TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼
【屑石】SixTONESアンチスレpart8【イキリぶす】
ジャニーズJr板の自治を考えるスレッド【3】
デブ組禁】Jr.総合ファンスレPart3011
【デブ組禁】Jr.総合ファンスレPart2631【西禁】
【ウインク】金内柊真【ありがとうま】
Jr.総合実況スレpart47
【デブ組禁】Jr.総合ファンスレPart2628【西禁】
【無能マン】SnowManアンチ★40【滝沢ゴリ押し】
月さんと星さんと玉森スイーツゆうた(’・_,’)V
♪♪♪★★【Travis Japan Part.16】★★♪♪♪

神7のストーリーを作ろうの会part9


1 :2014/02/18 〜 最終レス :2014/11/11
終わることのない 神7 Story

2 :
作者さん続き待ってます

3 :
【乞食速報】
ロックジョイというアプリをDLしてキャンペーン招待コードのところに『キンチョール』と入力すると
itunesカード、Amazonギフト券1000円分などと交換出来るポイントが1000ポイントもらえます。
入力しないともらえません。
Androidマーケット、AppStoreからダウンロードできます。今だけだよ。急げ
iPhone→ https://itunes.apple.com/jp/app/rokkujoi-o-denapurezentokyanpenga/id656698242?mt=8
Android→ https://play.google.com/store/apps/details?id=com.buzzvil.lockjoy

4 :
水曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」
第十一話
「これは物置部屋か何かか?」
部屋に入るなり、羽生田が顔をしかめた。
「うわぁなんか昭和の匂いがするよぉ。ブラウン管のテレビの実物なんて初めて見たよぉ。ねぇ栗ちゃん?」
「ギャハハハハハ!!倉庫かなんかじゃね?」
中村と栗田が埃の被ったブラウン管テレビを珍しがっている横では谷村が「神田川」を口ずさんでいた。余計に辛気臭さが増す。
「おい!!泊まりの楽しみっつったら皆で有料放送観ながらエロ談義だろ!!これ有料放送観れんのかよ!?」
神宮寺にとって重要なのは部屋のボロさよりも何よりも有料放送が観れるかどうかであった。
「観れなさそう…どこにもカードの挿し込み口もないから…」
何故か有料放送視聴の仕組みを知っている岩橋がそう告げると神宮寺は暴れた。
「ごほ…神宮寺くんやめてよ埃が舞うよ…窓開けよう」
高橋が部屋の埃に耐えかねて窓を開けるとそこに広がった風景は…
「うわーこりゃ見事な墓地だなー」
倉本がポテトチップス片手に呟いた。
そう、旅館の裏は墓地だった。しかも秋なのに周りは枯れ木ばかりで不気味さを更に際立たせていた。
「そーいやこの旅館って「出る」ってことで有名らしいね。だから格安なんだよね?おに…森田先生?」
同じくカラムーチョ片手に中村(海)が問いかけると美勇人は何故か目を輝かせて答えた。
「大丈夫だみんな!おに…先生が守ってやるよ!ああ、自分のクラスだけじゃなく他にもこんな可愛い男の子達を守ってあげられるなんて俺は幸せ者…」
悦に浸る美勇人をよそに岸くんはなんとかして部屋を変えてもらえないか室内電話で教頭に交渉した。が、無情な答えが返ってくる。
「何言ってんの。7組が問題起こさないようにそこにわざわざ配置したんだから。岸先生よろしく頼むよ」
「そんな…」
窓から一陣の風が吹き抜ける。生温かくて湿り気を帯びたそれに、不吉な予感だけがまとわりつき岸くんは涙目になる。
出ませんように…
岸くんの願いといえばただ一つ、それだけであった。そんなことはおかまいなしに7組と寅菱学園の5人ははしゃぎまわっていた。そしてそれを眩しい目で見守る同期のイケメン少年愛好者…
気が遠くなりながら夕食会場に向かった。

.

5 :
「1番!神宮寺勇太、「抱いてセニョリータ」いっきまーす!!!」
夕食会場の大広間では案の定、7組は大騒ぎだった。しかし端っこに配置されているためさして御咎めもない。時たま教頭の苦い顔が目に入るだけだった。
「おに…森田先生、飲んで飲んで」
「おにい…森田先生、パセリ好きだったよな?あげる」
「おに…森田先生、この後自由時間?」
またしても隣に配置されていた寅菱学園五人組は美勇人にお酌をしたり好物の交換をしたりと和気藹藹と楽しんでいる。相当慕われているようでなんだかうらやましかった。
でも俺も運動会やピンチの救出なんかで7組と絆も深まってきているし…みんなだって少しは俺のこと…と期待しているとぽんぽんと肩を叩かれる。
「岸ぃこれあげるぅ。これもぉ」
中村が岸くんのお膳にトマトとうにを入れた。よしきた、岸くんは感涙に咽ぶ。こうして生徒に慕われることこそ教師の醍醐味…鼻をすすった。
「お、ありがとう中村。じゃあ俺もこれあげる」
岸くんが中村の好物である卵焼きを渡そうとするとしかしその箸が払われる。
「てめーの唾液がついた卵焼きをれいあに食わそうとかセクハラにも程があんぞコラ!!このセクハラ大魔王」
「やだぁ岸ぃそんなのいらないよぉ谷村にでもやっといてぇトマトもうにも僕嫌いだからちゃんと処理しといてねぇ」
「…」
いや違う。これは中村特有のツンデレであって決して残飯処理じゃない。決して…
「谷村、はい…」
卵焼きを仕方なく谷村にあげようとすると彼は顔をしかめた。
「俺、卵嫌いなんだけど…」
「…」
沈黙。
暗い。暗すぎる。谷村は好き嫌いが多いからそこかしこによけられたにんじんやら大根やらがあった。自我修復を繰り返しながら食事をしている。なんだか食欲がそがれるから見ない方がいいかもしれない。

6 :
「岸くんお疲れ。まあ飲みたまえ」
珍しく羽生田が岸くんのグラスに飲み物を注いだ。よしきた、こいつも普段は天から人を見下したような上から目線のもの言いだがどこかで慕ってくれているのだ。最近は教室をセレブ改造しなくなったしこれはこれで可愛いところが…
「ごふっ!!!」
液体を一口入れて、そのあまりに強烈な味に岸くんは思わず吹いた。なんじゃこりゃ。すっぱいのか甘いのか辛いのかしょっぱいのかわかりゃしない。一体何が入っているというのだ…?
「わはははははは。どうだ羽生田挙武特製ドリンクの味は?天にも昇る心地だろう?」
「ギャハハハハハ!!すっげー色!!そんなんよく口にするよな!?俺だったらぜってー飲まねえ!!」
「やだぁ岸ぃお行儀悪いよぉ口から出し過ぎぃ」
違う。これは愛嬌だ…。羽生田はこう見えてお茶目だからその冗談の延長で…あ、口が痛い。ダメこれ…これはアカンやつ…キシ君はあまりのまずさに意識が遠くなる。
「岸くん先生大丈夫!?お水お水!」
誰かが親切に水を持ってきてくれた。普通の水だ。ようやく意識が戻ってきて岸くんはその親切な生徒に涙ながらにお礼を述べる。
「ありがと…命の恩人様…」
ぎゅっと手を握るとしかしその手が触るのが痛いくらいに高温になっていく。
「そ…そそそそそそそそそそそんな、生徒として当たり前のことをしただけで、そそそそそそそそんな風に手なんか握られたら…ああああああああああああああああああああああ」
ぼんやりと開けて行く視界に、ゆで蛸のように真っ赤になった高橋が映った。
「ひゅーひゅー颯良かったなー!今夜岸くんとランデブーってか?」
「ギャハハハハハ!!颯、なんなら俺とれいあが実践して教えてやっか?おしべとおしべのアレをよ!!」
神宮寺と栗田が悪ノリで颯をはやしたてると彼の頭から湯気が立ち上った。
「ちょっと何言ってんの神宮寺くんに栗田くん、冗談やめてよ!あああああああああああああ」
岸くんがやばい、と思った時にはもう遅かった。すでに岩橋と中村と羽生田と谷村は非難済みであり、倉本もお膳を持ってそれに倣っていた。
「高橋、やめ…」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああああああああダメえええええええここで超高速ヘッドスピンはダメええええええええええええええええ」
高橋は米国のハリケーンも真っ青の破壊力を伴った超高速ヘッドスピンを始めた。宴会場は一時騒然となり、当然の如く岸くんは教頭から大目玉をくらう。説教に疲れて部屋に戻るともう皆大浴場に行っていた。

つづく

7 :
更新きた!作者さん乙です!
ここから寅菱学園とどう絡んでいくのか…
続きも楽しみにしてます

8 :
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」
第十二話
部屋は悲惨だが大浴場はそれなりに広い。もっとも7組は他のクラスが入った後にまわされ順番的には最後だった。それでも大はしゃぎである。
「おい!誰が一番長く潜れるか潜水競争やろうぜ!ビリはみんなにジュース奢りな!」
神宮寺と栗田と羽生田と倉本が潜水競争をする横では高橋が不安にうなだれていた。
「どうしよう…俺のせいで岸くん先生が怒られてしまった…」
「気にすることないよぉ颯。岸が怒られるのはお約束じゃん。そうじゃなかったらつまんないしぃ」
中村がタオルを頭に乗せながら慰めるが、それでも高橋の表情は冴えない。
「岸くん先生に嫌われたら…どうしよう…」
「颯ほんとに岸のこと好きなんだねぇ。どこがいいのぉ?まぁこないだ助けてくれた時はちょっとかっこいいかもと思ったけどぉ相変わらずのあの感じでしょぉ?やっぱぁ男は栗ちゃんみたいに天真爛漫で明るくつっぱしってくれる子じゃないとぉ」
全裸でぎゃはぎゃは風呂の中を走りまわる栗田を眩しそうに見ながら中村がそう呟くと、高橋は入浴してまだ間もないのに顔を赤くして湯船に沈む。
「ど、どこがいいのっていうか…岸くん先生は俺の中での理想そのものだから…。優しいしかっこいいし不憫だしすぐ汗かくし真面目に見えて適当すぎるところがあるし舞台上でありえないミラクルミス犯すし…って何言ってんだろ俺…」
高橋と中村がガールズトークを繰り広げる横では谷村がのぼせてぐったりしていた。岩橋はマイペースにシャンプーをしている。
「これ女子風呂覗けんじゃね?ほら、ここんとこの子窓からさ」
神宮寺が何かを見つけてそう呼びかける。皆呆れながらもそれに付き合ってやると…
「…なんじゃありゃ?」
暗闇の中にぼんやりと浮かび上がるものがそこにはあった。

.

9 :
「岸くん、さっきは大変だったな。風呂で疲れ落とそうよ」
教師の入浴は生徒の後である。岸くんは美勇人と共に大浴場に向かった。その途中でばたばたと通り過ぎる集団がいた。
「あれ?いまの可愛い子たち岸くんのクラスの子たちじゃなかった?」
「…そうだけど…どうしたんだろ?あいつら…」
7組の連中が血相をかえて通り過ぎて行く。てっきり大浴場で大騒ぎしているかと思ったら…
まあいいや、騒ぎを起こさないでいてくれるならその方が…と思い直して大浴場に入る。湯船に浸かっていると美勇人のクラスの5人組が入ってくる。
「あれ?お前ら風呂まだだったの?」
「卓球やって腕相撲対決してたら時間過ぎててさ。おにい…先生も俺と腕相撲やる?」
ゴリラのような腕を見せながら閑也が冗談めかすと梶山がやめとけやめとけ、と止めに入る。岸くんは彼がどこをどう見ても30代にしか見えない。年下だなんて信じられない。
「おに…先生、背中流すよ」
「お、ありがとう顕嵐。お前は可愛いなああああ」
涙ぐみながら美勇人は顕嵐に背中を流してもらっていた。生徒に背中を流してもらう…なんだかうらやましい。そんな思いと共にふと横を見やると中村(海人)が湯船に浸かりながらアニメソングを歌ってアイスを食べていた。
同じ中村でもうちのとはえらい違いだなぁ…と思いながら見ていると、誰かが何かを見つけたらしく声をあげた。

10 :
「宮近、どしたの?」
美勇人が声をかけると子窓のようなものを開けて見ていた(何故そんなことをしていたのか分からないが)宮近が青白い顔を更に青白くさせて指をさしていた。
「なになに?なんかあるの?」
興味本位で岸くんがその子窓を除くと暗闇の中に薄ぼんやりと何かが浮かびあがっている。岸くんは己の視力の良さをこの時ばかりは呪わずにいられなかった。
これって所謂一つのつまるところ率直に言うところ「幽霊」ってヤツですか…?
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
認識すると同時に全裸で大浴場を飛び出していた。丁度居合わせた教頭にまた怒られるがそれでも岸くんはまっしぐらに部屋に戻った。
部屋に戻った岸くんを待っていたのは季節外れの大怪談大会だった。真っ暗な室内の真ん中に蝋燭の火だけが揺らめき、そこに青白い顔が…
「それでねぇ…その和尚さんが振り向いたらぁ…和尚さんの顔がぁノッペラボーでぇ…」
「ぎぃやぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
岸くんが腰を抜かして大絶叫すると連鎖反応で皆もびびりだす。幽霊だと思ったのは怪談を話す中村だった。あまりにも色が白いから見間違えてしまった。

11 :
「失礼しちゃうよぉ。人のこと幽霊だなんてぇ。幽霊を引き寄せてそうとかって「霊感が強そうJr」に名前挙げるとか失礼にもほどがあるでしょぉ」中村は頬を膨らませた
「てめぇびびらすな岸!!心臓飛び出すかと思っただろ!!」栗田が蹴ってくる
「岸くんタチわりーよ!!いっちばん怖いとこで大声出すとかよ!」神宮寺が肩パンしてくる
「ひどい…あんな大きな声でびびらすなんてこれはいじめだ…心臓に悪いよ…」岩橋が涙目で非難してくる
「南無阿弥陀仏…」谷村は自我修復しながらお経を唱えている。
「岸くん先生にびびらされるなんて…幸せ…」高橋は何故か恍惚としている。
「お前らびびりすぎ。俺はお化けより飢えの方が怖いね」
皆が皆びびる中、倉本だけはお菓子片手に余裕だった。そして悪ふざけBABYこと羽生田が何かを思いついたらしくぽん、と手を叩いた。
「そうだ、せっかく墓地が裏にある絶好のロケーションだから肝試しなんかはどうだろう?修学旅行の思い出作りに」
岸くんは大反対したがあれよあれよという間に何故か風呂あがりの寅菱学園の連中も交えて裏の墓地で肝試し大会が行われることになった。

つづく

12 :
あげ

13 :
問題点
宗教は羽生の自由ですが薬事法違反のカルト商法は問題です
【血糖値が〜糖尿病にも!】【神のテープ・神の声】【新たな医療】【念を込めたアイテム】
チャクラ仙人のブログに書かれていることは某ゴーストライター詐欺師と同じ主張
そんなチャクラ仙人に【相棒】と書かれている羽生
税金でチャクラ仙人をソチ入りさせて閉会式も一緒に行動
羽生の父親も手伝ったと書かれているチャクラカード…【共犯者】です

14 :
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」
第十三話
旅館の裏の墓地は世にも恐ろしいロケーションだった。
真っ暗闇の中ににょきにょきそびえる墓石と枯れ木のコラボレーションはその不気味さをよりお互い引き立てている。こんなところに何故旅館を建設したのかという疑問はともかくそのおあつらえ向きのおどろおどろしいムードに岸くんは戦慄した。
「皆、消灯時間もあるし問題起こしたら停学だし、やっぱりそろそろ寝た方が…」
しかし7組は岸くんの半分びびり、半分忠告を全く聞き入れずくじ引きを始めた。
駄目だこいつら…岸くんは美勇人に援護射撃を求めた。
「ねえ美勇人くん、やっぱりこういうのって何かあったら後々問題になると思うしどうにかしてやめさせた方が…」
「可愛い男の子達が恐怖に震える…それをお兄ちゃんが守ってやる…こんな素晴らしいシチュエーションはない…!」
悦に浸る美勇人に、駄目だこりゃ、と岸くんは諦めた。それならそれで現場監督としてゴール地点でずっと待ってようと思ったのだが…
「岸くんは颯とペアな。おめでとー」
神宮寺からくじを渡され、え?と岸くんは目が点になる。
「なんで俺もやるの?俺は教師…」
「あっちの先生もやるっつってんだから岸もやれ!ギャハハハハハハ!!」
栗田に尻を蹴られ、あれよあれよという間に肝試しは始まってしまった。ルールは30分かかる墓地を一周。5分間隔でスタートし、タイムが一番早かったり前のチームに追いついてしまうとヘタレ決定として罰ゲームの対象になる、と告げられスタートした。

.

15 :
第一組 岩橋&閑也ペア
「僕は嫌だって言ったのに…これはいじめだ…」
岩橋はすでに泣きそうになっていた。怖がりびびりヘタレ…どう言われてもいいから逃げられるものなら逃げたい。恐怖心は腹痛を招く。早くもしくしく痛みだした。
「おい大丈夫かお前。顔色悪いぞ」
懐中電灯で照らされ、岩橋は目を細める。しかも人見知りなのに知らない人と一緒になんてなんたる拷問…
「こんなとこなんも出てきゃしねえよ。そんなビビるな」
がしっと逞しい腕が伸びてくる。岩橋は顔をあげた。
「さっさと行こうぜ。もっとも早すぎると罰ゲームだからほどほどにな」
「うん。ありがとう…」
なんだか頼もしくて岩橋は安心する。そうだ、彼の言う通りこんなところにオバケだのなんだの出てきやしない。ただちょっと暗くて不気味なだけだ。そう、何も問題はない。問題は…
そこでガサガサ!!と大きな音がする。風で何かが擦れ合ったのだろうが、岩橋は反射的にびびって大声をあげた。
「うわあああ!!!!」
閑也にしがみついてしまったものだから、彼はバランスを崩してその際に懐中電灯を落としてしまう。それはころころと転がって茂みの向こうに落ちて行ってしまった。
「おいおいどうすんだよ灯りなしじゃキツイぞ」
うんざりしたような閑也の声と共に、真っ暗闇の中で岩橋の意識は深い淵に落ちて行った。
.

