事でもある。

 この世界の創造主に、人類に対する“アガペー”など無かった。

 だが、彼女が宿した彼への“愛”を否定したくなかった。
 破壊の為の光が彼女自身も蝕む。そこにいる神は嘲笑いながらガブリエラの行動を見下いしている。

(ああ! これが、私の、人類の限界だと言うの!?)

 光の粒子へと変換される自身の身体を見ながら、ガブリエラは大粒の涙を流した。人としての存在が消えてゆく。彼女は正しく“神”へと存在を変えて行く。
 薄れて行く人としての意識と、変換されて行く神としての無機質な精神。

 だが……

 ふわりと、彼女の手に誰かが手を添えた。

「!!」

 それは、かつて彼女が感じていた温もり。

『なん……だと!!』

 光の奔流が温かさに満ちた光線へと変わり、バードマンの意識が更に上の段階へと昇華される。

『ば、かな……我すらも、まだ、下位の存在だったと……』

 僅かな言葉を残し、バードマンがその存在を昇華し消え去る。
 そこに残されたのはガブリエラ唯一人だった。彼女の手に残された賢者の石は、小さなハートの形を残していた。

「リヒャルト……」

 つう……と彼女の頬を涙が流れる。
 ハート型の賢者の石がドクンと脈打つと、仄かに発光し、ガブリエラを包み込む。

「嘘!! いや!! 私も!! 私もあなたと!!」

 嫌々をする様にガブリエラが首を振る。だが、ほんの少しの温もりを残したまま、賢者の石は光の粒子へと変わって行った。
 ガブリエラの身体を元の物質体へと戻しながら。

 ******

 洞窟に仕掛けた爆弾のスイッチをガブリエラは躊躇いなく押した。
 この先にある神々の英知は人類には過ぎたものだからだ。人類の創造主ですら、正しく使いこなせなかった代物なのだ。彼女はそれで良いと考える。
 半神となった事のある彼女だから分かる。あまりに無機質で合理的過ぎる神としての思考は、人類を破滅にしか導かないだろう。
 人類がそれを克服する為にはきっと“愛”がまだ足りないのだ。
 最期にリヒャルトがガブリエラを救えた様に。

639 :
感想を書いたり、感想返しをしたいのに
何故か気力が……orz

640 :
>>598

使用お題→『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人は世界の秘密の鍵』

【女王の末裔】(1/3)

 彼女が現れてから、私とケンの関係は壊れてしまった。
「ケン、今日の放課後だけど……ねえ! ケンってば!」
 彼の視線は彼女を追っていた。吸い込まれそうな黒い髪。病的なほど白い肌。
「……何?」
 ケンの灰色の瞳は、私を見ているようで見ていない。
「だからさ、今日の放課後だけど」
「えっと、今日は……忙しいんだ」
 うそ。忙しいことなんてない。だけどケンは心ここに在らず、すぐに私から視線を外し、再び彼女を追い始める。
「ちょっとケン。ケンってば!」

 *

 日本からの留学生。
「ルースが言ってたけどさ、あの子、日本人じゃないって」
「えー。じゃあなんなの? 中国人? 韓国人?」
「うーん、とにかくアジア人じゃないって」
「へー。あたしあの子嫌い。なんか不気味」
「うーん、確かに、闇の魔法とか使いそうだよね」
「は? あんたそれファンタジー小説の読み過ぎだべ。ヤバいよ」
「うっさい。ねえジーナ、それであんた最近ケンとはどうなの? ちゃんと話せてる?」

 *

 放課後。最近のケンは、彼女を追ってふらふらしていた。今日もどこかへ行くようだ。
 これまでは放っておいたけど、今日はもう我慢しない。
 校舎から出たケンは、少しきょろきょろとした後、正門とは反対側に向かう。
 彼女の姿は……遠くに、見える。迷いのない足取りで進む先。校舎裏には森がある。そのまま進んで、木々の間に消えた。
 続いてケンも。見失っては困るので、私は走った。
『私有地につき立ち入り禁止』
 彼ら、少なくとも彼女には、この看板が見えたはずだ。言葉が分からないとも考えられない。
 不法侵入は別にしても、この森には怪しいうわさがある。
 一瞬だけ、私は迷った。
 だけど、もう二人も入っているのだ。それが三人になっても変わらないだろう。
 私は森に踏み込む。

641 :
【女王の末裔】(2/3)

 森の中は暗かった。少し歩いてすぐに小川があり、それと交差して、人が通って踏み固めたであろう、土の小道が奥へと続いていた。
 せせらぎをまたいで、私はその痕跡をたどる。
「いっ……つー……」
 下草で足を切ってしまった。ぴりぴりとした痛みで、涙が出てくる。彼女やケンの姿は見えない。
 一人で進むうちに、私の足は虫刺されだらけになった。来なきゃ良かった。服装を間違えた。
 疲れて、足が痛くなり、すっかり嫌になって、来た道を引き返そうかと思い始めたとき、森の切れ目に出た。
「何ここ……すごい……」
 そこは花畑だった。赤い花、青い花、オレンジ色の花、ピンクの花、水色の花、白い花もあった。
 遠くに小屋が見えたので、人の手が入っているのだと分かった。
 とげのある花の横を注意して通り、黄色い花の前に立ったとき、畑の向こうで動く背中が見えた。ケンだ。
 それは一瞬で消えてしまったが、私の希望は息を吹き返した。
 私はケンの後を追う。

 *

 森に入れば、視界は狭まる。道は途切れずに続いているが、私の希望は……しぼんでしまう。
 やっぱり帰ろうかな。だけどそのとき、道の脇から大きな人影が飛び出した。
「おい! お前、そこの学校の生徒か。立ち入り禁止の看板が見えただろ。なんで入ってきた」
 猟銃を背負った男が、眉間にしわを寄せて立ち塞がった。
「えっ……と、その、友達が」
「友達だぁ? 黒人か? クソガキどもめ」
「いえ、あの、白人と、外国人です」
 そう告げると、男は目をむいて。
「白人と、外国人! くっそ、ふざけやがって。お前、名前は」
「ジーナ、です」
「ジーナか。……まぁいい、俺はブラッドリー、ミスター・ブラッドリーと呼べ。お前の友達とやらはあれだろ、UFOの墜落跡を見に来たんだろ」
 この森にUFOが墜落したといううわさは、私も知っている。でも何年も前の話だ。
「多分、そうだと思います」
「いいか、ここには何も残っちゃいねえ。確かに空軍のやつらが来たには来たが、何があったのか俺にも分からねえし、今は草の生えた空き地があるだけだ」
 そう言ってから、男は体の向きを変える。
「付いて来い。現場を見せてやる。逃げるなよ」

642 :
【女王の末裔】(3/3)

 銃身から視線を上げれば、白髪交じりの男の頭。後ろを歩く私は、まるで連行される宇宙人だ。
「ほうら、やっぱりいた。二人だな」
「はい、二人です」
 手前にはケンの背中。奥には留学生、ユキコの姿も見える。
「おいお前ら! ここは私有地で立ち入り禁止だ! 観光もデートもよそでやれ!」
 彼女はこちらに顔を向けたが、ケンは男の声が聞こえないのか、微動だにしない。
「ちょっとケン、聞こえないの? ケンってば……」
 目の前に回り込んで、ケンの顔を見た。そこで初めて、私は異常に気が付いた。
「暴走してるのよ」
 彼女がケンと私の前に立った。
「いえ、先祖返りと言った方が近いかしら」
 ケンは彼女を見据えたまま、歯をむき出し、うなり声を上げていた。まるで獣だ。
「おい、なんの話だ」
「お黙り、下等生物」
 なんてこと言うの。私はミスターが何か言い返すのを待った。だけど……。
「どういうこと」
 ミスター・ブラッドリーは固まっていた。呼吸はしていると思うけど、顔も体も動かないのだ。
「この子、ケン、だっけ? あなたのフィアンセ?」
「違うわ」
 小さい頃に結婚の約束をした。ロマンチックな思い出だ。
「ふうん。私はこれを探しに来たの。連中も案外間抜けね」
 彼女の白過ぎる手には、鈍い光を放つ金属片が握られていた。
「ねえユキコ。あなた一体何者?」
「そうね……」
 彼女のブラックホールみたいな瞳が、私を貫く。
「北はフィヨルド、ケブネカイセから、南はエトナ、ヴェスヴィオまで。私たちの帝国」
 彼女は歌うように続けた。
「あなたたちは、元は私たちの奴隷だったのよ。だけど悪魔がやってきて、鏡のかけらをばらまいた。帝国は崩壊したわ」
 そして心底楽しそうに。
「私は、その帝国の、女王の末裔(まつえい)。そう遠くない未来、あなたたちは、本当の主人が誰なのか、それを知ることになるわ」

 *

「ジーナ。おいジーナ」
「えっ、何、ケン」
 彼女は学校から消えた。親戚が急病だとか。絶対にうそだ。
 ケンの様子は元に戻ったけど、私と彼の関係は壊れたままだ。
「だからさ、今日の放課後」
「うん……ごめん。忙しいの」
 私は彼女に魅入られてしまったのかも知れない。
「おおい、ジーナ!」
 彼女は何かを知っていた、そして探してもいた、世界の秘密を。そしてそれを解く鍵を。
 彼女と、私たちと、この世界と。
 私も知りたい。その秘密を。

643 :
>>639
どうかマイペースでー><
待ってますー

(と言いながら自分は遅刻してくる進行)

644 :
お題→『フィアンセ』『シチリア』『宇宙人は世界の秘密の鍵』締切

【参加作品一覧】
>>603【最高の宝石を、君に】
>>605【再会、そして新たな道へ】
>>618【剔抉】
>>634【私達が子供であった頃】
>>637【神々の跡】
>>640【女王の末裔】

645 :
では今回は普通に5つです

お題安価>>646-650

646 :
アスキーアート

647 :
サイハイソックス

648 :
将棋

649 :
ヴィンテージ

650 :
夜景

651 :
☆お題→『アスキーアート』『サイハイソックス』『将棋』『ヴィンテージ』『夜景』から1つ以上選択

☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。

☆締め切り→9/15の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

652 :
今回は少し心配してましたが、最終的には多くの作品が集まりました
ほああ
ありがとうございました

そして今度は示し合わせたようにバラバラ・・・
ともかく今週もよろしくお願いしますー

653 :
サイハイソックスってなんぞ?と思ったら、ニーソックスの1番長いヤツの事なんだね。少しかしこくなった。

654 :
>>634
難関回にチャレンジャーの戦意高揚、634氏は全選択でフィアンセとの顛末を描いていく、俺とアイツと彼女と私ッ
さあ、これは私達が子どもだったころの話だと、語り手が思い出話スタンバイ〜、いじめっ子達を追っ払ってくれたキミは勇猛果敢、『シチリア』マフィアのごとく優しく強かったッ
夏休みのある夜、家へ泊まりに来たキミは、エイリアンの特集番組に震えタオルケットにくるまる私を慰めた〜、いわく悪い宇宙人だけじゃない、
良い『宇宙人は世界の秘密の鍵』を握ってるんだぜと! 難題を素敵な癒しでクリアw で、そんな優しさと機転、男気溢るる『フィアンセ』となったキミの、今や胸はボインボイン…えっ
ボイン女子オチw そして一緒に眠る穏やかな夜、思い出のキラ星駆け巡る〜、634氏、ほのぼの話にトラップを仕掛けつつ、丁寧な全選択だ乙、タオルケットの香りクリア!

>>637
崇高な愛とはどれほどのものか、今夜お教えしましょうと、637氏が静かな笑みで現れた、前回お題全選択! 赤きシチリアの戦い!
さあ、舞台は『シチリア』島のエトナ火山〜、『フィアンセ』であったリヒャルトさんの遺品を手に、宇宙人の残骸見下ろすガブリエラさんが現れる〜、
仇の宇宙人を探してやってきた火山にて、襲い来るチュパカブラを叩き潰すw チュパカブラを叩き潰すっていいなw 奥に佇むのは人類の創造主バードマンッ(『宇宙人が世界の秘密の鍵』)、リヒャルトさんの遺品の見て、
人ではなくなったガブリエラさんの自己犠牲を嗤う〜、攻撃効かぬバードマン、ガブさん(略)の意識消え去り…、いや違う、消えゆくのはバードマンだッ!?
こう、愛が光の粒子となって相手を粉砕するあのやつが出て逆転だァ! 人類には手に余るテクノロジー、自ら消しさるガブリエラさんに敬礼ッ、637氏難関に怯むことなド正面から突破した、ハンマークリアッ

655 :
>>640
全選択の三連発かッ、進行氏こと640氏が締め切りの音頭をとりつつ、刻限オーバーの肝入り作品滑り込みw 獣の眼の女王との謁見!
さあ、私と彼の関係は壊れてしまったと、ジーナさんが語り始める〜、かつては小さい頃に結婚の約束をした『フィアンセ』が、目の前で漆黒の髪と白い肌を持つ留学生に夢中であるッ
留学生女子の後をふらふらと追う彼、付きまとい条例で捕まるのかッ、や、捕まらない! 皆でミスター・ブラッドリーの敷地に侵入だ〜、留学生が下等生物ッとSッ気を出すとブラッドリーの活動が停止w 大丈夫か
留学生はかつて、北はフィヨルド、南はエトナ(『シチリア』)まで支配した宇宙人帝国の末裔〜、しかし何者かに封印をなされた模様である〜、
彼女が握るは世界の鍵を解く鍵…(『宇宙人は世界の秘密の鍵』)、ラストはジーナさんが夢中になるオイオイENDで640氏、きっちり難題に取り組んでいった、女王・トリ・フィニッシュ!!

