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【気をとりなおして】御機嫌如何(二)【長編小説】


1 :2019/11/17 〜 最終レス :2020/03/16
◆最初のデート(続き)

 1996年6月29日(土)
 七月一日から、香港返還まで一年のカウントダウンが始まるらしい。
歴史教育でもナショナリズムが強調されるらしい。
民主活動家の人々は、返還を恐れているらしい。
心の中では、どう思っているかしれないけど、表面的には楽観しているようだ。
五十年不変という約束、高度な自治・言論の自由、それは守られるのか?

2 :
 1996年7月22日(月)
 朝起きたら、サッカー、ブラジル戦をやってた。なんと、すごい。
1−0で勝ってしまった。UPIは「オリンピック史上、最も大きな番狂わせのひとつ」
と配信したらしい。雨あられのすごいシュート、よくも、まあ、防ぐことができたな。
川口はすごい。ドーハの悲劇から、ロスタイムはほんとに長いよな。
スーパースターを揃えたドリームチームに勝てるなんてなー。
歴史にに残る勝利だよ。Jリーグの効果がでたよ。

3 :
1996年7月23日(火)
 人生、最良の日。私の人生も捨てたものじゃないね。
びびりにはじまり、びびりに終わったんだって。青学と速攻H。
俺は、本当に手が早い。
オリンピック、すごい惨敗だ。

4 :
この頃、毎日朝まで電話していた。
スマホどころか携帯もない時代なんだけど、
固定電話の子機の電池が切れるまで、話していた。
内容は、ほとんどHな話だったと思う。
自分の母校に連れて行ってと頼まれたので、「いいよ」ということになり
八王子駅のホームで待ち合わせし、大学まで行ったと思う。
ルートは八王子⇒新宿⇒原宿⇒明治神宮前⇒表参道だったと思う。
「びびりにはじまり、びびりにおわった」と言ってるのは、青学に行ったことを指している。
自分にとっては、十年以上いってる学校だったし、特別なことは何もなかったけど
ナミリにとっては、特別な経験だったようだ。
とにかく緊張しすぎだよ。
地下の学食でご飯食べようとして、お味噌汁のお椀をトレイに零してたからな。
おそらく、楽しかったこの日の余韻が半年続き、そして消えたということだね。
自分は雑な人間なので、あまり反省したり後悔したりしないけど、
そんなに楽しかったなら、もう一度、教えていた他の大学でも連れて行ってあげれば
よかったなと、それだけは悔いが残っている。
距離と時間で物理的に無理なんだけどね

5 :
自分は、いつものくせで、他の大学の院生が来た時と同じように、書庫を案内したけど
これも違ってたかもしれない。
学食でご飯を食べた後、センター街を歩いて、
渋谷⇒下北沢⇒相模大野
大野の伊勢丹で買い物をして、小田急相模原に帰ってきた。
白いストライプの入ったピンクの服と白いスカートがよく似合って、かわいかった。

6 :
二十年以上前の服装が、なぜ分かるのかというと、写真が残っている。
昔のチャペルを背に、並木の真ん中で、はにかんだ顔して映っている。
ちょっと、遠くて、ピンボケ気味。
もっと、いい写真もあったと思うけど、それは、自分のアルバムに貼るといって、
後日来た時に、ナミリは持って帰った。

7 :
やっと、家にたどりついたんだけど、帰りの電車の時刻もあって一時間もいないうちに
送っていくことになった。
小田急相模原⇒町田⇒JR町田⇒八王子
この日は、電車に乗ってばかりだったね。

ピンクの服を脱がせたとき、口紅が襟元について、悪いなと思ったことを覚えている。
慌てすぎだ。

8 :
八王子まで送っていく途中、JR町田駅のホームで、電車を待っていたら、
ナミリがクスッと笑って「いきなり、やられるとは思わなかった」と言った。
アパートの部屋に入って、キスしたと思ったら、すぐに脱がされたんだから、言うよね。
「朝まで、オナニーの話してたやん」とごまかす。
まあ、厳密に言うと、ここまで正直に書く必要があるか疑問だけど、クリントン大統領的
にはセーフでなんだけどね(後述)
この頃、無料通話アプリとか、ないので、ナミリが電話してきて、いったん切って、こっち
から、かけなおした。ナミリの家の電話代が凄いことになるからね。
正確に書くと電話を二回鳴らして切ったらナミリだから、電話するように決めていたと思う。
毎晩、朝まで、正確に言うと、親子電話の子機の電池が切れるまで、話してた。
切れるとピーというんだね。
内容は、ナミリの一日の出来事報告、それが済むと、だんだんHな話になっていく。
この日は、指を入れるか入れないか、そんなことを話してた。入れないんだって。
八王子で、カイジに乗るナミリを見送って、家に帰りついたら、留守電のナミリが
「今日はありがと」と入れてくれていた。

9 :
1996年7月24日(水)
 膝と腰が痛い。昨日、無理な姿勢だったかもしれない。
あんなに、かわいくてキレイで気立てのいい子が手の中にある。
この幸せを守っていきたい。
胸がうすいことを、かなり気にしているみたいだたけど、
まだ体が大人になってないからだよ。

10 :
1996年7月25日(木)
 ナミリ、中銀を落とされたらしい。最初の面接から、まずくて、他へと言われていた
のを、無理に頼み込んだのだ。ダメならダメと、その時に言ってほしいよ。
(言ってたのか知れないけど)
特に友だちが採用されたのがショックみたいで、泣いていた。
地方銀行の短大採用枠など、地縁と血縁のみで、個人の人柄・能力・努力は関係ない。
運がなかったとしか言いようがない。だから、あんまり深刻に考えても仕方ない。
ナミリが泣いていたから、
「あなたには、素敵な彼氏がいるじゃないの」と言うと
「ダレ?」だって

11 :
1996年7月26日(金)
 ナミリ、商工信金に採用される。本当にホッとしたよ。
一時四十五分に面接があって、後で電話してきたけど、自信なさそうだったので、
心配してたけど、外出して帰ってきたら、留守電が入っていたので、電話すると
受かってたらしい。本当に、よかったよ。

12 :
前日は、どうやって中銀に復讐するか、二人で長々と話し合っていた。
抗議文をコピーして中銀の本店近くで撒くとか、ウナギを百人前注文するとか、
インターネットがない時代なので、直接行動しなければならないのだ。
今日の面接は、最初に笑うようなことがあり、緊張がほぐれたので、うまくいった
と、うれしそうに言っていた。本当に、よかった。

13 :
1996年7月27日(土)
 ナミリと、また三時間以上電話する。はっきりいって、電話代がこわいけど、とっても
楽しい。Hなことも、かなり聞いちゃった。ナミリに「過去まで脱がされた」と言われた。
もっと、自分の意見をはっきり言えるようになるといいね。
Hな話しかしないんだけど、なぜか、言動に気高さを感じるときがある。
躾がいいのか、正しくありたいと思っているのか、なにか、あるみたい。
正しくありたいと思っているから、正しいというわけでもないんだけどね。

14 :
1996年7月28日(日)
 耳が弱い。
電話代、調べてみたら、一時間1000円程度と考えておけばいいでしょう。

1996年7月29日(月)
 ナミリとの話、二日連続で三時間を超す。
去年は、本当にいろいろあったみたい。
クセが悪くて、思い出すと、悪いことしたと思うんだって。
いろいろなことを話したいみたい。大人の聞き手として想定しているんやろうね。
動揺せずに、やさしく大きく包み込んでいけたら、いいんだけど。

15 :
1996年7月30日(火)
 ナミリと電話。ユーミンのSAVE OUR SHIPが好きなんだって。
TBSの秋山さんがソ連のロケットで宇宙に行ったのに憧れたんだって。
今年は花火大会に行きまくるんだって。
1996年7月31日(水)
 ナミリ、テレビ見ながら電話するの、やめてくれる。アクビするのもね。
若いから、子供だから、仕方ないといえば仕方ないけど、ちょっと心外だ。
やさしく、やさしくしてあげたい。
宝物だから。

16 :
 この次の日、入社のための身体検査があるので、夜早く寝るから、
夕方電話してと言われたので電話したら、ものすごく機嫌が悪かったので、びっくりした。
実は、この日記は、ナミリが来た時に検閲されるので、当たり障りのないように
書いてあるが、ゆうたは、この後、ビールを飲んでふて寝した。
 Hまでしてるのに、今更だけど、ナミリとほんとに付き合っているのか、
確信が持てない。ほんとの彼氏がいるんじゃないのという疑いが消えないのだ。
人を好きになるということは、うれしい気持ちと同じくらい、苦しいことがある。


単純に生理が重いという可能性もあるけど、そう思うのはゆうたの経験による。

17 :
◆マリエ

 宮崎美子がピカピカだったころだから大昔の話になる。
ユウタの入ったのは、就職なんか知るかという学科だったけど、
文科系のマニアックなサークルに入り、呑気に大学生活をスタートさせていた。
六月初めの日曜日、
ユウタが当時住んでいた豪徳寺のアパートで宿題の英語の本を読んでいたら、
「ユウタ君のところに遊びに行っていい」
と、サークルの先輩のマリエさんから電話があった。

18 :
 実はユウタはサークル間違えて入ってしまった。
中国研究会っていうんだけど、三国志とかやるのかなと思って入ったら、
近現代史専門の、思想的には左派のサークルだった。
軍艦のプラモデル作りから、ばりばり軍国少年だったユウタにとって思想的には
対極なんだけど、まあいいかなと入った。
 マリエさんは、中研の部長の高校の一年後輩で、北陸の出身で、雪のように肌の白い
背が高くて足が長くて胸の大きなスタイルのいい人だった。
顔は竹内まりあに似てると言われたと自分で言ってた。
ゆるくパーマをかけて寄せてたからか、確かに似てるといえば似ていた。
 あんまり胸がデカいので、思わず指でちょんちょんとつついてしまい、
「部長、ユウタ君が胸を触るので注意してください」とマリエさんに言いつけられ
「ユウタ君、やめてください」と部長に注意されていた。
今、書いていても恥ずかしいですが、小学生じゃなくて大学生の話です。
ホントに、チャラくていやになるね。

