TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼
【ただただ】詩板の雑談スレ【過疎】
兎草子 2
詩の初心者なので、いろいろ教えてください
兎草子 3日
【猫】ねこびより【猫】
現代詩フォーラム25
集団ストーカー@埼玉
【甘い】君の悲しみで僕を殺してくれ【痛み】
syrup16gの詞 Part5
雑談スレ Part89

僕の歌を聞いてください


1 :2010/11/16 〜 最終レス :2020/03/09
http://www.youtube.com/watch?v=NkNm1Ha3h1k
アクセスが伸びません。
何が悪いんでしょう・・・

2 :
みたよ。
怖い。歌い方も歌ってる歌も怖い。使用なら心霊フォトグラファーに改名したほうがいんじゃないってくらい。
親がみたら泣くと思うよ。

3 :
親はもういません。
頼る親戚もいません。
伴侶がいるのが救いです。

4 :
>>1
うーん。曲がよくないからだと思うよ。
歌詞は?でした。詩板に貼ったってことは詩作についてなんだと思うが、歌詞みてもらいたいなら歌詞あげた方がいい。
音楽関係のひともいなくはないと思うが。
まぁみての通り魑魅魍魎がのさばってるとこなんで、プラスになる意見は少ないが大衆が客観視するには素直な意見が聞けるかもね。
確かにこわいけど音楽も人気商売だからその自分スタイルが認められるにはいい曲でないと難しそう。これが何系っていうのか判らない。
創作に親はいらねー。自分とビデオとる人がいれば十分だ。
自分で気になってるところは聞いてみたらいいよ。
ちなみに僕は二度聞きたいと思わなかった。
ひとつは歌詞が微妙だった。ですます調が歌詞に邪魔だった。
曲のサビと他の部分にはに差がなくメリハリがなかった。せめてサビだけでも力入れるとか。
歌ってるのかわからない部分がある。(ボーカルの音量
お化けスタイルはホームレスにも見えて人気でないと思った。(見たら呪われそうだった。
ある意味インパクトはあるが、なぜそのスタイルか聞いたら返答に困りそう。
切れ切れにいい音は入っているかもしれないがメロディーにはなっていない気がする。
素人意見だけどな。滅多切りすまん。

5 :
あのなぁ、お前ら!!(*)((σ))
お前らは モコのことをKYだと思ってるだろ!!((φ))
でも 違うんだヨ!!(*)((φ))
モコは 空気が読めるんだヨ!!(*)((ξ))
モコは 空気が読めるから いつも微妙な
ギリギリセーフの地点を攻めることができるんだヨ!*
たとえば 三沢が死んだ時は 三沢の追悼スレに書き込むのは
さすがにヤバいと分かっている!(*)((φ))
そういう微妙なところは ちゃんと分かっているんだヨ!*
だから モコは今日まで生き延びてこれたんだヨ!!(*)((Ο))
モコは 現在 一人暮らし(*)((Φ))
モコは 家事手伝い中の中年処女なのヨ(*)((ξ))
夏の女は ヤリたい盛りヨ☆(*)((●))
今こそ 攻め落とすチャンスなのヨ!(*)((ξ))
この夏こそ 防御力低めな夏の女を ゲットせよ!(*)((◎))
モコが 防御力低めな夏の女を 短期で攻め落とす方法を…(*)((Φ))
教えてあげるワ(*)((ξ))
だから、モコの言うことを よ〜く 聞きなさ〜い(*)((φ))
モコは 晴れやかに踊る!(*)((φ))
モコは 海辺で 服を脱ぎ 晴れやかに踊る!(*)((Φ))
モコは ハダカで あでやかに 歌い 踊る!(*)((ξ))
モコはハダカのビーナス(*)((φ))
原始の海の泡から誕生したビーナス(*)((Ο))
キューピットたちが モコを祝福している(*)((φ))
でも 気のふれた熟女にしか見えない(*)((ξ))
漁村の老人たちは 影で白い目で見ている(*)((δ))
かまうもんか!(*)((σ))
そんなの気にしてたら、ビーナスにはなれない(*)((φ))
漁村の老人たちは モコを見て あざ笑う(*)((δ))
でも ヤるんだヨ!(*)((σ))
そんなの気にしてたら、天女になんか なれない!(*)((φ))

6 :
ちゃんとマイク使ってないよね。
まずは人に聞かせるように録るものじゃないの。
バックも単調なら主旋律も単調、詞も単調。そしてそれぞれがばらばら。
あと、詞は明らかに破たんしている。聞いていて何もわからん。
お悔やみ申し上げたいのか、申されたいのかどっちだ。
大体本人にお悔やみ申し上げてどうすんだ。
一歩二歩三歩譲って、曲にはなっている。形としては。
ただ、ボカロより声が聞こえないのはもはやどうしようもない。

あと、これは無駄な話。
自己満でおさまっていて、やっぱり人に聞かせるもんじゃないよ。これ。
まぁ、もうこのスレ見てないと思うけれど。

7 :
>>5
・・・・・・・・・不覚にもすんごい惹かれるんだけど(w
勿論人となりにじゃなく、字の並べ方にだけど

8 :
OZアカデミーについて 語ります!((◎))(*)((ξ))
昨日モコは久しぶりにガオラで栗原あゆみの試合を見た(*)((Φ))
栗原あゆみの新しい赤いコスチュームはなかなか良かった(*)((ο))
新コスチュームは 肌を露出してる部分が多かった (*)((ξ))
光沢のある薄いビニール製の新コスチュームはテカテカ光っていた(*)
ケツには小さな黄色い星のマークがついていた((◎))(*)((φ))
ヒザのパッドにも小さな黄色い星のマークがついていた(*)((Φ))
アジャコングは前に「栗原あゆみは試合中にウンコを漏らした」(*)
と言ってたけど 自分だって小便を漏らしていたじゃないか!((ο))
アジャコングの股間は小便で びっしょり濡れていた(*)((ξ))
栗原あゆみも試合中にウンコを漏らしていたかもしれないが…*
ビニール製のコスチュームはウンコがにじまないのだ(*)((◎))
だから ウンコを漏らしても分からないのだ(*)((φ))
うまく考えたものだ(*)あれならウンコを漏らしてもバレない((Φ))
栗原あゆみは重いアジャコングを持ち上げて 投げていた!(*)((ο))
なかなか力が付いてきたなぁと思う(*)((ξ))
最後はアジャコングのバックドロップとトップロープからの
エルボードロップで 栗原あゆみからフォールを奪っていたネ…(*)((◎))
栗原あゆみは試合中の表情が イイね(*)闘志を感じるヨ(*)((Φ))
こないだのトウスポで 風間ルミも(*)((ο))
「これからの女子プロレス界でスターになる素質のあるのは…
 金を持ってる愛川ゆず季 と 栗原あゆみだ」って 言ってたネ(*)
アジャコングは 最後に「これで トドメだぁ〜!」と叫びながら…*
栗原あゆみの肛門に中指を突っ込んで 持ち上げて(*)((ξ))
垂直式落下式のブレンバスターをキメていたネ!(*)((φ))
しかも アジャコングは重い体重を中指にかけて (*)((ξ))
脳天がリングに突き刺さった瞬間、(*)((ο))((◎))
さらに肛門の奥深くにまで 中指を突っ込んで さらに圧力を加えていた!*
あれは かなり えげつない攻撃だ! なんか 恨みでもあるのか!?☆
嫉妬か!? ジェラシーか!?(*)((φ)) (*)((ξ))

9 :
「顔合わせ」
照れ隠しだよ
嬉しくも楽しくもなくてあんなふうにニコニコしない
やっぱり顔見れるって
単純に嬉しいもんだし
ありがとう
エネルギーもらえた気がする
がんばるね

10 :
栗原あゆみに「年収はいくらだ?」って聞いたら(*)((ξ))
「年収って なんですか?」って 答えていたヨ(大爆笑)(*)((Φ))
栗原あゆみの技、チンクラッシャーは アゴをくだく!(*)((◎))
マンクラッシャーは Rをくだく!(*)((υ))
マロンクラッチは 栗原あゆみの新兵器! (*)((ξ))
Rクラッチは チンポを固めるチン兵器! (*)((Ο))
モコのRはジュクジュクして かゆくて臭いの(*)((φ))
荒塩をRにすり込んだら ヒリヒリして 痛いの(*)((ο))
変な薬を塗って 乾かしたら カピカピして また痒くなったの((Ο))
先日、忘恩・極悪のアンチモコ派のヤロウについて話が出た☆
財界も厳しい*  モコが会った財界人が語っていた… *((υ))
「一部の悪徳コテハンのやり方は完全に時代遅れだ*
 一般市民の感覚とは大きくズレている」と手厳しかった☆
「美和よりも悪党」と評判の、あの畜生野郎のことだな(笑い)*
名前は、もう少し、出すのはやめておくよ(爆笑)☆
とにかく利用できる人間は、とことん利用しぬき、骨までしゃぶり*
何かあっても自分だけは小ずるく逃げ、(*)((ο))
責任は他人に全部、かぶせてきたやつだ(*)((υ))
やつに利用され、煮え湯を飲まされた人間は、(*)((ξ))
一人残らず、あいつを恨み抜いている(*)((Φ))
骨髄に徹して、憎みぬいている☆ 奴がどれだけ悪事を働いてきたか☆
聞きしにまさる悪党だ(*)((υ))
そんなあいつが今さら「助けてくれ…*」なんて泣きつこうが☆
当然、誰一人、相手にしない(*)((φ))
助けるどころか、今か、今かと、(*)((υ))
あいつの破滅を首を長くして待っている(爆笑)(*)((Φ))

11 :
本を売るための「仕掛け」を繰り返し 問題を起こしているのは
一部の凶暴なヤクザまがいの出版社だ (*)((ξ))
文学ファンから何度も断罪されているのも、一部の出版社だ☆
本当に凶暴だ! まさに その通りだ!* (*)((φ))
東京大学大学院の教授も その一部の出版社の暴走に警鐘を鳴らしている*
「小説愛好家の側から ポ●ラに対して『やりすぎだ!』
 との批判が高まっている(δ)((ξ))
 文学研究者の側も、なぜここまで断罪しなくてはならなかったのかを
 厳しく検証するようになった」 と鋭く分析していた*
その文学研究者サイドまで 口汚く罵っている箇所もある(笑い)☆
アマゾ●サイドが 真面目に書き込んだな批判に対して
「事実無根のデマ」と断罪し 批判の書き込みのすべての削除を狙っての
『大規模な削除事件』もあった(δ)((Φ))
当然、文学ファンは 不条理な削除を含めて厳しく対処している*
小説愛好家側が通報した案件も すべて小説愛好家側が完全に勝利している☆
だがしかしアマゾ●サイド運営側は
「彼ら誹謗中傷している者たちは 裏付け調査を全くせずに書き込みを
 行っており、著しく軽率」等と厳しく断罪していた(δ)((*))
裏付け取材は書き込みのイロハだ(υ)((Φ))
その取材もせずに、デマを書き殴り(υ)((ξ))、
結果として水嶋ヒロ先生に損害を与えた(υ)((Φ))
まさしく「言論の凶器」だ* 某コテハンは猛省するべきだ* 
本当だったら、筆を折るべきじゃないか(δ)((*))
それを反省もしない(δ)((Φ)) 責任も取らない*
評論家も「このコテハンは、腹の中では謝る気などはない☆
アク禁が確定しているのに、まったく往生際が悪い」と痛烈に非難していた*
社会的責任を感じ取る神経が完全にマヒしている(δ)((Φ))
だからプオタから全然、信用されていない(δ)((ο))
読売新聞の世論調査(平成21年)でも…*
某コテハンの書き込みを「信頼できる」と答えた人は、☆
たったの「1%」だった* 「1%」だよ(*)((υ))
情熱の真っ赤なモコを咲かせよう!!!(δ)((Φ))

12 :
age

13 :
悪のネット戦士くすのきが、 時に野心を抱き
2ch征服を夢見た時に、 君はどうする、 君はどうするか、 君は
ぬるぽされて黙っているか

14 :
>>13
ガッ

15 :
>>12
乞食と物乞いの区別が付かないのが、チョウセンヒトモドキ

16 :
age

17 :



18 :
天空の城ラピュタ

19 :




20 :

心の瞳で 君を見つめれば
愛すること それが
どんなことか わかりかけてきた


21 :
モコは恋人のチンポをオモチャのようにさわって遊んでいたんだヨ☆
モコだって 女の子* クソもするしショーベンもする*
メンスの時は 血まみれになる☆
昨日CSチャンネルで『ワールドプロレス クラッシック』を見てました☆
「坂口征二vsペドロ モラレス」は スゴかったです!*
やはり ペドロ モラレスのチンポは うわさどおりスゴかったですネ!*
飯塚孝之さんは 昔「JJジャックス」をやってた !☆
JJジャックス=ジャパニーズ ジョリージャックス*
略して日本の陽気なヤツらということです(笑)☆
宝塚みたいな ド派手なピンクのコスチューム!*
野上彰&飯塚孝之! 二人でJJジャックス!☆
飯塚さんは きっと昔の恋人 野上彰が恋しくて
野上アナをいつも狙っているんだヨ!*
名前が同じだけなのにネ…☆  かわいそうな飯塚さん*
もう 見境がつかなくなってしまってるんだネ☆
もう 狂ってしまってるんだネ…*
安田忠夫がこんなことを言ってたヨ…☆
「狂犬 村上が襲いかかって来た時、
 オレは向かって行ったけど  他には誰も行こうとしなかった。
 来てくれたのは 飯塚さんだけだったよ。
 ケンスケなんかは 黙って見てるだけだったよ」と…*
アイアンフィンガーというオモチャを手に入れた子どもが
うれしそうに はしゃいで 狂ったように遊びまわっている☆
全部、規制議論板でハッキリしたな。 モコ社長の言葉にあるように
「犬は獅子を咆ゆれば はらわたくさる」と仰せの通りだ*
獅子であるトニーコーポを妬み、攻撃し 非道の限りを尽くした「モコ犬」が、
腐りきったはらわたをさらけ出しながら のたうちまわっている(笑い)☆
とにかく勝つことは愉快だ。 勝てば、みなが元気だ。幸福だ* 
賑やかに人も集まる(笑い)☆

22 :
包换谈谈学院! ((◎))(*)((ξ))
莫科看着经过长时间的栗原Gaora (*)((滨崎步在昨天的比赛Φ))
滨崎步新的红色服装漂亮的栗原仲仲(*)((ο))
有许多新的服装揭示parts'm (*)((ξ))
薄新塑料制成的服装是闪亮闪亮闪亮(*)
驴是一个小的黄色星号((◎))(*)((φ))
带着被黄星和小护膝(*)((Φ)标记)
Ajakongu之前,“栗原滨崎步泄露了在游戏过程中狗屎”(*)
我什至没有透露自己的尿液和我说的! ((Ο))
Ajakongu裤裆是湿尿浸泡(*)((ξ))
泄漏可能在比赛中过于栗原滨崎步狗屎... *
涂抹防乙烯服装这是一个狗屎(*)((◎))
我知道为什么漏屎(*)((φ))
我觉得好东西(*)Barenai狗屎即使你披露((Φ))
栗原滨崎步Ajakongu扔重任! (*)((Ο))
我想我已经与部队仲仲(*)((ξ)是)
最后从顶绳背景Ajakongu
秋季是偷了栗原滨崎步Erubodoroppu ... (*)((◎)由东北)
栗原亚由美会像在良好的游戏(*)我觉得打哟(*)((Φ))
鲁米在其他天风间太Tousupo (*)((ο))
“一个妇女的摔跤未来世界明星的气质...
栗原滨崎步赛季,他得到了钱合川柚子“氦告诉我(*)
Ajakongu结束,“这最后一击的DAA!”呐喊... *
推力解除中指肛门栗原滨崎步(*)((ξ))
东北有一个垂直下降Burenbasuta表达质感! (*)((Φ))
此外,在沉重的重量Ajakongu (*)((ξ中))
刺穿了他的头骨环时刻,(*)((ο))((◎))
进一步的压力,进了肛门,更深层的中间推力! *
这是一个非常讨厌的攻击?是否有任何不满或东西! ? ☆
我真装轣I ?或嫉妒! ? (*)((Φ))(*)((ξ))

23 :
君を知らない俺にどうすごいか三行で。

24 :
>>1
陰気臭いし、歌下手だし、メロディーも一昔前の歌謡曲ともロックともつかないような、中途半端な代物
だし、みるべき物が全くない。この程度の曲でどうやって目立とうと?
>待望のtatoo(城辰由) 新曲がいよいよ公開
一体だれが待ってたんだよw コメント件数0じゃねーかw

25 :
>>24
シロウトが分かったようなこと言ってるんじゃねーぞ
音楽知ってんのか?

26 :
>>25
音楽なんて知る必要があるのかよ?w >>1が聴けって言うから聴いてやったんだろがw 
結局歌なんて、素人層にどれだけ幅広く受けるかだろw 少数のプロの評価で一体何を得ようってんだよw
あれか?「明るく陽気で、歌が上手くて、時代の先を行った音楽だ」と言えばいいのかよw 俺がどう言おうが
コメント件数0ってのが世間のこいつの歌に対する評価だろうがw
君みたいなプロに意見するのは申し訳ないが、何の特徴もない、それこそありふれた歌謡曲だよ、>>1の歌は。
陰気臭いとこを除けばね!

