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OizelcrBocka


1 :2017/04/06 〜 最終レス :2018/07/24
OBのためののんびりスレです

前スレ
OizelcrBocka
http://shiba.2ch.sc/test/read.cgi/nanmin/1476216799/

2 :
雌にされるエレンさんの話
by らいむぎ

 エレンは女遊びの激しい部類の人間だ。
 それ故、セックスフレンドは何人かいたりする。
 それでも社内で変な噂がたたないのは、大人になって相手を選ぶ目が肥えたからだろう。
 この女性ならば面倒なことにはならないと思った相手としか夜を共にしない。
 それは主に年上の女性が多かったが、それ以外でもエレンは女性から誘われることが多く、異性から好かれることが多い。
 一番面倒なのは年下で、自分のことを可愛いと思っている女だ。そういう子には「君にはもっといい男がいるよ」と困ったように笑って言えば、なんやかんやあっても最終的には丸く収まってくれる。

「イェーガーさん、今夜空いてますか?良かったら、ご飯でも一緒にどうかなと思って…」

 少し頬を染めて上目遣いで窺う年下の女性社員は可愛く、不安そうに身を縮ませるものだから胸が寄って柔らかそうに弾んだ。あー、ヤりてぇな。その胸に顔を埋めたらどれだけ心地よいかと想像すると、今すぐにでも誘いに頷いてしまいそうだ。
しかし、この子は明らかに“彼女”という地位に拘るタイプだろう。エレンは面倒なタイプだな、と心の中で溜息をつく。

「あー、ごめん。今日はちょっと約束があって」

 眉を下げて心底申し訳なさそうに謝る。
 本当は約束などなかったし、できればその柔らかそうな体を堪能したかったが、秘書課のお姉さんの家にセックスをしにいく予定ができた。たった今。

「そうなんですか…残念です」
「ごめんな。また今度、皆でどこか食べに行こう」
「はい…」

3 :
 決して“二人で”という約束はしない。下手に期待させて踏み込んだ関係を少しでも築いてしまえば面倒な事になるのはわかりきっている。
 彼女は“皆で”と言ったことに少々不満げな顔を見せたが、すぐにその場から去ろうとはしなかった。
 エレンの顔をじっと見つめてくる彼女に、まだ何か用があるのかと首を傾げて見せる。

「何?」
「イェーガーさん、受付の先輩と付き合ってるって本当ですか?」

 拗ねた口調で問われ、エレンは「は?」と聞き返した。
 確かに受け付けには一人、体の関係を持つ女性がいたが…どうやら、二人で会っている所を社員に見られていたらしい。

「いや、付き合ってないよ。ああ、たぶん飲み会が終わった後で、帰る方向が同じだったから送っていった時じゃないかな」

 にっこり笑って答えると、彼女は「そうですか」と言って頭を下げて去って行った。受付の子と遊ぶのはしばらくやめておこう。
 今日行こうと思っていた秘書課のお姉さんの所もやめて、社外のRの家に行こうかと思案し始める。
 けれど、考えるのも面倒だ。学生の頃は良かった。何も考えずにセックスできたし、責任だって今ほど重くはない。
 あの頃は感じなかった色々なものが重くのしかかって来て、呼吸がし辛くなる。息苦しくて生き苦しい。
しかし、そうは思っても、まあどうにでもなるか、と思ってしまう程にはエレンは楽観的だった。
 だからこそ、こんなにも簡単に“下”を味わうことになってしまったのだ。

「こいつは俺と約束があるんだ」

 エレンは、えっ、と声を上げそうになる。

「どうして課長がイェーガーさんと…?」
「大学の後輩だ」

 本当に?と彼女がエレンの顔を見上げてくる。
 リヴァイがどういうつもりなのかはわからないが、これで腕を離してもらえると言うならうまく合わせるしかない。
 エレンは曖昧に笑って頷いた。

「…わかりました」

 彼女もリヴァイに言われたら従うしかないのだろう。
 渋々ながらも腕を離した彼女の顔は明らかに納得していなかったが、エレンはホッとした。
そうして、二次会へ行くメンバー 早くこの場を去りたいとばかりに頭を下げる。が、

「っ!」

 ぐい、と強い力で腕を掴まれて足が止まる。

4 :
 先ほどまで掴まれていた柔らかい手じゃなくて、固くて大きな男の手だ。

「おい、助けてやったんだ。少し付き合え」
「あのオレ約束があるんですけど…」
「キャンセルだ」

 それを決めるのはお前じゃねぇ!と叫びそうになるのを堪えて、じっとリヴァイを見つめる。
 男に腕を掴まれても全く嬉しくない。エレンは柔らかくてすべすべで、暖かい肌が好きなのだ。

 リヴァイは片手で器用に煙草を取り出すと、一本口に咥えるとキンッといい音を立てる金属製のオイルライターで火をつける。
 煙草吸うんだ、と単純な感想が頭に浮かんだ。

「…、吸い終わるまで待ってやる」

 その間に女に連絡しろと言うことなのだろう。
 リヴァイは、エレンのこれからの約束がRに会いに行ってセックスをするだけの大した物ではないことだと気が付いているのだ。
 試しに腕を引いてみてもビクともしない。力であってもこの男には勝てそうにない。
 エレンは諦めてスマートフォンを取り出すと、女に電話をかける。目の前で電話をさせるのだから性質が悪い。
 相手が電話に出る間、リヴァイは余裕で紫煙を吹かす。様になっているのが少し腹立たしい。
 エレンは煙草を吸わない。女が煙草を吸った後はキスしたくないと言ったからだ。
 まぁ、エレンも特に吸いたいとは思わないし、だからと言って喫煙者を責めるようなことも言わない。単に興味がないのだ。

「…もしもし。悪い、今日は行けねぇわ。…うん、また今度」

 電話越しの会話はたったのそれだけだ。
 相手もその辺は割りきっているから文句を言われることもない。そう、この程度の約束なのだ。
 エレンが溜息をつきながらスマートフォンをスーツのポケットにしまうと、リヴァイはちょうど足で煙草を踏み消していた。

「行くぞ」

 そしてそのまま強引に腕を引かれて歩き出す。どこに行くのか全くわからない。
 リヴァイとは本当に接点がなかったし、これから飲み直すと言われたって決して楽しくはないだろう。

5 :
 ようやっと離してもらえた腕を摩って、リヴァイに声を掛けると、彼は何食わぬ顔で上着を脱ぎ始めた。

「エレン」
「えっ、はい」
「お前、先に風呂に入って来い」
「は?どうして風呂に入る必要が?っていうかオレはどうしてここに連れて来られたんですか?」
「うるせぇ。いいから入って来い。俺は潔癖なんだよ」

 こちらの質問は全く無視で、とにかく風呂に入れと言われる。
 リヴァイには何を言っても駄目だということはこの短時間でよくわかった。
 エレンは、まぁ、こんないいホテルの風呂なんてめったに入れないからラッキーくらいに思うことにして、大人しく従った。

 結果的には満足だった。風呂はエレンが足を伸ばしても十分すぎるほど広々としていて、何しろジャグジーバスだった。
 さっぱりした気分で部屋に戻ると、リヴァイはこんなところだというのに仕事をしていた。
 本当に仕事人間なんだな、とエレンはイメージ通りなことを一つ見つけた。

「上がりましたけど」
「…ああ」

 リヴァイはパソコンから視線をエレンに向ける。なんだか本当に変な感じだ。
 今までろくに会話をしたこともない他の課の課長と高級ホテルの一室に一緒にいて、自分は風呂上がりでバスローブを着ているなんて。
 何だこれ、とエレンは心の中で呟いた。

「えーっと、リヴァイ課長もどうぞ」
「リヴァイでいい」
「?はい。じゃあリヴァイさん?」

 言うと、リヴァイは緩めてあったネクタイをしゅるりと抜いて、こちらに近づいてくる。
 風呂にはいるんだろうな、と思って場所を退く。
だが、それは叶うことなく、まだ機構に新しい手に腕を掴まれて強引に引きずられてしまった。

「えっ!?ちょ、なんですか!?」

 そのまま大きなベッドへと乱暴に転がされる。そして、何も言わないリヴァイにマウントポジションをとられてしまった。
 両腕を掴まれたままベッドに押し付けられて全く起きあがることができない。

「お、い!何すんだよ!」

 エレンはその手が逃れようと必死でもがくが、驚くほどにリヴァイの体はビクともしなかった。嫌な汗が流れる。
 やばい、この状況は危険だ、と頭の中で警報がなっている。

6 :
「何をするって?あんだけ女食っておいて今からテメェが何をされるのか本当にわからねぇのか?」
「っ、どけ!」

 わかる。わかるから焦って、逃げようとしているのだ。

「…ハッ、男にこんなことして何が楽しいんだよ、頭おかしいんじゃねぇの…っ?」

 リヴァイを睨み上げ、わざと吐き捨てるように言った。怒らせて少しでも隙ができれば逃げられる。

「生憎、お前をどうにかしたいと思うくらいには頭がイカれちまってるからな。そういう口を利かれるとかえって興奮する」

 顔は笑っていないから到底興奮しているようには見えなかったが腹に押し付けられている固いものが何なのかくらい分かる。
 エレンは本格的にまずいと焦り、顔を引きつらせた。

「ちょ、ちょっと待ってください、リヴァイさん。落ちついてください、」
「俺は落ちついている。ああ、でも、興奮するなっていう意味ならそれは無理だな」
「ほ、本当に待ってください!オレ男ですよ!?」
「さっき言っただろうが頭がイカれてるって」

 エレンの抵抗はもうないようなもので、リヴァイは言いながらエレンの両手をネクタイで纏めあげた。
 そして器用に片手で自分のワイシャツを脱ぎ始める。
 徐々に見えてくる筋肉質な体が、今自分の上にのっているのは柔らかい女ではなく男なのだとエレンに分からせた。

「なんで、こんなこと…!」
「お前、女とセックスすんの大好きだろ?そういう奴を自分の雌にしてぇんだよ」
「ク、ソ…!変態野郎…!」

 リヴァイはわざとエレンの耳元で吐息交じりに囁く。こうすると相手の体が震えることをエレンはよく知っていた。
 ごりごりと腹に固くなった性器を押し付けられてゾワゾワと不快感が体中に広がった。

「ん!…っ、ゃ、んぅ…っ」

 頭の上で両手を押さえつけられ、顎も掴まれると強引に唇を塞がれる。
 少し唇がカサついていると思ったのは最初だけで、下唇を食まれ、ぬるりと舌をねじ込まれるとすぐにそんなことは忘れた。
 男の舌は思っていたよりも柔らかかった。それに、気持ちのいい場所を的確についてくる。
 いつもは自分が相手の唇を好きに貪っているのに、今は逆に貪られている。
 リヴァイの深いキスは食べられてしまいそうなほど強引で、獣のようなキスだった。

7 :
「ん、は、ぁ…ぅ、」

 くちゅくちゅと音を立てながら舌で口内をかき混ぜられて、だんだん頭がぼうっとしてくる。
 何も考えられなくなって、リヴァイに支配されてしまったのかもしれないと馬鹿なことを考える。
 だから体に力が入らなくなって、されるがままになっているのだと。
 唇を離したリヴァイが「良い子だ」とでも言うように頬を撫でる。エレンは浅く呼吸を繰り返しながら、潤む瞳でリヴァイを睨みあげた。

「おいおい、キスなんて飽きるほどしてんだろうが。ちゃんと応えてみろよ。それとも女にしてもらってんのか?」
「っはあ!?んなわけねぇだろ!」
「じゃあやってみろよ」
「クッソ…!」

 暗にキスが下手くそだと笑われてた。これでも女にはうまいと褒められる。
 そもそもそっちが無理矢理キスしてきたというのに上手いも下手もあるか、とエレンはプライドを傷つけられたようで安い挑発に乗ってしまった。
 エレンはその腕でリヴァイの顔を自分の方へ寄せると、その唇に噛みつくようにキスをした。
 初めは唇をあむあむと食んで、その後で湿った舌を口内にねじ込む。
 上顎をなぞり、相手の舌の裏を舐めあげる。じゅる、と唾液を吸って柔く舌を噛んだ。

「ん、は…ん、…っんん!?」

 いきなりれろりと舌を絡められ、エレンは驚いてくぐもった声を上げる。先ほどとは打って変わって大人しかったリヴァイの舌が突如動きだしたのだ。
 頭を枕に押さえつけられて、リヴァイの口内に入りきった舌を吸われ、甘噛みされる。

「ふ、…っん、ぅぅ……はぁっ、」

 先ほどまで握っていた主導権はいとも簡単に奪われて、また食べられてしまいそうな程深いキスにエレンは息をするのも精一杯で、必死にリヴァイの背中をどんどんと叩いた。

「んっ…んぅ!?」

 肌蹴てしまったバスローブの隙間からリヴァイの指がエレンの体に直に触れて、ビクリと跳ねた。
 相変わらず口内への刺激を止めてもらえず体に力が入らない。リヴァイの指がエレンの乳首に触れて、ゆっくりと捏ねられる。
 指の腹でぐりぐりと押しつぶされると、そこからビリビリとした快感が走った。

「ふ、ん、ぁ…ゃめ、っ!」

 そしてぷっくりと腫れてきてしまったそこを、今度は指先で弾かれるように弄られる。

8 :


9 :
 その度に体がビクビクと跳ねてしまう。
 エレンが女にやるようなことを自分の体にされていた。
 もし自分がするならば次は軽く摘んで少し痛くした後に、それを労わるように舌で愛撫する。
 でもエレンは女じゃない。
 こんな所で感じるわけがないし、リヴァイがそれを男であるエレンにするはずがない。
 エレンは祈るような気持ちでリヴァイの腕から逃れようと必死になった。
 しかしそれは、リヴァイから逃げたいのではなく、確かに感じる快感から逃れたかったのだと気付く。
 いつの間にか唇は解放されていた。

「ああっ…ぁっ…!」

 散々弄られた乳首にリヴァイの暖かい舌がべろりと這った。
 エレンは目を見開いて体を仰け反らせ、高い声を上げた。言い訳のしようもない喘ぎだった。

「良い声で鳴くな。女の前でもそうなのか?」
「ちが…っん、やめ、…っひぁ!」

 ガリ、と歯を立てられた。ビクンッと体が勝手に跳ねる。

「なぁ、気付いてるか?テメェのここ」
「あっ、や…なんで…っ」

 リヴァイの指が触れたソコ。熱く、固くなって上を向いている。
 獣のように唇を貪られ、女のように乳首を弄られただけだというのにエレンの性器は固く勃起していた。
 それはリヴァイの愛撫に感じて、興奮してしまったという紛れもない証拠だった。
 エレンは自身が勃ってしまっているということに唖然とした。
 一方でリヴァイは心底楽しそうに笑って、エレンの性器を撫でている。

「一回出させてやる」
「ぁ…っや、やだ…っ」

 もう逃げられないと思ったのか、リヴァイはエレンの上から退くと、その足の間に移動して性器を両手で扱いた。

「あっ…さわんなっ!…ぁ、っく、」

 女のよりもごつごつした掌。性器を包みこんで、少し乱暴にも思える扱き方は女にされるそれとは全然違った。
 そして、ぱくり、と大きく口に咥えられた瞬間、エレンは身を捻じって声を上げた。

「ひぅっ!っ、あっあっ、ゃめ、…っ舐め…っぁ!」
「初めてでもねぇだろうが」
「ぁ、ゃだ…っこんな、っ」

10 :
 リヴァイの口は大きくて、キスの時のように食われてしまうと思う程深い口淫だった。
 わざとじゅるりと音を立てながら舐めしゃぶられて、尿道の入り口にも強引に舌をねじ込まれる。

「やぁ…っ!たべないで…はぁっ、ぁ」

 クスリとリヴァイが笑った気配がしたけれど、強すぎる快感にエレンは気がつかない。

「あっ、で、でる…っ、んっ…あっ?」
「気が変わった」
「ぁ、なに…っ」

 リヴァイの言っていることの意味を理解できないまま、乱暴にひっくり返される。
 そして尻を高く上げさせられて、四つん這いの格好にされた。

「やめろ…っ何する気だ…っひあ!?」

 べろ、とありえない場所に湿った舌の感触がした。

「ケツでイかせてやる」


このあとめちゃくちゃに奥まで突かれてメスにされた。


中途半端になっちゃったけど時間切れじゃった(笑糞)

11 :
 エレンが手の内に堕ちてきたことにリヴァイは少なからず喜んでいた。
 触れるそばから薄い体が跳ねて嬌声が上がる。
ぐずぐずに蕩けた後孔に己の性器をねじ込めば女のようなそこはうねり、きつく締め付けられた。
 気持ちいい、もっと、と向けてくる視線と甘い声が腰にくる。
 普段は澄ましたような顔が真っ赤に染まるのは気分が良かった。
 支配する感覚。
 エレンのことは大学を卒業しても繋がりのあった後輩から話を聞いたことがあった。
 すごくモテる奴がいてめちゃくちゃ女食ってるんですよとかそんな感じだったと思う。
 中には女をとられた奴もいるとも言っていた。
 本当に女にモテる奴と言うのは自分からいかなくても勝手に女から寄ってくるものだ。
 きっとそいつは“とった”んじゃなくて女が馬鹿だったのだろうな、とリヴァイは思った。
 そしてそのエレン・イェーガーが同じ会社に入社していたと知ったのはリヴァイが課長に昇進して何年か経った頃だった。
 女性社員がよく騒いでいる男性社員の名前を聞かされた時リヴァイは記憶の端にあった女遊びの激しい男の名前がエレンだったことを思い出したのだ。
 合同の飲み会の席でリヴァイは初めてエレンをエレンだと認識してその人物を見た。
 隣にはリヴァイの部下である女性社員が座っていて体をべたべたと触られている。
 他の女性社員も皆控えめながらも羨ましそうに視線を向けていた。エレンは女遊びが激しいようには見えなかった。
 年下の女性に圧され気味でずっと眉を下げて困っているようだったしどちらかと言えば女性経験が少なそうにも見える。
 部下が豊満な胸を押し付けているというのにエレンは全くそれには動じずに上手に自分を制御しているようだった。
 ああ、わざとか。と、すぐにわかった。
 初心な男のような顔をして、おそらくエレンは遊ぶ女をちゃんと選んでいる。
 面白い。あの男を自分のモノしたい。リヴァイは酒を煽るふりをして口元を歪ませた。
 エレンを組み敷き、その澄ました顔が快楽に歪んで喘ぐ姿を見たくて堪らなくなった。
 だがそれは、エレンを陥れたいというわけではない。
 女が挙って手に入れたがるエレンを男である自分が支配して、お前らが欲しがる男はこんなにも可愛い顔で強請るんだ、と言う優越感に浸りたかったのだ。

12 :
 自分にだけ見せる顔。雄の顔ではない、男のリヴァイだけが見ることのできるエレンの雌の顔が見たいのだ。
 結果的には…そう、結果的にその顔は見ることができたし、自分のモノにもできたと思う。だが、エレンは心までは許してくれなかった。

「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」

 エレンの背中にちゅ、ちゅ、と吸いつきながら、腰を掴んでぐちゅぐちゅになって解れている後孔を何度も穿つ。
 外気に触れれば熱を持つローションがエレンの内側の肉をますます敏感にしてしまうようで、中は火傷しそうなほどに熱かった。
 こうしてセックスするようになって、どのくらい経つだろうか。季節は冬から春に変わっていた。
 エレンはやたらセックスをねだるようなことはしなかったが、我慢ができなくなるとリヴァイのところにやってくる、そんな感じだった。
 まだ少し、リヴァイに抱かれることに戸惑っているようだったが、指先でも触れればその体は素直になった。
 だが、エレンは最初の頃よりも声を抑えるようになった。
 息ができているのか心配になるくらい顔を枕に押し付けて、くぐもった喘ぎだけを漏らす。
 手はシーツを強く掴んでいて決して離そうとはしなかった。
 まだ男に抱かれる屈辱に耐えているのかと思いきや、気持ちいいか、と聞けば素直に気持ちいいと言うのだ。だったら我慢などせずにもっと喘げばいい。
 縋りつけばいい、そう思っているのにエレンは頑なにそうしようとはしなかった。

「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」

 声を我慢されるのが不愉快で、一度性器をずるりと抜くと、その体をひっくり返してこちらを向かせた。
 顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、荒い息を繰り返すエレンは驚いた様子でリヴァイのことを見た。

「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」
「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」

 抜いたばかりでまだ少し開く後孔に性器の先端を押しあてようとした所で、エレンがそこに手を伸ばしてそれを阻んだ。

13 :
「こっちでするなら、…っ手、縛ってください…っ」
「……なに?」
「お願いします…っ初めての時みたいに、両手、縛ってください…!」

 リヴァイはその懇願に頭がくらくらした。
 確かに初めてエレンとセックスした時はネクタイで両手を縛ったが、あれはエレンが抵抗するからであって、別にリヴァイに緊縛の趣味があるわけではない。

「…理由は?」
「………なんとなく、…っいいから!早く縛れよ!」

 じゃないと入れさせない!みたいに叫ぶものだから、リヴァイは不本意ながらも床に放られた自分のネクタイをとる。
 だが、エレンに「皺にしちゃうからオレのにしてください」と言われて、言うとおりにエレンのネクタイでその両手首を縛った。

「痛くないか?」
「平気です…もっときつくてもいいくらい」

 これでも結構きつめに縛ったのだが、少しの隙間にエレンはまだ不満そうだった。

「跡がついちまうだろうが」
「いい…明日、休みだから」

 そして、手首を縛るために起きあがらせていた上半身をどさりとベッドに横たえると、エレンはリヴァイを見上げて言った。

「ひどく、してください…」

 エレンが何を考えてこんなことを言うのかがわからなかった。

・・・

「…それで、それを聞かせられた私はどうすればいいの?」

 わいわいと騒がしい居酒屋でリヴァイは正面の女性に冷ややかな視線を向けられていた。
 話していた内容は、到底人のいるところでは出来ないほど下世話な話で、この居酒屋が辛うじて個室になっているということだけが救いだった。

14 :
 隣の声はもちろん聞こえる。
 まぁ、両隣ともすでに酔っぱらって大騒ぎなので、こちらの会話が聞こえてはいないと思うけれど。
 エレンが縛ってひどく抱いてほしい、と言ってくる。と、リヴァイは酒が届くなり言ったのだ。

