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【妄想を】CCさくらSSスレ【垂れ流せ】


1 :2018/11/06 〜 最終レス :2020/01/05
カードキャプターさくらのSSを投稿するスレです。
書式、構成等の上手下手は問いません、好き勝手に書きなぐりましょうw
ただし来た人が引くようなエログロは勘弁な。
参考スレ
【禁断】小狼×知世をひっそり語るスレ【村八分】
https://mao.2ch.sc/test/read.cgi/sakura/1523196233/l50

2 :
保守代わりにひとつ。
旧作の最後の審判のやり直しがあまりにワンサイドゲームだったので
妄想してみた、並行世界でのお話。

「あんな悲しい未来には、絶対にさせないっ!」
星の杖をユエに向け、構えるさくら。目には強い決意と、悪夢から覚めさせてくれた愛しい人への訴え。
「ふん、何度やっても無駄なことだ、お前はクロウ・リードの代わりには決してなれない。」
さくらに向き直り、冷淡に言い放つユエ。その奥底にあるのは、新しい主(あるじ)への拒絶の意思。
 クロウカード最後の審判、その「やり直し」の対決を眼前に、
後継者候補木ノ本さくらと、審判者ユエが再び対峙する。

 東京タワーの根元、3人は眼上を見上げ、残された最後のチャンスの行方を見守る。
「くそっ!何かないのか、俺たちに出来ることは・・・」
式服に身を包んだ少年、李小狼が頭上の二人を見上げ、嘆く。
「何もあらへん、審判の時は手助けはおろか、アドバイスさえもできんのや!
それをやったら即、さくらには資格無しの裁定が下ってまう・・・」
翼をもつ獅子の姿を持った選定者ケルベロスが、見上げながら呟く。

「いいえ、ありますわ。私たちにも出来ることが。」
後ろにいた黒髪の少女、大道寺知世のその一言が二人を振り向かせる。
「「え?」」
「ケロちゃん、応援するのはよろしいんですのよね。」
にっこりと笑ってそう問いただす知世。
「そ、そらまぁ、応援くらいやったらなぁ・・・」
「なら、私たちにできることをいたしましょう、3人で声を合わせて、こう・・・」
 ・・・・・・・・
「え”」
「よっしゃ、それやるか!ん、どないした小僧?」
「い、いや・・・」
「決まりですわね♪」

3 :
 さくらの前に1枚のカードがふわりと舞い、それを手に取る。先ほどユエに逆支配された
ウッド(木)のカード。やり直しの審判の前に、元々手持ちのカードは再び元に戻される。
このカードを使ったことが、先ほどの最悪の結末を招いてしまった、否応なしに緊張がさくらを包む。
私に出来るのだろうか、この最後の審判を乗り切って、あの「この世の災い」を回避することが。

「「「フレーっ、フレーっ、さ・く・らっ!」」」
「・・・え!?」
「「「頑張れ、頑張れ、さーくーらーっ!!」」」

下から響く声、その響きに思わず下を見やるさくら、そしてユエ。

「「「フレーっ、フレーっ、さ・く・らっ!」」」
「「「頑張れ、頑張れ、さーくーらーっ!!」」」

3人がさくらにエールを送っている。知世は自慢の美声を響かせ、ケルベロスは彼らしい大声で
そして小狼は顔を赤らめ、半分ヤケクソ気味に声を張り上げて。
そのはるか後方では、瑞樹先生がその光景を見ながら微笑んでいる。

「ふん、無意味なことを。」
冷淡に呟くユエにさくらが杖を向け、返す。
「そんなこと、ないっ!」
ん?という表情のユエに続けて返す。
「すっごく、元気でたっ!!」
笑顔で力強くそう告げるさくら。そう、私には応援してくれる仲間が、大切な人たちがいる。
先ほどまでの重圧はどこへやら、高揚感とやり遂げる意欲、そして少しの新鮮さを心地よく感じていた。

4 :
「(そういや、李君に『さくら』って呼ばれたの初めてかも)」
新鮮さの正体を悟り、思わず笑みがこぼれるさくら。
が、次の瞬間、その考えを打ち消す記憶が脳裏にフラッシュバックする。

−さくら、封印や・・・−

「(・・・あれ?以前にも李君に、そう呼ばれたことが・・・あれは確か・・・)」
記憶を紐解いていくさくら。あれは確か、あるカードを封印する際の出来事。
「・・・あ!」
その情景をはっきりと思い出す、そしてその時感じた疑問を今の状況に当てはめる。

−なんでそんなカード作ったの−

「(そう!もし今あのカードをうまく使えたら・・・だけど。)」
そのカードを使うには、いくつかの条件をクリアする必要がある。その為に必要なことは・・・
「(思い出して、さっきみたいに私が今まで経験したこと、カード集めで知ったこと
その中に、必ず答えはあるはず!)」
目を閉じ、記憶を邂逅するさくら。長かったカード集めの中で知ったこと、体験したこと、
今日私が経験したこと、その中から今、必要なカードを選んでいく。
「(あのカード、それからアレとアレ・・・でもダメ、まだ足りない。)」
ほぼ青写真は出来た、ただ一つ、最初の条件をクリアするカードが見つからない。
「(思い出して!カードさんを集めてきたこと、ケロちゃんと知世ちゃんと李君と一緒に、そして・・・)」
さくらは思い出す。今ここにはいないけど、一緒にカードを追いかけてきた快活な少女の存在。
「苺鈴ちゃん!そうだ、あのカードさんなら!」

 左手で手持ちのカードを扇状に広げ、右手で一枚、また一枚とカードを抜き取っていく。
腰のホルスターに左手のカードを収納し、抜き取った5枚のうち4枚をそのホルスターの
最上部に収納する、使うカードは決まった。
「準備はいいようだな、では始めるか!」
ユエがさくらを睨み、重心を前にかけ一歩踏み出す。

5 :
さくらは右手のカードを放り、星の杖で打ちすえて発動させる。
「汝の優れた技と力を我に宿せ、ファイト(闘)ーっ!!」
カードから水色の武道着を纏った少女の姿が現れ、さくらの体に憑依するように重なり、同化する。

「あれは、ファイトのカード!しかし・・・」
「よっしゃさくら、かまへん、ぼてくりまわしたれーっ!わいが許す!」
「・・・さくらちゃん?」
その選択に下の3人がそれぞれ違った感想を有する。あのユエに格闘戦で勝ち目があるのかと訝しがる小狼、
ノリノリで同じ守護者のユエをどつき回せと本気で考えるケロ、
そしてさくらの思い人、雪兎の真の姿であるユエを殴れるのかと不安な表情を見せる知世。

「ふん、ファイトか。それで私に対抗できる気か!?」
右手を振り前方にかざすユエ。無数のつぶてが生まれ、弾けるように飛び出す。
「はっ!とっ!ていっ!!」
その飛礫を左右に躱し、宙返りで飛び越え、杖で弾き、腕で叩き落とすさくら。
「小癪な、ならばこれはどうだ!」
ユエは青白い炎を弓矢に具現化し、さくらに向けて放つ。幾多の矢がさくらに押し寄せる。
「はあぁぁぁぁっ!!」
押し寄せる矢の雨を次々にパンチやキックで叩き落とす。と、そのさくらの真横に踏み込んでくるユエ。
ユエのアッパーカットを上体をそらして躱し、連続で放たれた回し蹴りの足の上に乗って後方に飛び、距離を取る。
さらに連続攻撃を仕掛けるユエ、しかしさくらはその天性の運動神経と、ファイトのカードによって得た
格闘能力で次々にユエの攻撃をいなしていく。

「すごいですわさくらちゃん!」
「何やっとんねん、逃げんな、ぶちかませーっ!!」
「確かに。なんとか躱せてはいるけど、攻撃しないとユエは倒せない、あいつ一体・・・」

6 :
 そんな3人の思いとは裏腹に、さくらは戦いながら思う。
「(私の考えた作戦は、まずユエさんの攻撃をある程度しのげないと使えない。
でも、ジャンプ(跳)さんでも、フライ(飛)さんでも、ユエさんの攻撃からは逃げられなかった。
だけど、あの苺鈴ちゃんと互角に戦った、このファイトさんなら!ファイトさん、苺鈴ちゃん、力を貸して!)」

 ひとしきりの攻撃を凌ぎ、距離を取る。ユエも追撃の手を止め対峙する。
「少しはマシになったな。しかし、攻撃しなければ私は倒せんぞ。」
その言葉に答えるかのように、さくらはホルスターから次のカードを取り出す。
眼前に放り、星の杖でそのカードを打ち据え、発動させる。

「木々よ、彼の者を捕らえよ!ウッド(木)ーっ!!」

「・・・え?」
「ええっ!?」
「なんやってえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
さくらが打ち据えたカードから、無数の枝が伸びユエに向かう。
「アホかーーーーっ!さっき操られたばっかしやないかーーーいっ!!!」

 木々がユエに触れた途端、その木々は動きを止める。
「愚か、という言葉しか出ないな。こんな者が資格者だと!?」
険しい表情で木々を逆操作する、木々はたちまちさくらに向けて反転、次々にさくらに襲い掛かる。
「えいっ!とう!はっ!!」
それでもさくらは駆け、飛び、木々の追撃から逃れる。枝を蹴ってジャンプし、巻き付こうとする蔓から
素早く腕や足を抜き、囲おうとする枝を突破する。とはいえ状況がさっきよりずっと不利になったのは明白だ。

7 :
「ここは・・・」
思わず叫びそうになり、慌てて口を押える小狼。さくらに対するアドバイスは最後の審判では御法度だ。
「(ここはソード(剣)だ!陰陽五行では「木」は「金」、つまり金属に弱い、ソードであの木を打ち払えば・・・)」
小狼の心の叫びに同調するかのように、次のカードを取り出すさくら。眼前に放り投げ発動させる。

「雨よ、地に降り注げ!レイン(雨)ーっ!」
カードから雨雲が沸き立ち、たちまち空を覆う、間を置かず降り注ぐ大粒の雨。
その雨がさくらを、ユエを、そして木々を打ち濡らす。

「レインだって!なんてことを!!」
悲鳴に似た声を上げる小狼、あまりにも間違った選択を取った、少なくとも小狼にはそう思えた。
事実、雨水を吸ったウッドは膨張し、その幹が、枝が、蔓が、爆発的に成長し、また数を増やす。
あっという間に東京タワーの展望台上はユエの操る木々の巨大な檻に覆われる。

「アイツ、やっちまった!なんでレインなんか!!」
「いいえ、それは違いますわ、李君」
「え?」
嘆く小狼に訂正を入れる知世。ケルベロスがそれに続く。
「ああ、さくらは知っとったハズや、レインがウッドを強化することを、その身をもってな。」
「だからきっと何か、考えがあるのですわ。」
不安と期待が入り混じった表情でそう答える二人。
「け、けど、見ろ。もうアイツに逃げ場はないぞ!」
巨大な樹の檻に囲まれているさくらとユエ。その樹を操ってるのはさくらではなくユエの方だ、
どう贔屓目に見ても状況は絶望的に見えた。

8 :
「終わりだ!」
ユエの合図とともに四方八方から無数の枝が伸び、中央のさくらに襲い掛かる。
さくらはホルスターから次のカードを取り、発動させるべく放り投げる。
が、その直前に枝から伸びた一本の蔓が、ついにさくらの左足に巻き付く。
構わずカードを打ち据えるさくら。

「杖を振るう我の腕を守れ、ファイアリー(炎)っ!!」

「まずい、捕まった!」
「さくらちゃん!」
「まだや!焼き尽くしたれや、いけ!ファイアリーっ!」

「今更ファイアリーとはな、だが、無駄だ!」
冷徹に言い放つユエ。
「レインのカードの発動中に、ファイアリーが本来の力を振るえると思うか!」
その指摘通り、ファイアリーの炎の精は、体を打ち付ける雨にその威力を殺されていく。
それでも主の命令通り、さくらの両手に取り付き、木々から手と杖を守っている。

「ありがとうファイアリーさん、これが・・・最後のカード!」
ホルスターから5枚目のカードを抜き取り、投げる。炎を纏った腕を振り、杖を振り上げる。
「今更何をしようと、もう手遅れだ。カードは主を失い、この世の災いが発動する。」
冷酷な目で木の上に立ち、蔦の絡んだ右手をさくらに向けて言い放つユエ。
事実さくらはすでに胸まで木々に巻き付かれ、首にすら蔦がかかっている。
だがさくらは懸命に声を上げ、その杖をカードに向けて振り下ろし、打ち据える。

「カードよ、木に宿り、汝の力を示せ、クロウ・カードーっ!!!」

カードが発動したその瞬間、愕然とするさくら。ファイアリーは消滅し、腕に、首に、蔦が巻き付き動きを止められる。
首から下を全て木に巻き付かれ、完全に身動きできなくなるさくら。
その手から星の杖が落ち、東京タワー展望台の屋根に乾いた音を立て、落ちる。

9 :
「・・・!」
下の三人は声も出せず、最悪の結末を呆然と見つめている。その後方で同じ表情の瑞樹が嘆き、呟く。
「エリオル・・・これが、貴方の望んだ結果なの?」
最後の審判が終わる、そして『この世の災い』が今、始まる・・・のか?

「こんな・・・」
首から下をウッドで簀巻きにされているさくらが、険しい表情でつぶやき、そしてユエに叫ぶ。
「こんなやり方、まるでクロウの・・・クロウを気取ったつもりかーーーっ!!」

「へ?」
ケルベロスが、何言っとんのやさくら、という表情で見上げる。知世と小狼も同じ表情で。

ユエが木の上を、さくらに向かって歩みを進める、穏やかな表情で。そしてさくらに語る。
「ううん、これは『私』が、今まで経験してきたこと、カード集めで知ったこと、そして・・・」
そこまで語ったユエが、足元の木の枝に足を引っ掛け、ぐらぁっ、とバランスを崩す。
「ほ、ほぇぇぇぇっ!!」
両手をばたつかせ、必死にバランスを取ろうとするユエ。しかし努力むなしく、顔面からべちゃっと
前方に倒れる。
「あいたたた・・・ご、ごめんなさい。この長い脚に慣れなくて。」
顔面を抑えながら起き上がるユエ。

「ほええって、ユエ・・・お前、キャラ変えたんか?」
「い、一体何が、何を言ってるんだアイツ。」
もはや目が点になっている2人。その後ろで知世が視線を上から前の二人に移す。
ケロと小狼を何度か交互に見やり、そして頭の上に電球がぱぁっ、と灯る。
ぽん!と手を打ち、笑顔になる知世。
「分かりましたわ!」
「「え!?」」
思わず知世に振り向くケロと小狼。

10 :
「さくらちゃんはあの時、お二人に縁の深いカードを使われたんですわ♪」
「わいらに・・・?」
「縁の深い、カード・・・?」
顔を見合わせ、邂逅するケロと小狼。元々この二人は仲のいい間柄ではない。
小僧、ぬいぐるみ、とお互いを敵視し、衝突したことも度々である。
最悪なのはお互いの体と心が入れ替わり、両者が散々な目にあったことも・・・

「「あーーーーーーーーーっ!!」」
お互いを指差し、同時に叫ぶ二人、そして同時に展望台を見上げる。
「「チェンジのカード!!」」
ひとり、瑞樹だけが頭の上に?マークを浮かべている。
「つ、つまり今、ユエが木ノ本さんで、木ノ本さんが・・・ユエ?」

「そうか、だからウッドにレインを使ったんだ。わざとウッドを強化して自分を捕まらせて
木を通して自分とユエを繋げるために・・・」
「チェンジさんはカメレオンみたいなデザインですしねぇ、木に力を通すのも得意なのでしょう。」

「だーーーっはっはっはっはっ!」
ケルベロスの爆笑が響き渡る、ときには顔を伏せて手で地面をだんだんと叩き、
また寝っ転がって腹を抱えてごろごろしながら高らかに笑う。
「た、確かに、クロウの奴に最後の審判やらせたら、こんな人をおちょくったようなコト
しかねんわ、わはははははは・・・」