27 :
なんかしょっちゅうあげてるみたいだけどロクに返事も書かないのにプライドだけは高いし。

28 :
たぶんボーカルの才能が無いよこの人……声量が無いからノビ
が全然少ない。歌詞も三流以下。声はだみ声のくせに曲調は〔ハイド}あたりを
パクリ.歌詞はガゼット(笑)らへんをぱくり
流石にネタだろ??
本気ならボーカル変えろ 曲調はシンセでも使って豪華にしろ
あと歌詞ももっとROCKかPOPにしろ
もうv系の時代とうに終わってるよ
音痴では無いが声がキモイ

29 :
てst

30 :

                 ___
               /     \
             /        \
            /           \
            |        .◞≼◉≽◟ | 
            |  .◞≼◉≽◟        | 
            \   "ー=〓=-'` /  กดญี่หป็เ๑๘ก้เ้พค่ะ??
     / ̄ ̄ ̄ ̄´\         /
    ノ         ノ   .____/
  /´              |   
 |    l           \
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、-一'''''''ー-、.    
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) _(⌒)⌒)⌒))

31 :
アリの巣コロリってあるじゃん。
蟻の行列にポンと置くと、一瞬ビックリして列が乱れる。
邪魔だなと言わんばかりに迂回する列が出来る。
そのうち好奇心旺盛な一匹がアリの巣コロリに入る。
そいつをマネして何匹も入る。
毒とも知らずにツブツブを運び出す。
一匹が一粒づつ。
いつのまにか行列はアリの巣コロリが折り返し地点になる。
黄色い粒と黒い蟻が作り出す模様は綺麗で見てて楽しい。
一匹が一粒づつ、丁寧にせっせと毒の粒を運ぶ。
せっせと、せっせと、せっせと、せっせと。
蟻さんって働き者だなと思う。
俺も頑張らなきゃなと思う。
次の日、あれほど沢山いて俺を困らせた蟻が一匹もいない。
ほんとにいない。
探してもいない。
泣きたくなった。

このレスを見た人は4日後にあなたの大切な人がいなくなるでしょう・・・・
それが嫌ならこのレスを5つの板にコピペしてください。
信じるか信じないかはあなた次第です。

32 :
>>1そもそもタイトルはおくやみでないほうがいい死者に対する冒涜感がなんとも気持ち悪いし怖い
俺死んだらこんな歌詞みたいに蔑まれんのかと考えて鬱になった
この歌はメンヘラすれに貼ってくるよ死者に対する冒涜感がまじ気持ち悪いし怖い

33 :

癒される曲ですね♪
この動画はお薦めです -- 庭の花 http://www.youtube.com/watch?v=X1_uNN4Ebpw

34 :


35 :


36 :


37 :
>>1
僕はこのジャンルは嫌いではありません。
ただ二番煎じがいなめない。
このジャンルは万人にはうけないとおもいます。
当然ウケが悪いので。
恋や愛の唄のようにはいきません
おくやみもうしあげます
までの間に言葉の毒を吐けるだけはきましょう。
一字一句に意味のある毒を考えましょう。
次回作に期待してます。

38 :
基本真面目な男の子が抱いた悪の感じょうを唄にするのは面白いです。
本当の悪党は唄など歌いません


39 :
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYhrPJBQw.jpg

40 :
あほ

41 :
>>1
デーモン閣下を目指しているのか?

42 :
総選挙(6月8日)・4thソロ(7月)・主演声優アニメDVD,BD(6月5日)
総選挙に死力(2位以内ランクイン)→ソロ爆死&アニメ円盤大爆死→ソロ活動と声優活動終了
ソロに全力→総選挙4位以下確定&アニメ円盤大爆死→センター陥落確定、声優活動終了
総選挙とソロをバランス重視→総選挙4位以下濃厚&ソロ前作割れ+アニメ円盤大爆死→センター陥落確定、ソロ活動終了、声優活動終了
ポイント
・総選挙2位以上にランクインしないと今の48G人事だとまゆゆはセンター陥落濃厚(島崎、松井珠等が候補か?)
・アニメ円盤はアンチAKB多数のアニヲタには買ってもらえない
どうすんのこれ

43 :
ひろみごー?
向こうで素晴らしいトレーナーに出会い自信を新たにしたが
それは長い基礎固めの終わりであり
振りかえると基礎を作るのに40年以上要したと
成し遂げたことは大切にしているが
求めているものはとてつもなく大きいから
まだまだこれから変化し世界を広げたいと
何かを成すのには時間や労力を要するものだから
自分のピークは60歳代あるいはそれ以上に来るかもしれないと語った
ほう、すごい話であると以上のことに感心至極であった

44 :
登場人物

アンドロマケ  ヘクトルの妻。
ヘレネ  白鳥に化したゼウスと、レダとの娘。スパルタ王メネラオスの妃で、絶世の美人。
ヘカベ  プリアム王の妃で、ヘクトル、パリス、トロイロス、カサンドラ、ポリュクセネ等の母。
カサンドラ  プリアモスとヘカベとの娘。アポロンに愛され、予言する力を与えられたが、
神の意に従わなかったので、怒ったアポロンは、彼女の予言が誰にも信じられないようにしてしまった。
平和の女神
イリス  虹の女神で、神々の使者。
侍女及びトロイアの女たち
ポリュクセネ  プリアモスとヘカベとの娘。
ヘクトル  プリアモスとヘカベとの長男。トロイア方の総大将。
オデュッセウス  イタケー王。弁舌と計略に長けたギリシア方の大将。ホメロスの「オデュッセイア」の主人公。
デモコス
プリアモス  トロイア王。ヘクトル、パリス、トロイロス、カサンドラ、ポリュクセネ等の父。
パリス  アレクサンドロスとも呼ばれる。プリアモスとヘカベとの次男。
オイアックス
水夫
幾何学者
アブネオス
トロイロス  プリアモスとヘカベとの息子。シェイクスピアの「トロイラスとクレシダ」の主人公。
ピュジリス
オルピデス
老人たち
伝令

45 :
城壁のテラス、それより高く別のテラスがあり、下の方にある他の城壁が見下ろせる。
アンドロマケ、カサンドラ

アンドロマケ  トロイア戦争は起こらないわ、カサンドラ!
カサンドラ  じゃ、賭けをしましょうか、アンドロマケ。
アンドロマケ  もっともだわ、あのギリシアの使者の言うことは。使者を迎え入れて、ヘレネにのしをつけて返すべきだわ。
カサンドラ  きっと失礼な迎え方をするわ。ヘレネを返したりするものですか。トロイア戦争は起こるのよ。
アンドロマケ  そうよ、ヘクトルがいなければね! でも、あの人は帰ってくる、カサンドラ、帰ってくるのよ! 
あなただってラッパの音が聞こえるでしょう……今、凱旋して市へ入ってくるところよ。
あの人が黙っているものですか。三ヶ月前に出征する時、誓ったの、これが最後の戦争だって。
カサンドラ  最後だったのよ。でも次が待っているわ。
アンドロマケ  あなた、いやにならない、そんなに恐ろしいことばかり見たり予言したりして?
カサンドラ  私は何も見てやしない、アンドロマケ。予言なんかしてるんじゃないの。
ただ、人間も自然もどんなに馬鹿なものか、考えているだけよ。
アンドロマケ  なぜ戦争が起こるのかしら? パリスはもうヘレネに夢中になっているわけでもないし、ヘレネもパリスに未練はないというのに!
カサンドラ  あの人たちのせいだと思っているの?
アンドロマケ  じゃ、誰のせい?
カサンドラ  パリスはもうヘレネに夢中になっているわけでもないし、ヘレネもパリスに未練はない! 運命が否定文に興味を持つなんて、あなた見たことある?
アンドロマケ  知らないわ、運命がどんなものなのか。
カサンドラ  教えてあげましょう。運命って、ただ時間の速くなったものなのよ。それなんだわ、恐ろしいのは。
アンドロマケ  抽象的なことは、私には分からない。
カサンドラ  いいわ。じゃ、たとえ話をしてあげましょう。虎のことを考えてごらんなさい。
分かるでしょう、これなら? 少女たちでも分かるたとえ話よ。眠っている虎。
アンドロマケ  眠らせておけばいいじゃないの。

46 :
カサンドラ  それに越したことはないわ。でも虎の眠りを覚ますのは肯定文よ。しばらく前から、トロイアの町中いっぱいよ。
アンドロマケ  何でいっぱいなの?
カサンドラ  肯定文で。世界も、世界の将来も、広く言えば人間の、狭く言えばトロイアの男女の双肩にかかっているっていう……
アンドロマケ  分からないわ。
カサンドラ  ヘクトルは今トロイアに帰ってくるところでしょう?
アンドロマケ  ええ、ヘクトルは今妻の下へ帰って来る。
カサンドラ  そのヘクトルの奥さんにはもうすぐ子供が出来るんでしょう?
アンドロマケ  ええ、私、もうすぐ子供が出来る。
カサンドラ  それ、みんな肯定文じゃない?
アンドロマケ  脅かさないでしょ、カサンドラ。
若い侍女  (洗濯物を持って通りかかる)いいお天気でございますね、奥様!
カサンドラ  あら! そう? そう思う?
若い侍女  (退場しながら)今、トロイアは春の盛りでございますわ。
カサンドラ  下女まで肯定文を使っている!
アンドロマケ  ええ、その通りよ、カサンドラ! こんな日に、あなたはどうして戦争の話なんか出来るの? 幸福が世界中に降り注いでいるのに!
カサンドラ  雪のようにね。
アンドロマケ  美が降り注いでいるのよ。あのお日様をごらんなさい。トロイアの郊外に、海の底のように真珠色に輝いているわ。
漁師の家からも、木立からも、貝殻の囁きが聞こえてくる。人間が謙虚になって……不老不死になって……
カサンドラ  そうね、門の前まで車にのせられて押されてきた中風病みも、自分は不老不死だと思っているわ。
アンドロマケ  善良になって……平和に暮らす方法を見つけられるとすれば、それは今日よ! 
ごらんなさい、あの前衛の騎兵が馬の上から身を屈めて、城壁の銃眼にいる猫を撫でている……
今日からは人間と動物が仲良く暮らすようになるかもしれないわ。
カサンドラ  あなた、お喋りがすぎるわよ。運命が動き出すわ、アンドロマケ。
アンドロマケ  夫のない娘たちの中で動いているんだわ。私はあなたの言うことなんて信じない。

47 :
カサンドラ  いけないわ、それは。ああ! ヘクトルは栄光に包まれて、愛しい妻のもとに帰って来る! 目を開く……
ああ! 椅子に腰掛けている中風病みが、自分は不老不死だと思っている! のびをする……
ああ! 今日、世界に平和が確立されるかもしれない! 舌なめずりをする……
そして、アンドロマケに男の子が生まれる! 騎兵が今身を屈めて銃眼にいる猫を撫でている! そして歩き出す……
アンドロマケ  やめてよ!
カサンドラ  音も立てずに宮殿の階段を上ってくる。鼻面で扉を押し開ける……そら、来た……そら、来た……
ヘクトルの声  アンドロマケ!
アンドロマケ  嘘! ヘクトルじゃないの!
カサンドラ  誰がそうじゃないと言ったの?

48 :
アンドロマケ、ヘクトル

ヘクトルはアンドロマケを腕に抱きしめ、石のベンチまで連れて来て、自分もそのそばに腰を下ろす。短い沈黙。

ヘクトル  男の子かい? 女の子かい?
アンドロマケ  そんなことを言って、どちらが欲しかったの?
ヘクトル  男の子を千人……女の子を千人……
アンドロマケ  なぜ? あなた、千人も女を抱いているつもりだったの? がっかりなさるわ……男の子たった一人だけ。
ヘクトル  多分そうだろうと思ったよ……戦争の後には、女より男が沢山生まれるものさ。
アンドロマケ  じゃ、戦争の後は?
ヘクトル  戦争の話はやめよう。今度の戦争の話も……やっと終わったんだ。戦争はお前のお父さんと兄さんを取り上げた。しかし夫だけは返してくれた。
アンドロマケ  ご親切なこと。今に取り返しに来るわ。
ヘクトル  心配することはないよ。二度とそんな機会は与えないから。
これからすぐ広場へ行って、厳かに戦争の門を閉めるんだ。今度は決して開くことはないだろう。
アンドロマケ  閉めてごらんなさい、きっとまた開くわ。
ヘクトル  いつ開くか、知っていそうな口ぶりだな!
アンドロマケ  小麦が黄金色の穂を垂れる日、ぶどうが枝もたわわに実る日、どこでも夫婦が幸福に暮らしている日に。
ヘクトル  そして、多分、平和がその絶頂にある日にだろう?
アンドロマケ  ええ。それから、私の子供が逞しく立派に育った日に。
(ヘクトル、彼女に接吻する)
ヘクトル  お前の子供は意気地なしかもしれない。それなら心配はないじゃないか。
アンドロマケ  意気地なしにはならないわ。でも私、右手の人差し指を切ってやるの。
ヘクトル  母親がみんな子供の右の人差し指を切ったら、世界中の兵隊は人差し指なしで戦争をするようになるさ……
右足を切ったら、兵隊は一本足ばかりになる……目を潰したら、兵隊は盲ばかりになる。それでも兵隊はなくなりはしない。
白兵戦になると、手探りで相手の腿の付け根や鎧の隙間や、咽喉を探り合う……
アンドロマケ  いっそ、殺してしまうわ。
ヘクトル  母親らしい戦争の解決法だな。
アンドロマケ  笑わないで。生まれないうちにRことだってできるわ。

49 :
ヘクトル  一目見たいとは思わないのかい? 一目だけでも? 後で考えるさ……お前の子供だよ。
アンドロマケ  あなたの子供にしか私は興味がないの。あなたの子供だから、あなただからこそ、私は恐いのよ。
どんなにあなたに似ているか、あなたには想像もつかないわ。まだ生まれもしないうちから、あなたそっくりなの。
優しくて、物静かで。あなたが戦争がお好きなら、この子も好きになるわ……戦争、お好き?
ヘクトル  なぜそんなことを聞くんだい?
アンドロマケ  白状なさい、好きな時もあるって。
ヘクトル  希望や、幸福や、愛している人たちから自分を引き離すものを、好きになれるとしたら……
アンドロマケ  本音が出たわね……好きなのね。
ヘクトル  戦いの最中に、神々の使者として戦っている気になって、いい気になっていられるとしたら……
アンドロマケ  まあ? あなた、戦争をしている最中に、神様になったような気がするの?
ヘクトル  大抵、人間以下になったような気がするよ……だけど、時々、朝起きると、身が軽くなって、引き締まって、別人になったような気がすることがある。
体も、武器も、いつもと重さが違うし、別のもので出来ている。不死身になったんだ。
優しい気持ちが体に染み込んで、全身を浸してしまう。戦争をしているときの優しい気持ちというのは、無慈悲だから優しくなるんだ。
神々の優しさもこんなものなんだろう。敵に向かって、ゆっくり、ほとんど放心したように、しかし優しい気持ちで進んでいく。
黄金虫を踏み潰さないように避けて通る。蚊がとまると、叩き潰さないで追い払う。人間がこれほど生命を尊重したことは一度もない……
アンドロマケ  それから、敵がやって来るの?
ヘクトル  それから敵がやってくる、泡を吹きながら、物凄い形相で。見ていると可哀想になる。
泡を吹き、白目をむいても、戦争がなければ、人間味のある平凡な役人で、平凡な夫であり、
婿であり、平凡な従兄弟であり、酒やオリーブの好きな平凡な男であるそいつが、
何も出来ないくせに一生懸命になっているのがこちらに分かるんだ。するとその男に愛情が湧いてくる。
頬のいぼや目の中のほしまで好きになる。その男が好きになるんだ……
ところが相手はあくまで戦いを挑んでくる……それで殺してしまう。

50 :
アンドロマケ  それから、神様のように、その哀れな死体を見下ろす。でも神様じゃないんだから、生き返らせることは出来ないわ。
ヘクトル  見下ろしたりするものか。他の奴が待っている。他の奴が、泡を吹きながら、憎らしげにこちらを憎んでいる。
家族や、オリーブや、平和をいっぱい背負い込んでいる他の奴が。
アンドロマケ  それで、その連中も殺してしまうの?
ヘクトル  Rんだ。戦争だからね。
アンドロマケ  みんな殺してしまうの?
ヘクトル  今度はみんな殺してしまった。わざとそうしたんだ。あいつらは本当に戦争の好きな民族だからね。
アジアに戦争が広がって、後を絶たないのは、あいつらのせいだからな。一人だけ取り逃がした。
アンドロマケ  千年もたつと、人間はみんなその人の子孫になってしまうわ。それに、そんなことをしたって無駄よ。
私の子供は戦争が好きになるわ、あなたが好きなんですもの。
ヘクトル  どちらかといえば、嫌いな方だと思うな……今はもう好きじゃなくなったんだから。
アンドロマケ  今まで好きだったものが、どうしてもう好きでなくなったりするの? 話してちょうだい。聞きたいわ。
ヘクトル  たとえば、友達が嘘吐きだってことに気付いた時なんか、そうじゃないか。
そうなると、そいつの言うことは何もかも嘘に聞こえる。たとえ本当のことを言っていても……
こんなことを言うのは変かもしれないが、戦争は私に約束してくれたんだ、
みんなが善良になり、寛大になり、下劣なものを軽蔑するようになると。
私は、自分の情熱も、生き甲斐も、お前も、戦争のおかげで手に入れることが出来たんだと思っていた……
今度の戦争まで、私が愛さなかった敵は一人もいなかった……
アンドロマケ  さっき仰ったわね、愛しているものしか、うまく殺せないって。