「俺はアイツと普通にセックスがしたい。優しくしてやりてぇ」
「…すればいいじゃない。」

 自分の話をする時はあんなに嬉々とした表情でマシンガンのように話すくせに、リヴァイの話にどうでも良さそうに答えるのは幼馴染で腐れ縁のハンジ・ゾエだった。

「必死に頼むアイツの顔に弱いんだ」
「それでもしたいならすればいいんだよ。」
「でもアイツは受け入れようとしねぇ。縛れと言われる度に一線を引かれているような気がする」

 ハンジの溜息が聞こえてきた。

「ていうか、もう自分のモノにしたんでしょ?それでいいじゃん。そうして欲しいって言うならやってやりなよ」
「そうだが…いや、そうじゃねぇだろう…」

 それはそうなのだが、リヴァイはそれでは納得できないのだ。

「どうして?だってさ、君の可愛いエレンはセックスしたい時に来るわけで、リヴァイだって自分の所にきてくれて満足。
彼は気持ちいいし、お互いそれだけの関係でしょう?実際それだけの繋がりでしかないんだし。むしろそれだけの関係ならもっと気持ち良くなりたいと思うんじゃない?」

 女だというのにはっきりと言うハンジに若干ひきつつも、リヴァイは一理あるその言葉に眉を潜めた。

「それじゃあ体だけみてぇじゃねぇか。アイツはRじゃない」
「は…本気で言ってる?Rじゃなかったらなんなの?」

 リヴァイは黙考した。エレンはRじゃない、と思う。
 確かに会う度にセックス…というかセックスするためにしか会わないけれど、リヴァイの中ではそうではないのだ。
 それだけの関係にしたくない。男のエレンが同性のリヴァイに抱かれる。
 そんなのは普通では考えもしないことで、彼が自分の手の中に堕ちてきただけでも僥倖だと言うのに、リヴァイはそれ以上をエレンに求めているのだ。

「リヴァイがそう思ってなくても、きっと彼はそう思ってるよ。だからリヴァイの所に行くし、セックス自体に嫌とも言わない」
「…それでも、アイツは」

15 :
 正直に話そう。リヴァイはエレンのことを自分のモノにしたいと思っていた時から、たぶん、彼に好意を抱いている。
 支配したいと思うのも自分のモノにした優越感に浸りたかったのも、全てただの独占欲だったのだ。
 こんな関係になる前、二度も強引に抱いてしまったことを少なからず後悔していたリヴァイは言うなればただの不器用で、これ以上嫌われてしまわないようにするにはどうしたらよいかわからなかった。
 とりあえずもう無理矢理に手を出すことを止めよう。そう思っていた。
 けれど、あの日エレンに初めて呼びとめられた。
 何か言いたいことがあるのだろうと、あまり人の入らない保管室に連れていった。エレンは何も言わなかった。
 体に触れてしまうと抑えが利かなくなるから出来るだけ触れないようにした。
 煽るようなことを言ったのも、エレンがいつでも逃げ出せるように逃げ道を作ったつもりだった。
 けれど、エレンは顔を仄かに赤くして潤んだような瞳を期待に染める。
 以前とは違う反応だった。物欲しそうにリヴァイを見つめ自分から顔を近づけてくる。
 ああ、可愛い。思わず少し笑って、エレンが逃げ出す前に唇を塞いでいた。
 その可愛い顔をもっと見たくなった。でも、離れようとしても強くスーツを引き寄せられて、求められた。
 可愛すぎる、このまま食べてやろうか。だが、このまま流されてまたセックスしてしまっては関係は変わらないと思った。
 エレンを抱きたい欲求ばかりで埋め尽くされるこの脳みそを冷やす必要がある。
 ちょうど明日から出張だし、この間に頭を冷やして、帰ったらすぐにハンジを呼びだそう。
 そうしてエレンがリヴァイに責任取れと言ってきた日にハンジを呼びつけたのは、一刻も早くエレンとのことをどうにかしたいからだった。
 けれど結局、他の男と寝るなどと言いだしたエレンに腹が立って、強引に腕を引いていた。
 もっと触れて欲しくなるから離せと言うエレンは可愛くて、でも男の所に行くから離せと言うエレンは可愛くなかった。
 他の男などに触れられてたまるか。男であるエレンに女を抱くなとは言わない。
 異性を抱きたくなるのは人間として当然のことで、そこまでエレンを縛りつけることはできない。
 リヴァイが抱くのは女も男も関係なくエレン一人で十分だけれど、それはリヴァイが勝手に決めたことだ。

16 :
.

17 :
 でも、どうしても、エレンを抱く男は自分だけでありたかった。そうしたらエレンは、苦しそうに顔を歪めて自分の元に堕ちてきた。
 女の人のところには行かないで、と声を震わせて。
 エレンももしかしたら自分以外を抱かないでほしいと思ってくれているのかもしれないと思った。
 己だけを求めて欲しいと。
 エレンもリヴァイと同じ気持ちなのかもしれない、と。
 そう思ったら我儘だとわかっていてもエレンの心が欲しくなった。
 優しくして、甘やかして、体だけじゃなくて心も満たせる存在になりたいと思いはじめてしまった。
 エレンは頑なにリヴァイとの間に濃い一線を引いているのだ。それが嫌でたまらない。

「エレンに距離を置かれるのが嫌なんだ」
「あー…ちょっと待って。話が食い違ってる気がする。この話は緊縛プレイじゃなくて普通にセックスしたいんだけど…っていう話?それとも、Rじゃなくて恋人にしたいんだけど、っていう話?」
「……後者だ」
「リヴァイは言葉が足りないよ。不器用すぎる」

 ハンジが呆れたように言った。自分の頭の中だけで考えすぎて、ハンジとの会話が飛んでしまったらしい。
 昔から、肝心なことが伝えられない。仕事になれば話は別だけれど、リヴァイは自分の気持ちを言うのが苦手だった。

「てっきりリヴァイとエレンはただのRだと思っていたよ。でも、リヴァイは彼が好きなんだね。だったら初めからそう言ってくれる?何で悩んでるのかわからないけど、そんなの好きだって言っちゃえばいいんだよ」

 簡単に言ってくれる。
 けれど、女とのセックスをそれなりに楽しんでいたエレンを無理矢理にでもあんな体にしてしまったのに、心までも手に入れようだなんてリヴァイは思えなかった。
 好きだと告げてしまえば、彼は二度とリヴァイを求めようとはしない気がする。
 リヴァイがエレンを抱く理由をエレンは聞いてこない。それはきっと聞く必要がないからだ。
 大方、告白されただとか、ここに来るまでに変な女に捕まったとかそんなことだろうと安易に予測はついたが、そんなこと言わなければわからないのに、わざわざ風呂に入ろうとするなんて、余程不快だったのだろうか。

「…入って来い」

 エレンは少しホッとしたように息を吐いて、バスルームへと向かった。

18 :
 手持無沙汰になってしまったリヴァイは窓際の椅子に腰を下ろして煙草に火をつけた。
 戻って来たエレンは性急に求めてきた。温まった体はしっとりとして仄かに赤く色づいている。
 作り出された香料の香りが鼻についたが、いつものエレンの香りではないそれを纏っていると、他人のモノになった彼を抱いているようで少し興奮した。
 唇が腫れてしまいそうなほど貪りながら、エレンが弱いところを攻める。
 乳首はすでにぷっくりと固くなって主張し、指で捏ねたり弾いて引っ掻いたりすれば、エレンはアッ、と短く喘いだ。
 性器はもうとっくに固く勃ち上がっていて、ふるふると震えながら先走りを垂らしている。
 触れたらすぐにでも弾けてしまいそうなそれに何の予告もなしにしゃぶりつけば、エレンは背を反らせて一際大きく喘いだ。

「ひあっ、はぁっ…ゃめ、ん〜っ…」

 女とのセックスが好きだったエレンが口淫されたことがないはずはないだろうに、いつだって彼は嫌がる素振りを見せる。
 初めてエレンとセックスした時は「たべないで」と舌ったらずに言われて、早急に入れたくなるほど興奮した。
 女よりも深く激しい口淫に食べられちゃうかもしれない、と思っているのだとしたら可愛くて堪らない。

「ンッ、も、でちゃ…から…あっあっ」

 じゅぶじゅぶと音を立て吸いながら唇で扱き舌を性器に絡みつかせた。
 だんだん呼吸が短くエレンに、もう限界なのだと察すると先端をじゅっと吸ってから口を離した。
 イきそうなところで口を離されて、思わず出してしまいそうになるのを耐えるように指がシーツを握りこんだ。
 はぁっはぁっ、と詰めていた息を整えるように呼吸を繰り返して、体を震わせる。
 リヴァイが体を起こせばエレンは敏感になった体に必死に力を入れて慣れたように背を向けて尻を上げた。
 強張っている背中を撫でればビクビクッと震えて中もヒクつく。
 背中に覆いかぶさって乳首をきゅうっと摘めば中もリヴァイの性器をぎゅっと締め付けた。

「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ」

 エレンの顔の横に手をついて、エレンの言う通り奥まで突いてやる。
 その度にガクガクと体が震え、ぢゅ、ぐぢゅ、と中をかき混ぜる音とエレンの甘い声がリヴァイの耳にまで届いた。

19 :
「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」

 また、エレンは「ひどくして」と乞う。瞳を潤ませ、快感に熱い吐息を洩らしつつも、その顔は苦しそうに歪められていた。
 これはエレンの本意ではないと思った。だとしたら、何故そんなことを言うのだろう。
 リヴァイは頭の片隅でそんなことを考えながらも、快感には逆らえずに腰を振った。
 奥を突き、ぎりぎりまで抜く度に聞こえるぐじゅ、ぬりゅ、といやらしい音が思考を鈍らせようとしていた。
 リヴァイの放った白濁がうつ伏せになった状態で荒い呼吸を繰り返しているエレンの背中を汚していた。
 セックスを終えた二人の間に甘い時間などは訪れない。
 リヴァイは口下手であるし、エレンは最近リヴァイに控えめな態度で、セックス中以外はあまり言葉を発しなくなった。
 エレンの背中に吐き出したものを雑に拭ってやる。
 その足でベッドから降りると、なんだかやりきれないような気分になって、断りもなく煙草に火をつけた。

「…中に出していいって、言ったのに」

 独り言のように呟かれたエレンの声はしっかりとリヴァイの耳に届いていた。

「体きつくなるだろうが」
「別に。女じゃあるまいし、子どもができるわけでもねぇんだから中出しでも何でもすればいいじゃないですか」
「そういうことじゃねぇ。お前のことを心配してんだ」
「男なんだからそんなに弱くありません」
「…おい。お前さっきから何を言ってる?」
 リヴァイはまだろくに減ってもいない煙草を灰皿に押し付けて、ベッドに近づいた。
 いつの間にかエレンはリヴァイに背を向けるようにして横になり、体を丸めていた。

「だから、優しくすんなって言ってんですよ」
「ああ?」
「ひどくしていいって何度も、」
「俺にそんな趣味はねぇ」

 最初は無理矢理だった。
 だからこそ、今は優しくしてやりたいし、エレンの体にあまり負担がかからないようにしてやりたいと思っているのに、エレンは何故か苛立っているようだった。
「何が気に入らない?」
「…、」
「何でもすればいいって言うなら、俺はお前にひどいことはしたくねぇ」

 言うと、エレンは体を起こして泣きだしそうな声で叫んだ。

20 :
「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」

 リヴァイは目を瞠った。

「そんな風にするなら、他を当たってください」
「エレン」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」
「おい」

 ベッドから降りようとするエレンの腕を思わず掴んだ。
 エレンを女の代わりだと思ったことはないし、女のように抱いていると思ったこともない。
 ただエレンの体を気遣いたくて、甘やかしてやりたかっただけなのに、それが裏目に出ているというのか。

「離してください」

 ハンジが言っていた。
 長い付き合いの私でさえ勘違いするんだから、エレンはもっとわかっていないよ。
 リヴァイは言葉が足りないから、無理やりにでもわからせるしかないかもね。
 ああ、その通りだ。エレンは何もわかっていなかった。
何も伝えていないのだから、理解しろと言う方が無理かもしれない。
 でも、今リヴァイが何を言ったとしてもきっとエレンは信じようとはしないだろう。
 だったら、わからせてやる。
 その腕を引き寄せ、ベッドに組み敷いた。
 顔には出ないが、明らかに苛立っているリヴァイを見て、エレンが目を大きく見開いて驚いた。

「な、離せよ…っ」
「うるせぇ、黙ってろ」
「んぐっ」             

 リヴァイは大きな掌でエレンの口元を塞ぐと、そのまま押さえつけて耳元で囁いた。

「そんなに言うなら、俺のやりたいように抱いてやる…テメェが言ったんだ、何されても文句言うんじゃねぇぞ」

                  






こりゃ続いちまうやつだ(大爆笑)

21 :
 リヴァイとのセックスは気持ち良すぎて堪らなかった。
 腹の奥に男根を埋め込まれ、ぐぽぐぽと出し入れを繰り返されれば敏感な肉はそれを締め付ける。まるで女のようだ。
 リヴァイに言われたように本当に雌にでもされたのかと思う程に与えられる快感にエレンの体は喜んだ。エレンには複数の異性のRがいる。
 けれど、リヴァイとセックスをするようになってから、めっきり連絡をしなくなった。女とのセックスが嫌になったわけではない。
 だが、女を相手にしたところでリヴァイとのセックス以上に気持ち良くなれるとも思えないのだ。
 そうして自然に連絡が薄れれば、相手からの連絡がくることもなく、関係は消滅していった。
 それだけの関係だ。Rなんて。
 そんな関係を持つ女が複数いるエレンには、リヴァイとの関係もそれと同じなのだと思うことに時間はかからなかった。
 リヴァイとはRだ、とエレンの頭は完結する。
 エレンは長らく、恋というものをしていない。社内でリヴァイの姿を見ると、体が疼く。
 あの禁欲的なスーツの下には見た目よりも筋肉質な体が隠されていて、書類を持つあの指が男であるエレンの体を翻弄する。
 そして限界まで高められた体に追い打ちをかけるように太くて固い、熱が…と考えてエレンはハッとした。
 仕事中なのにこんなことを考えてしまうのなんて初めてだ。
 今まで適度にRで性欲を発散してきたエレンには、こんな待ちわびるような我慢できなくなるほど体が疼くなど経験したことない。
 これも、リヴァイとセックスするようになってからだ。女では満足できないエレンの性欲は全てがリヴァイに向けられてしまう。
 以前のエレンであれば相手の都合など考えずに連絡していたがリヴァイに同じようにするのは何故か躊躇われた。この躊躇いを煩わしいと思いつつもエレンはどうしてもリヴァイに対しては強く出られなかった。
 それはエレンが抱かれる側だからかもしれない。
 リヴァイは他の男や女を抱くことはできるがエレンはリヴァイに拒絶されてしまったらただ取り残されるだけで、その体を自分で慰めなければならないのだ。
 エレンは他の男は駄目だというリヴァイの言葉を律儀に守っている。元々、他の男に体を差し出す気など少しもないが。
 幸い、先ほどに会って話をした時、今日は比較的忙しくないと言っていた。

22 :
.

23 :
 たぶん今日ならば断られずに済む。『今日行くから』『セックスさせて』なんてR相手にメッセージを送っていたのに、相手の様子を窺うように『今日空いてますか』とメッセージを送るのは何とも笑える話だった。
 体は正直で、気持ち良すぎる快感に勝手に逃れようとしてしまう。
 何かに掴まっていないと逃げてしまうからエレンはシーツを握りしめ、枕に顔を押し付けて耐える。
 呼吸も苦しい方がいい。
 思考が快楽で埋め尽くされている今、口を遊ばせていたら何を言ってしまうかわからないからだ。
 気持ちいいと素直に言うことも、もっととねだることも、そのためにセックスしているのだから構わないが、何か余計な事を言ってしまうのではないかと何故か不安だった。

「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」

 背中を吸われて体が揺れた。リヴァイは最近、抱き方が変わった。
 以前は強引で、全身を食べられてしまうような、圧倒的な雄の欲望を見せつけられるようなセックスだったように思う。
 抵抗しようとするエレンを力でねじ伏せて、無理矢理言うことを聞かせるような。
 けれど、最近のリヴァイはそうではなかった。簡単に言えば、優しい。
 エレンが抵抗をしなくなったからかもしれないと思ったが、それにしたって優しかった。
 無防備になった背中に小さく口付けられて、確かめるように触れられて、中を穿つ力は強いのに体に触れる指は優しかった。
 リヴァイが強く体を押さえつけてくれないから、エレンは余計にシーツを握る指に力が入る。
 そんな風にリヴァイが抱くから、正面から受け止めるのはどうしても躊躇われた。
 掴むものがなくなってしまうし、リヴァイの優しいキスを正面から受けるのは何故かとても怖かった。
 それなのに、

「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」

 急に中から性器をずるりと抜かれると、正面を向かされた。
 肩で息をしながら額にうっすらと汗をかくリヴァイが瞳に映る。

24 :
「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」

 リヴァイの性器がもう一度、ヒクついて欲しがる後孔に狙いを定めた。

「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」

 駄目、駄目だ。
 エレンは急に焦り出して、咄嗟にそれを手で阻んだ。
 このまま入れられてしまったら駄目だ。
 掴むものを失った手はおそらく目の前の男に縋るように手を伸ばしてしまう。
 そして引き寄せて、自由になった唇はリヴァイの耳元で何を言ってしまうかわからない。
 もうすでに喉元まで出かかっている言葉に、エレンはとても嫌悪している。
 社内で偶然リヴァイを見かけただけで熱くなってしまう体を引きずりながら家に帰ってくると、ご飯も食べずにベッドに横になった。
 油断すれば熱を持つソコに手が伸びてしまいそうになる。
 でもまだ、リヴァイとセックスしてから二日しか経っていない。
 頻繁に連絡して迷惑になるかもしれないと考えるなんて本当に笑える。
 リヴァイから連絡が来たことは一度もなかった。
 むしろあっちから連絡が来れば、遠慮なんてしなくて済むのに。
 リヴァイはセックスしたいと思わないのだろうか。
                  
「…あぁ、」

 エレンは思い出した。
リヴァイはあの日、女は許すと言っていた。
 リヴァイはエレンが他の女とセックスすることに対して何も思わない。
 エレンはリヴァイが抱く他の女を自分と重ね、夢の中の自分にさえ嫉妬したというのに、リヴァイは何とも思わない。
 それはたぶん、リヴァイも他の女を抱いているからだ。
 だからリヴァイはエレンに連絡をしてこない。
 所詮、リヴァイにとってエレンは都合のよいRでしかないのだ。

「っだったら、なんで」

 そもそもリヴァイが男であるエレンとセックスをする理由なんて、妊娠のリスクなく快感を得ることができるからに決まっている。
 女のように濡れない体は面倒ではあるが、後に面倒事を引き起こすことはない。
 妊娠しない、体も弱くはない。
 自分の欲望を気兼ねなく発散することのできる体。

25 :
 だったらどうしてあんな優しく、壊れ物を扱うように触れるのか。
 そんな風に女も抱いているのか。そう思うと堪らなく嫌だった。
見つめる視線も、その指も、女と比べているんじゃないかと不安になる。
 固いばかりの体が女よりも勝っているところなんてない。
 比べるくらいなら、女とセックスしたほうがいいに決まっている。
 エレンとリヴァイの関係はエレンが一方的に手を伸ばしているようなものだ。
 リヴァイはその手をとることも、遠ざけることもできる。
 だからこの関係はエレンがリヴァイに手を伸ばし続け、リヴァイの愛想がつきないよう適度に距離を保たなければすぐに終わってしまう。
 終わらせたくない、とエレンは思う。
 どうして、と問えば今まで気付かないふりをしていた感情はすぐに答えをくれるかもしれない。
 けれど、この薄っぺらな関係にその感情は重すぎる。
 のせればのせるほど歪んで、終いには壊れてしまうかもしれない。
 エレンはそれが怖かった。女のようにされたこの体はもう女を抱くことはできない。
 他の男に抱かれることを望まないエレンはリヴァイとの関係が壊れてしまったら、どうなってしまうのだろう。

「あー!エレンくん!」
「お疲れ様です」

 リヴァイと時間をずらして会社を出る時、ちょうどエレベーターで一緒になった年上の女性社員二人に挨拶をする。
 金曜日だからか、気分の良さそうな二人はこれから飲みに行くらしい。

「エレンくんも行かない?」
「女二人じゃつまらないし、エレンくんが来てくれたら嬉しいな」

 細い手がエレンの腕に巻きついて、ぐっと寄せられる。
 もはや抱きつかれているのと同じくらいに近い距離に、エレンは少し眉を顰めた。

「…すみません。これから予定があって、すぐに行かなくちゃならないんです。また機会があれば御一緒させてください」

 そう言って頭を下げると、えーつまんない!という高い声を聞きながら、早足でホテルへと向かった。
 スーツに少しだけ残る女の匂いを消したかった。
 女に触れられたのが不快だったわけではない。
 女に触れられた体をリヴァイに差し出すのが嫌なのだ。

26 :
「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ、」

 背中越しにリヴァイの荒い呼吸が聞こえる。
 リヴァイの性器が動かされる度にぐちゅぐちゅと聞こえる音は自分の体の中で出されているのだとは到底思えなかった。

「あっ、ん、ふ…っ、ぅ、」

 中が擦れる。気持ちいい。エレンは熱に浮かされたような頭でぼんやりと考える。
 今リヴァイはどんな顔をしているのだろう。
 しかし、振りかえることも、正面からリヴァイを受け止めることもしたくはなかった。
 その顔を見てしまったら、絶対に彼に縋ってしまうと確信していたからだ。
 リヴァイを求め、その体に腕を回して引き寄せて呼吸を近くて感じたい。
 離したくない、離して欲しくないと口走ってしまいそうになる。
 それを耐えるようにエレンは枕に顔を押し付けて、リヴァイに縋りつきたい衝動をシーツを握りしめて耐えるのだ。

「んっ、…っ、ぅ、はぁっ…あ、」

 無防備な背中をリヴァイの指が滑る。優しくするな、まるで大切だとでも言うように触れるな。

「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」

 エレンは「ひどくして」と乞う。そうでないと、好きになってしまうから。
 もう、限界だ。
 リヴァイに優しく触れられるのが、女のように触れられるのが辛くて堪らなかった。
 そうじゃない。アンタがオレを抱くのはそういうことをしたいからじゃねぇだろう。
 エレンは決めつけて、リヴァイに当たった。
 終わらせたくないと思っていたのに、一度口にしてしまえば止まらなくなった。

「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」
「そんな風にするなら、他を当たってください」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」

 ああ、終わりだ。
 こんな面倒な事を言う奴はRに必要ない。だったら、捨てられる前に自分から離れた方がマシだ。
 けれど、リヴァイはエレンの腕を掴んだ。
 強引にベッドに組み敷かれて、視界に映ったリヴァイは明らかに苛立っていた。なんで、どうして。

27 :
 アンタはオレを引きとめる程オレを想ってはいないだろう。
 他の女を抱いていいと言う程オレを想っていないくせに。
 ただのRとしか思ってないくせに。
 どろどろになっているくせにきつく締め付けてくるエレンの後孔に自分の欲望をねじ込んでから、一体どのくらいの時間が経ったのだろう。
 優しくするな、と言って嫌がるエレンに思考が鈍るくらい甘い愛撫を続けた。
 何度射精したかもわからないし、何度かは出さずに、中で達していたと思う。
 エレンの腰にはもう力が入らずに、リヴァイの手によって支えられているようなものだった。
 こちらに背を向けているエレンの体が可哀想な程に震えていた。

「ぁ…、はぁ、…っ、」

 熱い吐息と小さな喘ぎ。
 挿入してから一度も動かしていない性器はもうエレンの中で溶けてしまったのかと思うくらい馴染んでいた。
 リヴァイも頭がぼうっとしてきていた。
 体中が熱くて、痺れて、神経がむき出しになってしまったみたいに、少し動いたり、呼吸が体に触れるだけでゾクリとした快感が走った。

「…っ、」
「あっ…っ、…っ」

 熱くて熱くて堪らない。額をつたった汗が白く震える背中にポタリと落ちる。
 エレンの体がビクッと跳ね、内側の肉がリヴァイを締め付けた。
 熱い。苦しい。動きたい。
 悪戯をするみたいにきゅんきゅんと締め付けてくる後孔を叱りつけるようにめちゃくちゃに突いて、擦って、泣かせてやりたくなる。
 しかし、エレンが自分から手を伸ばし縋りついてくるまでは動いてやる気はなかった。

「ゃ…、動いて…っ動いてくらさ…ぁ、はぅ…っ」
「駄目だ…っ」
「ああっ…、ゃめ…っ」

 体に力が入らず、自ら動かすことのできないエレンは顔を真っ赤にし、回らない舌でリヴァイにねだる。
 可愛い、堪らない。
 我慢できずに項にちゅうっと吸いつけば、エレンの口から甘い声が上がった。
 リヴァイの性器を締め付けるのはもはや反射だった。
 エレンは腹の奥からじわじわと全身に広がり犯すような快感から逃れるように必死にシーツを掴み、枕に頬を押し付けていた。
 もうだめ、やだ、うごいて、あつい、とうわ言のように喘ぐ。
 気持ちいい。でも、あと一歩のところで手が届かない。

28 :
.