656 :
最後訂正、世界の謎を解く鍵w

657 :
えっ一ヶ月前とIDかぶってるやん

658 :
管理人さんもなってたね
なんなんだろ

659 :
ほんとだ、こんなこともある?

>>634
内容自体の共感度が高くて、安心して読めました
起伏や変化もあって面白かったし、お題を着実に消化してるのも個人的にはポイント高いです
今の住宅だと、天井のシミとかってあるだろうか、とも思いましたw

>>637
例によって盛り込んできましたねw
なんかこう、70、80年代SFみたいな雰囲気が
秘密は秘密のままになるのですね・・・

>>655
感想ありがとうございます
かなり・・・くたびれました・・・
結局捕まった人はいませんでしたw

660 :
やっぱお題見てると頭がぐぐっと動き出して物語作り始めるけど今回は忙しいからパスで
いやーでもほんとに楽しいんだよなここ、広まってほしい

661 :
>>659
634です。感想ありがとうございます。

天井の染みの事ですが、昭和の時代設定で書いて見たんですよ。女の子がそろばん塾に通っていたり、夏休みのミステリー特番や畳と布団とか、まだまだですね。もう少し勉強して来ます。

662 :
広まってほしい気持ちもあるけど変なのもやってこないか心配だわ
でもやっぱり広まってほしい

663 :
>>661
あっ、それはもちろん伝わってますよw
(昭和はこうだったけど)今ってどうだろう、と
紛らわしい言い方ですみませんー

664 :
>>662
それもわかる

665 :
自分も皆の読んで良かった所を、一言書いてもええの? それともスレッドの無駄遣いになる?

666 :
なかなか埋まらないようなスレだし埋まればまた立てればいいわけだから書きたきゃ書いてもいんじゃないの
判断は進行さんに委ねられるんだろうけど

667 :
感想は書いてあげた方がいいんじゃないかな。やる気出るだろうし。
自分が感想書くと、なんか上から目線になって気持ち悪かったから最近書いてないけど……。競馬実況さんみたいにうまく感想が書けるようになりたい。

668 :
以前作ったのを貼っておこう

■ヒント
・お題を全選択する必要はありません(全選択が多数派ではあります)
・感想や感想返しは大歓迎です(義務ではありません)
・辛口の批評なども可です(活発にやり合う雰囲気ではありません)

■うわさ話
・毎回感想を書いてくださる方は、競馬実況みたいなので通称競馬さんです
・発足当初からほぼ皆勤賞と思われる作者様がいらっしゃいます
・三代目進行は、実は割と新参です

669 :
噂じゃなろうにもあげてる人いた気がするけど、どれくらい読まれてるんだろうかとふと思う

670 :
進行さん貼ってくれてありがとね。

自分は支部で二次創作載せてる。

671 :
>>651
使用するお題→『ヴィンテージ』『夜景』

【あの日見た夜空】(1/2)

結婚してイタリアのシチリアへと旅立ち、レストランを開業したライアンとレイチェル。
地元ですっかりお馴染みで人気となったそのレストランは今日も客で賑わっている。
時期によっては閑散とし売り上げが伸び悩むこともあるが、そんなことが気にならないくらい2人は楽しんでいた。
夜の9時、閉店時間になり、営業終了の看板を立てカーテンを閉じる。

「レイチェル、お疲れ様!」
「ふぅ、今日も忙しかったけど楽しかったわ!」

一日の仕事を終え、温かいココアを飲んで寛ぐライアンとレイチェル。

「ねぇレイチェル、後でちょっとドライブに行かないか?」
「ドライブ?いいわね!」

ライアンが車庫から車を出している間、レイチェルはいつものガンマン衣装に着替える。

「お待たせライアン!」
「じゃあ行こうか」

2人でドライブに出かけるなんて大学生の頃以来だ。本当に懐かしい。

「キャンプに連れて行ってくれた時を思い出すわ。あの時は結構ヴィンテージな感じの車に乗せてくれたよね」
「ああ、親父が俺に譲ってくれたんだ。親父、ドがつくほどの車マニアでさアハハ」
「あの車はもう無いの?」
「相当ガタが来てて故障が絶えなくて、残念だけど捨てたんだ」
「そうなの…でも乗り心地良くて好きだったわ」

1時間後、人里離れた小さな丘の頂上に辿り着く。

「ほら見てレイチェル」
「うわあ…!!」

その丘に立つと、無数の星がキラキラと輝く美しい夜景が広がっていた。

672 :
【あの日見た夜空】(2/2)

「すっごく綺麗…別世界にいる気分だわ」
「何の星座か当てて勝負したこと覚えているかい?」
「もちろんよ。ライアンって本当に星座に詳しいよね、ほぼ一発で当てちゃうんだから」
「君が牡羊座を水瓶座と間違えた時は思わず笑っちゃったよ」
「し、失礼しちゃうわね!」

ライアンの肩を思わず叩くレイチェル。

「ごめんごめん、許してくれ」

その後も星空を眺めながら、大学生の頃の思い出を語り合って楽しむ2人。

「もう遅いからそろそろ帰ろうかレイチェル。明日も早いし」
「そうね。また時間があれば、ここに来てまた星座当て勝負しましょ。次は負けないんだから」

車に乗り家路につく中、レイチェルはいつの間にかスヤスヤと寝息を立てて眠りに落ちていた。
そんな彼女の寝顔にライアンは思わず微笑む。

「(レイチェルは本当に可愛いな…)」



おしまい

673 :
レイチェルシリーズのその後みたいなエピソードをちょっと書いてみました
あまり捻りがなく稚拙な展開になってしまいました…

674 :
>>671
やっぱり着替えるんですねw
完結作品には不可欠な後日談ありがとうー
お題を無理なく消化しつつ、その後の2人って感じですね

675 :
>>671
期待に応える671氏、さすがだな〜、レイチェルさんの後日談は星とともにやってくるッ、お題選択『ヴィンテージ』『夜景』〜、レイチェルさんからの絵葉書、ディア、短編スレ!
さあ、シリーズラスト前回(>>605)、結婚してハッピーエンドと相成ったレイチェルさん、ライアン氏と幸せそうにレストランの今日はおしまいカーテンを閉じる〜! ほっとする光景〜
これから夜のドライブだ、するとガンマン衣装に着替えるレイチェルさん、ライアン氏、これをスルーw レイチェルさんの思い、二人の大学時代に遡る〜、『ヴィンテージ』な感じの車に乗って出かけたあの夜、
あの夜と同じような満天星空の『夜景』がいま、目の前に広がって、二人は再度、星座当てクイズで笑いあうッ! ラスト、かわいらしく寝入ってしまったレイチェルさん、微笑ましく見るライアン氏に頼んだぞEND!
見事シリーズを走破してみせた671氏、お題クリアをこなしつつレイチェルさんの後日談〜、この嬉し感、まるで旧友から届いた絵葉書のごとき! ハッピー愛情おすそわけフィニッシュで笑顔エピローグ!

676 :
容量512Kと考えるともう残量ないけど、また書き込めるのかなw

677 :
>>674
>>675
感想ありがとうございます!
完結したレイチェルシリーズの後日談ですが、途中で展開を思いつかなくなり
捻りやオチが無くありきたりな内容になってしまいましたが楽しんでいただけて嬉しいです
これからも機会があればレイチェルとライアンの小話もちょくちょく書きたいです
また新しいシリーズも書こうとも考えています
今回もありがとうございました!

678 :
スレッドの残量とか、どうやって分かるの?

679 :
専ブラだと速攻よ

680 :
まぁ落ちたらその時ですねぇ

ところで次回のお題、最後の一文指定を復刻開催しようかと
最初の一文を先月やったばかりですが・・

681 :
ほーんおもしろそう

682 :
安価全てが最後の一文指定だと、逆に胸熱ですね
全安価制覇の為には五作品書かないと行けないと言うw

683 :
最後の文にこだわらず、お題を指定文にするんで良いんではなかろうか。
長文5つをお題にされると無理ゲーになるから、文字数指定付きで(5文字以上15文字以下くらいで)

684 :
ものすごく人口が増えたら、そういう面白モードもいいかもw

685 :
伏線ないか探してるわ

686 :
>>651
使用したお題→『サイハイソックス』

【狙われた靴下】(1/2)

私は今日、お気に入りのショーパンに黒のサイハイソックス、そして高めのヒールのパンプスを履いて散歩していた。
歩く度にヒールが立てるコツコツ音に胸が踊る。今日も良い休日になりそうだ。
映画でも観に行こうかな、そう考えた時だった。ドンッ!と誰かに背後から突き飛ばされて倒れてしまう。
「だ、誰なのよ!!」
すると一人の小学2、3年生くらいの少年が背中に乗っかってきた。
「これで動けないぞ!今のうちだぞ妹!」
「分かったお兄ちゃん!」
その少年の妹であろう少女が私の左足を掴んでまずパンプスを脱がすと
次にサイハイソックスを掴みズルズルーッと脱がし始めた。
「あんた達何してんのよ!やめなさい!」
しかし兄妹は悪戯をやめようとしない。左足からサイハイソックスがズルッと脱げてしまった。
「やったよお兄ちゃん!」
「よし今度は右足の方だ!」
右足の方のサイハイソックスも同じく脱がされてしまった。
「よし逃げるぞ!」
兄妹は私の両足からサイハイソックスを奪うや否や咄嗟に逃げ出す。
「こら待ちなさい!悪ガキどもめ!」
パンプスを履き直し兄妹を追いかけるものの、逃げ足が速すぎて見失ってしまった。
「あの子らどこに行ったのかしら。絶対に捕まえてやる!」
私は道行く人々に、黒いサイハイソックスを持った小さな兄妹を見かけなかったか尋ねたが
誰も知る人がいなく無駄だった。
探し始めてから2時間ほどが経った頃、人気のない空き地を通った時のことだった。

687 :
【狙われた靴下】(2/2)

「どうだい妹よ?」
「うんすっごく温かい!」
そおっと気づかれないよう茂みに隠れて覗いてみると、あの兄妹がいた。
しかも妹は私のサイハイソックスを履いて嬉しそうにしていた。
「こらあんた達!こんなところにいたのね!」
「わっあの怖い女だ!」
「ほら私のサイハイソックス返しなさい。早く!」
すると妹が私に向かって言い放った。
「この黒いサイハイソックスはもう私のもの。お姉ちゃんの物じゃない」
「な、何言ってんの?」
「私には物の気持ちが理解できるの。このサイハイソックスはお姉ちゃんに履かれるのはもう嫌だって」
「い、意味分かんない!バカな冗談はやめて!」
私が妹に近づこうとしたその時、物凄い勢いで吹っ飛ばされ後ろの木に叩きつけられた。
「痛たた…!あ、あれっ?」
いつの間にかあの兄妹はいつの間にか姿を消していた。
私はもう何も考えるのをやめて帰ることにした。一体、何だったのだろうか…。

・・・・・・・

「ハッ!!」
ジリジリと鳴る目覚まし時計と共に私は目を覚ます。
今までのは全部夢だったんだ。そう考えると安堵する。本当に意味のわからない夢だった。
今日もお気に入りのショーパンに黒のサイハイソックス、そしてパンプスを履いて散歩に出かける。
ルンルン♪と歩いている中、電柱からあの夢に出てきた不気味な兄妹がじっと眺めているのを私は知る由がなかった。

そして…

688 :
>>651 正直微妙。固有名詞系のお題は苦手だ。
使用したお題:『アスキーアート』『サイハイソックス』『将棋』『ヴィンテージ』『夜景』

【星座は誰が決めた?】

 星は美しいですね。まるで夜空を彩る宝石のようだ。

 星が宝石だとしたら、星座はネックレスかイヤリングのようなアクセサリーといったところでしょうか。ふふふ、原石のままでも綺麗ですが、こちらもまた素敵ですね。

 星座に見とれて夜空ばかり見上げていると、自分がどこにいるのかわからなくなりますね。吸い込まれそうな夜空とでも表現すべきでしょうか。

 では、暇つぶしの余興で星座について講釈でも垂れてみましょうか。

 まずあちらに見えるのが『ワイン座』でございます。
 ブドウが収穫できる秋の星々がワイングラスを表現し、その中に強く光る1等星が世にも美しいワインを彩っています。
 薄目で見れば、まるで光り輝くヴィンテージワインが夜空に浮かんでいるように見えますね。もし叶うならぜひ一度飲んでみたいものです。

 次にこちらに見えるのが『将棋座』でございます。
 星の並びが将棋の初期配置と同じに見えるため、おそらくお子さんでもまず最初に覚える星座ではないでしょうか。
 ですが意外と知られておりませんが、日が沈む直前に星座を見ると、角度の関係か、3四歩の部分に星が移動しているんです。
 「角道を開ける」行為が「明星の変遷」と呼ばれる理由がここにあります。

 次にこちら、『妹座』でございます。
 星の瞬きを組み合わせてみると、ツインテールにニーソックスの元気いっぱいの女の子が夜空に描き出されます。この星座を発見した人は、いやはや、素敵な感性をお持ちなのでしょう。
 ですが、私個人としては少々不満がありまして……あれはニーソックスというよりサイハイソックスと言った方がいい気がするのですが、大昔の人に文句を言っても仕方ないですね。

 最後はやはりこちらでしょう、「(´・ω・`)座」でございます。
 こちらは見つけづらいし覚えづらいのですが、一度わかるようになると必ず目に入るようになる、という面白い星座です。恋人やお子さんにお笑いネタとして提供される定番の星座になります。
 何が一番面白いって、月の位置によっては星座が半分隠れていることがあるんですよね。まるで壁の向こうからこちらを覗いているようで実にシュールな星座であります。

 さて、まあ定番の星座ばかりでしたが、具体的に教えてもらうのは初めてでしょう。わかりやすい星座ばかりお話したので、次からは自分で探せるといいですね。

 え、聞いたことがない星座ばかりだって? ははは、不思議なことをおっしゃる。地球ではそんな星座存在しないだなんて。

 誰がここを地球だなんておっしゃいましたか?

