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ピカチュウの人生8


1 :2017/02/18 〜 最終レス :2018/06/28
全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレのその8
※続きを書く前に前スレ・過去スレ・議論所・保管サイトをしっかりと読み、
 過去からの流れと設定、キャラの性格と口調等はしっかり掴んでおきましょう。
※荒らしはスルーが基本。書き手が現れるまでまったり待とう。
※sage進行推奨
前スレ
ピカチュウの人生7
http://tamae.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1389464373/
過去スレ
ピカチュウの人生6
http://kohada.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1332179947/
ピカチュウの人生5<小説リレー・進化>
http://kohada.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1286038834/
ピカチュウの人生4<小説リレー・進化>
http://yuzuru.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1243265269/
ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>
http://schiphol.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1186585164/
ピカチュウの人生2<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1168594628/
ピカチュウの人生<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1163338618/
関連過去スレ
ピカチュウの人生議論スレ
http://game11.2ch.sc/test/read.cgi/poke/1165628880/
避難所&議論所
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/11567/#1
保管サイト
http://hikochans.com/life_of_pikachu/

2 :
840 名前: ◆MD73K1NQHubz @無断転載は禁止[sage] 投稿日:2017/01/29(日) 10:29:09.90 ID:mNI4ElwC0 [1/2]
「仕方なく私は周囲を警戒しながら姉の後に続いた。
うつ伏せに倒れているその者の傍へ行くと姿形はニューラに似ているが、
頭部に生えた奇妙な鬣や爪の形状など他にも普通の者とは異なる部分があることがわかった。
突然変異だろうか。それともシロガネの山奥にもニューラ達が棲息しているらしいと聞くから、
シロガネに棲む者達は皆このような姿をしているのだろうか。
――それがニューラが進化した姿だということを知るのは後の事だ。
何代にも渡る閉鎖的な里の暮らしは我々から進化の方法も、
その存在すらも忘却の彼方へ置き去り奪っていたのだ――
様々な憶測が頭の中で巡る中、奇妙なニューラにまだ息があると姉が一足先に気付く。
揺すり起こすつもりなのか姉は傍にしゃがみ込んで恐る恐る手を伸ばした。
直後、気配を感じ取ったのか微かに奇妙なニューラは揺れ動き、いきなり姉の手を掴んだ。
それから飛び起きるように顔を上げて我々の姿を確認するやいなや表情に少し安堵の色を浮かべ、
『血が足りない。何よりも腹が減って限界だ。悪いが何か恵んでくれないか』
そう言い残してまたふらりと突っ伏してしまった」
 行き倒れになっているところを救われたってのは頭領から何度も何度も聞かされていたが、
倒れていた理由はその時が初耳だった。もっと壮絶な理由かと思えば決定打は空腹とは。
なるほど、頭領もそこだけはあまり詳細を話したがらないわけだ。あっしは苦笑を浮かべる。

3 :
841 名前: ◆MD73K1NQHubz @無断転載は禁止[sage] 投稿日:2017/01/29(日) 10:30:01.28 ID:mNI4ElwC0 [2/2]
「驚きと呆れで私と姉は顔を見合わせた。よくよく見ればその体に刻まれている傷は、
新しいものもありはしたがその多くは昔に負ったらしい古傷だった。
捨て置いてもいいのでは、と言い添えつつも私は姉にこの”傷だらけ”の処遇をどうするか尋ねた。
姉は暫し考えた後、里に連れ帰り介抱しようと告げる。
里の外に住まうニューラらしき者と接触できるまたとない好機。
この者から得られる知識が里に改革を起こす切っ掛けとなるかもしれないと感じた、と。
姉は一度言い出したことはよほど誤った事でもない限りほとんど曲げることはない。
あまり根拠はないただ己の直感に依るものだったとしてもただ『信じろ』と臆さず堂々と胸を張る。
それを後押しするように姉のそういった感覚は良くも悪くもいつも当たるのだ。
内心諦めつつも私は幾らか反論したが『責任は全て自分が取る』と姉に一蹴され、
仕方なくあの男を里へ連れ帰ることと相成った。
どこの馬の骨ともしれない者をいきなり連れ帰ってきたなどと知られればご老公らの反発は免れぬし、
里を勝手に抜け出していた事もまだ知られたくはない。
里に戻ると私と姉はを屋敷から離れた廃屋の一つに運び込み匿う事にした。
普段は比較的自由に動ける私が、暇を見つけては姉も訪れて介抱を続ける内、
あの男は瞬く間に回復していった」

4 :
846 名前: ◆THwEt9XplM @無断転載は禁止[sage] 投稿日:2017/02/09(木) 06:20:43.88 ID:7sxItbNM0
「我々に助けられた事にあの男は大層大袈裟なまでに感謝してな。
自分に出来る事なら何だってして恩を返したい等と自ら言い出した。
姉が様子を見に来たときの態度からして下心があるのは明白で、
これ以上関わるのはやはり危険ではないかと姉に伝えたが、
分かりやすくてかえって御しやすいだろうと――心なしか何だか少し愉快そうに見えた――
存分に里の為に役立てて売った恩を返してもらうことにしたのだ」
 隊長は思い返すだけでも当時の気苦労が蘇るといった様子で少し項垂れ、胃の辺りをさする。
「あの男の世話や目付け役は自ずと私に押し付け……いや、任された。
きっと姉も姉でご老公方の説得に苦心していたのであろうが、
軽薄という言葉が足を生やして歩いてるかのようなあの男を里に馴染ませるのには、
私もとても手を焼かされたものだ。お前とは比にならない程に、それはもう。
紆余曲折、四苦八苦、悪戦苦闘しながら私の指導や、
ご老公方から課される半ばRことが目的な無理難題の数々を悪運と妙な腕っ節の強さで乗り越え、
――曰く、愛の力の賜物だのなんだの事あるごとに歯が浮くような台詞を姉に吹き込んでいた。
その都度、姉にはそれをからかうように軽くあしらわれて飄々とかわされていたが――
あれよあれよという間にもっと姉に近づける近衛隊の地位にまで登りつめてきた。
異例中の異例な事態だ。隊の、特に年長の者達が猛反発して多くが姉のもとを離れていった。
当のあの男は、私と特に自分がいれば姉を守るのに十二分過ぎるだろう。
かえって頭のお堅い年増方がいない方が動きやすくていいのではないか、と気にする風もなかったがね」

