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「令安かすみん物語」


1 :2019/12/15 〜 最終レス :2020/04/11
かすみ「今日もかすみんの配信みてくれてありがと〜〜っ!またね〜〜♪………っと」


かすみ「今日の視聴者数は――」


かすみ「よかった…減ってない」

2 :
🍄cι˘σ ᴗ σ˘* 〜1〜

3 :
人類滅亡というのは、人類がひとり残らず死んでしまった時のことをいうのでしょうか。それとも、人類が社会を機能できないくらい追い詰められた時をいうのでしょうか。

字面通り捉えれば、前者なのですけども、不思議なことに、『人類滅亡後の世界!』という触れ込みで、人類がほそぼそと生活してる映画ってけっこうあるような気がします。


どっちなんですかね?


少なくとも現代は、おおざっぱに衰退した人類ですけども、まだ滅亡はしてないみたいです。

4 :
この世が摩訶不思議な菌に襲われたあの日、ほとんどの人類は死ぬか、変質してしまったようです。

それはもう恐ろしいスピードでしたから、対処なんて間に合うわけもなく、現代社会がまたたく間に機能しなくなりました。

まるで寿命をごっそり刈り取られたかのように、大人から順にバタバタと倒れていく様子を映して、普通のテレビ番組は全滅しました。

いまでは何者がつくったかもわからない謎の洗脳番組が常時流れているので、うかつにテレビをつけることもできません。

5 :
かすみ「いやぁインターネットがなかったら退屈で死んでたなぁ」


どういうわけかこの時代でも、電気は通っているし、水も通っているし、インターネットも繋がっています。

いったい誰が供給してるんでしょうね?


とはいえ決してネット環境も決して安全ではなく、りな子特製のアンチウイルスを十重二十重に張らなくては、すぐさま洗脳されてしまうでしょう。

かすみんの超絶かわいい生放送を見ているみなさんも、何らかの対策を講じているはずです。

視聴者数が減っていないことが、無事である証ですから。


そして、この時代に残された人々の基本生態だと思われますが――外は危険だからあまり出歩きたくないとなれば、もう、引きこもってネットするしかないのでした。

しかし!かすみはただの引きこもりではないのです!


人類史が停滞した現代最後のネットアイドル。それがかすみん。

それほど誇張してないですよ?

6 :
インターネットの恩恵は、かすみにアイドル活動の居場所を与えてくれるだけにとどまりません。


かすみ「………」


ちらり、と時計を確認します。もう何度目の確認かもわかりません。そわそわしています。そろそろ荷物が届くはずなのです。

外出を控えたいかすみにとって、ネット通販はとても貴重なお買い物手段です。

必要なのはパン作りの材料。いまや食事も必要としない身の上ですけども、前時代からの習慣でしたからね。パン生地をこねるあの果てしない作業が、時折恋しくなるのです。

発酵して膨らんだ生地とか、案外かわいいですよ? かすみんほどじゃないですけどね!

7 :
今回注文したのは強力粉。ありがたいことに、このご時世に小麦粉を販売しているお店があったのです。

聞いたことのないお店でしたけど……小麦粉は小麦粉。本来ならいつも使っていた強力粉が良いのですが、そこはかすみんの腕で調整します。


同好会のみなさんも、コッペパン作りの腕だけはいつも認めてくれていた気がします。

スクールアイドルとしては……どうでしょう。認めてくれてたのかな?

……いや、それじゃただのパン屋さんじゃないですか! きっと認めてくれていたことでしょううんうんそうに決まっています。


今となってはわからないけれど。

8 :
――ピーンポーン…


かすみ「!……きた!」


きたきた来ました。小麦粉ちゃんです。強力粉ちゃんです。にひひ、かすみんをダメにする白い粉が来ましたね!


かすみ「はいは〜いどうぞ〜」


ぱたぱたと玄関まで小走りして、鍵を開けます。勢いよく扉を開けたそこには……。


かすみ「――へ?」


筋骨隆々の上裸男がいました。

9 :
思えば、この時代にこっそり生きる人間としては無警戒に過ぎたかもしれません。しかし時すでに遅し……扉は開けられていて、目の前には上裸の男。

それだけではありません。彼には首がありませんでした。


かすみ「………あ、あは」


首がない、というのは表現上の話で、より正確に形容するならば、首から上、頭部がまるごとありませんでした。

大柄で鍛えられた肉体なので、首の部分がどうなっているのか、かすみの位置からは見えません。


『……………』


首なしのマッチョは一歩、玄関に入ってきて、扉を閉めました。

頭部の有無は、彼の生命に関わりがないようです。これもまた摩訶不思議な菌の影響でしょうか。


それはさておき……これは、死んじゃうパターン?

10 :
と思ったのですけど、杞憂だったようです。


??『なかすさんでよろしかったですか?』


くぐもった低音。最初はなにか空耳かと思いましたが、頭の中で反芻して、自分に対する質問だと気づきました。

声の主は、首なしマッチョのようです。


かすみ「――ひゃ、ひぁい…っ」

??『ああ、よかった。……今回は小麦粉のご注文、ありがとうございます』


そう言って、彼は礼儀正しく存在しない頭を下げました。言う、というのも変ですが、どうやら口がない代わりに、身体が振動して声を発しているみたいです。


??『なぜか配達業者が集荷に来ないので、直接参りました。わたくし、グルテンと申します』


手を差し出されたので、反射的にかすみも手を出して、握手を交わします。

それで理解しました。――なるほど、無骨な彼の手は、固めのパンのような弾力をしていました

11 :
この時代、人が植物になることがあれば、植物が人になることもあるようで。

目の前の彼のベースは小麦でしょうか。そういうものだと思ってしまえば、もう困惑する必要はありません。

研究者も消えた現代に、客観的な事実ほど価値のないものはないですから。

上裸にジーパンというファッションは刺激的に過ぎますけど……。


アメリカ産の小麦なのでしょうか?


見た目に反して紳士なグルテンさんは、背負っていた荷物を丁寧におろします。それはまさしく、かすみが注文した強力粉でした。


グルテン『しかし、嬉しい限りです。小麦粉が求められるというのはね。ほら、最近は……グルテンフリーがうるさいですから』

かすみ「…………」


ほら、とか言われてもわかりませんが。

わずかな時間、玄関に沈黙が満たされます。どうやらグルテンさんは、昨今のグルテンフリーに対する共感をかすみから得られると思っていたようです。

グルテンフリー党どころか、人類が滅亡気味なのですけど。

12 :
グルテン『――っ』

かすみ「!…ど、どうしたんですか?」


突如、グルテンがくぐもった音とともに、背中をかばうような動きをしました。それは、まるで人が痛みに耐えるかのような挙動でした。


グルテン『いえ……。情けない話ですが、ここに来るまでにもグルテンフリー派に襲われましてね。何発か食らっていたようです』

かすみ「ええっ!?」


なんということでしょう。現代においてもなお、グルテンフリーは猛威をふるっていたのです。しかも発砲騒ぎ。穏やかではありません。


グルテン『すみませんが、弾を抜いてもらっても? 肩のあたりで、自分では見えんのです』

かすみ「は、はぁ」


そりゃ目がないですし、というツッコミは我慢しましたよ?