「笑いすぎだケルベロス!」
さくら(中身はユエ)が眼下を睨み、同じ守護者に毒を吐く、もっともさくらの可愛らしい声だから
威圧感は皆無だが。
ふぅふぅと呼吸を整えながら、笑い終えたケルベロスが上を見上げ、言う。
「お前言うとったなぁ、『さくらじゃクロウの代わりにはならん』て。
せやけどさくらは辿り着いたで、やり方は違っても、クロウがやりそうな結末に。」
何よりユエ自身がそう言ったのだ、クロウを気取ったつもりか、と。

11 :
「く・・・」
歯ぎしりをして嘆き、それからふぅっ、と息を吐き、力を抜くさくら(中身ユエ)。
すると彼女を覆っていたウッドがするっと解け、力を失い、やがてカードに戻る。
「・・・え?」
驚愕するユエ(中身さくら)にすたすたと歩み寄り、その体に抱き着くさくら(中身ユエ)
「チェンジ!」
さくら(中身ユエ)がそう言うと、二人の友進に光が溢れ、やがて収まる、離れる二人。

「ほ、ほぇぇ、戻った!?でもでも、チェンジって一日待たないと戻らないんじゃ・・・?」
自分の両手を、そしてきょろきょろと状況を見回し、元に戻ったことへの安心と疑問を混ぜ込んで言う。
「チェンジは私の配下のカードだからな。ただ、使うと同時に発動するから、お前に使われた時は
支配する暇もなく入れ替わられたが。」
その二人の間に、2枚のカードが舞い飛んで、空中で制止する。ウッドとチェンジのカード。
それをぱしっ!と手に取り、さくらを見るユエ。

 未だ最後の審判の終了は宣言されていない、さくらの心に緊張が走る。
が、ユエは手を下ろし、さくらをまっすぐに見て言う。
「ひとつ答えろ、どうしてこんな手の込んだやり方をした。」
「・・・え?」
「本来、この最後の審判はそう難しい物ではない。ケルベロス配下の攻撃カードである
ファイアリーやアーシー(地)を使えば、簡単にカタがついただろう、何故そうしなかった。」
友枝町を覆いつくした豪雪を一撃で溶かしつくしたファイアリーや、
この地一帯を完全支配したアーシーの威力はさくらもよく知っている。
そして、そうしなかった理由もユエには予想がついていた。自分の仮の姿である月城雪兎、
彼女が好意を寄せるその人の身を気遣ってのことであろう、と。

12 :
「だって、『ユエさん』を、傷付けたくなかったから。」
「何!?」
予想外の言葉に驚愕するユエ。雪兎ではなく、私を・・・?
「ユエさんも、ケロちゃんと同じ守護者さんなんですよね、だったら攻撃するより、
なかよしになりたいなぁ、って。」
「・・・なかよし、か。」
ユエは邂逅する、かつて自分が崇拝していた人物、クロウ・リードの残した言葉を。

−やがて新たな後継者が現れるでしょう、あなた達やカード達を慈しんでくれる者が−

 ある意味、後継者の資格はそこにこそあるのではないか、魔力も大事だが、何よりカードにも
守護者にも命がある、それを同じ目線で、対等に接してくれるそんな心を持った存在こそ・・・
道具ではなく、『なかよし』になってくれる主、それが今、自分の目の前にいる。

「目を閉じろ!」
「ほ、ほぇ?」
「・・・早くしろ。」
「は、はいっ!」
言われるままに目を閉じるさくら。その前にひざまづき、宣言するユエ。
「選定者ユエ。我ここに『最後の審判』を終了し、『木ノ本さくら』を新たな主として、認む。」

 さくらが目を開けた時、そこにユエの姿は無かった。ただ、目の間に星の杖が浮かんでいる。
そして周囲にはユエが小狼とさくらから奪ったカードが、さくらの招きを待っているかのように
彼女をリング状に取り囲んでいる。タイム、サンド、ストーム、ドリーム、そしてウッドにチェンジ・・・
 右手で杖を取り、左手を出す。その手のひらに宙に浮かぶカードが次々に収まる。

 そしてさくらは時を超え、かつての所有者、クロウ・リードと心の邂逅を果たす−

13 :
「やったよーっ!」
東京タワーから降り、笑顔で知世、小狼、ケロのもとに駆け寄るさくら。
合流するとさくらは小狼の両手を取り、彼をぐるぐると振り回す。が、その勢いはとどまることを知らず
やがて小狼の足が浮き、まるでジャイアントスイングのようにぶん回される。
「うわぁっ、ちょ、ちょっと!」
「ほ、ほえぇぇっ!?」
あまりのさくらの豪快さに驚愕する小狼、意外な小狼の軽さに驚くさくら。

「あー、まだファイトが発動しとるわ、アレは力もえらい上がるからなぁ。」
「なるほど。」
大変、とばかりに小狼を引き付けるさくら。もし手を離したら小狼がケガをしかねない。
ぐいっ、と自分の方に引き寄せ、小狼をキヤッチするさくら、ふぅ、よかった。
そしてふと、小狼の顔を見てさくらが言う。
「そういえば、さっきはありがとう。」
「え、何だ?」
「李君が『さくら』って応援してくれたから、チェンジのカードを使うのを思いついたんだよ。
初めて『さくら』って呼ばれたハズなのに、なんか聞き覚えがあるなぁ、って。
ケロちゃんが入った時にそう呼ばれてたからだったんだけど。」
一呼吸おいて続けるさくら。

「ねぇ、これからも私のこと『さくら』って呼んで欲しいな、私も『小狼君』って呼んでいい?」
至近距離での笑顔の提案に思わず赤面する小狼、目を背けて言う。
「す、好きにしろよ・・・。」
で、その目を背けたすぐ先に、ケロベロス、ビデオを構えた知世、瑞樹先生が居並んでニヤニヤしている。
え?ほぇ?という顔でふたりは3人を見る、なんで見られてる?もう一度自分たちを見て、状況を確認する。

14 :
さくらはしっかりと、小狼をお姫様だっこしていた。

「う、うわあぁぁっ!は、早く降ろせっ!」
「ほえっ!は、はいっ!」
パニックで手を放すさくら、当然小狼の体は地面にどさっ、と落ちる。
「ほえぇぇぇっ、ご、ごめんなさいっ!!」
「いたたたた・・・いきなり放す奴があるかっ!」
「いい絵が撮れましたわ。」
二人の苦笑いの横で、知世が満面の笑みを浮かべている。
「そのビデオ、ダビングして小僧の実家に送ったれや。」
「まぁ、それは名案ですわ♪」
「や、やめろ!それ寄こせっ!」
こんなのをもし苺鈴が見たらまた事態がややこしくなる、慌てて知世を追いかけようとする小狼を、
背後からはがい締めにするケロ。
それを笑顔で見ているさくら、その横に瑞樹先生が並ぶ。

「どう、クロウとは会えた?」
「はいっ!」

15 :
まぁこんな感じで、好き勝手にやっちゃってください。
小狼×知世スレの人見ても、この板にSS書ける人多そうだし・・・

16 :
ssスレ待ってました!頼むよみんな!

17 :
何の情報もなくいつの間にかさくらがひいおじいちゃんの事を知っていて、これに関して何の説明もなかったので、致し方なく補完する。
尚、時系列は「封印されたカード」後の冬休み頃とする。

友枝町 ――ジャパン――

【プロローグ】

さくら「お父さん!ひいおじいさんがまた来てるって本当!?」

藤孝「ええ、本当ですよ。桃矢くんから聞いたんですか?さくらさんへ今伝えようと思ってたんですが園美くんのところへ休暇を取るそうですよ。」

さくら「お兄ちゃんは『もうあってきたからさくらも今のうちに挨拶してこい』だって」

藤孝「そうでしたか。では僕と2人でいっしょに
RRRRR…

藤孝「あ、もしもし?木之本で…えっ?ア?見つかったって?はい!行きます!」

藤孝「ごめんね。さくらさん、予定が入っちゃったよ。 一人で行くことになるけど…大丈夫?」

さくら「うん!大丈夫だよ!前にも知世ちゃんち行ったことあるし それにお父さんお仕事頑張ってね!」


続きます

18 :
【PART1 知世ちゃんのうちへ遊びに行こう】

大道寺宅 ーー10:09amーー

さくら「ふー…やっとついた」
ガバァッ
ケロ「グベェッ!ブハァーっ!あ゛ーっさくらのバッグ、いつ入ってもしんどうてキツいわー。」

さくら「もうちょっとの辛抱だからわたしが『いい』というまでおとなしくしてよ!」

ケロ「わーったわーった大人しくしますわさくらさまー」

ケロ(知世んちの菓子は安モンつこうとらへんからなー僅かな贅沢やで)
ピンポーン
知世「あの押し具合は!…さくらちゃんですわ…///」

園美「やだ怖い」

19 :
【PART2 あの時ー再演ー】

シアタールーム ーー11:45amーー
ズドーンダダダダダダキカンシテオチャニシヨウモウアトモドリハデキナインダゾテキガナナブニミドリガサンブダアサノヤキダマハカクベツダホンドノタメソコクノタメカマワンイッタイゴデステンハワレワレヲミハナシタオワッタ
オーディオ機器《…あなたにわたしのこの想いを伝えれば良かった……》

一同「「「「(終わった…)」」」」

知世「いつ見てもこのドレスのさくらちゃんは素敵ですわー!特にこのなだらかな曲線のさくらちゃんの脚を生かして正解でしたわね。」

園美「ガラス細工のように素敵よーさくらちゃん とくに脚が」

ケロ「(やっぱさくらの綺麗なトコは脚しか無いな)」

さくら「(みんな脚の事ばっかり…わたしの脚そんなにいいのかな?)」

園美「それにしてもあの時は大変だったわよねーみーんな失神してたしビデオカメラ等の電子機器が何故か一時停止していたもの。あぁぁあ゛その時その瞬間のさくらちゃんが収められなかったと思うと……」グスン

知世「気を落とさないで下さいな。あのときみんなで手伝っておかげで初めて知り合えてお互い交流も深まったことですし、再演時では緊張感なくスムーズに演技できた方もいらっしゃいますので」

さくら「深まった…かぁ//」

園美「あら?さくらちゃん顔が赤いわよ?」

さくら「別に…無いです…///」

園美「(いやまさか!!あの坊やに!?いやそんなハズは無い!深く考えちゃ駄目よ園美!別にボーイフレンドが出来たわけじゃ…いやボーイフレンドを作ること事態が悪く…
イヤイヤイヤあの坊やに さくら「そうそう、ここにひいおじいさんがいると、で、挨拶しようと来たんですけれど」

園美「へ?」

20 :
           _,,;;-ー''''''''''ー-;:;,,_
        _.;-''"  "''´`´''"´ノiノi"''-、
      _,;;"/´           "''ミ;: ヽ    ここは、「庶民の王者」池田大作先生を称えるスレです。
     /;ミ"取りますノーベル平和賞 'iミ::"、
.    /::::ゝ.   ... .. .    ..      .i;; ::::'、  お約束
   ,;' :::::'l    ,, ... :   , :'' ..    i:::::::;;;;:l
   .l;;;;:::::ミ  ,,;=ニニニ彡  ミニニニニ=;、  ヽ::::::l    一、このスレを見つけたら、age なければならない
   .|;;:::r'"  __-‐─‐-、 = ,rー───;;、  i::::_i   一、先生をケナしたり暴行したら即刻死刑
   i;;;;i━r'"      i━ |       .|━ノ´i   一、このスレでの自慰・脱糞・放尿・放屁行為を一切禁ずる
   i ;; |   ,;'´●ヽ |  :l ,;´●`;、 .l ::lヽl   一、いうまでもなく陰部露出、強姦、変態痴漢行為、カマ掘り、口淫手淫等下品行為も禁止じゃ、ボケ!!
   l  :: .'、 ..´  ̄' ノ:  ゝ、 ̄____ノ  ::l l   一、このスレはお下劣ネタスレでも珍種スレでもない!!
   'i :::i ` ── '´ノ::   '';;、      ::ゝ:|   一、アトミックパンチとかクソAA貼るカスは即時銃殺刑に処す
    .i、 :;i ::  :'   '、;;、__,,.;;;.,ノ ::    .. ..:::: (  前スレ
     |:::i :::.. ,;    ; ;      ..:::: :' ::::::.ノ  【常時age】庶民の王者・最敬・池田大作先生スレ41
     l::::i ' ';; ヽ  ,ィ;ニニニニニ;;,  ::::''   :::::|   http://egg.2ch.sc/test/read.cgi/koumei/1536220134/l50
     '、.ヽ:  :: ; ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;;ノ    :::ノ::::/
   _,,,,_ヽ": \      ̄ ̄ ̄: ;   ./;;;;/ ̄゛'''''''''''''
,:-'''''::::::/::: '-、_ 、 ゝ: : : ..___,,, . ノ : ::/:::::::::::::::::::::::::::::
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:::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::`'-;;、::::    : : : : /  ヽ:::::::_:::::::::::::::::

21 :
            ↓ドトールコーヒー

      `ヽ::::`::.i_,. - ‐ ´::::::::::::::::::` ‐ 、_ 
        ゞ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
      /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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   .!:::::::::::::::::::::::::::/\:::::::ヽ\::::::::::::::ヽ\:::::::::::∧::i
   |:::::::::::::::::::::::::/   ヽ_.>‐‐ - 、 ζ´ ~,`ヽ、丿.∨
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   |:::::::::::::::::::::::|   /_  _ , .イ ( _ _ ,イ          ``フ
   'i:::::::::::::::::::::::i          ハ             /
    y:::::::::::::::::::::i             ‖             /        _
   (  V   \| ──.     ||          /       _/´  ヽ
     ト       ──.       |.|       /        │  御題目あげると願いが叶うんだじぇ
      `丶 __     /.       | |     /             ̄ヽ   ノ
          \         | |    /               ` ̄
           \        U   \∩
             `丶 _           \つ
                `  ー───- イ

      カルト.   カルト.
   三┏( ∵)┛┏( ∵)┛        三┏( 'A`)┛
   三  ┛┓   ┛┓         三  ┛┓ 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

22 :
     / ̄ ̄ ̄\
   /ノ / ̄ ̄ ̄\
  /ノ / /        ヽ  ←くそカス丹下
  | /  | __ /| | |__  |
  | |   LL/ |__LハL |
  \L/ (・ヽ /・) V
  /(リ  ⌒  ●●⌒ ) <キンR先生を、StaP細胞で、ニッケンとアサイより長生きさせますニダ
  | 0|     __   ノ  <ウリをS価校に入れて博士論文書かせてくださいニダ
  |   \   ヽ_ノ /ノ  <長寿ギネス記録を目指しますニダ・・・で、センセーって何処にいるニダ?  
  ノ   /\__ノ |
 ((  / | V Y V| V
  )ノ |  |___| |

    /::::/       \  ←仏罰、選挙権不明&行方不明
    |::::::ミ   元法華講  |
    ゙、:::|    ,_=≡ 、´ ,=≡|
   /:::ヽ-─-||..::+;;;| ̄|(;;;;.;|  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ::::<∂ u ヽ二/ ヽニ/| < ・・アイゴー、「財務」と「性狂」だけして、ウリのことはもう忘れて欲しいニダー!!
    ヽ_|     ハ− - ハヽ  \_______マハーロ、バカヤロー、キンR!!
    |  ヽu ゝ _/\ノヽノ|            
    ヽ  ヽ  ィ'\しw/ノ.ノ
     \_ \___ i/

