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/ ´,_ゝ`\初心者のための富士山登山入門130m


1 :2017/09/18 〜 最終レス :2017/09/22
【アフィサイトへの転載・誘導禁止】
富士山は、夏の暑さと冬の寒さを一日で体感する過酷な環境です。
>>2〜のテンプレを参考に「余力を残して登頂・余裕を持って下山」でご安全に。


■ ご覧の皆様へ
登山キャンプ板にはブログ宣伝を行う荒らしやアフィ業者が常駐しています。
http://matsuri.2ch.sc/test/read.cgi/out/1500267844/1
「wi1d28jp」(栗城ハンター)などの悪質ポストは踏まずにNG登録を。
踏んでしまった人は関連cookieを残らず削除し、ネットショッピングは別ブラウザから。

■普段からアフィ対策を!
ブラウザにadblockやuBlock導入+国内フィルタ全部載せが推奨です。
スマホは広告ブロッカーも多いのでお好みのものを(フィルタ追加できるものが効果的)。
勝手な広告やスパイウェアをブロックして安全で快適なネットライフを♪
スマホ通信量の節約、時短にもなります。


※前スレ
127m
http://matsuri.2ch.sc/test/read.cgi/out/1502426392/
128m
http://matsuri.2ch.sc/test/read.cgi/out/1504257381/
129m
http://matsuri.2ch.sc/test/read.cgi/out/1505654412/
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvvv:1000:512:----: EXT was configured

2 :
 
開山期間は山梨県側で7/1〜9/10。静岡県側で7/10〜9/10です。
初心者が登れるのは山小屋が営業する期間に限られます。

初冠雪(積雪)は例年10月初旬ですが、9月でも降雪の可能性があります。
10月以降、風雪と強風に磨かれカチカチに凍った急斜面は氷の滑り台のようになります。
毎年のように滑落事故があります、十分なご注意を。
 

3 :
 
高度が100m上がるごとに気温は0.6℃下がり、風速1m/sごとに体感温度は1℃下がります。
富士山では台風並みの強風が吹くこともあり、夜明け前の山頂は真冬のような寒さに、体感温度は氷点下になります。
冷えた体を温めるために多くのエネルギーが消耗され、真夏でも低体温症や疲労凍死のリスクがあります。
万全の準備で臨みましょう。
 

4 :
 
2ちゃんねるの書き込みは、釣りや冗談、初心者以下の知識で語る人や受け売りも多いので気をつけましょう。
また、各種業者のステマやアフィリエイト目的のブログ誘導などにも注意、まずは対策から>>1
「自分はこれで大丈夫だった」「他の人もこうしてる」という話は鵜呑みにせず、信頼できる情報源から総合して慎重に判断しましょう。
 

5 :
 
■リンク
(公共性の高いものを抜粋。不適切サイト、推奨サイトお知らせください)

・富士登山オフィシャルサイト
ttp://www.fujisan-climb.jp/
・静岡県「世界遺産 富士山とことんガイド」
ttp://www.fujisan223.com
・環境省「富士箱根伊豆国立公園」
ttp://www.env.go.jp/park/fujihakone/data/index.html
・富士山ガイド.com(富士吉田市)
ttp://www.fujisanguide.com/forms/top/top.aspx
・富士宮市「富士山」
ttp://www.city.fujinomiya.lg.jp/fujisan/index.html
・御殿場市「富士登山」
ttp://www.fujisan-climb.jp/hospitality/resource/link.html
・小山町「富士山」
ttp://www.fuji-oyama.jp/kankoubunka_mtfuji.html
・山梨県警察「富士登山情報」
ttp://www.pref.yamanashi.jp/police/p_tiiki/sangaku/fujitozan.html
・静岡県警察「夏の富士登山情報」
ttp://www.pref.shizuoka.jp/police/kurashi/sangaku/fujitozan/index.html
・富士山五合目観光協会
ttp://www.fujiyama5.jp
・フジヤマNAVI
ttp://www.fujiyama-navi.jp/fujitozan/

■その他の個人サイト
(掲載基準が不明ですが一旦継続しておきます)

・あっぱれ!富士登山
ttp://www001.upp.so-net.ne.jp/fujisan/
・富士登山をしてみたい!
ttp://www.tozan.org/fuji/
・富士さんぽ
ttp://www.fujisanpo.com/
 

6 :
 
■天気予報

・気象庁HP
ttp://www.jma.go.jp/jp/yoho/
・富士山の天気 - 日本気象協会 tenki.jp
ttp://www.tenki.jp/mountain/famous100/5/25/150.html
・snow-forecast.com
ttp://www.snow-forecast.com/resorts/Mount-Fuji/6day/top
・富士山山頂の天気 - てんきとくらす
ttp://tenkura.n-kishou.co.jp/tk/kanko/kad.html?code=19150004&;;type=15&ba=kk
 

7 :
 
■気象について

雨の日に登っても楽しくありません。天気が悪ければ延期する決断を。予報が晴れでも、夏は局地的な夕立や雷雨があります。
雨具や荷物の防水も忘れずに。降水確率と雨量は無関係です。確率が低くても大雨ということも。
風の強さも確認を。天気概況で「大気の状態が不安定」「急変する恐れ」「雷を伴い」と予報されていたら、登山は中止してください。
冷たい風が吹き降ろしてきたら夕立の合図です。降り出す前に雨具を着用しましょう。
 

8 :
 
■装備 ◎必須○有効△状況しだい×余計な荷物

◎ザック....防寒着が嵩張るので、30〜35gが適当
○ザックカバー.雨のとき被せる防水カバー。砂埃除けにも
○スタッフバッグ ..小物をまとめ、パッキングが楽に。電子機器、着替えなどは防水袋へ
◎登山靴....防水のミドルカットが最適。ハイカットは必要ないが、スニーカーはNG
◎雨具.....予報にかかわらず必要。ポンチョ、100円雨合羽はNG。傘は不可。強風で雨が下から
吹き上げるので、上下セパレートタイプが必須。強風時はウィンドブレーカーとして使える
◎ヘッドランプ.日帰りでも下山遅れに備えて必ず必要。予備の電池も忘れずに

◎帽子.....風に飛ばされない対策を。ご来光待ち用にニット帽も
◎サングラス..目も日焼けする。安物はレンズに歪みがあるのでNG
◎手袋.....軍手と防水の手袋を別々に。転倒時に怪我をしないように、下りでは必ず着用
◎防寒着....夜明け前は真冬並みの寒さ。ダウンなど、脱ぎ着しやすいものを
◎長ズボン...伸縮性の物が良い。ジーンズは濡れると動き難くNG。半ズボン、短パンは、風が吹くと寒い
◎化繊の下着..必ず100%のものを。綿は濡れると乾きにくく、体温を奪う
◎中厚手の靴下.長時間歩行のクッションとして。柔らか過ぎず、網目が密でしっかりしたものを

◎日焼け止め..汗で落ちたら塗り直し、首筋、耳も忘れず
◎登山地図...下山時に道を間違う人が多い
◎飲み物....2〜3gが目安だが個人差がある。怪我や目に入った砂埃を洗う真水も必要
◎救急セット..下痢止め、バンドエイド(靴擦れ対策にも)、テーピングテープ、保険証のコピーなど
◎その他....飴や干し梅など行動食を定期的に摂ろう。タオルや日本手ぬぐい。ゴミ袋

×保冷水筒...重く嵩張るのでペットボトルが良い
○保温水筒...ご来光待ち用に。山小屋でお湯を売っていれば出発時に補給
△スパッツ...砂や小石が靴に入るのを防ぐ
○ストック、金剛杖.腕の力を活かし、足(特に下りの膝)の負担軽減に有効
△その他....マスク(下山時の砂埃対策)、ウェットティッシュ、カイロ
△頭痛薬....高山病の頭痛も和らげるが、症状を隠すので却って危険という意見も
×酸素缶....吸っている間しか効果ない
 

9 :
 
■登山の注意点

余計な荷物は体力を消耗するだけ。無駄は省きましょう。但し、必要な装備を重いとかザックに入らない
などといって持たずに登るのは本末転倒。きちんと装備を揃え、背負える体力をつけてから登りましょう。

登り始めは靴一足分の歩幅で、ゆっくりと登りましょう。追い抜かれても慌てずに。オーバーペースの人は
すぐバテるので、いずれ抜き返せます。高所は乾燥しています。水分は少量を定期的に摂るのが最適。

グループで登る方は、途中ではぐれないように必ず2人以上での行動を維持しましょう。何か問題が起きた
ときに対処が遅れると命取りです。登山中は最も遅い人のペースに合わせ、登るのが早いからといって
子供に単独行動をさせないように統率しましょう。初心者は隊列の真ん中に挟み、経験者が前後を固め
て目を配りましょう。

一人にひとつずつ地図のコピーを持たせること。どの登山口から登って来たか、全員が覚えておくこと。
はぐれた場合に落ち合う場所を複数決めておくこと。特に下山時の分岐点について予習しておくこと。

万が一体調不良、怪我人が出た時は全員で下山するのが大原則です。どうしても登山を続行する場合
でも病人などを一人で下山させるのは絶対に避け、必ず付き添いを付けるようにしましょう。 体調不良の
人は高山病も疑われるので、山小屋などで待たせるよりもすぐに下山させた方が良い場合もあります。
トイレは有料なので、100円玉を多く用意しておきましょう。順番待ちになることも多いので限界まで粘らず、
出来るときに早めに済ませましょう。ツアー登山は、スケジュールが決められているために自分のペースが作り
難く、無理について行くと高山病を誘発する場合もあり、あまりお薦めしません。

下山時は重心を軽く前にかける。歩幅も小さく、靴一足分。滑りやすいところでは、足を逆八の字に開く。
富士宮ルートの、岩の平らな所は砂で滑りやすい。岩の角に靴底の溝を引っ掛けると滑らない。爪先で
踏ん張らず、力を抜いて足裏全体で接地するか、親指の付け根を意識する。猫のように下れ。
 

10 :
 
■高山病の予防と対策

高山病は体質に起因すると言われ、年齢や性別、体力やスポーツ経験もあまり関係ないようです。
自己の体力を過信せず、登り始めはゆっくりと時間を掛け、身体を慣らしながら登りましょう。

息を吸う事よりも吐く事を特に意識してください。有圧呼吸法も有効とされています。
大きく息を吸い込み、2秒ほど息を止めるとともに、胸に圧力をかけるように力を入れた後、口先を
すぼめてゆっくり吐き出す。これを5〜6回繰り返すと、血中の酸素濃度が上がり、楽になります。

水分を定期的に摂ることも大切です。行程の時間から逆算して必要量を算出し、計画的に摂取し
ましょう。1時間あたり、体重kg×5mlを4回ぐらいに分けて飲むのが良いそうです。(間隔や量は各自
調整してください)

・Yutaka Miura's home page:私の高山病の治療方針
ttp://www.med.nagoya-cu.ac.jp/igakf.dir/chyo_AMS.html

睡眠中は呼吸が浅くなるため、高山病になりやすいです。なるべく低い標高の山小屋を選択し、着い
てからすぐ横にならずに、しばらく身体を動かして高度に慣らしましょう。催眠成分を含有する頭痛薬
なども呼吸を浅くするため、高山病を誘発しやすいようです。

高山病になったら悪化する前に下山させるのが一番の解決策です。無理に動かしたり、引っ張って
登らせてはいけません。重篤な場合には、診療所・救護所へ助けを求めましょう。
初期症状は、頭痛、息切れ、むくみ、不眠症、食欲不振、脱力感、吐き気など。さらに、激しい頭痛、
嘔吐、空咳、 意識障害(支離滅裂なことを言う、問いかけに無反応など)になると、とても危険な状態
です。登山は諦めて付き添いの人と共にすぐに下山してください。高山病は最悪の場合死に至ります。
 

11 :
 
■ご覧の皆様へ

現在、>>1の注意喚起とadblock周知を妨害しようとする者によって
前スレが連投荒らしに遭っています。
ここが同様に荒らされた場合はさらに新スレを立て対処していきます。


・荒らしの状況
初心者のための富士山登山入門128m
http://matsuri.2ch.sc/test/read.cgi/out/1504257381/639-n
初心者のための富士山登山入門129m
http://matsuri.2ch.sc/test/read.cgi/out/1505654412/1

・異常者による荒らし予告
SN7P4m6n
http://hissi.org/read.php/out/20170917/U043UDRtNm4.html
YmBsHqVJ
http://hissi.org/read.php/out/20170918/WW1Cc0hxVko.html

・連投荒らしの抽出(冒頭にアフィスレへ誘導しています)
55THIflI
http://hissi.org/read.php/out/20170917/NTVUSElmbEk.html
 

12 :
 
ワッチョイにしてみました。
果たして異常者は荒らすでしょうか。
ちょっと実験です。
 

13 :
>>8
他の山はともかく富士山にスパッツは必須やろ

14 :
>>13
無しで登ってる時やつはいくらでもいるので必須ではないな
靴がドロドロになったり、小石が入ったりするだけだから致命的ではない

15 :
>>14
じゃあ手袋も帽子もないやつも腐るほどおるやん

16 :
手袋は必須だよね
手が寒いもの

17 :
帽子は必須だな、日焼けするし、
手袋も寒いとか、岩場で手をついたりするし
軍手くらいは持ってるでしょ?

18 :
まあでもランニングマンたちは短パンノースリーブにスニーカーで駆け上がっていくよ

19 :
>>17
富士山で手をつくようなとこあったっけ? 記憶にねえや

20 :
>>575
吉田には岩場あるし、滑って手をつくことのある
登山に手袋はほぼ必須だよ

21 :
拝した後、頂上を目指した。登山道には茶屋や山小屋が建てら
れ、多くの登拝者の活動を支える施設が体系的に整備されたの
もこの頃である。また、富士講においては長谷川角行ら指導者
の言動にならって周辺の風穴や湖沼・滝なども修行の地とされ
、ここにおいて富士山と周辺の宗教施設・霊地・巡礼地は庶民
の信仰の場として定着し、山の結界が開放される二ヶ月間に年
平均1万〜2万人の人々が信仰を目的とした登山を行うように
なった。芸術作品の多様化とジャポニスム芸術面においても、
とりわけ江戸時代(17〜19世紀半ば)には、文学、絵画、
工芸、庭園等のモチーフとして多岐にわたって取り上げられ、
三保松原と富士山を描いた絵画など多様な表現が追究されるよ
うになった。(表参照)特に、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に
代表される浮世絵の数々は、西洋の画家たちに文化的衝撃を与
えた。19世紀後半には「ジャポニスム」という芸術上の画期
的な転機を惹き起こし、印象派の作品に影響を与えるとともに
、その富士山を含んだ構図は海外において日本のイメージの一
つとされてきたのである。日本を訪れた外国人が富士山からイ
ンスピレーションを得て記述した紀行文の中でも、富士山のア
イコン的側面を綴ったものが多い。近世以前も富士山は日本一
有名な山であったが、19世紀後半の開国によって日本が近代
国家としての体制を整えるにつれて、日本を代表する山から日
本を象徴する山へと変貌した。廃仏毀釈と登山の利便性向上1
9世紀半ばより、明治政府を中心に行われた日本の近代化・西
欧化政策は富士山にも影響を与えた。政府が神仏分離や修験道
禁止の方針を打ち出したことや、これを契機に発生した廃仏毀
釈の運動により、仏教的施設は神道系の施設に再編されたが、
1872年の(信仰の山における)女人禁制解禁の影響もあり
富士山への登拝は継続ないし拡大した。19世紀末以降の鉄道
・自動車道の開通も、登山者の利便性を格段に向上させた。南
麓へは1889年に東海道線が開通し、北麓へは1900年前
後に馬車鉄道と中央線が開通したことによって、東京からの登
山がさらに活発になった。自動車道としては、1929年に北

22 :
口本宮冨士浅間神社から馬返(標高1450m)まで自動車専
用道路が開削され、1937年には大型バスによる輸送も始ま
った。第二次大戦以降、日本の価値観や経済状況の変化により
、富士山への登山は信仰を中心としたものから、富士山への憧
れを主な動機とするものに変化した。また、1964年に中腹
までの自動車道として、北麓の富士山スバルラインが、197
0年に南麓の富士山スカイラインが開通し、これ以降、中腹(
標高2300〜2400m)を起点とした登山が主流になった

23 :
。この結果富士山への登山者は急増し、年平均20万〜30万
人に達するに至った(2007年からはさらに増加し年間35
万〜43万人)。これらの登山者の行動様式の中には富士山へ
の信仰の核心が受け継がれており、加えて、現代的な富士山信
仰の形態として、静岡県の柿田川のように、新たに富士山との
関わりが明らかになったことが、環境保護活動の活性化につな
がった例などがある。最近の保全の歴史20富士山体は文化財
としては、1924年に史蹟名勝天然紀念物保存法により、山
麓の幅広い地域が名勝に仮指定された。これとほぼ同じ範囲は
、1936年に自然公園法により国立公園の一部として指定さ
れ、現在も保全の対象となっている。さらに、第二次世界大戦
後の1952年には、新たに文化財保護法によって、御中道以
下500mより上及び一部の登山道などが名勝として(同年、
特別名勝として)指定され、1966年には指定区域を拡大し
た。山梨県は1978年(のち、1999年及び2006年に
改定)、静岡県は2006年に「特別名勝富士山」の保存管理
計画を策定し、適切な保存と活用を図っている。周辺の浅間神
社や御師住宅の近代以前の修理や保存の状況は2bで述べたと
ころだが、それらを含めた富士山に関わる記念工作物・建造物
群・遺跡は、1907年以降、古社寺保存法(1897年〜1
929年)、(国宝保存法(1929年〜1950年))、史
蹟名勝天然紀念物保存法(1919年〜1950年)、文化財
保護法(1950年〜現在)により、名勝、特別天然記念物又
は天然記念物、重要文化財、史跡等として指定され、文化財ご
とに保存管理計画が策定されており、それぞれの価値が最もよ
く表れる時代の状態が保たれるように細心の注意が払われてい
る。、また、周辺に位置する個々の文化財は、「包括的保存管
理計画」によって、富士山体も含めた統一的な保存・管理が行
われている。21表富士山の美術(1)日本古来の伝統様式に
よるもの(国宝重要文化財)指定所在作品名形式時代(年代)
説明東京国立博物館聖徳太子絵伝屏風1069現在最古の富士
山。聖徳太子が馬で富士山を越える物語の状景。神奈川清浄光