13 :
かすみ「………」


玄関に座ったグルテンさんの背中から弾を探します。なぜでしょう。ハードボイルドなような、そうでないような。

ターミ○ーターのどれかにこんなシーンありませんでしたっけ?


かすみ「ん?」


弾……らしきものはあっさり見つかりました。パンのような手触りの肩を軽くほじって取り出します。

ほじった穴はぎゅむぎゅむと塞がっていきました。なかなか便利な身体をしているようです。

さて、手のひらにころんと乗った、小さな黒い粒。

少なくとも、鉄砲の弾ではありません。ただ、どこかで見たことあるような……。


グルテン『っ……あぁ、それですね』

かすみ「あの、これは……?」

グルテン『見ての通り、そばの実です』

かすみ「そばの実」


さも当然のように言われても困りますが?

けれども、思い出しました。丸みを帯びた三角形のような黒い粒は、たしかにそばの実のようです。


やつら、小麦を嫌いますからねぇ、とグルテンさん。

やっぱりこれ、ハードボイルドとは程遠いですよ。

14 :
グルテン『それでは、失礼します』


あくまでも紳士的に、グルテンさんは去っていきました。玄関をわずかに開けて、外を確認してから出ていく様子は、さらがら0○7のようでもありました。

彼とグルテンフリーとの戦いはこれからも続くのでしょう。まあ、今のところ平和的な争いに見えますけども。

ともすれば茶番にも見えるのは、気のせいでしょうか?


さて、玄関に置かれた強力粉をキッチンまでえいやと運んで、一息つきます。

目の前に置かれた強力粉の大きな袋。ふふふ、これだけあれば、しばらくパン作りに困ることはないでしょう。

若干イメージと異なる展開でしたが、粉さえ手に入ればよかろうなのです。とても幸せな気持ちに満たされています。

現代で今のかすみほど幸せを感じている人間は他にいないでしょう。……洗脳されている人を除けばですが。

15 :
かすみ「……よし」


やはり、我慢できません。いますぐにパン作りを始めるかは置いといて、強力粉の”感じ”を確認しておきたいところです。

なにしろ、通販ですからね。期待したものかどうか、封を切ってはじめてわかります。そして、万人の理解を得られると思われますが、通販において開封の儀が最も高揚する瞬間と言ってもいいでしょう。


かすみ「ふふふ〜どうかな〜」


袋に入った状態の手触りは良好。ちょきりと上部を少し切って、こぼれるのも構わず手の上に粉を落とします。


ふむ、ふむ。

にぎにぎ。


サラサラとした感触。握っても手につかず崩れる様子は、以前使っていたものと大差ないように見えます。

いいですよ!これ。


かすみ「〜〜♪――おや?」


ご機嫌になって封をしていたところで、しかし、あることに気づきました。

袋の裏に、文字が書いてあります。

16 :
『右足』


かすみ「………」


はて。

小麦粉の袋に、身体の部位の名称が書かれているなんて、珍しいこともありますねぇ。


ーーーーーーーーーー


後日、グルテンさんから購入した強力粉でパン作りをしました。

いつもより弾力が強く出た気もしますが、それはそれで美味しかったです。

17 :
🍄cι˘σ ᴗ σ˘* 〜2〜

18 :
摩訶不思議な菌に世界が襲われてからというもの、誰もが共通して持っている常識というやつは、土台から崩れてしまったようです。

多くの人類は人間性を失い、かと思えば人外が人のように活動する。

街にあふれたワーカーたちの喧噪は消えて、代わりに洗脳を促す「幸福への勧誘」がスピーカーから流れ続けています。


いったい菌とは何なのか。洗脳しようとしているのは何者なのか。


考えてもわからないならば、玄関を閉じて、せめて今持っているモノを守るのがかすみの選択です。

もう、失うのは怖いですから。


とはいえ、そこまで孤独な状況ではありません。一部の同好会メンバーとは、今でも交流できています。

19 :
かすみ「――それじゃぁば〜いばい♪」

かすみ「……ふぅ」


今日もまだ、視聴者数に変化はありませんでした。この数字にどれほどの意味があるのか、実際のところ定かではないですけども、かすみに計れる数値はこれくらいです。

世間と触れ合う機会のない引きこもりにとって、同じように生きている人間がいるというのは、それだけで心強いものなのですね。

それもこれも、奇跡的な可愛さのかすみんがいるおかげです。可愛いで世の引きこもりを救う女神! すごいですねぇ、かすみんって。


かすみ「………」


いえ、誰かのツッコミを待ってるわけでもないですけどね。


ピロロン♪

かすみ「ん?」


通話です。このタイミングだと……思い当たるのは一人だけですね。

20 :
せつ菜『お疲れさまです! 今日のかすみんも最高でしたよ〜!』

かすみ「ふふふ〜。当然じゃないですかぁ〜」


せつ菜先輩。

正体不明のスクールアイドルでしたが、学校が意味を失くした今では、立派な引きこもり仲間です。


せつ菜『おぉぉ…。かすみんのプライベートヴォイス…っっ! 私だけに向けられた脳トロヴォイスッ!! たまりません!』

かすみ「あ、あはは〜」


どういうわけか、引きこもりになってからというもの、せつ菜先輩のオタク属性が加速しているような気がします。異変以前から、身内の同好会メンバーにもファンのように接することがある人でしたけども…。

まあかすみんは可愛いですからね。仕方ないですね。


せつ菜『きのこも可愛らしく見えますよ! とても個性的です!』

かすみ「むぅ……。そうだといいんですけどぉ」

21 :
きのこ🍄。

大人から寿命を刈り取り、およそすべての人類を変異させた菌は、もちろんかすみにも影響を与えました。

身体が樹化するような、そんな大変容は起きませんでした。ただ一箇所だけ、ひと目でわかる変化が……。


頭にきのこが生えました。

だいたい拳くらいの大きさでしょうか。髪飾りのミニハットみたいな顔して、頭から斜めに生えています。触るとさらさら、ふにふにしています。

がっつりきのこです。菌の塊です。苗床にされてしまっております。

癒着しているのか、きのことかすみの境界が曖昧になっていて引っこ抜くこともできません。一度力を入れてみたら、痛みもなく顎が持ち上がりました。どうやら、かすみときのこは運命共同体のようです。