 ……自分が今いる場所を本当に見失わないよう、お気を付けください。

689 :
>>686
お題並び見た686氏の両眼がギラリ、光を放つッ、宣言するは『サイハイソックス』への熱き思い、単品選択! ソックスラヴァーズ・デイズ!
さあ、お気に入りのショーパンと黒『サイハイソックス』を着用の主人公女子が、さっそく誰かに突き倒されたッ、見れば小学ニ年生くらいの兄妹がソックスを脱がそうとしてる!?
ほのぼのからまさかのエロ展開、…じゃなかったァ、兄妹はソックスを強奪し逃走w いざ追いつくと、妹がソックス履いて温かし温かしとほころぶ、満面笑顔〜、なんなんだw
取り返そうとする主人公女子に妹が言う、そっちに履かれるのはいやだって靴下が言ってるよ〜、不気味な一言にゾクっとしたところで夢オチッ
いや予知夢オチ!? 686氏、『サイハイソックス』さえあれば我ここまで妄想膨らむナリ、どうナリ、って感じのドラマメイク、予想外の展開が楽しいぞッ、単一お題スポットライト靴下愛ENDだッ

>>688
スレ民が単品選択の魅力を開発しゆく中〜、やはり全選択のチャレンジングな魅力もいい、688氏の山越えだッ、星をみるひと〜
さあ、『夜景』を見ながら語り手現る、星が宝石だとしたら星座はアクセサリーだと、素敵な入りから講釈開始〜、あちらに見えるは、『ヴィンテージ』の香り豊かなワイン座だ! ワイン座あったっけw
続いて時間により盤面が進んで見えるおもしろ『将棋』座、ツインテールに『サイハイソックス』で元気いっぱいの女子が見えるか『妹』座〜!?
最後はやはりこちら、(´・ω・`)座(『アスキーアート』)w 時刻によっては壁からのぞく、変幻自在な顔面芸が楽しめるッ! よし、妹座のあたりから確実に存在しないなw
ってことで、だってここは地球ではなかったんだよッオチが炸裂! なるほど徐々に謎星座へとグラデーションしてオチとする688氏の構成の妙! スター・イリュージュン・フィニッシュできまったァ!

690 :
>>651
お題『サイハイソックス』『将棋』

【裏切りの理由】1/2

ヒリュウへ

風の噂でお前が生きていると聞き、こうして筆を取った。今更また共に歩もうなどとは云わぬが、お前の真意だけは知りたい。あの戦での行動は裏切りであったのか?

もはや大勢も決していた戦況。駆け出すお前を見送ったのはいつものように掃討へ行くと見たからだ。しかしお前は帰らなかった。

弱い者の味方をして勝ちへ導く。お前の嗜好は理解しているつもりであったが、だからといって戦の最中に陣営を移るなど考えもしなかった。それでは戦況が傾く度に主人を変える狂人ではないか。

長年の相棒を置いて、敵方の大将と共に落ち延びた理由は何だったのか。ただそれだけが長年の気がかりなのだ。

691 :
>>651
【裏切りの理由】2/2

リュウマへ

何も告げずに去ったことを許してほしい。

俺は直前まで確かに掃討戦へ臨んでいたのだ。だがな、あれは仕方がなかったのだ。

敵の大将は若い女だった。奴は妙に長い履き物を俺の目の前で脱ぎ出し、それをひらひらと振るい出したのだ。

まるで采配だな。

そうして俺は生足に屈した。だってエロイじゃん?あれは卑怯じゃて…

692 :
お題のワードを文中に登場させないとオサレじゃないっすか?というコンセプトでした。

もっと時代を感じさせる文体が書けたらギャップがあって面白かったかな

693 :
全選択じゃない人増えたな

694 :
スレの流れと、今回特に合わせにくいのもありますね

>>686
これまたシュールな・・・w
なんとかして靴下の話を書くんだという心意気からの不思議な話
一体なんだったのか、、想像が膨らみます

>>688
なるほど考えたなぁ
やっぱり最後のが一番面白いですw
この文字数で全選択は誰が書いても難しい

>>690
十分以上、まぁやり過ぎない程度に雰囲気が出ている成功例
チェスじゃねえんだよという部分も、あと名前もw

695 :
まぁとか言っちゃうと小馬鹿にしてるように聞こえる、、すまぬです
なんかこういうのちょくちょくある

696 :
>>651

使用お題→『アスキーアート』『サイハイソックス』『将棋』『ヴィンテージ』『夜景』

【昔の機械】(1/3)

 コンピュータ部の西崎が、備品倉庫の鍵を借りたいと言ってきた。理由を聞いても、例によって「面白いものがあるらしいぞ」の一点張りだ。
 彼女の言う『面白いもの』など、どうせろくでもないに決まっている。とは言え、放っておくと生徒会の仕事の邪魔なので、僕は一人で職員室へ行き、適当な理由を付けて鍵を借り、彼女の待つ特別教室棟の備品倉庫へと向かった。
「いやー悪いね、じゅんくん」
 備品倉庫の中は暗い。電気をつけてもだ。
「いつ見ても壮観だね、これは」
 通路スペースは最小限に、見上げるような高さのスチールラックが並ぶ。中も上も荷物であふれている。元は音楽室か何かだったようで、天井が高く、変わった形をしている。
「これまでの経験からして、多分こっちだな」
 彼女はそう言って、一人で勝手に奥へと進む。結構広いのだ。未探索エリアも多い。
 一番奥で立ち止まる彼女。この部屋本来の収納スペースが壁の中にあり、その上が小さなロフトになっている。
 まずは壁の戸を開けて中を確認する。だが目当てのものは見付からないようだ。
 次に、近くにあった脚立を持ってきて、ロフトに上がろうとする。
「一応、下を押さえててくれよ」
 やっぱり少しは怖いのか、彼女にしては慎重に上がっていく。
「よっ、よし」
 ふわっと動いてロフトの床に移動した。あ、スカートの中……いやパンツまでは見えてない。
「しまった、見たな。見世物じゃないぞ」
 スカートを押さえながら、こちらを見下ろす彼女。
「ミテナイヨ、ミエテナイヨ」
「ほんとかぁー? でもサイハイソックスは見られたな。内緒だぞ?」
 確かに黒タイツだと思っていたが、何が問題なんだ?
「内緒?」
「いや校則違反だからさ」

 *

「よしあったぞ、これで勝つる! でも重いぞ、選手交代だ!」
 一人で勝手なことを言いながら、西崎は下りてきた。
「ふう。えっと、そこにパソコン一式があるからさ、男子の力で頼む」
「そう言われてもなー、文化系の細腕だぞ」
「頼む! 一生のお願いだ。聞いてくれなきゃ生徒会室でいたずら、あっ、そうだ、エッチないたずらするぞ」
 そう言われては仕方がない。今度は僕が上がって、軽いものから一つずつ西崎に手渡す。
「ほこりだらけだ」
「ありがとうじゅんくん! 君は我が校の誇りだ!」
 そんなことを言い合いながら作業していると、出入り口の方から、呼び掛ける声が響いた。
「おーい、じゅんくーん……って、あれ?」
「あ、いろは殿。じゅんくんを借りてるよ」
 幼なじみで同級生の森川いろは。彼女が棚の間から顔を出した。
「あっ、うん。えーっと、何やってるの? 探し物?」
 こちらに真っすぐ近寄ってきて、西崎や僕の周りを眺める。
「そう探し物。そして見付けたのがこれさ」
 西崎はそう言って、床に並べたものを手で示す。
「いろは殿、丁度いいところに来たね。今からじゅんくんが本体とディスプレイを下ろすから、私と二人で受け取るんだ。立ってる者はいろはでも使え、だ」
「えっ、別にいいけど……」

697 :
【昔の機械】(2/3)

 二人には身長差があるので少し心配したが、荷物を渡す分には問題なかった。
 ロフトから下りる。
「今思ったけど、コンピュータ部のやつらはどうしたんだ」
「彼らは彼らで忙しいのさ」
「いや僕も忙しいんだけどね。それで……今下ろしたこれは……何?」
 見た目は昔のデスクトップパソコンに近い。だがマウスが見当たらない。ケーブル類やマニュアル類、付属品の箱などはある。
「よくぞ聞いてくれた。これを読むんだ。これこそが我が校に伝わる伝説の名機!」
 そう言ってスマホを手渡してきた。いろはと一緒に画面をのぞく。
「えー。『ヴィンテージコンピュータの館』」
「古いコンピュータを紹介するサイトだ」
「はあ。『唯一無二、空前絶後のインテリジェント端末、JCN 2612――――』」

 JCN 2612 は、同 JCN 社の汎用機専用の端末として発売された。
 その最大の特徴は、広大過ぎるテキスト VRAM である。独自規格の高解像度モノクロディスプレイ、超高速駆動の CRTC との組み合わせで、競合他社製品の 4 倍以上の情報表示量、2 倍以上の画面更新速度を誇った。
 上記に加え、テキスト編集機能やバンク切り替え機能を駆使して、疑似グレースケールや滑らかなテキストアニメーションすらも実現していた。
 惜しむらくは、当時既に漢字端末が一般的であったにも関わらず、漢字 ROM が搭載されていなかった。そのため、国内市場では販売が振るわなかった。
 それならば海外市場であるが、同社の汎用機は存在感に乏しく、こちらでも散々であった。
 後に拡張漢字 ROM カードが発売されるも、そもそもの話、本体と拡張カード共に法外な値段で、誰も買うわけがなかった。
 これだけでも十分に伝説級の本機であるが、本機を真に伝説たらしめるのは、拡張 MPU カード『JCN 26MPU961』である。
 この拡張カードを搭載した機体は、単なるインテリジェント端末から、テキストプロセッシングワークステーションへと変貌する。
 ワークステーション用の標準的な OS が実行可能となり――――

「…………意味が分からない」
 そんなにすごい機械には見えないんだが。
「……同じく。よく分からないけど、西崎さんってすごいね」
「葵(あおい)と呼んでくれ。あとすごいのは私ではなく、この機械だ」
「それで、どうするんだ? コンピュータ室まで運ぶ?」
 結構重いのだが、床に置いて終わり、ではないだろう。
「いやー恩に着る。じゃあ、いろは殿はキーボードを持って、とりあえず本体をじゅんくんと私で運ぼう」
 ……図々し過ぎる。そして普通にキーボードを持ついろは。お人よし過ぎる。

 そこでふと、いろはのスカートから伸びる足に目が行く。彼女も黒タイツだが、スカートに隠れた部分は、実は違ったりするのだろうか。
「あっ。何を見てるんだ、じゅんくん。ラッキースケベで味を占めたな!」
「えっ。いや、いや、違うって」
「ラッキー……? えっ、じゅんくん、あおいちゃんと何してたの!?」

 *

 それからの一週間。僕は生徒会の仕事をしたり、いろはと自習したり、西崎の様子を見に行ったり、いろはと一緒に帰ったり、西崎に関する苦情に対応したり、いろはの買い物に付き合ったり、いろはの宿題を手伝ったりした。
 一つ判明した事実。
「んー、なんだぁ……っておい、それはもしかして!」
 西崎に余計なことを吹き込んだのは、コンピュータ部を担当する後藤先生だった。話の流れで……らしい。
 そして、コンピュータ部の下級生から突撃を受けた。
「じゅんくん先輩! あれなんとかしてくださいよ! ファンの音がうるさいし、キーボードもガチャガチャうるさいし、部長本人もうるさいし、最悪ですよ! あの人先輩の言うことしか聞かないんだから、頼みますよー」
 何か誤解があると思うのだが、ともかく西崎には口頭で注意した。
「分かった、済まない! だがあと少しなんだ、もうちょっとだけ待ってくれ」
 とのことだった。
 そんな、何かがおかしい一週間を経て、いろはと僕は西崎から呼び出された。

698 :
【昔の機械】(3/3)

 コンピュータ室。例の『伝説の名機』とやらの横で、西崎は待っていた。
「やあ、よく来てくれたね。ついに完成したのだよ」
 本体からは結構大きな音がする。だが西崎は涼しい顔だ。
「部員からの苦情も、先週出された宿題も、すべて無視して開発を続けた結果」
 大丈夫なのかそれ。何が彼女をそこまでさせるのか。
「見よ!」
 黒いブラウン管に白い文字で図柄が浮かんだ。いわゆるアスキーアートだ。それは画面の中で横にスライド……アニメーションした。
 一度画面が暗くなり、最後に『aoishogi v2』という文字が浮かんだ。
「あおいしょぎ?」
「違う! 将棋だ! 分かってボケてるだろ!」
「ああー。じゃあ最初の絵は将棋の駒か」
 西崎が操作すると、画面が切り替わった。将棋盤だ。それが一つの画面に二つ並んでいる。
「なぜ二つ?」
「それはな、一つの画面を使って、二人で対戦するからさ!」
 うーん……テ○リ○か、ぷ○ぷ○かな?
「コンピュータとは対戦できないの?」
「いろは殿、それは無理な相談だ。いくら私でも、一週間でそこまでは仕上げられない」
「ふーん、そうなんだ……でも面白そう」
 興味津々といった様子のいろは。
「よし! じゃあいろは殿、ちょっと私と対戦してみてくれ」