5 :
 隊長は頭領の無茶振りに呆れるように溜息を吐いた。
「そうやって離反した者達は、挙ってご老公の下に付いた。この里で姉に匹敵する力を持つのは他にはおらん。
ご老公は若い頃、近衛隊の隊長を務めていた程の猛者で、先々代、つまり私達姉妹の母からの信頼は厚かった。
それをいい事に、ご老公は更に自分の地位を強くするべく、母に自分の弟を娶せ、頭領の家に婿入りさせた。
それが私達の父親だ。もっとも、私達が生まれる以前に亡くなったそうだがな。
更に母が亡くなってからは、姉の後見として絶対的な権力を誇っていたのだ」
 自分の野望の為に兄弟まで利用するたあ、ある意味、あのババアの根性もご立派なモンだ。
 ふとあっしは昨夜ご老公を見掛けた事を思い出したが、話の先の方が気になり、口に出すまでに至らなかった。
「ご老公は姉に、あの男を重用するのを止めるよう進言した。当然、姉は聞く耳など持たない。
狡猾な野心家であるご老公は、姉を傀儡として利用しようと甘言に甘言を重ねて育ててきたそうだが、
幼い頃より賢明だった姉は、とうの昔にその魂胆を見抜いていたのだ。
そして、どう足掻いても姉を説得できぬと悟るや、姉に反旗を翻し、屋敷を出て郎党共々別宅へ居を構えた。
自分達はこちらに手出しせぬ代わりに、一切命令には従わぬ、やるなら勝手にやればよい、とな。
一応、表向きは体調不良の為に隠居したという事になってはいるが、無論それは建前に過ぎん。
結果、姉の元に残ったのは、私とあの男、そして、まだ若い隊員数名のみだった。
そして、私は近衛隊の隊長に就任した。いや、させられたと言った方がよいか……
ほとんど姉の薦めと、あの男のゴリ押しによるものだったからな」

6 :
「何で頭領さんが隊長にならなかったんでやしょうね?」
「それは無論、未熟な隊員の世話まで押し付けられたら、好き勝手に動けなくなるからだろう」
 もう諦めた様子で隊長は首を傾げた。
 隊長が常に杓子定規な態度を崩さねえのも、元々真面目な性格に加え、奔放な先代や頭領に振り回され、
余計な苦労をしてきたせいかもしれねえ。
 本来なら、世話好きで優しいひとなんじゃねえか、というのは、此処に来てから薄々感じていた事だ。
 何だかあっしは、隊長にひどく同情的になっていた。
「そして姉はあの男を参謀として、本格的に里の改革に乗り出していった。
幸い、若い隊員達も古い風習にうんざりしている者ばかりだった為、嬉々として働いてくれた。
長老達にとって大きな誤算だったのは、里の一般民がこちらの説得に応じ、改革を支持し始めた事だ。
殊に、道具や武器を取り扱う職人達がこちらに賛同してくれたのは大きかった。
彼女らもまた、ご老公ら長老達による圧政に不満を持っていたのだ。
そして皆の協力の元、里の施設は次々と創り返られていった。
職人や商人を一所に纏め、その周辺に集落を作り、商売を活気付けた。
修練所も新しい技術や制度を取り入れ、効率的な訓練ができるようになった。
食糧も賄えるよう、木の実の栽培を始めた。まあ、寒冷な地のせいか、これはなかなか上手くいかなかったが。
そうして内部の環境が徐々に整えられていくと、次に姉達の目は、外の世界へと向けらていった」

7 :
前スレの容量が一杯になったので立てました
即死回避とかいるのかな

8 :
いらないかもしれないけど、一応10まで埋めておきます

9 :
ついでに、ピカチュウ達の現在位置

・ピカチュウ、ミミロップ、ムウマージ、アブソル、デルビル +カモネギ兄弟
ウバメの森・ウバメの祠付近(コガネシティへ進行中)

・ロズレイド、マニューラ +オオタチ・オタチ親子
自然公園(39番道路のモーモー牧場へ進行中)

・ドンカラス、エンペルト
森の洋館(ドンの回想中) ←今ここ

10 :
という訳で、よろしくお願いします

11 :
スレ立て乙です

12 :
1乙です
明日明後日くらいにまた続き書きます

13 :
明日の深夜位に投下できたら

14 :
保守

15 :
投下は今日の深夜以降にに遅れます

16 :
「このまま里が復興し住民達の数が増していけば、いずれ土地も食料も補いきれなくなるだろう。
その前に新たな縄張りとなりうる土地を入念に下調べしておいた方がいい。
最初に提案したのはあの男だった。
まだ少しずつ里内の状況が良くなり始めたばかりで時期尚早、
気が早すぎるのではないかとも私は思った。
しかし、姉はいつかそういった状況が差し迫って来ているのが民の目にも明らかになってきて
不安や不満を抱かせてしまうようなことになる前に新天地を予め見繕っておくのは
早すぎるくらいでいいだろうとその提案を受け入れた
しばらくの間ずっと里で働き詰めで息苦しかった、というのもすんなり受け入れた理由の一つだろう。
あの男を拾う前、共にお忍びで外界を見聞して回っていたこともあり、
外に惹かれる姉の気持ちも痛いほど理解できたから、
姉の身を案じた苦言を一つ二つ呈するにとどめ、あまり強くは反対もしなかった
何よりも、里では見られない珍しい物や風景を眺めた時などに
姉が時折浮かべる他の誰にも見せたことがないような、長という重責から一時だけでも解き放たれたような、
子どもみたいに晴々と輝いてさえ見える表情は私にとっても何ものにも代えがたいものだったから……」
 ふぅ、と隊長は何ともいえぬ――少し恍惚としたような――息を漏らす。
 肉親である姉に抱く感情としては何だか少しだけ隊長は危うい領域にまで
のめり込みかけているような印象が先代を語る口振りや素振りの端々から感じられたが、
それだけ恩義を感じていたんだろうとあっしは見て見ぬふりをした。