23 :
     / ̄ ̄ ̄\
   /ノ / ̄ ̄ ̄\
  /ノ / /        ヽ  ←く創カス丹下桜
  | /  | __ /| | |__  |
  | |   LL/ |__LハL |
  \L/ (・ヽ /・) V
  /(リ  ⌒  ●●⌒ ) <キンR先生を、萌え声で、井上喜久子より長生きさせますニダ
  | 0|     __   ノ  <ウリをS価校に入れて木之本桜ちゃんの声やらせてくださいニダ
  |   \   ヽ_ノ /ノ  <アイドル声優ギネス記録を目指しますニダ・・・で、センセーって何処にいるニダ?  
  ノ   /\__ノ |
 ((  / | V Y V| V
  )ノ |  |___| |

    /::::/       \  ←仏罰、選挙権不明&行方不明
    |::::::ミ   元法華講  |
    ゙、:::|    ,_=≡ 、´ ,=≡|
   /:::ヽ-─-||..::+;;;| ̄|(;;;;.;|  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ::::<∂ u ヽ二/ ヽニ/| < ・・アイゴー、「財務」と「性狂」だけして、ウリのことはもう忘れて欲しいニダー!!
    ヽ_|     ハ− - ハヽ  \_______マハーロ、バカヤロー、キンR!!
    |  ヽu ゝ _/\ノヽノ|            
    ヽ  ヽ  ィ'\しw/ノ.ノ
     \_ \___ i/

24 :
クリアカード編の補完が途中ですが、
<月亮><星辰>の二本を投稿します

初めて書いたccsのssが<月亮>でした
なるべく同じ言葉を使いながら
「決意」「迷い」「過去」「未来」「訣別」「再会」
そういった対比を織り込んで出来上がったのが対となる<星辰>

さくらが小狼に思いを告げなかったらどうなっていただろうと思ったのがきっかけで生まれた作品です
個人的な考えですが、たとえあの時さくらが空港(orバス停)に駆けつけなかったとしても、二人はまたいつかどこかで出会った気がします
そしてその「鍵」はさくらが握っているような・・・

ttps://www.youtube.com/watch?v=5Ram_QlVgZI
<月亮>は2年ほど前に↑の曲を聴きながら書き上げた話なので、物語の起伏が曲の緩急となんとなくリンクしています。
少し尺が余りますが、BGMがわりにお聴きいただくと一興かもしれません。

25 :
自室の窓辺に立って、小狼は香港の夜景を見下ろしていた。
ヴィクトリア・ピークにある李邸からは香港の夜景がよく見える。
彼の部屋も例外ではなく、眼下には満月に照らされた百万ドルの夜景が広がっている。
初めて魔力で火を起こすことができた日、父上が亡くなった日、クロウカードを集めるため日本へ行くと決まった日・・・。
そんな人生の節目節目に、彼はいつも自室の窓辺に立って香港の夜を眺めたものだった。
今や部屋はすっかり整理されて、小さなテーブルの上に一冊のアルバムが置かれているだけである。

小狼はちらとアルバムに目をやった。
それは、小狼が13になる年の春に日本の友人から送られて来たものだった。

「李君へ

先日私共も小学校を卒業いたしました
記念にと思いお送りいたします
どうぞお受け取りください

         大道寺知世」

添えられたカードの主は、聡い人だった。彼女は気がついていたのだろう。香港へ戻った自分が、二度と日本を訪れることがないということに。
香港に帰ってきてからの日々は以前とは比べものにならない程忙しかった。煩雑な毎日に追われて、日本でのことは遠い記憶の彼方に霞んでいく。
それを惜しいとも悲しいとも思う余裕もなかった。あれは、儚い幻のようなもの。下手な感傷に浸って今の生活に支障をきたすよりはずっといいとさえ思った。
小狼の前には、いつも李家の当主となるべき道が布されていた。それは、「何か」に定められたものではあるが、自分が望んだものでもあった。だから、辛くはなかった。
ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、これとは違う道を夢見たことがなかったとはいえない。
李家のものではない「小狼」。当主としての責を負わない「小狼」。ただ一人の「少年」としての「小狼」であったならば、この生をどのように生きてみただろう。
日本へ渡ると決まった時、これまで感じたことのない胸の高鳴りを感じた。当時は、重要な任務を任されたという緊張や、己の力を試す機会を得たという喜びからくるものだと思った。
しかし今思えば、この訪日が、運命が与えた人生の「遊び」のようなもので、大きな潮流の中に絡め取られた人生にいっときだけ許されたモラトリアムであるということを予感していたからかもしれない。

26 :
こんな月の夜にはクロウカードや不思議な出来事を追って夜の街を駆け抜けたことが思い出される。
今の小狼にはもう手が届かないけれど、あのときだけは、あの日々だけは確かに何人(なんぴと)にも縛られない「ただの」小狼として生きていた。


一度だけ、アルバムをめくったことがある。そこにある顔はどれも少しだけ記憶より大人びていて、自分が去った後も時は着実に流れたのだ、と思わされた。
己の記憶を確かめるように写真をなぞっていくうち、アルバムは最後のクラスの集合写真のページになった。
不意に、自分の名前を呼ぶ鈴のような声が蘇った。


『小狼君!』


他のクラスメイトに混じって、在りし日の記憶のままの「彼女」が笑っていた。
少し泣き虫で。
でもやると決めたら一生懸命で。
いつも一緒に山崎の嘘に騙されていた。
「彼女」に出会って初めて人を好きになるということを知った。心に広がる甘いような苦いような、切ない想いを何度噛み締めたことだろう。
返事も聞かずに帰って来てしまったけれど、追い立てられるような香港での生活の中でも、この「想い」が曇ることはただの一度もなかった。
「彼女」と同じ写真に写るまだ幼さの残る自分の姿を見て泣きたいような笑いたいような気持ちになった。
何者にも縛られないただの「小狼」として生きられたことは、なんと幸せだったことか。
たとえこれからの人生が「彼女」のものと交差することがないとしても、一人の「少年」として生き、自分が思うがままに「彼女」を愛することができたのだから。
彼女はもう、自分のことを忘れてしまっただろうか。
彼女が忘れてしまっていても、俺は忘れない。それでいい。それで、十分だ。

27 :
「李小狼」として生きるためには、切り捨てなければならないものがあった。乗り越えなければならないものもあった。
李家の次期当主として認められた今もなお、多くのものを切り捨て踏み越えてゆく途中にある。
明日からは、次期当主として本格的な活動に入る。それに伴って、よりふさわしい部屋へ移ることになっていた。子供時代を過ごしたこの部屋とも今夜でお別れだ。
思ったより、幸せな日々だったと思う。
この世で最も尊い「想い」はもう見つけた。そして、その「想い」を宿した思い出は胸の中(ここ)に在る。
だから、何があっても生きてゆける。


「さくら―――」
小狼は春に咲く花の名前をそっと口にした。
そして、何千何万回と繰り返した言葉を万感の思いを込めて唱えた。

「―――火神招来ッ」

ゴォッ、とひとかたならない炎が上がり、テーブルの上のアルバムが火に包まれた。
鳶色の髪が揺れる。
狼の瞳でまっすぐ前を見つめた。
かつての少年は歩き始める。己の選んだ道を生きるために。

その先には、何が待っているのだろう。

28 :
今日は友枝小学校の同窓会だ。
懐かしい顔ぶれが一堂に会するということで、さくらはワクワクしながら会場へやって来た。
いつもより少しだけおしゃれに気を遣って、でも心は小学生の頃に戻って。みんな元気かな、どんな風になっているだろう。
きっと、とても素敵になっているんだろうね。そんな話をしながら、知世と二人連れ立ってふと見上げた空には、大きな満月がかかっていた。

「千春ちゃん、奈緒子ちゃん、利佳ちゃん!」
人混みの中に、昔の面影を残した友人たちの姿があった。さくらの声に旧友の弾けんばかりの笑顔が向けられる。
「さくらちゃん!元気にしてた?」
「うん、この通り元気だよ。みんなも元気にしてた?」
「元気元気。二人は相変わらず仲良しだね〜」
「ふふ、ありがとう」
「利佳ちゃんはまた一段とお綺麗になりましたわね」
「そ、そんなことないよ。知世ちゃんもお元気そうね」
「はい。おかげさまで」
「同窓会っていうのはね〜!」
「山崎くん!」
変わったようで何も変わらない、そんな友の様子になんともいえない嬉しさが込み上げて、一同の顔に笑顔の花が咲いた。

少し大人になるということは、子供の頃とは比べものにならない程忙しい日々を過ごすということでもあった。
煩雑な毎日に追われて、カードキャプターとして奮闘していたことは遠い記憶の彼方に霞んでいく。
魔法を駆使する機会がなくても、それを惜しいとも悲しいとも思わなかった。ケロちゃんはそばにいてくれるし、ユエさんも雪兎さんとして元気にしている。
カードさんたちとはいつでもお話できるし、魔法が使えなくても友枝町にまた事件が起こるよりはずっといい。
ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、これでいいのかと自問することがあった。
カードキャプターとして責務を全うしようと格闘した「さくら」。不思議な出来事からこの街や友達を守ろうとした「さくら」。
自分が秘めている力を信じてひた走った「さくら」は、今の自分よりも「さくら」らしかったのではないか。
社会の常識や大人の分別を身につけて、世の中にうまくなじんできたけれど、それが本当に自分が望んだ生き方だったのかがわからない。
クロウさんは魔力のことなど気にせず自分らしく生きればいいといってくれたけれど、果たして今の生き方がそうなのだろうか。

29 :
さくらは窓の外に目をやった。
こんな月の夜にはクロウカードや不思議な出来事を追って夜の街を駆け抜けたことが思い出される。
今のさくらが手を伸ばすことはもうないけれど、あのときは、あの日々は確かに自分が思うままの「さくら」として生きていた。

何年かぶりの再会に話が弾む。卒業してからの進路のこと。旧友の消息・・・。話したいことは後から後から湧いてくる。
尽きない話題に少し話し疲れた頃、千春がぽん、と手を打った。
「そうそう、私、今日卒業アルバム持ってきたの!」
「え、見たーい!」
「私も!」
ガサゴソとカバンの中から重厚な表紙のアルバムを取り出すと、千春はそれを見やすいようにテーブルの上に置いた。
広げられたアルバムを覗き込む。まだあどけない自分達の姿がそこにあった。
さくらは隣の知世に囁きかけた。
「みんなまだ小さいね」
「そうですわね」
「こんな風に写真に残ってるって、なんか嬉しいかも」
「ええ。ただ、私の作ったお洋服を着たさくらちゃんが写っていないのだけが残念ですわ」
「知世ちゃん・・・」
相変わらずの知世に脱力しながらも、さくらはめくられていくアルバムを熱心に見つめた。
運動会、学芸会、体験学習・・・。思い出の一コマが鮮明に記録されていて、忘れかけていた記憶さえ蘇って来る。
遠い昔のことなのに、まるでつい最近のことのように感じられるのだから不思議なものだ。
己の記憶を確かめるように写真をなぞっていくうち、アルバムは最後のクラスの集合写真のページになった。
「あ」
千春が声をあげた。
「李くんだ」
一枚の写真にみんなの視線が注がれる。そこには、他のクラスメイトに混じって、ひときわ意志の強そうな瞳の少年が写っていた。
「ほんとだ。集合写真、写ってたんだね」
奈緒子がそう言うのも無理はない。香港から来たという彼は、わずか一年ほどを友枝で過ごし、ある日突然故郷へ帰ってしまったのだ。
十分な別れもないまま、その消息は途絶えてしまった。

30 :
「私、李くんのこと、少し苦手だったな。いつも怖い顔してたし」
利佳が少し困ったような笑みを浮かべて言った。
「でも、本当はとてもお優しい方でしたのよ」
慈しむような、優しさに満ちた表情で知世が言う。
「僕の噓にもよく付き合ってくれたしね」
山崎の声には、少し寂しさがにじんでいた。
「うん・・・」
知世がそっとさくらの方を窺い見る。伏し目がちに答えたさくらは、遠い日の出来事に思いを馳せていた。


『俺・・・、お前のことが好きだ』


突然の告白だった。
クロウカードを争って、同じ人に想いを寄せて。不思議な出来事が起こった時はいつも助けてくれた。それがどれだけ支えになっていただろう。
初めて自分への好意を打ち明けてくれた人だったのに、何も返せないまま、彼は帰ってしまった。
あれから何人もの人に好意を向けられたけれど、あんなも鮮烈であたたかな想いを向けられたのは後にも先にもただ一人だけだった。
「彼」と同じ写真に写るまだ幼さの残る自分の姿を見て泣きたいような笑いたいような気持ちになった。
何者にも縛られないただの「さくら」として生きられたことは、なんと幸せだったことか。
たとえこれからの人生が「彼」のものと交差することがないとしても、自分が思うままの「少女」として生き、世界にただ一人の「少年」に愛してもらうことができたのだから。
彼はもう、自分のことを忘れてしまっただろうか。
あなたが忘れてしまっていても、私は覚えているよ。それで十分。それで、いいよね・・・?

31 :
「木之本桜」として生きるために、幾多の選択を繰り返してきた。選んだものがあり、同時に、選びとらなかったものもある。
「カードキャプター」ととして生きる必要がなくなった今だからこそ、己が進むべき道は自ら見つけ出さなければならない。
この先に何があるかはわからない。自分の選択に後悔することもあるかもしれない。しかし、今のさくらには確信があった。
思っているより、幸せな日々が待っている、と。
この世で最も尊い「想い」はもうこの手にあった。そして、その「想い」を宿した思い出は胸の中(ここ)に在る。
だから、何があっても生きてゆける。


異国から来た少年。鳶色の髪と狼の瞳を持った人。
今、あなたの名前を呼ばなければまた後悔するかな。

「―――小狼くん」

さくらの唇からこぼれ落ちた名前を聞いて知世が微笑んだ。
胸元の鍵が揺れる。
翡翠色の瞳はまっすぐ前を見つめた。
かつての少女は歩き始める。己が選ぶ道を生きるために。

その先には、何が待っているのだろう。

32 :
>>24-31
gjです、何気に利佳ちゃんが李くん苦手って
言ってるのが良いですね。
ソードを封印したとき一瞬本気で剣を向けられた間柄ですし。

しかし小狼なにも燃やさなくても、、、福本漫画の黒社会にでもデビューすんのかw

33 :
良スレ発見

34 :
保守

35 :
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%A0+%E3%81%B2%E3%82%8D%E3%82%86%E3%81%8D

36 :
保守

37 :
小狼 さくらっ!///かわいいぞ!もう来る! なか…に射出すぞ!///

ドプドピュリュリュリュドップゥ〜

小狼 っ…///ッっ…///ハァ///フゥ☆きもちよかった…ぞ///…さくら…///

さくら うへぇぇ…小狼くん出しすぎだよぉ〜…

一カ月くらい前から小狼君は積極的だ。まるで獣化したセックスマシーンだ。
そもそもの発端は小狼君とのセックスのマンネリ化にある。
最初は確かに二人共恥ずかしがりながらそれはとても燃え上がったものだが、お互いの体を徐々に知り合っていくうちに物足りなさに気づくのだ。
それを見かねた知世ちゃんが

知世 私にいい考えがありますわ!!!!!このセックスコスチュームを着ていただけば精力!淫力爆発の毎晩性夜のholynight!!!ですわ!
私はいつものように隠れて撮影しますから

と言って、わたしと小狼君にやけに際どい衣装の一カ月分をダンボールに詰めてプレゼントした。

さくら これ不要在庫の押し付けなんじゃ…

つづく

38 :
つづき

小狼 さくら///中々似合ってる///
さくら えーと背中に貼り付けてある紙には…

紙 この衣装はさくらちゃんがお選びになったんでしょうか?大胆ですわー!これは魔法騎士をイメージした衣装ですわ

さくら ハイレグ…すごく食い込んでる…//
ピチピチパッツーン
小狼 さくら…//その…//股布の所に思いっきりおれの…//チンチン…こすりつけていいか?
さくら え!ちょっ…///ほええぇぇぇぇ!!///
ヌッチャヌッチャヌッチャ
小狼 この素材…//気持ちいい…///あっ…
ドププ