16 :
第二組 嶺亜&栗田&顕嵐トリオ
「両手に王子様とか僕幸せだよぉ」
中村はごきげんだった。右には栗田、左には顕嵐とイケメン二人に囲まれてうきうきピクニック気分である。墓石はカルストに見えなくもないし、枯れ木には花が咲いているように思え、カラスの鳴き声も小鳥のさえずりに聞こえるようだった。
オバケが出てきたらどっちに抱きつけばいいだろう…頭はそんな悩みでいっぱいだ。
「おいおめーくっつきすぎじゃね?ちょっと離れろ」
栗田は中村の肩を抱き寄せて顕嵐を牽制した。
「あ、ごめん」
顕嵐はスマートな動きで一歩離れる。ああ、紳士イケメンと自然体イケメンのどっちを選べばいいのぉ…?れあくりはジャスティスだしぃフォーエヴァーだけどぉれあらんも最近キてるよぉ…と中村が脳内にお花畑を作っていると懐中電灯であたりを照らした顕嵐の顔が青ざめた。
「どぉしたのぉ顕嵐くん?もしかしてオバケぇ?」
中村が問うと、顕嵐は首を横に振って少し震える声でこう囁いた。
「ここって意外と高いんだね…こっちが崖になってて…」
言われてみれば道の脇は急な崖になっていてかなりの落差だった。落ちたらひとたまりもないよぉ、と思っていると顕嵐がこう告白する。
「実は高所恐怖症で…オバケより高いところが苦手なぐらいで…」
「ギャハハハハ!俺は高いとこ大好きだぜ!!」
栗田が得意げに叫ぶ。中村はうんうんと頷きながら
「そうだよねぇ栗ちゃんと煙は高いところ好きだもんねぇ頼もしいよぉ」
と握った手に力をこめる。頼もしい栗ちゃんも素敵だけどイケメンが怯えてるところもまたいいよぉ…とうっとりしながら中村はもう一方の手で顕嵐の手を握った。
「怖い時はぁこうして手を握れば怖くないってJJLっていう番組で見たよぉ」
三人で手を繋ぎながらスキップ気分で中村は栗田と顕嵐とともに先を行くと、少し行ったところで見覚えのある人物が見えてくる
「あれぇ?」
そいつは全速力で逆走して通り過ぎて行った。
.

17 :
第三組 倉本&中村(海人)ペア
「実際さー、罰ゲームとかよりご褒美の方がやる気出るよな」
たけのこの里を口に放り込んでボリボリやりながら倉本はぼやく。
「ほんとだよねー。優勝したら回転寿司食べ放題とかにしてくれたら優勝する自信あるんだけど」
きのこの山を次々にたいらげながら海人も同意した。
「けどよー、俺らってそれぞれのクラスで大食いキャラとして定着してんじゃん?でも最近俺思うんだよね。それだけっつうのも限界あるかなって。縦に伸び出してそんなにぽっちゃりでもなくなってきたしよ」
倉本が胸中を曝け出しながらじゃがりこチーズ味をかじると海人はうんうんと頷きながらカントリーマァムを次々に開ける。
「まあねー。俺なんかはほら、その他にもアニメオタクキャラができつつあるんだけどさ、正直大食いもアニメオタクもアイドルにとってはマイナスでしかないと最近思い始めてきてね。
顕嵐なんかは紳士イケメンとして確立してるし、梶山なんかは開き直ってオッサンキャラ貫いてるけどね」
「うちもさー、腹痛キャラとかなにかってえとすぐ回りだす担任ラブキャラとか乙女ドSキャラとかアホキャラとかエロキャラとかセレブキャラとかネガティブキャラとかでけっこう個性激しいんだよね。大食いだけじゃ埋没しちまうから悩みどころなんだよな」
「そっち個性強いっていうかある意味芸術だもんね。俺ら5人とはいえまだまだ模索中でねー。この長身を活かしたキャラ作りってないもんかなー」
「色々大変だよなー。大食いもそんな楽じゃねーしよー」
「だよねー。あ、期間限定のポテトチップスしあわせバター味あるけど食べる?お近づきの印に」
「まじかよそんなんあるの?うみんちゅお前ってやっぱいい奴だなー。今度俺の漫画コレクション貸してやるよ」
すっかり友情が深まった倉本と海人の前に突如として人影が踊り出る。二人は驚いてポテトチップスしあわせバター味を落としかけた。
「ちょっとおいこらシャレんなんねーぞしあわせバターがおじゃんになったらどうしてくれんだよ!!」
倉本が激怒しながらその人物に怒鳴ると海人がしあわせバターを死守しつつ首を傾げた。
「あれ?閑也じゃん。何やってんのお前一組目でしょ?」
不思議がる倉本と海人だが、閑也はただぜえぜえと息を切らしてこう呟くのみであった。
「デーモンが…デーモンが…」
.

18 :
第四組 神宮寺&宮近ペア
「やっべーなこの雰囲気…怪談モノとか今度見てみるのもいいかもな…これが終わったら早速検索だ」
神宮寺は程良い恐怖心を興奮に置換して心拍数を上げている。チャラ男キャラだが意外と小心者…そのギャップが自分でも魅力だと思っている。
「なになに怪談モノって。そんなんあるの?教えてよ!」
興味津々で宮近がノってくる。思春期男子そのもののノリに神宮寺のテンションも上がった。
「それでよ、さっき女子風呂覗けんじゃね?と思って窓の外見たらよ暗闇にボーっとなんかが浮かびあがって…」
「あ、それ俺も見た!やっぱ女子風呂覗きは定番だしな。ちょうど墓地の方角だったよな」
「幽霊でもさー色っぽくて巨乳の幽霊だったら大歓迎なんだけどな。初体験が幽霊とかちょっと面白くね?そーいうAVあんのかな?」
Y談にお花畑を作りながらどしどし進むと、ちょうど墓地の真ん中あたりにぼうっと灯りのようなものが浮かび上がっているのが見えた。
「おい宮近…なんだありゃ?」
「さあ…美人の幽霊かな?」
二人は唾を飲む。怖い。が、美人の幽霊なら見てみたい。恐怖心と好奇心の狭間で揺れた。
「宮近…お前確かめてこいよ。モノマネ得意だろ?幽霊にもうけるかもしれんぞ」
「神宮寺こそ…チーッス!ってチャラさ全開で行けば幽霊もフレンドリーになんじゃね?」
「いやそこは宮近、女優と熱愛報道されたお前が行けよ」
「その傷ほじくり返すのやめてくれる?ていうか初対面の設定だし世界観無茶苦茶になるじゃん」
らちがあかず、じゃんけんで決めることにした。だが置いて行かれたらそれはそれで怖いので結局は二人でそこまで向かう。だが…
「フフ…フフフ…」
背後から不気味な笑い声が響いた。振り返ってライトをあてたが誰もいない。
「おい宮近…俺の言いたいこと分かるな?」
「おう神宮寺…今日出会ったばかりだけど俺達テレパシー使えんじゃねってぐらいに以心伝心だぜ今ばかりは」
「だったら話は早い…いいな、せーので行くぞ」
「おう。せーの!」
神宮寺と宮近はダッシュで逃げた。
.

19 :
第五組 羽生田&梶山ペア
「このいかにもなシチュエーション…燃えてきたぞ…フフ…」
羽生田は血の騒ぎを抑えつつ愛用のモデルガンを撫でた。悪ふざけ大好き、ハリウッド映画大好き、普段はセレブに収まっているがこういう時に眠っていた血が騒ぐのである。
その羽生田を隣で若干ヒきながら梶山は見ていた。
「そんなもん持ってきていいのか?修学旅行だろ」
「フフ…先生は黙っていてくれ。他校なのだから口出し無用」
「誰が先生だ!俺はれっきとした生徒だ!高校一年生だ!」
梶山が主張すると羽生田は目を丸めた。
「なんと…こんな老けた高校生がいるのか?うちの高橋や谷村も充分老けているがそれにしても半端ないな。一体どういう人生を歩んできたら10数年で30代の貫録が身に付くんだ?」
「自分が比較的年相応だからって言いたいこと言いやがって…寅菱学園のワイルド梶山こと梶山朝日とは俺のことだ。ようく覚えて…うわち!!」
梶山の頬の横を物凄い勢いで放たれた弾丸がかすめる。それは羽生田のモデルガンから放たれていた。
「何すんだ!危ないだろうが!!」
「すまんな。近くに気配を感じたものだから」
梶山は頬に違和感を感じて触ると薄く血が滲んでいるのを認識して背筋が寒くなる。
「それ本当にモデルガンか?充分殺傷能力あるんじゃないか?合法なのか?」
「さあな…俺が「とりあえずカッコイイモデルガンを頼む」と言ったらこれが送られてきた。使用するのは今回が初めてだが」
羽生田はモデルガンを舐めた。すでに目がイっている。こいつは何をしでかすか分からない。
「お前一体どこの何者だ!…まあいい。先を進もう。まったく…こんなことならあの暗い奴と一緒の方がまだましだったぞくそ…」
ぶつくさ言いながら進むその最中も羽生田はモデルガンをぶっぱなしている。その彼がぴたっと足を止めた。
「どうした?」
「人の気配が…あっちだ!!」
「やめろ俺に当たる!!こんなとこで乱射すんな!!おい聞いてんのか!!人の気配がするんなら尚更ぶっぱなしちゃいかんだろうが!!」
梶山の叫びも虚しく、暗闇にモデルガンの乱射音だけが響き渡ったのであった。

つづく

20 :
暗いやつw
さては谷茶浜…

21 :
作者さん乙でっす
うみんちゅ倉本コンビはもはや鉄板ww

22 :
作者さん乙です!
梶山 羽生田コンビとは珍しいw
ホント倉本うみんちゅコンビ鉄板だわw

23 :
日曜ドラマ劇場「私立神7学園高校」
第十四話
最終組 谷村&美勇人&颯&岸くん
岸くんは美勇人に頼みこんで4人で行かせてもらうことにした。どうにもこうにもこのロケーションは怖すぎる。とんだ時間外労働である。
「可愛い男の子を守ることができるなんて教師になって本当に幸せ…」
目を輝かせて美勇人は率先して最前線を歩いてくれた。頼もしい限りである。
「あの…岸くん先生…」
隣で懐中電灯を持つ高橋がおずおずと切り出す。その声は萎んでいた。
「何?どしたの?てかそんな小声で話さないでよ益々怖くなる…」
「さっきはごめんなさい…俺のせいで先生が怒られたって…」
しおらしいその態度に岸くんはなんだか忘れていた教師魂が蘇る。そうだ、俺は教師だ。肝試しでびびって怖がっている場合じゃない。こんな時こそ担任らしくあるべきだ。
「そんな気にすんなって!俺が怒られるのは毎度のことだしそうじゃないとこの話つまらないしお約束みたいなもんだからさ!ドンマイドンマイ!」
「岸くん先生…」
高橋は感激で目を潤ませる。彼の中でまた岸くんが神格化していく。懐中電灯を持つその手がぶるぶる震えたかと思うと美勇人が「しっ」と人差し指を立てた。
「これは…閑也の悲鳴…!可愛い教え子のピンチ!待ってろ閑也ああああああああああああああお兄ちゃんが助けてやるからなあああああああああ!!!!!!!!!!!」
何かを察知した美勇人は墓場の中を突っ切って行ってしまった。

.

24 :
「…」
高橋は動揺した。こんな暗闇で岸くん先生と二人きり…吊り橋効果で二人の間には教師と生徒に芽生えてはならない感情が沸き上がってしまうのでは…?そんな…まだ心の準備が…
「俺もいるんだけど…」
背後の暗闇からぼそっと声がした。それは谷村だったが今高橋の脳内には彼はもう闇と同化してしまっている。
「あ、あ、あの…岸くん先生…」
何か話題、話題…沈黙になると変なムードになってしまう。ああでもそんなムードになっちゃったらもうこれはイケナイことになってしまう。
落ち着け颯。落ち着くんだこんな時はメロンパンのことでも考えよう。そしたら二人きりというこの極限状態にも耐えうるのではないか…
「だから俺もいるってば…」
また背後の闇が何かを呟いている。高橋はそれをシャットアウトした。闇は溜息をついた。
「ん?何?」
「あの…えっと…あ、明日の自由行動でど、どこを回ったらいいかな?京都って名所だらけでどこに行っていいか分かんなくて…」
「う〜ん…俺も詳しくないからなんとも言えないけど清水寺とか三十三間堂とかそういう有名なところかな?」
「そ、そうですか…清水の舞台からヘッドスピンして飛び降りたらど、どうなるかな…?」
ああ、もう心臓が限界だ…高橋は喘いだ。こんな状況で平静を装えっていう方が無理がある。いっそのことオバケでも出てくれた方がいいかも…。ああ、でもそうしたら岸くん先生に抱きついてしまって更に変な雰囲気になるんじゃなかろうか、どうしようか…
高橋の脳内がオーバーヒートしかけているとどこかで銃声のようなものが鳴り響いた。
「うわああああああああああ!!!!何今の音!?なんなのなんなの!?幽霊?オバケ!?うわああああああああああああああああああああ」

25 :
びびって取り乱す岸くんの可愛さと幼稚さにまた高橋が胸をきゅんとさせていると突然墓場の中から人影が飛び出す。その人影は岸くんに抱きついた。
「はああああああ岸くん先生のピンチ!!ていうかうらやましい!!岸くん先生から離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
逆上した高橋は高速ヘッドスピンを始めた。
「ちょ、待て…!!おい颯、俺だ、神宮寺だっつってんだろおい!!」
「神宮寺とりあえず俺から離れてえええええええハリケーンが来るうううううううううう!!!」
岸くんが必死に高橋のヘッドスピンを止めようと抱きついてきた神宮寺を離そうとすると今度は後頭部に激痛が走った。
「いで!!なんだこれ…いで!痛い痛い!!」
細かい粒のようなものが次々に当たってきて岸くんは悶えた。
「オバケはどこだ…この羽生田挙武が成敗してくれるわ…フフフ…!!」
なんとそれはライフルを持った羽生田であった。すでに目がイっていて説得は困難な様子である。もう無理。岸くんは全力で逃げた。走って走って走りついた先には…
「…岩橋?」
ゆらりと誰かが立っているのが見える。背格好は岩橋のように見えたから恐る恐る近づいたがやはり彼である。ちょっと安心して気を抜いたのだが…
「え?」
いきなりがしっと両腕を掴まれたがそれが尋常な力ではなかった。野球経験者とはいえどちらかというと華奢な岩橋の腕力とは到底思えない剛力…岸くんは本能的に恐怖を覚えたがもう遅かった。
「岸くん…トントンしてあげるね…」
すでにその眼はいつもの頼りないウェットな岩橋のそれではなかった。瞳の奥が妖しく光っている。最早それは人間のものではなく悪魔そのものだった。

26 :
「ちょ…岩橋…何する気!?先生に暴力はいけません!校内暴力断固反対!!」
「優しくしてあげるからね…」
そう囁くと岩橋は物凄い力で押し倒して来た。抵抗しようとしたがそれが全く無駄であるほど岩橋は超人的な力でねじ伏せる。
「うわああああああああああちょっと待て無理いいいいいいいいいいいやめてええええええええええ犯さないでええええええええええ結婚するまで綺麗な体でいたいのおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
思いがけない貞操の危機に岸くんは叫んだ。まさかこんな形で失うなんて…お父さんお母さんごめんなさい、優太は穢れた子になってしまいます…生まれ変われるなら貝になってもう全てを閉ざしてしまいたい…
白目を剥きながら意識を遠くに飛ばしていると、突然その力が止まった。
「…?」
薄眼を開けると微かな眩しい光が挿し込んでくる。
「何やってんのぉ岸ぃ」
「ギャハハハハハ!!おめーらこんなとこでプロレスか!?やめといた方がいーんじゃね!?」
中村と栗田が笑っている。彼らの照らす懐中電灯の光を浴びて岩橋はまるで憑物が落ちたかのようにきょとん、としていた。
助かった…俺の貞操は守られた…
安心感と疲労とで岸くんはその場に倒れ込んだ。

.

27 :
「生きてるって素晴らしい…綺麗な体でいられるって素晴らしい…」
肝試しは結局誰が一番早くゴールしたのかがうやむやになり、羽生田がぶっ放したモデルガンの銃声音を聞きつけた旅館の従業員が警察に通報してしまったがために岸くん達は慌てて旅館に戻ることになった。
「可愛い教え子達が無事で何より。さ、寝よう。おに…先生が寝かしつけてあげるからね」
美勇人はご満悦の様子で消灯し始める。まだ起きていたい神宮寺と栗田はぶーたれたが岸くんも疲れ果てていたからそれに倣った。
「おやすみ…いい夢見られますように」
そう願って蒲団に入った時である。
「…フフ…フフフ…」
暗い部屋に不気味な声が谺する。岸くんはこの声に聞き覚えがあった。本能的に恐怖を感じて飛び起きるとそこには再び澱んだ目をした岩橋が…
「うわあああああああああ!!!灯りつけて!!!デーモンが来る!!!!!!!」
岸くんが叫ぶと誰かが素早く点灯させた。そうすると岩橋は通常モードに戻る。
「岩橋は暗くなると人格変わるからぁ…電気つけて寝た方がいいかもねぇ」
中村がそう言って栗田と一緒の布団に再び入って行った。
「マジシャレんなんねーよこの俺の腕力でも敵わないんだからさ」
閑也がぐちぐち言いながら蒲団を被る。彼もどうやら恐怖体験を味わったようである。
「なんなんだ皆…まるで人のことを腫れもののように…いじめだ…これはいじめだ…」
涙ぐみながら岩橋は蒲団に入る。全員が寝付いたのを確認して岸くんも蒲団を被った。
夢すら見ず泥のように眠り、翌朝は自由行動でこれまた7組の監視に追われた。そんな岸くんの修学旅行の唯一の収穫は嵐山のお土産屋さんで買った青い唐草模様の扇子である。
帰りの新幹線では汗だくの体をそれで扇ぎつつ東京駅で教頭に起こされるまで爆睡であった。

つづく

28 :
作者さん乙です!!
谷茶浜のセリフ「俺もいるんだけど」
だけw
さすが不憫2ww

29 :
ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。
ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。ひんがら目気色悪すぎこっち見んなR。