17 :
明日明後日位にでも続き書く

18 :
投下は明日の深夜以降くらいに出来たら

19 :
保守

20 :
今日の深夜くらいには間に合わせます

21 :
「多くの者が外界へ乗り出していくことは表向きは我々に対し無視を決め込んでいるご老公方も
さすがに許容しないだろうと考え、調査は若い近衛の中でも限られた人員の間で行われる事となった。
姉も体調が良い時は積極的にそれに同行した。
姉を傍で守り、調査隊を率いるのは初めに提案したあの男だ。
 あの男の事は私もそれなりに評価はしていたが、信用しきってはいなかった。
普段べらべらと余計な口は回るくせに、いざ自分やその過去のことに触れそうになると
途端に言い濁したり貝のように口を噤んでしまう。
この里の発展に協力しているのも拾われた恩や姉への邪な感情だけでなく、
何か別の目的があるのではないか。そう私は勘繰っていた。
私利私欲で兵を動かさないか、姉に破廉恥な振る舞いで迫ったりしないか、
監視の為なるべく私も調査には同行するようには心がけていたが、
近衛隊長として里内で別件の仕事も増えてそれもままならぬことも多く、
漠然とした不安に悶々とする日々が続いていた」
 不意に隊長の言葉がそこで途切れる。あっしが怪訝な顔をすると、
隊長は少し言いづらそうに一息置いてから再び話し始めた。
「……今思えばあの男へ抱いていた不信感は私個人の嫉妬に依るものも大きかったかもしれん。
私が近衛隊長となった辺りから、それまで姉は私を片時も離さずお傍に置いていてくれたというのに、
徐々にあの男がその代わりとなるように姉の傍に居ることが増えていたからだ。
それはきっと、隊長としてすべき事が多岐に渡るようになり忙しい身となった私を、
なるべく自身のことで煩わせないようにという姉の気遣いであったろうに。
心が私から離れていくのではないか。とられてしまうのではないか。
公私混同、私利私欲で働いていたのは他ならぬ私の方であった。……全く、情けない話よな」

22 :
明日明後日位に続き書けたら書く

23 :
保守

24 :
明日の深夜位に投下できたら投下したい

25 :
今日の夜〜深夜くらいに変更で

26 :
 今になって思えば隊長に感じた危ういもの、それ即ち先代へと抱いていた感情は、
肉親に向ける愛情だとか忠義だとかの一線を越えて依存に近いものにすら至っていたのかも知れねえ。
 どう反応していいものか困って黙っているあっしに、隊長は「ふむ」と少しばつが悪そうに一息置いた。
いらないことにまでうっかり口を滑らしてしまった。恐らくそんな感じの態度だ。
この場所に来て話を聞き始めてからというもの、里にいる姿を見る限りではまるで必要な事だけを
淡々とこなすばかりの機械かなにかのように見えていた隊長から段々と
等身大な”ひとらしさ”みたいなものを感じとれるようになってきていた。
里の日常からは隔絶された場所だってのに、
いや、だからこそ今まで見えていなかったものが見えてきているのだろうか。
「……ときに、カラス。お前に兄弟はいるか?」
 失態を誤魔化すように隊長はあっしへと唐突に問いを投げかける。
なんて答えたもんか。あっしは少しの間考え、首を横に振るった。
「いやせんね。いや、単に血が繋がってるってぇだけなら、
扱き使われた末にくたばってさえいなきゃきっとどこかに大勢いるんだと思いやす。
その、ちぃとばかしあっしの生い立ちは特殊というかアレなもんでして。
親しいとか親しくねえとか以前に互いに互いの顔すらわからねぇと思いやす」
 悪質なブリーダーのもとで粗製乱造の玩具工場かなにかみてぇにぽこぽこぽこぽこ産み増やされて、
そのうちの一羽として孵ったばかりでまだろくに頭も回らねえ内にロケット団へ二束三文で売り払われたのがあっしだ。
兄弟どころか親の顔すらまともにわかりゃしねえ。
 隊長は一瞬考えるような仕草を見せた後、察した様子で「ああ」と少し嘆くように呟いた。
「私としたことが。すまぬ、お前の生まれについては以前に聞き及んでいたはずなのだが……」
「クハハ、あっしに謝るなんざ隊長さんらしくねえ。気にしねえでくだせえよ。
あっしの生い立ちなんてカビゴンすら食わねえような話、逆に覚えておく方が損ってもんだ。それに――」