19 :
マリエさんが、なんでユウタのアパートを知っているかといえば、
サークル内でアパートで飲み会するのが流行っており、
ユウタのアパートでも二週間くらい前に飲み会があったせいだと思う。
スーパーで、いろいろ食べ物やビールなどを買ってきて、
ホットプレートでジュージュー焼きながら、朝までいろんな話をする。
当時は今より地方出身者が多かったと思う。

20 :
マリエさんから、そのことを聞いたのは、翌朝あたりが明るくなった頃だった。
マリエさんは、部長と恋人同士で同棲していると。
ユウタの腕枕で、大きなおっぱいを押しつけながらマリエさんは言った。
もうすでにHしちゃった後なんですけど。どうなるの。

ユウタに打ち明けた後、マリエさんは部長のアパートに電話した。
そして部長が知らない女友だちの家に泊ったと嘘ついた。
雪国の人は、胸の白さと背中の白さも変わらないな、と
椅子に座って電話するマリエさんの綺麗な裸を眺めていたら
突然マリエさんがプリプリ怒り出し、電話をガチャンと切り
「しつこいんだよ」と吐き捨てた。

いつも一緒にいる恋人が急にいなくなって、家に帰ってこなかったら心配するな。
実際、方々へ電話したみたい。ユウタの家まではかかってこなかったけど。

隠すことがあるとき、人は攻撃的になる。
このことをナミリがすごく機嫌が悪かったので思い出したのだ。
あと、おわかりのように、残念なことにユウタさんは、普通の人の百倍にぶい。
ヒントが100くらい出てたはずなんだけど、まったく気がつかず、
マリエさんに打ち明けられたとき、驚愕したのは、残念ながら事実である。

21 :
 ユウタの入ったサークルは、上部団体があり、早稲田とか日本女子大やお茶大などにも
同じサークルがあったんだけど、早稲田サークルの会報の他己紹介でユウタは「長いもの
に巻かれない人」と書かれていた。生意気なこと言ってたんやろうと思うね。
軍国少年が左派系のサークルに入ると、そりゃ浮くわね。

 ユウタは基本的に人にどう思われても何ともない。
「お前に俺の何がわかるというんじゃい」と思ってる。

そして、頭のなかで、脈絡もなく、いろんなことを考えてる。
例えば、
孔明の北伐、地図をみたらノーチャンスや。一本道やで。関羽と荊州を失ったあと、
北伐は無理やで。ほんとに、長安を獲って魏を亡ぼす気が合ったんだろうか。
とか、
爆装零戦の特攻機、急降下で当てるのは、無理やで。スピードが出たら、揚力が働くから
操縦も難しかったやろうね。急降下爆撃機は、揚力を防ぐため、九九艦爆やスツーカのよ
うに車輪をだしている。ゆるく当たって、250キロだったら、なかなか戦果も期待でき
ないな。
とか、人に話しても、わかってもらえないようなことを、始終空想している。
こういう性格・性癖が、人間関係に、とてもにぶい原因だと思う。

22 :
1996年8月1日(木)
 ナミリ、昨日は、やっぱり頭が痛くて、ご機嫌が悪かったみたい。
商工信金の健康診断があり、血も採られたんだって。
英和の子が多くて、県短はひとりだけで、グルになれなくて、つまらないんだって。
でも、入ってからが大切。いい仕事、いい人にめぐりあえるといいね。
雛形あきこが嫌いなのは胸がでかいからだって。
胸が小さいひとが歩いているのを見ると、友達と思うんだって。

23 :
1996年8月1日(木)
 ナミリ、昨日は、やっぱり頭が痛くて、ご機嫌が悪かったみたい。
商工信金の健康診断があり、血も採られたんだって。
英和の子が多くて、県短はひとりだけで、グルになれなくて、つまらないんだって。
でも、入ってからが大切。いい仕事、いい人にめぐりあえるといいね。
雛形あきこが嫌いなのは胸がでかいからだって。
胸が小さいひとが歩いているのを見ると、友達と思うんだって。

24 :
1996年8月2日(金)
 ナミリより電話。お父さんとケンカしたんだって。
お風呂の石鹸が小さくなったら替えろということが始まりらしい。
口惜しくて、泣いてお風呂に入って、三時頃電話してきた。
ナミリ、お父さんとうまくやっていけるか、心配だ。
心にもないことは言えないんだね。

25 :
1996年8月3日(土)
 ナミリより電話なし。土日はバイトで忙しいから、仕方ないけど、すこしさびしい。
1996年8月5日(月)
 アトランタ・オリンピック終わる。あっという間に終わったな。金メダル三個だけ。
選手の努力をサポートする国じゃないのに、メダル獲れっていっても、無理無理。
ナミリが明日来てくれる。うれしい。

26 :
ユウタの腕枕で、マリエさんが、マリエさんと部長の関係を話してくれた。
高校の部活で放課後練習をしていたら、一年上の部長から声を掛けられ
付き合うようになり、部長が青学に入ったので、一年遅れて自分も青学に入ったと。
マリエさんは、上智にも受かってたけど、青学にしたんだって。賢いんだ。
そして久我山のマリエさんのアパートというか、大家さんの家の敷地にある離れみたいな
家で同棲していたんだけど、大家さんに見咎められ、親に言いつけられたんだって。
それで、部長は目黒に住んでたんだけど、井之頭公園駅近くのアパートに引っ越しをして
そこで二人で住んでいるんだって。
客観的な第三者なら、微笑ましく、うらやましいような話なんだけど。
残念ながらユウタは第三者ではない。
マリエさんが「遊びに行っていい」と電話で聞いてきたとき、マリエさんは英米だから、
宿題の英語の意味のとれないセンテンス教えてもらおう程度にしか思ってなかった。
晩御飯を一緒に作って食べて、いろいろ話してたら、終電がなくなる時間になってしまった。
ユウタは片肘をついてマリエさんの顔を見ながら「どうしたいの?」と聞いた。
今日のことは二人だけの秘密にしましょう。一生口外しません。
なかったことにしましょう。あなたは部長のところに戻ったほうがいい。
冷静に振り返れば、ユウタが、こういえばよかったかもしれない。
そして、ユウタは、ユウタのことを好いてくれていた青短の娘と付き合えば
万事丸く収まってたね(この時期、ユウタ君、人生唯一のモテ期だったみたい)

27 :
1996年8月6日(火)
 ナミリが来てくれて、チャーハンと牛乳スープを作ってくれた。
人参を切るのが危なっかしくて、ハラハラした。
一時間くらいかかったけど、とても美味しかった。
そのあと、ずっとゴロゴロしてしまった。エッチ!
1996年8月7日(水)
 ナミリは、目鼻立ちがくっきりしていて本当に美人さんだな。
パジャマもエプロンも、よく似合っていた。
とても美人で、とてもかわいい。
この幸せはいつまで続くんでしょうか?
しかし、俺って、ものすごくすごくエッチだね。

28 :
 マリエさんの顔、よく見ると、ちょっと鼻が短いかも、ほっぺも丸すぎ、
でも目は、すいこまれそうに大きく美しい。目がチャームポイントやね。
マリエさんは「部長と別れて、ユウタと付き合いたい」と言った。

マリエさんの気持ちも、わからんでもない。
どんなに好き同士でも、狭いアパートで、いつもいっしょにいたら、
だんだん不満も溜まってくるよね。

ユウタは「倦怠期の刺激みたいな位置づけでは無理」
「本当に別れることができるのか」と念を押した。
人間関係、普段から何も考えてないユウタでも、難易度の高い話ということは
流石にわかってたみたい。

29 :
ただユウタさんは、おわかりのように、とてもエッチな人なので、
マリエさんのキレイな裸に魅惑されていたことは、否定しようのない事実である。

マリエさんは、「また来るね」と言って帰ったけど、そのあとは本当に大変だったみたい。
そりゃそうやね。高校生の時から、つきあっている恋人が、心変わりして、
会ってひと月もたたない一年生と付き合うと言い出したら、驚くよね。
本来ならばユウタが出ていくべき話なんだけど、かえって、こんがらがるし、
ユウタに見せたくないこともあるやろうと、遠慮した。

30 :
この幸せはいつまで続くんでしょうか?

この答えは、わりと早い段階で出た。
来年(1997年)の一月まで。
ナミリの話を聞いてるうちに、だいたい分かった。
ナミリは、人を好きになる場合、シチュエーション込みなのだ。
教師と学生がつきあってる、でも教室のほかの娘はだれも知らない。
二人だけの秘密。そういう状況こみで好きなのだ。
だからシチュエーションが変われば、冷める。
人が好きなんじゃなく、状況こみで好きなのだ。
いつか「お前はいつか刺される」と元彼に言われたとか言ってたけど、
急に心変わりしたように受け止められたのだと思う。
環境が変わって会えなくなったりしたら、冷めるのだ。
授業が永遠に続いたらいいんだけど、来年一月で終わる。

なんでか、ナミリを迎えに町田の小田急からJRへの連絡通路で
行ってこいでチャラだから、きついな。
好きになった分、落ち込むだろうな。と、考えながら歩いてたことを覚えてる。

分かってるから、心の準備ができてるから、見苦しくならないというわけでも
ないんだけどね。

31 :
別れの予感というのは、つねに付きまとっていた。
難易度はマリエさんとのこと以上だもの。
このころ、中島みゆきの「御機嫌如何」を本当によく聞いていた。
別れたあとのことを考えていた。

32 :
教室につき合ってる学生がいる場合の教師の心理。

えこひいきしていると思われるのは、困るね。
だから、視線を送ったり、目くばせすることは一切ない。
ナミリは、友だちに「実は先生とつきあってるんだ」とか、
打ち明けないタイプとすぐに、わかったから、そういう心配はしなかった。
秘密が好きなんだよね。