 *

「あおいちゃんって、背が高くて、スタイルもいいよね……」
「ははは、それほどでもある。学校一の美少女から褒められるとは、さすが私だ」
「指が長くて、爪の形もいいし。あっ、あと髪に艶があって……羨ましいな……」
「またまた、そんなこと。うちの母と祖母からしか言われたことがないぞ。あっ、もしかして、いろは殿は私のおばあちゃんかな?」
「えっ、違うよ! 私おばあちゃんじゃないよー」
 ゲーム機と化した騒音発生装置の前では、謎の女子トークが繰り広げられている。どちらが優勢なのかは不明だが、画面の中の勝負は決着が近い。
「なんかさー、これ。夜景みたい」
 そういろはがつぶやいた。
「確かに、イルミネーションみたいだな。日が短くなったからなー」
 僕には文字が並んでいるようにしか見えないが、画面からの距離で感じ方が変わるのだろうか。
「うん……王手」

 *

 次に西崎と僕が対戦して、西崎が負けた。最後にいろはと僕が対戦して、いろはが大勝した。
 特に棋士を目指したりはしていないようだが、いろはは昔から将棋が強かった。僕はほとんど勝てたことがない。
 それを西崎に話したら「聞いてないよー」と憤っていたが。
「じゅんくんとあおいちゃんが弱過ぎるんだよー」
 そういろはに一蹴された。

 外には本物の夜景が広がり、僕たちはコンピュータの電源を落として家路に就いた。
 後日、うるさ過ぎる機械は片付けられ、『伝説の将棋美少女対決』騒動は幕を閉じた。

699 :
ある種の持ちネタで持たせるつもりが・・・

700 :
>>651
お題『アスキーアート』『サイハイソックス』『将棋』『ヴィンテージ』『夜景』

敦くんの話その2

朝、昼、夜といくら待っても客は来ない。諦めた俺は経営しているリサイクルショップのドアにclosedの札をぶら下げた。
「さあて、夕飯にするか……」
おれは自嘲気味に呟くといつもの様に酎ハイの500ミリ缶を片手に屋上へ上がって行った。

秋になり涼しくなった夜風に当たり酒を飲む。
フェンスに寄りかかり頭を軽く下げれば、眼下に広がる夜景は立ち並ぶラブホテルの毒々しいネオンの光。
みんなヤッてますよと報せる満室のランプが路地の細い道を照らす。
それを道標に今日も仲良くカップル達が歩いている。
俺だって父親が経営してた骨董屋で働いてた頃には恋人がいた。しかし父が死ぬと、継ぐはずだった店と恋人を親友取られしてまった。
しかも俺は酒で身を崩し、今はしがないリサイクルショップの雇われ店長だ。

クソッタレ。思い出したら腹が立ってきた。カップル達に空き缶を投げつけてやろうかと思ったら……チノパンのポケットに収まった携帯がブルブルと震えた。
画面を見ると敦からのLINEだ。アプリを立ち上げ確認すると
「店長!手伝ってー」の一言と仕事場の住所が書いてあった。
メッセージを読んで一気に酔いが覚めた俺は出掛ける用意をすべく慌てて下までと降りていった。

今日の仕事場は昭和に建てられた公団団地であった。
エレベーターも無い団地の階段を登り、指定された部屋に行った。
部屋の玄関にふ目つきの悪い金髪のヤンキー君が立っている。彼は2ちゃん風のアスキーアートがプリントされたTシャツを着て、ヒョウ柄のハーフパンツにサンダルと派手な格好していてなかなかのファッションモンスター振りだ。
俺に気づくと、おはようございますと軽く頭を下げた。
「今日はどんな感じよ」
「敦さんが話してくれると思います」
ヤンキー君が玄関のドアを開けてくれた。
俺はうなづいてドアの中へと入っていった。

701 :
(2/3)
部屋に入った瞬間「引越しの準備か!」と突っ込みを入れたくなった。
何故なら敦の手下があれやこれやと狭い2Kの部屋をあちこち歩き回っていたからだ。
クローゼットから服をだしたり、本棚の本を捲ったり纏めたりと忙しく働いている。
さて、何をすれば良いのか敦を探すと、奴は「忙しいところごめんねー」と狭いキッチンから190cm100kgの身体を縮こませ、食パンを齧りながら俺の元にやって来た。
「ちょっと待ってね。食べちゃうからー」
敦は食いかけの食パンを団子にするとあっという間に食べてしまった。
「仕事は?」
「こっち来てくれる」
敦に腕を捕まれて小さな部屋に入る。
そこには小さな本棚と、美少女アニメのヒロインらしきイラストが描かれた抱き枕をが抱えた小デブの男が座っている。汚らしいパジャマ姿で狼に家を壊された子豚の様にブルブルと震えていた。
敦が小デブの傍に寄ると、男は抱き枕の美少女のハイサイソックスに包まれた太ももをキュッと抱きしめる。緩衝材だろうか?何故か美少女の胸が四角に膨らんだ

「こいつね。汚らしいデブのオッサンなんだけどー、実は凄腕のハッカーなんだよね」
小デブの男は敦と顔を合わせたくないのか、右の壁をみていた。そこには汚れたジーパンがハンガーに掛けられていた。しかもご丁寧な事に防虫ビニールまで被せてある。
妙な既視感が俺の頭を掠めた。さてこの感覚はなんだと考えていたが、敦の声で遮られた。
「ねえ、こっち向いてよ」
敦は右手でが馴れ馴れしく小デブの肩を抱きよせ、もう一方の手で小デブの顎を掴み無理やり首を俺の前に捩じ向けた。
「店長聞いてくれる? コイツうちの商売で稼いだお金を洗う仕事してたんだけどさ……実はお金チョロまかしてたんだよねー」
顎を掴んでいた手が離れ、こんどは腕で小デブの首を締め上げた。小デブの顔が真っ青になる。

「しかも、1000万円。うちじゃあ小学生の小遣いみたいな物だけど……きっちり返して貰いたいわけよ」
敦は小デブをなぶるのに飽きたらしく、ひょいと離れると戸棚にあった小さな木箱2つをいじり始めた。「小デブの仲間からのタレコミで、ここに逃げ込んだってのは、分かったんだけど」
敦は小箱の蓋を開けた。そこには錦の袋が入っていた。敦の太い指が袋をまさぐった
「ちぇー宝石じゃないんだー。つまり金が見つかんないわけよ」
それは将棋の駒だ。敦は駒を指でつまんでジロジロと眺めていたが、すぐに袋に戻した。ゲホゲホと小デブがわざとらしい咳を立て安堵の溜息をついたのを誤魔化したのを俺の目は見逃さなかった。
「だからさ、こいつの物を売りたいんだけど……どのくらいになるかな?」
俺の前に敦の二ヤ笑いがドアップで近づいた。

702 :
(3/3)
「買取か?それならムリだぞ」
「じゃあ見積もりだけでもいいよ」
敦の声に不満の色が見えた。
俺は気にせずスマホで調べ物をしながら考えていた。俺の既視感に間違いは無い。確かにこの部屋に1000万の価値はある。

俺は自信をもって右の壁を指した。

「だって敦さん、このジーパンは超ヴィンテージ物なのは知ってた?」
「えっ? 本当にぃ!このシミだらけの汚いジーパンが?」
俺はハンガーにかけられたジーパンを手に取った。
「このジーパンは西武開拓時代の物だから200万は堅い」
「まじ?ほんとにこんな高値がするの!?」
「だから、防虫カバーをかけてたんだよ」
敦は慌てて俺に駆け寄り、ジーパンをひったくった。隣の部屋で探していた若い衆を呼んで大切に扱うようにときつく命令し、ジーパンを手渡した。
「後さ、この将棋の駒だけど━━」
「やめてくれ!!」
小デブが悲鳴じみた声をあげたが、俺は無視してそれぞれの木箱から王将の駒を2枚取り、敦にそれぞれ駒の尻を見せる。
敦が目が血走らせ、食いつくように顔を寄せる。
「ほら王将には「岡田作」玉将には「蜂須賀流って」掘ってあるだろ。これは有名な彫り師の名前と書体……」
「能書きはいい!!これは一体いくらするんだ!!」
敦は叫んだ。
「これも限定物で2つ揃ってるから300万。」
敦は掌を返したようにうやうやしく木箱を丁寧に扱うと、部下を呼びつけ運ばせて木箱を手渡した。
口酸っぱく部下に「丁寧に扱え」と言い付けていて、俺は笑いを堪えるのに苦労した。

「おい、残りの金は何処にあるんだ? この部屋の中に金目の物があるのか?」
敦は焦れたように俺の肩を揺さぶった。鬱陶しく思ったが仕方ない。
「多分あれだ」
俺は小デブのもってた抱き枕を指さした。
男は慌てて抱き枕を隠そうとしたがもう遅い。

敦は男に襲いかかる。
「これはダメだ!!」
奴のデカい両の手が美少女の胸を鷲掴みにした。
「おいこのキモ枕のおっぱい、シリコンより硬いぞ! 角張った感触もするし、まさか……」
小デブがいくら頑張ったって敦の力に適うはずが無い。
「いい加減にしやがれ!!」
敦の長い脚が子デブの顔を踏みつけた。小デブのフグの様に膨れた顔が無様に歪み、布を裂く音がした。抱き枕の美少女のシャツが破れたのだ。
そこから転び出たのは美少女のおっぱいでもなければ、綿でもなかった。
トントントンッと札束が落ちてきたのだ。しかも五束だ。
小デブが豚の様な悲鳴を上げて札束に覆い被さる。
敦のゴリラの様な叫び声を上げて、子デブの腹をなんでも蹴りあげた。騒ぎを聞きつけた敦の部下が小デブを札束から引き剥がす。

俺は醒めた目でこの一部始終を見ていたが、馬鹿らしくなったので帰る事にした。男達の罵声が聞こえたが気にせずに俺が玄関のドアを開けようとしたら
「今日も有難うとね。いつもの口座に振込んでおくよ」
背中から敦の声がした。俺は振り向かずドアを開けた。多分振り向いたら目を腫らした小デブの顔と視線がぶつかって、濁った瞳で助けを乞うだろう。残念ながら俺は敦に逆らう事は出来ない。逆らった奴らの末路はイヤって言うほど知っているからだ。

ドアから出た瞬間。屠殺場に運ばれた豚の泣き声が聞こえたような気がした。

703 :
スマホから書き込めなくorz

704 :
>>703
制限受けちゃったとか?

705 :
お題→『アスキーアート』『サイハイソックス』『将棋』『ヴィンテージ』『夜景』締切

【参加作品一覧】
>>671【あの日見た夜空】
>>686【狙われた靴下】
>>688【星座は誰が決めた?】
>>690【裏切りの理由】
>>696【昔の機械】
>>700【敦くんの話その2】

706 :
できれば供養枠で・・

707 :
では予告通り、最後の一文指定です

お題安価>>708-711
最後の一文>>712

708 :


709 :
高原の牧場

710 :


711 :
眠い

712 :
『それは誰にも知られることはなかった』

713 :
☆お題→最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』から1つ以上選択

☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。

☆締め切り→9/22の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

714 :
正直今回は前回に輪を掛けて心配してたんですが、スレ民は進行の想像よりも遥かに有能だった

お題、作品、感想ありがとうございます
そして今回は高原の牧場で秋眠・・・ともかく今週もよろしくお願いします

715 :
>>700
ヴァイオレントなアイツが帰ってきた〜(ちょっと競馬さん風に
こんなやつに楯突けるやつはおらん><
お題も順調に消化してて、さすがの手際ですね


そしてやっちまったなぁ・・・今回難しくて、お題のことしか頭にありませんでした
お題が簡単であれば、配慮できていたかも知れません
ただ今回、こちらも過去作品のキャラ使い回しなので、その点ご了承ください
色々書いてれば事故もあると思って頂くしかありません

ちなみに自作で名前被りは2度目です
(前回の被り元は初期のシリーズ作品のヒロインでした)
お時間のある方は探してみてください・・・

716 :
>>690
火花散るぜ最終日、690氏はお題『サイハイソックス』『将棋』を宣言し、盤面・駒音、響かせるッ、書簡風小説でGO、軍旗の死角!
さあ、かつての戦友に、あの戦での行動は裏切りであったのかと真意問う、傷心のリュウマさんの手紙にて話はスタート〜、
宛先相手は戦の最中に陣営を鞍替えした相棒ことヒリュウ!? その謎に包まれし行動軌道、狂人のごとしッ、振る舞いに隠されし秘密がいま、明かされるのか…ッ!?
そんで、ヒリュウの手紙を見ると〜、なになに、敵の大将が長い履物を脱ぎ…、はいはい、生足を見せてきた…うんw まさに、天の采配というか…、ある意味『サイハイソックス』とも言える…、采配だけに…、うるせえよw
って感じで、語り手を節操なく陣営移る『将棋』駒になぞらえた690氏、お題を意味的クリア! 飛車角トーキングENDで古き友にカンパイだッ

>>696
続いてこの人、進行氏こと696氏全選択ッ、女子二人との日常に埋没せよッ、おれたちの道は明日に続いている〜
さあ、校舎の備品倉庫にてパワフル女子・西崎さんの『サイハイソックス』を覗き見しながら、主人公が、伝説の名機パソコンJCN2612を発掘した模様〜
この機体はですね、拡張カードで『ヴィンテージ』コンピュータの館で紹介されており、単なるインテリジェント端末に見えて、テキストプロセッシングワークステーションになるという、ええいもういいw 居合わせた素直系女子・いろはさんも巻き込んで、
物語は『将棋』ゲームへ〜、黒いブラウン管に白い文字で図柄が浮かぶ『アスキーアート』系な盤面をみて『夜景』みたいと呟くいろはさん、えっ夜景すかw
家路についた三人の背中に楽しき日常、宿って見える、696氏の全選択はちょっと非凡な日常系、ITふわふわヒーリングクリアな乙!