51 :
ヘクトル  お前には分からないだろう、戦争は崇高なものだと、こちらが信じ込むほど、戦争の音階はうまく調律されていたんだ。
夜、馬を駈ける蹄の音、重装歩兵連隊がテントのそばを通る時、一緒に聞こえてくる盾の音や衣擦れの音、
散会して待ち伏せしている中隊の上を飛んで行く鷹の鳴き声、
そういうものがこれまでは実に正確に、素晴らしく正確に音程が合っていた。
アンドロマケ  それが今度は音程が外れていたの?
ヘクトル  どうしたわけだろう? 年齢のせいだろうか? ある朝、私と同じ年頃の敵を組み伏せて、
とどめを刺そうとした時感じたのは、家具屋がテーブルの足を削っている時急に感じるような、ただの仕事の疲れだろうか? 
以前は、私がR相手は、自分と正反対の人間だったような気がしたものだ。
今度は鏡の上に膝をついているようだった。そいつをRことは自殺のようなものだった。
こんな時、家具屋だったら鉋や漆を投げ出すのか、それとも仕事を続けるのか、どうするか知らないけれど……
私は仕事を続けた。しかし、この瞬間から、正確な音程を持ったものは何一つなくなってしまった。
私の盾に当たった投槍が、急に調子外れな音を立てる。戦死者の倒れる音も、何時間か後で宮殿が崩れ落ちた音も、やっぱりそうだった。
それに、こちらに分かったということが、戦争の方にも分かったのだ。
それでも戦争は平気なものだった……戦死者の叫び声も調子外れだった……こんな風だったんだ。
アンドロマケ  他の人にはみんな正確な音程に聞こえたんでしょう。
ヘクトル  誰でも同じなんだ。私がつれて帰って来た兵隊はみんな戦争を憎んでいる。
アンドロマケ  耳の悪い兵隊ね。
ヘクトル  いや、そうじゃない。お前には想像もつかないだろうが、一時間前にトロイアが見え出すと、誰の耳にも調子外れに聞こえなくなった。
それを聞くと、どの部隊も苦しくなって立ち止まってしまった。思い切って門から入れなかったほどだ。
私たちは三々五々城壁の周りに散らばっていた……無防備の祖国を平和に取り囲むのは、
本当の軍隊にとってやり甲斐のある唯一の任務だよ。

52 :
アンドロマケ  それが真っ赤な嘘だということがどうして分からなかったの? 戦争はトロイアの中にいるのよ、ヘクトル! 
城門であなた方を迎えたのは戦争なの。私がこんなに絶望してあなたに縋りつくのも戦争のせいよ、愛情からじゃないわ。
ヘクトル  何を言うんだ?
アンドロマケ  じゃ、パリスがヘレネをさらって来たことを知らないの?
ヘクトル  今聞いたところだ……それで?
アンドロマケ  ギリシア人がヘレネを返せと要求していることは? ギリシアの使者が今日到着することは? もし返さなかったら、戦争になるってことは?
ヘクトル  返さないなんてことがあるものか! 私が自分で返してやるよ。
アンドロマケ  パリスが承知するものですか。
ヘクトル  パリスはすぐ私の言うことを聞くよ。カサンドラが連れて来てくれるだろう。
アンドロマケ  あの人はあなたの言うことなんか聞くものですか。パリスの栄光とか言うものが、
そんなことをさせないわ。それに、パリスに言わせると、愛しているんですって。
ヘクトル  いずれ分かるさ。大急ぎでプリアモスの所へ行って、今すぐお話したいと言ってきておくれ。
心配することはないよ。戦争をしてきたトロイア人や、戦争の出来るトロイア人は、みんな戦争なんかしたくないんだから。
アンドロマケ  他の連中だっているじゃありませんか。
カサンドラ  パリスが来たわ。
(アンドロマケ退場)

53 :
カサンドラ、ヘクトル、パリス

ヘクトル  おめでとう、パリス。我々の留守の間を無駄には過ごさなかったというわけだな。
パリス  ありがとう。まあね。
ヘクトル  それで? ヘレネの一件は?
パリス  ヘレネはとても可愛い女だよ。そうだろう、カサンドラ?
カサンドラ  かなり可愛いわね。
パリス  どうして「可愛い」なんて言うんだい、今日は? 昨日はとても美しいと言っていたじゃないか。
カサンドラ  とても美しいけれど、可愛いって点では、まあまあと言ったところよ。
パリス  小さな可愛らしいかもしかみたいじゃないか?
カサンドラ  いいえ。
パリス  かもしかみたいだって言ったのは姉さんだぜ!
カサンドラ  私の間違いだったの。あれから本物のかもしかを見たのよ。
ヘクトル  かもしか、かもしかってうるさいな! そんなに人間離れしているというのかい?
パリス  そりゃもう。ここらの女とはタイプが違うよ。
カサンドラ  ここらの女のタイプってどんなの?
パリス  姉さんみたいなのさ。全然気取ったところがないんだ。
カサンドラ  あなたのギリシア女は恋をする時でも気取っているの?
パリス  トロイアの女が喋っているのを聞いてみろ! 僕が何を言っているか、分かるだろう。
僕はアジアの女には、もううんざりだ。あいつらに抱き付かれたらとりもちみたいだし、
接吻されると押し潰されそう、ものを言う時は、こちらを飲み込まんばかり。
着物を脱ぐにつれて、どの着物よりごてごて飾り立てた裸体という着物が出てくる。
自分の姿を僕たちの上に写さんばかりのお化粧ぶり、そしてまた実際に写してしまうんだからな。
要するに、あいつらは恐ろしく近い所にいる……ところが、ヘレネは遠い所にいるんだ、僕の腕に抱かれていても。
ヘクトル  そいつは面白い! しかし、遠い所にいる女、そんな女をパリスに愛させるために、戦争をする値打ちがあると思うか?
カサンドラ  遠い所にいる女ですって……パリスの好きなのは、遠い所にいるような感じの女だけど、体はすぐそばになくちゃね。
パリス  そばにいて、遠くにいるような感じのするヘレネのためなら、どんな犠牲でも払う価値があるね。

54 :
ヘクトル  どんな風にしてさらって来たんだ? 合意の上でか、それとも無理矢理?
パリス  何を言うんだ、ヘクトル! 兄さんだって僕に負けないくらい、女を知っているだろう。
無理矢理でなければ承知するものか。ところがそうなると女は夢中になるものでね。
ヘクトル  馬に乗せてさらって来たのか? 窓の下に馬糞を一山残してきたのか、さらって来た証拠に?
パリス  訊問かい、それは?
ヘクトル  訊問だ。はっきり返事をしたらどうだ。向こうの家やギリシアの土地を侮辱しなかっただろうな?
パリス  ギリシアの水を少々。ヘレネは海水浴をしていたんでね……
カサンドラ  泡から生まれたんですって! 冷たさも泡から生まれるのよ、ヴィーナス(アフロディーテ)と同じように。
ヘクトル  いつものくせで、お前は宮殿の柱につまらない落書きなんかしてきたんじゃないだろうな? 
お前が一声怒鳴ったことを、今時分、山彦が、ご亭主のメネラオスに繰り返し聞かせているんじゃないだろうな?
パリス  いいや。メネラオスは裸で砂浜にいたよ、足の指を挟んだ蟹を取るのに夢中だった。
着物を風にさらわれたような顔をして、僕の船が遠ざかるのを見ていたよ。
ヘクトル  物凄く怒っていただろう?
パリス  蟹に挟まれた王様が嬉しそうな顔をしていたためしはないよ。
ヘクトル  他に誰も見ていなかったのか?
パリス  僕の船の水夫だけだ。
ヘクトル  よし!
パリス  何が「よし」なんだ? どうするつもりだ?
ヘクトル  取り返しのつかないようなことは何一つしていないから、「よし」と言ったんだ。
要するに、ヘレネは裸だった。だから、着物一枚、持ち物一つ汚されたわけじゃない。
汚されたのは体だけだ。そんなものは問題にならない。ギリシア人のことだから、
王妃が海へ行って、何ヶ月か水に沈んでいた後で、涼しい顔で静々と上がってきたら、
あいつらはそれを自分たちの都合のいいように、神の仕業にしてしまうよ。
カサンドラ  顔だけは保証するわ。
パリス  僕がヘレネをメネラオスに返すとでも思っているのかい!

55 :
ヘクトル  お前にそれまでしてもらおうとは思わない……メネラオスにも……その仕事はギリシアの使者が引き受けてくれる……
田植えでもするように、海の指定の場所へ植えてくれるだろう。今夜、使者に引き渡してもらいたい。
パリス  ヘレネと一晩すごせると言うのに、それを諦める奴がいると思うなんて、
自分がどんな酷い間違いを犯しているか、兄さんにはよく分からないんだ。
カサンドラ  まだ半日ヘレネと過ごせるじゃないの。その方がギリシア的だわ。
ヘクトル  もういい。分かっている。女と別れるのは、何もこれが初めてじゃああるまいし。
パリス  そりゃそうだ、ヘクトル、これまで、僕はいつも喜んで別れてきた、たとえ最愛の女とだってね。
女と別れる楽しさを味わうことを知っているという点では、僕は誰にも負けないつもりだ。
最後の抱擁をすませてから町へ出て、初めて一人だけで散歩する時だの、
女が鼻が真っ赤になるくらい泣いて出て行った後で、針仕事をしている女がいかにも呑気そうに、
みずみずしい顔をしているのを始めて見た時だの、そういう時の楽しさのためなら、僕は喜んで他のものを犠牲にするね……
「一人の女いまさねば、全て戻り来ぬ」……女はみんな僕のために新しく生まれてくる、みんな僕のものだ、
しかも、自由で、沽券にかかわることもなし、良心の呵責も感じない……
そうだよ、兄さんの言う通りだ。恋愛には本当に夢中になれる時がある。それは別れる時だ……
だから、僕はヘレネとは絶対に別れない、あれと一緒にいると、他の女全部と別れたような気がする。
僕は千倍も自由になり、千倍も高い気持ちになれるんだ。
ヘクトル  あの女がお前を愛していないからさ。お前の言うことはみんなその証拠じゃないか。
パリス  何とでも言うがいいさ。しかし、僕はどんな情熱よりも、僕を愛していないヘレネのあの態度が好きなんだ。
ヘクトル  それはお気の毒だな。とにかく返してもらおう。
パリス  兄さんは国王じゃないんだよ。
ヘクトル  俺はお前の兄貴だ。未来の国王だぞ。
パリス  じゃ、将来指図するがいい。今のところは、僕は親父に服従する。
ヘクトル  それで結構だ。プリアモスの判断に任せていいんだな?
パリス  いいとも。
ヘクトル  誓うな? 誓ったぞ?

56 :
カサンドラ  気をつけなきゃ駄目よ、ヘクトル! プリアモスはヘレネに夢中なのよ。ヘレネを渡すくらいなら、自分の娘を渡しかねないわ。
ヘクトル  何だって?
パリス  未来のことはともかく、姉さんが現在のことを言い出したらそれは本当だぜ。
カサンドラ  兄弟も、叔父さんたちも、大叔父さんたちも、みんなよ! 
トロイアの老人たちは、みんなヘレネの取り巻きなのよ。見てごらんなさい。あの人の散歩の時間だわ……
城壁の銃眼に白髪頭が鈴なりになっている……コウノトリが城壁の上で鳴いているみたい。
ヘクトル  面白い眺めだな。髭は真っ白で顔は真っ赤だ。
カサンドラ  ええ、血がのぼっているのよ。凱旋部隊が入って来るスカマンドロス門に行っていなければならないのに、
あの連中はヘレネが出かけるスカイアイ門に集まっている。
ヘクトル  みんな急に下を向いた、ネズミが通るのを見つけたコウノトリみたいに。
カサンドラ  ヘレネが来たわ……
パリス  そうかい?
カサンドラ  二つ目のテラスにいるわ。サンダルを直している。立ったまま、足を高く組んで。
ヘクトル  信じられない! トロイア中の老人が上から見下ろしている。
カサンドラ  いいえ。要領のいい連中は下で見ているわ。
外の叫び声  美の女神万歳!
ヘクトル  何と言っているんだ?
パリス  「美の女神万歳」って言ってるんだ。
カサンドラ  賛成だわ。爺さん方、さっさと死んでしまえばいいのに。
外の叫び声  ヴィーナス様万歳!
ヘクトル  今度は?
カサンドラ  「ヴィーナス様万歳」だって……怒鳴っているつもりだけど、歯がないものだから、ただ力一杯もぐもぐやっているだけよ。
ヘクトル  ヴィーナスと何の関係があるんだ?
カサンドラ  ヘレネをくれたのはヴィーナスだと思っているのよ……パリスが一目見て林檎をヴィーナスに捧げたお礼に。
ヘクトル  お前もとんだことをしてくれたもんだな。
パリス  兄貴面するなよ!

57 :
カサンドラ、ヘクトル、パリス、二人の老人

第一の老人  下の方がよく見える……
第二の老人  よく見たじゃないか!
第一の老人  だが、ここの方がわしらの声がよく聞こえるからな。そら! 一、二、三!
二人同時に  ヘレネ万歳!
第二の老人  わしらの年齢になると、見たり、万歳を言ったりするたびに、あの物凄い階段を登ったり降りたりするのは一仕事だな。
第一の老人  一日おきにやったらどうだろう? 最初の日は万歳を言って、次の日はよく見ることにしたら?
第二の老人  馬鹿を言え。ヘレネをろくに見もしないで一日を過ごすなんて! 今日見た時のことを考えてみろ! 一、二、三!
二人一緒に  ヘレネ万歳!
第一の老人  さあ、今度は下へ行こう!
(彼らは走って退場)
カサンドラ  ごらんの通りよ、ヘクトル。あの老いぼれの肺がよくもつと思うわ。
ヘクトル  親父はまさかあんなじゃないだろうな。
パリス  おい、ヘクトル、親父の前で話をする前に、ちょっとヘレネに会ってみないか。
ヘクトル  俺はヘレネになんか興味はない……ああ! 父さん! ただいま!
(ヘカベ、アンドロマケ、詩人デモコス、幾何学者を従えてプリアモスが登場する。ヘカベはポリュクセネの手を引いている)

58 :
ヘカベ、アンドロマケ、カサンドラ、プリアモス、ヘクトル、パリス、デモコス、幾何学者、ポリュクセネ

プリアモス  何を言っていたんだ?
ヘクトル  父さん、大急ぎで戦争の門を閉めて、閂をさして、錠をかけなければと言っていたんです。
二枚の扉の間から蚊一匹通れないようにしなくては。
プリアモス  そんなに長い台詞ではなかったようだが。
デモコス  ヘレネなんかに興味はないと言っておられました。
プリアモス  下を見てみろ……
(ヘクトルは言われた通りにする)
       見えるかね?
ヘカベ  ええ、見えますとも。あの女が目に入らない人が、一度も見なかった人があるものですか。町中練り歩くんですからね。
デモコス  美の練り歩きですな。
プリアモス  見えるかね?
ヘクトル  ええ……それで?
デモコス  プリアモスは、何が見えるか、聞いていらっしゃるのです!
ヘクトル  若い女がサンダルを直しているのが見えます。
カサンドラ  あの人、サンダルを直すのに時間がかかるわね。
パリス  裸のままさらって来たので、クローゼットを持って来なかったんだ。あれは姉さんのサンダルだよ。少し大きすぎるんだ。
カサンドラ  小さな女には、何だって大きすぎるものよ。
ヘクトル  可愛らしいお尻が見える。
ヘカベ  誰が見ても見えるものは同じですよ。
プリアモス  可哀想な奴だ!
ヘクトル  何ですって?
デモコス  プリアモスは「可哀想な奴だ」と仰っているんです!
プリアモス  そうだ、わしはトロイアの若い者がそんなだとは知らなかった。
ヘクトル  どうだと仰るんですか?
プリアモス  美を解さないというのだ。
デモコス  従って愛を解さない。リアリズムというやつさ! 我々詩人はそういうのをリアリズムと呼んでいるのです。
ヘクトル  トロイアのご老人方は、美や愛を解していらっしゃるというわけですか?
ヘカベ  当たり前ですよ。愛や美を解さなければならないのは、愛している人たちや美しい人たちではないのだから。
ヘクトル  父さん、美というものはどこでも見られますよ。ヘレネのことを当てこすっているわけではありませんが、美は町中どこででも見られますからね。

59 :
プリアモス  ヘクトル、ひねくれたことを言うものではない。
お前だって女を見て、その女がただの女であるだけでなく、
ある観念や感情がその女の身内を流れ、その女の形を借りて姿を現しているように感じたことは何度もあるだろう。
デモコス  そこでルビーが血の象徴になるのです。
ヘクトル  血を見たものにとってはそうじゃない。俺は血を浴びてきたんだ。
デモコス  象徴と言っているのですよ! いくら軍人だからって、あなたも象徴という言葉くらい聞いたことがあるでしょう! 
遠くから見ただけでも、知恵や調和や優雅を象徴しているように見える女に会ったことがあるでしょう?
ヘクトル  見たことはある。
デモコス  そういう時はどうしました?
ヘクトル  近寄ってみたらお終いだった……あの女は何を象徴しているのだ?
デモコス  もう一度言いますが、美を象徴しているのです。
ヘカベ  では、早くギリシア人に返しておしまい、あの女がいつまでも美の象徴でいてほしいなら。あの女は金髪だよ。
デモコス  この女どもとは話も出来ない!
ヘカベ  では、女の話などしなければいい! あなた方は礼儀も弁えず、愛国心もないのね。
どこの国の人間だって、鼻が低かろうと、唇が分厚かろうと、
美の象徴は自分の国の女を祭り上げるものですよ。あなた方だけよ、よその国の女を祭り上げるのは。
ヘクトル  父さん、私も私の戦友も、疲れ切って帰って来ました。この大陸に永遠の平和を確立したのです。
私たちは今後幸福に暮らしていける、妻が何の心配もなく私たちを愛し、子供を産むことができる、と思っていました。
デモコス  立派な心掛けだが、戦争で子供が生まれなくなったためしはありませんよ。
ヘクトル  ヘレネ一人のために町がこんなに変わってしまったのはなぜですか? 
ギリシア人と戦争をしてでも手に入れる値打ちのあるものをあの女が持って来てくれたというのですか?
幾何学者  その答えなら誰だって出来ますよ! 私が言いましょうか?
ヘカベ  そら、幾何学者のお喋りが始まった!