29 :
 快楽という水に溺れ続けているような感覚だった。この苦しさから引き揚げられて安心したい。
 そうでなければ、もういっそ力尽きて気を失ってしまいたい。
 でも、リヴァイはそのどちらも許さなかった。

「っ、は…な、なんで…っ動いてくれな…っぁ、」
「なんで?お前がひどくしろって言ったんだろうが」

 文句は言うなって言ったよな?
 そう言って、耳の裏を舐めしゃぶる。
 たっぷりと唾液を絡めた舌で、じゅるっと音を立ててそこを吸うと、またきつく締め付けられた。
 油断すれば持って行かれそうになる。リヴァイとて限界に近かった。
「うぁ…っ、ゃ…っ、あついっ…リヴァ、ィさんの…っあっ」

 根元まで沈めた性器はエレンの媚肉に小さく締め付けられて、もう長い間動かしていないのに全く萎える気配もない。
 それどろこか、エレンの喘ぎと熱い呼吸に煽られて興奮しっぱなしだった。

「ぉ、お願い…っリヴァ、イ…さ…っあ、っ」

 シーツを握りしめていた指が震えながら、エレンの腰を掴んでいるリヴァイの手に触れて、きゅっと握りしめた。

「エレン、」

 こんな風にエレンから触れられるのは久しぶりだった。
 何かの拍子に触れることはあっても、セックス中に求めるように触れることをエレンはしなかった。
 いつもそうだった。エレンが掴むのはシーツや枕。リヴァイはそれが面白くなかった。
 後ろからしているのだから仕方ないとは思っていたが、気付けば後ろから挿入するように体勢を変えるのはいつもエレンの方だった。
 強引に正面を向かせても、エレンは頑なに縛れと言ってくる。
 ああ、こいつはわかっていて俺に縋ってこない。
 そう理解したのはエレンに線を引かれていると感じたのと同時だった。

「お前は、俺が嫌いか…」

 自然と口から出てしまった声は思っていたよりも弱々しかった。
 繋ぎとめるように握り返した指は震えていたかもしれない。

30 :
 強引にこんな体にしてしまったエレンの自由を奪いたくはなかった。
 エレンはリヴァイには抱かれるが、男を好きなわけではない。
 もちろん女とセックスしたくなる時だってあるだろう。
 これから先、一緒に生きていきたいと思う相手も見つけるかもしれない。
 だから、女とセックスすることは許したし、気持ちを告げることもしなかった。
 線を引かれて、心までも渡すつもりはないと思っているのならばそれでも構わなかった。
 だったらせめて、体だけは。セックスしている時くらい恋人のように甘やかして、恋人のように抱き合いたいと思っていた。
 けれど、エレンは決してリヴァイに縋りつこうとはしなかった。
 エレンからメッセージが来る度にホッとして、もっと、とねだられると求められているようで嬉しかった。
 いい歳した男が、年下の男の一挙一動で嬉しくなるし、辛くもなる。
 今だって、エレンが自分の指をちょっと握ってくれただけでぶわりと心の底から沸き上がる何かがあった。
 好きだ、と言ってしまいそうになる。
いっそ告げて、エレンがもう自分の所へこないと言うのならばそれでもいいのかもしれない。
 だったら、最後くらいはエレンが泣いて止めろと言ったって、気を失うまで甘やかしてやりたいと思った。
幸い、エレンは今、今まで散々線を引いてきたリヴァイに縋ってしまう程余裕がないし、もう思考もままならないだろう。
 もしかしたら聞こえていなかった、なんてこともあるかもしれない。
 そんな都合のいいことを考えてしまうくらいにはエレンを手放したくはなかった。
 無理矢理エレンを襲った奴が何を言っているんだ、とリヴァイは自嘲する。
 いくら強い人間でも、弱い部分はある。それがリヴァイにとってはエレンだった。
 エレンを自分のモノにしておきたい。でも、縛りつけたくはない。この葛藤がリヴァイの判断を鈍らせる。

「ひっ…!?〜〜っ!」

 掴まれた指を放りだすように離して、ぷっくりと固く尖る乳首を指先で刺激する。
 二本の指で挟んで潰すようにねじれば、エレンの体が一際跳ねて、達してしまったのがわかった。
 性器が痛いほどに締め付けられる。その締め付けに性器がさらに大きくなった。
 ゆっくりと、あまり刺激しないように性器をずるりと抜く。

31 :
 性器の先端と、ぱくりと開いたままの後孔が粘りのある糸を引いていた。
 頭がくらくらする。少し擦れただけで出してしまいそうになった。
「アッ…っ、ぁ!」

 その小さな刺激でさえエレンは耐えきれずまた達してしまったようだった。  ビクビクと跳ねる性器が先走りと自身の出した精液でどろどろ濡れている光景はなんともいやらしい。
 その力の入らないエレンの体を気遣うようにして仰向けにさせる。
 瞳を潤ませ、とろけた表情を見せるエレンに、さらにリヴァイは興奮して、性器を固く猛らせた。
 はぁ、はぁ…と震えた呼吸が聞こえる。リヴァイは正面からエレンを抱きしめる。
 直に抱きしめたのなんて、初めてかもしれない。

「エレン…、頼むから、俺に触れてくれ…」

 情けない、縋りつくような声だった。
 耳元で、戸惑うように息を呑んだ音が聞こえた気がした。
 まだエレンの手はシーツを弱々しく握っている。

「今日はお前を絶対に縛らない」

 今度こそ、エレンがヒュッと息をしたのを聞いた。

「ゃ、やです…っア!まっ…うぁ…っ」

 エレンの制止の声も聞かず、体の力が入らないのをいいことに太ももを掴みあげると、まだ熱くぬめるそこに性器を押し付け、腰を進めた。

「アアッ!…ぁ、っ…あつ…っま、待ってくださ…っ奥が、熱くて…っあ、んっ…びりびり、する…っ」

 ぬちゅぬちゅと粘りのある液の泡立っている音が聴覚を刺激する。
 今までで一番気持ちが良い。女の中のように柔らかくなった後孔がリヴァイを欲しがって締め付ける。
 やっと与えられた快感に体が喜んでいるのがわかる。

「だ、だめ…っア、縛っ、て…っお願い…っああ!ん、ひぁっ」
「縛らないと、よくねぇか?そうじゃないよな?エレン、」

 もちろん、リヴァイが好きだと告げたって素直には信じない。

「どうして駄目なんだ?」

 まるで子供に聞くような声音だった。

「アッ、だって…っR、だから…っん、ひどくしてくれないと…っ優しく、されたらっ、あっ、好きに、なっちゃう…っ」

 エレンは涙をぽろぽろ零しながら必死に言葉を紡いでいた。
 そうか、エレンはRだと思っていたから、この関係には体以外はいらないと思っていたのか。

32 :
「あっ…!?や、奥…っあ、んあっ、ああっ」

 エレンの体に腕を回し、その体を抱き起こす。
 リヴァイの足の上に跨る姿勢になったことで体重がかかり、エレンの中の性器がもっと奥まで埋め込まれた。
 こうなるともうエレンが掴むものは何もなくなる。
 エレンはその衝撃と快感に無意識にリヴァイの体に腕を伸ばした。

「エレン」

 背を丸め、リヴァイの首元に顔を埋めるエレンの耳に小さく囁いた。その体が怯えたみたいにビクッと跳ねた。

「縋っていい、好きになっていい。俺は初めから、お前をRだなんて思ってねぇ」
「う、や、聞きたくな…っひ、」
「お前以外を抱きたいとも思わないし、興味もねぇ」

 震えるその背中を撫でた。リヴァイは言葉が足りないよ、不器用すぎる。
 そう言われたのを思い出した。気持ちをつたえるのは得意じゃない。
 だったら回りくどいことは言わずにはっきり言えばいい。

「俺はお前が好きだから、お前もそう思ってくれるなら、嬉しいと思う」

 一瞬戸惑うような気配がした。そして、ゆっくりと背中に回されたエレンの両手が震えながらリヴァイの体をきつく抱きしめた。

「…女を抱いていいとか、言わないでください…オレはアンタが他の人とセックスするのは嫌です…っオレが好きだって言うなら、最後まで、手放さないでください…!」

 オレも好きです、と小さく、微かに震える声がリヴァイの耳を擽った。

 

  

   

    
ちからつきた(糞大笑)

33 :
 指先で人差し指の腹を擽られる。
 そのまま上って、指と指の間を擦られ、掌を滑った。
 愛撫にも似た触れ方に、エレンは顔を俯け、静かに息を吐いた。
 そして掌が重なると、指を絡められてぎゅうっと握られた。手に触れられただけなのに、繋いだだけなのに、嬉しいと感じる。
 だが、同時にもっと触れて欲しいと欲張りにもなった。エレベーターが目的の階に着いたと音を告げる。
 今日は会う約束も何もしていなかったから、ドアが開き、リヴァイが一歩足を踏み出せば繋がれた手は離れてしまうのだろう。
 まさか帰りが一緒になるとは思っていなかったから、嬉しくて、余計に離れがたくなってしまう。
 一緒に帰りませんか、飲みに行きませんか、なんて誘うのは簡単だけれど、男同士の恋人という世間的には白い目で見られてもおかしくない関係を気にしすぎて、エレンをさらに躊躇わせていた。

「あ…」

 何と声をかけたらいいだろう、と悩んでいるうちにリヴァイの手がするりと離れた。
 リヴァイはただ、「お疲れ、また明日」と言ってこの箱を自らの足で出た。
 もしかしたらリヴァイの方から誘ってくれるかもしれないと思ったのに、その様子が全くないことにエレンは淋しくなった。
 リヴァイは自分のことを好きだと言ってくれたけれど、エレンがリヴァイを想う程は想ってくれていないのかもしれない。
 エレンもリヴァイもいい大人だ。中学生や高校生の頃のように好きだけではいられない。それはわかっているけれど。

「また明日も会えるかなんてわかんねぇのに」

 エレンは課長であるリヴァイが周りに期待され、色んな仕事を任されていることを知っている。
 だから頻繁に連絡することも、誘うこともしなかった。
 でもそれは、それでエレンが大丈夫というわけではないのだ。もちろん会いたい、もちろん淋しい。
 リヴァイが言ってくれればいくらでも一緒にいるのに。少し離れたリヴァイの背中を見ながらエレンも歩き出した。
 周りには有名な課長と、他課の社員にしか見えないだろう。

「イェーガーさん!」

 高い女性の声に呼びとめられて、ハッとした。
 リヴァイの課のいつもの女性社員だ。
 彼女はビルの玄関の所でエレンを待っていたらしく、先にそこを出たリヴァイにも「お疲れ様です」と挨拶をしていた。

34 :
.

35 :
「お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ。…オレに何か用事?」

 いつもはオフィス前の廊下で話していることが多いから、社内ではなく外でこうして待ち伏せをされていることに少し違和感があった。

「はい!今日はイェーガーさんのお誕生日だって聞いたので、何かお祝いできないかなと思って」
「あ、そっか…誕生日」

 はい!と嬉しそうに笑う彼女を見て驚く。そうか、今日は誕生日か。エレンは完全に忘れていた。
 相変わらず仕事は忙しいし、それ以外はほとんどリヴァイのことを考えていたような気がする。
 今日が何日かをわかっていても、今日が何の日かなんて考えてもいなかった。

「お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「この後何か予定ありますか?なかったらご飯食べに行きませんか?もちろん私が出すので!」
「いや…そんな気にしなくていいよ。おめでとうって言ってくれただけで充分嬉しいから」

 彼女の誘いをやんわりと断る。異性であれば、一緒に食事に行くことも何らおかしくはないのに、と思いながら。
 少し落ち込んでしまった彼女は「そう言うと思ってました」と言って困ったように笑った。

「じゃあまた今度、合同で飲み会でもしましょう!」
「…うん、そうだな」

 彼女が自ら大勢で、と言うのは初めてだ。
 いつもエレンが皆で、と言えば渋い顔をしたのは彼女だったからこの提案は意外だったけれど、なんとなく彼女から二人でご飯食べに行きませんか、と誘われることはもうないような気がした。
 誕生日だと、彼女に言われるまで気がつかなかった。
 今日一日を振り返れば、確かに先輩が少し優しかったり同期がお昼におかずをくれたりしていた。
 あれはもしかしたらそういうことだったのか、と思い当たる。
 おかげでおかずは一品多く食べることができたし、定時で仕事を終えることができたけれど彼らが予想していたようなロマンチックな誕生日はおそらく過ごせないだろう。
 恋人であるリヴァイはエレンの誕生日を知らないだろうし、エレン自身も今さら言ったりしない。
 約束を取り付けていないエレンは、仕事が早く終わろうが、残業しようが、今夜を一人で過ごすことに変わりはないのだ。
 例えば何千円ってする焼き肉弁当だとか。いやあれは予約しないといけないのだった。

36 :
「何か急ぎの」
「今日お前が乗るのはこっちだ」
「はっ?」

 何か急ぎの用ですか、と聞く前に掴まれた腕をそのまま引かれて、エレンが乗る電車とは別の電車のホームに連れて行かれる。
 そっちはリヴァイの家へ向かう電車だ。

「あのっ、どうしてそっちに…今日は何の約束もしてないし、明日だって仕事が…!」

 朝一から昼を跨いで行われるそれに、課長であるリヴァイは出なければいけないはずだ。

「あと腕!離してください!」

 周りからの視線を感じる。慌てて、黙ったまま腕を引くリヴァイの手をパシパシと叩いた。

「ちゃんとついていきますから!」
「…、隣」
「はい…」

 ようやく腕を離してくれたリヴァイは、それでもまだ機嫌が悪そうだった。
 後ろをついてくるのではなく、隣を歩けと言われて大人しく従った。
 そんなに疑わなくても、もう逃げないのに、と思う。リヴァイと一緒にいられることを嫌だと思うはずがない。
 ただ、リヴァイの迷惑にはなりたくないと思っているだけだ。ちょうど到着していた電車に乗り込む。
 この路線はいつもエレンが乗る路線よりも比較的乗客が少ないように思えた。
 吊革を掴むリヴァイの隣に並んで同じように掴んだ。
 リヴァイは元々、口数は少ない方だと思うけれど、今日は不機嫌が相まってもっと少なくて、何だか居心地が悪い。
 オレ何かしたかな、と考えてもピンとくることは思いつかなかった。

「リヴァイさんの家に行くんですか?」
「ああ」
「そ、そうですか」

 会話が続かない。リヴァイはそれを口にしたきり自分から話すことはなく、眉を顰めながら、時折、何か考えているようだった。
 駅に着くとすぐ、リヴァイは「先に家に行って風呂でもためてろ」と言って逆方向へ歩いて行ってしまった。
 何がしたいんだ、と思いつつもリヴァイのマンションへと向かう。エレンのマンションよりも広く、部屋数も多い綺麗なマンションだ。
 エントランスのパネルに部屋番号を入力して開ける。部屋へと繋がる玄関の鍵は以前もらっているから問題はない。
 リヴァイが残業だという時は行かないようにしていたし、勿論アポなしできたこともないので、最初の一回以来この鍵はあまり使ったことはないけれど。

37 :
「お邪魔します…」

 鍵を開けて部屋へ入ると、暗く、静かな部屋が出迎えた。電気をつける。
 相変わらずゴミ一つ落ちていない、モデルルームのような部屋だ。
 春らしくなってきたとは言え、まだ少し夜は肌寒くなるので弱めに暖房をつけておいた。
 リヴァイがすぐに帰ってくるのかは分からないけれど、あの口ぶりだとそんなに時間はかからないのだと思う。
 もう少ししてから風呂に湯を張ろうと決めて、ふかふかのソファに腰を下ろした。
 今日はラッキーだと思う。
 エレベーターで一緒になっただけでなく、リヴァイの意図はわからないが夜は一緒に過ごせるらしい。
 誕生日だから、神様が気まぐれでプレゼントしてくれたのかもしれない。
 そんな子どものようなことを考えて、ふ、と笑った。

「秘密にしよ」

 秘密にして、自分だけの誕生日の思い出にしよう。
 リヴァイの誕生日はいつなのだろう。その時まで恋人という関係が続いていたらいいな、と思う。
 もうエレンもリヴァイも誕生日を喜ぶような歳でもないけれど、それでも祝ってもらえるなら嬉しい。
 それが好きな相手なら尚更。
 部屋も暖まった頃、風呂をため始めた。
 リヴァイが帰ってくるまで何もやることがなくてぼうっとして、風呂が溜まったという知らせと玄関を開ける音が耳に入ったのは同時だった。
 すぐにお湯を止めに行って、その足で玄関先を覗く。
 両手にスーパーの袋を持ったリヴァイが靴を脱いでいるのが見えた。

「あの、先にお邪魔してます。風呂もためときました」

 言うと、少し目を丸くしたリヴァイがじっとエレンを見つめている。

「どうかしましたか?」
「…ただいま」
「はい」
「ただいま」
「? お、お帰りなさい」

 その場を動かず何度もただいま、と言うリヴァイに戸惑いつつもそう言えば、彼は満足そうにしてリビングへ消えていった。その後ろを追いかける。

「いっぱい買い物してきたんですね。仕舞うの手伝いますか?」
「いい。お前は風呂に入ってこい」
「え、でも」
「ゆっくり浸かって来い」

 キッチンにスーパーの袋を置いて、着替えもせずスーツの上着だけを脱いで何やら作業を始めたリヴァイの有無を言わせない態度にエレンも折れた。

38 :
 着替えは以前ここに来た時に揃えたものがあったから、それを寝室のクローゼットから出してきた。
 スーツも皺にならないようにハンガーを借りて掛けさせてもらった。
 おそらく今日は自分の部屋へは帰れないだろうし朝一で家に帰るにしたってまたこのスーツを着なければならないだろうから。
 キッチンではリヴァイが何かを切っている音が聞こえてくる。なかなか手際が良かった。
 リヴァイが料理をするなんて想像もしていなかったけれど、コンビニの弁当などを食べている方が想像できなかったから意外ではなかった。
 何を作ろうとしているのか興味はあったが聞いてはいけないような雰囲気が漂っていたので見つめるだけにしておいた。

「シャツは洗濯機にいれておけ」
「わ、わかりました」

 視線は手元からはずことはなかったけれど見つめていたのがバレてしまったようで少し恥ずかしい。
 早足で風呂に向かい、羞恥を晴らすようにして脱いだシャツをバサリと洗濯機の中に放り投げた。今日のリヴァイは調子が狂う。
 夜はきっとセックスするのだろうと当然のように思ったので手が勝手に体を隅々まで綺麗にしていた。
 そして髪も洗って湯船に浸かった後はずっとぼんやりとリヴァイのことを考えていた。
 次第に視界もぼんやりとし始めて逆上せる寸前だと気がついて急いで上がった。
 少しふらつくような気がするけれど結果的にリヴァイの指示通りゆっくりはできたと思う。
 脱衣所で少し落ちつくまで蹲っていると、扉が開いた。

「…まさか逆上せたのか?」
「はい…あ、いや、いいえ」
「ほら」

 顔を上げると額に冷たいものが当てられた。冷えたミネラルウォーターだった。

「すみません…ありがとうございます」

 それを受け取るとリヴァイがエレンのまだ濡れて水滴の垂れる髪をタオルで優しく拭ってくれた。

「落ちついたら、ちゃんと髪乾かしてから来い」

 そう言ってリヴァイは脱衣所から出ていった。どのくらい風呂に入っていたのだろう。
 リヴァイが様子を見にくるくらいだから相当時間が経っていたのかもしれない。
 はぁ、と溜息をつくとミネラルウォーターを煽る。少しだけホッとした。
 そしてしばらくしてから髪を乾かしてリビングへ戻る頃にはすっかり体調は良くなっていた。

39 :
 リビングへ続くドアを開けると、いい匂いがしてきた。途端に空腹なことにも気が付く。
 空腹で、しかも熱い風呂に長時間入っていればそりゃあ逆上せるな、とエレンは情けなくなった。