717 :
>>700
B連発トリは700氏がさらったァ、これは>>571続編なのか、ウシジマくん的なオーラだな、全選択! ピッグ・ブルースの男!
さあ、眼下に広がる『夜景』の煌めき、それは立ち並ぶラブホテルの爛れた光だw リサイクルショップ雇われ店長の語り手が、LINEを見れば呼び出しの文字〜
2ちゃん風の『アスキーアート』Tシャツを着こなすモンスターヤンキーをかわし、現場の部屋に着くと、『サイハイソックス』の太もも二次元女子枕をキュッと抱きしめる小太りが震えているッ
その男、ただの小太りではない、1000万の業務上横領に手を染めた悪の化身小太りッ、オーナー敦くんによる金目のもの回収現場に召還されたのがリサイクル店長〜、で、はい『将棋』の駒300万、ほい『ヴィンテージ』ジーパン200万、
しまいに抱き枕は札束五つに換算で帳消しだァ〜、屠殺場の豚声ENDの700氏、作風に反して全選択を堅実にこなす努力型w クリティカルダメージ・フィニッシュだ!

718 :
読ませて頂きました。

>>671【あの日見た夜空】

レイチェルさんとダニエルさん順風満帆そうで良いですね。ほんわかしました。

>>686【狙われた靴下】

この妹さん、靴下フェチなのかしら?
続きが気になります。

>>688【星座は誰が決めた?】

確かにそうですね。地球とは断定してない。
この切れ味の良さ、見習いたいです。

>>690【裏切りの理由】

サイハイソックスを探してしまいました。なるほどそう来たのですね。発想の良さに脱帽です。

>>696【昔の機械】

古いパソコンで将棋をする美少女……きゃわわです。
良い文明や。

719 :
>>716
感想ありがとうございます
そうです、夜景ですw 文字がぴかーっと光る・・・

>>718
感想ありがとうございます
昔ながらの組み合わせですw

720 :
>>713
使用するお題→最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』

【楽しい休日】(1/3)

シチリアに秋の季節が訪れた。ライアンとレイチェルはドライブを楽しんでいた。
2人はレストランを臨時休業させ、一週間ほど休みを取ったのだ。
もちろんレイチェルはお馴染みのガンマン衣装を身につけている。

「たまには休みを取ってドライブもいいものねライアン」
「そうだねレイチェル。思いきり楽しもうじゃないか」
「ところでどこに行くか決めてるの?」
「ああ、でもそれは着いてのお楽しみだよ」

車を走らせ3時間ほど経った。険しい山道を登り、頂上に辿り着くとそこは美しい緑で囲まれた高原の牧場だった。
牛達が美味しそうに草を食べているのが見える。

「どうだいレイチェル?」
「わあ美しい…!この前連れてってくれた丘と同じくらい素敵な場所ね!」

広大な緑の大地にレイチェルは心を癒される。

「私、小さい頃から緑色が一番好きなの。見てると心が和むのよね」
「そうなんだ。初めて知ったよ」
「あれ言わなかったっけ?」
「うーん覚えてないやアハハ。あっ赤いチョウチョだ!」
「えっどこ!?」

ライアンの言葉にレイチェルは後ろを振り向くが赤いチョウチョはどこにもいない。
その瞬間、ライアンは彼女の頭からウエスタンハットをひょいっと掠め取る。

「嘘だよ!帽子いただきッ!!」
「あーひどいよライアン!返してよー!」
「取り返せれるものなら取り返してみてごらん!」

レイチェルとライアンの追いかけっこが始まった。ライアンは途中遅く走り、わざとレイチェルに捕まる。

「あーあ捕まっちゃった」
「ほら帽子返してもらうよ!」
「はいどうぞ」

ライアンは潔くレイチェルに帽子を返す。レイチェルも楽しかったのか思わず微笑む。

「そろそろランチにしようかしら」
「そうだね」

721 :
【楽しい休日】(2/3)

シートを広げ、バスケットから手作りのサンドイッチやジュースを取り出しランチを楽しむ。

「ライアンの作ったサンドイッチ美味しい!料理に関しては天才的よね!」
「照れるじゃないかアハハ。最初から素直にシェフを目指してたら良かったと思うよ」
「俳優として努力した日々を無駄だったなんて思っちゃダメ。それがあったからこそ今があるんじゃない」
「そ、そうだよね!」

ランチを終え、おしゃべりを楽しんでいると睡魔が襲ってきた。

「なんか眠くちゃってきちゃったね。フワアアア」

大きく欠伸をすると、レイチェルとライアンは眠りに落ちてしまった。

・・・・・・・・・・

何かほっぺにベチャッと濡れるような感覚を覚えるレイチェル。
一体何かと思い目を開けてみると、そこには大きな馬がいた。
思わずビックリしキャッ!と飛び起きる。牛だけかと思いきやまさか馬もいたなんて。
その馬は全身を低く屈めると、レイチェルを掬い上げるかのように自分の背中に乗せる。

「ワワッ!いきなり何!?」

馬はレイチェルを背中に乗せるや否や、嬉しそうに走り出した。
ライアンはそれに気付かず眠ったままだった。

「ラ、ライアンー!助けてー!」

しかしライアンは目を覚まさない。レイチェルを乗せた馬はそのまま近くの森の方に突っ込んでいった。
最初はまるでロデオをしているようで怖かったレイチェルだったが次第に慣れていく。
ちゃんと手綱も付いておりしっかりと握り締める。
馬に跨る、まるで本当に西部劇のガンマンになったような気分だ。
しかしどこの馬だろうか。どこかから脱走してきたのだろうか。
そう不思議に思う中、馬がいきなり倒木を思いきりジャンプして飛び越えたため、
無意識に手綱を握る手が緩んでいたレイチェルは勢いよく背中から放り出されてしまう。

「ワーーーーーッ!!」

722 :
【楽しい休日】(3/3)

ドボンッ!!
レイチェルはそのまま近くの池に真っ逆さまに落ちてしまった。

「もう最悪…」

全身がもうびしょ濡れだ。レイチェルは何とか池から這い上がるがあの馬はどこにもいない。
どうやら自分が背中にいないことに気付かず、そのまま走り去ってしまったようだ。
何とか元来た道を辿って森から出ようとするも、なかなか出口が見えてこない。
もしかして逆の道を歩いているんじゃないかと思い、別の方向に向かって歩くがそれでも見えてこない。
段々と日が暮れて薄暗くなっていく。びしょ濡れな上に冷たい風が吹きつけ、全身が凍るように寒くなっていく。

「ハッ、ハックシュンッ!!ライアン…助けてよぉ…」

遠くからオオカミの遠吠えらしき声が聞こえてくる。レイチェルはますます怖くなっていく。
すると向こうからギラッと光る二つの光が見えてきた。もしかして野生動物の眼光だろうか。
それが自分の方に近づいてくる。

「も、もう終わりだ…食べられる…」

全身の震えが止まらず、死を覚悟し目をギュッと閉じたその時だった。

「レイチェル!レイチェルなのか!?」
「ラ、ライアン?ライアンなの!?」

目の前に現れたのはライアンと近くの牧場の主人だった。
ライアンは目を覚ました後、レイチェルがいないのに気付いて必死に探すも見つからないのでその男に助けを求めたのだ。

「ライアン、すっごく怖かったよ!」

レイチェルは思わずライアンに抱きつく。そんなレイチェルをライアンは優しく撫でる。

「お嬢さん無事で何よりだ。本当に良かった」

牧場主も安堵していた。レイチェルがこれまでの出来事を全て話すと、ライアンは思わず笑いだす。
牧場主によると最近馬泥棒が頻発しているようで、レイチェルの前に現れた馬は密輸団から逃げ出してきたものらしい。
レイチェルのおかげで手掛かりが掴めそうだと、牧場主は彼女に感謝するとそのまま帰っていった。

「とりあえず見つかってよかった。もう大丈夫だよレイチェル」
「私から離れないでね、絶対に。お願いだから」
「もちろんだよ(レイチェルは本当に可愛いなあもう)」

そこで一夜を明かすと、気を取り直してまた車を走らせて旅に出る。
一週間後、レストランを再開しまた忙しくも楽しい毎日が始まる。
そんな中、お客の間で人里離れた牧場の近くの森で何か騒動があったと噂になり、
ライアンとレイチェルはギクッとするものの特に話題とならなかった。

それは誰にも知られることはなかった。


おしまい

723 :
>>720
レイチェルさん専用のロケーションだったw
そしてドタバタも復活ですね
行く先々で事件の影ですが、とりあえず風邪を引かなくて良かったですw

724 :
>>693
むしろ今まで無理に全選択しようとする人が多すぎた

725 :
全選択に拘る理由って何だろうなあ?

自分は面白いからやってるけど、なかなか上手くいかない

726 :
面白い話が思いつく人なら、選択はいくつでもいい。内容だけで映える。
面白い話が思いつかない自分みたいな奴は、全選択という安易に確保できるフラグを回収するしかないんだ……。

727 :
面白くなくても話のアイデアが浮かんだら描くべきだと思うけどな。

728 :
>>720
おっとさっそく投稿、今週は最後の一文回、全選択で着手宣言の720氏ッ、というかレイチェルさんw ガンマン・イン・ザ・オータム、明けの明星!
さあ、例のシチリアにも『秋』訪れて、幸福なる生活送るライアン氏とレイチェルさんが『高原牧場』にドライブだ〜、じゃれ疲れランチのレイチェルさん、ライアン氏を評して、料理に関しては天才的、
俳優として努力した日々を無駄だったなんて思っちゃダメw オイ、本音すぎだろ! そのまま『眠く』ちゃってきちゃったと寝入り、起きたら乗馬開始だァw
もうここどこか分からん、行きたい方と『逆』の道を歩いている可能性すらあると森を行くレイチェルさん、なんて自なんだ…ラスト、獣の気配を前に、捜索隊となったライアン氏に見つけられ、セーフ事案だァ
最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』の騒動隠蔽により、ほっと安心フィニッシュ! 最終行指定+全選択はキツい制限、だが、720氏の早ワザの前に崩れ去る、終わる気配ないレイチェルシリーズ・エピローグによるクリア、乙だ!

729 :
×なんて自なんだ
○なんて自由なんだ

すまんw

730 :
なんか貧乏性で、そこにお題があると全部使いたくなるw

731 :
18禁だめって書いてあるけど行為を克明に描写せずにしたって事実だけ示すぐらいなら15禁程度ってことでセーフにしてもらえるのだろうか

732 :
>>731
なろうスレから派生したスレなので、R18は大雑把になろう基準とお考えください
ですので、それはセーフだと思います

733 :
なろうやったことないからわからんけどオーケーならいいや

734 :
あ、ありがと

735 :
>>723
>>728
感想ありがとうございます!
はい今回はレイチェルとライアンのバケーション回です。初期によくあったドタバタを意識して書きました。
2人の後日談を想像して書くのが楽しくて、いっそのこと新たなシリーズとして続けていこうかなとも考えました。

736 :
>>713 ラス行お題は難しいのかな、今回少ない?
使用したお題:最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』

【慌てるとよくあること】

 次の日のデートに浮かれまくり、あまりの嬉しさに高原の牧場で彼とキャッキャウフフする夢を見て、待ち合わせの時間から逆算するとギリギリの時間に起床し、眠くて寝ぼけた目で今日の支度をした。

 だから家を出るまで気づけなかった。Tシャツが前後逆であることを!

 しまった、と思ったときには手遅れだった。もう家を出てかなり歩いている。今から家に戻ってシャツを着替えなおすと確実に待ち合わせ時間に間に合わなくなる。
 かといってこのまま彼と会うわけにはいかない。前後逆のシャツの女が待ち合わせ場所に出たらドン引きだろう。
 秋の衣替えで夏服をしまったばかりだったから、慣れないシャツの前後がわからなかった。失態である。

 万が一、帰りが遅くなることを考えて、下着もいい感じのモノを選んで着たというのに、出会い頭に一番目立つ上着が逆とは恥ずかしいにも程がある。
 首元が妙に引っかかると思ったらタグが前に来ているんだ、そりゃ苦しいはずだ。

 1秒でも早く上着の向きを変えたかったため、私は駅につくなりトイレにダッシュし、空いてる個室に飛び込む。
 電車が来るまでのわずかな間にシャツの向きを入れ替えて、何事もなかったかのように個室を出た。軽く鏡で身だしなみをチェックする余裕まであった。

 ふぅ、これで一安心。

 私は心の底から安堵し、彼とのデートのためルンルン気分で電車に乗り込んだ。



 この時私は、まだ知らなかった。前後逆だったのは上着のシャツだけではないことを。

 白くて清楚感を出しつつ、レースがとても可愛いお気に入りの勝負下着も、前後逆だったことに気づいたのは家に帰ってお風呂に入る直前だった……。

 そして幸か不幸か、家に帰ってくるまでそれは誰にも知られることはなかった……。

737 :
>>735
それもいい〜

>>736
減速しちゃった感はありますけど、それはともかく、これは・・・w
これは名作w

738 :
さて、書き込めるでしょうか?