60 :
幾何学者  そうですよ、私は幾何学者ですよ! 幾何学者は女のことに口を出す必要はない、などと思わないでもらいたいですな! 
女の器量を測るのだって幾何学者ですよ。あなた方の腿の皮が厚すぎたり、首にこぶがあったり、
そんなことで我々幾何学者がどれだけ頭を悩ましているか、言わないでおきますがね……
とにかく、これまで幾何学者たちはトロイア付近の風景には不満を持っていました。
平野から丘への線はしまりがないし、丘から山への線は針金のようでした。
ところが、ヘレネがここへ来て以来、景色は意味を持って来たし、引き締まってきたのであります。
真の幾何学者が痛感しておりますことは、空間や体積を測る尺度は、もうヘレネ以外にはないということであります。
宇宙を細切れにするために人間が発明した道具は、全てお払い箱です。もうメートルもグラムもマイルもありません。
ヘレネの歩幅、ヘレネの肘の長さ、ヘレネの目に見える距離、ヘレネの声の聞こえる距離しかないのです。
ヘレネが歩く時の空気の流れが風の単位です。ヘレネは我々の気圧計、風速計であります! 
我々幾何学者が申し上げたいのは、以上のことであります。
ヘカベ  泣いてるわ、馬鹿ね!
プリアモス  ヘクトル、あの群集を見るがいい、そうすれば、ヘレネが何であるか、お前にも分かるだろう。
あの女は一種の贖罪なんだ。町の城門に白髪頭を並べて待っている老人たちの中には、
盗みを働いた者や、女を売った者や、一生を棒に振った者もいるが、あいつらも心の奥底では、人知れず美を求めていた。
ヘレネはそういうことを証明しているのだ。今ヘレネが身近にいるように、
美しいものが身近にあったら、友達のものを盗んだり、娘を売り飛ばしたり、
遺産を飲み潰したりはしなかったに違いない。ヘレネは彼らの赦免であり、報いであり、未来なのだ。
ヘクトル  老人たちの未来など、どうだっていいじゃありませんか。
デモコス  ヘクトル、私は詩人だから、詩人として考えます。私の言葉が時々美に触れなかったら、
どうなると思います! 至福という言葉がなかったとしたら!
ヘクトル  そんなもの、なしですますだろうね。俺はもうなしですましている。至福なんて言葉は、無理矢理言わされない限り口にしない。

61 :
デモコス  そう、あなたは快楽という言葉もなしですますのでしょうな?
ヘクトル  快楽という言葉のために戦争をしなければならないというなら、なしですますね。
デモコス  あなたが勇気という一番美しい言葉を見つけたのは、戦争のおかげですよ。
ヘクトル  高くついたよ。
ヘカベ  卑怯という言葉だって、戦争の時に見つかったに違いないわ。
プリアモス  ヘクトル、どうしてわしらの言うことを分かろうとしないのだ?
ヘクトル  あなた方の仰ることは、よく分かりますよ。言葉をすりかえて、美のために戦うんだと言いながら、
実は一人の女のために我々を戦争へ駆り立てようとしているんです。
プリアモス  では、お前はどんな女のためにでも、戦争はしない、と言うのか?
ヘクトル  絶対にいたしません!
ヘカベ  全く、この子の言う通りですよ。
カサンドラ  女が一人しかいなかったら、戦争をするかもしれないわ。あいにく掃いて捨てるほどいるんですもの。
デモコス  アンドロマケを取り返すためでも戦争はしない、と言うんですか?
ヘクトル  アンドロマケと俺は、どんな牢獄でも抜け出して一緒になる秘密の手筈を打ち合わせてあるのだ。
デモコス  一緒になれる希望が全くない場合には?
アンドロマケ  そんな場合でもです。
ヘカベ  見事にあの人たちの化けの皮をはがしてくれたね、ヘクトル。女一人のために戦争をするなんて、不能者の愛し方ですよ。
デモコス  女性を過大評価することになりますか?
ヘカベ  そうですよ! 決まっているじゃありませんか!
デモコス  賛成いたしかねますな。私のおふくろも女性ですから、どんなつまらない女性でも私は尊敬するつもりですよ。
ヘカベ  分かっていますよ。そういう女性をもう何度も尊敬なさったんだから……
(騒ぎを聞いて集まっていた侍女たちがどっと笑う)
プリアモス  ヘカベ! お前たち! 女が寄ってたかって反対するとはどういうことだ? 
お前たちのうちの一人のために、祖国の運命を賭けるべきか否かを相談しているのに、腹を立てているのか?
アンドロマケ  女が腹を立てるのはただ一つ、それは不正です。
デモコス  実に嘆かわしいことです、女の方が女の何たるかを心得ていないとは。

62 :
若い侍女  (再び通りかかって)おやおや!
ヘカベ  そんなこと、女はよく心得ていますよ。女というものがどんなものか、私が教えてあげましょうか。
デモコス  女に喋らせてはなりませんよ、プリアモス。何を言い出すか、知れたものじゃありません。
プリアモス  お前たちのうちの誰か一人のことを考えるだけで、わしには女の何たるかが分かるのだ。
デモコス  第一に、女は我々のエネルギーの源である。それはあなたのよくご存知でしょう、ヘクトル。
背嚢に女の写真を入れていない兵隊はものの役に立ちません。
カサンドラ  自惚れの源でしょう。
ヘカベ  悪の源ですよ。
アンドロマケ  女は、憐れな、気紛れと恐怖の塊です。重いものが大嫌いで、ありふれた、たやすいものが大好きなの。
ヘクトル  よく言ってくれた、アンドロマケ!
ヘカベ  そんなこと、何でもありませんよ、五十年も女でいるくせに、私はまだ自分というものが分かったためしがないのだから。
デモコス  第二に、女が欲すると否とにかかわらず、女は勇気に対する唯一の褒美である……
下っ端の兵隊にでも聞いてごらんなさい。男を一人殺せば、女を一人手に入れる権利ができるのです。
アンドロマケ  女は卑怯者や放蕩者が好きなのよ。ヘクトルが卑怯で放蕩者でも、私はやはりヘクトルを愛しますわ。おそらくこれまで以上に。
プリアモス  いい加減にしておきなさい、アンドロマケ。自分の証明したいことの反対を証明することになるかもしれんぞ。
ポリュクセネ  女は食いしん坊よ。嘘吐きよ。
デモコス  貞節や純潔が人間生活の中でどんな役割を演じているか、そういうことは言わないのですか、え?
侍女  おやおや!
デモコス  何をやっているんだ、お前は?
侍女  「おやおや」と言ったんです。自分の思ったことを言っただけですわ。
ポリュクセネ  女は自分のおもちゃを壊すものよ。熱いお湯の中へおもちゃの頭をつけたりして。
ヘカベ  私たち女は、年をとるにつれて、男がどんなものか、はっきり分かってくるんですよ。
偽善者で、法螺吹きで、すけべだってことがね。男は年をとるにつれて、女が素晴らしく立派に見えてくる。
こっそり抱いた女中まで、あなた方の思い出の中では、素晴らしい美人になってしまうのね。

63 :
プリアモス  浮気をしたことがあるのか、お前は?
ヘカベ  あなたとだけよ、だけど百回も。
デモコス  アンドロマケは浮気をしましたか?
ヘカベ  アンドロマケはそっとしておいておやり。あの子は女の話とは何も関係がないのだから。
アンドロマケ  ヘクトルが夫でなかったら、私は、あの人と浮気するわ。
もしヘクトルがびっこでがに股の漁師だったら、漁師小屋まで追いかけて行くわ。
牡蠣の殻や海草の中に横になって、あの人の不義の子を産むわ。
ポリュクセネ  女は夜、目を瞑って眠ったふりをするものよ。
ヘカベ  (ポリュクセネに)お前までそんなことを言うのか! 恐ろしい子だ! もう一度言ってごらん、承知しないから!
侍女  男ほど始末の悪いものはないけれど、この男ときたら!
デモコス  女が浮気をする、こいつはどうも仕方がない! 女が自分の品位と価値を蔑ろにする、これもまた仕方がない。
女がいつまでも理想的な姿を保ち、しゃんとして、心に皺を寄せないようにすることが出来ないんだから、我々がそれをかわりにするんだ……
侍女  まあ! 靴の木型じゃあるまいし!
パリス  一つだけ女が言い忘れていることがある、女はやきもちを焼かないということさ。
プリアモス  お前たち女が我々に反対している、そのことだけで、我々の正しいことが証明されるわけだ。
今、お前たちが平和のために戦っているのは、非常に広い心を持っているからだ。
しかし、平和はお前たちの夫を無気力な、怠け者の弱虫にしてしまう、ところが戦争は彼らを男にするのだ!
デモコス  英雄にするんだ。
ヘカベ  そんな言葉くらい知っていますよ。戦争中は男を英雄と言うのです。
そう言われたからって、別に勇敢になるとは限らないし、尻に帆を上げて、
逃げ出さないとも限らない。逃げたところで英雄には違いありませんからね。

64 :
アンドロマケ  お父様、お願いです。私たち女に対してそれほど愛情を持っていらっしゃるなら、
世界中の女が私の口を借りて申し上げることを聞いてください。私たちの夫を今のままにしておいてください。
男が敏捷さや勇気をなくさないように、神様は、生きているものや、生きていないものや、沢山のトレーナーを作ってくださったのです。
嵐だけだって! 獣だけだって十分ではありませんか! 狼や、象や、豹がいる限り、人間を相手にするよりずっとましですわ。
私たちの周りを飛び回っている大きな鳥や、私たち女の目にはヒースと見分けもつかないような毛をしたウサギの方が、
鎧に身を固めた敵の心臓より、私たちの夫の目を鋭くするのに、ずっと役に立ちますわ。
鹿や鷲が殺されるのを見る度に、私はありがたいと思いました。
ヘクトルのために死んでくれたことを知っていますから。
ヘクトルのために他の人間が死んでほしいなどと思いませんわ。
プリアモス  わしだってそんなことは望んでおらん。しかし、お前たちがみんなこんなに美しく、
こんなに元気で、こうしていられるのは、なぜなのか知っているかね? 
お前たちの夫や、父や、先祖の人たちが軍人だったからだよ。
彼らが武芸を怠っていたら---生命なんて普段はつまらない、馬鹿げたものだが、
その生命を人間が軽蔑するとたちまち有意義な輝かしいものになるということを知らなかったら、
お前たちの方が卑怯になって、戦争をしようと言い出すに違いない。
この世で不死になる方法はただ一つ、それは自分が死ななければならないということを忘れることだ。
アンドロマケ  ええ、その通りですわ、お父様! 戦争で死ぬのは勇敢な人たちです。
戦争で死なないようにするには、よほど運がいいか、よほどうまく立ち回るかしなければなりませんわ。
少なくとも一度は、危険を前にして、頭を下げるか、膝をつくかしたはずです。
凱旋門をくぐって行進する兵隊たちは、死を前にして逃げ出した人たちです。
名誉も力も失った国が、どうして名誉や力を誇ることが出来ましょう?
プリアモス  少しでも卑怯なことをしようとすれば、国民はその途端に若さを失ってしまうのだ。
アンドロマケ  どちらが卑怯なのでしょう? 他人に卑怯だと思われても平和を守るのと、自分に対して卑怯になって戦争を起こすのと?

65 :
デモコス  卑怯とは、祖国のために死にたい、他の人のために死にたくない、と思わないことだ。
ヘカベ  この辺りで詩でも出てくるのかと思いましたよ。詩なんて掃いて捨てるほどありますからね。
アンドロマケ  誰だって祖国のために死んでいるんですわ。よく働いて、正しく賢明に生涯を送った人も、やはり祖国のために死んだのです。
お父様、戦死した人たちは地下で安らかに眠っているわけではありません。土になって永遠の眠りにつくのではありません。
土の肉になるのではありません。土の中に人間の骨が見つかると、
その側でいつでも一振りの剣があるものですわ。土の骨、何の役にも立たない骨、軍人ってそういうものよ。
ヘカベ  それとも老人だけを軍人にするといい。国中若い者ばかりになる。若い者が死んでしまったら国が滅びてしまうんだから。
デモコス  若い者などという言葉を振り回すのもいい加減にしてもらいたいですな。三十年もすれば、年寄りになるじゃありませんか。
カサンドラ  違うわ。
ヘカベ  違いますよ! 人間は四十になると、老人と取り替えられてしまうのさ。元の人間は消えてなくなるのよ。
見た目がどこか似ているだけ。何一つ同じものはありはしない。
デモコス  栄光を望む私の気持ちは変わりませんでしたよ、ヘカベ。
ヘカベ  そうだったわね。それからリューマチもね……
(侍女たち、再びどっと笑う)
ヘクトル  パリス、あれを黙って聞いているのか、お前は! 
何年も続く不和や殺戮から俺たちを救うために、色事一つ犠牲にする気は起こらないのか?
パリス  どう言えばいいんだ? 僕の立場は国際的なんだよ。
ヘクトル  パリス、お前、本当にヘレネを愛しているのか?
カサンドラ  二人は愛の象徴なんですって。もう愛し合う必要さえないんですってさ。
パリス  僕はヘレネが大好きだよ。
カサンドラ  (城壁の所で)来たわ、ヘレネが。
ヘクトル  俺が説き伏せて、ヘレネが帰ると言ったら、お前は承知するだろうな?
パリス  ああ、承知するよ。
ヘクトル  父さん、ヘレネがギリシアに帰るのを承知したら、あなたは腕ずくでお引き止めになりますか?
プリアモス  起こるはずのないことをどうして問題にするのだ?

66 :
ヘカベ  なぜ起こるはずがないのです? もし女にあなたの仰る四分の一の値打ちでもあったら、ヘレネは自分で帰りますよ。
パリス  父さん、僕からもお願いします。みんながどんな態度かごらんになったし、どんなことを言っているかもお聞きになったでしょう。
ヘレネのことになると、国王の家族ともあろうものが、途端に平民どもそこのけの、姑や小姑の集まりになってしまうのです。
大勢の家族の中で僕の役ほどいやな役はありません。当てこすりを言われるのはもう沢山です。
ヘクトルの挑戦を受けることにします。
デモコス  パリス、ヘレネはあなた一人のものではありません。市のものです。国のものです。
幾何学者  風景の一部です。
ヘカベ  お黙り、幾何学者。
カサンドラ  ヘレネが来たわ……
ヘクトル  父さん、お願いです。これだけは私に委せてください。そら……式の合図です。先に行っててください、後からすぐ行きますから。
プリアモス  本当に承知なのか、パリス?
パリス  僕の方からお願いします。
プリアモス  よかろう。みんな、おいで。戦争の門を閉める準備をしに行こう。
カサンドラ  憐れな門。閉める時には、開ける時より余計に油が必要なのね。
(プリアモス以下退場。デモコスは残っている)
ヘクトル  何をぐずぐずしているんだ?
デモコス  インスピレーションを待っているのです。
ヘクトル  ヘレネが現れるたびに、インスピレーションが湧くのです。無我夢中になって、即興の詩がこんこんと溢れ出るのです。よし、これだ!
(朗誦する)
胸麗しく、頭気高き
麗しのヘレネよ、スパルタのヘレネよ、
ゆめ、汝がメネラオスの元に
再び帰らざらんことを!
ヘクトル  歯の浮くような拙い詩はいい加減にしないか。
デモコス  私の創作です。もっと素晴らしいのを聞かせてあげましょう、謹聴、謹聴。
人誇り、人おそるとも、
スカマンドロスのヘクトルの元に、恐るることなく来たれ!
汝は正しく、彼はもとれり……
彼は厳しく、汝は優しければ……
ヘクトル  出て行け!
デモコス  何だってそんなに私を睨むのです? どうやら戦争に劣らず詩がお嫌いのようですな。

67 :
ヘクトル  出て失せろ! 戦争も詩も一つ穴のむじなだ!
(詩人退場)
カサンドラ  ヘレネよ!