それからというもの二人は絶えることなく燃え上がった。なおこの話について執事と赤ちゃんプレイ中の詩之本秋穂氏はー。

秋穂 あぶあぶ

と言った。

おわり

39 :
>>37-38
>>1
>ただし来た人が引くようなエログロは勘弁な。

40 :
 オレンジ色の世界−

 幾人もの人が私を見てる、笑ってる。
まるで影絵のような、人の形をした黒いシルエット。
目も、鼻も見えないけど、口元だけが三日月のように笑ってる。
数え切れない程の影が、私に笑顔を向けている。周囲を埋め尽くすほどの人数で、
群れを成すほどの大勢の人影が、私に向かって笑顔を向ける。

 その、地平の遥か向こうに、一本の線が伸びている、下から上に。
あれは、木?ううん、柱・・・だ。根元で大勢の人の影がその柱を垂直に押さえてる。
笑顔をこちらに向けたまま。

 柱の一番上、はるか高い所に、横に一本の短い線がある。柱の先の先、
そこだけがまるで、縦横の線が交わって、十字架みたいになってる・・・。

 目を凝らしてみる。そう、美術の授業で見た絵には、あそこに人が縛られていた。
目を凝らして見る。いた、絵と同じ縛られ方で、絵とは違う感じの人が、そこにいる。

 男の子、知ってる子。影のある表情、華奢だけど体幹の通ってる、物事にまっすぐな・・・

 −私の 大好きな人−

41 :
「さくらぁっ!起きんかーーーいっ!!」
「はっ!」
耳元の大声に、がばぁっ!と布団から跳ね起きる。
いきなり変わった世界に思考が追い付かず、きょろきょろと周囲を見渡す。
ここは・・・私の部屋?ベッドの上・・・。

「ほ。ほえぇぇぇっ!!ケロちゃん、いま何時?」
「目覚ましはとっくに鳴り疲れて愛想つかしとるわーいっ!完っ璧に遅刻やでぇっ!」
「ええええーっ!」
目覚ましをひっつかんで時計を凝視する、その時計が表示しているのは信じたくない時間だった。
さーっ、と目の前が暗くなるさくら。
父は発掘旅行で留守、兄は大学の研修で泊まり、さくら一人の朝ゆえの大失態。
中学生活序盤から3ヵ年皆勤賞の消滅が確定しそうだった。

 ふとんから跳ね起き、バジャマを速攻脱いで制服を乱暴に羽織る、朝食の時間なんてない。
いってきます、とケロに告げると、半泣き顔で階段を駆け降り、そのまま玄関に飛び出す。
走り出してすぐに急ブレーキ、玄関にUターンして下駄箱の上にあるカギを取り、外に出て施錠する、
今度こそ全力疾走で学校に突撃するさくら、それを窓から見下ろし、ケロが嘆く。
「ホンマ、中学生になっても変わらんなぁ、さくらは。」
手を水平に広げ、ヤレヤレと首を振る。

42 :
「お、おはよう・・・」
青息吐息で教室に駆け込み、机に手を付き挨拶をする。
「さくらちゃん、おはようございます。」
「もう早くは無いけどね〜」
知世のあいさつに続き、友人の千春が現実を告げる。
「でも、幸運でしたわね、さくらさん。」
「ほえ?」
秋穂の言葉の意味が分からず、顔を上げる。教室の黒板に書かれた大きな文字。

『自習』

「ほ、ほぇ〜、助かったよぉ〜」
校門をくぐった時点で始業のチャイムは鳴っていた、教室に先生がいないことに違和感はあったが
そういうコトだったのか、なんとか皆勤賞の可能性は繋いだようだ。
 着席し、とりあえず2時間目の予習を始める。ホントに良かった、と思う。
2つの意味で。

 遅刻が確定しそうになった時、さくらの脳裏に「魔法を使って間に合わせる」という考えが
確かに頭をちらついた。フライト(飛翔)とルシッド(透過)を使えば、誰にも見られる事無く
ひとっとびで学校に着けただろう。
でも、とさくらは思う。魔法は確かに便利だけど、だからといって自分の都合で
使っていい物ではないとも思っていた。寝坊したのは自分の責任、それを魔法で帳消しにするのは
ズルをしているような気がしたのだ。

 特に、さくらの好きなあの人なら、きっとそう思うだろうから。

あれ?そういえば今朝、彼の、小狼君の夢を見たような気が・・・


カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

プロローグ、終わりの始まりの夢

43 :
ごめんな。

44 :
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第1話 さくらとチアとマーチング

「さてみなさん、中間テストも終わり、いよいよ夏本番!
 私たちチアリーディング部の活動もこれからが本番です。気合を入れてね!」
「「はいっ!」」
放課後のクラブ活動、運動場の一室にて先生の激を受けているのは、さくらの所属する
チアリーディング部。
夏に向けて、各運動部の大会が盛んになるこの時期、応援団としてのチア部も
応援活動本番の季節である。
 しかし、この友枝中のチア部にとっては、もうひとつの大きなイベントが控えている。
いわゆる「応援」ではなく「主役」としての活躍の場所が。

「8月の『なでしこ祭』、ウチの部は最終日の夜の最終公演が決定しました!」
その先生の発表に、チア部全員から黄色い歓声が上がる。
「うっそー、ファイナルステージで?」
「どうしよう、今から緊張してきたー」

 友枝中チア部はこの辺りではかなり有名だ。そもそもチア部がある中学はこの辺りでは多くなく
そんな中での華やかな演技は毎年『なでしこ祭』を盛り上げている。
昨年のトリこそ友枝小の演劇に譲りはしたが、実質な内容では演目での最高評価を受けていた、
最後の演劇が地震による中止という原因もあったにせよ。

 一息置いて、皆が落ち着いてからさらに付け加える先生。
「で、実は今年に関してはもうひとつ、なでしこ祭にてチア部の出番があります。」
意外な先生の言葉に部員全員が耳を傾ける。なにかの手伝いか、ボランティアの類か・・・
「じゃあ、米田先生からどうぞ。」
いつのまにか顧問の傍らにいたのは、音楽教師であり吹奏楽部の顧問である米田先生、
恰幅のいいオバサン体形に、にこやかな表情とベートーベンのようなパーマヘアの女性。
丸メガネをくいっ、と上げると、前に出て話す。

45 :
「えー、一年生の皆さんには、吹奏楽部が出るマーチングのお手伝いをしてもらいます、
 よろしくね。」
「「ええっ!?」」
いきなりの言葉に驚きを隠せないチア部一年生。というか私たちが?と顔を見合わせる。

「チアのステージがファイナルなら、マーチングはオープニングセレモニーよ、
でもウチの部はそんなに人数いないから、ガードやドラムメジャーに割ける人がいないのよ・・・
それを先生に相談したら、今年のチアの一年は粒ぞろいって言うじゃない?
それでぜひ皆さんに踊りをお願いしたくてねぇ。」

 皆の注目が特定の二人に集まる。今年の一年生の注目株、木ノ本さくらと三原千春。
小学校からチア部だった二人の実力は折り紙付きで、周りの一年生のよき手本になっていた。
視線を感じてか、千春に話しかけるさくら。
「ね、ねぇ千春ちゃん、マーチングって、何?」

 周囲が一斉にずっこける。チアをやっててマーチングを知らないとは珍しい。
「鼓笛隊の行進みたいなアレよ、去年のなでしこ祭でもやってたでしょ?」
「え・・・そうなんですか?」
あきれる周囲に千春がフォローを入れる。
「さくらちゃんは去年、劇の主役だったものねぇ、なでしこ祭楽しむ余裕も無かったでしょ。」
「ええーっ!あのお姫様って木ノ本さんだったの?」
「ウッソー、すごぉい。緊張しないのって羨ましい!」
「そ、そんなこと無いよ、緊張したよ、すっごく。」
 米田先生がぱんぱんと手をたたき、皆を黙らせる。
「というわけだから、今日からチア部一年は吹奏楽部と合同練習よ、頼むわね。」

46 :
「へぇ、さくらさん達はマーチングに出るんですか、それは楽しみですね。」
夕食時、父の藤隆がにこやかに話す。
「うん、先頭でバトンを振るドラムメジャーか、真ん中で旗を振るカラーガードのどっちかで。
来週にはドラムメジャーのオーディションがあるの、それに合格したらその人がドラムメジャーで
他の人は全員カラーなんだって。
「それは頑張らないといけませんねぇ。」
にこやかに答える父とは対照的に、兄、桃矢は皮肉いっぱいに返す。
「そりゃ大変だな、万が一さくらがドラムメジャーやったら、公衆の面前でまた
バトンを頭にぶつける羽目になるなぁ・・・」
「お兄ちゃん!」
「あ、でも旗振りで周囲の見物人をなぎ倒すと、さらに厄介かなぁ」
「もーっ!本っ当に意地悪ばっかり!」
そんな兄妹のやりとりを見ながら、ふと藤隆が思い出す。
「そういえば、去年のなでしこ祭りのマーチング、確か・・・」
遠い目をして続きを語る。数秒後、木ノ本家にさくらのほぇぇ絶叫が響き渡るコトになる・・・

47 :
みんな見てるよ

48 :
同人誌出したら買う

49 :
>>47-48
どもです、お金を取るほどのものは書けませんがw

カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第2話 さくらと不思議なメトロノーム

 昼休み、いつものメンツのお弁当の最中、柳沢奈緒子は一枚のプリントを
眺めながら、しみじみと呟く。
「九州の仙空中学に四国の黒花小学校、関西のKUGハイスクール、北関東の社会人チームの
香芝に東北の仙台錦付属中・・・今年も全国の有名どころがうじゃうじゃだねぇ。」
「「はぁ〜」」
同時にため息をつくさくらと千春、奈緒子が見ているのは今年の『なでしこ祭』の
開幕マーチングパレード、その参加チームの一覧だ。

「そんなにすごいチームが来るのか?なでしこ祭に、わざわざ全国から。」
小狼の質問に知世が答える。
「ええ、ああいう『演奏系』のクラブは、発表の場をいつも探してますから、
 わたくしも小学校の合唱部時代から、結構あちこちに遠征してましたのよ。」
はー、という表情で秋穂が続ける。
「そんなチームのトップを切って、友枝中が演奏するんですか、大変ですねぇ。」

 2年前から始まったなでしこ祭のマーチング、初年度は地元の学校だけで
つつましく行われてきたが、噂を聞き付けた2年目、つまり去年から全国の有名チームが
多数参加する目玉イベントになってしまった。
おかげで昨年、友枝中吹奏楽部はそのレベルの差をまざまざと思い知らされる結果に
なってしまった。そこで今回、吹奏楽部は演奏に集中し、チア部に踊りを担当してもらうことで
少しでもレベルアップを果たそうと、今回の依頼となったのである。
 となれば、当然チア1年生、中でも先頭を進むドラムメジャー候補のさくらと千春が
相当なプレッシャーを感じるのもやむなき事態であろう。

50 :
「私としては好都合ですわ。今回コーラス部はチア部のひとつ前の出番ですから、
さくらちゃんがチア部で出場なら、その雄姿を撮影するは難しいですもの。
初日なら日程もかぶりませんから、思う存分さくらちゃんの雄姿を撮影できますわ♪」
「あはは・・・ぶれないね知世ちゃんは。」
冷や汗を流しながら答えるさくら。
「さくらちゃんが先頭を切ってバトンを振り颯爽と行進・・・想像しただけでドキドキですわ〜」

「はーい、それじゃ今日はここまで。各自本番のリズムをしっかりつかんでおいてね。」
今日の吹奏楽部との合同練習がようやく終わる、チア一年生の7人はそれぞれが『チューナー』
というメトロノーム機能を備えた電子機器を渡される。
とにかく暇さえあれば本番の演奏のリズムを体に染み込ませろ、ということだ。
ドラムメジャーは普通の演奏であればコンダクター(指揮者)の役割も果たす。
もしドラムメジャーがリズムを崩せば演奏全体がなだれをうって崩れる羽目になる、責任は重大だ。

「今のところは木ノ本さんと三原さんが一歩リードだけど、他のみんなも諦めずに
ガンガン追い込んでね、少しでもいいマーチングにしたいから。」
笑顔でプレッシャーをかける米田先生、元オペラ歌手だった彼女の声は優しくも魂に響く、
今や一年生全員がさくらたちと同じ光景とプレッシャーを感じていた。
「「はいっ!!」」
全員が元気な返事を返す。米田先生はよろしい、では解散と告げてその日は終了となった。

51 :
「はいあかん、ズレとるで〜」
チューナーを凝視していたケルベロスがさくらの動きにまったをかける。
「はう〜、難しいよぉ」
「1曲は5分くらいやろ、最初の1分でもう1拍子早くなっとるで。」
体内時計を演奏曲に合わせるための自主練、物事に積極的な性格のさくらは
どうしても自然にハイペースになってしまうようだ。
「どうする、もっかいいっとくか?」
「う、うん、頑張る!」
「ほないくでー、3・2・1・ハイ!」
「(いっちにぃさんしっ!いっちにぃさんしっ!!)」
心で数を数えながらリズムにあわせて腕を振るさくら。

ピッ・ピッ・ピッ・ピピピピピピッ・・
カッ・コッ・カッ・・・コッ・・・カッコッ・・・
チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク
そ〜れぇデワアスノおてん〜キデス・・・

「ほぇ?」
「おいいっ!いきなり乱れとるやないかーいっ!」
「じゃなくて、何このリズム・・・?」
「ああ?な、なんやこれぇっ!?」
部屋中から不規則に音がする、リズムを刻む。時計から、テレビから、スマホから
借りてきたチューナーからさえ不規則な音が乱れ飛ぶ。
「ケロちゃん、これ・・・」
「またなんかの気配を感じるんか?」
「うん!封印解除(レリーズ)!」
胸の鍵を杖に変え、構える。さくらにしか感じない魔力を、気配を頼りに探す。
「そこっ!主無きものよ、夢の杖のもと我の力となれ、固着(セキュア)!」
アタリを付けたのはいつもの目覚まし時計、それに夢の杖を打ち下ろす。
と、その時計の脇に一つの台形が現れる、中央には左右に触れる針。

52 :
「メトロノーム?それに・・・封印出来ない、どうして?」
「動きを止めんとアカン・・・わけでもなさそうやなぁ、動いてへんし。」
確かに、そのメトロノームは静止し、規則正しく針を動かしている。ただし音はしていない。
代わりに部屋中には先ほどからの不規則なメロディが躍っているが。
「あーもう、なんやコレ!気が変になりそうや!」

「待って!これって・・・」
さくらには既視感があった。普通の方法で封印が出来ないカード、過去にもあった。
例えば名前を当てる、力比べに勝つ、格闘技で勝利する。相手の得意な分野で勝つことにより
自分に従うカード達。そしてこのカードの得意なことは・・・
そのメトロノームは一定のリズムで左右に揺れる、そしてそのリズムはさくらの
良く知っているリズムだった。
「そうだ、これは、さっきまで私が練習していたマーチングの曲のリズム。」
周囲の音があまりにも不規則に響き渡るため気付きにくいが、そのテンポは確かに
さくらが練習していた曲のテンポだった。

 夢の杖を胸に当て、バトンの動きでメトロノームに合わせて杖を振る。
周囲の雑音に惑わされないように、メトロノームの針に動きを合わせる。
いっちにっさんしっ、いっちにっさんしっ、いっちにっさんしっ・・・

53 :
 さくらの動きが完全にメトロノームとシンクロする。もう乱れない、完全な一体感がある。
と、その時、メトロノームが輝き、光の粒子となってさくらの杖に吸い込まれていく。
そして1枚のカードとなって、さくらの目前にはらり、と落ちる。それを手にするさくら。
「律動(Rhythm『リズム』)・・・」
「なんや、周囲の音ものうなっとるで。そのカードの仕業だったんやなぁ。
「うん、どうもそうみたい。」
自分のカードのホルスターを取り、そのカードを仕舞うさくら。

「なんや、使わんのかさくら。それ使えば練習になるやろ。」
「うん、それはダメだよ、みんな魔法なしで練習してるんだから。」
さくらは先ほどの『律動』とのシンクロに少し怖さを覚えた。自分でも不思議なくらい
リズムに乗れたその動きは、練習の成果とはまた違う不自然さを感じた。
「それもそうやなぁ、魔法をそういうコトに使うのはたしかによーないわ。」
二人は偶然、同じカードのことを思い出していた。クロウ・カードだった頃のダッシュ(駆)。
魔法の使用は時として不公平を生む、それで不利益を被る人間がいるならそれを使うべきではない
そんなことを学ばせてくれたカードの事を。

「まぁ誰かさんは、ケーキが少ないとか言って魔法で小さくなってたけどね〜」
少しイジワルな表情でケロを見るさくら。ケロがぎくっ、と硬直する。
「ま、まぁ人生いろいろやでぇ〜。さ、寝よ寝よ。」
ごまかして布団に入るケロに続いてさくらも布団に入る。
まどろみの中でさくらは、ひとつの事を考えていた。

『魔法って、どの程度までなら使っていいんだろう・・・』
やがて眠りに落ちるさくら。そして夢の中、ひとつの言葉が頭に響く。


 −お前はもう、戻れない−

54 :
たしかいつかさくらもフライトで空を散歩したいなんて言ってなかったっけ?