30 :
第九話 その1
「受験票…筆記道具…腕時計…電車賃…連絡用携帯電話…参考書etc…よし、忘れ物はないな」
リビングで家族全員が輪になり、龍一の荷物チェックをする。挙武が一つ一つ確認して鞄に入れた。
「体調は?龍一」
岸くんが訊ねると龍一は頷き、大丈夫という意を示した。
「消化にいいものとぉ頭にいいものちゃんと詰めといたからぁ…ゆっくり噛んで食べるんだよぉ。今日だけはぁ全部龍一の好きなものしか入れてないからぁ」
嶺亜がそう言って弁当箱を手渡す。
「おい龍一!俺が究極のリラックスのおまじない教えてやるぜ!これさえやりゃあプレッシャーなんて消えてなくなっちまうぜ!俺も去年これで乗りきったからな!ギャハハハハハハ!!いいか、手の平にだな…」
恵が言いかけて勇太がツッコんだ。
「おい恵、まさか「人」っていう字を三回書いてそれ飲み込む、とかじゃねーだろうな?」
「なんでおめーが知ってんだよ俺の必勝法を!!」
「…龍一、このアホはとりあえず無視していいぜ。この勇太お兄様が疲れた時に元気が出る動画を…」
「おめーの動画は下半身が元気になるだけだろ!!んなもん受験会場で見たらつまみ出されんぞコラ!!」
恵と勇太がやりあうその横で郁がハムエッグをもぐもぐ食べながら冷静に時計を見る。
「もうそろそろ出た方がいいんじゃね?てかさー、何もわざわざ颯兄ちゃんが付いて行かなくてもタクシー呼んで行けばよくね?」
「いや、郁…龍一の運の悪さと不憫さを甘く見るな。渋滞に巻き込まれたり事故ったりするかもしれん。電車の方が確実だ」
挙武がきっぱりと断言すると皆がうんうんと頷いた。
「大丈夫だよ皆!龍一のことは俺に任せて!!ちゃんと責任持って受験会場まで送り届けるから!この日のためにちゃんと二人でD高まで行ったし道もちゃんと覚えてるし」
どん、と胸を叩いて颯は言い切った。頼もしい双子の兄の言葉に皆胸を熱くする。そして岸くんは今こそ父親の出番…とばかりに総括した・
「龍一、皆がついてる。だからお前は絶対受かるよ。大丈夫。俺達を信じて、自分を信じて当たって砕けろ!!」
拳を握ってそうしめくくったが恵に「砕けてどうすんだおめー縁起でもねーこと言うな!!」と蹴りを入れられた。岸くんは仕切り直す。
「いてて…今のは言葉のアヤで…。ちゃんと昨日嶺奈の遺影にも上手くいくよう手を合わせてきたからきっと天国でお前のママも見守ってくれてるよ。帰ったら大好きなプリン食べようぜ」
「ありがとうパパ…兄ちゃん達…颯、郁…がんばります…絶対合格するから」
龍一は固い意思を瞳に宿してそう宣言し、第一歩を踏み出した。
「あ」
ちょうどそこに郁が飲みほしたファンタオレンジのペットボトルがあり、見事に龍一はそれを踏んづけて滑って転んだ。
「…」
沈黙。
起き上がった龍一は涙目で高速自我修復に励む。出だしの第一歩からつまづき、不吉なことこの上なし。そこに庭に黒猫が迷い込んで叫んでいるのが見えた。続いてリビングの掛け時計が傾いて落ちてくる。
「…」
どんよりしたムードが漂う。龍一の放つ尋常ならざる負のオーラにたった今まで盛り上がっていた気分はどん底にまで落ち込もうとしていた。
「と、とにかく、龍一がんばれ!勝利の女神がお前に微笑んでいるぞ!ほら!嶺亜!!女神の微笑みで励まして!」
「龍一がんばってぇ。ヘマしたらおしおきだよぉ」
嶺亜はにっこり笑って言ったがこれもいつもの癖で余計に追い込むようなセリフが出てしまう。
「ああー!!そうこうしてる間にこんな時間!早く行かなきゃ龍一!行くよ!」
時計を見て颯が龍一の腕を引っ張る。慌てた龍一は玄関先でもすっ転んだ。それを皆が不安いっぱいに見守る。
「ところでよ、龍一の受験番号って何番だ?」
勇太がなんとなく訊ねると挙武がしばし考えた後こう答えた。
「確か339番…さんざん苦しむ…」
「…」
「こりゃ…ダメかもな」勇太が溜息をついた
「とりあえずダメだった時のことをもう一度考えとくか」挙武が頭を掻いた
「やっぱり龍一の負のオーラの前には僕達無力なのかもねぇ」嶺亜は指を唇に当てた
「残念会は焼き肉だな!」郁は肉屋のチラシを見始めた
「いや…龍一を信じよう。天国の嶺奈もきっと見守ってくれているはず…」
岸くんが亡き前妻を想いながら手を合わせると嶺亜がそれを横目で睨んでこう呟いた。
「パパぁ、ママはねぇ龍一のこと『あんな不憫で負け神しょった子他にいないよぉ』って断言してたからねぇ。ママなんかの力借りようとすると絶対不合格だよぉ」
.

31 :
「お、今日はすき焼き?豪勢だね」
夕飯の支度をする嶺亜と郁に仕事帰りの岸くんが問いかける。
「そぉ。恵ちゃんがバイト先ですきやき用のお肉安くしてもらってきたしぃ勇太が八百屋のおばちゃんに気に入られてるからぁお野菜も安くわけてもらったんだよぉ」
「あとは俺が春休みの農場体験で卵をもらってきたからな!」
郁が得意げに胸を張る。そろそろできあがろうかというところに龍一と、彼を迎えに行った颯が帰ってきて家族全員で鍋を囲んだが…
「…ダメかもしれない…」
開口一番、この世の終わりのような顔で龍一はそう呟き、リビングは凍りついた。
「…国語の問題で、途中分からない問題があってそれを飛ばして回答してたつもりだったんだけど…どうも回答欄を一つずつ間違えたかもしれない…最初の方の問題だったからあとの問題全部解答欄違いで撥ねられる…」
「…」
皆の箸を持つ手がぴたりと止まる。郁でさえも、である。
「…やっぱり俺には負け神が憑いてるんだ…この先何やってもどうせ上手くいかないんだ…」
「そ、そんなことないだろ龍一!お前の勘違いかもしれないだろ。その解答欄を空けて他の問題解いたんなら何も問題は…」
岸くんが元気づけようとしたが龍一はうなだれて首を振った。
「…最後の問題を解答しようとしたら…一つ空いてるはずなのにすでに全部の欄が埋まってしまってて…そこでパニックになってしまってあとは自分がどうしたか覚えてないんだ…もうだめだ…」
「いや…でも、1教科だけだったら他で挽回…」
「それが1限で、あとの時間もどうやって問題を解いたか覚えてないんだ…頭が真っ白になって…」
沈黙が流れる。鍋のぐつぐつと煮える音だけが虚しくこだまし、すき焼きはすでに煮えすぎてグラグラになってしまっていた。その残骸を皆が無言で自動的に口に入れて夕食は終わった。
それから一週間、龍一は生ける屍となっていた。いつもの10倍増しの暗さで同部屋の颯はいたたまれず郁の部屋に寝泊まりするほど負のオーラがだだ漏れていたのである。
そして合格発表の日…
「龍一!何言ってんの!?龍一の合格発表なんだから自分で見に行かないと!」
颯が部屋のドアを叩きながらそうまくしたてたが龍一は蒲団を被ってそれに抵抗した。
「…嫌だ…どうせ落ちてるんだから誰でもいいからそれを確かめてきて…俺には耐えられない…」
「おいおめー何言ってんだよ!おめーの合格発表をなんで俺らが代わりに行かなきゃなんねーんだ甘ったれんな!」
蒲団の上から恵が蹴りを入れたがそれでも龍一は出て来ない。
「龍一、いいから出てこい!ここにお前好みの巨乳美女のグラビアがあるぞ!」
勇太がエロ本で釣ったがしかし全く反応はない。
「おい龍一!!辛いのは分かるがこの僕だって去年、不合格と言う事実を甘んじて受け入れたのだからお前にそれができないなんて言わさないぞ!
心配しなくても不合格だった時の対処法も全て考えてあるからそんなに気に病むことはないんだ!だから行け!」
挙武が自身の苦い体験を励ましの言葉に変えたがそれでも龍一は「嫌だ」の一点張りである。
「龍一ぃ…出て来ないとおしおきだよぉ…それでもいいのぉ…?」
嶺亜がドスをきかせた声で脅しをかけると龍一は一瞬顔を覗かせたがそれでも再び蒲団を被った。
「んじゃ俺が行ってきてやるよ」
末っ子の郁が、仕方がないといった様子でそれを申し出ると岸くんが蒲団の前に座ってこう諭した。

32 :
「龍一、じゃあ皆で行こう。お前が辛くて一人じゃ耐えられないなら皆で見よう。例え不合格でも皆はお前を責めたりしないよ。それは分かってるだろ?」
「…」
「お前が颯のために公立一本に絞って受験するって言った時…お前が家族みんなのこと思ってそう決断してくれたその気持ちは高校に合格するよりもずっと大事なことなんだって俺は思ったよ。結果じゃなくて課程が大事なんだって。
だから合否がどうであれ俺達は受け入れるし、お前にもそうしてほしい。不合格だから自分はダメな奴だなんて絶対思わないでほしいんだ」
「パパ…」
しばしの沈黙の後、龍一は折れたが歩くのがやっとといったおぼつかない足取りでいつ風と共に吹き散って行くか分からないような状態であった。
そして合格発表会場を目前にした門の前に到着する。会場の方から喜びの声や叫び声、その他歓声が飛んでくる。それとは正反対に泣きながら門を出て行く親子連れもちらほら目にする。まさに合格発表の悲喜こもごもである。
「龍一、行こう」
岸くんが手招きしたが、龍一はうつむいて立ち尽くしていた。
「龍一」
もう一度岸くんは龍一を呼んで手を取った。それでも龍一は泣きそうな顔で歯を食いしばっている。
「龍一ぃ、仕方ないからぁ今日は龍一が食べたいもの作ってあげるからぁ…だから行くよぉ」
反対側の手を嶺亜が握った。
「しゃーねー、今日だけは許してやるぜ!!」恵がばしっと龍一の背中を叩く。
「俺も兄貴らしいとこちょっとは見せとくか。おい龍一、今夜はお前の好きなジャンルのAV見放題のオールナイしてやる!帰りにツタヤに寄って帰ろうぜ!」勇太がぴしっと龍一の額を弾く
「まあ今日だけは僕のコレクションのモデルガンをいじらせてやってもいい。今日だけな」挙武がぺん、と龍一のお尻を叩く。
「龍一、帰りに俺のイチオシのメロンパン買って帰ろう!だから行こうよ!!」颯が前方を指差す
「どーしても嫌なら俺が見て来てやるからさ、龍一兄ちゃん」郁が前を歩く
「…」
兄弟達と岸くんに背中を押されて、龍一はようやく門をくぐる。そして震える足で合格発表の掲示板の前まで歩いた。人だかりの中を掻きわけて、受験票を手に龍一は自分の番号を探す。その後ろ姿を岸家一同が固唾を飲んで見守った。
ややあって、龍一が振り向く。その眼は大きく見開かれ、唇はわなないていた。
「龍一?どうだった!?」
岸くんが訊ねると龍一は震える声で
「…あった…」
と掠れた声で呟いた。
.

33 :
「本当だ…339番。確かにある。合格だ。やったぞ龍一!!」
龍一の合格を家族全員がこの目で確かめ、周りがどん引きするくらい大騒ぎで胴上げをしてひとしきり騒いだその後は岸家で合格祝いパーティーが催された。どんちゃん騒ぎで夜を明かし、岸家は颯と龍一揃ってサクラが咲いた。そして入学式を迎える。
「良かったねぇパパぁ。龍一と颯の入学式が午前と午後で分かれててぇ。颯は絶対入学式に来てほしいって言ってたしぃ」
岸くんのネクタイを正してあげながら嶺亜は微笑む。岸くんは自分自身もちょっと前まで高校生だったのに今や保護者として入学式に参列だなんて不思議な感慨に浸った。
「パパありがとう来てくれて!俺は1年1組になったよ!あとで校門の桜の木の下で一緒に写真撮ってよ」
颯は入学式で大はしゃぎだった。陸上部の部室も一緒に見に行って噂のトラビスなんとかの先輩達も見て来た。そして午後は龍一の入学式に向かう。
さすがに超進学校なだけあって周りの保護者もどことなく上品な感じである。岸くんはその中で浮きまくっているのを痛いほどに感じる。保護者も楽ではない。
人生で初めて勝ち取った合格に龍一は少しポジティブになっているようで、入学式が終わって家に帰るとアルバイト雑誌をリビングで読み始めた。それを恵がからかう。
「ギャハハハハ!龍一無理すんじゃねーぞ。おめーまずは高校で友達作んねーと!」
「そうだよぉ龍一ぃ。中学の時だって凛と仲良くなるまでほとんどクラスの子としゃべってなかったんだからぁ。それにぃ進学校なんだから勉強だって大変だしねぇ」
嶺亜が夕飯の支度をしながらそれに加わる。龍一は苦い顔をしたが真剣にページをめくっている。
岸くんとしては恵と嶺亜の言う通り、まずは友達を作って高校生活を楽しんでほしかったが家族のために、自分を変えるためにバイトを始めたいという龍一の気持ちは尊重したかった。
そんなこんなで一週間ほど経った頃である。
「龍一…今、なんて?」
その日の夕食で龍一がぼそっと話した内容に全員が耳を疑い、挙武が「信じられない」というニュアンスを含んで訊き返した。
「…あ、明日…友達が家に来るから…」
もう一度、龍一は繰り返した。
「友達…だと…?」
勇太は絶句しながら箸を転がした。
「嘘でしょぉ…一体どうしたっていうのぉ龍一ぃ…なんか運勢まで変わってないぃ?」
味噌汁を入れる手を震わせながら嶺亜は呟いた。
兄弟達は皆顔を合わせて驚愕したが、岸くんは素直に喜ぶ。
「良かったじゃん龍一、友達できるか不安そうにしてたのに難なくできて。同じクラスの子?」
「うん…。隣の席で、ちょっとしたきっかけで話してそれから一緒にいるようになって…」
「そうなんだ。まあ同じ学校だし頭のいい子なんだろうな。大事にしろよ。やっぱ学校は友達といるのが一番楽しいから。俺もさー高校生の頃さー」
岸くんは高校時代の思い出を語ったが誰も聞いていなかった。そうこうしているうちに郁に半分食べられてしまっていた。
.

34 :
「んじゃバイト行ってくるわれいあ。夕飯までには帰るから」
「うん。行ってらっしゃい恵ちゃん」
恵と勇太はいつもの肉屋とファミレスのバイト、颯は陸上部の練習に出かけて行った。
「さぁてとぉ、郁ぅお庭の畑のお手入れ手伝ってぇ」
「あいよ!」
嶺亜と郁は庭に作った畑の世話に精を出す。4月の陽気に包まれて岸家の家庭菜園は少しずつ芽吹き始めていた。
「これ収穫できる時期になったらさ、庭でバーベキューとか良くね?嶺亜兄ちゃん」
「そぉだねぇ…そのうち鶏とか牛とか飼いだしたりしてねぇ」
二人できゃっきゃと笑いながら鍬やスコップを動かしていると話題は今日龍一が連れてくる彼の友達になる。
「そーいやさー、さっき龍一兄ちゃん駅に迎えに行ったけどどんな奴かなー。あの龍一兄ちゃんとよくコミュニケーションとろうなんて思ったよな」
「だよねぇ。でも凛の時も龍一と似たようなタイプでお互い安心できてたみたいだからぁ似たようなタイプの子じゃないのぉ?おとなしくてくらぁい感じのぉ」
「てことは龍一兄ちゃんに負けず劣らず暗くてネガティブで負のオーラ放ってるってことか。あ、そういや空が曇ってきたからそろそろ帰ってくるかも」
郁に言われて嶺亜が空を見上げるとさっきまで晴れていた青空が今は一面の鉛色になっていた。ひと雨来そうな感じがして嶺亜は洗濯ものを早めに取りこむことにした。郁と物干しに向かうと門が開く音がしてそこに視線をやると龍一が帰ってきたところであった。
「あ、ただいま嶺亜兄ちゃん…。えっと…友達の…」
おずおずと龍一が連れて来た友達を紹介しようとする。嶺亜と郁は想像と全く違った龍一の友達に目を丸くした。
「初めまして、おじゃまします。本高克樹と申します」
はきはきと明るく、礼儀正しくお辞儀をしてにっこりと輝くような笑顔で自己紹介をすると、本高と名乗った美少年は龍一に向き直る。
「龍一君が言ってた通り、綺麗なお兄さんと可愛い弟さんだね」
「あ…うん…そう言っていただけると嬉しい…」
光と闇、陰と陽…二人から放たれる全く正反対の雰囲気に驚愕しつつ、嶺亜と郁はリビングにいる岸くんと挙武に報告しに行った。

35 :
「冗談言うな嶺亜。龍一にそんな明るくて朗らかな友達なんてできるはずがない。エイプリルフールはとうに過ぎたぞ」
新聞の経済欄を見ながら挙武は鼻で笑う。岸くんも映画のDVDを見ながらまたまた〜と冗談めかす。
「本当だって!目がくりくりしててチャーミングで小動物的な可愛い感じだけどガタイは意外に良くて頭も良さそうで昆虫苦手っぽい感じでなんとなく絵が超ド級に下手そうなとにかく龍一兄ちゃんとは正反対な明るい美少年なんだよ!な、嶺亜兄ちゃん」
「そぉなのぉ。可愛い子だったよねぇ…ちょっとお茶出しにもう一回覗いてこよぉ」
嶺亜はいそいそとお茶とお菓子の用意をして二階の龍一の部屋にあがった。
「龍一ぃ、お菓子持ってきたからぁお友達と食べてぇ」
部屋を開けると二人とも勉強の最中だった。こういうところはいかにも進学校の生徒らしい。難しい参考書が広がっている。
「すみません、ご馳走になります」
「どういたしましてぇ。ゆっくりしていってねぇ。汚い家ですけどぉ」
謙遜ではなく部屋の中は本当に汚かった。颯と龍一の二人部屋だが颯は部活が忙しくて部屋の整理どころではないらしいし龍一も無頓着である。よくこんな部屋にせっかくできた貴重な友達を入れようなどと思ったものである。
「龍一ぃ、お友達連れてくるなら部屋くらい片付けときなさいぃ。これじゃ恥ずかしいでしょぉ」
「これでも少し片付けたんだけど…」
「こんなの片付けたって言わないよぉ。次からお友達来る時は僕が掃除するからちゃんと言ってねぇ」
小言を言いつつ本高には笑顔で対応して部屋を出ると嶺亜は岸くんに「可愛い子だったぁ。いい子だしぃ」と報告をする。しかし岸くんからは「あんまりぶりっこしちゃいけません」という忠告が帰ってきたのだった。

36 :
嶺亜が出て行った直後、本高はほうっと溜息をついた。
「優しくていいお兄さんだね。お兄さんっていうよりお姉さんかお母さんみたい。綺麗だし可愛いし…」
「そうかな…ああ見えて怒ったら怖いし小言は多いしヘマするとおしおきくらうし…いいことばかりでもないんだけどね」
しかし兄を褒められて悪い気はしない。龍一はお菓子を食べながら顔が綻ぶ。
「龍一くん家は兄弟が多いんだよね。いいよねそういうの。うちは普通の核家族だから」
「いや…多くてもあんまりいいことはないよ…。二番目の兄ちゃんはすぐ暴力ふるうし笑い声がうるさいし三番目は下ネタ大好きで家族内セクハラがひどいし四番目は嫌味攻撃と理論攻めで精神的に責めてくるし。
双子の兄は普段は穏やかだしいいんだけど回り始めると手がつけられないし末っ子は食欲の権化でうっかりしてたら全部食べられるし…パパは優しくていいパパだけど」
「お父さんって義理のお父さんなんだよね?凄いよね、赤の他人なのにそこまで受け入れてるなんて。普通なかなかよそよそしくなって気まずくなってしまうと思うんだけど」
「まあ色々あって…。その点についてはバックナンバーかまとめサイトを読んでもらえば…って何を言っているんだろ」
すっかり和んで話をしていたらけっこうな時間が経っていた。バイトを終えた恵と勇太が帰宅し、颯も部活を終えて帰ってきた。
「ただいま!あ、友達来てるんだっけ龍一。こんにちは初めまして、俺は双子の兄の颯。人見知りだけどよろしくね」
人見知りなんだかフレンドリーなんだか分からない挨拶をして颯は本高と打ち解けたようである。
「龍一ぃ、良かったら本高くんにお夕飯食べて行ってもらったらぁ?恵ちゃんが唐揚げ用のお肉たくさん持って帰ってきたからぁ」
本高を気に入ったらしい嶺亜はそう持ちかけたがしかし龍一は気が進まなかった。というのも岸家は奇人変人のオンパレードだ。至って常識人の本高には刺激が強すぎる。ドン引きで顔をひきつらせるであろう彼の姿が容易に想像できた。
「いや、でも…あんまり遅くなったら家の人も心配しそうだし…そうだよね、本高君?」
頼む、断ってくれ…と龍一は願ったがしかしその祈りは届かなかった。
「いいんですか?今日は両親が遅くまで仕事で、弟は学校行事で泊まりに行ってるから夕食は僕一人でしなくちゃいけなかったから…嬉しいです」
かくして龍一の懸念をよそに本高は岸家と食卓を囲むことになったのだった。

その2に続く

37 :
キタ━━( ゚∀゚ )━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━( ゚∀゚ )━━!!!!
まじ作者さん乙乙乙

38 :
岸家の人々きた!!
谷茶浜よかったね〜おめでとう!