この身体になってからというもの、便利なこともあるにはあるのですが……。

これじゃまるでかすみの頭がジメジメしてるみたいじゃないですか。そんなことないですから。さらさらつやつやですよ? シャンプーしにくいですけど。

22 :
かすみ「というか、久しぶりじゃないですかせつ菜先輩。……もっと頻繁に連絡してもいいんですよ?」


せつ菜先輩とかすみの連絡は、どういうわけか一方通行になっています。いわく回線の問題だとかなんとか、よくわかりませんが、かすみからは連絡できないのです。


せつ菜『〜〜っ! いまのセリフ! 最高です! きゅんと来ました!』

かすみ「っっ!! わざわざ言わないでください恥ずかしくなるじゃないですか! もう」


オタク属性というか、単純に変態度が増してます。せつ菜先輩の変異は変態になることだったのかもしれません。


せつ菜『私もかすみん成分を摂取したいのはやまやまだったのですが、最近はちょっと忙しくて……』

かすみ「……また攻略ですか?」

せつ菜『そ〜なんですいまは「つりおつ」というのをやってまして、あ、これは略称なんですけど』


長い解説が始まりました。引きこもりになってから、せつ菜先輩はエロゲなるものをずっとやっているようです。順調にオタクの階段を登っているというべきか……。

23 :
せつ菜『ふと思ったのですけど……あれ、かすみさん?』

かすみ「あ、はいはい聞いてますよ〜」


いけないいけない。まったく聞いてませんでした。いやだって、解説とか興味ないですもん。普通にネットサーフィンしてました。

へぇ〜カンパーニュってこうやってつくるんだ〜。


せつ菜『よかった……ええ、ふと思ったのですけど、異変前にもっとみなさんとスキンシップをとっておけばよかったなぁと』

かすみ「はい?」

せつ菜『例えば、いま私はかすみさんをめちゃくちゃに抱きしめたい欲でいっぱいなんですよ』


なにを言っているのでしょう、この変態、いやこの先輩は。


せつ菜『ほら、今はもう簡単にスキンシップもとれないですけど、以前なら簡単だったなぁと。思えば同好会メンバーは個性豊かであまりにも恵まれていたなぁと』


ふぅ、とため息がスピーカーから聞こえてきます。


せつ菜『もったいなかったなぁ』

かすみ「せつ菜先輩気持ち悪いです」

せつ菜『はぅぅっっ』


どうやらお望み通りの言葉を差し上げられたようで、なによりです。


せつ菜『もっと!もっと!』

かすみ「おねだりしないっ」

24 :
かすみ「…………にひ」

せつ菜『かすみさん…?』

かすみ「ん、なんでもないですよ〜」


思わず笑いがこぼれてしまいました。だってもう、楽しくて、楽しくて。

こうしてせつ菜先輩と話せることが、なによりも幸せで。にやにやしちゃうのだって抑えられません。

どうかな。今日なら大丈夫かな?


かすみ「……あのぉ〜、せつ菜先輩?」


甘さたっぷりの媚びた声。これで釣れると良いのですが。


せつ菜『――あっっっ、あぁぁぁぁぁ……』

せつ菜『……………』

せつ菜『…………はっ』

せつ菜『ふぅ、危ない、耳から昇天するところでした』

かすみ「もぅ〜〜せつ菜先輩たら大げさですよぉ〜♡」

せつ菜『――あっっっ…』


思ったより効いてますね。

25 :
かすみ「えっとぉ、かすみんお願いがあってぇ〜」

せつ菜『はい!なんでも言ってください!』


はぁはぁと興奮した鼻息が聞こえます。

にひひ、これなら今日はイケるかも?


かすみ「せつ菜先輩のこと見たくてぇ、カメラつけて話したいんですけどぉ」

せつ菜『あ、それはダメです』

かすみ「うっ……!」


おかしいです……まったく効いてないじゃないですか!

嘘じゃないですか!


かすみ「なんでですか〜!」

せつ菜『あはは』


いつものことです。かすみは配信できのこ姿も見られてますが、せつ菜先輩は声しか届きません。異変以後、顔も見たことがないのです。

だから、久しぶりに顔をみて話したいのに……。


せつ菜『すみませんかすみさん、いつも断ってしまって』

かすみ「ふ〜んいいですよ〜だ」


相変わらず、せつ菜先輩は秘密主義的だというだけです。菌による影響がどの程度だったのかも教えてもらえませんし。

姿をかたくなに見せない理由も、聞きにくい雰囲気です。


かすみ「でも、そのうちせつ菜先輩の元気な姿見せてくださいね?」

せつ菜『……はい』


せつ菜『そう遠くないうちに、きっと』

26 :
せつ菜『――果林さんは健在ですか?』


会話が一段落ついたころ、せつ菜先輩がそう切り出しました。いつもの流れです。


かすみ「……ええ、変わりないです」

せつ菜『そうですか』


わずかに、沈黙します。静けさに満ちているのは、落胆でしょうか、安堵でしょうか? この問題に答えが見つからない限りは、感情の落とし所もわかりません。


かすみ「……あ」


静かになったことで、外の音が聞こえてきました。今日もまた、飛行船にのったスピーカーから声が届きます。

毒を含んだ「幸福への勧誘」。

それはあまりにも聞き馴染みのある声で、けれども、受け入れがたい声音です。


歩夢【――みなさん】

27 :
歩夢【今日の天気は晴れ。絶好のお散歩日和です。】

歩夢【午前11時の時点で、コナプトの加入は80%を超えました。まだ余裕があります。】

歩夢【災害で家族を失い、一人残されたあなたへ。新しい生活を始めてみませんか? コナプトでは衣食住だけでなく、素晴らしい仲間があなたを待っています。】

歩夢【大丈夫、焦る必要はありません。私たちはあなたの一歩を応援しています。】

歩夢【さあ、あなたも幸せになりましょう。】

歩夢【詳しい案内はお近くの市役所、または新政府公式ホームページ、もしくは、テレビ、ラジオでもご覧いただけます。】


歩夢【――みなさん。今日の天気は……】

28 :
せつ菜『かすみさん? どうかしましたか?』

かすみ「……歩夢先輩はいつも通りだなぁ、と思ってたとこです」

せつ菜『ああ、飛行船の時間……』


いつごろからか、空には飛行船が飛ぶようになりました。目的は一貫して、残存市民に向けた新政府への勧誘のようです。大人が消えたはずのこの世界で、新政府なるものが一体何者によって運営されているのかは、例によって不明ですが。

肝心なのは、その広告塔に歩夢先輩が使われているということです。正気ではないでしょう。生存が確認できるだけ、幸運だと思うようにしています。

哀しんでも、現状は変わりませんから。


かすみ「……もぅ」


だからかすみんは、できるだけ明るい方向に舵を取るのです。


かすみ「ほんと歩夢先輩ずるいですよねっ! ライバルが飛行船使うなんてフェアじゃないですよぉ〜」

せつ菜『……くす。いえいえ、かすみさん? ライバルというのは、自分よりも強力なものです。その上で打ち破る! これが熱い展開なんです!』

かすみ「う、なるほど。さすがはせつ菜先輩。オタク系スクールアイドルは伊達じゃないですね」

せつ菜『オタク系!? あれ、間違ってない…?』


歩夢先輩はライバル。これは今でも変わりません。

だってそうでしょ?