55 :
>>37
>>38
セックスコスチュームとはなんぞやwwwww

56 :
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第3話 さくらと千春とオーディション

「ふぅ・・・」
借り住まいのマンションの一室、明かりが消された部屋でひとつ息をつく少年、李小狼。
扉は閉ざされ、カーテンも閉められ、その部屋に明かりは無い。
ただ、足元の魔法陣だけが青く輝き、少年の顔を下から照らしている。 
 そしてその周囲には、無数の精霊が漂っている。あるものは成人女性の姿、あるものは少女の姿、
あるいは小動物、剣や天秤などの道具など、多種多様な精霊たちが、小狼の周りに浮かび
彼から発せられる魔力を吸い込み、そして消えていく。

 さくらカード。小狼がさくらから奪ったカードの精霊、あの日から小狼には義務ができた。
この精霊たちが存在し続けるための魔力を供給し続けるという義務が。
そのため彼の放課後は、彼自身の魔力を高めるための儀式と精神集中に費やさなければならない、
今の彼に、普通の中学生の放課後は望むべくも無かった。

 高位の精霊、ライト(光)とダーク(闇)が、おつかれさま、と小狼を労い、そして消える。
最後に残った一体、ホープ(希望)が小狼に寄りかかり、額を小狼の胸に当てて感謝を示し、
すっと後ろに飛ぶ。タンスの上に置かれたくまのぬいぐるみに向かい、吸い込まれるようにその姿を消す。
消える魔法陣、小狼は部屋の電気をつけると、ようやく日常的なマンションの部屋がそこに戻った。

「お腹、空いたな・・・」
魔力のオーバーワークは肉体に過度の負担を強いる、かつての雪兎=ユエがそうであったように、
人として魔力の回復を図るなら、まず肉体を万全のコンディションにする必要がある。
よく食べ、よく眠る。今、彼にできることはそのくらいしかなかった。
以前は自炊が当たり前ではあったが、今はもう料理をするのもおっくうだ。余裕のある日は
まだ出来るが、今日はどうももう限界のようだ。
今夜はコンビニの食事でいだろう、汗を拭き、服を着替えて外に出る。

57 :
 帰り道、すっかり暗くなった夜道を歩く。と、彼の耳に聞きなれた声が漂ってくる、
知ってる声、いつも聞いてる男子の声が、少し離れた公園から聞こえてくる。これは・・・

「イチ・ニ・サン・シ、イチ・ニ・サン・シ、イチ・ニ・サン・シッ!」
公園にはふたつの人影があった。ひとりは声の主、クラスメイトの山崎貴史、
その声に合わせて踊っているのは、彼の幼馴染でさくらの友人の三原千春。
そういやマーチングのオーディションが近いはずだ、二人ともそれぞれのクラブの後
こんなところで練習してたのか、と感心する。こりゃさくらも大変だな、と。
 いつまでも覗き見るのはよくない、心の中でがんばれよ、とエールを送って去ろうとしたその時、
千春の言葉が小狼の足を止める。

−うん、今回は・・・負けたくないから、『さくらちゃん』に−

「それにしても、ずいぶん頑張るねぇ、今回は。」
天真爛漫な表情でタオルを渡す山崎に、千春は少しためらいながらこう返した。
「うん、今回は・・・負けたくないから、『さくらちゃん』に。」
え?という表情で固まる山崎。どちらかと言うと競争意識はあまりない性格だと思っていただけに。
そんな山崎を見つめて、千春はこう続ける。

「だって・・・そうでしょ?5年生の時の劇はさくらちゃんと小狼君が主役だった、それはいいわ。
でも6年の時、本当は山崎君が王子様のはずだったのに・・・直前でケガしちゃって、
また李君に主役を取られちゃったじゃない!」
しばし沈黙の後、千春は続ける。
「私・・・楽しみにしてた。山崎君の王子様、本当だよ!」
自分がお姫様役ならなお良かった、という贅沢は心に押し込める。
「だから、その分も私が頑張るの。今年は私が主役になって、マーチングの先頭を切って踊るわ、
去年の山崎君の分まで!」

58 :
 その後の二人の会話は聞いていない。多分山崎がおちゃらけた言動で千春を和ませ、
軽いツッコミの後、練習を再開したんだろう。だが、小狼にとってそんなことはどうでも良かった。
マンションまで逃げるように走り帰ると、部屋に入って弁当を放り出し、ベッドに突っ伏す。
胃の中に鉛を流し込まれたような自己嫌悪、不快感、焦燥感、そんな感情に押しつぶされて
食欲は完全に失せてしまっていた。

 去年のなでしこ祭の練習期間、さくらはナッシング(無)のカードの災いに巻き込まれた。
その災いは学校にまで及び、対処のため周囲にいた生徒たちをスリープ(眠)で眠らせた。
その際に山崎は左手を巻き込んで倒れ怪我をし、主役の座を断念せざるをえなかった。
そして交代要員として白羽の矢が立ったのが小狼だったのだ。

 あのときスリープを使ったのは他ならぬさくらだ、あくまで自分たちの都合で。
魔法の事が周囲にバレるのを恐れるあまり、クラスメイトにケガを負わせ、出るべき舞台に
出られなかった。そして今この時までその傷を心に残している。
そんな事実を突きつけられ、小狼の心は痛んだ。

−このことをもし、さくらが知ったら−



 オーディション当日。夕闇に染まる校舎、その3階で小狼はクラスメイトの柳沢奈緒子と日直の仕事に
追われていた。クラスの一人が他校とのトラブルを起こしたらしく、担任の先生が対応に当たる都合上
日直の二人は抜けた先生の穴埋めに奔走していた。
ようやく目途もつき、日誌を抱えて職員室を後にし、二人で廊下を歩く。
と、奈緒子がふと中庭を見て足を止める。
「あ、やってるやってる。ほら李君、オーディションやってるよ。」
「え、もう?」
中庭でチア部一年生の7人が行進し、バトンを振り、踊る。
その際を各部の先生と部長が真剣な表情で審査している。なるほど、オーディションの真っ最中のようだ。

59 :
「今から行ってももう間に合わないね〜、このさいここで見ていこうか。
「ああ。」
二人並んで窓から眼下の踊りを見る。素人の小狼から見ても、やはりさくらと千春の演技は
一歩抜けているのがよくわかる。
小狼は複雑だった。本来ならさくらを応援したいところだが、先日の一件もあって、今年は三原に、という
気持ちも強かった。なにより去年の件が魔法に起因しているだけに。

 踊りも終盤に差し掛かろうとした時、奈緒子が思わぬ言葉をよこす。
「こりゃあ李君、今年は残念だったねぇ。」
「・・・え?」
「千春ちゃんすこいわ、正直さくらちゃんと比べても完全にレベルが一段階上だよ。」
「そうなのか?」
柳沢も小学校時代はチア部所属だった。素人には分からない明確な差があるのだろう。
小狼は残念な気持ちと、ほっとした安心感を同時に胸に抱える。
「まぁ、しっかり慰めてあげなさい、それは李君の役目だから。」
そう言って日直の仕事に戻る、少し片づけをすれば仕事は終わる、二人ともチア部に合流できるだろう。

「それでは、今年のドラムメジャー担当を発表します。」
採点表を手に、米田先生が一年生と吹奏楽部員を前にして言う。
小狼や奈緒子、合唱部の知世や秋穂、ラクロス部の練習を終えた山崎もそこに駆け付け、発表を待つ。

「木ノ本さん、しっかり頼むわね。」

 周囲に起こる拍手、祝福。
そんな中、小狼と奈緒子だけは意外な表情を隠さなかった。思わず奈緒子を見る小狼。
彼女はうつむいたまま、小声で呟く。
(ウソ、でしょ・・・?私にはわからない中学生レベルでさくらちゃんが上回ってた?
でも、そんな・・・自信無くすなぁ・・・)
どうやら見当違いな評価だったらしい、小狼ははっ!として千春を探す、あれだけ頑張って
決意をもって臨んでいただけに、その落胆はさぞかし大きいに違いない・・・

60 :
「おめでとう、さくらちゃん。本番頑張ってね〜」
・・・え?
当の千春は、悔しさも残念さもみじんも見せず、にこやかにさくらを祝福していた。
それは表情を隠すというレベルではない。演技で決定的な失敗をして「仕方ない」という
感情の在り方でもない。まるであの夜の特訓も、断固たる決意も無かったかのように
わずかな暗い影も見せずにさくらに接している。
 母と、4人の姉と、元婚約者の苺鈴という女系家族に囲まれて、女性の表情を見る目には
自信があった。それだけに今の三原千春のその表情、態度には不思議な違和感があった。

 結局、さくらを祝福することも忘れ、小狼は帰宅する。
そして、日課の魔力供給を済ませ、今日もコンビニに夜食を買いに行く。
その帰り道、彼はまた二人を目にする。同じ場所、同じ時間、先日とは真逆の感情を抱いた彼女を。

「どうして!どうしてよ!!私は全力で、完璧にやったつもりだったのに・・・
また、またさくらちゃんに・・・」
千春が山崎に抱き着いて、人目もはばからずに泣き叫んでいる。山崎は優しい表情でその頭をなでる。
「私は、私たちは脇役だっていうの?どうしていつもさくらちゃんと李君ばっかり・・・
うわあぁぁぁぁん!」

 その光景を見て、小狼は背筋が凍り付くのを覚えた。そう、今のような態度こそ、あの時見た三原の
決意に相応の態度なのだ。なのに何故、さっきはさくらに対してああもにこやかでいられたのか・・・
帰り道、小狼は思う。何かがおかしい、三原のあの態度の違い、柳沢の評価と先生や部長の評価の差、
さくら、魔法、カードの精霊、色々な思いがぐるぐると小狼の頭を回り巡る。
 何か、この違和感を埋めるピースが何か足りない。ただ、嫌な予感だけが小狼の中で大きくなっていく。
マンションに到着し、玄関に入ろうとした小狼は、後ろからの声に呼び止められる。

61 :
「こんばんわ、君も夜食の買い出し?」
すらっとした華奢な体つき、薄紫色の髪型に眼鏡、その手には食料を山ほど抱えて微笑む青年。
−月代雪兎−
クロウ・カードの守護者、ユエの仮の姿であり、かつてさくらと小狼が惹かれた青年。
「どうしたの?難しい顔してるよ。」
「い、いえ・・・何も。」
「当ててみようか。多分、さくらちゃんのコトでしょ。」
「は、はい・・・」
クスクスと笑う雪兎。どうもこのヒトがいると調子が狂う、とため息をつく小狼。
この穏やかな人があのユエと同じ人とはどうしても思えない。あの最後の審判を戦った・・・

 小狼の全身に電撃が走った、気がした。最後のピースを見つけた、見つけてしまった。
ユエ、最後の審判、それを乗り越えたさくら、その先にある最後のピース、それはさくらの言葉。


 −私と『なかよし』になってほしいな−

62 :
月城、な。

63 :
wktk

64 :
>>62
スマヌ・・・スマヌ・・・
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第4話 さくらとロバの耳の王様

 クロウ・リードの手記より。

−この手紙を読んでいる貴方へ−
−この手紙を読んでいるということは、貴方も魔法が使えるのでしょう−
−ならばよくお読みなさい−

−魔法は時として、貴方に素晴らしい体験や恩恵を与えてくれるでしょう−
−しかし、同時に貴方を不幸にする力でもあります−
−過ぎた力は、時に他人からの嫉妬や恐れを受けることがあります−
−他人には無い力は、やがて貴方を孤独にすることになるでしょう−
−そしてその先、さらに待つ不幸−

−魔力は、やがて貴方の願いを叶えるようになるでしょう、この私のように−

−私はもう、私の望みであった『知の探究』ができなくなってしまいました−
−私の体から溢れ出る魔力は、私の願いを勝手に叶えてしまいます−
−私が知ろうとする知識は、すでに魔力によって私の中で勝手に解き明かされてしまいます−

−退屈ですー
−願いを叶えられない人生は、退屈で、そして不幸ですー
−願わくば、この手紙を読んでいる貴方が、この退屈に埋もれませんように−

−世界一の『愚かな』魔術師、クロウ・リード−

65 :
 ブツン!ツーッ、ツーッ、ツーッ・・・

「くそ!やっぱりダメか・・・」
携帯を睨み、焦りの表情を隠さない小狼。
この春先以来、何度やってもイギリスの柊沢エリオル、つまりクロウ・リードの転生人と
連絡が取れなくなっていた。
さくらの友人、詩ノ本秋穂の執事であり、魔法教会を破門になった魔術師でもある
ユナ・D・海渡がなんらかの原因ではあるようだが・・・

 小狼は焦っていた。先日のマーチングのオーディションの一件で、彼の危惧する事態が
進展していることを知ってしまったから。
かつて実家で読んだクロウ・リードの手記、そこに記された『不幸』が、さくらの身に
すでに起き始めているであろう事を。

 小学生の頃、さくらは魔力に目覚め、カードキャプターとして幾多のカードを集め
そして変化させていくことで、膨大な魔力を身につけるに至った。
それはクロウカード改めさくらカードを維持するのに必要なことではあったが、
同時に増えすぎた魔力は、さくらに更なる不幸を呼ぶ危険があった。
そのため小狼は日本を去った後、柊沢エリオルに師事し、魔法の応用と知識を学んでいた、
さくらのそばで、さくらに起こる不幸を取り除くために。

 くまのぬいぐるみを触媒にして、さくらカードの精霊を奪った。
魔力は一度魔法を使うと一時的に失われ、その後、以前以上に多く回復する。
まるで筋力トレーニングによる筋肉の超回復のように。
だからさくらが魔法を使えないように、カードを使えなくしたのだ。

66 :
 だが、さくらは自分でも気づかないうちに、新たなカードを作り出すようになった。
クリアカード。さくらが純粋に、そして無意識に自身の力で生み出した魔法のカード。
まるでクロウカード集めをなぞるように、さくらは次々とカードを集め、そして魔力を
さらに高めていってしまった。
小狼には打つ手が無かった。さくらの魔力が精霊による騒動を起こしてしまっている以上
関わるな、とは言えない。クロウカードの封印を無意識になぞっているだけに、カードの起こす騒動は
周囲の人を危険に晒す心配がある。ならばさくらが(無意識に)起こした騒動をさくらが止めるのに
口を挟むわけにはいかない。もし多くの人がケガをするなど不幸な目にあって、その原因がさくらの
魔力にあると知ったら、さくらはどれだけ悲しむか知れないから。