24 :
寺外一遍聖絵絵巻1299一遍が全国遍歴の途中、富士川に入
水する往生者を見送る背後に富士山。兵庫・真光寺遊行上人縁
起絵絵巻1323他阿上人が全国遍歴の途中、甲斐の御坂峠を
越えて河口に進む背後に富士山。大阪・久保惣記念美術館伊勢
物語絵巻絵巻14世紀伊勢物語現存最古の絵巻。第九段物語の
主人が富士山麓を進む場面。東京国立博物館月次風俗図のうち
小屏風15世紀十二月風俗図の一場面。鎌倉初期に行われた富
士山麓の巻狩を題材とする。富士山本宮浅間大社富士参詣曼荼
羅図掛軸16世紀霊山である富士山に参拝する行者達の登山風
景、山頂に三尊あり。狩野派の祖元信筆。東京国立博物館武蔵
野図屏風17世紀武蔵野の状景を装飾的に描いた名所図屏風の
一。ススキ野の奥に富士山がそびえる。山梨県立博物館曽我物
語図屏風17世紀鎌倉将軍源頼朝が主催した富士の巻狩最中に
果された曽我兄弟による仇討ちを題材。富士山の美術(2)室
町時代水墨画によるもの指定所在作品名形式時代(年代)説明
東京・根津美術館富岳図仲安真康筆掛軸15世紀現存最古の水
墨による富士山図。鎌倉建長寺の僧で、鎌倉画派の祖とされる
。東京国立博物館富岳図祥啓筆掛軸1490仲安真康の弟子、
建長寺の書記を勤めた禅僧万里集九や雪舟とも交友があった。
東京永青文庫富士清見寺図雪舟集掛軸15世紀世界的に著名な
日本を代表する水墨画家の作。水墨画による富士山の一典型作
。静岡県立美術館富士八景図式部輝忠筆掛軸1530東国を中
心に活躍した水墨画家。瀟湘八景にあやかって連作に挑んだ作
品。個人(?)富士三保松原図是庵筆掛軸16世紀京都相国寺
の僧で、画をよくした。下辺に三保松原、富士山の左手に日輪
を描く。22富士山の美術(3)江戸時代諸派の作家と富士山
指定流派著名な作家名所在代表作(年代)説明陶芸野々村仁清
東京・鼻山美術館銹絵富士山香炉(17世紀)世界的にも著名
な京焼の第一人者。富士山の朝昼晩の三つの景色を造型化する
。狩野派狩野探幽静岡県立美術館富士山図1670江戸狩野派
の祖、第一人者。富士山連作の緒を開いた。狩野派狩野山雪静
岡県立美術館富士三保松原図屏風(17世紀)山楽の養子とし

25 :
て京狩野派を継ぐ。装飾性と抒情性に富む。琳派尾形光琳奈良
・大和文華館富岳図(扇面貼交手箱内)(18世紀)世界的に
著名な代表的画家。工芸デザイナーとしても卓越する。文人画
派池大雅東京芸術大学富士十二景図(18世紀)日本文人図(
南画)の大成者、第一人者。富士・立山・白山を信仰登山し、
三岳道者と自称。その体験を描く。文人画派与謝蕪村富山佐藤
美術館松林富士図(18世紀)大雅と並ぶ日本文人画の第一人
者。俳人としても高名で、俳画を大成した名手。文人画派野呂
介石和歌山・田辺市立美術館(寄託)紅玉芙蓉峰図1821紀
州藩の役人で、大雅にも師事した。早春の明け方の朱に染まっ
た富士、赤富士の魁。文人画派谷文晁静岡県立美術館富士山図
屏風1835江戸文人画の大家。諸国諸山の風景を写実的に描
いた写生派の草分け。円山派円山応挙兵庫・白鶴美術館富士三
保松原図屏風1784装飾性と写実性とを融合し、独自の画境
を開いた、いかにも応挙らしい作品。洋風画派小田野直武秋田
県立近代美術館富岳図1777秋田藩士。日本で最初に西洋画
を学んだ、秋田蘭画の創始者。江戸出府の折の作。洋風画派司
馬江漢静岡県立美術館薩?山富士遠望図1804平賀源内らと
蘭学を研鑚、後に小田野直武の影響を受けて、洋風写生画の第
一人者となる。南蘋派宋紫石東京国立博物館日金山富岳展望図
(18世紀)長崎に渡来した清人画家より写生的花鳥画を学び
、また平賀源内らを通じて蘭学に通じた。禅画白隠慧鶴大分・
自性寺富士見大名行列図日本臨済禅を確立した禅僧。全国を遍
歴、布教した。禅画の大成者としても著名。浮世絵派葛飾北斎
山梨県立博物館版画富岳三十六景1831世界的に著名な浮世
絵師。富岳三十六景に見る象徴主義は欧米文芸に大きく影響し
た。23浮世絵派歌川広重山梨県立博物館版画不二三十六景(
19世紀)北斎とともに世界的に著名な浮世絵師。東海道五十
三次など風景画に新境地を開き、印象派に与えた影響は大きい
。浮世絵派歌川貞秀神戸市立博物館三国第一山之図1849幕
末の浮世絵師。自ら富士山に登り、その感動を本図や富士絶頂
之図など多くの作品を残した。富士山の美術(4)近現代作家

26 :
と富士山文化勲章指定ジャンル著名な作家名所在代表作(年代
)説明油画(洋画)高橋由一金刀比羅宮宝物語館牧の原望岳図
1878明治維新以降、最初に油彩技法を習得した先覚者の作
品。明治初期の貴重作。〃五姓田義松東京都現代美術館清水の
富士1881父芳柳と共に早く油彩技法に目覚めた開拓者の一
人。明治初期の貴重作。〃和田英作鹿児島歴史資料センター富
士(河口湖)1926日本近代洋画を技法的に確立した先駆者
の一人。写生の確かさを見よ。〃梅原龍三郎岡山・大原美術館

27 :
朝陽1945ルノアールに学び、日本洋画に存在感ある独特の
装飾技法を樹立した。その金字塔とも言うべき作。〃田崎広助
長野・田崎美術館箱根朱富士1975日本独特の平面的装飾に
新しい一頁を開いた田崎ならではの自然景観。〃林武箱根彫刻
の森美術館赤富士1967主として第二次大戦以後洋画壇をリ
ードした。豪快な技法で富士連作に挑んだ。膠画(日本画)富
岡鉄斎兵庫・清荒神清澄寺富士山及び山頂全図屏風1898最
後の文人画家とも言われる思想家。自ら富士山に登り、その神
聖性をダイナミックに表現した。〃横山大観東京国立近代美術
館或る日の太平洋1952フェノロサ、岡倉天心と共に日本画
壇を復興した巨匠。日本の象徴と意識して多くのテーマに富士
山が描かれた。〃下村観山秋田県立近代美術館三保富士図屏風
1919横山大観とともに明治日本画壇を背負った作家が伝統
的テーマに新風を吹き込む。〃川端龍子東京・大田区立龍子記
念館怒る富士1944強烈な個性で大作に挑んだ激情の画家。
激しい気象現象を示す富士に挑戦した作品。〃松岡映丘宮内庁
三の丸尚蔵館富岳茶園1928昭和天皇即位記念の作品。伝統
的日本画に透明感のある新しい表現技法を示す。〃徳岡神泉京
都国立近代美術館富士1965福田平八郎と共に昭和の日本画
壇に独自の新風を吹き込んだ。茫漠たるモノトーンの中に立す
る富士。24〃横山操東京・五島美術館朱富士1966第二次
大戦後の日本画壇をリードした新星。多くの富士を描いたが、
赤富士と電光の対比の妙。〃小松均京都市立美術館白富士19
82第二次大戦後の日本画壇に詩的な大画面で新境地を開いた
。郷土山形や大自然に魅せられて。〃片岡球子神奈川県立近代
美術館面構葛飾北斎数年前に没したが、最も現代日本画界をリ
ードした女流画家。本図は女史のライフワーク面構シリーズの
一つ。写真鹿島清兵衛宮内庁三の丸尚蔵館富士1894アマチ
ュアながら当時の技術を駆使した大版写真を御成婚25年記念
に皇室に託した。〃岡田紅陽山梨・岡田紅陽写真美術館忍野赤
富士1894文字通り富士山の写真家。富士山のあらゆる表情
を写真に収め、広めた。木版画萩原英雄山梨県立美術館三十六

28 :
富士1926本県出身の日本を代表する木版画家。新しい視点
からの富士山シリーズ。富士山の文学歴史書「六りっ国史こく
し」(奈良−平安)菅野すがのの真ま道みちら「続日本しょく
にほん紀ぎ」(平安)藤原通憲ふじわらのみちのり「本朝ほん
ちょう世紀せいき」(平安)伝皇こう円えん「扶桑ふそう略記
りゃっき」(平安)※作者未詳「吾妻鏡あづまかがみ」(鎌倉
)斎藤月岑さいとうげっしん「武江ぶこう年表ねんぴょう」(
江戸)風土記元明天皇げんめいてんのう詔「常陸ひたち国のく
に風土記」(奈良)談話集景戒きょうかい「日本にほん霊異記
りょういき」(平安)※作者未詳「今昔こんじゃく物語集もの
がたりしゅう」(平安)和歌集大伴家持おおとものやかもち「
万葉集まんようしゅう」(奈良)紀淑望きのよしもち・紀貫之
きのつらゆき「古今和歌集こきんわかしゅう」(平安)村上む
らかみ天皇てんのう「後撰和ごせんわ歌集かしゅう」(平安)
後鳥羽ごとば上皇じょうこう「新古今和歌集しんこきんわかし
ゅう」(鎌倉)後鳥羽院ごとばいん「最勝さいしょう四天王院
してんのういん障子しょうじ和歌わか」(鎌倉)藤原長清「夫
木和歌抄ふぼくわかしょう」(鎌倉)藤原ふじわらの為ため明
あきら「新拾遺和しんしゅういわ歌集かしゅう」(室町)25
記録・紀行文都良香みやこのよしか(平安)「富士山記ふじさ
んき」※作者不詳(鎌倉)「海道記かいどうき」※作者不詳(
鎌倉)「東関紀行とうかんきこう」飛鳥井あすかい雅世まさよ
(室町)「富士紀行ふじきこう」堯孝ぎょうこう(室町)「覧
らん富士記ふじき」堯恵ぎょうえ(室町)「北国紀行ほっこく
きこう」※作者不詳(室町)「富士御覧日記ふじごらんにっき
」道興どうこう(室町)「廻国かいこく雑記ざっき」宗牧そう
ぼく(室町)「東国とうごく紀行きこう」紹巴じょうは(室町
)「富士見ふじみ道記みちのき」小堀遠州こぼりえんしゅう(
江戸)「東海道紀行とうかいどうきこう」浅井了意あさいりょ
うい(江戸)「東海道名所記とうかいどうめいしょき」岩佐い
わさ又兵衛またべえ(江戸)「迴国道の記」松尾まつお芭蕉ば
しょう(江戸)「野ざらし紀行」香川景樹かがわかげき(江戸

29 :
)「中空の日記」古川古松こしょう軒けん(江戸)「東遊とう
ゆう雑記ざっき」藤とう惺せい梅ばい(江戸)「東海紀行」日
記文学菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ(平安)「更級
さらしな日記」阿仏尼あぶつに(鎌倉)「十六夜日記いざよい
にっき」「うたたね」後ご深ふか草院くさいんの二条にじょう
(鎌倉)「とはずがたり」賀茂真淵かものまぶち(江戸)「岡
部日記おかべにっき」永井ながい荷風かふう(江戸−昭和)「
大窪だより」伝説・物語※作者不詳「竹取たけとり物語ものが
たり」(平安)※作者不詳「伊勢いせ物語ものがたり」(平安
)紫式部むらさきしきぶ「源氏げんじ物語ものがたり(若紫わ
かむらさき)」(平安)藤原兼輔ふじわらのかねすけ「聖徳太
子伝暦しょうとくたいしでんりゃく」(平安)※作者不詳(平
安)「平中へいちゅう物語ものがたり」「平家へいけ物語もの
がたり」(鎌倉)※未詳「曽我そがの物語ものがたり」(鎌倉
)※作者不詳「源平げんぺい盛衰記せいすいき」(鎌倉)※未
詳「承久記じょうきゅうき」(鎌倉)浅井あさい了りょう意い
「東海道名所記」(江戸)能(謡曲)伝世阿弥ぜあみ原作(室
町)「富士山ふじさん」※未詳(室町)「羽衣はごろも」御伽
草紙「富士の人穴ひとあな草紙ぞうし」(江戸)仮名草紙※作
者不詳(江戸)「竹斎ちくさい」滑稽本十返舎一九じっぺんし
ゃいっく(江戸)「東海道中膝栗毛とうかいどうちゅうひざく
りげ」仮名垣魯文かなかきろぶん(江戸−明治)「滑稽富士詣
こっけいふじもうで」26浄瑠璃近松門ちかまつもん左ざ衛門
えもん(江戸)「聖徳太子絵伝記」竹田たけだ出雲いずも・三
好松洛みよししょうらく・並木千柳なみきせんりゅう(江戸)
「仮名かな手本でほん忠臣蔵ちゅうしんぐら」童謡巌谷いわや
小波さざなみ(明治−大正)「富士山ふじさん」(「ふじの山
」)海野うんの厚あつし(明治−昭和)「背せいくらべ」随想
・随筆新井あらい白石はくせき(江戸)「折おりたく柴しばの
記」田山たやま花袋かたい(明治−昭和)「富士を望む」小島
烏水こじまうすい(明治−昭和)「すたれ行く富士の古道」、
「不二山ふじさん」永井ながい荷風かふう(明治−昭和)「日

30 :
和ひより下駄げた」太宰だざい治おさむ(明治−昭和)「富嶽
百景ふがくひゃっけい」大町桂月おおまちけいげつ(明治−大
正)「富士の大観」中村星湖なかむらせいこ(明治−昭和)「
少年行しょうねんこう」北村きたむら透谷とうこく(明治)「
富嶽ふがくの詩し神しんを思おもふ」深田ふかだ久弥きゅうや
(明治−昭和)「日本にほん百名山ひゃくめいざん」小説落合
直文おちあいなおぶみ(江戸−明治)「たかねの雪ゆき」夏目
漱石なつめそうせき(明治−大正)「三四郎さんしろう」「虞

31 :
美人草ぐびじんそう」泉鏡花(明治−昭和)「婦おんな系図け
いず」「春しゅん昼ちゅう」「春しゅん昼ちゅう後刻ごこく」
徳富とくとみ蘆花ろか(明治−昭和)「冨士ふじ」「自然しぜ
んと人生じんせい」(随筆)永井ながい荷風かふう(明治−昭
和)「新帰朝者日記」橋本英吉はしもとえいきち(明治−昭和
)「富士山頂ふじさんちょう」井伏鱒二いぶせますじ(明治−
平成)「岳麓点描がくろくてんびょう」武田泰淳たけだたいじ
ゅん(大正−昭和)「富士ふじ」武田百合子たけだゆりこ(大
正−昭和)「富士日記ふじにっき」新田にった次郎じろう(大
正−昭和)「強力伝ごうりきでん」「怒いかる富ふ士じ」「芙
蓉ふようの人ひと」「富士ふじに死しす」「着氷ちゃくひょう
」「冬山ふゆやまの掟おきて」「富士ふじ山頂さんちょう」川
端康成かわばたやすなり(明治−昭和)「東海道とうかいどう
」白井喬二しらいきょうじ(明治−昭和)「富士ふじに立たつ
影かげ」国枝くにえだ史郎しろう(明治−昭和)「神州纐纈城
しんしゅうこうけつじょう」松本まつもと清せい張ちょう(明
治−昭和)「波なみの塔とう」芹沢光せりざわこう治じ良ろう
(明治−平成)「我が入道にゅうどう」「人間にんげんの運命
うんめい」幸田文こうだあや(明治−平成)「崩くずれ」27
詩歌伝柿本かきのもとの人麻呂ひとまろ(飛鳥−奈良)「柿本
集」山部赤人やまべのあかひと(奈良)「万葉集まんようしゅ
う」高橋たかはしの虫むし麻呂まろ(奈良)「高橋虫麻呂たか
はしのむしまろ歌集」藤原ふじわらの清きよ正ただ(平安)「
清きよ正ただ集」在原業平ありわらのなりひら(平安)「業平
集」藤原ふじわらの公きん任とう(平安)「公きん任とう集」
藤原ふじわらの定家さだいえ(平安−鎌倉)「内裏名所百首」
「名号みょうごう七字十題和歌」飛鳥あすか井い雅まさ経つね
(平安−鎌倉)「明日香あすか井い和歌集」藤原ふじわらの俊
とし成なり(平安−鎌倉)「(藤原兼ふじわらのかね実ざね)
右う大臣家だいじんけ百首ひゃくしゅ」「五社百首」「丹後守
為忠朝臣家百首」慈じ円えん(平安−鎌倉)「拾玉集」西行さ
いぎょう(鎌倉)「新古今和歌集しんこきんわかしゅう」源実

32 :
朝みなもとのさねとも(鎌倉)「金槐和歌集きんかいわかしゅ
う」阿仏あぶつ尼に(鎌倉)「安嘉門院あんかもんいんの四条
しじょう五百首ごひゃくしゅ」万里ばんり集九しゅうきゅう(
室町)「梅香無尽蔵」堯ぎょう恵え(室町)「下葉和歌集」水
無瀬みなせ氏成うじなり(安土桃山−江戸)「水無瀬殿富士百
首」清水浜臣しみずはまおみ(江戸)田安宗たやすむね武たけ

33 :
コピペキチガイまだ自演続けてるのか
よく飽きないなぁ

テンプレもまた盗んでるし
恥とかマナーとかそういう概念が無いのかな?