かすみんはネット上で、歩夢先輩は飛行船から。生き残った人類を奪い合っているんです。負けませんよ? だって、かすみんが一番可愛いですもん。


ええ、負けませんとも。

29 :
せつ菜『すみませんかすみさん。そろそろ…』

かすみ「え、もうですか…?」

せつ菜『もうと言っても、一時間は経ってますよ』

かすみ「あ、ほんとだ」


時計を見ると、たしかに一時間はとうに話しているようでした。あっという間の一時間です。


かすみ「で、でも。かすみんまだせつ菜先輩と話したい…」

せつ菜『すみません…』

かすみ「せつ菜先輩…」


また、わがままを言ってしまいました。応えられることがないと、わかっているわがままです。せつ菜先輩を困らせるだけのわがままです。

それでも口をついてしまうのは、きっとかすみが弱いから。

だめですね。この時代を生きるには、強かでないと。


かすみ「…にひっ。ジョーダンですよ〜。ドキッとしました?」

せつ菜『…ふふっ。はい。ドキドキしすぎて、口から心臓が飛び出るかと思いました』

かすみ「それはびっくりするほうのドキドキじゃないですか!」

30 :
せつ菜『それでは…』

かすみ「またすぐ、連絡くださいね? もうこうして話せるのは、せつ菜先輩だけなんですから」

せつ菜『もちろん。――大好きですよ、かすみさん』

かすみ「っっ! ……もう!」


ピロンと、軽い電子音を最後に、通話は途切れました。いつもいつも、油断したところで「大好き」なんて言うんだから。

まったく、大した変態です。エロゲなるものに感化されたのかもしれません。かすみんがあまりに可愛いから、攻略対象と勘違いしちゃったんですね。

ふぅ。やだやだ。


女の子同士とか、そんな常識通用しない時代なんですから。本気になったらどうするんですか。ねぇ?……なんて。

31 :
ぼーっとしていたら、パソコンのディスプレイが切れて、暗くなりました。もともと部屋の電気はつけず、カーテンも閉じているので、周りは真っ暗に……と、本来はそうなるのですが。

かすみんの部屋にはまだ光源があり、辺りは仄かにロイヤルブルーの光で浮き上がります。


深海に沈んだ宝石のような、高貴なブルー。

32 :
そこには、果林先輩がいます。

部屋の隅っこで、両足を抱え座り込んでいます。うつむきがちな瞳に生気は感じられず、もう何も映していないでしょう。


けれども、果林先輩は美しい。


この世のものとは思えない、という表現があります。果林先輩は異変で、大部分が向こう側に行ってしまったのかもしれません。

だからかもしれません。何も摂取せず、ただずっと部屋の隅で座っていますが、肌のハリは決して損なわれず、髪は常に艷やかで、なんかいい匂いまでします。

あまつさえ、淡くロイヤルブルーに発光しているのです。それはまったく冗談のような光景ではなく、きっと後光が差しているのと同種の神聖さを感じます。


果林先輩は美しい。けれども、神々しさほどこの世から遠いものはなく。

異変以降、果林先輩は何も反応しません。

33 :
かすみ「果林先輩〜〜」

かすみ「今日は久々にせつ菜先輩が連絡くれたんですよ。あの人、まだエロゲなるものにハマっているようです。えっちなの苦手なくせに」

かすみ「あ、ほんとは好きなんでしょうか? アニメのちょっとえっちなシーンも見ない振りしてる人でしたけど、好きの裏返しだったのかもしれません」

かすみ「ハマってるエロゲの解説をしてくるのは困っちゃいますけど…」

かすみ「あ、そうそう、かすみんのきのこを可愛いって言ってくれました。でもあんまり嬉しくないですよねぇ」

かすみ「いや、ほんとは嬉しいんですけど…。乙女心は複雑なんですよ」

かすみ「ええ、かすみん乙女なので」

かすみ「…それから」

かすみ「今日もやっぱり姿を見せてはくれませんでした。きっと、引きこもり過ぎて裸族が板についちゃったに違いありません」

かすみ「にひひ、今度りな子に連絡ついたらせつ菜先輩のカメラを強制的にONにするようなプログラムを……」

かすみ「いや、これだと痛み分けですね…。あんまり嬉しくない」

かすみ「いつか、一緒にせつ菜先輩に会いに行きましょうね」


---------------------
-------------
-----

34 :
今日という日はとても良い日でした。

明日もきっと良い日でしょう。


それは祈りではありません。祈る対象をかすみんは持ちません。

それは宣言ではありません。この上自分を追い込む必要はありません。


それはきっと、もっと単純な――

………なんでしょうね?

うまい言葉が見つかりませんけど、とにかく。


ふと思っちゃうような、本音みたいな気持ちです。

35 :
ディストピア系か?
続きが気になる

36 :
設定しっかりしてそうで続き楽しみ

37 :
Eじゃん

38 :
ベレー帽みたいなきのこ想像しとけばええんかな?

39 :
続きが楽しみ

40 :
続きの催促とか嫌いだけどしてしまいそうなくらい気になるな、楽しみにしてる

41 :
グルテンさん好き

42 :
展開に俺もドキドキした
続き楽しみ

43 :
これは気になる
文章も読みやすいし

44 :
いいぞ


色々いいぞ

45 :
ほし

46 :
🍄cι˘σ ᴗ σ˘* 〜3〜

47 :
ふと、夢を見ていると気づきました。

意識ははっきりしていませんが、どうやら自分は夢を見ていて、遊園地にいるという認識がありました。

友だちと来ているわけでもないようです。ただ、遊園地にいるというだけで、昔の記憶が刺激されるのか、幸せな気持ちが胸の辺りに滲むような気がしました。


ふわふわと、現実味のない幸福感。


ああ、これは夢だな、とわかっていても、その幸福感にしがみつくように、かすみは夢の中の遊園地を歩いていました。

その遊園地はとても静かでした。かすみ以外、誰もいないようでした。遊園地に人がいないということが不思議で、違和感も抱いたのですが、それでも人は現れませんでした。


自分がどこに向かっているのか、まったくわからないまま自動的に歩いていたかすみでしたが、気づけば、脚は止まっていました。

そうして前を見れば、いつの間にか、アトラクションの入口があります。

薄暗い入口を、かすみはくぐりました。辺りは生温かい空気が流れていて、しっとりと頬を撫でられたような錯覚までありました。

48 :
そこにはトロッコのようなアトラクションがありました。薄暗い中で、紫色っぽい光に照らされています。

自動的に、かすみはトロッコに乗り込んでいました。


「出発します〜」


どこからかアナウンスが流れました。ガタンゴトンと、トロッコが揺れながら前進します。

トロッコは何両か連なっていました。かすみは先頭ではありませんでした。

後ろのほうのトロッコに、人が乗っていることにも気づいていました。さっきまで人の気配なんてまったくしなかったのに、急に現れた彼らを自然と受け入れてしまったのは、夢らしくはあります。

かすみの一つ後ろには女性が、さらに後ろには男性が乗っていました。彼らは一様に顔色が悪く、無表情でした。


かすみ「……あれ?」


声が漏れました。急に、意識のレベルが一段落上がりました。じわりと、手のひらに脂汗を感じます。

これから起きることが、なぜか想像できました。というよりも、かすみはこれとほとんど同じ状況を聞きかじったことがありました。


その時、またアナウンスが流れました。


「次は活けづくり〜活けづくりです。」

49 :
後ろのほうからおぞましい悲鳴が聞こえてきました。振り返ると、2つ後ろのトロッコに乗っていた男性の周りに、四人のぼろきれのような物をまとった小人が群がっていました。

小人は鋭利な刃物を持って、男性を切り裂いていきます。すでにおびただしい血にまみれ、肉は削ぎ落とされ、白い骨がむき出しになりながら、男性は大声で悲鳴を上げ続けます。

てきぱきと血まみれの内蔵は取り出されていき、人としての形は失われていきました。だというのに、断末魔はいっそう強く響いています。


かすみ「――ひっ…ぁ…!」


その恐ろしい光景を見て、かすみはまともに叫び声を上げることすらできませんでした。意識は、とうに現実と遜色ないほどはっきりしています。鉄っぽい血の臭いと、生臭い臓器の臭いで胃液がこみ上げてきます。