39 :
岸家の人々きた!!
谷茶浜よかったね〜おめでとう!

40 :
作者さんありがとう!
岸家の人々ずっと楽しみに待ってました!!

41 :
谷村が中学卒業高校入学の季節にこのストーリーを持ってくるところがステキ

42 :
この小説最高過ぎて泣ける!!
欲望を言えばきしれあをもっともっと書いて欲しいです←

43 :
第9話 その2
「うちの家族は皆ちょっと変わってるから気にしないで。決してあまり深く考えないように。珍獣ハウスに迷い込んだと思って。世界ビックリ人間大賞を3D体験してるんだと思えば少しは笑えるだろうから」
夕飯ができてリビングに向かう途中で龍一は本高にそう言い聞かせた。個性的と言うにはあまりにもエキセントリック過ぎる家族をこんな常識人に紹介するのは気が進まない。
だけど兄弟達にそれらしく振る舞ってもらうなんて不可能だからせめて予備知識だけでも与えて置いた方が衝撃は少なかろう。
「龍一君て面白いね。最初会った時はそんな感じしなかったけど。そういう冗談も言うんだね」
あっけらかんと本高は笑う。駄目だ、通じてない…。純粋な彼の頭の中にはこの世の中に生息する奇人変人の類など想像もつかないのだろう。せっかくできた友達なのに、また明日からは一人かな…と龍一は覚悟した。
「いっただきまーす!」
威勢のいい郁の声で夕食は始まる。彼はまるで飲み物のように唐揚げを次々に胃袋に放り込む。最近、縦にも伸びてきてるからこのままいくと末っ子が一番巨漢になってしまいそうである。
「ギャハハハハハ!おめーこんな暗い奴と友達になってやるとかいい奴だな!ボランティアの一環か!?ギャハハハハハ!!」
早速バカ笑い全開で恵がからみにまわる。アホと秀才の対極にあるその構図になんだか皮肉なものを感じた。
「座った席が隣同士で、龍一君が筆箱忘れて困ってたからシャーペンを貸してあげたのがきっかけで話すようになったんです。僕も新しい環境で知ってる子もいなくて不安だったから」
「そぉなんだぁいい子だねぇ本高君。龍一ぃ、あれだけ学校に行く前に忘れ物ないかチェックしときなさいって言ったのに筆箱忘れたのぉ?ほんとうっかり屋なんだからぁ」
嶺亜が本高に感心しながら彼のご飯をよそった。
「頭のいい学校だし勉強とか大変でしょ?龍一もバイトするって言ってるけどそんな暇なさそうだよね。龍一、無理しなくていいからね」
岸くんが味噌汁をすすりながら優しく諭すと本高はそれをうらやましそうに見た。
「龍一君は偉いですよね。家族のためにバイトするって聞いて僕は自分のことしか考えてないからちょっと恥ずかしくなりました。でも将来なりたいものがあるから後悔はしたくなくて…」
「なりたいものってぇ?」
「医者です。そのためには大学もちゃんと選ばないといけないしそのために努力もしなきゃいけないし…」
それを聞いて勇太が指を鳴らした。

44 :
「医者か!!いいな!診察で美女の裸体拝みたい放題だし産婦人科とかいいかもな!!美人ナースもいりゃあ天国だろうな。よし、女医モノでも探すか!」
ああまた下ネタ大魔王がぶち壊しにしたよ…と龍一が自我修復をしかけると本高はうんうんと頷く。
「産婦人科は今本当になり手がいないみたいだからそれも視野に入れてるんです。生命の誕生に携わる大事な仕事だしやりがいはきっとあるだろうから」
澱みのない瞳で本高がそう答えると挙武が「ほう…」と感心したように呟く。まあ挙武兄ちゃんはこの中では常識のある方だし秀才同士話も合うんじゃないか…と龍一が落ち着きかけていると挙武はいきなりその眼をヘッドライトのようにした。
「それではお近づきの印に僕がモノマネで迎えよう!まずは藤ヶ谷君のラップ…フジラップだ!!その次はサクラップ!サランラップはニュークレラップ!!」
いきなり立ち上がり、挙武はラップだのモノマネだのクオリティの低いものから高いものまで次々と連続で披露する。春の訪れとともにどうやら挙武の頭の中にはサクラが咲いているようである。恵と勇太がバカ笑いで盛り上げ、どんちゃん騒ぎである。いつものパターンだ。
「騒がしい家族でごめんねぇ。これからも龍一と仲良くしてあげてねぇ。暗くてネガティブで負のオーラと負け神を生まれつきしょいこんだどうしようもない弟ですけどぉ」
最後は嶺亜がぶりっこ全開で本高の手を握る。すると岸くんがオホン、と咳払いをする。郁は本高そっちのけでひたすら食べていたし颯はトレーニングのため空気椅子で食事をしていた。

.

45 :
「大変お見苦しいものをお見せしてしまって申し訳ない…放送事故のようなものとして処理していただければ…」
やはりこうなる運命なのか…と龍一は諦めに似た感情がやってくる。所詮俺には友達なんて立派なものはできなくて一人でくら〜く自我修復してろという神様の訓示…。そう、友達と高校生活を楽しむよりも家族のために馬車馬のように働けという…
たった一週間だったけど友達ができて嬉しかった。ありがとうさようなら本高君…俺のことはもう亡きものにしてくれてもかまわないからね…
龍一が数秒でそんなことを頭の奥に響かせていると本高はあっけらかんとこう言い放つ。
「面白かったよ。なんか今までに出会ったことのないタイプの人達だったし賑やかで楽しいよね。お父さんもあんなに若いなんてびっくりしたけどいい人だよね。雰囲気もいいしうらやましいな」
「…まじで言ってるの…?」
空耳ではないようである。本高は至って平然としているから冗談というわけでもなさそうだ。
「笑い声の大きなお兄さんは頭がカラッポそうで愉快だし産婦人科に異常に興味を持つお兄さんもファッションセンスとかかっこ良くて憧れるしモノマネ披露してくれたお兄さんは面白いし。
颯くんのヘッドスピンって凄いし郁くんはとにかく食べてて豪快だしお父さんは優しそうで人が良さそうで安心できるし、それに…」
そこで本高は何故か伏し目がちになる。どこか恥らっているようにも見えた。
「龍一君のお兄さんって、可愛いよね…なんか今までに出会ったことのないタイプで…」
「は?」
お兄さんってどの?四人いるけどそりゃあ四人ともそういないタイプの奇人変人オブジェクションだ。一体どれのことを言っているのか…分かるような気もしたが分かりたくない気もする。そう懸念した矢先に本高は独り言のように呟いた。
「苦手なカブトムシも『れいあ』って名前をつけたら可愛く思えるかなぁ…」
「ちょ、ちょっと待って…」
「あ、ごめんね。お兄さんのことこういう風に想われるのって嫌だよね。こういう奴とは友達になりたくないよね?」
「いや…そんなことはないけど…」
「ほんと?龍一君って心が広いね。良かった、友達になれて」
にっこりと笑顔でそう言われ、龍一は涙が出そうになる。もちろん、これは感動が半分である。そしてもう半分は…

46 :
「あんなに可愛いけど彼女とかいるのかなあ…なんか想像できないなあ…それとも彼氏がいるのかなあ…まさかね」
「は…はは…」
まさか義理の父とデキてるだなんて清廉潔白な本高の頭の中には存在し得ない予想であろう。後ろめたさに泣きそうになる。
しかし憧れは憧れのままそっとしておくのが一番だ。龍一はそう判断した。家族の話はこの先ひかえよう…そう決心したのだが…。
「これは…」
あくる日の休み時間、ひょんなことから龍一は本高の持つスマホの画像フォルダを見てしまった。見るつもりなど全くなかったが不慮の事故だ。偶然だ。そこにあったものは…
「嶺亜兄ちゃん…?」
一体いつどこで撮ったのか、それは嶺亜の画像だらけだった。どう考えても男子高校生が男子高校生の画像を集めているのは普通じゃない。例え憧れという理由付けがされていようとも。
龍一は全身から血の気が失われて行くのを自覚する。見なかったことにして本高とは距離を置くのが一番いいかもしれない。だが…
「あ…」
5限が始まる直前、問題集を忘れてしまったことに気付く。今日の授業は問題集がなくてはどうにもならない。忘れると大幅に遅れを取ってしまう。
「どうしたの?あ、問題集忘れたの?良かったら見せてあげるよ」
焦っていると本高が察してくれて問題集を見せてくれた。それだけではなく、昼休みは一緒に食べようと誘ってくれて購買で買ったパンまでくれた。
こんないい友達と距離を置くなんてできるわけがない。ただでさえ暗くてネガティブで友達を作るより東大に合格する方が簡単な気がするくらいなのにそんな勿体ないことしたらもう未来永劫独りぼっちで生きなくてはならない気がした。
ならばせめて嶺亜と岸くんの道ならぬただならぬ関係を決して悟られることのないよう努めよう。龍一は固く心に誓う。

47 :
「龍一くん…ちょっと頼みたいことがあるんだけど…」
放課後、一緒に下校すると本高がそう呟いた。少し浮かない表情である。
「何?」
「大変あつかましいんだけど…いや、やっぱりあつかましすぎるかな…」
本高は悩んでいる風だった。だから単純に龍一は力になりたいと思ったのである。問題集を見せてくれて、一緒にお昼を食べてくれて、パンまでくれた。こんなに親切にしてもらってるんだから何か一つくらいは恩返しをしないといけない。
「そんな遠慮しないでなんでも言って。俺にできることならなんでもするから」
龍一は自分の軽はずみな言動を後に激しく後悔することになる。本高は少し安心したようにこう言った。
「あのね、両親が明日から親戚の結婚式に行くんだ。北海道だから明日は帰って来なくて…。弟は付いて行くんだけど俺は勉強が遅れると困るからって残ったんだ。
でも一人で家にいるのは不安で…。龍一くんの家って家族が多くて賑やかで楽しそうだから泊めてくれると嬉しいんだけど…」
冗談じゃない。泊めるとなれば奇人変人ブラザーズが何をしでかすか分からないし嶺亜と岸くんの関係がバレる可能性が高くなる。絶対ダメだ。これは断固断るべき…
龍一が断る理由を考えていると本高はふっと暗い表情になって俯いた。
「あ…やっぱダメだよね…。ごめん、忘れて」
「いや全然!うちの家族は変わってるけどそれでもいいって言ってくれるなら大歓迎だよ。むさくるしい家ですがよろしければいつまでもいてもらってかまわないから」
口が勝手に回ってしまった。後悔先に立たず。龍一は本高を泊めることを約束してしまった。

48 :
「まずい…非情にまずい…」
「何がまずいの龍一?嶺亜くんの作ったご飯まずいなんて言ったら素っ裸で外に放り出されて二度と家に入れてもらえなくなるから滅多なこと言わない方がいいよ」
隣で筋トレをしながら颯がトンチキなことを言っているが龍一はそれに付き合う余裕がない。なんとかしてこの危機的状況を脱しなくてはならない。考えろ、考えるんだ龍一、お前の頭脳はこんな時のためにあるんだろうが。
颯を無視して思案にあけくれていると彼は「あ」と何かに気付いたように筋トレを一時中断した。
「始まっちゃった。まだ10時なのに。今日は早いね」
時計を見ながら颯が呟いたと同時に壁の向こうから艶めかしい声が響いてきた。
「やだぁ…パパ、ちょっとそんなの無理ぃ…んっ…んんっ…!!」
忘れていた設定ではあるが龍一と颯の二人部屋は岸くんと嶺亜の寝室の隣である。壁一つ隔てて夜はあの声がわりとダイレクトに聞こえてくるのだ。
「あっ…やだっ…ダメだってばぁ…」
「もうちょっとだけ…ここをこう…おおっ…おおお」
「パパぁ…絶対出したらダメだからねぇ…黙って出したらもうしてあげないよぉ」
「分かってる分かってる…あっ…いい…!」
龍一は絶句する。こんなの聞かれたらもう終わりだ。三月は岸くんが長期出張があったりして随分溜まっているのか回数も内容の濃さもハンパない。
「始まったか!よしきた!今日のプレイは何かこの勇太お兄様が当ててみせようぞ!」
そうすると嬉々として盗み聞きに勇太がやってきて勝手にY談にお花畑を作るのである。エロ談義独演会を始めてティッシュ持って来いとパシられた。

49 :
「駄目だもう…せめて明日だけは我慢してもらうようパパに頼むしかない」
大丈夫、パパは優しいしいい人だから聞いてくれる。可愛い息子のためならば…
「そんなの駄目だよ龍一!パパはね、嶺亜くんとすることだけが楽しみなんだからその楽しみを奪うなんてとんでもないよ!俺からヘッドスピンを奪うようなもんだ!」
岸くんバカが何か言っている…しかし折れるわけにはいかない。反論しようとするといつの間にか部屋にいた挙武がコップを壁にあてて耳に付けながらこう忠告してきた。
「パパはともかくとして龍一、お前が嶺亜にもの申すことなんてできるのか?まあ僕は止めないがな。明日にはお前が全裸で庭に作られた小屋に生活していると思うと兄としては心苦しいな」
「…」
龍一は己が全裸で犬小屋のような粗末な空間で震えながら生活してる様が脳裏に浮かび、気が遠くなった。
忘れてた。俺が嶺亜兄ちゃんに何か言おうものなら絶対零度でねじ伏せられるだけなのだと。
やっぱり友達を失うフローチャートになってたんだと絶望しながらリビングに降りると恵がプレステでバイオハザードをプレイしていて、叫びながら次々にゾンビをなぎ倒していた。
アホは悩みがなくていいよな…と思っていると声をかけられる。
「おい龍一。まだパパとれいあはヤってんのか?」
「え?あ、うん。今佳境みたいで…」
「なんかムカつくから俺が協力してやる。明日あいつらにヤらせなきゃいーんだろ?」
「え?今、なんて…」
我が耳を疑っていると最後のゾンビを倒してステージクリアした恵は立ち上がって龍一にこう言った。
「恵「お兄様」が弟のためにひと肌脱いでやるっつってんだよ。感謝しろよオメー!」
蹴りをいれられたが、溺れる者はなんとやら…龍一は恵の協力を得ることになった。

その3につづく

50 :
早く続きみたいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

51 :
作者さん最高です!
面白い作品をありがとうございます!
辛いことがあってもここを見れば神7への思い、
楽しいお話があって玄樹が出ます^_^
これからも頑張って下さい!

52 :
51です
誤字ですw
元気がでます!