34 :
世界遺産条約第1条及び『世界遺産条約履行のための作業指針
』(以下、『作業指針』という。)第45項に規定にする「記
念工作物」、「建造物群」及び「遺跡」に該当する。2)評価
基準への適合性証明以下に示す理由に基づき、「富士山」には
、世界遺産一覧表への記載のための評価基準のうち(B)、(
C)、(E)が適用できる。評価基準(B)現存するか消滅し
ているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承
する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
評価基準(B)の適用富士山では神聖なる気持ちを喚起する自
然環境を背景とし、山頂への参詣などの特徴を持った山に対す
る宗教的な儀礼・活動が成立し、18〜19世紀にかけて大規
模な大衆による宗教的登山の代表的存在となった。山体とその
周辺の地域には、体系化された儀礼・活動の場となった神社、
登山道、及びその沿道に分布する関連遺跡群、霊地・巡礼地と
なった風穴・湧水地・湖沼などが残されている。そこでの儀礼
や活動を通じて、人々の生活の中に富士山に対する信仰の核心
が継承されている。また、今日でも富士山は日本を代表し象徴
する最高峰として老若男女を問わず憧れ親しむ「名山」である
。したがって、富士山は山頂への参詣という形態を中心とし、
時代を超えて今日まで継承された山に対する固有の文化的伝統
を顕著に表わす物証として稀有な存在である。・日本における
山に対する固有の文化的伝統を顕著に表わす物証富士山の山頂
部一帯は、山に対する日本の宗教観とその秀麗な姿、及び10
世紀頃まで盛んであった火山活動などに基づき神仏の世界、あ
るいは他界(死後世界)とされてきた。このため富士山では富
士山の神(※1)を祀った山麓の浅間神社における遥拝活動と
ともに、以下の絵図(類似の登山案内図が数多く作成された)
に示されたように、雲上の神仏の世界へ一定の儀礼に従って参
詣する「登拝」を中心に、富士山体・周辺にある富士山の火山
活動によって生成され神聖な意味を持つとされた風穴・溶岩樹
型・湖沼・滝・湧水地などを巡礼し、修行することで治病・除
災などの超自然的力を獲得し、罪や穢れを消して生まれ変わる

35 :
(擬死再生)と考える「富士山禅定」(※2)と呼ばれる行為
(儀礼・活動)が成立し、18〜19世紀にかけて富士山は体
系化された登拝のための宗教施設も含め、大規模な大衆による
宗教的登山を代表する存在となっていた。このような自然への
畏敬という日本の宗教観の根本を基盤とし、神仙思想(道教)
や仏教(特に密教)なとど融合した日本独特の山岳信仰を代表
する遥拝及び登拝・登山の様式は今日でも命脈を保ち、特に夏
季を中心に訪れる外国人を含む多くの登山客とともに富士登山

36 :
の特徴を成している。また、信仰の核心部分は各地の浅間神社
に対する信仰や今日も続く宗教的な儀礼・活動によって受け継
がれ、富士山は日本を代表する神聖な山として知られている。
(※1)この神は、1868年の神仏分離令まで神仏習合の影
響を受け仏の化身と考えられていた。また、この神は一つの神
に限定されず、信仰の種類や時代ごとに異なる性格と名称を持
ついくつかの神または仏が信仰されていた。(※2)「禅定」
とは本来は心を静めて一つの対象に集中する宗教的瞑想・状態
、あるいはその結果仏と一体化することを示す言葉であり、そ
の後、主に修験道において富士山などの霊山に登って修行する
ことも意味するようになった。写真「絹本著色冨士曼荼羅図」
(部分:16世紀ごろ)30「絹本著色冨士曼荼羅図」(16
世紀ごろ)評価基準(C)歴史上の重要な段階を物語る建築物
、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕
著な見本である。評価基準(C)の適用富士山では、富士山信
仰の形成の中で神社等の建築群・登山道・宗教施設を経て山頂
に参詣する体系化された宗教的儀礼・活動が15〜16世紀に
かけて発達し、18〜19世紀にかけて完成された。この過程
において、日本における山に対する固有の文化的伝統や富士山
により生み出された芸術活動を背景として、富士山の宗教施設
、そこでの儀礼・活動は富士山の自然環境と一体となって宗教
的な意味を持つ景観として認知され、これが宗教的絵画等で表
現されることにより、多くの人々に富士山が神聖な山であると
の認識がより強固に定着し、日本写真上図拡大部分宗教施設水
垢離場における山と人間の良好な関係の形成に影響を与えた。
したがって、富士山への信仰の形成過程を通じて定着した富士
山の景観認識は近代工業社会以前の段階における山と人間との
精神的関係を表す景観の顕著な見本である。・山と人間との精
神的な関係を表す景観の顕著な見本富士山では噴火が沈静化し
た12世紀ごろから山頂への宗教的登山が開始され、15〜1
6世紀には「富士山禅定」と呼ばれた登拝様式が整い、大衆に
も拡大した。この過程で富士山は、矮小な存在である人間が山

37 :
麓の草原地帯(「草山」、「カヤ原」などと呼ばれた)にある
神社・水垢離場で身を清め、森林地帯(「木山」、「深山」な
どと呼ばれた)の山中の宗教施設等を順に経ながら、砂礫地帯
(「焼山」、「ハゲ山」などと呼ばれた)の神仏の世界あるい
は他界に至るイメージで認知されるようになり、同時期に絵画
や文学作品において典型的な富士山像が成立したことを背景に
、「絹本著色冨士曼荼羅図」を代表例とする信仰上の景観認識
が成立した。17世紀以降はこれらの典型的な認識を基に、さ
らに多様な信仰上の認識(※3)が模索され、「富士講」と呼
ばれる富士山信仰集団の隆盛や交流人口の拡大などにより、1
8世紀後半から19世紀にかけてほとんどの日本人に富士山の
神聖な山としての景観認識が定着した(※4)。この認識は近
代工業社会の自然に対する考え方が一般化する以前の山と人間
との良好な精神的関係を示すものであった。、31(※3)富
士山は神仙思想における不老不死の象徴である「蓬莱山」や仏
教における世界の中心である「須弥山」に見立てられた。また
、主に18世紀後半より富士山の信仰上の景観認識を立体化し
た「富士塚」が東京を中心に建設され、女性を含め山頂への登
拝ができない人にとっての代参施設となった。(※4)登拝者
には登山口の浅間神社や御師の発行する富士山の信仰上の景観
認識を描いた宗教画が配布されるとともに、縁起の良いものと
して富士山やその図像を拝したり、眺めることが行われた。右
「富士山のゾーニング」左「三尊九尊図」評価基準(E)顕著
な普遍的意義を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信
仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連
がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ま
しい)。評価基準(E)の適用富士山と周辺の特徴的な自然が
醸成する優秀な景観美や火山としての活動は、日本人の山に対
する信仰の形成の一翼を担い、今日まで継承されている山頂へ
の遥拝と参詣を中心とした文化的伝統は、アジア地域に顕著で
ある山を神聖視する文化と深い関りを有している。写真写真焼
山(ハゲ山)木山(深山)草山(カヤ原)32また、これらの

38 :
富士山の特色は古くから様々な芸術活動の母胎ともなり、「万
葉集」や「竹取物語」をはじめとする日本固有の和歌、俳句、
物語文学やこれらを主題とする絵画などの対象として日本人に
良く知られていた。特に富士山を題材にした「浮世絵」などは
海外にも広く知られ、近現代の西洋芸術に様々な影響を与えて
きた。したがって、富士山は、顕著な普遍的意義を持つ生きた
伝統、芸術的作品・文学的作品と直接的・実質的に関連がある
景観である。・顕著な普遍的意義を持つ生きた伝統との直接的
・実質的関連アジア地域、特に東アジア地域では特異な形態を
持った山岳の空間を神聖視し、仏教(特に密教)や道教(神仙
思想)、儒教と結びついて修行の場や宗教施設を設置する場と
した。これらの伝統は6世紀〜8世紀を中心に日本に伝えられ
、日本固有の山岳信仰や神道と結びつき修験道などの信仰を生
んだ。現在の富士山においてはこれらの信仰の核心部分が登拝
などの形態や儀式に伝えられている。また、富士山のみならず
日本各地の山岳やアジア地域の山岳においても形態は異なると
はいえ山を神聖視することをその根本に据えた文化的伝統が数
多く行われている。したがって、富士山は顕著な普遍的価値を
持つ生きた伝統と直接的・実質的に関連がある景観である。・
顕著な普遍的意義を持つ芸術作品との直接的・実質的関連独立
峰である富士山の周囲には湖や海と組み合わされた富士山の優
れた景観を望む展望地があり、今日に至るまで多くの芸術作品
を創造する場となった。これらの富士山を題材にした芸術作品
のうち、最も海外に影響を与えた作品は葛飾北斎の浮世絵「冨
嶽三十六景」である。19世紀前半に作成されたこの一連の作
品は、日本の開国に伴い西洋に輸出され、他の浮世絵とともに
その構図や表現方法がジャポニスムと呼ばれた西洋における日
本芸術の流行を生み、モネ、ゴッホといった印象派の画家に大
きな影響を与え、アールヌーボーが発生する一因となった。そ
のほか、富士山と三保松原を舞台に富士山に関わる伝説をモチ
ーフとした能(謡曲)「羽衣」は文学におけるモダニズムに影
響を与えた作品である。また、19世紀後半から20世紀初頭

39 :
にかけて、日本が万国博覧会などで意図的に出品した富士山を
題材にした絵画・工芸作品や、富士山を意匠に用いた日本の輸
出品は、富士山を描いた浮世絵や日本を訪れた外国人が富士山
からインスピレーションを得て記述した紀行文の文学的表現な
どとともに多くの世界の人々に他の世界の著名な山と明確に区
別される富士山の景観イメージを広めることに貢献した。文学
では海外に良く知られた「万葉集」以来、数多くの和歌や俳句
などによってその崇高さや美しさが称えられ、近代以降も海外

40 :
にも知られた文学者(※夏目漱石「三四郎」・太宰治「富岳百
景」など)によるものをはじめ富士山を舞台とした作品が生み
出された。写真写真左「神奈川沖浪裏」右「凱風快晴」葛飾北
斎「冨嶽三十六景」より(1831〜36年)33写真ゴッホ
「タンギー爺さん」b)顕著な普遍的価値の証明a)において
証明した評価基準への適合性の証明の結果として、「富士山」
は以下に記す観点から顕著な普遍的価値を持つ。顕著な普遍的
価値の言明富士山は、日本を代表し象徴する日本最高峰(標高
3776m)の秀麗な独立した火山として世界的に著名であり
、その自然的美しさと崇高さを基盤として日本人の自然に対す
る信仰の在り方や、海外に影響を与えた葛飾北斎や歌川広重な
どによる顕著な普遍的価値を持つ「浮世絵」などの日本独特の
芸術文化を育んだ「名山」である。富士山は、山岳に対する信
仰の在り方や芸術活動などを通じ、時代を超えて一国の文化の
諸相と極めて深い関連性を示し、生きた文化的伝統の物証であ
るのみならず、人間と自然との良好で継続的な関係を示す景観
の傑出した類型として、世界的にも類例を見ない顕著な普遍的
価値を持つ山である。富士山の山体とその周辺の地域には、宗
教的な儀礼・活動の場となった神社、登山道と関連遺跡群、霊
地・巡礼地となった風穴・湧水地・湖沼などが残され、そこで
の儀礼や活動を通じて、人々の生活の中に富士山に対する信仰
の核心が継承されている。また、富士山信仰の中で山体・樹叢
・湖沼などの自然環境を基盤とし、体系化された神社等の建築
群・登山道・宗教施設を経て山頂に参詣する宗教的な儀礼・活
動が成立した。これが発展し、18〜19世紀にかけて富士山
は大規模な大衆による宗教的登山及びその体系の典型的存在と
なり、この体系の核心は現代の登山に継承されている。現在で
も、富士山は日本を代表し象徴する最高峰として老若男女を問
わず憧れ親しむ「名山」である。加えて、富士山と周辺の特徴
的な自然が醸成する美しさと崇高さは、信仰上の景観として捉
えられただけでなく、古くから様々な芸術活動の母胎となり、
「万葉集」をはじめとする日本固有の和歌や俳句、絵画などの

41 :
対象として日本人に良く知られていた。特に富士山を題材にし
た「浮世絵」などは海外にも広く知られ、近現代の西洋芸術に
様々な影響を与えてきたものである。さらに、これらの芸術と
富士山やその景観美を紹介した外国人の著作を通じて、富士山
が一つの国の文化を代表する「名山」であることは国際的に認
知されるに至っている。34写真写真本栖湖からの富士山三保
松原からの富士山c)比較検討による証明1)比較軸の特定富
士山の顕著な普遍的価値を表す要素を特定し、他の同種の遺産
がそれらの要素に該当するか否かを検討することによって比較
を行う。富士山の顕著な普遍的価値は、以下の3つの要素に整
理できる。(1)山に対する固有の文化的伝統を顕著に表わす
物証として稀有な存在:富士山では山頂への参詣などの特徴を
持った山に対する宗教的な儀礼・活動が成立し、山体とその周
辺の地域には、神社、登山道、霊地・巡礼地となった風穴・湧
水地・湖沼などが残されている。そこでの儀礼や活動を通じて
、人々の生活の中に富士山に対する信仰の核心が継承されてい
る。(2)景観の顕著な見本:富士山体とその周辺の景観は、
類いまれな美しさ、神聖な空間として認知され、日本における
自然美の典型として、多くの人々に世界の山の中でも最も著目
なアイコンとして共有されている。(3)顕著な普遍的意義を
持つ芸術的作品との関連性:富士山の優れた景観美は、近現代
の西洋美術に影響を与えた芸術的作品などに「関連する景観」
である。信仰の山については、2001年9月に和歌山県で開
催された国際会議「アジア・太平洋地域における信仰の山の文
化的景観に関する専門家会議」(以下、「信仰の山会議」とい
う)において、信仰の山の認定及び保護に関する様々なテーマ
と問題が討議された。ここで、信仰の山の遺産としての価値は
、有形的価値、無形的価値の形態をとって現れるとされた。ま
た、信仰の山の自然的特性についても評価が可能とされた。信
仰の山会議で示された指標を参考に、富士山の顕著な普遍的価
値を表す要素を勘案して、自然的要素としては、「形状・標高
」(独立峰かどうか、富士山と同程度の標高か)、「岩盤や岩

42 :
(洞窟を含む)・水域」「火山」(火山であることに由来する
特徴的な風穴・湧水地・湖沼などがあるか)、有形的価値とし
ては、「洞窟」「歴史的な巡礼路又は参詣道」「神社」「寺院
」「眺望・展望地」がそれぞれ存在するかどうか、無形的価値
としては、「継続性」(崇拝儀礼などが今も行われているか)
、「存在」(山自体が信仰の対象か)、「慣習」(登拝、遙拝
を行っているか)、「アイデンティティ」(山自体が国、民族
の象徴となっているか)、「知名度」(富士山と同程度(山頂
までの登山者が30万人、山麓が4,000万人)の訪問者が
あるか)、といった観点から、評価することとする。同様に、
顕著な普遍的意義を持つ芸術的作品との関連性については、山
の景観美が芸術作品を産み出す母胎となったかどうか、またそ
れらの作品群が海外にも広く知られ、世界史に大きな影響を3
5与えたかどうか、といった観点から、評価することとする。
2)海外同種資産の特定同種資産の特定にあたっては、評価基
準に関するものとしては、@「信仰の山会議」で信仰の山と紹
介されている山岳、評価基準に関するものとしては、A世界遺
産リストの概要で芸術への明確な関連性が示されている山岳、
B海外の専門家による研究書等で芸術の山として紹介されてい
る山岳等を抽出した。また、両方の基準に関するものとしては
、Cイコモスによる研究書「FillingtheGaps」
の類型別分析・テーマ別分析、D文化的景観に関する研究書の
分析を行った。具体的には、Bでは、の三つの文献を対象とし
て資産を抽出した。Cでは、「文学・芸術への関連性、演劇」
、「聖なる山」、「アジア・太平洋地域の土着信仰」に関する
山岳等を抽出した。Dでは、ユネスコ世界遺産センターから刊
行されたPeterJ.Fowler氏による研究書の中で、
山が特徴として挙げられている資産のうち、「美的資質」、「
集団のアイデンティティ」、「信仰、聖地、神聖性」の特徴を
持つ資産を抽出した。以上より、富士山の比較対象とする海外
の同種資産は表1の34件となる。その中では富士山との共通
性のあるものに、共通性の大きいものにがしてある。信仰面で

43 :
は、上記の無形的側面での共通性があるもの、芸術面では山自
体が絵画の題材とされ、画派等を生むなど、美術史への影響力
があるものを共通性が大きいとしている。が付された比較対象
について、1)で示した比較軸である信仰の物証(自然的特性
、有形的側面、無形的側面)、芸術作品との関連性により、同
種資産を整理すると表2、表3のとおりになる。36表1:比
較対象とした海外の山岳等(34件)番号山名資産名評価基準
国名信仰芸術1ウルル、カタ・ジュタウルル−カタ・ジュタ国

44 :
立公園オーストラリア2サバラン山サバラン−イラン3スライ
マン−トースライマン−トー聖山キルギス4プーカオ山チャン
パサック県の文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺産群
ラオス5ボグドハン山、ブルカン・カルドゥン山、オトゴン・
テンゲル山モンゴルの聖なる山:ボグドハン山、ブルカン・カ
ルドゥン山、オトゴン・テンゲル山−モンゴル6ヒマラヤ山脈
サガルマータ国立公園(F)ネパール7ルアペフ山、ナウルホ
エ山、トンガリロ山トンガリロ国立公園ニュージーランド8泰
山泰山中国9黄山黄山中国10武当山武当山の古代建築物群中
国11廬山廬山国立公園中国12峨眉山峨眉山と楽山大仏中国
13武夷山武夷山中国14青城山青城山と都江堰水利(灌漑)
施設中国15三清山三清山国立公園中国16五台山五台山中国
17華山、衡山、恒山、崇山泰山の登録拡大として四つの聖山
−中国18雁蕩山雁蕩山−中国19南山慶州歴史地区韓国20
漢拏山済州火山島と溶岩洞窟群韓国アジア・太平洋地域21ア
ダムスピークピーク野生保護区、ホートンプレインズ国立公園
、ナックレス山脈−スリランカ22アパラチア山脈グレート・
スモーキー山脈国立公園アメリカ23キラウェア山ハワイ火山
国立公園アメリカ24ロッキー山脈カナディアン・ロッキー山
脈自然公園群、恐竜州立自然公園、ウォータートン・グレーシ
ャー国際平和自然公園、イエローストーン国立公園カナダ・ア
メリカ25シナイ山聖カトリーナ修道院エジプト26サント・
ヴィクトワール山サント・ヴィクトワール山とセザンヌに関連
する土地−フランス27ペルデュ山ピレネー山脈−ペルデュ山
スペイン及びフランス28アトス山アトスギリシャ29オリン
ポス山オリンポス山周辺−ギリシャ30ドロミテ山塊ドロミテ
イタリア31ケニア山ケニア山国立公園/自然林ケニア32ワ
スカラン山ワスカラン国立公園ペルー33スイス・アルプス(
ユングフラウ−アレッチュ峰、ビチホルン峰ほか)スイス・ア
ルプスユングフラウ−アレッチュスイスアジア・太平洋地域以
外34キリマンジャロ山キリマンジャロ国立公園タンザニア3
7表2:信仰関連の山岳等番信仰の物証号山名自然的要素、有

45 :
形的側面無形的側面1ウルルカタ・ジュタ・ウルルは単一の岩
石・アボリジニにとって、ウルル−カタ・ジュタの岩は伝統的
な信仰の中で不可欠なものである。・山自体が信仰の対象であ
り、遙拝といった信仰形態をもつ。3スライマン−トー・参詣
道、岩面陰刻・中央アジア随一の聖なる山とされ、ムスリムの
聖地である。前イスラム教とイスラム教を融合した信仰形態が
残る。・山頂を目指すという行為自体に宗教的意義付けがない
(登拝といった信仰形態をもたない)。4プーカオ山寺院、山
頂のリンガ(シバ神の象徴)・シバ神の住む山である。・山頂
から麓の川に至るまでに建てられた寺院群はヒンズー教の宇宙
観を表現する配置である。6ヒマラヤ山脈・同程度以上の標高
(エベレスト8848m)・修道院、寺院・神々の住処として
崇拝される空想的な山であるメール山(スメール山、須弥山)
が地上に顕現・チベット仏教、ボン教、ヒンズー教、ジャイナ
教の聖地・ヒンズー教の聖典の一つには人間の罪はヒマラヤを
見れば消滅する、とある。・登山許可は下りない。7ルアペフ
山ナウルホエ山トンガリロ山・火山・マオリにとってこれらの
山は文化的・宗教的な重要性を持っており、そのコミュニティ
と環境との間の精神的なつながりを象徴している。・山自体が
信仰の対象であり、遙拝といった信仰形態をもつ。8泰山・参
詣道、寺院・小泰山(山頂まで登れない人が泰山の代わりに祈
る場所)・儒教・仏教・道教の聖地である。・秦の時代より、
皇帝即位の際の儀式である「封禅の儀」を執り行っていた。・
宗教施設が山頂、山中に点在するため、参拝が登山の形態をと
るが、登山行為自体に宗教的な意義を求める登拝とは異なるも
のである。11廬山参詣道、寺院・中国の近代政治上、重要な
場所とされている。・山自体ではなく、山に築かれた宗教施設
が信仰の対象である。・仏教、道教、儒教の聖地とされ、キリ
スト教、イスラム教の施設も建てられている。12峨眉山・同
程度以上の標高(万仏頂3099m)・参詣道、寺院・中国に
おける仏教の最初の聖地。・山に築かれた宗教施設や日の出・
ブロッケン現象といった自然現象が信仰の対象。宗教施設が山