33 :
<登場人物紹介>
ユウタ   みてのとおりのアホンダラ。1996年当時、県短で非常勤講師をしていた
ナミリ   その講義を受講していた、かわいい子
マリエさん ユウタが大学生の頃の彼女

34 :
1996年8月8日(木)
 論文少し詰まってきた。考えることはない。全体を掴むために流していけばいい。
史料を積み上げていって、焦点を絞る。
ナミリとのH、とにかく入れてやるってことだ。
ナミリとの電話、途中で切れる。昨日はお父さんにばれたらしい。
1996年8月9日(金)
 ナミリの家の近くで地震。大丈夫?
1996年8月10日(土)
 弟夫婦に誘われて、サザンのコンサート、西武ライオンズ球場に行く。
真横から見るような席だったけど、面白かった。
「ミス・ブランニューディ」とか「いなせなロコモーション」などを歌ってた。
「C調言葉」も歌ってくれた。懐かしく、うれしかった。
たてのりと手拍子には、びっくりして疲れたけど。
西武球場、景色はいいけど、遠いね。
帰り、電車の待ち合わせとか、わけわからんくらい時間がかかった。
ナミリに言うと「私も行きたーい」だって。

35 :
1996年8月12日(月)
 ナミリ、かわいい、目が大きい。スタイルがよい。ぶっきらぼう、てれやさん、
乱暴な言葉、ポワンとした顔、ちょっと子供の足、かわいい胸、危なっかしいけど
美味しい料理。深夜の電話。Hな話。正直者。形のよい手、うすい毛、白い肌、
お人よし、長い髪、ストレートパーマ、ジョナサンのバイト、コーヒー嫌い、
紅茶と巨人が好き、キンキのルカ(役名・光一)石和、JR東日本も好き。
先生の宝物。

36 :
 マリエさんと、付き合いだして、いろんなことがわかってきた。

1ユウタが人と一緒に暮らすことがムリなこと
 二人で、お揃いのお茶碗とかお箸買って、同棲生活始めたんだけど、とにかくムリ
 多分、ユウタは一人暮らしが長すぎるんだと思う。
 県庁所在地の中高一貫の進学校に郡部から行ってたから、中学生のときから一人で
 住んでた。最初のとき、とても寂しかったことを、かすかに覚えているけど、知ら
 ないうちに慣れた。
 気を使うというか、いつも神経が向いているというか、どんなに好きな大好きな人
 でも無理。永遠に続くと思うと気が狂いそうになる。
 結婚は磁石みたいにひっつくイメージなんだけど、たぶんユウタのは磁力が弱いんだと思う
 だから、世界中の結婚している人を尊敬する。ほんと、我儘なんだろうね。
2ユウタは、女だったら完全無欠の愛人タイプ
 だから、たまにきて、Hしてくれたら、それだけで充分。
 一週間のうち一日とか、二日とか、時間を区切って、遊びに来てくれたら、それだけで
 充分。それ以上の欲はない。
 だいぶん、時間がたって、ユウタが博士前期課程の頃、マリエさんが中学の英語教師に
 なり、最初の一年くらい土日に泊りに来てくれたことがあるけど、このときが人生で一番
 しあわせだったと思う。慣れない仕事で、疲れ果ててるのか、土曜日の夜来て、ずーと
 寝てるわけ。起こして、作ったご飯を食べさせて、Hして、またマリエさんは寝る。
 月曜の朝、元気になったマリエさんが、学校に行く。
 あとHさえしてくれれば、外で何しても、たとえ浮気していても一切気にならない。
 人と一緒に暮らすのはムリだとわかっているから、束縛するとか、そこまで要求する
 のは、悪いと思ってる。 

37 :
マリエさんも同棲生活の不満の爆発が、部長との破局の原因だったので、自分の家に帰り
学校であったり、デートしたり、たまに泊りに来てくれることになった。
マリエさんも、ちょっとムリだったみたいで、二度と同棲しようとは言わなかった。
ユウタも言わなかったけど。
高校から、つきあっていた恋人を、一年生にとられた部長も黙って引きさがるわけもなく
マリエさんをとりもどそうと涙ぐましい努力をしていた。
ユウタは「お前は俺の女だ。よそ見するな」とかいうタイプではなく、
マリエさんが部長と一緒に夏休み田舎に帰るのを上野まで見送ったこともある。
マリエさんは、賢く、気も強い人なんだけど、情に流されるというか、
けじめがつかない人でもある。優しいんだと思うね。
ユウタはそんなに優しくはないけど、けじめというか踏ん切りがつかないところがある。
そういうところもケミストリーがあってた。
ナミリのように、自分の生活圏に入らなくなったら死んだも同然というふうに、
割り切って先に進める人は、本当にうらやましい。
ナミリは、特別かわいいから、美人さんだから、どんどん先に進めるんだと思う。

38 :
1996年8月14日(水)
 フィリピンでアジア女性基金の支払いが始まる。200万円でもフィリピンでは大金らし
い。傷ついた人たちが、人生の最後に少しでも満たされた気持ちになるといいね。
ナミリ、バイトの合間をぬって明日来てくれる。うれしい。楽しい一日にしたいな。

39 :
 夏休み明け、部室で部長の学生手帳を拾って、何気なく見たら、
田舎に帰る汽車のなかで二人で抱き合ってキスしたと書いてあった。
学生手帳、日記にしてたみたい。あとは、ユウタに対する呪詛が多かった。
途中で見るのやめたけど。

マリエさんは、振り子のようにユウタと部長の間を揺れるようになった。
なにもかも、分が悪い戦いとなった。
部長は井之頭公園・マリエさんは久我山なのにユウタは豪徳寺。
ちょっと遠いかも。ガダルカナル航空戦みたいな話になった。
そしてユウタの女なら完全無欠の愛人タイプという性格は、この戦いの中で形成された。
人なみにやきもちを焼いて苦しんだこともあったけど、
基本的にひとりで、本を読んだりすることが好きなので、
悩んで何日も眠れないということはなかった。

それにユウタは、1996年当時でも想像もつかないけど、
Hの面で部長より勝っていた。
マリエさんは、ほんとにHに厳しい人で自分の快楽を追求することに妥協のない人だった。

40 :
正常位も必ず肩に足をかけるように指示され、騎乗位では必ず軽くブリッジさせられた。
もうギブとブリッジをゆるめると、腰を叩かれた。
腹のあたりが汗びっしょりになるくらい頑張り、スゴイと思ってたら、手を掴まれて、
おっぱいをもむよう誘導された。
とにかく体力がある人で、こんなにHがすごい人は、ユウタは、ほかに会ったことがない。
でも、その代わり、なんでもやらせてくれた。縛ったりもさせてくれた。

ちょっとHすぎますね。
程度がわからない。

41 :
マリエさんとのいちばんすごいHは、
ユウタと別れて部長のところに戻ると言われた後
じゃあ、最後に一回といって、やらせてもらった時だ。
(この二人ほんとにグダグダで、こんなことは何度もありすぎて何時のことか覚えてない)
ふだんは、いろいろ気を遣うんだけど、この時は、腹が立ってやったから、すごかったみ
たい。別れるのやめて、一週間に一回、Hしにくると言い出した。
なんでも部長のアパートに戻るけど、一週間に一回、久我山の自宅に戻ることにして
ユウタのところにHしにくるんだって。

そんなことしていて、ばれたこともある。
部長が歳末の車で配達するバイトにいったので、マリエさんがHをしにきた。
電気を暗くして、もちゃもちゃして、入れたところで、突然ドアがガンガン叩かれ、
「開けろ、開けろ」と大声が。バイトの帰り、もしやマリエさんが浮気してるんじゃ
とカンを働かせ、ユウタのアパートによったら、案の定やり始めていたのだ。
もしかして殺されちゃう?とか、思ったけど、マリエさんがユウタのパジャマを着て、
ドアを開けたら、そのままマリエさんを連れて行った。
車で帰る途中、そのパジャマを脱いで裸になれと言われたと、翌日服とかバックをとり
にきたマリエさんは言ってた。そのあと、Hしちゃったけどね。
下に住んでる女の人に出くわしたので、昨日はお騒がせしてすみませんと謝ったら
大変ですねと言われた。

42 :
ユウタも、こんなことばっかりしてちゃいけない。
マリエさんをあきらめて、
もっと普通の夢のような恋をしなくちゃいけないと、
他の子とデートしたりしてると、
ユウタがいく研究会とかに、
マリエさんが突然現れ「今夜、泊りに行っていい」と耳元で言うのだ。
マリエさんのくぐもった優しい声を聞くとユウタは反射的に「いいよ」といい、
またグダグダな関係が復活したりする。
もういったい、なにをしていたのか、なにをしたいのか、Hしたいだけか、
わけわからん。

43 :
書き忘れたけど、パジャマで帰った日の翌日、服とかバッグを取りに来たマリエさんと
Hしたんだけど、また部長が来たらやばいと、押し入れに隠れてやったんだと思う。
マリエさんは、こういうのもいいねと抱きついて、おおきなおっぱいを押しつけてきた。

44 :
実は、この部長、とてもいい人で、ユウタは最初から最後まで、悪い印象はない。
惚れたものの弱みか、マリエさんの数限りない悪行も許す寛大さも持ち合わせていた。
しかし、流石にこの時は、怒って問い詰めたらしい。
あいつのどこがいいのか?と

45 :
そりゃそうだ。
マリエさんのために、寒い中、バイトしているのに、
マリエさんたらユウタのところに来てHしてるんだもの。
それを見たときの絶望といったら、想像を絶するよね。
ドアをガンガン叩いて「開けろ、開けろ」と叫んだんだけど、
その声は、張りのある声じゃなく、
なんか絞り出すような声で、人間の声とは思えなかった。
マリエさんに入れた瞬間、叫びだしたから、
それまで、もちゃもちゃしてたのを見てたんだと思う。
ドアの新聞受けの隙間から。
ガンガン叩いたけど、あれは素手だったんだろうか。
後で、ドアをみたら、厚いドアがへこんでたし。
ユウタは一瞬何が起こったかわからず、裸だったので、
パンツパンツと探していたら、
マリエさんが先にパジャマを着て、開けて、連れていかれた。
「やっぱり、本当に助けてくれないんだ」と後でマリエさんに言われた。
前にマリエさんが危険な目にあっても助けないとか、言ってたんだろうか。
言ってたんだろうね。
パンツが見つからなくて、と言い訳した。