53 :
デブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚R
デブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚R
デブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚R
デブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚R
デブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚R
デブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚Rデブ豚R

54 :
第九話 その3
嶺亜は隣の部屋で兄弟達が聞き耳をたてていることを薄々勘付いていた。だから今夜はそこそこに切りあげるつもりでいたのだがいかんせん岸くんがやる気になっちゃっている。
「それでは続きまして…」
「ちょっと待ってパパぁ、颯達の部屋で勇太とか挙武が聞いてるよぉ。今夜はもぉこれくらいにしとこうよぉ」
「それは無理です」
キッパリハッキリと岸くんは言い切った。分かっていたことではあるがこの状態の岸くんと止めることなでできるはずもない。嶺亜は諦めて受け入れようとしたが…
「!?」
いきなり部屋の扉が開いた。驚いてそちらを見ると難しい顔をした恵が立っている。
「恵ちゃん!?なに?どぉしたのぉ?」
「け、恵…今お取り込み中なんだけど…」
嶺亜と岸くんが焦っていると恵はずかずかと入りこんで来て嶺亜の腕を掴んだ。
「な、なぁに?恵ちゃん?」
「れいあ、今夜は俺と寝るぞ!明日もな!」
「えぇ?あっちょっと待ってよぉ服くらい着させてよぉ」
嶺亜を半ば引き摺るようにして恵は強引に自分の部屋に連れ去る。岸くんは全裸で放心状態になった。一体どういう風のふきまわしだろうか。ここにきてブラコン魂がまた再燃してしまったのか。慌てて服を着た嶺亜は恵に問いかける。
「恵ちゃん急にどうしたのぉ?なんで一緒に寝るとか言いだしたのぉ?そりゃあ小さい頃は毎日一緒に寝てたけどぉ」
「れいあ、れあくりはフォーエヴァーなんだよ!例え今現在の俺が行方不明でもれあくりは確かに存在した青春の証なんだよ!俺がギャハハと笑えばれいあがうふふと笑う、そんな仲なんだよれあくりは!お前の誕生日にれあくりメモリーBDを見ながら作者は涙してんだよ!
だからこれから暫くは俺と一緒に寝んだよ、いいな?」
何を言っているのか全く分からないけど必死なことだけは伝わってきたから嶺亜は首を縦に振ることしかできなかった。

55 :
嶺亜を連れていかれて岸くんが全裸で拗ねているとコンコンと部屋のドアをノックする音がする。今度はなんだと振り向くと枕を抱えた颯と夜食のスルメをかじった郁が入ってきた。
「パパ、嶺亜くんがいなくて寂しいだろうから今夜は俺達が一緒に寝てあげるね!」
颯ははりきって挙手をした。
「寝てやるから明日帰りに老老軒の肉まん買ってきてくれよパパ」
郁はスルメをへけもけと口の中で噛みながらたかってきた。
「いや…あの…お二人の気持ちは嬉しいんですけど…」
岸くんは丁重に御断りの方向でいった。というのも息子とはいえ颯はすでに岸くんよりかなり大きくてガタイもいいし郁は最近食欲のせいで加速度的に体格が大きくなってきてもう岸くんは身長を抜かされてしまった。
こんな二人に挟まれて寝たらどんなことになるかは想像せずとも分かる。
「せ…狭い…」
ダブルベッドに男三人川の字はきつい。これでは翌朝寝違えること必至である。
「パパ、あのね、今日学校の部活で朝日がね…」
「なーパパ聞いてくれよ。みずきがよー…」
しかしながら、最近忙しくてまともに子ども達の顔も見ていない話も聞いていないことに岸くんは気付いた。
たまにはこうして話を聞くのも悪くないかな…そう思い直して岸くんは颯と郁の新学期の生活から朝食のリクエストまでえんえんと話を聞いた。
「それにしても恵兄ちゃんはなんでまた急にブラコン魂が復活したんだろ」
郁が疑問を口にした。
「さあ…そりゃまあここでしかれあくりは見れないからな…って何言ってんだ俺は」
岸くんは自分の頭を小突く。
「龍一とさっきなんか話してたみたいだけど…。珍しいよね、龍一は恵くんに何か言うとすぐ蹴られるから嫌だって言ってたのに」
「俺夜食取りに行った時ちょこっと話聞こえてきたけど明日誰かうちに泊まりにくるみたいだぞ。来るなら手土産持参してもらわないとな」
「へえ。龍一と恵がねえ…。でもそれとブラコン復活となんの関係があるんだろう?ま、いいか。明日も早いしそろそろ寝よう。颯、寝ぼけてヘッドスピンだけはやめてね。郁も腹が減ったからって噛みついてくるのはやめてね。おやすみ」
「うん、おやすみパパ」
翌朝、やはり岸くんはベッドから放り出されていて首と腰が痛かった。

56 :
「つーかよ、れいあとパパがデキてるってことを本高に気付かれずに帰ってもらえりゃそれでいーんだろ?」
恵と龍一は一緒に家を出る。学校へ向かう道で昨夜の相談の続きを始めた。本人達はもちろんのこと他の兄弟に漏れるとややこしいからである。
「そうだけど…昨日嶺亜兄ちゃんは怒ってなかった…?パパとのアレの邪魔をして…」
「あ?そんなん、れいあが俺に怒るわきゃねーだろ。おめーとは絆がちげーんだよ、キズナが!」
いきなり蹴られた。だが逆に頼もしいと言わざるを得ない。もしも龍一が同じことをしたら逆鱗に触れて全裸で叩きだされていただろうが恵だったら「どぉしたのぉ?」で済むのだから。
「れいあは可愛いからなー。悪い虫がやってこねーように追い払うのも楽じゃねーぜ。まあ悪い虫どころかパパみてーな汗だく涙目ほうれい線野郎とデキちまったんだからもう俺もそろそろブラコン卒業かとも思ったんだけどよ」
「そんな…本高くんは悪い虫なんかじゃ…むしろあんな純情で真面目な好青年を誑かす嶺亜兄ちゃんの波打つ魔性のDNA異次元フェロモンに問題があるわけで…」
「あ、言ってやろ。れいあに言ってやろー!龍一がれいあのことウルトラ淫乱尻軽ぶりっこ上目遣い性別不明男の娘っつってたって言ってやろー!」
「ちょ…そんなことまで言ってない…!!お願いですやめて下さいまたおしおきの絶対零度くらう…!!」
さんざん恵にからかわれて疲労感を抱えて龍一は登校した。隣の席にはもう本高が着席していて、不思議そうに龍一の顔を覗きこむ。
「どうしたの?なんかぐったりしてるけど」
「あ…いや、ちょっと昨日遅くまで勉強してたから睡眠不足で…」
「そうなんだ。凄いなあ。俺は昨日はなんだかフワフワしちゃってあんまり勉強できなかったんだ。遅れないように授業はちゃんと聞かないと」
「フワフワ…?」
「うん。今日泊まらせてもらうじゃん?お兄さん、何が好きかなあ…とか何持って行ったら喜んでくれるかなあ…とか何話そうかなあ…とかずっと考えちゃって。あ、予鈴なった。いけね、予習しなくちゃ」
本高は慌てて教科書を取り出していそいそと予習を始める。龍一は一抹の不安がよぎったがそれを無理矢理押し殺して授業に集中した。

57 :
そして放課後、本高は商店街に寄りたいと龍一を誘った。本屋で参考書でも買うのか手土産のお菓子でも買うのかと思っていたら彼は花屋で足を止めた。
「喜んでくれるといいんだけど…」
はにかみながら本高は真っ赤なバラの花束を購入する。
「…」
花より団子の末っ子始め岸家には花を愛でる殊勝な心がけのものなどいない。花よりゲームの二男、花よりAVの三男、鼻は高いが花には全く興味のない四男、花より岸くんの五男、そして長男は花なんかより僕の方が可愛いよぉのスタンスである。
「あの…せっかくだけどうちにはそんな綺麗な花似合わないと思うんだよね」
「そう?綺麗な人には綺麗な花が似合うと思って。清楚な感じもいいけどこういう華やかな方が喜んでもらえそうだからさ」
その綺麗な花には無数の棘があって刺されてるとこれまた痛いんだよ、と龍一は喉まで出かかったが黙っておいた。
かくしてバラの花束を抱えた本高を迎え、第二ラウンドが始まろうとしていた。

その4に続く

58 :
作者さん乙です
れあくりフォーエバーで涙が・・・

59 :
作者さん乙です!!
れあくりフォーエバーサイコーです!
栗ちゃんと谷茶浜の絡みが見れて嬉しいな…

60 :
ジャニーズJr.板VIP
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/subject.cgi/music/28222/
2年間閉鎖してたJr.板VIPが復活したけど過疎ってるからよろしく

61 :
きたぁぁぁあれあくりフォーエヴェア!!!!
本高の変態っぷりと、栗谷の協力関係もすばらしいね

62 :
第9話 その4
「今日は無理言ってお邪魔させてもらってすみません。あの、これはほんのつまらないものですが…」
はにかみながら本高は嶺亜にバラの花束を渡す。岸くんは残業でまだ帰宅していなかったから嶺亜はぶりっこ全開だった。
「ありがとぉ。こんな綺麗なお花もらっちゃっていいのかなぁ」
「お兄さんのイメージに合うと思って…」
「お兄さんだなんてそんなぁ他人行儀だよぉ。嶺亜って呼んでねぇ」
ぶりっこ笑顔で嶺亜が微笑みかけると本高は頬を染めた。
「れ、嶺亜…くん…」
なんだかいいムードになりつつある二人を恵の強引で飾り気のない振る舞いが攪拌した。
「おい本高!お前ゲームは好きか!?好きだよな、よっしゃこっち来い俺と対戦だぜギャハハハハハ!!」
本高の腕をひっぱって恵はツインビー対戦を始めた。何故岸家にそんなカビの生えたようなレトロゲーがあったのかはともかくとして次々に兄弟達が帰ってくる。
「勇太様のお帰りだぜ!お?なんだ客か?あれお前確か龍一の友達…おいおいなんだよツインビーとかやってんじゃねーよときメモやろうぜ!」
「ときメモ…?ときメモってなんですか?」
本高がきょとん、とした顔で問う。
「お前ときメモ知らねーとかモグリかよ!いいか、ときメモはなあ…」
「なんの話をしてるんだ。おや本高くんこんにちは。今日も懲りずに龍一に付き合ってやってるのか。君もなかなか忍耐強いね」
勇太がときメモについて熱く語ろうとすると挙武が帰宅する。本高は礼儀正しく挨拶をした。
「ただいま!あれ?本高くん来てたの?こんにちは。これ高校の近くに来てた屋台で買ったメロンパンだけど食べる?」
部活帰りの颯がメロンパンを差し出すと郁が光の速さで奪い取った。

63 :
「嶺亜兄ちゃん…あの…パパは…?」
ご機嫌で花瓶にバラの花束を移し換えている嶺亜に龍一が問う。
「パパは高校の時の友達と同窓会なんだってぇ」
有り難い展開だった。岸くんと嶺亜の道ならぬ関係さえ気付かれずに帰ってもらえたら後はもう安心なのだ。帰りが遅ければ遅いほどその危険が薄まるから願ってもない。
夕飯ができて岸くん抜きで食卓を囲む。今日はお好み焼きである。ホットプレート一面にタネが敷かれそれをコテで割って分けるという大家族岸家スタイルである。一枚ずつ焼いていたのではおっつかないのだ。
「パパ同窓会かよ。元同級生とランデブーしてなきゃいいけどな」
勇太が嶺亜に冗談めかすが龍一は背中に汗をかいた。お願いだからそれとなく分かるようなこと言わないでくれ…
「まあパパもたまには正真正銘の女と触れあいたいだろうからな。おっと嶺亜、コテで人の手を刺すのはやめろ」
挙武はさっと嶺亜の攻撃をよける。彼は絶対零度の人殺しの眼になっていたが本高は豚玉を食べていて気がつかない。顔をあげたと同時に女神の微笑みに戻って嶺亜は本高に話しかける。
「いっぱい食べてねぇ。あ、郁ぅ食べ過ぎだよぉポテトサラダが冷蔵庫にあるからそれ食べてなさぁい」
嶺亜のぶりっこは相変わらずだったし岸くんは帰宅が遅いからその前に本高を自分の部屋にでも連れて行けばさほど問題ないかもしれない。
何事もなくこのお泊まりが終われば明日からまた平穏な日々が訪れる…龍一は祈りながらお好み焼きを口にした。
「こら龍一ぃ、ソース零れてるよぉほんとだらしなぁい」
嶺亜にたしなめられて、慌てて龍一が拭くと本高がくすっと笑う。その後でうらやましそうに呟いた。
「いいなあ。俺もソース零して怒られたい…」
いつもならこれ絶対零度で「服に染みできるような真似したら洗濯大変なの分かってんのぉ?」って刺されるんだぞそれでもいいのか…という言葉を龍一は飲み込んだ。
本高がいるからか嶺亜は猫を被って優しいお姉さん…じゃなくてお兄さんを演じている。さすがと言うべきだろうか。
夕飯が終わり、恵が強引に本高をマリオカート対戦に付き合わせて洗いものを終えた嶺亜も参加する。
「あぁまた轢いちゃったよぉこれ難しいよぉ」
「ギャハハハハ!!れいあはカートで人轢くのがうめーな!ギャハハハハハハ!!」
恵がバカ笑いしていると本高がうっとりした表情でまた呟く。
「いいなあ。俺も嶺亜くんのカートで轢かれたい…」
龍一は思う。日曜の朝、遅くまで寝てると「ちょっと邪魔ぁ。自分で掃除しないんならさっさとどいてぇ」と掃除機で轢かれるんだけどそれでもいいのか…と。こいつならそれでも悦ぶんだろうか…

64 :
「れいあ兄ちゃん、風呂入れたから俺先に入っていい?あ、冷蔵庫のコーヒー牛乳は俺のだから恵兄ちゃん飲むなよ!」
郁がバスタオルを持って風呂場に向かって行った。
「たくよー郁はちゃっかりしてやがんなー。れいあ後で俺と一緒に入ろーぜー!最近ずっとパパとばっか入ってっから今日から暫く俺とな!」
恵の際どい発言にハラハラしているとまた本高は恍惚の表情である。
「いいなあ。俺も一緒にお風呂に入って背中流しっこしたりシャンプーされて冷水や熱湯で責められてタオルを窒息寸前にまで被せられたい…」
まともな常識人だと思っていたが、龍一は本高に対するイメージが変わりそうだ。だがそんなことを言っている場合ではない。本高は嶺亜に幻想を抱き過ぎだ。初期段階でそれをやんわりと否定しておいた方がいいのではないか。
とすれば協力を仰ぐのはあの二人しかいない。嶺亜の本性を語らせるにはうってつけの三男と四男に…
「おいおいおい本高、お前さては童貞だな?女子に免疫ねーな?いいか、数々の女を相手にしてきたこの勇太様から言わせるとあんな二面性の激しい可愛いこぶりっこ小悪魔になんか騙されんなよ。
あいつピンクが大好きだよぉとか言ってっけど身に付けるのは黒系が多いしお料理大変だぁとか言ってるけど最近冷凍モン多いしとにかく自己アピールにだけは長けてっからそこんとこ騙されないようにな」
さすがだ…龍一は感心した。本人に聞かれたら「明日から勇太は犬の餌ねぇ」と言われかねないがそこはそれ。挙武も続ける。
「童貞に童貞と馬鹿にされる筋合いはないと思うが本高、嶺亜は男のくせに女々しいからな。昨日、この僕のメロンジュースを勝手に飲んだくせに「そんなに飲みたかったら名前書いとけばぁ?」なんて開き直るんだぞ。
おまけにトマトがどうしても無理ときたもんだ。全くあのぶりっこ小悪魔め」
「挙武と嶺亜の口論は一晩中でも続くからな。どっちも譲りゃしねえ。れあむオタにはたまんねえ光景なんだろうが俺はうるさくてAV鑑賞もできなくてとんだ迷惑だぜ」
勇太と挙武は嶺亜に対する愚痴を本高にこぼした。いい具合にイメージが崩れてくれればと思ったのだが…
「いいなあ。俺も嶺亜くんに犬の餌食べさせられてメロンジュース飲まれたい…一晩中口論したい…」
駄目だこりゃ、と龍一が白目を剥いていると嶺亜と恵が風呂からあがってくる。風呂あがりの嶺亜に本高はぽ〜っと魅入っていた。
「ごめんねぇお客さんより先に入っちゃってぇ。次入ってもらってねぇ龍一ぃ」
シャンプーの香りをちらつかせて嶺亜は猫かぶりぶりっこモード全開だ。分かっててやってんな…と龍一も挙武も勇太も呆れる。その後ろで颯が爽やかに挙手した。
「じゃあ本高くん俺と入ろう!どっちが長く湯船に潜ってられるか勝負!!」
また訳の分からんことを…と頭を痛くしていると本高はこう呟く。
「嶺亜くんの入ったあとのお風呂に潜る…ああ幸せ…」
もう勝手にしてくれ…と諦めの境地に達した龍一が静かに部屋の隅で自我修復を始めようとすると玄関のドアが開閉する音が聞こえた。

65 :
「ただいま。終バスがなくなったから岩橋泊めることにしたよ。灯りはつけて寝てもらうから皆ご安心を…あれ?」
岸くんが岩橋を連れて帰宅した。本高の姿を見て首を傾げている。
「あ、お邪魔してますお父さん」
本高はぺこりと頭を下げる。龍一が今日泊めることになって…と説明すると岸くんはそうなんだ、と答えた後で本高に岩橋を紹介する。
「どうもこんにちは…」
岩橋は人見知り全開で挨拶をする。相変わらずである。
それからばたばたと順番に入浴を済ませてリビングでゲーム大会やら勇太推薦のギャルゲー大会なんかが催されて盛り上がったが龍一はそんな気分ではない。
さっさと床につきたかったがいかんせん本高が気にかかる。さっさと彼を連れて自室に寝に行きたかったが…
「んじゃ今日は俺とれいあが一緒に寝るかんなパパ!おめーは岩橋と寝ろ!ギャハハハハ!」
恵がさっさと嶺亜を確保した。よしこれで今夜アレの声が部屋の横から聞こえることはなくなった。ろくでもない兄だがこの時ばかりは龍一は恵に感謝した。
「あ、じゃあパパとは俺が寝る!!だって本高くんは龍一と寝るから俺が二段ベッドあけてあげないとね!」
颯が目を輝かせて挙手した。まあどうでもいいやと思っていると郁が空いた恵の部屋で寝たいと言いだした。
「とするとぉ…郁の部屋が余るよねぇ。颯のベッド、ヘッドスピンのしすぎで凹んでるからそんなとこに寝せたら本高くんが可哀想だからぁお客さん用の布団をそこに敷くかねぇ」
ということは…?と龍一が考えていると本高は先程のうっとりした目をなんと岩橋にも向けていた。
「岩橋くんって年上なのに可愛いよね龍一くん…。なんかモジモジして人見知りっぽいとことか…」
「…」
龍一は思う。本高ってこういう系にとことん弱いのではなかろうか…
しかしながら彼の興味の対象が嶺亜から岩橋に移ってくれるのは有り難い。これでもう心配することはないだろう。今夜は久しぶりに安眠できる。龍一が心の底から安堵して眠りにつくと階下から悲鳴が聞こえて来た。
後は察するとおりである。「電灯は消すな」のお達しを忘れた本高がうっかり暗闇にしてしまってデーモン化した岩橋に襲われかけたのであった。
当の岩橋本人はやはりその記憶はなく翌朝怯える本高に「これはいじめだ…」と涙目でトーストをかじって岸くんにフォローされていた。
おわり

66 :
ツインビーなんだっけってつい検索しちまったじゃねーかwww
れあたんかわいいなぁ
なにはともあれ頑張れ龍一

67 :
自分もツインビー検索したいわ
そして谷村が少しだけ明るくなって良かったw

68 :
規制で全然感想書けないけど1スレ目からずっと楽しみに見てるよ
栗田はもうだいぶだけどついにおにくもoutで神7情勢も随分変わって来ちゃったね
個人的にはれあたんをお姉ちゃんと呼ぶという偉業を成し遂げた高橋海斗が気になる昨今