 さくらの魔力は、もうさくら自身を不幸にするレベルまで高まってしまっている。
唯一の頼れる存在、柊沢エリオルとは、もうずっと連絡が取れないでいる。
エリオルにしても、直接日本に来てさくらの力になれない理由がある。
ならば俺が、さくらを助けなければいけない、俺自身の判断で。

 さくらの魔力は、もうすでに『さくらの願い』を『勝手に』叶え始めてしまっている、
さくらの心の奥にある、さくらの純粋な思いを、間違った形で。

 −私と、なかよしになってほしいな−

67 :
 今のさくらは、周囲の人間に(惚れ薬)を撒き散らして歩いているようなものだ。
だからオーディションの審査員たちは、そのさくらの魔力に当てられ、さくらの演技を
魅力的に感じてしまった。遠目で見ていた柳沢だけが正しい審査ができたんだ。
さくらに絶対に勝ちたかった三原は、さくらに負けた時、その悔しさをさくらの魔力で
かき消されていたんだ。だから笑ったんだ、普段のお弁当の時のように。

 だが、まだ間に合う。今ならまだその影響はさくらの近くにいる人間だけだ。
クロウのように、世界中の知識が否応なしに流れ込んでくるレベルには達していない、
今のうちに何か、何か手を打たないと。

 そこで小狼は気づく、絶望的な未来に。
そう、さくらはオーディションでドラムメジャーの座を勝ち取っていたんだ。
なでしこ祭、さくらはそのオープニングセレモニーで先頭を切って行進し、踊る。
大勢の人が注目する中で、惚れ薬のような魔力を撒き散らしながら、自分の魅力を
体いっぱいに表現して・・・
 もしそんな事態になったら、さくらは否応なく注目を浴びる存在になってしまう、
魔力によって人を惹きつけ、魅了する存在に。
それがさくらの人生に良い影響など与えるわけがない。周囲の人すべてを振り向かせ
称賛させ、だれも彼女を否定しない、そんな異常な『優しい』世界。
議論も、刺激も、争いも、悲しみも、驚きも存在しない、狂った世界。
自分以外の人間が、さくらに笑いかけるだけの、乾いた孤独な世界・・・

 もう時間が無い、なでしこ祭までに何か手を打たないと!
小狼は再び電話をかける。イギリスではなく、香港。自分の実家へ。
「もしもし、俺です、小狼です。偉(ウェイ)をお願いします・・・」

68 :
「おはよう、秋穂ちゃん。また本?」
朝、登校したさくらの隣で、上機嫌で本を読んでいる秋穂に話しかけるさくら。
「ええさくらさん、昨日、前から欲しかった本が一冊、手に入ったんですよ。」
その本を横にしてさくらに見せる秋穂。
「ほぇ〜、外国の本なんだ。ええと、ミダ・・・なんていう本?」
ローマ字で書かれたタイトルを読もうとするが、見慣れない文字もあってよく読めない。
その背後から知世がひょっこり顔を出し、笑顔で解説する。

「ミダース、ですね。」
「すごい!知世ちゃん読めるの?」
「はい。実はそれ、さくらちゃんも多分知ってる物語ですわ。」
言って知世は秋穂と顔を見合わせ、くすくすと笑う。
「ほぇ?私そんな話聞いたこと無いけど・・・」

「ミダースって言うのはねぇ!」
「「うわっ!!」」
いきなり背後に山崎が現れ、解説を始める。
「名前の通り、この世を乱す悪い魔法使いの名前だよ。人の心を他人と入れ替えたり、
生き物を石に変えたりと、それはもうやりたい放題だったんだ!」
「ほ、ほぇ〜・・・酷い魔法使いだね〜。」
「でもね、あるとき現れた床屋さんが、彼の頭を大仏のような仏さんヘアーにしたんだよ、
それ以来、ミダースはいい人になって、人々から信頼される王様になったんだよ〜」
「「ふんふん・・・」」
いつの間にか小狼もさくらの隣に並んで話を聞いている。

69 :
「またいーかげんな嘘ついてる・わ・ね。」
がしっ、と山崎の頭をわしづかみにする千春。
「しかも微妙に帳尻を合わせようとしない!授業が始まるわよ、山崎君はクラス隣りでしょ!」
言ってドアまで山崎を引きずって、ドアの外に放り出す千春。
「・・・嘘だったの?」
「お・・・俺は知ってたぞ。」
「李君も急がないと、授業始まりますわよ。」
「あ・・・そうか、じゃあまた。」
「うん、またね小狼君。」

教室から出ていく小狼を見送って、改めて秋穂を見るさくら。本当は一体どんな話なんだろ?
と、秋穂がアゴに手を当てて考え込んでいる。
「本の伝承と山崎君のお話、どちらが本当なんでしょうか・・・」
その秋穂のセリフに千春が一言発して絶句する。
「信じた!?」

「いつの日か、山崎君の話が本当になるといいですわねぇ。」
「というか知世ちゃん、本当はどんな話なの〜?」
「さくらちゃんも良く知る童話ですわ、『王様の耳はロバの耳』の王様の名前ですのよ。」
さくらの頭上に電球が、ぱぁっ、と灯る。
「ほぇ〜、あの王様、ミダースって名前だったんだ。」
「「はい。」」
知世と秋穂が同時に答える。

 ミダース。黄金を欲するあまり、触れるもの全てを黄金に変える願いを叶えた王。
しかしそれはすぐに絶望への能力であることを思い知らされる。
パンも、肉も、水も、彼に触れた途端黄金に変わってしまうのだから。
やがては彼の愛娘さえも黄金の像に変えてしまうことになる・・・

70 :
 願いを叶える力、それがその本人にとって決して幸せではない力であること。
かつてミダースが歩んだ不幸を、今、さくらが歩みつつあることを、さくらはまだ知らない。

71 :
とてもいい

72 :
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第5話 さくらと小狼と最大の危機

「ほぇ〜、終わったぁ。」
テスト用紙が集められ、机に突っ伏すさくら。1学期最後の難関、期末テストの
最後の教科がようやく終了した。
「さくらちゃん、お疲れ様。」
知世が余裕の表情で笑顔を見せる。成績抜群の優等生にとってそのイベントは
通常授業とそう変わりないものかもしれない。しかし、さくらにとっては・・・

「大丈夫かなぁ、もし万が一、赤点だったら大変だよぉ〜」
不安げに呟くさくら。友枝中では平均点の半分を下回ると『赤点』となり
追試、夏休み中の補習授業、そしてクラブ活動参加への制限もかかる、
マーチングでドラムメジャーを務める以上、赤点で練習参加が出来ないなんて事態は
絶対に避けたいところだ。
「大丈夫ですわ、さくらちゃんなら。」
「そうだといいけど・・・あーもう、数学と英語が不安だよぉ〜」
本来大の苦手の算数(数学)と、普通の学校より外国人が多い友枝中において
英語の得点は特に気になるところだ。

 翌日、廊下に張り出される成績表、成績優秀者から順に名前が羅列された表の前で
生徒たちが自分の名前を探して賑わっている、その中にさくらと知世もいた。
「あった!あったよ〜、良かったぁ〜。」
215人中142位木ノ本さくら 402点。しかしさくらの安堵は順位でも点数でもない。
赤点を一教科でも取ったものは張り出された成績表に名前が載らないのだ、
ここに名前があるということは、無事赤点を回避できたということになる。

73 :
「よかったですわね、さくらちゃん。」
「ありがと。知世ちゃんはどうだった?」
笑顔で祝福する知世に」さくらが問う。
「おかげさまで、無事満点でしたわ。」
知世が指差す先、成績表の端っこの方、3列目に『1位 大道寺知世 500点』の文字。
知世含め全問満点は計7人、最高の中学生活スタートダッシュが切れたようだ。
「ほぇ〜、やっぱりすごいね、知世ちゃんは。」
「ちなみに、山崎君も満点でしたわよ。」
確かに、7列目に『山崎貴史』の名前もある。飄々としていながら何かと万能な山崎である、
他にも友人たちの名前を見て回る。60位三原千春、72位柳沢奈緒子、146位詩ノ本秋穂・・・

「・・・小狼君の、名前が無い。」
さくらの言葉に思わず振り向く知世。まさか、赤点?彼が・・・?
小学生の時は、国語こそ手こずっていたが、他の教科は成績優秀だった。その小狼の名前が
ここにないということは、やはり・・・
「やっぱり、国語がダメだったのかなぁ。」
「大丈夫でしょうか、あまり悪いと香港に強制送還なんてことにならなければいいんですが。」
はっとするさくら。そういえば小学校の時も通知表を異常に気にしていた。もし成績が悪ければ
母親に相当怒られそうな家庭であったから。

「ふぅ。」
ため息をついて椅子に腰を下ろし、教科書を取り出す小狼。赤点を取ってしまった以上
追試を受けねばならず、それをパスできなければ夏休みには補習が待っている。
彼のやらなければならない事の為にも、それは避けなければいけない。
赤点教科は2つ、国語と社会。どちらも日本と香港では内容に差があり、向こうで習った知識は
ほとんど通用しない。

74 :
 それでも小学校時代はなんとかついては行けていた。しかし中学校に入ってからは
国語のわび・さびや日本史の戦国武将など、日本人としてはある程度の基本的知識を
前提としての授業に理解が追い付かなくなって来ていた。
 加えて毎日の魔力供給とそのための精神集中、儀式の労力が堪えている、予習も復習もあまり
出来ずに、そのまま寝落ちする日さえあるほどだ。
かくして小狼はさくらのサポート以前に、自分の問題を解決しなければならなくなった。

 お昼休み、いつものメンツが集まってお弁当を広げる中、小狼だけは早々に食べ終え、
教科書を広げて真剣な眼差しで文字を追っていた。心配そうなさくらが声をかける。
「ねぇ小狼君、何か手伝えることがあったら言ってね。」
「大丈夫だ、勉強は自分で理解してこそ身に付くものだからな、心配かけてすまない。」
「う、うん・・・」
「それにしても、李君がまさか2教科赤点とはねぇ〜」
国語と社会で満点だった柳沢がしみじみと呟く。秋穂がそれを聞いて一言。
「実は私も、その2教科は赤点のボーダーライン上でした・・・。」
やはりその2教科は外国暮らしが長い者にとっては鬼門のようだ。
海渡という優秀な家庭教師がいなければ、秋穂も赤点回避は困難だったかもしれない。

「しかし知世さんと山崎さん、全教科満点なんてホントすごいです!」
目をうるませ、二人を交互に見て秋穂が言う。
「いやぁ、ボクはヤマが当たったのが大きかったけどね。」
「私も似たようなものですわ。」
そんな二人に千春がツッコミを入れる。
「知世ちゃん、全範囲を完璧に理解するのをヤマとは言わないわよ。」
同じクラスだけに知世の優秀さは否応なく理解している千春。なにしろ先生が
残り時間を気にして授業をしている時、当てられるのは高確率で知世になるほどだ。
「そうそう、ヤマといえばねぇ・・・」
「勉強している人の集中力を乱さないの!」
山崎のボケを千春が阻止する。山崎の語りは小狼も興味津々なだけに、今は控えておくべきだろう。

75 :
「ふーん、小僧が赤点をなぁ・・・」
「そーなのよ、らしくないっていうか、ちょっと心配。」
事の次第をケロと相談するさくら。
「まぁ心配ないやろ、あの小僧はマジメだけが取り柄やから、追試までヘタはうたんわ。」
「だといいけど・・・何かしてあげられないかなぁ。」
「さくらはクラブが忙しいやろ、小僧の勉強に付き合ってやれる余裕はないハズやで。」
「うっ・・・」
マーチングの練習はまだまだ継続中だ、未だ完璧にはほど遠いレベルにあり、他人の心配を
している余裕はさくらには無かった。
「そうだ!前みたいにミラー(鏡像)さんを使えば!」
さくらの提案に、冷徹に返すケロ。
「ほぉ〜、ミラーにドラムメジャーを譲るんかい。」
「そ、そうじゃなくて・・・私はクラブ出て、ミラーさんが・・・」
「小僧と仲良く勉強するんかい、まぁさくらがそれでいいんやったらええけどな〜。」
「そ、それは・・・絶対に嫌。」
言って自分の提案が無意味なことを知る。
「は、はぅ〜・・・」
「ま、小僧を信じてやるこっちゃな。アイツにも試練は必要やろ、人生いろいろやからなぁ。」

さくらが夕食に降りている間、ケロはこっそり電話をかける。
「あ、ユエ、ワイや。実は小僧がなぁ・・・」
「ふむ、赤点か。まぁ無理もない、いくら真面目な彼でも、今の状態ではな。」
ケルベロスもユエも、小狼の事情は理解している。さくらカードの力を奪ったが故の
日常の時間と精神を削り取られている生活、13歳の少年には楽なわけがない。
「ほんでなぁ、よかったらやけど、ユキウサギの奴に協力を頼めへんか?」
「雪兎に、か。いいと言ってるぞ。」
「早っ、返事はやっ!!」
電話の向こうでユエと雪兎が入れ替わる。
「ようするに、家庭教師をすればいいんだよね。」
「ああ、たださくらや兄ちゃんにバレんように頼むわ。小僧にもプライドがあるからなぁ」
「桃矢にバレたら関係も悪化するかもしれないしね。うん、分かった。」
「・・・兄ちゃんと小僧の関係、これ以上悪ぅなるんかな?」

76 :
 翌日の夜、小狼の暮らすアパートで、小狼の向かいに座っている2名と1匹。
正面の男をジト目で睨む小狼。
「あははは、ごめんね小狼君。桃矢はどうにもカンが鋭くって・・・」
小狼の正面に座るさくらの兄、桃矢は意地悪く目をニヤつかせながら彼を見下ろす。
「よう赤点男、それでさくらと付き合おうとか、ずーずーしーにも程があるな。」
「ぐ・・・」
横でケルベロス(成体)が頭を抱えて大きなため息ひとつ。
「で、他の教科はどうだったんだ?」
「ん!」
3枚のテスト用紙を桃矢に突き出す。英語、数学、理科。最上段に輝く『100』の文字。
「へ〜ぇ、やっぱり優秀だね。他の2教科も赤点って言っても、ボーダーギリギリだし。」
「ちっ、相変わらず可愛げのねー奴だ。」
居住まいを正し、小狼に向き直る桃矢。
「おめーがだらしねーと、さくらの練習に身が入らねーからな、さっさとやるぞ。」
え?という表情を隠さない2人と1匹。無視して教科書を広げる桃矢。
「さくらと父さんには外泊すると言ってある、時間を無駄にするなよ!」
「・・・はい。」
毒舌ではあるが、今は桃矢も小狼に協力すると言っている。その意気は無駄に
するべきではない、今は素直に従い、教科書を見る小狼。

「あーゆーのを、ツンデレって言うんだよ♪」
横で雪兎がケロに耳打ちする、くっくっく、と笑うケルベロス。
「聞こえてるぞ!デレてねぇよ、こんなガキに。」
桃矢が小狼を気に入らないのは出会ってからずっとだ。しかし勘のいい彼には
コイツがさくらの為にずっと身を削っていることはなんとなく分かっていた。
それはこの部屋に入って確信していた。隠れているつもりだろうが、さくらカードの精霊の
気配がそこらじゅうにアリアリだ。
そして、それはさらなる事態の深刻さを悟らせる。

77 :
「じゃあ俺たちは帰るが、ちゃんと言った課題やっておけよ!」
はい、とうなずく小狼。2人と1匹(小さくなった)がアパートを出る。
と、桃矢が小狼のほうに引き返し告げる、雪兎とケロに聞こえないように。
「さくらは、もう『はじまっちまった』んだな?」
びくっ!と体を強張らせる小狼、うつむいて返す。
「はい!」
「・・・そうか。」
それだけを言うと、桃矢はきびずを返し、雪兎たちの方に向かう。