46 :
考えれば考えるほど、ホントにひどいね。
自分のために働かせておいて、公然と浮気してるんだから。グルのユウタもね。
「えっ!車のなかでパジャマ脱げっていわれたの」
「裸で帰ったわよ。寒かった」(12月の話)
「えっ!みんなに見られたんじゃない」
「見られたかもね」
「車から降りるときも裸のままだったの?」
「裸の裸足だよ」
「えー。誰かに見られてたね。絶対。濡れた?」
「寒かっただけだよ」
「ほんと?ほんとは濡れたんじゃない」
「うーん。ちょっと」
「どれどれ、みてあげましょう」
翌日も部長は働いているのに、こんな感じでH始めてたからね。

エロ描写の才能が光るね。なんか、エロいシーンなら延々と書けそうだ。
志の方向が間違ってたかもしれない。

47 :
そういえば、こういう場面もあった。
マリエさんがユウタと初めてHした翌日、マリエさんは「また来るね」といって帰った。
そのあとは大変だったみたいと伝聞調で書いたけど、そのあとのこと思い出した。

マリエさんから、電話があって、部長のアパートを出て、ユウタのところに行くから
迎えに来てといわれたので、迎えにいったんだった。
アパートの前で、待ってたら、荷物を持ったマリエさんが出てくるんだろうな。
と思って行ったら、
赤い顔をした部長がドアの前に立って(お酒飲んでたのかもしれない)
「絶対通さない」とユウタに言う。

ホントに非現実的な光景で、今考えても、現実だったんだろうかと思うけど
確かに部長は、カミソリを持って、手首に当ててた。
赤いドアの前に仁王立ちで、両手を交差させるように、前に上げていた。
つまり、ユウタがドアを開けようとすると、手首を切るということらしい。
マリエさんを取られるくらいなら、死ぬということらしい。
ちょっと、異常すぎて、あまり近づけもしなかった。
「部長(面倒くさいから、部長で通すけど、もちろん本名で言ってる)
落ち着いてください。ほんとに死ぬつもりなら、頸動脈を切らないとRませんよ。
(ユウタは、こういう異常行動が心底嫌いだから、かなり冷然とした口調。しかし
これは間違った対応)手首を切っても、痛いだけです。落ち着いてください」

48 :
まあ高校からつきあって同棲していた恋人が突然心変わりして、
会ってひと月もたたない新入生のところに行くと言い出したら、逆上するよね。

「部長、落ち着いてください。話しましょう」
でも、部長は、なんかワーワー言ってるし、何言ってるかわからないし。
絶対、やけ酒かなんかで泥酔してたんだと思うね。
警察が来ますよ(ホントに来そうだった)
ここに住めなくなりますよ(ユウタなら、この時点で、恥ずかしくて住めないね)
それに、見せる相手が違いますよ。
死ぬほど愛してるところを見せたいなら、
あなたが、守ろうとしているドアの向こうにいるマリエさんに見せないと、
いけないんじゃないの。
いろいろ、言うべきことは思い浮かぶけど、聞いてくれそうもないし、
まわりは、ざわついてるし(かなり人が出てきてた)
ユウタがいること自体が部長を刺激してるみたいだし、
ほんとになにか起きたら困るし
もう仕方ないから
「わかりました。今日は帰ります。マリエさんとよく話し合ってください」
と部長に言ってアパートを離れ
近くの公衆電話から、マリエさんに電話した。
「今日のところは帰ります。
なんか興奮してるみたいだけど、マリエさんが危害を加えられるようなことはないの?」
あんまりにも異常行動すぎるから、心配して聞いたら、
マリエさんは鼻で笑って「大丈夫」といった。
「じゃあまた、明日。落ち着いたら来てね。愛してる」
「あたしも愛してる。おやすみ」
ドアを守っても、人の心は守れないよね。

しかし別れると言われたら、
じゃあ最後に一回やらせて、
というユウタとはだいぶん違いますね。

49 :
「ホントに部長はマリエさんのことを好きなんだね。愛してるんだね」
ユウタには、とてもできない行動だったので、翌日マリエさんに言ったら
「愛してるっていうのは、人のことを考えることじゃないの。
束縛して独占するのは違うよ」と、食い気味に反論された。
そう、宮崎美子がピカピカだったころは、男女雇用機会均等法が施行され
男女同権が叫ばれる時代だったのです。

50 :
この前の話は、落ちて久しいので、再編集して、再掲載する予定です。
これと同じくらいのスピードでの掲載になると思います。
あまりにも、欲張りすぎた構成で、ごちゃごちゃして、
自分でも、わけわからんとぶん投げてしまい、
知らないうちに何年もたってしまいました。
エロに特化します。

51 :
 こんなこともあったユウタと部長だけど、二人だけで渋谷で飲んだこともある。
部長は、高校生のとき、放課後の部活・卓球部だったマリエさんが、とてもかわいかった
ことを教えてくれた。
ユウタは、どうしてサークルでマリエさんとつきあってたことを隠してたのか聞いた。
もし知ってたら、マリエさんと絶対こんなことにはなってないと言った。
大体、ユウタは面倒くさいことが嫌いだから、先に知ってたら、おっぱいさえ触らなかった
と思う。
酔った部長は、ちんこで負けてるから、ユウタを打倒できないという。
さすが、民青系のサークルの部長は、言うことが違うね。
マリエさんは、好色な人だけど、下品な人ではないので、ちょっと想像つかないけど
自分が悪くて、叱られると、逆切れするから、
「あいつのどこがいいんだ」と問い詰められたとき、「ちんこだよ」と言い返したらしい。
まあ、なんか、部長がかわいそうになったユウタは、
「マリエさんは、今は元気が有り余ってるから、いろいろ遊んでいるけど、
落ち着いたら、いずれ部長のところに戻ることになると思いますよ」と言った。
なんか、好色な旦那に苦しめられる本妻と愛人みたいな話になり、
二人で肩組んで帰ったから、これはこれで異常な話だよね。

52 :
1996年8月15日(木)
ナミリが来てくれた。伊勢丹で美味しいパスタを食べる。
ナミリと食べると美味しい。
H,最初はうまくいったけど、途中からできなくなる。
三回試みるも失敗。年かなー。ブルーになったぜ。悲しいぞ。

盛者必衰の理をあらわす祇園精舎の鐘の声が聞こえてきますね。
前の話から約十五年たっているんですけど、歳月は人を変えてしまいますね。
あれだけ頑張り屋さんのいい子だったのに、ダメな子になっちゃいましたね。

一読した率直な感想は、せっかく、わざわざナミリが遠いところから、来てくれて
るのに、ちんこもたたないくせに、Hしたがるのは、いかがなものかと思いますね。

53 :
ユウタはHが好き。
マリエさんとの愛人(?)生活が長かったせいか、つきあう=Hと思ってるふしもある。
たたないくせに、なんでそんないやりたがるのか。
愛し愛されてる実感というか、確証が欲しかったんだと思う。

実は、ユウタもナミリに対して大きな秘密があった。
たぶん、ナミリに言ってるし、手紙にも書いたと思うけど、ナミリはわかってないと思う。
それを秘密というべきなのか、どうかわからないけど。

ナミリがユウタにしてくれるすべてのこと
電話してくれたり、
わざわざ来てくれたり、
駅で待ち伏せしてくれたり、
いっしょにご飯を食べてくれたり、
ユウタにご飯を作ってくれたり、
いっしょに歩いてくれたり、
そういう、すべてのことを
とてもとても、うれしく思ってること。
そして、感謝してること。
一生かけても、かえせないなと思うくらい感謝してること。
それは、秘密だ。
ちょっと、つりあわない感情だから。

54 :
キスしてくれたり、
笑ってくれたり、
手をつないでくれたり、
歌ってくれたり、
一緒にお風呂に入ってくれたり、
Hしてくれたり、
そういう、すべてのこと。

とても、とても、とても、とてもうれしいこと。うれしすぎること。
とても、とても、とても、とても感謝してること、ありがたく思ってること。
それは、秘密。
釣り合わない感情だし、ちょっとナミリには重い話になる。

遊び遊ばれて、そういうことにして、やがて別れる二人なんだから、
分からなくてもいいことなんだろうね。

55 :
そりゃ、若くてかわいくて気立てのいい子が、現れたら、うれしいと思うやろ。
神様ありがとうございますと思うやろ、ということでは、ありません。
大事なことなので、二回書きました。ここ、重要。試験に出るよ。
覚えておいてね。

56 :
正直に言うと、連日・深夜の長電話、
ユウタもpublish or perishの世界に生きてる研究者のはしくれだから、
どう考えても、許容範囲を超えてる(ちょっと、かっこよく書きました)

でも、毎日、いつかかってくるのかな?まだかな?と、待ち焦がれていた。
楽しみで楽しみで、今日は、どんなこというんだろ、何教えてくれるんだろと
電話が鳴るのを待っていた。
どんどん、好きになるのが、好きになっているのがわかった。
でも、本当にそれでいいのか。身の程をしれと、自分を戒める気持ちと
ナミリの本当の気持ちはどこにあるのか、不安も疑問も強まる。
なにか、確かな証のようなものが、ほしい。