46 :
頂・山中に点在するため、参拝が登山の形態をとるが、登山行
為自体に宗教的な意義を求める登拝とは異なる。13武夷山・
参詣道、寺院・南中国での道教と新儒教の源であり、朱子が生
涯の大部分を過ごした地である。・山自体ではなく、山に築か
れた宗教施設が信仰の対象。16五台山・同程度以上の標高(
葉頭峰3058m)・参詣道、寺院、小朝台(朝台を簡略化し
た祈る場所)・中国仏教四名山の一つで、文殊菩薩が悟りを開
いた地とされる。・自然景観を神聖なものとしているが、5つ
の台頂に築かれた寺院に参詣すること(「朝台」)が最大の願
いである。20漢拏山・独立峰、火山・参詣道・韓国の最高峰
の火山で、聖なる儀式の場としても使用された溶岩洞窟を多く
持つ。・山自体よりも山中の石に対する信仰が強い。21アダ
ムスピークストゥーパ、沐浴場・釈迦が訪問した地とされる。
・山頂に聖なる足跡があり、仏教、ヒンドゥー教、イスラム教
それぞれの聖地とされ、巡礼者が訪れる。25シナイ山修道院
・シナイ山は、旧約聖書において、モーセに神からユダヤ教の
聖典と十戒が渡された場である。28アトス山寺院、修道院・
古代ギリシャの聖なる山であった。・1054年にギリシャ正
教の中心地として定められ、現在も修道士たちの隠棲の地であ
り、敬虔な宗教活動が続けられている(女人禁制)。入場者は
ごく少数に制限されている。34キリマンジャロ山・同程度以
上の標高(キボ峰5895m)・地域の神が住む場所と考えら
れ、東アフリカの人々は死者を埋葬する。・チャガ族(キリマ
ンジャロ山麓に居住する部族)は、神の住む場所としており、
彼らの伝承や慣習には、山への高い敬意が表されている。38
表3:芸術関連の山岳等番号山名芸術作品との関連性8泰山・
数多くの詩や文が残る。・山頂の風景が紙幣の図柄になるなど
、中国人の精神的シンボルと捉えられている。9黄山・絵画は
数多く描かれ、黄山画派と呼ばれた。11廬山・山水画、山水
詩は多数作られ、特に「観瀑図」は日本の画家にも大きな影響
を与えた。22アパラチア山脈・フレデリック・チャーチやト
ーマス・コールといったアメリカの風景画家に描かれている。

47 :
24ロッキー山脈・19世紀のアメリカ人画家、アルバート・
ビエスタッドの描く絵画は、ロマン主義運動の理念を最も劇的
に具現化しており、”ロッキーマウンテン画派”の指導者であ
った。・富士山と同程度以上の標高(エルバート山4401m
)26サント・ヴィクトワール山・20世紀の初頭、フランス
人画家、ポール・セザンヌによって、風景画に対して根本的に
異なるアプローチが始められ、西洋美術作品の中でも最も有名
な山となった。27ペルデュ山・この風景は生活の伝統(牧畜

48 :
との暮らし、国境の文化、ピレネー独特の文化)と芸術・文学
作品が関連して、顕著な普遍的価値を構成。(レイモンド・デ
・カルボニエ、ヘンリー・ラッセル、ヴィクトル・ユゴー等)
。・ヨーロッパ芸術の中でロマン主義が発展していく上で重要
な役割を果たした。・富士山と同程度以上の標高(3352m
)33スイスアルプス(ユングフラウ峰、ビーチホルン峰、ほ
か)・印象的な風景はヨーロッパ芸術、文学等において重要な
役割を担った。・レオナルド・ダ・ヴィンチはモンテ・ローザ
のスケッチをモナリザの背景として描いた。・富士山と同程度
以上の標高(フィンスターアールホルン4274m)3)国内
同種資産の特定同様の方法で、日本国内の資産について、世界
遺産登録物件または暫定リストから抽出すると、表4のとおり
3つの山が考えられ、特に共通性が認められる2件について評
価を行った(表5)。表4:比較対象とした国内の山岳等(3
件)39表5:信仰、芸術関連の国内の山岳等(2件)信仰の
物証番号山名自然的要素有形的側面無形的側面芸術作品との関
連性1紀伊山地参詣道、神社、寺院、滝・日本古来の自然崇拝
の思想と大陸から伝来した仏教とが融合して形成された修験道
などの行場としても重視され発展した。・山自体が修験の場で
あり、山中で廻峰行という宗教行為が行われている。神聖性の
高い自然及び継続的に行われている宗教儀礼は、信仰の山の文
化的景観を構成する要素として優秀かつ多様である。2瀰山神
社・古くは彌山を含む島全体を神聖視し、対岸から遙拝してい
たのであるが、やがて水際に社殿が成立し、彌山を含めた背後
の山腹が社殿群の背景的効果をもつ自然景観として重要視され
た。神道の施設であり、仏教との混交と分離の歴史を示す文化
遺産として、日本の宗教的空間の特質を理解する上で重要な根
拠である。番号山名資産名評価基準信芸国名仰術1紀伊山地紀
伊山地の霊場と参詣道日本2瀰山厳島神社日本3御蓋山(春日
山)古都奈良の文化財日本404)結論以上の比較分析から、
他の信仰・芸術に関連する山と比べて、推薦資産は、以下の3
つの点で顕著な普遍的価値を持つ事例であると言える。(1)

49 :
海外の信仰関連の山岳との比較富士山は、8世紀以降、噴火を
鎮めるため山麓に浅間神社が建てられた。12世紀に修験者の
道として登山道が開かれ、15〜16世紀には修験者に引率さ
れ、登拝を中心とした宗教的な活動が盛んとなった。山体につ
くられた宗教施設だけでなく、溶岩洞穴・樹型・湧水地も巡礼
・修行の場となった。この結果、登拝の行為を通じて周辺の神
社及び巡礼地、参詣道が形成された。このように、富士山は、
今日まで継承された山に対する固有の文化的伝統を顕著に表す
物証であるとともに、人間と山との精神的な関係を表す景観で
あり、18〜19世紀は既に年平均1〜2万人という世界的に
も類例のない大衆による高山への登拝が行われるようになった
。富士山は、(ケニア山やキリマンジャロ山、トンガリロやウ
ルル等に代表されるような)原始的な山岳信仰のあり方から、
(泰山等の中国の山々やアトス山やシナイ山等に代表されるよ
うな)多様な宗教の介入によって生み出された信仰のあり方ま
で、そのいずれも失うことなく現在に至るまで継承している。
信仰に関連する山の多くは、山自体ではなく、山麓に点在する
宗教施設や石仏が信仰の対象であり、そうした宗教施設等を参
詣するための道が整備されている。また、一部は山頂にそうし
た宗教施設があるため、参拝が登山の形態をとるが、富士山の
ように登山行為自体に宗教的な意義を求める登拝とは異なるも
のである。アダムス・ピークは多くの巡礼者が登山の形態をと
るが、頂上の聖なる足跡とされる岩を目指す点で、宗教施設に
参拝する形態と類似するものであり、富士山とは異なると考え
る。また、一部の山岳はその聖なるがゆえに登山を制限してお
り、登拝はなく、遙拝という信仰形態しか持たない山もある。
信仰の山の自然的要素である標高については、自然遺産を中心
に富士山よりも高い山も存在するが、その標高に比した登頂者
の多さ(年約30万人)は他に例がなく、山頂部への道路や軌
道によるアクセスがないことから、登頂者は徒歩6時間以上か
けて、山頂部を目指すことになる。こうした登山形態は、日本
では20世紀前半に開花する近代アルピニズムに起源するもの

50 :
ではなく、17世紀以降の江戸(現在の東京)を中心に数多く
組織された富士講の登拝活動を母胎に発展したものである。こ
のことは、人々の生活の中に富士山に対する信仰の核心が継承
され、今日でも富士山は日本を代表し象徴する最高峰として老
若男女を問わず憧れ親しむ「名山」であることを示している。
また、富士山への登山は夜明け前の山頂到着を目指す登山者が
多いことにも特徴がある。これは、山頂付近で日の出を拝むた
めであるが、17世紀以降、道者が山頂周辺において「御来迎
(仏の来迎と見なされたブロッケン現象)」(のち「御来光(
日の出)」)を拝んだことに由来する。こうした自然現象に宗
教的な意義を見出す傾向は、比較対象の中では峨眉山以外には
見あたらない。IUCNが2009年に行ったテーマ別研究で
ある「世界遺産の火山」では、世界遺産一覧表には一般の人々
が一様に認めている火山の多くが含まれていないことは興味深
いとし、その例として、イタリアのエトナ火山や富士山などを
挙げている。とくに富士山は、火山とその周辺地域に訪れる年
間の観光客が地球上のどの火山よりも多い点で重要とされてい
る。こうしたギャップを埋めるために、知名度、科学的重要性
、文化及び教育的価値を基準に個々の長所を検討すべきとして
いる。41(2)海外の芸術関連の山岳との比較独立峰であり
、高い標高を持つ富士山の秀麗な姿は、四方の広い範囲から眺
めることができ、古くから芸術活動の対象となった。これら富
士山を題材にした芸術作品のうち、最も海外に影響を与えた作
品は、葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景」である。この一連の
作品は、ジャポニスムと呼ばれた西洋における日本芸術の流行
を生み、モネ、ドガなどの西欧の印象派の画家達は浮世絵から
、構図、デフォルメ、平面的な表現技法を学んでいる。また、
アールヌーボーが発生する一因ともなった。芸術的作品との関
連性では、比較対象資産の関連する多くの芸術作品が、周囲の
山々や景観を合わせて描いたものである。また、そうした芸術
作品との密接な関連を持ち、アメリカの山々のように芸術史の
上で一つの流派を形成したものもあるが、その作品の影響は国

51 :
内に留まる。また、中国の山水画は日本にも大きな影響を与え
たが、近世以降で美術史に影響をもたらす芸術作品を生み出す
母胎となった山は富士山しかない。山と芸術作品との密接な関
連を持つ代表例は、セザンヌが描いたサント・ビクトワール山
があり、これはその作品の多さからも西洋美術で最も著名な山
とされるが、富士山を題材とした浮世絵がセザンヌの出自であ
る印象派にも大きな影響を及ぼしたことを考慮すると、そうし
た浮世絵の制作を喚起した富士山の優位性は揺るがない。(3

52 :
)国内同種資産との比較信仰との関連性では、比較対象の資産
では、古くは山自体が神聖視されたが、その後は宗教施設が発
展し、山は背景となっていった。紀伊山地では、修験道の道場
として山々をめぐる行為が宗教行為とされており、富士山でも
その初期においてはこうした修験者による登山が中心であった
が、富士山については、その後、修験者に導かれた一般人の登
拝が増加し、18世紀後半より東京を中心に流行した富士講に
よる大衆登山へと発展していった。現在も夏を中心に30万人
が徒歩による富士山の登山を体験しており、こうした信仰の核
心が多くの人々に継承されている点において富士山の優位性は
明らかである。芸術作品との関連性では、比較対象の資産では
、評価基準(E)は信仰の空間との関連性で用いられており、
関連する芸術作品等も宗教的な題材とする作品が多い。富士山
は、和歌や俳句、絵画、文学の多くの分野においても、数多く
の作品を輩出し、その中には葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景
」のように西洋の美術史に大きな影響を与えた作品もある。そ
の多様性や生み出した芸術作品の影響の大きさの面でも富士山
の優位性は明らかである。(4)結語このように、富士山にお
いては、登拝等により、信仰の核心が現代の多くの人たちに受
け継がれ、また、浮世絵等により、近代の西欧芸術史に大きな
影響を及ぼした。富士山は、信仰のあり方、芸術の両面で、古
代から現代まで影響を与えている唯一の山であり、世界的にも
類例を見ない顕著な普遍的価値を持つ山岳である。42d)真
実性及び完全性1)完全性推薦資産の範囲は、「ある文化的伝
統の存在を伝承する物証として希有な存在」として神聖視され
、「歴史上の重要な段階を物語る景観を代表する顕著な見本」
として認知された富士山の範囲が適切に確保されているととも
に、「顕著な普遍的意義を有する芸術的作品及び文学的作品と
の直接または実質的な関連性」を示す富士山体の範囲も、数々
の顕著な普遍的意義を有する作品に共通して描かれた最大の範
囲に相当しており、資産の重要性を伝える諸要素・過程を完全
に表す上で適切な範囲が確保されている。(図面挿入:主要な

53 :
展望地点から見た資産範囲を示した正面図)また、登山道、神
社並びに富士五湖などの儀式・修行・巡礼の場や、適切な展望
線を確保した主要な展望地点といった、顕著な普遍的価値を表
すのに必要な全ての要素を包含している。登山道は、信仰登山
が盛んに行われていた18〜19世紀に認識されていた登山道
を全て含み、登山道の起点となる浅間神社も不足なく資産に含
まれている。その他、御室浅間神社や河口浅間神社といった富
士山信仰を語る上で欠かすことの出来ない重要な浅間神社や、
富士講を迎えて登拝の世話を行った御師の住宅、富士講がオプ
ショナル・ツアー的に巡礼・修行を行った地として代表的な湖
沼、滝、風穴・溶岩樹型も全て資産を構成する要素として推薦
範囲に含めている。それらは、周辺に必要十分な範囲の緩衝地
帯を設定しており、負の影響を与える可能性の行為に対して適
切な法的規制を行うとともに、包括的保存管理計画の下に保全
又は改善のための対策を明示している。したがって、資産の周
辺環境の保全に関する完全性も揺らぎはない。2)真実性推薦
資産は、所有者をはじめ、国及び地方公共団体によって適切な
維持管理が行われ、文化資産としての価値を失することなく良
好な状態を保っている。以下に、『世界遺産条約履行のための
作業指針』第82項に示された文化遺産の評価に適用される真
実性の属性に基づいた、構成資産の種類ごとの分析を示す。(
1)富士山体(遺跡(site))富士山は、1707年を最
後に噴火しておらず、以降、形態に変更はない。また、今後噴
火によって形態上の変化が起こったとしても、富士山の荒ぶる
姿は人々の信仰心を鼓舞し、芸術活動に駆り立てることから、
真実性が損なわれるものではなく、むしろ、有史以来時代を超
えて、精神・機能の観点からみた真実性は確実に維持されてい
る。神聖性が最も高いとされる、山体中腹以上の核心となる区
域には、文化財保護法により厳格に保護されているほか、その
周辺地域や展望線及び主要な展望地点は、自然公園法などの国
内法により展望・眺望への妨げとなるものの除外や風致景観と
の調和を図る景観保全が行われており、景観全体の真実性は確

54 :
実に保証される。また、登山道や山小屋、信仰関連遺跡などの
諸要素が総体的な登拝システムを構築し、その機能は良好に遺
存している。登山道は、人為による現状の変更には厳しい規制
がかけられており、地下に埋もれた遺構を含め、価値の真実性
の伝達については、将来にわたり確実に保証されている。また
、宗教空間としての用途・機能を何百年も維持してきた。レク
リエーションのために登43山を行う人々にとっても、脈々と
継承してきた富士山に対する信仰の核心の証左として、それら
は機能している。(2)神社・御師住宅(記念工作物・建造物
群・遺跡(site))神社について、建築の歴史的価値を表
す平面形式、構造様式、内外の立面意匠は顕著な普遍的価値を
表す時代のままである。近代以降の保存修理事業においては、
建立後に修理又は改変された後補部分について、後補材の撤去
・復原・欠失した部分の復旧を行うなど、高い真実性が追究さ
れてきた。脆弱な材料・材質から成る木造建築の修理に関する
伝統をはじめ、そこに用いられる技術についても確実に継承さ
れている。また、富士山の顕著な普遍的価値が最もよく表現さ
れる時代の位置を維持し、境内林などに囲まれた周辺の環境も
良好である。さらに、宗教空間としての用途・機能を何百年も
維持してきた。レクリエーションのために登山を行う人々にと
っても、脈々と継承してきた富士山に対する信仰の核心の証左
として、それらは機能している。(3)その他の信仰関連遺跡
(遺跡(site))富士五湖及び忍野八海においては、文献
や石碑などの状況証拠から、内八海巡りや富士御手洗元八湖が
行われていたことがわかっている。人々の信仰心を駆り立てた
湖沼の水そのものは、顕著な普遍的価値の核心として現在に継
承されている。さらに、周辺環境においても、自然公園法や景
観法に基づく景観計画などにより風致景観との調和を図る景観
保全が行われており、景観全体の真実性は確実に保証されてい
る。白糸ノ滝においては、長谷川角行の修行地がどこであった
かを明確に示す文献はないが、富士講講徒が滝壺で修行したこ
とは講徒の記録及びその挿図で確認できる。船津胎内樹型及び

55 :
吉田胎内樹型の中には祠などが祀られ、穴自体を神聖視する精
神、宗教空間としての機能は現在も受け継がれている。入洞者
の安全のため、船津胎内樹型の入り口部分は改変が加えられて
いるが、それ以外の形状・位置の真実性は、自然崩落の場合を
除き、確実に継承されている。人穴富士講遺跡においては、碑
塔のほとんどに建立者、講の名称や年号(創建年号や関係者の
死亡年号)などが記載されており、真実性に疑いの余地はない
。444.保全状況と資産に与える影響a)現在の保全状況「

56 :
富士山」の17個の構成資産については、すでに多くの修理や
整備の事業が適切に行われており、自然的な要因に基づく一部
の資産を除き構成資産の保存状況も良好である。特に神社の建
造物及び境内については、所有者である宗教法人により適切な
維持的措置が恒常的に行われており、保存状況は良好である。
1)資産全体の保全状況(1)主要な展望主要な展望としての
構成資産は、本栖湖と三保松原であり、展望点及びそこから展
望した山体の大部分である。展望面に関しては本栖湖の場合構
成資産に含まれており、三保松原の場合は展望点より山体まで
距離の距離が約45qと遠方であり、かつ、その間のかなりの
部分が海面及び人口密集地(富士市市街地)であるため、展望
点より山体までの範囲は構成資産に含めてはいない。現状にお
いてこれらの資産範囲及び展望面は三保松原の一部を除き良好
な状態を保っている。これらの資産範囲については、信仰の核
心である御中道より上の範囲は文化財保護法(特別名勝及び名
勝)及び自然公園法(特別保護地区及び第1種特別地域)によ
り厳密に保全され、下部(標高1500〜2000m以下、特
別名勝範囲外)は自然公園法(特別保護地区、第1〜3種特別
地域、普通地域)及び森林法(保安林)により重層的に保護さ
れている。また、展望面の周辺部については自然公園法(特別
保護地区、第1〜3種特別地域、普通地域)及び森林法(保安
林)、景観法に基づく景観条例、景観計画により保護されてい
る。これらの法令の許可制に基づく保護により、景観面に関し
て資産に影響のある開発は厳重に管理されている。また、資産
範囲及び緩衝地帯に含まれていない三保松原の展望面について
も海面において実質的に開発行為は起りえず、市街地において
も景観法に基づく景観条例、景観計画により保護されているた
め、特に問題は生じない。(2)登山道(遺跡(site))
これらの構成資産は富士山体及びそこに所在する登山道である
。これらの構成資産については、真実性及び完全性が担保でき
る部分が史跡に指定されるとともに、その大部分の範囲が特別
名勝に指定されている。これらの構成資産については、県が、