ヘレネ、パリス、ヘクトル

パリス  ヘレネ、こちらがヘクトルだ。君にちょっと話があるそうだ、ごく簡単なことだがね。
ヘクトルは君をギリシア人に返すつもりなんだ、君が僕を愛していないことを証明しようというのさ……
ヘクトルと話をする前に、僕を愛していると言っておくれ……思っている通りに正直に言っておくれ。
ヘレネ  私、あなたが大好きよ。
パリス  言っておくれ、君をギリシアから運んで来た波は美しかったって!
ヘレネ  素晴らしかったわ! 素晴らしい波だったわ! あなた、どこで波を見たの? 海はあんなに静かだったのに……
パリス  メネラオスなんか大嫌いだと言っておくれ。
ヘレネ  メネラオス? 大嫌いよ。
パリス  まだあるんだ……私は決してギリシアへ帰りません。繰り返して。
ヘレネ  あなたは決してギリシアへ帰りません。
パリス  そうじゃない、君がだよ。
ヘレネ  もちろんよ! 私、なんて馬鹿なんでしょう! 私、絶対にギリシアへ帰りません。
パリス  僕が言わせたんじゃないぜ……さあ、どうぞ。
(退場する)

68 :
ヘレネ、ヘクトル

ヘクトル  美しい所ですか、ギリシアは?
ヘレネ  パリスは美しいと言っていましたわ。
ヘクトル  ヘレネのいないギリシアが美しいかと聞いているんです。
ヘレネ  ヘレネのことを考えてくださって、お礼申し上げますわ。
ヘクトル  要するに、どうなんです、あれ以来?
ヘレネ  大理石の上に王様と羊が沢山散らばっていますわ。
ヘクトル  王様が金の装束で、羊がアンゴラなら、朝日に照らされている所は悪くないでしょう。
ヘレネ  私、朝が弱いの。
ヘクトル  神様も沢山いるんでしょうな? 空には神様がうようよしていて、女神の星が空からぶら下がっている、なんてパリスが言っていましたよ。
ヘレネ  パリスはいつでも上を向いて歩いているんです。見たかもしれませんわ。
ヘクトル  あなたは見なかったんですか?
ヘレネ  私には素質がないんです。海で泳いでいる魚が見えたことがないんですもの。帰ったらもっとよく見てみましょう。
ヘクトル  もう決して帰らないと、今、パリスに言ったばかりじゃありませんか。
ヘレネ  そう言ってくれと頼むんですもの。私はパリスの言うことをきくのが大好きなの。
ヘクトル  分かりますよ。メネラオスにもそうなのでしょう。あなたはメネラオスが嫌いではないのですね。
ヘレネ  嫌いになるわけはないじゃありませんか。
ヘクトル  本当に嫌いになるただ一つの理由がありますよ。あなたはあの人を見飽きたんでしょう。
ヘレネ  メネラオスを? どうしたしまして! メネラオスをよく見たことは一度もありませんわ、見たと言えるほどには。正反対よ。
ヘクトル  あなたのご主人じゃありませんか?
ヘレネ  物でも人でも、色がついているように見えるものがありますわ。
私、そういうものならよく見えますし、信じることもできるんです。
メネラオスがよく見えたことは一度もありませんの。
ヘクトル  でも、あなたのすぐ側に来たこともあるはずですね。
ヘレネ  私、あの人を触ったかもしれません。でも見たとは言えませんわ。
ヘクトル  あなたの側を離れなかったというじゃありませんか。
ヘレネ  もちろんですわ。知らないうちに、あの人の中を突き抜けて通ったことだって、何度もあるはずよ。

69 :
ヘクトル  ところが、パリスの方は見えたというわけですか?
ヘレネ  天と地を背景に、くっきり浮き上がったように。
ヘクトル  今でもくっきり浮き上がって見えますか? ごらんなさい、あそこに、城壁にもたれています。
ヘレネ  確かにパリスですの、あれ?
ヘクトル  あなたを待っているんですよ。
ヘレネ  まあ! 以前ほどはっきりしませんわ!
ヘクトル  壁は新しく塗りなおしてあるんですがね。ほら、横を向きましたよ!
ヘレネ  不思議ね、自分を待っている人は、自分が待っている人ほどはっきり見えないなんて!
ヘクトル  パリスがあなたを愛していることは確かですか?
ヘレネ  私、他人の感情を、あまり知りたくありませんの。これほど面倒なことはないんですもの。
カードで相手の手札を見てしまったようなものですわ。負けるに決まっています。
ヘクトル  愛していらっしゃるんですか、あなたは?
ヘレネ  私、自分の感情もあまり知りたくありませんの。
ヘクトル  何を仰るんです! 恋をした後で、パリスはあなたの腕の中で眠り、
あなたはパリスに抱き締められ、パリスでいっぱいになっている時に、あなたは何も考えないのですか?
ヘレネ  私の役目は終わったんですから、私のかわりに宇宙に考えさせておくんです。宇宙は私よりもずっと上手に考えてくれますわ。
ヘクトル  しかし、喜びがあなたを誰かに結びつけるわけでしょう。他人かあなた自身かに?
ヘレネ  私は他人の喜びしか知らないんです……その他人の喜びのために、私はどちらからも離れてしまうんです……
ヘクトル  そういう他人は沢山いましたか、パリス以前に?
ヘレネ  何人かは。
ヘクトル  パリス以後にもあるでしょうね? 地平線や、壁や、シーツを背景に、くっきり浮き上がって見えさえすれば。
てっきりそうだろうなと思っていましたよ。あなたはパリスを愛しているんじゃない、ヘレネ。男を愛しているんです!
ヘレネ  男は嫌いじゃありませんわ。大きな石鹸のように、自分の体にこすりつけるのは気持ちのいいものですわ。それですっかり綺麗になりますもの……
ヘクトル  カサンドラ! カサンドラ!

70 :
ヘレネ、カサンドラ、ヘクトル

カサンドラ  何?
ヘクトル  笑わせちゃいけない。預言者の方から聞く奴があるか。
カサンドラ  なぜ呼んだの?
ヘクトル  カサンドラ、ヘレネは今晩ギリシアの使者と一緒に出発する。
ヘレネ  私が? 何を言っていらっしゃるの?
ヘクトル  あなたはついさっき言ったじゃありませんか、パリスをとくに愛しているわけじゃないと。
ヘレネ  あなたがそう解釈なさっただけよ。まあ、そうおとりになっても構いませんけど。
ヘクトル  原文通り引用しますよ。あなたがとくに好きなのは、大きな石鹸のように男を自分の体にこすりつけることでしょう?
ヘレネ  ええ。それとも、軽石のように、と仰っても構いませんわ。それで?
ヘクトル  それで、あなたが別に嫌いでもないギリシアへ帰るのと、戦争のような恐ろしい災難と、どちらかを選ぶのに、躊躇うことはないでしょう?
ヘレネ  ヘクトル、あなたには私の言うことが少しもお分かりにならないのね。私、選ぶのに躊躇ったりするものですか。
これこれしかじかの事が起こるように、私はこれこれしかじかの事をする、と言うのは簡単なことですわ。
私が弱いことに気がついて、喜んでいらっしゃるのね。女の弱みを見つけた男は、真昼に泉を見つけた猟師のようなものですわ。
すぐに飛びつくのね。でも弱い女を説き伏せたからといって、未来を説き伏せたなどとは思わないでください。
子供を操って運命を決めるわけには行きませんわ……
ヘクトル  ギリシア式の微妙なことや、細かいことは、私には分かりません。
ヘレネ  微妙なことや、細かいことではありません。少なくとも怪物やピラミッドくらいの問題ですわ。
ヘクトル  出発するんですか? しないんですか?
ヘレネ  そうがみがみ言わないでください……私は物や人を選ぶのと同じように、出来事を選ぶんです。
私にとって形じゃないものを選ぶんです。私の目に見えるものを選ぶんですわ。
ヘクトル  分かっています。その話はもう伺いました。あなたの目に、色がついているように見えるものでしょう。
数日後にメネラオスの宮殿に帰って行くあなたの姿は見えないんですか?
ヘレネ  ええ、よく見えません。

71 :
ヘクトル  あなたを迎えるために、ご主人に派手な服装をしてもらってもいいですよ。
ヘレネ  貝殻染料を沢山使って真っ赤に染めたところで、私の目に見えるようにはなりませんわ。
ヘクトル  この人はお前の商売仇だよ、カサンドラ。この人も未来が読めるんだ。
ヘレネ  私は未来を読むわけではありませんわ。でも、その未来の中に、色がついて見える場面と、灰色に見える場面とがあるのです。
今まで起こったのはいつでも色のついた場面でしたわ。
ヘクトル  紫の海と黄色の壁の間の、真昼の眩しい砂浜で、あなたをギリシア人に引き渡します。
我々一同は赤い垂れのついた金色の鎧を着る。そして私の白馬とプリアモスの黒馬の間で、
緑の着物を着た私の妹たちが、裸のあなたをギリシアの使者に渡します。
使者は真紅の羽飾りのついた銀の冑をかぶっています。これならあなたにも見えるでしょう?
ヘレネ  いいえ、ちっとも。何だか薄暗くて。
ヘクトル  私をからかっているんですか?
ヘレネ  からかうって、どうして? じゃ、お望みなら、出発しますわ! 
ギリシア人に私を引き渡す用意をしてください。どうなるか、今に分かりますわ。
ヘクトル  あなたは人類を侮辱していることに気がつかないんですか、それとも無意識ですか?
ヘレネ  私が何を侮辱しているんですって?
ヘクトル  あなたのフルカラーのアルバムが人類を愚弄しているとは思わないのですか? 
我々全員が身を犠牲にして、たとえしばらくでも平和に暮らせるように戦っているのに、
あなたは未来永劫までもう出来上がっているアルバムをめくっているんだ! どうしたんです? 
その見えない目で何を見つめているんです? あなたがこの同じ城壁の上で戦争を眺めている絵でしょうね? 見えますか、戦争が?
ヘレネ  ええ。
ヘクトル  それから、市が崩れて、燃えているところでしょう?
ヘレネ  ええ、真っ赤ですわ。
ヘクトル  それから、パリスは? 車のあとにつけられて、引きずり回されているパリスの死体が見えますか?

72 :
ヘレネ  まあ! あれ、パリスだとお思いになって? 本当に、血まみれになった塊が土埃の中を転がっていくのが見えますわ。
手にはダイヤが光っている……そうだわ! 私、顔がよく見えないことはよくあるけれど、宝石はよく見えるの。確かにあの人の指輪ですわ。
ヘクトル  申し分なしだ……アンドロマケと私のことは、もうとても聞く気にはなれない……
私たち夫婦のことは……見えるんですね! そうじゃないとは言わせない。
ヘレネ  別に見ようとは思いませんわ。
ヘクトル  ヘクトルの死骸に縋り付いて泣いているアンドロマケは、色がついていますか?
ヘレネ  お分かりでしょう。色がついているように、とても鮮やかな色がついているように見えても、
何も起こらないこともありますわ。誰にだって間違いはあるものよ。
ヘクトル  もう結構。分かりました……倒れている父親と泣いている母親の間に、男の子がいるんですね?
ヘレネ  ええ……父親のもつれた髪の毛をおもちゃにしていますわ……可愛らしい子供だこと。
ヘクトル  その場面は、あなたの目の中に映っているんですか? 私にも見えますか?
ヘレネ  さあ、どうですか。見てごらんなさい。
ヘクトル  もう何もない! 火事の後の灰だけだ、黄金やエメラルドも粉々になっている。何と澄んでいるんだろう、世界を映すレンズは! 
しかしこのレンズを洗うのは涙じゃないだろう……泣くか、ヘレネ、Rと言われたら?
ヘレネ  知りませんわ。でもきっと大声を出すわ。ヘクトル、そんなことばかり仰ると、私、大声を出すわ……大声を出すわよ。
ヘクトル  ヘレネ、今晩ギリシアへ帰るんだ、さもないと殺してしまう。
ヘレネ  私だって帰りたいのよ! 帰る用意は出来ています。ただ、もう一度言いますが、私を連れて帰る船の姿がさっぱり見えないんです。
帆柱の金具も、船長の鼻輪も、見習い水夫の白目も、色がついているようには見えないんです。
ヘクトル  灰色の海を、灰色の太陽に照らされて帰るんだ。とにかく、我々には平和が必要なんだ。
ヘレネ  平和には見えませんわ、私には。
ヘクトル  カサンドラに頼んで、見せてもらうがいい。魔法使いだから、幽霊や精霊を呼び出してくれる。

73 :
伝令  ヘクトル、プリアモスがお呼びです。神官たちが戦争の門を閉めるのに反対しています! 神々に対する侮辱だと言っています。
ヘクトル  不思議だな、非常時に神々がご自身で何も仰らないとは。
伝令  ご自身でお話になりました。雷が神殿に落ちました。生贄の腸の占いはヘレネの送還に反対です。
ヘクトル  神官どもの腸も何とかして見てやりたいものだ……すぐ行く。
(伝令退場)
ヘクトル  では、承知してくれますね、ヘレネ?
ヘレネ  ええ。
ヘクトル  今後、私が言えという通りに言いますね? 私がしろという通りにしてくれますね?
ヘレネ  ええ。
ヘクトル  オデュッセウスの前で、私と反対のことは言わないでしょうね、私の言うことに合わせてくれますね?
ヘレネ  ええ。
ヘクトル  カサンドラ、聞いたか! この否定の塊がはいはい言っているのを! みんな私の言うことを聞いた。
パリスも、プリアモスも、ヘレネも。ところが、見た目には勝ったように見えるが、あべこべにみんな負けたような気がする。
巨人と戦っても、もう一踏ん張りで勝てるぞ、と思っていたのに、気がついてみると、女の網膜に映った影と戦っていたんだ。
これには勝ちようがないじゃないか。ヘレネ、私にいくら「はい」と言ったって仕方がない、
あなたの中にある頑固さの塊が、私を馬鹿にしているんだ!
ヘレネ  そうかもしれません。でも、私にはどうしようもありませんわ。頑固なのは私じゃないんですもの。
ヘクトル  世界も、何を血迷って、自分を映す鏡をこの鈍い頭にはめ込んだりしたんだろう?
ヘレネ  確かに、残酷なことですわ。でも、鏡の頑固さに勝つ方法がありますか?
ヘクトル  うん、さっきからそれを考えているんだ。
ヘレネ  いくら鏡を壊しても、映っていたものはやっぱりなくならないでしょう?
ヘクトル  それが問題なんだ。
他の伝令  ヘクトル、急いで来てください。海岸は大騒ぎです。ギリシアの船が見えました。
旗をマストに上げないで、伝声管につけています。味方の海軍の名誉の問題です。
使者が上陸した途端に殺されやしないかと、プリアモスが心配しておられます。
ヘクトル  カサンドラ、ヘレネをよろしく頼む。後で使いをよこすから。

74 :
ヘレネ、カサンドラ

カサンドラ  私には何も見えませんわ、色のついたのも、つかないのも。
でも、誰かが近付いてくると、その重みを感じるのです。血管の苦痛でその人の運命を感じるのです。
ヘレネ  私、色のついた場面の中で、時々一ヶ所だけ、他の所よりはっきり見えることがあるんです。
ヘクトルには言わなかったけれど、あの方の子供の首が光っていましたわ。頚動脈の打っている辺りが……
カサンドラ  私は手探りで歩いている盲のようなものですわ。盲でも、私は真理の真ん中にいるのです。
他の人たちはみんな目が見えるにしても、嘘を見ているのですわ。私は真理を手探りしているのです。
ヘレネ  私たちにとってありがたいのは、幻と思い出が、未来と過去が交じり合っていることね! 
それだけ感じが鈍くなるのですもの……本当なの、あなた、魔法使いで、平和を呼び出すことができるんですって?
カサンドラ  平和を? おやすいご用ですわ。平和は乞食のように、どの戸の後ろにも隠れて待っています……ほら。
(平和の女神が現れる)
ヘレネ  なんて綺麗なんでしょう!
平和の女神  助けて、ヘレネ、助けてちょうだい!
ヘレネ  でも、真っ青よ。
平和の女神  真っ青? まあ、真っ青ですって? あなたにはこの金の髪飾りが見えないの?
ヘレネ  まあ、灰色の金なのね! 珍しいわ……
平和の女神  灰色の金! 私の髪飾りが灰色ですって?
(平和の女神、姿を消す)
ヘレネ  消えてしまったの?
カサンドラ  口紅でもつけているんでしょう。
(平和の女神、下品なほどの化粧をして再び現われる)
平和の女神  どう、これなら?
ヘレネ  だんだん見えなくなるわ。
平和の女神  じゃ、これでは?
カサンドラ  ヘレネにはやっぱり、よく見えないのよ。
平和の女神  あなたには見えるのね。だって私に話し掛けていらっしゃるんですもの!
カサンドラ  見えない人と話をするのが私の特殊能力なの。
平和の女神  一体、何が起こったの? なぜ、男の人たちが、市や浜で大騒ぎをしているの?

75 :
カサンドラ  あの人たちの神々が乗り出したらしいの、どうやら名誉も賭けているらしいわ。
平和の女神  神々ですって? 名誉ですって?
カサンドラ  ええ……あなたは病気なのよ!