27 :
 言葉の途中であっしは小っ恥ずかしくなってやめた。
”それに、今となっちゃ里の連中みんなが友、兄弟、家族みてえなもんだ。”
こんなことあっしが思ってうっかり口にも出したのが何かの拍子にマフラー野郎や特に新米のヤツめに伝わったら、
しばらくの間ずっとあっしをおちょくり倒したり奢りをたかったりする格好のネタにされちまうだろう。
首を傾げる隊長に「なんでもねえです」とあっしは誤魔化した。
「そうか。ならいい。……私の姉への態度を当時あの男に何度となく茶化されていたのでな。
他の者がどのように血を分けた者へと接しているのか少し聞いてみたかっただけだ。他意や悪意はない」
 こほん、と隊長は咳払いする。
「余計な横道に逸れてしまったようだ。話を戻そう。
――あの男はしばらくの間は順当に里の外界、ジョウトの地を調査して回った。
我らニューラの体質に合う住みよさそうな地。獲物、その他食料が豊富にとれる場所。
長い間多くの土地を渡り歩き自力で生き延びてきたらしく、随分と手馴れた様子で次々とあの男は成果を上げた。
姉の贔屓目で重用されているだけではないのかとまだ少し懐疑的だった民達の一部も、
その目覚ましい活躍ぶりを聞き、里では手に入らない珍しいものを沢山引っ提げて華々しく凱旋する姿と、
それらの品々を出迎える者達へ分け隔てなく気前よく施すのを見て、瞬く間に心を掌握されていった。
己を慕っていく民達にあの男も満更ではなさそうな態度を示し、
姉はそんな男と民達の様子をとても満足そうに眺めていた。
民とは現金なものよな。あの男曰く、それが面白い。姉曰く、だからこそ愛おしい。
私にはとんとわからぬ。それが器の違いというものなのだろう。
その後も止まらぬ快挙、快進撃。あの男や隊員達に憧れ、入隊を志すものが次々と増えた。
民達の支持する声に圧され、ご老公方も我々に益々口出し出来なくなっていった。
しかし、そんな絶頂の時に一抹の影は差した」

28 :
明日か明後日にでも続きを書きたいです

29 :
明日の夜か深夜に投下します

30 :
「そんだけ上手くいってたってのに、どんな邪魔が入ったってんで?」
 あっしの問いに、隊長はこちらの顔を見ながら少し考え、徐に言った。
「……ある意味、お前の過去に関わる事かもしれん」
 そう言われても、あっしの過去から思い付く事なんざ一つしかねえ。
「ロケット団……」
「その通りだ」
 あっしの呟きに、隊長は頷く。
「当初は我々も奴らの事など無視していた。悪辣な人間など掃いて捨てるほどいる、いちいち気にしていたらキリがないからな。
あの男は、あの黒服共について何やら思うところがある様子だったが、なるべくなら関わるなと言っていた。
だが、徐々に奴らはジョウト中に蔓延り、見過ごせぬ程の横暴な振る舞いをするようになった。
人間達の手持ちを奪うだけでは飽き足らず、野生の群れまで集団で襲い、奴らに抵抗した為に殺された者も多いと聞く。
もっとも、その辺りの事情はお前の方が詳しいと思うが」
「そういや確かに、団員がやたら増え始めたのは、その時分かもしれねえです」
 ジョウトのロケット団が勢い付いたのはちょうどその頃、アポロとかいう若い幹部が役に付いてからだ。
奴は同じジョウト出身の人間を大幅に採用し、成果を上げようと躍起になる奴の命令で、団員達は挙ってポケモンを乱獲し始めた。
その大半が、元々密猟者や密売人といったヤサグレ者ばかりだったもんだから、その遣り口にゃ仁義もクソもねえ。
 更に、奴らと反目しているカントー派の団員は奴隷の如く働かされ、その手持ちであるあっしらもこき使われた。
ボスの元にいたらこんな扱いはされなかっただろうに……と、あっしの元飼い主もよく嘆いてたもんだ。
 だがそれが、この里の行く末にまで影響してるとは、想像すらしようもねえ事だった。
「こうなると、新たな居住地どころではない。あのような非道な輩が横行していては、我々が……
いや、元々その地に住む者達も、安心して暮らす事など到底出来るものではない。
そして何より、優しい姉は、奴らによって不幸な目に遭った者、特に、幼い子ども達に心を痛めた。
親を殺された子、遠い異国より攫われてきた子……まだ自身で生きる術を持たぬ子どもを、そのまま捨て置く事はできない。
姉は、そうした子ども達を里へ連れ帰り、大人になるまで面倒を見ようと決めたのだ」

31 :
「それが、あの寺子屋ですかい」
「そうだ。元々あの場所は、本当に人間の学び舎だったらしい。それを改築して住まえるようにしたのだ。
集落より少々離れた所にあるのも好都合だった。子どもとはいえ、異種族を里に入れる事に馴染めぬ者もいるからな。
だが如何せん、年端もいかぬ子ども達の面倒は我々だけでは手が足りぬ。やはり専任の世話役が必要だ。
そこで白羽の矢を立てたのが、あの子だった」
「ああ、その話なら、せんせから聞いた事ありやす」
「そうか……」
 それを聞いて、隊長はふと和んだような声色になる。
「実を言えば、姉達にあの子を推挙したのは、この私なのだ」
「へ? そうなんで?」
「長老達の無慈悲な言い付けの為に、あの子は体調を持ち直した後も療養所に閉じ込められていた。
姉の元へ行った私に代わり、あの子はずっと患者達の面倒を看ていた。それ故、姿形の異なる者への偏見も無い。
あの子自身は自覚していないだろうが、この役目にはまさに打って付けだったのだ。
それに、未来への希望を失っていたあの子を、再び表へ出してやりたい、という思いもあってな」
 ひょっとしたら隊長は、自分と同じく不当な運命を背負ったせんせを、妹のようにでも思ってたのかもしれねえ。
 隊長はあっしに何か言いたげだったが、それ以上は触れずに先を続けた。
「だが、勿論それで万事解決した訳ではない。その後も黒服共の被害者は増える一方だった。
姉は次第に黒服共への激しい憤りを募らせ、見付け次第に奴らを襲撃するように我々に命じた。
流石にあの男も姉を止めようとしたが、一度決めたら梃子でも動かぬ頑固さ故、あの不遜な男が慄く程の勢いで押し切られた。
そして我々は、事ある毎に奴らを襲った。奴らの拠点を破壊し、物資を強奪し、捕まっていたポケモン達を解放した。
だが、それでは足りぬ。いずれあの組織を根底から潰さねば、ジョウトの、いや、世界中のポケモンが平穏には暮らせない。
そんな妄執に近い願いに駆り立てられるように、姉は不調を圧してまで、自らも出撃を繰り返した。
激務に次ぐ激務が続き、只でさえ虚弱な姉の体は目に見えて痩せ細っていった。
そして、とうとう自分の限界を悟った時……姉は、重大な決断をした。
それは、あの男にとっても、そして私を始め里の者にとっても、前代未聞の決定だった」