57 :
建造物については、火災による焼損防止のために自動火災報知
設備及び各種の消火施設・避雷施設を設置し、防火・消火に関
する組織の運営についても万全を期している。また、建造物の
所有者である宗教法人及び市並びに個人は、県又は各市町村が
策定した保存活用計画に基づいて、それらの確実な保存管理に
当たっている。また、建造物の軽微な補修等の日常管理につい
ては、所有者の依頼により、専門の建築技術者によって実施さ
れている。(4)その他信仰関連遺跡(遺跡(site))こ
れらの構成資産は、湖沼、風穴・溶岩樹型、滝・湧水、石造工
作物(人穴の碑塔)である。これらの構成資産については、そ
の自然的価値から湧玉池が特別天然記念物に、白糸ノ滝が名勝
及び天然記念物に、富士五湖が名勝に、風穴・溶岩樹型及び忍
野八海が天然記念物に指定されているとともに、その一部が史
跡に指定されている。これらの構成資産については、県及び市
町村が、各史跡等の規模・形態・性質・立地・環境等に応じて
保存管理計画を策定し、確実な保存管理に当たっている。した
がって、各史跡等を構成する諸要素及びそれらと一体をなす周
辺の地域は、良好な状態を保っている。さらに、指定地内で行
われる現状変更等については、文化財保護法の下に許可制に基
づき厳重に規制されている。2)構成資産の保全状況(A)山
体(眺望の対象である富士山、ある文化的伝統を伝承する物証
である、連続性のある資産としての富士山)登録範囲における
自然的環境については、おおむね良好な状態である。資産範囲
の上部は文化財保護法(特別名勝)及び自然公園法(特別保護
地区及び第1種特別地域、第2種特別地域)により厳密に保全
され、下部(標高1500〜2000m以下、特別名勝範囲外
)は自然公園法(特別保護地区、第1〜3種特別地域、普通地
域)及び森林法(保安林)により重層的に保護されているため
、景観および文化的価値のどちらの点においても資産に影響を
及ぼす行為は発生しない。た46だし、山体西側には山頂部付
近から標高2200m付近までを源頭部とする土砂崩れ(以下
、「大沢崩れ」という。)が、約1000年前より継続して発

58 :
生している。このため山体西側の一部でかつての信仰に関わる
道(御中道)の通行等が禁止されている区域がある。山頂及び
登山道周辺では、多くの人々によって行われる登山行為に起因
する廃棄物・し尿が発生するが、山小屋組合などにより適切に
管理・除去されている。なお、山腹において、山小屋の維持・
廃棄物の撤去のためにブルドーザーが通行する道路があるが、
使用は必要最小限にとどめられている。山頂部周辺の文化的環
境についても、現時点における保全状態は良好である。ただし

59 :
、降雪・強風等に常時さらされるため、小規模な変更は常時行
われてきた。(A1)山頂信仰遺跡現時点における保全状態は
良好である。(A2〜5)登山道富士山は脆弱な火山地質であ
るとともに、雪崩・強風等に常時さらされるため、登山の開始
以降登山道小規模な経路の変更は常時行われていた。したがっ
て、継続的な観点における保全状態について明確に述べること
はできない。しかし、現在も登山道として使用されている部分
については毎年登山期前に県、地元保存会(須山口)又は山小
屋組合により整備が行われ、適切な状態に保たれている。(A
6)北口本宮冨士浅間神社北口本宮冨士浅間神社は定期的な維
持修理が行われており、現時点における保全状態は良好である
。(A7〜9)西湖・精進湖・本栖湖すべての湖とも現時点に
おける保全状態は良好である。中でも本栖湖は、訪問者の体験
を損ねないように、展望地点から富士山を見た展望線と展望地
点区域の周辺環境の維持に配慮した良好な保存管理が行われて
おり、現時点における保全状態は特に良好である。(B1)富
士山本宮浅間大社定期的な維持修理が行われており、現時点に
おける保全状態は良好である。湧玉池は全般的には良好な状態
であるが、二つの池のうち「上池」では、湧水量が減少し、藻
類が繁殖しているため、「湧玉池保全再生会議」が設置され、
対策が検討されている。(B2)山宮浅間神社現時点における
保全状態は良好である。(B3)村山浅間神社現時点における
保全状態は良好である。(B4)須山浅間神社現時点における
保全状態は良好である。(B5)富士浅間神社(須走浅間神社
)現時点における保全状態は良好である。(B6)河口浅間神
社現時点における保全状態は良好である。47(B7)冨士御
室浅間神社現時点における保全状態は良好である。ただし、漆
塗装の磨耗退色が著しい部分がある。また、本宮本殿の脇障子
版は富士山二合目所在時に毀損にあっており、今後、修復・修
繕の検討が予想される。(B8)御師住宅旧外川家住宅は20
06−2007年に大規模な修繕工事を行ったため、現時点に
おける保全状態は良好である。小佐野家住宅は、所有者らによ

60 :
って日常的な維持管理が行われているほか、補助事業などによ
って文化財としての保護に必要な修繕や設備の整備が進められ
てきた。(B9〜10)山中湖、河口湖どちらの湖とも現時点
における保全状態は良好である。(B11)忍野八海天然記念
物として指定されている範囲は水面に限られており、私有地が
隣接しているため、周辺環境を含めた保全状態に課題がある。
しかし、忍野村が景観計画を策定し、周辺環境を含めた保全を
行っている。(B12)船津胎内樹型現時点における保全状態
は良好である。(B13)吉田胎内樹型内部の溶岩の盗掘や人
の侵入による破壊を防ぐために本穴入り口は施錠されており、
現時点における保全状態は良好である。(B14)人穴富士講
遺跡碑塔群はおおむね良好な状態であるが、一部の碑塔に修理
が必要である。(B15)白糸ノ滝現状では滝壺周辺に売店が
あるなど景観面において課題がある。このため、富士宮市が中
心となり保存管理計画の改訂および整備計画の策定を行い、今
後適切な整備がなされる予定である。滝の自然崩壊については
特に対策は採られていない。(C)三保松原現状では1960
〜80年代に進行した海岸浸食の影響からの回復を図るため、
資産内及び周辺にヘッドランドなどが仮設され、景観に影響を
与えている。また、松原においてもマツクイムシ(マツノザイ
センチュウ)による松枯れがみられるため、薬剤注入・散布に
よる予防措置及び植林、枯れた松の除去が実施されている。現
在これらの対策により、資産の現状を保ち、将来においてはよ
り良好な保全状態となることは確実である。なお、三保松原の
象徴的存在である羽衣の松は1707年の宝永噴火とその前後
の地震により初代とされる松が失われたため、現在の松(樹齢
約650年)を指定した。しかし、この松も台風による幹の損
傷で樹勢が衰え、2010年10月にその交代が行われる(三
代目は樹齢約300〜400年と推定されている)。また、現
在静岡市が保存管理計画の改訂を行っている。なお、資産範囲
・緩衝地帯範囲には含まれないが、三保松原の富士山方向の対
岸に当たる富士市の工業地帯においては、現在使用していない

61 :
高煙突の撤去が静岡県の政策(富士地域煙突ゼロ作戦)として
実施されている。48b)資産に与える影響の要因1)開発の
圧力資産及びその緩衝地帯において、建築物又は工作物の建設
、土地の形質変更、木竹の伐採等の等の行為を行う場合には、
文化財保護法、自然公園法、都市計画法、森林法、河川法、海
岸法及び関係市町村が定める条例(景観法に基づき策定された
景観条例等)の下に、それらの規模、形態・構造に関する規制
(建築物又は工作物に関しては、それらの高さ・色彩・意匠等
の規制を含む)が行われるため、資産の価値を著しく低下させ
るような開発は起り得ない。「富士山世界遺産両県協議会」(
設置予定・仮称)では、両県の知事・市町村長を中心に、許認
可・保存に関わる国機関も加わり、開発の状況を把握し、コン
トロールのあり方について検討を行う予定である。開発計画の
うち、現在北麓(山梨県)においては都市計画区域用途地域ま
たは都市計画区域外では5ha以上、都市計画内(用途地域外
)では10ha以上の計画については、山梨県内の組織である
「山梨県土地利用調整会議」に事前協議書が提出され、知事の
同意が必要とされている。その同意を得た後で、個別法令の許
認可を担当する部署での手続きを行うことになっており、一元
化した組織かつ統一した基準での開発のコントロールが行われ
ている。こうした大規模開発を含む緩衝地帯内で行われる一定
規模以上の開発行為については、「富士山世界遺産両県協議会
」へ報告がなされ、必要に応じて個別法令の許認可を担当する
部署に対して助言等がなされる予定である。また、各市町村の
景観計画の下に、各市町村は景観阻害要因の排除に努めること
としているほか、世界遺産暫定一覧表に記載され、世界遺産一
覧表への記載の可能性のある文化資産に相応しい周辺市街地を
創出するために適切な景観の保全・改善の施策を実施すること
としている。なお、次に掲げる開発計画等の立案に当たっては
、いずれにおいても資産への影響を最小限に留めるよう関係機
関・団体と調整を行うことし、実施する場合にも事前に十分な
協議を行うこととしている。(1)観光開発(ホテル・ゴルフ

62 :
場・スキー場)緩衝地帯に位置するホテル等については、自然
公園法に基づき、高さ・色彩・意匠等の規制が行われており、
既存施設の改築についても同様である。特に山体の五合目以上
、本栖湖からの展望線の核心部は自然公園法の特別保護地区、
第1種特別地域となっており、新規の構造物の建築は禁止され
ている。また、富士山北麓(山梨県)では新規の10ha以上
のゴルフ場開発については凍結されている。(2)廃棄物処分
場又は清掃工場現時点で計画なし。(※演習場内の解放地に御

63 :
た、三保松原における松にはマツクイムシ(マツノザイセンチ
ュウ)による被害が見られる。これに対しては、薬剤注入・散
布による予防措置及び植林、枯れた松の除去を資産の所在する
静岡市とNPO法人が行っており、被害の拡大を防止している
。3)自然災害と危機管理資産の所在地域における自然災害と
しては、第一に富士山特有のものとして山体及び側火山からの
噴火及びそれに伴う噴石、火砕流・火砕サージ、溶岩流、融雪
型火山泥流、降灰、降灰後の降雨による土石流などが予想され
るとともに、数年単位で発生する山体における雪崩(特に大量
の水分を含んだ雪が流動する雪泥流)や大沢崩れ及びそれに伴
う土石流、強風、雨水による浸食などが考えられる。また、富
士山を含む駿河湾沿いの地域はM8クラスの海洋プレート内地
震の発生が予測されている。第二に日本列島の太平洋側におけ
る一般的自然災害である台風・大雨・洪水並びに火災等が予測
されている。第三に三保松原に関しては海岸浸食に伴う高潮な
どの被害がある。これらについてそれぞれ以下のような防災対
策を講じている。噴火及びそれに伴う災害に対しては、気象庁
をはじめとする研究・防災機関が常時観測を行うと同時に、国
の富士山ハザードマップ検討委員会報告書(2004年)に基
づき県及び市町村において火山防災計画(ハザードマップ・避
難計画)などを策定している。雪崩については、吉田口登山道
では馬返より上の登山道に浸透桝を設け、雨水や雪崩による崩
壊を防いでいる。土砂崩れ・土石流(主に大沢崩れ)について
は国が中心となり、源頭部における水分と土砂の分離、山麓に
おける土石流災害防止を目的とした遊砂地の設置などを行って
いる。また、登山道を管理する県では導流堤を設置し、落石の
落下先をコントロールしている。これらの災害は発生自体を防
止することは困難であるため、その被害を最小限にとどめるこ
とを対策の骨子としている。50地震に関する対策としては、
大規模地震対策特別措置法(1978年)に基づき、予知を目
的とした観測体制、予知を前提とした非難・警戒体制、防災施
設整備が行われるとともに、東海地震対策大綱(2003)に

64 :
基づき国・県・市町村の防災計画が策定されている。また、今
後各神社等の耐震化が行われる計画となっている。台風は19
96年9月に富士山南側の人工林地区(ヒノキ)に風倒の被害
(標高1100〜1200m中心、計1125ha、富士山で
は約935haうち国有林620ha)をもたらしたことがあ
るため、1997年より静岡県が中心となり、被害地に対して
自生種(ブナ・ミズナラ)の植栽(のべ22・68ha)を実
施している。また、風倒による被害を防ぐため人工林における
下刈を実施している。大雨・洪水に関しては堤防・遊水地・砂
防堰堤の建設や河川の改修などにより、大雨時の洪水に対する
防止策を講じている。山火事に対しては、国、県、市町村の連
絡・協力体制を確立し、草原地帯においては防火帯を設け、大
規模な火災に対して最大限の対応を可能としている。建造物の
火災に対しては自動火災報知設備・ドレンチャー設備・消火栓
、放水銃などを設置しているほか、自主防火組織も整備するな
ど、万全を期しているので問題ない。万一、上記の災害が発生
した場合においても、速やかに現状復旧の対策を講じるための
制度及び体制を完備しており、資産の価値が減じることはない
。三保松原においては、高潮対策事業として安倍川(土砂供給
源)下流部での砂利採取を1968年より海岸浸食の原因の一
因と考え禁止するとともに、1989年より34年計画(20
34年まで)でヘッドランド・離岸堤の設置や養浜による海岸
保全対策を行い、現在、海岸と平行した方向に年250mの割
合で砂浜の回復が進行している。現在ヘッドランドの一部が景
観に影響を与えているが、砂浜の回復後に撤去する計画が進ん
でいる。登山者の安全に関しては、気候の急変に備え、「富士
山登山指導センター(山頂と富士宮口新五合目)」、「富士山
安全指導センター(吉田口六合目)」と「富士山衛生センター
(富士宮口八合目)」が設けられている。また、富士宮口のす
べて、吉田口七合目以上のほとんどの山小屋にはAEDが設置
されている。(御殿場口はなし、須走口は1軒・東富士山荘)
4)来訪者及び観光の圧力富士山の構成資産のうち私有財産で

65 :
ある小佐野家住宅(御師住宅)を除いた資産はすべて公開され
ている。ただし山体資産範囲については登山道及び山頂部以外
は土地所有者(国、県、富士山本宮浅間大社)の了解が必要で
あり、安全上の観点からも県が登山道からの逸脱を好ましくな
い行為として事実上立入を制限している。山体以外の資産につ
いては、き損・悪戯・盗難等の被害から建造物等の構成資産を
護るために、防犯警備施設を設置するとともに巡視及び監視の
体制を整備し(山宮・村山・人穴等では防犯システムは採用さ

66 :
れていない)、来訪者によるゴミの増加等に対しても地域住民
や関係市町村が適切な管理を行っていることから、観光による
圧力が資産の価値を著しく低下させるようなことは起こり得な
い。山体に関しては、観光客によるごみ及びし尿、並びに自動
車で訪れる来訪者(富士山スカイラインでは4月〜11月の合
計で年平均127,000台・1999〜2009年、富士ス
バルラインで年平均410,000台・2006〜2008年
)による環境への負荷及び混雑の軽減を目的に以下の対策を行
った。ごみに関しては国・県及びNPO法人(富士山ネットワ
ーク・富士山クラブ)、ボランティアによ51る清掃作業が活
発に実施されるとともに(平成20年実績・92回、約64t
、延べ参加人数約7000名)、外国人も含め登山者に対して
マナー向上を呼びかけ、登山道周辺のごみは減少している。山
頂部で発生するごみについては山小屋組合(富士山吉田口旅館
組合等)により、山麓に搬出し、適切に管理・処理されている
。し尿対策に関しては登山道及び山小屋のトイレ48箇所を2
006年までにバイオ処理式等に改良し、環境への負荷を軽減
した。さらに、登山者の増加や設備の老朽化に対応するため、
環境配慮型トイレ適正管理委員会を設けて対策を検討しており
、今後は業者と連携を密にしてメンテナンスをきちんとしてい
くことが確認された。自動車に関しては、土日・休日を中心に
各登山道の利用者数に応じて自家用車の利用を規制し(利用者
の多い富士スバルラインで最大12日間、利用者の少ない御殿
場口はなし)、山麓の臨時駐車場と五合目駐車場間のシャトル
バスによる輸送を行っている。吉田口においては2011年夏
には富士吉田IC付近に1400台の駐車場を整備し、自家用
車の利用規制を15日に拡大する予定である。5)資産と緩衝
地帯の居住者人口構成資産内人口:人緩衝地帯内人口:人合計
:人集計年:2010年No.構成資産の名称構成資産範囲内
人口(人)緩衝地帯内人口(人)合計(人)富士山A1山頂信
仰遺跡A2大宮・村山口登山道A3須山口登山道A4須走口登
山道A5吉田口登山道A6北口本宮冨士浅間神社A7西湖A8

67 :
精進湖AA9本栖湖B1富士山本宮浅間大社B2山宮浅間神社
B3村山浅間神社B4須山浅間神社B5冨士浅間神社(須走浅
間神社)B6河口浅間神社B7冨士御室浅間神社B8御師住宅
52B9山中湖B10河口湖B11忍野八海B12船津胎内樹
型B13吉田胎内樹型B14人穴冨士講遺跡B15白糸ノ滝C
三保松原535.資産の保護の管理a)所有関係各構成資産の
所在地及び所有者については、以下に記すとおりである。b)
法に基づく指定保護資産を構成する重要文化財に指定された「
記念工作物」「建造物群」、史跡、特別名勝又は名勝、54特
別天然記念物又は天然記念物に指定された「遺跡」は、古社寺
保存法(1897年制定)、史蹟名勝天然紀念物保存法(19
19年制定)、国宝保存法(1929年制定)などの下に適切
な保護が行われてきた。また、1950年には、それらの諸法
を統合・改革して文化財保護法が制定され、それ以後、現在に
至るまで、個々の構成資産はこの法律の下に万全の保護措置が
講じられてきた。富士山の山体及び北側の構成資産の範囲にお
いては、さらに国立公園法(1936年制定)、それを改定し
た自然公園法(1957年制定)により、その優れた自然の風
景地が保護されてきた。17個の構成資産の指定保護の状況に
ついては、以下に示すとおりである。(A)富士山1936年
2月1日:富士箱根国立公園の指定(1952年10月7日:
名勝富士山の指定1952年11月22日:特別名勝富士山の
指定1966年10月6日:特別名勝富士山の指定地域の変更
(A1)山頂信仰遺跡(特別名勝範囲内・Aに同じ)史跡富士
山の指定予定(A2)大宮・村山口登山道史跡富士山の指定予
定(A3)須山口登山道(一部のみ特別名勝範囲外・範囲内は
Aに同じ)史跡富士山の指定予定(A4)須走口登山道史跡富
士山の指定予定(A5)吉田口登山道(特別名勝範囲内・Aに
同じ)史跡富士山の指定予定(A6)北口本宮冨士浅間神社1
907年8月28日:特別保護建造物(富士嶽神社境内東宮本
殿)の指定1953年3月31日:重要文化財北口本宮冨士浅
間神社本殿の指定1953年3月31日:重要文化財北口本宮