「もう平気か?」
「はい、すいません。ちょっと目眩がした程度なのでもう大丈夫です」
「そうか」

 座れ、と促されて椅子に座るとテーブルの上にはこの短時間に作ったのかと驚くほど綺麗な料理が並べられていた。
 エレンはあまり料理をしないから簡単なものなのか難しいものなのかはわからないが丼料理じゃないことだけはわかる。

「これ全部リヴァイさんが作ったんですか?」
「急だったからそんなに手間がかかるものは作ってねぇ」

 そうは言いつつも自分では作りそうもない鮭とほうれん草のクリームパスタに、鯛のカルパッチョ、きのこのたくさんのったチキンソテーはガーリックのいい香りがして食欲をそそった。
 レストランで出てくるように綺麗に盛られている料理にエレンは少し感動した。
 いただきます、と手を揃えてさっそく料理を口にすると見た目通り、味もとてもエレン好みで美味しかった。
 手作りだと言う苺のパンナコッタはとろけるような食感で苺の酸味がまた爽やかだった。
 リヴァイがこんなに料理ができるとは知らなかったし、好きなのも知らなかった。
 これまで自分たちはセックスするためだけに会っていたから恋人にならなければ一生知ることもなかったかもしれない。

「すごく美味しかったです。ご馳走様でした」
「こんなモンしか作ってやれなくて悪かったな」
「いえ全然!美味しかったです」
「もっと前から知ってたらちゃんと準備していた」
「?どうしても今日じゃなくちゃダメだったんですか?」

 首を傾げるとリヴァイが眉を顰めてこちらを見ていた。

「…何ですかその顔」
「お前…今日誕生日なんだろう?」
「どうして知ってるんですか?」
「さっきおめでとうって言われてただろうが…」
「あー…なるほど」
「そういうことは先に言っておけ」

 リヴァイは今日が誕生日だと言うことを教えなかったことに対して少し拗ねていたらしい。
 でも、誕生日だと知って慌ててエレンを連れて来て、料理を作って、祝おうとしてくれていたのか。ふは、と思わず笑ってしまった。

40 :
,

41 :
「すみません、オレ今日誕生日なんです」
「もう知ってる。…おめでとう。何か欲しいものはあるか?」
「ありがとうございます。美味しい料理作ってもらったんで、それだけで嬉しいです」

 今日という日を自分だけの思い出にしようと思っていたけれど、リヴァイはちゃんと祝ってくれた。
 毎年一回は必ずくるこの日を自分の特別な人と過ごせたことはとても嬉しいことだと思う。それだけで今日と言う日が特別になる。

「あ、でもリヴァイさんの誕生日も教えてください」
「…十二月二十五日だ」
「クリスマスなんですか?」

 そうだ、と頷くリヴァイを見ながら結構先だなと思う。
 それまで一緒にいられるかはわからないけれど、今度はエレンが祝ってあげたい、と思った。

「じゃあその日はオレが料理を作るので、それまでしっかり料理教えてください」

 これは、これから先も一緒にいたいというエレンの願いだ。風呂上がりのリヴァイから自分と同じ香りがする。
 正確には、今日はエレンがリヴァイと同じ香りを纏っているのだけど、近すぎて、もう境界線なんてわからない。
 全身を隅から隅まで舐められて、吸われて、とにかく泣きだしたくなるほど甘やかされた。
 そのせいでどこに触れられても体が跳ねてしまうし、シーツに擦れるだけで声が出てしまいそうだった。

「んっ、ぁ、…っも、いいって…っ」
「まだだ」
「ああっ、ぅ、…舌で、ぐりぐりって、しないで…っんあ」

 もうぐずぐずになっているはずの後孔にリヴァイの舌がにゅるりと入ってくる。
 そのまま固く尖らせた舌に内側の肉をぐりぐりと押されて、それを押し返すように締め付ける力が強まった。
 自分の後孔が開いていくのがわかる。リヴァイの優しい愛撫で緊張を解いた後孔が、その指と舌によってどんどん柔らかくなっていった。

「う、んぅ…っリヴァイさん…っも、いれてください…っあ、もう充分、だからっ…ぁ、」

 砕けそうになる腰に頑張って力をいれて、向きを変える。

「ここっ…はやく、ぃれて…ください…っ」

 枕に頭をのせ、腰を少し浮かせて散々解された後孔を自身の指で広げて見せると、ローションがくちゅりと音を立てた。

42 :
 自分の指がそのぽってりとした入口に触れただけで体がビクンッと跳ねる。
 ここに早く入れて欲しい。その熱くて固い熱を埋め込んで、奥まで激しく突いて欲しい。

「ぁ…っ、」

 そこに、ぴとりとリヴァイの熱が宛がわれる。後孔が期待してその先端に吸いつくようにキスしているのがわかった。

「はやく、…っリヴァイさん、いっぱいしてください…っいっぱい、ぎゅってしてください…っん」
「エレン、」

 リヴァイが腰を進めると同時に体を少し前に倒す。
 エレンの大好きなリヴァイが、その体がこんなにも近くにある。
 エレンは腕を伸ばしてリヴァイの背中に回すと、そのままぎゅうっと抱きついた。
 ずっとずっと、こうしたかった。
 でも、好きになってはいけないと、好きになるのが怖いと思ってずっと手を伸ばさないようにしてきた。
 でも今はそんなことしなくてもいい。好きなだけ抱きしめていい。
 もうリヴァイはエレンのもので、エレンはリヴァイのものなのだ。

「アッ、ん、好き、です…っリヴァイさ…っひぅ、」
「…俺もだ、エレン」

 疲れてしまったのか、体を丸めて眠るエレンの顔を見て、はあ、と息をついた。エレンが可愛くてたまらない。
 与えてやれるものは何でもしてやりたいと思うのに、どこか遠慮するエレンは今日が誕生日だと言うことも教えてはくれなかった。
 それは単に自分でも忘れていただけだと言っていたが、きっとリヴァイがこうして言わなければずっと言わなかったに違いない。
 渡してあった合鍵もめったに使うことがないのだ。
 ただいま、と言って多少は言わせた感があっても「お帰りなさい」と言ってくれたのは正直嬉しかった。
 リヴァイもエレンも我儘なんて言うような歳でもないし、男だから大体のことは何でもできてしまうけれど、それでも我儘を言って欲しいと思う。

「迷惑なんて、考えなくていい。お前は我慢しすぎだ」

 エレンがリヴァイに迷惑をかけてはいけないと思っていることを知っている。もっと会いたいという願いはリヴァイしか聞いてやることができない。
 リヴァイはただ待っているのだ。エレンが自分から一緒にいたいと望んでくれることを。

43 :
「リヴァイさん、起きてください。オレ一旦家に帰るので先に出ます」

 隣でまだ眠っているリヴァイを揺り起す。
 ぐっすり寝ているからこのまま起こさずに帰ろうかとも思ったが、以前、帰る時はいくら寝ていても絶対に声をかけろと言われたのだ。

「…いっしょにいけばいい」
「でもオレ着替えが…」

 昨日勢いでシャツを洗濯機の中に入れてしまったから、着ていくシャツはないし、人の少ない朝の電車でならまだ今着ている服でもあまり人に会わずに帰れる。
 だからできるだけ早く家を出たかった。このままじゃ寝ぼけたリヴァイに引きとめられて、帰れなくなってしまう。
 仕方がないから無視して出るか、とベッドを降りようとした。
が、枕に顔を押し付けたままのリヴァイに手首を掴まれてしまった。
 離してください、と言っても全く離す様子もないし、寝ているくせに力が強くて全然外せない。
 このままじゃ本当に、とエレンは焦り出す。

「シャツならある」
「は?オレ、リヴァイさんのは着れませんよ?」
「ちがう、お前の、きのうかってきた」
「え?」

 安いので悪いが、と続けられる。
 昨日、買いものに行った時に一緒にエレンのサイズのシャツを買ってきてくれていたらしい。

「だからまだ寝れる」

 そう言ってまた布団の中に引きずり込まれて、がっちりと抱きつかれてしまった。
 リヴァイが案外朝に弱いことを知った朝だった。
 二度寝して、さすがにもう起きないとやばいと思ってリヴァイを起こして適当に朝食を食べた後、買ってきてくれたシャツを着てスーツに着替えた。

「あ、」
「どうした、サイズ合わねぇか?」
「それは大丈夫です、ありがとうございます。いや昨日と同じスーツなのは構わないんですけど、ネクタイも一緒ってのは…って思って」

 スーツもネクタイも昨日と同じなんて、自分の家に帰っていません、と背中に張り付けて歩いているようで少し気が引ける。
 そんなに気にする社員もいないだろうけれど、あの同期ならきっとからかってくるに違いない。

「これやってけ」

 リヴァイがクローゼットからネクタイを一本取り出してくれた。

「え…ありがとうございます」

 落ちついた、少し暗めの青色のネクタイだった。

44 :
 触った感触が普段自分のつけているようなものとは少し違っていて、ずっと触っていたくなるような生地だ。

「それお前にやる」
「え!?これすごい高そうなんですけど!?」
「俺が一番気に入ってるやつ」
「そ、そんなん貰えませんよ!」

 つっ返そうとしてネクタイを差し出すと、正面に立ったリヴァイがそれを手にしてエレンの首に回した。
「昨日誕生日だったろうが。使ったやつで悪いが、貰ってくれ」

 そう言って、手際良くきっちりとネクタイを結ばれてしまえば、もう貰うしかない。嬉しくないわけがないのだ。

「あ…りがとう、ございます」
「誕生日おめでとう。今度はちゃんと何か買ってやる」

 赤い顔は俯いても隠せない。リヴァイが、ふ、と笑う声が聞こえた気がした。
 女を抱くことしか知らなかった体が男に抱かれることを知ってしまった。
 内側を抉られるような刺激は思考も快感に染まり、何も分からなくなるほど気持ち良かった。
 これまでにないほど乱れてしまい、こんなのは違う、オレじゃない、と何度思ったかわからない。
 それでもこれ以上の快感を得ることはこの人意外にはあり得ないとわかっていた。
 繋がりは、体以外に何もない。
 だからこそ、彼を見かけた時はいつもセックスしている姿としか結び付かなくて、体が勝手に疼いて期待しまう。
 そして、その事実にやはりRでしかないのだと落胆した。
 落胆してしまう理由には気がつかないふりをした。
 そして、いつかこの関係が終わってしまった時、自分はおかしくなってしまうかもしれないと不安になって、これ以上は踏み込まないように線を引いた。
 心の中にいつの間にか生まれていたリヴァイへの恋心は、エレン自身によって無視されることで迷子になり、孤独になっていた。
 けれど彼に、リヴァイに、縋っていい、好きになっていい、と言われた時、とてつもなく安心した。
 やっと救われたような安心感、幸福感。
 同時に、もう二度とこんな思いはしたくないと思った。

 エレンは心配してくれていた同期に「社食で悪いけど」と言って昼飯を奢ることにした。
 この会社の食堂はなかなか美味しくて、軽食からボリュームのあるものまで、メニューも豊富だから女性社員にも人気だ。

45 :
 同期に「一番高くてもいいの?」なんて聞かれて、若干顔をひきつらせ頷くと、冗談だと笑われた。
 まだ時間が早いのか、食堂は席を選べるほどには空いていた。
 結局、同期が選んだボリュームのあるカツ丼と特に食べたいものがなかったエレンは日替わり定食を頼んで、窓際の席へと座った。近くに座っている者はいなかった。

「解決したっぽい?なんか吹っ切れたっつーか、落ちついた…?いや、ホッとしたような顔してるな、最近」
「…そんな顔してるか?」
「してるしてる。前は毎日不機嫌って感じだったし、一時期戻ったかと思えば今度は背中に闇背負って、無理してます、って感じだった」

 なんだそれ、と言ってしまいそうになったが、まぁ…間違いではないかもしれない。
 訳も分からずリヴァイに強引に抱かれ、そのくせ放っておかれて頭にきていたし自分のところへ来てくれたリヴァイに少しだけ満足もしたが、その後の関係を維持しようと無理をしていたのも事実だ。
 やっぱり、この同期はふざけていそうに見えて案外人のことをちゃんと見ている。

「…悪かったな、気遣わせて」
「気なんか遣ってねーよ」

 そうは言うけれど、話を聞いてくれようとしたり、食事に誘ってくれたりしてくれていたし、エレンに無理矢理聞くこともせずにいてくれた。
 しかし、それを言ってしまうのは野暮というものだ。
 何があったのかを話すことはできなかった。
 ただ「たぶん、もう大丈夫だと思う」と言えば、彼は「そっか」と笑っただけだった。
 午後は外に出ないといけないからと言って先に食堂を出た同期を見送って、エレンはまだ随分と残っている手もとの昼飯をゆっくりと食べ始めた。
 具合が悪いわけでも、気分が落ちているわけでもない。
 何と言うか実感がわかないような感じで、気がつけばぼうっとしている。
 急に肩の荷を下ろされて楽になるどころか何が起きたのかわからない、という感覚なのだ。
 リヴァイに好きだと言われたのは二日前だった、と思う。
 金曜の夜にホテルで会う約束をして、そのまま次の日の朝まで気が狂う程セックスをしていた。
 肉体が溶けたかと思うくらい全身が熱くて思考もぼんやりとして、体に力が入らなくなった。
 眠る、というよりは気を失いそうになる時に、リヴァイに電話がかかって来たのを覚えている。

46 :
.

47 :
 そして、そのやり取りを辛うじて視界に入れていると、ペットボトルのミネラルウォーターを煽ったリヴァイが口移しでその水を飲ませてくれた。
 そういえば喉もカラカラだった。冷えた水が体内に流れて少しだけ思考がクリアになる。
「トラブったらしいから行ってくる」と言いながら髪を撫でられて、その心地良さにまた目を閉じた。
 目が覚めた時にはリヴァイはいなくなっていた。そういえば呼び出されていたと思い出して、休日なのに大変だな、とぼんやりと思った。
 そして、シャワーを浴びて戻ると、スマートフォンに『そろそろ起きたか。部屋はそのまま出て構わない。また後で』とメッセージが届いていた。そのメッセージには『お疲れ様です。わかりました』と返したが、また後で、と返さなかったのは無意識だったと思う。
 好きだ、と言われた。好きです、とも言った。でも、果たしてこの関係は本当に変わったのか、エレンには自信がない。
 気がつけば昼休憩に入った社員が増えてきたようで、ちらほらと食堂に入ってくる人が増え始めていた。早く食べて出ないと、と食べるペースを速めた。
 エレンの後ろの席に誰かが座った気配がした。椅子の背もたれが、コツリとぶつかる。

「あ、すいません」

 幅を取りすぎていたかもしれないと思って謝ると、背中にドンと何かがのせられたような重みが増した。
 はぁ…と深い溜息が聞こえる。ああ、この匂いは。

「お…お疲れ様です…リヴァイさん」
「…ああ」

 椅子を合わせ、エレンの背中を背もたれにするようにして寄りかかられている。
 頭ごと預けるようにするリヴァイの声は疲労に染まっていていつもよりも低かった。寄りかかられていて体を動かすことができない。
 食事をすることも躊躇われて、疲れたリヴァイの体が楽になるよう、ひたすら背もたれなりきろうとした。
 食堂にはどんどん人が増えていくが、だからと言って離れてください、なんて言うこともできなくて困ってしまった。
 きっと以前までのエレンであれば言っていたと思うけれど。

「お前今日、定時であがれるのか」
「そうですね、たぶん」
「そうか。じゃあ駅前のカフェで待ってろ」 
「え?仕事終わってからですか?」
「ああ。俺も比較的早く帰れる予定だ…というかそろそろ帰らせてもらわねぇとさすがにきつい」

48 :
 今まで普通の会話らしい会話はほとんどしてこなかったから、聞いたことがないのは当たり前かもしれないけれど。

「そろそろって、もしかしてあれから家に帰っていないんですか?」
「…まあな」

 風呂に入りてぇ、とうんざりしたリヴァイの声を聞いて、だから今日はいつもよりもリヴァイの匂いが濃いのか、と考えて急に恥ずかしくなった。
 自然に体が熱くなる。興奮にも似た高揚に頭を振ると背中の重さがなくなった。立ち上がったらしいリヴァイを振りかえる。

「いくら早いって言ってもお前の方が早いだろうから、待っていてくれ」
「でも、お疲れなんじゃ」
「だからだろ。じゃあな」

 何が“だから”なのか。
 見上げたリヴァイの顔には疲労が浮かんでいたが、そう言って肩に手を置かれてしまえば何も言い返すことができなかった。
 定時を迎え、リヴァイに言われた通り駅前のカフェに入る。仕事終わりの時間帯の店内はそれなりに客がいた。
 ホットコーヒーを頼んで席を探すと運良く外がよく見える席が一つだけ空いていたのでそこに座った。
 土曜日の朝、休日出勤していた社員によって発覚したミスはかなりひどいものだったらしい。
 それでも他課に影響が出なかったのは課長であるリヴァイの働きによるものだと聞いた。
 さすがだと思ったが、あんなに疲労しているところを見てしまうと働き過ぎなのではないかと思ってしまう。
 そんな状況で休む時間をエレンが奪ってしまうことは尚更躊躇うし、自分なんかと会うよりもゆっくり休むべきだと思う。
 リヴァイの顔を見たら早く休むように言って帰ろう。
 …言ってもいい立場にいるよな?と不安になったが、たぶん、おそらくだがもう体だけの関係ではないのだと思う。
 はっきりしないな、と思う。
 それにしても、リヴァイからこうして約束を取り付けてくるのは初めてだったから、少し変な感じだ。普通の恋人みたいだ。
 だが、これまでセックスしかしてこなかったから、リヴァイとすることと言えばそれぐらいしか思いつかない。
今日だって当然のようにセックスをするのだと思っている。
 ただ、リヴァイからも誘ってくれるようになっただけでやることは今までと変わらないのかもしれない。
 好きだとは言われたけれど、果たしてそれで恋人になったと思ってもいいのだろうか。

49 :
 これまでの自分では考えもしなかった男同士の恋人。
 男同士の友情以上を経験したことがないのだから実感がわかないのも当たり前なのかもしれない。
 好きになった女を男として守り、支えていきたいと思うのは当然のことだと思う。
 けれど、リヴァイとの関係の中で男であるエレンはどちらかと言えば守られる側なのだろうし、現にセックスでは抱かれる側なのだ。
 だが、エレンもどうしたって男だから、当たり前のようにそうなってしまうことに抵抗があるのも当然のことなのだ。
 エレンは女のように弱い存在ではないのだから。一緒にいる時に女のように扱われていい気はしない。
 それがエレンを好きだと言うリヴァイからの愛情だとしても、男であることを忘れたくはない。
 だから、それを素直に受け止められるのは女側になるセックスの時だけなのだ。
 そう思うと、今まで散々体だけの繋がりだと言っていたセックスこそが自分たちを恋人たらしめるものなのかもしれないと思った。
 考え過ぎだと、思うかもしれない。自分が好きだと思った相手も自分のことを好きだった。それならそれでいいじゃないか。

「エレン。待たせて悪かったな」

 ハッとして顔を上げる。外が見える位置に座っていたというのに全く気がつかなかった。
 腕時計を見ると、リヴァイが来たのはエレンがこのカフェに入ってから一時間経った頃だった。

「お疲れ様です。そんなに待っていませんよ。仕事の方はもう大丈夫なんですか?」
「ああ、何とか。今日の仕事が間に合わないところだったが、あいつらが頑張ってくれたおかげだ」
「そうですか、良かったです」

 いつの間にかエレンの隣が空いていたらしく、リヴァイがそこに座る。はぁ、と重い溜息が聞こえた。
 何か飲みますか、と聞くと少し考えた後に、いらない、と返って来た。

「今日は早く帰って休んだ方がいいんじゃないですか?」
「…そうだな、帰ろう。俺の家に行くぞ」
「は?」

 ぽかんとするエレンを無視して立ち上がり、当然かのようにエレンの飲んでいたコーヒー代を払おうとするリヴァイを何とか抑えて自分で会計を済ませると、二人でカフェを後にした。
 どんどん先を歩いて行ってしまうリヴァイの後を慌てて追いかけて、いつもとは違う電車に乗り込んだ。

50 :
「リヴァイさんの家に行ってもいいんですか?」
「駄目だったら言ってねぇ」
「でも、疲れてるだろうしオレがいたら休めないんじゃ」
「問題ない」
「でも、」
「しつこい」

 聞き入れないのはそっちだろう、と思いつつも、そういえばこの人ははじめから強引だったと思い出して早々にエレンが諦めた。
 ざっと車内を見ても空いている席はなくて、二人並んで吊革に手を伸ばした。
 窓から見える景色がいつもと違う。
こんな風に並んで電車に乗るのは初めてで、リヴァイのいる右側が妙にむずむずした。
 降りるぞ、と言われて降りたのはたぶん乗ってから五つ目くらいの駅だったと思う。
 綺麗な街で、リヴァイに似合うな、と思った。
 道のわからないエレンはリヴァイのあとをついていくしかなくて、疲れている彼に煩わしいと思われないようにと、一歩後ろをただ無言で歩いた。
 途中でコンビニに寄ってミネラルウォーターなどを買ったが、リヴァイの住むマンションは駅から歩いて十分ほどで、うるさくなりがちな駅前から程良く離れた位置にあった。
 さすが優秀なリヴァイ課長と言いたくなるようなマンションに、エレンは何度も瞬きをした。

「…お邪魔、します」

 玄関を開けた瞬間にリヴァイの匂いがふわりと香った。本当にリヴァイの部屋に来てしまったのか、と信じがたいような気分になってしまう。
 今まで会うのはいつものホテルの部屋だったから、リヴァイの家に来るのはもちろん初めてだ。
 彼のことを知っていくのが怖くてセックスする以外で一緒にいることをできるだけ避けていた。
 だから、一緒にいる時間が長くなればなるほど、どんどん新しいことを知っていく。
 例えば吊革を掴むのは左手。エレンは電車が揺れる度にぶつかりそうになる手にいちいちドキドキした。
 それと、見かけによらず甘いものが好きらしい。コンビニでプリンを買っているのを見てしまって、少し笑いそうになった。
 そうやって一つずつリヴァイのことを知って行けるのは、良いことだと、嬉しいことだと思う。

「道は覚えたか?」
「えっと、はい。たぶん。ほとんど一本道でしたし、それほど駅から離れてないですから」

 リヴァイに促されてソファへと座る。広いリビングは綺麗に片付いていて、少し落ちつかない。

51 :
「じゃあ次は一人でも来れるな」
「はあ…」

 ぼんやりとした返事をすれば、リヴァイは何を気にすることもなく隣の部屋へと消えた。
 リヴァイは当然のことのように言ったけれど、一人でここに来るようなことがあるのだろうか。
 今自分がここにいることすら未だに不思議でならないのに、一人で?
 戻って来たリヴァイがリビングのテーブルにコトリと何かを置いた。

「エレン、鍵はここに置いておく。俺は先に風呂に入ってくるからお前は好きにしてろ」

 ソファから振り返ると、確かにテーブルの上に銀色に光る鍵が置かれている。
 わかりました、と答えると、リヴァイは風呂場へと早足で向かった。

「…帰る時は掛けて帰れってことかな」

 エレンはリヴァイのいない部屋でやっと肩の力を抜いた。

「ん、…っ」

 風呂から上がって来たリヴァイが隣に座ったと思えば、すぐに唇を塞がれた。
 やっぱりするのか、と冷静に考えながらも体はどんどん熱くなって、休んで欲しいと思うのにその手を拒むことはできなかった。
 後頭部に回った大きな手に引き寄せられて、口付けが深くなる。
 まだ少し濡れているリヴァイの髪から水滴がぽたりと落ちて、エレンのシャツを濡らした。

「っ、ふ…ぁ、リヴァイさ…っぁ…、は、あの…っ」
「…なんだ」
「その、手、を…」

 今まで伸ばせなかった手を。
 恐る恐るリヴァイの肩に手を伸ばすと、リヴァイが驚いたように何度か瞬きをして、ふ、と笑った。

「どうぞ?」
「…っ」

 腕を持ち上げられて、リヴァイの肩にのせられた。
 その余裕に、おじおじしていた自分が少し恥ずかしくなったけれど、また深いキスをされてしまえばその腕でリヴァイに抱きつかずにはいられなくなった。

「ん、んっ…ぁ、」

 エレンの体はリヴァイに触れられればすぐに反応してしまう。
 体は熱くなって、キスをして舌を絡ませただけでどうしようもなく興奮した。
 現にもうすでにエレンの中心は固くなりはじめているし、リヴァイの指がシャツの裾から入って肌を撫でる度に腰が揺れてしまう。
 もっと、いっぱい触って欲しい、そう欲張りになればなるほど、ぎゅう、と無意識にリヴァイに縋った。

52 :
.