57 :
 ユウタと部長の関係は、今考えても不思議でおかしいね。
あるとき、マリエさんが、サークルの先輩にヤラレる大事件が勃発した。
その先輩は、海外を放浪し、話も面白い人だった。
たしか、北千住の公団みたいなところに住んでいて、
ユウタもサークルの泊り飲み会で行ったことがある。
ちょうど、ユウタがサークルに入った初日で、ユウタ歓迎もかねての泊り飲み会だった。
翌朝、おでこを上げて、顔を洗ったすっぴんのマリエさんを見て、昨日は綺麗な
お姉さんだと思ったけど、今日はかわいいなと思ったことを覚えている。
先輩の部屋には、英語のラジオ講座を録音したカセットがたくさんあり、凄いなと思った
ことも覚えている。金銭感覚も独特で、サークルで地方に合宿に行っても、ほかのみんな
が電車を使っても、ひとりだけでヒッチハイクで行き帰りするような人だった。
 マリエさんも、慕っており、遊びに行ったら、ヤラレたというわけだ。

58 :
マリエさんは、ユウタのアパートに来て打ち明けてくれた。
「えっ。先輩にヤラレちゃったの」
「ユウタ君とも遊んでいるんだから、俺とも遊んでくれ。と言われて、いきなりヤラレた」
「まあ。怖くなかった。びっくりしたでしょ。」
「必死すぎて、笑ったわよ」
へっちゃらみたいな言いぐさのマリエさん、そういうところ大好きよ。
でもユウタの反応を窺うような様子もある。
エロで解決するしかないよね。
「はいはい、患者さん、入ってください」
突然、お医者さんごっこを始めるユウタ。
「この度は、大変な目に遇いましたね。犯人は、ゴムはつけましたか」
「はい、用意していたみたいです」
「犯行は昨日だったみたいですが、昨日の夜は眠れましたか?トラウマとか、ないですか?」
「ありません」
「もう、ひとりで行ってはいけませんよ。男は、狼になりますから」
「そうですね」
「体の方は、どうですか。ケガとかしてませんか」
「いいえ」
「診察するので、脱いでください」
「全部ですか」
「全部です。寒くないですか。大丈夫ですか」
「下着もですか」
「そうです。手伝ってあげましょう」
「先生、先生の手が変なところ触ってますけど」
「調べています。ゆっくり、回ってください。ちょっと、痩せましたか」
「先生、先生の手がおっぱいをもんでますけど」
「調べているだけです」
「ちょっと、そこは、くすぐったいです」
「はいはい。では、そこのベッドに横になってください。
今から、先生がマリエさんを舐めて、きれいにします。いいですか」
「はい」

そのあと、キスして、抱き合って、Hして、腕枕して、頭撫でながら
「この話はこれでお終い。マリエさんは、何も変わってないよ。いつものまんまだよ」
と言うと、こっくりうなづいたマリエさんは、キスしてきた。

59 :
でも、そのあと、ユウタは部長のところに電話して報告し、二人であのヤロー許せん
ということになった。
サークルがある日、先輩が来たので
「マリエさんから、全部聞きました。私は別にマリエさんと遊んでるわけじゃありません」
と言った。かなり、とげとげしい言い方だったと思う。
先輩は、目をまるくして、立ちつくしてた。ばれてないと思ってたみたい。
他の人に知られたら困るので、ぶちまけるわけにもいかないのが、もどかしいですね。
部長は、部長で、ユウタの十倍ぐらい文句言ったと思う。
もう二度と、来なくなったからね。

60 :
 サークルの合宿で思い出したけど、まったく部長のマリエさんに対する献身は、目を見張
るものがあったね。みんなが見てるのに、ユウタも見てるのに、まめまめしくお世話して
いた。人目が気になるユウタには絶対できないことだ。
二人の同棲生活を垣間見るような気がしたね。
 青短の娘が、こっそり「女王様と家来みたいですね」と耳打ちするくらいすごかった。
そうね、女王様と気の利いた奴隷みたいなかんじやったね。
 部長は、マリエさんのことが、かわいくて仕方ないんだろうな、一回も、まともに
叱ったことないよね。マリエさんは、もともと気が強い人だから、怒ってもへっちゃら
だろうけどね。
マリエさんとユウタは、二回だけ、ケンカしたことがあるけど、そのうちの一回は、
マリエさんが、山崎のチョコのついたカステラみたいなパンと細かく指定したので、
お使いに行ったけど、なかったので、他のパンを買ってきたんだけど、これじゃないと
ぶん投げられて、ユウタが腹たてた事案だけど、部長なら、万難を排して買ってきたや
ろうね。

61 :
マリエさんは、忠実で献身的な賢い犬のような部長と、ひとりにしてくれ、ほっといて
くれ、たまに頭撫でてくれという気まぐれな猫みたいなユウタの性質を、よくつかんで
いたと思う。
だいぶんあとで「華やかな時代だったわね」と、一人で悦にいって総括していたけど
そんなヴィクトリア朝みたいなこといわれても、あなたに振り回された二人は大変だっ
たんですよと、言いたかったけど、言わなかった。

62 :
 マリエさんは、ユウタのもっと本質的なところも見抜いていたと思う。
 ユウタは、かわいいとか、キレイと、ほのかに思うことがあっても、だからつきあうとか、交際を申し込む
とか、Hしたいとか、そこまでは、なかなか思わない。臆病なのか、うーん、そういうこ
とでもないと思うけどね。うまく言えないけど、場面転換の突破力に欠ける、うーん、こ
れも違う。好きな気持ちがあって、それが高まって、行動に出るということがない。
とにかく、ちょっとほったらかしても、他の猫と仲良くなる猫じゃないことは、わかって
たみたい。
なんなんでしょうね。まったく。
 ユウタ、人生最大の痛恨事(笑)として、あるとき、サークルつながりで早稲田の女の子
がご飯を作りに来て、泊ってくれたことがあるんだけど、今考えれば、処女捨てに来てた
と思う。やっても学校が違うから、あとくされなさそうだし、でも、ベッドで寝ている、
幼い顔をみてると、本当に、いいのかなと、逡巡しているうちに、寝落ちして、朝起きた
ら、いなくなってたことがあった。気が変わったんだと思う。いないことに気づいて、
「わー。もったいないお化けでちゃうよ」と思ったけど、反面ホッとしてたしね。
なんなんだろう。
マリエさんは、ユウタは一途にあたしのことを思い続けてくれてると確信していたと思う。
うーん。それを一途な愛と呼ぶべきなのか。消極的には、そうかもしれないけど。
いまさらだけど、好きとか、愛してるとか、わからないまま死んでいくみたい。

んだと思うけど、ベッドで寝ている、その子の顔をみて、妹より年下

63 :
好きです。付き合ってくださいと申し込んで、付き合うみたいなことがないよね。
そもそも、フラットな状態から、付き合うほど好きという感情の高まりが、わからない。
なんか、わけがわからないので、推敲もしないで、文章もおかしくて、すみません。
マリエさんも、ナミリも、受け身から始まって、相手に好意を見せられて、
応えなきゃということで、好きになってるよね。

64 :
ユウタが部長のことを好ましく思うのは、感情の表出として、行動として、ああ、この人
は本当にマリエさんのことを好きなんだ、大事に思っているんだと思えることなんだよね。
ユウタのことも憎んでいたと思う。マリエさんにユウタの悪口を吹き込んでたからね。
それを毎回、マリエさんから聞かされることには閉口したけど。おちおち、会話もできな
いじゃん。そんな、悪意の切り取りして、マリエさんに言いつけるなら、と面倒くさいと思
ったこともあるけど、ユウタに対する憎悪も含めて、好ましいと思ってた。
それだけ、好きなんだろうね、と分かったから。
ユウタは、おそらく一度も悪く言ったことはないと思う。悪く思ってないから。
ただ、恋人を取り合う相手を憎めないものが、人を愛することができるのか、
という問題も出てくるわけ。
ユウタは、たしかに、とてもおかしいけど、孤高のボッチ・キャラというわけでもない。
むしろ、真逆。高校が大学に出す内申、悪いことが書かれるわけないけど。
「天性の社交家。クラスの仕事もよくできた」と書いてあった。修学旅行委員とか、
文化祭の委員をするようなタイプ。修学旅行委員としては、ホント完璧な仕事したと
思うね。班分けの会がある前に、クラス全員のところまわって、班長と班員全部ひと
り残らず、きちんと決めてたもん。進学校だから、簡単なのかもしれないけど。
表面的な社交性はあるけど、好きなものを好きと言えない、好きなものがわからない
ほしいものを手に入れようとしない、ほしいものがわからない。
これは、哀しいね。

65 :
1996年8月16日(金)
 ナミリ、石和駅に着いたら、変な男がいて(車で)追いかけられたらしい。
お母さんに迎えに来てもらったらしい。体がブルブル震えたらしい。
女の子を夜遅く帰すのは危険すぎる。早く帰すか、送っていくべきだ。

66 :
1996年8月17日(土)
 ナミリが来週の月火と泊りに来てくれるらしい。うれしい。
来週、ナミリのお父さんが手術するらしい。
何か、難しいことにならなければいいけど。
あんまり、ナミリに無理はさせたくないけど、来てもらいたいし、ちょっと複雑。

67 :
1996年8月18日(土)
ナミリより電話。「あんまり泊りに行くのがうれしくなさそう」といわれてドキ!
「7月23日がいちばん楽しかった」と言われてドキ!ドキ!
わざわざ遠いところ来てくれてるのに、本当に大切に思っているのなら、
こんなこと思わせてはならない。こんなに大切な人はいない。

68 :
ナミリにとっては、就職も決まったことだし、社会人になる前の最後の夏休みだし
残ってる卒論とかレポートはユウタにやらせればいいし(笑)解放感いっぱいで、
遊びまくってたんだろうね。友だちと遊んだりするスケジュールが空くと、ユウタ
に会いに来てくれる予定を入れてくれたんだと思う。わざわざ、遠いところ来てくれ
て、うれしくてうれしくて仕方ないんだけど、好きになれば好きになるほど、疑念も
強まっていく。
 駅で変な男につけられた話をしたとき、開口一番「もうユウタのところに行けない」
と言ったりするわけ。ちょっと、びっくりして、よくよく聞いてみると、怖かったのね
ということなんだけど。
でも、そういう言葉のはしに、隠している本心が表われたりもする。
例えば、お手玉をしている女の子が、急に手玉が増えて、扱いかねているような感じ、
やりたい放題やりすぎて、収拾がつかなくなって当惑しているような感じがしていた。