宮殿の中庭、両隅に海へ行く道。中央に戦争の門。門は大きく開かれている。
ヘレネ、トロイロス

ヘレネ  ねえ、そこにいる人! ええ、あなたよ、私が呼んでいるのは! こちらへいらっしゃい!
トロイロス  いやだ。
ヘレネ  何という名前なの?
トロイロス  トロイロス。
ヘレネ  こっちへいらっしゃいったら!
トロイロス  こちらへいらっしゃい、トロイロス! (トロイロス近寄る)ああ、やっと来たわね! 
名前を呼ぶと言うことを聞くなんて、まだ可愛い所があるのね。本当に酷い人。
私に大声を出させた男は、あなたが始めてよ。男って、いつでも私にくっついているから、
私はただ唇を動かしさえすれば用が足りるの。カモメや、小鹿や、山彦は大声で呼んだこともあるけれど。
男にはこれまで一度もなかったわ。おぼえていらっしゃい……どうしたの? 震えているの?
トロイロス  震えてなんかいないよ。
ヘレネ  震えているじゃないの、トロイロス。
トロイロス  ああ、震えている。
ヘレネ  なぜいつも私の後をつけてくるの? 私が太陽を背にして歩いて行って、立ち止まると、
いつでもあなたの頭の影が私の足にぶつかるわ。ちょうど足より前へ出ないところで止まるけど。何が欲しいのか言ってみて……
トロイロス  何も欲しくない。
ヘレネ  何が欲しいのか言ってみて、トロイロス!
トロイロス  全部、全部欲しいんだ!
ヘレネ  全部欲しいの? お月様も!
トロイロス  全部! もっと欲しいんだ?
ヘレネ  もう本当の大人みたいな口をきくのね、私に接吻したいんでしょう!
トロイロス  違う!
ヘレネ  私に接吻したいんでしょう、トロイロス?
トロイロス  そんなことをしたら、僕、後ですぐ自殺してしまう!
ヘレネ  こっちへいらっしゃい……幾つなの?
トロイロス  十五……ああ!
ヘレネ  「ああ」はよかったわね……女の子に接吻したことある?
トロイロス  女の子なんか大嫌いだ。

76 :
ヘレネ  接吻したことあるの?
トロイロス  みんな接吻させるもの。一人も接吻しなかった頃の僕にかえれるなら、命を投げ出してもいい。
ヘレネ  随分たくさん命の持ち合わせがあるらしいわね。なぜ率直に「ヘレネ、あなたに接吻したいんだ」って言わないの? 
私に接吻したって、何も悪いことなんかないわ……接吻なさいよ。
トロイロス  絶対にいやだ。
ヘレネ  夕方、私が城壁の銃眼に腰を下ろして、島の間に沈んでいく夕日を見ている時に、
足音を忍ばせてやって来て、手で私の頭をあなたの方へ向ける
---金色だったのかが、暗くなって、もちろんよく見えなくなるけど---
そして、私に接吻してくれたら、とても嬉しかったのに---
まあ、あのトロイロスが接吻してくれる、私はそう呟いたと思うわ……接吻してよ。
トロイロス  いやだ。
ヘレネ  分かった。私に接吻したら、私が嫌いになるのね?
トロイロス  ああああああああ! 大人はいいな、言いたいことが言えて!
ヘレネ  あなただって結構言っているじゃないの。

ヘレネ、パリス、トロイロス

パリス  気をつけた方がいいよ、ヘレネ。トロイロスは危険人物だからね。
ヘレネ  どういたしまして。この人、私に接吻した言っているのよ。
パリス  トロイロス、もしヘレネに接吻したら、君を殺してしまうぞ!
ヘレネ  この人は死ぬことなんか平気よ、何度死んだって。
パリス  どうしたんだ? 身構えをしているのか? 君に飛び掛ろうとしているらしいぜ……
可愛い奴だな! ヘレネに接吻しろよ、トロイロス。許してやるよ。
(トロイロスはヘレネに飛び掛りそうにしていたが、すぐ離れる)
パリス  おい、トロイロス! 戦争の門を閉めに、お偉方が大勢やって来る……
あの人たちの前でヘレネに接吻してみろよ、有名になるぜ。将来有名になりたいんだろう?
トロイロス  ううん。有名になんかなりたくない。
パリス  有名になりたくない? 金持ちや、偉い人になりたくないのか?
トロイロス  うん。貧乏で、みっともなくていいんだ。
パリス  最後まで言わせろよ……そうなったら女をみんな手に入れられるんだぜ!

77 :
トロイロス  女なんか一人も欲しくない!
パリス  元老院議員たちが来たぞ! どっちにするんだ、君があいつらの前でヘレネに接吻するか、
それとも君の目の前で僕が接吻してみせようか? 僕がした方がいいのか? 
よし! よく見ていろ! ああ! ……こんな接吻をしてくれたのは初めてだよ、ヘレネ!
ヘレネ  トロイロスにするはずだった接吻よ。
パリス  君はどんなに損をしたか分からないぜ、坊や! 何だ、行ってしまうのか? さようなら!
ヘレネ  トロイロス、後で接吻しましょうね。約束したわよ。(トロイロスは行ってしまう)トロイロス!
パリス  (少し苛々して)大きな声を出すよな、ヘレネ!


ヘレネ、デモコス、パリス


デモコス  ヘレネ、ちょっと! こちらを見てごらん。今、手に素晴らしい鳥を持っているんです、
さあ、離しますよ……用意はいいですか? そうそう……髪を直して、にっこり笑って。
パリス  ヘレネがにっこり笑ったり、髪の毛が膨らんでいたりしたら、どうして鳥が飛び出すのに具合がいいのか、分からないな。
ヘレネ  どちらしろ、私が損をするわけじゃないわ。
デモコス  動かないで……一! 二! 三! そら……もう済みました、もういらっしゃっても結構です……
ヘレネ  で、鳥は?
デモコス  見えなくなることのできる鳥なんです。
ヘレネ  今度は、その方法を聞いておいてね。
(彼女は退場する)
パリス  なぜあんなふざけた真似をするんだ?
デモコス  私はヘレネの顔をテーマにして歌を作っているんですよ。
微笑を浮かべ、髪を整えているところをよく見て、記憶の底に刻み付けておく必要があったのです。もう大丈夫。

78 :
デモコス、パリス、ヘカベ、ポリュクセネ、アブネオス、幾何学者、数人の老人

ヘカベ  とうとう、閉めてくれるのね、この門を?
デモコス  閉めるものですか。今晩また開けなければならなくなるかもしれませんからな。
ヘカベ  ヘクトルが閉めると言っているのだから、プリアモスに承知させるでしょうよ。
デモコス  今に分かりますよ。それにびっくりさせてやることがあるのです、ヘクトルを!
ポリュクセネ  まま、どこに行くの、この門をくぐると?
アブネオス  戦争へですよ。門が開いている時は戦争があるからですよ。
デモコス  諸君……
ヘカベ  戦争だろうと何だろうと、あなた方の象徴は馬鹿げていますよ。
ろくに手入れもしないで、扉はいつも開けっ放し! 犬が片っ端から小便を引っ掛けていくじゃないの。
幾何学者  手入れなど問題ではありません。問題は戦争と神々です。
ヘカベ  私もそう言っているんですよ。神々はご自分の門を閉めることもご承知ないとね。
ポリュクセネ  私だってちゃんと閉められるわね、ママ!
パリス  (ポリュクセネの指に接吻しながら)お前なんかが閉めたら、指を挟まれるよ。
デモコス  パリス、そろそろ静かにしてくれませんかね? アブネオス、幾何学者、並びに列席の諸君、
時間前にここに集まっていただいたのは、我々の第一回の会議を開くためであります。
そして、この第一回の戦時会議が将軍たちの会議ではなく、インテリの会議であることは、幸先のよいことであります。
なぜならば、戦争におきましては、味方の兵士に武器を与えるだけでは不十分だからであります。
彼らの戦意をいやが上にも昂揚することが必要不可欠なのであります。
部隊長が突撃の際、強い樹脂入りのぶどう酒を与えて得る肉体的興奮も、
我々詩人が与える精神的興奮によって倍化されることなくしては、
ギリシア人を前にして効果を発揮することは出来ないでありましょう。
高齢のために戦いに参加することの出来ない我々は、せめて戦いを苛烈ならしむるために手を貸そうではありませんか。
アブネオス、君はその点において意見をお持ちのように見受けられる。君に発言を許可します。
アブネオス  さよう。我々には軍歌が必要であります。
デモコス  その通り。戦争には軍歌が必要であります。

79 :
パリス  これまでなしですませてきたじゃないか。
アブネオス  我々が軍かなしですませてきたのは、これまで野蛮人を相手に戦争をしてきたからだ。
あれは狩のようなもので、角笛だけで十分だった。
しかし、ギリシア人と戦うとなると、我々は一段高い段階の戦争を始めることになるわけであります。
デモコス  その通りだ、アブネオス。ギリシア人たちは相手構わず戦争をするような連中じゃない。
パリス  我々には国歌があるじゃないか。
アブネオス  あります。しかし、あれは平和の歌です。
パリス  平和の歌だって、恐い顔をして、身振りをつけて歌えば、軍歌になるさ……ええと、どんな歌詞だったっけ?
アブネオス  よくご存知でしょう。毒にも薬にもならない歌詞ですよ。「我ら麦を刈り入れ、ぶどうの血を絞る!」
デモコス  せいぜい穀物相手の軍隊ですよ。カラス麦を脅したって、スパルタ人は驚きませんよ。
パリス  手に投槍を持って、死骸を踏みつけながら歌ってみるがいい。
ヘカベ  「血」って言葉があるじゃない。軍歌はみんなそうよ。
パリス  「麦」という言葉もある。戦争はこれが大好きだからな。
アブネオス  文句を言うことはないでしょう。二時間もすれば、デモコスが新しいのを作ります。
デモコス  二時間はちょっと短いかな。
ヘカベ  心配することはない。それだけあれば沢山ですよ! 軍歌の次は賛歌、賛歌の次はカンタータ。
戦争が始まったら、詩人がじっとしているものですか。韻というやつもいい太鼓だからね。

80 :
デモコス  しかも一番役に立つんです。ヘカベ、あなたには想像もつかないくらいに。私は戦争ってものをよく知っています。
戦争がないうちは、戦争の門が閉まっている間は、いくら戦争を罵倒したって構わない。
平和な時代に侮辱されたって、戦争は歯牙にもかけない。しかし、いったん戦争が姿を現したら、うっかりしたことは言えなくなる。
お世辞を言って、おだてあげなくては、いい顔をしてくれない、戦争に勝てないんだ。
そこで、喋ったり、書いたりできる者の任務が始まるんだ。
戦争を賛美して、四六時中おだてあげて、巨大な体のあちこちをひっきりなしに誉めてやるんだ。
そうしないと見捨てられてしまう。将校たちを見るがいい。
「敵に対しては大胆に、戦争に対しては細心に」これこそ真の将校たるものの心がけだ。
パリス  もう軍歌の腹案は出来ているんだろう?
デモコス  素晴らしい考えがあるんです。あなたは誰よりもよく分かってくださるでしょう……
戦争だって、メドゥーサの髪だの、ゴルゴンの唇だのと言われるのは、もううんざりに違いない。
私は一つ、ヘレネの顔にそっくりだと言ってやろうと思うんです。
ヘレネに似ていると言われたら戦争もきっと大喜びでしょう。
ポリュクセネ  ママ、何に似ているの、戦争って?
ヘカベ  ヘレネ叔母さんに。
ポリュクセネ  綺麗ね。
デモコス  ではこれで閉会します。軍歌の件は引き受けました。何をもじもじしているんだ、幾何学者?
幾何学者  軍歌より急を要することがある、もっと急を要することが。
デモコス  勲章のことか、デマのことか?
幾何学者  悪口のことだ。
ヘカベ  悪口?
幾何学者  ギリシアの兵隊は、投槍を投げ合う前に、悪口を投げ合うんだ……ヒキガエルの兄弟! 牛の申し子! と怒鳴りあう……
つまり、侮辱しあうんだよ! 奴らがそうするのも無理はない。
自尊心を傷つけられると、肉体も傷つきやすいことを奴らは知っているんだ。
沈着で有名な軍人も、いぼだのあばただのと言われると、途端にかっとなってしまうものだ。
我々トロイア人は悪口を言うのが恐ろしく下手糞だからな。
デモコス  幾何学者の言う通りだ。全く俺たちだけだよ、R前に敵を侮辱しないのは……

81 :
パリス  非戦闘員が侮辱し合うだけで沢山だとは思わないかね、幾何学者?
幾何学者  軍隊も非戦闘員と憎しみを共有しなければなりませんよ。
この点にかけては、ご承知のように軍人ってやつはあてになりませんからな。
放っておいたら誉め合ってばかりいる。奴らの間にはすぐに真の友情が生まれる。
戦場ではお互いに尊敬し合っているものだから、憎しみの方は、学校や、サロンや、商店へ行ってしまう。
味方の兵隊が悪口合戦でせめて互角にやってくれないと、
侮辱したり中傷したりする気がなくなってしまう。そうなったら間違いなしに戦争も負けですよ。
デモコス  採用! 今晩早速コンクールを行います。
パリス  子供じゃあるまいし、自分で見つけられると思うがね。
デモコス  とんでもない! あなたは自分で見つけられますか、悪口を? なかなかうまいという評判だが。
パリス  そのつもりだが。
デモコス  それは自惚れというものです。アブネオスの前でやってごらんなさい。
パリス  なぜアブネオスの前で?
デモコス  悪口を言い易いように出来ていますからな、太鼓腹で、がに股で。
パリス  いや、アブネオスの前では、うまいのが出てこない。なんならあんたの前でやってみよう。
デモコス  私の前で? よろしい! 即興の悪口がどんなものか、やってみれば分かる! 
十歩数えて……用意はいいぞ……さあ始めて……
ヘカベ  あの男をよく見てごらん。いいのを思いつくよ。
パリス  老いぼれの居候! 汚らしいへぼ詩人!
デモコス  ちょっと待った……間違えないように名前をつけたら……
パリス  なるほど、そうだ……デモコス! 牛の目玉! ふけだらけの丸太野郎!
デモコス  文法的には正しいけれど、スケールが小さいですな。
「ふけだらけの丸太野郎」と言われて、どうして私がかっとなって、人殺しをするような気になるんです? 
「ふけだらけの丸太野郎」は全然効き目がありません。
ヘカベ  「牛の目玉」とも言ったわ。
デモコス  「牛の目玉」は幾分ましだが……しかし、パリス、あなたは何をまごまごしているんです? 
こちらの痛い所をつくようなのを探しなさい。私の欠点はなんです、あなたの考えでは?
パリス  お前は卑怯だ、息は臭いし、ちっとも才能がない。

82 :
デモコス  張り倒すぞ、この野郎!
パリス  僕が言ったのは、君を喜ばせるためなんだぜ。
ポリュクセネ  ママ、デモコスおじさん、どうして叱られてるの?
ヘカベ  ひわだからさ。
デモコス  何ですって、ヘカベ?
ヘカベ  デモコス、あんたはひわだって言っているのさ。もしひわが鷹のように馬鹿で、生意気で、
みっともなくて、臭かったら、あんたはひわだよと言っているのさ。
デモコス  どうです、パリス? あなたのお母さんの方が上手ですな。見習いなさい。
各々が毎日一時間ずつ稽古しても、悪口にかけては、ヘカベにはかなわない。
軍歌の方もヘカベに頼んだ方がいいんじゃないかな……
ヘカベ  何なら引き受けますよ。だけど戦争がヘレネに似ているなんて言わないからね。
デモコス  誰に似ているんです、あなたに言わせると?
ヘカベ  門が閉まったら教えてあげるわ。

83 :
神スレ

84 :
これから話すこと 秘密だよ
毎月、きちんきちんと自分の取り分を貰うやつにろくなやつはいない。
そういう人って人生のどこかで1000万の支払いを要求されたりする。
逆に、お金に何らかの問題を持っている人はその先一生お金に困ったりしないんだ。

85 :
デモコス、パリス、ヘカベ、ポリュクセネ、アブネオス、幾何学者、数人の老人、プリアモス、ヘクトル、しばらくしてアンドロマケ、次にヘレネ

閉門の儀式の間に、アンドロマケはポリュクセネを脇へ呼んで、そっと用事を言いつける。

ヘクトル  閉めるとも。
デモコス  ヘクトル、ちょっと待ってください!
ヘクトル  儀式の用意が出来ていないのか?
ヘカベ  出来ていますよ。蝶番はオリーブ油の中で泳いでいます。
ヘクトル  じゃ、どうしたんだ?
プリアモス  ヘクトル、みんなが言いたいのは、戦争の用意もできているということだ。よく考えてみるがいい。
みんなの考えも間違ってはいないのだ。この門を閉めたところで、すぐにまた開けなければならなくなるだろう。
ヘカベ  ほんのしばらくの間でも、平和の方がいいじゃありませんか。
ヘクトル  父さん、何ヶ月も戦ってきた者にとって、平和がどんなものか、ご存知のはずですよ。
溺れる人の足がやっと底についたのと同じです。ちっぽけな平和のかけらでもいい、足をつかせてください。
ほんのしばらくの間だけでも平和に触れさせてください、たとえ爪先だけでも。
プリアモス  考えてみろ、ヘクトル。今日市に平和という言葉を広めるのは、毒を撒くのに劣らぬ罪悪だぞ。
そんなことを言うと、誰も彼も鎧を脱ぎ、武器を仕舞い込んでしまう。
お前が平和を口にすると、思い出や、愛情や、希望をばら撒くことになるのだ。
兵隊は大急ぎで平和のパンを買い、平和の酒を飲み、平和の女を抱きに行くだろう。
そして一時間もしたら、そいつらをまた戦争にかり立てることになるのだ。
ヘクトル  戦争は起こりません!
(港の方で騒ぎが聞こえる)
デモコス  起こらない? あれを聞いてごらんなさい!
ヘクトル  門を閉めましょう。間もなくここでギリシアの使者を迎えるんです。交渉はかなり難しい。
だから、平和のうちに使者を迎えましょう。