69 :
日曜ドラマ劇場 Beautiful Twins
第一話
都内某所。常識外れに巨大な邸宅の一室から悲鳴が轟く。
「あああああああああああああ!!!!!!!!!!!なんでこんな時間になってるんだ!?完全に遅刻だあああああああああああああもう!!!!!!!!!!」
バタバタと部屋を出て階段を駆け降りたその先はリビングである。そこから優雅な弦楽合奏が流れてきた。曲はモーツァルトのディベルティメント第二番…しかしそんなものはおかまいなしに魂の叫びをあげる。
「どういうことだよ嶺亜これは!!!!!なんで俺の部屋の目覚まし時計が止まってるんだ!!?お前の仕業だろう!!!?」
勢い良くリビングのドアを開けると朝食のオムレツを上品に口に運ぶ嶺亜がこちらを一瞥だけした。
「いいがかりよしてくれるぅ?自分がセットし忘れただけじゃないのぉ?人のせいにすんなよぉ」
しれっと言い放ってトーストにバターを塗り始め、嶺亜はくすくす笑う。そこでまた血圧が上がった。
「俺がそんなイージーミスを犯すわけがない!!昨日ちゃんとセットして寝たのを覚えてるんだぞ!!お前が止めたに決まってるだろ!!嘘ばっかつくな!!」
「証拠あんのかよぉ」
「お前しかいないだろ!!だいたい朝は無駄に早起きなくせにいつまでもモタモタ食べて…おい、トマトもちゃんと食えよ!残すなんて非人道的な…」
「あーもううるさいなぁ。そんなのんびりしてていいのぉ?遅れるよぉ学校ぉ」
トーストをかじりながら嶺亜はリビングの掛け時計を指差した。8時10分。あと20分で教室に着くなんてどこでもドアか天狗の抜け穴が開発されない限り不可能だ。
ひとまず続きは帰ってからするとして、身支度もそこそこに飛びだしロールスロイスをぶっとばしてもらってどうにか5分の遅刻で済んだ。5分は大目に見てもらった。安堵するとふつふつと怒りが再びこみあげてくる。
「おぼえてろあの小悪魔…今日という今日は許さん…泣いて謝るまで理論攻めで言い負かしてやる…」
爪を噛み噛み、その思案にくれた。
羽生田挙武は都内の超エリート校に通う高校二年生である。
容姿端麗、学業優秀、良家の子息と3拍子も4拍子も揃った彼の将来の夢はハリウッドスターになってアメリカに永住することである。ビバリーヒルズあたりでプール付きの家でエキサイティングな毎日を過ごすことが目下の目標である。
「羽生田くん、今朝はまた大慌てだったね。徹夜で勉強でもしてたの?」
クラスメイトが話しかけてくる。お上品な学校にはお上品な生徒しかいない。多少物足りなくも感じるが学校は穏やかに過ごすべきところだと割り切ることにしていた。
「いいや。双子の兄が…どうしようもない兄が俺の目覚ましを勝手に止めたんだ。ホント毎回いい加減にしてほしいよ。おかげで朝食を食べそこねた…あの小悪魔め、帰ったらどうやって泣かしてやろうか…」
呪詛を吐いているとクラスメイトは笑う。
「そっか。羽生田くんは双子なんだっけ。一度見てみたいね。やっぱりそっくりなの?」
「とんでもない!!似てるもんか!?俺はあんなに女々しくないし裏表の激しい二面性小悪魔でもないしトマトはちゃんと食べるしそれに…」
息を吸い込んで声高らかに宣言した。
「まともな神経の持ち主だ!!」
「なんかよく分かんないけど…仲悪いの?でも二人だけの兄弟なんでしょ?」
「仲が悪いわけじゃない!あんな兄だがいてもらわなくては困る。家を継ぐのは長男の役目だからな。俺には夢があるから会社はあいつに継いでもらわないと…」
そう、家は幾つものホテルを全国チェーンとして展開しているコンツェルンなのである。当然それを継ぐのは子である挙武か嶺亜のどちらかになるが一応長男は嶺亜である。
挙武は会社経営なんて夢のない仕事はまっぴらごめんだし将来のビジョンを早いうちから見据えてそれなりに努力もしている。だから当然継ぐのは長男である嶺亜なのだが…
「羽生田くんちは桁外れのセレブだもんね。お兄さんってさ、どこの高校通ってんの?開○とか麻○とか?ここにいないってことはここより偏差値の高いとこなんじゃないの?」
「それは聞いてくれるな。おっと授業始まるぞ」
嶺亜は地元の公立高校に通っている。しかも車で5分程度の距離だから毎朝あんなに優雅に朝食を食べている。勉強が嫌いなわけでもできないわけでもないが他に興味がいきすぎてそこそこどまりなのだ。ろくでもないことには恐ろしく知恵が回るくせに…
とりあえず、帰りにもう一つ目覚まし時計を買って嶺亜に分からない場所に隠してセットしておかないとな…
そう考えながら挙武は授業をこなした。

70 :
「あーもぉ寝グセついちゃってるよぉ。やだなぁもぉくせ毛はぁ」
髪の毛をいじいじしながら門の前で車から降りるとちょうど友人の高橋颯が通りかかる。
「あ、おはよう嶺亜。あれ、髪の毛変じゃない?」
「もぉ気にしてんだからさぁ。朝ご飯ゆっくり食べ過ぎて気が付いたらドライヤーの時間なくなっちゃっててさぁ」
「だったら朝ご飯を食べなきゃいいんだよ!どうせお昼にはお腹すくし」
自信満々に颯は言った。嶺亜はあーはいはいと適当に流しておいた。
高橋颯は一つ年下の幼馴染みである。この春同じ高校に進学するということで色々と高校について教えてあげている。相変わらず発想が突拍子もなく破天荒だ。こういうところは嫌いではないのだがたまについていけない。
お昼休みに二人で屋上で弁当箱を広げると颯は袋詰めされたパンをどかどかと出して来た。その全てがメロンパンである。
「見てるだけで甘ったるいよぉ。そんなに糖分摂ってるくせになんでそんな筋肉質なのぉ世界7不思議の一つだよぉ」
「糖分が筋肉にいいってことじゃない?嶺亜も食べる?」
「僕はいいよぉ。お弁当残して帰ったりしてそれが挙武にバレたらまたお説教聞かされるしぃ。そうだぁ、あのねぇ今日早起きして暇だったからぁ挙武の寝顔でも写メってやろうと部屋しのびこんだんだけどぉ
目覚まし時計が鳴ってるのに挙武ったらさぁ一向に起きる気配なくてさぁ一度止めて水でもかけて起こしてやろうと思ったら朝ご飯できましたよぉって言われてすっかり忘れてたら挙武が血眼でリビングに来てさぁ」
「嶺亜のイタズラは挙武にとってシャレになってないものばっかりだから…挙武怒ったでしょ。またこんなカッと目見開いてなかった?」
颯はそう言って挙武のヘッドライトアイズの物真似をする。けらけら笑っていると颯が急に何かに視線を奪われて話が中断されてしまった。
「あ…ふうん…なるほどぉ」
颯の視線の先にはとある人物がいる。そこで嶺亜は察した。
「かっこいいよねぇ。髪切ってなんか男らしくなったっていうかぁ…大人っぽく見えるよねぇ」
耳元で囁いても颯は聞いていない。ぽ〜っと魅入られている。
それを微笑ましく見ながら、暫く会話になりそうもないのでスマホをいじるとラインが入っていた。
「げ」
それは挙武からで、今夜は父親が客を連れて来て高級料亭に行くから予定は入れるなとあった。

.

71 :
挙武はイライラしている。腕に嵌められたスイス製の高級時計の針を見てまたそれが増幅される。
「何やってんだ嶺亜は…」
ラインは確かに既読になっている。6時までには家に帰って来いということも分かっているはずだ。
なのにもう5時55分にもなるのに一向に帰ってくる気配がない。電話をかけて呼び出そうとすると父親がやってくる。
「挙武、行くぞ」
「え?嶺亜がまだでしょ。それとも現地集合?」
聞き返すと父親はバツが悪そうに頬を掻きながらこう答えた。
「嶺亜はどうしてもはずせない用事があるそうだ。仕方がないから今日はお前だけ連れて行く」
「はぁ!?」
思わず叫んでしまった。しかしながらこれはいつもの嶺亜の常套手段である。嶺亜に甘い父親にのみ知らせるという…
「ちょっと待ってよ!なんで嶺亜だけ…だいたいあいつのはずせない用事って何?そこんとこちゃんと聞いてるんだろうね父さん!!」
詰め寄ると、父親は参ったといった風に両手を胸の前に広げる。
「聞こうとしたら…『パパは僕のこと信用してないのぉ?』って泣かれちゃって…嶺亜を泣かせるとほら、後が厄介だから」
「そんなん嘘に決まってるだろ!!だいたい父さんは嶺亜にだけ甘すぎる!俺だって本当は今日見たかったハリウッド映画の公開日だったのに我慢して来たんだぞ!それなのに…」
「分かった分かった。今度の連休ロスに行こう。最新の映画セットができたそうだから…それでいいだろう?な?待たせてあるから早く」
そそくさと父親は逃げて行く。挙武は収まりきらぬ怒りを抑えながら食事を終了した。そして…
「ここで降ろして」
帰り道、家の手前で車から降ろしてもらう。それは隣の家である。
インターホンを押すと「ふぁい?」と気の抜けるような高い声が返ってくる。名前と要件を告げると渋られたが半ば懇願、半ば圧力をかけてドアを開けてもらった。
「うちのどうしようもない我儘娘…じゃなかった兄がお邪魔してると思うんで」
「あ、でもぉ…嶺亜お姉ちゃんは…お兄ちゃんだったっけ?まぁいいやぁ…今お取り込み中で挙武お兄ちゃんが来ても通すなってぇ…」
「悪いけど緊急を要するから通してもらう。すまんな海人」
挙武が睨みをきかせると隣の高橋家の二男、海人はおろおろと道を開けた。声変わりもまだの中学三年生である。
「たのもう!!」
狙いを定めた部屋のドアを勢いよく開けると、案の定そこには嶺亜と幼馴染みの颯がいた。
.

72 :
挙武が嶺亜の小細工にブチ切れる少し前、コンビニで買ったメロンパンを食べながら嶺亜は颯と一緒に下校して彼の家に身を寄せることにした。
「嶺亜いいの?また挙武怒るよ」
「いいのいいのぉ。そしたら颯が助けてくれるでしょぉ」
「助けるとか無理っぽいんだけど。挙武が起こったら俺がどうにかできる感じじゃないよ」
「そんなことないよぉ。颯が一言言えば挙武はそれ以上強く出て来れないんだからさぁ」
そんな会話を交わしつつ高橋家の玄関をくぐると丁度颯の弟、海人が出て来た。
「あ、嶺亜お姉ちゃんこんにちはぁ」
エキゾチックな見た目に似合わぬマシュマロボイスで海人は挨拶をしてきた。もう中学三年生になるが声変わりはまだのようである。
「お姉ちゃんじゃないよぉ。海人どこ行くのぉ?ダンスレッスン?」
「うん。行ってきまぁす。お兄ちゃん、夕飯はママがカレー作ってくれたってぇ」
夕飯の報告をして海人はダンスレッスンに向かって行った。高橋兄弟は小さい頃からダンスを習っていて海人はヒップホップ、颯はブレイクダンスが得意なのだ。
「海人ってまだ僕のこと女の子だと思ってんのぉ?制服着てるのにさぁ」
「多分半信半疑かな。分かってはいるけどいざとなるとお姉ちゃんって言っちゃうっぽいんだ」
天然なのかなんなのか…さすが颯の弟だよぉと納得しながら嶺亜は颯と二人で映画のDVDを見たりゲームをしたりして過ごした。
その途中できちんと父親にも連絡はしておいた。嶺亜の計算通り、甘い父親は少し泣き真似をすると「仕方ないなぁ…今日だけだぞ」と折れた。
後はこうるさい挙武をなんとかしなきゃなぁと考えつつ颯の家でカレーをご馳走になった。そして再び颯と二人で宿題に勤しんでいると…
「たのもう!!」
ちょうど計算したぐらいの時間に怒りの形相の挙武が現れた。その後ろで海人がおろおろしている。
来たなぁ…と思いながら嶺亜は臨戦態勢に入る。
「嶺亜、俺の言いたいことは分かるな…?」
「挙武、まあまあちょっと落ち着いてメロンパンでも…」
颯があっけらかんとメロンパンを差し出したが挙武は首を横に振る。
「颯、邪魔したな。このどうしようもないろくでもない女々しい兄はちゃんと俺が連れて帰るから…暫くは勝手なことさせないつもりだから迷惑かけることももうないと思う。んじゃ!」
挙武は嶺亜の腕を掴んだ。
「今夜は寝かせないぞ…もちろんこれは口説き文句ではない、文字どおり徹夜でお説教だ。覚悟は出来てるよな、嶺亜!?」
「やだよぉちょっと離してよぉ寝不足はお肌の大敵なんだからさぁ。悪かったよぉごめんなさいごめんなさいもうしませんったらぁ」
「そんな軽口に騙されるか!これで何回目だと思う?記憶にある限り4歳の夏から数えてもう2789回目だ!2000回記念の時に初めて殴り合いの喧嘩をしたことを覚えてるだろう?記録は今夜でストップさせてやる」
「覚えてるぅ。僕が「なんだよぉもううるさいよぉ小姑挙武ぅ」ってほっぺたぺちんってやったら挙武が驚いて暴力に訴えるとは何事だって泣き叫んだんだよねぇほんと挙武って物理攻撃に弱いんだからさぁ」
「しっかり覚えてるじゃないか!暴力は俺の最も忌み嫌うところだ。だから今夜はみっちりと言葉のみで理解させてやるから安心しろ。とりあえず眠気覚ましのコーヒーは用意してきた!」
「コーヒーよりロイヤルミルクティがいいよぉ」
「そういう問題じゃない!なんなら眠眠○破を1ダース買ってやろうか?とにかく、ここだと迷惑がかかるからとっとと来い!」
「やだって言ってんだろぉ暴力反対ぃ!」

73 :
「暴力じゃない!俺は穏便に話し合いで決着つけようとしてるだろ!」
挙武が嶺亜の腕を再度ぐいっと引っ張ると海人のマシュマロボイスが後ろで響く。
「あのぉ…挙武お兄ちゃん…女の子に暴力はいけないと思うんだけどぉ」
颯が弟の間違いを正す。
「女の子じゃないって何度言ったら分かるの海人。嶺亜は男の子だよ。小さい頃一緒によくお風呂入ったでしょ?羽生田家のだだっぴろいお風呂」
「そうだっけぇ…昔すぎて覚えてないやぁ…」
高橋兄弟の呑気な会話をよそに挙武と嶺亜の口論は激化しようとしていた。
「うっさぁい!だいたいなんなんだよぉその鼻ぁ!ピラミッドかよぉ!」
「そっちこそなんだその白さは!太陽に申し訳ないと思わんのか!?ちゃんと紫外線は吸収しろ!!」
「余計なお世話ぁ!挙武なんかウニとイクラにまみれて溺れちゃえぇ!ばーか!」
「わけのわからん憎まれ口を叩くな!そっちこそトマトジュースで顔洗って出直して来い!」
「あ、言ったなぁ!挙武なんかトウガラシ飲まされてまたリバースしちゃえぇ!!」
「人のトラウマをやすやすと口にするな!!だったら俺も言わせてもら…」
「ちょっともう二人ともやめなよ!!」
挙武と嶺亜の永遠に続くかと思われる口論を一刀両断にしたのは颯の叫び声である。
シーン…と水を打ったように静まり返った次の瞬間、神妙な面持ちの颯が再び口を開く。
「目覚まし止めたり約束すっぽかしたのは嶺亜が悪いよ。挙武が怒るのももっともだよ。そうでしょ?」
「…そぉだけどぉ…」
不満そうに嶺亜は口を尖らせる。次に颯は挙武に向き直った。
「挙武も怒り過ぎ。セレブキャラのくせにキレキャラになってるじゃん…たった二人きりの兄弟でしかも双子なんだからもっと嶺亜に優しくなんなよ。本当は嶺亜のこと好きなくせに」
「…いや…でもな颯…」
挙武はばつが悪そうに天井を見上げる。
「兄弟っていいもんでしょ?俺は海人と喧嘩することもあるけどやっぱり大事な弟だし…嶺亜と挙武だって小さい頃からずっと一緒だから兄弟みたいなもんだもん。
だから二人が喧嘩するところは見たくないよ…まあ一日平均3.47回くらいは見てるけど…だけど本当はお互い仲良しって分かってるから仲良くしてほしいよ」
「…」
「…」
挙武と嶺亜は颯の説得にその勢いを完全に鎮火された。しかしながら、これもいつもの光景だった。挙武と嶺亜の口喧嘩を颯が止めるのは通算で6895回目である。
「颯お兄ちゃんかっこいいぃ…さすがお兄ちゃんだぁ…」
海人は感心している。颯はちょっぴり照れ臭かったが兄の背中は大きく見せなさいと親に言われて育った。それを実行で来てることに達成感を感じる。
感じているとすぐ側にあった携帯が振動した。
「あ」
それはラインで、その送り主は…
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
き、きききききききききききききき岸くんからだああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
跳び上がった颯は天井に頭をぶつけ、落下と同時にヘッドスピンでぐるぐる回りだした。その際の暴風で部屋の中はシッチャカメッチャカ、海人は跳ね飛ばされ左半身を強打し泣きだした。
それを見た彼の母親が「あれほど部屋の中でヘッドスピンはやめなさいと言ったでしょ!」と激怒りで挙武と嶺亜は巻き込まれないようそそくさと高橋家を後にしたのである。

74 :
屋敷に戻ると、嶺亜は凍りついた。
「嶺亜、そこにお座りなさい」
母親が般若のような形相で立っていた。元・女優で抜群の美貌を誇るが怒るとノストラダムスも裸足で逃げ出す程に恐ろしいマダムである。後ろで父親がおろおろと右往左往していた。
「マ、ママ、あんまり嶺亜を怒らないであげて…」
「あなたは黙ってなさい!全く…父親が甘すぎるからこの子がこんなに我儘娘…じゃなくて我儘息子になるのです!反省なさい!!」
一喝されて父親は黙りこんでしまった。
父親は嶺亜に甘いが母親はわけ隔てなく厳しい。今日は同じセレブ仲間のマダムとお茶会だと聞いていたから大丈夫だと思ったのに…
「嶺亜、あなたはこの羽生田家の跡取りでしょう…?そのあなたがお客様との食事をすっぽかすなんてこんな甘えた態度が許されるなんて思ってないでしょうね…」
ゆらりと首を回しながら母親は絶対零度を向けてくる。嶺亜の唯一にして最大の弱点がこの母親の絶対零度だ。その血を色濃く継いでるが故に恐怖を感じるのである。
「でもぉ…ママぁ…」
「デモもデモクラシーもありません!!朝ご飯のトマトを残したこともシェフから聞きました!!17歳にもなってトマトの一つも食べられないようでは立派なレディに…ジェントルマンになれませんよ!!
今からママが食べさせてやるからそこにお座りなさい!!」
「やだよぉトマトだけは死んでも嫌だぁ!」
食べるくらいなら舌噛み切って死んだ方がましだぁ、と叫ぼうとすると視界が遮られる。
挙武が前に立ったからだ。
「母さん、嶺亜がトマトを食べなかったのは朝俺と喧嘩したからだよ。それで時間がなくなってしまったんだ。
それに、食事会に出られなかったのは…嶺亜は颯と前から約束しててそれを家の都合で断るのは友達を大切にしなさいっていう母さんの教えに背くことになるでしょ?だからだよ」
「挙武…?」
なんと挙武は嶺亜をかばった。これは嶺亜の記憶が一番古い4歳の夏から数えてたった915回目である。数が多いように思えるが嶺亜はこの8倍はかばわれることなく付きだされている。
「どうしてあなた達は喧嘩をしたのです?仲良くなさいといつも言っているでしょう?」
だが母親のつっこみが別の方向から入った。それは…と挙武が口ごもっていると嶺亜が白状した。
「僕が挙武の目ざまし時計を止めちゃったからぁ…だから挙武が寝坊したのぉ。ごめんなさい、挙武ぅ…」
嶺亜が挙武に素直に謝るのは通算で12回目である。生まれてから6235日で12回。一年で平均0.7回だ。
「ママ、嶺亜も反省してるし、挙武もこう言ってるから許してあげようよ。家族仲良く!これが羽生田家の家訓だし」
父親が渾身の力で宥めてようやく嶺亜は御咎めなしで済んだ。

.