53 :
「エレン…腕、少しゆるめろ…」
「え、ぁ…ごめ、なさ…っ」

 ハッとして慌てて腕を解くと、リヴァイの体がぐらりと傾いて、エレンの胸にぽすりと落ちた。

「え?リヴァイさん?」

 すう、と静かな寝息が聞こえてくる。

「寝てる…?」

 やっぱり相当疲れていたんだ。
 軽く背中を叩いてみたが、起きる様子は全くない。
 おそらく、エレンとホテルで会っていたあの日からずっと休まず駆けまわって、眠る暇もなかったのだろう。
 しばらくどうしようか考えたが、寝ているリヴァイを寝室へ運べるほど力はないので、このままソファに寝かせることにした。
 許可もなく入るのは躊躇ったけれど、風邪を引かせるわけにはいけないと、寝室に入って布団を何枚か持ってくる。
 布団からはリヴァイの香りがして、体の熱を取り戻しかけたが、ぐ、となんとか堪えた。
 ちゃんとベッドで横にならないと疲れはとれないだろうけれど、仕方がない。
 エレンは自分の非力さを悔やんで筋トレしようかな、なんて考えてみる。
 いくら鍛えてもリヴァイには勝てそうもないけれど。
 テーブルの上に置いてあった鍵で玄関に鍵をかけると、玄関ポストにそれを落とした。
 終電には十分間に合いそうだ。
 迷わずに駅まで来ると、あと少しも待てば電車が来そうだった。
 スマートフォンを取り出してメッセージアプリを開く。

『鍵はポストに入れておきました。ゆっくり休んでください。』

 すぐに既読がつくことはないだろう。
 セックスもせずに帰ったのは初めてだ。
 リヴァイの寝顔を見るのも初めてで、眉間の皺がなくなって少し可愛く見えた。
 それに、あんな風に人に寄りかかって寝てしまうなんて意外だった。
 それほど疲れていたのかもしれないけれど、他人にはあまり無防備なところは見せない人なのだろうと思っていたから。
 エレンはスマートフォンを仕舞うと、ホームにゆっくりと到着した電車に乗り込んだ。
 起きてスマートフォンを見ると昨日のメッセージに既読のマークがついていたから、朝はちゃんと起きられたのだと思う。
 少しでも疲れがとれていればいいけれど。
 しかし、会社でばったり顔を合わせて、疲れ云々というよりかは不機嫌そうなことにエレンは首を傾げた。

54 :
 明らかに先を急いでいるリヴァイに頭を下げ、その場を去ろうとした腕を掴まれ、人気のない所まで連れて来られた。
 壁に追い詰められ、リヴァイの腕に囲われて、ジロリと睨まれた。
 逃げられそうもない。

「え、と…あの、オレ何かしました…?」
「…帰るなら起こせ」
「でも、ゆっくり寝て欲しかったんです、けど」

 疲れて寝てしまったリヴァイを起こすようなことはしたくなかったし、彼のことを考えての選択だったのだが、ただ起こさなかったことを怒っているのか、勝手に帰ったことを怒っているのか、エレンにはわからなかった。
 リヴァイが、はぁ、と大きな溜息を吐く。

「…次からはいくら寝ていても起こせ」
「わ、わかりました」

 リヴァイが離れる。
 これまでこうして強引に腕を引かれた時は何かされることが多いから、何事もなく体が離れたことに少しホッとした。
 昨日は、キスはしたのにセックスできなかったから、今ここで体にそういう意味で少しでも触れられたら我慢が出来なくなりそうだった。

「それと、お前あの鍵の意味、わかっているか?」
「掛けて行けってことですよね」
「…違う」
「え?」
「まぁいい。次渡した時はそれ使って家で待ってろ。あと返さなくていい」

 時計を見ながらそう言って去っていくリヴァイの背中を見ていた。
 鍵の意味。
 返さなくていい、と言うのはつまりエレンにくれるということなのだろうか。
 もしかして、あれは合い鍵だったのだろうか。
 確かにリヴァイが使っていた鍵はキーケースについていて、エレンに渡したものとは違った。
 あれは合い鍵だったのか。
 だとしたらそう言ってくれればよかったのに。
 でも、合い鍵なんて大事なものは信用のおける人にしか渡すものじゃないと思う。例えば、恋人、だとか。

「……、恋人」

 口に出した瞬間、ぶわわ、と顔が熱くなる。
 はっきりしない、実感が沸かない、なんて言ってきたのに、リヴァイが自分のことを恋人だと思っているかもしれないと考えただけで急に恥ずかしくなった。

「なんて単純…」

 エレンはその場に座り込み、思わず笑った。うだうだ考えていた。

55 :
 自分は女じゃないから守られたくない、なんて意地を張って、そんなことを考える自分はリヴァイの恋人ではいられないのではないかと思っていた。
 だけど、やっぱりそんなのは考えすぎていただけだった。男だ女だなんて関係ない。
 エレンはリヴァイという人が好きで、好きな人に恋人だと思ってもらえただけでこんなにも嬉しくてたまらない。
 自分よりも弱い存在だから守るんじゃない好きな相手だから守るのだ。
 エレンだって好きな相手を守りたいと思うし心配だってする。
 それはきっとリヴァイだって同じことで、お互いにそう思って、気持ちのうえで対等になれるのが恋人なのだと思う。
 いつかも言ったかもしれない。
 エレンは長らく恋というものをしていなかった。

「はは、久々すぎて忘れてた」

 忙しい日が続いて、リヴァイともなかなか連絡がとれなかった。
 それも一段落して、社食で少し遅い昼食を食べ終え、一息ついているところだった。

「イェーガーさん、お疲れ様です!ここいいですか?」
「ああ、お疲れ。どうぞ」

 正面の席に座ったのはリヴァイの課の子だ。彼女は休憩しに来たのか手には甘い匂いのするカップを持っていた。
 彼女と話すのも久しぶりだ。楽しそうに話すのをエレンはただ合槌をうちながら聞いていた。

「イェーガーさんもしかして恋人できました?」
「…え、なんで?」
「なんか…うーん、落ちついたっていうか…いや前から落ちついた感じではあったんですけど、うーん、とにかく前と何か違う気がします、いい方向に」
「そうかな」

 どう言ったらいいのかわからなくてはっきりしない彼女はいつかの同期の姿と重なるものがあってエレンは、はは、と笑った。
 でも、あの日から心がすっきりしたような気はしている。
 いつもどこかで抱えていた不安はいつの間にか気にならなくなっていた。

「じゃあ今日ご飯行きませんか?恋人いないならいいですよね?」

 ぐ、とこちらに身を乗り出して言う彼女に「えっと、」と戸惑った声を出してしまった。
 すると肩にトン、と手が置かれて反射的に顔をそちらに向けた。

「仕事しろ」
「課長!」

 リヴァイだった。エレンの肩に手を置いているくせに、その言葉は彼女に向けて言っているものだった。

56 :
「今休憩中です。って課長、また邪魔する気なんですか?」
「ああ?別に」

 言いながら、ちらりと横目で見られた。

「予定がねぇなら付き合ってくれるんじゃねぇか?」
「え、」

 女と二人でご飯を食いに行っても構わない、と言われているようでエレンは少しショックだった。
 リヴァイはエレンが女とセックスすることも構わないと言っていたし、こうやって時折、手離すようなことを言うのだ。
 好きだと告げた日にそんなことを言うのは止めて欲しい、と言ったのに、未だにそれを許す真意がわからない。
 ふと、どうしたいんだ、と少し苛立つエレンの手に何かが触れた。

「っ、」

 リヴァイの指だ。
 まだ二人はエレンの前で会話を交わしていると言うのに、テーブルの影に隠れて何食わぬ顔で触れてくる。
 ああ、もう。口では「付き合ってくれるんじゃねぇか」なんて言っておいて、行かせる気なんか少しもないではないか。
 掌に冷たい、金属の感触。それは紛れもなく、リヴァイの部屋の鍵。

「もう!冷やかしにきたんですか?」
「ちゃんと用事があってきたが、もう済んだ」
「課長もちゃんと仕事しないと最近できたって言う恋人に愛想つかされちゃいますよ!」
「ああ…それはねぇだろ。お前もそう思うよな?エレン」
「えっ、そ、そうですね…」

 ああ、ああ、もう、本当に。
 エレンの返答を聞いて満足そうに去っていくその背中に飛びついてやりたくなった。
 クソ、とエレンは心の中で呟く。
じわじわと顔が熱くなっていくのを止めるのに躍起になった。

「それで、今日どうですか?」
「ご、ごめん…予定、できたから…」
「なんだ、残念です」

 次渡した時はそれ使って家で待ってろ。そう言われたことを、エレンは忘れていなかった。
 リヴァイがいつも使っているのとは違う何もついていない鍵で中に入った。
 リヴァイが帰ってくるまで何をしていたのか思い出せないけれど玄関が空いた瞬間に中に引きずり込んでキスをしたのは覚えている。
 珍しくリヴァイが驚いたような顔をして体勢を崩していた。どうしてか、堪らなく触れたくなった。
 今までずっと触れて欲しいと思うばかりだったのに、今日は自分からリヴァイに触れたくて頭がくらくらした程だった。

57 :
 寝室に連れて行かれて、両手を握られたままベッドに座ったリヴァイがこちらを見上げてくる。

「冷や冷やしました。あんなこと言って、オレを試して面白がってるんでしょう?」

 リヴァイの上に乗り上げるようにして跨った。自然と腕は彼の頭を抱きこむ形になる。

「リヴァイさんは、まだオレが女を抱いてもいいと思ってるんですか?」
「お前は俺とセックスするが、男が好きなわけじゃねぇだろう?男なんだから女も抱きたくなって当然だ」

 そう言いながら背中に回った手が骨をなぞるように撫でられて、反射的に仰け反った。
 リヴァイはわかっているのだ。
 抱かれる側のエレンが自分で男であることを忘れたくないと、ただ女のように扱われるのが嫌だと思っていることをちゃんとわかっている。
 だから、こうしてそのチャンスを与えるようなことを言うのだ。
 …そんなこと言うから、Rだと思われるんですよ。
小さく呟いた声はリヴァイの耳にも届いていると思う。

「リヴァイさんはオレ以外も抱きたくなるんですか?…ぁ、」

 首筋をれろりと舐められて、小さく喘ぐ。

「俺はお前しか抱かない」
「でもオレは女とセックスしていいって?」
「男はひっかけるなよ」
「…オレだってリヴァイさんだけです」

 リヴァイだからセックスしたいと思う。抱いて欲しいと思う。
 それは間違いなくリヴァイを好きだからで、好きな人に他人とセックスしてもいいなんて言われたら嫌に決まっている。
 本当は自分のことを好きじゃないのかもしれない、と思ってしまうのは当然だ。

「リヴァイさんはそうやってオレに選択肢を与えようとするけど、そんなの必要ない。もっと縛ってください。…じゃないとオレはどうしていいかわからなくなる…」
「お前を全部、俺のものにしていいのか?」
「…好きな人には全部あげたいと思うし、好きな人は誰にも渡したくないって思うのが、普通なんじゃないんですか」

 男同士で好きだ何だ、と言い合うのはどうしても恥ずかしくて顔を背けてしまう。
 けれど、恋人同士であるならどうだろう。無償に好きだと言いたくなるし、触れていたくもなる。

58 :
.

59 :
「お前はすんなり帰っちまうし、合い鍵を受け取らねぇからその気はないんだと思っていたが…」
「それはリヴァイさんの言葉が足りないんですよ…!」
「……まぁいい。もうお前は俺のものでいいんだな?」

 はい、と言おうとしたその唇を塞がれて、それに応えるようにリヴァイにぎゅうっと抱きついた。
 唇が腫れてしまうかもしれないと思う程にキスをして、自分よりも分厚いリヴァイの手で肌をなぞられ、敏感な部分を擦られて何度も達した。
 今までシーツを掴むしかなかった手でリヴァイに目一杯抱きついて、抑えなくなった声で何度も「好き」とこぼす。
 やはりリヴァイとのセックスは気持ちが良い。思いが通じたとなれば、尚更、気持ちが良かった。

「あ、ああっ…ん、んぅ、リヴァイ、さん…っ」

 もう下半身はローションや体液でぐちゃぐちゃで、あんなにきつく閉じていた後孔もリヴァイの舌と指に翻弄されてだらしなくヒクつき、開いたままになっていた。
 すぐに熱いリヴァイのモノで塞いでくれると思ったのに放っておかれて、もの欲しそうに疼いてしまっている。
 仰向けに寝かされ、赤く熟れた乳首に吸いつかれた。
 じゅう、っときつく吸い上げられて背中がビクビクと跳ねあがる。
 快感を押さえつけるように、リヴァイの頭を抱え込めば、また吸い上げられて、カリッと噛まれた。

「ああっ…んっ!…、はぁっ…、ぁ、噛まな、で…っ」
「でも今のでまたイッただろう、エレン」
「ん、ゃ、…も、おかしく、なりそ…だからっ、入れてください…っ」

 何度もイかされたし、寸止めにもされた。
 もう乳首だけでも達してしまうほど、体中が敏感で、脳が痺れている。このままじゃ気を失ってしまいそうだった。
 自ら足を上げて、リヴァイを見上げる。余裕をなくして歪むその顔に興奮した。

「アッ…、すご、い…ぐちゅぐちゅ、してる…っ」

 後孔の窄まりに指を伸ばして、ぐずぐずに蕩けてヒクつくそこを見せつけるように開いた。
 我慢できずに少しだけ中に入りこんでしまった指に、粘着質な液体がくちゅりと絡みついた。

「ここ、リヴァイさんので、奥まで、いっぱいにしてください…っ」

 はぁっ、と切羽詰まった呼吸が聞こえて、熱くぬめった後孔に熱く、固くなった性器が押し付けられる。

60 :
「ぁ、っ、んっ〜〜〜……っ!」

 そのまま躊躇いもなく、ぐ、と腰を進められて、リヴァイの性器が根元まで内側にぐぢゅんっと突っ込まれた瞬間、全身に電気が走ったみたいにガクガクと震えて、大きすぎる快感に、たまらずリヴァイの背中に爪を立てた。

「あっ、あ…、ぁ…ゃ、すご、い…入れただけ、なのに…っ気持ちいい…っはぁ、」

 体に力が入らないのに、後孔はリヴァイの熱をぎゅうっと締め付けて離さない。

「あっ、ん、リヴァイさん…っ熱い、オレの中でびくって、してる…っは、ぁ…っ」
「お前…っ、そりゃわざとか?」
「な、何…っアッ!…ぁ、まだ、奥っ…」

 足を抱えられて、折りたたまれるようにされると奥まで入ったと思っていた性器がもっと奥まで入り込んできた。
 熱い、大きい、固い。
 隙間なくぴったりと埋まる熱は少しの動きでも敏感に反応して、締め付けてしまう。
 耳元で、「悪い、動く」と余裕のない声が聞こえて、え、と思った瞬間には媚肉を強く擦られた。

「アアアッ…〜〜〜っ、っ、ぁ、く、ぁ…っ」

 全身がスプッスプッと震え、中でイッてしまったのがわかった。
 リヴァイにしがみついていないと、自分が今どこにいるのかがわからなくなってしまいそうで、必死にしがみついた。
 ああ、気持ちいい、すごい、死んじゃいそう。

「アッ!あっ、ん、は、あぁっ…!リヴァイさ…っリヴァイさん…っすき、です…っ」
「ああ、っ俺も好きだ」
「い、いっぱい…っしてくださ…っ…ぁ、んぅ、あ、はぁっ」

 性器を出し入れする度に、ぐぢゅ、ぢゅぶ、と恥ずかしい音が聞こえてくる。
 でも繋がっているのだと実感できて興奮した。顔を近づけて、キスをせがんだ。

「ん…、食べちゃう、みたいなキス、してください…」
「は、なんだそれ」
「ん、好き、です…っ」

 思えば、あの最初のキスでエレンはもうリヴァイのことを好きになっていたのかもしれない。

 

おわり (笑)

内容ごちゃごちゃで本当すいませんでした
ありがとうございました!(大爆笑)

61 :
 背中越しに首筋に噛みつかれる感触。与えられている刺激は確かに痛みなのにゾクリとした。
 腹の奥にまで熱い杭を打ち込まれて、敏感になってしまった内側の肉が擦られる度に女のような声が漏れた。
 他人に体を揺すぶられる感覚に、自分は今、己よりも強い男に抱かれているのだと頭の隅で理解した。
 主導権を完全に握られ、体も、聴覚さえも支配されている。触れられるだけで体は跳ねた。
 ぐじゅ、じゅぶ、と耳に入ってくるいやらしい水音が頭の中で木霊して、耳を塞ぎたいのに体は言うことを利いてくれない。
 こんなのは違う。自分の知っているセックスと違う。こんなに脳が痺れそうなほど気持ちいいセックスは知らない。
 体の芯から気持ちが良いと、ただ単純に快感だけを押し付けられるようなセックス。

「…っ!」

 あれからもう一週間。エレンは毎朝、リヴァイ・アッカーマンと言う男に抱かれる夢に魘されて起きる。
 汗だくになっているシャツを握りしめて、クソ、と忌々しげに吐く。下半身のそれは緩く勃ち上がっていた。
 最悪だ。無理矢理リヴァイに犯されたというのに、夢の中で見る自分はとても気持ち良さそうに、素直に気持ちいいと高い声を上げて善がっていた。
 そしてその夢を見て勃起させているなんて、自分もとんだ変態だ。リヴァイのことをどうこう言える立場ではない。
 この鬱憤を晴らそうとエレンはスマートフォンをタップすると、『今日ヤらせて』と今までで最高に最低なメッセージをRに送った。
 いくら広げられていたとはいえ、リヴァイの凶器ともいえるように太く、固い性器を受け入れるのはつらかった。
 痛みに涙をこぼし、情けない声をあげないように食いしばった唇には血が滲んだ。
 声を抑えるなと指を突っ込まれて掻きまわされれば、今度はだらしなく開きっぱなしになった口からははしたない嬌声と唾液が零れた。
 男としてのプライドをずたずたにされたような気分だった。早く帰りたいと、軋むほど抱きつぶされた体を叱咤して、リヴァイがシャワーを浴びているうちにホテルを出た。
 電車の振動が少しだけリヴァイとのセックスを思い出させて舌打ちをする。手すりを掴んでいる手の手首にはネクタイで縛られた痕が赤く残っていた。

62 :
「あっ、イェーガーさん!どうしたんですか?」

 用がない限り寄りつかない他の課のオフィスに行くと、最近やたら話しかけてくるあの女性社員がいた。
 彼女は目ざとくエレンを見つけると、とたた、と小さな歩幅でこちらまでやってくる。
 エレンは「この書類を届けて来い」と暇そうな同期の奴に言われてここに来た。何でオレが、と文句を言えば「いいから」と背中を押されてしまった。
 このオフィスには近づきたくなかった。なんせ彼女がいる課ということはリヴァイのところだということだからだ。もう二度と顔を見たくない。
 いや、同じ会社である以上それは無理だからせめて自分からは不用意に近づきたくなかった。
 だから彼女に気付いてもらえたのは良かったかもしれない。リヴァイの顔を見ずに用を済ませられそうだ。

「ああちょうど良かった。これ」
「はい、お預かりします。…あれ、どうしてこれをイェーガーさんが?」
「頼まれたんだ」
「そうなんですね。…えへへ」

 少し照れたように笑う彼女に首を傾げる。
 俯きがちに「イェーガーさんが私に会いに来てくれたみたいで嬉しい」と小さく呟いたのがばっちり耳に入ってしまったが、ここは敢えてスルーして「なに?」と問いかければ、「何でもありません!」と彼女は書類を抱きしめて首を振った。
 相変わらず大きくて柔らかそうな胸だ。むくむくと欲がわいてくる。そしてホッとした。
 あんな固くて筋肉質な腕なんかよりも彼女のように柔らかそうですべすべな肌の方が好きだ。断然。
 この小さな体を抱きしめて、胸に顔を埋めて、恥ずかしいと顔を赤くするのを見ながら、段々快楽に染まっていく姿を見たい。

「あ…あの…イェーガーさん…?」
「……え、なに?」
「そんなに見つめられると…恥ずかしい、というか…」

 彼女の顔が想像の通りに赤く染まるのを見てハッとする。そんなに見つめてしまっていたのか。

「わ、悪い…ごめん」
「い、いえっ」

 必死に首を振る彼女を見下ろして少し気まずくなる。
 会社で、しかもこんなオフィスの入り口で他の課の女の子を欲のこもった目で見つめてしまった。セクハラで訴えられてもおかしくない。

63 :
 こんな風になってしまったのも全てリヴァイとのあの夜からだ。リヴァイとのあの行為を思い出さないように必死で女の体のことを考えてしまう。
 そして自分の中で女の体の方が何倍も良いと結論付けては安心しているのだ。今だって、エレンは間違いなくホッとしていた。

「じゃあ、」
「あのっ!今日も、ご飯…だめですか?」

 そろそろ自分のオフィスに帰ろうと踵を返せば、彼女がスーツの裾を掴んでくる。

「あー…」

 今日も約束が、そう言おうとして止まる。
 断られるのを恐れて不安そうに下げられた眉。スーツの裾を掴む指は細く、白い。小動物のような顔とは不釣り合いなほど豊満な胸。
 …ヤりたい。この際この子でもいいかもしれない。なんなら恋人にしてもいい。
 Rのことは黙っていればいいし、この体を今夜にでも抱けるのならばそれも有りかもしれない。
 エレンは彼女に向き直ると、裾を掴む細い指を優しく離す。

「わか、」
「おい、邪魔だ。いつまでもそこに突っ立ってんじゃねぇ」

 わかった、いいよ、と言いかけたエレンの口は、後ろから聞こえたその声がまるで沈黙の魔法だったかのように動かなくなった。
 それなのに、心臓は真逆に忙しなく脈打ち始める。じわりと掌に汗が滲んだ。

「か、課長!お帰りなさい。お疲れ様です」

 彼女が声をかけた。
 何食わぬ顔でエレンの隣に立ったのはあれだけ顔を見たくないと思っていたリヴァイ・アッカーマンだった。
 エレンは早くここから立ち去るべきだったと後悔した。

「じゃあそれよろしくお願いします」
「えっ、あ、はい…」

 早口でそう言うと、リヴァイには目もくれずにエレンはその場を後にした。彼女の残念そうな声が聞こえてきて、恨むならその人を恨めよ、と心の中で呟いた。
 あそこでリヴァイが来なければ彼女は今日エレンと食事に行き、抱かれ、望めば恋人になれたかもしれないのに。
 エレンは少し苛立ち気味に人通りの少ない廊下で足を早めた。だが、

「ぅお…っ!」

 強い力でいきなり腕を引かれてバランスを崩すと、そのまま引きずられるようにして近くのトイレに連れて行かれる。
 その強引さには覚えがあったし、こんなことをするのは一人しか思いつかない。

64 :
.