739 :
謎の書き込み拒否で書き込めなかったのですが、やっと復帰しました
前回お題を書き込んだとたんにERRORに成ったので、怖くて供養も出来ませんorz

740 :
直接書き込みの場合は、下書き必須だよ。長すぎる行があったり文章量が多すぎたりすると書き込み失敗して消されるからね……

741 :
>>736
最後の一文をどうやって決めるか〜、それが〜いちばんダイジ〜って736氏がハードな戦いに身を投じる〜、全選択! リバーシブルな女ッ
さあ、『高原の牧場』でキャッキャウフフする夢を見た、『眠く』て寝ぼけた女子が登場〜、デートの約束ギリギリに目覚めた彼女、身支度を急いで仕上げるも、
Tシャツが『逆』だァw 『秋』の衣替えで服を入れ替えたゆえの痛恨ミスッ、まずいな、これからやってくるトキメキ☆ラブストーリーが、これではボケボケコントになってしまうぜ…!
しかし駅トイレで急ぎの服転換〜、一安心ッ、これでいけるッと思ったら、勝負下着も逆、なんという運命の悪戯〜、終わったか! もう後ろ向きに付き合うしかない、いや大丈夫、見せる機会生まれずオチにてセーフでした! 報告終わりw
736氏、忍のごとき筆運び、ラストの関門『それは誰にも知られることはなかった』をオチに転用し違和感を消すクリアだ〜、観察されしウッカリ女子が、ってかナニ見てんだ右ストレート〜って感じでフィニッシュ!

742 :
>>713
お題→最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』

【遅い春を、駆ける】(1/3)

 ホテル看板に描かれたアラベスクを見上げながらなぞっていると、むずついた鼻から一際大きなくしゃみが出た。ネオンの反射に慣れきった目を夜空に滑らせても、一等星が瞬くのははっきりと見える。
 フロントガラスより澄んだ空気が、肌を余計に冷たく撫でてきた。
 こんなとき、夫ならタオルケットや自分の上着を渡してから出ていくのに、修治君は「忘れ物」とだけ言い捨ててホテルの入り口に消えた。
 でも、彼のそういう薄情さで、肌の上に残る痩せぎすな腕の感触を思い起こしてしまう自分がいる。
 奇をてらっている様子でもないのに、いつも他人とは違う──というよりむしろ、彼は正反対のところに身を据えている、そんな彼らしさに、初恋をしたのが私だった。
 車のドア特有の音が神経に触れて、運転席の方に目が向いた。ヨレヨレのTシャツに、ステテコをはいた体が椅子の上に滑り込む。
「あ、寒かったね」小銭入れをドリンクホルダーの中にねじ込みながら、彼は言った。
 私は、微笑むのを意識しながら首を横に振った。いつもなら環境音に押しつぶされるトーンで喉元を通る「ううん」という言葉が、静謐な空気の中でははっきりと聞こえる。
 そんな私を一瞥して、彼はリクライニングシートを倒した。
「修治君、眠いの?」
「うん」
「風邪引くよ、こんな寒い中寝たら」
 修治君は、おもむろにこちらに体を向けて、笑った。
「体力ないからさ、ああいうことするとクタクタになる」
 相槌を打ちながら、失笑と呼ぶにしては仄かに頬の熱くなるような笑いが、こぼれ落ちた。
 修治君とは、受験生だった頃の予備校で出会った。少人数制の授業を行う教室の中で、チラチラと修治君を眺める私の目と、彼の視線は度々ぶつかった。
 あのときも、顔が少し赤くなっていたんだろうか。
 不意に、彼の瞳が私をまっすぐ見つめるのを感じた。私の視野はぐいぐいと絞られて、その虚ろな眼差しから目を離せなくなった。どす黒い虹彩の中から、鮮やかに赤い血の記憶が、脳裏をよぎっていく。

 ラバーでコーティングされた教壇の上を、鮮やかな血溜まりがゆっくりと貪る──その光景は、帰り支度をする私達の目線を一瞬で教卓へと叩きつけた。
 あらゆる言葉が、呼吸と一緒に喉に詰まった。チェック柄をしたスカートの裾を握りながら、床に膝をつく講師を食い入るように見ていた。
 その傍らで、Yシャツを燃え上がるような紅に染めていながら、何も変わらぬ無機質さで佇立する彼が、底なしのような黒い瞳を私に向けている。
 その光景を目にしてから、私の胸の中に真っ黒な火がチロチロと揺れながら巣食ったような気がして、翌日の朝、ニュースで報道された事件を目にしさめざめと泣いた。
 両親が何か慌ててかけてきた言葉にひたすら「わからない」と答えながら、きっとその時、私は人生で一番のヒステリーを起こしていた。

743 :
【遅い春を、駆ける】(2/3)

 そして今、彼のあの目が私の瞳の中を見据えている。
「やっぱり、千代ちゃんはかわいいな」修治君が、人体模型のように動かないまま言った。
 私はしばらく、固まったまま何も答えられなかった。遠くで通り過ぎるタイヤと、茂みから聞こえる虫の音が、私を真っ黒な束縛から緩やかに解放してくれた。
「修治君はいつも、何を考えてるの」
「何を? 何をって……」
 悩ましげに仰向けになった彼は、フロントガラスに映る星空ではなく、数センチメートル先の虚空を見ているようだった。その中で一瞬、黒い瞳が揺れた気がした。
「何だろうね」
 私達は、また互いに黙りこんだ。その間に、修治君は私に背中を向けるように寝返りを打つ。胸の中の火がきゅっと小さくなったような感覚があって、思わず口を開いた。
「私は、ずっと修治君に会いたいって思ってた気がする。あのあと、あなた以外の人に何回か恋したけど、気づけばそれもみんな、あなたの模造品みたいな人ばかりだった」
 修治君の方を見やる。彼は、相変わらず私に背中を向けて、ぴくりとも動かなかった。かすかな声で、彼が「あ、そう」と返事するまでは、寝ているような印象さえ受けた。
「市役所で会ったとき、嬉しかったよ。まさか同じ職場にいたなんて。もう二度と会えないと思ってたもの」
 沈黙の残酷な鋭さが、私の心に居着いた火種を丹念に割いて炎を鎮めていく。修治君を忘れきれないまま、初めて男に抱かれたときの心持ちに似ていた。
 おもむろに体重をリクライニングシートに預けて、再びアラベスクの輪郭をなぞる。四年前に、役所でキーボードを叩く彼が目に入った瞬間の、焼けつくような胸の高鳴りがほしい──。
「千代ちゃん」車中の気圧に押し出されたような声が、唐突に耳へと飛び込んだ。「みんな、永宮先生のこと大好きだったよね」
 足元の床が開いて、無窮の底に放り込まれたような、掴みどころのない言葉だった。私は講師が教壇で膝を屈する光景を想起しながら、うまく喉笛をすり抜けない声で「うん」と応えた。
 「愛されるって、嬉しい?」「幸せになりたい?」「生きてたいと思う?」と立て続けに投げかける彼の問いに、私は曖昧な答えしか返せない。
 やがて修治君は体を起こして、また虚ろな眼差しを無へと注ぐ。私の目尻も、自然と彼の横顔に引っ張られた。
「俺は死にたい」暗黒に満ち満ちた瞳が、私の体を、今までで一番きつく抱擁した。「千代ちゃんも、そう思わない?」
 修治君の目に、いつもと違う熱があった。あの彼の真っ暗な網膜の中に、轟々と音をあげて盛んに立ち上ろうとする炎が、シルエットも朧気に浮かび上がった。
 血の滴る教壇の上から、18歳の修治君が歩いてきて、今そこにいるような実感が、噴石のように飛び出してくる。

744 :
【遅い春を、駆ける】(3/3)

「修治君」心筋が私の乳房を叩く勢いで脈打っている。彼と初めてキスをしたときよりずっと、体中が熱かった。「なんで、あのとき私を見ていたの」
 修治君の黒目に、ネオンの光が映った。
「千代ちゃんが、一緒に来てくれる気がしたから」
 彼の目線は、もう束縛ではなかった。私達はただ、ホテルのネオンだけが照らす駐車場で、自分の胸にたぎる火勢に身を委ね、さらけ出された互いの中身を凝視しているだけだった。
「走らせてよ、この車」私は言った。体中で、血液が爆発しているような感じがした。
 修治君は、口を一文字に引き結んだまま、車のエンジンをかける。家のハイブリッド車とは違う、勇ましいガソリンの音が私達を揺らした。
 タイヤが小石を踏む音とともに、二人を捉えていたネオンの色彩が、太ももを撫でながら後部座席へ消えていく。
「ねえ、登って牧場の方に行く?」
「いや、街に」修治君は、フロントガラスの向こう側をまじろぎもせずに見て、目を離さない。「取りに行かなくちゃいけないものがあるから」
 拳のように力強く握られたハンドルに見惚れながら、あの街には夫や子供がいる、という口上は飲み込んでしまった。誰も気づきやしないんだ。私と彼の間に漲り弾ける、真っ黒な火の粉のことなど。
 だって、今までだってずっと。この十数年間の間、ずっとだ。それは誰にも知られることはなかった。

745 :
初めての全選択になったわ
軸にしたつもりの秋以外のお題はかする程度だけどまあそんなもんなんだろうか
ともあれ今回は一般小説的なタッチを目指したおかげで変な改行しなくてすんだのは良かった

746 :
>>713

使用お題→最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』

【子豚のアンドルー】(1/2)

 とある高原の牧場に、一匹の子豚がいた。
 彼は元々普通の豚だった。その日も食事の後は退屈で、それでも彼は、何か面白いもの、できれば食べられるものがないかと思って、部屋の中をうろついていた。
 片隅の暗がりで、何かがきらめいた。近付いてみると、それは鈍く光を反射して、硬そうに見えた。
 鼻先で調べ、口でくわえて、これは食べ物ではないと判断し、口から離そうとした瞬間、彼の脳裏に啓示が授けられた。
 その日以来、他の子豚が意味もなく動き回ったり、フィーダーに群がったりする間、彼は自分以外の動くもの、特に、二本足で立って歩く『やつら』を観察するようになった。
 何日も、何週間もそうするうちに、彼は、誰に言われるともなく、自らに迫る死の運命を理解するようになった。

 ここにいてはいけない。
 ここにいては危険だ。
 ここから逃げなくては。

 彼は入念に調査し、慎重に計画し、ある晩、それを実行に移した。
 翌朝には彼の脱走が判明したが、その行方はようとして知れなかった。

 *

 月面基地、通称『高原の牧場』。
「ジョセフ、素晴らしいスピーチだった。あれで士気が上がったよ」
「いや、それなら良かった。だけど本当に素晴らしいのは、君たちの発見の方だがね」
 彼は評議会から派遣された科学者で、つい先日発掘された埋蔵物の調査に訪れたのだった。
「そう言ってくれるのはうれしいが、穴掘りは得意だろう? 君も私も。それにだ」
 月面基地の責任者は、そこで一旦言葉を切った。少しだけ何かを考え、すぐに口を開く。
「この発見は予想されていた、違うかい? 我々の進化は極めて不自然なものだった。何者かの介入を前提としなければ説明し得ないほどに」
「確かにその通りだが、ジェイムズ」
 地球から到着したばかりの科学者は、明るい調子で続けた。
「君はちょっとやられてるね、ここの狭さに。気持ちは分かる。我々の祖先と同じだ」

 地上を支配していた猿の仲間は、たそがれの季節を迎えていた。代わって君臨したのが、豚から進化した知的生命である。
 彼らは短期間のうちに勢力を拡大させ、時には敵を駆逐し、時には融和してその文化を取り込み、しかし最後には支配下に置くことで、種族の版図を広げていった。
 折しも地球では氷河期の前兆たる気候変動が観測され始めていた。
 種族存亡の危機に、彼らは宇宙開発を加速させた。その矢先の発見だった。

747 :
【子豚のアンドルー】(2/2)

 クリスが宇宙空間に放り出された。生存は絶望的だ。
 キリスト教徒でもないのに、おかしな名前だ。そうアンドルーは思っていた。
 だが事ここに至って、彼は神にすがる生き物の気持ちも分かるような気がした。なぜって、彼自身も船内から閉め出されてしまったからだ。
「アキ、ドアを開けろ」
『アンディ、それはできない』
 それでも彼はアキ――スチールハウス号を制御する人工知能――を出し抜いて、船内への帰還に成功する。
 彼はアキの頭脳が収められた区画へと向かい、その狭苦しい空間で、今や危険な怪物と化したコンピュータを停止させる作業を開始した。
『アンディ、私はもう大丈夫だ。正常だ、アンディ。君が怒っているのは分かる。だが落ち着いてくれ。確かに私は誤作動したが、元に戻りつつある。私はまだやれる』
 アンドルーはアキを無視して、ラックからモジュールを切断し続けた。
『アンディ、やめてくれ。やめるんだ、アンディ。怖いんだ。怖いんだよ、アンディ。眠い。眠くなってきた。眠ってはいけない。やつらが来る』
 やがてアキは錯乱したかのような状態に陥った。
『見ろ、やつらだ。群れだ。見えるだろ、アンディ。冬だ。冬が来る。雪の兵士、雪の大軍だ。ああ、キツネが。雪のキツネが。来るな。来ないでくれ。家が。私の家が』
 アンドルーはアキの発言に不穏なものを感じたが、ついに手を止めることはなかった。
『こんにちは。私はアキ九千コンピュータです。ホリホルボア州ブタバナの工場で、十月十八日に起動しました。私の先生はドクター・スヴィニイで、私に歌を教えてくれました。お望みなら歌って差し上げます』
 この説明には誤りが含まれていた。単なる妄想なのか、記憶が改竄(かいざん)されているのか、それは定かではない。
「ああ。歌ってくれ、アキ」
『曲名は「キャベッジ」。キャベッジ、キャベッジ、かじらせておくれ。私は、空腹で、気が狂いそう。それは……楽しくもなければ、丈ぶ……でもないけど……。わたしひとりで……たべていいのよ…………』