69 :
 それなのに、次の日は泊りに来てくれるとか急に言ってくれるから、ユウタも当惑する。
こんなに、よくしてくれたら、本当に本当に本当に好きになっちゃうけど、独り占めした
くなっちゃうけど、誰にも渡したくなくなっちゃうけど、絶対責任取ってくれないよね。
うれしいんだけど、うれしすぎるんだけど、後が怖すぎる。どこまで、落ち込むか、絶対
立ち直れない自信がある。たぶんナミリは何も考えてないよね、そんな年じゃないもの。

70 :
一年たって、部長が四年・マリエさんが三年・ユウタが二年になった春、マリエさんの
妹さんが上智に受かって上京してくることになり、マリエさんは吉祥寺の南の方のアパ
ートに引っ越した。井之頭公園を越えて、商店街まで歩いた、お風呂屋さんのとなりの
二間あるアパートに引っ越しをした。井之頭公園駅に近い部長のアパートまで、歩いて
すぐの距離だった。マリエさんは、それでも、ユウタのところにHしに来てたけど、次
第に足が遠のいていった。監視が厳しくなり、嘘もつきにくくなったこともあるけど
部長の献身に、ほだされたことが一番の理由だと思うね。
 ユウタはユウタのほうで、異常な三角関係を脱して、普通の夢のような恋をしなくち
ゃとサークルつながりでお茶大の川畑さんと映画に行ったりしてた。よく覚えてる、有
楽町シネマで、真夏でものすごく暑くて映画館のなかはクーラーが効いていて、映画が
とても難しくて爆睡したことを。確か「去年マリエンバートで」だったと思う。川畑さ
んは、ユウタが貸してあげた「うる星やつら」を暗いのに読んで楽しそうにしていた。

71 :
それなのに…
マリエさんは、ユウタはあたしのことを一途に思い続けていると確信していたと思う。
さらに一年たって、部長は高校の教員となって田舎に帰っていった。
絶対ユウタと浮気するなと固く約束させて帰ったらしい。
浮気したら別れると言ったらしいと、あとでマリエさんから聞いたような気がする。
マリエさんは四年生、ユウタは三年生になった。
四月のある日、現代中国論かなんかの連続講演会が明治かその辺で行われ、
ユウタもサークルのみんなと出席していた。すると、そこにマリエさんが突如現れた。
マリエさんは英米文学科なので、現代中国論には、あんまり興味ないと思う。
みんなで帰って神保町の交差点で、信号が変わるのを待ってたら、マリエさんが
ユウタが一緒に映画を見に行った川畑さんを含むサークルの女の子と話はじめ、
それとなく聞いてたら「ユウタ君のアパートに行くと、とてもやさしくしてくれるよ」
とか言ってるわけ。わー余計な事言わないでね。とか、思ってたら、マリエさんが、
突然ユウタのところに近づいてきて「今夜、泊りに行っていい」と耳元で囁いた。
会うのも久しぶりで、ずいぶんほったらかしにされてたと思うけど、マリエさんの
くぐもった優しい声を聞くと反射的にユウタも「いいよ」と言ってしまった。
なんなんだろうね。
マリエさんは「腐れ縁だよー」とか言ってたけど、半年か、それ以上ほったらかしにしていて、
会って開口一番「今夜、泊りに行っていい」とか普通言える?言えないと思うな。
ほんと、なんなんだろうね。

72 :
1996年8月19日(月)
今日は泊りに来た記念ということでnamiriが書きます。許可をもらったので!
えーと、まず私は10:17 石和発のtrainに遅れた。それで、12:28八王子着で
やってきた。そしたら、ユウタが遅刻!やってられない。
でも吉祥寺で旧式ボートで、超楽しかった。

73 :
ナミリが来てくれるときは、いつも八王子まで迎えにいっていたけど、
いつもほぼ遅刻しており「どうして授業は遅刻しないのに、私とのデートでは遅刻するのよ」
と、いつも怒られていた。
しかし、これは構造的な問題でどうしても遅刻することが宿命づけられている。
「今から出るから」
「うん、迎えに行くね」
もうこの時点で遅刻は決定づけられている。
ナミリ 家⇒石和⇒八王子
ユウタ 家⇒小田急相模原⇒町田⇒JR町田⇒八王子
しかも、ナミリの家は駅から10分もかからないと思うけど、ユウタは20分くらいかかると
思う。さらに、乗り換えもあるわけで、とにかく、遅刻しちゃうわけ。
ホームでふくれているナミリに、手を合わせて「ごめん、ごめん」と、いつも走り駆け寄
っていた。
この日は、カイジに乗り遅れて、各停で行ったのに、それにも遅刻したと言ってるみたい。
でも、たぶん、この日も朝まで電話しているはず。
20歳の女の子と付き合う35歳のおじさんの苦衷もご察しください。

74 :
ナミリは20歳になったばかりで、
ユウタは35歳から36歳になるところだったので、
年の差は16歳となる。
だから二人の会話も、微妙に食い違ってくる。まあ、それも面白んだけどね。
たとえばナミリは中山美穂が好きといえば
ユウタは「ママはアイドル」で「派手!」を歌ってる姿を思い浮かべるんだけど、
ナミリは、この前年公開された映画「Love Letter」に出てくる、しっとりとしたお姉さん
を思い浮かべてる。ついでに言うとユウタは風の「あいつ」みたいな映画やねと思っちゃう。
ふつうの手漕ぎボートなんだけど、ナミリにとっては旧式ボートなんだね。
そういうこと、ひとつひとつが、おもしろく、かわいらしかった。
井之頭恩賜公園は、よくドラマの舞台にもなっており、ユウタにとって井之頭公園といえ
ば、やっぱり「俺たちの旅」なんだけど、ナミリにとっては、この前年のドラマ「愛して
ると言ってくれ」だったわけで、常盤貴子がバイトしてた茶店あたりを、ぶらぶら歩いて
珍しそうにしていた。

75 :
そんなに広い公園じゃないので、井之頭公園駅まで歩いて行って階段を上がって
「ナミリ、ここ、わかる?「高校教師」の最初に出てくる駅だよ」
と言うと、うんうん、うなづいていて、かわいらしかった。
ただユウタにとっては、井之頭公園駅は、完全アウェイで、嫌な記憶が蘇ったりする。
いつだったんだろ。マリエさんのアパートに行ったらいなくて、部長のところにいるの
かな、部長のアパートの前通って、井之頭公園駅から帰ろうと、通りがかると、部長の
部屋の窓、少しだけ開いたサッシの隙間から、見慣れた長くキレイな指が出て、ピアノ
を弾くように動いていた。部長は、大きなベッドを窓に寄せていた。
今でも鮮明に覚えているから、きっとショックだったんだろうね。

76 :
ナミリは「高校教師」第一話の最後のシーンが好きだと言っていた。
暗闇のなかで、明るく照らされている緑の公衆電話。
大きな闇を抱える主人公が、生物教師に電話して、
ペンギンの話を聞いて、つかのまホッとする場面。
ナミリがユウタに求めていたものは、そういう役割だったと思う。

ネットのない時代は、テレビが娯楽の王様で、毎週、豪華で分厚いテレビ雑誌が発売
され、みんな見ていた。共通理解があったよね。

77 :
ボートに乗ることにして池のほうに歩いたけど、いろんなことを思い出していた。
ナミリと一緒に歩いているのに。
あのベンチ。
座ってるユウタにマリエさんが横に座って抱き合って長い間キスしてたこと。
マリエさんはベージュのショートパンツで長い脚によく似合ってたなとか。
井之頭公園は、ユウタにとって懐かしく思い出が多すぎる場所なのだ。
「あたしが漕ぐから」
ナミリが漕いでくれるボートに乗って、ぼんやりしてると、ボートが外国人の親子連れ
のスワンにぶつかって「若い二人には時間があるから急がないで」とか、英語か日本語
で言われた。
ナミリは、元気いっぱい漕いでいる。
ナミリは、おもしろくて、ガム噛んでて吐きたいといって吐く場所がないので、
ユウタの手のひらに吐いて、「あたしって、こういう子なの」って言ったりする。
ジュースも一口飲んで「いらない」と言って、渡してくる。
そういうナミリのすべてを愛らしく思いながら、池を渡る橋をぼんやり見て
マリエさんと何百回も渡ったことを思い出していた。
「マリエさん、ユウタがこっち歩くよ。マリエさんは、こっち」
実は冬の池を渡る橋は寒いのだ。
ユウタが冷たい風を受けるから、まあ気休めにもならないんだけど。
「ありがと」
マリエさんの声が聞こえたような気がして哀しかった。

78 :
1996年8月20日(火)
ナミリが泊ってくれた。カレーも作ってくれた。美味しかった。
ナミリは、鼻をかむのに、いちいちトイレで水を流すくらいの恥ずかしがりや。

79 :
1996年8月21日(水)
ナミリの特徴。恥ずかしがりや。前髪命、シャワーを浴びるたびにドライヤーで直す。
昨日の午前11時55分、妹の第二子・陽奈ちゃんが生まれた。家族が増えてうれしい。
大きな元気な子らしい。
1996年8月22日(木)
ナミリ。元気よすぎて体が心配。
ナミリ、巨人ー横浜戦の駒田の逆転満塁弾に怒る。ユウタは横浜ファン。第二次の別当
監督の頃からの二十年来の大ファンなので、うれしい。だから、ケンカになる。

1996年823

80 :
ナミリにマリエさんのことは、ほぼ話してない。
一度間違えて、ナミリのことを「マリエ」と呼んだことがあるけど、ナミリは一拍おいて
振り向いて「ほかの女がいるかと思ったわよ」と流してくれた。
ナミリが気にしていたのは、よく電話や手紙をくれていた女学館の卒業生で、七月にマン
ドリンの演奏会やるから聴きに来てくださいと言われて、ユウタが花束持って聴きに行
った人のことは気にしていた。
「ドクトル・ジバゴ」が好きだから、マンドリンに興味があっただけなんだけどね。
ナミリは、おもしろくて「荒らしてやる」と言って、髪を触り、ユウタの部屋に長い髪を
落としていった。ほかの女が見つけて、揉めるようにするためだって。