65 :
「は、なせ…っ何すんだよ…っ」
「黙ってろ」
「おいっ」

 男子トイレの奥の個室に押し込まれた。
 ネクタイを掴まれ、閉められた個室のドアに背中を打ちつけられた。ガンッと扉にぶつかる音がして息が詰まる。

「な、にす…ぐ、ぅっ」

 声出すなと言わんばかりに首を腕で圧迫された。

「なぁエレン。体の具合はどうだ?」
「ぅ、くる、し…っ」
「良かっただろ?」
「あ…っ」

 膝でぐり、と性器を押し上げられる。体がビクッと跳ねて顔が羞恥で赤く染まった。
 なぁ?と耳元で囁かれ、その近さにあの夜のことを思い出してしまう。

「ぅるせぇ…っ変態野郎…!良いわけあるかよ…!」
「…そうか。随分良さそうに腰を振っていたと思うが」
「っんなわけねぇだろうが!頭がイカれてるから夢でもみたんじゃねぇの…っ?」
「随分生意気な口利くじゃねぇか。躾けが必要か?」
「あぅ…っゃ、め」

 また。まただ。自分よりも強い男の力。こんな力で押さえつけられたら逃げられるわけがない。
 片腕を使って肩を扉に押し付けられて、空いた方の手はエレンの太ももの内側を撫でていた。
 ぞわぞわと這いあがってくるのは不快感だと思う。でないと困る。
 その手がスラックスの上から性器を撫で上げ、形をなぞるように動いた。

「触んな…っ」
「声が上ずってる」
「うるさ、っあ、おい!こんな所で何する気だよ!」

 片手で器用にベルト緩められ、エレンは焦る。まさかこんな場所で何かしようとする気なのか、と。
 エレンは顔を青くさせた。やめろと言っているのにリヴァイはまるで聞こえていないように徐々に手を進めて、ついにエレンの性器に直に触れてきた。

「ぁ…っ!やめろ…っさわ、ぁ…んあっ」
「大きな声を出すんじゃねぇよ。誰か来ちまうだろうが」
「ア、 ンタがやめればいい話だろ…っ」

 萎えた性器をリヴァイの固い手が揉みこむようにして動く。
 こんな状態で勃つはずがないのに、敏感な部分は少し刺激を与えられただけでも少なからず反応を見せてしまう。

66 :
 しばらくの間、と言っても時間はそんなに経っていないと思う。
 ほんの少しの間、そうしてずっと揉まれていれば、次第に息は上がって、く、と熱っぽい吐息が漏れる。
 だんだんと性器は固くなり始め、先走りを垂らす。

「ぁ、ぅ…は、」
「会社で勃起させてんじゃねぇよ」
「クソ、野郎…っく、」

 リヴァイの笑う声が聞こえる。お前が触るからだろう、と文句を言いたいのに、エレンの良いところを的確に弄るリヴァイの指に翻弄されて口から出るのはくぐもった嬌声だけだ。
 先走りでヌルつく指が性器の先端をくりくりと擦られる。爪で引っ掻かれるとビクンッと跳ねて、アッ、と声が出てしまった。
 漏れてしまう声を抑えようとできるだけ体を丸めるようにして顔を俯かせた。
 リヴァイの顔により近くなってしまい、耳の裏をじゅるりとわざと音を立てて舐められる。

「っ、やめ、ろ…って…っく、ぁっんむ」

 本当にやばい、このままじゃ出しちまう、とリヴァイの肩を押し返そうとしたが、急に唇を塞がれた。
 舌がぬるりと入りこんできて、ゾクゾク…と背筋に快感が走った。

「んっ、ん、ふ、ぅ…っ!?」

 その時、足音が聞こえてきて、確かにトイレへと入って来た。心臓がバクバクと音を立てる。
 それでも唇を離そうとしないリヴァイに嘘だろう、と驚いてもがく。だが、瞳を細め、静かにしろと言われるように唇を強く押し付けられた。

「っ…、ぅ…ぁ……っ」

 ゆるゆると性器を擦られる。バレたらどうしよう。与えられる快感は息を潜めようとする程により際立って、敏感に感じ取る。
 神経を直に愛撫されているように小さな刺激でも拾い上げてしまい、体がぶるりと震えた。
 それに加えて口内を静かに、だがねっとりと味わうように動く舌がエレンの頭を麻痺させた。
 はぁ…、ふ…、と熱い吐息が漏れる。その合間に、絡みあう舌からなのか、先走りでぐちょぐちょに濡れる性器からなのかわからない、くちゅ、という水音が微かに聞こえた。

67 :
「…っ!ぁ…っ…っ、」

 リヴァイの爪が尿道の入り口をカリカリと引っ掻く。もうだめだ、そんなことをされたら出してしまう。
 声も我慢できない。トイレに入ってきたおそらく社員であろう男は、まだそこにいる。この薄い個室の扉越しにまだいるのに。
 エレンは耐えきれず、声を漏らさないよう自分からキスを深めると、リヴァイの肩をぎゅうっと掴んで引き寄せた。

「っ、っ…ぅ……っ〜〜〜!」

 そして、リヴァイが指を先端にねじ込んだ瞬間、エレンの体がビクンッと跳ねて、その固い掌に白濁をぶちまけた。
 エレンが達した瞬間、扉がガタンッと音を立てたが、男は大して気にかけなかったようで、少し窺うような気配はあったが、そのままトイレを跡にした。

「っ、ぷはぁっ…っん!ぅ、はぅ…んぅ…」

 詰めていた息を吐きだした瞬間、またその唇に齧りつかれた。
 まるでセックスをしている最中に気分を高まらせた恋人同士がするように夢中で唇をお互いに貪る。

「んっ…ぅ…、はぁっ…ぁ、も、い…っんぅ!」
「はぁ…っ」

 ここに来て初めてリヴァイの興奮したような呼吸を聞いた。先ほどまで上から目線で、余裕ぶっていたのに。
 その荒い呼吸に頭がぐらりとしたが、ハッと我に返ると、リヴァイの肩を弱々しい力で押し返した。

「も、いい加減、に…っ」

 やっと唇を離せば、お互い荒くなった呼吸を整えた。
 やばい、流されそうになった。というか、出してしまった。
 会社のトイレで、しかもリヴァイの手で扱かれて、イッてしまった。エレンは顔を赤くさせる。

「…、」

 なんとなく、気まずい雰囲気。恥ずかしくてリヴァイの顔を見ることができなかった。

「…ちゃんと落ちつかせてから戻れよ」

 はぁ、と溜息をつきながらそう言ったリヴァイはエレンを解放し、先に個室を出た。
 蛇口の水が流れる音が聞こえてきて、自分が掌にぶちまけてしまった精液を洗い流しているのだと思ったら居たたまれなくて、エレンはトイレに腰を下ろして顔を両手で覆った。

68 :
「遅かったな。どうだった?」
「……はぁ?」

 衣服を整え、顔を洗ってからオフィスへと戻ると、書類を届けろと言ってきた同期がニヤニヤしながらエレンに聞いてきた。

「何が」
「な、何でそんな怒ってんだよ…。だってこの間あの胸のおっきい後輩ちゃんがあまりにも可哀想だったからさぁ、少し手伝ってやろうかと思ってよ」

 俺って良いやつじゃない?と自慢げに言う同期の顔をぶん殴りたくなる。
 そのいらないお節介のせいで見たくない顔も見る羽目になったし、トイレで変態野郎に襲われたんだ。

「で、後輩ちゃん喜んでた?」
「……お前のせいで彼女はチャンス逃したんだよ」
「え!?なんで!?」

 何でだよ!と喚く同期に、エレンはうるせぇ!仕事しろ!と怒鳴りつけた。
 隣に眠る裸の女を横目で見て、エレンは静かに溜息をついた。
 昼間に会社でリヴァイにイかされ、苛立ちと落ち込みを器用に二つ携えて仕事を終わらせた後、その足でRの家へと向かった。
 そんなモヤモヤとした気分でいたからなのか、気がつけば女が「痛い」と声を上げていた。
 半ば強引に両手をまとめ上げ、力で押さえつけるようにして女を後ろから突き上げていた。
 それはまるで自分がリヴァイにされたことそのままで、無意識のうちにエレンはあの日のことを思い出して己と女を重ねていたのだ。
 背中側から時折見える気持ち良さそうな女の顔を見て、自分もこんな風に快楽に顔を歪めていたのかとぼんやり考えもした。
 そして、女相手に力で組み敷いて、自分よりも弱い存在に満足した。
 だが同時に、こんな時にまでリヴァイのことを考えていたことに唖然とした。
 果たして、自分が欲を出した時に考えていたことはなんだったのか。もしかしたら昼間のリヴァイの手淫を思い返していたかもしれない。
 これはまずい。非常に。
 エレンは女とするセックスが大好きなのだ。滑らかな肌、柔らかい胸、そして女特有の甘い匂い。
 それ全てを自分の思い通りに支配できるセックスが大好きなのだ。しかし、エレンは今、とてもまずい状況にある。

69 :
 おそらく心は満足している。女を支配できたこと、欲を発散できたこと。自分の下で喘ぐ女に胸がすいた。
 リヴァイに傷つけられたプライドを修復するには十分だった。けれど、どうしたというのか。
 体が満足していない。物足りない、と思ってしまう。
 セックスをしている時も考えていた。一方的に快感だけを与えられることがどれだけ気持ちが良かったか。
 きっとこの女はあの時の自分のように頭の天辺から足の先まで痺れるような快感に支配され、最高に気持ちがいいはずだ、と。
 夢の中の素直に喘ぐ自分と女の背中が重なった。

「…くそ、」

 アイツのせいだ、と呟く少し欲の混じった声は暗闇に溶けた。
 相変わらず眠れば夢にリヴァイが出てくるし、それが嫌で少しでも起きていようと思えばリヴァイのことを考えてしまう。
 寝不足も良いところだ。Rの所へ赴く気力もない。行ったとしてもどっちにしろ満足できず、やはり考えてしまうのはリヴァイとのセックスの時の快感だから、かえって気分が晴れない。
最後にリヴァイを見てからしばらく顔すら見ていないのに、忘れるどころか記憶の中の彼を追う一方だった。
 毎日悶々としている。同期にも「顔色悪いけど、欲求不満?」なんて聞かれて図星だったから一発お見舞いしておいた。
 それだけ最近のエレンの生活はひどいものなのだ。
 しかし、このままでいいわけがない。ずっとリヴァイのことを考えているのも頭がおかしくなりそうだし、何よりも男として女とのセックスが物足りないと言うのは些か問題だ。
 それ以上に気持ちのいいものを見つけてしまったかのように体が疼いて仕方がない。
 あと少し。この体の疼きの正体を認めてしまえばきっとエレンは落ちてしまう。
 それを男としてのなけなしの矜持でもって否定している。これ以上リヴァイに関わってはだめだ。
 と、そう思っている時ほど、何故か出くわしてしまう。
 仕事のせいだけではない疲労を背負いながらオフィスを出ようとした時、エレベーターの前で書類を片手に部下らしき男と話しているリヴァイが目に入った。
 ドクン、と心臓が跳ねる。
 これ以上関わるな、と思ったばかりなのに、視線はリヴァイから反らすことができず、体も動かすことができない。

70 :
.

71 :
 あちらはまだエレンに気がついていないから今ならば逃げることができるのに。動け、早く。
 しかし、ふとリヴァイがこちらを向いた。視線がぶつかった瞬間、足は縫い付けられたようにさらに動かなくなり、エレンはもう駄目だ、と無意識に諦める。
 部下に何かを指示したリヴァイがこちらを見ながら近づいてくる。目がそらせない。

「エレン」
「っ、」

 リヴァイは名だけを呼び、エレンをじっと見つめた後、背を向けた。行ってしまうのか、と頭の隅で問いかける。
 けれど、ちらりと向けられた視線が「来い」と言っているような気がして、エレンはリヴァイの後ろについていった。
 いつものように強引に腕を引かれたわけでも、これまでのことを脅されたわけでもない。
 ただ、名前を呼ばれただけだ。それなのに先ほどまで全く動かなかった体は勝手に動いて、リヴァイの背中を追いかけている。
 馬鹿だ。
 そう思うにはもう手遅れだった。

「ん、ぁ…っやめ、」
「お前が自分からついてきたんだろうが。止めろも何もねぇよな?」

 誰もいない会議室。
 机に薄い胸を押し付けられるようにして後ろから押さえつけられた。
 いつの間にかスーツは脱がされ、白いワイシャツをたくしあげられて背中をあぐあぐと柔く噛まれている。
 ゾクゾクした。食べられてしまう、と恐怖するのに、その半面で確かに歓喜している自分がいる。
 乳首が冷たい机に押し付けられて、弄られたわけでもないのにコリコリと固くなっている。押しつぶされる度にビクリと体が跳ねた。
 リヴァイの固い手がベルトを外し、スラックスを下着ごと下げる。露わになった性器は寒さからなのか、それとも期待からなのか、ふるりと震えた。

「期待したのか?勃起しかけてる。…今日はちゃんと後ろもしてやる」
「アッ…ん、ぁ…」

 軽く勃ち上がりかけている性器を大きな掌で包みこまれる。すでに先走りが溢れて、ぬるぬると滑りのいい感触がして気持ちが良い。エレンは額を机に押し付けて小さく喘いだ。

「ひあっ!ぁ…やだ…っそこは…っ」
「濡らすもんがねぇから、これで我慢しろ」
「あっ、ん…っ舐めんなぁ…っは、んぁ!」

 リヴァイの舌がきつく閉ざしている後孔をぬるりと舐めあげる。

72 :
 そこはあの夜もこうして攻められたけれど、あの時は少し弄られただけで、その後はローションを塗り手繰られてぐずぐずになるまで指で蕩かされた。
 けれど、今日はローションがない。リヴァイは唾液を絡ませた舌で後孔の皺を丁寧になぞるようにして舐めた。
 そこが唾液で湿り始めると、尻を掴み少し広げるようにする。そしてその隙間に舌をねじ込むと唾液を流し込んだ。
 はぁ、とリヴァイが吐く息が熱くて後孔が敏感に疼く。

「ああっ…う、んぅ…っはぅ…あっ、ぁ」

 リヴァイの熱い舌が、滑る舌が、気持ちいい。
 じゅるじゅると肉を吸われ、舌で内側の肉を擦られる度に頭がおかしくなるんじゃないかってくらいビリビリして、もっと、と強請りたくなる。
 この間のようにもっと太いもので奥まで突き上げて、火傷するほど強く擦って欲しい。
 エレンは、今日までの物足りなかった熱がだんだん満たされていくような気分だった。
 あれほど駄目だ、と否定していたなけなしの矜持はリヴァイを見た瞬間に脆く崩れ去った。
 あの物足りなさ、体の疼きの正体は最初からわかっていたのだ。

「あ…ぁ…っも、いい、から…っぁ」

 己の尻を掴むリヴァイの手を掴む。

「お、ねが…っはぁ、いれて…っ中、いっぱい擦って…っ!奥、いっぱい突いて…っ!」
「っ、お前、いい顔するな…っ」

 今自分がどんな顔をしているかはわからない。
 けれど、 口の周りをシャツの袖で拭ったリヴァイは雄の顔をしていた。今から雌を食おうと、支配しようとする瞳だった。

「んっ…ァ…っ」

 散々舐められた後孔に固く、太い熱が押し付けられる。ゾク、と背筋が震えた。やっと満たされる。
 あ、来る、と思った瞬間、その熱い杭がエレンの腹の奥へと強引にねじ込まれた。

73 :
 エレンは帰宅するなり、スーツを着たまま寒いリビングで蹲った。
 まだ体を押さえつけられているような感触が残っている。あの固く大きな手で腰を掴まれて激しく揺さぶられた。
 後孔にはまだリヴァイの太い性器が収まっているような気がしてきゅんきゅんと疼いて仕方がない。
 リヴァイのあのぎらついた瞳を向けられた時、エレンは確かに歓喜に打ち震えた。
 食べられてしまう、支配されてしまうと考えただけでゾクゾクして、興奮した。
 そして、間違いなく満たされていた。物足りないと、モヤモヤしていたことなど完全に忘れて、リヴァイに触れられた瞬間から体は期待して熱くなり、奥を突かれてとにかく気持ちが良かった。
 会社の会議室なんかじゃなかったら、声など我慢せずにはしたなく喘ぎ、気持ちいい、もっと、と強請っていたに違いない。
 捕食され、支配される快感。これを知ってしまったらもう、戻れない。
 だが、エレンはそこまで分かっていてまだ認めることができない。
 嫌だ、オレは女じゃない。男のモノを突っ込まれて善がるなんてどうかしている。嫌だ嫌だ…!認めたくない…!
 リヴァイの背中を追ってしまった時にすでに崩れ去ったと思っていた男のプライドが、またみっともなく縋りつき始めている。
 エレンはリヴァイの手に触れた両手で、苦しげに歪めた顔を隠すように覆った。驚くほど、頬が熱かった。
 お前大丈夫?と肩を叩かれて、ハッと我に返る。気付かぬうちにぼうっとしていたようで、全く仕事が進んでいなかったことに驚いた。
 いつもならば冷やかす同期もさすがに様子がおかしいと思ったのか、本当にただ心配そうにこちらを見ていた。

「何かあった?」
「…別に、何も」
「嘘つけ。…昼奢ってやろうか?」
「……いらね。食欲もないし」

 あー、そう。と言った彼はそれ以上何も聞いてこなかった。
 いつも余計な事をする奴だが、こう言う時は意外と空気の読める男だった。
 昼を奢ると言ってくれたのも、きっと話を聞いてやるということだったのだろう。だが、言えるはずがなかった。

「…わり、ちょっと休憩してくる」
「はいよ」

 仕事も進んでなのに何が休憩だ、と思いつつも、このままじゃ到底集中できそうになかった。

74 :
 外の風にでも当たりに行こうと思ったけれど、昨日の会議室の前を通らなければならないことを思い出して胸がざわつく。
 そっちに行くのはやめよう。そう思って踵を返した。

「イェーガーさん、お疲れ様です!」
「あ、ああ。お疲れ」

 振り返るとすぐに声をかけられ、少し驚いた。リヴァイの所の女性社員だ。今日もにこにこと笑ってエレンを見上げている。
 男のエレンを見る女の目だ。異性であるエレンのことを好意的に見つめる視線。
 エレンはその瞳で見られていることが何故か居たたまれなくて、視線を反らした。

「あ…どうかしました?」
「え?あ、いや」

 女はこういうことには敏感だ。避けられたのだと思った彼女は不安げに眉を下げる。そうではない。
 そんな目で見るな。男に突かれて喜んで、喘いで、それを忘れられずに体を疼かせて、今もそのことを考えられずにはいられない自分を、そんな目で見るな。
 エレンは彼女の前に立つ自分が恥ずかしくて堪らなかった。彼女はエレンがリヴァイに触れられて喜ぶ姿を、喘ぐ声を知らない。
 きっとそれを知られたら彼女はすぐに気持ち悪いと顔を歪めて二度と近づかなくなるのだろう。

「こ、今度一緒に、ご飯食べに行こうか」
「えっ本当ですか!あの…二人、ですか?」
「君さえ良ければ」
「やったあ!嬉しいです!」

 不安げだった彼女は嬉しそうに笑った。本当に嬉しい、夢みたい、なんて言いながら仄かに頬を桃色に染めるのだ。
 そんな彼女を見てエレンは居心地が悪くなる。エレンは自分のこのあさましい姿を隠すために彼女を利用したのだ。
 女の前では普通の男でいられる。こうやって、女を相手にしていれば、今まで通り快感を与える側でいられるはずだ、と。そう思いながら。

「あっ!課長!」
「っ、」

 不意に彼女がエレンの背後に向かって声を上げる。この前と同じように。

「聞いてください!イェーガーさんと食事に行けることになったんです!」
「そうか。良かったな」
「はい!この間は課長が邪魔したから、機会逃しちゃったんですからね」

 二人はエレンを置いて話を続ける。
 見られていただろうか。昨日女のように抱かれていたエレンが、女に対して男の顔を見せるところを。

75 :
 そうして女を従えるような優越感を得ようとしているところを。

「それは悪かったな。イェーガーにいいもん食わせてもらえよ」

 リヴァイはそう言ってエレンには目もくれずに去っていく。何故かエレンは腹が立った。
 なんだそれ。何で、何もなかったみたいに。
 こっちは散々悩まされているのに、何食わぬ顔で仕事して、部下に冗談まで言って。
 呼んだことないくせいに、イェーガーなんて呼んで。ああ、わかった。またこの前みたいにこの場を去った後で強引に腕を引かれるんだ。
 そして乱暴に唇を塞がれて、余裕そうに笑われるのか。
 けれど、リヴァイは人のたくさんいるオフィスの中へと入って行く。用がない限りそちらへエレンが入ることはないと言うのに。

「リ、っアッカーマン課長…!」
「…なんだ?」

 気付けば、エレンは無意識のうちにリヴァイを呼びとめていた。こちらを振り返るリヴァイと、どうしたのだろうと首を傾げる彼女。
 本当に、オレは何してんだ。
 呼びとめてどうしようというんだ。

「あ…いや、」
「……ああ、そういえばそっちの課長に頼まれていたやつがあったな」
「え、は…はい」

 リヴァイはこちらへ戻ってくると「ついてこい」と言ってエレンを見る。彼女に軽く挨拶をして急いでリヴァイの跡を追った。
 会話一つなく辿りついたのはファイルや資料がぎっしりと詰められた部屋だった。薄暗くて、ほこり臭い。
 小さな窓から差し込む光に埃が反射している。リヴァイはそれを見るなり舌打ちをして「きたねぇな」と呟いた。

「それで?」
「は?」
「何か用があったんじゃねぇのか?」
「は、そっちがついて来いって言ったん、」

 エレンはハッとした。呼びとめたのは自分だ。
 自分で呼びとめたくせに何も考えていなくて、リヴァイに「ついてこい」と言われればのこのこついてきた。
 これじゃあまるでそう言われることを望んでいたみたいだ。
 いや、“みたい”じゃない。強引でも何でも良かった。たぶんエレンはとにかくリヴァイに触れて欲しかった。それを望んでいたのだ。

「…まぁいい。なんだ?期待していたのか?」
「っ、」

 リヴァイがゆっくり近づいてくる。

76 :
.