そして追試の日、放課後の2時間、赤点の生徒は教室に集められ、追試を今、終えた。
「あ、小狼君、追試どうだった・・・?」
教室から出てきた小狼に、さくらが声をかける。
「ああ、採点まで終わってる、大丈夫だったよ。」
ほっ、と胸をなでおろすさくら。外国人である小狼の日本での生活が酷なものに
ならないといい、という心配から解放され良かった、と思う。
そういえば、中学生になって再会してからは、思ったより一緒にいられる時間が少ない。
クラスも違うし、クラブもある。カードの騒動の時以外は積極的に二人でいることは
あまりなかった。
「ね、私も今クラブ終わったし、一緒に帰ろ!」
そうだ、もうすぐ夏休み。小狼君も補習を回避できたし、私もなでしこ祭以降は
そう忙しくはない、もっともっと一緒にいる時間が出来る。
そんな夏の日常を想像してテンションが上がるさくら。
「あ、ああ。」
照れながら返す小狼、その笑顔は小学校の時に何度も見た、さくらの無邪気な笑顔。
久しぶりに小学生時代を思い出し顔を赤らめる。
そんな赤面は夕焼けの紅がうまく隠してくれた。小狼の赤面も、そしてさくらの
赤くなった頬も・・・。

78 :
FABULOUS

79 :
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第6話 さくらと苺鈴とお友達

「ごめーん、みんなお待たせー。」
集合場所のバス停に向かって走るさくら、その先にはいつものメンバーが待っている。
知世、千春、山崎、奈緒子、秋穂、そして利佳。
 今日は夏休みの『休部日』、全ての部活が練習休みの日。
結果重視の学生部活動において、スパルタ的な練習スケジュールによる熱中症等
生徒の負担が全国的に問題になる中、友枝中では月に2回、こういった休部日を設けている。
それに合わせて皆で遊びに行こう、と企画したのは意外なことに小狼だった。
唯一、部活動に参加していない彼のこの提案に皆は乗ったのではあるが・・・

「あれ、小狼君まだ?」
さくらが見渡す。肝心の発案者が未だここにいない。時間は・・・もうすぐリミットなのだが。
と、向こうの角から小狼が姿を現し、こっちに歩いてくる、ゆっくりと。
全員が小狼の方に向き直る。
「あ、小狼君、こっちだよー。」
手を振るさくら。しかし何かその姿に違和感を感じる。なんで歩いてるの?
彼の性格からして、最後の一人になったのなら皆を待たせまいと小走りに駆けてくる
イメージがある。しかし今の彼はのんびりとこっちに歩いてくる。
やがて皆の前まで到着する小狼。
「お待たせ。」
「あ、うん。」

80 :
その瞬間だった、いきなり背後から知世とさくらと利佳にタックルするように
抱き着いてくる人物。
「やっほー、おまったせーっ!」
目を丸くして振り向く一同。小狼だけはやれやれ、と頬を掻いている。
「め、苺鈴ちゃん!?」
「あらまぁ」
「うわっ、久しぶり〜」
思わぬサプライズに抱き着かれた3人が思わず反応する、他の面々も突然の来訪に驚きを隠せない。
なるほど、小狼が走らず歩いてきたのは、背後から苺鈴がこっそり近づくための囮だったらしい。
「言ってたでしょ、夏休みには来るって!」
「あ、そっか。」

山崎がアゴに手を当て、ふんふんと納得して口を開く。
「今日の本当の提案は苺鈴さんの方だったんだね〜」
全員があっ!という顔をする。小狼にしてはらしくない提案だと思っていたが
なるほど苺鈴なら納得だ。
 と、その苺鈴はぴょん、と後方に飛び跳ね、居住まいを正す。
その後ろには二人の少女が並んで立っていた。
一人は長身の金髪、もう一人はやや背の低いショートヘアの娘。

「紹介するわね、私の香港での友達、ステラ・ブラウニーと王林杏(ワン・リンシン)よ。
なでしこ祭見たいって言うから連れてきたの!」
おおーっ、という表情で全員が2人を見る、見た目にも対照的な二人。
 山崎以上の長身で金髪碧眼をポニーテールにまとめ、肩口をリボンで止める白い
トップスTシャツのへそ出しルック、ホットパンツから伸びるすらりとした足、いかにも
アメリカンなプロポーションはいわゆるモデル体型の見本のようなスタイルだ。
 かたや髪型を男の子並みに短く刈り込んで、それでも一目で女子とわかる優しげな表情、
ソデの無い青い服装の中央はトグルで止まっており、いわゆる人民服系のファッションに
長めの紺色スカート、全身からえもいわれぬ気品が漂っている。

81 :
 と、山崎が臆することなく前に出る。両者の前に立って挨拶。
「山崎隆司です、小狼君と苺鈴ちゃんとは仲良くさせていただいてます。」
さすがに度胸と社交性あるなぁ、と皆が感心する、金髪の方に手を差し出して一言。
「ワン・リンシンさんでしたね、よろしく!」
山崎と金髪以外の全員がずっこける、逆でしょ普通、と千春がツッコミを入れようとしたその時、
金髪娘が絶叫する。
「NO!!!なんで私がリンシンだと分かったネ!?お前タダモノじゃないネ、さてはCIAの諜報員か?」
ふっふっふ、と得意げに笑い、ショートヘアに向き直る山崎。
「で、こちらがステラさんですね、山崎です、よろしく。」
「あ、あの、そうじゃなくて・・・」
困惑する表情を向けるショートヘアの女の子。

「「いいかげんにしなさーいっ!」」
千春が山崎に、苺鈴がボケ続ける金髪にツッコミを入れる、両者の頭をハタいた音が
パシーン、と気持ち良くハモる。
どうやら金髪がステラ、黒髪がリンシンの見た目通りで間違いなさそうだ。

「イヤー、お前とはウマいリカーが飲めそうダ!」
すっかり意気投合した山崎にステラがばんばんと肩をたたきながら話す。
一方リンシンは知世や秋穂とにこやかに話している、出会ってものの数分で両者のキャラが
必要以上に掴めてしまった。
「ダケドこのグループ、ほとんどガールばっかりネ、ボーイは李とヤマザキだけ?」
ステラの質問に苺鈴か返す。
「しかも二人とも予約済みだからね、とっちゃダメよステラ。」
「OH!ソーなの?ザーンネン。」
「ええ、お二方、お付き合いしてる方がいるんですか?」
思いもかけず食いつく林杏、知世が横から解説を入れる。
「山崎君と千春ちゃんは、10年来の幼馴染ですのよ。」
「ナールホド、ドーリで、さっきのツッコミが胴に入ってたと思ったヨ。」
「ま、まぁ私がつっこまないと、山崎君ひたすらボケ続けるからねぇ・・・」
顔を赤らめた千春が照れ照れで返す。

82 :
「で、李さんの彼女、誰なんですか?」
林杏が目を潤ませながら周囲を見渡す。その一言と同時にさくらがぼふっ!と顔から煙を出し
耳まで真っ赤っかになり、俯く。
リアクションを起こさない小狼に、知世が横から軽く、苺鈴が後方から強めに肘鉄を入れる。
「あ、ああ。王、こちらが木ノ本さくら・・・で、俺の・・・」
言ってこちらも瞬間湯沸かし器のように赤面し、頭から煙を出す。

「変わらないわねー、二組とも。」
利佳が二人を見てにこやかに言う。さくらと千春の手を取り、ぐいっ、と引き寄せて耳打ち。
「もっと積極的にいかなきゃ、今時は草食系男子が多いんだから。」
「「え”・・・」」
積極的に、と言われてもかなり難しい。小狼も山崎も性格は違えど女子の方から距離を詰めるのは
なかなかに難儀なキャラクターだから。いろいろ妄想しながらもじもじと両手の人差し指を
胸の前で合わせる二人。
「だ・か・ら、これからプールでしょ、健闘を祈るわ♪」
ウインクして離れる利佳、どうやら恋愛に関しては遥かに上級者のようだ。

 残念ながらその目論見は外れた。更衣室から登場したステラのプロポーションたるや
お前のような中学生がいるかと言いたくなる迫力だ。赤青のワイヤービキニに身を包み
早くも周囲の注目を集めている。
さくら、秋穂、千春、奈緒子、そして林杏の5人は、胸に手を当てて、はぁ、とため息。
苺鈴はステラをジト目で見ながら毒を吐く。
「ホンッとに、何食べたらこんな体になるのかしらねぇ・・・」
「でもさくらちゃんも、水着似合ってますわ♪」
知世だけは他には目もくれず、早速さくらにビデオを向けている。

83 :
「こっちこっちー」
山崎が女子連に声をかける。男子は着替えが早いので、もう二人ともプールサイドで待機中だ。
皆が二人の方に走る、集まったところで利佳がさくらの背中を押し、小狼の前に立たせる。
「あ・・・」
「ど、どうかな、似合ってる・・・?」
さくらの水着はひらひらのフリル付きバンドゥビキニ。赤を基調にピンクや白の桜の花が
デザインされたフリルが胸と腰を覆っている。
「あ、ああ・・・似合ってる。」
直視できないといった表情でやや目をそらし、赤面して答える小狼。
 隣では千春が山崎に水着を披露している、こちらはセパレートタイプながら、カラフルな
ストライプが入ったデザイン。スクール水着に比べて若干ハイレッグになっており、色気もある。
「うーん、いいんじゃないかな。似合ってるよ。」
「ホント?よかったぁ。」
実は事前に山崎は利佳からメールを受けていた、内容はこうだ。
”千春ちゃんの水着をホメること!ボケたら承知しませんよ!”
しぶしぶ冗談にするのを諦める山崎、隣で嬉々としている千春を見て、まぁいいか、と納得する。

 楽しい時間は過ぎるのも早い。競泳水着に身を包んだ苺鈴がさくらと競争したり、
リンシンが迷子と間違われたり、探しに行った秋穂が二重遭難したり、知世は終始さくらを撮影したり
ステラがナンパ男に絡まれては年齢を告げて引かれたり、奈緒子と千春が利佳との話に花を咲かせたり
売店には案の定、桃矢と雪兎がいてさくらをずっこけさせたり、クリームソーダを注文してから
さくらがやたら周囲を警戒してたり、その時すでに売店の中でケロが雪兎におごってもらった
クリームソーダに舌鼓を打っていたりしているうちに、あっという間に夕方が来てしまった。

84 :
「それじゃみんな、またね。なでしこ祭、楽しみにしてるわ。」
苺鈴がステラと林杏を連れて一行と別れる。他のみんなも解散、という時、利佳がいきなり声を出す。
「そーれっ!」
その合図とともに奈緒子、知世、秋穂、そして利佳が一斉に駆け出す、別々の方向に。
「じゃあ、またー」
「またねー」
「お疲れ様でしたー」
「頑張ってねー」
何事が起ったのか理解できぬまま、その場に残されるさくら、小狼、千春、山崎の4人。
いち早く状況を悟ったのは山崎、ふぅ、とため息ひとつ。
「じゃあ帰ろうか、僕と千春ちゃんはこっちだから、またね。」
自然に千春の手を取り、歩き出す山崎。思わぬリアクションに驚く千春、無論悪い気はしない。
「うん、またねさくらちゃん、李君。」
満面の笑顔でひらひらと手を振って去っていく、夕焼けの街角に消えるのを見送って、小狼が
さくらに話す。
「俺たちも・・・行こうか。」
「うん。」
歩き出そうとして、ふと止まる。
さくらから顔をそらしたまま、すっ、と手を出す小狼。
「あ・・・」
少しの間、そして次の瞬間、さくらはその手を掴む、両手で、ぎゅっ、と。
こぼれるような笑顔のさくら、目線を泳がせながらもさくらの手を握り返す小狼。
そのまま二人は歩き出す。泳ぎの疲れも忘れて。

マーチングのことも、さくらの魔力の事も、今この時だけは忘れて−

85 :
「フーン、アレがクロウ・カードの所有者ネぇ」
「とんでもない魔力でした、小狼さんが私たちを呼ぶのもうなずけますね。」
ホテルのロビーのテーブルで、少女3人と初老の男性が話している。
「さくら様はもう危険な状態だそうで、苺鈴様、ステラ様、林杏様、どうかよろしくお願いします。」
「任せてよ偉(ウェイ)、私がいるんだから何にも心配ないわよ!」
どんっ、と胸をたたく苺鈴。
「その意気ですよ、大事なのは『きっと上手くいく』という意志なのですから。」

4人は知らない。木ノ本さくらも、その考えを身上としていることに。

 −絶対、だいじょうぶだよ−

86 :
続き待っていた

87 :
あっ不穏な流れになってきた
毎回楽しませてもらってます

88 :
SSごとにスレを立てればいいと思うんですけど(提案)

89 :
>>86-87
こんな駄文に感想頂きありがとうございます、ヤル気でますよホント。
>>88
あんまスレ乱立すると叩かれるってじっちゃん言ってたw
同人板でやれ!とかオ〇ニーうぜぇ、とか言われそうですし・・・
あ、割り込みは自由ですよ、どんどん投稿しちゃって下さい、他の板でも
そういう流れのスレありますし。
ここ見てる他の人の意見はどうかな?

90 :
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第7話 さくらとみんなの大行進

ぽん、ぽんっ!
夏の青空に花火が響く。友枝町なでしこ祭、いよいよ開幕の時!
さくらはオープニングのマーチングを直前に控え、メンバーと共に緊張した面持ちで
その時を待っていた。
 なにしろ彼女たち友枝中吹奏楽・チアリーディング合同のすぐ後ろには、全国に名をはせる
有名マーチングチームがずらりと並んでいるのだから緊張もひとしおだ。
そんな中、知世はさくらの至近距離まで来てビデオを構え、感動の瞳を浮かべている。
「ああ、これからさくらちゃんが大観衆の中、先頭を私の作ったコスチュームを着て
行進なさるんですね・・・感動ですわ〜」
聞き捨てならない一言にさくらが固まる。
「え・・・知世ちゃんが、作ったの?コレ。」

 マーチングのユニフォームは基本、派手である。それは友枝中も、他のチームも同様だ。
そんな中でも演奏する吹奏楽部のコスチュームはやや地味で、踊りを担当するカラーガードや
ドラムメジャーの衣裳は特に派手なのが一般的だ。
友枝中の場合、演奏陣は紫地に黄色のストライプ、カラーガードはワインレッドのフラメンコ風、
そしてドラムメジャーは白いシャツに黒のジャケット+赤蝶ネクタイ、下はラメの入った黒い長ズボン
頭には小さなシルクハットがピンで止められている。
ボーイッシュではあるが動きやすく、長袖長ズボンではあるが通気性もバツグンだ。
なるほど、よくよく見れば知世のセンスらしさが伺える。

「友枝町中の服飾店に手を回した甲斐がありましたわ〜」
「と、知世ちゃん・・・」
そういえば今年のユニフォームはどこからか寄贈されたって話を聞いた気がする。
今日のこの日に備えてきたのはさくらたちだけでは無かったようだ。
「ワイも見とるで、がんばりや〜。」
ケロはちゃっかり知世のハンドバッグの中に潜り込んで、顔だけ出して激励する。

91 :
「さぁみなさん、いよいよ本番です。この2か月の練習の成果、存分に見せてあげなさい!」
米田先生が全員にハッパをかける。
「「はいっ!!」」
皆が元気よく答える。やれる事はすべてやってきた、あとは本番あるのみだ。
「それじゃ最終チェックに入って、自分のやることをしっかり理解してね。」
各自が服装や楽器のチューニング等のチェックに入る。さくらもバトンの感触を確かめ
ホイッスルの試し吹きも行う。うん、問題なし。

 いよいよ本番、整列する友枝中チームの先頭に立つさくら。
ひとつ深呼吸して前を見る、正面には良く知った顔がずらりと並ぶ。
お父さん、お兄ちゃん、雪兎さん、知世ちゃん、ケロちゃん、山崎君、奈緒子ちゃん、秋穂ちゃん、
そして、小狼君。
あと、そこかしこにビデオを構えた知世ちゃんのボディガードの皆さん。知世ちゃんってば・・・

『さぁ、それでは第3回、友枝町なでしこ祭、いよいよ開幕です!』
その場内放送が流れるのを合図に、さくらがホイッスルをくわえ、バトンを持つ右手を高々と上げる。
同時に後ろの演奏隊が楽器をすちゃっ!と構え、カラーガードが旗をびっ!と構える。
さぁ、出発だ!