だというのに、いっこうに夢から覚める気配がありません。心臓はばくばくと破裂しそうなほど鳴っていました。それでも、現実は遠く、夢の輪郭がはっきりするのみです。


いつしか男性の悲鳴は止んでいました。男性がいた座席は血の海のようになっていて、赤黒い物体がちょこんと置いてありました。それはまさしく活けづくりのようでした。

50 :
たまらず、かすみは吐き出しました。足元に勢いよくこぼれ落ちていく吐瀉物。まだ形の残っているその中に、昨晩のパンが混じっているのを確かに認めました。それは、現実のものであるはずでした。


「次はえぐり出し〜えぐり出しです。」


聞き覚えのあるアナウンスが流れます。今度は小さな小人が2人現れ、その手にもった鋭いスプーンのようなもので、後ろの女性の目玉をえぐり出しはじめました。

すぐ後ろで、恐ろしい悲鳴が上がります。彼女は目から血なのか脳漿なのかよくわからないものを噴き出しながら、首を反らせて叫び続けました。


もう猶予はないように思われました。次はかすみの番です。

足元からも、口の中からも酸っぱくて苦い臭いが上がってきます。溢れる涙は吐いたせいなのか、恐怖のせいなのかもわかりません。

脚ががくがくと震えていました。これは夢なのか、現実なのか。ずっと夢だと思っていましたが、現実だとしてもおかしくありません。むしろ、鋭敏な五感は現実だと強く訴えてきます。


かすみ「―――ぅ…ひっ…」


涙が止まりませんでした。嗚咽がひどくて呼吸もしずらいほどです。

逃げなければならない。とにかく、それでした。なのに、震える脚は役に立ってくれそうにありません。

51 :
「次は挽肉〜挽肉です〜」


挽肉。


かすみ「―――ぁ…ぁひっ…!」


悲鳴なのか、笑い声なのか区別のつかない音が漏れました。

どこからかあの小人が現れました。手にはなにやら物騒な器械を持っています。サメのようなぎざぎざの歯がいっぱいついている、と見えたのは一瞬で、「ウイーン」という音とともに歯全体が猛烈に回転しはじめました。

それはかすみを挽肉にする器械でした。

小人はかすみの膝に乗り、その器械を顔に寄せてきます。躊躇いはありませんでした。「ウイーン」という音はだんだん大きくなり、顔に風圧を感じます。

鉄っぽい臭いは、器械の臭いか血の臭いか。


かすみ「あ」


身体の震えがとまっていました。数秒後にミンチになっている自分が見えました。かすみはその未来を受け入れていました。

脚はやはり動きません。これまでのようです。

最後に、目を閉じました。

52 :
「だめだよ〜」

かすみ「―――え」


どこかから、間延びした声が響きました。アナウンスではありません。でも、聞き覚えのある――とても聞き覚えのある――優しい声です。

とっさに目を開けると、そこにいたはずの小人は消え失せていました。

小人だけでなく、血の臭いもしないことに気づいて、後ろを見るとおぞましい活けづくりも眼球のない女性も血の海とともに消えていました。

トロッコは止まっていて、かすみだけが乗っていました。……自分のゲロと一緒に。


かすみ「――あ」


トロッコの外に視線を向けます。聞き覚えのある声は、やっぱり聞き間違いなんかじゃなくて。


彼方「危なかったね〜。かすみちゃん」


懐かしい人が、そこにいました。

53 :
彼方「落ち着いたかな??」

かすみ「ずび……う、はい…」


泣いてしまいました。ええ、思いっきり泣きついてしまいましたよ。

でも今回くらいは仕方ないと思います。ありえないくらい怖かったですし。もうだめかと思いましたし。でも助かるし。

そしたら、異変以来、まったく音沙汰のなかった彼方先輩がいるし。


もう自分の気持ちがわかりません。恐ろしいやら驚きやら嬉しいやら、いろんなものがごちゃまぜになって、溢れた分だけ泣いてしまいました。

強かなかすみんにはまだ遠いようです……。


彼方「よ〜しよ〜し」

かすみ「………」


彼方先輩に頭を撫でられます。異変以前なら子ども扱いに怒るところですけれど……。

胸のあたりがほかほかするので、ちょっと、浸ることにします。

54 :
かすみん達はアトラクションを離れ、遊園地の適当なベンチに座っていました。ここは夢の中だったはずですが、もうほとんど現実のように思えます。ただ、起きてる間に遊園地に来た憶えはないのですが。

と思っていたら、彼方先輩が答えを見せてくれました。


彼方「あ、かすみちゃん怪我しちゃってる?」

かすみ「え? …あ、ほんとだ」


おでこがジンジンと腫れていました。触れてみると、軽い痛みと、指先に小さな血がついてきます。そういえば、吐いたとき、勢いでトロッコにおでこをぶつけた気がしなくもありません。


彼方「よ〜し。彼方ちゃんがバンソーコーをあげよう〜」

かすみ「…すみません」


なんて殊勝に頭を下げたかすみんの目の前で、まばゆい光が生まれていました。

は? と思ってよく見ると、その光は彼方先輩の手の中からあふれてきています。「え〜い」なんて軽いかけ声がして、光は急速に弱まっていき、見れば、彼方先輩の手元には大きな絆創膏がありました。


彼方「ほれほれ、おでこを見せなされ」

かすみ「いやいや! なんですか今の!?」

彼方「ん〜? 彼方ちゃん式魔法だよ〜?」


うろたえるかすみに、こともなげに彼方先輩は答えます。


彼方「だってここ、かすみちゃんの夢だもん」

55 :
彼方「彼方ちゃんはね〜、いろんな人の夢を渡れるのだよ〜」


かすみんのおでこに大きな絆創膏(ひつじ柄)を貼り付けて、彼方先輩は言います。

なにを言っているのか、とは思いません。摩訶不思議な菌に世界が覆われて以降、常識は覆るものですから。

なんだって起こりえます。


彼方「ふふふ、いまでは夢の住人なんだ〜。現実の身体はたぶん、なくなっちゃったのかなぁ」

かすみ「…そうですか」


彼方先輩らしい変異とも言えます。悲壮感も薄いようです。それがよかったかといえば、そんなことはないでしょうが。


彼方「かすみちゃん、気をつけなきゃだめなんだぞ〜? 夢で死んじゃっても大丈夫なんて保証、ないんだから」

かすみ「はい…」

彼方「さっき、諦めちゃったでしょ〜」

かすみ「う。…はい」

彼方「……昨日の夜、恐い話読んだでしょ〜」

かすみ「うぅぅ〜はぃぃぃ〜」


猿夢。

昨日読んだネットの怪談でした。まさかこんな事態になるとは思いませんでしたが…。

もう絶対! 怪談は読まないことを誓います。

56 :
それからしばらく、彼方先輩とお話をしました。

異変以降にあったこと。果林先輩のこと。せつ菜先輩のこと。りな子のこと。…歩夢先輩のこと。

頭のきのこは褒めてくれました。いや、ニヤニヤしてましたけど。

彼方先輩が渡れる夢はほとんどランダムで、誰かを選べるわけではないようです。今回かすみんの夢に来たのはたまたまで、強いて言えば助けを求める夢が多いのかも、と話していました。