77 :
 距離を保とうと後ずされば、いつの間にか背後には本棚があってこれ以上後ろへは逃げられない。
 リヴァイの手がエレンを越して本棚にトン、と触れた。もう少しで触れられそうな距離に胸がドキリとした。

「昨日のセックスが忘れられない?」
「ん、なわけ…っ」

 誰もいないこの薄暗い部屋で、リヴァイの声はエレンの耳によく届いた。

「本当か?」

 本棚とリヴァイの腕に囲われる。だが、リヴァイはエレンの体に少しも触れていない。昨日あんなに体を弄っていた手は不自然なほど触れてこなかった。

「雌の顔して自分から可愛く強請ってきたじゃねぇか。さっきはちゃんと男の面してたが……なぁ、もう一回、可愛くおねだりして見せろ」
「っ、ぅるせぇ…っするわけねぇだろ…!」

 リヴァイの顔が近い。少しでも動けば唇が触れてしまいそうなほど近くて、声が詰まった。
でも、おかしい。リヴァイはエレンよりも背が低くて、少し顔を寄せなければこんなに近くはならないはずなのに。

「は…ぁ…、」

 その距離に呼吸が乱れる。
 エレンは悪態をつきながらも無意識のうちに少し顔を俯かせていたのだ。…リヴァイにキスをしてもらうために。
もう少しで触れてしまう。
 あともうちょっとエレンが顔を近づければ、容易く届いてしまいそうな距離。
「ぁ…、」

 自分の口から吐息とともに漏れた声に頭がクラクラした。
 リヴァイは全く動こうとせず、指先すらエレンに触れようともしない。焦らされているのか。それともエレンからキスをしろということなのか。
 してほしいのに、してくれない。自分から近づければすぐに触れられる、そうしたらきっとリヴァイは応えてくれる…けれど、自分からしてしまったらもう認めるしかなくなってしまう。でも、けれど、だって―――。
 エレンの頭が欲求と言い訳で埋め尽くされようとした時、ふっ、と笑う声が聞こえた。
 笑われた?からかわれた?リヴァイはエレンが顔を仄かに赤くして葛藤する所を見て楽しんでいた?

「っク、ソ…!ふざけん…っん!」

 羞恥に腹を立て、暴言を吐こうとした口を塞がれた。

78 :
「んっ、ふ…っ、っ」

 頭はリヴァイへの怒りでいっぱいなはずなのに、やっと唇に触れられた熱にどこかで嬉しいと思っていた。
 熱い舌が絡まる。舌の表面をお互いに擦り合わせれば唾液が混じってぴちゃぴちゃと音を立てた。
 相変わらずリヴァイは本棚に手をついたままで、強引に押さえつけられているわけでもない。
 逃げようと思えば逃げられる。だが、触れているのは口元だけなのにそこから全く動けなかった。

「ぁ、ん…っんぅ……はぁ、ぅ」

 上顎を舐められると体が跳ねた。そこが気持ちいいのだとばれてしまうのが恥ずかしくて、快感をRように瞳をぎゅっと閉じた。
 けれどそんなことをしてももう遅くて、リヴァイはそこばかりを執拗に攻めてくる。

「んっんっ…ゃ、ぁ…は、んんっ」

 気持ちいい。
 エレンは耐えきれずにリヴァイに手を伸ばすと皺一つないスーツを縋るように強く握った。
 腕に縋ろうとしなかったのは、やっと触れてもらえた安心で余裕のできた頭が、そっちが体に触れてこないのにオレが触れるのは癪だ、と思ったからだろう。
 けれど、リヴァイが少しでも唇を離すような気配がすればスーツを引き寄せて自分から舌を深く絡ませた。
早く、早くオレの体に触れよ。

「はぁっ…ん、ふ…っ、」

 そして、やっとリヴァイが触れてくれてくれたと思ったら、スーツを固く握りこんでいた手をやんわりと外された。もう、終わりなんだ、と心が冷えていく。
 そっと瞳を開ける。リヴァイの唇が離れていった。

「ん、ぁ……、」

 さっきよりも遠くなったリヴァイとの距離に少しだけ淋しくなる。
 リヴァイは息を荒くしているエレンをじっと見つめると、何も言わずに、何の未練もなく部屋を出て行った。
 そのスーツが少し皺になっているのを見て、エレンはざまぁみろと顔を苦しくゆがめて笑った。
 体には指一本触れず、激しいキスだけを与えられたエレンは朝よりも顔色が悪いと同期に言われてしまった。
 当たり前だ。先ほどのキスで誤魔化しきれないほど己がリヴァイを求めているのだということを知ってしまったのだから。
 けれどまだそんな自分を受け止められずにいる。

79 :
「今日パーっと行く?女の子と遊べば元気になるかもよ?」
「…そうだな」

 さっきも気にかけてくれたのに、断るのは悪いと思って曖昧に笑って返せば、じゃあ飲みに行こう!と同期は張り切った。
 彼もエレンに何人もRがいることを知らない。
 女と遊ぶならRの所に行った方が早いと思ったが、たまにはこういうのもいいかもしれない。
 今は何も考えたくなかった。リヴァイのことを考えすぎて、求めすぎて、少し疲れた。
 同期な何人か女性を呼んだが、エレンの隣に座った女性は可愛くて、小さくて、何故か会社の後輩の女の子を思い出させた。
 そういえば、あの子とも食事に行く約束をしていた。そんなことをぼうっと考えながら適当に周りに合わせていた。
 そして気がつけば知らないベッドに仰向けに寝ていて、女の子に跨られていた。
 元々エレンはこういう奴なのだ。少しでもいけそうだと思った女にはすぐに手を出したし、簡単にセックスをした。
 こんな風に何も考えずに手を出したのは社会人になってからは久しぶりだったけれど、セックスは好きだったのだ。
 だが、全く満たされない。確かに柔らかく包みこまれるような感覚は気持ちが良かった。けれど、やはり全然足りないのだ。
 あれ以上の快感で上書きすれば満たされるかもしれない。しかし、そもそも上書きするには自分の立場が違いすぎる。
 そうじゃなくて、もっと何もかもがどうでもよくなるくらい激しく“抱かれたい”、とそう思ってしまうのだ。
 全bュ満たされない荘フで家へと帰っbトくると、静かbナ、冷えた空気bェ漂うこの空間bヘ、まるでエレャ唐フ感じる物足b閧ネさと同じだbチた。
 熱いもので埋めて欲しい。頭が痺れる程の快感を与えて欲しい。
 そんな風に抱かれていた夢の中の自分はとても気持ちが良さそうだった。本当は、夢の中の自分を羨ましいと思っていた。
 ―――ああ、オレはあの人とセックスしたいんだ。
 エレンはようやく認めると、そのまま冷たいシーツを握りしめて眠った。

80 :
 あのキスから二週間。
 リヴァイの姿を見かけなかった。なんだか前もこんなことがあった。
 あの時もリヴァイとセックスをした後で、今まで全く関わりがなかったから余計にその存在が気になって苛立ってしまっていたのだと思う。
 この二週間の間に、後輩のあの子とご飯を食べに行った。
 しかしそれは単に約束を守ろうとしたわけではなく、リヴァイの様子が気になって、それを聞きだすためにそれとなく食事に誘った結果約束を守る形になってしまっただけだった。
 本当にただご飯を食べて、話をして、駅まで送り届けた。
 彼女はもしかしたら夜のことを期待してしたかもしれないけれど、それでは自分は満たされず、いたずらにリヴァイとのセックスを思い出して体を疼かせるだけだとわかっていたので、素知らぬふりで手を振った。
 リヴァイは今、出張で地方に言っているのだと彼女から聞いた。
 その物理的な距離に少し気が遠くなったが、「来週帰ってきますよ」と言われて、それだけで少し期待した。
 そして今日、リヴァイは帰ってくるらしい。通りすぎるふりをして廊下からオフィスを覗いたら、彼はいつも通り仕事していた。
 顔を見るのはあのキス以来だった。エレンはその体に欲という熱を携えて、自分のオフィスへと戻った。
 ようやく仕事を終え、お疲れ様です、と声をかけてオフィスから出た。
 リヴァイがいつ仕事を終わらせるのかなんてわからないから、会社のエントランスで待ち伏せるつもりだった。
 エレベーターを降りると、帰り支度をした社員が一様に正面の玄関へと向かう。

「あ、」

 その中に、エレンが待ち焦がれていた背中が見えた。リヴァイだ。エレンは思わず駆け出すと、人を掻きわけてその腕を掴んだ。
 弾かれたようにこちらを向いたリヴァイが、必死なエレンの顔を見上げて少し驚いたように息を飲んだ気がした。
やっと、やっとだ。

「…何か用か」
「何か用か、だって…?」

 本当はわかってるだろう。
 服越しにリヴァイの体温が伝わってくる。エレンはそれだけでも腹の底が熱くなった。

「…アンタとヤりたくてしょうがないんですよ…っあんなに女とセックスすんのが好きだったのに、今は全然物足りないんです」

81 :
 エレンはできるだけ声を荒げないように押し殺して言った。

「……っ雌にした責任、とってくれます…?」

 もう限界だった。
 プライドなんてどうでもいい。とにかくこの体の疼きを止めて欲しかった。
 体が触れて欲しいと言っている。あの固い掌と、筋肉のついた腕、それに分厚い体。
 その全てで激しく抱いてほしい。ひどくしたっていい。強引に組み敷いて、これ以上エレンが逃げないように抱きつぶして欲しい。
 今自分がどれだけ情けない顔をしているのかわからないけれど、本当に何もかもがどうでもよかった。
 男としてのプライドも恥も捨てて、余裕のないエレンが今できる精一杯の、不器用な誘いだった。

「…何か言えよ」

 何も言わずただじっとエレンを見つめるリヴァイの腕を縋るみたいにしてぎゅうっと掴んだ。
 何で何も言わないんだよ。アンタがオレをこんな体にしたのに。ふざけんなよ。

「悪いな。今から用事があるんだ」
「……は?」

 はっきりと言われたその言葉にうっかり力を緩めれば、リヴァイは簡単にその腕を払って背を向けた。
 エレンは何と言われたのか理解できなくて、その背中を唖然と見つめた。
 なんだ、なんだそれ。

「リヴァイ!」

 その背中の向こう側に、慣れたように名を呼ぶ女性が見えた。
 リヴァイはその人に向かって歩き出す。その歩調は先ほどよりも早い。

「は、…なんだそれ、」

 エレンはまさに取り残されたような気分だった。
 人の体で遊んどいて自分には女がいるのかよ。出張から帰って来てすぐに会う約束を取り付ける程、会いたい女がいたのかよ。…今からその女を抱くのかよ。
 リヴァイに触れていた手は空気を掴んでだらしなく垂れた。
 初めは強引に引かれていた腕がいつの間にかリヴァイを求めるようになって、今はこうして振り払われて行き場をなくしている。
 腹が立って悔しい。でも、同じくらい淋しくて虚しかった。
 なんかもう、本当に、どうでもいい。どうしてもリヴァイを行かせたくない。戻って来て、この虚しさを埋めて欲しかった。

82 :
.

83 :
 エレンは拳を握りしめると、リヴァイの背中に向かって叫んだ。

「リヴァイアッカーマン!責任取れクソ野郎…っ!」

 大声を出したエレンに周りの人が立ち止まり、振り返る。
 あの優秀で有名なリヴァイを呼び捨てにした挙句、クソ野郎と罵ったことに周囲は驚きを隠せないでいた。
 最悪だ。何やってんだ、とエレンが一番驚いている。
 なんだなんだと控えめながらもこちらをじろじろと見ながら、周囲が少しずつ動き出した。
 だが、次第に元通りになっていく風景の中にリヴァイの姿は見えなくて、エレンは諦めの息を吐いて掌で視界を覆った。
 格好悪い。最悪。ヤり捨てられた…しかも、男に。
 そう思った。

「テメェ…でけぇ声出してんじゃねぇぞ」

 けれど、耳に入って来た声は不機嫌そうで、強引に腕を掴まれ開けた視界には、やはり不機嫌な顔をしたリヴァイがいた。
 戻って来て、くれたのか。

「……こんな風になったオレはもう用済みってことですか?それともまた女とたくさんセックスすればヤってくれます?」

 思ってもないことがすらすらと口から出た。いや、半分は本当にそう思っている。
 けれど、もう女とセックスをする気など到底起きそうになかった。
 リヴァイは何も応えない。

「もういいです…っ、どうせオレはもう女じゃ満足できません。他の男でも探します」
「待て」

 腕を掴むリヴァイの手に力がこもる。
 そう言われたのも束の間、いつかのようにまた強い力で腕を引かれ、引きずられる様にして歩き出した。

「っ、おい!」

 先ほどの女性の前を通った時に「あれ?私は?」と聞こえたが、リヴァイは「クソして寝ろ」と顔も見ずに言っただけで歩みを止めようとはしなかった。
 彼女は呆れたように「はいはい」と言って手を振っていた。
 離せ、と喚いても離してもらえずに、連れて来られたのは初めてリヴァイとセックスをしたホテルだった。
 フロントでは二人のただならぬ様子に少し眉を寄せられたが、何故か絶大の信頼を寄せられているらしいリヴァイは、また簡単に鍵を手に入れてしまった。
 部屋に着くと、ようやくリヴァイはエレンを振りかえった。

84 :
「離してください…。アンタに触れられると、もっと触って欲しくなるから、嫌なんです…っ」
「離せばお前は違う男の所に行くのか?他の男で満足できるのか?」

 詰め寄られて、冷たいドアに背中が当たる。

「…さあ?他の男となんかヤったことないからわかりません。これから確かめて来ますよ。…だから離してください」
「駄目だ」
「っどうして…っんん!」

 ネクタイを引かれて唇を塞がれる。
 下唇に噛みつかれ舐められて、久しぶりのその熱に背中がゾクリと泡立った。
 もっと、と欲しがるように口を開ければ、ぬちゅりと舌が入りこんで、口内をねっとりと舐められた。

「んぅ、ぁ…っ」
「俺はお前を俺だけの雌にしてぇんだよ。女は許す。だが、他の男は許さねぇ」
「…っじゃあ、なんで…!」

 エレンの下手くそな誘いを断って女の所に行こうとしたのはそっちだろう、と言いかけて口を噤む。
 エレンに女は許すと言うくらいだ、リヴァイにだって他に女がいたっておかしくない。リヴァイが他の女とセックスしようが、エレンに行くな、と言う権利はない。
 けれど、エレンは嫌なのだ。女でも男でも、リヴァイが自分を放って他の人を抱くのが。
 夢の中でリヴァイに抱かれる自分にさえ羨ましいと思ってしまう程、何故自分じゃないのかと悔しくなってしまうのだ。

「クソッ…なんで、オレ、こんな…っ」

 どうしてこんな風になってしまったのだろう。
 エレンは顔を歪めながらリヴァイの背に腕を回すと、その肩に額を擦りつけた。
 手放さないでほしい。離さないでほしい。触れていて欲しい。

「…女の人のところなんか…行かないでください…」

 弱々しくて、情けない声だった。もう、エレンの心も体も満たせるのはリヴァイしかいないのだ。

「ああ、妬いたのか?…お前、可愛いな。やっぱり俺好みだ」

 いつもよりも優しげなリヴァイの声が聞こえて、少し笑ったような気がした。
 強引じゃない力で抱き寄せられて、直に体を合わせているわけじゃないのに心地よかった。

「…うるせぇよ。責任、とってください…」

85 :
 この部屋に来た時に、リヴァイが潔癖だと言っていたのを思い出したから「風呂、入ってきます」と恥ずかしいながらも言ったのに、「別にいい」と言われてベッドに寝かされてしまった。
 本当に潔癖なのかと尋ねると、「あの時はお前、女にべたべた触られていただろう」と言われた。なんとなく恥ずかしくなって、顔が熱くなったような気がした。
 服を全部脱がされて仰向けに寝かされる。リヴァイのちゃんとした裸を見るのは初めてだった。自分よりも筋肉のついた分厚い体。
 男の体。今までこんな体に抱かれていたのかと思うと、これまで嫌だと首を振っていたのが嘘みたいに腰が重くなった。

「ぁ…、う…」
「素直だな?」

 すでに緩く勃ちあがりかけている性器を見て、リヴァイが笑った。
 文句を言う間もなく、乳首に吸いつかれた。初めは感じるわけないと思っていたのに、今では軽く触れられただけでも体が震えてしまう。
 本当に女の体にでもなってしまったんじゃないかと思う程に、体のあちこちがリヴァイに触れられるだけで敏感に反応した。

「あっ……ん、」

 唇で挟み、唾液を纏った熱い舌がその先端をぬるりと舐める。時折じゅっと吸われれば、ビクンッと体が跳ねて熱い吐息が口から零れた。
 リヴァイの指を咥えさせられて湿った指が、もう片方の乳首をくりくりと撫でる。爪で弾かれるようにされると、固くなったそれは敏感に震えた。

「んっ、ん…は、ぁ」

 まだ触れられてもいない後孔が期待に疼いて仕方がない。
 しかし、やっと抱いてくれるのに、リヴァイは優しく愛撫するだけで、すぐに欲しい所には触ってくれなかった。
 ガチガチに勃ち上がって先走りを垂らしている性器も、ヒクつく後孔も触れてくれる気配がない。
 早く触って欲しい。ひどくしてほしい。力で組み敷いて、強引に開かされた後孔に熱いリヴァイの性器をぶち込んで、激しく体を揺さぶって欲しかった。
 エレンは焦れて、リヴァイの肩を押した。

「ぁ…、リヴァイさ…っもう、いいから、早く抱いてくださ…っ」

 リヴァイが驚いたように目を見開いた。
 ああ、驚いてるな、そう思ったけれど、エレンは気にせずにリヴァイに背を向けると枕に頬を押し付けて、尻を高く上げて自分の内腿に手を添わせて足を広げた。

86 :
「ローションでも何でも、いいから、早くぐちゃぐちゃにして…っ早く、リヴァイさんの熱いのでいっぱいにして…っ」
「…っお前、本当に可愛いな」

 少し余裕のなくしたリヴァイの声が背中越しに聞こえた。

「アッ…、」

 そして、後孔にとろりとした液体をかけられると、それを内側に欲しがるように肉がヒクヒクと動いた。
 足に添うようにして垂れる液体は、エレンの性器の裏筋にも添うようにして垂れた。
 その冷たさに体がゾクゾクする。けれど、頭の中はやっと触れてもらえると歓喜でいっぱいだった。

「んんっ…あ、ぅ…っ」

 後孔の表面にローションを塗り手繰るようにリヴァイの指が触れる。
 くるくると円を描くように、筋をなぞるように。ぬちゅ、といやらしい音が聞こえてきた。

「はぁっ…ア…っい、れて」

 小さな声で訴えると、今までゆっくりと縁をなぞっていた指が、ぐにゅ、と後孔の入り口に少しだけねじ込まれる。

「ひああっ!ん、あぁっ」

 そのまま内側の肉を押すようにしてどんどん指が入りこんでくる。エレンは腰が逃げそうになるのを、シーツをぎゅうっと握りこんで耐えた。
 リヴァイの指が根元まで入りこむと、きついけれど、ローションで滑るぬるぬるとした感触が気持ち良くて、ぐじゅぐじゅと動かされる度にエレンは「あ、あ、」と小さな声を漏らした。
 けれど、やはりもっと、頭が痺れるようなあの感覚が欲しい。頭が、早く、もっと、とエレンを急かす。

「もっと、激しくして…っ痛くてもいいから、早く、リヴァイさんっ…」
「っ、」
「ア…ッ、奥まで、一気に、入れて…っオレが、嫌って言っても、いっぱい中擦ってくださ…っ」

 エレンが枕に頬を押し付け、真っ赤な顔に涙をぽろぽろ零しながら熱っぽい視線をリヴァイに向ける。
 リヴァイは自分の性器にぐっと熱がこもるのを感じて、息を飲んだ。
 そして性器にもローションを塗りつけると、ぐちょぐちょになったそれをエレンのヒクつく後孔に押しあてた。