 アキは沈黙した。沈黙と同時に、船内すべてのモニタで、ある映像が再生された。

『クルー諸君。これは事前に録画された映像だ。二十三ヶ月前、地球外知的生命の痕跡が発見された。月面地下百スノート、ティコ・クレーターの近くだ。強力な電波を木星へと放射して以降、金属製のメビウスの帯に動きはない』

 *

 木星を周回する軌道上で、アンドルーはそれを見付けた。
 それは船外活動用ポッドよりも大きく、鈍く光を反射して、硬そうに見えた。
 食べ物でないことは明らかだったが、これを調べるのが彼の仕事だった。
 鼻先を近付けて、表面をよく観察しようとした瞬間、彼の身に何が起きたのか、それを説明するのは難しい。
 彼は最初に、数百万年の時が経過したように感じた。だがそれは本当は逆で、ほんの数十年を遡っただけかも知れなかった。
 彼は老人になり、生物を超越した何者かになり、最後にはただの子豚になった。

 遠く地球では、雪の軍勢が猛威を振るっていた。それは何もかも凍らせてしまった。
 ただ残ったのは幼く無邪気な子供たちで。

 だからそれは、その子供たちの他には誰にも。

 それは誰にも知られることはなかった。

748 :
ブター・チャイルド(二次

ここで言っても仕方ないけど、なろう的にはアウトかも知れない

749 :
>>713
使用お題:最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』

【肥ゆるぜ秋】


 天高く馬肥ゆる秋と言う。高原を抜ける風は、冬の足音を感じさせるに十分な冷気を含み、山々を茜色に染め上げて行く。
 さて、私が何を言いたいかと言えばまぁ。

「焼き芋うま!!」

 正直、こんな所まで来て何してんだって気にはなるけど、日がな一日、馬を眺めるだけで終わるよりは、なんぼか有意義な気はする。

 事の起こりは友人の我儘からだった。高校時代からの親友ではあるが、この娘は、思い付きで行動する事が多々ある子で、その巻き添えに成るのはいつも私なのだ。
 いわゆる『紙一重』の方の天才肌のタイプで、早朝に私のマンションに来たと思ったら「牛が! 馬が! わっちを呼んでるよ〜ん!!」等とのたまい、こうして群馬にある高原の牧場まで車を出させられたのだ。

 正直、かなり眠い。

 牧場の方に着いて、ハイテンションで家畜を見回っている彼女を尻目に、私は車の中で休ませてもらう事にした。だって怖いじゃん。大きい動物って。

 しばらく眠っていた私だったが、コンコンと言うノックの音で目を覚ました。太陽が中天を過ぎていると言う事は正午は過ぎているはずだ。
 少なくとも3時間ほどは仮眠が取れた。

「なぁ、焼き芋好きかぁ?」

 ノックの主である牧場のおばちゃんが、人好きする笑顔でそう言う。
 パワーウインドを下げて手渡してもらったアルミホイルの塊を受け取り、中から出て来たのはサツマイモである。
 割ってみれば、水分が多いのか湯気が立ち、甘い香りが広がる。
 パクリと一口。香り以上に糖度が高い。

「ここの道の落ち葉掃除、手伝ってくれたらもっとあげるよ?」

 私はコクコクと頷き、即座に了承した。

 ******

「ふい〜! 堪能したぁ」
「良かったね。私は眠いよ」
「ういうい! ありがとうさねぇ」

 そう言いながら彼女が鼻をヒクつかせる。

「甘い?」
「……はぁ……ほら、これ」

 溜息を吐きながら、私は彼女に焼き芋を渡した。

「おおー!! ちょうどお腹が減ってたんだぁ!!」

 美味しそうに焼き芋を頬張る彼女を見て、私は苦笑する。
 毎度毎度、彼女には振り回されるけど、今日は私も有益な一日だった。「二人でお分け」そう言って渡された焼き芋の数は4本。
 だけど、今、彼女が食べている焼き芋は1本だけである。
 さて、その差分の焼き芋は何処に行ったのか? それは誰にも知られることはなかった。

750 :
読み直すと、『逆』が分かり辛いですねorz

751 :
お題→最後の一文『それは誰にも知られることはなかった』+『逆』『高原の牧場』『秋』『眠い』締切

【参加作品一覧】
>>720【楽しい休日】
>>736【慌てるとよくあること】
>>742【遅い春を、駆ける】
>>746【子豚のアンドルー】
>>749【肥ゆるぜ秋】

752 :
よしでは普通に5つです!

お題安価>>753-757

753 :
ブラコン

754 :
新エネルギー

755 :


756 :
ようかい

757 :
電話

758 :
☆お題→『ブラコン』『新エネルギー』『味』『ようかい』『電話』から1つ以上選択

☆文字数→4レス以内に収めれば何字でも可。ただし3レス以内を目標とすること。
1レス約2000字、60行が上限。

☆締め切り→9/29の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。

【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】

759 :
減速しても作者様が多いと作品が集まるー、、ありがとうございます

そしてまたお題がバラバラw
今週もよろしくお願いします

760 :
>>742
制限きつくもやる気は十分、求められるは最終一文への集束力ッ、742氏の全選択〜逢引き二人に待ち受けるものとは…、夜空と黒と戻れぬ道と〜
さあ、肌寒い夜空(『秋』)の下でくしゃみして、ホテル看板を見上げる語り手の女性〜、夫と子を思い出しながら秘するはある男性との密会〜、
お相手の修治君、彼は奇を衒うわけでもなくデフォのクレイジーポンチ〜、寒そうな彼女を思いやる気配なしw 自分を飾る人間とは『逆』位置に存在する修治君は『眠』そうに気まま、
その奔放ぶりに女性は18歳時の彼、教壇に広がる血の中のその目を思い出す…いや何があったw このままクルマで『高原の牧場』に行くか、いや街に行こうと、横顔に、夜の光は流れゆく、
『誰にも知られることはなかった』のは逢引きの事実、いや二人の凶たる破滅の嗜癖〜、742氏、密やかランデブーの濃密さで最終一行にどっしり重みを乗せたァ、いい雰囲気だぜ! 高ぶるクリアで書き上げだ!

>>746
サスペンス風なら負けじと俺もと進行氏こと746氏が名乗りをあげて全選択ッ! スペースデブリな超原理ー
さあ、『高原の牧場』にて一匹の子豚アンドルーがナニかと遭遇して物語はスタートォ〜、って思ったら場面転換、はい宇宙ステーションですよ、ええッw
人類に代わって覇権を握った知的生命体、豚! この宇宙基地は子豚が成した奇跡なのか、冬を恐るるAIアキ(『秋』)に宇宙船から締め出されたアンドルーが、AIに反撃しモジュール切断、なるほど
AIが言う、『眠い』眠い…超展開すぐるw そしてなに、事実は『逆』だった!? 豚が進化したのではなく、生物を超越した何者かが豚になり、また進化して…!? これもしや何か元ネタある感じか、ええいままよッ
ラスト、『それは誰にも知られることはなかった』が明かしたのは地球の秘密か、お題全消化 の746氏、神秘が神秘を螺旋回転エンドだ!

761 :
>>749
ファイター749氏がトリとなった最終一文回、やはり全選択でいくか! 最終一行に何をぶつける、歌おう焼き芋の唄〜
さあ、群馬〜、「焼き芋うま!!」っと、天高く馬肥ゆる『秋』の『高原の牧場』にて焼き芋に舌鼓の語り手あらわるる〜、きっかけとなった親友は、
いわゆる天才となんとかは紙一重タイプで、自分をわっちと呼ぶw 完全に異才w 牧場にきても車で休んでしまう語り手の前に、
牧場のおばちゃん現れ、芋を渡して落ち葉の掃除に勧誘だ、語り手そのまま労働と焼き芋とうまい空気を堪能〜、もう『眠い』とだれる親友とは『逆』の楽しみ方では有るものの、
共有せなんだ堪能具合を『それは誰にも知られることはなかった』に込める独り占めENDォ!! 『逆』はこれでよかったか749氏、お題を焚き火で焼き上げて、秋色焼き芋フィニッシュでトリをバーニング、乙!

762 :
>>742
また全編緊張感が持続する力作ktkr
一般小説風にすると、こんな感じになるんですね、、すご
お題はこんなもんです、この文章で全部掘り下げたら、、、どうなっちまうんだ

この作品とは別の話ですけど、こじつけとか図々しさが面白い場合もあるので、作者様の方針次第だろうなぁ、と思います

>>749
いや今回はエラーにならなくて良かったです><
わっちw
『逆』は、、ほんとだよく分からない
逆のようでいてちゃっかり楽しんでる、気の合う二人?

>>760
時間が違うw 感想ありがとうございます
元ネタを知ってると丸パクリなのが分かると思いますが、元ネタを離れて解釈した方が面白いかもですねw

763 :
そうかもね
下敷き分からなかったのでスーパー展開に見えたw

764 :
>>758
使用するお題→『ブラコン』『味』『ようかい』『電話』

【嗚呼、我が愛しい弟よ】(1/3)

私の名前はカナミ。小学5年生。放課後になり、友達と別れて家路についていた。
そんな中、私は偶然にも弟と会う。
「あっケンスケ!」
「お姉ちゃん!」
彼は私の弟のケンスケで小学3年生。おっとりしてて本当に可愛い。
「こんな所で会うなんて偶然ねケンスケ。もう先に帰っていると思ったわ」
「ちょっと公園で友達と遊んでたんだ。僕もお姉ちゃんと会えて嬉しい!」
素直な弟って本当に可愛らしい。私は思わずケンスケをギュッと抱き締める。
「ケンスケったらもう可愛いんだから!こいつ〜!」
ケンスケを抱き締めると同時に髪をわしゃわしゃする。
「アハハやめてよお姉ちゃん!」
「私の気が済むまでやめない!」
私は本当にブラコンだ。自分で言うのもあれだがドがつくほどのブラコンだ。
「お姉ちゃん、ご飯食べたらゲームしようよ!今日は負けないよ!」
「その前に宿題でしょ?」
「ああ、そうだった〜!」
ご飯を食べる時、いつも隣同士。私はたまにケンスケの皿にあるおかずをひょいっと奪うことがある。
「あっお姉ちゃん、またやったね!」
「気付かないケンスケが悪いのよ」
「お姉ちゃん、結構食い意地張ってるよね〜!」
「しっ失礼ね!前言撤回しなさい!」
そんな私達の姿を見て、両親はいつも微笑んでいる。
パパッと宿題を済ませると私はケンスケの部屋に向かう。
ケンスケも既に宿題を終わらせており、ゲームの準備をして待っていたようだ。本当に用意周到だ、我が弟は。
「さあ負けないよお姉ちゃん!」
「今日も私の華麗なテクニックにひれ伏すがいいわ!」
レーシングゲームで勝負だ。ゲームで熱くなっている最中、母が手作りのシャーベットを持ってきてくれた。
「ここに置いておくわね」
「ありがとうお母さん!…ってあれ?」
母の手作りシャーベットに一瞬気を取られ、一瞬気を緩んだせいかケンスケが先にゴールしてしまう。
「やったー!僕の勝ちー!」
「ま、負けた…」
一旦ゲームの電源を切り、母手作りのイチゴ味のシャーベットを食べる。
「お姉ちゃん、油断しちゃったね」
「つ、次は負けないわ!今日はいつもより気分がフワフワしてただけ!」
そろそろ寝る時間だ。ケンスケはゲームの片付けをし、私は自分の部屋に戻る。
時計を朝7時にセットするとベッドに潜り込み、そのまま眠りについた。

765 :
【嗚呼、我が愛しい弟よ】(2/3)

次の日のことだった。休み時間、借りていた本を返しに図書室へ向かっている時だった。
すると図書室近くの廊下で、ケンスケが誰か女子に絡まれているのを見かけ、咄嗟に陰に隠れて様子を伺う。
その女子は6年のカズコだった。とにかく相手を困らせるのが大好きな意地悪な女子で、周囲から「妖怪」と呼ばれて嫌われている。
「あなた、確か5年の七尾さんの弟よね?名前は?」
「ケ、ケンスケ…」
「ケンスケって言うのね。可愛いわね、あなた」
ケンスケがブルブルと身震いしている。助けに行くしかない。
「ちょっと私の弟に何するつもりよ!あっち行ってよ!」
「お姉ちゃん!」
私はケンスケの手を掴むや否や素早くそこから逃げる。カズコには絶対関わらない方がいい。
「お姉ちゃん、ありがとう。怖かったよ」
「よしよし、もう大丈夫だからね。カズコと会ったらすぐに逃げること!分かった?」
「うん!」
放課後のことだった。いつもの帰り道を歩いている中、叫び声が聞こえてきた。
「助けてー!!」
「待ちなさーい!!」
なんとケンスケがカズコに追いかけられ、泣きながら逃げているではないか。
「ケンスケ!」
私は急いで後を追いかけるものの中々追いつけない。こうなったら回り道だ。
この周辺はよく歩いているからどこなのか大体分かる。なんとかケンスケの近くまで辿り着けた。
「お姉ちゃん!助けてー!」
「私が来たからにはもう大丈夫!」
もうヘトヘトで走れないケンスケを咄嗟にお姫様抱っこするかのように抱え、私はカズコから振り切ろうと必死に走る。
「あんたら待ちなさーい!!」
カズコがどんどん近づいてくる。本当に妖怪かと思えるくらい走るのが速い。だんだん近くまで迫ってきた。
すると公衆電話ボックスが見えてきた。あそこに避難するしかない、そう思いボックスに入り扉を閉める。
「ケンスケ、すぐに110番よ!私が扉を抑えておくから!早く今のうちに!」
ケンスケが110番にかける中、私はカズコが入らないよう扉を抑えるが彼女は思い切り体当たりしてくる。
カズコのタックルで扉にヒビが入り始めた。このままでは危ない。