68 :
冨士浅間神社西宮本殿の指定史跡富士山の指定予定(A7)西
湖1936年2月1日:富士箱根国立公園の指定(名勝富士五
湖の指定予定55(A8)精進湖1936年2月1日:富士箱
根国立公園の指定(名勝富士五湖の指定予定(A9)本栖湖※
本栖湖からの展望面含む1926年2月24日:天然紀念物富
士山原始林の指定1936年2月1日:富士箱根国立公園の指
定(2010年3月8日:天然記念物富士山原始林及び青木ヶ
原樹海の指定名勝富士五湖の指定予定(B1)富士山本宮浅間
大社1907年5月27日:特別保護建造物浅間神社本殿の指
定1944年11月7日:天然紀念物湧玉池の指定1952年
3月29日:特別天然記念物湧玉池の指定史跡富士山の指定予
定(B2)山宮浅間神社史跡富士山の指定予定(B3)村山浅
間神社史跡富士山の指定予定(B4)須山浅間神社史跡富士山
の指定予定(B5)冨士浅間神社(須走浅間神社)史跡富士山
の指定予定(B6)河口浅間神社史跡富士山の指定予定(B7
)冨士御室浅間神社1985年5月18日:重要文化財冨士御
室浅間神社本殿の指定史跡富士山の指定予定(B8)御師住宅
1976年5月20日:重要文化財小佐野家住宅の指定重要文
化財旧外川家住宅の指定予定(B9)山中湖561936年2
月1日:富士箱根国立公園の指定(名勝富士五湖の指定予定(
B10)河口湖1936年2月1日:富士箱根国立公園の指定
(名勝富士五湖の指定予定(B11)忍野八海1934年5月
1日:天然紀念物忍野八海の指定(B12)船津胎内樹型19
29年12月17日:天然紀念物船津胎内樹型の指定(B13
)吉田胎内樹型1929年12月17日:天然紀念物吉田胎内
樹型の指定(B14)人穴富士講遺跡史跡富士山の指定予定(
B15)白糸ノ滝1936年2月1日:富士箱根国立公園の指
定(1936年3月6日:名勝及天然紀念物白糸ノ滝の指定(
C)三保松原1922年3月8日名勝三保松原の指定1977
年4月1日名勝三保松原の一部指定解除1990年3月29日
名勝三保松原の追加指定及び一部指定解除c)保護の実施手段
1)資産各構成資産については、遺跡、記念工作物、建築物群

69 :
のみならず、それらと密接な関連を持つ展望線など、富士山の
本質的価値を構成する諸要素を厳格かつ的確に把握し、それら
をすべて含む範囲について、価値の中核をなす部分は文化財保
護法の下に指定(特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然
記念物、重要文化財、史跡)され、また、価値の中核をなす部
分を取り囲む地域の大部分は自然公園法の下に国立公園(国立
公園、県立自然公園)に指定している。これら範囲のうち、富
士山の顕著な普遍的価値を証明するために必要不可欠な範囲を

70 :
資産範囲とした。これらの範囲の大部分においては、国の許可
無くそれらの現状を変更することはできない。文化財保護法、
自然公園法の及ばない地域は国有林であり、開発行為が行われ
ることはない。また、森林法に基づき森林の伐採に関しても適
切な管理が行われている。文化財保護法の定めるところにより
、特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念物、重57
要文化財、史跡の保存管理・修理・公開については、所有者又
は管理団体が適切に行うことを原則としている(法第31条・
第32条の2、第113条・第115条・第119条)。また
、自然公園法が定めるところにより、国立公園の管理と保護に
ついては、国又は管理団体が適切に行うことを原則としている
(法第9条、第37条、第38条、第39条)。重要文化財に
指定されている建造物の修理に関して、部材の痕跡調査などか
ら判明した原型への復元などの現状変更等を行おうとするとき
や、特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念物、史跡
の指定地内において現状変更等を行おうとするときは、あらか
じめ文化庁長官の許可を得なければならない(法第43条・第
125条)。文化庁長官は国が設置し、イコモス国内委員会委
員を多数含む文化審議会文化財分科会に対して当該現状変更等
に関する諮問を行い、その答申を経て許可することとしている
。したがって、資産の現状を変更する場合には、学術的かつ厳
密な審査に基づく許可を必要としている。また、国立公園(特
別保護地区及び特別地域)の現状変更については、あらかじめ
環境大臣の許可を得なければならない(法第13条、第14条
)。特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念物、重要
文化財、史跡の管理と修理に対しては、必要に応じて国が経費
を補助し、技術的指導を行うこととしている(法第35条・第
47条・第118条)。国立公園の管理と保護は国が費用を負
担する(法43条)。また、管理団体が管理と保護を行う場合
、国が必要な情報の提供又は指導・助言を行う(法42条)。
資産範囲の国有林については森林施業計画により皆伐は年5h
aにとどめるなど景観への影響を最小限に留めるよう適切に保

71 :
護・管理されている。加えて国有林の大部分である保安林は指
定施行要件(保安林の種別ごとに異なる。)に合致しない伐採
等には都道府県知事の許可が必要である(法34条)。2)緩
衝地帯緩衝地帯の全域においては、文化財保護法、自然公園法
、景観法(それに基づく景観条例及び景観計画)、森林法、砂
防法、海岸法、又は関係各県・市町村が定める条例等の下に資
産の周辺環境について万全な保全措置が講じられている。緩衝
地帯の範囲については、資産から眺望できる山の稜線のほか、
法律・条例等に基づく境界、地籍境界、行政界、道路等の明確
な境界などを考慮しつつ、資産の保護に必要不可欠な範囲を定
めた。山体の緩衝地帯については富士山を周辺ないし構成資産
から展望した際、資産範囲を含め良好な景観を形成する範囲を
基準としている。この範囲の中には演習場を挟んで、三保松原
以外のすべての構成資産が含まれる。緩衝地帯において行われ
る建築物及び工作物の新築・増築・改築、土地の形質変更等に
係る行為、木竹の伐採については、許可制や届出制に基づく規
制を設けており、これらの行為に関する重要な事項については
、特に関係各市町村の景観審議会等による調査、審議に基づき
、関係市町村が事前に適切な指導や助言を行うこととしている
。なお、緩衝地帯設定の考え方や、行為規制等の詳細について
は、本推薦書の付属資料及び別添参考資料を参照されたい。緩
衝地帯は大きく3つの方法により保護措置が講じられている。
一番目は自然公園法(山梨県のほぼ全域)、二番目は景観法に
基づく各市町村の景観条例及び景観計画(静岡県富士市・富士
宮市ほ58か)、三番目が各市町村独自の景観条例や土地利用
事業指導要綱(山梨県富士吉田市の一部・静岡県裾野市・御殿
場市・小山町)である。三番目の地域に関しては将来的に二番
目の保護措置に移行する予定である。なお、三保松原などいく
つかの資産においては、資産範囲が文化財としての登録範囲よ
りも狭く設定されているため、緩衝地帯の一部は文化財保護法
により保護されている。これらの地域では適用する法令等に違
いはあるが、緩衝地帯において行われる建築物・工作物の新築

72 :
、増築、改築、土地の形質変更等に係る行為については、許可
制ないし承認制・届出制に基づく規制が定められ、資産の周辺
環境の万全な保護措置が講じられている。緩衝地帯に適用され
る諸法令等の概略法令名対象地区規制内容許認可文化財保護法
三保松原(一部)現状変更文化庁長官の許可自然公園法(国立
公園)山体・静岡県・山梨県工作物の新築等、ごみ捨て又は放
置、木竹の採取、土石の採取、車馬の乗り入れ等環境大臣の許
可(特別地域)、届出(普通地域)自然公園法(県立自然公園
)県立自然公園条例三保松原(一部)工作物の新築等、ごみ捨
て又は放置、木竹の採取、土石の採取、車馬の乗り入れ等県知
事の許可(特別地域)、命令景観条例及び景観計画(景観法に
基づく)富士市・富士宮市静岡市・忍野村・山中湖村・富士河
口湖町建築物の新築等、工作物の新設等、開発行為、土石の採
取・堆積等(高さ・色彩・形状を規制)市町村長への届出勧告
、指導・要請(問題があった場合)景観条例(自主条例)富士
吉田市建築の新築等市長への届出勧告、助言・指導土地利用事
業指導要綱裾野市・御殿場市・小山町土地利用事業市長・町長
の承認森林法(保安林指定施業用件)保安林(土砂流出防備保
安林)(保健保安林)(水源涵養保安林)立木の伐採(原則択
抜※水源涵養保安林除く)県知事の許可砂防法(静岡県砂防指
定地管理条例)砂防指定地(富士宮市等)施設又は工作物の新
築等、竹木の伐採等、土地の形状変更、土石の採取・集積又は
投棄等県知事の許可海岸法三保松原(海岸の水際線から50m
の範囲)土石の採取、施設等の新設、土地の掘削等海岸管理者
(静岡県河川砂防管理室)の許可県有林管理計画山梨県県有林
なし(水土保全林)(森林と人との共生林)立木の伐採皆伐〜
禁伐59(資源の循環利用林)なお、緩衝地帯の外側に広がる
市街地のうち富士山の主要な眺望(北側では河口湖・山中湖北
部から眺望した富士山、南側では三保松原から眺望した富士山
)に若干の影響を及ぼす範囲については、日本政府が自主的に
保護する範囲として「保全管理区域」を設定している。F資産
に影響する可能性がある個別の開発計画企業立地促進法に基づ

73 :
く静岡県東部地域基本計画(静岡県及び14市町)2009年
2月策定市町村森林整備計画(富士宮市・富士市・裾野市・御
殿場市・小山町)2006年4月策定e)資産の保存管理計画
又はその他の保存管理体制構成資産のうち、史跡又は特別名勝
・名勝、特別天然記念物・天然記念物に指定されている土地及
びその範囲に立つ建造物(重要文化財含む)については、19
19年に制定された史蹟名勝天然紀念物保存法及び1950年
以降においては文化財保護法に基づく段階的な指定により保護

74 :
措置がとられ、史跡等の管理団体である各市町村と静岡県・山
梨県が個別に保存管理計画を策定して適正な保存管理に当たっ
ている。さらに、2011年には、資産を構成する重要文化財
、史跡、特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念物に
ついて、静岡県・山梨県が文化庁、所有者である宗教法人・個
人、史跡等の管理団体である各市町村との調整の下に構成資産
の全体を対象とする包括的保存管理計画を策定し、保存管理全
体の整合を図る予定である。上記した各構成資産の保存管理計
画の概要と資産全体を対象とする包括的保存管理計画の全文に
ついては、本推薦書付属資料−として添付している。1)保存
管理計画各構成資産の保存計画の策定状況については、本推薦
書の7.資料、e)参考文献、3)保存管理計画書に示すとお
りである。特に静岡県・山梨県教育委員会は、文化庁及び関係
各市町村の教育委員会との十分な調整の下に『世界遺産富士山
包括的保存管理計画』を策定し、資産の全体を視野に入れた総
括的な保存管理を行う予定である。包括的保存管理計画に定め
る基本方針は、次の5点である(別添参考資料)。(1)構成
資産の適切な保存管理(2)周辺環境を含めた一体的な保全(
3)経過観察の実施(4)整備・公開・活用推進(5)保存管
理体制の整備と運営包括的保存管理計画に定めた上記の基本方
針に基づき、管理団体である県・市町村が個々の重要文化財、
史跡、特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念物の保
存管理計画を利用し、具体的で適切な保存管理に当たる予定で
ある。これらの保存管理計画を要約したものについては、付属
資料に示すとおりである(別添参考資料)。「富士山」を総体
として保全するためには、構成資産のみならず緩衝地帯をも含
め、資産に影響を及ぼす人工物などを適切に制御していく必要
がある。そのため、構成資産の本質的な価値に負の影響を与え
る可能性のある人工物や開発については、たとえそれが緩衝地
帯におけるものであってもできる限り抑制することとし、やむ
を得ず設置する場合であっても、最小限の数量・規模とすると
ともに、色彩等の観点から景観にも十分配慮するよう関係者へ

75 :
の理解と協力を求める予定である。なお、既存の鉄柱・看板・
広告塔など構成資産に影響を及ぼすものについては、撤去また
は修景に努め、公益上必要と考えられる施設については、現状
の利用状況を尊重しつつ、将来的に撤去又は移転等について検
討するとともに、当面の間、資産に対する影響の軽減を図るこ
ととする予定である。図保存管理計画の構造図「富士山」包括
的保存管理計画62各構成資産の都市計画保存管理計画等観光
計画(山梨県・静岡県・各市町村)整備計画等632)保存管
理体制包括的保存管理計画に定めた上記の基本方針に基づき、
静岡県・山梨県と関係市町村は、広範囲にわたる富士山の構成
資産及び緩衝地帯を包括的保存管理計画に基づき統一的に管理
するため「富士山世界遺産両県協議会」(以下「両県協議会」
という。仮称)及びその支部組織である「静岡県世界遺産協議
会」・「山梨県世界遺産協議会」(以下両者をまとめて「各県
協議会」という。仮称)を設置し、各構成資産を成す重要文化
財、史跡、特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念物
の保存管理計画を共通の基準に基づき確実に実行する予定であ
る。両県協議会及び各県協議会は、資産及びその周辺地域にお
いて、国・静岡県・山梨県・関係市町村等・民間団体等が実施
する予定の事業等についての情報を総合的に把握し、それぞれ
の事業が、資産の保存管理に負の影響を及ぼすことなく、適切
に実施されるように関係各機関の連絡・調整を行う。両県協議
会・各県協議会における調整結果に基づき、静岡県・山梨県及
び関係市町村は、民間事業者等に対して権限に基づく適切な指
導や助言を行うこととする予定である。また、両県協議会には
国関係機関(文化庁・環境省・国土交通省・防衛省・林野庁)
、国内の大学及びイコモス会員等の研究者・専門家が参加し、
学術的な観点からの助言を行う予定である。各県協議会の下に
は、各県庁内の実務担当者レベルの調整組織として、静岡県(
山梨県)庁内連絡会議を設置するとともに、各市町村担当者や
民間業者(観光協会、登山組合、神社関係者)などの代表者と
の調整組織として静岡県(山梨県)保存管理協力者会議を設置

76 :
し、十分な連携を図る予定である。さらに、静岡県・山梨県文
化財保護審議会をはじめ各市町村文化財調査委員会は指定文化
財及び文化財全体に関する事項を審議し、それぞれ、静岡県・
山梨県教育委員会及び直接的な構成資産の管理を行う各市町村
教育委員会に対して建議を行っている。これらの組織の運営は
静岡県・山梨県の世界遺産推進課が行い、専門の職員名により
業務が行われる。また、富士山文化課世界遺産推進係を設置し
た富士宮市教育委員会や世界遺産推進室を設置した富士吉田市
をはじめ、各市や市町村教育委員会においても構成資産の保存
管理を担当する専門の職員を定めている。これらの組織体制に
ついては、さらなる充実化に努める予定である。なお、上記の
体制については現在登録準備のために設置され、実質的に機能
している組織を改変・名称変更・役割変更するものであり、そ
の運営に関して問題は生じない。図「富士山」に係る保存管理
の組織体制図(仮案・今後変更の可能性大)64富士山世界遺
産両県協議会(構成)静岡県、山梨県、関係市町村学識経験者
等国関係機関(文化庁、環境省、国土交通省、防衛省、林野庁
)f)財源及び財政的水準各構成資産の管理については、それ
ぞれの所有者又は管理団体が行っている。特に「記念工作物」
、「建造物群」の修理を行う場合には、小修理その他特別な場
合を除いて国が必要に応じて経費の50開発事業者、地域住民
、関係者静岡県世界遺産協議会山梨県世界遺産協議会(委員)
行政:静岡県、関係市町(委員)行政:山梨県、関係市町村等
民間:観光協会、登山組合、神社関係者等民間:観光協会、山
小屋組合、静岡県保存管理協力者会議(委員)関係市町(企画
・都市計画・文化財担当)観光関係者、登山組合、神社関係者
等神社、関係者等静岡県庁内連絡会議山梨県庁内連絡会議(委
員)関係課等(委員)関係課等山梨県保存管理協力者会議(委
員)関係市町村(企画、都市計画、文化財担当)観光関係者、
山小屋組合、神社関係者等65〜85%の補助金を交付してい
る。「遺跡」である史跡、特別名勝又は名勝、特別天然記念物
又は天然記念物において発掘調査・修理・整備の事業を行う場

77 :
合にも、国が必要に応じて経費の50%の補助金を交付してい
る。これらの国の補助金に併せて、静岡県・山梨県は国の補助
金相当額を控除した額の50%に相当する額以内の補助金を交
付し、構成資産所在の市町村が同内容の補助金を交付する予定
である。また、重要文化財、史跡、特別名勝又は名勝、特別天
然記念物又は天然記念物において、それぞれ防災施設等を設置
する事業についても、同様の比率の下に経費の補助を行うこと
としている。なお、上記の補助金とは別に、2006年より構

78 :
成資産の整備活用及び保護に関する教育プログラムのための基
金を設けており(「富士山基金」)、基金には国内の経済界を
中心に民間からの資金提供も行われている。g)保全及び保存
管理の技術における専門的知識及び研修構成資産の保存管理に
ついては、所有者(宗教法人を含む)をはじめ、静岡県・山梨
県教育委員会及び各史跡等の管理団体に指定された各市町村教
育委員会が実施している。静岡県・山梨県教育委員会とその関
連機関である財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所及び山梨県
埋蔵文化センターでは、それぞれの組織内に文化財の高度な保
存・管理技術を持つ専門職員及び技術者を配置し、管理団体で
ある各市町村が行う保存管理に対して適切な技術的支援を行っ
ている。また、独立行政法人国立文化財機構は、全国の史跡等
における整備活用事業の円滑な推進と専門職員及び技術者の技
術や能力の向上のために、地方公共団体の専門職員を対象とし
て定期的に研修を開催しており、静岡県・山梨県をはじめ関係
各市町村の職員も当該研修等に積極的に参加して、資産の整備
活用の技術向上に努める予定である。さらに、独立行政法人国
立文化財機構(201年度より国内の大学の研究者及びイコモ
ス会員を含む富士山世界遺産両県協議会の助言者及び両県協議
会も含まれる予定である)の助言・指導に基づいて行われてい
る保存・管理技術は、高い水準を維持する予定である。重要文
化財、史跡、特別名勝又は名勝、特別天然記念物又は天然記念
物を維持するための措置として簡単な修理又は復旧を行う場合
は、事前の届出に基づき、文化庁が適切な技術的指導を行って
いるため、管理技術の水準はきわめて高く保たれている。資産
の見回りや清掃等の日常的な維持管理については、静岡県・山
梨県教育委員会から嘱託された文化財保護指導員(静岡県3名
、山梨県2名:構成資産の所在地区を担当する人数)のほか、
地域住民・民間団体・管理団体が協働して積極的に行っている
。表技術者の資質向上のために行われているおもな研修h)来
訪者の施設と統計構成資産の大部分は、周囲に展開する景勝地
とともに日本を代表する優れた名所として国内のみならず海外