彼方「遥ちゃんは見てないか〜」

かすみ「…はい」


彼方先輩は妹さんを探しているようでした。

異変以降、離れ離れになった妹さんの夢を探して、休みなく夢を渡り歩いているようです。


彼方先輩は、一人でずっと戦っていたのでした。

57 :
彼方「あ、そろそろ、覚めちゃうかも?」

かすみ「えっ!? な、なんでですか」

彼方「朝が来るからね〜」


至極もっともな理由です。朝がきたら、人は夢から覚めないといけません。

あの日から、少しだけ冷静になったかすみんは理解しています。

お別れの時間でした。


彼方「…………」

かすみ「―――へ?」


気づけば、ぎゅうと暖かく、彼方先輩に抱きしめられていました。懐かしい香りがします。柔らかで、優しい香りです。

いつかの彼方先輩からは想像できないくらい、力強い抱擁でした。そこにつまった思いで涙がこぼれそうで、負けじと、抱きしめ返しました。

でもやっぱり、泣いちゃってたかもしれません。彼方先輩には秘密ですけど。

58 :
彼方「目が覚めるとね、かすみちゃんは夢のこと忘れちゃうと思うけど」

彼方「でもね、きっと胸に残ると思うんだ〜」

かすみ「…忘れませんもん」

彼方「…ふふ、そうだね〜」


彼方「…またね、かすみちゃん」

かすみ「はい…また」


目をつぶって、小さく答えます。

暖かい感触は、夢が覚めることを示すように、少しずつ薄れていきました。

夢のまぶたは残滓を反射して、白く光りながらどこかへ溶けていきます。

重力は消えて、夢の世界は閉じて。


それから……


----------------------
---------------
---

59 :
夢を見た気がします。でも、夢の中身は忘れてしまいました。


かすみ「?」


なぜか、パジャマが汗だくです。恐ろしい夢だったのでしょうか?

それにしては、安らかな気分ですが。


かすみ「??」


額に違和感を抱いて、手をやります。なにか貼り付いているようです。

ぺりりと剥がすと、それは大きな絆創膏で、おでこには立派なたんこぶができていました。

昨日、こんなのありましたっけ?


絆創膏も、あまり見憶えのないものです。大きな、ひつじ柄の絆創膏。

なんとなく、ひつじを撫でます。


はて。

悲しいような、嬉しいような?

60 :
猿夢…怖いよなぁ
それにしても夢の内容忘れちゃうならもし遥ちゃんと会えても忘れられちゃうのか、辛いな
今日も面白かったよ、ありがとう

61 :
ホラーの描写が全力すぎる

62 :
雰囲気がすごい好き

63 :
あなた先輩は居ない感じか

64 :
この雰囲気好きだわ

65 :
ほし

66 :
保守

67 :
保守

68 :
保守

69 :
保守

70 :
期待

71 :
🍄cι˘σ ᴗ σ˘* 〜4〜

72 :
マズローの欲求階層をご存知でしょうか?

自己実現理論とも呼ばれるもので、人の欲求を5段階の階層で理論化したものです。上から順に、

自己実現の欲求
承認の欲求
社会的・愛の欲求
安全の欲求
生理の欲求

と並んでいます。人はこの欲求を下から順に満たしていくのだそうです。これらの欲求が満たされないと、不安な気持ちになったり、孤独感を抱いたりするのだとか。

例えばかすみんのアイドル活動は、異変以前は承認の欲求から自己実現の欲求を満たしていたと思われますが、現在では社会的欲求を満たす役割も果たしています。

学校という居場所がなくなった現代で、インターネットが新しい社会的所属になったというわけです。これがなければ、不安にかられ自己同一性が損なわれてしまうでしょう。

ただ、そういった高次の欲求は、より低次の欲求が満たされてはじめて表面化します。サバンナの真っただ中で承認欲求に駆られる人は、おそらくいないはずです。

お前それサバンナでも同じ事言えんの? というやつです。あれ、違う?


………とまあ。暇をもてあましてwikiを読んだ程度の知識ですけれども。

長々と、なにを言いたいのかというと、これは言い訳なのです。

自分への言い訳。


かすみ「…右よし…左よし。…よし!」


危険な外に出てしまったことへの、言い訳です。

73 :
不安だったのです。ええ、とっても。

生放送をしようとしても、不安な気持ちが先に来て、どうにもだめでした。パソコンを前にして、マウスを動かすのですけれど、落ち着きませんでした。

不意に席を立って部屋の中をうろうろ歩き回りました。どうすればいいのかわからない、粘っこい不安が、胸に渦を巻いていました。


えたいの知れない不吉な塊が、心を始終圧えつけていたというか。


どうしようもないので、とりあえずパンを作ろうとしました。いつもと違う気持ちになったときは、いつものルーチンを試みればいいのです。賢い発想です。

でも、だめでした。パンを作ろうと、準備するまでに手がつかなくなりました。やりきれない気持ちでした。焦燥というか、嫌悪というか……いたたまれず、また部屋をうろうろ回り始めました。


とうとう、果林先輩に頼りました。美しく不浄の果林先輩。淡く神秘な果林先輩。無抵抗の果林先輩には、普段できるだけスキンシップは避けているのですが、あまりの不安に、つい触れてしまいました。

頭を撫でてみました。もちろん反応はありません。それはそれで悲しいことですが、しかし、胸の不安は薄まりません。

ぎゅっと抱きついてみました。だめでした。どうにも、無抵抗な果林先輩に触れるということ自体、自分の中で拒否感がありました。罪悪感に近い感触でした。


果林先輩に一方的に謝って、別の方法を考えます。胸でとぐろを巻く不安の正体を見極めようと試みます。


これは仮説なのですが。

頭にきのこが生えて以降、かすみんは自分をより客観的に見れるようになったと思われます。なにせ、きのこと脳が連結してそうですしね。考える部分が2つになったのかもしれません。

そうして暫く……一つの結論を導きました。


かすみ「――外に出よう」

74 :
外。

摩訶不思議な菌に支配され、前時代の常識が翻った現代。外はどんな危険に満ちているか、わかったものではありません。

人外は確実にいます。引きこもっていても、前のようにグルテンさんに出会ってしまう世の中ですから、外ではどうなるか、想像もつきません。

グルテンさんのように、危険ではない人外がいると知れたことは喜ばしいことではありますが。

基本的に菌そのものは、人類に対して敵対的に思えます。でなければ、人類史は破綻していません。


かすみんはあの日以降、一度も外に出たことがないのです。準一級自宅警備員なのです。

上級国民ともいいます。

それでも、外に出ないといけません。人外が跳梁跋扈する、危険な外へ。

なぜわざわざ危険とわかっている外に出るかといえば、危険である、それこそが理由です。


安全の欲求なのです。この不安は、安全の欲求が満たされていないことによる不安だと思われました。

異変以降、飛行船やラジオ波を通じてじわじわと安全な領域が侵されている昨今ですが、グルテンさんという身近な人外を目の当たりにして、ついにキャパオーバーを起こしたのです。


この部屋は安全なのでしょうか?
近所は安全なのでしょうか?
ずっとここにいても大丈夫なのでしょうか?