「ンッ……ぁ、やっと…っ」

 エレンの歓喜に染まった声が聞こえた。

87 :
「…っ、奥まで一気に入れて、お前が痛がっても嫌がっても、突いて、擦ってやる」
「っあ…ぅんっ」

 リヴァイは腰に力を入れると、性器を欲しがって吸いついてくるエレンの後孔にガチガチに固くなった欲の塊をぶち込んだ。

「アアアッ!!〜〜〜っんあ、はぁっ、あ、気持ちいい…っ熱い、んんんっ」
「っ中、すげぇうねってるぞ…締まる…エレン、気持ちいいか?」

 欲しがっていた熱が奥までぶち込まれて、全身がビリビリと痺れた。自分では制御できない内側の肉がリヴァイを求めて、いやらしくうねった。

「んっんっ、気持ちいいっ、アアッ、ひぁ、」

 出し入れされる度に後孔と性器がぐぽ、ぢゅぶ、とローションを泡だてて、シーツに垂れた。
 エレンが手の内に堕ちてきたことにリヴァイは少なからず喜んでいた。触れるそばから薄い体が跳ねて嬌声が上がる。
ぐずぐずに蕩けた後孔に己の性器をねじ込めば女のようなそこはうねり、きつく締め付けられた。
 気持ちいい、もっと、と向けてくる視線と甘い声が腰にくる。普段は澄ましたような顔が真っ赤に染まるのは気分が良かった。
 エレンのことは大学を卒業しても繋がりのあった後輩から話を聞いたことがあった。
 すごくモテる奴がいてめちゃくちゃ女食ってるんですよとかそんな感じだったと思う。中には女をとられた奴もいるとも言っていた。
 本当に女にモテる奴と言うのは自分からいかなくても勝手に女から寄ってくるものだ。
 きっとそいつは“とった”んじゃなくて女が馬鹿だったのだろうな、とリヴァイは思った。
 そしてそのエレン・イェーガーが同じ会社に入社していたと知ったのはリヴァイが課長に昇進して何年か経った頃だった。
 女性社員がよく騒いでいる男性社員の名前を聞かされた時リヴァイは記憶の端にあった女遊びの激しい男の名前がエレンだったことを思い出したのだ。
 合同の飲み会の席でリヴァイは初めてエレンをエレンだと認識してその人物を見た。隣にはリヴァイの部下である女性社員が座っていて体をべたべたと触られている。
 他の女性社員も皆控えめながらも羨ましそうに視線を向けていた。エレンは女遊びが激しいようには見えなかった。
 年下の女性に圧され気味でずっと眉を下げて困っているようだったしどちらかと言えば女性経験が少なそうにも見える。

88 :
1

89 :
 自分にだけ見せる顔。雄の顔ではない、男のリヴァイだけが見ることのできるエレンの雌の顔が見たいのだ。
 結果的には…そう、結果的にその顔は見ることができたし、自分のモノにもできたと思う。だが、エレンは心までは許してくれなかった。

「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」

 エレンの背中にちゅ、ちゅ、と吸いつきながら、腰を掴んでぐちゅぐちゅになって解れている後孔を何度も穿つ。
 外気に触れれば熱を持つローションがエレンの内側の肉をますます敏感にしてしまうようで、中は火傷しそうなほどに熱かった。
 こうしてセックスするようになって、どのくらい経つだろうか。季節は冬から春に変わっていた。
 エレンはやたらセックスをねだるようなことはしなかったが、我慢ができなくなるとリヴァイのところにやってくる、そんな感じだった。
 まだ少し、リヴァイに抱かれることに戸惑っているようだったが、指先でも触れればその体は素直になった。
 だが、エレンは最初の頃よりも声を抑えるようになった。
 息ができているのか心配になるくらい顔を枕に押し付けて、くぐもった喘ぎだけを漏らす。
 手はシーツを強く掴んでいて決して離そうとはしなかった。
 まだ男に抱かれる屈辱に耐えているのかと思いきや、気持ちいいか、と聞けば素直に気持ちいいと言うのだ。だったら我慢などせずにもっと喘げばいい。
 縋りつけばいい、そう思っているのにエレンは頑なにそうしようとはしなかった。

「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」

 声を我慢されるのが不愉快で、一度性器をずるりと抜くと、その体をひっくり返してこちらを向かせた。
 顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、荒い息を繰り返すエレンは驚いた様子でリヴァイのことを見た。

「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」
「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」

 抜いたばかりでまだ少し開く後孔に性器の先端を押しあてようとした所で、エレンがそこに手を伸ばしてそれを阻んだ。

90 :
「こっちでするなら、…っ手、縛ってください…っ」
「……なに?」
「お願いします…っ初めての時みたいに、両手、縛ってください…!」

 リヴァイはその懇願に頭がくらくらした。
 確かに初めてエレンとセックスした時はネクタイで両手を縛ったが、あれはエレンが抵抗するからであって、別にリヴァイに緊縛の趣味があるわけではない。

「…理由は?」
「………なんとなく、…っいいから!早く縛れよ!」

 じゃないと入れさせない!みたいに叫ぶものだから、リヴァイは不本意ながらも床に放られた自分のネクタイをとる。
 だが、エレンに「皺にしちゃうからオレのにしてください」と言われて、言うとおりにエレンのネクタイでその両手首を縛った。

「痛くないか?」
「平気です…もっときつくてもいいくらい」

 これでも結構きつめに縛ったのだが、少しの隙間にエレンはまだ不満そうだった。

「跡がついちまうだろうが」
「いい…明日、休みだから」

 そして、手首を縛るために起きあがらせていた上半身をどさりとベッドに横たえると、エレンはリヴァイを見上げて言った。

「ひどく、してください…」

 エレンが何を考えてこんなことを言うのかがわからなかった。

・・・

「…それで、それを聞かせられた私はどうすればいいの?」

 わいわいと騒がしい居酒屋でリヴァイは正面の女性に冷ややかな視線を向けられていた。
 話していた内容は、到底人のいるところでは出来ないほど下世話な話で、この居酒屋が辛うじて個室になっているということだけが救いだった。

91 :
 隣の声はもちろん聞こえる。
 まぁ、両隣ともすでに酔っぱらって大騒ぎなので、こちらの会話が聞こえてはいないと思うけれど。
 エレンが縛ってひどく抱いてほしい、と言ってくる。と、リヴァイは酒が届くなり言ったのだ。

「俺はアイツと普通にセックスがしたい。優しくしてやりてぇ」
「…すればいいじゃない。」

 自分の話をする時はあんなに嬉々とした表情でマシンガンのように話すくせに、リヴァイの話にどうでも良さそうに答えるのは幼馴染で腐れ縁のハンジ・ゾエだった。

「必死に頼むアイツの顔に弱いんだ」
「それでもしたいならすればいいんだよ。」
「でもアイツは受け入れようとしねぇ。縛れと言われる度に一線を引かれているような気がする」

 ハンジの溜息が聞こえてきた。

「ていうか、もう自分のモノにしたんでしょ?それでいいじゃん。そうして欲しいって言うならやってやりなよ」
「そうだが…いや、そうじゃねぇだろう…」

 それはそうなのだが、リヴァイはそれでは納得できないのだ。

「どうして?だってさ、君の可愛いエレンはセックスしたい時に来るわけで、リヴァイだって自分の所にきてくれて満足。
彼は気持ちいいし、お互いそれだけの関係でしょう?実際それだけの繋がりでしかないんだし。むしろそれだけの関係ならもっと気持ち良くなりたいと思うんじゃない?」

 女だというのにはっきりと言うハンジに若干ひきつつも、リヴァイは一理あるその言葉に眉を潜めた。

「それじゃあ体だけみてぇじゃねぇか。アイツはRじゃない」
「は…本気で言ってる?Rじゃなかったらなんなの?」

 リヴァイは黙考した。エレンはRじゃない、と思う。
 確かに会う度にセックス…というかセックスするためにしか会わないけれど、リヴァイの中ではそうではないのだ。
 それだけの関係にしたくない。男のエレンが同性のリヴァイに抱かれる。
 そんなのは普通では考えもしないことで、彼が自分の手の中に堕ちてきただけでも僥倖だと言うのに、リヴァイはそれ以上をエレンに求めているのだ。

「リヴァイがそう思ってなくても、きっと彼はそう思ってるよ。だからリヴァイの所に行くし、セックス自体に嫌とも言わない」
「…それでも、アイツは」

92 :
 正直に話そう。リヴァイはエレンのことを自分のモノにしたいと思っていた時から、たぶん、彼に好意を抱いている。
 支配したいと思うのも自分のモノにした優越感に浸りたかったのも、全てただの独占欲だったのだ。
 こんな関係になる前、二度も強引に抱いてしまったことを少なからず後悔していたリヴァイは言うなればただの不器用で、これ以上嫌われてしまわないようにするにはどうしたらよいかわからなかった。
 とりあえずもう無理矢理に手を出すことを止めよう。そう思っていた。
 けれど、あの日エレンに初めて呼びとめられた。
 何か言いたいことがあるのだろうと、あまり人の入らない保管室に連れていった。エレンは何も言わなかった。
 体に触れてしまうと抑えが利かなくなるから出来るだけ触れないようにした。
 煽るようなことを言ったのも、エレンがいつでも逃げ出せるように逃げ道を作ったつもりだった。
 けれど、エレンは顔を仄かに赤くして潤んだような瞳を期待に染める。
 以前とは違う反応だった。物欲しそうにリヴァイを見つめ自分から顔を近づけてくる。
 ああ、可愛い。思わず少し笑って、エレンが逃げ出す前に唇を塞いでいた。
 その可愛い顔をもっと見たくなった。でも、離れようとしても強くスーツを引き寄せられて、求められた。
 可愛すぎる、このまま食べてやろうか。だが、このまま流されてまたセックスしてしまっては関係は変わらないと思った。
 エレンを抱きたい欲求ばかりで埋め尽くされるこの脳みそを冷やす必要がある。
 ちょうど明日から出張だし、この間に頭を冷やして、帰ったらすぐにハンジを呼びだそう。
 そうしてエレンがリヴァイに責任取れと言ってきた日にハンジを呼びつけたのは、一刻も早くエレンとのことをどうにかしたいからだった。
 けれど結局、他の男と寝るなどと言いだしたエレンに腹が立って、強引に腕を引いていた。
 もっと触れて欲しくなるから離せと言うエレンは可愛くて、でも男の所に行くから離せと言うエレンは可愛くなかった。
 他の男などに触れられてたまるか。男であるエレンに女を抱くなとは言わない。
 異性を抱きたくなるのは人間として当然のことで、そこまでエレンを縛りつけることはできない。
 リヴァイが抱くのは女も男も関係なくエレン一人で十分だけれど、それはリヴァイが勝手に決めたことだ。

93 :
 でも、どうしても、エレンを抱く男は自分だけでありたかった。そうしたらエレンは、苦しそうに顔を歪めて自分の元に堕ちてきた。
 女の人のところには行かないで、と声を震わせて。
 エレンももしかしたら自分以外を抱かないでほしいと思ってくれているのかもしれないと思った。
 己だけを求めて欲しいと。
 エレンもリヴァイと同じ気持ちなのかもしれない、と。
 そう思ったら我儘だとわかっていてもエレンの心が欲しくなった。
 優しくして、甘やかして、体だけじゃなくて心も満たせる存在になりたいと思いはじめてしまった。
 エレンは頑なにリヴァイとの間に濃い一線を引いているのだ。それが嫌でたまらない。

「エレンに距離を置かれるのが嫌なんだ」
「あー…ちょっと待って。話が食い違ってる気がする。この話は緊縛プレイじゃなくて普通にセックスしたいんだけど…っていう話?それとも、Rじゃなくて恋人にしたいんだけど、っていう話?」
「……後者だ」
「リヴァイは言葉が足りないよ。不器用すぎる」

 ハンジが呆れたように言った。自分の頭の中だけで考えすぎて、ハンジとの会話が飛んでしまったらしい。
 昔から、肝心なことが伝えられない。仕事になれば話は別だけれど、リヴァイは自分の気持ちを言うのが苦手だった。

「てっきりリヴァイとエレンはただのRだと思っていたよ。でも、リヴァイは彼が好きなんだね。だったら初めからそう言ってくれる?何で悩んでるのかわからないけど、そんなの好きだって言っちゃえばいいんだよ」

 簡単に言ってくれる。
 けれど、女とのセックスをそれなりに楽しんでいたエレンを無理矢理にでもあんな体にしてしまったのに、心までも手に入れようだなんてリヴァイは思えなかった。
 好きだと告げてしまえば、彼は二度とリヴァイを求めようとはしない気がする。
 リヴァイがエレンを抱く理由をエレンは聞いてこない。それはきっと聞く必要がないからだ。
 大方、告白されただとか、ここに来るまでに変な女に捕まったとかそんなことだろうと安易に予測はついたが、そんなこと言わなければわからないのに、わざわざ風呂に入ろうとするなんて、余程不快だったのだろうか。

「…入って来い」

 エレンは少しホッとしたように息を吐いて、バスルームへと向かった。

94 :
6

95 :
 手持無沙汰になってしまったリヴァイは窓際の椅子に腰を下ろして煙草に火をつけた。
 戻って来たエレンは性急に求めてきた。温まった体はしっとりとして仄かに赤く色づいている。
 作り出された香料の香りが鼻についたが、いつものエレンの香りではないそれを纏っていると、他人のモノになった彼を抱いているようで少し興奮した。
 唇が腫れてしまいそうなほど貪りながら、エレンが弱いところを攻める。
 乳首はすでにぷっくりと固くなって主張し、指で捏ねたり弾いて引っ掻いたりすれば、エレンはアッ、と短く喘いだ。
 性器はもうとっくに固く勃ち上がっていて、ふるふると震えながら先走りを垂らしている。
 触れたらすぐにでも弾けてしまいそうなそれに何の予告もなしにしゃぶりつけば、エレンは背を反らせて一際大きく喘いだ。

「ひあっ、はぁっ…ゃめ、ん〜っ…」

 女とのセックスが好きだったエレンが口淫されたことがないはずはないだろうに、いつだって彼は嫌がる素振りを見せる。
 初めてエレンとセックスした時は「たべないで」と舌ったらずに言われて、早急に入れたくなるほど興奮した。
 女よりも深く激しい口淫に食べられちゃうかもしれない、と思っているのだとしたら可愛くて堪らない。

「ンッ、も、でちゃ…から…あっあっ」

 じゅぶじゅぶと音を立て吸いながら唇で扱き舌を性器に絡みつかせた。
 だんだん呼吸が短くエレンに、もう限界なのだと察すると先端をじゅっと吸ってから口を離した。
 イきそうなところで口を離されて、思わず出してしまいそうになるのを耐えるように指がシーツを握りこんだ。
 はぁっはぁっ、と詰めていた息を整えるように呼吸を繰り返して、体を震わせる。
 リヴァイが体を起こせばエレンは敏感になった体に必死に力を入れて慣れたように背を向けて尻を上げた。
 強張っている背中を撫でればビクビクッと震えて中もヒクつく。
 背中に覆いかぶさって乳首をきゅうっと摘めば中もリヴァイの性器をぎゅっと締め付けた。

「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ」

 エレンの顔の横に手をついて、エレンの言う通り奥まで突いてやる。
 その度にガクガクと体が震え、ぢゅ、ぐぢゅ、と中をかき混ぜる音とエレンの甘い声がリヴァイの耳にまで届いた。

96 :
「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」

 また、エレンは「ひどくして」と乞う。瞳を潤ませ、快感に熱い吐息を洩らしつつも、その顔は苦しそうに歪められていた。
 これはエレンの本意ではないと思った。だとしたら、何故そんなことを言うのだろう。
 リヴァイは頭の片隅でそんなことを考えながらも、快感には逆らえずに腰を振った。
 奥を突き、ぎりぎりまで抜く度に聞こえるぐじゅ、ぬりゅ、といやらしい音が思考を鈍らせようとしていた。
 リヴァイの放った白濁がうつ伏せになった状態で荒い呼吸を繰り返しているエレンの背中を汚していた。
 セックスを終えた二人の間に甘い時間などは訪れない。
 リヴァイは口下手であるし、エレンは最近リヴァイに控えめな態度で、セックス中以外はあまり言葉を発しなくなった。
 エレンの背中に吐き出したものを雑に拭ってやる。
 その足でベッドから降りると、なんだかやりきれないような気分になって、断りもなく煙草に火をつけた。

「…中に出していいって、言ったのに」

 独り言のように呟かれたエレンの声はしっかりとリヴァイの耳に届いていた。

「体きつくなるだろうが」
「別に。女じゃあるまいし、子どもができるわけでもねぇんだから中出しでも何でもすればいいじゃないですか」
「そういうことじゃねぇ。お前のことを心配してんだ」
「男なんだからそんなに弱くありません」
「…おい。お前さっきから何を言ってる?」
 リヴァイはまだろくに減ってもいない煙草を灰皿に押し付けて、ベッドに近づいた。
 いつの間にかエレンはリヴァイに背を向けるようにして横になり、体を丸めていた。

「だから、優しくすんなって言ってんですよ」
「ああ?」
「ひどくしていいって何度も、」
「俺にそんな趣味はねぇ」

 最初は無理矢理だった。
 だからこそ、今は優しくしてやりたいし、エレンの体にあまり負担がかからないようにしてやりたいと思っているのに、エレンは何故か苛立っているようだった。
「何が気に入らない?」
「…、」
「何でもすればいいって言うなら、俺はお前にひどいことはしたくねぇ」

 言うと、エレンは体を起こして泣きだしそうな声で叫んだ。

97 :
「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」

 リヴァイは目を瞠った。

「そんな風にするなら、他を当たってください」
「エレン」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」
「おい」

 ベッドから降りようとするエレンの腕を思わず掴んだ。
 エレンを女の代わりだと思ったことはないし、女のように抱いていると思ったこともない。
 ただエレンの体を気遣いたくて、甘やかしてやりたかっただけなのに、それが裏目に出ているというのか。

「離してください」

 ハンジが言っていた。
 長い付き合いの私でさえ勘違いするんだから、エレンはもっとわかっていないよ。
 リヴァイは言葉が足りないから、無理やりにでもわからせるしかないかもね。
 ああ、その通りだ。エレンは何もわかっていなかった。
何も伝えていないのだから、理解しろと言う方が無理かもしれない。
 でも、今リヴァイが何を言ったとしてもきっとエレンは信じようとはしないだろう。
 だったら、わからせてやる。
 その腕を引き寄せ、ベッドに組み敷いた。
 顔には出ないが、明らかに苛立っているリヴァイを見て、エレンが目を大きく見開いて驚いた。

「な、離せよ…っ」
「うるせぇ、黙ってろ」
「んぐっ」             

 リヴァイは大きな掌でエレンの口元を塞ぐと、そのまま押さえつけて耳元で囁いた。

「そんなに言うなら、俺のやりたいように抱いてやる…テメェが言ったんだ、何されても文句言うんじゃねぇぞ」

98 :
 リヴァイとのセックスは気持ち良すぎて堪らなかった。
 腹の奥に男根を埋め込まれ、ぐぽぐぽと出し入れを繰り返されれば敏感な肉はそれを締め付ける。まるで女のようだ。
 リヴァイに言われたように本当に雌にでもされたのかと思う程に与えられる快感にエレンの体は喜んだ。エレンには複数の異性のRがいる。
 けれど、リヴァイとセックスをするようになってから、めっきり連絡をしなくなった。女とのセックスが嫌になったわけではない。
 だが、女を相手にしたところでリヴァイとのセックス以上に気持ち良くなれるとも思えないのだ。
 そうして自然に連絡が薄れれば、相手からの連絡がくることもなく、関係は消滅していった。
 それだけの関係だ。Rなんて。
 そんな関係を持つ女が複数いるエレンには、リヴァイとの関係もそれと同じなのだと思うことに時間はかからなかった。
 リヴァイとはRだ、とエレンの頭は完結する。
 エレンは長らく、恋というものをしていない。社内でリヴァイの姿を見ると、体が疼く。
 あの禁欲的なスーツの下には見た目よりも筋肉質な体が隠されていて、書類を持つあの指が男であるエレンの体を翻弄する。
 そして限界まで高められた体に追い打ちをかけるように太くて固い、熱が…と考えてエレンはハッとした。
 仕事中なのにこんなことを考えてしまうのなんて初めてだ。
 今まで適度にRで性欲を発散してきたエレンには、こんな待ちわびるような我慢できなくなるほど体が疼くなど経験したことない。
 これも、リヴァイとセックスするようになってからだ。女では満足できないエレンの性欲は全てがリヴァイに向けられてしまう。
 以前のエレンであれば相手の都合など考えずに連絡していたがリヴァイに同じようにするのは何故か躊躇われた。この躊躇いを煩わしいと思いつつもエレンはどうしてもリヴァイに対しては強く出られなかった。
 それはエレンが抱かれる側だからかもしれない。
 リヴァイは他の男や女を抱くことはできるがエレンはリヴァイに拒絶されてしまったらただ取り残されるだけで、その体を自分で慰めなければならないのだ。
 エレンは他の男は駄目だというリヴァイの言葉を律儀に守っている。元々、他の男に体を差し出す気など少しもないが。
 幸い、先ほどに会って話をした時、今日は比較的忙しくないと言っていた。

99 :
 たぶん今日ならば断られずに済む。『今日行くから』『セックスさせて』なんてR相手にメッセージを送っていたのに、相手の様子を窺うように『今日空いてますか』とメッセージを送るのは何とも笑える話だった。
 体は正直で、気持ち良すぎる快感に勝手に逃れようとしてしまう。
 何かに掴まっていないと逃げてしまうからエレンはシーツを握りしめ、枕に顔を押し付けて耐える。
 呼吸も苦しい方がいい。
 思考が快楽で埋め尽くされている今、口を遊ばせていたら何を言ってしまうかわからないからだ。
 気持ちいいと素直に言うことも、もっととねだることも、そのためにセックスしているのだから構わないが、何か余計な事を言ってしまうのではないかと何故か不安だった。

「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」

 背中を吸われて体が揺れた。リヴァイは最近、抱き方が変わった。
 以前は強引で、全身を食べられてしまうような、圧倒的な雄の欲望を見せつけられるようなセックスだったように思う。
 抵抗しようとするエレンを力でねじ伏せて、無理矢理言うことを聞かせるような。
 けれど、最近のリヴァイはそうではなかった。簡単に言えば、優しい。
 エレンが抵抗をしなくなったからかもしれないと思ったが、それにしたって優しかった。
 無防備になった背中に小さく口付けられて、確かめるように触れられて、中を穿つ力は強いのに体に触れる指は優しかった。
 リヴァイが強く体を押さえつけてくれないから、エレンは余計にシーツを握る指に力が入る。
 そんな風にリヴァイが抱くから、正面から受け止めるのはどうしても躊躇われた。
 掴むものがなくなってしまうし、リヴァイの優しいキスを正面から受けるのは何故かとても怖かった。
 それなのに、

「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」

 急に中から性器をずるりと抜かれると、正面を向かされた。
 肩で息をしながら額にうっすらと汗をかくリヴァイが瞳に映る。

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