75 :
「疲れた…これというのも全てあの小悪魔のせい…」
へとへとになってベッドの上に突っ伏するとコンコンとノックがしてドアが開いた。入ってきたのは嶺亜である。両手にはゼリーカップと2本のスプーンが握られていた。
「食べるぅ?」
嶺亜が差し出してきたのは挙武が気に入っているコンビニスイーツだった。無言で受け取ると嶺亜は挙武の部屋のアームチェアーに座って蓋を開けて食べ始めた。
「これでチャラねぇ」
そんなこったろうと思った…と思いながら挙武も蓋を開ける。
「不公平すぎるだろ。母さんの折檻から救ってやって302円(税込)はないだろう。100個分くらいはするだろ」
「そんなことないよぉ。僕だって挙武が遅刻したことママに知られる前に救ってあげたんだからぁこれぐらいでちょうどかなぁってぇ」
「本当に口だけは達者だな…呆れるよ全く」
「それはこっちのセリフぅ」
ゼリーカップが空になった頃、羽生田家の家政婦がドアをノックした。
「お風呂のご用意ができてます」
「ありがとぉ。あのねぇお願いなんだけどぉお布団二つここに持ってきてぇ」
嶺亜は家政婦に蒲団の用意を申しつけた。一体何故?と思っていると風呂上がりにその疑問が解ける。
「…一緒に寝ろと?」
「やならいいよぉ。明日も遅刻しなきゃいいけどねぇ」
「…素直に一緒に寝たいと言えよ。全く、変なとこで意地になるんだから…」
ぼやきつつ蒲団に入ると嶺亜は満足げだった。
挙武は真っ暗にしないと寝られないが嶺亜は逆に薄明りでないと寝られない。ジャンケンの結果嶺亜が勝ち、薄明りで床につく。
嶺亜はすぐ寝付くが挙武は少し時間がかかる。これも双子でありながら全然違う。特に今夜は嶺亜の寝易い薄明りだから5分ほどして寝息が聞こえて来た。
「…」
浅い溜息をついて、挙武も目を閉じる。色々あったが世は全て事も無し。明日からまた色々とやるべきことはあるし…と考えながら眠りにつこうとすると、
「…あむぅ」
嶺亜の掠れ声が響く。なんだ?と言いかけたが寝がえりをうった嶺亜は目を閉じていたから寝言だということに気付いた。
「あむぅ、ごめんねぇ…」
やれやれ…と肩をすくめた。寝ている時なら…夢の中なら素直に謝ることができるんだな、と。

76 :
その夜、挙武は夢を見た。小さい頃の夢だ。
「あむ、待ってよぉ、あむぅ」
高原の別荘に遊びに行った時、近くの林を探検していてさっさと進んでいく挙武に後ろから嶺亜が甘えた声を出す。早くしろよと急かすと嶺亜はむくれた。
「待っててくれてもいいじゃん、あむのいじわるぅ!」
「いじわるじゃないだろ、れいあが遅いのが悪いんだ。だいたい行こうって言いだしたのはれいあだろ」
喧嘩になり、拗ねた嶺亜は座りこんでしまった。しかも間が悪いことに雨が降り出した。二人とも傘を持っていない。
びしょ濡れになって帰ると二人とも母親にしこたま怒られてさんざんだった。しかも、その夜それが元で挙武は熱を出してしまった。
熱にうかされていると冷たいものが額に当たる。だるくて目を開ける気力がなかったがその声が微かに響いてくる。
「あむぅ、ごめんねぇ…」
朦朧とした意識の中で、その聞きなれた声がそう言った。生まれた時から聞いている声、この世の誰よりもたくさん聞いている声、だから聞き間違うなんて絶対にありえない。しかも、嶺亜が挙武に謝るのはそれが初めてであった。そう、5歳になってすぐのGWである。
だけど元気になってそれを問うと嶺亜は「そんなこと言ってなぁい。あむの勘違いぃ」と軽くあしらわれ笑われた。そこでまた喧嘩になった。
ふいに視界が白くなり、挙武はだるさと共に徐々に覚醒が促されてゆく。
朝だと気付いたのはそれから暫くまどろんだ後で、そのまどろみは次の瞬間一気に吹き飛んだ。
「あああああああああああああ!!!!!!!!!!!なんでこんな時間になってるんだ!?完全に遅刻だあああああああああああああもう!!!!!!!!!!」
目覚まし時計は死んだように止まっていて、時計の針だけがカチコチと動いている。昨日買っておいた二台目はあれやこれやで鞄の中に収められたままである。
確かに目覚ましはセットした。セットしたぞ、それなのに…
「あんにゃろう…」
もぬけの殻になった隣の蒲団を踏みつけると挙武はパジャマのままリビングにダッシュした。また優雅な弦楽合奏…ヘンデルの「水上の音楽」が聞こえてきて…
「ってそんなことはどうでもいい!!!嶺亜!!ふざけるなよお前!!今度という今度こそは許さないからなああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
嶺亜は優雅にコーンスープをすすっていた。そして涼しい顔をしながらこう言い放つ。
「僕はちゃんと起こしたよぉ。でも挙武全然起きないんだもん。僕に怒ってる暇があったら早く支度したらいいと思うよぉ。二日連続遅刻とかママが知ったら怖いよぉ」
挙武は息を吸い込んだ。
そしてありったけの大声で言い放つ。
「今日という今日こそそのフザけた態度を改めてもらう!!今夜は寝られると思うなよ、この小悪魔が!!!」



つづく

77 :
作者さん最高です!!
やっぱり神7はForeverですね!!

78 :
れあむうううううううううううううううううううううう

79 :
高橋兄弟w

80 :
神7 ショートギャグ
谷栗 オランジー○パロ
谷村龍一は列車に乗り込んだ。隣には栗田恵も一緒だ。
普段このアホにアホ扱いを受けていて、イラっとする時もあるがこのアホも割といいやつだ。
そんなことを思いながらふと前を見ると…超絶美女の色白小悪魔乙女、れあたんが座っていた。
谷村はそうだ、と思い、栗田に声をかけた。
「栗田、僕ちょっとあそこでオラン○ーナ買ってくるね!待っててね」
「うん!!ぎゃはは!早く戻ってこいよ!」
谷村は売店でオラ○ジーナを買っているとおばちゃんに声をかけられた。
「お兄さん、イケメンね〜」
こんなことを言われるのはいつも不憫で不幸な目にあっている谷村には久しぶりだった。
「ありがとうございます」
つい嬉しくなって口元を緩ませた。
しかしその瞬間栗田のダミ声が響いた。
「ぎゃはは!谷村!!ドア閉まってるぜ!!」
はっと我に返り、ダッシュで乗り込もうとしたがドアは閉まってしまった。なんとか後ろから飛び乗るが、その拍子に腰を打った。そして強風で飛ばされかけた。そして更に強風に耐えた際にまた腰をやった。
「……」
すっかりボロボロになって列車の席に向かおうとするが腰が痛い。
自我修復をしながらなんとか辿り着くと…。
「うふふ、栗ちゃん可愛いねぇ」
「ぎゃはは!れいあのほうがかわいいし!!!」
「……」
なんと栗田とれあたんは仲良くお話し中だった。
こんなアホなガキに先をこされるなんてと心が折れそうになるが、不幸な目は慣れている。めげずに小悪魔れあたんに話しかけた。
「あ、あの…これどうぞ!」
挙動不審になりながられあたんにさっき買ったオ○ンジーナを受け取るとれあたんはにっこり微笑んだ。
「ありがとぉ」
そう言ってから「栗ちゃん一緒にのもうねぇ」といちゃいちゃしながら蓋を開けた。
谷村は初めて会った相手にお礼を言われたはずなのに、この人とは何年もの付き合い、しかもかなり一緒にいた気がした。そのなかでもお礼を言われたのは初めてだと谷村は思う。
幸福感に浸っていると突然の不幸が訪れた。
なんとれあたんの顔にオ○ンジーナが勢いよく噴射されたのだ。
それは谷村が列車に乗る前の奮闘の証だ。
「あああああああの!!!すいませんごめんなさいもうしませんおしおきだけは勘弁してください…ほんっとうにす…」
谷村が必死に謝っていると絶対零度が飛んできた。
「谷村ぁ…。あとでおしおきぃ」
谷村はあまりの恐ろしさに泡を吹いて倒れた。
「ぎゃはは!アホだな谷村!!」
デジャヴ?なんかこんなことが日常茶飯事であったきがする…。
薄れゆく意識のなか、栗田の声と自分の思考がぐるぐる回っていた。

反応あれば続きます!
初めてなのに読んでくれた方ありがとう!
誤字脱字ご了承ください

81 :
たにむ安定の不憫
クリエでも間違ってパンチされてるとか…
他のも読みたい!

82 :
作者さん高橋海人出してくれてありがとう
この間クリエに行ったられあたんとか颯くんとかが見学に来てたよ
トラジャ組も神7組もかわいかった、明日からはまたコンサートも始まるね

83 :
神7ショートギャグ
岸颯
みなさんは覚えているだろうか、あのCMを…。
作者は一部分しか覚えていない上にそこもかなりうろ覚えだ。
岸くんと颯はCMの撮影のためにとあるスタジオに呼ばれていた。
「岸くん!今日はなんのCM撮影するんだろうね!」
颯は大好きな岸くんと2人で撮影なんて、とウキウキだ。
「CM…、ついに神7もデビューの兆しか…。谷栗もなんか撮影したらしいし」
神7リーダーの岸くんはやっぱりウキウキだ。
実は2人にCMの内容は伝えられていなかった。
こんな2人で大丈夫なのかという心配はさておき、台本が渡された。
「「…‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」」
2人共目が飛び出るんじゃないかと心配になるほど驚いた。
「これは…」

一ヶ月後…
「岸くんと颯のCMは今日放送だな。良かったらうちのテレビで神7全員で見ないか?」
羽生田の一声で神7は全員集合したが、肝心の岸くんと颯はうかない顔をしている。
「栗ちゃん、岸と颯どぉしたんだろぉ?」
「ぎゃはは! CMでなんかやらかしたんじゃね?てかれあくり久しぶりだな!!」
中村と栗田は安定のいちゃいちゃ、
「あ、もしもしみずき?くらみずき久しぶりだな!」
『くらもっちゃん!そうだね!あ、電話代もったいないからあと10秒ね』
倉本と井上はツンとデレの温度差が半端じゃない。
「おいお前ら!!神7全員大集合は何年振りだよ!神宮寺様のこの腰フリをたっぷり拝め!」
神宮寺は相変わらずキチ…、素晴らしい腰フリを披露している。
「おお谷村、最近よくあうな」
「まあ…最近出番も増えて来たしね。作者Mが毎月一回ファンレターをくれるおかげかな」
「毎月一回!?まるでストーカ……。熱心なヲタ…ファンだな」
神7のエリート担当でおなじみの羽生田と谷村はファンのありがたさについて語る。
久しぶりだがずっと前から変わらない神7だ。
「あ!始まる!」
散々バカをやっているとついにCMが始まった。
「あ、これって颯と岸ぃ?」
『てってってってってってれってててってってれー細マッチョ…』
そこでテレビが切れた。
そして羽生田家の全ての電気が止まった。
停電か?そう言ってみんな辺りを見回す。
すると…
「竜巻…」
颯は恥ずかしさのあまりヘッドスピンで竜巻を起こしていた。
そしてその風圧で電線が切れたのだ。
「おい岸くん!これをなんとかできるのは君だけだ!早くあれを止めてこい!!」
羽生田は必死で叫んで岸くんが座っていた場所に目を向けた。
しかし岸くんはシャチホコポーズを保ったままフリーズしていた。
「…はっっっ!!」
羽生田は目を覚ました。汗びっしょりだ。
「嫌な夢を見たな…目覚めがよくない」
そう言ってリビングに下りた。
今日のニュースはなんだろうとテレビをつけた瞬間羽生田は仰天した。
「てってってってってってれってってってってってってれー細マ…」
羽生田は悪い夢を見ていると思いまた高級ベッドに潜り込んだ。
一時間後、学校に遅刻すると気付いて再び仰天し、絶叫することも知らずに…。

84 :
乱文すいません。
調子に乗ってまた書きました

85 :
昼ドラ 颯の心の葛藤
「もぉ岸口に付いてるよぉ汚ねぇなぁ」
「え、どこどこ!?!?拭いて拭いて!!!」
「もぉーしょうがないなぁ」
「うへへw」
何やってんだいあの二人
僕の岸きゅんがぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあの小悪魔乙女
美白皆の視線を独り占めぇおんn((
男に
とられちゃぅぅうぅぅぅう!!!!!
颯は小さい頃から変な妄想癖の持ち主で
自分に害のある妄想をした場合
高速ヘットスピンをするという
かなりの変人だ
颯は岸と付き合ってもないが
岸くん本気愛が凄すぎて
ただ間今心と葛藤中なのだ

86 :
セクゾのコンサート行ったらたにれあが両手で恋人繋ぎして二人して弾けるような笑顔だった上にれあたんがそのまま全体重を谷村に預け挙げ句の果てには胸に頭をくっつけるような体勢になっていたよ
実はたにれあものすごく好きだから頭吹っ飛ぶかと思ったよ
久しぶりにまたたにれあの問題作も読みたいな…なんてね

87 :
横浜アリーナバイバイDuバイ記念に

本日は晴天なり
谷村龍一は広がる青空を見上げながらそんなことを呟いた。
おりしも季節は5月、ツツジが咲き誇る麗らかな春…世間はGWだったがジャニーズJrにGWはない。4日間全てコンサートの仕事が入っている。
それでも谷村はそんな忙しさを嬉しく思っていた。何せ久しぶりのコンサートである。この春高校生になってようやく最後までいられる喜びに胸は躍っていた。
「おいそこ立ち位置違うぞ!もっとズレろ!」
しかし呑気に浮かれている余裕はない。必死に立ち位置や振りを覚えなくては二度と呼ばれなくなってしまう。バックダンサーとはいえ出演者の一人には違いないのだから少しのミスも許されない。
「…で、ここでJr紹介やるから。まずセクシーボーイズをマリウスが…」
Jrの中でも重要なポジションを与えられている彼らはしかし谷村よりも過酷な動きをこなしている。ふと周りの視線を見ると皆「いつか俺もあそこに…」といった眼をしている。もちろん谷村とて全く向上心がないわけではない。
「…」
真剣にスタッフの指示を聞いているJrの中の一人に谷村の視線は吸い込まれて行く。さっきまで必死にリハーサルの内容を頭に叩き込んでいたからその余裕はなかったが今は紹介Jr以外は休憩モードだから自然とそこに目が行ってしまった。
透き通るような白い肌に、髪を切って少しだけ短くなったその黒髪に真剣な眼差しが見え隠れしている。細い腕は17歳の男子のそれに比べてしなやかで、その全身から柔らかな美しさが溢れている。
一時期、肩を並べて活動していたのに今はなんだかひどく遠い存在のように思える。少し寂しさにも似た感情がかけめぐるがそれを無理矢理押しR意味で隣にいた菅田琳寧と他愛もない会話をしてごまかした。
「おいちょっと集まれJr!変更点今から言うぞ」
のんびりする間もなく変更点が告げられる。一日目、二日目とコンサートが全く同じ内容で進むことはまずない。
初日にはなかった変更が、昨日までこうだったことが、それがめまぐるしく変更するのはザラだ。こうして臨機応変に対応できる柔軟さが実は最もJrには必要だったりする。
「…で、次の曲…バイバイDuバイだけど、フォーメーションとフレンドシップの関係でバック増員。谷村、ちょっと来い!」
「…ふぁい!?」
突然呼ばれて谷村は驚いて変な声が出た。後ろで誰かがくすくす笑う。
「お前身長あるから追加な。フリは覚えてるよな?」
「…は、はい…」
こんなこともザラである。バックが増減するなんてさして珍しいことじゃない。むしろ出番が増えることは悦ぶべきことだ。谷村はそうポジティブに受け取ることにする。
「そんでこうきてこうきて…ここで二人組で向かい合って制止。おい谷村、お前はこっちだ」
振付師の指示に従って谷村は移動する。そこで二人組の相手が少しけだるそうに立っていた。谷村はその相手を確認して心臓が跳ねる。
「…よろしくぅ」
素っ気なく言って、その相手…中村嶺亜は振付師の指示に淡々と従っていた。

.