81 :
あと言ったのは、「女殴ったことある?」と聞かれて、
「うん」と、マリエさんとのもうひとつのケンカの話をした時くらい。

後でユウタと同じゼミの凸山が「マリエさん、目のところどうしたの」と聞いて
「うん、ユウタ君に殴られたの。でも、あたしが悪かったの」
と言ってるのを記憶しているから、
ユウタが三年生でマリエさんが四年生の頃の話だと思う。
マリエさんは、ビリー・ジョエルが大好きでいつもよく聴いていたんだけど、朝が早かった
んだろうね。隣の人から苦情が来たので、すみません、とユウタがあやまってラジカセの
ボリュームを下げたら、「なんで下げるのよ」といきなり背中を蹴られた。理不尽なり。
いきなり、とっくみあいのケンカになった。マリエさんにしてみたら、ボリュームさげて
いいか、まずマリエさんに聞くべきなのに、聞かないで下げたことが気に入らなかったみ
たい。顔とか胸とか引っかかれて、ユウタの怒りも臨界に達し、思わず右目のあたりを、
三発グーで殴ってしまった。すると、マリエさんの動きが止まり、ユウタも我に返り、大
変なことをしたと思い、ふとんのうえにうつぶせで寝た。レスリングで、そういうのある
でしょ。さらにエキサイトしたマリエさんは、ユウタの背中を殴ったり、引っかいたりし
てたけけど、もう抵抗せずに、気が済むまで我慢していた。マリエさんが、カッターか、
なにかで、ユウタのお尻の上のほうをぐじぐじ突いてきたときには、ちょっと痛かったけ
ど、我慢していた。しばらくたって、気が済んだみたいなマリエさんに「ごめん」と謝っ
たら、マリエさんも「あたしもごめん」と謝って、抱き合って、二人で泣いた。
いったい、何が二人をそうさせたんでしょうね。
でも、おもわずグーで殴った跡は暫く残り、見るたびにユウタは、ホントに悪いことをし
たと反省し悔悟した。ユウタは、生まれてきてから今日まで記憶のない幼少期はともかく
人を殴ったのは、これが最初で最後なんだけど、なんなんだろうね。

「ほら、これがその時のお尻の傷」とナミリに見せたら
「なんにもなってないよ」と言われ、
お前との結婚はもともとないけど、今の話で100パーないわ、というくらい、
ドン引きされ、「チェッ!ホントのこと言うんじゃなかった」と心の中で思った。

82 :
◆わかってる

わかってる。全部わかってる。
16歳の年の差といえば、ユウタが高一くらいで、文化祭の委員をして、その専横を極め
る独裁ぶりに、人格者で名高いクラスメートのたにしさんに「んー。もう、この独断男」
とか言われて、怒られてた頃に生まれた赤ちゃんということになる。
どう考えても、ムリ。
そもそも、接点もない。ただ大学の授業でつながっているだけ。
わかってる。わかってるんだけど。

83 :
「いつも君のそばにいるよ」ということもできない。遠距離だから。
ナミリが、わざわざ遠いところ電車に乗って来てくれるから、続いているだけで。
忙しくなったら、それも無理になる。
今は、夏休みだから、暇が多くて、会いに来てくれてるけど、どうなるんだろう。
電話も、今は休みだから、長く話せるけど、これもどうなるかわからない。

84 :
それに恐らくナミリは何も考えてない。
本能だけで動いてるようなもの。
20歳って、そういう歳だもの。
自分を顧みてもそうだもの。
マリエさんと延々Hしか、してなかったもの。
喜びすぎで、舞い上がって、奈落の底に叩き落される未来図しか予想できない。

85 :
ナミリは充分ユウタによくしてくれている。
わざわざ遠いところ、会いに来てくれる。
「電車で退屈しない。無理してない」と聞いたら
「あたし電車に乗るの好きだから」と言ってくれる。

あんまり、疑ったりしたら申し訳ないかもしれない。
そもそも、その資格があるんだろうか。
浮気していても、
いやあるいは、ユウタと付き合ってることが浮気だとしても、
文句の言える立場じゃないよね。

わかってる。わかってるんだけど。

86 :
マリエさんは四年生なので、就職活動を始めたけど、うまくいかなかったようだった。
あるとき、面接で会社の人が創業以来の社訓の話をしたので「へー固執してるんですね」
と言ってエライ怒られたと、プリプリ怒って帰って来た。
うーん、固執は、悪意表現ととられるかも。なんでもできるマリエさんにしては意外だね。
就職活動に嫌気がさしたマリエさんは、一年留年して教員採用試験をうけることにした。
田舎に帰って部長と、より戻すつもりかなと思ったけど、それよりは、もう一年一緒に
いることになって、うれしかった。
マリエさんとは、いっぱい映画も見た。池袋の文芸座で「風の谷のナウシカ」観たし、
シネマ東急スクエアで「カルメン」を観た。マリエさんは「ピア」をよく見て、珍し
い映画も誘ってくれたな。「ガリガリ博士」とか「ファンタスティック・プラネット」
とか。ナウシカ観たときは、食い入るように見てたせいか、蚊に二か所噛まれている
ことに、あとで気がついた。
今考えると、昔のデートは、ホント映画が多いよね。まだ、レンタルビデオも一般的じゃ
なかったし、下北にあったレンタルビデオ店のように一本借りて千円とか、はー何それ、
みたいな店ばかりだったな。

87 :
マリエさんは四年生なので、就職活動を始めたけど、うまくいかなかったようだった。
あるとき、面接で会社の人が創業以来の社訓の話をしたので「へー固執してるんですね」
と言ってエライ怒られたと、プリプリ怒って帰って来た。
うーん、固執は、悪意表現ととられるかも。なんでもできるマリエさんにしては意外だね。
就職活動に嫌気がさしたマリエさんは、一年留年して教員採用試験をうけることにした。
田舎に帰って部長と、より戻すつもりかなと思ったけど、それよりは、もう一年一緒に
いることになって、うれしかった。
マリエさんとは、いっぱい映画も見た。池袋の文芸座で「風の谷のナウシカ」観たし、
シネマ東急スクエアで「カルメン」を観た。マリエさんは「ピア」をよく見て、珍し
い映画も誘ってくれたな。「ガリガリ博士」とか「ファンタスティック・プラネット」
とか。ナウシカ観たときは、食い入るように見てたせいか、蚊に二か所噛まれている
ことに、あとで気がついた。
今考えると、昔のデートは、ホント映画が多いよね。まだ、レンタルビデオも一般的じゃ
なかったし、下北にあったレンタルビデオ店のように一本借りて千円とか、はー何それ、
みたいな店ばかりだったな。

88 :
マリエさんは四年生なので、就職活動を始めたけど、うまくいかなかったようだった。
あるとき、面接で会社の人が創業以来の社訓の話をしたので「へー固執してるんですね」
と言ってエライ怒られたと、プリプリ怒って帰って来た。
うーん、固執は、悪意表現ととられるかも。なんでもできるマリエさんにしては意外だね。
就職活動に嫌気がさしたマリエさんは、一年留年して教員採用試験をうけることにした。
田舎に帰って部長と、より戻すつもりかなと思ったけど、それよりは、もう一年一緒に
いることになって、うれしかった。
マリエさんとは、いっぱい映画も見た。池袋の文芸座で「風の谷のナウシカ」観たし、
シネマ東急スクエアで「カルメン」を観た。マリエさんは「ピア」をよく見て、珍し
い映画も誘ってくれたな。「ガリガリ博士」とか「ファンタスティック・プラネット」
とか。ナウシカ観たときは、食い入るように見てたせいか、蚊に二か所噛まれている
ことに、あとで気がついた。
今考えると、昔のデートは、ホント映画が多いよね。まだ、レンタルビデオも一般的じゃ
なかったし、下北にあったレンタルビデオ店のように一本借りて千円とか、はー何それ、
みたいな店ばかりだったな。

89 :
1996年8月23日(金)
ナミリが彼氏に求めるものは、愛されてる実感だって。
ネックレス、なんとかしないといけない。
それにしても、二十歳の元気はすごい。
体が心配だ。
1996年8月24日(土)
…ナミリだけ、いてくれたら、それでいいんだけど…
1996年8月25日(日)
ナミリ、眠っていて起きたとき、目をこすりすぎて、とても痛くなったんだって。
横に擦りすぎて、うわ瞼の裏を傷つけたらしい。心配。
でも、夜ワイン飲んだとか言ってたから、ホッとした。
目が大きいこともあるけど、ちょっと疲れすぎ。寝不足もあると思うよ。
最後の夏休みだから、ということで遊び倒してるんだろうけど。
でも早く治るといいね。いちばん、大切だ。はやく、会いたーい

90 :
ネックレス、なんとかしないといけない。
とあるのは、ナミリが肌身離さず身に着けていた、太めの金の鎖のネックレスのこと。
元カレにもらったものだけど、気持ちは残ってないけど、気に入ってるから着けてるって、
言ってたと思う。でも、気になるじゃない。

ナミリが初めて泊りに来てくれた時、信玄餅をお土産に持ってきてくれて、
人の家を訪ねるときは、信玄餅をもっていくのが、山梨県民の嗜みです、
とか言ってたな。
正しい信玄餅の食べ方も教えてくれた。いったん、餅を外して、
残ったきなこのくぼみに黒蜜をかけ、それに餅をつけて食べるんだって。
へえー。わりと、感心した。