32 :
明日明後日位にでも続き書けたら書く

33 :
保守

34 :
投下は明日の深夜以降に

35 :
保守

36 :
 外界に目を向け自ら積極的に出向いたり、拾ってきた余所者を重用したり、
他にも既に色々と前代未聞といえるような革新的なことを行ってきた先代が、
更にこれ以上何をしでかそうと言いやがんだろう。
下々の者には華やかな功績と恩恵をもたらす良い主君だったのかもしれねえが、
すぐ傍で仕える者達、特に隊長の苦労を推し量ろうとしたらこっちの胃まで痛くなりそうだ。
「む……確かに姉の傍にいて色々と大変な思いはした。
だが、従えばちゃんと確かな結果が得られるというのは悪くないものぞ」
 あっしの哀れむような視線を察したのか、弁解するように隊長は言った。
 もしも悪辣だったり質の悪い者や場所に仕えていたら大変な事になっていたんじゃあないか、このひと。
あっしの目の哀れみはますます濃くなっていたことだろう。
「もういい。私のことはなんとでも思うがいい」
 誤魔化すように隊長は大きく咳払いをひとつして話を戻しにかかる。

37 :
「自分は頭領の座を降りる。私とあの男だけを集めひと払いをすると、姉はそう宣言した。
事の唐突さにあの男は少々呆気に取られたような顔を浮かべ、私の方は思わず声を上げた。
 姉の疲弊は私も感じとっていたが、辞めようにも正統な後継者となるものがいない。
上に立つ者が急にいなくなってしまえば里が大いに混乱する事は想像するまでもなかろう。
ご老公方がまた出張ってくればこれまで積み重ねたものが台無しになってしまいかねない。
何か策はあるのか。泡食って何も言えずにいる私の横で、あの男が珍しく神妙な面持ちで姉にたずねた。
無論あるともさ、と代々受け継ぐ紅葉柄の扇子を広げて告げる姉に、
私は縋るようにしてその策とやらを問いただした。
 姉はあの男に少し席を外すように言い、男が部屋を出て行くと少し間を置いてから口を開く。
 後継者がいないのであればこれから作ればいい。縋りついたままの私に姉は堂々とそう宣言する。
再び電流を浴びたような衝撃を受け固まる私に構わず姉は淡々と言葉を続けた。
 此度のことで己が限界というものを痛感した。元よりあまり長くは生きぬ身と自覚はあれど、
このままずっと激務へ身を投じていてはその少ない命もあっという間に削り取ってしまいそうだ。
だからまだその余力がある内に子を残しておきたい。優しくあやす様に私を撫でながら姉は言った。
しかし、その相手となるのは。後継者が育つまでの頭領の座は。顔を上げ私は姉に問うた。

38 :
明日明後日位にでも続き書く

39 :
保守

40 :
明日の深夜位に投下できたら

41 :
 そんな私に、姉は今更聞くまでもなかろうとでも言いたげに笑みを浮かべた。
何のためにあの男に一から長としての振る舞いや心得を仕込み、
民からの目と信望を一身に集めさせたと思っている。
姉に尋ね返すように言われ私はハッとする。
 あの男が民の心を掴んでいく一方で、姉の存在感は徐々に薄まっていき、
当時の急き過ぎるような黒服共への攻撃やあまりに鬼気迫った姉の有り様には、
僅かながら民達の間にも疑問の声が上がり始めていた。
それも全てはあの男へ座を譲るお膳立て。姉の思惑通りに物事は進んでいた。
もちろん非道な黒服共への怒りや、他種族にまで及ぶ慈悲もまた本心ではあったのだろう。
時に己を犠牲にしてまで里という群れを存続させる為の長という機構として
ただひたすらに務めようとする姉の姿には私も少しばかり末恐ろしさを感じる事があった。
 しかし、とはいえ、何故わざわざあんな男を――。私も薄々気付いてはいた。
だが、目付け役としてずっと傍であの男の野蛮で品がなくて無鉄砲で
無茶な振る舞いを見てきた私としては、幾らそれらがだいぶ改善されたといえど、
民を率いる者として申し分ない器が備わっていることも当然知ってはいれど、
認められないというか、何だかとても言い表し難い複雑な心境だったのを覚えている。
 姉もまた、どうしてだろうな。と少し困ったような顔をして首を傾げた。
 ちゃんと身体も丈夫でもっと上品で聡明なオスも探せばいるのかもしれない。
だけど、あの男を一目見た瞬間、何か運命めいたものを感じたというか、
直感したというか……要は一目惚れしてしまったのだ。
そう気恥ずかしそうに少ししどろもどろになって姉は思いを述べ、
 立場があったとはいえ散々素っ気無くしておきながら今更虫がいいと思われないだろうか。
やつれてしまった自分をまだ想ってくれているのだろうか。
 だなんて急に不安になってきた様子で思い悩み始める姉の姿に、
長としてではない歳相応の少女らしい姿を私は垣間見てしまって――。
個人的な感情は捨て去り、出来うる限りの助力をしようと私は腹を決めたのだ」