88 :
「ヘイヘイヘイ!!横浜愛し合おうぜえ〜!!!」
コンサートは幕を開ける。谷村は雑念を振り払って集中しようと努めた。なんとか自分の出番はここまでミスなくこなせたのだが…
次だ。
青い衣装に着替えながら谷村は背中に汗をかいていた。もちろん、走り回ったり踊ったりして出た汗とは全く違う。
ある意味では…しくじったら振付師よりも誰よりも恐ろしい相手である。最終確認でも目も合わせず至って淡白に済まされたから何気にそれが精神的に響いているのだ。
考えてみれば、自分の前のシンメであるあいつが辞めて以来ほとんどろくに口もきいていない。元々共通の話題なんてないし性格も違うしこんな仕事をしていなければ出会うこともなかったし…それに…
あいつがいなくなってから、口にも素振りにも出さないけどやっぱり寂しいんだろうな、という感じはひしひしと伝わってくる。これは勘違いや考えすぎや深読みのしすぎとかではない。谷村は何故か確信があった。
それは、いつも見てるから。
だからその表情の細かい変化が谷村には分かるのだ。分かってしまうのだ。
時には目を逸らしたくなるくらい顕著に現れていて、どうしたらその曇りを除いてあげることができるのか、愚かな思案にも暮れた。自分なんかにどうにかできるほど彼は弱くない。余計なお世話でしかないだろう。
だから何をするでもなく、声をかけるでもなくもう一年近くにもなろうとしている。そういえば、去年のGWもここで一緒に仕事をして、その時はあいつもまだ自分のシンメで…
そんな思考に陥りかけてると肩を突かれた。
「何してんのぉ?早く着替えなよぉ次だよぉ」
一気に現実に引き戻され、谷村は超高速で振り向いた。そこには嶺亜がもう青の衣装に着替えていて…
「気ぃ抜くなよぉ。バックでもお前のことだけ見てるファンの子いるんだからぁ」
正論だけを言って、嶺亜は待機場所に向かって行った。
「…」
谷村は自分の両の頬をきつくはたいた。じんじんと痛みが伝わるがいい喝になったと思う。
失敗は許されない。真面目に、真剣にやらなきゃ。これはお遊びでもないしおふざけも許されない。ショーの邪魔をするわけにいかないんだ。例えバックでもアイドルはアイドル、舞台に立ったらファンの子に夢を与えなければ。
心を入れ替えて、谷村はステージに立つ。眩しいくらいに照らしつけるライトに勇気をもらってすでに頭に叩き込んでいる振付を懸命にこなす。
問題の個所…二人で手を合わせて数秒向かい合う、そこが近づくと否応なしに鼓動は早くなっていった。

89 :
「…」
こんなにちっちゃかったっけ?とぼんやり思って自分の身長があの頃よりまた大分伸びているだけだということに気付く。少し見下ろすぐらいのその身長差がまた谷村の神経を昂ぶらせた。
黒いサラサラの髪、透き通るような白い肌に魅惑的な瞳が自分を捉えて見つめ合う…熱さのせいなのかなんなのか、谷村は頭がぼうっとしてしまう。すぐ近くにあるその嶺亜の顔に不思議な高揚感が呼び起こされ…
「…え?」
谷村はしかし、そうした幻想に浸ることを許されずぎょっとした。
合わせた掌から嶺亜が指をからませてくる。そして…
「…ちょ…」
思わず足に力が入る。踏ん張りをきかせていないとひっくりかえりそうなほどに重力がかけられて…
「れ、嶺亜くん!?」
まるで全体重を谷村にかけるかのように嶺亜はぐいぐいと押し寄せてきた。
「倒れちゃダメだよぉ。そしたら全部台無しだよぉ」
にたりと小悪魔的な笑みをたたえて、小声で嶺亜はそう呟いた。
「…ぎ…」
しかしこれはなかなかに辛い。そうこうしてる間にどんどん体重をかけてくる。大した重さではないがいかんせん動揺が先立ってしまって谷村は足が痙攣しかけているのを自覚する。
「ほら笑顔ぉ。苦しそうな顔してたらファンの子が何事だって思うじゃん」
「う…」
言われて咄嗟に笑顔を作ってみたものの、ひきつっていないか心配になる。だけど…
目の前の嶺亜は満面の笑顔だった。それは半分からかっているかのような笑いだったがそれでもその笑顔が自分に向けられて、こんな至近距離にあることを認識すると谷村は自分の顔面の筋肉が緩んでいくのが分かる。
態勢はかなり辛いのに、ずっとこのままでいたいと頭の奥で谷村の中の一番素直な人格が命じていた。
時間にして数秒…だけどその数秒だけはこうして見つめ合う喜び…それだけでなく、嶺亜特有の小悪魔めいた遊び心の餌食になっていることに悦びにも似た感情が全身を駆け巡っていた。
そして次の振りに変わる。そのまま手を繋いでくるくるとメインメンバーの周りを回る。
握った手に自然と力が入る。離したくない、だけどもう次の瞬間には離れていた。その温もりと感触だけが余韻のように掌に残っている。
「お疲れ。明日が最終日、皆疲れ残さないようにしっかり休んでがんばろう!!」
コンサート終了後、スタッフの締めに返事を返してJr達はそれぞれ着替えや帰宅準備にとりかかる。楽屋の中は当然のようにごちゃごちゃしていてこういうのが苦手な谷村はさっさと出ることにしている。
いつもなら、ここで出口に一直線だがその楽屋の前に来ると何故か足が止まった。

90 :
まだいるのかな…
しかしいたところでこちらからどう声をかけていいものか…それより何より待ち伏せとか気持ち悪がられること間違いないだろう。浅い溜息をついて谷村は踵を返した。
「あ」
少し進んで、靴ひもがほどけてしまっていることに気付く。靴ひもを結ぶのは苦手だから面倒くさいな…と思いつつかがんでそれを結び直そうとしたその時である。
「…ひゃ!!」
いきなり頬に冷たいものが当たって反射的に悶絶してしまっておかしな声が出てしまった。
何事?と驚きつつそこに視線を合わすとコーラ缶があった。そのコーラ缶を持っていたのは…
「あげるぅ」
にこっと笑って谷村にコーラ缶を放ると機嫌良さそうに嶺亜は小走りで出口に向かって行った。
「…」
その冷たい缶を握りしめつつ嶺亜の後ろ姿をただ呆然と谷村が見つめていると突然彼は足を止めた。
そして、振り向きもせずこう言った。
「明日もちゃんと支えろよぉ」
谷村が返事をする前にもう嶺亜は廊下の曲がり角を曲がって行った。まるで、返事は決まりきっているから聞く必要はないとでも言いたげに。
支えるよ。
ずっと支えるよ。だからどれだけ寄りかかってくれても構わない。
誰もいない廊下で谷村はそう口にしていた。
そしてコーラを飲もうと缶を開けるとその中身が勢い良く吹きだして顔じゅうコーラまみれになり、さらにはその辺に飛散して通りかかったスタッフに谷村はめちゃめちゃ怒られた。


我らが天使を支える柱となってくれるのは、不憫な星の下に生まれた君しかいない。頼んだぞ、谷村
END

91 :
たにれあやばい!
栗ちゃん懐かしいね…これからも小説に登場させたいな!

92 :
早速の谷れあありがとう
れあたん最近高橋海人とふたり母子家庭みたいだけど頑張ってね

93 :
横浜アリーナバイバイDuバイ記念(裏)

「龍一さん、今日はコーラ被って帰ってこないでね。お洗濯大変だから」
母親に小言を言われて谷村は「分かってる」と返事をして家を出た。
今日の横浜は平年をかなり下回る気温で5月とは思えない肌寒さだ。空を見上げると曇天で、GWの最終日にしては愛想のない天気である。
それでも谷村の足取りは軽かった。やる気に満ちていると言ってもいい。
電車に乗り込みながら昨日の回想に浸る。心なしかあの感触がまだこの手に残っている気がする。小さくて少し冷たい手…嶺亜の手の感触だ。
「明日もちゃんと支えろよぉ」と嶺亜は言った。だから今日は全身でその全てを受け留めるつもりで来た。俄然モチベーションが上がっていることを自覚しつつ外の景色を眺めていると…
「…?」
普段からほとんど着信のない自分の携帯電話が振動していた。鞄のポケットからそれを出して確認すると思ってもいない相手からの着信で思わず声をあげそうになった。
メールアドレスを交換した記憶はあったがそれが使われたことはほとんどない。それでもその名前はきちんと谷村の携帯電話のメモリに入っている。
『コンサート終わったらさっさと帰らずに楽屋○○の前で待っといて』
たったそれだけを簡潔にそのメールは記していた。

.

94 :
バイバイDuバイの曲順が近づく度に谷村の体温は自動的に上がってゆく。だが浮かれているのとは少し違う。舞台裏で関西Jrと高橋海人の3人が披露する曲を舞台を見つめたまま聞いている嶺亜の背中を見ていると自然とそうした有頂天は消えて行く。
代わりにやってくるのは使命感にも似た思い。
嶺亜が何を思ってDuバイであんな気まぐれを起こしたのか、今朝メールをよこしたのか、谷村にはその真意は測れない。だけどそこに何かしらのメッセージがこめられているのかもしれないと勝手に解釈してその背中を見つめた。
そして曲が始まる。今日は心の準備ができているからパーフェクトに出来る自信がある。笑顔で嶺亜の体重を受け留めて見つめ合…
「…え?え?」
その顔がだんだん近づいてくる。身長差があるからそれは谷村の胸あたりに位置するが、それにしてもこれはまるで…
「…!」
心臓の音が嶺亜に聞こえやしないかと谷村は本気で危惧する。会場には爆音に近い音源が流れているがそれでも尋常ならざる鼓動の音に聞こえずとも触れられたら一発でバレる。
嶺亜の表情は見えない。何故なら、それを盗み見ることは許されない気がして谷村はただひたすら昨日言われた通りに笑顔を崩さずその態勢でいることしかできなかったからだ。
気がつけばコンサートは終わっていて、盛大な歓声の中嶺亜がステージ上でお辞儀をしていた記憶だけがぼんやりと残っている。
「あれ?谷村帰らないの?」
誰かに問われたが谷村は自分がどう返答したか次の瞬間には忘れてしまった。指定の場所で携帯電話をいじる振りをして待っていると15分後に彼は来た。

95 :
「お待たせぇ」
柔らかい口調とは裏腹に表情は全くと言っていいくらいになかった。今仕方ステージの上で天使のような笑顔でファンに愛想を振りまいていたアイドルとは対極にある完全に無の表情。
だけどそれはぞっとする程に美しく、その絶対零度の冷たさが放つ凛とした美を目にすることを自分は許されたのだという不思議な優越感のようなものを抱いた。
「あの…嶺亜くん」
嶺亜の後ろを歩きながら谷村は問う。単純な疑問だ。
「何?」
「あの、俺今朝返事だけしか返してなかったけど…どっか行くの?だったら家に連絡…」
「行くよぉ。そこ」
嶺亜が指差した先は…
「え?ここで何を…」
谷村の質問には答えず、嶺亜はそこに入って行く。もうほとんどのJrが会場内にはいないだろうからそこもしんとしている。が、いつ誰が来るか分からない。だけど躊躇わず進んでいく嶺亜に導かれるようにして谷村は疑問符を打ち消して入った。
「嶺亜くん…?」
狭い個室内で向き合うと、さっきのステージの上でそうしたのとはまた違った心臓の変拍子がやってくる。何が起こるのか、どういう意図でこんなところに連れて来たのか分からないから余計にそれはひどく、殴りつけるように谷村の胸を打った。
「…声出すなよぉ、絶対にぃ」
そう命じたかと思うと嶺亜は谷村の両の頬をその手で包みこみ、そして…
「れ…」
その先を声に出すことができなかったのは、口を塞がれたからだ。
手ではなく、唇で。

96 :
「…!!」
驚く間もなく、谷村の意識は強烈な閃光によって弾き飛ばされた。唇に伝わる柔らかい感触に、神経は一点に集中した。微かに柑橘系の匂い…いや、味?が掠めるのは嶺亜がガムか何かでも噛んだ後なのか、それともキスとはこういう味がするものなのか…
飛ばされた意識の向こうで谷村はそんなことを思った。
全身の筋肉が一時的に弛緩したのか、それとも神経がその一部分に一点集中されたからか谷村は足腰が立たなくなって閉じられた便座の蓋の上に腰をおろしてしまう。だが嶺亜はそんなこともおかまいなしに谷村に跨ってきた。
唇を離すと、向こうの見えない瞳で嶺亜はじっと谷村を見つめた。息遣いが感じられるほどに近く、瞳のガラスに自分が映っているのが認識できそうな気がした。
だけどその暇を与えず嶺亜は再び谷村の顔に自分のそれを近づけ、そして再び唇を重ねてきた。
どうして嶺亜がこんな行動におよんできたのか、谷村はその疑問の前にもう理性が毟り取られてしまう。あれこれ考えるのが馬鹿らしいくらいに震える本能を前面に出すと自分の中に爆発的な感情が芽生えるのを自覚した。
嶺亜の華奢な背中に腕を回し、きつく抱きしめながら暫く無言で唇を重ね合う。だけどだんだんそれだけでは足りなくなってしまって、谷村はもうすでに極限にまで上がりきったボルテージに従って本能のままに嶺亜を求めた。
「ちょっとぉ…調子のんなよぉ…」
乱れた息と共に嶺亜がそう囁いたがしかし抵抗はしない。これは受け入れてもらえるということだと勝手に解釈して谷村は彼の衣服の中に手を滑り込ませた。
すべすべの肌から体温が直に伝わってくる。抱き締めていて分かるが、全くごつごつとせずしなやかさすら感じるその体格も何もかもが谷村の神経を震えさせる。
「嶺亜くんっ…」
ほとんど吐息だけでそう囁き、谷村は嶺亜の全身に掌を這わせた。
「…」
谷村の拙い愛撫でも感じているのか、その瞳が潤みだす。まるで少女のようなそのいたいけな瞳に胸の奥から何かがこみあげてきて谷村は我を忘れて嶺亜にむしゃぶりついた。

97 :
「はぁっ…」
嶺亜が大きく息を吐いたかと思うと、彼の体がぶるっと震えた。どうやら首筋が弱点らしい。そこに唇と舌を這わせるとまたびくん、と痙攣が訪れる。
「嶺亜くん…ここがいいの…?」
小声で囁くと、嶺亜は目をきつく閉じた。肯定とも否定ともつかなかったが体の反応で谷村はイエスであると確信する。すでにベルトを外しておいたから容易にそこに手を滑り込ませることができた。
「ちゃんとついてたんだ…」
疑っているわけではなかったがあまりにも中性的すぎて嶺亜にそれが存在することを半分忘れてしまっていた。そして今、それを確認して不思議な感慨が訪れる。谷村の愛撫でもうそれは十分な硬さを備えていた。2、3回さするといきなり耳たぶを噛まれた。
「いたっ…」
「調子のんなって言っただろぉ…どこ触ってんだよぉ…」
「だって…」
「だってじゃない。そこはダメぇ。離してぇ」
いつもなら、嶺亜の言うことに逆らえるはずもないのだが今谷村の中では色々壊れてしまって自分でも思ってもみない言葉がついて出る。
「じゃあ嶺亜くんがしてよ…。そしたら離すから」
嶺亜の目は『何言ってんのぉ?』と一瞬見開いた。だけど谷村には根拠のない自信があった。彼は首を縦に振るだろう、と。
そしてそれは当たった。嶺亜は憎たらしげに谷村を睨むとこう呟く。
「いつからそんな生意気になったのぉ…?」
その手は手際よく谷村のジーンズのチャックをおろしていた。小さな手が中に侵入してくる。暫く下着の上から擦ったあとで直に触れてきた。
「う…」
いともたやすく形勢逆転してしまった。経験ではかなうはずもないのか、嶺亜の手つきは男の性感を知り尽くしているかのように絶妙に刺激してくる。

98 :
「はぅっ…あっ…」
抑えようとしても声が漏れてしまう。まるで全身に微電流でも通されたかのようにビリビリとした快感に包まれ、谷村は喘いだ。狭い個室内に自分の淫猥な声がこだまし、余計に興奮してくる。
「谷村ぁ、声出し過ぎぃ…誰か入ってきたらどうすんのぉ?」
「だって…無理だよこんなの…声出すななんて拷問…」
「自分が望んだんでしょぉ…?」
「そうだけど…それとこれとは…うぁっ…!」
「生意気なこと言った罰だよぉ。出るまでやめないからねぇ」
まるでおいたをした子を叱るような口調でそう囁いた後、嶺亜の手の動きは激しさを増す。そうなるともう谷村には太刀打ちできない。声を我慢することを早々に放棄して全身を快楽に委ねた。
「……くっ…!!」
自分の中から勢いよく粘液が放出されると果てしない充足感が包みこんでくる。うっすらと発汗する全身は燃えるように熱かった。
息を整え、閉じていた目を開けると現実的な光景が目に入ってくる。嶺亜はトイレットペーパーで手を拭いていた。事務的な動作だった。
「…あの…」
声をかけようとするとしかし冷たい目でとある部分を見おろされ、こう告げられた。
「早くしまいなよぉそれ」
「あ…」
羞恥心と、えもいわれぬぞくぞくとした悦びが沸き上がってくる。やっぱり自分は被虐趣味があるのかもしれない。だがそうされたい相手は限定されている。誰にでもそうされたいわけではないのだ。
だから谷村はその言葉に従う前に思わずこう口にしてしまった。
「嶺亜くんがして…」
案の定、絶対零度の視線で見下ろしながら嶺亜はこう返す。
「だから調子のんなって言ってるだろぉ。なんでそんなことまでしてあげなくちゃいけないのぉ?早く手ぇ洗いたいんだけどぉ。べとべとして不快なんだよねぇ。
だいたいねぇ、出る時はちゃんと言えよぉもう少しで服にかかるとこだったじゃん。そしたら洗濯してもらう時にすんごい厄介だからぁ…ほんと谷村って…」
一気に早口でまくしたてられ、これこそがまさに望んでいた返事であることを谷村は自覚し感動に似たものが全身を包んだ。
呆然とその美しい冷たさに魅入っていると呆れたような顔になって嶺亜は眉根を寄せた。
「ちょっとぉ…なんでもうそんな元気になってんのそれぇ…バケモンかよぉ…」

END

99 :
たにれあきたぁぁぁ!!
テンションMAXになって夜中に1人でうぉぉって
なってたよ
作者さん乙です!

100 :
たにむの変態っぷり最高です


100〜のスレッドの続きを読む
【エース】HiHi Jets橋優斗のファンスレ Part 4
Jr.担によるデビュー組雑談スレ65
「Rの法則」
Jr.総合ファンスレPart1823
森本慎太郎 Part.1
【無能マン】SnowManアンチ★65【滝沢ゴリ押し】
Jr.総合ファンスレPart1841
HiHi Jets アンチスレ
Jr.総合ファンスレPart2729
つぎのでびゅーはだれ
--------------------
勝手に今日輝いていたレス大賞 178
ゼノブレイド2アンチスレ★2
切らない包茎手術クリック法はおすすめだよ!
【自称東大公認ブロガー】ブッシーただっちパシフィックまちこPart.24【ロンダ&東大生狩り主婦】
なぜ2-0から時間稼ぎをしなかったのでしょうか
【国内】 「韓国の強姦と売春の文化は世界中で有名」〜奈良県安堵町議員、また韓国への差別的投稿★2[11/01]
スズキ伝家の宝刀「KATANA」が19年ぶりに151万円で復活。 するも、デザインが”鈍筋”になってしまう。 でも売れると思う。 [318531558]
■トリの質問はここでしてチュン その18
日本共産党は外国籍の党員を認めろ!
▲▲▲▲▲新興宗教 - 危険度ランキング▲▲▲▲▲
FRED PERRY フレッドペリー pt.16
【うまい奴】高速道路の走り方・45台目【へたな奴】2
相場日誌3
太平洋の3大無ェとは?
ONE OK ROCK 228 o'clock
早く死にたい
suimonこいなぎstrategy研応援スレッド14
【PS4/XBOX1】APEX LEGENDS エーペックスレジェンズ マウサー専用スレ
司法受験生のアルバイト事情
大阪のいいところ
TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