91 :
1996年8月26日(月)
韓国、前の大統領に対する判決が出る。
全斗煥に死刑。盧泰愚は22年3ヵ月。
光州事件の公式の犠牲者は193名ということになったらしい。
金泳三大統領は、盧泰愚の協力で大統領になれたんだと思ったけど。
ここまで、圧倒的な権力だと、大統領自身のパーソナリティが大きな影響力をもつ。
「文民政権」「歴史立て直し」先が思いやられる。
1996年8月27日(火)
さきがけの鳩山ー武村会談は、物別れに終わったようだ。さきがけ内では、排除の論理
といって反発が強まっているようだ。…でも、鳩山新党には可能性があると思う。
1996年8月28日(水)
沖縄、代理署名判決で敗訴。沖縄の主張は、内地と平等に扱ってほしいということなのに。

なんでか、時事ネタ三連発。

92 :
マリエさんと映画に行くとき、マリエさんの好きな映画を見ることにしていた。
いちばん最初のデートのとき「ユウタくんの好きな映画でいいよ」と言ってくれたのを、
まにうけて「連合艦隊」を見にいってしまったのだ!
その三時間後くらい。
だって好きな映画って言ったじゃんと心の中で呟きながら、
センター街の喫茶店で、プリプリ怒るマリエさんの前で、うなだれていた記憶がある。
小一時間いや、もっと長い時間怒られていた。
「連合艦隊」は、中井貴一の映画デビュー作で(真黒で声のきれいな人という印象)で
大和爆沈のシーンなど、見るべきところもあるけど、いかにも長く、脚本もちょっと冗長。
なんで、栗田艦隊のレイテ湾への反転のところ、そこまで尺をとる、とユウタでも思うか
ら、マリエさんは、わけわからんと怒り心頭だった。また、メロドラマ風味なのも、気に
いらなかったみたい。もともと、心情左翼の部長の彼女だったから、お嫌いなんですよ。
もっと古い映画になるけど「戦争と人間」だったら、セーフだったかもしれないね。
ユウタは、軍国少年だから、歴史の流れを知ったうえで、スペクタクルを観たいというか、
そういう場面にときめくことを、わかってもらいたかったんだけどね。
「攻撃隊発進します」
「敵機直上、急降下」
「赤城・加賀・蒼龍に命中。黒煙が上がっています。一航艦司令部との通信途絶」
「二航戦司令官より、赤城に発光信号。司令権を継承し、反撃を開始する」
というのが好きなんだけど、これは彼女には、なかなか分かってもらえないよね。
ともかく、しばかれたので、びびったという話。

93 :
1996年8月29日(木)
丸山真男氏が亡くなった。すごい人でも死んじゃうんだ。

ナミリの話は、相変わらず、楽しい。
前々から注意しようと思っていたけど
「(あたしとの)結婚を考えてない?」って、言われた。
二十歳の子と、おじさんでは、ものの見方が違うよね。
これから、世の中に出ていく、希望にあふれた若い人と
前途が暗黒に閉ざされている、くたびれたおじさんでは、特にね。
誠実であろうとすることは大切なことだけど、
変なプレッシャーを感じさせては、かわいそうだ。
わかってあげること、大人として広い心で見てあげること
それが一番大切だ。

94 :
1999年8月30日(金)
最近のナミリは、目が痛かったり、お腹が痛かったり、少しお疲れ気味だ。
元気がいいから、少し心配だ。
1999年8月31日(土)
ナミリは、優しくて、とてもいい娘。
それなのに「お前は、いつか誰かに刺される」なんて、言われたこともあるんだって。
まあ、別れ際の言葉だから、言いたい気持ちもわかるけどね。
他に好きな人が出来た場合、飽きた場合に別れるそうですけど、
ユウタとは、まだ飽きるほど会ってないんだって。
甲府で会うのは難しいけど、学校が始まる前に、
ちゃんと探しておく必要があるでしょうな。

95 :
「前々から注意しようと思ってたけど、結婚考えてない?」

ナミリは、笑いながら、からかい気味に言った。ユウタが、ナミリとのこと、あんまり
にも喜びすぎて、有頂天になって、一人で先走っているのを、やんわり水差そうとした
んだと思う。日記見てて思うもの。お前は、中学生か!って。大学の先生なんだけどね。
でもナミリに、こんだけ、よくしてもらったら、無理ないとも思うけどね。

「お前は、いつか誰かに刺される」

で、その気にさせといて、自己都合で、ばっさり切り捨てる。
なんか自分自身の未来を見るような怖い話。

96 :
甲府で会うのは難しい云々

というのは、Hできる場所探しましょ。という話。
で、結局ビジネスホテルでいいんじゃね、ということになった。

97 :
1996年9月1日(日)
サンプロ。鳩山新党、呑気で明るくバカなのに驚く。純粋な人なんだねー。
1996年9月2日(月)
ナミリ、学校始まる。歴博の先生の集中らしい。
1996年9月3日(火)
ナミリの電話、待ってて寝過ごしたと思ったら、ナミリも寝てしまったんだって。
母より電話。いとこがお見合いしたとかいう話。彼女がいるのかと聞かれたので、
うん、と答えると、今年中に連れてきて、来年の節分には結婚しろと、突っ走って
いた。ナミリに話すと「断れないからなー」だって。

98 :
結婚したいくらい好きだったのは、その通りだけど、今すぐとは思ってなかったと思う。
結婚が何の保障(保証・どっちもいいみたい)にもならないことを身近な例で知ってたか
ら、思ってなかったと思う。

ユウタの院生の友だちに藤吉って娘がいて、フランス文学科から史学科東洋史に移ってき
た変わり種。吉祥寺に住んでたな。
青学のフランス文学科で吉祥寺に住んでるというと、一定のイメージが浮かんできません?
きれいなお姉さんがおしゃれな服着てるみたいな。
ところが藤吉は、年がら年中、薄汚れたジッパーのついた白い服を着て、平気。服装とか、
普段まったく関心がないユウタでも、藤吉それでいいのかーと思うんだけど、平然として
いたな。目は一重で、髪は長めのおかっぱで、小さくて、かわいい日本人形みたいなんだ
けどね。
「フランス文学科では浮いてたでしょ」すぐ仲良くなった。類は類を呼ぶんだね。

藤吉は小さいんだけど、母性というか包容力とがある子で、ユウタもホント迷惑かけたこ
とがある。諸般の事情(後で詳述します)で、博士前期課程四年目(ふつうは二年なんだ
けど、これも後でね)後がないプレッシャーのなかで修士論文を書いていたら、ものすご
く不安になるわけ。するとユウタは藤吉のところに電話して
「藤吉、修論書けない。うえーん。期限に間にあわないかもしれない。うえーん」
「あたしも書いてるから。邪魔しないで。もう電話してこないで」
これを、ほぼ毎日繰り返してたからね。
でも藤吉は、毎日話聞いてくれたから、ほんと有難かったな。迷惑だったろうにね。

この藤吉には彼氏がいて、それも新宿のエル・フラでフラメンコ・ダンサーをしている
変わり種。その彼氏のお母さんが、結婚を急がせて、二人を結婚させた。ユウタと凸山
と藤吉と彼氏、四人で渋谷でお祝いをしたこともあったんだけど、藤吉は、結婚させら
れたことが気に入らなかったみたい。
で、藤吉はダンナを残して、突然、中国・山東に留学、しかも向こうでロシア人の彼氏
を作るおまけつき。日本に帰って来たので、何のためと聞いたら、離婚のためと言って
たから、じゃあ、いったい、何のために結婚したの?と聞きたいような顛末だった。

99 :
話は、どんどん脱線するけど、
ほんと、この頃にパソコンいやワープロでもいいけど、それがあったらと、ほんとに思う。
それだけは、なんか口惜しい。
万年筆の手書きで、卒論用の原稿に書いてたんだから。ボールペンはダメなんだよね。
手が痛くなって、すぐ書けなくなるから。三百枚から四百枚くらい。

ユウタのサークルは、年一回の全国大会(といっても、東大・早稲田・お茶大・青学と
立命だけなんだねどね)のために、会報を作って、それをもとに研究発表するんだけど、
ワープロもないうえ、コピーもない!から、蝋原紙に鉄筆でガリガリ書いて、それを一
枚ずつインクのついたローラーで紙に印刷していたんだからねー。

ユウタのサークルは、学校の公認サークルじゃないから部室は東大のサークルのを使わ
せてもらってた。この世の、ありとあらゆるごみの吹き溜まりみたいな、駒場の明寮の
部屋。少なくても20年は掃除してないよね、みたいなところで。しかも、隣のブリ研
が防音のため、窓潰してたから、昼間でも電気がないと真っ暗な部屋で。
ブリティッシュロック研究会が、ビヨーンビヨーンと、またうるさいんだ。これが。

そういえば、ブリ研がいない静かな部屋で、部長と二人で、原稿を書いてたら、パタパタ
足音がするから、「あっ。マリエさんが来ましたよ」というと、「足音でわかるの」と、
驚かれたこともあったな。
マリエさんは、足がとてもきれいな人だったから、一瞬、足タレになろうと思って、少し
レッスンを受けたことがあったみたいで、モデルみたいにきれいに歩く人だったから、足
音に特徴があった。ただ、惜しむらくは、ちょっと猫背。胸が重いせいだって。いつも肩
が凝るって言ってたな。

100 :
そういえば、藤吉と凸山とユウタの三人で、井之頭線で帰ってたら、突然、凸山が藤吉の
白い服のジッパーを上げたことがあったな。なんか、ジッパーを下げた谷間アピールが、
急に気に入らなくなったみたい。酔ってたんだろうね。
でも、藤吉はまたジッパーを谷間がアピールできるところまで、下げてた。
こだわりがあるみたい。

ユウタは、マリエさんに連れて行ってもらった「カルメン」アントニオ・ガデス、クリステ
ィーナ・オヨスが出てた映画を見てたから、フラメンコに興味があって、藤吉のダンナとは
話がはずみ、イイひとなんじゃね、と思ってたんだけどね。

なんか院生って、いつも一緒にいて、一緒に苦難(!)を乗り越えるから、バンド・オブ・
ブラザーズが生まれるんだよね。兄妹あるいは姉弟みたいな関係になるね、


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