42 :
明日明後日位に続き書けたら書く

43 :
保守

44 :
明日の深夜位に投下できたら

45 :
保守

46 :
 最もあのふたりの間を私が取り持つ必要も入り込む余地すらも初めからまるでなかったのだが、
と隊長はひとり苦笑するように呟く。
「その後あの男は姉の想いをすんなりと受け入れた。
担う事になる重責も恐れず、痩せ細り変わり果てた姉の姿も厭わずに。
最早あの男にとってそんなものはなんの苦にもならない些細なこと、障害として見えてすらいない。
上辺だけの言葉じゃなくあの男も心の底から一途に姉に惚れていたのだ。
 婿としてあの男を迎え入れるのは然程苦労はしなかった。
最初にあの男を里へ住まわせる事を認める為にご老公方が吹っかけ
次々と突破されてしまった数々の難題は、
ずっと昔行われていた長となるに相応しい最も力ある者を選び出す試練と
奇しくも――あるいは姉が予めそう仕向けていたのかもしれん――ほぼ同じ内容だったのだ。
古い掟や風習に縛られきった頭に振りかざすにはそれはとても鋭利な矛となり、
積み上げてきた民達からの名声と信頼もとても心強い盾となった。
 立場上は代理だが権限のほぼ全てをあの男へと委ね、姉は一時的に養生するものとして表舞台を降りた。
時々姉から叱咤を受けつつもあの男は頭領として順調に務め、
姉もゆっくりと日々を過ごしながら妻としてあの男に寄り添った。
 まるで憑き物が落ちたように穏やかな表情となり、以前の容姿を段々と取り戻して行く姉の姿を見て、
身の回りの世話をしながら私はとても安心感を覚えたものだ。
それが燃え尽きる前に一際大きく輝く蝋燭の火のように儚いものとも知らずに。……私は愚かだ。
表面上は徐々に体調を取り戻しているように見えたが、以前の激務は姉の命を確実に削り取っていた。
今後また何か体力を大きく消耗するようなことがあれば、致命的だと姉自身が一番よく分かっていただろう」

47 :
明日か明後日にでも続きを書きたいです

48 :
明日の夜か深夜に投下します

49 :
【速報】ピカチュウ 韓国でRされる [無断転載禁止](c)2ch.sc [876811395]
http://hitomi.2ch.sc/test/read.cgi/poverty/1494062157/

50 :
すみません、明日の夜に遅れます

51 :
 隊長は柔らかな朝日が差し込む天窓を見上げ、ふと息を漏らした。
「……それは、こんな風に静かな朝の事だった。
いつものように挨拶に伺った私に、姉は、身支度を整えたいので毛繕いを手伝って欲しい、と言ってきた。
姉は普段、どちらかと言えば、身なりには拘らぬ方だった。いや、寧ろ無頓着と言った方が適当かもしれん。
それに、公の席などで体裁を繕わねばならぬ際も、他者の手を煩わせるような事などしなかった。
一体どういう風の吹き回しか、と尋ねると、これから絵師殿に、自分の似姿を描いて貰おうと思う、という事だった」
「ああ、それがあの絵ですね?」
 あっしは頭領の部屋で見た、先代の肖像を思い出す。
「うむ。無論姉は、何もせずとも十分に美しかったが、そこはやはり、女心というものだろう」
 そう他人事のように言うが、隊長自身、それと瓜二つの美貌を持っている。
 顔を隠さなきゃいけねえ特殊な事情を差し引いても、身嗜みに気を使ってる様子は全く無かった。
 そういった意味じゃ、やっぱ似た者姉妹なんだろう。
「私は命じられた通り、丹念に姉の体毛を梳り、爪を丁寧に磨き上げた。
穏やかで柔和な表情とも相まって、姉の姿はもはや輝くばかりの美しさとなった。
やがてやって来た絵師殿も『このような美の極致に相対するほど光栄な事はない』と感嘆するぐらいだった。
絵師殿は姉の頼みを快く承諾し、自分の仕事を中断してまで、肖像画の制作に没頭した」
「へええ、あの枯れたような爺さんがねえ」
「良き題材を得た絵師としての本分もあるだろうが、それよりも大きいのは姉に対する恩義だろう。
お前も聞いた事があるかもしれぬが、あの絵師殿は旅の途中で病に掛かり、行き倒れているところを姉達が助けた。
ただ、異種族とはいえ高齢ゆえ、子どもと一緒に寺子屋に入居させる訳にはいかぬ。
そこで、屋敷を出るまでご老公が使っていた離れで、ゆっくり療養してもらう事となったのだ」
 ババアの後にジジイが来るたあ、また洒落が効いているこった。