79 :
に広く知られており、夏季の登山をはじめとして四季折々の自
然の姿を求めて来訪する観光客でにぎわい、現在も国内有数の
観光地となっている。図富士山への登山者数の推移(各登山口
推計登山者数)静岡県山梨県富士宮口御殿場口須走口県計吉田
口合計図富士山への来訪者数の推移(7・8月における各登山
口五合目への入れ込み数推計)66図主な構成資産の来訪者数
の推移(推計等)富士山では、山頂へ7〜8月の登山期に約2
9万人(1999〜2009年平均)が登山し、自動車でアク
セス可能な各登山道の「五合目」(自動車道建設以前の五合目
とは一致しないため「新五合目」と呼ばれる)には、同期間に
約250万人(1999〜2009年平均)が訪れ、近年は外
国人がかなりの数を占めるようになっている(外国人の数に関
する統計は取られていないため、正確な数値は不明である)。
富士山体においては、国内外から来訪する観光客や登山者等の
利用者の安全と利便を確保するとともに、秩序ある良好な風致
景観を維持及び形成することを目的として、「富士山における
標識類静岡県山梨県合計富士宮口御殿場口須走口県計吉田口(
年間)富士吉田・河口本栖湖・精進湖・山中湖・忍野八三保松
原浅間大社白糸ノ滝湖・三つ峠周辺西湖周辺海周辺総合ガイド
ライン」作成し、統一されたデザインによる四ヶ国語(英・中
・韓及び日)の道標や解説板を設置しているほか、富士山体の
主として緩衝地帯には駐車場・トイレ・資料館等の便益施設が
整備されている。今後とも、適切な計画の下に順次整備してい
くこととしており、「ビジターセンター」などのガイダンス施
設の充実も行われる予定である。自動車による訪問者の管理に
ついては、土日や休日等登山者が突出して増加する日に、仮設
トイレ・臨時駐車場等を設置するとともに、登山用の自動車道
は自家用車の通行(登山道ごとに異なる、最も利用数の多い吉
田口(富士スバルラインを利用)で最大12日間)を規制しシ
ャトルバスによる代替輸送を行うことで環境への負荷と混雑を
軽減するようにしている。この日数は山麓の駐車場の整備に従
い(2011年に吉田口に1400台の駐車場を整備)今後拡

80 :
大(吉田口で15日)する予定である。登山者の安全管理につ
いては、4箇所の案内施設(山頂、富士宮口、吉田口、富士ス
バルライン終点)と3箇所の救護センター(富士宮口に1箇所
、吉田口に2箇所)が対応を行っている。南麓では静岡県によ
って30名の「富士登山ナビゲーター」が登山指導・案内・通
訳業務を行っており、北麓では富士吉田市条例によって、登山
下山の案内を行う約230名のガイドが「富士吉田市案内員組
合」に登録している。さらに吉田口の山小屋では、民間の気象
予報会社と連携し山岳気象情報を共有している。事故に対して
は県警察山岳救助隊及び消防本部や市町村消防署が対応し、場
合により自衛隊の出動も要請する。また、気象条件が一般の登
山を行うには危険となる冬季は登山道・山小屋を閉鎖(山梨県
側は10月初旬、静岡県側は11月末より翌年7月初旬)する
ことにより十分な装備と経験を有する者以外の登山は不可能で
ある。冬山登山者は各登山口所轄警察署(御殿場署・富士宮署
・富士吉田署)に登山計画書の提出を推奨されている(また、
おおむね11月末〜4月末まで静岡県側の登山用自動車道は閉
鎖され、山梨県側も積雪・凍結等の状況に応じて段階的に閉鎖
される。)山体以外の構成資産については、おおむね来訪者数
に応じた駐車場・トイレ等を整備しており、今後、これらをさ
らに整備する予定が立てられている。i)資産の整備・活用に
関する方針・計画静岡県・山梨県では、構成資産及びその周辺
を対象とした保存管理に関する事業計画を定め、地域住民によ
る活用の取組をも取り込んで計画的に実施している。こうした
諸計画に基づき、富士山地域の歴史的背景を展示する「富士吉
田市歴史民俗博物館」「裾野市立富士山資料館」「富士市立博
物館」の活用や、富士山に係る包括的な保存・管理や利用者ニ
ーズに適切に対応する拠点の整備を検討するなど富士山の適切
な保全・管理・活用を図っていく。加えて、富士山についての
市民向け講座の開催をはじめ、児童・生徒を対象とした体験学
習などの情報発信施策が定期的に実施されている。個別の資産
については、「遺跡」である特別名勝又は名勝、天然記念物、

81 :
史跡をはじめ「記念工作物」・「建造物群」である重要文化財
に指定されている建造物については、一部を除き所有者・管理
団体が年間を通じて一般に公開している。なお、登山について
は、登山期間(基本的に7月1日〜8月31日)が公開時期に
当たる。この時期以外の登山も禁止されてはいないが、道路・
山小屋等の閉鎖、および冬季の気象条件などにより専門家以外
の登山は困難である。j)専門分野・技術・管理に関する人的
措置68静岡県・山梨県教育委員会の委嘱を受けた文化財保護

82 :
指導員(以下、「指導員」という。)が定期的に文化財を巡回
・点検し、両県教育委員会に対して保護に関する助言を行って
いる。静岡県・山梨県は、指導員の調査報告に基づき、所有者
や関係市町村に対して文化財の保存管理に関する指導を行って
いる。このように、将来的に良好な状態の下に資産を維持して
いくための体制についても万全を期している。6.経過観察(
モニタリング)の体制a)保存状況を計測するための主たる指
標構成資産である「遺跡」・「記念工作物」・「建造物群」を
はじめ、それらの緩衝地帯については、顕著な普遍的価値の確
実な保持、修理又は復旧、維持管理、防災及び危機管理に関す
る体制の充実及び技術の向上を目的として、4章に掲げた保全
状況及び資産全体に与える影響に対し、次に掲げる主な観点の
下に適切な指標を設定し、定期的かつ体系的な経過観察(モニ
タリング)を実施する予定である。@「3.記載のための価値
証明」に記された資産の価値と真実性及び完全性が維持されて
いるか。A「4.保全状況と資産に与える影響」に記された諸
要素(開発・環境問題・自然災害・観光・その他)が資産とそ
の緩衝地帯にどのような影響を与えているか/与えたか。B「
5.資産の保護と管理」に関連して、資産とその緩衝地帯及び
それらを取り巻く周辺の広い地域が、相互に呼応しつつ資産の
顕著な普遍的価値に関する知識を発信する場として適切な発展
を遂げているか。設定するおもな観察指標については、以下の
表に示すとおりである(予定)。表観察指標一覧表※斜字は富
士山を守る指標(2010年度改定予定)から指標周期記録組
織(1)資産の視覚的結a)視点場における景観阻害要因数毎
年両県びつきの保護b)電線の地中化延長毎年両県a)富士山
環境教育開催数・参加者数毎年両県b)パンフレット・HPに
よる情報提供数毎年両県c)主要地点での観光客の入込み数毎
年両県d)登山者数(5合目以上)毎年市町村e)登山者数(
8合目以上)毎年環境省(2)資産の関連性の保護f)森林伐
採面積(森林の整備形態?)毎年両県a)文化財保護法におけ
る現状変更の数毎年両県b)自然公園法における許可行為の数

83 :
毎年両県・環境省c)生活排水クリーン処理数毎年両県(3)
個別資産の保護d)富士山5合目以上のごみ収集量毎年両県a
)自然公園法における許可行為の数毎年両県・環境省b)ゴル
フ場面積毎年両県(4)緩衝地帯の保護c)森林伐採面積(森
林の整備形態?)毎年両県69d)廃棄物の不法投棄量毎年両
県なお、上記指標の具体的な設定根拠及び測定方法等に関する
内容の詳細については、本推薦書参考資料である包括的保存管
理計画において具体的に記述している。b)資産の経過観察(
モニタリング)のための行政上の体制定期的報告を含む経過観
察(モニタリング)については、以下の表に示すように管理団
体である山梨県及び関係各市町村が、静岡県・山梨県教育委員
会を通じて文化庁の指導の下に行う。『世界遺産条約履行のた
めの作業指針』(2008年)第5章に基づき、年度ごとに情
報収集及び記録作成を行い、蓄積した成果について6年ごとに
保存管理状況の評価としてまとめ、世界遺産センターを通じて
世界遺産委員会に定期報告書(英文)を提出する。モニタリン
グ体制分担管轄域担当組織1.担当組織及び担当課名資産及び
緩衝地帯2.監督組織資産及び緩衝地帯組織名称:文化庁組織
代表者氏名:文化庁長官担当課及び担当責任者氏名:記念物課
課長3.指導組織資産及び緩衝地帯組織名称:静岡県教育委員
会:山梨県教育委員会組織代表者氏名:静岡県教育長:山梨県
教育長担当課及び担当責任者氏名:静岡県世界遺産推進課課長
:山梨県世界遺産推進課課長c)以前の保全状況報告の成果経
過観察(モニタリング)に必要とされる諸事項に関し、現時点
及び過去における資料・情報については、静岡県・山梨県・及
び資産の所在する市町の下に適切に収集・保管されている。そ
れらの一覧表については、以下のとおりである。表(過去に経
過観察のために実施した過去の資料・情報)番号編著者標題対
象資産年要約707.資料a)写真・スライド・画像一覧表N
oフォーマット標題撮影年月撮影者・編集者著作権保持者著作
権者連絡先非独占的権利譲渡b)保護のための指定に関する文
書などc)資産関連資料d)資産管理機関住所e)参考文献8

84 :
.連絡先a)申請書作成者連絡先b)管理組織・官庁c)その
他の組織d)公式ウェブサイト9.署名構成資産の分析(1)
番号構成資産候補名所在市町村文化財指定状況保存管理計画策
定状況H21.10.30学術委員会評価分析結果備考富士山
両県未着手分析結果A:富士山の価値を証明するのに必須の資
産C:富士山の価値を証明するのに不可欠ではない資産平成2
1年10月30日の各県学術委員会(両県合同開催)での評価
A:顕著な普遍的価値を有する資産B:顕著な普遍的価値につ
いてさらに調査等が必要な資産C:顕著な普遍的価値を有しな
い可能性がある資産保留:評価を保留平成22年度第1回静岡
県学術委員会・第2回山梨県学術委員会資料3世界文化遺産富
士山包括的保存管理計画原案−1−世界文化遺産富士山包括的
保存管理計画原案目次第1章目的と経緯1目的2計画策定の経
緯(1)各県における検討の経緯(2)学術委員会・保存管理
計画検討部会組織3計画の位置付け(1)行政計画との関連・
連携(2)計画の実施第2章構成資産の概要1構成資産の一覧
2資産及び緩衝地帯等の範囲3構成資産の概要(1)富士山山
体及び登山道A富士山A1山頂信仰遺跡A2大宮・村山口登山
道A3須山口登山道A4須走口登山道A5吉田口登山道A6北
口本宮冨士浅間神社A7西湖A8精進湖A9本栖湖(2)信仰
B1富士山本宮浅間大社B2山宮浅間神社B3村山浅間神社B
4須山浅間神社B5冨士浅間神社B6河口浅間神社B7冨士御
室浅間神社B8御師住宅B9山中湖B10河口湖B11忍野八
海B12船津胎内樹型−2−B13吉田胎内樹型B14人穴富
士講遺跡(人穴浅間神社)B15白糸ノ滝(3)眺望C1三保
松原第3章保存管理の基本方針1顕著な普遍的価値及び周辺環
境等を構成する諸要素(1)顕著な普遍的価値を構成する諸要
素@富士山山体及び登山道A信仰B眺望(2)顕著な普遍的価
値を構成する諸要素と密接に関わる諸要素@自然地形A森林、
植栽樹木B社寺の境内に含まれる歴史的な建造物及び工作物等
以外の建築物及び工作物C道路とその関連施設(3)周辺環境
を構成する諸要素@自然的要素A歴史的要素B人文的要素2保

85 :
存管理の基本方針(1)構成資産の適切な保存管理(2)周辺
環境を含めた一体的な保全(3)経過観察の実施(4)整備・
公開・活用推進(5)保存管理体制の整備と運営第4章構成資
産の保存管理1現状の把握(1)富士山山体及び登山道(2)
信仰(3)眺望2保存管理の基本的な考え方(1)現状変更の
制限についての考え方(2)地区区分についての考え方(3)
指定地に関わる諸法令について3具体的な施策(1)第1種保
護地区(2)第2種保護地区(3)三保松原−3−第5章緩衝

86 :
士山の秀麗な姿は古くから芸術活動の対象となり、その結果生
み出された「万葉集」の和歌などの文学作品や「浮世絵」など
の秀麗で独自の絵画作品は、日本国内のみならず海外にも広く
知られ、様々な影響を与えてきた。それらの作品群は、地球上
の特定の地域において独自の文化的伝統が形成・発展するのに
当たり、富士山が重要な源泉となった極めて強力な関連性であ
ることを示している。このような価値をもつ「富士山」の構成
資産は、山梨県と静岡県の二県にまたがって分布している。こ
れら一連の構成資産を世界文化遺産「富士山」の総体として確
実に保存し、確実に次世代へと継承するためには、両県共通の
考え方を基に、各構成資産全体を一つの資産として包括的に保
存管理していくための方法を整理していく必要があることから
、個別の構成資産についての保存管理計画に加え、構成資産相
互の関係性を保全し全体の価値を継承していくための包括的な
保存管理計画を策定しておくことが必要である。そのため、山
梨県・静岡県は、文化庁・環境省の指導・助言の下に関係市町
村、関係各機関等と調整を図り、本計画を策定した。「富士山
」包括的保存管理計画−5−各構成資産の都市計画保存管理計
画等観光計画(環境省・山梨県・静岡県・各市町村)整備計画
等図包括的保存管理計画の体系2計画策定の経緯富士山包括的
保存管理計画は、構成資産に係る個別の保存管理計画を基礎と
し、世界遺産の推薦に当たって必要とされる保存管理及び整備
に係る理念・基本方針とその具体的内容について明示するため
、学術研究者等により構成される山梨県・静岡県学術委員会及
び二県学術委員による審議を経て策定されたものである。学識
経験者等により構成する各県学術委員会のもとに、保存管理計
画の原案を検討する保存管理計画検討部会を設置した。原案を
検討するにあたり、県庁内の関係部署との連携や共通認識を得
るため、それぞれ「山梨県保存管理計画検討プロジェクトチー
ム」(表)及び「静岡県保存管理計画検討庁内連絡会議」(表
)を設置し、連携・確認を行った。また、富士山の効果的かつ
確実な保存管理を行うためには、地元関係者など幅広い方々の

87 :
協力・助言が不可欠であることから、関係自治体・地域住民・
観光関係者・神社関係者などで構成する「山梨県保存管理計画
策定協力者会議」及び「静岡県保存管理計画協力者部会」を設
置し、連携を図った。さらに、二県学術委員会のもとに設置し
た「包括的保存管理計画検討部会」における検討とあわせ、文
化庁の指導・助言の下、201■年■月に策定した。(1)各
県における検討の経緯両県の経緯(包括的保存管理計画検討部
会と学術委員会)2007年11月29日平成19年第1回包
括的保存管理計画検討部会・包括保存管理計画の必要性・国内
の世界遺産における包括的保存管理計画の事例2007年12
月26日平成19年第2回包括的保存管理計画検討部会・目的
と経緯・構成資産の概要・保存管理の包括的な基本方針200
8年3月17日平成19年度第2回学術委員会・包括的保存管
理計画検討部会の審議結果2008年6月19日平成20年度
第1回包括的保存管理計画検討部会−6−・包括的保存管理計
画の役割・構成要素と本質的価値の明確化2009年5月20
日平成21年度第1回包括的保存管理計画検討部会・各資産候
補の概要について・構成資産、緩衝地帯、保存管理区域につい
て2010年3月19日平成21年度第2回学術委員会・保存
管理計画の考え方について山梨県の経緯2007年8月31日
平成19年第1回山梨県保存管理計画検討部会・保存管理計画
の事例2007年12月9日現地調査2008年1月31日平
成19年度第2回山梨県保存管理計画検討部会・包括的保存管
理計画検討部会の審議結果・山梨県保存管理計画の基本方針2
008年2月21日平成19年度第3回山梨県・静岡県学術委
員会・各県保存管理計画検討部会の審議結果2008年4月1
6、17日現地調査2008年5月1日平成20年度山梨県保
存管理計画策定ワーキング・山梨県保存管理計画の策定につい
て2008年6月10日現地調査2008年6月30日現地調
査2008年7月22日平成20年度第1回山梨県保存管理計
画検討部会・構成要素と本質的価値の明確化・保存管理の方法
と考え方2009年4月24日平成21年度第1回山梨県保存

88 :
管理計画策定協力者会議・富士山の世界文化遺産登録の現状に
ついて・山梨県保存管理計画策定協力者会議について2009
年6月19日平成21年度第1回山梨県保存管理計画検討部会
・各資産候補の概要について・構成資産、緩衝地帯、保存管理
区域について2009年8月26日平成21年度山梨県保存管
理計画策定ワーキング・富士山世界文化遺産登録への取組状況
について・山梨県保存管理計画の策定について2010年3月
16日平成21年度第3回山梨県・静岡県学術委員会・保存管

89 :
理計画の考え方について2010年6月30日平成22年度第
1回山梨県保存管理計画検討部会静岡県の経緯2007年7月
5日平成19年度第1回静岡県保存管理計画検討部会・保存管
理計画について−7−2008年1月23日現地調査2008
年1月30日平成19年度第2回静岡県保存管理計画検討部会
・包括的保存管理計画検討部会の審議結果・静岡県保存管理計
画について2008年2月21日平成19年度第3回山梨県・
静岡県学術委員会・各県保存管理計画検討部会の審議結果20
08年7月16日平成20年度第1回静岡県保存管理計画検討
部会・包括的保存管理計画検討部会の報告・静岡県保存管理計
画について2008年9月9日平成20年度静岡県保存管理計
画検討部会第1回庁内連絡会議・富士山の世界文化遺産登録推
進の取組について・静岡県保存管理計画の策定について200
9年2月12日現地調査2009年6月1日平成21年度第1
回静岡県保存管理計画策定協力者部会・富士山の世界文化遺産
登録推進の取組について・静岡県保存管理計画の策定について
2009年6月17日平成21年度第1回静岡県保存管理計画
検討部会・静岡県保存管理計画の策定について・富士山の緩衝
地帯に関する考え方2009年7月13日平成21年度静岡県
保存管理計画検討部会第1回庁内連絡会議2009年10月2
9日平成21年度静岡県保存管理計画検討部会第2回庁内連絡
会議2009年11月25日平成21年度第2回静岡県保存管
理計画策定協力者部会2010年1月29日平成21年度第3
回静岡県保存管理計画策定協力者部会2010年3月16日平
成21年度第3回山梨県・静岡県学術委員会・保存管理計画の
考え方について2010年6月30日平成22年度第1回静岡
県保存管理計画検討部会(2)学術委員会・保存管理計画検討
部会組織学術委員会及び保存管理計画検討部会の組織は図に示
すとおりである。また、その構成は表〜のとおりである。(1
)行政計画との関連・連携構成資産及び緩衝地帯を有する山梨
県・静岡県及び関係市町村では、まちづくり、観光、防災など
に関する各種計画を策定し、実施している。これらの計画は、