86 :
プリアモス  ギリシア人に上陸を許すかどうかもまだ決まっていないのだぞ。
ヘクトル  上陸させます。オデュッセウスとの会見が平和の最後の望みです。
デモコス  上陸させたりするものですか。我々の名誉が賭けられています。我々は世界中の笑いものにされるのですぞ……
ヘクトル  戦争を引き起こすような処置を元老院にとらせて、その責任をお前が負うのか?
デモコス  私が? どういたしまして。ピュジリス、出て来い。お前の仕事が始まるんだ。
ヘクトル  何だ、この外国人は?
デモコス  この外国人は、現存する国際法の最高権威者です。幸い、ちょうどトロイアに滞在中でした。
これなら、一方的な証人だとは言えないでしょう。この人は中立ですから。
元老院はこの人の意見に賛成だし、明日は全世界が同じ意見になるでしょう。
ヘクトル  ところで、あなたの意見は?
ピュジリス  皆さん、目撃者の証言並びに以後の調査によりますと、ギリシア人はトロイアに対して三カ条の国際法違反を犯しております。
彼らに上陸を許しますと、被攻撃側たる資格を失い、紛争の際に世界中の同情を得ることが出来なくなるのであります。
ヘクトル  詳しく説明してもらいたい。
ピュジリス  第一に、彼らは旗をマストに上げず、伝声管につけました。
皆さん、軍艦が伝声管に旗をつけますのは、牛を積んだ船に対する答礼の場合のみであります。
従いまして、市とその住民の前では、これは典型的な侮辱であります。前例もないわけではありません。
昨年、ギリシア人はオフェアの港に入る際、旗を伝声管につけました。
厳重な抗議が発せられました。オフェアは宣戦を布告したのであります。
ヘクトル  それでどうなった?
ピュジリス  オフェアは敗れました。もうオフェアもオフェア人も存在しません。
ヘカベ  申し分なしだわ。
ピュジリス  一国の滅亡も、その国際道義上の優位にいささかの変更をも加えるものではありません。
ヘクトル  それから?

87 :
ピュジリス  第二に、ギリシア艦隊は貴国の領海に入る際、横陣といわれる隊形をとりました。
最近の学会におきまして、この隊形を攻撃的防御の項に入れることが問題となりましたが、
その真の性格は防御的攻撃であることが認められましたことは、私の喜びであるところであります。
すなわち、これこそ海上攻撃の潜在形態の一つであり、封鎖の潜在形態なのであります。
これ即ち第一級の違反を構成するものであります。これにも前例があります。
五年前、ギリシアの軍艦がマグネーシア沖に投錨いたしました際、横陣の隊形をとりました。
マグネーシアは時を移さず宣戦を布告したのであります。
ヘクトル  勝ったのか?
ピュジリス  敗れました。城壁の石一つ残っておりません。しかし、私の条文は残っております。
ヘカベ  それはおめでとう。私たちは随分心配しましたよ。
ヘクトル  それから?
ピュジリス  第三の違反はそれほど重大なものではありません。
ギリシアの軍艦の一隻が許可なくみだりに着岸し、ギリシア人中もっとも乱暴で、
もっとも始末に負えない、館長オイアックスが、町の方へ登って来て、
悪口や挑発的言辞を撒き散らし、パリスを殺してやると怒鳴っております。
しかし、国際法の見地から見ますと、この違反は無視できるものであります。
この違反は形式通り行われていません。
デモコス  これで分かったでしょう。道は二つしかない。侮辱を忍ぶか、それに応えるか、どちらかだ。
ヘクトル  オネア、オイアックスの所へ走って行け! 何とかしてここまで引きずって来い。
パリス  待ってるぞ。
ヘクトル  俺が呼ぶまで宮殿にいてくれ。それから、ピュジリス、はっきり言っておくが、俺たちの市はギリシア人に侮辱されたとは全く考えていない。
ピュジリス  驚くには値しませんな。トロイア人は貂のように自尊心がないということは、伝説的ですからな。
ヘクトル  すぐに、一つ学説を見つけてもらいたい、ギリシア人側には何ら違反はなかった、
我々純白の貂は安んじて使者を迎え入れることが出来る、というような学説をね。
デモコス  何の冗談です、それは?
ピュジリス  それは事実に反しますよ、ヘクトル。

88 :
ヘクトル  ピュジリス君、我々この市のものは皆、法律がもっとも想像力の必要な学問の分野だということを知っている。
詩人でも、法律家が事実を解釈するほど自由に、自然を解釈したことはない。
ピュジリス  元老院が私の意見を求められましたので、意見を述べたまでです。
ヘクトル  私は解釈を求めているんだ。その方が法律学的だろう。
ピュジリス  そんなことは、私の良心に反します。
ヘクトル  君の良心は、オフェアが滅び、マグネーシアが滅びるのを黙って見ていた。今度はトロイアの滅亡を平気で見ていようというのか?
ヘカベ  そうよ、シラクサ人だもの。
ヘクトル  頼むよ、ピュジリス。二つの民族の死活問題だ。力を貸してくれ。
ピュジリス  真実を申し上げる以外のお手伝いは出来ません。
ヘクトル  そうだよ。我々を助けてくれるような真理を見つけてくれ、と言っているんだ。
法律が罪のない者を守ってくれないなら、一体何の役に立つんだ? 我々に真理を一つ作ってくれ。
それに話は簡単だ。真理が見つからなければ、戦争の続く限りここにいてもらおう。
ピュジリス  何を仰るんです?
デモコス  職権濫用ですぞ、ヘクトル!
ヘカベ  戦争中は法律を閉じ込めておくのだから、法律家くらい閉じ込めてもいいでしょう。
ヘクトル  よく覚えておけよ、ピュジリス。俺は脅迫したことでも、約束したことでも、必ず実行する。
この衛兵たちに何年も牢屋にぶち込まれるか、それとも今晩大金をもらって出発するか、
どちらかだ。これだけ聞いた以上で、もう一度問題を公平に調べてもらいたい。
ピュジリス  もちろん、方法はあります。
ヘクトル  そうだろうと思っていたよ。
ピュジリス  たとえば、第一の違反につきましては、豊かな地方の沖では、
牛を積んだ船に対する挨拶は、海軍から農業に対する敬礼であると解釈できないでしょうか?
ヘクトル  なるほど、論理的だ。要するに海から陸への挨拶だな。
ピュジリス  それに牛と申しましても、牡牛であってもいいわけでありまして、その場合には挨拶は敬意以上のものになります。
ヘクトル  そら、俺の言うことが分かったな。その通りだ。

89 :
ピュジリス  横陣の隊形につきましては、挑戦ともとれますが、親しみを表すととることも出来ます、
子供の欲しい女は正面を向けるのでありまして、脇を向けるのではありません。
ヘクトル  快刀乱麻を断つが如しだ。
ピュジリス  それに、ギリシアの軍艦の舳には大きなニンフが彫ってあります。
海軍の単位としての軍艦ではなく、多産の象徴たるニンフをトロイア人に示すという事実は、
侮辱とは正反対であると申すことも出来ましょう。裸で腕を広げて近寄ってくる女は、
脅迫しているのではなく、身を委ねようとしているのです。いずれにいたしましても、この……
ヘクトル  これで、我々の名誉も救われたよ、デモコス。市中にピュジリスの意見を張り出せ。
それから、ミノス、港湾守備隊長の所へ走って行って、オデュッセウスを上陸させろと言って来い。
デモコス  戦争から帰って来た連中を名誉を論じることなんか出来やしない。
卑怯者扱いされる心配がないものだから、勝手なことを言いやがる。
幾何学者  ヘクトル、とにかく戦死者への弔辞を述べなさい。そうすれば考えも変わるでしょう……
ヘクトル  戦死者への弔辞は述べないことにする。
プリアモス  それも儀式のうちだぞ。凱旋将軍は門を閉める時、戦死者への賛辞を述べなくてはならん。
ヘクトル  戦死者への弔辞は、生存者のために偽善的な自己弁護です、無罪放免の要求です。
そんなことは弁護士のすることです。私は自分が無罪だという自信がありません……
デモコス  指揮官に責任はありません。

90 :
ヘクトル  残念ながら、全員に責任がある、神々にも! それに、戦死者への弔辞は、もう述べたんだ。
あいつらが息を引き取る間際に。奴らは戦場でオリーブの木に斜めにもたれて、
聞こえなくなりかけた耳をすまし、見えなくなりかけた目を見張って、俺の言うことを聞いていた。
俺が奴らに言ったことを君たちの前で繰り返してもいい。
腹をやられて、もう白目をむいている奴には、こう言ってやった。
「おい、大したことはないぞ……」
棍棒で頭を真っ二つに割られた奴には
「鼻を割られたら、お前もさぞかしみっともなくなるんだろうな!」
左手をやられて血がどくどく吹き出していた俺の従卒には
「左手ですんで、お前も運のいい奴だ……」
俺はあいつらの一人一人に、人生の最後の一滴の水を飲ませてやれてよかったと思っている。
あいつらが求めていたのはそれだけなんだ。それを味わいながら死んで行った……
もう一言も付け加えることはない。門を閉めろ。
ポリュクセネ  従卒も死んでしまったの?
ヘクトル  そうだよ、死んでしまったんだ。あいつは右手を上げたよ。誰か目に見えない者が元気な方の手を掴んだんだ。そして死んでしまった。
デモコス  大将、死んでいく奴にかける言葉と、戦死者への弔辞を混同しているらしい。
プリアモス  強情を張るんじゃない、ヘクトル。
ヘクトル  はい、はい、やりますよ。
(彼は門の前に立つ)
ヘクトル  我々の言うことも聞こえず、我々を見ることも出来ない戦死者諸君、この弔辞を聞け、この儀式を見よ。
我々は勝った。そんなことは君たちにとって、どうでもいいことだろう? 君たちも勝ったのだ。
しかし、我々は勝って生き残った。ここからが違う所だ。この点で私は恥ずかしいと思う。
戦死者の間で、勝った者と負けた者を区別するしるしがあるかどうか、私は知らない。
生きているものは、勝った者も、負けた者も、本当のしるしを、二つのしるしを持っている。
目だ。我々は二つの目を持っている。我々は太陽を見ることが出来るし、太陽の下で行われることは、何でもやっている。
食べる、飲む……そして、月の光の下で! 我々は自分の妻とともに寝……君たちの妻と寝る……
デモコス  今度は戦死者を侮辱するつもりですか?
ヘクトル  そう思うか?

91 :
デモコス  戦死者か、生存者か、どちらかを。
ヘクトル  どちらかなどということがあるものか……
プリアモス  ヘクトル、最後までやれ……ギリシア人が上陸してくるぞ……
ヘクトル  続けます……臭いを嗅ぐことも出来ず、手で触れることも出来ない戦死者諸君、この香の香りを嗅ぎ、この供物に触れよ。
私は将軍として真面目に話しているのだから、そのつもりで聞いてもらいたい。
私は君たち一人一人に対して、同じ愛情、同じ尊敬を持っているのではない。
戦死したとはいえ、君たちの間にも、生き残った我々と同様、勇敢な者もあれば、臆病な者もある。
儀式だからといって、私は、自分が尊敬している戦死者と、尊敬していない戦死者とを混同するようなことはない。
しかし、今日私が言いたいのは、戦争とは、人間を平等にする方法のうちでもっとも下劣な、
もっとも偽善に満ちたものであるということであり、そしてまた私は死を
卑怯者への罰や償いと考えることも、生存者への褒美と考えることも出来ない、ということだ。
だから君たちが誰であろうと、ここにいない、生存しない、忘れられた諸君、
することもなく、休むこともなく、生命もない諸君、この門を閉じるにあたって、
逃亡者である我々生存者は、君たちに対して謝罪しなければならない。
そして---この二つの言葉が君たちの所まで届かないで欲しいと思うが---
「あたたかさ」と「空」と呼ばれるこの二つの幸福を、特権であり、盗んだものであると感じなければならない。
ポリュクセネ  ママ、門が閉まるわよ。
ヘカベ  そうね。
ポリュクセネ  死んだ人が押しているの?
ヘカベ  死んだ人も少しは手伝っているんだよ。
ポリュクセネ  右の方を多目に手伝っているのね。
ヘクトル  すんだか? 閉まったか?
衛兵の一人  しっかりと……
ヘクトル  平和になったのです、父さん、平和になったのです。
ヘカベ  平和になったのね!
ポリュクセネ  ママ、本当にいい気持ちね。
ヘクトル  そうかい。
ポリュクセネ  私はずっといい気持ちだわ。
(急にギリシア人たちの音楽が響き渡る)

92 :
伝令  プリアモス、ギリシアの乗組員が上陸しました!
デモコス  何という音楽だ! 何といういやな音楽だ! この上もなく反トロイア的な音楽だ。奴らに相応しい迎え方をしてやろう。
ヘクトル  王者らしく迎えてやれ、差し支えのないようにここへ案内しろ。君たちの責任だぞ!
幾何学者  とにかく、トロイアの音楽で対抗しよう。ヘクトル、他に鬱憤の晴らしようがないんだから、音楽合戦くらいは許してくれるでしょうな?
群集  ギリシア人だ! ギリシア人だ!
伝令  プリアモス、オデュッセウスは桟橋に降りました! どこへ案内しましょう?
プリアモス  ここへ。宮殿にいるから知らせてくれ……パリス、お前も来い。今はお前がうろうろしている時ではない。
ヘクトル  父さん、ギリシア人向けの演説を用意しに行きましょう。
デモコス  戦死者への弔辞よりはましなのをお願いしますよ、いろんな矛盾があるでしょうからな。
(プリアモスとその息子たちは退場する)ヘカベ、あなたも行ってしまうんですか? 戦争が何に似ているか、教えもしてくれないで。
ヘカベ  そんなに知りたいの?
デモコス  見たことがあるなら、言ってください。
ヘカベ  猿の尻に似ているよ。エテ公が木に登って、凍えてうろこのできた尻、汚らしいかつらを
かぶったような真っ赤な尻をしているのを見てごらん。それこそ戦争だ。戦争の顔だ。
デモコス  ヘレネの顔と、これで二つになった。
(彼は退場する)
アンドロマケ  ほら、ちょうどヘレネが来たわ。ポリュクセネ、あの人に言うこと、よく覚えているわね?
ポリュクセネ  ええ……
アンドロマケ  さあ、行ってらっしゃい……

ヘレネ、ポリュクセネ

ヘレネ  私に何かお話?
ポリュクセネ  ええ、ヘレネ叔母様。

93 :
ヘレネ  きっと大事なことなのね。あなた、すっかり固くなって。分かるでしょう、あなた、自分が固くなっているのが?
ポリュクセネ  ええ、ヘレネ叔母様。
ヘレネ  固くならないと言えないようなことなの?
ポリュクセネ  ええ、ヘレネ叔母様。
ヘレネ  じゃあ、その後を言ってちょうだい。あなたがそんなに固くなっていると、私まで辛くなるわ。
ポリュクセネ  ヘレネ叔母様、私たちが好きだったら、帰ってちょうだい!
ヘレネ  なぜ帰らなくちゃいけないの?
ポリュクセネ  戦争になるんだもの。
ヘレネ  もう知ってるの、戦争とは何か?
ポリュクセネ  よく知らないわ。みんな死んでしまうんでしょ。
ヘレネ  死ぬということも知ってるの?
ポリュクセネ  よく知らないわ。何も感じなくなるんでしょ。
ヘレネ  アンドロマケは、一体、私にどう言えって言ったの?
ポリュクセネ  私たちが好きだったら帰ってちょうだいって。
ヘレネ  あまり理屈に合わないようね。あなた、誰かが好きだったら、その人と別れる?
ポリュクセネ  まあ、そんなこと、しないわ。
ヘレネ  どっちがいいの、ヘカベに別れるのと、何も感じないのと?
ポリュクセネ  何も感じない方よ! 別れないで、何も感じない方がいいわ……
ヘレネ  あなた、自分の言い方が拙いことが分かるでしょう! あべこべよ、私に帰ってほしかったら、
あなた方を好きになってはいけないのよ。私があなたを好きでなくなった方がよくって?
ポリュクセネ  いいえ、私を好きでいてちょうだい!
ヘレネ  つまり、あなたは、自分で何を言っているのか、分からないのね。
ポリュクセネ  ええ……
ヘカベの声  ポリュクセネ!