52 :
「やっぱ頭領さん達は、あの爺さんの能力が役に立つと踏んだんですかい?」
「いや、始めは純粋な好意に過ぎんと思われる。絵師殿に不思議な力があると知ったのは入居してからの事だ。
あの男は絵師殿の種族は知っていたようだが、実際にその能力を見るのは初めてだと言っていた。
絵師殿は、老いた余所者を厚く待遇してくれた事に大いに感謝し、自分の力の全てを姉達に捧げると申し出た。
近頃では、己の生涯を費やした仕事を頭領の家に捧げ、この里に骨を埋める所存だ、と言っておるようだ」
「そりゃあ、いってえどんな仕事なんですかねえ?」
 あっしが近衛の一員としてどうにかやっていけてるのも、爺さんの助力があったおかげもある。
 一度ちゃんと礼をしに行きてえところだが、許可なく離れに近付く事は戒められてるし、
その仕事とやらの邪魔をして、また絵の具を頭からぶっ掛けられたくもねえ。
「それは我々も詳しくは知らぬ。まあ、技に関する事柄なのは間違いないだろうがな。
……話を元に戻そう。
絵師殿の優れた力量もあってか、僅か数日の後に肖像画は完成した。見ての通り、見事な出来栄えだった。
私にはまるで、天上より舞い降りた天女……いや、慈愛を湛えた聖母のように思えた。
そう、まさに……」
 隊長は頭を垂れ、視線を上から自分の膝の上へと落とした。
「絵師殿は、非常に憔悴した様子で絵を届けに来た。始めは、制作に集中し過ぎたせいだろう、と思っていた。
だが、芸術に関わる者というのは、我々には及びもつかない感性を持っているものだ。
絵師殿は絵筆を通じ、姉の真の姿、姉の魂を垣間見たに違いない。
帰り際、絵師殿は『限りない喜びと、深淵たる憂いが同時に訪れるとは……おいたわしや』と涙を零した。
そして私は……不甲斐ない事に、その時になってようやく気付いたのだった。
姉がどうして急に、自分の似姿を残そうなどと言い出したのかを……」

53 :
明日明後日位にでも続き書く

54 :
明日の深夜位に投下できたら

55 :
明日の深夜位に遅れます

56 :
保守

57 :
 気付いた所で私には何も出来なかった、隊長は力なく首を横に振るう。
「完成した似姿を自室に広げて姉は満足げにしばらく眺めた後、
誰に見せるでもなく丁寧に丸めて布で包み、大事そうにしまいこんだ。
これのことはまだ誰にも言うな、特にあの男には。『しーっ』と爪先を口元にあてる仕草をして、
姉は子どもみたいに悪戯っぽく笑っていた。
私はその場は何も気付かずに困惑しているふりをして、ただ頷いた。
 後日、姉は私をひとり自室へと呼びつけ、長細い箱状のものをそっと取り出して目の前へ置いた。
綺麗な柄のその紙の箱は、ちょうど丸めた掛け軸が一つ入りそうな大きさで、
何が入っているのかすぐに分かった。
 箱から姉へと視線を戻すと穏やかになんだかほんの少し愉快そうにして姉は微笑んで、
実はな、子どもができた。と不意をつくように唐突に切り出した。
 私は極めて冷静な態度で『おめでとうございます』とひとまず祝った。
姉は反応が予想外だったようで――もっといつものように私が大げさに驚くのを期待していたのだろう――
きょとんとした表情を浮かべる。
それからすぐに私の態度から全て察した様子で、気付かれているか、と苦笑した。
 ぐっと感情をこらえ、はいと私は答えた。それ以上言葉が浮かばなかった。
私が何か言ったところで運命を変える事は出来ないし、
堪えきれず泣き言を漏らしてしまえば姉の覚悟に水を差してしまいかねない。
しばらくの重い沈黙の後、姉は箱を私の方へと差し出した。
自分の身が持たなかった時は代わりにあの男に渡してほしい、と言葉を添えて」

58 :
明日明後日辺りにでも続き書く

59 :
明日の深夜辺りに投下できたら

60 :
保守

61 :
今日の夜くらいに遅れます…

62 :
「少し考えた後、私は頷いて箱を受け取った。
ありがとう、と優しく微笑む姉の顔を私はまともに見ることは出来なかった。
どうして虚弱な体に生まれついたのが私ではなく姉だったのだろう。
出来損ないの私が代わりになれたならどれだけいいことか。
私であれば誰も悲しむことも惜しむことも知ることもなく、
悪いものを全て背負ってこの場所でひっそりと朽ちていけたろうに。
常日頃から抱いていた思いをより一層ひどく痛感せざるを得なかった」
 隊長が傍から見たら必要以上に先代に入れ込んでんのは
恩義とはまた別に負い目や引け目もあったんだろうか。
「そして、とうとうその日はやってきた。危惧していた通り、
子を産んだ後、姉の容態は急激に悪化しそのまま――。
覚悟を決めていたとはいえ、まともに子の顔を見る事さえもかなわずさぞ無念だったろう。
その瞬間の感情はもはや口では言い表せない。自分の殆どが消えて無くなってしまったような、
空虚の中に放り出されただぼんやりと浮かんでいるしかないような無力感と、
あの男の里全体を揺るがしそうな悲痛な咆哮だけ鮮明に覚えている。
 しかし、私にもあの男にも打ちひしがれている暇などありはしなかった。
姉がろくに何も言い残せぬままに世を去ってしまったのをいいことに、
葬儀が終わればすぐにでも隠居を気取っていた者達が隙あらば権力を取り戻さんと動き出すに違いない。
頭ではわかっていた。でも心と体はそう簡単に奮い立たせることは出来ずにいた時、
姉に生前託されていた箱の事をふと思い出したのだ」

63 :
明日明後日位にでも続き書ければ書く

64 :
明日の深夜位に投下できれば

65 :
保守

66 :
遅れてて申し訳ない今日の夜には何とか

67 :
「私は自室に隠していた遺品の箱を取り出し、上蓋の鮮やかな柄をしばらくじっと眺めた。
そうしている内にもう流し尽くして枯れきったと思っていた涙がまた滲みそうになって、
感情が込み上げてきて、中には姉の姿が描かれた巻物が収められていることを思い出し、
例え絵であろうとそのお姿を堪らなく見たくなって、
――あの男に渡せと託されていたものだというのに、躊躇はしたが堪え切れず開けてしまった。
中を覗き込むとあの時のまま綺麗に布でくるまれた巻物と、
それとは別に封書らしきものが三つ添えられていることに気付いた。
きっと遺言だろうとすぐに私は察した。だがあと二つは何だろうか。
少し躊躇はしながらも私は三つの封書を箱から取り出してみた。
一つは思った通り、遺言書と書かれたもの。もう一つは宛名としてあの男の名が書かれたもの。
最後の一つは私宛てのものだった。
 あの男に渡す前に私が箱の中身を見てしまうのも姉には想定済みだったのだろう。
姉が私に、一体何が記されているのだろうか。
才も徳も地位も併せ持っていながらその身の強さだけには恵まれず、
片や姿形が似ているばかりで他は何も無い、それどころか呪われしき身でありながら
のうのうと生き延びてしまった私にどんな思いを遺したのだろう。
私は封書を両手で掴んだまま動けずにいた。少し震えていたかもしれない」