確認しなければならない。セーフティネットの確立。

それこそが、この不安を正統に解消する手段であると、そう考えたのでした。

75 :
かすみ「た、太陽……」


装備を整えておっかなびっくり外に出たかすみんですけれど、最初の敵は菌ではなく、太陽でした。

明らかに溶かしに来ています。じりじりときのこが焼けそうです。香ばしくなっちゃいます。

異変以降、四季もなくなって天候不順なこの頃ですが、本日は極めて快晴なようです。飛行船のスケジュールを考えると、今の時間帯がチャンスなのですが。

気温としてはいたって問題ないものの、太陽光、引きこもりの身には拷問もかくやといった有様です。


ちょっと元気すぎじゃないですか? というかかすみんより輝くってどういうことですか? いやかすみんだって輝けますけど。ネットでは。


ともあれ、外に出てすぐお陀仏になることもなく。

見える範囲に人外がいないことについては、幸先がいいと思うべきでしょう。


かすみ「……ふぅ」


額の汗を拭います。暑さというより、緊張によるものでした。

今回のゴールは近所のコンビニ。前時代ではよくお世話になりました。そこまでのルートが開拓できたのならば、安全を確保したとかすみんも認識できるはずです。


というわけで、レッツ&ゴー。

76 :
「あの」

かすみ「………」


気のせいでしょうか?

後ろから、声を掛けられたような。


「あのー??」


いや気のせいではないようです。ばっちり聞こえます。

幸先がいい、なんて思ってからまだ数歩しか進んでないのですが?


かすみ「…………」


とりあえず、すたすたとコンビニへと向かいます。ええ、だって振り返ったら取り憑かれる系の怪談とか、テンプレじゃないですか。

ジョ○ョで読みました。


「――いや待ちなさいよあんたっ!!」

かすみ「うひゃっ…!」


げしっと、お尻に衝撃。よろけて数歩たたらを踏みます。


かすみ「………」


いや、は?

いま、かすみん蹴られました?

77 :
保守しに来たら続いててすっごい嬉しかった。
続きも楽しみにしてるから頑張って

78 :
ざわ…ざわ…

79 :
やざわ…やざわ…

80 :
保守

81 :
ほし

82 :
保守

83 :
保守

84 :
「ふん、無視するからよ」


なおも、後ろの人物はなにやらほざいております。どうやら、言葉は通じるようですが。

そうなると、ふつふつと怒りがこみ上げてきます。これが言葉の通じない人外からの攻撃ならば、不運と思うしかないですけれども、そうではなく。

ただの不条理です。不条理に対して、ただ黙っているかすみんではありません。


かすみ「――ちょっとぉっ!?」


振り返りました。それはもう全力で。


少女「ひっ……なによ」


そこにいたのは、小学生くらいの女の子でした。低学年でしょうか、小さく、幼いです。

かすみんの愛くるしさに多少驚いたと見えますが、気丈さを装ってもいるようです。ひとまず、ちゃんと人間のようで安心します。


かすみ「…………むぅ」

少女「………文句あるならいいなさいよ」


じろりと、少女が睨んできます。あまり礼儀のなっていない子のようです。どこでこんな言葉遣いを覚えてしまったのやら。

文句ならあります。文句ならありますが、しかし、思ったより相手が幼いので対応に困ります。

というか、こんな小さな子が外に一人で大丈夫なのでしょうか? この時代で。

あ。かすみん閃きました。


かすみ「もしかして、お母さんとはぐれちゃった?あとあと、いきなり人を蹴飛ばしたらいけないんだよ〜」


にっぱり笑顔。怒りを圧えた素晴らしい対応です。さりげなく教育もできる大人の女なのです、かすみんは。某テーマパークのキャストもかくやといったところでしょう。


少女「…お母さんは、いない。あと説教しないで」


…なるほど。

表情から察するに、この場合の「いない」はあまり深追いしないほうがよさそうです。

85 :
思えばこの時代、親世代がまともに機能しているほうが珍しいかも知れません。変異は大人であるほど重篤ですから。この少女もおそらく、かすみんと同じ境遇で、そういう子供が実は多いのかも。

自活する子どもたちの時代。


少女「ふん。……これ」

かすみ「?」


そっぽを向いて、少女がなにやら紙を差し出します。メモ書きのようです。それから、地図。

コンビニまでの地図でした。「ここに行きたいんだけど」と少女がモゴモゴ言います。

理解しました。少女は道を尋ねたくて、かすみんに声を掛けたようです。でも、無視されたので蹴飛ばした。

無視されたから蹴飛ばすという行動は短絡的に過ぎますが、仕方ありません。警戒してスルーしてしまったかすみんにも非が無いとは言えませんし。

気持ちを振り絞ったのに裏切られた、と受け取ったのかもしれません。自己中心的ですが、子供とはそういうものです。であれば、大人なかすみんは優しく教え、導いてあげるべきでしょう。


かすみ「わかった、ここね。お姉ちゃんも同じ所に行くから、一緒に行こ?」


慈悲深いかすみんです。後光が差しているに違いありません。これが同年代なら即ファイト案件ですが、子供ですからね。

いやかすみんはいつだって慈悲深いですけど。


少女の境遇に、思うところがないわけでもありません。


少女「子供扱いしないで」

かすみ「………」


生意気な。

86 :
というわけで、2人連れ立ってコンビニへと向かうことに。人外よりも先に、人間に出会ったことは僥倖と言えるでしょう。大人なかすみんと比べ、反抗期気味なおこちゃまではありますが。

同行者がいるというだけで、ずいぶん安心感があります。


ちらと横を歩く少女を見ます。言葉遣いは要矯正ですけれど、身なりはなかなか整っています。この時代としては、どうなのでしょう、珍しいのでしょうか?

ストリート・チルドレンらしさは全くなく、清潔な服装やよく梳かれた髪は、良家のお嬢様のような風格すらあります。まあ、かすみんほどではないですけどね。


かすみ「なにしにコンビニ行くの?」


コミュニケーションを試みます。実際、気になっている事でもありました。

かすみんがコンビニへ向かうのは単純に、安全圏のポイントとしてです。コンビニとしての機能は期待していません。

こんな世の中ですから、期待できないと言いますか。とはいえ、インフラやグルテンさんのような例もありますから、「よくわからない何者か」が営業している可能性もあります。

それはそれで困りますけど。

この少女はそのあたり、考慮しているのでしょうか?


少女「お買い物」


当たり前でしょう? という表情です。つっぱねた言い方ですが、ちゃんと会話はしてくださるようです。

87 :
かすみ「う〜ん。コンビニ、やってるかなぁ」

少女「知らないの? コンビニっていつでもやってるのよ」

かすみ「いやそうだけど…」


現代でもあてはまるかは……う〜ん。

渋い顔(それでも可愛いですよ?)をしていたかすみんとは対照的に、少女は自分のほうが物知りだと思ったのか、得意げな様子です。


少女「教えてあげる、24時間営業っていうの」

かすみ「はぁ」

少女「知ってる? セブン○レブンも24時間営業なのよ」


そんなピンポイントな。

88 :
かすみ「コンビニでなに買うの?」

少女「……雑誌」

かすみ「?」


何気ない質問のつもりでしたが、少女の表情は一転、曇ってしまいました。

あまり自分のことは話したくないのでしょうか? これも、深く聞かないほうがいいかもしれません。


けれど。

会話の途切れる直前――小さく、少女はつぶやきました。


少女「かわいい雑誌」

89 :
コンビニに到着しました。ええ、何事もなく。


かすみ「………」


周囲を確認します。特に変わったところは見られません。かつてのように、コンビニがあるだけです。

結局、遭遇したのは少女だけで、人外とは出会いませんでした。とても安全な道程だったと言えます。


まるで、異変なんてなかったかのような。


しかし、かすみんは知っています。こういう時は油断した人から狩られていくのです。数々のホラー映画が物語っています。

ふふん、引きこもりの映画消費能を侮ってはいけません。

というわけでここも慎重に……


少女「なにしてるの」


すたすたと。

電柱に隠れるかすみんを置いて、少女はコンビニに入ってしまいました。


かすみ「ちょっとぉっ!」


一人になるのもダメなんですって!