94 :
ヘレネ、ポリュクセネ、ヘカベ、アンドロマケ

ヘカベ  つんぼになったの、ポリュクセネ? なぜ私を見て目をつぶるの? 銅像の真似でもしているの? こちらへいらっしゃい。
ヘレネ  この子は何も感じない練習をしているのよ。でもどうやら見込みがなさそうね。
ヘカベ  ポリュクセネ、私の言うことが聞こえないの、私が見えないの?
ポリュクセネ  いいえ、聞こえるわ、見えるわ。
ヘカベ  なぜ泣くの? 見えたり聞こえたりしたって、何も困ることはないじゃないの?
ポリュクセネ  あるわ……ママ、行っちゃうんですもの……
ヘカベ  ヘレネ、これからはポリュクセネをそっとしておいてやってね。とても感じやすい子供ですから、
見えないものを感じさせるのは可哀想よ、たとえあなたのその綺麗な着物や綺麗な声を通してでも。
ヘレネ  私もそう思うわ。アンドロマケ、自分の御用はご自分で仰るようにおすすめするわ。
ポリュクセネ、私に接吻してちょうだい。私、今晩帰ることにするわ。
あなたが是非そうしてと言うんですもの。
ポリュクセネ  帰っちゃいや! 帰っちゃいや!
ヘレネ  まあ、よかった、固くなっていたのが治ったわ……
ヘカベ  来ない、アンドロマケ?
アンドロマケ  いいえ、ここにいますわ。


ヘレネ、アンドロマケ

ヘレネ  じゃ、話し合いをするの?
アンドロマケ  その必要があると思うわ。
ヘレネ  聞いてごらんなさい。あそこで、みんな怒鳴りあったり、議論したりしているじゃないの! 
まだ足りないの? 私たちまで言い争いをするの? 何を言い合うの、私は帰るのに?
アンドロマケ  ヘレネ、あなたが帰ろうと帰るまいと、もう問題じゃないわ。
ヘレネ  ヘクトルにそう仰いよ。あの人の手間が省けるわ。
アンドロマケ  ええ、ヘクトルはあなたを帰らせようと躍起になっているわ。男ってみんな同じね。
ウサギが一匹飛び出すと、豹が隠れている藪を放り出してしまうのよ。
獣を狩るのはそれで十分かもしれないけれど、神様相手ではそうは行かないわ。
ヘレネ  この事件を、神様がどうするおつもりか、あなたに分かったら大したものだわ。

95 :
アンドロマケ  神様が何かをお望みになっているか、それは分からないわ。でも世界は何かを求めているのよ。
今朝から、あらゆるものがそれを求めて大声で叫んでいるような気がする……人も、獣も、草木も、私のお腹の中の子供まで……
ヘレネ  何を求めているの?
アンドロマケ  あなたがパリスを愛することを。
ヘレネ  私がちっともパリスを愛していないってことを知ってるんだったら、私より詳しいことになるわね。
アンドロマケ  愛していらっしゃらないわ。愛することがお出来にならないとは思わないけれど、
今のところ、あなた方はお二人とも誤解の中に生きていらっしゃるのよ。
ヘレネ  私はあの人と気が合って仲良く楽しく暮らしているの。気心が合ってて誤解だなんて、何のことかよく分からない。
アンドロマケ  愛していらっしゃらないわ。愛していれば、理解し合えるものじゃない。
愛し合っている夫婦は、落ち着いている時なんかないのよ。
本当の夫婦も、嘘の夫婦も、同じ所から出発するんだわ、生まれつきの不調和からよ。
ヘクトルは私と正反対なの。あの人は私と全然趣味が違うの。
私たちは毎日、お互いに征服したり、相手の犠牲になったりして暮らしているわ。
愛し合っている夫婦は、明るい顔をしていないものよ。
ヘレネ  私がパリスの側へ行った時に、顔色が鉛色だったり、目が白かったり、手が湿っていたりすると、
メネラオスが有頂天になって、ギリシア人が嬉しそうな顔をするとでも思うの?
アンドロマケ  そうなったらギリシア人がどう考えようと、問題じゃないわ!
ヘレネ  それで戦争は起こらないと言うの?
アンドロマケ  多分、起こらないでしょうね! あなた方がもし愛し合っていらっしゃったら、
「愛」はその仲間の「寛容」や「理知」に救いを求めるに違いないわ……
誰だって、たとえ運命だって、情熱を踏み躙って平気でいられるものじゃないわ……
それでも戦争が起こったら、仕方がないわ!
ヘレネ  同じ戦争ではないと仰るんでしょうね?

96 :
アンドロマケ  そうよ、ヘレネ! この戦争がどんな戦争になるか、あなた、よくお分かりなんでしょう。
ありきたりの戦争だったら、運命がこんなに気をつかうはずがない。
この戦争を土台にして、未来を、二つの民族や私たちの考え方の未来を打ちたてようとしているんだわ。
私たちの思想や未来が、愛し合っている男と女の物語の上に築かれる、これはまあ悪くない。
でも運命には、あなた方二人が、ただ表面上の夫婦にすぎないということが分からないのよ……
表面上の夫婦のために、死んだり、苦しんだり、これから先幾時代もの間、世の中が栄えるか、不幸になるか、
そしてまた今度何世紀にも渡って人間の考え方が、愛し合ってもいない二人の色恋沙汰で決められる……考えただけでもぞっとするわ。
ヘレネ  同じことよ、私たちが愛し合っているとみんなが信じていれば。
アンドロマケ  信じてなんかいるものですか。でも、信じていないことを白状する人は一人もいないでしょう。
戦争が近付くと、誰でも嘘という新しい汗をかく。あらゆる出来事が嘘という新しいニスで塗ったようになる。
みんなが嘘を吐くの。老人たちは美を愛しているんじゃない、自分自身を愛しているのよ、醜いものを愛しているのよ。
それにギリシア人たちが憤慨しているなんてことも嘘よ。あなたがパリスと何をしようと、ギリシア人はそんなこと気にもかけやしないわ。
吹流しや軍楽隊に迎えられてあそこについたギリシアの船だって、海の嘘よ。
私の子供の生命やヘクトルの生命が、偽善と幻に賭けられるなんて、恐ろしいことだわ。
ヘレネ  それで?
アンドロマケ  だからヘレネ、私はあなたにお願いしているのよ。
まるで私を愛してくださいと言っているみたいに、こうして一生懸命お願いしているんじゃありませんか。
パリスを愛してちょうだい! さもなければ、私が間違っていると言ってちょうだい! 
あの人が死んだら自Rる、って言ってちょうだい! あの人の生命を救うためなら、顔を切られてもいいって…… 
そうしたら戦争はただの災難になるわ。不当なことではなくなるわ。それなら私も我慢します。

97 :
ヘレネ  ねえ、アンドロマケ、そんなに簡単に割り切れるものじゃないわ。
正直に誓って、私、人類の運命のことを考えて夜を明かしたりすることは絶対似ないの。
でも、いつでも思うんだけど、人間には二種類あるのよ。
前者は、言ってみれば、人類の肉体で、もう一方は様子や態度よ。
笑い声や、涙や、その他一切の分泌物は前の方で、身振りや、態度や、視線は後者なの。
一種類だけにしてしまったら、うまくいかないわ。
人類にとっては、縁の下の力持ちも、華やかなスターも、どちらも必要なものなのよ。
アンドロマケ  ヘレネ!
ヘレネ  それにあなたも気難しい方ね……私は、私の愛だって、満更捨てたものじゃない、と思っているのよ。
私には気に入ってるのよ。もちろん、パリスが私を放り出して、ボール遊びや、アナゴ釣りに出かけたって、
肝臓や脾臓が引きつったりすることはないわ。でも私は、あの人に支配され、磁化されているの。
磁化されることだって、一心同体になるのに劣らない愛だわ。
目を泣き腫らしたり、体をこすりつけたりして表現する情熱に劣らず、古くからある豊かな情熱の一つよ。
この愛に浸っていると、私は正座の中の星のように、楽な気持ちでいられるの。
引力に引かれて回転したり、輝いたりするのも、呼吸をしたり、抱き締めたりする私なりのやり方なのよ。
この愛からどんな子供が生まれるか、分かるわ、指に輪の入った、鼻の低い、明るい大きな子供よ。
私がやきもちを焼いたり、優しくしたり、心配したりしたら、どうなるの! 
世界はただでさえこんなにやきもきしているのに。あなただってお分かりでしょう。
アンドロマケ  可哀想だと思ってやってちょうだい、ヘレネ。世界に必要なのはただそれだけなのよ。
ヘレネ  ほら、そう来るだろうと思ったわ。とうとう言ったわね。
アンドロマケ  何を言ったの?
ヘレネ  可哀想ってことをよ。他の人に頼むがいいわ。哀れみなんてお門違いよ。
アンドロマケ  不幸というものを知らないからよ!

98 :
ヘレネ  私だってよく知ってるわ、不幸な人たちもよく知ってるわ。私はそういう人たちと、とてもよく気が合うの。
小さい頃、毎日宮殿のそばの小屋で、漁師の娘たちと鳥を捕まえたり、育てたりしていた。
私は鳥から生まれたから(ヘレネはゼウスが白鳥の姿でレダと交わって生まれたと言われている)こんなに鳥が好きなんだと思うの。
人間の不幸だって、鳥と関係がありさえすれば、細かいことまでよく分かる。
たとえば、朝早く、固くなって湖に打ち上げられた父親のことも……
カモメが目玉をついばみに集まって来るので、頭がだんだん大きくなって震えている……
酔っ払って、よく馴れているツグミの毛を生きたままむしっている母親のことも、
ホオジロが騒いだために、巣の下の垣のかげで奴隷と一緒にいるところを見つかった娘のこともね。
五色ひわを飼っていた友達はみっともなかったし、うそを飼っていた友達は肺病だった。
私は人間を鳥になぞらえて考えていたけれど、人間がどんなものかよく知っていた。
卑屈で、薄汚くて、惨めなものだってことを。でも、哀れんでもらいたがっているなんて感じたことは一度もないわ。
アンドロマケ  人間は軽蔑する値打ちしかない、と思っていらっしゃるからよ。
ヘレネ  さあ、どうだか。不幸な人たちを自分と同等だと感じているから、私がその人たちを認めているから、
私の健康も、美貌も、評判も、あの人たちの不幸よりましだと考えていないから、
そう思うことだってあるわ。友情からそう思うことだってあるわ。
アンドロマケ  ヘレネ、冒涜よ、そんなことを言うのは。
ヘレネ  人間は自分を憐れと思う程度にしか、他人を憐れとは思わないものよ。
不幸や醜さは、人間には我慢できない鏡だわ。私は自分をちっとも憐れとは思わない。
戦争が起こったら、あなたにもお分かりになってよ。私、あなたより立派に、飢えも苦痛も黙って耐え忍ぶわ。侮辱だって。
私が通るのを見て、トロイアの女が何を言っているか、私が知らないとでも思っていらっしゃるの? 
私を淫売って言ったり! 朝、私が黄色い目をしているって言ったり! 嘘か本当か、どちらかだわ。
でもそんなこと、私は問題にしてないの、全然。
アンドロマケ  おやめなさいよ、ヘレネ!

99 :
ヘレネ  あなたのご主人の仰るフルカラーのアルバムの中に、時々年をとって、萎びて、
歯の抜けたヘレネが台所にしゃがんでジャムを舐めている場面が、私の目に見えないとでも思っていらっしゃるの! 
塗りたくった白粉が真っ白なの! ジャムは真っ赤なの! 
色がついていて、絶対確実だわ! そんなこと、私にはどうだって構わないの。
アンドロマケ  もう駄目だわ……
ヘレネ  なぜ? 戦争を始めるのに完全な夫婦が一組あればいいんだったら、あなた方ご夫婦がいるじゃないの。


ヘレネ、アンドロマケ、オイアックス、少し後でヘクトル

オイアックス  どこだ? どこにかくれているんだ? 卑怯者! トロイア人!
ヘクトル  誰を探しているんだ?
オイアックス  パリスを探しているんだ……
ヘクトル  俺はパリスの兄だ。
オイアックス  立派なご一族だ! 俺はオイアックスだ、貴様は誰だ?
ヘクトル  ヘクトルと呼ばれている。
オイアックス  俺は淫売の義兄と呼んでやる!
ヘクトル  ギリシアを代表して談判に来たんだろう、どうしようと言うんだ?
オイアックス  戦争だ!
ヘクトル  見込みはないな。なぜ戦争がしたいんだ?
オイアックス  貴様の弟がヘレネをさらったからだ。
ヘクトル  俺の聞いたところでは、女の方でも承知の上だったそうだが。
オイアックス  ギリシアの女が何をしようと勝手だ。貴様に許しを求める必要はない。戦争だ。
ヘクトル  俺たちは謝罪をしてもいいんだよ。
オイアックス  トロイア人は謝罪などするものか。俺たちは貴様らの宣戦布告を聞かない限り、帰らんぞ。
ヘクトル  そっちで勝手に布告するがいい。
オイアックス  よし、俺たちは宣戦するぞ、今晩すぐに。
ヘクトル  嘘を吐け。宣戦などするものか。ギリシア中の小島一つついて来やしないよ、戦争責任がこちらにない限り……こちらはそのようなこと、ご免こうむる。
オイアックス  貴様、個人的にも宣戦しないか、俺が貴様は卑怯者だと言ったら?
ヘクトル  そんなことは平気で承るね。

100 :
オイアックス  こんな鈍い戦士は見たことがない! ギリシア人がみんなトロイアをどう思っているか言ってやろうか、トロイアは悪そのものだ、愚劣そのものだ……
ヘクトル  トロイアは頑固そのものだ、戦争は起こさない。
オイアックス  俺が唾を吐きかけてもか?
ヘクトル  吐いてみろ。
オイアックス  王子の貴様を引っ叩いてもか?
ヘクトル  やってみろ。
オイアックス  トロイアの虚栄心と、いんちきな名誉心の象徴のその面を引っ叩いてもか?
ヘクトル  引っ叩いてみろ……
オイアックス  (ヘクトルを引っ叩いて)そら……この人が貴様の奥さんだったら、さぞかし鼻を高くしていらっしゃるだろうな。
ヘクトル  俺にはよく分かっている……鼻を高くしているさ。


ヘレネ、アンドロマケ、オイアックス、ヘクトル、デモコス


デモコス  何です、今の騒ぎは? この酔っ払いは何をしに来たんです、ヘクトル?
ヘクトル  別に何も、もう欲しいものはくれてやったよ。
デモコス  何があったんです、アンドロマケ?
アンドロマケ  何も。
オイアックス  全く何もありゃしないよ。ギリシア人がヘクトルを引っ叩いた。ヘクトルはじっと我慢しているんだ。
デモコス  本当ですか、ヘクトル?
ヘクトル  真っ赤な嘘だ、なあ、ヘレネ?
ヘレネ  ギリシア人は大変な嘘吐きよ。ギリシアの男は。
オイアックス  片方の頬がもう一方よりも赤いのは生まれつきだな。
ヘクトル  ああ、こっち側はすこぶる元気なんだ。
デモコス  本当のことを言ってください、ヘクトル。こいつがあなたに手を上げたんですか?
ヘクトル  そんなことは俺だけの問題だ。
デモコス  戦争の問題です。あなたはトロイアの象徴ですぞ。
ヘクトル  その通り。象徴を引っ叩く奴がいるものか。
デモコス  お前は誰だ? 乱暴者め! わしはアキカオスの次男、デモコスだ!
オイアックス  アキカオスの次男? 始めまして。おい、アカキオスの次男を引っ叩くのは、ヘクトルを引っ叩くくらい重大な事件かね?
デモコス  全く同じくらい重大だ、この酔っ払いめ。わしは元老院議長だ。
戦争がしたかったら、食うか食われるかの戦争がしたかったら、やってみるがいい。


100〜のスレッドの続きを読む
☆詩★詩★詩★
君のセンス5段階+αで評価するよ[vol.113]
小林えりのiLoveit
集団ストーカー/テクノロジー犯罪
下ネタ厳禁スレ2 お肉の端末
榎本櫻湖のことについてあれやこれやいってくれ
天才?秋田中学生少女 ポエム詩 盗作疑惑
意味不明ポエム11
意見スレ□反原発song
【偶然の】占い【女神】
--------------------
ぬるぽで1時間以上ガッされなければ`∀@ハン板1414
親世代が得たストレスへの耐性などは子孫にも受け継がれる - 京大
ドイツ戦車閑談室 その85
☆【画像】6494
【どったま】獨協埼玉中学校・高等学校【Part4】
【ヘリ搭載】いずも型護衛艦155番艦【護衛艦】
【GDF】ガンダムジオラマフロント Part547
ヤマハ歌声合成ソフト『VOCALOID』Part82
最初に覚えた・知った2ch用語
【Michael】マイケル・ジャクソン【Jackson】Part1303
日本ドラマ史上最高のカップルは誰と誰なのか?
コトナタソを熱く語らないか?4
鯨 kujira くじら クジラ
【PSゲーム総合】ソードアートオンラインpart214 [無断転載禁止](c)2ch.net
ほいほいと珍味版にとばされた訳だが・・・
●美魔女すぎてショック死しそうな女優・有名人2●
ブリヂストンフローラルについて語れ
スーパー三和のお弁当、お惣菜
武蔵小杉の50年安心タワーでウンコ禁止令★7
地雷魚 その4
TOP カテ一覧 スレ一覧 100〜終まで 2ch元 削除依頼