68 :
明日か明後日にでも続きを書きたいです

69 :
明日の夜か深夜に投下します

70 :
 実際、そう話す隊長の体は微かに震えていた。
 やおら隊長は再び覆面を外し、内側の折り返しから黄ばんだ封書を取り出した。
「これがその封書だ。今まで、私以外の誰にも見せた事は無いが……読むか?」
 そう言って、隊長は余りにも無造作に、あっしに封書を差し出した。
 あっしは仰天し、必死で頭を振った。
「い、い、いや! 滅相もねえ! そんな大事なモンを手前なんぞに……!」
「いや、お前になら構わん。寧ろ、お前のような者ならばこそ、姉の意志を知って欲しいのだ」
 隊長は金色に輝く瞳で、じっとあっしを見詰めた。
 あっしは思わずぐっと息を呑み、その訴え掛けるような表情に圧され、こくこくと頷いた。
そうでなくとも、絶世の美女に迫られて断り切れる男なんざ、萎びたジジイかホモぐれえだろう。
 あっしは恐縮しながら封書を受け取り、羽根の先でそっと広げた。
 薄明かりの中でも分かる、ややクセはあるがはっきりした力強い文字。
 そこには、先代から隊長への……いや、姉から妹へ対する想いが、切々と綴られていた。

71 :
『最愛の妹へ

あなたがこの手紙を読む頃には、私は既にこの世にいないだろう。
とうに覚悟していた事とはいえ、今となっては心残りが多過ぎるのが残念でならない。
我が子の成長も、この里の行く末も、私はもう見守る事ができない。
けれど、あなたがいる事で、私は心穏やかに旅立つ事ができる。

あの子はあのひとに似ても私に似ても、何者にも束縛されない、自由気ままな子になるだろう。
どうか私の代わりに、あの子が道を踏み外さぬよう、立派になるまで見守ってやって欲しい。
内外に敵を抱えるあのひとを助け、支えになっててやって欲しい。
あなたが診療所の者達を慈しんだように、この里の全てを愛して欲しい。
やがてこの里に訪れるであろう、心あるポケモン達を大事にして欲しい。
多くのポケモンがこの地に移り住み、里の者と交流し、睦み、愛し合うようになれば、
この里にはもう、私達のように呪いに苦しむ者はいなくなるだろう。
あなたが私の志を受け継いでくれるなら、こんなに喜ばしい事はない。

今まで我が儘で自分勝手な私を支えてくれて、本当にありがとう。
誠実で心優しいあなたがいなかったら、私はここまで生きてこれなかった。
この世でたったひとりの肉親であるあなたを、心から愛している。
例えこの身は滅んでも、この想いだけは潰える事はない。
私はいつまでも、あなたの中に生きている。いつでもあなたの傍にいる。
それだけは決して忘れないで欲しい。
あなたが末永く健やかである事を、これからのあなたの幸福を、心から祈っている。

親愛なる姉より』

72 :
明日明後日位にでも続き書けたら書く

73 :
明日の深夜位に投下できたら

74 :
保守

75 :
今日の深夜位に遅れます

76 :
色々と立て込んで遅れて申し訳ない
今日の夜には何とかしたい

77 :
あっしは読み終えた封書を丁寧に畳み隊長へと返す。
「もしかしたら姉に怨まれているのではないか。そんな私の抱いていた恐れなど、
己の器が矮小であるがゆえに抱いていた虚像でしかなかった。
私は姉のようにはなれん。改めて痛感した次第だ」
 封書を再びしまい込み、隊長は苦く口元を歪める。
「だが、こんな私を姉は最後まで信じていた。
……代わりなどに決してなれはしない。
しかし、その信頼に少しでも応えられるよう、私の全てを捧ごう。
封書を読んで、私はそう己を再起させたのだ」
 ぐっと隊長は片手を握る。表情と語気に少しばかり力が戻って感じた。
「遺言により、あの男は代理から正式な頭領となり、
残された子――若君を養育する権利も老人達が動き出す前にあの男が確保した。
 私は姉が生きていた頃と同じように近衛隊長としてあの男に仕え、
男手一つでは賄いきれない若君の世話と教育も担うこととなった。
幸いなことに生まれ持った弊害らしきものは若君には何一つ無く、
皆にも祝福されながらすくすくと元気に育っていった」
 あのガキの普段の振る舞いと吹っ掛けられる迷惑が次々と頭に過ぎり、
幾らなんでもありゃちょっと元気が過ぎるとも思ったが、口に出すのはやめておいた。

78 :
明日明後日位にでも続き書けたら

79 :
保守

80 :
明日の深夜位に投下できたら

81 :
今日の夜くらいにはなんとか

82 :
保守

83 :
保守

84 :
PC修理や回線工事等々でだいぶ遅れた、投下は明日の深夜位になります

85 :
保守

86 :
保守

87 :
ピカチュウ♀をご覧ください [無断転載禁止](c)2ch.sc [874925464]
http://leia.2ch.sc/test/read.cgi/poverty/1502965052/

88 :
保守

89 :
保守

90 :
保守

91 :
保守

92 :
保守

93 :
保守

94 :
保守

95 :
保守

96 :
保守

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保守

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保守

99 :
保守

100 :
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