90 :
包括的保存管理計画と密接に関連し、日常的に連携を図りつつ
実施されている。表包括的保存管理計画に関連する計画(山梨
県)計画名称策定年等F資産に影響する可能性がある個別の開
発計画大規模集客施設等の立地に関する方針(山梨県)201
0年1月ゴルフ場造成に事業に関する今後の取扱いについて(
山梨県)1993年10月−17−明神峠自然環境保全地域保
全計画昭和50年策定静岡県森林共生基本計画平成19年3月
策定富士地域森林計画書平成18年4月策定F資産に影響する
可能性がある個別の開発計画企業立地促進法に基づく静岡県東
部地域基本計画(静岡県及び14市町)平成21年2月策定市
町村森林整備計画平成18年4月策定−18−(富士宮市・富
士市・裾野市・御殿場市・小山町)(2)計画の実施今回提出
する富士山包括的保存管理計画は、20年月から既に実施され
機能されているものである。−19−第2章構成資産の概要1
構成資産の一覧世界遺産「富士山」の構成資産の種別、位置、
面積、緩衝地帯の面積、所在地については、以下の表に示すと
おりである。表構成資産の一覧大種別分類小分類構成資産世界
遺産条約文化財保護法自然公園法所在地位置資産面積(ha)
緩衝地帯面積(ha)A富士山(山体)(御中道含む)遺跡特
別名勝史跡山頂信仰遺跡(奥宮、お鉢巡り)遺跡特別名勝史跡
A2大宮・村山口登山道遺跡特別名勝史跡A3須山口登山道遺
跡特別名勝史跡A4須走口登山道遺跡特別名勝史跡A5吉田口
登山道遺跡特別名勝史跡静岡県(富士宮市、裾野市、御殿場市
、小山町)山梨県(富士吉田市、身延町、鳴沢村、富士河口湖
町)県境未確定地″A6北口本宮冨士浅間神社遺跡建造物記念
工作物特別名勝史跡重要文化財A7西湖遺跡名勝A8精進湖遺
跡名勝A9本栖湖遺跡名勝BB1富士山本宮浅間大社遺跡建造
物記念工作物重文静岡県富士宮市B14人穴富士講遺跡遺跡市
史跡静岡県富士宮市NEB15白糸ノ滝遺跡名勝・天然記念物
静岡県富士宮市NEC三保松原文化的景観遺跡静岡県静岡市N
E2資産及び緩衝地帯等の範囲「富士山」の顕著な普遍的価値
を表す構成資産の保護を確実にし、各構成資産における富士山

91 :
体への良好な眺望を保証するために、個々の構成資産の周囲に
必要十分な範囲の緩衝地帯を設定する。さらに、個々の構成資
産間の関係を良好に保ち、富士山の景観の一体性・連続性を保
証するために、緩衝地帯を含め、広く保全管理区域を設定する
。構成資産の位置及びその周辺地域である緩衝地帯、保全管理
区域の範囲については、図に示すとおりである。図「富士山」
の範囲(構成資産・緩衝地帯)富士山山体の範囲については、
現在特別名勝富士山に指定されている区域だけでなく、その周
辺部にあたる標高約1,500m付近までとした。この範囲に
おいて、特別名勝の区域は文化財保護法で保護され、特別名勝
指定地外から標高1,500mの区域については自然公園法と
森林法で保護されている。緩衝地帯との境については林班によ
り線引きを行い、県道などの人工物の改修工事等への影響が軽
減するよう配慮した。そして本栖湖、精進湖、西湖までを富士
山の山体として考え、範囲付けしたことは、展望地点から山頂
までを連続して保護するための措置である。緩衝地帯の範囲に
ついては、当初国道469号から県道72号にかけての富士山
側を計画していたが、国際専門家から飛び地の資産である、富
士山本宮浅間大社や山宮浅間神社を緩衝地帯に含めるべきだと
の指摘があり、市道を境に緩衝地帯を設定した。その際、富士
山本宮浅間大社からの富士山の眺望を確保するため、富士山に
向かって約36度の広がりで設定した。この範囲については、
文化財保護法以外の法律を適用し、自然公園法、森林法、景観
法で保護されている。保全管理区域の範囲については、三保松
原から富士山を眺望する際、その阻害要因を軽減させるために
、溶岩が流出した範囲を基本として設定した。そのため、静岡
県側においては、裾野市、御殿場市、小山町に流出している溶
岩流の範囲については、保全管理区域とはしていない。なお、
保全管理区域についても、森林法と景観法で保護されている。
富士山山体の東に位置する、演習場(北富士演習場・東富士演
習場)については、従前より大規模開発が予定されていないこ
とから、緩衝地帯同様に資産を緩衝することが可能な区域であ

92 :
ると言える。3構成資産の概要構成資産及び保存管理状況の概
要については、以下に記すとおりである。構成資産の詳細につ
いては、推薦書本文にて説明を行っている。保存管理状況等の
詳細については、構成資産毎に策定されている個別の保存管理
計画等において、それぞれ具体的内容を含めた説明を行ってい
る。なお、p18,19表のA〜Cは次のように分類し、整理
したものである。A富士山山体及び登山道B信仰に関わるもの
C富士山の眺望に関わるもの(1)富士山山体及び登山道A富

93 :
士山標高3776mを測る富士山は、日本を代表し、象徴する
日本最高峰の秀麗な独立火山である。その自然的な美しさと崇
高さを基盤として、日本人の自然に対する信仰のあり方や、日
本独自の芸術文化を育んだ名山でもある。富士山は山岳に対す
る信仰の在り方や芸術活動などを通じ、時代を超えて一国の文
化の諸相と極めて深い関連性を示し、生きた文化的伝統の物証
であるのみならず、人間と自然との良好で継続的な関係を示す
景観の傑出した類型として、世界的にも類例を見ない顕著な普
遍的価値を持つ山である。世界文化遺産としての富士山とは、
富士山山体の内、標高約1500m以上の範囲である。この範
囲は、富士山周辺の主要な神社や景勝地から見た可視領域が重
なり合う範囲であるとともに、各登山道における山体の神聖性
に関する境界の一つである「馬返」の標高とほぼ一致する。な
お、「馬返」とは、乗馬登山が物理的にも、宗教的観点からも
不可能になる地点を示す。景観的には山体の傾斜角の変化率が
大きくなり「平野部」と「山体」の境界として認識され、稜線
が優美な曲線を描き、絵画などの対象とされることが多い範囲
である。写真上空から見た写真に資産範囲を線で示したもの(
推薦原案と同じもの)−21−−22−標高約2500m付近
の森林限界より上方は富士講信者には「焼山」と呼ばれ、神聖
な地域あるいは死後世界である「他界」と考えられていた。ま
た、登山道ごとに標高は異なるが、1779年以降、浅間大社
の境内地とされてきた八合目以上はより強い神聖性を持つとさ
れる。理由は八合目の標高とほぼ一致する噴火口である「内院
」の底部に浅間大神が鎮座するとの信仰に基づく。富士山頂へ
向かい、登山の歴史の中で開鑿された登山道が、現在の4本の
登山道の起源となっている。また、ほぼ森林限界に沿い、富士
山山体を一周する「御中道」が15〜16世紀ごろ富士講の祖
とされる長谷川角行によって開かれたとされ、その後「大沢崩
れ」という危険箇所を通るため、富士講信者により修行の道と
して利用された。表法的保護、修理・整備の経緯1924年史
蹟名勝天然紀念物保存法の下に名勝に仮指定1936年国立公

94 :
園法の下に(富士箱根)国立公園に指定1952年文化財保護
法の下に名勝、ついで特別名勝に指定1969年国が大沢崩れ
に対する砂防事業に着手(継続中)1996年国・県が台風に
よる森林の風倒被害に対する対策に着手(継続中)「御中道」
は、標高2,300m付近から2,800m付近の山腹を通り
、富士山の中腹部を時計回りに一周する約25kmの道である
。「御中道巡り」は、修験道の祖とされる役行者が始めたと伝
えられ、16世紀後半、富士講の基礎を築いた長谷川角行が行
ったことが記録されている。古くは定まった道もなく巡ったと
され、富士講が盛んになった江戸時代後期には一定の道が整備
された。富士山信仰の上では、山体西側の大沢崩れを渡るとい
う危険を伴う最大級の大行の道とされていた。富士登山3回以
上の経験を持ち、誓約書を御師に提出し、神への伺いをたてた
上でないと許可されないほど厳しいものであった。この御中道
の巡拝を無事終えると、その証である「御許し」を御師から受
けることができた。1816年の資料では年間100人以上が
御中道巡りを行っているが、1977年の転落事故で通行止め
となり、現在では一周することはできなくなっている。写真御
中道の写真A1山頂信仰遺跡(富士山本宮奥宮)富士山山頂部
の火口壁沿いに、いくつかの神社及び宗教関連施設が所在する
。富士山への信仰登山が開始されると、修験道の影響を受け山
頂部において寺院の造営や仏像等の奉納がおこなわれるととも
に、山頂部での宗教行為が体系化されていった。登拝者は山頂
周辺において「御来光」を拝み、内院と呼称される噴火口に鎮
座すると言われる神仏を拝した。また、火口壁にいくつかある
ピークを仏教の曼荼羅における仏の世界に擬して巡拝する「お
鉢めぐり(八葉めぐり)」と呼ばれる行為を行なうことが一般
的であった。山頂の宗教的施設は、12世紀中ごろ、修行僧末
代により建立された大日寺(大日堂)が最初とされ、その後、
経典・懸仏・仏像等の山頂部への奉納・埋納や内院への散銭が
行われた。また、遅くとも17世紀には、大宮・村山口山頂部
に大日堂が、吉田・須走口山頂部に薬師堂が造営された。この

95 :
様子は19世紀中ごろの絵図によって確認できる。1874年
、山頂の仏教的施設及び仏像は廃仏毀釈の影響によって撤去さ
れ、ピークの名称も変更され、寺院は神社に改変された。しか
し、山頂部に対する信仰自体は変化することなく、上記の行為
は現代の−23−登山者の多くが行っており、これらを通じて
富士信仰の核心が現代に受け継がれている。写真奥宮の写真表
法的保護、修理・整備の経緯1924年所在地が史蹟名勝天然
紀念物保存法の下に名勝に仮指定1936年所在地が国立公園
法の下に(富士箱根)国立公園に指定1952年所在地が文化
財保護法の下に名勝、ついで特別名勝に指定2008年財団法
人静岡県埋蔵文化財調査研究所により現地調査が行われ、その
成果に基づき2010年に「史跡富士山保存管理計画」が策定
された2010年文化財保護法の下に他の文化財とともに史跡
富士山として指定山頂の噴火口の周囲を一周し、頂上の各峰を
巡る行為は、古くから「お鉢巡り」と呼ばれ、現在も多くの人
々に受け継がれている。13世紀後半の資料には「いたゞきに
八葉の嶺あり」との記載があり、このころには山頂の峰々に信
仰的意義を見出していたことが伺える。16世紀前半には地元
為政者が「八要メサルヽ也」との記述も見られ、後に盛んにな
るお鉢巡りの古態と思われる習俗があったことが知られる。富
士講講中の多くは、頂上に着くと、時計回りに山頂を巡ってい
った。内院に賽銭を投じ、御来光を礼拝し、途中にあるいくつ
かの仏像や石碑を拝みながら、大日寺(現奥宮)の大日如来、
最高峰の剣ヶ峰、釈迦割石、霊泉とされた金明水などを巡礼し
た。写真お鉢めぐりの写真A2大宮・村山口登山道富士山南西
麓の浅間大社及び村山浅間神社を起点とし、山頂大日岳に至る
登山道である。12世紀前半、富士山で修行した末代上人の開
削した登山道が起源だとされ、14世紀初め、僧の頼尊が修験
者とその活動を組織化したことで、村山を基点とする登山が行
われていたことが推測できる。15世紀に入ると村山での宿坊
の存在が確認でき、同世紀前半には、地元支配者である今川氏
により発心門等の施設が寄進されたとの記録がある。今川氏は

96 :
1552年、村山を神聖な地と定め、村山三坊には山役銭の徴
収権を与えている。この権利は19世紀後半まで継続し、浅間
大社が登山道の管理に関わることはなかった。一方、16世紀
ごろ、浅間大社は湧玉池での水垢離を重要な儀式と位置づける
ことによって、浅間大社を経由した登拝を喧伝した。浅間大社
には16世紀前半に30余りの道者坊があったことが伝えられ
、同時期の絵図である「絹本著色富士曼荼羅図」には浅間大社
・湧玉池及び村山浅間神社を経由して登山する人々の姿が描か

97 :
れている。道者坊はその後統合され、19世紀前半には5坊と
なった。また、1600年頃以降、地元支配者により、大宮を
経て村山口登山道を利用することが求められた。登山道中の宗
教施設は、17世紀初頭までに建設され、石室などの施設は主
に17世紀後半、興法寺から許可を受けた先達により建設され
たが、1707年の宝永噴火で登山道と共にことごとく破壊さ
れた。これらは再建されたが、その復興は須走口より遅かった
。主要な宗教施設としては発心門、中宮八幡堂、室大日などが
あった。登拝者は興法寺の檀所や浅間大社の道者場としていた
静岡県西部地方を含む西日本の人々が多かった。なお、153
2年以降不連続であるが、登拝者の記録が残され、その数は1
8世紀後半から19世紀初頭の道者坊の記録より、御縁年で2
,000人前後、平年で数百名程度と推測できる。1826年
の記録ではその数が減少し、村山の村落も衰退していたとの記
述もあるが、1860年、初の外国人登山となる英国公使オ−
24−ールコックは大宮を経由して村山に宿泊し、山頂をめざ
した。彼の記録では大鏡坊、中宮八幡堂の存在や登山道の様子
が確認できる。明治維新以降、女人登山の解禁もあり、登山者
は増加傾向を示すが、1889年、東海道線の開通による御殿
場口利用者の増加により衰退し、これへの対策として1906
年、村山を経由せず4km短縮された大宮新道(カケスバタ口
)が建設されたため、大宮から現六合目までの村山口登山道は
登山道としての機能を失い、その歴史を閉じた。現在は、林道
の建設に雨水による侵食も加わり、一部を除き登山道跡の推定
は困難な状態であり、道標、地蔵・不動明王像、建物跡などを
ある程度たどることができるのみである。写真大宮・村山口登
山道の写真A3須山口登山道富士山南東麓、須山浅間神社を起
点とし、山頂部浅間嶽(駒ケ嶽)に至る登山道である。その起
源は明確ではないが、1200年の資料には大宮・村山口、吉
田口、須山(珠山)口以外には登山道がないことが述べられて
いる。1486年の京都の僧による資料(廻国雑記)では、「
すはま口」の名が確認できる。登山道および山頂部銀明水は須

98 :
山浅間神社及び12軒の御師を中心とした須山村により管理さ
れていた。ただし、銀明水の管理を巡り、須走村と争いになっ
た際は浅間大社の裁定を仰いでいる。登山道には宝永噴火前の
状況を描いた絵図で須山御胎内に附属する御胎内神社等の宗教
施設と山室がみられる。これらの施設及び登山道はその中腹よ
り噴火した宝永噴火により壊滅し、御縁年の1740年に復興
したが永続せず、1780年にようやく復興した。また、18
80年代の記録では御室浅間神社、中宮浅間社、御胎内等の宗
教施設と4箇所の石室があることが確認できる。中宮浅間社や
水呑浅間は村山修験の富士峯修行の行場としても使用された。
登拝者については詳しい研究が進んでいないが、西日本・東日
本両方からの登山者があったことが、宿帳及び案内立札の立地
から確認できる。登拝者数は御縁年に当たる1800年に約5
,400人、1840年代前半は年平均約1,700人、続く
1860年の御縁年には約3,600人であった。登拝者は神
仏分離令後も継続していたが、1883年、須山口二合八勺に
接続する御殿場口登山道が開鑿された。また、1889年に東
海道本線が開通し、御殿場口の利便性の向上により須山口から
の登拝者や登山者が減少することとなった。1912年には、
登山道の一部が陸軍演習場となり使用不可能となったため、須
山口からの登拝(登山)は衰退し現在に至っている。二合八勺
以下の登山道で当時の道が確認できる部分は一部のみである。
また、1999年、地元住民により須山口下山歩道の名でかつ
ての登山道の一部が復興された。写真須山口登山道の写真A4
須走口登山道富士山東麓の冨士浅間神社を起点とし、八合目で
吉田口登山道と合流して山頂久須志岳に至る登山道である。そ
の起源は明確ではないが、六合目からは1384年の銘のある
掛仏が出土している。文献からは「勝山記」の1500年6月
の項に、関東地方での戦乱を避け、吉田口を利用すべき登拝者
が須走口に集中したことが確認できる。遅くとも17世紀まで
に、冨士浅間神社及び須走村が登山道山頂部までを支配し、薬
師嶽(現久須志岳)における石室建設の独占、薬師堂の開帳・

99 :
入仏などを行った。また、内院および薬師堂の散銭取得権も浅
間大社に次ぐ権利を有していた。冨士浅間神社及び須走村は、
1703年と1772年の2回幕府に訴え、これらの権利につ
いて八合目以上の支配権を主張する浅間大社と争い、正式に権
利を認められた。−25−登山道の施設は1683年の資料等
で詳細が確認でき、大日堂、御室浅間神社、古御岳神社等の宗
教施設と共に、小屋・石室が山頂部まで設置されている。17
07年の宝永噴火では、これらの施設及び麓の浅間神社、須走
村は約3mの降砂に覆われ壊滅したが、江戸幕府の支援を受け
、翌年の登拝期までには復興を完了し、多くの登拝者を集めた
。18世紀半ばには800名前後に減少したとの資料があるが
、18世紀後半、相模の大山石尊や関本の道了尊とセットにさ
れた参詣の流行で登拝者数は増加し、年平均約1万人、180
0年の御縁年に23,700人とピークを迎えた。登拝者は関
東地方の富士講関係者が多く、東北地方からの登拝者も見られ
る。講によっては吉田口から登山し、砂道で下山に適した須走
口へ下山する形をとった。また、1831年、須走口山頂部に
宝経塔が作られたことにより、日蓮宗の信徒による登拝も増加
した。1889年の東海道線開通による御殿場口、および19
03年の中央線開通による吉田口の利便性の向上で、距離が長
い須走口は敬遠されるが、御殿場口の下山道として利用され続
けた。1909年より登山道の周囲に石垣を築き、1916年
には、八合目まで馬による登山が可能になった。八合目以上は
浅間大社境内地という理由で馬の利用は行われなかった。また
、1923年に皇太子(昭和天皇)の登山に利用されている。
1959年、バス道路(現ふじあざみライン)の完成により、
五合目以下の登山道の利用は減少し、一部登山道としての確認
ができない区間がある。写真須走口登山道の写真A5吉田口登
山道北口本宮冨士浅間神社を起点とし、富士山頂を目指す道で
ある。15世紀には、富士山への登拝が、修験者だけでなく、
ごく一般の人々の間にも広まっていた。吉田口は14世紀後半
には参詣の道者のための宿坊もでき始め、大勢の人々が登るた

100 :
めの設備が整うようになった。16世紀から17世紀、長谷川
角行が吉田口を利用して修行を行い、18世紀前半には富士講
隆盛の礎を築いた食行身禄は、入定(宗教的自殺)にあたって
信者の登山本道をこの吉田口と定めた。このため、富士講の信
者が次第に増加した18世紀後半以降は、年間数万人を数える
富士講の道者が登拝したとされる。1964年に富士山有料道
路が開通した後は、ほとんどの登山者が新五合目(小御岳)を
起点として登るようになったため、五合目以下の道を利用する


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