ピーッ、ピーッ、ピッピッピッ!!
さくらのホイッスル&バトンに合わせて全員が足踏みを開始する。
全員が一歩踏み出すと同時に、金管楽器が音楽を奏でる。

92 :
※TVアニメ「カードキャプターさくら、さくらのテーマI」

トランペットがメロディを奏で、ホルンが高らかに音を響かせる。パーカッションがリズムを刻み
ユーフォニウムやチューバーが重厚な音を染み渡らせる。
千春率いるカラーガードは情熱的に、そして妖艶に舞い、一糸乱れぬタイミングで旗を振り回す。
その先頭でさくらはバトンでリズムを刻み、皆を先導して行進し、皆の指揮を執る。
大事なのは笑顔を絶やさぬこと、その為には何よりこの行進を楽しむこと、それが米田先生の教え。
バトンを天高く放り投げ、側転からの宙返りで落下点に入り、見事バトンをキャッチする、
そしてそのまま行進を続けながら観客に敬礼、拍手喝采が沿道に巻き起こる。

「なに、あそこ凄いな、どこのチーム?」
「地元の友枝中?こんなに上手かったっけ。」
2番手以降の有名どころを見に来たマニアも、思わぬダークホースに注目する。
友枝中に合わせて移動しているのは最初は身内だけだったが、そのうち他の見物客も
友枝中を追いかけ始める。

 こうしてゴールの友枝商店街広場まで、約500mの大行進が始まった。
夏の太陽は容赦なく照り付け、地面からの熱波がみんなの体力を奪っていく。
それでも、彼女たちにとってこの舞台は一生に何度もない『晴れ舞台』だ。
みんなが私の演奏を聴いてくれる、私の踊りを見てくれる、身内だけではない、
大勢の見知らぬ人が。暑いなんて言ってられない、気にもならない。

 それを追いかける大観衆、ある吹奏楽好きは演奏に聞き入り、あるマーチングファンは
ガードの旗振りに熱い視線を送り、そしてあるビデオ撮影少女は先頭のドラムメジャーを追って歩く、
沿道もまた行進の列ができており、皆が一つの流れとなってゴールを目指す。

 トロンボーンが銃剣のように天を差し吠える。アルトサックスが夏の日差しを受けて輝き
ガードの旗が行進に勇ましい華を添える、ゴールまであと少し。
やっと終われる、もっと続けたい。矛盾する二つの感情を全員が胸に抱き、ラストスパートをかける。
友枝商店街広場に到着、さぁ、いよいよフィナーレ!

93 :
 縦列していた一行が方向を変え、横一列に並び、一歩また一歩と行進
「カンパニー」と呼ばれるフィニッシュに向かう。
 ガードの千春ともう一人が旗を預け、行進の先頭に走り、さくらの前に出る。
さくらは再びバトンを高々と放り投げ、前の二人に向けてダッシュ、二人が組んだ手の上に乗り
そのまま二人に天高く放り投げてもらう。そして空中で見事バトンをキャッチ、
落ちてくるさくらを下の二人がしっかりと受け止める、間髪入れずさくらは地面に降り、
バトンをびっ!と皆の方にかざす。
その瞬間、最大の音を出していた演奏がきれいに止まる、一糸乱れぬフィニッシュが決まった。

 大歓声に包まれる会場、祝福の拍手が鳴り響く。
さくらの知人も、吹奏楽部の身内も、見知らぬ大勢の観客も、惜しみなく絶賛の柏手を打つ。
 全員が深々と一礼しそれに答える。達成感と疲労感、やり遂げた思いと終わりの未練。
みんな汗だく、そしていい笑顔で駆け足して退場する。

 終了後の待機スペースには、チア部の先輩たちが飲み物を用意して待ってくれていた。
「お疲れ様、木ノ本さん凄かったわよ!」
「ガードも良かったよ〜これは来年以降が楽しみねぇ」
「私たちも負けてられないわね、最終日見てなさい!凄い演技するから。」
コップに注いでくれたスポーツドリンクを飲み干すさくら達。玉の汗を光らせながら
先輩たちの絶賛に笑顔、涙する娘もいる。
「んもー、先生感動しちゃったわよ、ホントによかったわよみんな。」
米田先生が大声で吹奏楽部とチア1年を労う。皆で団結し、努力し、結果を出した。
去年のくやしさを思い出したか、吹奏楽部の2,3年の多くが涙する。

94 :
 解散となった後、さくら達は友人たちに囲まれて祝福を受ける。
「ホントにかっこよかったですわさくらちゃん、これはビデオ編集が楽しみですわ〜」
目を星印にしてうっとり語る知世に、秋穂が釘を刺す。」
「あ、あの、知世さん。明日は私たちなんですから、編集はそれ以降に・・・」
コーラス部は明日、最終日のラスト2の出番だ。ビデオ編集で夜更かしして
風邪でも引かれたら大事である。
「ま、よかったじゃねぇか、バトン頭に落とさなくて。」
「そういう桃矢が一番感動してたけどね〜」
「ユキ!」
兄と雪兎の会話にも思わず笑みがこぼれる。奈緒子や他地区から駆け付けた利佳も
さくらたちに称賛を送る。
「そういえば、マーチングっていうのはねぇ・・・」
感動を阻止されてはたまらないと、千春が山崎にクローを極めて黙らせる。

「・・・あれ、小狼君は?」
そういえば小狼がいない。スタート地点では確かにいたのに。
「ああ、小狼なら、サッカー部の手伝いに、駆り出されてたわよ・・・。」
苺鈴がちょっと息切れしながら説明する。確かに午後の部にサッカー部主催の
リフティング大会が予定されている。
「え!?」
「あ、大丈夫。さくらの演技は、ちゃんと最後まで、見てたわよ、伝言よ。
『ホントにすごかった、それしか言えない』だって。」
「・・・そう、良かった。」
さくらは複雑な気持ちだった。本当なら、いの一番に小狼にここに来て祝福して欲しかった。
でも、どこか孤独なイメージのある小狼に男友達が出来るのは悪い事じゃない。
もしサッカー部に入部ともなれば、彼の運動神経ならレギュラーは間違いないだろう、
チームが活躍すれば、以前知世が言ってたように、チア部として応援する
未来もあるかもしれない。今日以上の演技を、小狼君の為に。
それに、明日は一緒になでしこ祭を回る約束をしている。今ここにいない埋め合わせは
きっと明日にしてくれるだろう。

95 :
「そういえばあの二人は?」
奈緒子が苺鈴に問う。わざわざ香港から、なでしこ祭を見に来た外国人2人。
「あ、ああ、ステラと、林杏なら、他のマーチング見るって、言ってたわ。」
今やマーチングは最高潮、全国の有名チームが次々と極上の演奏演技を披露している
悲しい事ながら、すでに友枝中の演技を覚えてる人は多くない。

 ふと、知世が苺鈴に声をかける。
「苺鈴ちゃん、大丈夫ですか、どこか御気分でも・・・」
見ればあのタフな苺鈴が汗だくになっている、呼吸も切れ切れで、まるで全力疾走した
後のようだ。
「だ、大丈夫大丈夫。ちょっと人波にもまれただけよ。」
その時、会場の裏側の方向で、サイレンの音が鳴り響く、救急車の音だ。
「どなたか熱中症になられたんでしょうか。」
真夏の午前10時半。こういうイベントなら残念ながらよくある光景。
やがて遠ざかっていくサイレン音。

 なでしこ祭初日、さくらとみんなの挑戦は、こうして無事、大成功に終わった。
充実感と達成感み満たされて帰宅したさくらは、疲労感からか夕食も取らずに
泥のように寝入ってしまった。父、藤隆が布団をかけ、ご苦労様、と声をかけて退室する。
そしてさくらは夢を見る−

オレンジ色の世界、みんながさくらに笑いかける世界、はるか向こうの十字架に
さくらの大好きな人が磔にされている世界・・・

96 :
スレいっぱい立ったら追いかけるの大変だから個人的にはこのままでおk
今書き込んでらっしゃる物書さんは他スレにもいらっしゃった物書きさん?

97 :
>>96
以前「さくらと小狼ちお泊り」スレでいくつか書いてました、スレ落ちましたがw
他の板でもSS書いたことがあります、HNは別ですが。

カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」

第8話 さくらの魔力と小狼の戦い

「鏡よ、我を映し出し、我の分身となれ、ミラー(鏡)」
マーチングのスタート地点から少し離れた建物の陰、小狼は手鏡に自分を映し、そう唱える。
鏡に映った小狼に、さくらカードの精霊『ミラー』が憑依する。
そして鏡から飛び出し、小狼の分身となって彼の前に立つ。
「じゃあ、頼むぞ。」
こくり、と頷く小狼の分身。
「スタートの前にさくらに見える位置にいてくれればいい。あと、さくらの兄上には
絶対に近づくなよ、あの人の勘の鋭さは異常だからな。」
あ・・・という表情を見せた後、少し残念そうな表情で頷く分身。

 まもなくなでしこ祭、開幕のマーチングパレード出発の時。小狼、偉(ウェイ)、
ステラ・ブラウニー、王林杏(ワン・リンシン)、そして苺鈴が所定の場所についている。
今やさくらの魔力は、さくらの周辺の人間を魅了する性質を備えてしまっている。
この大勢が注目するイベントで、そんなものを撒き散らしながら行進すればどうなるか、
さくらの周囲の状況が激変するのは間違いないだろう、さくらの望まぬ形で。
 それを阻止すべく、香港に連絡を取り、準備してきた、この日の為に。
さくらの魔力を封じ、純粋にマーチングの演技をやり遂げてもらうために。
母の弟子、ステラと林杏の二人に来日してもらい、5人でさくらのマーチングを
魔力の介入なしにやり遂げてもらうために。

 小狼に化けたミラーが沿道の脇につく。言った通り桃矢とは離れた位置に。
さくらがそちらに目をやってくれるのを期待して、小狼はかがんで護符を取り出す。
『封魔』と書かれたその護符は、この日の為に母上に作ってもらった特別制。
魔力を持つ人の体外に溢れた力を無効化する能力がある。

98 :
ピーッ、ピーッ、ピッピッピッ

 始まった!
小狼が、マーチングの進路となる道路を挟んだ向こう側でステラが、林杏が、一斉に護符を発動させる。
「封魔!」
「フーマ!」
「封魔っ!」
3人の位置は三角形の頂点になっており、その3点の中にさくらがいる。
護符で三角の結界を作り、その中にさくらがいる間は魔力の影響が出ないようにするのが狙いだ、
しかしマーチングは行進である。さくらがその結界から出るとその効果は消失する。
さくらを先頭とする行進が動き始める、小狼はスマホのイヤホンを通じて他の4人に連絡する。
「始まったぞ、次!偉(ウェイ)、頼む!」
「かしこまりました。」
小狼と同じく、道路のこちら側、小狼の位置から100mほど進んだ位置に待機しているウェイが返す。
ステラは全力で次のポイントに向かう、苺鈴が人目につかない場所を確保しているはずだ。

さくらが3人の結界から出る瞬間、今度は小狼とウェイと林杏が次の護符を発動させる。
「封魔!」
「封魔っ!」
「封魔。」
さくらが結界から出る瞬間、新たな結界がさくらの進路に現れ、その中に進むさくら。
小狼は全力でマーチングの進行方向に走る。結界を張っているウェイを追い越し、その先
100mほどの地点に駆けつけてきた苺鈴を見つける。
「小狼、こっち!」
苺鈴が小狼を手招きし、すぐ近くの建物の陰に誘導する。人前で護符の発動をするわけにはいかない
誰にも見られず護符が使える空間をキープし、見つからなければ苺鈴自身が術者を隠すのが
魔力を持たない苺鈴の役目だった。

99 :
「じゃあ、次のポイントにいくわ!頼むわよ!!」
そう小狼に言い残し、今度は苺鈴がダッシュする。すでに対岸では林杏が次のポイントに
向かっているはずだ、時間が惜しい。
マーチングのずっと先までダッシュして、道路を横切り、あらかじめ探しておいた場所に
全力疾走で向かう、林杏より先に着かないと意味が無い。
なんとかそのポイント、木陰に到着し、走ってくる林杏を呼ぶ。
ウェイ、ステラ、小狼による3つめの結界が生まれる。行進が思ったより早い、急ぐ必要がある!
苺鈴は再び引き返して道路の反対側へ走り、ウェイを商店街の裏路地に誘導する。
そしてまた道路をまたいで、今度は次のポイントにステラを呼ぶ。

 幸いにも友枝中のマーチングは好評のようだ。見物者の列の後ろで忙しく動いている小狼たちを
気にとめるものは誰もいない。そんな中、小狼たちは次々に結界を張り、走る。
中でも道路のあちらとこちらを往復している苺鈴の運動量は異常だ。ポイントで合流するたび
彼女の呼吸は荒く、激しくなっていく。
ステラも林杏もウェイも、魔力を使いながらの運動に徐々に体力を奪われていく、まして今は真夏、
香港の暑さよりマシとはいえ、この作業がキツくないはずは無かった。
そして、最初にミラーのカードを使った小狼の疲労も相当なものだ。

 と、その小狼の所にひとつの精霊がすっ、と現れる。緑の髪に赤いリボン、ミラーだ。
「うまくいきました、主(さくら)は出発前、私を貴方として認めました。」
「そうか、ありがとう!」
そう言って宝玉を出す小狼、ミラーはすっ、とその中に吸い込まれるように姿を消す。
そして走りながらマーチングを見る、さくらの見事な演技に歓声が沸いている。
しかしそれは決してさくらだけが注目されているわけではない、ある人は演奏される音楽に耳を傾け
またある人はカラーガードの見事な旗振りに目を奪われている。

100 :
 よかった、心底そう思う。もしさくらの魔力がダダ洩れな上体でマーチングが行われたら・・・
確かに友枝中は並み居る強豪チームを押しのけ、評価一位をモノにするかもしれない。
しかしそれはさくら一人の成果でしかない。誰も演奏を聞かず、演技や行進も見ず、
ただたださくら(の魔力)に魅了されるだけの、いわば洗脳に近い評価。
チームメイトの2か月の努力も、わざわざ遠征に来てくれた他チームの演技も、
みんな無駄にする『魔法の暴挙』。
 さくらにそんな事をさせるわけにはいかない、さくらが自身の魔力で自分を不幸にするのは
なんとしても阻止してみせる!そんな決意が疲れ切った小狼の体を引き起こし、走らせる。

 やっとフィニッシュの友枝商店街広場まで来た、あと一息だ。
最後のカンパニーの行進が始まるのを合図に、小狼が、ステラが、林杏が、最後の札を発動させる。
「「「封魔!!」」」
今日何度目か分からない言葉を、最後の力を振り絞って叫ぶ。
最後の結界が発動し、さくらを含むマーチング一同を取り囲む。そしてさくらはジャンプして
見事なフィニッシュを決める。

「ああ・・・ホントに凄いな、さくらは・・・」
そう言いながら崩れ落ちる小狼、隣にいた苺鈴がとっさに抱きとめる、息も絶え絶えに。
「しゃ、シャオ・ラン、しっかり・・・」
疲労で抱えきれず、そのままそこにへたりこむ二人、そこにウェイが駆けてくる。
「しっかりなさって下さい、小狼様、苺鈴様、お気を確かに。」
そしてスマホを取り出しダイヤルしながら、告げる。
「救急車をお呼びいたしますから、それまでご辛抱ください。」


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