90 :
というわけで、二人揃ってまんまと入店した次第です。

外から見てもなんとなく気づいていましたが……このコンビニ、何事もなく営業しています。

眩しい蛍光灯、陳列された商品、乾き気味のホットスナック……以前来たときとほとんど変わっていないように見えます。


『〜〜それはきれいな〜♪女神様が〜いるんやで〜〜♪〜〜』


BGMも相変わらず流れております。インフラも流通も、問題なく機能しているようです。その供給源は謎ではありますが。

一点、不気味な点を挙げるとするならば、かすみ達以外に誰もいないことでしょうか。

お客はもちろん、店員も出てきません。


コンビニだけで自立しているような錯覚を覚えます。

自己管理するコンビニ。ありえなくはありません。

91 :
少女は雑誌コーナーにいました。棚を見上げて、お目当ての雑誌を探しているようです。こちらも問題なく陳列されている様子が、当たり前かのようです。

できれば早く見つけて頂いて、早く退散したいところです。元々入ることなく、とんぼ帰りするつもりでしたから。

君子危うきに近寄らず……ええ、かすみん君子なので。

上級国民でもあります。(二回目)


それにしても、少女くらいの幼さで雑誌とは、ませてるような気もしますが。かすみんが初めて雑誌を買ったのは、いつ頃でしたっけ?


少女「………」

かすみ「……どれがほしいの?」


尋ねてみますが、反応はありません。ちらちらと雑誌の表紙を眺めている少女ですけれど、手に取る様子もありません。

お目当ての雑誌がなかったのでしょうか?

ふむ、どうしようかと思ったその時でした。


少女「―――っ」


ぽろり、と少女が涙をこぼしたのは。

92 :
かすみ「えっ!? ええ?? どうしたの?」

少女「…ぅっ…っ」


さしものかすみんも狼狽します。あまりに急で、どうすればいいのかわかりません。一体なにが起きたのか。

子供をあやした経験なんてほとんどありません。とりあえず、頭とか背中とか、よしよしと撫でてはみますが、これで正しいのかどうか。

けれど。


かすみ「…………」

少女「……っ…」


そうして触れて、ようやく気づきました。

暖かいけれど、小さく軽い背中。弱々しく震える肩。

ここに来るまで、負けん気が強いかのように振る舞っていた少女ですけれど。

自立しているかのように歩んでいた少女ですけれど。


少女は、普通の、か弱い少女だったのでした。

93 :
少女「かわいくなれる雑誌がほしいの」


やがて落ち着いた少女は、ぽつりと言いました。


少女「かわいかったら、お母さんが帰ってくるから」


要約すれば、こういうことです。

少女は母親が消えた理由が、自分が可愛くないせいだと思っていました。だから、可愛くなればきっと帰ってきてくれるはずだ、と。

どうすれば可愛くなれるのだろう。ある時、クラスメイト達が教室で雑誌を囲んでいるのを見ました。少女はそれを遠巻きに眺めて、色とりどりの紙面を見て、これだ、と思いました。そうだ、雑誌でかわいいを勉強しよう。

けれど、少女は雑誌なぞ買ったことがありませんでした。いざ雑誌を前にしても、どれを買えばいいのかわかりませんでした。


かわいくなれる雑誌が買えないならば。

お母さんは帰ってこない。


その想像は、勇気を振り絞って買い物に出た少女の、ハリボテのように固めた心を挫くには十分だったのでした。

94 :
その話に、どこか違和感を覚えたかすみんですけれど。

結局その正体はつかめず、それよりも、いまは目の前の少女のほうが大事に思えました。


さて、涙の理由がわかれば、やることは一つです。


かすみ「はい、これ」

少女「?」


目をこする少女に一冊の雑誌を手渡します。


少女「これ…?」

かすみ「この中で、いっちばん! かわいいが詰まった雑誌よ」


それはスクールアイドルを特集した雑誌でした。往年の特集号なのか、やや昔のスクールアイドルが表紙を飾ってはいますが……かわいいが詰まっていることに違いありません。


かすみ「ふふふ、お姉ちゃんもスクールアイドルなんだよ。可愛いでしょう?」


ばちっと、ウインクを決めます。ついスクールアイドルと言ってしまいましたが、まあ、いいでしょう。学校のない今でも、気持ちはスクールアイドルですから。


そんなかすみんの思いはよそに、少女はじっと、表紙を見詰めていました。

95 :
店員は最後まで出てきませんでした。

普通なら少し文句の言いたくなる状況ですけれど、いまの世の中ではむしろありがたいくらいです。

レジに代金だけ置いて、ささっとコンビニを出ることにします。少女の雑誌と合わせて、ついでにかすみんはシュークリームを買うことにしました。

コンビニスイーツ! かつての放課後の記憶が呼び起こされます。せっかく虎穴に入ってしまったのですから、虎子を得て帰りましょうという算段です。

にひひ、不意なチャンスも見逃すかすみんではないのです。


コンビニからの帰り道、少女は雑誌を大事そうに胸に抱いていました。まるで母親と繋がる唯一の希望のように。


かすみ「……………」


もしかしたら、これはかすみの罪なのかもしれません。

可愛くなればお母さんが帰ってくるなんて、そんなことないとわかっているのに。


少女はこの先、ゴールのない可愛さを求め続けることになるのかも知れません。

いつか、スクールアイドルとなって。

96 :
『かすみちゃんは可愛いね』


かすみ「?」


少女をじっと眺めていたせいか。

いつかの記憶が蘇って、どこからか声が聞こえたような気がしました。その声に誘われるように振り返ると――しかし、誰もいません。

はて、と首をかしげて向き直れば。


そこに少女はいませんでした。


いつの間にか、かすみんは一人で立っていました。

97 :
後日。


無事に不安が解消したという記念に、例のシュークリームを意気揚々と食べようとしたかすみんですけれど、しかし、あることに気づいてしまいました。

表記のおかしな部分があるのです。どういうわけか、消費期限が十年ほど前になっていました。

印字ミスというやつでしょうか?


とりあえず、気味が悪いので捨てました。

98 :
タイムスリップしちゃったのかしら

99 :
これはかすかすがタイムスリップしたのか世界がタイムスリップしたのかどっちだ?
せっつーとか果林ちゃん、ぽむやりな子、カナちゃんもいる(はずだ)から世界が人をそのままにタイムスリップしたのかな

100 :
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