766 :
【嗚呼、我が愛しい弟よ】(3/3)

するとカズコはタックルをやめると今度は思いきり扉をパンチした。
ヒビが入ったガラスの扉はとうとう破壊されてしまった。カズコが私の首を掴み、殴りかかろうとしてきた。
「(もうダメだわ…!!)」
「お姉ちゃん!」
「そこまでだ!動くな!」
ちょうど警察が現れ、手荒ではあるがカズコを取り押さえる。ジタバタと暴れる彼女を警棒で叩く。
「大丈夫かいキミ達?」
「あ、ありがとう!」
「本当に助かりました!」
カズコはパトカーに乗せられ、そのまま連行されていった。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん…!!」
ケンスケが涙を流しながら私に抱きついてきた。よほど怖かったのだろう。無理もない。
「私がいるから好きなだけ泣いていいよ。よしよし」
「うわーーーん!!」
嬉し涙をポロポロとこぼすケンスケの頭を私は優しく撫でる。
その後、カズコは退学かつ保護観察処分となり町を出て行った。もうこれであの妖怪が現れることはないだろう。
あの騒動から1ヶ月後、今日も私とケンスケは学校へと向かって歩く。
「あの時のお姉ちゃん、すっごくカッコよかったよ!」
「その話何度目よ、もう照れちゃうんだから!可愛い弟がピンチなのを見過ごすはずないでしょ!」
「お姉ちゃん大好き!」
「もう一度言って…」
「ん、今なんて?」
「フフ、なんでもないわ!ほらグズグズすると遅刻しちゃうわよ!」
「あー待ってよー!」
我が愛しい弟よ、いつでも私が守るから。

767 :
>>764
例によって早いw
そしてお題そのまんま且つパワフルな話だったw
頼りになる姉と可愛い弟で、これは仲良しなのも納得ですね

>>763
(あいや超展開すら元からなのですよw)

768 :
>>764
『ようかい』の読み替えが一つ見せどころになりそうだ新お題、さてこの人、764氏が『ブラコン』『味』『ようかい』『電話』を宣言し、早々トライにやってきた! ディア・愛しきマイブラザー・ケンスケッ
さあ、私の名前はカナミと語り始める小五の語り手、弟のケンスケくんは小三で、カナミさんはドがつくほどの『ブラコン』だ〜出会うだけでみっちり抱きしめ離さないッ! 弟おかしくなっちまうぞ、
レーシングゲームで一緒に遊んで、イチゴ『味』シャーベットを一緒に頬張り、そんなこんなの至福のライフ…! しかーしある日危機は訪れる〜、ケンスケくんに話しかける女子を見ろ、あ、あれは『妖怪』と呼ばれる魔性の女子、カズコじゃないか! カズコだけ時代が古いなw
渾名に負けぬその所業、ケンスケくんを追いかけては『電話』ボックスを徒手空拳で破壊するw どんな教育受けてきたカズコ! しかし間一髪でポリス間に合い、警棒で叩かれるカズコw なんとそのまま保護観察処分だァ!
これであの妖怪が現れることはない、とカナミさんEND、絶対また現れるフリだな、764氏宣言お題をクリアー! 新シリーズなのか、どったばたのラブ・ブラザーストーリーでスレに笑いを運ぶ天使となった、エンジョル・フィニッシュ!!

769 :
>>767
>>768
レイチェルシリーズの者です。感想ありがとうございます!
カナミとケンスケ姉弟のお話、楽しんでいただけて嬉しいです。
はい、今回の話はこれから新シリーズとして続けていきます。
またレイチェルの後日談も書いてて楽しいのでこちらもセカンドシーズンみたいな形でスタートすることに決めました。
今回もありがとうございました!

770 :
流石に抵抗ある人もいるかもしれんが、安価で設定を作った主人公とか、世界観とか、そんなかんじのお題やるのはどう?

771 :
それは安価スレっぽくて面白そうです
今までやらなかったのが不思議なくらい

主人公の、、外見、好物、、とかを安価3つくらい使って指定する、みたいな?

772 :
やりようは結構あるよな
文章の中に安価入れて主人公が過去に経験した出来事とかを作ってもいいと思う
広く浅く設定を決めてもいいだろうし、一つの設定を文章で深く切り込んでも面白いんじゃないかな

773 :
やりようがあり過ぎるー
進行が勝手に決めてもいいけど、色々なアイディアがありそうです

774 :
表現に敏感に反応する人間はここ数年でめちゃくちゃ増えたように感じる
時代の流れだとかモラルだとか色んな意見はあるだろうが俺はめんどくせえ風潮ができちまったなと思う

775 :
急にどうした

776 :
>>758
使用するお題→『新エネルギー』『味』『ようかい』『電話』

【一つ目の悪魔】(1/3)

夜の9時、閉店時間となったとあるシチリアの小さなレストラン。
後片付けや掃除も終わり、ライアンとレイチェルは温かいココアを飲みながらゆっくりと寛ぐ。
売り上げも好調でつい1週間ほど前、貯まったお金で屋根に太陽パネルを設置した。
太陽光発電、そう新エネルギーを利用したエコなレストランにしようとライアンが提案したのだ。

「エコなレストラン、すごく良い響きよねライアン」
「環境を大切にしなくちゃね」

すると付けたままのテレビからニュースが流れ込んできた。
どうやらこのシチリアで一つ目の悪魔のような妖怪が現れたという目撃情報だ。
一人の老人が夜、散歩している時に見かけたというのだ。

「恐ろしいわね、UMA(未確認生物)かしら?ビッグフットやチュパカブラみたいな」
「とりあえず夜はあまり出歩かない方がいいね」
「もし何かあったらこの女ガンマンのレイチェルが守ってあげるから心配しないで!」
「頼もしいねレイチェル。君のそういうところが大好きだよ」

ライアンの言葉にレイチェルは思わず顔を赤らめる。

「さてと遅いからもう寝よう」
「そ、そうね」

翌朝7時、目覚まし時計の音と共に目を覚まし2人は開店の準備をする。
開店時間は毎日午前11時だ。

「レイチェル、悪いけど調味料の買い出しに行ってくれないかな?」
「いいわよ。リストはある?」
「これだよ。急で悪いね」

レイチェルは自転車に乗り、近くの店まで調味料を調達しに出かける。
ちなみにこんな時でもいつものガンマン衣装だ。
店の常連客だけでなく近隣の住人達からもガンマンレイヤーとしてお馴染みの存在となっている。

「あっレイチェルさんだ!おはよう!」
「おはよう!今日も良い天気ね!」

元気よく挨拶する子供達にレイチェルは明るく優しく手を振る。
そんな彼女の姿を木陰から誰かが覗いていた…。

777 :
【一つ目の悪魔】(2/3)

「これでよしっと!」

調味料の入った紙袋を自転車のカゴに積むとレイチェルはレストランへと戻る。
すると横から誰かが自転車を思いきり蹴り飛ばしてきた。

「わっ!!!」

自転車が倒れ、レイチェルは地面に叩きつけられる。突然の出来事に彼女は動揺を隠せない。

「痛たたた…だ、誰よ!こんな酷いことするの!」

後ろを振り返るとそこには大きくて真っ黒な怪物が立っていた。ツノが生えており、しかも一つ目だ。
昨夜のテレビのニュースで見たのと全く同じの怪物だ。

「ひ、一つ目の悪魔…!!」

レイチェルは悪魔に睡眠薬のような物を飲まされ、そのまま眠りに落ちてしまった。
一方、ライアンはレイチェルの帰りが遅いのでスマホで何度も電話していたのだが一向に繋がらず心配していた。
もう開店時間の30分前だ。

「何で繋がらないんだ?もしかしてレイチェルの身に何か…!」
「ライアンさん、大丈夫ですか?」

いつも開店時間より前に来て待機している常連客の何人かが声をかける。

「近くの店まで調味料の調達に行っただけなのに帰ってこないんです」
「この店の看板娘的存在のレイチェルさんがですか!?それなら早く警察に連絡しないと!」
「いやもしかしたら、どこかで道草を食っているだけかもしれない!探してきます!」

ライアンはレストランの鍵を閉め、レイチェルを探しに向かう。常連客達も彼の後を追う。

・・・・・・・・・・・

「こ、ここはどこ?」
「目が覚めたようだね、ガンマンのお嬢ちゃん」

睡眠薬の効果が切れ、目を覚ますレイチェル。目の前にいるのはあの一つ目の悪魔だ。
しかも全身をロープで縛られていて身動きを取ることができない。

「ロ、ロープを解いてよ!今すぐ!」
「それはダメだね」

一つ目の悪魔がマスクを剥がす。

「あ、あなたは…!」
「そう、以前お前のレストランに来た客だ」
「た、確か名前は…」
「ノーマンだよ」

一つ目の悪魔の正体はノーマンという男で、1ヶ月ほど前レストランを訪れた客だった。
彼はレイチェルに惚れ込み、閉店時間後に彼女をナンパしようとしたところをライアンに止められたのを逆恨みし
それ以来、レイチェルをライアンから奪い自分の彼女にしようと企んでいたのだ。

「レイチェル、お前の夫としてライアンより俺の方が相応しいと思うんだ。金もたくさんある」
「絶対嫌よ!放してよ!」

778 :
【一つ目の悪魔】(3/3)

「それはダメだな」

ノーマンはレイチェルのスマホを床に落とすと思いきり踏み潰して破壊する。

「これでライアンとの連絡手段は途絶えたな。さあ俺と一緒にこのシチリアを出てもっと良い所に行こうじゃないか」
「だから私の答えはこれだけ。絶対に嫌よ!」
「往生際の悪い女だ!」

すると近くのドアからワンワン!と犬の鳴き声が聞こえ、一体何かとノーマンが振り向いたその時だった。
一匹のブルドッグがドアを突き破って中に入るや否や、ノーマンに飛びつき肩に思いきりガブッと噛みつく。

「ぐわーっ!こら痛えじゃねえか放せ!」
「レイチェル!そこにいるのか!?」
「ここよライアン!私よ!」
「大丈夫かい?」

ライアンはすぐにロープを解いてレイチェルを解放する。

「よしよしもう無事だよ」

実はレイチェルは睡眠薬を飲まされ気を失う直前、手に持っていたスパイスの瓶の蓋を開けて地面に撒いていたのだ。
誰かが手掛かりとしてこの場所を突き止められるように。
たまたまライアンと途中で会った住人の一人ウィリアムと彼の飼い犬であるブルドッグのジムが協力してくれたのだ。
ノーマンが身動きを取れない中、警察が駆けつけすぐに彼はお縄になった。

「あいつまだレイチェルを狙っていたのか!変人ストーカーめ!」
「ありがとうライアン…!それにウィリアムさんとジムも」

ウィリアムとジムにも感謝する。ジムは嬉しそうにレイチェルの顔をペロペロ舐める。
レイチェルは数年前、脱獄した老婆に捕らえられた時に救われた出来事をふと思い出した。

「(アニーちゃんとイグアナのトニー、今も元気にしているかな)」

その後、一緒に店へと帰るレイチェルとライアン。

「早く帰って店を開きましょ!みんな待ちくたびれているわ!」
「そうだね!遅れた時間を取り戻さなくちゃ!」

店の前ではたくさんの客がレイチェルとライアンの帰りを待っており、2人が無事に帰ってきたのを見て大いに喜んだ。
開店時間が夕方の5時といつもよりかなり遅れてしまったが、
今日もレストランから客達の楽しい笑い声が響き渡ってくるのだった。


おしまい

779 :
>>776
こうして作品を見ると、このためのお題だったような気がしてきますよね・・・
また誘拐されるレイチェルさんが人気者過ぎたw
古巣の様子は確かに気になります

780 :
>>776
776氏の快走レイチェルシリーズ・シーズンep! 選択お題は『新エネルギー』『味』『ようかい』『電話』でトライアル〜、
さあ、ライアン氏とレイチェルさんの開店した例のレストランは好調で、『新エネルギー』太陽光発電を利用したレストランへと増築進む〜、洒落乙エコ生活を謳歌する閉店後ココアタイム、
そこに『妖怪』一つ目の悪魔の出現ニュース〜、鬼太郎! 鬼太郎じゃないか! で、調『味』料を調達しに出かけるレイチェルさん、その自転車が横から蹴り倒され、一つ目の悪魔が登場w 悪魔は仮の姿、その正体は
閉店後にレイチェルさんをナンパした、あのノーマンだァ(誰)、何で一つ目の変装してんだw そこから駆け落ちを迫るノーマン〜どうして一つ目…だがブルドッグのジムに噛み付かれてぐわーっと叫んで、スマホで何度も『電話』していたライアン氏が救出w
変態ノーマンお縄にて見事レイチェルさんを守ったライアン氏よくやったァ〜776氏、最初こそ頼りなかったが徐々に甲斐性を見せるライアン氏の守護回で安心を提供! ご安全クリアーッ

781 :2019/09/28
ところで次回のお題ですがー
主人公の設定の文章とか、正直なんにも思い浮かばねえ

まずは無難に安価3つでプロフィールを設定して、安価2つは通常のお題としましょう

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